約 4,198,575 件
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/1834.html
時間は少しさかのぼります。 盗賊が盗みに入った事で学院内は大騒ぎになっていました。 その中で、コルベールは塔に開いた大穴と大量の残土を冷静に検分していました。 「この大量の土と、塔に開いた大穴、生徒の証言から察するに『土くれのフーケ』たぶん宝物庫内に書置きがあるだろう・・・」 苦虫を噛み潰したような表情で呟くコルベールに別の呟きが聞こえました。 「・・・泣いている」 その瞬間残土が弾け、とある物体がハルケギニアではありえないスピードで飛んでいきました。 土のゴーレムの右腕が叩きつけられた地面は凹んでいます。キュルケは青ざめタバサは厳しい表情をしています。 時が止まってすべての音が消えてしまったような中、シルフィードがある事に気がつきました。 「きゅいきゅい!!」(お姉さま、ゴーレムの後ろの空を見て!!) シルフィードの言葉を聞いて見上げたタバサがキュルケに知らせました。 「あそこ」 ルイズは自分がどうなっているのかもうすでに分かっていました。分かっていたからこそ涙を拭き戦う決意の眼差しでおとーさんを見るのでした。 おとーさんはルイズの眼を見て頷くとルイズが大事に抱えていた剣を受け取り背負いました。 空中で土のゴーレムに向き直るとルイズは杖をおとーさんは左手でルイズを抱えながら右手で剣を抜いて構えました。 「おでれーた!!お前、使い手か?? 娘っこ!! このデルフリンガー、これなら力になれるぜ!!」 錆だらけで喋る剣、デルフリンガーを不思議そうに見ているおとーさんをルイズが微笑みながら大丈夫だからと声をかけると再び杖を構えるのでした。 「おとーさん。さっきと同じ様に私が魔法で援護するから。おとーさんは飛びながら土のゴーレムの注意をひきつけて!!」 おとーさんは頷くと地上に降りてルイズを降ろし此方に気づいて向かってきた土のゴーレムに向かって飛んでいくのでした。 おとーさんは剣を使ったことが無かったのですが、剣を握った瞬間からなんとなく達人の様に使える気がしたのでとりあえず土のゴーレムの側をすり抜けながら腕を切りつけてみました。 バターを切るように簡単に切れた上に再生していく腕を見て無性に楽しくなっていました。 「うふふふ」 デルフリンガーは大丈夫かな~?と思いながら使い手のことを心配していました。 おとーさんは「注意を引き付ける為」に飛び回りながらヒットアンドウェイで腕や足を切っていくのでした。 しかし、攻撃のリズムは単調で土のゴーレムを操るフーケにも読めるようになって来ました。その事に気がついたデルフリンガーはおとーさんに声をかけます。 「使い手の旦那!!リズムが単調だと読まれちまうぜ!!」 おとーさんはデルフリンガーの言葉を気にする事無くカウンターを狙う土のゴーレムの右腕に突っ込んでいきます。 その時、土のゴーレムの背中でルイズの失敗魔法が炸裂したのでした。狙いを外さないために「錬金」で攻撃したのですがうまくいったようです。 「おでれーた!! 単調な攻撃はその為だったのか!!」 デルフリンガーの言葉におとーさんは驚いた表情で見ています。 「・・・違うのか」 嫌な空気が流れましたが、とりあえず今までどおりの攻撃をすることにしました。 遠くでその様子を見ていたキュルケとタバサが、間合いをみて魔法攻撃に参加してきました。 「タバサ~、あれ倒せると思う?」 「あと一押し」 タバサは土のゴーレムの再生速度が遅くなっているのを見逃しませんでした。 何度目かのルイズの失敗魔法が炸裂したのをきっかけに三人による魔法総攻撃をかけ土のゴーレムを粉砕することに成功しました。 ゴーレムが粉砕されたのを確認したおとーさんはデルフリンガーをしまうとルイズを抱えてキュルケとタバサの元に飛んできました。 「なんとか倒せたわねぇ。もう錬金も出来ないわ」 「同じく」 「とりあえず盗まれた物は取り返したみたいだし」 ルイズ達が安心して談笑してると、シルフィードが突然叫びました。 振り返るとそこには、破壊の杖を担いだフードを目深に被った人物と巨大なゴーレムが出来上がりつつありました。 その頃、学院内では。 「・・・毛が」 度重なる出来事による心労とおとーさんが飛ぶ際に起こした爆風により。 サヨナラを告げた長い友達に絶望しているコルベールがいました・・・
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/7086.html
前ページ次ページ使い魔は鉄拳王 いきなり老人が叫び、ルイズ達は耳を塞ぎました。 叫んだ後、老人は周りの異変に気付きました。それは何処かの病院のような施設に自分が居る事です。 ふむ、誰か親切な者がわしをここに運んだのだな。一様、礼はしておくか。 老人の前に、ピンクの髪の少女が居る。 「娘、お前が、わしを手当てしてくれたのか?」 老人は尋ねました。ルイズは耳の無事を確認した後に老人に怒鳴ります。 「ちょっと!あんた、私の鼓膜を破る気!?」 目の前の少女は怒っているようだ、たぶん、わしの寝言がうるさかったのだろう。 しかし、この娘は日本人ではないな、あの頭が寂しい男に医師らしき男も日本人に見えんな? 「娘よ、すまんな。」 老人の謝罪にルイズは落ち着きました。とりあえず自分が呼び出した事など色々教えておかなくては。 「あなたを呼び出したのは私よ!それに傷は高価な秘薬で治したのよ!名誉な事だと思いなさい!メイジの使い魔になれる事は!」 老人は何の事か半分ちかく理解できませんが半分は理解しました。 使い魔?メイジ?まさか、また飛ばされたか?ふむ、少し聞いみるか。 「娘よ、日本、アメリカ、ロシア、中国のどれか知っておるか?」 普通の人間なら誰でも知っている事を聞いてみる、すると彼女は・・・ 「なにそれ?そんな田舎聞いたこと無いわ。」 「ふむ、ならばここは何所だ?」 彼女は小さな胸を張って誇らしげに言いました。 「ふふん、教えて上げるわ。ここはかの有名なトリステイン魔法学院よ!」 魔法!確かに、この少女は魔法と言った。どうやらまた飛ばされたらしいな。 「所であんたの名前は?」 「ふむ、人に名乗る時は、まず自分から名乗るのが礼儀だと思うがな?」 「ふん、平民の癖になまいきね!まあ良いわ、私の名前はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ!!」 「ずいぶんと長い名前だな。ふむ、わしの名前は三島平八である!!」 なぜか平八は名前を叫んで言いました。最初の叫びと、同じぐらいうるさい、まるで雷だ。ルイズは耳を押さえて怒る。 「うるさい!うるさい!うるさい!本当にうるさい!!なんで名前を叫ぶのよ!?」 「まあ気にするな。所でルイズよ、話を戻すがわしをどうやって、ここに連れてきた?」 平八がルイズに尋ねるとコルベールが質問に答えました。 「み、耳が痛い・・・と、ともかくミシマヘイハチさんでしたか?それには私が答えましょう。」 コルベールは平八に教えられる限りの説明をしました。 「ふむ、するとわしは、『サモン・サーヴァント』と呼ばれる使い魔召喚の儀式でここに呼ばれたという訳だな?」 「ええ、それでミシマヘイハチさん」「平八で良いぞ。」 「ではヘイハチさん、貴方は既にミス・ヴェリエールの使い魔になったのですが・・・」 「わしは構わんぞ。」 平八は以外にもすんなり受け入れました。それには訳がありました。 魔法は以前、異世界で幾つか見た事があり知識があったから特に慌てる必要が無く、魔法の道具は『デビル遺伝子』に対抗できる可能性もある。 最初の異世界、いや時代的に戦国の時代に飛ばされた時に見つけた『ソウルエッジ』に複数の世界が交差した時に見つけた『神の瞳』に『黄金の種』など。 それに異世界に飛ばされる事は良い修行になりうる、人外の存在と戦えばデビルの力を超えれるかも知れないと考える。 また元の世界に戻るにしても情報は必要。ここは有名な学校。情報は手に入れやすい。 ルイズは、この爺が自分の使い魔になる事に不満が無いようなので(不満があっても自分は貴族なので問題は無いとも思っているが)自分の立場を教える事にしました。 「じゃあ私の事はご主人様と呼びなさい!!」 「それはイヤじゃ。」 平八はストレートに言った。 「な、な、あなた貴族をなんだと思っているの!?」 「まあまあ、ミス・ヴェリエール落ち着いて、ヘイハチさんと部屋に戻りなさい。」 「はい、分かりました、ミスタ・コルベール。それじゃヘイハチ着いて来なさい!」 コルベールに言われ、しぶしぶルイズは部屋に戻ります。それに続く平八の顔は心なしか楽しそうです。 コルベールは最初の平八の叫びで目を回してる医師を起こしながら、スケッチしたルーンを見る。 「ふむ、彼はただの平民ではないだろうな、このベットは頑丈なのにあの老人は素手で破壊した、あの鍛え抜かれた肉体、軍人でもそうは居ない、それにこのルーン確か・・・」 親子喧嘩していた老人は異世界に飛ばされ何をするのか、それはまだ誰も知らない・・・ 前ページ次ページ使い魔は鉄拳王
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/899.html
夜。 ルイズが目を覚ましたのは自分の部屋だった。 反射的に身を起こしたその視線の先には、椅子に座って優雅にワインを愉しむ男の姿が合った。 笑みを浮かべた男が声を掛ける。 「気が付いたようだな、マスター」 瞬時に意識が覚醒する。 状況を全く飲み込めていないルイズだったが、それでも辛うじて1つの質問をぶつける。 「あああああああんた!いい一体な、何者!?」 男はグラスを置き、悠然とその問いに答える。 どこか上機嫌に見えるのは気のせいだろうか。 「自分の意思で血液を喰らい、自分の力で夜を歩く不死の血族―――吸血鬼というのが我が種族に与えられし名だ。」 ああやっぱり。 広場で自分の血を飲んでいた時点で、予想できた答えではある。 が、やはり年頃の女の子にはなかなかヘヴィな現実だ。 吸血鬼といえば、その残忍さと狡猾さから、ここハルケギニアにおいて最悪の妖魔と称される存在である。 よりにもよってそんなものを使い魔として呼んでしまうなんて。 目の前にいる男を自分が完璧に御せたなら良い。 だが、もし暴走し災厄を撒き散らしたなら? 自分の不名誉で済めばまだ良い。 最悪の場合、王族の血に連なる由緒正しきヴァリエール家にも被害が及ばないとも限らない。 つまり? そう、つまりはコイツを呼び出したその瞬間、ヴァリエール家の運命は私の双肩に乗せられてしまったということだ。 余りの現実の重さに再び意識を手放したくなったルイズだったが、どうにか気を取り直して眼前の吸血鬼を見据える。 既に契約は交わされたのだ。 幾ら嘆いた所で、この男が自分の使い魔であるという事実は最早取り消せない。 ならば、自分に残された選択肢は一つしかない。 深呼吸をしてから、努めて冷静に男に問いかける。 「……貴方、名前は?」 男はルイズの傍に跪く。 「アーカード。かつてのマスターはそう呼んでおられました。」 瞑目し、胸の上に手を置いたルイズは、心の内で誓いを立てる。 『この男を使役する。完璧に。一点の曇り無く。』 それは実に簡潔で、そして揺ぎ無い決意の言葉。 『我が誇り高きヴァリエールの名と、そして――――』 それは実に堅固で、どこまでも気高い己への誓約。 『―――我が杖に懸けて。』
