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――では、今回のミッションについておさらいしよう。 今回特異点化の兆しが見られたのは、西暦1600年の日本。 藤丸君に分かりやすいよう言うなら、東海地方の岐阜県あたりを、中心とした一帯だ。 この時代のこの場所においては、大きな戦争が起きている。 安土・桃山時代の終わり、そして江戸時代の幕開け――天下分け目の関ヶ原だ。 この地でかの徳川家康は、石田三成の一派を打倒し、日本を支配する江戸幕府を築き上げる。 その後日本がどうなったかについては、学校で教わっているはずだよね。 とはいったものの、この介入によって、歴史にどのような変化が起こるのかは、正直なところ不透明だ。 確かに徳川政権下の日本は、鎖国によって外国との接触を制限し、独自の文化を築き上げてきた。 しかしそれが成ったのは、徳川家康の体制から、二代も替わった後の話だ。 あるいは新宿の時のように、それ以上の何らかの変化を、起こそうとする意志がある……のかも、しれないけれどね。 ともあれ、下手人の意図が分からない以上、厄介を強いられることは覚悟した方がいい。 状況は過酷かもしれないが、それでも、成果を期待させてもらうよ。 それでは、レイシフトスタートだ。 頑張ってくれたまえ、藤丸君。 ◆ 剣戟が聞こえる。鬨の声が響く。 轟咆に込められるものは、闘志か憤怒か。赤く染まる土煙から、響き渡るものは勇気か怨嗟か。 具足の音は絶えることなく。斬撃の音は断ってなお続く。 いざ行け、進め、戦慄の大地を。矢を撃ち落とし、刃を退け、生存と使命を担保にかけて、地獄を踏破し疾走せよ。 この有りようこそ戦である。祈りと怒りと誇りと恨み、全てを煮詰めて坩堝と成した、この灼熱こそ戦場である。 『戦場です、先輩! そこは戦闘の真っ只中! レッドアラート・鉄火場・ナウです!』 「見れば分かるよそんなことぉ!」 そうだ。そうなのだ。 人類最後のマスター・藤丸立香は、目的地へレイシフトした矢先に、その戦場へ放り込まれたのだ。 似たようなことは前にもあった。永続狂気帝国・セプテムの旅も、最初は合戦からのスタートだった。 しかしながら、それにしたって、いきなり戦場のド真ん中に、投げ出されることはなかったはずだ。 オペレーター席のマシュの言葉に、悲鳴のような声を上げながら、立香は生存のためにひたすらに走った。 矢と鉄砲と怒号が飛び交い、血飛沫が乱れ飛ぶ戦乱の最中で、只人たる立香はまさしく、無力だった。 『うーん、しかしこれは妙だね。念のため、本来の合戦場からは、転移座標をずらしていたはずだ。加えて両軍いずれにも、徳川・石田の特徴は見られない』 通信システムの向こうでは、ダ・ヴィンチが首を捻っている。 どうにも今まさに起きているのは、本来の関ヶ原の戦いとは、また異なる戦であるようだ。 赤備えの鎧武者達が、挑む相手は人ではなく、かたかたと骨を鳴らす竜牙兵である。なるほど確かにこの合戦は、まともな戦国時代のそれではない。 『しかしその色で騎馬武者となると、どこかで……』 「どうだっていいよ! とにかく、何とかこの場を切り抜け――」 「貴様、一体何者だ!」 テンパる立香の敗走が、遂に武者達に見咎められた。 武器を構え立ちふさがる鎧に、立香は悲鳴と共に身を竦める。 「怪しい装いだ。さてはランサーの手の者だな!」 「ひっ捕らえよ! 抵抗するなら首を取れ!」 「うわぁあああっ!」 はぐれたサーヴァントの強制転移――駄目だ、命令が間に合わない。 槍と剣とを構えた武者は、ものすごい剣幕でこちらに迫り、今にも斬りかからんとしている。 こんなところで終わるのか。これまで窮地を切り抜けてきたというのに、こんな訳の分からない形で、呆気なく終わってしまうというのか。 サーヴァントでも魔神でもない、どこの誰かも分からない、人間の手にかかって死ぬというのか。 「――ッ!」 しかし、その時だ。 目を瞑らんとしたその直前に、紫の影が躍ったのは。 鋼が響く。刃金が唸る。光輝を放って迸る刃が、迫る赤鉄を次々と切り裂く。 その太刀筋を、知っていた。藤丸立香の前に飛び出し、剛剣を振るう男の姿を、彼は確かに、記憶していた。 「久しいな、藤丸殿。マシュ・キリエライトは息災か?」 「ランスロット……キャメロットの、ランスロットか!」 鈍く光る紫の甲冑。短く切りそろえられた髪。涼やかな顔立ちでありながら、眼光は怜悧に、そして鋭く。 現れたのは円卓最強。かつて第六特異点にて、激しく火花を散らし合い、最後には共に戦った湖の騎士。 セイバーのサーヴァント、ランスロット――この場においては間違いなく、最高の援軍の姿が、そこにはあった。 『第一声でそれですか! ……ああいえ、今はそれどころではなく! 貴方も来ていたんですか、ランスロット卿!』 「うむ、息災で何よりだ」 思わず声を荒げるマシュに、ランスロットが冷静に応じる。英霊の力を失ったとはいえ、奇妙な宿縁は健在ということか。 かつてかの騎士の息子である、サー・ギャラハッドの魂を宿していたマシュは、唯一この男の前では、どうにも感情的になってしまうのだ。 「ともあれ、今はこの場を切り抜けるのが先か。突破するぞ、藤丸殿!」 「ああ、頼む!」 とはいえ、今はそうした些事にも、感慨にも囚われている場合ではない。 一度連携した仲だ。状況を把握してからの、互いの行動は素早かった。 謎の敵対者の姿を認め、襲いかかってくる武者達を前に、ランスロットが聖剣を構える。 湖光、炸裂。快刀乱麻。唸りを上げる『無毀なる湖光(アロンダイト)』が、青き光を剣閃と変えて、赤い鎧を鉄屑と砕いた。 「囲め、囲め! 敵は一人ぞ!」 一騎討ちでは敵わない。この男はそれほどに強い。 僅かな打ち合い斬り合いからでも、それはありありと察せられる。故にこそ赤鎧の軍団は、集団戦法による打倒を選んだ。 されどそれでも未だ足りぬ。そこらの手練は討てたとしても、円卓最強は止められぬ。 「フッ――!」 四方八方から刃が迫れど、空の一点には死角があった。 ランスロットは迷うことなく、蒼天目掛けた跳躍を見せた。 まるで鎧など無いかのごとく、湖の騎士は軽やかに舞う。目標を見失い、友軍とぶつかり、もみくちゃになった鎧武者達の、赤い甲冑をとんと蹴り逃れる。 一箇所に固まった標的に対し、魔力の斬撃波を、一閃。飛燕の刃は彼方の敵を、爆裂と共に吹き飛ばした。 「……!」 そして、敵はそれだけではない。敵の敵は味方ではないのだ。 正体不明の竜牙兵達も、立香の敵となり襲いかかった。無骨で不気味な武器を構えた、髑髏の軍団がその首を狙った。 されど、今なら問題ない。頼もしい味方の背中を見届け、余裕を取り戻した立香ならば、平静を取り戻し戦うことができる。 牙持たぬ彼の、彼なりの刃――絆を育んだサーヴァントを、呼び寄せ使役することによって。 「来い――風魔小太郎ッ!」 赤い令呪が光を放った。強制転移の命令を発した。 瞬間、ちゅどっ――と爆ぜるのは、熱と圧とを伴う爆風。藤丸立香の目の前で、忍の火薬弾が吼える。 灰色の煙の奥底から、躍り出るものは赤毛の戦士だ。されど身軽なその姿は、剣持つ鎧武者のそれではない。 侍の支配の影を疾駆し、戦い続けた異形の戦士――隠密集団・忍者の姿だ。 「せいッ!」 風魔が頭目、名を小太郎。 幼き少年の姿にあれど、研鑽悪辣全てを賭して、磨き上げられた力と技は、微塵の陰りも見せることなく。 クナイを手に取り、鈍く光らせ、骨の継ぎ目と継ぎ目を一撃。バラバラに砕けた竜牙兵から、剣を奪って掴み取ると、次なる標的目掛けて投げる。 電光石火の早業は、さながら闇夜の流星か。立香の言霊に呼応し、駆けつけたアサシンのサーヴァントは、見定めた敵を次から次へと、的確に迅速に打倒していった。 「――ははは! なかなかどうして、やるではないか!」 そして、その時だ。 獅子奮迅の二騎によって、敵の攻勢が崩れ始めた、その時にこそその声が響いた。 中性的。否、このトーンなら女性か。豪快に大笑する声は、遥か頭上から轟いてきた。 慌てて、その場から退く。何がやって来るかと思えば、降ってきたものはなんと馬だ。驚嘆に値する脚力によって、一跳びで乱入してきたのだ。 当然、獣は人語を話さぬ。であれば舞い降りた馬には、言葉を発する主がいる。 「御館様!」 「御館様だぞ!」 侍達が活気づく。もうもうと土煙を立て現れた、乱入者の姿を讃えて叫ぶ。 やはりと言うか、当然というか、馬上の女の姿も鎧だ。両の肩と膝のあたり、合計四ヶ所に備えられた、山吹色の水晶玉が、不思議と目を引く鎧だった。 女性にしては背の高い肢体を、一際剛健な赤備えに包み、存在感をアピールしている。 かと思えば、腿やら胸やら、随所には扇情的な露出も見られた。豪快に開かれた胸元は、くっきりと濃い谷間を築いていた。 「貴殿がこの部隊の長か。惜しいな。敵でなければゆっくりと、語らうことも叶ったのだが」 「死合う相手を口説くとは、くく、よほどの肝かあるいは阿呆か」 この惨状を見る限り、恐らくは前者なのだろうよ。 乱入者は悠然と構えながら、ランスロットを見定めた。 見た目にはアレな部分もあるが、だからといって油断ならない。二本の大角の甲の向こうで、犬歯と金眼を光らせる女は、まごうことなき強敵だ。 大国の神祖、ロムルス王。漆黒の凶王、クー・フー・リン。そして女神ロンゴミニアド。 