約 632,335 件
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1838.html
このページには、ゆっくりいじめ系1001~1250まで一覧となっています。 作品の後ろにある文字の説明はジャンルマークについてに纏めてあります。 1000以前および1251以降につきましては下記から。 ゆっくりいじめ.250 ゆっくりいじめ.500 ゆっくりいじめ.750 ゆっくりいじめ.1000 ゆっくりいじめ.1500 ゆっくりいじめ.1750 ゆっくりいじめ.2000 ゆっくりいじめ.2250 ゆっくりいじめ.2500 ゆっくりいじめ.2750 ゆっくりいじめ.3000 ゆっくりいじめ系1001 考え方の根本が違うそ無 ゆっくりいじめ系1002 鯛焼き ゆっくりいじめ系1003 万能お兄さん1_1 ゆっくりいじめ系1004 万能お兄さん1_2 ゆっくりいじめ系1005 出産妨害ってほど妨害してない ゆっくりいじめ系1006 ゆっくり郷 ゆっくりいじめ系1007 見守るドスまりさ制無 ゆっくりいじめ系1008 後悔、先に立たず ゆっくりいじめ系1009 家にゆっくりが居た ゆっくりいじめ系1010 ゆっくりクイズ ゆっくりいじめ系1011 ありすに厳しい群れ(中) ゆっくりいじめ系1012 冬のゆっくり そ 環 家 ゆっくりいじめ系1013 手を汚すのが嫌いな虐待おねーさん(その1) ゆっくりいじめ系1014 どすのせいたい ゆっくりいじめ系1015 プロの虐待お兄さん ゆっくりいじめ系1016 家畜饅頭ゆプー(前)虐家機料道無 ゆっくりいじめ系1017 家畜饅頭ゆプー(後)虐機道無 ゆっくりいじめ系1018 忘却 ゆっくりいじめ系1019 ゆ狩りー1 虐 家 ゆっくりいじめ系1020 ゆ狩りー2 虐 家 ゆっくりいじめ系1021 ゆっくり駆除アリス 虐 家 性 ゆっくりいじめ系1022 万能お兄さん2_1 ゆっくりいじめ系1023 万能お兄さん2_2 ゆっくりいじめ系1024 嘘つき少女の悲劇 制 捕 ゆっくりいじめ系1025 赤姫 ゆっくりいじめ系1026 ゆっくり宅に挨拶 ゆっくりいじめ系1027 ゆっくりの救急車 ゆっくりいじめ系1028 盲導ゆっくり(前編)制無 ゆっくりいじめ系1029 盲導ゆっくり(後編)制無 ゆっくりいじめ系1030 ドキッ☆ゆっくりだらけの運動会 ゆっくりいじめ系1031 ドキッ☆ゆっくりだらけの運動会2 ゆっくりいじめ系1032 手を汚すのが嫌いな虐待おねーさん(その2) ゆっくりいじめ系1033 大根の本気 虐 制 環 ゆっくりいじめ系1034 プロの虐待お兄さん2 ゆっくりいじめ系1035 赤ゆれいむ ゆっくりいじめ系1036 レポート ゆっくりいじめ系1037 僕とわがまままりさのギスギスしたおもてなし ゆっくりいじめ系1038 たっぷりしていってね!_01 ゆっくりいじめ系1039 たっぷりしていってね!_02 ゆっくりいじめ系1040 チャリンコ 虐 家 無 ゆっくりいじめ系1041 ゆっくり一家、デパートへ逝く ゆっくりいじめ系1042 蹴る虐家無 ゆっくりいじめ系1043 彼岸花 ゆっくりいじめ系1044 ゆっくりと共同生活 ゆっくりいじめ系1045 奇跡のゆっくりプレイス ゆっくりいじめ系1046 一匹のゆっくりを捕まえてきた ゆっくりいじめ系1047 発電する国虐環機無 ゆっくりいじめ系1048 一匹のゆっくりを捕まえてきた。2 ゆっくりいじめ系1049 一匹のゆっくりを捕まえてきた。3 削除しました 削除しました ゆっくりいじめ系1052 ゆっくりとガチバトル そ ゆっくりいじめ系1053 ゆっくり咲夜来襲! ゆっくりいじめ系1054 子沢山(にんっしんっ篇) ゆっくりいじめ系1055 コシアンルーレット 前編 ゆっくりいじめ系1056 ゆっくり漫才 ゆっくりいじめ系1057 万能お兄さん3_01 ゆっくりいじめ系1058 万能お兄さん3_02 ゆっくりいじめ系1059 種付けゆっくり・前編 ゆっくりいじめ系1060 種付けゆっくり・後編 ゆっくりいじめ系1061 まきぞえ ゆっくりいじめ系1062 甘い言葉虐無 ゆっくりいじめ系1063 ゆっくり黄昏てね ゆっくりいじめ系1064 ゆっくり潰し ゆっくりいじめ系1065 奇形たちの楽園 前編 ゆっくりいじめ系1066 奇形たちの楽園 後編 「ゆっくりいじめ系1067 冬篭りのせいで歯車がズレたか……は作者の要請により削除されました。」 ゆっくりいじめ系1068 放置プレイ? ゆっくりいじめ系1069 ゆっくり想像妊娠(前編)制環捕無 ゆっくりいじめ系1070 ゆっくり想像妊娠(後編)制環捕無 ゆっくりいじめ系1071 コシアンルーレット 後編 ゆっくりいじめ系1072 ドキッ☆ゆっくりだらけの運動会3 ゆっくりいじめ系1073 ゆっくり視点 ゆっくりいじめ系1074 まりさとぱちゅりーの子育て_01 ゆっくりいじめ系1075 まりさとぱちゅりーの子育て_02 ゆっくりいじめ系1076 てんことお兄さん2 ゆっくりいじめ系1077 飼い猫のジョン ゆっくりいじめ系1078 何かがいる ゆっくりいじめ系1079 僕とわがまままりさのギスギスしたごっこ遊び ゆっくりいじめ系1080 母をたずねて三里 ゆっくりいじめ系1081 戦闘お兄さん001 ゆっくりいじめ系1082 まりさは貝になりたい 本編 ゆっくりいじめ系1083 ゆっくりーまん ゆっくりいじめ系1084 ゆっくり実験01 ゆっくりいじめ系1085 ゆーちぇ ゆっくりいじめ系1086 ゆっくり家族愛 ゆっくりいじめ系1087 潜入!ボスの群制無 ゆっくりいじめ系1088 まりさとぱちゅりーのお引越し ゆっくりいじめ系1089 青い空 ゆっくりいじめ系1090 ゆっくり食べてね! ゆっくりいじめ系1091 情報屋まりさ ゆっくりいじめ系1092 のうかりんランド① ゆっくりいじめ系1093 ゆっくりエレエレしてね! ゆっくりいじめ系1094 黒ゆっくり1 ゆっくりいじめ系1095 鉄ゆ ゆっくりいじめ系1096 飼いドス ゆっくりいじめ系1097 アストロン ゆっくりいじめ系1098 アストロン対策 ゆっくりいじめ系1099 頭 ゆっくりいじめ系1100 不幸なゆっくりまりさ ゆっくりいじめ系1101 冬の三角形 ゆっくりいじめ系1102 醜い男 ゆっくりいじめ系1103 capsize 1 ゆっくりいじめ系1104 capsize 2 ゆっくりいじめ系1105 ゆっくりホームステイしていってね!! ゆっくりいじめ系1106 一匹のゆっくりを捕まえてきた。外伝1 ゆっくりいじめ系1107 ゆくぶつかん ゆっくりいじめ系1108 赤ちゃんまりさとまりさつむり ゆっくりいじめ系1109 やっぱりこの人はすごい ゆっくりいじめ系1110 頭の良いゆっくり ゆっくりいじめ系1111 協定破棄 復 無 ゆっくりいじめ系1112 社会とゆっくり 1 ゆっくりいじめ系1113 社会とゆっくり 2 ゆっくりいじめ系1114 最強の遺伝子 ゆっくりいじめ系1115 ゆっくり食べてね! ゆっくりいじめ系1116 2008年宇宙の旅 ゆっくりいじめ系1117 ゆっくり剥製 ゆっくりいじめ系1118 ベーシック加工場を目指してみた ゆっくりいじめ系1119 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!1 ゆっくりいじめ系1120 加害者ありすの献身虐制性無 削除しました ゆっくりいじめ系1122 恐怖のリッツパーティ ゆっくりいじめ系1123 定型句 ゆっくりいじめ系1124 スカウトマンゆかりん前 ゆっくりいじめ系1125 スカウトマンゆかりん後 ゆっくりいじめ系1126 れいむの転落人生 ゆっくりいじめ系1127 ありすほいほい ゆっくりいじめ系1128 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!2 ゆっくりいじめ系1129 庇護 ゆっくりいじめ系1130 ゆっくりちくろ ゆっくりいじめ系1131 悲しき聖帝ゆっくり! お前は愛につかれている!!3 ゆっくりいじめ系1132 庇護─選択の結果─ ゆっくりいじめ系1133 ゆっくりCUBE外伝(後) ゆっくりいじめ系1134 おろし金 ゆっくりいじめ系1135 ちょっと熱めなお兄さん ゆっくりいじめ系1136 恵みの饅頭 ゆっくりいじめ系1137 ゆっくり苺大福 「ゆっくりいじめ系1138は作者さん要請により削りました。by管理人」 ゆっくりいじめ系1139 やねのうえのゆっくり ゆっくりいじめ系1140 親れいむのがんばり ゆっくりいじめ系1141 ゆっくりする事を求めて(前) ゆっくりいじめ系1142 ゆっくりする事を求めて(中) ゆっくりいじめ系1143 ゆっくりする事を求めて(後)1 ゆっくりいじめ系1144 ゆっくりする事を求めて(後)2 ゆっくりいじめ系1145 硬いお菓子 ゆっくりいじめ系1146 スーパー系お兄さん 1 ゆっくりいじめ系1147 スーパー系お兄さん 2 ゆっくりいじめ系1148 ゆっくりベビーシッター ゆっくりいじめ系1149 ゆっくりさくやと私 ゆっくりいじめ系1150 人里は餡外魔境 ゆっくりいじめ系1151 ひも付きゆっくり家族 ゆっくりいじめ系1152 僕とわがまままりさのギスギスした山登り ゆっくりいじめ系1153 ありすに厳しい群れ(後) ゆっくりいじめ系1154 じっくり虐待・1 ゆっくりいじめ系1155 じっくり虐待・2 ゆっくりいじめ系1156 お兄さんとドスれいむ ゆっくりいじめ系1157 変わる日常。変わらないもの ゆっくりいじめ系1158 毒人形 「ゆっくりいじめ系1159 ゆふらんセブン 哀・まりさ編は作者さんの要請で削除されました。」 ゆっくりいじめ系1160 子れいむのがんばり ゆっくりいじめ系1161 まだ見ぬゆっくりを探して ゆっくりいじめ系1162 人間 ゆっくりいじめ系1163 冬ごもりすっぞ!? ゆっくりいじめ系1164 虐殺お兄さんの弱点 ゆっくりいじめ系1165 ゆっくりれみりゃの生涯 『希少種への進化編』 ゆっくりいじめ系1166 ゆっくりによる裁判 ゆっくりいじめ系1167 ゆっくりゆうかの一生 ゆっくりいじめ系1168 鬼意屋敷殺人事件 ゆっくりいじめ系1169 ゆっくり転生 ゆっくりいじめ系1170 等価交換 ゆっくりいじめ系1171 しろくろ ゆっくりいじめ系1172 二匹のゆっくりを育ててみた ゆっくりいじめ系1173 しろれいむ 1話 ゆっくりいじめ系1174 頭 ゆっくりいじめ系1175 灼熱地獄 ゆっくりいじめ系1176 甘い話には裏がある(前) ゆっくりいじめ系1177 甘い話には裏がある(中) ゆっくりいじめ系1178 甘い話には裏がある最終話 ゆっくりいじめ系1179 どり~む ゆっくりいじめ系1180 ゆっくりホームステイしていってね!! 2 ゆっくりいじめ系1181 しろれいむ 2話 ゆっくりいじめ系1182 悪徳の栄え1 ゆっくりいじめ系1183 おねしょゆっくり ゆっくりいじめ系1184 のうかりんランド② 1 ゆっくりいじめ系1185 のうかりんランド② 2 ゆっくりいじめ系1186 二匹のゆっくりを育ててみた。2 ゆっくりいじめ系1187 ジュースを片手に森で踊ろう ゆっくりいじめ系1188 漢方『湯繰丹』 ゆっくりいじめ系1189 心地よい箱 ゆっくりいじめ系1190 ゆっくりの巣 ゆっくりいじめ系1191 どすの加工所 ゆっくりいじめ系1192 ゆっくりさとり ゆっくりいじめ系1193 れいむをまもるもの ゆっくりいじめ系1194 ゆっくりの裏ビデオ ゆっくりいじめ系1195 ゆっくり釣っていってね!!! ゆっくりいじめ系1196 ゆっくり釣らないでね!!! ゆっくりいじめ系1197 おでんとからし ~おでん~ ゆっくりいじめ系1198 おでんとからし ~からし~ ゆっくりいじめ系1199 ゆっくりできた日々1 ゆっくりいじめ系1202 ゆっくりプリズムリバー ゆっくりいじめ系1203 うーぱっくと果樹園 ゆっくりいじめ系1204 観察 ゆっくりいじめ系1205 幻想樹の迷宮 ゆっくりいじめ系1206 幻想樹の迷宮Ⅱ ゆっくりいじめ系1207 もりのおう ゆっくりいじめ系1208 あるゆっくり魔理沙の記録 ゆっくりいじめ系1209 ことばのろうそ環家無 ゆっくりいじめ系1210 もやし ゆっくりいじめ系1211 扇風機 ゆっくりいじめ系1212 仲良し姉妹 ゆっくりいじめ系1213 ともだち ゆっくりいじめ系1214 【餡れいざー】 ゆっくりいじめ系1215 取らぬゆっくりの餡算用 ゆっくりいじめ系1216 実力の無い話 ゆっくりいじめ系1217 水夫と学者とゆっくりと ゆっくりいじめ系1218 ゆっくり ゆっくりいじめ系1219 ゆっくりとにとり ゆっくりいじめ系1220 ゆっくりいじめ系1221 むてきまんじゅう さんゆっくすりぃ vs 農耕士○ンバイン(嘘) ゆっくりいじめ系1222 ゆっくり繁殖させるよ! ゆっくりいじめ系1223 終わらないはねゆーん 前編 ゆっくりいじめ系1224 モンスターバスター ゆっくり襲来vol.1 ゆっくりいじめ系1225 少年 ゆっくりいじめ系1226 悪徳の栄え2 ゆっくりいじめ系1227 ゆー戯王 ゆっくりいじめ系1228 ありすの望み ゆっくりいじめ系1229 ゆっくりが好きな子供 ゆっくりいじめ系1230 万能お兄さん4 ゆっくりいじめ系1230 万能お兄さん4_2 ゆっくりいじめ系1231 こんにゃゆっくちいりゅかな?そ家 削除しました ゆっくりいじめ系1233削除 ゆっくりいじめ系1234 【樽】 ゆっくりいじめ系1235 現ゆ ゆっくりいじめ系1236 頭の良い生き物 ゆっくりいじめ系1237 ゆっくりサファリパーク ゆっくりいじめ系1238 ゆっくりsacrifice ゆっくりいじめ系1239 マタニティゆっくり 前編 ゆっくりいじめ系1240 でーしーえす ゆっくりいじめ系1241 【球体】 ゆっくりいじめ系1242 日々淡々とした話 ゆっくりいじめ系1243 兵器にもならぬゆっくり ゆっくりいじめ系1244 トカゲのたまご1 -たまご ゆっくりいじめ系1245 徹夜でゆっくりしようぜ! ゆっくりいじめ系1246 二人のお兄さんと干しゆっくり ゆっくりいじめ系1248 人間の味方 ゆっくりいじめ系1249 赤ゆっくり物語 ゆっくりいじめ系1250 緩動戦士まりさ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/1892.html
このごろ世間では、ゆっくりとかいう奇妙な生き物が跋扈しているらしい。 私のように、親の遺産で隠遁生活を送る者のところへはやってこないのか、今まで見たことはないが。 そんなある日、久しぶりに私を訪ねてくる人があった。古い友人だった。 何かがいる 「久しぶりだな。上がってもいいかい?」 彼は十年前から変わらないような服を着、見たことのない透明な空箱を提げていた。 「もちろんさ、ゆっくりしていってくれよ君」 「ところでお前――結構ゆっくり好きだったりするのか?」 友人は怪訝そうな顔で、なぜかそんなことをいきなり聞いてきた。 「いや、好きも嫌いも……このあたりで見かけたことは一度もないなあ」 それを聞くと、友人は 「あっはははははは!!!いや、まいったっ……っふっははははは!!!」 ただひたすら笑い転げた。私は何だか面白くない。 「すまないが、あまり人前に出ないものでね、最近の世情には疎いんだ。 そうだ、いい機会だからそのゆっくりとかいう生き物について教えてくれないか? 君の方はなかなか詳しそうじゃないか」 友人はなおも大爆笑。 「おい?」 「いや、お前、こんな仕込みをしてくれるなんて……性格変わったか?」 私はさすがに異常を感じる。 「君……一体何の話をしてるんだ……?」 友人は笑い転げるのをやめて、こちらに向き直った。まだ顔は引きつっていたが。 「いや……俺を面白がらせるためだけに、部屋にこんなにゆっくりを放つなんて思っても見なかったからさ…… まるでゆっくりが一匹もいないみたいに振舞う演技もすごく上手かったしな、面白かったよ」 「?」 彼も、私との間の異常を感じ取ったようだ。 「お前……まさか本当に……」 彼の視線がまっすぐに私を射る。 「本当に、この、部屋中のゆっくりが見えないのか」 「何のことだ?」 私は部屋を振り返った。いつもの私の部屋。 そこには、なにも存在していなかった。 * * * * ゆっくりとは、人面を持つ饅頭で、人語を喋る。その性質は傲慢極まりないが、知能はそれほど高くない。 食料を取るために人の畑を荒らすので、害獣のような扱いを受けることが多い。 それが友人から聞いたゆっくりだった。 「お前は昔から、まるで幻想郷に生きていないような浮世離れしたところがあったからな」 友人は言った。 「確かに。 聞いていれば、そのゆっくりとかいう生き物、この幻想郷そのもののようだ」 「どういうことだ」 「曖昧で、いかようにも変幻し、実存がその拠って立つ物理法則よりも優先される」 「すまんが、もうすこし易しく」 「いいかげんな生き物だってことさ。私が、年を経ていまだ馴染むことのできないこの世界と同じくね。 彼らは”存在するから認識される”のではなく、”認識から生まれ存在する”かのようだ。 だからきっと、偏屈な私には理解することも認識することもできないんだろう」 友人はため息をついた。辺りを見回す。 「それにしてもひどいありさまだ。二十匹近くいるんじゃないのか」 私はなんとなく笑った。 「そんなにか」 「お前は物に執着しない性質だったからな。今も、ほとんど物を持たない生活をしているんだろう?」 「なんでもお見通しだな」 友人が言うには、ゆっくりは人間の物を荒らしたり人間の家を自分の住処として好き放題に踏み荒らすらしい。 物を持たない自分だからこそ、今までゆっくりの存在に気づくこともなかったのだろう。 「言われてみれば、食べ物がすぐになくなるような気がすることは多々あったが…」 「お前は健啖家だからな、たくさんある食べ物が少しぐらいなくなっても気づかないのかもしれないが… それにしても、信じられないな」 そこらじゅうをぴょんぴょんと飛び跳ねているらしいゆっくりを見ようと目を細めてみたが、やはりなにも見えなかった。 友人は、ゆっくりの”虐待”を生業にしているといった。眉をひそめる私に友人は言う。 「犬や猫をいじめるのとは違うさ。こいつらは知能を持ち、我欲でもって人間に悪事を働くことも多い。 畑を荒らすなんて日常茶飯事だ。……もっともそれは生活のためなんだが、言うに事欠いてあいつらは ”ここはれいむのおうちだよ!ゆっくりできないにんげんはでていってね!”とか言うんだぜ」 「なるほど、それはよろしくないな」 「お前にも見えればな、すぐに理解できるんだが。どうしてこいつらがこんな扱いを受けるのかが」 友人は床の上をまさぐり、何かを掴むような仕草をした。 それがゆっくりを掴んだのだとすぐに気がついた。 「お、おい……」 友人はそれを、こちらへ放り投げる。もちろん私には何も見えない。 何かがぶつかったような感じもしなかった。 「おい、どうなったんだ」 友人は釈然としない表情で言う。 「……よくわからんが……すり抜けた……ように見えた」 * * * * 「ゆぴいぃぃぃ!!!ゆっぐりざぜてええええ!!!」 れいむとまりさを親とする、一般的な家族形態のゆっくり家族。 男の家に住まうその家族は今まで幸せだった。 時には、 「おにいさん!はやくたべもののいれものをあけてね!!」 「……」 「おにいさんはぐずなの?しぬの?」 「……」 「ばやくしてってばあああああ!!!!」 「……」 またある時には。 「おにいさん!さむいからはやくとをしめてね!!こどもたちがさむがってるよ!!」 「おお、雪が降ってきたか……風流、風流」 「ゆゆゆゆゆゆ……」 「おにいさんばっかりあったかいふくでずるいよ!れいむたちのことももっとかんがえてね!」 「吹雪いてきたな……すこし冷えるが、良い眺めだ」 「さむいぃぃぃぃ!!!ゆっぐりできないぃぃぃぃぃ!!!」 以上のように、ゆっくりを完全に無視する男の態度が不都合だったりはするものの、男が悪意を持ちえない以上 それが命に関わるようなことはなかったからだ。 基本的には広くて立派なゆっくりぷれいすとして、ゆっくりたちは男の家に安住していたのだ。 そこに天敵はいなかった。 しかし、それは今までの話だ。 透明な箱に入った二匹のれみりゃと、それを連れてやってきた男は違った。 「なるほど、私の認識を覆すことがないようにでもなっているのか……」 「おそらくはな」 客である男は、今もまったく何気ない顔で子供のゆっくりを捕まえ、死なない程度に圧を加えている。 「ぢゅぶれりゃう!!!!おかあちゃんちゃちゅけてええええ!!!!」 「あたらしいおにいさん!ゆっくりあかちゃんをはなしてね!!」 「ゆっくりできないおにいさんはでていってね!!」 れいむとまりさの抗議など何処吹く風と聞き流し、家人である男との会話に興じている。 ぐっぐっぐっと、だんだん子ゆっくりが膨らんでいくのがわかる。 「おかあ……じゃびゅうう!!!!」 とうとう限界を超え、はじけて中身を飛び散らかすゆっくり。 「れいむのあがちゃんがあああああ!!!!」 それを見て箱の中のれみりゃは大喜びだ。 