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錯綜の精霊 ネバー・マインド VR 光 (7) クリーチャー:エンジェル・コマンド 6500 ■ブロッカー ■相手のコスト3以下のクリーチャーは攻撃もブロックもできない。 ■W・ブレイカー 作者:翠猫 エンジェル・コマンド。 相手のコスト3以下クリーチャーの動きを制限する攻撃可能なブロッカー。 名前の由来はニルヴァーナのアルバム「ネヴァーマインド」。 フレーバーテキスト 弱き者は、抗うことすら敵わない。 収録エキスパンション DMAE-05「バトラーズ・オデッセイ」 関連 《天道の精霊 我々・リャンセ》 評価 GRクリーチャーのメタとして悪くなさそう?パワーはともかくコストは結構低く固まってる事が多いですし -- 名無しさん (2019-06-18 17 32 47) 名前 コメント
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6◆◆◆◆◆◆ 「シッ―――」 ランベントライトの刃を閃かせ、ユウキは迫りくる無数の触手を切り捨てる。 しかし触手は再生能力を有しているのか、切られた端から再生し、再びユウキを拘束しようと襲い来る。 だがユウキは気にも留めず、蠢く触手を次々に切り裂きながら闇色のロボット――ダスク・テイカーへと接近する。 「チィ……ッ」 対するテイカーは、ユウキの予想以上の剣技に舌打ちし、接近されまいと後退する。 だが距離を取ったところで、パイロディーラーでユウキを攻撃することはできない。なぜなら現在のこの森では、被ダメージは倍加されるからだ。 そして周囲の森まで燃やしてしまうパイロディーラーでは、森林火災という地形効果による継続ダメージで、勢い余って殺してしまう可能性がある。 そんな失敗は容認できない。その羽を奪うまでは、彼女に生きていてもらう必要があるのだ。 「セアッ――!」 「このッ……!」 無数の触手――シー・スターによる猛攻を切り抜けたユウキが、細剣による鋭い一撃を放つ。 それをテイカーは右腕の大型カッター――プライヤー・アームで防ぐ。 細剣とカッターが激突し、金属音とともに激しく火花を散らす。 それも一度や二度ではない。ユウキの細剣は高速で閃き、一瞬で五度も金属音を響かせる。 「しつ、こい……ッ!」 更なる追撃が入るより早く、テイカーは左腕の触手を薙ぎ払いユウキを後退させる。 まともに反撃する余裕などない。ユウキの剣の技量は、間違いなく黛拓武以上だ。 翅を奪うことに固執したままでは、接近戦に持ち込まれ負けると、否応なく理解させられた。 そんな焦りを表に出すことなく、テイカーは相手を侮った口調で余裕を見せる。 「………いやあ、油断しました。貴方、思ったよりもやりますね」 「そう言う君は、そうでもないね。思った通り、ステータスに頼るだけの半端者だ。本物には遠く及ばない」 「っ……! なんですって?」 「少し戦っただけですぐ解る。そのカッターも触手も確かに強力そうだけど、君は全然使いこなせていない。 この分だと、さっきの火炎放射も同じなんじゃないかな?」 「……言ってくれますね」 「事実だよ。だって君、どっちの腕も振り回しているだけで、“技”を全然使ってこないじゃん。 単純なんだよ、君の攻撃は。それってつまり、腕を使うだけで精一杯ってことでしょ?」 ユウキのそんな言葉に、テイカーは激しい怒りを覚える。 本物には遠く及ばない? 腕を使うだけで精一杯? そんな筈はない。そんな事はあり得ない! 僕はこの力を誰よりも上手く使えるし、もし“技”がないというのなら、その“技”を奪えばいいだけの事だ! 「まったく……ずいぶん舐めた事を言ってくれるじゃないですか。 そう言う貴方はどうなんですか? 先ほどから僕に一度も攻撃が届いていませんけど」 「うん。だって、さすがに殺しちゃうのは後味が悪いからね」 「……なんですって」 「だから、殺さずに倒せるなら、その方が断然いいでしょう?」 「……………………」 そしてその怒りは続いて放たれた言葉によってあっさりと限界を超えた。 殺しちゃうのは後味が悪い? それはつまり、殺さずに勝てる自信があるということか? 本当に、ずいぶん余裕を見せてくれる。そこまで言うのなら、手加減するのはここまでだ! 「そうですが。では、お遊びはここまでですね」 「――――――」 その言葉に、ユウキはテイカーへの警戒を強める。 しかしその警戒に意味はない。何故なら、本当に注意すべきはテイカーではなく。 「やれ、ライダー!」 「砲撃用ー意!」 テイカーが誰かに命令すると同時に、一人の女性が突如として出現する。 その背には四門の大砲。砲口は全てユウキへと向けられている。 そう。警戒すべきはテイカーではなく、第三者の介入だったのだ。 「ッ―――!?」 「藻屑と消えな!」 ユウキがそれに気づくと同時に、砲撃が放たれる。 撃ち出された砲弾は木々を容易く破壊し、ユウキの立つ地面を粉砕する。 だがユウキは、間一髪のところでそれを回避し地面を転がる。 「鈍亀ェ!」 そこへ砲撃を放った女性――ライダーが、クラシックな二丁拳銃による銃撃を行う。 ユウキは咄嗟に近くの立木を盾にし、銃撃から逃れるが、容赦なく木の幹を削り飛ばす銃弾に肝を冷やす。 これで状況は二対一。しかも女性の方はその気配から察するに、ロボットとは違って確かな実力者のようだ。 そんな人物が自分より格下のロボットに従っている理由は分からないが、これで状況は一気に不利となった。 どうやらカオルに気を使って殺さないように気を付けたつもりが、いつの間にか油断していたらしい。 こうなる前に、ダメージを気にせずロボットの四肢を切り落としておくべきだったか、と。 そんな今更な考えをしつつ、ユウキはテイカーへと声をかける。 「まさか仲間がいたとはね。確かにそれなら、君の実力はあまり関係がないや」 「はっ、この状況でまだそんな減らず口を叩けるとは。そこまで行くとある意味感心しますよ。 けど、一つ大事なことを忘れてはいませんか?」 「へぇ、何を?」 「僕の強化外装が、もう一つあるということをですよ! 《パイロディーラー》装備!」 テイカーがボイスコマンドを口にすると同時に、その右肩に大きなタンクが、右腕に大きな四角い筒が装着される。 それを見て瞬時にユウキは思い至った。自分たちを襲った炎の壁は、あの機械装置から放たれたものなのだと。 「ッ……!」 そして同時に、盾にしていた木の影から飛び出す。 すぐにライダーの放つ銃弾の雨にさらされるが、気にしている余裕はない。 何故なら先ほどまで盾にしていた木は、テイカーが放った火炎放射によって一瞬で消し炭にされていたからだ。 あと少しでも判断が遅れていれば、その炭の中に自分の身体が混ざったことだろう。 「くははは……! そうです、そうやって逃げ回っていればいいんですよ!」 ユウキへとそのまま火炎を放ちながら、テイカーはそう嗤い声を上げる。 先ほどまで余裕を見せていた相手が、逃げ惑うしかない事が楽しいのだろう。 (さて、ここからどう反撃しようかな……) その声を聴き流しながらも、ユウキはこの二人にどう対処するかを考えていた。 単純に相手を倒すだけならば、ライダーよりはテイカーの方が相手をしやすい。だがそれは相手も理解しているだろう。そうやすやすと近づかせてはくれまい。 そして無駄に手間をかければ、テイカーへの攻撃の最中にライダーの銃撃が飛んでくることになる。さすがにあの銃撃を防ぎながら、テイカーを素早く倒せる自信はない。 となると、残る選択肢は一つだけだ。 「ほう? あたしとやる気かい?」 ユウキの視線からその意図を読み取ったライダーが、好戦的な笑みを浮かべる。 そう、残る選択肢は一つだけ。まず先に、ライダーの方を倒すという手だけだ。 ライダーはテイカー以上の強敵だ。それは間違いない。 だがテイカーが使用する火炎放射器は、その性質上ライダーさえも巻き込みかねない。 テイカーの触手に気を付ける必要はあるが、接近戦にさえ持ち込めば、実質的には一対一の状況となるはずだ。 そしてもし仮にテイカーが加勢するために、右腕を大型カッターへと戻し近づいてくればそれこそ好都合だ。 その瞬間に逆にテイカーへと接近し、反撃する間もなく倒してやる。 「よし、行くよ――」 そう覚悟を決め、ライダーへと接近するために足に力を込めた――――その瞬間。 「おっと。余計な事はしないでくださいね。彼女がどうなっても知りませんよ」 テイカーの放ったその声に、思わず足を止める。 見ればその左腕の触手には、いつの間にかカオルが捕らえられていた。 「カオル!? どうして! 危なくなったら逃げてって言ったじゃん!」 「ごめんなさい、ユウキさん。気が付いた時には脚を絡め捕られてしまいまして」 カオルは本当に申し訳なさそうに、ユウキへとそう謝る。 テイカーの触手はカオルの身体にしっかりと巻き付いている。 あの状態ではゲイル・スラスターを使用したところで、テイカーも一緒に連れていくことになってしまうだろう。 「くッ……!」 「おやおや、ケツに火が付いちまったみたいだね。 どうする? 降参するかい? 今なら身ぐるみ寄こせば、見逃してくれるかもしれないよ?」 「ああ、それもいいですね。貴方の全てを僕に渡して、その上で服従を誓うというのであれば、考えないでもありません」 「おや。身ぐるみを引っぺがすだけじゃなく、首輪まで付けるのかい? アンタもたいがい悪党だねぇ」 「この世の根本原理は『争奪』なんですよ、ライダー。敗者は全てを失うのが当然の結末です」 「へぇ。いいこと言うじゃないか、ノウミ」 テイカーとライダーのやり取りを聞きながらも、ユウキは一歩も動けないでいた。 カオルが囚われている以上、逃げることはもちろん、攻撃することもできない。下手に動けば、その累はカオルに及ぶことになるのだ。 無論、カオルを見捨てれば自由に動けるが、そんな選択は問題外だ。 「さぁ、今度は貴方の番ですよ。抵抗はしてもかまいませんが、反撃は禁止します。精々無様に逃げ回ってください。 やれ、ライダー!」 「あいよ!」 テイカーの命令に従い、ライダーがユウキへと銃口を向けながら突撃してくる。 どうやらテイカー自身は、手を出す気はないようだ。あくまでもカオルが逃げ惑う様を眺めているつもりなのだろう。 「カオル。少しの間だけ、我慢してね……!」 小さくそう口にしながら、ライダーへと向けてランベントライトを構える。 これからは反撃の許されぬ、戦いとも呼べぬ一方的な戦闘だ。 その窮地の中で勝機を見出すために、ユウキは自分の命を賭ける覚悟を決めた。 7◆◆◆◆◆◆◆ 一合、二合と魔剣と光剣が激突し、相手を打倒さんと鎬を削る。 翻る刃は相手の身体を断ち切らんと鋭く閃き、それを防がんと打ち弾く。 高速でぶつかり合う二つの刃は、相手の体を浅く切り裂きながらも、決定的な一撃には至らない。 その攻防立ち替わる激しい剣戟は、戦いが始まってから一度として途切れることなく続いている。 「アアアァアッッ―――!」 「クッ……、セアッ――!」 黒の剣士キリトと、オフィシャルナビのブルース。 この二人の戦いは、自身を顧みずに戦うキリトが優勢に進めていた。 無論、戦うという点においては、ブルースとて手加減はしていない。 ならばなぜ戦いはブルースに不利となっているのか。 それは主に、彼の心理的な要因があった。 確かに純粋な剣の技量においてはキリトの方が上だ。 だがブルースとて、オフィシャルナビとして多くのウイルスやナビを倒してきた。単純な総合力においては、キリトにも劣っていない。 しかし、激情に駆られているとはいえ、キリトはサチを助けるために戦っている。 誰かのために戦う『悪』ではない者を、自分の身を守るためとはいえデリートしてしまうかもしれない可能性に攻めあぐねていたのだ。 「ハ――ッ、アア………ッ」 対するキリトに、そんな躊躇は微塵もない。 サチを助ける。その一点しか思考にない今の彼には、相手の命はもちろん、自分の命さえも無価値だ。 キリトがまだ命を懸けていないのは、自分が死んだところで、サチが助かる保証がないからだ。 もし自分の命を差し出すことで彼女を救えるのなら、彼は何の躊躇いもなくその命を差し出すだろう。 その自己を投げ打った無鉄砲さもまた、ブルースが攻めあぐねる要因の一つとなっていた。 「何やってんのよブルース! そんなヤツ、早くやっつけちゃいなさいよ!」 自分たちが不利となっている現在の状況に、焦れたピンクが檄を飛ばす。 言われなくとも解っている。 如何に相手が『悪』でないとしても、ただ倒されるつもりはブルースにもない。 必要とあらばキリトの動きを抑え込み、ピンクのインフィニティによる一撃で決着をつけるつもりだ。 無論。そう言うほど容易い相手ではないが、そこはオフィシャルとしての力の見せ所だろう。 だがそれは最後の手段だ。まだ余裕の残っているこの状況において取るべき選択ではない。 「いい加減、少しは落ち着け……! 俺たちを倒したところで、何の解決にもならないとなぜ気付かない!」 「……うるせぇよ。だったらサチを、彼女を元に戻せって言ってるだろうが―――ッ!!」 ブルースが静止を呼びかけるが、キリトは全く聞く耳を持たない。 それどころか、むしろますます激高し、ブルースへとその魔剣を叩き付けてくる。 「チィッ……!」 そのあまりの分らず屋っぷりに、ブルースは堪らず舌打ちをする。 どうやらキリトを止めるには、彼女からあの黒いバクを取り除く手段を提示する必要があるらしい。 ……だがそんな事は不可能だ。自分たちとあの黒いバグは無関係だし、対処法など知っているはずがない。 「ピンク!」 「ゴメン、わかんない。プログラム関係は弄ったことないの」 わずかな可能性に賭けピンクへと声をかけるが、やはり無理だと首を振られる。 いかなピンクの情報収集能力でも、五感から獲得できないデータ情報の取得や、ましてやその解析などは不可能らしい。 となるともはや、手段は二つしか残されてはいない。すなわち、力尽くで彼を取り押さえるか、あるいはデリートするかだ。 「やるしか、ないようだな……」 ブルースは小さくそう呟いて、一際強くキリトを弾き飛ばし、戦闘を仕切り直すために距離を取る。 キリトの技量は決して侮れるものではない。どちらを選ぶにしても、全力を尽くす必要があるだろう。 ならばその結果として、キリトをデリートしてしまう可能性も、ブルースは覚悟の内にいれた。 「ハァ、ハァ、ハァ………」 対するキリトは、弾き飛ばされると同時にサチを背中に庇い、乱れた息を整えつつ少女の様子を見る。 しかし彼女は、この剣戟を前にしてさえ変わらず虚ろな瞳を彷徨わせるだけだ。 ―――どうして、こんな事になってしまったのか。 ………決まっている。自分が、彼女を一瞬でも拒絶したからだ。 だからサチは何もかもが信じられなくなり、何もかもから逃げ出したのだ。 「ッ…………!」 そんな今更な後悔に、キリトは堪らずほぞを噛む。 ……だけどまだ手遅れじゃない。アイツらを倒せば、きっとサチは助けられる。 …………だから。 「サチ、君は絶対に死なせない。必ず、俺が助けるから――――だから」 だから、俺を信じてくれ。と、サチへと向けて言外に懇願する。 そしてブルース達へと向き直り、一層強く睨み付ける。 こいつらのせいで……こんなヤツ等さえいなければ、サチはこんな目に合わずに済んだはずなのに。 ………赦せない。絶対に、後悔させてやる―――! キリトはそんな激しい憎悪を燃やし、ブルース達へと魔剣を構え、感情のままに突撃する。 ――――その、直前。 ズプリと、キリトの腹部から、血のように赤いライトエフェクトをまき散らしながら、剣の刀身が飛び出した。 「――――――――、え?」 その光景に理解が及ばず、痛みを認識するより先に、そんな声が漏れた。 ……ブルース達の仕業ではない。彼らもまた、何かに驚いた表情を見せている。 ならば、この剣は一体何なのか。 「グッ、づぁっ……ッ!」 遅れてきた激しい痛みに、堪らず呻き声を出す。 だがそんな事はどうでもいい。今重要なのは、この攻撃が何なのかということだけだ。 正面からの攻撃ではない。剣の切っ先が見えている。ならば背後からの一撃ということになる。 ………けどそれはおかしい。 背後にはサチしかいなかった。剣での一撃である以上、近接攻撃であるはずだ。近づこうとすれば、彼女が邪魔になる。 だから、完全に不意を突かれて後ろから刺されるなんてことは、あり得ないはず……なのに――――。 「ぁ…………、なん………で……?」 理解が及ばない。現実を認識することを、心が拒絶している。 けど、振り向いた先に見えたのは確かな現実で、だからそれが信じられない。 なぜ、彼女がそこにいるのか。 なぜ、彼女はそんな顔をしているのか。 ―――そしてなぜ、彼女が自分に突き刺さる剣の柄を握り締めているのか。 「サ……チ…………?」 目の前の光景が信じられないと、キリトは呆然と声を漏らす。 その背中には、彼に剣を突き刺しながらも驚愕の表情を浮かべる、彼が懸命に助けようとしていた少女がいた。 † ――――気が付けば、とても広く深い海の中にいた。 けど、不思議と息苦しさはなかった。むしろ、どこか安心感のようなものさえある。 半透明の魚のようなものが泳ぎ、無数の大きな気泡が海の深くから浮かび上がってくるその光景は、どこか幻想的にさえ思えた。 「ここ……は……?」 茫然とした頭で、微睡むように口にする。 この海は一体何なのか、なぜ自分がここにいるのか、まったく理解が及ばない。 確か自分は、何かから懸命に逃げて、どこかの森を彷徨っていたはずなのに………。 ――我等、月夜の黒猫団に乾杯!―― 不意に触れた気泡が弾け、そんな声が聞こえた。 それは確か……キリトがギルドに入った時のお祝いで、リーダーのケイタが取った音頭だっただろうか。 なぜあの時の言葉が聞こえたのだろうと不思議に思い、恐る恐る別の気泡に触れてみる。 ――俺たちが、聖竜連合や血盟騎士団の仲間入りってか?―― ――なんだよ。目標は高く持とうぜ。まずは全員レベル三十な―― それは、いつか交わしたギルドのみんなとの会話だった。 ならこの海に浮かぶいくつもの気泡は、もしかして私の記憶なのだろうか。 そう思って、もう一度別の気泡に触れてみれば、やはりどこかで聞いた会話が聞こえてくる。 その中には、リアルにいる家族や友達との会話も含まれていた。 ―――その声に、どうしようもない懐かしさが込み上げてくる。 ああ、そうか。ソードアート・オンラインに閉じ込められてから、もう半年も経っていたんだっけ。 それを思い出して、また家族と、友達と、みんなに会いたいと、そう強く思った。 ―― !―― 不意に、また声が聞こえた。 けど今度は、気泡には触れていない。それに、声もよく聞こえなかった。 ―― !―― また聞こえた。 けど、やっぱりよく聞こえない。ただ、とても緊迫していることだけは分かった。 声は、海の上の方から聞こえてきた。もう少し上に行けば、よく聞こえるだろうか。 ………けど、そちらには行きたくないと、どうしてか思った。 それは、この海の居心地が良いからだろうか。……何か、違う理由があった気もするけど、よく思い出せない。 「ぁ…………」 けれど、海の上を意識したからだろうか。体が徐々に、上へと浮き上がり始めた。 そっちは嫌な感じがするけど、行きたくない理由もよく解らないので、浮かび上がるに任せる。 そうして体は海から引き上げられ、視界は一瞬、眩しい光のようなものに白く染められた。 ――――ノイズが奔る。 今いる場所は、たぶん森。けどよく判別できない。 視界が激しいノイズに覆われていて、そこらかしこで黒い点が点滅している。 ギイン――と、ノイズに紛れて、金属音のようなものが聞こえた。 まるで、剣と剣がぶつかるような音。視界を彷徨わせれば、赤と黒の人影が戦っていた。 先ほどの眩しい光は、彼らが剣をぶつけ合って飛んだ火花の光だったのだろうか。 彼らは、なんで戦っているのだろう。二人の顔は………だめだ。ノイズのせいで、よく見えない。 ガキン――と、一際強くぶつかり合って、彼らは一度距離を取った。 赤い人影は向こう側へ。黒い人影は、私のすぐ近くに。 ……ノイズは相当酷いらしい。手が触れられそうなこの距離でも、彼の顔はちゃんと判別できない。 「サチ、君は絶対に死なせない。必ず、俺が助けるから――――だから」 ふと、どこからか、ノイズに紛れてキリトの声が聞こえた。 どこにいるのだろうと視界を巡らせても、彼の姿はどこにも見えない。 ならきっと、あの気泡がまた弾けたのだろう。 ―――絶対に死なせない。俺が助ける。 ………そうだ。彼はいつもそう言って、私を安心させてくれた。 死の恐怖で眠れなかった私は、彼のおかげでまた眠れるようになったのだ。 ……ああ、でも、再会した時の彼は、なぜか私に怯えるような顔をして。 ………そうだ、思い出した。 ここはSAOじゃない。何か別の、よくわからないデスゲームの中だった。 だとしたら彼らは、きっと殺し合っていたのだろう。…………何の意味があって? ………いや、意味なんてきっとない。 彼らはただ、自分が生き残るために、他の誰かを殺そうとしているのだ。 そしてその誰かには、私さえ含まれているだろう。 …………嫌だ。死にたくない。 まだ死にたくなんかない。またリアルで、家族と、友達と会いたいみんなと一緒に笑っていたい。 ……死にたくない。こんなところで死ぬのは嫌だ。こんな所で殺されるなんて、絶対に嫌だ。 ……そうだ。どうせ殺されるくらいなら、いっそ私が先に殺して――――――。 「――――――――、え?」 ――気が付けば、剣で何かを貫いた感触と、そんな声が聞こえてきた。 いつの間にか私は、目の前にいた人影へと攻撃していたらしい。 不思議な感覚だった。まるでこの身体(アバター)を、自分以外の誰かが操作したかのよう。 「ぁ…………、なん………で……?」 また、とても聞き覚えのある声が聞こえた。 その声は、どうやら目の前の人が、口にしているらしい。 ……そうだ。この距離なら、このノイズのなかでも顔を判別できるだろうか、と思った。 だからその人の顔を見ようと、視線を上へと上げて――――そのあまりにもよく知る顔に、堪らず目を見開いた。 「サ……チ…………?」 キリトが、呆然と私の名前を口にする。 その声に私は、一歩、二歩と、ふらつく様に後退りする。 それで彼の身体から剣が抜け、彼は苦痛に声を漏らす。 頭が真っ白になって、何も考えられない。 視界を覆っていたノイズは、いつの間にか消えていた。なのに、目の前の光景を正しく理解できない。 なんで? どうして私は、キリトに剣を突き刺したのだろう。 わからない。わからない。わからない。わかりたくない。 ……ああ、それよりも、早く彼のHPを回復しないと。 