約 3,621,558 件
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/1659.html
死途の供:A (平教経) その威風堂々とした佇まいは強者を引き寄せ、逆に弱者を遠ざける。 防御力が向上し、武勇のある敵サーヴァントにターゲットとして認識され攻撃集中状態になるスキル。
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/1231.html
【元ネタ】- 【CLASS】キャスター 【マスター】 【真名】アイリスフィール・フォン・アインツベルン 【性別】女性 【身長・体重】158cm・52kg 【属性】混沌・善 【ステータス】筋力E 耐久E 敏捷C 魔力A+ 幸運B 宝具B 【クラス別スキル】 道具作成:A 魔力を帯びた器具を作成する。 陣地作成:B 魔術師として自らに有利な陣地な陣地である「工房」を作成する。 女神の神核:C 完成した女神であることを現すスキル。 精神と肉体の絶対性を維持する。精神系の干渉をほとんど緩和し、肉体の成長もなく、どれだけカロリーを摂取しても体型が変化しない。 神性スキルを含む複合スキルでもある。 彼女は正式な神霊としての分霊ではないため、ランクはC止まりとなる。 【固有スキル】 献身の覚悟:A 自己犠牲さえ厭わない、愛する者への想い。 防御・回復系の魔術やスキルやアイテムの使用効果に対してプラス補正がかかる。 自然の嬰児:A いずれ等しく、世界の裡で生まれ落ちた嬰児たち。 たとえ天然自然の生物ではなく、人の手によって造り出された命であろうとも、時に世界は多くの祝福を与え得る。 魔術医療:A サーヴァントとしてのアイリスフィールは、高度な治癒の魔術を行使する。 【宝具】 『白き聖杯よ、謳え(ソング・オブ・グレイル)』 ランク:B 種別:魔術宝具 レンジ:0~50 最大捕捉:20人 ソング・オブ・グレイル。 愛と母性が聖杯と結び付き、真摯にして清らかなる祈りを一時的に叶える。願望器としての機能ではなく、あくまで、彼女の存在が昇華された宝具。 自陣を回復し、バッドステータスを全解除する。持続ダメージの類も解除される。 霊核の欠片でも残っていれば戦闘不能状態となったサーヴァントの復活も可能ではあるが、この効果は『FateGO』では使用されない。 【解説】
https://w.atwiki.jp/f_go/pages/1518.html
クラス・入手方法別クラス別番号順限定
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/246.html
生存本能:EX (■■■■) 不死身に近く 頭が潰されても餓死するまで一週間は生き延び、 頭部だけでも栄養分の枯渇まで数時間は生き続ける生命力を持つ。 サーヴァントと化した事により魔力供給さえ有れば焼かれたりしない限り不死身と言って良い。
https://w.atwiki.jp/bokuserve/pages/1259.html
【元ネタ】史実 【CLASS】アーチャー 【マスター】 【真名】アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン 【性別】男性 【身長・体重】181cm・72kg 【属性】秩序・中庸 【ステータス】筋力D 耐久C 敏捷D 魔力E 幸運C 宝具B 【クラス別スキル】 対魔力:E 魔術に対する守り。無効化は出来ず、ダメージ数値を多少削減する。 単独行動:C マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクCならば、マスターを失っても一日間現界可能。 【固有スキル】 黄金律(偽):B 金運や宿命の類ではなく、資産運用の手腕。 十分な資財があるのならば、それを元手に巨万の富を得る事ができる。 金銭に限らず、魔力や兵力など自身の手元にある“資産”を効率的に使う事を得意とする。 軍略:D 一対一の戦闘ではなく、多人数を動員した戦場における戦術的直感力。 自らの対軍宝具の行使や、逆に相手の対軍宝具に対処する場合に有利な補正が与えられる。 募兵特許状:A+ 徴兵権限。傭兵隊長として兵を募り、武装させ、部隊を編成する許可証。 周囲の霊的存在と契約し、自身の使い魔――ゴーストライナーとして使役できる。 ランクA以上ならば、マスターを失った他のサーヴァントとの再契約も可能。ただし、令呪を得る事はできない。 他サーヴァントと契約した場合を除き、ゴーストライナーは兵士としての役割(クラス)とそれに応じた装備が与えられる。 【宝具】 『我が軍勢は尽きることなし(コントリブツィオン)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:- 最大捕捉:1人 アーチャーが創始した軍税制度が宝具化したもの。聖杯と契約を交わす、一種の魔術宝具。 「聖杯戦争の舞台での虐殺、魂喰い、戦闘を除く破壊行為を行わない」事を条件とする戒律をアーチャー自身に課する。 この戒律が守られている限り、聖杯はアーチャーが必要とする魔力を最優先に供給し続ける。 聖杯戦争のルールに則って戦う限り、アーチャーは魔力不足とは無縁となる。 ……生前のアーチャーは、自身の軍勢に(当時常識だった)略奪を禁止する代わりに、駐留する土地に税を課し、兵を養った。 【Weapon】 『無銘・銃』 三十年戦争当時に使われた、先込め式の歩兵銃。 アーチャー自身が扱うほか、彼が契約したゴーストライナーにも同種の銃が与えられる。 『無銘・槍』 テルシオ(方陣)を構成する内の槍兵が装備する長槍。 アーチャー自身が扱うものではなく、彼が契約したゴーストライナーに与えられる。 【解説】 三十年戦争期のボヘミアの傭兵隊長。神聖ローマ帝国大元帥。 プロテスタント勢力と戦争中であった皇帝から皇帝軍の総司令官に任じられ、“大軍”を組織する。 この当時の戦争は1~2万名程度の軍同士がぶつかり合うのが一般的であり、4万もいれば大軍といえた。 が、ヴァレンシュタインが募兵し、組織した軍は10万以上であり、まさしく桁違いの規模であった。 この“大軍”でプロテスタント勢力を一蹴し、帝国を窮地から救い出すものの、 あまりに巨大な軍勢を有する事から皇帝に警戒され、総司令官を罷免されてしまう。 しかし、ヴァレンシュタイン不在の隙を突いてプロテスタント勢力が盛り返した為、皇帝に懇願され、僅か2年で復職。 復職後に率いる軍が自らが鍛えたものではない為、その指揮は精彩を欠くものの、 リュッツェンの戦いでプロテスタント勢力の中核、スウェーデン王グスタフ2世アドルフを戦死させる。 しかし、“帝国最大の敵”たるスウェーデン王が消えた事により、ヴァレンシュタイン自身の価値も失われ、 独自に講和を結ぼうとしたと反逆の疑いをかけられ、皇帝軍の将校に暗殺される。 彼が創始した軍税制度は、その有効性から各国に取り入れられ、常備軍システムの礎の一つになったといわれている。
