約 1,487,891 件
https://w.atwiki.jp/byakumu2/pages/1899.html
データ作者:SRC学園製作委員会(旧マガツ氏データ) 名前:灰原 剛鬼 (はいばら ごうき) 性別:男性 年齢:17歳か18歳 誕生日:8月1日 血液型:A型 身長:178cm 体重:71Kg 一人称:俺 二人称:苗字を呼び捨て 学園:クルセイド学園 高等部3年2組 所属:黒崎生徒会(別名反水無月裏生徒会『ミラージュ・レジデンス』) 部活:剣道部 黒崎浩三の戦闘面をサポートし続けるクルセイド学園の生徒。 ミラージュ・レジデンスに所属しており、背水の陣を幾多もひっくり返してきた守護神。 黒崎浩三と同様、水無月家に対して恨みを持っている。 その理由は彼と黒崎浩三が従兄弟、親も黒崎財閥にかかわっていることから、予想が付くであろう。 生徒会とは別に部活動にも精を出している。 こちらの方は九条直樹や芹澤一羽といった、一撃必殺の使い手との真剣勝負を楽しんでいるようだ。 能力:風を操る能力 格闘センスと組み合わせて遠当ての手段として利用している。 フェイティア:斬貫刀 念を篭めることにより最長バスを切断できるほどの大きさの剣に変形するフェイティア。 普段はリストバンドの裏に隠せるほど小さい。 奪われた場合も使用される恐れがあるものの、 莫大なエネルギーを消費に加え、変形後の重量に耐え切れるものでしか扱うことは出来ない。 ちなみに、正式名前は"力があれば斬ることも貫くことも容易な刀"である。 灰原剛鬼 剛鬼, ごうき, 男性, 人間, AAAA, 160 特殊能力 覚悟, 1 不屈, 1 切り払いLv3, 1, Lv4, 26, Lv5, 42, Lv6, 51, Lv7, 64 143, 104, 146, 121, 162, 157, 超強気 SP, 60, 必中, 1, 気合, 1, 努力, 9, 鉄壁, 14, 熱血, 18, 直撃, 30 02pilot_1801.bmp, -.mid # 実は九条直樹をかなり参考にしている。 # 不屈追加。切り払いは相殺用になりました。 # 回避するなんて器用な戦い方は向いていないと思うし。 灰原剛鬼 灰原剛鬼, はいばらごうき, (人間(灰原剛鬼専用)), 1, 2 陸, 3, L, 5500, 140 特殊能力 属性解説集 攻撃属性=夢 性別=男性 メッセージクラス=ミラージュ・レジデンス 5000, 250, 1100, 55 BACA, 02pilot_18U.bmp 烈風拳, 1500, 1, 3, -10, -, 10, -, AACA, -10, 風複 斬貫刀, 2400, 1, 1, +15, -, 50, 130, AAAA, +30, 突 # 装甲+300 # 烈風鉄拳波は語呂が悪いので烈風拳に変更。 # 斬貫刀の消費-30、武属性を突属性に。 灰原剛鬼 回避 灰原剛鬼(攻撃), 黒崎の手を煩わせるまでもない! 回避 灰原剛鬼(攻撃), 何処を狙っている! 回避 灰原剛鬼(怒り), 大事な一手を逃したか 回避 灰原剛鬼, 俺に触れることもかなわぬか 回避 灰原剛鬼, 俺に避けられる様では黒崎に当てることはできん ダメージ小 灰原剛鬼(攻撃), 黒崎の手を煩わせるまでもない! ダメージ小 灰原剛鬼(攻撃), 貴様の力はその程度か! ダメージ小 灰原剛鬼, 臆することなく立ち向かってきたか。.だが余りにも非力 ダメージ小 灰原剛鬼, どうした? それでは俺の闘志に火を着ける事も出来ん ダメージ小(対九条直樹) 灰原剛鬼(冷静), 一撃必殺同士の対決で様子見とは余裕の心算か? ダメージ小(対芹澤一羽) 灰原剛鬼(冷静), 一撃必殺同士の対決で様子見とは余裕の心算か? ダメージ小(対東郷シズネ) 灰原剛鬼(冷静), 一撃必殺同士の対決で様子見とは余裕の心算か? ダメージ小(対哲憲波歌音) 灰原剛鬼(冷静), 一撃必殺同士の対決で様子見とは余裕の心算か? ダメージ小(ミラージュ・レジデンス)(対水無月京夜) 灰原剛鬼(冷静), 水無月の名を持つ者がこのような腑抜けとは…… ダメージ中 灰原剛鬼, 骨のある相手のようだな ダメージ中 灰原剛鬼, これでこそ俺の相手に相応しい ダメージ中 灰原剛鬼(攻撃), なかなかの一撃だ!.だが、俺の一撃は更に上を行くぞ! ダメージ中 灰原剛鬼(冷静), 攻撃一辺倒では行かぬ相手か… ダメージ中(対九条直樹) 灰原剛鬼(攻撃), それが貴様の一撃必殺か、九条! ダメージ中(対芹澤一羽) 灰原剛鬼(攻撃), それが貴様の一撃必殺か、芹澤! ダメージ中(対東郷シズネ) 灰原剛鬼(攻撃), それが貴様の一撃必殺か、東郷! ダメージ中(対哲憲波歌音) 灰原剛鬼(攻撃), それが貴様の一撃必殺か、哲憲! ダメージ中(ミラージュ・レジデンス)(対水無月京夜) 灰原剛鬼(攻撃), 敵を潰すのに躊躇う必要があるのか? ダメージ大 灰原剛鬼, 見事な一撃だ ダメージ大 灰原剛鬼(怒り), 俺は破れる訳にはいかぬ! ダメージ大 灰原剛鬼(攻撃), 詰めの甘さを後悔するがいい… ダメージ大 灰原剛鬼(攻撃), 死中にこそ活は有り! ダメージ大(対九条直樹) 灰原剛鬼(攻撃), まだ決着は付いていないぞ! 九条直樹!! ダメージ大(対芹澤一羽) 灰原剛鬼(攻撃), まだ決着は付いていないぞ! 芹澤一羽!! ダメージ大(対東郷シズネ) 灰原剛鬼(攻撃), まだ決着は付いていないぞ! 東郷シズネ!! ダメージ大(対[[哲憲波歌音]) 灰原剛鬼(攻撃), まだ決着は付いていないぞ! 哲憲波歌音!! ダメージ大(ミラージュ・レジデンス)(対水無月京夜) 灰原剛鬼(攻撃), まだ決着は付いていないぞ! 水無月京夜!! 破壊 灰原剛鬼, ……見事だ 破壊 灰原剛鬼(怒り), 俺自身の不覚を呪う! 射程外 灰原剛鬼(冷静), 当然の結果だな 射程外 灰原剛鬼(冷静), 能力でも対処不能か…… 射程外 灰原剛鬼(冷静), 卑劣ではあるが確実な一手だ 攻撃 灰原剛鬼(攻撃), いざ、尋常に勝負!! 攻撃 灰原剛鬼(攻撃), ここを突破できると思うなよ! 攻撃 灰原剛鬼(攻撃), 黒崎の手を煩わせる必要はない! 攻撃 灰原剛鬼(攻撃), 我が信念、力で語ろう! 攻撃 灰原剛鬼(攻撃), 我が攻撃、常に必殺の一撃なり! 攻撃 灰原剛鬼(攻撃), 受けきれるか! 俺の一撃を! 攻撃 灰原剛鬼(攻撃), 手加減はせんぞ! 攻撃(烈風拳) 灰原剛鬼(攻撃), この拳圧に耐えられるか! 攻撃(烈風拳) 灰原剛鬼(攻撃), 風よ、打ち抜け! 攻撃(烈風拳) 灰原剛鬼(攻撃), 俺の拳はその距離でも届く! 攻撃(斬貫刀) 灰原剛鬼(攻撃), 斬る! 攻撃(斬貫刀) 灰原剛鬼(攻撃), 持てる最大級の技で勝負しよう! 攻撃(斬貫刀) 灰原剛鬼(攻撃), 二の太刀など要らぬ! 一撃で決めよう! 攻撃(対九条直樹) 灰原剛鬼(攻撃), 貴様と全力で勝負をしてみたいと思っていたぞ! 攻撃(対九条直樹) 灰原剛鬼(攻撃), 一撃必殺を信条にしているのは貴様だけではないぞ! 攻撃(対芹澤一羽) 灰原剛鬼(攻撃), 貴様と全力で勝負をしてみたいと思っていたぞ! 攻撃(対芹澤一羽) 灰原剛鬼(攻撃), 一撃必殺を信条にしているのは貴様だけではないぞ! 攻撃(対東郷シズネ) 灰原剛鬼(攻撃), 貴様と全力で勝負をしてみたいと思っていたぞ! 攻撃(対東郷シズネ) 灰原剛鬼(攻撃), 一撃必殺を信条にしているのは貴様だけではないぞ! 攻撃(対哲憲波歌音) 灰原剛鬼(攻撃), 貴様と全力で勝負をしてみたいと思っていたぞ! 攻撃(対哲憲波歌音) 灰原剛鬼(攻撃), 一撃必殺を信条にしているのは貴様だけではないぞ! 攻撃(ミラージュ・レジデンス) 灰原剛鬼(攻撃), 何人たりとも、我らの目的の邪魔はさせん!! 攻撃(ミラージュ・レジデンス)(対水無月京夜) 灰原剛鬼(攻撃), 積年の恨み、ここで晴らさせてもらおう! 攻撃(ミラージュ・レジデンス)(対水無月京夜) 灰原剛鬼(攻撃), 水無月の名を恨む怨叉の声を聞け! 攻撃(ミラージュ・レジデンス)(対水無月安曇) 灰原剛鬼(攻撃), 積年の恨み、ここで晴らさせてもらおう! 攻撃(ミラージュ・レジデンス)(対水無月安曇) 灰原剛鬼(攻撃), 水無月の名を恨む怨叉の声を聞け! 斬貫刀(命中) 灰原剛鬼(攻撃), 必殺! 斬貫刀・単純明快斬り!! 斬貫刀(命中) 灰原剛鬼(攻撃), 必殺! 斬貫刀・疾風走破斬!! 斬貫刀(命中) 灰原剛鬼(攻撃), 必殺! 斬貫刀・電光石火!! 斬貫刀(命中) 灰原剛鬼(攻撃), 一刀両断!! 斬貫刀(とどめ) 灰原剛鬼(攻撃), 我に断てぬものなし!! 斬貫刀(とどめ) 灰原剛鬼(攻撃), 全力を出させた時点で貴様の負けだ! 斬貫刀(とどめ) 灰原剛鬼(攻撃), これぞ一撃必殺! 自由記入欄 ここから先は、作者以外の方が何かを追加したいときに追記する欄です。 何か追加したい設定がありましたら、ご自由にお書きください。 出演シナリオ 三年二組からの手紙 鵯
https://w.atwiki.jp/rnext/pages/67.html
それが仕事な人たち 最初はたちくらみだと思った。 久々に降り立ったロンドン。事件の調査の為遠征し、仕事が一段落着いたところでふと元同僚の顔が浮かんだ。 彼女は警察を辞職し、この地で大学教授なり、今もってあの強気な目を輝せ講義をしているとのこと。 もし会いに行けば、嫌そうな態度を隠そうともせず、けれども口の端を上品に上げて迎えてくれるのは容易に想像できる。当然その口からは流れるように挑発・嫌味・悪口雑言etcと出てくるのは経験上明らかで。まあ、その点はお互い様である。 心のどこかで、あのやりとりを懐かしみつつ彼女の在籍している大学講堂に入った瞬間、視界がぐらついた。 暗転。 そうして気付いた時には、見知らぬ場所で見知らぬ携帯を通して、見知らぬ二人があっさりと命を散らす映像だった。しかも通常起こりえない死に方で。 「もし、この首輪がなかったらアンノウンの仕業かと勘繰っていたところですね…」 知らず内に思考が喉をついて漏れた。首に感じる冷たい違和感に手を触れ、現実であることを再認識する。 北條透は警察機構のエリートである。 その頭の中には警察が要注意とマークしている組織のリストが記憶としてあり、いつでも引き出せる。 だが、その詳細の中にスマートブレインなる会社名を確認することは出来なかった。 聞いたことのない社名。非人道的な行い。そして非現実的な機能を持つ首輪。 摘発するには充分すぎる証拠がいまここにあり、その渦中に自分がいる。 「まったく…こんな大きい仕事を処理するのに何日、いや何ヶ月かかるか…」 冷静になるための一時的な逃避として、脱出してからの算段を打ち切った。今はすべきは自分の地盤を固めることである。 放り出された場所は川沿い。いち早く身を隠すために移動した。しばらくすると路線が、その先には整備された道路が見えた。 開けた場所は避け、道路に並走するように点在する街灯の、その光の輪が自分に届かない草むらに身を潜めた。 この位置なら自分の姿は見えず、けれどもその灯りの恩恵に授かることは出来る。 若干暗めの光量に目を細め、手にした携帯を開く。 集めるべきは情報と協力者。携帯をいじり、参加者リストを小さなディスプレイに浮かべ顔をしかめた。 面識のある者の名の中に、風谷真魚と記されていた。 彼女は予知能力があるとはいえ、ただの一般市民だ。こんな日常から隔絶された状況でいつまで耐えられるか。出来る限り早くあの少女を保護しなくては。 次いで協力者となりえそうな葦原涼。ただ彼とは以前、確執があり良好な間柄ではないのは重々承知している。その点に関しては不安があるが、とにかく顔を見知っているというだけで殺しあうことはなく、話し合いに持ち込めるだろう。 二人以外には知っている名は無かった。その少なさに残念さと安堵と、複雑な想いがよぎった。 電池の残量を考え、携帯を閉じる。