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ルイズにはなにが起こったかわからなかった。 目の前のものが『何』かは理解できる。 だが『なぜ』そこにいるのか? それが理解できなかった。 周りの皆の嘲笑がそれを理解させた。 「さすがは『ゼロ』のルイズ! 平民を召喚するなんて!」 「君はやればできる子だと思ってたよ! ププッ」 ルイズは瞬時に行動に出る。 「ミスタ・コルベール! やりな――」 「だめです無理です儀式です。君には最後までやってもらいます」 ハゲは否定する。頭皮は拒絶する。それは絶対的宇宙意思―― ルイズはあらためて『それ』を見る。 相手のほうも、なにが起こったかわからないようで、怯えている。 それにしたって異常な怯え方だ。 よく見るとずぶぬれで、手には何か包みを持っている。 「ちょっとアンタ!」 声をかけるとビグゥッ! と震えた。ルイズぷちショック。 「あ…あなたは?」 「…聞いて驚きなさい、わたしの名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール!」 そして! 間髪いれず! 一気に!! 「平民の分際で! 貴族にこんなことされるんだから感謝しなさいよね!」 その唇に! キスをッ! ブチュルブチュルとブチ込んだッ!! そいつの左手にズギュンとルーンが刻まれていく。 (間違いないわ…ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール…『この人』は……) 『女の子が好き』 ~百合の使い魔~始まらないよ! 一体なんでこんな事になったのか、今でもわからないわ―― ――わたしはただ、小瓶を拾ってあげただけ。 このグラモンとかいう人をどうこうしようなんて、まるで考えてなかった。 小瓶を机の上に置いた途端、彼の周りが騒がしくなったの。 それから――すごい平手打ちだったわ。食堂中に音が鳴り響いたもの。 ――でも、それだけじゃなかった。 ワインを頭からかけられて、極め付きの一言―― 「最低! もうそのワイン臭い面見せるんじゃないわよッ!」 彼は私のことをすごい目つきで見てた。 「君は確か…ミス・ヴァリエールの……」 「ちょっとギーシュ! 人の使い魔に何ちょっかいかけてんのよ!」 そこに彼女が割って入ってきた。 「使い魔の不祥事は主の不祥事……償ってもらうぞヴァリエール! 『決闘』だッ!」 「はぁ? 急に何言い出してんのよアンタ?」 「ぼくが勝ったら……」 「話聞いてる?」 本当に、何がなんだかわからないの。 「彼女をぼくにくれッ!! 決闘だ! 『愛』のために!!」 (これで間違いないわ…ギーシュ・ド・グラモン…『この人』は……) 『私のことが好き』 ~百合の使い魔~決闘祭りよッ! ルーシーは、特に決闘に興味が無かったので、ルイズの部屋でごろごろしていた。 何しろ、この部屋には『脊椎』が置いてあるのだ。出来るだけそばにおいておきたい。 もしかしたら『遺体』のパワーで突然元の世界に戻れるかもしれない。 ガチャリ、とドアが開いてルイズが入ってきた。 「お帰りなさ――どうしたのその顔!?」 ルイズの顔は随分とひどく腫れ上がっていた。 そして同時に晴れ上がった顔でガッツポーズを取るルイズ。 ルイズの話によると、決闘は両者が同時に杖を落としてしまい、素手による乱闘に突入。 ギーシュは空気投げでルイズを翻弄し、ルイズは逆立ちでギーシュを困惑させる。 それでも決着がつかず、お互いを強敵(とも)と認め合ってその場は収まったらしい。 (女の子とガチで殴り合って引き分けって、正直大概よね) (スティーブンだったらこんな華奢な女の子、一発でノシて今頃サーカスに売り飛ばしてるところよ) (ルイズってそういう層に需要が高そうだし、割りといい値段がつくわね) (そういえば家柄も貴族だし、キュルケのサラマンダーどころの話じゃないわ) (好事家に見せたら、値段なんかつかないわ) 夫のことを思い出してセンチな気分になるルーシー。彼は今大丈夫だろうか? ルイズがベッドに寝転んできたので、いつものように「よちよち」と頭を撫でてやる。 ゆっくりと何回か撫でてやると、ルイズは気持ちよさそうに眠りについた。 だいぶルイズも主従関係というものがわかってきたようだ。 何者かに見られている感覚を味わいながらルーシーは思った。 (間違いないわ…オールド・オスマン…『あの人』は……) 『スケベジジイ』 ~百合の使い魔~盗撮祭りよッ!
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半壊になった教室をルイズは一人で掃除していた。 姿をくらました使い魔をどう叱ろうか授業中ぼんやり考えていたら 教師に目を付けられ、錬金の魔法を前に出て実践することになったのだ。 結果を一言で表すなら、惨劇が起きた。自分で言うのもなんだが日々破壊力に磨きがかかっている気がする。 実はキュルケが掃除を手伝おうかと言ってきたのだが断っておいた。 どうせ裏があるに違いないと思ったからなのだが よく考えたらキュルケは、ルイズに使い魔がいないのは自分のせいだといまだに思っているようなのだ。 そう考えると無下に断ったのは逆に悪かったかもしれない。実際はルイズの使い魔はピンピンしているのだから。 まぁもう少し黙っとこう。そのほうがおもしろい。 そう、それよりも問題はブラック・サバスのほうだ。 もし他の生徒が同じ事を言いつけられたら、使い魔にでも手伝ってもらうのだろうが ブラック・サバスは朝ルイズの下着入りの洗濯カゴを持って(というか食べて)どこかへ消えてしまった。 まさか本当に洗濯に行ったとは思えない。もし本当に洗濯してたらはしばみ草でもアバ茶でも食べてやる。 (帰ってきたらエサ抜きね!) そんなことを考えながら机の破片を拾い集める。 いや、でもあれ何食べるんだろう。まさか下着を口の中に入れたのは本当に食べるために… (もしそんなことしてみなさいよ…エサ一週間抜きにしてやるんだから!) いや、でもあれ何食べるんだろう。 ルイズはポケットから『箱』を取り出す。 壁の一部が無くなり、日の光がいつもよりずっと多く入る教室には影になる部分も多い。 それを確認すると『再点火』してみる。 だが使い魔は現れなかった。 呼ぶためには他の条件がいるのか、はたまたもう呼ぶことさえできない遥か遠くに行ってしまったのか。 ルイズは嘆息で火を消すと、どこで何をやっているのか分からない使い魔のことは一旦諦め、掃除を再開した。 学院の中庭にあるベンチにキュルケは一人で座っていた。 雲ひとつ無い空を眺め、ひとつ嘆息。 それは自分の美貌の為にはよくないことだし、自分のキャラじゃないとは思っているのだが、つい出てしまう。 自分の格好のおもちゃであるゼロのルイズ。それに大きな貸しを作ってしまった。 ツェルプストー家とヴァリエール家の伝統とも言える因縁も含めて、キュルケはルイズをある意味特別視していた。 ルイズとは会えば口げんかするし、しょっちゅうからかってはおちょくる犬猿の仲。 だけど本当に馬鹿にしたことは決してなかった。 特にルイズの日頃の努力を最も知っている自分にそんなことはできない。 だからサモン・サーヴァントへ向けて気合を高めるルイズを心の中では応援してたし 最初ルイズが箱を召喚した時は、またおちょくるネタができたとニヤニヤしつつも とりあえず成功させたことにほっとしていた。 ルイズだってうれしかったはずだ。何度も何度も失敗してとうとう現れた使い魔。 だがそれがあっさり死んでしまった。いや、殺されてしまったのだ…。 気配を感じて視線を空から前方に移す。 ああダメだ。あまりにも悩みすぎて幻覚を見ているようだ。 