https://w.atwiki.jp/bokuserve/pages/2251.html
【元ネタ】民間伝承 【CLASS】アサシン 【マスター】 【真名】夜雀 【性別】女 【身長・体重】166cm・50kg 【属性】混沌・善 【イメージカラー】濡羽色 【特技】尾行、地味な嫌がらせ、夜の道案内 【好きなもの/苦手なもの】深夜徘徊、人を脅かすこと/鳥料理 【天敵】群れて行動する人間、驚かない人間 【ステータス】筋力C 耐久E 敏捷B 魔力A 幸運C 宝具B 【クラス別スキル】 気配遮断:C サーヴァントとしての気配を絶つ。隠密行動に適している。 完全に気配を断てば発見する事は難しい。 【固有スキル】 怪異:C 魔性の存在。アサシンは本来英霊ではなく、怪異に属する存在である。 Dランク相当の「対魔力」効果を得、手にした物に魔力を帯びさせる。 変化:C 小鳥や蝶に姿を変えられる。人間としての姿もこのスキルによるもので、どれが本当の姿かは不明。 使い魔(狼):B 狼をマスターの使い魔として使役させることができる。契約を行う必要はなく、思念を送るだけで可能。 このスキルによって使い魔となった狼は、マスターに山の獣や怪異を寄せ付けない効果を発揮する。 【宝具】 『恐慌夜会への招待状(ナイトバード・パニック)』 ランク:C 種別:対人結界 レンジ:1~20 最大捕捉:10 アサシンのテリトリーである夜の山道を再現する結界宝具。結界内には音も光も存在しない。 この結界内においてアサシンは不可視の状態となり、鳥の声を響かせ不安を煽る。結界に囚われた相手はDランクの「狂化」に相当する思考の混濁を引き起こす。 『夜雀の怪(ナイトバード・ナイトメア)』 ランク:B 種別:対人 レンジ:- 最大捕捉:1 『恐慌夜会への招待状』の結界内において、マスター、サーヴァントを問わずアサシンに「触れた」者を対象に自動で発動する宝具。 対象の視覚を1ターンのみ完全にシャットアウトし、復帰後も歩行の妨害などいくつかのバッドステータスを付与する。また、夜盲症を発症させる。 【Weapon】 鳥の羽根:軸の部分を鋭く研ぎ澄ましたもの。 嘴、爪:鳥の姿での武器。喉をかき切るぐらいは出来る。 【解説】 高知県と愛媛県の一部に伝わる鳥の妖怪。夜に鳴き声をあげながら、山道を歩く人の前後につくという。 夜雀に憑かれるのは不吉とされる、捕まえると夜盲症を患うなどいわれる。また、高知県の別の地域では、黒い蝶のような姿で、鳴きながら懐や傘の中に入り込み、歩くのを邪魔するという。 和歌山県の一部にも伝承があるが、そちらでは夜雀が憑いている間は狼が山の魔物からその人を守ってくれる証しという。 【コメント・余談】 実力での暗殺ではなく、無理矢理シチュエーションを作り出して闇討ちするアサシン。 ……というか、サーヴァントと正面切って戦える腕っ節がないので結局そうするしかない。やっぱりアサシンはアサシンだった……? 現代社会にさして興味はないが、妖怪としては自分たちが恐れられないのは由々しき問題なのでその辺については真剣。
https://w.atwiki.jp/bokuserve/pages/3113.html
【元ネタ】アーサー王伝説 【CLASS】セイバー 【マスター】 【真名】カナン 【性別】男性 【身長・体重】掘り返せないので確認不能 【属性】中立・中庸 【ステータス】筋力- 耐久B 敏捷- 魔力D 幸運E 宝具E 【クラス別スキル】 対魔力:A Aランク以下の魔術を無効化する。 教会の秘蹟には対応しない。 騎乗:- そんな事はできない。 【保有スキル】 聖杯の寵愛:- 彼は聖杯の恩寵から見放されているが、彼が罰せられる事に聖杯は力を貸す。 彼の場合、現界して宝具を顕し続ける事が罰に相当している。 無救の武練:- 四百数十年に渡って救済を拒んだ剣の舞。 撃退された者達の錚々たる名の故に、剣群の剣技は無闇に研ぎ澄まされている。 単独行動:A+ マスター不在でも行動できる能力。 彼の在り様を行動と言ったものかは別として。 戦闘続行:A+ 現界強制。全ての剣と墓を同時に粉砕しなければ消滅できない。 奇蹟に類するスキル、最高ランクの洗礼詠唱、 かつての彼の解放条件を満たす者はこれを無効化できる。 【宝具】 『眠り得ぬ咎の墓標(リミテッド・ブレイドワークス)』 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:0~30 最大捕捉:12人 燃え上がる一つの墓と、 剣の突き立てられた十二の墓。 接近する者に対し十二本の剣が自動迎撃を行う。 この宝具は召喚時点で自動的に展開される。 【解説】 アリマタヤのヨセフに従った十四人兄弟の一人カナン。 召喚して出て来るのは墓、本人はさっさと消滅したいがその為に何をできるでもない、 マスターの側も一向に得をしない、それでいて敵にはそこそこ面倒、 という誰にとっても外れサーヴァント。 ヨセフ一行の多く、十四人兄弟では十二人が聖杯の恩寵を与えられていたが、 カナンとシメオンは信仰心の不足から排除されていた。二人は嫉妬し、憎悪する。 そしてカナンは十二人の兄弟を殺し、シメオンは従兄弟ペテルを殺そうとして こちらは未遂に終わるも、治癒至難な毒の傷を負わせた。 ヨセフ一行の他の者達は二人の大罪人を生き埋めに決める。 カナンは悔いて、周りを兄弟の墓で囲んで欲しいと願い、容れられる。 翌日、兄弟の墓の上に置かれた剣は独りでに直立しており、カナンの墓は燃えていた。 この剣群は兄弟の墓へ近付こうとする者へ襲い掛かり、打ち据えて追い払ってしまう。 数百年後に訪れたガウェイン卿とエクター・ド・マリスさえ撃退されてしまったのだ。 恥辱のうちに去る前に、二人は墓の炎を鎮める解放者となるべき者を示す銘文を見る。 曰く「“悲しみの王妃の子”がやって来るまで、恥辱を受けず墓地に入る者は無い」 カナンは“悲しみの王妃の子”が、シメオンは“悲しみの王妃の子”の息子が救う。 すなわち、ヨセフの縁者にしてダビデの末裔、ランスロとガラアドの事である。
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/1015.html
