約 1,091,115 件
https://w.atwiki.jp/tomochan/pages/12.html
斜度 = ひんぱん 浪人の商人(?) = さすらいのしょうにん
https://w.atwiki.jp/utauuuta/pages/4093.html
あさやけもゆうやけもないんだ【登録タグ Youtubeミリオン達成曲 x0o0x_(UTAU) あ さてまろ みたらしいぬ 島(Sakamotonorok) 曲 殿堂入り】 作詞:9Q 作曲:9Q 編曲:9Q 唄:唄音ウタ(デフォ子)、使音アキ、みたらしいぬ、さてまろ、x0o0x_ 曲紹介 島(Sakamotonorok)が9Q名義で投稿したUTAU曲。 新たにリメイク版として夏毛名義で投稿された。 歌詞 あるまちに さまよい まいごに なった ねんじゅう きょくやの このまちに ひとりで きたんだ すたれた じんじゃの とりい くぐる ひかりが ないのに めが くらむ ふゆのうみへ おぼれそうで それが ここちよくて さむいよる ながく つづく まちの びょうまに おそわれている あさやけも ゆうやけも ないんだ あおが つづくだけ くらがりの みじかい ゆめを みる なまあたたかい かぜが ふく たいようも まひるも きえるんだ しかいが ぼやけた あぶない このまちは うっそうと しています こきょうは ひさしく なりますが もう もどれないのです きずあとが うずく こごえてくる ひかりが ないのに めが くらむ しものうみへ おぼれそうで それが ここちよくて さむいよる ながく つづく まちの びょうまに おそわれている あさやけも ゆうやけも ないんだ あおが つづくだけ くらがりの みじかい ゆめを みる なまあたたかい かぜが ふく たいようも まひるも きえるんだ しかいが ぼやけた さむいよる ながく つづく まちの びょうまに おそわれている あさやけも ゆうやけも ないんだ あおが つづくだけ くらがりの みじかい ゆめを みる なまあたたかい かぜが ふく たいようも まひるも きえるんだ しかいが ぼやけた (さびしくて かなしく すすりなく きく あたたかく でも さむく あさやけも ゆうやけも わすれた もろく きえたんだ) コメント 初めてのはずなのに懐かしくてようやく会えた気がする曲 -- 名無しさん (2020-10-31 04 34 04) …あぁ…つらい…どうしてこんなにつらい歌詞を書けるのか…こんなメロディーと一緒に…覚悟を感じる… -- 名無しさん (2020-12-03 22 03 00) 私の身体中のツボを押さえている。自分の置かれた状況や好きな物語やキャラクターを思い浮かべなら聞いてしまう。すてきだ〜 -- 名無しさん (2020-12-18 16 35 10) なんだか切ない・・・ -- 名無しさん (2021-01-04 15 12 14) これ裏化し -- 名無しさん (2021-05-12 10 09 35) これ裏歌詞すごいなあ -- 雨宮優 (2021-05-12 10 10 45) どうでもいいけどたこ焼き犬可愛いよね -- 爆破ニキ (2021-08-02 13 51 44) たこ焼きいぬじゃなくてみたらしいぬ -- 名無しさん (2022-01-07 14 24 35) う、裏歌詞…!?そんなものが存在してたんだ… -- 名無しさん (2022-01-21 11 33 55) このコード進行まじですこ -- (2023-07-13 10 29 56) 裏歌詞がすごい。そして裏歌詞があったことに衝撃受けた -- 玲邇 (2023-08-05 13 52 15) リズム好き -- サイフ (2023-08-19 09 54 46) 神曲 -- 名無しさん (2023-12-10 07 04 16) 裏歌詞壊すぐる -- 名無しさん (2024-01-09 03 05 23) ↑(訂正)怖すぎる -- 名無しさん (2024-01-09 03 06 02) デフォ子のみオフボーカル版を聴いてみたらめっちゃ裏歌詞聞こえてきて草生えた -- 名無しさん (2024-02-02 06 32 32) なんか謎の懐かしさと寂しさを感じる… -- 名無しさん (2024-03-12 22 50 48) 裏歌詞あったんだ....最後若干聞こえたけども。 -- 名無し・オブ・ザ・名無し (2024-07-18 10 34 44) 後ろの夜景好き -- 名無し (2024-09-15 23 41 31) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/may3dcustom/pages/370.html
主にMAY,JUNスレで活動している住人。中の人はもう数年で40代らしい 眼鏡をかけた小さなけもの耳娘のSSを中心に貼っている 自らの妄想で泣いてしまったりと発言の節々から嫁をかなり溺愛していることが伺える嫁というよりは娘という感覚なのかもしれない ……乳首あきと同一人物? 名前 コメント 主なスレ住人
https://w.atwiki.jp/onimomo/pages/655.html
■ 英語学習アプリ「鬼桃語り」の攻略サイト■ 鬼桃語り攻略メニューへ戻る ひいぽよけも No ★ 属性 桃トモ名 MAX LV 311 2 火 ひいぽよけも 15 HP ATK DEF HEAL 110 35 6 23 MAX HP MAX ATK MAX DEF MAX HEAL 146 47 8 30 SKILL名 SKILL あげぽよぉ~! 次の味方の攻撃力アップ・中 進化先 デカ炎ぽよけも ■ 英語学習アプリ「鬼桃語り」の攻略サイト■ 鬼桃語り攻略メニューへ戻る
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/2465.html
750 名前:ぽけもん 黒 27話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2011/12/29(木) 01 22 47 ID 7CNDPUVs [2/9] 「私が反ロケット団のリーダーであるシルバーだ、か。いやー、いうねえ」 数時間後。集会が解散した後、僕達はシルバー、そしてシルバーの傍らにいた壮年の男と、休憩室といった趣の小さな部屋にいた。 「うるせえ黙れ。俺にも立場ってもんがあんだよ」 いつもと随分と違うキャラを演じていたことを恥ずかしく思っているのだろう、シルバーは顔を赤くしている。 壮年の男はそれを穏やかな目で見ていた。 「それで、こちらの方は?」 僕がシルバーに彼のことを尋ねると、シルバーが答えるより早く、彼は答えた。 「私はただのしがない年寄りさ。彼の父と親しくさせていただいてね」 「そういうことだ。この人は俺の昔からの協力者さ」 シルバーの父。 その言葉で、先ほど浮かんだ疑問が再燃した。 「そうだ。シルバー、さっきの演説で随分とロケット団を恨むようなことを言っていたけど、いったいどういうことだ?」 「……今は言えねえ。だが、俺にはロケット団を潰す義務がある。ただ、十年前の警察からやられたこと、アレのバックにロケット団の指示があったということだけは言っておく」 彼のこともなげに付け加えたようなその話は、それだけで僕にとっては大きな驚きだった。アレがロケット団の指示だったって、シルバーの父はロケット団の幹部じゃなかったのか? それに、ロケット団を恨む理由としてはこれで十分であるように思える。 この出来事がきっかけで、すべては変わってしまったのだから。 でも、シルバーはそれをまるでおまけのように語った。じゃあ彼のロケット団を潰す義務ってのはいったい何なんだ? 「お前はまた余計なこと考えてんな」 「余計なことじゃない。大切なことだ」 「ともかく、俺は今お前にそれを言う気はねえ。諦めろ。そもそも、俺はそんな話をしにここにお前等を呼んだわけじゃねえんだ」 「じゃあ何のために……」 「作戦のために決まってんだろうが」 「あ」 うっかりしていた。 集会参加者の何人かと話を交わし、彼らのロケット団から受けた酷い仕打ちにすっかり感情を動かされ、本題を忘れかけていた。 「まったく、俺達はロケット団被害者の会じゃないんだぞ」 「ごめん……。でも、ちゃんと実働部隊の人の能力と性格はある程度調べたよ」 「当たり前だ」 彼はそういいつつ、テーブルの上にラジオ塔の図面を広げた。さらにその上に小銭とメダルを広げる。 「メダルが俺達の戦力だ。そしてこの小銭は敵戦力。小銭の金額はそのまま敵の数として考えろ」 「敵の作戦は分かったのか?」 「いや、ほとんどの団員には古賀根市に集まること以外何も伝えられていない」 「じゃあ作戦は分からずじまいか」 「一応、ぎりぎりまで調べようとは思うが、期待はできないだろう」 「作戦が分かってるに越したことは無いけど、どのみち雑兵にできることなんて限られてくし、この場合は特に僕達の作戦の問題にはならないと思う」 「どういうことだ?」 「入り口や階段、エレベーターの数は限られている。そこを抑えればそれだけでいい」 僕はそういいながら、二機あるエレベーターに一人ずつ、社員用出入り口に二人、階段に二人、非常階段に一人、適切なメダルをおいていく。 二人配置したところは力押しで突破されないよう、弱点を補う、もしくは相互に組み合わせて力を発揮するタイプの人員を、一人配置のところには地形を利用して放水や落石など単純な物量で守れる人員を配置してある。 「敵は航空戦力を使用しないって話だけど、追い詰められたら目立つのを無視して強硬手段に出るかもしれない。それでこうだ」 そういって、僕は屋上に雷タイプのポケモンを二人、飛行タイプのポケモンを二人配置した。 「ランは使わないんだな」 「彼女は最終手段だよ。構内じゃ危なくてとても使えない」 「最終手段?」 「基本はお前とともに電波発信を狙う幹部に対応してもらうつもりだけど、もしそれが失敗に終わったら、ラジオ塔そのものを焼き落としてもらう」 「……随分な作戦だな」 「あくまで最後の手段だよ。最悪の事態を避けるためだ」 「最悪の事態……か」 シルバーはそう言って苦々しげにうつむく。 751 名前:ぽけもん 黒 27話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2011/12/29(木) 01 23 40 ID 7CNDPUVs [3/9] そうだ、もしロケット団の作戦がすべてうまくいってしまえば、この国は奴らに乗っ取られてしまう。 それを防ぐためには、いくらかの犠牲と被害を出そうとも、ここを奴らの手中に収めさせるわけにはいかない。 「分かってると思うけど、この作戦の性質上、奴らに先んじて、僕達が施設を占拠しなきゃいけない。だから、敵の作戦決行がいつになるかを先につかむことが肝と言える。おそらく、やつらも目立つをの避けるために、まずは少数精鋭での制圧を行うはずだ。中枢を押さえたら、大部隊を投入して一気に占拠、という狙いだろう。というか、多分、今回集められる部隊のほとんどはラジオ塔を占拠するために用意されたわけじゃないと思う」 「どういうことだ?」 「奴らの作戦が成功した際、いくら世の中が混乱に陥るとはいえ、ラジオ塔を奪還、もしくは破壊するために動く人間がいないとは考えがたい。だから、少なくとも作戦遂行中はラジオ塔を守る人員が必要だろう。そして、流される電波があのときと同じものだとすれば、奴ら側のポケモンも行動不能になる。もし集められた人員の多くが人間ならば、それは多分間違いない」 「分かった、調べよう。もし敵がほとんど人間なら、戦力はポケモンに大きく劣る。守るのは容易か」 「そういうこと。守ることは多分難しいことじゃない。