参加者の名前は頭に入った。 ならば次は現在位置。そっと辺りを見渡し、特徴となりうる地形・建物と今まで自分が歩いた場所を考慮しながら地図でおおよそ位置の見当をつける。 GPS機能を使えば、瞬時に現在位置を割り出せたろうが、充電場所を確保してない以上、節約に越したことはない。 B-7エリア。研究所と書かれた場所の近くらしい。 あの主催者側が用意した施設に、脱出の手がかりがあるとは思えないが…他に役に立つものがあるかもしれない。 当面の食料は持たされたデイパックに入っているとはいえ、先が見えない今、手に入れて損はない。 そもそも自分に支給された、あのふざけた態度の女が言っていたであろう、スペシャルアイテムとやらが、気に入らない。 複雑に色線の入った、CDの規格から外れた厚みの円盤。一体に何の役に立つのか。 幸先の悪さを覚えつつ、北條透は道路沿いに移動を始めた。スマートブレインの思惑を阻止するために。 ○ ○ ○ 風のエルは戸惑っていた。 主催者側の意志は理解した。が、それはなんら自分に関係ない。今なすべきことは、自らの子らを消すため瞑想に入った主を護ることだ。なのにこんな場所にいたのでは使命が果たせない。 光球に姿を変え主の元へ還ろうとし、それは成し得なかった。いまだ自分はここにいる。 まるでその様を笑うかのように、首の冷たい感触が不快感を煽る。 還れない。望むものが出来る。主の傍へ。ならば…。 風をその翼に孕み、風のエルは夜を飛ぶ。どこかいつもと違う感覚を覚えながら。 ○ ○ ○ 夜の闇でもひっそり白く浮かび、厭世的にそびえる建物が見えた。道路と違い、手入れを怠ったのか、荒れた印象を覚える。 侵入は容易いだろうと、一歩踏み出した瞬間、北條は何者かに強引に腕を捕まえられ地面に転がされた。 冷静になったつもりがなりきれていなかった。一瞬の気の緩みを全身で後悔し、続くであろう痛みを覚悟した彼に、届いたのは突風と言葉。 「いきなりすみません。でも、危ないところでしたね」 まだ若い、おそらく自分より年下の青年が、中腰で背中を向けている。いや、先を睨んでいる。 点々と続く光の輪。その輪の一つにいる誰かを。純白の翼。鋭利な嘴を街灯に照らさせ、優雅さすら感じる佇まいでこちらを見据えている人型の鳥を。 「徒人の子らよ。我が主の下へ還るために、悪いが死んでもらう」 「…僕にも、帰りたい場所があります。だから、死ぬわけにはいかない」 「普通に会話している場合ですかッ!?」 青年の主張に北條は転がったままの姿勢で突っ込みを入れる。 「言葉が通じるなら、まず話をします」 「ですが…!」 「アギトでない者を殺すのは忍びないが、せめて楽に…」 男とも女ともつかない声で、一方的な最後の宣告がなされる。 アギト。北條の耳が聴き慣れた音を捉えるやいなや、またも視界が急速に回る。 青年が北條を抱えて横っ飛びに転がったのである。耳の傍で盛大に鳴る葉擦れに重なり、風切音が頭上を通過する。 三半規管が程よくシェイクされ、起き上がりに時間がかかる。青年はといえば、もう体勢を立て直している。 ふらついているとはいえ、思考は冴え渡る。アギトの単語から、相手の正体がクリアに結びつく。 「ヤツはアンノウンです!普通の人間では太刀打ち出来ません、逃げましょう!」 「いえ、あの速さだと追いつかれる…仕方ない」 この暗がりで相手を視認しているのか、隙の無く視線を巡らせながら、青年はジャケットから笛を取り出した。 笛の音が広がる。小さな竜巻が空気を裂きながら青年を包みこむ。 「ハッ!」 気合一閃。手刃で風を文字通り断ち切ると人とは異なる姿の者がいた。 石膏モデルを思わせる、引き締まった筋肉。歌舞伎の面を彷彿とさせる青く縁取られた貌と、同じく青色に染まった腕に、先ほどの青年の姿はどこにもない。黒鉄の輝きをもつ肌は人のそれとは明らかに違う事が伺えた。 北條の知る異形の姿と重ならないそれは、そうまるで… 「鬼…」 草まみれの北條を残し、青年、いや鬼は道路へ跳んだ。 現実という文字をここまで無視した状況の数々に、もしこの場に、かの才媛がいたらどう言うだろう。 答えはでなかった。 ○ ○ ○ 風と風がぶつかり合う。 風のエルの動揺が広がる。 見据えた人間からはアギトの因子を感じ取ることはなかった。 だが、姿を変えこうして戦いの力を得ている。ただそれだけでも危険だ。早く主に伝えなくてはならない。 羽を飛ばし、相手の軌道をそれとなく街灯の下へと追い込む。 退路を狭ませたところで、下段から腕を大きく振り上げるが、爪の切っ先は相手の身体ではなく、街灯を切り崩すだけで終わった。 支柱から切り離され、重力に促されるまま地面に激突した街灯の突端が、そこら中にガラスカバーの破片と耳障りな重低音を撒き散らす。 その反射神経から察するに体術はそこそこのよう。だが武器もなく、防戦一方。とはいえ、正確に自分のいる位置を捉えてはいる。 遠距離から弓で射る方が安全に事が運ぶだろう。 だが風のエルは未知の者に対してより確実に、直接爪で貫き殺すことを選んだ。幾度か対峙し、攻撃し、さらに追い込む。 威吹鬼は空気の流れを読み、距離を取る。瞬間、体が反射的にさらに飛び退がる。 自分のいた一瞬後の空間を鋭利な爪が貫く。勢いを載せて繰り出される蹴りを辛うじて腕で防いだ。 あの爪はまずい。金属性の支柱をやすやすと切り崩した威力だ。 まともに喰らっては、いくら硬質化した肌でもただではすまないだろう。 近接戦より中距離戦を得意とする威吹鬼には不利な相手。音撃管もなく加えて先ほど助けた彼は叫んでいた。アンノウンと。 もし音撃管があったとしても、清めの音が効くかどうかもわからない。かといってこのままいたずらに体力を消耗するわけにいかない。 一か八か。 またも突いて来た攻撃を身を低くして避け、素早く印を結び怪人の懐に半身を捻りこみ、解き放つ。 「なっ!?」 眼前に突如現れた炎の鳥に怪人は隙を見せる。そのまま回転の勢いに乗り風を纏わせた回し蹴り、鬼闘術・旋風刃を頭に叩きつける。 一度弾み、吹っ飛んだ相手に、威吹鬼は警戒しつつも近寄る。 「何をしているんですか!?早くトドメを!」 怪人のさらに先、草まみれの男が街灯の下で叫んでいる。怪人が地を蹴り、彼に向かう。 まずい! 威吹鬼が駆け出した瞬間、体が一瞬輝き、変身が解けた。 「えっ?」 困惑に気を逸らされた。走っても間に合わない。再び印を切る。 慌てた彼が逃げようとして、脚をもつれさせ転ぶ。 怪人の繰り出した攻撃は急に目測を失い、街灯に衝撃が走る。衝撃は騒音となり、がいぃぃぃっん!と辺りの空気を震わせた。発動した炎の鳥が怪人に飛び掛ったのはその音と同時だった。 「くぅ…!」 不利と判断したのか、怪人はふらつきながらも夜の闇へと姿を消した。 ○ ○ ○ 「正直、助かりました。協力していただけて心強いです」 「いえ、こちらこそ。同じ考えの人に出会えてちょっと安心しました」 戦い終わって、二人は自己紹介も程ほどに、研究所に移動した。 笛の音やら金属音やらで散々大きな音をたて、誰か、それこそまた殺し合いにのる者が近くに来てはたまらない。 建物に入ってすぐの、とりあえず適当に選んだ部屋で各々の状況と情報を交換し合う。 最初こそ北條も、青年ことイブキ──「和泉伊織です。呼ぶ時はイブキでお願いします」と言われた──を多少警戒もしていたが、殺人者かどうかもしれない人間を助けるためにあっさり戦いに向かった姿に、どこかの誰かを思い出したのだ。 「…こんな状況下でも笑っていられるあたりとか、似てますね」 「え?何か?」 「何でもありませんよ。ただの独り言です」 イブキとて不思議だった。変身した人間を目の当たりにし、冷静でいられるものはそう多くない。好奇心が勝って尋ねてみると「似たような知り合いがいるので」と彼の知りうる変身するものの情報付きで返ってきた。 無事に帰れたら紹介してもらって、猛士にスカウトしてみようか。 無事に帰れたら──想い人の香須実と、弟子のあきらの姿が浮かぶ。あの怪人も帰りたい場所があったのだろう。 北條から危険な存在と言われても、どこか、話し合う余地があるんじゃないかと考える自分がいる。そして、猛士の一員として人々の安全を護る使命から、倒すべきと考える自分も。なるべくなら、犠牲者は出したくない。 「イブキさん?」 「あ、すみません。えっと、葦原涼さんと風谷真魚さん。この二人と早急に会う必要があると」 「ええ。それと日高仁志さんと、保護対象の桐矢京介さんですね」 「はい。風谷さんと同じく、桐矢くんもまだ学生です。この状況は酷だと思うので…」 助けるべき人間がいる。それだけで、取り乱さずにいられるのは市民を護る職務についているからだろうか。 だが、違和感はある。先ほどの戦闘時。思っていたよりも怪人が吹き飛ばなかったこと。 何より変身が自然と解けたこと。鬼になるのも、その姿を解くのも意志による判断だ。 とはいえ、戦いの最中に変身が解ける事態もある。 だがそれは当人の意識がなくなった場合やダメージ過負荷による瞬間を指し、イブキは無論そんな状態に陥ってなどいない。 ──考えるより、もう一度変身をして確かめた方がはやいか。 「北條さん、ちょっとこれから実験をしたいんですが」 北條としてはこの研究所を探索し、何か役に立つものを手に入れたかったが、真剣な表情のイブキに承諾せざるを得ない何かを感じた。 笛をかざし吹こうと口をつけた瞬間── 『こんな夜遅くに申し訳ない! 』 機械で増幅した声が聞こえた。 「馬鹿がいるー!!」 「いやツッコミ入れてる場合じゃないでふが!?」 思わず叫んだ北條の口を慌ててイブキがふさぎ、ふさぎつつ大声を出してるイブキの口を北條がふさいだ。 大の男二人が、互いの手を互いの口に押し当ててる滑稽な姿を知らず、声はなおも続く。 声の主はデネブと名乗る。どうも【さくらいゆうと】──名簿にあった桜井侑斗だろう──という椎茸嫌いの男の子を探しているらしい。 『侑斗はとっても――――――お! おわぁ!? だ!誰!?モ、モガモガ…………』 最後に機械音特有の耳障りなハウリングを残して声は途絶えた。 「…あんな放送かまして、格好の的じゃないですか」 「A-7エリアっていってましたね。山のほうか…すごく近い」 二人は地図を広げつつ確認する。 「どう思います?声の…デネブって人」 「ただの、子供が迷子になってテンパってる保護者。それ以上でも以下でもありません」 「あ、やっぱり…」 「全く、高校生以下の子供まで参加させるなんて…スマートブレインめ」 【男の子】の【嫌いな食べ物】を事細かに説明されたせいで、桜井侑斗の印象に小・中学生のイメージが定着しつつある。 当人が聞いたら、その後の展開推して知るべし、である。 「誰かに口をふさがれたようですが…心配ですね」 「僕、様子を見てきます」 「殺人にのった人が来るかもしれないのに? 今から行っても間に合わないかもしれないのに? 危険すぎます」 射抜くように問い掛ける北條に、イブキは迷わず答える。 「それが、僕の仕事です。人を助けるのが猛士の仕事なんです」 …どうにも、似ていると思った人物を北條は間違えたようだ。あのヘラヘラした津上翔一ではない。 皮肉をいっても通じない。不器用で、まっすぐな、故に危なっかしい…氷川誠の方に似ているらしい。 「……仕方ありませんね。私もついていきますよ」 「北條さん!」 「ただし、捜索は一時間ほど。危ないと思ったらすぐここに引き返します。いいですね?」 口を開けば悪口しか聞こえない彼女、小沢澄子の声が聞こえた気がする。 ――ふーん、あんたも結構やるじゃない。 幻聴と解っていても北條は返した。 ――私も、警察官ですからね。 北條は思考の邂逅を打ち切り、準備に入る。 「そうなると時間が惜しい。どういう結果になっても、この研究所には戻ります。邪魔になる荷物は置いていきましょう」 イブキがうなずく。 北條は自分のデイパックから携帯と、逡巡してマグライトを取り出す。それらと、折りたたんだ地図をポケットにねじりこんだ。 明かりは使いどころを一歩間違えれば、自身が格好の的となる。が、光源もなしに夜の山に探索に行くのは無謀だと判断した。 