昨日自分が殺したルイズの使い魔が、キュルケの使い魔のフレイムの尻尾を握ってこっちを見ていたのだ。 (幽……霊?こういうのはあの子のポジションでしょ) 一瞬、無表情な青い髪の親友の姿を思い浮かべる。 そこでキュルケの意識は途絶える。 学院の中にある図書館でタバサは一人本の世界に入り込んでいる……はずだった。 タバサは嘆息する。本当に小さく、本で隠すように。 ここは図書館で自分以外誰もいない。司書の先生すら用事で抜けているようだ。 いつもこの時間帯はこんなものだ。 なのにさっきからずっとこっちに向かって声をかけてくる存在がいる。 基本的にタバサは読書に没頭しはじめると、周りのことなど眼中になくなる。 だが、さすがに同じ事を30分間近く話しかけられ続けると、いいかげんうっとおしくなる。そこで。 「チャンスをや…………」 タバサは本から目をそらさず、手だけ動かし前にいる存在にサイレンスの魔法をかけ音を消した。 一時間後、本を読み終えたときにはすでに声の主も消えていた。 シエスタには嘆息をするような余裕はなかった。今は夕食の準備の真っ最中。 厨房は戦場と化していた。自分の仕事をテキパキとこなしていかないと間に合わなくなる。 (あ、お皿用意しなくちゃ) 頭をクルクルと回転させ、やるべきことを次々とこなしていく。 これは普段のシエスタの仕事ではないのだが、今日は他の使用人に病欠が多いため回ってきたのだ。 なんでも真昼間から幽霊と遭遇して、気分を悪くし寝込んでいるらしい。 マルトーさんは何を馬鹿げたことをと笑っていたが。 (幽霊……そういえば結局朝の使い魔はなんだったんだろう) 作業する手を休めず、朝の出来事を回想する。 唐突に現れた使い魔は、唐突に消えた。なぜかシエスタの洗濯物といっしょに。 使い魔も主人の……確かミス・ヴァリエール……の洗濯に来ていたようだったから 間違えていっしょに持って帰ってしまったのかもしれないが…… できれば返してもらいたかったのだが、あまりあの使い魔にもその主人にも関わりたくないというのが本音だった。 あの使い魔の不気味さは言わずもがなだし、その主人であるミス・ヴァリエールの噂も知っていたからだ。 つまり『ゼロ』のルイズは魔法が使えないくせに、やたらプライドは高いと。 「お前にチャンスをやろう」 後ろから声が聞こえヒッと悲鳴をあげてしまう。あわてて後ろを振り向く。 そこには黒い帽子に黒いマント、人間とはとうてい思えない顔と体、そしてその右手にはなぜかエプロン。 今度は見詰め合うこと数十秒。 「あ、あの…お返しに来てくださったんですか?」 使い魔はシエスタの問いに、エプロンを持つ手を差し出すことで答えた。 「あ、えと、わざわざありがとうございます」 「…………」 「ちゃんと乾いてる。干してくださったんですね」 「…………」 「あ、あの。本当にわざわざお越しいただいたのにスイマセン。今から夕食の準備に取り掛からないといけないんです。本当にありがとうございました」 やっぱKOEEEEEEEEEEEEE。思わず下唇を歯でかみそうになりながら、逃げるようにシエスタは食器棚に向かった。 皿を何枚も重ねて、お盆に乗せる。 一枚、一枚は大した事なくても、生徒の数だけそろえると相当の重さとなった。 両手に力を入れ、よいしょっと持ち上げる。なんとか持てそうだ。 しかしそこで使い魔が道を塞ぐように立っていることに気づく。 「あ、あの……」 不安になりながら尋ねる。すると使い魔は無言でシエスタに両手を差し出したのだ。 (これは手伝ってくれるって事?) 使い魔の差し出された両手の位置からは「お盆を持ちますよ」という意味にしか取れない。 「あの大丈夫です。これは私の仕事ですから」 やんわり断るが使い魔は全く反応しない。きっとお盆を渡すまでその場からテコでも動かないだろう。そんな『凄み』を感じる。 「ありがとうございます。それではお言葉に甘えさせていただきます。向こうの机まで運んで下さいませんか」 そう言うと使い魔はお盆を掴もうとさらに手を伸ばしてきた。 二人の手が触れ合う。予想と違って普通の人間と同じような温かさをその奇妙な手から感じる。 「じゃあ、あの、手を離しますよ?ちゃんと持ってくださいね?」 シエスタは何度か使い魔に確認し、手を離した。 そして使い魔の手に渡ったお盆は、そのまま下へ落下していく。 「どらあ!」 それに即座に反応したシエスタは気合の叫びとともにお盆を空中でキャッチする! 「つつつつつつ使い魔さん!ちゃんと持って下さいっていったじゃないですか!」 半腰に皿の乗ったお盆を両手で抱えるという、かなり無理のある体制のため 足をプルプル震わせながら、上目遣いで使い魔に非難の声を上げる。 「つかんだ!」 使い魔はそれだけ言うと、再びお盆に手を掛けて持ち上げようとするが…全く持ち上がらなかった。 思わず貧弱、貧弱ゥ!と叫びたくなる。どうやらこの使い魔はシエスタより力が弱いらしい。 (やれやれだわ…………) シエスタは思わず心の中で嘆息した。 To Be Continued 。。。。?
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「・・・。」 「う~ん・・・キュルケ・・・に・・・シアーハー・・・むにゃ・・・。」 「・・・。」 「壊れない・・・ウフフ・・・。必殺・・・やって・・・おしまい。」 「しばっ!!」 バサァッ!! 爽やかな朝に不穏な寝言を言うルイズ。 そんな彼女の朝は、キラークイーンに布団を引っぺがされることから始まった。 さすがに布団の爆破はしない。 『許可なき爆破は許さない。』キラークイーンに課せられたルールである。 どのみちルイズに馴染んできたキラークイーンにとっては、ルイズの意志がなければ出来ないが。 その他にも目覚ましの役目も言い渡されている。 そんな忠実なる使い魔に、彼女は寝ぼけ眼で言い放った。 「・・・誰?ってか何?」 「・・・。」 「あ、使い魔か・・・。」 ・・・何かもうダメだ。 「着替えなきゃ・・・。えっと、パンツは一番下に・・・と。」 衣擦れの音の響く部屋、その中で無駄に存在感を発揮するキラークイーン。 オプションには半裸の美少女。 異様な光景である。 「櫛は・・・キラークイーン、ちょっと取って。」 櫛を手渡すキラークイーン。何故かいつまでも視線をルイズの手に向けている。 「あんたって手を見ると動き止まるわよね・・・。変なの。」 その理由を彼女は知らない。 でも知らない方がいいってことも世の中にはたくさんありますよね。 「さて、準備も出来たし朝食に行くわよ。ついてきなさい。」 何となくキラークイーンには傍にいて欲しいルイズ。彼を近くに呼び寄せます。 別に離れても問題は無かったのだけれど、あんまり離れていると何かこうムズムズとするのです。 部屋から出て、施錠チェック終了!!といったところでなるべくなら聞きたくない声がした。 燃えるような髪。ルイズとは対照的な「何想像してんのさ」と聞こえてきそうな体。 そう、今朝、ルイズの夢の中で爆弾戦車に追っかけ回されていた女性、キュルケである。 ちなみに爆死する前に布団を引っぺがされたため、死んではいない。 「あら、ルイズ。その猫っぽい亜人が貴女の使い魔?けっこうキュートね。 フフッ・・・ひょっとして他の人のをさらってきたんじゃないでしょうね?」 「黙りなさい、キュルケ。体温すらない体にするわよ?あと人の使い魔、勝手に触らないで。」 「・・・。」 「・・・?フフ・・・私の手、綺麗でしょ?」 「キラークイーン!手なんか見ててもしょうがないでしょう!?行くわよ!」 「あら、キラークイーンっていうのね。素敵な名前・・・。 それと・・・私だけが知ってるのもフェアじゃないから。」 彼女の隣にジョーダンのようなトカゲが現れた。 「これが私の使い魔、フレイム。サラマンダーよ。しかも火竜山脈の・・・。 好事家に見せたらきっと欲に塗れた醜態を晒してくれるでしょうね・・・。」 「ふ~ん、まあまあね。あんたにぴったりじゃない。それじゃ、私お腹空いてるからこれで。」 「あ、ちょっと・・・。」 有無を言わさず立ち去るルイズ。 普段見せているコンプレックスの欠片も見せなかったルイズにキュルケは戸惑っていた。 意外に思えるかもしれないが、このときルイズが癇癪を起こさず、冷静に対応できたのは奇跡などではない。 なぜならキラークイーンもけっこうレアなため、この時点でルイズには勝った!!という考えが浮かんでいたのだ。 キラークイーンの能力を把握しているルイズにとって、サラマンダーなどシアーハートを発射するだけで事足りるのだから、 当然といえば当然の態度である。 本日のルイズ・・・夢の中で必殺技を思いつく。 必殺技・・・シアーハートアタックを発射後すぐにキラークイーンで全力投球。これにより周囲の温度に影響されずに標的に向かう。 ただし対象物に温度がない場合は使えない。 To Be Continued → 戻る 目次
