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錯綜する思春期のパラベラム(後編) ◆j1I31zelYA 「い、今ですっ!」 初めて聞く少女の声と足音が、バタバタと動き回る気配。 「光子、無事か!?」 「え、ええ……」 怪我をした右目に煙を当てられて、御手洗はしゃがきこんだ。 そばで光子が心配そうに肩をよせる。 “水兵”に、ある程度の戦う力はあれど自律思考は無い。 命令者である御手洗たちさえ視界の利かない空間で、複数の標的を補足することなどできなかった。 煙が晴れるのを待てば、その場からは標的の少女たちが消えている。 「逃げられた、か……」 「いいえ、あんな状態の杉浦さんを抱えながら走ることはできないはずよ。ほら……」 光子の指さした先には、最も手近なエレベーターがある。 閉ざされた扉の上で、階数表示が上の階まで上昇を続けていた。 「よし、追って仕留めよう」 「怪我はいいの?」 「視力に支障はないさ……それに、『惚れた女』にヘマばかりを見せていられないからね」 ◆ 御坂美琴と吉川ちなつから荷物を回収していたので、ディパックの数には余裕があった。 あとは、学校での『爆発』と同じやり口で御坂美琴の不明支給品を詰め込んで着火し、投擲したまでである。 「できれば、もうちょっと早く援護してほしかったけどね」 「すみません。『交換日記』だと救助者はすぐに動かせない様子だったので、管理室まで寄ってたら遅くなっちゃって……」 「まぁ、いいわ。カメラを潰してくれたおかげで、こうして隠れられたわけだし……あんたも、感謝しなさいよ」 「ありがとうございます……式波さん」 やっと酸欠から回復したポニーテールの少女が、返事をした。 吉川チナツと同じ制服から、座りこんだ床に水滴がしたたっている。 「ん? 確かにその名前で合ってるけど……ほら、その服だと水滴で居場所がばれるから、これでも着てなさい。急いで」 ミツコから名前を聞いたのだろうか、と自己完結しながら、ミコトの支給品だった洋服を手渡す。売り場から拝借したタオルもついでに。 スプリンクラーの放水でアスカたちも少しは水を浴びたけれど、“水兵”に飲まれた彼女は完全にぐしょ濡れだった。 渡された服が胸元の大きく空いたフリルドレスだったのを見て顔を引きつらせたけれど、文句を言わずに受け取る。 「借りがある知り合いって……吉川さんのこと?」 後ろでせわしなく衣服を脱ぎ着する音を出しながら、少女は尋ねる。 そんなことを尋ねたからには、御手洗との会話中も意識があったらしい。 「まぁね」 「……ごめんなさい」 「なんでアンタが謝るのよ」 「私……支給品で、吉川さんの居場所が分かってたのに ……放送に夢中で、ちゃんと見てなかったから……だから」 だから合流できなくてアスカたちを危険な目に遭わせてしまった、とでも言いたいのだろうか。 ばかばかしい。 そう思ったから、アスカは一蹴した。 「だから罪悪感を感じてますってこと? 助けられる資格がないって言いたいの? それってチナツを犠牲にして生きてるアタシに対する嫌味なの?」 「ご、ごめんなさい! そんなつもりじゃなかったの」 隣を見れば、初春カザリがこちらも表情を暗くしていた。 なので、続けて言う。 「ひとつ聞くけど。アンタ、もしチナツを殺したヤツが、改心して心の底から謝ってきたらどうするの? そいつが必至に罪の償いをがんばってても、絶対に許せないって復讐しちゃうわけ?」 「そ、そこまでは……会ったら怒るかもしれないけど、もし償いをしようって気持ちが本当なら、時間をかけて許したい……と思うんじゃ、ないでしょうか」 「やっぱりバカ。許せるなら、アンタが自分を許さない理由だって無いじゃない。 あ、ちなみにその『殺したヤツ』っていうのがここにいる初春カザリだから」 「は? え? ……えぇっ!?」 「そ、そうなんです! 悪いのはあなたじゃなくて、わた――」 「だーかーらー。そういうジメジメしたのは棚上げにしようって言ってんの。 今はミツコたちをどう切り抜けるか考える時でしょーが」 振り向くと、少女はちょうど着終えたところだった。両腕でもじもじと露出のひどい胸元を隠している。 さて、エレベーターは途中の階で降りたし、監視カメラは初春が潰している。 交換日記の予知にも異常はないから現時点では安全だが、あいつらに捕捉されるのも時間の問題だろう。 あの水の化け物からどう逃げ切るか、どう撃退するか。 非常階段とエスカレーターを上手く使ってひっそり脱出するか。 デパートにある物を使って戦うか。あるいは時間を稼いで救援のアテを探るか。 どっちにせよ、即席のトリオに『チームワーク』が求められようとしている。 これまでのアスカには必要のないものだったけれど、これから戦う相手は強大で得体がしれないのだから。 「そう言えば、あの男の眼……ちょっと前のカザリに似てたわね」 本性を露わにした御手洗たちのことを思い出し、アスカは既視感を覚えた。 【F-5/デパート/一日目 夕方】 【杉浦綾乃@ゆるゆり】 [状態] 健康(まだ少し濡れている) [装備] エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に、壊れた携帯電話 [道具] 基本支給品一式、AK-47@現実、図書館の書籍数冊、加地リョウジのスイカ(残り半玉)@エヴァンゲリオン新劇場版、ハリセン@ゆるゆり、七森中学の制服(びしょ濡れ) 基本行動方針 みんなと協力して生きて帰る 1:式波さんたちと協力して、菊地さんのところに戻る。 2:式波さんに、碇くんのことを伝えたい。 3:誰も殺さずにみんなで生き残る方法を見つけたい。手遅れかもしれないけど、続けたい。 [備考] ※植木耕助から能力者バトルについて大まかに教わりました。 ※携帯電話が水没して友情日記ごとダメになりました。支給品はディパックに入れていたので無事です。 【式波・アスカ・ラングレー@エヴァンゲリオン新劇場版】 [状態] 左腕に亀裂骨折(処置済み)、腹部に打撲 [装備] ナイフ、青酸カリ付き特殊警棒(青酸カリは残り少量)@バトルロワイアル、 『天使メール』に関するメモ@GTO、トランシーバー(片方)@現実 、ブローニング・ハイパワー(残弾0、損壊)、スリングショット&小石のつまった袋@テニスの王子様 [道具] 基本支給品一式×4、フレンダのツールナイフとテープ式導火線@とある科学の超電磁砲 風紀委員の救急箱@とある科学の超電磁砲、釘バット@GTO、スタンガン、ゲームセンターのコイン×10@現地調達 基本行動方針 エヴァンゲリオンパイロットとして、どんな手を使っても生還する。 1:ミツコたちをどうにかする。 2:スタンスは変わらないけど、救けられた借りは返す。 [備考] 参戦時期は、第7使徒との交戦以降、海洋研究施設に社会見学に行くより以前。 ※イングラムM10サブマシンガン(残弾わずか)@バトルロワイアルは燃え尽きました。 ※光子を捕獲する際に使ったのは、デパートの警備員室からもちだした包丁@現地調達です。現在はデパートの床に落ちています。 【初春飾利@とある科学の超電磁砲】 [状態]:健康 [装備]:交換日記(初春飾利の携帯)@未来日記、交換日記(桑原和真の携帯)@未来日記、小さな核晶@未来日記?、宝の地図@その他 [道具]:秋瀬或からの書置き@現地調達、吉川ちなつのディパック 基本行動方針:生きて、償う 1:杉浦さんを助ける。 2:辛くても、前を向く。 3:白井さんに、会いたい。 [備考] 初春飾利の携帯と桑原和真の携帯を交換日記にし、二つの未来日記の所有者となりました。 そのため自分の予知が携帯に表示されています。 交換日記のどちらかが破壊されるとどうなるかは後の書き手さんにお任せします。 ロベルト、御手洗、佐野に関する簡単な情報を聞きました。御手洗、佐野に関する簡単な情報を聞きました。 【相馬光子@バトル・ロワイアル】 [状態]:健康 [装備]:無し [道具]:基本支給品一式、、乾汁セットA(甲羅、シンジャエール、イワシ水)、おにぎり(毒入り)のお弁当箱@テニスの王子様、不明支給品×0~1(武器じゃない) 基本行動方針:どんな手を使っても生き残る。 1:獲物を始末する。 2:御手洗清志に奉仕し、利用する。 【御手洗清志@幽遊白書】 [状態]:全身打撲(手当済み)、右瞼に切り傷 [装備]:なし [道具]:基本支給品一式、ブーメラン@バトルロワイアル、ラムレーズンのアイス@ゆるゆり、鉄矢20本@とある科学の超電磁砲、水(ポリタンク3個分)@現地調達 基本行動方針:人間を皆殺し。『神の力』はあまり信用していないが、手に入ればその力で人を滅ぼす。 1:獲物を始末する。 2:相馬光子と共に参加者を狩り、相馬光子を守る。そして最後に相馬光子を殺す。 3:ロベルト・ハイドンと佐野清一郎は死亡したので、同盟は破棄。 4:あかいあくま怖い……。 [備考] ※参戦時期は、桑原に会いに行く直前です。 ※ロベルトから植木、佐野のことを簡単に聞きました。 ◆ ――宗屋ヒデヨシは、殺し合いに反抗する少年だ。 主催者とも戦えるだけの戦力を集めて、首輪を外して主催者の居所をつきとめ、ぶっ倒す。 そんな目標を掲げて、信頼できる仲間を集めようと会場を巡っていた。 転機は第一放送の後、ホテルで多数の参加者が集まった時に起こる。 多数の対主催派が集まっていた拠点を、ロベルト・ハイドンという危険人物が襲撃してきた。 皆はロベルトを迎えうとうと、協力体勢を取る。 殺すつもりなんてない。殺し合いに乗った人間だからといって、殺していい理由など有り得ない。 しかし、一行の中に裏切り者がいた。 殺し合いが始まった当初から行動を共にしていた少年――七原秋也だ。 七原は、冷酷なほどに合理主義の人間だった。 殺し合いに乗った人間は脱出派の障害だから殺すと宣言し、意見が対立したヒデヨシたちを、もう利用価値がないと処分しにかかった。 ロベルトに注意を向けていた不意をついて、仲間だった桐山和雄と赤座あかりを射殺。 そして動揺した仲間たちをロベルト・ハイドンの前にオトリとして放置し、一人だけすたこらさっさと逃げ出したのだ。 裏切られ、ロベルトの手によって全滅は免れないヒデヨシたちだったが、その場に残った仲間である佐野清一郎が奮戦する。 ロベルトを相手に時間を稼ぐと宣言し、盾となってヒデヨシだけを逃がすことに成功した。 ヒデヨシは涙をのんで、ホテルから続く坂道を走った。 七原はおそらく、新たに利用する集団を求めるつもりだろう。 ヒデヨシたちを騙した時のように、表向きは主催者に逆らう革命家を気取って。 信用を築いた相手を、潰し合わせる駒として利用するために。 七原には中川典子という相方もいたようだし、そういう知り合いの口からも七原を誤って信用した犠牲者がこれから増えるかもしれない。 さっきの放送では、佐野とロベルトの両者の名前が呼ばれた。 きっと、相打ちになってしまったのだろう……。 「じゃあ、お前の仲間でもう生き残ってるのは、植木ってヤツだけになっちまったのか……」 「ああ、ぶっちゃけそいつの消息を知りたくて、お前らと接触したってわけだ」 向かって右手には、なだらかな丘陵とその先にある海岸線。 左手にはきれいに整備させた人口の林道。 そんな遊歩道に建てられた東屋で、三人の男女が会話をしていた。 いや、紅一点である常盤は聞き訳で、しんみりとした会話を交わしているのは浦飯と宗谷ヒデヨシだった。 東屋の丸椅子にどっかと腰かけ、テーブルの上には、口を半開きにしたディパックを無防備に置いている。 その姿は一見するとくつろいでいて、人を簡単に信用する男のように見えた。 裏切られたばかりにしては甘すぎると思わないでもないが、それだけ七原という男は特例扱いなのかもしれない。 実際、浦飯は疑うのが苦手なのか、素直にその話を受け入れている。 しかし、常盤愛の方は別だった。 (おかしいよね……?) ヒデヨシの話には、違和感がぬぐえない。 七原秋也という名前には、聞き覚えがあったからだ。 『あの』中川典子の、彼氏。 彼女とともに殺し合いを共に生きのびた、絶対に信頼できるパートナー。 中川典子が目を輝かせて語っていたことを聞く限り、とても自分の保身を第一に考えるような人物ではなかった。 あの時は語られた七原像を『美化しすぎなんじゃないの』と否定したけれど、偏見を取り除いた頭で思い返してみれば、全てがお姫様の誇張だとは考えにくい。 しかも、ヒデヨシの話ではもう死んでいる中川典子だって怪しいと言う。 典子が人を利用して殺せる人間かどうかは、襲って拘束して脅迫までしたからよく知っている。 「そういうわけだから、お前らの探してる御手洗ってヤツには会ってねぇんだ」 「そっか。悪かったな。信用し合うためとはいえ、嫌なことまで話させちまって」 「気にすんなよ。辛いことがあったのは、そっちもみたいだしな」 むしろ、真実は逆だとすれば。 宗谷ヒデヨシこそが、七原秋也を裏切って殺し合いに乗っているとすれば。 七原秋也を悪人だと伝えるのは? 殺し損ねた七原が、宗谷ヒデヨシには気を付けろと伝えて回るかもしれないから。 中川典子のことまで信用できないと言い切ったのは? 典子が放送で呼ばれたのは、第二放送の時点だから。 とっくに中川典子経由で『七原は信用できる』という情報が出回っているかもしれないし、そうなれば悪評の真偽が疑われる。 ヒデヨシの話に出てくる人物が、『桐山和雄』や『赤座あかり』など、既に死んだ人間ばかりなのは? 死人に口無し。ヘタに生きている人間の名前を出せば、『その後そいつはどうなったんだ』と追究されてボロが出るかもしれない。 仮定だけれど、つじつまが合う。 「ところでよ、その御手洗ってヤツは、そんなにヤバい相手なのか? ロベルトみたいに、能力者だったりとか……」 「ああ、水さえあれば簡単に人を殺せるヤツだ。 もっとも、ヤツと戦ったのはオレじゃなくて桑原のヤローだけどな……」 「ぶっちゃけ、詳しく教えてもらっていいか? 聞いといて損はないだろうし――」 つつがなく進行する情報交換が、とても落ち着かない。 仮定が真実だとすれば、ヒデヨシは殺し合いに乗っていないふりをして、乗っている。 この瞬間も、情報を引き出せるだけ引き出してから浦飯たちを始末する算段をつけている。 しかし、ヒデヨシに向かって疑念をつきつけることはできなかった。 中川典子のことを説明すれば、どうなるか。 愛が犯したことを、避けて通れない。 ぼかして『中川典子と情報交換していた』だけでは、『中川典子の方が嘘をついている』で押し通される。 『人を殺すように脅す』という特殊すぎる対応をしたからこそ、殺し合いに乗る少女ではないと確信を持てている。 ヒデヨシの化けの皮を剥がす行為は、愛自身のそれも剥がしてしまう行為だ。 浦飯に、自分のしたことを、知られてしまう。 「そんなヤバい奴らと渡り合ってきたのかよ……浦飯って、強いんだな」 「強くたって、守れなきゃ意味ねぇよ。俺と知り合ったヤツも、もう常盤と秋瀬とお前ぐらいしか残ってねぇしな……」 「すまねぇ……ぶっちゃけ浦飯の方が辛いはずなのに。 オレは佐野と生きてるうちに合流できたけど、亡くなった後で見つける方が、辛いに決まってるよな」 だとすれば、どうすればいい。 保身を優先するなら、ヒデヨシが直接的な危害を加えてくる前に、浦飯の元から離れるべきなのだろう。 浦飯を見捨てて、自分だけ逃げる。 想像した瞬間に、ぞくりとする戦慄が全身を震わせた。 (アタシが……浦飯のことを、気にかけてる?) 見捨てると考えただけで、嫌悪感でたまらなくなった。 自分の方が置きざりにされるような寂寥感でいっぱいになった。 もう、誰かを気にかけるのも今さらなほど、手を汚しているのに。 まして浦飯は愛の庇護者でも居場所でもなんでもない、雪村螢子の大切な人で。 しかも、『女の子を脅迫して人を殺させる』なんて卑劣なことは、絶対に許さないようなヤツで―― ――なんだ。 気づく。 とっくに浦飯幽助のことを、いいヤツだと認めていたんじゃないか。 浦飯は、いいヤツだ。 殺されてはいけないヤツで、理不尽な目に遭ったし人も殺したけれど、救われるべき人間だ。 そんな心変わりなど知る由もなく、ヒデヨシは次の話題を切り出した。 「あの……これは、浦飯も大切な人を亡くしてるから、聞きたいんだけどよ」 喪った人間のことを思いだして、悲しい顔をする浦飯に向かって。 内緒話を打ち明けるように声をひそめて。 「滅多なヤツには言えねぇことだし、不快ならすぐに忘れてほしい」 言い訳のように前置きを入れて、尋ねた。 「放送で、死んだ人間を生き返らせることもできるって言われたよな。 アレをどう思った?」 ねぇ、神様。 いいかげん、うんざりしてもいいですよね? 「もし、優勝したら本当に生き返るとしてだな。そしたら――」 「また、なの?」 思わず、冷えた声が出る。 浦飯も同情するような顔はしていたけれど、やれやれと頭を掻いた。 「アンタが言ったことは、とぉーっくに通過してるんですけど」 「常盤、それはしょうがねぇよ。宗谷は放送で初めて『生き返る』とか聞いたんだから。 もっとも、オレも考えすぎて頭痛くなってきたところだけどな」 これまで、二人は『蘇生』に関する一連の出来事を伏せていた。 園崎魅音のケースや常盤愛自身のケースのようによけいな諍いを生みかねないし、何より浦飯たち自身さえ確信していない希望を餌のように示すのは悪趣味だったからだ。 しかし、こうなっては隠しておいた方がためにならない。 浦飯は、全てを話した。 過去に、蘇生に立ち会ったこと。 雪村螢子をはじめ、死んだ人間の蘇生を考えたこと。 園崎魅音に、できなかったらどうすると問われて悩んだこと。 常盤愛から、蘇生を前提で考えるのはおかしいと言われたこと。 「なに、いってんだよ」 ヒデヨシが、つりあがった太い眉の下にある大きな目をぎょろりと見開いた。 「生き返るって知ってて、選ばなかったのか?」 ワンテンポ遅れて、目だけではなく、口も開かれる。 冷静さも配慮も欠いた、言葉の羅列が流れだした。 「被害者が蘇生を望まない? それなら、加害者はどうなるんだよ。 オレの知り合いには、殺し合えって言われたら殺しちまいそうな奴もいるんだぜ? そいつらは、悪者にされたままなのかよ。だったら全部チャラにした方が、誰も傷つかずに済むじゃねぇか」 かっと、愛の激情に火がついた。 加害者の勝手な都合で、全員を生き返らせる。 それこそ常盤愛が、神崎麗美からそそのかされて、そして拒んだ考えだった。 しかも、殺し合いに乗っている可能性が高いヒデヨシがそれを言っている。 つまり、自分自身の罪を無かったことにしたいから、蘇生させようという意味にしか取れない。 怒りに任せて口を開く前に、愛は自問する。 これは、ただの逆ギレか? 感情に任せての愚考なのか? 違う、許せないからだ。心からの、答えだ。 浦飯がこんなヤツに利用されるのも。 保身のために、こんなヤツに利用される浦飯を黙って見ている、自分自身も。 だから愛は、叫んだ。 「アタシだって……アタシだって、最初は加害者だったのよ! 女の子を脅して殺せって命令して、間接的に何人も殺したんだから!」 認めよう。今なら認められる。 常盤愛は、ただの怖がりだ。 でも、怖がりには怖がりの意地がある。 傷つけられるのが怖いなら、知っている人が傷つけられるのだって怖い。 「アタシは、七原の彼女の中川典子って女に会った。 そいつはすっごくお人好しで、自分と恋人の保身のために、周りを利用するようなヤツじゃなかった。 あたしは自分の生き残りたさに、そいつを脅して人を殺してこいって言ったのよ。 男が怖かったからって、そんな理由で――」 ぶちまける。 自分のしたこと。男性恐怖症のこと。中川典子にしたこと。 道中で、逆恨みに近い感情から高坂王子らを襲ったこと。 越前リョーマたちの悪評を広めるつもりで、浦飯と接触したこと。 自分の知らぬ間に、中川典子への恐喝がたくさんの犠牲者をもたらしていたこと。 自分の汚いところ。理不尽だったところ。糾弾されたこと。 全部吐き出して、吐き出し尽くして。 目を丸くする宗谷ヒデヨシに、小気味よさを覚える。 そして、即座に問いかけた。 自分の価値観を、変えてくれた少年に。 「浦飯。あたしのことを、殺したくなった?」 同情は求めない。裁いてほしいワケでもない。結論を急かすつもりもない。殺されたって文句は言えない。 ただ、率直な感想を。 「いいや」 返答は、否定。 表情には、ありありと怒り。 「やったことは反吐が出そうだし、お前がやったって言われてもピンと来ねえとこもある。 これが、もし同じことをされたのが螢子だったら、オレは女でもテメェをぶっ殺してたと思う」 しかし、見つめてくる眼光は変わらない。ぐっと鋭さを増しただけで、そのまっすぐさは変わらない。 「でも、それはお前と死んだ奴らの間のことだろ。ここで白状したってことは、もう止めたってことだ。 オレに言ったことが全部ウソだったわけでもねぇし、それで常盤に態度を変える理由にゃならねーよ」 そう言い切るや、怒りが解ける。それだけで、いつもの浦飯に戻る。 どっと拍子抜けがして、体が一気に温かくなった心地がする。 なんだ、と内心でつぶやき、笑った。 こんなに簡単なことだったのか。 弱さを認めて、自分を見てもらう。 謝っても許されないことをしたかもしれない。 たった一人に認められただけで、現状が変わったわけじゃない。罪の重さに潰される末路は変わらないのかもしれない。 それでも、常盤愛を常盤愛として見てくれた人がいる。それだけで、こんなに心が違う。 「むしろ、テメェの方が気に食わねぇよ」 常盤の意思に呼応するかのように、浦飯が眼光を鋭くしなおしてテーブルの向こうを見据える。 「さも辛い目に遭ったような顔をして、何も悪くない連中を陥れて。 しかも、生き返りが本当なら殺し合いに乗ってもいいって考えらしいな」 見据える先には、額から汗を流しながらも、断固とした顔をする宗谷ヒデヨシがいた。 もはや開き直りと言っていいのか、ヒデヨシは反論する。 「証拠はあるのかよ。なんで情報が食い違ってただけで、乗ってたことにされなきゃいけねぇんだ。 生き返りの話にしたって、放送であんなことを言われたら誰だって気にするだろ? いくら殺すのがいけないことだって、それで皆が助かるなら――」 「いや……っていうかさ」 完膚なきまでにこいつの主張を粉砕する言葉を、愛は知っている。 浦飯が、教えてくれた。 「百歩ゆずって、みんな生き返らせてチャラにするとしても、殺し合いに乗る理由は無いよね?」 「は……?」 「だから、さっきも浦飯が説明したでしょ。浦飯も最初は、生き返りを期待してたの。 でも、優勝するんじゃなくて、皆で首謀者をぶっ倒してから生き返らせようとしたのよ」 晴天の霹靂とは、青空の下で雷に打たれるようなという例えだったか。 まさにそんな感じの顔に、ヒデヨシはなった。 「け、けどよ……! 