約 2,496,731 件
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/1444.html
『ノストラダムス秘密の大予言』は1991年にオウム出版から刊行された麻原彰晃の著書。 【画像】カバー表紙 内容 全4章構成である。 「第一章 本物の予言詩集を求めて」「第二章 ノストラダムスの故国、フランスでの資料収集」では、麻原とオウム真理教の中心的な信者が信頼できる原文を求めてフランスに飛び、ミシェル・ショマラと会見したことなどが述べられている。 「第三章 ついに解かれた封印」「第四章 一九九九年の謎」は、手に入れた1555年版、1557年11月3日版などを元に解釈した結果を部分的に紹介したものである。 コメント 本書はオウム真理教の機関誌『マハーヤーナ』に掲載された記事に加筆修正したものである。 ミシェル・ショマラとの会見内容についてだが、ショマラの発言中には殊更にオウムを持ち上げる発言はほとんど見られない。 その一方、(麻原にとっては都合が悪いであろう)詩百篇第10巻72番が偽物である可能性が指摘されている(詩百篇第8巻以降に偽作の疑いがあるというのは、確かにショマラが著書でも述べている持論である)。 こうした点から言って、麻原及びオウム真理教が多々問題を引き起こしたことは言わずもがなだが、ショマラの発言を著しく歪めるようなことはしていないように思われる。 ショマラが1557年11月3日版の影印版を出版するのは1993年のことであり、オウムはそれに先んじてその原文(のごく一部)を日本で紹介した形になった。 解釈が独善的で見るべきものがほとんどないことは他の解釈本と変わるところがないが、その前提となる資料収集の点では、他の日本人解釈者たちよりもはるかに充実していたことは事実だろう。 ただし、山本弘が指摘するように(*1)、逆にその真面目さゆえに後戻りできなくなり、後の暴走(一連のオウム真理教事件)につながった可能性を否定できないのも事実である。 書誌 書名 ノストラダムス秘密の大予言 副題 1999年の謎 著者 麻原彰晃 版元 オウム出版 出版日 1991年12月14日 注記 外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire) Titre Nostradamus himitsu no daiyogen (trad./ Les grandes Prophéties secrètes de Nostradamus.) Sous-titre 1999 nen no nazo (trad./ Le mystère de l'an 1999.) Auteur ASAHARA Shôkô Publication AUM shuppan Lieu Tokyo, Japon Date le 14 décembre 1991 Note Entretien d'Asahara avec Michel Chomarat à Lyon, 1989 (chapitre 2) ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/2511.html
2018年予言―2019年予言―2020年予言 ノストラダムスの2019年予言は、いくつかのインターネットメディアで報じられている。しかし、毎年恒例の単なる与太話の域を超えるものではない。 なお、ノストラダムス本人の予言で2019年と明記された予言は存在しない。 報道の例 「【緊急】2019年ノストラダムスの予言を大公開! 移民押し寄せ日本滅亡、最高気温100度、地震連発、寿命は200歳に…!」(TOCANA, 2018年10月18日) "Nostradamus 2019 predictions World War 3, climate change and asteroid disaster - SHOCK"(Express, 2018年12月5日) ほかにも英語圏を中心にいくらか見られるが、同工異曲なので省く。 いずれにしても、それらはノストラダムスの2018年予言でとりあげたものとの重複がほとんどである。 また、いくらかある新予言はノストラダムス『予言集』の中での適切な出典を挙げておらず、単なる捏造か、2019年と明記されていない予言詩の大幅な曲解かのいずれかだろう。 改めて論じる必要性を感じられない。 印刷物の例 『SPA!』2019年1月29日号の2ページの記事「最新[地球滅亡論]の読み方」には、角由紀子と山口敏太郎によるノストラダムス予言の断片的な紹介がある。彼らによれば、2019年向けのノストラダムス予言には以下のものがあるという(以下3項目は、地の文・発言の区別なども、出典のまま引用)(*1)。 「秩序は乱れ世界は混乱。ノストラダムスは’19年にローマ法王の暗殺を予言」(山口氏) ノストラダムスの予言では、’19年に日本に大量難民が押し寄せて日本が滅亡する。「北朝鮮と韓国が統一した後、武装難民が新潟に上陸。南下しながら日本を侵略します」(山口氏) ノストラダムスの大予言では、日本もノアの大洪水レベルの大洪水にあうという。「イタリア、イギリスなどの欧州諸国でも、’19年に大洪水の被害にあうといわれています」(角氏) これらが一体何に依拠したものか、一切明記されていない。 『予言集』には、ローマ教皇暗殺と解釈されてきた予言はいくつもある(第2巻97番およびmansolが出てくる詩など)。 ヨーロッパの大洪水の予言もいくつもある(イタリアの例として第2巻31番、イギリスの例として第3巻70番など)。 だが、それらに時期の指定など一切ない。 「日本」「韓国」などは出てこないし、ましてや「新潟」などみじんも出てこない。「太陽」(Soleil / Sol)を日の丸=日本と解釈するなどの例はもちろんあるが、時期の指定がなく、2019年と解釈するのには無理がある。 ノストラダムスの2018年予言のように、近年のネットメディアには、具体的固有名詞を含むものがあるから、そういったものから持ってきたのかもしれない。だが、当「大事典」で何度も述べている通り、それらのほとんどは根も葉もない捏造である。 過去の解釈例 占星術的解釈から2019年が挙がった例はなくもない。詩百篇第5巻25番である。その1行目の星位が、2019年8月を指しているというのである。 手元のホロスコープソフトで確認する限り確かにそうなっているが、そう主張したジョン・ホーグ自身は、あくまでも複数の可能性の一つとして挙げたにすぎず、1987年のイラン・イラク戦争とする解釈を採用していた。 実証主義的研究の結果からも、2019年8月と見るのが妥当とは思えない。 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/2024.html
『ノストラダムス・メッセージII 一九九九年七月 ― 二十一世紀篇』 は、1993年に角川書店から刊行されたヴライク・イオネスクの著書。監訳者は前著『ノストラダムス・メッセージ』と同じく竹本忠雄である。 【画像】 『ノストラダムス・メッセージII』 カバー表紙 内容 目次は以下の通りである。 イオネスク解読の歴史的成功 - 日本語版監修・翻訳者序 序論 またも勝利したノストラダムス 第一部 「陽気主義者たち」の湾岸戦争第一章 最大の謎「アダルンカティフ」 第二章 強者としての「悪(マル)」 第二部 黙示録のロシア第一章 右手のかたに還らんとして・・・ 第二章 「祝婚歌(エピタラム)」は流れても・・・ 第三章 暴かれたロシア全土の核汚染地獄 第三部 二十一世紀の激闘と武勲詩第一章 中国―アラブ枢軸軍、進撃す 第二章 「一九九九年七月(ななつき)」の贈物 第三章 近未来の賦―迎え撃つ「大君侯」 第四章 遠未来の賦―第三次世界大戦 第四部 ニューワールド第一章 日・米・欧の卍ともえ 第二章 ノストラダムスは見た――「天孫の国ニッポン」 第三章 射手座の射手、三島由紀夫 ヴライク・イオネスク博士来日記念講演 精神世界の使者―ノストラダムスの秘密と使命 エピローグ 基本的には書き下ろしだが、同じ年のイオネスクとマリー=テレーズ・ド・ブロッスの共著 『ノストラダムスの最終的勝利』で示された解釈内容と重複する部分も少なからず見られ、監訳者の竹本も 『ノストラダムスの最終的勝利』 について、「本書の要約版といったもの」 と位置づけていた。 