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/35.html
「ハハハハハッ!いつまでもつのかな?」 左右から人形が迫る 「くっ」 エピタフで予知していたので一体を右腕で殴り破壊。二体目の攻撃を回避 「エピタフ!」 次の予知、その予知は 「後ろ三体!」 右腕のチョップで一気に三体倒す。だがこのままだと 「・・・消耗戦になってしまう・・エピタフ!」 事実、本体であるギーシュに詰め寄れない。詰め寄ろうとしても何体もの人形が邪魔をするのだ 「右二体前一体・・ここ!」 左後ろに下がり瞬時に 「エピタフ!」 未来予知を使う。その結果 「・・・囲まれた?!」 「こうも簡単にその敷地に来るとはね。今まで君を相手にしていたワルキューレたちは陽動さ」 「まずい・・・!」 周囲の土から現れた人形、数にして八体 ドッピオは右腕を使い回転して周囲の八体を薙ぎ払う様に倒す 「エピタフ!」 次の予知を行うが 「・・くっ」 さっき倒さずにいた三体の人形の攻撃、前、右、左 ドッピオは右腕を地面に打ち後方に下がろうとするも ドガッ! 「ぐっ・・・?!」 後ろの何か・・・いや、青銅の鎧人形にぶつかってしまった 「言っただろう?今まで君を相手にしていたワルキューレたちは陽動と その三体は今までのワルキューレじゃないかな?」 「しまっ・・」 ドゴォッ! しまったと言い切る前に殴り飛ばされる それは計算されたのかギーシュ手前の二、三メートルまで飛ばされた 「・・・ゲホッ」 「ここでさっきの愚行を改める・・・土下座して謝るって言うならもう終わらせてもいいけど」 「・・・れが」 「・・・よく聞こえなかったなーもう一度言ってくれないかな?」 「・・だれが貴方なんかに謝りますか・・・!」 ドッピオは少しギーシュに対して不満を持っていました。二股もさることながらルイズを小ばかにした態度が気に入らなかったのです 「ふーん、じゃあその考えを改めるまで・・・」 ドッピオに杖を突きつけギーシュは 「僕のワルキューレたちのサンドバックになるがいいさ!」 ドッピオは瞬時にエピタフを使い対応しようとしますが 「やめて!!」 その声にさえぎられたのです 午前の授業を終えたルイズは一度部屋に戻りました ドッピオに昼ごはんを与えるためドッピオを探していたのです ですが 「部屋にもいないなんて・・掃除は綺麗にやってるみたいね まったく主人をほったらかして何をやってるのかしら。あの使い魔は」 少々ルイズは怒っていました。自分の使い魔が自分にまったく干渉しようとしないのですから 「本当にどこに行ったのかしら」 「お困りのようね。ゼロのルイズ」 と、急に自分のあだ名で呼ばれたルイズ。ルイズ自身は分かっている。この声の主が 「何の用かしら?ミス・ツェルプストー」 「いえ、貴女が一度使い魔に脱走されたなんて聞いたので 今回もまたそういうことになってるんじゃないかと思って」 「余計なお世話よ。大体実際に脱走はしていないし今回だって違うわ」 「そうかしら?あんないかにも体力より頭脳って感じの・・ドッピオだっけ? そんなのに掃除洗濯任せてたらいやになるのも当然よ」 「う・・・」 その事に関してはルイズも同意見でした。まだ上手くやっていますがいつ放り出してしまうか 少しルイズも不安でした 「だ、だからってここ以外に住めるところなんてこの辺には無いし 野生のクリフォンやドラゴンが出てくるのよ?無用心に出て行くなんて」 「それを貴女の使い魔は知っているのかしら?もしかしたら」 ルイズは少し冷静になり考えたら恐ろしいことが浮かびました 「・・・ドッピオが死んじゃうかもしれない?」 「そうなるかもしれないわね」 「だったら急いで探さないと!」 ルイズは自分の家名に泥がとか使い魔が脱走した上に見殺しで自分の評価が下がるとか言うのは考えませんでした 二日とは言えど自分の世話をしてくれた彼が見殺しになるのがなぜか嫌でした 「そう、じゃ頑張ってね」 「ちょっとアンタも手伝いなさいよ」 「嫌よ、何で人の使い魔の問題を抱えないといけないのよ」 「こうして話をしてロスした分の時間そのくらい手伝ってもらわないといけないわ」 「・・・ハア、仕方ないわね」 こうしてドッピオを探すために廊下を走り回るルイズとキュルケですが一人の生徒と会いました 「ゼロのルイズとミス・ツェルプストーではないですか。どうかしたんですか?」 少々ルイズはムッとしましたが今は気にしてられません 「丁度いいわ。コイツの使い魔がどこにいるか知らない?」 「ゼロのルイズのですか?そういえば今すごいことになってますよ 何でもギーシュと決闘をするだとか」 「何ですって?!」 「・・それはどこでやっているのかしら」 「確か中庭だったと思いますよ」 「急ぐわよ!ルイズ!」 「ええ!」 予想していたことより厄介なことになりました たとえドッピオが勝ったとしても貴族を侮辱した罪などで起訴されれば死刑になってしまう それにドッピオのような平民が貴族・・魔法を使えるものに敵うわけが無い そう思って中庭に来たルイズとキュルケでしたが 「嘘・・・」 「・・すごい」 予想していたようにはなっていませんでした ドッピオはギーシュ相手に戦えていました ギーシュのワルキューレがどこから来るのか分かっているかのように攻撃を回避し 自分たちに視えないなにかでワルキューレたちを倒していきます 「嘘・・・貴女の使い魔って平民よね」 「ええ・・魔法は使っていないはずよ。杖持ってないし」 魔法使いには必須の杖を持たずに不可視の何かでワルキューレを倒していくドッピオ 「・・・でも、もう終わりのようね」 「え?」 「ギーシュのほう、よく見なさい」 「・・まさか」 ギーシュは笑っていた 自分の魔法が平民であるはずのドッピオに敗れているはずなのに笑っていた 「ギーシュの奴、何か罠を張ってるわよ」 「あ?!」 突如ドッピオに現れる八体のワルキューレ、だがドッピオはそれを薙ぎ倒す 「積みね」 そこからさらに前進して来たワルキューレから離脱しようとして後ろのワルキューレにぶつかってしまった ドゴォッ! 「あ?!」 鈍い音が響きました。それを周りの人は笑いながらや見ていられないように見ています 「・・・ギーシュ、加減をしてないわね。骨までイったんじゃないかしら」 「そんな・・・!」 「ここでさっきの愚行を改める・・・土下座して謝るって言うならもう終わらせてもいいけど」 ギーシュの言葉でした。ルイズは (もうドッピオは戦わない。何が目的でやったか知らないけどこれだけひどい傷を負えば) そう考えていました。いや、だれもがそう考えていたでしょう 「・・だれが貴方なんかに謝りますか・・・!」 ですが、その考えはもろくも打ち破られました 周囲の人は静かでした。笑いや同情もなく、ただその場で立ち上がろうとするドッピオを見て・・見守っていました 「ふーん、じゃあその考えを改めるまで・・・」 ドッピオに杖を突きつけギーシュは 「僕のワルキューレたちのサンドバックになるがいいさ!」 と言いました。その一言で 「あ、ちょっとルイズ?!」 ルイズのスイッチが入りました 6へ
