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L:白魔法学校 = { t:名称 = 白魔法学校(施設) t:要点 = 白魔法、白い服、先生 t:周辺環境=学校 t:評価 = なし t:特殊 = { *白魔法学校の施設カテゴリ = 国家施設として扱う。 *白魔法学校の位置づけ = 教育施設として扱う。 *白魔法学校は所属する藩国内の国民に白魔法を覚えさせる。 } t:→次のアイドレス = 魔法建築の発展(イベント),初級白魔法(絶技),白魔法使い(職業),自然との調和(強制イベント),優しい心の勃興(強制イベント) } 設定文 白魔法について ゴロネコ藩国における白魔法とは最終的な目的を対話によってお互いにとって最も有益な道を探すためと定めて行使する魔法を指す。 目的を達成するために主に三つの系統の魔法の習得に重点を置かれている。 三つの系統とは、一つは対話の魔法、一つは守りの魔法、一つは束縛の魔法である。 対話の魔法 対話の魔法は神々、悪魔、動植物、機械、異星人等を含むあらゆる存在とお互いの意思と意見を戦わせ 互いにとって最も有益な道を探る魔法である。 対話の魔法はあくまで相手と言葉で会話を行なうのと同レベルの対話を行えるようにする事を目的とする。 相手の気持ちを考えた上で話し合うのは誰にでも備わっている能力であり、魔法ではなく通常の対話にて解決するべき事柄だと考えられているためである。 たとえお互いに仇同士であり憎み合っていて、相手の気持ちになることが困難であってもそれは同じである。 このため対話の魔法は同調と言うより翻訳魔法や舞踏や歌唱等で意思を伝える魔法と言った性質のものの研究が進められている。 文 YOT 守りの魔法 守りの魔法は敵対状態の相手に対して対話可能な状況に持ち込むために使用する魔法である。 相手にこちらが殺されては対話を行なう事が出来ないからである。 そのために個人レベルや集団レベルで魔法の防壁や結界を構築する事で自分や周囲の身を守る魔法の研究が進められている。 束縛の魔法 束縛の魔法は守りの魔法と同じく敵対状態の相手に対して対話可能な状況に持ち込むために使用する魔法である。 相手にこちらが殺されては対話を行なう事が出来ないのと同じく、こちらが相手を殺してしまっても対話が出来ないため 相手を生かしたまま対話が可能な状態に移行させるために使用される。 また暴力によって事態を解決するのが相手に取って最も利益がある方法であると認識されている場合にその方法を縛ると言う事でもある。 そのために命を奪わずに相手の動きを封じる魔法や意識や戦闘能力を喪失させる魔法の研究が進められている。 白魔法の使い手への制限 白魔法の研究によって得られた力は、白魔法本来の目的でのみ使われるべき力であり 誤った使い方をされた場合に制限を設けるための研究が行なわれている。 例えば反撃で相手を撃ち殺すために守りの魔法を行使した場合 相手を脅迫するために束縛の魔法を行使した場合 自分の利益のみを考えた詐術に対話の魔術を行使した場合などに、その力が失われる事を目的としている。 白魔法学校について ゴロネコ藩国立白魔法学校は文字通り白魔法を教える学校である。 共和国環状線ゴロネコ藩国駅付属学院に併設されている。 生徒と教師は互い取ってに対話を学ぶ師でもあると考え互いに敬意を払うべきとされている。 外来の客人もまた師でもあるとして敬意を払うべきであるとされる。 広く門徒が開かれていて、訪れた者は誰でも大きな楡の木の木陰で先生の話を聞くことが出来る。 校舎について 中央にシンボルでもある大きな楡の木があり、巨木の傍らには羽妖精の住む泉が湧いていて、泉からは小川が流れている 小川の横には校舎があり座学は校舎で教えられているが、他の説法や瞑想などは楡の木の木陰で行なわれる事が多い。 SS 榊聖「と、言うわけで学校に潜入します」 ~回想~藩国政務室 榊聖「んー。白魔法学校…授業とか受けてみたいな…」 武田「…入学したてのこの時期なら、せんこー顔覚えちゃいねぇな。いけるぜ?」 わたどり「いやいやいや…(汗)」 武田「やったことある。ポーカーフェイスと、度胸が必要だな」 榊聖「だいじょうぶ!伊達に藩王やってないわよ!」 わたどり「ちょっ!二人とも…(YOTさんをちらりと見る)」 しかしYOTは… YOT「武田、長ランとか特攻服とか着てきたら、ダメだよ?」 わたどり「Σ(行く気満々!?)」 榊聖「セーラー服は~?」 YOT「指定の白い制服着ないとだめです。」 榊聖「ちぇー」 武田「(きっつとか言ったら殺されるべな…)」 榊聖「………」 (ぐ~りぐり) 武田「ぎ…ぎぶぎふ」 ~回想終了~ わたどり「…早速ですが。藩王さま…だけじゃないですが…。まず変装してください藩王さま。」 榊聖「あ、ごめんごめん。」 わたどり「武田、どっかの藩王さまの真似して短ランやめなさいって」 武田「うーい。」 わたどり「ウルさん化粧のみ女装は勘弁してください…」 ウル「ん?YOTさん来てないの?」 来ている人を見渡すと待機、非番などぬかし、ブレーキになる人がわたどりぐらいしかいない(六花はおとなしい)。 榊聖「…珍しいわね。」 わたどり「(わ…私がなんとかしなければ)」 わたどりは気合いが入ってる。事前にアムから変装セット?を借りているがわたどり六花以外は着てきてないようだ。 六花「あの…本当に大丈夫なんですか?」 榊聖に「制服似合う可愛ぃ~」と言われて、抱きつかれて動けないでいる六花。 武田「平気だべ。こんなこともあろうかと、今日は五人程休み確実なクラスがある所を作っておいた!(どーん)」 ウル「深い話は?」 わたどり「聞かない方がいいかな……」 ちなみに、榊聖はその場しのぎで眼鏡をかけた。ウルはカツラを被った。武田はバンダナの色をかえただけ。 わたどり「(不安だ!)」 一行は白魔法学校へ。 ~学園前~ 女子生徒「おはようございます。」 男子生徒「おはよー」 気持ちのよい朝に響く元気で爽やかな声… 六花「おはようございます~………良い天気でよかったですね。」 ウル「そうですね~。」 わたどり「綺麗に掃除してありますね…ちゃんと毎日掃除してるんだなぁ」 我が白魔法学校は駅付属学院の中にある、白魔法学校丸ごと入るので相当な大きさである。 榊聖「あー……なんか、学校きたら眠くなっちゃった…」 武田「んー、そりゃ正常だ。」 わたどり「…正常じゃありませんから…良いですか?目立った行動をしないでくださいね!白魔法学校の日常を見るが今回の目的ですからね!」 しかし… 榊聖「武田ー、なんか持ってきたー?」 武田「カバンは持ってきた」 榊聖「中身は入れてきてるんでしょうね?」 暴走機関車二人と、 六花「わー、ウルさん髪型こうすると可愛いですよー」(注)ウルはノリノリで女装している ウル「わーい、ありがとうー」 天然二人組 勿論今の話を聞いてたのかわからない。 わたどり「しくしく(ダレか助けてください…(涙))」 わたどりは世界の中心で叫びたくなった…かもしれない。 変装した五人が中央の大きな木の下に入ると。 (カランカランカラン) 教師が鐘をならしている。 教師「はーい。そろそろ始まるよー!」 六花「あ、いそぎましょ」 わたどり「Σ心の準備が」 武田「巧いエスケープの方法は…」 榊聖「うんうん」 わたどり「わー!変なことふきこまない!武田、教室は?」 武田「一番はじのクラス」 ウル「いきますか~」 ~そして教室~ 武田「(いちおー一番後ろの列を確保したっすよ)」 男子生徒「お?おはよー」 榊聖「おはよー」 なんなく、教室に入り込めた五人、(ウルは盛大な無視をされている)HR前らしく少し騒ついている。イロモノ集団は最後尾一列に座った。少し異様な雰囲気。 男子生徒「あれ?噂の体験入学のひと?」 男子生徒が話し掛けてきた。 ウル「(へ?体験?)」 六花「?」 わたどり「(武田?)」 武田「(俺知らねぇ)」 榊聖「(……まさか)」 素早いアイコンタクトだが気付いたときには遅かった。 教室の前のドアが開いた。気付いて慌てて戻る男子生徒。先生と、知ってる顔がはいってきた。 女子生徒「起立。礼。着席~」 少し教室が騒ついている。 榊聖「……どうりですんなり行かせてくれるわけだわ」 先生「はい、おはようございます。昨日連絡したよう、教育実習生と体験入学のみなさんが来ております。仲良くしてくださいねー」 ?「みなさんおはようございます。教育実習生のRYOです。よろしく願いします。」 六花「(YOTさん……)」 そう、紛れもなくゴロネコ藩国摂政YOTの姿だった。かれは、別の時に臨時教師として、教段に立ったことがあるのだ。 榊聖「(武田!さっきの逃げ方教えなさい!)」 武田「(無理だ、摂政さんににロックオンされとる)」 六花「(二人ともよく政務放り出して逃げますからね…)」 わたどりとウルはうんうん頷いている。 先生「では、RYO先生。」 YOT「はい。では…」 YOTの口から今日から実力テストを行うという事と遅刻撲滅週間を実施するということが説明された。 男子生徒「Σテスト」 女子生徒「遅刻もですか~」 各方面からわいわいざわざわしてきた。 後ろに陣取る体験入学組(?)は… 六花「テストかぁ」 ウル「(うーむ。しばらくこのかっこで来なきゃいけないのかぁ…)」 武田「(遅刻は廊下にでも立たされるんなねぇ(笑))」 わたどり「うんうん、有意義な日々になりそうですね。」 榊聖「むぅ…藩王である私をだしぬくなんて…」 各自反応はそれぞれだが……… YOT「………(にこにこ)」 YOTの背後に《テスト良い点とらないと……》という五人にしか見えない言葉が浮き出てプレッシャーを与えている。 YOT「さて、体験入学のみなさんの自己紹介を…」 五人「(そう言えばしてないな…)」 YOT「している暇もないので、私から名前だけ紹介します。」 五人「Σ」 YOT「一花さん、わだりさん、エルさん、たけしさん、はがきさん、五人です。」 YOTは一人一人、目を合わせて紹介した。 榊聖「Σ(はがっ!?)」 ウル「(俺と、わたどりさん怒られなぁい?)」 武田「(おれ…名字じゃない)」 わたどり「よ、よろしくお願いします。みなさま。」 (パチパチ) あたたかい?拍手が教室にひろがる。 先生「ふむ。では、テストの日程を発表します。体験入学の人達はがんばってなー」 テストは一日目に、詠唱、集中力テスト。二日目に体術という格闘トーナメント。中休みが入り、四日目学力テスト。最終日、総合能力テストという、模擬戦。 榊聖「(へぇ…学問だけかと思ったら、以外と体力使うのがあるわね…)」 わたどり「(実戦に近いテスト?がありますね。)」 そして、テストが始まった。 ~一日目詠唱、集中力テスト~ 先生「はーい。では、このまま、テストにはいりまーす。」 RYO「午前中に集中力テスト。午後は詠唱能力テストをします。」 午前のテスト、学校内にある、大きな木の下で瞑想をする。 テストが開始され瞑想が始まった、それと同時に先生方による邪魔も始まった。顔の目の前で突然手を叩いたり、くすぐってみたり、先生方のいき過ぎないようさまざまなことをし始めた。ちなみに、テスト参加者はざっと百名近く。 …二時間経過、脱落者がでるなか RYO「(ふむ…さすが。まだみんなのこっているようですね………そうだ)」 五人「……」 RYO「うっ……目眩が…」 男性教師「あっ!大丈夫ですか!」 YOTはなぜか服がはだけてる。男性教師が近寄りだきとめる。 はがき「Σ」 RYO「はい、はがきさん、一花さん、わだりさん、終了~」 わだり「はかられた!」 結局最後まで残った、ウル、武田が高得点。 午後のテスト、今回の内容は詠唱で相手の攻撃を相殺させる防御魔法。 わだり「(…ちなみに、自信ある人)」 一花「(少し…)」 はがき「(無い)」 たけし「(ねえ)」 エル「(どこかに忘れた)」 わだり「…」 成功したのは、わたどり、六花。完璧だったのは、榊聖。ウル、武田は少し焦げて帰ってきた。(たいした威力のアタックではないので怪我人はでない) そして、一日目夜談話室 ウル「ウ~ン。何だか今日は、じろじろ見られまくったなぁ」 武田「あれっすよ。化粧が濃すぎたんすよ。」 榊聖「(ち…ちがうわ……武田が話し掛けられるくらいバレバレだったからよ)」 六花「じゃあ、今度は化粧薄めのナチュラルメイクでいきましょう」 アム「まあまあ、かつらに工夫してみては?」 エスト「そろそろ寝ないと明日キツイですよ~」 二日目体術トーナメント ちなみに、この、体術トーナメントをやる目的は白魔法使い=非力、を無くそうと体術も鍛えようで行われている。トーナメントなのは競争心、ライバル心からくる向上心を作るため。駅前学園の体育館を借りトーナメントをやるようである。男女別れて行う。テストの中で一番人気?がある。 たけし「ウラアァァァァァァァァ!」 わだり「くっ……」 男子トーナメントは、わたどり、武田が決勝であたり。武田の我流特殊空拳で圧倒。優勝をおさめた。 そして、女子トーナメント… 女先生「あの……」 エル「女の子です」 はがき「女の子よ?」 女先生「いやいやどう見ても…」 エル「それでも女の子です。」 はがき「女の子よ?」 RYO「Σ(力技で来た!)」 ……力技でトーナメント開始。 予想どうり?榊聖、ウルの決勝になった、六花は準決勝でウルとあたり敗退。流石のウルも榊聖、六花と続けて強敵とあたり惜しくも決勝で榊聖に敗退。 榊聖「ほーーほっほっほっほっほっ」 エル「うーむ。」 一花「(軽い怪我の人ばかりで良かった…)」 大盛況で幕を閉じた。 三日目、なか日。 アールヴ「?今日は静かですね…」 エスト「ですね?」 雑賀有「ふふ、明日は白魔法学校内テスト魔の日だからねぇ」 アールヴ&エスト「(笑)」 雑賀有「あ、おはようございます。アムさん。」 アム「おはようございます。静かでござるな…」 雑賀有「(笑)」 魔の三日目学力テスト。 わだり「んー、おわったー」 一花「さっきのここ答えが…」 はがき「あ…。そうなの!間違いだ~」 たけし「とける~」 エル「記憶が溶ける~」 はがき「現実逃避はだめよ…」(ため息) 結果は後日に。 最終日総合能力テスト。 このテストは、白魔法使いとして野戦技能能力を見る。形としては、歩兵、白魔法使いのみの編成で相手チームのリーダーの鉢巻きをとれば勝利となる。 後衛となる詠唱部隊は守りの魔法以外は今回は余り使わないように。歩兵はチームで決めてよい。 今回のチーム編成は大規模戦闘を想定して、Aチームに榊聖、ウル。Bチームにわたどり、六花、武田。…ちなみに、面白そうだと言う理由でアムが変装乱入している。歩兵戦、詠唱戦をくぐり抜け本陣のリーダーの鉢巻きをとる。2チーム総勢50人50人の模擬戦が始まる。 Aチーム陣地 ロム「(わくわく)」 はがき「(あ、一応偽名になってる。)」 女子生徒「ダレが指揮とりましょう?」 エル「えーと、はがきさんなんてどうでしょう?」 はがき「はいはい。まかせて」 Bチーム陣地 たけし「……」 男子生徒「(たけしさん、トーナメントの時もそうでしたけど雰囲気変わりますね…)」 一花「(少し、怖くなります…)」 女子生徒「わだりさん指揮とってもらっていいですか?」 わだり「Σ」 男子生徒「(わだりさんは物事頼みやすそうな人だなぁ(笑))」 場所は学園の校庭…場所がとれなかったそうだ。 ぶっちゃけ、正面衝突ぐらいしかできない広さである。 はがき「ふむ。正面衝突しかできないか…、戦力は互角…。」 エル「(多分、歩兵には武田いるでしょうね…)」 ロム「(以外と冷静な所あるから注意でござる、守備はわたどりさん六花さんで固めてきそうでござるな)」 戦闘開始… 正面歩兵同士の突撃。予想どうりBチームの歩兵武田が突進してくる、Aチームはウルがあたる。 詠唱戦はAチームがやや押し気味。リーダーを他のものに任せ、前線で全員がではらっている様子。 実際に戦場に出ている六人の動きは段違いのようだ……。 歩兵戦で動きが、ウルが徐々に押されはじめる、武田が事前に渡された武器を外に向かって放り投げ、特殊空拳で押している模様。(ウルもつられて投げてしまい素手) エル「!!(投げなきゃよかったー(涙目))」 たけし「くそが…白魔法が邪魔!」 白魔法の守りの呪文で思うよう攻撃が効かない。(ちなみに、歩兵戦している人たちも白魔法使いの格好でやっている) Aチーム後衛… 男子生徒「前衛押されてますね…てか、素手…」 ロム「(パイロット勝負なら立場逆転してるでござるが…白魔法でなんとか踏張っているでござる…何か対策立てねば後衛の詠唱部隊になだれこんでくるでござるな。)」 前衛20名、後衛20名、本陣10名で行うようテストで決まっている。 ~前衛~ エル「うひゃ~」 たけし「だぁ!見失ったー」 生徒「うりゃー」 生徒「わー」 ……収拾がつかなくなってきた。この後ウルに代わり榊聖が前衛に出てきた、案の定、動きが悪くなる武田。たたみかけるように女の子を中心とした、後衛が前に出て、Bチームもつられて、後衛が出撃。ドロドロのドロ試合になった。 そして、数時間がたった ロム「つあぁぁぁぁ!」 たけし「うおおぉぉぉ!」 先生「…」 RYO「Σ先生危ない!」 YOTが叫んだときにはすでに遅かった。 ……が (ぴと) (ぴと) その教師がアム、武田両者の間に入り、素早くおでこに触れた。 (ごろごろ) (ずざざざ) 指が触れた瞬間、突進していたアム&武田は壊れたおもちゃのように、崩れ突進の勢いで転がっていった。 わだり「Σ」 エル「Σわお」 先生「双方それまで。時間切れ、引き分けとしましょう。」 ど真ん中で一騎打ちしていた二人が眠らされたため、すぐに広まり。模擬戦が終了した。 放課後、職員室 RYO「先程は、お見事です。」 先生「いやー、疲弊しきっていても、さすが前線で働いているかたがたですね…迫力が凄かったですよ。」 よく見ると、顔面蒼白になっている。「爆発物処理班の気持ちがわかります」と元気なく答える教師。 YOT「気付かれていましたか…」 先生「動きがダンチですよ。…詠唱以外(笑)」 YOT「詠唱はそちらがスペシャリストかもしれませんね(笑)」 先生「さて…こちらが、学力テストの採点したものです。王宮で皆さんにお渡しください(笑)」 YOT「お気遣いありがとうございます(お辞儀)」 先生「いえ、毎日騒がしくて毎日笑顔でいられました…間違いなく楽しい日々でしたよ。またお忍びでいらしてください(にっこり)」 YOT「はい、その言葉は皆が喜びます。ありがとうございます。」 そして夜、王宮談話室… 榊聖「あははははは」 武田「うひゃひゃひゃひゃ」 榊聖と武田がお互いの学力テストの点数を見せあって爆笑している… エスト「…何やってんだかなぁ、あの二人は(笑)」 ウル「(ぼー)」 アールヴ「どうしました?」 わたどり「自分の名前っていいよね……」 ウル「…まったくだ」 六花「(笑)」 YOT「テスト皆さんにまわりましたか?」 わたどり「あ、はい。」 YOT「とりあえず、結果論としては、優秀な成績だったそうです。ので、これといった罰は無しとします。」 わたどり「(ほっ…)」 ウル「(本気だったのか…)」 YOT「また、担任の方からまたいらしてください。と、お言葉をいただきました。」 武田「テスト以外の日なら…いくよ?」 エスト「(笑)」 YOT「では、私は政務室へいきますので。」 榊聖「ん、おつかれさま。」 武田「うぬぅ…今度テストは汚名挽回だずぇぇぇぇぇぇぇ!」 エスト「Σ汚名は返上しとけっ!」 榊聖「六花さ~んここ解らな~い」 ~政務室~ 雑賀と恵、ブータがいる。 恵「そんな事が…」 雑賀有「ええ、周りはそこそこ忙しかったですよ…」 (がちゃ) 雑賀有「お、お帰りなさい。」 YOT「ただいまです。周辺の警護お疲れさまでした。」 体術トーナメント、総合能力テストでは学園外でやるため、周りに迷惑がかからないように周辺に警護を手のあいてる王宮の人達がやっていた。 雑賀有「苦情はありませんでしたねぇ。…ただ」 YOT「ただ?」 よく見ると、雑賀の机の上に総合能力テストで使った白兵様の武器が置いてある。 雑賀有「学園の外回りしてたら、落ちてきた。」 YOT「学園の広さ考えると、かなり力がある人じゃないと投げととどきませんね……Σ(あ、)」 テストで投げた馬鹿がいる。 雑賀有「誰かなぁ」 YOTをちらりと見る雑賀。恵とブータはニコニコ話をしているようだ。 YOT「…。(ウルさん&武田か…)」 雑賀有「ん?何か知ってるな~、吐け~、吐かないと脱がすぞ~」 YOT「Σちょっ、雑賀さん悪のりですか!?離れて!」 雑賀有「うけけけけ」 ブータはにやにやしている。恵は少し顔が赤い。 (がちゃ) アム「すいま……、」 雑賀&YOT「あ、」 わたどり「あ、」 アールヴ「お?」 榊聖「ちょっとー後ろつまってるんだけどー!」 六花「テスト採点ミスがあります~」 エスト「中に入ってから、喋る方が良いかな~(笑)」 武田「おーい、入らないと後ろから押すズェー!」 わたどり「Σちょっ、スト…」 (どーん) なだれこんでくる全員。 榊聖「武田!痛い!」 武田「俺は押したのエストさんだずぇ!」 エスト「いやいや、僕押せば前にいる人に当たるわけで…」 六花「ΣYOTさんがむかれてる!」 武田「ん?」 榊聖「ほほう。」 バタバタでさらに混乱してくる場。 YOT「Σはっ!ち、ちがいます!ごか…」 ブータ「(ニヨニヨ)」 恵「あはは」 藩国の一日が過ぎていく… SS 武田”大納言”義久
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荒れた心を癒すのは、私の場合、破壊が一番適切な処置だった。 手を振るい、壁に穴を空け、家具を壊す。そうしてようやく、私は落ち着くことができる。 不甲斐ない…自分でもそう吐き捨てることが多くなってきたと実感してしまう。 別段、特定の人物に怒っているわけではないが、このやりきれない気持ちが私を無意識に破壊へと導いてしまう。 人としての生き方を望まれずして生まれた私たちは、与えられた役目さえ実行できずに今も飄々と生きている。 化け物と呼ぶには遠く、人と呼ぶには欠陥が多すぎる。ならば私たちは、自分が住みやすい居場所に自分を騙るしかない。 “私は人間だ” そう、今なら言える。 人として生きるのには問題は無いし不満も無い。だけど…足りないんだ。 敗者の矜持を捨ててさえ、人間にしてくれた人が居ない。擬似だが、家族として扱ってくれた大切な人が居ない。 今でも仲間はいる。今でも家族はいる。 でも…人間として機能させてくれる人がいない。彼がいなくても、きっと彼女たちに言えばこう返ってくるだろう。 “貴女は人間だよ”と。仲間がいるのは心強い。家族がいるのは暖かい。 なら私は、何を求めているのだろうか? この渇きは、何をすれば満たされるのだろうか。 今の私は…“どっち”なんだろうか。 ▼ 「ねえトーレ姉さん、兄様は今…何をしているのか分かる?」 「そんなもの…私に聞くな」 ミッドチルダの中央区にある一角のアパート。もうずっと明かりも点けないまま、二人は過ごしていた。 セッテとトーレは、半年前に機動六課を辞退していた。本来ならば監獄へ逆戻りだったが、少ない期間ながらの好成績によって残りの期間は免除された。 それからずっと引きこもり。セッテはよく街に行くが、セッテより重症なトーレは全くと言っていいほど外には出たがらなかった。 ただ夜になると、ずっと空を見続けている。 心配して見にくる六課の人たちも、いつも十秒も持たない。 粘れば家に入ることは可能だろう。だが、無理を通せばトーレが何をしだすか分からなかった。 「だが、兄上はご健在だ」 「…そうだね」 短い会話。およそ会話のキャッチボールと呼ぶには程遠いこの会話は、飽きもせずに十ヶ月も続けられている。 カーテンから零れる日光が、異常なほど目に染みた。 「みんな…どうしてるかな?」 「知らん」 一蹴。さほど興味が無いのか、トーレは大切な兄の話が終わるとベッドに寝転がってしまった。 「姉さん…」 セッテ自身も、十分に悲しい現実に突きつけられているのは周知の事実だ。だがそれでも…心で泣き続ける姉を支えようと、痛みを隠して過ごしている。 兄が、ヴィアトリクスがいなくなったのは、きっと私たちが弱いからだ。 心の支えにすら、なってあげられなかった。 スタンドランプを点けた。 昼間でも暗い部屋を、蝶の形をした影が伸びていた。 「…綺麗」 既にトーレは寝たのか、音の無い部屋には寝息が聞こえる。 それにしても…ただただ綺麗だった。 二人が引っ越すまで家具も何も無かったので、ヴィアの部屋から色々と貰ってきたのだ。 「これは…煙草?」 キャリーバッグから、箱の先端が見えた。 取り出してみると、やはり煙草だった。まだ開封されていない。きっと、なのはたちに取り上げられまいと隠していたのだろう。 ついでに入っていたライターを取り出し、加えて火をつける。 「けほっ…なに、これ…」 想像以上に不味かった。 不味い、といういうよりは、苦しいという方が正しいだろう。 咽《むせ》て吸う気がなくなったのか、すぐに火種を消してゴミ箱に投げ捨てた。 「これが、おいしいって言ってた…」 正直、堪えられたものじゃない。今すぐに箱を潰そうとしたが、ぎりぎりのところで止めた。 煙草への好奇心が無くなった今、残るは暇という文字のみ。テレビか外か。インかアウト。なかなか判断に困る状況だ。 夜に寝る習慣を保ちたいため、セッテは外へ繰り出すことに決定した。 ▼ 外が眩しい。雲一つ無い晴天は、身体に良くても心は憂鬱にさせた。 行き交う人々は、誰もが笑ってる。羨心はやがて嫉妬に変わってきた。 「…痛っ」 「すまない…怪我は無かったか? って…お前、セッテか?」 十字路を曲がろうとしたとき、誰かにぶつかった。 聞き覚えがある声に気付いて見上げると、見知った顔があった。そしてそのまま連行される。 「チンク姉さん…」 「姉のおごりだから、たくさん食べるんだぞ」 テーブルに並べられたのは、およそ二人で食べるような量ではない料理が並べられている。 連れてこられたのは近所のファミリーレストラン。有無を言わさず、強制だった。 「なんだ、食べないのか?」 「………」 「ヴィアの事か?」 チンクは、セッテを見ずに喋っている。手はフォークとナイフを掴んだままだ。 そしてセッテも、姉の顔を見ることが出来ない。 「図星、か」 「私は……」 「案ずるな。姉に任せろ」 「半年前も…同じ事を言っていた」 「そうか? 忘れたよ。過去のことは」 「兄様の事も忘れたと言うのか…!!」 怒鳴った。周りの客が一斉に、端の席を見ている。 セッテが怒鳴っても、チンクは黙々と食べていた。 「落ち着け」 「………」 「私はな、セッテ」 ようやく手を止めて、セッテの目を見た。 「恐れていないんだ」 「恐れる…?」 「ああ。ヴィアは死んでなんかいない。だから私は、“死んでいるかも”という疑念を恐れてはいない」 「………」 「だがお前たち二人はなんだ? 行方不明になっただけで絶望して殻に閉じこもる。お前たちはヴィアの事を一番信じているという気持ちが大きいくせに、お前たちが一番信じていない。