約 18,691 件
https://w.atwiki.jp/21silverkeys/pages/36.html
運命の呼び声~Call of Fate~◆q4eJ67HsvU 探索者(マスター)たちよ。そして銀鍵の守り手(サーヴァント)たちよ。 運命の呼び声の時ですと、シオン・エルトナム・アトラシアの姿をした者は、そう言った。 ▼ ▼ ▼ ――すべてを始めるにあたってまず、このアーカムという街についていくつか語っておく必要がある。 マサチューセッツの州都ボストンより北東20マイル、ミスカトニック河の下流に位置するこのアーカムは、 港町として知られるキングスポートから程近くに位置し、悪名高い魔女狩りの街セイラムからもまた近い。 事実、17世紀末のセイラム魔女裁判を逃れた魔女共がアーカムに流れ着き、隠れ潜んでいたという噂もある。 二人の魔女のうち一人は行方をくらまし、もう一人は街の住民によって縛り首にされたと言われるが、今や知る者は少ない。 ともあれアーカムという街の起こりは概ねその時期であり、現在のフレンチ・ヒル周辺が最初の集落だったと言われている。 港町としてのアーカムの発展は近郊のキングスポートの影に隠れて遅々として進まなかったが、 アメリカ独立戦争においては私掠船の停泊地として、また長距離交易の中継港として、そこそこの賑わいは見せた。 戦争が終わると貿易拠点としてのアーカムの価値は地に落ちたが、しかしアーカムの真の発展は19世紀に入ってからとなる。 海上交易が廃れることを予見した人々によって繊維工場が相次いで建てられ、農業や貿易の衰えと反比例するかのように工業が盛んとなった。 新聞社が設立され、電話線が通り、南北戦争の後にはガス灯が灯り、市警察が設立され、タクシーが走るようになっていた。 そして何より、この街を支えているのはミスカトニック大学の存在だった。 18世紀末に貿易商の遺産と蔵書を元に設立されたこの大学はアーカムの中心として成長し、年々その規模を大きくしていった。 蔵書の充実が魅力となってか市外から名のある学者たちが続々と集まり、ミスカトニック大学の教授陣に名を連ねた。 19世紀になってニューイングランド一帯を襲った景気の停滞も、ことアーカムにおいては大学の存在がその影響を和らげた。 ミスカトニック大学を中心とした人の往来が、閉塞した地方都市にありがちな行き詰まりを打破したのである。 今日に至るまでミスカトニック大学の名は広く知られ続け、アーカムもまた大学街として隆盛を誇っている。 しかし、このアーカムという街の底には、未だに仄暗い何かが横たわっているように思える。 旧い魔女狩りの時代から続く陰鬱な空気は、アーカムが経済的に発展した今なお、石畳の下で息づいているのだ。 曰く、ミスカトニック大学の大図書館には、禁じられた魔導書の写本が眠るという。 曰く、かつて書庫に忍び込もうとして番犬に噛み殺された青年は、人ならざる異形であったという。 曰く、魔女の隠れ家と伝えられる場所で寝泊まりしていた学生が、何者かによって心臓を抉り取られて死んだという。 曰く、街の郊外に存在する廃屋にはおぞましく飛び跳ねる名状しがたいものがおり、近付く者を襲ったという。 曰く、呪われた漁村インスマウスからこの街に来た者どもは、みな一様に魚めいた異相をしていたという。 曰く―――― いずれもただの風聞に過ぎない。だが、これ以上語る必要もないだろう。 このアーカムで真実に近付くことは、この世ならざる神秘にその身を晒すことに他ならない。 深淵を覗き込むのならば、心せよ。誰もお前の精神を守ってはくれないのだから……。 ▼ ▼ ▼ 【 01: Library Use 】 ミスカトニック大学キャンパス内、大学図書館。 今しがた架空都市アーカムの歴史に関する本を読み終え、《鷺沢 文香》はほうと一息ついた。 「伝説に満ちた街、その裏側に潜むもの……このアーカムは、ただの舞台装置ではないのでしょうか」 文香は、自分がこの場所にいる意味を今までずっと考え続けている。 ただの偶然で片付けてしまえば気が楽なのかもしれない。それでも、思案を止められないのが文香の性分だった。 銀の鍵。聖杯戦争。サーヴァント。そして万能の願望器。 