首謀者をぶちのめしたりして、生き返らせてくれなくなったりしたらどうすんだよ」 「生き返らせて『くれなくなった』ら? ……アンタは、こんな最低のイベントを考えた大人が、ちゃんと約束を守ってくれるって信用してるの?」 ヒデヨシは、言葉を詰まらせた。 やはり、ダメだった場合のことは何も考えていなかったらしい。 「殺し合いを楽しむような連中が、殺し合いに乗せようとして『願いを叶える』って言ってきたのに賭けるのと。 主催者を倒せるだけの戦力が残ってるうちに皆で突撃して、無理にでも生き返らせるのと。 同じ可能性が低いでも、悪党の性格から考えて、まだ二つ目の方があり得ると思うんだけど」 「…………」 「それでもアンタが『殺し合いに乗る方がいい』って言うなら、それは『正しいから』じゃなくて、『自分の間違いを認めたくないから』って以外に理由が見つからないんだけど? アンタ、これでも殺し合いに乗る方が『正しい』って言える?」 「…………」 自分が正しいと思っている相手は、その論理の瑕疵を指摘されると窮する。 神崎麗美と交わした会話から、我が身をもって思い知らされたことだった。 相手が蘇生を『正しい』と信じているなら、その言い訳を取り除くまでのこと。 「よーく、分かったよ」 彫像のように固まって、うつむいていたヒデヨシが顔を上げた。 すっと、右手が半開きになったディパックの中に動く。 素早く引き抜かれたそこには、黒い鉄の塊が握られていた。 「他の参加者に、そんなことを漏らされる前に死んでくれ」 「テメェッ――!」 「やめなよ、浦飯」 逆ギレして襲い掛かってくるぐらいは、予想している。 しかも、他の二人は座っていたのに対して、愛は最初から立っていた。 だから、この時ばかりはもっとも早く動けた。 一挙動で、テーブルへと飛び乗る。右足を回し、振りぬく。 革靴のつま先が正確にヒデヨシの右手首を撃ちぬき、コルトパイソンを弾きとばした。 「だっ……!」 ヒデヨシが痛みにうめいて手首をおさえた瞬間には、既にして第二撃がととのっている。 最短で、まっすぐに、一直線に、前方に、足を放つ、ぶっ飛ばす。 テコンドーの蹴り技、その基本である前蹴り(アプチャギ)が、顔面を直撃した。 「ごっ……!」 猿顔の鼻筋に、蹴りがめり込む。その勢いのまま首をがくんとそらせて椅子ごと巻き込み、ヒデヨシは後方へと倒れ、地面をすべった。 浦飯が、初めて目にする常盤愛のテコンドーに目を丸くしている。 「と、常盤……?」 「勘違いしないでよね。自分でぶっ飛ばしたいから止めたんじゃない。 こんなヤツの命を、アンタがしょいこむことないからよ」 浦飯なら、もしかして血がのぼった拍子にまた殴り殺してしまうかもしれない。 そう思ったから、先に動いた。 人を殺しておいて、それを罪とも認めない。間違っていると指摘されても、さらに人を殺して上塗りするヤツ。 遅すぎる償いかもしれないけれど、こんなヤツを野放しにはしたくない。 何より、こんなヤツを放置したって殺したって、浦飯は救われないだろう。 「とりあえず気絶させてから、秋瀬のところまで連れていくわよ」 ヒデヨシが起き上がってこないかを警戒しながら、愛はヒデヨシを拘束すべくじりじりと距離をつめる。 むくり、とヒデヨシが顔だけを起こし。 愛と目が合って、笑みが浮かんだ。 とても卑屈そうな、しかし『してやったり』と言いたげな笑みが。 !? おかしい。なぜ笑う。 まるで、『計画通り』だとでも言わんばかりに。 常盤愛によってぶっ飛ばされることで、ヒデヨシがこうむる利益なんて―― 「お前ら!! オレの『仲間』に、何してんだあぁぁぁぁっ!!」 ――『木』が、常盤愛に向かって一直線に突進してきた。 「危ねぇっ!」 とっさに浦飯が飛び出し、愛を抱きかかえるようにして飛びずさる。 太くて茶色くてがっしりした、木の幹にしか見えないものが、 一直線にのびて常盤のいた場所を貫き、東屋の支柱に激突して止まった。 (なんで……!? 『逆ナン日記』の予知からは、ノイズが聞こえなかったのに) 携帯を露骨にチェックするような真似は避けていたけれど、未来予知のノイズには絶えず耳を傾けていた。 『逆ナン日記』では、遭遇する『男』のおおざっぱな印象しか予知できないけれど、 それでも出会いがしらに攻撃してくるほど強烈な印象の『少年』ならば、未来予知が変わらないはずない。 遊歩道ぞいのゆるやかな丘陵地に着地させてもらうと、背負っていたディパックのポケットから日記を取り出し、開く。 「何よ……これ」 宗谷ヒデヨシの“似顔絵”が。 携帯電話の液晶ディスプレイに内側から張り付けられ、日記の文字を塗りつぶしていた。 そして、予知には表示されていなかった少年が、ヒデヨシを介抱するように駆け寄る。 「ヒデヨシ、大丈夫か!?」 「植木っ! ああ、ぶっちゃけこれぐらい何ともねぇよ」 宗谷ヒデヨシの顔に浮かぶのは、安堵したような笑み。 芝草のような緑色の髪をした少年が、意思の強そうな両眼に怒りを宿して二人を見下ろした。 ◆ 携帯電話のディスプレイは、『液晶』という液体と固体の中間物質から構成されている。 液晶ディスプレイとひと口にいっても、『偏光フィルタ』『ガラス基板』『液晶』『光源』などのパーツに別れているのだけれど、詳しく内部構造を熟知している中学生はむしろ少数派だろう。 とにかく、それは何枚もの薄い板を重ね合わせて作られていることぐらいなら、ヒデヨシの知識でも覚えていた。 そして、“声を似顔絵に変える能力”を使えば、似顔絵を“どこにでも”貼り付けることができる。 情報を聞き出してから殺す上で、未来日記の予知は必要不可欠だ。 交渉が決裂するとあらかじめ分かっていれば、それより先に不意をつくこともできる。 かといって、会話を行いながらもチラチラと携帯を気にしたり、携帯電話から何度もノイズ音を出したりしていれば、相手が日記所有者でなくとも不審に思われてしまう。 では、どうすれば未来変化のノイズを防げるか。 ノイズ音が走るのは、未来予知が書き変わる時に、日記の画面に砂嵐が走るからだ。 ならば砂嵐が走る瞬間に、ディスプレイに別のものを上書きすればノイズは防げるのではないか。 ディスプレイの偏光フィルタに“似顔絵”を貼りつけて、未来予知を塗りつぶす。 ホテルから移動するまでの間に実験をして、効果があるかは確認した。 ディパックを半開きにしてテーブルに置くと、ディスプレイの角度を調節して携帯電話を内部に設置する。 ちらりと視線をうつむけるだけで、未来予知を読めるように。 そして、日記にノイズが走りかけた瞬間に、“似顔絵”でディスプレイのフィルターを上書きする。 ノイズが通過するだけの時間を置いてから“似顔絵”を消せば、変化後の予知はきちんと読める。 画面を書き換えただけで、日記が壊れたわけでも、未来予知が狂ったわけでもないのだから。 ついでに、常盤愛がこそこそとディパックに携帯電話を隠していたようだったので、そちらのディスプレイもあらかじめ“似顔絵”で潰していた。 たとえ未来日記と契約していても、予知が読めなければ意味がない。 交渉は、決裂した。 殺し合いで大切な幼馴染を喪った人物なら、上手く唆せば殺し合いに乗ってくれるかもしれない。 そう見込んでいたのが、裏目に出ようとしていた時だった。 無差別日記にはひとつの予知が表示される。 植木耕助が、時をおかずして駆けつけること。 ここから導き出される最善手はひとつしかなかった。 植木と浦飯たちを、協力させてはならない。 『全員が生き返る』と力説したところで、あの植木がそうそう殺し合いに乗るとは思えなかった。 だからその動向と生存とを確認して、ヒデヨシ自身の生還が絶望的になった時にでも、後を託せればいいと考えていた。 いくら植木でも、大切な仲間から『どうかオレを生き返らせてくれ』と頼みこまれてしまったら、無下にはしないだろう。 しかし、『殺し合いに乗らずに生き返らせる方法』を提示されてしまった。 『あの』植木なら、悪党の言いなりになって殺し合いに乗ってからすべてをやり直す方法と、 悪党をぶっ飛ばした後ですべてをやり直す方法とでは、どちらを選ぶだろうか。 考えるまでもない。 その選択肢がある限り、植木耕助は主催者の打倒を諦めないだろう。 ならば、浦飯たちの口をふさぐしかない。 時を同じくして、植木耕助もまた『探偵日記』を確認する。 しかし、日記所有者の予知をするという最強格の日記でも、死角はあった。 いや、それはすべての未来日記に共通する死角。 未来の行動を予知しても、その行動の意図を読むことまではできはしない。 かつて『探偵日記』を使った秋瀬或が、『雪輝日記』所有者の行動を読み切っていながらも『敢えて予知どおりに事を運ばれる』ことで出し抜かれたように。 植木耕助が、探偵日記によって宗谷ヒデヨシの居場所を知る。 宗屋ヒデヨシが、無差別日記によって『植木耕助がこの場にやってくる』という未来を知る。 知った上で、ヒデヨシは行動を決める。 図らずもその結果として、探偵日記にはヒデヨシの予知が更新された。 『ヒデヨシが日記を使って未来を変える。 [結果]ヒデヨシが、リーゼントの男と小柄な女の二人組に襲われる。 小柄な女の蹴りでぶっとばされる。』 そんな予知を見れば、植木は仲間を守るために突撃するに決まっている。 ◆ 「ヒデヨシ、大丈夫か!?」 「植木っ! ああ、ぶっちゃけこれぐらい何ともねぇよ」 そんな会話を聞いて、浦飯幽助はマズイと直感する。 おそらく植木は、仲間が殺し合いに乗っていることを知らないのだろう。 ヒデヨシにこれ以上のことを喋らせてはならない。 しかし、幽助たちが口を開こうとするよりも素早く、ヒデヨシは人差し指で常盤たちを指し示した。 「植木、こいつらは殺し合いに乗ってる! 手を組んで、乗ってないふりをして人を殺して回ってるヤバい奴らだ!!」 常盤が焦って、ヒデヨシを指差し返す。 「な……なに言ってるのよ!! 殺し合いに乗ったのも、先に銃を抜いて撃とうとしたのも、そっちじゃない!」 失言だった。 一瞬にして、植木のまとう空気が更なる怒りで熱くなる。 植木耕助にとっての宗谷ヒデヨシは、優しくて勇敢な少年だ。 ビビりなところもあるけれど、いざという時は命を賭けてでも大切な者を守ろうとする強い意思を持った友達だ。 面倒をみている孤児院の子どもたちから兄貴分のように慕われている、人望のある仲間だ。 「なに言ってんだ。ヒデヨシが、殺し合いなんかに乗るはずねぇだろうが!!」 『あの』宗谷ヒデヨシが、殺し合いに乗っている? 有り得ないを通り越して、想像するだに腹立たしい。 悪党が、仲間を陥れようとして口にする卑劣な虚飾にしか聞こえない。 さらに理由を足せば、植木には時間がなかった。とてもとても、時間がなかった。 どこかを一人で彷徨っている、杉浦綾乃を見つける。 綾乃を見つけ出して、同じく一人で行動している菊地善人を待つ。 二人を守らなければいけないからこそ、無差別に人を襲う者たちをうろつかせることなどできなかった。 それに、仲間を探すために、別の仲間が襲われているのを見過ごすことなんてできない。 だから今の植木にできる最善で最速の方法とは、一刻も早くこの2人を気絶させてからヒデヨシとともに綾乃を探し出すことだった。 「植木が来てくれたなら、もう百人力だ。『仲間』の結束の強さを、アイツらに見せてやろうぜ!」 「ああ!」 偽りの結束でもって、かつての仲間は『殺し合いに乗っている』少年と少女に戦火を交えようとする。 そんな二人を見て、幽助たちは同じ言葉を心中で吐き捨てた。 ――この……ゲス野郎っ!! 【E-6/F-6との境界付近/一日目 夕方】 【宗屋ヒデヨシ@うえきの法則】 [状態]:冷静 、右手に怪我(噛み傷)、顔に殴られた跡 [装備]:無差別日記@未来日記、パンツァーファウストIII(0/1)予備カートリッジ×2、コルトパイソン(5/6) 予備弾×30、決して破損しない衣服 [道具]:基本支給品一式×5、『無差別日記』契約の電話番号が書かれた紙@未来日記、不明支給品0~6、風紀委員の盾@とある科学の超電磁砲、警備ロボット@とある科学の超電磁砲、 タバコ×3箱(1本消費)@現地調達、木刀@GTO、赤外線暗視スコープ@テニスの王子様、 ロンギヌスの槍(仮)@ヱヴァンゲリヲン新劇場版 、手ぬぐいの詰まった箱@うえきの法則 基本行動方針:植木か自分が優勝して 、神の力で全てをチャラにする 1:常盤愛の問いかけに対して―― 2:植木を利用して、浦飯たちを処分する。 [備考] 無差別日記と契約しました。 “声”を“似顔絵”に変える能力を利用して、未来日記の予知を表示できなくすることができます。 【植木耕助@うえきの法則】 [状態]:全身打撲、仲間を傷つけられた怒り [装備]:探偵日記@未来日記 [道具]:基本支給品一式×3、遠山金太郎のラケット@テニスの王子様、よっちゃんが入っていた着ぐるみ@うえきの法則、目印留@幽☆遊☆白書 ニューナンブM60@GTO、乾汁セットB@テニスの王子様 基本行動方針:絶対に殺し合いをやめさせる 1:ヒデヨシを守りながら殺し合いに乗った二人を倒し、一刻も早く綾乃を探す。 2:自分自身を含めて、全員を救ってみせる。 3:学校へ向かい、綾波レイを保護する。 4:皆と協力して殺し合いを止める。 5:テンコも探す。 [備考] ※参戦時期は、第三次選考最終日の、バロウVS佐野戦の直前。 ※日野日向から、7月21日(参戦時期)時点で彼女の知っていた情報を、かなり詳しく教わりました。 ※碇シンジから、エヴァンゲリオンや使徒について大まかに教わりました。 ※レベル2の能力に目覚めました。 【常盤愛@GTO】 [状態] 右手前腕に打撲 [装備] 逆ナン日記@未来日記、即席ハルバード(鉈@ひぐらしのなく頃に+現地調達のモップの柄) [道具] 基本支給品一式、学籍簿@オリジナル、トウガラシ爆弾(残り6個)@GTO、ガムテープ@現地調達 基本行動方針:認めてくれた浦飯に恥じない自分でいる 1:どうにかして2人を止める。 2:浦飯に救われてほしい [備考] ※参戦時期は、21巻時点のどこかです。 ※幽助とはまだ断片的にしか情報交換をしていません。 【浦飯幽助@幽遊白書】 [状態] 精神に深い傷、貧血(大)、左頬に傷 [装備] なし [道具] 基本支給品一式×3、血まみれのナイフ@現実、不明支給品1~3 基本行動方針 もう、生き返ることを期待しない 1:宗谷たちをどうにかする。 2:圭一から聞いた危険人物(金太郎、赤也、リョーマ、レイ)を探す? 3:殺すしかない相手は、殺す……? ◆ 「くそっ……何があったってんだよ」 菊地善人が戻ってくると、杉浦綾乃も植木耕助も姿を消していた。 残されていたのは、『綾乃がいなくなったから探す。すぐ戻る』という、植木の簡潔な書き置きだ。 こういう時は迷子の鉄則にのっとって『その場を動かずに待つ』ことで行き違いを回避すべきかもしれない。 だが、こうしている間にも状況は進行している。 碇シンジから託された綾波レイをはじめとする仲間たちが、菊地たちを待っている。それも、戦いの渦中に身を置いて。 第一に、杉浦のことが心配だった。 まだ半日の付き合いでしかないけれど、よっぽどのことでも無い限り勝手な行動をとって人を心配させる少女ではないと確信がある。 彼女の精神状態に、何事かがあったとしか思えない。 そういう時に、追いかけてやらないでどうするのだ。 「問題はどっちに行ったかつかめないってことだが……泣き言は無しだ。 『先生』なら、そんな時にも『生徒』のピンチに駆けつけてやるもんだからな」 最悪の未来を回避するために、菊地は走り出した。 「頼むから、間に合ってくれよ!」 【F-6/一日目 夕方】 【菊地善人@GTO】 [状態] 健康 [装備] デリンジャー@バトルロワイアル [道具] 基本支給品一式×2、ヴァージニア・スリム・メンソール@バトルロワイアル 、図書館の書籍数冊 、カップラーメン一箱(残り17個)@現実 、997万円、ミラクルんコスプレセット@ゆるゆり、草刈り鎌@バトルロワイアル、 クロスボウガン@現実、矢筒(19本)@現実、火山高夫の防弾耐爆スーツと三角帽@未来日記 、メ○コンのコンタクトレンズ+目薬セット(目薬残量4回分)@テニスの王子様 、売店で見つくろった物品@現地調達(※詳細は任せます)、 携帯電話(逃亡日記は解除)、催涙弾×1@現実、死出の羽衣(4時間後に使用可能)@幽遊白書 基本行動方針 生きて帰る 1:植木と杉浦を探して走る。 2:綾波レイたちの元へ再合流。 3:落ち着いたら、綾波に碇シンジのことを教える。 4:次に仲間が下手なことをしようとしたら、ちゃんと止める [備考] ※植木耕助から能力者バトルについて大まかに教わりました。 ※ムルムルの怒りを買ったために、しばらく未来日記の契約ができなくなりました。(いつまで続くかは任せます) 【スリングショット@テニスの王子様】 吉川ちなつに支給。 弾丸として、大量の小石がつまった袋も付属している。 作中で三船入道コーチの行った『スポーツマン狩り』というサバイバルゲームの最中に、 越前リョーマと遠山金太郎が現地調達した木の枝などを利用して制作した簡単なパチンコ。 ゲーム中に不正をはたらいた高校生の風船(割られたら失格)を狙い撃ちしてリタイアに追いこむ活躍をした。 上記の出来事は、『テニスの強化合宿』の真っ最中に起こったことである。 【目くらまし詰め合わせ@現実】 御坂美琴に支給。 花火、爆竹、発煙筒などなど、とにかく火花とか音とか煙とかを出すモノの詰め合わせ。 これで支給品ひと枠。 【エンジェルモートの制服@ひぐらしのなく頃に】 御坂美琴に支給。 ファミリーレストラン『エンジェルモート』のウエイトレスの制服。 とても昭和のウエイトレスの制服とは思えないデザインをしている。 Back 四人の距離の概算 投下順 Next 中学生日記 ~遠回りする雛~ Back 時系列順 Next 中学生日記 ~遠回りする雛~ ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 植木耕助 最良の選択肢 君に届け(I for you) 菊地善人 最良の選択肢 ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 杉浦綾乃 TEAM ROCK ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 式波・アスカ・ラングレー TEAM ROCK ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 初春飾利 TEAM ROCK 子どもたちは毒と遊ぶ 相馬光子 スノードロップの花束を 子どもたちは毒と遊ぶ 御手洗清志 スノードロップの花束を 悪魔にだって友情はあるんだ 宗谷ヒデヨシ 最良の選択肢 ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 浦飯幽助 最良の選択肢 ルートカドラプル -Before Crysis After Crime- 常盤愛 最良の選択肢
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錯綜する思春期のパラベラム(前編) ◆j1I31zelYA 殺さないですむ、殺されないですむ、そんな世界がほしかった。 誰かが死ぬのも、誰かを殺すかもしれないのも、悲しくて辛いことだったし、 それに、七森中の誰かが死ぬのも、誰かを殺すのも、見たくなかったから。 それなのに。 ちっぽけな杉浦綾乃が頭を悩ませている間にも、人はどんどん死んでいった。 その場にいるだけで、とってもいい子だと感じ取れた後輩も。 それに、いちばん死んでほしくなかったアイツも。 立ち直らないといけない。 前を向いて、しゃんとしないといけない。 分かっているのに、心は大きな穴があいたような心地のまま。 空洞になったあたりを支配する凍える風のような痛みは、ちっとも止んでくれなかった。 小さな嗚咽を漏らしては、意思の力でどうにか泣き止む。 そんな努力を何度か繰り返した頃に、植木がおずおずと話しかけてきた。 「あのさ、綾乃。辛いならなんでも話、聞くぞ?」 「話……?」 「ああ……我慢するよりは、ぶちまけた方が楽になるかもしれないだろ? それに、オレだって自分以外の人が答えを持ってるって教わったばっかりだからな」 その言葉を聞いて、己の胸に手をあててみた。 たしかに胸にわだかまる、モヤモヤとした形にならない想いの存在はある。 これを洗いざらいぶちまけていけば、少しはモヤモヤもおさまるだろうか。 もっと、子どものように駄々をこねてしまってもいいのだろうか。 たとえば。 もう、ごらく部の四人がそろった姿を見られないこと。 ごらく部の四人と生徒会の四人とで、海に行ったりカラオケに行ったり、一緒に遊んだりができなくなったこと。 いや、そんな特別な休日のことだけじゃない。 『プリントの提出ができていない』とか、適当な理由をつくって会いに行くのもできなくなってしまったこと。 もっと素直になりたいとか、もっと緊張せずに自然に話せるようになりたいとか、そんな目標をかかげて過ごす毎日がなくなったこと。 何気なく言われた『可愛い』だとか『また一緒に遊ぼう』という言葉に対して赤面することさえも、できなくなってしまったこと。 最近オープンしたおしゃれなカフェに、好きなひとを誘いたいというささやかな夢が、叶わなくなったこと―― ――はた、と気づいてしまった。 想いを洗いざらいぶちまけるということは、つまり。 (『女の子どうし』って、やっぱりおかしい、の、かな……?) 『さっき放送で呼ばれた女の子のことが好きでした』と暴露することに他ならないわけで。 こんな時に何を気にしているんだと呆れられても、仕方がない。 しかし、しかしだ。 綾乃はただ仲良くなりたいと必死だっただけで、親友の千歳にさえ『そういう感情』だとはっきり認めたことはない。 それを男の子に向かって『カミングアウト』する。 ……想像するだけで、顔が発熱して倒れそうになった。 いや、落ちこんで悲しんでたはずなのに何を考えているんだと、冷静になろうとする。 だいじょうぶ、植木くんって『そういうもの』を偏見の目で見る人じゃ無さそうだし。 あ、でも菊地さんに知られたら引かれるかも、それは嫌だな。 というか、これって仮にも『告白』になる? そんな、心の準備が ……って、だから、今はそういうことを気に病む時間じゃないんだって! (ダメ……い、いったん落ちつこう。……うん、落ちついてから、話そう) 「ごめんなさい。ちょっと……一人で考えさせてもらっていいかしら。整理できたら、ちゃんと話すから」 「お、おう。無理しなくていいぞ。何かあったら呼ぶんだぞ」 急に顔を紅潮させたことで、植木はうろんな目を向けてきた。 それでもどうにか、手近な民家の裏手に回りこみ、一人の時間を確保する。 すぅはぁ深呼吸を繰り返して、赤面した頬の熱をどうにか追い払った。 落ち着け、落ち着けと念じる。 (ハァ。