約 3,451,967 件
https://w.atwiki.jp/animeamemo/pages/181.html
アニメ:紅 kurenai(くれない) ED2 歌手名:新谷良子(しんたにりょうこ) 曲名:手のひらの太陽(てのひらのたいよう) 曲はこちらから
https://w.atwiki.jp/yaruo-schop/pages/609.html
サムネイル画像 タイトル ソラールさんのぼくらのたいよう 作者名 ◆pK/wkQFKvk 原作 オリジナル作品 ジャンル R18、異世界もの、ファンタジー 主人公 太陽の騎士ソラール(DARK SOULS) 期間 2016/10/10~2016/10/18 掲示板 やる夫系狐板 タグ 安価、完結作品、選択安価、ダイス まとめサイト 様 やる夫が人生でいいじゃない 様 スレッド一覧 スレッド名 タグ 備考 開始日時 最終レス 【R-18】おいでよおおおお!! どーぶつのもり【安価・あんこ】 R18、安価、選択安価、ダイス #2730から「ソラールさんのぼくらのたいよう」シリーズ:スタート 2016/09/29 2016/10/17 【R-18】亡国◆pK/wkQFKvkの雑談短編所【その22】 R18、選択安価、ダイス #826から「ソラールさんのぼくらのたいよう」シリーズ:再開 2016/09/14 2016/12/14 同作者の作品一覧 ポケモンレンジャー!! やらない夫! 東京喰種:Es ソラールさんのぼくらのたいよう
https://w.atwiki.jp/retrogamewiki/pages/12410.html
今日 - 合計 - てのひらを、たいように ~永久の絆~の攻略ページ 目次 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 基本情報 [部分編集] ストーリー [部分編集] 攻略情報 [部分編集] Tips [部分編集] プチ情報 [部分編集] 関連動画 [部分編集] 参考文献、参考サイト [部分編集] 感想・レビュー 名前 コメント 選択肢 投票 役に立った (0) 2012年10月12日 (金) 13時00分37秒 [部分編集] ページごとのメニューの編集はこちらの部分編集から行ってください [部分編集] 編集に関して
https://w.atwiki.jp/saikyoumousou5/pages/1811.html
【妄想属性】オリジナル 【作品名】町内宇宙大戦 【名前】太陽 系子(たいよう けいこ) 【属性】宇宙中学校3年3組委員長 【大きさ】活発な女子中学生並 【攻撃力】 女子中学生並。以下の武装を手を触れずに全て同時に扱うことが出来る。 「ザ・サン」:3000000000000度の高熱で全てを焼き尽くす槍。 「マーキュリー」:天に掲げるだけで高さ500km、幅5500kmの大洪水を引き起こす壷。系子は無事。 「ヴィーナス」:地に刺すだけで金属製の剣を半径1光年にスコールのように降らせる剣。系子は無事。 「マーズ」:炎の形をした兵隊を3000000体呼び出す笛。炎の温度は300000000度程。その他は成人男性並。 「ジュピター」:月ほどの大きさを持つ木の塊を相手の真上に召喚し潰す琴。奏でると即発動。 「サターン」:あらゆるものを切り裂く直径3kmほどのチャクラム。亜光速。 「ウラヌス」:月を貫くレーザーを放つ銃。 「ネプチューン」:系子を除くあらゆるものを融解させる雨を降らせる扇。雨の勢いはスコール並。範囲は半径半光年。 「プルート」(番外):絶対零度で相手を完全氷結させる斧。ただし、色々あって系子の武装から外されている。 【防御力】 女子中学生並だが宇宙生存可能。自分の速度に耐える。 「アース」:系子と、系子の所持品の傷を0秒で癒す羽衣。自身も例外ではない。 「エッジワース・カイパーベルト」:常に系子の周りを漂う微細な塵。あらゆる物理攻撃はこれにさえぎられ系子には到達しない。 【素早さ】光速で移動可能。光速の3倍に反応可能。 【長所】武装 【短所】他の面子に比べると攻撃力が低く、遅い 【説明】宇宙中学校3年3組で委員長をやってる少女。 ◆考察記録--------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 542 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 01 21 52 太陽 系子考察 光速の三倍反応でネプチューン発動して距離とるが基本戦術 それでだめならマーズ発動 ○ブラックホール 物理攻撃なのでエッジワース・カイパーベルトでふせげる ネプチューン勝ち ○宇宙移動ハニワ 反応で勝るので基本戦法勝ち ○魑魍魅魎魅魎魑魍 ロングロングタイムはきかない 基本勝ち △フィルン 銀河の半分は無理 ただ物理攻撃っぽいので負けはない ○ガーディア 反応で勝る ネプチューン勝ち ×ダークマター 無理 ○スーパーストライクフリーダムガンダム 全部ビームだしエッジワース・カイパーベルトで防げる 勝ち ?ゴッドモララー ネプチューンは効かない30兆度の熱で勝てるか? ×神奈 神霊結界100%によって攻撃全部効かないだろう 速度定期にもそれほど差がなさそうだし負け ○メガ進藤さん ロボの攻撃なので物理攻撃だろう エッジワース・カイパーベルトで防げるし勝ち ○ORT 基本勝ち ○反転神聖機甲魔神 基本勝ち ×面接受けに来た漢 夢現の民で負け ○王子 ネプチューン勝ち ○デスリオック改 ネプチューン勝ち ?眼鏡王 眼鏡レーザーは物理攻撃?微妙 ○○神海賊団(仮称 海賊神 基本勝ち ○○○MBFMウェーブ次元斬ハニワ~幸真緒 基本勝ち △銀河 負けはないでも勝てないだろう 異論がなければ上行く 543 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 01 25 32 542 あらゆるレベルだからモララーや神奈にも効くんじゃね? 眼鏡王みたいなのは不思議攻撃の可能性があるから微妙。俺なら効くと判断する。 他は同意。上も見た方がいいと思う。 544 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 01 27 00 了解した つまりネプチューンはあらゆるものをふせぐとかでもなけれぱ溶かしちゃってOKね そろそろ反応負けと物理攻撃以外が出てきて負けそうだけど 545 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 01 47 13 太陽 系子 続き よく考えてみると装備はすべて同時につかえるんだな(ネプチューンとエッジワース・カイパーベルト以外役に立たないけど) ×世界機構 無理か負け ×カラシニコフたん 見て負け ×おっぱい みて負け ○ケールニヒ ネプチューン勝ち △ダニー 0秒で無限大にふくれあがるが相手はKOT症候群をつかえないので分け ○ユウ ミカエルと一緒 ○ミカエル 思考が早くても行動が遅い ネプチューンで勝ち ○悠美 ネプチューン勝ち ○ハンゴク先生 ワイのルールは任意っぽいのでネプチューンで勝てる? ○任意全能さん ネプチューン勝ち ○怒津屁留源牙亜 勝てないが負けない(エッryのを貫けるのがサターンとネプチューンだけでサターンは遅いしネプチューンは系個には効かないし) ×さすらいのジョニー 無理 ○折原藍 ネプチューン勝ち △双聖剣 アポートでは負けようが無い でも勝てない △そこから始まるファンタジー 範囲たりないでも負けない ×超サイヤ人4ゴジータ 無理物理攻撃じゃあないし ×曙 アケボノパンツで負け?エッジryで耐えても宇宙がもたないだろう ユウの上かなー もうちょっと上とやる? 546 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 01 50 01 545 超光速反応だから視認発動系は効かないと思う 超光速反応の上は本当に超光速反応とかだからもう少し見た方がいいかもしれない 547 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 01 54 20 俺もそう思ったんだけど超光速連中の上にいるんだもん視認発動の人たち だからなんか特別な理由があると思った 548 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 01 58 07 超光速だろうがなんだろうが目の前に立って戦闘開始するんだから嫌でも見ることになるだろ 549 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 01 58 24 ダニーはおかしいな。もっと上がる。 深遠の剣系は思考以外は亜光速までなので視認系攻撃は有効。 ゴジータや曙などはカラシニコフたんには勝てるがそれ以下で連敗してるからだろう。 あとは光速未満とカオスだから問題ない。 550 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 01 59 16 548 見る前に攻撃して倒せば問題ない 551 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 02 15 550 どうやってだよw デカくて遠距離攻撃できる奴ならともかく 552 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 04 38 550 超光速に対応できるんだから視覚以外を使ってるはずだろ。 少なくとも光速の光が目に入るより先に動けるはずだ。 戦闘速度が超光速なんだし膠着するならともかく一撃で決着をつけるなら視認はしない。 553 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 05 13 550じゃねえ551。 554 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 05 32 少なくとも系子に関しては光速移動かつ光速3倍反応だから、 相手から光速で遠ざかりつつネプチューンを発動させることで相手を見ないで勝てるな。 555 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 02 06 22 太陽 系子 続き カラシニコフたんとおっぱいには勝てる方向で続き ×オメガアルキデスオオヒラタ よし無理 ×シオ・ベルスーズ~玲 音虎 反応負けしてるしみんな物理攻撃じゃあない負け ○○『フォーバラス』号 『グラディオス』号 ネプチューン勝ち ?闘えるようにしたテンプレ ネプチューンと任意全能のどっちが早いか微妙 不利か 意見求む ○八人の弥勒 反応で勝る ネプチューン勝ち ○タカヤ ネプチューン勝ち ○超光速ドラえもん ネプチューン勝ち 『フォーバラス』号 『グラディオス』号の上? 556 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 08 17 超光速に対応できるんだから視覚以外を使ってるはずだろ そういう事言い出すと自重とかも考慮しなきゃいけなくなるぞ 557 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 08 53 今気付いたけどネプチューンの速度は書いてないな。微妙かもしれん。 ただ、亜光速未満の反応ならサターンで代用できるしマーズで前方に並べまくるという手もあるからあまり問題ないか? 