「で、あんたが私のサーヴァントでいいのかしら?」 遠坂凛は瓦礫の中であぐらをかいて座っている人物を見やった。 美男子と言うよりは愛嬌のある顔をした中年の武将は、うむ。と頷く。 「アーチャーのサーヴァント徳川家康じゃ」 徳川家康。 江戸幕府開闢の祖にして、天下統一を成し遂げた戦国武将の中でも最も有名な人物。 凛は拳でガッツポーズを決め、小さく呟いた。 ―――この戦い私の勝「まあ、お互い死なんようにボチボチ頑張ろうな」 思いっきり気の抜けた台詞に、凛は思わずズッコケかけた。 「あんたねえ……、サーヴァントとして勝利をもたらすぐらい言えないの?」 「わしゃあ、勝つのは得意だよ」 しかし、とアーチャーは言葉を句切った。 「負けるのはもっと得意だからのー」 「何言って……そうか。あんたの生涯って、平坦じゃなかったもんね」 歴史によれば、元々の家は弱小豪族であり、祖父は暗殺され、衰退。 幼い頃は今川やら織田やらで人質生活。 武田信玄と戦っては負け、有名なしかみ像と呼ばれる肖像画を残し、信長の死後は秀吉の台頭で住み慣れた領地を追われてまで秀吉に臣従する事になった。 関ヶ原では勝ったものの、圧倒的に兵力に劣る相手に対しギリギリの勝利だった。 大坂の陣では自決すら覚悟した。 常に上り坂の人生であり、忍従の人生であり、戦い続けた生涯を持つ英雄。 それが凛の召喚した徳川家康だった。 「だが安心せい。負け方を知っておる分、勝ち方も知っとるからな」 そして最後の最後で勝利した英雄。 凛は確信した。転んでもただでは起き上がらず、栄光を諦めないこの姿こそ彼が天下人にまでなった理由なのだと。 そして、自分もまた勝利に向かって突き進むべしと心に決めた。 「結界宝具に大砲の宝具持ちで接近戦もこなすか、籠城戦になりそうね」 「おう。物資は用意しておるか?」 作戦会議をしている中で、凛はふと疑問に思った事を尋ねた。 「ねえ、アーチャー。貴男はなんで私の召喚に応えたの?」 「そりゃあ、触媒があったからだよ」 アーチャーのその言葉に、凛は怪訝な表情をした。 「……徳川家康の触媒なんて用意していないけど」 凛のその言葉に、アーチャーは瓦礫まみれになった部屋の隅を指差した。 「ほれ、あれが触媒だ」 その言葉に凛が部屋の隅にまで歩き、アーチャーが指差した物を手に取った。 「これって、小学校の修学旅行で行った日光東照宮で買ったお守りじゃない」 「ああ。わしが神として祀られているところで買った守札なら、触媒として十分だ」 何せ、有る意味ではわし自身だからのう。と解説するアーチャーの眼前で凛はプルプルと震えだした。 「一千とんで六十五万四千三百九十円」 「ん?」 「この日に備えて最強の英霊を召喚するための触媒を手にいれる為に方々を探し回った調査費と購入費よ」 それでも結局偽物だったり、神秘が少なかったりで使えなかったけどね。 冷静に事実を述べる凛のこめかみはピクピクと痙攣している。耐えきれずウガーッと絶叫した。 「それが、存在すら忘れていたお守りで召喚されたですってー!?私の青春の時間と費用を返せー!!」 「お、落ち着かんかい!」 あかいあくまに喚ばれた狸親父は、これからの戦に一抹の不安を覚えながら必死に凛を宥め続けた。 「シンジ、酒だ」 「あ、ああ」 慎二が洋酒をつぐグラスは一つだけではなく、二十の数がある。 そしてそれを持っているのは此度の聖杯戦争でライダーとして召喚されたサーヴァントだった。 赤銅色の眼でつがれた酒の色を楽しみ、乱杭歯が生え揃った口で一気に酒精をあおった。くはっ、と息を吐く。 二十の腕を持つその男は人間では無い。 自らの首を切り落として火にくべる苦行の末、神々、ガルーダ、ナーガ、ヤクシャには決して殺されない身体を手に入れたラクシャーサ。 羅刹王ラーヴァナが彼の名前だった。 ラーマーヤナに関係あると言われていた。とある寺院に安置されていた宝石はマキリの手に渡り、彼は間桐桜の手で召喚されることになった。 当初はその威容に恐れを隠せなかった慎二も、伝説通りの彼の宝具を詳しく聞き出すと、進んでラーヴァナと共にいるようになった。半分は戸惑いもあるが。 慎二はニヤニヤと笑いながらライダーにつまみのチーズを渡す。高級な部類に入るそれは一瞬でライダーの口に消えた。慎二は咀嚼するライダーにもう一度尋ねた。 「お前の宝具、普通の人間からかけ離れた奴。つまりは神性を持っているサーヴァントには特に効果があるんだよな?」 「うむ。苦労して手に入れたとは言え、以外と退屈になったがな」 「凄いじゃないか!ギルガメッシュ、ヘラクレス、クーフーリン、カルナ、イスカンダル。大抵の強力な英霊は神の血を引いているかそれ並みの信仰を集めている連中ばかりだ!他の参加者が強力な英霊を喚び出せば喚び出す程お前の独壇場だぞ!!」 興奮する慎二に、ライダーはつまらなそうに答えた。 「そうなったらつまらなすぎていっそ死にたくなるがな……ダメか。吾輩も人間じゃ無いから首を切り落としても再生しちまう」 「……もう一度聞くけど、お前は殺し殺される『人間』との戦いを存分に味わうことが願いで、聖杯自体には特に興味が無いんだよな?」 「いや。今思いついたが受肉して人間相手にもう一度ラーマーヤナを始めるというのはどうだ?」 人間の軍隊と総当たりしてみるのも面白いかもしれぬ。と獰猛に笑う羅刹王に、慎二は思わず身震いした。 「お、落ち着けよ。お前の願いは多分、と言うか確実に叶う。お前のマスターが今のところこの本だって事は知ってるだろ?」 慎二は偽臣の書を掲げて見せた。 「ああ、知っとる。それで後の一席をどこぞの魔術師から令呪を奪い取った蟲の小僧が埋めるということもな」 マキリの怪物を小僧扱いするライダーに表情を引きつらせながらも、慎二は話を続けた。 「その一席はアサシンだ。そしてその英霊は……」 瞬間、ライダーが表情を喜びに輝かせ、問うた。 「もしや、モンスタースレイヤーか?」 怪物殺し。ヒトでありながらヒトの捕食種たる怪魔を滅ぼす力を身につけた者達。 ライダーが不死身の肉体を得て以来、感じ続けている『飢え』を満足させるかも知れぬ『人間』。 期待に胸を躍らせるライダーに、慎二は不敵な笑みを浮かべた。 「首尾良く行けばの話だけどな。そいつは純粋の人間で、日本で最も有名な侍だ。残りの五騎を叩き潰した後で、ゆっくり殺し合いなよ」 「せやから言うとるやろ。楽々に勝つにはマスターに令呪で自決させた方が効率的じゃい。サーヴァントの情報は分からんにしても、マスターの情報まで分からんてどういうことやねん」 関西弁で喋る鎧姿の男は間桐臓硯に文句をつけた。臓硯は何も言わない。 文字通り虫の息なのだから返事など出来る筈もないが。 召喚されたサーヴァント、アサシンは基本的に機能も性能も申し分ない英霊だった。 そして、ある程度の情報交換を行った後で、アサシンは知覚が不可能な程の速度で抜刀し、間桐臓硯を切り刻んだ。 そして臓硯は、無数の蟲はただ蠢くしかできないでいる。 数百年を生きた怪物は、蟲の一部に突き立てられた日本刀を見やった。 (ほ、宝具か!おそらくは―――!!) 不覚をとった。令呪さえあれば、或いは桜の命を人質にすれば何も出来ぬであろうと慢心した結果がこれか!! やがて蟲の一部から必死に声が絞り出された。 「よ、よいのかアサシン。儂を殺せば桜が……」 「ん?三虫の一種やろ。要するに。その口ぶりからするとあの嬢ちゃんの中か」 アサシンは鎖に縛り付けられ全裸でただ黙っている少女を見ると、もう一振りの刀を抜いた。 アサシンがやろうとしていることを臓硯は察し、必死に縋るが如く止める。 「ま、待て。その娘は誰1人殺しておらぬ、弱民ぞ。それを殺すなど」 「それが?糞虫千匹殺すのに人一人の犠牲で済むなら安い買い物じゃ」 そう言うとアサシンは、身じろぎ一つしない桜の前で刀を振りかぶった。 桜は迫り来る死に何も思わなかった。 