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「で、オメーは何なんだ?」 セッコと名乗った男がまた同じ質問を繰り返してきた。馬鹿にも程があるわ。 「しつこいわね、さっき自己紹介したばっかりじゃない!」 「名前はわかったつってんだよお、その前後が意味不明なんだああ!」 まさか人語を解さないなんて事はないでしょうね。 「だからここはトリステイン魔法学院で、あんたは私の使い魔。」 「それがわかんねえてんだろおおおおおおお!」 どうやったらこの変な奴にうまく説明できるの、後にして休みたいわ。 「後でゆっくり説明してあげるから、わたしについてきなさい。」 「うん。」 セッコは大人しく後をついてきた。案外素直じゃない。 それとも使い魔の印のせいなのかしら? 「ここが私の部屋よ。とりあえず入りなさい。」 「うん、うん。」 ふと、辺りが埃っぽいとうかカビ臭い事に気づいた。 あ、そういえばこいつゴミの山の中から出てきたんだったわね…… 「ちょ、ちょっと待ちなさい!」 「?」 「その前に体を洗ってきなさい、あなたゴミの中から這い出してきたのよ。」 「わかった。」 凄い勢いで行っちゃったけど、水汲み場が何処か判るのかしら? まあいいわ、今日は凄く疲れたし昼寝でもしよう。 あいつは一体何なんだぁ?変な服を着てるし偉そうだし、しかもあいつに命令されると、なんとなく素直に返事をしてしまう。 不快ではない、しかし何が何だかわからねー。 その上自分のことすら名前以外思い出せないときたもんだ。 考えても始まらないし、確かに体はカビ臭い気がするし、洗ってから話を聞こう。 「……どこで洗えばいいんだ?」 そうだ。水がある場所なら、水の音がするんじゃねえか? そう思って耳を澄ますと、何かを洗っているような音が聞こえてきた。 きっとそこには水があるに違いない。 程なくして水場が発見できた。使用人っぽい服を着た女が洗濯をしている。 「この水で体を洗っていいか?」 「きゃあああああ!!」 !? 「あ、す、すみません! ちょっと驚いてしまって…… でも、でもここは貴族様の来る様なところでは、……」 畜生また変な奴か。 「貴族じゃねえ、オレはセッコだ。 で、この水は使っていいか?」 「それは失礼しました。かまいませんよ。 でも、できればお洗濯が済むまで待ってもらえますか。あ、あと私シエスタって言います!」 「わかった。」 初見のオレに水をただで使わせてくれるなんていい奴だ。 だが張り付いた様な黒いおかっぱ頭がどうも気に食わねえ。 ボーっと眺めていると洗濯は終わり、シエスタとかいう使用人は何処かへ行ってしまった。さっさと体を洗って戻ろう、ルイズに聞きたい事が多すぎる。 あ……あー、部屋はどこだっけ? 「ふぁあ……もう夕方かぁ」 ちょっと昼寝のつもりがずいぶんと時間が経っちゃったわ。 あら、そういえば使い魔はどこ? 「うおあ! うおっ月 月があぁ!」 下が騒がしい、窓から身を乗り出し見てみると、 変な服を着た男が騒いでいた。ってセッコじゃないあの馬鹿ああああああ!! 「ちょっと何やってるのよ、早く戻ってきなさい!!!」 「おあ ルイズ! 月 月っ月!!!」 「いいから戻ってこいって言ってるでしょ!」 「うぼあ……あ……わかった。」 ため息をつきつつ窓に背を向ける。 どう考えてもこの使い魔は使えない。涙が出てくる。 ドスッ 「戻った。」 なんか早くない? 「ねえ、どこから入ってきたの?」 「窓。」 「そう。早いのはいいけどできればドアから入って欲しいわ。」 え、窓?!ここ3階だったわよね? 「セッコあなた魔法使えたの?」 「魔法なんか使えるわけねえだろぉ、普通に下からジャンプして上がってきた。」 「そ、そう、あなた結構やるわね。」 前言撤回。こいつ意外と使えるかもしれないわ。 「なぁー聞いてもいいか?」 「何よ。」 「素朴な疑問なんだよぉ……メチャ最高に……」 「言ってみなさいよ。」 「何で月が二つあるんだ?お前は何なんだ?オレは何をすればいい?」 「月が2つあるのは当たり前。私は貴族でメイジのルイズ。セッコは私の使い魔。」 「月とルイズはともかく、いや月はおかしいがこの際どうでもいい、使い魔って何だ?」 「あなた何も知らないのね。」 「自分の事も怪しいのにそんなこと判るかよぉー」 セッコは物凄くしょんぼりした様子で床に座り込んでしまった。ちょっと言い方が悪かったかもしれないわ。とりあえず説明してやることにする。 「まず、使い魔は主人の目となり、耳となる能力を与えられるわ。」 「便利だ。」 「でも無理みたいよ、さっきセッコが下に居た時わからなかったし。」 「ルイズオメー使えねーなぁ」 言われてみれば原因は私かもしれない。でもとりあえず一発殴る。 「使い魔は主人の望むものを見つけてくる、秘薬とか。」 「それは多分できない。」 最初からそれは期待してないわ。 「使い魔は主人を敵から守る存在である。」 「相手による。」 まあ……そりゃそうよね、妥当な答えだわ。平民の癖に。 「あんたって、強いの?」 「わからない。」 「戦ったこととかないの?」 「うう……あるようなないような……」 記憶が戻らないことには戦わせる気にならないわね、強そうなんだけど。 ……いい事を思いついたわ。 「使い魔は主人の身の回りの世話をする。」 「例えば?」 「起こしたりとか服着せたりとか洗濯したりとかよ。」 「できるけどやりたくない。」 「やりなさいよ馬鹿。」 「ご褒美くれるなら。」 「食べ物と寝る場所の世話は私がするのよ?それで十分でしょ?」 「うーあー」 「じゃあ他に何が欲しいのよ。」 「甘いの。」 「飴とかでいいのかしら?」 「うん!うん!」 「気が向いたらあげるわ、でもわたしの命令はちゃんと聞きなさいよ?」 「うん。」 意外と扱いやすいかもしれないわ。けど明らかに教育が必要ね。 「あなたと話してたら疲れたわ、寝るからちゃんと朝起こしなさいよ。」 「オレはどこで寝るんだ。」 「ベッドが一つしかないから床ね。毛布ぐらいあげるわ、おやすみ。」 「わかった。」 やたらと寝るのが早い奴だなあ とセッコは思った。 床に転がって考える。オレは気づいたらここにいた。 ルイズはオレのことを使い魔と呼ぶ。飯と、寝る所と、甘いのをくれるとも言った。 人間として扱われてないような気もするが、同時に何だか懐かしい。 オレはもしかすると元々そういう生活を送ってきたのか?考えたくねえ。 そういえば昼会ったシエスタって奴は親切だった。 だがあの髪だけは許せねえ、いつか毟ってやる。 To be continued…… 戻る< 目次 続く