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4505.html
前ページ次ページぷぎゅるいず 「この世界の何処かに・・・」 散々お馴染みのこのフレーズ、そう、今回もお話しはここ召喚の儀式から始まります。 いくつものお話しで様々な使い魔を呼び出しては色々な冒険を繰り広げるルイズが今回召喚するのは・・・ 「ルイズが!!」 「あのゼロのルイズが!?」 「ナイチチのルイズが!?」 「いや、見た目はよりはあるほうだぞ!?」 「魔法成功率ゼロのルイズが?」 「おい、見ろなにかいるぞ!?」 「おい、途中で変な事いってるやついなかったか?」 「言ってる事はあってるけど」 「土煙が晴れてきたな」 「あ、あれは」 「「「「「「メイドさんを召喚したーーーーー!?」」」」」」 「あ、あんた誰?」 「私はチェコです」 ぷぎゅるいず 第一話 ~お前ホントはメイドとかじゃないだろう~ ルイズはすっかり困り果てておりました 何せ、メイドです。見た目ただのメイドです。 召喚に成功したのはいい物のやってきたのはメイド、名前はチェコ、とりあえず引率のコルベール先生に 助けを求めようとも 「神聖な儀式じゃけんのぉ、あんお方と契約ばせないけんとよ」 と珍妙な方言で拒否されてしまいました。 回りでは空気を読めない輩がルイズを囃し立てております。 「きしゃあああ!!!黙れ!!」 ルイズはぎゅあわしぃとチェコちゃんの頭を掴み、やがて意を決した様に、 「感謝しなさいよね、貴族にこんな事普通はして貰えないんだから」 と口と口を合わせ・・・・・・ ガップゥ 「なぁ・・・・あれって口付けなのか・・・・?」 「ど・・・どうだろう」 「ふ、おぉーーーーー(訳:私を食べるなーーー!!)」 ルイズはチェコちゃんにがっつり喰われてしまいました。 「え、えーと、契約も出来たみたいですね、ルーンも刻まれましたし・・・・珍しいルーンですね」 コッパゲ先生もとりあえず食われているルイズは見なかった方向で動くようです、酷いですね 「後でスケッチしてもいいですかな?」 そう言った瞬間チェコちゃんは左手のルーンをペリッと剥してオハゲ先生に渡しました。 「え・・・・ええ!?」 これには流石にナマハゲ先生も動揺を隠せません 「いやいやいやいや!!!はずしちゃ駄目だから!!契約の証外したら色々まずいから!?」 大慌てでチェコちゃんの左手にルーンを取り付けました さて、時間はうってかわって、夜中、ルイズの部屋ではチェコちゃんが新しいご主人の為に一生懸命お掃除をしております なんだかんだと言ってもやはりメイドさん、掃除、洗濯となんでもチェコちゃんはこなすのです。 チェコちゃんは骨の髄までメイド色なのです ただ、問題はずっと口にご主人のルイズを含んだままだという事ですけどね。 第2話予告 メイドに降りかかる様々な災難、しかしメイドは笑って受け止める、なぜなら奴は・・・・・・・・・ 次回:だって仕方ないじゃん、そういう役所が定着したんだから に続く 前ページ次ページぷぎゅるいず
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/6623.html
前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ 悲鳴と同時に弾かれるように外に飛び出すタバサとエレアノール、一瞬遅れたキュルケは外に飛び出す前に、景気のいい音と共に小屋の屋根が吹き飛ぶのを目の当たりにした。青く広がる空と、それをバックにして立っている巨大な影。 「ゴーレム!!」 キュルケの悲鳴。それと同時にタバサが杖を振って、唱えていた魔法を解き放つ。巨大な竜巻が舞い上がり、ゴーレムへとぶつかって行く―――が、その質量を押し切るほどの力はない。続いてキュルケも炎の魔法を放ち、ゴーレムを火達磨にするが目に見えた効果はほとんど無かった。 「無理よ、こんなの!!」 「退却」 キュルケとタバサは一目散に逃げ出す。エレアノールはそれを横目で見ながら、ルイズの姿を探す。先にルイズに気付いたのはデルフリンガーであった。 「おいおい相棒、娘っ子が無茶してやがるぜ!」 エレアノールから見てゴーレムの向こう側で、ルイズは呪文を唱え杖を振っていた。―――爆発、ゴーレムの背中が弾けるが、その大きさから見て微々たるもの。だが、ゴーレムが背後のルイズに注意を向けるには十分であった。 「ご主人様!! 逃げてください!!」 「いやよ!」 再び杖を振って魔法を放つ―――爆発。 「ご主人様!!」 「いやよ! フーケを捕まえなきゃダメじゃない!!」 ゴーレムは逃げ出したキュルケたち、正面に立つエレアノール、そして背後で失敗魔法を放ち続けるルイズのどれから相手にしようか迷っているようにも見えた。 ―――爆発。その間にもルイズの魔法はゴーレムの表皮を削り続けるが、その都度、土が盛り上がって再生する。しかし、ゴーレムは自分にダメージを与え続けるルイズから相手にすることを決めたのか、ゆっくりとした動作で後ろを向き始める。 「―――!! ルイズッ!!」 エレアノールが地を蹴りルイズの元へと走る―――が、ゴーレムを迂回する分だけ出遅れる。 「私は貴族よ。魔法が使える者を貴族と呼ぶんじゃない! 敵に後ろを見せないものを貴族と呼ぶのよ! それに―――」 ―――爆発。ゴーレムの行動を僅かに遅らせる程度でしかない。だが……この局面では僅かな時間が、貴重な時間となる。 「―――それに! 私は貴女に相応しいメイジだと! 貴女の立派な主だって証明しないといけないじゃない!!」 ゴーレムが足を高く上げ、ルイズ目掛けて踏みつけるように落とす。視界一杯に広がるゴーレムの足にルイズは硬く目を閉じた。しかし、僅かの差で横から飛び込んできたエレアノールがルイズを抱きかかえ、一気に走り抜けた。同時にエレアノールはその場にアイスを数個展開し、ゴーレムが踏み込むと同時に起動させる。キィンという音と共に数メイルほどの氷塊が生まれ、ゴーレムの片足を包み込む。 その足止めが効力を発揮している間にエレアノールは十分な距離を走り、そこでルイズを降ろす。呆然とするルイズに、エレアノールはその頬を平手で叩いた。 「ルイズ! 何で逃げなかったのですか!!」 「え……え、だって……だって……」 ルイズの目から涙がぼろぼろとこぼれだす。エレアノールは硬く引き締めていた表情を、フっと和らげて微笑みを浮かべる。 「誇りをもって命を賭すのと、虚栄のために無謀なことに挑むのは別物です。それに……、ご主人様は気高き誇りを既にお持ちじゃありませんか。何人にも折ることの出来なかった、決して諦めず投げ出さなかった誇りを……」 スっと立ち上がると背後に顔を向ける。エレアノールの視線の先には足を覆っていた氷塊を砕いて、体勢を立て直しつつあるゴーレムの姿があった。 「私には、それがとても眩しく思えるのですよ……お仕えするに値するほどに」 ―――それは憧憬の声――― 「エレアノール……貴女……」 エレアノールの背中越しに聞こえてきたのは、かつて夢の中で聞いた昏い声。それと同じものを含んでいた。 「―――あのゴーレムは私が相手をします。ご主人様は安全な場所へ」 「エレアノールッ!!」 エレアノールはデルフリンガーを握り直すと、ゴーレムに向かって駆け出した。ルイズは悲鳴にも似た叫びを上げてその後を追おうとしたが、目の前にタバサが跨ったシルフィードが舞い降りて立ち止まる。 「乗って」 「でも、エレアノールが!」 「わかってる。でも、貴女が先」 ルイズは渋々とタバサの手を取り、シルフィードの背中へと引っ張りあげてもらう。ルイズがしっかりと跨ったことを確認すると、タバサはシルフィードへ指示を与える。 「キュルケとエレアノールとロングビル、ゴーレムの隙があり次第順次回収」 「きゅいきゅい!!」 シルフィードは翼を大きく広げ、空へと舞い上がった。 ぶんッ―――重々しい音と風圧がエレアノールのすぐ脇を通り抜け、一瞬後には地面を揺らす衝撃となって響きわたる。それを引き起こしたゴーレムの拳は、一メイルほどの大穴を地面に作ってめり込んでいた。それが引き上げられようとする瞬間、周囲にアイスが次々と設置されて即座に起動する。凍結し、ゴーレムの右手を地面へと縛りつける。 「えい!!」 地面から跳び、ゴーレムの左肩から胸にかけて斬りつける。残された左手を振り回してくるが、それをゴーレムの身体を蹴った反動で距離を稼いで避ける。 「やるな、相棒。でも見てみな、斬ったところがまた再生してやがるぜ」 「そのようですね」 大きく斬り裂かれていた箇所が、徐々にくっ付き元通りになる。 「向こうの再生力がどれほどかは分かりませんが、このままでは消耗戦に持ち込まれると厄介です」 「あの手のゴーレムは術者のメイジを叩けばいいんだが、隠れたまま出てこねーみたいだな」 ガキンっと右手の氷塊を砕いてゴーレムが立ち上がる。 「そういや相棒はさっきから氷で凍らせてるみてーだが、あれで一気に全身を凍らせるのは出来ねーのか?」 「これだけ大きいと無理です―――ね!!」 地を駆けて、立ち上がったゴーレムの足の間を一気に走り抜ける。同時に右足を斬りつけて、左足にアイスを設置する。潜り抜けると同時にアイスを起動させ左足を氷で止め、残った右足が再生しきる前に完全に両断しようと振り返って斬りつける。 ―――ガキィィィンッ 「ッ!?」 「いでででででッ!?」 今までの土とは違う手ごたえと衝撃に、デルフリンガーを握る手が痺れる。先ほどまで土だったゴーレムの右足が、鉄へと変わっていた。 「お、おでれーた、相棒の攻撃を読んで鉄に錬金して防いだぜ」 左足を拘束していた氷塊もあっさりと砕け散って、ゴーレムは自由を取り戻す。 「それに氷を砕くコツも掴んできたみたいですね―――!!」 ビュンという風斬り音を響かせ殴りかかってくるゴーレムの拳を、後ろに跳んで避けて距離を取る。しかし、歩幅の違いからすぐに距離は詰められる。 「相棒! 右から来るぜ!」 「分かってますッ!」 ゴーレムの拳を紙一重でかわし、逆に連続して斬撃を叩き込む。一瞬、ゴーレムの左腕は崩れかけるが、すぐに再生する。 ギーシュの青銅ゴーレムと違い、圧倒的な質量と再生能力を誇るフーケの土ゴーレムに、エレアノールは決め手に欠けていた。ルーンの効果による身体能力の向上もゴーレムからの致命的な一撃を回避するには有効だが、逆に致命的な一撃をゴーレムに与えるには力不足であった。 (正直、これは攻め切れませんね……) エレアノールの顔に焦りの色が浮かび始めた。 ゴーレムとエレアノールの戦いにロングビル―――フーケは、顔に驚きの表情を浮かべたまま見入っていた。当初の予定通り、四人をゴーレムに襲わせ『雷の宝珠』を使わせるつもりだったのだが、エレアノールの予想外の健闘にその目論見は崩れつつあった。 「―――何なんだよ、まったく。あの女は!?」 ゴーレムの足に『錬金』をかけ終えて、小声でぼやく。本当は殴りつける腕に錬金をかけるはずだったが、エレアノールの動きに反射的に足にかけて辛うじて防ぐことができた―――もし、土のままでは両断されて倒れていただろう。 