なんであんなに動転してるのよ……別にアイツはそんなんじゃなくて。 『もっと仲良くなりたい』なんて、友達でも普通に考えることじゃないの) そう、いくら綾乃が京子のことを想って一喜一憂していたからといって、 付き合いは一緒に遊ぶ友達同士のそれでしかなかった。 (友達同士……?) ふと、その言葉が引っかかった。 忘れていたことを、思い出そうとする時のような引っかかり方だった。 友達同士。 友達。 友情。 (あ……………) 友情日記。 思い出し、口がぽかんと間抜けな形に開く。 最後にチェックしたのは、いつだったろう。 現在いるエリアに入ったあたりで放送が流れて。 名前が呼ばれたショックで頭がいっぱいになって、未来予知を確認する余裕なんてなかった。 つまり、だから、すっかり、忘れていた。 (これを見れば……まだ、生きている人たちのことも、分かるのかな?) ふるえる手で肩から荷物をおろし、ディパックから携帯電話を取り出そうとしていく。 心臓が、さっきとは別種の動揺から動悸を早くしていく。 何度かボタン操作を押し間違えながら、やっと予知画面にたどりつく。 自身の周囲9エリアにいる『友達』のことを教えてくれる未来日記。 そこに映し出されていた予知は―― ◆ 「初春カザリって言ったっけ……アンタはこれから、どうしたいの?」 二人の少女が、てくてくと日差しの弱まりはじめた路上を歩いていた。 「白井さんに会いたい、です……いいえ、会わなきゃ、いけないんです」 先導するように歩くアスカ・ラングレーに対して、後ろを歩く初春飾利は答える。 ようやく泣き止んだのか、さっきまでの涙声とは異なるしっかりした声だった。 「白井クロコ……ミコトから聞いたことある名前ね。 そいつと合流して、殺し合いをぶっ潰そうってわけ?」 「それも、あります。でも、まずは御坂さんのことを伝えなきゃいけないから。 白井さんは、御坂さんのことを本当に慕ってましたから……」 アスカはちらりと後ろを向き、初春を一瞥した。 言葉こそしっかりしているものの、その顔は法廷に立つ罪人のように悄然としている。 友人のいないアスカにも、その心情ぐらいは想像できた。 友達の敬愛していた人を、殺してしまったのだから。 御坂ミコト当人が許したからといって、その友人たちが何も感じないはずがない。 どんな顔をして会えばいいのか分からないとうなだれたくもなるだろう。 「ほかにも、謝らなきゃいけない人がいっぱいいます。 始めに殺してしまった、桑原さんの知り合いも。 それから、あの爆発で亡くなってしまった人たちのお友達にも……」 言葉を重ねるにつれて、初春の声がどんどん弱くなっていく。 そんな懺悔を断ち切るように、アスカは苛々として言った。 「まったく……。どうして日本人は、何かあったら真っ先に謝ろうって考えるのかしら。 そりゃあアンタを恨んでるヤツはいるかもしれないけど、被害者の身内に謝罪してまわったりしたら時間がいくらあっても足りないじゃない。 ついででいいのよ。そんなものは」 「つ、ついでですか?」 やったことを考えれば罪悪感を感じる方が当然だけれど、ずっと暗くなっていればいいってものじゃないだろう。 アスカ・ラングレーは、初春カザリを救う役目を引き継いだのだから。 「いい? たとえ今後、アンタを責めたてる連中が現れたとしても。 アンタに救われてほしいと思ってたヤツが少なくとも二人いたわけよ。そこんとこ、覚えときなさい」 「は、はいっ」 「なんなら、そのクロコってヤツに、ミコトがキレイさっぱり許してたって証言してもいいわよ。 当人同士で解決してるのにグチグチ言うなってね」 第三者としての義務を果たすことを宣言すると、初春はまだ困惑しながらも、表情をゆるめた。 「式波さん……いい人なんですね」 「はぁ? どうしてこの会話の流れでそうなるの?」 吉川チナツといい御坂ミコトといい、どうしてこうも人を善意で解釈するのだろうか。 アスカは依然として、自分の生還が第一であるはずなのに。 「あ、そうだ。ついでって言えば、話しておいた方がいいかも」 たった今になって思い出したかのように、初春が声をあげた。 デイパックのポケットから、メモ書きのようなものを取り出し、アスカに見せる。 「殺し合いに乗ってた時に、三人の男の人を襲って未遂に終わったことがあったんですけど。 目が覚めたら、この手紙が手元に置いてあったんです……」 筆跡の主は、冒頭で秋瀬或と自己紹介していた。 手紙に書かれていたのは、おおむね予想できることに、殺し合い反対派が殺し合いに乗った人間を説得する類の文章だった。 「でも、やけに詳しいわね、こいつ……」 自分は今までにこれこれこういった参加者に出会っており、彼らの総合戦力その他を考えても、君ひとりが皆殺しを狙って行動するのは無理がある。 また、主催者のやり口を考えても優勝者の願いが叶う保証はうんたらかんたらと、やったら断定的に『殺し合いに乗ること』が絶望に直結していることを論証していた。 自分はこれから殺し合いに乗っている危険人物と接触しに行くから同行させることはできないけれど、 この忠告に少しでも信憑性を感じてくれたら思いとどまってほしい……と言ったような言葉で、手紙は締めくくられていた。 「わたしは優勝を狙ってたわけじゃありませんから、殺し合いに乗ったら破滅すると言われても、止まれませんでしたけど……」 「普通は、『優勝しないけど殺し合いに乗る』って人間の方が少数派だろうしね」 文章で説得するだけしておいて放置するというのは無責任にも見えるが、 その『危険人物に会いに行く』という話が本当ならば、そいつと戦っている最中に『学校のようなこと』が勃発するリスクは恐れるだろう。 文章そのものは胡散臭いのに、情報の持ち合わせが多いことを匂わせる語り口から、 『接触する価値はあるかもしれない』と思わせるところが、無性にしゃくだった。 「その後の放送で呼ばれなかったってことは、まだ生きてるのね……。 とにかく、人を探すにしたってアテは無いのよね? なら、いったんデパートに戻るわよ。ミツコには病院のことが成功しても失敗しても戻るって言っちゃったから」 「はい! よ、よろしくお願いします」 ぴしっとかしこまったような一礼が返ってきた。 緊張しているというよりは、むしろこちらの態度の方が素なのだろう。 本当に、根拠もなく人を信用する輩が多くて困る。 ◆ 吉川ちなつ。 あまり杉浦綾乃と一対一で話したことはなかったけれど、『いつもの8人』で遊ぶ時にはいつもそこにいた。 そして、歳納京子の可愛がっていた、大事な大事な後輩。 そして、後輩である大室櫻子と古谷向日葵の、大事な大事なお友達。 その吉川ちなつが、すぐ隣のエリアにいたという。 友情日記の予知が提示されていた時間は、放送の直後だった。 『F-5デパート近くの路上で、吉川さんが放送を聞いて落ち込んでいる』 その、十数分後。 『吉川さんたちは、銃声を聞いて学校の方に向かったわ。私たちも早く合流しないと……!』 さらに、その数分後。 『大変! 学校の校庭で爆発が起こって、吉川さんも巻き込まれてしまった』 その、数分後。 『吉川さんが、アスカ・ラングレーさんを爆発からかばって死んでしまった』 ほんの、数分前のことだった。 目の前が、真っ暗になったようだった。 違う、違う、有り得ない、こんなの嘘だ。 だって、さっき歳納京子と赤座さんが死んだって言われたばっかりじゃないか。 それに、それに。 日記を見ることさえしないで立ち止まっている間に、 知り合いの死が実況されていたなんて、知らなかった。 手遅れ。 頭を思いっきり殴られたような衝撃が貫いて、ぐらぐらと足元までもを揺らす。 『友情日記』の予知はさらに続いていたけれど。指が震えて、画面をスクロールすることさえ覚束なかった。 「私の、せいなの……?」 予知にちなつのことが書かれてから、彼女が死ぬまでには充分な時間があった。 もし予知を見て駆けつけ、爆発のことを教えていれば、こんな結果はふせげていたはずだ。 言い訳しようと思えば、いくらでもできる。 歳納京子たちが死んだという話を聞いて、呆然としていたんだから仕方がないとか。 植木だって、探偵日記を見ることを忘れていたとか。 しかし、事実は変わらない。 命を救おうと思えば救うことができたのに、杉浦綾乃は無視した。 何もせずにへたりこんでいた間に、目と鼻の先で、後輩が助けを求めていた。 「吉川さん……」 ふらふらとした足が、その場から離れる一歩目を踏み出した。 行かなくちゃと、思った。 ちゃんと確かめないと、まだ死んだと決まったわけじゃない。 急いで、吉川さんの安否を確かめないと。 未来予知が本当に当たると言われたって信じられないし。 そうだ、図書館の時は、植木くんが死ぬという予知が変わったじゃないか。 急いだら、まだ間に合うかもしれない。 私のせいでごらく部の人たちが死ぬなんて、あっちゃいけない。 私が、ごらく部の人を見殺しにしたなんて――。 そんな思いが歩く速さを加速させ、気が付けば走り出していた。 なりふり構わず、学校を目指して。 ◆ 「さすがに、行き過ぎじゃないの?」 「……だよなぁ。もうE-6に入るかってところだし」 住宅街と言うには家もまばらになり、遠方を見ても地平線ではなく水平線がのぞきはじめる。 陽が傾いて影も長くなってきた寂しい道で、二人の男女が立ち止まった。 「もう。こんなことなら、秋瀬からレーダーを返してもらったらよかったじゃない」 「つってもなぁ、向こうは向こうで駆けつけるのにレーダーが要るみてぇだったし。 御手洗があの短時間で進路変更するとは思わなかったからよ」 本来ならば、浦飯幽助も秋瀬とともに、彼の探し人を助けに向かう予定だった。 どうやらその探し人は、凶悪な少女に命を狙われているらしいとのことだったので。 だがしかし、状況は動く。 浦飯から秋瀬へと貸し出していた携帯電話探知レーダーに、『御手洗清志』という少年の名前が映ったのだ。 しかも、ちょっと進路変更をすれば駆けつけられる位置に。 他にも何人かの名前は映ったけれど、浦飯にとってはその少年が、分かりやすく危険度の高い人物だった。 この殺し合いに呼ばれる直前まで、桑原から『水兵(シーマン)』という能力について聞かされていたのだから。 しかも、急がなければ一緒にいる『相馬光子』という少女が襲われてしまうかもしれない。 しかし、行けども行けども出くわさないまま、気が付けばエリアを丸ひとつ越えようとしている現状がここにある。 御手洗が唐突に気まぐれを起こして、進路を変更したと考えるほかなかった。 「その秋瀬のこともさ……本当に良かったの? 『雪輝』のことを何にも知らないのに、『何があっても殺さないし、なるべく助けてやる』なんて安請け合いしちゃって」 秋瀬或が助けにいきたいと告げた、雪輝という少年。 その名前を、浦飯幽助は知っていた。 あの前原圭一から、天野雪輝は危険人物だと言い含められている。 主催者の手先かもしれないとさえ聞いている。 それでも、浦飯はあっさりと頷いた。 詳しい事情を説明する暇もない短いやり取りの中で。 雪輝君は殺し合いに乗っていないから、信用してほしいと言われて。 そして、今もあっけらかんとして答える。 「オレが殺してでも止めるって思ってたのは、螢子の時の二の舞にしたくなかったからだ。 べつに知り合いが『殺さないでくれ』って言ってきたヤツまで、進んで殺したりしねぇよ」 言われてみれば浦飯らしいかもと、常盤は思う。 もとより、浦飯が『手に負えない危険人物は殺す』と言い出したのだって、『雪村螢子に間に合わなかった』という後悔からだろう。 だとすれば、『雪村螢子のためなんて未練で動いても彼女は喜ばない』と諭された今になっては、殺すことにだって躊躇っているのかもしれない。 (アタシは……どうしたいんだろう) なあなあで、浦飯と行動を共にしている。 浦飯は危険人物の討伐に連れていくことを躊躇したけれど、女の子を一人にするのもまた危険だと考えたらしい。 すっかり仲間か何かのように接してくる。 でも、いずれ愛の悪行を知る誰かと出会ったりすれば、この関係は破綻するだろう。 それでも浦飯と行動することを選んだのは、一人でいるよりはまだ安心だからなのか。 (男と一緒にいた方が安心できる? ……この、アタシが?) 自分で、自分の考えたことに驚いた。 それは、常盤愛にとって絶対にありえないことだったから。 でも、苦しくないことは事実だった。 男と同じ空間にいただけでいつも感じる不安じみた多大なストレスを、浦飯からはもう感じていない。 すでに嫌というほど、傷つけたり傷つけられたりしたせいかもしれない。 そのことがまた、愛の胸を痛ませた。 男性に信頼とも共感ともつかないモノを持ってしまった以上、これまでにしてきたことを罪だと感じずにはいられなかった。 「しょうがないなぁ……だったら、アタシの奥の手を使ってみてもいいよ」 「奥の手ぇ? そんなものがあったのかよ」 「ほら、『逆ナン日記』。これを使えば、どんな男に会うかが分かっちゃうんだ」 切り札だったはずの未来日記さえ、明かしてしまう。 どうせ自分はロクなことにならないのだから、貸しを作っておくぐらいは悪くないという捨て鉢さもあった。 ――アンタは天使なんかじゃない。ただの人殺しの、死にぞこないだ。 神崎麗美から言われたことは、もう否定できない。 「『未来日記』か……数分単位で予知を出すなんて、どのあたりが『日記』なんだ?」 「同感だけど、御手洗清志ってヤツも『男』だしね。まだこのあたりにいるなら、出会うかどうか分かるかもしれないでしょ?」 「なるほどな! じゃあさっそく頼むぜ」 笑顔で頼まれて、愛は予知画面を呼び出す。 しかし、出会いの予知に映し出されたのは御手洗とは似ても似つかぬ『男』であり、二人はそろってがっかりすることになった。 頭頂部のとんがった髪の毛に、こずるそうな表情。 どことなく猿を思わせる、そんな人相の少年だった。 名前欄には、宗屋ヒデヨシと書かれている。 ◆ 「ちくしょぉ……綾乃おぉぉぉぉ! どこだぁぁぁぁぁ!?」 走りながら首を左右に振って、杉浦綾乃の姿を探す。 時おりは脇道や民家にはいったりして、あの長いポニーテールが揺れていないか目をこらす。 見つからない。 一刻も早く、見つけ出さなければいけない。 植木が一人になることを許したばっかりに、綾乃はいなくなってしまった。 別れる直前だって、熱でもあるのか不自然なぐらい顔を真っ赤にしていたのだ。 哀しみのあまり、様子がおかしくなった可能性ぐらい考えてあげないといけなかった。 (どうする……いったん戻って別の道を探すか? いや、綾乃が菊地の後を追ったかもしれないなら、学校に先回りしてた方がいいか?) 植木たちのいた場所から学校へ至る道のりには、ふたつの選択肢があった。 ひとつは西を回り込むようにして向かい、一つは北を回り込むようにして向かう道だった。 前者は先行している菊地が通った道だから少しは安全だろうとして後者から捜そうとしたのだけれど、それが裏目に出たらしかった。 こんな時に、居場所を探知するレーダーでもあればすぐに見つけられるのに。 そんなことを考えて歯噛みをする。 しかし、思い出した。 「そうだ! 『探偵日記』があったんだ!」 探偵日記は、同じエリアにいる未来日記所有者の行動を予知してくれる。 そして杉浦綾乃もまた『友情日記』の所有者になっている。 もし綾乃が植木のいる道を通ったならば、きっと反応してくれるだろう。 植木はばたばたとディパックから携帯電話を探し出し、もどかしく予知画面に切り替えた。 そこに映し出されていた予知は―― ◆ 仲間を置いて、走り出してしまった。 息の乱れと焦燥が、後悔にすり替わるのはすぐのことだった。 しかも一心不乱に走ってきたから、道を間違えていた。 駆け抜けて飛び出したのは、デパートの正面入り口だった。 綾乃はふらふらとデパートの壁に手をつき、ひぅとかすれた息を吐き出す。 植木は今ごろ、きっと慌てふためいているだろう。 菊地だってもう戻ってきて、植木と一緒に心配しているかもしれない。 「私のすることって、こんなことばっかり……」 仲間に何も言わずに単独行動をするなんて、明らかに間違っていることだ。 そんな行動に出てしまったのは、『取り返しのつかないことをしてしまった』という罪の意識から。 仲間と向き合うことさえ、無意識のところでは怯えていた。 「戻ろう……そうしなきゃ。ちゃんとアスカさんのことも教えて、三人で学校に――」 手の甲で額をつたう汗をぬぐい、前髪の隙間から目を刺してくる日差しに顔をそむける。 「あの、いいかしら」 「ひゃぅっ!?」 そんなタイミングで、呼び止められた。 小柄で愛らしい印象の少女と、パーマがかった髪にパーカーの服を着た少年が、少し離れた場所に立っている。 初対面の相手だとか、不意打ちだったとか警戒だとか、そんな理由で固まってしまう綾乃へと、少女の方が近づいてくる。 同性の綾乃から見ても愛くるしいと思ってしまうような、完璧な造形美を持つ少女だった。 「その制服……もしかして、吉川さんのお友達なの?」 まさに、渦中の知り合いのことを持ち出された。 「え……吉川さんを、知ってるんですか?」 「ええ、さっきの放送の少し前まで、何人かの仲間と一緒に行動していたの。 それぞれにすることができたから、今はこうして別行動をとっているんだけどね」 ふわふわのツインテールをした、守ってあげたくなる雰囲気の子よね、と。 共通する話題を見つけられて嬉しがるように、綾乃との出会いを素直に喜んでいた。 「あっ、名乗るのが遅れてごめんなさいね。 あたしは相馬光子っていうの。こっちの男の子は御手洗清志くん」 そうか。 この人は、その吉川さんが死んだことを、まだ知らないんだ。 そう思ったことが、引き金になった。 警戒していた心が緩む。涙腺が熱くなる。 「っごめんなさい、吉川さん……私の、せいでっ」 伝えなければと思うのに、涙とか認識してしまった現実とかでいっぱいいっぱいになって、上手く言葉にならない。 いきなり泣き出した綾乃に対して、それでも相馬は優しかった。 なだめるように、「大丈夫、大丈夫だから」と落ち着かせてくれる。 「何があったのかはしらないけど、ゆっくりで構わないわ。 まずは中に入って、話しましょう?」 「…………はい」 きっとこの人と一緒にいた間は、吉川さんも安心だったのだろうなと思った。 事情を説明する前に植木たちのところに戻りたいと要望したのだけれど、相馬は男性である御手洗くんに呼びに行ってもらった方がいいと申し出た。 御手洗も気安いことのように、ひとっ走りしてくると言っていなくなる。 彼女らの話によれば、もともとデパートを離れようとしていたところを、走り過ぎる綾乃を見つけて引き返してくれたらしい。 使いに走らせるようで申し訳なかったけれど、綾乃も相馬にちなつのことを伝えたいと思っていたので、その提案を受け入れた。 「そう……それなら、少なくとも式波さんは無事なのね?」 「はい……殺し合いに、乗ってたはずだって聞いたんですけど……」 「そうねぇ……言われてみれば、思い当たるフシがあったかもしれないわ。 私たちの中で一番強い御坂さんを、やけに邪魔者扱いしていたし」 「じゃあ、殺し合いに乗ってた人をかばって、吉川さんは……」 「私たちと会う前に改心した可能性もあるから、断定はできないわ」 ちなつを見殺しにしたことについて、相馬はちっとも綾乃を責めなかった。 私だって、放送で大切な人が呼ばれたりしたら同じことになったはずだからと言って。 「むしろ、杉浦さんの方が私より辛かったはずよ。この殺し合いに呼ばれる前からの、友達だったんでしょう?」 「どうして、そんなに優しいんですか……」 だから、なのだろう。 時間がたつにつれて、懺悔の時間は、心のうちを吐き出す時間になっていた。 「私は……人を殺さないで済む方法を知りたかったんです。 それは、自分が死ぬのも嫌だけど、友達が殺されたり、殺すところを見たくなかったから。 でも、そんなことを言っておいて……友達が殺されるのに、何もできなかった」 初めて会った人に、こんなことを言ったって仕方がない。 分かっているのに、慈愛にみちた相馬光子の優しい目が続きを促すから、綾乃の言葉は止まらなくなっていた。 「どうして、なんでしょう。 私だって、ごらく部のみんなだって、 菊地さんも植木くんも碇くんも式波さんも綾波さんも越前くんも御手洗さんも相馬さんも、 その友達の人たちだって! 殺し合いたくなかったはずなのに。そんなことしたくないって思ってるのに。 どうして、人を殺さないでいるだけの、簡単なことが叶わないんですか……」 決まっている。 殺さなければ殺されると、脅されているから。 理解できるのに、認めたくない。 認めてしまっても、『じゃあどうすればいい』と問われて答えられないから。 「杉浦さん。自分を追いつめてまで考えることはないのよ」 相馬が幼な子を慰めるように、綾乃の頭をなでた。 慈母のような笑みを浮かべて、告げる。 「だってそんな方法、無いんだもの」/「だってそんな方法、無いんだから」 「え……?」 眼前にあるのは、恐ろしいまでに完璧な笑みを貼りつけた相馬光子。 そして、背後からは、植木たちを呼びに行ったはずの御手洗の声。 ぞくりと寒気を感じ取り、振り向いて、さらに戦慄する。 「ありがとう。もう貰えるだけの情報は貰えたわ」 そこには、綾乃の背丈より大きい“水の化け物”がいた。 ハリウッド映画のポスターなんかでしか見かけないような、ミュータントだかエイリアンだかと形容される二足歩行の生き物が、綾乃の近くまで忍び寄っていた。 御手洗が、ぺたんと座った綾乃を冷たい眼で見下ろしながら、その化け物を従えていた。 「だからさよなら」 どぱぁっと、津波のように化け物が覆いかぶさってきた。 水が、水が、水が、水が、水が。 奇妙な粘性のある液体に、全身を叩かれた。 全身が一瞬で濡れて、またたくまに“水”の中へと取り込まれる。 鼻から、口から、容赦なく水が流入する。 水の侵入と同時に鼻孔をじーんとする痛みが貫いて、前後不覚に陥りかける。 口から浄水フィルターのように大量のあぶくがガボガボと漏れた。 溺れる。 なんで。 どうして。 相馬さんたちが。 恐慌から一心不乱に手足を掻いて、水の外へ出ようともがく。 それなのに、のばした手は水の外へと突き抜けない。 粘性のある壁に阻まれるように、水の境界は断絶されていた。 絶望が、綾乃の心を染める。 凝らした視界の向こうには、微笑んだままの相馬光子が立っていた。 「だって杉浦さん。人を殺すのなんか、簡単じゃない」 水に阻まれているのに、相馬たちの声は不思議なほどによく通った。 「あなたは方法さえ見つかれば殺し合いは止まると思っているようだけれど、 他に方法があったって人を殺す人間はいるのよ? だから、止める方法があったって無いのと同じ。 これってなんて言うのかしらね……逆説? 演繹? あたし、勉強は苦手だから分からないや」 「しいて言えば、『反証』に当たるだろうね」 今度は後ろから、御手洗が楽しそうな声を出した。 