「あうー☆いっぱいゆっくりがいるどぅ~♪はやくたべたいっどぅ~~♪」 「まぁまぁ~♪れみぃもたべたぁいどぅ~!うあ☆うあ☆」 ちなみにれみりゃは親子で、親ゆっくりは胴付きだが子のほうはまだそこまで成長してはいない。 「よぐもあかちゃんつぶしたね!ゆっくりあやまってね!!」 嘆き悲しみ、文句をまくしたてるれいむをちらりと見ると、男はれみりゃの入った箱に手をかける。 その動作でゆっくりはびくっと身をすくませる。 「はやくおそとにでるどぅ~!!」 と、れみりゃも箱をばんばんと叩きゆっくり家族を脅かす。 「れみりゃはゆっくりできないよ!ゆっくりやめてね!」 「「れみりゃはゆっくちかえってね!!!」」 そのさまを男はなんでもないように見守る。 それはゆっくりを認識しない家人の男のものとは似ているが違う。 ゆっくりの虐待が日常と化している男の目だった。 * * * * 「おお、すっかり長居してしまった。そろそろ帰るわ」 だいぶ話し込んだ後で、友人が言った。 「そうか。辺鄙なところだが、また寄ってくれよ」 「もちろんだ。……ところで、頼みがあるんだが」 「何だ?どうせ、かのゆっくり絡みだろうが」 「その通り」 私は友人の要請を聞き入れた。 天井の梁に金網を渡し、天井に近い部分の空間を区切る。友人はそこへ、持ってきた箱の中身を開けた。 「本当はこれを見せに来たんだ。俺の自慢の、ゆっくりをゆっくりさせないゆっくりだ」 「悪いが何を言ってるのかさっぱりだ……」 相変わらずゆっくりの見えない私には、空箱を持って演劇の練習でもしているようにしか見えない。 「あとは、家の外にこいつを置かせてくれ」 「空の箱?」 「そうか、見えないんだったな……俺が連れてきたゆっくりは二匹いて、ここにはまだ一匹入っているんだ。 特に何もしなくていい。後で俺が様子を見に来るよ」 「そうか、分かった」 * * * * 天井から声がする。金網張りの上かられみりゃがこっちを見ているのだ。 「たべちゃうどぅ~♪ぎゃお~☆」 「やめてええええ!!!!」 「ゆっくちできないぃぃぃ!!!ゆっくりにげりゅよ!!」 ゆっくり達はゆっくりと移動する。 「にがさないどぅ~!うっう~☆」 れみりゃはそれよりも素早く飛んで、ゆっくり達の上に居続ける。 「れみりゃこわいぃぃぃぃぃ!!!!!」 「ゆっ!あかちゃんたち!おそとににげるよ!」 「おきゃあさんあたまいい!ゆっきゅりおそといくよ!!」 「ううーーー!!!まつんだどぅぅぅぅーーーー!!!!」 扉にぽむぽむと体当たりして押し開け、外へと飛び出すゆっくり達。 れみりゃが追ってこないと知るや、はやくもゆっくりしだす。 「おうちのなかはゆっくりできないから、ここでゆっくりするよ!」 「ゆっきゅりぃぃぃ!」 だが。 「ぎゃお~!ゆっくりたべちゃうどぅ~♪」 「ゆっぐりできないよぉぉぉぉ!!!!」 外にも虐待お兄さんが置いていった子れみりゃがいる。箱に入ったままで外には出られないが、 得意満面でゆっくり達を威嚇する。胴体もなく翼も未熟だが、そんな子れみりゃでも通常種よりは遙かに強いのだ。 「ゆぶぶぶぶ!!!!」 「まりざのあがちゃんがああああ!!!!」 子の一匹がショックで死んでしまったほどだ。 「ゆっくりにげるよ!!」 「うわああああんんんんん!!!!」 再び慌てて逃げ出すゆっくり達。家と庭を往復し、延々と泣き叫び続けるのだった。 一方、れみりゃ達も――。 「う?またゆっくりはいってきたどぅ♪まつんだどぅぅぅぅぅ!!!」 金網を手で掴んでもがくが、金網はびくともしない。 「ゆゆっ!!またれみりゃだよ!ゆっくりにげるよ!!」 「まつんだどぅぅぅぅ!!なんでだべられないどぅぅぅ!!?? おながずいたどぅぅぅぅぅぅ!!!!!ざくや、ざぐやああああ!!!!!」 「まぁまぁ~!!れみぃおなかすいたどぅぅ!!あう♪ゆっくりきたどぅ~♪たべちゃうどぅ~☆」 もちろん逃げるゆっくり。 「はこからでるぅぅぅーーー!!!はこからでるどぅぅぅ!!!ゆっきゅりたべたいどぅぅぅぅーーー!!!!」 家主の男は書き物の仕事をしている。 「ゆっ……ゆっ……!おにいさん、かわいいれいむたちをたすけてね!」 「れいむにげまわってちゅかれた!ゆっくりしたいよおおお!!!」 ゆっくり達の発言も、もちろん男には聞こえていない。 「なるほどね。随分扉のたてつけが悪くなったものだと思っていたが、ゆっくりが使っているということかな?」 などと、思索にふけったりしている。 「なにのんぎなごといっでるのおおおおおお!!!???はやくなんとかしてよおおおお!!!!!」 「どこにいるのかはわからないが……どこにでもいるんだろうな。 なんにしても、私の家を勝手に使われているのは面白くない」 「なにいってるの!ここはれいむのおうちだよ!!おにいさんはぐずぐずしないでれいむのいうこときいてね!!!」 「れみりゃ……とか言ったか? 家を荒らすような生き物は、彼が連れて聞いたそれにさっさと食べられてしまうがいいさ」 「どぼぢでそんなごというのおおおおお!!!!!!」 「今日も静かな夜だ……この部屋に何かがいるなんてとても信じられないな。 さて、そろそろ仕事を切り上げて寝るとしようかね」 「れみりゃごわいいいいい!!!!」 「ゆっぐりでぎないいいいいい!!!!!!!」 おしまい。 □ ■ □ ■ あとがき ”ゆっくりが見えないお兄さん”のお話でした。 見えないお兄さんと虐待お兄さんがコンビを組んだらいろんなことができそうな予感。 読了ありがとうございました。 過去に書いたSS 豚小屋とぷっでぃーん 豚小屋とぷっでぃーん2 エターナル冷やし饅頭 れみりゃ拘束虐待 無尽庭園 ゆっくりできない夜 ゆっくりぴこぴこ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/979.html
「ゆ? ゆっくりうごいてるよ! もうすぐうまれるね!」 「ゆゆ! ほんとだわ! いまやわらかいばしょをよういするわ!」 ありすは急いで脇の方に置いてあった枯草を、れいむの前に敷き詰める。 ちょうどそこは、れいむの頭から生えている赤ちゃんたちの落ちる場所である。 「ゆっくりうまれてね!」 「「「ゆっゆ!」」」 産まれる直前ともなると、親の言葉に反応してプルプルと震える事ができる。 れいむはその振動を感じ取って幸せに包まれた。 もうすぐ愛する我が子と会える事に。 「ゆゆ! うまれるわ! ゆっくりがんばってね!」 ありすが掛け声をかける。れいむは子供たちが無事に生まれる事を願っていた。 ポロリと。頭の茎から一匹のありすが落ちた。そしてそれを皮きりに残り七匹も枯草の上に落ちてくる。 たっぷりと敷き詰めた枯草の上は柔らかいのだろう。落ちた後も枯草の上でモゾモゾとしていた。 親である二匹は心配そうに見つめていた。 やがて、三匹が目を開けた。そして二匹の方を向いて、生まれたてとは思えないほど大きな声で 「「「「ゆっきゅりちていっちぇね!!!」」」 そう言った。れいむはその光景を見て思わず涙ぐむ。 「ゆぐ、ゆぐっ!・・・ゆっくりしていってね!!!」 ありすもとても幸せそうな顔で挨拶を交わす。 「ゆーゆ♪」 「ゆっきゅりごひゃんたべちゃわ!」 「ゆっくりー!」 ありすが三匹とれいむが五匹。植物型でも少々多い。 が、両親は特に気にしなかった。今の季節は春である。食料も出産前から十分に溜めている おうちの方も、ゆっくりにしてはかなり広い方なので、狭いという事もない。 「おちびちゃんたち! ゆっくりごはんをたべてね!」 れいむがそう言うのと同時に、頭の上から茎が落ちてきた。 子供に送られていた栄養がたっぷりと詰まっていて、味もほどほどに抑えられている茎は 最初に子供が食べるものとしては最高の餌だ。 ありすとれいむはそれらを口の中に入れて、むーしゃむーしゃと噛み砕いた。 「ゆゆ! ゆっきゅちごひゃんをとらないでね!」 一匹の赤れいむが怒り出す。れいむは謝りながら 「ごめんねあかちゃん! でもこれでやわらかくなったからゆっくりたべれるよ。」 「ゆっくりたべてね!」 生まれたての赤ちゃん達はむしゃむしゃと柔らかくなった茎に被りつく。 そして生まれて初めての食事を楽しむ。 「「「「「「「むーちゃ!むーちゃ! ちあわちぇー!」」」」」」」 「ゆっきゅちちちぇいってね!!!」 「ゆ?」 両親は何か違和感を感じた。が、この時はそれは何なのかはわからなかった。 食事を終えた赤ちゃんたちは、さっそく家の中で遊んでいた。 「ゆっっきゅちおうたをききちゃいよ!」 「ありちゅはとかいちぇきなおうちゃをききちゃい!」 「れーみゅはすりすりしちゃいよ!」 無邪気に親に甘える赤ちゃん達。その中で変な言葉が聞こえてきた。 「ゆっゆっー! ゆっきゅりちちぇいっちぇね!」 一番小さい赤れいむである。 「ゆゆ? れーみゅたちはゆっきゅちちちぇるよ?」 「どうしたのあかちゃん? ゆっくりしてるわよみんな?」 赤れいむに話しかける家族。しかし帰ってくる答えは 「ゆっゆっゆー!」や 「ゆっくりー♪」 「ゆ?」 といった言葉しか返さない。というか基本的に「ゆっくりしていってね!!!(発音修正済み)」 か、「ゆー」とかしか言わないのだ。 「ゆ? どうちちゃったのれーみゅ?」 心配そうに見つめる兄弟 「ゆゆ! どうなってるの? まさかびょうきなの!」 れいむはソワソワと落ち着きなくおうちの中をうろついている。 ありすは家族を落ち着かせようとした。 「おちついてねみんな! いまぱちゅりーをよんでくるわ!」 そういって大急ぎで近くのぱちゅりーを呼びに行った。 「むきゅん! これはせんぞがえりね!!!」 「ゆー? なにそれぱちゅりー?」 ぱちゅりーの言った言葉の意味がわからないれいむ達。ぱちゅりーは話を続けた。 「むかしむかし、ゆっくりがだれにもじゃまされずにゆっくりしていたじだいとがあったのよ! むかしはみんな『ゆっくりしていってね!!!』しかいわなかったそうだわ!」 「それで! だいじょうぶなのあかちゃんは!」 ぱちゅりーはあくまで冷静にみんなに話す。 「おちついてねありす。これはとてもうんのいいことなのよ! むかしのゆっくりはぜったいにゆっくりできるっていいつたえがあるの! このこもとてもゆっくりできるはずよ!」 「ゆゆーん! さすがれいむたちのこだね! とってもゆっくりできるなんてすごいね!」 「とってもとかいはなこね! ありすはうれしいわ!」 「れーみゅはとちぇもゆっきゅりできるんだね!」 家族はとてもゆっくりできるという事を大いに喜んだ。 そして家族の生活は始まった。 最初の頃は、言葉が伝わらずに大変苦労したが、それでも長い間暮していると、言葉が伝わるようになっていった。 元々、ゆっくり達の話す『ゆっくり』にはかなり広い範囲の意味が込められている。 それこそ『おいしい』という意味から敵がいるかいないかまで、状況に応じて意味が違ってくる。 太古のゆっくりはその微妙なニュアンスの違いを感じ取っていたのかもしれない。あるいは意志の疎通など必要なかったのか。 とにかく、進化したとはいえ現在のゆっくり達の遺伝子にもそれは受け継がれている。 要は馴れれば分かるようになってくるのだ。 「ゆっくりしていってね!」 「そうねれいむ! きょうはおそとでとかいてきなひなたぼっこをするわ!」 「ゆっくりおひさまにあたろうね!」 「おかーさんもゆっくりいくよ!」 「ゆっくりしていってね!!!」 「ゆー!」 この一月の間に完璧なコミュニケーションが取れるようになった。 家族は近くの野原で思い思いに遊んだ。 「ゆっくりころがるよー!」 「ゆゆー! まってねばったさん!」 「ゆゆーん! とかいはのたんぽぽよ! れいむにあげるわ!」 「ゆっくりー! ゆっくりしていってね!!!」 「おねーちゃん! れいむもほしいよ!」 両親はその光景を眺めていた。 「みんなとってもゆっくりできてるね!」 「そうよね。ありすたちはとってもしあわせものね。」 互いに頬を寄せ合う二匹。それは親愛の証でもあった。 その時だった。二匹の後頭部ががっちりと何かに掴まれたのは。 「ゆゆ! だれなの! ゆっくりはなしてね!」 「そうよ! ありすたちはとってもよっくりしてるのよ!」 「ぷくううううううううう」と膨らんで怒り出す二匹。しかし掴んだ相手はそんな事はまるで気にしなかった。 「う~♪ あっまあまだっどぉー♪」 間抜けな声が聞こえた。そしてそれは近くで聞いてはいけない声だった。 「「でびりゃだあああああああああ!!!!!」」 「やめてね! おかーさんたちをはなしてね!!!」 子供たちは両親を掴んだ敵に対して体当たりを繰り出す。しかしそんなものは効果がない。 「うー? じゃまなんだどぉー! ちっちゃいあまあまはおちびちゃんたちのぶんなんだからー! だまってるんだどぉ♪」 そういって足でガッ!っと踏みつける。 「やべちぇえええええええええ!!!!」 「いたいですうううううううう!!!! 「ありすもういやああああああ!!! だれかたすけてえええええええええ!!!!」 次々に踏みつぶされる兄弟。あのれいむも家族を助けようとするが、 「まってねれいむ!」 長女のありすに止められた。 「ゆ! ゆっくりしていってね!」 「わたしたちじゃかてないわ! どすをよんできて!」 れいむ達の家の近くにはドスまりさが住んでいる。群れは持っていないが、ドスの周りには大勢のゆっくりが住んでおり れいむ達もその一つだ。 ドスならばみんなを助けられるとありすは考えた。 「ゆっくりしててね!!!」 れいむはそれを理解して急いでドスの家へ向かっていった。 れみりゃは家族を踏むのに夢中で気づかなかった。 「う~? ぷにぷにしておもしろいどぉ~♪」 「いじゃいよ! やめてよ! ゆっくりできないよ!」 れいむは走った。途中で何度も転びそうになりながらも必死で走った。家族の為に。 その思いが通じたのか、何の障害もなくドスの家の前についた。 「ゆっくりしていってね!!!」 そういってドスの家へ飛び込むれいむ。 「ゆゆ? ゆっくりしていってね!!!」 中にはドスと何匹かのゆっくりがいた。その中にはぱちゅりーのつがいのまりさもいた。 「どうしたの? ゆっくりはなしてね!」 ドスの声に反応して、さっそく助けを求めようとするれいむ。 しかし 「ゆゆ? ちゃんとはなしてくれないとわからないよ! ドスだっておこるよ!」 「ゆ・・・ゆっくりしていってね!!!」 「さっきからなにいってるかわからいよ! れいむはちゃんとしゃべってね!!!」 「ばかなの? しぬの?」 かれこれ10分はこんな調子である。 れいむの言葉は馴れた家族には伝わったが、初めて会話する他のゆっくりには通じなかったのだ。 「ゆ・・・ゆっゆっくりしていってね!!!」 ついには泣きだしながら喋るれいむ。 「だからわからないっていってるでしょ? ばかなの?」 だんだんとドスは苛立ってきた。そしてもう家から追い出そうかと考えたちょうどその時 「どすー!たいへんなんだよー!れいむとありすたちがれみりゃにおそわれてるんだよー!」 「れみりゃのこどもたちもいっぱいきてるみょん!」 運よくれみりゃ達を目撃したちぇんとようむがドスに伝えに来たのだ。 「ゆ! わかったよ! すぐいくね!」 「ゆっ!ゆっくりしていってね!!!」 ドスがやっと動き出した事に喜ぶれいむ。 そして一目散に家族の元へ向かった。 助けを連れて戻ってきたれいむ。しかしそこに居たのはれみりゃ達とただの皮だった。 「うー! おいしかったどぉー! れみ☆りあ☆うー☆」 「とってもえれがんとだどぉ~♪ れみりゃのおちびちゃんはとってもかりしゅまなんだどぉー!」 「さくやー! のどがかわいた~♪ れみりゃはおれんじじゅーすがのみたいどぉー!」 「うっうー! のう☆さつだんすでふみふみだどぉ~♪」 そこには餡子を失って皮だけになった家族で弄ぶれみりゃ達がいた。 既に光のない眼で空を見ている両親と兄弟。先ほどまで元気に動いていた家族。 それが今ではただの動かない皮。 「ゆ・・・・ゆっくりじでいっでねぇえええええええええ!!!!!!!」 れいむは半ば半狂乱になりながらゴロゴロと転がりまわった。 それを周りのゆっくりが止めてるうちに、ドスはれみりゃ達に近づいた。 「ゆっくりできないれみりゃはゆっくりしんでね!!!」 それだけ言い放つと、口からドススパークを放ち、れみりゃ達をあっという間にやっつけた。 このれみりゃ達はみんなのごはんとして分けることになった。 ドスの家の前。近くのゆっくりが全員集まり、れいむとありす達を土の中に埋葬していた。 そこには当然れいむが居るはずである。しかしれいむはそこから少し離れた場所にいた。 近づけて貰えないのだ。 ゆっくり達は最後の別れを済ませた後に、口ぐちにれいむを責め立てた。 「れいむがちゃんといわないからありすたちはしんだんだみょん!」 「こどもなんだからしゃべれるでしょ! ほんとにできそこないのゆっくりだね!」 「ありすたちがしんだのはれいむのせいだね! はんせいしなくていいからゆっくりしんでね!!!」 「ことびゃもまちょもねはなちぇないなんて、ゆっきゅちできにゃいね!!!」 「ほんとはきょうだいをゆっくりさせたくなかったんでしょ!」 遂にはドスまでも 「れいむのせいだからね! ドスがもっとはやくついたらみんなぶじだったんだよ! わかってるの? ばかなの? しぬの? ゆっくりしないでどっかいってね!!!」 「ゆゆ・・・ゆっくりしていってね!!! ゆっくりしていってね!!!」 「ゆっくじでぎるわげないでしょおおおおおおおおおおおお!!!! どっどどでていってねえええええええ!!!!!」 こうしてれいむはこの付近から立ち退くことになった。れいむにとって嬉しかったことは ぱちゅりーだけは最後まで味方でいてくれた事だ。 「れいむ、たべられるものやかりのしかたはおぼえてるわね?」 出発当日、ぱちゅりーは朝早くからやってきて真剣な目で問いかけてきた。 「ゆっくりしていってね!!!」 ぱちゅりーには言葉の意味がわからなかったが、おそらく肯定したのだと思って話を続けた。 「そう、おうちのつくりかたもだいじょうぶね? これはあさごはんよ!」 そういって口から差し出したのは、はちみつだった。 野生のゆっくりにとっては滅多に食べれない貴重なものである。 「ゆっくりしていってね!!!」 「れいむもゆっくりしてね!!! がんばってねれいむ!!!」 帰って行ったぱちゅりーの後ろ姿を寂しげに見つめながら、れいむは新たな家を求めて旅立った。 【あとがき】 昔書いて途中でほったらかしたヤツ うん。何に影響を受けてたかよくわかるな俺 あと、久々に発掘した時に書かれてたメモが 【メモ】 ジャギ様登場 どういうことなの…… byバスケの人 このSSに感想をつける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/3633.html
