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その畑では、本当に、お野菜さんが、勝手に生えてくるのであった。 理由は判らないが、数日前にゆっくり達が言っていた台詞が真実になってしまったな、と思った。 「だから、ここは、僕のおうちで、これはお兄さんが育てたお野菜なんだよ。」 「おやさいさんはかってにはえてくるんだよ!!」 「おやさいさんをひとりじめするにんげんさんはずるいよ!!ゆっくりしんでね!!」 「「「「「ちんでにぇ!!!!!」」」」」 まりさとれいむと、赤ゆっくりが5匹。初めてゆっくりの被害にあってしまったが、 なんというか、本当にこんな思考をしてるんだなぁ、と驚愕するばかりである。 別に自分は農業で生活を立てている訳ではない。親から受け継いだ畑で、趣味として野菜を育ててるのだ。 新鮮な野菜を食べれるし、国からわずかだが、お金も出る。それだけだ。そんな理由なので荒されても別に心は荒まない。 被害も、きゅうりが4本程度、トマトが5個くらいだろう。どうでも良かった。 だが、自分が畑を荒してる所を止めようとしたら、体当たりしてきたのだった。 ぽこん、ぽこんと足に体当りする様が面白かったので、捕獲しようと思った。 使っていない納屋まで誘導し、扉に鍵を掛ける。 こうして、着いてきた一家丸ごと捕まえる事に成功したのだった。 「ゆっへっへ。もういちどまりささまのたいあたりをくらいたくなかったら、ゆっくりここからだすんだぜ!!」 「そうだよ!!まりさはとってもつよいんだよ!!!はやくあやまったほうがいいよ、おにーさん!!!」 「「「りぇーみゅちゃちに、はやきゅあみゃあみゃをもっちぇきちぇね!!」」」 「「まりしゃちゃちにももっちぇきちぇね!!しょしちゃらゆっきゅりちんぢぇね!!!」」 どうも、先程の体当りで優位に立っていると思っているようだ。捕まえたと言っても閉じ込めている訳ではないし。 まあ、いいか。……と野菜は勝手に生えてこない事を根気よく説明したが、返事は、勝手に生えてくる。という一点張りだ。 これはやり方を変えないと駄目かも。そう思ってると足に音が鳴る。 「ゆっふっふ。おにーさんのざれごとに、つきあっていられないぜ。まりささまのこうげきでしんでもらうぜ。」 またもや、ぽこんぽこんとリズムを奏でる事にしたようだ。 「うっそお?」 さっき何度も繰り返して効かなかった攻撃を繰り返すとは。他に攻撃の手段はないのか、と驚いてしまった。 「まりさ!!ゆっくりきいてるよ!!!」 「「「おちょーしゃん!!ぎゃんばっちぇにぇ!!!しょしちぇあみゃあみゃをとってきちぇね!!!」」」 効いてないし、と突っ込むよりも、子供達の台詞がひたすらに甘い物を求めているだけな事のほうが気になる。 そういえば、ここに缶ドロップがあったことを思いだので、気づかれないように移動、そして腕だけ動かし 缶ドロップを取る事に成功した。そして、まりさの攻撃?に合わせて飴を落とす。 「「「ゆゆ!!?おにーしゃんからにゃにきゃおちちぇきちゃよ!?」」」 親が必死に体当りしてる場所が近いと飴を拾えないだろうから、気づかれないよう移動する。 「「「ちあわしぇ~~♪♪きょれはちょってもあみゃあみゃだにぇ!!!」」」 うお、いきなり口に含むとは・・・。何という警戒心の無さ。 「まりさ!!おにーさんをこうげきしたらあまあまがでてくるよ!!!」 「わかったんだぜ!!もっとこうげきをはげしくしてあまあまをださせるんだぜぇえええ!!!」 「「「おちょーしゃん!!もっちょあみゃあみゃをだしちぇね!!!!」」」 飴が落ちるたびに子供達がきゃいきゃい騒ぎ出した。 ……しかし、何度か続けると、飴が出なくなってしまう。 まあ、缶ドロップの中身などたかが知れている。というか飴を舐めないで食べてるから消費が早いのだ。 「まりさ!なにやってるの!?はやくあまあまをだしてね!!!!」 「「「ひゃやくだしちぇね!!やくたたじゅにゃおちょーしゃんはちんでにぇ!!!」」」 「どぼじでぞんなごどい゛う゛のお゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 何故か責められる親まりさ。不憫だ。助け舟を出してやろう。 「まあ聞きなさい。飴さんは勝手に落ちてこないんだよ。限りがあるんだ。お野菜さんだって同じだよ? 勝手に生えてこないんだ、解るかな?」 「ゆゆ!!?まりさのゆっくりぷれいすににんげんさんがいるよ!!?」 「そんなのどぼでぼいいでじょお゛お゛お゛!!はやくあまあまざんをだじででいぶにもっでぎでね!!! でいぶはまだあ゛まあ゛まざんをだべでない゛んだよ!!!」 「「「やくたたじゅのおちょーしゃんはちね!!しょしてあまあましゃんをもっちぇきちぇね!!!」」」 聞いてなかった・・・。というより気づいたのはまりさだけだ。 そのまりさもさっきは出してといっていたのに、今ではここが自分のゆっくりぷれいすだと思っている。 れいむは、子供達を優先したようだが、心の中は飴に夢中だったらしい。涎が物凄い事になっていた。 子供達は甘いものしか見えてないのが哀れだ。これが、ゆとり教育の弊害かもしれない。 「にんげんさんはまりさのゆっくりぷれいすからでていってね!!!そしてあまあまをもってきてね!!!」 「ばりざあ゛あ゛あ゛!!!あまあまざんをだすのをあぎらめない゛でえ゛え゛え゛え゛!!!」 「「「あまあまをもってこないまりしゃおちょーーしゃんはゆっくりちんでにぇ!!!」」」 駄目だ、この一家。家庭崩壊とかいうレベルじゃない。なんだか親まりさが哀れで泣けてくる。 あまりにも(頭が)可愛そうだったので捕まえるのは止めた。納屋から出してやる。 「ゆゆ!!??おやさいさんがいっぱいあるよ!!!ここをまりさたちのゆっくりぷれいすにするよ!!!」 「ゆ!?……やったね!!まりさ!!さすがれいむのおっとだね!!!」 「「「おちょーしゃんしゅぎょーい!!!」」」 目の前に畑があっただけなのだが、それだけで突然一家の中が良くなった。なんだこいつら。 「むーしゃ、むーしゃ!!しあわせーー!!!」 「むっしゃ!むっしゃ!!しあわせーー!!!」 「むーちゃむーちゃ!ち、ちあわちぇええええええ!!!」 一家そろってガツガツと野菜を食べ始めるが、自分はもう止める気はなかった。 どうせ趣味でやってる畑だ、こう幸せに食べてくれるなら、いいじゃないか。自分ではこうも幸せそうに食べられないし。 それに、親まりさには同情している。こんな一家の大黒柱を務めるなど、とても出来ない事だ。 まあ、かといって家に上がられると困るので、家の鍵は厳重に閉めておこう。 毎日自分の畑に来ては、野菜を食い漁っていたまりさ一家だが、その幸せは突然終焉を迎えた。 なんと、畑に野菜が全くなくなってしまったのである。 「どぼじでおやざいざんがないのお゛お゛お゛お゛お゛!!!!」 「「「ゆえーーん!!おやしゃいしゃんたべちゃいよおおお!!」 「まりざあ゛!!!まりざがたべだんでじょお゛お゛お゛お゛!!!」 「でいぶだっでだべだでじょお゛お゛お゛!!ぞれに!!おやざいざんは!がっでにはえでぐるんだよお゛お゛お゛!!! なぐなるばげない゛んだよお゛お゛お゛お゛お゛!!!!!」 「じゃあ゛なんでないのお゛お゛お゛お゛!!!?まりざのぜい゛でじょお゛お゛お゛お゛お゛!!!!! おやざいをだべだまりざはごみぐずい゛がだよ!!!!」 「「「おやしゃいしゃんをたべちゃ、まりしゃおちょーしゃんは、ゆっくちちね!!!!」」」 「どぼじでばりざのぜい゛にずるのお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 家の窓から覗いていたら、こんな光景を繰り広げていた。まあ2週間もバクバク食ってたら無くなるよね。 無実(?)の罪で罵られ、妻からは、 「まりさは今日の分の狩りをして帰ってきてね、れいむ達は家に置いてあるお野菜を食べて待ってるね。」 というような事を言われ、置き去りにされているまりさ。 相変わらず不憫だ。と思っていると、畑に向かって土下座し始めた。 「かみさま、おねがいだから、おやさいさんをちゃんとはやしてあげてね!かってにはえてくるのをじゃましないでね!」 という台詞を土下座しながら叫んだまりさは、去っていった。何言ってるんだろう、あのまりさ。 だがまあ、神頼みとはゆっくりにしては、上等な行為をするものだ。宗教の概念も無い物体の癖に……。 まりさのお願いをせめて、山の神様に届けてみるか。そう思い、お賽銭を山の上の神社に投げ入れる事にした。 神社に着くと、参拝客は誰も居なかった。この寂れ具合だと、優先順位は一位だろう。願い事が少しアレだが。 自分は全てのゆっくりの平和を願っておくか。 この願いよりは、まりさの願いの方が若干楽だろうから、自分の願いは後回しなはずだ。 翌日、自分の畑には野菜が全開で生えていた。ありえん。 「ゆゆーーーっ!!まりさのゆっくりぷれいすにおやさいさんがはえてきたよおおおおお!!!」 「まりさのいうとおり、きのうはおやさいさんがゆっくりしてただけだったんだね!!!」 「「「おちょーしゃん、ものちりだにぇ!!!!」」」 「ゆっへん!!みんなでおやさいさんをたべようね!!!!」 ガツガツと食っていくまりさ達。おいおい、一日で出来た野菜とか恐くて食えねーよ・・・。少しは考えようよ。 「「しあわせーーーー!!」」 「「「ちあわちぇええええええ!!!!」」」 食えるのかよ。しかも旨いのか。まあいいよ、自分は食う気にならないし・・・、好きにしてくれ。 まりさの地位も元に戻ったようだし、満足だ。ヒエラルキー最下位はつらいよな。 さらに、次の日、畑の野菜の濃度が上がっていた。個人でやってるような畑ではなく、農業を営めるような畑だった。 神社効果か?神様スゲェ、としか言いようが無い。まあ、隣の家まで2kmある田舎だからそうそう騒ぎにはならないだろう。 「おやさいさん、すっごいゆっくりしてるよぉおおお!!!!」 「こんなにゆっくりとしたおやさいさんは、はじめてだね!!まりさすごいよ!!!」 「「「しゅごいゆっくちだにぇ!!!おちょーしゃんだいしゅきだよ!!!!」」」 「ゆゆ~ん。てれるよぉお!!」 まりさの株もストップ高だ。おめでとう!!まりさ、おめでとう!! 心の中で誉めてやる。 それからは、毎日がゆっくりデイだった。 お野菜は本当に勝手に生えてきたので、まりさはゆっくりしている。 妻のれいむとの仲も良好なようで、常に頬擦りしてるような感じであった。 まりさの子供達も発育が良く、最近では、赤ちゃん言葉が抜けてきたようだ。 試しに家族を尾行して巣を探してみたが、巣の中は人間が入れる程広く、野菜も存分に保管されていた。 というか、巣というのは俺の納屋であった。畑は納屋をも侵食し、今や大農園の様相を呈していたので、気づかなかった。 そろそろお隣さんにバレるかと思ったが、お隣さんはいつの間にか空き家になっていた。 調べてみると半年前かららしい。ビクビクしていたのが馬鹿らしい。 1ヵ月後、最近まりさ達の姿が見えないな、と思い探してみる事にした。 納屋が探せない・・・。なんという野菜王国。自分の家だけを避けるようにびっしりと生えた野菜の楽園。 ここまで来るとさすがに気持ち悪い。もうやめて。と神社にお祈りしにいこうかな。どうせ自分はこの野菜を食べないし。 30分程かけて納屋を見つけた。中に入ると入り口には変な生物が居た。冬虫夏草っぽいゆっくりだ。 「あ゛あ゛あ゛あ゛!!!でいぶのあんごがずわ゛れでい゛ぐう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」 れいむらしい。頭からトマト(大)を30個はぶら下げている。というか、そう言っている間にもトマトが生っていく。 養分が吸われるのか、それを補うようにずりずり移動しながら野菜を食べている。気持ち悪い。 キャベツを食いながらトマトを生産するとは・・・。これが連金術か。 無視して中に入っていくと、子ゆっくり達が居た。 「おねーちゃんのとまとおいじい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛」 「れいむのきゅうりざん、どっでもあまあまだよお゛お゛お゛お゛お゛お゛」 「まりさおねーちゃんのいちごさん、すごくゆっくりだねえ゛え゛え゛え゛え゛え゛」 「おねーぢゃんのなずざんばすっごぐじんなりじでる゛よお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛」 「まりさのとうもろこじはざいごうだよう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛」 数珠繋ぎだった。野菜が生えてくる瞬間から共に食べあっている。うーん、飽きないのかなあ・・・。 飽きたら順番変えればいいのか?・・・というかトウモロコシだけ凄い食べにくそうだが。まあいい、ほっとこう。 まりさを探す。まりさは何処だ?まりさやーい。 奥の奥、納屋の中でも全く日に当たらない暗闇の中、まりさは居た。懐中電灯を持ってきてようやく見つけたのだった。 見てみると頭から野菜は生えていない。おお、無事だったか。 「ゆ!!?おにーざん!!???」 覚えててくれたとは、おにーさん嬉しいよ。 「おに゛い゛ざあ゛ん!!!ごごは、ぜんぜんゆっぐりでぎない゛よお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!!」 よしよし、何があったか話して見なさい。おにーさんに聞いてみて? 「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん!!!!」 早く話してよ・・・。 まりさの説明は要領を得なかった。3時間かかって、ようやく理解した頃には日が暮れていた。 ながったらしい説明である、正直途中で見捨てようかと思ったが、泣いてすがり付いてきたので我慢する事にした。 光っていたお野菜さんの種があったので、家族で食べた。 すると、まりさ達の頭の上に野菜が勝手に生えてくるようになっていた。 最初は喜んでいたが、自分の力が吸われていく、と気づいてパニックになる。 れいむが頭の茎をへし折った所、今度は2本の茎が生えてきた。折るのはまずい、と理解した。 力が抜けていくのを感じたので、急いでお野菜を食べたが、一向に力が戻らない。 それどころか、余計にお野菜さんが力強く生えてくるようであった。 日が沈むと、お野菜さんは生えてこなくなり、この時にお野菜を食べれば力が戻ると解った。 なら、安心だね。と笑いながら眠ったが、それが間違いだった。次の日には益々お野菜さんが生えてきた。 まりさは恐くなって納屋の奥に逃げた。しばらくするとお野菜さんが大人しくなっているが解った。 まっくらな所にいれば、お野菜さんは生えてこない。すごい事に気づいたと思った。 急いで家族に知らせようとしたが、その時はすでに夜であり、何も見えなかったので、次の日に知らせる事にした。 だが、その時には遅かった。れいむは頭から10本のトマトを実らせ、ほとんど動けず。 這いずりながら野菜を食う、生きる屍と化していた。 子供達もほぼ同じ状態。跳ねる事が出来なければ、この暗闇には来れない。 まりさは一人、暗闇に舞い戻るのであった。 ………。光る種を食べたのはまあいい。……だが、ゆっくりしすぎだ。答えを先延ばしにした結果がこれじゃないか!! 「おにい゛ざあ゛ん!!だずげでねえ゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!」 やれやれ、解ったよ。同情しちまったなら、最後まで面倒みるのが筋さ。 というか神社にお祈りしたせいなら、半分は俺のせいだし。 そういうわけで、夜なのに神社にやって来た。上等な酒を持ってきたので大丈夫なはず。人間も神様も酒が好きのだ。 おやさいさんが勝手に生えてくる、という願いを取り消してください。お願いします。 シンプルに願って、山を降りた。 自分の家に着くと、そこは普通の畑があるだけだった。野菜都市は崩壊したようだ。 そうだ!!まりさは!?まりさはどうなった!!?? 急いで納屋に駆け込む。 冬虫夏草なれいむと子ゆっくりは死んでいた。恐らく、身体のほとんどを野菜に乗っ取られていたんだろう。 まりさは大丈夫だろうか。侵食の具合が気になる。納屋の奥に行くと、まりさは泣きながら胸に飛び込んできた。 「おにぃーざーーん!ありがとお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!まりざのなががら、おやざいざんがぎえだよお゛お゛!!」 ……、全く、これに懲りたらお野菜が勝手に生えてくる、なんて言っちゃ駄目だよ? 「わがっだよお゛お゛お゛お゛!!!ありがどう゛!!ありがどう゛う゛う゛!!!」 その後、妻と子供の死を知り、また泣いたまりさだったが、家族の分まで生きていくと言っていた。 自分と一緒に暮すか?と聞いたが、これからは、お野菜さんが勝手に生えてこない事を布教して回るという。 ゆっくりまた会おうね。と別れた。 いい奴だったな……。ゆっくりにもいい奴がいる。そんな事を、思った。 しかし、山の上の神社は本物かな?何か間違った方向に叶ってしまう気がするから使う事はないだろうけど……。 自分も何か願ったような……。気のせいかな? ───────────── 前に書いたの まりさとの平日 ぱちゅりーとおにーさん
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「ごべん゛な゛ざい゛い゛い゛はんぜい゛じまずがらゆるじでぐだざい゛い゛い゛い゛い゛」 一匹のゆっくりれいむがお兄さんに捕まった。お兄さんの家に忍び込み大切な母の形見を壊したからだ。 ここまではよくある風景だがこのゆっくりはちょっと違った。 「でいぶはどうなっでもい゛い゛がらおながのあがじゃんだげはだずげでぐだざい゛い゛い゛い゛」 このれいむ実は胎生型妊娠をしていたのだ。幸いなことにお兄さんは虐待お兄さんではなかったので 子供が生まれるまで生かしてもらえることになった。 − − − 1 日 目 − − − 「むーしゃ、むーしゃ…」 れいむは逃げないよう檻に囚われ餌として野菜くずを与えられた。 くずといっても野生の食べ物に比べればはるかに美味しかったがれいむは幸せな気持ちになれなかった。 もうすぐ人間さんに殺されてしまう。そう思うと美味しいはずの食事も味が良く分からない。 「ゆゆっ?あかちゃん?」 その時れいむの腹の中の赤ちゃんが動いた。 「れいむのかわいいあかちゃん、げんきにそだってね」 死の恐怖に怯えていたれいむだが赤ちゃんそ存在がれいむの心を支えていた。 − − − 7 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…れいむとってもうれしいよ」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 『子供に罪はないから生まれるまで待ってやる。だが子供が生まれたらお前は殺すからな』 「ゆゆっ!だめだよ、あかちゃんまだうまれないで!」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 やがて赤ちゃんも諦めたのかれいむの産気は収まった。 「あかちゃんうまれるのはもうちょっとだけまってね…」 − − − 1 0 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「れいむのあかちゃんうまれるんだね…」 だがその時お兄さんの言葉を思い出す。 「あかちゃんおねがいだからうまれないでええええ」 れいむは腹に力を込めて生まれてこようとする赤ちゃんを押し戻した。 だが赤ちゃんは前回より強い力でれいむの体から出ようとする。 「おねがいだからやめてええええ」 自分の力では抑えきれないと思ったれいむは野菜の芯で自分のまむまむに蓋をした。 そのかいあってかしばらくして産気は治まった。 「あかちゃんがうまれるとれいむがこまるんだよ。おねがいだからうまれないでね」 − − − 1 2 日 目 − − − 「うーん、うーん、うまれるよ…」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむのおなかに痛みが走る。赤ちゃんが生まれようとしているのだ。 「おねがいだからう゛まれないでっていってるでしょお゛お゛お゛お゛」 だが今回は赤ちゃんもなかなか諦めようとしない。 まるで『なんでうんでくれないの?じぶんはいらないこなの?』と言っているようだった。 「わがままなあかちゃんだね!れいむそんなわがままなあかちゃんいらないよ!」 怒ったれいむはお腹の中の赤ちゃんを罵倒しはじめた。れいむの気持ちがわかるのか赤ちゃんは大人しくなった。 「こんなできのわるいあかちゃんがいるなんてれいむはふこうだよ」 赤ちゃんは寂しそうにごろりと動いた。 − − − 1 7 日 目 − − − 「い゛だい゛い゛い゛い゛、でいぶのおなががい゛だい゛い゛い゛い゛い゛」 お兄さんが仕事で家を開けている時、れいむは激痛でのた打ち回った。 お腹の子供が成長しすぎたせいでれいむの体を圧迫しているのだ。 「れいむをいたいいたいさせるあかちゃんはしね!」 れいむは壁や床にお腹を叩き付けた。何度も何度も… あかちゃんは『いたいよ、なんでこんなことするの?』と言う様にもぞもぞと抵抗したが その動きがよけいにれいむのお腹を痛くし怒りを買うことになった。 「あかじゃんあばれるな!はやくしね!はやくしね!」 やがてお腹の赤ちゃんは動かなくなった。壁に叩きつけられたダメージで死んでしまったのだ。 れいむのまむまむからチョロチョロと餡子が漏れる。 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 「れいむの赤ちゃん中々生まれないな」 「し、しらないよ!れいむはあかちゃんになにもしてないよ!」 「…」 「お、お兄さん?」 「なあれいむ…」 「れれれ、れいむはなにもしてないよ、あかちゃんはげんきにそだってるよ!」 「…そうか」 お兄さんは無言で部屋から立ち去った。 − − − 2 0 日 目 − − − 「うーん、うーん」 お腹に痒みを感じれいむは目を覚ました。何だろうと思いお腹を見ると… れいむのまむまむにウジ虫が入り込もうとしていた。 どうやら腐った赤ちゃんの餡子の臭いに釣られて湧いてきたらしい。 「やめでえ゛え゛え゛!むしさんれいむのなかにはいらないでえ゛え゛え゛!」 れいむはまむまむを壁に擦りつけウジ虫を引き剥がした。 ほっとしたのもつかの間腹の中にちくりとした痛みを感じる。 どうやら気づいたのが遅かったらしくすでに数匹体内にウジ虫が入り込んでいたのだ。 チクチクとした痛みはやがて激痛に変わる。どうやらウジ虫が中枢餡子のあたりまで入ってきたらしい。 「いだいよお゛お゛お゛お゛!むしさんでいぶをだめないでえ゛え゛え゛え゛!」 「なあれいむ・・・」 「ゆ、ゆぴっ!!」 気がつくと背後にお兄さんが立っていた。 赤ちゃんを殺したことをお兄さんにばれないようにしなければならない。 れいむは痛みをこらえて平静を装った。 「れいむがこの家に来てからもう20日になるな」 「れ、れいむのあかちゃんはゆっくりしているからなかなかうまれないんだよ」 自分が疑われていると思ったれいむは聞かれてもいないのに言い訳を始めた。 「俺あれから考えたんだけどさ。れいむ、赤ちゃんが生まれてもお前は助けてやるよ」 「ゆ、ゆゆっ!?」 「俺も幼い頃母親が死んでさ。だから形見が壊されたときすごい怒ったけど やっぱりゆっくりでも母親は必要だと思うんだ。」 「…」 「生まれてすぐ母親がいなくなるのって悲しいからな。お前の赤ちゃんにもそんな思いさせたくないんだ」 「……」 「あの時のことは水に流してゆるしてやるからお前も赤ちゃんのこと大事にしろよ」 「…ゆ、ゆぐっ」 「れいむ?」 「ゆ、ゆげええええええ!!」 「おいれいむ?どうしたんだ?しっかりしろれいむ!」