問題は、先に先遣部隊なり何なりにラジオ塔を制圧されてしまった場合だ」 僕はそういってポケギアを操作し、資料を広げる。 「これによると、ラジオ塔側に僕達側の伝手は無いんだよな」 「ああ、それはつい数時間前に話が変わった。プロデューサーの一人から協力を得られそうだ」 「へえ。もともとラジオ塔に知り合いなんかはいなかったんだろ? どうやったんだ?」 「単純に、倫理や立場より話題と視聴率が好きな人間に今回の話の一部を明かしたのさ。そしたらいい特ダネになるとノリノリだ」 「まったく、ろくな人間じゃないな……。まあ、今回に限って言えば好都合か。ならどこかに事前に僕達を潜入させてもらうってことはできないかな」 「相談してみよう」 「よろしく頼むよ。もしこれができれば先手を取れるのは約束されたようなものになる。後は、もし突破された際の話だけど、……」 そうして、僕が計画をすべて話し終えると、シルバーは重々しくうなずいた。 「あとは情報を待つのみか」 「そうだな」 「じゃあ今日はここで解散だ。また後日連絡する」 「……ああ。じゃあ、また」 僕はそう言って、香草さんとやどりさんとともに部屋を出た。 入り口のところで、先ほどシルバーの傍らにいたおじさんを見つけ、軽く会釈する。 いったいこの人は何者なんだろう。 僕はそんな疑問を抱きながら、その場を後にした。 そこから数日、僕達はひたすらポケモンセンターで時間を潰していた。 連絡は未だ無く、しかしいつ作戦が始まるか分からないから動くわけにも行かず、トレーニングもできない。 そして香草さんはやどりさんがいるにも関わらず常にいちゃいちゃしようとしてくるから困る。 どうも人がいるところでいちゃいちゃするのには抵抗が…… それに、特に一緒に旅をする仲間の前というのは。 やどりさんは僕達の様子を見せられて不満げだし、香草さんもいまひとつ僕が煮え切らないのを見て不満げだ。 香草さんには申し訳ないけど、こんなときくらい自重してもらえると助かるんだけどな。 彼女のぬくもりを肌で感じながらそう思う。 「ねえ、ゴールド、大丈夫よね? 死んだりしないわよね?」 香草さんが甘く耳元で囁く。 何度目変わらない、彼女の問いかけ。 その言葉の裏に、この計画に参加するのをやめてほしいという彼女の叫びが聞こえる。 「大丈夫だよ。生き残って見せるさ。絶対に」 僕はその叫びから耳を反らし、また何の役にも立たない、祈りにも似た言葉を重ねた。 752 名前:ぽけもん 黒 27話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2011/12/29(木) 01 24 28 ID 7CNDPUVs [4/9] 数日後、ラジオ塔内部。 僕達は機材搬入車に入り、難なくラジオ塔の内部に潜入した。 ロケット団の襲撃の日は確定してはいないが、ロケット団の集まり具合や資材の流れから一両日中に行われることがほぼ間違いなくなったので、例のプロデューサーの手引きで内部に潜伏することとなったためだ。 埃臭い、普段は倉庫となっていて、人の入らない資材置き場の一角。 その入り口から死角となる最奥部が、僕達の詰め所となっていた。 そこで僕達は数日前会ったメンバーの一部と再開を果たし、そして作戦を説明する。 もちろん、盗聴防止のため電波探知がかけられ、そして独断での行動を禁止することで、作戦が外部に漏れることを防止してある。 僕の説明を、皆が険しい顔をして聞く。 ちなみに、僕がこの作戦の立案者だとは伝えられていない。 僕はただの仲介役ということになっている。 シルバーと違い、あの演説のように参加者の不安を抑えることなんて僕にはできない。 説明が済んだ後も皆緊張でか言葉少なかったけど、数人、他愛の無い雑談を交わす者もいた。 集められた時は張り詰めていた空気も、何の続報も無く数時間も待機させられたら緩みもする。 どことなく、「もう、今日は来ないんじゃないか」という空気が漂い始めた、そんな頃。 大音量で通信が鳴り響く。 「ロケット団潜入との情報あり。至急行動開始せよ」 そんな簡素な情報に、僕達は一瞬で総毛立つ。 先手を打たれた? いや、まだ予想の範囲内、いかようにも挽回できる。 しかし僕達が潜入したその日にロケット団が行動を起こしてくるとは。 僕達側の情報網がさすがと言うべきなのか、それとも、敵方の行動の迅速さを褒めるべきなのか。 ともかく、僕達は一斉にそれぞれの持ち場へ向かって走り出した。 まわしてもらった監視カメラの映像には特に敵影は無い。 おそらくまだ進行の初期。排除はたやすい段階だと思われる。 持ち場に合わせて僕達は暫定的に四グループに別れ、担当する持ち場のない余剰人員が予定外の会敵時の対処や内部の人間に対する状況説明、場合によっては持ち場を持った人員に代わって鎮圧を担当することとなっている。 初めはやどりさんを足止めに配置しようかと思ったけど、思ったより人員があまったので僕とともに行動してもらうことにした。 なので僕は香草さんとやどりさんの三人で行動することになる。 早速ガスマスクをつけたロケット団員と、スモッグを吐き散らすマタドガスに出くわした。 「やどりさん、ハイドロポンプ」 やどりさんの放つ激流で毒ガスごと押し流した。 こっちはとっとと所定の位置に全員を配置しなきゃいけないんだ。いちいち構っている暇は無い。 拘束は手が開いている者に任せることにして、気絶しているロケット団員を横目に、僕達はひたすら突き進む。 その甲斐あってか、さらに数人のロケット団員を倒した後、順当に全員を予定の配置につかせることができた。 本格的な戦闘があちこちで開始したようで、はあ、と僕が一息つく周りで、怒号が響き渡っている。 「そうだ、急がないと」 一応、シルバーと協力者が偉い人に話をつけてくれているはずだけど、念のため見に行ってみようか。 見取り図をみて、局長室へ向かってみると、机を挟んでシルバーほか数人と局長と思われる人が向かい合っていた。 「話は分かった。だが、君達が下の連中と共謀してないとどうして言い切れる?」 入るなり、局長らしき人の厳格そうな声が聞こえてくる。 これだけの人数の得体の知れない人間を前にして、まったく臆すことなくこんな台詞をいえるなんて、なかなか肝の据わった人だ。 ランは僕たちに気づくなりこちらを睨んできたが、シルバーがちゃんと言ってあったのだろう、僕たちに襲い掛かってくるようなことは無かった。 「あなたの言い分も尤もです。だが、今それを証明することは不可能だし、事態は一刻を争うのです」 一方こちらは、例のシルバーの傍にいた男が交渉役になっているようだ。 確かに、シルバーは交渉役には不向きだろう。 753 名前:ぽけもん 黒 27話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2011/12/29(木) 01 25 08 ID 7CNDPUVs [5/9] 「証明できない、時間も無い、だが信じろ、か。無理を言う」 「無理を承知で言っています。それに、先ほどから警備と連絡がつかないんでしょう?」 それを聞いて、局長は少し顔を歪めた。 「おそらく、ロケット団にやられたのでしょう。今このビルが占拠されていないのは、うちの者が各所で奮戦してくれている結果です」 「ふん、仲間を本気で攻撃する馬鹿はいまいよ」 局長はあくまで譲らないようだ。確かに、僕達がロケット団とグルじゃないと証明する手段もない。 部屋に怜悧な空気が張り詰めるなか、一報の通信が入った。 「た、対空部隊です。敵地上部隊の雷の乱発により、飛行ポケモンが使えません! 同時に、敵ポケモン数人がその中を雷の中を突破、突破、窓を破って構内に侵入されました!!」 「分かった。対空部隊はこちらも雷で対抗しろ。これ以上敵を中に入れるな!」 外はそんなことになっていたのか。 窓の無い場所を走ってきた上に、戦闘音で雷の音も聞こえなかったから気づかなかった。 ラジオ塔の周囲での雷乱発に、窓を破って進入とは、敵もなりふり構わなくなってきた。 これは僕達の防衛が上手くいっていることの証明であると同時に、敵が物量に任せて短期決戦を狙ってきてあるということでもある。 しかし対応が迅速すぎる。 もうしばらくは無理に突破しようと無駄な兵力と時間を浪費してくれると思っていたのだけれども。 敵もこのような事態になってもいいよう、対応策を考えてあったのだろうか。 「ふん、そちらの自慢の戦力というのも大したこと無いな」 「大したことない戦力ですから、ラジオ塔側の協力が必要となるのですよ。今の通信でお分かりのとおり、もう事態は切迫しているのです」 そう言われて、局長は苦々しげに顔を歪める。今、彼の内ではさまざまな感情と思惑が渦巻いているんだろう。 そして、数十秒の沈黙の後、彼は机に備え付けの端末をなにやら操作した後、口を歪めた。 「……分かった。だが停波はできん。こんな事態を報道せずしてどうして報道機関を名乗れようか」 部屋に張り詰めていた空気が少し緩んだのを感じる。 おそらく、話がつかないようであれば力ずくでことを進める気だったのだろう。 「では、全隔壁閉鎖のほうは」 「もう通知した。まもなく閉鎖されるはずだ。職員への退避命令もな」 局長はそういって腰を上げた。 あわせて、部屋にいた全員が局長室を退室する。ここもまもなく封鎖されるだろう。普段ならここに篭城すれば安全だが、ラジオ塔崩落の危険がある今は、ここはただの頑強なだけの棺桶になってしまう可能性がある。 「では、私は避難させてもらう。後は勝手にやれ」 「いいんですか? こんな大事件を現場で体験しなくて」 散々言われるだけ言われた仕返しか、男が皮肉気に言う。 「体験している者はもう十分にいる。それより頭が火中にあっては手足もまともに動かせんだろ」 彼はそう言って、意地悪げに口角を上げた。 部屋にいた大半は局長と一緒に脱出するようで、僕やシルバー達数人と別れた。 これで打てる手は打ったけど、戦いは終わりでもなんでもない。 ロケット団を全滅させるのが理想だけど、それが無理でも、少しでもロケット団に打撃を与えたい。 それに、今作戦には幹部も参加しているはずだ。 それを見逃す手は無い。 先ほどの連絡にあった、雷の嵐の中を切り抜けて突入してきたそれが、只者ではないことは想像に難くない。 幹部、ないしはそこそこの立場にいる人間であることはほぼ間違いないだろう。 今のところ、各所に配置した人員から特に連絡はない。 つまりまだその幹部と会敵してはいないということだろう。 守っている人員を排除して、突破口を開くことが進入の目的ではないとしたら、あの大量の下っ端は陽動と割り切り、隠密行動――というには大分派手だけど――で、放送室に向かい、例の電波を流してしまうことが目的と考えられる。 ならば向かう先は決まっている。 通信機に向かって呼びかける。 「みんな、さっきの通信で分かってると思うけど、局内にかなり場慣れしていそうな敵が侵入した。みんな背後にはくれぐれも気をつけて作戦を続行してほしい。もし見かけたら、必ず通信してください。すぐに増援を送ります」 通信機からは了解、隊長という声が聞こえてくる。 恥ずかしいのだけれど、作戦を説明したからか、みんなは僕をからかうように、隊長、と呼んでくる。 それを聞いて、シルバーがニヤニヤしてこっちを見てきた。 糞、自分だってリーダーなんて呼ばれてる癖に! ともかく、その間にも僕達は進み続け、そして目的の場所にたどり着いた。 754 名前:ぽけもん 黒 27話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2011/12/29(木) 01 26 17 ID 7CNDPUVs [6/9] 通信施設へと続く通路。 ここは防火扉をかねた無数の隔壁で完全に封鎖されている。 そこを塞ぐ鋼鉄の壁が見事に打ち破られていた。 