※おぜうさまの か り す ま☆せっていがあるかもだどぉ~☆ ※虐待がすぐなめかもしれないんだどぉ~☆ 小ネタ ☆爆裂資産☆ 「こんの野郎!さっぱり売れねえじゃねーか!」 ボカン!とれみりゃの肉まんヘッドに俺の怒りの鉄拳がめり込んだ。 「ゔぁ゙ぁ~!ごべんなざいぃー!れみりゃのあがぢゃんがまずいがらでずぅ~!」 地面に転がったれみりゃはまるで土下座をするような体勢でひたすら謝っていた。 「反省するだけならゆっくりでもできるってんだよ!あ、そっかお前もゆっくりだったな」 はぁ、とひとつため息を付くとやり場のない怒りに俺は頭を抱えてその場に座り込んだ。 それというのも泣け無しの財産を叩いて始めた商売が初っ端から大コケにコケたからである。 里の近くで開かれる市では様々な出店が並び、毎日のように賑わいを見せる。 客層は広く、人間だけに限らず紅白貧乏巫女さんから年齢不詳の宇宙人まで何でもありだ。 そしてその広い客層すべてを相手にできる商売、それは「食い物屋」である。 俺はもともと加工所で働いていたものの、毎日同じような処理しかできず、 一向に虐待Styleのレパートリーが増えない職場に愛想を尽かせてしまったのだ。 週5日の勤務体制では正直外に出て虐待無双乱舞する時間も物足りない。 そこで俺が考えたのが自分で好きに加工でき、さらにそれを直接利益につなげることのできる「ゆっくり食品」の販売だ。 最初のうちは屋台でマグロの解体ショーならぬゆっくりの解体ショーでもやりながらゆっくり焼きでも作ろうと思っていたのだが、 すでにそのようなパフォ-マンスは加工所が手を出していてらしい。 いろいろとアイディアは尽きなかったが、どれもこれも先駆者がいるものが多かった。 2番手が1番手に勝負で勝つにはよほどの戦略がない限りは難しい。 新しい実演販売を捜し求め続け、最終的にたどり着いたのが「れみりゃの産地直送☆にくまん屋」であった。 れみりゃにその場で赤れみりゃを作らせて、それをその場で解体しつつ小さ目の肉まんに加工しふかし直して販売するのだ。 実はこの商売も先駆者がいた。だがなぜか途中で挫折するものが後を絶たず、現在市に同じ店を開いている者はいない。 なぜ成功しないのかはやってみてからのお楽しみだ。俺には失敗しない自信がある。 出だしは好調だった。外をほっつきまわっていたれみりゃをぷっでぃーん(プリンではないらしい)でおびき出して捕獲する。 その後1週間程かけて調教した後に市場へ連れて行きその場で自分の赤ぢゃんを加工させるのである。 さぼるれみりゃは容赦なく羽を毟り取り屋根からつるし、逃げ出すれみりゃは他のれみりゃに命じて赤れみりゃと一緒ににくまんになってもらった。 初日はその過激さのおかげで珍しいもの見たさで集まる連中が後を絶たず、屋台の周りには人だかりができた。 おぉ、れみりゃをよくぞここまで調教したもんだ。ゆっくりさせない為にならなんでもやるんだな。 どこからこんなアイディアが沸いてくるんだ。あらいい香りね少女臭には適わないけど。 各々が思い思いの感想を口に出しながら屋台の中を覗き込む。 人の壁で少し暗くなった屋台で俺はせっせと火を起こし肉まんを蒸かしてゆく。 開店から1時間、にくまんは20個程度売れ、このペースでいけば一日150個はくだらない。 ひゃぁ!我慢できねぇ!増産だ! と、調子に乗ってつくりまくったところ、あまりのバイオレンスっぷりに引け目を感じてか、その後客足は妙に少ない。 1ヶ月が経過したがその後売上額は低空飛行、むしろ墜落寸前の域をたどり続けた。 結局毎日多めに作ったにくまん50~70個程が破棄処分となってしまい相当な赤字になってしまった。まさに火の車である。 いや、寧ろ実際にこの屋台が燃えてくれたらどんなにいい事か。燃料代が少しは浮くだろう。 餌代はそのへんのゆっくりで賄える分ほぼタダであり、れみりゃにも現金の投資はない。 だが屋台の設置費や借地代がバカにならない。食費を差し引くとこのままでは月々の文々。新聞代すら危い。 やはり見世物小屋と食い物処は一緒にするべきものではなかった。 流石にその場でくたばったゆっくりを加工して出されるのは気分も良くないのだろう。 一部の鬼意山には人気を博したが、正直ほんの一握りといっていい。 またゆっくりに加工させているのもまずいらしく、清潔さを気にかける女性にはまったくといっていいほど売れなかった。 まさに爆裂資産。俺もこのまま四散してしまいたい。 「かぁ~……どうすっかなぁこれ……」 とりあえず絶望に打ち拉がれてこのいろんな意味で何もない屋台に永遠と突っ立っているわけにもいかない。 俺は惨めな気持ちで屋台に布をかけるとれみりゃたちを引きずりながら帰路に着いた。 家に帰ると俺は囲炉裏の小さな赤くなった炭を眺めながら打開策を練るべく脳内俺会議を開いていた。。 過激すぎるのもいけないが、家でれみりゃを加工して屋台でただ肉まんに整形して出すだけでも全く面白みがない。 ちょうどいい中間を捜せ、という結論に至る。 俺はまたため息を付くと近くにあった餅を網に載せると囲炉裏にかざした。 パチパチというなんとも風流な音が少しずつ餅を膨らませていく。 いい音だ。こういう音が食べ物のの味を何倍にも引き立てることは良くある事だ…… と、ここで脳内会議場の中心から一つのひらめきの花がぱっと開花した。 なるほど。音か。叫び声の中で作られたものや、更にそれをその叫び声の中で食べるなんて相当に気味の悪いことだろう。 一応俺のような特殊な人間を除いて、だが。 俺は適当な手ぬぐいを2枚手に取ると、土間のかごの中で喚き散らしているれみりゃの中から一匹えらんで部屋の中に放つ。 「うっう~、やっとれみりゃのかりすま☆かげんに気づいてくれたんだどぉ~♪」 勝手なことを抜かしているれみりゃを背伸びして捕まえると口の中に丸めた手ぬぐいを押し込んだ。 そして蓋をするように口の上から手ぬぐいを巻いた。 「*****!*******~!」 何を言っているのかは聞き取れないほど小さい音が漏れてくるのみである。 また、へんな帽子とあわせて丁度加工所の食堂のおばちゃんみたいな格好に見えた。 一つのアイディアで問題点を二つも解決してしまうとは。流石は俺。カリスマ度が違うぜ! だがまてよ、と俺の表情は再び険しいものとなった。 確かに親れみりゃの叫び声は抑えられる。だがしかし肝心な加工される側の赤れみりゃの口をふさぐことができない。 うちの屋台にこだまする叫び声の8割は赤れみりゃから発せられる断末魔である。 それにこれでは家の看板娘……ではなく看板畜生れみりゃの売り込みVoiceも流せない。 「れみりゃのあがぢゃんがらづぐっだにぐまんでずぅー!おいじいでずぅー!がっでぐだざいぃー!」 この声があってこそのれみりゃの肉まん屋である。 おそらくれみりゃ達に赤れみりゃの声を出させずに殺せと指示しても無駄だろう。 再び萎んでしまった頭の中の花に水をやる。 するとどこからとも無く赤れいむがやってきて俺の萎みかけのアイディアの花に向かってしーしーを始めた。 うおおおぉぉぉぉ!やめろおおぉ!俺のアイディアの花を病気にする気かおんどりゃぁ! 脳内会議は中断されて脳内鬼意山達がいっせいに赤れいむをフルボッコしにかかる。 まさに頭の中は戦場と化していた。もう何がなんだかわからなくなってきたぞ。 だが、砂糖水の雨を物ともせずに再び俺のアイディアの花はぱっと開いた! あぁそっか。れみりゃがダメなられみりゃいじめ百戦錬磨の俺が加工すればいい。 とりあえず赤れみりゃの声が出ないように息の根を止め、それをれみりゃたちに加工させればよいのだ。 そして1匹呼び込みようのれみりゃを用意すれば……おぉ!完璧だ! あまり過激でなく、清潔感があり、尚且つれみりゃの肉まん屋の醍醐味を味わってもらうことができる! これだ!これぞ究極の肉まん販売スタイルである! すぐさま脳内議会に解散を命令すると近くにあった台帳にメモを取った。 明日からこのスタイルで売ってみる。これでもダメであった場合は……不本意ではあるが、この道はあきらめよう。 俺は一世一代の大仕事にかかるべく、その日は夜遅くまでれみりゃの特訓に励んだ。 結論から言うと、この方法は大成功だった。 お昼ごろまではいつもと変わらぬうだつの上がらない状況が続いたが、昼飯時から一気に客足が増えた。 小奇麗になったしちょっと食べてみようか、というお客さんがかなり多かった。 またれみりゃ一人を完全に売り子として独立させたおかげで遠くまで客を呼び込むことができたのだ。 おかげでこの日は今までがうそだったかのように売上高が鰻上りに上昇し、十分な利益を得ることができた。 この調子があと1週間も続けば土地代も屋台代も支払うことができるだろう。 「いやっほぉぉぉぉぉ!大成功だぜぇ!」 俺は柄にも合わずれみりゃを抱きしめてそこらじゅうを飛び跳ね回った。 このままいけば俺は将来支店を出す事だってできるかもしれない。 俺の可能性はグングン広がってゆく。 「あのー、ちょっとよろしいかしら」 不意に声がかかり後ろを振り向くと、カウンターに女性が一人立っていた。顔が暗くてよく見えない。 ニヤニヤがとまらないままカウンターに歩み寄りながら答えを返す。 「あぁすみません。れみりゃまん随分と人気がでましてね、今日はもう売り切れちゃったんで店じまいなん――」 不意に俺の顔からニヤニヤがなくなり、逆にツツーと血の気が引いていった。 そこにはかの有名なれみりゃ愛好家として知られる洋館のメイド長が、輝きの無い目で俺を見ながら立っていた。 俺はその瞬間、この商売が成り立たない本当の理由を心のそこから理解したのである。 あとがき うぁー!ほんどうはごんなえずえずがぎだぐないどぉー!もっとさぐやとあまあまーなえずえずがぎだいんだどぉー! (途中から眠くなってやっつけになってしまってますがご勘弁ください) いままでかいたもの ゆっくりいじめ系1989 ゆっくりいじめ系2006 ぱちゅりーと鉄塔 ゆっくりいじめ系2011 満月の夜とひとりぼっち Enjoy! By かりすま☆れみりゃ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4440.html
「ゆぅぅぅぅぅ! どうじでぞういうごというのおおお!」 れみりゃへの怒りで一つになって一致団結……かに見えたゆっくりの群れだったが、早速分裂しそうになっていた。 お決まりの強硬派vs慎重派である。慎重派筆頭はもうこれはそういう星の下に生まれたのであろう長女まりさ。強硬派の方は長である母まりさと他の姉妹。ちなみに十七匹もいた姉妹たちも、軍隊長まりさをはじめとしてれみりゃに殺され、十匹にまで減っている。 「ゆぅ、これからどんどん暗くなっていくよ。れみりゃはまりさたちよりも夜目が利くから、こっちが不利だよ。とりあえず、長のおうちなら生き残ったみんなが入れるからそこに立て篭もって夜明けを待つべきだよ」 しっかりと戸締りをすれば、れみりゃでもそう簡単に開けることはできない。無理に入って来たら、そこをみんなで攻撃すればいい。 これは、妙案と言えた。ゆっくりたちはいまいち理解しておらず、長女まりさといえどもそうはっきりと認識していたわけではないが、これまでゆっくりたちはれみりゃの機動力によっていいように蹂躙されてきたのである。力の差ももちろんあるが、まずなによりも機動力だ。家に立て篭もることによって、れみりゃの機動力の有効性を減退させることができる。入り口で待ち伏せればいいのだ。どこに来るのかがわかっていれば、そこに全戦力を集中することもできる。 「ゆぅぅぅ! すぐにれみりゃをとーばつしに行くべきだよ! だいたい、そうやってみんながかたまってたられみりゃは怖がって出てこないよ!」 ここでも、ゆっくりたちの判断力を鈍らせているのは、自分たちは強い、という認識であった。れみりゃはコソコソと少数で行動しているものや、子供などの弱いものを狙ってきている。それは、れみりゃも兵隊ゆっくりたちが三十匹もいてはかなわないとわかっているからだ。だから逆に、そうやって数が揃っている以上、れみりゃは姿を現さないだろう、というのが強硬派の言い分である。 「でも、みんなで探しに行ったら、また子供たちが襲われるかもしれないよ」 「ゆゆぅ……」 「それはだめだよ、もう子供たちを殺させるわけにはいかないよ……」 先ほどの惨劇が脳裏に蘇ると、さすがに強硬派も少し腰が砕けてくる。先ほどの襲撃で殺された子ゆっくりは五匹程度だったが、逃げることもできずにいた赤ゆっくりの被害が大きく、三十匹は殺されていた。 咲夜はこの群れの数を二百匹程度と見積もっていたが、それは大体当たっていた。 長まりさの一家が約二十匹。彼女らを含めぬ兵隊ゆっくりが四十匹程度。兵隊ゆっくりではない大人のゆっくりがやはり四十匹程度。後は、子ゆっくりと赤ゆっくりが百匹程度。群れの総数二百匹と言っても、基本的に子沢山なゆっくりであるから、子供の割合がかなり大きくなる。 一連のれみりゃの襲撃により、兵隊ゆっくりは三十匹は殺されている。兵隊ゆっくりではない大人ゆっくりは殺されたのは十匹程度で三十匹残っている。子ゆっくりと赤ゆっくりは合わせて、約六十匹しか残っていない。ゆっくりは大きな数は認識できないものの、こうまで殺されると「とにかくすごくゆっくりできない数が減った」ということはわかる。 「ゆゆ、そこでまりさは考えたんだけど」 と、長女まりさが切り出した。 「ゆゆっ、ゆっくり聞かせてね!」 長をはじめ、ゆっくりたちは熱心にその話に聞き入った。 作戦は、いわばおうちにいる子供たちを囮にするものだった。子供を囮、というだけで露骨に嫌がるものもいたが、結局これしかないと長女まりさと、逸早く同意したゆっくりたちに説得されて、長まりさが断を下したことにより、作戦は実行に移された。 「うー、おめめぱっちりだどぉー」 数時間眠って、目を覚ましたれみりゃは周囲の漆黒の闇を見て嬉しそうにダンスを踊る。 「うー、あー、れみりゃのじかん、だどぉー」 と、踊りつつ、なんだかとてもいい感じだとれみりゃは思った。 「これがゆっくり……ちがうどぉ、ゆっくりはもっとゆっくりしてるんだどぉ」 その正体はわからぬが、とにかく今、楽しいのは確かだった。嬉しくなってさらに尻の振りを大きくして踊る。 「さぁて、今度はどうやって攻めてやろうかな、だどぉ」 楽しい。 「とりあえず、あいつらのおうちの様子を見に行くどぉ」 とにかく、今、楽しいのだから、楽しまねば損だ。なにしろ週に一度のぷでぃーん以外になんの楽しみもないゆっくり生だったのだから。 「うー、誰もいないどぉ、みんなおうちでおねむーかな、だどぉ」 集会場にはゆっくり一匹おらず、さっきの襲撃で潰されたゆっくりたちの死骸の一部が草や地面にこびりついているばかりだった。一応、片付けられる限りに片付けたようだ。 「うー、あれ?」 れみりゃは夜行性なのでけっこう夜目が利く。 「あそこは、さっきは穴が開いてたはずだどぉー」 そう、そこは洞窟で、そこにゆっくりたちが逃げ込んでいたのを確かに覚えている。あの時は兵隊ゆっくりや、逃げられずにいる赤ゆっくりを潰すのに専念していたので洞窟に逃げ込むゆっくりは放置していたが、確かにあそこには穴があったはずだ。それが完全に塞がれている。 「うー、あそこに隠れているに違いないどぉー」 れみりゃは、そろーりそろーりと抜き足差し足で、その塞がれた穴に行ってみた。 「うー」 壁の向こうから微かにゆっくりの声が聞こえてくる。 「ゆゆっ、みんなれみりゃを探しに行って、ここにいるのは戦いは下手なゆっくりと、子供と赤ちゃんだけだよ」 「ゆうぅ、やっぱり怖いよ、不安だよ」 「ゆっゆっ、この扉はれみりゃにも壊せないから大丈夫だよ!」 「ゆっ、そうだね!」 「がんじょうに作ってあるもんね!」 そんな会話を聞いて、れみりゃはにやりと笑う。 「うー!」 少し扉から離れて助走をつけて思い切り木剣を突き込むと、扉にはあっさりと穴が開いた。中から「ゆゆーっ!」という悲鳴が聞こえてくる。 「うーっ、こんなうっすいドアはれみりゃのこんばくりゅうでイチコロなんだどぉ」 ばきばきと穴を広げていく。 「やめてね! やめてね!」 「この中には、戦えないゆっくりとおちびちゃんたちしかいないんだよ!」 「やめちぇ! れみりゃはあっちいけー!」 「うー、うー」 中からの悲鳴懇願は当然これまで通り無視である。 「う?」 だが、成体サイズのゆっくりが通れるぐらいの穴が開いたところで、木剣が欠けてしまった。扉を作るのに使った材料の中に鉄板があり、その鉄は、硬度は先ほどのみょんの剣とそう変わらなかったが、軽量のゆっくりがくわえているのではなく、扉の材料として固定されていたために、さしもの咲夜お手製の木剣も負けてしまったのだ。 それでも折れることはないだろうが、れみりゃは咲夜にこれを「プレゼント」として貰っているので、これ以上傷つけたくなかった。 「うー」 現時点で開いている穴では、胴つきであるれみりゃは通ることができない。 「うー」 何か他に武器は無いか、と見回すがあいにくそういうものは無いし、それにれみりゃの中ではこの扉は、咲夜がくれた木剣よりも強い、という認識ができあがっており、生半可なものでは逆に壊れてしまう、と思った。 腰に下げてあるナイフを思い出したのはその時だ。これは咲夜が愛用しているのと同じものである。当然切れるし丈夫である。 「うー、さぐやのぷれぜんとを折るわけにはいがないどぉ」 しかし、れみりゃはそのナイフを「短かくて弱そうだから」という理由だけで耐久性は低いと思い込んでいた。ゆっくりを斬り付けるならともかく、この扉をこじ開けることができないだろう、と。もちろん、そんなことは無いのだが、とにかくれみりゃはそう思い込んでいた。薄れている記憶を掘り起こす。咲夜にはもう一つ、なにかを貰ったはず。 「うー……うっ!」 ようやく思い出したようだ。れみりゃは尻振りダンスをかました。 それから座り込み、帽子の中から何かを取り出した。それは円形の筒でれみりゃの片手におさまる程度の大きさで、それに紙が巻き付けてある。 その紙を広げて、れみりゃは、うー、うー、とそこに描いてある絵をじーっと見ていた。 「ゆゆっ! もう行こうよ!」 にっくきれみりゃがもたもたしているのに耐えかねて、れいむが隣にいる長女まりさへ言った。 「ゆっ、だめだよ。今行ったら、れみりゃは飛んで逃げちゃうよ」 「ゆゆぅ……」 れいむは、力なく下を向いた。長女まりさの言うことが正しいということはわかっていた。しかし、このれいむは、先の襲撃で三日前に生まれたばかりの赤ちゃんを三匹とも潰された上に、護衛に残っていた部隊に伴侶のまりさがいて、これも殺されたために、れみりゃのせいで今日一日で家族を全員失うという憂き目に遭っていた。 「もう少し待つんだよ。もう少し、もう少しだけゆっくりと待つんだよ」 妹を七匹殺された長女まりさには、れいむの気持ちが痛いほどにわかる。だが、その恨みを晴らすためにも、今は待つ、ゆっくりと。 長女まりさは、ゆぅゆぅ唸って考えて、れみりゃを仕留めるにはまず飛べなくすることだ、という結論に達した。どんなに追い詰めても、れみりゃが飛べて自分たちが飛べない以上、逃げられる可能性が高い。 そこで、長女まりさが考え付いたのが今回の作戦である。 まず、長のおうちである洞窟に、兵隊ゆっくり以外の全てのゆっくりが入り、そして兵隊ゆっくりも十匹ほど入る。先ほど、戦えるものが全て出払っていると言ったのは、れみりゃにわざと聞かせるための嘘であった。 扉をこじ開けてれみりゃが洞窟の中に入る。その時、中にいるものたちは悲鳴を上げて逃げる。……これは演技をせずとも、れみりゃに対する本能的な恐怖から自然とそうなってしまうであろう。 非戦闘ゆっくりばかりと油断してれみりゃが洞窟の奥まで入ったら、奥に隠れていた兵隊ゆっくりたちが全力で打ちかかる。それを率いているのは長まりさであり、そう簡単にパニックを起こすことはないだろう。あの洞窟はいざという時に群れのゆっくりが避難する場所にもなっているので、かなり広い。奥の奥まで誘い込めば出ようと思ってもそうすぐには出られない。そこで、表に隠れていた長女まりさの率いる別働隊二十匹が入り口を塞いでしまう。洞窟の中に閉じ込めて飛んで逃げれなくなればこっちのものだ。三十匹の兵隊ゆっくりによる攻撃にれみりゃは耐えられないだろう。 れみりゃに飛行しての逃亡を許さない、という観点から見ればよい作戦である。しかし、果たして戦闘訓練を積んでいるとはいえ、三十匹のゆっくりでれみりゃを倒せるのか? ――倒せる。 と、そこは長女まりさも他のみんなも確信している。 どんなに知恵があり賢くても、物事の判断材料となるものは多くは自らの経験だ。その経験を正しく積んでいないと、どんなに賢くてもそもそもの前提が違っているために思う通りの結果が出ない。 この長女まりさがまさしくそうであった。まず最初に、おそらく世界一弱いれみりゃに勝ってしまった。その時のれみりゃの弱さこそが勝因なのだが、そうは思えない。なにしろれみりゃと初めて戦ったのだから、比較する経験が無いのだ。 それから後は、れみりゃやふらん、その他の外敵とまともに戦う機会を与えられなかった。紅魔館の妖精メイドたちが、うちのれみりゃが鍛え終わるまであいつらを殺させるなとのメイド長の指令によってあの手この手で群れを守り、しかもそれを自分たちの実力であると思わせた。特例中の特例の経験を修正する機会を全て奪われて、長女まりさほど賢いゆっくりが、とにかくれみりゃを空へ逃がしさえしなければ確実に勝てる、と確信してしまっている。 そして、誤算はもう一つあった。 このれみりゃのバックには十六夜咲夜という下手な妖怪なんぞ裸足で逃げる恐ろしい人間さんが着いており、彼女がれみりゃに円形の筒状をした道具を渡していたこと。 「うー、ひもをひっぱって抜く、おうちに投げる。……かんたんなんだどぉー」 紙に描いてあった絵は、筒の使い方を字だとわかりっこねえので絵にして示した、いわば取扱説明書であった。咲夜が無駄に力を入れた写実的なれみりゃが筒から出たひもを引っ張って、それをゆっくりがいる穴の中に投げ込んで、うーうーと尻を振って踊っている絵である。 「うー、さぐやのくれたこの丸いのを喰らうがいいどぉ」 れみりゃはひもをぐっと引っ張った。何かに引っかかって取れないように、少し堅いが、れみりゃが全力を出せば抜けるようにしてある。 「うぅぅぅぅっ、うーっ!」 すぽんと紐が抜けた。するとその穴から煙が噴出し始めた。 「うー、もくもくだどぉ、えい、だどぉ」 扉の穴に、それを投げ込んだ。あの筒は、ゆっくりをいぶり出すための発煙筒だったのだ。 「ゆゆぅ、れみりゃ来ないねえ」 「なにをゆっくりしてるんだろうね、ゆっくりしてないではやくしてね!」 「ゆっ? 何か入ってきたよ。ゆゆっ!? もくもくがもくもく出てるよ」 「なんなのこれ、ゆっくりできないよ!」 中から途端に悲鳴が上がる。咲夜が持たせただけに、ただの発煙筒ではない。その筒に「八意」という、ゆっくりにとってはそれだけで禍々しくゆっくりできない文字が書かれているそれは、ゆっくりにとっては極めて高い毒性を持った煙を噴出する。 「ゆ゛、ゆ゛っぐりでぎない……」 「おぐ、おぐ、おぐへ逃げでええええ!」 「びんなあ、おぐだよもっどおぐへぇぇぇ!」 「ゆっぐりでぎなぐなるよぉ、あのもくもくは、ゆっぐりでぎないよぉ……ゆぐぅ!」 扉のすぐ向こうにいたゆっくりたちは最初に無警戒に煙を吸い込んでしまったために、奥へ行く途中に倒れて死んで行った。 「ゆゆっ?」 表で待機していた別働隊は、一体何が起こっているのかわからず、かといってれみりゃが洞窟の外にいるので出ていくわけにもいかず。 「れみりゃ、扉を開けるのを諦めたのかな?」 「ゆぅ、でもゆっくりできない踊りをしているよ……」 「MPが吸い取られそうなのぜ」 皆は、長女まりさの指示を待っている。 「ゆぅ……」 しかし、長女まりさとて何が起こっているのかわからなければ判断の下しようが無い。賢いだけに、判断材料が揃わないと決断できない、というところが彼女にはあった。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!!!」 やがて、洞窟の中から物凄い苦しそうな、ゆっくりできない声が聞こえてきた。そして、内側から扉が壊されているではないか。 この扉は、内側からは簡単に壊せるようにしてある。巣作りをするゆっくりならば出来て当たり前の技術である。 そのため、いざ内側から開けようとすれば、それは簡単だった。扉が壊れると、つん、と嫌な臭いが漂ってきたので、それを嫌ってれみりゃは後ろに下がった。 