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カラッと晴れた夏のある日、私は自分の家の縁の下を覗いていた。 案の定、ゆっくりまりさが私の家の縁の下で、昼寝をしている。 この時期のゆっくり達は、こんな晴れた日は、涼しく風通しの良いところで昼寝をしていることが多い。 もうおわかりだろうが、私の趣味はゆっくりいじめだ、今日もゆっくりで遊ぶため、哀れな犠牲者を探していたのだ。 起こさないように気をつけながら、ゆっくりを引きずり出す。 しっかり寝ていることを確認してから、帽子を慎重に、取り上げる。 とりあえず、下準備は出来た。 起こさないよう、気をつけながらゆっくりまりさを元の場所に戻しておく。 とてもいい顔で寝ている、きっと楽しい夢でも見ているのだろう。 私は、ゆっくりまりさの帽子を持って、家の中に入る。 死んだゆっくりれいむの、髪飾りを縫い付けた帽子を返してやって、仲間達に嬲り殺しにされるのを見るのは楽しそうだ。 しかし、今回はそれはしない、まずはこの帽子をスーパー袋の中に入れる。 そして、三角コーナーの中に入っていた野菜や、カビの生えたパン、傷んだ挽肉、豆腐、納豆などを帽子の中に投入する。 最後に、カップラーメンの残り汁を帽子の中に注ぎ、よく割りばしでかき混ぜる。 スーパー袋の口を結んで、密閉された、透明な箱の中に入れておく。 準備が整うと、私は表に出てみた、思ったとおりゆっくりまりさが必死に何かを探している。 笑いを堪えながら、私はゆっくりに声をかける。 「やぁ、どうしたんだい?あまりゆっくりしていないけど。」 「まりさはゆっくりしてるよ!ほっといてね!」 おお、怖い怖い、だいぶイライラしているようだ。 「もしかして、帽子を無くしたのかい?」 「!!なくしてないよ!まりさはぼうしあるよ!」 見え透いた嘘を吐くゆっくりだ、懲らしめてやらねば。 「嘘はいけないなぁ、僕も協力して探してあげるよ。」 「それじゃあゆっくりさがしてね!」 あぁ、探してやるとも、ゆっくりとね。 しばらく探すふりをしていたが、そろそろ頃合いだろう。 何気ない風を装って、ゆっくりに話しかける。 「もしも帽子を無くしたんだったら大変だよね、仲間から苛められちゃうよ、このまま外にいたら危ないよね。」 「ゆっ!」 「生きたまま切り裂かれて、食べられちゃうよ。」 「ゆっ!いやだよしにたくないよ!ゆっくりしたいよ!」 顔を真っ青にして、首?いや、体を振っている。 「もしよかったら、僕の家に来たらどうかな?帽子は僕が探してきてあげるから、外にいるよりきっと安心だよ 帽子が見つかるまで、家でゆっくりしていきなよ。」 「ほんとう!じゃあおにいさんのいえでゆっくりしてあげるよ!」 相変わらず上から目線だな、それからしばらくの間、ゆっくりと生活を共にした。 しかし、このゆっくりは本当に腹立たしい奴だ。 口を開けば「ぼうしはみつけた!ゆっくりしてないでさがしてきてよ!」だの、「とっととごはんをよこしてね!」だ。 ゆっくりに感謝の気持ちなど望んではいないが、さすがにこれはイライラした。 しかし、ここで自制心を失って殺してしまっては面白くない。 当初の予定は、一週間かけるつもりだったが3日もすれば匂い、いや臭いがつくはずだ。 ゆっくりのウザさに3日間耐えたに耐えた私の心には、どす黒い何かが渦巻いている。 良し、今日こそゆっくりまりさに帽子を返してやろう。 3日ぶりに、ゆっくりまりさを外に出した、二人が初めて出会った時のようなすっきりとした晴天だ。 「まりさ、ついに君の帽子を見つけたよ。」 「ゆっ!ゆっくりしないではやくもってきてね!」 「それじゃぁ、取ってくるからゆっくり待っていてね。」 「ゆっくりまってるよ!」 ぴょんぴょん跳ねながら喜んでいる。 あぁ、今返してあげるからね。 ゴム手袋、マスクを装備して、あの禁断のスーパー袋の中のまりさの帽子を見てみる、マスク越しでも鼻が曲がるような臭いがする とりあえず、中の腐った食料を出す、まるでヘドロのような物体が出てきた。 帽子はというと、所々カビが生えており、色も茶色に変色している、この帽子を見てあのゆっくりがなんと言うか楽しみだ。 外で跳ねているゆっくりに、スーパー袋ごと帽子を投げつけてやった。 「ぎゅぅ!いたいし!くさいよ!なにするの!」 少々へこんだ体で、ぷくーと膨らんで怒りをあらわにしている。 無視して、ゆっくりまりさを押さえつけて、帽子をつかむゴム手袋とはいえ、触りたくないな。 「君はおっちょこちょいだからね、二度と無くさないように、帽子を体に縫い付けてあげるからね。」 「ゆ゛っ!まりさのぼうしはそんなにきたなくないよ!」 ゆっくりはどんなに汚くても、自分の飾りはすぐに分かる、本当に嘘つきなゆっくりだ。 「あはは、本当に君の帽子じゃないのかい?」 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ!う゛るざいゆっぐぅりだまれぇ!」 無視して、針と糸で体に帽子を縫い付ける。 「ぎゅ!ぎゅ!ぎゅ!いだい!いだいじぃぐざいよ!ばなじでゆっくりはなしで!」 「動くな、皮が破けて死ぬぞ。」 私の言葉が理解できたか分からないが、皮が破けないギリギリの力でひっぱてやると大人しくなった。 しっかり頭に帽子を固定できたか確認した後、軽く蹴り飛ばしてやった。 3日間、一緒に暮らしたゆっくりに、別れの言葉をかけてやろう。 「もう帽子を無くすんじゃないぞ、元気でな!」 「うるさい!じじいはゆっくりせずにすぐしんでね!」 ゆっくりまりさが、林の中へ逃げていく。 本当はもっといじめるつもりだったが、十分すっきりさせてもらった。 それに、私が直接手を下すより、あいつは野生で生きていく方がより苦しむだろう。 ゆっくりは意外に綺麗好きだ。 あんな薄汚い帽子をかぶったゆっくりはある意味、飾りなしのゆっくりより嫌われ迫害されるだろう。 ここ数日、ゆっくりの世話にかかりきりだった、今日はゆっくり休もう。 そんなことを思いながら 私は家に帰った。 臭い付きゆっくり(下)に続く。 後書き 今回は、虐待成分が少なかったので、すっきり!したかった方は、期待を裏切ってすみませんでした。 次回は、精神的に臭い付きをいじめたいと思います。 ちなみに、fuku1063ゆっくりカーニバル fuku1069ゆっくりカーニバル修正版 なども、書かせていただきました。 fuku1063ゆっくりカーニバルは、非常に読みにくいので、読んでいただけるのであれば fuku1069ゆっくりカーニバル修正版が、多少読みやすくなっていますので、こちらをお読みください。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutau2/pages/1885.html
カラッと晴れた夏のある日、私は自分の家の縁の下を覗いていた。 案の定、ゆっくりまりさが私の家の縁の下で、昼寝をしている。 この時期のゆっくり達は、こんな晴れた日は、涼しく風通しの良いところで昼寝をしていることが多い。 もうおわかりだろうが、私の趣味はゆっくりいじめだ、今日もゆっくりで遊ぶため、哀れな犠牲者を探していたのだ。 起こさないように気をつけながら、ゆっくりを引きずり出す。 しっかり寝ていることを確認してから、帽子を慎重に、取り上げる。 とりあえず、下準備は出来た。 起こさないよう、気をつけながらゆっくりまりさを元の場所に戻しておく。 とてもいい顔で寝ている、きっと楽しい夢でも見ているのだろう。 私は、ゆっくりまりさの帽子を持って、家の中に入る。 死んだゆっくりれいむの、髪飾りを縫い付けた帽子を返してやって、仲間達に嬲り殺しにされるのを見るのは楽しそうだ。 しかし、今回はそれはしない、まずはこの帽子をスーパー袋の中に入れる。 そして、三角コーナーの中に入っていた野菜や、カビの生えたパン、傷んだ挽肉、豆腐、納豆などを帽子の中に投入する。 最後に、カップラーメンの残り汁を帽子の中に注ぎ、よく割りばしでかき混ぜる。 スーパー袋の口を結んで、密閉された、透明な箱の中に入れておく。 準備が整うと、私は表に出てみた、思ったとおりゆっくりまりさが必死に何かを探している。 笑いを堪えながら、私はゆっくりに声をかける。 「やぁ、どうしたんだい?あまりゆっくりしていないけど。」 「まりさはゆっくりしてるよ!ほっといてね!」 おお、怖い怖い、だいぶイライラしているようだ。 「もしかして、帽子を無くしたのかい?」 「!!なくしてないよ!まりさはぼうしあるよ!」 見え透いた嘘を吐くゆっくりだ、懲らしめてやらねば。 「嘘はいけないなぁ、僕も協力して探してあげるよ。」 「それじゃあゆっくりさがしてね!」 あぁ、探してやるとも、ゆっくりとね。 しばらく探すふりをしていたが、そろそろ頃合いだろう。 何気ない風を装って、ゆっくりに話しかける。 「もしも帽子を無くしたんだったら大変だよね、仲間から苛められちゃうよ、このまま外にいたら危ないよね。」 「ゆっ!」 「生きたまま切り裂かれて、食べられちゃうよ。」 「ゆっ!いやだよしにたくないよ!ゆっくりしたいよ!」 顔を真っ青にして、首?いや、体を振っている。 「もしよかったら、僕の家に来たらどうかな?帽子は僕が探してきてあげるから、外にいるよりきっと安心だよ 帽子が見つかるまで、家でゆっくりしていきなよ。」 「ほんとう!じゃあおにいさんのいえでゆっくりしてあげるよ!」 相変わらず上から目線だな、それからしばらくの間、ゆっくりと生活を共にした。 しかし、このゆっくりは本当に腹立たしい奴だ。 口を開けば「ぼうしはみつけた!ゆっくりしてないでさがしてきてよ!」だの、「とっととごはんをよこしてね!」だ。 ゆっくりに感謝の気持ちなど望んではいないが、さすがにこれはイライラした。 しかし、ここで自制心を失って殺してしまっては面白くない。 当初の予定は、一週間かけるつもりだったが3日もすれば匂い、いや臭いがつくはずだ。 ゆっくりのウザさに3日間耐えたに耐えた私の心には、どす黒い何かが渦巻いている。 良し、今日こそゆっくりまりさに帽子を返してやろう。 3日ぶりに、ゆっくりまりさを外に出した、二人が初めて出会った時のようなすっきりとした晴天だ。 「まりさ、ついに君の帽子を見つけたよ。」 「ゆっ!ゆっくりしないではやくもってきてね!」 「それじゃぁ、取ってくるからゆっくり待っていてね。」 「ゆっくりまってるよ!」 ぴょんぴょん跳ねながら喜んでいる。 あぁ、今返してあげるからね。 ゴム手袋、マスクを装備して、あの禁断のスーパー袋の中のまりさの帽子を見てみる、マスク越しでも鼻が曲がるような臭いがする とりあえず、中の腐った食料を出す、まるでヘドロのような物体が出てきた。 帽子はというと、所々カビが生えており、色も茶色に変色している、この帽子を見てあのゆっくりがなんと言うか楽しみだ。 外で跳ねているゆっくりに、スーパー袋ごと帽子を投げつけてやった。 「ぎゅぅ!いたいし!くさいよ!なにするの!」 少々へこんだ体で、ぷくーと膨らんで怒りをあらわにしている。 無視して、ゆっくりまりさを押さえつけて、帽子をつかむゴム手袋とはいえ、触りたくないな。 「君はおっちょこちょいだからね、二度と無くさないように、帽子を体に縫い付けてあげるからね。」 「ゆ゛っ!まりさのぼうしはそんなにきたなくないよ!」 ゆっくりはどんなに汚くても、自分の飾りはすぐに分かる、本当に嘘つきなゆっくりだ。 「あはは、本当に君の帽子じゃないのかい?」 「ゆ゛ぅ゛ぅ゛ぅ!う゛るざいゆっぐぅりだまれぇ!」 無視して、針と糸で体に帽子を縫い付ける。 「ぎゅ!ぎゅ!ぎゅ!いだい!いだいじぃぐざいよ!ばなじでゆっくりはなしで!」 「動くな、皮が破けて死ぬぞ。」 私の言葉が理解できたか分からないが、皮が破けないギリギリの力でひっぱてやると大人しくなった。 しっかり頭に帽子を固定できたか確認した後、軽く蹴り飛ばしてやった。 3日間、一緒に暮らしたゆっくりに、別れの言葉をかけてやろう。 「もう帽子を無くすんじゃないぞ、元気でな!」 「うるさい!じじいはゆっくりせずにすぐしんでね!」 ゆっくりまりさが、林の中へ逃げていく。 本当はもっといじめるつもりだったが、十分すっきりさせてもらった。 それに、私が直接手を下すより、あいつは野生で生きていく方がより苦しむだろう。 ゆっくりは意外に綺麗好きだ。 あんな薄汚い帽子をかぶったゆっくりはある意味、飾りなしのゆっくりより嫌われ迫害されるだろう。 ここ数日、ゆっくりの世話にかかりきりだった、今日はゆっくり休もう。 そんなことを思いながら 私は家に帰った。 臭い付きゆっくり(下)?に続く。 後書き 今回は、虐待成分が少なかったので、すっきり!したかった方は、期待を裏切ってすみませんでした。 次回は、精神的に臭い付きをいじめたいと思います。 ちなみに、fuku1063ゆっくりカーニバル fuku1069ゆっくりカーニバル修正版 なども、書かせていただきました。 fuku1063ゆっくりカーニバルは、非常に読みにくいので、読んでいただけるのであれば fuku1069ゆっくりカーニバル修正版が、多少読みやすくなっていますので、こちらをお読みください。 このSSに感想を付ける
https://w.atwiki.jp/vip_oreimo/pages/90.html
30 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 05 36.45 ID dtuFfnRW0 身体が左右に軽く揺れる感覚。 ああ、違う。俺が揺れているんじゃなく、誰かに揺らされているのか。 そして、俺はこの手を知っている。 「起きてください、京介さん。もうお昼ですよ?」 「うっ、眩しいな……おはよう、沙織」 「はい、おはようございます、……アナタ」 言って沙織は頬を赤らめた。 こっちだってまだその呼ばれ方には慣れちゃいなかった。 とは言え、恥ずかしいなら止めれば良い、なんて口が裂けても言えやしない。 そう、俺こと高坂京介と槙島沙織は1週間前、めでたく結ばれ、契りを交わした。 31 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 11 08.19 ID dtuFfnRW0 「あ゙ー、寝すぎた」 俺は頭をポリポリと掻きながらあくびをかみ殺し、ベッドから這い出た。 枕元に置いてあるデジタルの目覚まし時計は11時を示している。 「昨日は遅くまでお仕事でしたから」 沙織はそこで一旦区切って続けた。 「さ、少し遅いですけれど、朝ごはんの用意ができております」 「ありがたいねえ。今日は真っ黒なトーストじゃないだろうな?」 「もう、京介さんったら……」 沙織はあまり料理が上手ではなかった。 中学の頃から親元を離れて暮らしていたと聞いていたので 正直期待していたと言えば嘘になる。 が、本人は至って真面目にやっている。 まだお互い若いんだし、これからいくらでも上達するだろうよ。 32 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 17 28.90 ID dtuFfnRW0 ダイニングのテーブルには、サラダ、トースト、卵焼きと シンプルながらヘルシーな朝食が用意されていた。 「おっ、美味そう」 「見た目だけじゃありませんよ?」 まだ先ほどからかった事を気にしているのか、少し頬を膨らませ 責めるようなジト目で、沙織はこちらを見ている。 「んじゃ味わってみますか」 そうして俺達は、いただきますと手を合わせて遅めの朝食を摂る運びとなった。 「お、んまい」 「そ、そうでしょう!?」 沙織は強がってはいるが明らかに嬉しそうにこちらを見ている。 同時に安心もしているようだ。やれやれ、そんなに気にする事もないんだがなあ。 まぁ俺がからかうのがいけないんだろうが……沙織が可愛いからつい、な。 33 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 20 49.23 ID dtuFfnRW0 「あー、そう言えば今日って……」 「はい、そうですよ。桐乃ちゃんと、瑠璃ちゃんが来ます」 やはりそうだったか。 「? なぜそんなに嫌そうな顔をしていらっしゃるのですか?」 「いや、そんな顔してたか、俺?」 「はい、それはもう」 嬉しそうに言われても反応に困る。 「嫌って事はないけどさ……昨日の残業で疲れてるからかなあ」 「ふふっ」 「何笑ってるんだ?」 「いえ、相変わらず素直ではないのですね」 放っておけ。 ああ、今確実は俺は嫌そうな顔をしているな。 沙織をからかうのは好きだが、その逆は嫌いなのである。 贅沢者め。 34 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 25 29.64 ID dtuFfnRW0 そんなこんなで和気藹々と朝食を食べ終わり、後片付け。 