558 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 02 09 04 怒津屁留源牙亜には△だなすまん 559 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 09 44 556 それはまた別問題だ 光が光速なのは柳田でもなんでもない 560 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 02 11 00 つーかスコール並ってかいてあるじゃん ぜんぜん任意全能のほうが早い 半光年を数秒で移動できるやつにはきかんなこりゃ 561 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 11 08 557 スコール並、だろ? その辺りは考慮済み? 562 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 12 03 おそかった 563 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 12 37 561 スコールだろうが速度はそう変わらないと思うが 564 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 02 13 37 いやいや、扇を振るってからスコールがふるのでこの辺じゃあかなり遅い ほかの攻撃で死ななくてなおかつこつちを一撃で殺せる相手には負けるなこりゃ やり直しか 565 名前:格無しさん 投稿日:2006/11/07(火) 02 13 37 556 通常の視覚じゃないってことだ。 レーザー回避できるなら可視光線も回避できる。 だから見る前に行動可能。 566 名前: ◆oSP2rUawRA 投稿日:2006/11/07(火) 02 24 53 太陽 系子 やりなおし 基本は光速でにげながら全アイテム同時発動 ネプチューンは数秒ぐらいで半光年に広がるものとする ○ブラックホール 物理攻撃なのでエッジワース・カイパーベルトでふせげる ネプチューン勝ち ×宇宙移動ハニワ 次元斬ハニワと一緒 ○魑魍魅魎魅魎魑魍 ロングロングタイムはきかない 基本勝ち △フィルン 銀河の半分は無理 ただ物理攻撃っぽいので負けはない ○ガーディア 反応で勝る ネプチューン勝ち ×ダークマター 無理 ○スーパーストライクフリーダムガンダム 全部ビームだしエッジワース・カイパーベルトで防げる 勝ち ○ゴッドモララー ネプチューン勝ち ×神奈 反応では勝るが 速度が負けてる ネプチューン発動前にまけ ○メガ進藤さん ロボの攻撃なので物理攻撃だろう エッジワース・カイパーベルトで防げるし勝ち ×ORT 結晶化負け ×反転神聖機甲魔神 光速反応なのでウラノスは防ぐだろうそのまま負け ×面接受けに来た漢 夢現の民で負け ×王子 ネプチューン発動前に負け ×デスリオック改 無理 ネプチューン発動前にくわれる ×眼鏡王 眼鏡レーザー負け ○○神海賊団(仮称 海賊神 まぁ勝てる ×MBFMウェーブ次元斬ハニワ かたっ!サターンがあたる前に切断負け △セレネさん 負けない勝てない ○幸真緒 基本勝ち △銀河 負けはないでも勝てないだろう 神海賊団(仮称の上 ネプチューンの発動が遅い上にほかのアイテムも軒並み光速以下だし近接武器は無駄に多いしでこんなものか
https://w.atwiki.jp/parallelparadox/pages/189.html
ガウェインこと兵頭平馬の心器。形状:赤い刀身を持つ両手持ちの西洋剣 “燃える”心器の物質創造。 赤星勇吾の草薙とほぼ同じ能力を持つ。 ただ、周囲の空気を燃やしているわけではなく心器自体が燃えている 。 四天滅殺との戦闘の際、赤星勇吾の草薙に撃ち抜かれ破壊された。 ⇒兵頭平馬(ひょうどう・へいま) ⇒R12(らうんどないつとぅえるぶ) ⇒草薙(くさなぎ) ⇒四天滅殺(とらんぷ) ⇒魄滅(ほわいとあうと) ⇒太陽の一撃《ライジング・インパクト》
https://w.atwiki.jp/dq_dictionary_2han/pages/3169.html
DQⅡ Ⅱに登場する【5つの紋章】のうちの一つ。 入手自体は簡単だが、場所が果てしなく難しい。 「【炎のほこら】にある」という情報はあるのだが、肝心の炎のほこらがどこなのかわからない。 旅の扉を使いまくっているとそのうち燭台があるほこらに出るので、「ここかな?」と予想をつけるしかない。 やまびこの笛が最も活躍するはおそらくこの場所だろう。 そして正確な位置は炎のほこらの外壁の向こうにある草むらというからタチが悪い。 もちろんレミラーマなんてものは無いので地道に全マス調べないといけない。 数あるⅡの難解な謎解きの中でも【ラゴス】、【ハーゴンの神殿】と並ぶ厄介さである。 福引所ではこれが三つ揃うとなんと1等の【ゴールドカード】が貰える。さすがレア紋章。 DQⅥ Ⅵでは【聖なるほこら】にあるパネルに同様の紋様が描かれている。 セバスの兜に印として刻まれており、当たりの紋様の一つとなっている。
https://w.atwiki.jp/wakan-momomikan/pages/7045.html
太陽の如き火玉│和(肥州)│火部│ http //wakanmomomikan.yu-nagi.com/momomi3/maki-6913.htm 『阿蘇山上奇瑞記』には「日輪の如き火」
https://w.atwiki.jp/idolmasterwiki/pages/146.html
作詞:柚木美祐 作曲:NBGI(jesahm) 歌:たかはし智秋、今井麻美 歌姫楽園 REM@STER-B 名前 コメント タグ jesahm たかはし智秋 今井麻美 太陽と月 柚木美祐
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/406.html
霧子にとって、この急転した状況はすべて飲み込めるようなものではなかった。 ハクジャとその仲間、ミズキの登場。己を勧誘する彼等と、自分を守るように言葉を交わす小さな少女。 そして、その少女が謳う、この世界からの脱出。 怒涛の情報量と織りなされる議論に、本来なら当人であったはずの霧子は置いていかれていて。 けれど、その中で――霧子の見過ごせない事実も、確かにあった。 それは、梨花の提案した脱出プラン――ではなく。 「………何かしら、霧子ちゃん」 目の前で固い微笑を湛えている、彼女たちのこと。 脱出プランそのものは、確かに、霧子としても望むものではあった。 自分の為に誰かを殺すとか、蹴落とすとか、そういうつもりは元からない。かといって、アンティーカの仲間と別れることを安易に良しとできるような強さを持ち合わせてもいない。 だから、その選択自体は、彼女の望むものであって。 けれど、それだけでは駄目なのだと、同時に分かった。 「……生まれてきたから、そう生きるとかじゃ、ない………」 ――この世界は、残酷なものなのだろう、と。 界聖杯という機構を指して、霧子はやはりそう思った。 幽谷霧子を称して、可能性の器だと指した、かの聖杯。 それはきっと恵まれたものであれど――その実態が、可能性を持たぬものは、ただ無遠慮に削除するものであったから。 「あのね……」 可能性の器は、聖杯を手に入れることで生き残れる。――そうでない器は、切り捨てられる。 だから最初は、せめてそれに逆らおうと思った。 彼等がもし切り捨てられるような結末を迎えてしまったとして、それでも、聖杯に願った想いまで無駄になることがないように。 咲耶もそうだし、今となっては梨花もそう。皮下ですら、願いそのものはもしかしたらただ純粋に祈りを尽くす価値があるだけのものなのかもしれない。 自分一人では限界があるのは、最初から分かっているけれど、それでも自分に聞こえる限り、その願いだけは聞き届けたい。 「生きたいって思えるだけで…………生きてていいの………」 ――ああ、それだけではなかったのだ。 目を、向けたいと思ったのだ。 「切り捨てられる」ものは、もっと広くて。もっと多くて。 今目の前にいる、「界聖杯の中に生きている人々」という存在は。 可能性の器ですらない、未来に何の影響も及ぼさないと断じられる者たちは――元より籠の中の鳥で、生きることすら許されない。 わたしは、それでも、生きることを許されたけれど。 彼等は、そもそも、命すら彼等のものではなかった。 「……過去は……大切で、わたしたちのそばに、ずっとあって……」 ……過去に縛られるだけなら、いい。 過去として入力された記憶に基づく行動方針は、確かに指針であるのだろう。 それは否定されるべきものではない。 だから、皮下を裏切れというのも、彼等が恩義を感じているからこそというのも、わかるのだ。 ――けれど、その結果として。 命すら彼女たちのものじゃないと感じてしまっている、そのことが、とても哀しい。 「……でも、それは……いなくなっていい理由には、ならないから……」 ――はは、霧子もパン、もらっていいんだ。 ――もし、なんにもつくれなかったとしても。 だって。 パンをもらうべきじゃない人なんて、この世界にはいないのだと、あの人はいつか言ったではないか。 ただ生きることに、その人生を享受することに、誰の許しもいらなくて。 まして、自分が自分に生きることを許していけないということなんて、どこにもなくて。 そういったものを伝えようと、アイドルとしての幽谷霧子はそうであろうと、思ったから。 誰かにパンをあげられるアイドルに、なりたいから。 誰かが抱く、聖杯に対する願い。咲耶のように死した人の無念。 そして、何より――一度「生きたい」と願ってしまった、可能性を保たないという烙印。 全部を抱きかかえるのなんて無理だ。幽谷霧子は偶像であっても、全てを救えるような救世主じゃないから。 だから、手の届く限り。できることは、掬い上げられるのは、唄えるのはたったそれだけ。 ……それだけしか、できなくて。 「……わたしは、もう、知ってるから……ハクジャさんたちが、生きたいって思ってること……」 ……それだけのものを、見過ごせない。 命として生まれ出でたと感じて、消えたくないと――生きたいと、願い始めているのであれば。 その想いに、未だ帰る場所がないというのであれば。 「だから……ハクジャさんも……アイさんも、ミズキさんだって……ただ……ただいまって……言えるように……」 ――ああ、だから、せめて。 帰る場所が、あるように。 可能性が喪失して、泡沫と化してどこにもいけず、ただ無に戻るだけで終わらないように。 彼等が生きて、ここがあるべき場所だったんだと、言えるように。 「記憶を、覚えてて……今のことを、大事に思えるなら……いいの……」 そのあるべき場所が、あるいは皮下真なのかもしれない。 それならそれでいいと、霧子は思っていた。 だが――皮下真は、彼等を顧みることはない。 命は平等(かる)くて犠牲は尊(しかたな)い。安心していろ、結果を使ってやるから忘れない。 かの男がそういう人間であることを、霧子自身は知らなくとも――今ここにいるアイが、ミズキが、ハクジャが、『生きて帰る』べき場所ではないというのは、分かった。 そうであるのなら、もっと笑って、運命すらも飲み込んでいる筈だ。実際に、そういう生き方を選んだ器足りえぬ者――割れた子供や、悪の救世主の心酔者もいるのだから。 そうなっていない時点で、皮下は義理を通すべき相手であっても――彼等の安息には、なりえていなくて。 「でも、そうじゃないなら……心が、どこにも帰れないなら……」 それなら、帰る場所を作りたいと思った。 聖杯戦争の参加者と同じように、彼等の思いと願いが帰る場所。 ただ、思いを引き継ぐだけでなく――生還という形で真に生きる場所を与えられるというのであれば、尚更に。 「過去だけじゃなくて……未来のことだって、思っていいんだって……」 だってこんなにも、目の前の命は生きているから。 