これまで対峙した強敵達が、等しく発してきた恐るべき王気(オーラ)を、この女武者もまた兼ね備えている。 百獣の王を思わせる、白いたてがみをたなびかせる姿は、後光を発しているかのようだ。 『自重して下さいよ、ランスロット卿。あの方もまたサーヴァントです』 「然り。此度の流儀に沿うならば、ここはライダーと名乗らせてもらおうか」 にやりと笑うその姿は、確かに人のそれではなかった。 カルデアから観測を行っているマシュには、そしてマスターである立香には、目の前の存在がサーヴァントであると、確かに認識することができた。 これだけの気迫、風格である。恐らくはこの日ノ本においても、相当に名の知れた大英雄なのだろう。 それがモニター越しであっても、その恐るべき気配を察知していた、マシュ・キリエライトの推測だった。 「藤丸殿、ここは後ろに……藤丸殿?」 「………」 ああ、しかし。されどしかしだ。 立香には、ついでに小太郎には、それ以上のものが見えていた。 マシュにも、そしてランスロットにも、はたまた恐らくはダ・ヴィンチにすらも、見えていないものが見えていたのだ。 ぎょっと目を見開いた様子で、二人がぱくぱくと口を開く。何と言ったら分からないが、とにかく言いたいことが山ほどある。そういった類の動揺だ。 「うん? どうした、そこの細いの」 そして遂にその様子を、敵すらも不審に思ったのだろう。 気迫も風格も一時引っ込め、怪訝百パーセントといった様子で、ライダーが立香を気遣うように問うた。 「あの……その……ライダー、さん。俺、こんな格好してますけど、その、日本人なんです」 「ふむ、まぁそうだろうな。大陸や半島の者でないなら、必然同郷となるだろうよ」 「ええ、ですからその、知ってるんです。色々と」 「何を」 「有名なんですよ。そのアレとか、ソレとか、本当にもう、色々と」 何からどのように言っていいか。探るように口にする、藤丸立香のすぐ傍で、小太郎がかくかくと小刻みに頷く。 そうだ。有名なのだ、この女は。 ライダーと名乗って名を隠すのが、全く意味をなしていない。どう考えても日本人の前で、その真名を隠そうというのは、無理がありすぎる話なのだ。 何で女だったのかとか、色々疑問は尽きないのだが、それでも思い当たる節ばかりが目立つ。 何せ赤い鎧を纏って、その上馬に跨っている姿は。 巨大な二本角が印象的な上、たてがみまで生やしている兜飾りは。 これは後世には伝わっていないが、目元をバイザーのように覆っている、面当ての彩りが虎柄というのは。 そして何より、何よりも、その鎧の背後ででかでかと、掲げられている軍旗は。 風と林と火と山の、四文字が目立ちまくっているその旗印は――! 「……ああもう! そんな格好してる人は、貴方しかいないんですよ信玄公――――――っ!!!」 ◆ 真 名 開 放 関ヶ原のライダー 真名 武 田 信 玄 BACK TOP NEXT 決戦前夜、あるいは遅れて来た者の話 天頂統一戦線 関ヶ原 世界を変える準備はいいか(2)
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【リプレイ】『――この世界を、裁く』 アクトさんが入室しました シグマ- ぉ、あっくん!(気付く アクト- (ところがどっこい入店してきてないんだぜ シグマ- (2人とも外だと思うけども アクト- (マジかよ 世紀末だ シグマ- (戦闘直後だぜー シュネー- (むしろラグナロクだ アクト- (姿はそこに無く―― アクト- (曇天が泥の様に夜空を覆っていく シグマ- (皮膚下の金属剥き出し 出血中 シグマ- …一雨来るかなァ? アクト- (途端 美殺さんが入室しました シュネー- (あれ?ちょっと無茶しすぎたかしら アクト- (紅い稲妻がシグマの真横を奔る シュネー- (雲がご機嫌斜めね―― シグマ- ッ シグマ- ――、また? シュネー- !(構 アクト- (続いてシュネーを貫かんと稲妻がアーチを描いて奔る シュネー- (回避せず防御 アクト- (シャワーのように稲妻が奔り、喫茶周辺を襲う シグマ- 、ッ、ちょ、電気は勘弁ッ(喫茶に逃げ込む シュネー- (ほんと今日はにぎやかな日ね… アクト- (だが稲妻は着弾せず雲に戻るため、退避は容易 シュネー- (喫茶入り口で構える アクト- (途端、稲妻が止む シグマ- 、……なんだァ? アクト- (喫茶から遥か離れた――セントラルタワー屋上がライトアップ アクト- (――“K”出現 シグマ- (喫茶の窓から見遣る アクト- 美殺、セントラル全域で良い。俺の声を広げれるか?(後ろに目線をやり 美殺- うっふふふ……仰せのままに…… シュネー- (さすがに…よく見えないわね シグマ- ……。 アクト- (掌を突き出し、指を弾く アクト- (――全メディアをジャック。 喫茶のTVにKの姿が映る シグマ- 、ッわ。なんだコレ 美殺- (同時にKの声の「音」を操り拡大 アクト- 『聞け、人々よッ!!』 シグマ- (喫茶のTVでなく、遠く離れたセントラルタワーに視線を戻す アクト- (セントラル全域に声が響く アクト- 『――我が名は、、、“K”≪キング≫ッ!!』 アクト- (するとKの背後に無数の剣士が出現 シグマ- ―――… アクト- 『そして…』(腕を水平に アクト- 『我らの名は、『新世の騎士団・ナイトメア≪Knight Messiah≫』ッッ!!』 シュネー- (――またこいつ? …なにやってんのよ… シグマ- 二重音声うっさい。(TV消す アクト- 『――我々ナイトメアは、力を持たない全ての者の味方だッ!』 アクト- (セントラルの人々が外に出、タワーを見上げ始める アクト- 『まずはこれを見てほしい!』(指パチン シグマ- (頬杖吐いてタワーの方見てる シグマ- (ついて、だ アクト- (曇天が巨大な孔を作る シュネー- (シグマの傍へ近寄る バハムート(異端)さんが入室しました シグマ- …ぉ、ドラゴンクン。 バハムート(異端)- (超巨大サイズの怪物が、タワー上空に翼を広げる バハムート(異端)- ■■■■■■■■――ッ!!(咆哮 アクト- 『姿形は違えど、この絶望を見た事がある筈だッ!!』 アクト- 『破壊に告ぐ殺戮、まだ我々の記憶に新しいッ!!』 シュネー- (新手のショー…じゃないわよねえ(屈んで頭を近づける>シグマ アクト- 『――だが、脅威は排除されたッ!!』(再度指を弾く バハムート(異端)- (霧散し、Kに吸い込まれる バハムート(異端)さんが退室しました(2007/03/03 23 06) アクト- 『誰の手によるものだ?』 アクト- 『そう、知っても通りヴァースに住む戦士達の手によってだ!』 アクト- 『怪物の脅威をも跳ね除ける強靭な者達…!』 アクト- 『彼等が居れば平和は安泰か……?』 シグマ- ……ん、アンタも見える?(場所譲るように位置ずれる アクト- (腕を振りかぶり アクト- 『否ッ 断じて否ッ!!!(腕を水平に払う』 シュネー- (興味なさそうな眼で見てる アクト- 『奴等が跳ね除けたのではないッ!!』(視線を喫茶へ アクト- 『奴等が呼び寄せたのだッッ!!』 アクト- 『時には仇! 時には恨み! 時には運命(さだめ)ッ!!』 アクト- 『あるいは戯れで町を破壊する者達ッ』 シグマ- ……… シュネー- ―― アクト- 『私は戦いを否定しない!』 アクト- 『だが、強き者が弱き者を一方的に蹂躙する事は許されない!!』 アクト- (喫茶――シグマの背後で影が盛り上がる シグマ- 、――? アクト- (出現するKの影 シュネー- !(振り向く シグマ- んなッ アクト- (Kの影はオリジナルの動きはコピーする シグマ- …… アクト- 『そして……力ある者が相応の責任を持たない事をッ』(腕を突き出し アクト- 『断じて許さないッ!!』(影が両者を指差す シグマ- ……(別にオレ、何もしてねーけどなァ。 シュネー- (――好きでやってるわけじゃないのに なー シュネー- (――いや、一回やっちゃったか シグマ- …(影を見る アクト- 『戦闘快楽者が蹂躙するこの世界を許しはしない!』 アクト- 『我々は世界を創り変える!!』(水平に腕を切り アクト- 『討っていいのは…討たれる覚悟のある者だけだッ!!』 アクト- (Kの背後で次々と剣士共が蜂起。一斉に剣を掲げる シグマ- …アンタさァ、(聞こえないと知りつつ、影に シグマ- こんなコトして、どーするってんだ……?(呟くように シュネー- (言ってることは正しいけど…手段が問題ね アクト- (そうだ……これで良い アクト- 『力ある者よ、――我を恐れよッ!』(影を翻し右手を広げる アクト- 『力無き者よ、――我を求めよッ!』(入れ替わりに左手を広げ アクト- 『『世界は、我々ナイトメアが――審判(さば)くッ!!』』 アクト- (――途端、今までの騒ぎが嘘のように消え去り シグマ- ……。 シュネー- (――あんな事やらかしといてよくそんな事が言えるわね アクト- (ライトが消えると共にK達の姿も掻き消え アクト- (シグマと対峙する影も霧散し消失する シグマ- ……バカな奴。 