約 579,105 件
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/204.html
ぼくはまだ小さいから、わからないことや知らないこと、どうしてなのかなって事がたくさんある。 そんな時は、まず自分で考える。勉強して字だって読めるようになったから、本も読む。 それでもわからないときは、 「ねえ、父さま」 「ん?」 ぼくの父さまは、むかし勇者さまと一緒に旅をしたこともあるカッコいい人なんだ。 癒しの魔法だって父さまに教わった。 ぼくの知らないことをたくさんたくさん知ってる、スゴい人なんだ。 「…父さまは、なんで女神さまのおムコさんをやめたの?」 ぼくが、大きくなったら教会の神父さまみたいな人になりたい、って母さまに言ったら、教会にいる男の人はみんな女神さまのおムコさんなのよって、母さまが教えてくれた。 そして、父さまも昔はそうだったんだ、って。 父さまは、なんだそんなことか、と言うように頭をふった。 「だってなぁー、 …女神さま相手じゃ…ヤレないからなあ」 「やれないって…?なあに?」 「あっ、いやいや…、女神さまは、上に乗っからしてくれないっていうか…、あっ、レティスは物理的には背中に乗せてくれたっけか、 …いや、そうじゃなくてだな…」 父さま、なんだか困ってるみたい。ぼくが首をかしげていると、父さまがふっとまじめな顔になった。 「いいか。 …女神さまは、いつもたくさんの人々をでっかい慈愛の心でお救いしてるんだよ」 「うん」 「世界中の人達を、平等に愛して見守ってるんだぞ。おムコさんになったからって、父さんだけを見てくれるわけじゃないだろ。 …ぶっちゃけ、ライバル多すぎねえ?」 「…うん…」 「だから、父さんは自分だけの女神さまを見つけることにしたんだよ。それが、でっかい女神さまのおムコさんをやめた理由」 そうだったのかあ。 父さまのお話は時々難しくてわからないこともあるけど、きっと大切なことを言っているに違いないので、ぼくはしっかりと聞いた。 だけど…。 「だけど父さま、父さまだけの女神さまは見つかったの?」 「ああ、見つけたよ。 …母さんさ」 「母さまが、父さまの女神さまなの?!」 ぼくはびっくりして、父さまの顔をじっと見た。父さまはやっぱりまじめな顔だ。 「ああそうさ。母さんは父さんが見つけた、たった一人の女神さまだよ。だから結婚したんだ。 …いや、逆だな…。ゼシカを見つけたから、自分だけの女神さまになって欲しくて、でっかい女神さまのおムコさんをやめたんだな…」 父さまは一瞬だけ遠くを見るようなまなざしをしたけれど、すぐにまたぼくを見つめて、 「男には誰にでも、たった一人の女神さまがいるもんなのさ」 よくわからないけど、父さま、なんだかカッコいいや。 「それなら、ぼくの女神さまも母さまがいい!ぼくも母さまが大好きだもん!」 ぼくの母さまは、怒るとちょっとこわいけど、明るくてやさしくて、マグノリアの花みたいにきれいなんだ。 「そうだな」 父さまは微笑んで、ぼくの頭をやさしく撫でた。 「おまえはまだ子どもだから、今はそれもいいさ。 …だけどな、マルチェロ」 ぼくは背筋を伸ばした。 父さまがまじめな顔でぼくの名前を呼ぶときは、特に大切な話のときだ。 「大人の男は、それじゃだめなんだ。大人になったら、自分で女神さまを探せ」 「大人になったら、母さまが女神さまじゃいけないの?」 「母さんは、もう父さんと結婚してるからだめなの」 「あー、そっかあ…」 少しだけしょんぼりしたぼくを見て、父さまがあわてて言葉をつないだ。 「大丈夫だよ!お前は子どもの頃のオレにそっくりなんだから、大きくなったら世界でも五本の指に入る美形になるぞ! 昔の父さんみたいに女の子がたくさん集まってきて、よりどりみどりさ」 父さまはもうまじめな顔はやめてる。 いつも冗談を言うときのような笑顔を浮かべて、 「そうだ、トロデーンのエイティアなんてどうだ?お似合いだぞ」 エイティアはぼくの大好きな友達だ。お人形みたいに可愛いのにブーメランがすごく上手な、カッコいい女の子なんだ。 「だけどぼく、母さまのほうがずっと大好きだもん…」 「エイティアとうまくいけば、逆玉だぞ?」 その時。 「…ちょっと、あなた!?」 母さまが、腰に手をあててやってきた。 「また、マルチェロにくだらない事教えてるんでしょ!」 「あっ、いや、そんなことないぞ?」 そうだよ母さま、父さまの話はくだらなくなんてないよ。いつだって大切なことばかりだよ。 「オレはその、なんだ…、 ただ、自分の中の信仰とどう向き合うかについて我が子に語り聞かせていただけさ」 「嘘ね!『女の子がよりどりみどり』だの『逆玉』がどうのって聞こえたわよ!」 そして、母さまはぼくににーっこりと笑いかけた。 「ねえマルチェロ、パパとなにを話してたの?ママに教えてくれない?」 「あのね。…母さまは、父さまのたった一人の女神さまなんだ、っていう話」 「なっ…!」 母さまの顔が、みるみる赤くなっていく。 「いやね、何言ってるのよもう…、 ククールのバカ!バカ!」 母さまったら、いつもぼくに『人にバカって言っちゃいけませんよ』って言ってるのに、父さまにバカって言ってる…。 だけど、母さまはなんだかすごくうれしそうだ。なんでだろう、怒ってるみたいな口振りなのに。 なんでうれしいのに怒るのかな。 …そういえば、この前父さまが言ってた。 『世の中には、大人にならなきゃわからないこと、大人になってはじめてわかることもあるんだ』って。 いまの母さまが、ほんとうはすごくうれしそうなのに、まるで怒ってるみたいにふるまうこと。これがたぶん 『大人にならなきゃわからないこと』なんだろう。きっと。
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/159.html
絶対許さない、あのイヤミ男! いいえ、イヤミなんてかわいいもんじゃないわ。あいつ最低よ! ようやくレオパルドを倒して杖を回収できると思ったのに、人に濡れ衣きせて、こんな所に押し込むなんてひどすぎる。 肝心な場面で間に合わなかったくせに、恥知らずもいいとこだわ。ここから出たら、絶対ただでは済まさないんだから! 今思い出すと、あの騎士団員たちもムカつくわ。いくらレオパルドとの戦いで消耗してたからって、私たちを捕縛できるだけの実力があるのなら、黒犬相手にも、もっと気合入れて戦えっていうのよ。必ずここから脱出して、お返ししてやるわ。 ・・・脱出、できるのかしら・・・。 私たち、これからどうなっちゃうの? こんなところにいると、世界がどうなってるのか、全くわからない。 でも看守の交替は規則正しく行われてるみたいだから、暗黒神はまだ復活してはいないんだと思う。それだけが救いだわ。 この煉獄島に閉じ込められてから、もう一カ月になるけど、その間ククールとはほとんど口をきいていない。 エイトもヤンガスも、そっとしておいてやれって言うから。そのくせ二人は、いろいろ話しかけたりしてるのよ。ズルいじゃないの。 『ククールも男で、そういうお年頃だから』なんて、意味のわからないことを言われる。 そして『あいつは見えっ張りだから』とも言われた。後の方は何となくわかるわ。要は女の私に同情されるのはプライドが傷つくってことよね。 