確か彼のHPは半分を切っていて…… それにここは………ダメージが倍になる、痛みの森で………… 彼が傷を負った箇所は、確か………大ダメージを受ける…………急所で………… だから…………半分しかなかった、彼のHPが…………残っているはずは、きっとなくて…………… 「あ、………あ……あ…………ア――――――」 キリトが、縋るように手を伸ばしてくる。 それから逃げるように、さらに数歩後退った。 だって、キリトが死ぬ瞬間なんて見たくなかった。 私が彼を殺したなんて現実は、認めたくなかった。 ………だから私は、もう何もかもが嫌になって、現実の全てを拒絶した。 「イヤァァアアアアア―――――ッッッ!!!!」 ―――その瞬間。 私の視界は唐突に、無数の黒い点に埋め尽くされた。 8◆◆◆◆◆◆◆◆ ――――そうして十数分後。 初めての山登りの感想は、とにかく疲れた、というものだった。 何の問題もなく洞窟の入り口へと辿り着きこそしたが、整地されていない山の足場を確保することに苦労したのだ。 肉体的な疲労はないが、精神的に疲れた。キャスターは平然と登っていたが、セイバーの方は早々に飽きて霊体化したほどだ。 ただ、一つ気になる事があるとすれば、 ―――……カイト。君、浮いてるね。 と、背後にいたカイトへと振り向き、その足元を見つめながらそう口にする。 そう。カイトは地面から五~十センチほど浮遊しながら、苦労して山を登る自分に平然とついてきていたのだ……! 「……………………?」 しかし、カイトはそれがどうかしたのか、といった風に首を傾げている。 どうやら彼にとってそれは、ごく当たり前の機能らしい。 それを若干恨めしく思いながらも、はあ、とため息を吐いて諦める。 そもそも彼はゲームのシステムAI。ベースとなる世界観が自分とは違うのだから。 それに、とカイトから視線を外し、その向こうに広がる景色を眺める。 そこには広大な草原が広がり、左手には森が、右手には街が見える。 この光景を思えば、苦労して上った甲斐もあるというものだろう。 「うむ、実に良い眺めだ。登山というのも、存外悪くないものだな」 「ええー? 霊体化して楽した人に言われてもぉ、ありがた味が全然ないんですけどぉ」 実体化しセイバーの感想に、キャスターがそう不平不満の籠った突っ込みを入れる。 まったくの同意である。 「あ、あの、申し訳ありません。楽させてもらっちゃって」 と、ポケットに入りっぱなしだったユイがそう謝ってきた。 いや、ユイが謝る必要はないだろう。 霊体化して楽をしたくせに、さも苦労して上ったかのような事を言ったセイバーが問題なのだ。 第一、子供に山道を歩け、というのも酷というものだ。それに対した重さでもなかったし、気にする必要はない。 ……まあ、妖精アバターならユイも空を飛べるので、そちらの事を謝っているのかもしれないが。 それよりも、と改めて洞窟の入り口へと振り返る。 山も登ってみたかったが、こちらも重要な目的の一つだ。等閑にはできない。 少しだけ中へと踏み込んで覗き込んでみるが、どうやら中は相当に暗いらしい。入り口からはでは奥を見通せない。 本格時に調べるなら、洞窟の中へと立ち入る必要があるだろう。 「洞窟内部および付近にプレイヤーの反応はありません。危険はないと思われます」 ポケットから飛び立ったユイが、周辺エリアをサーチしてそう告げる。 洞窟の暗さに若干の不安を覚えていたが、少なくとも奇襲の心配はいらないようだ。 その事に安心し、ついでにユイに道案内を頼む。 妖精アバターの彼女の翅は小さく燐光を纏っていて、彼女の姿は暗い洞窟内部でも視認できる。 またマップをサーチできる彼女なら、この洞窟が複雑な構造をしていたとしても迷うことはない。 加えて内部へと入ってしまえば、洞窟の輪郭ぐらいは視認できる。彼女を目印に、壁面にさえ注意すれば問題なく進めるだろう。 「はい、任せてください」 ユイはそう言って、洞窟の方へとゆっくりと飛んでいく。 ―――さあ、行こう。 そうセイバーたちへと声をかけ、ユイに続いて洞窟へと足を踏み入れた。 † ――――そうして。 暗闇を抜けた先にあったものは、湖底が見えるほどに透き通った地底湖と、純白に輝く大樹だった。 その目前に広がる、幻想的とも神秘的とも言えるその光景に、思わず目を奪われる。 「わぁ――――――――」 「うむ、実に見事な風景だ。余の感性とは違っておるが、これはこれで良いものだ」 胸元でユイが感嘆の吐息を溢し、セイバーが賞賛の意を評する。その感想に、自分も手放しで同意する。 ……しかしただ一人。キャスターだけは何か難しい顔で首を捻っていた。 その様子が気になり、一体どうしたのかと声をかける。この光景に、何か気に入らない所でもあったのだろうか。 「いえ、そう言う訳ではないんです。この光景自体は充分に綺麗だと思います。思うんですけど………。 この雰囲気、何と申しましょうか。尻尾の毛が妙にざわざわするというか、何というか……。 どこかで感じた覚えがあるような、ないような……? う~ん……申し訳ありません、ご主人様。どうにもはっきり思い出せません。あとちょっとのところまでは来てるんですけど………」 とキャスターは語尾を弱める。どうやら彼女自身にも理由がはっきりしないらしい。 しかし、一尾とはいえ神霊の分御霊である彼女が何かを感じたのだ。ここには確かに何かがあるのだろう。 地底湖の畔まで近づき、その水に触れてみる。 地下水なだけあり、よく冷えている。だが水自体に変わったところは見られない。 この地底湖で最も気になるのは、地底湖の中心にそびえる純白の大樹だが、触って確かめるには地底湖を泳がなければならない。 ………果たして自分は、泳げるのだろうか。 岸波白野の明確な記憶は、聖杯戦争予選からだ。その時点から今までの間に、どこかで泳いだ記憶はない。 いや、プールに行った覚えはあるから、ただ記憶の欠片が埋もれているだけかもしれないが、確証は持てない。 ………そう言えば、あのプールには誰と行ったのだったか。 自分以外に三人……いや、四人ほど一緒にいた気がするが………だめだ。どうにも記憶がはっきりしない。 頭を振って、今は思い出す事を諦める。今必要なのは自分が泳げたかであって、プールの内容ではない。 さて、どうするかと顎に手を当て考える。 一番確実なのは実際に泳いでみることだが、いきなり試すには、地底湖の水は冷た過ぎて躊躇してしまう。 と、そんな風に迷っていると、ユイがふわりと目の前に飛んできて、ある提案をしてきた。 「ハクノさん。私が飛んで行って調べてきますね」 ユイはそう言って、純白の大樹へと飛んでいく。 確かにユイなら飛べるし、サーチ能力も持っている。ただ調べるだけなら、彼女が適任だろう。 しかし、彼女は一つ忘れていることがある。 それを伝えるために、ちょっと待って、とユイへと制止を呼びかける。が、それは少し遅かった。 「なんですか、ハクノさ―――きゃっ!?」 他プレイヤーから五メートル以内(妖精アバターの制限エリア)を越え、バチン、と音を立てて、ユイは通常アバターへと強制的に戻される。 同時に飛行能力も失い、少女はそのまま地底湖へと落ちて行った。 ―――ユイ! と声を上げ、慌てて地底湖へと飛び込もうとするが、それより早く動いた者がいた。 先ほどまで沈黙を続けていたカイトは、ユイが通常アバターに戻ったと同時に素早く飛び出していたのだ。 ……ただし、地底湖に飛び込むのではなく、湖面を浮いて進む方法で。 やはり、地形効果を無視するあのホバー移動はずるいと思う。 「ダ=ジョ$ブ?」 「……はい、なんとか」 カイトは地底湖に落ちたユイを素早く引き上げ、抱き抱える。 迅速に助けられたユイは、水の冷たさに震えてこそいるが、溺れたといったことはないようだ。 その事に安心し、あまり心配させないでほしい、とカイトに抱えられたままの彼女に声をかける。 「まったく。あまり奏者に心配をかけるでない」 「同感です。本当にビックリしたじゃないですか」 それにセイバーとキャスターも同意し、同様に苦言を呈する。 「すみません。制限の事をつい忘れていました。次からは気を付けます」 ――――ああ、そうしてくれ。 と応え、ユイの謝罪を受け入れる。 そこでふと、あることを思いついた。 そのままの状態なら、ユイも大樹に行けるのではないか? 「あ、確かにそうですね。カイトさん、お願いできますか?」 「……………………」 ユイのお願いにカイトはコクリと頷き、彼女を抱えたまま大樹へと浮遊して移動する。 そして湖面で広がる大樹の根に下ろされたユイは、大樹の幹に触れて目を閉じる。 岸波白野のアバターを解析した時のように、大樹からこのエリアのデータを解析しているのだろう。 そしてそのまま十数秒ほど経ち解析を終えたユイは、行と同じようにカイトに抱えられてこちらの岸まで戻ってきた。 「ありがとうございます、カイトさん」 「……………………」 地面へと降りたユイは、そうカイトへとお礼を言う。 それを受けたカイトは、やはりコクリと頷くだけだが、どこか照れ臭そうにしている気がした。 「ではユイさん。何かわかったことはおありですか?」 「はい。どうやらこのエリアの下には、もう一つ謎のエリアがあるみたいです」 「ふむ。謎のエリアか。……なら、それがなんであるかはわかるか?」 「いえ、残念ながら。とても強力なプロテクトがあって、そこまでは解析できませんでした。 と言うより、正確にはプロテクトがあったからこそ、そのエリアに気付けた形になります」 「ふむ、そうか」 それはつまり、絶対に見つからないよう念を重ねたからこそ、かえって不自然さが表れた、という事だろうか。 そう呟くと、ユイはそういう事ですねと答え、ただ、と話を続けた。 「一つだけ、気になったことがありまして」 「気になったこと、ですか?」 「はい。そのエリアの内部で、何かの反応を感知したんです。 ですが、それが何の反応なのか、どうにもはっきりしなかったんです。 モンスターやプレイヤーに設定された機械(システム)的なパターンではなく、もっとこう、自然的な反応パターンだったんです。 イメージ的には、夜空を漂う星、みたいな感じでしょうか。……すみません、上手く伝えられなくて」 いや、そこに何かがあると分かっただけでも十分な情報だ。 プロテクトが掛けられていた、という事は、その場所は榊にとって重要な場所、という事になるのだから。 ……だがそのエリアにプロテクトが掛けられている以上、通常の手段では入ることは出来ないだろう。 第一このエリアの下とは言っても、一体どこに下へと繋がる道があるのだろうか。 そもそもそれを見つけない限り、自分たちではどうすることもできない。 「確かに、その通りですね。 私のマップサーチでも、この洞窟に下へと繋がる道は見つかりませんでしたし。 っ……くしゅん、ッ……!?」 不意にユイが、そう可愛くクシャミをして、なぜかビックリしていた。 彼女が驚いた理由はわからないが、クシャミの方は、地底湖に落ちて濡れたことで体を冷やしてしまったのだろう。 制服の上着を脱ぎ、これ以上冷やさないようにとユイの肩に羽織らせる。 「あ……ありがとうございます、ハクノさん。 ふふ。クシャミなんてしたのは初めてで、ビックリしちゃいました。 この世界では、私のようなAIでも人と同レベルの反射パターンを取れるんですね」 そう言ってユイは、どこか喜ぶように小さく笑った。 人間と同じ感覚を得られることが、そんなに嬉しいのだろうか。 「はい、嬉しいです。まるで、パパとママの本当の子供になれたみたいで。 それに、現実における水のモーションパターンも、実体験として知ることができました。 私たちの世界のVR技術では、まだ流水の再現は非常に難しく、完全な再現ができていないんです。 けどこの世界では、あらゆる情報がリアルです。それこそ、まるで現実世界にいるみたいに」 ユイは地底湖の淵に屈み、手を伸ばして泉の水に触れながらそう口にする。 ――――ユイの両親。 バグを起こしていたAIである彼女を助け、自分たちの子供にしたという二人のプレイヤー。 仮想世界の住人である以上、ユイは彼らの住む現実世界での感覚を得ることは出来ない。 だがこの世界に連れてこられたことで、本来知るはずのなかった、人間としての五感を得ることとなった。 そして現実の感覚を知ったユイは、ようやく両親の生きる世界に触れることができたと、そう感じることができたのだろう。 ……ああ、そうか。ユイは本当に、生まれたばかりの子供なんだな。 「生まれたばかりの子供、ですか……」 そう言って考え込むユイに、ああ、と答える。 新しい世界を知る喜びは、きっと命が生まれる喜びに似ている。 その存在を両親に認められ、その命を祝福されて育んできたユイは、この世界に招き入れられたことでようやく生まれ出でたのだ。 彼女が感じている喜びは、その無意識の実感からくるものだろう。 ――――だがその喜びは、現実世界を完全再現した霊子虚構世界、SE.RA.PH(セラフ)で作り出された自分には知ることのできない感覚だ。 岸波白野は自分を確立した時から、今の岸波白野としてそこにあった。 心こそ強くなったかもしれないが、岸波白野は未だに、ムーンセルという母胎から生まれ出でていないのだ。 だからだろう。誕生の喜びを知ったユイの事を、少しだけ羨ましく思った。 Next 守りたいもの
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【 YouTubeアニメ無料動画@Wiki >おおかみかくし>おおかみかくし 第8話「錯綜」】 おおかみかくし 第8話「錯綜」 YouTube , ニコニコ動画 ,veoh,MEGAで 無料 で見れるおおかみかくし 第8話「錯綜」の アニメ 動画 を紹介。 更新状況 更新履歴を必要最低限にわかりやすくまとめたものです。 【広告】あの部長のドメインが、ワタシのより可愛いなんて・・・・。 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(9/23) 【最新】けいおん!!:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【最新】屍鬼:アニメ動画2本追加しました!(9/23) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ動画3本追加しました!(9/23) 【ソノ他】動画ページ上部に「お知らせ」を追加しました!(9/23) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(9/5) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(9/5) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(9/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(9/2) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/30) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/28) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/26) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画3本追加しました!(8/25) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/25) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/21) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/18) 【修正】デュラララ!!:第7話を視聴可能な動画に更新しました!(8/16) 【今更】刀語:アニメ最新話追加しました!(8/16) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/15) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【過去】とらドラ!:アニメ動画5本追加しました!(8/14) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/14) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/12) 【ソノ他】70万ヒット達成!ありがとうございますヽ(´∀`)ノ(8/11) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/11) 【過去】とらドラ!:アニメ動画10本追加しました!(8/11) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/10) 【関連】殿といっしょ:MAD動画等7本追加しました!(8/10) 【最新】殿といっしょ:アニメ動画2本追加しました!(8/10) 【過去】こばと。:アニメ動画全話追加し終えました!(8/9) 【最新】生徒会役員共:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】みつどもえ:アニメ最新話追加しました!(8/8) 【最新】屍鬼:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】黒執事II:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】伝説の勇者の伝説:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】オオカミさんと七人の仲間たち:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】ストライクウィッチーズ2:アニメ最新話追加しました!(8/7) 【最新】けいおん!!:アニメ最新話追加しました!(8/6) 【最新】ぬらりひょんの孫:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】世紀末オカルト学院:アニメ最新話追加しました!(8/3) 【最新】学園黙示録:アニメ最新話追加しました!(8/3) お知らせ↓追加しました!(9/23) 最近、更新が停滞していて本当にごめんなさい。管理人の都合で、またしばらくサイトの更新ができなくなります。えっと、都合というのはちょっとした国家試験なんです。もっと早く勉強を始めていれば・・・と後悔が募るばかりですが、この度、生まれて初めて(!)本気を出そうと思います。もうすでに遅いような気もしますが、ネットするのを我慢して、自分なりに頑張ってみようと思ってます。たまに更新することもあるかもしれませんが、その時は勉強サボってるなあと思ってください(^^;) 更新は10月下旬頃に再開する予定です。怠け者でダメ人間な管理人ですが、これからも生温かい目で見守ってくれるとうれしいです(*´□`*)♪ ※実はこっそり隠れてツイッターもやっています。あまり見られたくないですが、もし見つけたらリプくれると喜びます! 当サイトについて 動画は最近放送されたアニメを中心に( ´∀`)マターリ紹介しています。管理人の気まぐれや人気記事ランキング、リクエストなどを参照して過去のアニメも更新してます。最近はニコ動などのMAD動画やYouTubeなどにあるOP&EDもバリバリ更新!事前に動画共有サイトから埋め込みタグを取得しているので、他サイトに移動する必要はありません。再生マークをポチっとするだけでOK.゚(*´∀`)b゚+.゚ veoh アニメ動画専用。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合も結構あります。30分以上だと5分間しか見れませんが、ほとんどのアニメは30分以内なので全部見れます。→ Ranking MEGA アニメ動画専用。再生マーク赤をポチっとしたら、広告といっしょにもう一度表示されるので、再生マーク緑をクリックすると再生できます。あまり削除されません。72分間連続視聴すると動画が見れなくなりますので、その場合は54分空けてから見て下さい。また通常は1日に10本までしか見れません。→ Ranking YouTube アニメ動画やMAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。アニメ動画の場合は削除されることが多々あります。MAD動画の場合はなるべくコメント付きのニコニコ動画で見ることをお勧めします。YouTubeだけで紹介(そんな時期がありました…)しているアニメ動画のページは、かなり削除済み多数です(*_ _)人ゴメンナサイ。全部はとても対応できそうにないので、どうしても見たい動画は【リクエスト】してください。→ Ranking ニコニコ動画 MAD動画など。再生マークを一回押したら見れます。削除されている場合もたまにあります。通常は登録しないと見れませんが、埋め込みなのでログイン不要です。コメントに慣れてない人は右下の吹き出しマークをクリックして非表示にしてみてください。広告は×を押して消して下さい。→ Ranking コメントについて↓一部更新しました!(9/23) いつもたくさんのコメントありがとうございます!遅くなる事もありますが、すべて読ませてもらってます♪ 少し注意事項です。動画ページには各ページ中部に感想を書くためのコメント欄がありますが、最近そのコメント欄に「動画が見れない」などのコメントが目立ちます。そのような視聴不可報告は【リクエスト・視聴不可・不具合報告】にコメントしてください。それ以外のページの視聴不可報告は見落としてしまって対応できないことがあります。ご協力よろしくお願いします。 上の注意事項は一部の方です。みんなの感想や応援のコメントには本当に感謝しています!励まされます!アリガトウ(●´∀`●)ノ 見れない時は… veohとMEGAの両方とも削除済みで見れない時は【視聴不可報告】にコメントして頂けると助かります。 動画の視聴に便利なサイト ■GOM PLAYER:MP4やFLV動画の再生ソフトです。DVD,AVIなどの再生にも対応しています。 ■GOM ENCODER :対応ファイル形式が豊富なカンタン高速動画変換ソフトです。PSP/iPod/iPhone/WALKMANなどに対応。 ■バンディカム:CPUの占有率が低く、キャプチャー中でもゲームがカクカクしません。無料動画キャプチャーソフトの新定番です。 動画を見る前or後に押してくれるとうれしいですd(≧▽≦*d) 【お気に入りに追加する】【 bookmark_hatena】 MEGA このページのタグ YouTube アニメ 無料 動画おおかみかくし コメント(感想) 動画おおかみかくし 第8話「錯綜」に関するコメントを気軽に書いてください♪ 名前 クリック単価、広告の種類、管理画面の使いやすさなど総合的に判断しても1番オススメです(●`・v・) 今日の人気ページランキング にゃんこい! 第4話「美しい人」 おまもりひまり 第2話「海ねこスクランブル」 クレヨンしんちゃん シロをレンタルするゾ 昨日の人気ページランキング 荒川アンダーザブリッジ OP「ヴィーナスとジーザス」Full らき☆すた 第14話「ひとつ屋根の下」 【マイムマイム】マサオミマイム【紀田正臣】 君に届け 第13話「恋」 屍鬼 コメント/ひだまりスケッチ×365 第11話「9月28日 パンツの怪」 デュラララ!!ラジオ 略して デュララジ!! 第1回 デュラララ!! 公式パーフェクトガイド けいおん!の歌のシーンを集めてみた