生きているのなら、生きたいと、欲しいものを願っていいのだから。 「……未来に、帰る場所を、作れるんだって……」 ……その願いが、生まれているなら。 そこにはきっともう、可能性がある。 「帰って、いいの……」 それはまるで、雨の先で虹が出るように。 それはまるで、種を残す花が咲くように。 「生きたいって思える場所に、帰りたいって思っても、いいの……!」 世界は、過去の記憶という蓋で閉ざされてなんていなくて。 未来が、可能性が、輝きがあって。 それを、誰しもが掴んでいいはずなんだからって。 あまりにも優しすぎるその歌のような声で、幽谷霧子は伝えていた。 「あ――――――」 だから。 真っ先に、ひとつの声が上がって。 その優しさを見て、一番最初に生きたいと願った、獣耳の少女は。 アイという、『まだ子供にしかすぎない自我を与えられてしまった少女』は。 植え付けられた記憶と相応に、生への渇望を与えられてしまった、彼女は。 己の居場所の喪失への恐怖と、それを掬い上げてくれる目の前の偶像に、確かに救われて――ただ、膝を折って泣き崩れた。 それを傍らで見ていたミズキは、ただ嘆息することしかできない。 ああ、これだから――子供の態度というのは分かりやすくて。 「……みー。改めて、提案するのです」 そう考えれば、彼女のこの老獪さは、やはり子供染みてはいない。 今この瞬間を逃すまいと――希望が芽生えて手を伸ばしたその瞬間を必死に掴み取らんと、まっすぐにこちらの目を見据えるのは、百年の魔女。 ――百年を生きてなお、帰る場所を見失いたくなかっただけの、少女。 「……あなた達が生きることを望むなら、わたし達はあなた達と一緒に、外の世界に一緒に抜け出したいのです」 それすらも、可能かもしれない。 カケラの先に思いを残し、仲間を信じて未来を、そんな奇跡を、この手で掴んだように。 「それが運命だからと、死ぬことを諦める前に。生きる為に、手を伸ばしたいと思うなら」 もしも、「生き残りたい」と、願うようになったのあれば。 彼等がそれを望むのであれば――ただ純粋に、生き残り、ただ消える未来に飲み込まれることへ抗うというのであれば、古手梨花は。 「私は、生き残れる道を示すのです。それが、あなた達が真に生きる為になるのなら」 誰かに手を伸ばすことを、選びたいと思った。 「……だから、自分たちの意見も聞いてくれ、と?」 「みー。そこはギブ&テイクというやつなのです。実際、損はしないと思うのですよ?互いに攻撃されないまま、こっちは逃げたい人だけで逃げられて、そっちはライバルが減るのですから」 ……もちろん、打算もありき、だ。 見ず知らずの人間にそこまで無遠慮に信を置けるほど、梨花も馬鹿ではない。 けれど、それでも。 互いにとっての解が目に見えているのなら、それを信じたい――そう、梨花は感じていた。 だからこそ伸ばした彼女の手に、ミズキは傍らのアイを一目見ながら逡巡し。 両者の間に、僅かな静寂が流れ。 「……ミズキさん」 不意に声がしたと思って男の側が振り向けば、どこか爽やかに笑うのは長髪の少女。 幽谷霧子に付き従っていた彼女からしても、こうなることは予想できなかったのだろう。 自分たちが皮下に感じている恩義自体は本物だ。こうしなければ生きられなかった、いや、この世界で自分というものを真の意味で認識する――生まれてくることすらできなかったのだろうから。 その上で。 だから死んでもいいと――死ななければならない運命なのだ思っている自分たちに、彼女は希望を示してみせた。 この世界で息づいた、いずれ消えるものでさえ、生きる価値があるのだと言ってみせた。 「……あなたにとっては、この展開は想像していたのですか?それとも――」 「予想なんて、していなかったわ。彼女たちを殺す気も十分にあった。 ……ただ、私も――あとほんの少しだったとしても、生きたくなってしまった」 そう呟く彼女に、ミズキは嘆息で返す。 仮にも皮下のサポートを行った側の人間として、ミズキは彼女の生い立ちを知っている。たとえそれが偽りであったとしても、彼女の記憶には鮮明に刻み込まれているのだろう。 「……ずっと、生きたいと願っていた。だから、手段はどうあれ生き延びようとし続けた。 だからかしら。生きたいって思う心が、私はどうしても切れないみたい」 ……朝の太陽という希望を唄う、そんな誰かに生かされた。 たとえ偽りであっても、そんな記憶を持つ彼女に、どれだけこの少女の輝きが刺さったことか。 暖かな日差しと生きる道行の希望をもう一度示してくれたことは、彼女にとってはきっと、それこそ命を救われたに等しいことだから。 (……私はといえば、そこまで執着することもないでしょうに) 事実として。 太陽の輝きに魅せられた少女たちに比べれば、ミズキは二人ほど感傷に浸ってはいない。 生そのものに価値を見出しているのかといえば、そこまでという訳でもない。ただ、皮下という男が自分たちに居場所を用意してくれた以上、その恩義には報いるべきであると感じただけ。 そして、それと同時に――皮下の無情さについても、理解はしている。気まぐれで人を殺すような外道である彼の下で生きる以上、自分たちが虹花としての存在価値を担保し続けなければいけないというのも分かっている。 だからこそ、最悪の場合、アイが処断されないように、全てをハクジャに押し付けて彼らを敵だと認定することも、勿論選択肢として残してはある。 そうすれば、アイが「裏切り者」として皮下に消される可能性もなくなるだろう。自分たちも、聖杯戦争が終わるまで虹花として生き残れる可能性はまだ幾らかはある。 けれど、ミズキには元より疑念があった。 今後の聖杯戦争において、ただ虹花としての利用価値を活かすだけでは、自分たちは生き残れない可能性がある。 百獣海賊団としての戦力は、自分たち虹花をして優に凌駕している。魔力消費のことを加味しても、この身がサーヴァントには到底敵わぬ以上、今後の激戦化において自分たちが戦場に出るメリットは下がる一方だろう。 だとすれば、合理的な選択として――自分たち虹花は、ただ付き従っているだけでもいずれ彼らの「電池」として使われる可能性もある。 重ねて言うが、自分は良いのだ。それで死んでも、元より行き場のないこの身に悔いはない。 だが。 ――アイさん、消えたくないなぁ…… それでも結局、皮下がただ勝利するだけでは、彼女が泡沫と消えてしまうのならば。 それを回避する手段が、あってしまうというのであれば。 我が子と重ねた彼女が、どうか救われてほしいと願ってしまうのは、本来可能性を持たない木偶が持つにはどうしようもなく愚かしい願い。 正直なところをいえば、本当にアイを助ける理由があるのか、と自問自答することもある。 彼女を重ねている娘の記憶も、所詮作り物なのだからと囁く声も、内心にはあるのだ。 だが、それは同時に皮下に救われた事実も嘘であるということになり――それこそ、自分が今こうして皮下の手先として動いている理由も失われる。 どうせどちらも受け入れてしまうのなら、今この瞬間に自分が救いたいと思うものが矛盾せず生き残れる可能性というものを信じてみたい。 ああ、全く。 もしも彼女達の言葉全てが狂言であったなら、自分たちはただの舞台装置であるにも関わらず不義理を働いただけの存在に成り下がる。 愚かな木偶人形が失敗作ともなれば、最早誇れるものなどない。籠の中で夢を見て藻掻き、結局は羽をもがれた鳥として、ただ可能性のない存在であることを突き付けられるだけだろう。 ただ――それでも。 「いいでしょう。あくまでも私たちは、ですが、あなた達の結論を飲もうと思います」 今、この瞬間。 0%にも等しかった自分たちの命という可能性を、1%にベットするという選択に――彼等は、乗った。 生きる為の選択を、選び抜いた。 「その上で、皮下を説得できるか――それは保証できません。というより、できないと考えるべきでしょう」 そして、ならばこそここからは現実との戦いだ。 1%をモノとする為に、その可能性を潰えずに持ち続ける為に、どのように歩むべきか。 自分たちが真の意味で生きるために――まずはそれこそを、考えなくてはならない。 「私たちは、確かに皮下さんを最後までサポートしながら、それでも生きる為にあなた達に従うという可能性はあるわ。 ただ、皮下さん本人は違う。どちらにせよ聖杯を獲れば帰れる以上、あなた達を信じる上でのメリットがない」 その目の前にある最大の関門は、彼らの主たる皮下に他ならない。 彼にとっては、この交渉は決して頷けるものではない。 わざわざ相手に対して徒に魔力を無駄遣いせず、また一部の戦闘では共闘もできるというのはなるほどマスターとしてはメリットだ。 だが、なまじ彼のサーヴァントが強すぎるからこそ、それらのメリットの為に「徒党を組んで襲われる」というデメリットの可能性を切り捨てるのでは天秤が合わない。 「幸い、あなた達からすれば皮下から283プロへの追求については、どちらにせよ弱まるでしょう。我々の陣営としても、この大災害を起こすきっかけのサーヴァントを撃滅することが恐らく目下の問題となるでしょうから」 峰津院――彼等が攻めてきた以上、皮下含むカイドウ陣営としてもそちらへの対応に追われている。 何しろ損害らしい損害を与えられていないということなのだ。アジトが露見すればまた襲われかねないし、それまでに一刻でも早く自陣を盤石なものにする必要がある。 283プロがどこまで育っているかは分からないが――少なくとも現時点で『弱いものいじめ』をしている状態ではない、というのは皮下も考えているだろう。 「でも、そこから先――生還を目指したり、そのために不可侵でいたい、という意見については私たちも保証できない。それに――彼に利用価値がないと判断された時点で、私たちは見限られるでしょうから、こちらから助け船も出せないわ」 要するに、今語った同盟を皮下に通すのであれば、虹花の協力もなく真っ向から話さなければならない、ということだ。 皮下自身から283への攻撃意思を奪うなら、それ以上の策も必要だろう。 「……わかったのです。ちょっと霧子とも相談するのです」 ■ 「……なんとか、話は着いた、ということなのです」 そうして、改めて梨花は霧子と対面する。 彼女の目に、自分はどう映っているのだろう。最初のように年相応の少女として映っているか、それともこうして言葉を交わしていたことを得体の知れない少女として見ているのだろうか。 ただ、どのように見られていたとしても――彼女には、言わなければいけないことが、残っている。 「あの……梨花ちゃん……」 「……ちゃんと、話したいと思ってたのですよ、霧子」 不安気にこちらを除く彼女の目に、真っ向から向き合う。 状況の不安を取り除くとか、信用を勝ち取るとか、きっと優先するべきは他にあるのだろう。 だが、その信用を得るという意味でも――何より、梨花自身が言いたいという意味でも、真っ先に梨花はそれを伝えることにした。 「……私は、咲耶に会っているのです」 「……………!」 瞬時に、霧子の目が大きく見開かれ――頽れるように、梨花の手を掴む。 先程見せた優しさも、何処か超然とした雰囲気も捨てて、ただ梨花の言葉に縋るように。 「あの……梨花ちゃん……!咲耶さんは……!」 何かを言おうとして、しかし何から話せばいいのか分からず、ただ必死に問いかけるような。 そんな表情を、彼女もするのだな、と思った。 友を、心配する目。かけがえのない運命を共にした誰かを、真に想い、そして案じる、そんな普通の顔。 梨花にとっても見覚えのあるその顔を、優しく包み込むように、あの高潔な少女からもらった言葉を返す。 「咲耶は、脱出するための相談をする為に、私たちに接触してきたのです。 ……そして、その相談に乗れなかった私に、最後にこう言ってくれたのです」 ――最後に一つ。約束してもいいかな? ――どうか…生きてほしい。これからもきっと、辛い事はあるかもしれない。 ――だけど、私は…白瀬咲耶は、梨花。君が生きて元の世界に帰れることを祈っているから。 それは確かに、咲耶が梨花へと向けてくれた、祈りの言葉。 「……そう……なんだ……」 それを、聞いて。 朝露が花からこぼれるように、はらりと一滴の水が落ちる。 「……………そっか……………」 流れた涙を、優しく拭う。 運命を共にしたかけがえのない仲間を喪う気持ちに、せめて少しでも寄り添いたくて。 わなわなと震えるその手と身体を、今はただ、しっかりと握っていた。 「うん……」 しばらくそうしていた後、霧子は懐から何かを取り出した。 一瞬ただの白い紙に見えたそれは、封筒に入った一通の手紙で――なんとなく、その中に入っているものには検討がついた。 「梨花ちゃんにも……これ……」 差し出されるそれを、おずおずと受け取る。 取り出してめくって見れば、そこに書いてあったのはやはり――疑いようもなく、彼女の言葉。 直に対面したからこそ、分かる。偽物などではない、彼女自身が彼女の想いを込めて書いた、あまりにも優しい、許しと願い。 「咲耶さんの……想い……そこに、あるから…… こうして、伝えられれば……咲耶さんが、ずっとそこにいてくれるから……」 白瀬咲耶の、ありったけの想い。 あれほど優しい少女が、彼女の信じる者たちへ残した、最期の言葉。 ……それを、自分にも託してくれるということを、心苦しく思う。 結果的にとはいえ、私は彼女の手を取れず、ともすれば見殺しにしたのかもしれないのだから。 「……伝えられて、いたのね。あなたの、仲間に。そして、私にも……」 ……それでも。 白瀬咲耶のあの優しさを、今はただ、抱き締めていたかった。 自分たちの信じる道を進む、その勇気を、彼女の言葉から繋ぐ為に。 「……ありがとう、なのです」 「……うん……」 今は、ただ。 白瀬咲耶という一人の人間が生きたその証を、願いごと抱き締めて歩いていく。 それがきっと、彼女という存在を未来にも届かせる為に、唯一できることだから。 「……それで、その。霧子は正直、よく分かってないことも多いと思うのですよ。それに、霧子にお願いしたいこともあるのです」 ――と、いつまでも感傷に浸ってはいられない。 ミズキたちをいつまでも待たせるわけにはいかないし、何より打開策を考えなくてはならない。 それにそもそも、霧子は偶然居合わせただけで、正味どこまで冷静に事態を把握しているかは怪しいところだろう。 「だから――」 ■ そして。 それらを全て傍から聞き届けるだけだった剣豪ふたりは、互いにその剣気を諌めつつ相対し続けていた。 張り詰めた空気を通しつつも相方の案が上手くいったことを察した武蔵は、ここを幸いに、と剣の切っ先を揺らす。 「結局、私たちは蚊帳の外で決着がついたようね。折角ならそっちもここは顔を立ててくれると嬉しいんだけどなー」 そうして均衡を和らげようとしてみても、やはり気を抜かず此方を睨み着けるのみ。 「……下らん……貴様を主諸共斬り捨てることも……」 「そうなったら結局、アイツらに狙われるだけね。まあ町自体が一個吹き飛んだからどこまで行き届いてるかは知らないけど、『こういう世界』で監視から逃れる手に本気で自信がないならオススメはできないかなぁ」 尚も剣気を収めない鬼の言葉を、嘆息しながら叩き切る。 事実、武蔵のそれは経験談によるものだった。かのオリュンポスにおける主神の監視とまではいかないが、この世界も少し気を抜けばどこに目があるか分からない都市。もし皮下たちがそれに何らかの形でアクセスできるというのなら、追われる可能性は十分にある。 徹底的な閉鎖世界であることや、先程ミズキが語ったような「おびき出し」に弱いというのも逆風だ。向こうからすれば、手を打つ可能性は大いにあるだろう。 「で、実際どうなの?貴女から見て、あのマスターは」 そして、そんな「おびき出し」に釣られてしまうようなマスターとこの鬼が主従関係を結んでいる――というのは、武蔵から見れば奇妙に映るものだった。 端的に言えば、不釣り合い。殺戮を主とし、剣にのみ生き様を求めるサーヴァントと、あのマスターはどうにも噛み合わない。 彼女の持つ優しさ、それ自体は本物だ。泡沫の消える存在にまで思いを馳せ、手を伸ばそうと足掻いて悩んでいた存在を間近で見たからこそ、同じものを掲げる彼女の強さは理解できる。 だが、その優しさのあまり律しきれていないのか。少なくとも、あの立ち辻を放置してしまったことは失策だっただろう。 もちろん、『それだけ』で決まるものではないことも知っている。 梨花と自分の縁だって、世界のカケラを旅するという傍目にはわからない共通項で結ばれた縁。そうした内面の繋がりあってこそ、ということも考えられる。 だからこそ、この二人にもそうした縁があるのかとも思ったが。 「……下らん。脆弱で戦う意志も持たない、弱き存在……」 それらの疑問に対し、黒死牟は無情に一蹴した。 そこに見えるのは、苛立ちと怒り。己の主として定めるには、やはり本意ではないと言わんばかりの歪んだ表情。 「仮に、奴等が代わる主になるならば……今すぐにでも…」 そう告げる黒死牟の目は、ミズキたちに向けられている。 実際、目の前の鬼がその選択をする可能性まで考えていた故に一切の油断をしていなかった武蔵ではあるが、やはり既に見極め自体は終わっていたらしい。 そう――NPCでは、可能性の器と同等の英霊の受け皿とはなり得ない。契約に縛られるサーヴァントであるからこそ、その事実は両者共に認識していた。 界聖杯の管理する情報量自体は同じであろうと、あくまでマスター権限を保持しなければサーヴァントとの契約は不可能なのだ。 それがなければ、今すぐにでも霧子を殺し、『やる気』のあの三人の誰かを次なる主として選んだ方が黒死牟にとっては好都合。 主が霧子のままであれば、ひとえに霧子という首輪が自分のウィークポイントとなったままではあっただろう。彼ら部下のうち誰かであれば、ある程度は自由に剣を振るうこともできただろう、と。 なるほど、理に適ってはいる。力を求め、斬り合いを求める剣鬼ならば、その道を求めるもありだろう。 「理に適ってはいる。だけど、そうであっては引っかかる部分もあるのよね」 ――ならば、なぜ。 『戦う機会がなくなる』ことになる、梨花の脱出案を聞いて、彼は何もしなかった? 自分とて同じ人でなしだから、その求道を理解はできる。まして自分よりも血に飢え、戦を求める目の前の鬼ならば、「戦えなくなる」という道には強く反発して然るべき。 ならば、梨花の案に対して動かなかったのは何故か。相対していた武蔵には、その理由が理解できた。 自分と相対していたから、言葉を発する余裕もなかったとか、そういった理由では断じてない。 彼女が交渉をしている最中、彼の注意は彼等ではなく、己がマスターに向いていたのだ。 今は下らないと斬り捨てたばかりのあのマスターの、柔らかな微笑みを見て。 その剣を、殺気を、煩悶によって一瞬でも途切れさせていたのだ。 「だから、一つだけ質問。貴方、聖杯に何を願うの?」 それは、ある種の本質を捉える問。 武蔵の見立てが正しいならば、あるいは――これで、はっきりする。 黒死牟が、真に剣の鬼たりうるものなのか。それとも、やはり彼の本質は―― 「無論……強さのみ。聖杯に強さを願い、我が剣技を今度こそ最強に至らしめんが為……」 その一言で――武蔵は、理解する。 この鬼の強さの、本質の一端。 「……そう。そうですか。そういうこと」 ああ、そうだ。そう言うのであれば間違いない。 ひとりの剣鬼として、武蔵は黒死牟の存在を見極めた。 この鬼は、厳密には――『剣』の鬼では、ない。 確かに、外道に墜ちてでも力を求める姿勢は理解できる。 だが、そのひとでなし足る所以、求める力の在り様は既に剣を高めるという点にはあらじ。より純粋に、特化した、何かへの妄念を打ち払うための『強さ』でしかない。 ・・・・・・・・・・・・・・・・ でなければ、己が修練の機会を聖杯ごときに譲りなどするものか。 術理を食らう、刃を交える、どちらも魅力的だと感じていながら、その実彼が求めるのはただ勝利と強さのみ。 ――極論、『剣の道の奥を垣間見えたなら死んでもいい』とか、『己が認める剣に斬られるなら本望』などとは思っていないのだ、この鬼は。その点においては、嘗て相対したかの至高天(エンピレオ)の方がまだ上等だ。 (……多分、『それが分かっていても自分では気付けない』のね。考えてみればその通りでした。あの御前ですらああなっては気付けないのですから) 宿業の埋め込み――業(カルマ)の肥大とは言ってしまえばそういうものだ。 己が妄執、世界への祈りが九を占めていたとしても、残りの一を破滅的なまでに拡張する所業。 己が無念を認識しても、その哀切で剣を止めること能わず。いやむしろ、認識してしまうからこそ無念は否定の呪詛と化して一層破滅を加速させる。 いっそ英霊剣豪との相対のように宿業ごと両断してしまえば或いは解放に至れるのかもしれないが、その為には恐らく此方も先を更に越える決死を以て挑まねばならないだろう。そして、そうしたところで結局主人である少女が訳も分からず投げ出されるだけ。 口惜しいが、所詮は多少まともなだけの剣鬼に過ぎない宮本武蔵が出来ることといえば斬ることただ一つに絞られる。 まして彼を――人を妄執より救うなどという行動、まさしく分不相応。 そういうのは、あのまっすぐなライダーや今は彼方にいる嘗ての主。そして――その主と同様に、「消えるべき世界でもなお生きたいと願った誰かを見過ごせない」と謳った、剣鬼の主その人こそが見せるべき優しさだ。 「ええ。ですが、あえて言わせてもらいます」 だからこそ。 その優しさを持つ少女に、僅かでも意識が向いているのならば――まだそこに余地があるのならば。 それこそが、この二人を繋いだ縁だというのなら。 「――貴方もいっぱしの人斬り包丁を名乗るなら、戻るべき鞘くらいは見つけておきなさい。野晒しのままの剣は、ただ錆びていくだけでしょう?」 「……黙れ………!」 ずお、と音を立てて巡る殺気。 いよいよ以て何かの地雷を踏んだか、と身構えつつも、しかしここで引き下がれない。 こうしなければ、 「セイバー」 「………セイバーさん」 その張り詰めた空気を、互いの主が咎めなければ。 瞬時にぎらついた黒死牟の剣が、二人すら射貫いたその瞬間に――武蔵はあえてその剣を収めてみせた。 しかし、位置取りは油断なくマスター二人と黒死牟の中間点。しかも刀の柄には手を添えたまま。 居合の構え そのまま、数秒の沈黙が流れたかと思えば―― 「……ま、そういうことで。少しは貴方の主と話すべきだと感じたけどね。その後――あなたが真に剣の道を賭けて戦うというのであれば、私も改めてお相手しましょう」 軽くそうあっけらかんと言い残すと、彼女はひと時のうちに梨花を抱えて虹花のいる方へと飛び退っていた。 苛立ちに身を任せて追い縋ろうとする黒死牟に、彼女は一言短く告げる。 「……剣鬼を名乗るモノよ。この私に剣を誇るのであれば、その迷い、これ以上見せるな」 侍として、剣を誇る矜持の言葉。 それで一瞬足を止めた彼を、最後に一瞥して――梨花たちは、最早廃墟と化したカフェを後にしたのだった。 ■ 『……随分と、剣呑だったのです。大丈夫だったのですか?』 『色々ギリギリだったけど、まあ十分ね。できれば放置もしたくなかったけど釘も刺したし…あとは、アレを引いたのがあの子だったという事実を信じたいわね』 皮下へのアジトへ向かう道。 その道中で、梨花と武蔵は念話を交わしていた。 向こうも念話していることは百も承知だろうが、かといって内容を詮索しても無意味なことくらいは分かっているのか歩みを止める素振りもない。 というか、子供の方に至ってはうとうとし始めていた。レナが見ていたら「お持ち帰り」は間違いないだろうな、と苦笑する。……自分の右側から似たような気配が感じられることは無視しておこう。 『ともあれ、こちらもこちらで一旦正念場になることは間違いないわね。