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爆炎の使い魔 漂う土煙!これはルイズによって起こされたもの! 召喚の儀だというのに、性懲りもなく爆発を起こした少女、ルイズ!! しかし、しかし!だからこそ現れたのではないだろうか! 爆発こそが「それ」を象徴する能力なのだからッ!! 時間は少し遡る。 幽霊の出る小道で主と引き離された「それ」は‘どこでもない場所‘を彷徨っていた。 体はバラバラ、ひび割れて無残な姿だ。 主を失ったスタンドはどうなるのか・・・それはわからない。 おそらくは消えていくのであろう。 だが!「それ」の場合は消えなかった! 主がとどまり続けるのと同様に(もちろん「それ」はそのことを知らないが)、 「それ」もまた新たなる世界でとどまり続けるのだ! さあっ!迎えの光がやってきた! 光に飲み込まれていく「それ」は自らの体が修復されていくのを感じていた・・・。 土煙が晴れ、そこに一つのヴィジョンが佇んでいた。 それを見たルイズは喜びに打ち震えていた。自らが召喚した使い魔がその優美な姿を見せていたからだ。 猫と髑髏が融合したかのような顔、筋骨隆々たる体、そして何者をも寄せ付けない気高い威圧感! そのどれをとっても貴族たる自分に相応しい。 「嘘だろ・・・ゼロのルイズが成功しやがった・・・。」 「イ、インチキに決まってる!!」 「そうだ!爆発に紛れて何とかしたんだ!」 プツンッ!ルイズの方から何かが切れた音がした。 「黙りなさい・・・。」 「何だよ!図星なモンだから焦ってんだろ。」 「黙りなさい、と言ったのが聞こえなかったの・・・? このルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール・・・。 そのような姑息な真似は!一切!!していないッ!!! これは正真正銘!私が召喚した!私の使い魔よッ!!!!!」 To Be Continued → 目次
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さっさと食事を終えて食堂に戻ってみてもルイズの食事は未だに終わってなかった。 仕方がないので億泰はボケ~っと出口で待つ事にしたが、 食事を終えた生徒が通りがかりに億泰を見てクスクス笑っていくのが腹立たしい。 『見世物じゃねーぞコラァー!』とでも叫びたい気分だったが、 どうせろくな事にはならないのが目に見えていたので無視する事にした。 十分後に出てきたルイズまで無視してしまい、思いっきり蹴られるハメになった。 ルイズと合流し、連れてこられた所は大学の講義室のような石造りの大部屋だった。 見渡しても談笑している生徒が殆どで、この辺りはぶどうヶ丘高校と大して違いがない。 高校生の億泰にはどちらかというと視聴覚室だな~と思ったりしている。 二人が入っていくと、談笑していた生徒達が一斉に振り向き、 そして億泰を連れたルイズを見るとクスクスと笑い出す。 ルイズがそれを無視して席につこうとすると、 男子に囲まれていた一人の女子生徒がグループから離れて近づいてきた。 「あらルイズ、本当に平民が使い魔なの! すごいじゃない!あははあはは!」 燃えるような赤い髪に、ルイズよりも高い身長、ルイズよりも色気の漂う肉体、 とりわけルイズよりも突き出た胸元を、ブラウスのボタンを二つ程外して覗かせている。 ルイズと比べると、『負けた……スタイルのレベルで……』と若い頃のジョセフさんが言いそうな程だ。 勿論億泰はビミョーにヨダレを出しながらその胸元に視線を向けている。 「キュルケ……なに?なんの用なの? 嫌味言いに来たならアッチ行きなさいよ」 そう言ってシッシッと手で払うような素振りを見せるが、 当然キュルケはそんなのを無視してもの珍しそうに億泰を眺めだす。 「別に良いじゃない、見て減る訳じゃないでしょ? ふ~ん………… なんだかポカンとした瞳の奥に『何かを隠してる』ような気がするわね。 ねえ、お名前は?」 途中口をつぐんだのは、 直接『何だか締まりの無い顔ね』と言うのは流石に酷だと思ったからだろう。 だが、億泰はそんな事にも気づかない。 いや、二つの胸の谷間に生じる歯車的砂嵐の小宇宙に魅入って気づく余裕さえないのだ。 「あ、アッー!億泰ッス!虹村億泰!」 「オクヤス?変な名前。ま、覚えておいてあげるわ。 ねぇ、それよりルイズぅ。やっぱり使い魔ってのはこういうのよねぇ? フレイムー?」 キュルケが勝ち誇った声で使い魔を呼ぶと、 教室の後ろからゆっくりと巨大なトカゲが現れる。 「!! これってサラマンダーじゃない……!」 「そうよー、火トカゲ。 ほら見て!この鮮やかで大きい炎の尻尾! きっと火竜山脈のサラマンダーよ!」 と、そう言って自慢を始めるキュルケとそれを悔しげな瞳で睨むルイズの横で、 ポカンと億泰はフレイムを見つめていた。 (なっなんか規格外が出てきてるぜ~~~~ 燃えてるじゃねーかァ~~!?) 平気なのかよォ~という目で見ていると、 フレイムがきゅるきゅる、と他の皆もそんなモンだから気にするな。 という意味で鳴いたように聞こえた。 (ほぉ~、やっぱ使い魔ってスゲーんだな) きゅるきゅるきゅる 微妙に意思疎通ができているらしい。 そうしてフレイムと対話?をしながら椅子に腰掛けようとして、 ルイズに思いっきり突き落とされた。 「ドピ!?」 「何座ろうとしてるのよ。 ここはメイジの席なの、使い魔なんだからアンタは床。 す、座りたいならお願いくらいしなさいよ」 「あんだと~~!? ……フンッ、分かったぜ、床に座ってりゃーいーんだろ? ケッ邪魔しねーよーにしといてやンよ!」 と、そう言って壁際に移動してドッカと腰掛けた所で 紫色のローブに身を包んだ中年女性が入ってきた。 「はいはい、お喋りはそこまで。 授業を始めますよ」 どうやら教師のようだ。 「皆さん、春の使い魔召喚は、大成功のようですわね。 このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ。 ……あら?ミス・ヴァリエールは変わった使い魔を召喚したと聞いていたのですが、本当のようですね」 シュヴルーズが億泰を見てとぼけた声で言ったのを引き金に、教室中がどっと笑いに包まれる。 「ゼロのルイズ! 召喚できないからって、その辺歩いてた平民を連れてくるなよ!」 「それに、同じ平民でもせめてもう少し賢そうなのにしな!」 キュルケの自慢を聞かされて相当苛立っていたルイズは、 机をバンッ叩いて大きな声で怒鳴りつける。 「違うわ!きちんと召喚したの! でもこいつが来ちゃっただけよ! だいたいマリコルヌ、なによその格好!脂汗と包帯でまるで光ったメロンね!」 「なんだと!? 何度も『サモン・サーヴァント』をミスっていた分際で! このクサr……モグッ!?」 二人が口汚く口論しだすと、 突然ルイズをバカにしていた包帯メロンの口に赤土の粘土が叩き込まれる。 口を塞ぐだけではなく、口の中一杯に頬張らされているようだ。 「ミスタ・マリコルヌ。 貴方はその格好で授業を受けなさい。 少々口調が乱暴すぎますよ?」 窒息しそうな程にウーウー呻くマリコルヌの不気味さに教室の笑いが収まった。 それを見てこほん、と咳払いをするとシュヴルーズは杖を振る。 「私の二つ名は『赤土』。赤土のシュヴルーズです。 『土』系統の魔法を、これから一年、皆さんに講義します」 授業が始まると、億泰はボーっと眺めていた。 億泰にとってはいくら興味深いものでも教師の言葉は眠りの魔法なのだ! きゅるきゅる、きゅーきゅー、キョォォーン、ぎゅーぎゅー、ゲロゲロ アギ…… と、暫くすると何匹かの使い魔が億泰の所へと集まりだした。 億泰はそれらの相手を適当にしながら、意識を半分眠りに委ねる。 まあ、それでも化け物状態から治る前兆すらなかった頃の父親の世話をしていたため、 猫草をすぐに手なづけるような事ができたりするのだ。 一方でルイズはその光景をチラチラと見て、ムカッ腹を立てていた。 (何よ!他の使い魔とかなんかと仲良くしてるんだか! そいつらの主人はみんなアンタに陰口叩いてんのよ!?) 「聞いていますか?ミス・ヴァリエール」 「ふえ!?」 「全く、授業中には集中してください。 そうですね……あなたにやってもらいましょうか、ミス・ヴァリエール。」 「え、わ、わたしが?」 「そうです、この石ころを望む金属に変えて貰いましょう」 それを聞いて意気揚々とルイズは立ち上がった。 