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錯綜する迷穴 「昨日は聞きそびれちゃったんだけど、なんか好いことでもあったのかしら?」 町の一角にある極めて普通の宿屋、その二階の一室の扉に寄りかかった女性が声をかけた。 声を掛けられた男は応答せず、ただ窓から昼の月を眺めている。 「うわ、一丁前にシカトぶっこかれちゃったよ?ユアンのくせに」 女性は両手を上に上げておどけるジェスチャをとったが、一向にユアンは見向きもしない。 「ふふふ…カトリーヌはグリッドの嘘に引っかかったけどそうは問屋が卸さないわ! でも、このミンツ大一の名・探・偵!!プリムラ様にかかればあんたらが 何をやっていたかなんて全部まるっとゴリっとお見通しだ!!」 もはやガン無視の状態である。ボケを殺されて少し血流が早くなったのか、プリムラの一本毛は小刻みに震えていた。 「推理の鍵はズバりあの箒。グリッドの状態とさっきのやり取りを見れば答えは一目瞭然。つまりは…」 腕組していたユアンの指が少しだけ痙攣した。 「…隠しても仕方ない、か。そうだ、あいつは…」 「放尿プレイね!」 ゴスン、と鈍い音がしてユアンが崩れ落ちた。 どう転べばここまで小気味良い音が出るのか不思議なくらいに壁に激突した。 「『いいこと思いついた、お前俺の中で放尿しろ(裏声)』とか、 『ユアンザーさんの箒(ブルーム)テクニックにグリッドもよがってるぜ! アソコも箒もビチョビチョだ!!』とかやっちゃったんでしょ~~? あんたらがそういう関係だったとは空気読めなくてごめんなさいね。 でもここ全年齢なんだから少しは節度ってものを持って…Noooooooooo!!!」 薄く鼻血か引かれた顔を怒気に染めてユアンは振りかぶっていた。彼の殺気を感じ、ようやくやり過ぎたことに気づいた プリムラは無駄と知りつつも慌てて両腕で顔をガードする。 二つ縦に連なったユアンの拳がプリムラの顔面を通り過ぎた。彼女の前髪が風圧で靡く。 はっと自分の失態に気づいたユアンは改めて右手を彼女の顔面に近づけ、ゼロ距離で雷球を形成しようとするが、 「二人とも何してるんですか?」 物音に気づいた一人の女性がその場に現れた。 暫しの静寂、ようやく口を開いた彼女の第一声は、 「…すみません。空気を読めなくて…でも、あの、こういうところでそんな特殊(?)なプレイは…」 「いやいやいや何処を如何したらそういう発想になるのだ……というか何だこのループは」 「こ…これがラブコメ式連鎖的関係崩壊術…」 「で、結局何が聞きたいんだ」 椅子に座って気だるそうにユアンが聞いた。目の前のプリムラは大きな漫画的タンコブを一つ拵え、床に正座している。 「心配していたんですよ。グリッドさんと貴方のことを」 口ごもるプリムラの助け舟といわんばかりに、カトリーヌはテーブルにお茶を置いた。 「なによその眼、私が心配しちゃキャラに合わないってか!表に出ろ!!」 閉じたかどうか限界ギリギリの薄目で睨むユアンにささやかな口撃をするプリムラ。 しかしそんなもので彼我戦力差が変わる訳がない。 「ユアンさんが帰ってくるか、不安でしたから」 カトリーヌはプリムラにお茶を置き、自分の分をテーブルに用意して座った。 「随分軽薄に見られたものだな。まあ、実際そのつもりだったが」 ユアンは軽口を叩くように言った。その眼光は二人をもう一度品定めしているようにも見える。 「ですから、何かあったんだと思いまして。それに…言い難いんですが…」 「あそこまで臭いを漂わせては悪の道も何もないな。箒の主には悪いことをした」 カトリーヌは無言で首肯した。あんな嘘で自分の粗相を誤魔化そうと思うグリッドがどうかしている。 そんな人間に箒に載せた時点でもうこの箒には乗らないとユアンは決めていた。 「あの、静かにするから、頭の上のお茶、どかしてくんない?」 「奴のことを如何思う?深く考えなくていい」 ようやくプリムラへの責め苦が終わり、三人はテーブルに着く。 「「……」」 「深く考えるなといったろう。ここが禁止エリアになった以上、こうして話をする機会なぞもうないかも知れん」 ユアンはカップを眺め、少し考えてから口を付けた。 「その前に一個聞いていい?前から聞きたかったんだけどなんであんたがリーダーにならなかったの?」 プリムラは小さく手を垂直にあげた。 「お前ならこんな組織のリーダーになりたいか?私が接触したときの編成はこいつとあいつだけだぞ?」 「接触というより、弾着でしたけどね」 親指で指されたカトリーヌはにべもなく言い返した。 「でもさ、私たちを弾除けにするにしてもあんたの性格だと№2なんて柄じゃないでしょ?」 「最初は場の勢いに飲まれただけかと思っていたが、今なら多少は理解できる。 アレには指導者としての天性の才がある。私よりも、な」 女性二人は驚きに眼を合わせる。ユアンはカップに映る虚像に先ほどのグリッドの気迫を見ていた。 「……故に、恐ろしくもある。アレには指導者として絶対的な欠点がある」 「何よ?欠点しかあいつは持ってないでしょ」 プリムラはきっぱりと言った。実際、無能なのだから仕方がない。 「そんなはっきり言わなくても…至らない部分は私たちが補えばいいじゃないですか」 カトリーヌのフォローにユアンは相槌を打った。 「そうだ。そのために下部組織があり、参謀があり、機能が存在している。 指揮官に必要なのは、明確な指針と勘案された意見を聞くこと。 そして採用した意見を率先して遂行すること。大まかにはこれだけしかない」 「それだけなら一応満たしてるわね、あいつ」 少々納得がいかない部分もあるが、確かにコングマンとの戦いを見るに必要十分な条件は満たしている。 「私が不本意ではあるが参謀役をしているのもそこら辺も理由だ。今の私は前線に出ることが出来ん。 部下の前に立てぬ奴には誰もついては行かぬよ」 「前線って…あんた晶霊術士(クレーメルユーザー)でしょ?前線もヘチマもないじゃない」 プリムラは素朴に疑問を放った。箒に乗って、雷を放つ。女性なら典型的な魔女の王道だ。 「晶霊…?マジックユーザーのことか?私の本職は前衛寄りの魔法剣士だ。 レネゲードを作ってからは自前の得物を持つ機会も減ったからな…まったくバツが悪い」 眉間を抓んでうなるユアンを尻目にプリムラはカトリーヌに耳打ちした。 数度の往復を経て、もう一度彼に向き合った。固有名詞は聞き流すことにしたらしい。 何が久しく使ってない、だ。さっき私の前で両手が横切ったのは‘武器を持っているつもり’だったからだろうに。 「あのう、話を戻していいですか?」 カトリーヌはおずおずと手を上げた。 「ああ、すまない。脱線してしまったな…何処まで話したか…」 「グリッドの無能を差し引いても何か欠点があるって所まで」 プリムラは多少不快そうに言って、お茶に口を付けた。少し温くなっている。 「奴は、自分と漆黒の翼という組織の間に線を引くことが出来ない」 ユアンの発言を飲み込めない二人は、詰まった言葉をお茶で流し込んだ。 「俺が奴を殺そうとしたとき、グリッドは言ったよ」 「ぶはははははははははは!!!!!!!!!!!!!!!!!」 詰まった言葉は大笑いで吹き抜けた。プリムラは片手でお腹を抱え、涙目を浮かべて笑っている。 カトリーヌは背中をさすりやんわりと諫めた。 「いや、だって、『俺は漆黒の翼を守る!!!! たとえユアン!!お前に殺されてもなっ!!!!!』ってアンタ、 死んだら守れないでしょ?!彼奴どんだけアホなのよ…ぶはははははっはあははっはあっはっは!!!!」 少々下品とも言える大笑いに1人は眠っているはずの笑われている本人が起きてこないかを心配し、 1人は動じることなく、というよりは心ここにあらずというような目でカップの中を見つめている。 「はははっは…まあ、私達のことを心配してくれたのは嬉しいけどね。 ふーん…まあ、少しは認めてあげても、いいんじゃない?」 少しばかり自分の行為にバツの悪さを感じたのか、プリムラは萎れたように言った。 「だからこそ、彼奴はガラクタだ。現時点では使い物にもならない、な」 ユアンに対面した2人は絶句した。沈黙と中で窓から差し込む陽光が嫌味に思える。 「……何処がよ」 沈黙が痛々しすぎて、プリムラは思わず口を付いた。 グリッドの弁護をする気は更々無かった彼女が、どうしてこんな事を口走ったのかは本人にも分かっていなかった。 「素質と実力は別物だ。今のままなら、未完のまま彼奴は死ぬ」 死ぬ。いつもなら一笑に付すその一言が、彼の口から、この場所で出てくるだけで妙な説得力を持っていた。 「あれから漆黒の翼を奪ったら、何が残ると思う?」 ユアンは窓辺に立って、石畳の街路を俯瞰しながら言った。 再び沈黙が流れる。しかし今回の沈黙には確かな拘束力があった。 グリッドから、彼奴から漆黒の翼を奪う?あり得るはずが無い。 プリムラにしてみれば、彼らと出会ったときから漆黒の翼は結成されていたし、 グリッドは最初から漆黒の翼のリーダーとして、全く不変の理のようにその座にいたのだ。 漆黒の翼を持たないグリッドなど‘想像する余地が無い’。 「1つ、考えていたことがあります。何故、私は彼に選ばれたんでしょうか?」 カトリーヌはカップを両の手で抱え込む様に持って、俯き加減でお茶を見ていた。 「……別に、確かぶつかって出会って向こうの方から強引に勧誘してきたんでしょ? 彼奴の性格なら普通にありそうな話じゃない?」 「でも、私は見ての通り足手まといで、それに方向音痴で、それに……」 カトリーヌの自虐が始まりそうになったのでユアンが顎で先を促す。矢張りその瞳は遙か遠くを覗いている。 「と、とにかく私は全然これっぽっちも役に立ちません。グリッドさんが私を仲間にする理由が無いんです」 清々しい朝にはどうにも不似合いな重々しい空気が三人にまとわりついた。 プリムラはもうこの場の三人の中でこの話の終点、その見当が一致していることを確信していた。 しかし、その弁護に立つ理由も手段も持ち合わせない彼女はこの2人の迂遠な話を唯聞くしかない。 「カトリーヌ、確かお前のグリッドから貰った称号は疾風だったな?」 示し合わせたように淀みなくカトリーヌは応じた。 「はい。そしてユアンさんは大食らいです。私はブーツを履いていたから通るにしても、ユアンさんは道理が通りません」 プリムラは一気に残りを飲み干し、音が鳴るほどにカップをテーブルに叩き付けた。 この感情は疎外感だろうか。プリムラと彼らに引かれた境界線はカップ程度で消せるほど柔くはない。 「で、私の称号が決まっていないことを加えると1つのくっだらない事実が出てくるわけだ? あんたらの称号は本物の漆黒の翼の借り物って事実が」 「オリジナルは全部で3人。4人目がいれば、お前にその称号が当てられるはずだからな」 新しく注がれたカップから立ち上るほんの少しの湯気に2人と1人は隔たっていた。 「普通に考えて、幾らこの場所にその2人がいないからと言ってその称号を見ず知らず出会ったばかりの人間に差し出すか? あの何よりも仲間に拘るグリッドの中でこれだけが‘理に沿わない’んだよ」 そう、グリッドには向こうの世界で待っている本当の漆黒の翼がある。 本当なら、逃げて、逃げて、元の世界にいる2人のためにもグリッドは生きなければならないのだ。 それを投げ出す様に急拵えに作られた仮初めの翼を守ろうとする。 「あんた、何を言ってるか分かってるの?」 「取り繕った所で、瑕が塞がるわけでもない」 ユアンの言葉は、既にプリムラも、カトリーヌも分かっている。言わなくても済む。 グリッドは、仲間を守りたかったんじゃない。 漆黒の翼という居場所を守りたかったんだ。 「漆黒の翼を失えば奴には何もないのだよ、多分。だから守るのだ」 孤独は厭だから、1人では立つことが出来ないから、リーダーという仮面がなければ虚勢の1つも張れないから。 だから直ぐに拵えた。誰でも良かった。危険を省みずに漆黒の翼のリーダーという自分を作り上げた。 ユアンは席を立ち、天井を仰いだ。 「無論、本人も自覚はないだろうな。元の世界でなら別にそれでも八方丸く収まった筈だ」 道化として生きるのも、小賢しく生きるのも、漆黒の翼の団長という鎧を纏ったグリッドなら上手くやるだろう。 「……4000年変わらなかったものも最後には少し変わったんだ。 このおままごとも、リーダーごっこも何時かは終わる。この場所なら尚更な」 2人はただ、ただ‘何もしないこと’しか出来なかった。 常に目減りしていく参加者、減らない死者。そして一点の曇りもなく理想を高らかと口にする彼らのリーダーは此処にはいない。 ユアンは、グリッドはズボンを乾かして動けないうちに私達を言葉巧みに洗脳し、 この組織をそっくりそのまま奪おうとしているのかとも、プリムラは少し考えた。 そうじゃないのは直ぐに分かった。こんな、グリッドの安寧を守る為だけに機能している組織なんて奪ったって意味がない。 ユアンは案じているのだ。あの情けない紛い物と、その末路を。 「私達がいなくなったとき、漆黒の翼が完全に失われたとき、彼奴はグリッドとして立っていられるのか?」 彼女は自身に問う。 必要のない4番目の彼女の、此処にいる意味を。 淡い光の向こうで、誰かが此方を見ている。 此方を見ている誰かは、両膝を付いて私に哀願している。 まるで、そう、まるで、 (デジャヴかしら?それともまだ走馬燈の続き?……あはは……私が其処にいるわ) まるであの時の私のように情けない奴がいる。 一線を踏み越えたことに対する後悔と、自己嫌悪と、ほんの刹那の陶酔と、 それらを必死に体の中で処理しようとする健気さが入り交じった無力な子供が其処にいる。 何とも滑稽な姿だ。あの時の私もそうだったんだな、と思う。 本当になんて無様な子供… (ん?私って金髪だっけ…?) 疑問と共に、淡い光が弱々しい現実の灯に変遷していく。 泣いているのは何とも別人だった。 たった1つコロリと横たわるカンテラの明かりに全員が照らされ、彼女の周りで影が蠢いていた。 灯りの一番傍でプリムラが仰け反っている。弱い光が彼女の前面の血を鈍く輝き鈍く照らされている。 前髪で表情から状態を察することが出来ない。 グリッドは彼女の前で両膝を折り呆然としている、手を彼女の血で真っ赤に塗らした彼に常の覇気が無い事は明瞭だった。 この2人を挟むようにして、2人と2人が対峙している。 中継点側にリオンとカイル、出口側にヴェイグとトーマがそれぞれの心中を揺らめかせていた。 リオンは掴んだカイルの腕を放しながら仮面の奥から正面を見据えた。 彼の目算はこの状況を六分で此方が有利だと判断している。 問題は山積しているが先ず安全の確保を優先すべきだろう。そう彼は考えたかった。 ディムロスは前方三歩、プリムラの真横。喋らないところを見ると取り敢えずは様子見するつもりか。 確か、名簿にあった名前は、カイル=‘デュナミス’だ。 プリムラの正面が派手に染まっているが、それにしては妙に地面の血が少ない。 急所さえ外れているなら、後回しにしてもいいだろう。何より、最終手段は此方の嚢中にある。 リオンは眉間に皺を寄せた。この道を行けばこうなることは、彼は了承していた。 しかし、真逆こうまで早いとは流石に想いもしなかった。 皮肉にも程がある、と悪態も付きたくなる。全くこれだから運命は馬鹿馬鹿しい。 問題はそこの銀髪、名簿の名前はヴェイグ=リュングベルだろう。確か奴と共にいた奴だ。 プリムラの話に従えば、彼女が行きかけの駄賃に刺した奴も銀髪じゃなかったか? しかし状況はそこまで悲惨じゃない。奴の後ろにトーマが控えているし、 何より戦端を開くにはそこの2人が邪魔だ。これでは戦いは始められない。 とはいえ、悲惨でなくともプリムラの状態が即死から瀕死になっただけで、依然状況は予断を許す気がないらしい。 1つ動かせば確実に奴と斬り合いだという確信に従い、 正面の連中の死角になるようにリオンは腰の後ろの短剣に右手を添えた。 警戒さえしていれば少なくとも済し崩しにそこの男に斬り殺されるという無様な真似は曝さずに (待て?何で僕は今更命を惜しんでいる?) ふと脳裏を過ぎった疑問に、リオンは逡巡する。 (殺されても良いと思った。さっきカイルにそう言っただろう?何故だ?) 「絶……」 反応、遅れること一秒半。 「瞬影迅!!」 目の前の銀髪の動作にリオンは微動だにせず驚愕した。 男の行動の意味は分からないが、紛れもない殺気にリオンの全身が反応する。 (まさか、突進するつもりか?) 「トーマ、寄せろ!!」 叫ぶが先か、リオンはカイルを横に突き飛ばし加速の体勢に入る。どちらが狙われているにせよ、自分が止めるしかない。 リオンに言われるまでもなかったのか、トーマは左手を前に伸ばして扇ぐ様に左から右へ薙いだ。 トーマのフォルスによってグリッドとプリムラの体が不自然に横に動く。 (間に合うか……?) 警戒はしていたとはいえ、トーマは正気とは思えないヴェイグによる錬術加速からの突進に一瞬の虚を突かれた。 既に座標が定まらないヴェイグを抑えることを諦め、2人を避難させる方向へ判断を変えた。 しかしプリムラが手負いであることを考えると急な力を掛けるわけにも行かない。 「ヴェイグ!剣を…ッ!?」 間に合うか、間に合わぬかその限界の距離でトーマは全く望外の図面を見た。 ヴェイグは速度を殺さぬように跳躍し、リオンに向かって飛び込んだのだ。 横への推進力を重視した飛び込みによってヴェイグの靴がグリッドの髪を掠める。 中空でヴェイグは腕を引き、溜めるように‘短剣’を構えている。 (飛び込みからの突撃、スナイプロアと同質の?抜刀…遅いか!?) リオンは桔梗に左手を寄せながら唸った。何故プリムラを置いて自分を狙うのか、 何故自分は生きたがっているのか、その理由も皆目見当付かない。 奴にとって僕はジューダスを殺した仇だ。 此処で殺されて仕舞えば、それで、全てが綺麗に片づく。 (スタンも死んだ、僕にはもう何も残っていない。何故僕はそれでも生きたがっている!?) 違う、とリオンの中で警報が鳴った。 短剣で切り込むには、スナイプロアを仕掛けるならば構えが早すぎる。間合いも若干遠い。 この警報は何処で鳴っている? 左よりも早く、右手が背中に隠したもう一振りを抜く。 (クロスレンジじゃない?ミドルレンジからの一撃…この技は!?) 「霧氷翔!!」「月閃光!!」 ヴェイグの短剣が冷気を纏い、剣槍へと変質しながらジューダスへ向かう。 右手が導くように生み出された三日月は氷の突きと相殺する。 グリッドを除く全ての視線が、冷えた空気に映えたその月と突きを見ていた。 カイルの視線だけがその光景に別の意味を見いだしている。 「どちらだ」 着地と同時に距離を詰めて、ヴェイグは剣を横に薙いだ。 リオンは二刀を重ねて斬撃を止める。 「お前が望まない方が正解だ」 「……そうか」 トーマはプリムラ達の無事を確認して、動きを止めたヴェイグに手を翳した。 「ヴェイグ。剣を下ろせ」 「止めろ、トーマ。こいつは正気だ」 リオンの言葉にトーマの左腕はびくりと動いて、直ぐに静止した。 洞窟の壁がじっとりと湿って、雫を一滴落とした。 「ああ、俺にも状況は理解できる。だが」 ヴェイグは呼吸を落ち着けて、剣を握る。 暴走するほどに血は上っていない。決して逆上して斬りかかった訳ではない。 自分を刺した相手とは言え、プリムラのことがどうでも良かったという訳でもない。 漆黒の翼の2人を盾と利用して、一瞬の虚を突いて、 慎重に、冷静に、確実に、目の前の死人を切り離そうとした。 リオンだろうと、ジューダスだろうと、この一瞬に関してはどうでも良かった。 死人が、カイルを連れて行く。 たった1つ、このイメージを忌避するために。 それがこの空間が醸し出した幻想か、 死んだはずのジューダスが甦ったことか、 殺人鬼であるリオンが居たことがもたらしたイメージなのかは分からないが、 最大の贖罪の対象であるカイルを失うことだけは許すわけにはいかない。 カイルがこの場所にいるという可能性を忘却していた彼が考えられたのはそれだけだった。 そしてその目的に対してヴェイグに採ることが出来た手段は、死人からカイルを切り離す事だけだった。 そしてその認識は剣を交えて死人が生きたリオン=マグナスであることを認識しても続いている。 氷の刀身をもう片方の手の腹で押し、ヴェイグはじりじりと剣と剣の交差位置をリオンに寄せていく。 「悪いが、俺にも俺の事情がある。ここは我を通させて貰う」 「仇か?少なくとも1人、お前には僕を殺す動機がある」 「違う」 一喝したヴェイグは体躯の差で強引にリオンを壁に押し飛ばした。 まだ体力的に完調していないリオンは受け身を取る間もなく壁に叩き付けられる。 ヴェイグは押し切った勢いのまま突進を仕掛け、水平に構えた氷剣をその素ッ首に打ち付けた。 リオンは右手を突き出し躊躇無く剣の根本、即ち氷剣の原型たる短剣の部分を掴む。 「……少し、話が長引きそうだな」 「お前が何も言わずこの手を離せばそれで終わる、この場で朽ちて在るべき場所に還れ」 氷剣は腕力の差に後押しされ、ゆっくりとリオンの喉元に近づいていく。 既にリオンの背中には塞がった壁の冷ややかな感触が伝わっていた。 リオンの背中から魔力が放たれる。ヴェイグは漸くリオンの左手が遊んでいることに気付いた。 二刀は既に、腰に収まっている。リオンは一瞬だけカイルの方を見た。 (この未練がましさの原因は、この少年に会ったからなのか?何にせよ……) 「悪いが、今の僕の命は僕だけがどうこうできるものじゃ無いんだ。まだ、死ぬわけにはいかん」 (亀裂は理解できた。この裏側の円柱状の鉄が邪魔だな。 いや、それよりも問題は、鉄心……いや、この鉄に括られている土塊だ……何が向こうに刺さっているのか……迷う時間は無いか) 「シャル!破砕しろ!!」 背中に隠した左手に握られたコアクリスタルが輝く。 ピシリ、ピシリという音が二回なって、一気に亀裂が‘向こう側からやってきた’。 