もちろん全部赤裸々にするつもりはないんでしょ?』 『はいなのです。だから、一回あの人たちとも連絡をしないといけなかったのです』 身を守るためとはいえ、ここまである程度赤裸々にしてしまった以上、少なくともアッシュたちとのある程度の合意形成が必要だ。 梨花たちも今はまだ一度言葉を交わしただけで、同乗といえど連携が密とは言えない。ひとつの陣営と共闘でき得るというメリットも持ち込めたとはいえ、独自判断でこれだけのことをやってしまった以上報告だけでもしておかなければならない。 かといって、この場で二人とも向かわなければ皮下は成果がなかったハクジャたちを処分する可能性もあるとなれば、少なくともどちらかは出向かなければならない。 だからこそ、そちらは自分たちが担うしかなかった。 ここで「だから霧子を一人で向かわせた」となれば、自分は283プロの面々から信用されないだろう。それに、283プロの誰と話を通せばよいのかも、自分より霧子の方が詳しい。 更に言えば、敵陣から逃げる最後の手段である令呪を既に一画失っていることや、サーヴァントとの連携が取れていないことも含め――虎穴に飛び込むのは、自分たちの方が都合が良かった。 『283との交戦か、そうでなくても警戒か……緩めてくれればいいんだけどねえ』 ――それでも283を追う、と皮下陣営が動くのであれば、是非もなし。 令呪による離脱と逃避行で、なんとか凌ぐしかない。 もちろん、ただ逃げるだけではその後に追い付かれる可能性もあるが――そこに関しても、考えはある。 『なんとなれば――おでんとも協力して、戦うのです』 既に、彼に向けた言付けを霧子に託した。光月おでんという男へのコンタクトと、その内実。 古手梨花とセイバーが七草にちか擁するライダーとの同盟を正式に結んだことと、皮下という医者がマスターである――『黒』の可能性が高めの――主従に会ってくること。 上手くいけば逃げた先で合流したい、と幾つかの合流ポイントも示しておいた。互いに連絡手段を持っていないのが苦しいが、それでも賭けるには値する程に協力な助っ人だ。 『風来坊って本人も言ってたし、会えるかどうかが問題かなー。流石にさっきのアレで死ぬ人ではないでしょうけど』 『一応、住んでいるらしい場所は教えたのです。……いるかどうかは運なのです』 日ももうじき沈む頃だ。 これまでの新宿での大災害が例外であっただけで、聖杯戦争の本番になるだろう深夜に、何等かのアクションを起こしていても不思議ではない。 夜だからとねぐらに戻ったり、その近辺にいてくれれば最高なのだが、果たして。 ともあれ。 彼等が霧子の助けによって合流することができれば、皮下陣営からの離脱後も格段にやりやすくなるだろう。 あの義人が残留と離脱のどちらを選ぶかは分からないが、途中で誰かを見捨てるような人間ではないことは伝わってきた。脱出までは確実に自分たちの力となってくれる筈だ。 彼等と、そしてアッシュたちと力を合わせれば―― (……井の中の蛙。それだけじゃ、ない。井戸の中から、生きたいと願う誰もを救いだせるような……) そんな可能性は、きっとここから。 その居城に住まう敵が、光月おでんの仇敵であること、未だ知らず。 おでんと幽谷霧子の従える二人の侍が血を分けた兄弟であること、未だ知らず。 皮下と同盟を結んだ北条沙都子が、聖杯を獲るべく暗躍していること、未だ知らず。 沙都子に付き従う人理の影法師が、嘗て武蔵が相対した美しき肉食獣であること、未だ知らず。 さあ――是より向かうは、因縁渦巻く伏魔殿。 其処には、龍が待っている。 【新宿区・皮下のアジトまでの道中/一日目・夜間】 【古手梨花@ひぐらしのなく頃に業】 [状態]:疲労(小)、焦り [令呪]:残り3画 [装備]:なし [道具]:なし [所持金]:数万円程度 [思考・状況] 基本方針:生還を目指す。もし無ければ… 0:皮下の陣地へ。283にどれ程の矛先を向けているか確認、新宿区の大戦の趨勢によっては協力。 1:白瀬咲耶との最後の約束を果たす。 2:ライダー(アシュレイ・ホライゾン)達と組む。 3:咲耶を襲ったかもしれない主従を警戒、もし好戦的な相手なら打倒しておきたい。 4:彼女のいた事務所に足を運んで見ようかしら…話せる事なんて無いけど。 5:櫻木真乃とアーチャーについては保留。現状では同盟を組むことはできない。 6:戦う事を、恐れはしないわ。 【セイバー(宮本武蔵)@Fate/Grand Order】 [状態]:全身に複数の切り傷(いずれも浅い) [装備]:計5振りの刀 [道具]: [所持金]: [思考・状況] 基本方針:マスターである古手梨花の意向を優先。強い奴を見たら鯉口チャキチャキ 0:梨花と共に皮下の陣地へ出向き、動向を見定める。……それはそうとどんなサーヴァントなんだろなー!あとアイちゃんかわいいなー! 1:おでんのサーヴァント(継国縁壱)に対しての非常に強い興味。 2:アシュレイ・ホライゾンの中にいるヘリオスの存在を認識しました。 武蔵ちゃん「アレ斬りたいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ。でもアレだしたらダメな奴なのでは????」 3:櫻木真乃とアーチャーについては保留。現状では同盟を組むことはできない。 4:あの鬼侍殿の宿業、はてさてどうしてくれようか。 ■ 今した話を伝えるというのも含めて、一度にちかと連絡を取ってほしい――というのが、梨花の提示した答えであった。 正直に言えば、状況が掴み切れていない霧子にとっては渡りに舟の提案ではあった。そこを否定するつもりはなかったし、283の皆と連絡を取れることも含めて断る理由もない。 だが、その話の内容を聞いているうちに、霧子の中では僅かな引っかかりが産まれていた。 (……にちかちゃんの、番号……) 霧子が梨花から渡されたのは、にちかに渡されたという電話番号。 それ自体は、歪な部分は何もなかった。 だが、『夕方に新宿区で会った』という言葉が、どうにも引っかかった。 霧子がにちかと会ったのは、摩美々と会った昼頃。そこから移動した、というのであれば辻褄は合うが、しかしそこから新宿区まで移動して人と会って、を全てこなしたのだろうか? しかも、聞けば新宿区での待ち合わせはにちかの側が待っていたとのことで――彼女の行動経路が、ひいてはそれらを繋ぎそうなひとつの違和感が、霧子の頭に引っかかっていた。 ――やっぱり……283プロが……ざわざわしてる…… 何かが、違う。 聖杯戦争だけではなく、もっと根深いところで、自分の知らない何かがあるような、そんな気がした。 だからこそ、まずは摩美々と、にちかと、連絡を取って。 その後、梨花に言われたように、おでんという人物に会えないかどうか試して。 そして改めて、脱出に向けて歩き出そうと、霧子が意を決して――それと、同時に。 「……セイバーさん……」 先程の、梨花のセイバーと話し合ってから押し黙っている自らのサーヴァントに、目を向けた。 「……セイバーさんは、何を……」 何を、聞こうとしたのだろう。 あのセイバーが告げた、迷いについてか。その前、立ち辻を行っていたらしいことか。それとも、もっと別のことか。 霧子がその答えを出す前に――黒死牟は、霧子に詰め寄り、その胸倉を掴んでいた。 「貴様が……何を……知ろうというのだ……」 憎々し気に。 今すぐにでも両足を斬って、死なないまでも自由に行動をできないようにしてやろうかとも言わんばかりの形相で。 黒死牟は、霧子を睨みつけていた。 武蔵の指摘。霧子の言葉。何もかもが腹を据えかねる。 己の剣の在処など、聖杯を求める理由など、強くなる以外の何者でもなく。それ故に、この少女の優しさなど全て邪魔でしかなくて。 「私は……」 なのに。 「色んなものを、知りました……」 目の前で、染みわたるようなこの声を発する少女の言葉は。 「皮下さん……は、まだわからないけど……ハクジャさんに、ミズキさん……それに、アイさんに……梨花ちゃん……そして、咲耶さん………」 ――武蔵が黒死牟に向けたような、哀れみの声ではない。 哀れみであれば、きっと今よりも早く斬っていた。自分の百分の一にも及ばぬ強さの幼い少女に哀れまれることなど、あってはならない。 ただ、そう。彼女が求めているものは――きっと、ずっと最初から。 「だから……セイバーさん……黒死牟さんのことも……」 ――あなたにとって、辿り着きたい場所はどこですか。 ――あなたにとって、暖かい場所は、どこですか。 「暗いだけじゃ……帰り道も、わからないから……って……」 暗いのならば、寒いのならば、暖かい場所に一緒に往こう。 焼かれる炎が熱いとしても、想いが呪いと化していても――その想いには、根源があるはずだ。 その願いの根源こそを、霧子は知りたくて。 知った上で、彼が帰るべき場所に、一緒に歩いていきたくて。 「黒死牟さんが、帰れるように……」 きっとそこで、彼の安息を共に見たいのだと。 霧子は、ずっと謳っていた。 暫しの静寂の後――突き放すように、黒死牟は握っていた手を放り出した。 少し力を入れるだけで、飛んでしまう小さな少女を見下しながら吐き捨てる。 「……………………………………必要、ない」 帰る場所。温かい陽だまり。自分にとっての安寧の地。 ・・・・・・・ ・・・・・ ――あってたまるか、そんなもの。 「……………………帰る場所など、ない………!」 全て。 全て、捨てたのだ。 何もかもを捨てた。帰る場所も、 それほどまでに求めて、飛び込んだ場所は焼かれる焔の中だ。 暖かい?ああ、この身が焦がれる程に熱いとも。今のこの身は、心は、きっといつまでも焼かれている。 その炎を鎮めることでしか、真の安息はない。 「……それでも……」 そう言って背を向け、霊体化した黒死牟の背中をじっと見つめながら、ひとり残された霧子は呟く。 影に隠れるように去った彼が抱いているはずの、記憶のこと。 「お日さまは、きっと、待ってるから…………」 ――太陽があるからこそ輝ける、月面が照らすまっさらな反射光(リフレクト・サイン)を。 太陽は今もきっと、待っているはずだと、そう信じたかった。 「黒死牟さんの、お月さまが………お日さまに、光をあげる日のこと………」 だって。 天に浮かぶ上弦の月が、陽が落ちる前も尚、青い空で見下ろしてくれているように。 これ程までに焦がれる太陽の輝きを放ってなお――その太陽もまた、月の傍で佇んでいたはずなのだから。 【新宿区・喫茶店(ほぼ崩壊)付近/一日目・夜間】 【幽谷霧子@アイドルマスターシャイニーカラーズ】 [状態]:健康、お日さま [令呪]:残り二画 [装備]:包帯 [道具]:咲耶の遺書 [所持金]:アイドルとしての蓄えあり。TVにも出る機会の多い売れっ子なのでそこそこある。 [思考・状況] 基本方針:もういない人と、まだ生きている人と、『生きたい人』の願いに向き合いながら、生き残る。 0:おでんさんと……摩美々ちゃんたちに……色んなお話、伝えなきゃ…… 1:色んな世界のお話を、セイバーさんに聞かせたいな……。 2:病院のお手伝いも、できる時にしなきゃ…… 3:包帯の下にプロデューサーさんの名前が書いてあるの……ばれちゃったかな……? 4:摩美々ちゃんと一緒に、咲耶さんのことを……恋鐘ちゃんや結華ちゃんに伝えてあげたいな…… 5:にちかちゃんと……283プロのみんな……何か変……? [備考] ※皮下医院の病院寮で暮らしています。 ※"SHHisがW.I.N.G.に優勝した世界"からの参戦です。いわゆる公式に近い。 はづきさんは健在ですし、プロデューサーも現役です。 【セイバー(黒死牟)@鬼滅の刃】 [状態]:苛立ち(特大)、動揺(特大) [装備]:虚哭神去 [道具]: [所持金]:なし [思考・状況] 基本方針:強き敵と戦い、より強き力を。 0:誰も………彼も………! 1:鬼の時間は訪れた。しかし── 2:セイバー(宮本武蔵)と決着をつけたい、が……? 3:上弦の鬼がいる可能性。もし無惨様であったなら…… 4:あの娘……………………………………… [備考] ※鬼同士の情報共有の要領でマスターと感覚を共有できます。交感には互いの同意が必要です。 記憶・精神の共有は黒死牟の方から拒否しています。 時系列順 Back 各駅停車 Next サイレントマジョリティー 投下順 Back あらし(ワイルドハントあるいは祭り)のよるに Next サイレントマジョリティー ←Back Character name Next→ 075 で、どうする?(前編) 古手梨花 102 械翼のエクスマキナ/Air-raid セイバー(宮本武蔵) 幽谷霧子 092 Hello, world! ~第一幕~ セイバー(黒死牟) 97 新月譚・火之神