シュネー- ――バカなやつ シグマ- (…アンタは、そんな器じゃねーだろ? ―― シグマ- やー、イキナリ静かになったなァ(シュネーに シュネー- (コクリ アクト- (別のビル屋上にて―― シグマ- …さて、どうしょっかなー… セッカク仮眠室なるモノがあるんだし、使ってみよっかな シュネー- もう つかれた…(…眠い シグマ- (仮眠室のドア開く アクト- ひとまずは一手…… アクト- ご苦労だったな、美殺 シュネー- (私は…入れないわね シグマ- ンン、どーしたん?(シュネーに 美殺- いえいえ……貴方様こそご苦労様ですわ…… シュネー- (…いや、ここのことだからもしかすると…(仮眠室内部を覗く アクト- (別のビル屋上にて―― シグマ- …さて、どうしょっかなー… セッカク仮眠室なるモノがあるんだし、使ってみよっかな シュネー- もう つかれた…(…眠い シグマ- (仮眠室のドア開く アクト- ひとまずは一手…… アクト- ご苦労だったな、美殺 シュネー- (私は…入れないわね シグマ- ンン、どーしたん?(シュネーに 美殺- いえいえ……貴方様こそご苦労様ですわ…… シュネー- (…いや、ここのことだからもしかすると…(仮眠室内部を覗く 功刀さんが入室しました シュネー- ((仮眠室ってどんだけ広いんだろ アクト- これで存在が知れた。隙間も付いてやったからな…… 功刀- (近くのビルの屋上で塩アイス食ってる シグマ- ((二段ベッドが4組くらいなイメージだった 美殺- いよいよ始動…ですわね(にこやかに アクト- ((一人一部屋のスイートもあるでよ 功刀- ……宣戦布告、か。やりやがった“なキング”…… シュネー- ((なんか狭そうだと思ってたけどありえない広さだったりしそう 功刀- ((点の位置間違えた 部屋は実はありえない広さかも …地下とか アクト- 同意する奴等が居れば何かしらコンタクトを取ってくるだろう シグマ- お、ココ階段付いてるぜ。コッチはスイート行きじゃね?(シュネーに 功刀- (立ち上がり、アクト達が見える位置へ シュネー- (…あたしはギリギリ、ってとこかしら 功刀- …(俺の足音ぐらい聞こえてんだろうな、美殺なら シグマ- よッ、 と(2段ベットによじ登る アクト- (後は民衆の動きを見るだけだな 美殺- ……… シュネー- (適当に広いスペースに転がる シュネー- (尻尾は通路に投げ出す シグマ- オヤスミーッ、と(布団被る シュネー- おやすみ(ゴロン 功刀- (タワーを見上げる形で、屋上の給水塔に手をつく 功刀- …ここで潰すか、それとも…まだ様子を見るか シグマ- …フゥ。(ケガした腕見遣り シュネー- (……寝返り打ったら確実にアウトね、ここ…(ギュウギュウ アクト- ……(そして世界を…… アクト- (母さん……、フィーネ……俺は……(ギュ、と拳を シグマ- ……(みんな勝手に生きて勝手に戦って勝手に死んでんじゃん。…そんなん、どうしようも。 功刀- お前はどうなんだ。そこに居るなんて俺は知らなかったが… シグマ- …寝よ。(ゴロン シグマさんが退室しました(2007/03/03 23 32) シュネー- (――バカみたい 功刀- お前も、同じ考えでそこに居るのか…?(この距離…美殺にしか聞こえぬ言葉 美殺- ………愚問ですわ シュネー- (脅威だ脅威だって言われて竜殺しに殺されて アクト- (身を乗り出し世界を俯瞰する 美殺- (私は私のやりたいようにやるだけ…… シュネー- (殺されたと思ったら竜騎兵のペットにされて 強い弱いなんて誰が決めるのよ… 功刀- ──さーてどーすっかなぁ、俺は… シュネー- (――考えるだけ無駄ね 寝よ 美殺- (正義も悪も関係ない……世界なんて興味は無い……求めるものは シュネー- (zzzzz シュネーさんが退室しました(2007/03/03 23 35) 美殺- (闘争 美殺- ………精々、楽しませてくださいな……私を(功刀の方を見遣って妖笑 功刀- ……(なおもタワーを見上げ)…… アクト- …、美殺? どうかしたのか 美殺- ……いいえ、なんでもありませんわ、お気になさらずに(にっこり アクト- ……そうか アクト- これからは攻め手も考えていく。 美殺- そこは貴方様にお任せしますわ アクト- フム、判っている。 ……退屈はさせんさ アクト- 一先ずは戻る。まだやることが残っているからな 美殺- 仰せのままに…… アクト- (影色の翼が開き アクト- (両者の姿を闇に消す アクトさんが退室しました(2007/03/03 23 44) 美殺さんが退室しました(2007/03/03 23 45) 功刀- ……ふぅ…… 功刀- 面白そうだから見てみぬ振りをしていたが…ま、潮時か 功刀- 次に会った時…お前が“アクト”のままでも潰す。 功刀- ま、なんだろうな。これも運命ってやつなのかね…(自分の手のひらを見て 功刀- (……握り締める)全知在れ、か。まぁやるだけやってみるさ。 功刀- (踵を返し、屋上の入り口へ 功刀- ──じゃあな。 アクトさんが退室しました(2007/03/03 23 44) 美殺さんが退室しました(2007/03/03 23 45) 名前 コメント すべてのコメントを見る
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スポンサー遍歴(春期) 世界を変える100人の日本人! テレビ東京系列(金)20 00~20 54 <冬期> 対象日4月16日 4月23日 4月30日 6月4日 対象日 4月16日 1部60秒 - (PT)永谷園 30秒 - LION、外為オンライン、ニトリ、ソフトバンクモバイル、アートネイチャー 2部30秒 - TKC全国会、リーブ21、サントリー、(PT)永谷園、(PT)コーワ、(PT)第一三共ヘルスケア 4月23日 1部30秒 - リーブ21、サントリー、TKC全国会、(PT)永谷園、(PT)コーワ、(PT)再春館製薬所、(PT)タカラトミー 2部60秒 - (PT)永谷園 30秒 - ニトリ、LION、外為オンライン、第一生命 4月30日 1部60秒 - (PT)永谷園 30秒 - LION、外為オンライン、ニトリ、(PT)劇場版・銀魂、(PT)角川映画「いばらの王」 2部30秒 - TKC全国会、サントリー、リーブ21、アイア、(PT)永谷園、(PT)コーワ 6月4日 1部30秒 - リーブ21、ニトリ、アース製薬、NTTコミュニケーションズ、JPゆうちょ銀行、再春館製薬所、(PT)永谷園 2部30秒 - 外為オンライン、LION、TKC全国会、ソフトバンクモバイル、キリングループ、富士フイルム
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スポンサー遍歴(冬期) 世界を変える100人の日本人! テレビ東京系列(金)20 00~20 54 対象日1月22日 1月29日 2月5日 2月12日 3月5日 除外日拡大放送 休止 対象日 1月22日 1部60秒 - 外為オンライン 30秒 - KDDI、LION、TKC全国会、スターツ、ニトリ 2部60秒 - DMM.com証券 30秒 - リーブ21、セコム、NTTデータ、(PT)コーワ 1月29日 1部60秒 - DMM.com証券 30秒 - リーブ21、ニトリ、セコム、コナミ、(PT)コーワ 2部60秒 - 外為オンライン 30秒 - スターツ、KDDI、LION、TKC全国会 2月5日 1部60秒 - (PT)永谷園 30秒 - TKC全国会、外為オンライン、KDDI、LION、(PT)トヨタ自動車(「SAMURAI CODE」番宣) 2部30秒 - ニトリ、DMM.com証券、リーブ21、スターツ、(PT)コーワ、(PT)永谷園 2月12日 1部30秒 - スターツ、DMM.com証券、リーブ21、ニトリ、「恋するベーカリー」、(PT)永谷園 2部60秒 - (PT)永谷園 30秒 - TKC全国会、LION、KDDI、外為オンライン 3月5日 1部30秒 - 外為オンライン、KDDI、ニトリ、TKC全国会、NEC、LION、(PT)永谷園 2部30秒 - リーブ21、日本通運、DMM.com証券、日本医師会女性医師支援センター、ソフトバンクモバイル、(PT)GO!FES 除外日 拡大放送 2月19日 = 2時間スペシャル 休止 2月26日 = 「所さんのそこんトコロ!」3HSP
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スポンサー遍歴(夏期) 世界を変える100人の日本人 テレビ東京系列(金)20 00~20 54 対象日7月9日 7月16日 7月23日 9月3日 9月10日 9月17日(最終回) 対象日 7月9日 1部60秒 - TKC全国会 30秒 - LION、ニトリ、外為オンライン、(PT)自由民主党、(PT)アートネイチャー 2部60秒 - 国際石油開発帝石 30秒 - リーブ21、アース製薬、日清食品、トライグループ 7月16日 1部60秒 - (PT)アサヒ飲料 30秒 - トライステージ、国際石油開発帝石、中央三井信託銀行、リーブ21、アース製薬 2部60秒 - 外為オンライン 30秒 - ニトリ、TKC全国会、LION、(PT)永谷園 7月23日 1部60秒 - 山田養蜂場 30秒 - 外為オンライン、ニトリ、TKC全国会、LION、(PT)アサヒビール 2部60秒 - 国際石油開発帝石 30秒 - アース製薬、トライグループ、日清食品、リーブ21 9月3日 1部60秒 - 外為オンライン 30秒 - TKC全国会、LION、明治乳業、ニトリ、(PT)アコム 2部30秒 - 三菱UFJニコス、リーブ21、国際石油開発帝石、日本たばこ産業、日清食品、養命酒 9月10日 1部30秒 - 養命酒、和光堂、リーブ21、国際石油開発帝石、日本たばこ産業、日清食品、(PT)アコム 2部30秒 - ニトリ、外為オンライン、TKC全国会、LION、富士フイルム、(PT)アサヒビール 9月17日(最終回) 1部30秒 - ニトリ、養命酒、外為オンライン、リーブ21、TKC全国会、LION、(PT)アコム 2部60秒 - 富士フイルム、国際石油開発帝石 30秒 - 日清食品、ソニー生命