「イブキさんはなるべく身軽でいて下さい。私はあなたと違って変身できません。正直、戦力はあなただけです」 「はい」 促され、イブキは携帯だけをデイパックから取り出し、ジャケットの胸ポケットに入れた。 主催者側からの連絡ツールということもあるが、互いに離れ離れになる事態に陥っても、GPS機能があれば研究所に帰り着くことは可能だ。 「もし私たちのいない間にここに誰かが来て、荷物を奪われるのは痛手になります。まとめて隠して、それから行きましょう」 改めて部屋を見渡す。6条程度の広さ。ヒビが走り防音・気密性の欠けた曇りガラスの小さな窓。横長の折り畳み机に、壁紙の模様を隠すように立ち並ぶ細長いロッカー達。 そう、ここは更衣室である。 そのままロッカーに放り込むのには抵抗を覚え、机にのぼり、天井板のひとつをずらす。二人のデイパックを天井裏に押し込め、もとどおりに板をはめ戻す。 隠し場所としてはベタな場所ベスト10に入るが、致し方ない。 若干足をはやめ、辺りを警戒しながら研究所を出ると、やや頼りない星明りが広がる。 と、そこで何か思い出したようにイブキが北條に顔を向けた。 「北條さんのスペシャルアイテムってなんだったんですか?」 ジャケットの袖をめくり、左腕にくくりつけた勾玉を指しながらイブキが質問する。 イブキのスペシャルアイテムは、運良く使い方の知っている勾玉だった。 攻撃能力は低いが、相手の気を逸らしたり、火を自分で起こす必要がなくなるという点では充分に価値のあるアイテムだ。 事実、これがなければ先ほどの怪人との闘いは、正直考えたくない結果に終わっただろう。 北條は苦笑いを浮かべて答えた。 「それが…どうも運が悪かったらしく、碌な物は入っていませんでした。お陰で丸腰状態ですよ」 もし、この時点で北條が支給品のことをイブキに伝えていたら、状況は好転したといえよう。 なぜなら、彼が持たされた円盤は猛士が誇る探索式神。ディスクアニマル【アサギワシ】であったのだから。 かわいそうな保護者を探しに、二人は歩き出す。 もしイブキが、変身の実験を出来ていたら―― もし北條がほんの少しでも支給品の特徴を口にしていたら―― この先の話は少し違ったものになっただろう。 「でも変身したのに、なんで服が無事なんだろう?」 「何か言いました?」 【北條透@仮面ライダーアギト】 【1日目 深夜】 【現在地:B-7 研究所近く】 [時間軸] 最終話 [状態] 健康。 [装備] なし。 [道具] 携帯電話・地図・マグライト [思考・状況] 1:イブキについていく(デネブを探す) 2:研究所内を探索する 3:葦原涼・風谷真魚・日高仁志・桐矢京介、そしてこの殺し合いに反発する者との合流。また風のエルに警戒。 4:無事に戻った暁にはスマートブレインを摘発する 【和泉伊織(イブキ)@仮面ライダー響鬼】 【1日目 深夜】 【現在地:B-7 研究所近く】 [時間軸] 35話付近 [状態] 戦闘による若干の疲労。鬼に二時間変身不可。 [装備] 変身鬼笛・音笛 勾玉 [道具] 携帯電話 [思考・状況] 1:デネブを探す 2:なんかいつもと色々違うなぁ… 3:葦原涼・風谷真魚・日高仁志・桐矢京介、そしてこの殺し合いに反発する者との合流。また風のエルに複雑な心境。 [備考] ※勾玉の炎は火力が低く(服の表面を焦がす程度)、距離も数メートル程度しか飛べません。回数制限は不明。 ※変身しても服が無事なのはそこだけ映画設定としてご了承ください。 [その他共通事項] ※北條透・和泉伊織のデイパックは、取り出した物以外B-7エリアの研究所に隠してあります。 ※デネブの放送により、桜井侑斗へ小・中学生のイメージを抱いています。 ○ ○ ○ 風のエルは困惑していた。 未知の力を持つ者に。そして、通常の力を出せなかった最後の一撃に。 常ならば、あの程度の細さの街灯など切り裂くことが可能だ。実際切り崩した感触がまだ残っている。 だが、あの最後の一振りはそれを成し得なかった。 風のエルは知らない。それが首輪による制限であることを。 還らねば。主のもとへ。早く、はやく。こんな不可解な地と人のいる場所からはやく。 【風のエル@仮面ライダーアギト】 【1日目 深夜】 【現在地:D-7北東部】 [時間軸] 48話 [状態] 困惑気味。頭部にかなりのダメージ。二時間能力発揮不可。 [装備] なし [道具] 基本支給品一式 不明支給品(未確認)1~3個。 [思考・状況] 1:とにかく還る。 2:帰還した時には、主に未知の力を報告。 [備考] ※デネブの放送は距離と精神的動揺から聞こえていません。 008 Action-DENEB 投下順 010 犀虎の十分間 008 Action-DENEB 時系列順 010 犀虎の十分間 北條透 033 ワインディング・ロード 風のエル 019 想いを鉄の意志に変えて 和泉伊織 033 ワインディング・ロード
https://w.atwiki.jp/terachaosrowa/pages/5459.html
質問に答えられなかったタケシを抹殺したジョン・フレミングは新たなターゲットを探していた。 そして間もなく見つけた。左目に眼帯を付け、右手に包帯を巻いた少年だ。 当然の如くフレミングは少年に質問を投げかける。 「少年。私の生み出したこの法則を知っているかね…?」 そう言って両手のあの法則のポーズを少年に見せ付ける。 するとその少年はそれを見るなり驚愕したような表情を浮かべワナワナと震え始めた。 「どうした、答えられないのか?」 「バカな…貴様が何故ソレを知っている…?」 「ん?」 「黒の教科書でしか知らなかったが本当に存在していたとはな… しかしアレは既に黒歴史の果てに人々の記憶から抹消された存在のはず…それがどうして…?」 「は?」 「正気か?ソレを…『バルギスの定理』で世界の真理を暴くことがどれほど危険なことか…。 貴様は…貴様は一体何をしようとしている!?『バルギスの定理』を使って…貴様ァァァァァァッ!!」 「違う…この馬鹿のバルギスがぁ…ダブルフレミングバスター!!死ねえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 少年の意味不明な珍回答に今までにない程の怒りをこめて電撃を放つフレミング。 が、少年は突如何もない空間から最上級悪魔の力が宿った闇色の剣『魔剣ルシファーブレード』を具現化させるとフレミングの放った電撃をその一振りで打ち払った。 「何だとッ…!」 「ククク…攻撃してくるとはな。それが貴様の選択か… やはり貴様は禁じられた『バルギスの定理』を使ってよからぬことを企んでいるらしいな…」 「いや、だから違うって言ってんだろ」 「貴様の野望は俺の邪気眼が跡形もなく次元の彼方へ消し去ってやる!!闇の炎に抱かれて消えろ…」 「さっきから話聞けやこの厨二野郎」 そして少年は左目の眼帯と右手の包帯を脱ぎ捨てる。 少年の左目と右腕に刻まれた謎のタトゥーが妖しく輝いていた…。 【一日目・20時/栃木県】 【ジョン・フレミング@現実?】 【状態】テラカオス化進行中、電撃能力会得 【装備】なし 【道具】支給品一式 【思考】 基本:フレミングの左手と右手の法則をきちんと知らん奴を皆殺し。(野田総理でも許さん) 0:邪気眼使いを殺す 1:子供の参加者を優先して質問を投げかける 2:答えられなかったら当然始末する ※テラカオス化進行により、両手から電撃を放てるようになりました 【邪気眼使い@邪気眼ネタ】 【状態】邪気眼覚醒、邪気眼解放中 【装備】魔剣ルシファーブレード@作者の妄想 【道具】支給品一式 【思考】 基本:邪気眼の力に導かれるまま動くだけだ 0:フレミングをこの世界から消し去る 1:それが世界の選択か…
https://w.atwiki.jp/galgerowa/pages/116.html
戦い、それが自由 ◆A6ULKxWVEc 「…少し急ぎの用事がありますのでそこを退いて下さらない?」 戦闘の現場に急行しようとしていたとき、いきなり斬撃を放ってきた人形のように無表情な少女に問いかける。 ただでさえ不調のお陰で足が遅いのだ、これ以上引き離されては追いつくのは絶望的になる。 「……」 対する少女は無言のまま構えを崩さない。 「ちょっと、聞くいてらっしゃる?私、あまり気の長いほうではありませんの。さっさと退かないと、力ずくで押し通りますわよ?」 最初の斬撃、そして今の構えを見るにかなり戦い慣れしているようだ。そしていきなり斬りかかって来たことから、恐らくこの殺し合いに乗っているのだろう 自分より強い、とは言わないが相手は刀、此方は酒瓶と人形。実力以前の問題だ。 だがそれでも下手には出ない。その様な生き方をカルラは好まない。 「好きにすればいい。あなたが何をしても、私は殺すだけ」 わかっていたことだが相手に引く気は無いようだ。そして当然自分にも引く気はない。 確かに戦闘している所でアルルゥ、エルルゥが襲われているかもしれない。 しかし、それを言うならこの危険人物を見逃したことでその二人が殺されるかもしれない。 どちらを選んでも危険があるなら楽しそうな方を選んでも問題にはならないだろう。 そして何より───挑んでくる強者に背を向けて、何が戦闘民族だ。 「では好きにさせていただきますわ。先にも述べたとおりあまり時間がありませんの。ですから───手短に行かせて貰いますわッ!!」 そう言いつつ酒瓶を投擲する。 当然そんな物は容易く切払われる、だがそれは計算の内。 砕けた破片が少女を襲い、その隙に拳で─── 「───ッ!?」 だがその計算は破られた。確かに酒瓶の破片は少女を襲った。 しかし少女はその程度の破片など恐れない。まるで痛みを感じない人形のように。 ガラスの破片は少女を傷つけ、しかしそれに怯むことなく彼女はカルラへと肉薄する。 そしてその刃がカルラの胸元へと─── 届く直前、カルラの拳が少女へと届いていた。 先に当たったとは言えその拳は振り抜きも踏み込みも足りないその場しのぎの物に過ぎない。 当然少女はすぐに立ち上がり刃を構える。 先ほどの酒瓶の所為で体中到る所に出血が見られる。しかし目の前に立つ少女はまるで痛みを感じてないかのように、気負うことなく、怯むことなく平然と構えている。 「中々いい根性してますわね。貴方、お名前は?」 故に、今こそカルラは眼前の少女を敵と認める。この闘いが終った後でも記憶に残しておく価値のある敵だと。 「アセリア。アセリア・ブルースピリット」 少女───アセリアは淡々と自分の名を告げる。 「アセリアですか。中々いい名前ですわね。私はカルラと申します。戦闘民族ギリヤギナの末裔にしてハクオロ皇の奴隷ですわ。それと───」 歌うように彼女は続ける。 「先程急ぎの用事があると申しましたが、あれはキャンセルしますわ。今はただ───貴方と全力で踊りましょう」 それで話は終わり?そう問いかける代わりにアセリアが切り込んでくる。 そう、最早私達の間に言葉は要らない。 相手はは刀、此方は拳で語るのみだ。 刀と拳。言うまでも無く絶望的なまでに不利なのはこちらだ。 だが、それでも。カルラの顔にははっきりと笑みが浮かんでいた。 体が思うように行かない苛立ちを斬撃に込め、目の前の女──カルラと言うらしい、に斬りかかる。 だがその斬撃は肌を掠るのが精々だ。 そしてその攻撃に被せて来る相手のカウンターは確実にアセリアを蝕んでいく。 しかしその攻撃はアセリアを止めるにはあまりに浅すぎる。 もう何度このやり取りを続けたのだろう? カルラの体には無数の切り傷があったし、アセリアもカルラの拳が、そして最初の破片による傷の所為で着実にダメージを負傷させていく。 もしも思う通りに体が動けばすぐにでもカルラを切り捨てられるのに。 どうもこの島に来てから思うとおりに体が動かない。 その所為で後一歩のところでぎりぎり攻撃を避けられてしまう。 そのことを疎ましく思う反面、少しだけ感謝もしていた。 本調子だったらすぐに決着がついてしまう。 それは───少しだけ勿体無い。 