…言ってることが分かるな?」 「深い関わりも無いくせに、知ったことを言うな…」 姉妹喧嘩、というには少し状況がはっきりしすぎていた。 明らかに敵意をむき出しているセッテに対し、チンクは冷や汗一つ垂らさず話しを続けている。 「私もあの方を慕っている。戦場で肩を並べたならば深い繋がりはなくても戦友だ。だがお前は…“家族”なのに信じていない」 「黙れ…」 「哀れだな」 「黙れ…!」 「いつまで閉じこもるつもりだ」 「うるさい! その口を閉じろ!」 興奮はピークに達した。既にセッテの手はチンクの首を掴もうとしている。 震える手が、チンクの首まで達しないように抑えていた。 「場所を、変えようか」 ▼ 「夏が終わって、また冬が来る。冬は、なぜかヴィアを思い出すな」 「………」 「姉と同意見か?」 「兄様は…」 「…ん?」 「兄様は、初めて私とトーレ姉さんを人間の家族として迎えてくれた」 いつもあまり表情を表に出さないセッテが、泣いていた。 拳を握り締めて、必死に涙を堪えている。 「“敗者”っていう檻から、出してくれたんだ……!!」 「…ちょっとやり方は強引だったがな」 「でも…私は兄様を…慕ってる…」 「お前は、何を我慢している。泣きたい時は、泣けばいい」 「うっ…うう…なんで、なんで居ないの…!?」 公園は、二人だけだった。 ベンチには、姉の胸を借りて溜めていた涙を流す妹。 「安心しろセッテ。お前の涙は、姉が拭ってやる」 その涙は、日が傾くまで止まらなかった。 ▼ 「煙草かそれ」 「…うん、兄様の」 「よし、姉に貸してみろ」 日が暮れた頃には、世間話に変わっていた。 セッテはまだ目が腫れているが、もう、泣き止んだようだ。 「けほっ…不味いな」 「チンク姉さんじゃ、捕まっちゃうよ…?」 「失礼だな。こんな見た目でも姉なんだぞ」 「うん…知ってる」 泣き止んでからの沈黙は多かった。だが、悪い雰囲気ではない。 「姓は違えども、私たちは家族だ。…違うか?」 「うん。…家族だ」 「だからな、泣きたい時は精一杯泣け。寂しい時は、いつでも頼れ。お前が我慢なんかし続けたら、ヴィアが帰ってきた時には海が出来てしまう」 「うん…」 「それにしても随分感情が出てきたなセッテは。…セッテ?」 静かな公園には、微かに寝息が聴こえる。 「世話の掛かる妹だ…」 ゆっくりと、起こさないように頭を撫でる。 風に揺られて、ピンクの髪が揺れていた。 「そうやってセッテを騙して、またあの場所《六課》へ連れて行く気か?」 「…大きい方の蝸牛《かたつむり》がお出ましか」 「馬鹿にしているのか?」 「…困っている妹の悩みを姉である私が聞いてあげただけだ」 「私はセッテの教育係だ」 「…その教育係より、セッテの方がよほどまともだ。お前と違って、セッテはこの辛い現実に立ち向かおうとしている」 「現実…?」 「ヴィアトリクス・フロストリアがいない現実だ」 その名前を聞いた瞬間、トーレのインパルスブレードが喉元に突きつけられている。 膝枕をしていたチンクが、セッテをベンチに寝かせた。 「…はぁ。場所を、変えようか」 戦いになれば、セッテが起きてしまう。だから、通る人が少なく、通報されても逃げやすい場所に来た。 前に立つトーレの気配も、眼光も、全てが殺気となっている。 「兄上は、お前たちの為に…」 「まるで死んだかのような口ぶりだな」 「なに?」 「お前たちはヴィアを愛していながら、信じていない。私たちは彼を信じているからこそ、戦っているんだ」 「戯言を…!」 「戯言を抜かしているのはお前だ!」 チンクの手にも、ISのナイフが握られている。 「姉なら姉らしくしろ…」 「お前に、お前らなんかに…! 私たちの痛みが分かってたまるか…!!」 トーレのISが機動する。 暗がりとはいえ、戦闘機人の“目”から、トーレの姿が消える。紫色の閃光が、夜を引き裂きながら移動してくる。 勝算はほぼ無かった。超が付く程の近接戦闘型のトーレと違って、チンクは隠密行動などに長けている。相性も、経験も…トーレとチンクでは、差がありすぎた。 「くぅッ…!」 目が追いつかない。右に振り向けば、トーレは左に居る。 チンクは右左の両方に、ナイフを投げた。 「そんな遅さでは…私は捉えられないぞ…!」 ナイフを掻い潜って、エネルギーの刃が襲う。 寸での所でガードしたが、灰色のコート《シェルコート》が引き裂かれた。 「終わりだ!!」 トーレの刃がチンクの首を斬る直前、爆発が起きた。 二人は爆風で、吹き飛ばされる。 「お前…そうか、私を捉える為なら怪我は厭わないというのか」 「だが…それも失敗みたいだ」 トーレに大したダメージは与えられなかった。 向こうは起き上がるが、チンクはまだ立てなかった。 「お前の…負けだ」 「オーバーデトネイション!!」 「そんな物なんて……なに!?」 チンクが手を広げるのと共に、トーレの周りに無数のナイフが出現した。 「さすがのその速さでも、それは避けられないだろう…?」 掌が拳に変わると同時に、ナイフはトーレに全方位から襲い掛かった。 一つが爆発すると、周りのナイフも誘爆する。直撃を喰らったトーレが、後退した。 「くっ…!?」 「聞こえるか、管理局が来たぞ」 遠くからは、サイレンの音が聞こえてきた。まあこれだけ派手に戦えば、管理局が来てもおかしくはない。 「今日は退く…私たちはまだ、お前たちを許した訳じゃないからな…!」 「“私は”の間違いじゃないのか?」 「ふんっ…」 トーレが居なくなると、チンクは立ち上がった。 やはり姉妹で戦うのは、気が引けた。 「困った姉だな、全く。…さて、セッテを起こして私も帰るとしよう」 痛む身体に鞭を打って、チンクは公園へ戻っていった。 後に残ったのは、爆発で剥けた無残な地面だけだった…。 ▼ 走る、走る。 誰かから逃げる訳でもないのに、私は必死に街を駆けていた。 「くそ…くそっ!!」 苛立ちが収まらない。チンクが憎いわけではないが、どうしても、心は苛立ってくる。 なんなのだろうか、これは。私がもっと強くて、速かったなら、きっと兄上を助けられたかもしれない。 「………」 そうか。私は…自分が許せなかったんだ。 あの時、兄上を迎えに行く、なんて意気込みながらも、ただの雑兵と戦うことしかできなかった自分を。 兄上の背中すら、見ることが出来なかった。 「…チンクの言った通りか」 私は心も弱かった。 罪を他人に押し付けて、六課を去った。…なんて弱さだ。 兄上に負けて、自分のプライドを守れるぐらいに強くなりたいと願ったはずなのに、こんなにも弱い。 「…お前は」 路地裏、私が一人立ち尽くしていた所に、犬が来た。 足に擦り寄ってくる小さい犬は、様子がおかしい。 「なんだ、怪我でもしているのか?」 しゃがんで、犬の顔を覗き込むと、すぐに異変に気が付いた。 「な…!? くそ…! これは!?」 犬が倒れる。元々、野犬にしても異常なほど痩せていた。 倒れた犬から、黒い何かがトーレに飛びつく。やがて身体全体を包み込み、暴れていたトーレの動きが止まる。 「………」 倒れる時、空が見えた。 ―――月が赤い。こんな夜には、人を喰らうにはもってこいの静けさだった。 ▼ 「その怪我はどうした!?」 六課に戻ってすぐに、叫び声は仕事を終えた局員たちに響き渡った。 叫んだのはゲンヤ・ナカジマ。J.S.事件が終わった後、更正プログラムを終えたナンバーズの何名かを引き取った者だった。 自分の怪我も、周りの目さえ気付かず、チンクは口を開いた。 「父上、なぜここに?」 「ええい! お前は早く医務室へ行け!」 質問は却下。チンクはそのまま、医務室に向かうことになった。 チンクと入れ違いで、フェイトが入ってくる。 「あの、ゲンヤさん。お話しとは?」 「あぁ…少し、厄介なことになりそうだぞ」 「…詳しく聞かせてください」 ソファーには、向かいあって二人が座った。 向かいにいるフェイトに、ゲンヤは珈琲を一気飲みして言った。 「街が、危険だ」 「…どういう意味ですか?」 「お前たちは、タナトスというロストロギアを追っていたな?」 「はい。…まさかミッドに!?」 「確証は無い。だが、その可能性は高いぞ」 ゲンヤが取り出したのは、何かの爆発によって破壊された広場だった。 「これは…」 「約一時間前の奴だ。今日は非番だったから外食をしていてな。たまたま現場に出くわした」 「…すぐに調査を」 「待て、まだ確証があるわけじゃないから六課は動くな」 「風評ってやつですか…?」 「それもある。いずれにせよ、ロストロギアが関わるならお前たちの出番になる」 風評…元々あまり上層部からの人気が無かった機動六課は、今や世界を救った組織からただの役立たずへランクダウンしている。 下手に動いて何も無かったら、また上からお小言を貰うのは目に見えていた。 「分かりました。はやてたちには私から伝えておきます。わざわざすみませんでした…」 「なぁに、上の奴らと違って、俺は六課が気に入ってるからよ」 「ゲンヤさん…」 「気張れ、お前たちは…よくやったよ」 「はい…」 一息ついて、ゲンヤは帰っていった。 窓の外は綺麗な夜空。だが、嫌な空気が漂っていた。 ▼ 夢を見ている気がする。気がする…という曖昧な表現が正しいのは間違いない。 私は、ただ歩いていた。 夢なのか、現実なのか。よろよろとまともに立っていられないのに、私は歩き続けている。 「………」 下水の臭いが、鼻をつんざく。 まともに言葉を喋れない。その上、気分だけが上がっていく。 私は故障している。流れる血の脈動が、一刻も早く喰らえと命じてくる。 喉が乾く。身体が熱い。水が…飲みたい。 ―――ただの水じゃあ、満足できないだろ? 兄上の声がする。 ―――赤い水のタンクが、そこらへんにたくさんうろついている 何を、言っているのだろう… ―――喰え タンクは…人なのに…? ―――喰え 乾きが強くなった。私は、手を伸ばす。 獲物が逃げた。追わなくちゃ。 「IS、ライドインパルス…」 遅い。路地裏にたむろっていた若者たちの身体が裂ける。 ――静かになった。ようやく、この乾きを癒すことができるみたいだ。 ―――サア、ショクジノジカンダ ▼ 「ここ…は…?」 深い眠りから醒めると、今居る場所を知っていることに気付く。チンクが、寝ているセッテを抱えて運んだのだ。 立ち上がって、周りを見渡す。すぐに異変に気付いた。 「なに、これ…?」 自分の部屋が、無残にも荒らされていた。 いや、家具や壁などが粉々に壊されているあたり、荒らすという言葉を超えていた。 唯一無事なのは、ヴィアのスタンドランプぐらいだ。 リビングに出ても、誰もいない。残るは、姉の部屋ぐらいだ。 苛立ちを抑える為に物を壊していたトーレがセッテの部屋を破壊したのは分かっていることだ。ただの強盗にここまでは出来ない。 「姉さん、居るの…?」 部屋の片隅に、トーレが居た。 うずくまって、下を向いている。セッテが、事情を聞こうと近づいた時、部屋に怒鳴り声が響いた。 「来るな!!」 いきなりの事で、少し戸惑う。トーレは、いくら苛立ってもセッテに八つ当たりすることは無かった。 怒りを超えて、既に殺気と化している。そして、咽るような臭い。 「電気、点けるよ…?」 答えは無い。セッテは、部屋の明かりを点けて、驚愕した。 白い壁はあちこちに赤いコーティングが施されている。これは、知っている…人間の、血の臭いだ。 「こ、れ…は…」 「来ないでくれ…」 泣きそうな声で、トーレが呟いた。 いや…泣いているのかもしれない。どちらにせよ、話さなければ何も始まらないと判断したセッテは、歩みを止めなかった。 「姉さん、一体なにが…」 ようやく、気付いた。 姉の後ろに、何かが居る。それはほとんど実体は無く、気配として存在している。 禍々しく、自分の存在を誇示していた。すぐに分かった。こいつが原因だと…。 「お前か…お前が姉さんを泣かせたのか…!!」 「逃げろセッテ…!」 ISを機動させる前に、セッテが吹き飛んだ。 トーレが、セッテに刃を向けている。 「姉さん…!?」 「夢じゃ、無かった…」 「え…?」 「逃げろセッテ…そして、六課を呼んでくれ…。私を、止めてくれ…」 「姉さん!!」 セッテを殺そうとする意思に抗いながら、トーレは窓から飛び出した。 何事も無かったように、部屋は静寂に包まれる。 「嘘…だ…あんなの、兄様じゃない…!!」 ▼ 気付いたら、私は機動六課の前まで来ていた。 今日の姉さんはおかしかった。真っ赤な部屋におかしな言動…なによりも、トーレ姉さんの後ろに居た黒い影は、明らかに兄様だった。 自分一人ではどうにもすることが出来ない。だから、ここにきたのだろうか…。 「暗い…」 真っ暗な六課を見上げて、そう呟いた。今は深夜、起きている方がおかしいというものだ。 入り口は開かない。時間は無いのに、どうすることも出来なかった。 「兄様…」 兄様なら、どうするんだろう…そう考えている内に、また足は無意識の動き出した。 「兄様ならきっと、自分でなんとかする」 だったら、私も頑張らなきゃいけない。嫌な予感がする。 これ以上私は…家族を失いたくないんだ。 「厭《いや》な…空気だ…」 静か過ぎる街は、逆に疑心を煽る。予感が、段々と確信へ変わっていく。 この街は今…戦場になっている予感がした。 ▼ 家に戻っても、手掛かりは無かった。 窓が割れた音も、叫び声も騒ぎにはなっていないらしい。だが部屋に戻ったら…トーレが居るという幻想は無駄だった。 部屋は赤く、窓は割れ、誰も居ない。 「姉さん…」 誰も居ない、という事が妙に悲しかった。 トーレだってたまには外に出ることもあるだろう。待っていれば家族は帰ってくる。でも…“誰も”いない。 「家族が居ないのは寂しいですか?」 「誰だ!?」 「誰? そうですね、強いて言うならば、貴女の敵ですよ」 窓の前には、女が立っていた。 入ってきた気配すら無い。いや、もとから居たのかもしれなかった。 美しい黒髪をなびかせて立っている女のその紅い瞳は、明らかな嘲笑。 「敵…? フリージアか…!」 「正解です。さて、貴女のお姉さん、何か様子がおかしかったでしょう?」 「…!? やっぱりお前たちだったのか…それに、あの兄様に似た影はなんだ!」 「兄様? あぁ、ヴィアトリクスのことですか。はて、貴女にはそう見えたのですか」 「どういう意味だ…」 「いえ、予想通りと言えばそうなのですが…。まあ、そんなことよりも影の正体の方を気にするべきでは?」 ISは既に起動している。後は、返答次第で彼女を斬るだけだ。 「兄様じゃない事が分かったならそれで十分だ。後は…お前をここで倒す!」 狭い部屋の中ではブーメランを投げるわけにはいかない。セッテはそのまま斬りかかった。 一瞬で距離を縮め、振り下ろす。だが、その場所には誰もいなかった。 「…なに!?」 「おめでとうございます。貴女は選ばれました。新たなる歴史を築く駒として…」 後ろを振り向く前に、セッテに衝撃が走った。 相変わらずの、嘲笑の瞳。 「我が名はベルザ…お見知りおきを」 そのまま倒れる。微かに残る意識の中、首に手が届く寸前で、セッテの意識は途絶えた。 灰色の雲が広がっていく。ミッドに、嵐が近付いていた。 第十六話:空いた心
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ジルギス (謎のリハーサル直後 ジルギス (勝手に戦闘を始める奴 ジルギス (次の仕事に行く奴 ジルギス (なんか素人誘ってご飯行く奴 ジルギス (色々居るけど、どことも混ざりたくない。 ジルギス (それに。 ジルギス もう終わったから帰って良いけど? ジルギス (みんな散り散りに居なくなった建物の廊下にて自分のファンに話しかける エル にょへへっ☆ エル じるじるは~…これからどうするんだにょっ? ジルギス …。別に決めてないけど。 ジルギス なんか食べようかな。 エル そうなんだにぇ~♪ エル なんだかエルちゃんも…とってもお腹が空いてきた気がするんだにょ! ジルギス ふーん。 ジルギス おまえは、どこで食べんの? エル にょっ(聞き返されて驚く エル (じるじるの行く所やる事に勝手についていく・・・のがエルちゃんの基本スタイルだったので エル (じるじるから聞かれるなんてとっても珍しい…むしろ初めてかもしれないにょ!? ジルギス 食べるんでしょ? エル 勿論だにょ!!(即答して エル え~っとえっとえっと・・・いつものEFでもいいのですけど~… ジルギス 仕事じゃん。 エル そうなんだにょ!非番の日に職場でゴハン食べるのは仕事人が過ぎるんだにょ! エル という訳で~・・・ エル エルちゃんの知ってる別のお店に・・・行ってみるんだにょ?(ちらっとじるじる窺って ジルギス ふーん。別にどこでも良いけど。 ジルギス なんか食べれるってんなら…行こっか。 エル にょ!!(隠せないにょへへ顔で エル わ…わぁ…いいんだにょ!?エルちゃんセレクトで?? エル そのえっとえっと エル お仕事の時間は・・・もう終わってるのに・・・ ジルギス ・・・。 ジルギス んー。 ジルギス さっき池なんとかって奴が ジルギス 予想以上に長引いたお詫びだか、混乱したお詫びだかで食事券くれたから。 ジルギス コレ使うとこまで仕事なんじゃないの。 エル にょ!!!そんな物が!!?? ジルギス 全員に配ってるわけじゃないの?適当だなアイツ。 ジルギス じゃあ…仕方ないからこの1枚で2人とも食わなきゃいけないじゃん? エル そ…それならそういう事になるにょ!? エル じゃ、じゃあ・・・(ほっぺにおてて当てて顔赤らめて エル …じるじる。 一緒にご飯食べにいこっ! エル …だにょ。 ジルギス 良いけど。仕事だし。 ジルギス おまえもあんな長いの付き合わされたし。 ジルギス ゴハンぐらい良いんじゃない?別に。 エル い、いいんだにょ!?いいんだにょ!?遠慮無く行っちゃうにょ!? エル 確かにちょっぴり大変な瞬間もあったけどエルちゃんは常にはっぴーはっぴーはーっぴー(某みーむ)だったにょ!? エル 〆まではっぴーだなんてお得しか無いんだにょ~・・・! ジルギス ま。捉え方は人それぞれで良いんじゃない? ジルギス 自分は仕事の日だから仕事してるだけだし。 エル は~いだにょっ♪♪ エル じゃあじゃあっ、早速行こうなのでしたっ♪ ジルギス 良いけど。フォーデン内ね?(言いながら歩き出す エル もちのろんだにょ!日が暮れちゃうにょ! エル エルちゃん的には暮れに暮れちゃってもいいのですけど…? ジルギス ふーん。 ジルギス ・・・。 ジルギス 別に後ろ予定ないけどね。 ジルギス (なんか言いながら歩いてる エル にょ! エル も、も~じるじるったら… ファンサ力がすぎょい…(じるじるの前をふらふらぱたぱた飛んでるエルちゃん エル ごはん所に着くまでに持たないかもしれないにょ~・・・ ジルギス はいはい。良いから案内してよ。(ふらふら飛んでるエルちゃんについてきながら エル は~いだにょ~・・・!(施設から出て、日の暮れ始めたフォーデンの街を進む2人 エル (なんだか…普段はじるじるの背中を追っかけてばかりなので~・・・ エル (今のこのしちゅえーしょん、とっても新鮮なんだにょ・・・!? ジルギス (ふらふらぱたぱたエルちゃんをのんびり歩きで着いていくジルギス エル (て、ていうか。かくじつにじるじるがエルちゃんを見てるって事で・・・ エル (にょにょにょ~~~・・・! エル …あれっ? この道だったかにょ??(なんてのを挟みつつ ジルギス なに?行き慣れてるわけじゃあないの? エル そ、そんな訳じゃないにょ!心が戸惑っているんだにょ?? エル (わたつきつつ、十数分のんびり歩いた所で、目当ての店に辿り着く ジルギス ここ?(店前で エル ここだにょ!(フォーデンの飲食店が立ち並ぶ路地の一つ エル (洒落た小さな看板があり、奥まった所に入口が見える エル (個人経営の隠れ家的カフェ…のような雰囲気の場所 エル エルちゃんはお昼にしか来た事無いのですけど~夜もやってるっていうお話だにょ! ジルギス ふーん。閉まっては無いんじゃないの? エル うんうんっ。じゃあ…入るにょ! エル いらっしゃいましたー♪(カランコロン ジルギス (何も言わず着いていく…特に顔とか隠してないフォーデンプロファイター エル (薄暗めの照明 カウンターとテーブル数席の手狭な店内 エル (他に客は居らず、寡黙そうなマスターがカウンターに一人佇んでいる エル にょっっ(なんだかお昼に来た時と雰囲気がちがうにょ…!? エル (おしゃれな小物があちこちに置かれた店内は、確かに昼はこじゃれた可愛いカフェなのだろうが ジルギス ふーん。(店内見て エル (いわゆる「昼はカフェ、夜はバー」形式の店・・・だったらしい エル え~っと…2人だにょ!(マスターにピースして エル (寡黙なマスターは、街の有名人であるジルギスを目にしても特に何も言わず。 エル (最低限のやりとりで、奥のテーブル席に案内される2名 ジルギス カウンターじゃないじゃん。(案内され終わった後 ジルギス 全然知らない店員のマスターとカウンターとか無理だから良いけど。 エル 確かにだにょ!? エル お店の雰囲気・・・明らかにバーなのに…気を利かせてくれたのかもにょ…? ジルギス バーだね。(店内見て ジルギス 今日、酒飲むの? エル …バーだにょ!どう見ても! エル にょっ。(問われて エル (エルちゃんは実はお酒は大丈夫だったりしない事も無い気がする…覚えてない過去の記憶がそう言ってる気がするにょ… エル …ど、どうしようかにょ~…?エルちゃんその~・・・ エル お昼はおしゃれ~なランチとかかわい~いデザートとかが出るお店で…そのイメージのまま来ちゃったので…(正直に喋って エル でもでも… 今は明らかにバーなのに…飲まないのも変な気がするにょ?? ジルギス …ん。そういうもんね。 ジルギス んー。 ジルギス …。 ジルギス 酒ね。あんま飲まないんだけど。(言いつつメニューとか見て ジルギス 「どこでも良い」って言ったしね。 エル …! …じゃ、じゃあ。 エル エルちゃんも、甘~いのをちょっとだけ…飲んじゃおうかにょ。 ジルギス じゃあ僕が飲む分のお酒も決めてよ。 エル (じるじるが見てるメニューを覗き込む …呪文みたいな名前が多いにょ! ジルギス 見てもよくわかんないんだよね。(メニュー閉じて ジルギス (エルちゃん側に渡す エル …にょ! (代わりに受け取って エル …大役だにょ…! でもでもエルちゃんも店員魂…!(開いて、眺めて エル そういえばEFでもお酒の注文はできるんだにょ。殆ど頼む人いないけどにょ。 エル なので…この中でも理解できる呪文はあるにょ…! エル あ。でもそういえば・・・ エル じるじるって…どのくらいお酒強いんだにょ? ジルギス んー。 ジルギス 別に弱いとか無いんじゃないの? ジルギス 普段飲まないから覚えてないけどさ。 エル そうなんだにょ?なら安心だにょ!(素直に信じるちゃんえる ジルギス 別に明日も試合無いしさ。 エル じゃあ何選んだって大丈夫な気がするにょ! ジルギス せっかくなら美味しい奴ね。わかんないけど。 ジルギス (のんびりとエルちゃんのメニュー選びを見ている) エル そうだにょ~… ならなら…(じーっと エル 直感と定番! そるてぃーどっぐ! ジルギス ふーん。ソルティーだから? エル いえす! エル 対してエルちゃんはあま~いこの子(ココア系のまっしろカクテル)にするにょ! エル ヘイマスター!(謎に気合入れて呼び付けて注文 エル (寡黙なマスターはスピーディにカクテルを作り、2人の元に運んでくる ジルギス これ? エル にょへへ・・・(運ばれてきたカクテルを眺めて ジルギス (ソルティードッグ見て エル なんだか緊張してきちゃったにょ。。。 エル これ! だにょ。(グラスの淵に塩が付いてる不思議な?カクテル ジルギス ふーん。(不思議な?カクテルを奇妙そうに持って ジルギス 何に緊張してんの?酒? エル (同じくまっしろなカクテルグラスを持って エル それじゃぁ… ジルギス ………(グラス持つエルちゃん見て エル (ちなみにエルちゃんのはプリンセスメアリーっていうカワイイ名前の甘そうなカクテルだにょ! エル …… エル な、何に乾杯するにょ? 一日おつかれ~だにょ? ジルギス ん。………そうなるかな。 ジルギス 今日一日、 ジルギス ファンとして、付いてきて、………まぁ…んーー。 ジルギス ………おつかれ。 エル ……! …! エル おつかれさまだにょっっ!(カチンとグラスを鳴らして ジルギス (カチンとグラスを鳴らす エル ~~~!(勢いでカクテルをくいーっと飲んじゃう ジルギス そんな感じなんだ。…(真似してくいーーーっと エル んっっ(少量は少量だが一気飲みして ジルギス っっ、げ。すっぱ。 エル ぁ。にゃ。なんかその喜びを噛み締めて飲み干しちゃったんだにょ! ジルギス 柑橘。酒。塩。甘酸っぱ。 エル 本来はもうちょっとゆ~っくりおとな~・・・に…にょ!? エル おいちくなかったにょ…!?(小声で ジルギス ん? ジルギス びっくりしただけ。(グラスおいて ジルギス 同じの頂戴よ。 エル よかったにょ…! エル いけそうだにょ?チェイサーとか無くて大丈夫にょ…? ジルギス 何?チェイサーって?(酒知識に乏しい エル (意外とまっとうに様子を見ているエルちゃんだにょ エル お酒と一緒に飲んで悪酔いを避ける…よく言う水も飲みながら…ってやつだにょ ジルギス ふーん。よくわかんないけど要らないんじゃない? ジルギス 今日、飲むんでしょ? ジルギス (グラスの淵に残った塩を見せて ジルギス なんか上手く飲めなかったから再挑戦したいんだよね。 エル りょーかいだにょ!(わかんないけど自信ありげだにょ!なら大丈夫な気がするにょ! ジルギス 淵を舐め回すのは違うよね?チビチビ回しながら飲むのかな。 エル 淵のお塩と一緒にお酒を飲むらしいんだにょ。そうなると回すって事なんだにょ? エル ともあれ…ヘイマスター!おかわり!だにょ~! エル エルちゃんもなんだか別の甘いお酒をおかわりしたいんだにょ~! ジルギス ふーん。だから思ったより量あったのかな。 ジルギス 回しながら塩を飲む……… エル (雑な注文にも顔色一つ変えず、マスターは二杯目を作り始める… ジルギス ん。おまえもなんか飲みなよ。すぐ消えてたじゃん。 エル も、もちろんだにょ~。 エル 何だか身体が熱くって・・・喉が渇いてきた気がするにょ~~~ エル これがお酒の力なんだにょ…? ジルギス 喉乾くなら飲み物飲めば良いじゃん。酒とか。(危険な考え エル にょへへへへ… エル お酒のチェイサーにお酒って事だにょ?じるじるってば強者だにょ~ エル でも・・・なんだか今なら行けちゃう気がするのでしたっ エル (そして運ばれてくる 二杯目のソルティードッグとナンダカ・アマイ・カクテル ジルギス ん。 エル にょへへへ。二杯目だにょ~~~ エル 今度はじるじるのおつかれと頑張りに乾杯するにょ~~~(グラス持って エル じるじる。あーんな感じの悪い喧嘩に巻き込まれてほんとにお疲れ様なのに…… ジルギス ん。2回目でもするのね。