同情なんかじゃない。ただ心配なだけなのに・・・。 私たちに法皇様暗殺未遂の濡れ衣をきせ、この煉獄島に送り込んだのは、ククールのたった一人のお兄さん、聖堂騎士団長のマルチェロ。 だからククールは、きっとずっと責任を感じて、自分を責め続けている。 その気持ちを思うと、涙が出そうになる。 でも私がククールにしてあげられる一番のことは、自分自身を気遣って元気でいることだとエイトに忠告された。 私が悲しそうにしていたり、体調を崩すようなことがあったら、ククールがますます辛い思いをするだけだからって。 確かにその通りだとは思う。いつだって自分は後回しで、他の人のことばかり気にかけている人だから。 でもやっぱり辛い。自分の無力さが悲しくなる。 そして、最悪の報がもたらされた。 法皇様はもう一カ月も前に亡くなられていたこと。 それは丁度、私たちがこの煉獄島に収監された頃。 私、また守れなかった・・・。 騎士団員たちに囲まれた時、私は何も出来なかった。 力も体力も無い私のたった一つの取り柄は、誰よりも早く魔法が放てることだったのに動揺してる間にマホトーンをかけられてしまい、どうしようもなかった。 魔法が使えない私が、騎士団員たちに敵うはずもない。足手まといにしかならなかった。 油断しすぎだわ。マルチェロがイヤな奴だっていうのは、わかってたのに。 だけどまさか、ここまでひどいことするなんて思わなかったのよ。 マイエラ修道院でも濡れ衣は着せられたけど、誤解が解けたら、一応は謝ってくれた。お詫びの印だって、世界地図までくれた。 だからどこかで甘く考えちゃってたんだわ。 どんなことをしても抵抗するべきだった。あの杖がどんなに恐ろしいものかは、暗黒神に呪われて支配された私が、誰よりも一番良く知っているはずなのに。 「わしに構うな! お前たちは、早く地上をめざせ!」 ニノ大司教が自分の身を犠牲にして私たちを逃がしてくれ、昇降機を動かすレバーを操作してくれた。看守にあまりひどい目に合わされなければいいんだけど・・・。 地上に近づくにつれ、不思議な感覚がする。 今、あの杖を持っているのはマルチェロだと確信できる。理屈じゃなくわかる。 もしかしたら私はまだどこかで、あの杖と繋がっているのかもしれない。 ククールも同じことを感じてるみたい。それは血の繋がりでわかるものなのかしら? でも不気味な静かさも感じる。これから起こる恐ろしいことのために、強い何かが力を溜めているような・・・。 どうか、間に合って。こんなところで無駄にした一カ月を、これ以上苦いものにはしたくないのよ。 昇降機が地上に到達した。 ヤンガスが先に飛び降りて、鉄格子をこじ開け始めた。エイトもそれに続く。 そしてククールが降りて、私の方を振り返った。 「ごめん、ゼシカ。この一カ月、全然気遣えなくて・・・」 申し訳なさそうな顔で、腕を差し出してくれた。 ・・・バカな人。一番辛いのは自分のくせに、こんな時まで他人を気遣おうとする。 強がる姿が痛々しくて悲しくなるけど、その一方で、ククールがそれだけの余裕を取り戻してくれたことが嬉しい気持ちもあって、私はその手に自分の手を重ねる。 「気遣いじゃないなら、この手は何なの?」 久しぶりに触れる手の感触に気が緩みそうになって、私の方から軽口叩いてしまう。ククールはちょっと考え込んでしまった。 「・・・お詫び?」 自分の言葉に疑問符を付けながら、もう片方の手も差し伸べてくれる。 「バカね。普段が気を遣いすぎなのよ」 そして私はククールに手を引いてもらって、昇降機を降りる。 【ありがとう】 二人の声が重なった。 ・・・どうして、ククールがお礼言うの? きっといつもだったら、顔を見合わせて笑ってしまうところなんだろうけど、今はとても笑えない。ククールの顔を見ることも出来ずに、目を背けてしまった。 今ククールの顔を見たら、私きっと泣いてしまうから。 「行きましょう」 それだけ言って、エイトとヤンガスの方へ向かう。 ごめんなさい、ククール。 私、マルチェロとは本気で戦う。私の時は、あんなに手加減してもらってたのにね。 レオパルドを倒すのもやっとだったんだもの。最後の賢者の命を吸収した杖を持つマルチェロに手加減して勝てるなんて、とても思えない。 どんなにひどいことされても、あなたがお兄さんを憎めずにいるってわかってる。でもやるしかないんだもの。 私がもっと強かったら、絶対に死なせずに杖だけ取り上げるって約束できたのに。口に出して誓うには、私の力は小さすぎる。 でも、どんなに小さくても、完全な無力ではないと思いたい。この手にだって、一つくらい大切なものをつなぎ止められると信じてる。 だから決して死なせはしないわ、マルチェロ。 勘違いしないでよね、あんたの為じゃないわ。私はもうこれ以上、ククールに辛い思いをしてほしくないのよ。 だから必ず、助けてあげる。・・・感謝ならククールにしなさいよ。 小さな手-後編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/138.html
いろいろ振り回されたけど、私たちはようやく船を手に入れることができた。 次に目指すのは、ドルマゲスが向かったという西の大陸。 この船の動く仕組みはよくわからないけど、方向を指定するだけで、定期船とは比べ物にならない速度で進んでくれる。 タワーの上で見張りをしていた私のところに、ヤンガスがやってきた。 「交替の時間でがすよ」 「あら? 次はエイトの番じゃなかった?」 「アッシが代わったんでさあ。エイトの兄貴はククールと、剣の稽古をしてるでげす」 ・・・ククールの言うところの『シメてる』のかしら。 ククールがあんまり勝手なこと言ったり、したりすると、その後必ずエイトに『かえん斬り』とかされて、本気で命の危険を感じるらしいから。 でもわかってるなら、ククールもやめればいいのにね、アホなこと言うの。 まあ、どっちの気持ちもわかるわ。 船を手に入れた後、私たちは少しだけ寄り道してみることにした。 ドルマゲスの情報があまりにも少なすぎたし、何より、自分たちの船を手に入れたってことで、少し浮かれてたんだと思う。 メダルを集めてる王族が住んでる島では、役に立つアイテムをもらえたりして、まあ、寄り道するのもたまには悪くないって思ったわ。 ただ、やめておけば良かったって思う場所が二か所あったのよね。 まずは法皇様がいらっしゃるサヴェッラ大聖堂。そこであの『二階からイヤミ』改め『どこでもイヤミ男』マルチェロにバッタリ会ってしまい、最大級のイヤミを言われてしまった。 もうククールったら、すっごくむくれちゃって、エイトに対して『ごちゃごちゃ話しかけてくんな』とか『うっとおしい』とか、言いたい放題。さすがのエイトもあれには腹が立ったんじゃないかしら。 それでもまあ気をとりなおして、今度は巨大な女神像がある聖地ゴルドに行ってみたら、そこでもまたあのイヤミ男に会っちゃって、またイヤミ言われて。サヴェッラでは少しは言い返してたククールも、もう言葉も出ないって感じで。 その晩は、二日酔いになるまで飲んでたみたい。仮にも聖堂騎士なんてやってる人が聖地といわれるところでお酒飲むのはどうかと思ったけど、あの時だけは何も言えなかった。 最悪だったわ。本当に。 夕食の支度を始める時間まではまだ間があるし、私はトロデーン城の図書室から借りてきた本を読むことにした。 