辺りには腐臭が漂っている。 これは……毒か? どうやら侵入者は毒で隔壁を溶かして突破したらしい。 やどりさんに頼んでこびりついた残りを除けてもらい、穴の開いた隔壁を通り抜ける。 まずい。隔壁さえ降りれば簡単には突破されないと思っていたのに。 とにかく道を急ぐ。 皆異常を訴えていないから、毒ガスが充満したりしてはいないらしい。 進むにつれて、また妙な臭いがしてきた。 破られた隔壁を更に抜け、広いオフィスに抜ける。 視界の先が紫色の霧で埋まっている。 やどりさんのハイドロポンプで押し流す。 もやの向こうに、数人の人影が見えた。 「イドロ、ガドータ、ヘドロ爆弾」 もやの向こうから男の声が聞こえ、その直後、二つの黒い塊がもやを突っ切って飛んできた。 ヘドロ爆弾は着弾と同時に炸裂し辺りに有毒のヘドロを撒き散らす。何かに隠れないと。 咄嗟に遮蔽物を探すが、めぼしいものが無い。 「ラン、火炎放射で打ち落とせ」 二つのヘドロの塊は灼熱の火炎に包まれ、灰となって消えた。 「だ、誰だ!」 僕は煙の向こうに呼びかける。 「ハシブト、風起こし」 今度は羽ばたきの音に続いて、紫煙が突風とともにこちらに向かってきた。 「やどりさん、サイコキネシスで押し戻せ!」 両者の力が中間地点でぶつかり、渦巻く。 行き場をなくした力は窓の強化ガラスを破って、毒ガスとともに外部に流れていった。 煙が晴れたことで、向こうの姿が見える。 全身を粘液で包まれた、二十前半と思われる物憂げな表情をした女性と、薄煙に包まれ、宙に浮かぶ目つきの悪い女性。 その後ろに控えるようにして立つ、黒い服に全身を包んだ――その胸にはやはり血のような赤でRが刻まれている――四十がらみの人相の悪い男と、それに寄り添うようにして、烏の髪と、烏の翼を持った、美しいながらも、明らかに日の下を生きる者とは違う、退廃の空気をまとった、毒婦のような妖しい色香を持つ少女が立っていた。 「まったく、ことごとく我々を邪魔するつもりらしいな。お前等はいったい何だ?」 男が、その容姿に見合った、ドスの利いた声で問いかけてきた。 「反ロケット団、といえば言葉は知らなくても俺達が何なのかは分かるだろう」 「反ロケット団……くっ、随分と面白いことを言うんだな」 「面白いか? 自分の終わりが」 「いや、出来過ぎだと思うよ。俺の人生のストーリーとしてな。まさにおあつらえ向きの障害だよ、お前等は」 「その障害に潰されて死ね」 シルバーの言葉とともにランが火炎を放った。 それをガドータと呼ばれた女性が口からガスを吐き出して応じる。 火炎はそのガスを破れず、消えた。 「不燃ガスか」 「そら、今度は毒ガスだ」 その言葉通り、今度は先ほどと違う種類のガスが放たれた。 「面倒……まとめて、潰す」 やどりさんがそう呟き、ほとんど同時にこちらに流れ込もうとしていたガスが下方向に沈んだ。 同時に相手も何かの力に押さえつけられるように体をかがめる。 それに続いて、周囲の机類が吸い寄せられるように彼らを巻き込む。 そしてかき混ぜられるように机が回り始め、見る見る灰色の濁流となっていく。 「ラン、仕上げだ」 「はい」 その渦にランの火炎放射が加わり、渦巻きは火柱と化した。 「ちょ、やりすぎだろ!」 「何だ? この期に及んでまだ人殺しはいけないとか言ってるのか?」 「それもあるけど、こんなに派手に壊して、ここを廃墟にする気かよ! それに、おそらく相手はヒラの団員じゃないんだろうから、生かしておいたほうが色々都合がいいだろ!」 「……前半はおそらくそのとおりになるが、後半に関しては、心配する余裕はなさそうだ」 いまや溶けてくっつき、何かのオブジェのようになった黒い塊が、突如として弾け飛び、中から粘性の高い液体が噴き出してきた。 「衝撃吸収に耐熱か。本当に便利だな、うらやましいね」 「そりゃどうも」 中から出てきた男が不吉に微笑む。 冗談だろ!? まさかそんな方法であの攻撃を防ぐなんて! 「だが万能ではなさそうだ。その鳥、その泥落とさないと飛べないだろ」 「ああ。それに一張羅が台無しになるという欠点もある」 男はそういって両腕を振り、泥を飛ばした。 「燃えて真っ黒になるよりはましだろうさ!」 シルバーの声に答えるように、ランの両腕から火炎放射が放たれる。 「ああ! それには同感だな!」 それを二人の女性が不燃ガスと不燃泥で防ぐ。いや、それどころか押し返してくる。 755 名前:ぽけもん 黒 27話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2011/12/29(木) 01 27 25 ID 7CNDPUVs [7/9] 「やどりさん!」 僕がそういうと、彼女は頷き、中空に右腕を差し出す。 再び、相手に上方向からの圧力が降りかかる。 「ラン、火力を上げろ。周囲の被害もやむを得ない」 ランがそれに答え、熱量を上げた。 炎の色が変わり、その熱波で景色が揺らぐ。 この熱量なら、あるいは。 いや、そうでなくても、炎で包み続ければ、いずれ息が続かなくなって窒息死だ。 後は、下方向から逃げられるのを防ぐために、敵がいる泥の塊を空中に浮かべれば完璧だ。 僕がやどりさんにその意図を伝えようとしたとき、おかしなことに気づいた。 敵の、ハシブトと呼ばれた女性がなんだか揺らいで見えるのだ。 ランの炎のせいだろうかと思い、一瞬で思い直す。 「やどりさん、後ろだ!」 僕がそう叫んだ瞬間、ハシブトの姿は揺らいで消え、やどりさんの背後に現れた。 やどりさんの背中に突き刺さろうかという鍵爪の一撃を、僕がナイフで受ける。 硬質の物同士が打ち合わされる高い音とともにナイフは折られ、僕は弾き飛ばされた。 やどりさんの背中にぶつかり、そのまま二人そろって倒れこむ。 無防備に晒された僕の腹部に、彼女の足が振り下ろされた。 それが僕の腹に突き刺さる前に、香草さんの蔦による横薙ぎの一閃で弾かれる。 翼を広げ体勢を立て直そうとする彼女に、香草さんの蔦が殺到する。 それを両の翼で切り払い、さらに数歩距離をとる。 そこに無数の葉が突き刺さるが、いつの間にかそこに彼女の姿は無く、それは地面に突き刺さっていく。 左右に彼女の姿は無い。 ふと、背筋に寒いものを感じ、慌てて上を見ると、そこには僕に向かって振り下ろされる鋭利な鍵爪があった。 僕の脳に電気信号が閃き、無数の対抗手段が瞬時に浮かぶ。 そしてそのどれもが手遅れだと悟った瞬間、彼女の体は飛来した水球によって弾き飛ばされた。 どっと冷や汗が噴き出す。 ほんの一瞬、彼女が弾き飛ばされるのが遅ければ、今頃―― 視界に火花がちらつき、一瞬、正常な思考ができなくなる。 そのせいで、注意が遅れた。 飛ばされたハシブトは再び姿を消し、一拍の間も置かず、今度はランの頭上に現れた。 シルバーが突き出したナイフを体を捻ってかわし、ランの肩に深々と鍵爪を突き立てた。 それは容易に彼女の皮膚を突き破り、肉を抉り、骨を砕いた。 骨が軋み、砕ける何とも形容しがたい不快な音が、ここまで聞こえてくる。 残るもう片足がランの頭部に突き立てられようというところで、ランの体が火に包まれる。 慌てて逃げようとするハシブトの脚を掴もうとランは無事なほうの手をハシブトの脚に伸ばすが、再びハシブトは消え、その手は宙を切った。 火炎放射が止んだことで毒ガスとヘドロがこちらに向かってくる。 それをやどりさんがサイコキネシスで強引に押し返した。 それに遅れて、ランの絶叫が室内に木霊する。 ランの肩から下はぐっしょりと血に濡れ、腕は力なくぶら下がっている。 「ラン!」 「寄るな!」 慌ててランに駆け寄ろうとしたが、拒絶されてしまった。 しかしランに手当てが必要なのは間違いない。 僕はリュックから応急救護セットを取り出すと、シルバーに放り投げた。 「とりあえずこれで治療してくれ。やどりさん、毒ポケモン二人の相手を頼む。香草さんはやどりさんとシルバーとランを敵から守ってくれ」 体勢を立て直そうとする敵二人に向かってやどりさんはハイドロポンプを放ち、体勢を崩す。 後はハシブトとロケット団の男だけど…… そういえば、敵二人の後ろに控えていた男がいつの間にかいなくなっている。 やどりさんの攻撃で飛ばされたのかと一瞬考えたが、もしかしたら…… 彼女達のはるか後方から、爆発のような音が聞こえてきた。 「しまった! この二人はただの時間稼ぎだ! 本命は奥だ!」 ハシブトはどこに消えたと思っていたら、男とともに奥の隔壁を破壊しに行っていたのか! 先ほどの自在に姿を消すような攻撃方法を見ていたら、こちらはそれに警戒せざるを得ない。 あの攻撃の目的はそうやって僕達の注意をひきつけることだったのか! 「やどりさん、あの二人を頼める?」 毒ポケモン二人は相性の問題もあるのだろうけど、大して強くは無い。もしくは力を温存しているか。 やどりさん一人でお釣りがくるだろう。 「任せて」 「じゃあお願い! 香草さん! 僕と一緒に来てくれ!」 問題はあの悪ポケモンのほうだ。神出鬼没でやどりさんの念力がまともに当たらない上、攻撃力も非常に高く、やっかいだ。 756 名前:ぽけもん 黒 27話 ◆wzYAo8XQT.[sage] 投稿日:2011/12/29(木) 01 27 52 ID 7CNDPUVs [8/9] 「お、おいゴールド!」 「お前は早くランの血を止めろ!」 僕はそう言って香草さんとともにイドロとガドータに向かって駆け出す。 「そんなことは」 「させない」 当然、僕達の前に立ちふさがろうとする二人は、まるで巨大な手に払われたように右方に弾き飛ばされた。 すぐに体勢を立て直した二人に、香草さんは蔦で机を掴み、叩きつける。 「邪魔よ!」 机がばらばらに砕け、二人が一瞬怯んだ隙に、僕達はその脇を通り抜けた。 奥に、隔壁に向かって攻撃を繰り返している男とハシブトが見える。 香草さんは走りながら机を掴み、それを二人目掛けて放り投げた。 机が扉にぶち当たり、反響音が空気を震わす。 机の奥には人の影も形も無い。 後ろか! 僕が振り向きざまにナイフを突き出すと、それがロケット団の男のものと衝突した。 その男に抱きつくようにしてハシブトもいる。 あの女、自分だけではなく、こうすれば仲間も一緒に姿を消して移動することができるのか! 男がナイフを上方に弾くが、そうして開いた胴部に今度は香草さんの蔦が向かう。 二人の姿が揺らいで消え、香草さんの蔦は宙を切る。 「チコ!」 僕がかがむと、彼女はその意図を察してくれたのか、両腕を振り回して蔦であたり一帯を切り払った。 香草さんを中心に、爆発したように机が宙に跳ね上げられる。 「くっ!」 少し離れたところで、渋い顔をした男と、それを抱えた女が出てきた。 「騙し討ちなんて僕達には通用しないぞ!」 「ああ、そうらしい」 そういいつつ、再び男は姿を消す。 何か新しいことをする気か、それともやどりさん狙いか。 同じ手を繰り返すほど単純じゃないとは思うが、それも含めて、裏を読んでいるのかもしれない。 何せ騙し討ちだ。 迷っている暇も無い。 とりあえず、香草さんに指示して、こちらに背を向けて応戦している毒二人目掛けて机を投げつけてもらう。 もろにぶつかり、派手な音を立てる。 攻撃としてはたいしたこと無いけど、意識をそらすのには十分だ。 再びやどりさんのサイコキネシスが発動し、二人は地面に伏す。 さあこれで相手に猶予は無い。 この状況で狙われる可能性の高いのはまずやどりさん、次に僕だろう。 いくらワンパターンと言えど、状況を打開するために相手はそうせざるを得ない。 案の定、敵はやどりさんの頭上に現れた。 そこにシルバーのナイフが突き刺さる。 男は足に傷を負い、慌てて離脱する。 そうこうしている間にも、毒ポケモン二人はどんどん押しつぶされていく。 骨の軋む音と、女性二人のうめき声が聞こえてくる。 「香草さん、後ろ!」 香草さんが蔦を後ろに薙ぐと、ちょうど現れた二人を見事に捕らえた。 床に叩きつけられ、二、三転すると、再び姿を消す。 敵はただ消耗してゆくのみ。 僕達が油断しなければ、負けは無くなった。 「おとなしく投降しろ! そうすれば命は保障してやる!」 僕は大声で呼びかける。 姿は見えないけど、おそらく聞こえているはずだ。 この状況での相手の投降はすなわち敵の作戦の失敗と同義だ。 おとなしくそうなるとは思えない。 でも、そうなれば一番いい。 それはお互いに同じだと思う。 「うふ、もう勝った気?」 艶かしい女性の声がどこからか聞こえてくる。 同時に、やどりさんが押しつぶしていたうちの一人が押し潰された。 大量の液体が噴き出し、つらつらと地面を流れていく。しょうがないこととはいえ、思わず目を背けたくなる。 「もう勝敗は明らかだろ! これ以上の戦いは無意味だ」 「ぼく、ひとついいこと教えてあげる。投降は、強者が弱者に対して呼びかけるものよ」 何を言っているんだ。現にお前の仲間は一人潰されて…… まて、潰されたはずの死体、何かおかしくないか? 大量の体液が溢れて周囲に流れていくのはまだ分かる。 問題はその流れ方だ。 やどりさんに押しつぶされているってことは、敵の周囲の床はサイコキネシスで撓んでいるはずなのに、その部分に溜まっていない。 いや、それどころか、妙にやどりさん側に流れている? まさか、これは―― 「逃げ――」 僕に気づかれたからだろう、やどりさんに近づきつつあったソレは、唐突に大爆発を起こした。