(グラス持って エル 「ぷろ」と「ふぁんさ」を貫いてて、すっごくすごいにゃ~~~って思ったにょ ジルギス ふーん。そう。ふーん。 エル にょへへへ!これはエルちゃんがしたかったからなのでしたっ エル さっきはじるじるがえるちゃんをねぎらってくれたので~ エル えるえるがじるちゃん・・・あれ? エル じるじるをえるちゃんがえらいえらいしたかったのでした~! ジルギス へーーーーー。 ジルギス (えるえるじーーーっと見て エル じるじる~えらいえらい!すご~い!かっこいい~~~!(にょへにょへにこにこしてる 一杯目だが…? ジルギス ふーん。ふーーん。 ジルギス (2杯目を持ちながら何だか顔が赤くなってきている。お酒を飲んでいるからかな? エル えへへへへへ。 かんぱーい!(赤~いお顔でにこにこ笑顔でグラスをカチン! ジルギス ん。 乾杯。(グラスをカチンとして一気に ジルギス ぁ。(半分以上飲んだ所で ジルギス 淵の塩じゃん。(思い出す エル んえ~??(こっちもくいーっといっぺんにいっちゃって エル 淵?塩? じゃあまた淵で塩だにょ? ジルギス しょうがないな。もいっこ同じの頂戴よ。 エル にょへへへへ。 こっちはあま~いにょ…♪ エル は~いっ♪♪ エル えるちゃんももっともっとあま~くなりたいのでしたっ♪(アルコールに常識を溶かされ、ご機嫌で次を頼む者 エル (こうして……夕暮れ時のご飯タイムは危険なバータイムと化し、時間は刻々と過ぎて行った・・・ 夜の街 ーーーーー 夜の街 ーーー 夜の街 ー エル にゃははははははは♪ エル (お店に入ったのは……夕方だったかにょ? エル (あれからすっかりおひさまも隠れて・・・ エル (おほしさまとお店の看板がぴかぴかしてるんだにょ ジルギス すっかり夜じゃん。 エル (ふらふらぱたぱたお店を出て来たえるちゃんとじるじる ジルギス (第八席:暗影に潜む罠-ジルギス シャドウマスタージルギス エル 夜だにぇ~~~ ジルギス (語呂合わせで8杯飲むと言い ジルギス (最初にチョイスしてもらったソルティドッグを8連続で飲んだ エル (エルちゃんもじるじるのおかわりのタイミングに合わせて色んなあま~いお酒を頼んだので・・・ エル (合計八杯飲んだんだにょ エル わぁ~~じるじる~ おほしさまがぼやぼやしてるにょ~ ジルギス あー。夜空結構見えるじゃん。(星見上げて ジルギス って事は結構、夜じゃん。 エル 夜だにぇ~~ ジルギス おまえさ。 ジルギス 家どこ? エル あんまり歩いてる人もいないんだにょ エル えるえるのおうちは~・・・フォーデン! ジルギス ふーん。 ジルギス 家まで送るけど? ジルギス 案内してよ。 エル ふえっ ジルギス (顔まだ紅いジルギスが、なんて事を言いながらぱたぱたエルちゃんに近づいてくる エル にょ。。。じる。 にょ???(お酒を飲んだからかにょ?まっかっかのエルちゃんだにょ ジルギス 女の子が1人で帰る時間じゃないじゃん。 エル にょっっっ エル じ、じるじる~~~・・・!?(まっかっかなお顔に両手を当てて エル しゅ、しゅき……(なんかだだもれてる ジルギス うん?ああ。あぁ。ね。 ジルギス 家までぐらい行くけど? ジルギス (何の気無しに言ってるけど、なんか言いながら相当近づいてくるインファイター エル んにゃ。。お、おんにゃのこ扱い・・・へへ、しょんなの……(なんかうだもだ言って ジルギス おまえ隙だらけだし。1人の帰すの心配じゃん。 エル じゃ、じゃあっ。ご注文のおうちにご案内…… にょえ!?? エル (怒涛の追撃にハートが追い付かないにょ~~!! ジルギス だから送るよ。良いでしょ。家案内してよ。 エル ん。う。うんうん良いにょ歓迎だにょ嬉しいにょ送り狼~!(なんかのたまって エル こ、こっちこっちがエルちゃ(沸騰した頭で先導しようとぱたぱたして エル ん゛っ(飛んでるくせに前につんのめる ジルギス ん。(咄嗟に影踏みで空中に止めて ジルギス んっ。(静止したエルちゃんを真後ろから胸の前に両腕回して抱き止める エル んっっ!!!???? ジルギス 危なっかしいなあ。(耳元で囁きながら、優しくぎゅっと抱きしめて エル 。。。 にゃ、、、にょ。。。 エル ふ、ふにゃぁ。。。。(全てがキャパオーバーして腕の中でくたーっと脱力する ジルギス あれ?何?お酒で飛べないの?(くたーっとなったエルちゃん見て エル ん。。。う、、、(お酒でっていうかなんていうかなんていうかだが エル 飛べにゃい・・・(回された腕に手で触れて ジルギス ふーん。それならさ。(後ろからぎゅっと抱きしめながら脚に手を下ろして ジルギス (右腕に脚を乗せて、左手で肩下…背中からお胸あたりを触れて、 ジルギス (顔を上げさせて近い距離にお姫様抱っこして ジルギス 家まで運ぶけど? エル ~~~~~~~・・・・!!! エル (真っ赤な顔でじるじるの顔をじーーーっと見つめて ジルギス (真っ赤な顔でエルちゃんの顔をじーーーっと見つめ返して エル (もう頭も心もいっぱいいっぱいでな~~~んにも考えられない エル し、しあわしぇ・・・ ジルギス ん。 ジルギス 僕も…なんか今、悪い気はしないけど。 エル そ、そっか・・・ よかったぁ・・・ エル ・・・ エル (このままおうちに着かなかったらずっとこうしててくれるかも・・・なんて ジルギス ・・・ エル (ふわんふわんな考えが頭を過ぎるのだが エル (じるじるがそれじゃあよくないかもという意識は沸くものの エル (それ以上やその先はやっぱりふわんふわんしてしまい エル ・・・おうち・・・ エル ……行った方が良い・・・にょ・・・?(ふわんふわんな質問をする ジルギス …なんで?帰りたくないの? エル …にょへへ。 エル だってじるじるがこんな事してくれてるのに・・・ エル こんな時間、終わってほしくないにょ・・・? ジルギス ん。 ジルギス …じゃあ。 ジルギス ・・・。(じーっと見てたエルちゃんから目を逸らして前向いて、なんか歩き出して エル ・・・・? ジルギス …家着いたら、寝るまで一緒に居ても良いけど? ジルギス (そっぽ向きながら赤面しながら エル … ぇ。 エル …………(じるじるの腕の中で真っ赤になって エル きょ、今日は・・・ エル いーっぱい、、、わがまま聞いてくれるんだにぇ。。(じるじるの胸元の服をきゅっと掴んで エル (埋もれるように胸元に顔を寄せる ジルギス ん。(ぎゅっと抱き寄せて ジルギス 別にそっちだっていつも ジルギス 僕のわがまま聞いてくれるじゃん。 エル ん。。そう・・・かにゃ?(あんまり自覚無いようで ジルギス ん。そうだよ。 ジルギス 今日とかもさ。いっぱい。(赤面した顔でエルちゃんの顔の方を見なおして エル ……そっかにゃぁ……(てれてれ嬉しそうに綻んで エル (緩んだ顔で照れ隠しにじるじるの胸元をなでなでしてる ジルギス んっ。くすぐったいんだけど? エル にゃっ。 ぁ。ご、ごめんにょ。。 エル ぁ。でも今のちょっとかわいい・・・(よいどれだだもれ ジルギス …お前のが可愛いけど?(赤面してだだもれに返事 エル にょ。。。!? エル にょ。。。。 エル しゅ、しゅき~……(照れて胸元に顔埋めて ジルギス ん。 ジルギス ん、・・・。(顔埋めてるエルちゃん見ながら歩く エル えへへ・・・ しゅき。しゅき…(顔埋めてもぞもぞ呟いてる ジルギス ん。。。何それ。あんま可愛いの辞めてよね。 ジルギス 家まで…持たなく…なるじゃん。 エル ? えぇ~……? えへへ… エル だってもう止まんないんだにょ~……(にへにへ嬉しそうにして ジルギス しょうがないなぁ…(ぎゅっと抱きしめたまま ジルギス (体に重なった星々の光からの影。影踏み能力でまた止める ジルギス 家までもぞもぞ禁止。家案内してよ。 エル ん。。。 エル はぁい。 えへへ、いじわる~・・・(止まらないにやけ顔で呟いて エル あっち~・・・(おぼつかない調子で道案内を始める ジルギス (影ふみ解除して、エルちゃんの顔と案内を覗き込めるようにして、歩く ジルギス ん…。 ジルギス (歩いて。歩いて。道案内通りに進んで ジルギス この辺?(エルちゃんに聞いて エル あ~(ぽんやりおめめで周囲を見て エル あそこだにょ~(薄ピンクの壁の小さめのアパートを指差し ジルギス ん。(アパートにエルちゃん抱っこしたまま突入していくフォーデン有名人 エル あそこの…2階の…一番奥の部屋~~~(なんて雑な説明なんだにょ ジルギス (2Fぐらいエレベーター使わずに階段で登ってしまうファイター ジルギス (なんか気持ち早い歩幅であっという間に部屋の前へ エル ここだにょ~~~(だにょだにょ ジルギス 鍵。開けれる?(まだまだ降ろさず エル あ。鍵…鍵は・・・ポシェット?(下げてる鞄を開けようとごそごそするが エル (なんだか動きがおぼつかない ジルギス …降りる?(その様子を見て エル ・・・むー・・・ エル あける~・・・!(気合でごそごそして エル 降りたくにゃいにょ~・・・! エル もう一生降ろさないで欲しいくらいだにょ・・・!(なんとかかんとか鍵を取り出し、ドアノブに挿して ジルギス ふーん。これが良いんだ。ふーん。(呑気に。鍵開け頑張るエルちゃん見て エル 女の子の夢・・・なんだにょ~・・・!(がちゃがちゃ エル (カチャッ エル (そして鍵が開く ジルギス (鍵が開いたら家に入って、 ジルギス (家に入ったら、 ジルギス (お姫様抱っこから、、正面抱っこに姿勢変えさせて、 ジルギス (正面から ジルギス ん。 ジルギス (ぎゅーっと抱きしめる エル ん。 んっっ(ぎゅーっ ジルギス んっ… エル んっっっ。。。(埋もれて、ぎゅーーーってし返して ジルギス ん…(ぎゅーってして、耳元に口寄せて ジルギス ん。 ジルギス んっ。 ジルギス ・・・今日さ。 ジルギス 僕、帰んないから。 エル 、。 ぁ。 エル (「…家着いたら、寝るまで一緒に居ても良いけど? 」 エル ・・・、 エル 寝かさないで・・・ エル くれる……ってこと? ジルギス ………ん。 ジルギス そっちが……… ジルギス 良いなら…だけど… エル 、、、そ、そんなにょ…… エル 良いに、決まって、……(て、ていうか。急にそんな聞いてくるなんて。。。 エル (かわいすぎてずるいにょ・・・・・・!? エル 、、、s、 エル 好き。(ぎゅーってして エル すき。すきすきすき! だいすきじるじるっ エル すきすきだぁいすきっっっ ジルギス んっ、ぅ、ぁぅ…ん……(赤面して…たじたじにエルちゃん見て ジルギス ん……… ジルギス ぅ。 ジルギス 動かないでよ?(と言って、重ねた影がエルちゃんの体を止めて ジルギス (額と額をくっつけて ジルギス …ん。 エル ん。。。(幸せいっぱいの赤面顔で、されるがままに止められて ジルギス ……… ジルギス ぁ。 ジルギス ありがと………(動けない体に ジルギス ………。(ゆっくりと唇を重ねる エル ―――
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C.E78/5/29、統一地球圏連合政府の90日戦争終結宣言からはや1ヶ月が経過した。 しかし戦場の舞台となった西ユーラシアでは今なお紛争の火種はくすぶり続けており、テロリストによるテロ活動、そして統一連合による掃討作戦が繰り返されている。 90日革命戦争後、西ユーラシア自治区の治安維持は統一連合軍が受け持っているがその大半はオーブ軍か徴兵した地元の軍人で構成されている。それでもオーブが譲歩した形であり、当初の派遣案ではオーブ軍と地元の軍人のみで構成するというものであった。 未だに主権を放棄していない国々にとっては、ここで治安維持をオーブのみ一任されると統一連合の軍事介入後はオーブ軍が受け持つという前例を作り上げられる危険性があった。 それを特に避けなければならないと考えていたのが大西洋連邦で、エターナリストであるカール=レノン大統領の反対を圧倒的多数で押し切り、戦争終結後も派遣することを決定した。 カール=レノンはエターナリストであるが政治的手段として使っているだけで信奉者ではない。 カール=レノンには議会の決定を覆す拒否権があったが世論の70~80%が派遣続行を賛成しており、しかもそれは戦争時に派遣を容易にするために自ら扇動した結果であったこの状況で派遣決定に対して拒否権を行使すれば次の選挙で確実に負ける。そういった心理が働いて拒否権を行使することができなかった。 「なんでこうなっちゃのかな~。戦争が終わった後のごたごたはオーブに任せて、本国に帰れると思ってたのに……。」 「不謹慎だよ、フォスタード。もう1ヶ月たったんだから気を取り直そうよ。」 フォスタードのぼやきにカーディオンは服を着替えながら注意する。 「だってさ~。ここの待遇僕らだけ明らかに悪いじゃん。大西洋連邦から派遣された人だけプレハブ住まいっておかしくない?ルシオルは水に当たって身体壊すし。」 「ここら辺は第二次汎地球圏戦争のときに大西洋連邦の実質的な支配を受けてたから評判が悪いんだよ。かといって表立っては仕返しするわけに行かないから……。それにしても、ルシオル大丈夫かなー。」 「どうだろうね。ところでカーディオン、なんで着替えてるの?」 「ん?ああ、テロを抑えるには事前の情報が必要だからね、現地で情報を集めようと思って。」 「そんなの諜報部に任せればいいのに。」 「そういう訳には行かないよ。伝達系統の都合で僕らのところに情報が届くのは他よりだいぶ遅いし。」 「それって明らかに……」 「おねがい、それ以上は言わないで。わかってるから。それじゃ、行ってくる。」 カーディオンはそういって部屋を出た。 西ユーラシア自治区の酒場で異国の人間であることは確かな3人の男がいた。この光景自体はこの地ではありふれた、普通なことだった。 問題なのは、彼らがC.E77/10/11に大西洋連邦で催された感謝祭を襲撃した首謀者達であることだ。 彼らはあの後、レイヴェンラプター師団と合流しており、C.E78/1/1のホワイトアラクライシスの折にイザークたちによってレイヴェンラプター師団が壊滅した後はその行方が分からなくなっていた。 マーレが酒の入ったグラスをカウンターに叩きつける。酒に酔って荒れているのは明らかだった。 「イザークの野郎、次は絶対につぶす。」 苛立っているマーレとは対照的に「バイオレーター」のコードネームで呼ばれていた男、ヴィオ=エルファンテスは上機嫌であった。すでにかなり出来上がっている。 「まっ、こっちで反乱がおきたおかげで奴らの追撃は緩んだ上にこんな隠れ場所もできたんだ。今のところはロゼクロ様々って事でいいんじゃねえか?もっとも、ロゼクロはとっくにつぶれてるけどな。」 「それより……、これから…どうするんだ……?」 「サイレント」のコードネームで呼ばれていた男、ヴァレリア=Y=ノートンがマーレに問いかける。 実際問題、彼らには後ろ盾となる組織とガルムを含めた部下を失っていた。他の組織に鞍替えしようにもレイヴェンラプター師団のメンバーは周辺の武装組織からも警戒されており、実行部隊であったマーレたちを迎え入れてくれる組織はどこにも無かった。 そのため、政府軍の目から逃れるために無政府状態に近い西ユーラシア自治区まで逃げ込むしかなかったのである。 「とりあえずは再起を図るためにまとまった金が必要だ。前みたいに貨物船でも襲って……」 マーレがイスに寄りかかりながら金策を話そうとしたとき、カウンターに頼んだ覚えの無いつまみが置かれる。 「おい、俺らはこんなの頼んでねえぞ。」 「あちらのお客様からです。」 バーテンダーの示した方を見ると、フードすっぽりと被った男が静かに酒を飲んでいた。 マーレはいぶかしりながらその男に歩み寄る。 「何のつもりだ?顔見せろよ。」 マーレの尊大な態度に男は答える。 「久しぶりだな、マーレ。7年ぶりだったか?」 男はそう言いながらフードを外し、顔をさらす。マーレはその顔を見て息をのんだ。 「てめえは、「怒れる双剣」のトラオム=ウィルケン!!!ヤキンドゥーエ戦の後脱走したとは聞いてたが、生きてたのか!!!」 「おいおい、勝手に殺すな。ちゃんと足だってあるし、心臓も動いてる。」 「なんでテメエがこんなところにいる!?」 「こんなところで話すことじゃないな。場所を変えようか。マスター、彼らの代金も俺が立て替える。」 そう言って金を払うと、トラオムはおもむろに立ち上がって外へと向かう。 「おい!ちょっと待て!勝手に話を進めんな!」 自分を無視して勝手に話を進められているように感じたマーレがトラオムに突っかかる。トラオムは扉の前で一度止まり、マーレたちに告げた。 「話が聞きたかったらついて来い。強制はしない。」 そう言って外へ出て行ったトラオムに、マーレたちもついていく。ただでさえ苛立っているこの状態で自分を無視されたまま勝手にどこかへいかれるのが我慢できなかったからだ。 裏路地に入ってしばらく進んでからトラオムは止まってマーレたちの方へ振り返り、その口を開いた。 「俺がこの地にいる理由だったな。俺はある御方の下で仲間になってくれる者たちを探している。」 「仲間だぁ?」 「そうだ。そして、この地でお前達と出会ったという訳だ。」 「偶々かよ。先に言っとくが、ナチュラルの下に付くのはごめんだぜ。」 マーレにとっては正直なところ相手がどんな組織なのかはどうでもよかった。ただ、ナチュラルがトップに立っている組織だとしたらそんなところに所属することはマーレにとって屈辱であり、耐えられないことだからだ。 そして、もしもトラオムが所属する組織がそうだった場合、トラオムを裏切り者として殺す気でいた。そのために腰の銃をいつでも撃てる体勢を、マーレはとっていた。 「安心しろ。あのお方は純粋なコーディネーターだ。それも、俺達コーディネーターの光となる……な。」 「光?」 「そう。光だ。仲間になるかどうかは一度会ってみてから判断してくれてかまわん。」 やつの言う光が何を意味しているかは深く理解していなかったが、その組織のトップがコーディネーターであるということ。入るかどうかの決定権がこちらに与えられているという優越感。そして、酒による判断能力の低下がマーレの心を固めた。 「まあ、とりあえずは会ってやるか。ヴィオ、ヴァレリア。お前らはどうする。」 「他に…いくところは……無いしな…。」 「O.Kオーケー。」 「だとよ、トラオム。とっとと案内しろ。」 「ああ、分かった。付いてきてくれ。」 トラオムはそう言うと、再び歩き始めた。 「っふー。結局何も収穫は無しか……。」 カーディオンは広場でイスに座り、溜息をついた。そこは所々で未だに戦いの傷跡が残っていたが人々でにぎわっており、復興の兆しを見せている。 だが、カーディオンの心は晴れない。 この広場はかなり復興が進んでいる場所であり、カーディオンが先ほど見てきた場所の中には未だに瓦礫が撤去されず、異臭が発生している場所もちらほらあった。だがそれ以上にカーディオンの心を曇らせているのは、瓦礫に息子の名前を叫び続け、助けを求めている老婆に自分が何もしてやれなかったことだ。 (僕はあの時助けられた。それなのに僕は……) カーディオンがそのときを思い出す。 7年前、ブレイク=ザ=ワールドで崩落した瓦礫に埋まり、死に瀕していた自分を助けてくれたあの人。 名前も、所属も分からなかったけれど服装から大西洋連邦の軍人だということは分かった。 大西洋の人間としては珍しい黒髪黒目ということもカーディオンの脳裏に焼きついている。 あの人に助けられたから今の自分がいる。 あの人にもう1度会いたくて。あの時言えなかったお礼が言いたくて。そして、あの人みたいに何かを守りたくて僕は軍人になった。 それなのに、現実はどうか。 自分はどうすることもできないからと老婆の助けに答えず、あろう事か老婆に気づかれる前にその場を逃げてしまった。 これが自分の本質なのだろうか。命に執着し、他の命を顧みないこの姿が。 自責の念に沈み込んでいくカーディオンの思考は銃声によって打ち破られた。 平穏だった広場に銃声と怒号が響く。 「青き清浄なる世界のために!!!」 「宇宙の化け物どもの媚びる者達に神の裁きを!!!」 10人ほどの男が逃げ惑う人々に向けて無慈悲に銃撃する。 「ブルーコスモス……!」 誰かがそう叫んだのを聞いてカーディオンは目を見開いた。 その言葉は、かつて世界を席捲していたコーディネーター排斥組織「ブルーコスモス」がよく使う言葉であった。最盛期と比べるとその勢力は大幅に衰えているが今なお大規模である。 カーディオンは咄嗟にテーブルを跳ね上げてその銃撃を防いでいた。 (ブルーコスモスが……また!?みんなを…殺すために……!?) テーブルの裏でカーディオンの呼吸は荒くなり、瞳孔が開く。頭に血が上る。その一方でどこに敵がいるのか、どのように倒せばいいか、どうすれば敵を殲滅できるか……。カーディオンの思考にはその方法が鮮明に浮かび上がっていた。 周囲にはブルーコスモスに対して応戦している者もおり、こちらに何かを言っている者がいたが、銃声で聞き取れない。だが、カーディオンにとってそんなことはどうでもよく感じた。 そして、カーディオンは携帯していた拳銃を手に取る。その目から光はなくなっていた。 カーディオンはテーブルから躍り出ると目に映ったブルーコスモスに対して即座に2発撃つ。その弾は正確に相手の胸と頭部を打ち抜き、絶命させる。一人目。 そのまま走り出して近場にいたブルーコスモスを撃って頭を吹き飛ばす。二人目。 さらに先ほど屠った死体を引っ張って盾とし、別のブルーコスモスの銃弾を防ぐ。力の入っていない死体は重かったが今のカーディオンはその程度のことは大したことではないと感じていた。 肉の盾で銃弾を防ぎながら拳銃でまた一人屠り、もう一人に掴んでいる死体をぶつける。 死体が邪魔でなかなか起き上がれないブルーコスモスを死体越しに踏みつけ、拳銃を眉間に当てて引き金を引く。四人目。 ブルーコスモスの一人が物陰から射殺しようと構えたがカーディオンはそちらを見ずに拳銃を数発撃ち、絶命させる。五人目。 ブルーコスモスが他にいないか辺りを見回すが他に立っているものはいない。 (そういえば他にブルーコスモスと応戦してた人がいたっけ。) カーディオンはそのことを失念していた。 殺し合いが終わったことに気が付くと、カーディオンは先ほどまでの自分の行動を思い出し、愕然とする。 (僕は……何を…………!?) やっぱり、これが僕の本質なのか。他人の命を奪うことに何の躊躇も覚えなかった、残虐なあの姿が。 そうしている間にもまだ息の合った2人のブルーコスモスが動かないカーディオンに向けて銃を向けるが、引き金を引く前にそれぞれ頭を撃たれて脳漿をぶちまけた。 カーディオンがその銃声に気が付くと、黒髪に燃える様な赤い目の青年がこちらに近づいて怒鳴った。 「あんた!人の話聞かないで勝手に出たと思ったらぼけっと突っ立って、そんなに死にたいのかよ!!!」 「え…あ…その、……すみません……。」 カーディオンが平謝りしていると、茶髪の女性が後ろからその青年の頭を思いっきり引っ叩いた。 「痛っ!コニール、いったい何すんだよ!」 「シン。あんただってあたしが止めなきゃ真っ先に突っ込んで行ったでしょ。」 「うっ、それは言うなよ……。」 コニールと呼ばれた女性はこっちを見て話しかけてきた。 「それにしても、さっきの動き、凄かったわね。どこで覚えたの?」 「いえ、身体が勝手に……。それに、凄くなんかありませんよ。こんな殺すための力なんて……。」 「そんなこと無いわ。あたし達だけだったら他の人たちがもっと死んでたかもしれなかったし。あんたのおかげで助かった人だっているのよ。もっと自分に自信を持って。」 「えっ!?」 先ほどまで考えていた、どす黒い自分の本質とは全く違う感想を言われてカーディオンは戸惑った。 広場に向かうサイレンが聞こえてくる。 「げっ!今の騒ぎを聞きつけてあいつら来るわ。あんたも早く逃げた方がいいわ。」 コニールはそのまま走り去ろうとしたが思いとどまってカーディオンに再び話しかける。 「そういえば、あんたの名前を聞いてなかったわね。なんて名前なの?」 「え…えっと、カーディオン。カーディオン=ヴォルナットです。」 「そう。良い名前ね。」 「おい、コニール!早くしないと置いてくぞ。」 「ちょっとあんたねえ、一人で勝手に行くんじゃないわよ!それじゃ、カーディオン。また縁があったら会いましょ。」 コニールはそういってシンと一緒にその場を走り去って行った。 本来なら呼び止めるべきなのだろうが、カーディオンはそうしなかった。 「それで、ブルーコスモスのテロはどうなった?」 西ユーラシア自治区の司令室で司令官レーデ准将が蓄えた顎鬚を整えながら部下に聞いた。 「全滅しました。」 「そうか、広場の市民は全滅か。ブルーコスモスが相手ではな。」 部下の報告を受けて笑うのをこらえながら頷く。 「いえ、全滅したのはテロを起こしたブルーコスモスの方で、広場の市民の被害は死者6名、重傷者18名、軽傷者29名となっております。」 部下の返答に顎鬚を整える作業を止める。 「何?どういうことだ。」 「テロの起きた広場に武装していたものが応戦したようです。」 「ほう。」 「また、その場にいあわせた正規の治安維持兵が半数を撃退したようです。」 「治安維持兵?広場周辺に配備した覚えはないんだが。」 「そうやら非番だったようです。外出許可申請も受理されております。」 「そうか、彼らには悪いことをしたかな。まあ良い。当然、他にも応戦したものはいるのだろう?」 「はい。現場から2名ほど離れたものがいたようです。先ほどの治安維持兵は見失ったと証言しております。」 「なら良い。大義名分は立った。もしそのような輩を放置していては、治安を大きく損なってしまうかもしれんからな……。すぐに作戦を立てるぞ。今回はそいつらが逃げた方向にある地域だ。」 大義名分は十分立ったことが分かったレーデ准将の顔はすでに笑っていた。 「准将。治安維持兵の一件はいかがなさいますか。」 「適当に始末書あたり書かせて終わらせろ。」 「了解しました。」 「……………。やっと終わった。」 ブルーコスモスのテロから1日経過した30日に、カーディオンは提出を求められていた始末書をようやく書き終えた。 「カーディオン。そんなに真剣に書かなくても、中身があるように見せるだけで簡単に済むのに。」 「そういうわけにも行かないよ。あの一件で見失った僕に責任があるわけだし。それに、もっと重い罰が下ると思ったらなんでか始末書だけですましてくれたのにそれでまで手を抜くのはよくないよ。」 「はぁ、真面目だねぇ。」 カーディオンの優等生な発言にフォスタードは寝転がりながら答える。 同じように寝転がっていたルシオルを見てカーディオンが聞く。 「ルシオル。調子はもういいの?」 「ああ、大事だ。それより聞いたぜ、カーディオン。なんでもブルコスの連中とやりあったんだってな。なんかMSを殴り壊したとかって聞いたけど本当か?」 明らかに冗談としかいえない噂を聞いてカーディオンは呆れる。 「ルシオル……、どうやったら噂にそんな尾ひれがくっつくの……。」 