心底楽しそうに戦うカルラの笑顔が伝染したかのように、アセリアの顔にも小さな笑顔が浮かんでいた。 一体どれだけの時が立ったのだろう。 両者の集中力は極限に高まり、自分と相手以外の雑音は一切耳に入っていなかった。 当初両者互角に見えた戦闘は今や完全にアセリアが押していた。 出血による疲労、拳と刀の間合いの差、理由を数え上げればきりが無い。 しかし一番の決定打はアセリアの成長だろう。 当初アセリアは地獄蝶々を自らの永遠神剣“存在”と同じように扱っていた。 当然の事だが大剣と日本刀の扱いは大きく違う。 しかしアセリアは天性の才能と戦場で培った経験でその2つの武器の差を埋めていく。 少しずつ、しかし着実に彼女は日本刀を使いこなす。 徐々にアセリアの刃はカルラを捉えはじめ、カルラの拳は空を切りはじめた。 アセリアは思う。 こんなものか、と。 自分が優位に立っているにも関わらず喜悦は何処にも無く、ただ理由の無い失望感だけがあった。 最早当初の昂揚は何処にも無い。 唯、何時ものように刃を振り下ろす。 そしてその刃は───カルラを捉えた。 悲鳴ひとつ上げることなく、カルラは崩れ落ちる。 恐らくは致命傷。 仮に死んでなくとも、これ以上戦闘する力はないだろう。 故に彼女は倒れ臥した女に背を向け、次の敵を探す。 このもやもやした感情をぶつけれる対象を。 「おまちなさい、まだ勝負は終ってませんわ」 だが。 彼女を止める声があった。 「どうして?」 立ち上がれる筈は無い。 そして立ち上がったところで意味も無い。 振り向いてみれば、カルラは立ち上がった物の、満身創痍。 特に先程の一撃を受けた右腕はだらりとぶら下がっている。 それなのに。 「どうして?」 どうして彼女は笑っているのだろう。 「どうして、と聞かれましても何のことだが分かりませんわ」 息も荒く、今にも倒れそうな眼前の女は、しかし決して崩れないのだろう。 理由も無くアセリアはそう感じた。 「そうですわね……敢えて言うなら私が私らしくあるため、でしょうか」 自分らしくあるために戦う、というのはアセリアにはある意味で尤も分かりやすく、そして尤も分かりにくいものだから。 アセリアにとって戦いは自分そのもの。そもそも戦わない自分、というものが想像できない。 「あなたも……戦い以外に自分が無いの?」 ならば何故彼女は笑うのだろう。 何故彼女はあんなにも楽しそうなのだろう? もしかしたら、自分も唯の義務や手段ではなく、戦いを楽しめるようになるのだろうか しかしそんな少女の期待はあっけなく裏切られる。 「まさか。戦って、酒を飲んで、仲間と騒いで、トウカをからかって、そして夜になったら主様にご奉仕する。それら全てを含めて私ですわ」 結局、カルラも悠人と同じ種類の人間なのか。自分と同じ様に感じていたのは錯覚だったのか。なぜかは分からない、だがアセリアはカルラに裏切られたような気がした。 何度切っても立ち上がるなら、何度でも切ろう。 理由は分からない。 それでも、もうカルラを見ていたくなかった。 カルラの声を聞きたくなかった。 だがそれでも彼女は語りかけてくる。 「あなたは、戦いしか知らないんですのね」 煩い。 普段は誰に何を言われても気にはしない。 だが何故か眼前の女の言葉はやけに気に触った。 「だったら、何?」 目の前の女は不適に笑う。 「いえ、ならそんな女相手に私が負けることは無いと安心しただけですわ」 もはや問答する気は無かった。 ただ目の前の気に食わない女を斬る。 まるで何か吹っ切ろうとする一刀両断の一撃。 その一撃はカルラの左手を捉える。 そして刀を引き、今度こそ首を飛ばそうとする。 だが、刀が動かない。 そして、カルラの目は死んでいない。 「ギリヤギナを舐めないでくださいます?この程度の一撃、最初から覚悟してれば耐えられますわ」 肉を切らせて骨を断つ、と言う言葉がある。 しかしこの行為はその程度のレベルではない。 これは、骨を断たせて骨を断つ、という行為。 恐らくもう二度とこの左手は動かないだろう。 我ながら無茶をしていると思う。 だが、この小娘に負ける訳には行かない。 自分のためにも彼女のためにも。 そしてカルラは拳を振り上げる。 もはやまともに動かない右腕を。 「私に勝ちたかったら、戦い以外の自分を見つけて出直してくることですわね。」 その拳はアセリアの顔面を完全に、捉えた。 朦朧とする意識の中、アセリアは彼女の言葉を聞く。 「ここで立ち上がってこれるかこれないかが私とあなたの差ですわ」 何故私は立てないのだろう。 そして何故彼女は立てるのだろう。 「せん……ます………。」 もはや彼女がなにを言ってるのかほとんど聞こえない。 それでも最後の一言だけははっきりと聞こえた。 「次に会うときに、まるで成長してなかったらそのときは私があなたをぶち殺して差し上げますわ」 その言葉を聞き終わると同時に彼女の意識は途絶えた。 「少々お節介が過ぎたかもしれませんわね」 アセリアとの戦闘は思ったよりも時間を食った。 そして何よりも血を流しすぎた。 意識ははっきりとしないし、歩くのもままならない。 「……まあ、武器も入手したことだし、良しとしますわ」 『戦利品としてこの刀は貰っていきますわ』 一応そう告げて武器は貰っておいたし、誰かを襲うことは無いだろう。 「けっこう歩いたのですが…戦闘の跡らしきものは見えませ───」 その言葉を言い終わる前に、弾丸が彼女の胸を貫いた。 そして倒れ落ちる間に、2発、3発と弾丸が彼女を貫いていく。 アセリアの刃を受けても挫けることなく立ち上がった彼女は、突然現れた少女、咲耶の放った凶弾を受け、二度と立ち上がることは無かった。 「ごめんなさい、とは言わないわ。あなたも誰かを殺したんでしょうし」 咲耶が殺した女は全身血塗れで、刀を持っていた。恐らく誰かと戦って、負傷はしたものの勝利したのだろう。 ───相手を殺して。 誰かを、妹達を殺しうる人間は殺さなければならない。 妹の為に、みんなでお兄様の所に戻る為に。 だから、後悔なんてしない。しちゃいけない。 全てが終る、その時までは。 【G-7海岸側1日目 早朝】 【アセリア@永遠のアセリア】 【装備:無し】 【所持品:支給品一式(ランダムアイテム残り不明)】 【状態:気絶・ガラスの破片による裂傷。殴られたことによる打撲】 【思考・行動】 1:??? ※戦闘に集中していたので拡声器の声は聞いていません。 【G-81日目 早朝】 【咲耶@Sister Princess】 【装備:S W M627PCカスタム(8/8)地獄蝶々@つよきす】 【所持品:支給品一式 可憐のロケット@Sister Princess S W M627PCカスタムの予備弾61 肉まん×5@Kanon】 【状態:健康】 【思考・行動】 1:四葉、衛、千影を探し守る。 2:姉妹を傷つける可能性をわずかでも持つ者を殺す 3:脱出を具体的に計画している人物は放置。 4:脱出の具体的計画がなくとも、100%姉妹を傷つけない確証が得られた場合は殺さない。 5:3の際に脱出が現実味を大きく帯びた場合のみ積極的に協力する。 基本行動方針 自分と姉妹達が死なないように行動する ※カルラのディパックはG-8に放置されてます。 【カルラ@うたわれるもの 死亡】 [残り57人] 042 宣戦布告 投下順に読む 044 偽りの贖罪 040 希望は爆発と共に 時系列順に読む 050 夢と決意と銃声と―― 025 傀儡のアセリア アセリア 078 彼女は戦士だった 027 【二人の岐路】 咲耶 067 少女連鎖 031 魔女 カルラ
https://w.atwiki.jp/kerfuffle/pages/208.html
中継点の現在は交叉と呼ばれる世界の過去存在した知恵者。 義弟に否亡鬼、妹に咲夜を持ち。二人の悪食っぷりに日々苦笑いを浮かべていた。 暗殺者の家系に生まれながら体が弱く、もっぱら戦略や謀略。薬師として日々を過ごしていた。 どんな経緯か、現在は義弟であり親友でもある否亡鬼の愛刀として存在しており。否亡鬼と混在している三日月に振るわれている。 その刃は陰ること無き真の白。 「それは毒だ! それは石だ! 毒キノコはともかく宝石は食用に類するものすらないぞ!!」 「僕にとって、否亡鬼は親友であり義弟であり英雄だ」 「成る程、それが貴様の狙いか……後の世までも欲で汚すつもりか…………」
https://w.atwiki.jp/chomepuls/pages/14.html
「そしてすべての答えは42になった事件」 とは東京都ある小学校にて[[AS http //www38.atwiki.jp/chomepuls/pages/13.html ]]を見た小学生が・・・・
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1173.html
きっかけは些細な口論だった。 その日、朝比奈さんにSM女王様の格好をさせようとせまっていたハルヒを止めるべく立ち上がる。 いや、俺も男だ。 本音を言えば朝比奈さんの女王様ならば縄で縛られることも低温蝋燭であぶられることもいとわないが、それはまた別の話だ。 しかしまあなんだってこの部屋にはハルヒの暴走を止める人間が一人もいないもんなのかね。 古泉はにやにやと笑みを浮かべるだけだし長門は手にもった本をめくる機械と化してるし…… こいつらに期待するほうが間違っていたか。 とにかく、今日もいつものように俺とハルヒが小芝居じみた口喧嘩をして、 いつものようにハルヒがぶすくれてそれでも日常はいつものように流れる── はずだった。 「またあんたなの! いっつもあたしの邪魔ばっかりして、あんたいったい何様なの!?」 「それは俺のセリフだ。いつも朝比奈さんを着せ替え人形にして、お前のほうが何様のつもりだ」 「あたしはこのSOS団の団長よ。この団において唯一にして絶対の存在で──」 わけのわからんことを言い出した。こいつは何かの宗教を開くために生まれたんじゃなかろうかと考 える俺には人を見る目があるという他ないだろう。 世迷言をのたまうハルヒを軽く無視して部屋の隅で小さくなっている朝比奈さんを振り返る。 「朝比奈さんも嫌なものはきっちり断ったほうがいいですよ」 「え……? でも……」 「いいんですよ。ハルヒのバカに付き合ってたらそれこそ時間がどれだけあっても足りません」 この麗しい方の貴重な時間をあの電波団長の気まぐれに割くことほど無駄なことも早々ありはしまい。 と、あれだけわめいたハルヒが急に静かになる。いかれた演説が終わったのか? まあどうでもいいことだ。俺は朝比奈さんを立たせると鞄を渡してハルヒに向き直る。 「おいハルヒ、俺と朝比奈さんは今日はもうかえ──」 「許せない……」 見るとハルヒはぷるぷると肩を震わせ、いつもの怒り顔によく似た、初めて見る表情で言葉をつなげている。 「このあたしをさんざ無視した上にバカ扱いなんて……」 「お、おい。ハルヒ?」 「あんたなんていなくなればいいのよ! SOS団どころかあたしの視界に入ることすら我慢ならないわ!」 ハルヒがそうがなり散らしたとき、今までずっと何もいわずに本を読んでいた長門が顔をあげる。 「涼宮ハルヒ」 「何よ! ……!」 いつもの平静な声で話す長門に対し声を荒げたハルヒはそのことを軽く自省し、改めて長門に聞きなおす。 「……有希、どうかしたの?」 そんなハルヒの心情など意に介せず長門は無表情にハルヒに言葉をつなげる。 「それが本当にあなたの望み?」 「それって……ああ、バカキョンのことね。ええ、そうね。こいつにはもうこの世からすらも消えて欲しいわ!」 「ちょ、ハルヒ……」 俺が思わず言葉を失い、それを取り戻す前に長門は一言「そう」とつぶやき、手に持っていた本を閉じた。 それと同時に俺の視界が白く染まる。 「う……」 次に目覚めたとき、俺は部室にはいなかった。 荒れた大地に既視感を覚え、それがコンピ研の部長氏にとりついたカマドウマの世界と同じだと俺が気づくのと、長門が口を開くのはほぼ同時だった。 「大丈夫?」 