自分が巻き込まれたそれらについて何も知らないままでは、きっと何も出来ずに終わってしまいそうで。 ……終わる、というのが自分の死を意味することを思い出し、文香は肩掛けの裾をぎゅっと掴んだ。 未だに戦争を実感できたとは言いがたい文香にとっても、死を想像するのは恐ろしい。 きっとこの街で文香が命を落としたとして、誰一人として悼んではくれないだろう。 家族も、やっと打ち解けてきた事務所の仲間も、そして自分を新しい世界に連れ出してくれたプロデューサーも。 文香にとって大切だと思える人たちの誰もが、文香の死にすら気付かない。 こんな見知らぬ街で、孤独に、ただ孤独に、ひとりで……。 「アーチャーさん……っ」 文香の漏らした呟きに答えるように、叛逆者の英霊《ジョン・プレストン》が実体化した。 まるで機械のように冷徹な男。文香は未だに彼への潜在的な恐怖心を拭い切れていない。 それでも、彼が詩の美しさに揺さぶられるような感受性を持つこともまた分かっているから。 その感受性が自分と彼との縁だったのではないかと、そう感じているから。 彼がいれば自分は孤独ではないと、ひとりぼっちではないのだと、そう思おうとした。 「……書物もいい。だが、周りにも目を向けろ。もうじき、始まるぞ」 プレストンは多くを語らない。その言葉は常に端的だ。 ゆえに人一倍内側に考えを篭もらせるタイプの文香は、無意識に言葉の裏を考えようとしてしまう。 始まるとは無論、聖杯戦争のことだろう。いよいよ役者が出揃い、戦いの幕が切って落とされる。 知識を得るのがいかに大事なことでも、いずれ自分の世界で思案を巡らせるだけではいられなくなる。 (私ももっと、他の人と関わるべきなのでしょうか) 思えばミスカトニック大学に「通い始めて」以来、文香はあまり他の学生と話した記憶が無い。 人との関わりがなければ、このアーカムで埋もれてしまいそうな、そういう感覚がある。 試しにこの大学図書館に通う学生とでも、話をしてみるのもいいのかもしれない。 そういえば、この図書館には講義にも出ないでずっと入り浸っている学生がいると聞いたような気がする。 あだ名は確か、図書館の魔女――。 ▼ ▼ ▼ 【 02: Natural History 】 表面上は魔術とは無縁の生活を送っているはずなのに、いつの間にか魔女と呼ばれるようになってしまったことについて、 正直なところ《パチュリー・ノーレッジ》はかなり辟易としている。 これでも幻想郷と勝手の違う近代社会へ溶け込もうと、最低限の注意は払っているはずなのだが。 服装だっていつもの装束では目立ちすぎると考え、自分なりに現代風の格好を揃えてみたのだ。 いくら現代のアーカムについての知識は持っているとはいえ、流行風俗についてはどうしようもない。 まぁ、少なくとも目をつけられなければいい。まだ目立つには早過ぎる。 この聖杯戦争において、自分の正確な立ち位置を定めていない今のうちは、まだ。 「ったく、ようやく戦の臭いがしてきたってのに、辛気臭い顔してんじゃねえよ」 「辛気臭いは余計よ、セイバー。貴方の戦馬鹿に付き合わされたら、こっちの身が持たないわ」 まだ早すぎる、と言っているのに。 パチュリーのサーヴァント、《同田貫正国》は好戦的な姿勢を一向に崩そうとしない。 武者震いというのだろうか、近付く戦いの予感に沸き立っているのがそばにいるだけで分かる。 刀剣の付喪神のようなものなのだから、武者震いというのもおかしな話だが。 「時が来れば戦わせると言ったでしょう。今は待ちなさい」 今のパチュリーは魔術師というより猛獣使いだ。 目を離せば鎖をちぎって獲物に飛びかかりそうな獣を、なだめすかして飼い慣らしている状況。 猛獣が自分にとりあえずは忠実なのが、救いといえば救いだが。 (戦うことだけがプライド、か。魔法使いとはつくづく無縁の生き様ね) 彼の在り方を受け入れるには、まだしばらく時間が掛かりそうだ。 だが、そんなことは関係ない。ここが何処であろうと、相手が誰であろうと。 パチュリー・ノーレッジのプライドが魔術にある以上は、当面は魔術師の流儀でいかせてもらう。 ▼ ▼ ▼ 【 03: Pilot 】 戦いの中で、己の力を示すこと。 それこそが、《クリム・ニック》にとってのプライドである。 