ここで成功させてマイナスイメージを払拭してやる! 億泰にも!ここの皆にも! 大丈夫、私ならやれる筈よと誰にも聞こえない位の小声で呟いた。 そのやる気の満ちた様子にクラス中が恐怖に覆われる。 蛇に睨まれたカエルのようにガタガタ震える者も居れば、 カタカタと涙を流しながら意識を手放す者もいた。 「先生、やめさせてください」 「それだけはやめといたほうが……」 「危険です」 「お慈悲を」 「ダメダメダメダメダメダメダメダメダメ……」 しかし、その声が耳に入らないかのようにルイズは教壇へと歩いていく。 その様子にシュヴルーズはにっこりと笑顔を浮かべ、 周囲は余計に引きつっていく。 「周りの声など気にしてはいけません。 さあ、錬金したい金属を心に強く思い浮かべるのです」 促されてルイズは可愛らしく頷き、手にした杖を振り上げる。 ざわっという声が教室に広がり、慌しく生徒達が思い思いの対策を取り出した。 「Hail 2 me……願いを三つ。 ルイズが錬金を成功させる。 それが無理なら錬金が失敗しても何も起きない。 それも無理なら爆発が避けていく。 Hail 2 me……」 「こ、此処は僕達が隠れるんだ! 君が入ったらスペースが埋まる!他に回ってくれマリコルヌ!」 「いやよ!こっちこないで!」 「こんな教室にいられるか!俺は部屋に帰るぞ!」 そんな様子すらも無視し、絶好調誰にも止められない状態のルイズは 唇をギュッと結び、真剣な顔で短くルーンを唱えて杖を振り下ろした。 瞬間!石ころは大爆発! 爆発の煙と臭いが充満し、平和な教室が一瞬で戦争最前線へと姿を変える! 至近距離の直撃を受け、シュヴルーズは吹っ飛ばされて叩きつけられた。 ルイズは真っ黒な煙の中に居て様子が分からない。 机に隠れた集団は無事だった。 願いを言っていた奴は地獄を!自分に!になった。 ギーシュに蹴りだされたマリコルヌはどこにも隠れられず、 吹っ飛ばされて使い魔の集団に叩きつけられた。 そのあまりの光景に驚いた使い魔は恐怖の対象のマリコルヌをボコボコにしだす。 フレイムが火炎を吐き、犬猫が噛み付き、鳥が引っかき、 マンティコアが飛び上がって鳩尾に体当たりだ。 「ゲェッ! なっ何だッ! イヒィイイイイイイ~~~~っ なんだこいつわぁあああ!」 アギ…… そして、衝撃で目覚めた億泰が不気味な形相のマリコルヌに驚いて蹴飛ばすと、 最後に衝撃で倒れてきた人面岩がマリコルヌを押し潰したのだ。 ほんの数秒で前線から阿鼻叫喚の地獄へとシフトして混乱が起きる。 状況を把握した先から被害者の姿を見てしまい、彼方此方で悲鳴と怒号が上がった。 「メイジは許可なく死ぬことを許されない! 死ぬな!死ぬなマリコルヌ~~~!」 「だから嫌だったのよ!もう二度とやらせないで!」 「ええい!学園は何をやってるんだ! 早くヴァリエールを退学にしろぉおお!」 「ピッツァー!マリコールヌ!気を確かに持てぇぇ!」 億泰はただ呆然としていた。 一言で表すのなら、 『あ…ありのまま今起こった事を話すぜ! 『おれ居眠りの階段を登っていたと 思ったらいつのまにか爆発が起きていた』 な… 何を言ってるのか わからねーと思うが おれも何をされたのかわからなかった… 頭がどうにかなりそうだった… 二股だとか死亡フラグだとか そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…』 という感じだ。 暫くして頭の再起動が終わり、教室を見渡す。 前の方でシュヴルーズ先生が倒れて痙攣していた。 歯が全部折れているような気がした。 マリコルヌが岩の下から引っ張り出されてた。 誰の使い魔だかわからないが何処かで見覚えのある人面岩だ。 ルイズはそんな阿鼻叫喚を意に介さずにハンカチを取り出すと、 煤で真っ黒になってはいたが涼しい顔でこう言った。 「あら、おかしいわね?」 当然、その一言に他の生徒達がプッツンする。 「おかしいのはお前の魔法だ!」 「おかしくないって言うなら、 このマルコメルくっつけて治してよ!」 「マ・ルコ・メル!マ・ルコ・メル!」 状況が殆ど分からないが、億泰にもこれだけは分かった。 ルイズがなぜ『ゼロ』なんて呼ばれているのかが。 マリコルヌ&ミセス・シュヴル-ズ →治療を受けて全治数日。 他の生徒 →軽傷or無傷 ルイズ&億泰 →掃除を命令される 授業 →中止
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ドドドドドドドドドドドドドドドド………… ルイズはギーシュを睨みつけていた。 正直最初はブラック・サバスを連れ出してさっさとこの場から離れようと思っていた。 しかしギーシュから『侮辱』を受ける少女が、悔しさで肩を震わせ涙を流すのを見たとき 自分の頭の中で何かがプッツンした。 ギーシュとメイドと野次馬たちの視線が自分に集まる。 ブラック・サバスは……テーブルの上のデザートを見つめていた。おい、誰のせいでこうなったと思ってんだ。 ギーシュは芝居がかった仕草でルイズの方を向いた。 「侮辱?ミス・ヴァリエール、君には関係ないことだと思うんだけど?」 「関係あるわよ、同じ貴族としてね。もともと悪いのはあんたでしょ。それを他人のせいに……しかも相手が平民だからって馬鹿にして。 貴族にはあるまじき行為よ。あんたは貴族と平民の両方の誇りを傷つけてんの!」 「なるほど、ミス・ヴァリエール。『ゼロ』の君は平民の心がよく分かるらしい」 ギーシュのその言葉に回りからドッと笑い声が上がる。 ルイズはそれら全てを無視し続けた。 「それにあんたは私の使い魔も侮辱した」 「使い魔?…………それってコレのことかい?」 ギーシュがコレと言って指差した先で、ブラック・サバスはデザートのケーキを口の中に放り込んでいた。 「……………………そうよ」 自分の使い魔と紹介したことをちょっと後悔しつつルイズは答えた。後でオシオキね………。 「君の使い魔は召喚したと同時に死んでしまったという噂だったんだけど…… しかしメイジの実力を見るには使い魔を見ろとはよく言ったものだね この素行の悪さなんか君にそっくりじゃないか」 ギーシュの嫌味たっぷりの言葉にまたもや回りのギャラリーから笑い声が生まれる。 ルイズは悔しさを顔に出さないが、両手をグッと握り締めた。隣で泣いているメイドも嘲笑された時同じ気持ちだったのだろう。 味方がひとりもいない中、嘲笑の的にされる気持ちは誰よりも分かる。 ルイズが何か言い返そうと口を開きかけた…………が、先に口を開いたのはブラック・サバスだった。 そしてその口から出てきたケーキは、ギーシュの顔面をクリームだらけにした。 本日二度目のザ・ワールド!皆がクリームまみれのギーシュを見て唖然としている。 …………この世界で最初に動いたのはルイズだった。 「…………フ…………フフフ………」 何をやっているのだ自分の使い魔は? いきなり私を襲ってくるし、分けわかんないことをオウムみたいに繰り返すし 洗濯物食べてどこか消えるし、授業でないし、片付け手伝わないし、揉め事を大きくしてるし……でも 「フフフフフフ…………フハフハフハハハハハ!」 でも、今のは最高だったわ!最高に「ハイ!」って奴だわアアアアアア! 「アハハハハハハハハハハハハ!」 ルイズは腹を抱えて笑っていた。こんなに心の底から笑ったのは久しぶりだった。 おかげでギーシュが自分たちに決闘を申し込んだのを聞きそびれるところだった。 ばか笑いを上げるルイズをほっといて、ギーシュは他の生徒を連れて先に広場に向かって行った。 食堂に残っているのは、3人のメイジと1人のメイドと1匹の使い魔。 ルイズは一応ブラック・サバスに文句のひとつでも言おうと、笑いを抑えるのに必死だった。 