いずれ来る死であり、どうせ避けられない死であるのなら、せめて綺麗に終わらせたかった。 だから目の前にいるアサシンは自分にとっての救いであり、何も怖くは無い。 「あー、残念やー。こんな風に聖杯戦争が終わるなんて、むっちゃショックやー」 そう言って刀を振り下ろそうとする侍を前に、桜の口から一言言葉が漏れた。 「せんぱい」 瞬間、腹の底から何かがこみ上げるように、桜は口から全てを吐瀉した。 吐瀉物まみれで逃走する蟲は、逃げるよりも速く侍の刀で刺し貫かれた。 「やーっと出てきたかい。しっかしわしも相変わらず役者やの~」 「ア……ァァ……」 ボロボロと壊死していく本体の蟲から、臓硯の声が聞こえる。 「……騙していたのか。すべて、芝居だったのか」 「お前かて人を食ってたんやろが。わしには分かるわい。まあ、運が悪かった思うて諦めい」 「た……すけて、死にたく、ない」 「あーそうかい。死にたくないのね。うん。せやけど―――」 お前はどれだけそう言う人間を喰い殺したんじゃ? アサシンが慈悲の欠片も無く言い放った言葉を最後に、マキリの怪老は完全に滅び去った。 アサシンは呆然としている桜の前に立ち、今度こそ刀を振り下ろす。 ジャラジャラと鎖が地面に落ちる。断面はバターのように綺麗に切れていた。 「悪い悪い。怖かったなあ嬢ちゃん。でもあんなんきっしょい虫けらにいじめられても負けへんで強かったなあ、偉いなあ。嬢ちゃんは。立派やで」 侍は、にかっと笑った。悪戯が成功した子供のように。 「……つまり嬢ちゃんは闘いは嫌ちゅうことね」 そういうアサシンの手にはお銚子に入った日本酒がある。 それを受け取った桜は、身体の隅々まで洗われるような芳香を放つ酒を飲み干した。 もう大丈夫だとは思うが、念のためにこの神造の酒で消毒しとき、とはアサシンの弁だ。 その話す効果に嘘は無く、桜は体内の蟲が一匹残らず死滅していることに気がついた。 ほろ酔い加減で幸せな気分に浸りながらも、桜はアサシンの言葉にはっきりと返した。 「うん。殺されたくないし、人を殺すのはもっと嫌」 「まいったなー。わしも別段聖杯が欲しい訳やないしー」 頭をボリボリとかくアサシンに、今度は桜が驚く番だった。 「えっ、アサシンは聖杯が欲しくないの?だって願いがあるから戦争に参加したんじゃ」 「わしの願いはこの戦争で死んだり怪我したり泣いたりする連中が出んようにすること」 ほら、わしってこの国のサムライやし?他の連中が手段選ばない真似しくさるようやったらさっさと切り捨てる義務がありありな訳で。 などと言いながら蟲倉に散らばっている桜の服を拾うアサシンは、床に突き刺さっていた自分の愛刀を引き抜いた。 「まあ、とりあえず現世での人助け第一号は嬢ちゃんな」 そう言うとアサシンは抜刀と同じく目にもとまらない速度で納刀し、桜に服を渡した。 死にそうな人に手を差し伸べて、逆に手を噛まれても後悔だけはしない人。 桜はアサシンのその姿に、無意識で想い人の姿を重ねていた。自然と声が出た。 「アサシン、私―――「さ~て、敵が出たらどういう方法でぶっちめたろうかね~」へ?」 ケケケと笑うアサシンの表情は先程までの自分を安心させる笑顔とはうって変わって、テレビに出てくる悪代官のものに似ていた。あっけにとられる桜に構わずアサシンは喋る。 「まー、出ないなら出ないでこしたことないけどな、この時代の魔術師はさっきの蟲みたいな性根しくさった連中が多いらしいし、それこそ外道は掃いて捨てる程出るやろ。 今までさんざん人を踏みにじっていた連中が逆に踏みにじられることになったら、それこそ大爆笑もんやで。 おまけに卑怯くさい手でどん底に突き落とされたら、もうそいつらそれだけで血管ブ千切れてお陀仏じゃ。 あー、英雄ってたのしー」 さて、戦の前に作戦会議じゃ。こと戦は始まる前に戦って、終わる前に終わるもんやから。 そのままアサシンは蟲倉の階段を昇り始めた。桜は服を着ながら混乱していた。 (……ど、どうしよう。いい人らしいし、実際にいい人だと思うけど、私ひょっとしてそれ以上にとんでもない人喚んだんじゃあ……SOSせんぱい~!!) 「じょーちゃーん」 混乱の中から自分を呼ぶ声に、はっとして意識を元に戻すと、こちらを向いたアサシンは言葉を発した。 「わし、源頼光。化け物退治の英雄やで。よろしゅう頼んます」 「え?」 「あら、ひょっとして今の時代じゃわしマイナー?あ~、むっちゃショックやわー」 「あっ、そんなんじゃ無いの。ただ驚いて、私こんなに簡単に解放されると思ってなかったし、だから」 「ケケケ、騙されたな。嬢ちゃん!わしは人も化け物も騙すの大得意じゃ!!」 「あっ……もうっ」 頬を膨らませる桜に、笑っておちょくるアサシンは蟲倉の外へ、ねじ曲がった闇の外へと出て行った。 その後上階に上がったアサシンが、既に召喚されていたライダーと一悶着あったのは、また別の話。 あらゆる英霊にはえてして悲劇的な最期がつきものである。 クー・フー・リンにしても、ディルムッド・オディナにしても、ヴラド3世にしてもいずれも悲惨きわまる最期で有名だ。 そしてこの事実は聖杯戦争では現実的に深刻な問題となってマスターを悩ませる。真名が分かれば、同じような最期を『演出』されてしまう可能性もあるのだ。 「遠坂邸の結界は強化されていました。既にサーヴァントらしい気配もあります」 眼前には日本的な黒髪を持つ女性がいた。 甲冑に身を包みながらもその姿は美しい。持っている薙刀が導き出すクラスは一つだった。 ランサーのサーヴァント。木曾義仲が愛妾、巴御前。 宝具もスキルもステータスもよくまとまっていて、申し分ない。 バゼットはおおむね満足しながらもランサーとの会話に意識を戻した。 「なる程。その結界は現代の神秘によるものではなさそうですね。サーヴァントの一兵、キャスターならあり得るかもしれません」 「今夜から偵察をかけてみましょう。ところでマスター。例のあれは仕上がっております」 「貴女の宝具、マスター専用の宝具とも言える『縁紡ぎし忠義の印』ですか」 予想外どころかそれ以上にこのサーヴァントは有用だった。 本来三画しか配布されない令呪を作り出す能力は、用途が非常に限定されているとは言え、他の陣営には無いアドバンテージとして存在している。 そしてそれ以上にランサーにはある長所がある。 敗死した逸話が無いのだ。 木曾義仲と別れてからの記録が無い。尼になったとも言われているが、敗死の記録が無い以上、彼女の真名が知れたとしても滅ぼすのは至難の業だろう。どのような方法や道具を用いて殺せばいいのか分からないのだから。 「それからもう一つ聞きますが、貴女の願いは義仲軍の武将として最強を証明する為に参加することでしたね」 「はい。もはやこの世界に義仲様と仲間達の痕跡はありませんし、家系すら途絶えています」 だからこそ、とランサーは答えた。 「せめて過去には我等がいたのだと。将軍様と同じ夢を抱いた武者は確かに強かったのだと、証明したいのです」 「それならば、聖杯にかける願いは無い、と。それはそれでいい」 欲望は力になるが、強すぎる欲望は身を滅ぼす。