書名や章題に表れているように、湾岸戦争などの予言解釈を行いつつ、21世紀初頭にも起こるとしていた中国・アラブ連合軍とヨーロッパ諸国の戦争についてのシナリオを描き出している。 コメント イオネスクのシナリオ (特にその基幹たる 「大君侯」 君臨によるフランスの王政復古) は現時点では未来に属する部分が残っているので、当たった、外れたというレベルの論評は控えておくが、解釈以前に基本的な事実関係の誤りが目に付くことについてだけ触れておきたい。 たとえば、アムステルダム版を現存最古の『予言集』として紹介しているが(*1)、明らかに誤っている。アムステルダムで出された版は1667年版か1668年版のいずれかしかない。しかし、1555年の初版も含め、1665年以前に出されていた版は数十という単位で現存している。 また、ノストラダムスがモンペリエ大学で医学博士号を取得できた理由は 「革命的な医療法に関する論文」 によるものだったとしているが(*2)、そもそもノストラダムスが本当に医学博士号を取得できたかどうか自体に議論があり、今なお裏付ける史料が発見されていないくらいだから、イオネスクが講演した時点で学位請求論文の内容など特定できたはずがない。 ほかにも、アンリ2世との謁見が1556年だったとか(*3)、予兆詩集は1567年11月向けが最後であるとか(*4)、あからさまに古い情報が散見される。 こうした事実は、「世紀別ノストラダムス文献目録」(『ノストラダムス・メッセージ』所収) にも掲載されていた一部の実証的研究書に基づけば、容易に訂正できたはずの事柄である (厳密には、シャヴィニーの弟子入りの時期については、ジャン・デュペーブの『ノストラダムス 未公刊書簡集』を参照する必要があるが、1983年刊行のこの文献は、イオネスクの1987年の目録からも漏れている)。 そうした文献が存在することを知らないというのならまだしも、参照しているはずなのに、明らかに誤っている旧説を墨守する理由が全く分からない。それどころか、アムステルダム版が現存最古などという主張にいたっては、イオネスク以外には誰も主張していない。こうした点は、研究者としての姿勢に疑問を投げかけられてしまうものではないだろうか。 書誌 書名 ノストラダムス・メッセージII 副題 一九九九年七月 ― 二十一世紀篇 著者 ヴライク・イオネスク 訳者 竹本忠雄 版元 角川書店 出版日 1993年8月10日 注記 外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌(Bibliographie provisoire) Titre Nosutoradamusu Messêji II (i.e. Nostradamus Message II) Sous-titre Senkyûhyakukyûjûkyûnen nanatsuki - Nijûisseiki hen (traduction / De l'an mil neuf cens nonante neuf sept mois jusqu'au XXI siècle) Auteur Vlaicu IONESCU Traducteur TAKEMOTO Tadao Publication Kadokawa shoten Lieu Tokyo, Japon Date le 10 août 1993 Note ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。 コメントらん 以下に投稿されたコメントは書き込んだ方々の個人的見解であり、当「大事典」としては、その信頼性などをなんら担保するものではありません (当「大事典」管理者である sumaru 自身によって投稿されたコメントを除く)。 なお、現在、コメント書き込みフォームは撤去していますので、新規の書き込みはできません。 手厳しいですね。ルーマニアは当時、共産圏だったから、予言集の情報が入手できなくても仕方ないと思ってる。 -- とある信奉者 (2013-12-26 22 21 26) この本の時点でルーマニアから亡命して数十年たっているわけですし、上にも書いたようにLeroyやRuzoなどの本を彼は参考文献リストに掲げているわけですから、ルーマニア出身であることはあまり関係ないと思います。 -- sumaru (2013-12-27 06 50 42)
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/1560.html
『21ノストラダムス』シリーズは池田邦吉の著書。2003年から2007年の間に5冊が刊行された。 最初の4冊がハードカバー、最後の1冊がソフトカバーである。 概要 池田は『ノストラダムスの預言書解読』シリーズ(1996年 - 1999年)で、ベズビオ山が1999年9月27日に噴火するという解釈を打ち出し、それをピークとする近未来のシナリオを描いたが、実現することはなかった。 この『21ノストラダムス』シリーズでは、ベズビオ山の噴火を中軸とするシナリオ自体はさほど変化させないまま、時期がずらされることになった。 NO1 『21ノストラダムス NO1』(2003年6月)では、2つの修正がなされている。 一つ目はかつて池田が1995年から2000年までの事件の詩が『予言集』全体の66%を占めると主張していたことについてで(*1)、20世紀末までに的中したのは約80篇のみで、残りの詩は21世紀についてのものと位置付け直した。 もうひとつは時期についてで、1999年7番目の月は、21世紀に新教皇が選出される年の7番目の月という意味だと解釈しなおした。その上で、重要な詩には「 3 」が登場する詩が多いとし、新教皇の選出は2003年かもしれないと述べた。 NO2 『21ノストラダムス NO2』(2003年9月)は、後書きによればその年の7月に書かれたらしいが、2003年8月から起こることになっていた新教皇選出とベズビオ山噴火に関するシナリオを詳細に描き出した。 NO3 『21ノストラダムス NO3』(2004年1月)では、前二巻の解釈が外れたことについて、「 3 」が意味していたものは年ではなく、教皇ヨハネ・パウロ「 2 」世の後継という意味だとした。その結果、ベズビオ山の噴火がいつ起こるかはわからないとしつつ、10年以内のX年とした上で、噴火のシナリオを充実させた。 NO4 『21ノストラダムス NO4』(2006年12月)は、2005年に新教皇ベネディクト16世が即位したことを受けて出版されたものである。「 3 」はヨハネ・パウロ2世の後継であるベネディクト16世のことだったとした。 従来の解釈で何度となくヨハネ・パウロ2世の後を継ぐのは「レオン14世」と主張してきたことについては、ベネディクト16世が短命に終わったあとに教皇になるのがレオン14世と修正した(実際には2013年にフランシスコが即位)。 また、ベズビオ山の噴火は2007年のことだろうと新しい予定時期を示した。 NO5 『21ノストラダムス NO5』(2007年9月15日)は、2007年9月27日に起こると主張していたベズビオ山噴火のシナリオを直前に描き出したものである。 巻末には「以下次巻」とあるが、これ以降、シリーズの刊行は見られない。 続刊予定 池田は『続神様がいるぞ!』(明窓出版、2013年4月)の中で、『21 ノストラダムスNO6』について、「まだ出版されていないのだが、神々の世界には存在している」(*2)とコメントしている。 なお、『続神様がいるぞ!』の序文では、2012年に行われた池田の講演の際に、聴衆からベズビオ山はいつ噴火するのかと聞かれ、「来年」と即答したところ、質問者が絶句したというやり取りが出てくる(*3)。 本編でも、2013年9月以降のシナリオが若干述べられているが(*4)、2013年にも池田が言うような噴火は起こらなかった。 『神様といっしょ』(明窓出版、2014年)では、神々の働きかけによってベズビオ山は「近未来にも、もっと先にも爆発はない」(*5)ことが確定し、ノストラダムスの預言書が「無効になった」、「終了」したと主張した(*6)。 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/2803.html