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『ゆっくり家族とエターナルフォースブリザード』 冬も近づき朝の冷え込みが辛くなってきた頃、奴らはやってきた。 やることもなく家でまったりしていたら突然玄関がガラガラと開いた。 誰も、いない? 居間から玄関は覗けるのだが、扉の開いた向こう側には誰も見えない。 いたずらかと思ったが、疑問はすぐに解けた。 「ゆっくりしようね!」 「ゅ! においがちゅるよ!」 「おいちいたべもののにおいだよ!」 「ゆっくりちようね!」 突然の来訪者はゆっくりだった。 ゆっくり霊夢の家族のようで、扉を開いた母れいむはまだ小さい子供たちを中へと急かす。 子れいむたちの数は4匹。そのどれもが赤ちゃんだ。 まだ雪は降ってないとはいえ寒い中よく来たものだ。 私は立ち上がってゆっくり達の様子を見る。 ちなみに居間と玄関は1つの空間で繋がっているが段差があるので座ってるとゆっくり達が見えないのだ。 れいむ達は相当飢えて余裕がないのかこちらを気付いていないようだ。 あ、でも母れいむはこっちを見たような。いや確実に私を見た。 「こっちからにおいがちゅるよ!」 「じゃあみんなでゆっくりたべようね!」 玄関入って目の前が台所で食糧もそこにまとめてある。 こいつらはそれを食べようとしていた。 冬のために貯めておいた食糧を無断で取られるわけにいかない。 私はそっとゆっくり達の元へ行く。その前に開きっぱなしの玄関も閉めないとな。 「ゆ! かごのなかにあるよ!」 と籠を体当たりで倒そうとする母れいむを掴んだ。 「ゅ? なに? ゆっくりはなしてね!!」 「これは私の食糧だから取っちゃダメだよ」 しかし母れいむは聞かない。 「なにいってるの! ここはれいむたちがみつけたんだかられいむたちのおうちだよ!!」 「しょーだよ! おかーしゃんをゆっくりはなちてね!」 「ゆっくりできにゃいひとはでてってね!!」 「かってにれいむたちのたべものとりゃないでね!」 「しょーだよ! くうきよんでね!!」 口々に私を罵倒してくるゆっくり達。 これは教育しないといけないようだ。もちろん虐め的な意味で。 ちょうど家には親ゆっくりサイズの透明な箱が2つある。 ゆっくりで遊びたい人なら誰でも持ってるあれだ。 私は手早く母れいむと子れいむ4匹をそれぞれ別の箱へと閉じ込めた。 「ゆっくりはやくだしてね!」 餓えていて少し小さい母れいむは箱に入れても余裕があった。 ただ、自由に跳ねまわることはできないので不満そうだ。 「おかーしゃーん!!」 「だちて~!!」 「おなかちゅいたよー!!」 「ゆっくりちゃせて!!」 赤ちゃんサイズの子れいむたちは4匹とはいえ飛び跳ねたりと空間に余裕はあるようだ。 「君たちにはちゃんとあげるよ」 子れいむたちの箱の中に昨日の料理の時に出た生ゴミを入れる。 生ゴミと言っても野菜の切れ端や皮なので十分ご馳走といえるだろう。 「ゅー♪」 「これでゆっきゅりできるね!」 「うっめ! しあわちぇ~!」 「こんなおいしいのはじめちぇ!!」 今までどんなものを食べてきたんだ。とても幸せそうに食べていく子れいむ達だった。 「れいむにもちょうだいね!!」 涎を垂らしながら母れいむも、食事をくれと要求してくる。 「だが断る」 「ゆ"っ!?」 「子供には罪がないし飢えていて可哀想だから食事をあげる」 「でもお母さんれいむはまず私に言うことがあるよね?」 「ゆ…そうだったね…」 お、意外と反省するのが早かったな。これだけ素直なら冬の間飼ってもいいかも。 「いただきます!!! さぁ、いったよ! だからしょくじをちょうだいね!!」 前言撤回。教えてあげないとやっぱりダメだ。 というか、言ってやったぞと勝ち誇ったような顔がすごくムカつく。 「私のおうちに勝手に入ったこと、私を無視して食糧を漁りにいったことを謝ってね」 いやまぁ、外の環境がゆっくり達には辛いのは分かるし子持ちで大変なんだろうけど、 私に気づいておきながら無断で食糧を漁ろうとしたことを母として謝ってほしかった。 「ゆ! しらないよ! ここはれいむたちのおうちなんだからたべものたべたっていいでしょ!」 「分かってないみたいだから食事なしだね」 「なんでぇぇぇぇ!!! れいむはちゃんとわかってるよぉ!!」 「じゃあここは誰のおうち?」 「れいむのにきまってるでしょ!」 「私が元々いたのに?」 「だれもいなかったよ!」 「家に入ってきたときこっち見たよね?」 「ゆ…! しらないよ! とにかくれいむたちのおうちだよ!!」 一瞬言葉が詰まったようだがなかなか強情な奴だ。 「別に良いけど、分からないならずっと食事なしね」 「いやだよ! じゃあここはおにいさんのおうちってことにしてあげるよ! これでまんぞく!?」 大いに不満足だ。私の頭がフジヤマヴォルケイノだよ。 ふと子れいむを見るとぐっすり眠っていた。 きっと疲れていたんだろう。 この子たちはお馬鹿な母れいむのために使わせてもらうとしよう。 私は子れいむの入った透明な箱を持って外へ向かう。 「ゆ! れいむのあかちゃんをどこにもっていくの!!」 「外。でも殺さないしすぐに会えるから安心してね」 「しんようできないよ! ゆっくりいそいでかえしてね!!」 どっちなんだか。 家の脇に水を汲んだ桶を置く。 そして子れいむ達を水の中へと入れる。 うー、さすがに冷たいな。 その水の冷たさに子れいむ達は目を覚ました。 「ゆびべっ!」 「ち、ちべだいよ!」 「み、みじゅ!? ゆっくちできなぃぃ!!」 「しずむよ! うかべないよ!!」 どの子れいむも一言だけ声を発すると桶の底へと沈んでいった。 これだけ冷たければ身が締まってふやけないだろう。それにゆっくりは窒息しないらしいからね。 子れいむ達が逃げられないことを一応確認すると、私は家へと戻った。 「ゆ!! れいむのあかちゃんは!? どこにやったの!!」 「大丈夫。明日には会わせてあげるから」 「なにをいってるの! ふざけないですぐにかえしてね!!」 「じゃあここは誰のおうち? 答えたらすぐに返してあげる」 「だからおにいさんのおうちということにしてあげるっていってるでしょ! ゆっくりりかいしてね!」 「お前が理解しろ。もう一度だけ言うけどここはずっと昔から私の家だ。そしてそこに入ってきたのがお前だ」 少なくとも母れいむは私が家に居たことを確認したのに無視して食糧を取ろうとした。 そこは反省してもらわないとね。 しかしその後も母れいむは反省する様子はなかった。 まー、すぐに反省されても拍子抜けな訳で。 せっかく子れいむの準備をしたのだから明日まで教育という名の虐めは止めておく。 翌朝家の外に置いておいた水の入った桶は見事に凍りついていた。 水量も少なめだったので中まで凍りついていた。 氷の中には苦悶の表情をしていたり、すやすやとした表情の子れいむ4匹が固まっていた。 よし上手くいった。 私は氷漬けの子れいむを母れいむの元へと持っていくと、母れいむはすぐに氷の中の子を見つけた。 「ゆぐぅ!? れいむのあがしゃん!! これはどういうごどおぉぉぉぉ!!」 「何って。氷漬けだけど?」 「だいじょうぶだっていったぐぜにぃぃぃぃ!!」 「大丈夫だって。氷が解ければ元に戻るよ。ほら、冷凍保存ってやつ」 「じゃあゆっくりしないでいそいでとかしてね!!」 「お前が反省したらいいよ」 「はんせいすることなんてないよ!!」 「じゃあこの子たちはずっと氷漬け」 「やめてね! あかちゃんとほおずりしたいよ!!」 「じゃあ早く自分がやったことをゆっくり理解してね」 それだけ言うと私は子れいむを母れいむの入った箱の前に置く。 それも目が合うような向きで。 「ゆっくりしていってね!」 母れいむは子れいむが反応するんじゃないかとお決まりの挨拶を発するが当然無反応だ。 「ゆぅぅぅ!! はやくとけてね!!」 残念だけどこの部屋は朝から暖めていない。なんで室温は外気温とさほど変わらないので氷もすぐには融けない。 「それじゃあ謝る気になったら謝ってね」 それだけ言うと私はれいむ達を放って奥の部屋に籠った。 奥の部屋は暖めてあるのでそこで自分の時間を過ごす。 そして一時間か二時間に一度居間に戻ってれいむ達の様子を見る。 母れいむは私の姿を見ると 「あかちゃんをはやくたすけてね!」 「しょくじをよういしてね!」 しか言わない。 やっぱり直接命に危険がなかったり子の悲鳴を聞かないとダメなのかな。 「まだ分からないならずっとそこにいてね」 それだけ言ってまた奥の部屋へと戻る。 四度目の様子見の時には子れいむ達の氷が融けつつあったので再び外の水を入れた桶に沈めておく。 また明日の朝にでも出すことにしよう。 三日経ったところでようやく母れいむが泣きを入れた。 「おねがいぃぃぃぃ!! なにがだべざぜでえぇぇぇ!!! あかじゃんどゆっくりざぜでえぇぇ!!」 「心から反省すれば許すって言ってるじゃないか」 「ずみばぜんでじだぁ! もうじないがら! だがらゆるじでぇ!!」 「何が悪かったか言ってみ?」 「かってにおうちにはいっだごどだよ!!」 「誰の?」 「おにいさんのだよ!!!」 泣きながら私の質問に答える。 謝るなら敬語で謝れよと思ったりするがゆっくりに言葉づかいを期待しても仕方ないか。 「勝手に私の家に入ったのはいい。だが私がいることに気づいたのに食糧を漁ろうとしたよね?」 「ご、ごめんなざいぃ!!」 「うん、でもなんでそんなことしたの?」 何かこういうやり取りしてると子供を叱ってるみたいだな。 「あかちゃんをそだてるためにしょうがなかったんだよぉぉ!!!」 「だったらそれを最初に言えよ。無視して食糧を取るのはただの泥棒だぞ」 「ごめんなざい! もうじないよ!!」 「じゃあ、あの時のやり直しだ。反省した今ならちゃんと頼めるよね?」 「あかちゃんがおなかすいでじにぞうなの! だからゆっくりしょくじよういじでね!!」 なんでそんな偉そうなんだ。 でもまぁ、ゆっくりは元々こんな感じだからやり直しとしてはむしろリアルだ。 「まぁ…いいだろう。子供を返してあげるよ」 「ゆ! はやくかえしてね!!」 私は居間に氷漬けの子れいむ達を持ってくる。 「じゃあ溶けるまで待ってね」 「ゆっくりまつよ! でもおなかすいたからしょくじもってきてね!!」 私が許したことで何か調子のった気がするけど、 生ゴミも子れいむを凍らせてから溜まってたので母れいむにあげることにした。 「むーしゃ、むーしゃ…しししあわせえぇぇぇぇ~~~~♪」 この家に来る前からもほとんど食べてなく餓えていたのだろう。 歓喜の涙を流しながら三日分の生ゴミを平らげてしまった。 ちなみに母れいむはすでに透明な箱から解放してやってる。 「ゆ! まだたりないよ! ゆっくりもっともってきてね!」 「ダメだ。後まで我慢しろ」 「ゆぅ…ならじぶんでもってくるよ!」 そう言うと母れいむは台所へ向かおうとするので頭を掴んで阻止する。 「なんでじゃまするの!」 「ここは私の家だ。分かるよね?」 「ゆ! わかってるよ!!」 「じゃあ私がダメって言ったことは守らないとダメだよね?」 「でもれいむはおなかすいてるんだからべつにいいよね!」 「そういうつもりならやり直しだ。子供はまた氷漬けにするね」 「ゆっ、ごめんなざい! ぞれはやめでぇ!!」 「だったら私の言ったことは守らないとね」 「ゆっぐりりがいじだよ!!」 まったく本当にゆっくりはお馬鹿だなぁ。 出してやった結果がこれだよ。 とにかく子れいむ達が溶けるまで待ってもらおう。 それから三十分ほどで子れいむの周りの氷が融け切った。 しかしまだ中身は固まったままだろう。 「れいむ、まだ触っちゃだめだよ?」 「ゆ! もうとけたんだからいいでしょ!」 「あ、コラ…」 母れいむは私の忠告も聞かず子れいむに頬を擦り合わせた。 「いっしょにゆっくりしようね!」 しかし子れいむはその場で割れてしまった。 母れいむが体を擦りつけた次の瞬間亀裂が入ったと思ったら、 亀裂に沿っていくつかの餡子の塊になってしまったのである。 「あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! れいむのあかぢゃんんんん!!!!」 割れてしまった子れいむに向かって泣き叫ぶ。 あー、だから言ったのに。 「おにいざんのぜいだよ!!」 今度は私に向かって怒り出した。 「私はまだ触るなって言ったよね? 私の言うことは守るって理解したんだよね?」 「う"…あ"う"う"ぁ"」 母れいむは自分のやってしまったことに嘆く。 「とにかく子供が自分で動き出すまで待とうね」 「ゆ"ぅ」 母れいむはゆっくり頷くと、割れた子れいむを食べ始めた。 「ちょっと! 自分の子供食うなよ!」 「ほかのあかちゃんがおきたときにこわがるよ。それにあいするものにたべられるのはしあわせなんだよ」 「そ、そうか」 お腹が減ったうえでの凶行ではなかったようだ。 そういえばゆっくり愛好家の友人が「俺のゆっくりが自分を食べてと言うので困る」なんて言ってたな。 愛する相手に食べられるのが幸せなんて変な生物だ。 それから一時間経った。 また子れいむは動かない。 母れいむは何度も 「ゆっくりしていってね!」 「はやくゆっくりしようね!!」 と動かない子れいむに声をかけ続けている。 さらに二時間。 子れいむはまだ動かなかった。 「おにいざんどういうごどぉぉぉぉぉ」 母れいむは私に泣きついてきた。 あるぇ~? 解凍すれば復活すると思ったんだけどなぁ。単純な構造だし。 しかし子れいむは復活しない。 指先でちょっと触れてみた。 柔らかいし体温も通常のようだ。 「ゆ! れいむもさわるよ!! こんどはいいよね!?」 「ああ今度はもう割れないみたいだからいいよ」 「ゆっくりふれるよ!!」 母れいむは子れいむに頬を擦りつける。 しかし反応はない。 舌で舐めても子れいむは母の唾液で濡れるだけだ。 あー、なんか死んだっぽいなぁ。 いやぁ失敗失敗。 「おにいざん! とけたのにおきないよ! うそついたの!?」 「あーうー、嘘じゃないよ」 「でもなおらないよ!」 「それだなぁ。うん、お前がすぐ反省すれば治ったはずなんだよ。でも何日も反省しなかっただろ?」 子れいむが死んだ事については100%私が悪いけど、せっかくだから母れいむのせいにしちゃおう。 「ゆ"ぐっ…」 母れいむには私の言い訳がもっともらしく聞こえたのか言葉に詰まる。 「ゆぅぅぅ、ごめんねあがじゃんんん!!!」 もはや動かなくなった子れいむ達に母れいむは謝り続けた。 しばらくしてようやく母れいむは泣きやんだ。 「れいむはもうでていくね…」 表情にも声にも元気はない。 「この子れいむ達はどうするんだ?」 さっきまで母れいむは泣きながらも残る3匹を食べようとしていたのだが、 傷一つない魂が抜けただけの子れいむの姿を見ると食べることができなかったようだ。 「ゆっくりここにいさせてあげてね」 それだけ言って母れいむは玄関に向かうがそんなことさせない。 「まぁ待ちなさい。ここでお前に帰られたら困る。主に私が困る」 ここで帰られたら冬の間の楽しみが無くなってしまう。 子れいむが死んだのはちょっと予想外だったけど唯一残った母れいむを逃がす手はない。 「ゆ!? はなしてね!」 「ダメだ」 そして母れいむを透明な箱に閉じ込める。 「やめてね! ゆっくりだしてね!」 「せっかくだから春までゆっくりしていきなよ」 「やだよ! おにいさんとはゆっくりできないよ!!」 「別にお前とゆっくりするつもりはないよ でもそうだな。一匹で寂しいだろうからゆっくりを持って来てやるよ。ありすとれみりゃどっちがいい?」 「ゆ"っ!? ど、どっちもやだよ!!」 「選べないならお兄さんが選んであげよう。楽しみに待っててね」 「ゆ"ぅあ"あ"あ"あ"あ"あ"!! いやだよぉぉぉぉ!!!」 母れいむの背に私は家を出た。 せっかくだからゆっくり生産機の二つ名を持つありすを捕まえてくるとしよう。 ありすを持ち帰った私はありすを揺さぶって発情させた。 まず狙われたのは箱に入っている母れいむではなく、ただそこに在るだけの子れいむ達だった。 レイプという名の殺戮。 成人ゆっくりの重さに赤ちゃんサイズの子れいむが耐えきれるわけもなくすぐに潰れてしまう。 「あ"あ"あ"あ"あ"! ごろざないでえぇぇ!! ありずやめでえぇぇぇ!!!」 「ハァハァ、まだれいむがいるうぅぅぅぅ!!!」 子れいむ三匹を潰し終えたありすは母れいむの入った箱へ突撃する。 私は優しいので母れいむを箱から取り出してありすの前に差し出した。 反撃されても困るのでしばらく押さえつけておく。 「れいむかぁいいよれいむぅぅぅぅ!!!」 「ゆあ"あ"あ"あ"! やめで! おがざないでえぇぇぇ!!!」 ありすの猛烈な愛撫を嫌がる母れいむだったが次第に感じてきたのか抵抗する力が弱まっていく。 「れいむぅ! すっぎりしぢゃいそうよ! いっしょにすっぎりじよぉ!!!」 「ああぁぁぁぁぁぁ!!!」 「「んほぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ♪」」 二匹同時に達したようだ。 そして母れいむの頭から茎が生え始めてきた。 よしよし、赤ちゃんゆっくりが出来たら冬の間いろんな遊びができる。 二回戦を始めようとするありすを引き離して透明な箱に入れる。 赤ちゃんゆっくりが必要になったらまた出してあげることにしよう。 数日後、私の家には別々透明な箱に入ったれいむとありす。 そして籠に入った十匹程度の赤ちゃんゆっくりができていた。 この数日でれいむは二度の出産を終えている。 一度目の赤ちゃんゆっくり達は粗相をして反省も無しなので母れいむの目の前で潰してあげた。 注意しないからこうなるんだぞ、と言いながらね。 ありすの透明な箱は別室に黒幕をかけて置いてある。 ゆっくり生産機なので赤ちゃんゆっくりが必要な時でなければ出すつもりはない。 外を見ると雪が降り始めていた。 春まではまだ長い。 私は赤ちゃんゆっくり達を眺め、 今日は母れいむの前でどうやって虐めようかと考えていた。 終 by ゆっくりしたい人 子ゆっくりを凍らせたかっただけ。 物理的におかしくてもゆっくり補正ということで。 でもゆっくり可愛いよゆっくり。 タワシで力強く洗ってあげたいぐらいかぁいいよー。 このSSに感想を付ける
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《 樽(たる)の中のれいむ 》 大きな赤いリボンをつけた大きな頭が、バラバラに散らばった木の前で途方にくれていました。 「ゆぅ……れいむのお家、こわれちゃったよ……」 頭だけの生き物、「ゆっくり」でした。彼女の名前は「れいむ」と言います。 「れいむ」の他にも「ゆっくり」はたくさんいましたが、その「れいむ」は特別な「ゆっくり」でした。 これからするのは、そのれいむの話です。 私たちの街に住んでいた、特別なゆっくりの話です。 れいむはいつの間にか私たちの街に来ていたそうです。 親もなく、たった一匹でしたから、いったいどこで生まれたのかわかりませんでした。 ある日、街の人がたずねました。 「お前はどこの生まれなんだ?」 れいむはきょとんとしていましたが、やがて頭をゆらしながら考えはじめました。 そうしてから答えました。 「ゆゆっ、お日さまの下で生まれたよ」 その話を聞いて、ある人はバカにして笑い転げましたし、またある人はなるほどと感心したそうです。 れいむは食べ物をめぐんでもらって生きていました。 ある日、とある金持ちのところに行ってお願いしました。 金持ちはうんざりしていました。 もともと大変けちんぼうだったのですが、そのれいむは何度も何度もやってくるのでした。 そのたび何度も何度も追いはらってきたのですが、今日もまたやってきたのでした。 いいかげん我慢できず、金持ちは家の外に飛び出してどなりつけました。 「いいかげんにしろ! お前にやれるものなんか持ってない!」 れいむはニコニコしながら言いました。 「おじさんのお腹のものを少しわけてくれるだけでいいよ!」 その話を聞いて、ある人は「あつかましく無礼だ」と嫌な顔をしましたし、 またある人は感心して、お金だとか財産だとかについて考えたそうです。 れいむに食べ物をめぐんだ人はたくさんいました。 れいむは食べ物をもらうたびに「ありがとう。ゆっくりしていってね!」と言いましたが、 ある日、こんなことがあったそうです。 子どもが散歩中のれいむに、たまたま自分の持っていたお菓子をあげました。 甘いお菓子で、れいむはおいしそうに食べました。 子どもの母親がそれを見て、「えらいわね」とほめました。 するとれいむはとても嬉しそうな顔をしたのです。お菓子をもらったときより嬉しそうでした。 母親が理由を聞くと、れいむはニコニコして言いました。 「ほめられたから嬉しいんだよ」 「この子が?」 人がほめられると自分のことのように嬉しくなるのか、そう母親は思ったのですが、違いました。 「れいむがほめられて嬉しいんだよ。 お菓子をもらえるれいむをほめてくれてありがとう。ゆっくりしていってね!」 その話を聞いて、ある人は「感謝の気持ちを持たないやつだ」と腹を立てましたし、 ある人は「自分に自信があるからまっすぐでいられるのだ」とうなずいたそうです。 れいむは家がありませんでした。 しかし、やがて捨てられた樽の中に住むようになりました。 れいむはそれを自分の「お家」だと思っていましたが、ある人はやはりただのゴミだと思っていました。 ある日、れいむがもらったダイコンを川で洗っていると、別のゆっくりが通りかかりました。 ペットとして飼われているゆっくりで、飼い主と散歩していました。 飼われているゆっくりはれいむに話しかけました。 「こんにちはー、れいむ」 「ゆっ、ちぇんだね。ゆっくりしていってね!」 