https://w.atwiki.jp/hshorizonl/pages/405.html
ミズキたちにとって、このタイミングでハクジャたちと出会えたことはまさしく僥倖といったところであった。 まず大前提として、皮下医院の崩壊があった。 チャチャとは違い、葉桜の過剰適応によって得た能力が物理的な干渉力を所持していたアオヌマ。 彼が這う這うの体で己の生存域を確保し、ドクロの角の墜落による即死を免れながらなんとか瓦礫から抜け出して、皮下と合流――した後すぐに鬼ヶ島にブチ込まれて雑用として働くハメになる――までの間。 それまでの間に、彼は現状を分かる範囲で仲間に報告していた。 チャチャが残していた電子回路自体は幸いまだ機能していたのもあって、災害時においても繋がる緊急用のホットラインが繋がったそれは、外にいる『虹花』の仲間たちへと緊急事態の共有を可能としていた。 『アイドル探してる場合じゃねえ。病院が丸ごと潰れちまった』 『さっきのアレで死んでなければとっとと戻って来い。あの人のことだからどうせキレねえだろ』 それはアオヌマの独断であったが、しかし皮下真という人物をよく理解しての発言でもあった。 皮下という男が、極論仲間の命はどうでもいいと思っていること。 それはそうと、手駒としての仲間を極力大事に思っているのも事実であること。 正直に言えば嫌がらせにすぎないアイドルにちょっかいを出すことと比べた際に、流石に自陣の被害が大きすぎたこと。 最後の一つに関しては皮下に限らない反応だろうが、ともあれ、それらの方針から導き出される答えは「一旦ちょっかい出すのはやめて自陣で状況を立て直すのを手伝った方が、有能な手駒が欲しい向こうも好き好んで消されたいわけじゃない自分たちも得をする」ということで。 したがって、ミズキもアイを伴って集合場所のアジトに直帰する、という結論に至っていた。 とはいえ、それでも車は使えない。元はと言えば自分たちの味方が引き起こした大規模災害は各種交通機関を致命的なまでに麻痺させるには十分であり、都心の交通量も手伝ってあっと言う間に整然とした大行列を形作る。 従って、ミズキは車を降りた後にアイの身体能力を借りて移動することを選んでいた。メンタル面を考慮し、ここではアイにはチャチャや仲の良い実験体の死亡については伏せて。 ここで、ひとつの偶然が発生した。 新宿の近隣を通るアジトへの道からそう遠くない場所で、ハクジャの反応があったのだ。 そしてそれは、情報収集した限りでは新宿での大戦争の余波を食らっている筈の場所でもあった。 彼女は幽谷霧子と共にいるはず。ならば霧子自身は死んでいるということもないだろうが、付き添っているハクジャの安否が不明であり、よしんば生きていても混乱によって取り逃したということも十分に有り得る。 そうした状況の整理も鑑みて、二人はハクジャの元へ立ち寄ることを選んだのだった。 つまるところ、ここに皮下の手下が集合したのは、ある程度運が味方したもの。 これがもう少し離れていれば彼等が立ち寄ることもなかっただろうし、ハクジャの側から安否を送っていただろう。間隙を縫うようにして、結果的に彼等は霧子を包囲することに成功していた。 「……成程……」 ――ああ、それで? 「……だが、運がない」 此処に来たのが運だと知っていたのなら、それは悪運に他ならないと、そう黒死牟は断じていただろう。 折しも大災害の跡地の一角。この建物が己の剣によって奇跡的に死人を防いでいるとはいえ、後から検分でもしない限り誰が死んでいてもおかしくはない場所だ。 ・・・ ならばこそ、己のマスターをつけ狙う間諜を事故死に見せかけるのであれば、此処を置いて他にないくらいの絶好の瞬間。 殺し合いをただ生き残るためであっても、ここで殺すのは当然の選択といえるだろう。 そう。 その、筈なのに。 「……駄目、です……」 他ならぬ己のマスターがそれを庇い立てしているというのだから、黒死牟にとっては本気で意味が分からなかった。 ミズキとアイ、そしてハクジャが三人で集まるのをこれ幸いと一刀に伏そうとしたところで、この少女が己の腕を握ったのだ。 振り払うことは容易だが、先程令呪を使って己だけでなくハクジャを守ったことも考えれば、最悪ここでもう一画を使ってくる可能性もある。 今はもう二画となった、絶対命令権にして絶大な魔力リソースである令呪を、これ以上無駄にするという愚行をこれ以上犯されても困るのだ。 その一線が分かっているからこそ、黒死牟は一度剣を止めているが――それでも、間諜どもの出方によってはそれすら覚悟で一刀に伏さなければならないだろう。 「……霧子さんがマスターである可能性については、既に伝えています。ここで我々をどうしたとしても、あなたたちは彼の捕捉の下にあると考えていただきたい」 そんな黒死牟の思考を更に逆撫でするかのように、ミズキは滔々と語る。 語り口は平坦なれど、そこに慢心もなければ虚勢もないことが、皮下が誇る陣営の強さに裏打ちされた事実であると伝えるかのようで。 「私としては、何も言わずに着いてきていただけると幸いなのですが。そちらが積極的に敵対さえしなければ害することはありません」 「何を……世迷言を……」 そんなミズキの言葉に対して、苦々し気に黒死牟は斬り捨てる。 その六つの目が三人を睥睨したかと思えば、苛立つように吐き捨てた。 「貴様等……恐らくは何等かの改造か薬を服した身であろう……既に人に在らぬ肉体で……何を語る……?」 「――ッ」 霧子が小さく息を吞む音。仮にも医術に興味を抱くものとして、感じ入るものもあったのだろうが、今はそれも本題ではない。 黒死牟の透き通る目は、ハクジャ、ミズキ、そしてアイの三者三様の肉体の構成を既に見抜いている。 本来の人間ではありえない構造をそれぞれ各部位に持つ彼らのそれは、自然界にはあり得ない。その上で医者だと言うのであれば、肉体改造、薬物投与、他にも諸々の処置を施していることは文字通り目に見えていた。 「……ハクジャの力も見られている以上、言い逃れはできませんか。おっしゃる通り私たちは皮下によって施術を受けている身です。 本来なら何の力も持たなかった筈の存在ですが、この通り――あなた達サーヴァントには及ばずとも、ある程度のマスターと渡り合うだけの力はあると思っていただきたい」 こんなふうに、と言わんばかりにアイの頭を軽く撫でる。 ミズキを見上げすり寄ってくるその頭からぴょこんと伸びた獣耳。自然の人間にはあり得ないその変異も、なるほど非人道の医術によってなされたというなら理解は及ぶ。 物語の中にいるマッドサイエンティストさながらのその所業を見れば、常人なら忌避して当然。 未だに専門教育を受けていない学徒の身であっても、半端に医術を学んでいるならば猶更、そんな人間に近寄りたくはない。 一般人であるなら、今すぐ逃げて関わらないことを選んでもおかしくないだろう。 「ですから、信用されていないのは十二分に理解できています。 ――そして、私たちはその上で、あなた達に話を持ち掛けている」 ――けれど、元より皮下の陣営に身を置くものとしても、穏当に済ませられるラインはとうに超えている。 皮下医院、もとい主従を盤石にしていた陣地が表裏共に甚大なダメージを被った以上、悠長に小競り合いを仕掛けていられるラインは踏み越えられた。 ならば、可能性の器としてほぼ確定している相手に対して、ただ傍観し続けることは得策とは言えない。 即ち、ここに至っては敵と味方の線引きを明確にしておきたい、という訳だ。 この場で皮下の軍門に下り、傘下として戦うならば良し。 そうでなければ、今後二人は皮下の『敵』として認定される、ということ。 「ついでに――必要とあれば、283プロダクション自体を検めさせてもらうかもしれませんが」 そして、一般人である彼女に効くだろうダメ押しも忘れない。 身近な人間が攻撃されて戸惑わないものはいないし、よしんば彼女が他メンバーと不仲であったとしてもその仮定で他のマスターを潰すことができればそれでも十分。 もしも霧子を『敵』と認定したなら、その程度の所業をすることに皮下は一切の容赦をしないだろう。 「……下らぬ。貴様等を、ここで斬れば良い。ただそれだけの話だ」 「それで上手くいけば、良いわね」 黒死牟の身も蓋もない暴論に、今度はハクジャが言葉を返す。 事実として、それは可能だろう。 アイの攻撃、ハクジャの拘束、そしてミズキの毒――たとえ全員が持てる全ての力を振り絞ったとして、目の前のサーヴァントに傷一つ付けられない。 よしんば幽谷霧子に攻撃対象を絞ったとしても、それらが及ぶ前に斬って捨てられる。 そしてそれは同時に、ハクジャたちを殺した下手人として、今度こそ霧子に『明確な敵』という烙印を押すこととなる。 皮下に対しても、『ハクジャの生死を確認しつつ、幽谷霧子の状態を確認する』という旨の連絡はすでに行っている。ハクジャの死だけなら新宿の戦争の余波で済むかもしれないが、ここでミズキたちも死んでしまえば言い逃れのしようもない。 野良のサーヴァントに襲われた可能性も勿論否定はできないが、それより可能性が高いものとして――『幽谷霧子のサーヴァントにこれ幸いと逃げられ、追ってくる自分もそこで死んだ』と解釈されるのが自然というものだろう。 もちろん、ただ逃げるとしても――どちらにせよ、皮下という男から「倒すべき相手」として標的に据えられる。 「……脅しのつもりなら、片腹痛い……」 「名の知れたアイドルである幽谷霧子の目撃情報くらいなら、集められるだけの情報網はこちらもありましてね」 正確には、電子ハッキングによって任意の人間の追跡をこなせるチャチャはもういない。だが――「それを所持していた」という事実で胸を張れる以上、ブラフとしては十分だ。 ついでに、チャチャが死んだ旨をまだ伝えていないアイが自信満々に胸を張っている。彼女の態度を利用するのは気乗りしないが、こういう時に演技のできない無垢さというのはそれなりに信憑性を持ってくれる。この笑顔を後に曇らせる感傷を今は無視して、楽しそうにしている彼女の頬を猫のように撫でながら再び黒死牟を見据えた。 それに、チャチャがいなくなったとしても、強者の相手さえ終わらせてしまえば百獣海賊団という物量での虱潰しが手段として解禁される。 大事なのは、皮下から敵視されることそのものがディスアドバンテージとなりうる状況である、という状況を認識させることだ。 自分たちが有利な状況にある、というカードが切れるうちは、交渉においても有利に立ち回れる。 最早、この場における主導権はミズキが完全に掌握していた。 「然らば最早……斬らぬ理由もなし……」 そして、ならばこそ是非もなし。 斬ろうが斬るまいが、どちらにせよ状況は同じだ。ならば、せめて少しでも後腐れなく処理をしておいた方がまだ目眩ましになるだろう。 その結果として周辺を幾ら突かれようと知ったことか。むしろ、鎬を削る機会が増えるのであれば上等だ。正面から戦うことこそ、黒死牟にとっての本懐のひとつであるのだから。 故にこそ、黒死牟は再び殺気を放ち。 「……ダメ……です……」 そしてそれを、やはり霧子が止める。 「皮下先生が……何をしたいのか……わたしには分からないし……」 霧子とて、皮下が何かを狙っていることくらいは理解している。 