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スポンサー遍歴(秋期) 世界を変える100人の日本人! テレビ東京系 (金)20 00~20 54 対象日10月16日 10月23日 10月30日 11月6日 11月13日 11月20日 対象日 10月16日 1部60秒 - 外為オンライン 30秒 - LION、住友生命、TKC全国会、ニトリ、KDDI 2部60秒 - 太田胃散、DMM.com 30秒 - リーブ21、HONDA 10月23日 1部30秒 - リーブ21、太田胃散、DMM.com、TKC全国会、住友生命、YKK AP、明治製菓 2部30秒 - KDDI、外為オンライン、LION、HONDA、ニトリ、濱田酒造株式会社 10月30日 1部60秒 - 外為オンライン 30秒 - 濱田酒造株式会社、KDDI、LION、TKC全国会、ニトリ 2部60秒 - DMM.com、太田胃散 30秒 - リーブ21、住友生命 11月6日 1部30秒 - リーブ21、DMM.com、太田胃散、スターツ、東芝、ITJ法律事務所、(PT)永谷園 2部30秒 - ニトリ、外為オンライン、KDDI、LION、TKC全国会、SUBARU 11月13日 1部30秒 - TKC全国会、ニトリ、外為オンライン、KDDI、LION、HONDA、(PT)ソニーマーケティング 2部30秒 - 富士フイルム、リーブ21、DMM.com、太田胃散、スターツ、東芝 11月20日 1部30秒 - スターツ、富士フイルム、リーブ21、DMM.com、太田胃散、ITJ法律事務所、HONDA 2部30秒 - LION、TKC全国会、ニトリ、外為オンライン、KDDI、(PT)ソニーマーケティング
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あなたはきっと頑張る人に違いありません。頑張りしてなければそもそもこのようなブログなんて読まないはずです。頑張る人じゃなきゃブログ車ないし文章も見ません。私は頑張る人も応援だけをしたいです。 の中には頑張る人のための本やプロフはたくさんあります。頑張り人がもっとがんばるための本も下がります。あたしもヒトカラがんばってますね 見つけてきました。そのために本と嫌な気持ちにもなりました。頑張りだけで人生OL人をたくさん見てきたからです。 どうも、土地国は仕事世界にあるのではないらしい。生きてる間にこそ天国と地獄が存在するのです。がんばれなっても報われないならまだあきらめがつきます。頑張っている変わりないのですが死んでも私いけません。 人生の大半の時間をつ休み喰われなかったら悲劇です。やっぱりがんばった人には向かれてほしいと思いますいいわかりやすくなるともっと頑張れ~かと思います。自分に意識しなくても頑張れるようになります。毎日笑顔で人生を送れるように。 がんばっているのに報われない人生を幕張西制度浮かべさせるここは1つしかありません。 あれは手放すことです。 今まで正しいとカタカナに行っていた固定観念を手放すのです。イマイル事故から約5年は多くの固定観念と言う荷物を持ちすぎているからです。本当にただそれだけの話なのです。
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人は城、人は石垣、人は堀。情けは味方、仇は敵なり。 武田信玄の在り方について、後世の歴史家が語った言葉である。 人を多く殺しもしたが、活かしもしたのが信玄だった。 なればこそ、甲斐の武田軍は、攻めるも守るも一級品の、無敵の軍隊として機能した。 なればこそ、堅固な城を建てずとも、決定的な敗北もなく、戦い続けられたのだろう。 無論、だからと言ってこの言葉が、城の存在自体を無用であると、そう解釈するのが誤用であるのは、今更言うまでもない。 天然の要塞である甲斐の地形を、的確に利用した成果が、不落の躑躅ヶ崎館であるというのは、言うまでもない。 仕掛けの整備を行ったのが、信頼し合える部下であることも、無論、言うまでもないことなのだが。 ◆ 岐阜の県境を跨いで、隣の県の長野のあたり。 かつて信濃と呼ばれた土地に、武田信玄の居館はあった。 本当ならば、本拠地である、甲斐に陣地を構えたかったそうだが、状況が状況だったために、召喚された土地で妥協したらしい。 「お城を想像してたんですけど、違ったんですね」 「大掛かりな城は手間を要する。おまけに悪目立ちもすると来た。期待に沿えなかったのは悪いが、故にこそ生前に倣わせてもらった」 生前の信玄の本拠・躑躅ヶ崎館は、文字通り天然の要塞であった。 山と川とに四方を囲まれ、的確に仕掛けを備えた館は、大掛かりな壁を要さずとも、攻め込み難い鉄壁を有するに至ったのだという。 まぁ、二回ほどボヤ騒ぎ起こしてるんだがな――とも、本人は苦笑気味に証言していたのだが。 ともあれかくして、藤丸一行は、武田軍との合流の末に、新生躑躅ヶ崎館へと案内されたのだった。 『信濃国には、ここの他にも、松代城というお城もあるそうです。調べたところ、終生のライバル・上杉謙信と、川中島というところで戦うために建造されたのだとか』 『この時代にも残っているのだろうけど、あれは前線基地だからね。こういう本拠地とは、求めるものが、恐らく違っているんだろうさ』 謁見の広間へと通され、小太郎、ランスロットと共に座す立香。 そんな彼に通信を送った、マシュとダ・ヴィンチのやり取りだ。 そうした考え方には、覚えがあった。確かにフランスやローマにおいても、様々な城を巡ったものだ。恐らくその松代城も、同じようなものなのだろう。 世界存亡の危機なんてものは、起きないに越したことはないのだが、こうした歴史観への理解が深まったのは、拾い物の一つなのかもしれない。 「いやぁ、待たせた! 遅くなったな」 そうこう話しているうちに、城の主がやって来た。 赤備えの派手な姿から一変、渋い色合いの着物を纏い、どっかと上座に腰を下ろしたのは、素顔を晒した信玄である。 たてがみで隠れていた地毛は、短めに切られたボーイッシュ・ヘアだ。窮屈なのか、着崩した胸元からは、案の定乳房の谷間が覗いていた。 どのあたりに感心したのかは謎だが、ほぅ、とランスロットが感嘆する。通信からマシュの咳払いが聞こえたので、直後にぴくりと背筋を伸ばす。 そんなやり取りを目の当たりにしてか、共に現れたアグラヴェインの視線は、以前に目の当たりにした時よりも、随分と白けたものに見えた。 そして加えてもう一人、立香とさほど変わらない、少年と呼べる歳の男が一人。彼らが信玄側に着き、三対三で向き合う形で、会談の場は整った。 「さて、改めて武田信玄だ。此度はライダーのサーヴァントとして、この聖杯戦争に当たっておる」 「藤丸立香です。人理を守るカルデアという組織で、サーヴァントのマスターをやってます」 「此奴のことは、もう知っておるのだったか。この時代で見つけたはぐれサーヴァントとやらでな。なんだったか、そう、鉄腕制裁オグラベインという」 「わざと言っているな貴公」 この後一通り、両陣営の、簡単な自己紹介を済ませる。 驚きだったのは、信玄側の残り一人が、かの小早川秀秋だったということだ。 本来あるべき関ヶ原の戦いを、傾けた一因であったと言われている、日本一有名な裏切り者の一人だ。 それ以上のことは知らなかったので、ここまで年若い武将であったというのは、正直なところ、意外だった。 『しかし今に始まったことじゃないが、まさか女性だったとはね』 「女だからと黙っておれぬと、そういう事情があったと思ってくれればよい。男と語り伝えられるのも、まぁ慣れた話ではあるさ。長尾の方が可愛げがあるくらいだからな」 あれはまた見ものだぞ、と、終生のライバルの名を挙げて、信玄はにやにやと下世話に笑った。 長尾景虎――上杉謙信は、そちらにこそ女性説がささやかれていたのだったが、事実は小説より奇なり、と言うべきか、机上の空論と言うのが正しいのか。 『落ち着いたところで、信玄さん。この時代に起きていることについて、詳しく教えていただけないでしょうか』 「そうさな。何から話すべきか……」 言いながら、ちらと信玄が秀秋を見やる。何やら後ろめたいことがあるのか、秀秋は実に不安げな顔だ。 忠義と恩義で板挟みになり、寝返りを即決できなかった秀秋は、とかく優柔不断に見られがちなのだが、実態も小心者だった、ということなのだろうか。 