「ちぇんはお散歩してるからゆっくりしていられないんだよ、わかってねー」 「ゆゆっ、ゆっくり理解したよ」 「ところでれいむ」 「ゆ?」 ちぇんは銀色のくさりにつながれた赤い耳かざりをゆらしながら聞きました。 「なんでちぇんみたいに人間さんに飼われないの? お家にも食べ物にも困らないよ」 れいむは青い葉っぱのついた白いダイコンを水に浮かべながら答えました。 「れいむはお家も食べ物もあるよ。ところでちぇんはそんなくさりをつけていて動きづらくないの? 好きなときに好きなところに行った方が、お散歩たのしいよ」 その話を聞いて、ある人はれいむがのたれ死ぬことを望みましたし、 またある人はれいむがこのままのびのび生きることを望みました。 れいむは頭だけの生き物でしたから、食べるときは地面に顔をつけるようなかっこうでした。 ある日、通りがかりの人がその様子を見て、「まるで犬だ」とからかいました。 れいむは特に怒ることもなく、こんなことを言ったそうです。 「そっちはまるでカラスだね。でもこれはれいむのだからあげないよ」 その話を聞いて、ある人は「ゴミあさりする鳥といっしょにするな」と怒りましたし、 ある人は「生きるために食べ物に集まるカラスの方が、まだましだろう」と考えました。 ある日、この街をおさめる王様がやってきました。 王様は広い領土を持っていて、今も領土をどんどん広げていました。 街の人たちはみんな王様にあいさつにいきましたが、れいむはあいさつしにいきませんでした。 それで、王様の方がれいむに会いにいきました。 れいむについては、いいうわさも悪いうわさもあちこちに広まっていたので、 王様はれいむに興味があったのです。 王様が大勢の兵士といっしょにれいむの所へいくと、そのゆっくりはひなたぼっこをしていました。 王様はれいむの前に立ってたずねました。 「お前がれいむかね」 「ゆっ、そうだよ、おじさん。ゆっくりしていってね!」 王様はおじさんと呼ばれるのは生まれて初めてでしたが、怒ることなく話を続けました。 「お前は私をこわがらないのかね」 後ろではたくさんの兵士が武器を持っていましたが、れいむはそれがまったく見えないかのように のんびりとしていました。 「おじさんは悪い人?」 「どちらかというと悪い人ではないと思うがな」 「じゃあいい人なんだね。こわくないよ」 王様がれいむの勇気に感心していると、れいむが聞きました。 「おじさんは何をしている人?」 「私かい? 後ろの兵士たちといっしょに領土を広げているんだよ」 「広げてどうするの?」 「世界をおさめるのさ」 「おさめてどうするの?」 「おさめられるかわからないが、もしできたなら、そのときはお前のように休みたいね」 れいむは不思議そうに言いました。 「休みたいなら、今かられいむといっしょに休んだらいいのに。ゆっくりしていってね」 王様はそれを聞いて、しばらくきょとんとしていましたが、 やがてあごをいじりながら考えこんでしまったそうです。 れいむはあいかわらずニコニコとしていました。 しばらくしてから王様は言いました。 「私には無理だ。いや、誰にも無理なことだ。すばらしいな、 お前は何も持っていないが、全てを手に入れているのだな」 けれど、れいむは言いました。 「よくわからないけど、れいむにもほしいものがあるよ」 意外な言葉に「ほう」と王様は驚いて、聞きました。 「それは何だね。この私が何でもあげよう」 「ひなたぼっこのじゃまだから、ゆっくりそこをどいてね」 れいむがお願いしたのはそれだけでした。 王様がそこをどくと、日の光がれいむにあたり、そしてれいむは気持ちよさそうに昼寝をはじめました。 れいむのところを立ち去るときに、王様はこうつぶやいたそうです。 「今度生まれ変わるときには、あのようになりたいものだ」 ある日、れいむが散歩から帰ってくると、住んでいた樽がこわれていました。 信じられないくらいバラバラになっていて、れいむはそれが樽の残がいであることにしばらく気づきませんでした。 少しの風も吹いていない日でしたから、そんなふうになってしまったのは誰か心ない人がこわしてしまったのでしょう。 「ゆぅ……れいむのお家、こわれちゃったよ……」 大きな赤いリボンをつけた大きな頭は、バラバラに散らばった木の前で途方にくれました。 持ち物と呼べるものは何も持ってないれいむでしたが、それでも雨を避ける場所だけは持たないと いけませんでした。 しかし、そのただ一つの場所はもうありませんでした。 ある人は、れいむがこの街から出て行くことを望みました。 それだけれいむはひどいことをされたのですが、そうはなりませんでした。 自分の家はありませんでしたが、れいむはこの街にいつづけました。 れいむはいろいろな所で過ごすことにしたのでした。 いろいろな人の家、いろいろな店、いろいろなたてもの。その屋根の下にれいむは自分の身をおきました。 追いはらわれることもたくさんありましたが、受け入れられることもたくさんありました。 そうしてれいむは、樽がなくてもずっと幸せに過ごすことができたのです。 さて、れいむは屋根を貸してくれた人に感謝していたかというと、やっぱりこんなことを言っていたそうです。 「れいむのためにこんなところを作ってくれるなんて、とってもうれしいよ。ゆっくりしていくね!」 それからしばらくして、れいむに新しい樽がおくられました。 誰がおくったのかは知りません。 自分の家を持たせてあげたいと思った人がおくったのかもしれませんし、 人の家をかってに借りるれいむを迷惑に感じた人がおくったのかもしれません。 こうしてれいむはまた樽の中でくらしはじめました。 これが私たちの街のれいむの話です。 そのれいむはこの街で一番に嫌われていました。また、一番に愛されてもいました。 「これほどのゆっくりは、そうはいない」 この言葉を口にする人はたくさんいました。その言葉には人それぞれの意味がありました。 しかし、どのような意味であったとしても、れいむは変わらず幸せだったでしょう。 それだけは誰もがそう思っていました。そうしてそれは事実だったにちがいありません。 れいむはとても幸せでした。 「ゆっくりしていってね!」 このSSに感想をつける
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「おねえちゃん、おやさいがおちてるよ!」 「きょうからここをれいむたちのゆっくりプレイスにするよ!」 畑仕事がひと段落つき、干草に寝っ転がっていると近くからなんとも自分勝手な主張が聞こえてくる。 また出やがったな、害獣ゆっくり。幻想郷の作物を食い荒らす迷惑な生き物だ。俺は鍬を手に取り、ゆっくり共の背後に忍び寄った。 実は俺、虐待お兄さんである。だが、飲まず食わずでも平気な妖怪虐待お兄さんと違い、人間の俺は食べなければ餓死する。 しかたなく、オヤジから継いだ畑で農家をやっているのだ。 本当は加工場に勤めたかったんだが、志望動機に『ゆっくりをいじめることなら誰にも負けません』と書いたら 『加工場はゆっくりを虐待する場所ではありません。貴方は何か勘違いをしているようですね。』 と言われてしまった。なので、農作業の合間に畑に現れたゆっくりを潰すのがせめてもの息抜きなのだ。 荒い息を抑え、ゆっくりの背後の木の陰に隠れる。どっちから先に潰そうか…。よし、れいむの姉妹のようだし姉のほうから潰そう。 んで、妹が「お゛ね゛えぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」とか喚くところを蹴り飛ばしても良いし、畑に生き埋めってのもいい。 自力じゃ降りられない木の上に放置っていうのもいいな。 そんなことを考えていると、ふと思いついた。ゆっくりの中でも母性や家族愛が強いれいむ種。そんなヤツラの絆(笑)を引き裂くのはどんなに楽しいだろうか! 一瞬にして幾通りものパターンが頭の中でシミュレートされる。口端が釣り上がるのを押さえられない。ひゃあ!虐待だぁ! 「やあ、ゆっくりしてるかい?」 ゆっくり姉妹に声をかける。 「ゆっ!おじさん、ここはれいむたちのおうちだよ!!ゆっくりでていってね!!」 「おねえちゃん、にんげんだよ!にんげんにあったらすぐににげろっておかあさんもいってたよ!」 「だいじょうぶだよ!れいむのことはおねえちゃんがまもるよ!!」 なんて美しい姉妹愛。ああ、空気を吸って身体を膨らませている姉れいむを叩き潰したら、妹れいむはどんな声で鳴いてくれるのか…!!! だが、ここで欲望に負けるわけにはいかない。目先の快楽に捕われては、真の虐待お兄さんとは言えないのさ。 「大丈夫だよ、実はお兄さんは君達にもっとゆっくりできる場所を教えてあげようと思ってきたんだ。」 「ゆゆ、ほんとう?」 俺は農具小屋に向かって歩き出す。饅頭どもは半信半疑についてくるが、小屋の扉を開けてやると 「ゆっくりできそうだよ!」 「きょうからここをれいむたちのおうちにするよ!」 と早速お家宣言だ。跳ね回るゆっくりたちに屑野菜を放ってやり、俺は小屋の扉を閉めた。 ここならゆっくりがぶつかったところで壊れるものなど無い。さあ、後はアイツを待つだけだ。 二日ほど経った。ゆっくり共は納屋に監禁したままだ。時折中を覗くと、二匹仲良く跳ね回って遊んでいる。エサは屑野菜や生ゴミを投げ込んでやっている。 実はこの農具小屋、まだ俺が虐待お兄さんだった頃にゆっくりを監禁する場所にしていた。 攫ってきたゆっくりが、いざ虐待の際に弱りきっていてはつまらないので、ゆっくり用の遊具を置いて元気でいられるようにしてあるのだ。 そして、畑のほうには待ち望んでいたアイツ。特別ゲストの登場だ。 「きょうからここをまりさのおうちにするんだぜ!!」 「やあ、ゆっくりしてるかい?」 「ゆっ!おじさん、ここはまりさのおうちだぜ!!ゆっくりでていってね!!」 「大丈夫だよ、実はお兄さんは君達にもっとゆっくりできる場所を教えてあげようと思ってきたんだ。」 俺はまりさを小屋まで案内してやる。 「「ゆっくりしていってね!!」」 出迎えるのはれいむ姉妹だ。 「やあ、れいむ達!今日からまりさもここでゆっくりさせてあげてね!」 「ゆっ!!まりさがいるよ!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ…ゆっくりしていくぜ!!」 準備完了。早速三匹は俺の作ったゆっくり用滑り台で遊んでいる。俺は小屋の戸を閉め、農作業に戻った。 その日の夜。寝る前に小屋に入り込むと、中では三匹が思い思いの場所で寝息を立てている。俺はまりさの頭を掴み、小刻みに振動を与えた。 「ゅ…?ゆぅうぅう…!」 途中で目を覚ますまりさ。しかしその目はトロンとしている。これでは体が火照って眠れまい。見ていると、まりさは手近なれいむに夜這いを掛け始めた。 「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆーっ!!!」 れいむのほうは身体は反応しているが、起きてはいないようだ。まりさが体を揺らすたび、泡立った粘液が二匹の身体を伝う。 「んほおおおおおおっ!!すっきりー!!」 やがて、まりさがすっきりする。夜這いを掛けられたれいむの方も、心なしか顔がすっきりー!の顔になっている。 しばらく待つと、れいむの頭から小さな目が出てきた。交合成功だ。さてまりさ、お前はもう用済みだ。死ぬ前にいい思いが出来てよかったな。 翌日、れいむ姉妹はまりさがいなくなっている事にショックを受けたようだが、それ以上に新たな命を授かったことが嬉しいようだ。 妹れいむの頭の上には蔓が伸び、八つほどの実が生っている。まだ爪の先ほどの大きさだが、いずれ拳大の大きさの赤れいむとなる。 その日はお祝いということで、いつもの屑野菜と一緒に餡子を投げ込んでやった。 ゆっくり一匹分、昨日迷い込んできたまりさの大きさと同じくらいの量の餡子だが、 「うっめ!めっちゃうっめ!」 「まじぱねえ!」 と意地汚く食べていた。 さらに三日ほど経った。小屋からは饅頭共の跳ね回る音は聞こえなくなり、代わりに 「ゆ~♪ゆ~♪ゆ~っくり~♪して~♪いってね~♪」 だの下手糞な歌が聞こえてくるようになった。 エサをやりにいくついでに様子を見ると、実の大きさもビー玉くらいになり、早いものは髪や目や口が形成され、時折ぷるぷる震えている。 れいむ達はそれを見ては顔をほころばせている。そろそろ頃合だな。 その日の夜、俺は再び小屋に忍び込んだ。みると、姉妹は寄り添って眠っている。妹れいむが姉れいむに寄りかかっている状態だ。 なるほど、妹が体勢を崩さないようにしているんだな。 月の明りを頼りに懐からキリを取り出し、先端をライターで炙る。そして、蔓から生えている一番大きな赤れいむに焼けた針を数回突き刺した。 「み゛ゅ゛っ!」 小さな目をカッと見開いて、赤れいむは生涯を閉じる。通常のゆっくりではこんなもので殺せないだろうが、体の小さな赤ゆっくりはそうもいかない。 おお、目と口から煙を噴き出していて笑える。その調子で合計七つの実を焼き殺した。残ったのはやっと目、口が出来始めた実が一つ。 これなら何が起きたか気付くまい。そのまま小屋を出、俺は眠りに就いた。 翌朝、農作業に使う鋤を取りに小屋に入ると、れいむ姉妹は白目を剥いて気絶していた。起きたら赤れいむがほぼ全滅していたのが相当ショックだったようだ。 とりあえず頬をひっぱたいて起こしてやる。 「おい、大丈夫かれいむ?」 「ゆっ…おに゛い゛ざん゛!!れ゛いむ゛のあがぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「いも゛う゛どのあ゛がぢゃん゛がしん゛じゃっだよ゛お゛お゛ぉ゛!!」 取り乱して涙やら涎やらを撒き散らしている。おお、きもいきもい。 「まあ落ち着けお前ら。まだ一匹残っているじゃないか。」 「ゆ゛っ゛!れ゛いむ゛のあがぢゃん゛!!!!」 どうやら気付いたようだ。しかし七匹も死んだという事実はこたえているらしい。涙をボロボロと流して、 「どうじでごんな゛ごどに゛い゛い゛ぃ゛!!」 と叫んでいる。さて、ここからが俺の演技力の見せ所だ。まあ、ゆっくり相手なら誰だって騙せるんだろうが。 「これは栄養失調だな!妹れいむの栄養が足りなかったんだ、このままでは残りの赤ちゃんも死んでしまうぞ!」 「ゆ゛ーっ゛!?え゛い゛よ゛う゛しっぢょう゛!!!?」 「ごめ゛ん゛ね゛え゛、おがあ゛ざんがえ゛い゛よ゛う゛しっぢょう゛のぜいで、ごめ゛ん゛ね゛え゛ぇ゛!!!」 あっさり騙された。というかそんなもち肌で何が栄養失調だ。こいつらには屑野菜や生ゴミしか与えていないが、それでも雑草や虫よりは栄養価が高い。 お前らで栄養失調なら野生のゆっくりなんてみんな干からびてるっての。それは置いておいて、演技続行だ。 「残った赤れいむを救う方法は一つしかない。お前達、やれるか?」 「ゆ゛っ゛!!おね゛がいじまず、れ゛い゛む゛のあがぢゃんだずげでぐだざい゛!!」 「いも゛う゛どのあ゛がぢゃん゛を゛だずげであげでえ゛え゛!!」 よし来た。俺は小刀を取り出し、姉れいむの頭頂部を突き刺して一捻りする。すぐに頭頂部には穴が開き、餡子を覗かせた。 「ゆ゛ーーっ゛!!!おね゛え゛ぢゃん゛にな゛に゛ずるの゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛っ゛!!!」 妹のほうが叫んでいる。一方姉のほうは白目を剥いて痙攣している。そう慌てるな妹よ、次はお前の番なんだから。 今度は妹れいむの蔓を掴み、根元付近を小刀で一周させたあと、少し力を込める。すると、蔓は根ごとすっぽ抜けた。もちろん妹れいむはショックで気絶している。 すぐさま姉れいむの傷口に根の部分を突っ込み、接合部に小麦粉を振りかけてやる。妹れいむの頭も小麦粉で塞ぐのは忘れない。 気付けにオレンジジュースを二匹にぶっ掛けてやれば作業終了だ。 妹れいむは目覚めるなり頭上の蔓がなくなっていることに気付き、 「れ゛い゛む゛のあがぢゃん゛ん゛ん゛!!」 と怒鳴っている。まあ落ち着け。落ち着いてお前の姉貴の頭を見てみろ。 「ゆっ?れいむのあかちゃんがおねえちゃんのあたまにいるよ!?」 「おにいさん、いもうとのあかちゃんになにしたの!ゆっくりせつめいしてね!!」 詰め寄るゆっくり共。うざい、潰したい。いや、我慢我慢。 「妹れいむは栄養失調だからな。健康な姉れいむだったら、赤ちゃんを死なせないで産んであげられるから、差し替えた。これで赤ちゃんは助かるぞ!」 「「ゆーっ!!!!おにいさんありがとう!!!!」」 まあ気にするな。赤ゆっくりを殺したのは俺なんだから。 翌日。他の赤ゆっくりを間引いた結果、残った一匹は栄養を独り占めして破格の成長を遂げた。 通常ならあと三日はかかるところを、すでに目、口、髪、リボンが形成され、 「ゆー、ゆー」 と声を上げることも出来る。生き残ったのはれいむ種だったか。 「ゆっきゅいしちぇいっちぇね!」と喋れるようになるのもすぐだろう。明日には蔓から離れるかもしれない。 妹れいむは姉れいむの頭上を見上げ、 「ゆ~♪れいむがおかあさんだよ!ゆっくりしてね!」 「はやくおかあさんといっしょにゆ~っくりしようね~♪」 と声をかける。一方、姉れいむのほうは微妙な表情を浮かべている。この表情…おそらく俺の企ては成功している。だが、確証が欲しかった。 「おーい、妹れいむ!もうすぐ赤ちゃんが生まれそうだから、お祝いにドアのところにお菓子を置いてあるよ!お姉ちゃんれいむにゆっくりとってあげてね!」 「ゆっ!?お菓子!?取ってくるよ!!」 妹れいむはドアのほうに駆け、散らばったクッキーを舌で掻き集めている。そのとき、俺は確かに無く耳にした。 姉れいむが頭上の蔓…蔓に実った赤れいむを見つめながら 「れいむがあかちゃんのおかあさんだよ…」 と、妹れいむに聞こえないよう呟くところを。 あああああああああ、ニヤニヤが止まらない!!姉れいむのほうは、たった一日蔓を頭に生やしただけで、母性を持ってしまったようだ。 もう、口の両端が目に届きそうなくらいに笑顔が止まらない。 その日、俺一度も休みを取ることなく、全力で農作業を進めた。明日は、あのれいむ姉妹に付き合ってやらなきゃいけないからな…! 翌朝、小屋に入ると赤れいむが生まれる寸前だった。 姉れいむの蔓の上で、トマトほどの大きさに育った赤れいむは身体をブランコのように揺らし、妹れいむはをそれを見て 「がんばってね!がんばってね!!」 と声をかけている。そして赤れいむが一際大きく揺れると蔓から頭がちぎれ、ぽてりと地面に落ち… 「ゆっきゅいしちぇいっちぇね!」 鳴いた。妹れいむは感動のあまり目を潤めている。だが、次の瞬間。 「おかあしゃん!おなかしゅいた!!」 赤れいむは。姉れいむに向かって。「お母さん」と言ったのだ。戸惑いながらも、嬉しそうな顔をする姉れいむ。しかし妹れいむは黙っていられない。 「どお゛じでぞんな゛ごどい゛う゛のお゛お゛お゛!!れ゛いむ゛があがぢゃんの゛お゛があざんでしょ゛お゛お゛お゛お゛っ゛!!!」 姉れいむのほうも、悲しそうな顔をして赤れいむから目を逸らす。よく分かっていないのは赤れいむだ。 「ゅ?れいみゅのおかあしゃんはこっちだよ?」 言いながら姉れいむのほうに飛び寄る。妹れいむは半狂乱になって 「ちがうの゛お゛お゛お゛っ!!れ゛い゛む゛があがぢゃん゛の゛お゛があざん゛な゛ん゛だよ゛お゛お゛っ!!!」 と訴える。まあそうなるだろうな、赤れいむは物心ついたときには姉れいむの頭の上だったんだから。 こうなると、気になるのは姉れいむの反応だ。姉れいむは悲しそうな顔をして 「ゆう、あかちゃんのおかあさんは、あっちのれいむだよ。あっちのれいむをおかあさんってよんであげてね…。」 おお、母性愛よりも妹を気遣う家族愛が勝ったか。てっきり妹に向かって「このこはれいむのあかちゃんだよ!」ぐらい言うかと思ったが。 そんな姉の気遣いにも気付かず、妹れいむは赤れいむと姉れいむの間に割って入り、 「おねえちゃんはゆっくりむこうにいってね!!」 と威嚇する。あー、本当笑える、こいつ等。 それからも修羅場は続いた。赤れいむが滑り台の着地に失敗したとき、「おかあしゃーん!」と泣きながら見るのは妹れいむに気を使い、離れている姉れいむのほ うだ。 妹れいむが(俺の用意した)昼飯を持ってきた時も、姉れいむのほうを見て「おかあしゃんもいっちょにたべよ?」といった後、慌てて「ゆっきゅりまちがえちゃ った!」だと。 そのたびに姉れいむは悲しそうな、済まなそうな顔をし、妹れいむは「れいむがおかあさんだよ!!」声を荒げる。そんな光景が昼間中続いた。 夕方になった。赤れいむも学習能力が出てきたのか、ここ三時間ちかく姉れいむを「おかあしゃん」と呼んでいない。今は歌を歌っている最中だ。姉れいむは少し はなれたところでそれを聞いている。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆっくりしていってね~♪」 「しちぇいっちぇね~♪」 俺には不快な音波にしか聞こえないが、ゆっくり共にはそうでもないんだろう。目を閉じて聞き入っている。だがそのとき、赤れいむの悪い癖が起きた。 「ゆ~、おかあしゃんもいっちょにうたお?」 うっかり姉れいむに「お母さん」と呼びかけてしまったのだ。妹れいむの頬が膨れていく。アレはキレてる。相当キレてる。 「なんで!わからないの!れいむが!おかあさんだよ!!」 赤れいむのすぐ近くで地団太を踏むようにジャンプする。赤れいむのほうは本気で怒られて涙目だ。 「もういいよ!!そんなにおねえちゃんがすきなら、おねえちゃんのあかちゃんになればいいんだよ!!」 言いながら、妹れいむは赤れいむに体当たりした。人間で言えば思わず手が出てしまったというところか。 しかしゆっくりだと手が出てしまったでは済まない。その体格差には赤れいむは一メートルほどポヨポヨと跳ね、泣き出してしまう。 瞬間。 妹れいむは。 猛スピードで体当たりしてきた姉れいむに弾き飛ばされた。 一メートルなんてものではない。ノーバウンドで跳ね飛ばされた妹れいむは壁で跳ね返り、赤れいむから少し離れた場所でやっと起き上がる。 その赤れいむまでの距離を遮るように、姉れいむが立っていた。 「れいむのあかちゃんになにするの!!!いもうとでもゆるさないよ!!!!」 ここで母性愛が勝ったー!一瞬睨み合った後、お互いに飛び掛って喧嘩を始める姉妹。 いや、これは喧嘩なんてものではない。転げ周り、お互いの身体に食いつき、跳ね飛ばし、踏みつける。 まさに殺し合いだ。傍目からはネコの喧嘩に見えるが。 俺は赤れいむが巻き添えを食わないよう手の上に乗せてやった。赤れいむは涙を流しながらその光景を見つめている。 やがて、体格差を生かした姉れいむが妹れいむに噛み付いたままのしかかる。 姉れいむが妹れいむに「れいむのことはおねえちゃんがまもるよ!!」って言ってたのは一週間前だっけ? とにかくこのままでは死んじまうな。俺は二匹を引っぺがした。 「おにいさんなにするの!!」 