料理は沙織がやると言って聞かないので、 せめて皿洗いは俺が担当する事にしている。 「……」 「……」 「……」 「……あー、沙織」 「は、はいっ!?」 「いつも言っているが、あんまりジロジロ見るなよ」 「な、なぜお分かりになるのでしょう……」 視線なんて物理的には何もないようなものだが刺さるものは刺さる。 沙織の料理の腕があまり良くないと言った俺だが 俺自身、家事が得意な訳ではない。 だから監視されているような気分になってしまうのだ。 しかし沙織にはカッコイイとこだけ見せたいので、 皿を洗うところを見られるのは正直居心地が悪い。 37 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 30 04.17 ID dtuFfnRW0 「そうは仰いますが」 キュッとお湯を止め、手を拭いて皿洗い終了。 「男の方がキッチンにいる姿を見るのは……なんと申しますか、心がぽかぽかします」 「な……」 恥ずかしがり屋のくせに、こういう台詞を臆面もなく本人に言えるのは やはり沙織がお嬢様だからなんだろうか? 「でもまぁ、確かに、沙織がキッチンで料理作ってるの見ると、イイなぁと思っちまうのと同じか」 「そ、そんな事を思っていらしたのですか?」 沙織は顔を紅くして下を向いてしまった。 ふっ。俺を照れされた報いよ。 「でも」 俯いたまま、ボソッと呟くように。 「そう思って頂けて、とても嬉しいです」 カウンターで真っ赤になったのは俺の方だった。 38 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 39 02.52 ID dtuFfnRW0 気まずいような、くすぐったいような沈黙を破ったのは携帯電話の振動だ。 「沙織、鳴ってるぞ」 「はい。メールですね……あ、桐乃ちゃんからです」 そう言えば、沙織は今では桐乃と瑠璃(黒猫の事だ)を本名で呼ぶようになった。 何ヶ月か前にいつものメンバー4人で集まって俺達が結婚する事を決めた時からだと思う。 『きりりん氏、黒猫氏。今日はお2人にどうしても報告せねばならない事がございます』 そう言って、沙織は牛乳瓶の底のような眼鏡を外し、居住まいを正して。 『私、槙島沙織は高坂京介さんと結婚する事になりました』 本当は男である俺の口から言うべきなんじゃないかと俺は2回ほど沙織に念を押した。 が、沙織は頑として譲らなかった。 桐乃と黒猫の表情は、硬かった。 沈黙が部屋を占拠して、息をするのも苦しかった。 「……そう」 39 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 44 37.79 ID dtuFfnRW0 まず口を開いたのは、黒猫だった。 『まぁ、貴方達が付き合っていたのは知っていたから、 いつかこういう日が来るのかしらとは、思っていたけれど』 しかしそう言ったきり、また口を閉ざしてしまう。 そしては桐乃は。 『……』 少し肩が震えているようだった。 前髪から覗く額や目の周りはやや青みがかっているようなのに 頬や耳は紅潮しているかのように見えた。 膝の上に載せられた小さな拳は真っ白になるほど強く握られていた。 沙織は口を開かず、ただ、手を床について、下を見ている。 どのくらい時間がたったのか。ようやく口を開いた桐乃から発せられた言葉は 殺気さえ孕んだような 『おめでとう』 の一言だった。 40 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 50 27.20 ID dtuFfnRW0 そして一拍の間をおいて、桐乃は立ち上がり、俺を指差して叫んだのだった。 『今からこの部屋は女子専用! 男のアンタは出てって!』 『な、なんだと?』 『良いから出ていきなさいよ!変態!キモっ!ウザっ!』 『お、お前なぁ……』 救いを求めるように黒猫に視線を移したが、黒猫はため息を1つ零すと 桐乃に同調するように言った。 『そうね、貴方は今すぐにこの部屋から、いえ、この家から消えなさい。それが身のためよ』 『く、黒猫……?』 『京介さん、私からもお願いです。話が終わりましたら連絡いたしますので』 沙織にまでそう言われてはどうしようもない。 俺は財布と携帯電話だけ掴んで家を出た。 雰囲気が雰囲気なら、ガールズトークってヤツで盛り上がるんだろうけど そんな空気とは無縁だったよな……沙織、大丈夫かな。 41 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 51 30.15 ID GLfiHVi4O 妹を心から愛している俺にとってはこの作品のアニメ化には憤りを隠せない 仮にけいおん並みに流行ってしまったら マスゴミの影響で妹ブームなるものが来てしまう 「妹」というジャンルの投げ売りはやめて貰いたいね。 そして世の中には「妹萌えーwww」とかほざくリア充や妹系を自称するスイーツ(笑)どもで溢れかえる 俺が妹に告白しても「どうせあのアニメの影響でしょ?」の一言で一蹴されてしまう。 俺は生まれる前から妹を愛しているのに…… 俺の愛を貰ってお腹をぷっくりと膨らませた妹が枕元でちょこんとおすまししている―そんな未来を描く俺の夢は―今ここに潰えた…… 42 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 17 55 17.36 ID dtuFfnRW0 行くアテもなく、しかし、俺は思い当たって、歩を進めた。 そこは一軒の和菓子屋。幼馴染の家だった。 『あら、京介ちゃん』 出迎えてくれたのは麻奈実のお母さん。この人も昔から俺に良くしてくれた。 『麻奈美ー、京介ちゃんよー』 大きな声で愛娘を呼び出すおばさんの姿に俺は何か一抹の寂しさを覚えてしまった。 『あ……きょうちゃん……』 『よぉ。ちょっと話がしたくてさ。今、時間あるか?』 『うん』 通されたのは居間。もう昔のように部屋になんて上がれない。 『単刀直入に言うぞ。俺、今度沙織と結婚する』 『そっか……』 返事をする麻奈美の目にはうっすらと光るものがあった。 43 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 18 01 07.43 ID dtuFfnRW0 俺は幼馴染の見せた涙に何も言う事はできなかった。 しかし、麻奈美は涙を溜めたまま、笑顔でおめでとうと言ってくれた。 あの妹とは大違いだぜ。全く。爪の垢を煎じて飲ませてやりたいね。 『でも、ごめん、きょうちゃん。今日は帰って……?』 『……わかった。その、元気でな』 『うん、きょうちゃんも。沙織さんと、お幸せにね。結婚式には絶対呼んでね』 小さく、ハッキリと頷いて居間の戸を滑らせるとそこには麻奈美の弟、岩男がいた。 『何してんだ、お前は……』 『な、なんでも!』 そう言って岩男は2階へと駆け上がってしまった。 『なんだってんだ、アイツは……』 『あ、あとで私から叱っておくよ』 『はは、お手柔らかにな』 『うん』 そうして俺は田村屋を後にした。 もう裏の玄関から入ることはないのかもしれんと思うと寂寥感は拭えそうになかった。 44 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 18 08 46.90 ID dtuFfnRW0 結局、沙織からメールが来た頃には日付が変わっていた。 終電も終わってしまったという事で、沙織は俺の家にそのまま泊まるらしい。 が、俺の帰宅は果たして認めてもらえず、俺はファミレスから 駅前の漫画喫茶への移動を余儀なくされた。 一体、何を話しているのかねえ。 沙織へのメールの裏で、黒猫にメールを送った。 『To 黒猫 From 京介 なぁ、沙織を2人でいじめたりとかそういう事はないよな?』 すぐに返信がくる。 『To 京介 From 黒猫 貴方は銀河の果てまで吹き飛ばされてしまえば良いのに』 おいおい! 何いきなり怖い事を口走ってんだよ! 『To 京介 From 黒猫 冗談よ。安心しなさい。3人で思い出に浸っているだけだから』 ふーん、まぁ確かにそういう話って時々時間を忘れるよな。 でも、俺が帰ってはいけない理由にはならないと思うんだが……。 45 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 18 20 12.72 ID dtuFfnRW0 翌朝、朝8時。ようやく出た帰宅許可だったが、 慣れない寝床で夜を越した俺にはなかなかキツイ。 『京介さん、ごめんなさいね』 『お前が謝る事じゃないだろ、沙織』 ごめんとは口にした沙織だが、その顔は裏腹に明るい。 桐乃、黒猫も、まるで一睡もせずに泣き明かしたかのような ひどい顔だったが、昨日俺を追い出した時よりは 幾分スッキリしているような印象だった。 そしてあの晩を境に、沙織は、あのぐるぐる眼鏡を止めた。 ついでに呼び方も変わった。 とは言え、あの美人顔でオタクな発言をされると ギャップに少々驚いてしまうのだが、そこは勘弁してもらおう。 「京介さん?」 「ああ、悪い。ちょっとボーっとしてた。で、黒猫のやつ、なんだって?」 瑠璃ですよ、と言って沙織は続けた。 「2人は夕方になるそうです。私の手料理を楽しみにしている、とも」 「そりゃ、気合入れて夕飯準備しないとな」 はい。と嬉しそうに頷いた沙織の顔にはやる気が満ち溢れているようだった。 46 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 18 29 09.45 ID dtuFfnRW0 結婚して1週間。いまだ新居は綺麗なままの新居……などと思ってもらっては困る。 むしろかなり散らかっている。 と言ってもこれは沙織が掃除のできないヤツ、という訳ではないし、 俺が脱いだ服をその辺に投げている訳でもない。 沙織が相当なお嬢様というだけあって、結婚式はかなり盛大なものだった。 いやすまん。かなりどころか、とても盛大なものだった。 この年になるとチラホラ友人の結婚式に呼ばれるからその違いはハッキリ分かる。 最近は紙切れを提出し、結婚を報告する葉書だけで終わらせるような カップルも少なくないというのに、両家の親戚連中はもちろん、 お義父さん(いまだにそんな軽々しく呼べない)の仕事関係の友人たち そして奔放初のお披露目となった沙織の姉であるところの『香織』さん。 新婦側の多さに、あの、うちの親父ですら軽くビビっていたのはここだけの話である。 そう言えば、香織さんと言えば、かつて沙織が『コスプレ』した『元キャラ』で、 当時、そのコスプレはサバイバルゲームをたしなむ男勝りってな感じの印象だったが 実際目の当たりにしたその人はやはり沙織並に整った目鼻立ちをしており しかし、豪快で竹を割ったような性格をしていた。 47 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 18 35 47.19 ID dtuFfnRW0 話がやや逸れたように思われるかもしれないが、ちゃんと繋がっている。 要は、結婚式に出席してくれた方々からの贈り物の数が尋常ではなかったのだ。 これがかつて沙織が住んでいた、両親所有のマンションなら まだ『倉庫』もあっただろうが、ここは若い2人にありがちな新居で、ぶっちゃけそんなに広くない。 それでも2LDKなのだから世間の平均にしたら広い方だと思うんだけどな。 しかし、この荷物の山を収めるには手狭。圧倒的、あるいは致命的に場所がない。 加えて共働きしているため荷解きも満足に行えていない状況だ。 「……このままじゃ、アイツらが寝るところねーな」 「あら? 泊まって頂くんですか?」 「お前だって最初からそのつもりだろうに」 京介さんは何でもお見通しなんですね、と沙織ははにかんだ。 当然だろ。お前の事だからな。まるっとお見通しよ。 48 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 18 40 50.79 ID dtuFfnRW0 かくして荷解きと片づけが始まった。 さすがにアイツらと同じ部屋では寝れないからな。 まぁ、最悪。女性陣3人は寝室。俺はリビングに寝れば良いんだけどな。 どちらにせよ、できるだけ早くやらなければならないタスクである。 そもそも何を頂いたのかすら把握しきれていない現状もヤバイしな。 基本的に贈り物は沙織向けのものが多かった。 食器類、貴金属や宝石などのアクセサリー(俺が買った指輪より高いんじゃないか?)、そして、 「ベビーベッドって……気が早すぎんだろオイ」 「あらあら。期待されていますのね」 言いながら赤面している沙織である。 言わなきゃ良いのに。 まぁ、俺まで恥ずかしいから、なんだが。 49 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 18 49 30.14 ID dtuFfnRW0 でも、そうなんだよな。 結婚したからには、そりゃいつかは子どもを作る訳で。 自然な事だよね。いやそうなんだけどね。 脳裏に浮かぶのは去年の夏。 デートで海へ行ったのだが……。 『きょ、京介さん』 『お、遅かった……な!?』 『申し訳ありません……あまり慣れておりませんで……』 そこにいたのは美の化身かと見まがうばかりに神々しささえある沙織の姿だった。 ビキニではなかった。ちょっと期待してたんだけどね! しかしそんな事が瑣末に思えるほど、沙織の水着姿は完璧だった。 水色のワンピースに短いパレオを腰から巻いている。 パレオが作り出すスリットからすらりと伸びた白くて綺麗な脚は 程よい太さで美しい曲線を描いていたし、 大きく開いた背中は透き通るように美しいし、 極め付けに窮屈そうにしている胸ははちきれそうなのだ。 50 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 18 54 09.05 ID dtuFfnRW0 『ど、どうでしょう?』 どうでしょうって。どうでしょうってお前さん。そりゃ最高としか言えないよ。 この時ばかりは自分の語彙の少なさを呪ったね。 『ありがとうございます』 照れてはにかむ沙織の姿はビーチのマドンナ(死語)だった。 ただ、他の男に見せたくなかったので、 もう2度と公共の海水浴場には行かない事にしたけどね。 そう。そんな沙織を抱く? うわあ。思い浮かべるだけでヤバイぜ。 今日はこれから桐乃たちが来るんだからそれどころじゃないってのに。 「京介さん?」 「はいっ!!?」 突然呼ばれて声を裏返らせた俺を見て沙織は吹き出した。 「どうしたんですか? 手が止まっていますよ?」 「悪い悪い……頑張るよ」 全く、頑張って雑念を払わないとな。 精を出すのは片付けだけにしろってな。 59 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 21 13 23.90 ID dtuFfnRW0 1つ1つ包みを開封して中身を確認しては沙織に確認を取り 用途ごとに振り分けていく。 しっかし一体いくつあるんだろうねえ。 今日一日、いや半日で終わるのか怪しいもんだ。 「あら?」 「どうかしたか?」 「い、いえ、なんでもありませんわ」 沙織は箱のフタをそっと載せ、小走りに隣の部屋へ駆けて行く。 「?」 おっとこうしちゃいられん。さっさと片づけを進めないとな。 これもアクセサリーかよ。ダイヤにプラチナ? しかも揃いでネックレスまで。 なんだかなぁ。自信なくなっちまうぜ、ホント。 あの時の事をちょっと思い出すな。 それは、そう。初めて沙織のご両親、槙島夫妻に会った時の事だ。 本当の金持ちは上ではなく、横にでかい家に住む。とは誰が言ったのだろう。 槙島家はまさしくそんな家だった。 こんなのゲームや映画の世界にしか存在しないとさえ思っていたんだけどな。 63 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 21 58 50.94 ID dtuFfnRW0 『さ、お入りください』 威容に圧倒されている俺の手を引いて門をくぐる沙織の手はひんやりと冷たくて 変に昂ぶっている俺の気持ちを少しだけ冷静にしてくれた。 まず玄関のドアを開けると広いエントランスが、なんて事はなかったが、 日本特有の狭小住宅と明らかに違う、ゆとりある空間の使い方だ。 調度品も全然厭味がなくて落ち着いた雰囲気を作り上げている。 そうか、こういう家に生まれると沙織みたいな子が育つのか、 なんて事を考えてしまうあたり、平常心とは言えない。 『高坂様、ようこそいらっしゃいました。どうぞこちらへ』 なんとリアルメイドの登場だ。