「それにしても、さっきから氷漬けにされるのが厄介だねぇ」 先ほどからゴーレムの拳や足にまとわりつく氷塊に眉をひそませる。最初は空からタバサが魔法をかけてるのかと思ったが、それにしてはエレアノールの攻撃とのタイミングが合いすぎる。無論、エレアノール自身がそれを行っているのなら説明がつくが、そうだとすれば杖も呪文詠唱もなしに氷塊を生み出していることになる。 「つくづく謎の多い使い魔だね―――チッ!」 ぼやいている間に左腕の三箇所に深い斬撃を入れられ、崩れ落ちようとしていた。慌てて再生させるために精神を集中させて、それらをつなげ直し―――消耗した精神力に軽いめまいを覚える。 (このままじゃジリ貧だねぇ……) フーケの顔にもまた、焦りの色が浮かんでいた。 上空からルイズはエレアノールとゴーレムの戦いを、ハラハラしながら見つめていた。ちょうど、木々の間から『フライ』で飛び上がって合流してきたキュルケも、落ち着きのない眼差しで眼下に視線を向けていた。 彼女たちが見守るエレアノールの戦いは、ギーシュとの決闘の時に見せた疾さでゴーレムを翻弄しているようにも見えたが、斬りつける端からゴーレムは再生し、決め手に欠けているのは一目瞭然であった。 そしてタバサは二人と違い、戦いそのものより時折ゴーレムの行動を阻害する氷塊を注意を払っていた。氷塊を生み出しているのは状況から見てエレアノールの仕業、なのに杖も持たなければも詠唱すらもしている様子がないと―――タバサの思考にそれらの信じがたい事実が深く刻まれる。 「タバサ! お願い、エレアノールを助けて!!」 「近寄れない、今は注意を引くのが精一杯」 シルフィードは何度かゴーレムの間合いギリギリを飛んでいるが、ゴーレムの方はそれをほぼ無視してエレアノールに攻撃を加え続けていた。上空から援護するしようにも、タバサの『エア・ハンマー』程度ではゴーレムの表皮を軽く削る程度、トライアングルスペルの『エア・ストーム』は至近距離にいるエレアノールを巻き込みかねない。 それでも注意を可能な限り引くために、タバサは『エア・ハンマー』を唱えて放つ。後ろではルイズが同じように杖を振って、魔法を放つ。タバサの『エア・ハンマー』は狙い通り正確にゴーレムの頭へ、ルイズの『爆発』はゴーレムの胸に炸裂する。 「効果なし。これ以上は精神力を消費しすぎる」 「だからって、何もしないわけにはいかないでしょ!!」 ルイズの叫びにシルフィードに乗り終えたキュルケが頷いて、杖を振って火球をゴーレムへと叩きつける。 「そうね、こればかりは同意するわ」 火球を受けてもビクともしないゴーレムに、ルイズが再び杖を振って魔法を放つ。―――爆発、ゴーレムの肩が弾け飛ぶ。 先ほどまでと変わらない威力であったが、今度の攻撃に対してゴーレムは上空に顔を向けると、右手の手のひらに土の塊―――恐らくは自身の身体の一部―――を生み出し、それを三人目掛けて投げつけてきた。空中でそれらは砂礫になり、弾幕となってシルフィードへと襲い掛かる。 「避けて」 「きゃあぁぁぁ!?」 緊急回避のために大きく翼を羽ばたかせるシルフィード。しかし、砂礫は容赦なく襲い掛かった。 「きゅい~~~!?」 一際大きな塊がシルフィードの頭と翼に当たり、地面へと墜ち始める。キュルケがとっさに『レビテーション』を唱え、ルイズを抱きかかえて宙に舞う。ほぼ同時にタバサも宙に舞い、辛うじて墜落するシルフィードから飛び出し、何とか三人とも着地に成功する。 先に墜ちたシルフィードは何とか起き上がろうとしているが、墜落のダメージが大きいのかその場で悶えていた。 (退却の選択肢が削れた) 森の中を散開して逃げる手も残されているが、下手すれば遭難する―――『フライ』の使えないエレアノールはほぼ確実に。タバサは杖を握り締め、エレアノールとゴーレムの戦いを見つめた。 「エレアノール……」 そしてルイズは、戦いを思いつめた表情で見つめていた。 エレアノールは何度目―――二十何度目になる斬撃をゴーレムの胴体に入れ、そしてまったく同じようにしぶとく再生を続けるゴーレムにため息をつく。 「これほどとは……、厄介ですね」 「あー、でも再生にも精神力使うから、このままいけば勝てるじゃね?」 デルフリンガーの言葉どおり、最初に比べてゴーレムの再生速度も明らかに遅くなっているが、状況は決して楽観できるものではない。フーケが次の一手を打って状況を打開しようとする前に決着をつける必要がある、とエレアノールは考えていた。ブゥン、と風切り音と共に視界に広がるゴーレムの拳をバックステップで回避―――しかし、先ほどのゴーレムの攻撃で地面に降りてきたルイズたちに攻撃の矛先が向かないように、最低限の距離に留める。 (仕方ありません。何とか両足を断って、撤退するための時間を稼ぎ―――) 「『雷の宝珠』! 私に応えて!!」 エレアノールの思考を中断させたのはルイズの必死の叫び。振り向くといつの間にか『雷の宝珠』―――トラップカプセルを掲げていた。エレアノールのために何か出来ることを、と考えた上でタバサから強引に受け取っての行動。だが、トラップカプセルはルイズに応えない―――魔法との相性の悪さゆえに。 「お願いッ!! お願いだから!!」 「ご主人様! 早く逃げて―――あッ!!」 エレアノールはルイズが掲げているトラップカプセルを見て気付く。自分が使っているアイスのトラップカプセルでは、膨大な質量のゴーレムの足止めにも使えない―――だが、攻撃力に優れたサンダーのトラップカプセルなら? 「ご主人様、それをこちらに! 『雷の宝珠』を!!」 「え? ……ええ、分かったわ!」 ルイズから投げられたトラップカプセルをエレアノールは地を蹴って跳び―――その直後、ゴーレムの一撃が彼女の立っていた場所に叩きつけられる―――空中で受け取り握り締めた。振り返りながら着地し、ゴーレムへとトラップカプセルを向ける。 「これで―――」 左手のルーンが一際大きく光り輝き、ゴーレムの足元に八個のトラップが設置される。 「―――終わらせて頂きます!!」 そして起動。―――眩い雷光と轟く雷鳴がゴーレムを包み込み、弾けた。 「おでれーた、すっげぇ雷撃だぜ」 デルフリンガーの呆気に取られた声が、雷鳴が消え去った後の静けさの中に深く響いた。雷撃の真っ只中にあったゴーレムは全身からブスブスと焦げ臭い煙を上げており、徐々に崩れつつあった。 ルイズはその様子を呆然と見つめていたが、ゴーレムが完全にただの土の塊になると安心して放心したのかその場に崩れるように座り込んだ。タバサはゴーレムの最後を見届けると、「きゅい~~~」と痛みに耐えているシルフィードの元へと向かい、キュルケも驚きと喜びの表情を浮かべてエレアノールの元へと駆け寄る。 「お疲れ様、エレアノール! ギーシュの時もそうだったけど、貴女には本当に驚かされるわね!」 「いえ、それほどでも……。それより、ゴーレムを操っていたフーケは?」 その言葉にキュルケは首を振る。フーケを探していたが見つからなかった、と。 「そうですか……。あと、ミス・ロングビルは見かけられませんでしたか?」 「そういえばどうしたのかしら―――あ、いたわよ。どうやら無事みたいね」 辺りを見回していたキュルケが、ある一方へと指差した先に森の中から歩いてくるロングビルの姿があった。 「皆さん! ご無事ですか!?」 「ミス・ロングビル! 今までどうしてたのかしら?」 キュルケの問いかけに、ロングビルは顔を伏せる。 「申し訳ありません。森の中で突然当身を入れられて、つい先ほど、気付いたばかりなのです……」 「じゃあ、そっちもフーケに襲われてたってこと?」 「恐らくは……、黒いローブも着込んでいたみたいですし」 ロングビルはキュルケとの問答を切り上げると、エレアノールに顔を向ける。 「それにしてもミス・エレアノール、貴女は『雷の宝珠』を扱えたのですね?」 「ええ……、私も同じものを持ってますし」 デルフを地面に突き刺し、空いた手で服の中から手持ちのトラップカプセルを取り出す。『雷の宝珠』と寸分違わぬ見た目のそれに、ロングビルと近くにいたキュルケ、そして放心状態から立ち直って寄ってきていたルイズが目を丸くする。 「ええええ~~~!? な、何で貴女がこれを持ってるのよ!?」 ルイズの叫び声は、静けさを取り戻しつつあった森に強く響いた。キュルケはその叫び声の大きさに顔をしかめ、ロングビルは口をパクパクさせながらエレアノールのトラップカプセルに見入っていた。 「これは知り合いの学者さんが作った魔法を応用したトラップカプセルというものです。中に決まった種類のトラップ、魔法仕掛けのカラクリが入ってまして、こういう感じに―――」 手近な地面に設置するように操作する。パシュっという軽い音と共に、なだらかな起伏をもった板状のアイスが設置された。 「望んだ場所を決めて設置して、好きなタイミングで起動させるように考えれば、それを読み取ってくれるのですよ」 キィンという音と共にアイスが起動し、先ほどのゴーレムに対して使ったときよりも小さめの氷塊を生み出す。 「では、先ほどの『雷の宝珠』も同じ方法で使えるのですか?」 「……ええ、その通りですよ」 ロングビルの言葉にエレアノールは頷いて同意する。 「なるほど……。あの、その正体が何であれ学院の秘宝であることは間違いありません。『雷の宝珠』をこちらに……あと、見比べてみたいので貴女のトラップカプセルもお借りしてもいいですか?」 「構いませんよ」 手を伸ばしてきたロングビルに、『雷の宝珠』とトラップカプセルを手渡す。 「―――でも、魔法そのものとは相性が悪くて、メイジには使えないものらしいです」 「ッ!?」 エレアノールの言葉にロングビルの表情が固まった。二つのトラップカプセルを持つ手も、僅かながら震えている。 「それじゃあ、あたしたちには使えないの? ミス・ロングビルの次に試してみようと思ったのに」 キュルケがトラップカプセルを見ながら残念そうに呟く。 「作成した学者さんも言ってましたし、先ほどもご主人様が使えなかったので間違いないですね。……ミス・ロングビルも、『今までに一度くらい』は試されたことはありませんか?」 エレアノールは微笑みながら、自然な動作でデルフリンガーの柄に手をかけて、僅かながら重心を移動させる―――引き抜いていつでも斬りかかれるように。キュルケやルイズは気付いていないが、目の前のロングビルはそれに気付いて瞳に動揺の色を浮かべていた。 「それではミス・ロングビル、そろそろ私のトラップカプセルを返して頂けますか? 学院に戻るまで、フーケが再び襲ってこないとも限りませんし、迎え撃つにしてもトラップカプセルがある方が有利なので」 「そうね。タバサのシルフィードも回復したみたいだし、そろそろ戻るべきよね」 ルイズの視線の先では、タバサの回復魔法で痛みが治まったシルフィードが「きゅいきゅい♪」と元気に鳴いていた。エレアノールも横目で見ながら、ロングビルから自分のトラップカプセルを受け取り、服に仕舞い込む。 「それじゃあ帰りましょ。……でも、シルフィードもいるのに帰りも馬車なのは嫌よねぇ」 キュルケのもっともな言葉に、シルフィードの治療を終えて歩み寄ってきたタバサが口を開いた。 「上空の偵察役と地上の馬車役、二手に分かれればいい」 馬車はゴトゴトと音を立てて学院への帰路を順調に進んでいた。 