シエスタは展開についていけず、ただ涙を止めようと必死だった。 ブラック・サバスはボーっとしていた。 タバサは食後の読書タイムだった。 そしてキュルケは機嫌の悪そうな顔でルイズの方に近づいてきた。 「ちょっとルイズ!説明しなさい!その使い魔は死んだんじゃなかったの!?」 キュルケがルイズに詰め寄る。ルイズは笑いを抑えるために一度大きく深呼吸してから答えた。 「あぁ…………ごめん」 「え?」 意外な返事にキュルケは言葉に詰まってしまう。 「あんたが私の使い魔のことで考えてくれてたのは分かってたけど、こっちも色々あって説明するヒマがなかったのよ」 「あら~?えらく素直じゃない?」 皮肉たっぷりに答える。 「どーせこの後決闘のやじ馬するんでしょ?辛気臭い顔で見られてたら勝てるものも勝てなくなるのよ」 キュルケの方を一切見ずに言う。 言われたキュルケは思わずポカンとした顔をしてしまう。が、しばらくしてプッと噴いた。 「何よ」 「別に…でもあんたの使い魔なかなかやるじゃない。今のはなかなか傑作だったわよ」 そう言ってニヤリと笑うキュルケに釣られて、思わずルイズも再び笑いそうになってしまう。ヤバイつぼだ。 「申し訳ありません!私なんかの為に大変なことになってしまって!」 シエスタがペコペコと頭を下げて会話に入ってきた。その顔はまさに顔面蒼白である。 「勘違いしないであんたの為に戦うわけじゃないんだから。大体あんたは何も悪くないじゃない。 ギーシュが二股して、私が文句言って、こいつが話をややこしくした。だから決闘を申し込まれた。あんたの為に決闘するんじゃないのよ。 だから…………そうね。あんたが侮辱された分は、私がギーシュを倒してあんたに謝りに来させるから、それでいい?」 ルイズは事も無げにそう答える。 「そんな!謝罪なんてけっこうです!本当にいいんです!ミス・ヴァリール!そのお心遣いだけで十分です!決闘なんて危険です!」 シエスタは数時間前のブラック・サバスの虚弱性を見ていた。 それに自分を助けてくれたこの貴族は、確か『ゼロ』のルイズ……魔法の使えないメイジ……勝てるわけ無い。 再び泣きそうな勢いでルイズに話しかけるシエスタの肩に、キュルケの手がそっと置かれた。 「貴族が決闘を申し込んだ以上、それを取りやめることはできないのよ。それに大丈夫。今は昔と違って命のやり取りをするわけじゃないんだから。それに…」 話を途中で止めたことにシエスタは訝しげにキュルケを見たが、キュルケは気にすることなく話題を変えた。 「でヴァリエール?あれだけ啖呵を切ったんだから、もちろん勝算…あるんでしょうね?」 「勝算ね」 ギーシュ・ド・グラモン 。『青銅』のギーシュ。土系統のドットメイジ。派手好きでキザでナルシスト。 決闘には錬金で作る青銅のゴーレムを使ってくるだろう。たしか5,6体は同時に作ることができたはず……… それに対して私の使える魔法は爆発のみ…はたしてゴーレムに対して効くかどうか? ふと、ブラック・サバスの方を見てみる。なにやら今度は窓から外を眺めているようだ。 ルイズもその視線を追ってみる、この時間帯にしてはかなり暗い。 どうやらあんなに昼間は晴れていたのに、いつの間にか雲が出て二つの月を隠してしまっているみたいだ。 そこまで考えてルイズは力強く答えた。 「あるわよ」 「今の間はなによ…」 キュルケが苦笑しながらつっこみを入れるが、ルイズの自信満々の様子は変わらなかった。 「ブラック・サバス!」 名前を呼ばれた使い魔はルイズの方へゆっくりと向きを変えた。 「今度は私の言うこと聞きなさいよ」 ブラック・サバスは答えなかった。ただ首を縦に振っただけだった。 「分かったなら、返事しなさい」 そう言いながらもルイズは満足そうに笑っていた。 シエスタは不思議だった。『ゼロ』のルイズと、シエスタよりも貧弱な使い魔。決闘をするというには絶望的なコンビ。 しかし彼女たちからは不思議な安心感を感じる。 今までシエスタが出会ってきた、どの貴族たちとも違っていた。爽やかささえ感じていた。 「行くわよ」 そう言って歩き出したルイズの後を、ブラック・サバスと呼ばれた使い魔はまるで影のようについていった。 To Be Continued 。。。。?
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――ローマ コロッセオ-……のゴミ収集車の中。 ここはどこだ? 体が動かねえ…… 何にも聞こえね…… 暗れ…… オレは何してたんだっけ? 何で息が苦しいんだアギェッ なんだかわからんが逃げねーと…… オレは……何だっけ? ん、何だこれは 鏡? やべえ 鏡はやべぇ!確か鏡は別の世界が…… って何だっけ?オレは何を言っているんだ? とにかく何とかしねーと!オアァァ ……or?なんでor?英語の授業か? プげッ ――トリステイン魔法学院―― 「はぁはぁ、サモン・サーヴァント!」 何度目かすら忘れつつもとにかく呪文を唱える。 これだけは失敗するわけにいかない。 偉大なるヴァリエール家のルイズが留年なんて、そんな馬鹿なことがあっていいわけがない。 絶対に成功させないと! ドサッ ドサドサドサドサドサ! やれやれ、やっと何か呼び出せたみたいね。よかった…… 「ウワァーーー!!!」 周りの奴らが騒いでいる。なんか凄いのでも出したのかしら? 「わたしだってやればできるみたいね、疲れたけど。」 「臭ぇー!ゴミの臭いがプンプンするぜぇー!」 「ゼロのルイズぅーおめー脳がマヌケかぁ?これが使い魔に見えるのか?!」 「ルイズ、[サモン・サーヴァント]でゴミの山を呼び出してどうするの?」 って、ええぇーーーーーーーー何よこれ!!!! 「ミスタ・コルベール!」 ルイズと呼ばれた少女が怒鳴った。人垣が割れて、中年の男性が現れる。 「なんだね。ミス・ヴァリエール」 「あの!もう一回召喚させてください!」 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」 「どうしてですか!」 「決まりだよ。春の使い魔召喚は神聖な儀式なんだ。 一度呼び出したものを変えることは許されない。」 「でも……」 「よく見てみなさい。ミス・ヴァリエール」 よく見なさいって、このハゲ馬鹿じゃないの? いくらなんでもゴミなんか使い魔にできるわけないじゃない。 ……あら? ゴミの山の中から男が這い出してきた。 男が喋ったわ。ゴミよりはマシだけどとても使い魔には見えない。 「な……なんだここは?!それよりオレ、誰?」 どうも混乱しているようね。わたしも混乱してるけど。 「ゴミじゃなかったけど平民でしたぁーーー!さすがゼロだ!」 「留まる所を知らないほどの失敗率!」 後ろで誰かがわめいている。わめきたいのはどう考えてもわたしよ。 「ミスタ・コルベール!」 「なんだね。ミス・ヴァリエール」 「あの!もう一回召喚させてください!」 「それはダメだ。ミス・ヴァリエール」 「でも!平民を使い魔にするなんて聞いたことありません!」 ルイズがそう言うと、再び周りの笑い声が大きくなる。 睨みつけてはみたものの、笑いが止む様子は全くない。 「これは伝統なんだ。例外は認められない。」 「そんな……」 「さて、では、儀式を続けなさい。」 「えー、彼と?」 「別にゴミの方でもいいぞ。」 そんなの、絶対嫌。このよくわからない全身スーツを着た平民もかなり嫌だけど。 周りの奴らがニヤニヤしながら眺めている。ハゲは至って真面目な顔でこっちを見ている。 ルイズは自分が召喚した平民をまじまじと見た。 結構身長は高い。いい体格してるじゃない、顔はマスクのせいでよくわからないけど。 「ねえ、ちょっとこっち向きなさい。」 男がこっちを見た。こいつは本当に人間なんだろうか。 その瞳からは妙に野生を感じる。