「長門……? ここはどこだ?」 「私が情報統制を行っている情報制御空間。位相はずれているがあの部屋と同じ場所にある」 さっぱりわかんねえよ。 そのとき、突如として空間にスクリーンのようなものが現れ、部室を映し出す。 『何これ……どうなってるの……?』 スクリーンに映し出されたハルヒが誰にともなく呟いている。 『ねえ、みくるちゃん……キョンと有希はどこに行ったの……?』 『わたしに聞かれても……』 わかるはずもないのにハルヒは朝比奈さんへとそんなことを聞く。 「な、なあ長門。これどういうことだ?」 「あなたの存在を涼宮ハルヒによくない影響を及ぼすものと判断して情報統合思念体に情報制御空間の作成の許可を申請した。 しかしあなただけが消えた場合、涼宮ハルヒはわたしを言及し、真実の隠匿が困難と判断したため私もこちらに移動した。 今後、涼宮ハルヒの監視はこの空間から行う予定」 「えーと……」 やばい、さっぱり意味がわからん。ただなんとなく俺にもわかったことといえば── 「つまり俺とお前はこれからずっとここで過ごすってことか?」 容量限界突破した俺の脳がひーこら言いながら吐き出した答えを聞いた長門は顕微鏡で見なければわからないほどわずかに首を動かし、 「そう」と告げた。 「『そう』ってお前……!」 ようやく現状の認識が追いつきパニックになることまではできた俺のことなど知るはずもないハルヒは 部室で呆然と立ち尽くしている。 『そんな……あたしがさっきあんなこと言ったから……?』 『涼宮さん、まずは落ち着いて──』 古泉がハルヒを落ち着かせようとしているがハルヒが立ち直る気配はない。 『落ち着けるわけないじゃない……私があんなこと言ったから二人は消え──』 そこまで言ったとき、ハルヒの双眸から流れた一滴の涙が頬に透明な線を引いた。 『あ、あた……取り返しのつかないこと……!』 一度決壊したダムがその氾濫を止めることができないようにハルヒの涙はとめどなく流れ、 ほんの数秒後、ハルヒの心の堤防も決壊した。 『うわああぁああぁぁぁああぁあ! あたしが! あたしのせいで二人が!』 見たことのないハルヒの涙を目の当たりにし、思わず俺はスクリーンに駆け寄り叫ぶ。 「ハルヒ! 俺はここにいるぞ! 長門も一緒だ! 待ってろ、すぐ戻るからな!」 「無駄」 そんな俺に無感情な長門の声が届く。 「こちらからあちらの様子を見ることはできるけど言葉は届かない」 「そんな……」 そうしている間にも部室の状況はどんどん悪化していく。 『涼宮さん……』 『ひっ……あの二人はあたしの団員……団員の不始末は団長がとるものじゃない……なんでこうなるのよぉ……」 近くによる朝比奈さんも目に入っていないハルヒはぶつぶつとそんなことを呟く。 『帰ってきて……いなくなるのはあたしでいい……なんでも、なんでもするから帰ってきてよ…………』 「おい長門」 「何」 「お前は、情報統合思念体はあんなハルヒが見たいのか?」 「…………」 「違うだろ? あれじゃ朝倉のやろうとしていたことよりひでえじゃねえか」 長門はほとんど無表情のような顔のままだが、少し迷っているように見える。 「……帰ろうぜ。俺もハルヒに謝らなきゃいけないし。もちろん、お前もな」 長門が次の言葉を発するまで、ほんの数秒だったかもしれない。 俺にとっては何時間にも感じられたその数秒はしかし、やはり数秒でしかなく。 「そう」 長門の簡素な一言で俺達はあっけなく元の部室に戻っていた。 「あ……」 そう声を漏らしたのは朝比奈さん。 ハルヒは俺がいつも座っている椅子に腰掛け、机に突っ伏して嗚咽を漏らすばかりだ。 俺はそんなハルヒの肩に手を置いた。 「何似合わないことやってるんだお前は。そういうのは可憐な美少女の特権だって知ってたか?」 その言葉に、ハルヒはびくりと肩を竦ませたが、頭は机の上で組んだ両手に乗せたまま顔を上げることはなく。 「うるさい、バカ」 と、短く発するのだった。 ともかくこれで一件落着かと思ったとき、部屋にとさりという軽い音が響く。 全員が音のした方向に視線を注ぐと、そこには床に倒れ伏した長門の姿があった。 「有希!」 真っ先に駆けつけたのはそれまで机についてきた付属品なのかと思うほど動きを見せなかったハルヒだった。 ハルヒに抱き起こされた長門はよく見ると少し息が荒く、辛そうな顔をしている。 「おそらく、力を使いすぎたのでしょう」 古泉がハルヒに聞こえないように俺に話しかける。 「キョン! あたしは有希を保健室に連れていくからあんたはここにいて! 絶対帰っちゃダメよ!」 「お、おお」 すさまじい剣幕に気圧され怯んだ俺をそのままにハルヒは長門を抱きかかえたまま部室を出て行った。 「……ちょ、ちょっと待てハルヒ!」 半分は俺の責任でもあるのでハルヒを追いかけようとしたとき、古泉が俺の肩に手をおき、ゆっくりと首を横に振りながら言った。 「涼宮さんのためにも今は行かせてあげてください」 古泉のその言葉に、俺は足をとめて自分の椅子に戻った。 椅子には、まだ少しだけハルヒの体温が残っていた。 「…………」 長門は目を覚ますと、自分の状況を確認する。 白いベッドにそれを囲むように閉ざされたカーテン。 どうやらここは学校の保健室であるらしい、と理解した直後、体に少し強い衝撃と重さが加わる。 その衝撃と重さが、涼宮ハルヒが自分に抱きついたことから生まれたものだとわかるのにそう時間はかからなかった。 「ごめんね……有希、本当にごめんね……」 自分の名を呼びながらまるで自分以外の全てに宛てたかのように、ハルヒはひたすらに謝り続ける。 言わなければならなかったことがいくつかあったような気がする。 「あたし、もうあんなこと言わないから……もっとみんなのこと大事にするから……」 いくつか言おうと思っていた台詞があったような気がする。 「だからもう……絶対いなくならないでね……」 ただ、今やらなければならないことはそんなことではなかったような気がしたので。 「……わたしも、ごめん」 ただ一言だけ、あのいたって普通の男子生徒に言われたように短く謝り。 震える体をそっと抱き返した。 了。 同刻。 椅子に座りしばし脱力していると、いつもは俺の対面に座る古泉が今日は横に腰掛ける。 「向こうで何があったかは聞かないでおきましょう」 「…………」 古泉の言葉を右の耳から左の耳にスルーさせた直後、体に少し強い衝撃と重さが加わる。 その衝撃と重さが、古泉が自分に抱きついたことから生まれたものだとわかるのにすげえ時間がかかった。 なんだこいつは。そういう趣味なのか? 「すいません……本当にすいません……」 ただひたすら謝りながら、古泉は俺を抱きしめる。 (ハルヒに)言わなければならなかったことがいくつかあったような気がする。 「僕も、もう少し止め役に回りますから……この団を大事にしますから……」 (ハルヒに)いくつか言おうと思っていた台詞があったような気がする。 「だからもう……絶対にいなくならないでください……」 ただ、今やらなければならないことはそんなことではなかったような気がしたので。 「抱きつくな、気持ち悪い」 ただ一言だけ、短く罵り。 震える体をぶん殴った。 本当に終了。
https://w.atwiki.jp/bc5656/pages/626.html
クライスさんが入室しました クライス- ―――― クライス- ―――― クライス- ――――生きている―――― クライス- ―――― クライス- ――――なら何故動かん。何故何も見えぬ。 クライス- ――――我は何故此処に在る―――― クライス- (動かぬ体におぼろげな意識 最後の景色と記憶を辿る クライス- (抗魔金属の爆破に蝕まれ、死する直前に、皇帝たる彼が示した道は― クライス- ("逃亡" 残された光帝の魔力を用いての移動術 クライス- (目的を十分に達する事なく敵戦力から唯逃亡する敗走の一手。 クライス- (皇帝たるもの逃げるわけには行くはずがない―――が、そんな掟よりも・・・ クライス- (今の彼には守りたかったモノが――― サカナさんが入室しました サカナ- (ギィ、と古びたドアの音が鳴り、薄暗い部屋に一筋の光が出来る サカナ- ―――、む、(手には何かわさわさと サカナ- クライス殿…………?(ベッドで昏々と眠っていた、その男の名を呟くように呼ぶ クライス- ―――【女帝】サカナか。 (ゆっくりとその名を呟く サカナ- ああ。 目を、覚ましたのだな……(ベッドの傍に歩み寄りながら サカナ- ふむ、つまり、調合は成功。手順も誤らずに済んだという事か…(手に持ったわさわさを床に降ろす。――魔草だろうか。 クライス- ―――…………(体は眠ったまま目だけを開きゆっくりとサカナを見つめる サカナ- (埃っぽい部屋のあちこちでは、植物が蔓延って幅を利かせ、窓には蔦が絡みつく。 クライス- そうか。 我は、貴様に救われたのだな。 サカナ- ワタシはお主に救われた。報いるのは当然の事だ。 サカナ- (クライスの傷口にぐるぐると巻かれた包帯。その下には恐らく、独自調合された薬が塗ってあるのだろう クライス- (ゆっくりと上体を起こし クライス- 手間を、かけさせたようだな。(我が身を包む幾百もの白を見て クライス- 薬学の心得も有ったのか―――抗魔の傷を受けた我が身とは思えぬ。 サカナ- ぁぁ、だが暫く安静にしていた方が良いぞ。(身を起こしたクライスに サカナ- 植物に関する事は全て興味があるからな。その道専門とは言えぬが、知識は持っているつもりだ。 クライス- ・・・果てない探究心だな。 (素直に再び横になる サカナ- 抗魔金属による損傷だと解っていたからな。薬が効くのか些か不安ではあったが、発想を逆にして金属共和を誘発させる――(何やら説明し始める サカナ- …、む、しまった。静粛にすべきだな(口元手で押さえて クライス- いや。 抗魔金属の損傷を治す機会などそうはあるまい。 クライス- 貴様の探究心で救われたようだ。 サカナ- ああ。 … サカナ- ……本当に良かったぞ。成功して。(感慨深げに息を吐く。 クライス- どうした。 クライス- 自信が無かったのか【女帝】サカナよ。 サカナ- 否、そうではない。……いや、(珍しく言いよどむように サカナ- 研究や実験に失敗は付き物だ。だが、今回は絶対に失敗する訳には行かなかった。 サカナ- そういう意味では、自信が無かったと言えるかも知れないな。 クライス- 案ずることは無い。 クライス- 【皇帝】は死なぬ。 クライス- 貴様が居る限り な。 サカナ- ――そうだな。(ふ、と柔らかく笑み サカナ- 共に同じ道を歩むと決めたのだ。互いが居る限り、互いは死なぬ。 クライス- ――そうだな。(フッ、と笑みを浮かべ クライス- 聡明なる貴様の言うとおり、もう一刻程眠りにつくとしよう。 サカナ- ああ、そうすると良い。(その笑みを見下ろして クライス- そうさせてもらおう。 クライス- では、あれを閉ざしてはくれぬか。(薄暗い部屋に光差す開かれたドアを差して サカナ- 、ああ、あれか。(扉へと歩き サカナ- (扉を閉じてしまうと、光が遮られ、部屋は元の薄暗さを取り戻す サカナ- ワタシも中で少し行いたい作業があるのでな。少し物音がするかもしれぬが、なるべく気を付ける故了解してくれ。(部屋の中に留まったまま クライス- 嗚呼、構わぬ。 クライス- ―――………… クライス- 貴様はずっと我の傍らに居ろ。 サカナ- ―――(背越しに声を聞き サカナ- ……、クライス、殿。(驚きの表情を浮かべ、ゆっくりと振り向く クライス- ―――………… クライス- (瞳を閉じ、姿勢清らかに、静かに横になっている サカナ- ……、……(そのままクライスの方を向き サカナ- (その寝姿に吸い込まれるように、ゆっくりとベッドの傍に近付く サカナ- (長い睫毛の縁取る瞳を伏せた、その人の顔をじっと眺める サカナ- ……ふむ、(流れる銀髪。白い絹のような肌。普段の威厳が抑えられ、言葉の無い彼の姿。 サカナ- ……ここまで美しかったのか。