酸欠から真っ赤なアラートが激しく点滅する頭で、二人の言葉はガンガンと反響する。 「光子の言う通りだよ。人間は醜い。 君は僕らがただ殺したくて殺し合いに乗っているなんて、想像もしていなかったんだろう? 僕らに限ったことじゃないよ。ちょっとしたきっかけがあれば、人間は簡単に殺人を肯定するようになる。 現に、もう半数以上が死んでいるじゃないか。今さら、『殺さないですむ方法』なんて手遅れさ」 手遅れ。 胸がズキリと痛む。 そう、手遅れには違いない。 歳納京子も赤座あかりも、吉川ちなつも死んでしまったのだから。 そして、綾乃も――。 (わたしの……してきたことって…………) 「そうね、悪意をどうにかする方法があるなら、私だって『こんな』になる前に誰か助けてくれたはずだわ。 べつにあの国に限ったことじゃなくて、どういう世界にもいるはずよ。 レイプされる小さな女の子とか、悪い道に誘われる中学生とか。 良かったわね。たまたま汚いものを見ないで育つことができて」 その言葉は、まるで『私たちは何も悪いことしていないのに』と嘆くことさえ否定しているかのようで。 水ごしによって輪郭のゆらゆら歪んだ相馬の姿が、もはや幽鬼か何かのように見えた。 酸欠が激しくなるにつれて、視界はさらにぼやける。 水を掻く手の力さえ、喪ってゆくのが分かる。 「やっぱり溺死させるのは面倒だね。時間がかかる」 「でも、刺し殺したり殴り殺したりすると、争った跡や返り血が残るかもしれないもの。 一長一短ってところかしら……」 そんなやり取りが聴覚に届いたけれど、もはや意味を認識する力はなかった。 (ごめんなさい、植木くん……こんな終わり方でごめんなさい、菊地さん……) なぜか。 死んだら歳納京子に会えるのかな、という思いより。 こんなところで菊地とお別れするのは悲しい、という思いが勝っていた―― (もっと、色んな、話、して、みたかっ――) ――ガァン、と鈍い音が、なくしかけていた聴覚を揺らした。 ◆ 「ぐあっ……!!」 鈍い音とともに、ピンポン玉ほどの小石が御手洗の右目を直撃した。 いかに“水兵(シーマン)”が強力でも、御手洗自身は生身の中学生にすぎない。 耐えきれず膝をつき、その手で目元をおさえる。 「御手洗くん!?」 御手洗がうずくまり、光子の視線がそちらを向いた隙をついて。 長髪をなびかせる人影が、矢のように迫った。 非常口の方角から、だ、だ、だ、と大股で接近し、相馬光子の背後をとり、捕える。 「まったく……ちょっと危機感のあるだけのお人好しかと思ってたら、とんだ役者だったようね」 「光子!」 式波・アスカ・ラングレーが、相馬光子を羽交い絞めにしてとらえ、喉元にはどこにでも売っているような包丁をあてがっていた。 光子の首を絞める左腕の手先には、御手洗の右目を撃ったパチンコが握られている。 「ほら、ミツコが大事なら、さっさとそこのそいつを解放しなさいよ。 一応、借りを作ってるヤツの知り合いみたいだから、見殺すわけにもいかないのよね」 光子のきゃしゃな首に包丁の先端を食い込ませると、御手洗は苦々しく舌打ちをした。 “水兵”が吐き出すようにして杉浦綾乃を領域外に放出する。 どさりとアスカたちの近くに転がった綾乃はしばらくその身を震えさせていたが、やがて激しく咳きこみながら水を吐き出した。 アスカはほっとしたように息を吐き、さらに命令する。 「それじゃあ、次はその変な水の化け物を始末してもらおうかしら」 「……残念だな。そいつは一度出したら元には戻せないんだ」 「嘘ね。こんな目立つものを戻せないなら、一般人を殺す為だけにホイホイ出したりしないはずよ」 「じゃあ、そのポニーテールの子は見逃してやるから、拘束だけは解いてくれないかな。 君だって、その子への借りを返したいってだけで、殺し合い自体には乗っていたんじゃなかったっけ? 今の僕たちは信頼度が皆無だろうけど、残り人数を効率よく減らす為にも、今ぐらいは見逃してくれたっていいんじゃないかな」 「同類扱いしないでくれる? 機をうかがってれば、殺し合いに乗ったヤツは醜いとか、誰も助けてくれないとか、人のことまでひと括りにして。 殺し合いに乗ったヤツが、みんな殺したくて殺してると思ってんじゃないわよ。 それに、『とっさに体が動いた』とか言って助けてくれるヤツだっているのよ」 げほげほと咳きこむ少女が、はっとしたような顔をアスカへと向けた。 血がしたたる右目をおさえたまま歯ぎしりをする御手洗を見て、アスカはほっと安堵する。 包丁が光子の喉を切り裂くまで、たいした予備動作はかからない。 使役された水がアスカや綾乃を襲うより早いだろう。だから、どうにかなりそうだ。 そんな余裕から、慢心を持ったことは否めなかった。 「……光子に言われたとおり、保険をかけておいてよかったよ」 背後に、立たれる気配。 もう一匹の“水兵(シーマン)”が触手じみた腕を伸ばし、包丁に絡みついた。 「なっ……!?」 “水”の内部と外部は断絶されている。 いくら刃が光子の喉元にあっても、水の“領域(テリトリー)”はぴったりと包丁だけを絡め取り、光子を刃から解放した。 「この……くっ!?」 とっさに、包丁を手放してしまうアスカ。その隙に光子は、安全地帯である御手洗のそばへと逃げる。 攻撃し放題になった“水兵”が逆の腕を振り上げ、アスカの腹部にめりこませた。 「ぐっ……がっ……あ゛っ……!」 胴体を貫く連続的な打撃が、体を宙へと持ち上げる。 下から突きあげるような拳がアスカを軽く吹き飛ばし、数メートル向こうのレジテーブルに叩きつけた。 「……っ……げほっ」 腹部をおさえてうずくまるアスカを見おろして、光子は大きく息を吐いた。 「デパートにいた時から、どうにも煮え切らないところのある子だとは思ってたけど……こんな無茶をするなんてね。 吉川さんに庇われて、そんなに感動したのかしら」 「けほっ…………ようい、しゅうとう、なのね」 「前にもこういうイベントを経験したことがあってね。 修羅場の真っ最中に横やりを入れられたことがあったから、学習したのよ」 「おい、それはさっきの放送で悼んでた、滝口ってヤツのことか?」 「あら。御手洗くん、妬いてるの?」 仲睦まじそうな会話が交わされる間にも、“水兵”は腕の先端を槍のように尖らせ、アスカにとどめをさすべく迫っていた。 「ほけん、ね…………それは」 アスカは水の怪物を見上げ、しかし臆さず笑ってみせる。 「……こっちも、だっちゅーの!」 びゅん、とディパック状の何かが床に投げ出された。 次の瞬間に、破裂。 パンパンパンパンパンパンと、盛大な着火音がデパートの床を埋め尽くした。 発生するのは黒煙。白煙。あざやかな花火。 足元を火花を散らして駆けまわる、ネズミ花火に似た何か。 火災報知器のベルの音と、スプリンクラーからの放水。 様々な種類の火煙と水煙が、全員の視界を曇らせた。 (後編)
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『パチュリー・ノーレッジ』 【昼】E-3 大蝦蟇の池 「なんだか、神秘的な場所だな」 「当たり前よ。ここは『大蝦蟇の池』。 守り神である大蝦蟇様が棲み付くと言われてる、れっきとした聖域だもの」 物珍しそうに周りを見渡す吉良の感想に、パチュリーは自宅の蔵書で見た知識を披露する。 知識とは溜め込んでばかりだと単なる自己満足。自身の足で赴き、見て、体験し、実生活での応用を為せて初めて意義が生まれる。 耳学問など以ての外。こうしてパチュリーは、たとえ相手が外界の殺人鬼であろうとも、幻想郷の観光地をガイドすることに躊躇いはない。 無論、あの寺子屋教師ほどにはうるさくない程度に、だが。 「……綺麗な水だね。大蝦蟇サマとやらはどうにも胡散臭いが、守り神が棲むと言われても納得してしまいそうだ」 「その池の水は『神水』。神事の際には欠かせない物らしいわ。私の目から見ても確かな魔力が宿っているお墨付きよ」 いかにも西洋かぶれ然とした見た目のパチュリーだが、その本領はどちらかと言えば東洋の魔術師に当たる。 こういった日本特有のまつりごと、神性こそが彼女の操る五大元素の真髄そのものだ。 「ふむ……どれ、ここはひとつ」 無表情で腰を下ろしたまま吉良は呟き、決して大きく音を出し過ぎないよう極めて丁寧にパン、パン、と拍手を打つ。 そして両手を下げ、分度器で測ったかのようにピタリ90度頭を下げ、静かに立ち上がりもう一度軽く45度頭を下げる。 過程を幾らか排除しての見事な二拍手一拝であった。これに多少なり驚いたのは傍で見ていたパチュリー、ぬえの両方。 この男が信心深そうには見えないところから、その行為は単なる願掛けであろうとは思うがしかし。 これではまるで彼が『普通の男』に見えるではないか。 「……何というか、意外ね」 「『こんな風習に沿う様な男には見えなかった』……そう言いたげな顔だな?」 「そう言いたげですもの。少なくとも私が持つ殺人鬼のイメージじゃあないわね」 歯に衣など着せる気のないパチュリーの言葉選びは吉良を幾分か不満気な表情にさせたが、それにも慣れたのか。 やれやれといった顔で吉良は頭を振り、若干ダルそうに反論を述べることで魔女への仕返しとした。 「……君たちが仗助共からどこまで私の下劣な情報を聞いたかは知らないが、少なくとも今まで私は立派に人間をやってきた。 有名な美術家の作品を見て心動かされることもあるし、美しい景色に癒される常識的な価値観くらいある」 彼のしかめ面は言外に「少しは普通の人間らしく扱え」と言った様なものであり。 今まで当たり前のように『吉良は恐るべき異能者』と認識していたパチュリーは、自らが抱く語弊に気付く。 この男にも人生はあり、過去はある。 普通の人間とは明らかに異なる性を持ちながらも、普通に生きようとしていた男。 平穏を望み、安寧を願い、常に己の理想の平和に手を伸ばしてきた。 因果者にして、果報者にも類されるのだろう。 彼は快楽の為に殺人を犯したことなど一度として無いのだから。 殺人とは、彼が生きる為の性質そのものに根を張った、抗うことの出来ない『呪い』でしかないのだから。 正直、人生の殆どを文字空間で胡坐掻いてきたパチュリーや、暴を誇示して我を通す吸血鬼のレミリアなんかよりよっぽど人間らしいというか、『普通』だった。 『殺人鬼』というどうしようもない部分を除外さえすれば、吉良は意外と人間味溢れる存在かもしれない。 基本的に他人に関心が無いパチュリーは、ここに来てようやく『人間』の多様さを知覚した。 吉良の闇である部分はあくまで彼の一側面でしかなく、その裏側に光を当てれば今まで見えなかった実体も浮き出てくる。 だが、だからといってパチュリーが吉良に対する評価を上方修正するのかといえば…… 「―――アンタねえ……涼しい顔で言ってるけど、自分が何やったか忘れたわけじゃないでしょうね……!?」 我慢し切れないといった風に口を挟んだのはぬえだ。 正論でしかない。ぬえの言ったことは何もおかしくはなく、現に吉良はつい先程ひとりを殺したばかりなのだ。 そんな男がまるで被害者面のように「普通扱いしろ」とは、ちゃんちゃらおかしい。 「……どうやらぬえ君はあくまで私を快楽殺人者に仕立て上げたいみたいだが」 「いや、実際河童を殺してるでしょアンタ! そんなキレた奴が横に居れば誰だって糾弾したくもなるわよ!」 「言ったように、アレは仕方なしに始末しただけだ。にとり君が康一君を殺したことも事実だし、下手すれば私が彼女にやられていたかもしれなかったのだからね」 確か正当防衛、だと吐いたか、この男はあの時。 吉良の建て付ける反論も分からないでもない。にとりに危険思考の疑いがあったのはパチュリーこそが最もよく知っていたのだから。 事実はどうあれパチュリーは、にとりが死んだことで最悪吉良に命を救われた可能性すらある。 にとり手製の『爆弾』なんてとんでもない物が後から出てきた時、確かに身震いがした。ゾッとしたのだ。 事はもっと重く見るべきであった。藁の砦から組まれ続けた要塞は、どこまで過程を経ても所詮は薄っぺらい藁でしかなかった事実を。 故にパチュリーはこれから先、もっと周りを見ることに専念しなければならなくなった。 異変打破を志す巨大な集団も一皮剥けば、脆く細長い柱によってのみ支えられていることを自覚しなければ。 誠に不本意だし性でもないが、事実上この集団のリーダー核を担っているのは自分なのだ。 誰が言い出したことでもないし、他にも夢美や慧音といった知者は確かに居る。(夢美にリーダーはまず不適応だが) 言わば代わりの利く役職とも言えるが、それでも己にしか出来ない領域というものはある。 周りを見る、ということは人間関係を纏める、ということだ。 傍若無人な友人(科学バカではなく吸血鬼の方)とは違い、カリスマなど一寸すら無いもやしの自分にどこまでやれるか。 パチュリーは己の内に澱む不安を臆面に出さないよう、いがむぬえの前面を遮った。 「はいはい喧嘩はやめなさいな御二人さん」 「パチュリーさん。一言言わせて貰うと『喧嘩』とは同レベルの、それも極めて程度の低い者同士が行う内容の無いいがみ合いであって、少なくとも私の方は……」 「それに吉影。貴方だって事実、私たちを爆弾と称し人質にした行為を忘れてないでしょうね?」 「……そのことは『水に流す』取り決めだったハズだが?」 「水には流せても、過去までは流せないということよ。私はただ厳然たる事実に釘を刺しただけ。貴方と敵対してもメリットは無いしね」 平気な顔のようでいて、実の所パチュリーの内心は冷や汗ものだ。 吉良の能力は異変解決の『鍵』にも成り得る。その彼をここで失うわけにはいかない。 となると体面上でもパチュリーは、吉良を守るように動いていかなければならないということだ。 その吉良に喧嘩を吹っ掛けるような真似を続けるぬえの方が余程危なっかしい。 とはいえ彼女の言い分も理解できるし、パチュリーとて通常ならこんな汚れ役は御免だった。 一時的にでも『人の上に立つ』ことの困難さが身に沁みて分かる。これではレミリアを馬鹿に出来ない。 「……まあいい。ところで『水に流す』といえば、さっきからパチュリーさんは身体を濡らしていないようだが?」 背後でぬえの険しい視線を受け止めながらパチュリーは、吉良のちょっとした疑問に答えることで内なる焦燥を霧散することに決めた。 指摘通り、パチュリーの身体は少しも濡れてなどいない。この雨の中なのに、だ。 少し前からポツポツと音を立てて降り注がれてきた雨水は、少しずつ勢いを増してこの大地に吸い込まれていく。 この大蝦蟇の池の周りには雨を凌ぐには困らない分の木々が茂っており、多少は傘の役目を担ってくれる。 しかしそれでも吉良やぬえの頭髪や肩には、冷たい染みが絶えず点を作る程には雨水が注がれており、一方でパチュリーの身体にはまるで染みの痕がない。 「魔法よ、まほー。これくらい余裕よ、よゆー」 心なしか鼻高々に言ってのけるパチュリー。 その周囲数センチをよく見れば、確かに雨が弾かれているように見える。言うならば透明ドームが如く。 「五行説で言うところの相剋を応用した簡単な魔法よ。反性質の相手を打ち滅ぼして行く陰の関係……それが相剋。 これはその『土剋水』ね。土は水を濁すことが大自然の摂理。私が行ってるのは『土』属性の魔法。 雨という『水』属性に相反する『土』属性の魔法を纏うことで、雨粒を弾いてるのよ」 「……『土』は『水』に強い、というワケか。便利だが、わざわざ魔法など使うまでもないな」 相手だけ傘要らずなことを妬むことなく、吉良は少し首を見回して辺りを観察し始めた。 池の畔を探し、あっさりと目当ての物を発見する。その手に握られている物は二本の大きな植物の葉である。 「古来より人間はそこにある物で満足し、工夫を重ねてきたのだよ。 ハスの葉の表面は非常に細かい球状の細胞が覆っており、この凹凸が水を弾く超撥水性の役目を持っているらしい。 ジブリ映画のトトロも持っていたサトイモの葉もコレと同じ物さ。わざわざ土の魔法とやらを習得するまでもないということだ」 「トトロ……? 外界の妖怪だったかしら、確か」 小さめの頭を乗せた首をちょこんと傾げるパチュリーを無視し、吉良は二本の内の一本のハスをぬえに手渡した。 その手つきと仕草は至極体面的なものではあったが、幼稚な感情でこれ以上身体を冷やすのも馬鹿馬鹿しいと思い、ぬえは渋々と葉を受け取る。 同時に毒気が抜かれたように彼女は口を閉ざし、一方的な吹っ掛けが再び発動することはなかった。 自然が生んだ傘によってようやく雨水から身を守る手段を手に入れた吉良は、そのままついでとばかりにパチュリーへと会話を促した。 先までのお喋りとは違って、今度は重要な話題である。 「―――時にパチュリーさん。魔法といえばだが……」 「ええ分かっているわ。休憩がてら、ここらで『検証その2』を始めようかしら」 目尻を下げて本題へと話題を振る吉良の横をスッと通り過ぎ、パチュリーは池の前までトコトコと歩く。 「さて、いいかしら吉影? 私たちはついさっき、この会場の『端』まで行って結界を見てきたわね」 「透明の見えない障壁で四方を囲む憎たらしい結界だったな。そして私の『キラークイーン』の能力も通じる気配はなかった、と」 十数分前、パチュリーら一行は既に会場端の結界まで足を運んでいた。無論、吉良の能力による実験検証の為だ。 まず『キラークイーンで結界は破壊できるか?』という検証だが、結果はパチュリーも予測を立てたとおり、『不可能』だった。 以前にも夢美との協力で結界へ弾幕攻撃を仕掛けてみたものの、その時も彼奴めは無傷。結界はその大仰な名前を地に堕とすことなく役柄を完璧に全うした。 弾幕で駄目ならスタンドは?という僅かな可能性も、惨敗。哀れキラークイーンは障壁に触れただけで大きく弾かれ、爆弾化叶うことなく検証は失敗を以って徒労に終わった。 当然と言えば当然の話である。この策が成功しようものなら今まで自分たちがウンウン頭を捻って導き出してきた考察とは何だったんだという話になる。 故にこれはパチュリーの中では予定調和。本番なのは今から行う検証その2の方だ。 「確か……『魔力』もといそれに準ずるエネルギーを私の能力で爆弾化できるか、といった実験だったな」 「ええ。これが不可能なら脳内爆弾の解除実験方策を根本から考え直す必要があるわ。踏ん張り時よ」 吉良へ無駄にプレッシャーを掛けながらパチュリーは池の前に腰を下ろすと、その白く細い手で水を掬ってみせた。 その行為に如何なる意味があるのか。吉良はいちいち焦れったく勿体ぶるパチュリーに説明を要求する。 「魔力の実験にその池の水が必要なのか?」 「というわけでもないけど、ここの水は特別魔力に満ち溢れてるからね。その神秘を少しだけ借りさせて頂くわ。 吉影、そもそも魔力って何なのかわかる?」 普通の人生を目指してきた吉良にとって、本家本元の魔法使いから直に魔法講座を教授するなどとは思ってもいなかった。 今まで散々魔法魔力だのの言葉が飛び交ってきたが、こうして改めて訊かれても本職ではない吉良が答えるには少々厳しい質問である。 「よね。いいわ、パチュリーレッスンよ。まず、この世界の魔力は大きく分けて二種類あるの。 生物が生まれながらに秘める小さな魔力……有る人無い人いるんだけど、これを『小源(オド)』と言って、魔法使いはコイツを魔術回路で魔力に変換して魔法を使うの」 わざとらしくコホンと咳払いをして説明する彼女の姿はどこか誇らしげだ。 対照的に吉良はイマイチ実感に来ないのか、「そんな薀蓄はどうだっていいからさっさと実験とやらを開始しろ」とでも言いたげな視線を投げ続けている。 「でも個人の小源には限界がある。だからこの大気中に満ちているもう一つの魔力『大源(マナ)』を取り込んで大きな魔法を使ったりするのよ。こっちは無尽蔵だし実質タダよ」 「なるほどな。しかしパチュリーさん。そんな薀蓄は正直どうだっていいからさっさと実験とやらを開始して欲しいのだが」 気を良くしている所に吉良の遠慮の無い一撃で殴られ、一気にむくれたパチュリーは頬を膨らませ、また吐く。 どうにも人間というものは過程を省きたがるクセがある。 楽を求め、近道をし、ズルをしたがるのが人間たちの特性であり、それは時に長所ともなるのだが。 (そもそも魔法が生み出された経緯自体、人間たちが楽をしたいが為、ズル目的な事実だってあるわけだけども、ねぇ) 何の効能も生み出さない思案を早々に投げ捨て、パチュリーは説明の続行を決意する。 こんな先生役は寺子屋の牛女に任せるとして、今はただ必要な事柄だけを説明すればいいのだ。 「……そうね。ところで吉影。さっき言ってた『実験には絶好の隔離空間』だけど……」 「……あぁ、まあ確かに私はその場所を提供できる、が……。今からそこで実験を行うのか?」 「正直何が起こるか分からないしね。あまり目立ちたくもないし、念の為ってやつよ」 少し前のことである。 パチュリーはこれから行う実験(主に康一の頭部の解剖)を行う場所について頭を悩ませていた。 なにせ埋葬したばかりの康一の身体を掘り出し、あまつさえ頭部を切断して実験台にしようというのだ。 この壮絶な解体現場を仗助に目撃された日には彼がどれだけ爆発するかわからない。少なくとも事は穏便に運ばないだろう。 メンバー全員の集合地として設定したジョースター邸にて取っ掛かりの実験を始めるには間違いないが、あまり仗助には見られたくない。 となれば念には念を入れて万全な環境を用意したい……といったぼやきをパチュリーが呟いた時であった。 「―――あ~~、その……パチュリーさん。その悩みならば私が解決できる手段を持っているかもしれない、が……」 意外や意外。助け舟は思わぬ方向から流れてきた。 吉良がそんな都合の良い場を提供してくれるということである。 尤も、彼の表情はいかにも気乗りしないといった風で、恐らく己の隠し持つ情報を公開することに若干の躊躇いがある、といったとこだろうが。 「―――で、その『亀』が実験場になってくれる……と」 「広さも悪くなく、実験場としてはおあつらえ向けな物件だと思うがね」 こうして彼の手にはエニグマの紙から飛び出た亀が握られることになる。 ハッキリ言って眉唾物の情報だが、これもスタンドとやらのブッ飛んだ恩恵なのだろう。 となれば次に「どうして今までそんな有益な情報を黙っていたのか」と問い質したくもなるが、そもそもこの男は他人に正体を隠して生きてきた人間だ。 極力、手の内は晒さない性分なのだろう。それが今回こうした形で協力を得ることも出来た。彼なりの譲歩が窺える。 「あまり時間も無いわ。早速亀の中に入らせて頂戴」 「背中の『鍵』に触れれば一瞬で中に入れる。やってみてくれ」 言われるがままに亀の『鍵』に腕を伸ばすパチュリー。 瞬間、視界が変貌した。気付けばそこはホテルの一室を思わせる、ちょっとした休憩場だ。 常時にはこの部屋で本に埋もれていたい衝動すら駆られ、思わず頬が綻んだ。 良い気分も束の間、パチュリーの後に続いて吉良も部屋に入ってくる。 