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1411.html
130 :ぽけもん 黒 18話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/11/30(月) 20 21 50 ID IaP3RpEy 「で、話って何?」 香草さんが、淡々と切り出した。 雰囲気からして、婉曲を使える場面ではないと判断した僕は、ずばり核心から告げる。 「契約解除を……取りやめてほしい」 香草さんの目をじっと見つめる。 「いいわよ」 「そこをなんとか……って、え?」 「だから、いいわよ」 なんというか、お約束みたいになってしまった。 まさかこんなすんなり話が運ぶとは思わなかった。しかしあっさりしすぎている気もする。 そうか、もしかしてこれは「(アンタとの旅はもう)いいわよ」という意味のいいわよかも知れない! 一応確認してみよう。 「そ、それは契約解除を無かったことにっていう意味でのいいわよでいいんだよね?」 「そうよ、しつこいわね」 どうやら間違いないようだ。 「よかった! ありがとう香草さん!」 「ただし、条件があるわ」 「条件? 条件って?」 条件か。どうも嫌な予感が…… 「簡単なことよ。あの鳥と契約を解除しなさい」 「契約解除って……え?」 な……香草さんは一体何を言っているんだ? 「何? 一度聞いただけじゃ理解できないの? あの鳥と、契約を解除しなさいって言っているのよ」 僕は彼女が言っていることが信じられず、無駄な確認を行う。 「あの鳥って……ポポのことだよね?」 それに対する彼女の返答は、澱みのないものだった。 「そうよ。それと、今後新しいパートナーを迎えることも禁止よ」 「それって……やどりさんも?」 「当然じゃない!」 「そんな! 一体どうして?」 僕の質問に、香草さんは目を伏せる。 「どうしてって……そんなの……ただ私が気に入らないからよ」 「そ、そんな理由で……」 「それ以上、理由が必要かしら」 信じられなかった。たったそれだけの理由で、ここまでの横暴を行おうとするなんて。 「確かに仲はよくなかったかもしれないけど、でも、一緒に旅をしてきた仲間じゃないか!」 彼女の眉がピクリと持ち上がった。 「仲間? 笑わせないでよ。勝手についてきただけでしょ」 そう言われたら、僕も口調が荒くなる。 「香草さん、ポポに契約を申し込んだのは僕だ。勝手についてきたわけじゃない。それに、勝手に契約を持ちかけたのに、勝手に契約を解除するなんて、滅茶苦茶だ」 「申し込んだって、そもそもあなたを襲おうとしたのよ? どうしてそんなのとパートナーになれるのか、あなたの神経を疑うわ」 「それは……ポポだって自分で選んでそういう生き方をしていたわけじゃない。それしか選択肢が無かっただけだよ」 自分でも、自分の言葉に自信がもてなかった。 ずっと、僕はポポのことを無垢な子供だと決め付けていた。 でも、それは、ただ僕がそう思い込みたかっただけなのかもしれないのだから。 131 :ぽけもん 黒 18話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/11/30(月) 20 22 15 ID IaP3RpEy 僕の弁明に、香草さんは呆れたように溜息を一つ漏らすと、僕を睨んで言った。 「何それ。性善説?」 何もいえない僕を尻目に、彼女は続ける。 「いい? お人よしのあなたには分からないみたいだから私が言ってあげるわ」 「香草さん……」 「……アレは、悪よ」 「香草さん!」 僕は耐え切れずに、部屋の中央のテーブルを叩いた。 「ご……ごめん」 すぐに我を取り戻した僕は、先ほどの振る舞いを恥ずかしく思って彼女に謝った。 ちょっと厳しい言葉を使われたからって、すぐに激昂しては、それが図星だったみたいじゃないか。 僕を射抜く彼女の冷たい目は、僕の浅い考えを見透かすようだった。 「いいわよ、あなたが私を選んでくれるなら。すべて水に流してあげる」 僕の背筋に悪寒が走った。彼女の口調は静かな、淡々としたもので、決して恐怖を覚えるようなものではないはずなのに。 「私を……選ぶ?」 「あなた、一体何を聞いていたの? 私が言ったのは、つまりそういうことよ」 そういうこと。 香草さんの提案した条件。 契約解除はしない。ただしポポと契約を解除し、今後新たに契約はしない。 つまり裏を返せば、そうしなければ契約を解除する、ということなのだろう、彼女の言葉からして。 頭に、一つの言葉が浮かぶ。 「……脅迫?」 「そう思う?」 彼女は相変わらず、こちらを測るような目をしている。 「ごめん、忘れて」 愚問だった。彼女の態度が正しいとは言わないけど、彼女にはそれを言うだけの正当な権利がある。パートナーなのだから。 パートナーが一方的な主張を行った場合、それを守る義務はない。しかし…… 僕は何を被害者面しているのだろうか。最悪だ。 パーティーでの致命的な不和。これは契約を解除する理由としては十分だというのに。 僕はそれに対して、気配りが足りなかったんだろうか。それとも、この不和の原因は僕の過失によるものなのだろうか。 自らを責めても、現状の解決には繋がらない。 「そう。それで、答えは?」 立場がまるで逆になっている。 僕が彼女にお願いをする、つまり彼女に選択を求めるはずが、僕が選択を迫られている。 「どうしたの? まさか迷っているの? 迷うことなんて無いじゃない。そうでしょ?」 彼女の口調にわずかな変化が見られた。相変わらず淡々としたものだが、先ほどまでとは少し調子が変わっている。 「最初に契約したのは私でしょ? 最初は、あなたと私の二人だけだったじゃない。元に戻るだけよ」 132 :ぽけもん 黒 18話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/11/30(月) 20 22 50 ID IaP3RpEy 元に戻る。その言葉を聞いて、調子を崩していく香草さんと対照的に、僕は少し調子を取り戻した。 「香草さん、時間は流れていくものなんだ。元に戻るなんてことは、無いんだよ」 苦い過去の記憶を思い出す。どんなに悲しんでも悔やんでも、もう元には戻れない。 前に進むというより、進まされている。それはどうすることもできない。 僕の言葉は、単にそういうものであって、それ以上の意味はなかったんだけど、確かに、誤解を招きそうなものだったと思う。 でも、それを考慮したとしても、彼女のリアクションは異常だった。 「ど、どういうことよ! まさか、私じゃなくてあいつらを選ぶつもりなの!? なんで! どうしてよ!」 先ほどまでの冷静さが嘘のようだ。 彼女は突然泣き出さんばかりの勢いで叫び始めた。 「か、香草さん!?」 「私があいつらより劣っているところなんて何一つ無いじゃない! おかしいわよ!」 「落ち着いて!」 「何で!? やっぱり私一人じゃ不安なの!? 私の強さ、まだ信じてないの!?」 確かに強さは大事だけど、今の論点は強いとか弱いとか、そういうことじゃないはずだ。 訳が分からない。一体何がここまで彼女の不興を買ったのだろうか。 苛立ちが強く滲む声で彼女は言った。 「……だったらいいわよ、分からせてあげる。隠れてないで出てきなさい」 香草さんはそう言ってドアのほうを見た。 え、何? 忍者? 僕は人の気配をさっぱり感じなかったのだが、ドアの向こうにはポポとやどりさんがいた。 「え、もしかして話聞いてたの? というか香草さん気づいてたならどうして何も言わなかったのさ」 「あえて聞かせて、身の程を弁えさせてやろうと思ったのよ。それなのにあなたときたら優柔不断で……」 あれ? 今僕責められるべきシーンじゃなくない? 「ポポも盗み聞きなんて! やどりさんも人が悪いですよ! いたならいたと言って下さい」 「ごめんなさいです……」 「……ごめん……なさい」 「で、でも、これで分かったです? チコの本性が! ポポ、ずっといじめられていたですよ!」 「黙りなさい!」 「きゃあー。怖いですー。ゴールド助けてですー」 ポポは黄色い悲鳴をあげ、羽をパタパタと動かしながら僕の後ろに隠れようとする。 当然、香草さんの怒りに燃料を注ぐことにしかならない。 「今ここでぶち殺してあげましょうか」 「ちょ、落ち着いて!」 全員の視線が僕を向く。とりあえず場を収めること以外に何も考えてなかった僕は、当然無言である。 その沈黙は、香草さんの溜息によって破られた。 「そうね、畜生と言い争うなんて愚の骨頂だったわ。さっさと本題に入りましょう」 畜生、という言葉はスルーして話を促す。 「本題って何さ」 「戦うのよ。それで勝てば文句ないでしょ?」 いや、あります。 そもそもどうしてそういう発想になるのかが分かりません。 理解できないのは僕が馬鹿なせいでしょうか。違うと思います。 「見せてあげるわ、私の力を。二対一だろうが六対一だろうが、何の問題もないってことを」 六対一は一先ず置いておいて、香草さんはどうやら自分の力を証明するためにポポとやどりさんの二人を相手取って戦うつもりらしい。 「望むところですよ。身の程を弁えるのはどっちかはっきりさせてやるです」 「二人とも! ……ってやどりさんまで! いいの!? こんなことに巻き込まれて!」 「話は……全部……聞いた……、そう……しなけれ……ば……パートナーに……なれない……ならば……私は……倒す」 ああ、もうダメだ。 133 :ぽけもん 黒 18話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/11/30(月) 20 23 12 ID IaP3RpEy 何で皆さんそんなに好戦的なのですか。僕は胃が痛いです。 「こ、こんなところで争ったら旅を続けられなくなっちゃうよ!」 「分かっているわよ。この街にはバトルの練習場があったはずよ。そこでやりましょう」 ああ、なんで貴女はそんなことを覚えているのですか。 向かう道中、僕は必死に皆を説得した。だが、僕がどちらかを選ばない以上、他に選択の余地は無いようだ。 三人の意思は固かった。無駄に。 練習場のフィールドがすべて埋まっているように願ったが、待つ必要も無くすぐにフィールドに入れる状態だった。この世に神はいないらしい。 