「じゃましないでね!!」 で、二匹揃って俺の手の上の赤ゆっくりに気付く。 「「れいむのあかちゃんをはなしてね!!!」」 お互いにその発言が気に入らなかったのか、すぐさま戦闘態勢に入る二匹。 「まあ、待て二匹とも。」 二匹は互いを警戒しあいながら俺のほうを見る。ああ、俺はこの一言を言いたかったんだ。この一言のために、今まで準備をしてきたんだ。 今までの準備が走馬灯のように頭をよぎる。ああ、やっと報われる。このために、潰したい饅頭を潰さずにがまんしてきたんだ。 ようし、言うぞ?言っちゃうぞ? 「そんなに自分の子供って言うなら、この赤れいむをお互いに引っ張って、勝ったほうが母親ってことにすりゃいいじゃん。」 言って、赤れいむを二匹の合間に放り投げる。二匹は一瞬間をおいた後。 「いぢゃい゛い゛い゛いっ!!!お゛があじゃん゛、い゛だいよお゛お゛お!!!!はなじでええ゛え゛え゛え!!!」 「あかひゃんがひたがってうよ!!!!ゆっくいはなふぇええええ!!!」 「そっちがはなへええええええ!!!!」 おお、醜い醜い。姉れいむは赤れいむの髪を、妹れいむは赤れいむの顎を噛み、それぞれの方向に引っ張る。 赤れいむのほうはかわいそうに、二倍近く伸びてしまって口から餡子を吹き出している。 「あかひゃんのあんこがでひゃってるよおおお!!!」 「おねえひゃんがはなへばあああ!!!?」 「おまえがはなふぇええええ!!!!」 一方赤れいむは、体の真ん中から裂け始めている。 「もっちょ…ゆっきゅり…しちゃか…」 でた、断末魔宣言だ。言い終わったと同時に、二匹は吹っ飛んだ。赤れいむが千切れた反動だ。 「ゆ、あかちゃん…は…?」 「れいむの…あか…ちゃん…」 …。 ……。 ………。 「「むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪」」 食うのかよ!!!しばらくたち、二匹とも口の中のものを咀嚼し終わった時点で、ようやく口の中に広がった甘味の原因に気付いたようだ。 「れいむの…あかちゃんが…いもうとに…」 「おねえちゃんが…れいむのあかちゃんをたべちゃった…」 「よくも…!!!」 「れいむのあかちゃんを…!!!」 「「ゆっくりしね!!!!!」」 再び始まる大乱闘。今度は止める理由も無い。俺は小屋の戸を閉め、家に戻った。あー、井戸水で冷やしておいた西瓜うめぇ。 完全に日は落ちた。小屋のほうからは物音一つ聞こえない。西瓜を食べ終わった俺は、小屋のドアを開けた。 みると、そこら中に散らばった餡子。小屋の真ん中では、千切れたリボンの近くで荒い息を吐く傷だらけのれいむが一匹。 辺りにはゆっくりの表皮や目玉が散らばっている。 コイツ、妹れいむか?姉れいむか?今までは体の大小で判断つけてたんだが、比較対象がなくなっちまってわからない。 れいむのほうは、俺のほうを見ようともせずにふーふー唸っている。さて、どうやって声をかけるかな。 「あーあ。死んじゃったな、二匹とも。」 びくっと震えるれいむ。しかし、その顔はこちらを向かない。 「俺にはよくわからないけどさ。」 言葉を続ける。れいむは動かない。 「あの赤れいむにとっては、どっちも本当のお母さんだったんじゃないかな。」 「ゆ………。」 ゆっくりと出口に這っていくれいむ。そして。 「おにいさん、いままでありがとう…れいむはここからでていくね…」 餡子を片付けた後、小屋の周りを一周してみたが、れいむの姿は無かった。 うん、昔はゆっくりを肉体的にいじめていたが、こういう精神攻めも案外面白いな。 次の獲物はどうやって虐めてくれようか…。よし、今夜は虐待お兄さん復活祭りだ!農家なんてどうでもいいぜ!っひゃあ、虐待だあ!! 数日後、一匹のれいむがドスまりさに討伐された。最近群れに迷い込んできたれいむは、にんっしんっ!しているゆっくりの蔓を片っ端から噛み千切ったのだとい う。 そのれいむは「あかちゃん…やっとあえるね…」と呟き、事切れたそうだ。 /**** 書くのに丸一日かかった。 本当はゆっくりが食虫植物に食われるのを書いていたんだ!でも、 行き詰る→新しいネタ思いつく→メモっておく→もう一度書き始める→行き詰る→新しいネタの続き思いつく→メモっておく→以下ループ。 by町長 /****今までに書いたもの fuku2120.txt 満員電車とゆっくり このSSに感想を付ける
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「おねえちゃん、おやさいがおちてるよ!」 「きょうからここをれいむたちのゆっくりプレイスにするよ!」 畑仕事がひと段落つき、干草に寝っ転がっていると近くからなんとも自分勝手な主張が聞こえてくる。 また出やがったな、害獣ゆっくり。幻想郷の作物を食い荒らす迷惑な生き物だ。俺は鍬を手に取り、ゆっくり共の背後に忍び寄った。 実は俺、虐待お兄さんである。だが、飲まず食わずでも平気な妖怪虐待お兄さんと違い、人間の俺は食べなければ餓死する。 しかたなく、オヤジから継いだ畑で農家をやっているのだ。 本当は加工場に勤めたかったんだが、志望動機に『ゆっくりをいじめることなら誰にも負けません』と書いたら 『加工場はゆっくりを虐待する場所ではありません。貴方は何か勘違いをしているようですね。』 と言われてしまった。なので、農作業の合間に畑に現れたゆっくりを潰すのがせめてもの息抜きなのだ。 荒い息を抑え、ゆっくりの背後の木の陰に隠れる。どっちから先に潰そうか…。よし、れいむの姉妹のようだし姉のほうから潰そう。 んで、妹が「お゛ね゛えぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」とか喚くところを蹴り飛ばしても良いし、畑に生き埋めってのもいい。 自力じゃ降りられない木の上に放置っていうのもいいな。 そんなことを考えていると、ふと思いついた。ゆっくりの中でも母性や家族愛が強いれいむ種。そんなヤツラの絆(笑)を引き裂くのはどんなに楽しいだろうか! 一瞬にして幾通りものパターンが頭の中でシミュレートされる。口端が釣り上がるのを押さえられない。ひゃあ!虐待だぁ! 「やあ、ゆっくりしてるかい?」 ゆっくり姉妹に声をかける。 「ゆっ!おじさん、ここはれいむたちのおうちだよ!!ゆっくりでていってね!!」 「おねえちゃん、にんげんだよ!にんげんにあったらすぐににげろっておかあさんもいってたよ!」 「だいじょうぶだよ!れいむのことはおねえちゃんがまもるよ!!」 なんて美しい姉妹愛。ああ、空気を吸って身体を膨らませている姉れいむを叩き潰したら、妹れいむはどんな声で鳴いてくれるのか…!!! だが、ここで欲望に負けるわけにはいかない。目先の快楽に捕われては、真の虐待お兄さんとは言えないのさ。 「大丈夫だよ、実はお兄さんは君達にもっとゆっくりできる場所を教えてあげようと思ってきたんだ。」 「ゆゆ、ほんとう?」 俺は農具小屋に向かって歩き出す。饅頭どもは半信半疑についてくるが、小屋の扉を開けてやると 「ゆっくりできそうだよ!」 「きょうからここをれいむたちのおうちにするよ!」 と早速お家宣言だ。跳ね回るゆっくりたちに屑野菜を放ってやり、俺は小屋の扉を閉めた。 ここならゆっくりがぶつかったところで壊れるものなど無い。さあ、後はアイツを待つだけだ。 二日ほど経った。ゆっくり共は納屋に監禁したままだ。時折中を覗くと、二匹仲良く跳ね回って遊んでいる。エサは屑野菜や生ゴミを投げ込んでやっている。 実はこの農具小屋、まだ俺が虐待お兄さんだった頃にゆっくりを監禁する場所にしていた。 攫ってきたゆっくりが、いざ虐待の際に弱りきっていてはつまらないので、ゆっくり用の遊具を置いて元気でいられるようにしてあるのだ。 そして、畑のほうには待ち望んでいたアイツ。特別ゲストの登場だ。 「きょうからここをまりさのおうちにするんだぜ!!」 「やあ、ゆっくりしてるかい?」 「ゆっ!おじさん、ここはまりさのおうちだぜ!!ゆっくりでていってね!!」 「大丈夫だよ、実はお兄さんは君達にもっとゆっくりできる場所を教えてあげようと思ってきたんだ。」 俺はまりさを小屋まで案内してやる。 「「ゆっくりしていってね!!」」 出迎えるのはれいむ姉妹だ。 「やあ、れいむ達!今日からまりさもここでゆっくりさせてあげてね!」 「ゆっ!!まりさがいるよ!」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆ…ゆっくりしていくぜ!!」 準備完了。早速三匹は俺の作ったゆっくり用滑り台で遊んでいる。俺は小屋の戸を閉め、農作業に戻った。 その日の夜。寝る前に小屋に入り込むと、中では三匹が思い思いの場所で寝息を立てている。俺はまりさの頭を掴み、小刻みに振動を与えた。 「ゅ…?ゆぅうぅう…!」 途中で目を覚ますまりさ。しかしその目はトロンとしている。これでは体が火照って眠れまい。見ていると、まりさは手近なれいむに夜這いを掛け始めた。 「ゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆっゆーっ!!!」 れいむのほうは身体は反応しているが、起きてはいないようだ。まりさが体を揺らすたび、泡立った粘液が二匹の身体を伝う。 「んほおおおおおおっ!!すっきりー!!」 やがて、まりさがすっきりする。夜這いを掛けられたれいむの方も、心なしか顔がすっきりー!の顔になっている。 しばらく待つと、れいむの頭から小さな目が出てきた。交合成功だ。さてまりさ、お前はもう用済みだ。死ぬ前にいい思いが出来てよかったな。 翌日、れいむ姉妹はまりさがいなくなっている事にショックを受けたようだが、それ以上に新たな命を授かったことが嬉しいようだ。 妹れいむの頭の上には蔓が伸び、八つほどの実が生っている。まだ爪の先ほどの大きさだが、いずれ拳大の大きさの赤れいむとなる。 その日はお祝いということで、いつもの屑野菜と一緒に餡子を投げ込んでやった。 ゆっくり一匹分、昨日迷い込んできたまりさの大きさと同じくらいの量の餡子だが、 「うっめ!めっちゃうっめ!」 「まじぱねえ!」 と意地汚く食べていた。 さらに三日ほど経った。小屋からは饅頭共の跳ね回る音は聞こえなくなり、代わりに 「ゆ~♪ゆ~♪ゆ~っくり~♪して~♪いってね~♪」 だの下手糞な歌が聞こえてくるようになった。 エサをやりにいくついでに様子を見ると、実の大きさもビー玉くらいになり、早いものは髪や目や口が形成され、時折ぷるぷる震えている。 れいむ達はそれを見ては顔をほころばせている。そろそろ頃合だな。 その日の夜、俺は再び小屋に忍び込んだ。みると、姉妹は寄り添って眠っている。妹れいむが姉れいむに寄りかかっている状態だ。 なるほど、妹が体勢を崩さないようにしているんだな。 月の明りを頼りに懐からキリを取り出し、先端をライターで炙る。そして、蔓から生えている一番大きな赤れいむに焼けた針を数回突き刺した。 「み゛ゅ゛っ!」 小さな目をカッと見開いて、赤れいむは生涯を閉じる。通常のゆっくりではこんなもので殺せないだろうが、体の小さな赤ゆっくりはそうもいかない。 おお、目と口から煙を噴き出していて笑える。その調子で合計七つの実を焼き殺した。残ったのはやっと目、口が出来始めた実が一つ。 これなら何が起きたか気付くまい。そのまま小屋を出、俺は眠りに就いた。 翌朝、農作業に使う鋤を取りに小屋に入ると、れいむ姉妹は白目を剥いて気絶していた。起きたら赤れいむがほぼ全滅していたのが相当ショックだったようだ。 とりあえず頬をひっぱたいて起こしてやる。 「おい、大丈夫かれいむ?」 「ゆっ…おに゛い゛ざん゛!!れ゛いむ゛のあがぢゃん゛があ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 「いも゛う゛どのあ゛がぢゃん゛がしん゛じゃっだよ゛お゛お゛ぉ゛!!」 取り乱して涙やら涎やらを撒き散らしている。おお、きもいきもい。 「まあ落ち着けお前ら。まだ一匹残っているじゃないか。」 「ゆ゛っ゛!れ゛いむ゛のあがぢゃん゛!!!!」 どうやら気付いたようだ。しかし七匹も死んだという事実はこたえているらしい。涙をボロボロと流して、 「どうじでごんな゛ごどに゛い゛い゛ぃ゛!!」 と叫んでいる。さて、ここからが俺の演技力の見せ所だ。まあ、ゆっくり相手なら誰だって騙せるんだろうが。 「これは栄養失調だな!妹れいむの栄養が足りなかったんだ、このままでは残りの赤ちゃんも死んでしまうぞ!」 「ゆ゛ーっ゛!?え゛い゛よ゛う゛しっぢょう゛!!!?」 「ごめ゛ん゛ね゛え゛、おがあ゛ざんがえ゛い゛よ゛う゛しっぢょう゛のぜいで、ごめ゛ん゛ね゛え゛ぇ゛!!!」 あっさり騙された。というかそんなもち肌で何が栄養失調だ。こいつらには屑野菜や生ゴミしか与えていないが、それでも雑草や虫よりは栄養価が高い。 お前らで栄養失調なら野生のゆっくりなんてみんな干からびてるっての。それは置いておいて、演技続行だ。 「残った赤れいむを救う方法は一つしかない。お前達、やれるか?」 「ゆ゛っ゛!!おね゛がいじまず、れ゛い゛む゛のあがぢゃんだずげでぐだざい゛!!」 「いも゛う゛どのあ゛がぢゃん゛を゛だずげであげでえ゛え゛!!」 よし来た。俺は小刀を取り出し、姉れいむの頭頂部を突き刺して一捻りする。すぐに頭頂部には穴が開き、餡子を覗かせた。 「ゆ゛ーーっ゛!!!おね゛え゛ぢゃん゛にな゛に゛ずるの゛お゛お゛お゛お゛ぉ゛っ゛!!!」 妹のほうが叫んでいる。一方姉のほうは白目を剥いて痙攣している。そう慌てるな妹よ、次はお前の番なんだから。 今度は妹れいむの蔓を掴み、根元付近を小刀で一周させたあと、少し力を込める。すると、蔓は根ごとすっぽ抜けた。もちろん妹れいむはショックで気絶している。 すぐさま姉れいむの傷口に根の部分を突っ込み、接合部に小麦粉を振りかけてやる。妹れいむの頭も小麦粉で塞ぐのは忘れない。 気付けにオレンジジュースを二匹にぶっ掛けてやれば作業終了だ。 妹れいむは目覚めるなり頭上の蔓がなくなっていることに気付き、 「れ゛い゛む゛のあがぢゃん゛ん゛ん゛!!」 と怒鳴っている。まあ落ち着け。落ち着いてお前の姉貴の頭を見てみろ。 「ゆっ?れいむのあかちゃんがおねえちゃんのあたまにいるよ!?」 「おにいさん、いもうとのあかちゃんになにしたの!ゆっくりせつめいしてね!!」 詰め寄るゆっくり共。うざい、潰したい。いや、我慢我慢。 「妹れいむは栄養失調だからな。健康な姉れいむだったら、赤ちゃんを死なせないで産んであげられるから、差し替えた。これで赤ちゃんは助かるぞ!」 「「ゆーっ!!!!おにいさんありがとう!!!!」」 まあ気にするな。赤ゆっくりを殺したのは俺なんだから。 翌日。他の赤ゆっくりを間引いた結果、残った一匹は栄養を独り占めして破格の成長を遂げた。 通常ならあと三日はかかるところを、すでに目、口、髪、リボンが形成され、 「ゆー、ゆー」 と声を上げることも出来る。生き残ったのはれいむ種だったか。 「ゆっきゅいしちぇいっちぇね!」と喋れるようになるのもすぐだろう。明日には蔓から離れるかもしれない。 妹れいむは姉れいむの頭上を見上げ、 「ゆ~♪れいむがおかあさんだよ!ゆっくりしてね!」 「はやくおかあさんといっしょにゆ~っくりしようね~♪」 と声をかける。一方、姉れいむのほうは微妙な表情を浮かべている。この表情…おそらく俺の企ては成功している。だが、確証が欲しかった。 「おーい、妹れいむ!もうすぐ赤ちゃんが生まれそうだから、お祝いにドアのところにお菓子を置いてあるよ!お姉ちゃんれいむにゆっくりとってあげてね!」 「ゆっ!?お菓子!?取ってくるよ!!」 妹れいむはドアのほうに駆け、散らばったクッキーを舌で掻き集めている。そのとき、俺は確かに無く耳にした。 姉れいむが頭上の蔓…蔓に実った赤れいむを見つめながら 「れいむがあかちゃんのおかあさんだよ…」 と、妹れいむに聞こえないよう呟くところを。 あああああああああ、ニヤニヤが止まらない!!姉れいむのほうは、たった一日蔓を頭に生やしただけで、母性を持ってしまったようだ。 もう、口の両端が目に届きそうなくらいに笑顔が止まらない。 その日、俺一度も休みを取ることなく、全力で農作業を進めた。明日は、あのれいむ姉妹に付き合ってやらなきゃいけないからな…! 翌朝、小屋に入ると赤れいむが生まれる寸前だった。 姉れいむの蔓の上で、トマトほどの大きさに育った赤れいむは身体をブランコのように揺らし、妹れいむはをそれを見て 「がんばってね!がんばってね!!」 と声をかけている。そして赤れいむが一際大きく揺れると蔓から頭がちぎれ、ぽてりと地面に落ち… 「ゆっきゅいしちぇいっちぇね!」 鳴いた。妹れいむは感動のあまり目を潤めている。だが、次の瞬間。 「おかあしゃん!おなかしゅいた!!」 赤れいむは。姉れいむに向かって。「お母さん」と言ったのだ。戸惑いながらも、嬉しそうな顔をする姉れいむ。しかし妹れいむは黙っていられない。 「どお゛じでぞんな゛ごどい゛う゛のお゛お゛お゛!!れ゛いむ゛があがぢゃんの゛お゛があざんでしょ゛お゛お゛お゛お゛っ゛!!!」 姉れいむのほうも、悲しそうな顔をして赤れいむから目を逸らす。よく分かっていないのは赤れいむだ。 「ゅ?れいみゅのおかあしゃんはこっちだよ?」 言いながら姉れいむのほうに飛び寄る。妹れいむは半狂乱になって 「ちがうの゛お゛お゛お゛っ!!れ゛い゛む゛があがぢゃん゛の゛お゛があざん゛な゛ん゛だよ゛お゛お゛っ!!!」 と訴える。まあそうなるだろうな、赤れいむは物心ついたときには姉れいむの頭の上だったんだから。 こうなると、気になるのは姉れいむの反応だ。姉れいむは悲しそうな顔をして 「ゆう、あかちゃんのおかあさんは、あっちのれいむだよ。あっちのれいむをおかあさんってよんであげてね…。」 おお、母性愛よりも妹を気遣う家族愛が勝ったか。てっきり妹に向かって「このこはれいむのあかちゃんだよ!」ぐらい言うかと思ったが。 そんな姉の気遣いにも気付かず、妹れいむは赤れいむと姉れいむの間に割って入り、 「おねえちゃんはゆっくりむこうにいってね!!」 と威嚇する。あー、本当笑える、こいつ等。 それからも修羅場は続いた。赤れいむが滑り台の着地に失敗したとき、「おかあしゃーん!」と泣きながら見るのは妹れいむに気を使い、離れている姉れいむのほ うだ。 妹れいむが(俺の用意した)昼飯を持ってきた時も、姉れいむのほうを見て「おかあしゃんもいっちょにたべよ?」といった後、慌てて「ゆっきゅりまちがえちゃ った!」だと。 そのたびに姉れいむは悲しそうな、済まなそうな顔をし、妹れいむは「れいむがおかあさんだよ!!」声を荒げる。そんな光景が昼間中続いた。 夕方になった。赤れいむも学習能力が出てきたのか、ここ三時間ちかく姉れいむを「おかあしゃん」と呼んでいない。今は歌を歌っている最中だ。姉れいむは少し はなれたところでそれを聞いている。 「ゆ~♪ゆ~♪ゆっくりしていってね~♪」 「しちぇいっちぇね~♪」 俺には不快な音波にしか聞こえないが、ゆっくり共にはそうでもないんだろう。目を閉じて聞き入っている。だがそのとき、赤れいむの悪い癖が起きた。 「ゆ~、おかあしゃんもいっちょにうたお?」 うっかり姉れいむに「お母さん」と呼びかけてしまったのだ。妹れいむの頬が膨れていく。アレはキレてる。相当キレてる。 「なんで!わからないの!れいむが!おかあさんだよ!!」 赤れいむのすぐ近くで地団太を踏むようにジャンプする。赤れいむのほうは本気で怒られて涙目だ。 「もういいよ!!そんなにおねえちゃんがすきなら、おねえちゃんのあかちゃんになればいいんだよ!!」 言いながら、妹れいむは赤れいむに体当たりした。人間で言えば思わず手が出てしまったというところか。 しかしゆっくりだと手が出てしまったでは済まない。その体格差には赤れいむは一メートルほどポヨポヨと跳ね、泣き出してしまう。 瞬間。 妹れいむは。 猛スピードで体当たりしてきた姉れいむに弾き飛ばされた。 一メートルなんてものではない。ノーバウンドで跳ね飛ばされた妹れいむは壁で跳ね返り、赤れいむから少し離れた場所でやっと起き上がる。 その赤れいむまでの距離を遮るように、姉れいむが立っていた。 「れいむのあかちゃんになにするの!!!いもうとでもゆるさないよ!!!!」 ここで母性愛が勝ったー!一瞬睨み合った後、お互いに飛び掛って喧嘩を始める姉妹。 いや、これは喧嘩なんてものではない。転げ周り、お互いの身体に食いつき、跳ね飛ばし、踏みつける。 まさに殺し合いだ。傍目からはネコの喧嘩に見えるが。 俺は赤れいむが巻き添えを食わないよう手の上に乗せてやった。赤れいむは涙を流しながらその光景を見つめている。 やがて、体格差を生かした姉れいむが妹れいむに噛み付いたままのしかかる。 姉れいむが妹れいむに「れいむのことはおねえちゃんがまもるよ!!」って言ってたのは一週間前だっけ? とにかくこのままでは死んじまうな。俺は二匹を引っぺがした。 「おにいさんなにするの!!」 「じゃましないでね!!」 で、二匹揃って俺の手の上の赤ゆっくりに気付く。 「「れいむのあかちゃんをはなしてね!!!」」 お互いにその発言が気に入らなかったのか、すぐさま戦闘態勢に入る二匹。 「まあ、待て二匹とも。」 二匹は互いを警戒しあいながら俺のほうを見る。ああ、俺はこの一言を言いたかったんだ。この一言のために、今まで準備をしてきたんだ。 今までの準備が走馬灯のように頭をよぎる。ああ、やっと報われる。このために、潰したい饅頭を潰さずにがまんしてきたんだ。 ようし、言うぞ?言っちゃうぞ? 「そんなに自分の子供って言うなら、この赤れいむをお互いに引っ張って、勝ったほうが母親ってことにすりゃいいじゃん。」 言って、赤れいむを二匹の合間に放り投げる。二匹は一瞬間をおいた後。 「いぢゃい゛い゛い゛いっ!!!お゛があじゃん゛、い゛だいよお゛お゛お!!!!はなじでええ゛え゛え゛え!!!」 「あかひゃんがひたがってうよ!!!!ゆっくいはなふぇええええ!!!」 「そっちがはなへええええええ!!!!」 おお、醜い醜い。姉れいむは赤れいむの髪を、妹れいむは赤れいむの顎を噛み、それぞれの方向に引っ張る。 赤れいむのほうはかわいそうに、二倍近く伸びてしまって口から餡子を吹き出している。 「あかひゃんのあんこがでひゃってるよおおお!!!」 「おねえひゃんがはなへばあああ!!!?」 「おまえがはなふぇええええ!!!!」 一方赤れいむは、体の真ん中から裂け始めている。 「もっちょ…ゆっきゅり…しちゃか…」 でた、断末魔宣言だ。言い終わったと同時に、二匹は吹っ飛んだ。赤れいむが千切れた反動だ。 「ゆ、あかちゃん…は…?」 「れいむの…あか…ちゃん…」 …。 ……。 ………。 「「むーしゃむーしゃ、しあわせ~♪」」 食うのかよ!!!しばらくたち、二匹とも口の中のものを咀嚼し終わった時点で、ようやく口の中に広がった甘味の原因に気付いたようだ。 「れいむの…あかちゃんが…いもうとに…」 「おねえちゃんが…れいむのあかちゃんをたべちゃった…」 「よくも…!!!」 「れいむのあかちゃんを…!!!」 「「ゆっくりしね!!!!!」」 再び始まる大乱闘。今度は止める理由も無い。俺は小屋の戸を閉め、家に戻った。あー、井戸水で冷やしておいた西瓜うめぇ。 完全に日は落ちた。小屋のほうからは物音一つ聞こえない。西瓜を食べ終わった俺は、小屋のドアを開けた。 みると、そこら中に散らばった餡子。小屋の真ん中では、千切れたリボンの近くで荒い息を吐く傷だらけのれいむが一匹。 辺りにはゆっくりの表皮や目玉が散らばっている。 コイツ、妹れいむか?姉れいむか?今までは体の大小で判断つけてたんだが、比較対象がなくなっちまってわからない。 れいむのほうは、俺のほうを見ようともせずにふーふー唸っている。さて、どうやって声をかけるかな。 「あーあ。死んじゃったな、二匹とも。」 びくっと震えるれいむ。しかし、その顔はこちらを向かない。 「俺にはよくわからないけどさ。」 言葉を続ける。れいむは動かない。 「あの赤れいむにとっては、どっちも本当のお母さんだったんじゃないかな。」 「ゆ………。」 ゆっくりと出口に這っていくれいむ。そして。 「おにいさん、いままでありがとう…れいむはここからでていくね…」 餡子を片付けた後、小屋の周りを一周してみたが、れいむの姿は無かった。 うん、昔はゆっくりを肉体的にいじめていたが、こういう精神攻めも案外面白いな。 次の獲物はどうやって虐めてくれようか…。よし、今夜は虐待お兄さん復活祭りだ!農家なんてどうでもいいぜ!っひゃあ、虐待だあ!! 数日後、一匹のれいむがドスまりさに討伐された。最近群れに迷い込んできたれいむは、にんっしんっ!しているゆっくりの蔓を片っ端から噛み千切ったのだとい う。 そのれいむは「あかちゃん…やっとあえるね…」と呟き、事切れたそうだ。 /**** 書くのに丸一日かかった。 本当はゆっくりが食虫植物に食われるのを書いていたんだ!でも、 行き詰る→新しいネタ思いつく→メモっておく→もう一度書き始める→行き詰る→新しいネタの続き思いつく→メモっておく→以下ループ。 by町長 /****今までに書いたもの fuku2120.txt 満員電車とゆっくり このSSに感想を付ける