船を手に入れたおかげで、旅に出てから初めてこういう時間が持てるようになった。 自分の足で歩かなくて済む分、体力的にも大分楽だし。 とてもいい天気なので、船室に籠もるのはもったいない気がした。ひなたぼっこも兼ねて、船尾の方で読書しよう。 そう思って移動したら、先客がいた。ククールだった。無造作に転がって眠っているように見える。 エイトの姿は見えない。剣の稽古はもう終わったのかしら? ・・・ククール、生きてるわよね? エイトのことだから、殺しちゃったりしないとは思うけど、こんな所で横になるなんて、ククールらしくないから不安になる。 でも、確認するのは、ちょっとためらっちゃう。 まだ仲間になったばかりの頃、私、眠ってるククールに近づいて、殺されかけたことがあるから。 野営をしていた時、火から離れたところで、木に背を預けて眠っていたククールに毛布をかけてあげようとしたら、いきなり首筋にレイピアを突き付けられた。 もちろん切られはしなかったし、私だと気づいたククールはすごく真剣に謝ってくれたけど、あの時は本当に怖かった。 『気配の変化で起きられるようにしておくのは騎士のたしなみ』なんて言ってたけど、あの殺気はそんなかわいいもんじゃなかったわ。 ・・・やっぱり、修道院にいた時、マルチェロに殺されかけたことがあったのかしら? あっても不思議じゃないとは思う。油断なんてできない環境で長く過ごしてきたら、他人のことなんて信用できなくなっても、仕方ないのかもしれない。 でも、ちょっと寂しいな。 私は、ククールのこと、仲間として信頼してるのに。 思えば、お母さんも私のこと信頼してくれなかったよね。 私って、そんなに頼りない人間? 努力すれば、いつかは認めてくれる? 私だって、頼りにしてもらいたいのよ? 守られてばかりなんて、そんなのイヤよ。 ククールが眉間にシワを寄せてる。悪い夢でも見てるのかしら。 そっとのぞき込む。あら? よく見るとなんともない。 でも、私が頭をあげると、また眉間にシワが寄る。 ・・・手に持ってた本を掲げてみる。そうすると、また普通の顔に戻る。 なんだ、ただ単に日差しが眩しかっただけなのね。こんなところで寝るからよ、ホントにしょうがないんだから。 少し考えて、隅の方にあるタルを転がして持ってくる。角度を計算して、そのタルを椅子がわりに座る。ククールの寝ている場所に影ができるように。 私が日よけになってあげるわよ。以前、安眠を妨害したお詫び。特別大サービスなんだからね。 私は、持っていた本に目を落とした。 持ってきた本は結構面白くて、夢中になって一気に読み終えてしまった。今は失われてしまった魔法『ドラゴラム』や『パルプンテ』とか、そういった呪文を使いこなす勇者たちの物語。最後が完全なハッピーエンドじゃなくって、ちょっとせつないのよね。 余韻を感じながら本を閉じると、いつのまに目を覚ましていたのか、ククールが私のことを見つめていた。 「やだ、いつから起きてたのよ。声かけてくれればいいのに」 「二十分くらい前かな? ゼシカがあんまり夢中になってるから、声かけられなかった。ところで、何でこんなところで読書してたんだ?」 そんなに前から? 百面相してなかったかしら。恥ずかしい。 「ククールがまぶしそうにしてたから、日よけになってあげてたのよ」 その私の言葉に、ククールは心底意外そうな声で返してきた。 「優しいとこ、あったんだな」 「失礼ね! まるで私が普段、全然優しくないみたいじゃないの!」 「ああ、いや、違う、つい、うっかり。じゃなくて、ほら、あれだ、感激しすぎて口がすべった」 慌てて弁解しなくていいわよ。ククールが私のことどう思ってるか、今のでよ~くわかったわ。 「嬉しいよ、サンキュ」 素直にお礼を言われて、拍子抜けする。何だか、いつものククールより優しい顔してるみたい。何かいいことでも、あったのかしら? ・・・いつでも、こんな感じにしててくれたらいいのに。 いつか-後編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/208.html
鳥山設定画 カードゲーム1 カードゲーム2 いただきストリート その他
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/418.html
昔々サーベルト天帝の妹であるゼシ姫という美しい娘と、クク星という見目麗しい青年がいました。クク星はそらもー大層女好きで、美人でスタイル抜群のゼシ姫を一目で気に入りなかなか自分の手に落ちないゼシ姫の事を日々あの手この手で口説いておりました。最初はそんなクク星を鬱陶しく思っていたゼシ姫も次第に心を開いていきいつしか見ている方が恥かしくなるようなかゆいやり取りを無自覚に交わすようになったのです。しかし2人のあまりの痒いやり取りに、見ていられなくなったサーベルト天帝は、2人の間に、天の川を流されて、2人を会えなくしてしまわれました。天の川の川幅は広くて向こう岸の様子など一切見えないほどでした。「べ、別にクク星に会えなくなったって淋しくもなんともないんだから」とツンデレながらも悲しそうな顔をするゼシ姫の様子にズキッと胸が痛んだ兄バカなサーベルト天帝は「1年に一度だけなら会っても良いよ」と言って、クク星の元にもその旨を伝えるべく使いのかささぎを送ったのでした。ところがかささぎから事情を説明されたクク星は…「はあ?1年に1度?ざけんなよ!まだ色々と揉めているようだったから暫く大人しく様子を見てようと思ったけどそんな馬鹿な決め事されるんだったら黙ってるわけにはいかねえな。好きな女1年に1度しか触れられないなんて冗談じゃねーよ。しかも俺とゼシ姫はまだくっついてねえっつーの!口説き落としている最中で向こうからはっきり返事も貰っていない状況でさらに1年に1度しかってありえねーだろ!その間に悪い虫に取られたらどう責任とってくれるんだよ!!!つーことで俺は俺の勝手にさせてもらう。ルーラ!!」と早口で捲くし立てた後反則技な呪文を唱えてあっという間にその場から姿を消したのです。そして……「なんであんたがここにいるのよッッ」ゼシ姫の部屋に突如現れたのは本来絶対いるはずのない男です。「よお、会いに来たぜゼシ姫」驚くゼシ姫にクク星は平然と答えるとゼシ姫の腰を抱き寄せました。「会いにって…私たち、その、1年に1度しか会っちゃ駄目って…サーベルト兄さんが…」「んな勝手な決めつけ俺が従うはずねえだろ」「でも、だからって、天の川をどうやって…」「移動呪文使ってきた。ゼシ姫、今日こそ返事聞かてくれよな。俺の事どう思ってる?」「どうって、あんたねえ…!」「好きだ」「へ…」クク星の腕から逃れる事も忘れ困惑するゼシ姫に構わず、クク星は至近距離でゼシ姫を見つめ、腰に回した腕に力をこめます。「俺はゼシ姫が好きだ。マジで惚れている。信じらんねーくらいお前に夢中だ」「ちょ、ちょっと、待って、あの、いきなりそんな…」さんざんクク星に口説かれてきたゼシ姫でしたがこんなに直球に、真面目な顔で想いをぶつけられるのは始めてでした。ついでに腰を抱かれた状態というのも始めてなのですが、そんな事に気付く余裕は今のゼシ姫にはなかったのです。突然の出来事に思考が半分停止状態でしどろもどろになっているゼシ姫に追い討ちをかけるようにクク星は続けます。