「まず、貴様らの認識から聞きたい。貴様らはこの時代の関ヶ原を、如何様な戦として捉えておる」 「えっと、まず豊臣秀吉が亡くなって……徳川家康と石田三成が、その後の日本の支配権を、争った戦いだったと教わってますけど」 「うむ、まぁその通りのようなんだがな。――そ奴ら二人共、既に死んでおる」 その一言を聞かされた時、立香は耳を疑った。 当事者の二人が、死んでいる? 関ヶ原の戦いの結末が、歪められたというのならまだいい。家康が死んで三成が勝ったとか、そういうのならまだ分かる。 しかし二人共死んだとは、一体どういうことなのだ。 それでは関ヶ原はどうなった。まともに決着はついたのか。あるいはそもそも戦い自体――始まる前から終わっていたのか。 「あるべき関ヶ原は、起こらなかった。そこな小早川の話によるとな。戦が起こるその前に、大将二人が殺されたというのだ」 「あ……あいつだ! お前達と同じ、サーヴァント! 恐ろしき剣士のサーヴァントが、三成様を殺したんだ!」 思い出すのもおぞましいと、身の毛がよだつといった様子で、がたがたと震えながら秀秋が言う。 「そこから先は滅茶苦茶よ。セイバーを現界せしめた聖杯とやらは、わしら残る六騎をも呼び寄せ、新たな戦を起こすよう求めた。聖杯戦争という名のな」 ここまでの話をまとめると、こうだ。 藤丸達がレイシフトする以前に、徳川・石田両名は死亡。関ヶ原の戦いは起きることなく終わった。 その事態を招いた聖杯は、下手人たるセイバーを含めた、七騎のサーヴァントを召喚。 史実とは全く異なる形で、七騎のサーヴァント達による、関ヶ原での戦争を欲したというのだ。 無論、これまでの特異点のように、ランスロットやアグラヴェインなど、例外のはぐれサーヴァントも、同時に現界しているようだが。 「まるでイスラエルの再来だな……」 「三つ巴でなく、七つ巴だ。陣営の数だけを見るならば、あれよりも更に混沌としている」 沈痛な面持ちで呟くランスロットに、アグラヴェインが補足する。 第六特異点たるイスラエルは、立香達が来る前に崩壊していた。 他ならぬ円卓の騎士達が、十字軍を打倒したことによって、歴史の前提を崩してしまったのだ。 そうして打ち立てられたキャメロットと、同時に顕現したエジプトの軍勢、そして地元の暗殺教団による、三つ巴の大混戦こそが、第六特異点の様相である。 無論、ランスロットにとっては、未だ拭い難いトラウマの一つだった。 「そう、これは七つ巴の戦だ。どうも真っ当な聖杯戦争では、こうはならんようなのだがな……我ら七騎は、このわしのように、全員が軍隊を保有しておる」 『軍隊を……ですか? つまりこの聖杯戦争は、大勢対大勢の集団戦……!?』 『はぁ、これはまた本当に滅茶苦茶だね。現代社会で再現すれば、ありとあらゆる勢力図が、開幕と同時に崩壊だ』 これはもう、とんでもない話だ。 科学が台頭する現代においては、神秘は秘匿されなければならない。 故にこそ、かつての聖杯戦争は、サーヴァント七騎のみによる、個人競技として執り行われた。 しかし、誰に憚る必要もない、この特異点もどきの過去世界においては、その大前提が通用しない。 何百何千、何万の兵士が、合計七つの陣営に分かれて、超絶大乱戦を繰り広げているというのだ。 そこもキャメロットとの共通点ではあったが、倍以上の陣営数となると、もう考えるだけで頭痛がしそうになってきた。 「実際、先の戦も我が軍と、ランサーの軍によるものでな。ランサーめを打倒したわしが、敵将討ち取ったりと広め回っておったところで、貴様らに出くわしたというのが真相だったのだ」 「ランサーを!? もう一組目が、脱落しているんですか!?」 立香の問いに、信玄が頷く。 あの時既に、七騎のサーヴァントのうち、一騎がライダーによって討たれていた。 であればこの戦は、残り六騎だ。そしてその討たれた一騎とは、どのようなサーヴァントだったのだ。 「あれはなかなかに難敵であった。見る間に城を建てたかと思えば、やかましい騒音を撒き散らして、我が方の兵達をなぎ倒しておってな」 と、思ったのだが。 しかし実態を耳にした瞬間、疑問は即座に氷解した。 氷解したはしたのだが、これまでの緊迫がどこへやら、思いっきりやるせない気分に襲われることになった。 『あのぅ、先輩、それってひょっとして……』 「何度も出てきて恥ずかしくないのかな、彼女……」 知っている。 そいつの顔は絶対に知っている。 ランサー軍の残党が、竜牙兵で占められていたのも、それを聞いてしまえば納得だった。 これで一体何度目だ。第一特異点にも現れ、第五特異点にも現れた。しかも今度は聖杯に乗せられ、戦争に参加していたのだという。 もう何なんだお前は。何を考えているんだ。まぁ霊基が継続していないのなら、また知らない彼女が現界していたのかもしれないが。 「しかし、アレがよくなかった。竜の娘を自称されては、さすがに黙ってはおれんからな。ついカッとなり『風林火山』を、全て使って叩きのめしてしまった」 『あー……まぁ確かに。越後の龍のことを思えば、同類を名乗られるのはいい気しないだろうね』 越後の龍、というのは言うまでもなく、前述した謙信公のことである。 元より彼の存在がなければ、竜虎相搏つの虎の異名が、信玄のものになることもなかったのだろう。 それほどに執心したライバルなのだ、であればどんな人間であれ、あのランサーに同類ヅラされるのは、たまったものではなかったに違いない。 「ともかく、これで残る敵は五つとなった。セイバー、アーチャー、キャスター、バーサーカー。そしてアサシンの五つの陣だ」 「うむ。我らはこれを打ち倒し、この状況を終わらせねばならん。故にこそ、アグラベインの進言に従い、貴様らをこの館へと招いたのだ」 アグラヴェインの名前を、上手く発音できないというのは、どうやら本当だったらしい。 どこか引っかかりのある呼び方をしながら、信玄は話をまとめにかかる。 要はこういうことを言いたいのだ。人理修復を成し遂げた手腕を、この状況の終結のために貸してほしいと。 「……戦いを終わらせるのが目的なら、聖杯は欲しくはない、ということなんですね?」 なればこそ、問わねばならなかった。微妙な言い回しに突っ込んで触れた。 武田信玄の思惑が、聖杯による人理の転覆であるなら、当然従うことはできない。 しかし信玄は、聖杯を欲しいと、自ら口にすることはなかった。 であるならばと、問うたのだ。自分とお前、二人の目線は、同じ方を向いているのかと。 「無論。願いを叶える万能の器、確かに惹かれるものではある。しかし我が身をも含めた、人の世そのものと引き換えては、本末転倒というものだろう」 即答する信玄の金の瞳は、まっすぐにこちらを見据えていた。 見るだけで分かる。立香にも分かる。何の嘘も偽りもない、本心からの言葉と瞳だ。 こういう目をした英雄達と、立香は何度も出会ってきた。彼らは例外なく高潔であった。だからこそ信じられるのだ。 きっと、手段は違っても、人類を生かそうとしていたアグラヴェインが、同じく彼女を信用したのも、同じ理由だったのだろう。 「主殿」 風魔小太郎が先を促す。ランスロットも無言で頷く。 申し出を断る理由などない。武田信玄は、信用できる。藤丸立香はそう判断した。 「俺が力になれるのなら、喜んで協力させてもらいます」 「成果を期待させてもらうぞ、人理救済の英雄よ」 世界を救ったのは確かだが、未だ本物の英雄達から、そのように呼ばれるのはむず痒い。 それでも、頷くことに対して、迷う気持ちは微塵もなかった。 こうして藤丸立香一行は、ライダー・信玄の陣営に、客将として身を寄せることになる。 本来あるべき聖杯戦争を、大きく逸脱した大いくさ――すなわち、聖杯大戦争。 これまでだってそうだったのだ。であれば、この未曾有の戦いを止めるためには、やはりカルデアだけの力では足りない。 故にこそ、世界を救うための、共同戦線の態勢が、今ここに敷かれたのであった。 BACK TOP NEXT 世界を変える準備はいいか(2) 天頂統一戦線 関ヶ原 咲き並んで幾百の華(1)