「ゆ゛げっ、ゆ゛げえっ」 「ごほっ、ごほっ、ごほごほ」 「ゆぅ、ゆぅ、ゆぅ」 吐くもの、咳き込むもの、へたり込むもの。とにかく、洞窟の中にいたみんなが弱っているのだけはよくわかった。 それでも、最初に思い切り吸い込んでしまったゆっくり以外は死に至らなかった。洞窟が広く、煙の毒性がそれほどでもなくなる程度に拡散したからだ。 「うー、嫌な臭いが消えてきたどぉ」 扉が開いたことにより、煙の残滓も外に逃げて行った。れみりゃは木剣を頭上に掲げつつ、扉を壊して表へ転がり出してきた長まりさたちへと近付いていく。 「……ゆゆゆーーーっ! 突撃ぃ!」 長女まりさは、作戦が失敗したことを悟り、別働隊に突撃を命じた。しかし、まだれみりゃは洞窟の入り口近くにいる。 「みんなで一斉に体当たりしてれみりゃを洞窟へ入れるんだよ!」 「ゆぅぅぅぅぅ!」 みんなで一斉に、とは言っても二十匹全てが一辺に当たれるわけではない。それに、あくまでも油断しないれみりゃは、後背からゆっくりたちが現れた時点でとにかく飛び上がり、距離をとって様子を見ることにした。 「ゆ、ゆゆぅ……」 もはや、完全に洞窟の中にれみりゃを入れて飛んで逃げれなくなるという作戦が破綻して、長女まりさが悔しそうに呻く。 「れみりゃああああ!」 長女まりさが叫んだ。 「いつまで逃げ回っているの? 弱いの? ヘタレなの?」 「うーっ?」 「まりさたちは、れみりゃなんか怖くないんだよ! ただ、そうやって飛べるから、逃げられてるだけなんだよ!」 長女まりさは、もういちかばちか、他に手が無くなったので挑発するしかなくなったのだ。れみりゃ種にしては慎重な相手である。そんなところは自分に似ている。この程度の挑発には乗らないかもしれないが、それでもとにかく、もうそれ以外に手が無かった。 「そうだよ! まりさたちはね! 前にれみりゃをやっつけたことがあるんだよ!」 毒煙のダメージから回復した長まりさも、上空に向かって叫ぶ。 「その時は、まりさとそこのまりさと、まだ子供だったまりさとれいむたちだけで勝ったんだよ! まりさたちはその時よりも強くなっているし。仲間も増えてるんだよ! 絶対にれみりゃなんか、まともに戦ったら負けるわけがないんだよ!」 「そうだよ、おかーさんは、長はちゃんぴおんのれみりゃをやっつけたんだよ! お帽子についてる赤いのがそのしょーこだよ! 怖いからコソコソ逃げ回る気持ちはわかるけど、そろそろちゃんと勝負してね! おくびょうもののれみりゃちゃん!」 長女まりさの作戦を察してそれに乗ったもの、或いはもう家族を仲間を失った怒りを嘲りにしてれみりゃにぶつけるもの。少数の前者と多数の後者であったが、とにかくやっていることは同じであった。みんな、れみりゃの臆病さと卑怯さとゆっくりしてなさを罵倒して、度胸が少しでもあるなら、正々堂々勝負しろ、と挑発した。 「うー」 今まで、れみりゃはなんとなくこの群れを漠然と母の仇だと思っていた。しかし、今ここに、はっきりと自分がやった、と言うゆっくりを見た。 ――こいつが仇。 れみりゃの中に、はっきりとした輪郭を持った「母の仇」が生まれていた。 「うーっ!」 急降下。木剣を振る。狙いは、母から奪い取ったというちゃんぴおんの証。 「ゆぐぅっ!」 見事に命中。赤バッチのついた帽子が宙に舞う。ついでに長まりさの頭皮にも傷をつけていた。 「ゆぅ、まりさの、お帽子!」 慌てて帽子を拾いに行く長まりさ、帽子をくわえた瞬間、再び急降下してきたれみりゃが、木剣を突き刺した。 「ゆ゛ぐあ゛あ゛あ゛あ゛!」 後頭部を貫いて口から切っ先が姿を見せている。 「うー!」 足で長まりさを踏みつけて木剣を抜き取る。別に長まりさを狙ったつもりはなく、あくまで帽子についた赤バッチを狙ったのだが、長まりさが帽子をくわえたために、そうなってしまったのだ。 「うー」 今の一撃で、れみりゃは冷静になった。クールに瀟洒、私のように。咲夜の教えはれみりゃの脳髄にまでこびり付いている。 「ゆっ、逃がしちゃだめだよ!」 宙に浮いたれみりゃを見て、長女まりさが慌ててみなに命じる。しかし、れみりゃは逃げるつもりなどなかった。 「うーっ!」 三度の急降下。狙いは……またもや長まりさ。徹底的に長を最初に叩いておこうというのか。長女まりさの指令というよりお願いが飛ぶ。 「ゆゆっ、おかあさんを守って上げて!」 長まりさを心配して傍らに駆けつけていたれいむが、木剣に薙がれてふっ飛んだ。餡子を点々と地面に落としながら。 クールで瀟洒なれみりゃの狙いは最初から長まりさではなかった。怪我をした長を心配して寄って来て、傷口をぺーろぺーろしている奴を狙ったのだ。なぜか、隙があるからだ。それ以外に理由は無い。隙のより大きいものから攻撃する。クールに、瀟洒に。 クールはともかく、瀟洒はちと違うのでは、と言いたいとこではあるが、れみりゃにとってはクールも瀟洒もあまり変わりなく、怖い時の十六夜咲夜のようであればそれであるという認識なのだ。 上空からの急降下しての一撃離脱に、ゆっくりたちはなす術が無かった。 はじめは、あのれみりゃは逃げる気が無いようだ、と安堵した長女まりさであるが、手の届かない天空から一方的に攻撃を仕掛けられるとなると、安堵は恐怖に変わった。 「ゆぅ、はやくしないと、ゆっくりしてられないよ」 ちら、ちら、と視線は長――母まりさへと注がれる。今すぐに手当てすれば、間に合うかもしれない。すぐにぺーろぺーろして、パチュリーのお墨付きの薬草の葉っぱで傷口を塞げば助かるかもしれない。 しかし、それはできない。長の危機に駆け寄ってぺーろぺーろするゆっくりは先ほどのれいむのように何匹かいたが、全てがれいむと同じ運命を辿った。れみりゃは明らかに、そうやって無防備になっているゆっくりを優先して狙ってきていた。 れいむの次にまりさ、みょん、れいむ、の計四匹が長の傷の手当て中に急降下攻撃を喰らって死ぬと、もう長へ駆け寄るものはいなくなった。 長女まりさだって、すぐにでも行きたい。ぺーろぺーろしたい。大丈夫だとおかあさんを励ましたい。でも、それをすれば自分がやられる。おそらく、長に続いて自分がやられれば、まがりなりにもなんとか成立しているこの戦闘集団は瓦解する。 「ゆゆぅ、ゆっくりでぎない゛よぉ、もうやぢゃああああ!」 遙か高みから恐ろしい敵に見下ろされる緊張感に耐え切れずに、どうやら理性が壊れてしまったらしいまりさが何もかも、敵にも味方にもおうちにも背を向けて走り出した。 「ゆっ、だめだよ!」 それは、長女まりさの妹のもはや数少ない生き残りであった。姉妹の中では一番戦いに向いていないと思った。種でいえば、まりさ種はれいむ種よりも戦いや狩り向きだが、姉妹のれいむたちよりも、あのまりさは向いていなかった。何度も、兵隊ゆっくりから他の仕事に変わるように言った。でも、あの子は聞かなかった。 「まりさは、えらいえらーいちゃんぴおんの子供なのぜ。戦ってみんなを、群れを守るのぜ!」 そう言われては、それ以上何も言えなかった。おとなしい気性のくせに、荒っぽい軍隊長まりさの真似をして「なのぜ」などと言っているのが、明らかに無理をしていて心配だった。 今度の戦い、妹は生き延びてきた。正直、真っ先に死ぬと思っていた。しかし、生き延びた。まともな戦いはせずに、他のみんなの後ろに着いていただけだ。生き延びられたのは、運の要素が強い。たまたま、れみりゃの視界の中にいなかった。いても、たまたま、あの子よりももっと隙だらけのゆっくりがそばにいた。 それでも、よくぞここまで生き延びた。と長女まりさは思う。だから、今この緊張感に精神が焼き切れてしまうのを責めようとは思わない。よくやった。無理して自分に合わないことをしていたけど、ゆっくりしていた。……実はあんまりゆっくりとはしていなかったが、それでも、言って上げたい。とってもゆっくりしているね! と。 責める気など毛頭無い。 「だめだよ、背中を見せちゃーーー!」 だから、咎めたのはそのことではない。敵に背中を見せることを咎めた。だからといって、逃げたことを咎めたのではない。同じことなのかもしれないが、長女まりさの中では違う。奴は、隙を見せたものを最優先にする。だから、背中を見せちゃいけない。逃げてもいい、あの子には生き延びて欲しい。だから、背中を見せちゃ駄目! 「うぅぅぅーっ!」 れみりゃが見逃すはずもなかった。もう、あの子が背中を向けた瞬間にわかっていた光景。逃げる背中を追いかけて、その勢いをそのまま木剣に乗せる。幾度となく見たあいつのやり方、一見、ただ触れただけのように見えるが、とつてもない威力を帯びたその攻撃。 ぱん、と、妹の体は弾け飛んだ。背中にえぐられたような傷が出来ている。ごろごろと前に転がって、その回転が止まった後は、もう二度と動かない……かと思ったが、なんと妹はぴくりぴくりと動いているではないか。 「うーっ、ちょっと外したんだどぉ、トドメだどぉ、こんばくりゅうのこけんに関わるんだどぉ」 いや、関わんないから、と妖夢がこの場にいたら言ったであろうが、もちろんいないので、れみりゃはこんばくりゅうのこけんとかいしんとか、なんか大層なもんを背負いつつ、妹まりさにトドメを刺すべく急降下した。 「まりざのいぼうどぉ! やべでえええええ!」 それまで群れのゆっくりの中ではただ一匹、冷静を保っていた長女まりさの精神もそろそろ限界であった。ゆひゅぅ、ゆひゅぅ、とか細い呼吸をしながら辛うじて生きている妹にあの悪魔が突き進む光景。見たくないのに、目を閉じられない。 「ゆ゛!」 断末魔は短いが、よく通る声だった。 「ゆ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 長女まりさは、叫んだ。それに呼応して他の生き残りたちも叫び始める。しかし、あくまでもれみりゃはクールで瀟洒。無我夢中で叫んで隙が出来たゆっくりれいむを血祭りならぬ餡祭りに上げる。 残る兵隊ゆっくりは、十八匹。うち三匹は、急降下攻撃の直撃を辛うじてかわしたが、相当な痛手を負っているものだ。 「ゆ゛う゛う゛う゛っ゛ ひぎょうだよ!」 しばらく意味をなさぬ叫び声を上げていた長女まりさが、言った。卑怯だ、と。 「空を飛ぶなんて、ひぎょうだよ! ずるいよ!」 そう、ゆっくりの一つ覚えと言われてもしょうがない。 挑発、である。 「そうだよ! ひぎょうものぉ!」 「れいぶたちは飛べないんだがら、飛ばれだら勝てないよ!」 「ふこーへーなのぜ! ちゃんとびょうどーに戦うのぜ!」 「う゛んう゛んだよ、おばえみだいなきたない奴は、う゛んう゛んだよ!」 もう、進退窮し切ったとでも言うべきか、それでもまだ少しは計算していて、他にもう何も手がないから仕方なく挑発という方法をとっている長女まりさはともかくとして、他のゆっくりたちは、もう現実逃避のために大声でとにかくれみりゃを罵るだけだ。 「うー」 長女まりさも、他のゆっくりも信じられなかった。自分たちの末路はこのままれみりゃによる一方的な急降下を受けての全滅だと、みんな、心のどこかで覚悟していた。 しかし、れみりゃは静かに地上に降り立った。木剣を構えて、言った。 「うー、かかってくるんだどぉ」 何か罠があるのではないかと警戒した長女まりさは、すぐにも飛び掛ろうとする仲間を制した。 「ぴんぴんなのが十と少し、けがでいだいいだいなのが三」 れみりゃは構えながら、正確に、ゆっくりたちの状況を把握していることを示した。 「この程度なら、飛ばなくても勝てるんだどぉ、もっとたくさんいた時も、やれば勝ててたんだどぉ、でもくーるでしょーしゃなれみりゃは、しんちょーにやったんだどぉ」 「ゆゆっ!!!」 「ゆっ、だ」 め、と長女まりさが言う前に、れみりゃの背後に位置していたれいむが口にくわえた棒をれみりゃの背中に向けて突っ込んだ。 ゆっくりれいむとしては生涯最速の走りのつもりだったのだろうが、近付く前に、跳ねる音で察知されてしまい、後ろを向いたれみりゃに真正面から相対する格好となり、難なく真っ二つに割られた。 「こんばくりゅう、うしろぎりだどぉ」 これぞ、魂魄流後ろ斬り、そのまんまな名前であるが、魂魄家に伝わる剣術の名誉のために言えば、そんな技存在しない。そもそも後ろを向いて普通に前から斬ってるんだから後ろ斬りじゃないじゃん、とかそらもう突っ込みは無数にできるのだが、この場にいるのはゆっくりだけなので、そういう野暮な突っ込みは無いのである。ゆっ。 「そこで死にがけでる奴の赤バッチは、元々れみりゃのまぁまのものだったんだどぉ」 長女まりさがハッとする。なぜこのれみりゃは自分たちの群れを皆殺しにするような勢いで襲撃してきたのか。攻撃に対応するのに忙しくて、真剣にゆっくりと落ち着いて考えることはなかったが、頭の片隅にはその疑問はあった。捕食種というのは恐ろしい存在だが、れみりゃはそれでもまだ捕食種の中ではマシな方だ。れみりゃのゆっくりへの攻撃はあくまで捕食であり、腹が一杯になるだけのゆっくりプラス両手に持てるだけのゆっくり、それ以上は殺さない。ゆっくりをいたぶって殺すこと自体が目的のふらんに比べれば、群れを壊滅させるような恐ろしい存在ではないはずなのだ。特に一匹だけとあっては。 「……まりさたちは、あなたのおかあさんのかたきなんだね」 「そうだどぉ、生まれたばかりのわだじは、その仇討ちのために育てられたんだどぉ、ゆっくりすることなんて無かったどぉ、週に一度のぷっでぃーんだけが楽しみだったどぉ」 「ゆゆぅ、それでも……」 それならば、自分たち一家だけ殺せばいいではないか。群れごと皆殺しにかかることはないではないか、長女まりさは、憎い敵ではあるものの、死んだ母親の仇討ちという理由を知って、僅かにだが、れみりゃに対しての敵意が薄らいでいた。 「うー! れみりゃは、さぐやに作られた戦闘マッスィーンなんだど! ゆっくりを殺すのが楽しいど。ぷっでぃーん以外に、初めて見つけた楽しみだど!」 だがその言葉を聞いてそんな気持ちは霧散する。こいつは、駄目だ。もう、こいつは仇討ちとかはどうでもよくて、ただ快楽のためにゆっくりを殺したいだけ。姿形はれみりゃでも、もはやふらん種に近い。ふらんでもこれほどの戦闘能力を持った個体はそうはいないだろうから、ふらんよりも遙かにゆっくりにとってタチの悪い存在だ。 「上からずばーんてやれば絶対に勝てるど、でも、それもたいくつになってきたんだど、少しは反撃されてみたいどぉ」 すすっ、とれみりゃが流れるようなすり足で前に出た。紅美鈴が見れば「よし、ちゃんとできてる」と合格点を出したであろう。 「ゆ゛びぃぃぃぃぃ」 目の前にれみりゃが来たれいむは、くわえていた武器を取り落とした。もう、口を閉じていられないのだ。あわあわと、口が小刻みに震えている。 「うー、その構えはあし」 なんだか意味はよくわからないが、魂魄妖夢との特訓中、そう言った直後に妖夢は強烈な斬撃をれみりゃの隙があったところへ打ち込んできたので、なんとなく真似したのである。 ぶおん、と木剣が唸り、突いて後、跳ね上げる。 しかし、相手がゆっくりである。剣に刺さったまま、持ち上がってしまった。 「い゛だい゛ぃぃぃぃぃぃ!」 「うー、ぽい!」 れみりゃは剣を振った。すぽん、とれいむが剣から抜けて、そのままその先にいたまりさにぶち当たった。不運なことに、そのまりさは木の棒を前に突き出して構えており、れいむに衝突されて、その木の棒が喉の奥に突き刺さってしまった。 「ゆ゛ぎあ゛あ゛あ゛ぁぁぁぁ!」 「いぢゃいぃぃぃぃぃ!」 「うー、なんか新おうぎあみだしたかもしれないどぉ、れみりゃ、凄いどぉ、こんばくりゅうのほまれだどぉ」 れみりゃは嬉しくなって、うーうー、と例の尻ダンスをする。 「ゆ゛ぅっ!」 長女まりさが自らを鼓舞するように叫んだ。 「みんな、もうまりざだちの残りは、十五人だけ、まりざだちがやられたら、もう子供たちを守るものはいないよ!」 自分たちの敗北イコール、子供たちの死、という現実を改めて突き付けられて、他のゆっくりたちの顔が引き締まる。 「もうこうなったら小細工はむよーだよ! みんなでいっせいに死に物狂いでかかるんだよっ!」 正確に言うと、もう小細工すら考えつかない。もう、命を捨てて行くしかない。 「ゆっくりしねえええええ!」 これが、攻撃開始の合図になった。 ぽよんぽよんと、四方からゆっくりたちが跳ねてくる。飛べば、難なくその包囲を脱して後ろに回り込めたが、れみりゃは翼を羽ばたかせることは無かった。 「うー! うー! うー!」 縦横に木剣を振るう。当たれば一撃でゆっくりは戦闘不能に陥る。しかし、その(あくまでゆっくり的には)凄まじい斬撃は、防御を捨ててこその攻撃力。死角から突っ込んできたゆっくりたちの武器に、れみりゃの体もまた痛めつけられる。 しかし、泣かない。 運よく直撃せずに、木剣がかすってちょっと傷付いただけでも、兵隊ゆっくりなどと言っていた連中はゆぎゃん、ゆびぃ、と泣く。 でも、れみりゃは泣かない。泣いたら咲夜に怒られるから。泣いたらくーるでしょーしゃでないから。 「ゆ、ゆぅぅぅ」 長女まりさは、隙あらば全体重を乗せた突きをお見舞いしようと伺っているのだが、これという隙が無い。隙は無いことは無い。でも、そこでは大したダメージにならない、という箇所ばかり。 「ゆぅ、にゃんで、にゃんで……」 恐怖に涙を流しながら、長女まりさは呟く。 なんで、このれみりゃは泣かない。れみりゃは、痛みを与えたらすぐに泣くものだ。 「にゃんで泣かないにょぉぉぉぉぉぉぉ!」 隙――無我夢中で突いた。隙、らしきもの。それがれみりゃの誘いだということに、普段の長女まりさならば気付いただろうが――。 「それはれみりゃが戦闘マッスィーンだからだどぉ、これ言うの二回目だど」 すぱーんと音高く、木剣が長女まりさの右頬をこそぎ落とすように切った。 「ゆぎゃああああ!」 痛みにのた打ち回りながら、長女まりさはすぐに周囲を見回す。仲間たちはどうなった。それを思えば、頬の痛みを一瞬忘れることができた。本当に、ごく普通に育っていれば、さぞかし立派なまりさとなって、長生きできたらドスまりさにもなれたかもしれない。 「ゆ゛ぐっ゛」 既に満足に立っている仲間はいなかった。ほとんどが事切れていて、生きているものも寝転がって辛うじて生きているだけ。長女まりさ以外で最もマシなのは寝転がってれみりゃに向かって命乞いをしているまりさだった。まだ声を出す余力がある分だけ、彼女はマシだった。 しかし、一番最初に死んだのはそのまりさだった。うるさいので、真っ先にトドメを刺されたのだ。 他に生きているゆっくりも、れみりゃは無慈悲に潰していく。 そして、とうとう、長女まりさだけが残った。洞窟に避難している非戦闘ゆっくり以外は全滅。もうこの群れにはこのれみりゃを止められるような戦闘力は残っていない。いや、もしかしたら、最初からそんなものは存在しなかったのかもしれないが。 「うー、まぁまのかたき、かくご、だどぉ」 振り上げられた木剣を見ながら、長女まりさは死を覚悟した。もう、それを覚悟する以外に無いではないか。 「ゆ゛ぅ、ごべんべえええええ」 長女まりさは洞窟の方へと目をやって声を限りに謝る。あの中では、今も群れの仲間たちが、自分たちの勝利を信じて待っているだろう。 「やべてね!」 その声に、れみりゃは振り向く。 「うー、しぶとい奴なんだどぉ、さすがにれみりゃのまぁまを倒した奴なんだどぉ」 声は、既に死んだと思われていた長まりさのものだった。 「ゆひー、ゆひー、やべてね、ばりさのぶすめに手を出じだら、ばりさおごるよっ」 息も切れ切れに、長まりさは、いや母まりさは声を絞り出した。 「うー、たいした奴なんだどぉ、けーいをひょーじて、特に変わったことはじないで殺すけど、とにかくけーいはひょーするどぉ」 軽く叩いただけで、もう母まりさは絶命するだろう。れみりゃは、けっこう本気でこの母まりさに感心していたので、後ろでずーりずーりという音がしているのに気付かなかった。 「ゆぅぅぅぅ!」 長女まりさは、渾身の力で飛んだ。 捨て身の体当たり、それで自分の体がぺしゃりと潰れてもいい全力の一撃。 それで、そいつを倒せるなんて思っていなかった。できれば逃げてしまいたかった。 でも、おかーさんを助けるために、まりさは飛んだ。 れみりゃ――。 かつて家族みんなでやっつけたれみりゃの子供らしい。 おかあさんれみりゃよりもずっと強いれみりゃ。 倒せるわけはないけれど、あの時も、おかーさんを助けるために自分は飛んだのだから、今度も行ける。あの時、一度まりさは死んだのだ。もう死んでいるのだから、恐怖も何も無い、あのれみりゃを倒してから、その子供のれみりゃが現れる今日まで、本当にしあわせだった。ゆっくりした。ゆっくりしまくった日々だった。むーしゃむーしゃ、しあわせー、と群れのみんなで声を合わせて言ったあの瞬間のしあわせ感は忘れることができない。 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛!」 「う? う゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!」 自分へ返って来る衝撃とかそんなことも度外視したその一撃は、完全に後ろからの不意打ちだったこともあって、さすがのれみりゃも転倒させられてしまった。 「うー、油断したど、くーるでしょーしゃじゃないどぉ」 「ゆぎぃぃぃぃぃぃぃっ、い゛い゛っ゛、ゆ゛ぎぃ゛」 明らかにダメージが大きいのは仕掛けた長女まりさの方であった。衝撃で、右頬の傷口から餡子の塊がぼとりと落ちてしまった。 「うー、おやこそろってたいしたもんだどぉ、おまえにもけーいをひょーじてやるどぉ」 木剣を振り下ろす。かつん、と地面に落ちていた石を叩いた手応えに、思わず木剣を取り落としてしまう。 長女まりさが剣が当たる寸前に転がってかわしたのだ。 「ゆ゛がががが!」 恐ろしい形相でれみりゃの右手に噛み付いてくる。 「う゛ぁ゛っ、い゛だいどぉ、はなずんだどぉ!」 空いている左手で叩くが、噛み付きの力が緩まない。 「ぎぃぃぃぃっ、ぎぎぃっ!」 長女まりさは、ゆっくりとはかけ離れた必死さで噛み付いて離さない。もう意識もまともには残っていなかった。とにかく、れみりゃの右手を使えなくしてやろうと思った。れみりゃは右手で木剣を振っていた。あれが利き腕なんだ。だから、それを使えなくしてやれば、少しでも、おかあさんや他のみんなが生き延びる可能性が高くなる。 「う゛ぁ゛っ!!」 その長女まりさの顔を見て、れみりゃは怯んだ。そして悟った。 「おばえ、死ゆっくりだどぉ!」 このまりさは、既に死んでいる。生きながら死ゆっくりになっている。ならば、すっかり勝ったと油断して生者になっていたれみりゃが遅れをとるのも当然。 「う゛ぅぅぅっ!」 (5)へ