晶力を通わされた岩々は踊るように崩れていく。 その一瞬の緩みに、リオンは作成した後方の空間に倒れ込むように飛び退いた。 飛び退いた先で今し方観測した鉄心、溜弾砲とその土塊を凝視した。 一気に砂煙が巻き上がりリオンとヴェイグを覆い隠す。トーマは慌ててプリムラの傷に障らないように粉塵を弾き飛ばした。 煙る視界の奥から聞こえた声は、壁に反射し段々細くなっていく。 「トーマ。こいつの相手は僕がしておく。その間に決めろ」 「逃がさんッ!」 トーマは歯を軋らせて唸りながら、手持ちのサック二つの口を握りしめた。 中にある切り札、グミの存在を強く確信する。 やがて粉塵は地面で湿り、不規則な運動を停止した。 「……どうしろってんだ」 トーマは事態を整理する。 ヒューマが三匹。女は物理的に死にかけ、小僧はいい塩梅に狼狽えて、最後の男は昨日見た気丈さの欠片もない抜け殻の様。 手持ちの回復手段はヴェイグ達とこの小僧が出し惜しみしていないという条件でプリムラのサックに入ったミラクルグミ1つ。 リオンやプリムラの話に因ればもう一つのパイングミでは精神力しか回復しないらしい。 このタイプのグミはカレギアには無かったが、グミそのものの性能はサレのこともあって疑う点はない。 使えば、プリムラは今直面している死から逃れることが出来る。 状況は厳しいがグミという超回復を前提にすればデッドラインまではまだ余裕がある。 最低此処までを前提にしなければ、まともに考えることも出来ない。 トーマは逡巡している。無論、たった2つしかないグミを惜しむ等という卑しさは ミミー=ブレッドの熱に触れた彼には極々常識的な範囲でしか持ち合わせていなかった。 通常ならば何も気兼ねなく使っただろう。 しかし、プリムラの命を救う事で八方が丸く収まるとはトーマにはどうしても思えない。 もし、もしそれで丸く収まるなら‘プリムラが今こうなっている訳が無いのだ’。 突発的に斬られたプリムラ=ロッソ、突発的に斬ったのは小僧、そして斬られたプリムラと縁のあるグリッド。 (こいつは、何の冗談だ?) 予測外の死角から刺されたのはヴェイグ=リュングベル、狂気に当てられて咄嗟に刺したのはプリムラ=ロッソ、 斬られたヴェイグと同道していたのはハロルド=ベルセリオス。 (昨日の夜の再現か……?) 場所・役者・動機、構成している要素は全て違うがそれ以外はほぼ同じ構造だ。 そしてその2つともにトーマは傍観者という立ち位置にいる。 トーマは首を力強く2往復させた。そんな馬鹿げた話は無い。 唯の偶然に振り回されて、適当に似ているように見える要素だけを凝視して、同じだと思いこもうとしているだけだ。 (本来ヴェイグの治癒はグミを使って行われるはずだった) しかしグリッドはどんな手品を使ったのか分からないが、グミも無しにヴェイグを救って見せた。 此方はリオンというイレギュラーを内包しつつもプリムラをここに引っ提げることに成功した。 そして先ほど洞窟の前で、生き返ったヴェイグを前にしてあの男はプリムラを許した。 完璧だ。完璧すぎる。考え得る最高の形だった筈だ。 最高の形は、状況を全く好転させていない。 最高の道を選んだ先に辿り着いたのは何一つ代わり映えしない元いた場所。 (有り得ねえ……有り得ねえが……昨日の夜と今日の朝、この二つが同じ構造になっているとしたら……) プリムラを助けようと助けまいと状況はもう一周するだけなのではないか? この小僧が昨日のプリムラと対応しているなら、‘プリムラを助けたとしてもこいつを助けられる保証が無い’。 昨日のハロルドのようにグリッドが憤怒し小僧を半殺しにするか? 昨日のプリムラのように逃げだし、小僧を基点として更なる状況の悪化を招くか? 死者の発生と生者の怨嗟が連鎖するこの島では、この手合いの事など別段珍しいことではない。これも良くある偶然の筈だ。 ならばなぜこうまで心が竦み怯えているのか?先ほど失せたテルクェスのせいか? トーマは自分の心中すら計りかねていた。 トーマは渦中の連中を無視したくて、今し方開通した道を見る。 最初に辿り着いた南側の入り口と同じ厭な匂いがした。濁っているのに冷え切ったこの気配は気分を悪くさせるのに十分だった。 地面には、幾つもの岩から山ほどの石と礫に格下げされた石と、 それらを不自然に避けて血塗れの砲が一門とそのおまけが其処にあった。 (俺は、俺はどうしたら良い……教えてくれ……ミミー……) 此処は矢張り良くない場所だ。トーマは苦々しげに唸った。 【トーマ 生存確認】 状態:TP70% 右腕使用不可能 軽い火傷 やや貧血気味 既視感に対する恐怖 プリムラ・ヴェイグ・リオンのサック所持 所持品:イクストリーム マジカルポーチ ハロルドのサック(分解中のレーダーあり) パイングミ ジェットブーツ 実験サンプル(燃える草微量以外詳細不明) 首輪 スティレット ミラクルグミ ミスティブルーム、ロープ数本 ウィングパック(食料が色々入っている) 金のフライパン ハロルドメモ2(現状のレーダー解析結果+α) 首輪 45ACP弾7発マガジン×3 ウグイスブエ(故障) 基本行動方針:ミミーのくれた優しさに従う 第一行動方針:グミを使う?使わない?それとも? 第二行動方針:漆黒を生かす 第三行動方針:キールを探し、ハロルドメモの解読を行う 現在位置:G3洞窟・中央中継点 【プリムラ・ロッソ 生存確認】 状態:意識回復中? 臨死 左下から右上にかけて前面に大規模裂傷 右ふくらはぎに銃創・出血(止血処置済み)切り傷多数(応急処置済み) 所持品:C・ケイジ@I ソーサラーリング ナイトメアブーツ 基本行動方針:??? 第一行動方針:??? 第二行動方針:キールを探し、ハロルドメモの解読を行う 第三行動方針:グリッドとヴェイグに謝る? 現在地:G3洞窟・中央中継点 【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】 状態:HP40% TP50% 他人の死への拒絶 サック未所持 所持品:チンクエディア ミトスの手紙 基本行動方針:今まで犯した罪を償う(特にカイルへ) 第一行動方針:リオンを追い、倒す 第二行動方針:E3に残存していれば、魔杖ケイオスハートを回収する 第三行動方針:キールとのコンビネーションプレイの練習を行う 第四行動方針:もしティトレイと再接触したなら、聖獣の力でティトレイを正気に戻せるか試みる 現在位置:G3洞窟・中央中継点→洞窟南側へ 【グリッド 生存確認】 状態:不明 (プリムラの死(という思いこみ)=漆黒の翼の完全崩壊によるアイデンティティの連鎖崩壊?) 所持品:マジックミスト 占いの本 ハロルドメモ ペルシャブーツ 基本行動方針:??? 第一行動方針:??? 第二行動方針:E3に残存していれば、魔杖ケイオスハートを回収する 第三行動方針:マーダー排除に協力する 現在位置:G3洞窟・中央中継点 【リオン=マグナス 生存確認】 状態:HP70% TP80% 右腕はまだ微妙に違和感がある コスチューム称号「ジューダス」 サック未所持 所持品:アイスコフィン 忍刀桔梗 レンズ片(晶術使用可能) 基本行動方針:ミクトランを倒しゲームを終わらせる 可能なら誰も殺さない 第一行動方針:ヴェイグを引きつける 第二行動方針:キールを探し、ハロルドメモの解読を行う 第三行動方針:協力してくれる者を集める 現在地:G3洞窟・中央中継点→洞窟南側へ 【カイル=デュナミス 生存確認】 状態:HP45% TP75% 悲しみ 静かな反発 過失に対するショック 状況に対する混乱 所持品:鍋の蓋 フォースリング ウィス 忍刀血桜 クラトスの輝石 料理大全 要の紋 蝙蝠の首輪 レアガントレット(左手甲に穴)セレスティマント ロリポップ ミントの帽子 基本行動方針:??? 第一行動方針:??? 現在位置:G3洞窟・中央中継点 【備考】S・Dはカイルから若干離れた位置にある 前 次
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錯綜するダイヤグラム ◆wd6lXpjSKY 剣を掲げし男女の英雄 その刃に乘せるは刹那の希望、永遠の憧れ 懸ける願いは己が夢、主への忠誠、或いは生き様 戦場が学び舎、屋上であれど放つ衝撃は戦火の中と相変わらず。 独裁魔術師は他者を塗り潰し己の色に染め上げる 全ては王の為に、民を臣を極限まで使い潰す 手を結ぶは過去の豪傑武将、その力に疑い無し 互いに胸を明かさず、一つの点が合致しているだけの軟い同盟。 そして潜む暗殺者。 学び舎――アッシュフォード学園に現段階で座するマスターは五名。 夢、目的、帰還……彼、彼女達は戦う理由が存在する。 従うサーヴァントも例外なく主の駒としてその力を振るい、己が証を打ち立てる。 誰もが退かず、協定を結ぼうが仮初であり、終点に至るのは元々一組でしかない。 終点に至るのは一組、ならばその過程において朽ち果てる人形も――存在する。 廻る廻る戦の輪、其処に予定調和など存在せず、決められた筋書きも無ければノルマも無し。 あるのは舞台だけ、役者は揃って台本など読まず、求めるだけ求めるのだ、歓声を、拍手を。 故に何処で誰が堕ちようと、舞台は変わらず、演じられる――。 ◆ ◆ ◆ 双牙のセイバーが屋上で刃を交える中、人吉善吉は教室にて授業を受けている。 戦火散らされる中悠々と授業を受ける彼を笑う者は、居るだろう。 だが彼は気付いていない訳ではなく、ハイリアのセイバーが鳴らした警告を感じている。 その挑発に乗るな、止めるアサシン。この選択が正解かどうかは不明だ。 しかし授業を抜け出さず、全うする姿は生徒の鑑。流石生徒会、と茶化すべきか。 主である人吉の行動を止めたアサシン、垣根帝督。 不確定要素の塊である現状で、直感に任せ行動するのは危険過ぎる。 冬場に夏タイヤでアクセルを極限まで踏み込むなど愚の骨頂、それに値する。 目の前にある危険に自ら乗り込むなど考えられず、場を見極めるならばここは静観を取るべきだ。 幸い人吉は彼の進言を受け入れた。 アサシンのクラスで現界している己に真正面からの接近戦は不利になる可能性が高い。 彼自身負ける気など微塵も思っていなく、正面から戦える力を所有している、が。 腐っても呼び出されるサーヴァントは大なり小なりこの世に名前を刻んだ伝説の存在だ。 用心するに越したことはない。 逆に屋上の挑発に乗った者も存在する、人吉の隣に在籍している生徒だ。 名を夜科アゲハ、彼が動き出したタイミングは挑発のそれと重なっている。 トイレと宣言し席を立ったが、十中八九屋上に行くための建前だろう。 夜科アゲハが何を思い屋上に向かったかは知らないが潰し合ってくれるなら重畳。 手を汚さないで頭数を減らすことが出来れば今後の展開に上方修正を入れる事が出来る。 ああ、違う。 手を汚すことなど別に構わない。 人は死ぬ、英霊でも今はこの世に形を保っているならば再度、死が訪れるだろう。 標的は全員敵だ、思惑は存じぬが参戦しているならば無関係は強調出来ない。 手を汚すことなど別に構わない。力を温存出来る、これが全てだ。 (音が何も聞こえねぇ) 時間は経っているが件の屋上から、学園の上から振動は何一つ伝わってこない。 会話でもしているのだろうか。 一つ、仮説を打ち立てよう。 もし屋上の過剰な魔力反応が挑発ではなく、一種のアピールだとすれば。 人吉善吉は聖杯戦争に参加している、当たり前だ。そのサーヴァントが垣根帝督なのだから。 この当たり前の情報――これを握っている他の参加者は現段階では知らない。 居ない、と断定出来ないのが情けない所だが、少なくても彼らは知らないのだ。 情報収集が目的として、屋上の挑発は関係者以外気付くことはないだろう。 つまり寄ってくるのは野次馬ではなく他の参加者だ。接触を求めるには絶好の機会である。 無論騙し討の線もなくはないが……何にせよ全く反応が感じられない。 誰かが死んだか、手を結んだか。 『なぁ……屋上から何も感じねえな』 『まぁそんなもんだろ、今は大人しくしとけ』 人吉が念話で垣根に話しかけるも一言返すだけ。 実際問題、今此処で別段動く必要も無ければ、策を張り巡らせる必要もまだ無い、だろう。 何が起きたかは帰ってきた夜科アゲハから察すればいい。 帰ってこなければ所詮その程度の存在だった、それだけのこと。 だったのだが。 (――!) 『おい、アサシン! 一気に反応が膨れ上がったぞ!?』 意識を離したその刹那、忘れるなと強調するかのように膨れ上がった魔力。 彼らは知る術が無かった。時のセイバーが奏でた音色は結界となり屋上を包んだ。 これにより外部には一切の音と反応を遮断、人吉達には何も届かない。 それを断ち切ったのがもう一人のセイバーだ。 宝具の名を開放し魔力を放出、彼女の一振りが時のセイバーの結界を断ち切った、それだけのこと。 結界が無くなったことにより充満していた魔力が解放される。 気付くのは他参加者であろうが、戦闘音が響くのも時間の問題だろう。 静観を選択したが気配を遮断し一旦偵察に向かうのも悪くはない、そんな思考が生まれるが。 「先生、夜科が中々戻ってこないので様子を見てきます!」 思考、そんな無駄な過程何て必要ない、そう言わんばかりの勢いで席を立つ人吉。 活発で行動力のある若者……言葉の印象は最高だが馬鹿だ、愚かだ、死地へ向かう志願者と変わらない。 面を喰らい溜息を零す垣根だが一応だ、言っても無駄だと思うが静止を掛ける。 『行ってどうすんだ?』 『この反応の大きさってマジで殺す気じゃねぇか、わざわざ殺す必要もないだろ。 叶えたい願いが在るのは解るけどよ、脱落でいいんだ。 だったら止めるさ、生徒会として、人として……同じ参加者だとしてな!』 扉を開けると人吉は脇目も振らず階段へ直行した。 垣根の反応も伺うこと無く屋上に向かい参加者との接触を図るのだろう。 それは情報交換などと言う名義ではなく、戦闘の停止の呼びかけだった。 『……あの野郎本気でゲームか何かと勘違いしてんのか。 ったくよぉ、馬鹿何だか人誑し何だか……』 走り去る己のマスターに垣根はやれやれと言うように言葉を零した。 垣根帝督には夢が在る。 文字に起こすととても幼稚だが仕方がない、事実だから。 彼はマスターに言った。 『もう一度やり返したい奴が居る』 そのために彼は聖杯に願いを懸けるのだ。 リベンジマッチだ、淡く、消えそうな灯火。 だが信念が強ければ強い程しぶとく永劫に灯る内の炎。 その名は一方通行。 垣根がまだ生を得ていた頃の世界で事実上最強の座に君臨していた学園都市有数の超能力者だ。 その力は反射、万物悉く跳ね返す絶対無敵の超絶超能力者、彼はその力に負けた。 この願いの先に垣根の更なる願い――願いと言う表現が適切かどうかは曖昧だが目的がある。 彼が居た学園都市のトップであるアレイスター、そう呼ばれる人物との直接交渉権だ。 その先にある思惑は本人しか解らない、それはマスターさえも。 だが彼の願いに大きな穴が在る、しかもその穴は落とし穴などではない。 彼が標的としている一方通行はバーサーカーとしてこの聖杯戦争に参加しているのだ。 もしこの世に神が居るならば、少年漫画が好きなのだろう。 『わざわざ願いを叶えなくても因縁の戦いのためにお膳立てをしてるんだから』 「……」 人吉の後を追い廊下に出るも彼の姿は見当たらない。相当な走りだったのだろう。 数歩先の角に視線を配り、彼もまた行動する。 柄でも無いが願いが在る、それもメルヘンチックなリベンジマッチ。 可怪しい事はない。 願いが無い人間など傀儡や死徒と同義だから。 ◆ ◆ ◆ 犬飼伊介は真剣に授業を受ける気は無く机に伏している。 大方テストでも碌に書き込みもせず白紙で提出するような生徒だったのだろう。 机に伏しているだけなのに絵になるような、どうしようもない光景。 彼女もまた別クラスのマスターと同じく屋上の挑発に気が付いている。 あれ程魔力を強調したのだ、力に自信があるのだろう、ならば動く時ではない。 サーヴァントであるキャスターは優秀だ、声に出したくはないが魔術師としては優秀である。 キャスターに正面から戦う力は無いがその宝具である洗脳は強大な力だ。 現にこのクラスに在籍している生徒の七割は彼女達の駒となっている。 その駒に命令を下す。 『屋上を見てこい』 だが返ってきた連絡は『扉が開かない』。 キャスター曰く結界の一種でも使用しているらしい。 つまり他の餌が引っかかったのだろう。 そうなればこの学園には自分も含めて四人の参加者が在籍していることになる。 「居眠りとは感心しないな」 「んー、それはあたしに言ってるのかなぁ♥」 「お前以外に誰が寝ていると言うのだ、たわけ」 屋上挑発した参加者、これで一人。 釣られた参加者が一人と仮定して、二人。 自分を含めて、三人。 そして寝ている伊介に注意を促したのが朽木ルキア、彼女もまた聖杯戦争に参加するマスターだ。 その願いは力を取り戻す、嘗て死神の力を有していたあの頃に戻るため。 力が欲しい、だがそれは他者を殺してまでも叶える願いではない、重々承知している。 故に彼女は殺しを行わず、そのサーヴァントもまた殺しを行わない。 何の因果が働いたかは不明だが神はどうも己の好みを反映している節がある。 「伊介様♥ そう呼べって言ってるだろ」 居眠りを注意されたのが癇に障ったのか。 伊介はお前呼ばわりされたことに釘を刺す、それも黒い笑顔で。 その瞳に込められている感情は威嚇のそれと変わらない。 「……はぁ」 その反応に何を思ったかは不明だが溜息を零す。 何故このような奴と同盟を結んでいるのか、と。 両者はこれでも一応同盟を結んでいる、が。 とても柔く、脆く、崩してくれと言っているような淡い同盟である。 犬飼伊介と朽木ルキアの間で結ばれている同盟。 同盟と言っても名前だけ、利害が一致しているだけの一時的な協定だ。 聖杯に叶えられる願いは一つ、ならば必然的に残る主従は一組であり、当然である。 犬飼伊介とキャスターは朽木ルキアとランサーを捨てる気でいる。 しかも犬飼伊介は隙があれば己のサーヴァントを変えることも視野に入れているのだ。 キャスターの統率力は魅力的ではあるが戦闘能力は皆無だ。 珠正面からの戦闘に関しては英霊などと口が裂けても言えないだろう。 故に大局を長い目で見据えるならば鞘替えも充分選択の範囲に陥る。 彼女が知っているサーヴァントは現段階で朽木ルキアのランサーのみ。 戦闘面ではキャスターとは比べ物にならない程上を行くだろう。 そして何より犬飼伊介は己のサーヴァントである食蜂操祈を気に入っていない。 『あ、ちょっと展開に異変ありだゾ☆」 犬飼伊介が朽木ルキアに注意され機嫌を損ねていた時、風が吹いたように取り巻く空気が変貌する。 先ほどから反応が感じられていなかった屋上から突然膨大な魔力の反応が有り。 結界が崩壊したと見て間違いないが、さて、どう動く。 『生徒を送りなさい♥』 『解ってるわよそんな事』 軽い念話で再び生徒を屋上に向かわせる、偵察の意だ。 「おい、今度は此方でも動かせてもらう」 「まぁ勝手にどうぞ♥」 朽木ルキアもまた己のサーヴァントを動かす。 『おうよ! んじゃちょいと鐘が鳴り響いたら行くとしますか』 時計をを見ると後五分程度で授業が終了する。 余計に騒いでは他の生徒に迷惑と判断しランサーは一拍間をおいて行動を開始すると宣言。 仮初めの世界に通う創られた生徒達だが彼らにも生活のサイクルは存在する。 ならば、無為に巻き込む必要はない。 ◆ ◆ ◆ 「おい! さっきから此処で――っていねぇじゃん……」 屋上に人吉が辿り着いた時、其処に人の姿は無し。 遅かったのか、決して遅くはないが結果論を述べるとしよう。 先に動いた夜科アゲハは他の参加者と接触した。 出遅れた人吉善吉は誰とも接触をしていない。 一見前者の方が正解に見えるが後者の方が利口である。 人吉は知らないが夜科アゲハは屋上で戦闘を行い少ないながらも魔力を消費した。 その代りに得たのが他の参加者の情報、そしてどう転ぶか不明だが再度交渉の提案をしている。 さぁ、神が居るならばどう大局を動かすか。 最も今の人吉にそんな情報を知る術は存在しないのだが。 屋上を見渡すと損害は特に見当たらない。 強いて挙げるならば床に戦痕とフェンスが少々歪んでいるぐらいか。 何にせよ、無駄足となってしまった。 「着地成功、とっとと逃げるぞ」 「わーってるよ」 屋上から飛び降りた夜科アゲハとセイバーはそのまま茂みの奥に移動を開始する。 唯でさえ目立ってしまった彼ら、校庭に留まっていれば尚更注目を集めるだろう。 「で、これからどうすんだアゲハ?」 己のマスターに提案するセイバー。 今後の動向はどう考えているか。 余り使いたくはないが彼女は彼の従者であり、決定権は彼にある。 どんな命令でも素直に二つ返事で許可するつもりはないがマスターの命令は基本守るつもりだ。 故に今後の予定について聞く必要があった。 「一応体育館裏に来いって言ったからな……まだ昼前だけど先に行こうと思ってる」 「本当に来るのかあの女ぁ? どうもあたしに似てる声で耳に付くっつーか。 まぁいいけどよ、昼前……十二時丁度に昼飯って訳でもないよな、ならそれなりに待つことになる。 お前も魔力消費したみたいだしあたしも方太刀バサミ使っちまって魔力を消費したしな……英霊ってのは何でこうも制限が」 生前ならば武器の一つや二つを振るう度に力を浪費することなど無かった。 英霊の枠は魔力となりてその力の強さ引き換えに枷を嵌めていた。 茂みに身を隠すとそのまま人目に付かないように移動を開始する。 幸い外で授業を行っていなく体育館裏までは特に生徒と出会うこと無く辿り着けそうだ。 「これであの女が仲間になるなら、まぁ楽にはなるな」 「あぁ、仲間が増えることに文句はない……けどよ」 歯切れ悪く返答するアゲハ、それを読み取るセイバー。 聖杯戦争に参加している者には少なからず願いが存在する、天戯弥勒も言っていた。 「最後に残るのは一人、だろ? んなもん気しにしてもしゃーねぇぞ。 お前が天戯弥勒をぶっ飛ばしさえすれば願いも関係ないだろ……大体何が聖杯だよ。 あたし達サーヴァントが居るってことは聖杯はあるんだろうよ、でも姿も見えなきゃ形も解らねぇと来たもんだ」 天戯弥勒は願いを叶えてやる、だから殺し合え。 簡単にまとめると参加者にこう言い放った、変えようのない事実であり既実。 だが聖杯とは言葉ばかりだ。現にアゲハは聖杯の存在を知らないで巻き込まれている。 総ての参加者が聖杯を知っている訳ではない、天戯弥勒の言葉でしか知らないのだ。 「俺も願いを叶える何でもマシーンがあるとは思わない、けどよ。 それに縋りたい奴もいる……しゃーねぇんだわ、よく出来てるシステムだぜ」 人間は甘く、脆く、愚かで。 駄目と解っていても動いてしまう。 結果が欲しい、理由が欲しい、反応が欲しい、誰かに見られたい、独りにしないで。 本来ならば他者を蹴落とし己の願いを叶えるなど外道畜生の所業である。 それすらも解らず、手を伸ばしても掴むのは光ではなく藁。