少なくとも聖杯ほしさに血迷った真似をすることは無さそうだ。 「とは言っても、負けるつもりはありません。必ずや勝利を掴んで見せます」 自らに勝利を誓うランサーの姿は、確かに美しかった。 征服王イスカンダル。革命王ナポレオン。蹂躙王チンギス・ハン。魔王ヒトラー。 彼等は世界の領土を多く征服し、世界の王と崇められているが、それでも自分の敵では無いと彼女はせせら笑った。 少女は―――背格好がそう見えるだけであって、その実全てを包み込む母性と全ての息の根を止めることも出来る魔性は、まさに彼女が此度の聖杯戦争で召喚されたキャスターであることを証明している。 片眼に眼帯をはめ、手の指全てに包帯を巻いたその姿は見るだけで痛々しいが、彼女はかつて父親に潰されたその指を、愛おしそうに撫でた。 彼女がいる場所もまた、尋常では無い。 濃霧が立ちこめる海上。そこには港湾部に似つかわしくない“島”が存在していた。 『遊泳孤島(イマップ・ウマッソウルサ)』 彼女の子供であり城であり魔術師としての工房でもあるそれは、主の存在以外を認めない。主以外の人間を背に乗せればそのまま海に引きずり込み魚の餌にしてしまうだろう。 この大海こそ彼女の最大の武器だった。どんな英雄でもこの海を根城にする彼女には敵わない。 人間達は大海を制したなどとほざいているが、それは海面を浮遊物に乗って浮くアリが大言を叩いているのと同じだ。深海は未だ人間にとって未知の空間であり、完全に到達した人間はこれまでの歴史ではまずいない。 現在の人間達がそうである以上、過去に生きる英雄達も同様だ。彼女に言わせれば王達の覇道など、子供が砂場で遊んでいることと大して違わない。 今の時代には深海まで潜れる原子力潜水艦とかいう軍船があることは知っているが、彼女にとっては正しく玩具に過ぎない。少々水流を起こすだけで真っ二つにへし折れる小枝のようなものだ。 王と呼ばれる者達の中でも海を完全に征服したものはまずいない。 この星の多くを占める海はそれだけ懐が深く、そして無慈悲だ。 深海に潜った彼女は、自分の子供達である海獣達の頭をよしよしと撫でた。 フユキという土地の海中は既に彼女の世界だ。 討ち取るには海に潜って首を取るしか無いが、最優のセイバーであろうとも水中という彼女のフィールドで本来の力を発揮することは出来ない。動きは鈍くなり、そこを彼女の子供達の食事になるのが関の山だ。 「これで防御の態勢は整えたわね。あとは……」 そこに彼女の子供である魚が寄りそう。彼女は魚の姿を見るだけで、言わんとすることを理解した。 「そう。マスターの手足を完全に食いちぎったのね。美味しかった?みんないい子よ。マスターは戦いを怖がっていたんだから、私が守ってあげないと、そのためにも何処にも出しちゃ駄目。 ずっとこの深海で何処にも出さずに守ってあげる……始めましょう私達の聖杯戦争を。世界を私の憎悪(アイ)で満たすために」 寄り添う魚たちに話しかけるその姿は愛らしく見えるが、話の内容は残酷極まりない。 それはそうだ。彼女は海そのものであり、豊かな恵みを与え、時に荒れ狂い命を奪うそこにある存在なのだから。 サーヴァント七クラス中、三騎士クラスとしてセイバー、ランサー、アーチャーが定められている。 言うまでも無く、せいばーは刀剣を、ランサーは長柄武器を、アーチャーは長射程の飛び道具を扱う。 大事な点は三騎士全てが“武器”を扱う点である。人間の強さは乱暴に言えば扱う道具に左右される。 「……つまり、『武器』が一切効かない英霊をバーサーカーとして使役すればいいのです」 「だから、カフカスの半神?」 聞き返すリズに、セラは眼前でうずくまる8メートル以上の巨体を見た。 身体は金属のような光沢に輝き、時折熱風が吹きすさぶ。 その威圧感は、超人と言うより怪獣じみたものだった。 「Aランク以下の武器による攻撃は全てキャンセル。殺しきれるのはかの騎士王の聖剣程度でしょう」 「鍛冶の神に鍛え上げられた鋼鉄の身体だもの。アインツベルンに順当に勝つには、マスターである私を殺すぐらいしか無いわ」 得意気にイリヤも会話に加わる。 最強の防御力に加え、自力で真名解放ができないものの強力な攻撃手段をも持っている。アインツベルンが喚んだ英雄は、文字通り破格の存在だった。 ただ一つ、問題があるとすれば。 鍛冶の神に鍛え上げられた鋼鉄の肉体を持つ英霊―――バトラズは、時折唸り声を上げながらも動こうとしない。 その理由は、バーサーカーが僅かに身じろぎしたことで分かった。 ずぶずぶずぶずぶずぶ。 「あーっ!バーサーカーのおばかー!気をつけて歩かないと駄目って言ったでしょー!」 バーサーカーは体長8メートル以上、そして体重は100トンである。 狂化していても二足歩行することは変わらないので、身体の部位で接地面は足の裏だけになる。 100トンの自重が圧力となって、足の裏に集中するため……。 「おばか~。こんなんじゃどうやって戦うのよ」 呆れるイリヤの眼前には、股下まで地面に埋まったバーサーカーがいた。 「もう、霊体化しなさい!」 かき消えるバーサーカーを見ながら、アインツベルンのホムンクルス達はため息をついた。 そう、このバーサーカーは重すぎるのだ。 屋内での戦いや足場の悪い場所での戦いは全く動けなくなる可能性がある。 霊体化している間は流石に平気だが、実体化して闘える場所は限られている。 強いが使いにくい駒。 それがアインツベルンのバーサーカーだった。 だが、このバーサーカーの問題はアインツベルン陣営にある変化をもたらした。 「それじゃあ、今日はバーサーカーが闘えそうな場所を偵察してくるわよ。いい場所を見つけたら念のため地面一帯に強化の魔術をかけておいてね」 イリヤは冬木市の地図を広げ、リズとセラに指示を出した。 「その場所で闘えない場合は、お嬢様を襲ってくる敵への対策が必要になりますね。マスター殺しを行うアサシン対策が必要です」 「そうね。今日は霊体化から実体化へのタイムラグを短縮させる訓練を行うわ」 「イリヤ。マキリとトオサカに使い魔飛ばした」 使いづらいバーサーカーを何とか使えるようにする対策、アインツベルンが作戦を立て始めたのだ。 強い武器、強い兵士、強いマスターを揃えるのは、正攻法を大黒柱としている戦争においては正道だが、それらを上手く使えなければ単なる宝の持ち腐れに終わる。 皮肉にも理性無きバーサーカーの存在が、イリヤ達に作戦と戦術の大事を痛感させ、僅かながらもバーサーカーは戦略的に、効率的な武器として使われることになった。 強い武器、強い兵士、強いマスター+事前の情報、適切な運用、的確な作戦。 それらがイコールで結ばれれば、出る答えは『無敵』である。 巨人。 巨大な人という意味以外にも、強力な国家などを指す場合がある。 そして巨人国家に怯まず戦い、ついには独立を認めさせた英雄。 人はそれをジャイアントキリングと呼ぶ。 英霊は成長しない不変の存在として世界に登録された者達だ。 これは聖杯戦争では重大な問題として立ち塞がる。