いるところにはいるもんだねえ。 と感心している横で沙織は少し不機嫌気味だ。 『沙織? どうしたんだ?』 『いえ……』 否定する沙織だったが、明らかに怒っている。 これはハッキリ言ってかなり珍しい事だった。 65 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 22 48 53.46 ID dtuFfnRW0 ドアを開けるとそこには気立ての良さそうな婦人と、 穏やかな表情のナイスミドルが座っていた。 『これはこれは。よくいらっしゃいました。沙織の母でございます』 『ど、どうも。お初にお目にかかります。私は、こ、高坂京介と、申します』 『あらあら。硬くならないでよろしいんですのよ』 『そうとも。娘から良く話は聞いている。自分の家だと思ってくつろいでくれたまえ』 こういうシチュエーションでは大概父親は良い顔をしないもんだと思っていたが どうやらそれは杞憂だったらしい。 少なくとも表面上は歓迎ムードなようだった。が沙織が噛み付いた。 『お父様、お母様! お客様が来たのに自分たちが迎えに来ないのはいかがなものでしょう?』 なるほど、さっきちょっと憤慨しているように見えたのはそういう事か……。 割とそういうトコ気にするんだな。 『お、おい。俺、いや私のことは良いから』 『良くありませんわ。京介さんは私の大切な彼氏なのですから!』 一瞬、空気が固まった。 『まあまあ。うふふ』 『はっはっは。大切な、か。見せ付けてくれる』 当の俺と沙織はゆでだこか、もしくは加熱したエビみたいに真っ赤だった。 67 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 03 07.76 ID dtuFfnRW0 それからは完全に会話の主導権を掴んだご両親のペースだ。 なんだか喋らなくて良い事までお互い口にしてしまった気がする。 そして意外だったのは 『私たちも、年をとった。香織は年に1回帰国するかしないかだからね』 『ええ。だから子どもは早めにお願いしますね。孫を抱くのが今の私たちの生きがいなのですから』 という発言だ。どうやらすっかり結婚するものと決め込んでいる。 ただ、俺はその時、一瞬だけ垣間見たのだ。 お義父さんの目が光ったのを。 娘を幸せにするだけの覚悟と経済的、社会的、社交的な力量。 当然それらを持ち合わせた上で娘と付き合っているんだろうな、と。 釘を刺されたように感じた。 圧倒的に持っている者の、言外の恫喝に、俺は身震いした。 68 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 17 03.17 ID dtuFfnRW0 沙織は、正真正銘のお嬢様で、俺は中流家庭の平民。 選ぼうと思えばいくらでも稼ぎの良い男、家柄の良い男がいるはずだ。 それでもコイツは俺を選んでくれる、と思う。 そう疑わないだけの時間、10年近い時間を一緒に過ごして、乗り越えてきたんだ。 じゃあ俺はそれに応えられるのか。心身を引き締めずにはいられなかった。 ふと気づくと、沙織が俺を見ていた。 『どうかしたのか?』 そう聞くと沙織はふるふると顔を小さく横に振って微笑んだ。 『私の使っていた部屋がありますわ。よろしければご覧になりませんか?』 『おお、そりゃ是非ともお願いしたいね』 『では参りましょう』 嬉しそうに俺の手首を掴む沙織の姿に、俺はコイツを幸せにしてやると、改めて強く思ったものだ。 69 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 21 50.93 ID dtuFfnRW0 「……懐かしいなあ……」 なんだかんだ言って良いご両親だ。 お義父さんボロ泣きしてたもんな。 「京介さん」 「んー、どうかした、か……?」 突然沙織の声に呼ばれて振り返ると、そこには綺麗なドレスを着たお姫様が立っていた。 「おま、その格好……」 「ふふ。どうです? 贈り物に入っていたのです」 ワインレッドのベルベッドに身を包む彼女はまるで女神だ。 流れるようなラインが沙織のスタイルの良さを上品に、そして強烈に表現している。 「すげー似合うぜ。ドレスも良いけど、やっぱ中身が最高だから」 「もうっ、京介さんったら……」 なんとなく、そんな格好をした沙織を見ていると。 なんとなく、1週間前の事を思い出して。 なんとなく、沙織の目が潤んで。 71 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 30 25.35 ID dtuFfnRW0 「沙織」 「はい」 「好きだ」 「私もです、京介さん」 なんとなく。 沙織の柔らかな唇に、唇を重ねた。 やがて、ほうっと息を漏らして沙織が離れた。 心臓が仕事しすぎなんじゃないかと心配になるくらい左胸の鼓動がヤバイ。 お互いに心なしか息が荒くなっている気がする。 「沙織……」 名前を呼んで、肩をつかむ。 ビクッと小さく震えて、けれどすぐに力が抜けて。 「……沙織……」 「京介さん……」 ピンポーーーーーーーーーーーーーーーーン 「…………あ゙?」 水を差された状況とは逆に、俺の怒りはMAXで燃え上がってしまったが致し方ない。 沙織はあからさまにガッカリした顔になっている。これはこれで珍しい。 73 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 38 00.42 ID dtuFfnRW0 俺は観念してカメラ付きインターホンを付けるとそこにいたのは例の2人だった。 『げっ』 「人ん家に来て第一声がそれか。早かったな」 『早いって……もう4時過ぎてるじゃん』 あれ? まだ15時前くらいかと思っていたがそんな事はなかったぜ。 『それで、いつになったら開けてもらえるのかしら、このオートロック?』 「ああ悪い。今開けるよ。ほいっ」 『全く』 それからややあって、玄関のベルが鳴る。 「よう、よく来たな」 「はぁ? 別にアンタに会いに来た訳じゃないし。ていうか早くどいてよ」 「……」 なんだろうね。コイツのこの態度は。なんだか昔を思い出すねえ。 懐かしくて涙が出そうだぜ。 74 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 44 40.02 ID dtuFfnRW0 「黒猫も、いらっしゃい」 「ええ。1週間ぶりね。と言ってもあの時はほとんど話もできなかったけれど」 2次会はあったが、どっちかと言うと新郎新婦の友人たちと騒ぐって言うより 新婦の関係者による質問攻めと、新郎の品定めみたいなものになったのは嫌な記憶だ。 「2人ともいらっしゃい。桐乃ちゃん、瑠璃ちゃん。来てくださって嬉しいです」 「沙織!」 俺が応対している間に先ほどのドレスを着替えた沙織が奥から出てきた。 そんな沙織を見るなり桐乃と黒猫は駆け寄った。 「沙織、大丈夫? あの男に変なもん食わされてない? いびられてない?」 「貴女の事だから大丈夫だと思うけれど、何かあったらすぐ連絡するのよ」 「いやだ、2人ったらもう……」 「いやいやいや。お前らなんつー会話してんだよ」 なんだか放っておくと話がエスカレートしそうな空気だったのですかさず止めに入る。 と、桐乃は気の立った猫のようにこちらを睨んだ。 「あのねー。何? この散らかりよう。沙織に家事押し付けて、 自分はふんぞり返ってんじゃないでしょうね」 「そっ、そんな事しねーよ! 俺だって皿とか洗ってる!」 「あーやだやだ。マジキモイ。何? それくらいで得意面? 自慢ですかぁ?」 「ぐっ……」 相変わらずコイツは人の神経逆撫でするのが上手いよなぁ! 75 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 53 09.64 ID dtuFfnRW0 「口を動かすより手を動かした方が良いわね。沙織、手伝うわよ」 「あ、アタシもアタシもー」 「2人とも、ありがとうございます。助かりますわ」 そんな訳で我が家の初めての客に家の掃除を手伝わせると言う なかなか申し訳なくもあり、情けなくもある状況になってしまったのだが ぶつくさ文句を言いながらもしっかりやってくれる桐乃に 黙々と手を動かす黒猫の2人を見ていると良いコンビだと心底思う。 ……ただ途中途中で、高価なものを見る度に こっちを一瞥しては嘲笑するのが癪に障ったけどな。 そして夕食。沙織は宣言どおり、料理の腕を振舞った。 結果としては……満点とはいかなかったが、2人の先生からは 及第点ギリギリをもらったとだけ言っておこうか。 いや、別に不味い訳じゃないんだよ? マズメシ嫁なんかじゃないからな? 76 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 57 51.80 ID dtuFfnRW0 で、その後は宴会になった。 桐乃はあんまり酒に強くない。良く笑うし、良く泣く。そう、泣く。 普段絶対人前で泣いたりしないヤツなのに、だ。 あやせが初めて桐乃と飲んだ時の動揺っぷりと言ったらなかったね。 ちなみに翌日には綺麗さっぱり忘れるから始末が悪い。 黒猫もあまり強くないらしい、が、ペースと量を弁えているので 桐乃のようにハメを外しすぎる事がない。 ある意味一緒に酒を飲むなら一番適任だろうな。 一番って沙織はどうしたって? アイツはダメだ。完璧超人の旧姓・槙島沙織だが、やはり人には欠点があるもので。 沙織は、酒の量が一定のラインを超えると、脱ぐんだよ。 いや止めるのにマジで苦労するんだ……。 本人分かってるのに、結構酒が好きみたいでな。 俺? 俺はまぁ普通だよ。テンションが上がるだけ。 面白味がないとか言うな。軽く凹む。 78 以下、名無しにか - 2010/11/10(水) 23 59 25.64 ID dtuFfnRW0 まぁ、そんな訳で、こんな4人が宴会である。 到底人様には(特に槙島家の関係者)見せられない様相だ。 「ちょっと、そこの変態! 今パンツ見たでしょ!」 「見てねぇ!」 「京介さぁん……聞き捨てならないですぅ……」 「沙織! 脱ぐな!」 「じゃあアタシが脱ぐ!」 「意味が分からんわ!」 「貴方が脱ぐなら私も脱ぐわよ」 「ぐぬぬ……それはヤバイわね……」 何がどうヤバイんだ。いや確かにヤバイけどな。 しかし見ていると酔った桐乃を黒猫は割りと上手にいなしているように見えた。 「きょーすけさーーん! もーう、ろこみれるんれすかぁー」 「うわわわ、沙織! バカ! 桐乃たちが見てんだろ!」 「らーってぇー」 本当に黒猫がいなかったらどうなってたのやら……マジで恩に切るぜ。 79 以下、名無しにか - 2010/11/11(木) 00 00 11.74 ID vLAorgNV0 そんな乱痴気騒ぎは日付が変わっても続き、ようやく収束したのは午前も2時を過ぎた頃だった。 結局半裸になって倒れた沙織と桐乃を寝室にぶち込み、酒臭いリビングに戻ると 黒猫がソファにちんまりと座ってこちらを見上げていた。 「2人は?」 「ぐっすり寝てやがるよ。いい気なもんだ」 「そう」 「今日はサンキュな。お前がいたおかげで地獄の一歩手前で済んだ気がするぜ」 そう、と黒猫は落ち着いた声だった。 「お前は、あんまり楽しめなかったか?」 「いえ、そんな事ないわ。私がお酒を飲むのは貴方達とだけよ」 「ははっ、そりゃ光栄だ」 ほんのり朱が差したような頬。20を過ぎてなお、コイツの肌は桐乃の折り紙付きだ。 「沙織は」 「ん?」 「とても、幸せそうね」 「……お前にそう見えるんなら、嬉しいね」 80 以下、名無しにか - 2010/11/11(木) 00 01 35.44 ID dtuFfnRW0 しんみりと、そしてしっとりした空気だ。 これは黒猫の人格に依るものだろうか。 コイツといると、昔から落ち着くのだ。不思議と、優しい気持ちになる。 「ねぇ」 「なんだ?」 「なぜ、あの時――」 そこまで言い掛けて、しかし、黒猫は 「いえ、なんでもないわ」 「お、おい。そこまで言っておいて」 「私もそろそろ寝ようかしら。貴方も寝たら? 明日も仕事なのでしょう?」 そう、日曜だが明日も仕事だ。正確には明日じゃなくて今日だけどな。 「ま、追求しても言いそうにないしな。寝るか」 「私と一緒に?」 「……バカヤロー」 「……冗談よ」 知ってるよ。 冗談じゃないって事はな。 「じゃあ、おやすみ、黒猫。いや、瑠璃」 少しだけ目を見開いて、黒猫はそっと微笑んだ。 「ええ、おやすみなさい。京介」 81 以下、名無しにか - 2010/11/11(木) 00 03 24.04 ID vLAorgNV0 朝7時。女3人が起きてくる様子はない。 ま、特に問題はないだろう。 沙織には後でメールしとくとして……。 「きょうすけ……さん?」 「あれ、なんだ起こしちゃったか?」 眠そうな目を擦りながら現れたのは沙織。 明らかに寝不足風の顔だ。 「ご、ごめんなさい……寝坊しちゃって……」 「いいって。今日は日曜なんだしさ。まだ寝てろよ。もう出るし」 「そ、そんな」 家を出る前に、愛する奥さんの顔を見て、声を交わせる。 平凡でありきたり。でもそんな日常こそが、俺の夢見た幸せであり、 今ここにあるのはまさしくそれだった。 「んじゃ行ってくるよ、沙織」 「はい。気をつけていってらっしゃい、貴方」 「おう」 「あ」 ついっと滑るように俺との間合いを詰め、すと手を伸ばした。 沙織がふわりと微笑んで 「タイが曲がっていてよ、京介さん」 今日も、頑張れそうだった。 終わり
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支援会話集 フレデリク×サーリャ 支援C 支援B 支援A 支援S 支援C 【フレデリク】 はい、それでは腹筋あと百回です! 皆さん、頑張って下さいね! 【ルフレ】 ……!! 【サーリャ】 ルフレ…がんばっているわね。 うふふ…さすが、私が見込んだ人…。 【フレデリク】 ふぅ。今日はここまでです。 各自、しっかり体を休めてくださいね。 では、解散!! 【サーリャ】 ようやく終わったようね…。 ルフレは…いた。 あぁ、また仲間に阻まれて… 私だけのルフレなのに…。 みんな呪ってやろうかしら…。 いえ…みんなを呪うよりも ルフレに誰かが近付くと 鼻が曲がる異臭を放つ呪いを かけるほうが早いかしら…。 あ、でもそれでは私も近づけない…。 【フレデリク】 あ、サーリャさん。 ここにいらっしゃったのですね。 【サーリャ】 え? 【フレデリク】 すみません、定刻になっても お姿が見えなかったものですから、 サーリャさん抜きで集団鍛錬を してしまいました…。 今からもう一度鍛錬の時間にしましょうか。 私もお付き合い致しますよ。 【サーリャ】 …は? ちょっと…なにを…! 【フレデリク】 はい、では次は腕の筋肉を 鍛える運動ですよ。いち、に、さん…! 【サーリャ】 な…なんなの…これは。 あぁ…もう、駄目…。 【フレデリク】 サーリャさん、どうしました? もしかして、体調が優れないのですか? では続きは明日にしましょうか。 それまでしっかりと休んで下さいね。 【サーリャ】 冗談…じゃないわ…。 どうして私がそんなことを…。 【フレデリク】 ふふ、こうやって体を動かすと、 健全な心身に近づく感じがしますよね。 それでは、また明日 よろしくお願い致しますね。 【サーリャ】 …呪術師に…健全な心身を得て… どうしろと言うの…。 支援B 【フレデリク】 サーリャさん! 【サーリャ】 …なにか? 【フレデリク】 なぜ約束の鍛錬の場に来ないのですか! 私は何日も待っていたのですよ。 【サーリャ】 約束なんて… した覚えはないわ…。 【フレデリク】 そんな…! …私は夜通し待ち続けたせいで 風邪をひいてしまったというのに 貴方は約束をしたつもりすら なかったというのですか…! 【サーリャ】 なんとかは風邪をひかないって… 聞いたことがあるかしら…? 【フレデリク】 ………? 【サーリャ】 いい? 貴方が風邪をひいたのは… 私の呪いにかかったからよ。 【フレデリク】 なんですって!? 【サーリャ】 うふふ…怒った? 【フレデリク】 この私が呪いなどに…! …許せません。 【サーリャ】 そう…そうやって私を憎みなさい。 憎悪の感情…私、大好きよ…。 【フレデリク】 本当に許せないです…! 惰弱なこの精神と肉体が! 【サーリャ】 …は? 【フレデリク】 ぬぅぅぅっ…はぁぁぁっ!! …ふぅ。よし、これで大丈夫です。 風邪もすっかり治りました。 病は気から、とも言いますしね。 【サーリャ】 そんな馬鹿なこと…。 【フレデリク】 サーリャさん。私はまた明日から、 ここで貴方をお待ち致します。 今度こそ、必ず来て下さいね。 これは、約束ですよ。 