馬車の上には御者のロングビルとデルフリンガーを抱えたエレアノールの二人、残りの三人はシルフィードに乗って上空を優雅に学院への帰路を辿っていた。 「ねぇ……」 ロングビル―――フーケが前を見たまま、エレアノールに話しかけたのは道のりの半分を終えた辺りであった。 「あんた、いつから気付いていたんだい?」 「確信はもてませんでしたが……気付いたのは、あの廃屋の中で『雷の宝珠』を見つけた時ですね。―――違和感は、宝物庫で貴女が伝えてきた目撃情報を聞いたときからずっとありました」 鞘から若干刀身を覗かせているデルフリンガーが、興味深そうにカチャカチャと鍔を鳴らす。 「へぇ……? あたしが持ってきた証言のどこがおかしかったのだって?」 「どこがというより、一通り全部ですね。昼間でも暗い森の中で黒ずくめの男を目撃したという農民。そんな深夜に真っ暗な森で黒ずくめの人など見えるものじゃありませんし、目撃者が灯りを持っていたのならフーケも気付いているはずです」 「ああ、言われてみればそのとおりだね……やれやれ」 淡々と話すエレアノールに、フーケは苦笑しながら肩を揺らす。 「その目撃者が貴女の聞き込みに応じる―――朝から聞き込みを開始したのであれば、少なくとも学院の近くまで目撃者が来ていたことになりますけど、馬で四時間以上もかかるほどに距離が離れているのであれば、偶然にしても出来すぎてます。……もちろん、目撃者がフーケかその協力者で誤った情報を貴女に伝えた、と言い逃れできますけど」 「ははは……、言い逃れさせる気があるのかい?」 苦笑を通り越した、明るい―――しかしどこか空虚な笑い声。 「農民が真実フーケの目撃情報を知らせたものと考えるにしては、不自然なほどの偶然の連続。一方で誤った情報を掴まされたとしたら、『雷の宝珠』があの場所にあること自体がありえません。……しかし、実際に置いてあった以上、フーケには何かの『目的』で置いておく必要があったのと、私たちが回収してもそれを取り戻す『手段』を持っていたということです」 一呼吸言葉を置いて、エレアノールはフーケの様子を伺う。笑い声は収まっていたが自分のミスに呆れているかのように、押し殺した含み笑いで肩を震わしている。 「―――その『手段』は、メンバーの中にフーケかその協力者がいるだけで容易に達成できますしね」 「それであたしが怪しいって……わけか」 「ええ、それにあの時、あわよくば私のトラップカプセルも盗ろうと考えたのでしょう?」 フーケは肩を竦めて聞こえるようにため息をついた。そして自嘲気味な笑い声を交えて答えてくる。 「やれやれ、欲張りすぎたって話だね……。ああ、目的は『雷の宝珠』の使い方だよ。売り払うにしろ使うにしろ、使用方法がわからなきゃ価値もつかないし意味がないだろ? ゴーレムで襲えば、使い方を知ってる奴が対抗するために使うと踏んでいたの……だけどねぇ」 ガタンゴトン、と大き目の石を車輪が轢いて、馬車が大きく揺れる。その揺れに合わせるように、フーケは肩を落とした。 「それで……あたしをどうしようって言うんだい? このまま学院に連れて帰って、オールド・オスマンのセクハラ爺に突き出す気かい?」 「……貴女は何で貴族ばかりを狙われるのです? 確かに見返りは大きいですが、危険も相応に大きいですよね?」 自分の命運をかけた問いかけ―――答え次第では全力で逃げることも想定していた―――に、問いかけで返されてフーケは肩透かしを食らった気分になる。 「……あたしは貴族が嫌いなんだよ。偉そうに振舞っているくせに、自分の欲望に忠実な自制心のないケダモノじゃないか。それに、見返りの大きいというのも大切なんだよ。倉に貯めこまれているより、もっと有益に使われるべきなんだし」 「そうですか……」 エレアノールは相槌をうつと、そのまま黙り込む。ゴトゴトという馬車の車輪の音が大きく響いた。その沈黙にフーケは最初は我慢していたが、すぐに気になるように後ろを振り向く。 「……黙ってられたら気になるじゃないか、何とか言って欲しいもんだね」 「いえ、ちょっと知り合いを思い出していたもので……失礼しました」 どこか慈しむような微笑みを浮かべてエレアノールは頭を下げる。 「念のために聞きますが、『雷の宝珠』や私のトラップカプセルはまだ狙っておられるのですか?」 「メイジには使えないのだろ? その手の盗品を裏で買い取ってくれそうな貴族様はメイジばかり。でも、使えもしなければ、平民の反抗するための牙になりそうな厄介な秘宝を、欲しがるわけがないじゃないか。安く買い叩かれるのがオチだね」 言葉の最後に、貴族に恨みを持つ平民に渡すのも一興かもね、と愉快そうに付け加える。 「……じゃあ、もう私たちに手出ししないというのであれば、何も言いませんよ。私たちは『土くれ』のフーケを追撃して取り逃がしたが、辛うじて『雷の宝珠』を取り戻した。それだけのことです」 「気前がいいねぇ―――で、何が望みだい? それだけ羽振りがいいこと言うからには、交換条件で何かあるんだろ?」 「察しがいいですね。……貴女がもつ情報網で調べて欲しいことがあります」 「調べて欲しいこと?」 フーケの声色に好奇心が混じる。エレアノールは一息深呼吸すると、トラップカプセルを手にとって見つめる。 「このトラップカプセルは私の世界―――遠い故郷の産物です。『雷の宝珠』に関してはオールド・オスマンに後でお聞きしますが、それ以外にも帰るための手がかりが必要なのです。貴女には、変わった噂や事件……そういったことを調べて教えてもらいたいのです」 「へぇ……、てっきりヴァリエールのお嬢ちゃんに仕え続けるのかと思っていたけど、里心でもわいたのかい?」 「それをお答えする必要はありますか?」 フーケはエレアノールの答えに、呆れたように肩をすくめる。 「つれないねぇ……。ま、いきなり拉致紛いの召喚で使い魔にされたら、普通なら激怒するだろ? それなのに、あんたは嫌な顔を一つせずに忠実に従ってる。はっきり言って信じられないよ―――あんたみたいな名家、しかもかなりの上級貴族の出自の者だとね。正直、今さらって感じはあるね」 「私が上級貴族と? その根拠は?」 「雰囲気に物腰。……メイジじゃないのが不思議だけど、言い換えればメイジじゃないこと以外は、貴族としての教養をまともに受けてるように見えるねぇ」 エレアノールはその言葉を聞いて深く考え込む。しばしの間、馬車の音が再び大きく響いたが、今度はフーケも急かすことは しなかった。 「……別に私は強引に連れてこられたとは思っておりませんよ。気がついたら使い魔になっていたというのは少々呆れましたが、ご主人様も良い方ですから不満はありません―――正直なところ、帰れたとしてもまたお仕えするために戻ってくるかもしれませんし、ね」 言葉を区切り、感慨深げにふぅ、と息をつく。 「……それに、私も貴族としての名を剥奪された、みたいなものです」 「へぇ……」 フーケはどこか親近感―――同じ境遇の者へ向ける好意の感情―――を秘めた視線をエレアノールに向ける。 「―――話は飛びましたが、今言ったことを調べていただけますか?」 ゴトゴトと馬車は順調に学院への帰路を進んでいた――― 「いいさ、その条件を飲んでやるよ! 正体を知られた以上、あんたに命を握られているに等しいからね。投獄されて処刑されるのに比べれば、その条件なら天国みたいなものさね!」 「よろしくお願いします、ミス・ロングビル―――いえ、フーケとお呼びするべきですか?」 「人前じゃロングビルって呼んでもらいたいね。本名も別にあるが……教える気はないよ」 ―――その馬車の上で大貴族の令嬢に仕える使い魔と、貴族専門の大盗賊との間に紳士協定に等しい盟約がその時、結ばれた。 「やれやれ、相棒はお優しいねぇ」 「このことは秘密ですよ、デルフ」 「わかってら! おれっちだって空気くらい読める!」 一人、会話に入れなかったデルフリンガーは、少々寂しそうに鍔を鳴らしていた。 タバサは二人の会話を聞いていた。正確には、風の魔法を使ってシルフィードに二人の声が届くようにして、聴覚を同調させることで聞いていた。ロングビルの正体とその目的、そしてエレアノールがそれを見逃すことも全て。しかし、タバサはそれ以上に重要なことを聞き逃さなかった。 (『私の世界』……言い直していたけど、確かにそう言った) その言葉がもつ意味を考える。後ろで軽い口喧嘩を始めているルイズとキュルケの声が、雑音として響くが思考を妨げるほどでもない。 (つまり彼女はここを『別の世界』として考えている) 思考を一つ一つ進めて解を求める。聖地の向こう―――ロバ・アル・カリイエのことを最初に考えるが、それはあくまで『東の世界』であって『別の世界』ではない。次いで思い浮かべたのは、文字通りの『異世界』、子供向けの寓話や小説でまれに出てくる概念だった。 (ありえない……、本当に『ありえない』ことばかり) 眼下に広がる草原、その中で学園への帰路を順調に進む馬車を視界に捉える。エレアノールとフーケの会話は歓談へと変わりつつあったが、タバサはそれらの言葉も逃さないように一言一言を脳裏に刻みはじめた。 学院に帰還した五人の報告にオスマンは顔を綻ばせてそれを讃えて、エレアノールとフーケを除く三人に爵位と勲章の授与申請を、フーケに金一封の進呈を約束する。エレアノールにも金一封を渡そうとしたが、それを丁重に断って話したいことがあると申し出て学院長室に残った。ルイズは残ろうとしたが、エレアノールの申し訳なさそうな顔とオスマンの退室を進める言葉に、他の三人と一緒に渋々と部屋から出て行った。 「さて、話したいこととは何じゃね? もしやわしの側に仕えたいと申されるのかのぉ? それならば、次席秘書としてミス・ロングビルと共に―――」 「いえ、そのようなことではなくて、『雷の宝珠』についてお伺いしたいことがあります」 エレアノールに一言であっさりと否定され、オスマンは明らかに残念そうな顔をする。しかし、一瞬後には元の表情へと取り繕い直す。 「あの『雷の宝珠』は私が居た世界の道具―――トラップカプセルという道具です。私も同じものを持っています」 「ふむ……、確かに『雷の宝珠』と同じものじゃの」 エレアノールの差し出したトラップカプセルに、目を細めて頷く。 「それで『雷の宝珠』をどこで入手されたのでしょうか? 少なくとも、こちらの世界では手に入らないはずです」 「『私の居た世界』に『こちらの世界』か……、なるほどのぉ」 エレアノールの『世界』を故意に使った推し量るための言い回しに、オスマンは何やら納得するように頷く。 「いや、ミス・エレアノールの言葉で合点がいった。それの持ち主も同じようなことを言っておった」 オスマンは懐かしさと、そして軽い後悔が混じった表情を浮かべて、三十年前に『雷の宝珠』を入手した経緯を話し出した。 ―――森でワイバーンに襲われたときに一人の男性に『雷の宝珠』で救ってもらったこと、そして瀕死の重傷を負っていた男性は看護の甲斐なく亡くなったこと、そして形見として『雷の宝珠』と彼が所持していた幾つかの物品を持っていることを。 「彼はベッドの上でうわごとを死ぬまで繰り返しておったの。『ここはどこだ? 何故、時の航路図が使えない?』とな。……『時の航路図』とやらは、これのことかの?」 机の引き出しから取り出された金色に鈍く光る、一見すると幾つかの時計が組み合わさったようなアイテムに、エレアノールは息を呑む。 