例えばAという英霊がBという英霊と戦った場合、BがAより圧倒するステータスを持っていたら、Aは手も足も出ないという事になる。 勿論戦闘がステータスの比べ合いだけで終わることなどありえず、作戦次第で勝つことはあるが、それでも不利になることは変わりが無い。正攻法に勝る作戦は無いのだから。 聖杯戦争に参加するマスター達はこぞって強力な英雄を喚ぼうとするだろう。 強力な宝具を、強力なスキルを、強力な魔力を、強力な伝説を持つ英霊を。 おりしも冷戦中の兵器開発競争に似た思考の渦の中で、魔術師殺しと蔑まれた男は逆に考えた。 自分の他の六人六騎がいずれも強力であっても、勝ちに繋げることが出来る英雄。 例え本人が弱くても、強い英雄を倒すことが出来る英雄。 つまりは、とどのつまりは圧倒的に強い敵を退け、目標である民族の独立を成し遂げた反骨の英雄ならば、例え相手方のステータスが圧倒的でも、負けないための戦い方が出来る……と考えた。 隣国である軍事大国に対し卓越したゲリラ戦の技術を持ち、時局を見誤らない眼力を持って祖国を独立させ、王朝を開闢した平定王の聖遺物を、魔術師殺しは手に入れた。 結局喚び出す英霊は他の人物に決まったが、聖遺物だけはセーフハウスの一つである武家屋敷の土蔵に保管されていた。十年後に一人の正義の味方を目指す少年が偶然から件の英霊を喚び出す事は誰も予想できなかったが。 「セイバー、メシができたぞ」 「おう。坊やか。今日は何だ?」 異国の服装を着込み、背に大剣を背負った男に、未熟な魔術使いの少年、衛宮士郎はお盆の上に乗った料理を並べていく。 「ベトナムの麺料理、フォーだ。中華は苦手だけど、ベトナムと中国は違う国だから、うん。大丈夫だ」 「俺の国の食い物か……おお!いけるぞ!」 ずぞーずぞーと美味そうに麺を啜る男―――サーヴァント、セイバーは空になった丼を突き出して一言。 「おかわり!」 「はいはい」 新しくフォーを注ぎながら、士郎は偶然に召喚したセイバーを見やる。 普段は気のいい兄ちゃんと言った様子で、大凡英雄に見えない。だが、ここ数日の同居で外見だけが全てではない事を士郎は思い知っていた。 聖杯戦争の事をセイバーから聞いたとき、衛宮士郎は居ても立っても居られずにその被害を食い止めるために戦うことを決めた。その為なら命ですら投げ出しそうな勢いの士郎を、セイバーは冷静に落ち着かせると、自分の宝具やスキル、真名、そして基本的な戦闘スタイルなどを話し合った。 「なあ、セイバーは真っ向から勝負するのは苦手なんだよな?」 「苦手じゃ無いぞ。趣味じゃねーだけで。まあ、得意なのは戦略的撤退と奇襲だけどな」 セイバーは冬木市の地図にペンで注釈を記しながら、話を続けた。 「この戦争考えた奴はよっぽどのアホかよっぽどの外道だ。強力な宝具を使う英霊なら、勝つ可能性は高くなるが、そいつらを喚び出した連中はそれを『いつ』、『どこで』使うのか失念してる。宝具やスキルがショボイ連中の方がよっぽど扱いやすいだろうに」 宝具の中には対軍宝具や対城宝具、はたまた対国宝具や対界宝具なんてものもあると士郎はセイバーから聞いている。住宅密集地域が多い場所でそんなもの使えば、大惨事どころの話では無い。 「下手に使えばドカンと花火大会だ。その点俺の宝具は退却が成功しやすくなるだけだから、周囲に与える影響は大して無い。使用に対して魔力の消費以外に懸念は無い。だから俺達の戦略としては序盤でできるだけ情報を集めて、危険な宝具を持っている奴には張り付いてぶっ放そうとした時にはバッサリ切り捨てる」 勿論、後ろから攻撃する。隙を見せたところを狙い撃ちにしてな。そこまで言うとセイバーは士郎の手に視線を移した。 「士郎、令呪は隠しているよな?」 「ああ。怪我をしたってことにして包帯巻いている」 令呪のある片手に巻かれた包帯を見て、セイバーは頷いた。 「それでいい。お前の今の力じゃ逃げ隠れしかできねえ。聖杯戦争終盤、あるいは終わるまでは力を蓄えておくんだ」 幸いなことに、士郎自身の魔力は微々たるもので、住居にも殆ど魔術の痕跡が無いに等しい。 聖杯から情報として与えられた『魔術師らしい』からかけ離れているのだ。 これは魔術師に気づかれにくいという強力な利点であり、攪乱と逃げ隠れをそのまま攻撃に繋げるセイバーの戦術にも寄与するところは大きい。 工房を城とすれば、守りを固めるのが普通だが、戦争全体に目を見回せば時には城を捨てることが正解である場合もあるのだ。尋常な魔術師では有り得ない『本拠地を捨てる』という行為ができることは美点の一つだ。 「……それしかできないのか?」 「正義の味方志望としては、納得いかねえか?」 そこでセイバーは不満げな表情をしている士郎に対し、真剣な表情になった。 「意気込みだけじゃどうにもならない現実もある。お前の命を消費しても変わらないものもある」 いつもは気のいいセイバーの冷厳とも言える事実を告げる言葉に、士郎も黙り込んだ。 「―――それでも、お前はこの街守りてえか?」 「……」 「死ぬ確立がデカイことは勿論、誰にも褒められるわけじゃねえ。報酬だって出ねえ。嫌な思いだってするだろう……逃げたって誰も責めはしない。それでもお前は他人の為に貧乏クジ引く度胸はあるのかよ?」 「セイバー」 セイバーの真剣な問いかけに、士郎はやっと声を絞り出した。 「俺は大火災の孤児だ。本当の両親の記憶なんて無いし、そんな俺がこの街を尊く思うのはおかしいかもしれない。それでもだ……爺さんに会えて、藤ねえや桜に会えたこの街が俺は好きなんだよ。この街に住む人達が泣きたくても泣けないような酷い目に遭うかもしれないのに、黙ってなんかいられない……俺のふるさとなんだ。守りたい」 衛宮士郎は空っぽな人間で、だからこそ、この街と住んでいる人達の価値も分かっていると思いたい。 士郎の無言の思いを瞳の中に見たセイバーはこくりと頷いた。 「人が戦う理由はそれぞれだ。利益のために戦う人間がいれば、誰かのために剣を取る奴だっている。自分の故郷を守るために戦うなんて理由なら、まあ上等な方だろ」 そこでセイバーは自身の剣を鞘から引き抜いて掲げた。 黄金色の輝きは、湖水に朝日が煌めいている様に似ていた。 「それじゃあ、開始しようや。俺達の戦争を。レ・ロイと衛宮士郎の戦争を」 ―――今此処に、世界最小最大の戦争が開かれる。
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/250.html
戦火の赤騎士:A (レッドライダー) セイバーの戦争と殺戮を司る存在としての特性。 周囲の人間の憎悪、殺意によってパラメーターを変動させる。 より血みどろの戦場の中であるほど、このサーヴァントの能力値は上昇する。
https://w.atwiki.jp/minnasaba/pages/759.html