これからここで実験をするのだから当然なのだが、部屋の中でコイツと一緒というのは如何にも息が詰まりそうで早くもここから出たくなってきた。 「……ってあれ? ぬえ~~~~? 貴方は入ってこないの~~~~?」 天井に向かって声を張り上げ、そこに居るはずのぬえに救援を求める。吉良と二人っきりはちょっと勘弁して欲しい。 上部に設置されたままの『鍵』の外。半透明で映る外の風景にぬえの下顎が大きく現れた。 どうやら自分らは本当に亀の中に入っているらしく、外のぬえが巨人に見える。気分は打ち出の小槌の魔法を浴びた一寸法師だ。 「私は……いいや。亀が変なとこ移動しないよう見張ってるから、実験なら二人でやりなよ」 素っ気無く返事する彼女の表情は暗い、というより無表情に近い。 さっきからずっとこの調子だし、喋る時は喋るのだがどうも何を考えているのか掴めない。 とはいえ見張り役も無いよりはいい。心に引っ掛かるものを感じながらパチュリーはぬえの気持ちを汲み、このまま実験を行うことにした。 「さっ。じゃあとっとと始めるわよ吉影」 「魔力を爆弾化できるか?だったな。……未だにピンと来ないのだが」 吉良の疑心は尤もで、パチュリー自身もかなり不安であった。 まずスタンドなる概念がどこまで万物の物理現象に干渉できるか見当もつかないし、ここにも主催者の制限が施されていたら実験はいきなり終了である。 魔法使いの歴史とは、探求と挑戦の歴史だ。 不可能を可能にする、と口に出せば胡散臭い文句にしかならないが、魔法というものは本来そういった難問を解く為に工夫を重ねてきた手段。 出来ないならば別の方法を探せばいい。それがどんな遠回りだとしても、積み上げた歴史と知識は嘘をつかない。絶対に。 パチュリーは己の種族に誇りを持っている。 先祖代々受け継いできた血と智を嘘にしない為に。 この歴史を絶やさない為に。 『動かない大図書館』と比喩された魔法使いは、遠い光明へ向けて今、動くのだ。 果ての果て。真理の闇に覆われた僅かな灯火に、歩を進めるのだ。 有象無象の仲間達と共に、落とし穴だらけの道程を経て。 「やってみなければわからないわよ。吉影、スタンドを出して」 「…………」 途端に吉良の表情が曇る。命令されるような口調に不満があるのか、秘中のスタンドを自ら見せ開かすことに抵抗があるのか。 だがここで子供のように駄々をこねるほど彼も馬鹿ではない。この工程が必要な儀式だということは重々承知している。 「―――『キラークイーン』」 低く、狂気の腹底から這い出たような呟きが吉良の喉から発せられる。 現れたそのビジュアルや、シリアルキラーの切り札に相応しき禍々しさを宿した瞳の人型ヴィジョン。 パチュリーがそのスタンドを目撃するのは康一死亡時に続き二度目となるが、痛切に思う。 ―――コイツとは、絶対に敵対したくない……と。 現在の幻想郷ではまず見られない、殺すことのみを手段に添えた圧倒的な暴の匂い。 仮に吉良が敵に回ったとして、勝てる自信が無いわけでもない。腐っても自分は大魔法を操る超級の魔法使いなのだ。 それでも、この男の、このスタンドに潜む殺意を向けられるのは絶対に御免被る。 それくらい厄介な男なのだ。吉良吉影という人間は。 「……出したぞパチュリーさん。それで今から………………パチュリーさん?」 「…………あ、いえ。何でも、ないわ」 不覚。紅魔の動かない大図書館と(主に雑用メイドたちに)呼ばれたこの私が、たかが人間に恐怖を抱き、硬直するなんて。 額に浮き出た汗を軽く拭い、気持ちを整える。敵ならともかく、協力関係である男に何を警戒する必要がある。 吉良は話の分かる人間だ。彼に利する環境を与えている今、よほどの事でもない限り自分らに牙を向けたりはしないハズだ。 「失礼。それじゃあ今から魔力を見せるわね」 そう言ってパチュリーは人差し指を空に向けた。 透明なスケッチブックに筆を走らせるように彼女がツツーと指を軽快に滑らせると、どこから現れたのか水の球がその周囲を飛び回った。 「この水球は大蝦蟇の池で借りてきたさっきの神水。これには多くの『大源(マナ)』が含まれていると最初に説明したわね」 「マナ……つまり魔力か。その水っ玉を風船爆弾にすることが出来れば実験成功ということか?」 「んーちょっと違うわね。水は水。マナとは所詮、この水液体に付属した不可視の要素に過ぎないもの。 これを爆弾にしたところで、それは魔力の爆弾化とは言えないわ。言うとおり、ただの風船爆弾でしかないわね」 無重力にプカプカ浮かぶコーラの如く、パチュリーの指先には直径10センチほどの小さな水球が舞う。 ならばどうする?という抗議を言外に含んだ吉良の表情は、次のパチュリーの質問によって塗り替えられた。 「時に吉影? 貴方の能力って不定形物質にも作用するの?」 言われて吉良は少し考え込み、過去を振り返りながら逡巡する。 川尻家の庭に発生した『猫草』は空気を操るスタンド使いだった。その能力を応用し、空気爆弾として使用することを練っていたのも遠い出来事ではない。 兼ねてより自主的に実験は行っていた。 例えば、キラークイーンは『空気』すら爆弾にすることも可能だ。 ある程度密度を固めたものではないと流石に不可能だが、空気が可能なら目の前に浮かぶ『水』だって爆弾には出来るだろう。 「…………物にもよるだろうが、不可能ではない。そこの水球程度なら恐らく容易なハズだ」 「それは良かった。さっきも言ったけど、この水には魔力が込められている。 水だけじゃない。その辺に漂う空気や私達の踏みしめるこの土地、木々なんかにも本来魔力が存在するの。 それがマナね。魔法使いはこれらを吸収して魔術回路に組み込み、魔法を発動する者達なんだけど……」 「その肝心な魔力は目に見えない。……少なくとも私の目には」 「そういうこと。ちなみに私の目からも見えないわよ魔力なんて。肌で感じ取るものだしね」 するとなると当初の『見えない物、触れない物は爆弾には出来ない』という問題が壁となる。 猫草の空気弾の場合、相当質量を膨らませてゴム鞠のような弾力性ある気体に昇華できていたから触れることが可能になった。 しかし魔力というヤツはそうもいかないのではないだろうか。これを膨らませる、というのなら話は変わってくるが…… とまで考え付いたところでようやく吉良は、パチュリーのやろうとする事が理解できた。 「……水の中に宿る魔力のみを膨らませ、キラークイーンで直接触れられる水準まで質量を上げる?」 「ピンポン。流石に頭の回転が速いわね」 「茶化さないでくれパチュリーさん。そういうことが可能なら、百聞は一見に何とやらだ。取りあえずやってみせてくれないか?」 言われるが否やパチュリーは颯爽と水球に指を伸ばし、そのままブツブツと何事かを口ずさみ始める。 恐らく呪文の類だろうと吉良はその光景を興味深そうに眺めていると、彼女の柔らかそうな唇が宣言を唱え終えたと同時に事象が発生した。 空中で静止したままの水球内から「ポヨン」というコミカルな擬音と共に小さな膿のような物が分離したのだ。 「そのちっこい青色の微生物みたいな物が魔力なのか?」 「そ。水の中に眠るマナの質量を可視領域にまで高めて分離させたの。 魔力にも色はあるんだけど、この程度のマナ量なら薄い青色に見えるハズよ」 パチュリーはひと仕事終えたように前髪を軽く整え、こっちは用ナシとばかりに残った水球を地面に突き落として破裂させた。 フワフワ浮かぶ魔力をツンツンと突つきながら弄ぶその様は、まさに幻想の魔女と言うに相応しい。 さて、ここからの仕事はスタンド使いである吉良の領域。傍に並び立つキラークイーンを眼前に動かし、その腕をゆっくりと振り上げる。 「これを……爆弾化させればひとまず実験は成功、という認識で良いんだな?」 「ひとまずはね。私にさえ触れられるんだし、多分大丈夫だとは思うけど」 この肉体に掛けられた忌々しい呪いの根源が魔力の類だとして、その容量が常識を逸脱した大きさだとはどうにも思えない。 そこまで巨大な圧力を持つ魔力ならパチュリーや他の賢者達にも一発で見抜かれてしまう。それは主催者の本意ではない筈だ。 しかし以前夢美とスタンドを使って体内をくまなく検査した時にはそのような魔力の基になる呪印や方陣など一片も見付からなかった。 我々に施された爆弾や制限の呪い、そのスイッチとなる起源はあくまで小さな魔力を源にして体内に仕掛けられている。パチュリーはそう当たりをつけていた。 ならばその程度の魔力、発生源さえ見つけられればこちらから対策を仕掛けることも可能だ。 これはその第一歩。 吉良の能力が魔力でさえ爆破出来るのだとすれば、体内を伝う呪いの魔術回路そのものを完全に無効化できる可能性はある。 魔法とスタンドに如何なる関係性があるかは知ったことではないが、主催者太田がスタンドの管轄外だとしたらそこに隙が存在する。 無論、もう一方の主催者荒木がここに手を加えていたら対策はより困難と化すだろうが。 「……キラークイーン。ソイツを『爆弾』にしろ」 白き殺人鬼の腕が、青い魔力の塊を透過する。 ……一見、何も変わっていない様に見える。パチュリーは吉良を横目でひと睨みすると、吉良は右手で丁度スイッチを押す構えを作った。 躊躇無く、スイッチに向けて親指を振り落とす。 カチリ、という擬音が二人の耳を突き抜けた。 ボンッ 魔法薬の調合に失敗した時とよく似た小さな炸裂音が、部屋の中に木霊する。 パチュリーが予想したよりも遥かに小ぢんまりした爆発が彼女の瞳に刻まれた。 「成功ね」 「……随分とあっさりした実験だったな」 吉良の呟く通り、参加者の運命を握る一大実験の先駆けにしては、思ったよりも小さな祝砲音で幕は閉じられた。 これではやりがいも無ければ実感も無い。果たしてこれは本当に喜ばしい結果なのだろうか。 「当たり前でしょ。これはあくまでこの先進める実験の前提を確かめる為のもの。実験の実験なんだから。 とにかくこれで分かったわね。貴方のキラークイーンは『魔力すらも爆弾に出来る』ってことが」 涼しい表情でパチュリーは内心、胸を撫で下ろす。 実験の成功は勿論ありがたい結果なのだが、それ以上に彼女は腹に抱えていたもうひとつの懸念の解消に安堵したのだ。 吉良のキラークイーン『第1の爆弾』とやらは、同時に複数の対象を爆弾に変えることは出来ないらしい。 となれば今ここで彼が魔力の爆弾化、加えて爆破を行ったということは、彼は『誰も爆弾に変えてはいなかった』ということになる。 にとりを人質にし、実際に爆殺した男のことだ。彼があれ以来、誰かを再びこっそり『人質』にしてはいない、という確証なんか無かった。 パチュリー自身、吉良の素振りには最大限警戒していたが、自分が気付かぬ内に爆弾にされている可能性もゼロではなかった。 もし爆弾にされていようものならこの先、この男に対して都合の悪い意見は問答無用で全て封殺されることであっただろう。 その懸念も木っ端のように消滅した。吉良も自身が置かれた立場の重要性は理解出来ているということだ。 (これでひとまずは準備完了ね。……まだまだ乗り越える関門は残っているけど) 今回は実験対象がただの『マナ』だったからこうも上手く行っただけに過ぎない。 次なる実験は死体であるとはいえ『人間』だ。まず、本当に体内に仕掛けが施されているかが分からない。 よしんばその源流に辿り着き、更なる実験の成功を収めたとしても、最後の難関は『生きた人間』を対象とする行いだ。 これは実験などでは収まらない。失敗がそのまま『死』に繋がる危ない橋渡りだ。 だからこそこうやって何度も実験を重ねていく。石橋は叩き過ぎて困ることは無いというもの。 「―――となれば次はどうする? さっさとジョースター邸とやらに足を運ぶのか?」 吉良の催促に少し考え込むパチュリー。下唇に人差し指を添えた可愛げのある思考姿は、多くの男性を虜にしてやまない光景だろう。 その彼女の考える脳内では、爆弾は解除すればいいものではない、という視野の広い考察が繰り広げられていた。 最終的な目標は主催打倒。最悪でもこの会場から脱出出来なければ意味が無いというものだ。 ならばこの段階で爆弾解除のみに行動を割いているだけでは根本的な解決には繋がらない。リーダーとは希望の道を常に見据えてなければ務まらない役職なのだから。 (魔力……う~ん魔力、なのよねぇ、問題は…………) 吉良の能力を利用した実験に関する工程は現段階で全て終了した。 凡そが上々の結果。これまではパチュリーの予想通りと言っても良かった。 そして今まではあまり深く考えてこなかった疑問が、来なくてもいいのにのそのそと湧き上がり、我が物顔で脳内を占領し始める。 つまりは『魔力』そのものだ。 これだけの参加者の数に一度に呪いを施し、制限を掛け、幻想郷にもよく似た不可解な会場を創り上げ、参加者たちを散らした。 余程膨大な魔術の行使が予想されるが、ハッキリ言ってここまで来ると次元が二層三層も違ってくる。 ならばこれもスタンドによる桁違いの恩恵か、とも思うが、それは更にあり得ない。 魔術の一切を使わずにここまで巨大な御膳立てを用意できるものか? 無理だ。パチュリーはスタンドには詳しくないが、どの世界の常識においてもそんな神業を一朝一夕で行えるわけが無い。そう決め付けた。 (じゃあ、やっぱり魔力……かしら。いやでも、それにしたって…………) 空いている椅子に腰掛け、肘を突いて思考に耽け込む。その様子を吉良は焦れったい目で睨んでいるが構いやしない。 そもそもおかしいのが魔力なのだ。 先ほど吉良に説明したように、より強大な魔法を使用する場合、通常なら人は大地に眠る『大源(マナ)』を借りる。 あの主催者が教科書通りマナを利用してこのゲームを創っているのならば、そのマナはどこから引き出している? ―――考えるまでもなく、今自分達が立っているこの場所。血が染み付いた母なる大地からだ。 ワーハクタクの妖怪・上白沢慧音が満月でもないのに妖怪化していることからも明らかに見える。 今までは脳内爆弾について頭を悩ませていた故に大して重く見ていなかったが、こうして頭に余裕が出来てしまうとその異常は顕著に浮き出る。 現在の会場は満月の夜……ともすればそれ以上に魔力濃度が圧倒的に高い。 だからこそパチュリー達はこうして会場を隈なく歩き回り、魔力の密集地を発見する作業にも精を出しているのだが……。 (……どうも会場のどこかに魔力が密集している、って感じじゃないのよね。寧ろ……) 会場全域。土地全体に魔力が漲っている感じだ。 ここまで広範囲に魔力が漂うとなると、当初予定していた“魔力の密集地に赴き、その力を際限なく薄める作戦”に影が曇ってくる。 パチュリーもこれで立派な魔法使い。こうまで土地に密着した魔力が発生していれば、それを判別することは容易い。 この擬似的な会場は間違いなく、土台となった土地の持つマナを基にして創られている。 例えば仙人たちが手軽に創るようなインスタント異界『仙界』には、基になる土台は皆無に等しい。 創りあげる本人達の霊力や技術に依存する部分が多いので、恐らく仙界ではここまで大規模な空間は創れないのではないだろうか。 それも含めて豊郷耳神子に会ったら意見を聞いておきたいが、パチュリーの予想だとこの会場には歴とした土台がある筈だ。 幻想郷の中にも無い、圧倒的な魔力が秘められた基盤。 (一体……『どこ』なの、ここは……?) いくら難しい顔して考えていても、ヒントの少ない現状では詮無いことだ。 無駄なことを考えるほど無駄な時間も無い。パチュリーは脳内で進めていた考察に栞を挟み終え、予ねて書き綴っていたメモにペンを走らせる。 パチュリーメモへの記録はこまめに行うべきだ。自分の身にいつ何が起こるか分からない。 突発的な敵襲によって殺されるかもしれないし、度重なる疲労により精神的に参ってしまうことも想定しておくべきだろう。 知恵の鏡も曇りかねない……危惧するべきはそういう事態だ。 霊夢や紫、知恵を貸してくれる賢者達は他にもいる。ならば今は自分にしかやれない事柄を進めておくべきだ。 パチュリーはもう一度己の立つべきポイントを客観的に俯瞰する。 まずはジョースター邸。状況が穏便に進んでいれば、そこでもう一段階足を進めることが出来る。 「―――出発しましょうか、吉影。目的地まで後は一直線…………」 現在までの考察・疑問点を記録し終え、威勢よく立ち上がったパチュリーは。 まず、最初に。 「――――――グ、は…………!?」 衝突してしまう。 ゲーム開始からおよそ『二度目』となる、身を焦がすような『得体の知れない何か』に。 一度目は広瀬康一爆死の瞬間だった。 「吉、影……? どうしたの、その血――――――」 今回も、あの時と同じ。 目の前の『理解に及ばない光景』は、幻想の魔女の困惑を誘うには充分すぎた。 所詮、本の世界で生きてきた彼女だ。此の世で不意に起きる事故……『謎』に対する咄嗟の措置、それへの経験値が不足していた。 仲間であること以上に、吉良はこの先、実験の鍵に成り得る『護衛対象』とも言って差し支えない人物。 その男の口から大量の『カミソリ』が、血と共に吐き出されている光景を見て。 こともあろうに呆然と立ちすくみ、次への緊急行動を遅らせている。 醜態以外の何物でもない。 パチュリー・ノーレッジという確かな才女は、眼前の予期せぬ事態にただただ醜態を晒すのみだった。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 『封獣ぬえ』 【昼】E-3 大蝦蟇の池 端的に言って私は、焦ってたんだと思う。 何をかって? 決まってるでしょ。 吉良吉影を。あの腐った殺人鬼を始末することを、よ。 殺しへの倫理なんてそもそも気にしちゃいない。 だって私は妖怪だから。 強いて言えば、妖怪が人間に手をかける理由なんて、原初を辿ればそれこそが私達の本能だからだ。 身に染み付いた本能に反するなんて、そうそう簡単なことじゃない。 妖怪が気に入らない人間を殺して、何の不都合がある? あの康一とかいう人間もそうだった。私からすれば本当に取るに足らない人間共。 だからソイツの死を利用し、吉良の生命という導火線まで誘爆しようと色々画策したってのに。 全部。 「全部…………メチャクチャじゃない……!」 レールが外れだしたのはどこからだっけ? そう……あの闘牛頭の仗助が、にとりの爆弾を復元させた辺りからだった。 いつの間にか逸れてしまった軌道は、私の運命を背負ってあらぬ方向に進んで行ってしまっている。 時間が経ち、魔女の考察が進めば進むほど、吉良が持つ能力の重要性が如実に浮き出てくる気がしてならない。 つまりこれは『風船』のようなものだ。 私がこうやって『機』を待つ間にも、吉良という風船はどんどんと膨れ上がっていく。 気付けば取り返しがつかない所まで空気は送られ続け、最大限度まで膨れた風船を針で刺したなら―――待つのは大爆発。 風船というよりも『爆弾』ね。火薬が少ない内に爆発させておくべきなのよ、こういう時って。 「今ならまだ、被害は少ない……かもね」 これ以上魔女が吉良の有用性を上げない内に、動いてしまおうか。 何だってパチュリーの奴はあんな人間の同行を許可したのか。正直彼女の気が知れない。意味が分からない。神経を疑う。 だから私が。 今ここで。 喰ってしまえ。 暗殺にはうってつけのスタンド『メタリカ』で。 蛇のように這いずって、静かに息の根を止めよう。 理想はパチュリーにも気付かれないように、陰からそっと。 吉良の能力の代わりなんて他にも居る。魔女自身が言っていたことじゃない。 もしバレても、何とか誤魔化せる。 (この正体不明の大妖怪、封獣ぬえ様が殺してやるよ…………下等な人間め) 端的に言って、この時の私は…………やっぱり焦ってたんだと思う。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 血。カミソリ。ダメージ。 ―――攻撃。 様々な視覚情報を経てようやく導き出した結論は、全てにおいて一手先を許す結末に至る。 目の前の吉良が喉元を押さえて苦しむ姿を見てパチュリーは、これがスタンドによる現象なのではと予測したが。 「―――吉影っ! それは…………!?」 言葉や行動が、思考に追いついていない。 もしこれがスタンド攻撃の類だとしたら、それを『行っている者』が近くにいる筈だ。 緊急するべき行動は、その相手をいち早く発見する。或いは吉良と共に安全な場まで逃走することである筈だ。 分かっていても、パチュリーはそんなマニュアル通りの行動にすら移せずにいる。 イチ、ニの、サンで決闘開始の合図を放つスペルカードルールとは異彩を放つ、真の殺し合い。 きっかけも攻撃の正体も対処法も、何もかもが命名決闘法とはまるで違うのだ。 極論、避けて弾を撃つのみに終始するだけと言っていい幻想郷の決闘を教科書にした所で、今回のようなスタンド戦では大して役に立たない。 悪魔の館が誇る大魔法使いをしても。 幾千の魔術を究めた知の賢者をしても。 正体不明の殺意に対しては、対策を練る糸口すらも見付けられない。 「―――こんなふざけた災厄、原因は……決まっている、だろう…………ガハァッ!」 ボトボト。ドバドバと。 口内から溢れんばかりのカミソリの刃。僅か三センチばかりの鉄の諸刃が、何枚も何枚も。 まるで馬鹿げた手品のように、吉良の喉を切り裂きながら突如として現れたのだ。 「……スタンド攻撃、だ……! それ以外に考えられない……ハァー…ハァー……!」 自身を襲った理屈抜きの災厄。吉良はスタンド戦の百戦錬磨と言うほどではないが、今までの経験上、この現象の原因がスタンドによるものだとすぐに直感した。 見当をつけた上で、これから取るべき行動は自ずと選択が絞られてくる。 「これがスタンド攻撃なら『敵』は亀の外に居る……! クソがッ! あの小娘は何をやっている!?」 「敵……そうだ、ぬえはどうしたの!?」 吉良の言葉から数瞬遅れ、パチュリーも天井を見上げる。 見張り役を自分から引き受けた彼女だ。事が起こるまでどうして何一つ声を発さなかった? 敵襲を知らせなかった? まず考え付いた推測が、ぬえも同時に攻撃を受けている可能性。最悪、殺されているかもしれない。 その推測を確かめる為にも、パチュリーと吉良が起こした行動は殆ど同時だった。 天井に腕を伸ばし、二人とも一瞬で亀の外に飛び出す。 「ぬえ……!? どこなの! 返事をしなさい!!」 「…………っ」 たかが数分ぶりに感じた外の空気が、いやに熱く肌を刺激してくる。 夢美やにとり、康一、慧音たち集団に遭遇した時のようなぬるい空気などではない。 今回のはパチュリーにもハッキリと感じ取れるほどに殺気に満ちた敵襲。完全に自分達が的に掛けられたエンカウントだ。 屋外に出たパチュリーはまず、ぬえを探す。 辺りは以前と全く変わらない光景。通常の大蝦蟇の池だ。 一見すれば襲われているとは分からない状況。しかし吉良の口元に染まる赤い染みが、なにより事態の深刻さを物語っている。 「吉影! そのカミソリはどうしたの!? いつ入れられた!?」 「知るわけがない……! 私は敵スタンドの影など一瞬たりとも見てはいない……!」 