(思った事がつい口に出てしまう。彼女の癖。 クライス- ―――………… サカナ- ……やはり、助けられて良かったな。(その顔をじっと見つめながら、ほっと呟く クライス- ―――………… サカナ- ……(ベッドの端に手を付き、真上から見下ろす形に サカナ- ……(この間は、不意を突かれる形になってしまったからな(何やら思案 サカナ- ……(今度は、ワタシが驚かせるのも良いであろう サカナ- ――(ゆっくりと頭を下ろし、 サカナ- (その唇に自分のそれを重ねる クライス- ―――ン、、 クライス- 、、(眼を開き、頬に手を触れる サカナ- 、――、(触れられ、離すに離せなくなる クライス- ―…………(逆の手でサカナの頭を撫で、口付けを続ける サカナ- 、―――、……(以前よりもずっと長く、深い口付け サカナ- ―、ん、………、(自分から始めた事とはいえ、らしくなく気恥ずかしさが込み上げる クライス- ………(その事を知ってか知らずか、こちらから唇を離す サカナ- 、、……(ば、とベッドから顔を上げ、口許を押さえる クライス- ―――驚いたな。 サカナ- ………ふむ、驚いたか。ならば目的は果たせているな。(声は冷静だが、顔赤い クライス- 安静にしておくべき、では無かったのか。(サカナを見上げ サカナ- ……、言われてみればそうであった。 サカナ- すまぬ。お主の顔を見ていたらつい衝動に駆られてしまったのだ。(きっぱり明確に クライス- む、、、(言いよどみ サカナ- それに、前回は不意を突かれてしまったからな。…… クライス- そうか。 女医サカナよ。 クライス- (サカナの頬に触れ、上体を起こし クライス- "安静にしろ"という令、どうやら守れるモノでは無いようだ。 サカナ- ――、どういう事だ? クライス- こういう事だ。 ―――(サカナの顎を引き口付けさせ、 サカナ- ―― 、 (ベッドの上に引き寄せられ クライス- 、 (体を抱き寄せ、脚の上に座らせる サカナ- 、――、、クライス殿、?(腕の中で クライス- 案ずる事はない。 共に進む道だ。 サカナ- ―――、、 (ようやっと理解 耳まで朱く染まる サカナ- ……、 クライス殿、(きゅっと背中の服を掴み サカナ- …ワタシは、こ、こういった事には、不慣れで。というか、実経験が不足している故検証が圧倒的に足りない点は否めない、のだ。……(何時になく歯切れ悪く クライス- ――(フッ、と笑みを浮かべ クライス- 案ずる事はない。 共に進む道だ。 サカナ- ―――… クライス- 共に進む覚悟は良いか? 【女帝】サカナよ(サカナの眼を見て サカナ- ――…ああ。 共に進めば、恐れる物など無い。…そうだな。(クライスの目を見て クライス- ―――………… クライス- (何度目かまた唇を重ねる サカナ- ――……、……(何度目かになる口付けを受け入れ サカナ- 、、―――(ぷは、と クライス- (口を離し、彼女を見つめる クライス- ―実経験や検証が足りぬのは、 クライス- 、、貴様、だけではない。……(何時になく歯切れ悪く サカナ- ……、、 サカナ- ――、、……クライス殿?(キョトンと サカナ- む、、ふむ………そう、だったのか。(見つめ合ったまま クライス- ―何も案ずる事はない。 (不安を払うように クライス- ―共に進む道だ。 (三度繰り返す クライス- 先見えぬ道程も、我らが探究心で越えて行けば良い。 サカナ- …ああ。(柔らかく笑い サカナ- …宜しく頼むぞ。クライス殿。(お互いの額を合わせる。 クライス- 嗚呼、我が【女帝】 サカナよ。 (その笑みに答える クライスさんが退室しました サカナさんが退室しました
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/2738.html
32話 それが俺らの歩く道 「……畜生ォォ!!」 七原秋也が叫ぶ。 自分がもたもたしている間に11人の死者が出た。 それだけで、彼が怒るのには十分だった。 「くそ…8n氏が…………あの人が死ぬなんて、くそ……」 「……これ以上殺させねぇ…!」 七原秋也は立ちあがる。 もう死人が増えていってしまっているかもしれない。 「YRさん、立てる?」 七原が◆YR7i2glCpAに肩を貸す。 右足を怪我している彼を気遣ったのだ。 「ありがとう……ごめんね」 「いや、悪いのはあいつなんだ…」 「うん……」 どうにかゆっくりと歩く。 少しづつ前に進んで行った。 ◆ ◇ 「うそだろ…8n氏が死んでしまうなんて…」 「……新八君、死んじまうたァな……」 所変わりこちらは沖田総悟と◆9QScXZTVAcの二人。 七原たちと同じエリアのE-3にいる。 (万事屋の旦那はまだ生きてるし、土方さんも死ぬタマじゃあねぇ…山崎は知らないが) (しかし、万事屋の旦那…大丈夫か?新八君が死んじまったが…でもまぁ、それほど心は脆くないのは知ってるし) 沖田は少し考えて、すぐに結論付けた。 そして、さっさと動こうとした時だ。 『……畜生ォォ!!』 そんな声が遠くから聞こえてきた。 その声にまず反応を見せたのは◆9QScXZTVAcだった。 「だ、誰でしょうね…この声…」 「さぁな…知らないが、行ってみるかぁ」 「う、嘘でしょ!?危険ですよ!」 「あぁ?だったらお前はここに残ってろい…」 「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」 さっさと行く沖田を◆9QScXZTVAcは急いで追いかけていった。 ◆ ◇ 「……あれ、誰か人がいる」 「あ、本当ですね…」 七原と◆YR7i2glCpAは人を見つけた。 少し相談したあと声をかける事にした。 「おーい!こっちだ!」 七原が声を上げると向こうも気付いたようで、近付いてきた。 「えー、いきなりでわりィが…お前らは殺し合いに乗ってるか?」 「いや、乗っていない…こんなふざけたゲームなんかには絶対のらない」 「同じくですよ」 「ふぅん…よし、おーけーおーけー…」 「ちょっと!沖田さん!」 そこで◆9QScXZTVAcがやっと追い付いてきた。 「はぁ…って、YR氏!」 「9Q氏か…!良かった…まだ生きてたか…」 「まあ、沖田さんに守ってもらったし…って、その足の怪我…」 「うん、実は…中学生みたいなやつに襲われてさ…」 「本当かィ?それは」 「ああ、俺がどうにか退かせたけど…」 沖田が少し考える。 「なぁ、アンタ等…俺たちと行動しねぇかィ?」 「ああ、俺にとっちゃあ好都合だ!よろしくな!」 「ええ、宜しくお願いします」 二人はためらうことなく承諾する。 「よし、じゃあ……どこに行くか?」 「とりあえず…学校とか市役所とか人がいそうなところで…」 「僕もそれがいいと思います」 「よし、じゃあ行こうかィ」 4人はそこから歩き出した。 ここから反抗が始まるのかもしれない。 【午後/E-3】 【七原秋也】 [状態]健康 [装備]レミントンM870(3/4) [所持品]基本支給品、こっくりさんセット、レミントンM870の弾(8) [思考・行動] 基本:殺し合いに反抗。 1:◆YR7i2glCpA、沖田総悟、◆9QScXZTVAcと行動。 2:川田との合流、桐山を最大限に警戒。 3:あの中学生に注意。 [備考] ※願いは不明です。 ※参戦時期は漫画版本編終了後からです。 【◆YR7i2glCpA】 [状態]右足に銃創(応急処置中) [装備]なし [所持品]基本支給品、不明支給品(1~2) [思考・行動] 基本:殺し合う気はない、死にたくない。 1:七原秋也、沖田総悟、◆9QScXZTVAcと行動。 2:他の書き手さんは信頼できそうか…? 3:あの中学生に注意。 [備考] ※願いは不明です。 ※元の世界の知識はある程度残っています。 【沖田総悟】 [状態]健康 [装備]打刀 [所持品]基本支給品 [思考・行動] 基本:あの主催の野郎をぶっ殺す。 1:◆9QScXZTVAc、七原秋也、◆YR7i2glCpAと行動。 2:坂田銀時、土方十四郎、山崎退との合流。 [備考] ※願いは不明です。 ※参戦時期は真選組動乱編終了後からです。 【◆9QScXZTVAc】 [状態]左肩に銃創(治療済み) [装備]なし [所持品]携帯電話、水(二本) [思考・行動] 基本:殺し合う気はない。 1:沖田総悟、七原秋也、◆YR7i2glCpAと行動。 2:他の書き手さん達と合流。 [備考] ※願いは不明です。 ※元の世界の知識はある程度残っています。
https://w.atwiki.jp/anirowakojinn/pages/1437.html
―――これはバトルロワイアルという狂気のゲームの、その盤外で広げられたお話である。 「それでは……バトルロワイアルを開始するっ……!」 兵藤和尊によるバトルロワイアル開始の宣誓。 高らかな宣言と共に、教室に居た総勢85名の参加者が消える。 こうして開催された殺戮の遊戯。 8キロ四方の狭い箱庭で、ただ一人の生存者を決めるまで執り行われる殺し合い。 残された老人は、笑い続ける。 今から始まる至上のゲームに思いを馳せて、狂った様に笑い続ける。 「てめぇ……ふざけんじゃねえぞ!」 そんな老人の傍らに、少年は取り残されていた。 上条当麻。 神の奇跡だろうと何だろうとそれが異能であれば打ち消す力を、右手に宿す少年。 その右拳と決して揺るがぬ信念を以て、数多の強敵を打ち破ってきた少年である。 上条当麻は怒りに身を焦がしていた。 意識を失う寸前まで大天使と戦っていた事、世界を救う為ベツレヘムの星ごと大天使へと特攻を果たした事、その特攻から生存せしめた事、 それら全ての出来事を忘却の彼方へと追いやる程に、上条は怒りを覚えていた。 つい数分前に眼前で失われた命。 命を奪った当の老人は、反省の欠片すら見せずに笑い声をあげている。 馬鹿にしている。 命を、他人の命を、馬鹿にしている。 「どうしてあの男を殺した! 答えろよ、てめえ!」 眼前の老人に命を握られているという事さえ忘れて、上条は吠える。 その声に笑いを止め、視線を向ける兵藤。 光の輪により拘束されている上条の姿を見て、兵藤は思い出したように手を叩く。 「ん……? ああ君か、上条当麻君……! そうか、君はどうやら異能が効かないんだったな……! 彼女の転移魔法を知らぬ間に打ち消してしまったらしい……! いやはや厄介な能力だ……!」 兵藤の顔に宿るのは、数瞬前と同様の歪んだ愉悦に満ちた笑顔であった。 上条の言葉に答えを返さず、兵藤は手を叩いて自らの語りたい事を語っていく。 「期待しているぞ、上条君……! この殺し合いには沢山の異能力者が参加している……君の『幻想殺し(イマジンブレイカー)』がどんな働きを見せるのか、今から楽しみだ……!」 語る兵藤の姿は、本当に、心の底から楽しげであった。 そんな兵藤の姿に上条は思わず言葉を無くす。 彼が戦ってきた人達は、誰もが誰も自身の理念に則って戦っていた。 例えば、とある女性を守る為。 例えば、自らの居場所を守る為。 例えば、世界に散らばる主義主張を一つに束ねる為。 例えば、世界の争乱をいち早く無くす為。 例えば、他宗教の信者を全て滅する為。 例えば……その考え方と方法自体は歪んでいたものの……世界を救う為。 誰もが何かしらの『戦う理由』を持っていた。 その『戦う理由』の為に苦悩し、迷いながらも力を振るっていた。 だが、この老人は違う。 自らの愉悦の為だけに力を振るい、こんな殺し合いを開催したのだ。 人間の最も邪悪な部分をまざまざと見せ付けられた上条は、強く強く唇を噛む。 「やっぱり無理ね。この子には私達の世界の『魔法』も効かないわ」 そんな上条を放置し周囲の状況は変化していく。 上条から見て右奥の扉が開き、見知らぬ女性が現れたのだ。 胸元と臍周りが大きく開けた漆黒の衣服に、その全身を包む紫色の外套。 腰まで伸びた薄灰色の髪に、その手に握られた1メートル程の長杖。 その特異な格好は、まるで御伽噺に出て来る魔女のようであった。 「これはこれはプレシア君……!