【サーリャ】 勝手なことを…いえ、それよりも どうして風邪が治ったの…? 私、本当は呪いなんて かけていなかったのに…。 今度は… 本当に呪ってみようかしら…。 支援A 【フレデリク】 お待ちしていましたよ、サーリャさん。 ようやく鍛錬をする気になったのですね。 【サーリャ】 違うわ…。 …私がここに来たのは…。 確かめたいことがあったから…。 【フレデリク】 な、なにをするのですか…!? 痛っ!? 【サーリャ】 やっぱり…さっきの戦いで… 深い傷を負ったわね…。 【フレデリク】 気づいていたのですか。 【サーリャ】 …当たり前よ。 私の…呪いのせいだもの…。 【フレデリク】 サーリャさんの呪い…? 私に呪術をかけていたのですか? 【サーリャ】 …えぇ。私のことが見えなくなる 呪いをかけていたわ…。 姿が見えなくなれば、鍛錬鍛錬と うるさく言われなくなると思って…。 にもかかわらず貴方は… 私の危険を察知してかばってくれた…。 呪いはかかっていたはずなのに…。 ずっと見えていなかったはずなのに…! 【フレデリク】 そういうことでしたか。道理で 違和感がつきまとっていたわけです。 サーリャさんの気配がするのに、 なぜか姿が見えなかった。 自分の正気を疑っていましたが、 呪いのせいだったとは。 【サーリャ】 …どんな罰でも受けるわ。 腕を落とせというなら落とすわよ。 【フレデリク】 な、何をおっしゃるのですか!! もっとご自分の体を 大切にして下さい! それに…呪いにかかったのは、 私の心に隙があったせいです。 責任は私自身の未熟にあります。 貴方が気に病むことではありませんよ。 【サーリャ】 …貴方、バカだわ…。 本当に…どこまでお人好しなの…。 【フレデリク】 それは褒め言葉として 受け取ってよろしいのですか? 【サーリャ】 好きにすればいい…。 …それより、傷を見せなさい。 こう見えて、いくらか医術の心得があるわ…。 貴方も、もっと自分の体を 大切にした方がいい…。 【フレデリク】 サーリャさん…。 【サーリャ】 勘違いしないで。貴方が元気ないと… ルフレが悲しむからよ…。 【フレデリク】 そうですか。では… ご厚意に甘えることに致しましょう。 支援S 【サーリャ】 …傷、治ったようね。 【フレデリク】 そのようですね、 ありがとうございます。 【サーリャ】 ………… …どういうつもり…? 【フレデリク】 なんのことですか? 【サーリャ】 …治療は終わったのだから、離れなさい。 もう、私に用はないはずよ…。 【フレデリク】 えっと…次の鍛錬には ちゃんと出てくださるのですよね…? 【サーリャ】 その確認…もう五回目よ…。 ちゃんと出るって言っているじゃない…。 本当に、どういうつもりなの…。 貴方が去らないのなら、私が去るわ…。 【フレデリク】 ま、待って下さい! ひとつ訊きたいことがあるのです。 【サーリャ】 …何なのよ…。 【フレデリク】 まさかとは思いますが、治療中に 私に呪いをかけたりはしていませんか? 【サーリャ】 なぜそんなことを訊くの…? 【フレデリク】 自分の感情が、何かの力によって 支配されていないかの確認です。 【サーリャ】 …安心しなさい。 呪いなどかけていないわ…。 【フレデリク】 そうですか。 それを聞いて安心しました。 おかげで心置きなく、 これをお渡しできます。 【サーリャ】 指輪…? なんのつもり? 私に呪いをかけようとでもいうの…? 【フレデリク】 人生と縛るという意味においては、 呪いと言えないこともありませんね。 【サーリャ】 人生を…? ま、まさか…! 私に、求婚しているの…? 【フレデリク】 そのつもりですよ。 【サーリャ】 なぜ…? 私には、貴方から 好意を受ける理由が見当たらない…。 【フレデリク】 言葉を並べるだけの理由なら、 いくらでも飾り立てて言えるでしょう。 でも、そんなものに意味はありません。 私の心が、貴方を欲しているのですよ。 サーリャさんと人生を共に歩みたい。 それではいけませんか? 【サーリャ】 そんなことは…ないけれど…。 【フレデリク】 では、受け取ってくれますね? 【サーリャ】 えぇ…でも、ひとつだけ… 条件をつけさせて。 【フレデリク】 なんですか? 【サーリャ】 健全な心身のためという… 例の鍛錬は…なしにして。 ただでさえしあわせを感じて… 呪術師としての力が萎えそうなのに… これ以上…正の気に支配されたら… 私、聖職者になってしまう…。 【フレデリク】 わかりました。心身の鍛錬ではなく、 花嫁修業に専念していただきます。 【サーリャ】 それなら…喜んで…。
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タグ ネタ系 見事に全部の矢印が曲がっています。 (管理人撮影) コメント 名前 コメント
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タロムが三人のパパから衝撃の事実を告げられた後、 お前ら世界の平和を守れ的なことを言われ、それを理解した際に言った一言。 何が曲がったのかはよく分からないが(それもそのはず、『分かった。』の空耳であるため)理解してもらえたようでなによりである。
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沙織「タイが曲がっていてよ」:452のあやせ√ 612 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 30 39.63 ID gHmPx/qq0 引越して5日目。日曜日、つまりあやせの日。 結局昨日、俺は桐乃を抱く事はしなかった。 だって妹だぜ? さすがに手を出そうって思えないだろ? それでもちょっとは楽しく飯食ったり買い物行ったりできたから あれはあれで良いんじゃねえって思った。 桐乃も別れ際、そこそこ満足してる風だったし。 まぁそれは置いといて。 今日はあやせ。マイラブリーエンジェルあやせですよ、おまいら。 ずっと幼馴染だった麻奈実の時は、変な意味で緊張したけどそれはまぁ別の話で。 あの、全宇宙最高の美少女あやせたんを抱く? うわああああああああああああマジなのかよ!? 全っ然信じられん。現実感皆無だっての。 つーか本当に今日来るのかねえ。それすら怪しいもんだぜ。 まぁ、あんな事言ったけど、ぶっちゃけあんま期待してねえんだ。 ヒゲは念入りに剃ったし、爪もヤスリをかけて万が一にも痛くないように手入れした。 部屋には1時間前にファブ○ーズして十分換気、ちょっとアロマっぽいのを焚いたりしてな。 ……すんません。気合だけは入りまくりです。 この『夢のような生活』が始まってまだ5日目。 俺はまだ、このどこか現実離れしたシチュエーションに適応できずにいた。 614 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 31 28.23 ID gHmPx/qq0 部屋の中で不審人物発見。はい、俺です。 さっきから落ち着かない。ぴくりともしない携帯を手に取ったり、うろうろしたり。 本を手に取ったり、やっぱり机に戻したり。 何やってるんだろうねえ。 なんか落ち着くよう音楽でもかけようか。 そんな風に思っていた時、インターホンのベルが鳴り響いた。 「は、はいっ!?」 「……何をそんなに慌ててるんですか?」 聞こえてきたのは、まぎれもなくあやせの声だった。 「開けてもらっても良いですか?」 「あ、ああ。もちろんもちろん。今すぐ開けるよ」 「ありがとうございます」 インターホンの通話を切って正面玄関のドアを開けるボタンを押した。 ……マジで来た。1人か? 実は怖いお兄さんが後ろに立ってるとか……。 ぐるぐる考えていると今度はうちのチャイムが鳴る。あやせだ。 鍵を外し、ドアを開くと、そこにはまぎれもなく彼女が立っている。1人で。 「お邪魔しますね、お兄さん」 やっぱ可愛い! 615 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 32 15.74 ID gHmPx/qq0 「よ、良く来たな」 「はい。へー、ここがお兄さんの新居なんですね。なかなか綺麗じゃないですか」 あやせがキョロキョロと辺りを見回している。 今日のあやせは白を基調としたファッションでまとめられていた。 落ち着いた色のインナーに、薄い白のカーディガン。 膝丈のスカートと、シルバーのネックレス。 やべえ可愛い。やっぱあやせたんマジ天使だぜ。略してAMT? 「あ、お兄さんお腹空いてません?」 「え? あ、ああ……そりゃまぁ、それなりに」 「じゃあお昼ごはん準備しちゃいますね。お台所、お借りします」 そう言って、あやせはカバンを置いてキッチンに入っていく。 「俺も何か手伝おうか?」 「いえ。座っていてください」 別に嫌がられているとかそういう事ではないらしい。 あやせは鼻歌交じりで冷蔵庫の中を検分している。 沙織と言い、あやせと言い。女の子って意外と料理好きなのか? 最近の若い子は料理しなくなってるって聞くけどあれはマスコミの情報操作か。 あ、でもフェイトさんは料理なんて全然しようともしなかったな。 ……もう30も近いのに、あの人だけはマジ心配だぜ。いろんな意味で。 616 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 32 59.29 ID gHmPx/qq0 キッチンからは包丁の規則正しい音。 いやー女の子が台所に立ってるのはマジ良いぜ。つくづく思うね。 やがて炊飯器が音を立て、米が炊き上がったらしい。 あやせはそれを待っていたかのように、調理を仕上げに入る。 熱された油の音、どうやら炒め物らしい。 一気に香ばしい匂いがして食欲をかきたてる。 「出来ましたよー」 「おっ、美味そう」 「お兄さんのお口にあうと良いんですけど」 ご飯に味噌汁。そして肉野菜炒め。派手じゃないけど、逆にそれがすごく良い。 あやせの家庭の味を頂けるなんてこれ以上幸せな事はない。 「あ、でもさ。あやせは大丈夫なのか?」 「? 何がです?」 「よくわかんねーけど、カロリーとか」 炒め物みたいな油を使う料理はモデルの体型維持のためにはどうなんだろう。 若い男はこういうの大好きだけどさ。 「大丈夫です。鶏肉は胸肉なのでヘルシーだし、油も脂肪になりにくいのを使ってます。 それに健康的な食生活という意味では少しくらい油を取った方が良いんですよ」 「へぇ、そういうもんなのか」 「はい。それじゃ食べましょうか」 「だな。ありがたく頂きます」 617 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 33 43.42 ID gHmPx/qq0 女の子って、やっぱ反応が気になるのかね。 俺が一口食べるまで、じーっとこちらを見てる。 「あ、美味い。それにすげえ良い香りするな」 「良かったです。香りは、仕上げにちょっとだけごま油を加えると良いですよ」 そういや、ごま油とか買ったなあ。使ってなかったけど。 あやせは安心して食べ始めたようだ。 いや、お世辞じゃなく美味いぜ。沙織と言い、麻奈実と言い、大したもんだな。 あやせのモデルの話や学校の話、楽しい昼食を終えて一息つく。 ややあって、あやせはぽつぽつと語り始めた。 「私、怖いんです」 「あやせ?」 「お兄さんの事は、嫌いじゃないです。でも、その、エッチするのは……怖い」 あやせは、本来的に怖がりだ。 あの時もそうだった。 桐乃が落ちぶれてしまうのが怖い。 大好きな桐乃が私に秘密を隠していることが怖い。 「皆もお兄さんが好きで、だから、今この状況をどうにかしようとは思いません。 でも、やっぱり、その処女は、結婚する人のために取っておきたいんです」 「……そうか」 もっともだと思う。そしてハッキリとそう言ってくれた事が、俺には嬉しかった。 その日、結局あやせは何もせず、帰っていった。 618 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 34 36.21 ID gHmPx/qq0 もしかしたら、もう来ないかな、と思った。 あやせは根が真面目なんだ。 今までのように、なあなあでやっていくには本音を出しすぎてしまったんじゃないか。 でも、俺はそれでも良いと思ったんだ。寂しくないとは言わないけどさ。 あやせが自分で選んで、そうするなら、それはとても良い事であるはずだ。 だから、翌週。1日中待ってあやせが来なくても、俺はなんとも思わなかった。 思わないように、した。 ところが、そのさらに翌週。あやせは現れた。 「……こんばんわ」 ちょっと俯いて上目がちにこちらを見るあやせはどこか照れくさそうにしていて、 でも、あやせが会いに来てくれた事を俺は純粋に喜んだ。 居間のソファに腰掛けたあやせにハーブティーを出してやる。 気分が落ち着く、らしいよ? 「……ありがとうございます」 こうやってあやせと静かにお茶を飲むのも良いもんだ。 俺は心なしか優雅な気持ちで、日曜の昼下がりを楽しむ事にした。 619 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 35 29.31 ID gHmPx/qq0 お茶を8割ほど飲んだあたりで、あやせが切り出した。 「あの、ですね。その、先日は申し訳ありませんでした」 「ん? なんかあったっけ?」 どっちかって言うと、何もなかったんだけどな。 「……あれから、色々と考えたんですけれど、やっぱり、お兄さんとエッチするのは、ちょっと……」 「そっか」 気落ちなんて全然してないぜ。いや本当に。 別に日曜は念入りにシャワーしたりとかねーし。 長めに歯磨きしたり、眉毛の手入れしたりとか、全然関係ねーし。 「でも、やっぱりお兄さんと、特別な時間は過ごしたい気持ちがあるんです」 「特別?」 「はい。なので、その、しょ、処女は、ダメなんですけど」 顔を真っ赤にして、あやせは顔を上げた。 「後ろの処女なら良いです!」 ………………お茶、全部飲み干しておいて良かったよ。 620 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 36 10.56 ID gHmPx/qq0 そこからあやせは早口で捲し立ててきた。 「ネットでちゃんと調べてきました! そういうの、アナルセックスって言うんですよね!」 「ぶふうっ!」 「ちゃ、ちゃんとグッズも買っておいたんですよ!」 いやに目がギラギラしてるのは気のせい、じゃない。よな。 やる気満々の顔でカバンから出てきたのはまず大きなボトルが1つ。 「そ、それは?」 「アナルセックス用ローションです!」 orz OTZ ○| ̄|_ マイラブリーエンジェルあやせたんが壊れていく……いやもう壊れてしまったのか? あんまりその顔と声でアナルアナル言わんでくれんですか! 兄さんいろいろ限界ですよ! 「普通のローションじゃダメらしいんですよ。ちゃんとコッチ使ってくださいね」 あ、もうアナルセックス(自分で言うのも憚られる)やるって決定してんのね。 「それから、やっぱり病気とか怖いのでコンドームです。 お兄さんは常備してるかなとも思ったんですが、一応薄いの買っておきました」 なんという気遣い。でもかえって痛い。主に心に。 621 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 36 54.40 ID gHmPx/qq0 その後も、アナルをほぐすために使う細いバイブとか、 初心者の俺のためのマニュアルをサイトからプリントアウトしたものとか。 なんかもう、本当に準備万端だな、あやせ。 お前はどうしちまったんだ。 そりゃまぁ、興味がなくはないよ? 桐乃にやらされたエロゲでもそういうシーンは散々見てきたしさ。 でもこういうのって普通女の子の方が嫌悪感を示すもんじゃねーの? 見るからにノリノリなんですけどこの子。 ひとまず俺は言われた通り、念入りに石鹸で手を洗い、さらにエタノールを使って殺菌。 あやせは寝室でうつ伏せになって待っていた。 「あ、ちゃんと綺麗にしました?」 「お、おう」 「じゃあ……」 今さら恥らわれてもなぁ、とかちょっと思ったけど、やっぱり恥らうあやせは可愛かった。 くそう、このマイラブリーエンジェルめ。 だけど、この子と今からする事を考えると心臓の鼓動が早まるのも致し方ない事だ。 あやせは少し腰を持ち上げ、スカートとショーツ、そして靴下を脱いだ。 可愛いらしい、小さくキュッとしたお尻があらわになる。 宝石みたいで、その艶は真珠か何かと見紛うばかりだった。 622 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 14 38 32.91 ID gHmPx/qq0 ベッドの上に膝を立てて、四つんばいみたいな格好。 