それが多くの願いを――命を簡単に踏み躙るものであるなら、止めるべきなのだろう。 「みんなに……危ない目に遭ってほしくも……ない……」 けれど、それで仲間が踏み躙られるのであれば――幽谷霧子にとっては、それを聞き逃す訳にはいかない。 咲耶だけでなく、摩美々や結華、恋鐘ですらも失われるということを、良しとできるほどに非情にはなれなかった。 それに、皮下という男についても霧子は何も知り得ない。彼が聖杯に願う祈りも、彼と道を同じくするサーヴァントも。ミズキとアイの存在ですら、今しがた知ったばかりの彼女には。 「……皮下先生の……お話を……聞かないと……」 せめて、皮下真という男が何を願って、戦うのか。 それを聞かなければ。ただここで道を違えるだけでは、彼の何もかもを知らずに敵対することになってしまうから。 それでは――彼の祈りも、知らないままになってしまうから。 だから、霧子はゆっくりとミズキの方に歩み寄る。 (……ならば……) それこそが、黒死牟にとっての好機だった。 霧子の注意が三人に移った今こそ、三人を斬り捨てる唯一の好機。 これ以上の議論は無駄だ。 何となれば、主ごと斬ろうとも構わぬとばかりに、刀を一瞬の間に抜き放つ――。 「はい、そこまで」 されど、振り抜かれる前に、機先を制した声がひとつ。 皆が振り向けば、そこにいたのは一つの影。陽が落ちて薄ら暗がりになった世界で、尚鮮やかさを失わぬ華。 無双の剣客・新免武蔵、此処に参上。 「うんうん、タイミングピッタリ。……というわけで改めて再戦、といきたいのは山々なのだけれど――」 そして、それはあくまでお膳立て。鬼たる剣士を抑える為の、彼女が持っていたカードの一つ。 鬼札ならぬ魔女の札。今にも沸騰しそうな場を抑えるべく注がれた冷水が、傾きつつあった天秤を再び押し戻す。 「ここは、私の相方の顔を立ててくれると嬉しいわね。という訳で、いける?」 「はいなのです。霧子、ここはちょっとだけ任せてほしいのですよ――にぱー」 そして、彼女が立ち上がる。 やはり、と目を細めるハクジャとミズキ。訳のわからぬままに瞠目する霧子とアイ。 それらの視線を一身に受けながら、百年の時を過ごした雛見沢の魔女は静かに言葉の海に躍り出た。 ■ (……まさか、あれが霧子のサーヴァントだったなんて) (聞いてる感じ、サーヴァントの独断って感じでしょうね。そうじゃなければあなたが聞いた通り、梨花ちゃんまで庇う必要はない) 時は僅かに遡り、ミズキが霧子たちへと声をかけた頃。 梨花が霧子とハクジャの陰に隠れつつ武蔵とつないだ念話で分かったのは、霧子を守ったサーヴァントが武蔵と相対していたものと同一であったことだった。 自分だけ離脱するのではなく、ハクジャや梨花も含めて守るような善性を持つマスターがあの幽鬼のごときサーヴァントを連れていることには、さしもの二人も内心で驚愕するしかなかった。 (もっとも、手綱を握れていない、ってのはマイナス要素だけれど。あの立ち辻、下手に引っかかってたら死人のひとりかふたり出てもおかしくなかったでしょう?) しかし、善性があるからといってならばそれで全てが丸く収まるかと言われればそうでもない。 それだけの配慮の心がありながら、あのようなサーヴァントの全方位への敵対行動を許している。上手く取り入っている、という訳でもないとなると、律するという点においては不足があると言えるだろう。 (……ま、それはそれ。ひとまずは当座の問題をどうにかしないとね。という訳で、梨花ちゃんとしてはどうするのかしら?) (……私は) そんな霧子と、霧子を狙う間者たちが言葉を交わす中で、梨花はどうすべきか。 今のところは、「怯えて立てないただの少女」として取り繕えている……はずだ。ミズキと名乗った男が此方に一瞥をしたが、令呪は服で隠してある為に見えていないはず。 すぐに逃げていないという意味では怪しまれるのも道理だが、まだ言い逃れはできる程度。逆に言えば、下手な行動を起こしてしまえばすぐにマスターだと看破されるだろう。言い逃れをするのであれば、このまま徹底して少女を取り繕わなければならない。 (……少なくとも、手そのものはあるわ。上手くいけばここを切り抜けるという意味でも、将来的な敵を減らすという意味でも) その上で。 ただ指をくわえてこの状況をやり過ごすのか、それとも何等かの形で打開して、霧子に助け船を出すのか。 策は、ないわけではない。これまでの話を聞いた上で、あの話を切り出せば、或いは――そんな想いも、確かにある。 (ただ、あいつらが「それ」で動いてくれるかどうかもわからないし……もし動いてくれなかったら、結局今度は私も含めて追われることになりかねない) かといって、それは100%の説得を確約してくれるものでもない。 いいところ五分五分だし、彼等の方針によってはすげなく断られる可能性も高まる。そしてそうなれば、自分たちもまた霧子と同じく敵と見做されて彼等に追われることになるだろう。 にちか達の同盟に厄介事を持ち込む可能性も考慮に入れてまで、それをする意味はあるのか。 幽谷霧子の為に、そこまで命を張れるのか。 (……それは) 戦略的に考えれば、リスクは高い。 だからこそ、本当にここで踏み込んでいいのかに関しては熟慮せねばならない。 ただ霧子を皮下から遠ざけるにしても、戦力を整えて後から彼女を助けにいくとか、そもそも一緒に逃げるという手段だってあるのだ。 けれど、それは咲耶の。私たちを信じてくれた、あの少女の望む姿なのか―― (うん。それは正しいわ、梨花ちゃん。その選択は確かに間違ってない) その煩悶を、武蔵はあえて否定しない。 武蔵自身、無闇に命を捨てることを肯定するような愚直さは持ち合わせていないのだ。鉄火場での斬り合いで死ぬことに異論こそないが、それで死ぬくらいなら躊躇なく遁走を選択する。最後に立って、生きていた方が勝ち――それが、戦場における当然の理なのだから。 だから、己の命惜しさにこの場をやり過ごすこともまたひとつの戦術。同意こそすれ、責める理由などどこにもないのだ。 (――だから、ここから先は現実の話です) けれど、それもあくまで今この場面の梨花に限った話。 咲耶、霧子、そして自分。梨花の視点はあくまでそこ止まりだが、それら以外の大局を見れば、また違った版図が現れる。 それを示すのも、また相方として――曲がりなりにも鉄火場を生き延びてきた者としての武蔵の役目だろう。 (貴女が同盟を結んだ相手、七草にちか。覚えてるとは思うけど、彼女は283プロダクションのアイドルよ) 忘れてはならないのは、生き残るその最終目的がこの聖杯戦争の脱却であるということ。 そこからの逆算。天眼を持ち、勝ちにも負けにも至る道筋を考える武蔵だからこそ、とまでは言わずとも、この場の生死を超えたところで新たな戦いが始まっているというのなら彼女の戦への感はそれを見逃さない。 刃を交わす決闘ならまだしも、言葉の戦場で安易に飛びついてそのまま袋小路へ――というわけにはいかないのだ。 (それだけではありません。プロダクション近くで会った櫻木真乃だってそうだし、彼女たちが会おうとしていた人間もきっとそう。咲耶のユニットだってもしかしたらもっと仲間がいるかもしれない) 流石にそこまで言われれば、梨花にもその内実が理解できる。 同盟の基点、脱出を主導するあのライダーは、あくまで283プロダクション内の存在だ。梨花は咲耶との親交も、スタンスとして脱出を図っているのもあってそこに踏み入ったが、あの事務所内で今後いっそう一丸となるのであれば、自分達はそもそも外様の存在であることには変わらない。 (彼女達が、きちんと連携を密にした場合――幽谷霧子の行方不明、まして怪しさに溢れた病院の院長に連れ去られたのを、私がみすみす見逃していたら) (ええ。当然のように信用は墜落、私たちの同盟はせっかく繋いだ縁ごとまるっとご破算でしょうね) つまり、そういうことだ。 仲間の仲間、同盟相手にとって見知った相手と知りながら助けなかった行為が露見すれば、せっかく築いた絆がすべてお釈迦になる。 生き残る可能性も、知らない世界の中で掴んだ信頼も、すべてを無に返してしまう。そう考えれば、今すぐにでも霧子に加勢するべきか――と言われれば、またそれも異なる。 (そういう訳で、今は仁義を通すべき場面です。……とまあ長々と講釈垂れたけど、ぶっちゃけここで見過ごしたところでバレる可能性は少ないのもまた事実なのよね、残念ながら) 逆に言えば、「バレなければ問題ではない」というのもまた事実なのだから。 古手梨花がこの場所にいることを知っているのは、ここにいる面々だけ。自分の不義理が露見するのは、皮下の部下はともかくとしても、何らかの形で霧子が逃げおおせた上で自分の存在に言及された場合のみだ。 敵陣からなんとか霧子が逃亡できなければ、露見する確率もゼロだろう、と。 そうした現実的な見立てまで、相棒たるセイバーは整えて、その上で。 (……セイバー) (選ぶのは貴女です、梨花。貴女が信じて行くと決めた道を、私は切り拓きます。 あとは強いて言うなら、そうね。令呪一画とお命までいただいてしまった恩義、私なら返すかなあ、といったくらいでしょう) そう委ねてくるのだから、まったく。 自分は人斬り包丁だと息巻いて、だからこそ正しい人間に委ねたい――そう言っておきながらこれになるとは、彼女も大概人がいい。 あるいはこれも、彼女を従えていた元の『マスター』の影響か。 ともあれ、それだけの言葉を寄せられて――それで自分の中でも、漸く腹を括ることができた。 (……ありがとう) 結局のところ、必要なのは理由だ。 ここで見逃してはいけない、誰も喪わせないことに合理性を与える理由。 感情で命を賭けるには、背負ってるものが多いけど――見捨てなくてもいいのなら、諦めて折れるのは間違いだから。 ああ、そうだ――諦めるな。信じろ。言葉を紡げ。そして、絶望を越えてみせろ。 だから、古手梨花はしかと立つ。 白瀬咲耶が生きた証として生きる――一度誓ったそれに、恥じることなき選択を。 そして何より、雛見沢の惨劇を一度越えた者として、運命に打ち勝って生き続けるために。 ■ 「まず、一つ確認したいことがあるのです」 さて。 根本的な問題として、古手梨花は知将ではない。 彼女の理知を支えているのは積み重ね続けた百年の経験であり、経験則と状況の分析――今置かれている状況が、発言が、『彼女の知る常識』からどれ程外れているのかという間違い探し。 だが、少なくとも今の話を聞いていた上で、そこから類推される推測をできないほどに馬鹿な訳でもない。 「皮下、という男の部下らしいあなた達は……NPC、可能性の器ではないのですね?」 「はい。あくまでこの界聖杯に再現された人格にすぎません」 きっかけは、ミズキが発した最初の台詞だった。 「可能性の器ではないが、聖杯戦争を知っている」。この台詞から考えられる可能性は、大別すれば二つ。「この界聖杯のNPCである」か、「サーヴァントの宝具で召喚された何等かの武器であるか」か、だ。 だが、皮下医院という病院の存在は梨花でも知っている。その上で、霧子が口にした皮下先生という言葉も含めて考えれば、彼等の主はサーヴァントではなくマスターとして医者の役割(ロール)を背負っている皮下その人に他ならないだろう。 そもそもサーヴァントの呼び出した存在であるのなら、自分たちを『サーヴァントそのものではないですが』と自己紹介するはず。マスターを指す言葉である可能性の器の側を否定している、ということも、そう考えれば辻褄が合う。 「……なら、分かっているのですか?皮下が優勝しても、あなた達は……」 「この世界や可能性喪失者と諸共に、消える。ええ、理解していますよ」 そしてそうであるなら、梨花としては僥倖だった。 最悪、ゼロから説得するつもりもあった。だが、そうであるなら――梨花にとっては、一つの切り札がある。 「……あえて、聞くのです。この世界が終われば消えてしまうと分かっていて、どうして皮下に味方をするのですか?」 