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/2234.html
※虐めというか自滅 鼻血 「うおっ!?」 「せんせー!!タケちゃんが鼻血だしてるー!!」 一同騒然としタケちゃんと呼ばれた少年の周りに集まる。 先生、慧音も少年の元へ寄りその頬に手をあてる。 「大丈夫か?・・・ふむ、どうやら暑気にやられたのかな。」 熱を帯びているのは何も暑さのせいだけではないのだが、顔を赤くした少年は照れくさそうに顔を伏せるだけなのであった。 授業は一先ず中断。慧音は少年に連れ添い手洗い場へ、残された生徒達も一様に彼の心配をしているのであった。 そんな様子を窓から覗く影一つ。 「ゆっふーん・・・いいものみたよ!!」 その正体はゆっくりれいむ、大方寺子屋の生徒達に菓子の一つでもたかりに来ていたのだろうか。 彼女は一言呟くとくるりと踵を返し、森へと向かってぽよぽよと跳ね出したのであった。 「ずーり、ずーり・・・」 数分後、そこには顔面を木の幹に擦り付ける饅頭の姿があった。 痛みからかその目元に薄っすらと涙を浮かべ、しかしその反面口元はだらしなく歪み涎をじゅるじゅると垂れ流している。 「おきゃーちゃん、あのおねーちゃん にゃにちちぇりゅの?」 「こら!! めをあわせちゃいけないよ!! ゆっくりできなくなるよ!!」 側を通るゆっくり達もこの異様さに近寄りがたいものがあるらしく、餡子脳な彼女達に似つかわしくなく声も掛けずそそくさとその場を 後にするのであった。一方のれいむは悪態を突かれてもどこ吹く風やら、すっかり自身の頭の良さに酔いしれているのであった。 彼女の計画はこうである 1.鼻血出る 2.優しくされる 3.スイーツ(餡) 余りにも完璧すぎる計画。汚物をみるような目をしてるド饅頭共め、れいむに尽くすまで精々ゆっくりしていってね!! そうしてれいむの打ち込みは辺りが暗くなるまで続いた。それはもう凄まじいもので、木の皮がずる剥けになる程であった。 だが目的の鼻血は出ない。息をぜいぜい切らしながられいむはあることに気付いた。 「ゆゆ!? れいむにはおはながついてないよ!!?」 鼻が無いのに鼻血が出るはずも無い。もっとも血肉すら通ってないのだが。 「ぷ、ぷ、ぷ、ぷぴー!!!」 れいむの怒りが有頂天、真っ赤になった体内では餡子の温度がマッハである。 だがその思いが通じたのか、次の瞬間れいむの顔を一本の黒い筋が流れた。 「・・・ゆ? でたよ!! ついにやったよ!!」 体温が上がり緩んだ餡子が念願の鼻血?を流したのである。 こうなってしまえばこっちのもんだ。まずは手始めに冷たい目を向けたあの一家から見舞い品を巻き上げてやる。 その後は群れ一番カッコイイまりさに看病させよう。そしていい感じになった2人は次第に・・・。 「ゆっふっふ・・・ゆっはっは・・・ゆぁーっはっはぁ!!」 己が野望の達成に悪い笑いの三段活用を決める、しかしその時事件は起きた。 「ゆぁーっはっはっはっは『ブッパァァン』あ?」 顔一面に広がる生温い感覚と全身に広がっていく悪寒。 散々傷付けられた顔の皮膚は限界に達し、れいむが大きく仰け反った際についには決壊したのだ。 顔面からぬるぬると流れ出す餡子、その量は凄まじくもはや痛みを感じる余裕すら無い。 「うびいいいぃぃぃぃ!!?」 顔面を真っ黒にしながられいむは叫ぶ。手足の無いその体では傷を押さえることさえ叶わない。 「ゆゆ!?どうしたの!?」 「いったいなんのさわぎなの!?」 夜の戸張が降りているとはいえ、ここまでの大騒ぎがあっては自ずとゆっくり達は顔を集める。 そうして集まった先では地面に突っ伏す声の主の姿があった。 「どうしたの!? しっかりしてね!!」 「いったいなにがあったの!? れみりゃでもでたの!?」 皆が見つめる中、ゆっくりゆっくりとれいむは面を上げる。 固唾を呑んで見つめるゆっくり達、そして次の瞬間激震が走った。 「ばぶべべえええぇぇぇぇぇ!!!!!」 「「「ゆっぎゃあああああああああ!!!!???」」」 そこにあった顔はもはやゆっくりではなかった。 顔の中心から放射状に大きく裂けた皮膚、辺り一面に飛び散る餡子。 全身皺だらけで大きく歪み、大きく飛び出した2つの目玉はギョロギョロと独立した生物の如く忙しなく動く。 ゆっくりどころか人間が見たってショック死しかねないレベルである。 「ぼべばいいぃぃぃ、ばぁぶべぇべえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」 ぐじゅりぐじゅりと音を立てにじり寄るれいむ。本人は助けを求めているだけなのだが端から見たその姿は獲物を見つけた悪魔である。 歪んだ口の隙間から言葉にならない何かをひり出しながら必死に命乞いをする。だが掛けられた言葉は期待したものではなかった。 「こっちこないでええぇぇぇぇ!!?」 「まりさはおいしくないからたべないでねええええぇぇぇ!!!」 違う、そうじゃない!!れいむはただ優しくされたいだけなのに!! れいむがこんな目に会ってるのに何言ってるの!?馬鹿なの!?死ぬの!?さっさと手当てしろおおおおおお!!! 「ぅぼあああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」 「むっきゃー!!!?? えれえれえれ・・・・」 「ぱちゅりー!!? おまえ、よくもぱちゅりーを!!!」 辺りを揺さぶるれいむの雄叫び、これに当てられついには1匹のぱちゅりーがショックの余り嘔吐しはじめた。 これに激昂したのはあの群れ一番カッコイイまりさである。彼女は大きくその身を屈め 「ゆらぁ!!!」 「ぼばっ!!!??」 全身をバネにした渾身の一撃をれいむの叩き込んだ。 その衝撃で間欠泉のように噴出す餡子。だがまだまだ悲劇は終わらない。 「ゆゆ!! こいつよわいよ!! みにくいだけでぜんぜんたいしたことないよ!!」 このまりさの一声で今まで怯えていたゆっくり達が一斉に動き出したのだ。 「かおだけなんだねー!! わかる、わかるよー!!」 ぼべっ 「このいなかもの!! さっさとこきょうにかえりなさい!!」 うびっ 「なんというみにくさ、おおきたないきたない」 「「「おお、ばっちぃばっちぃ」」」 ぶびゃぁっ 数分後、群れの皆にリンチを食らったれいむの命は風前の灯であった。 思い思いの制裁を加えたゆっくり達は、唾を吐き捨てながら今後の始末について相談しはじめた。 そんな折、天から救いの神が現れた。 「うっうー☆」 「「「れみりゃだあああああああ!!!」」」 さっきまでの威勢も何のその、蜘蛛の子の如くその身を散らすゆっくり達。後には傷ついたれいむだけが残された。 「うー、きったないまんじゅうなんだど~。」 そう言ってうつ伏せの饅頭を掴み上げるれみりゃ。面を上げたその顔はさっきよりも一層ひどいものになっていた。 「ばぶべべぶべべばびばぼおおおおおおおお!!!」 「うっぎゃああああああ!!!?? ざぐやああああああ!!!!!」 餡子をブビブビと噴出しながら礼を告げるれいむ。 だがれみりゃは思いも寄らぬびっくりフェイスに肝を潰し、れいむを投げ捨てると泣きながら脱兎の如く逃げ出したのであった。 こうして幸運にも命を繋いだれいむは、痛む体に鞭打ちじゅーりじゅーりと黒い筋を残し我が家へと向かったのであった。 1週間後 そこには元気に窓にへばりつくれいむの姿があった。 「リョウタ、鞄持ってやるよ。」 「リョウ!! 俺が雑巾がけしてやるからお前箒頼むわ!!」 リョウタと呼ばれる少年、その右腕は白い大きな三角巾で吊るされていた。 「ゆっふーん・・・いいものみたよ!!」 そうしてれいむは森に向かって跳ねていったのであった。 終わり 作者・ムクドリ(´-ω-`)の人 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1880.html
ゆっくりの躾け方・上巻 はじめに ゆっくりを躾けるのは非常に難しい。 何故なら異常なまでに知能が低く、教えた事を三分で忘れるからだ。 比較的簡単なのはれいむ種だろうか。 知能レベルは最低に近いが、それでも根が素直なところがある。 生まれた時から愛情を注ぎ込むか、恐怖と暴力を与えればそれで済む事が多い。 逆にまりさ種は非常に難しい。 愛情を与えても、飼い主は自分を保護するためのものとしか見ず、横暴な態度は何時までも残る。 暴力で従わせようとしても、従った振りをして虎視眈々と脱走や報復の機会を窺う様になる。 また、その強い好奇心とリーダー気質から周囲の飼いゆっくりを巻き込んで悪さをする事も報告されているので手に負えない。 ブリーダーの間ではまりさを調教できたら一人前と言われているほどだ。 では、ゆっくりれみりあはどうなのだろうか。 難易度は中といったところ。頭は悪いが、他の種と違って悪知恵が働かないのはプラス要因。 毎日躾を欠かさなければ、それなりのレベルにまでは簡単に持っていける。 もっとも躾を怠れば他のゆっくり以上の早さで増長し、知能の劣化もそれに比例する。 そしてそれ以上に、ある一定以上の能力を求めるのには難しい。 何故なら持ち前の知能の低さが邪魔をし、高度な事を教え込めないからだ。 れみりあ種に高度な事を覚えこませるには、それこそ達人と呼ばれるほどの腕前を必要とする。 さて、前書きはこのくらいにしておいて、早速行動に移ってみよう。 前述の通り、初心者にはれいむ種から手を付ける事をおすすめする。 まずは固体の選別。 初心者は知能強化を施された赤ん坊を買うのをおすすめするが、野生の個体を選ぶとなるとそれなりのコツがいる。 「ゆっくりしていってね!」 初対面で上記の様な事を言ってくる固体は間違いなく知能が低い。 人間の恐怖を知らない野生の個体は、学習能力が著しく低い事を示す。 少しでも知能があれば、自分より大きい生物に対して警戒するのが当然だろう。 ついでに言えば他のゆっくりと情報交換ができていない証拠でもある。 なので上記の様なゆっくりを見つけたら優しくハンマーで潰してあげよう。 知能の低い野良ゆっくりを残しておくと、後々誰かが被害にあうかもしれない。 外出時には専用のゆっくり潰しハンマー(税込:535円)を持ち歩くのがエチケットだ。 次に選別の合格基準だが、これは方針によって異なる。 愛を与えるのなら家族がいる固体は止めた方がいい。人間よりも同族に対しての感情が強いからだ。 群れからはぐれた固体や、家族から追い出された固体なのが御し易いだろう。 そしてできれば赤ん坊がいい。成長後にその性格を矯正し、知識を与える事は難しい。 恐怖を与えて従わせるのならその逆。 家族はいい脅迫の材料になるし、見せしめにも使える。 これもやはり赤ん坊が良いし、何より長い間楽しめる。 と、言っても変異種でもない限り個体差はそこまで大きくない。 面倒だと思ったり、自分の腕に自信があったりするのならどんな固体でもいいだろう。 「……なるほどな」 お兄さんは読んでいた本を脇へと置き、透明な箱に入ったゆっくりれいむを眺める。 家の前で倒れていたのを保護し、飼ってもいいかなと考えていたところだ。 「こいつ飼えるのか? 本見た限りでは結構難しそうなんだが」 箱の中のれいむはお兄さんの考えも知らず、暢気に眠っている。 散々お兄さんに餌を要求し、満腹になったら直ぐに眠ってしまったのだ。 まあ、非常にゆっくりらしい性格をした固体だと言えるだろう。 と、その時れいむが目を覚ました。 しばらく辺りをキョロキョロとしていたが、やがて自分が知らない場所で透明の箱に入れられている事に気付く。 「おにいさん、れいむへんなはこのなかにはいってるよ! ゆっくりだしてね!」 お兄さんが声を掛ける前に、れいむは箱から出せと要求してくる。 が、そうはいかない。ゆっくりを部屋の中で放し飼いする気はお兄さんにはない。 あくまで観察したり、偶に遊んでやる程度の存在でいいのだ。 「おにいさんれいむのこえがきこえてないの? それともばかなの? れいむのいうことがりかいできないの?」 その声にお兄さんの眉が傾く。 助けてやった上に餌もやったのだが、それを忘れていきなりこれか。 お兄さんは騒ぐれいむを無視し、先ほどの本の続きに目を通す。 では実際に躾を行っていこう。 まず全体を通して注意すべき事は、ゆっくりより自分の方が上だと理解させる事だ。 これは愛情を与える場合にも必須だ。これがないと、ゆっくりは飼い主の事を便利な道具程度にしか思わない。 大事なのは懐いてないうちはゆっくりの要求を絶対に聞き入れない事。 餌が欲しい、遊んで欲しい、外に出して欲しい、などと言った要求は全て却下。 何故なら簡単に要求を呑むと、ゆっくりは飼い主を自分より下だと思い込む。 それに、飼い始めたばっかりのゆっくりを箱の外に出すのは危険だ。 何故なら十中八九部屋の中を荒らしまわるか、自分の家宣言をし始めるからだ。 調子に乗ったゆっくりを一気にどん底まで叩き落し、短期間で服従する方法もあるが初心者にはおすすめできない。 上記の様に書いたが、餌はやらないと流石に不味い。 ゆっくりは多少の絶食では死にはしないが、固体によっては絶望や思い込みで死に至るので長期間の絶食はおすすめはできない。 さて、餌のやり方だが、まずは自分の食事をゆっくりに見せながら食べる。 そして自分の食事が終わった後、食べかすや野菜クズをゆっくりに与えよう。 その際、いただきますとキチンと言わせよう。言わない様なら軽めの罰を与えていい。 そうする事によって、飼い主の方が上であるとゆっくりに教えるのだ。 間違ってもゆっくりの食事を優先したり、ゆっくりに手作りで餌を作ったりするのはしてはいけない。 そうする事によってゆっくりは増長するうえに、ゆっくりは自分に都合の良い事は中々忘れない。 少しでも餌のランクを落せば癇癪を起こし、飼い主の食事まで要求してくる事も多々ある。 大事なこの作業を根気良く続け、ゆっくりに自分の立場を理解させる事が…… 「……いかん、めんどくさそうだな」 お兄さんは本に栞を挟んで閉じ、溜息を吐いた。れいむは読書中も煩く喚きたてていたが、当然無視。 お兄さんの認識よりも遥かに、ゆっくりを飼うのは面倒そうなのだ。 もっとも生き物を飼うのは大抵面倒なのだが、生き物を飼った事のないお兄さんには分からない。 「む゙じぢない゙でえ゙ぇぇぇ」 「……まあ、やるだけやってみるか。懐けば可愛いだろうし」 それに犬や猫よりかは手間も掛からないだろうし、話し相手にもなるだろう。 そうお兄さんが考えていると、ふと周囲が暗くなっている事に気付く。 そろそろ夕食の時間か。そう思ったら腹が減ってきたので、お兄さんはれいむを無視して台所へと移動する。 「ほーら、メシだぞお」 「ゆゆっ! おにいさんれいむのためにありがとう! ゆっくりれいむにちょうだいね!」 お兄さんは焼き魚と味噌汁、そして白米をれいむの前に置いて見せ付ける。 そして透明な箱と取り去り、れいむを解放してやった。 そうすると当然れいむは飯へと急ぐが、たどりつく寸前にお兄さんの手が伸びる。 軽いデコピンによってれいむは弾き飛ばされ、勢い良くタンスにぶつかった。 そして素早く透明な箱を被せ、お兄さんは箸に手を伸ばす。 「どうじでごんなごとずるのおぉぉぉ」 「誰がお前の飯だっと言った。これは俺の飯だ」 「ゆ? おにいさんなにいってるの? それはれいむのごはんだよ?」 泣きながら喚くれいむを他所に、お兄さんは白米を掻きみ、酒で咽を潤す。やはり労働の後の一杯は美味い。 頭に疑問符を浮かべているれいむの戯言など、耳に入らぬほどだ。 「ゆゆっ! おにいさんれいむのごはんかってにたべないで! れいむはどろぼうきらいだよ!」 「だから何時お前の飯になったんだ。これは俺が用意したんだぞ」 「そんなのかんけいないよ! れいむがみつけたんだかられいむのごはんだよ!」 いかん、埒があかない。 お兄さんはそう舌打ちし、食事を中断して本を手に取る。 そもそもお兄さんが持ってきたのに、どうしてれいむが見つけた事になっているのか。 ゆっくりへの対処法 食事編……58P それでもゆっくりが食事の際に我侭を言う事は多々あります。 曰くその食事は自分のものだ、餌の量が少ない、餌の味が悪い、などと要求は多種多様です。 そういった事を言い出した場合、罰として餌を取り上げたり、次の餌を極端に少なくしたりすると効果的でしょう。 ゆっくりの知能は非常に低いですが、餌についての事は案外素早く覚えます。 不満を言ったりすれば自分の餌がどんどん少なくなり、味が落ちていく、貰えなくなると理解させるのは難しくはないです。 しかし、まりさ種の場合は飼い主の食事を横取りしようとする事も多いので、反省したから箱から出して、などと言っても無視しましょう。 また、どうしても聞き分けないのなら絶食や体罰も手です。 絶食の目安は丸一日です。一食抜いた程度では、ようやく自分の命令を聞いて持ってきたと錯覚される事も多々あります。 半端にやると逆効果になるので気を付けましょう。 体罰は頬をちぎる、もしくは針で刺す程度でいいでしょう。 それによって力の差を覚えさえ、徐々に飼いならして行くのが最善です。 あまり初期から激しい体罰を加えると、まりさ種でなくとも恨みを抱く可能性があるので注意が必要です。 「おにいさんはやくれいむのところにはこんでね! あとここからだしてね!」 「……ゆっくり、一つ聞こう。これは誰の飯だ?」 「おにいさんばかなの、なんかいいえばわかるの? そのごはんはれいむのだよ、ゆっくりりかいしてね!」 「あっ、そう。馬鹿には今日の餌はなしだ」 そう言うとお兄さんはれいむの見ている前で黙々と食事を続ける。 どおじてだべじゃうのおぉぉ、などと色々聞こえて来るが、お兄さんにはただの雑音に過ぎない。 そして全て食べ終え、ごちそうさまと手を合わせた。 「明日お前に餌をやるかどうかはお前の態度次第だ」 「れ゙い゙む゙のごはんがあぁぁぁ」 「……ほんとに飼えるのか、こいつ?」 不安を覚えながらも、れいむを入れた箱に布を被せ、押入れにしまいこむとゆっくりは寝室へと向かう。 あの調子で騒がれた煩くて寝れやしない。 明日からの躾をどうするか考えながら、お兄さんはゆっくりと眠りに付いた。 本格的な虐待……ではなく調教は次回くらいで 躾マニュアルみたいな感じ書こうとしたけど上手く書けないな…… このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/723.html