「……ええ、それは確かに『時の航路図』です。私たちの間では移動用のアイテムとして使っていました。もちろん、制限はありますが。少し、お借りしてもよろしいでしょうか?」 時の航路図。遺跡と地上を瞬時に移動でき、また既に入ったことのある遺跡ならば自由に移動できる冒険者の必須アイテム。 震える手で時の航路図を受け取り、移動したいと思うだけで起動するその機能を試す。 ―――しかし、何も起こらない。 「どうじゃの?」 「……やはり、壊れてるみたいですね」 元の持ち主の言葉から薄々予想はついていたが、期待が打ち砕かれてエレアノールはため息をつく。遺跡の中では時の航路図が使えない場所もあるため、本当に壊れているかどうかは分からなかったが、少なくとも役に立たないことには変わりなかった。時の航路図をオスマンへと返し、自分と同じ異邦人の詳細を知るための疑問を投げかける。 「それでその男性はこちらにどのようにして来たとか、何か言っておりませんでしたか?」 「ふぅむ……、意識が朦朧としておったからのぉ。わしも聞いてみたのじゃが、あまり要領を得なかった。他に言っておったことと言えば『俺は早くバルデスさんの仇を取るんだ』とか言っておったが」 「―――ッ!? それは、確かに言っておられたのですか?」 「ああ、そうじゃ。間違いなく言っておったのじゃが……それがどうかしたのかの?」 「いえ……、何でもありません」 震える声を隠し切れないエレアノールに、オスマンは怪訝な顔をする。 (私と同時期の誰かが、『三十年前』のこちらの世界迷い込んだということになるのでしょうけど……) 遺跡―――精神世界アスラ・ファエルの時空が乱れているのは、冒険者の間では周知の事実であった。ある遺跡の階層では、一日を過ごしても地上では一瞬のことであったり、逆に地上での一ヶ月が僅か十数分で過ぎ去る階層もある。同時に同じ階層に多くの冒険者が入っても、並列する別の時間軸に分かれてお互いに会うこともなかった事例。そして、数日前に行方不明になった冒険者が死後数ヶ月を経過した状態で発見されて、その後に遺跡に入った者が行方不明になる前の『生きていたときの冒険者』と出会っていた事例すらあった。 「何やら考え込んでいるようじゃが、話は以上かの?」 「え? はい、色々とありがとうございました」 エレアノールは礼を述べると、学院長室を後にしようとし――― 「ところで、ミス・エレアノール。その左手のルーンについて知りたいことはないのじゃろうか?」 老練さと威厳さ、そしてどこか愛嬌を感じさせるオスマンの声色に、エレアノールは目を瞬かせた。 ルイズは学院の着付け部屋の前で、まだ終わってないエレアノールを待っていた。先ほどまでにぎわっていた生徒と教師は既に舞踏会会場へと立ち去っており、着付けを手伝っていたメイドたちもほとんどが会場での他の仕事のためにこの場を後にしていた。 辛抱強く待っていたルイズであったが、我慢の限界が近づいたのか着付け室を覗こうと思い出したとき、ちょうどそれを見計らったようにドアが開いた。 「お待たせしました、ご主人様」 「遅かったじゃないのよ!」 口では文句を言いつつも、ルイズはエレアノールの美しさに目を見張っていた。長い黒髪をフィッシュボーンにまとめ上げて銀細工の髪飾りのアクセント、青いドレスは引き締まった身体のラインを美しく見せ、麗しい雰囲気を引き立てていた。自分の見立ての正しさを誇りつつ、ルイズは表情を取り繕い腕組みをする。 「なかなか似合ってるじゃない。私の従者として合格よ」 「ありがとうございます、ご主人様も似合っておられますよ」 ルイズの可憐な高貴さを引き立てる衣装へのエレアノールの褒め言葉にに、「当然じゃない」と言い、顔を背ける。それは照れ隠しの動作だと見え見えであった。 「……あ、あと、もう『ご主人様』って言わなくていいからね! 特別に、『ルイズ』って名前で呼ぶことを許してあげるんだから!」 「よろしいのですか?」 「貴女は態度もいいし、それくらい構わないわよ。それに……『雷の宝珠』奪還の立役者に、せめて私から報奨を与えないと不公平じゃない!」 ルイズの態度にエレアノールは微笑みを浮かべて頷く。 「では、ルイズ様。そのようにいたします」 「じゃあ、早く行くわよ。 『フリッグの舞踏会』はもう始まってるのよ」 照れた表情を見せまいと先を歩き出すルイズの背中を見ながら、エレアノールは胸中で呟く。 (その真っ直ぐな心があるのなら大丈夫でしょうね。……いつかは貴女も気付くでしょう) かしずかれ傲慢に他を見下して腐敗する貴族と、それに苦しめられている平民。魔法の使えないと嘲笑されているルイズは、皮肉なことに見下される苦しみを知っている稀有な貴族であった。それゆえに、貴族社会に一石を投じる存在になりえる可能性を秘めているとエレアノールは感じていた。 (貴女ならきっと大丈夫です……、そのことを祈ります) 「ちょっと! 早くついてきなさいよ!」 「はい、ただいま行きます!」 廊下の端から呼びかけるルイズに、エレアノールはドレスの裾を摘んで小走りで追いかけた。 同時刻、女子寮のルイズの部屋。 「そりゃあ、おれっちは錆が浮いてて見栄え悪いけどよぉ。置いていくなんて酷すぎじゃね?」 まったく人気のない寮の静けさが、デルフリンガーの孤独感を一層かき立てていた。静けさゆえに、遠くから聞こえてくるパーティの歓談が、孤独感をかき立てるように室内に響いてくる。 「せめて会場の外に置いておくとか気を利かせてくれよ、相棒ぅ」 ―――それは悲哀の声 間違いなく、確かに、一点の曇りも、誰もが疑う道理の全くない悲哀の声ではあったのだが、窓から差し込む月光と室内の家具だけがそれを聞いていた。無論、聞いていたが何か特別な変わったことがあるわけでもなかった。 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4898.html
前ページ次ページ蒼い使い魔 「遅かったな」 医務室の窓から外を眺めながら振り返らずにバージルは言った。 入って来たコルベールは額に汗を浮かべ 「お待たせして申し訳ありません、ではどこからお話ししていいものやら…」 と困ったように言った。 「聞きたいことがある、この左手の模様はなんだ?」 グローブを外し左手の甲をコルベールに見えるように掲げる。 「はい、それは使い魔のルーンです、契約の儀式をした際に使い魔の身体に刻まれます。 そちらのルーンは珍しいものでしてねぇ、現在こちらで調査中ですよ」 「使い魔契約だと…?そんなものいつ俺が了承した」 バージルから凄まじい殺気が漂ってくる、 コルベールは殺気に圧倒されそうになりながらも「申し訳ございません、ですが、使い魔との契約ができないと 彼女は二年次に進級できないので「そんなことはどうでもいい」……」 言い切る前にバッサリである、取り付く島もないとはこのことだろう、しかしコルベールは下がらない。 「それに、契約をさせていただいたのはもう一つ理由があります」 「なんだ…」 「あなたが召喚された際に負っていた怪我です」 「…」 「あなたの再生能力には驚かされましたが…その腹部の傷、それだけは完全には塞がっていませんでした。 呼び出された平民がこの学院で治療を受けるとなると面倒な手続きが必要なのです、ですからその手続きを簡略化するためにも 彼女の使い魔、ということにして治療を受けさせたのです、それに、治療に必要な秘薬代は彼女が負担しています」 多少の脚色は入っているがほぼ事実である。 「ちっ…」 軽く舌うちするバージル。 (これはもうひと押しだ!) そう確信したコルベール「つまり彼女はあなたの命の恩人ということになります」 きまりが悪そうに外へ視線を向けるバージル。 「フン・・・ところで、この世界には俺の知らない力があるらしい、貴様が放って来たのがそうだ、 いったいあれはなんだ?」 「失礼ですが魔法をご存じではないのですか?」 「知っているには知っているが、俺の知っているものとはずいぶん違う」 「そうですか、この世界には魔法という概念があります、少々かいつまんで説明しましょう」 現役の教師なだけあって、バージルを巧く丸めこみ自分のペースに持っていった。 コルベールは魔法の概念、系統、使い魔、魔法が使えるか否かによる身分社会制度をバージルに説明した。 「成る程…大体理解した…」 「そうですか、それはよかった。」 満足そうにコルベールは微笑む、やはりそこは先生、教えたことが伝わって喜ばしいのである。 「どうやら俺は…あの女に助けられたようだな…」 「で・・・ではっ!?」 バージルは腕を組み目を瞑りながら言った。 「あの女に、少しだけ付き合ってやる、貴様らの言う、魔法とやらの力にも興味がわいた」 そう言い残し、医務室のドアから出ていった…… 「だっぁぁぁぁ~~~~つかれたぁぁぁぁぁ~~~~~」 コルベールは倒れ伏すように医務室のベッドに倒れこんだ。 「いままで生きてきたなかで最も気を使う会話ベスト5にランクインしそうな勢いでしたよ…」 まったく、あんなのが使い魔とは・・・ミス・ヴァリエールもかわいそうに…そう呟いたその時 「おい、コルベール」 ドアの前にバージルがいた。 「はっはい!なんでしょう!?」 慌てて飛び起きたコルベールにバージルは呟いた。 「あの女の部屋は…何処だ」 「・・・・・・」 前ページ次ページ蒼い使い魔
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/8064.html
黒王「ハイハイハイ。まーそういう訳で黒王なんですけどね、いやー、ほんと、がんばってまいりましょうさー行きましょー」 黒王「まー黒王としては? ドリフも発売されましたし、ついでにハルケギニアでもヒラコークオリティで世界中ムッチャクチャにしてたろかなーとか思ってるワケなんですけど」 ルイズ「・・・・・・何やってんのよサイト」 黒王(?)「ハァ? 今の私はサイトではあっりませーん。ドリフのカリスマ溢れる黒幕、こく☆おうだって言ってんだろが、この貧乳カービィ(CV釘宮)。」 黒王(?)「なにお前? ツンデレなの? 女王様なの? どっちかにしろよ。だいたいお前の胸が大きければ万事丸く収まるんだよ。なにそのまな板なめてんの?」 ルイズ「ハァー!? あんた、いい加減にしなさいよ!」 黒王(?)「もうやだツンデレめんどくさい。ハーレムエンド行かせろよ。戦国ランス見習えよ。うん?」 黒王(?)「そうだ、俺ちょっとアルビオンでガンダールヴ無双してレコンキスタ滅ぼしてくる。んで巨乳のエルフとイチャイチャしてくる」 ルイズ「ひ、ひどい・・・せっかく最近はいい感じになってきたと思ったのに・・・」 黒王(?)「あっ、泣くでない!! 貧乳はステータス!! 世の中にマニアはいるって!!」 黒王(?)「原作なら俺もメロメロだってノ○ルも言ってた!」 ルイズ「本当に?」 黒王(?)「本当ですって」 黒王(?)「ウソです」 黒王(?)「巨乳こそ正義」 黒王(?)「俺が作るエンディングはなんだかんだで大中小、飛んで巨を併せ持つハーレムエンド。ぶっちゃけ貧乳はどうでもいい。次刊までに虚無の魔法でもなんでもいいからGカップにしてこい」 ルイズ「」 シエスタ「なッ何いってんですか!! ルイズ様にあやまりなさい!!」 黒王(?)「出たなメイド。ゼロ魔のおっぱい(中)担当め」 黒王(?)「お前もメイドならその辺心得て、『ご主人様、私にお仕置きの×××××してください』とか『ああ、ミス・ヴァリエールが起きてしまいます! ×××××をそんなに!』とか言いなさいよ」 黒王(?)「モット伯イベントで色気の一つも見せないってどういうことなの? バカなの?」 ルイズ・シエスタ『死ねーーーーーッ』 終われ。