「天の川なんて俺にとっちゃ障害でも何でもねえけどこのままじゃ周りに邪魔されて自由にできなくなる。他の事は別にまあいいけど、ゼシ姫の事だけは他人に介入されたくねえんだよ。絶対に守るから…幸せにするから、俺の伴侶になって欲しいんだけど…ダメか?」いっつも自信満々で強引で、自分のペースに他人をはめようとするクク星が、最後だけちょっと弱気になって眉尻を下げながら窺ってくるもんだから元々世話好きな気質で母性本能強めなゼシ姫はきゅーんとときめいてしまいました。そうでなくても引き離されそうになった事でクク星への気持ちをうっすら自覚し始めていたところなので、クク星の真っ直ぐな愛の告白にゼシ姫が頷かないはずがありません。「わ…私もクク星のこと…幸せにしてあげる」顔を真っ赤に火照らせいっぱいいっぱいになりながらも何とか応えたゼシ姫をクク星はたまらずそのままぎゅーっと力一杯抱きしめてしまいました。こうして2人はかささぎから話を聞いたサーベルト天帝がゼシ姫の部屋に飛び込んでくるまで抱き合ったままずうーっといちゃついていたそうです。2人がめでたく結ばれたその日、7月7日は「かゆバカップルの日」と呼ばれ短冊に恋愛成就祈願を世界樹の葉につるしておくとそれが叶うとか叶わないとか言われていたりいなかったりとか。おしまい
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/151.html
ベルガラックのカジノが再開し、オレたちは護衛の報酬にもらったコインで遊ぶことにした。 一番得意なのはポーカーなんだが、残念ながらこのカジノにはカードゲームは無いんで、仕方なくルーレットで勝負する。 ビンゴやスロットは機械任せだから、実力を発揮しようが無い。その点ルーレットは人間のディーラーが相手だから、まだ腹の探り合いをする余地があるからな。 「カードならともかく、ルーレットってイカサマできないわよね。それなのにどうして、こんなに当てられるの?」 ゼシカが無邪気に感心したような声を上げる。いろいろとコツが無いでもないが、勝負の真っ最中にさすがに言うわけにはいかない。 「それは企業秘密さ。まあ、一つだけ覚えておいた方がいいことはある。ここのディーラーみたいに一流どころになると、狙った所に玉を入れてくるからな。ギャンブルなんてのは胴元が勝つようになってるから、大事なのは目をつけられる前にやめることだな」 「そんな真っ赤な服着て、目立たないようにしようってのは、間違ってると思うわ」 「オレの場合、この美貌でもう目立ってるから、服は関係ないんじゃねえの?」 「あいかわらず、自意識過剰ね」 いつもと変わらない軽口の応酬。 「ねえ、今更なんだけど、どうしてククールだけ制服の色が赤いの?」 いきなりのゼシカの質問に、オレは少しとまどった。 「本当に、今更だな」 「自分でもそう思うけど、急に気になったのよ。そうなったらもう、聞かずにはいられないの」 普段ならたいしたことはない質問だが、ギャンブルとイカサマと赤い服。この組み合わせはあまりにも、揃いすぎていた。 「別に深い意味はないさ。敢えて言うなら、青よりも似合ってたから、かな」 「うそ。あんたらしくないわ。普段だったら、オレはどんな色でも似合うんだ、ぐらいは言うじゃない」 こういう時だけ、ゼシカは妙に鋭い。 どうしても秘密にしなきゃならないことではないけど、改めて話すにはちょっとテレくさいんだよな。 もう何年も経ってるっていうのに、オレの中では思い出として語ってしまうには、まだ色鮮やかすぎるんだ・・・。 オレが両親を失い、修道院で暮らし始めたのは八歳の時だった。そして十歳の頃から貴族たちに指名されて自宅へと招かれ、祈りを捧げることを務めとしていた。 あの頃のオレは自分で言うのも何だが、柔順でおとなしい子供だった。そして天使のような愛くるしい容貌。さらには没落した領主の家の息子だったっていう悲劇性が、ゴシップ好きの婦人たちの心をとらえたんだ。 オレにとっても初めのうちは、貴族の家への訪問は楽しいものだった。まだガキだったオレにとって、規律でがんじがらめの修道院の中よりも、華やかな外の世界の方が素晴らしいものに思えたとしても無理はない。 きらびやかな衣装を身に纏う貴婦人。美しい食器に盛られる、珍しい菓子や料理の数々。それらは全て、両親が生きていた頃の何不自由ない暮らしを思い出させた。 人々はみな親切で、誰もがオレに良くしてくれていたように思えた。 同じ修道院で暮らす異母兄のマルチェロは、オレがどんな態度を取ろうと、いつでも変わらない憎しみを向けてきた。時に冷たい態度で憎しみを露にし、時に初めからいないもののように、完全に無視してくれた。 オディロ院長を初め、何人もの人が何とかオレたちの仲を取り持とうとしてくれたが、それはますますマルチェロの心を頑なにするだけだった。初めのうちはオレにしか見せなかった敵意を、他の人間にまで示すようになっていってしまった。 まだ純粋だった頃のオレには、自分が冷たく扱われることよりも、優しかったはずの兄貴が自分のせいで荒んでいくのを目の当たりにする方がキツかった。 だから少しでも、兄貴の目に触れない場所に身を置きたいと思った。そうすれば、互いに傷つけあうことも少なくなるだろうと考えていた。 貴族の家を訪問して、寄付金を集めてくることは、育ててくれたオディロ院長への恩返しにもなるし、一石二鳥だと思えたんだ。 オディロ院長は初めは猛反対したけど、オレはそれを振り切った。止めてくれる理由をわかってなかったんだ。オディロ院長はオレのことを心配してくれてたっていうのに、オレは自分がヘタなことをしたら、修道院の迷惑になるからだと勝手に思い込んでた。 今思うと、心配してくれる気持ちを受け入れられないところは、その頃からだったのか。本当にどうしようもないヤツだよな、オレって。 最初の頃は、貴族の家を訪問する時には騎士団員の護衛がついていたが、二年も経つ頃には護衛は行きだけになり、滞在時間も帰る時間も、オレの判断に任されるようになっていた。 オレはルーラの呪文を習得していて、護衛付きでも魔物の出る道を歩くより、ずっと安全に修道院に帰れたからだ。オディロ院長は、貴族の家への訪問を了承してくれた後も、オレがルーラとバギを習得するまでは絶対に外に出してくれなかった。 聖職者として、人を疑うようなことはしたくなかっただろうに、汚れた貴族の欲望から自分の身を守るための手段を、オレに授けてくれていたんだ。本当に実の子供のように守ろうとしてくれてた。 だけどオレは気づいてなかった。自分がどんどん擦り減っていっていたことに。 修道院の中では『憎むべき疫病神』であり『柔順な金づる』であること。貴族達の家では『姿のきれいなお祈り人形』でしかないこと。 それを、オレの心は無意識のうちに感じ取っていた。自分が人間として扱われていないことに気づいてしまっていたんだ。 そして、オレはドニの町を訪れるようになっていた。 初めのうちは修道院から逃げ出してきたんじゃないかと困惑していた町の人たちも、窮屈な生活の息抜きのためだけに来ているんだと強く示すうちに、オレを歓迎してくれるようになった。 ちょっとばかり汚いやり方だったとは思う。 不幸な境遇の元領主の息子に同情こそしながらも、何の手も差し伸べてこなかったことに負い目を感じてるのはわかってた。