価値 by ”ゆ虐の友”従業員 人里の外れにある大きな畑。 「ゆっゆっ!」 「ゆゆー!」 ここでは、ゆっくり達によるイチゴの収穫が行われている。 「とってもりっぱないちごだにぇ!」 「おちびちゃん、たべちゃだめだよ!あっちのかごにゆっくりいれてね!」 二十匹を越すゆっくり達が、人間の指示で動いている。 そんなことが可能なのか?と思う人もいるだろう。 もちろん素行の悪いものもいるが、よほどの問題とならないかぎりは多目に見る。ある程度の基準で作業が進みさえすれば良い。 できの悪い労働力をいちいち怒鳴ったり潰したり、そんなことをしているほど農業は暇な商売ではないのだ。 それに、ゆっくり達はよりゆっくりするための対価として、納得して働いている。 「ゆーしょ!ゆーしょ!」 「ゆっきゅ!ゆっきゅ!」 ゆっくり達は朝から夕刻まで一生懸命に働き、いくつもの籠(かご)に山盛りのイチゴが収穫される。 「ゆっくりがんばったよ!」 「いちごさん、ゆっきゅりしていってにぇ!」 日が落ちるころになると人間の男が現れ、作業を取りまとめる。 この日は、長い収穫作業の最終日。ゆっくり達に待望の報酬が支払われる日だった。 「よし、今日までよく働いたな」 「ゆっへん!」 ゆっくり達は、ゆっくりできない風にも負けず、数多くの誘惑にも負けず働いた。 悪天候やれみりゃの襲撃で命を落としたものもいたが、それでもついに作業を完遂した。 「それでは、今期の報酬をやろう」 「ゆゆゆーー!!!」 男の周りに終結し、そわそわと待つゆっくり達がどよめく。 ゆっくりに長期間の労働をさせるにいたった報酬―― 「ほれ」 男は、一本の大根を取り出すと、ゆっくりの一匹に与えた。 「すごくゆっくりしたおやさいだよぉぉぉぉぉぉーーー!!!」 「しゅごいよぉぉぉぉぉぉーーーー!!!!」 「れいみゅにもみせてにぇ!」 「まりさにもだよ!」 「やべでね!おざないでね!!」 ある地域の野生ゆっくり(以下”A群”)に関する報告 A群のゆっくりにとって、イチゴの価値は低い。 彼らにとってイチゴとは、「おちびちゃんでもとれる、ふつーのおやさい」だからである。 ゆっくり特有の”思い込み”によって「大したものではない」とされているために、 実際の糖度に関わらず甘さを感じることもほとんど無い。 一方で、大根の価値は非常に高い。 よほど体格の大きいゆっくりでなければ手に入れることができない大根は 「とってもゆっくりしたおやさい!!」であるためで、 彼らにとってはそれは至上の味わい、そして最高級の社会的価値でさえあるという。 A群のゆっくり達ならば、大根を手に入れるためにはなんでもするのではないだろうか。 我々が、宝石や黄金のためにそうするように。 「ゆっへっへ!!まんまとせしめてやったのぜ!」 「さすがはまりさだよ!にんげんからだいこんをてにいれるなんてすごくゆっくりしてるよぉぉぉぉ!!!!」 大根を後生大事に運ぶゆっくり達。イチゴ収穫組のリーダー格であるまりさとれいむは得意満面だ。 「ゆっく、ゆっく……ぺっ!!」 まりさは畑からくすねてきたイチゴを吐き出す。 「こんなつまらないものをあつめるだけでだいこんをくれるなんて、やっぱりにんげんはばかなんだぜ!」 「ゆっくりぃぃぃぃぃ!!!!」 こうして手に入れた大根は、リーダーまりさとれいむのおうちに保管することになった。 他のゆっくり達は面白かろうはずもないが、おうちの規模の関係で仕方なかったのだ。 自分のおうちに大根があるということで、特に子まりさは有頂天だ。 「だいこんさん!まりしゃのおうちでゆっきゅりしていってにぇ!」 白く輝く表面も、鮮やかな緑の葉っぱも、それはほかのどんなものとも換えがたいゆっくりだ。 「ゆ、ゆっくり!!!!」 「ゆゆぅ!?」 そのとき、運搬係だった一匹のれいむが、子まりさを押しのけて大根に飛び乗った。 「ぺーろ、ぺーろ……!」 「なにやっでるのぉぉぉぉぉ!!!???」 「かってはゆるさないぜ!!」 すかさずまりさが引きずり落としにかかる。 「おりるのぜ!!ゆっくりおちつくのぜ!!」 「ゆ……」 まりさが近づいたそのとき、運搬係れいむは地面に落ち――そしてそのまま、動かなくなった。 「ゆゆ!?まりさはまだなにもしてないのぜ……!?」 れいむは死んでいた。 「むきゅ、あんまりきゅうげきにゆっくりしたものだからしょっくしょうじょうがでたのね!」 一匹のぱちゅりぃがそう断定すると、一同は深い沈黙に包まれた。 「おちびちゃんもきをつけなきゃだめだよ!」 「わかったよ…まりしゃきをつけるよ……」 とにかくそのようにして、大根はまりさのおうちに置かれることとなった。 「うー!!おぜうさまのすぴあ☆ざ☆ぐんぐにるがないんだっどぉ〜!! しゃくや、しゃくやぁぁ〜!!」 ぐずりだしたれみりゃに俺は言ってやった。 「れみりゃのすぴあ☆ざ☆ぐんぐにるなら、森のゆっくりが持ってったぞ」 我が家の飼いれみりゃのおもちゃの中でも一番のお気に入り、『すぴあ☆ざ☆ぐんぐにる』。 要するに、売り物にならなかったしけた大根なのだが。 「おぜうざまのだいじなものをがっでにもっでいくなんて、ゆるせないっどぉーーー!!!!」 俺はイチゴを頬張りながら、どたどたと家を出て行くれみりゃを見送った。 振動を感じて、よほどの大きなゆっくりが大根を見るためにやってきたのだと思った。 「だいこんはとってもゆっくりしてるけど、さんぱいきゃくはちょっとめんどうなのぜ……」 のそのそと入り口へむかうまりさとれいむ。 「ここはまりさと!」 「れいむのゆっくりぷれいすだよ!ゆっくりしていって……ね……?」 そこにいたのはれみりゃ。 「おまえが、れみりゃのすぴあ☆ざ☆ぐんぐにるをとったんだどぉ〜?」 「ゆびぃぃぃぃぃぃ!!!!????」 慌てておうちに逃げ込もうとする二匹だが、むんずと捕らえられて圧迫される。 「ゆ゛っゆ゛っゆ゛っ!!!!」 「ゆあああああ!!!!!!!」 「しらべはついてるっどぉー、おじゃまするど」 後には、取り返しのつかないところまで握りつぶされた二つの”元”ゆっくりが天を仰ぐのみだった。 「ぎゃおー☆あったどぉー!! これこそおぜうさまのすぴあ☆ざ☆ぐんぐにるだっどぉーー!!」 大根を手に大喜びのれみりゃ。そこへ、背後から声がかけられる。 「そ……それは!ま、ま、ままままりさのゆっきゅりしたおやさいだよ!!!!かえしてね!!」 子まりさだ。 子まりさは物陰から両親の末路を見た。隠れていなければ。それはわかっていた。 それでも子まりさには、苦労して手に入れた大根を持っていかれることが許せなかったのだ。 たとえその相手が、れみりゃであったとしても。 「それはとってもだいじな、おかーしゃんとまりさの……」 「うーーーー☆」 れみりゃは斟酌しない。ただ力任せに大根を振るった。 「ゆぺし!!!???」 致命的な質量と速度で叩きつけられた大根に触れた瞬間――永遠へと引き伸ばされた最後の一瞬――子まりさは知った。 極上の甘さを。ゆっくり感を。世界の真理を。 生まれて初めて、本当に、ゆっくりとした。 「………!」 「………!」 そこにはすべてが存在し、 規定不可能の闇がなにもかもをむさぼっていた。 心安らぎ、心安らぎ、心安同時ににに不安ににににににににに責め苛まれていた。 「………」 スローモーションの終わりの中で、 「@f」 子まりさは最初で最後の 「」 うんうんをした。 「ぐじゃいどぉぉぉぉーーー!!!おぜうざまのだいじなすぴあ☆ざ☆ぐんぐにるがぐじゃいのやだどぉーーー!!」 「くせーんなら家に持ち込むなよ……!ド饅頭が……!」 返り餡だか返りうんだかがこびりついて汚れたその大根に、俺は彫刻刀で <すぴあ☆ざ☆うんうんにる> と彫ってやった。 「ぢがうどぉぉぉぉーーー!!!!うんうんじゃないどぉぉぉぉぉーーー!!!!」 「名前も彫ってやろう……出来た、<すぴあ☆ざ☆うんうんにるれみりゃ>」 「ばう゛う゛う゛う゛う゛う゛う゛!!!」 おしまい。
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/345.html
楽園 愛護派、虐待派、駆除派の人間が出てきます。 --------------------24 「ゆっへっへ。まりささまはむれでいちばんつよいんだぜ!」 「・・・」 男は無言の返答を返した。 今日はただ単に森の果物を取りに来たのだが、気付けばこんなことになっていた。 おそらくこのゆっくりまりさも私同様に果物を取りに来たのだろう。 大抵のゆっくりは知らない人間を見かけると警戒し、すぐ逃げ出す。 だが、このまりさは逃げ出さずに私と対峙していた。 若いゆっくりにはありがちなことだ。若さ故に親の言い付けを守れなかったのだろう。 「まりささまをむしするなんていのちしらずだね!」 「・・・」 「まりささまのごはんをとろうとしたばかは、ゆっくりしね!」 といって、無視したことに痺れを切らしたのかまりさは男に渾身の体当たりをしかけた。 男は避けることなくまりさの体当たりを脚に喰らい 「や~ら~れ~た~~」 と、気の抜けるような台詞を吐きながら膝から崩れ落ちた。 ゆっくりまりさは倒れた男の背に乗り、トドメとばかりにひたすら男の背で跳ねた。 「にんげんがまりささまにかとうなんてひゃくねんはやいんだぜ!」 そして、気が済んだのかまりさは果物を取ってから巣に帰っていった。 男はゆっくりまりさが帰ったことを確認するとスッと立ち上がる。 まりさが倒した思っている男は虐待お兄さんだった。 「さて、帰るか」 そう言い残し、帰途についた。 数日後 「ゆっくりしていってね!」 「ちょうちょさん、ゆっくりまってね!」 「おみずぷーかぷーか」 「れいむ、あまりおみずのなかにはいってるとゆっくりできなくなるからゆっくりでてきてね!」 「むーしゃ むーしゃ しあわせ~!」 ゆっくり達の群れは森の中にある小さな広場で思い思いにゆっくりしていた。 と、そこに野菜を頭に載せたまりさ達が戻ってきた。 このまりさ達は群れの中でも聞き分けのない若いゆっくり達だ。 「まりしゃおねーしゃんすごーい!」 「おいしそー!」 「まりさ、そのおやさいどうしたの?」 たまに優しい人間が美味しいものをくれてたので、貰ったものなのだろうか。 でも、いつもは貰えたとしても少量だったのでゆっくり達は驚いていた。 「ゆっへっへ。にんげんたちはばかだから、はたけからとってもきづかなかったんだぜ!」 「ゆゆ! にんげんからぬすんできたの?」 「そんなことをしたらゆっくりできなくなるよおおぉおぉぉぉ!」 人間の強さは知っている。以前群れがれみりゃの集団に襲われたときに助けてくれたのだ。 そして恐ろしいれみりゃの集団をあっという間にやっつけてくれた様を見て、力の差を知ったのだ。 そんなに人間に悪さをしてただで済むわけがない。群れのゆっくり達は恐怖するが 「きにすることはないぜ! まりさたちはにんげんよりもつよいんだぜ! にんげんがしかえしにきてもかえりうちにしてやるぜ!」 数日前に虐待お兄さんと対峙したまりさは、人間を倒せると勘違いし案の定増長していた。 そして取り巻きの若いゆっくり達を連れて、人間の畑から野菜を盗むと言う凶行に走ってしまったのだ。 「なにいってるのおおおぉぉぉ!」 「にんげんはれみりゃもやっつけちゃうんだよ!」 畑から野菜を盗んできたまりさ達は盗みが成功したことにより自分の力を過信しすぎていた。 たしかに群れの若いゆっくりの中では強いゆっくり達だ。 だが、それはあくまで群れのしかも若いゆっくりの中の話だ。 たしかに子供のころ、人間がれみりゃの集団をやっつけていたのは見ていたが それは自分達が子供だったからであり、今なられみりゃの集団も敵ではないとまで勘違いしている。 井の中の蛙という言葉を知らないとは哀れである。 その頃、畑を荒らされた村では話し合いが行われ紛糾していた。 今までもゆっくり達はちょくちょく畑荒らしに来ていたが単体もしくはつがいで来るので 被害はあったものの微々たるものだった。しかし、今回は数が多く被害が大きかったのだ。 今までのことに加え、今回の大きな被害で積もり積もったものが爆発したのか激怒していた。 「ゆっくりはすべて駆除すべきだ!」 畑を荒らされ被害を被った駆除派の人達は今後も被害にあう可能性を考え駆除を訴えた。 「良いゆっくりもいる。すべて駆除はやりすぎだ!」 それに対し、野生のゆっくり達とたまに遊んだりしていた愛護派の人達は擁護を唱えた。 「ならば、今回の被害をどうすればいい? そして今後も被害に遭わない保障はない。 それとも、お前達が被害を被るたびに被害を穴埋めしてくれるのか?」 駆除派の矛先は気付けば愛護派に向いていた。 本来なら怒りの矛先を畑を荒らしたゆっくりに向けるべきだが、生憎とここにはいない。 なので振り上げた拳がゆっくりを擁護する愛護派に向いてしまったのだ。 駆除派は農業を生業にしている人がほとんどだ。 故に元々ゆっくりなぞどうでもいいと思っている。それよりも日々の暮らしが重要だからだ。 だが、実際に被害を被り、また今後も被害を被ることを考えると駆除派になってしまうのも仕方がなかった。 また農業を生業にしている人が多いため、駆除を唱える人が大多数を誇っている。 他のことを生業にしている人のほとんどは、この話し合いを傍観している。 矛先を向けられ窮地に陥ってる愛護派の人達は困り果てていた。 被害の損失補填をしろと言われても生活にそれほどの余裕はない。 しかし、だからといってゆっくりの全滅を黙って見過ごすわけにはいかない。 そんなとき、今まで話し合いを眺めていた虐待お兄さんが助け舟を出した。 「私に良い案がある」 全員に聞こえるような声ではっきりと発言し立ち上がった。 話し合いの場は静かになり、虐待お兄さんの案を聞くことにした。 「つまり駆除派の方たちは被害の穴埋めが出来ればいいのですよね?」 「ああ、暮らしていければ我々は何も文句はない」 その言葉を聞くと虐待お兄さんは微笑み妥協案を提示した。 「ならば、ゆっくり達に被害の穴埋めをしてもらいましょう」 「「「「「・・・・はぁ?」」」」」 突拍子もないことをいきなり言う虐待お兄さんに一同は唖然とする。 ゆっくり達に貨幣経済の概念はない。 そんなゆっくり達にどうやって被害の穴埋めしてもらうのかと騒ぎ始めた。 だが、虐待お兄さんはあることを知っていた。それは加工場の存在である。 駆除派の農家の人達には遠くの町にあり、また実生活とは関係ないためほとんど知られてないが 虐待愛好者の間では有名な存在だ。なにせゆっくりの売買をしているのだから。 「遠く離れた町にゆっくりを買取ってくれる場所があります。 群れのゆっくり達に被害額分のゆっくりを提供するように交渉し さらに今後の被害を出さないために、また被害を出したら同じことになると教えます。 それと群れ以外の野生のゆっくりが畑を荒らした場合も同様に群れに責任を取らせましょう。 もしここで反省の色なく断るようでしたら、そのときは仕方ありません。駆除ということで。 しかし、反省し素直に被害を穴埋めするならば、それ以上は人間は何もしないと教えます」 駆除派の人達はこの案を受け入れた。 この案ならば、ゆっくり達が大人しく受け入れるなら被害額分が手元に戻ってくる。 逆に断られた場合でも駆除の名分が立つ。どちらに転んでも利があるからだ。 「さて、愛護派の人達はこの案は如何でしょうか?」 と言っても、結果など分かっている。 愛護派は対案など出せないだろう。被害の損失を穴埋めしなければ駆除派は納得しないからだ。 ゆっくり達が盗んだ野菜を返しに来る可能性もなくはないが限りなく低い。 そしてこの案を蹴れば、多数決でゆっくり達の駆除が決まってしまうだろう。 唯一、道があるとすれば私財を投げ打ってゆっくり達に代わって被害の穴埋めをすること。 別にそんな選択肢を取っても構わない。畑荒らしに味を占めたゆっくりは、再犯を繰り返すからだ。 すべての逃げ道は塞いである。 話し合いの結果、虐待お兄さんの妥協案が全員賛成を持って受け入れられた。 ゆっくり達に群れに交渉しに行くことになったのは、虐待お兄さんと愛でお姉さんである。 「案を提案したのは自分なので、交渉役も行います」 虐待お兄さんは、案を提案したので自分なのでと交渉役に立候補した。 「私もついていきます」 続いて愛でお姉さんも立候補に名乗り出た。 一瞬、自分が虐待お兄さんであることがバレたのかと思ったが、どうやらばれてはないようだ。 どうやらゆっくり達に不利な交渉にならないようにと監視役も兼ねてのことようだ。 賛成すべきか反対すべきか迷ったが、ゆっくりと仲の良い彼女を利用する算段が付いたので 「1人よりも2人のほうが交渉がしやすいと思いますので 2人で行こうと思いますがどうでしょうか?」 虐待お兄さんは愛でお姉さんも行くことに賛成した。 虐待お兄さんは内心で嘲笑していた。 すでに条件はほとんどクリアされた。 唯一の懸案はゆっくりの出方次第だったが 愛でお姉さんがいれば成功率も上がるだろう。 翌日 虐待お兄さんと愛でお姉さんはゆっくり達の群れと交渉に向かった。 愛でお姉さんは群れの住処が分かっているのか迷うことなく進んでいく。 虐待お兄さんは分からない振りをしてついていく。 この2人がゆっくり達の群れの住処を知った理由は違った。 愛でお姉さんは優しいゆっくりできる人間として群れに招待されたため。 虐待お兄さんは捕まえたゆっくりに苦痛を与え、巣の場所を吐かせたためだ。 もっとも虐待お兄さんは効率よくゆっくりを捕まえるために聞いておいただけだったので 巣の場所を聞いても群れを全て駆除など考えていなかった。楽しみがなくなってはつまらないしな。 2時間ほど歩いたところでゆっくり達の群れについた。 ゆっくり達は異常に怯えていたが別に私に怯えてるわけではないだろう。 私はゆっくりを虐待した後、生かして返したことがないからな。 「ゆっくりしていってね!」 愛でお姉さんが声をかけたことで 「ゆっ ゆっくりしていってね!」 ゆっくり達はおずおずと挨拶を返してきた。 そして群れのリーダーなのか、大きいゆっくりれいむが出てきたと思うと 「むれのゆっくりたちがおねえさんたちのはたけからおやさいをぬすんでごめんなさい」 いきなり謝罪した。 なかなか見所のあるゆっくりだ。 「ごめんなさい。ごめんなさい」 他のゆっくり達もつられて、ひたすら謝っている。 愛でお姉さんはばつが悪そうに項垂れながらそれを眺めている。 大方、必死に謝罪するゆっくり達を見て許してやりたくなったのだろう。 交渉は愛でお姉さんがやると宣言していたので問題が発生するまでは見守ることにした。 そして、10分も過ぎた頃にようやく愛でお姉さんが言いにくそうに話を切り出した。 「あのね、里のみんながね、お野菜を盗られてすごく怒ってるの」 「ゆうぅぅうぅぅ!」 「ごめんなさいいいいぃぃぃいいぃぃ!」 「むきゅうぅぅぅぅうぅうぅ!」 1匹のぱちゅりーが泡を吹いて気絶した。まさか一言めで脱落とは。 「それでね、お野菜を返してくれないかな?」 「まりざだぢがだべぢゃっだあああぁぁぁぁああ!」 愛でお姉さんは私が一番が知りたかったことを聞いてくれた。 そして、私にとって最高の答えをゆっくり達は答えてくれた。 私とは正反対に愛でお姉さんは最後の希望を砕かれ渋々と要求を伝える。 「このままじゃね、みんなはゆっくりできなくなるわ。 だからね、盗みを働いたゆっくり達には人間の所で働いて返して欲しいの。 そうすれば里のみんなは盗んだことを許してあげるって」 「ゆゆ! それでゆるしてくれるの?」 「それならおやすいごようだわ!」 ゆっくり達は、ゆっくりさせてくれないゆっくりを嫌う。 まりさ達は人間から盗んだ戦利品を群れの前で食うことで優越感に浸り さらにまりさの部下になれば美味しい目にあえると見せ付けることで仲間を増やそうと思っていたのだが しばらくすると群れの長と大人のゆっくり達がまりさ達のところに来て袋叩きにした。 虐待お兄さんは群れのゆっくり達がゆっくりできなくしたゆっくり達を差し出すことは予想がついていた。 しかし、分かっているからと言ってストレートに言うことは出来ない。 にもかかわらず愛でお姉さんはオブラートに包みながらもストレートに要求してくれた。 実に素晴らしい。加工場の名を出さずに上手く誘導するとは。 交渉を任せた私の目に間違いはなかった。 にしても、人間の所で働いてねか。上手い言い回しをするものだ。 それが二度と帰ってこれないことなのに。 しばらくして15匹の若いゆっくりたちが体中に傷をつけたまま連れてこられた。 全員ぐったりしている様子で、その中には私を倒したと勘違いしたまりさも含まれていた。 どうやら群れのゆっくり達に折檻されたようで誰も文句を言わずに歩いている。 さすがに顔を見られては不味いので、群れのゆっくり達に何も言わずに まりさを持ってきた袋にいきなり詰め込む。 「ゆゆ?」 前回会ったときは声を出してないので、覚えているとしても顔だけのはずだ。 その顔も眼鏡をかけ髪型は変えて帽子まで被っている。餡子脳とは言え、ごくまれに賢いのもいるので念には念を入れた。 それに袋の中に入れたのでこれでもうこのまりさは、私が以前倒した勘違いした人間とは分からないだろう。 まりさを詰め込んでから、改めてゆっくり達に尋ねる。 「こいつらを持っていけば良いんだよね?」 「ゆっくりおねがいね!」 「わかった」 手早く残りの盗みを働いた若いゆっくり達を袋に入れた。 最初はいきなり袋に入れられたことに騒いでいたが、次第に大人しくなっていった。 この袋は加工場が作ったゆっくり専用の袋で、この袋に入れるとどういう原理か知らないがゆっくりは大人しくなるらしい。 他にも対ゆっくり用の便利グッズを取り揃えているので、よくお世話になっている。 ゆっくり達はこれでゆっくりできると思い笑顔になっていた。 「おねえさん、これでゆっくりできるね!」 一応群れの仲間であるはずのゆっくりが連れて行かれるわけだが 群れのゆっくり達は、誰も気にしていなかった。 まぁ、こんなことをしでかすくらいだから普段の素行も悪かったのだろう。 愛でお姉さんは、まだ言うことがあったので言い淀んでいた。 本題はここからだ。 「あとね、里のみんながね、また悪いことをしたら同じことをするって言ってるの」 「ゆ、おねえさん。もうれいむたちはそんなことをしないからゆっくりしてね!」 愛でお姉さんが落ち込んでることに気付いたのか励まそうとする。 「むきゅ! わるいことをしたらゆっくりできなくなるっていってるのにきかないのがわるいのよ!」 「ゆっくりさせてくれないゆっくりは、もういないからだいじょうぶだよ!」 群れのゆっくり達は悪いことをすればどうなるのか理解しているらしく そんなことしない。安心して。大丈夫など必死に伝えている。 それでも立ち直ることなく愛でお姉さんは落ち込んだまま、話を再開した。 「みんな、ありがとう。みんなは優しいものね。 でもね、里のみんなはこの群れ以外のゆっくりが悪いことをしても、この群れのせいだと思ってしまうの」 「ゆっゆぅぅぅぅぅ!」 「むきゅうううぅぅぅ!」 一部の賢いゆっくり達はこの意味を理解し嘆いた。 群れのゆっくりではないゆっくりが人間の畑を荒らしても その責任を関係ない群れのゆっくり達が取らなければいけないのだ。 「どうずればいいのおおおぉぉぉぉ!」 「おねえざぁぁぁぁあん! まりざだぢをだずげでえええぇぇぇ!」 「う~ん」 周辺にすべてのゆっくりが畑荒らしをやめなければ、この群れのゆっくりに被害が出てしまう。 しかし、すべてのゆっくりに悪いことはしてはいけないと理解させることは現実的ではない。 これといった名案は思い浮かばず、愛でお姉さんも困っていた。 この場所を捨てて新しい場所を探すという考えを持たせぬために すかさず虐待お兄さんは手を差し伸べた。 「なら、こうしたらどうだろう。 畑を荒らしたら君達に被害が出る。でも、逆にいうと荒らさなければ被害が出ない。 