それなのに離れた場所から閉じた人間の口へと大量のカミソリを入れ込む技術。 この『謎』を解明しなければ対抗策など編み出せない。 ならばいっそ逃走を選ぶべきかもしれないが、ぬえの姿が見当たらないことが気になる。 (ぬえを……置いて逃げる……!?) 彼女が死亡している可能性があるのなら、あらゆる倫理を脱ぎ去っていち早く逃げる手段もアリだろう。 周囲360度どこを見渡しても、ぬえも敵の影すらも見えない。雨風だけが、木々の葉を揺らすのみだ。 パチュリーはすぐに魔法の箒に跨り、逃走の態勢をとる。 「―――逃げるわよ、吉……」 極力、戦闘の回避を皆に促してきたのは自分だ。 何よりも生きて情報を持ち帰ることこそが重要。故にパチュリーは決心をつけた。 ぬえの生存を確認しないまま、吉良を連れてこの場から撤退。それが最も合理的な選択に思えた。 しかしダメージを受けた吉良を箒に同乗させようと彼を振り返った瞬間、パチュリーは目撃することになる。 「―――吉影ッ! ハサミ!!」 吉良の喉内部にくっきりと大きく浮き出た刃物が、血管ごと両断する勢いでその両刃を開いている光景を。 「うぉぉおおおおおおッ!!!」 さっきのカミソリとはわけが違う、全長七インチはあろうかとも見えるハサミが吉良の喉に埋め込まれている。 パチュリーは数秒、吉良から視線を外していたが、一体どういう理屈でカミソリやハサミを人の喉に気付かれずに入れ込むというのか。 そしてこの敵が吉良ばかりを狙う理由は? 複数の相手には同時攻撃できない? 思考するばかりで、対策が講じられない。少なくとも今ここで吉良を失うわけにはいかないのだ。 (ど、どうする!? 吉影がマズイ! 今すぐに敵を見つけないと……いや、いっそ私だけでも―――) 目の前の理不尽に何の抵抗も出来ずにいる。 なにしろ敵は身内の内部から攻撃しているのだ。こんな攻撃にどう対処すればいいのか、パチュリーの知識には備わっていなかった。 グギギと鈍い音を軋ませながら。 今にも喉をかっ切りそうな構えのハサミが、誰が触るでもなくひとりでに開き……そして次の瞬間――― 「この、吉良吉影を……舐める、なよ…………! 『キラークイーン』ッ!」 再び現れたキラークイーンが、躊躇無く吉良の喉に指先を突っ込み―――閉じられる寸前のハサミを、一瞬で爆破した。 勿論、爆発の影響で自分までもが吹き飛んでは意味が無い。 爆破は最小限。消滅レベルの粉砕にて、喉を襲うハサミは煙の如く霧散した。吉良にとっては容易い曲芸だ。 「がはッ!! ハァ……ハァ……! く、そが……!」 「大丈夫!? 吉影!」 窮地を脱した吉良のその芸当にパチュリーはひとまず息を吐く。 体内であろうとも内部を損傷させずに最小限の爆破を行ったその技術は皮肉にも、これからの脳内爆弾解除への安全性を高める裏付けともなったが、これで危機が去ったわけではない。 体力が大きく奪われたのか、ここで吉良が完全に膝を突いてしまう。 「あ、足に力が……入らん……!」 身体中の関節を支える糸が一斉にプツリと切れたように。 吉良の体が崩れたのだ。それほどのダメージを刻まれたわけでもないのに。 「箒に乗って吉影! 貴方を連れてここから離脱する!」 傍で見ていればこの攻撃、体内から刃物を突き刺してくるまでに若干のラグを必要としているらしい。 ならば今ここを除いて逃走の好機は無い。パチュリーは動くこともままならない吉良に駆け寄り手を引こうとする。 「逃げて……そして、どうするんだパチュリーさん……?」 今は自分の命の方を優先して、と。 喉まで出かかったその言葉を、パチュリーは飲み込む。 つまらない問答などで好機をふいにしている場合ではないから……という理由“ではなく”。 「この私が、誰かも分からない正体不明の殺意に怯え、背後を気にしながら、あまつさえ何も抵抗せずに一目散に逃げろ……というのか。 この、吉良吉影が……! この吉良吉影がッ!!」 怨讐の炎をドス黒く燃やす殺人鬼の顔が、魔女である自分すらも強張らせるほどに醜く歪んでいたからだ。 「離れていろ…………パチュリーさん」 頼りにも思えるその男のたった一言が。 パチュリーに未来の不安を、予期させずにはいられなかった。 ―――この殺人鬼を懐に招き入れた自分の判断は、本当に正しいものだったのか、と。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 思うに、スタンドなる概念とは『やろうと思わずしては不可能』だと、ぬえは気付く。 逆に言うなら、やろうと思えば結構理不尽な現象だって起こせる。 この能力を手に入れ、行える範囲で様々な検証を行ってきたが、やはりメタリカの力は光明だ。 メタリカは鉄分を磁力のように操る能力であり、地中に眠る鉄分を再構成し、刃物に変えることが出来たりする。 だがこの力、どうやら地中の鉄分のみを操作するに非ず。 考えてみれば人体にだって鉄分は存在する。だったら離れた相手の体内の鉄分すらも刃物に変化させることも可能なはず。 心中では“流石に無茶苦茶ではないか”と不安もあったが、仗助や吉良の能力だって充分無茶な部類に入る。 だったらやってみるべきだ……と、半ば実験台のように亀の中の吉良向けてイメージを行使した。 (……見た目にはグロテスクなものがあるけど、やっぱりやってみるものね) 亀から飛び出てきた吉良は、確かな損傷を被っているようだった。 二人とも当然のようにぬえの姿を探しているが、現在の彼女は勿論透明化を施しての攻撃だ。抜かりなどあろう筈もない。 正体不明の妖怪が、その小柄な体躯までをも見えないヴェールで覆い隠す。 一体誰が彼女の正体を見破れるというのだろう。ぬえは大妖怪らしく驕りの笑みを浮かべたくなる。 だが、駄目だ。 友人であり、大妖怪でもあるマミゾウすらも呆気なく死んでいる。 これを教訓として慎重に事を運ばねば、彼女の魂はいよいよ無念な残滓として露に消えてしまう。 (油断なんてしないわよ……人間め。そのまま何が起こったのかも理解出来ないまま……苦しんで逝きなさい) 相手より10メートルは離れた木陰の下で、覗き見るようにぬえは慎重にスタンド操作に集中する。 この能力は透明のまま攻撃するにはかなりの器用さを必要としており、本体であるぬえの精神も次第に疲弊していくというのは軽く見られない短所だ。 長期戦だと不利になる。このまま一気にケリをつけようと吉良の喉にハサミを生み出してやったが…… (キラークイーン……! あれが厄介ね……) 問答無用で対象を木っ端に散らすあの能力は、噂にも聞く紅魔館に幽閉されているという、かの吸血鬼にも似た危険なものだ。 或いは、とも思ったが、やはり体内で作ったハサミだろうが何だろうが、吉良は片っ端から消滅することも可能だろう。 しかしそれすらも織り込み済みだ。 鉄分を刃物に変えて攻撃する、というのはどういうことか? その体内に存在する鉄分を一気に対外へ放出するということだ。 『鉄』というのは、血液の中で呼吸により取り入れた酸素をつかまえ、体の隅々まで運ぶ役目を持った重要な成分だ。 鉄分を体内から大量に奪われた者は息こそ荒くとも、酸素が体内に全く取り入れられてないことを意味する。 簡単に言えば、血がおぞましい黄色になって死ぬ。死ぬ前にその体は『死人』へと変貌するのだ。 (つまり吉良……どう転んでもアンタはもう既に、私の能力に堕ちているのよ!) ろくに動けなくなった吉良に、攻撃の手段はもう無い。 触れた物を爆弾にする能力……恐ろしい能力だが、こうして一定の距離を保てば恐るるに足らず。噛み付かれると分かっている虎にわざわざ近づくアホは居ない。 相手の鉄分を奪い、その鉄分すらも武器として扱えるメタリカには隙が無かった。本来、鉄分を奪うという結果は副次的なものに過ぎない。 千の手を武器に変えるスタンドというものは、まだまだ未知数だ。 既にぬえは手に入れたばかりの能力を早くも使いこなせる域にまで昇華させ始めている。 弾幕ごっことは趣からして異である能力。この殺し合いの舞台においてはその名前通り、まさに隣に立たせるべき力であると理解した。 そしてぬえは思い出す。 今自分が相手取る人間もまた、千の手を武器に変えるスタンド使いであることを。 あらゆる不当不平の状況の中にこそ勝機を見出す、貪欲な獣たちであることを。 「シアーハートアタック」 それは、とても追い込まれている人間が放つ言葉の重みではなかった。 吉良が間際に放った単語の意味は、為す術がなくジリ貧からの悪足掻きか。 (―――違う) あの人間の表情は、絶望の淵に立たされた仔兎の怯えるソレとは全く違う。 妖怪と人間では、本来なら人間の方が“喰われる側”である筈だ。 今や過去となったその図式を捨て去り、ぬえに慢心は無かった。本気で敵を殺りに行ったのだ。 (―――“アレ”は、そんな表情じゃあない……!) 故に彼女は慎重だった。 近づけばスタンドパワーは上昇し、もっと楽に吉良を始末できたのかもしれない。 それでも目の前に落ちたチャンスには安易に飛び掛らず、冷静に勝機を見出していた。 ぬえは間違っていない。スタンド戦における“ほぼ正解”の道を選択出来ていた。 だったら吉良が浮かべるべき表情は、苦悶や絶望の類でなければおかしい筈なのに。 あの顔ではまるで―――まるで何か“切り札”でも隠し持っている人間の歪んだ笑みではないか。 『ソコに居ヤガルナァ~~ テメー』 “シアーハートアタック”と呟かれたその名が『コイツ』を指すというのなら。 間違いなく『コイツ』は、吉良の切り札であるのだろう。 (なん、で…………) 何故、というのなら、どう考えたってありえないからだ。 キラークイーンの左手から発射されたように見えたこの『小型の骸骨戦車』が。 ギャルギャルギャルと尖ったキャタピラ音を響かせながら走るこの小さな殺意の塊が。 誰にも正体を破られていない筈のぬえ目掛けて――― (―――どうして私ン所に一直線に突っ込んでくるのよこの骸骨はァ~~~ッ!?!?) 『コッチヲ見ロォ~~~!』 ぬえにとっての誤算は二つ。 あのホテルで仗助たちの口から語られたキラークイーンの能力を説明する場に、ぬえが居合わせなかったこと。 殆どのメンバーにはシアーハートアタックの事も含め、吉良の能力は知られている。 ただぬえと、ついでに言えば夢美だけが吉良の切り札を知らずに現状まで至る。これは致命的な不運だ。 そしてもう一つの誤算は、至極単純であるものだった。 『正体不明』なのは何もぬえだけではない。吉良吉影という男も、これまでの人生でその正体を覆い隠してきた。 自分の正体が見破られる事こそを恐れてきたぬえにとっては。 他人の正体を見破る経験については、圧倒的に不足していた。 要はスタンド戦というものは、先に『相手の正体を見破る』ことが戦いの鍵にもなる、とまで言っていい。 情報や機転、運など。様々な要素を構成して、初めて勝機を見出す事が出来る頭脳戦。 姿を隠し、多少のダメージを与えたところで、この殺人鬼を制圧する事など甘い考えに過ぎなかった。 一つの町を混沌に陥れた最凶の殺人鬼……それなりの『カード』は揃えているということだ。 (やば……! あの凶悪爆弾魔から発射されたんだ……絶対ロクなもんじゃないッ!!) 警鐘を鳴らし続ける頭を強引に振り、ぬえは次なる行動を考える。 スピードはそう速くないが、何か嫌な予感がする。とにかくアレに触れるのは悪手だ。 こちらの武器は無限大に生めることが利点だ。地面の鉄分を再構成し、幾多ものナイフを作り出して小型戦車に向けて放つ。 (……! か、『硬い』……ッ!) が、駄目! 防御に関しては随一の鉄壁を誇るシアーハートアタックに、ナイフ如きの刃が通じるわけもなく。 『死ネ!』 目と鼻の先に迫る死神に対抗する策は浮かばない。 本体である吉良を先に抹消すれば、とも考えたが、最早そんな時間は残されていなかった。 「――――――あ」 思わず声が漏れてしまったが、そんなことはどうでもいい。 確かにぬえはこの瞬間、確実なる『死』の到来を視てしまった。 目の前を走ってくる骸骨は、きっと死神。 自分にとっての死神は、あの歪なる人間だったのだ、と。 そう思い、数秒後に訪れる死を畏れ、瞼を固く閉じた。 故に、シアーハートアタックが身を凍らせた自分の真横を素通りしていく事には気付けなかった。 「あー? 其処ぉ 底にぃ 誰か いるのかい???」 直後、代わりに鼓膜を叩いた気色の悪い『声』と『爆発音』だけが、ぬえの脳裏に恐怖の象徴として確かに刻まれた。 ―――背後で拡散した死の爆風が、強張るぬえの全身を包んで吹き飛ばす。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 「…………手応えは?」 「わからん。シアーハートアタックは熱源を追う自動操縦だ。爆破があったとなれば『敵』はそこに居た、ということになるが」 木々をも吹き飛ばした爆発の余韻に耳を押さえながらパチュリーは、隣で蹲る吉良に訊いた。 生ある者を纏めて死の爆発に巻き込むシアーハートアタックは確かに『何者か』に反応し、爆音を轟かせたのだ。 相手が透明であろうと正体不明であろうと、シアーハートアタックは狙った標的を必ず仕留める。 まともに受ければ致命傷。せめて爆ぜた相手の正体くらいは確認しておきたいが…… 「……煙幕が晴れるぞ」 「私が確認してくる。貴方はそこに居て」 依然、体力を失ったままの吉良を庇うように前へ出るパチュリー。 まことに不本意だが、彼が狙われる事はなるべく阻止したいのが本音であり、現状その盾役は自身のみだ。 箒に乗ったまま音も無く滑空し、晴れゆく煙幕の向こうにいる敵の影を探す。 ガサリ 僅かに揺れた草葉の音が、『敵』の生存を伝える。 ならば追撃。 パチュリーは己の得意とする魔法詠唱の準備を整えながら。 見た。 「――― び っ くり したァ~~~。なに 今の爆発は? 貴方がやったのね??」 『敵』の姿を。 大した損傷も無く、ゆったり揺らめくようにこちらへと歩を進めてくる女の姿を。 『彼女』のことは、知っている。 「―――貴方、永遠亭の……姫君―――」 ―――違う。 髪の色がパチュリーの知る月姫と同じ物だったので思わず間違えたが。 よくよく見れば、違う。 あの永遠亭の蓬莱山輝夜が放つ、煌くような瞳とは。 全然……違う。 目の前の『彼女』は。 パチュリーが知る以前までの『彼女』とは、雰囲気からして…… 異端。 「いえ、貴方は…………竹林の蓬莱人、『藤原妹紅』―――」 『目は口ほどに物を言う』……情のこもった目つきは言葉と同等に、相手の気持ちが伝わることの意だが。 パチュリーは目の前を歩いてくる妹紅“らしき”人物の瞳を覗いて、一瞬にて悟った。 ―――怪物。 『アレ』はもはや人間でも蓬莱人でもない。 何も……何の未来も映していない虚無の瞳。アレではまだ地獄の死神の方が愛嬌を灯している。 狂気に満ちた不尽の焔が、まるで己の身ごと焦がしているかのように、 黒く、どこまでも黒く燃え盛る炎を右手に宿し、 歪んだ微笑を携え、 こっちへと、 ゆっくり、 足を、 進 「―――水符『プリンセスウンディネ』ッ!!!」 機を制したのはパチュリーだった。 火水木金土の五大元素に加えて日月の属性魔法を操るパチュリーは、相手の弱点を突くことに長けている。 詠唱が終わるや否や、大量に現れた水泡が密度の高い弾幕となって妹紅を襲った。 「わっ」 迫り来る水害に対して空気が抜けるような声を漏らし、流石に妹紅は抵抗の術を唱えた。 右手に燻る黒焔を撃ち出し相殺を試みるも、水と炎では圧倒的に分が悪い。 妹紅が炎の妖術を扱う事を知っていたパチュリーは、水の魔法で圧倒することを一瞬早く行っていた。 彼女の言葉を聞くよりも。 彼女の動きを眺めるよりも。 何よりも妹紅の瞳が、雄弁に悟らせたのだ。 「この女は危険だ」という絶対的な危険信号を、パチュリーの脳髄へと、一瞬で。 「逃げるわよォーーーーーーッ!!!!」 下手人の正体は知れた。 謎のカミソリやハサミのスタンド攻撃は妹紅の得た能力か何か。恐らく夢美と同じに、DISCによる能力付加だろう。 比較的人情味があると聞く彼女に何があってあのような姿になったのか。 何故吉良を狙ったのか。 そんな疑問を全て放り投げて、逃走を選択した。 幾重にも密度を高める水泡により炎が掻き消され、蒸発と共に再び煙幕が周囲を覆う。 この環境を味方につけ、一目散に離脱を図った。 こんな大声を出したのは何時振りだろう。もしかしたら初めてかもしれない。 喘息の悪化を予期しながらパチュリーは、爆走する魔法の箒に吉良を乗せる。 「すぐにシアー何とかを回収して吉影! 早く逃げるわよ!」 「敵の正体は判明した……! ならば今ここで始末した方が後腐れにはならないだろう……!」 「判明したからこそ逃げるのよ! 次からは対策を立てることが出来るし、貴方も負傷している。今ここで無理に戦う事もない! それにアイツは炎を自在に扱うにんげ……蓬莱人。熱を自動で追うとかいうシアーハートアタックでは相性が悪いわ……!」 シアーハートアタックによる最初の爆発は、妹紅に一切のダメージが無かった。 おそらく彼女の撃ちだした炎の弾幕をシアーハートアタックは追尾してしまい、あらぬタイミングで誘爆させられたのだろう。 更に妹紅が纏っていた『火鼠の皮衣』は炎を通さない作りの衣。一瞬だけ見たその衣装の効能もパチュリーの知識には存在する。 パチュリーだけならともかく、吉良が妹紅と対峙するには確かに食い合わせは良くない。 苦虫を噛むように苛立つ表情を作った吉良は、パチュリーの後方に相乗りしながらシアーハートアタックを手元まで回収させた。 納得はしていないものの、パチュリーの意見に渋々ながら賛同したことの表れだろう。 殺人鬼を同乗させることの嫌悪感も感じながら、すぐにパチュリーは箒を浮かせて滑走を開始した。 再び煙幕が晴れた時……妹紅の視界に揺れ動く者は、大地に降り続く大粒の雨以外に無かった。 「…………あーーーあ、逃げられちゃった。……アイツらに『蓬莱の薬』の在り処、訊こうと思ったのに」 言葉とは裏腹に、何の感慨も秘めてなさそうな顔を作り、妹紅は呟いた。 永琳から逃げてきて辿り着いたこの場所で、初めて出会った男女二人。 アイツらがここで何をしていた、とかそんな事はどうだっていい。 重要なのはアイツらが妹紅に対して攻撃してきたという事実。 こっちは何もしていないのに。 “まだ”……何もしていないというのに。 やっぱり、この世界に居る奴らは全員『敵』だ。 消し飛ばすべき、敵なんだ。 「…………籠目 籠目 籠の中の鳥は いつ いつ 出やる~~」 記憶の沼底に眠る古き童謡を何となしに口遊み、女は往く。 後ろの正面も、何もかもを燃え上がる景色に変えて。 黒き焔の翼を広げて徘徊するその様は、幾度も蘇る不死鳥の翼というよりは。 死と禍を運んで廻る、鴉の黒翼にも見えて。 あるいは「月夜烏は火に祟る」との俗信の如く、夜の鴉の鳴き声が火災の前兆をも象徴するように。 見えもしない、見てもいない『何か』に向かって。 漆黒に塗れた女は、鳴きながら歩を進め出した。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 【E-3 大蝦蟇の池/昼】 【藤原妹紅@東方永夜抄】 [状態]:発狂、記憶喪失、体力消費(小)、霊力消費(小)、左肩に銃創、黒髪黒焔、再生中、濡れている [装備]:火鼠の皮衣、インスタントカメラ(フィルム残り8枚) [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:生きる。殺す。化け物はみんな殺す。殺す。死にたくない。生きたい。私はあ あ あ あァ? 1:蓬莱の薬を探そう。殺してでも奪い取ろう。 2:―――ヨシカ? うーん……。 [備考] ※彼女がこれからどこに向かうかは後の書き手にお任せします。 「ぜぇ……けほっげほっ! ……はぁ、けほ! …………げほっ」 林を縫うように滑空し、木々の空間をようやく脱出したところでパチュリーと吉良は箒から下り、ひと息をついた。 とはいえ傍目には二人の状態は健康とは言い難い。 パチュリーは早速いつもの喘息症状が喉を苦しめ、吉良に至っては鉄分が奪われたおかげで立つこともままならない。 「ハァ…ハァ……! クソ! 何だあの女は……あれも幻想郷でのお友達か、パチュリーさん?」 「けほっ……! ……ハァ、そんなところ、かしら。竹林に住んでるとかいう、蓬莱人……『人間』よ」 「人間……? あれが……? ハァ……ハァ……! 私の目には……『怪物』か何かに、見えた、がね……」 吉良は先ほどの少女の身形を思い出す。 容姿などの造形自体は端正な人間のそれだったかもしれないが、表情に全く光が無かった。 歪んだ笑みを貼り付けているだけの人形。あれが人間だというなら幻想郷の『人間』というカテゴリ自体を疑わなければならない。 実際パチュリーも大いに驚いた。 妹紅の変わりようもそうだが、彼女をあそこまでの狂気に陥れたこの『バトルロワイヤル』を軽く見ていたのだ。 パチュリーにとって目下の敵となるのは主催の二人、という今までの認識を塗り直さなければならない。 初めて遭遇した『危険人物』。主催者がどうのこうの以前に、まず警戒すべき敵はゲームに乗った人物だった。 頭では分かっていたつもりだが、いざ現実に起こってみれば、己の認識のなんと甘いことか。 いや、今回は甘いで済まされる事態ではない。 「…………ぬえ」 ポツリと、一言だけ。 状況からいってぬえは妹紅にやられたのだろうと察する。 彼女がまだ生きている可能性は無いわけではないが、その可能性を捨て去ってでもパチュリーは逃走を選んだ。 何の躊躇もなく、気にする素振りさえ見せずに。 パチュリーの詰めの甘さが、一人の少女を見殺しにさせた。 そう結論してもいい不手際とも言えた。 「―――ちょっと……! ゼェ……ゼェ……、アンタたち、なに人を置き去りにして……トンズラ、こいてんのよ……っ!」 完全に不意打ちの方向から、既に故人だと断定しかけていた人物の声が届いた。 「むきゅっ!?」 「むきゅっじゃないでしょ、この人でなし!! バカ!! アホ!! 紫もやし!!!」 肩で息するぬえが、怒りながらパチュリーらに追いついてきたのだった。 「……なんだ、まだ生きていたのか」 「黙れ人間! けほっ、けほっ! こ、このぬえ様があんな人間如きに殺されるわけ、ないでしょ……ッ!」 「ぬ、ぬえ……貴方、無事だったの?」 「無事なわけあるかーーー!!! 見なさいよこの『傷』っ!! アイツにやられたんだから!」 その怒りを静めることなく、ぬえは怒号と共に自分の『喉の傷』と『カミソリ』を二人に押し付けるようにして見せた。 ぬえの受けた傷と手に持つカミソリは、吉良の物と全く一致している。 「亀の見張りやってたら何処からともなくあの女が来て、いきなりこのカミソリを口に入れられたのよ。 声も上げられないし、ほんのちょっとアイツから隠れてたらアンタたちが亀から出てきて、私に気付きもせずにあっという間にスタコラサッサよ。 