思い出すのは、あの時――一度はレナを見捨て、それでも尚圭一の努力によって彼女を救うことを再び諦めずに選んだカケラのこと。 あの時だ。あの時こそ、自分は知った。自分が時間を戻しても それまでの自分は――ああ。自分がいなくなった後のカケラのことを、気にしてなどいなかった。 どうせいつかは消えるのだからと、その後を顧みることなんて一切しなかったあの頃――今となっては それは、今のこの状況とて変わらない。自分たちが脱出した上で、界聖杯と共に泡沫に消える存在のことを、深く考えはしていなかった。 だって彼らは、本当に消えるのだろうから。 可能性喪失者ごと、この世界は喪失する。そのルールが定められている以上、彼らはこの鳥籠の中で死にゆくしかない――それが、可能性の器たちが認識しているこの世界のルールで。 「それを知って、何をすると?」 「……あなた達が生き残る術。それを、示したいのです」 ここからだ。ここからが正念場――惨劇の中でひとつ磨いた、『生き残る』為の覚悟を括る。 ……正直に言えば、不安要素もある。なにせ、ここから先は彼等にとっては荒唐無稽な話だろう。信じろという方が無理な話だし、そもそも信頼関係どころか敵対関係にある相手なのだから猶更だ。 だが、生半可な言い訳では結局のところ現状打破にもなりえないのもまた事実。持ちうるカードを突き詰め、真実を以て話さなければ、そこに可能性は産まれ得ない。 そして、何より――泡沫に消える運命だと、それを受け入れている彼らを、彼女は黙って見ていられない。 故にこそ、古手梨花はあえて真実を語る。 「私たちの目的は――聖杯戦争からの脱出なのです。にぱー」 古手梨花の最終目標、それそのものを。 言い放ったその目標に、皮下の部下たちの反応は三者三様だった。 眉をぴくりと動かしながらも、静かにこちらを見据えたままのハクジャ。 こちらを訝しむように目を細め、緊張感をより高めたミズキ。 そして、男とは対照的に僅かに目を見開いた猫耳の少女。 その反応を目端に捉えつつも、梨花はここでは止まらない。 「私たちは、生きる為に戦うのです。その手段も、私たちはもう見つけているのですよ」 断言する。 手段――アッシュのそれが不完全である可能性は、ここでは考慮しても意味がない。 どちらにせよ、ここで丸め込まなければアッシュを含む自分たちの陣営そのものが皮下の陣営と対立するだろう。上手く騙くらかすのが成功して休戦関係を構築するか、失敗しても元の状況通りこちらが敵視されるのみだ。ハッタリだろうがなんだろうが、ここで貫き通さなければどうしようもない。 「ただ器ではない人形としてではなく、純粋に生き残りたいと願うのなら――私たちは、あなた達とも手を取り合いたい。それが私の、偽らざる本音なのです」 アッシュの脱出方法。 それは、界聖杯そのものに干渉し、これを破壊、あるいはルールの書き換えを行う宝具であるという。 だとするなら――可能性の器だけではない。ここで産まれた彼らを救うためのルールすらも、挿入することができるのではないか。 梨花が賭けたのは、その可能性だった。 「……あの」 そして、それに答えるように――ハクジャでもミズキでもない声が、小さく響く。 梨花がそちらを向けば、おずおずと手を上げるのは、ミズキの横で縮こまっていた影。先程霧子に対して胸を張っていた、確か、そう――アイという少女。 不安気に挙げたその顔で、小さく、彼女は言葉を紡ごうとして―― 「もし、もしそのだっしゅつに、アイさんたちが――」 「アイさん」 か細い言葉を、ミズキの冷徹な声が断絶させる。 頭に添えられた手に僅かに力が籠ったかと思えば、アイがびくりと大きく震え――その後、目に見えて萎縮した。 「それは、彼への裏切りになります。やめておいた方がいいでしょう」 そう告げるミズキの目は、言葉通り冷徹に徹したそれ。 怯える彼女を抑え込んだ彼は、しかし苦々しく顔を歪めた。 ――子供の態度は、分かりやすい。 その間隙を――確かに、梨花は見届けていて。 「……生きたいと願ってるのに、それを妨げるのですか」 そして、その間隙は、同時に。 梨花にとっても、絶対に見過ごせないものであった。 籠の鳥、囚われの身。そう産まれておきながら、それでも――生きたいという願い。 その痛みを、古手梨花はきっと、この世界の誰より強く強く知っている。 「運命が死ねというのであっても、生きたいのであればその為の道を探す。それが、最善の道ではないのですか――!」 だからこそ、やはり我慢がならないのだ。 消えたくないと願う祈りは、今確かにそこにある。それは決して恥ずべきものでも、まして抑圧されるべきでもないのだ。 自分とて、運命をただ受け入れるままになっていた頃もあった。一度や二度ではない、何度も繰り返す中で挫折すらも幾度となく経験した。 けれど、その先で手を差し伸べてくれる人間が、希望を示してくれたことがあったから。 だから自分も、そのように手を伸ばす。 そんな梨花を見つめ、対するミズキはあくまで冷静に自分たちの現状を語る。 「……まず、前提として。そもそも私たち、可能性の器ではない者たちは界聖杯が用意した『世界』の構成要素の一つです」 ミズキがそれを理解したのは、彼が虹花として己の権能を理解したその時点であった。 自分の存在が、より大きなものの一部である感覚。自らの身体を手で触れた時のように、自分が今経っている地面の側から、ミズキという個体と客観的に接触しているという感触が伝わっていること。 その感覚が自分だけではないことは、周囲の覚醒者と交流することでも確認できた。 ――自分たちは、人間ではない。この世界を構築する舞台装置としての、人形の一つ。 それを実感として受け取れていたからこそ、界聖杯の真実を知った時もそういうものなのだと自然と理解できてしまっていた。 「ですから、根本的に――界聖杯から離れた時点で、私たちを構成している魔力を得ることはできなくなります」 そして、その実感がなくなれば――この世界そのものと分たれてしまえば、きっと自分たちは生きていられないであろうことを、明確に認識できてしまった。 葉桜の覚醒のみに留まらない。真実を認識することや、何らかの方法で力を手に入れるに至るなどによって自己を強く確立した時、大なり小なりそれは心のどこかで理解できてしまうのだ。 自分は、ただこの世界に置かれた、ただの張り子にすぎないのだと。 「それは……」 「――あなた達の能力からは、私たちほどではないにせよ魔力がある。それでも?」 想定していなかった情報に尻込みする梨花に、再び武蔵が助け船を入れた。 サーヴァントである身だからこそ、ある程度の魔力は探知できる。故にこそ、彼等が使っている異能は確かに魔力を経由して作り出されていることも看破できた。 ならばそれは、彼等の肉体を構成している魔力の代用品なり得ないのか。 「……ええ。その可能性は、確かにあります」 それも、また事実。 自分たち虹花のバイタルチェック結果と併せて、この事実を報告した際に、仮説としては産まれていた。 界聖杯の一部として構築されているのはほぼ確定。界聖杯から与えられた魔力によって肉体が構成されている可能性は、 だが、それと同時に、恐らく記憶や人格そのものは端末としての肉体に埋め込まれている。そうでなければ、葉桜で外部から刺激を加えたとしても元世界と同じく個人に由来する能力を行使するのは難しいはずだ。 そして、ソメイニンの適合率が100%を超過し、「開花」のレベルまで至っている虹花の面子であれば。 『界聖杯からのリンク切っても動く可能性は、ま、ゼロじゃねえな。 できればそのリンクを利用して聖杯いただき……とかやれたらクッソ楽だったんだけど、流石にそれくらいは対策済みだろうなあ』 要は、PCを主電源から切り離しても、バッテリーを内蔵して記録内容の読み込みさえできれば支障なく使えるのと同じ。 肉体を構成するだけの魔力を自己生成できれば、最低でも肉体の維持自体は行える可能性が高い。 そして、虹花の面々が持つ能力は、それを満たしているともいえた。 皮下が予想しているように、ただ単に覚醒するだけで情報量という界聖杯からの魔力の追加剰余が行われるのとはまた別だ。 葉桜の原材料そのものは界聖杯という世界で構成されている故に魔力を帯びているが、その製造技法とソメイニンに由来する神秘の力は紛れもなく皮下が開発した独自の事柄。 極論を言えば、彼等虹花のオリジナルがこの世界に存在した時、ソメイニンを由来とする魔力は彼等がサーヴァントを従える上で潤沢なリソース足りえただろう。そういう意味で、彼ら虹花は間違いなく魔力を自己生成していると言えた。 「それなら――」 ならば、可能性はやはりゼロではない。 勿論、問題は山ほどある。彼等がどのくらい界聖杯と同一の存在なのか。ルールの書き換えはどのように行えばいいのか。彼等は、どの世界に戻るべきなのか。 けれど、それでも――生き残る可能性自体は、ゼロではないのだ。 ならば、やはりそれを試す価値がある。 そう叫ぼうとした 「――確かに、そうね。私たちは、運命に縛られている」 その声を、冷たく遮るものが一つ。 振り返る梨花の視線の先で、薄く笑うのはハクジャだった。 その頬に浮かべた微笑を僅かに強張らせながら、彼女は朴訥と語り出す。 「……私たちが産まれたのは、こうして世界の真実を知った時。……でも、それだけで、私たちの過去までも否定したくはないのよ」 その頬に浮かべた微笑を僅かに強張らせながら、彼女は朴訥と、唐突に問いかけた。 記憶には、連続性がある。 自分が生きていたそれまでの積み重ね。ずっと歩んできた道筋。それは、NPCであろうと可能性の器であろうと等しく持ち得ていたものだ。 「私たちは、私たちの記憶の通りに生きていた。――その記憶は、たとえ縛りであり呪いなのだとしても――どうしても、嘘になれない」 だから、必然的に彼らも、その行動はその記憶に準じるものだ。 たとえ全てが虚像だと分かっていても、自分の在り方が人形だと認知していても――役割からは、逃げられない。 あてがわれた自分の役割、詰め込まれたその記憶を――自分がそういうもので、だからこうして生きるしかないのだという命題を裏切れない。 今、ミズキの手の下で震えてしまった彼女がそうだ。 トラウマ 存在しない過去であろうと、心的外傷からは逃げられない。命を縛る鎖は、最早解けるもの足りえない。 ――うたかたの記憶。可能性の器にあらぬ、元の世界の記憶を刷り込まれただけの木偶。 「だから、この記憶がある限り――私が生き残りたいと願ってしまう限り、同時に……いえ、だからこそ、過去にそれを叶えてくれた皮下さんは裏切れない」 そこから抜け出ることなど、出来ないのだ。……誰にも。 たとえそれが、全て張り子であると、分かっているとしても。 「……ああ」 それで、梨花にも理解が及んだ。 ――彼らは、きっと諦めている。 さながら、井戸の中で空を眺める蛙――いや、蛙にすらなれなかった、鰓呼吸のままのオタマジャクシか。 実際、覚えはある。 信じた過去が空虚であるという、その可能性はとても苦しい。そうでなければ、あのカケラで鷹野のスクラップ帳にしがみついたレナがあそこまで苦しむものか。 まして、それが自分を構成していた全てというのなら――彼女達がそれに縛られることも、無理はない。 だとしたら。 だとしたら、己が言うべきことはなんだ。 あの時自分が、惨劇の中で欲しかった言葉――駄目だ。ただでさえこちらを信用していない相手に、「奇跡を信じろ」と謳って何になる。 なら。 なら、どうする? (どうするのですか、圭一――) 「…………違う…………」 ――その答えを、告げる声は。 梨花の背後から、響いてきた。 それまで、状況から置いていかれていた、一人の少女。 生還からも、聖杯戦争の勝利からも、この場で最も遠いと言えて。 超人的な力も、精神も、持ち得ることなどなくて。 ただ――この空間で最も優しいという、ただそれだけの少女が。 決然的な輝きを灯す菫の瞳で、世界を見据えていた。 →