だからその『元ぼっちゃん』が屈託なく接することに、安堵していたのも感じてた。要は弱みに付け込んだってことだ。 でもオレには必要だった。昔からの自分を知り、憎みも利用もしない人たちの中で、道具や見世物じゃない『人間』だった頃の自分を感じる時間ってやつが。 その頃のオレはいつも穏やかで、行儀も人当たりも良かったから、修道院の方でも旧知の人たちを訪ねるという、たった一つの規律違反は、多額の寄付金を集めてくる功績に免じて、目をつぶってくれた。 おとなしく柔順にさえしていれば、誰も自分を邪険には扱わないことを学んでいた。ただ一人の例外、マルチェロを除いてだがな。 そして、そんな暮らしの中であの人に出会った。 自称、世界一のギャンブラー。えげつなくてロクでもないことばかり教えてくれた、オレにとって師匠と呼べる人だった。 その日もいつものようにドニの酒場を訪れていたオレは、カードゲームに興じている、見かけたことのない男の姿を目に止めた。 屋内だっていうのにサングラスをかけ、豊かに蓄えられた口ひげと顎髭の間からパイプをくゆらせていたその男は、体格が良く、熊をも絞め殺せそうな太い腕を持っていた。 相手のゴロツキは店の常連で、弱いくせに大の博打好き。いつも宿屋の主人や酒場の客に勝負を挑んでいたが、勝った姿を一度も見たことが無かった。 三大巡礼地の一つ、マイエラ修道院に近いあの町で、見かけぬ男の姿なんて特に珍しいもんじゃなかったし、上品さとは無縁のあの酒場で博打が行われることもよくあることだった。だけどオレは何か違和感を感じて、その光景から目が離せなかった。 そして、見ちまったんだ。器用にカードがすり替えられる瞬間を。イカサマだった。 「あっ・・・」 マヌケだったのは、思わず声を出してしまったことだ。 他の誰も聞き取れない程の小さな声だったはずなのに、髭の男はその声に気づいて視線を向けてきた。 オレは慌てて顔を背けたが、確かに一瞬目が合ってしまった。 「ちょっとだけ待ってろ。すぐに戻る」 ゴロツキにそう声をかけ、髭の男はオレの方へ歩み寄ってきた。 「こんなところで、お前さんみたいなガキが何してるんだ? 坊やは帰ってミルクでも飲んでな。おっと、ここで飲んでるのもミルクか」 男はオレのカップを覗き込み、自分の言った言葉に大笑いしていた。オレもさすがにその年では、まだ酒は覚えてなかった。 でも、そんなことよりもオレは生きた心地がしなかった。 博打にイカサマは付き物だ。だけど、ドニの酒場で行われるイカサマなんで稚拙なもので、大抵バレて、くだらない乱闘になる。 だけどその男の手さばきは、相手のゴロツキも、勝負を見物している客たちも、誰ひとりとしてそれに気がつかなかった程に見事なもんだった。気づいたのはオレだけ。 思わず声を出してしまったことを後悔した。自分がイカサマに気づいたのがバレたら、どんな目に合わされるのかと思うと気が気じゃなかった。 男はオレの隣にドカッと腰を下ろした。身なりは良いのに、男の体はかなり匂った。軽く見積もっても一週間は風呂に入ってなかったと思う。 「お前、見てたのか?」 小声で問われ、背に冷たい汗が流れた。 男は見るからに強そうで、その太い腕にかかれば、当時のオレの華奢な首なんて一瞬でへし折られてしまうに違いないと思った。周りの人間の助けは期待してなかった。 「どうなんだ?」 ドスのきいた声で再度訊ねられ、オレは完全に竦み上がった。 「ん? なんだ、お前、ビビッちまってんのか? 別にとって食いやしねえよ。あー、でもよく言われんだよなあ。お前の顔は怖いから、言葉だけでも優しくしろってよ。そんなに怖くもねえと思うんだがなあ。なあ、お前、どう思う?」 男はサングラスを取って、ニカッと笑いかけてきた。 サングラスに隠されていた目はクリッとして丸く、顔全体の造形はお世辞にも可愛いものではなかったが、不思議な愛嬌を感じさせた。 「それとも、やっぱり怖いか?」 大きな背を丸め、しょんぼりとする男の姿は、怖いという言葉からは程遠いものだった。 何となく気の毒になって、オレは首を横に振った。 「そうかそうか、そいつは良かった。で、話を戻すけどよ、お前、さっきのアレ、見てたのか?」 三度目になる問いに、ようやくオレは小さく頷いた。 「ああ、やっぱりそうか、ちくしょう。おめえみてえなガキに見破られちまうとは、オレもヤキが回ったもんだぜ。ちっとばかり気を抜きすぎたみてえだな。世界一のギャンブラーの名が泣くぜ」 そして男は懐から財布を取り出し、オレの前に札の束を投げ出した。 「これはおめえのもんだ」 いきなりのことに、あの時はかなり面食らったもんだ。 「えっ、だって、どうして・・・」 男は、オレの耳に口を寄せて囁いた。 「イカサマってのは、バレたらそこで負け。見破ったヤツの勝ちになるんだ。だから、あのカモからぶんどった金は、オレのイカサマを見破ったお前のもんだ」 言いたいことだけ言って、男はまたゴロツキの待つテーブルへと戻っていった。 後に残されたのは、千ゴールドもの大金。 オレは完全に混乱してしまっていた。 その場で金を返しちまえば良かったんだが、カードゲームを再開したテーブルに近づく程の度胸はなく、結局その日は、そのまま金を持って修道院に戻った。 そうでなくても眠りの深い方じゃないっていうのに、大金を持つ緊張で、その晩は一睡も出来なかった。 それで次の日、貴族宅への訪問を終えたオレは、金を返す為にドニの町に大男を訪ねた。男は留守にしていたが、宿屋に荷物は残されてたから、まだ引き払われていないのがわかり、少しホッとした。 オレは外で男の帰りを待つことにした。選んだ場所は川のそば。人のいる場所にはいたくなかった。 その頃のオレは、もうドニの町を訪れることでも自分を保つのが難しくなっていた。大事な何かをつなぎ止めていた糸のようなものが少しずつ擦り切れていて、それを完全に失ってしまう寸前だったのかもしれない。 誰とも会いたくないとも思うのに、誰かにそばにいてほしいとも思ってた。 相反する感情、矛盾する思い。それは人間なんてものをやってたら仕方ないことなのに、まだガキだったオレには理解できなかった。 水面には決して目を落とさなかった。自分の姿を目にしたくはなかった。それがあの頃の自分の境遇を作り上げた最たるものだってことを感じて、無自覚に疎んでいた。恵まれた容姿だけが自分の存在価値だなんて、純真な少年だったオレの心にはキツすぎた。 そうしていると、水音に混じって何かかぼそく鳴く声が聞こえてきた。 初めは気のせいかとも思ったが、川面を覗いてみると、一匹の猫が中洲に取り残されていた。犬にでも追われて落ちたんだろうか、おびえきって悲しげな声で鳴き続けていた。 あの時は本当にどうしようかと困り果てたもんだ。あの町の川は低いところを流れていて、そこまで降りていく道はなく、小さいながらも切り立った断崖を降りていくしかない。川の流れそのものは緩やかだが、深さはかなりあった。 更に、オレは泳げなかった。いや、泳いでみようとしたこともなかった。 領主の嫡男に生まれ、豪華な屋敷の中で箱入り生活をした後は、規律の厳しい修道院暮らし。泳がなきゃらない事態に遭遇したことなんてあるわけがない。 それでも目の前の、弱くて儚くて、誰にも気づかれないところで鳴いている小さな命を、見捨てるつもりにはなれなかった。 