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/262.html
傍らの豪奢なベッドに眠る主・ルイズを見て、 「なんという寝相だ。」そう呟いてある可能性に気付いた。 『天凱凰との戦いにおいて我自身の体から魔力があふれ出していたか!?』 となると勘の鋭い者やほぼ全ての使い魔たちにも悪影響を与えたかもしれない。 「とりあえず見なかったことにしよう、うむ」果たしてそれで済む事だろうか。 ちなみにルイズがどんな寝相をしていたかというと『クェックェッ』という台詞が似合いそうな、そんな寝相である。 「今からもう一度眠ったら二人まとめて遅刻という事態になりそうだな。」 彼は寝る前に出された洗濯物を抱えて寮付きのメイドとやらを探し始めた。 空がやっと白み始めた頃、ほとんどの『貴族』共はまだ惰眠を貪っているだろうから この時間に人の気配が多く集まっている場所に行けば話が早かろう、という事で食堂脇の調理室へ向かう。 すると別の通路から誰か近づいて来る気配がするのでとりあえず立ち止まってみると 予想通りメイドらしい衣服の少女に出会った。 「もし、一つ尋ねたいのだが。」「あら、あなたは…」 「ルイズという名の貴族に呼び出された人間だ。名前は『ウル』」 「私はシエスタです。それで尋ねたい事ってなんですか?」 「この衣類の洗濯を任せられる者を探しているのだが」 「ああ、それでしたら私がやっておきます。」 「面倒をかける様で済まない。」 「いえ、これも仕事のうちですから。」 顔を良く見ると、やはり疲労の色が微かに見える。頭を抱えたくなった。 「あの…どうかされましたか?」 「い、いや何でも無い。失礼する。」 そして朝。 ルイズを起こそうとするも「やだー、もうちょっと」とか「今日は休むー」とかごねるので 殺意を含む視線で強制的に起こし適当に選んだ衣服を渡して 「さぁさぁ、早く着替えて髪を整えて朝食を済ませて授業に出るッ!」と急かした。 髪を整え終わった段階で、何かを企んでいたらしくルイズが頭を抱えていたのだが無視。 食堂で「あんたの食事はこれよ」と床に置かれたりしたが、視線を上に向けなくてもいいので 素直に状況を受け入れる。 教室へ行くまでの間に「教室には使い魔専用の場所があるからそこに行きなさい」と言われて いざ教室へ入ると原因が解っているだけに逃げるわけにもいかず。 とりあえず使い魔専用の場所とやらに腰を落ち着ける。 next ゼロの破壊神5
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/5193.html
前ページ次ページとりすていん大王 箸にも棒にもひっかかる気は無い 始まるです とりすていん大王 10回目 前回、お父さんとモンモランシーの治療で一命を取り留めたウェールズ王子でしたが迫り来るレコン・キスタの軍勢に風前の灯です 「パリー、覚悟を決めるぞ」 「殿下、地獄の果てまでお供させて頂きますぞ」 王子は四方八方から迫る矢を暴風で叩き落し、並み居る敵をつむじ風で切り裂き、無数の魔法を風の壁で跳ね返します パリーも王子に負けんとその身を翻し、レコン・キスタの兵士に斬りかかります 「パリー・・・生きているか?」 「・・・・・・残念ながら」 闘いが始まってから数刻、すでに王子とパリーの体と精神力は限界に達していました じわじわと二人を兵士達が包囲します 「これまでか・・・」 王子が呟き、空を見上げると同時に一人の兵士が無言で剣を振り上げました 王子の目に青空が写り・・・ 次に空に高く吹っ飛ぶレコン・キスタの兵士たちを見たのです 「な、何?何がおこった!?」 そして、王子は見たのです 逆光にシルエットを写す三人の姿を 「まずは露払いだ!!」 「ひやぁーはぁー いいぜ相棒!!心を奮わせろー」 黒髪の少年 サイトが喋る剣を従えて次々と兵士を切り伏せていきます 彼に放たれた魔法も剣が吸収してしまいました 「ぶぅるわああああ!!」 別方向で人柱が吹き上がりました お父さんが一度腕を降ると兵士達が吹き飛び、蹴り上げると大地が震えます 「こ、これは一体?」 突然の事にウェールズ王子も困惑していると最後のシルエットが王子に話しかけてきました 「王子、死ぬ事は簡単です 王族の勤めと死ぬのもいいでしょう ですが・・・」 有無を言わせぬ迫力にウェールズ王子もパリーも言葉を失います 「女性一人を泣かせるのは男の恥ではないのですか!!」 ドドンと言う効果音と共に仁王立ちのシルエットは王子に告げます 「あーいや、その」 「ええと・・・王子なんですかコレは?」 もう何がなんだか解らないといった感じで王子とパリーはお互いを見つめ合ってしまいました そしてついに最後のシルエットの主が姿を現します その姿に王子もパリーもそしてレコン・キスタ兵士達も畏怖し、叫んだのです 「「「へ、へ、変態だぁーーーー!!」」」 四体の(アマゾネスっぽい)ワルキューレに神輿を担がせ、その神輿に威風堂々と佇む、ブーメランパンツ一丁とマントだけを羽織った男 その名もギーシュ・ド・グラモン改め、ギーシュ・ザ・グレート!! 「さぁ、脱出しましょうウェールズ王子!!」 そう言うが早いが嫌がるウェールズ王子を無理やりに神輿に乗せてギーシュは戦場を脱出するため動き始めたのです お父さん達が戦場に乱入して数分、レコン・キスタの軍勢はめちゃくちゃ理不尽な強さを発揮する三人に手を焼いてました サイトの相手になった兵士はまだいい方です マトモに闘い、敗れました お父さんの相手は不幸でした 何も出来ずに殴られたり蹴られたり頭突きされたりで気を失いました そして、ギーシュの相手をした兵士は・・・ 「うわぁああ!!」 「ぎゃあああ!!」 「うひぃいい!!」 次々と暴走神輿に引かれて吹き飛んでしまいます まるで一人だんじりです 「うわはははは!!」 神輿の上ではギーシュが腕を組み仁王立ちで高笑いをしています 「と、言うか逃げるんじゃなかったのか?」 神輿の中で、何かを諦めた様なウェールズ王子が呟きました 「く、て、撤退!!撤退だぁ!!」 なんとたった三人に押し返されて、戦意を喪失したレコン・キスタ軍は撤退し始めました 「くっ、だが今、無理をしなくてもよい 軍を立て直して万全で仕留めればよい」 「その通りです閣下」 レコン・キスタ本陣では歯がゆそうにワルドとクロムウェルが撤退する軍を見ていました 「お、王子!!敵が、レコン・キスタが引いていきますぞ!!」 「ああ、僕たちは助かったのか?」 王子とパリーが信じられないと言った表情でその光景を見つめていました その時です、彼らが異常な魔力を空に感じたのを 「逃がさん」 空の上、お父さんがくるくると回転しながら点滅を繰り返しています そしてお父さんを中心にまるで大気が渦を巻くように蠢き始めました アルビオンから離れた洋上の空の上、お父さんたちと離れて避難したルイズたちはアルビオンを振り向き声を上げました 「「「「あ」」」」 ウェストウッドの村でサイトの帰りを待つテファや子供達にもそれは見えました 「「「「あ」」」」 タルブやラ・ロシェールでも人々がそれを見て声を上げます 「「「「あ」」」」 ウェールズ王子が空を見上げ言います 「あ」 レコン・キスタの兵士達が呆けた顔で言います 「「「「「あ」」」」」 ワルドとクロムウェルが唖然として言いました 「「あ」」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・・・・・・・・ それはあまりにも、あまりにも巨大な まるでアルビオン大陸と同程度ぐらいはあるのではないかという 「メリーー」 お父さんでした その体がワルドにむかって、クロムウェルにむかってゆっくりと飛来してきます そしてその時、それを見ていた人全てが言いました 「「「「「「「「「「「「「「「「「「「「あ。」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」」 続く 前ページ次ページとりすていん大王
https://w.atwiki.jp/anozero/pages/4570.html
前ページ次ページゼロな提督 ハルケギニアを、今日も朝日が照らし出す。 いつもと同じようにゆっくり顔を出す太陽。森には早起きな鳥たちの歌声。朝靄は木の 葉の上で雫へと変わっていく。生々流転する世の理は変わらならい。 だが、『歴史は繰り返す』という言葉はあるが、実際には一日たりとも同じ事をしていな い人間達。今日も今日とていつもと違う事をしようと頑張っていた。 特にトリステイン上空では頑張りすぎてる人たちがいた。 第22話 嵐の前後 ウルの月、第四週ティワズ、イングの曜日。 ゲルマニア皇帝アルブレヒト三世と、トリステイン王女アンリエッタの結婚式は、ゲル マニアの首府、ヴィンドボナで行われる運びであった。式の日取りは、来月…、三日後の ニューイの月の一日に行われる。 そして本日、トリステイン艦隊旗艦の『メルカトール』号は新生アルビオン政府の客を 迎えるために、艦隊を率いてラ・ロシェールの上空に停泊していた。 後甲板では、艦隊司令長官のラ・ラメー伯爵が、国賓を迎えるために正装して居住まい を正している。その隣には、艦長のフェヴィスが口ひげをいじっていた。 アルビオン艦隊は、約束の刻限をとうに過ぎている。 「やつらは遅いではないか、艦長」 イライラしたような様子で、ラ・ラメーは呟いた。 「自らの王を手にかけたアルビオンの犬共は、犬共なりに着飾っているのでしょうな」 そうアルビオン嫌いの艦長が呟くと、鐘楼に登った見張りの水平が、大声で艦隊の接近 を告げた。 「右上方より、艦隊!」 なるほどそちらを見やると、雲と見まごうばかりの巨艦を戦闘に、アルビオン艦隊が静 静と降下してくるところであった。 「ふむ、あれがアルビオンの『ロイヤル・ソヴリン』級か…」 感極まった声で、ラ・ラメーが呟いた。あの艦隊が、姫と皇帝の結婚式に出席する大使 を乗せているはずであった。 アルビオン艦隊旗艦『レキシントン』号の後甲板で、艦長のボーウッドは、左舷の向こ うのトリステイン艦隊を見つめていた。隣では、艦隊司令長官及び貴族議会議員である政 治家サー・ジョンストンの姿が見える。 「艦長…」 心配そうな声で、ジョンストンは傍らのボーウッドに話しかけた。 「サー?」 「例の仕込みは、どうなっているかね?」 「ああ、あれでしたら…」 つまらなそうに答えるボーウッドは、無意識に『ホバート』号へと視線を向けた。 艦隊最後尾の旧型艦『ホバート』号内部では、準備に忙しかった。 乗組員達が脱出用ボートに『フライ』をかけ、総員脱出の準備をしている。艦の各所で 火薬樽への点火も用意されていた。 「連中がこちらの礼砲に答えるのに合わせ、自爆と脱出が行えます。その後、速やかに砲 撃戦へと移行します…予定通りなら、ですが」 「…そうだね。