「ん?やっぱ違うのか。」 「当たり前だ。そのテロではMSの使用は確認されていない。」 ニールが扉を開けながら説明する。どうやら自分達の話を聞いていたようだ。 「でも生身で5人倒したのは本当なんだろ。すげえじぇねえか。」 「凄くなんか無いよ。僕以外にも応戦していた人はいたし、その人たちは見失っちゃうし。それに、あんな殺すための力なんて……」 「それは違うぞ、カーディオン。確かに実行犯は全員死亡したが、結果的には市民への被害を大幅に減らせている。その市民を助けたのもお前の力だ。重要なのはその力をどう使うかだ。」 「それそれ。俺もそれ言いたかったんですよ。よくあるでしょ。力は悪くなくて、使う奴がどう使うかで良いか悪いかが決まるっていう感じの話。」 からそういわれたときにカーディオンは広場でも茶髪の女性が同じようなことを行っていたことを思い出した。 この力は紛れも無く相手を殺す力だ。でも、その力で助けられる力がある。 この力から逃げてちゃ駄目なんだ。ちゃんと向かい合って、コントロールできればそれは助けるための力にもなる。 ただの自己欺瞞なんじゃないのかと思いもしたが、そう考えると心が幾分かは軽くなった。 「隊長、ルシオル。ありがとうございます」 「いや、良いんだ。カーディオン。…フォスタード、お前に話がある。」 カーディオンのお礼の言葉を受け取ると、ニールはフォスタードの方を振り返る。 「えっ、ぼ、僕ですか!?」 「先ほどの会話は始めから聞こえていたぞ。勿論、始末書の件からだ。」 「あ゛……………!!!」 「……減俸辺りは覚悟しておいたほうが良いな。」 「そんな~。勘弁してくださいよ~。」 「口は災いの門ってか。良かったじぇねえか、カーディオン。フォスタードの忠告を聞いてたらお前も一緒に減俸だったぞ。」 フォスタードのヘナヘナとした懇願を聞いてルシオルが笑い飛ばす。 自然とカーディオンの口から笑みがこぼれる。 部屋の空気が和やかになったところでニールに通信が入る。 「……はい。了解しました。今そちらへ向かいます。」 「隊長、何かありましたか?」 「いや、ただ呼ばれただけだ。処分の類ではないだろう。気にするな。」 カーディオンの疑問に軽く答えた後、ニールは部屋を出て行った。 さかのぼること前日のC.E78/5/29 「おい、こんなところにお前のトップはいんのかよ。」 トラオムがつれてきた場所は時代を感じさせる古びた貨物列車の中であった。中にはだいぶ年代を感じさせる骨董品が並べられていたが、マーレは自分が思い描いていたのとだいぶ違い落胆する。 「まあ待て。これはあくまで脱出のためのものだ。本拠地は別の場所にある。あの御方もそこだ。」 「ったく、面倒くせえことすんなー。直接行くって訳にいかねえのか?」 ヴィオが無造作に頭を掻きながらトラオムに聞く。それに答えたのはヴァレリアだった。 「ゲリラにとって…本拠地を悟られるのは…死と…直結する。中継地点を何箇所も…何箇所も…経由して…本拠地を隠すのは…当然のことだ。」 「ふーん。ただの補給地点じゃねえってことか。」 「……そうだ。」 「……話を戻すぞ。ここからの脱出方法についてだが……」 トラオムがマーレ達に説明しようとしたときにトラオムの通信機が通信を受け取る。 「すまないな、ちょっと待ってくれ。……私だ、どうした。……。そうか、…分かった。」 トラオムは眉間に皺を寄せる。その様子を見たヴィオが聞く。 「おい、どうした。トラブルでもあったのか。」 トラオムは通信を終えると返答した。 「ああ。統一連合に忍び込ませている仲間からの報告でな。つい先ほど、ブルーコスモスのテロが広場で起きたそうだ。」 「それがどうしたって言うんだよ。」 「テロを起こしたブルーコスモスは全滅したが、事件を受けて司令官はこの地域への掃討作戦を実施するつもりだそうだ。もっとも、その情報はまだ内部にも伝わっていないが。」 「そうか…。それにしても…何故…この地域に?」 「その話には続きがあってな。ブルーコスモスと応戦していた者がいて、その内2人組がこの地域周辺に逃走したようだ。もっとも、あの虐殺好きの司令官なら場所を適当に決めててもおかしくないがな。」 「頭イカレテルんじゃ無いのか。」 「全くだ。本来なら4日後に出発するこの貨物列車の荷物に紛れ込んで脱出する手はずだったんだが、インフラの類は止められるだろうな。おかげで強行突破せざるを得なくなった。もし自前の機体があったらここまで運んでくれ。運搬用のトレーラはこちらで回す。掃討作戦は3日後の6月1日に開始されるからリミットは明後日の5月31日までだ。」 「ったく、ブルーコスモスの連中。面倒なことしてくれるぜ。」 マーレは毒づいて自らの機体を取りに戻った。 人の口に戸は立てられないもので、近々掃討作戦が行われるという噂は徐々に広まりつつあった。 そして、その話は新しいシグナスの装備を受け取るためにこの地に来ていたシンたちにも届いていた。 「何だって!?統一連合が掃討作戦を行うって、それは本当なのかよ!」 シグナスのメンテナンスの手を止めて、シンはコニールの肩を掴んで揺さぶる。 「落ち着きなさいよ、シン!確かな情報よ。情報屋から裏は取ったわ。」 「なんでこんなこと……。」 「表向きにはあの場を逃走した2人組、つまりはあたし達を燻り出す為に行うそうよ。」 「表向きって……」 「掃討作戦を決定した司令官には、この間の90日革命のときに敵基地の降伏信号を無視して虐殺と破壊の限りを尽くしたっていう黒い噂もあるわ。その様子から潜伏してるローゼンクロイツからは「虐殺指令」って呼ばれてるそうよ。」 「そんな……!」 コニールの話を聞いたシンにとって、その相手を許すことができなかった。 今まで戦ってきた相手の多くは、シンにとって納得できなくても各々に強い信念のようなものがあった。オーブ軍や地球連合軍。あのブルーコスモスにさえである。 だが、己が欲求として殺戮を行うだけのその司令官からはそのようなものを全く感じない。その人物はむしろ己が利益のために戦争を作り上げていたロゴスに近いものを感じた。 「それで、どうするの?」 「え…!?」 頭に血が上っていたシンはコニールの問いかけに答えるのが遅れる。 「まさかあんた、何も考えてないわけ?ここは補給地点や他の組織とコンタクトするときに必要な大事な場所の一つだからただ逃げるって訳にも行かないわよ。それに、大尉達は別件でこっちにこれないから支援も当てにできない。分かった。」 「誰が逃げるもんか!俺がぶっ倒してやる!!!」 「言っとくけど、逃げるわけにいかないからって目立ちすぎないでよ。9月には例の作戦があるんだから。」 「分かってるよ!」 (こりゃ聞いてないわ。) コニールは今までの経験からシンは今、頭に血が上ってろくに人の話を聞いていないことがあっさり分かる。 「……本当に大事かしら。」 ついついコニールの口から不安の言葉がこぼれた。 一人の男のエゴという名の刃が振り下ろされる。そのときが刻一刻と近づきつつあった。
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正直な話、向こうがちょっかいを出さなければ、私は共存するのは全然構わない。 現状公表していないがレベル6になり、アレイスターとの直接交渉権を確保して いる私。別に焦る必要もない。それに私は無駄な争いはしたくない。 だが、人間正気を失うと、枯れ尾花が幽霊に見えるのだろうか? 彼女は勝手に自滅の道を選んでいる。 (同情なんかするのは失礼よね。研究者としては大先輩にあたる彼女へ) だから私は彼女を全力で叩き潰す。 ・・・・・・・・・・・ 19時 自宅 天気予報で19時ちょうどから雷雨の予定だったので、急いで自宅へもどる。 エントランスで指紋認証と暗証番号を押し終えたころ、滝のような豪雨が降り始め 危うく難を逃れる。日中36度まで上がっていた気温も急降下し、涼気が辺りをつつ む。窓を雨が打ち付ける音が結構激しい。 「美琴 おかえり 濡れなかったか?」 「ふふ・・危なかったわ。なんとかね無事よ」 「それはよかった」 「今日風紀委員は非番だったのよね。小テストどうだった?」 当麻が誇らしげに、英語と数学の小テストを見せびらかす。 「へへ。聞いて驚くな、満点だよ・・」 私は、不幸がさく裂しなかったことに胸をなでおろす。あのソフトのガイダンスどおり 問題をこなせば確実に満点がとれるはずなのだから。 「すごいじゃない。おめでとう」 「まあ・・とはいえ、たかだか小テストだけど、先生にびっくりされた それと、課題を提出したことも驚かれた。」 「ふふ・・小さな成功を積み重ねるには良いことだわ。だけど慢心はしないでね」 「ああ・・まだ離陸したばかりなのは良くわかっている 」 食卓から漂ってくる匂いが食欲を誘う。 「あらニンニクのいい匂いね。へえ・・生姜焼きね・・」 「今日も暑かったからな。まあ古典的なスタミナ料理ですよ」 食卓の上に、ご飯とネギと豆腐の入った味噌汁、生姜焼きと付け合わせのキャベツと 人参、キムチと、オニオンスープ (美味しそう・・) 「悪いわね、こんなに手間かけさせちゃって」 「満点なんて久しぶりなんで、感謝してますよ」 「ありがとう。じゃ・・早速」 「いただきます」 私は着席して、食べ始める。生姜焼きね・・何年振りだろう。 (B級グルメの定番みたいなものね。) ・・だけど、食べ始めるとやみつきになるのよね・・ 私はいつの間にかバクついて、10分少々で食べ終えた。 「お肉が美味しかったわ?ブランド豚?」 「お粗末様、普通のイベリコ豚だけどな、近くのスーパで特売だった」 「へえ・・ブランド豚と区別がつかなかったわ」 私は、手早く食器を洗浄機に入れ、マイセンを食器棚から出し、紅茶を入れる。 「じゃ・・飲んで」 「ああ」 私は、一仕事を成し遂げ誇らしげな当麻を、見つめる。 「AIはすごいわね。私が教えるより全然いいじゃない」 「ああ、でも開発者の美琴はすごいと思うよ。本当、勉強しないダメな奴の 心理をよく読んで作っている」 「まあ・・当麻を見ていれば、ね・・」 「はあ?まあそれもそうだな」 美琴は、いつものように手を握り、体を寄せて甘えてくる。外では頼れるお姉さまを 意識的に演じているせいもあるのだろうか、素顔の美琴はその反動もあり、甘えん坊 ぶりを隠さない。 「ねえ、今日は久々に早く帰ったしいろいろしたいなあ」 「いろいろ?」 今日は何か嫌な事で会ったのだろう。いつにもなく甘えてくる。スカートをまくり 太ももを見せつけ触るように、妙なテンションで燥ぎまくる。付き合いは短いが 素顔の美琴は、自省的で、人の痛みを自分の事として感じる感性の持ち主でもある。 その一方で、職場ではリストラ役を顔色一つ変えず、完璧に演じ切るんだから。 そのプレッシャーは小さくはないだろう。 (そうか・・慰めてもらいたいんだな) (美琴の悩みは・・木原唯一か・・だったら) 「なあ・・木原唯一と仲良くなる方法はねえのか?」 私は、苦笑いを浮かべ当麻の顔をまじまじと見る 「美琴と利害が衝突しているのは確かにわかるし」 「それに、先方が美琴を敵視とか嫉妬しているのも分かる」 「だけど・・それをなんとかできるのが美琴のよさじゃないか?」 美琴は急に表情が引き締まり、外向きの顔に代わる。器用にも微笑みまで 浮かべて。 「そうしたいけど、先方が私を抹殺したいと思っている以上なかなか難しいわ」 「現実的に可能性はないだろう?」 「いや・・アイツは私の弱みを知っているから侮れないわ」 「弱み?」 「アイツはね、私と違って、任務の遂行にためらいがない、ねじが吹っ飛んだ 人間よ。手段を択ばない。それに周りの人間に手を出すのよ。しかもアイツは 光学迷彩や心理を操るすべを持っている。ある意味最強の敵よ。私が人を殺せない 性格であることを明確についてくる。」 美琴は、右手を突き出し、能力を使いたい雰囲気を醸し出し始める。 「まあ・・正直な話・・アイツを今この瞬間に殺すことはできるけどね」 「居場所はわかっているし、テレポートはミリ単位でできる。マイクロ波を ミリ単位で飛ばす事もできる。携帯電話を使用中に爆発させることもできる。」 「でもそれを私がやっちゃおしまいじゃない」 美琴は、一瞬苦々しい表情を浮かべるが、すぐに表情を隠し笑顔に変える。 「まあ、正攻法で行きましょう。暗部も潰したことだし」 「ああそうだな」 「アイツが、私の大事な人に手を出そうとするならその時には叩きつぶすだけよ」 「ごめん、じゃお風呂入ろう」 「ああ」 俺は美琴と手をつなぎ浴室へ向かう。この年で誰もが羨む婚約者を持ち、高級 マンションでのカップル生活。低空飛行だった、学力は離陸に成功し、風紀委員活動の おかげで無意味な能力開発から解放された。間違いなく俺の人生は、転機を迎えた。 俺は今の状況を幸福だと捉えている。 (先の事は考えても仕方ないか) 浴室で、お互いの体の隅々まで洗う。浴室でお互いの温もりを感じ、お互いの 呼吸を感じる。美琴の華奢な体に負わされた重すぎるほど重い荷物。 そのギャップの大きさに、俺は切なさと愛しさを感じる。 日常的に荒事をこなしているとは思えない、シミ一つない、無垢な体。 唯一少し割れた腹筋と、弾力のある太ももに荒事の片鱗を見せるだけだ。 その弾力がある太ももを触るのが心地よく、美琴もなすがままにされている。 30分ほどの濃密な肉体接触で、身も心も十分にスタンバイが完了し、ベッドへ 向かう。その前に、スポーツドリンク500cc缶を2つ冷蔵庫から取り出し、2人で 飲み干す。美琴がLEDライトを消し、暖色系の淡い間接照明に切り替える。 柔らかな照明が、多少幼さは残すものの、端正で整った水準を遥かに上回る美琴の 容姿を照らす。 「じゃ・・そろそろいい?」 「ああ」 「今日は、ゆっくりしようね。」 「え。。。」 「こうゆうことは、自分だけ楽しんだじゃダメ。そのたどり着く過程と、終わった後が 大事よ。」 「ええ善処いたしますが、もう・・パンパンです」 「2分じゃだめよ。ちゃんともたせてね」 ・・・・・・・・・・・・ 9月8日(火) 午前5時 昨晩の寒冷前線による雷雨が嘘のように、晴れ上がり、初秋の冷気が辺りをつつ む。昨日は忙しくてサボった登下校デートの代償のように、私は当麻と手を繋ぎ 肩を寄せ合い歩く。 (今度こそ3日坊主にはさせないわ) 私は、微笑みながら当麻へ謝意を伝える。 「約束を守ってくれてありがとう」 当麻は私の表情から私が何を伝えたいのか理解したのか、私の聴きたい言葉を発する。 「ああ。今度は3日坊主にしない」 「嬉しいわね。だけど5時が明るいのもせいぜい今月いっぱいね」 「そうだな。そしてすぐに冬が来るか」 「私がオバサンになっても愛してくれる?」 「森高千里か・・まだ早いよ。それに美鈴さんを見る限り、美琴がオバさんになって も全然問題ないぞ」 私は、婚約式の4次会で歌った歌の歌詞を思い出し、あるいやな想像をする。今後 結婚してもこの旗男に振り回される危惧を。 「ありがとう。でも何かそれ胸小さいて暗に言われているみたいね」 「なわけねえだろう。美琴。美琴はすべてが特別だよ。だけどデリカシーなくて御免 な。でも・・まだ胸の事を気にしていたのか?」 「気にしていないといえば嘘になる。」 「だけど、それで私の価値が損なわれると思うほど愚かではないわよ」 「そうか・・美琴らしいな」 「まあ少しやせ我慢もあるけど、矜持て大事でしょ。私のイメージも大事にしたいの よ。外ではね」 約20分ほどの散策を終え、自宅マンション前に到着する。 私はエプロンを装備し、朝食の支度を始め、当麻は教材を薄いカバンへ詰める。 2人で手際よく一連の作業を終え、私はフランス・パンにローストビーフと程よい サイズに切り分けられたトマトをスライスチーズとレタスで巻いたサンドを食卓へ 飾る。そしてコーンスープの甘い香りと、サイフォンから漂うコーヒーの香りが 食欲をそそる。 (やっぱり朝はしっかり食べないとね) 当麻が目を輝かせて着席、私にねぎらいの言葉をかけてくる 「悪いね。美琴手間かけちゃって」 「ありがとう。」 「美琴は、手際いいな。短時間にこんな美味しそうなものを作ってくれて」 「ある程度前の晩に軽く準備するからね。でもちゃんと手間をかけないでいるわよ」 「いやいや立派なものです。」 「ありがとう。でも・冷めるから早く食べて」 当麻は5分ほどで食べ終え、食器を洗浄機へ運ぶ。 朝の支度を終え、今日の日程を確認する。私は、寝る前に当麻に話した今日の メインイベントを説明する。正直自分が何とかしたいが、その同時刻に風紀委員会の 幹部会ではどうもならない。 (まあ・・しょうがないわ。でも・・やきもきしそうだわ) 正直、会議なんて形式だが、自分が副委員長では抜けようもない。 「昨日話した件、よろしくお願いね」 「ああ・・」 「正直もどかしいのよね。AI捜査支援ソフトで何が起こるかだいたい分かって いるのに、それが発生する直後にならないと動けない」 「そうだな」 「それに、今回は私が不在」 「ああ、風紀委員会本部で会議だったな」 「欠席するわけにもいかないし」 「大丈夫なんとかするよ」 「頼もしいわ。5分なんとかして。かならず応援を手配するから」 「ああわかった」 「さ・・そろそろ時間よ。行きましょ」 私と当麻は、オートロックのマンションを出て学校へ向かう。 ・・・・・・・・・ 9月8日 午後4時 自宅マンション前 90m地点 歩道上 そろそろ時間だな。 俺は時計を確認する。き美琴になるべく時計は見るなと言われたが気なってしょう がない。そもそも自分が襲われると分かっていて、無心でいるなんて俺には できない。襲撃予定時刻5秒前に俺はなるべく不自然にならないように深呼吸をする。 (さあ そろそろ) 5、4、3,2,1 時間に合わせ咄嗟に身をかわす、さっきまでに俺がいた場所に、銃弾のようなものが 突き刺さる。 (アブねえなあ) 攻撃されることがなければ絶対に避けることなんてできなかった。隣の屋上から 銃で攻撃されると分かっていなければ絶対避けれるはずもない。 俺は、美琴との打ち合わせどおり、全速力で現場を回避する。引き続いて催涙弾もま き散らされるがそれも回避する。 (はあ・・美琴がいれば即座になぎ倒すんだけどな・・) 俺の右手は異能には絶対的な効力を有するが、ライフル銃や拳銃には対抗力を有し ない。ライフル銃と催涙ガスの攻勢の前には逃げ回る以外に、道がない。 約束の5分が何十分にも感じる。広い道では追いつかれるので、路地を駆け抜け、ご み箱を倒し、自転車をひっくり返し、走り抜ける。だが・・逃走から3分ついに前後 を囲まれ、万事急す。 男達が俺に狙いをつけ腹に複数照準があたる。もう逃げたところで回避不能だ。 (くそ・・もうダメか・・) ・・後1分30秒逃げ切れば・・ だけど、結局逃げ切れなかった。俺は時間稼ぎを試みる。本当に狙いは美琴のはず なのだ。俺は美琴を釣る餌のはず。ならばすぐに殺しはしないはず。 「な・・どうせ、すぐ美琴にばれる。・・なら無駄じゃねえか・・」 男達が、囲む中つかつかと、女が無言で突進してくる。女は、冷酷に俺に死刑宣告 を発する。 「時間がない、撃て」 俺はそれでも諦めきれず、言葉による無駄な抵抗を続ける。 「オイ」 だが、女は俺の時間稼ぎには何らの反応を示さず、作業のように命令する。 「問答無用、発砲」 だが、その命令は実施されることはなかった。突然催涙ガスがまかれ、同時に男達 は、頭を抱えて苦しみはじめる。十数人の黒ずくめの男達は全員うずくまる。 (間に合ったのか・・?) 俺もばらまかれた大量の催涙ガスで目がくらむ。 少し遅れて数十人のアンチスキルが乱入し、黒づくめの男達が一挙に検挙される。 そして、美琴の言うとおりちょうど5分ですべてが完了し、事態は収束を始める。 (はあこれで終わりか・・) だが科学の尖った先兵は、美琴の予想どおり簡単にはくたばらない。 リクルートスーツの女はなりふり構わず、突進する。複数のアンチスキルを強引に なぎ倒し、アンチスキルもその突進力を抑えることができない。まるで数十トンの モンスタートラックが突っ込んだような圧迫感を感じる。俺は尋常ならざるパワー を感じ、バックステップでかわすが、ぐんぐん距離を詰める。俺は、なんとか躱し 続けるが、執拗な攻勢でついに態勢を崩され、つまずいてしまう。 そのすきに、リクルートスーツの女は、いっきに間合いを詰め、俺を追い詰める。 ついに腕を掴まれ、羽交い絞めにされる。ただの女性とは思えない、まるでレベル 4の肉体強化系の尋常ならざるパワーで俺を締め上げる。おそらく高度な、駆動鎧の 駆動機構を人体へ応用し、圧倒的なパワーを可能にしているのだろう。 駒場利徳も使っていたが、其練度精度は遥かに上だ。科学を極めた女は、そんじょ そこらの能力者では太刀打ちできない力を発揮する。 (くっそ・・なんてパワーだ。このままでは背骨を折られる) 「さあ・・上条・・御坂美琴を葬る前にテメエの首をもぐ」 「ぐ・・テメエが美琴を葬る?」 「はあ・・それは無理だろうな」 女は、無関心を決め込むが、少し動揺し始める。その瞬間女の駆動部分の関節が軋み はじめ、女は、苦痛に顔をしかめる。 俺を締め上げる力が弱まったのを確認し態勢をよじり、なんとか拘束を逃れる。 ・・ハア・・ハア・・ 「ハア・・バーカ・・木原唯一・・テメエの行動は全部読まれているだよ」 「くそ・・関節がいうことを気かねえ・・テメエ何をした?」 木原唯一は、激痛に顔を顰め、もんどりうつ。 俺は学生服から、小型の装置を取り出す。発信機のようなマイクロ波発射装置 皮膚を貫通しある特定の物質のみを効率的に加熱する装置。 「テメエがやりそうな事はバレバレなんだよ。だから・・対抗措置を確保している んだよ」 「くそ・・・。特定物質を効率的に加熱するマイクロ波か・・どうせテメエの知恵じゃねえだろう」 「ああ・・こんな知識があるのは、学園都市でも美琴かテメエくらいだろう」 「けえ・・御坂美琴・・忌々しいクソガキが。正義の味方面で世間知らずのふりを しながら、アレイスターに取り入る、計算高い女か・・」 「だがな・・上条・・私が負けたわけじゃねえ。まだ・・」 俺は、唯一へ聞こえるように大きな声で溜息をつく。 「A.A.Aならもうテメエは使えねえよ」 「はあ?・・」 「A.A.Aは脳波制御だろう?やってみ」 「え・・」 「テメエのA.A.Aはもう全部美琴にハッキングされているんだよ。もう手遅れだ」 俺は、スマホの美琴からのメールを確認し、言葉を続ける。 「うそ・・そんな・・」 「テメエが手配した猟犬部隊も全部拘束済みだ」 「諦めろ。もうテメエは終わりだ」 「テメエが、学園都市のために、危ない事に手を染め、人間を捨て、暗部や キタネエ実験を主導したことは全部美琴から聞いている。糞たれな実験で 置き去りや、犯罪者を使い、非道な実験を行ったことも、ただ尊敬する 脳幹先生のためだったことも」 「だが・・今のテメエはなんだ、ただの逆恨みじゃねえか」 発条包帯の異常加熱で関節が焼かれ激痛に打ちひしがれていた木原唯一の 顔が激情でゆがむ。 「くそ・・、上条・・いままで散々利用されて捨てられる気持ちがわかるか・・」 「知らねえうちに、糞みたいな力を偶然得た女に、全部奪われる理不尽がテメエに わかるか」 木原唯一は、うめきような 不気味な声で意味不明な言葉をつぶやき始める。 「オイ・・それ以上美琴を侮辱するな。テメエが何を奪われたて言うんだ」 「そもそもテメエが何を奪われたんだ?テメエは同じ顔のクローンを殺された のか?テメエは自分の力が世界をいつぶっ壊すかおびえながら暮らしたのか? テメエの悩みなんぞくだらねえだよ。そんなテメエが美琴を逆恨みするのなら テメエの逆恨みごと全部ぶっ飛ばしてやる。ハア食いしばれ糞女・・」 ・・バッキ・・ 木原唯一は数メートル吹っ飛び、気絶する。 「なんとか終わったようだな」 だが、俺もすでに限界だった、限界を超えた筋肉の過剰使用がたたり 俺もその場に倒れこむ。 ・・・・・・ 19時 カエル顔の医師の病院 「当麻起きた?」 「ああ美琴か、俺は気絶したのか?」 「ええ、2時間30分ほどね。発条包帯の駆動鎧のパワーで肉離れと脚が剥離骨折、目に見えないけど結構ダメージを受けたみたい。骨折の縫合は終わったから、今日 1晩入院すれば退院できるわよ。」 「ごめんね。アンチスキルの手配が遅くなって」 「いや・・5分が長かった。逃げ切れなかった俺の方がすまん」 「で・木原唯一はどうした?」 「とりあえず、仲良く同じ病院よ。隣の病室にいるわ。あっちは結構かかると思うわ。 マイクロ波で発条包帯が約1000度に加熱したんだもん、脚はボロボロだわ」 美琴は、少々疲れたような表情を見せる。俺が寝ている間に、俺には理解できない 交渉事でもしていたのだろうか。だがその表情はいつも快活な表情に置き換わる。 「今日は本当、迷惑かけたわね」 「気にしなくてもいいよ。美琴がいろいろ手配してくれなければ、俺は死んでいた。」 「当麻・・だけど私のせいよ。アイツがアンタをついでに殺そうとしたのは」 俺は、美琴をみつめ正面から美琴の悩みに向き合う。 「美琴、結局この右手がある限り俺は、普通には生きられない。」 「だったら、同じ悩みを持つ美琴とともに手を携えておれは生きる。」 美琴は俺の顔を食い入るようにみつめる。 「当麻、ありがとう。元気でたわ。そうね。」 「木原唯一の問題なんか氷山の一角だわ。彼女は私を目の敵にしてぶつかってきた。 だけど、研究者は多かれ少なかれ私や能力者に実験動物という感覚を持っている。 だから、ことあるごとにその負の感情と戦わなければ、先へ進むことができない」 「美琴・・・」 「だから、当麻に一緒に壁にぶつかりながら、挫折しながらでも一歩一歩生きていこう」 「ああそうだな」 私は、当麻の口をふさぎ、軽く接吻をする。 (きっと忙しくなるだから当麻・・助けてね。お願いよ) 続く 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/とある科学の超荷電粒子砲(プラズマ・キャノン)