2023年予言―2024年予言―2025年予言 この項目ではノストラダムスの2024年予言について扱う。 毎年のことではあるが、ノストラダムスの『予言集』には、2024年と明記された予言はない。 目次 以前の解釈例ヴライク・イオネスク マリオ・レディング 前年からこの年にかけての解釈例(雑誌など)『実話ナックルズGOLDミステリー』vol.12(大洋図書、2023年10月25日) 『ムー』2024年3月号(ワン・パブリッシング、2024年2月8日) 『週刊ポスト』2024年4月12/19日号(小学館、2024年4月1日) 前年からこの年にかけての解釈例(ウェブサイト) 以前の解釈例 ヴライク・イオネスク ヴライク・イオネスクは『ノストラダムス・メッセージII』(1993年)などで、彼の解釈のピークの一つである「大君侯」(Grand Monarque)の即位する候補として、2024年も挙げていた。 大君侯は、イオネスクの解釈では、1999年8月11日に誕生するブルボン家の血を引く若者で、中国・イスラーム連合軍を迎え撃つヨーロッパ側の救世主として描かれていた。 イオネスクは詩百篇第4巻86番に描かれた星位から、2022年2月5日、2023年2月16日、2024年3月1日、2025年3月13日、2033年7月10日、2034年7月17日、2042年11月2日、2043年11月14日、2051年1月31日、2052年2月12日などの候補を挙げ、詩百篇第6巻3番(未作成)との関連から、「2023年と2024年を即位年として選ぶのがいちばん蓋然性が高いという結論に達する」としていた(*1)。 竹本忠雄も『秘伝ノストラダムス・コード』(2011年)でこの説を踏襲していた(*2)。また、ショーヴロンの『ノストラダムスの年代記』(2022年)でも、イオネスクが挙げた候補の日付が大君侯即位の日として挙げられている(*3)。 【画像】『秘伝ノストラダムス・コード』カバー もっとも、大君侯即位の前段に当たる中国とイスラームの連合軍自体、2024年初頭の時点では全く存在していない以上、大君侯の即位だけが突然当たるとは考えづらい。 マリオ・レディング マリオ・レディングは、詩百篇第5巻23番に基づく2023年と、第6巻24番に基づく2024年の解釈については、『ノストラダムス 未来のための全予言』『ノストラダムス:福音』の両方でほぼ同じ内容を展開している。 それによると、2023年には「相互破壊的な交戦状態のグローバルな増大」(a global increase in internecine warfare)に対抗して、強大な二権力(Two great powers)の間で同盟が結ばれるという。この同盟は2024年にも続くが、一方が他方を犠牲にすることになるのだという。 ただし、レディングの解釈はかなり漠然としたものであって、彼自身がどのような事態を想定していたのかは、いまいち掴みづらい。 なお、第6巻24番は星位と捉えられることがしばしばだが、レディングはかなり象徴的に解釈している。彼の場合は、星位を読んだ結果というよりも、単に2篇の詩番号から2023年と2024年に結び付けたように思われる。 【画像】『ノストラダムス 未来のための全予言』電子書籍版 前年からこの年にかけての解釈例(雑誌など) 『実話ナックルズGOLDミステリー』vol.12(大洋図書、2023年10月25日) 白金狐子「ノストラダムス新解釈 2025年に中国滅亡が予言されていた!!」(pp. 68-71) この中で「ノストラダムス研究家の冴木氏」なる人物の解釈を踏まえ、詩百篇第2巻65番を解釈し、人馬宮に水星がある時期に中国に恐ろしいトラブル等が起こる恐れがあるとして、「直近では2023年12月23日~2024年1月2日と、2024年11月26日~12月16日」を挙げている。 もっとも、4行目の「土星が衰退する」云々を東洋占術と結び付けて、あれこれと解釈しているが、「衰退」というのは誤訳に過ぎない(第2巻65番の記事参照)。 『ムー』2024年3月号(ワン・パブリッシング、2024年2月8日) 宇佐和通「能登半島地震をノストラダムスが予言していた!?」(pp. 4-5) 海外のメディアを引きつつ、それらが時期や場所の明記されていない詩句のこじつけに過ぎないことを指摘している。 全体的なトーンについて言えば至ってまともであり、特段の異論はない。 ただし、「乾いた大地がさらに干上がり、大きな洪水がある」と「有害な波を通して大飢饉が訪れる」という詩句をいずれもセザールへの手紙からの引用だろうとしているのは、明らかな誤りであろう。 特に前者のフレーズは、異なる文脈での指摘とはいえWebムーの記事(下の節にリンクを貼ってある)も正しく指摘しているように、詩百篇第1巻17番からであることは明らかである。 後者のフレーズは波と飢饉が同時に出ていることから、おそらく第6巻5番の1行目だろうと思われる。 大きな天災に際し無責任な風説が広まらないように急いで書き上げたのであろうし、その姿勢自体は悪くないとは思うのだが、それと引き換えにノストラダムスの誤った知識が広められてしまうことに対しては、もう少し何とかならなかったものかという気はする。 『週刊ポスト』2024年4月12/19日号(小学館、2024年4月1日) 「帰ってきたノストラダムスの大予言」(pp. 53-56) 無記名の記事で、記事中で多くのコメントが引用されているのは、ライターの白神じゅりこ、角由紀子の2人。 2024年については、第3巻1番を引き合いに出し、「早ければ24年中、遅くとも30年までに」台湾有事が起こるという白神のコメントくらいしかなく、それ自体が「有識者」の見解の孫引きという形がとられている。 第3巻1番にはそもそも時期の指定がなく、どこの誰だかも分からない「有識者」に責任を丸投げにし、なおかつ2030年までに幅を持たせた解釈などに、説得力はないだろう。 前年からこの年にかけての解釈例(ウェブサイト) 仲田しんじ「飢餓、軍事衝突、干ばつ、大洪水…2024年のノストラダムスの予言が予想通り壊滅的だった!」(TOCANA, 2023年12月5日) 「2024年には何が起きる?ノストラダムスの予言から紐解く4つのこと」(カラパイア、2023年12月16日) 「ノストラダムス「2024年の大予言」に戦慄! 米中戦争、気候変動… 今年を上回る絶望的1年か?」(Webムー、2023年12月20日) 「3つ目の戦火への不安反映か 欧州メディアが「ノストラダムス予言」もとに2024年世界に言及 中国絡む「戦闘と海戦」も懸念⁉」(THE NEWS LENS, 2023年12月26日) 「2024年はどんな年? ノストラダムスやババ・ヴァンガの予言が話題に」(朝鮮日報、2024年1月2日) 仲田しんじ「ノストラダムス、元旦の能登半島地震を予言していた!?「地球が乾燥し致命的な津波と洪水をもたらす」」(TOCANA, 2024年1月17日) 以上のインターネット上の報道、海外のオカルトメディアからの安易な転用であって、どのサイトも同工異曲の内容に過ぎない。 もっとも、Webムーの記事は、海外の記事で詩番号が書かれていない予言もきちんと典拠になっている詩番号を特定して、4行分を引用し直すなど、多少はまともな加筆を行なっている。当「大事典」としても、詩との対照は正しく行われているものと見ているが、第10巻22番は訳文を引用しておきながら、詩番号が第3巻1番と誤って書かれているため、全然違う内容の第3巻1番が二種類引用されるという妙な状態になっている(2024年1月27日確認時点)。 Webムーで引用されている通り、おもに話題になっている四行詩は詩百篇第1巻17番、第3巻1番、第5巻56番、第10巻22番の4篇だが、Webムーの記事にさえも「『2024年に起こる』と明示されているわけではなく」と明記されている通りである。 Webムーの場合、「しかし、こうやって毎年のようにノストラダムスの言葉から暗澹たる近未来を読み取ることで、人類が「それを避けるために何ができるか」を考え、さらに行動に移す契機となるならば、これほど有意義かつ重要な予言はないだろう。」と強引に締めくくっているが、イソップ寓話のオオカミ少年の話を思い浮かべれば、「毎年のようにノストラダムスの言葉から暗澹たる近未来を読み取」ってハズレまくっている事実は、むしろ逆効果にしかならないことが明らかだろう。 なお、1月1日の能登半島地震を踏まえ、詩百篇第1巻17番が的中したと主張する向きもあるが、その詩は2022年や2023年には2022年向けや2023年向けの予言として取り扱われていたものにすぎず、毎年のように「今年こそ」と、災害が起こることを期待する不謹慎な輩がいるというだけの話に過ぎない。 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/2032.html