8. 突然の爆発音に驚いて飛び出してきたのは、喫茶店レーヴェンスボルンの人々に限らなかった。 花火の類では決してありえないその轟音。子供の悪戯である筈はなく、近隣で事故があったのかと思えばそうではない。 何事かと顔を見合わせ、ふと空を見やり――そして更に驚愕する。 完成すれば水佐波水上都市のシンボルとなったであろう高層ホテルの最上部が、跡形も無く消し飛んでいるのだから! 住民達の脳裏によぎるのは数年前に発生した、飛行機が乗客もろともビルに突っ込んだという、あの事件。 そう、事件だ。事故ではなく、事件。となれば、この後に何が起こるかわかったものではない。 我先にと逃げ始めた人々の判断は、はっきり言って正常だったろう。しかし、状況が異常であった。 「――――うん?」 最初に其れに気づいたのは、昼食を食べようと会社を出たばかりのサラリーマンだった。 ホテル最上階が爆発する、その瞬間を目撃していた彼は、取るものも取らず慌ててホテルとは正反対の方向に走り出していた。 不幸にして逃げ惑う人々の最前となってしまった故に、彼はその集団と出くわしてしまう事になる。 その集団は――どうしたわけか、冷凍倉庫の中から現れた。ぞろぞろと何十人も連なって。 最初は倉庫の従業員達かと思った。しかし、その衣服はといえば決して作業用のそれではない。 私服のものもいた。背広のものもいた。大人もいれば老人もいたし、子供も混ざっていた。男もいれば、女もいた。 そして、あろうことか、彼らはホテルの方へ向かおうとしていたのだ。 「お、おい、あんたら! あっちは危ないぞ!」 戸惑いながら、サラリーマンは彼らに注意を促す。 ひょっとしたら倉庫の中にいて、何が起きたのか知らないのかもしれない。 幾ら奇妙な集団だからと言っても、見捨てておける筈は無かった。 しかし、誰も止まらない。 中空を睨む虚ろな眼に、だらしなく開いた口元。しかし足並みは整然としており、軍隊さながらに乱れが無い。 ぶつぶつと何やら呟きながら、まるでサラリーマンの姿が眼に入っていないかのように、歩いていく。 ――こいつら、何かやべぇぞ……。まるで死人じゃねェか……。 直感的に判断し、それ以上声をかけずに走り出そうとした彼の判断は、やはり正常と言えただろう。 しかし、状況は異常なのだ。 背後――――つまりホテルの方向から迫り来る巨大な何かに気づいた時には、もう遅い。 それが何なのか理解する暇もなく、雪崩の如く迫り来る鼠の群れにサラリーマンは飲み込まれ、そして消えた。 他の市民達も、程なくして理解するだろう。 人を貪り喰らう鼠の群れ。 次々に数を増やしていく死者の軍勢。 その両者の戦いの最中に、自分達が放り出されたのだということに。 「ど、どーしよう、なんか凄いことになっちゃったよぅ……っ」 「慌てるな、小日向。テロにせよ事故にせよ、少なくとも避難するのが妥当だろう。 しかしテロだとして、水佐波を狙った目的はなんだ? ……まるで想像がつかないが」 「少なくとも私達が考える事じゃないよ、冴子」 そして一方、喫茶店レーヴェンスボルン。 瞬く間に人々がいなくなり、取り残されたのはごく少数の人員。つまり水佐波高校の女生徒たちと、夏海、優介、鉄人、そしてアーチャーであった。 通りで奇妙な集団――少なくとも一般市民である彼女達にはそれが死者だとはわからなかった――と、異常な数の鼠が争う光景を見ながら、 パニックにならずに留まっていられたのは、そして異常事態に慣れた人員が残っていたのは、幸運以外の何者でもなかろう。 ――と、優介は、喫茶店の窓際に一羽の鴉が止まっていることに気づき、それを店内へと招き入れる。 そしてその鴉が纏っている腐敗臭に顔を顰め――それが誰から送られたのかを理解し、ますます不機嫌そうな顔になった。 手を伸ばすと躊躇うことなく鴉の首を引っつかんで持ち上げ、その足首に巻かれた紙切れを外し、目を通すと、 やはり躊躇うことなく、その手紙をグシャグシャに握りつぶす。親の仇もかくやと言わんばかりの様子だ。 「どーかしたで御座るか、御館殿」 「…………あーもう、面倒臭ェ」 ため息を一つ。こうなったら、つい先ほどまで睨みあっていた男――蔵間鉄人との交渉所ではあるまい。 そしてそれは、鉄人も同様らしかった。二人して顔を見合わせ、それから揃ったように溜息を吐いた。 「おい、あんた……取り合えずここは手を組まないか?」 「ちょうど良い。坊主、俺も似たような事を考えてたぜ。 俺ァ、この街でのゴタゴタをさっさと片付けたい。坊主も似たようなもんだろ」 「ああ。さすがにこの状況は、あんたと殺し合ってる場合じゃないからな。まったく面倒臭ェ」 流れるように会話が続き、あっさりとここに同盟が結ばれる。 気に喰わないことだが、鉄人と優介はお互いに、相手と自分の求めているものが同じだという事を理解していた。 つまるところ、菅代優介は自分が平穏に生きたいが故に、蔵間鉄人は水佐波の街と住人の為に、この状況―― ――――ひいては、聖杯戦争などという馬鹿騒ぎも片付けてしまいたいのだ。 恐らくは聖杯に捧げる願いが無いのも同じだろうと、互いに考える。 それに何より、菅代の翁/あの爺と比較して――手を組むには申し分ない相手だった。 優介は鉄人が『何者』であるのかを知っているし、鉄人――というより夏海にとって――優介のような主催者側と協力できるのは大きい。 双方共に、生き残ることが至上の目的である以上、ここで争う必要が無い。 こう言った双方の事情を鑑み、渋々であったが手を組むことに鉄人が同意したのは、本人の過去の経験に拠るものが大きいのだが、 それがこうも簡単にまとまったのは、本人は無自覚であろうけれど、優介の持つ『能率』という起源に助けられたからだろう。 詰まる所は二人揃って「利害が一致すれば私情に関係なく手を組める」人間だった、という事だ。 ようは似たもの同士と言っても過言ではあるまい。――本当に、気に喰わない事だが。 「しかし、ありゃ何だ。やらかしてるのは九割九分九厘マスターどもだろうが、正体がわからん」 「ああ、あれは死体だ。……参った事に、誰が操ってるのかも知ってるから、それは任せて欲しい。 かわりにあんたは鼠の方を片付けてくれ。と言うかマスターなら、あれが何だかわかんだろ?」 「ああ、それなんだがな……」 さて、どう説明したもんかと鉄人は思考を巡らせる。 協力体制を組む以上は明かすべきなのだろうが、しかし彼女を必要以上に関わらせるのは本位ではない。 ――が。 ちょこちょこと何時の間にか此方に近づき、会話を盗み聞いていた夏海には、そんな心配は関係なかった。 「あ、それ違うよー」 「あん?」 「マスターなのは兄さんじゃなくて、あたし。サーヴァントはアサシンだっけ?」 「はァ!? 素人がマスター?! なんだよそれ、ふざけてんのか! 馬鹿なのか? 死ぬのか!」 「まぁ、そういう事も稀にあるで御座るよ。慌てない慌てない」 「お前は少し慌てろ、アーチャー! くそったれ、面倒臭ェ……!」 激昂する優介を他所に、鉄人は心底から頭を抱えたくなった。 「つまりあの鼠どもは、一匹一匹が全部サーヴァントだって事か」 「うん。でもさ、あたしは良く知らないけどサーヴァントとマスターって普通、二人で一組ずつなんじゃないの?」 「まあ、一人で複数のサーヴァントを従えてる例も無くは無いけどな。 主人を無くした奴と契約をしたり、最初から二体召還したり……本家本元、冬木の聖杯戦争で何度か確認されてる。 