そしてオレは、転落防止に張り巡らされているロープをくぐった。 「おい! そこのお前! ちょっと待て、早まるな!」 大きな声と共に、地鳴りのような足音。その方向を見上げると、前日酒場でイカサマギャンブルに興じていた大男が、すごい形相で走ってきていた。 「命は一個しかねえんだ、バカなマネすんじゃねえ!」 大男は、その勢いにあっにとられているオレをロープの向こう側から引き戻し、軽々とかつぎ上げた。 「ふう、危ねえとこだったぜ。何があったか知らねえが、おめえみたいなガキが命を粗末にするようなマネすんじゃねえ!」 オレは地面に下ろされるや否や、問答無用の拳骨を頭に浴びせられた。目に星がとぶっていうのは単なる比喩表現じゃないことを、あの時知った。 「何か困ったことがあるなら、話してみろ。オレに良ければ相談に乗ってやる。死ぬなんてのは、いつだって出来るんだ、男ならまずは戦ってみろ」 自分が自殺未遂をしたと勘違いされてることに気づいたオレは、ガンガンいってる頭を横に振った。 「ち、違います・・・」 そう言って川の方を指さすと、男は川面を覗き込んだ。 「・・・お前、あの猫助けようとしてたのか?」 オレが頷くのを見て、男は自分の額をピシャリと叩いた。 「すまねえ、早とちりだ。オレはいっつもそうなんだ。よし、ちょっと待ってろよ」 言うが早いか、男は上着を脱ぎ捨て勢い良く川に飛びこんだ。激しい水しぶきがあがり、目まぐるしい展開にオレの頭はついていかなかった。 ようやく我に返って川を覗いてみると、男は猫を懐にいれ、絶壁の岩壁を軽々とよじ登ってきていた。 「おう! ちょっとすまねえが、何か拭くもの持ってきといてくんねえか? あと、酒とミルクも頼むぜ!」 絶壁をよじ登ることの苦労など、全く感じさせなかった。 オレは言われた通り酒場にタオルと酒とミルクを取りに行き、戻ってきた時にはもう、男は岩壁を昇りきっていた。 オレがタオルを差し出すと、男は自分のことはそっちのけで、ガシガシと乱暴な手つきで猫の体を拭き始めた。 あの時のあの猫は気の毒だったと思う。犬に追いかけられた方がマシだっていう勢いで悲鳴を上げてた。メチャクチャに暴れて、命の恩人の手を引っ掻きまくって、元気に逃げていったけどな。 「あれだけの元気があれば、大丈夫だな」 男は体を拭きもせずに、酒を呷りながら笑っていた。 「せっかくミルクまでやろうと思ったのに逃げられちゃあ仕方ねえ、それはお前が飲め。そんな女みたいな顔してヒョロヒョロしてやがるくせに、こんな岩棚おりようなんざ、勇敢通り越してバカだぜ」 確かに、あの頃のオレは同じ年頃のヤツらと比べてもチビで弱っちかったと思う。でも、そこまで不躾な言い方をされると、さすがにムッときた。 その男に会いに言った理由を思い出し、サッサと用件を済ませてしまおうと思った。 「こんなお金をいただくわけにはいきません。お返しします」 男は札束とオレの顔を交互に見比べ、金を受け取った。 「そうだなあ、あの後、お前みたいなガキにこんな金持たせるのは考えなしだとは思ったぜ。それに酒場なんかにいたから気づかなかったが、お前マイエラ修道院の人間だろ? 清く正しく生きる僧侶様には金は無用のモンだよな」 わりとアッサリと金を返せたことに、オレは少し安堵した。 「だけどお前、よくオレのイカサマを見破れたもんだ。どうしてわかった?」 だから、その男の問いにも、答えてみるつもりになった。 「ずっと見てたからです。どうしてかわからないけど、あの時、全体に何となく違和感があったから・・・」 とは言っても、こういう答えかたしか出来なかったけどな。 「ほう・・・」 男は感心したような声をあげた。 「まあ、確かにお前みたいなガキに金を渡すのはアレだからな。代わりに何かやらねえとなあ。何か欲しいもんはないか?」 いきなりの言葉に、オレは訳がわからなかった。 「イカサマだって、バレるかどうかのリスクを楽しんでやってるんだ。見破られれば、何かを失う。そういうリスクがなけりゃあ、つまらねえ」 本当に付き合ってられないと思った。 「結構です。もう帰らなければならないので、失礼します」 「ああまあ、すぐには思いつかねえよな。ゆっくり考えてこい。オレはまだしばらくこの町にいるからよ」 しばらくが、どのくらいかわからなかったが、その男がいる間はドニには近づかないようにしようと心に決め、オレはルーラの呪文を唱えた。 なのに、その二日後、意外なところで再び男の姿を目にすることになった。 週に一度は訪問していた、当時のオレの一番のお得意様の貴族の屋敷でだった。 オレも相当ビックリしたが、向こうの驚きっぷりは更に上だった。サングラスと髭で表情なんてものは全く読み取れなかったんだが、雰囲気でわかった。 「そうか・・・。元領主の息子ってのは、お前のことだったのか・・・」 そう呟いた男の声が沈みきっていたのは、今でも覚えてる。 「まあ、お知り合いだったんですの?」 その家の夫人がつまらなそうな声を上げた。 彼女は顔の造形としては美人の部類に入ったんだが、何というか品性に欠ける御婦人だった。オレが訪問する時には必ず他の客を屋敷に招いていて、自分が、不幸な境遇の元領主の息子にいかに親切にしているかをアピールするのを、何よりの楽しみにしていた。 多い時には両手の指でも足りない程の人数の前で祈らされることもあり、本当に見世物なんだっていうことを強く意識させられた。 「ええ、親友です」 男はあっけらかんとした声で、とんでもないことを言い出した。 夫人は一瞬あっけにとられ、その後、慌てて取り繕うような笑い声を上げた。 「まあ、そうでしたの。それならご紹介するまでもありませんわね」 オレは本当は紹介してほしかった。身なりからして、その男がそれなりの地位や収入のある人間だっていうのは見当がついてはいたが、ドニの安い宿屋に滞在していたことや、酒場でイカサマカードなんてやってたこと、何よりも粗暴な言動。それらがどう考えても一致しなかった。 でも、そんなことはすぐにどうで良くなった。 その日も、その男の他に三人の客がいて、いつものように綺麗な顔と声で、心の籠もらない口先だけの祈りを捧げていた間、ずっと居心地が悪かったからだ。 明らかに男はその場の空気に不快感を感じていた。 オレにしてみたって、面白くはなかった。知り合いと呼べる程ではなかったにせよ、会うのが三度目にもなる人間に、寄付金目当てに祈る姿を見られるなんて、気分がいいはずがない。 その頃だって、その程度のプライドは、まだギリギリで持ってたんだ。 祈りを捧げ終わり、修道院での生活の苦労話を、ほとんど芝居の台本を読み上げるような気持ちで話して貴族の虚栄心と同情心を満足させてやり、多額の寄付金を受け取って暇を告げたオレに、男は声をかけてきた。 「お前、ルーラ使えるんだよな。悪いけど、ちょっとドニまで送ってってくれ」 それなりに自分の感情を抑え込むことに慣れてなければ、もの凄くイヤな顔をしていたと思う。だけど不快な場所であったとはいえ、お得意様の屋敷の客に無下な態度を取ることも出来ず、渋々ながらも承知するしかなかった。 でもドニの町に着いて、男の発した言葉を聞いた途端、我慢の限界がきた。 「お前、いつもあんなことさせられてんのか? あれじゃあまるで見世物みたいじゃねえかよ。