少なくとも、僕の願いを聞き届けてくれる神は。 標準的な土のフィールドを選び、僕たちは入場した。 フィールドを挟んで、香草さんがポポとやどりさんに向き合っている。 通常のバトルでは二対一なんて認められないが、練習とあれば話は別。誰にも咎められない。 職員の人に事情を説明すれば戦いを止められないこともなかったが、そんなことをすれば皆になんらかの処分が下る。最悪、旅の参加資格を剥奪されてしまうなんてことにもなりかねない。 僕一人の過失で処理できればいいけど、皆が嘘をついてくれない限り、むしろ僕は責任を問われず、三人だけが罰せられるということになりかねない。 今の僕に出来ることはもはや、皆怪我も無く無事戦いが終わってくれることを願うだけだった。 「……じゃあルールを確認するよ。ルールは公式戦のルールに則るけど、ポポやどりさんチームは二人とも戦闘不能または気絶または場外にならない限り戦いは続行というルールを追加。……これでいいね?」 「いいわよ。そもそも、私はルールなんてどうだっていいもの」 僕はどうだってよくありません。 「いいです!」 「……いい」 「……皆、止めるなら今だよ。こんなことしたって何の意味も無いんだから」 「ゴールド、これ以上あなたが寝ぼけたこというなら、合図なしで試合開始するわよ」 はあ、と僕は溜息をついた。 不意打ちで誰かが大怪我するくらいなら、僕が試合開始の合図をしたほうがまだマシだ。 「……分かりました。……試合、開始」 僕が呟くと、弾かれたように香草さんは両腕を伸ばし、数十の蔦を繰り出した。 傷ついているどころか、ここまでの本数は今まで見たことがない。 彼女の回復力の高さと、能力の高さに驚かされる。 数が多い分、速度は若干遅めに感じる。 しかし素早いポポを相手にするうえに二対一であるこの状況、数で攻めるのは決して悪くない策だ。 ただ、少し香草さんらしくないとは思った。 普段の彼女なら、こんな小細工は弄さず、速度も力も乗った研ぎ澄まされた一撃で片方を不意打ち気味に沈め、その後残りの一人を相手にすると思う。 結局、その判断は正解だったのだろう。ポポもやどりさんも、いくら先を突こうと、戦略性の無いただの一撃で沈められるような凡庸な人たちではなかった。そういうことだ。 香草さんの行動は、二人の実力を正確に読みきっていた結果だったのだろうか。 広げられた蔦に覆われるより早く、ポポは空中に飛翔した。 しかし香草さんは迷うことなく、その蔦の群れをやどりさん目掛けて振り下ろす。 蔦は地面を強く叩き、衝撃で床が揺れた。 轟音と共に濛々と土埃が舞い上がり、フィールドに立ち込める。 やどりさんは土埃のうちに一瞬で隠された。 蔦の落下の直前、隙が生じることを予想したのだろう、ポポは香草さん目掛けて急降下を開始した。 蔦が地面に打ちつけられたときには、香草さんはすでにポポの射程内に入っていた。 翼で相手を打ち据えようと、ポポが体勢を整える。 飾り気の無い、しかし強力な攻撃。 そのとき、カウンターのように、香草さんから葉っぱカッターが放たれた。 避けきれない! 僕の目には、回避するにはポポは近付きすぎていたように見えた。 しかし僕の予想に反してポポが不自然な軌道を描き、鋭利な葉っぱの群れを回避する。 134 :ぽけもん 黒 18話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/11/30(月) 20 23 52 ID IaP3RpEy 間を空けずに、立ち込める土埃を切り裂いて、土埃の中から水球がすさまじい勢いで香草さん目掛けて飛び出した。 切り裂かれた土煙の向こうに見えたやどりさんは、蔦による攻撃などなかったかのように、右手を前方に突き出して直立していた。 砲弾のようなそれが、香草さんに迫る。 それを彼女は咄嗟に蔦を引き寄せることで防ごうとした。 彼女の思惑通り、水球と蔦の一本が交差する。 しかし水球の速度は殆ど減損されず、そのまま香草さんの右上腕部に直撃した。 肩が後方に流され、香草さんは大きく体勢を崩した。 その隙目掛けて、ポポが再び強襲する。 しかし香草さんに迫るポポの目前に、突然、無色半透明の板が現れた。 それを確認したポポは軌道を変え、再び高度を取る。 その隙に、香草さんは両手の蔦を引き戻した。 わずかの間にあまりにも多くのことが起こりすぎて、何が起こっているのかよく分からない。 おそらく、やどりさんは蔦が打ち付けられる瞬間に念力によって蔦の軌道をそらして回避した。そして土埃にまぎれて、ポポの軌道を念力で変えることで葉っぱカッターを回避させ、さらに水鉄砲で香草さんを狙った。 体勢を崩した香草さんに迫るポポの前に表れたのは香草さんが張ったリフレクター――物理攻撃の威力を半減させる障壁である―― で、それにより自身の攻撃の威力が減損し、そのせいで攻撃後、香草さんの蔓に捕らえられることを恐れたポポは強襲を中止した、と後になって考えることくらいしかできない。 それは今まで目の前で見たことのないようなレベルの戦いだった。 近接型のポポと遠距離型のやどりさんの相性がいいということも一因にあるのだろう。だけど、それだけじゃない。 すべては、彼女達の卓越した能力にあった。 皆、こんなに強かったのか。 僕は彼女達は皆優秀だと評価していたつもりだったけど、その評価は随分と甘いものだったらしい。 唖然と香草さんを見ていると、彼女もこちらに視線をよこした。 わずか数瞬。僕と、香草さんの視線が絡み合う。 その目は、先ほどまで相対する二人に向けていたものとは違うもののような気がした。 再び激しい戦闘が再開される。 やどりさんが、緩慢に、しかしどこか禍々しいものすら感じさせる確かさで、左腕を前方に突き出した。 身構える香草さんを無機質に見つめ、その左腕を振り下ろした。 瞬間、香草さんの体が下向きに沈んだ。彼女の周囲を舞っていた薄い砂埃が地面に吸い寄せられるように動き、彼女の周囲が鮮明に晴れた。 香草さんの顔には怪訝そうな表情が浮かんでいる。 上方向から押しつぶすように念力を働かせたようだ。 やどりさんを止めようと香草さんは葉を飛ばすが、葉っぱはやどりさんをかわすように動き、あたらない。 蔦を飛ばそうと手を伸ばすが、その動きは上空から急降下してくるポポによって妨害される。 一先ずポポに向き直りリフレクターを張るとポポは急転換し、再び上空を位置取る。 残った左手をやどりさんに向け、蔓を伸ばすが、その手は蔦ごと空中で停止した。 困惑の色を浮かべる香草さん目掛けて、やどりさんの水鉄砲の連射が襲い掛かる。 香草さんの左手の動きを止めたのはおそらくやどりさんの金縛りだろう。念力は未だ解かれていない。 念力に金縛り、それに水鉄砲の連射まで。 トリッキーな搦め手から直接的な打撃まで、やどりさんは自分の力を完全に使いこなしている。 水鉄砲が迫り来る香草さんの前方に、今度は淡く輝く半透明のもやのようなものが発生した。多分これは香草さんの光の壁だ。 今まで香草さんが防御系の技なんて遣うことが無かったから知らなかったけど、リフレクターによる物理防御に光の壁による特殊防御と、香草さんの防御手段はかなり充実している。これに蔦による防御も加えれば、鉄壁と言ってもいい。 香草さんが二人同時に相手どることにしたのは、この防御力に対する自信からだろうか。 135 :ぽけもん 黒 18話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/11/30(月) 20 24 28 ID IaP3RpEy 光の壁で弱められるからと言って、水鉄砲が消滅するわけではない。 水鉄砲は光の壁をすり抜け、容赦なく香草さんに降り注ぐ。 しかし香草さんはやどりさんではなくポポを見据えた。 香草さんは草タイプなので水タイプの攻撃に対しては耐性が高い。 やどりさんも優れた力を持つとはいえ、さすがに三つもの力を同時に使うことの負荷は高いはずだ。事実、顔は苦しそうに歪んでいる。おそらく、力を使い続けたまま移動するのは不可能なのだろう。 となると攻撃がくる位置が決まってしまうので、光の壁で威力を減損し続けられる。 対するポポは空中を自在に飛び回り、攻撃方向を予測することは難しい。 リフレクターがあっても、回り込まれてリフレクターの無いところを突かれれば危険だ。 香草さんは嵩み続ける、毒のようではあるが微弱であるダメージを無視し、自分に大きなダメージを与えかねないポポに狙いを絞ったようだ。 封じられていない右手を宙に掲げると、一斉に蔦を伸ばす。 ポポは蔓を縫うように器用に避け、羽ばたきで複数の旋風を起こす。 旋風が香草さんに到達する前に、動かぬ左手から伸びた蔦を引き摺りながら位置を変え、回避する。 旋風を放つと同時に、ポポ自身も急降下を開始した。 地面とぶつかった幾つもの旋風は再び風を起こし、フィールドに強風を起こした。 土埃が舞い上がり、水鉄砲が揺れて崩れ、香草さんのスカートの裾が翻る。 土埃のせいで対応が遅れたのだろう、香草さんはポポを回避しきれず、腹部を翼で強かに打ちつけられた。 数メートル後退し、そのまま崩れ落ちる。 リフレクターは発動していたが、正面からの攻撃を緩和するには至らなかったのだろう。 香草さんは苦痛に顔を歪めている。 そんな香草さんに容赦なく念力の重圧と水鉄砲が降り注ぐ。 しかしやどりさんを迎え撃つことは出来ない。少しでも気をそられば、ポポの餌食だ。 いよいよ追い詰められた。 光の壁があるとはいえ、香草さんの体力はジリジリと削られ続けていく。 一方のポポとやどりさんは後は香草さんの動きを抑制しているだけでいい。 勝負あったか、と思われたそのとき。 香草さんが叫びながら体を起こした。 ガラスの窓がビリビリと揺れる。 封じられていて動かないはずの左腕が持ち上がっていく。 やどりさんが呻き声を漏らし、両手で頭を抱え、その場に蹲った。 まさか、信じられない。 力で、無理矢理念動力を破るなんて! 力自慢の格闘タイプですら破ることは難しいのに。 彼女の、プライド――執念の力なのか。 金縛りを破り、やどりさんが反動で動けなくなったことで、香草さんは念力による押さえつけや水鉄砲からも解放された。 彼女は両腕を上に伸ばすと、両腕から蔦を放った。 それぞれの蔦が、まるで槍のように伸びていく。 動きは直線的だが、早さと数で、回避するのは不可能に思われた。 咄嗟に天井付近まで退いたポポに、数本の蔦が次々と突き当たる。 即座に周囲の蔓も向きを変え、ポポを捕らえんと伸びた。 ダメージを受けたポポは、それでも素晴らしい反応で翼により蔦を次々と切り払っていく。 しかし数が数だ、すべてを打ち落とすことは不可能だった。 ついに、蔦の一本がポポの左足を捕らえた。 そしてポポが払うより早く、蔦はポポの足を強く握りつぶした。 乾いた、嫌な音と、ポポの絶叫が場内に響き渡る。 それでもポポはそのままポポを絡めとらんとする蔦を切り払い、急降下するときの速度を利用して蔓の囲いから脱け出した。 ポポの左足の脛から先は制御を失い、地面に向かって垂れ下がっていた。 香草さんは、蔓でポポの足を砕き折ったのだった。 僕は、まるで喉に何かつまったかのような錯覚を覚えた。 まさか、香草さんがここまでやるなんて。 そんなことを考えている場合ではない。戦いを止めないと。 ……いや、そんなことは不可能だ。 医療の発達した現代、足の骨折程度では戦闘不能の要綱には認められない。 となると戦闘を止めるには僕が止めるかポポが自分からリタイアしてくれるしかない。 しかしこの場合、僕が戦闘を止めることは出来ないだろうし、ポポが自分からリタイアするなんて考えられない。 それにもし万が一、僕が声をかけたことでポポの意識が反れ、それによって取り返しのつかない結果を招いてしまったら…… 僕は声を出すことすらも出来なかった。 