確かこの前の回でも一組か二組はいた筈だが……まったく、あの鼠は反則も良い所だ。面倒臭ェ」 余りにも圧倒的な戦闘力の差に、優介は心底から溜息を吐いた。 祖父の残した資料――過去に行われた聖杯戦争の記録と、つい最近開催された戦争の生存者からの報告書による限り、 英雄となった鼠の大群などという、こんな馬鹿げたサーヴァントが存在する筈も無いのである。 エーデルフェルトの双子などが、一人の英霊の正邪両面をそれぞれ召還したという特異な例も存在するが、 あれは一人一体というマスターとサーヴァントの原則を破っているわけでもなく、参考にすらならない。 かつて聖杯戦争に参加した時計塔の講師曰く、無数のサーヴァントを召還する宝具も存在するようなのだが、 しかしこうも長時間――更に広範囲に渡って――扱えるような物で無いことくらい、魔術を齧っていれば誰もが想像できる。 可能性として考えられるのは、その講師が参加した聖杯戦争の『分裂するアサシン』のようなタイプだろう。 アサシン程度ならば、それこそ他のサーヴァントで正面から戦う事ができれば問題にすらならないのだが、 ……………鼠の大群ともなると、正直な話、どう対応して良いのかまるでわからない。 「アーチャー、何か手はあるか?」 「……生憎、拙者は『一匹の怪物』を退治して祀り上げられてしまったのであって、戦場で暴れたわけでは御座らん。 というより、戦場で負けたから腹切って死んだので御座るからして、ぶっちゃけ無茶振りで御座る――が。 嫌ァなことに、正体は検討がついてるので御座るよー……多分あれ、頼豪殿で御座る」 「頼豪――頼豪阿闍梨か!?」 その通りと頷くアーチャーに対し、思わず鉄人は顔を顰めていた。 頼豪阿闍梨と言えば、時の天皇を恨み、絶食して果てた後、関東を襲った怨霊である。 とてもではないが、まともな英霊の類ではない。 であるならば、この鼠の大群こそがサーヴァントであるというのも頷ける話だ。 なぜならば頼豪は恨みを晴らす際、その体を八万四千匹の鉄鼠へと転じたというのだから。 どうにもこうにも打つ手が欲しいところだ。 死者の軍勢は現在、かろうじて鉄鼠の群を押さえ込んでいるが――それ以上ではない。 長期戦になるのは確実だし、それで果たして勝てるかどうかも不明だ。 加えて、もしも長期戦になどなれば水佐波がどうなるのか想像もつかない。 神秘は隠匿すべしという大原則から外れるのも良いところだ。 ――後のことを考えると、優介としては非常に頭が痛いのだが。 と、そこで何かを思い出したのか、夏海がぽんと手を叩いた。 「あ、でさ、兄さん達。相談中のところ悪いんだけど、ちょっと良い?」 「あん?どうした?」 「実はその、友達の彼氏が入院してるんだけど――……」 ちょいちょいと夏海の手招きに応じて、彼女の友人達が話し合いの場へと集まってくる。 全員が年頃の少女である以上仕方ないのだが、その顔には不安や怯えの色が濃い。 平静を保っていられるだけでも、褒めてやるべきだろう。 「……彼女の性格からして、梃子を使っても傍を離れんだろう。様子を見に行きたいんだが」 「私や冴子、葵も鍛えてはいるけれど、正直、徒歩で行けるとは思えなくて」 「病院――水佐波総合病院か。……おい、坊主。お前、アシはあるか?」 「一応は車がある。無理やり詰めれば全員は乗れなくもないだろう」 優介の言葉に頷き、鉄人は黙考する。 手はある。やろうと思えば、割合と楽だ。だが――やりたくはない。 そうも言ってられない状況なのは重々承知しているし、実行するつもりでもいるが。 ――糞ったれ。戦争なんていうのは半世紀以上も前に終わっただろうに。 「……よし、わァった。夏海、お前は俺と一緒に来い。お嬢さんがたは、坊主の車で病院まで送ってもらえ。 病院は病院で何か対応してっだろうし、たぶん大丈夫だろう。その後の担当は、さっき決めた通り。坊主、良いな?」 「構わないが――――あんた、何とかできるのか?」 「ああ。だから、そっちも早いところ何とかしてくれ」 ―――――ほど無くして。 「大蛇」は人員を満載して、レーヴェンスボルンから走り去った。 さすがに日本車、危なげない走りである。あの分なら、このどうしようもない状況の中であっても問題なく病院まで行けるだろう。 しかし夏海としては――不安以外の何者でもない。 あの夜、ランサーと血を啜るマスターに襲われた時から、たった一日だ。 戦いとは全くの無縁だったというのに、今から行くのは殺し合い。 ――いや、それはつい一時間前まで、この水上都市を闊歩していた多くの人たちもそうだろう。 その内の何人が助かり、何人が死に、そして――『視る』事になるのか。 一歩間違えば、自分もそうなるのだ。自分だけでなく、兄や、アサシンも。考えたくもない。 何もかも投げ出してしまいたいけれど、何とかできるのも自分――のサーヴァント、アサシンだけ。 別に主従だとかそんな事を考えてはいないが、彼女が戦う以上、自分が逃げるわけにもいかない。 そして何より、鉄人が戦いに行くのだ。自分が逃げるわけにはいかない。 だけど――どうしようもなく、怖かった。 「……………兄さん。大丈夫?」 「ああ、大丈夫だ。別に、大した事じゃ無ェさ」 「……本当?」 「本当だ」 「…………本当の本当?」 「本当の本当だ」 「……………本当の本当の本当?」 「本当の本当の本当だ。……つか、怖いならついて来なくても良いんだぞ?」 「う……。それは―――」 できない、と。 あまりにも魅力的な言葉だけれど、できないのだと。彼女は首を横に振って拒絶する。 それを見た鉄人が、困ったような顔をして笑い――不意に、わしゃわしゃと夏海の髪が引っ掻き回された。 あの晩と同じ、撫でているんだかなんだかわからない、不器用な手の動かし方。 「だったら、少しは信用しろ。 俺ァ大丈夫だし、お前も大丈夫。それに――」 「ええ、わらわもついておりますもの。夏海様、心配する必要はありんせん」 胸元から聞こえてくる軽やかな声。未だ首飾りの姿をしているアサシンが、穏やかな様子で囁いた。 ――そう、あの夜と同じなのだ。 アサシンがいて。鉄人もいて。 不意に、胸の中に広がる暖かいものに気がついた。不安が溶けていくように無くなった事に気がついた。 「…………うん。わかった、信用する」 だから行こう、と。 夏海は、混乱の渦と化した水上都市へと脚を踏み出した。 ****あとがき************ さて、皆さんあけましておめでとうございます。 今年もどうか宜しくお願いします……と、新年SS書初めでした。 いろいろと悩みながら試行錯誤を繰り返しておりますが、 どうにかこうにか、リハビリが終わってきたような感もあります。 とりあえず水佐波市を大パニックにというのは当初から考えておりまして(笑) 鉄鼠VSゾンビ軍団というB級映画もかくやな光景ではありますが、 それがメインなわけではないので、描写も浅くせざるをえんのが残念です、はい。 まあ、どうにかこうにか頑張って行きたいなぁ、と。 次回はライダーVSアーチャーの――予定!