宇宙世紀から幾千年の時をおいたリギルド・センチュリーにおいても、モビルスーツパイロットの矜持は変わらない。 もちろんそれは、モビルスーツを降りて本来の世界ではまったく無縁だったはずの戦争に加わることになってもだ。 聖杯戦争。万能の願望器を賭けた、魔術師同士の決闘儀式。 その手のオカルティズムなるものに対してクリムは造詣など深くはないが、だからこそ奮い立つ。 トライする。チャレンジだ。運試しに賭けてみる。 クリム・ニックはそういう事柄に命を懸けられる男である。 「……相変わらず、呑気な様子ね。緊張感というものを教わらなかったのかしら」 「緊張? していますよ。私は常に緊張を保ち、それと同時に緩和を実現しているのだ。 それが戦場に立つ者の流儀というもの。そうでしょう? 戦姫さま」 「否定はしないけれどね。ある意味大物なのかしら、まったく」 「そうとも。私は大物なのです。稀代の傑物と呼んでいただいて構わない」 そう言うと、槍の英霊《リュドミラ=ルリエ》は呆れたと言わんばかりに首を振った。 決して関係が険悪なわけではないのだが、どうも変な奴だと思われているようなのがクリムには不満である。 とはいえ、それも戦場に出る前までのこととなるだろう。 モビルスーツの操縦桿を握らなくとも、天才と呼ばれるに足る男であると証明するまで。 「戦姫さまにも近々ご覧に入れましょう。この天才クリムの目の冴える采配ぶりを」 「はいはい、期待はしておくわ」 「これはつれない。だがこのクリム・ニック、大統領の息子という生まれで評価されてきたわけではない。 この血ではなく己の実力で名を挙げて来たのだ。それはいずれ分かっていただく」 自信満々に言い切るクリムに、リュドミラは何処か思うところのあるような視線を向けた。 ▼ ▼ ▼ 【 04: Credit Rating 】 生まれひとつで、人を取り巻く世界は何もかもが一変してしまう。 みすぼらしいボロを纏った自分と、きらびやかなドレスを身につけたかつての親友。 認められるはずがない、そんなことは。 私は「選ばれた側」なのだ。「ドレスを身につける側」でなければならないのだ。 「その通りでございます、プリンセス・ローズマリー」 「あなた様こそが本当の姫です、プリンセス・ローズマリー」 「真に高貴な血統はあなたから生まれるのです、プリンセス・ローズマリー」 自分を称える言葉と共にかしずく者達を《ローズマリー・アップルフィールド》は見下ろした。 少なくともこのアーカムにおいて、ローズマリーはみすぼらしい孤児ではない。 歴史ある屋敷に住み、綺麗な服を着て、豪華な食事を口にする。 まるで貴族のようだ。まるで。 「王子様?」 「ここにおります、プリンセス・ローズマリー」 銀髪をなびかせて進み出る、この館で誰よりも美しい剣士。 己のサーヴァント、《グリフィス》の声を聞くたびに、ローズマリーは陶酔感すら覚える。 この完璧な殿方が、自分のためだけに尽くしてくれるという事実。 実のところ、この屋敷も、服も、食事も、全て彼の宝具『鷹の団』の一員となった者達に与えられたものに過ぎない。 しかし、グリフィスだけは別だ。彼だけは本当にローズマリーが所有しているのだ。 これこそがプリンセスの特権なのだ。 「私、この借り物の暮らしじゃ満足できないの」 「分かっております。あなたに相応しいのは、あなたの為だけに造られた王国」 「なら、貴方のその美しい剣で、私の夢を遠ざける人達を皆殺しにしてみせて?」 「仰せのままに。我が鷹の団が、必ずやプリンセスの敵の在り処を暴き立てましょう」 その頼もしい言葉に、ローズマリーは頬が熱くなるのを感じた。 この忠実な騎士は、自分のためなら誰だって殺してくれるだろう。 そんな男を従える自分は、やはり「選ばれた側」の人間なのだろう。 ――今この瞬間もグリフィスが嗤いを噛み殺していることに、ローズマリーは気付かない。 ▼ ▼ ▼ 【 05: Law 】 悪意に満ちた笑みに、《アイアンメイデン・ジャンヌ》は不信の眼差しでもって応える。 世界に平和をもたらすために聖杯戦争を戦い抜こうとしているジャンヌにとって、眼前の存在はあまりに耐え難い。 傲岸不遜の極みにして、残虐非道の化身たるもの。 