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『まりさ☆りざれくしょん!(後編)』 22KB 虐待 観察 日常模様 現代 細かい技術云々はスルーしてね たくさんでいいよっ 以下:余白 『まりさ☆りざれくしょん!(後編)』 三、 あれから、れいむとまともに顔を合わせることができなくなった。 「まりさが助かればそれでいい」。平然とそう言ってのけたれいむの真意が理解できないのだ。 れいむは判っていたのである。雨が降って、ありすとぱちゅりーが永遠にゆっくりしてしまう未来図を。はっきりと予見していたはずなのだ。 あの言葉から察するに、れいむはありすとぱちゅりーを見殺しにしたのだろう。 まりさにはれいむの事が分からない。 あんなに優しくて賢いれいむが、何故仲間を見殺しにするような選択肢を選んだのか。考えれば考えるほど何も分からなくなっていく。 まりさが閉じていた目をそっと開いた。 (れいむは、いったいどういうつもりなんだろう……) 神様のように感じていたれいむの存在が理解できなくなると、途端にそれが恐ろしい何かに変貌してしまったかのように感じた。 (ありすとぱちゅりーのことは、えいえんにゆっくりしてしまってもいいと……おもってたのかな) そう考えると何故だか冷たくて寂しくて悲しくなってしまう。れいむを優しいゆっくりだと思っているまりさにとって、それは余りにも残酷な展開だった。 最近では食料を探しに行くときも、おうちに帰ってきたときもれいむの姿を見かけない。 一度、おうちを訪ねてみようかと思ったこともあったがそれを実行に移すことができなかった。 まりさはれいむを怖がっていたのである。自分よりも力を持つ者が、真意も読めないままに近くにいればそれは畏怖の対象となるだろう。 「まりさ」 「……っ!」 また、これまでのように巣穴の外かられいむがまりさに声をかけた。 つい昨日までその声にどうしようもない喜びを感じていたはずなのに、今はそれが微塵も感じられない。 もちろんれいむの方にそんな気は毛頭無いのである。一方的にまりさが怯えているだけだ。 好きなはずのれいむの声がやたらと大きな重圧となって、まりさに重くのしかかった。 「まりさ。いるんでしょ?」 「いま、いくよ……」 ずりずりとあんよを這わせて巣穴の入口へと這うまりさ。そのあんよの進みは遅い。 葉っぱの扉を押し開けて外に出るといつもと変わらぬ無表情のれいむがそこにいた。ぼんやりとまりさを見つめている。 まりさは無意識に視線を逸らした。 「どうしたの、まりさ。れいむのことがきらいになっちゃったの?」 「そ、そんなことないよ……」 「ほんとうに?」 「ほ、ほんとうだよ……。でも……」 「でも、なんなの?」 「まりさ、れいむのかんがえていることがすこしもわからないよ。だから、れいむのことをおしえてね。れいむがなにをかんがえているのか、しりたいよ……」 「…………」 れいむが動きを止めた。 まりさはれいむの心を離さぬようにその虚ろな瞳を見据え続けている。 何も知らなかったのだ。まりさは何一つれいむのことについて知らない。ミステリアスとかそういう形容を超越して、何も解らないのである。 最初はそれを知りたいという気持ちが恋へと繋がった。だが今は違う。知らなければ怖いという感情のほうが先行しているのだ。 「ゆ?」 まりさの言葉を無視したまま、れいむが森の奥へと視線を向けた。まりさが顔を傾げてそちらの方を見る。 (……どうしたのかな……?) 「まりさ。いまから、れみりゃがくるよ」 「ゆ゛っ!?」 死の宣告に等しいことをさらりと言ってのけるれいむ。まりさが口を開けたままその動きを止めた。 れみりゃの活動時間は夜。今はどう考えても日中だ。まだ正午にすらなっていない。こんな時間に活動するれみりゃなどいるはずがないのだ。 困惑し混乱しかけるまりさの前にれいむが無言で立ちはだかった。 すると。 「うー☆ うー☆ たべちゃうどぉ!!」 「ゆ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!! れみりゃだあ゛ぁ゛ぁ゛!??」 れいむの予告通りに飛来してくるれみりゃ。その数、三。 真っ昼間だというのに活発に動くれみりゃたちは既にまりさとれいむを標的に定めているようだ。一斉に急降下してくる。 まりさは思わず泣きながら顔を背けた。ぎゅっと目を閉じ、口を真一文字に結ぶ。それはささやかな死に対する抵抗。命を食いちぎられる痛みに対して唯一取れる防御策。 ぶるぶる震えて動かないまりさ。しかし、予想に反してその痛みはいつまでもまりさを襲うことはなかった。 恐る恐る目を開く。 そこにはまりさの目の前で固い木の枝を咥えたれいむがれみりゃの牙を受け止めている姿があった。 まりさが目を点にしてその様子を見つめる。がっぷり四つと言ったところか。れいむもれみりゃも微動だにしない。 「れい……むっ……!?」 「まりさ……なにをぼーっと、してるの……? ゆっくりしてないではやくにげてね……」 「ゆ、ゆぅぅぅぅぅぅ!??」 れいむと組み合っているれみりゃの後方からもう一匹れみりゃが突っ込んできた。体勢を変えて間一髪で回避するれいむ。みょんより強いというのも伊達ではないらしい。 更にもう一匹。それがまりさ目がけて飛んでくる。 れいむと目が合った。れみりゃ二匹を相手にしていれば、当然まりさへの援護は期待できない。 「う……うわぁぁぁぁぁ!!!!」 れみりゃの鋭い牙がまりさの頬をざっくりと切り裂く。刹那、痺れるような痛みが患部を襲い、そこから中身の餡子がぼとりと落ちる。 顔面蒼白になるまりさ。激痛と漏れ出した自分の中身を見て思わず絶句する。おそろしーしーを漏らしながらあんよを僅かながらも動かすことができなかった。 「ゆひ……ゆひぃ……」 滝のように涙を流して情けない声を漏らし、顔だけ後ろへ後ろへと行こうとしているようだがその場から動くことができない。 それを見たれみりゃが「うー☆」と楽しそうに笑い、まりさの餡子が少量付着した牙を見せて羽をぱたつかせている。 こうなってしまった通常種はもはやどうすることもできない。永遠にゆっくりしてしまうまで、捕食種の牙で引き裂かれ続けるだけだ。 それをまりさもれみりゃも理解しているのだろう。敗者の嘆きと勝者の笑みが両者の間で混じり溶け合う。 仮にまりさが他のゆっくりと比べて肝の据わっているゆっくりだったとしても、跳ねればどんどん中身が零れていく。皮が破れるということはゆっくりにとって致命傷なのだ。 れみりゃはわざとらしくまりさの周囲をぐるぐる飛び回っていた。 その残酷な笑みが、牙が、まりさの視界の中で出入りを繰り返している。 「ゆ゛ぐっ……!!」 「!! れ、い……む……」 れいむの声。それに対して向けられるまりさの消え入るような声。それらをれみりゃたちの「うー☆ うー☆」という歓声が掻き消していく。 しかし、そんな事に気を取られている暇はなかった。 れみりゃの牙がまりさの左目を捉えて、それを力任せに抉り出したのである。 「ゆ゛ぎゃあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あぁ゛ぁ゛あ゛!!!!!」 失われた左目。そこから口のラインにかけて引き千切られてしまったまりさ。まりさは気が狂ったように泣き叫んで地面をのた打ち回っていた。 「うー☆ うー☆ たべちゃうどー!」 「や゛べでぇ゛ぇ゛!!! ばでぃざのおべべをだべな゛い゛でぐだざい゛ぃ゛ぃ゛!!!」 まりさの視界には映し出されていないが、二対一を強いられていたれいむも顔の数カ所を食いちぎられていた。揉み上げも片方地面に転がっている。餡子も撒き散らされていた。 もともと暗くなりかけていたまりさの視界が更に闇に染められていく。 それでも、れいむはあれだけの傷を負いながらもいつもと変わらない表情をまりさに見せていた。 (……え……?) その極限状態の中で、初めてまりさはれいむに対する違和感に気が付いた。あるいは、気にしないようにしていた部分に対して何らかの確証を得たのか。 れいむのあの表情。ほとんど変化することのない表情や態度。まりさはそれをれいむの感情表現の方法が乏しいせいだと思い込んでいた。 自分よりも遥かに痛みに対して強い耐性を持っているのだろう。いったいどうすればそんな風に自分も強くなれるのだろうか。そう考えていた。 しかし、まりさもれいむもそうだが、今負っている傷は“痛みへの耐性”がどうのこうのと言えるような代物では到底ない。 まりさの餡子脳がようやくフル回転を始める。おかしい。どう考えてもおかしい。 そういう視点でこの場を改めて目視すると、あんな異常なダメージを全身に負いながら表情一つ変えないれいむに対して、れみりゃは“畏れ”を感じていないのだろうか。 相変わらず「うー☆」と言いながら機械的にれいむに対して牙を突き立てるのみである。 「まりさ。ごめんね」 不意にれいむが口を開いた。 まりさの展開していた思考が現実へと引き戻される。 いつのまにか、まりさを攻撃していたれみりゃもれいむの方へ加勢に入り、れいむは三匹がかりで牙による蹂躙を為す術なく受け続けていた。 れいむの右目が爆ぜる。リボンなどはとうの昔に破り捨てられ、綺麗だった黒い髪もれみりゃの涎と泥にまみれ見る影もない。 食い破られた顔からは致死量に近い餡子が漏れ出しており、それは既に一カ所や二カ所ではなくなっている。 片方の揉み上げと黒い髪の毛が残っていなければ、そこにれいむ種というゆっくりがいることに誰も気づかないだろう。 そんなボロボロの状態であるはずのれいむ。それなのに。 あの落ち着き払った表情は何だと言うのか。顔の半分近くを損壊させていながらも、まりさには確かに感じ取ることができた。あれはれいむの“いつもの表情”に他ならない。 「ゆ゛っぎぃ゛ぃ゛ぃ゛!??」 「うー☆ うー☆ たべちゃうどー☆」 まりさのお下げに噛みついた一匹のれみりゃがそれをブチブチと音を立てて引き千切る。左のこめかみ辺りを刃物で突き刺されたかのような激痛がまりさを襲った。 「い゛だい゛よ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛!!!!」 右目と左目の在った場所から涙が流れる。 滲んだ視界の片隅ではれいむがれみりゃたちに食い散らかされている真っ最中だった。 時折れいむが痙攣を起こしているかのように顔全体を跳ね上げるのは、れみりゃの咀嚼によるせいだろう。れいむは既に完全に抵抗する手段を失っていた。 「まりさ」 「!!!」 れいむの声に対してまりさが目を見開く。 やたらとれいむの声がまりさまでしっかりと届いた。抑揚のない、感情が籠っているように感じない……“冷静”だと思っていたれいむの静かな声。 「まりさ。げーむおーばーだよ。ありすとぱちゅりーはたすけておくべきだったのかもしれないね。そうしたらふたりをつかってれみりゃからにげられたかも」 「……?!」 ゲームオーバー。確かにれいむはそう言った。 この期に及んでいったいれいむは何を言っているのだろう。そんなことよりもあんな状態で流暢に喋ることができる理由は一体何だというのか。 「うー☆ うー☆ たべちゃうどー☆」 同じ言葉を繰り返しながられいむの存在を少しずつ食らっていくれみりゃたち。 まりさはそれを薄れゆく意識の中でぼんやりと見つめていた。 「“また”、しっぱいしちゃったよ。“まえのとき”は“なかま”がおおすぎて、やられちゃったけど……やっぱりれいむひとりじゃきびしいね」 「うー☆ うー☆ たべちゃうどー☆」 れみりゃの口がれいむの最後の一かけらをその中に収める。 れいむはまりさの視界から消えてしまう直前まで、残った左目でまりさのことを見続けていた。 「まりさ……“またね”」 最後の最後までれいむは淡々とした口調でまりさに別れを告げた。 まりさにはもう何が何だか分からない。れいむの事が分からない。何一つとして分からない。 翻るれみりゃの翼。迫りくる牙。貼り付けられたかのような笑顔。それらがまりさの視界全てを覆い尽くす。 (まりさ……えいえんにゆっくりしちゃうんだ……) 口を壊されたまりさはもはや喋ることすらできない。頬に、あんよに、額に、れみりゃたちが一斉に牙を立てる。 それなのに抵抗することもできない。激痛に叫び声を上げることも、身を捩じらせることも許されていなかった。ただ、食糧としての最期を迎えるのみ。 れみりゃたちは容赦なくまりさを食いちぎり、ばらばらに引き裂いていった。邪魔だと判断されたのか帽子はとっくに投げ捨てられている。 餡子が口から噴水のように吐き出された。まりさが“その時まで”は生きていたという証拠だろう。 あとは物言わぬ饅頭として、れみりゃたちにその全てを食らい尽くされた。 それがまりさの“今回の最期”だった。 四、 「あー、もうっ! なによこのクソゲー! ホント、初見殺しにも程があるわねっ!!!」 「基本的に姉ちゃんの操作が下手なだけだよ。今ぐらいのれみりゃだったら、一匹でもどうにかなるし……。攻略サイトでも読んでみたら?」 「うるさいうるさいっ!! 私は一周目は自分でクリアしないと気が済まないタチなんだっ!」 液晶テレビには真っ黒な画面と“GAME OVER”という白い文字が映し出されていた。そこに姉弟の表情も映りこんでいる。 弟は姉からコントローラーを奪い取ると、ボタンをカチャカチャと操作して次の画面へと進ませた。 「あははっ! でも、プレイ時間は前よりも一時間くらい増えてるよっ! でも総合評価はDランクだってさ」 「ぬぅ……。ちょっと私よりもゲームが上手いからって調子に乗ってんじゃないの……っ!?」 「事実を突きつけただけだよ」 昨今、ゲーム業界の発展には目を見張るものがある。 数年前は絶対に無理だとされていたことが、今は現実と成り得るほどに世界全体のプログラミング技術は向上し続けていた。 従来のゲーム……特にRPGというジャンルについては登場人物を操作し、そのキャラクターたちに起こる様々なイベントをプレイヤーが追体験してそれを楽しむものだった。 それが少しずつ変化してコントローラーを使わずに自らの動きで画面内のキャラクターを動かす体感型のゲームが発展していく。 これからも月日を重ねるごとにゲームというジャンルは進化を続けていくだろう。そんな進化の途中に生み出されたゲームがこれだった。 『Yukkuri Box 365』。 ネーミングはどう考えてもかつてPS3と並び称されていたゲーム機のパロディである。余談だが現在はPS5が発売されていた。 『Yukkuri Box 365』(以下:『YB365』)は大手ゲームメーカーが開発した、ソフト内蔵型の新しいハードだ。 ゲームの内容は至ってシンプルで、一匹のゆっくりが天寿を全うするまでプレイヤーがパートナー役となりそれを支え、様々なイベントをクリアしていくというもの。 プレイヤーはコントローラーを使って操作キャラである“パートナー”を動かしてゆっくりをフォローすることができる。 また、キーボードを使って話しかけたい言葉を入力すると、自動的に“ゆっくり口調”に変換されて“パートナー”とチャットのように会話をすることもできる。 この二つの機能を使って、ゆっくりを誘導したりピンチから助けたりしながら生存時間を競っていくというゲームなのだ。 CEROはZ指定であり十八歳未満は購入できない。理由はもちろん暴力的なシーンが盛りだくさんだからである。 無表情のれいむ。感情の乏しいれいむ。それは姉が“操作”していた“キャラクター”だったのだ。 そして、まりさは……。 「それにしても酷いゲームだよねぇ、これ。ゆっくりの命をなんだと思ってるのかしら」 「姉ちゃんが言っても全然説得力ないけどね。それに……ほら、ちゃんと生きてるよ。まだ、“コンティニュー”できるみたいだし」 「本当に“あのまりさ”もタフよね」 「すごく生意気な野良ゆっくりだったからね。僕もそれを狙ってあいつを連れてきたんだし」 「でもさ。その生意気な性格も今はほとんど無いよね。ゲームをやり始めた頃はもうちょっと生意気な口調だったような気がするけど」 「そりゃあ、何回も何回も死ぬのを経験してたら性格も大人しくなっていくだろうね。と言うよりも、もう精神的にギリギリなんじゃないかな……? 実は」 そんな会話をしながらチラリと横目で一点を見る姉弟。そこには『YB365』が置いてある。 箱型の機械の横部分に電源スイッチがある。反対側からは三本のコードが伸びており、それぞれコンセントと液晶テレビ、キーボードに繋がっていた。 そして、上部。そこからは四本のコードが伸びている。この四本のコードは構造がよく分からないが高精度の電極のようなものだ。 箱の中には街で捕まえてきた野良まりさがセットされており、四本のコードはその野良まりさに突き刺さっていた。 電極は画面に映し出されたまりさに、野良まりさの感情や行動を伝える役目を果たしている。 ゲーム中にまりさが受けた痛みや苦しみもまた、箱の中に閉じ込められた野良まりさにダイレクトに伝わるという仕組みだ。 もちろん、ゲーム中にまりさが死んでしまえば箱の中の野良まりさも、それをリアルに追体験してしまう。 しかしそれが原因で野良まりさが死んでしまうようなことはない。あくまでゲームの中の出来事はゲームの中だけのものである。 寿命は野良まりさ本体に依る。 つまり野良まりさが寿命で永遠にゆっくりしてしまうまでコンティニューを続ければ、ひたすらに野良まりさは“死”の追体験を繰り返す事になるのだ。 「ところでこのまりさ、何回死んだの?」 「え? ……ちょっと確認してみるよ。えーと……百五十四回」 「姉ちゃん、死なせすぎだよ。ゲーム下手糞にも程があるよ」 「いちいち一言多い!!」 「シナリオモードばっかりやってるからだよ。たまには観察モードでもやってさ……こいつのスペックを把握しないと」 「え? そんなことできんの?」 「説明書読みなよ」 『YB365』には二つのモードがあるのだ。 姉がやっていたのはシナリオモードである。全二十ステージで構成されており、ステージが進むほど難易度が上がっていく。ちなみに姉が撃沈したのは第一ステージのラストだ。 キノコ狩りも、ありすやぱちゅりーと体験した雨も、れみりゃの襲来もすべてゲーム中のイベントである。 それに対してもうひとつ用意されている観察モードは一切のイベントが起こらず、ひたすらにゆっくりが活動しているのを見ているだけというものだ。 代わりに天候・気温・季節などの調節をプレイヤーの手動で行うことができ、ゆっくりがどういう状況下でどういう行動を取るのかシミュレートすることができるのである。 それに基づいてシナリオモードの戦略を練ったり、行動パターンを把握してよりスムーズなゲーム展開ができるようにするのだ。 「姉ちゃん、冬が来たらイベントが始まる前にゆっくり死ぬよ多分。冬のときにどうすればいいか分かる? どんだけ活動時間短くなるか分かる?」 「わ、……分からない……」 「試しに僕がやってみるよ。観察モードだから、姉ちゃんも見ておけばいいよ」 「うぅ……」 そう言って観察モードを立ち上げる弟。 画面の中にはまりさが映し出されていた。先ほどの“死”から僅か十分弱で再び強制的に目覚めさせられたのである。 まりさは「ここがどこだかわらないよ」と言いながら不安そうに周囲をきょろきょろ見渡していた。それを見ていた姉がうっとりとした表情を浮かべる。 「やだ……なにこれかわいい」 「見てるだけの方が楽しいって言う人もいるくらいだからね……。でも……こんなこともできるんだよ」 弟がメニュー画面を開き、「気温」にカーソルを持っていく。その設定を二十四度から一気にマイナス三十度まで下げた。 すぐに画面の中のまりさに変化が訪れる。拡大すると歯をガチガチ鳴らして凍えているようだった。凍りついた涙が頬にへばりついている。 「ざ……ざぶい゛……よ゛……ゆ゛っぐり゛……でぎ、な゛……。……も゛っど……ゆ゛っぐ……ゆ゛っ、ゆ゛っ……」 画面が暗転して「コンティニューしますか?」との文字が映し出された。一分経たないうちにまりさは“再び死んだ”のである。 姉はキョトンとした目でその様子を見つめていた。 弟がすぐにコンティニューを選んで観察モードを再開すると、また「ここはどこぉ……」などと言いながら周囲を見渡すまりさが画面に映された。 コンティニューされる段階で自分が何をやっていたのか強制的に忘れさせられるのである。しかし、記憶自体は本体の野良まりさが持っているのでおぼろげに引き継がれる。 百五十回ものゆっくりできない死の記憶は蓄積されていき、やがて本体の野良まりさの精神を壊すだろう。 言い換えればそれが『YB365』の寿命と言ってもいい。もっとも、別のゆっくりを捕まえてきて箱の中に入れればいくらでも替えがきくのではあるが。 