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22.伝えよう! 「……泉さん?」 「?」 声に気がつき、こなたが振り向く。 私も一緒だ。 病院のロビー、そこに『彼女』は居た。 「……『みゆき』?」 「?」 こなたより先に、私の口が彼女の名前を呼ぶ。 それを聞き、こなたがようやく何かを思い出す。 「……ああえと、高良さん。だっけ?」 「はい、お久しぶりです」 こなたが適当に頭を下げると、丁寧なお辞儀が返ってくる。 高良みゆき……そういやこなたと同じクラスだったっけ。 みゆきのほうが覚えてたのは意外だったけど。 「お見舞いですか?」 「う……ん、いとこの子が入院しててさ」 クラスメイトと世間話……といきたい所だけど、こなたのほうはまた緊張しまくってる。 それでも面識が少しはある分、峰岸たちとかよりはまだましか。 眼はあわさないけど、会話してるだけで結構な進歩よね。 「そうですか……実は私もお見舞いなんです。つかささん……柊さん、って覚えてますか?」 「……うん。まぁ」 その名前を聞いて、こなたと一緒に心臓が跳ねる。 みゆきがこんな所に居る理由はそう多くない。 私のお見舞い、それが一番妥当だろう。 「そのお姉さんも入院してまして……宜しければ泉さんもご一緒にどうでしょうか? つかささんも喜んでくれるはずです」 「……」 みゆきの笑顔の前に、こなたから戸惑いが伝わる。 それは私も同じだ。 つかさが、『居る』。 いくら想定していた事であっても、さすがに緊張する。 「うん……じゃあ後で寄るよ」 「本当ですか!」 みゆきがこなたの手をとって喜ぶ。 こっちを見てくれないのは少し寂しいけど……いつものみゆきの笑顔を見たら、何だか心が落ち着いた。 こなたの手から、みゆきの手の暖かさだって伝わってきたしね。 「では、またあとで」 みゆきと同じ階層まで歩き、別れる。 それまでに色々と会話もしたが、さすがみゆき……ひきこもりやこなたの母親の事には一切触れなかった。 私の病室の場所はみゆきから聞いた。 あとは私が心の整理をするだけ、なんだけどな。 「ここかな」 私が悩んでる間にもゆたかちゃんの病室に辿り着く。 最初にゆたかちゃんと会った集中治療室とはまた違う病室。 そこの扉をこなたが開けると、女性が目に入った。 「おーこなた、よく来たねー」 「こんちわ、ゆいねーさん」 珍しくこなたが緊張する事もなく、手を振る。 彼女の話は歩きながら聞いていた。 えっと、成美さんだっけ? 同じくこなたのいとこで、ゆたかちゃんのお姉さん。 なんでも引き篭もってるときもよく遊びに来てくれていたらしい……追い返してたらしいけど。 「よく一人でこれたねー、お姉さんびっくりだ」 あはは、と笑いながらこなたの頭を撫でる。 でも何処か表情が疲れてるように感じるのは、見間違いじゃないと思う。 「お母さんの事はもう……平気?」 「……」 その女性……成美さんの言葉に、こなたの手が、汗ばむ。 だけど、いつもの様に動悸が速くなることはなかった。 「鋭意努力中、かなっ」 こなたが笑う。 それを見て、成美さんも笑顔をこぼす。 「……そっか、こなたは偉いねっ」 そして二人で笑いあい、お互いを元気づける。 「今日は、きい兄さんとかは?」 「お仕事でね、今日は私がたまたま非番だったからさ」 用意してくれた椅子に腰掛け、ゆたかちゃんの顔をこなたが覗き込む。 包帯は巻かれているけど、私よりは少ないかな? でも本当に……ただ寝てるだけみたい。 「傷跡は残んないって、後遺症も心配なし……あとは目が覚めるだけかな」 「そっか……良かったね、ゆーちゃん」 「あははっ、ゆたかは綺麗な肌してるもんねー。傷でも残ったら一大事だよ」 二人がゆたかちゃんに話しかけるように会話をする。 それの返事はなくても、信じてるんだ。 いつかその言葉が、返ってくる事を……。 「それで、さ。ゆい姉さん」 「んー?」 お見舞いに持ってきてあった林檎をむきながら、成美さんが返事をする。 少しこなたに緊張感が混じったのは、気の所為じゃない。 「ゆーちゃんって本当に……『事故』、だったの?」 「……どゆこと、かな?」 指が止まり、長く繋がっていた林檎の皮が千切れる。 「調べたんでしょ? ……お仕事だもんね」 お仕事。 じゃあ……彼女がこなたの言ってた、『詳しい人』? つまり警察関係者、ってことになる。 「あー……こなたの耳にも、入っちゃってるか」 林檎を剥く作業に戻りながらも、少し手が震えている。 「一応はまだ捜査中……転落事故ってことにはなってるけど」 「転落?」 事故にだって、色々ある。 私のように車に轢かれる交通事故。 でもゆたかちゃんはそれとは別。 「公園あるでしょ? ここの近く……来る時バスから見えなかった?」 「え、うん……」 公園。 ここいらにあるのは一つだけのはず。 そう、あの……峰岸たちの居た公園だ。 「あそこってさ、長い階段があるんだよね。上の団地に繋がってるやつ」 転落事故。 階段。 この組み合わせから考えられるのは、一つ。 「その階段から、転げ落ちた……ってのが警察の見解」 「……詳しく、聞かせてくれる?」 「う~ん……少しだけだよ?」 少し成美さんが渋る。 事件か、事故か。 私たちはそれを確かめに来たんだ。 「発生は夜から深夜にかけて。その次の日の朝、犬の散歩をしてたお婆さんが階段下でゆたかが倒れてるのを発見したみたい」 「夜って……遅くにゆーちゃんが一人で?」 「……そう、なるかな」 曖昧に返事をされる。 どうにもそこは歯切れが悪い。 「その日は、ゆたかが家で一人のはずだったんだ……私も夜勤でさ」 「え? でも、ここって……」 「……そうなんだ」 ばつが悪そうに頭を抱える成美さん。 二人は何か分かったみたいだけど、私にはさっぱり。 「そこの公園は病院には近いけど、私らの家からは大分遠いんだよね」 そんな所にゆーちゃんが一人で? 考えてみれば、おかしな話だ。 事故にあった場所に居たゆたかちゃん。 でも彼女にはそんなところに居る理由なんてないはずだ。 深夜に……誰に告げるわけでもなく。 ……。 そこでまた、問題だ。 それでも、彼女は『居た』。 その場所に、その時間に。 「じゃあ、理由があったんだ。そこに居た理由」 「……」 彼女が少し押し黙り、それにこなたも気がつく。 「ゆい姉さんもしかして……知ってるの?」 「……こなた。こっからはさ、警察の仕事なんだ」 成美さんが誤魔化すようにこなたを諭す。 だけどこなたの眼は、彼女を見てた。 「お願いゆい姉さん……私、知りたいんだ」 心臓の脈打つ音が五月蝿い。 私だって、そうだ。 覚悟は決めた。 だから、立ち向かうだけ。 そのこなたの目に負けたのか、成美さんが一度ため息をつく。 「……今からするのは私の独り言。推理他私情も混じってるから、警察の意見って訳じゃないからね?」 一度断った後に、林檎を皿に置いた。 唾を飲むこなたの感覚が伝わり、鼓動が速くなる。 「ゆたかの部屋から、手紙が見つかったんだ。所謂そう……呼び出しってやつかな」 「手紙?」 「一応写しはとってあるよ、これ」 鞄から取り出した手帳を見ると、そこには短く二行の文。 大分短いというか……要点だけ書いてある。 「『これ』がワープロで打った文字で用紙に印刷してあった、本物は今は警察所だけど……作るのはそう難しくないかな」 「差出人とかは?」 「なし、多分ゆたかには……この数行だけで伝わったんだね」 ……。 心臓が、痛む。 耳を脈打つ音が、邪魔だ。 『事件の証言の件でお話があります 病院横の公園まで来てください』 それが、ゆたかちゃんに届いた手紙の内容の全て。 この手紙を出す人物。いや……『出せる』人物は、限られてくる。 だから余計に、私の心臓が暴れるのかもしれない。 「事件、ってもしかして……私の学校の?」 「ふぇ?」 成美さんの顔が反応する。 確かに、こなたが知ってていい情報ではない。 「何でそれ……」 「あ、んー、話すと長いから聞かないで」 私に訝しげな目で見られているのに気がついたのか、こなたが慌てて弁明する。 成美さんも同じような目で見ていたが、深くは突っ込まないでくれた。 「そ、ゆたかが関わってた『事件』ってのは数日前の交通事故。学校近くの交差点で、こなたの学校の子がトラックに轢かれたやつ」 「ゆーちゃんはその事件の……」 「重要参考人、ってとこかな。ゆたかの証言だと……その交通事故は、『事件』って事になる」 そしてゆたかちゃんの証言を、成美さんがなぞる。 私から教わってこなたもそれを知っていたが、あえて口は挟まなかった。 あんまり知りすぎてるのも変に思われるからね。 そこから少し話が逸れ、私の事件の説明に入った。 「それでゆたかの証言だと、事故にあった子の双子の妹が『容疑者』の最有力ってことになるかな」 「現場に一緒に、居たんだっけ」 「うん、そだね……本人がそう証言してる。『姉と一緒に下校していた』ってね」 そしてつかさの証言を今度はなぞる。 「ゆい姉さんはどう思う? その子が……ゆーちゃんを?」 「……」 その証言の説明が終わったところで、こなたがようやく確信を聞く。 そうだ、そこが問題。ゆたかちゃんの証言が苦しめるのは、つかさだけ。 だから自動的にゆたかちゃんの事件の犯人も……つかさに? 「確かにこの手紙を出したのは、その子……もしくは事件の関係者じゃないと無理だね」 手帳の文面。 これは確かに、一般の人が知るようなことではない。 少なくとも『ゆたかちゃんが交通事故の目撃者』という事実と、この手紙の『病院』を知っていなくてはこの手紙は書けない。 病院……つまりここ、『私』が眠る病院だ。 「でもね……その妹さんには、『出せない』んだ」 「えっ」 私もこなたも動揺した。成美さんの言葉が、あまりにも意外だったから。 「出せないって……どういう事?」 「『存在証明』って分かるかな? アリバイってヤツ。事件の日妹さんには、それがあったんだ」 その日。 つまり、ゆたかちゃんが事件にあった日。 「その日妹さんは友人の家に居た。これはその友人にも裏もとってあるよ」 「え、じゃ、じゃあどういう事?」 「『妹さんはゆたかの事故の時、現場には居なかった』。これは確定事項」 「でも……その手紙は確かにあったんだよね」 「そう、『誰かがゆたかを呼び出した』。これも確定事項」 ……。 不思議だ。 どうしても、うまく全てが結びつかない。 まるで違う種類のジグゾーパズルを混ぜて遊んでいる気分。 そしてそれを無理矢理くっつけようとすると、全てのベクトルがつかさに向いてしまう。 「確かに、こう考えれば簡単だよ? その友人が口裏をあわせてるだけ。姉を殺した妹が、目撃者であるゆたかを殺した」 私が事故にあっただけなら、それはただの交通事故で済んだだろう。 だけど、ゆたかちゃんは言う。 『片方が片方を突き飛ばした』 そしてそのゆたかちゃんも……転落事故。 その安直な直線を引ければ、全てが解決する。 だけどやっぱり……歯切れが悪い。 そこに一つの要素が加わるだけで、全てがおかしくなる。 差出人不明の『手紙』。 だけどそれを出せる人間は限られる。 そしてその一人……つかさは、アリバイがあった。 じゃあ『つかさには、ゆたかちゃんは殺せない』。 それを聞いて少し、心が軽くなった。 ……すぐに、切り裂かれるのも知らずに。 「今警察は、その手紙の差出人の特定に必死だよ。事件関係者……主に、その妹さんの家族。かな」 「かっ……」 こなたが言葉を失う。 でも、それは当然なのかもしれない。 私の家族だって私と同じに決まってる。 つかさのはずないって思って、その手紙を……。 「でも無駄足だったみたい、その日はそれぞれにアリバイがあったみたい……ってこれは機密か」 あははっ、と笑う成美さん。 「『ゆーちゃんの事故のとき、事件関係者には全員アリバイがあった』。ってこと?」 「そう、少なくともその妹さんの家族全員はね。だからこっからは私の推理」 少し話を整理しよう。 これはあくまで、仮定の話のもと進められている。 ゆたかちゃんの事故が、『事件だったら』という仮定。 その場合容疑者は『私の事件の関係者』が第一に疑われる。 こんな手紙まであれば尚更だ。 だけどその関係者には、犯行は不可能だった。 「可能性としては二つ……『妹さんに疑いがかかるように誰かが手紙を用意した』、もしくは『他に事件関係者がいる』」 ……。 前者は、私にも分かる。 こなたと必死に推理して出した、一つの答え。 でも後者は……考えたことすらなかった。 「こ、後者がよく分かんないな。どゆこと?」 「ゆたかの証言を、そのまま鵜呑みには出来ないってこと」 人間は完璧じゃない。 十人十色とは良く言ったもの。 どんなに正しいものを見ても、人はそれぞれの解釈で捻じ曲げてしまうものだ。 「ゆたかが証言したのは大まかに分けて二つ。『二人が歩いていた』ってこと、『その内の片方が、もう片方を突き飛ばした』ってこと」 ゆたかちゃんに嘘をつく理由はない。 なら、これは真実のはず。 いや……真実に近い『何か』のはず。 「でもゆたかが証言したのは、逆に言うとそれだけ」 「それだけって?」 「『二人』が歩いてた……つまり、その二人の関係は分からないってこと」 少し回りくどい言い方をされたため、こなたと一緒に頭を抱える。 だけど私より先に、こなたが何かに気が付く。 「そっか……それが本当に『姉妹』だったのかは、分かんない」 「そ、それはあくまで『姉と一緒に帰っていた』っていう妹さんの証言があるから立証されてるだけ」 それはつかさの証言。 そこまで聞いて私もようやく理解する。 じゃあつまり……。 「じゃあその被害者の子は、違う『誰か』と帰ってた?」 こなたが私の頭に過ぎった言葉を復唱する。 「それも、ないわけじゃないってことかな。でもそれだと、ひっかかるよね?」 分かるでしょ? といった様子で聞き返す。 そうだ。 これはあくまでつかさの『姉と帰っていた』という証言が嘘だった場合だ。 そこには……矛盾しか残らない。 「嘘をつく理由がない、彼女の証言は確実に彼女の首をしめる」 ……。 少し、沈黙が続いた。突きつけられた新しい情報に私は戸惑う。 つかさが現場に『居た』場合……これはしきりにこなたと推理をしていた。 だけど警察の成美さんが新しく突きつけた新しい可能性。 つかさが現場に……『居なかった』場合。 「それなら」 そう、ここで初めて彼女は呈したんだ……『第三者』の可能性を。 そしてそれは……最悪の形で、提言された。 「犯人は事故にあった姉の友人。ってなるかな……一緒に下校するぐらいのね。この場合妹さんは、その誰かを……庇ってる」 私を殺した『誰か』。 それはつかさだけじゃない……私の友人にまで、疑いが向けられた。 そしてもしそうなら、つかさは庇ってる? だから、嘘をついた? 私と一緒に帰ったって? でも私は確かに聞いた。 最後の最後……意識が途切れる瞬間に、「お姉ちゃん」と叫び続ける声を。 私の事故の瞬間、『つかさは現場に居た』。これは確実なはず。 つまり、増えてしまったわけだ。 合わないピースが……また一つ。 「ゆたかが嘘を言ってないってなるなら、推理できるのはそれぐらいかな」 もちろん彼女は警察だ。 その考えだって頭においてある、というだけなのだろう。 でも、私にはそれは困惑でしかない。 だってそうでしょ? つかさじゃない。それを信じるなら……その他。 私の友人たちを疑わなければいけなくなったのだから。 「でもこなた……あんまり、首を突っ込まないほうがいいと思うよ」 成美さんが警告する。 これは警察としての警告でもあり、いとこのお姉さんとしての忠告。 深く関わっても、こなたに得なんかない。 「ゆたかの件とは関係あるって言ってもさ、交通事故の件はこなたには関係ないんだし」 だからその言葉は、当然といえば当然の言葉。 でも少し……胸に刺さった。 そっか。 そう、だよね。 こなたには関係……ないんだ。 「そんな事ないよ」 「えっ……?」 私と同じく、成美さんが呆気にとられる。 「私、知りたいんだ……本当の事」 「……もしかして、知ってるの? その子たちのこと」 成美さんが尋ねる。 その質問も当然だ。 こなたの学校の生徒が巻き込まれた事件。 それに固執する理由としては、それが一番妥当だろう。 「うん……姉のほうだけだけどね」 「あ……」 それを聞いて、失言だと思ったらしい。 姉……つまり、私。 その私は今……同じ病院で、虫の息なんだから。 「……友達?」 それは、何気ない質問だったのかもしれない。 その場には一番あっていた質問。 だけど。 なのに。 なぜか…… 私の心臓の音が少し、速くなった気がした。 友達。 短い四文字で、漢字にすればたった二文字。 だけど何処か……恥ずかしい単語。 友達、なのかな? 私たちって……。 こんな体にならなかったら、あの天使に会わなかったら。 そしたら私たちはきっと……出会わなかった。 私たちが出会ったのはそれこそ、神の悪戯。 間抜けな天使が零れ落ちた私を救い上げ、こなたの上にふりかけた。 それだけの……関係。 それだけ、の……。 あ、あれ? 変だな私。 何か……変。 「うん」 「え……」 滲みかけた眼が、見開いた。 「大切な、友達」 こなたは、私を見なかった。 だけど、伝わった。 顔の熱も……搾り出した声、も。 「じゃあこなた、気をつけて帰るんだよー」 成美さんが手を振るのにこなたが手を振り替えし、ゆたかちゃんの病室を出る。 次に目指すのは、私の病室。 つかさや、みゆきの居る場所……なん、だけど。 「……」 「ちょ、ちょっとこなたっ」 廊下を早足でこなたが歩く。 それに必死についていくが、なかなか速度を緩めてくれない。 いや、まぁ理由は分かるんだけどね。 何でも共有してるとこういう時やりにくい。 多分……恥ずかしがってるんじゃ、ないかと。 うう、私も何か恥ずかしいじゃない! 「道、違うわよっ。みゆきが言ったのは逆方向じゃない」 「うっ……」 私の声にこなたが足を止める。 ようやく私も追いつくけど、やっぱり私を見ない。 そこまで照れるなら言わなくていいのに……あんな事。 「さ、さっきのは……ね」 必死に私から顔を背けながら、小声で喋る。 さっきの……って、やっぱりあれ、だよね。 ……思い返したら私も顔が熱い。 「私が、その……勝手に思ってるだけ、だから」 それだけ言って、踵を返す。 もちろん私の顔は見てすらない。 そしてまたせっせと廊下を進んでいく。 それを見て、少し呆気にとられる。 その後……笑ってしまった。誰にも聞こえないからって、大声で。 「わ、笑わなくてもいいじゃんさっ」 こなたが真っ赤になった顔をようやく振り向かせる。 ああそうだった、あんたには聞こえるんだっけ。 あんたには、見えるんだっけ。 こんな私を。 こんな体の……私を。 「ねぇ、こなた」 「……何さ」 ようやく足並みを私に揃え、廊下を進んでいく。 声をかけると、まだ笑ったのを怒ってるのか少し頬が膨らんでる。 「私も……勝手に同じこと、思ってるからね」 「……」 返事はなかった。 だけどまた顔を背けて、足早に進んでいくこなた。 その姿を見てまた可笑しくなる。 それだけで、十分だった。 ……。 大丈夫、だよね? きっとこなたと一緒なら、大丈夫。 見つけましょう……真実を。 それでさ、一緒にポイント貯めましょう。 紹介してあげるわ、頼りにならない天使とか……って見えないんだっけ。 それで生き返るんだ……そしたらさ、また一緒にゲームしましょ。 あんたってマンガばっかり読んでるから私のラノベ貸してあげるわ、活字もちゃんと読まなきゃね。 それで一杯一杯お話しよう。 こなたの部屋で、私の部屋で、学校で、皆で。 きっと楽しいよ。 つかさは凄いのよ? ちょっと抜けてるけど、料理とか上手くてね。 みゆきなんかもっと凄いわよ、もっと抜けてるけどね。 日下部だって峰岸だって他の皆だって! その輪にゆーちゃんや、みなみちゃんだって入れて騒ごう。 皆で一緒に騒いで、馬鹿みたいな話をしよう。 ゲームの話とか、マンガの話とか、テストとか、新しく出来たケーキ屋さんとか……好きな人の話、とか。 ……。 あ、あははっ。変だね、可笑しいねっ。 でもきっと……このドキドキは、そういう事なんだよね。 ……あんまり、考えないようにしよう。 勝手に伝わっちゃったら、もったいないもんね。 今私は、この夢のような……まるで幻想のような世界に居る。 でも確かに私はそれを、見てる……感じてる。 体のない体。 死の瀬戸際で、綱渡りをしている体。 そんな仮初の世界で出会った、少女。 その存在が私の中で大きくなっていくのを、日に日に感じている。 この時間を私は……失いたくない、続けていきたい。 だから私は、生き返ってみせる。 どんな困難も、乗り越えてみせる。 少女と……こなたと、一緒に。 そして私は、見覚えのある病室に足を踏み入れる事になる。 その扉の向こうにある事実に、全てを打ち砕かれる事も知らずに。 絶望という暗闇に、飲み込まれる事も知らずに。 コメントフォーム 名前 コメント かがみが轢かれそうなつかさを救おうとして突き飛ばした・・・とか? -- 名無しさん (2008-12-25 23 45 55) 同じく続きが楽しみでしょうがない -- 名無しさん (2008-01-23 02 54 50) 続きが楽しみでしょうがない。 期待してます -- 名無しさん (2008-01-12 05 52 51)
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登録日:2018/04/19 (木) 23 41 07 更新日:2024/05/02 Thu 12 01 33NEW! 所要時間:約 5 分で読めます ▽タグ一覧 17年冬アニメ さいとう・たかを テレビ朝日 フジテレビ 文春文庫 時代劇 時代小説 江戸時代 池波正太郎 長谷川平蔵 飯テロ 鬼平 鬼平犯科帳 この御方こそ、火付盗賊改方長官長谷川平蔵様なるぞ! 『鬼平犯科帳』とは池波正太郎作の時代小説。全24巻(文春文庫)。略称は鬼平。 江戸時代に実在した火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を主人公にした捕物帳で、池波作品では『剣客商売』、『仕掛人・藤枝梅安』と並んで高い人気を持つ。 時代設定は長谷川の生きた「寛政時代」(18世紀末)(*1)で、3巻登場のゲストキャラが後に『仕掛人~』サイドのボスキャラ化している。 また『剣客商売』は本作(及び『仕掛人~』)の過去世界の話(*2)で、20巻では平蔵が『剣客商売』主人公「秋山小兵衛」の名を名剣客として口にしていた。 人気作故にメディアミックス展開も多く テレビドラマ化 映画化 舞台化 漫画化(作画はさいとう・たかを) アニメ化(平蔵役は堀内賢雄) を経験している。 なお小説は原作者逝去により絶筆。ただ未完に終わったのは1作のみ。 漫画版は原作を忠実になぞりながらも独自色が強め。単行本は既刊103巻。 火付盗賊改方が江戸の街を騒がす悪人を成敗するというのが基本的な流れだが、そこは池波正太郎。登場人物にはそれぞれの事情が絡み、盗賊ながら好人物だったりフォローしがたい下衆な役人がいたり、法と人情は一筋縄では行かないのだ。 【盗賊】 本作には、盗賊に関連する造語(史実当時には存在しないオリジナルの表現)がいくつか存在する。 ◆「ターゲットの家が破滅するほど盗まないこと」「強姦行為をせぬこと」「誰も殺さぬこと」を原則とする盗賊団を「本格」の盗賊と呼ぶ。引き込み役(下注釈参照)がターゲットの商家に年単位で務めて信頼を得るなど、非常に気の長い事業になる。 こうした本格の盗みに徹して来た盗賊には情けが掛けられる事が多く、それに感服して手下になる者もいる。 ◆盗む事を「はたらき」「おつとめ」という隠語で呼ぶ。 盗人やその関係者以外ではまず使われない言葉である為、そこから企てが露見したり話が始まるパターンもある。 ◆一つの盗賊団に属せず、あちこちを渡り歩いて盗みに加わる流れ者の盗賊は「流れ働き」、仲間を集めず一人で空き巣のように盗みを働く事を「ねずみ働き」、十分な準備無しに急造の計画で盗む事を「急ぎ働き」、上の三原則を守らぬ暴力窃盗、強盗殺人を「畜生働き」と呼ぶ。 特に急ぎ働きの場合はそのまま畜生働きに繋がる事が多い。勿論その場合は平蔵も容赦せずその場で斬って捨てたり、頭も手下も全員極刑を以て臨むことも。 ◆改心したり足を洗ったりで今や平蔵の、そして奉行所の手足である密偵となって働く元盗賊は同業者からは「狗(いぬ)」と蔑まれ、仮に潜入任務等で潜り込んでるのが露見した場合には問答無用で始末するのが掟である。 この作品が有名な事とやたら馴染んだ表現のため、他の作者も使っていたりする。造語だと気づかない人もいるかも… 【主な登場人物】 ◆長谷川平蔵 火付盗賊改方長官。「平蔵」は通称であり、諱(いみな)は「宣以(のぶため)」(*3)。 父親は京都西町奉行の長谷川宣雄。生まれてすぐ亡くなった母親は巣鴨村の大百姓三沢仙右衛門の娘お園。目白台に私邸を持っているが、普段は清水門外の役宅に住んでいる。 家督を継ぐまでは銕三郎と名乗り、本所の銕の名で通っていた。 実父の宣雄は長谷川家の血筋が途絶えるのを防ぐため、断腸の思いで銕三郎とお園を置いて実の姪の波津と再婚するも宣雄は波津との間に子を為さなかったため、17歳の時に本家へ呼び戻される。しかし銕三郎を「妾の子」呼ばわりする義母の波津から疎まれ、反発心から家を飛び出す。家を出た後は本所・深川界隈の無頼漢の頭となり、放蕩三昧の日々を送る。それでも剣術の稽古だけは怠っておらず、一刀流・居合術を学び習得している。 父が亡くなると家督を継ぎ、後に火付盗賊改方長官に就任した。 放蕩無頼の経験から推理力と観察眼が鋭く、時には密偵を遣わせて悪党を取り締まる。 厳しい取り締まりに悪党からは「鬼の平蔵」→「鬼平」と恐れられている反面、たとえ悪党でも義侠心に厚い者や止むに止まれぬ事情から罪を犯した者は寛容で情け深い配慮を見せる。「瓶割小僧」や「泥鰌の和助始末」(*4)などで情け深い平蔵の姿を見ることが出来る。 2巻の「妖盗葵小僧」では、捕縛した後お白洲で自分の強姦遍歴を自慢して被害者たちを自分の道連れにしようとした犯人を即処刑し、強姦被害女性達の心と名誉をも守った(お役所的にはよろしくなかったのでお叱りを受けたが)。 また3巻の「盗法秘伝」では旅先で身分を隠して盗人と共に極悪商人の屋敷に忍び込み、二人で盗みを働いたこともある(やった後身分を明かし、見逃した盗人に釘を刺しておいたが)。 こういった経歴もあり、作中では剣士としても火付盗賊改方としてもほぼ無敗。 とはいえ剣士としては明確に格上・同格とされる人物は存在する他、偶然に近い形で勝ちを拾った戦いもないわけではない。 部下である同心や密偵達を信頼しているが、作中では数人道を誤ったものや止む無く平蔵が斬る事になった部下もおり、 5巻の『鈍牛』ラスト「知的障碍者を死罪確実の放火犯扱いして誤認逮捕する」という不祥事発覚を受け(*5)、「もし部下の不始末あれば、俺が腹を切る!」と同心一同に啖呵を切った。 妻久栄との間に2男2女をもうけている。更に盗賊の娘で天涯孤独の身になってしまったお順を養子として迎え入れている。 酒と煙草を好むが、何よりも美味いものに目がない美食家としての一面を持つ。 23巻で腹違いの妹がいることが判明した。名前は生母と同じ「お園」。但しお園には兄と告げず「お園の親代わり(長谷川家の元家来で妹の事を教えてくれた人)との縁で助けた」としている。 お園はその後平蔵配下の同心である小柳安五郎と結婚しており、平蔵と安五郎は(安五郎サイドは知らないが)義兄弟の関係ともなった。 ◆京極備前守(京極高久) 平蔵にとっては上司に当たる若年寄の一人。 慢性的な火の車である火盗改方の窮状に対して度々資金援助や、幕閣への便宜を図ってくれたりと影から平蔵、そして火盗改方を支える重鎮であり平蔵も頭が上がらない。 温厚な人物であるが、『おれの弟』で実の弟のように可愛がっていた弟弟子が身勝手な理由の元騙し討ちにあい、その相手が火盗改方では裁く事の出ぬ幕府重臣の息子であったが、さりとて許す事も到底出来ぬという平蔵に対して非合法に抹殺せよという暗喩をし、手を汚した事を知りつつも意図的に見逃したりと清濁併せ呑む度量も見せるという、根底には似た物を持つ事も平蔵が従う理由である。 ◆高杉銀平 平蔵が頭の上がらない人その二。 平蔵や左馬之助、緑之助に一刀流を教えた師匠であり、今でも尚相談に乗ったりと交流がある。 かつては様々な果たし合いを経験した剣客で、時にはその縁から平蔵を手助けしたりする事もある。 ◆佐嶋忠介 平蔵より五つ程年上の部下である筆頭与力。 火盗改方の副官で同心らを束ねる存在でありその能力は平蔵に匹敵する程で、平蔵からも全幅の信頼を置かれており所用等で江戸を離れたりする際には代わって指揮を取ったりもする。 実はかなりの酒豪。非番の日には一日で三升も空ける程だが普段は節制している為、それを知るのは平蔵を始め数少ない人達である。 ◆木村忠吾 平蔵の部下である同心の一人。色白でぽっちゃりしており、芝の菓子屋のうさぎ饅頭にそっくりだから「兎忠(うさちゅう)」と呼ばれ、からかわれている。 旨い物、酒、女に目がなく、それらに起因する失敗も多いが憎めない性格とここぞという時の働きで、平蔵には可愛がられている。 男色一本饂飩では両刀使いの浪人に貞操を奪われかける。ちなみに漫画版では浪人の妄想の中ではあるものの、お尻の初めてを奪われている。アッー! 14巻の『さむらい松五郎』では題となった盗賊とそっくりな顔だったせいで、松五郎のみならず忠吾を彼と勘違いした盗賊をも捕まえるきっかけとなった。 序盤は頼りない半人前的な描かれ方をされていたが、中盤から最終期にかけては別人のように逞しく成長していった。 また後半では結婚し、23巻の頃には娘も授かった。だが21巻の「麻布一本松」では日頃の生活で溜まる疲れや遊べないストレス、平蔵が後輩を可愛がってる様に見える事等からくる鬱憤からちょっとしたトラブルを起こし、その回のオチで報いを受けた。 ◆小柳安五郎 平蔵の部下である同心の一人。任務中に妻子を亡くし、その悲しみからそれまでのおっとりとした性格から筋金入りの男に変貌した。 人の機敏を捉える事に長けており、時には自らの立場を投げ打ってまで盗賊を説得し心を動かして事件解決に導いた事もある。 平蔵の腹違いの妹と結婚したため、安五郎は知らないが平蔵とは上司と部下の関係だけでなく義兄弟でもある。 ◆岸井左馬之助 平蔵の元道場仲間である凄腕の剣客。ひょんなことから平蔵と再会したことで彼の協力者になる。 尾行から正面切っての斬り合いまで何でもござれの多芸ぶりである為、捕り物では良く助太刀を頼まれる。 40過ぎて独身だったが8巻で結婚している。 ◆井関録之助 平蔵、左馬之助との同門。 武士の家の出ではあったが父親が心中をした事で御家断絶となり、僧となって諸国を放浪した後に江戸へ戻り、左馬之助同様ひょんなことから平蔵らと再会してからは、時々火盗改方に手を貸すようになる。 普段はある寺の住職代理として気ままに過ごしており、腕っぷしと度胸は平蔵と左馬之助に引けを取らない程だが肝心の僧侶としてはイマイチで、ある件で平蔵の死を偽装する為の葬式を上げる事になった際には読経を頼まれるも枕経すらロクに上げられず、痺れを切らした平蔵が死に装束のまんま代わって読み上げるハメになって周りを悶絶させたりという有様。 ◆小房の粂八 元野槌の弥平一味の罪人。かつての親分であり、上述の盗人三箇条を守っていた義賊的な盗賊の血頭の丹兵衛の名を汚す凶賊の探索を志願し、放免される。アニメ版では激しい拷問を受けていた。 以後は「鶴や」という船宿を経営し、時には会合の場や証人の一時保護先としても提供するのみならず怪しい人物が来店した場合には、二階の座敷に拵えた仕掛けを使って監視や盗み聞きを行う等、平蔵の密偵として活躍している。 ◆相模の彦十 平蔵よりも10歳は歳上の無頼時代の取り巻きで、密偵の一人。火盗改長官となった今でも平蔵は彦十と二人の場ではお互い昔の喋り方に戻ってしまうことも。 見方を変えれば平蔵という人物をこの上無く理解している数少ない人間でもある。 元は流れ働きの盗人で、それなりに顔が広い。 ◆おまさ 鶴の忠助という元盗賊の娘。無頼時代から付き合いがあり、父親の死後は盗賊一味の引き込み(*6)役を勤めていたが、平蔵が火盗改長官に就任したのを知り、平蔵を密偵の立場から助けようと志願した。 9巻で密偵仲間の大滝の五郎蔵と結ばれている。 ◆大滝の五郎蔵 元蓑火の喜之助配下の盗人で密偵の1人。盗人時代は「盗みの三ヶ条」を頑なに守っていた本格派で平蔵に命の危険を救われた恩を返すため密偵となった。 身を引いた今でもその名は通った盗賊であった為粂八や彦十と並んで顔が広く、時には密偵となってると知らずに盗賊から助太刀を願われる事も。 後におまさと結婚。 ◆長谷川辰蔵 平蔵の長男。目白台の私邸にいない平蔵に代わり私邸を守っている。 …はずなのだが忠吾と似たり寄ったりの遊び好きで、剣術道場に通っているがなかなか腕が上達しない。アニメ版では道場をサボっていたと思しき描写がある。 だが終盤では成長し、父の部下を道場で鍛えたり大捕り物の極秘切込み部隊に召集される等一人前の剣士となった。 甘い物好き。 ◆久栄 平蔵の妻。長谷川家と久栄の実家は隣同士で、平蔵は結婚前から久栄のことを知っていた模様。 平蔵を支えながら部下の面倒も見てくれる良き妻。 いざと言う時には自ら薙刀を手に悪党を斬るという女傑ぶりを見せる事も。 ◆お順 平蔵・久栄夫妻の養女。盗賊の野槌の弥平配下の娘で、ある同心が夫を盗賊と知らず殺めてしまった母親と共に面倒を見ていた。 しかし面倒を見ていた同心と母親が死んでしまった(*7)ことで天涯孤独となり、平蔵夫妻が引き取った。 原作では次第にフェードアウト、漫画版では平蔵の腹違いの妹夫妻に引き取られたが、アニメ版では初回から最終話まで清水門の役宅で無邪気に過ごす姿が描かれている。 【テレビドラマ・映画化】 いつの世にも、悪は絶えない。 その頃、徳川幕府は「火付盗賊改方」という特別警察を設けていた。 凶悪な賊の群れを容赦なく取り締まるためである。 独自の機動性を与えられた、この火付盗賊改方の長官こそ、長谷川平蔵。 人呼んで、「鬼の平蔵」である。 1969年から2016年まで4回ドラマ化を経験している。この数字は平蔵を演じる役者によってカウントしたもので、テレビスペシャルの放送回数と連続ドラマの回数を通算したものではない。 八代目松本幸四郎版 丹波哲郎版 萬屋錦之介版 二代目中村吉右衛門版 特に八代目松本幸四郎は池波正太郎が作中での鬼平のイメージの構築に松本幸四郎を考えていたのもあり、当たり役として評判になった。ちなみに八代目松本幸四郎は二代目中村吉右衛門の父親であり、親子で同じ役を演じたという稀有な事例である。 なお映像化にあたり、原作にないものは作らないという取り決めが原作者との間でされており、中村吉右衛門版が原作全てを映像化した2001年の第9シリーズを最後にシリーズは一旦終了。 その後はファンの要望で散発的にテレビスペシャルが制作される形で放送が続き、2016年12月放送の鬼平犯科帳THE FINALを最後に新作の放送を完全に終えた。 2024年に吉右衛門版に出演したこともある十代目松本幸四郎が主演となる新作映画の公開が決定している。 中村吉右衛門版はエンディングが非常に特徴的なシリーズで、ジプシー・キングスの「インスピレーション」をBGMに四季の庶民の風景を描くというというものになっている。 主要人物は一切登場せず、春夏秋冬に彩られた生活風景が映し出される。 穏やかな春に始まり、曲の盛り上がりに合わせて季節は夏や秋になり、最後は一年の終わりを感じさせる冬の風景と共に曲が終わり、エンディングも終わる。 時代劇に洋楽という風変わりな組み合わせだが、敢えてミスマッチな曲を当てることでBGMよりも映像を目立たせ、視聴者をその世界に引き込むという演出になっている。 映画は1995年11月に公開。キャストは当時ドラマが放送中だった二代目中村吉右衛門版と同じ。ゲストに藤田まこと、世良公則などを迎えた。 【漫画化】 ゴルゴ13で有名なさいとう・たかをの手によって1993年より連載開始。20年以上連載が続く長寿作品となり、2017年2月にめでたく100巻に到達。今も連載が続いている。 前述の通り、原作とは大きく展開を変えた話や鬼平以外の池波作品をアレンジした話も加わっている。 【アニメ化】 「鬼平」のタイトルで2017年冬アニメとしてテレビ東京系にて放送。 監督とキャラクターデザインに宮繁之、音楽に田中公平と川村竜、アニメ制作にスタジオM2を迎えるという豪華な布陣で、ストーリー中に食事が登場する時には食事専門の作画監督を立てるという気合の入れっぷりがなされていた。 アニメ公式HPに掲載されているインタビューによると、クリエイティブプロデューサーの丸山正雄氏は「困ったことに私は根っからの池波ファン、取り立てて鬼平ファンであり、相当なプレッシャーを感じた」と答えている。 キャスト 長谷川平蔵:堀内賢雄 長谷川辰蔵:浪川大輔 久栄:岩男潤子 お順:千本木彩花 おまさ:朴ロ美 木村忠吾:岡本信彦 相模の彦十:飯塚昭三 小房の粂八:細谷佳正 OPテーマ鬼平~江戸を走る~ EDテーマそして・・生きなさい歌:由紀さおり OPテーマの鬼平~江戸を走る~は近年のアニメ主題歌としては珍しいノンボーカルの曲。作曲・編曲は田中公平。 追記・修正改である!神妙にお縄につけ! △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 最近はまった俺にとってタイムリーな記事だ。時代劇版面白いんだがやたらと濡れ場が多いのは当時の風潮と規制の緩さなのだろうかw -- 名無しさん (2018-04-20 00 06 36) ドラマ版のEDテーマが非常にイイ曲なんだなこれが。インスピレイション、今でも耳に残ってる -- 名無しさん (2018-04-20 00 36 46) アニメ、面白かったなあ。二期やってほしい。 -- 名無しさん (2018-04-20 01 06 25) 史実では、日本初の刑務所(に該当する施設)を作った人なんだよね。あと、うちの親父の好きな時代劇 -- 名無しさん (2018-04-20 07 14 07) 悪人サイドにもちょくちょく憎めないキャラが出てきて切ないんだよなぁ~ -- 名無しさん (2018-04-20 08 20 22) アニメも低予算な作りながら丁寧で原作への愛を感じた。お順が娘として長谷川家にいるのは泣ける -- 名無しさん (2018-04-20 10 52 21) 剣客商売を最後まで読んだ後、原作2巻の「蛇の眼」を読むとやり切れないものを感じる。 -- 名無しさん (2018-04-20 14 58 27) レギュラーなのに大滝の五郎蔵の紹介はないの? -- 名無しさん (2018-04-20 15 40 15) 池波先生の造語のセンスは異常 -- 名無しさん (2018-04-20 16 05 41) 軍鶏鍋とそばが無性に食いたくなる作品 -- 名無しさん (2018-04-20 16 21 46) ↑藤枝梅安に比べると飯テロ度はこれでもまだマシというのが恐ろしい(個人差があります) -- 名無しさん (2018-04-20 18 22 12) え、無かったの?剣客商売無いの? -- 名無しさん (2018-04-20 22 21 08) アニメが好き過ぎて再放送もしっかり観てしまった -- 名無しさん (2018-04-21 11 37 54) 一本うどんというのが好きな話だった。でもうどんがすごい・・・。 -- 名無しさん (2018-04-24 09 57 33) 鬼平みたいな上司がほしい -- 名無しさん (2018-05-02 11 56 43) 葵小僧は実在した事件(平蔵が勝とう改め時の盗みのついで -- 名無しさん (2019-10-08 20 30 24) 一般的な時代劇(暴れん坊将軍、遠山の金さん等)での火盗はほとんどが悪役。独自の権限を笠に着て庶民をいじめる、ティターンズやアロウズみたいな扱いだった。そういう意味では火盗を人情深い善玉として描いた鬼平犯科帳は斬新な小説だったりする。 -- 名無しさん (2020-02-29 13 23 03) 男色一本饂飩だけ単独項目あるの草。確かにネタ回っぽさがある -- 名無しさん (2020-10-23 10 19 08) いまいち腑に落ちないのが「俄か雨」かなあ。部下とフリーな町の未亡人のいちゃつきを一喝して速攻普通の見合い結婚に持ってくって…。その後部下が未亡人に未練持つの怒るのは分かるが、そこは未亡人と結婚させろよという気が。 -- 名無しさん (2021-05-14 16 59 50) アニメ版をちょこちょこ観ていたけど、良作だった。ちなみ鬼平世界を地図に起こすと、事件が起きすぎで平面には収まらないらしい -- 名無しさん (2021-12-01 19 11 19) 中村吉右衛門さん、ご冥福をお祈りします。 -- 名無しさん (2021-12-01 21 30 48) 大塩平八郎に言わせると「長谷川平蔵は猟官に浮身をやつしていた小物」だった…というのだがそれだと小説の主人公にはならんのだわな。 -- 名無しさん (2022-08-12 12 22 50) ↑史実の長谷川平蔵は、公金を博打で増やしたりと色々不穏な行動が多かったので、同僚・上司からの評判は悪かったそうで。(大塩平八郎も与力だし)ただ部下や庶民からの評判は良かったみたい。あと若い頃ヤンチャしてたり、人足寄場作る辺りは一緒やね。ただ今から50年以上前、資料も殆どない時代にこれ程生き生きとした人物を創造する辺り、本当にさすが池波正太郎という他ない。しかもこの人の本、凄く読みやすいんだよね。 -- 名無しさん (2023-10-11 12 18 23) ↑博打って書いたけど正しくは相場でした。申し訳ない -- 名無しさん (2023-10-11 12 21 16) ↑2上司からの評判は悪いけど民衆からは人気の役人ってむしろ創作で受けやすい人物だよね -- 名無しさん (2023-10-11 14 00 09) ↑3ちなみに公金を相場で増やしたのは、元々予算が少なかったところに次年度更に減らそうとしたからやむを得ず行ったようで、上司の松平定信も了承した行為の模様。ただし松平定信以外の幕府の人間からは相当言われたらしく、松平定信が「長谷川が相場に手を出したことを批判する奴は多いけど、それ位やる奴じゃないと人足寄場なんて作れないよ」(意訳)って言ってたそうで -- 名無しさん (2024-05-02 12 01 33) 名前 コメント
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■はじまり 芝村 > 忙しいのう。 (9/15-21 55 49) 芝村 > マジオペ2は品薄でな。 (9/15-21 59 22) 芝村 > 結構作ったんだがダメだった。 (9/15-21 59 36) 芝村 > あ。そも小さいところでは扱ってないレーベルなんだけどね。 (9/15-22 01 48) 芝村 > Aマホはそこそこいけてそう。 (9/15-22 02 25) 芝村 > Aマホのキャンペーンもやらないとな。 (9/15-22 04 26) 芝村 > たかと使ってソロAマホを作るかのう。 (9/15-22 04 54) 芝村 > あ。発売直後で地方は殲滅。今大きな数を入れた都市部の大手のみだね。動いてるのは。 (9/15-22 06 26) 芝村 > うん。ソロ。一人でもできる奴。 (9/15-22 07 41) 芝村 > Amazonはどうかな。かなり数いれてくれてはいたけど、在庫切れるだろう。 (9/15-22 08 23) ■マジオペ 芝村 > まあ、マジオペはそういう意味でみんなありがとうというところさ。 (9/15-22 09 06) 芝村 > まるで阪の生活ゲームだ 堂々巡り。 (9/15-22 09 54) 芝村 > アラタのモデルはakiharuだからな。そりゃもう誰も切れないわけさ。カマキリですらな。 (9/15-22 11 36) 芝村 > 別に秘密にしてないぞ。シュワのモデルはシュワだ。 (9/15-22 12 58) 芝村 > そして現れるBGENZ。 (9/15-22 13 37) 芝村 > 冗談だ。BGENZ出す前に出さないといけないやつがいる。 (9/15-22 16 05) 弓下嵐@土場 > そういえば、ガンブラの方はモデルになったプレイヤーとかいるんでしょうか? ハマーさんがJAMさんというネタは聞いたことが… (9/15-22 14 40) 芝村 > ガンブラもいるね。 (9/15-22 16 24) 芝村 > ひみつ。 犠牲者 (9/15-22 17 43) ■今日のアイドレス 芝村 > まあ、それはさておき、アイドレスの国情報出すよ。10国 昨日出た国以外。 (9/15-22 17 22) 芝村 > ・になし藩国 天気奇妙 上昇気流  気温18度 国民が不安そうに空を見上げている。 (9/15-22 27 32) 芝村 > ・よんた 天気晴れ 北の風 気温20度 稲刈りの準備のため国家動員の長期休暇。ゴールデンウイークというらしい。 (9/15-22 29 33) 芝村 > ・星鋼京 天気雨 北の風 気温12度 秋の寒い雨。国民は家の中で手料理を食べている。 (9/15-22 32 21) 芝村 > ・フィーブル 天気晴れ 南の風 気温30度。国境付近で難民に紛れた自爆テロ多発。難民締め出しで国境がにわかにきな臭くなる。 (9/15-22 35 50) 芝村 > 難民はキノウツンだね。 (9/15-22 40 36) 芝村 > ・キノウツン 快晴。気温38度。南の風。戦闘は収束した。平穏な状況だが攻撃予告が相次いででている。 (9/15-22 39 57) 芝村 > BC兵器はすでに無毒化した。簡単なものだった。 (9/15-22 41 12) 高原 > Q 攻撃予告はどこかの名義で出ていますか? (9/15-22 42 34) 芝村 > 予告名義はでていない。 (9/15-22 43 47) 風杜神奈@暁の円卓 > 難民を出す事自体が目的ですか…… (9/15-22 42 40) 芝村 > 風杜の読みは正しいように思える。 (9/15-22 44 18) 芝村 > FVB 天候、温度、風不明。宇宙でクーリンガンのゾンビ艦隊出現。戦闘開始中。 (9/15-22 44 32) 芝村 > 今はFVBで対応してるが直ぐに応援が集まるだろう。 (9/15-22 46 19) 芝村 > 神でないクーリンだね。これは (9/15-22 46 43) 芝村 > 隕石落としはじめてるな。 (9/15-22 51 11) 芝村 > まあ。地上に落ちる前にどうかしよう。是空砲は使えないがm手はある。 (9/15-23 04 46) 芝村 > リワマヒ ところにより雨。気温30度。沈んだ家を漁礁にして国民は釣りをして魚の他猿を釣ってる。 (9/15-22 50 27) 芝村 > 猿食べるんだっけ。あの国。 (9/15-22 51 30) 芝村 > 世界忍者国 晴れ。気温20度 同国に多い空き家にて疫病発生。緊急対応中 (9/15-22 57 43) 芝村 > 空き家が多いのはかつて最小国民数を割ってそこから完全回復に至ってないせいだね。 (9/15-23 02 19) 芝村 > ・暁の円卓 奇妙な天気 上昇気流 気温22度 グリンダ、隕石切りの準備。 (9/15-23 01 12) 芝村 > レベル的には小宇宙と同程度だった。 (9/15-23 02 54) 芝村 > ということで、国情報は以上でした。以下次号。 (9/15-23 06 32) ■個人質疑 沙子@FVB > Qs すみません、FVBの国民の数が以前より目に見えて減っていたりしますか? (9/15-23 06 52) 芝村 > Asそういうことはない。 (9/15-23 08 06) 猫野和錆 > Qwa1:世界忍者国さんの疫病に関してですが、前回と同様、自動対応で様子を見たほうがよさそうでしょうか? (9/15-23 07 13) 芝村 > Aw1 そうね。取り敢えず様子見で。 (9/15-23 08 50) ■国情報続き 芝村 > 詩歌藩俺の発言が蹴られてるみたいならもう一度コピペしようか。 (9/15-23 42 24) ■個人の部 芝村 > ・カール 今日は非番で家の掃除をしている。キノウツン情勢のテレビをちらちら見てる。猫二匹を背中や肩にのせてるねえ。 (9/15-23 48 45) 芝村 > ・厚志 涼州でパン屋見習いをやっているね。 (9/15-23 50 40) 芝村 > ・真新しい墓の前にとよたろうが立っている。若宮はどう声を掛けるか迷っている。 (9/15-23 53 29) 芝村 > ・久藤百佳 生物兵器実験場で99連勝中。開発は順調だ。 (9/15-23 55 53) 芝村 > ・八神少年 人知れず隠れて石像になってる。KBNだけが居場所を知るようだ。いたずらされないように隠されたらしい。 (9/15-23 57 55) 芝村 > まあ、土場の国民は半端ないからな。美少女に作り変えたりはする。 (9/15-23 58 59) 芝村 > ・奏一郎 俺は石になるかもしれないからと毎日焼肉食べているが一向に石になる気配はない。 (9/16-00 01 23) 芝村 > そろそろメタボになるんで怒ってもいい。 (9/16-00 01 41) KBN@土場藩国 > だがちょっとまってほしい。メタボ化で評価が下がるので石化防止ではないのか? (9/16-00 03 21) 芝村 > は。確かにKBNが言ってることは正しい気もするがそれなら過度のダイエットでもいいはずだ。 (9/16-00 04 17) 芝村 > ・来須・A・銀河 キノウツン国境付近でゾンビを精霊手で浄化している。今囲まれた。 (9/16-00 03 24) 鷹臣@るしにゃん > Q臣:アンデットバスター持って邪魔にならないように援護にいけますか? (9/16-00 04 36) 芝村 > A臣 10マイル (9/16-00 05 35) 鷹臣@るしにゃん > r 先輩の邪魔にならないように、アンデットバスターを持って援護に行きます (9/16-00 06 32) 芝村 > OK 10マイル。派遣した。 (9/16-00 07 01) 芝村 > サクヤガミ 密林の木々の上を渡っている。下で何者かが蠢いているのを見たが、木が邪魔で上がってこれてないらしい。 (9/16-00 08 47) 芝村 > 子供に聞いたらほっといていいとのこと。何で絶賛放置プレイ中。 (9/16-00 09 41) 芝村 > 斎藤 煙草を吸ってナミ助に昔は私ももててたのよとか言ってる (9/16-00 11 47) 芝村 > 桜子 裕次郎に花を送っている。昔を思い出したか、砂漠の国を思った。 (9/16-00 14 40) 芝村 > ・くろじゃー 革ジャン着て特殊警棒持って新宿中央公園にて待機している。 (9/16-00 16 37) 芝村 > クロードRS (9/16-00 21 50) 芝村 > さておき個人の部終わり。 (9/16-00 22 28) ■個人質疑 久藤睦月 > Q睦 一応吏族2級なんですけど、権限を使って百佳さんのいる生体兵器実験場の場所は調べられますでしょうか? (9/16-00 11 32) 芝村 > A陸 調べられない。間違いなく非合法だろう。 (9/16-00 12 31) 戯言屋 > Qz:いやいやいや。なんで皇族になってるんですか? (9/16-00 16 24) 芝村 > AZ 君に知る権利はない。 (9/16-00 18 51) 久藤睦月 > Q睦2:この件を警察機関とか大法院に連絡して捜索して貰うことはできますでしょうか? (9/16-00 17 45) 芝村 > A陸2 いいんじゃね。 (9/16-00 19 23) 紅葉ルウシィ > Ql 先日教えて頂いた国の様子でテロが続いているようなので対策の政策を提出したいのですが可能でしょうか?URLはこちらになります。http //koyo.sevenspirals.net/seisaku/20120915_01 (9/16-00 20 46) 芝村 > Al ええ。 (9/16-00 21 24) 鷹臣@るしにゃん王国 > Q臣2:すいません、先輩先ほど囲まれてましたけど無事でしょうか… (9/16-00 22 43) 芝村 > A臣 以下次号。 (9/16-00 23 18) 久堂尋軌@世界忍者国 > Q久堂:受付を使用し、国民と清掃作業を行うことで藩国の疫病を防ぐことはできますでしょうか? (9/16-00 23 15) 芝村 > A久 まあ、まて。清掃でまた疫病が広がるんで慌てずマテ。 (9/16-00 24 03) とよたろう > Qt:すいません、お墓はどなたのでしたでしょうか (9/16-00 24 49) 芝村 > あt 猫のみかん (9/16-00 25 21) #とよたろう > ♯おおう、リアルにいなくなった姉の猫がみかん…… (9/16-00 27 35) ■世界忍者 疫病対策 桂林怜夜@世界忍者国 > QL 芝村さん、藩国の部隊を疫病対策に動かせないでしょうか? (9/16-00 10 39) 芝村 > AL いや、まだそこまでじゃない。何せ空き家だ。被害の広がりも遅い。軍隊出すほどではない。 (9/16-00 18 13) 芝村 > まあ。空き家に家畜とかホームレスがいたんだろうな。死んで腐って大変なことに。 (9/16-00 21 03) ■百佳さんの捜索r 久藤睦月 > はい、では r 警察機関・大法院に通報して百佳さんの捜索を要請します (9/16-00 23 20) ■タイツマン 芝村 > で。タイツマンの用事とは。 (9/16-00 24 50) タイツマン > 立ち位置のご相談をしたいなーと(笑) (9/16-00 26 30) 芝村 > まあ、テロ予告にはよく、r ダガーマンと書いてあるな。 (9/16-00 26 46) 芝村 > 被害はどこまでも増える。とも。 (9/16-00 27 07) 芝村 > 紅葉国でもキノウツンでも。かつてダガーマンが出てきたところばかりだな。 (9/16-00 28 04) 芝村 > どう考えても罠だろJK (9/16-00 28 55) タイツマン > 芝村さんとりあえず過去と同じ感じで。 (9/16-00 33 23) 芝村 > ま。やり口から考えてクーリンガンとその親友かなぁ。 (9/16-00 34 18) 芝村 > 是空の弱いところをよくついとる。 (9/16-00 34 55) 芝村 > まあ、タイツマンの対応は分かったが、あくまで影だ。誰かは表にいかねば。 (9/16-00 37 54) 芝村 > Jamもおるかな。 (9/16-00 35 55) 高原 > ああ。それで走り回ってるのか>KBN (9/16-00 36 39) ■来須さん 芝村 > 来須しんだあと誰をいかせよう。 (9/16-00 38 14) タイツマン > 来須が死ぬ前に僕が行きますよ(笑) (9/16-00 38 34) 芝村 > タイツマン隠れるというたやん。 (9/16-00 39 01) タイツマン > タイツマンなら「顔のない人」でしょ? 影から支える程度の簡単なお仕事で。……やっぱ隠れなきゃダメか??? (9/16-00 39 56) 芝村 > そうね。まだ一時間半ある。 残り (9/16-00 39 30) ■B缶 弓下嵐@土場 > (B缶がいる以上、私がいっちゃうと距離がまた・・) (9/16-00 39 25) 芝村 > うまいね。缶の得意なところをよういかしてる。 (9/16-00 40 21) ■個人質疑2 ポレポレ > Q:防空レーダーなどに、になしとかで確認された奇妙な空絡みの反応ってあったでしょうか。 (9/16-00 40 16) 芝村 > あ それは質量爆弾。隕石落としだよあ はい。 (9/16-00 41 03) 高原 > Q:ゾンビが復活してるのってたぶん神様がいないのと関係ありますよね? (9/16-00 40 19) 芝村 > A はい (9/16-00 41 18) ■来須さん救出・ゾンビ対応周り 芝村 > さよなら、さよなら 遠い冬 もうすぐここは来須の墓場。ダガーマンの良心の終着点 (9/16-00 42 42) 芝村 > 小宇宙仕事してもいいかも。 (9/16-00 43 36) 鷹臣@るしにゃん王国 > Q臣3:鷹臣は到着してますか? (9/16-00 43 15) 芝村 > A3 あと1時間20分 (9/16-00 44 02) 鷹臣@るしにゃん王国 > Q臣4:白い帽子を先輩に譲渡して所有者への加護(強制イベント)いけますか? (9/16-00 43 45) 芝村 > A臣 出来ない。 (9/16-00 44 46) 鷹臣@るしにゃん王国 > Q臣5:出来ないのは所有者への加護」が= ,,生死判定で失敗したことを一度無効化する。だからでしょうか? (9/16-00 46 40) 芝村 > A5譲渡可能な距離にいない (9/16-00 47 29) 鷹臣@るしにゃん王国 > Q臣6:先ほど「残り一時間半」が0:39で「到着まで1時間20分」が0:44だったのでぎりぎり到着譲渡は可能ですか? (9/16-00 49 27) 芝村 > A6 ぐるぐるするのはわかるが、まあ、小宇宙やはるの手並みを信じてもいいだろ。 (9/16-00 50 47) はる > qh:現状どういう状態か不明ですが、たしか騎士で汗血馬に乗ってる状態だった自分が来須を1ARで拾って1ARで離脱するのは有りですか? (9/16-00 45 07) 芝村 > Ahありだけど。 (9/16-00 45 45) 芝村 > ありだが、その場合ゾンビが嫌がらせを開始する。国民にね。 (9/16-00 46 25) 高原 > 待った、ムラマサ使うにしても国境付近だといろいろ問題が出るぞ (9/16-00 47 52) 小宇宙@キノウツン > ゾンビの外見ってどれ位かな… (9/16-00 48 41) 芝村 > ゾンビはー5くらい (9/16-00 49 08) 芝村 > 美少女ゾンビは居ない模様 (9/16-00 49 42) サク@携帯 > どうして神様いなくなったんですか? (9/16-00 46 02) 芝村 > 誰かサクに教えてあげて (9/16-00 46 51) サク@携帯 > 既に出ていたらすみません、今調査されているのでしたっけ… (9/16-00 47 21) 444@akiharu国 > 世界の終わりが近づくと、神様やオーマは眠りにつくのです。>サクさん (9/16-00 47 38) 久珂あゆみ > Qk AR+5の箒で途中でたかおみさんを拾ってかけつけつつ 援護はできますでしょうか(アンデッドバスターあると違うかなと (9/16-00 50 07) 弓下嵐@土場 > Q:評価マイナスってことは、空き缶転がしてデスナンバーで葬るのが一番の気がしますが、現状としてB缶が出てくる以上無理って危険って理解でいんでしょうか? (9/16-00 50 43) 芝村 > 仮に蘇っても二度しねば同じだ。 (9/16-00 51 09) 芝村 > まあ、デスナンバでも箒でもいいが。これまでのパターンを忘れるなよ。敵は必ず同時にくるぞ。 (9/16-00 52 30) 海法 > まぁゾンビの群れくらい、対処する方法はたくさんあるわけだけど、懸案なのは、どんな罠がしかれてるかですわな。 (9/16-00 52 10) 芝村 > おそらくFEGにもきてるはずだ。鍋にもきてるくらいだから。 (9/16-00 53 08) サク@携帯 > 鍋にも… (9/16-00 53 42) 芝村 > ゾンビの罠は爆発だろ。ころしても足止めしても逃げても爆発。難民巻き添え。殺したらダガーマンをなじるだけ。 (9/16-00 54 30) 芝村 > 爆発を防ぐのは難しい。そういう枝ないので。 (9/16-00 56 29) 芝村 > といことでそろそろ解散するか。 (9/16-00 56 53) 芝村 > まあ、みんな頑張ったよ。 (9/16-00 57 13) はる > では :聖騎士+汗血馬のはるが、コスモを後ろに乗せ、来須を救出。同時にコスモはゾンビにメンチをきる。 (9/16-00 57 19) 芝村 > OK はるはr でいいかい。10マイルだけど (9/16-00 58 01) ポレポレ > *精霊使いの特殊無効化能力 = ,任意発動,対象の特殊1つを無効化できる。 これを来須さんがもってると思うので、これで自爆止められないでしょうか (9/16-00 57 28) 芝村 > 一体はな。だから敵はまとまってきた。 ポレポレ (9/16-00 58 46) ■はるさんのr: はる > ではr:します。 r::聖騎士+汗血馬のはるが、コスモを後ろに乗せ、来須を救出。同時にコスモはゾンビにメンチをきる。 (9/16-00 59 18) 芝村 > OK はるは走った。間に合え(間に合うんだけどな) (9/16-01 00 06) ■個人質疑3(ゾンビ疫病周り) 芝村 > ゾンビは対応法いくらでもあるが疫病はそうでもない。すでにわさびは打ち止め、アポロもやばい。 (9/16-01 01 58) つづみ > Qt ダメ元でお伺いしますが、ゾンビを掃除で排除とかできないですか? (9/16-00 59 49) 芝村 > At その能力は疫病で使え。 (9/16-01 00 36) 猫野和錆 > Qwa2:的外れかもですが、同時大規模治療(イベント)でゾンビ化された方を一度に治療したりなどはできないでしょうか? (9/16-01 02 34) 芝村 > Awa やめとけ (9/16-01 03 39) 芝村 > ターン更新でおそらくささきてつやが動く。その時次第。つづみ投入判断はそにあとかな (9/16-01 04 50) 暮里あづま@ナニワ > Qあ:「相方の秘密任務に気づく」の開示受取りで何か全体的な状況にかかわりそうな情報は出ますでしょうか? (9/16-01 04 44) 芝村 > いいえ (9/16-01 05 13) 結城由羅@世界忍者国 > Qy:受付で、国民と協力して疫病対策をおこなう、で対応は可能でしょうか? (9/16-01 04 54) 芝村 > AY やめとけ 国民が病気になる。そこは国民抜きで (9/16-01 05 59) 花陵ふみ@詩歌藩国 > Qか:自分、蛇の僧侶のアイドレス着てます。PCですが、蛇の僧侶でゾンビの浄化できますか? (9/16-01 05 29) 芝村 > Aか そういう特殊があればできるよ。 (9/16-01 06 39) 花陵ふみ@詩歌藩国 > お返事ありがとうございます。そういう浄化の特殊はついてませんね。 (9/16-01 09 10) 芝村 > じゃあ、取り敢えず様子見かな。プロモとか手はあると思うけど、そこまでマイル使わないでもいいかな。 (9/16-01 09 59)芝村 > 花陵 (9/16-01 10 32) 芝村 > ま。ゾンビはあちこちから出る。昇ゾンビとかこよみゾンビとかいつ出てもおかしくはない。 (9/16-01 08 28) 芝村 > できるよ。 由羅 いいアイデアだ。 (9/16-01 09 02) 戯言屋 > 有刺鉄線で移動阻害させてゾンビのAR切れるまで放置プレイとかはダメなんだろうか。 (9/16-01 10 45) 芝村 > 難民は? 戯言屋 (9/16-01 12 12) 紅葉ルウシィ > Ql2:疫病やゾンビの対策を コイ(アイテム)の特殊の”水に由来する問題が発生したとき、コイを根拠にしてその広がりを阻止する(なかったことにする)。”で行えませんでしょうか?(水由来という証拠が挙がってないので強引ですが) (9/16-01 12 08) 芝村 > Al2 行えない。水由来ではないl (9/16-01 13 13) ■十五夜さんのr: 結城由羅@世界忍者国 > r:藩国部隊の「陣地構築(知識):33」を用い疫病の元になっている家の排除を図ります。なお、難易度によりましては連合国の羅幻さまからも協力をいただくよう手配をさせていただきたく(ハスターさんからありがたいお申し出をいただいております) (9/16-01 13 40) 芝村 > ということで、結果は明日にでも。ではではー (9/16-01 13 41)
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出雲かなみは今、泣きたい気持ちになっていた。もしかしたら泣いていたかもしれない。 目の前で、全裸の男が喘いでいる。 彼は自分の「中」を愉しんでいるのだ。 別に無理矢理というわけではない、かなみは目の前の男を知っている。 それは、見た目はハンサムで、好きだった筈の夫。 だが、お互い年齢が30となり、結婚生活も3年目となった今、かなみは目の前の男がそれほど魅力的に思えなくなっていた。 そして男は絶頂を迎える。 かなみはそれに対し、喘ぐ。喘ぐ演技をする。 そうしないと夫出雲セロイドはずっと繰り返すのだ。 面倒となった営みを終えたかなみは、二人の体液がついたシーツを洗う。 シーツに関しては大体がセロイドが洗う事になっていたが、今、セロイドは床に転がって眠っている。 仕事で疲れたのだろう。「やろう」と言い出した時は既に夜10時を回っていた。 「はぁ…」 なんでこんな男といるのか。かなみは疑問に思った。 始まりは10年前、まだ大学生同士だった二人は、7年もの交際を得て結婚した。 神崎かなみはここで出雲かなみという名前にかわり、これから幸せな家族を築いていく物だと思っていた。 だが、半年もたたないうちに、出雲セロイドという男の駄目なところが見え始めてきた。 7年も付き合っていた。お互い良い所も悪いところも知り尽くしている。そう思っていたかなみはまだ、若かった。 かなみは大学卒業後「デュエルドーム」と呼ばれる、デュエル専門のスタジアムのウグイス嬢始めた。 そこで彼女は、泣き、苦しみながらも、今では立派なウグイス嬢チームのリーダーとなっている。 そんな彼女は大学時代よりも大人になった。そして精神的に落ち着き、自分の状況を客観的に見れるようになり、彼女は気付いた。 そういえば私、セロイドに「ありがとう」と言われたことがない。 というより、セロイドが他人に感謝の気持ちを伝えたことが一度も無いのである。 例えば、彼が財布を落とした、それを拾ってくれた人を見て、セロイドはふんだくるように財布を取った。 彼はそのまま立ち去るもんだから、代わりに自分がその人にありがとうと伝えた。 当時はセロイドという人間は感情表現が苦手だと思っていたから、照れてるのかと思った。 だが、一度「感謝を伝えない」人物だと考えだすと…過去の彼の言動がいちいち引っかかるのである。 セロイドはかなみの事を好いているらしく、二人はよく一緒に出かける。 しかし、セロイドはデート中、誰にも感謝の意を伝えない。 ついでに言うと人とぶつかっても謝らない。 セロイドの代わりに、かなみはありがとうとごめんなさいを繰り返していた。 自分が好きな人間は、30にもなって感謝も謝罪もできない男なのか。 そうなると、セロイドという人間が途端に情けなく思えた。 考えが渦を巻きながらも、彼女はシーツを洗濯機に放り込む。 眠っているセロイドを見て、かなみは思った。 「私達、そろそろ潮時ね」 幸いにもセロイドと自分の間に子供はいない。最初は欲しかった筈なのに。 彼との関係を切るのなら今しかないだろう。 かなみという女は、セロイドのような人間に引っかかる割に頭の回る女である。 そして同時に行動が早い。 彼女は翌朝、セロイドが出かけてすぐさま、父親に電話をする。 「私、セロイドさんと離婚するわ」 父は自動車整備業を営んでいる。…今はもっぱらDホイール整備業だが。 しかし、父は娘の決断を喜んだ。彼はセロイドをあまり評価していなかったからだ。 だが、娘が決めたことだと我慢していた。しかし離婚を口にする程追い詰められていたとは…。 「分かった、今からトラックを回す」 父親はそれ以外何も言わなかった。寡黙だが、感謝と謝罪はできる男だ。 それと同時に必要最低限の事以外言わない。 かなみは自分の父親が少し苦手だったが、それを改める時が来たのかもしれない。 父との電話がついた後、自分の荷物を纏める。 通帳、携帯電話、パソコン、そして… 「…ずっとしてなかったな、デュエル」 セロイドは若い世代には珍しく、デュエルをしない人間である。 本人曰く「結構多いよ、子供っぽいし」という事である。 かなみも子供っぽいとは思われたくないので、デッキは封印し、自分の部屋に隠していた。 「今じゃ通じないかな…お触れホルス ブラスターや征竜と組み合わせれば…いけるかな?」 デュエルドームに勤めている彼女はデュエルの知識はある。だが、ここ最近デュエルはしていない。 離婚が終わったら、またカードショップに行こう。 そう決心して彼女は荷物にデッキを潜り込ませた。 昼ごろ、父が来てから大きな荷物を運ぶことにした。 父以外にも整備士の人が何人か来てくれた。 そこまでしなくてもいいのにといったかなみに「社長の娘さんだ!遠慮するな!」と言ってくれる整備士の皆。 ありがとう、かなみがそういうと、整備士達は笑って作業に入った。 化粧台、机、炊飯器に電子レンジ、それに…。 「これも持って行くぞ」 父は怪力を駆使し、嫁入り道具のタンスを運び出す。勿論中身もそのままだ。 更に冷蔵庫と電磁調理器、鍋の類も運びだした。 多少やり過ぎではないかと思ったが、しかし父にそれを聞くことはできなかった。 何故なら父は、激怒していたからだ。 言葉には出さず、誰に当たり散らすわけでもないが、しかし彼の周りには覇気があった。 もしここにセロイドが帰ってきた場合…セロイドは殴られるだろう。 しかし、娘を苦しめた馬鹿な男は何も知らずに仕事中だ。 そして仕事先に怒鳴りこむような事は彼は決して行わない。 だから彼は、セロイドの家から殆どの物を運び出したのである。 そして全ての荷物がトラックに積まれた時、時刻は16時を回っていた。 かなみ達はそのまま「出雲家」を後にした。 ただ 緑の紙だけを置いて……。 その頃。 「いやっはっはっは!出雲くんの冗談は面白いな!」 とあるビジネスビルの中で、ヤクザ「デュエル極道・双葉皐月組」の安田修造は上機嫌だった。 彼は安田修夜の父であり、今年52歳になる。 立派なひげを携えているが、作業服の下は歴戦の傷と鍛えられた肉体が存在していた。 デュエル極道・双葉皐月組も、表向きは一般企業である。 そしてその企業はいくつもの子会社を持っていた。安田はそんな子会社の一つのビルメンテナンス会社に来ていた。 「冗談じゃないぞ、これは本当の話だぜ」 そんな安田と話しているのは、出雲セロイドその人である。 彼は上司にも馴れ馴れしく話しかける。 顔はハンサムだが身長が低く、少なくともビルメンテとしての腕はそこそこのため許されている。 最も修造、いや、会社自体が言葉使いを気にしない社風でもあるが。 そして彼を含め、殆どの会社員はこの会社がヤクザの資金源になっていることを知らないで働いている。お客も同様だ。 そしてセロイドは、意外な事に上司や年上には好まれていた。 彼は、馴れ馴れしいが口は上手く、その話術は上司達の笑いの種になっている。 反面、部下や年下に対しては異常な程厳しい。 特に経験のない人間に対しては無視と文句を繰り返す有り様だ。 能力のない上司なら、セロイドのその「強きに媚び、弱きを挫く」性格に気付かないだろう。 だが、安田は甘い男ではない。 「…その話、もっとうちの若い奴にも聞かせてやれ」 「嫌ですよ、あいつらに聞かせて変な噂になったら困る」 ふぅ~むと安田は言う。そして彼は続けてセロイドの次の行動を予想する。 その予想は見事に当たる。 「っと、そろそろ立会の時間だな 行ってきます」 立会の時間まではまだ10分近くある。しかし彼はそそくさとコートを着て、事務所を出て行く。 それを見て、「若いやつ」後輩が慌てて彼の後を追った。 …立会には、セロイドと後輩が一緒に行くことになっていた。 だがセロイドは若い奴に声をかけるまでもなく一人で行こうとした。 彼がどうしてそのように、後輩や年下にそのような態度を取るのかはわからない。 先輩として厳しいつもりなのだろうか? しかしあんな事をされれば、仮にセロイドの言う事が正しかろうと反感を買うのは必死だ。 本人も若ければそれでいいだろう。だが彼はもう30代だ。 だが、「まだ30」だ。十分に間に合う。 彼が上司に対して媚を売る性格を直すのならば…。 安田はセロイド以外の人間にも話を聞くことにした。 「沢加味」 「はいっ!なんでしょうか!」 沢加味部長。セロイドの直接の上司に当たる人間だ。 元気は良いのだが多少ワーカーホリック …「働いている時間が長いほど良い人間」と思い込んでいるタイプだ。 「あの出雲の態度、どう思う?」 「…そうですね、後輩が彼と打ち合わせをしていません、そりゃあ出雲くんも怒るでしょう」 「後輩の方が悪いと?」 「ええ せっかく出雲くんも腕は良いんだから、もう少し仲良くしてほしいものです」 あの調子で仲良くしろと無理難題を言う。 こいつは出雲に煽てられて、彼の下にいる若い奴らの悲鳴が聞こえていない。 訴えても「もっと上手くやれ」とか、抽象的な事しか言わない。 こんな男が部長をやっているこの会社だ。売上が落ちているのも必死だろう。 安田が黙ったところで沢加味は続ける。 「大体あの後輩言葉使いが悪すぎますよ、どんな育ちをしたのか知りませんが 横柄さも感じます。それで仕事ができるのなら良いのですがそんなこともなく」 「それをどうにかするのがお前の仕事だろ!!」 安田は怒鳴る。部長は調子の良い事と、他人の批判しか言わない男だ。 だが、出雲と後輩たちの仲を取りまとめられるのは、立場上この男しかいない。 その男が具体的な案も出さず単に相手と仲良くしましょう等と言っているのだ。 しかし、怒鳴られた部長は理不尽なことを言われたかのように不満な表情を露わにし、そして言う。 「…いくら僕でも、宇宙人と出雲くんをコミュニケーションさせるのは無理ですよ」 「全部他人の仕業か」 「…だからぁ!あの後輩はこの社会に出てきてはいけない奴だったんですよ! 出雲くんも!コミュニケーションがちょっと下手で…」 「もういい、君は部長の器じゃないことはわかった」 沢加味の顔が歪む。 安田はそんな彼に反論の隙を与えない。 「借りにもし相手が宇宙人としても、日本語を理解はできるのだろう? ならばいくらでも手段はある。それをしないのは部長として怠慢だ。 そして全てを他人の仕業にして自分の保身を守ろうとする人間はここにはいらない。 …どうやら改革が必要なようだ」 安田はヤクザだ。だが、少なくともこの沢加味よりかは人情や仁義はあるつもりだ。 そして彼らは決して責任を他人に押し付けない。 何故なら自分の失敗やミスは、自らの身体を傷つけ死に至るからだ。 …ヤクザグループの会社とはいえ、平和な世界にいる彼らにそこまでは言わないが しかし沢加味の態度では平和な世界では考えられない紛争か死を呼ぶだろう。 そうして警察に目をつけられれば、双葉皐月組の活動にも支障が出るだろう。 だがそれ以上に、沢加味の態度が安田には気に食わない。 「社長にも話をつける必要があるな…」 狼狽し何事かを言っている沢加味を尻目に、安田は社長の方に向かう。 社長は双葉皐月組の幹部でもある。そして彼は不正を見逃す性格ではない。 だが、彼以外に双葉皐月組の人間はいない。 そんな彼の下で、沢加味や出雲みたいな奴らが不正を隠し、媚び諂っている。 ヤクザより質が悪い。だがそれも今日までだ。 安田はそう決心し、…デッキを用意した。 社長と話し合うのは、沢加味やセロイドと話すより簡単だ。 デュエルをすればいい。 それさえあれば、例え相手が「宇宙人」と言えどもコミュニケーションが取れるだろう。 その頃、セロイドは激怒していた。 後輩が業者の近くで邪魔をしているからだ。 最も後輩は単に近くにいるだけで、邪魔にはなってはいないのだが…セロイドにはそう見えた。 既に業者側の手違いで予定の時間を大幅に過ぎているのも怒りに火を注いだ。 そしてその業者の邪魔を後輩がしているように見える。 後輩としては業者の手伝いと見学の意味があるのだろう。 だが出雲にその理屈は通用しない。 彼にとって自分より何かが下であれば単なる足手まといなのだ。 そしてそんな足手まといをつけた社長に対し、恨みを抱いていた。 そしてセロイドは後輩にその事を言おうとした。 業者の邪魔をするなよ と。 だがそれは言えなかった。作業中の現場の上に、巨大なドラゴンが現れたからだ。 「あれは…ホルスの黒炎竜!」 後輩のその言葉に、セロイドはすかさず突っ込む。 「なんだあれ お前のおもちゃか?」 「いや…私のじゃないです」 「は?意味わかんねぇんだよ」 実を言うと、この日二人が会話を交わしたのはこれが最初である。 だが、後輩はセロイドを無視して、デュエルディスクを構える。 「仕事中に何おもちゃで遊んでるの」 「出雲さん!作業は中止だ!」 そして業者として来ていたブラック・サイクロプスもまた、ディスクを構える。 ホルスは二人のデュエリストを無視して、セロイドに向かって炎を吐く。 それを防いだのはサイクロプスの遅すぎたオークであった。 オークは遅いが、敵の攻撃の迎撃はできる。相手のホルスはまだ幼体のレベル4だ。 「サイクロプス!!」 「先輩方は出雲さんを!!俺はこいつを片付ける」 「わかった!気をつけろよ!」 業者たちはそういうと、セロイドを抱えてその場を去ろうとする。 だがセロイドに向かって更にホルスが突撃してくる。 「デュエルモンスターズなのに、ルールに乗っ取る気もないのか…」 後輩はそう言いながら、血の代償を発動させる。 デュエルモンスターズが出るということは、近くにデュエリストがいる…筈だ。 そうじゃないとすれば一体何かはわからないが、今戦える力を持つ以上、戦わなければいけない。 「お触れをされる前に…」 後輩はマドルチェ・マジョレーヌを召喚する。 それをみてセロイドは叫ぶ。 「なんだその弱そうなのは…」 口調は静かだ。彼は声を荒げるタイプではない。 だが、その小さな声には確実に棘があった。 本来なら後輩は黙っていただろう。だが、自分のモンスターを馬鹿にされて黙っているデュエリストはいない。 「うるさい!!あのホルスは確実にお前を狙っている!! 黙って見ていろ!!!」 「な……あぁ?」 「そいつの言うとおりだぜ出雲さん!!素人はすっこんでな!!」 「…お前ら、次の仕事はないぞ」 自分に対し、失礼な物言いだと出雲は思った。 彼は混乱したが、すぐに「一連を、この後輩が仕組んだこと」だと思い込む事にした。 そうすることで冷静さを保つのだ。全ては他人が悪い。 こうすることで、彼は自分のプライドを守った。 業者が遅れたのも、急に変なのが現れたのも、業者が「暴言」を吐いたのも、全て悪いのは…。 「俺は自らの命を削り…マジョレーヌを3体出す! そして召喚するのは、マドルチェ・ティアラミス!!」 女モンスターで遊んでいるこの後輩だ。 だが、彼の召喚したその女王は、強大な竜を押し返す。 「やるじゃねぇか!俺も負けてられねぇ!! 俺もその血の代償!使わせてもらうぜ!!」 サイクロプスは作業服を脱ぎ捨て、ジャイアント・オークとゴブリン突撃部隊を召喚、そしてリリースする。 強大な攻撃力を持った偉大魔獣ガーゼットを召喚する。 お触れホルスは魔法と罠を防ぐ強力なデッキだが、モンスター効果は防ぐことができない。 そしてホルスの群れは一瞬で駆逐された。 だが、セロイドは決して感謝の言葉を口にしない。 「なんだアレは」 「デュエルモンスターズだな」 後輩は敬語を捨てた。 「遊びかよ」 セロイドはそう吐き捨てる。 何もかもが彼にとって不愉快だ。 「お前のせいだろ」 そして後輩に文句を言う。 だが、後輩はどこ吹く風… 彼はセロイドを「無視」することにした。 「サイクロプスさんですか…パワーあふれるデッキですね」 「おう!俺のガーゼットは無敵だぜ!」 「無視すんなよ」 今まで自分はさんざん後輩を無視してたくせに、自分が無視されることは我慢ならない。 セロイドの言葉は短いが確実に毒を含んでいる。 しかし、彼の言葉は誰にも届かない。彼はデュエルをしないからだ。 だが、後輩とサイクロプスには絆が生まれていた。 ルールに則っていない乱雑な、モンスターのぶつけあい。それでもタッグデュエルを行った事に変わりない。 「…今日は禁止だな、サイクロプス」 業者仲間の一人がそういう。 「意味不明」 その言葉にセロイドは吐き捨て、彼は一人で車に乗ってその場を去った。 後輩を置き去りにして。 セロイドは事務所に帰るなり、部長に「後輩が邪魔をして業者が怒って帰った」と嘘の報告をする。 沢加味部長もその言葉を信じる。二人にとって後輩は、共通の敵だ。 「それはいけない 解雇だな」 「お願いします、部長」 そしてセロイドはそのまま直帰した。 こんなにイライラしたのは久しぶりだ。 しかし彼には妻がいる。彼女は気持ちがいい。あの後輩の顔も忘れられる。 だが、家に帰って来た彼が見たものは…蛻の空の自宅だった。 「!!!!!!」 彼は初めて表情を歪ませる。 愛する妻がいない。 冷蔵庫も机も、何もない。 それだけではない、ガスも電気も水道も止められている。 「はあ!?」 声を裏返して叫ぶ。 ローンが後30年残っている自宅は、まるで引っ越す前のように何も残っていない。 彼は部屋を見る。そこにも何もない。 …かなみの父は、結局家にあるもの全てを持っていったのだ、慰謝料代わりに。 「かなみ!!」 叫ぶ。妻の名前を。 彼は妻のことが好きだった。子供の頃から。 向こうは覚えていないが、彼は小学校時代からかなみを好んでいた。 そんな彼女を手に入れた時、セロイドは自分がこの世の王になった気がした。 いや、自分は王なのだこの世界の。 今は糞みたいな奴らに媚を売っているが、それも今だけの我慢だ。 そして立場に劣る奴らが自分に逆らう事は考えられない。 彼は王のつもりだ。だが彼は王でもない。 彼はリビングにおいていた緑の紙を見つけた。 離婚届。その言葉を読んだ瞬間、彼は吐き気を覚えた。 ……そんな彼を守る者は誰もいない。 自分より弱い奴らに文句と無視を繰り返した男は、助けられたことにも気付かず彼らを恨んでいた。 ホルスはそんな馬鹿を逃さない。 「ふあ?」 変な声を上げる。立会の時に見たモンスターが、窓の外にいる。 後輩は、ホルスを操っているデュエリストがいると推理した。しかしそれは間違いだ。 …ホルスが自ら意思を持ち、セロイドを殺そうとしているのである。 そいつは大きく口を開け、炎を吐いていた。 セロイドはそれを見て、何かを叫ぼうとしたが、高温の炎に包まれてそれも叶わない。 しかし彼は簡単には死ねなかった、灼熱の中、内臓という内蔵が破裂する感触を感じながらセロイドは苦しんだ。 苦しんでセロイドは死んだ。そして彼は灰となった。 自らのマスターを苦しめた男を焼きつくしたホルスは、満足したように炎となって消えた。 (この辺りで何かを感じたのだが……) 出雲セロイドが灰となり「行方不明」になってから数日後。 天下谷神茂は事件となった出雲家に来ていた。 武神が亀井戸信太郎を殺害した事件以降、彼は自らの目的のヒントを得ていた。 デュエルモンスターズを使った 人間の殺害。 サイコデュエリストとはまた違う、誰にも使えそうなその力。 しかし、結局手がかりは得られなかった。既に死体は灰となり、埃となっていたからだ。 (こいつのいた会社も潰れたし、何かがあるのは間違いないんだが…) しかし神茂はなんの手がかりも得られなかった。 セロイドが何もないこの家に住んでいる事も疑問に思ったが。 (せっかくの非番の日をフイにしやがって…) 神茂はそう愚痴ると、その家を後にした。 そしてセロイドの死の真相は、謎のまま迷宮入りとなった。 「沢加味!!言ってたマット、用意したか!」 元部長沢加味は今、屈辱を感じていた。 セロイドが行方不明になった事で会社に警察の調査が入り、そのまま会社は倒産となった。 彼は45歳。再就職に多少梃子摺ったが、新しい職場に何とかありつけた。 それはデュエルドームの作業員だ。 「遊び」のために働くというのが、彼にとって一つの屈辱だが、それは問題ではない、問題は。 「すみませ~ん 忘れてました~」 沢加味はわざとらしく言う。 彼に命令したのは、かつての後輩だからだ。 デュエル知識も持っている後輩はデュエルドームの就職をさっさと決め、今は前線で働いている。 沢加味部長は彼の部下となった。勿論その事は彼にとって屈辱である。 だから彼はわざと失敗を繰り返した。自分はお前のせいで苦労した、だからお前も同じ苦しみを味わえ。 しかし、後輩は部下の失敗に非常に寛容な性格であった。 「ま、慣れてないから仕方ないな、一緒に運ぼう」 その笑顔に沢加味は更に屈辱を感じる。 相手が全く気にしていないのと、それでもまだ自分に作業をさせるということに。 だが、再就職は難しい。 彼は一生彼の下で屈辱を感じ続けるだろう。心を入れ替えない限り。 沢加味の失敗はあったが、それでもスタッフの努力でデュエルドームは営業される。 「今日のプロデュエルの予定は!」 出雲…いや、神崎かなみは、明るい声でウグイス嬢を務める。 彼は今実家で衣食住の世話になっている。 行方不明になったセロイドが自分の前に現れないか…そうは思ったが、不思議と不安はなかった。 ホルスが守ってくれる。そんな感じがしたからだ。 ひと通り名前の読み上げを終え、マイクを切ったかなみの後ろから、後輩のウグイス嬢が登場した。 「かなみ先輩」 「ん?どうしたの?」 「この後第二会議室で会議みたいです」 「そう、ありがとう」 ありがとう。彼女は自然にそう言った。 セロイドにはそのサラっとしたありがとうが出せなかった。 …もう忘れよう。私は生まれ変わったんだ。 そして彼女はデッキを持ち、放送席から離れた。