だから、君達は人里近くに住んで畑を荒らそうとするゆっくりを捕まえれば良い。なんなら私も手伝おう。 悪いゆっくりが来ない日は今まで通りゆっくり過ごせるし、餌場まで少し遠くなってしまうけど その代わりれみりゃとか野犬とか危険な生物が出たら助けてあげよう。 それに越冬で死んでしまう心配もしなくていい。 冬は他のゆっくりも来れないから、冬の間だけ人間の廃屋を貸してあげよう。 もっとも餌だけは自分で取ってきてくれよ」 「ゆゆ! にんげんのはたけにくるわるいゆっくりをちゅういすればいいの?」 「こわいのがきてもたすけてくれるの?」 「ふゆもきにしなくていいの?」 ゆっくり達が賛成するように、なおかつ人間が楽を出来る範囲内で条件を出していく。 「ゆっくりりかいしたよ! れいむたちははたけのちかくにすむよ!」 「これでゆっくりできるね!」 「あたらしいすをゆっくりつくろうね!」 「お姉さんも手伝うから、みんなでゆっくりしようね!」 「一緒にゆっくりしようね!」 これで条件はすべてクリアされた。 すべてが上手く良き、虐待お兄さんも笑顔だ。 もっとも横で笑ってるゆっくりや愛でお姉さんとは別の意味でだが。 その後、群れのゆっくり達に 人間の家や畑に許可なく入ってはいけないこと。 人間のものを勝手に取ってはいけないこと。 そういう悪いことをしたらお仕置きをすること。 ゆっくりを憎悪する人間もいるので、知らない人には近づかないこと。 など人里近くに住むに当たってのいくつかの注意事項を教えた。 群れのリーダーの教育が良かったせいかゆっくり達は覚えが早かった。 その日の夜、里の人を集めてこれからゆっくり達に畑を守ってもらう旨を伝え 畑番を束ねる人間が必要ということで、私が畑番になった。 そして、私を倒したと勘違いしたまりさ以外は交易商に売り払って 出来たお金は被害に遭った農家に渡しに回った。 まりさだけは大いに私の役に立ってくれたので透明箱に入れて私の家の地下室に招待した。 翌日から群れのゆっくりたち80匹ほどが人里の畑近くに引っ越してきた。 案の定というか愛護派はゆっくりの巣作りを手伝ってあげた。 「すっごくおおきいよ!」 「これなら、ゆっくりできるね!」 さらにまだ必要ないというのに冬に住む廃屋のリフォームにかかってる。 いったいどこの馬鹿親だ?と言いたくなるような可愛がりようだった。 またゆっくりたちの中でも交渉についてきた愛でお姉さんが一番人気があった。 優しいというのもあるだろう。だが、理由はそんなことではない。 「むーしゃ むーしゃ しあわせ~」 「うっめ! めちゃうっめ!」 彼女は致命的に料理が下手だった。 普通の人は野菜の皮を剥くときは綺麗に皮だけを残すように剥く。 だが、彼女は包丁の使い方が下手だったため、そんな器用なことが出来ず 人間が食べる部分を多く残したまま皮を剥くのだ。 また肉や魚料理にしても料理下手を自覚しているのか、ひたすらシンプルに作る。 肉や魚を何の処理もせず焼いて塩をかけただけなど、えっ?と思うような料理を作るのだ。 そんな食材の無駄が多い料理のため、食べれない部分が大量に出てくる。 故に彼女から貰う生ゴミが一番豪華だ。もっともゆっくりにとってはだが。 そして、そんな悲しい理由で彼女はとても好かれていた。 愛護派の人達はゆっくりと遊ぶ時間が増え感謝していた。 なにせ今までは森の奥まで行かなければ会えなかったゆっくりの群れが歩いてすぐのところにいるのだ。 今では暇なときは散歩がてらにゆっくり達と遊べ、ゆっくりできるのだ。 そして、ゆっくり達には知らない人間には近づくなと言ってあるが、私が紹介した人は警戒されることなく近づける。 紹介された愛護派からもゆっくり出来る人連れてきたことでゆっくりからも喜ばれた。 恩は売れるときに売っておくに限る。 元駆除派の農家の人達は畑番が出来たことに感謝していた。 畑番をすることになったゆっくり達の群れは基本的にいつもゆっくりしているが 畑を荒らそうとするゆっくりが来た場合は必死になって畑を守る。 なにせ畑が荒らされた場合、畑番をしているゆっくり達はゆっくりできなくなる。 ゆっくり達はゆっくりできなくなることを何よりも嫌がるからだ。 おかげで畑荒らしの被害は一切なくなった。農家の人達からは大いに喜ばれた。 恩は売れるときに売っておくに限る。 ゆっくりをどうでもいいと思っていた人たちは、やっぱりどうでもよさそうだった。 恩を売れそうになかった。残念である。 カーンと鐘がなったので、ドアを開けるとれいむがいた。 「おにいさん、またわるいゆっくりがきたよ!」 「はいはい」 頭にバッジをつけたれいむが悪いゆっくりが来たことを伝えにきた。 畑番をしているゆっくりには他の野生のゆっくりと見分けるために髪飾りに特製のバッジをつけている。 針と糸を使って付けてあるので、裁縫のできないゆっくりではこのバッジを盗んだところで悪用することは出来ないだろう。 「ゆっくりいそぐよ!」 「ほら、抱えてやるぞ。どっちだ」 ゆっくりの歩行速度に合わせると遅くなるので こういうときだけは仕方なく抱えてやる。 言われた場所に到着するとバッジをつけたゆっくり達に囲まれ 傷だらけになったゆっくりありすがいた。 「ごめんなざあぁぁぁいいぃぃぃ!」 「おまえら、大丈夫か?」 「ゆ! おにいさん、わるいゆっくりはもうまりさたちがやっつけたよ!」 見たところ、酷い怪我をしたゆっくりはいないようだ。 持ってきた袋に悪いゆっくりを入れ褒めてやる。 「そうか、よくやったな。 また何かあったらすぐ呼ぶんだぞ。死んでからでは遅いんだからな」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「おにいさん、わるいゆっくりはいなくなったからいっしょにゆっくりしようよ!」 「そうしたのはやまやまだが、こいつにお仕置きをしないといけないからな」 と言って、先ほどのありすが入った袋を掲げてみせる。 ゆっくり達はここを楽園だと思っている。 危険な生物はほとんどおらず、れみりゃや野犬がたまに来たりもするが お兄さんを呼べばすぐに退治したり捕まえたりして助けてくれる。 また怪我をしたり、困ったことがあった場合も助けてくれる。 昔住んでた場所に較べ餌場まで少し遠くなってしまったが たまに人間からお菓子や生ゴミなど、美味しいものを貰えるので気にならない。 気が向いたときに雑草取りなどの人間の手伝いをするととても喜ばれ一緒にゆっくりしてくれる。 また越冬という習慣も残っているが、越冬で死んでいくゆっくりはいなくなった。 なぜならゆっくりが作った巣ではなく人間が作った小屋で冬を過ごせるからだ。 食事もどうしようもないときだけは助けてくれるので餓死するゆっくりもいない。 ただ、たまに悪いゆっくりが来るのが困りものだが、来ない日は気ままに心ゆくまでゆっくりできる。 ああ、ほんとうになんて素晴らしい楽園なんだろう。 虐待お兄さんはここを楽園に作り変えた。 畑番そのものはゆっくりがやってくれる。自分は呼ばれたときだけ行けばいいのだ。 群れのゆっくり達は虐待用のゆっくりを集めるためによく働いてくれる。 ほとんど何もしてないにも関わらず、報酬はしっかりと入る。 ゆっくりへの報酬は愛護派からの施しで十分だろう。 愛護派からは暇なときはすぐに会えてゆっくり達と遊べると喜ばれた。 農家の方からは畑荒らしの被害は一切なくなったので喜ばれた。 自分が働くことなく、また面倒なことをするでもなく ただゆっくりを虐待するためだけの環境を整えただけなのに、人々とゆっくりに感謝される。 今日もゆっくり達は悪いゆっくりを捕まえた。今夜はどんな虐待を試そうか。 ただ、たまに私を愛護派と勘違いされるのだけは笑いを堪えるのに苦労したが。 ああ、ほんとうになんて素晴らしい楽園なんだろう。 「おにいさん、ゆっくりしていってね!」 知らないということは幸せだ。 「ああ、一緒にゆっくりしような」 終わり 利用していることを悟られないように人もゆっくりも利用していく そんな虐待お兄さんの話でした。 by 睡眠不足な人 今までに書いた作品 ドスまりさのお願い(前) ドスまりさのお願い(後) 他にも何作品か書いてますが黒歴史ということで 続きへ このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/2422.html
※俺設定注意 ドスまりさの目の前でゆっくり達は全滅した。 泣き喚くもの、状況を理解せずに脅しつけるもの、命乞いをするもの。 人間はそんなゆっくり達を差別しない。 全て平等に、踏み潰し、切り裂き、引き千切り、殺す。 親ゆっくりも子ゆっくりも赤ゆっくりも老ゆっくりもすべてみんな殺されてゆく。 もちろん、ドスまりさもその殺戮の範疇にいた。 体は切り裂かれ、脳天に杭を打ち込まれているドスまりさの意識はない。 やがて処刑は終わる。 里の広場という処刑場にあるのは餡子。餡子。餡子の海。 気付けば日も暮れ始め、人間達はそれぞれの家に帰る。満身創痍のドスまりさを置いて。 だが、ここで奇跡が起こる。 ドスまりさの意識が目覚める。 本来ならば有り得えない。いくらドスとて、これほどの傷を負えばそのまま死ぬはずだった。 やがてドスまりさは地面にうち捨てられた帽子を拾い、ゆっくりと這い出す。 まただ。また、やってしまった。 ドスまりさはゆっくりと這う。おうちへと帰るのだ。 今回で何度目だ?一体、いくら死なせれば気が済むのだ? ドスまりさの胸中に浮かぶものは後悔。 ドスまりさは今まで何度も群れの全滅を見てきた。 ある時は突然の大雨。ある時はれみりゃの大群。そして、今回は人間の里に手を出してしまった。 他にも例をあげればきりが無い。 それほどまでにゆっくりは死にやすい。 今度こそ。今度こそこの群れは、立派にゆっくりさせてみせる。 そんな想いを何度も抱き、何度も打ち砕かれた。 この世はゆっくりできないものが多すぎる。そうだ。そうなのだ。 人間もれみりゃもふらんも山犬も雨も風も自然も何もかも、すべてがゆっくりできない。 もう解った。ゆっくりできないものには近づかない。近づきたくない。 だから次の群れは。次の群れこそはゆっくりさせてみせる。 ドスまりさは傷を庇うようにゆっくり這っていく。 その脳天には、いまだに杭が打ち込まれたままになっていた。 人間が立ち入ろうともしないような森の奥。 ここはゆっくりの理想郷。 ここのゆっくりは皆ゆっくりと、しあわせに暮らしている。 ゆっくりできないものなど無い。すべてがゆっくりしている。 ドスまりさは全てのゆっくりがしあわせー!になれるように、この理想郷を「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」と名づけた。 ゆっくりぱらのいあ 日の光が射しこむ朝。木の下に掘ったおうちの中で、まりさはゆっくり目覚める。 遂にこの日がやってきてしまった。 朝日の下、憂鬱な気分を紛らわすように溜息を吐く。 まりさの属する群れには、あるひとつの掟があった。 成人を迎えたゆっくりは、定期的に”お仕事”に就かねばならない。 まりさはこの春大人の仲間入りをした。今日初めて”お仕事”に就く。 これが普通の狩りや家事ならば、喜んでやろう。 まりさは本来そういう仕事に憧れていたし、その能力もあった。 だが違う。これからやる”お仕事”はどう考えても喜べるものではない。 ”お仕事”を放棄することは出来ない。 そんなことをすれば群れの長が黙っては居ない。 良くて追放、悪ければ・・・・・・まりさは考えるのを止める。 こんなことを考えても仕方が無い。 今日”お仕事”を済ませれば、当分の間は大丈夫。この群れに大人のゆっくりは数多くいる。 ゆっくり特有の前向き思考で、まりさは現状の問題を棚上げする。 こんな時はお兄さんと遊んだときのことを思い出そう。 まりさの話を聞いてくれて、まりさにいろんなことを教えてくれたとってもいい人。 今度はいつ会えるのだろう?また会って遊んでほしい。 楽しいことを思い浮かべるけれどもやっぱり憂鬱。 まりさはそんな気分で、森の広場へと向かっていった。 森の広場。 そこだけ木が切り取られたような広い空間に、巨大な饅頭が鎮座している。 この群れの長、ドスまりさだ。 「まりさ。まりさはゆっくりしてる?」 「もちろんだよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』だよ」 嘘だ。本当はゆっくりなどしていない。 だが嘘をつく。そうでなければ殺されてしまうから。 このドスまりさは狂っていた。 ドスまりさはこの群れ、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」をゆっくりにとっての理想郷だと信じ込んでいる。 ドスまりさは森の外は、ゆっくりできないものがうようよしていると信じている。 彼らは「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」の破壊を目的にしているのだ。 そのためドスまりさは、こんな森の奥に引っ込み、手出しができないようにした。 さらにドスまりさは、群れのゆっくりの中にも反逆者が混じっている、と信じている。 彼らはゆっくりできないもの、例えば人間と通じており、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」の破壊を目論んでいる。 彼らは忠実な群れのゆっくりに化けている。探し出し、処刑しなくてはならない。 ここのゆっくりは、皆ゆっくりしている。何故ならば、ドスが皆にゆっくりを提供しているから。 ドスはみんなの友達であり、ドスはみんなのことを常に考えている、ドスまりさは自分でそう信じている。 従って、群れのゆっくりは皆ゆっくりとしていなければならない。 もしゆっくりとしていないならば、それこそ反逆者である証拠だ。 「れいむ。れいむはゆっくりしてる?」 「もちろんだよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』だよ」 「ありす。ありすはゆっくりしてる?」 「もちろんよドス。ゆっくりしてるのはとかいはの『ぎむ』だわ」 「ぱちゅりー。ぱちゅりーはゆっくりしてる?」 「むきゅ、もちろんよドス。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』よ」 「ちぇん。ちぇんはゆっくりしてる?」 「もちろんだよー。ゆっくりしてるのはゆっくりの『ぎむ』なんだねー」 今日集められたゆっくりは5匹。 れいむ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、そしてまりさ。 この中で”お仕事”が初めてなのはまりさとぱちゅりー。 2匹は幼馴染みだった。 「今日はあつまってくれてありがとう。さっそく”お仕事”の説明をするよ」 一通り挨拶し終えたドスは話を切り出す。 「この前、ゆっくりできないれみりゃを見かけたという報告があったよ」 「れみりゃはゆっくりできない。ゆっくりできないものはこの森にいてはいけない」 「ドスはそう考えたよ。だからみんなに集まってもらった」 「みんなの”お仕事”は、そのれみりゃを永遠にゆっくりさせること」 「もちろん、反逆者がいたら報告してね。場合によってはその場で処刑してもいいよ」 きた。これだ。まったくゆっくりできない。 両親から聞いた話の通り過ぎて、まりさはさらに憂鬱になる。 「全てのれみりゃ・ふらん・その他捕食種はゆっくりできないよ」 「この森に住むゆっくりたちは全てゆっくりしており、この「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」は そうした完璧なゆっくりのみに許されたゆーとぴあだよ」 「ゆっくりしていない外見、中身、その他もろもろを持ったゆっくりは見つけ出され、根絶しなければならないよ」 知っている。 この森には飾りを無くしたゆっくりなんて者は居ない。 この森にはドスに逆らうゆっくりなんて居ない。 なぜなら飾りを無くせばドスに殺されるから。ドスに歯向かえば殺されるから。 最低のディストピアだ。 「ドスに内緒のお話・行動をしているゆっくりは反逆者だよ」 「ドスが知らない、認めていない組織に参加しているゆっくり。ドスが知らないということはその組織は秘密組織であり、 それに参加する者はドスや、「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」に危害を加えようとしているものと判断するよ」 「そんな反逆者は、狩りだして処刑されねばならないよ」 それも知っている。 秘密の狩りに出かけたもの。隠れてすっきりをしたもの。 彼らは全てドスに殺された。 この群れには密告というルールがある。 不穏な行動を取るゆっくりをドスに密告し、その報酬として安全を約束される。 自分の保身のために他のゆっくりを売る。 お陰でこの森から逃げる算段をつけることすらも難しい。 「ドスは君達の力量を考え、十分な装備を提供し、適切な任務を与えるよ」 「つまり、君達の任務成功率は100%だとドスは確信しているよ」 嘘だ。 ただのゆっくりがたった五人で、れみりゃに敵うと思っているのか。 それにこの森にれみりゃなんて居ない。 とっくの昔にドスまりさが狩りつくしてしまった。 報告というのもどうせ誰かの口から出任せ。 居ないものをどうやって捜せというのか。 つまり、まりさ達の任務成功率は0%だ。 ドスまりさの傍からゆっくりにとりが顔を出す。 このにとりも狂っていた。 まりさ達に手渡されるのは複雑に変形した棒のような何か。 おそらくはドスまりさの話を聞いて作った何かの模造品。これが「十分な装備」とは、恐れ入る。 「もし任務が失敗してしまうようならば、ドスはそれを反逆者の陰謀だと判断するよ」 まりさ達は任務の失敗を言い繕うために、反逆者を捜し出す。 別に反逆者である必要はない。誰かをそう仕立て上げれば良いだけのこと。 これからまりさたちが行うのは、自分達の命をかけた騙し合いだった。 「それからもう一つ!もし人間さんを見つけたら、必ず報告してね!」 「人間さんはゆっくりできないよ!人間さんはゆっくりできないよ!人間さんはゆっくりできないよ!」 壊れたようにドスまりさは繰り返す。 過去に何かあっただろう。それほどまでにドスまりさは人間を恐れている。 だがまりさは報告しない。 そんなことをすれば殺されてしまう。 ドスからすれば人間と会っているゆっくり=反逆者だからだ。 馬鹿正直に話をして、ドスまりさに反逆者と思われたら元も子もない。 「それじゃあみんな、頑張ってきてね!ドスはここで皆のことを応援してるよ!」 まりさ達5匹は、れみりゃが居たと報告された場所へ向かって歩き出す。 これから居もしないれみりゃを捜し出して、5匹の中の誰かを反逆者にするのだ。 まったくもって非生産的な”お仕事”。 楽しすぎて涙が出る。 そういえば、まりさは本当に反逆者なんだっけ。 ドスに内緒で人間さんと出会い、遊んだ。殺されるには十分な理由。 それだけのことで死んでたまるか。誰を犠牲にしてでも、絶対に生き延びてやる。 まりさはそう決意し、森の中を跳ねていった。 広場から遠く離れた森の何処か。 今まりさはひとり、森の中をぶらついていた。 当然のように、れみりゃはいなかった。 報告があったという洞穴。どこを探そうとれみりゃの影も形も見当たらない。 それでも一応、どこかに居るかもしれないという理由でまりさ達は分散して捜索を続けることにした。 死体は自分の無実を証明できない。 だから、まず先に殺してから相手に罪を被せることのほうが楽だ。 五人全員一緒に居ていつ誰から襲われるともわからない状況より、ひとりの方が気が楽だった。 このままでは任務は失敗に終わる。 その前に誰かに反逆者になってもらわねば。誰がいいだろうか?れいむあたりがいいかもしれない。 当然、相手も同じ事を考えている。殺るか殺られるか。 そう考えながら、まりさは周囲を捜索する振りを続ける。 突如。 目の前の茂みから、がさがさと音が鳴る。 まりさは驚愕する。 誰だ。れいむかありすかちぇんか。誰がまりさを殺しに来た。 いや、まさか。もしかしたられみりゃかもしれない。 もし本当にれみりゃが居たとしたら、今まりさはひとり。殺される。 あらゆる可能性が頭の中を駆け抜け、まりさを青褪めさせる。 しまった。いくら危険でも、全員で固まっていた方が良かったのかもしれない。 ここでまりさは殺され、後の4匹はまりさを反逆者ということにして生き延びる。 嫌だ。絶対に嫌だ。死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない…… もうまりさが何を後悔しても遅い。茂みをかき分け、出てきたのは――― 「お、いたいた。まりさ、ゆっくりしていってね」 まりさの不安は外れた。茂みから出てきたのは、人間さん。 そう、まりさと一緒に遊んでくれたお兄さんだ。 安心とともに地面にふにゃりとへたれ込むまりさ。 「ゆ、ゆぅぅ……。びっくりさせないでね、おにいさん」 「?」 お兄さんが首をかしげている。一体何のことかわからないのだろう。 お兄さんに説明してあげなきゃ。まりさはゆっくりと、今の状況を説明し始めた。 「ふーん……成る程ね。難儀だな、お前も」 「ゆぅ……ゆっくりりかいしてくれて、うれしいよ……」 大体の説明を終え、お兄さんはまりさを励ましている。 こんな異常な話に理解を示してくれたお兄さんに、まりさはさらに好感を持った。 「お前んとこの長が狂ってて、今お前は誰に殺されるかわからない状況だと……すごい話だな」 「ゆ……そうなんだよ」 普通ならばこんな話は信じられない。