画面内を不安そうに這い回るまりさの周囲に十五匹のれみりゃが配置された。弟がメニュー画面を使ってまりさの周囲にれみりゃを放ったのである。 まりさはしーしーをぶちまけてその場で固まってしまう。れみりゃたちは一斉にまりさへ飛びかかった。一瞬で餡子を飛び散らせて絶命するまりさ。 すぐに画面が暗転して「コンティニューしますか?」の文字が表示される。まりさは、また死んだのだ。 そこから更にもう一度コンティニュー。 「ゆっくりしていってね……?」と不安そうな声を出すまりさ。 今度は天候を台風に設定した。途端に暴風と雷雨が発生してそれがまりさを蹂躙する。 最初は必死になって逃げ回っていたのだが、帽子が風で吹き飛ばされるわ、それを追いかけて木の下から飛び出し雨に打たれて溶けて死ぬわで、またそのゆん生を終了した。 暗転。ゲームオーバー。コンティニュー。画面に表示されるまりさ。気温を五十度に設定。水分を失い、五分と経たないうちに干からびるまりさ。ゆん生の終了。 暗転。ゲームオーバー。コンティニュー。画面に表示されるまりさ。紆余曲折を経て、ゆん生の終了。 何度も何度も生き返る。ゲームの中に閉じ込められて、ひたすらに死ぬことだけを繰り返していく。 「観察モードはセーブできないから気をつけてね」 「え? じゃあどうやってずっと観察するの……?」 「これは練習、っていうかいろんなシチュエーションでゆっくりがどんな反応をするか見るためのものだからなぁ……。人によっては観察モードしかやらない人もいるけど」 「ずっと電源つけっぱなしなの?」 「うん。でもそれをすると箱の中のゆっくりがすぐに体力消費して死んじゃうからね……。個人的にはあんまりお薦めしないよ」 無意識にコンティニューをしてしまったのか、また草原の上にまりさが一匹ぽつんと映し出されていた。 弟は無言でメニュー画面を開き、「観察モードの終了」を選択する。 「ゆ゛ぶべぇ゛ッ??!!!」 画面内のまりさが爆発したかのように弾け飛んだ。直後、画面が暗転してタイトル画面へと戻る。 「え? わざわざ死ぬの?」 「仕様だよ。記憶が次のプレイに引き継がれないように、観察モード終了と同時に必ず死ぬんだ」 「へぇ……結構、考えてるのね……」 「でも、今のまりさは本当に無駄死にだったね。まぁ、実際にこいつが死んだわけじゃないんだけど」 そう言って『YB365』の箱をコンコンと叩く弟。 「久しぶりに“電池残量”確認してみる?」 「えー……でも、気持ち悪いし……」 「大丈夫だよ。専用の箱に閉じ込めてあるんだから」 『YB365』の電源を落とし、本体に手をかける。それから慣れた手つきで箱の表側の蓋を外した。 「うわ……」 本体の中にもう一つ箱がある。“ソフト”の役目を果たしている野良まりさだ。姉が思わず目を背けるのも無理はない。 真っ白になった金髪が抜け落ちて箱の底部に溜まっている。それを覆い隠すかのようにしーしーとうんうんがへばりついていた。 見開かれっぱなしの目玉は乾燥しているのが目視で分かるくらいにガサガサの状態になっている。干からびた頬の皮はところどころが剥がれてしまっていた。 半開きの口から垂れ下がるしわくちゃの梅干しのようになった舌。歯は一本も残っていない。帽子だけがあの日捕まえてきたときのままだ。 弟が本体の音量調節を最大まで引き上げると、微かに呻き声が聞こえてきた。 「お……ね、が……じば……。こ…………て……く……、だ……さ…………。ころ……じで……。こ……ろ……し……て……」 その瞳には何も映し出されていないだろう。姉弟の声も届いていないだろう。 何度も何度も死んだまりさは憔悴しきった様子で虚空に向けて声を絞り出す。それはいったい誰への願いだろうか。 うわ言のように「殺して」と繰り返すまりさを見て、弟はクスクス笑っていた。 「上級者はね……いや、ちょっと頭のおかしい人たちかな……」 「何よ……」 「最初の十回くらいしかできないプレイが一番楽しいんだってさ」 「どういうこと?」 「この蓋を開けた状態で、ヘッドフォンをつけて初回プレイをするんだ」 「それって……」 「そう。最初の“死”が一番苦しむ表情と叫び声が凄いんってだ。直前まで元気で生意気な口ばっかり利いてるゆっくりがいきなり絶叫するのは、堪らないらしいよ」 「私には理解できないわね……。私はシナリオモードがクリアできればそれでいいもん」 「ホント……。このゲーム、いったい誰が……誰の為に作ったんだろうね」 そう言いながらそっと『YB365』の箱の蓋を閉める弟。音量を消してしまえばこの中に野良まりさがいる事など当事者たちしか分からないだろう。 もう一度電源を入れる。幾つかの画面の切り替わりを経て、再びまりさが映し出された。 弟がクスクス笑いながら、メニュー画面を開いてまりさの満腹度というゲージを一気に下げていく。 するとまりさは「ゆっくり、おなかが……すいたよ……」と途端に憔悴してしまう。 画面を拡大すると顔面蒼白のまりさがはらはらと涙を流していた。それを見て思わず失笑する姉弟。 またゲージを元に戻してやるとぴょんぴょん草の上を跳ね始める。 箱の中の野良まりさが本当の意味で永遠にゆっくりしてしまうまで、野良まりさがゆっくりできる日は絶対に訪れないだろう。 このゲームは“命を弄ぶゲーム”だった。 『YB365』に収められたゆっくりは一生、この仮想空間から抜け出すことができない。 何度も何度も死んで、あるいは殺されて、遊ばれて。また何度も同じ場所に呼び出されて、それから死んで。ひたすらにそれを繰り返す。 この世界ではゆっくりは生き物として扱われていなかった。ゆっくりが“動くゴミ”と称されるようになって随分と長い時間が経っている。 街で見かけたゆっくりは全て例外なく殺すようになった世の中だ。今更、そんな価値の無い命がどう扱われようと誰もそれを咎めようとはしなかった。 この世界においてゆっくりとは人間たちの玩具でしかない。 それも壊してしまおうが失くしてしまおうが、掃いて捨てるほどそこらを這い回っているゆっくりたちだ。これ以上ない安い玩具だった。 『YB365』についても、インターネットでは“ゴミの有効利用”などの書き込みも多く、幅広い層に受け入れられているようだ。 今日も、この箱の中に入れられたゆっくりがゲームの中で死に、現実で死ぬような苦痛を味わいながら、またゲームの中で蘇る。 壊れない玩具が誰にも気づかれず泣き叫ぶ。 死ぬまで。 ずっと……それを繰り返すのだ。 La Fin
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『ヒヨドリの幸せ 上』 26KB 制裁 日常模様 飼いゆ 現代 愛護人間 上編です ※※CAUTION※※ 読後感の良さは保証しかねます ヒヨドリの幸せ 上 「あー、クソ疲れた」 仕事から帰った俺は、こきりと一つ肩を鳴らして階段を上り、晩秋の日差しに目を 細めながら、アパートの二階にある自宅の鍵を開けた。 俺の住んでいる安アパートは、ペット、ゆっくり可な事が唯一の取り柄だ。 駅は遠いし最寄りのコンビニまで徒歩20分。壁はある程度しっかりしてるけれど、 真向かいにビルがあるせいで、日当たりも悪い。でも、良いのだ。 ネクタイを外しながら、玄関の扉を開けた。そう、このアパートはペット、ゆっくり可。 飼いゆっくりのれいむを溺愛している、独身で一人暮らしの俺にとって、れいむを飼える というのが家選びの唯一絶対の基準。他なんてどうとでもなる。だから、俺にとってこの アパートは、たまらなく魅力的な素晴らしい物件なのだった。 「ただいま、れいむ」 奥の部屋にいるはずのれいむに向かって声をかけてから、スーツを脱ぐ。 しかし、何かが変だ。いつもなら、俺が扉を開ければすぐに玄関までやってきて 俺に飛びついてくるはずなのに、今日はおかえりの言葉も無い。 寝ているのか?そう思いながら部屋に入ると、れいむはそこに居た。 畳敷きの部屋の真ん中で、れいむが俺に背を向けている。夕陽に照らされたその後ろ姿は、 俺がこれまで見た事の無い雰囲気を纏っていた。 どこか侵しがたいような、張り詰めた空気。それは俺には、とても嫌な物に見えた。 おかしい。何かがおかしい。俺はもう一度れいむに声をかけた。 「れい・・・・・・む?」 「あ・・・・・・。おかえりなさい、おにいさん」 今俺に気付いた、という風にれいむが振り返り、俺に向かって微笑んでくれた。でも、 その笑顔は、いつもとは全然違った。いつもはこんな、内心を押し隠そうとするような 悲しそうな笑い方はしない。昨日まではもっと、天真爛漫に、「ゆっくりとした」笑顔を 浮かべていたはずだ。 「なぁ、れいむ。どうしたんだ?どこか具合が悪いのか?心配ごとでもあるのか?」 俺はれいむの前に回り、れいむの瞳を覗きこんだ。いつもニコニコと幸せそうに笑っていた はずのその瞳は、今日は物憂げに伏せられている。 「あ、そうか!何処か怪我をしたのか?」 赤ゆっくりの頃から飼っているれいむは、やっと成体サイズに成長したばかり。 昨日はそのお祝いに、これまで室内飼いだったれいむを、初めて公園に連れて行って やり、思い切り跳ねまわらせてやったのだ。 「うぅん・・・・・・。ちがうよおにいさん。れいむ、べつにけがなんてしてないよ」 そう言ってれいむは、ころんと腹を見せて転がり、あんよを俺に見せてくれる。 確かにそこに、傷なんてついていない。いつも通りぴかぴかのあんよだった。 「じゃあ、どうしたって言うんだ・・・・・・?何でそんなに悲しそうな顔をしてるんだよれいむ。 お前がそんな顔してたら、俺の方が悲しくなっちまうよ」 「あ、ごめんねおにいさん。れいむがゆっくりしてないとおにいさんもゆっくりできないよね」 転がったまま、れいむが困ったように笑う。俺をゆっくりさせてくれようとしているのだろうが、 そのいかにも無理をして浮かべた笑みは、かえって俺の心を抉った。 「本当、どうしたんだよれいむ。何があったんだよ」 俺はれいむを抱え上げ、正面からその眼を見つめた。 「何かあったんなら、言ってくれよ。寂しかったのか?それとも俺が何かやっちゃったか? 飯が不味かったのか?あ、それとも逆にお前が何か悪い事したとかか?何か物を 壊したとか。大丈夫。そんなので俺は怒らないよ」 怒涛のように口をついて出る言葉の奔流。れいむはしばらく黙って俺の言葉を聞きながら、 何か言いたげにしては口をつぐむ、という事をくり返していたが、決意したように 俺の眼を見つめると、縋るように話し始めた。 「おにいさん」 「何だ?」 「あのね、おねがいがあるの」 「何でも言ってくれ」 「いいの?」 「れいむが笑ってくれるなら、俺は何でもしてやるよ」 「ありがとう、おにいさん」 れいむは泣き笑いのような表情を浮かべると、 「おさんぽにつれていって」 そう言った。 れいむは昨日行った自然公園に行きたいらしい。もうすぐ日も落ちてしまう時間であるし、 ゆっくりの足で公園まで往復するのは時間がかかりすぎる。なので、俺は普段着に着替え、 れいむを自転車の前かごに乗せて、公園まで移動することにした。 「何だよれいむ。公園ぐらい、言えばいつでも連れていってやるのに。本当にお前は 良い子だなぁ。もっと我儘言ってくれてもいいんだぜ?」 上機嫌に自転車を漕ぎながら、俺はれいむに話しかける。公園に行きたいなんて 些細な要求を言い出せないなんて、れいむは本当に優しくて可愛い。 「~~~っ~」 れいむが何か言った気がした。しかし、前籠に乗っているれいむの表情は見えないし、 自分より前に居る人間が前を向いて喋る声というのは、そもそも聞きとり辛い。れいむが 言った言葉が、俺にはよく聞き取れなかった。しかし、その声は心なしか沈んでいた ように思える。 今日、れいむの様子が違ったのは、我儘を言いだせなかったからじゃないのか・・・・・・? れいむにもう一度声をかけようとして、一瞬前方への注意が逸れた瞬間。自転車の前に 何かが飛び出してきた。 「うわっ危ねぇ!!」 俺は慌ててハンドルを切り、飛び出してきたソレ・・・・・・野良ゆっくりを回避しようとする。 急にハンドルを切った自転車は急停止する。しかし自転車は長く、野良ゆっくりが一跳ね する距離は、意外と長かった。 「ゆひいいいいぃぃぃぃぃ!!!いぢゃいいいぃぃぃぃ!!」 べちん、と前輪にぶつかった野良ゆっくりのまりさはべちゃりと地面に貼りつき、 しーしーをだだ漏れにして、情けない声で泣きはじめた。 「飛び出してくんな馬鹿!」 俺はまりさを怒鳴りつけると、自転車のハンドルを真っ直ぐに戻し、走り始めた。 ここらへん、野良ゆっくり増えたよな・・・・・・。 ペダルを漕ぎながら考えていると、またしても、前かられいむの声がしたような気がした。 「よしよし、怖かったか?どこかぶつけちゃったか?ごめんな、もうすぐ着くからな」 さっき急停止した事についてだろう。そう考えて、俺は左手で前籠の中に居るれいむの 頭を撫でてやった。 あと数分で、公園に到着するだろう。 「おにいさん、さっきのまりさはだいじょうぶだった?」 公園に着いて前かごかられいむを降ろしてやった後。れいむが一番最初に俺に言った言葉 はそれだった。 「あぁ、良く見て無かったけど、前輪にぶつかっただけだし、大した怪我はしてないだろ」 俺はれいむを安心させるように言ってやる。 「見ず知らずの野良を気にしてやるなんて、れいむは優しいな」 「ちがうよ・・・・・・」 れいむがうつむき、何かを呟く。その言葉は小さくて、俺には聞き取れなかった。 「れいむ?」 やはり、まだ様子がおかしい。問い詰めようとした時、れいむが顔を上げて言った。 「なんでもないよ・・・・・・。おにいさん、おさんぽしようね」 その顔は、楽しく遊ぼうとするような、そんな顔じゃなかった。 大きな自然公園を、れいむと一緒にぶらぶらと歩く。 れいむはきょろきょろと周りを見渡しながら、ゆっくりと歩いている。釣られて俺も周りを 見渡すと、そこには前だけを見て歩いている時には気付かない、様々な物や、動物、 そして、たくさんのゆっくりがいた。 日が落ちる寸前の薄暗闇。その至る所に、溶けるように、リボンの赤や金髪が紛れ、 蠢いていた。 足元を見下ろすと、そこには俺の飼いゆっくりのれいむがいる。真紅に白抜きの入った リボンが、薄暗い中でもばっちりと映え、存在感を主張している。 しかし、れいむのように人間に庇護されない野良ゆっくりに、装飾品を綺麗に保っておく 術などは無い。薄汚れ、くすんだリボンや髪は、俺の目に野良ゆっくりたちを、背景と半ば 一体化した、曖昧な物に見せていた。それはあたかも、来る夜に飲み込まれ、 噛み砕かれたかのように。 何故野良ゆっくりというのは、あんなに惨めに見えるんだろう。猫やカラスのように、 街に生きる動物はたくさんいて、そいつらの事を見ても、「惨めだ」なんて思わないのに。 つらつらと考えながら歩いていると、れいむが話しかけてきた。 「ねぇ、おにいさん」 「ん?」 「れいむたちのまわりにいっぱいゆっくりがいるの、わかる?」 「あぁ、野良のゆっくりがいっぱいいるな」 「みんなぜんぜんゆっくりしてないよ」 「そうだな。あいつら汚ねーしな。野良ゆっくりは食べもの集めるのも大変らしいし、 ゆっくりはしてないかもな。でも、野良ゆっくりが増えたら街が汚くなるし」 「どぼじでぞんなごどいうの!?」 俺の台詞を遮って、れいむが叫んだ。驚いてれいむを見ると、れいむは俺を、 涙を溜めた眼で見上げ・・・・・・いや、睨みつけていた。 「おんなじゆっくりなんだよ!?れいむとほかのゆっぐりとなにがちがうの!? どうじでれいむはゆっくりしてるのに、ほかのゆっくりはゆっくりできないの!?」 叫び終わると、れいむは言いすぎた、という風に口をつぐみ、 「ご、ごめんね・・・・・・。おにいさんにおこってるんじゃないんだよ、ごめんね」 そう言って、申し訳なさそうに謝ってきた。 これか。れいむの憂鬱の原因は、これなのか。 昨日の散歩。れいむはそこで、野良ゆっくりを初めて見たんだろう。そして、その 「ゆっくりしていなさ」に衝撃を受けた。そりゃぁ、俺たち人間にとっては野良のゆっくりが 地面を這いずっているのは見慣れた光景だし、気に留めるような事でもない。 でも、れいむにとっては。優しいれいむには、自分と同じゆっくりが、自分と全く違う、 極めて過酷な場所に生きている事が、ショックだったんだ。 まずい。この流れはまずい。何でも良い、何か言わないと。そう思って喋ろうとするが、 言葉が出てこない。 「あのな、れいむ」 「おにいさん!」 捻りだそうとした言葉の先を、れいむに遮られた。 「ゆっくりできないゆっくりたちを、たすけてあげてほしいよ!!」 言われてしまった。あぁ、クソ。 れいむの言う「助ける」というのがどの程度までを指すのかは分からない。しかし、 れいむが見ている範囲の野良ゆっくりたちを、れいむから見て「ゆっくりできる」ように してやるなんて、およそ現実的じゃない。どれだけの手間暇がかかると思ってるんだ? そんなことは不可能だし、もし可能だとしても、正直に言って、そんなことしたくもない。 潤んだ瞳で哀願して来るれいむ。その真摯な瞳に見つめられて、心がズキリと痛む。 しかし、れいむには悪いが、その願いを聞いてやる事はできない。 「えぇと・・・・・・、あのなれいむ。そうだ、何かあまあま食うか?買ってやるよ」 何とか丸めこまなくては。そう思った俺は、舌が肥えるのでめったに食わせない あまあまをダシにして、れいむの興味を逸らそうとした。 「のらゆっくりは、あまあまをたべられるの?」 駄目だった。れいむは悲しそうな、そして必死な眼で縋るように俺を見ている。 「おにいさん、おねがいだよ。みんながゆっくりできないと、れいむもゆっくりできないよ。 おにいさんはみんなをたすけてあげられるでしょ?」 俺の足に体をすりつけながら、れいむは俺を見上げる。あぁ、これは真面目に答えないと まずいんだな。遅まきながらそう思った俺は、無言でれいむを持ちあげ、近くのベンチに 座った。膝の上にれいむを抱え、眼を覗きこんで喋りはじめた。 「なぁれいむ。お前は飼いゆっくり、人間に護ってもらえるゆっくりなんだ。その、 何と言うかな、あいつらとは違うんだよ」 「じゃあ、みんなを『かいゆっくり』にしてあげてほしいよ」 「そんなの無理だ。俺にはれいむしか飼えないんだ。分かってくれよ」 「どうして?れいむとみんなと、なにがちがうの?おんなじゆっくりなんだよ」 そうだ。れいむの言うとおりだ。野良猫と飼い猫は、両方猫だ。しかし・・・・・・ 「あのな、れいむ。確かにお前と他のゆっくりは同じかもしれない。でも、ひとつだけ 違う事がある。それは運だ。ゆっくりが幸せになれるかどうかは、最初から決まって いる。お前はそれに選ばれたんだ」 「じゃあ、れいむはみんなに『うん』をわけてあげるよ!れいむだけがしあわせー!に なるのはずるいよ!ひとりじめはゆっくりできないんだよ!?」 優しい優しい俺のれいむ。お前は偉いな。でも、それは。 「あのな、れいむ。お前が持っている運っていうのは、『俺にしあわせーにしてもらえる』 っていうものだ。幸せを与えるのは、俺の役目なんだ。だから、言い変えよう。 俺は、お前が言うようにたくさんのゆっくりを飼う・・・・・・幸せにする力は無い。 たった一匹、お前だけを幸せにするのがせいぜいなんだよ。だから、お前が しあわせーになる事は出来るが、他の奴にその幸せを分けてやる事はできない。 そう言う事なんだよ。な?分かってくれ」 「おにいさん・・・・・・」 包み隠さず、正直に言った。れいむにはそんなつもりは毛頭ないんだろうが、 正直、無能をなじられたような、そんな嫌な気分だった。でも、仕方が無いのだ。 「わかったよ、おにいさん」 俺の言葉を聞いたれいむが、俺を見上げる。 「おにいさんがれいむだけをしあわせー!にしてくれるなら、それなら」 決意を込めた瞳で俺を見つめる。 「れいむがみんなをしあわせー!にするよ」 曇りのない瞳で、れいむはそう言い切った。 「どう・・・・・・いうことだ?れいむ」 「れいむはほかのゆっくりをしあわせー!にしてあげるよ。れいむがんばるよ!!」 「いや、だって、お前は俺の飼いゆっくりで・・・・・・」 「かいゆっくりだったら、なんでだめなの?」 その台詞に答える言葉を、俺は持っていなかった。 お前は俺の飼いゆっくりなのだから、俺と一緒に居て、俺のことだけを 考えていればいい。頭に浮かんだその考えのあまりの醜悪さに、吐き気がした。 「ねぇ、おにいさん。それならいいでしょ?れいむはこのこうえんさんでくらしたいよ。 こうえんさんで、みんながしあわせー!になれるように、みんなをたすけてあげたいんだよ」 「・・・・・・俺は、どうなる?」 口からついて出た言葉は、何とも情けないものだった。 「お前がいなくなったら、俺はどうなるんだ?お前がいないと俺はゆっくりできないぜ? それでいいのか?それに、野良と一緒に生活したら、野良を助けてやることなんて出来ない に決まってるだろ。お前、自分がどれだけ優秀なつもりなのか知らないけど、お前一匹が 自分の食い扶持抜いて採って来られる餌だけで、野良ゆっくりが幸せになるんなら、 野良はあんなに惨めな生活をしてねぇよ。なぁ、どうするつもりなんだよれいむ。考え直せよ」 「でも、でも、れいむにはがまんできないんだよ!れいむだけがゆっくりするなんて、 ゆっくりできないいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!」 ぽろぽろと涙を零し始めたれいむ。正直、泣きたいのはこっちだ。 これ以上ここに居てはいけない。俺は泣き続けるれいむを抱え上げると、自転車置き場 にダッシュし、れいむを前かごに詰め込んだ。 「家に帰ろう。な?家に帰って、そこで考えよう」 半分以上、自分に言い聞かせている言葉だ。俺はれいむが何か言ってくるのを無視して 自転車のペダルを踏み込んだ。 料理をする気にはとてもならなかったので、晩飯はカップラーメンで済ませた。 れいむの前には、いつも通りのゆっくり用ペットフードが置かれているが、俺が食事を している間、れいむはそれに一度も口を付けなかった。 「・・・・・・おにいさん、のらゆっくりは、なにをむーしゃむーしゃしてるの?」 ぼんやりと平皿に盛られたペットフードを見つめながら、れいむが言う。 「・・・・・・お前の思ってる通りだよ。野良はそんな良いもん食ってねぇ」 がしがしと頭を掻きながら俺は答えた。正直、どうすればいいのか見当もつかない。 「でもな、れいむ。それは仕方ないことだろ?ゆっくりは、人間だって、いや、生きてる ものはみんな、平等じゃねーんだよ。分かるだろ?分かってくれよ!お前が幸せに なる事は悪いことじゃないんだ。お前には幸せになる権利があるんだよ。それ以上 気に病むな。な?もう公園になんて行くなよ。しばらく家でじっとしてろ。それがお前に とって一番良いはずだよ。な?飯食えよ」 俺にとっても、それが一番良い。 「・・・・・・やだ。れいむだけしあわせー!