136 :ぽけもん 黒 18話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/11/30(月) 20 24 51 ID IaP3RpEy 放たれた蔦はポポを追う様に折れ曲がり、低空飛行をするポポを上空から射抜くように次々と地面に突き刺さる。 ポポはかろうじて回避できていたが、折れた足のせいで高度を下げ切れていない。高くも無く低くも無い、中途半端な位置をふらふらと飛んでいるポポは攻撃も防御も行えない。 香草さんの格好の的だった。 香草さんは使い終えた右腕の蔦を一旦引き戻すと、今度は右腕を地面に対してほぼ水平に構えた。 左腕の上空から打ち下ろす蔦と右腕のまっすぐ射抜く蔦。 この二つを回避しきるのは、おそらく、不可能だ。 僕は何も出来ない自分のふがいなさに、両手を強く握り締めた。 香草さんの動きに気づいたのだろう、ポポは香草さんに向けて向き直った。 狙いは、正面突破だろうか。 確かに、この状況で、残された手はそれしかないように思えた。 しかしそれはあまりにも無謀な賭けだ。 向き合った二人は、そのまま暫し静止した。 お互いを見つめる二人の目には、一体何が見えているのだろう。 僕に、それを知る術はない。 静寂は、ポポによって破られた。 激しく羽ばたき、幾つもの旋風を巻き起こした。 香草さんを狙うには距離がありすぎる。タイミング的に蔦をかき乱すこともできない。 案の定、それはただ地面へとぶつかった。 しかしそのことにより、土煙が舞い起きフィールドの半ばが土埃で覆われた。 元々狙いはこれか。 この煙幕で、香草さんを撹乱しようというのか。 しかし、それはあまりにも浅はかに思われた。 そもそも、ポポの羽ばたきはそれだけで大きく風を起こす。いくら土埃が立ち込めていても、ポポの位置は筒抜けだ。 すぐに、土埃の一部が大きく揺らぐ。 香草さんはそこ目掛けて十本近い蔦を突き刺した。 しかもまだ手元に数本の蔦を残してある。 すべての蔦を使わないところが、計算高い香草さんらしいと思った。 しかし蔦が物を打ち据える鈍い音も、蔦によって強打されたポポの悲鳴も聞こえてこない。 僕が疑問に思う前に、香草さんは右腕の蔦を横薙ぎに振るった。 聞こえるのは空気を切り裂くのみ。 空振り? はずしようが無い。それに香草さんが容赦したわけでもない。それなのに、あたらないとは一体どういうことなのだろうか。 そのとき突然、あらぬ方向で土埃が大きく揺らいだ。 土埃を突き抜けて、ポポが香草さん目掛けて突進する。 香草さんは咄嗟のことにもかかわらず、素早く残りの蔦を差し向けてポポを迎え撃つ。 しかし蔦はポポにあたる直前で、軌道が反れていく。 もちろん、香草さんが逸らしているわけでも、ポポが不思議な力に守られているわけでもない。 やどりさんの念力だ。 やどりさんはいつの間にか金縛りを破られた反動から復帰していたのだろう。 そうか! ポポが砂埃を巻き上げたのもそのためか! 砂埃を巻き上げたのは、最初から自分の身を隠すためではなく、やどりさんの動きを悟らせないようにするためだったんだ。ポポは何時の間にか、やどりさんが戦える状態になったのを気づいていたのだろう。やどりさんが念力か何かで合図したのかもしれない。 土埃の最初の揺らぎは念力によって起こされた罠。本物のポポは念力の力によって羽ばたくことなく砂埃の中を運ばれていた。 これなら、香草さんに気取られるほど大きく空気をかき混ぜなくても移動できる。 すごい奇策だ。 137 :ぽけもん 黒 18話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/11/30(月) 20 25 36 ID IaP3RpEy 香草さんが次いで放った葉っぱカッターも念力でそらされ、ポポを浅く切り裂くのみだった。 しかしいくら撹乱されたからと言って、軌道が直線的なのには代わりは無い。かわされる。 香草さんも回避行動に入った。が、なぜか大きく体勢を崩す。 驚いて地面を見れば、地面はすっかりぬかるんで泥上になっていた。 そのせいで足を滑らせたらしい。 地面は最初は乾燥していて、泥なんかとは程遠いものだったのに。 僕は再び驚かされた。 やどりさんの水鉄砲は香草さんを倒すというより、最初からその水分で地面をぬかるませることが目的だったのか! やどりさんも、自分の力では決定打が与えられないことが分かっていたのだろう。だから、ポポが決定打を与えられるような環境を整えた。 信じられない。なんて先見性、そしてチームワークなんだ。今日会ったばかりで、碌に会話も交していないのに。すごい。言葉も出ない。 香草さんが、リフレクターを使ってポポを受け止めることより、回避を選んだのが運のつきだった。 いや、そもそも回避を選んだのだって今までのダメージの蓄積により、最初から受け止めるだけの体力が残っていなかったための、苦渋の選択だったのかもしれない。 とにかく、香草さんはリフレクターを張る間もなく、突進してきたポポに跳ね飛ばされた。 中空に浮き上がった、翼を持たない香草さんの体は、羽ばたくことなくそのまま地面に墜落した。 一転、二転、三転。 三回ほど転がり、ようやくそこで香草さんの体は停止した。 立ち上がる気配は、無い。 文句なしの決着だった。 二人を雑魚と嘲った香草さんが、その二人に、敗北した瞬間だった。
https://w.atwiki.jp/dinametamo/pages/352.html
もちごめ 入手法/作り方 米+糊、まぜる、すぐ ごま+ぐ実、まぜる、1日 作成アイテム 上トレイ 下トレイ 方法 時間 SUCCESS FAIL GREAT 猶予 もち米 - わける 1日 上新粉 腐ったもち米 GREAT もち米 - 熱する かなり もち 腐ったもち米 こんにゃく もち米 くり 熱する かなり 栗おこわ 腐ったもち米 メラメラせんべい 大根 もち米 まぜる かなり 大根もち 腐った大根 おでん せいろ もち米 熱する かなり ちまき 腐ったせいろ かきあげ 腐り復活 上トレイ 下トレイ 方法 時間 SUCCESS FAIL GREAT 腐ったもち米 - わける ちょっと 米 × 饅頭の皮 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/maiitu/pages/36.html
おもちゃ 庭で遊ぶためのコスプレと同じような感じのアイテム。 最初から"お面"を使った遊び"おにごっこ"ができます おもちゃ 価格 説明 備考 追加日 鬼の面 無料 鬼の面をつけたトロから逃げる 最初からあるおもちゃ 07/12/13 ホッピング 150円 逃げるトロをホッピングに乗ったニャバターが追う 着地する寸前に○ボタンで飛べる 08/01/18 RCカーブルータイフーン3000セット 300円 庭の中でラジコンを自由に走らせる事が出来る 付属品の庭用アイテムラップタイム計測機を使う事によってタイム計測が可能 08/02/14 鬼太鼓 円 鬼ごっこ 鬼として追うことも追われることも可能。トロ・クロが参戦するが、友達のニャバターを呼んで遊ぶことも可能 08/03/27 ローラースケート 円 ローラースケート アナログスティックを交互に動かして前進SIXAXISの傾きセンサーで曲がる 08/05/15 ハーモニカセット 200円 ハーモニカの演奏 SIXAXISの傾きセンサーを利用した新感覚の楽器 08/06/26 トロッコ 円 トロッコの操縦 別売りのレールが設置されていなければ方向転換できないレールの無い部分は直進するので途切れていてもよい 08/07/24 釣り竿 円 釣り モーションセンサー・振動機能対「釣り堀」を変えると他の魚が釣れるようになるまいいつSTOREで同時発売釣った魚は魚拓にして部屋に飾れるその他伝説のアイテムが釣れる事も 08/09/18 ミクロマシン 円 ニャバターのミクロ化 ミクロ化して遊べるアイテムをまいいつSTOREで同時発売メニューからではなく庭に設置して遊ぶ(メニューは使い方のみ表示) 08/11/13
https://w.atwiki.jp/i_am_a_yandere/pages/1412.html
220 :ぽけもん 黒 19話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/12/07(月) 02 10 45 ID RT3H1gnW その後、意識の無い香草さんと、歩くことの出来ないポポをやどりさんに手伝ってもらって、練習場内の医務室に運んだ。 ポポの足は粉砕骨折、香草さんは内臓損傷という重症だった。 医療が発達していても、重度の骨折ともなるとさすがに一日は絶対安静、三日はバトルを禁じられた。今日は集中療養室で一人でお泊りだ。 面会禁止でよかった。もし面会が可能だったりしたら、ポポはごねて僕についてこようとするか僕を帰れないようにしたに違いない。 治療時間としては香草さんのほうが短く、香草さんは数時間で意識を取り戻した。 こちらは今日一日は安静を推奨されたが、特に行動の制限は無い。 状況が理解できなかったのだろうか、香草さんは目を覚ますなり暴れだした。 僕とやどりさんと看護師さんの三人がかりで抑え、香草さんの両手両足を拘束具で固定し、ベッドに据えた。 両手両足の拘束を解こうともがいていたが、しばらくするとおとなしくなった。 蔦も葉も出さなかったことから考えるに、ただパニックになっていただけで、本気で拘束具を引きちぎろうとしていたわけではないらしい。 固定された香草さんは、青ざめた顔をして震えている。この震えは、寒さによるものではなさそうだ。 「私が負けたなんて……そんな……そんな……」 そんな感じのことを、うわごとのようにブツブツと呟いている。 彼女のプライドの高さからいったら無理も無い。 おそらく、同年代との戦いでは今まで負けたことなど無かったに違いない。 それなのに、二対一とはいえ、場外などのルール上の問題じゃなくて、文句なしの敗北を喫してしまったのだ、彼女のショックは計り知れない。 逆鱗に触れる結果になりかねないとも思ったが、僕は彼女に慰めの言葉をかける。 「げ、元気出してよ香草さん。香草さんもすごかったよ!」 突如、拘束された香草さんの手がピクリと動いた。手を伸ばそうとしたようだけど、拘束のせいで持ち上がらなかった。 びっくりした。てっきり首でも絞められるかと思った。 「……ぁ」 香草さんの口から、呻き声のような、涙声のようなものが零れ落ちる。 「ごーるどぉ」 名前を呼ばれた。 いつもの香草さんからは想像もつかない、不安げな、か弱い声で。 胸が締め付けられるのを感じる。物理的にじゃなく。 何だろう、香草さんがとても可愛く見える。 こ、これがギャップ萌えというやつか! ……って僕は何を考えているんだ! 「な、何?」 「お願い……お願いします。もう二度と負けたりしないから……」 呆気に取られて言葉も出ない。一体何の話だ? 「見捨てないでぇ。いなくならないでぇ。ごーるど、ごーるどぉ」 子猫の鳴き声のような、か細く、聞くものに庇護欲を喚起させる声。 「な、何を言ってるのさ。そもそも、負けたら契約解除だなんて一言も言ってないじゃないか」 「いや、いやぁ。ごーるどぉ」 彼女はついに泣き出してしまった。 まともな会話にならない。 彼女の拘束された手は、何かを掴もうとするように、必死に伸ばされていた。 白く、細く、怪力を発揮するとはとても思えない繊細で綺麗な手を。 僕が掴むことはなかった。 221 :ぽけもん 黒 19話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/12/07(月) 02 11 46 ID RT3H1gnW 「……ごーるど?」 不意に彼女の瞳孔がすっと細くなるのが見えた。 