あやせのお尻と、そして今まで誰も見た事がない場所が丸見えになった。 「こ、これがあやせの……お尻の穴……」 「い、いいい言わないでくださいよ、そういう事! 恥ずかしいじゃないですか……」 あやせは天使だから、排泄とかしないけどさ。 でもココってそういう目的の穴な訳だ。 そう考えると背徳感が沸々と沸きあがってくるのを抑えられない。 「え、えーと、じゃあ、始めるぞ」 「は、はい……あの、優しく、お願いしますね」 言われるまでもねえ。えーと何々。マニュアルによると、まずは肛門の周りを……。 「ひゃっ!」 つんつん。本当に軽く。弱く。触れるかどうかぐらいの強さで少しずつ刺激していく。 肛門周辺の筋肉は非常に強く堅固だ。(って書いてある。) そのままでは性器どころか指だって入るもんじゃない。(らしいよ。) まずはマッサージするように少しずつ柔らかくさせていく必要がある。(んだってさ。) 「うーん」 「ど、どうか……ひゃう……んくっ……しましたか……?」 629 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 01 33.14 ID gHmPx/qq0 確かにココに入れる訳だし、そのために肛門周辺の愛撫をしてやる事が 絶対必須なのは、まぁ、マニュアル読んで分かるし、そうなんだろうと思うよ? でもさ、例えば通常のセックスで『ソコ』ばっか愛撫する訳じゃないじゃん。 キスもするし、胸を触ったりとかするだろ? やっぱそういうの必要だよな? っていうか、俺はもっとあやせのいろんなトコ触りたい。 けどまだ肛門のマッサージは慣れてないし神経使うから、疎かにはできない。 この体勢では胸に手は届かないし、キスなんて真逆の位置に相当する。 「あっ!?」 とりあえず目の前のお尻にキスした。 程よくハリというか弾力があって、でも、柔らかい。 胸とはまた違う新鮮な触感を、唇で、舌で、指で手のひらで感じようとする。 「お、おに……さん……こ、こんな……ううっ」 すらりと伸びた脚はほどよく肉がついてて、すべすべする。 片手で脚をまさぐり、もう片手で肛門を注意深く触り、口でお尻を楽しむ。 やべえ、これちょっと良いな。 「そんな……ところばっかり……」 なんだかもぞもぞしているので、ふと上半身に目をやると あやせは自分の胸を自分で触り始めていた。 「あやせ……自分で触ってるのか?」 「だ、だって……お兄さんが全然触ってくれないから……切なくなってしまったんです」 630 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 02 16.49 ID gHmPx/qq0 腹に当たるかと思うほど勃起したわ、こんちくしょう。 でもアナルセックスは根気が大事なんだ。 十分に準備をせずに挿入を逸れば、女の子は大変な思いをする。 しかも気持ちよくもないし。 あやせが自分の胸を慰める姿に興奮しながらも、焦らず、マッサージを続ける。 心なしかさっきよりあやせの体温が上がってきたような気がする。 それに伴って、肛門の周りもなんとなく柔らかくなってきた。人体の神秘。 あれ? でも初めての場合、結構マッサージに時間取られるって書いてあるんだけどな。 かなり柔らかくなってきたのを感じて、俺は恐る恐る指の先を入れてみる。 「っーーー!!」 入った。 そして同時にあやせの背中がびくんと跳ねた。 「あ、あやせ、大丈夫か?」 「は、はい。お兄さん……すごい上手です」 こ、こんなんで良いのか? えーと次は、指が爪の半分くらい入るようになったら ゆっくりとほぐすように、指を上下に動かす。 631 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 03 40.84 ID gHmPx/qq0 「あっ、あぁっ……」 あやせからなんとも艶っぽい声が吐息と共に漏れ始めた。 本当に、お尻で感じてるのか、あやせ。 しかも思った以上にほぐれるのが早い。 少しずつ、抵抗を探りながら指を深くし押し込みつつ、動かしているのだが 既に指は第一関節まで入って、あわや第二関節間近だった。 いくらなんでも早すぎねえ? まだ15分くらいだけどこれで本当に大丈夫なのか? そして、同時に嫌な疑問が浮かんだ。もしかしてあやせ、後ろは初めてじゃない? 「な、なぁ、あやせ?」 「は、はい……んくぅ……はぅ……」 「お前もしかして、アナルセックス初めてじゃないのか?」 「初めてに、決まっ、てるじゃ、ないですか……何、言って、るん、ですか」 身体をぴくぴくさせながら答えているから、言葉も途切れ途切れだ。 「で、でもなんかほぐれるの早くないか? 逆に心配なんだが」 「あ、そ、そんな、こと、ですか? きまって、ます。 きょの、ために、わたし、じぶんで、じゅんび、したんれす」 「なっ……」 今日のために? 俺の、ために? 「そう、れす。おに、さんに、だかれ、たくて……」 やっぱりお前はマイラブリーエンジェルだ! 疑ってすまなかった! 632 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 04 23.05 ID gHmPx/qq0 指を出し入れしながら、アナルに触れていない方の手で前も少し愛撫してやる方が良いらしい。 しかし、そこは既にとろとろで、どろどろだった。 「あっ、そこ、さわ、ちゃ……らめ……っ! んっ!」 あやせの痴態に心臓がどくどく言ってる。 逸る気持ちを懸命に抑え、丁寧にマッサージを続けた。 指は1本から2本へ。そしてかなり深くまで抽送できるようになった。 マニュアルによれば、これぐらいならもう準備万端って感じらしい。 つかこんなにホントに拡張するもんなんだな……。 「あやせ、そろそろ……」 呼びかけられてこちらを向いたあやせの顔は羞恥と興奮に真っ赤だ。 「……はい、お兄さん。来て、ください」 633 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 05 34.92 ID gHmPx/qq0 ゴムを被せて、こっちも準備OK。 いい感じにほぐれたアナルが元に戻らないうちに。 ぐっ。 「うあ……」 「あっ……あぁぁっ……」 膣とは全然違う圧力。挿入感。 まだ俺のペニスは全体の1/5も入ってない。本当に先端。カリもまだ埋まらない。 それでも、これはやばい。 女の子がイく時にすげえ締め付けになる時があるけど、 あれくらい強く、最初からぎゅうぎゅうと締め付けられているようだ。 「い、痛く、ないか? あやせ……」 「は、はい……大丈夫……大丈夫ですから……」 「痛かったら、絶対言えよ……」 異物を押し返そうとする肛門と直腸。それに逆らって少しずつ、少しずつ推し進めていく。 「ぁぁぁ……おにい、さん……はいって……きてます……」 あやせの反応、声だけでも射精そうなのに、この圧迫感はヤバイ。 正直どれだけ保つのか、耐えられるのか分からない。 635 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 07 15.86 ID gHmPx/qq0 それでも、ゆっくりと、あやせの中に埋めていき。 「はい、った……」 「あ、ぁぁ……はい、ってるん……ですか? おにいさん、ぜんぶ……?」 「おう。根元まで、しっかり入ってるぞ」 「う、うれしい……れす……おにいさん……」 そんな事を言うあやせがあんまりにも可愛くて。 欲望の赴くままに動かしてしまいたくなったが、それは絶対ダメだ。 ていうかそんな事したら1秒ももたんよ! マニュアルにも書いてあったが、俺自身、ようやっと感じる事ができる あやせの中に少しでも長くいるため、ゆっくりと円を動かすように腰を動かし始めた。 「あっ、あぁっ、うごいてる……おにいさんの……うごいてましゅ……」 「ぐっ……あやせのなか、すげえ気持ちいいぞ……」 「うれしい、うれしいです……わらしも……おにいさんきもちいいれすう……!」 直腸の中は真っ直ぐじゃない。その分、膣のそれより不規則な圧力がかかって 油断すると意識ごと持っていかれそうだ。 それにあやせが物凄く感じてくれている。言葉にならない声で、喘いでいるあやせは たまらなく、反則的に可愛い。アナルに挿入れている背徳感と相まって腰のあたりががくがくしている。 「にゃっ……そ、そこ!」 突如あやせが妙な声をあげて一際大きくよがる。 痛がったのかと思い、腰の動きを止めた。 636 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 08 31.60 ID gHmPx/qq0 「あやせ、ど、どうした?」 「い、いまなんか……おにいさんのが……なんか、あたって……」 「……よ、良かったのか?」 こくんと恥ずかしそうに頷く。あーもう可愛い。マジ天使。 お尻で繋がったまま、手をベッドについて、そっと上半身を前に倒した。 「あやせ、こっち向いて」 「あ……おにいさん……」 そこで初めて、俺はあやせとキスをした。 蕩けるようなキス。すぐにあやせは舌を出してきた。 もちろん俺も応じてやる。腰はゆっくり小刻みに動かしながら体液の交換。 やがてどちらからともなく離れて、結合部の刺激を再開する。 先ほどあやせが感じたのは、この辺か? 「あっ……あぅ……んぁぁ……」 違うっぽい。こっちか? 「ひんっ! ら、らめ……って……そこぉ……!」 ここだった。男なら、女の子の弱いところを攻めてあげるよな? 確か女の子の言葉は他意があるって誰か言ってたし。 「あっ、らめ、そこ、へん、へん、なっちゃう、あっ、ひゃっ!」 あくまで激しくはせず、緩慢な動きで、だけど執拗な動きで Gスポットの裏側あたり重点的に攻めた。 637 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 09 30.40 ID gHmPx/qq0 口をぱくぱくさせて喘いでいるあやせはまるで魚みたい。 そしてそれはもう絶頂に程なく近いだろうと思い、 俺も自身にかけていたブレーキを徐々に緩めていく。 「あ、あやせっ、そろそろ、イくぞっ!」 「っ!……っ!……っ!」 もう、声すらない。しかし、俺の言ってる事は分かるらしく懸命に顔を振って答えている。 そして、俺の肉棒は、あっという間に射精へと至った。 びくんびくんと悶えるように、ゴムの中に精液を吐き出す。 それに合わせるようにあやせの身体は弓のように反り返って果てた。 ベッドに2人とも脱力して倒れこんだ。 俺の腰はまだどくどくと射精を続けている。我ながら驚くほどの量だ。 喋るのも辛いぐらいの圧倒的な疲労感。 かろうじてペニスだけ抜いて、俺たちは折り重なったまま、 急速に深い睡眠へと落ちていった。 638 以下、名無しにか - 2010/11/16(火) 15 10 36.86 ID gHmPx/qq0 目が覚めた時にはすっかり夜になっていた。どうやら3時間くらい寝ていたらしい。 まだ身体の芯が、特に腰が気だるい。 あやせはまだ穏やかな、そして幸せそうな顔で寝ている。 4月とは言え夜はまだ冷える。風邪を引かないよう布団をかけてやり 俺は熱いシャワーを浴びるべく風呂場へ向かう。アナル触ったりもしたからな。 サッパリして部屋に戻ると、あやせが起きていた。 「ありゃ、起こしちまったか?」 「はい。お兄さんがいなくなっちゃったのが寂しかったみたいですね」 あれ? なんかいつもよりデレてるよ? 「あやせも疲れたろ? シャワーしてこいよ。サッパリするぜ」 「そうですね」 「んで、その後、夕飯は外で食おうか。なんか腹減ったわ」 んー。と、あやせは口に手をあてて考える仕草をして。 「実はご飯の前に、1つお願いがあるんです」 「なんだ? なんでも言ってみろよ。今ならお前の頼み、なんでも応えてやるぜ」 「じゃあ遠慮なく」 そう言ってあやせはベッド脇に置いといたカバンから1本のバイブを取り出した。 「あのーあやせさん?」 「お兄さんにはアナルバージンを差し上げたので、やはりお兄さんからも同じものをもらいたいなと」 アッー! 終わり
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主?。 かつて暗黒期には集いを消滅から救ったスゴイ男である。 鼻が曲がっているのが特徴で、その強烈なアイデンティティをふんだんに活かしたトゥントゥン?というギャグを持つ。
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452 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 19 48 03.18 ID zZuVFrAs0 変わらないものを変わらないように維持していくのはそれなりに大変だ。 時間が経てば、変わる。それは自然の摂理なんだからな。 例えば、俺や麻奈実は大学生活3年目に突入するし、 黒猫と沙織、ついでに瀬菜もめでたくこの春から大学生。桐乃はこの冬受験だ。 就職活動もしなきゃなんねーし、みんなも今よりもっと明確に 将来について真面目に考えなきゃいけないだろう。 ずっと今のままではいられない。 それは例えば沙織の姉が結婚し、海外へ行ってしまった為に 彼女を中心としたコミュニティーが空中分解してしまったように。 いずれは俺に彼女ができたり、あるいは、誰かに彼氏ができたり、 仕事の都合で遠くに引っ越す事になったり、それこそ海外とか。 何があるのが分からないのが人生なんだ。 それを面白いって言うヤツもいるだろう。 まさに俺の人生はそんな感じだったから、同意しなくもない。 だけど、こんな風になるなんて、いくらなんでも想定外だった。 453 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 19 49 02.86 ID zZuVFrAs0 「またお前に先輩って呼ばれる日が来ようとはな」 「おや、拙者も今年からは後輩になるでござりますぞ」 「ああ、宜しく頼むよ、沙織」 入学式を終えて出てきた2人と合流する。 沙織はともかく、黒猫までここに受かるというのは 正直難しいと思ってたんだがどうやら見くびっていたらしい。 「まあ、先輩の目は節穴ですからね」 「む……」 悔しいが言い返せない。麻奈実は黒猫の合格を信じて疑わなかったからな。 ちなみに俺と沙織は経済学部、麻奈実は商学部、黒猫は文学部だ。 「その点については悪かったよ。悪かった。反省してるし、謝るよ」 「ふん……、分かれば良いのよ」 2つ下の女の子に頭が上がらない俺である。 「まぁ、ここに突っ立ってても仕方ない。行こうぜ」 「そうでござるな」 「行こう、と簡単に言うけれどね……」 454 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 19 49 51.77 ID zZuVFrAs0 そこで言葉を区切った黒猫の視線の先にあるもの。 激しい掛け声やら校歌斉唱やら何やらしながら無数のプラカードが踊っている。 決してデモとかそういうんじゃないぜ。 この季節、どの大学でも見られる至って一般的な恒例行事だ。 「……あそこを無事通り抜けられたら、の話ね」 「だな」 新入生をサークル勧誘せんと、校門前に大挙として押し寄せている人間の波だった。 実は先ほどから視線が痛い。 この場所にスーツを着て立っていれば大体新入生である事が確定していて 彼らにしてみれば端から声をかけたいぐらいの気持ちでいるはずだ。 しかし、ここに1人、強烈に目を惹く女の子が立っている。 黒く長い髪を綺麗に結わえ、凛とした目に薄化粧の黒猫、こと五更瑠璃は この数年で桐乃ですら驚くほどの成長を遂げていた。 背はさほど変わらないものの、手足はすらりと細くなり、 顔つきも以前の堅さが少し取れ、高嶺の花、クール系美人へと進化し 高校では一、二を争うほどの人気になっていると瀬菜から聞いた。 本来ならその横に立つ、180センチの美少女、槙島沙織はそれに劣らぬどころか 俺の知る限り、あやせにすら匹敵する美貌の持ち主――つまり世界最高水準――だ。 しかし、いつものぐるぐる眼鏡は今も肌身離さず 身につけているからパッと見には分からないんだろうな。 455 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 19 50 54.17 ID zZuVFrAs0 あーあー。まるで獲物を見る狼の目つきだぜ。 どうしたもんかねえ。 頭を悩ませていると、沙織はこちらに振り向いてω←こんな口を形作っている。 何か悪い企みを思いついた顔だぞ、これ。 「にゅふふ」 「沙織、なんか企んでるだろ」 「いやいや。