なごはんさんをむーしゃむーしゃしたくない」 だがれいむは、顔を伏せていやいやをするように頭を振る。 正直に言って、腹が立った。今日の態度は全て、れいむの優しさから出たものだと 分かっている。だが、俺にとってそれらはもう、あれが欲しいこれが食いたいなんて 可愛いものを越えた、もっとタチの悪い我儘にしか見えなくなり始めていた。 だが、癇癪を起こす訳にはいかない。今、俺がここで 「そんなに野良と同じ物食いたいってんなら、出て行って勝手に残飯でも雑草でも 食ってろ」 そんな風に言おうものなら、れいむは喜んでこの家を出て行くだろう。 俺はれいむを可愛がっているし、大好きだ。赤ゆっくりから育て上げたという自負もあるし 愛着もある。俺はれいむを失いたくないのだ。 俺は、れいむとこれまで通りに暮らして行きたかった。でも、どうやらそれは無理な 相談なようだ。 「・・・・・・分かったよ」 だから俺は、れいむに折れることにした。 「野良ゆっくりにも、お前と同じ餌を配ってやる。それで良いんだろ」 「え・・・・・・、いいの?おにいさん」 「あぁ、だから、お前も食え」 そうしないとお前が飯を食わないと言うんなら、仕方ないじゃないか。 「でもな、れいむ。俺にしてやれるのはこれだけだ。野良と同じ所に住まないと 駄目だとか、全部全部野良と同じじゃないと嫌だなんて、そこまでは聞いてやれない。 お前は俺の飼いゆっくりだってことを忘れるな。俺はお前をゆっくりさせてやる。 だから、お前もここにいて、俺をゆっくりさせてくれ」 これが、俺に出来る最大限の譲歩だ。これを断られたらもう正直打つ手が無かったが、 れいむは、俺を嬉しそうに見上げ、こくりと頷いてくれた。 「はやくごはんさんよこすんだぜこのくそじじい!!」 俺の毎日に新しい日課が加わる事になってから、一カ月が経った。 あの日から俺は毎日、会社帰りにゆっくり用ペットフードを、公園に居る野良ゆっくりに 配っている。今俺の足元で騒いでいるこの野良まりさは、俺が公園内での餌の分配を 任せている奴だ。 「なんなのぜそのめは!さっさとごはんさんよこさないとれいむにいいつけちゃうん だぜ!?このばかくずにんげん!」 調子に乗っているまりさの言葉に、俺は奥歯を噛みしめる。噛みしめながら、 俺はまりさに餌を渡してやった。 最初の何日か。俺は乗り気ではなかった。ただ、公園に適当に餌をばらまいて、 野良がその餌に寄ってこようが来まいが、確認する事もせず、すぐに帰っていた。 そして、餌を撒くようになってから最初の日曜日。俺はれいむにねだられて、れいむを 公園に連れて行った。れいむは野良ゆっくりがペットフードを食べる姿を嬉しそうに見て、 久しぶりに、心の底からの笑顔を見せてくれた。そしてれいむと俺は、ボール遊びや 鬼ごっこでたっぷりと楽しんだ。 次の一週間。俺は前と同じように、毎日餌を公園に撒いて、それを放置して帰ると言う 事を繰り返した。前の一週間と違う所は、詰まらなさそうな顔で餌をぶちまける俺を、 一匹のまりさが見ているようになった事だ。 毎日同じ場所で餌を撒いているんだから、それを狙っているんだろう。そう考えた俺は、 特にそいつの事を気にしてもいなかった。 次の日曜日。俺はまた、れいむを公園に連れて行った。いつものように俺が餌を撒き、 いつものようにゆっくりがそれに群がり、それを見たれいむが笑顔を浮かべる。 一週間の苦労(実際、安物とはいえペットフードをこれまでの数倍買い続けるのは 財布に痛い)が報われる気分で笑うれいむを眺めていると、一匹のまりさが、 ばら撒かれている餌には眼もくれずに俺と俺のれいむの前まで跳ねてきた。 可愛いれいむを見ていた俺は、そのまりさを見逃していて、気が付いたらまりさは、 れいむに話しかけているところだった。 「ゆっくりしていってね!れいむ!」 「ゆっくりしていってね!!」 「れいむはかいゆっくりなのぜ?」 「そうだよ!れいむはおにーさんのかいゆっくりなんだよ!」 「おにいさんは、ゆっくりがすきなのぜ?」 「だいすきだとおもうよ!れいむおにーさんに、とってもゆっくりさせてもらってる んだよ!」 「おにいさんがごはんさんをくれるのは、ゆっくりがすきだからなのぜ?」 れいむの顔が曇った。 「ゆぅーん、わからないよ・・・・・・。ほんとうはおにーさん、れいむだけにごはんさんを くれるほうがゆっくりできるんだとおもうよ・・・・・・」 「じゃあ、なんでおにいさんはごはんさんをくれるんだぜ?」 「それは、れいむがわがままをいったからだよ・・・・・・。れいむだけしあわせー!な ごはんさんをむーしゃむーしゃして、れいむだけゆっくりするのはゆっくりできないんだよ。 だから、みんなにもごはんさんをあげてねって、れいむはおにーさんにわがままをいった んだよ・・・・・・れいむはわるいゆっくりだよ・・・・・・」 しょげ返るれいむ。しかし、まりさはそれを聞くと、満面の笑顔を浮かべた。 「そうなのぜ!?れいむはとってもゆっくりしたゆっくりなんだぜ!!」 「え?」 「ここにいるゆっくりは、みんなゆっくりできてなかったんだぜ!でもいまは、おにいさんが ごはんさんをもってきてくれるおかげで、みんなとってもゆっくりできてるんだぜ!れいむは 『ゆっくりしていってね!』のこころをよくわかってるんだぜ!ゆっくりのなかのゆっくり なんだぜ~!」 「でも、れいむはおにいさんにわがままを・・・・・・」 「そんなことないんだぜ!みんなをみるんだぜ!みんなをこんなにゆっくりさせられる れいむが、ゆっくりできないゆっくりなわけないんだぜ!おにいさんだって、れいむのこと をゆっくりできるゆっくりだとおもってるんだぜぇ!おにいさん!そうなのぜ!?」 まりさが俺の方を見上げてくる。何だこいつ?妙に口が回りやがる。俺のれいむに 取り入ろうってのか。そう思って俺が眼を細めた時、れいむの視線に気づいた。 れいむはそわそわとした、何処か期待した眼で、俺を見つめている。 「おにいさん!れいむはゆっくりしたゆっくりなのぜ!?」 まりさが俺に答えを促してくる。こいつ、やばい。 「れいむは我儘を言ったか?」ではなく、敢えて「れいむはゆっくりしているか?」と 聞く事で、俺から肯定的な返事を引きだそうとしていやがる。 「・・・・・・あぁ、そうだな。れいむはゆっくりしたゆっくりだ」 くそ、言わされてしまった。 「おにいさん!!」 れいむがキラキラと輝く眼で俺の事を見つめる。 れいむは優しい。俺に負担をかけている事を、内心気に病んでいたんだろう。その 罪悪感を今、まりさのおかげで払拭できたのだ。そしてまりさがニヤニヤと笑いながら、 ここぞとばかりにれいむに追従する。 「よかったのぜー、れいむ!おにいさんもれいむのことを、ゆっくりできるゆっくりだって いってくれてるんだぜ!」 「うん。れいむ、れいむがおにいさんをこまらせるわるいゆっくりだとおもってゆっくり できなかったんだけど、まりさのおかげでゆっくりできたよ!」 「まりさはれいむみたいなゆっくりしたゆっくりとおともだちになりたいんだぜ~! れいむ、まりさとおともだちになってほしいんだぜ!」 「うんいいよ!れいむも、まりさみたいなゆっくりしたゆっくりとおともだちになりたいよ!!」 完全攻略。こいつのゆっくり心を捉える技術は、見事という他無い。 「つぎにこうえんさんにきたときも、またれいむにあいたいんだぜ!れいむの おにいさんのおかげで、まりさはまいにちこうえんさんにいられるから、れいむがいつきても だいじょうぶなんだぜ!」 「れいむもまりさにあいたいよ!おにいさん・・・・・・いい?」 きちんと俺に許可を求めるれいむは偉い。偉いが、今ここで俺が駄目だなんて、 言える訳がない。 「・・・・・・分かったよ」 俺は、こう答えるしかない。 「ありがとう!おにいさん!!これからもいっしょにゆっくりしようねまりさ!」 「まりさこそよろしくなんだぜ!いっしょにゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 笑いあう二匹。しばらくれいむと見つめ合っていたまりさが、つと俺を見上げてくる。 「おにいさんも、これからよろしくなんだぜ」 俺に向かって言うその顔には、「カモを見つけた」と大書してあるのだった。 その次の日。俺が公園に着くと、そこには俺を待ち構えていたまりさがいた。 「ゆっへっへ、にんげんさん、きょうもごはんさんもってきたんだぜ?」 「・・・・・・あぁ、持って来てやったよ」 気に入らない。そのニヤニヤ笑いは、明らかに俺を馬鹿にしたものだ。 「じゃあ、そのごはんさんはまりさにまるごとよこすんだぜ!そのごはんさんは、 このまりささまがゆうこうにかつっようっしてやるんだぜ!」 やはり、昨日のれいむへの態度は猫を被っていたのか。餌を持っていない右手を 握り締めると、それを目ざとく見つけたまりさが、後ずさりながら言った。 「おぉ~っと、まりさをつぶすきなのぜ?そんなことをしたら、れいむはどうおもうのぜ?」 「どうも思わんさ。ここにゆっくりは沢山いるし、野良が死んじまうなんていつもの事だ」 「れいむは、まりさとやくそくしたんだぜ?つぎにれいむがこうえんさんにきたときに、 まりさがいなかったらどうするつもりなんだぜ?」 「『まりさは三日前から見なくなった』とでも適当に嘘ついて、お前の事は諦めさせるさ」 「それはむりなのぜ!まわりをみるんだぜ!!」 周りを良く見渡すと、そこかしこの茂みに、こちらを見てにやにやと笑うゆっくりがいた。 その数は、ざっと数えて十匹以上。最初は餌を狙っているのかと思ったが、どうも様子が おかしい。 「こいつらは、まりさのてしたなのぜ!もしまりさをつぶしたりしたら、れいむが こうえんさんにきたときに、こいつらが『じじいがまりさをつぶした』ってつげっぐちっして やることになってるんだぜ!!げらげらげら!!!」 笑い終わったまりさが顎をしゃくると、ゆっくりたちはてんでばらばらの方向へ 逃げ出して行ってしまった。自然が多いということは、遮蔽物が多いということだ。今から 追いかけても、あいつらを正確に全滅させるのは、かなりの難易度になるだろう。 「そのごはんさんをまりさによこすのぜ!いやなられいむに、『おにいさんはまいにち こうえんでのらゆっくりをつぶしてる』っていってやってもいいんだぜ!!!」 くそっ、こいつ!こいつをれいむと喋らせたのは間違いだった!! こいつゆっくりの癖に、やたらと頭がキレやがる!! こいつは俺とれいむの関係を見抜き!俺のれいむへの愛着を見抜き! 何故俺が冷ややかな眼で毎日公園に餌を撒くのか!その理由を完璧に理解して! その上で俺の弱点、ボトルネック、すなわちれいむを押さえて、あろうことか 俺を強請りにきやがった!!何て奴だクソったれ!!! その上、その交渉の仕方も実にソツが無い。俺がこれからもこの公園を利用 するには、こいつの要求を飲む事が不可欠だ。他にも公園はあるが、ここが一番 近くて大きい。それに、いきなり行く公園を変えれば、れいむは訝しがるだろう。 「・・・・・・大したタマじゃねーか、饅頭」 奥歯を噛みしめながら、俺は言った。 「ゆっへっへっへ!!」 まりさは実に嫌な笑い方をする。 「れいむが来た時に、そんな卑しい笑い方するんじゃねーぞ」 まりさの眼の前に、今日の分の餌を丸ごと置いてやった。 勝ち鬨の声を上げるまりさを見ないように、俺は後ろを向く。一度地面を蹴り飛ばし、 盛大に砂を巻き上げてから家に帰った。 そして現在に至る。まりさは憎らしいほど完璧に立ち回り続けた。 「れいむ、れいむのおかげでいっつもゆっくりできるのぜ!ありがとうなのぜ!」 「おれいはれいむじゃなくて、おにいさんにいってね!」 週一回、俺が休みの日の外出は、れいむの生き甲斐になった。公園に行くたびに ゆっくりしているゆっくりが増え、優しいまりさとも会えるのだから当然だろう。 だが、俺はまりさがやっている事を知っている。まりさは、俺から奪った(敢えて奪う という表現を使う)食料を元手に、公園内で一大派閥を築き上げているのだ。 れいむが見る「ゆっくりしたゆっくり」とは、まりさの派閥に属するゆっくりの事だ。 他の派閥に属するゆっくりは、俺たちの恩恵を何も受けられないボロボロのゆっくりは、 れいむの眼に映らないように、俺たちに近づく事を禁じられている。 反吐が出るが、しかし、これは俺にもメリットがあった。「少ない手間と餌で、れいむに 『ゆっくりした野良ゆっくり』という幻想に近い物を見せる事が出来る」というメリットだ。 今ではれいむが見る野良ゆっくりは、忌ま忌ましいまりさが選別した見た目の良い ゆっくりに限られている。目に映らない物は無い物と同じ。れいむは俺のおかげで、 野良ゆっくりが皆ゆっくりできるようになったと思い込んでいる。 舞台の書き割のような『野良ゆっくり』。まりさは俺にそれを提供してくれていた・・・・・・。 加えて、まりさの性向も俺を助けていた。 「まりさはやさしいしかっこいいよ・・・・・・」 もじもじとまりさに擦り寄っていく俺のれいむ。件の糞まりさの奴に惚れている事は、 傍から見ても明白だった。 「ゆっ、れいむ!まりさなんかよりおにいさんのほうがかっこいいんだぜ!ほら、 それよりあっちをみるんだぜ!かわいいおちびちゃんがいっぱいいるんだぜ! あのおちびちゃんがゆっくりできるのは、れいむのおかげなんだぜ!」 巧みに(?)れいむの興味を逸らすまりさ。まりさはれいむから友達以上の好意を 示されそうになると、いつもこうやって話をはぐらかしていた。 そう。まりさは俺の飼いゆっくりになる気は微塵も無いのだ。 まりさは俺の強さと、その利用価値を知っている。そして、俺から餌を引き出し 続けるには、れいむが俺の飼いゆっくりであり続けなくてはいけないと言う事を知っている。 もし、れいむがまりさを慕って野良になれば、まりさはいとも容易くれいむを切り捨てる だろう。利用価値が無いからだ。 なら、れいむを利用して俺の飼いゆっくりになろうとしないのは何故か?それは、 権力志向の強いまりさは、飼いゆっくりの安楽な生活より、野良ゆっくりを束ねる 今の立場を好んでいるからだ。もしかしたら、俺の家という、いわば俺の テリトリーに来る事に恐れを感じているというのも、あるのかもしれない。 だから、まりさにれいむと番になる気はさらさら無い。あるのは、俺とれいむを骨まで しゃぶり尽くしてやると言う底無しの欲望だけ。 結果だけ見れば、俺は望む物を手に入れてはいる。 結局、餌をそこらに撒くか、それとも誰かにまとめて渡すかたったそれだけの違いで あるし、まりさは俺の餌を使って最高の効果をもたらしてくれている。ギブアンドテイクの 関係だと言えなくは無い。だが、気にくわない。断じて気にくわない。俺がゆっくりなんかの 掌の上で踊らされているなんて。屈辱にも程があるってもんだ。 「おにいさん!そろそろかえったほうがいいんじゃないのぜ?」 れいむを捌ききれなくなったまりさが、俺に助けを求める。 「そうだな、そろそろ帰ろうか、れいむ」 「えっ・・・・・・あ、うん、わかったよ。またねまりさ」 眉根を寄せ、不満そうにしながら、それでも俺の言う事を素直に言う事を聞くれいむ。 俺はれいむを抱え上げ、頬をつついてやった。 「またきてねれいむ!ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!まりさ!またくるからね!!」 俺の手に抱えられたれいむが、楽しそうにまりさと挨拶を交わす。その間中俺は、 人畜無害そうに笑っているまりさを、冷やかに見つめ続けた。 ヒヨドリの幸せ 下 へ続く
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道端でれいむが家族と物乞いをしているようだ。 「ゆゆ?ん、ゆゆゆー!ゆっくりーぃしていってね?♪」 「しゅごいよ!とってもゆっくちしたおうただよ!!」 「ゆっきゅりできりゅよ!」「ちょうだよ!」「ゆっきゅり!」 「こんなおうたをうたえるおか・・れいみゅにはゆっくりおかねをあげりゅよ!」 成体のれいむが1、大きめの子れいむが1、小さめで発音が怪しい子れいむが3。 親れいむが歌い、子れいむたちがサクラとしてツナ缶に紙切れを入れている。 紙切れは破れたチラシやレシートだが、どれも餡子色の文字で”いちまんえん”と書いてある。 「ゆ?っくりー♪(チラッ)くりくりー♪(チラッ)」 「そこのおにーしゃん!このおか・・れいみゅはかぞくのためにおうたでおかねをあつめてるんだよ! えりゃいよね!しゅごいよね!れいみゅかんどーしたからおかねいれちゃったよ。 おにーしゃんもいれるよね!?こんなにゆっくりできるおうただもんね!」 親れいむは歌いながらチラチラチラチラチラチラチラチラ・・・・・期待に満ちた目でこちらを見る。 一番大きな子れいむはあからさまな集金。と これで気づかれてないと思える姿に少々悲しいものを感じる。 「君ら家族?・・へぇ、違うんだ。じゃあちょっとこっちで手伝ってくれるかな。お金無いから食べ物を用意するよ。」 サクラの子れいむを物陰に連れ込んだ俺は、両手で子れいむを持ち、親指を後頭部に当て、生卵を割る感覚で裏返した。 「ゆびゅ!!!!」 軽い抵抗感の後、カクンと親指が内側に沈み込む。。 そうして内側と外側が逆になった子れいむは生きたまま餡子玉となった。 「いやぁ、さっきはすばらしい歌をありがとう。君らにはこのお菓子をあげよう。」 「ありがとう!でも、さっきのれいむはどこにいったの?」 「君ら他人でしょ?何か関係あるの?ないよね?じゃあ俺は帰るから。」 「ゆぅ・・・」 餡子玉をツナ缶に入れて俺は先程とは別の電柱の影へ。 親れいむはあたりをキョロキョロしていたが、しばらくすると子れいむが餡子玉を食べ始める。 つられて親れいむも納得いかない顔で餡子玉に口をつける。 「「「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!!」」」 震える餡子が面白いのか、普通ならすぐに食べきってしまうサイズの食べ物を少しずつ切り崩している。 やがて餡子が無くなり、震えが止まった餡子玉の中からへんなゆっくりが出てきた。 体は小さく、口の中に髪の毛が大量に詰まっている。 「ゆぎゃああああああ!なかからへんなゆっくりがでてきたあああああ!!!」 「りぇいみゅをびっきゅりさせりゅこは、ゆっくりちね!」 ろれつが回ってない子れいむはびっくりするのもそこそこに体当たりを始めた。 もはや完全に動きを止めた餡子玉は弾むことも無く簡単にひしゃげて口から中身を垂れ流す。 髪の毛の中に小さな赤いリボンが見えた。 「ゆぎゃ!おねぇちゃんのおりびょん!!」 「へんなこがおねぇちゃんをたべちゃったんだ!わりゅいこはちね!ゆっくりちね!」 「ゆわぁぁぁぁん・・・・ゆわぁぁぁぁぁん!!」 まだ小さい子れいむには難しかったかな。勘違いしている。 しかし親れいむは気づいてくれたようで、口の周りに付いた餡子もそのままに呆然と。 (ぺしっ、ぺしっ) 無言のまま、餡子玉を攻撃する子れいむ二匹を長く伸びた舌で払いのける親れいむ。 「いちゃいよ!なにすりゅの!」「そうだよ!おかあしゃんでもゆりゅさないよ!」 「れいむの・・・おちびちゃん・・・・おちびちゃんを・・・・れいむが・・・・」 親れいむが器用に舌を使って餡子玉の口から髪を引き出すと、餡子の無い饅頭皮は簡単に裏返った。 中から出てきたのは親れいむにとっては頼もしい長女。の皮。 妹れいむからすれば母親を助ける、とてもゆっくりした美しい姉。の皮。 「「「「ゆわああああああああああああああああああああああああああ!!!」」」」 いい悲鳴が聞けたので満足なので帰る。 というか、かなり大声を出されたので俺のせいと思われたら困るので退散だ。 駆けつけた近所の人がれいむたちをしこたま殴りつけてから30分後。 路上に餡子飛び散る暴行現場の中心で、 れいむ親子はいまだ皮だけのれいむの前で泣いていた。 「れいむがおちびちゃんのあんこ・・・たべちゃったから・・・あんこ・・・・なくなって・・・」 「おがぁざぁぁぁん」「ゆ゛わ゛ぁぁぁぁ」「おねぇぢゃんごべんだざいいぃぃ」 「あんこがあれば・・・・ゆっくりできるんじゃないかな・・・」 虚ろな目で皮を見つめていた親れいむは、薄く笑いながら子れいむとちゅっちゅして、 「ゆげぇ」 吐いた。自らの餡子を皮だけの子れいむに吐き出した。 餡子はうまく入らず、口の端からこぼれ落ちる。 こぼれた餡子を舌ですくっては口に押し込む。吐く、押し込む。吐く、押し込む。 泣いていた子れいむは親の狂行を見て絶句している。殴られている時よりも強い恐怖が表情を塗り固める。 「ゆげぇ。おちびちゃん、あんこがおくちからでてるよ。ゆっくりのみこんでね。ゆげぇ。」 そうして、空だった皮に餡子がみっちりと詰まる頃。それはプルプルと震えだした。 「!!!」 傷と吐き出した餡子で親れいむの中身は半分以上失われていた。 それでも、れいむは助かった自分の大事な子におかえりと言ってやるために精一杯の笑顔を作る。 「ゆっくりし「もっどゆっぐりじだがっだ・・・」」 濁った音でゆっくりの末期の声を発したそれは、穴という穴から餡子を噴出してしぼんでしまった。 笑顔が一転して剥がれ落ちた親れいむ。そこには悲しみも無く、絶望もない。 呆けた表情で後ろの子れいむへと向き直り、 「みんなもおねえちゃんのあんこをたべちゃったよね。ゆっくりぜんぶかえしてあげてね。」 <おわり>