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トゥルーデ誕生日SS 今日は3月19日。 一月や二月と違って外を歩いても石畳みから寒さは浸透してくるわけでもない頃合いだ。 地中海とはいえ冬というとフィレンツェでは降雪があったりと、いろいろと想像しにくいこともある。 しかし三月なので基地から離れた所に位置するロマーニャの市街ではすでに軽装な人もいるし、陽気に道端で会話をしている人もみかける。 そんな中俺は、宮藤芳佳、リネット・ビショップ、シャーロット・E・イェーガー、フランチェスカ・ルッキーニ、エーリカ・ハルトマンの一行ととともに街へと足を運んでいた。 何をしに来たかと言われれば当然明日のことに備えるためにきたわけだ。 明日の3月20日はゲルトルート・バルクホルン大尉の誕生日。 ここにきているのはそのためである。 軍のトラックを拝借して、シャーリーの運転ではだめだというリーネがいったので、自分が運転を申し出たのだ。 そしてここに到着したという状況である。 芳佳「それじゃあどうしますか?」 エーリカ「各自散開だ!適当に好きなものを買ってこよう」 シャーリー「それでいいな。じゃあ三時までにこの喫茶前に集合な」 ルッキーニ「シャーリー、あたしも一緒にいっていい?」 シャーリー「もちろんさ。あのカタブツにイイモノをくれてやろうじゃないか」ニヤリ リーネ「芳佳ちゃん、一緒にいこ」 芳佳「うん!いいよ!じゃあみなさんまたあとで」 そういうわけで各自いつもの二人組に分かれてぱらぱらと別方向に散っていった。 取り残されたのは俺とエーリカ。 エーリカ「一緒にいこうか、俺」 俺「そうだな。ここにいても仕方がないし」 エーリカ「じゃあまずはお菓子を買いに行かないと……」 俺「私用か。まぁエーリカについていくよ。俺はこれといってあげたいものがないからさ」 エーリカ「ダンベルでもあげたら?」 俺「確かに喜びそうだな……。まぁ何にしようか歩きながら考えるよ」 エーリカ「そっか、それじゃあいこ」 そういって俺はぱたぱたと小走りするかわいらしい悪魔のあとをぽてぽてとついていく。 くるくると回っては道端の芸道に目を囚われて、表情をコロコロと変える。 元気だな、と思いつつ頭をフル活動させ全俺勢力を結集し脳内会議をする。 いったい何をあげればいいのだろうか。 ~雑貨屋~ 俺「そういやエーリカはなにをあげるつもりなんだ?」 エーリカ「私?私は~、このぬいぐるみとか!」 俺「うん、似合わないな」 エーリカ「わかってたけどね。まぁ私は秘密ってことで」 俺「常套句だな」 エーリカ「にしし、それが一番に思い浮かんだからまねされるわけにはいかないからね」 俺「それほどのものか。まぁ真似はしないけどな。でもいったい何にすればいいんだろうか」 エーリカ「昔は握力鍛えるやつあげてなかったっけ?」 俺「いや、さすがに今回はそういうわけにはいかないぞ……。あ~!!!人に真面目にプレゼントなんてしたことないからわからん!」 エーリカ「別に物じゃなくてもいいんだよ?」 俺「物じゃないって?」 エーリカ「つまり、形に残るものじゃなくてもいいんだよってこと」 俺「ふむふむ、それでもいけるのか」 エーリカ「トゥルーデが喜びそうなものでいいんだよ」 俺「クリスの人形とかあげたら喜びそうだ」 エーリカ「そうそう。あ、このお菓子おいしそー」 俺「ほらほら、なんでも籠にいれな。今日は俺が払うよ」 エーリカ「やった!じゃあこれとこれとこれとこれと!これも。あ、これも、それとこれも」バサバサバサ 俺「多すぎだろ」 エーリカ「男に二言はないよね~?」ニヤ 俺「こんなの絶対おかしいよ」 エーリカ「お菓子もジュースもあるんだよ。ほらトゥルーデのためだよ、トゥルーデのため」バサバサ 俺「……もう何も怖くない」 雑貨屋で恐ろしく大量にお菓子を買わされ、さらにはトラックまで運ばされた。 最後にありがとー、といって笑顔を見せてきたので許したが、エーリカの旦那になる人がこうやってコキ使われるのだろうかと思うと不憫でな らずに涙したのは内緒だ。 時間は進み、時計はすでに三時を占めていた。 あのあといろいろ店をまわってプレゼントを探していろいろと買ってみたのだが。 ちょっと値段に恐怖したが、トゥルーデの笑顔を想像して即決で購入を決めたのだ……。 はたして喜んでくれるだろうか。 もう一度赤い日が差す夕暮れの中黒い排気ガスを出しながらトラックを運転し基地へと戻った。 そのあとエーリカの言葉を思い出しピンと頭に閃いたことがあるので、それを実行するためにも急いでハンガーへと向かった。 その前に執務室で、飛行許可をもらって、と。 ブリタニアへ出発、ロマーニャからだと最短で1900kmほどのはずだから……音速でいけば標準大気中で1225km/h。 ブーストを使えば一時間半ちょいか。途中で休憩もいれていけば大丈夫か。 行き帰りの往復で約6時間と多く見積もって……明日までには楽に帰ってこれるだろう。 ~501基地、朝、ハンガー~ 俺「うぐあ……魔法力使いすぎた」 整備兵「おら、コーヒー」 俺「ありがとよ。さすがにブリタニアまで行ったら疲れるな」 ~回想~ ブリタニアへストライカーユニットを使って向かった。 場所はとある病院。トゥルーデの妹クリスティアーネのいる病院だ。 部屋をノックしてドアをあけて入室する。 クリス「えーと……俺さん?」 俺「そうそう、俺だよ。覚えてたのか」 実はトゥルーデと非番が被った日、連れ出されてクリスに紹介されたことがあったのだ。 一方のクリスは困惑していたようだが、話しているうちに多少なかよくなった。 そのつもりだが。 俺「今日はトゥルーデの誕生日なんだが、クリスティアーネはこっちにくることができないしさ、何かできないかと思ってな」 クリス「あ、そうだったんですか。じゃあこれお願いできますか?」 俺「プレゼント?」 クリス「はい!お姉ちゃんへのプレゼントです」 俺「わかったよ。あ、でも暇だったらここから連れ出してトゥルーデのもとへと連れて行ってもいいぞ」 クリス「それはさすがに病院の方に怒られてしまうので……」 俺「わかった、ちゃんと届けておくよ」 クリス「俺さんこんなところまでありがとうございます。どうしようかなと思ってて」 俺「将来の義妹のためなら!」 クリス「ふふ、俺さんてば冗談うまいです」 俺「えっ?」 クリス「えっ?」 ~回想終了~ そういうわけでブリタニアからクリスティアーネのプレゼントを持って帰還。 帰りはブーストをかけて音速で帰ってきたのでジャケットがぼろぼろだ。 時間が来たので食堂へ、朝ごはんを食べに。 すでに全員集まっており俺が最後だった。 いつもの風景。 そしてこの後訓練との命令。いつもの命令。 ご飯をたくさん食べた後、もちろんお約束の訓練。 基地周り20周、滑走路50本、筋トレたくさん、坂本少佐と木刀での試合、飛行訓練、模擬戦、最後に基地回り20周。 すべてをこなした後、美しい夕陽が水平線へと垂れ下っているのを滑走路で横になってみていた。 俺「はぁ……はぁ……しんど」 バルクホルン「俺、終わったのか?」 俺「トゥルーデか、今さっきね」 バルクホルン「ふふ、ずいぶんとばててるな」 俺「あれは本当に鬼教官だな。もうあんまりうごけねぇ」 バルクホルン「今夜の晩御飯は宮藤が奮発してくれるそうだ」 俺「トゥルーデの誕生日だからだろ?また後でも言うけど、誕生日おめでとう」 バルクホルン「あ、ありがとう。だが歳をとるのはウィッチとしてはあまり喜ばしくはないな」 俺「歳をとるってことは、生きてるってことだよ。だから喜ばしいことだと思うけどな」 バルクホルン「ふふ、俺がそういうならそうなんだろうな」 俺「(今日はずいぶんと機嫌がいいな)」 バルクホルン「ほら、ここじゃあなんだから談話室でもいこうじゃないか」 夕陽をバックにすっと手を差し伸べてくるトゥルーデの手をとりぐっと起き上がる。 すべすべとした手が心地いいのと悪戯心で立ち上がった後もぎゅっと握ったままにしていた。 バルクホルン「お、おい!///」 俺「?」 バルクホルン「くっ……」 俺「ちょっとした悪戯だ、すまないな。ほら、基地へ帰ろう」パッ バルクホルン「あ……」 俺「どうかしたか?」 バルクホルン「い、いやなんでもない」 顔が赤くなっていたのでいたずらが過ぎたと思い手を離したが、一瞬だけ残念な表情になったのを視界の端で捉えた。 ちょっと気になって聞いてみるが、素知らぬふりをされてしまった。 そんな顔を見てほっておくほど俺はできない人間でもないので急いでトゥルーデへと近寄った。 驚くトゥルーデに少し気恥ずかしくも笑いかける。 俺「ほ、ほら帰るぞ」 バルクホルン「あ、ああそうだな!」 俺「基地の入り口までだから、な」 バルクホルン「わ、わかってるさ。まったく……片手が使えなくて歩きにくいな」 俺「そりゃ悪かったな」 バルクホルン「べ、別に悪くはない」 俺「トゥルーデは握力が強いな」 バルクホルン「あ、すす、すまない……。痛かったか?」 俺「いや、全然。それより、温かいよ」 バルクホルン「俺の方が、温かい」 俺「いやいやトゥルーデのが温かいよ」 バルクホルン「俺のだな」 俺「もうどっちでもいいや」 バルクホルン「そう、だな」 俺「……トゥルーデ、もう少し握力弱めてくれ」 バルクホルン「す……すまない……///」 俺「どうする?もう基地だぞ?」 バルクホルン「私はすでに力を弱めているぞ、俺が力をいれてるせいで離れないじゃないか」 俺「いや俺の方が力を抜いてるぞ。離さないのはトゥルーデのほうだぞ」 バルクホルン「みてみろ、私はこんなに力を弱めてるぞ」 俺「俺なんてもうありも潰せないほどの握力しか入れないぞ」 バルクホルン「お、俺が離さないのなら仕方ないな」 俺「よ、よく言うよトゥルーデ」 つながった影は表情はわからないものの、なぜかうれしそうだった。 つないだ手は基地についてからも廊下でペリーヌに見つかるまでしばらくそのままだったのは余談。 思う所、どっちも離そうとしなかったのは秘密。 談話室でエーリカやペリーヌ、エイラやサーニャたちと雑談したあと芳佳がご飯ですよと俺たちを呼んだのでがやがやと賑わいながら食堂へ向かった。 食堂に入った瞬間目を奪われる、テーブル上の豪勢な料理の数々に。 扶桑料理だけではないようだ、カールスラントの料理もいくらか混ざっている。 もちろん、定番の芋も。 リーネ「疲れた~」 シャーリー「うお~、すっげー。これリーネと宮藤が作ったのか?」 リーネ「あ、はい。うまくできているか不安ですけど」 ペリーヌ「さ、さすがですわね」 芳佳「えへへ、バルクホルンさんの誕生日ですから!」 ハルトマン「これ宮藤とリーネがトゥルーデのために作ったって言ったら卒倒するんじゃない?」 俺「ありうるかもな」 エイラ「うまそうダナ~」 サーニャ「主役がまだだから待ちましょう、エイラ」 エイラ「わ、わかってるぞ」 ざわざわと並べられた料理に声を立てる皆であったが、食堂に主役が入ってきた途端にぴたりと会話を一旦止める。 きょとんとするバルクホルンにぎゅっと全員が近寄る。 芳佳「バルクホルンさん!!誕生日おめでとうございます!!」 リーネ「おめでとうございます、バルクホルン大尉!」 バルクホルン「ああ、ありがとう、二人とも。この料理二人が作ってくれたのか?」 芳佳「はい!えっと、うまくできているかわかりませんけど」 バルクホルン「そんなことないぞ、きっとおいしいに決まっている!ありがとう、二人とも」 エーリカ「トゥルーデ誕生日おめでとう!いや~、また大人になっちゃったね~」ダキッ バルクホルン「お、おい離せハルトマン。ま、まぁありがとう」 エイラ「おめでとナー、大尉。これプレゼントだゾ」スッ サーニャ「おめでとうございます、バルクホルン大尉。私からも」スッ バルクホルン「ありがとう二人とも、プレゼント受け取らせていただく。しかし……エイラのこれはなんだ?」 エイラ「スオムスパーチっていうとても堅い木で作ったコップだゾ。スオムスじゃあ定番なんダ」 俺「(コップの横に扶桑語で小さく妹好きと彫られているのは仕様か……?どうせいたずらだろうが)」 バルクホルン「エイラにしては繊細なプレゼントだな」 エイラ「失礼ダナ……。まぁ壊れにくいから気兼ねなく使ってクレ」 バルクホルン「感謝する」 全員が食堂に集まる間に、トゥルーデにプレゼントを各々が手渡していた。 自分はというと部屋におきっぱなしであるが、別に忘れてきたわけではなく、後で渡そうと思っていただけだ。 正直こういうプレゼントというものを真面目にするのは初めてなので気恥ずかしい。 ミーナ「あら、みんなもうあつまってたのね」 ペリーヌ「さっきから皆さん騒がしいですわよ」 俺「みんな集まったな。ミーナ中佐はデスクワークでしたか」 ミーナ「ええ、毎日毎日疲れるわ、ほんと」 俺「胸中お察しできませんが、お疲れ様です。まだお若いですのに」 ミーナ「あら、厭味かしら?」 俺「そんな、本気ですよ。まだ、若い」 坂本「そうそう、バルクホルン、誕生日おめでとう。朝は言えなくてすまなかったな」 バルクホルン「ありがとう、少佐」 シャーリー「歳をとってカタブツ加減が和らぐことを祈るばかりだな」 バルクホルン「リベリアン、貴様はもう少し真面目になるべきだな。説教してやろうか?」 シャーリー「うへ~、こんな時までそれか~」 ルッキーニ「誕生日おめでとー!!」ダキッ バルクホルン「おわっ!」 芳佳「じゃあ皆さん座ってください~、ケーキもありますから」 俺「エーリカさんが手伝ってくださいました」 ペリーヌ「なんですって……?」 俺「盛り付けだけ」 ペリーヌ「安心しましたわ」 エーリカ「ちぇー、クリームとか作って塗ってみたかったよ」 シャーリー「でも盛り付けきれいじゃないか」 エーリカ「へっへーん、全部私がやったんだよ」 エイラ「ほんとカ~?このチョコで書いた文字もか?」 エーリカ「もちろん!あ、みんな信用してないな~」 リーネ「ほんとですよ。ハルトマンさんがバルクホルンさんのために何かやりたいって言ってきてくださってもがもんぐぐ!」 エーリカ「し、しゃべっちゃだめだよ、リーネ」 俺「トゥルーデのためにってそのチョコの文字を五回くらい書き直してたな」 エーリカ「もう!言わないでよ、俺」 バルクホルン「ふふっ、よくがんばったな。ありがとう、ハルトマン」 エーリカ「あぇ……、べ、別にいいけどさ……///」 エイラ「早くたべよう。冷めてしまうじゃないカ」 みんなに囲まれて気恥ずかしそうにするトゥルーデをみて自分もうれしくなっているのを感じる。 やっぱりトゥルーデにはこういう顔が似合うな、笑顔とか気恥ずかしそうな表情とか。 ほかには気難しくしてる表情を好きだ、個人趣味であるが。 古典的に電気を消しケーキにささったローソクへと火を灯す。 暗闇のなかを橙色の火がぼやっと絶え間なく燃え、周りを照らし、消されるのを今かと待ちわびるように揺れている。 俺「どうぞどうぞ」 バルクホルン「ああ。みんなありがとう」 そして息を吹きかけ、灯火をふっとかき消した。 同時に。 おめでとう(ございます)、と改めて基地中に響き渡るほど大きく祝いの言葉を贈った。 其の後、絢爛豪華な食事とともに美味佳肴なケーキを食べながら、愉快適悦な時間を過ごすこととなった。 楽しく騒がしかった食事も終わりを迎えた。今は日が過ぎようとする二時間前。 酔っ払ったものや、机につっぷくして眠ったものたちを抱えて部屋に運び込みベッドに寝かせたりしているうちにも時間は経ってしまった。 しかしやることもあるので自分の部屋に戻り放置しておいたものをポケットに入れてから部屋を出て、トゥルーデの部屋を訪ねる。 そしてほろ酔い加減のトゥルーデの手を夕方の時のように引っ張って、外へと連れ出した。 バルクホルン「お、おい、どうしたんだ?」 俺「ここらへんでいいか」 バルクホルン「なにかあるのか?」 俺「そうそう、あるんだよ。えっと……改めて誕生日おめでとう」 バルクホルン「それ聞いたぞ」 基地から外にでて明かりがぼんやりと顔を照らす場所で、トゥルーデに向き直って言い直す。 トゥルーデはなぜ俺が外まで連れてきたかをすぐ悟ったので、ふっと軽く笑って付き合ってくれる構えをしてくれた。 俺「空気を変えてってことだ。……ちょっと身長伸びたな」 バルクホルン「そりゃ、成長はするぞ。俺はもう止まったんじゃないか?」 俺「トゥルーデは160ちょっとだろ?それにプラス15cmぐらいが男はいいって言われるから。だから180ぐらい」 バルクホルン「ふふっ、だけど俺も昔の頃より大きくなったな」 俺「あの頃はトゥルーデより少し大きかったくらいだったな」 バルクホルン「ここに派遣されてきたときはあまりに変ってて気づかなかったぞ」 俺「男は毎日成長するっていうしな、そんなもんだ」 バルクホルン「私は……あの頃に比べて変わったか?」 俺「すごく変わった。月並みだけどきれいになった」 バルクホルン「言いすぎだ」 俺「事実だよ。そうそう、これ。プレゼント」 バルクホルン「こんなものまで用意していたのか……?」 俺「真剣になって誰かへのプレゼントなんて選んだことはないから……だめかもしれないけど」 バルクホルン「いや、ありがとう。俺が一生懸命選んでくれたものなんだろう、大事にするさ。開けてもいいか?」 俺「どうぞどうぞ」 外側は単なる茶袋だが中に入っているものはきれいな包装がされている。俺はぽりぽりと頬を掻きつつトゥルーデの反応をうかがう。 バルクホルン「これは、髪を結ぶ紐か?」 俺「そうだよ、今使ってるのもう古くなってるかと思ってさ。シンプルなのにしてみた」 バルクホルン「ふふ、ありがとう。しかしよく私をみてるな?」 俺「そ、それはおいといて次いこう」 バルクホルン「おい、なんだこの服は」 俺「トゥルーデに似合うかと思って。それはエーリカも一緒に選んでくれた」 バルクホルン「ド、ドレスって……」 俺「ミーナ中佐も赤いの持ってたからいいかもと思ってな。色の深い紺色を選んでみた」 バルクホルン「これ高かったろう……?いいのか?」 上目遣いのトゥルーデ、いったい何を気にしているのだろうか。 かわいいので頭をなでなでとしてやる。 俺「そんなこと気にしなくてもいいって。だからさ、また今度着てくれないか?」 バルクホルン「ああ、もちろんだ。に、似合わなかったらすまない」 俺「いや逆にドレスのほうが見劣りするかもな」 バルクホルン「俺は言いすぎだ///」 俺「あとこれ、クリスティアーネからのプレゼント。昨日ブリタニアにいってたんだ」 バルクホルン「だからいなかったのか……。というかあそこまで飛んで行ったのか?」 俺「ああ、最短コースを飛んで行ったよ。さすがに疲れたけど」 バルクホルン「よく帰ってこれたな。本当に、ありがとう、俺」 俺「誕生日おめでとうだってさ。いい妹だな~」 バルクホルン「自慢の妹だ。あとで部屋でみてみるか」 俺「また今度会いに行こうか。俺がいうのもなんだけど」 バルクホルン「ふふ、クリスは俺相手には緊張するようだぞ」 俺「俺のどこに緊張するって言うんだ」 バルクホルン「わからないが、あれじゃないか、やっぱりまだ知りあって日が浅いからじゃないか?」 俺「う~ん、根気がいるな」 聞こえるのは波音と木がささやく音、そしてトゥルーデの声。 トゥルーデをまっすぐに見据えてから優しく抱き締める、今日ずっとできていなかったことをまず初めにする。 俺「今日できてなかったから」 バルクホルン「落ち着くな、抱きしめてもらうと」 俺「トゥルーデはこうしてると小さく感じるよ」 バルクホルン「こうしてると俺が大きく感じる。温かいな」 肩におでこをぽんとつけてくるトゥルーデ。 やっぱり女の子だな、と思いつつさらに強く抱きしめた後ちょっとだけ軽く腕を解く。 すでに吐息が当たる距離、目を閉じるトゥルーデ、近づく唇。 そして口づけ。 バルクホルン「.....ん.....ぅむ.....ふちゅ......ン、ふちゅ......」 やわらかい唇をゆっくり丹念に味わっていく。 わずかに酒気が伝わってきて少し心地がいい、さらに貪る。 よだれが垂れることも気にせず、熱に浮いたように舌を絡ませなめあう。 舌の中央、わずかにくぼむところをずるっと舌でなめ上げるとトゥルーデの体がわずかにびくりとしたので執拗にせめてみる。 バルクホルン「んく.....ぅぁ.....お、おれ.......んちゅ......ん、ぁむ、ちゅ........」 トゥルーデがまたびくりと体を動かす。 しかしトゥルーデも負けじと舌を吸ってきたり甘噛みしてきたりしていることにさらにヒートしていく。 どのくらいの時間そうしていたかは知らないが唇を離したときトゥルーデの瞳はうるんでいるのをみてやりすぎたかなと自粛する。 俺「トゥルーデ、ニュルンベルグのうるわしの泉って知ってる?」 バルクホルン「はぁ……はぁ……あの金色の塔だな、知っている」 俺「よかった、ちょっと待っててね」 バルクホルン「?」 俺はトゥルーデをすっと離して魔法力を解放。 あの塔は昔に見たことがあり、さらに構造を記憶するほど気に入ったのを覚えているので、再現することができる。 もちろん魔法で。 俺「瞬間氷結……タワー、うるわしの泉。はっ!」ドガッ ピシシビキキキビキピキピキピキッ…… 数秒にして八角形の高さ17メートルの塔が出来上がる。 本物のように金色ではないが、基地から漏れてくる光を氷が中に閉じ込め反射している。 美しい氷の塔は二人の前にそびえ立ち、輝いていた。 俺「細かいところを調整してっと……。トゥルーデ、どうかな?」 バルクホルン「お、驚いたぞ。こんなに再現できるものなのか……芸術品じゃないか」 俺「能力限界はあるけど、これくらいならな。これについての話を知ってるか?」 バルクホルン「確か……願い事をしながら金環を三回まわしてその願い事を人に言わなければ叶う、だったか?」 俺「その通り。金環じゃないけど。なにか願い事したら……」 バルクホルン「ふっ、俺がかなえてくれるのか?」 俺「その通り。なんでもいいからやってきていいぞ。俺が全力でかなえるよ」 バルクホルン「なんでもか?」 俺「なんでも」 バルクホルン「じゃあ一つだな」 ―――………でありますように。 トゥルーデは氷塔に歩み寄り氷で作った柵にかけてある氷環をつかみ取って目をつむる。 そして俺には聞こえない声で何かをつぶやき環を三回まわし俺にぐっとふり向き直った、見とれるくらいの笑顔をともに。 「これは願い事じゃないが、俺、ずっと一緒にいてくれるか?」 俺はその問いに、ただまっすぐに答えた。 もちろんだと。なんでも叶えてみせると。 そのあと二人でそれを眺めながら基地で部屋から取ってきたワインとグラスで寄り添いながら二人だけの時間を過ごした。 翌日、エーリカとトゥルーデの提案によりみんなで一回、そして俺とトゥルーデで一回写真を撮った。 意図が全く見えなかったが、トゥルーデの部屋を尋ねたところ窓際に飾ってあったきれいな写真たてを見て納得したのだった。 なんだ、エーリカとクリスの誕生日プレゼントは一緒だったのか。 気持ちのいい、仲がよさそうな賑やかそうな写真が一枚。 そして。 全員の誕生日プレゼント抱えて、さらに紺色のドレスを着て立つトゥルーデとそれに寄り添う一人の男の写真。 どうやらトゥルーデの誕生日は成功のようだ。 こんな表情をしているのだから。 終わり