そのような大げさなものでは決して。ええ」 そう言って沙織はするりと俺の左腕に自分の右腕を絡ませてきた。 「なっ!?」 「これでそう簡単に、彼らも声を掛けられなくなったのではござらぬか?」 ちょっと抵抗ある、というか恥ずかしいが沙織の言う事には一理ある、気がした。 本当だぜ? 決して邪な考えじゃないって。マジで。 「それじゃあ私も」 「おう!?」 すると黒猫も反対側、俺の右腕を取って自身の身体を押し付けてきた。 「く、黒猫まで……」 「この状況で声を掛けてくるような愚劣な輩はいないでしょうね」 「うむうむ」 「さぁ、行きましょうか。先輩」 456 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 19 51 36.96 ID zZuVFrAs0 勧誘を企てていたサークルの人間たち、 特に野郎どもの視線は針どころか槍のムシロだ。 そりゃまぁそうだろうなあ。女2人を両脇に侍らせて 何だアイツはって思われてるに違いない。 それに、こう言っちゃ語弊になるかもしれんが、 サークルの男たちは美味しくいただける 新入生の女の子を探しに来てるヤツが相当多いはずだ。 とんびに油揚げをかっさわれた心境だろうよ。 射殺すような視線は努めて無視。 校門を出るまで、まるで生肉をぶら下げられたライオンの前を 裸で通っているような心持ちだったね。 「やれやれ。もう離れても大丈夫だよ、沙織、黒猫」 「? なぜでござる?」 「なぜって……」 相変わらずニヤニヤしながら聞き返してくる沙織。 くそう。ちっと恥ずかしがらせてやろうかな。 「……ってんだよ」 「はぁ? なんでござるか?」 「だから、胸が当たってるんだよ」 「当ててんだよ。言わせんな恥ずかしい」 見事なカウンターだった。 ガックリとうな垂れたいところだったが、 両脇を固められていてはそうもいかない。 そんな情けない姿の俺を、黒猫が見上げていた。 458 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 19 52 18.05 ID zZuVFrAs0 「……」 「ど、どうした、黒猫?」 「……どう?」 どうって何がだ。心なしか黒猫は頬を紅く染めている。 そう言えばなんだか右腕がちょっと苦しい。 「私も当てているのよ。言わせないで、恥ずかしい」 「~~~~ッ!?」 聞いて真っ赤になったが、すまん、黒猫。 スーツの上からだとあんまり感じない。 いや言われてみればちょっと感じるんだけど 左からくる圧力がちょっと凄すぎてヤバイ。 津波の前の小波って感じだ。 とにかく、2人とも腕を離す気はないらしい。 俺は予め考えていた定食屋へとやや早足で進んでいくのだった。 459 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 19 53 04.84 ID zZuVFrAs0 「でさ、真面目な話、2人ともサークルには入らねーのか?」 「拙者は既にいくつか興味のあるところは調べているでござる」 さすが沙織。その辺は抜かりないな。 「ただ、あまりサークルに捕らわれたり縛られたりは御免ですので もう少し情報を集めてから決めようかと」 「私は、今のところ、あまりその気はないわね」 まあ黒猫らしい。コイツ、昔ほどじゃないけど積極的に人と関わるの下手だもんな。 「そっか。ただ就活する時に、サークルって1つの指標になるから ムリじゃない範囲で参加しておくと、何かと楽になるぜ」 「そうね。考えておくわ」 「おう」 出された鯖の塩焼き定食を頂いて腹ごしらえをしていると、携帯が鳴った。 麻奈実からのメールだ。 「どうしたの?」 「えーと、『2人に会えた? 宜しく伝えておいてね~』だとよ」 「マメでござるなぁ」 ちなみに黒猫には麻奈実が勉強を教えていたので、 合格発表の時は自分の事のように喜んでいたし、 門出の日に駆けつけたがっていたのだった。 しかしアイツは今日は外せない用があり、来れない事は予め分かっていた。 相当残念がってたなぁ。 『もー、るりちゃんの晴れ舞台だよぉ? それなのにぃ……』 462 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 05 32.83 ID zZuVFrAs0 まぁ、こういうのはタイミングってヤツだ。 そして間の悪さって意味ではアイツは結構悪い方なんだよな。 「さて、京介氏。拙者この後いろいろ買い物したいのでござるよ」 「ん? おお。じゃあ荷物持ち手伝うぜ」 「かたじけのうござる」 大学入ると何かと物が入り用になる。 それは自分たちの時に経験済みだ。 先輩として、男としてここは手伝ってやらにゃ。 「……」 しかし黒猫はちょっとムスッとしている。 「黒猫?」 「いえ、なんでも、ないわ」 全然なんでもなさそうじゃないんだけどなぁ。 でも俺には心当たりが全然なかった。 沙織に助けを求める視線を送ると、同様に?が浮かんでいる。 が、何か思い当たったらしい。 「黒猫氏、拙者……」 「いえ、沙織。良いのよ。ごめんなさい。大丈夫」 「しかし」 「大丈夫よ」 こうなると黒猫は引かねーんだよなあ。 463 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 08 36.68 ID zZuVFrAs0 「後で先輩に埋め合わせしてもらうから」 なんて、そんな不穏な発言をして。 「ところで、何を買うのかしら?」 「ええ。必要なものはこのリストにまとめてあるでござるよ」 肩を寄せ合ってリストを見ている2人はなんだか姉妹みたいで微笑ましい。 「つか沙織は、いつまでその眼鏡かけてるんだ?」 「うーむ。難しい質問でござる。ですが拙者、まだしばらくは手放さないつもりでござる。にんにん」 以前は俺たちネットを通じて知り合った仲間の前、という前提でのみ眼鏡をかけていて 普段は特にキャラを作らず過ごしていたはずだったんだが、いつしか沙織は 常日頃から眼鏡をかけるようになっていった。 もったいない気がするが、こればっかりは本人の決める事だしな。 「よし。んじゃ買い物行くか。とりあえずハンズあたりか?」 「そうでござるな。道案内は宜しくお頼み申す」 「あいよ。あ、すいませーん、会計お願いします」 まぁ先輩だし、おめでたい日だし? これぐらいは奢っとかねーとな。 その後、電車で移動し色々と必要な物を買い揃え終わる頃には太陽が沈んですっかり暗くなっていた。 「今日は本当に助かったでござる」 「いつもお前に助けられる事の方が多いんだ。たまには恩を返させろよ」 「京介氏……」 464 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 10 07.67 ID zZuVFrAs0 ちょっと温かい空気。くすぐったくなるけど、心地いい。 しかしそんな中、黒猫は1人黙り込んでいる。 それを敏感に察した沙織ではあったのだが、何故だろう。 なんかニヤニヤしている。いつもなら気を遣ってフォローに入るなり何なりするのに。 「京介氏」 「ん?」 「今日は火曜でござる」 「そうだな」 それが何だって言うんだ? 「黒猫氏は、試験などでバタバタして、久しく時間が取れませんでしたからなあ」 「っ……沙織!」 珍しく声を荒げる黒猫だったが、そこまで言われてようやく俺も気がついた。 というか、思い出したのか、それとも意図的に目を背けていたのか。 そんな事を自問自答するのも恥ずかしすぎた。 465 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 11 07.64 ID zZuVFrAs0 「にゅふふ。それでは邪魔者は退散すると致しましょうぞ。それではまたっ!」 「あ……」 「……」 気まずい。クソ、沙織のヤツめ。この甘ったるい空気。 先ほどのちょっと温かい空気が比にならない気恥ずかしさだ。 それでも、男だからな。俺。 「く、黒猫」 「……何かしら」 1つ咳払いをして。 「寄ってくか?」 「……」 黒猫はちょっと躊躇ったのか逡巡したのか。 「ええ」 それでも、頬を紅く染めて、そう答えた。 466 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 12 27.15 ID zZuVFrAs0 電車で、徒歩で、移動している間。俺たちは一言も話さなかった。 昼間は沙織と競うように絡ませていた腕も、今は手を握るのみ。 パッと見には、2人の距離は遠くなったように見えるが、 固く握り合った感触は、俺と黒猫が物凄く近くにいるように感じられた。 駅から徒歩5分。学生が住むにはちょっと広めの1LDK。 自宅から通えなくもない場所の大学に通う俺が、 こうして部屋を宛がわれているのは、とある理由があった。 手を解いて鍵を出す。ガチャリと回してドアを開け、靴を脱いで家にあがった、 ところで、後ろから黒猫に抱きつかれた。 「黒猫?」 「……2人きりの時は、もう1つの名前で呼んで頂戴と、言ったはずよ」 「そう、だったな、瑠璃」 黒猫が『仮の名前』と称している本当の名前。 それを呼ぶと黒猫は、さらに強く俺を抱きしめた。 「ずっと、来れなくて、寂しい思いをしたのよ。 こんな事を言うなんて、私も随分弱くなったものだけれど」 「……そうでもないだろ。弱さを曝け出せるのも、強さの1つだと俺は思うぜ」 「ふふ」 ちょっと笑って、黒猫は腕の力を緩めると 「……今日は、いっぱい愛してくれるのよね」 「御意」 468 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 13 26.03 ID zZuVFrAs0 部屋の明かりは点けないまま、黒猫の手を取り寝室へと進んでいく。 お互いにとって勝手知ったる間取りに歩は鈍らない。 ドアを閉め、部屋の真ん中にあるベッドに腰掛ける。 そして黒猫はそこが指定席かのように俺の隣に座った。 ……何度こうしても、この時間だけは緊張する。 いや、緊張も何もなくなったら、それはそれで寂しい話だよな。 黒猫も緊張しているっぽい。元々黒猫はそういう傾向があるけど 今日は本当に久しぶりだ。それこそ、3ヶ月ぶりか? うーむ。上手く出来るかどうか、心配だ。 先に動いたのは情けない事に黒猫。 ついっと身を寄せると俺の頬に軽く唇を触れさせた。 緊張しているけれど、それ以上に期待している瞳。 白い肌と、見事なコントラストになった黒い髪、長い睫毛、大きな瞳。 そして、小さくてぷっくりとした紅い唇。 そんな黒猫が愛しくて、今度は俺から頬に軽いキス。 一度離れて、今度は互いに引き寄せられるように唇を重ねる。 「ぁ……」 そんな小さな吐息が黒猫の口から漏れ、黒猫の瞳がとろんとした。 背筋がぞくぞくして、思わず身体を強く抱き寄せ合って、熱烈に口付け合った。 キスの間あいだに熱い息が零れ、火照った声が聞こえる。 ぴくんぴくんと反応する黒猫が可愛くて脳が蕩けそうだ。 469 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 14 20.54 ID zZuVFrAs0 どちらの唾液ともつかないじゅるじゅるしたものを貪って与えてまた貪って。 黒猫の手は俺の背中から上半身へとまさぐるように動き、やがてボタンを上から順に外していく。 キスはもちろん止まらないまま、意図を汲んで俺はシャツを脱ぎ捨てる。 お返しとばかりに黒猫のジャケット、そしてシャツのボタンを外してやると 黒猫もまた、上着とブラを脱ぎ捨て、直接肌と肌を擦るように重ね合わせた。 胸の辺りに当たる少し固い突起は黒猫の乳首がピンと立っている証だ。 黒猫の背中に、あるいは頭に、腰に回していた右手をそっと左胸に沿わせると 少し大きく声をあげて反応した。 「んぅっ」 キスの応酬はそこで一旦休憩。お互いに荒い吐息のまま、ステージは第2ラウンドへ。 「瑠璃の乳首、固くなってるな」 「そ、そういう事……んっ、言わない、でっ、あぁっ、ちょう、だい……くぅん!」 久々なのであまり強い刺激は辛いだろう。 優しく乳房を下から持ち上げるように触り、ゆっくりと円を描くように愛撫する。 「ふぁ……ん……んん……」 471 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 17 00.38 ID zZuVFrAs0 黒猫が、俺の膝の上で、快感に集中するように目を閉じている。 その姿があまりにも可愛くて、俺は空いている首筋に軽くキスした。 「ひゃんっ! そ、それは……ダメ……くび、よわいの……知ってるくせにぃ……」 「瑠璃」 「な、なに……」 「可愛い」 言ってもう一度、首筋にキス。 「ば、ばかぁ……!」 黒猫の顔はもう蕩け切っていて、大理石みたいな肌はうっすら桃色に染まっているようだった。 身体を少し浮かせ、穿いたままのスカートを捲り上げると、黒猫は何をされるか察知したのだろう。 「ちょ、ちょっと……だめ……」 抗議の声を挙げたが、それで止まってやれるほど、俺も余裕はない。 少しでも優しく触れてやるので精一杯だった。 「ッ!……っあ……はぁっ……」 「すげえ、熱い……」 黒猫の秘所はすでにびしょびしょで、ショーツの上からでもその潤いが瞭然だ。 それにクリトリスも勃起しているのが分かる。 こっちもいきなりは控えた方が良いだろう。 人差し指と薬指で蜜壷の周りをゆっくり上下に撫で上げた。 「ぁ、ぁぁっ……そ、それ……んっ、んっ……」 473 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 18 51.40 ID zZuVFrAs0 大丈夫だろうか、黒猫の身体がさっきからぴくぴくしていて、もしかしたらイキそうなのかもしれない。 これじゃ挿入なんてしたらショック死しかねない。 「瑠璃、一回イっとけ」 「ふぇ、い、いくって、どこ……あ、あぁっ!?」 乳首とクリトリス。敏感なところを弄りながら、首筋にキス。 もう限界近かったのだろう。 「ひぁっ! ぁっ! だめ、い、うっ、あ、はっ、やっ! っく、ぁぁぁぁっ!」 俺の身体にしがみつく様にして、びくびくと大きく揺れ、黒猫は達した。 「くっ、は……は……はぁ、はぁ……」 「……大丈夫か、瑠璃」 黒猫の呼吸はまだ荒い。必死で酸素を取り入れようとしているのが、なんだか不謹慎にも愛らしい。 「……大丈夫、じゃ、ない……わよ……」 ちょっと涙目で、顔を真っ赤にした黒猫はやっぱり可愛い。 いとおしくなって、優しくハグ。頭をゆっくり撫でてやると黒猫はコテンと頭を俺の肩に預けてきた。 「京介……貴方、上達してるでしょう」 「……いや、そんな事はないと思うが……」 心当たりがなくはないのが非常に心苦しかったりする。 483 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 45 43.96 ID zZuVFrAs0 「隠さなくて良いのよ。元々、そういう約束なのだから」 そう、約束。同時に契約でもある。 俺がここに住む最大の理由にもなっている。 この発案者は、あろうことか、BL大好きの潔癖主義者。赤城瀬菜だった。 『……なんだって?』 『ですから。これだけ大勢の女性から愛されている高坂先輩には、応える義務があるんです!』 瀬菜がぶちまけたのは、俺の高校卒業を祝うという名目の元開催されたパーティーでだった。 桐乃、あやせ、黒猫、沙織、麻奈実、瀬菜、フェイトさんの7人の女子(約一名は女子というか女性)に対し 男が俺1人と言うのはいかにも異常だったのだが、割合つつがなく会は進んでいたのだ。 しかし、瀬菜が唐突にこんな事を言い出した。 『高坂先輩は、どの子が良いんですか?』 そりゃジュース吹き出すよな。 お前もうちょっと空気嫁と。 で、一気に場の雰囲気は大変な事になった。 尤も、それは正直俺にとっては想定外な事ばかり、というか、想定内の反応など1つもなかった。 484 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 47 01.00 ID zZuVFrAs0 『まぁここは私って答えて頂いても全然構わないんですけど』 と瀬菜が言えば、 『冗談は胸だけになさい。先輩は私のような落ち着いた人間が良いのよ』 と黒猫が返し。 『そういう意味では年上の私が最適って事かしら?』 とフェイトさんが胸を張れば 『はァ? 年増とか需要ないから。早く婚活始めればァ?』 と桐乃。 『そ、そうだよね。桐乃は妹だから……選べませんよね。 この中で一番可愛いのは桐乃ですけど、 でも仕方ないから私を選んで下さっても良いですよ、お兄さん』 とあやせが言うと 『おっと、眼鏡を外せば拙者、それなりに自信がございますぞ』 と沙織が張り合う。 