マイエラの修道院長は大層立派な人物だって聞いてたが、お前みたいなガキを寄付金集めに利用するようじゃあ、嘘っぱちだったようだな」 はっきりいって、キレたね。 オディロ院長は忙しい人だったから、そう頻繁に会って話が出来るわけじゃなかったけど、あの頃のオレにとって、唯一尊敬できる人だったんだ。それを悪く言われて黙ってるわけにはいかなかった。 「知りもしないくせに、勝手なこと言わないでください! オディロ院長はそんな方じゃありません、これはボクが自分の意志でやってるんです!」 正直、心臓が破裂しそうだった。悪い人間じゃないのは何となくわかってたけど、ゴツい大男にくってかかるようなマネしたのは初めてだったし、怒鳴り声あげること自体、あんまり体にいいもんじゃないしな。 「・・・そいつはスマンかった、許してくれ。オレはいつでも一言多いんだ。ホントにすまねえ」 アッサリと謝られ、オレはかなり拍子抜けした。そして、続いた言葉に混乱させられた。 「だけど今の言い方じゃあ、お上品すぎるぜ。『うるせえんだよ、てめえに何がわかるってんだ。オレの意志でやってることにゴチャゴチャ口出ししてくんじゃねえよ』とまあ、このぐらいは言わねえとな。相手によってはナメられるだけだ。ほれ、言ってみろ」 ムチャクチャだった。 ドニの酒場で多少はゴロツキの会話を耳にすることはあっても、基本は聖職者と貴族に囲まれて生活してたんだ。礼儀作法は完璧で、汚い言葉なんて使ったことが無かった。 「何だ、言えねえのか。どうもお前は危なっかしいガキだな。実力が伴わねえのに無理なことしようとするしよ。よし、さっきの暴言の詫びに少し鍛えてやる。明日からオレのところに来い。世間の荒波を乗り越える強さってヤツをたたき込んでやるぜ」 誰もそんなことは頼んでないのに、何だか勝手なところで男は盛り上がっていた。 オレはもちろん、そんなことを承諾した覚えはないんだが、その男は一度決めたことは絶対にやり通すタイプの人間だった。 その日、どうやって男に別れを告げて修道院に戻ったのかは、覚えてない。そのくらい動揺させられてた。そして翌朝、オレはその日以降の日程が大きく変化させられていたのに驚いた。 一カ月先までの貴族宅の訪問予定が全てキャンセルされていて、代わりにある家に通い詰めになることが決められていた。 その家では、ある貴族の老婦人が一人で暮らしていた。 家督を継いだ息子に追い出されるように与えられた小さな家で、使用人は料理人とメイドが一人ずつという質素な暮らしを強いられていた。 だから高額の寄付金を積むことができなくて、滅多にその家を訪れることはなかったけど、彼女のことは好きだった。 大抵の貴族のご婦人は、美貌と不幸な境遇なんてものにしか興味を示さなかったけど、彼女だけは下手くそなオレの祈りの言葉に熱心に耳を傾けてくれた。普段は口先だけで祈っていたオレも、不思議とあの家では真剣な気持ちで神様と向き合う気持ちになれた。 まあ何はともあれ、そんな不自然なこと、裏で何かが糸を引いてるに決まってるのに、あの頃のオレは素直にそれを喜んじまった。 だから、老婦人の家で例の大男の姿を見た瞬間、目眩がしたね。 「おう、よく来たなチビスケ。約束どおり鍛えてやるから、気合入れろよ」 本当に、そんなこと頼んだ覚えは一度もないのに、いつの間にか全てが決められていた。 やり方がえげつないよな。おそらくかなりの大金も積んで裏で手を回し、オレが一番悲しませたくないと思ってるご婦人を利用して、逃げられないようにしやがった。 ただ後で気づいたんだが、どう考えてもオディロ院長も一枚かんでたんだよな。そうじゃなかったら、オレが心を許していた貴族なんてのを知ってる人間なんて、他にいなかったんだから。 つまりオレはあの頃、オディロ院長の目にも危なっかしく見えてたってことなんだろうな。 秘密2
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/322.html
257名前が無い@ただの名無しのようだ2008/12/11(木) 00 49 01 ID j4tc5Rw80 ,'^y'⌒⌒ヾヽ ))! .八~゙リ))( やだっ∑ (.(ヾ(!;゚ヮ゚ノ! ) sage入れ忘れてたわ ゙ /ヽ、)ノ)づ. U曰ニ〈 ククールニ オシオキ サレチャウ・・・ .// ,!@ ん、_!__!,ゝ|彡ミヽ|(~ヾ》キラーン|ー゚ノ+ ⊂)| / でもま、|´ ,'^y'⌒⌒ヾヽ 黙っていればバレないわよね ))! .八~゙リ))( (.(ヾ(!;´∀`ノ)) ゙ /ヽ、)ノ)づ . U曰ニ〈 .// ,!@ ん、_!__!,ゝ |||||ミ | ^y.⌒⌒v^; )((~゙リ゙゙)(,〈 …? (ヾ、-゚ (!,),) ゙ (ヽ(/i-i . 曰ニ〈J .// ,!@ ん、_!__!,ゝ
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/414.html
~小ネタ~ 初々しい2人(97&98さん) なでなで(486さん) 日記(558、560さん) 潮時インスパイア(664さん) [[]]() [[]]() [[]]() [[]]() [[]]() ~SS~ アーンの定義*兄弟編(7-857さん) カリスマの苦悩(79さん) 乙女の悩み(79さん)カリスマの苦悩別視点 ククゼシな大冒険①~ドッキリ無人島編~(398さん) アホな七夕話(432さん) 続・無人島(398さん)ククゼシな大冒険シリーズ 潮時(650さん) 翌朝(650さん)潮時続編 ぬくもりの正体1(786さん) 猫化シリーズ関連作品 ぬくもりの正体2(786さん) ぬくもりの正体3(786さん) 呪われし騎士(857さん)ぬくもりの正体シリーズにリンクさせた作品
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/128.html
魔物の群れが現れた。 もう何十回となく繰り返されてきたこと。私たちは、淡々と敵を倒して行く。 最後に残ったブラウニーが、一気にSHT状態になり、私の頭上に槌を振り上げる。 この攻撃をまともにくらうのはマズい。防御するか、回避するか・・・。 攻撃をひらりとかわす。うまくいった。 ブラウニーは大振りして態勢を崩している。あとは、メラ一発で仕留められる。 そう思ったのに、私も足元の小石を踏んでしまいバランスを崩す。 隣でレイピアが煌めき、ブラウニーの身体を切り裂いた。 そうして、私たちは魔物の群れをやっつけた。 とどめを持っていかれてしまった。 別に勝ち星競ってるわけじゃないけど、彼にだけは遅れをとりたくない。 新しい仲間の名前はククール。元聖堂騎士団員。 ドルマゲスに大切な人を殺されて、その敵討ちに旅立ったっていう境遇は私と同じなんだけど、どうも馴染めない。 「お嬢さん、おケガは?」 ほら、こういうこと言われるのがイヤなのよ。私だって一人前に戦えるのに、こういう態度とるのって、失礼だと思うわ。 「おかげさまで、ピンピンしてます」 そっけなく答えてやる。 「ククールは力は今一つでげすが、すばしっこいでがすね」 ヤンガスが武器を収めて話しかけてきた。 「・・・アンタもヤセてみたらどうだ? 軽くなれば、早く動けるかもしれないぜ」 ・・・この調子。