未来予言TV「ノストラダムス」は、フジテレビが2014年1月17日から毎週金曜深夜に4週連続で放送するバラエティ番組。パネラーおよび視聴者は1週間以内の出来事の予測などを行う。視聴者については、投稿した回答の正解数に応じたポイントを競い、4週の通算ポイント最多獲得者を「日本のノストラダムス」と認定し、賞金10万円が支払われる(*1)。 司会は南海キャンディーズの山里亮太とフジテレビアナウンサーの伊藤利尋、「予言者」として出演するパネラーは坂上忍、椿鬼奴、AKB48の峯岸みなみ。 コメント ノストラダムスの名は「予言者」の代名詞として使われているに過ぎないようである。 1999年に向けたブームも2012年も通過したあとにバラエティ番組の冠に使われるのは、ネーミングセンスとしてどうなのかと思えなくもないが、それだけ「予言者」としての知名度が高いということでもあるのだろう。日本の通俗的なノストラダムス像の根強さが垣間見える。 外部リンク 未来予言TV「ノストラダムス」(フジテレビ公式サイト) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/2800.html
2022年予言―2023年予言―2024年予言 この項目ではノストラダムスの2023年予言について扱う。 毎年のことではあるが、ノストラダムスの『予言集』には、2023年と明記された予言はない。 ただし、この年をひとつの画期とみなす解釈書なども過去には見られた。 目次 以前の解釈例エミール・リュイール ヴライク・イオネスク マリオ・レディング 佐藤和也 前年からこの年にかけての解釈例書籍・雑誌などでの解釈 インターネット上の解釈 以前の解釈例 エミール・リュイール エミール・リュイールは、『ノストラダムス 予言集1948-2023』(Nostradamus. Ses Prophéties 1948-2023, 1947年)で、タイトルの通りに2023年頃をひとつの区切り目とみなしていた。 アンリ2世への手紙や詩百篇第1巻17番などをもとに、1983年に発見される新天体は天体望遠鏡では40年間見えるが、肉眼では見えず、40年目の2023年に接近して地球に激変をもたらすと解釈していた(*1)。 もっとも、リュイールのシナリオでは20世紀後半にはイスラーム勢力によるヨーロッパ侵攻があったはずで、たとえば1978年6月にはスペイン全土をリビアの指導者が征服するだとか、1990年代にはアジアから現れる反キリストがヨーロッパを蹂躙する等と書いているので(*2)、そのシナリオの信頼性は推して知るべしであろう。 なお、当「大事典」で参照したのは第3版(1948年)だが、翌年には『ノストラダムス 当代から2023年までの予言集』(Nostradamus. Ses Prophéties de nos jours à l'an 2023. Nouvelle édition augmentées, 1949年)が刊行されている。 ヴライク・イオネスク ヴライク・イオネスクは『ノストラダムス・メッセージII』(1993年)などで、彼の解釈のピークの一つである「大君侯」(Grand Monarque)の即位する候補として、2023年を挙げていた。 大君侯は、イオネスクの解釈では、1999年8月11日に誕生するブルボン家の血を引く若者で、中国・イスラーム連合軍を迎え撃つヨーロッパ側の救世主として描かれていた。 イオネスクは詩百篇第4巻86番に描かれた星位から、2022年2月5日、2023年2月16日、2024年3月1日、2025年3月13日、2033年7月10日、2034年7月17日、2042年11月2日、2043年11月14日、2051年1月31日、2052年2月12日などの候補を挙げ、詩百篇第6巻3番(未作成)との関連から、「2023年と2024年を即位年として選ぶのがいちばん蓋然性が高いという結論に達する」としていた(*3)。 竹本忠雄も『秘伝ノストラダムス・コード』(2011年)でこの説を踏襲していた(*4)。また、ショーヴロンの『ノストラダムスの年代記』(2022年)でも、イオネスクが挙げた候補の日付が大君侯即位の日として挙げられている(*5)。 【画像】『秘伝ノストラダムス・コード』カバー もっとも、大君侯即位の前段に当たる中国とイスラームの連合軍自体、2023年初頭の時点では全く存在していない以上、大君侯の即位だけが突然当たるとは考えづらい。 マリオ・レディング マリオ・レディングは2022年には英国王チャールズ3世の即位を予言していたとして話題になった。確かに彼の著書『ノストラダムス 未来のための全予言』(2006年、2010年・2015年改訂)には、その解釈が載っている。 しかし、その本の翌年に出た『ノストラダムス:福音』(2007年)ではカットされており、あまり重視されていたようには思えない。 また、それ以前の予言解釈も当たっていない。 そのレディングが、詩百篇第5巻23番に基づく2023年と、第6巻24番に基づく2024年の解釈については、『ノストラダムス 未来のための全予言』『ノストラダムス:福音』の両方でほぼ同じ内容を展開している。 それによると、2023年には「相互破壊的な交戦状態のグローバルな増大」(a global increase in internecine warfare)に対抗して、強大な二権力(Two great powers)の間で同盟が結ばれるという。この同盟は2024年にも続くが、一方が他方を犠牲にすることになるのだという。 ただし、レディングの解釈はかなり漠然としたものであって、彼自身がどのような事態を想定していたのかは、いまいち掴みづらい。 なお、第6巻24番は星位と捉えられることがしばしばだが、レディングはかなり象徴的に解釈している。彼の場合は、星位を読んだ結果というよりも、単に2篇の詩番号から2023年と2024年に結び付けたように思われる。 【画像】『ノストラダムス 未来のための全予言』電子書籍版 佐藤和也 佐藤和也の著書『秘密のたからばこ』(2010年)では、恐怖の大王の詩は、「202X年X月」の全世界滅亡の予言であったことが示されている(*6)。 この本は小説だが、著者が公式サイトで実際の期日を「2023年7月」と開示したうえで、現実に起こると主張した(*7)。 Amazonのレビュー欄や一部ファンサイトに掲載されている写真からは、「2023年7月、迫り来るブラックホール彗星!」というオビの付いた版も刊行されていることが確認できる。 それを信じる読者がSNSで拡散した結果、この本のAmazonレビュー欄は、絶賛するレビューと酷評するレビューとで両極端な状況になっている(2023年初頭時点)。 【画像】『秘密のたからばこ』カバー(リンク先はAmazonのページ) 前年からこの年にかけての解釈例 雑誌の刊行年は奥付によるもので、実際には前年に刊行されていたものもある。 書籍・雑誌などでの解釈 『発禁版「シン・都市伝説」大全』(噂の真相を究明する会、宝島社、2022年) エリザベス女王の死去を的中させ「ノストラダムスの大予言」が復権(pp.198-201) この本は『ムー』2023年2月号のブックレビュー欄で取り扱われており、「スキマ時間に拾い読みしたりするのにもピッタリ」(*8)と表現されている。裏返して言えば、一つ一つの項目の掘り下げは浅い。 この本で2023年のノストラダムス予言として挙げられているのは、実質的に詩百篇第4巻100番のみである(ただし、詩番号の記載はなし)。しかし、その詩は過去、普仏戦争(1870年 - 1871年)と解釈されていた通り、時期の記載は全くない。 【画像】『発禁版「シン・都市伝説」大全』 『実話ナックルズGOLDミステリー VOL.9』(大洋図書、2023年) 2023年!いよいよ日本と世界がヤバい!世界の予言者たちが記した終末の序曲(黒崎ビカソ、pp.3-7) 実質的にノストラダムスに触れたページは1ページだけで、取り上げられているのは第4巻100番であるので、上の節での論評に付け加えることは特にない。 