もしかすると何か才能があるかもしれない。 たとえ使い魔が平民でも留年よりはマシな気がしてきた。 杖を振る。 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ」 ふと思う。 こいつ、さっきまでゴミの山の中にいたのよね、病気になったりしないでしょうね。 しかし、もう後戻りはできない。邪念を振り払いそいつの頭を掴み唇を重ねる。 「終わりました。」 「コントラクト・サーヴァントは一発でできたね。」 コルベールが、嬉しそうに言った。 「あぐおああああああーーあばああーーーっおれををっ あばあああああ おれの顔ををおああああああ」 熱い、いや 痛い! 痛い?痛いって何だっけ?これはヤバい、ヤバすぎる 逃げないと! どうやって?そうだ!地面だ! ……地面?そんなところに逃げられるわけがない。 おれは何を考えているんだ? しかしもう我慢ができない! 「な、何やってんのあんた!」 契約を終えたばかりのその男は、垂直に3メイルほど飛び上がり……・ そして頭から地面に落ちて倒れた。こいつ頭がおかしいのかしら? 「もう、何なのよ!いきなり死んだりしてないわよね?」 ルイズがげんなりしていると、コルベールが近寄ってきて、そいつの左手の甲(と生きてるかどうか)を確かめる。 「ふむ……珍しいルーンだな。後、彼はちょっと気絶しているだけだ。 そんなに心配しなくてもよろしい。」 「心配なんかしてません!」 心配しているのはわたしの進級よ。死んだらいくらなんでもまずいじゃない。 正直もう一回成功させる自身なんてないわ。 「さてと、じゃあみんな教室に戻るぞ。ああ、ミス・ヴァリエール?」 「何ですか?」 「使い魔も気絶していることだし、先に寮に戻りなさい。 どうせ今日はもう授業はないし、彼に無理をさせてはいけない。」 そう言うと、ハゲは火を放ってゴミを跡形もなく焼却し、校舎に戻っていった。 「わかりました、ミスタ・コルベール」 はぁ、なんで使い魔を主人が運ばないといけないのよ。普通逆でしょう? どうしようもないけど……泣きたくなってきたわ。 でもまあ不幸中の幸いね。このゴミの山を一人で片付けさせられるのかと思って怯えたわ。 「う……」 なによこいつ!無茶苦茶重い!これを3階まで担いで上がれって言うの? 無理 絶対無理よ!起こすしかないわ! そもそもフライやレビテーションを使えないことに問題があるのだが、 もちろんルイズはそんなところまで頭が回らない。 水を汲んできて、倒れている男に思いっきりぶっ掛ける。 「おああ 冷てえ!……オメー誰だ? いや、そもそもオレは誰だっけ?ここはどこだ?」 男が凄い勢いで起き上がった。 この様子だと体は大丈夫そうね、頑丈なのはいいことだわ。 「使い魔のくせに失礼ね、まあいいわ。 わたしはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 長いしルイズと呼びなさい。後、ここはトリステイン魔法学院よ。 で、あんた誰?」 男は意味がわからないといった感じの顔で私を見た。失礼な奴だ。 「いいから早く答えなさい、貴族が先に答えてやってんのよ? あんた名前は?」 男は奇声を発しながら頭を抱えている。やっぱり知覚障害者?記憶喪失? 勘弁して欲しいわ。これからの自分を考えてまた泣きたくなった。 もう放っておいて戻ろうかと思っていたころ、男がようやく口を開いた。 「セッコ」 To be continued…… 目次 続く
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朝靄の煙るヴェストリ広場、そこにヴァニラは一人佇む 正確には彼のスタンド「クリーム」も一緒なのだが常人の目には映らないうえにスタンドは本体と一心同体、故に彼は一人だった 元の世界、延いてはDIOの元へ帰るための頼みの綱だった――蜘蛛の糸よりも頼りないが、ルイズの渾名である「ゼロ」の意味を知り 、いつかルイズに見切りをつけることを視野にいれなければと考え、毎朝ルイズを起こす前に精神鍛錬をやるようにしていた。 少しでも早く、少しでも遠くへスタンドを飛ばせるように、それこそ自分と対峙した時のシルバーチャリオッツのように (だが当面の目標は・・・) 顔を動かさぬまま、そっと森の方へ視線を向ける (あの爬虫類をここから消し飛ばすことだな) 茂みから小さな炎と、つぶらな瞳がヴァニラを見つめていた 亜空の使い魔――ヴァニラの日常 鍛錬を終え、部屋に戻ると洗濯物をまとめて洗い場へ持っていく 心底嫌そうに下着を洗っているのを見られてからシエスタが代わりにやってくれているので洗濯籠に入れただけでまた部屋に戻ると、今度は未だに夢の中のルイズを起こす 「おい、朝だ。起きろ」 部屋の端から端までフッ飛ぶくらいに思いっきり蹴りを入れてやりたいところを自制し、少々力を込めて肩を揺さぶる 「う・・・・?」 しかしルイズは首を傾げるような仕草で寝返りを打つと毛布をすっぽりと被り、丸まってしまった。 今ここにマニッシュボウイがいればいいのに、などと物騒なことを考えながらヴァニラは溜息を吐くと無理やり毛布を剥ぎ取った 「な、なによ!なにごと!」 「朝だ、遅れるぞ」 ようやく起きたルイズに着替えを投げてよこすといい加減聞き飽きた愚痴をBGMに着替えが終わるのを待つ。正直、だるい 男であるDIOと比べるのもなんだがあまりに・・・・・貧相なルイズの着替えを見たところでヴァニラにとって何の慰めにもならない 彼の名誉のためにいっておくが別にアーッ!とかではない、念の為 着替えを終えたルイズに伴い食堂へ赴くと相変わらず貧相な食事をいそいそと平らげ、部屋に戻る振りをして厨房へと潜り込み賄を別けてもらう 念の為廊下の途中でクリームを使って姿を消しているので万が一ルイズに見つかる心配も無いだろう(途中で危うくコルベールの頭髪を消し飛ばしそうになったがばれなかったので気にしない) .... まともな朝食を終えると外に出て薪割を始める マルトーは別にいいといっているのだがヴァニラは妙な律儀さで毎朝食事の礼にと薪割りをしていた 一応手斧を借りはしたがそれは使わずクリームの手刀で次々と薪を割り、あっと言う間に一日分の煮炊きに必要な薪の山を築き上げるいくらスタンドが弱体化したとはいえ木材を裂く程度の力は残っていた 「・・・・またか」 気配を感じ、薪を縛り纏めながら視線を向けると建物の影から巨大な赤い蜥蜴が顔を覗かせている 最近気がつけば事あるごとにあの蜥蜴に見張られていた 誰の使い魔かは知らないが普通使い魔とは主の目や耳になるものらしいから恐らく何らかの目的で偵察をしているのだとヴァニラは推測していた (杖を消し飛ばした連中か、それともあのヌケサクの使い魔か・・・何れにせよまっとうな目的ではないだろうな) 気づいていない風を装い、マルトーに薪割が終わった事を告げるとルイズが食べ終わるよりも先に部屋に戻る 椅子に座ってDIOの無事を祈っていると何やら機嫌の悪そうなルイズが貴族にあるまじき悪態をつきながら戻ってきた 「どうした、何か面白い事でもあったか?」 「うるさいわね!あんたには関係ないでしょ!?」 ヴァニラが皮肉を込めて声を掛けるとルイズは悪鬼の形相で睨みつけ、喚くその答えにヴァニラはつまらなそうに肩を竦ませるが、授業の準備をしながらぶつぶつと繰り返される独り言からキュルケとかいう奴と何か一悶着あったらしいと察するが頻繁に聞く名前だけに毎度の事なのだろう (私に被害が及ぶようなら釘を刺しておきたいが・・・) しかし態々その相手を探し出して始末をつけるのは何となくルイズのために働くような気がして止めにした その判断があんな事態を招くなどと、その時は誰も気付きませんでした・・・ To Be Continued...