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前ページ次ページ消えそうな命、二つ 孫悟飯は死んだ。 孫悟飯は殺された。 それでオレの物語は終わりだった。 父さんの歩んだ道――ワクワクと冒険の物語は、何時しか世界を駆けた超決戦へと移り変わり、この世界に生れ落ちたばかりのオレにも、早々と運命が待ち受けていた。 避けられない血に定められた運命を、人は牢獄のようだなと同情するかもしれない。 でも、オレは、運命を恨んではいなかった。だが、それを受け入れることが出来ていたのか、と聞かれれば、そうじゃないと答える。 そう、決してオレの人間が出来ていたわけじゃないんだ。 その頃は、世界に希望があった。 大魔王と恐れられた異星人に誘拐されようと、宇宙で帝王と恐れられる、文字通り次元違いの化け物と相対したときでさえ、希望は静かに燃え上がり、見たこともないようなまばゆい光がそこにあった。 だから、オレは何だって夢中でやった。少しでも父さんに追いつけるように、頑張れた。 ただ――――それだけなんだ。 ……しかし、かつての世界はもう、そこにはない。 一人の虚しい復讐者の狂信的なまでの憎しみの具体が、物語を一色に塗りつぶした。 途方もない悲しみと怒りが、希望と光に照らされていたオレの世界をすり変えた。 必死に抗った。それでも、とどかなかった。オレにはとうとう、掴めなかった。 オレは希望にはなれなかった。 父さんには、とどなかかった。 オレは世界に無念と絶望感と、ほんの少しの希望を残して、跡形もなく消え去った。 はずだった…… 心から喜べる事態に遭遇したとき、人は笑うよりも先に涙を流すらしい。 なぜなら今、心は喜びに打ち震え、気持ちは感謝で一杯のオレの頬には涙がつたい、とめどなく落ちるそれはベッドとシーツにじわじわ染み渡っている。 「どうしたの? ゴハン」 カトレアさんが、オレの顔を覗き込む。 金色がかった桃色の髪が揺れ、すう、といい匂いが鼻を突く。 喩えるなら春のような色気を帯びた顔が、不安げに揺らいでいた。 ああ、と心が痛む。 この人は本当に心配してくれている。まだ出会って、たった数度しか顔を合わせていない男の涙を。 怪しむわけでもなく気味悪く思うわけでもなく、心の底から気に掛けているんだ。 「ありがとう……カトレアさん」 「……?」 カトレアさんは自然と首を傾げている……あたりまえか。 噛み合わない会話、オレは泣いてばかり。これで事情が把握できるやつがいるとしたら、 そいつはきっと、ナメック星人かなんかだろう。 「いや、ごめんなさい。って先に謝るのも変だな。ははっ……。カトレアさん。オレの言うことが理解できないと思うけど、ちゃんと聞いてください」 すっと顔が離れた。 オレはいったん口を閉じる。 これから紡ぐ言葉は簡単だが、理解するには努力が必要だから。 額を汗が一つ流れる。一呼吸おいて、口を開いた。 「オレは……オレ自身、まだよくわかってないけど、たぶん。 オレはこことは違う世界……違う次元の、人間です」 ■ ――時は夜、道端で拾った青年は、実に不思議な奇跡だった。 唐突に、声が聞こえた。助けを求める声が、強く。 悔しさと悲しさを織り交ぜて、より一層力強く響く無念の感情が、脳裏を過ぎった。 反射的に馬車を止めさせた。 らしくもなく叫び、止まりかけの馬車を待てず、あまつさえ飛び出してしまった。 その頃には、背後から呼び止める声なんてかき消すほどに、その声は強く私の心を揺さぶっていた。 そこにいたのは、血溜りの地面にうつ伏せに沈んでいる、青年だった。 山吹色の珍しい服を、彼自身の血と傷に湿らせ、中に着込んでいる紺色の袖の先には左腕が無かった。 駆け寄って膝に乗せた顔には、泥に塗れた夥しい裂傷と打撲の後、額と頬には跡の残った切り傷まで携えている。 両目は閉ざされ、息は無く、それは今まで見たことないほど弱弱しい存在だった。 だけど――――まだ、生きてる。生きようとしている! 私は部屋に帰り、ベッドに寝かせるその時までヒーリングをかけ続けた。 死なせてはならないと、わたしはわたしに唯一つの誓いを立て、ただ一心に杖を振った。 生きたいと願う命が今、わたしの目の前で消えようとしている。それは許されないことだ。 しかし、彼の傷は見た目の更に何倍も酷く、顔からは次第に生気が薄れていくように見えた。 心の壁を、薄ら寒い何かが這い上がっていくのを感じた。それが恐怖なのか、不安なのか、はたまたただの焦燥からくる錯覚なのか、わからなかった。それがわからないことは、わかった。 胸に痛みが走る。激しく、途端に咳き込んでしまう。 もうやめてください! と使いの一人が叫んだけれど、ここでやめるわけにはいかない。 グっと歯を食いしばる。でも、限界はとっくに来ていた。 「あ……!」 最後に魔力を振り絞った光を当てると、急に視界が反転した。 体から支える力が抜ける。操る魔力を失ったアルヴィーのように、わたしは倒れてしまった。 もたれかかった彼の体から、風のささやきとは別に懸命に動き出す確かな鼓動を感じて、わたしは微笑んだまま意識を失った。 ■ わたしが目を覚ました、その2日後に彼は目を覚ました。 わたしが部屋に入ると、彼は焦点の合わない眼でぼうっとこちらに見呆けている。 体は覚醒しているが、彼はまだ意識も精神も呆然としているのだろう。 無理もない、あれだけの傷を体中に負っていたのだ。 むしろたったの2日眠った程度で目が覚めるのは、奇跡か、異常。 同時にそれは、それほど彼の生命力が、生きたいと願う想いがどれほど屈強なものだったのかを雄弁に物語っている。 彼――意識もハッキリ覚醒した彼は、「ソン・ゴハン」という不思議な名前を、戸惑いながら名乗った。 黒髪の黒目、トリステインでは珍しい部類に入る顔立ち。 彼は、篭りがちなわたしが今まで触れたこともないほどぴりぴり張り詰めた雰囲気を、何かを警戒するように常に体に纏わせていた。 それはトリステインの……ううん、ハルケギニアではお目にかかった事のない雰囲気。 母様の怒ったときよりも、もっと複雑でもっと悲しい空気を、彼は自分から纏っているような気がした。 ■ 「……あ、やっぱり!」 カトレアさんは別段慌てる様子もなく、あっけらかんと言い放った。 がくっと頭が下がる。 「えっと……どういうことでしょうか?」 「前の日にした質問、覚えてる?」 「前の日……記憶にある限りじゃ、トリステインがどうとか……平民がどうとか………………ま、まさか!?」 カトレアさんの表情が、屈託のない素敵な笑顔になる。 それは普段なら思わず見惚れてしまうぐらい破壊力のある笑顔だったけど、 今のオレは見惚れるよりもまず、笑顔に隠された真意に心底驚き頭を抱えた。 「引っ掛けだったんですか、あれ!」 「はい」 返答は笑顔と共にやってきた。 心の底で「してやったり!」とガッツポーズをかましているだろう笑顔。 そして眩しいくらいに穏やかな気。子供のように無邪気な感情が込められたそれは、オレに忘れてしまっていた心を、暫くぶりに思い出させた。 「で、でもどうして? 何でオレのことが……?」 「それわね、わたしもよくわからないの。ただ、あなたを一目見たとき、感じたの。『この人は、わたしとは根っこの部分から違う』ってね。何でかわからないけど、傷だらけで倒れてたあなたを見て、とにかくそう感じたのよ」 「……」 素直に感心した。カトレアさんの感性に、その順応性に。 死に掛けていた見ず知らずの人間を助け、あまつさえはその存在すら看破した彼女の天性は脅威の一言だ。 加えて、その存在を世界の『異常』と知りつつ、容易く納得してしまう心の広さ。 まるで初めから親しい間柄だったように軽々と話しかけ、相手を包んでしまうようなやさしさは、何者にも止められずするりと心に染み入ってくる。 「ねぇ、ゴハン……でいい?」 「ええ、好きなように呼んでくれてかまいません」 カトレアさんはオレの隣に腰掛け、顔をすっと近づけた。 「よかったら、ゴハンのいた世界のこと、わたしにお話してくれないかしら。わたし、別の世界の人とお話しするの初めてだから、いろんな話を聞きたいわ」 きらきら輝く鳶色の瞳は、好奇心で満たされていた。 恐怖や戸惑いは一片たりとも映っていない、あくまでも純粋な興味を表したもの。 オレは戸惑ったが、人造人間のことを除いて話すことにした。 ほんとうは話してしまいたい。この怒りや、悲しみを知ってもらいたい。 だが、カトレアさんはやさしかった。これほどやさしい人に自分の中に混濁した感情をぶつけるのは心が拒絶する。 仮に感情をコントロールしながら話したとしても、カトレアさんは絶対に悲しんでしまうだろう。 見ず知らずのオレのために、まったく違う世界を生きてきた、オレたちのために。 だからオレはそれを隠すことにした。それを隠し通す覚悟を決めて、話すことにした。 オレが今まで歩んできた道を。大切な、今はボロボロの世界のことを。 前ページ次ページ消えそうな命、二つ
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武田信玄。 天下無双の益荒男達が、日ノ本狭しと覇を競い合う、群雄割拠の戦国時代。 絶対王権が地に堕ちた、修羅の時代の只中において、こと武力軍略においては、最強と謳われた大大名である。 疾如風(はやきことかぜのごとく)、 徐如林(しずかなることはやしのごとく)、 侵掠如火(しんりゃくすることひのごとく)、 不動如山(うごかざることやまのごとし)。 風林火山の御旗のもとに、真紅の鎧をなお血に染めて、戦場を闊歩する騎馬武者隊は、無敵の二文字を体現し、諸大名達を震え上がらせた。 信長も、秀吉も、この関ヶ原を制するはずだった家康ですらも、例外なく信玄を恐れてきたのだ。 日本最強の英霊は誰か――この問いを投げられた者は、大概ならば信長や、宮本武蔵、あるいは源義経などを、いの一番に挙げるだろう。 しかしこの信玄もまた、集めた回答を並べていけば、彼女らに並ぶ最上位に、名を連ねる一人となるであろうことは、言うまでもない。 ◆ そうだ。その信玄だ。 今まさに藤丸立香の前には、剣騎士ランスロットの前には、その武田信玄が立っているのだ。 二本角の赤鎧を纏い、孫子の軍旗をでかでかと掲げて、騎馬武者隊を引き連れている。 たとえ巨乳の美女であっても、この装いを見せられて、信玄以外の名を挙げる者は、恐らく現代日本には存在しない。 そんな有様で表に出てきて、真名を伏せるなどということは、何を考えてるんだお前と、そうツッコまれても仕方がないことなのだ。 何だと思っているんだ、真名秘匿システムを。偉い人に怒られるぞコレ。 