『実話ナックルズウルトラ VOL.23』(大洋図書、2023年) ノストラダムスが示唆する5つの危ない未来とは 世界終末大予言2023(白神じゅりこ、pp.54-59) 5ページあるが、題名と裏腹にノストラダムスへの言及はほとんどなく、「天からの火が降り注ぐ……」という一句しか引用されていない。 この引用も第4巻100番の可能性があるが、主題別索引:驚異の通り、天から火が降るモチーフは意外とある(しかし、時期を2023年と明記したものはない)ため、どれからの引用かは特定しがたい。 『実話ナックルズ』2023年4月号(大洋図書、2023年) 新訳ノストラダムスの大予言 緊急警鐘2023年X月〈大きな炎が三夜にわたって空から降ってくる〉(白神じゅりこ、pp.102-103) 挙げられているのは詩百篇第4巻100番、詩百篇第2巻75番、詩百篇第1巻46番の3篇で、特に第1巻46番は闇の3日間に関する予言とされている。 記事の題名の通り、「大きな炎が三夜にわたって空から降ってくる」云々を引用して、核ミサイルが3日間にわたって降ってくる等と解釈している。 だが、その1行目に「オーシュ、レクトゥール、ミランドの至近で」とあることはカットし、一言も触れていない。 挙げられている3都市はフランス南西部で互いに数十キロメートル程度しか離れていない。 そんな範囲に3日連続で核ミサイルを叩き込むなどというのは戦略的な意味がなく、現実味に乏しいと言わざるを得ない。 だいたい、本来「闇の3日間」とは、信仰の光以外のすべてが闇に閉ざされるというモチーフである。 3日連続で核兵器が投下されて、核反応の光や、それによって引き起こされるであろう火災によって煌々と照らされるさまとは全く一致しない。 なお、当「大事典」管理者は2022年3月7日付でASIOSブログに 「2022年に「闇の3日間」が訪れて人類の3分の2が滅んでしまう?」 という記事を寄稿しており、その中で第1巻46番を闇の3日間と結びつけることは適切でないと指摘していた。 そんな詩を1年近くたって引っ張り出してくるあたり、闇の3日間をノストラダムスと結びつける題材がいかに乏しいかを端的に示しているように思われる。 『ナックルズ極ベスト vol.35』(大洋図書、2023年) ノストラダムスが示唆する3つの危ない未来とは 世界終末大予言2023 (白神じゅりこ、pp.60-63) 上で掲げた『実話ナックルズウルトラ VOL.23』の記事の細かい字句を微調整しただけで、図版なども含めてほぼ再掲載である。 なお、題名が「5つの危ない未来」から「3つの危ない未来」になっているが、もともと『ウルトラ』の記事の時点で予言1から予言3までしか載っていなかった。 『怪奇ミステリー超不思議MAX vol.10』(ダイアプレス、2023年5月27日(4月13日発売)) 東西のノストラダムスが予言する中国共産党の崩壊(黒崎ビカソ、pp.65-67) この記事は、ノストラダムスの2022年予言で紹介した、『実話ナックルズGOLDミステリー vol.5』の記事のほとんどそのままの使い回しである。 ただし、「2022年は、中国が起点となって、激動の年となるかもしれない」という結語が外れたものだから、「予言の通り、これから中国が起点となって、世界が激動する可能性は相当高そうだ」と時期をぼかした表現に差し替えられている。 これは裏を返して言うと、元の予言に2022年だとか2023年などと出てこないからこそ、こういう手抜きな原稿の使い回しができてしまうというだけの話でもある。 『実話ナックルズGOLDミステリーSPECIAL 人類滅亡のカウントダウン』(大洋図書、2023年6月30日) 緊急警告202X年、ついに始まった! 新訳ノストラダムスの大予言 人類滅亡のカウントダウン(白神じゅりこ、pp.3-7) 上で挙げた『実話ナックルズ』2023年4月号の記事の使い回しである(モノクロからカラーに変わり、レイアウトなどは変更されたが、文章は細かな字句の微調整を除けば全く同じ)。 しかし、『実話ナックルズ』4月号の記事では「2023年X月」だったのに、この記事では「202X年」と、時期指定がいきなり今年に限定されなくなっている。 この雑誌の実際の発売日は5月中旬で、まだ上半期も過ぎていないというのに、もう外れる前提で時期をぼかしているのだとしたら、怖がらせたいのか笑わせたいのかよく分からない。 インターネット上の解釈 「ババ・ヴァンガ、ノストラダムス、聖マラキ…大予言者による2023年予言の不穏な一致」(webムー、2022年11月29日) 「ノストラダムスの予言する2023年に起こりうる7つのこと」(カラパイア、2022年12月27日) 「暴動、人食い、7カ月間の大戦争… ノストラダムスが予言する2023年がヤバイ!」(TOCANA、2023年1月1日) 「ノストラダムスが予言する2023年!「暴動、人食い、7ヶ月間の大戦争…」」(ATLAS、2023年1月5日) これらの記事では、上で述べてきたことと重複する詩百篇第1巻17番、第4巻100番のほか、第2巻75番なども扱われているが、それらの詩にも時期の記載はなく、2023年と指定する根拠もない。 そもそも第1巻17番や第2巻75番は、2022年には2022年向けの予言として取り扱われていたので、オカルト業界の安直さがよく表れている。 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/1951.html
ノストラダムスの遺言書の日本語訳を示す。訳は当「大事典」でオリジナルにつけたものである。基本的に直訳を心がけたが、当時の表現に頻出する、同じような意味の言葉を重ねている箇所は、日本語として冗長になりすぎる場合にはいちいち逐語訳していない。 〔 〕は原文にない言葉を当「大事典」で補った箇所で、〔= 〕とあるのは最後に回すまでもない簡略な注記を指す。 原文はノストラダムスの遺言書 原文と語注を参照のこと。節の区切りは、ダニエル・ルソによるものを踏襲した原文の区切りに対応している。 なお、従来の唯一の日本語訳は『ノストラダムスの遺言書』 (二見書房)およびその改題版に含まれたものだった(外部サイト「ノストラダムスサロン」の「ノストラダムス遺言書」では、信頼性に注意を喚起した上で全文を引用している)。それは省略が多い上に、不適切な訳も多いから、ここでも具体的に検討したいところではあるが、ページサイズの都合などもあり、逐一その誤訳を指摘することはしなかった。 (1) 現下の全てと、居合わせる者たちが目にするであろう未来をご存知の、我らが主の御降誕より数える1566年の6月17日。 死は何よりも確実に訪れるものであるが、それがいつ訪れるのかは何にもまして不確かである。そのために、以下に署名する私こと当アルル司教区サロン市の王国公証人にして法廷公正証書役たるジョゼフ・ロシュと、以下に選任された証人たちは、前記サロン市の医学博士にして愛星家、国王の常任侍医にして顧問たるミシェル・ノストラダムス師の前に立ち会った。この者はある種の肉体的病魔とその高齢のせいで全ての面で衰えているとはいえ、思慮深く、よく話し、見て、聞ける健やかな判断力を備えている。しかし、その〔病魔と高齢の〕せいで、造物主たる神がこの死すべき世界において彼に貸し与えた財産について、自分が逝去した後に疑問が生じないように、生きているうちに相違なき手続きを準備しておきたいと望みつつも、目下のところ身動きが取れなくなっている。 (2) そのために前記ミシェル・ノストラダムス師は、純然たる自発性、自由意志、みずからの動向・熟慮・意向によって 〔遺言書の内容を口頭で〕 命じ、作成させた。そして本書状によって、造物主たる神がこの死すべき世界において彼に貸し与えた全財産のおのおのについて、その処分と規定を定めた口述の遺言と最終的な意思が、以下に示すやり方の通りに命じられ、確定される。 (3) まずはじめに、善良で敬虔なキリスト教徒たる遺言人、前記ミシェル・ノストラダムス師は、造物主たる神に自らの魂を委ね、臨終に際し、主の御意向がその魂を召されるときには、主の御慈悲・憐憫・許しをお与えいただき、天国にある永遠の王国へと安置していただけることを祈るものである。 そして、この時代にあっては肉体は魂の次に大事なものであるから、本遺言人ミシェル・ノストラダムス師はその魂が肉体から召し上げられた暁には、その亡骸が前記サロン市の聖フランチェスコの修道院 〔=フランシスコ会修道院〕 の墓所に丁重に葬られることを望み、また命じる。