同時に、彼女の両の袖から、数十の、ボロボロの蔦が這い出し、鎌首をもたげる。 それはやどりさんが念力で押さえつけるよりも早く、僕の手首に伸びた。 「いや、いや。行かないで。行かないでよぉ」 駄々をこねる子供のように僕に呼びかける。 僕の手を掴む蔦が、僕の手首をギチギチと絞めた。 やどりさんの念力によって、蔦を含む彼女の全身が下方向に強く押し付けられる。 しかし、僕の手首に巻きつけられた、一本の蔦だけはそれに抗っていた。 「ごーるど、ごーるど、ごぉるど、ごぉるどぉ」 最初は甘く、徐々に激しく、彼女は僕の名を呼び続ける。 蔦は、もはや万力のような力で僕の手首をギリギリと締め付けていた。 あ、あ、あ。 「う、うわああああああああああ」 病室中に、僕の悲鳴が溢れかえる。 怖かった。腕の痛みよりなりより、香草さんが、まるで。 ――まるで…… 看護師が慌てて駆け寄り、香草さんの細い、白い腕を剥き出して、何かを注射した。 すうっと、まるで水が引いていくように、滑らかに、急激に僕の手首を掴む力は引いていった。 「いや、こんな、ごぉるど、私、わたし……」 彼女の言葉からも急激に力が抜けていく。 下がる瞼を必死に止めながら、彼女は何か言葉を作ろうと口をモゴモゴと動かしていたが、それも長くはもたず、すぐに沈黙した。 僕は病室の白い床に尻餅をついた。 彼女の蔦につかまれていた手首には、真っ赤な蚯蚓腫れが浮かび上がっていた。 そのとき初めて、僕は自分が全力疾走をした後のような荒い呼吸をしていることに気づいた。 「……ごめんね、おかしなことに巻き込んじゃって」 「……いい」 練習場からポケモンセンターに戻る帰り道。 さすが都会というだけあって、夜も更けつつあるこの時間でも街頭やネオン、建造物からの光で街は明るく、人々によって騒がしい。 賑やかな街と対照的に、僕はとてもいたたまれない気持ちに包まれていた。 一体何が香草さんをあのようになるまで追い詰めるのだろうか。 先ほどのことが思い出されて、少し震えた。 やどりさんからすればいい災難だろうな。 自分に落ち度があるわけでもないのに、こんなよく分からないことに巻き込まれて。 旅をしてきた僕ですらよく分かっていないんだ、今日会ったばかりのやどりさんなんてさっぱりだろう。 「今日はもう遅いし、とりあえずポケモンセンターに戻ろうか。きっと、ポケモンセンターでもそのくらいの融通は利くよ」 陰鬱な気持ちを吹き飛ばすように、努めて明るく言った。 きっと今回の騒動をみて、やどりさんはパートナーになってくれる気なんてなくしたはずだ。 だからポケモンセンター本来の目的からすれば、パートナーでもなく、パートナーになることも無いやどりさんが宿泊するのは無理なんだろうけど、一日くらいなんとかなる……はずだ。 やどりさんは黙って僕を見つめている。どうしたのだろうか。やっぱり、僕と同室なんて嫌なのだろうか。 となると、他に宿をとってあげるしかないか。幸いにもここは都会、宿探しには困らないだろう。バトルで一度も負けてないから資金も一応はある。……ホントは店めぐりをして道具を買い込みたかったんだけども。 「どうしたの?」 「私……と……あなた……は……パート……ナー。だから……ポケモンセンター……に……泊まるのは……当然」 彼女は相変わらずの無表情でそう答える。僕は一瞬呆気に取られた。 「え、いいの?」 「どう……して? ……ダメ……なの?」 「そ、そんなこと無いよ! ただ、今日の騒動で、僕とパートナーになるのが嫌になっちゃったんじゃないかって思って」 「そんなこと……ない」 「そうなんだ! それならよかった」 部屋に戻り、手早く寝支度を終えた僕はベッドに潜る。 やどりさんが照明を消したのだろう、すぐに部屋は暗闇に包まれた。 人の動く気配がする。やどりさんがベッドに向かう気配だ。 そう思っていたのに、その気配は僕のほうに近付き、僕の寝ているベッドの前で止まった。 222 :ぽけもん 黒 19話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/12/07(月) 02 12 11 ID RT3H1gnW 「どうしたのやどりさん」 僕がそう聞くと、彼女は無言でもそもそと僕のベッドにもぐりこもうとする。 「や、やどりさん、何やってるの?」 「何……って……寝ようと……」 「な、何で僕のベッドで寝ようとしてるのさ!」 「何で……って……」 外の明かりに照らされて、彼女の表情が見えた。 いつものどこか間の抜けた表情だけど、今の彼女の感情ははっきり分かる。彼女は明らかに不思議そうな顔をしていた。 「私……と……あなた……は……パート……ナー。だから……一緒……に……寝るのは……当然……」 「当然じゃないよ!」 思わず声が大きくなる。一体彼女はどういう思考回路をしてるんだ。 いや、もしかしてそれは当然のことなのかな。ポポだっていつも僕と一緒に寝たがるし……って違う! 当然なんかじゃない! 何だろうこれは。やどりさんの催眠術にでもかかってるんだろうか。 僕は邪念を振り払うためにやどりさんに背を向け、壁のほうを向く。 しかし、壁のほうを向くと今度は途端に香草さんの姿が白い壁に描かきだされる。 彼女のあの様子、とても正気には見えなかった。 彼女の自信、プライド。 そういったものが打ち砕かれた衝撃は僕が思うよりもはるかに大きかったようだ。 これから、彼女は一体どうなってしまうんだろう。 そして、彼女に対して僕は一体どうしたらいいのだろう。 次第に、思考は袋小路へと陥っていく。 そのまま、いつのまにか僕は眠りに落ちていた。 「……いい……の?」 「うん。約束だしね」 翌日。僕とやどりさんは役所にいた。 もちろん、やどりさんと正式に契約を結ぶためだ。 本当は香草さんに確認を取ってからにしたかった。 練習場の医務室を訪れたのだが、彼女は未だ深い眠りの中だった。 酷い怪我をした上に、精神も酷く磨耗したのだから当然といえば当然なのだけど。 今回、香草さんが受けたショックの大きさを再認識させられる。 ちなみにポポは骨折が思った以上に酷かったようで、相変わらず面会謝絶だった。といっても、治療は伸びても半日程度だそうだ。科学の進歩ってすげー。 正直、やどりさんと契約を結ぶのもどこか後ろめたい。 トレーナーと契約を結ぶパートナー、双方の同意があるのだから何も問題は無い。 とはいえ、あれほど強情に自分以外のパートナーを認めなかった香草さんを無視する形になってしまうのには、抵抗を覚えてしまう。 それに……僕が今新たに契約を結ぶということは、新たに契約を結ぶ相手を騙すことと同じだ。 やどりさんの問いかけに努めて明るい口調で答えたのも、そういった自分の負の感情を誤魔化したかったからだ。 卑怯者。 香草さんに、そう言われた気がした。 「これで僕とやどりさんは正式にパートナーだ。これからよろしくね」 「……こちら……こそ」 契約の手続きそのものは何の滞りも無く終わった。 やどりさんは元々住民登録してあったから、本当に何の手間も時間もかからなかった。 時間がかからなすぎて、香草さんやポポの様子を再び見に行くにも早すぎる。 そういえば、やどりさんが新たにパーティーに加わることになったんだ、ささやかでも歓迎式なんか開いてあげたい。その準備に時間を使ってもいいな。 ……でもきっと香草さんが許さないだろうから無理か。 「僕は今からジムの下見に行ってくるよ」 僕は結局、自分の目的を優先させることにした。 「……私も……いく」 「そう? じゃあ一緒に行こうか」 やどりさんもついてきてくれるようだ。 相変わらず、感情は読み取りにくいけど、少なくとも不機嫌そうではなさそうで安心した。 ジムに向かっている最中。意外なことに、やどりさんは本当に私とパートナーになってよかったのかと尋ねてきた。 あんな横暴な振る舞いをされても、それでも香草さんのことを気遣っているのか。 ……いや、単に僕が自分勝手なだけなのかもしれない。 「今回のことで香草さんもチームプレーの重要性がわかったと思う。きっと分かってくれるはずさ」 223 :ぽけもん 黒 19話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/12/07(月) 02 12 46 ID RT3H1gnW そう、今回の敗北が、彼女にとってよい作用を持たせばいいんだけど。 自己すら見失い、狂乱状態にあった昨晩の彼女。 頭をよぎった昨晩の情景をすぐにかき消す。 あれはただ、強いショックを受け止め切れなかっただけさ。 時間がたち、落ち着けば、上手く消化して、自分の身の一部にできる。 そう、信じたい。 若干苦い感情を覚えながらもそう考えていると、やどりさんは、 「……そうじゃ……なくて」 となにやらモニョモニョ言っていた。 僕はまた何か意図を図り間違えたのかな。 しかしジムに着いたので会話は一旦中断された。 僕たちは正面玄関に近付くことなく、ジムの脇に回る。 今はジム戦を挑みに来たわけではない。偵察しにきただけだからね。 このジムは主にノーマルタイプのポケモンを使うということは分かっているけど、上手いこと他のトレーナーが戦っていてくれていればもっと詳しいことが分かる。 ノーマルタイプは格闘系の技が弱点だけど、ジムリーダーともなれば対策がしてないとは思えない。 香草さんが格闘タイプだから僕たちは有利か……あ、いや、香草さんは草タイプだった。いつもの印象でつい。 予想通り、ジムの側面には少し高い位置にだけど大きな窓がいくつも取り付けられていて、中の様子を伺うことはそれほど難しくなさそうだった。 「やどりさん、念力で僕を持ち上げることってできる?」 やどりさんがいなければ他の手段を講じていただろうけど、折角やどりさんがいるんだから頼ってみる。 「……簡……単」 「それじゃ、申し訳ないんだけど、あの窓から中がのぞけるように僕を持ち上げてくれないかな? それで、僕が左手を開いたら僕を降ろして欲しい」 「……分かっ……た」 覗いていることがばれるとよくないだろうから、見つかったときの対策をちゃんと考えておく。 やどりさんは両腕を前に差し出すと、そのままトテトテと歩いて、僕に抱きついた。 「や、やどりさん?」 「……ちゃん……と……捕まっ……て」 言われるがままに抱き返す。すると僕たちの体がするすると浮き上がり始めた。 「じ、自分の体も持ち上げられるの!?」 まさか、念力でここまで出来るなんて。 つまりやどりさんは空を飛ぶことが出来るということだ。 いや、少しこれは大げさかな。 でも宙に浮くことが出来るというのは間違いない。 それくらい、やどりさんの力は強いものらしい。 やどりさんは僕を見て、僅かにだけど微笑んだ。 いつも表情が分かりにくいやどりさんにしては珍しいことだ。 窓の辺りまで浮上した僕は窓から中を覗き込む。 しかしバトルはやっていなかった。 まあそこまで都合よくはいかないよね。 自然物を使っていた今までのジムとはうって変わって、床面は人工的で無機質な素材で出来ている。遮蔽も無く、酷く無機質な造りだ。構造だけ見れば。 しかし床の色がピンク色のせいでまったく無機質さを感じられない。 というか悪趣味以外の何物でもない。 ジムリーダーは一体何を考えているんだ。 遮蔽物無しか……今までのジムよりも戦いやすいように思える。 でも、きっとこれが相手にとって一番有利な地形のはずだから、油断は出来ない。 「やどりさん、ありがとう。降ろして」 僕がそういうと、今度はゆるゆると降りていき、地面についた。 やどりさんはいつものぼんやりとした表情で僕を見ている。 僕に抱きついたまま、離れる様子は無い。 「……あの、やどりさん?」 「……何?」 「そろそろ離してくれないかな」 「…………やだ」 やだと言われるとは思わなかった。 でもずっと抱きついているわけにもいかないので、やどりさんを押して離れる。 やどりさんは相変わらずの表情だ。 