このような男が『神』を名乗ること自体が、法神を従えるシャーマンであるジャンヌには許せずにいる。 「ヤハハハ、随分と嫌ってくれるではないか。この神を率いる栄誉に浴しているのだ、誇るべきだぞ聖・少・女」 「……戯言を。私のために力を尽くす気など無いのは初めから分かっています、ライダー」 「貴様のためだろうがそうでなかろうが、何も変わらん。我は神なり、神の前に立つ者はただ滅ぶのみ。 最後に立っているのが我らであれば、どのみち聖杯は降臨し願いは叶う。ヤハハハハ、違うか?」 違いはしない。しかし、それとこれとは話が別である。 確かにこのライダー――《エネル》は、此度の聖杯戦争において最強の英霊の一角だろうとジャンヌは考えている。 自然の猛威そのものを宝具として持つこの男は、その過剰なまでの自信に相応しい戦果をもたらし得るだろう。 だが、このような英霊に――悪意に満ち満ちた「神」に、自分の運命を預けることが出来るだろうか? 「まあいい。貴様の下らぬ令呪で気晴らしも出来ずにいたが、これでようやく興も乗るというもの」 「……殺しを愉しむなと言ったはずです」 「愉しむのはついでだ。魔術師だろうがサーヴァントだろうが、この神・エネルに無礼を働く以上は当然死んでもらう……。 どのみち殺すならば、愉しまずば損というものではないか。なに、木っ端英霊ごときでも道化役は務まる」 「……………………っ」 ジャンヌは奥歯を噛み締めた。 耐えなければならない。法の秩序があまねく行き渡る、完全平和の世界をもたらすために。 聖杯戦争集結まで耐えて、耐えて、耐えて……全ての縛りから解き放たれるであろう、聖杯降臨のその時には。 必ずやこの神を名乗る不遜な男に、法神シャマシュの名において正義の裁きを下してみせる。 だがそれまでは――この男を、上辺だけでも神と認めなければならないのか。 ▼ ▼ ▼ 【 06: Occult 】 神様は信じるものでも、すがるものでも、ましてや畏れるものでもなく、ただ心の中に想像しては楽しむもの。 つまるところ《神崎蘭子》にとっての神とは、今までずっと信仰とは遠い概念だった。 神の実在を心の底から信じなくても生きていけるし、だからこそ光と闇の夢想に遊ぶことも出来たのだ。 いるかいないか分からない。でも、いたらちょっとだけ楽しいかもしれない。 空想を好む内気な少女の、それが神に対する認識だった。 だから、太陽神の血を引くという大英雄《カルナ》を実際に目の当たりにして、蘭子は内心の戸惑いを捨てきれずにいる。 神の子がいるのなら当然神様も、もしかしたら魔王もいるのかもしれない。 遠い世界の話だと思っていた存在が、自分と地続きのところにいるという事実。 確かに存在するのならば、それはきっと、確かに向き合わなければならないもののはず、なのだけれど。 「どうした、主。いつもにも増して顔色が悪いぞ」 「わ、我が白き肌は生まれ落ちし刻よりのもの! 決して心の内なる泉に翳りが生まれるなどということは――」 「そうか。ならいいが」 「…………うぅ」 率直に言えばまだ分からないのだ、彼のことが。 太陽神スーリヤの息子、不死身の大英雄カルナ。 彼はあまりにも、己を語らない。今だって、自分を心配してくれたのか、ただ気になったことを口に出しただけなのかすら分からない。 蘭子も、自分の気持ちを人に伝えるのが苦手だ。尊大な態度のポーズは、弱気な自分を奮起させるためでもある。 だからこそ、自分の気持ちが伝わらないのが、彼の気持ちが届いてこないのが、怖い。 カルナが自分を主として認めてくれている、そのことだけは確かだ。 ならば蘭子も、この神代の大英雄の主として相応しいように振る舞い、彼の期待に応えないといけないのに。 「我が力は未だ翼を広げぬ雛……太陽を纏って羽撃くにはあまりに幼い、か……」 「オレの鎧のことなら案ずるな。常時展開してはお前の魔力では保つまい、切り札として留めおく」 「あぁっ、太陽を纏うとはそのような意味では……なくもない、けど……」 その冷徹にすら見える姿の裏で何を考えているにせよ、彼が自分を気にかけてくれているのははっきりと理解できる。 だったら、成長しなければいけないのだろう、きっと。 それはきっととても辛く、苦しく、困難な道のりなのかもしれないけれど。 神崎蘭子はアイドルだ。