485 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 47 57.67 ID zZuVFrAs0 そして 『きょうちゃんの事をいちばん理解してるのは、わたしだもん』 と胸を張る麻奈実に対しては 『バッカじゃない? それを言うなら妹のアタシほど バカ兄貴の事分かってるヤツはいないっての』 と、こうなった。 おかしいなあ。ここまで張り合う理由あるのか? 一番の当事者だった気がするが、既に蚊帳の外。 誰かが名乗りを上げると、誰か(もしくは誰か『達』)が否定する。 言いがかりも、水掛け論も、ごり押しも飛び交う さながら戦場のような光景だった。 結局出ない結論に、瀬菜はそう言った。 これだけ大勢の女性から愛されている俺には、応える義務があるのだと。 そんな実感は全くなかったんだけどなあ。 しかも誰か1人を選ぶ、とかじゃなくて、全員なのか? ん? どういう事? 486 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 49 11.59 ID zZuVFrAs0 『なるほど。全員でござるか』 『ええ。皆、ちゃんと順番を決めれば不満は出ないかなと!』 なんの順番だよ!? 『……なるほど、丁度7人、と言う訳ね』 『さっすが五更さん。あ、今は黒猫さんでしたっけ。 丁度1週間で回りますから覚えやすいですよね』 だから一体なんの話を進めてるんだよ。 蚊帳の外にも程があるだろ。 『ですから』 瀬菜は快活な声で 『ここにいる7人の女の子を、日替わりで、高坂先輩に愛してもらうんです』 一瞬、いや、数秒だったかもしれない。 『なにぃぃぃぃぃぃ!?』 瀬菜の言葉を理解できた時、俺はそう叫んでいたのだった。 487 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 49 52.22 ID zZuVFrAs0 しかしそこからは数に勝る女性陣があれよあれよと話を決めてしまった。 ただ、高坂家に何人もの女の子が入れ代わり立ち代わり来るのは 両親から見て不審と思われるだろうし、ましてやあの親父だ。絶対に大問題になる。 そこで対策として、沙織のコネクションを使って物件を探す事になった。 実家から通うよりは楽で、且つ、女の子たちが通いやすいロケーション。 真っ直ぐに部屋の前まで来れない構造。 (建物の前でインターホンを使い、自動ドアを開けてもらわないと入れないようなアレだ。 万が一にも鉢合わせはマズイし、親の抜き打ちチェックなんてあったら頭と胴が離れちまう。) 用途が用途なので、防音性とセキュリティに優れている事も重要。 予算と相談して、見つかったアパート。 必ずではないが、ここには曜日ごとに決まった女の子がやってくる。 月曜は瀬菜。火曜は黒猫。水曜は沙織。木曜はフェイトさん。金曜は麻奈美で 土曜に桐乃、日曜はあやせ、という風に。 ハッキリ言うが、何の冗談かと思った。 随分壮大なドッキリじゃないか、こんなに金と手間をかけて大変だなオイってな。 だから女の子たちも、誰一人として来ないだろうってタカをくくってた訳だ。 初めての1人暮らし、満喫してやろうって。 488 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 51 39.91 ID zZuVFrAs0 まず引越しが完了したのは水曜だったんだが、 その夜、沙織は引越しソバを食べようとやって来てくれた。 凄え嬉しかったんで、喜んで迎え入れた。 春らしい、薄いピンクのワンピースはシンプルなライン故に 藤原紀香と同じと自称するプロポーションを引き立てている。 あれ? そう言えばいつものオタクファッションじゃない、のに眼鏡をしている。 その上、白いエプロン身につけてるしな。 それがなんだかアンバランスでちょっとおかしい。 けどそのおかしさが、この一種異様な空間――自分の『家』で女の子と2人きりという――にあって 唯一、心を落ち着かせてくれる特効薬になっていたのだった。 『京介氏、ソバのおツユは濃い目と薄目、どちらがお好みですかな?』 『あー、つけて食べるなら濃い目で、かけるなら薄目かな』 『了解でござる』 なんだか鼻歌交じりにキッチンに立っている沙織が凄く新鮮に見えて 油断するとすぐ心臓の鼓動が早まりそうになる。やべえぜ。 醤油と出汁のいい香りがしてきたなと思うと、沙織はお盆に器を2つ載せてやってきた。 『出来上がりましたぞ、京介氏』 『おお、すまんな。全部やってもらっちまって』 『いや、なに。大した手間ではござらんよ』 つくづく思うけど、コイツってホントによく出来たヤツだよな。 2つも年上の俺がやけにちっぽけに見える。 489 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 52 23.13 ID zZuVFrAs0 『んじゃ、いただきます』 『召し上がれでござる。お口にあうと良いのですが』 ずるずるーとソバを啜ると麺にからんだツユはやや甘めで疲れた身体にじんと染みる温かさ。 思わず 『うめえ……』 と漏らしてしまった。 普段家で食べるものとはなんだか少々味が違うのは、 やっぱ作り手が違うと家の味が変わるからなのかなとか思ったりした。 割かし勢い良く食べていた俺だったが、ふと気づくと沙織がこちらを見ていた。 『なんだ? 食べないのか? 美味いぜ』 『はは。京介氏が本当に美味しそうに食べてくださるのが、拙者、嬉しくてですな』 『な……なんだよ』 『……良いものでござるな、こういうものも』 めちゃめちゃ優しい顔で笑っているのが眼鏡越しにも分かる。 心の中に湧いた何かを振り切るように、俺は箸を動かしたのだった。 『……あー、美味かった。ごちそーさん』 『お粗末様でござる』 沙織はソバを持ってきた時と同様、器をお盆に載せて、台所に持っていく。 『あ、洗い物ぐらい俺がやるから置いといてくれ』 『これぐらい大丈夫でござるよ。量もそう多くはありませぬ』 490 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 53 17.51 ID zZuVFrAs0 ジャーッという音がして沙織は皿洗いまで始めちまったらしい。 一応俺の家になるのに、こんなに任せきりで良いのだろうか。 でも、何気に沙織のヤツ、家事好きなのかな。割と楽しそうなんだよな。 新婚夫婦ってこんな感じなのかって思ったりした俺は慌ててそれを打ち消した。 『京介氏~』 『お、おう!?』 声が裏返っちまった。くっ、恥ずかしい。 『お風呂沸いてるでござるよ。お先にいかがかな?』 『えっ……なっ……』 『ほれほれ、入った入った!』 半ば強引に風呂場へ押し込まれてしまった。 いやいや。え? まさかだよな。けど、そもそもこの家ってさ。 ごくり。風呂のお湯のせいじゃない。この顔の熱さは。 これがエロゲーなら沙織が風呂に乱入してくる訳だが く、来るのか? 来ちゃうのか? そんなCG回収しちまうのか!? 『京介氏~』 『なっ、なななんだ!?』 ほ、ホントにキタ――(゚∀゚)――!!? 493 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 54 57.40 ID zZuVFrAs0 『湯加減はどうでござる?』 『あ、あああ、良いぜ! ちょっと熱めだけど、うん、気持ち良いぐらいで』 『そうでござるか。ごゆっくりでござるよ~』 そう言ってパタンと音がして。 沙織はそのまま出て行った。 そ、そ……そりゃそうだよな!? いくらなんでもそれなんてエロゲみたいな展開はねえよなあ! あー恥ずかし。何1人で舞い上がってんだよ俺。バッカみてー。バーカバーカ。 引越しで疲れた俺を労うために、ソバ作って風呂まで準備してくれた沙織に対して なんつー邪な気持ちを抱いていたんだ。反省しろ。 風呂を上がって髪を乾かし、居間に戻るとそこには沙織の姿はなかった。 なんだ、帰っちまったのか? それなら声をかけてくれても良さそうなもんだが。 『沙織ー? いねーのかぁ?』 『こちらに』 声が返ってきたのは寝室から。 まさかベッドメイキングまでしてくれてんのか? そんなんならもうマジで良妻になるな、沙織。 なんて事を考えながらドアを開けると、そこにはベッドの上に正座している沙織がいた。 しかも三つ指ついてる。しかも、しかもしかも、何故か、先ほどまで着ていた ワンピースが綺麗に折り畳まれている。 つまり、裸エプロンだった。 494 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 20 56 08.62 ID zZuVFrAs0 『さ、沙織!?』 『拙者は一応、家を出る前に身体は清めてきたでござる』 ……そ、それって……。 『ただまぁ、その、なんと申しますか。いきなり全てをお見せするのは、抵抗がございまして。 斯様な見苦しい姿を京介氏の前に晒す無礼をお許しくだされ』 『見苦しいって……んなこと……』 『京介氏さえ、よろしければ、拙者の事を、その……その……』 そこまで言われればいくら俺にだってその先は予想できる。けどな。 『沙織は、その、良いのか? お、俺なんかが……』 『京介さん』 沙織は眼鏡を外し、大きな瞳で俺を見据える。 『私は、軽い女ではないつもりです』 凛とした声。それは確かな意志だった。 『分かったよ、沙織』 その晩、俺たちは互いの初めてを、相手に捧げる事になった。 496 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 01 57.51 ID zZuVFrAs0 ある日、瀬菜に聞いた事がある。 『なぁ、瀬菜』 『はい、なんですか?』 『こういうのって、お前にとっちゃ許せない事なんじゃないのか?』 瀬菜はとにかく真面目気質で、きちんとしていない事が許せない性質だった筈だ。 自分で言うのもなんだが、1人の男が、相手を1人に決めずにいる事は 彼女にとっては到底許容できない事なのではないか。ましてそこに、自身が加わるなど――。 『京介先輩の言いたい事は分かります』 俺に向き直って、瀬菜は続けた。 『確かにおかしいと思いますよ。この現状。むしろ異常だと思わなくなったらオシマイかなって思いますし』 『そこまで言うなら、なんで』 なんで、あの時、お前はこんな事を発案した。 『こういうのって、ゲームの中だけかなって思ってました。 普通ならありえないんですよ。女の子って嫉妬する生き物だから。 誰かが、自分の好きな人に愛されているのが耐えられない。 そういう生き物なんですよね』 鼻歌を歌うように結構酷い事言ってないか? 497 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 02 38.05 ID zZuVFrAs0 『だから、例えば五更さんが、嫉妬にかられて私や槙島さんを刺したりとか。 そういう展開があってもおかしくないんですよね』 『おいおい』 おいおい、である。そういやそんなエロゲあったな。 『でも、皆、多少の不満はあっても、許容範囲内みたいなんですよ。 それがなんでか、分かります?』 『……いや』 『先輩が、素敵だからです』 ズッコケた。階下の人、すんません。 『お前、はぐらかそうとしてねーか?』 『失礼ですね。真面目トークではそんな事しません。それくらいの空気は読めますよ、あたし』 ……そうかなあ。コイツ全然空気読めないヤツだと思うんだけど。 『女の子って愛されれば自尊心が満たされて、満足するんです。 ある人は10。またある人は15って感じで人それぞれ違うんですけどね。 でも先輩はあたしたちが満足できる程度に愛してくれているんです。 だから不満が出ないんですよ』 『そんなに何かしてるつもりは全くないんだが』 『そこが先輩のすごいところなんです!』 ビシッと瀬菜は指差して言った。 タオルを巻いただけの胸がほよんと揺れて目に悪い。 498 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 03 18.57 ID zZuVFrAs0 『普通の人なら1人を大事にするので精一杯です。 だから浮気や不倫をすると、どっちかが不足してしまいます。 経済的な意味だったり、単純に時間的、情緒的な意味だったりしますけど』 今度は腰に手を当てて胸を張る。 だから、お前はそこを強調しちゃダメだっての。 『まぁ先輩の場合、ライバルがあんまりにも多すぎているから 女の子たちが多くを求めすぎていない事も1つの要因である事は確かでしょう』 『ちょっとした事で満足してるってのか?』 それ全然誉められてないよなあ。 『でも、皆、幸せそうにしています』 『む』 『むしろ、これ以外の方法じゃ、誰も幸せになれないんです』 そこまで言うか? 幸せのかたちなんて千差万別だろう。 『だから先輩。皆、先輩と幸せになりたいんですから、 ちゃんと皆を幸せにしてくれなきゃダメですよ』 『……お前の”ちゃんと”の精神はそこに帰結するのか……』 にへらっと瀬菜は笑って――以前はこういう笑い方しなかったんだけどな 499 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 04 17.51 ID zZuVFrAs0 『見届けたいんです。皆揃って、幸せになるのを』 『……へっ、そんなに期待しても、できる事しかやれねーぞ』 どうやら逃げ場はないらしかった。 『そうですね。じゃあできる事ヤリましょうか』 『カタカナで言うな』 『でも、先輩のソコ、また元気になってますよ?』 『……ッ!』 気づかれてた! そりゃまぁこっちもタオル巻いてるだけだからな! 隠し様がないよな! 『先輩、さっきずっとあたしの胸見てたでしょう? お見通しですよ?』 ……女の子ってなんでこう男の視線に敏感なんだろね。 『他の男に見られてもいい気はしませんけど』 そう言って瀬菜は俺の前にしゃがみ込んで、タオルをふわりと解いた。 艶かしい肌が露になる。それにしても本当に大きいな、コイツの胸。 『先輩になら、嬉しいです』 ああもうこの野郎。そんな事言うからまた愚息が反応しちまっただろうが――。 500 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 04 58.74 ID zZuVFrAs0 そんな訳で。どんな訳だ。 この2年。毎日ではないが、それでもかなりの頻度で俺は女の子を抱いていた。 始めはそれぞれお互いに初心者みたいなもんだったし、拙い愛撫、単調なピストンだけ って感じだったが、だんだん相手の気持ちいいところが分かるようになったり ネットなんかを通じて軽く勉強したりしてちょっとずつ上達した、んじゃないだろうか。 黒猫たちは今年に入ってセンターや本試験など、まさに大学受験のクライマックスを 迎えるため、お泊りどころかウチに来るのを禁止させた。 さすがに試験前にヤリ過ぎて勉強できなかった、なんて事になったら親御さんに顔向けできないからな。 そういう訳で大体3ヶ月はご無沙汰だった訳だ。 うーん。それぐらいで劇的に上達するとは思わないんだが。 7人のうち3人(黒猫、沙織、瀬菜だ)は受験生だったから実質半減だしな。 それでも、黒猫は満足してくれたらしい。その事は純粋に嬉しかった。 「もう、大丈夫。ごめんなさい」501 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 05 41.37 ID zZuVFrAs0 「うっ」 「あら、情けない。まだ始まってもいないわよ」 コイツは責めても可愛い反応するけど、気性的にはSなのだ。 つまり、やられたらやり返さないと気がすまない。 黒猫の痴態を見ただけで溢れていたカウパーを巧みに手のひら全体に伸ばし シュッシュッと両手で上下に擦り始める。 さらに顔を俺の胸に近づけて、乳首のあたりを舐め始めた。 「ぐっ、る、瑠璃……それやべえ」 「まだ、れろ、出してはだめよ……んむっ、もっと、ぴちゃ、楽しませてちょうだい」 これでブランクが3ヶ月とか。コイツこそ上達してんじゃねえのか? 容赦なく続く責めに、それ以上耐えられそうにない。 「やば、出る……」 「ッ!」 ビクンと一際大きく揺れる肉棒を感じ、黒猫は素早く顔を股間へとうずめ、 どぐっ、どぐどぐっ。 「う、あ……」 俺は黒猫の小さな口の中に、欲望を吐き出した。 503 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 06 24.22 ID zZuVFrAs0 「る、瑠璃……」 黒猫は答えない。どうやら予想以上に出たので困っているらしい。 それでも、外に吐き出す気はないようで、こくんこくんと喉を鳴らして ゆっくり俺の精を飲み下していった。 