少なくとも、まりさは信じない。 でもお兄さんは信じてくれている。人間さんはとってもゆっくりできるとまりさは思った。 「俺にはどうすることも出来ないけど……とりあえずこれ、食べるか?」 「ゆゆっ?それ、なぁに?」 懐から真っ赤な丸いものを取り出すお兄さん。 初めて見るそれに、まりさは疑問を呈する。 「見たこと無いのか?トマトっていうんだ。美味しいぞ」 「ゆっ……?」 日の光を浴びて輝くトマト。言われてみればとても美味しそうに見える。 まりさはふらふらとお兄さんに近寄り、トマトを一口かじる。 「おっ……おいしぃ~!!しあわせぇ~!!!」 思わず涙が出てしまう。 それくらいに美味しい。ほんのりとした酸味と甘さのコラボレーション。まるで太陽の味。 まりさは脇目も振らず、トマトを平らげる。 「おにいさん!ありがとう!おいしかったよ!」 「どういたしまして。傷物でよかったらまだまだあるよ」 更に懐からトマトを取り出すお兄さん。まりさはトマトにかぶりつく。 ああ、こんなに美味しいものをくれるだなんて。やっぱりお兄さんは良い人だ。人間さんはゆっくりできる。 ドスは何であそこまで人間さんを恐れるのだろう?こんなに人間さんはゆっくりできるのに。 赤い果実を食みながら、まりさはそんなことを思った。 もう日が高く昇っている。 お兄さんと別れ、まりさは歩き出す。 トマトのお陰でおなかは満腹。気力も充実。 今ならば誰にも負ける気がしない。生き残るには最高のコンディションだ。 そろそろ洞穴の前に戻るべきか。 このまま一人で居続けたならば、いつの間にか反逆者に仕立て上げられ、逃亡したということになりかねない。 そうなればドスまりさの山狩りが始まる。逃げ切れるとは思えない。 まりさは急いで元来た道へと引き返す。 「ゆっくり!ゆっくりいそぐよ!……ゆっ!?」 何か声がする。 ゆっくりしていない罵声。何か争うような音。洞穴の前で誰かが戦っている。 まりさは木の陰に隠れ、様子を伺う。 「まっででねおぢびぢゃん!!今がらままがおぢびぢゃんのがだぎをうづがらね!!」 「ゆあ゛っ、ぐるな゛、ぐるな゛ああああああああぁぁぁぁぁ!!!!」 ゆっくりありすとゆっくりれいむ。 恐怖を顔に貼り付けながら逃げるれいむを、修羅もかくやという表情のありすが追っている。 「までっ、までえええええぇぇぇぁぁぁああああ!!!!おぢびぢゃんのがだぎいいいいいぃぃぃぃぃ!!!!」 「ゆひいいいぃぃぃぃ!!!!ごなっ、ごないでえええぇぇぇぇぇぇぁぁぁああ!!!!」 すでに両者はぼろぼろだ。まりさが到着する前からふたりは戦っていたのだろう。 「じねえええええええええええええぇぇぇぇえええ!!!!!」 「ゆびゅぇっ!!!」 ありすの体当たりが炸裂する。吹っ飛ぶれいむ。 「じねっ!じね、じねえええええぇぇぇ!!!」 「ゆびゅっ!!!ぶっ、ぼぉっ!!!」 すかさずれいむに圧し掛かるありす。 そのままれいむを踏みつけだした。 「おまえのっ、ぜいでっ!!まりざがっ、おぢびぢゃんがっ、じんだっ、んだっ!!」 「げびゅっ!!ぶびょっ!!びょぶっ!!ぼびっ!!ぶぽっ!!」 ありすの踏みつけは終わらない。 どんどん餡子を吐き出し小さくなっていくれいむ。 「おばえざえっ、おばえざえいながっだら、ありずはっ!!」 「びょっ!ぶっ!ぼぇっ!」 おそらく、ありすの家族はれいむの密告によって反逆者として処刑された。 偶然にもれいむと”お仕事”をすることになったありすは、仇を討とうとしたのだ。 こんな光景は珍しくない。密告によって家族を失うゆっくりは大勢いた。 「までぃざどっ!!!おぢびぢゃんどっ!!!いっじょにっ!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 ありすは止まらない。 れいむが皮だけになっても、まだ跳ね続けている。 「ありずは・・・・・・じあわぜに・・・・・・」 ようやくありすは止まる。 れいむだった饅頭皮に顔をうずめ、泣き始めた。 まりさは隠れるのをやめた。 そっとありすの傍に近寄る。 「ありす・・・・・・」 「ゆ・・・・・・?ま、まりさ・・・・・・?」 ありすは顔を上げる。涙と泥と餡子でぐちゃぐちゃの顔。 「まりさだ・・・・・・まりさ・・・・・・まりさ・・・・・・」 何度もまりさの名前を呼ぶありす。様子がおかしい。 「ゆふ、ゆふふ・・・・・・!あのれいむをやっつけたから、まりさがかえってきた!」 何を言ってる・・・・・・そう言おうとして、まりさはやめた。 このありすは狂った。長年の仇を討ち、復讐という精神の拠り所を失ったのだ。 「まりさが、まりさがかえってきた!」 れいむを殺しても、まりさとおちびちゃんは帰ってこない。 わかっていたはずの現実から逃避し、ありすは楽しい夢の世界へといった。 「あれ?まりさはかえってきたけど、おちびちゃんがいないわね?」 きょろきょろと周囲を振り返るありす。 その瞳に正気の色は無い。 「おちびちゃんったらいったいどこにいったのかしら・・・・・・まりさ、しってる?」 まりさに子供の居場所を尋ねるありす。 まりさは首を振り、わからないと言った。 まりさにあの世の場所などわかるはずも無い。 「もう、おちびちゃんったら!ままにこんなしんぱいさせて、いけないこね!」 言葉では怒りつつも、その顔は満面の笑顔で満たされている。 きっとおちびちゃんがいた頃のありすはこんな感じだったのだろう。 慈愛に満ちた、優しいママ。 「まりさはそこにいてね!ありすはおちびちゃんをさがしてくるわ!」 まりさを洞穴に残し、ふらふらとありすは歩いていく。 見つかるはずの無いおちびちゃんを捜しに行くのだ。 「おちびちゃん~♪かくれてないででておいで~♪」 少しずつありすの姿は遠く、小さくなっていく。 おちびちゃんを呼ぶ声は、本当に楽しそうだった。 やがて、ありすの姿は見えなくなった。 でも、あの声は。 楽しそうにおちびちゃんを呼ぶ声はいつまでも消えずに、まりさに届いていた。 それからすぐに、ちぇんとぱちゅりーは戻ってきた。 まりさはれいむが反逆者であったこと、自分がそれを倒したことを伝えた。 ありすはれいむに食われたことにした。 生きていると知られるよりも、死んでいると思われたほうがあのありすにとって幸せだと思えたのだ。 結局、任務は失敗に終わった。 邪悪なる反逆者・れいむがその命を以ってまりさたちを阻んだのだ、ということにした。 森の広場で、ドスまりさに報告を行う。 「―――というわけで、にんむはしっぱいしちゃったよ、ドス」 「ゆうう!!反逆者がいたなら、仕方ないね!!」 まりさの言い訳に納得するドス。 任務は失敗だが、反逆者を見つけたことで満足したようだ。 「それじゃあ皆、お疲れ様。今回の任務はおしまい―――」 任務の終了を言い渡そうとするドス。 れいむという犠牲を払って生き延びられたというまりさの安心を――― 「まってねドス!はんぎゃくしゃはまだこのなかにいるんだよ!わかってねー!」 ―――ちぇんの叫びが、阻んだ。 「ゆ?どういうこと、ちぇん?」 「わかるよー!まりさははんぎゃくしゃだったんだよー!」 まりさの息が詰まる。 一体どういうことだ。このまま行けば任務は完了するはずだったのに。 「ちぇんはみたんだよー!まりさがにんげんさんといっしょにいるところを! まりさはにんげんさんからなにかあかいたべものをもらっていたよー! たのしそうにおしゃべりしてたよー!きっとまえからにんげんさんをしっていたんだねー!」 ちぇんは見ていたのだ。まりさが人間さんと出会った一部始終を。 それだけならばまだ良かったかもしれない。その後ちぇんはまりさを見失った。 そして洞穴に戻ってみればまりさと、れいむの死体があった。 きっとまりさは人間さんの手下として、れいむを殺したに違いない。 ありすがれいむに喰われたというのも嘘だ。きっとまりさがありすを殺して、食ったんだ。 なにも知らぬちぇんが、そう思ったのも不思議ではない。 本当の反逆者を告発するのに一片の躊躇もない。 「まりさのいってたことはうそだよー!きっとれいむとありすはまりさにころされたんだよー!」 「・・・・・・本当なの?まりさ」 能面のような無表情でドスまりさが問う。 やばい。やばいやばいやばい。殺される。何とかしてこの場を切り抜けなければ―――! 「ちっ、ちがうよ!ドス!そのちぇんのいってることはうそだよ!」 咄嗟にそんな言葉が口から出る。 こうなったら、ちぇんを反逆者にしてしまおう。そうでなければ、自分がそうなる。 まりさは覚悟を決め、嘘を並べる。 「まりさはそんなことしらないよ!きっとちぇんがにんげんさんのてしたなんだよ! まりさをはんぎゃくしゃにして、ころそうとしているにちがないよ! どす!だまされちゃだめだよ!このちぇんのほうこそはんぎゃくしゃだよ!」 「ちがうよー!まりさがはんぎゃくしゃだよー!わかってねー!」 「・・・・・・ゆうううぅぅぅぅ・・・・・・」 ドスまりさは悩む。 両者の言っていることは正反対。どちらかが反逆者だという明らかな証拠が無い。 はたして本当のことを言っているのはちぇんか。まりさか。 「まりさはしょうにんがいるよ!まりさはぱちゅりーといっしょにいたよ!」 「むきゅっ!?」 突然話を振られ、うろたえるぱちゅりー。 ドスまりさがパチュリーの方を向き、訊ねる。 「本当なの、ぱちゅりー?」 「む、むきゅううううううう・・・・・・」 おろおろしているぱちゅりーを見ながら、ちぇんは哂う。 何を言っているんだ、あのまりさは。 あの時まりさはひとりで、ぱちゅりーなどいなかった。まりさは自分の首を絞めたようなものだ。 虚偽の告発は、それも反逆だ。あの反逆者まりさは、処刑されるのだ。 「・・・・・・ほ、ほんとうよ。ぱちゅはまりさとずっといっしょにいたわ!」 「にゃあ!?」 ぱちゅりーの言葉に驚くちぇん。 そんな。どうして。何故そんな嘘を。 ちぇんはぱちゅりーの言っていることがわからない。 「ぱちゅはまりさといっしょにいたけど、にんげんさんなんてみなかったわ!ちぇんのいってることはうそよ! きっとちぇんがにんげんさんにあって、まりさをはんぎゃくしゃにするよういわれたにちがいないわ!」 ちぇんは知らなかった。 このぱちゅりーはまりさの幼馴染みだということを。 日々互いが密告をする群れの中で、2匹は信頼しあっていたということを。 ぱちゅりーは何も知らない。 まりさが人間さんと出会っていたことなど知らない。 まりさの言っていたことは嘘だということも知らない。 ただ、まりさのため。そのためだけに今こうして口裏を合わせている。 「いだいなちせいをもったドスならわかるでしょう!ちぇんははんぎゃくしゃよ!」 「ちっちがうよおおおおおおおお!!!わがっでねえええぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 今度はちぇんがうろたえる番だった。 まりさは反逆者だったはずなのに、いつのまにか自分が反逆者ということになっている。 しかも相手には証人が居る。2対1。絶体絶命。 「・・・・・・ドスは判断したよ」 ゆっくりと口を開くドスまりさ。 「ドスはちぇんを反逆者だと判断し、これを処刑するよ!」 「に゛ゃあ゛あ゛あ゛あ゛あああ!!!ぢがうよおおおおお!!!ドズぅ、わがっでよおおおおおお!!!!」 泣きながら自身の潔白を訴えるちぇん。 だが無駄だ。もうドスまりさはちぇんを反逆者と決めている。反逆者の言うことなど聞かない。 ゆっくりと開かれる口。 そこにはちぇんを消し去るための光が満ちる。ドススパークだ。 「反逆者はゆっくりしないで死んでね!!」 閃光。 まりさは見た。ドスの口から放たれる、灼熱の焔を。 小さく引き絞られた口径により、威力を高められた光の槍がちぇんを穿つ。 スパークと言うよりはまるでレーザーのよう。 ドスまりさは少なくとも勤勉だった。 己の身を守るため、群れを人間やれみりゃから救うために研鑽し続けた。 その結果がこのレーザー。このドスまりさだけが編み出した、新たなる武器。 ちぇんの額に穴が開く。 びくびくと痙攣し、白目を剥くちぇん。穴は深く、ちぇんの後頭部まで貫通している。 だがドスまりさはまだ止めない。 二度三度、レーザーを撃つ。次々にちぇんの穴が増えていく。 発射時間を抑え、その代わりに連射を可能にしたこのレーザーに隙は無い。 危なかった。まりさはそう思う。 一歩間違えば、自分がこうなっていたのだ。ドスの恐ろしさを改めて再認識する。 ドスまりさは止まらない。 ドスまりさがレーザーを撃つたび、森にレーザーの発射音が木霊する。 最早ちぇんが蜂の巣と見分けが付かなくなった頃。 ようやくドスまりさはちぇんを撃つのをやめた。 「―――ふぅ。反逆者はゆっくり死んだよ!」 元ちぇんだった穴だらけの何かの前で、ドスまりさは笑顔でそう言った。 最初の一発で死んでいたのに、何故ここまでやる必要があるのか。 やはりドスまりさは狂っているのだ。どうしようもない偏執狂。 「ごめんね、まりさ。ドスはまりさのことを疑ってしまうところだったよ」 まりさに謝るドスまりさ。 疑ってしまうところだった?思い切り疑っていたではないか。今は謝罪より、さっさと開放してくれ。 まりさは心の中で毒突く。 「さぁ、まりさ、ぱちゅりー、ご苦労だったね!"お仕事"は終了だよ!」 今度こそ任務の完了を告げるドス。 ようやく終わった。まりさは安堵する。 このふざけた茶番も終わり。次の"お仕事"がいつかは解らないが、とりあえずそれまではゆっくりできる・・・・・・。 「まりさとぱちゅりーにはご褒美をあげなくっちゃね!」 突然、ドスまりさがそんなことを言い出した。 ご褒美?なんだそれは? 両親の話にも出てこなかったご褒美とやらに、まりさは興味を持つ。 もしかしてまりさ達が優秀だったからご褒美をくれるのかもしれない。 5人の内、2人も反逆者がいたのだ。普通だったら全滅していてもおかしくはない。 生き残った2人は、それだけ優秀だった。ならば一体どんなご褒美が出るのだろう。 もしかして綺麗なたからものかもしれない。 ドスまりさが持っていると言われていたキラキラと輝く石。 そんなものがあれば、まりさは一生他のゆっくりに自慢ができるだろう。 もしかして沢山の食べ物かもしれない。 ドスまりさは群れの食料を管理している。そこからご褒美としてまりさに融通してくれるのでは。 自分の身体が埋まるほどの量の食べ物。一体どれほど幸せだろう。 もしかして。もしかして。もしかして。 まりさの期待は際限なく高まる。 「まりさたちには・・・・・・あの・・・・・・えーと・・・・・・なんだっけ・・・・・・ あの赤くて丸い、とってもおいしいもの。あのほっぺが落ちそうになるあれの名前は・・・・・・」 ああ。それはトマトだ。赤くて丸くて美味しいもの。 あの太陽のような輝きを持った食べ物は、まりさの心の中に刻まれていた。 「ゆっ!ドス、それはとまとさんだよ!」 まりさは指摘する。ドスのご褒美はトマトだったのか。 トマトならばご褒美として申し分ない。さぁ。早くトマトを。トマトをくれ。 まりさがドスに向かってそう言おうとした時。 「・・・・・・まりさ、トマトさんって一体何?トマトさんは人間さんの食べ物だよ」 冷たく重い、ドスまりさの言葉が返ってきた。 「まりさ、まりさは人間さんのことをよく知らないはずなのに、なんでトマトさんのことを知っているの?」 まりさは凍りつく。 やばい。しまった。迂闊だった。何とかしなければ―――。 「まりさは人間さんと出会ったことがないんでしょ?それなのになんでトマトさんのことを知ってるの? 人間さんを知らないのに、トマトさんは知ってる。 もしかして、まりさは人間さんと出会ってるんじゃないの?」 ドスまりさはまりさを騙したのだ。 ちぇんを処刑したとき、ドスまりさはまりさのことも疑っていた。ちぇんの証言は具体的過ぎる。 赤い食べ物とは一体何か。恐らくだが、トマトのことか、苺のことだろう。 ドスまりさはまりさにカマをかけてみたのだ。知らないならば良し、もし知っているならば反逆者。 「まりさはドスに嘘をつき、人間さんと出会っていた。これは立派な反逆行為となるよ! よってドスはまりさを反逆者と見なし、これを処刑するよ!」 まりさの目の前が真っ暗になる。もう駄目だ。まりさは死ぬ。 絶望の涙を流すまりさ。 「それからぱちゅりー!ぱちゅりーはドスに嘘をついていたね! ぱちゅりーはまりさと一緒にいたと言ったけど、それなら人間さんと出会っていることになるよ!」 「む、むきゅ!ドス、じつは、ぱちゅりーは・・・・・・」 「もしぱちゅりーがまりさと一緒じゃなかったなら、それもドスに嘘をついたことになるよ! ぱちゅりーはドスに嘘をついた!これは立派な反逆行為であり、ドスはぱちゅりーを反逆者だと判断するよ!」 「む゛、む゛ぎゅううううううううううう!!!」 ぱちゅりーも反逆者となった。 もうまりさたちに逃げる手段はない。 「ドスはまりさ、ぱちゅりーの両名を反逆者として認め、刑の執行を開始するよ!」 またも口を開くドス。その中には滅びの光。 今度その照準が向けられるのはちぇんではない。狙うのは、まりさ達。 最早まりさたちに希望はない。絶望し、涙を流しながら寄り添う二匹。 一体何のために生まれてきたのか。 自分達はゆっくりするために生まれ、生きてきたはずだ。それが何故、こんなことに。何故こんなことで死ななければならない。 もっとゆっくりしたかった。まりさ達はそう叫ぼうとして。 その叫びは光の中に呑み込まれていった。 「・・・・・・ゆぅ。まさか全員死んでしまうとは思わなかったよ」 「でも次のまりさ達なら。今度のゆっくり達なら、もっとうまくやってくれるよね」 「―――もしもし、○○さんですか?ええ、はい。私です。いつもお世話になってます」 今俺は電話をかけていた。相手は少し離れた里の重役さん。 「はい。いました。きめえ丸が巡回中に見つけたんです。 ・・・・・・ええ、うちのゆっくり園の中に逃げ込んでました。もう群れを作っていますね」 少し前、とあるドスまりさが群れを率いて里にちょっかいを出したらしい。 勿論その群れは潰され、ドスも殺されたはず・・・・・・だった。 「ええ、いえ、いいんですよ。別にうちの商品の価値が下がるというわけでもないし。 こちらとしても貴重なドスがゆっくり園にいるというのは好ましいことですから」 ところがそのドスは満身創痍ながらも逃げ仰せ、今は俺が所有する食用ゆっくりの繁殖地―――「ゆっくり園」に逃げ込んだ。 ここと向こうの里ではかなりの距離があるというのに、大した奴だと思う。 「はい。それに、結構面白い個体ですよ、奴は。どうもそちらでお灸を据え過ぎたようでしてね。 どうやら人間を恐れているようなんです。それも異常なくらいに」 今のドスまりさはとても変わったルールというか、指導方法を群れに課している。 いや、指導方法とは言い方が悪かった。あれではまるで粛清と、独裁だ。本当に変わっている。 「それに他にも面白いところがありまして。"ドススパーク"ってご存知でしょう? あれが少し変わってましてね。まるでレーザーみたいに連射してるんですよ」 毎日毎日誰かを疑っては、殺す。その日々をドスまりさは送っている。 きっとあのレーザーはそんな中で生み出されたものかも。実に興味深い。 「ああ、大丈夫です。連射が効くといっても、相手は人間を恐れているし、危険はありませんよ。 それに、あのレーザー程度じゃ問題にはなりません。駆除しようと思えばいつでもできます」 それに何より面白いのは、ドスがそんな暴君だというのに意外と群れの安定は保たれているということだ。 心優しい名君より、狂った無慈悲な暴君。そっちの方がゆっくりには合っているのかもしれない。 「しばらくは様子を見ようと思っています。あのドスが一体どういう群れを作っていくのかが興味あるので。 ・・・・・・ええ、どうも。ありがとうございます。それでは、また」 受話器を置く。傍らにはゆうかと、きめえ丸が立っていた。 「よし、きめえ丸。お前はもう一度監視に言ってこい」 「おお、了解了解。まったくゆっくり使いの荒いことで」 「ゆうかは俺についてこい。ちょっとあの群れのゆっくりに接触するぞ」 「わかったわ、お兄さん」 はてさてドス。お前は一体、その狂った頭でどんな理想郷を作ろうとしているんだ。 人間が立ち入ろうともしないような森の奥。 いや、正確にはここは私有地。だから誰も立ち入ろうとしない。 ここはゆっくりの理想郷。 ここのゆっくりは皆ゆっくりと、しあわせに暮らしている。 ゆっくりできないものなど無い。すべてがゆっくりしている。 それは嘘だ。全てはドスの妄想。ただドスがそう思っているだけ。 ドスまりさの頭にはいまだ杭が刺さっている。その杭のせいか、はたまたこの世の現実か。そのどちらかが、ドスまりさの心を狂わせた。 ここには幸せなゆっくりなど一匹もいない。ドスまりさは繰り返し滑稽な茶番を行う。 ドスまりさは全てのゆっくりがしあわせー!になれるように、この地獄を「ゆっくり・あるふぁ・こんぷれっくす」と名づけた。 ――――ゆっくり、あなたはゆっくりしてる? ――――ZAP! ――――ZAP! ――――ZAP! おわり ――――― 元ネタはボードゲームの「パラノイア」です。 閉ざされたディストピア。狂った管理者。敵はモンスターではなく、他のプレイヤー。 いかに生き延びるか、あるいは滑稽に死ぬか。 そんな設定に心惹かれました。 といっても元ネタの設定の良さの10分の1すら伝わってないとおもうんだねー、わかるよー! て言うかボードゲームやったことないくせにこんなSS書くなんて身の程知らずだったんだね、わかるよー!! このSSに感想をつける