だからこそ、夢は夢で終われない。 ▼ ▼ ▼ 【 07: Hide 】 夢に潜る魔を殻として生まれ出で、夢と現のハザマでたゆたうように存在するもの。 オリジナルの夢魔との区別を考えるのならば彼女のことは《白レン》と呼ぶべきだが、ここは単にレンと呼ぼう。 彼女はここしばらく、白猫の姿をとってアーカムの市街地を、商店街を、裏路地を駆けていた。 猫の姿のほうが都合がいいというのもある、しかしそれだけが理由でもない。 レンは今、己のサーヴァントの宝具の影響を受け、自分の世界「真夏の雪原」の中でしか力を振るえない。 アーカムの通常空間では、白の少女の姿を取ることすら一苦労だった。 『首尾はどうだい、マスター?』 「良くも悪くもないわね。そう簡単に尻尾を出す馬鹿ばかりではないか」 『そんなこと言って、こないだ一組仕留めたばかりじゃないか』 「あれはたまたま……というより、既に淘汰が始まっているのかも」 『淘汰?』 「私達以外にも動いてる奴らがいて、実力のない連中はあらかた狩られた後、ってことよ」 霊体化して付き従うサーヴァントに、猫の姿のままで言葉を返すレン。 キャスター――《ドッペルゲンガーアルル》はふーんと気のない返事をし、それから思いついたように言葉を足した。 『あれ、良くも『悪くも』ないっていうのは?』 「いくつか気になる噂は耳にしたわ。あとで教えてあげる」 『あはは、流石に猫に聞かれてるとは思わないだろうね。でも、噂かぁ』 「あら、噂は馬鹿にならないものよ? 他ならぬタタリから生まれた私が保証してあげる」 レンは、自分達に正面切って他のサーヴァントとやり合える力があるとは思っていない。 アルルの魔術師としての能力がいくら高かろうが三騎士には通用しないし、自分の力だって今やこのザマだ。 だが、いくらでもやりようはある。 夢魔の力。タタリの力。あらゆる認識を曖昧(ファジー)にするという、ドッペルゲンガーの力。 邪道こそが我らの正道。相手の裏を掻き、隙を潜り、真夏の雪原に引きずり込んで始末してやる。 『そーいえば、マスターが聖杯に懸ける願いってボク聞いたっけ?』 「はぁ? とっくに話したじゃない、のうみそぷーは貴女じゃないの?」 『あーっ、ひどいなぁ』 「もうこれっきりだからちゃんと聞きなさい、私はね――」 ひとりから分かれたひとりの片割れが、ふたり並んでアーカムの街を往く。 ▼ ▼ ▼ 【 08: Listen 】 一人から分かれた二人の片割れ。 アーチャーとして現界した虚の世界の英霊《ストレングス》の出自は複雑なものだ。 このアーカムで出会って以来少なからぬ言葉を交わしたが、彼女のことをちゃんと理解出来ているのかは分からない。 もっとも、彼女にとっての自分も同じかもしれない。分かり合うというのは、難しいことだから。 「はい、一騎カレーお待たせ」 喫茶店『楽園』――アーカムの下町、リバータウンで最近評判の店だ。 商業地区から少し離れているにも関わらず客足が途絶えないのは、コーヒーや紅茶よりも名物の料理にある。 雇われ調理師である《真壁一騎》の作るカレーやケーキは絶品だと、密かな評判になっているのだ。 それを目当てに、リバータウンだけでなく河向こうの市街地からも客が訪れている。 結果、一騎は彼らの注目の的となり――否応なしに、彼らの生活を見せ付けられている。 「……このアーカムに暮らす人達にも、それぞれの暮らしがあるんだよな」 呟く。 聖杯戦争などという血で血を洗う儀式の只中にいながら、一騎は穏やかな人々の暮らしと共にあった。 最初こそはストレングスの勧めで店内の客の話に聞き耳を立て、情報収集を図ってみたのだが。 話される内容はどれも当たり前の日常のことばかりで――それが今の一騎には愛おしく、そして辛い。 友人の結婚式が近い。取引先の役員が横暴だ。次のテストのヤマはどこだろう。 ここのところ天気が悪い。このカレー美味しい。ダウンタウンで怪人騒ぎが。子育てについて悩んでいる。 隣のクラスの子に告白したい。最近暇だ、何か面白いことでも起こらないだろうか―― 平和だ。少なくとも表向きは、戦争なんて遠い世界のことのようだ。 彼らは何のためにいるのだろう。このアーカムが架空都市なら、彼らもまた他の世界から呼ばれたのだろうか。 