ケンカ売ってるとしか思えない物言いするのよね。 顔を真っ赤にして飛びかかろうとするヤンガスを、エイトが羽交い締めにして止める。 「離してくだせえ、兄貴! この若造に口のききかたを教えてやるでがす! 人が気にしてることを、よくも!」 ・・・気にしてたんだ、ヤンガス。 何とかその場はエイトが宥めて、私たちは先へと進む。 日が暮れかかる頃、川沿いに教会を発見する。今夜はここに泊めてもらうことになった。 普段は10Gの寄付が必要だけど、今夜は特別にタダでいいらしい。 運がいいわ。・・・と思ったのは、皆が寝静まる頃までだった。 左足が痛い。 ベッドに入った頃から変な感じはしていたけど、時間が経つにつれて、どんどん痛くなってくる。 心当たりがあるとすれば、昼間の戦いでブラウニーの攻撃をかわした時。捻ってたのに気がつかなかったんだ。 どうしよう、エイトを起こしてホイミをかけてもらおうかしら。でも戦闘の他に、トロデ王や馬姫様の世話もして、きっと疲れてる。起こすのは悪い。 ああ、でも痛い。一晩中こうだとしたら、ちょっと辛いかも。 何かで気を紛らわそうにも、他のことが全く考えられない。 少しでも楽な姿勢を探そうと、何度も態勢を変える。 「ゼシカ?」 不意に頭の上で声がした。顔を上げると、ベッドのすぐ脇にククールが立っていた。 何!? まさか夜ばい? いえ、エイトもヤンガスも、トロデ王までいるのに、いくら何でもそれはないはず。 「どこか痛むのか?」 囁くような低い声。いつもの軽薄な感じはない。 そういえばこの人、僧侶でもあるのよね。イメージ合わないから忘れてたわ。 「ちょっと、足捻っちゃったみたい」 「ああ、やっぱりそうか」 「やっぱり?」 「昼間、ブラウニーの攻撃よけた時、よろけてただろ? だから訊いたんだ、ケガはないかって」 ・・・訊かれたわ、確かに。女だからバカにされてるって、勝手に思い込んだのは私。反省しなくちゃ。 「ここじゃ暗いな。礼拝堂の方へ行こう」 身体の下に腕を差し入れられ、いきなり抱き上げられた。 「えっ、や、ちょ、ま、じ」 ちょっと待って、自分で歩ける。 そう言いたかったんだけど、うろたえちゃって、こんな声しか出ない。 ククールはすました顔をしている。 「教会の中では、お静かに」 確かにその通りなんだけど、このナマグサ僧侶に言われるのは、何だかムカつくわ。 「どうなさいました? どこか御加減でも?」 礼拝堂に行くと、シスターが心配して声をかけてくれた。 「連れが足を捻ったようで。すみませんが、椅子と明かりをお借りできますか?」 こういう姿を見ると、とても酒場でイカサマカードをするようには見えない。ちょっと、とまどっちゃう。 ククールは私を手近な椅子の上に降ろした。 何だか、大袈裟なことになっちゃって恥ずかしい。 「あの、ごめんなさい。私のためにククールまで起こしちゃって・・・」 そう言った私に対するククールの返事は、意外なものだった。 「関係ないよ、初めから起きてた。僧侶っていうのは、たいして眠らなくても平気なように訓練されてるんだ」 「えっ、そうなの?」 「迷える子羊が助けを求めてきた時、寝てるわけにはいかないだろ?」 確かに、神父様もシスターもまだやすんでない。聖職者ってスゴイわ。尊敬しちゃう。 シスターが燭台を持ってきてくれた。 蝋燭の明かりに照らされた私の足は、イヤな色になって腫れ上がっている。 「ホイミ」 ククールの掌から、暖かく柔らかい光があふれ出す。その光りは渦をえがいて、私の足に吸い込まれていった。 腫れは見る間に消えていき、先刻まで私をあれほど苛んでいた痛みが、初めから無かったもののように消えていった。 「ありがとう、楽になったわ」 「また、こういう事があったら、オレのことは起こしていいから。さっき言ったように、たいして眠らなくて平気だし」 心なしか『オレのことは』という言葉が強調されて聞こえた。 この人って大人なんだわ。私がエイトに気を使って起こせなかったことに気づいてる。 「ねえ、どうしてヤンガスにケンカ売るようなこと言うの?」 私たち皆の力を合わせなくちゃ、ドルマゲスは倒せないと思う。ククールとだって、ちゃんと協力したい。 「昼間のアレか? あれはヤンガスのおっさんが先にケンカ売ったんだぜ? 力は今イチとか言いやがって」 「・・・気にしてたの?」 「一応、男なもんで」 前言撤回。この人って、とんでもなく子供だわ。 「回復魔法が得意なお仲間がいらっしゃれば、旅の間も心強いですわね」 ククールの治療ぶりを見ていたシスターが声をかけてくれる。 「ええ、本当に」 今までケガの治療はエイト一人に頼りきりだったけど、ククールがいてくれたら、エイトの負担も随分軽くなるわ。 「夜明けまではまだ時間がある。眠れそうなら眠っておいた方がいい」 そう言ってククールは、外へ出るドアの方へ歩いていってしまう。 「ククールは? 眠らないの?」 「言ったろ? 充分寝たんだ。外の空気を吸ってくる」 何だか急に不機嫌になってない? まあいいわ。今夜は本当に助かったし。 「今日はありがとう、ククール。これからもよろしくね」 ククールはこちらを見もせず、軽く手を上げるだけで出ていってしまった。 やっぱり、何かおかしいわよね? 私、何か気にさわるようなこと言ったかしら? とりあえず神父様とシスターにお礼を言って、客室に戻る。 トロデ王がベッドの上で起き上がっていた。 目を覚ましたら、私とククールの二人がいないので、興味津々で待っていたらしい。 私がかいつまんで事情を説明すると、露骨につまらなそうな顔をしている。 イヤね。一体どんな想像してたのかしら。 でも、ククールが急に不機嫌になったことを話すと、トロデ王の顔は真面目なものになった。 「ククールとは一度、話をしておいた方がいいようだの」 そう言ってベッドから飛び降りて、いつもの走りで出ていってしまった。 ・・・とりあえずは寝よう。寝不足だと明日、皆に迷惑かけちゃう。 ああ、どこも痛くないって幸せ。ククールには感謝しなくちゃ。 でも、ククールって気難しいとこあるわよね。 軽薄かと思ったら、さっきみたいに誠実だったり、大人びてると思ったら、つまらないことでスネてみたり。優しかったと思ったら、急に不機嫌になったり。 ・・・別にいいんだけどね、どうだって。 でも、やっぱり気にはなるのよ。私と境遇似てるから。 ううん、私より辛いかも。目の前の大切な人を守ることが出来なかったんだもの。きっとすごく悔しかったわよね。 ・・・私は寝なくちゃいけないのよ。考え事してる場合じゃないわ。 ああ、もう何か本当に・・・。 ・・・調子狂っちゃうわ。 とまどい-後編
https://w.atwiki.jp/kkjs/pages/121.html
ゼシ「エイト~、何で私よりククールの方が後ろにいるわけ? 女だし、魔法使いなんだからどう考えても私が4番目に来るべきでしょ?」 クク「バーカ。分かってないね~。言っただろ?片時も離れず君を守るって。 オレがハニーの後ろを守ってやるからさ。 これからは守りを気にしないで攻撃に専念できるってわけ。」 ゼシ「・・・。後ろから変なことしたら承知しないわよ。」 クク(バニーガールの衣装つけててそれはないよな・・・。) ガス(さしずめ あっしは先頭が不動の位置ってことで 人間の盾ってことでがすか・・・。)