当初の予定通りに行くなら、だがね」 二人は左舷下方に列をなすトリステイン艦隊を見やる。 事前の情報通り、トリステインの艦艇数はアルビオン艦隊の半分しかない。最新鋭の巨 艦『レキシントン』号に比べれば、どれも旧型で小さく、大砲の射程も短い。 彼等の当初の予定は、トリステイン艦隊の答砲と共に『ホバート』号を自爆させ、トリ ステイン側の実弾による砲撃を自作自演すること。これを口実としてトリステインへ奇襲 をかける、というものだ 両艦隊は高度を揃え、並走する形になった。 「とにかく、まずは旗流信号を送りましょう」 ボーウッドの言葉を控えた士官が復唱し、マストに旗流信号が掲げられる。 ほどなくして、『メルカトール』号のマストにも旗流信号が掲げられた。 『貴艦隊ノ来訪ヲ心ヨリ歓迎ス。トリステイン艦隊司令長官』 特に独創性も怪しい点もない、普通の返信だ。 ボーウッドは緊張した面持ちで次の指示を出した。 「よし、礼砲だ!準備でき次第、撃ち方始め!」 どん! どん! どん! とアルビオン艦隊から大砲が放たれた。 空砲ではあるが、巨艦『レキシントン』号が撃っただけで、辺りの空気が震える。 しばらくして、空の向こうから、轟音が轟いてきた。 トリステイン艦隊の答砲は、『レキシントン』号後甲板にも聞こえている。 『ホバート』号乗員は火種に火をつけた。 だが、サー・ジョンストンもボーウッドも、何も言わなかった。 トリステイン艦隊へ奇襲をかけるなら、砲撃戦を準備しなければならない。だが、二人 とも、その命は下さなかった。艦隊最後尾の『ホバート』号は既に火の手が上がってる。 計画では、そのまま艦内の火薬にも火を放ち、自沈するはずだ。 しかし他のアルビオン艦は、全く動かなかった。火をあげている当の『ホバート』号で すら、火薬庫に火を放っていなかった。 「艦長…今のは?」 クロムウェルの腰巾着と陰口を叩かれる政治家は、信じられないという様子だ。 「答砲、ですな」 ボーウッドは、落ち着いていた。 だがその冷静さが質問者の神経に障った。 「答砲なのは分かっている!だが、今のは…」 「ええ、14発分の音でしたな。左舷に並ぶトリステイン艦隊は、7発しか撃っていない にも関わらず」 「だから、そんなことは分かってるんだ!しかし、最上級の貴族でも11発しか撃たない んだ!しかも、後半七発の音は…」 「我らアルビオン艦隊の、右舷上方から、でしたな」 艦長はヒョイと右側を見た。 艦隊司令長官も、ギギギ…と音を立てるかのようにぎこちなく右へ向く。 アルビオン艦隊右舷、上空の雲の中から、戦列艦が降下してきていた。 艦列中、一番大きな艦の舷側大砲から7本の煙が上がっている。答砲7発分だ。 数はトリステイン艦隊とほぼ同数。 いまだ黒い煙が消えきらない艦のマストに旗流信号が掲げられる。 ボーウッドは、その内容を淡々と読み上げた。 「貴艦隊の来訪を心より歓迎す。ゲルマニア艦隊司令長官」 更に続けてもう一本の旗流信号も掲げられた。 「貴艦隊最後尾艦より火災発生。事故と確認。当方、救助の準備在り」 ゲルマニア艦隊の甲板上では、確かに救命ボートが準備されていた。 だが同時に、全艦艇の舷側は砲口が開かれ、大砲がアルビオン艦隊に向けられていた。 左舷ではいつのまにか、トリステイン艦隊も同じく砲門を向けている。 アルビオン艦隊司令長官は、力が抜けたかのように椅子へドスッと腰掛けた。 「ゲルマニア艦隊が…同盟国だが、条約締結したばかり…しかも他国領土内を堂々と…。 やはり、読まれていたな」 「そのようですな、作戦は失敗です。『ホバート』号へ消火指示を出します。『救助不要、 自力消火可能』とだけ返答しておきましょう。それで納得するはずです」 ボーウッドは全くの事務的な態度で周囲の士官に作戦中止と消火命令を下した。 ゲルマニア艦隊旗艦の後甲板では、角付き鉄兜にカイゼル髯の貴族が、悔しそうにアル ビオン艦隊を睨んでいる。 「くそ…我らが答砲などしなければ、あのまま奴等は砲撃戦に入ったろうに!アルビオン 艦隊を壊滅させる千載一遇のチャンスを、むざむざと!」 隣に立つ恰幅の良い貴族も忌々しげに同意した。 「全くですな!いくら婚儀を血で穢すわけにはいかないとはいえ…口惜しい。命令ではや むを得ないですが…!」 二人とも拳を握りしめ、逃がした大戦果と手に入れ得たはずの立身出世を力の限りに惜 しんだ。 右舷上方より降下してきたゲルマニア艦隊はアルビオン艦隊の右側に高度を揃えて並走 を始めた。 その様子に、ボーウッド艦長は嬉しげに頷く。 「事前に『トリステインが奇襲を見抜いている』という情報が来て無ければ、我らは両艦 隊に挟撃され敗北していました。作戦は失敗ですが、同時に全滅の危機も回避しました」 腰巾着の艦隊司令長官は肩を落として、だが重責から解放されて安心したように何度も 頷く。 「そして我が国は、『卑劣な条約破りの国』という悪名を轟かさずに済んだのです」 アルビオン親善艦隊は左のトリステイン艦隊と右のゲルマニア艦隊に挟まれるようにし て、朝日に照らされたラ・ロシェール港、丘の上にある世界樹の枯れ木へと降下を開始し た。 ヤンの献策に始まり、マチルダのもたらした情報により備えられた迎撃体勢。そしてワ ルドからの情報漏洩による奇襲作戦中止。 平民と泥棒と裏切り者により今日のハルケギニアは平和を守られた、という事実が歴史 書に載る事はない。 その頃、トリステイン学院でも朝日が校舎を照らしている。 だが、ほとんどの者は既に起床していた。学院で働く下男やメイド、コック達が日の出 前から起きているのはいつものこと。加えて今日は学生も教師も多くが起き出している。 明日の朝には学院の多くの貴族達が婚礼の儀へ出席するためヴィンドボナへ出立する。だ から朝から準備に余念がない。 驚くべき事にルイズの使い魔も、デルフリンガーに起こされる前に目が覚めていた。た だし、グータラ執事が勤勉に目覚めたとか、年をとったので朝が早くなったとか言う理由 ではなかったが。 「あのさ…ルイズ?」 ヤンに名を呼ばれても、ルイズはすやすやと寝息を立てていた。 「こら、ルイズ」 プニプニとほっぺたをつついてみる。だけど彼女は、むぅ~…と不満げな声を漏らして ますます丸まってしまう。 ヤンは主の左耳をキュ~ッと引っ張った。 「 ・ ・ ・・・、…?…ちょっと、ヤン。何してんのよ」 ようやく目覚めたルイズが、目の前の執事に文句をつける。 「それはこっちのセリフだよ。何故に君が僕の布団の中にいるんだい?」 ヤンは呆れて見ていた。自分の布団の中で丸まっている主を。 ついさっき、寝ていた自分から掛け布団を奪い取ってくれた少女を。 ヤンはルイズのベッドの横に布団を敷いて寝ていた。布団といっても厚手の毛布を二枚 敷いただけだが。もちろん昨夜も布団をかぶって眠りについた。ルイズだってベッドで寝 ていた。 が、何故か今朝は掛け布団を失い、クシャミと共に寒い思いで目が覚めた。自分の布団 はどこに行ったかと左を見れば、ルイズが自分の布団の中で、小さく丸まり寝ている。幸 せそうな顔をヤンに向けて、彼の左腕を枕にして。 そして今、二人はおでこがひっつきそうな距離で向かい合っていた。 鳶色の目をパチクリさせて、え~っと…と呟く。だが答えは出てこない。 「…何故かしら?」 「目撃者に聞いてみようか」 ちらりと壁に立てかけられたデルフリンガーを見る。ヒョコッと鞘から飛び出して、朝 日に刃を煌めかせた。 「俺っちも声かけたんだけどよ。トイレから戻ってきてヤンの布団に入り込んで、そのま まグーグー寝ちまって、全然起きなかったんだよ」 ふ~ん、という感じで聞いていたルイズは、目の前のヤンに視線を戻す。 「で、そのまま寝てたら、寝ぼけて布団をとっちゃったみたいね」 「そのようだね。じゃ、返してくれるかい?」 「もちろん。どーぞ」 といってルイズはヤンの体に、ふぁさっと掛け布団をかけ直した。半分だけ。 残り半分は、相変わらず自分が被ったままだ。 おまけに身体をヤンにすり寄せてくる。 「おいおい、ルイズ…」 「起きるのも面倒だもん。もうちょっとくらい良いでしょ?」 「ダーメ。またマチルダに怒られたら困るからね」 ヤンは左腕をヒョイと引き抜く。とたんにルイズの頭がポテッと落ちた。 むっくりと上半身を起こし、両腕を天に向けてウーンと伸びをする。 「ぶー。ケチんぼ」 ちょっと頬を膨らませたルイズも渋々布団から顔を出す。 二人が起き出したのを見て、デルフリンガーも元気にカチカチつばを鳴らした。 「ま、そろそろ起きとけよ!今日はノンビリ寝てられねーんだろ?」 「そういえばそうだったわね。んじゃ、起きましょっか!」 掛け布団を跳ね飛ばし、ルイズは元気に飛び上がった。 一気に脱ぎはなったネグリジェもフワフワと宙に舞う。 二人が寮塔を出ると、学院玄関に何台かの馬車が並んでいるのが見えた。御者や執事や メイド風の人たちが、大きなバッグやトランクを積み込んでいる。 食堂ではいつものように朝食の準備が進んでいた。ただ違うのは、早朝にもかかわらず 食堂周囲に貴族達が姿を見せていた事だろう。そして何人かは新調したドレスやマントを 身にまとい、盛んに自慢し合い褒めあっていた。 「みんな明日にはヴィンドボナへ出発なんだね」 ヤンの言葉に背中の長剣もツバを鳴らす。 「まったく、よっぽど楽しみなんだなぁ。こんな朝から一張羅を着て歩き回るたぁよ!」 ルイズはヤレヤレという感じで肩をすくめる。 「当然でしょ?姫さまの婚儀に出席出来るのは貴族の誉れよ。それに出席出来る学院の生 徒は、みんな名のある貴族だもの。気合いも入るわよ」 「ゲルマニア旅行も出来るしねぇ!」 そういうヤンも、みるからにワクワクしている。ゲルマニアを見れるのを遠足前の子供 のように楽しみにしていた。 「そーゆー事!特に私とヤンはゲルマニアの偵察も兼ねてるんだからね!浮かれてんじゃ ないわよ!?」 「おいおい娘ッコよぉ。そんな任務は受けてねーだろ?」 「何言ってンの!このルイズ様ともあろうものが、お気楽に旅行なんか・・・」 そんな話をしながら、二人と長剣は食堂に入っていった。 二人が朝食から戻ってくると、荷物を持ったキュルケが向かいの部屋から出てくるとこ ろだった。 朝食から戻ってきた二人を見つけ、にこやかに笑顔を向けた。 「あっらー、珍しく二人とも早いじゃないのぉ」 「お早う、キュルケ…もしかして、もう出発するの?」 ルイズはキュルケの旅装と大荷物に目を向ける。 「ええ。トリステイン貴族は結婚式に出るだけだから、お姫さまと一緒にいくでしょうけ ど、あたしはもともとゲルマニア貴族だもの。一度実家に顔を出してからになるわ」 「ああ、なるほどね」 納得と頷くルイズの横で、ヤンが周囲を見回した。デルフリンガーがヒョコッと鞘から 飛び出す。 「ん~、ヤンよ。誰か探してるのか?」 「いや、タバサさんを見ないな、と思ってね」 扉に鍵をかけ、荷物に『レビテーション』をかけながらキュルケが答えた。 「ああタバサなら、またどこかいっちゃったわよ。じゃ、ヴィンドボナで会いましょ!」 「オーケー、またねー」「はい、それでは良い旅を」「ねーちゃん、またなー」 キュルケはヤンに投げキッスをして、荷物をフワフワ浮かしながら出て行った。 本塔最上階、学院長室ではロングビルがメモを読み上げていた。 「・・・というわけでして、明日からは一週間、学院は休校となります。