『彼』の方はどうなりましたかの……?」 「五つものジュエルシードを使用したわ。それで何とか制限はできた筈だけど、それでも虐殺になりかねないわね」 「いやいや、充分でありましょう……流石は大魔導師殿だ……!」 「やはり『彼』は危険よ。シックスの推薦だからやむなく参戦させたけど、下手したらこちらがやられかねない。……それと、その大魔導師殿っていうの止めてちょうだい、虫酸が走るわ」 これは手厳しい、と兵藤が頭を叩いたところで一旦会話が区切られる。 ジュエルシードやら、『彼』やら、重要そうなキーワードが飛び交っていたが、上条にはそれが何を示すのか分からない。 「で、この子はどうするの。転移魔法は使えないわ」 「気絶させて黒服にでも運ばせましょう……! 放置する地点はクジでも引いて決めれば公平だ……!」 「任せるわ。私は結界の状況確認と『彼』の監視をしてくるから」 パチンと兵藤が指を鳴らすと、外で待機させられていたのか黒服黒サングラスの集団が教室へと入ってくる。 十数人ばかりの奇妙な黒服集団は瞬く間に上条を囲み、その中の一人が一歩前に出る。 前に出た男の手には、青白い閃光を放つスタンガンが握られていた。 プレシアと呼ばれていた女性はその様子を見ようともせずに、踵を返し教室から出て行こうとする。 終ぞ、プレシアの視線が上条を捉える事はなかった。 「待てよ」 だから、呼び止めた。 椅子に拘束されて、十何人もの人々に包囲され、首輪により命を握られて尚、上条は口を開く。 相手の機嫌一つで命が失われる状況で、それでも口を開いた。 振り返ったプレシアと上条の視線とがぶつかる。 「お前らが何者なのか、何でこんな訳の分からねえ殺し合いを開いたのかは知らない。お前達にも何か深い理由があるのかもしれないし、考えたくはねーけど何の理由もないのかもしれない。 俺は何も分からないし、何も知らない。そこまで深く考える頭もないしな。 ただそれでもこんな殺し合いに人々を、俺の仲間達を巻き込もうというのなら―――」 数分前、上条当麻はある人物達を視界に捉えていた。 自分同様椅子に拘束され、無骨な首輪をその首に巻き付けられた知り合い達。 それは同じクラスの友達だった。 それは何時も目の敵にされている知り合いであった。 それは嘗て二度も命を賭して戦った敵でさえもあった。 「―――その全てを、命ですらも思い通りにできると思っているのなら―――」 しかし、友達でも、知り合いでも、それが敵であっても、上条当麻は怒りを覚える。 こんな理不尽極まりない殺し合いに自分の知る者達が参加させられているというだけで、上条当麻を突き動かすには充分すぎた。 語る口は、止まらない。 自身の意志を眼前の敵に伝える。そうでなくては話は始まらない。 両の瞳に確固たる光を灯してプレシアを睨み、上条当麻は語る。 「―――俺は、絶対に、その幻想をぶち殺してやる」 そして言葉を遮るように、バチリという音が首筋から鳴り―――上条当麻は意識を失った。 ―――こうして話は盤上へと移る。 ◇ 気付けばミリオンズ・ナイブズは深淵の森林に立ち尽くしていた。 いや、立ち尽くすという表現は間違いであるか。 現象そのままに伝えるのであれば、ナイブズは浮かんでいた。 地上から十数センチの所で、まるで反発し合う磁石と磁石のようにフワリと。 それは、人間には到底なし得ない事象。 その事象をナイブズは、息をするかのように行う。 気付けば出来ていた事であった。 同種との融合に次ぐ融合の末、知らぬ間に手に入れていた力である。 ナイブズの身体は、人間のそれとは大きく異なっていた。 猛禽類の翼を思わせる身体。 白一色の染め抜かれた身体。 外見だけは人間と同様だった筈のプラント自立種が、同種の為にと行動し続けた末にあった身体。 何百何千と融合を繰り返した末に、なるべくしてなった身体であった。 「……何だ、これは……」 ナイブズは一人言葉を紡ぐ。 その表情には困惑が張り付いていた。 「身体が、重い……?」 まるで身体中に重りを吊り下げられているような、そんな感覚であった。 加えて身体の芯に異常なまでの疲労感が刻まれている。 動くことさえも億劫になる、ともすれば意識すらも霞むような疲労感が、常に身体を襲い続けていた。 これは何なのだ、とナイブズは思考する。 あのような愚昧の輩に拉致された上に、このような謎の仕掛けを仕組まれた事実。 ビーストの反逆を退け、人類の最後の砦を陥落させようと行進していた最中のこれだ。 疲労感を押しのけて憤怒が沸き立つ。 そして、ナイブズは憤怒のままに、人間の身体であれば左腕にあたるであろう左羽根を掲げた。 一瞬で終わらせてやろう、とナイブズは『力』を込める。 人類共に虐げられている同種達を一刻も早く解放せねばならない今、こんな下らない児戯に付き合っている暇などない。 だから、終わらせる。 発動させるはプラントが御する二つの『力』の片一方、『持ってくる力』。 それを数億の次元刃へと変化させ、自身を中心として全方向に発射する。 最大射程は数十万キロ単位。速度はその距離を一瞬で飛ぶ速度。それが数億にも及ぶ次元刃の数。 たったそれだけで、この殺し合いの会場にある全てが切り裂かれ役目を終える。 たったそれだけで、バトルロワイアルはナイブズの優勝をもって終焉を迎える。 それがミリオンズ・ナイブズ。 それだけの『力』をその身一つに内包している存在が、プラント融合体と化したミリオンズ・ナイブズであった。 瞬きの間に臨界へと至る『力』。 そして、『力』が―――解放される。 『力』が、四方八方に吹き荒れた。 「な、に―――?」 だが、望んでいた破壊は齎されない。 次元刃が破壊し尽くした世界は、半径数十メートルの狭い世界。そして余りにも遅すぎる刃の速度。 本来のものとは比較する事さえ烏滸がましい、あまりに矮小な破壊。 次元刃の数も精々、十数程度。 やられた、とナイブズは思う。 どのような原理か、無尽蔵に内包された『力』が制限されている。 全力の一撃がたったこれだけの破壊しか生み出さない。 身体を包む疲労感も、まるで黒髪化が発生した時のように増大している。 「……こざかしい真似を」 思わず、笑みが零れた。 自身の不甲斐なさに、あのような醜悪な人間に此処までしてやられた事実に、ナイブズは自嘲の笑みを浮かべる。 所詮このような存在だったのかと、所詮は人間に制御される程度の力だったのかと、ナイブズは笑う。 「良いだろう。受けて立つぞ、バトルロワイアル。そしてお前等を滅殺してやろう、俺の手で」 自嘲のままにナイブズは宣告した。 何処かで高みの見物をしているのであろう兵藤へと、渾身の殺意を以て言葉を飛ばす。 思えば初めてだったかもしれない、特定の人間を相手に殺意を抱くなど。 そうしてナイブズは視線を落とし、周囲の状況を確認する。 方法は見当も付かないが、此方の『力』は相当に制限されている。 本来のものからすればゴミ屑同然の『力』しか発揮できない。 疲労感も身体を侵襲し続けている。 今やナイブズは同じ舞台上にいた。 何者にも届かぬ絶対的存在から、首輪に設置された爆弾でも死亡する存在へと。 これは慢心が呼び込んだ事態、だからこそ自戒が必要。 この殺し合いを開催した兵藤……いや、あの小物の裏にはもっと強大な『何か』がいるのであろう。 その『何か』を滅ぼす為に、ナイブズはバトルロワイアルに集中する。 視界に映り込む景色は、自身を中心として円形に切り裂かれた世界。 草木が数十もの木片となり地面を埋め尽くしている。 その中に巨大な血溜まりがあった。 木片に混ざって浮かぶはおそらく人間の肉片か、先の破壊に巻き込まれた不幸者がいるらしい。 そして、血肉の湖に浸かる人間。 紺色の学生服にツンツンの尖り頭。 意識を失っているのか、少年は両の目を閉じたまま動こうとしない。 不思議とその身体には傷一つなく、完全な五体満足であった。 偶然ナイブズの『力』が届く範囲外にいたのか、それとも他の『力』が作用したのか。 白色の異形と化したナイブズの身体から人間の腕が生え、少年を掴み上げる。 ナイブズは少年を観察していた。 おそらく自分の攻撃はこの少年に届いていた。 共に行動していた者だけ殺害してその傍らにいる者が傷一つ無いなど、狙って行わない限り有り得ない。 自分の『力』から生き延びる事が出来た人間。 記憶にあるのはただ一人。 たった二人しかいない側近の片割れ、レガート・ブルーサマーズ。 身体が操られた感覚はない。だが、何らかの『力』が作用したのは確実。 自身の『力』から生存し得た人間にほんの少し興味が湧いたのか、ナイブズは僅かに目を細めて少年を見詰める。 が、それも一瞬。 ナイブズは直ぐさま思考を打ち切り、少年の命を刈り取る為に再度『力』を貯める。 無意味だからだ。 この少年が如何なる『力』を保有していようと、殺害する事に変わりない。 ならば、思考に費やす時間は無駄でしかない。 死する者に思慮は必要ない。 ましてや醜悪な人間如きに思考を煩わせるなど、愚かの一言。 『力』が解放される。 一秒と満たないタメで、人一人を跡形もなく切り刻む程の『力』が解放される。 死が、不幸な少年へと無慈悲に襲い掛かろうとしていた。 「スタープラチナッ!」 そして、その窮地に、救世主が舞い降りた。 その救世主とは、ある世界に於いて『最強』の二つ名を冠する男。 不幸な少年を救うべく、最強のスタンド使いが最強の異形の前に現れた。 ◇ 「……兵藤和尊……」 狂気の殺戮遊戯が開始されたからほんの数分が経過したその時の事。 D-1に位置する森林には学ラン姿の大男が立ち尽くしていた。 日本の高校生としては規格外といえる190をも越えた巨体。 殺し合いという異常な状況に置かれて尚、その眼光には寸分の陰りもない。 男の名は空条承太郎。勇敢なる先祖達から黄金の精神を受け継いだ少年である。 「てめーはやっちゃならねー事をやっちまったようだな……」 承太郎は一人言葉を紡ぎながら暗闇の森林を睨み付けていた。 普段と変わらないクールな表情で、だが両の拳を渾身の力で握り締めながら言葉をこぼしていく。 「てめーは自分の私利私欲の為だけに人を殺した……何も知らねー人間をてめーの愉悦を満たすためだけにッ! 『悪』とはッ! 自分自身の為だけに弱者を利用し踏みつける奴の事だッ! 兵藤、てめーがやったのはそれだッ!!」 そう語る承太郎の脳裏に浮き上がる光景……富竹という男が爆殺された、その瞬間。 拘束により動く事が出来なかった自分の眼前で行われた惨劇。 承太郎は目に焼き付けていた。あの惨劇が行われた瞬間、兵藤が浮かべていた表情を。 奴は、笑っていた。 人を一人殺しておいて、笑っていたのだ。 「てめーは俺が裁くッ!」 その怒号は深淵の森林を駆け抜け、震撼させる。 今の承太郎の状況を一言で言い表すならば、ブチ切れ状態。 宿敵ノ吸血鬼に祖父を殺害された時、とまではいかずとも普段のクールさを忘れる程にはキレていた。 そして、そんな承太郎の目と鼻の先で事は行われようとしていた。 怒号と共に歩き始めると、承太郎の視界が唐突に開けた。 鬱蒼としていた森林が、そこだけ何故か不自然に開けていたのだ。 コンパスで図ったかのように綺麗な円状に、木々が切り落とされていたその地点。 その真ん中に『それ』は悠然と立っていた。 『それ』が何なのか承太郎には分からない。 理解が追い付かないのだ。 白色の異形に人間の顔が生えている『それ』。 鳥の羽根を思わせる無骨な白色が全身を構成している。 異形の足元には惨劇が広がっていた。 地面に血が染み渡り、吸収しきれなかった血は溜まりを作る。 血だまりには浮かんでいるのは数百もの肉片か。 奇妙な冒険を通して数多の戦いを経験した承太郎であったが、その光景には思わず言葉を失う。 直前の兵藤に対する憤怒すら、驚愕に塗りつぶされてしまっていた。 息を飲みながら、承太郎は視線を這わせて状況を確認する。 白色の異形と細切れの……おそらくは人間だったもの。 それと、異形に掴みあげられた一人の少年。 異形の中からその頭部と同じように生えた人間の腕。その腕がまだ高校生くらいの少年を掴み上げていた。 