そして架空都市が聖杯戦争のために存在するのなら、彼らの役割は目くらまし……そして、生け贄。 『一騎……』 「……分かってる、アーチャー。これはきっと、余計な感傷なんだ。でもさ」 『うん。言いたいこと、分かるよ。あの人達も、きっと……』 「ここにいたい。存在したいはずなんだ。俺が、俺達がそうであるように」 存在することの重み、そして痛み。 真壁一騎は、竜宮島を離れてなお、その頚木(くびき)から逃れられずにいる。 ▼ ▼ ▼ 【 09: Psychology 】 そこにいるのに、そこにいない。 そこにいないのに、そこにいる。 確かにそこに存在するはずなのに、その存在は何処までも虚ろで、何処までも空っぽで、何処までも「無」だ。 バーサーカーとして召喚された虚空の英霊――かつて《広瀬雄一》と呼ばれていた少年を形容する術は、それしかない。 遥か外宇宙から来たりし精神体をその身に宿し、万物を消し去る力を手にした、しかし元を辿ればただの少年。 彼の物語は最悪の災厄であると同時に、ある意味ではありふれた、存在の痛みを巡る叫びでもあった。 『――――』 彼は何も語らない。 狂化スキルによって言語能力を奪われたからなのか、もともと言葉を持たない英霊なのか。 何も語らず、何も表さず。その整った容姿からも、「虚ろ」以外の何物も感じ取れはしない。 媒介を用いないサーヴァントの召喚は、マスターとの縁によるものであることが多いらしい。 それが《木戸野亜紀》にとっては、自分でも不可解なほどに不愉快だった。 「……姿だけじゃなく、完全に私の前から消えてくれればいいのに」 こめかみに指をやり、溜め息をつく。 あの少年を見ると無性に苛立つのは、被虐体質スキルとやらのせいなのか、それともそれ以外の何かか。 夢で見た彼の過去……亜紀の過去ともどこか重なる、あの虐げられた記憶のせいか。 同属嫌悪。その陳腐な言葉が頭をよぎり、亜紀はかぶりを振ってその考えを払った。 「ただでさえ魔力消費で体が重いのに、まったく……」 非戦闘時でこれならバーサーカーの力を戦いの中で使いこなすのは困難かもしれないが、亜紀にとってはどうでもよかった。 自分はこのアーカムに聖杯を求めてやってきたわけではない。 元の世界に戻れさえすればいいのだ。文芸部のメンバーが待つであろう、あの世界に。 恭の字ならこんな時どうするだろう、と無意識に考えてしまった自分に気付き、亜紀は自嘲した。 万能の願望器を巡る聖杯戦争。 願いを叶えるための戦いの中で彼のことを考えていたら――いずれはやましい考えまで、一緒に浮かんでしまいそうだ。 ▼ ▼ ▼ 【 10: Navigate 】 《空目恭一》は、確かに親しい人間には魔王陛下と呼ばれている。 しかし、自分と契約したというこの神隠しの主犯に繰り返しその名で呼ばれると、流石に鬱陶しげな表情にもなる。 「つまり私がそう呼ぶのが不満ですのね、魔王陛下?」 「そうではない。お前が俺のことをなんと呼ぼうが、どのみち愉快なことにはならん」 「あら、それならば何がお望み?」 「端的に言おう。必要もないのに口を開くな」 「それは残念。でもね、必要と不必要の境界は曖昧なもの。分かるでしょう、魔王陛下」 「…………」 「彼女」ではないもう一人の神隠し――《八雲紫》にまともに取り合ってはいけないということは、既に思い知っている。 意味のない戯言を弄ぶことを何よりも楽しむような妖怪だ。理由を求めようとすれば余計な労力を消費するだけだ。 かといって、黙れといって黙るタマでもない……このやり取りも、もう何度目か。 「それにしても、大学生に紛れても意外とばれないものねぇ」 「別に大学側がいちいち学生のチェックをしているわけでもあるまい。図書館の稀覯書は流石に許可がいるようだが」 「欲しいなら、私が境界をいじって忍び込む?」 「どうしても必要になればな」 身分上はハイスクールの学生になってはいるが、空目はほとんどの時間をミスカトニック大学で費やしている。 知識を得るにはこれ以上の場所はない――「彼女」を取り戻すために、知るべきことは多い。 聖杯戦争に積極的に関与するつもりがなくても、いずれはそれについての知識も得る必要があるだろう。 「神隠しとしての本分を果たすのは先になりそうね。