道を踏み外し続ける。 気付いた時に周りを見渡せば己に負の感情しか取り巻いていないだろう。 「つまり、だ。天戯弥勒の言葉に乗せられちまっているんだ、ムカつくな。 聖なる盃なんだろ? 大層な響きじゃねぇか……くだらねえ。 あたしが天戯弥勒ならテメェで聖杯の願いとやらを使うね、他人に殺させて選ばすなんて馬鹿らしい」 そもそも何故争わなくてはいけないのか、流れに身を任せているのではないか。 天戯弥勒の言葉に縋り在るかどうかも解らない聖杯のために……不毛だ。 会話をしている内に特段人との遭遇もなく体育館裏に辿り着いた彼ら。 授業中の影響もあり人の気配は一切感じられず今此処に居るのは彼らだけだろう。 適当に壁を背にし腰を落とす、ここいらで小休止と行こうではないか。 「それでよぉ、あっちのセイバーだけど」 休憩している間にセイバーが言葉を漏らす、先の戦いで合間見た敵の話だ。 「あたしにはどうも心当たりが無いんだ、あんなオカリナ? 吹いたりしてる奴ぁ」 剣を司る姿はセイバー、それは確定だろう。 盾を使う姿は由緒正しき騎士を連想させる。 青い瞳に特徴的な耳、服装からして異国の出身と断定。 更にはオカリナを奏で挑発や結界を張れる能力を持つ……これだけの情報があれば特定に到れるかもしれない。 「あれだけ特徴があんなら嫌でも耳にすると思うけど生憎あたしの耳に、周りの奴らもそんな噂は聞いてない、けどよ」 言葉を次々と紡いでいくセイバーの話を黙って聞くアゲハ。 彼も対峙したセイバーの所在を知らないのだ、決して勉学をサボった訳ではない。 天戯弥勒の言葉を借りるならば『世界が複数存在』するらしい、自分が居ない世界の歴史など知る由もない。 アゲハ自身未来を旅していたこともあり、平行世界論に違和感も意義もない。 「それでも何となく、何となくなんだけど記憶に引っかかるって言うか……アレだ。 英霊としての記憶っつーかなんつーかよ、知らないけど知っているような気がすんだ」 「お前何言ってんだ?」 「知らん」 セイバーの言い分は知っているが知らない、知らないが知っている。 子供が悪巧みを隠蔽するかのような弱い言葉の羅列だ。 真意を問いただせば知らんと一蹴、彼女は何を言いたいのか。 「サーヴァントとしての知識って奴だよ、自前じゃない。 もう少し情報が手に入れば何となく手が届きそうって話だよ。 放課後もし時間とか持て余すならよ、一度本なりパソコンなりで調べてみようぜ」 セイバーとセイバーの世界は異なるため、当然ながら生前の記憶に他者の存在は無い。 だが英霊となり現界したことで数多の世界が爻わった、そう解釈するならば。 この空間は線と線を繋ぐ点であり、総ての知識が集約されていても可怪しくはない。 「なるほど。その提案に乗った、何も無い何てねぇと思うがそうしようぜ」 相手の情報を入手しそれを基に対策を立てる、戦闘で有用な手段だ。 悔しいが夜科アゲハの力ではサーヴァントを相手に立ち回るのは辛いものがある。 セイバーが対魔力を有していた線もあるが、それでも辛い戦いになるだろう。 ならば己のサーヴァントを優位に進めるためにも情報収集を行う、悪くない。 まずは此処で紅月カレンを待つ。話はそれからだ。 ◆ ◆ ◆ 「じゃあその夜科アゲハって男が体育館裏に居るのね♥」 廊下ではキャスターの宝具で支配下に置かれている生徒から報告を受けている犬飼伊介の姿があった。 話では黒い髪の男が女のサーヴァントと共に屋上で交戦していた、獲物は剣だったそうだ。 この情報で一人、剣の英雄とその主を特定出来たのは結果上々だろう。 加えて屋上にて挑発を行ったサーヴァントもセイバーであると判明した。 生徒の名前は紅月カレン、生徒会に所属している生徒らしい。 この時点で二つの主従の情報を手に入れたのだ。 本人達は特に行動もしていない、キャスターの統率力が結果を招き込んだのだ。 「じゃあ体育館裏に直行お願ーい♥」 「お前は行かないのか? その命令に従うとでも?」 体育館裏に夜科アゲハが滞在している情報を元に犬飼伊介は朽木ルキアに命令を下す。 同盟を結んでいるならば偏りは避けるのが定石だ、だが。 「キャスターが正面からセイバーに敵うわけないじゃん♥」 「その言い方はムカつく☆ でも此処はそちらが向かうべきじゃない?」 「簡単に言ってくれるな、お前らは……」 キャスターの力とランサーの力。 優劣を戦闘力として付けるならば後者が圧倒的である。 セイバー相手ならばキャスター魔術師よりも槍騎兵の方が絵にもなる。 「伊介様って言ってんでしょ? それにランサーがどれ位強いか知りたいし♥」 「おうおう、言ってくれるじゃあないか」 体育館裏に別の参加者が居る、この事を知れたのはキャスターの力だ。 しかしそれを総て押し付けるのは如何なものか、朽木ルキアは思う。 任せっきりではなく一緒に行くのが筋では無いだろうか。 「行くのに文句は無い、けどよ。 背中を狙うつもりってんなら先に釘刺しておくぜ?」 「こわーい☆」 会話をするだけで疲れる、朽木ルキアの率直な感想だ。 犬飼伊介とキャスターの言動は一々何かと癇に障る。 まるで無理矢理素体に色を塗り潰したかのような喋り方はどうも気に入らないらしい。 戦地に赴くことに依存は無いため、ランサーと共に体育館裏へ向かう。 ランサーはこの時キャスター達に釘を刺した。 他者を操る宝具を用いているのだ、何時奇襲されるか解った物ではない。 「小手先調べの偵察程度だと思え。 お前達も何か新しい情報を掴んだら何か連絡してくれ……余り無闇に人を使い潰すなよ」 「……」 「……」 ルキアの忠告に揃って口を動かさないキャスター陣営。 子供のような態度に溜息を零すルキアだったが時間の無駄だと思い追求はしない。 そのままランサーと共に体育館裏に向かうため廊下を後にした。 ランサー達の背中を見つめる犬飼伊介とキャスター。 ランサーに釘を刺された『背中を狙うな』。 ルキアに忠告された『駒を使い潰すな』。 どちらもキャスター陣営の武器であり魅力である決して表向きではない能力。 戦場にて火花を散らすだけが戦ではない、彼女達には彼女達の戦い方があるのだ。 「なにあの女ぁ、ホントムカつくわね」 「まぁー別にいいんじゃないー? その通りだし♥」 故に忠告を守る予定は存在しない。 同盟として使えないようならば隙を見て背中を狙う。 狙えなくてもマスターを操りこの手に収めれば詰み同然である。 駒も同様だ。 使えるもの総てを使い、潰し、己にとって優位な戦局を創り出し、動かす。 此方にも願いはあるのだ。 力が欲しい、戦いたい。 そんなくだらない絵空事に付き合う必要など無いのだ。 「それで、もう一人の参加者については?」 「はい、キャスター様」 此処からはランサー達は知らない時間となる。 先に報告を行った生徒に再度情報の開示を求め始める。 何もランサー達が居る場で総てを引き出す必要はない、無意味に与える必要が無いのだ。 「紅月カレン、同じく夜科アゲハ達と共に屋上から飛び降りてきた生徒です。 髪は紅、生徒会に所属しているようですが……病弱な生徒と聞いておりましたが活発に見えました。 そして彼女のサーヴァントは緑の騎士、セイバーです」 「ふーん。どいつもこいつもキャラ創ってるのね☆ これで割れた情報はセイバーが二人……二人、ね」 本来ならば聖杯戦争には七つのクラスに座を用意されたサーヴァントを使役する。 その座は各クラス一つであり複数存在することなど例外中の例外だ。 元々天戯弥勒の存在や力、思惑も未知なため総てが未知であり既視など存在しないのかもしれないが。 「じゃあ引き続きお願いね☆」 そして偵察任務を再度言い渡し―― 「ったく同窓会じゃねぇんだぞ、おい」 無数の羽が吹き荒れると生徒の背中は突き刺された羽で覆われこの世から生を失った。 状況を理解出来ていないが察知した伊介は死んだ生徒の首を掴み己の前方に引き込む。 攻撃してきた男はサーヴァントだ、もう一度同じ攻撃を仕掛けられては対処のしようがない。 横に広さが確保されていない廊下で直線上の攻撃は回避する機会も限られてしまう。 故に取る行動は盾の確保だ。 「突然大胆過ぎないかしら? お兄さん♥」 「よく言うぜ、ずっとコソコソ嗅ぎ廻っていたじゃねぇか。 どうせ屋上の奴らの情報でも握ってんだろ、寄越せ」 伊介は言動こそ普段と変わらないが言葉に篭もる感情は違う。 暗殺者としての威厳と黒い感情を、未知なる敵と対峙している不安な感情を。 情報を寄越せと言われても簡単に渡す訳には行かない。 それは此方が優勢であったり信念や正義に駆られている時の建前だ。 明け渡したことによって安全が確保されるならばその選択も悪くない。 何方にせよサーヴァントにはサーヴァントで対向するのが筋だろう。 戦力は無いにしても交渉は出来る、そう思いキャスターに視線を移すが――。 「い、居ない……はぁ!?」 其処にキャスターの姿は見当たらない。 先程まで隣に居た筈、しかし其処には無の空間があるだけ。 霊体化でもして遠くに移動したのか、だどしたら何故だ。 思考が回らない中、目の前の男は不敵に笑っている。 最初は我慢していたようだが堪え切れなくなり周囲に笑いを零す。 「テメェのマスターがピンチって奴だぞ? なのに黙り決め込むか。 悪いとは言わねーよ、けど身の振り方を考えたらどうだ? 何時迄も駒が在るとは限らないぜ」 彼の言っていることは総て正しい。 主の危険に己の身を案じて逃走するなど従者失格である。 その振る舞いもいずれは誰一人として信用しなく、虚無の存在になるだろう。 此処で恐ろしいのは目の前のサーヴァントの洞察、観察力だ。 偵察を行わせた生徒を傀儡だと睨み、追尾して此処まで来たのだろう。 一瞬で見抜いたか、何か力を作用させたかは知らぬがキャスターの絡繰を見抜いている。 目の前の男はホストのようなスーツを纏い、その見た目から年齢は学生程度に感じる。 先の攻撃は羽、これが彼の能力、或いは宝具と仮定する。しかしこれだけではクラスの断定まで辿り着かない。 「他人を操るのは充分強力な部類だと思うぜ。でもよ。 俺には通じないな、簡単な数字の優劣でもそうだろ? 俺に常識が通用しないってのは知っているよな?」 対魔力のスキルでキャスターの宝具は封じれるようだ、これは前もって聞いてある。 その他にも特殊なスキルで阻まれる可能性も在るらしく、特に三騎士相手には武が悪過ぎる話だ。 故にランサーと同盟を結べたのは幸先良いスタートであった。 ランサーに連絡を行うにも携帯のような連絡手段は使えない、単純に知らないのだ。 交換でもしとけば良かった、後悔しても遅い。キャスターが線を繋ぐ点となっていたから。 そのキャスターが居なくては連絡も取れない、ならば何とかするしか無いのだが……無理な話だ。 そもそも何故キャスターは逃げたのか。 仮に此処でマスターである伊介が死ねば彼女も消滅する。 立ち向かうのが筋であり定石ではある。しかし逃走。 立ち向かったとしても相手は此方の力を見抜いているため状況は最悪だ。 願力で覆せるような状況ではなく、早くも絶体絶命と言った所だ。 「出てこいよ、第五位。 出て来ないならここでお前のマスターも、お前自身も脱落だぜ……っと」 言葉を紡いだ男の背中には不釣り合いな翼が誕生する。 その白き輝きを放つ翼、そこから放たれる羽で駒を殺害したのだろう。 突然の変異に驚くがそれ以外にも驚くべきことが紡がれていた。 「――キャスターの知り合い?」 「知り合い……ねぇ、簡単に言えば同じ世界出身ってとこか。 ついでに同じ地域に滞在していたって言ってもいいぜ。何で無数に枝分かれる英霊から知り合いを引くんだか」 やれやれと謂わんばかりに愚痴を零す男。 キャスターの知り合い、それならば能力を見抜いたことも納得出来る。 そして言葉から察するにキャスターよりも上を行く存在なのだろう。 『簡単な数字の優劣』つまり彼女は彼よりも下、故に逃走を選択したのか。 理解は出来るが認識したくない事実だ。 使えない、鞘替えをしたい、ランサーにでも乗り換えれば良かった。 「それで、伊介を此処で殺すの? あたしだって死にたくないし死ぬつもりもないけど」 「別に殺す必要は無い……まぁ関係者なら即効殺してもいいけどよ。 持ってんだろ、テレカ。そいつ使って帰るなら文句は言わねーよ、でも、しねぇだろ」 顔や身体全身に汗が走り出して行くのが気持ち悪いほど解る。 決してゴールなど甘い終着点は無く此処で命が散るかもしれないという不安が永遠のマラソンを継続させる。 男の提案であるテレカの使用。 サーヴァント消失後六時間以内ならばテレホンカードを使用し元の世界へ帰還するルールがある。 別の世界、この単語が有る時点で状況は超弩級のメルヘンチックだ。 「しなーい♥ 願いは此方にもあるの」 「そうか、まぁそうだろうな。 俺のマスターも願いは在る。柄じゃねぇけど力になってやってもいい。 生徒会何ぜ無駄な肩書背負って恋に生きるってのは学生らしい、眩しく見えちまう……ってどうでもいいな。 隣に座ってた奴もマスター何て随分と出来上がってる話なんだわ、これがよ。それに第五位まで来やがった。 もしかしたらアイツも居るかもしれない……長話悪いな、で、決まったか?」 一息付くと垣根は伊介に決断の有無を問い正す。 死ぬか、キャスターを放棄しテレカを使う実験材料となるか。 暗部の彼にしてみれば生存の選択を与えているだけ充分マシな問になっている。 何も言われず殺されていた可能性も在るためこれは好機、だが。 「神様って居るかもしれない……まさか、ね♥」 黒い笑みを零す伊介、それは死を悟った哀れな感情ではない。 彼女の視線の先、つまり垣根帝督の背後になる。 彼女はどうやら愛されているらしい、まだ生き延びる事が出来そうだ。 つまり――。 「新手か――ッ!」 その視線に感づいたのか背後に振り向き確認を行う垣根帝督。 其処には叩き斬らんとばかり剣を振るう緑のサーヴァントの姿あり。 その一撃を翼で己を囲むように重ね防ぐ、衝撃を殺すと翼を広げ風圧で弾き飛ばす。 相手のサーヴァントは見た目とは反して重量に自信があるのか、床を後退るように後退した。 そのサーヴァント、時の勇者、ハイラルの英雄。その名をリンク。 屋上で挑発を行った本人であり、此度の聖杯にセイバーとして招かれた紅月カレンの従者である。 騒ぎを聞きやって来た……キャスターが情報交換のために人払いをしている。 元々廊下の奥側、移動教室の中でも特に使われないような場所を選んだため騒ぎになることはない。 戦闘音と言っても垣根帝督はアサシン故か音を殺していたため漏れはない。 結果だけ述べるとキャスターが駒に命令し生徒会である紅月カレンに伝えたのだ。 『とある場所で暴れている不審な男が居る』と。 「助ける義理は無いよ、でも関係ない生徒を殺す奴の方が敵だ」 伊介の傍に駆け寄った紅月カレンはそう告げる。 何故伊介がマスターだと解ったのか、単純にサーヴァントに襲われているからだ。 彼女のサーヴァントが見えないのは恐らくやられてしまった、そう認識している。 「じゃあ……お願いねッ!」 「――な」 そう聞くと近くに堕ちていた垣根の羽を掴む、そして走りだす。 カレンの横を通り過ぎる時にはそのまま脇腹を切り裂くように羽を腕ごと伸ばす。 不意打ち奇襲突然動揺、カレンは対処する暇もなく脇腹を抉られた。 「っあぁ……っあぁ!」 即座に抉られた傷口を腕で抑え始める。 深くはない、致命傷にもならないが傷に変わりないし、血が出ているのも確かだ。 死にはしない傷だが出血量は傷口に反比例し多く、まるで一番血が出る部分を狙われたかのように。 「じゃあね♥ 紅月カレン、次会ったら謝ってあげる♥」 窓ガラスを蹴破るとそのまま伊介は外に飛び出し逃走を図る。 高さは二階、死ぬ事も無ければ着地に失敗するような高さでもない。 「――ッ!」 己のマスターに傷を負わせた、これは従者として失格だ。 言葉には出さないが表情が物語っており、リンクの顔は明るくはない。 黙って逃がす訳もなく逃げる伊介の足を狙い矢を放つ。 一直線に吸い込まれるように飛んで行く矢だが当たらない。 手元が狂った訳ではない、どうやら犬飼伊介という生徒は何かしらの力を持っているようだ。 手に握りしめていた垣根の羽――宝具である未現物質の残骸で矢を相殺させていた。 そのまま消えるように逃亡。 結果として傷を負ったのが紅月カレンだけだ。馬鹿らしい。 加勢に入ったお人好しは裏を欠かれ逃げるための駒にされてしまった。 犬飼伊介、どうも頭が回る小悪党らしい。 ◆ ◆ ◆ 「これはこれはお二人さんお揃いでぇ、邪魔したかい?」 時計の針はまだ昼じゃない、けどやって来た奴は紅月じゃなくてデッケー男だった。 俺と纏が余裕を持って体育館裏で休憩していた時、コイツが現れた。 「紅月の……仲間か何かか?」 「紅月? 聞いた事無い名前だけど待ち人かい兄ちゃん」 俺の投げた質問にこの男はチャラチャラした回答を寄越しやがった。 そんな訳ないだろ、まぁ体育館裏って状況を考えれば解らなくもないけど。 「お前……マジか?」 何でお前が引いてんだよ纏。俺と紅月って屋上で戦ってただろ。 そっから始まる恋模様何て火薬と硝煙の匂いしかしねぇ。それに俺には雨……ったく。 「そう思うなら一人で待ってると思うけど? そんな事言いに来たんじゃないんだろ、馬鹿長い刀担いで現れやがって」 自分の身長より長い刀、こんなの担いでる奴ってのは聖杯戦争中なら確定に決まってんだろ。 紅月のセイバーもそうだが、纏を含めてこの学園にセイバーが三体も揃ってんのかよ……ん? 「なぁ、聞きたいんだけどよ、サーヴァントってのは同じクラスは何体まで大丈夫なんだ?」 出会うサーヴァントが全員セイバーってのは出来過ぎな話だ。 これじゃあ全員セイバーかも、そんな事も思っちまう。 どっちでもいいから早く答えてくれ、同じ英霊なら聖杯戦争の仕組みぐらい解るんだろ? 「お前……各クラス一人に決まってんだろ」 「其処のお嬢ちゃんの言う通りだ……ん?」 だろ、そりゃあ疑問も生まれるよな。 俺達が対峙した紅月のサーヴァントはセイバーだった。そして纏も。 この時点でセイバーが二組、複数居ることになるんだ。 仕組みが違うなら天戯弥勒が手を加えたんだろうか、アイツは一体何を考えていやがる。 「なるほど、なるほどね! つまりお嬢ちゃんはセイバーで他にもセイバーが居たんだな?」 「そう言うこった、あんたも戦いに来たんだろ? 今あたしはちょっと身体を動かしたいんだ」 纏は武器であるハサミの片割れを取り出して構え始めやがった。 俺はまだ何も言ってねぇ、戦う事に異存はないけど。 その構えを見て男も馬鹿長い刀を抜いた。 「じゃあいっちょ始めますか、この聖杯戦争の初陣、罷り通らせてもらう! この前だ――ってはいはい」 豪快に刀を振り回して、まるで戦が始まるように気合を入れていたのに止まっちまった。 何があった、何てどうでもいいや。纏もやる気だ。 俺だって――まずはこいつのマスターを探すのが先だな。 こいつもセイバーなら悔しいが俺のPSIは通じないと考えたほうがいい、今は出来る事をやるだけだ。 「悪い悪い! 名乗りそうにしてたら主に怒られちまった! んじゃあ気を取り直して――ッ!」 「先手必勝って奴だよォ!!」 男が構えを取っている最中に纏はもう走りだしていた。 そのまま片手豪快にハサミを縦に一振り、けど防がれっちまってんな。 まぁ何にせよ戦いが始まってんなら俺も動く。 「――暴王の流星」 ◆ ◆ ◆ 「おっと! お嬢ちゃん女の子なのに随分力があるんだねぇ!」 纏流子の不意打ちを難なく刀で防ぐ前田慶次。 彼とて歴史に名を刻んだ戦国武将だ、不意の一つや二つ、突かれた所で動揺などしない。 縦の一撃を横に防ぎ均衡状態、しかし両者は口を動かす余裕は在る。 「お嬢ちゃんって何だよ、あたしは纏だそう呼びな」 「名前を自分から明かすたぁいいねッ! なら俺も言わなきゃ筋が通らないってもんよ!」 英霊は伝説の存在だ。 故に英雄の霊、過去に名を馳せた歴史の怪物である。 その知名度故に彼らには伝記が残されていることは多々ある。 つまり名前を明かすとそれを元に経歴や武具などを調べ上げられる可能性があるのだ。 幾ら伝説の存在と云えど対策を建てられては分が悪い話だろう。 『馬鹿者が! 言ったばかりであろう、名を明かすなと』 『悪いね、女が名乗ってんだ、男が気にして名乗らない何て……なぁ!』 念話を行いマスターに確認を求める、否。無くても行う。 このまま黙っていれば男が廃る、黒き流星を紙一重で回避し口を開く。 この男、唯の阿呆と思う事なかれ。 「改めて名乗らせて貰うぜ――前田慶次が、いざ!」 絢麗豪壮 天下無敵の風来坊 「前田慶次――ってそらァ!?」 恋に生きし 色男 「あの戦国武将――!?」 「罷り通る!!」 天高らかに名乗りを挙げると豪快に刀を振り払い獲物毎纏を吹き飛ばす。 動きを止めることはなく追撃を行わんばかりと大地を蹴りあげ距離を詰める。 今度は此方の番だ、喰らいやがれ。斜めに一閃、振り下ろす。 振り下ろされた一撃は獲物の長さ、戦国武将の腕力も相まって絶大な衝撃となる。 だが纏もこの一撃に簡単に屈することはなく、衝撃を防いでいた。 セイバーのクラスとランサーのクラス、何方もその資質、素質、能力に偽りや虚偽なし。 「戦国武将様と戦い合う【やり合う】たぁ思ってもいなかったぜぇ、おいッ!」 此方もお返しと謂わんばかりハサミを斜め上方に振り抜き均衡状態を崩す。 前田慶次はそのまま後方に飛び込み大きく距離を取っている、逃すか。 そのまま追撃を叩き込もうと距離を詰める纏、レンジまでまだ距離は在る。 「馬鹿、退け纏ィ!」 遠くで叫ぶマスター、夜科アゲハの声が聞こえる。 退く理由も解らなければ馬鹿と呼ばれる筋合いもない、このまま押し切るだけだが――。 「名乗りの時に言えば良かったけど……俺はセイバーじゃなくて――」 この時纏流子の時が止まる、刹那の一時が永遠に感じる程。 戦国武将の獲物は己よりも長い刀、その筈だった。 だが今目の前にいる男が手にしている武器は刀ではなく、朱槍。 「此度の聖杯戦争ではランサーとして現界してんだ」 纒流子は前田慶次をセイバーだと思い込んでいた。 故に武器は刀、自分とそれ程変わらない射程範囲と認識していた。 その獲物の長さが自分よりも勝るならばその分気にすればいい、そう思っていた。 だが槍とは思っていない、踏み込んだ距離はまだ想定の射程範囲内ではなく、猶予があった。 つまり、咄嗟に対応する術も、心構えも持ち併せておらず、豪快なる一撃の突きを不意で喰らう形になる。 「んなろおおおおおおお」 片太刀バサミを強引に引き寄せると紙一重で槍の一撃に重ねる。 直撃こそ防ぐが衝撃を総て殺すことは出来ず、体勢も取れぬまま壁に激突する。 「さぁて、あまり目立つ訳にもいかないって話は兄ちゃんも解ってるな? 此処は一つ惜しいがここらでお開きってことで」 夜科アゲハとしても、朽木ルキアとしても、序に犬飼伊介にしても学園で目立つことを誑しとしていない。 これだけマスターが潜んでいたのだ、洗えばまだ何人か潜んでいても可怪しい話しではない。 