そして、その 〔修道院の〕 大扉と聖マルタの祭壇の間の壁に寄り添う墓碑または記念碑が作られることを望む。そして、前記の亡骸には1リーヴル貨幣で4本の大蝋燭を添えることを望み、また命じる。同じく前記の遺言人は、その葬儀のすべてが以下に選任される遺言執行者たちの裁量で執り行われることを望み、また命じる。 (4) また同じく、前記の遺言人は自らが逝去したらすぐに、13人の貧者たちが6スーずつの施しをただ一度だけ与えられるようにと望み、命じ、〔その分を〕 遺す。その貧者たちは以下に選任される遺言執行者たちの裁量で選ばれることになるだろう。同じく前記の遺言人ミシェル・ノストラダムス師は、自らが逝去したらすぐに一度だけ、サン=ピエール=デ=カノン修道院 〔=サロン近郊にあった古い修道院で、当時はフランシスコ会士が管理していた(*1)〕 の修道士たちに1エキュが寄付されるように遺す。同じく前記の遺言人は、自らが逝去したらすぐに一度だけ、前記サロン市の白き贖罪者たちのノートルダム礼拝堂に1エキュが寄付されるように遺す。 (5) そして同じように、前記サロン市の聖フランチェスコの修道院の小さき兄弟たち 〔=小さき兄弟会とも呼ばれたフランシスコ会の修道士たち〕 には、自らが逝去したらすぐに一度だけ、2エキュが寄付されるように遺す。 (6) そして同じように前記の遺言人は、彼の近親者ルイ・ブゾディーヌの娘である淑女マドレーヌ・ブゾディーヌ1には総額10エキュ分のピストル金貨を遺し、彼女が結婚する時のみに寄贈されることを望む。そうであるから、もしも前記のマドレーヌが結婚する前に死去したならば、前記の遺言人はこの遺贈が無効となることを望む。 (7) そして同じように前記の遺言人ミシェル・ノストラダムス師は、その正妻アンヌ・ポンサルド殿との間に生まれた嫡出子たるマドレーヌ・ノストラダムス嬢に、結婚するときにただ一度だけ贈られる総額600エキュのソル金貨2を遺す。そして同じように前記の遺言人ミシェル・ノストラダムス師は、前記の正妻アンヌ・ポンサルド殿との間に生まれた嫡出子たるノストラダムス家のアンヌ嬢ならびにディアーヌ嬢に、おのおのが結婚するときにただ一度だけ贈られる総額500エキュずつのピストル金貨3を遺す。そして、前記のマドレーヌ嬢、アンヌ嬢、ディアーヌ嬢の姉妹たち 〔の全員〕 あるいはそのうちの一人が、被後見子のまま死ぬか、嫡出の継嗣のないまま死んだ場合は、前記マドレーヌ、アンヌ、ディアーヌのそれぞれ 〔該当する者〕 を、以下で名前を挙げる相続人たちに置きかえることとする。 (8) そして前記の遺言人ミシェル・ノストラダムス師は、深く愛する妻アンヌ・ポンサルド殿に総額400エキュのピストル金貨を遺す。前記遺言人は自らの死後すぐにそれらが前記の妻ポンサルドに遺贈され、前記ポンサルドが前記遺言人の名のまま寡婦として過ごす限りにおいて、その400エキュを享受することを望む。そして前記ポンサルドが再婚した場合には、前記遺言人は前記400エキュが以下に名前を挙げる相続人たちに返還されることを望む。そして、もしも前記ポンサルドが再婚しなかったならば、彼女は 〔死んだ時に〕 前記400エキュを前記遺言人の子どもたちのうち、彼女が良いと思える者に遺すことはできるが、前記遺言人の子どもたち以外の者には遺せないことを望む。 そして同じように、前記遺言人は彼の妻である前記アンヌ・ポンサルド殿に、前記遺言人の家屋全体の3分の1の使用と居住 〔の権利〕 を遺す。その3分の1 〔を家屋のどの部分にするのか〕 は前記ポンサルドが選び取ってよいものとし、彼女が前記遺言人の名のまま寡婦として生きる限りにおいて 〔その権利を〕 享受できるものとする。そして同じく、前記ポンサルド殿に対し、前記遺言人の住居の居間にある「大箱」と呼ばれているクルミ材の箱を、寝台近くの別の小箱とともに遺す。同じく、前記の居間にある寝台を、その寝台に付随する敷布団、マットレスとその付随品、長枕、綴れ織の寝台カバー、カーテンとともに遺す。また同じく6枚のシーツ、4枚の回転式手拭き、12枚のタオル、半ダースの皿、半ダースの小皿、半ダースの小鉢、錫製の水入れ用と塩入れ用の大小2つのピッチャー、および彼女の資質に従って必要とされるその他の家具類、そして地下室の自分用のワインを保存する3つの樽と小さな 〔油などを保存するための〕 水槽1つを遺す。 それらの動産は前記ポンサルドの死後ないし彼女が再婚した場合には、以下に名前を挙げる相続人たちに向けられることを、前記遺言人は望む。そして同じく、前記遺言人は彼の妻である前記アンヌ・ポンサルド殿に、彼女が望む全てのドレス、衣類、指輪類、宝石類を遺す。 そして同様に、遺言人である前記ミシェル・ド・ノストラダムス師は、彼の全蔵書のおのおのを、彼の息子たちのうち、最も研究に役立てることができ、ランプの煙を最も多く飲むことになる者 〔=ランプを使って夜遅くまで最も勉学に励む者〕 に先取分として遺贈する。それらの書物は前記遺言人の住居にある全ての書簡ともども、整理分類されることも目録を作成されることも前記遺言人は望まず、それらを受け取るべき者がそれらを手にするのに相応しい年齢になるまでは、梱包され、または大籠に荷造りされ、前記遺言人の部屋のひとつに置かれ、封印されることを望む。 (9) そして同じく、前記遺言人は正妻ポンサルド殿との間に生まれた嫡出子セザール・ド・ノストラダムスに、今は前記遺言人が住んでいる住居を先取分として遺贈する。同じく前記遺言人は彼に対して、前記遺言人が所有する金箔を二重に貼った銀杯、ならびに前記住居にある木製と鉄製の大きな椅子を先取分として遺贈する。しかしながら、妻である前記アンヌ・ポンサルドに行われた遺贈分 〔つまり彼女が必要とする家具を相続できる権利〕 は、彼女が前記遺言人の名で寡婦として生きる限りにおいて効力を有し続けるものとする。 そしてその住居は前記の兄弟セザール、シャルル、アンドレの間で、前記遺言人の 〔息子である〕 兄弟全員が25歳になるときまでは、使用に関しては不分割にして共有のままとし、その 〔全員が25歳になった〕 後には、前記住居の全体を前記セザールが意のままにできるものとする。しかしながら、彼の母である前記ポンサルドに行われた遺贈分 〔つまり家屋の3分の1の使用権〕 は、前記住居に関しても常に効力を有し続けるものとする。 そして同様に、前記遺言人は正妻である前記アンヌ・ポンサルド殿との間に生まれた嫡出子シャルル・ド・ノストラダムスに、総額100エキュのピストル金貨を先取分として遺贈する。その100エキュは前記シャルルが25歳に達した時に、〔使用権を失った自宅から〕 立ち去る前に一度だけ全額を受け取れるものとする。そして同様に、前記遺言人は正妻である前記アンヌ・ポンサルド殿との間に生まれた嫡出子アンドレ・ド・ノストラダムスに、総額100エキュのピストル金貨を先取分として遺贈する。その100エキュは前記アンドレが前述したように25歳に達した時に、〔使用権を失った自宅から〕 立ち去る前に一度だけ全額を獲得できるものとする。 (10) 一方、相続人の指定はそれぞれの遺言の要諦であり基礎をなすものであるから、それなしには全ての遺言は法的効力を持たず、何の結果も生まず、何も執行されない。そのため、ここに前記遺言人ミシェル・ド・ノストラダムス師は、純然たる自発性、自由意志、ある種の学識、みずからの動向・熟慮・意向によって、動産と不動産の彼のほかの財産、現在と未来 〔に得る利息など〕 の権利、名義、〔出資金の〕 取り分、株式、債権、および名前が挙げられ、位置付けられるものや、何らかの様態で名目と品質が備えられるものならば何でも、その全て、そしてその各々を本書状によって締約し、命じ、確定させ、あわせて自らの口で、その普遍的にして固有の相続人たちの姓名を挙げるものである。 〔その相続人たちとは〕 すなわち正妻たる前記アンヌ・ポンサルドとの間に生まれた嫡出子たち、ノストラダムス家の前記セザール、シャルル、アンドレであり4、彼ら 〔の内の誰か〕 が被後見子のまま死ぬか、嫡出の継嗣のないまま死んだ場合は、〔その死んだ〕 一方の者から 〔残っている〕 他方の者 〔たち〕 へと 〔死んだ者が相続するはずだった取り分を〕 均分に置き換えることとする。