それで、魔王陛下はこれから何をするおつもり?」 「そうだな――」 そういえば、ミスカトニック大にはオカルトめいた講義をするという民俗学の教授がいると聞く。 会ってみるのもひとつの選択肢かもしれないと考えながら、空目は神隠しを引き連れて講義堂の影に消えた。 ▼ ▼ ▼ 【 11: Psychoanalysis 】 《竹内多聞》はミスカトニック大学でそこそこ人気のある講師だが、学生の熱心さがその人気に比例するとは断言しにくいものがある。 現に今日の講義に参加している学生たちも、講義でいかに突拍子もない説が飛び出すかを期待している節がある。 無論、竹内は何の考えもなしにオカルトを吹聴するつもりがあるわけではないし、不真面目な聴講者には相応の課題を持ち帰らせている。 とはいえ……アーカムに来る以前に比べて、より講義の内容が思索に寄ったものになっているのは否めない。 他でもない、竹内自身が自分の考えを纏め上げるために、講義を利用しているからでもあるのだが。 「それで、真実には少しは近づいたかね、マスター? おお、言わずとも分かる。分かるとも。 そのぶんでは遠いな、実際遠い。真実はすぐそこにあるのだ、マスター、手が届くほど近い。 しかしこのままでは5マイル先まで霧だ。私が導いてもいいが、しかし、ふふふ」 「アサシン……突然現れてまくしたてるのはやめてくれと言ったはずだ」 ……竹内にとって、講義の間はこの狂ったサーヴァントに話しかけられないで済む貴重な時間でもある。 アサシン、ニンジャ真実に辿り着いたと嘯くこの《メンタリスト》は、言葉を交わすだけで人間の精神を引きずり込む力があるようだ。 竹内にとって彼は貴重な協力者である。邪険にするつもりはない。いざとなれば彼の力を頼ることにもなるだろう。 しかし、彼の言葉に耳を傾けすぎると、自分自身の自我境界が不安定になっていくのを感じるのだ。 「私はマスターに真実に到達して欲しいのだ。何かおかしいことがありますか? ありませんね? なのに、ふふふ、マスターは私の力を使おうとしない。視界を奪えるのでしょう? 見たくないかね? 私の見ているものをマスターが見る。そうすれば真実は近いぞ。ふふふ、試してみては?」 「……遠慮しておこう」 「ふふ、残念だ。そうとも、大いに残念だとも。マスターにも私の視界を、ふふふ、いつでも言ってくれたまえ」 実際のところ、アサシンに視界ジャックを使うというのは、客観的に見れば有効な手なのかもしれないが。 竹内には当面それを行うつもりはなかった。理由は言うまでもない。 有名な警句だ。深淵を覗く時、その深淵もまた、お前を―― (このアーカムで真実にもっとも近いのは、おそらくキーパーのサーヴァントだろうが。さて) アサシンの言葉をほどほどに聞き流しながら、民俗学者は考え込む。 ▼ ▼ ▼ 【 12: Martial Arts 】 (それでは、君はあのキーパーの声に聞き覚えがあると?) 『あ、ああ……済まない、もう少し考えが纏まってから話す』 今までの彼女――槍の英霊《リーズバイフェ・ストリンドヴァリ》らしからぬ歯切れの悪い返事に、 《亜門鋼太朗》は僅かな困惑を含んだ眼差しを返した。 彼女が清廉潔白な英霊であることは、他ならぬ亜門自身がよく知っている。 亜門自身が背中を預けてもいいと言い切れるほどに。 だからこそ、話せないのならば今は信じるしかない。彼女が自分を同じように信頼してくれていることを。 「何をガタイに似合わないシケた顔をしてるんだね、亜門君」 「す、すみません署長」 「HAHAHA、よいよい。男はたまにはミステリアスなところも見せたほうがいいからな」 「はは……」 署長の声で、亜門は会議という現実に引き戻された。 聖杯戦争のことは一旦頭から締め出し、手元の資料へ目をやる。 あの連続衰弱死事件については首謀者のマスターとサーヴァントを始末したはずだが、 ここアーカムではそれ以外にも不審な事件が起こっているらしい。 イーストタウンではチンピラが外傷なしの謎の不審死を遂げているという報告もある。 亜門にとってそれ以上に気になるのはロウワーのスラム街で起こっているという殺人だが。 「まるでグールだな」 「"喰種(グール)"……!?」 「"喰屍鬼(グール)"だよ。