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『伝わらない声』 俺は一匹のゆっくりれいむを飼っている。 元々野生のれいむで仕事の帰りに森の近くで出会った。 人懐っこい性格で見知らぬ俺に遊んで欲しそうにするので気まぐれに付き合ってあげた。 遊びといっても適当に指と追いかけっこさせたり高い高いしてあげただけだが、それでも十分楽しんでくれていた。 それからしばらく仕事帰りにそのれいむと戯れる日が続いた。 しかしあるとき、俺が家に帰ろうとすると寂しそうにするものだからついついお持ち帰りしたわけだ。 今では我が家のペットだ。 独り身の寂しさを紛らわしてくれる癒し系。 部屋に柵で囲った場所を作り、そこをれいむの部屋にしてある。 自由に家の中を動かれると色々と危険があるので俺が家にいないときはその中に居てもらっている。 朝、俺が仕事に出かける前にれいむを起こし、朝と昼の食事を柵の中に入れる。 「れいむ朝だぞー」 「ゆっ…ゆっくりしていってね!!!」 れいむは割と遅起きだ。俺が声をかけるまで眠っている。 そのくせ早寝だったりするので一匹だったら一日の半分は寝て過ごしていそうだ。 「朝ごはんだぞ。こっちはお昼だから後で食べろよ」 「ゆ!」 俺に向かって一言鳴くと朝ごはん用のお皿に近づいて食事を始める。 ゆっくりは「ゆっくりしていってね」以外はほとんど人間語で喋らない。 後は「ゆっくり」とか「ゆ~」「ゆっ」といった鳴き声だ。 ああ、ちなみに断末魔は「ゆっくりしたけっかがこれだよ」と言うらしい。聞いたことはないが。 「ゆっくり! ゆっ! ゆっくりー!!」 食事を終えた後のれいむは俺に向かって激しく鳴いてくる。 きっと朝一の運動を兼ねて遊びたいのだろう。 しかし俺も仕事があるのでそういうわけにもいかない。 「ごめんなれいむ。また俺が帰ってきてから遊ぼうな」 「ゆ、ゆっくりぃぃぃ!!!」 残念そうを通り越して悲しそうにれいむは鳴いた。随分と懐かれたものだ。 れいむの頭を少し撫でまわすと俺は仕事に出かけた。 れいむはおうちに帰りたかった。 ある日出会った優しいお兄さんはれいむと遊んでくれた。 もっと遊びたいと言ったらこのおうちに招待してお兄さんは美味しい食べ物を御馳走してくれた。 ご馳走の後は見たことのない物で遊んでくれた。 気付いたら外は真っ暗だったけどお兄さんはお泊まりさせてくれたし、フカフカの寝床を用意してくれた。 噂には聞いていたけど人間さんのおうちはすごくゆっくり出来た。 でもれいむはここでずっと暮らすつもりはなかった。 れいむには家族がいる。お母さんとお姉ちゃん、妹もいる。 それに友達だってたくさんいる。 だかられいむは何度も「そろそろおうちかえるね!!」とお兄さんに伝えた。 なのにお兄さんは「ああ、ゆっくりしていってね」と返事するだけ。 何日経ってもこのおうちから出してくれなかった。 れいむは事あるごとにお兄さんに外に出してと頼んだけどいつも話をそらされる。 いつもお兄さんとの会話は成り立っていなかった。 だがそれは当然だった。 そもそも人間にはゆっくりの言葉が分からない。 ゆっくりは人間の言葉を喋っているつもりだが、実際は喋れていない。 「そろそろおうちかえるね!!」と声に出したつもりが「ゆっくりしていってね!!!」と声に出していたわけだ。 ゆっくりは人間の言葉を理解できる。 さらにゆっくり同士の会話は人間語に翻訳されて聞こえる。 だからこそゆっくりは自分もちゃんと話せていると思い込んでいた。 れいむも当然そのように考えていた。 でも少なくともお兄さんには言葉が通じていない。 通じると言えば「ゆっくりしていってね」ぐらいのものだ。 しかしそれだけ伝わってもれいむはおうちに帰れない。 家族にも友達にも会えやしない。 「おにーさん! おかあさんにあいたいよ! もうおうちにかえして!!」 さっきの朝ごはんの後にもそう叫んだのにそれは伝わらなかった。 それどころか何を聞き間違えたのか、 「ごめんなれいむ。また俺が帰ってきてから遊ぼうな」 なんて言ってれいむの頭を撫でるだけだった。 「おうぢにがえじでええええ!!!」 れいむは泣き叫んだが、お兄さんはおうちの外へ行ってしまった。 お兄さんは外に出かけると日が暮れるまで帰って来ない。 れいむの一番嫌いな孤独な時間が始まる。 お兄さんは言葉が通じない人だけど一緒に遊んでくれる。 遊んでいればおうちに帰りたい気持ちも紛らわすことができる。 でも狭い柵の中、一人で出来ることなんて限られていた。 お兄さんが布と綿で作ってくれたボールで遊ぶのには飽きた。 柵の中を駆け回っても風景が変わるわけでもないのでつまらない。 だからこの時間が嫌いだった。 それにやることがないと楽しかった記憶が自然に頭に浮かんでくる。 お母さんにお歌を教えてもらって家族みんなで歌ったこと。 お姉ちゃんまりさの帽子に乗って川を渡ったこと。 妹の前で虫を捕まえて「おねーちゃんすごいよ!」と褒められたこと。 友達と一緒に広い野原を跳ねまわったこと。 そのどれもが懐かしい。 れいむは気付けば涙を流していた。 実に一週間、家族と会っていない。 それどころか同じゆっくりとも会っていない。 寂しくなって当然だった。 「みんなにあいたいよぉ…」 れいむの細い声は誰もいない部屋に響く。 それがますますれいむを寂しくさせた。 美味しい食べ物、フカフカの寝床、安全なおうち。 野生に生きてきたゆっくりからすればかなりの好条件が揃ったおうち。 なのにまるでゆっくり出来なかった。 れいむは自分より二回りぐらい小さなボールに頬を擦りつける。 仲間じゃないと分かっていても丸っこく柔らかい物に身を寄せたかった。 「いっしょにゆっくりしようね」 ボールに話しかけるが返事はあるわけもない。 空しくなったれいむはボールを向こうへと転がす。 「ひとりじゃゆっくりできないよ…」 れいむは天井を見上げる。 その様子はさながら囚人のようであった。 昼。 お腹が空いてきたのでお兄さんの用意してくれたお昼のご飯を食べる。 飼いゆっくり用のご飯らしく、甘くて美味しい。 むしゃむしゃ… 黙って食べる。 幸せじゃないので「しあわせー」なんて言えなかった。 舌がとろけるほど美味しいご飯なのにどこか味気なく感じる。 「みんなといっしょにしあわせーしたいよ」 そういえば友達と冒険したときに食べた木の実は美味しかった。 味は今思えば微妙だったけど満たされるものがあった。 楽しくないと美味しい食べ物も美味しく感じられないと、れいむは子供ながらにして悟った。 午後。 食事を終えるとますますやることがない。 れいむはただボーッとするだけ。部屋は静寂に包まれる。 音と言えば自身の出す音と、たまに聞こえる鳥の声ぐらいのもの。 世界に自分しかいないような感覚がれいむを襲う。 「ゆー、ゆっゆっゆ…ゆゆ~」 怖くなったれいむは歌い出す。 しかしそれも疲れるので長くは続かない。 みんなで歌った時はこんなすぐに疲れなかったのに。 実際のところ、みんなで歌ってれば途中で適度に休めるから疲れにくいだけだったりする。 でもこの場合は楽しくないのが一番の疲れる原因だった。 後の時間は柵の中を転がったりボールで遊んだりといつもの遊びで過ごす。 いい加減飽きているので楽しくは無いが、寂しさをちょっとでも紛らわせる。 ただそれだけの行為。 れいむはそうして一日のほとんどを抜け殻のようにして過ごす。 暗くなる頃にようやく飼い主が帰ってくる。 「ただいま。帰ったぞれいむー」 「ゆっくりしていってね!!!」 れいむは元気に帰ってきたお兄さんにおかえりの挨拶をする。 寂しかっただけにお兄さんが帰ってくるのは素直に嬉しかった。 「お腹は減ってるか? すぐに作ってやるからな」 「ゆっくりまつよ!!」 お兄さんにおうちに帰してとお願いするのはご飯を食べてからだ。 なのでお兄さんが料理を作ってる間は大人しく待つことにした。 「ほら、出来たぞ。卵焼きだ」 「ゆゆっ、おいしそうだよ! ありがとうおにーさん!!」 お礼を言うが人間には「ゆゆ~ん! ゆっくりー!!」ぐらいにしか聞こえていない。 それでもれいむが喜んでいることはちゃんと分かるようだ。 「ははは、砂糖を入れたから甘くておいしいぞー」 「むーしゃ、むーしゃ、しあわせー!!」 やっぱり誰かと食べるご飯は美味しかった。 ちなみにれいむはお兄さんの事が嫌いというわけではない。むしろ好きだ。 後は話を聞いてくれさえすればもっと好きになれるのに。 夕食後はお兄さんと遊ぶ時間だ。 柵から出してもらってお兄さんと向き合う。 れいむにとっては貴重なお願いの時間だ。 「おにーさん! れいむをおうちにかえしてね!! ゆっくりみんなにあいたいよ!!」 「はいはい、今日はこれで遊ぼうな」 「ゆゆー! ゆっくりちがうよ!!」 「お前これ好きだもんな。ほれほれ」 「れいむのはなしをゆっくりきいてってー!!」 お兄さんに向って何度もお願いするが、お兄さんは猫じゃらしをれいむの目の前で揺らしてくる。 れいむはそれを追いかけながらもお兄さんにお願いする。 でも聞いてくれない。 だったら遊ばないで体で示せばいいのにと思うかもしれないが、 目の前で猫じゃらしをチラつかせられるとついつい遊んでしまうのだ。 「ゆーっ! あしたになったらそとにだしてね!」 「ああ、次はボールで遊ぼうか」 「ゆっくりちがうよぉ!!」 結局こうしてれいむのお願いはお兄さんに通じなかった。 しばらく遊んだあと柵の中に戻されておやすみの時間になる。 「あしたはおうちにかえしてね」 「おやすみれいむ」 しばらくして部屋の灯りが消えた。 暗闇で何も見えなくなると急激に眠くなる。 いつか分かってくれるといいな。 そう考えながられいむは眠りについた。 れいむが人間のペットにされてからまだ一週間。 これから数ヶ月の時をここで過ごすことになるとはまだ思っていなかった。 れいむを飼ってから約半年。 最近、いや二か月ほど前からどうもれいむに元気がない。 「れいむ遊ぼうな。今日は俺の上に登るか?」 お兄さん登りと名付けた遊びで、れいむに俺の体を登らせるのだ。 これが案外楽しいらしい。 足から肩に飛び乗ったり、頭の上に乗ったりと大はしゃぎだった。 でも最近は乗り気じゃないようで俺が手を差し出すなどしない限りは飛び乗ってこなかった。 それだけではなく料理を食べても嬉しそうに「ゆーん、ゆーん、ゆゆゆー!!」なんて鳴かなくなった。 今はもそもそと黙って食べる。 行儀がいいとも言えるけどむしゃむしゃ元気に食べてくれた方が飼い主としては嬉しい。 (老化でもしたのか? でもそんなの聞いたことないぞ) れいむは最初は子供サイズだったが、今は大人のゆっくりに成長している。 見たことは無いが、ゆっくりは育てればもっと大きく育つらしい。 噂によると2mぐらい、さらには10mサイズもいるとか。 だとすると老化は考えにくい。 体は綺麗でハリもある。病気とも思えない。 精神的なものなのだろうか。 「森に帰してみるか…?」 「ゆゆっ!!」 ふと何気なしに呟いた言葉にれいむは激しく反応した。 「ゆっくりー! ゆゆゆっ!!! ゆーっ!!」 目をキラキラさせて胡坐をかいた俺の足に体を擦りつけてくる。 それから俺を見上げて激しく鳴いてくる。 もしやビンゴだったか? というかよくよく考えればこいつは野生のゆっくりだった。 だとすると当然家族や知り合いもいただろう。 「ああ、なんてこった」 半年の間そんな大事なことに気付かなかったとは。馬鹿だ俺は。 仲間がいなくて寂しい思いをさせてしまっていたんだ。 俺はれいむの頭に手をポンと乗せる。 「ゆーん! ゆーん!」 「ごめんな。れいむごめん」 「ゆっくりしていってね!!!」 謝る俺に「きにしないでね!」とでも言うように笑顔を向けて鳴いてくる。 優しいやつだ。本当はもっと飼っていたい。 でもこれ以上俺の我が侭で飼い続けるわけにはいかない。 やっぱり同じゆっくり同士が一番なんだから。 「明日、森に帰ろうな。今日はもう暗いし」 「ゆっ!!」 その夜俺とれいむはいつもより長く遊んだ。 寝る時も俺はれいむが寝るまで傍にいた。 翌朝。 お兄さんの声でれいむは目を覚ました。 「ゆっくりしていってね!!!」 れいむは元気に朝の挨拶をする。 こんなに気持ちのよい挨拶は久しぶりだった。 それもそのはず、昨夜お兄さんがとうとうれいむのお願いに気付いてくれたのだから。 そして今日、れいむは森のおうちに帰れる。 「よし、それじゃあ行こうか」 お兄さんの用意してくれたバスケットにれいむは収まる。 森まではお兄さんが運んでくれると言うので好意に甘えることにした。 懐かしい森への道をバスケットに乗って移動する。 お兄さんの話に相槌を打ちながられいむは久しぶりの故郷を思い返す。 優しいお母さんは元気かな。 お姉ちゃんはもう結婚したかな。 妹はそろそろ大人かな。甘え癖は抜けたかな。 友達はみんなゆっくりしているかな。 帰ったらまずは家族とあってスリスリしていっぱいお話ししよう。 明日は友達と会ってみんなで遊びに出かけよう。 そうだ。優しいお兄さんと人間のおうちのお話をしよう。 みんな羨ましがるかな。 でもれいむはみんなといるのが一番幸せだよって言っちゃおうかな。 だって本当にそう思ってるもん。 「着いた。ここでお別れだな」 「ゆっ!!」 森の入口、れいむとお兄さんが出会った場所に着いた。 懐かしい匂いがする。 れいむはバスケットから飛び降りるとお兄さんに振り替える。 「おにいさんありがとう!! いやなこともあったけどれいむたのしかったよ!!!」 「本当にごめんな。さ、仲間の所に戻って元気な姿を見せてやるんだ」 「ゆっくりわかったよ!! おにいさん、またあったらいっしょにあそぼうね!!」 お兄さんが手を振っている。 れいむはちょっと泣きそうになったけど堪えて森の中へと駆けていった。 おうちの場所は覚えている。 ずっと帰りたいと夢に思い描いていた場所だ。忘れようはずがない。 倒れた大木に出来た大きな空洞。そこがれいむ家族のおうちだ。 「ゆっくりかえったよ!!!」 おうちに入ると開口一番そう叫ぶ。 しかし中にいたゆっくり達の反応はれいむの期待とは違った。 「ゆ…? だれなの?」 「ここはまりさたちのおうちだよ!!」 「おうちをまちがえたの? でもここのゆっくりじゃないよね?」 「ゆ? ゆゆ、ゆ??」 れいむのおうちにいたのはれいむ種とまりさ種の家族。 でも見たことのないゆっくりだった。 「ゆっくりたってないででてってね!!」 「そうだよ! しつれいなれいむはゆっくりでてってね!!」 「ゆ、ごめんね! ゆっくりごめんね!」 訳も分からず責められ、れいむは取りあえずおうちから外に出た。 もしかして本当に家を間違えた? でもこの辺に倒れた大木なんて他にはない。 それに枝の形や入口の穴の形も記憶のそれと同じだ。 「ゆーん…」 れいむは友達のおうちを見に行くことにした。 しかし友達は誰一人見つからなかった。 それどころか知ってるゆっくりが一人もいなかった。 もしかして引っ越したのかと思ったけどこんなゆっくりプレイスから引っ越すなど考えづらい。 れいむは考える。 しばらくして一つの結論に至った。 「みんな、あのゆっくりにおいだされたんだね」 あの見知らぬゆっくりの群れがれいむの群れを追い出してここに居座った。 追い出されただけならまだいい。でも最悪殺されたのかも知れない。 そう考えると今ここにいるゆっくり達が憎くなった。 ようやく会えると思った家族、友達。 温厚でのんびり屋のれいむだったが大事なもの全てを奪ったゆっくり達を憎まずにはいられなかった。 れいむは自分のおうちに向かう。 ちょうどおうちの入口付近でおうちを奪った家族が集まって遊んでいた。 みんな幸せそうに笑顔を振りまいている。 泥棒のくせに。 「ゆゆ~!」 「ゆー、まってよ~!!」 追いかけっこする子ゆっくり。 れいむはその子ゆっくりの前に立ちはだかる。 「ゆっ、おねーちゃんもあそぶ?」 「ゆっくりあそぼうね!!」 さっきは巣の奥に居てれいむを見てなかったのだろう。 初めて見るゆっくりであるれいむに無邪気に遊ぼうと誘ってくる。 れいむは一緒に遊びたくなってしまう。 でも今はそんな呑気な事していられない。 「みんなはいつからこのおうちにいたの?」 「うまれたときからだよ!」 「このおうちはね! むかしからまりさたちのおうちだってきいたよ!!」 「そうなんだ」 昔から住んでるなんて酷い嘘だ。 この子たちはきっと親に騙されてるんだ。可哀想に。 「ゆっ、さっきのしらないれいむだね!」 「れいむたちのこどもになんのようなの!!」 れいむの元にその子供達の親がやってきた。 明らかにれいむを怪しんでいた。 でもちょうど良かった。この親に本当のことを聞けばいい。 「このおうちはいつうばったの?」 「なにいってるの! うばってなんかないよ! ここはずっとまえかられいむたちのおうちだよ!!」 「そうだよ! へんなれいむだね!!」 親まで嘘を言う。 本気でここに昔から住んでいると思い込んでいるのかもしれないが。 「ここはれいむのおうちだよ! おかあさんとおねえちゃんといもうとをどうしたの!!」 でも本気でそう思い込んでいるとしても元からいたれいむの家族は知ってるはずだ。 忘れたんだとしたら、もう許せない。 「しらないよ! わけのわからないこというね! ゆっくりできてないよ!!」 「そうだよ! まりさたちはここでずっとくらしてたんだよ!!」 「ゆっくり、しんでね」 「ゆ?」 「なにをいって…ゆぶっ!?」 「ゆっくりしんでね!!!」 れいむは怒りに身を任せて親まりさに体当たりした。 不意を突かれた親まりさは軽く吹き飛んで仰向けに倒れた。 「いだいいぃぃぃ!!!」 「まりさになにするの!! ひどいよあやまってね!!」 「あやまるのはそっちのほうだよ!! れいむのかぞくとおうちをかえして!!」 「だからなにいっでるのおおおお!!!」 れいむは続いて親れいむに飛びかかる。 親れいむもまたれいむの体当たりで吹き飛んでおうちの中に転がっていった。 れいむはそれを追いかける。 それに気付いた親まりさはおうちの入口近くにいる子供達に向かって叫ぶ。 「おちびちゃんにげてえええええ!!!」 その親の言葉に突然のことで固まっていた子供達は蜘蛛の子を散らすようにバラバラに逃げた。 何も考えないで逃げるので親れいむを追うれいむに吹き飛ばされる子供もいた。 れいむは吹き飛んだ子供に構わずおうちの中に侵入した。 そして起き上がろうとする親れいむに圧し掛かった。 「ゆ、ぐ…ぐるじいよ。い"だいよ"」 「しつもんにこたえてね!! ここにいたみんなはどうしたの!?」 「じらないよ"っ! ここにはれいむだぢがむがじがらいだよぉぉ!!」 「うそいわないでね!! だったらなんでれいむのかぞくもともだちもいないの!!」 「じらないよぉぉぉ!!!」 まだ白を切るつもりのようだ。 れいむは何度と飛び跳ねて親れいむを何度もプレスする。 「ぎゅっ、ぐっ、ぎゃべっ!! やべ、でぇっ!!」 親れいむは潰されるたびに苦しそうな声をあげる。 十数回潰した所で餡子を吐き始めた。 でもれいむは止まらない。 「いたいのがいやならはやくいってね!!」 「ゆ"、ぶ、ぶ、ぶぶぺっ……」 「ゆ?」 親れいむはそれから声を出さなくなった。 れいむがちょっと退けて親れいむを見ると死んでいた。 餡子を吐きだし、目も片方地面に転がっている。 家族について聞く前に死んでしまった。 「ゆっくりいわないからだよ」 悪いのは自分じゃない。 この親れいむが嘘をついたり、大事なことを忘れてるからいけないんだ。 情報を聞き出す前に死んだのは残念だけどまだ親まりさが残ってる。 れいむはおうちの外に出て親まりさの姿を探す。 でも見つからなかった。 その代わり、たくさんのゆっくりがおうちの周りに集まっていた。 「でてきたよ!!」 「ゆっくりできないれいむがでてきたよ!!」 「れいむは、れいむはどうしたの!! なんでおまえがでてくるの!!」 「むきゅ、かえりちでよごれてるわ。もしかすると…」 「ゆうううう!! れいむをがえじでえええ!!」 泣き叫ぶ親まりさ。 でもこれは自業自得というもの。 れいむの心が痛むことは無かった。 それよりも群れを奪ったゆっくり達に囲まれたこの状況はゆっくり出来ない。 きっとあのまりさの家族が助けを呼んだのだろう。 「ゆっくりごろしはゆっくりできないよ!!」 「へいわにくらしてただけなのに! あのれいむはゆっくりしてないね!!」 「あんなれいむゆっくりさせるわけにはいかないね!!」 「ゆっ! みんなでいしをなげるよ!!」 『ゆーっ!!!』 れいむを囲うゆっくり達が一斉に石を飛ばしてきた。 大人のゆっくりも子供も、赤ちゃんまでも石を飛ばしてくる。 れいむはそれを必死に避けようと駆ける。 群れのみんなもこうやって攻撃されて追い出されたんだと考えると逃げるのは何だか悔しかった。 でもこの状況ではそうも言ってられないしどうすることも出来ない。 「ゆっくりやめてね! れいむはわるいれいむじゃないよ!!」 「ばかいわないでね!! まりさのれいむをころしたくせに!!」 「ゆっ! ひとのおうちをうばおうとしたわるいれいむはしんでね!!」 「ひどいげすれいむだね!!」 れいむは石だけでなく罵声も飛ばされる。 体も心も傷付けられる。 すでにれいむの体には何度も石をぶつけられて傷が出来ている。 体の動きも徐々に鈍くなっている。 このまま倒れてしまえばゆっくり出来なくなる。 この包囲から抜け出さないと…! 「ゆっくりどいてね!!」 れいむはようやくれいむを囲うゆっくり達の元まで辿りついた。 その勢いで体当たりして道を切り開こうとする。 だが―― 「させないよ!!」 「ゆぎっ」 だが、れいむは逆に跳ね返された。 数匹の大人ゆっくりによる体当たりで弾き返されたのだ。 「みんな! いまだよ!!」 「ゆー!!」 「ゆっくりしねぇ!!!」 「ゆっ、ゆぐっ、ゆ、やめ、やめで!!! いだい!!!」 怯んだれいむにゆっくり達が次々と体当たりを仕掛ける。 体勢を立て直す前に次のゆっくりが攻撃してくるのでれいむは逃げることが出来ない。 動くこともままならないままれいむはボロボロにされていく。 もう逃げ切ることは出来そうになかった。 れいむは涙を流しながら憎きゆっくり達にリンチされた。 「ゆ"、ゆ"…ゆ"ふ"」 「ゆっくりはんせいしてね!!」 「おばかなれいむはそのまましんでね!!」 たった数分でれいむはボロ雑巾のようにされ、地面に這いつくばっていた。 もう自力では動けそうにない。 片目はどっかに転がって行ってしまった。 大事なリボンは破られて目の前に散らばっている。 そして… 「まりさのれいむをかえしてね!!」 「……」 あの親まりさが近づいてきた。 でもれいむは反応しない。出来ない。 「おまえがあらわれなかったらゆっくりくらせたのに。 おまえのせいでまりさのこどもたちはおかあさんをなくしたんだよ」 「……」 親まりさの声が遠のく。 れいむはそのまま静かに死を迎えようとしていた。 悪いのは群れを追い出したこいつらなのに。 どうしてれいむが悪者にされてるの。 この世の理不尽をれいむは呪う。 なんでお兄さんの元に残らなかったのかな。 こうなるって分かってればお兄さんとずっとゆっくり暮したと思うのに。 なんで? どうして? ぐちゃ 直後、れいむの意識は闇へと消えた。 れいむの上には涙を流すまりさ。 理不尽に妻を奪われた可哀想なまりさだ。 れいむの不幸は長く群れを離れたことだった。 人間に飼われていた半年という時間は長すぎた。 半年といえば野生に生きるゆっくりが3~5回は世代交代するほどの時間なのだ。 大抵のゆっくりは1~2ヶ月で何らかの理由によって死亡する。 外敵に襲われたり、子を作って黒ずんで死んだり、変な物を食べて死んだりと様々だ。 れいむは外敵もなく、食事も安全で美味しいものを食べてきたからこそ長生きした。 だけど家族も友達も何らかの理由でとっくに死んでいた。 そしてれいむの群れにいた見知らぬゆっくりの群れはその子孫だった。 れいむが殺したれいむはれいむの妹のひ孫。 れいむを殺したまりさはれいむの友達のひ孫の子だった。 哀れなれいむはそれに知らずに群れの仲間を奪われたと誤解して群れの仲間を殺した。 そして罪のない仲間を殺された恨みにより、群れの仲間に殺された。 せめてゆっくりの言葉が人間に通じさえすればこんな事にならなかった。 家族とも友達とも会えたし、お兄さんと再び遊ぶことも出来た。 早死にしたとしてもれいむは幸せだったのかも知れない。 でもそんなifは存在しない。 その結果が今の無残に潰れた姿。 れいむは家族と再会することなく命を散らせた。 終 by 赤福 このSSに感想を付ける