全く、厄日もいいところね……!」 ぬえの身に起こった瑣末は、客観的に見れば気の毒でしかないものだった。 何の為の見張りだ、という吉良の反論にはぬえも「仕方ないでしょ!こっちが殺されるところだったんだから!」と怒るだけ怒って地面に腰を下ろしただけだ。 彼女の容態は吉良ほど重くはなかったが、恐らく彼と全く同様の攻撃を受けたのだろう。 パチュリーは冷静になって初めて、敵の未知なる正体を分析し始めた。 「……ねえ吉影、気付いた? 貴方がシアーハートアタックを繰り出した時、それに向けて地面から一斉にナイフが『組み上がって』きたのを」 「……あぁ、見ていたとも。あのスタンドは物を相手の体内だとかに一瞬で移動させる類の能力ではない」 「…………!」 考察を聞いたぬえが僅かに肩を震わせたのに二人は気付かない。 「吉影。貴方の血が赤色でなく、黄色に変色している。ただカミソリやハサミを入れられただけの傷ではそうはならない」 言われて吉良は己の掌にベットリくっ付いていた黄色の血を眺め、再び口元を歪めて苛立ちの顔を作った。 そんな光景をジッと眺めながらパチュリーは、突然合点がいったように手を叩く。 「カミソリ、ナイフ、ハサミ……貴金属、そして黄色の血液……。 成る程、これは五行思想における『金』の属性攻撃……錬金術のような能力ね」 「……金? どういうことだ?」 「地面には多くの『鉄分』が含まれている。あのナイフたちは多分、その鉄分を再構成して創った物よ。 そして言うまでもなく人の体内にも鉄分はあるわ。体内にいきなり出現したカミソリはその鉄分を組み替えたのでしょう。 私も金の属性魔法くらい使えるけど、こんなエグイ応用は考えた事もなかったわね」 「じゃ、じゃあさじゃあさ、コイツの血が黄色なのもそのせいってこと?」 「血液が黄色って事は酸素が体内に行き届いてないって事。 鉄分が奪われた吉影は、傷以上に失った栄養素のせいで体力が奪われているってわけね。 ぬえはそこまでのダメージが無かったみたいだけど、念の為二人ともすぐに食事でも摂って栄養を補充しときなさい」 流石に五大元素を操るパチュリーは、能力のタネに案外早く辿り着いた。 所詮は推測でしかない理だったが、彼女の中では正解に限りなく近い推測のつもりだった。 原理さえ分かれば対処も取れる。妹紅が追ってくる様子は無さそうだが、もしまた出会っても最初のようにはいかない筈だ。 しかしそれでも、新たな不安は芽吹いてしまった。 このまま皆がジョースター邸に無事に集合出来たとして、妹紅の件を報告しないわけには流石にいかない。 そこで危惧すべきは、妹紅との交友が深かったという上白沢慧音……我らが仲間内を束ねる知恵者のひとりだ。 彼女のお堅い頭に友人に降り懸かった悲劇を知らせれば、起こる激動はいくつか目に浮かぶ。 間違いなく、これからの懸念事項に新たな欄が加わってしまった。 しかも記入される欄はそれだけでは終わらない。 パチュリーにはまだ疑問のタネ……頭の片隅に残るモヤモヤが払拭できていないのだ。 「―――ねえ、ぬえ。……貴方、本当にちゃんと見張ってた? 本当に妹紅にいきなり襲われたの?」 大きく顔を近づけ、探るようにパチュリーはぬえに問う。 「は、はぁ!? なに言ってるのよ! 最初からそう言ってるでしょ!!」 直後にぬえが明らかに狼狽したのは、急に近寄られたことへの動揺か、それとも――― その返答にパチュリーは「……そう」と言ったきり、話題を止めにした。 当初、パチュリーは覚悟していたのだ。 自分達がぬえを置いてあっさり逃げを選んだことに対し、彼女からの猛抗議を受けることに。 それなのに、当の彼女はその事自体にはそこまで不服そうではないように見えた。 実際ぬえはかなり不機嫌ではいるのだが、正直この程度で済んでいることにパチュリーは軽い違和感を感じている。 そしてもうひとつだ。 パチュリーには相手が嘘を吐く場合に見て取れる『負』の感情を察するという、魔法使い特有の特技がある。 この特技を以て彼女はぬえに対し、先ほど敢えて意地の悪い質問をしたのだが…… (やっぱり『分からない』……ぬえの感情の正体が掴めない) 会場で初めて会った時から今に至るまで、ずっと。 パチュリーはぬえに対し、ずっと不安があった。 パチュリーとて常に相手の嘘を測っているわけでもないが、ぬえの種族が持つ『正体不明』という特性は中々に気味が悪いモノだ。 どれほど目を細めて感情を読もうとしても、ぬえに対してだけはその真意が全く読み取れない。 それだけならまだいいのだが、ここ一連のぬえの動きには多少『引っ掛かる』ものがあるのだ。 とはいえ精々スッキリしない、といった程度に収まる感情であり、パチュリーもこれ以上不和のタネを拡げたくもない。 よってこの場は追求することもせず、まずは息を落ち着かせようと身近の木下で雨宿りをするだけだった。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 皮肉にも突然現れた襲撃者のおかげで、ぬえは首の皮一枚繋がった。 あの時、自分を抹殺せしめんと迫るシアーハートアタックは、背後から迫っていたより体温の高そうな人間に釣られて行ったのだ。 直後に起こった爆風はぬえの身体を数メートル転がしただけの結果に終わり、どさくさに紛れてその場を離脱する事が出来た。 咄嗟の機転だった。 自分を置いてさっさと逃げていったパチュリーと吉良の二人には大いに腹が立ったが、おかげで『仕込み』をする時間が稼げた。 このまま何食わぬ顔で二人に合流するワケにはいかず、ぬえが案じた策はやはり『メタリカ』しかなかった。 多少の覚悟は必要だったが、自身の喉内にカミソリを発生。これで自分も妹紅に襲われたのだと説明がつく。 そして全ての罪を妹紅に被せ、逃走した二人に全力で追い付いたのだが…… (マズイ……これって結構マズイわよね……) ぬえからすれば、今回の事態は何の実りもなく終わった災厄でしかない。 それどころか、これまで隠し持ってきたメタリカの存在が露になってきただけでなく、その能力までもが見破られてきている。 極めつけにさっきのパチュリーである。 あのあからさまな質問は、どう考えてもこっちの動向を疑ってきている証拠だ。 いっそ、これから自分からは何も動かない方がマシなんじゃないかとさえ思えてくる。 だがそれももう遅いかもしれない。事は動かしたばかりだ。 もしパチュリーがこれ以上、自分への疑惑を深めるようなら…… (ああ~~~もう! どうすりゃいいってのよ!!) 正体不明のアンノウンXは、己の貫くべき理念を未だ持てずにいる。 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽ 【E-3 川の畔/昼】 【パチュリー・ノーレッジ@東方紅魔郷】 [状態]:喘息、体力消費(小)、霊力消費(小) [装備]:霧雨魔理沙の箒 [道具]:ティーセット、基本支給品×2(にとりの物)、考察メモ、F・Fの記憶DISC(最終版)、広瀬康一の生首 [思考・状況] 基本行動方針:紅魔館のみんなとバトルロワイヤルからの脱出、打破を目指す。 1:霊夢と紫を探す・周辺の魔力をチェックしながら、第三ルートでジョースター邸へ行く。 2:夢美や慧音と合流したら、仗助達にバレずに康一の頭を解剖する。 3:魔力が高い場所の中心地に行き、会場にある魔力の濃度を下げてみる。 4:ぬえに対しちょっとした不信感。 5:紅魔館のみんなとの再会を目指す。 6:妹紅への警戒。彼女については報告する。 [備考] ※喘息の状態はいつもどおりです。 ※他人の嘘を見抜けますが、ぬえに対しては効きません。 ※「東方心綺楼」は八雲紫が作ったと考えています。 ※以下の仮説を立てました。 荒木と太田、もしくはそのどちらかは「東方心綺楼」を販売するに当たって八雲紫が用意したダミーである。 荒木と太田、もしくはそのどちらかは「東方心綺楼」の信者達の信仰によって生まれた神である。 荒木と太田、もしくはそのどちらかは幻想郷の全知全能の神として信仰を受けている。 荒木と太田、もしくはそのどちらかの能力は「幻想郷の住人を争わせる程度の能力」である。 荒木と太田、もしくはそのどちらかは「幻想郷の住人全ての能力」を使うことができる。 荒木と太田、もしくはそのどちらかの本当の名前はZUNである。 「東方心綺楼」の他にスタンド使いの闘いを描いた作品がある。 ラスボスは可能性世界の岡崎夢美である。 ※藤原妹紅が「メタリカ」のDISCで能力を得たと思っています。 【吉良吉影@ジョジョの奇妙な冒険 第4部 ダイヤモンドは砕けない】 [状態]:体力消費(中)、喉に裂傷、鉄分不足、濡れている、ちょっとストレス [装備]:スタンガン [道具]:ココジャンボ@ジョジョ第5部、ハスの葉、基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:平穏に生き延びてみせる。 1:しばらくはパチュリーに付き合う。 2:東方仗助とはとりあえず休戦? 3:空条承太郎らとの接触は避ける。どこかで勝手に死んでくれれば嬉しいんだが… 4:慧音さんの手が美しい。いつか必ず手に入れたい。抑え切れなくなるかもしれない。 [備考] ※参戦時期は「猫は吉良吉影が好き」終了後、川尻浩作の姿です。 ※慧音が掲げる対主催の方針に建前では同調していますが、主催者に歯向かえるかどうかも解らないので内心全く期待していません。 ですが、主催を倒せる見込みがあれば本格的に対主催に回ってもいいかもしれないとは一応思っています。 ※能力の制限に関しては今のところ不明です。 ※パチュリーにはストレスを感じていません。 ※藤原妹紅が「メタリカ」のDISCで能力を得たと思っています。 【封獣ぬえ@東方星蓮船】 [状態]:体力消費(小)、精神疲労(中)、喉に裂傷、濡れている、吉良を殺すという断固たる決意 [装備]:スタンドDISC「メタリカ」@ジョジョ第5部 [道具]:ハスの葉、基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:聖を守りたいけど、自分も死にたくない。 1:隙を見て吉良を暗殺したいが、パチュリーがいよいよ邪魔になってきた。 2:皆を裏切って自分だけ生き残る? 3:この機会に神霊廟の奴らを直接始末する…? [備考] ※「メタリカ」の砂鉄による迷彩を使えるようになりましたが、やたら疲れます。 ※能力の制限に関しては今のところ不明です。 ※メスから変化させたリモコンスイッチ(偽)はにとりの爆発と共に消滅しました。 本物のリモコンスイッチは廃ホテルの近くの茂みに捨てられています。 140:マヨヒガ 投下順 142:神を喰らう顎[アギト] 140:マヨヒガ 時系列順 144:愛する貴方/貴女と、そよ風の中で 125:賢者の意志 パチュリー・ノーレッジ 145:MONSTER HOUSE DA! 125:賢者の意志 封獣ぬえ 145:MONSTER HOUSE DA! 125:賢者の意志 吉良吉影 145:MONSTER HOUSE DA! 137:さよなら紅焔の夢。こんにちは深淵の現 藤原妹紅 147:Fragile/Stiff Idol-Worship
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固法「困ったものね……」 固法美偉は、その日何度目になるか分からない溜息をつく。 「風紀委員として見逃してはいけない」と自分に言い聞かせ、目の前の少年に声をかけた。 固法「ちょっといいかしら?」 少年「ああ?」 固法「風紀委員『ジャッジメント』よ。鞄の中を確認させてくれないかしら?」 少年「!?」 慌てて逃げ出す少年。 焦ることなく、固法は少年の足を引っ掛け転ばせると、手首を掴んでひねり上げた。 少年「痛い痛い痛い痛い!!!!」 固法「大人しくしないからよ……確認!」 固法の指示で、後輩の風紀委員が少年の鞄を開ける。 すると、そこから出てきたのは袋に入った白い錠剤。 風紀委員「麻薬ですね」 固法「まったく……今日これで何人目?」 風紀委員の仕事は、悪の秘密結社と戦うことではなく、街の治安維持だ。 固法「はぁ……誰か手を貸してくれる人、いないかしら?」 【第五話・錯綜! 人のココロ!!】 常盤台中学。 いわずと知れた名門女子校で、例え王侯貴族だろうとレベル3未満は入学できない。 学園都市でも五指に入る名門中の名門。 学舎の園に存在するお嬢様学校の中でも、注目度は一際高い。 何故なら。 学園都市に七人しか存在しないレベル5。その内の二人が在籍しているからである。 その内の一人―― 美琴「ん~~……今日はいい天気ねぇ……」 御坂美琴が、学生寮のベッドで目を覚ました。 年齢や評判に見合わない幼稚趣味なパジャマを脱ぎ、制服に着替える。 シャワーを浴びようかと思ったが、やはりやめておく。 今日は気乗りしない。 出来れば、この部屋からすぐに出たい…… 黒子「おはようございますの。お姉さま」 美琴「……うん。おはよう」 ルームメイトの白井黒子。 先日のキャンベルビルでの一件以来、二人の間に気まずい空気が流れていた。 美琴「ねぇ黒子? 今日も遅いの?」 黒子「ええ。最近は怪人だけでなく、能力者の犯罪も増えていますの」 美琴「治安悪いのねー……相変わらず」 黒子「えぇ。まったくですわね」 …… …… ……。 会話終了。 美琴は悩んでいた。 あの日は気が立っていた。 そのことは黒子も分かっているし、謝れば許してくれるだろう。 が―― 黒子「では。先に出ますので」 美琴「え? あ……う、うん……」 リズムが合わない。 結局、上手くタイミングが計れず、部屋に居る間ずっと息が詰まりそうになる。 美琴「………………はぁ……何て不器用」 先日の公園。 ツンツン頭の少年・上条当麻との、久しぶりの喧嘩。 美琴は思いのたけを思いきりぶつけ、上条はそれを全て受け止めた。 結局それは、叫んで暴れて、体力も気力も尽きた美琴が倒れるまで、一時間ほど続いたのだった。 上条『さて。すっきりしたんならさっさと帰れよ。フラフラじゃねえか……』 美琴『……やだ』 上条『はい?』 美琴『だって……居づらいんだもん……』 その日と同じく気の立っていた自分は、八つ当たりで黒子を傷つけた。 それを気にしないように気を使っている黒子。 そのことが、美琴の機嫌をさらに悪くしていたのだ。 上条『後輩と喧嘩したぁ?』 美琴『……うん』 上条『何だ……そんなことかよ……』 美琴『そんなことって……!』 言い返そうとしたが、少年はあっさり、真実を述べる。 上条『だって。自分が悪くて喧嘩したなら謝りゃすむじゃねーか』 美琴『うぐっ…………!?』 美琴「そんな簡単に出来たら苦労しないってのよ……あの馬鹿!」 風紀委員第一七七支部。 慌しい空気の中、私は親友とのスキンシップを図る。 佐天「初春ー?」 初春「……」 佐天「初春ー?」 初春「……」 返事が無い。ただのお花畑のようだ。 おのれ初春……この私を無視するとはいい度胸だ……! 目標補足! 目標を掴むと同時に捲り上げる!!! 佐天「うーーいーーはーー……るーーー!!」 初春「……」 馬鹿な!? スカートを捲っても無反応だと!!? 佐天「……」 初春「……」 佐天「えい! おお!! きれいなお尻だ!!」 初春「ひゃああああああああああああああああああああ!!!!???」 バチーーーーーン!!! と、部屋中に綺麗な破裂音が響き、私は意識を失った…… 初春「ななななななななななななななな何をするんですかーーーーーー!!!??」 佐天「いや……返事が無いから。コレは更に先に進めということなのかと……」 初春「忙しいんですよ!!! 見たら分かるでしょう!!!?」 おー。珍しく本気で怒ってらっしゃる。 いや、これは恥ずかしさを誤魔化すためにオーバーになってるな? 初春「もう……邪魔するんなら出てってくださいよ……」 佐天「えー? 初春が難しい顔してるから、気を紛らわせてあげようと思っただけなのにー」 初春「セクハラを人の所為にしないで下さい!!」 本当なのになー…… まぁ元気になったからいっか。 固法「戻ったわ……」 そこへ、巡回に出ていた固法先輩が帰ってきた。 なにやら暗い面持ちで、やっぱり、こちらも相当お疲れのようだ。 ……いや。期待されても流石に先輩にはしないよ? ……ホントダヨ? 初春「どうでした?」 固法「どうもこうも無いわ……酷いなんてものじゃないわね」 風紀委員はここのところ、著しい治安の乱れに悩まされていた。 それはブラッククロスだけではなく、学生達による犯罪の増加や、なにより―― 固法「ほら。戦利品」 佐天「これって……クスリですか?」 麻薬。ドラッグ。 いわゆる違法薬物が横行していた。 固法「今日だけでこれだけの数よ……あー、目の毒だわ……」 固法先輩は透視能力を使い、街中で違法薬物の取締りを行っている。 固法「やっぱりこれだけ治安が悪いとね……皆不安になって、こういうものに頼り出すのよ……」 初春「そういうもの……でしょうか?」 嫌な話だ…… 初春「でも。薬物は出所さえ掴めば何とか出来ますからね。ブラッククロスの件よりはマシです」 固法「その出所が分からないから困ってるんでしょ……」 佐天「出所……スキルアウトとか?」 固法「どうかしら……それだけじゃない気もするけどね……」 固法「白井さんは? まだ戻ってないの?」 初春「ええ。出てったきりです」 無理してなきゃいいけど……と、呟いて、個法先輩は机に向かった。 報告書を作るらしい。 初春に視線を移すが、彼女もまたパソコンで何やら調べもの中の様子。 ……ここのところ、ずっとこの調子である。 風紀委員は大忙し。 以前のようにみんなでお出かけしましょうというワケにもいかず、会話も減っている。 これはいけない。 こういう空気が長く続くと人は良くない方向へ転がるものだ…… 佐天「ふむ……」 さて、私こと佐天涙子がするべきことはなんだろう? 考えるまでも無い。 そんなことは決まっている―――― 佐天「じゃあ。私もそろそろ行くね? 邪魔にならないように……」 私がドアを開けて出て行こうとすると、初春が無言で手だけをひらひらさせて挨拶してくれた。 それに「じゃあね」と返し、私は駆け出した。 佐天「さぁて。ヒーローの仕事は戦いだけじゃない――ってね!」 ヒーロー・アルカイザーが、街に蔓延るドラッグを駆逐しちゃいますよ! 一七七支部を出た私は、人気の無い路地裏へ駆け込んだ。 誰にも見られないようにするためだ。 佐天「ふー…………この瞬間はいつまで経っても慣れないねぇ……」 何せ、正体を見られたら記憶を消されるのだ。 命がけの変身。慣れるはずが無い。 念入りに周囲を調べる。 物陰。通路の先。人が何処からも見ていないか? 最後に前後左右をもう一度見回して、目を閉じ、意識を集中する…… 佐天「……」 心臓が一つ大きく跳ねる―― 体の中心から、全身の血管へ。 血が廻るのを感じる。毛細血管の一本一本まで…… 心臓で生まれた熱量が、指先、つま先まで広がっていく。 力が湧いてくる――――! 佐天「変身! アルカイザー!!」 佐天涙子の体が輝き、視界が光に包まれる……! ピーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!! 佐天「………………え?」 突然のアラーム音に驚き、私は、さっき確認しなかった『頭上』を見上げた。 そこに『居た』のは―――― 「異常な数値の周波数を発見。ライブラリに該当無し。未知のエネルギーと断定。発生源、確認」 白くて丸っこい、大体40センチくらいの、何やら可愛らしい空飛ぶ機械。 「学園都市学生名簿と照合……該当者・佐天涙子」 佐天「……え? え?」 これって―――― 「佐天涙子より、未知のエネルギーを検出。映像、データを検証」 佐天「――――――」 やばい。 私、死んだ。 「おい、あの頭、見ろよ!」 「ツインテールか?」 「ツインになってねーじゃん! 分かれちゃってるじゃん! 蛸の足じゃん!」 「ハハハ! いっぱい分かれてるテールじゃねーの?」 黒子「……ここはいつ来ても不快ですわね」 不潔で嫌な臭いが充満している。 そういう場所はいる人間も不快で下劣だ。 ――しかし、昔の私なら蹴り入れてましたの。私も淑女になったということですわね……フッ。 白井黒子が居るのは工業地区の外れ。 古くなった建物や、廃棄された製品が溢れる、掃き溜めのような場所。 黒子「流石に遠出しすぎましたの……第七学区を出てしまいましたわ」 どんな場所だろうとテレポートで移動できる。 それゆえに、よく考えずに行動するとどこまでも来てしまう。 ……どうしても。あの時のことが頭をチラついて…… 黒子「……集中しませんと……気付いたら『壁の中に居た』では笑えませんの」 もう戻ろう。 黒子は踵を返し、今来た道を戻ろうとする。 「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」 黒子「!?」 先ほどのスキルアウトの一人が突然苦しみだした。 黒子「何事ですの!? 貴方達――!?」 「わ、わからねぇ……! コイツが突然……」 「く、クスリ……」 黒子「薬?」 「怪しい奴から買った、新しいブツを試したんだよ、そ、そしたら……」 ……呆れた。何故怪しいと思って買うのか…… いや、そんなことよりも今は――! 「ウゴ、ググッげ……ぐるあああああああああああああああああああああ!!!」 黒子「こ、これは!?」 苦しんでいたスキルアウトの体がボコボコと流動している。 歯が抜け落ち、その代わりなのか、歯茎から牙が生えてきた。 肌が黒く変色し、アンバランスに膨れ上がった筋肉で皮膚が破れ、体毛が伸びる。 黒子「怪物……いえ、まさか怪人……に……?」 怪人「ぐるる……ぐっぅあああああああああああああ!!!!!??」 怪人になった男は苦しんでいる。 無理も無い。ただの人間が、どういう理屈なのか、突然怪物にされてしまったのだ。 黒子「――――!」 戦いますの――――? だって、相手はただの人間ですのよ!? 「ひ、ひいいぃいいいい!!!?」 黒子「ちぃっ……!」 とにかく、今は一般人の避難を――! 例えスキルアウトでも、罪を犯していないなら守るべき対象。 黒子はテレポートで逃がそうと考えたが、止める。 黒子「……三人……!」 いくら黒子でも一度に運べるのは二人まで。 ということは、一人がここに残されることになる……!! 黒子「貴方たち! 早くお逃げなさい!!」 「は、はひぃぃ!!!」 黒子「……!!」 男達を逃がし、一人戦場に残った黒子は、怪人になった男と対峙した―――― …………………… どうしてこうなった。 「どうしたんだ涙子? 心拍数が落ちているぞ?」 佐天「うん……そろそろ落ち着いてきたんだよ……」 「そうか」 私の部屋に、あの白くて丸っこい機械がいる。 佐天「ねぇラビット? 本当にどこにも連絡してないのね?」 「ああ。私は嘘はつかない。