「……ふぅ。ご馳走様」 「……お粗末様」 「ふふっ、久しぶりに堪能したわ」 嬉しそうに、黒猫はそう言って、未だに鎮まる事を知らない俺の股間に目を向けた。 「次は、こっちね」 「……ああ」 黒猫が上に跨り、間近で見なくても分かるぐらいに濡れそぼった割れ目を俺の棒に宛がう。 「いくわよ……んっ」 じゅぶりと音を立てて俺のモノを受け入れた黒猫のそこは熱くてキュウキュウと締め付けてきた。 「あぁっ……す、すごい……」 「やっべ……瑠璃の中……気持ち良すぎる」 「バカね、当たり前、でしょう?」 なんとか平静を装っている黒猫だが、バレバレだ。 でもそんな強がっている様子が愛しくてつい悪戯心が湧いてしまう。 ぴくり。筋肉で肉棒を動かし、黒猫のイイ部分を軽く刺激してやると、 黒猫の身体がびくりと反応した。 504 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 07 05.85 ID zZuVFrAs0 「なっ」 「相変わらずそこが弱いんだな、瑠璃」 「お、おやめ、なさ……やめ……だめ……そこ、だめ、なの……ひゃん!」 やっぱり可愛い。クソ、可愛すぎる。 こうなるともうガマンできない。 ベッドのスプリングを生かし、反動をつけて、下から黒猫を突き上げた。 「ひゃ、ぅっ……ら、あっ、あぁぁっ! わた、わたし、が……うごく、のにぃっ!」 「もうたまんねーよ。こんなっ、可愛いとこ、見せられちゃ!」 黒猫が身をよじって逃れようとするが、許さない。 腰を両手で抑え、わざと音を立てるように肉孔をかき回していく。 「ひゃ、らめ、も、い、ちゃ……わ……」 突如、膣圧が急激高まり、黒猫の絶頂が近い事を知る。 「くっ、お、やべっ」 「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」 黒猫が長く美しい髪を振り乱して絶頂に達すると、 俺も搾り取られるように2度目の射精に至った。 ぱたりと、黒猫が俺の胸にもたれかかるようにして倒れてきた。 505 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 07 47.15 ID zZuVFrAs0 「瑠璃……、大丈夫か?」 そう聞く俺の呼吸も荒い。 「ええ……だい、じょうぶ……」 それ以上に黒猫の吐息も荒くなっていた。 「ちょっと、休憩すっか?」 「……それも良い提案ね。でも、まだまだ搾り取るから覚悟なさい」 「はは……お手柔らかに頼むよ、瑠璃」 月明かりが差す部屋に、卑猥な音が反響する。 肉と肉、骨と骨がぶつかり合う音。 混ざり合った体液を貪りあう音だ。 「あァ、んぅっ! ひぅっ! ぁぁっ!」 ベッドに黒猫の手をつかせ、後ろから獣みたいに交わる俺たち。 いや、これはもう獣そのものかもしれない。 黒猫との3ヶ月ぶりのセックスは、それくらい激しいものになっていた。 「ぐっ、で、射精そうだっ、瑠璃っ!」 「いい、わっ! だして、だして、なか、にっ! んんっ!」 強烈な一突きを黒猫の秘肉に打ち込み、一番奥、子宮に肉棒の先端を押し付けて 今日4度目の射精の勢いは弱まる事を知らなかった。 黒猫も、最後にイったらしい。膣は俺を離そうとはしなかった。 506 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 08 29.49 ID zZuVFrAs0 折り重なるように黒猫の背中の上から被さって、キスをした。 黒猫もそれに応じて顔をこちらに向けてくれる。 「ん、ちゅ……んん……」 「んっ……ふう……どうだった?」 「どうって……決まってるわ」 ぷいっとそっぽを向いた黒猫は決してこっちを見ない。 けれど、耳まで真っ赤なのはこの角度でもよくわかる。 「すごく、素敵だった」 言わせたのは俺だけど、こんなに嬉しい言葉はないし、こんなに照れる言葉もない。 「瑠璃も、すげえ可愛かったよ」 「ッ……バカ……」 さすがに4回も出すと結構疲れる。……最初は2回でもヘロヘロだったんだけどな。 ま、黒猫も満足してくれただろ。多分。 なんてそんな事を考えていた時の事だった。 ギシッ。 「焦るなよ。時間はいくらでもあるだろ」 「いえ、そんな事ないわ。足りないくらいよ」 埋め合わせしてもらうって言ったでしょう、と。 ぐいっ、と黒猫は思い切り俺に体重を預け、ベッドに俺を押し倒した。 「瑠璃?」 「今度は、私の番」 黒猫の手が俺の肉棒に絡みつくとぞくりと一気に快感がこみ上げた。 517 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 58 56.04 ID zZuVFrAs0 ………………えっ? 今、明らかに寝室の外、つまり居間から物音しなかった? まさか、不審者? 動揺しかけた俺を、しかし、黒猫の声がぴしゃりと抑えた。 「……見逃してあげようと思ったけれど、自分からシッポ踏ませてどうするの」 『……』 「観念して出てきなさい、沙織』 「さっ、沙織ぃ!?」 慌てて寝室のドアを開けるとそこには、本当に、沙織が腰をおろしていた。 それも、ただ床に座り込んでいた訳じゃない。 スカートをたくしあげ、ショーツはぐしょぐしょに濡れていたのだ。 しかも手元には俺のジャケットがあった。つまり、沙織は――。 横になっていた黒猫がようやくむくりと起き上がり、シーツを巻いて立ち上がる。 「自分を慰めるだけで気が済むなら、見逃すつもりだったけれど。 こうなっては仕方がないわね」 「も、申し訳……」 沙織は傍目にも可哀想なくらい震えていて、今にも泣きそうだった。 「お、おい。る……黒猫。あんまり沙織を……」 「人聞きが悪いわね。苛めているつもりはないわよ」 「うう……」 黒猫は目を眇めて沙織を見ると、ニヤリと笑った。 あ、なんか嫌な予感。 519 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 21 59 47.80 ID zZuVFrAs0 「沙織。取引といかない?」 「取引……ですか?」 「ええ」 沙織のやつ、眼鏡してるのに普段の口調に戻ってない。 キャラを被る余裕がなくなっているって事か。 いやまぁ、そりゃこの状況で平静でいられる女の子とかちょっと引くけどね。 「3Pをします」 「「……は?」」 図らずもハモってしまった。え、何言ってんの、黒猫さん? ううん、と首をひねって思案するような仕草。 「違うわね。こうじゃないわ。3Pをして……頂けませんか?」 な、なにを…… 「3Pをしたら……どうなんですか……?」 さっきから何を口走っているんだよ、黒猫おまえっ! 「3Pをしましょう。沙織」 しかも俺じゃないっ!? 「さ、さささんぴー……?」 「ええ、そうよ。私と貴方と、京介の3人でプレイ。略して3P」 520 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 22 01 00.19 ID zZuVFrAs0 3Pて。お前は何を言っているのか分かっているのか? いや、知識はあるよ? そりゃね、そういうものは見聞きしましたよ。 主にゲームとかDVDとかでな。 けど、黒猫。お前は分かっているはずだろう? 女の子は基本的に独占したいんだ。独占して、満たされる。 けど3Pってそれとは真逆の行為じゃねえのか? それで黒猫も沙織も満たされるのか? 俺には―― 「京介」 「……?」 「私も本音を言えば、不満がない訳ではないわ」 「黒猫」 「……」 チラリと沙織を見て、黒猫は続けた。 「今日は私の日なのに、出歯亀した上、乱入なんてね」 「ご、ごめんなさい……」 「けど、分からなくはない」 沙織の元に歩み寄って、しゃがみ込んだ。 521 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 22 06 21.31 ID zZuVFrAs0 「貴女も、私と同じで、ずっとお預けされていたんですものね」 「……」 「……溜まっていたんじゃなくて?」 カッと沙織の顔が紅くなる。 「ふふ。久しぶりに京介に会って、腕に抱きついて、彼の匂いを嗅いで、 優しくされて、でも、彼は他の女とこれから一夜を共にする、なんてね。 耐えなさいって言う方が酷と言うものよね。」 沙織は耳まで真っ赤にしながら、黙って聞いている。 「だけど、今日はやっぱりまだ私の日。あと2時間はね。 でも、一刻も我慢できないお嬢様のために、ちょっとだけ分けてあげるわ。 その代わり、明日は私も混ぜなさい」 「っ!」 黒猫は優しい目をしたまま、沙織の耳元に口を近づけて、ぽそりと呟いた。 「さぁ、早く京介に貫かれたいでしょう?」 その声は静かで穏やかだったはずなのに、 やけに静まった部屋の中でハッキリ聞こえてしまった。 そして沙織は眼鏡を外して俺を見上げた。 「京介さん……私にも、ください……!」 真っ赤な顔、潤んだ瞳。 疲れていた体が上下共に一気に活力と精力を取り戻して漲る。 523 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 22 09 25.77 ID zZuVFrAs0 結局その日。日付が変わっても快感の饗宴が終わる事はなかったのだった。 524 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 22 10 20.94 ID zZuVFrAs0 翌日。 講義やオリエンテーションは変わらずあるよ? しかしそこは、『そういう用途のための家』である。 女性陣たちはそれぞれ、お泊りセットと着替えの1つ2つが完備されている。 歯ブラシの数だけ見たらどんな大家族かと思うよな。8本て。 干からびそうな身体に鞭打って起こすと、既に黒猫も沙織も起きていたらしい。 「おはようございます、京介さん」 「おはよう、先輩」 なんだろうね。2人ともすっごいツヤツヤしてんすけど。女ってすごい。 「朝ごはんはもうすぐ出来ますから。顔でも洗って待っててください」 「あ、ああ、あんがと、沙織……」 525 以下、名無しにか - 2010/11/15(月) 22 11 45.07 ID zZuVFrAs0 ふらふらしながら洗面所に向かう。ああ、太陽が黄色い。 顔を洗って少しさっぱりしたけど、だからって疲れは抜けない。 ……何回出したか分からんくらい出した、っつーか絞られたもんなあ。 そりゃおにーさんもヘトヘトですよ。 けどよ。 「京介さん、ご飯できましたよ~」 「早くいらっしゃいな、京介先輩」 こうやって、幸せそうな顔見てると、頑張らなきゃなって思い直す訳だよ。 ゲンキンなヤツだって? 我ながらそう思うぜ。 この生活は、いつまでも続く訳じゃないだろう。 いつか必ず変化は訪れる。ずっと今のままではいられない。 そんな事は良く分かってる。 だからこそ、今は。目の前の笑顔を大事にしていこう。 「はい、しっかり食べて体力つけてくださいね、『兄さん』」 「そうですね、今夜も頑張って頂かなくてはいけませんものね、『お兄様』」 カーッと顔が紅く、熱くなる。 だって仕方ないだろ? 俺の妹たちは、こんなに可愛い。 終わり
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143 以下、名無しにか - 2010/11/11(木) 22 39 42.21 ID vLAorgNV0 「平凡」「不変」「普通」 俺が常々口にしている、俺なりの幸せのかたち。 変わらないものを変わらないまま続けていく難しさは ある程度理解しているつもりだった。 いや、大した経験や体験談がある訳じゃないから、 苦労を乗り越えて血肉としてそう言い切れるような人たちに 面と向かって言う事なんてできやしないけどな。 だってそうだろ? 誰でもが簡単にできる事なら、誰も苦労しないんだ。 けれど、俺の場合。案外あっさりそこに手が届くかもしれなかったりする。 144 以下、名無しにか - 2010/11/11(木) 22 40 38.38 ID vLAorgNV0 俺には1人の幼馴染がいる。 名前は田村麻奈実。和菓子屋の娘だ。 とにかく地味な性格、地味な容姿なのだが、成績に関しては優秀の一言に尽きる。 麻奈実のおかげで、そこそこ良いレベルの高校に合格できたし、 さらに都内の大学にも現役で合格した。 旧帝ってほどじゃないが、やはりそれなりに名の通った大学で 合格の知らせを聞いた両親や桐乃、黒猫や沙織、あやせも 割と驚いていたのが、悔しくもあり、また同時に嬉しくもあった。 「きょうちゃーん。こっち手伝って~」 「あいよ!」 季節は8月。大学生活4回目の夏休みは4年連続4度目の、バイトに来ていた。 どこって? そりゃ決まっている。 「おにーさん、このお饅頭とこっちのお煎餅2つずつね」 「はいはい。えーと、1050円が2点、840円が2点で……」 「違うわよ。こっちの1260円の方」 「うわっ、すんません!」 お盆を前に帰省ラッシュも始まりつつあるため、和菓子屋は大盛況という訳だ。 初めて麻奈実から話を持ちかけられたのは4年前。夏休みを控えた7月のある日の事だった。 145 以下、名無しにか - 2010/11/11(木) 22 41 20.01 ID vLAorgNV0 『バイト?』 『そう。実は毎年この時期は忙しいの。それで、今年もあるばいとをお願いしてたんだけど 急に1人きゃんせるが入っちゃって』 『それで俺に白羽の矢が立った訳か』 この話を聞いて、俺は悪くないなと素直に思った。 バイトは未経験で、兼ねてより探そうかなと考えたりはしていたからだ。 根が小心者の俺としては、いきなりコンビニなんかの知らないところで働くよりは ある程度気心の知れた人間の店で働く方が気が楽ってもんだろ? とは言え、一応親父の耳に入れる必要はあるだろうと思い、 その場では前向きに考えると答えるに留めた。 もちろん、その晩、親父からは2つ返事が許可が下りたけどな。 「あっ、すいませーん。これって包んでもらえるんですか?」 「贈答用ですか? 熨斗の指定はありますか?」 普段はぽけーっとしている麻奈実は意外にも手際よく客を捌いている。 そしてなんだか今日は機嫌が良さそうだな。傍目にも浮かれてやがる。 19時閉店。今日も1日お疲れ様でした。 ちなみに普段の営業は18時まで。繁忙期なので1時間延長しているのだそうだ。 実際閉店間際にもお客さん来てたしな。 「きょうちゃん、おつかれさまあ」 「おう、麻奈実もお疲れさん。今日もよく売れたな」 「うん。えへへ。きょうちゃんのおかげだよ~」 やっぱり機嫌良いな。なにかあったんだろうか? 146 以下、名無しにか - 2010/11/11(木) 22 42 01.30 ID vLAorgNV0 「なあ、麻奈実。お前、今日何か良い事でもあったのか?」 「えっ!? な、なんでわかるの~?」 そりゃお前、顔に書いてあるって表現がピッタリくるぐらい顔に出てるからな。 隠し事のできないヤツめ。 「それってさ、昼間のアレだろ?」 と、顔をひょこっと出したのは麻奈実の弟、岩男だった。 「にーちゃんがお昼食べてる時、お客さんに言われてたんだよなー」 「こ、こら! それはないしょ」 「なんだ? 俺が許す。言ってみろ」 むぐむぐと口で言っているかのようにもがく麻奈実を後ろから抑える。 「今日は若旦那は一緒じゃないのかい?ってお客のばーちゃんに言われてたんだよ」 「なっ! わかっ!?」 「ぷはーっ! もう、言っちゃだめって言ったのにー」 今度は俺が真っ赤になる番だった。若旦那て。 「ご、ごめんね。きょうちゃん。迷惑だった、かなあ?」 「……」 少し困るようにはにかむ麻奈実を見て、 何故だか心に小さなトゲが刺さったみたいに感じた。 147 以下、名無しにか - 2010/11/11(木) 22 43 05.98 ID vLAorgNV0 だから、俺はハッキリと否定してやる。 「いや」 「ふえ?」 「10年後、こうやって俺とお前はこの店を切り盛りすんのかなって、ちょっと今日思った」 麻奈実は、今自分が聞いたものが信じられないと言わんばかりの表情だったが、 一拍の間を置いて喜色満面になった。 「そ、それって、きょうちゃん……」 「まぁ、そういう事、かな。今後ともよろしくな、麻奈実」 「うん、うん!」 戻ってきた岩男が口笛を鳴らして快哉を叫ぶ。 あーあ、あの分じゃ爺ちゃんも婆ちゃんも、麻奈実の両親も聞いてたな。 でもまぁ。情報化社会、文化の欧米化が進む現代の日本で 伝統の和菓子を守るって仕事も悪くないだろ。 「えへへ、きょうちゃんだいすき~」 ましてや、涙と笑顔でくしゃくしゃになってるコイツと一緒なら、なおさらな。 こうして。既にいくつかの内定をもらっていた身ではあったが、 俺は永久就職先を見つけてしまったのだった。 終わり