「……そうなのか?」 無論、現代の事情など知らぬ信玄自身に、そこまでの想像の余地はない。 きょとんと目を丸くしたまま、適当な臣下の方を向いて、そんな風に尋ねてみる。 「ええ。まぁ……確かにその鎧は、目立ちまする」 「それはまぁ、そのつもりでやっているからな。しかし、何だ、他にも一人か二人くらいいるだろう。こんなの」 「いませんよ、御館様。鎧兜だけならまだしも、この軍旗までは」 「んー、まぁ、確かにそうか」 そこまで矜持の無い奴だったら、行って殴り倒してやるわと、得心しながら信玄は言った。 「………」 ただ、一人。 ぐだぐだ関ヶ原の様相をなした、この場においてただ一人、ランスロットだけが油断なく、目の前の敵を見定めていた。 身に纏う甲冑にも、得物にも、神秘の気配は感じ取れない。 神に認められただとか、精霊の加護があるだとか、はたまた竜を退治しただとか、そういう類の英雄ではないのだろう。 普通に考えれば、円卓の騎士たる己よりも、戦力的には格下である。霊格で劣る、はずなのだ。 (にも、かかわらず) そうだというのに、この様は何だ。 彼女が身に纏う気配の凄みが、円卓最強の騎士にすらも、油断の二文字を許さない。 日本列島の僅か一部――武田信玄が治めたという、甲斐国はあくまでも小国だ。 それでも、彼女は王であった。それが将に過ぎぬ己との差を、ここまで縮めているというのか。 『っ……信玄さん! 私は人理継続保障機関・カルデアの、マシュ・キリエライトです! そちらの方は――』 「皆まで言うな。サーヴァントを引き連れておる以上、尋常ならざる者であることは承知している」 通信越しのマシュの言葉を、信玄はばっさりと切り捨てた。 居住まいを正し、前を向き、牙を光らせる武者の顔は、先程の間抜け面ではない。戦闘態勢へと一瞬にして、己の在り方を立て直したのだ。 であれば今度こそ、気が抜けない。ランスロットもまた剣を構え、一切の油断なく赤武者を見据える。 「そこの南蛮者の言うように、腰を据えて話をするのも、それもまた良しとは思うのだがな」 『でしたら……!』 「だが、主人を連れているというサーヴァントの力、如何様なものか興味が湧いた」 にぃぃ、と口角が釣り上がる。 尖った犬歯がぎらりと光る。 金の瞳が陽光を反射し、ぎらぎらと彩りを放ち、威圧する。 「このままでよい。挑んでみせよ。貴様らの真価、手ずから確かめる」 確かめる、とはとんでもない詭弁だ。背後でぞくりと身を震わせた、立香の姿を見ながら思った。 これは試合ではなく、死合だ。武田信玄の纏うオーラは、紛れもなく猛獣の殺気であった。 倒すのでもない、制すのでもない。敵は殺す気で向かってくる。役に立たないというのなら、そのまま殺してしまってもいいと、そういう腹づもりでここにいる。 わざとらしく音を奏でて、ずらりと引き抜いたのは大剣。 そこらの雑兵が携えるものの、倍はあろうかという幅を有している。刃渡りそのものは並であるため、巨大な包丁か鋸のような形だ。 元より馬鹿でかい鎧を纏って、戦場に臨んでいる彼女である。であれば斯様な鉄塊ですらも、自在に意のままに振り回し、挑みかかってくるのだろう。 「藤丸殿と、風魔だったな。この場は私に任されよ」 であれば、前に出るべきは自分だ。 立香と風魔小太郎を、左手で制しながらランスロットが言った。 人間である立香はもちろん、連れているサーヴァントも暗殺者(アサシン)だ。真っ向勝負に向くとは思えない。 なればこそ、この場ただ一人の前衛役である、セイバークラスの騎士たる己が、この女を迎え撃つ必要がある。 風魔という名を聞いた瞬間、ほうと軽く呟いた女に、ランスロットが相対する。 「円卓の騎士が一、ランスロット。騎士の決闘の流儀にならい、こちらも名乗らせていただこう」 「円卓……円卓か。それはよい!」 何がよいのかは知らない。妙に感心したようにも見えるが、そこに気を取られている暇はない。 互いに名乗った。対等の印だ。これより始まる決戦は、恐らくはイーブンの勝負だ。 僅かな緩みが、手心が、勝負を分かつ決死の戦だ。 円卓最強、ランスロット。戦国最強、武田信玄。 いずれも最強の称号を背負う、大英雄同士の大激戦。 ただで終わる――などという、甘い期待は持てたものではない。『無毀なる湖光(アロンダイト)』を握る手に、一層、力と汗が篭った。 ◆ 「行くぞっ!」 先に仕掛けたのは信玄だ。 馬に跨っている以上、機動力を活かすのは道理と言えた。 獣が嘶く。蹄を鳴らす。ばからばからと爆音を立てて、戦国最強が激走する。 ダンプカーか、はたまた戦車か。腰を預ける馬ですらも、超常の魔獣なのではないか。そう錯覚するほどの威圧感を、藤丸立香はそこに覚えた。 「フ――!」 それでも、騎士は動じない。ランスロットは微動だにしない。 駆け出すことも、跳ぶこともせず、最小限の足運びと共に、迫る刃を弾いて凌ぐ。 馬上から斬りかかる信玄の太刀を、円卓最強は難なくいなした。この程度ならばジャブに過ぎぬと、そう言わんばかりの動作であった。 あるいはこれほどの突撃ですらも、嵐の前のそよ風に過ぎぬと、本能的に察知しているのか。 「やる!」 なればこそ、感嘆する信玄の表情にも、笑みが宿っているのだろう。 一合で、互いに再確認したのだ。こいつは相当な手練だと。 ランスロット側からすれば、油断のかなわぬ難敵であり。 武田信玄側からすれば、眼鏡にかなう大当たりであると。 「ちぇりゃァッ!」 雄叫びと共に、巨影が跳ねた。 ここまでやってきた時に見せた、武田騎馬の大跳躍だ。 人間を遥かに超える体躯が、天にも昇る勢いで舞う。宿された重力の全てを持って、圧殺せんと襲いかかる。 しかし、これはあくまでも既知。飛べると分かっている相手の動きに、今更驚愕を見せるほど、ランスロットは短慮ではない。 直線的な軌道を読み切り、やはり最低限の足さばきをもって、反撃に転じる構えを取る。 「む……!」 そこで、気付いた。目を見開いた。轟然と音を立て着地した馬が、既に無人であったことに。 これはフェイクだ。引っ掛けられた。なるほどこれしきの反応など、信玄にとっても織り込み済みだったのだ。 頭の回る阿呆には、戦国大名は務まらぬ、ということか。 「はぁぁッ!」 遅れて、今度こそ本命が迫る。 鉄色の大剣に日差しを浴びせ、逆光で視力を焼き殺さんとしながら、武田信玄が斬りかかる。 伏し目になりながらも、気配で追った。一瞬のひらめきを確証と信じ、ランスロットが迎え撃った。 がぁん――と鋭い鉄音が響く。飛びかかり、浴びせられた刃が、大気すら鳴動させて吼える。 防ぐランスロットは両腕だ。攻める信玄は片腕だ。重力で勝っているのだから、斯様な構えになるのは道理だ。 であれば、攻め手の左腕が空く。肉薄した身の左手を伸ばし、信玄がランスロットに掴みかかる。 「おォらぁっ!」 そうして紫の甲冑など、まるで意にも介さぬかのように、円卓の騎士の体躯を投げた。 着地と同時にしかと踏みしめ、長身の甲冑男一人を、怒号と共に投げ飛ばしたのだ。 斬撃でないなら、傷には至らぬ。であれば斯様な投げ技も、些事だ。投げ飛ばされたランスロットもまた、この場に及んでなお、冷静だった。 ぐるりと身を捻り、着地する。背中から地に落ちることは決してしない。 そしてこの時彼の目には、既に周囲の状況が見えていた。打ち捨てられた武者の武器を、確かに視界に捉えていたのだ。 「はっ!」 宝具発動、『騎士は徒手にて死せず(ナイト・オブ・オーナー)』。 真の武芸者は武器を選ばず。路傍の石ころであったとしても、敵を撃滅する凶器へと変える。 それが命を刈り取るために、鍛え上げられた武具であったなら尚更。 落ちた刀と槍を掴み、ランスロットはそのまま投げた。己の魔力と神秘を込めた、宝具の投擲を見舞ったのだ。 信玄もまた、それを弾く。想像を凌いだ手応えには、さすがに金の目を丸くした。 であれば、この一瞬は勝機だ。愛剣を素早く納刀し、更なる武器を両手に抱えて、ランスロットは真っ向から走った。 即席宝具を次々と投げる。牽制の雨あられを仕掛ける。いかな戦国最強と言えど、防戦一方にならざるを得ない。 「ォオオオッ!」 遂に至近距離まで迫る。本命の『無毀なる湖光(アロンダイト)』が光る。 この一撃を浴びせれば勝利だ。美女を斬るのは気が引けるが、間違いなく決定打となる一太刀だ。 ランスロットは確信し、必殺剣の一撃を、大上段から放たんとする。 「走れぇいッ!」 しかし、彼は見誤った。 武田信玄は剣士(セイバー)ではなく、あくまでも騎兵(ライダー)のサーヴァントなのだ。 彼女が乗っていた馬を、あの場で仕留めなかったのは失策だった。 それを理解するより早く、彼の体は跳ね飛ばされた。 知らぬ間に視界から消えていた、武田信玄の連れていた愛馬が、横合いから突進してきたのだ。 重量数百キロにも及ぶ、肉の塊が身を揺さぶる。防御態勢を取れなかった騎士は、面白いように吹っ飛ばされる。 そしてそれだけの隙ができれば、信玄にとっては十二分だった。即座に呼吸を整え直し、追撃の一太刀を浴びせんと迫った。 甲冑が揺れる。具足が吼える。陣羽織を鎧に括るようにした、、虎柄の腰布が尾のようにしなる。 まさに虎だ。赤い虎だ。武田信玄は虎であるのだ。 「だぁあああッ!」 「ぬぅんっ!」 猛然と斬りかかる信玄。 馬を押しのけ迎え撃つランスロット。 三合目の激突――そして四合。遂に足を止めた両者は、互いの力と技を尽くして、喉元を狙わんと刃をかざす。 