式の予定は以下 の通りです。 学院生徒と教員は今日夕方から明日早朝にかけて、順次出発します。迎えの馬車は学院 正門外に停留所を設けておきましたので、そちらに誘導して停めて頂くよう下男達には伝 えてあります。 明日の昼前、大聖堂にて大司教が出立の儀を執り行います。まず陛下が城で詔を述べた 後、サン・レミ聖堂まで行進。そこで大司教が旅の安全と婚儀の祝福を、アンリエッタ姫 とベアトリス殿下へ捧げられます。聖堂や城のホールも席に限りがありますので、これに 出席するのは要人のみですわ。 その後、トリスタニアを馬車にてパレードです。主立った貴族も連れての大行列ですわ ね。三日間のヴィンドボナまでの道中、ずっとお祭り騒ぎが続く事でしょう。 最後に、ヴィンドボナにて正式な婚儀が執り行われます。この婚儀が終わり次第、オー ルド・オスマン始め学院生徒はほとんどが学院に戻ります。ミス・ツェルプストーは実家 によるので遅れるとの事です」 「ん、では荷物の準備をお願いするぞい」 「承知致しました。では出発前に、こちらの書類全部にサインをしておいてください」 ロングビルは書類の束を机の上に置いた。 デスクでは学院長が髯を撫でながら秘書の報告と予定を聞いていた。 杖を取り出し書類の上を滑らせ、魔法でサインをしていく。 どすっ 突然ロングビルの足下から鈍い音が響いた。とたんにハツカネズミがちゅうちゅうと悲 鳴を上げて逃げていく。 「相変わらずですわね、学院長」 秘書は物腰柔らかく、床にめり込みそうなヒールをゆっくり元の位置に戻した。 オスマン氏は溜め息をついた。深く、苦悩が刻まれた溜め息であった。 「下着を覗かれたくらいでカッカしなさんな。はぁ~、昔はお尻を撫でても怒らなかった のにのぉ」 「昔は昔です。今、私の下着を見たりお尻を撫でたりして良いのは、ヤンだけです」 どこまでも冷静な声で、ミス・ロングビルが言った。 オスマン氏の口からは、あうあうと無様な声なき声が漏れる。 そして、やっとのことで言葉が紡がれた。 「人妻も、ええのぉ」 ロングビルは、無表情なまま机を回り込み、オスマンの横立ち、すぅ…と足を肩幅に開 いて腰を落とす。 バキッ! 「それでは、私は学院長の荷物を揃えて参ります。早く起きて全部の書類にサインして下 さいな」 ロングビルは稲妻のごとき右正拳突きを食らい机に突っ伏したオスマンを残し、学院長 室を出て行った。 アルヴィーズの食堂での朝食が終わり、後片付けも終わろうかという頃、洗った食器を 棚に戻し終えたシエスタがマルトーの前に駆けてきた。 「それじゃ、そろそろミス・ヴァリエールの方に行ってきますね」 「おー、ご苦労さん。いつも悪いなぁ、もう学院のメイドじゃねえのに」 「いいんですよ。お昼にはまた来ますから」 ペコッと頭を下げて厨房を出ようとしたシエスタの腕を、後ろからほかのメイドが捕ま えた。 「キャッ・・・て、ローラ。いきなり何よ」 「ちょっと!こっち来て、こっち!」 そういってローラは金髪を揺らしながらスズリの広場へ彼女を引っ張っていった。 スズリの広場、女子使用人宿舎裏では、他のメイド数名が待っていた。 「あらやだ、ドミニックにカミーユも。こんな所でどうしたの?」 「どうしたの、じゃないわよ!」 そう叫ぶや、メイド達はシエスタを取り囲む。突然のきな臭い雰囲気に、そばかすが魅 力的な頬に思わず汗が流れてしまう。 ローラが腰に手を当てて、シエスタにズズィと詰め寄った。 「シエスタ、あんた、あの秘書のこと、聞いたぁ?」 「…秘書のことって、もしかして、ミス・ロングビルとヤンさんとの事?」 「そーよ!あの人、アルビオンから帰ってきたら、もう、ヤンさんの女房気取りよ!信じ られないわ、シエスタを差し置いて!」 ローラは腕組みして、顔を赤くしてプンプン怒り出す。 そして他のメイド達も、口々に学院長秘書と使い間執事の関係について噂話を並べ立て 始める。 「今朝、学院長室の前で聞いちゃったのよ。ミス・ロングビルが『私のお尻を撫でていい のはヤンだけ』って言ってるの!」 「ほんとに信じられないわよ!淑女の慎みとやらはどこ行ったのかしらね!?」 「ヤンさんもヤンさんよ!あれだけシエスタの世話になったくせに、恩知らずにもほどが あるわ!」 「やっぱり、あれかしら?ミス・ロングビルって上品ぶってるだけで、ホントは、人に言 えない様な…」 「きっとそうよ!でなきゃ、あのセクハラじじいの秘書なんかやってるハズないもの!」 メイド達の噂話と恋話とどまるところを知らない。 どこの世界でも他人の恋愛事は最高の娯楽。オマケに三角関係、可愛いメイドと美しき メイジが一人の男性を奪い合うという、ある種禁断のストーリー。しかも見た目の平凡さ とは裏腹に、異国から召喚されて二ヶ月足らずで富豪になり、枢機卿の覚えも目出度き平 民の高級軍人を。 そして若い女の子達が、こんな面白そうな話を聞き逃すはずもない。 寄宿舎の中にいたり、食堂から戻ってきたメイド達が、次々と使用人宿舎裏へ呼び寄せ られたかのようにワラワラと集まってくる。一体、彼等の耳はどんな性能を有しているの かと不思議になるくらいだ。 「ほーっんとヤンさんって、ああ見えて女にだらしないのよね~」 「そーよそ-よ!シエスタの気持ち、分かってるクセに。ちょっと美人に言い寄られたく らいでさぁ」 「確かにミス・ロングビルが美人なのは認めるけど、メイジと平民よ!?弄ばれてるって 分かんないかねぇ。いずれ飽きられて、呪いでもかけられてポイッとゴミみたいに捨てら れちゃうわ」 「真面目そうに見えても、所詮は男よ。いやむしろ、真面目だからこそコロッと騙される のだわ!」 メイド達は、話の中心にいたはずのシエスタをほったらかして、てんで勝手に憶測を飛 ばしあい、ウンウンと頷いている。 そこで急に一人のメイドが声を上げた。 「あ、そーいえば、アルビオンから帰ってきてからのミス・ヴァリエール!見たかい、あ の有様!」 その言葉に、女性達はさらに目の色を変えて食い付きだす。 「あー!見たわよ見たわよ!もう、ヤンにベッタリじゃないの!堂々と手を繋いで歩いて たわ。信じられないわよ、他の貴族達まで目をひんむいてたわ」 「まさか、ヤンって、そっち系の趣味が…」 「いや、それは違うんじゃないかなぁ?ほら、ミス・ヴァリエールっていつも『ゼロ』て 呼ばれて他の貴族にバカにされてたじゃないか。いっつも一人だったし。 ヤンが召喚されたばかりの頃、食堂でつるし上げ喰らってたじゃない。もう他の貴族が 信じられないんじゃないかな」 「あー、分かる分かる!独りぼっちで寂しかった所に、いきなり優しい男がくれば、もう イチコロよね?ゼロってバカにしたりしないし」 「え~?でもぉ~?あれってどっちかと言うとぉ、パパに甘える意地っ張りで寂しン坊な 娘って感じじゃない?」 「甘い!しょせん男は狼、ヤンだって見た目は抜けてても中身は同じさ」 「そーそー!あんなペッタンコなちびっ子でも、いつも一緒にいれば、情も移っちゃうわ よ! そして双月が照らす部屋の中、楽しくおしゃべりしていた二人は急に黙り込む。 見つめ合う男と少女、ピンクの髪が妖しく揺れる。 男の息づかいが少しずつ早く、荒くなり、少女は何かに引き寄せられるように男の傍へ と…」 カミーユが語るピンクの妄想に、周りのメイド達もグググ…と前のめりになって頭を寄 せ合う。だんだんと小声になる艶っぽい話を聞き逃すまいと、皆押し黙り固唾を飲んで聞 き入っている。 「もう!みんな何言ってるのよ!いい加減にしてよ!」 話の中心人物でありながら、話の輪から放り出されたシエスタが強引に割って入った。 が、そのくらいで話を止めるほど同僚達は甘くなかった。 「何言ってるのよ!これはあんたにとっても重要な話なのよ!?」 「そーよ!このまんまじゃヤンさん盗られちゃうんだから!あんた、それでいいの!?」 「三角関係ならまだしも、四角関係だなんて!面白すぎ…じゃない、シエスタはライバル が多すぎるって話なんだから」 逆に詰め寄られて、シエスタはタジタジ。 このままでは延々と『メイドと執事の純愛に横槍を入れる秘書』『一人の男性を奪い合う 3人の女』という、トリスタニアのタニアリージュ・ロワイヤル座辺りで上演されていそ うな筋書きに付き合わされてしまう。 彼女は適当な理由を付けて、この場を退散する事にした。 「もう!付き合ってられないわ。私はこれからミス・ヴァリエールの所でゲルマニア行の 準備をしなきゃいけないんだから」 といってプイと背を向けた。 シエスタの言葉に、ローラがふと考え込む。 「ねぇ、あんたって今はヴァリエール家のメイドだから、ヤンさん達と一緒にゲルマニア へ行くのよね?」 「そうよ!その準備で今日は忙しいの!」 と言って寮塔へ向け、スタスタ歩き出す 彼女の背後からは「頑張りなよー!部屋でヤンに押し倒してもらいなさいよー!」とか、 「ゲルマニア行きの間がチャンス!あの秘書さんがいない間にアタックよ!」とか、声援 というか応援というか、勝手な期待と要望が飛んでくる。 寮塔へ向かいつつ、シエスタの口から独り言が漏れる。 「…言われるまでもないんだから!ゲルマニアでは見てなさいよ、今度はあたしのターン よ!!」 右拳が固く握りしめられていた。 その頃、最近のメイド達の話題を独占する人物となっていたヤンは、珍しく図書館では なく教室にいた。教室の後ろに立ち、コルベールの魔法の授業を見学している。火の色と 温度の相関関係について語るコルベールの話を興味深そうに聞いている。魔法も使えない のに授業に出ている平民の姿に、生徒たちもチラチラと好奇と不快が入り混じる視線を向 ける。 太った少年がルイズの背中をチョンチョンとつついた。 「おい、おいルイズ」 「何よ、マリコヌル」 ヒソヒソ囁くガラガラ声に、ルイズはジロッと肩越しに振り向く。 「あの平民、なんで授業に来てるんだ?」 「魔法の勉強をしに来てるのよ」 「だから、なんでだよ。平民なのに」 「決まってるじゃない。魔法について詳しく知らなきゃならないからよ」 「魔法も使えないのにか?」 二人の囁き声に、周囲の生徒達も聞き耳を立て始める。 「あたし達、枢機卿に軍略を示したり、お姫様の相談に乗るんだもの。父さまなんかヤン をヴァリエール家のお抱え学者にしようかってくらいよ」 「なっ!その噂、マジだったのかよ」 思わず驚きの声を上げてしまうマリコルヌ。周りの生徒もさわさわとざわめきはじめて しまう。 「マジよ。だからヤンも戦争とかで使う魔法は詳しく学ばなきゃいけないの。特に火の魔 法は」 コンコンコン コルベールが杖で机を叩いた。 「もしもし、ミス・ヴァリエールにミスタ・グランドプレ。他の生徒も授業中は静かに願 います」 頭髪の薄い教師に名指しされ、二人とも慌てて口を閉じる。 さらにコルベールは教室の生徒達に向けて語り出した。 「それと、ここは学校です。学問を修めたいという者を拒むような事はあってはなりませ ん。それが平民であっても、です。学びたい、知識を得たいと望む事は実に貴重で尊い事 です。それがいかなる知識であろうとも、決して無駄になる事はないのです。 ですから、ミスタ・ヤンが魔法を学びたいと言うのであれば、私は心から歓迎いたしま すぞ」 コルベールに真剣で誠実な目を向けられ、ヤンは深々と礼をした。 前ページ次ページゼロな提督