そして、もしも正妻である前記アンヌ・ポンサルド殿が1人ないし2人の息子を身ごもっていた場合は、その子たちも同じような置き換えをもって、他の息子たちと同等の相続人とする。そして、もしも彼女が1人ないし2人の娘を身ごもっていた場合、前記遺言人はその子ないしその子たちのそれぞれに、他の娘たちと同じ支払方法と置き換えでもって、総額500エキュのピストル金貨を遺すものとする。 (11) しかしながら、前記遺言人は前記の息子たちと娘たちが、彼らの母である前記アンヌ・ポンサルド、ならびに最も近い肉親たちの承諾と善意を得ることなしに結婚できないことを望む。そしてもしも 〔相続人に指定された3人の息子の〕 全員が嫡出の継嗣のないまま死んだ場合は、前記遺言人は相続人を、前記遺言人の娘であるノストラダムス家の姉妹、前記マドレーヌ嬢、アンヌ嬢、ディアーヌ嬢に置き換えることとする。 (12) そして前記遺言人は自身の遺産の大部分が現金と債権とで構成されていることを考慮し、〔遺言の執行時に支払いが〕 要求されることになる前記の現金と債権は、妥当な利潤 〔を得るための資産運用〕 のために、二人または三人の支払能力を持つ商人の手に預けられることを、前記遺言人は望む。 そして同じく、彼の子供たちが幼く、被後見子の段階にあることを考慮し、彼らにその人格と財産についての後見役・遺産管理役の女性をつけることとした。すなわち、彼の妻である前記アンヌ・ポンサルド殿のことで、特に彼女に委ねられる。〔その選定には〕 彼女が正しく忠実な遺産目録を作成することが求められる 〔立場にある〕 ことも考慮された。しかしながら、彼女が前記遺産のいかなる動産も家財道具も売却せざるを得なくなることは、彼女が前記遺言人の名のまま寡婦として過ごす限り、〔前記遺言人は〕 望まない。また、いかなる物であれ、動産のあらゆる譲渡をも禁じる。それらは保管され、前記の子供たちと相続人たちが前述の通り25歳になった時に分け与えられるものとする。 その女性後見人 〔つまりアンヌ・ポンサルド〕 は、彼女や前記の子供たちが栄養を摂るため、また 〔子供たちに衣類を〕 着せてやったり、彼らの性質に応じて必要となるものを揃えてやるために、前記の商人たちの手に預けることになる前記の現金からの利潤を受け取ることになるだろう。前述の通りに前記の子供たちのために使うときに限り、前記の利得に関して、彼女にはいかなる 〔収支の〕 報告も要請されない。 前記遺言人は、前記相続人たちが現金で保管されている前記遺産の彼らの分け前を、彼らが25歳になる前に要求することがないように、はっきりと禁じておく。前記の娘たちになされた遺贈分に関しては、彼女たちが結婚した時に前記の遺贈分に従い、前記の商人たちの手に預けられた現金の基金から拠出されることになるだろう。加えて前記遺言人は、前記遺言人の兄弟の誰一人として前記の遺産のいかなる管理もできず、いかなる責務も負えないことを望み、その遺産および前記の子供たちの人格の管理・監督は、妻であるアンヌ・ポンサルド殿に委ねるものとする。 (13) そして、本遺言書が、特に情け深い絆と彼の魂について、より良く執行されうるために、前記遺言人ミシェル・ド・ノストラダムス師は、本遺言書の執行人を命じておくものである。すなわちそれはシャトーヌフの領主である平貴族パラメド・マルクと、前記サロン市のブルジョワであるジャック・シュフラン殿のことで、前記遺言人は彼ら一人一人に、本遺言書を執行するための全面的な権限、権力、権威を与え、その 〔遺言執行役の見返りの〕 ために財貨を取得させ、本来の遺言執行人たちが課されるべき、また行うことが慣例となっているような全ての事柄を行わせるものとする。 (14) 本遺言書が、彼の全財産の各々に関するその最後の口述の遺言、措置、最終命令となることを、またそうなるべきことを、前記遺言人ミシェル・ノストラダムス師は望む。かつて前もって彼が示していた他の遺言書、遺言補足書、死後の贈与 〔の意思表示〕、その他の最終的な意思 〔として示してあったもの〕 を破棄・撤回の上で無効とし、本書状がその効力を有し、それが遺言書、遺言補足書、死後の贈与、その他の価値を持ちうるあらゆる手続きにも有効であることを希望する。 同様に、〔前記遺言人は〕 当の私こと末尾に署名した公証人と、以下に選任される証人たちに、前記の現在の遺言とそれに含まれる事柄の立会人となることを要請した。彼はその証人たちのことをよく知っていて彼らの名前を挙げたのだし、その証人たちもまた前記遺言人のことをよく知っている。そして上述の公証人である私は、前述の相続人たちやその他の関係各位に供するように、当然のこととして、しかるべき時と場所において現下の彼の遺言を書面にまとめておくものである。 そして直ちに、前記遺言人ミシェル・ノストラダムス師は以下に名前を挙げる証人たちの立会いのもと、総額3444エキュと10スーの現金を持っていることを表明し、前記の証人たちの立会いのもと、それらを以下に明示される通貨で実際に提示した。まずノーブル・ア・ラ・ローズ金貨536枚、そして1ドゥカート金貨6101枚、アンジェロ金貨779枚、2ドゥカート金貨126枚、古エキュ金貨4枚、古エキュ金貨に該当するリオンドール金貨82枚、ルイ王のエキュ金貨1枚、2エキュ相当の黄金のメダル91枚、ドイツのフロリン金貨108枚、帝政ローマ期の貨幣10枚、マリオネット金貨1117枚、半エキュ・ソル金貨8枚、エキュ・ソル金貨1419枚、エキュ・ピストル金貨1200枚、36エキュ相当のポルチュゲーズと呼ばれる金貨123枚、以上が前記の総額3444エキュと10スー13に換算される前記の現金の全体である。そして同様に前記遺言人は、帳簿、契約書、借用書、抵当 〔などの証拠を提示すること〕 によって、総額1000エキュ14の債権を持っていることを明らかにした。 それらの 〔先ほど挙げた〕 現金の全額は、ノストラダムスの前記の住宅で3つの金庫に保管され、それらの鍵の1本はシャトーヌフの領主パラメド・マルクに、別の1本は執政官マルタン・ミアンソン15に、残る1本は前記サロン市のブルジョワ、ジャック・シュフラン殿に与えられることとなった。そして、彼ら自身によって前記の金庫に現金が収められた後に、実際に彼らは 〔鍵を〕 受け取った。 当サロン市の前記遺言人ミシェル・ノストラダムス師の自宅の書斎にて、ブルジョワのジョゼフ・レノー殿、執政官マルタン・ミアンソン、財務官ジャン・アルグレ、シャトーヌフの領主で平貴族のパラメド・マルク、貴族ギヨーム・ジロー、アルノー・ダミザーヌ、平貴族ジョメ・ヴィギエ、前記サロンの聖フランチェスコの修道院の院長である聖職者ヴィダル・ド・ヴィダル、〔以上の〕 要請と召集を受けた証人たちの立会いのもとで作成され、承認され、公にされた。公証人である私は王令に従い、前記の遺言人と証人たちに自署を要請した。字の書き方を知らないと述べた証人である前記のレノーを除き、署名が行われた。 (15) そうしてその最初の原本には 〔以下の者たちの〕 署名がされた。ミシェル・ノストラダムス、執政官マルタン・ミアンソン、財務官ジャン・アルグレ、修道院長ヴィダル・ド・ヴィダル、証人バルテザール・ダミザーヌ、証人 P・マルク、J・ヴィギエ、ギヨーム・ジロー。 (公証人ロシュの署名) 注記 1. ノストラダムスのGermainとされているルイ・ブゾディーヌは未詳。germainは「兄弟」と「本いとこ」(cousin germain) の二通りの訳がありうるが、エドガー・レオニが his first cousin と後者に基づく訳をしているのに対し、イアン・ウィルソンはその娘マドレーヌ・ブゾディーヌをノストラダムスの姪と位置付けているので、前者の訳を採ったのだろう。伝記研究の泰斗エドガール・ルロワもこの人物は特定できなかったらしく、妻の側の germain ではないかと疑問符つきで示すにとどまった。当「大事典」が「近親者」という曖昧な訳にとどめたのは、以上の理由による。 2. ソル (Sol) は古いフランスの通貨単位で、これに該当する貨幣は古くは金貨、ルイ11世の時代以降は銀貨になり、ノストラダムスの死後になるが、ルイ14世の時代には銅貨になった(*2)。なお、エキュ・ソル、エキュ・ピストルなどの貨幣単位についてはよく分からない部分も多いので、適切な文献にお心当たりの方は、ご教示いただければ幸いである。 3. ピストルないしピストレは、「スペインの2エスクード金貨が16世紀から17世紀にかけ、フランスにおいてこの名を与えられた」(*3)ものだという。 