「一見、互角に見えますが……」 『うん、そうだね。余裕があるのはランスロットだ』 そしてこの激戦を、つとめて冷静に見ていた者が、風魔小太郎とダ・ヴィンチの二人だ。 超常の応酬を、頂上の決戦を、二人はそのように評した。 「そうなの?」 「ええ。技量ではなく、地力の問題です。恐らく大半のステータスにおいて、信玄公よりもランスロット殿の方が、一段上をいっているのでしょう」 『戦国大名と円卓の騎士では、土台となる物語が違いすぎるからね。勢い、こうなるのは道理だ』 神々と魔性の色を残した、アーサー王物語の世界観において、強者たる円卓の騎士達は、文字通り神話の力を宿している。 ランスロットの聖剣・『無毀なる湖光(アロンダイト)』も、湖の精霊という超常存在の、特別な魔力を宿した業物なのだ。 対して、戦国時代の日本人は、既にファンタジーを卒業している。鬼退治の逸話も龍神との対話も、この時代においては非常に少ない。 その身が人と戦うための器か、あるいは人を超えるための器か――信玄とランスロットの力差が、その一点によって表出した結果が、これだ。 現に攻める時も、応じる時も、常に冷静さを保っているのは、ランスロットの側であった。 「やりおるな! 西洋剣など重さ頼りの、なまくら棒だと侮っておったが、貴様のような奴もいたとは!」 「そちらこそ流石に芯が強い! 大和撫子の心意気、しかと見届けさせてもらった!」 「つれぬ男だ。もう締める気か? しからばここはわしの方が、本力にて振り向かせるほかないか!」 鍔迫り合い越しに信玄が吼える。サーヴァントの本力――それはもちろん、宝具の開帳に他ならない。 そうだ。あくまでもそうなのだ。 ランスロットも奥の手までは、未だ抜いてはいなかった。それは確かにそうなのだが、そのことは武田信玄にも、同じように言えたことなのだ。 戦国最強、武田信玄。悪魔を倒したこともなく、神に愛されたこともない。 故にこそ、宝具の正体が読めない。具体的な奇跡を語らぬ、この女の秘めた必殺奥義を、誰一人として予測できないのだ。 果たして繰り出されるのは何か。奴は何をしでかしてくるのか。 「『侵掠(しんりゃくすること)――如火(ひのごとォく)』ッ!」 咆哮が轟く。烈光が弾ける。 武田信玄の赤備えの、右肩に埋め込まれた水晶が光る。 浮かび上がるのは光輝の文字だ。孫子の軍旗の「火」の一文字だ。 瞬間、耐えしのいでいたランスロットが、一瞬にして吹き飛ばされた。 瞠目する円卓の騎士が、振り抜く信玄の横一閃にて、呆気なく払われ尻餅をついたのだ。 「何が……!」 何が起きた。今のは何だ。 僅かに動揺を浮かべながら、ランスロットが立ち上がる。 剣の峰を右肩へと担いだ、武田信玄がにやりと笑う。 『あれは技を放ったんじゃない。信玄公の攻撃力、それ自体が跳ね上がったんだ』 「これぞ宝具、『風林火山(ふうりんかざん)』。地味に映るやもしれんが、児戯に過ぎぬと笑いたくば、せめて最後まで味わってもらおうか」 レオナルド・ダ・ヴィンチの分析結果から、推し量れる全貌は、恐らくこうだ。 信玄の宝具・『風林火山』は、魔力の解放によって、自身のステータスを爆発的に向上させる。 「火」の文字で筋力が増したのならば、あるいは他の三文字にも、また別の力が割り振られているのだろう。 必要なだけの魔力を使い、必要なステータスを向上させる。それが信玄の宝具の正体だ。 ならば消耗を度外視し、完全に全てを解放してしまえば、一体どれほどの怪物になるのか。 「なるほど、ガウェイン卿のようなものか……!」 「そぅら、まだまだくれてやるぞ! 『疾如風(はやきことかぜのごとく)』!」 今度は左足が光った。膝に浮かんだのは「風」の文字だ。 瞬間、鎧は光と変わる。赤い軌跡が空間に残され、武田信玄は掻き消える。 それがただの人間である、立香の視力の限界域だ。既にその時、信玄の蹴りが、ランスロットを捉えていたのだ。 「が……!」 「ランスロット!」 遅れて気付き、その名を叫ぶ。 すれ違うようにしてその先に降り立ち、左手で信玄が地を掴む。 三本足の姿勢から、両脚に力を込めて跳躍。獣のたてがみと尾をなびかせて、大太刀の一撃を痛烈に浴びせる。 「どォりゃぁぁぁッ!!」 怒号一発。剣撃二発。三度目の踏み込みから四の太刀へ。 完全に一頭の猛獣となり、荒れ狂う猛虎・信玄の前では、ランスロットもただの人だ。 共に高い地力を誇り、それを的確に運用して戦う。完全なる白兵戦型のサーヴァント同士だ。その地力に差が生じてしまえば、これほどの結果になるというのか。 今や武田信玄の力と速さは、セイバーではなくバーサーカー――かの黒騎士と化したランスロットにも、匹敵するほどに肥大化している。 縦横無尽に大地を駆け抜け、必殺の一撃を連打してのける。一気呵成の戦いぶりは、まさに風林火山の具現そのものだ。 「まだ、これしき……!」 それでも、諦めの色はまだない。 防戦一方になりながらも、ランスロットは屈してはいない。 信玄が風林火山なら、彼は心技体の合一者だ。無窮の武練を体現した、湖の騎士の眼光は、未だ獣を捉えんと、右へ左へと走り続けている。 いよいよ、この速さにも慣れてきた。力を出し切っていないのは、こちらの方こそ同じことだ。 そう表情が語った瞬間、遂に円卓最強が動いた。 派手に飛び回るつもりはない。使うのは腕一本だけでいい。繰り出された紫の左腕は、飛びかかる猛獣に繰り出され。 「なっ……!?」 微か、空いた肩を軽く押した。 最低限の力を込めて、嵐の如き突撃を、いとも容易くいなしてみせたのだ。 作った隙は僅かでしかない。即座の追撃は軽率に過ぎる。なればこそ、着地した信玄が、振り返るまでに行うべきは、奥の手を放つための用意だ。 再度の跳躍に臨む信玄が、青く煌めく聖剣を捉える。これまでとは桁外れの魔力が、はちきれんばかりに渦巻くのを感じる。 これぞ、ランスロットの正真の奥義。烈火の猛攻を清水にて制する、一撃必滅の必殺剣だ。 なればこそ、この一刀で全てが決まる。直撃を食らわせた方が勝利する。どちらかの首が飛ぶことは、こうなってはもはや、避けられぬだろう。 「ぉおおおおおおッ!」 それでも、信玄は恐れない。戦国最強は怯まない。 引き際を見極めるのは将の力だが、攻め時を見極めるのは武士の魂だ。 ここでは引けぬ。逃げられぬ。怖じ気て勝負を投げ出すようでは、武田信玄の名がすたる。 故にこそ大剣を振りかざし、甲斐の虎は力強く吼えた。爪で地を蹴り、尾をなびかせて、獣の牙を突き立てんとした。 「でやあああァァッ!!」 「『縛鎖全断・過重(アロンダイト・オー)――!!」 なればこそ、最強の騎士たるランスロットが、心意気に応じるのは必定。決死で臨むというのなら、決死で受け止めるのが礼というものだ。 『無毀なる湖光(アロンダイト)』、完全解放。持てる魔力の全てを滾らせ、砕けぬ剣の限界を超えて、水の一撃を叩き込む。 神であっても悪魔であっても、切り返される道理などない。生きとし生けるもの全てを断ち切り、刹那に爆ぜ飛ばす魔技の一太刀。 今まさにその極光が、武田信玄の赤鎧を、深々と刻み砕かんとした、その瞬間。 「――そこまでだ」 漆黒が、視界を襲った気がした。 割り込んだ声を認識した瞬間、何者かがランスロットの右手を掴み、捕縛したのを理解した。 そしてまさにその時だ。極限まで滾らせていたはずの力が、急速に萎えていくのを覚えたのは。 「ぐぅっ……!?」 「これは、まさか……!」 この感覚には、覚えがある。 己と武田信玄を縛り、その力を奪う拘束を、ランスロットはよく知っている。 繰り出されたのは黒の鎖だ。サーヴァントが滾らせる力を、抑止し無力化する鉄の戒めだ。 「重ねて念を押しただろう。カルデアのマスターと出会ったならば、まずは城へと連れ帰るようにと」 ああ、この声も知っている。 がちゃり、がちゃりと具足を鳴らして、歩み寄る者を己は知っている。 顔を見るまでもなく察した。厳格に過ぎるほどの低い声は、深々と皺を刻んだ表情を、想起させて余りあるほどだ。 「あれは……!」 当然、立香も知っている。通信の向こうにいるマシュもだ。 第六特異点を経験した、全ての人間が知っているのだ。この鉄の戒めを操る、円卓の騎士が一人いたことを。 ああ、それでも。だとしてもだ。 ここで来るかと思ってしまった。かの時間神殿の戦いにも、遂に姿を現さなかった男の顔を、こんなところで拝むことになるかと。 ゆっくりと、声のする方を向く。認めるには相応の覚悟がいる。それを握りしめるようにしながら、ゆっくりと視線を合わさんとする。 果たしてその目に認めた顔は、思い描いていた顔と、まるきり同一のものだった。 「盟友が無礼を働いた。分別をわきまえた騎士であるなら、大人しく刃を納めてくれるな、ランスロット卿?」 「……アグラヴェインか……!」 鉄の男。堅き手の騎士。 ありとあらゆる感情を殺し、冷徹冷酷に職務をこなした、文字通り鉄面皮と呼ぶに相応しき男。 ランスロットの仇敵にして、互いに互いの抱える全てを、曲解しながら憎み合った男。 円卓の騎士、騎士王補佐官――アグラヴェイン・オブ・ザ・ハードハンド。 二度と会うこともなかろうと、どこかで思っていたその顔が、鉄の戒めのその彼方で、ランスロットを見下ろしていた。 BACK TOP NEXT 世界を変える準備はいいか(1) 天頂統一戦線 関ヶ原 世界を変える準備はいいか(3)