メカだからな」 ラビットと名乗ったそのロボットは、私に興味があるらしくここまで着いてきてしまった。 しかし、この場合どうなるんだろう? 相手はロボットだ。 決して『一般人』とは言えないだろう。 と、いうことは―― 佐天「セーフ?」 ラビット「何がだ?」 佐天「なんでもないよ」 ラビット「そうか」 うん。大丈夫のはず。 もしアウトだったら、きっと今ごとアルカールさんが現れているだろう…… 佐天「あのさ。さっきのアレについて聞かれても、私は何も答えられないよ?」 ラビット「そうか。残念だ」 佐天「……」 ラビット「……」 出て行かないんかい。 ラビット「何か悩んでいるな?」 佐天「はい?」 いや、あんたのことで悩んでるんだけどね? ラビット「涙子。何を悩む?」 ………………何だコイツ…… 佐天「……何を悩んでるのか分からないのよ」 ラビット「そういうときもあるだろう。まだ若いのだからな」 …………ロボット相手に人生相談か。 ラビット「己のココロというものは見えづらいものだ」 佐天「心……」 ラビット「私には無いものだ」 佐天「そうなの……? あなたのAIってすごく性能よさそうだけど?」 ラビット「ココロを求めれば求めるほど、己の中にはココロが無いことを確信することになる」 ふーん……変なロボット。 佐天「私はさ。この街に来てから悩んでばっかりだよ」 ラビットは黙ってぷかぷかと浮かんでいる。 話を聞いてくれてるのかな? 佐天「最近はそうでもなかったんだけどね。今はちょっと、嫌なことを思い出しちゃって」 美琴「…………」 美琴は行くアテもなく街をうろついていた。 馴染みの自販機でジュースを『頂き』、それをチビチビ飲みながらふらついている。 上条『喧嘩したなら謝りゃすむじゃねーか』 美琴「はぁ………………」 コンビニで立ち読みしていても落ち着かないし、初春や佐天とは連絡がつかない。 美琴「…………ひょっとして、私って友達すくない……?」 いや、分かっていたことだ。 だからこそ、尚更白井黒子が大切な存在なのだと。 レベル5の自分のことを憧れの先輩だと言いつつも遠慮しない。 ずけずけと、それこそ風呂場にまで入り込んでくるずうずうしさ。 美琴「黒子……」 いつの間にか、彼女は心の中にまで入り込んできていたらしい。 それにしても、まさか自分がたった一度の失敗でここまで落ち込むなんて。 美琴「うん。謝ろう。今度こそ。次こそ!」 そう強く決意し、美琴は空になったジュースの缶を清掃用ロボットの傍に投げ込んだ。 が―― その前に突然一人の男が割り込んできた。 カコーーーーーーーーーン。 美琴「……………………私の所為じゃないわよね?」 美琴「だ、大丈夫?」 おそるおそる近づく。 美琴「ねぇ? 怪我とか――」 妙だ。 男は、何かに怯えるようにガタガタと震えていた。 美琴「ねえ? ちょっと、どうしたのよ?」 「か……怪人……」 美琴「怪人!?」 また街の中で――――!? 「怪人に……だ、ダチが……怪人に……なっちまった……!」 美琴「…………え?」 黒子「くっ……!!」 黒子は苦戦していた。 相手がただの人間なら、スカートの下に忍ばせた『鉄矢』で動きを封じて捕縛できる。 相手がただの怪人なら、容赦なく致命傷を与えて倒すことが出来る。 だが―― この相手は「怪人になってしまった一般人」なのだ。 黒子「一体どうすればいいんですの!?」 苦しそうに暴れる怪人。 薬の作用なのか、無理やり太くされた筋肉をフル稼働し、黒子に突撃する。 駄々っ子のように腕を振り回して、まるで助けを求めるように―― 黒子「――――」 攻撃できない。 黒子が風紀委員である以上。 例え麻薬の常習者だろうと。ロクデナシのスキルアウトであろうと。 この学園で生活する学生は皆、守るべき対象なのだから。 それが、『悪の組織』に利用されている被害者だとしたら、なおさらだ。 自分の行動に、自信が持てない―― 佐天「わたしはさ。自分に自信が持てないんだと思う……だから無能力者なのかな……」 能力を使うために必要なのは自分だけの現実『パーソナルリアリティ』。 つまり、他の誰が何と言おうと、自分自身を信じるということ。 それこそ、この世の常識を捻じ曲げるほどに…… ラビット「無能力者……カリキュラムを受けてなお超能力を使えない人間か」 佐天「……改めて説明しないでよ」 佐天涙子は学園都市で改造された無能力者である。 佐天「そのナレーションをやめろ!!」 ラビット「チカラか」 佐天「うん。それさえあれば。何だって出来るのに」 もう、あんな無力感を味わわなくててすむのに。 ラビット「私の主もそう言っていた」 佐天「あるじ?」 ラビット「ああ。私の主もまた、涙子と同じく『万能の力』を求めている」 佐天「万能の……力……」 ラビット「それゆえ、私もまた、チカラを渇望してやまない」 佐天「ふーん……まぁ、だからさ。コンプレックスなんだよね。単純に」 ラビット「しかし、理解できない。何故だ?」 佐天「何故って……」 ラビット「今の涙子にはもうチカラがあるではないか。強力なチカラが」 佐天「え――――」 アルカイザー。 ラビット「それ以上のチカラを求めているのか?」 佐天「いや。でも……これは借り物で……」 ラビット「それは紛れも無い涙子のチカラだ。何を臆することがある」 佐天「………………」 ラビット「自信を持て。強者にはそれが必要だ」 佐天「強……者……?」 私が。 強者? まだ、怪人と黒子の戦いは終わらない。 黒子「っ! 一体いつまで続けますの……?」 攻撃自体はどうということはない。 例えどんな豪腕であろうと、攻撃が予測できればテレポートでかわせる。 怪人「ぐうあああああああああああああああああ!!!!??」 怪人が突撃し、それをまたテレポートで回避する。 すでに十数回。これを繰り返していた。 攻撃をかわされた怪人はジャンクの山に激突し、鉄くずの下敷きになる。 黒子「はぁ、はぁ……これで動きを止めてくれればいいのですが……」 ぐるるがあああああああああああああああああああああああ!!! 止まらない。 怪人は鉄くずを吹き飛ばし、再び黒子へと迫る。 その体当たりをまたもテレポートで回避。 黒子「いい加減に……っ!?」 そう――いい加減に、黒子の集中力は途切れていた。 黒子がテレポートした先。そこへ、先ほど怪人が吹き飛ばした鉄くずが落下して来る――! 黒子「……!??」 動揺で演算が狂い、テレポートが発動しない。 絶望。間に合わない。 否――間に合った――! 鉄塊に潰されることなく、黒子は着地に成功した。 黒子「………………お姉さま! どうしてここへ!?」 美琴「……黒子」 黒子の絶望は一瞬に満たなかった。 御坂美琴が放つ電撃は、音速を超えるのだから―― 黒子に迫る鉄塊は、美琴の放った電撃で再び宙に浮いた。 黒子「お姉さま……黒子を助けに……?」 美琴「当然でしょ? だって――」 大切な、可愛い後輩だもの。 美琴「黒子。この前はゴメンね……」 黒子「……いいえ。いいのですお姉さま……黒子は……黒子は分かっていましたから……」 お姉さまがそのことを気に病んでいることも。 お姉さまが自分を大切に思ってくれていることも。 お姉さまが、どんな苦境に立たされても再び立ち上がって、真っ直ぐに進むということを――! 二人に向かって、怪人が迫る。 今までと同じ。腕を振り回しての体当たり。 美琴「行くわよ黒子!!」 黒子「はいですの! お姉さま!!」 もはや迷いはない! お姉さまがいる! 自分は正義の側にいる! 正しいことを! 自分が正しいと思えることを!! 今はただ全力で信じる!!! 美琴「行っけぇっ――!!」 美琴がコインを弾く。 『超電磁砲』 それは怪人ではなくゴミの山に命中し、鉄くずを天高く巻き上げた。 怪人の行く手を阻むように鉄塊が降り注ぐ――! が、怪人は止まらない……! 鉄の板だろうが、車の残骸だろうが。 何にぶつかろうが、意に介することなく進撃を続ける……!! 美琴「頑丈ね……! なら――――!!」 美琴の額から電撃が放たれる。 それは直接怪人にではなく、怪人の周囲にばら撒かれた鉄くずに向かった。 磁力によって鉄くずが浮かび上がり、怪人目掛けて一斉に集まって行く。 美琴「黒子!!」 黒子「はいですのお姉さま!!」 美琴が操る鉄くずは怪人の体に絡み付いていく。 鉄の山を吹き飛ばす怪力だが、決して剥がれない鉄の塊に手足を固定されては暴れることも出来ない。 そして、完全に動けなくなった怪人を―― 黒子「触れられるのなら、私の能力でどうとでもなりますの!!!」 黒子が天高く転移させた。 黒子「体も意識も落ちて下さいませ!!!」 全身に重りを付けられた怪人が、上空から落下―― 否――まだ終わらない……!! 美琴「あれだけ頑丈なら……死にはしないでしょう……!!」 落下する怪人に、ダメ押しとばかりに電撃が浴びせられた……!! テレポートと電撃を間髪居れずに叩き込む、二人の能力による連携―― 『空間電撃』 頭から地面に落下した怪人は、電撃による追撃で完全に沈黙した。 それを確認し、黒子は隣に立つ美琴へ顔を向けた。 美琴も、黒子を見つめていた。 知らず口元が緩む。 場所がこんな所でなければ、素敵なムードでしたのに。 そんな軽口を叩ける。いつもの二人だった。 ピーーー! ピーーー! 佐天「な、何!? 故障!!?」 ラビット「呼び出しだ。戻らなければ」 佐天「そう……帰るんだ」 ラビット「また近いうちに会える」 そう言って彼は、フワフワとした軌道で窓から出ていった。 完全に外に出ると、空中で一度停止して数回光り、一気にスピードを上げて飛び去った。 佐天「また近いうちに……か」 彼の相談で、悩みは解消されたのだろうか? ただ、胸にふつふつと燃えるようなものがあるのは確かだ。 彼は、私には力があると言った。 この力を、私のものだと言った。 戦いたい…… 戦って、それを証明したい。 そうすれば、大嫌いな、無力な自分を塗り替えられる。 主人公になれる。 落ちこぼれのヒーローは、不思議な友達と出会った。 【次回予告】 ついに発見されたブラッククロスの麻薬工場!! アルカイザーは街の平和を守るため、謎の麻薬工場へと挑む!! そして邂逅する佐天と美琴!! 共に正義を求める二人が、一体何故戦わなければならないのか!! 次回! 第六話!! 【激突! アルカイザーVS超電磁砲!!】!! ご期待ください!! 【補足という名の言い訳のコーナー】 ・ラビットについて。 セリフでピンと来た人も居ると思うけど、一応ネタバレ禁止でお願いします。 ・連携について。 試しに出してみました。サガフロのシステムの一つで、連携すると技名が合体します。 今回の技名は「空間移動」と「電撃」を混ぜて空間電撃です。 テレポ電撃と迷いましたが、真面目なシーンであまりにもダサかったので没です。 ・怪人になった男について。 クーロンで戦うイェティです。原作でもあった人間が薬でモンスターになるシーンです。 あのグラフィックをどう文章で表現するのか分からず何かグロいことに…… ・いっぱい分かれてるテール。 なんかラジオで言ってた気がする
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【登録タグ Labyrinth し 少女綺想曲 ~ Dream Battle 曲 雨天決行 魂音泉】 【注意】 現在、このページはJavaScriptの利用が一時制限されています。この表示状態ではトラック情報が正しく表示されません。 この問題は、以下のいずれかが原因となっています。 ページがAMP表示となっている ウィキ内検索からページを表示している これを解決するには、こちらをクリックし、ページを通常表示にしてください。 /** General styling **/ @font-face { font-family Noto Sans JP ; font-display swap; font-style normal; font-weight 350; src url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/10/NotoSansCJKjp-DemiLight.woff2) format( woff2 ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/9/NotoSansCJKjp-DemiLight.woff) format( woff ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/8/NotoSansCJKjp-DemiLight.ttf) format( truetype ); } @font-face { font-family Noto Sans JP ; font-display swap; font-style normal; font-weight bold; src url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/13/NotoSansCJKjp-Medium.woff2) format( woff2 ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/12/NotoSansCJKjp-Medium.woff) format( woff ), url(https //img.atwikiimg.com/www31.atwiki.jp/touhoukashi/attach/2972/11/NotoSansCJKjp-Medium.ttf) format( truetype ); 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評価は完璧に個人の趣味ですよー 電撃 名前 一言 嫁 どこまで読んだか 現状評価(1~10) i.d. 「キングダム」強すぎ 真砂那依 全巻 7 アリソン この頃はよかった… フィー 全巻 8 ある日、爆弾が落ちてきて 男…普通。女…異常(時間的な意味で) 原ミチ子 全巻 5 いぬかみっ! みかんの方が可愛いです… なでしこ 全巻 3 イリヤの空、UFOの夏 壊れて壊れてさようなら 全巻 7 ウィザーズ・ブレイン 面白いけど新刊まだ? フィア 最新巻 7 オーバー・ザ・ホライズン 打ち切られた 全巻 5 終わりのクロニクル マロい sf 全巻 7 学校を出よう! ツンツンツンツン……デレ 高崎若菜 全巻 9 カレとカノジョと召喚魔法 悪魔が一匹、悪魔が二匹、悪魔が(ry 高嶺美樹 全巻 7 キーリ キーリ(泣)(絵的な意味で) 全巻 6 キノの旅 そうだ、旅に出よう… 最新巻 7 吸血鬼のおしごと レレナが可愛かったことだけ覚えてる レレナ 全巻 4 さよならピアノソナタ みんおん! まふまふ 全巻 8 時空のクロス・ロード あれ、さっきも似たような話だった気が… 全巻 4 しにがみのバラッド 日本人好み 小檜山七星 最新巻 8 灼眼のシャナ メロンパン ヘカテー 13巻 4 頭蓋骨のホーリーグレイル エロ、グロ、キモ、コワ 咲夜 全巻 3 タロットの御主人様。 なにこのエロゲ 八久住香澄 5巻 5 天使のレシピ 打ち切られたパートⅡ 清水上シホ 全巻 6 とある魔術の禁書目録 いいぜ、お前が評価10点を与えないと言うのなら、まず(ry ローラ 12巻 5 七姫物語 雰囲気が良い作品 浅黄姫 全巻 9 二四〇九階の彼女 劣化キノ 全巻 6 猫の地球儀 スカイウォーカー 人外はきつい 全巻 2 灰色のアイリス 鬱鬱、少しハッピー アイリス 全巻 5 バッカーノ ヒャッハー! エニス 7巻 8 フォーソルティアの風 一巻+外伝 ギン 全巻 5 フォーチュン・クエスト そうだね、冒険だね 新9巻 3 Missing 降りてくる降りてくる 日下部稜子 全巻 7 みずたまぱにっく 時代がこれに追いついてきた そんな趣味はない 1巻 3 ミナミノミナミノ 2巻はもう出ないの? 全巻 5 メグとセロン もう、ゴールしてもいいよね… フィーがいない… 最新巻 6 ゆらゆらと揺れる海の彼方 様々な視点からの物語 クローテッド 全巻 8 リリアとトレイズ ギリギリ許せる フィー 全巻 6
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悠二が「封絶」で見せた“銀”の炎。 それは共に戦ってきたフレイムヘイズだけでなく「紅世の王」たちにも大きなショックを与えた。 誰も知らない“銀”の正体とは。何故その力が悠二の中にあるのか。 答えの見つからない疑問と疑惑が交錯する中、シャナたちは悠二に新たな力の開花を期待する。 以前から指摘されていた、悠二の研ぎすまされた感覚と状況分析能力から予想される自在師としての適正だ。 マージョリーの指導で始まったその鍛錬は、悠二自身の頑張りもあり順調に進んで行く。 だが、その頑張りに、マージョリーは違和感を持ち言葉をかける「覚悟っていうのは、頭じゃなく腹で決めるものよ」と。 編集長の一言 清秋祭が、終わり。 みんないろいろな悩みを 持ちながら平穏な時を過ごし始めた そう悠二も、焦りからか、鍛錬にも積極的になる だが、シャナは、それに距離を感じた 映像は、こちら(消失の場合は、連絡の事 灼眼のシャナⅡep 18part 1 灼眼のシャナⅡ サブタイトルへ戻る
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【灼眼のシャナII】【ラノベ】【アニメ】【萌え】【2008】【2】 公式 wiki ニコニコ 悠二が「封絶」で見せた“銀”の炎。それは共に戦ってきたフレイムヘイズだけでなく「紅世の王」たちにも大きなショックを与えた。誰も知らない“銀”の正体とは。何故その力が悠二の中にあるのか。答えの見つからない疑問と疑惑が交錯する中、シャナたちは悠二に新たな力の開花を期待する。以前から指摘されていた、悠二の研ぎすまされた感覚と状況分析能力から予想される自在師としての適正だ。マージョリーの指導で始まったその鍛錬は、悠二自身の頑張りもあり順調に進んで行く。だが、その頑張りに、マージョリーは違和感を持ち言葉をかける「覚悟っていうのは、頭じゃなく腹で決めるものよ」と。 続・生意気悠二。 あれだけだらだら話を進めてたのに、いきなり覚悟云々言われてもなあ。 本当に最初12話で印象が悪くなってるYONE。 そりゃ一期のクライマックスを考えると波があってから当然なんだろうけど……。 僕の母さんが……。 ニコニコで見てても断トツ人気の若奥様であるちぶ……千草さん。 妊娠発覚にはちょいと早くないか、と即座に思いついた僕はダメな子。 いきなり表情豊かになるシャナに違和感を覚えた。 良く動いて可愛いし、やたら熱入ってる気がするが、正直浮いてるシーン。 ヴィルヘルミナに和む、これも良いアホの子。 いつも見てて思うんだが、フレイムヘイズの活動資金はどこから出るのかねえ。 世界各国の政府とも繋がりがあるんだろうかね。からくりサーカスを思い出す。 なんかきもいおっさんsが出てきたが、OPでもぶった切られてるし、どうなるかは予想が出来るな!弱そうだしな! 名前 コメント
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レッドジュエルドラゴン p e 属性 火 コスト 8 ランク B+ 最終進化 S レベル HP 攻撃 合成exp 1 ? ? ? 40 495 455 ? 最大必要exp 10,268 No. 1221 シリーズ ジュエルドラゴン Aスキル キュアセルフ+ 自分のHPを75回復 Sスキル 錯綜の紋章 ジャンルパネルをシャッフル(4turn) 売却価格 6,400 進化費用 50,000 進化元 - 進化先 ルビードラゴン(最終進化A+) 進化素材 キ1(C+) ロ1(C+) - - 入手方法 備考 br() ルビードラゴン p e 属性 火 コスト 13 ランク A 最終進化 S レベル HP 攻撃 合成exp 1 395 364 ? 50 791 729 ? 最大必要exp 19,564 No. 1222 シリーズ ジュエルドラゴン Aスキル キュアセルフ++ 自分のHPを100回復 Sスキル 錯綜の紋章 ジャンルパネルをシャッフル(4turn) 売却価格 22,500 進化費用 - 進化元 レッドジュエルドラゴン(A) 進化先 - 入手方法 進化 備考 br() ブルージュエルドラゴン p e 属性 水 コスト 8 ランク B+ 最終進化 S レベル HP 攻撃 合成exp 1 ? ? ? 40 500 462 ? 最大必要exp 10,268 No. 1223 シリーズ ジュエルドラゴン Aスキル キュアセルフ+ 自分のHPを75回復 Sスキル 錯綜の紋章 ジャンルパネルをシャッフル(4turn) 売却価格 6,400 進化費用 50,000 進化元 - 進化先 サファイアドラゴン(最終進化A+) 進化素材 キ1(C+) ロ1(C+) - - 入手方法 備考 br() サファイアドラゴン p e 属性 水 コスト 13 ランク A 最終進化 S レベル HP 攻撃 合成exp 1 365 367 ? 50 731 735 ? 最大必要exp 19,564 No. 1224 シリーズ ジュエルドラゴン Aスキル キュアセルフ++ 自分のHPを100回復 Sスキル 錯綜の紋章 ジャンルパネルをシャッフル(4turn) 売却価格 22,500 進化費用 - 進化元 ブルージュエルドラゴン(A) 進化先 - 入手方法 進化 備考 br() イエロージュエルドラゴン p e 属性 雷 コスト 8 ランク B+ 最終進化 S レベル HP 攻撃 合成exp 1 ? ? ? 40 547 530 ? 最大必要exp 10,268 No. 1225 シリーズ ジュエルドラゴン Aスキル キュアセルフ+ 自分のHPを75回復 Sスキル 錯綜の紋章 ジャンルパネルをシャッフル(4turn) 売却価格 6,400 進化費用 50,000 進化元 - 進化先 トパーズドラゴン(最終進化A+) 進化素材 キ1(C+) ロ1(C+) - - 入手方法 備考 br() トパーズドラゴン p e 属性 雷 コスト 13 ランク A 最終進化 S レベル HP 攻撃 合成exp 1 365 416 ? 50 731 833 ? 最大必要exp 19,564 No. 1226 シリーズ ジュエルドラゴン Aスキル キュアセルフ++ 自分のHPを100回復 Sスキル 錯綜の紋章 ジャンルパネルをシャッフル(4turn) 売却価格 22,500 進化費用 - 進化元 イエロージュエルドラゴン(A) 進化先 - 入手方法 進化 備考 br() 名前 コメント