4. 相続人について、竹下節子は息子3人とアンヌ・ポンサルドとしている(*4)。これはエドガール・ルロワの要約によるものだろうが、ルロワの要約では原文に比べてポンサルドの直前の de が脱落している。原文そのものに忠実に訳す限りでは、相続人は息子3人だけと見るべきだろう。 5. ノーブル・ア・ラ・ローズ (noble à la rose) は、かつてフランス、イギリスで流通した 「バラの紋章を持つ金貨」(*5)。 6. ドゥカート (Ducat) は13世紀にヴェネツィアで最初に鋳造された金貨で、ヨーロッパで広く流通した(*6)。 7. アンジェロ金貨 (angelot) は 「竜を踏みつけた大天使ミカエルの像を刻んだ15世紀のフランス金貨」(*7)。 8. リオンドール金貨 (lion d’or) は 「フィリップ6世治下のフランスの金貨」 または 「1454~66年に流通したフランドルの金貨」(*8)。 9. 黄金のメダル (une médailhe / médaille d’or) について、イアン・ウィルソンは顧客であった大実業家ハンス・ローゼンベルガーから贈られたものではないかとしていた(*9)。ノストラダムスは1561年の手紙の中で、ローゼンベルガーから謝礼の銀杯とともに贈られてきた黄金のメダルについて、その出来の見事さを誉めていた(*10)。 10. フロリン金貨 (florin) は1252年にフィレンツェで最初に鋳造された金貨で、のちにヨーロッパ各地で模倣した金貨が鋳造されるようになった(*11)。ノストラダムスが 「ドイツのフロリン金貨」 と地名を併記しているのは、以上のような経緯と関係があるのだろう。 11. マリオネット金貨 (marionnette) は 「ドイツのドゥカート金貨の一種」(*12)。 12. ポルチュゲーズ (Portugaise) は、「34リーヴルに相当する金貨」(*13)あるいは「(17世紀初頭の英国で) 3ポンド10シリングに相当する金貨」(*14)。ポルトガル王マヌエル1世 (在位1495 - 1521年) の時代に鋳造された10クルサード金貨がそう呼ばれたらしい(*15)。 13. 「3444エキュ10スー」という金額がどのくらいの価値を持つかについては、いろいろな見解がある。渡辺一夫は具体的な換算は行わず、「当時としては、大変な金額であり、しかも、それを全部上質の古金貨で持っていたようでした」(*16)と評していた。ユージン・パーカーは1920年時点で50万フランと見積もっていた。エドガール・ルロワはコラン・ド・ラルモールの換算を引用し、当時の肉や卵の価格から換算すると、1925年時点での500万から600万フランという見積もりを紹介していた(*17)。エドガー・レオニは、ノストラダムスがパリまでの旅で100エキュを費やしたと主張していたことを引き合いに出していた。ピーター・ラメジャラーは約45万ドル(*18)とか約30万ドル(*19)と換算している。 14. 「1000エキュ」 はマルセイユ原本・抄本の数値で、アルル写本では「1600エキュ」 となっている。 15. マルタン・ミアンソン (Martin Mianson) は、アルル写本ではマルタン・マンソン (Martin Manson) と表記されている。 【画像】 平木恵一 『新・世界貨幣大事典』 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/nostradamus/pages/52.html
『ノストラダムスの大予言・中東編』は、1990年に祥伝社から出版された五島勉のノストラダムス解釈書。 『ノストラダムスの大予言』シリーズの7冊目である。 イラク軍のクウェート侵攻に端を発する湾岸危機に便乗する形で発売され、1990年のベストセラー新書・ノンフィクション部門6位、1991年の同部門3位(いずれもトーハン調べ)にランクインした。 【画像】カバー表紙 概要 従来の関連書と異なり、ノストラダムスの生涯についてはほとんど本編では触れず、まえがきのなかで簡潔にまとめている。 本編では、ノストラダムスは湾岸危機を予言していたとして第2巻79番などの四行詩の分析を行い、湾岸危機自体は長期化しないだろうが、より大きな中東大戦が起こる可能性があると説く。 さらに、より詳細な分析をおこなう鍵として、六行詩集やアーサー・クロケットが発表した第12巻と称する四行詩の分析などもおこなっている。 後者についてはフランスの秘密結社による発見時の状況などについても紹介している。 コメント まえがきで触れられているノストラダムスの生涯は、史実とかけ離れている。 15歳でモンペリエ大学に入った 最初の妻はアドリエットだ 20年間放浪した 再婚相手は町長の娘で、14歳だった といった話は、全くの虚偽か、裏付けになる資料が確認できないものばかりである。 詩の解釈についても、enginという単語が10世紀には死語になっていた等、完全な虚偽説明が含まれている(*1)。 なお、クロケットが発表した詩は明らかな偽作であり(*2)、発見にまつわるエピソードも、時系列的な誤りから単なる創作であろうと推測出来る(*3)。 書誌 書名 ノストラダムスの大予言・中東編 副題 中東(フセイン)危機は人類破局への序曲だ 著者 五島勉 版元 祥伝社 出版日 1990年11月5日 注記 扱っている四行詩、六行詩は以下の通り。I-48, I-94, II-79, V-16, V-25, V-53, VII-40, VIII-96, IX-43, X-42, X-72, X-86, S1, S8, S27, S30, S39, S49. 加えてクロケットの詩篇を5つ紹介している。 外国人研究者向けの暫定的な仏語訳書誌 Titre Nosutoradamusu no dai-yogen, Chûtô-hen (trad./ Les Grandes Prophéties de Nostradamus, sur le Moyen-Orient.) Sous-titre Husein kiki wa jinrui hakyoku eno jokyoku da. (trad./ La crise par Hussein est le prélude d'une catastrophe de la humanité.) Auteur GOTÔ Ben Publication Shôdensha Lieu Tokyo, Japon Date le 5 Novembre 1990 Page 232, (10)pp. Note Exemen des quatrains I-48, I-94, II-79, V-16, V-25, V-53, VII-40, VIII-96, IX-43, X-42, X-72, X-86 et de cinq faux quatrains par Crockett ; Exemen des Sixains 1, 8, 27, 30, 39, 49 ※記事へのお問い合わせ等がある場合、最上部のタブの「ツール」>「管理者に連絡」をご活用ください。
https://w.atwiki.jp/obakegyarusonn/pages/13.html
怪談レストランへようこそ・・・私、支配人のお化けギャルソンです。現在は2021-12-09 14 38 48 (Thu)です。幽霊が出てくる時間帯だったら・・・いや、なんでもございません。 アコ 山桜小学校6年生。 あだなは“あんこ”。 空想好きで、将来の夢は冒険小説家。 怖い話は苦手だが、好奇心旺盛で真実を確かめずにはいられない。あんこっておいしいよね! ショウ アコのクラスに転入してきた、帰国子女の美少年。 ひとりでいるのが好きで、友だちがあまりいない。 怖い話が大好きで、世界各地の怪談を収集している レイコ クラス委員。 頭脳明晰で、科学的根拠のないことは信じない現実派。 なぜか、アコによく突っかかってくる。 # / \」 へなちょこなギャルソンのロウソクです。 |○●○●●| 僕下手なんで・・・ \ / _(●)_ \ / __\ /__ 2021-12-09 14 38 48 (Thu) 前月 2021年12月 翌月 日 月 火 水 木 金 土 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 名前 内容