元々前田慶次は小手先調べとして赴いている。 夜科アゲハも紅月カレンが来た場合は協力体制の提案をしようと考えていた。 戦闘の停止については両者一致している。 「その提案はいいけどよ、まだ……あいつは終わっちゃいねぇよ」 夜科アゲハが告げると前田慶次は首を傾げながら彼の視線先へ。 其処は纏を吹き飛ばした場所、砂塵が舞っている戦棍地。 だが彼の顔に笑みが浮かぶ、己にとって好ましくない展開なのに。 「やっと会えたな――鮮血!」 砂塵吹き荒れ霞む中 影がゆらりと聳え立つ その姿 唯の女子高生と思う事なかれ 世界を救った英雄也 散った友を身に纏い 流れるままに虎をも斬る 「あぁ……久しぶりだな流子」 喋るセーラー服を身に纏う女子高生、この姿こそ纒流子の真の姿。 「懐かしむのは後……違うか、流子?」 「ったくよぉ……その通りだ鮮血、んじゃ、いっちょ行きますか!」 赤く染まる手の甲に、伸びる糸を引き足りて、見よ、これが神衣。 「おいおいおいおいおい、随分と大胆不敵な格好と来たもんだ」 砂塵が晴れると其処に纒流子が立っていた。 壁に激突したダメージなど蓄積されておらず、その姿は健全だった。 「神衣――鮮血!!」 その身体を半ば半裸に開けさせ、纒流子真の姿となってこの聖杯に望む。 ◆ ◆ ◆ 屋上に無駄足を運んだ人吉は仕方がなく教室に戻っていた。 保健室に顔を出したが夜科アゲハの姿は見当たらなく、総てが空回りしていた。 後手に回った事が失敗だったのか、成果や結果が付いて来ない。 アサシンに念話で語りかけるも、返答はなし。取り込んでいるのだろうか。 仮に取り込んでいるならば、それは聖杯に関係している事であり、自分は此処にいていいのか。 考えても仕方が無いのだが、どうも置き去りにされているような気がしていた。 現に彼は学園を取り巻く騒動に関係している筈だが今一つ線と線が交わっていない。 平穏に過ごせれば越したことはない。しかし聖杯に辿り着くことは難しいだろう。 そんな彼にも転機が訪れる。 「人吉さん……生徒会所属の貴方にお願いがあります」 自分に訪れた生徒はどうやら頼みがあるようだ。 人吉に彼女がどんな生徒かは記憶はない、しかし頼みを断る程駄目な男でもない。 「俺に出来ることなら、で、なんだ?」 生徒会に頼む事、学園の設備についてだろうか。 器物破損は多い、廊下で騒いでいる生徒の影響で校内は見た目よりも傷ついている事が多いのだ。 流石に箱庭学園のような摩訶不思議な願いは来ないと思っているが。 「二階の廊下で暴れている不審な男が居るんです!」 女生徒が告げた一言は彼の脳を一時停止させる。 先程までは問題なく動いていた機器が急に止まり始めるように彼の思考も止まる。 一拍間を置いて言葉を紡ぎ出す。 「そ、それは先生に言ったほうが」 正論。 「でもその男は人吉さんの知り合いだって……アサシンがどうのこうの」 心臓が飛び出そうになる。 女生徒が言うにはアサシンと名乗り人吉と関係が在る、と言っていた男が彼を呼んでいるらしい。 しかも暴れている、そんなキャラでは無いと思っていたが何が正しいのかも判断できない。 女生徒に場所を聞くと彼は走りだす、授業には遅れるが此方が優先だろう。 めだかちゃんだってそうする、ならこれが俺達【正ト解】って奴だ、そう思っている。 角を曲がり階段を曲がろうとすると一人の女生徒が見える。 廊下を走るのは規律違反、減速し歩き始める人吉。 そのまま女生徒をスルーし再度走ろうとするも止められる。 「ねぇもしかしてお兄さんが人吉善吉?」 その女生徒は見た目同年代、しかし胸は比例せず豊かな印象を受ける。 白い手袋のような物を履いており、若干上目遣いで語りかけていた。 「そうだけど……?」 名前を聞かれ偽りではないので返答する。 急いでいるため早く要件を言ってもらいたい所だが女生徒は別の言葉を喋り出す。 「やっぱり☆ 噂通り鍛えた身体だね」 言いながら人吉の右腕を抱き抱えるように己に惹き寄せる。 抵抗しようとする人吉だが腕が胸に当たり言葉が出そうで喉元に詰まっている。 美少女に身体を触られるのは悪くない、だがめだかちゃんの顔が浮かび罪悪感に襲われる。 引き離そうとすると、耳を疑う一言が聞こえた。 「やっぱ令呪もあるね、これがあの第二位垣根帝督への絶体命令権かぁ☆」 何で垣根帝督の事を知っている。 何故令呪の事を知っている。 そもそもお前は誰だ。 何で居る。 謎だ。 何者なんだ。 何が狙いなんだ。 全く見えて来ない。 お前は何をしようとしているんだ。 「じゃあその力、使わせてもらうね。そうでもしないと流石に犬飼さんに悪いかも☆」 ◆ ◆ ◆ 犬飼伊介を取り逃した垣根帝督と紅月カレンは屋上に移動していた。 廊下では生徒の死体にガラス破損、あの場に留まっていては何もかもが裏目に出る。 情報交換と行きたいところだが紅月カレンは生徒の命を奪った垣根帝督を許すつもりはない。 「キャスター……食蜂操祈は他人の心を操る、質の悪い傀儡師みたいなモンだ」 「だから悪いのは殺した自分ではなくて操っていたキャスターってこと? そんな子供の言い訳が通ると思ってるんなら英霊も馬鹿ばっかって話だね」 「言うじゃねぇか……ったく、此方としてはもうどうでもいいんだ。 あの女狐化狸共を取り逃した、それだけだ。まさかお前は死者が誰も出ない、なんてメルヘンなファンタジー思い描いてないよな」 聖杯戦争には願いを懸けている者が招かれている。 そのために人殺しとならなければ敵う願いなど無い、故に死者は避けられない。 解ってはいるのだ、誰も死なない戦争何て存在しない、だが目の前の壁として聳え立つと。 「……思ってはいない」 「思ったよりも利口な奴だ、話が早くて助かるわ。 つまり、だ。食蜂操祈には近づくな。あいつに操られちゃあ一瞬で詰みだ。 俺は幸い能力――宝具で何とかなる、お前のサーヴァントもスキルでどうにかなる筈だ。 けど、お前自身はどうしようない。操られたら終わりだ。だから先に片付ける必要がある」 垣根帝督は学園都市第五位の力を甘く見ていない。 単純な戦闘能力なら第五位は第七位にも劣る、それ程に弱い。 だが駒となる人間を手に入れた組織力と統率力。 令呪のシステムがある以上マスターを狙われては一溜りもない。 垣根帝督は一時的な同盟を提案している。 食蜂操祈と言う厄介な害悪を除外するための戦線協定だ。 害悪糞女は先に滅して置かなくば聖杯戦争を裏で永遠に掻き乱される恐れがある。 「解った……でも先にあんたのマスターを呼んで」 「心配ご無用、呼んでるから、まぁもうちょいだろ」 トントン拍子で進んでいく協定だが肝心のマスターが居なくては話にならない。 此方のサーヴァントであるセイバーは既に見られているため霊体化させている。 しかしアサシンのマスターが見えない、潜んでいる可能性も在る。 「ほら、来たぞ」 垣根帝督が顎を指す。 振り向くと其処には学園の生徒、それも同じ生徒会に所属しているらしい人吉の姿があった。 これで役者は揃う、食蜂操祈を殺すための役者が。 マスターを狙うのは最終手段、とカレンは思っている。 垣根帝督は最初から狙う気でいるが。作戦なんて存在しない。 キャスターだ、それも病弱でサークルの姫のような存在。 正面からの戦闘で挑めば此方が負ける可能性など無に等しい。 だが食蜂操祈の能力は絶大で強力な最低である。 マスターを近寄らせるわけには行かないのだ。 故にセイバーが前線に趣き、アサシンが闇に潜み狩る――これが作戦。 念話である程度事前に人吉に話しているためスムーズに自己紹介が進む。 「まさか同じ生徒会の奴がマスターだったってか」 「あたしも、ね。会ったことは無いんだけど」 「まぁ何かの縁だろう。令呪を持って命ずる、アサシン――自害してくれ」 「そうだね……でも一時的だよ、最後に残るのは一組なんだから」 話している内容は物騒だが協定はこれにて結ばれる。 倒すべき敵は食蜂操祈、関係ない生徒を操る女を狩るだけだ。 ◆ ◆ ◆ 「おい――テメェ今何て言った、おい……何て言ったか聞いてるだろおおおおお」 ◆ ◆ ◆ 屋上で吠えるは暗部の天使。 背中に生える翼を大いに振るい美しく飛び散る無数の羽。 魅入る紅月カレン、だがそれは美しさにではない。 危険を感じたセイバーは現界しマスターの前に座する。 人吉善吉は何が在ったかは存じぬが意識を失っている。 客観的に述べよう。 『垣根帝督に対して自害の令呪が発動された』 「ふざけんなあああああああああああ」 広げられた翼はその存在総てを鋭利な形状に変化させる。 それは心臓を、総て何もかも貫く地獄の処刑人だ。 天使などと呼べるメルヘンな存在ではなく血と泥と粕しか存在しない地獄の溜まり場のチンピラだ。 「これって……ねぇ、死ぬの……あんた」 状況が飲み込めないカレンは垣根帝督に疑問を投げる。 情報は人吉が垣根帝督に自害の命令をしただけ、しかしこれが総てである。 故に垣根帝督も同じ状況である。 「決まってんだろ……ッァアアア!! あの糞女め……俺を真っ先に潰しに来やがってッ……チィ! 殺す、殺してやる……翼が俺に――ッアアアアアアアアアアアアアアアア」 鋭利となった翼の断罪標的は己、垣根帝督。 令呪の命令は絶対であり、英霊の枠に嵌められている以上逆らう事は出来ない。 垣根帝督は最後の力を振り絞り抵抗しているのだ。 生半可なサーヴァントならとっくに死んでいる、彼の強さが、しぶとさが生存に繋がっている。 だが終いだ。 「許さねえ、許さねえぞオオオオオオオオオオ! テメェは永遠に苦しめ、俺がそうさせてや――グッギィイイイイイ、 俺が終わる? 第五位に負ける? おいおい、冗談が過ぎるぞぉ……。 テメェは俺を怒らせた何てレベルじゃあねぇ……ぶっ殺してやる」 垣根帝督の翼は徐々に彼自身の身体に突き刺さっており、血が流れ始めている。 紅月カレンはこの状況に何もすることが出来ず、唯眺めているだけ。 セイバーもまた、もう垣根帝督は助からないと判断、己のマスターを守ることを優先する。 垣根帝督は再戦を臨んでいた。 奇跡的にもその相手は同じ英霊として聖杯戦争に招かれている。 狂戦士と成り果てた宿敵と対峙した時、彼は何を思うのか。悪党とチンピラ。 出逢えばそれは永劫に語り続かれる英雄譚に成り得たかもしれない、だが。 垣根帝督は此処で死ぬ、それだけだ。 「糞が、くそが、クソが……食蜂操祈、第五位……ようアレイスター、お前はどうせ笑ってんだろ? なぁ一歩通行……テメェもどっかで腹抱えて笑ってんだろ?」 一瞬の静寂が屋上を包む。 それを切り裂くように翼が心臓を貫いた。 「許さねぇからな……聞こえてんだろ第五位……テメェ、このくそがああああああああああああああああ」 【アサシン(垣根帝督)@とある魔術の禁書目録 死亡】 【C-2/アッシュフォード学園・屋上/1日目 午前】 ※屋上は一部破損有り 【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】 [状態]疲労(中)、魔力消費(中) 、脇腹に切り傷(止血済み) [令呪]残り3画 [装備]鞄(中に勉強道具、拳銃、仕込みナイフが入っております。(その他日用品も)) [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:願いのために聖杯を勝ち取る。 1.……。 [備考] ※アーチャー(モリガン)を確認しました。 ※学校内での自分の立ち位置を理解しました。 ※生徒会の会見として所属しているようです。 ※セイバー(纒流子)を確認しました。 ※夜科アゲハの暴王の流星を目視しました。 ※犬飼伊介、キャスター(食蜂操祈)を確認しました。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※垣根帝督から食蜂操祈の能力を聞きました。 【セイバー(リンク)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】 [状態]魔力消費(小) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターに全てを捧げる 1.マスターに委ねる [備考] ※マスター同様。 【人吉善吉@めだかボックス】 [状態]気絶 [令呪]残り二画 [装備]箱庭学園生徒会制服 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:日常を過ごしながら聖杯戦争を勝ち抜く。 1.今は授業を受け、その後アサシンと相談。 2.??? [備考] ※夜科アゲハがマスターであると知りません。 ※アッシュフォード学園生徒会での役職は庶務です。 ※相手を殺さなくても聖杯戦争を勝ち抜けると思っています。 ※屋上の挑発に気づきました。 ※学園内に他のマスターが居ると認識しています。 ※紅月カレンを確認しました。 ※キャスター(食蜂操祈)を確認しました。 ※食蜂操祈の宝具により操られていました。 ※サーヴァント消失を確認(一日目午前)これより六時間以内に帰還しない場合灰となります。 神衣鮮血を身に纏ったセイバーはそのまま自慢の脚力で距離を詰めると縦に一閃。 これを槍で防ぐランサーだがセイバーの自力が先程よりも膨れ上がっている事実に戸惑う。 それでも笑い、この戦いを楽しんでいる。 「まっさかぁ! 纏がそんな大胆な性格だとは思わなかったぜ!」 「勝手に言ってろ! そんなんじゃ足元を――掬われっぞォ!」 更に力を込め強引に戦国武将を押し込む纒流子。 鮮血から神衣の力を引き出した彼女は本来のポテンシャル以上の力を発揮する。 たかがステータスなどと言う細かい理論的な数値で彼女を図ることなど無謀だ。 足場毎粉砕するその一撃、訳が解らない容赦無い一撃。 衝撃により磨り減っていく大地から距離を取る戦国武将と神衣。 これから高度駆け引き、豪快な活劇が見られる――その筋書きだった。 「……すまん纏! マスターから撤退命令が出ちまった……申し訳ない」 「あぁ!? テメェ逃げる気かァ? 戦国武将ともあろう者が」 実際問題として纒流子は前田慶次が歴史に刻んだ事を知らない、名前だけ知っている存在だ。 故に彼女が使う戦国武将とは煽りのためだけの記号である。 「色々あるんだわこっちも……はぁ。一応同盟結んでるし、すまん!」 それだけ言い残すと前田慶次は朱槍を振り回す。 風に煽られ舞う砂塵、それが晴れた時其処には誰の影一つ存在しなかった。 「逃げやがったな……くっそ」 「まぁいいではないか、それよりも此処を離れるぞ流子」 「わーったよ鮮血、話はそれからだ」 これだけ暴れたのだ、下手をすれば誰かに見られている。 結局体育館裏に紅月カレンは姿を現さなかった。 前方には敵のマスターを探しに行っていたアゲハの顔が見える。 表情から読み取ってランサーのマスターは発見出来てないようだ。 此度の戦闘で判明したことは戦国武将のランサーが居ること。 彼らは気付いていない。 自分達が戦闘している間に学園を取り巻く環境が劇的に変化していることに――。 【C-2/アッシュフォード学園・体育館裏/1日目 午前】 ※大地が戦闘により凹んだりしています。 ※体育館の壁が一部凹んでいます。 【夜科アゲハ@PSYREN -サイレン-】 [状態]魔力(PSI)消費(中) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く中で天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.この場から離れる 2.夜になったら積極的に出回り情報を探す。 [備考] ※人吉善吉がマスターであると知りません。 ※セイバー(リンク)を確認しました。 ※ランサー(前田慶次)を確認しました。 【セイバー(纒流子)@キルラキル】 [状態]魔力消費(中)疲労(中)背中に打撲 [装備]鮮血(通常状態) [道具] [思考・状況] 基本行動方針:アゲハと一緒に天戯弥勒の元へ辿り着く。 1.逃げる。 2.情報を集めるのもいいかもしれない [備考] ※間桐雁夜と会話をしましたが彼がマスターだと気付いていません。 ※セイバー(リンク)を確認しました。 ※ランサー(前田慶次)を確認しました。 ※乗ってきたバイクは学園近くの茂みに隠してあります。 【朽木ルキア@BLEACH】 [状態]健康 、魔力消費(小) [令呪]残り三画 [装備]アッシュフォード学園の制服 [道具]学園指定鞄(学習用具や日用品、悟魂手甲や伝令神機などの装備も入れている) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を通じて霊力を取り戻す。場合によっては聖杯なしでも構わない 1.ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る 2.ただし同盟にはあまり乗り気ではない。何かきっかけがあれば解消したい [備考] ※外部からの精神操作による肉体干渉を受け付けなかったようです。ただしリモコンなし、イタズラ半分の軽いものだったので本気でやれば掌握できる可能性が高いです。 これが義骸と霊体の連結が甘かったせいか、死神という人間と異なる存在だからか、別の理由かは不明、少なくとも読心は可能でした。 ※夜科アゲハ、セイバー(纏流子)を確認しました。 【ランサー(前田慶次)@戦国BASARA】 [状態]疲労(小)魔力消費(小) [装備]超刀 [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:この祭りを楽しむ 1. ひとまずキャスターたちと協力して聖杯戦争に勝ち残る 2.ただし心底信頼はしない。マスターから離れず護衛をし、隙を突くためにも考察と情報収集 [備考] ※キャスターを装備と服装から近現代の英霊と推察しています。 ※読心の危険があるため、キャスター対策で重要なことはルキアにも基本的には伏せるつもりです。 [共通備考] ※犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈)と同盟を結びました。マスターの名前およびサーヴァントのクラス、能力の一部を把握しています。 基本的にはキャスターが索敵、ランサーが撃破の形をとるでしょうが、今後の具体的な動きは後続の方にお任せします。 ※朽木ルキアは駒から『学園内に戻ってください』という伝令を聞きました。 不要な役者を削ぎ落とし、舞台の裏で笑うは女王気取りの哀れな女。 犬飼伊介は校庭の茂みでキャスターと合流していた。 しかしキャスターは自分を見捨てた女だ、彼女を見る視線は鋭く冷たい物となっていた。 結果としてアサシンを一人排除する事が出来たのは大きなアドバンテージになるだろう、なっている。 だが、今後の主従関係を考えれば最悪極まりない状況になっている。 (こいつ……絶対殺す、殺される前に殺す) 犬飼伊介は決心した、いや。とっくに決めていた。 この女は最終的にマスターである自分も排除する気でいる、願いを独占するつもりだろう。 そんな事はさせない、アサシンの時同様に令呪で先手を撃ってやる、殺してやる。 だが今はその時ではない、使える時まで使い込み、永遠に潰す。 キャスターの能力は魅力的で強力だ、これは変えようのない事実だ。 ならば今は猫でも何でも被り遣り過す、その後に殺す。 新しいサーヴァントはあのランサーにですればいい。 序に朽木ルキアも殺せば何も問題はない。 (――って全部お見通しだぞ☆) それすらもキャスターは見抜いている。 垣根帝督を見た時、彼女は死を覚悟した。 何故居る、勝てる筈がない、逃げるしか無い。 マスターを置いての逃走、此処でマスターが死んでいれば彼女も死んでいたが運が良かった。 垣根帝督は余計な事を言っていたのだ。 『隣に座っていた奴がマスター』つまり、だ。 夜科アゲハ、犬飼伊介、朽木ルキア。この三人の内の誰か一人、その隣に座っていた者が彼のマスターだと。 犬飼伊介、朽木ルキアのクラスは略抑えているため白だ、ならば残るは夜科アゲハ。 その隣に座っていた人物こそが人吉善吉であり、ビンゴだった。 総てはキャスターの思惑通りになってしまった。 本来ならば最弱のサーヴァントは統率力と組織力を持って学園を操っている。 この牙城を崩すには彼女自身を殺さなくてはならない。 【犬飼伊介@悪魔のリドル】 [状態]疲労(小)魔力消費(小) [令呪]残り三画 [装備]ナイフ [道具]バッグ(学習用具はほぼなし、日用品や化粧品など) [思考・状況] 基本行動方針:さっさと聖杯戦争に勝利し、パパとママと幸せに暮らす 0.食蜂操祈に心を許さない。 1.この場を離れる。 2.キャスターの宝具を使い上手く立ち回る。 3.キャスターを使い潰した後にサーヴァントを乗り換える。 [備考] ※『とある科学の心理掌握(メンタルアウト)』によってキャスターに令呪を使った命令が出来ません。 ※一度キャスターに裏切られた(垣根帝督を前にしての逃亡)ことによりサーヴァント替えを視野に入れました。 【キャスター(食蜂操祈)@とある科学の超電磁砲】 [状態]健康、魔力消費(中) [装備]アッシュフォード学園の制服 [道具]ハンドバック(内部にリモコン多数) [思考・状況] 基本行動方針:勝ち残る。聖杯に託す願いはヒミツ☆ 0.このまま上手く立ち回る。 1.洗脳した生徒を使い情報収集を行う。 2.戦闘はランサーに任せ、相手のマスターを狙う。 3.ランサー一行及び犬飼伊介には警戒する。 4.人吉善吉をどうするか……。 [備考] ※高等部一年B組の生徒の多くを支配下に置きました。一部他の教室の生徒も支配下に置いてあります。 ※ルキアに対して肉体操作が効かなかったことを確認、疑問視及び警戒しています。 ※垣根帝督が現界していたことに恐怖を抱きました。彼を消したことにより満足感を得ています。 ※人吉善吉に命令を行いました。現在は操っておりません。 [共通備考] ※車で登校してきましたが、彼女らの性格的に拠点が遠くとは限りません。後続の方にお任せします。 ※朽木ルキア&ランサー(前田慶次)と同盟を結びました。マスターの名前とサーヴァントのクラスを把握しています。 基本的にはキャスターが索敵を行い、ランサーに協力、或いは命令する形になります。 ※人吉善吉、アサシン(垣根帝督)を確認しました。 ※紅月カレン、セイバー(リンク)を確認しました。 ※夜科アゲハ、セイバー(纒流子)の存在を知りました。 BACK NEXT 033 戦争と平和 投下順 035 CALL.1:通達 033 戦争と平和 時系列順 035 CALL.1:通達 BACK 登場キャラ NEXT 020 Bとの邂逅/ネジレタユガミ 朽木ルキア&ランサー(前田慶次) 039 わが臈たし悪の華 犬飼伊介&キャスター(食蜂操祈) 031 光の屋上 闇の屋上 夜科アゲハ&セイバー(纒流子) 紅月カレン&セイバー(リンク) 人吉善吉 アサシン(垣根帝督) DEAD END?