本当に、ポポや香草さんとは違った意味で、やどりさんは何を考えているのか分からない。 そもそも、僕を浮かすのにわざわざ抱きつく必要はあったのかな。 まずそこを疑問に思うべきだった。 224 :ぽけもん 黒 19話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/12/07(月) 02 13 12 ID RT3H1gnW 次に僕たちは古賀根百貨店に向かうことにした。 古賀根市に来たからには是非一度は寄っておきたかった場所だ。 道中の連戦連勝で大分お金も溜まっているし、思う存分道具が買える。 店に入った僕は、圧倒されて息を呑む。 久々に来たけど、やっぱりすごい品揃えだ。 あ、これ新製品だ。便利そうだなー。欲しいなあ。でも今の手持ちの道具と機能が被るよなー。どうしようか…… お、こっちは技マシンのコーナーだ。旅に出るまでは実感が湧かなかったけど、こうしてみると魅力的だよなー。 ええっ、こんなものまで売っていたっけ? う、でも高いなあ……これを買うと他の道具が……いや、でも…… 不意にやどりさんに服をつかまれて、ようやく正気に返った。 しまった、つい商品選びに夢中になり過ぎてしまった。やどりさんを意識するのをすっかり忘れてしまっていた。 彼女を見ると、いつもの表情で僕を見ていた。 お……怒ってる? 表情の変化が無いから感情が分かり辛い。というか少し、怖い。 「ごめん、つい夢中になっちゃって」 弁明するように僕は言う。 そういえば、この旅の……というか香草さんのせいで、僕は謝り癖のようなものがついてしまったように思う。 僕は昔から自己主張が強いタイプではなかったけれど、何かあったらとりあえず謝って場を濁すようなタイプの人間でもなかったと思うんだけどなあ。 ふと、そんなことを思う。 「……人、多い。はぐ……れそう」 多いといっても一緒にいる人を見失うほど混んでいる訳ではない。 でも僕が上の空であっちへふらふらこっちへふらふらしていたらはぐれても何の不思議も無い。 まったく、僕には気遣いが足りていない。 あと、やどりさんが、はぐ、で言葉を区切るから、てっきりまた抱きつかれるかと思ったのはスルーしておこう。 「そうだね。手、繋いでもいい?」 「……うん」 僕が差し出した手にやどりさんが手――正確には着ぐるみ――を重ねた。 滑らかで柔らかい手触りが、僕の手に伝わってきた。 「……あ」 とある棚の前でやどりさんが小さな声を上げた。 今までずっと無言だったから、何事だろうとやどりさんを見たら、彼女は誤魔化すようにすぐに――といっても、彼女の動きだからゆっくりなんだけど――視線を僕に向けてきた。 でも、一瞬だけどやどりさんは確かに棚の陳列物を見ていた気がする。 「ラピスアクアかー」 その棚にあったのは、淡い青色を湛えた、透明度の高い石だった。 この石――ラピスアクア、直訳すれば水の石――には世界各地で水の力が宿っているという言い伝えがあり、別名水の結晶とも呼ばれている石だ。 確かに、その澄んだ青は見るものに不思議な力を感じさせる。 持つものには水の力が与えられるといった話や、水の加護を得る、なんて話がいくつもあるのも納得だ。 特に水を操るポケモンと関わりが深く、全員がこの石を持っている種族があるほどだ。 また、綺麗な見た目から宝石としての価値もある。 「そういえば、やどりさんはラピスアクア持っているの?」 やどりさんは水タイプだ。ラピスアクアを持っていても何の不思議も無い。 しかしやどりさんはゆっくりと首を横に振った。 225 :ぽけもん 黒 19話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/12/07(月) 02 13 48 ID RT3H1gnW そうなのか。最近はアクセサリーとして持つ人も増えていると聞くけど。 実際、その棚に並んでいるものも、原石はごく一部で、殆どはアクセサリーとして加工されているものだ。 そして何よりも……高い。 なんだこれは。 なんだこれは! 少し大げさに驚いてみた。 しかし高いことは事実だ。 具体的に言うと、未加工の小さな原石一つで傷薬が十個は買える。 一番高い、凝ったテザインのティアラに至っては、傷薬が一、十、百、千、……傷薬の限界を感じる。 とにかく、ものすごく高いってことだ。 でもやどりさんがパーティー加入したのに、特に祝って上げることも出来ない。ならば、プレゼントの一つくらいはしたほうがいいんじゃないだろうか…… 「あの……ゴールド?」 「こ、このネックレスなんかやどりさんに似合いそうだよね!」 僕は震える指で陳列棚に並べられている商品の一つを指差した。 値段はティアラに比べれば体当たりみたいなものだけど、僕の財布には破壊光線だ。 自分でも頭が少しおかしくなっていることは分かってる。 当のやどりさんは少し首を傾げている。 こ、この反応は……何だ? 「……そう……かな」 ようやく口を開いた。よく分からないけど、多分、まんざらでもなさそうだ。よし! 「じゃあやどりさんにプレゼントするよ。パーティー入隊祝いでさ」 「……いい……の?」 やどりさんの眼がネックレス……いや、値札に向いた。 まるで僕の心を見透かされているようだ。 ……見透かされてないよね? 「うん! せっかく仲間になったっていうのに、皆あんまり歓迎してくれそうにないし……あ、それはやどりさんが悪いんじゃなくて、誰に対してもそうだっていうか……」 あたふたと弁明をする僕を見て、やどりさんはかすかに微笑んだ。 その微笑はかすかではあるけれど、殆ど表情に変化というものがないやどりさんにとっては大きなものだ。 僕は店員さんに代金を支払うと、ネックレスをやどりさんの首につけてあげた。 「あり……がとう」 デパートからの帰り道、僕はやどりさんの何度目か分からないお礼を聞いていた。 ネックレスをプレゼントして以来、ことあるごとにありがとうと言ってくる。 喜んでもらえたのは嬉しいけど、ここまで感謝されると少し照れくさい。 「そんなに気にしなくてもいいんだよ。やどりさんもパートナーになったんだから」 何度目か分からない、その照れ隠しの言葉を返したとき、とても意外なことが起こった。 やどりさんの体が突然光に包まれたのだ。 その光の発信源は彼女自身だった。 数十秒の後、光は消え、その中からやどりさんが現れた。 進化だ。 久々に見たから驚いてしまった。 着ぐるみを着ていることもあって、変化が分かり辛いけど、確かに進化したんだよね? 半ば呆然として眺めていると、やどりさんは滑らかな動作で僕に抱きついてきた。 「ゴールド!」 初めて聞く、嬉しさが滲んだ彼女の声だった。 「や、やどりさん!?」 少し離して、彼女の顔を見る。 その顔にははにかんだような笑みが浮かんでいた。 226 :ぽけもん 黒 19話 ◆/JZvv6pDUV8b :2009/12/07(月) 02 14 45 ID RT3H1gnW 今までは変化に乏しかったけど、進化したことによって感情を出しやすくなったのかな。 「私……進化できた。ゴールドのお陰」 進化してもやどりさんはやどりさんだ。前ほどではないけど、少しのんびりとした話し方だった。 「ぼ、僕のお陰だなんて、そんな……」 ラピスアクアのような石が進化のきっかけになることもあるという。 きっとやどりさんはラピスアクアを身に着けたことで石からの特殊な波動というかなんというか、そういうものを受容して、それが進化に繋がったに違いない。 つまり進化できたのは石のお陰で……石をプレゼントしたのは僕だから、これも一応僕のお陰ということになるのかな。 「と、とにかくよかったね!」 「うん!」 やどりさんは元気に笑った。 ほどなくポケモンセンターの近くまで来た。 ふと、ポケモンセンターの前に立っている人影に気づく。 キョロキョロと落ち着きのないその影は、僕を見つけるなり、一直線に飛んできた。 「ゴールドー!」 「ポポ!」 驚いた。一日は絶対安静だといわれていたのに。 「足はもう大丈夫なの? 確か絶対安静とか言われたんだけど」 ポポを抱きとめながらそう質問する。 「平気です! 愛の力です!」 誇らしげにそう言う。 あはは、と僕は苦笑いだ。 ポポは力強く僕に抱きついていたが、はっと思い出したように僕から離れた。 「そうです、た、大変なんです!」 「何が大変なのさ」 「あの女が、チコが眼を覚ますですよ!」 その言葉に僕はゴクリと唾を飲み込んだ。 パートナーに恐怖心を抱くなんてありえない話だし、パートナーの快気を嬉しく思わないなんて間違っていることも分かっている。 でも、僕がそれを聞いて初めに抱いた感情は、やはり恐怖だった。 香草さんに会うのが怖い。 はっきりとそう思う。 「そ、それのどこが大変なのさ」 僕はやっとのことでその言葉を吐き出した。 自分でも、大変だとアピールするような声色になっているのが分かる。 「……やっぱり、ゴールドも分かってくれたんですね! チコは危ないです! ポポはゴールドに危ない目に会って欲しくないです!」 そういえば、ポポは以前から香草さんの危険性を主張し続けていたっけ。 ポポの言っていたことは……間違いではなかったのかな。 「だから、ゴールド。契約を解除しちゃえばいいんです」 「え?」 その言葉は僕にとって不意打ち気味に発せられた。 「チコと、パートナーじゃなくなればいいんです。そうすれば、ゴールドは危ない目に会わなくてすむです」 「そ、そんなこと……」 「パートナーに対する暴力。これは契約を解除する理由になるですよね?」 それは事実だ。しかし僕はそれよりも、ポポはそこまで物事を理解し、考えていることに驚いた。 「大丈夫です。ゴールドにはポポがいるです」 「私も」 彼女達の強さは織り込み済みだ。この状況で、無理に香草さんとパートナーである理由がない。 「で、でも、僕は……」 「ゴールド!」 背後から、大声量で名前を呼ばれた。 馴染みのある、その声。 ポポとやどりさんが一瞬のうちに体をこわばらせたのが分かった。 僕は、ゆっくりと、呼ばれたほうを振り返った。 「ゴールド」 僕の視線の先には、患者衣のままの香草さんがいた。
https://w.atwiki.jp/hmiku/pages/37769.html
【検索用 もちもちかーる 登録タグ 2018年 GUMI VOCALOID みずす も わたしょ 曲 曲ま】 + 目次 目次 曲紹介 歌詞 コメント 作詞:わたしょ 作曲:わたしょ 編曲:わたしょ イラスト:みずす 唄:GUMI 曲紹介 曲名:『もちもちがーる』 歌詞 (piaproより転載) 進め 劣等そっち退け ほらねっ! 君の手を引っ張って 靴を鳴らして漫ろ歌 止まれ 遠方あっち向け 逆さまの街で泣いている 君を笑顔にしたいんだ 暮れる空を追いかけて 落ちてゆく林檎の声 ぽつり 行き場のないため息も 全部掻き集めて おもちみたいに搗けたらいいのにな あっちもこっちもぺったんもちもちいい感じ 君と紡いだ風見の鉄塔も 切ったり貼ったり継ぎ接ぎだらけで意味ないや 進め 劣等蹴っ飛ばせ ほらねっ! 君の手を引っ張って ひとりぼっちはあたしだね 続く 遠方あっけらかん 褪せた 暮れた 何をしようか どこか呆けた花時計 風に靡く袖の音 眩むような林檎の声 ぽつり 行き場のないため息も 全部食べてあげる 進め 劣等そっち退け ほらねっ! 君の手を引っ張って ひとりぼっちのふたりだね こんな日々に食べられて 大人になるのかな 甘味はことりと寄り添った ずっと 傍にいるから おもちみたいに搗かれてぺったんこ あっちもこっちもぺったんもちもち変な感じ ひとりよがりの明日への悪感情 切っても貼っても継ぎ接ぎだらけで意味ないや ねえ 君はどうしてあたしじゃ駄目なのさ ああだのこうだの喚いたところでやっぱひとり コメント 名前 コメント