少年の纏う学生服はその殆どが血に染められているが、少年自体は負傷していないようだ。 だが気絶しているのか、異形を前にしてピクリとも動かない。 異形に生えた顔は、まるで虫螻を見るような目で手中の少年を見つめていた。 このままでは殺される、そう承太郎は感じた。 「スタープラチナッ!」 そう感じた瞬間、驚愕など何処かへ吹き飛んでいた。 命を救わねばという衝動が、感情の全てを抑えて身体を突き動かす。 咆哮と共に発現するは彼の精神を映し描いた最強のスタンド・スタープラチナ。 承太郎に寄り添うように発現したスタープラチナは、叫び声と共に腕を振り上げる。 スタープラチナの射程距離は1、2メートル。 白色の異形との距離は10メートル程、殴打により攻撃は到底届かない。 スタープラチナの右手に握られるは、地面に転がっていた石つぶて。 『オオオオオオラアアアアアアッ!!』 それをスタープラチナは渾身の力で投げ付ける。 ただの石ころであろうと、スタープラチナのパワーで投擲されたそれは銃弾にも迫る威力と速度を秘める。 加えて、スタープラチナの精密動作により狙いも正確。 その矛先は異形の顔面へと。 脳天を撃ち貫きかねない勢いで、石つぶては異形へと急迫する。 「ちっ……!」 だが、つぶてが激突せず、異形に傷も無い。 突如現れた異形の周辺に現れた「暗き穴」。その穴に全て吸い込まれた。 音速の勢いで放たれた数十のつぶてが眼前に迫った瞬間、苦も無くソレに反応し「穴」を出現させたのだ。 彼のいた星の住人、ナイブズの配下の手駒である13人の人外戦闘集団、その上位に位置する者チャペル、ダブルファング、トリップオブデス、クリムゾンネイル、そして自らの側近。レガート・ブルーサマーズ。 彼等でさえ超音速の何倍何十倍もの程反応と戦闘速度を有しているのだ。彼等を遥かに超えるナイブズが肉体の制限があるとは言え、この程度出来ない訳が無い。 承太郎は今の現実に背筋を凍らせながら、口から忌々しげに舌打ちが鳴らされる。 あれだけの勢いと数で放たれたつぶてを全て防いだ事もそうだが、 何よりも恐ろしいのは白色の異形は視線すら承太郎に向けていなかった事だった。 スタープラチナを発現した瞬間であっても。 石つぶてが飛来していた瞬間であっても。 石つぶてを防いだその瞬間であっても。 視線は手中の少年へと注がれていた。 まるで承太郎など眼中に無いといった様子。 相手にすら、されていない事。 死神の鎌は少年の首元から外れる事なく、今にもその命を刈り取らんとしている。 「スタープラチナ―――ザ・ワールド!」 だから、承太郎は己の切り札を躊躇いなく行使した。この余りにも得体の知れない者に。 それは奇妙な冒険の果てに会得した最強の能力。 世界の全てを支配する絶対の能力。 使用可能な時間はほんの二秒。 だがその二秒間、承太郎は世界の支配者となるのだ。 『時』が、止まる。 承太郎を残して、世界の全てが静止する。 それに例外はなく、白色の異形も少年を掴み上げた姿勢のまま動きを止める。 渾身の力で地面を蹴り抜くスタープラチナ。 止まった時の中で承太郎が加速する。 ほんの一秒で異形との距離を詰めた承太郎は、スタープラチナの全力を以て異形の腕を殴り抜く。 少年を掴むその手が開いた。 スタープラチナが再び地面を蹴り抜く。 少年の首根っこ掴みながら、後方へと退避する承太郎。 もう限界だ。『時』が、動き出す。 (さて、上手くこいつを助け出せたのは良い。あとはこの訳のわかんねー『何か』がどうでるかだが……) ポーカーフェイスを常とする承太郎にしては珍しく、その表情には焦燥が滲んでいた。 眼前の『何か』からは途方もない威圧感を感じる。 ともすればあのDIOをすらも遥かに超越する威圧感が、眼前の存在からは感じ取れた。 冷たい汗が頬を伝う。 距離は先程までと同様に10メートル程開いている。 能力どころか、相手が何なのかすら分からない現状では慎重に事を進めたいところであった。 異形は目を大きく開きながら、空手となった自身の右手を見つめている。 一応敵前であるにも関わらず、何が起きたのか、ゆっくり考えているようであった。 ナメられてる。 だが、ナメられてると言っても、そう簡単に攻め込む事もできない。 厄介な状況だと、承太郎は素直に思った。 ちっ、と承太郎の口が再度鳴る。 「―――貴様か?」 声が、響いた。 タイミングとしては承太郎が舌打ちした直後。 これまで無言を貫いてきた異形が、遂に声を発した。 それはこれまで聞いた事のない、地の底から響くような暗い暗い声。 どす黒い、吐き気さえ催すようなどす黒い声であった。 承太郎の頬にもう一筋の汗が流れる。 「さあな……なんの事だか分からねーぜ、化け物」 心中の感情を無理矢理に押し込めて、承太郎は挑発を含んだ答えを返す。 何時も通り、冷静にクールに。 自身のペースを取り戻すかのように承太郎は言葉を紡ぐ。 だが、その言葉に対する返答は、あまりに熾烈なものだった。 承太郎が立つ地面、その前後左右全方位から音も発てずに生え出た凡そ十数本の白色。 承太郎にもその危険度が察知できた。 人一人背負った状態での、完全な包囲状態。 ヤバい、と心が思った時には身体が動き出していた。 『オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァッ!!』 高速の突きを連続で放ちながら、スタープラチナがその場で一回転身体を回す。 全方位に向けられた拳が白色の脅威を全て弾き飛ばし、同時にスタープラチナが地面を蹴り抜く。 ドン、と後方へ加速する身体。 大きく距離を離した承太郎は、異形を正面から睨み付ける。 「一つ、俺からも質問だ。その足元の仏はてめーがやったのか?」 返答はない。 なくともその表情が語っていた。 虫螻を殺して何が悪い、そう無言で語っていた。 自身の内にある何かが熱く高揚していくのを、承太郎は感じた。 「そうか、なら問題ねーな。俺がお前をぶちのめしても」 今度は感情のままに言葉を発していた。 燃えたぎる感情を抑えようともせず、承太郎は眼前の異形に視線を飛ばす。 街中の不良であれば目があった瞬間に後ろへ転進を始めるであろう、射殺すような視線。 そんな承太郎の視線を正面から浴び、それでも異形に変化は見られない。 変わらぬ表情で、退屈げに承太郎を見詰めていた。 やれるもんならやってみろ、という嘲りすら無い。 単純に興味が湧かない、そんな表情であった。 『オオオオオオオオ、ラアアアアアアアアアアッ!』 主の代わりに雄叫びをあげる最強のスタンド。 気合いの叫びと共にスタープラチナが、承太郎の前方へと躍り出る。 対する異形は身構えもせずに最強のスタンドを見詰めるのみ。 場は暗闇の森林。 この場にて死闘は繰り広げられる事となる。 ◇ 「―――で、上条当麻は『彼』のいるエリアに置いてきたわけね」 「いやはや彼は本当に不幸だ……公平にクジを引いて、まさか一番のハズレを引くとは……!」 「一番の不幸人は上条当麻を運んでいた黒服だと思うけどね。『彼』の攻撃に巻き込まれるなんて、目も当てられないわ」 そこは照明の一つもない部屋であった。 幅、奥行き共に長く広い広い部屋。照明がないにも関わらず、その部屋は非常に明るい。 床一面が液晶画面になっており、その液晶からの光が部屋を照らしているからだ。 とても目に悪そうな部屋にて、二人の人間が並び立ち、液晶を見詰めていた。 「『彼』に施した『枷』は正常に作動しているようね。ロストロギアを五個も消費したかいがあったわ」 ほう、と息を吐いたのはプレシア・テスタロッサ。 傍らの兵藤は、モニターの中で繰り広げられている死闘の数々に愉しげな笑みを浮かべている。 そんな兵藤にプレシアは僅かな苛立ちを覚える。 この男はロストロギアの価値を理解しているのだろうか。 たった一つでも世界を変革しうる究極のアイテムがロストロギア・ジュエルシードだ。 それを五つも体内へ埋め込んで、内部から強制的な制限を枷るしかなかった。 ナイブズとは、少なくともあのプラント融合体とは、そんな存在であった。 それでもこの殺し合いに参加させた猛者どもに匹敵……いや明らかにそれを遥かに超える実力を有している。 もし、ジュエルシードにより力を抑えなければ、文字通り彼の一撃により会場はおろか、星さえも破壊していただろう。 現に彼の弟であるヴァッシュ・ザ・スタンピードは以前、地球より遥かに大きい砂の星の5つ目の衛星に巨大な孔を穿っているのだ。 融合体の彼ならば更に大きな砂の星さえも破壊出来てしまう程だ。この世界なぞ一瞬で終わっていただろう。 万が一の事があれば、主催者としての優位など易々と崩れ落ちる。 警戒心は持ち続けなければいけない。 「それにしても……『幻想殺し』、か」 プレシアの言葉に連動するかのように、空中へ浮かび上がる小さなモニター。 モニターには大柄な学ラン男に担がれた少年―――上条当麻の姿が映されている。 未だ目を覚まさぬ少年を置いてけぼりにして、白色の異形と最強のスタンド使いはまさに激突しようとしていた。 だがモニターはその次元を超越した戦闘ではなく、上条当麻の右手へとズームインしていく。 『幻想殺し(イマジンブレイカー)』。 あらゆる異能を打ち消すとされる、不可思議な能力。 プラント融合体の次元刃すらも消滅させる、異能に対して圧倒的な力を持つ能力。 それはプレシアが知るあらゆる情報を以てしても説明不可の、まさに謎の力であった。 「フフ、興味が尽きないわね」 その呟きは傍らの兵藤にする届く事なく、宙に消えていく。 プレシアは思い出す。 自分に向けて大言壮語を吐き捨てた上条当麻の姿を。 彼がこの殺し合いの中でどれだけ生き延びられるか、それはプレシアにだって分からない。 ただ見てみたいとは思った。 上条当麻が、この殺し合いの中で過酷な現実に直面し、苦悩に心を痛めるその光景を。 見てみたいと、プレシアは心底から思った。 『幻想殺し』の少年は、まだ目を覚まさない――― 【一日目/深夜/D-1・森林】 【ミリオンズ・ナイブズ@トライガン・マキシマム】 [状態]融合体、疲労感(大) [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考] 1:会場にいる全てを殺し、バトルロワイアルの主催者どもも殺害する 2:眼前の人間を殺す 3 制限の源を解析し、制限を解く [備考] ※原作12巻・ビースト殺害の直後から参戦しています ※ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは×5が体内に埋め込まれ、力を大幅に制限しています。 【空条承太郎@ジョジョの奇妙な冒険】 [状態]疲労(小) [装備]スタープラチナ・ザ・ワールド [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考] 1:殺し合いを止め、兵藤をぶちのめす。 2:学生服の少年を守りつつ、目の前の異形をぶちのめす。 [備考] ※三部終了後から参戦しています 【上条当麻@とある魔術の禁書目録】 [状態]気絶中 [装備]なし [道具]基本支給品一式、ランダム支給品×1~3 [思考] 0:気絶中 1:殺し合いを止める。 2:仲間と合流する。 [備考] ※原作22巻終了後から参戦しています Back 人類最強VS吸血鬼最強 ~観客はお馴染みのネタに命を賭ける~ 時系列順で読む Next 一般人の皆さま、当バトロワは甘え禁止となっております。繰り返します、当バトロワは甘え禁止です(キリッ Back 人類最強VS吸血鬼最強 ~観客はお馴染みのネタに命を賭ける~ 投下順で読む Next 一般人の皆さま、当バトロワは甘え禁止となっております。繰り返します、当バトロワは甘え禁止です(キリッ GAME START 上条当麻 Next 時報(オープニング) 兵藤和尊 Next GAME START プレシア・テスタロッサ Next GAME START ミリオンズ・ナイブズ Next GAME START 空条承太郎 Next