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☆ 百年の花嫁 は大韓民国最高財閥家であるテヤングループ長子の婚家に入る一番目の花嫁は皆死ぬという百年前から伝えがある財閥家の呪いを取り囲んだ計略と陰謀,その中で咲き始めた命とも変えることができない真実の 愛が童話のように描かれるファンタジーメロドラマ☆ 百年の花嫁 DVD 13話~錯綜する伝説 別荘で1日を過ごしたドゥリムとガンジュ。ドゥリムが無事だと知りジェランは動揺する。そんな中、ガンジュの祖母が倒れイギョンに会いたがっているとの連絡が入る。ジェランは病院へ送る際にドゥリムを拉致し、イギョ ンとすり替えることに成功する。イギョンはガンジュの祖母から驚くべき告白を聞かされる。一方、倉庫へ連れていかれるドゥリム。あとをつけていたイヒョンが救出を試みるが…。 キャスト: 百年の花嫁 DVD イ・ホンギ(チェ・ガンジュ) ヤン・ジンソン(ナ・ドゥリム / チャン・イギョン) ソン・ヒョク(チャン・イヒョン) シン・ウンジョン(マ・ジェラン) キム・ソラ(キム・ミョンヒ) チェ・イルファ(チェ・イルド)
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◆猜疑・罵倒・錯綜・熱狂の1期◆ 2009年3月1日 Farland History-R 正式OPEN ■忍耐の2ヶ月 グランドオープンで建国ラッシュが起きるも街が1つ埋まらないという状態が2ヶ月続く。 誰が悪いわけでもないんだが、全員よーいどんで0から始まってる新品ぴかぴかってこともあって 個人のスキルアップ>国家情勢 になりがちな流れもあり、黙々とした時間が続く。 5月上旬、ついに最後の街が埋まり、ようやく本格スタート。 ■王道の立ち上がり 挨拶代わりの模擬戦、格下相手の制圧戦、大国同士の初衝突など、FRに慣れてるものには御馴染みの光景が各地に。 ■第一の火種登場 7月末、某氏(A氏)により、初めての途中建国国家誕生。 所属国家を下野→複数領土所有国を襲撃しての領土強奪→建国 行動自体は特に珍しくもないよくある光景の1つだが、後にA氏が1期最大の火種の1つとされた歴史から見ると、ここがささやかにも重要な発火点だったともいえる。 ■潜伏の群雄割拠 火種はしかしまだ燃え広がる事もなく、A氏建国の国もあっさりと滅びる。R史上初となる深夜戦争(AM0:00以降での開戦)を実行したという意味では小さな爪あとは残したか。 大国同士の衝突や征服の憂き目にあう小国など、この世界本来の姿とでもいうべき状態へ。 各国を代表するエースキャラも目立ちはじめ、いい意味での能力差が顕著に。 ■第一の火種再び A氏、再び建国。同一人物が同じ期で2度途中建国。FR史上皆無ではないが、珍しい。 ここで建国された「混ぜるな危険国」があらゆる意味で1期を引っ掻き回す国家に成長することになる。 ■第二の火種覚醒 建国以来、一切の戦争活動を行っていなかった某氏(B氏)率いる「ホリエモン国」が当時最大大国だった「鬼羅国」と戦争状態に。 戦争自体はごく普通かつ何の問題もないものだったが、B氏というキャラクターが 「多分に攻撃的な発言を積極的かつ挑発的に行うことを自認するキャラ」 であるところから、一部プレイヤーと確執が深まる。 プレイヤーとキャラクターの関係性、ロールプレイとリアルの本音、掛け合いとマジ喧嘩、ここらへんの境界線は不明だが、 「極めて稀なレベルで確信犯的に攻撃的な言動を持つキャラクター」であるB氏が火種を大きく育てていったことは歴史的事実となっていく。 この時期、 α・ホリエモン国─天国間でR史上初の外交による領土交換、 β・混ぜるな危険国─風の谷国間でR史上初の国家間同盟による戦争時人材派遣、 が行われた。 このαに対してA氏が難癖をつけたり、βに対してB氏が嫌味を言ったりという、言動による火種同士の絡み合いが本格化しはじめたのもこの時期から。 ■疑心暗鬼の国家解体祭り 戦争に負けて滅びたわけでもない「ホリエモン国」が自主的に国家を解体(他国に依頼して強制的に領土を滅ぼしてもらう)という、FR史上でもかなり珍しい行為が行われる。 この国家の代表がB氏だったこと、直後にホリエモン国時代の主要人物が中心になって新国家「アヒル国」が建国されていたこともあって、必要以上の疑心暗鬼が世界中に蔓延する異常事態が発生。 様々な陰謀説が囁かれ、全員宛欄や全国掲示板に 「実際の書き込みという形で個人的な疑惑の追及、証拠のない一方的な論理の披露、攻撃的かつ挑発的な議論の応酬」 など、場所が場所なら「炎上?」とでも表現されるような事態が相次ぐ。 A氏、B氏がこの全てに関わっていたわけではないが、全てに無関係でもなく、他にも火種予備軍とでもいうべき、火に油を注ぎまくるプレイヤーが複数暴走し、様々な角度で様々なプレイヤーに大小の禍根を残すことになった。 最終的には管理人が収拾に乗り出し、一応の沈静化。 ■快進撃の新興国家と連鎖的反発反応 「混ぜるな危険国」が予想を超える勢いで勢力を伸ばしていく。 この国家はもちろんゲームルールや規約に違反する行為は一切行っていないが、 建国者がA氏であること(国王は別の人物に変わっている) そのA氏が外交代表として表に出ることが多かったこと 深夜~早朝時間での戦争など、独自の戦争スタイルを有していたこと 二大火種と目されていたA氏・B氏が友好関係と思われる言動が見られていたこと 等を理由に「やりたい放題の国家」「カオスの元凶」などと非難対象にされることも。 もちろん、積極的に「まぜるな危険国」に仕官するプレイヤーも少なくなく存在した。 そしてこの国家は、天国、鬼羅国という初期からの大国を滅ぼし、アヒル国も滅ぼして残るは瑠璃色国のみに至るのだが、 天国滅亡→天国民のほとんどが鬼羅国仕官→鬼羅国滅亡→そのほとんどが瑠璃色国仕官 という流れが、また「1期はカオス」と呼ばれる「疑惑と議論の言論合戦」を呼び起こす。 本家から生息している類のベテラン組から見れば 「滅亡→集団仕官→攻める国ほど不利→てか、最後まで動かない国に全員集合で最強説」 一種の常識というかFRのもつ永遠の構造的欠陥というか・・・なので特に驚く光景ではないのだが、 「RでFRデビュー」かつ「混ぜるな危険国所属」で、極めて不可解かつ不快と感じたプレイヤー B氏が最終的な仕官先に「混ぜるな危険国」を選んだことでA氏B氏の競演に強く反発したプレイヤー 等が、必要以上に火種を燃やしにかかる現象がここでも発生した。 ■熱狂と憔悴の統一戦争 ここまできて統一戦がスマートかつスムーズに終始するわけもなく 外交交渉からスタートした混ぜるな─瑠璃色の統一戦は 外交代表でもないB氏が不必要に瑠璃色国を挑発 瑠璃色の国の外交代表がそれに強く反発 R史上初の24時間×1週間戦争という布告内容に賛否両論 外交交渉の間にカウンター布告・布告取り消し・再布告などなど、両国もうしっちゃかめっちゃか 何が起きても「カオス!カオス!」という雰囲気の中、統一戦開始。 10人差以上の人数差が6時間以上も続いたのに決着がつかない 12時間以上1度も落ちずに戦争参戦するツワモノ続出 等、多数の伝説を残しつつ、 2010/05.12 混ぜるな危険国が世界を統一する。 ☆総評 ◆猜疑・罵倒・錯綜・熱狂の1期◆と表現したが、 A氏、B氏という特定プレイヤーだけの問題ではなく、全体的に 「本来そこまで騒ぐようなことか?」という事象がいちいち大事のように騒がれた不思議な期であった。 その一方で、 「何をやっても楽しかった、密度が濃かった、熱く燃えた」など、とにかく物事が沸騰していて楽しめたという声も多く、 ある程度までの敵対感情や反発感はいい刺激剤となる可能性は示してくれた。 もちろん、そういった空気を強く否定し 「楽しく、仲良く、尊重しあえない時点でアウト」と攻撃的すぎる言動に警鐘を鳴らすプレイヤーも多く存在した。 また、ごく一部だがこの1期独特のカオス感に失望して引退を決意したプレイヤーも出てしまった事実も忘れてはならないところである。 <初>リスト ●初建国:光画部国 ●初戦争:忍魂国 → 天国 ●初深夜(AM0:00以降)戦争:コイヨ(^_-)-☆国 ●初連合戦争:ホリエモン国+鬼羅国 → 風の谷国(混ぜるな危険国から援軍派遣) ●初24時間戦争:混ぜるな危険国 → 瑠璃色国(※24時間経過前に決着) ●初統一国王:かいるん(混ぜるな危険国)
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錯綜思考(策創試行) 「イシナギという魚をご存知ですか?」 大して険しくもない、ただ薄暗いだけの山道の中を、二人の人間が歩いている。 一人は足首まで届くほどに長い、美しい黒髪を携えた少女。 一人は伸ばしっぱなしの黒髪に、カチューシャをつけた痩身の男。 少女の唐突な問いに対し、男は「いや」と、まるで興味がないという風に、そっけなく返す。男の前を歩く少女も、まともな返答を期待していなかったように、男のほうを振り返ることなく言う。 「北海道に主に生息する魚です。一般的にはマイナーな魚ですけれど、体長が2メートルを超えるものもあって、大物狙いの方たちにとっては人気が あるようです。もちろん食用にもなります。煮付けや刺身として食べることが主だそうですね。ちなみに肝臓には、多量のビタミンAが含まれているそうですよ」 「へえ」男は、あくまでそっけなく言う。「肝臓まで食べるのかよ、その魚」 「いえ、ビタミンAとはいってもあまりに多量すぎるので、食べてしまうと過剰症を起こして、頭痛、吐き気、皮膚剥離などの症状が出るそうです」 「毒じゃねえかよ」 男が呆れたように言うと、少女はくすりと笑った。「そうです、イシナギは危ないんです」 男はまた「へえ」と返す。それは先程のそっけなさとは別の、知っていることを今初めて聞いたように振舞うような、微妙な白々しさがあった。 それからまた、二人は会話を交わすことなく山道を歩き続ける。山道とはいっても、辺りに生い茂っているのは樹木の類ではない。 竹である。 広大な面積の、そのほぼ全てを青々とした竹で覆われた山。 地図に記された名は、雀の竹取山。 少女が先を歩き、男がその後に続いて歩く。頂上から麓へ向けて、下山する形で。 少女のほうは、高校の制服らしき特徴的なセーラー服。男のほうは、薄手のタンクトップにハーフパンツ、足元はなんと下駄という、どう考えても山歩き には向いていない服装であるにもかかわらず、どちらも不自由そうなそぶりを見せることなく、軽快な足取りで進んでゆく。 少女が懐中電灯で照らしているとはいえ、足元が少し見える程度の山道を坦々と歩いてゆく二人。その自然な足取りが、逆に不自然に見えてしまうような光景だった。 「ところで、奇野さん」少女が、今度は振り返って言う。「今のこの状況について、奇野さんはどうお考えですか?」 奇野と呼ばれた男はその質問に対し、少し嫌そうな表情を見せた。 「どうって言ってもな――まあ、非常識っつーか、信じがたい状況ではあるよな。信じる信じないの話じゃねえのかも知れないけどよ。 話は単純に見えるのに、突拍子もない部分が多すぎる。なんていうか、現実的な夢の中にいるみてーだ」 「現実的な夢、ですか。なるほど」 実際にはその逆でしょうけどね――少女は独り言のように言って、また小さく微笑んだ。 逆――現実的な夢の、逆。 夢のような、現実。 男――奇野は、数時間前に自分が見た光景を回想する。ほんの数分間の間に繰り広げられた、いっそ滑稽ともいえるくらいに不条理な光景。 血、肉、骨、首、臓器、脳漿、死体。 そのすべてが、今ではもう、幻のように消えうせて。 ………。 すべて、現実なのか。 あの光景も、今の、この状況も――― 「『現実的で構わないから、いっそ夢であってほしい』」 はっとしたように、奇野は顔を上げる。 「そう思っていますか? 奇野さん」 少女は振り返ってはいなかった。しかし奇野は、少女のその言葉だけで、視線とはまた別の何かによって射すくめられたような感じがした。 「余計な心配だよ、お嬢ちゃん」 余裕を表現するためか、奇野は肩をすくめた。 「お嬢ちゃんこそ、実際ついていけてねーんじゃねーの? あんた、一般人なんだろ? それがこんな、冗談が冗談してるみたいな状況に放り込まれて」 「もちろん夢であってほしいと思っていますよ。私は」 少女はあっけらかんと言う。 「奇野さんの言うとおり、私は見てのとおりの普通の女子高生ですから。私からすれば、現実的な夢も夢のような現実もありません。夢のように夢心地ですよ。間違って醒めてしまいそうです。 夢の中というよりも、漫画の中にいるような、あるいはゲームの中にいるような、いやむしろ小説の中にいるような心地です」 「小説…」 なぜだろう、そこだけ妙に納得がいく気がするのは。 「それにしちゃあ、随分と軽く構えてるように見えるけどな」 「重く構えるだけ動きづらくなるだけです。当然、軽く見ているつもりもありませんけれど」 少女の声色が、少しだけ真剣味を帯びる。 「今の状況に救いがあるとすれば、不条理な状況ではあれど、状況そのものが不鮮明ではないというところでしょう。ですから今のところ、 地に足がついている感じがするのは確かです。何しろ目的がはっきりしていますからね。それ以外にすることがない、というくらいに」 「目的…」 「殺し合い」 真剣さを帯びていたとはいえ、その言葉はあまりにも軽く発せられた。 自分たちの目的。自分たちがここにいる理由。 そう、この状況がいくら信じがたいものであろうとも、そこだけははっきりしている。 殺し合い。 殺し合い以外に、することがない。 「………」 奇野自身、それは常々口にしたいと思っている言葉の一つだったが、それは軽々しい心構えで口に出してしまうと、予想以上にえらい目に遭う言葉であるということを、奇野は身をもって経験していた。 だからこそ、それをあっさりと口にしてしまう少女の態度に、奇野は少なからず違和感を覚えた。 こともあろうに、『参加者』の一人である奇野が、自分のすぐ背後を歩いているという状況にもかかわらず―― 「勝つつもりで、いるのか?」短い沈黙を、今度は奇野が破った。「こんな、でたらめな、無茶苦茶な闘いなんかに、強制的に放り込まれて、本当にあんた、最後まで生き残るつもりなのか?」 「生き残るつもり?」 少女の声は変わらない。 「そんなもの、生まれたときからずっとあります」 「………」 「生き残るつもりがなくて、人間がどうやって生き続けられるというのですか。偶然で死に、必然で死に、当たり前のように死に続けるこの 人間という種類が。生き残る気もないのに生き続けている人間なんて、それはただ他者によって生かされているというだけの事。生かされているのは 死んでいることと同義。生き恥という言葉すら勿体ない。そんなふうに生き続ける人間の気が、私には一向に知れませんね」 奇野はまた沈黙せざるをえなかった。 なぜこの少女は、こんな言葉を平然と吐く? 「それに」少女は仕切りなおすように言う。「可能性の上でなら、私たちが勝つ方法はいくらでもあります。最初、あの白い部屋の中で主催者側の人間が言っていた言葉、覚えていらっしゃるでしょう? この闘いではあらかじめ、バランスをとるための配慮がなされていると」 「……ああ」 「? どうかしまして?」 「いや――つまり、それがお嬢ちゃんの自信の根拠ってことか?」 「確かに私はただの普通の一般人ですけれど、目的が殺し合いだったところで、主催者側から平等に勝つチャンスを与えられているとするなら、 一般人という属性を悲観する意味はないということです。むしろ私のような一般人こそ、早い段階で動いておく必要があります。状況に呑まれるのは 三流の証拠。求められるのは俊敏な思考と、正確な試行。戦略こそが鍵です」 「クリティカルだな」 「タクティカルですね」 軽い冗談のつもりが軽く流されてしまった。立つ瀬がない。 とはいえ、少女の言い分には奇野もそれほど異論はなかった。おそらくこの闘いには、最初に見たような相当な力を持つ『異能者』が 何人も参加していることだろう。しかし主催者側によってその実力に均衡がもたらされているとするなら、目の前の少女でさえ、確かに 戦い方しだいではいくらでも勝ち目はある。知力と戦略。この闘いでは、それこそが物をいう。 しかし奇野がそういうと、少女は「それは違いますよ」と否定した。 「違う? 何が」 「戦略が鍵になる、とは言いました。しかしそれは『参加者の戦闘能力が均衡しているから、より巧みな戦略を練ったものが勝利する』 という意味ではありません。なぜなら私は、参加者の能力に制限が加えられているというのが真実だったとしても、それによって参加者全員の 能力のバランスが均衡しているとは考えていないからです。少なくとも、私が主催者側の人間だとすれば、絶対にそうはしないでしょう」 「なんでそう思う?」 「面白くないからです」 長い黒髪が竹やぶに引っかからないように気をつけるようなそぶりを見せながら、少女は細い竹藪を掻き分けてゆく。 山頂からは、既にだいぶ下っている。今は二合目あたりだろうか。足取りが鈍らないのは奇野も同じだったが、少女のほうは まともな道も道標もないはずのこの山道を、まるで自分の庭であるかのように、迷う気配もなく進んでゆく。 「先ほど私は、自分がゲームの中にいるようだ、といいましたが、例えとして言うならあの表現は間違いでしたね。なにしろここは まさにゲームの中なのですから。生身の人間が参加する、実際の命をかけたサバイバルゲーム」 バーチャルの世界でないというだけ――少女はそういった。 「他の人間が一方的に殺されたんじゃ面白くない――あの主催者側の人間は、確かそんなふうに言っていましたね。一方的な殺戮では ゲームにならない。ゲームにならなければ面白くない。だからバランスをとるために、力を制限する。それだけ聞けば、確かに自然な流れに 見えます。しかし主催者側の立場で考えた場合、どうしても納得できない部分があるんです。そうは思いませんか?」 奇野は沈黙を保った。少女は続ける。 「このゲームの参加者がどういった基準で選ばれたのか、私たちにとって走る由もありませんが、『他の人間が一方的に』という言葉から あの妙ちくりんな衣装の人達のような異能者を筆頭とした、いわゆるプロのプレイヤーと、私のようなごく普通の一般人が、同時に参加していると 推察されます。一方的な殺戮では面白くないといっておきながら、殺し合いという事柄に関して、経験も能力も、価値観さえも、極端なまでに 異なる人種を同じ舞台に立たせてしまっている。この時点で、既に矛盾していると思いませんか?」 「………」 「一般人を同じ舞台に立たせてしまっている以上、バランスをとろうと思えば、それは相当な制限を『異能者』の側にかけることを 意味します。当の異能者、プロのプレイヤーの方達からすれば不本意極まりないことでしょうけど、しかしそれは、主催者の側にとっても 望ましい状況とは言えるでしょうか。こんな特殊な場所、ステージを用意し、おそらくは相当な、異常なほどに現実離れした 『異能者』達をわざわざゲームのプレイヤーとして選出しておきながら、その肝心の『異能』に対し、主催者の側でわざわざ 制限をかけているんですよ? ゲームを観戦する側からすれば、その異能こそをフルに発揮してやりあってほしいと考えるのが 自然でしょう。バランスを重視するというのならそれこそ私のようなただの高校生を集めてやったほうがむしろ面白くなりそうです。 わざわざ武器まで与えているんですから。はたしてこれが自然な流れといえるでしょうか? 違和感で人が死ねるなら 私は既に15回は死んでいます」 奇野は答えない。少女はさらに続ける。 「このようなゲームに限って言えば、プレイヤーの能力の低下は、すなわちゲームのクオリティの低下に直結する。牙と爪をもがれた 獣同士の殺し合い。そんなもの見て楽しいと思いますか? かめはめ波は強すぎるから使用禁止、空を飛べると卑怯だから舞空術も禁止、 体力がありすぎるから、サイヤ人は身体能力も制限。天下一武道会にそんな制約があったら嫌でしょう。ヤムチャさんどころか、 ミスターサタンが素で優勝することだってあり得てしまいます。盛り上がりに欠けすぎです」 言いたいことはよくわかるが、最後の例えに意味はあるのか。 「まあ…確かに」 奇野は言ってから、内心でもう一度つぶやいた。まあ、確かに。 少女と話しているうちに、奇野は今の状況に対してやたら客観的な意識を持ってしまっていたことに気づく。考えてみれば、自分こそまさにその『異能者』の側として参加している人間の一人ではないか。 「つまり、お嬢ちゃんは」奇野は、右手に持った荷物を軽く持ち直しながら言う。 「こう考えてるってのか? このゲームの主催者は、ゲームのバランスをとるつもりはない、と」 「いいえ、違います」 少女はまたも否定する。 「主催者はこのゲームのバランスに対して最大限の配慮を行っているはずです。バランスという言葉を最初に持ち出したのは 主催者の側なのですから。ゲームバランスというのは、ゲームが成り立つか成り立たないか、その一端を握っているといっていいほど 重要なものなのですから。こんな大掛かりなゲームを作り上げるような人間が、そこをおろそかにするはずはありません」 それができなければクリエイターとして失格です。 少女はそんな風に言った。 「ですから、私の予想―予想というよりは期待ですけれど―している限りでは、主催者側からのあの言葉は、こういった意味を 持っていると考えています。『用意はしておいた。それを使って、後は自分たちで好きなようにバランスをとれ』」 「『それ』?」 「裏技、ですよ」 鳥でも飛び立ったのか、二人の頭上の竹の葉がざわざわと派手な音を立てて揺れた。 「レーシングゲームで言えば、ショートカットのようなものですか。とにかくそういったものがこのゲームの中には存在していると 私は期待しています。このゲームにおける最大のポイントの一つは、プレイヤーの自主性。主催者の側ではあえてバランスを取らずに 最終的なバランスはプレイヤーに決定させる。私たちにランダムに与えられた武器とはまた別の、ゲームの内部そのものに組み込まれた 不確定要素。ゲームのクオリティの最大限に維持し、かつ全てのプレイヤーに勝利条件を与えることができる、まさに裏技です。 あくまで予想に過ぎませんが、それを探してみる価値は十分にあると思います」 「………」 奇野はまたも、沈黙せざるを得なかった。 絶句、というよりも、言いたいことはあったが、それを口に出すべきか躊躇した、といった感じである。 反応に困ったといってもいい。 確かに少女の言い分には一理あると言えなくもない。しかしそれは少女自身、期待、という言葉を用いていたとおり、 あまりに希望的な観測というか、都合の良すぎる考えではないだろうか。 この少女の自信は、そんな曖昧なものに依拠したものだったのか? 大体裏技って何なのだ。コマンド入力でフルオプションに一足飛びでもする気でいるのか。 奇野は嘆息した。やはりこの少女は『一般人』の側の人間だ。 殺人鬼を恐れない人間は二種類いる。鬼をも恐れぬほどの力を有する人間か、殺人鬼を知らない人間のどちらか。 参加者全員が殺人鬼である可能性すらあるこの状況で、殺し合いという言葉を軽々しく使い、参加者の一人である奇野に、堂々と背中を預けている。 人が死ぬ光景すら目の当たりにして、なお現状を認識できていない。 まさしくゲーム感覚である。 この少女と組んだのは、ある意味では正解だったかもしれないな―― 奇野がそう思い、この雀の竹取山における少女との邂逅、この少女と組むことになった山頂での出来事を思い起こし始めた、そのほぼ同時。 奇野は、それを目視した。 ◆◆◆ 声をかけてきたのは、少女のほうからだった。 雀の竹取山、その頂上地点で一人佇んでいた奇野頼知の前に、散歩でもするかのような優雅な足取りで、その少女はあらわれた。 ごきげんよう、と、気さくな感じに声をかけながら。 それに対し奇野は、当然の如く警戒した。相手が年端も行かぬ少女であるということは、奇野にとっては気を緩める理由には まったくならない。むしろ今の状況において、丸腰のまま、しかも真正面から接近してきたことが、奇野にはこの上なく不気味に思えた。 そんな奇野に対して、少女はあくまでも優雅に、柔らかな笑顔を浮かべながら、両手を頭の上でひらひらと振った。 こわがらなくてもいいですよ、とでもいいたげな仕草で。 少女は言った。 私は、あなたと戦うつもりは毛頭ありません。 とりあえず、私の話を聞いてはいただけないでしょうか、と。 この時点で、奇野がこの少女に対して一切、何の攻撃も加えなかったことに関して疑問を挟む余地はあるかもしれない。 少女の言うところの『異能者』側の人間、プロのプレイヤーである奇野が、あからさまなまでに隙だらけの相手を目の前にして、 ただ相手の動向を窺っていたというのは不自然ではないだろうかと。 しかしこの疑問に対して、奇野はこう答える。奇野は相手が少女ということで気を緩めるこそなかったが、『この少女であれば いつでも殺せる』という感想を抱いた。このゲームの趣旨から言えば、目の前にいる相手を殺さないというのは確かに愚行であると いわざるを得ない。 しかし「殺す」という選択肢には、それが取り返しのつかない結果を生むという条件が付随する。少女を殺すことで、ゲームにおける 対戦者を一人減らすことができるのはプラスではあるが、逆に今ここで、少女の話をまったく聞かずに殺してしまった場合、 それがマイナスの結果を生むことにならないとは言えない。 要するに、「いつでも殺せるのならば、少女の話を聞いてからでも遅くはない」という、妥当というか、ごくありきたりとも いえるような理由において、奇野は状況を保留することを選択した。 少なくとも奇野自身は、自分がそういった考えを持って少女を攻撃することをしなかったと、そう自分を納得させている。 少女が続けて奇野に対して言ってきたことは、奇野にとっては、いや一般的な観点から見ても、十分に予想の範囲内のことだった。 要点だけを言えば、自分と組まないか、である。 この闘いを生き残るために、二人で組んで行動しましょう、と。 当然のこと、奇野があっさり「組む組む組みたい組みましょう」と少女の提案を受け入れることはなかった。 生き残るためには、一人で行動するより多人数のほうが基本的に有利、という理屈は正しい。しかしこのゲームは、 最終的に一人が生き残ることを前提としたゲームである。 何人がチームを組んだところで、生き残るのはただ一人。 そんな趣旨のゲームの中において、協力という言葉がどれほどの打算を含んでいるのか、それが分からないほどに奇野は馬鹿ではなかった。 しかし少女は、そんな奇野の心情を見越したように言葉を紡ぐ。 私はあなたを殺そうとは思っていません。 どころか、私はここで誰も殺そうとは思っていないんです。 もちろん、私が死ぬつもりもありません。 私はただ、生きてここから帰りたいだけなんです。 その矛盾をはらんだ言葉に、奇野は訝しんだ。 結論だけを言えば、少女はこう提案してきたのだ。このゲームの勝者に与えられる権利、どんな願いでも一つだけ 叶えることができるという、途方もない権利。 私の望みは、ただ生きてここから帰ること。 だから私は約束します。 『このゲームに参加した、全ての人間を生き返らせること』―――。 私が最後まで生き残った暁には、必ずそれを願うと。 ………。 奇野は黙って、その少女の言葉を聞いていた。 全員を生き返らせることができるのかどうがは定かではないですけれど、「何でも」と言ってはいるし、願い事が一つだけというなら ポルンガでなく神龍のほうでしょうから、大丈夫でしょう――そんな訳の分からない言葉さえ聞き流して。 結果的に、奇野は少女と組むことを了承した。 少女の甘言に乗せられたわけでは、勿論ない。 殺しはするが、必ず生き返らせる。 そんな言葉を真に受ければ、それこそ馬鹿である。 ただ奇野は、またも保留することを選択したのだ。少女を攻撃しなかったときと、ほとんど同様の考えにおいて。 今のうちは、利用できるものは利用しておこうと。 少女とて、まさか本当に最後まで奇野と行動するつもりではあるまい。 ころあいを見て奇野を殺すつもりだというなら、それより先に自分のほうがころあいをみて少女を殺せばいいだけの話。 それまでは、この少女を自分の『所有物』のひとつとして連れていておいても、おそらくマイナスにはならないだろう、と。 しかし奇野のこの考えは、先ほどの思考と同じく、奇野が自身の選択に対して納得のいく理由を考えたというだけの、 いわゆるあとづけに近いものだと言っていい。 奇野が少女に対し攻撃を加えなかったことも、奇野がこの少女と組むことを決定したのも、奇野にとっての、このゲームの スタート地点である雀の竹取山の山頂において、彼がそこから数時間ものあいだ「様子見」と称して動こうとしなかったことも、 余裕のあるときならば、相手を小馬鹿にしたような軽薄な態度で相手に望むはずの彼が、少女との会話においてほとんど受動的な 受け答えしかできていないことも、すべては同じ理由に基づくものであるといえる。 裏の世界の住人である奇野頼知は、殺し合いの場という一般的には非常識な状況も、むしろそれが日常であるような世界で生きてきた。 だから今現在の状況も、あまりに現実離れしているとはいえ、奇野にとっては日常の延長線上のようなものだと考えている。 殺し合いというなら、ここは自分のフィールドだと。 そういうふうに、むしろ余裕を持って臨んでいた。 しかし実際には、奇野は自分の心理状態を正確に把握できてはいない。 「呪い名」。 「殺し名」七名の対極に位置し、戦闘集団である「殺し名」とは真逆、非戦闘集団としての性質を持ちながら、 ある意味「殺し名」以上に忌み嫌われている集団。「呪い名」六名。 その三番目に名を連ねる「呪い名」が一名、「奇野」。 奇野頼知の有する能力は、人殺しという目的に対して言うなら、確かに特出して有効なものであるといわざるを得ない。 しかしその能力は、いうなら鳥籠の中の鳥を殺すような、相手を完全に自分の領域の中に引き込んでこそ威力を最大に 発揮するような、そういった類のものである。 この闘いの中において奇野は、殺し合いという名のフィールドの内部に強制的に放り込まれた形である。 裏の世界の住人とはいえ、奇野はあくまで「呪い名」なのだ。 戦場の外部にいてこそ威力を発揮する奇野が、完全に戦場の内部、殺し合いの渦中に引きずり込まれてしまった。 その現実が、自身でも気づかないうちに、彼からプロのプレイヤーとしての余裕を奪った。 恐怖、緊張、焦燥。そういったものが、今の彼の選択肢をどうしようもなく狭めている。 要するに、彼は状況に飲まれているのだ。 さきほど奇野は、少女が自分に安易に背中を預けている、と言った。 しかしそれは、奇野が自分の前を歩く少女の行動に完全に追従しているといってもよい形である。 行動だけではない。 協力という言葉にどれほどの打算がこめられているのか理解していたはずの奇野が、少女の言葉で安易に「組まされる側」に回ることを 良しとし、少女と出合ったときには確実に警戒心を抱いていたはずの奇野が、ゲームのバランスを問題にした先の会話において、 少女が自分たち、プロのプレイヤーと同等の力量を有しているという可能性を完全に失念してしまっている。 彼――奇野頼知は、自分が既に目の前の少女にすら飲み込まれつつあることに、まだ気づいていない。 ◇◇◇ 「なんだ――あれ」 麓まであと数分もかからないというところで、奇野は少し離れたところにある、細く背の低い竹が密集したようにして生えている 竹藪の中に、隠されるようにして置かれている何かを見つけた。 「あら、この距離からもう見えますか。目がいいんですね、奇野さん」 ビタミンAは豊富に摂ってるんでね――奇野は冗談めかしてそういった。 見えたとはいっても、この暗さの中では、さすがにそれが何なのかまでは判断できない。 少女がそれを隠している竹藪をかき分けるところに至って、ようやく奇野は、それが何なのかはっきりと見ることができた。 それは一台のジープだった。 アウトドア用だと一目でわかる、この竹藪に停められているのが不自然なほど豪胆なデザインのジープ。 運転席を見ると、そこには鍵がささったままの状態になっている。 少女はジープの窓をぽんぽんと叩いた。 「裏技とまではいきませんけど、まあ、隠しアイテムといったところでしょうね」 奇野はジープと少女を交互に見つめた。 裏技。 隠しアイテム。 まさか、こんなものが本当にあるなんて―― 「そういえば奇野さん」少女はジープの後部座席のドアを開きながら言った。 「山頂で私が言ったドラゴンボールのたとえ話、覚えていますか? 願いがひとつというなら、ポルンガでなく神龍だと言う話」 またか。奇野はそう言いそうになるのを内心で思うに留めた。 どれだけドラゴンボールが好きなのだ。 「神龍は叶えてくれる願いはひとつだけですが、一度に多人数の人間を生き返らせることができる。ポルンガは三つの願いを 叶えてくれますが、ひとつの願いにつき、生き返らせることのできる人間は一人だけ。そういう設定でした。 しかし魔人ブウ編において、ポルンガも一度に多人数の人間を生き返らせることができるようにパワーアップされてしまっているんです。 ナメック星人の手によって」 それがどうした、木野は思った。だから言った。「それがどうした」 「おかしな話ですよね。神と同等の存在であるはずの神龍やポルンガが、パソコンのOSをバージョンアップでもするかのように どんどん便利にされてっちゃってるなんて。確実に人間の命の重さを念頭に置いたはずの設定なのに」 「ご都合主義もほどほどに、ってことか? お嬢ちゃん」 「神なんてその程度、ということですよ、奇野さん」 少女は奇野に手を差し伸べてきた。握手を求めてきたわけではない。奇野は少女の意図を察し、右手に持っていた荷物を少女に差し出した。 荷物、といってもディパックではない。 奇野が今まで、山道の中で引きずるようにして運んでいた、それ。 それは人間だった。 少年と呼べるくらいの年齢にみえる風貌。 敏捷そうな長い足。 服装は作業服らしき、緑色のツナギ。 端正なその顔からは、完全に血の気が失せてしまっている。 口元からわずかに漏れる呼吸音で、かろうじて少年が生きているのが判断できるほどに。 少女は奇野からその少年を受け取ると、作業服の襟首をつかんで「よいしょ」と気合いを入れつつ、少年をジープの後部座席に放り込んだ。 「さて、奇野さん」ジープの後部座席のドアが閉められ、代わりに助手席のドアが開かれる。 「とりあえず私たちがすべきことは情報収集ですが、それに専念するというわけにも行きません。既に私たちより積極的な行動に 移っているプレイヤーもいるはず。警戒することも必要ですけれど、そういうプレイヤーに対してこそ、先手をもって 制していかなければなりません」 「言われるまでも」 「幸い『情報』に関しては、私たちは一歩先行していますからね」 少女は自分のディパックを背から下ろした。 「ドラゴンボールの世界では、ほとんどの戦いにおいて物を言ったのは当然のごとく戦闘能力。しかしドラゴンボール収集の クエストにおいては、重要なのはやはり情報だった。ブルマさんは本当に有能な技術者でしたね」 またもそんなことを言い、少女はディパックの中身をひとつ取り出した。 「………」 ドラゴンレーダー、ではあるまい。 しかしその形状は、限りなくそれを髣髴とさせる。 緑色の画面の中央部に、小さな光点がふたつ灯っているのが見える。それが何を示しているのか、確認することすら余計だと奇野は思った。 今のところ、このエリアに他の参加者はいないようですね――そう言って、少女はディパックを背負いなおした。 「生きるためには生き残ること。ここが戦場だというのなら、生き残るために戦いましょう。 たとえ舞台が神の手の上だったところで、たとえ相手が魑魅魍魎の集まりだったところで――」 少女は、鋭利な日本刀のような笑みを浮かべた。 「私の名前は萩原子荻。正々堂々手段を選ばず真っ向から不意討って御覧に入れましょう」 奇野は少女のその笑みに気を取られ、少女が何を呟いたのか聞いていなかった。 【1日目 黎明 雀の竹取山 B-8】 【奇野頼知@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 とりあえず生きることが優先。そのためには誰でも殺す。 1 今のところは、少女の示すとおりにしておく。 【萩原子荻@戯言シリーズ】 [状態] 健康 [装備] 簡易レーダー(『生存者』の首輪に反応。同エリアにいる参加者の位置を示す) [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) [思考] 基本 生き残るために、常に最善の策を考えておく。 1 情報収集を優先。特に参加者に関する情報がほしい。 2 今のところ、一番警戒すべきなのは目の前の「奇野」。 3 『彼』が参加しているかどうか気になる。 「裏技」「能力の制限」に関しては、実際は可能性のひとつ程度にしか考えていない。 「クビツリハイスクール」時点の萩原子荻。 【石凪萌太@戯言シリーズ】 [状態] 意識混濁 [装備] なし [道具]支給品一式、ランダム支給品(1~3) (現在は子荻が所有) [思考] 意識混濁のため思考停止中 005← 006 →007 ← 追跡表 → ― 奇野頼知 ― ― 萩原子荻 ― ― 石凪萌太 ―
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ラクレイジさんが入室しました ラクレイジ- ((【転移】 23時 セントラ地方セントラル喫茶 公園も喫茶も人気ナス 【設定】 ラクレイジ- (喫茶にて一人 ラクレイジ- ……… ラクレイジ- (赤ワインを飲み、窓の外を眺める ラクレイジ- 誰も居ない、か… ラクレイジ- つまらない街だ…こうして私がわざわざ出向いているというのに… ラクレイジ- (赤ワインを一口 ラクレイジ- つまらない…つまらない街…そう…なんと言ったかな… ラクレイジ- K…と言ったかな… ラクレイジ- アレが宣戦布告をした街も…ココだったかな… アクトさんが入室しました ラクレイジ- (ワインを一口 アクト- (カランコロン アクト- (窓際席へ ラクレイジ- (木製の無骨なテーブル、その上に置かれている赤ワイン、食事の品は無く、4人席に一人。 そんなラクレイジの席 ラクレイジ- …、(移動するアクトを目で追う ラクレイジ- …(「学生か…」 アクト- (席に着きカフェラテをオーダー アクト- ふぅ…(襟の止め具を外す アクト- (学校から直で帰らなくなったな…最近 ラクレイジ- …(「やれやれ…ようやく人が現れたと思えば… ラクレイジ- …(「何かの達人でも無く…一般の学生…男性… ラクレイジ- 救いようが無いほどつまらない人間だな…(ワインを一口 アクト- …(まぁそれも、最早必要は無いか…? アクト- (最近は随分と静かだしな……(視界の隅でラクレイジを見遣り ラクレイジ- …(「私を見たな…密かに…」(手だけでウェイターを呼ぶ アクト- (緩やかな失敗だったな……見せしめに誰か討伐できればと思ったが ラクレイジ- …(「警戒? そうだろうよ…貴様もこの喫茶の噂ぐらいは聞いているんだろう?」 アクト- (…いや、平和ならそれで良い ラクレイジ- …(ウェイターにワインを注がせる ラクレイジ- …(「いや、平和で良い訳が無い…」 ラクレイジ- …(ワインを一口 ラクレイジ- …(「噂が正しければ…貴様が生き残り、学校帰りに通うほどの環境ではない… アクト- …(戦争が人を英雄にするとは言ったものだな… ラクレイジ- …(「ならば偽りの一般人…達人…能力者…もしくは噂そのものが偽りなのか… ラクレイジ- 確かめるか…(「噂が偽りならば、これ以上の滞在は無用… ラクレイジ- (席を立つ アクト- …、… ラクレイジ- (ウェイターを手で呼ぶ ラクレイジ- …(ウェイターにワインとワイングラスを持たせて、アクトの席まで二人で歩く アクト- (ん、…? ラクレイジ- …待ち人かね?(アクトに尋ねる アクト- …いえ、小休憩ってところです(カフェラテ一口 ラクレイジ- ご一緒しても? アクト- …未成年の僕で宜しければ。(カップハンドルに指先を絡めながら ラクレイジ- 何、年齢は関係ない… ただ話し相手が欲しいだけなんだ…(前に座る ラクレイジ- …(「この前の奴のように…突然襲い掛かってくるほど愚かでは無さそうだな… ラクレイジ- (ウェイターにワインを注がせる アクト- (接触を図ってきた…戦闘快楽者か? ラクレイジ- 私はラクレイジと言う…君の名は? アクト- (ただのそれならあしらえば済むが…… アクト- アクト。アクト=シュタットフェルドです(カップを置く ラクレイジ- そうか、アクト君か…(ワイングラスを持ったまま ラクレイジ- (ワインを一口 ラクレイジ- アクト君は…この店にはよく来る方かい? アクト- (コイツは……厄介そうだ アクト- …稀に(理解は出来ないが……恐らく ラクレイジ- 稀に、か… アクト- (本能的にそう感じたのか、理詰めの俺が アクト- (…まったく酔狂な話だ。…だが、直感は軽視できないな ラクレイジ- 私は今日が初めてだが…噂とは少し違うなぁ…(店内と窓の外を軽く見やり アクト- 噂? ラクレイジ- そうだよ…"戦闘喫茶"…だったかな? アクト- (…此処に居る時点で能力者なのは判ってる 問題はどんな能力なのか、だ アクト- ああ、、エンドレス、バトルっていう店名ですしね ラクレイジ- 異能の魔人や、頂点を目指す人類や、生み出された戦闘生命…だかなんだかそういうものが戦っているっていう… アクト- ……(……読心の娘のコトもある。能力でコンタクトを取られると厄介だな アクト- ええ、そうですね。ここではよく闘っている人が居ますよ ラクレイジ- 君も…その一人かい?(「愚直な質問だが…これでいい… アクト- 度々物は壊すし公共施設は破壊する アクト- 普通の一般人はまるで立ち寄らないから殺風景なものですよ。 アクト- 僕は……生憎剣とか魔法とか振り回すようなタイプじゃないんで アクト- (窓の外を見遣ると、前髪でラクレイジからアクトの瞳が見えなくなる ラクレイジ- そうか… ラクレイジ- (ワインを一口 ラクレイジ- 巻き込まれたりしないかい?(ワイングラスを持ったまま アクト- (――「告げる セット 」――(瞳孔が縦に割れる アクト- (――――(何かを召還するが、何も視界的に変化は訪れない アクト- 今のところは奇跡的に生きてます(戻った瞳でラクレイジを見遣り ラクレイジ- そう…"キング"の言っていた事が守られているわけではないんだな… アクト- キング……? ラクレイジ- 討っていいのは…覚悟が…なんだったっけかな… アクト- 討たれる覚悟がある者だけ――でしたね ラクレイジ- そうだったな…君も聞いていたか… アクト- 一時期ながら少し話題にもなりましたから ラクレイジ- … ラクレイジ- (ワインを一口 ラクレイジ- …キングは…いや、… ラクレイジ- "キング"という者について…君はどう考えているのかい? アクト- ……… アクト- 我侭な子供、かな ラクレイジ- ほう…面白い意見だな… ラクレイジ- 続けてくれよ、(ワインを置いて アクト- 別に、政治家がよく言ってることですよ アクト- 自分の意見 ワガママ を通したいから、権力 チカラ を使って言葉を振り翳す アクト- 皮肉な意見ですけど…子供なんですよ、賢くないと言うか ラクレイジ- 手厳しいな…"彼"は君達を守ろうとしているのだろうに… アクト- 確かに彼の意見には同意できる者がありますね アクト- けれど、言ってしまえばそれも勝手な話。 ラクレイジ- "彼"のわがまま、と? アクト- ……ワガママだと決め付けるのも、僕のワガママですけどね(肩を竦め アクト- まぁ、一般の人たちを巻き込むのはおかしいとは思います。 ラクレイジ- それならば…"彼"が正しいんじゃないのか? ラクレイジ- 君も巻き込まれたくはないだろう? アクト- …そうですね。巻き込まれたくは無いです アクト- 騒ぎを引き寄せる人達には責任を取って欲しいという気持ちもあります。 ラクレイジ- それでも"彼"を否定するのか? (少しだけ、口調が強くなる アクト- …否定はしません。 アクト- というか、行動に起こしません。 ラクレイジ- … アクト- それが一番賢いですから(カップを唇に運ぶ ラクレイジ- (同じくワインを一口 ラクレイジ- …(「愚かだ…殺したいほどの無能… アクト- ずるいと思いますか? ラクレイジ- さあ…難しいな…(「ずるい? その言葉に何の意味がある? ラクレイジ- ただ、"キング"が目的を達成してくれれば… アクト- 何をしたって変わらないのが判ってますから。ここに来る様な人たちに アクト- 何もしなければ、甘い汁は吸っておけば良いし、クレームは言ってもどうしようもない。 ラクレイジ- そうか…(「酷い…こんな奴らを守りたいのか…キングは…全く、理解に苦しむ… アクト- 自ら好転はしませんが、悪化はしません アクト- 弱いから縋るんです。結局何も変わらなくても保守派で居続ける ラクレイジ- …(「ほら、出た…"悪"だ… アクト- 人々は弱い、だから狡猾に生きているんです。 アクト- 此処の人たちはそれを悪く言うでしょうね ラクレイジ- …(「狡猾…? 善悪を考えるお前が…正気か? アクト- けれど僕は逆に問いたい。 ラクレイジ- …何を? アクト- 胸を張れてるのは、その剣のお陰なんでしょう? って(静かな目線で アクト- 否定出来る人……はたしてどれだけ居るでしょうね ラクレイジ- さあ、な…(「何を言っているんだ…こいつは… ラクレイジ- …(「一般人というのはみんなこうなのか…? それともコイツが狂っているだけか…? ラクレイジ- …(「力があれば…剣があれば強いのは世の必然ではないか… ラクレイジ- …(「なのにコイツはそれを認めない…かたくなに否定し…力を求めもしない… アクト- まぁ……人々なんて実際その身に起きないと関心なんて示さないんでしょうけど アクト- それが世の中の一般論ですよ、僕のフィルターはかかってますけど ラクレイジ- …(「自分の利益になる事さえも、"善悪"なんていう極度につまらないものに縛られて手にできない… アクト- 、世論云うほどの歳でも無いんで軽く流してくださいね ラクレイジ- いやいや、興味深い話を聞かせてもらったよ…その年で君のような人が居るとはね…(「全くだ… ラクレイジ- …(「非力を嘆き、力を欲さず、助けをも見送る…なら貴様はいつ動く? ラクレイジ- …(「狡猾に生きている…馬鹿が理想を語るな…お前は何一つ行動していないだけだろう? アクト- ……(随分と話した気がするな……全く我ながら厄介な性格だ アクト- ラクレイジ氏は、どう思うのですか? ラクレイジ- "キング"について…かい? アクト- …… アクト- ………(ああ……そしてお前は何者だ? ラクレイジ- …(「さて、この愚者にはなんて語るべきか… ラクレイジ- …(「頭が回っていて、話も出来ていて、賢い…だが、超越的なほどに愚か… ラクレイジ- …(「私と全く話が合わない…こんな奴と意見交換してなんになる? ラクレイジ- …そうだな、(「適当に流すか… ラクレイジ- 私は一般人には手を出さないし…私と同じ魔人能力者との戦闘でも、命を取り合うような事はしないな… アクト- そうですか…(ここまで話したのも妙だ(自分だけに見えるように掌を見遣る アクト- (掌に点滅する、極薄の影の膜 ラクレイジ- 正直言って…一般人を巻き込み喰らう魔人に良い印象は無いな… アクト- (干渉防御まで告げて具現化させた。 ラクレイジ- "キング"賛成派、といったところかな? ラクレイジ- …とはいっても、実際"彼"がどのようにその世界を構築していくのかまでは見ていないからな… ラクレイジ- "彼"の方法が『間違っている』と思ったら、止めに入るさ…(「どうだ? ラクレイジ- …(「貴様の望んだ幸せな回答か? 剣を持つ私にはこうしていてもらいたいんだろう? アクト- ……そうですか(能力でも察知したかのような俺の行動……これは予防でも読み合いでも無い アクト- (言っていることも“俺”にとって有害ではない。 アクト- (そう、コイツは俺にとって敵ではない言動をしている アクト- ……そういう考えだと、何だか安心しますね ラクレイジ- …(「納得したか… 『正しい』とか『間違っている』とかそういう考えが気に入ったのか? ラクレイジ- …(「それとも自分の身に危険が無い事に安堵したのか? アクト- (だが、端緒も何し俺を行動させた。 ……ラクレイジ アクト- ((無しに アクト- (貴様を警戒しろと俺の直感が そう云っている ラクレイジ- 私の"武器具現"で君を襲うつもりは無いから安心してくれ。(そう言うと、片手を通路側に伸ばし ラクレイジ- (赤い光と共に槍を具現化 アクト- (……それともう一つ ラクレイジ- コレは…自己鍛錬とショーの時だけ使う物だよ。(槍を消す アクト- (お前の、俺を見る目が気に喰わないな アクト- (一般を装っているが、見下しの目線には腹が立つ アクト- …そうですか。それだとひとまずは安心です アクト- 、とこんな時間か。長居しちゃったな ラクレイジ- すまないな、付き合わせてしまって…(「やっと帰るか… アクト- (だが此処で引っ掛かりはしない。正体を隠すため……否、 アクト- (席を立つ アクト- それじゃ、機会があればまた(軽く会釈し、外へ ラクレイジ- (目で挨拶し、見送る アクト- (――否、これは安いプライドだ。 ……嘲笑うのは俺だとなッ アクトさんが退室しました(2007/03/22 03 13) ラクレイジ- … ラクレイジ- (ウェイターを呼んでワインを注がせる ラクレイジ- (ワインを一口 ラクレイジ- 不味い… ラクレイジさんが退室しました(2007/03/22 03 18)