地下鉄に棲んでいて、人間を捕まえて食うという」 「は、はあ。都市伝説か何かですか」 ともあれ魔術師絡みの線も捨てきれない。亜門が自ら志願すると、上司はそう言うだろうと笑った。 「例の捜査官に手柄を掻っ攫われないように気をつけたまえよ、亜門君」 「FBIから出向してきたという彼ですか。外見と言動こそ奇矯ですが、有能な男だと聞いていますが」 「だからだよ。アーカム市警がこれ以上舐められるわけにもいかんのでな。頼むぞ亜門君」 上司の励ましを背に、会議室を後にする。 リーズバイフェの沈黙も気になるが、亜門には考えるべき問題が山積みのようだ。 ▼ ▼ ▼ 【 13: Track 】 「ひどい有様だな。山火事とハリケーンが同時にでも来たのか?」 ロウワー・サウスサイド。スラム街の一角、廃ビル内の事務所を見回しながら、青年は呆れた声を出した。 外見も、声も、まだ若い。色素の薄い髪をすべて後ろに撫でつけている。 しかし彼と対面した者は、すべて彼のとある一点に視線が吸い寄せられることになるだろう。 それは彼が被っているマスクである。視覚補助と記録媒体を兼ねているというその仮面は、しかしまともな人間が被るものではない。 その仮面がそのままコードネームとなり、彼は《マスク》と呼ばれている。本名は公にしていない。 「おっと、動くなよギャングども。貴様らには別件の手配状が出ているのだ。 つまりは私には捜査権限がある! もっともその有様で暴れられるようならだがな」 縛られた状態で汚れた床に転がったギャング達を見下ろし、マスクはオーバーに肩をすくめて見せた。 間抜けな話だが、ギャングの事務所が押し込み強盗にあったらしい。 FBI捜査官として別の事件を追ってロウワーに乗り込んだマスクがこの現場を見つけたのは、実際のところただの偶然だった。 もっとも、使えるものは使わせてもらう。これでアーカム市警に恩を売れば、もっと市内で動きやすくなるというものだ。 それに。 (どう思う、アサシン?) 『明らかに錬金術……聖杯戦争の流儀に合わせるならば、魔術によるものだ。自然ではない』 (やはりか。ただの物盗りではないな) アサシンのサーヴァント、《傷の男(スカー)》の答えにマスクは頷いた。 マスクは魔術に明るくない。そちらの方面にそれなりの知識を持つアサシンを召喚できたことを感謝する。 やはりこれは魔術師が……十中八九、聖杯戦争の関係者が何らかの目的をもってやったこと。 ならば追跡すれば、いずれは何らかの情報を得られるかもしれない。 (運が巡ってきたか。見ていろ、聖杯に連なるサクセスは私が掴む!) ギャング達が不審げな視線を向けるのも構わず、マスクは好戦的な笑みを浮かべた。 ▼ ▼ ▼ 【 14: Fast Talk 】 「ね、ねえリナさん。本当に、あんなに派手にやっちゃって大丈夫だったのかな……?」 「なによ、今になってあたしのやり方に不満が出てきたってわけ?」 「い、いや、そういうわけじゃないんだけど」 「だったらこう、ドーン!と構えてなさいよ。男の子でしょ?」 彼女――キャスター《リナ=インバース》はそういうが、流石にギャングを丸ごとひとつ潰したのはやりすぎではなかろうか。 流石に魔術を使ったなどとは思わないだろうが、アーカム市警も馬鹿ではないだろう。 自分は鎧を着ていたから顔は見られてはいないだろうが、もしも素顔だったら手配書が出回っていたと考えると気が滅入る。 《アルフォンス・エルリック》が召喚したサーヴァントは本当に規格外だった。魔力量も、その行動力もだ。 ドラゴンすらまたいで通る――その逸話が嘘偽りではないことを、アルフォンスはこれまでの時間で散々思い知らされている。 「肝っ玉が小さいわねぇ。それでもあたしのマスターなわけ?」 「リナさんに付き合える肝っ玉の持ち主がいたら見てみたいですよ……」 「何か言った?」 「言ってません!」 「ならばよし! だいたい、あたし達がしたのは悪党退治! 何一つ恥じることなんてないわ!」 (勢いで言いくるめられてる気がする……) リナに見つからないように溜め息をつく。 どうやらアルフォンスは、勢いで振り回される星の下に生まれてきたようだ。 今は覚えていないけれど、兄――エドワード・エルリックも弟の自分を散々振り回しながら旅を続けていたようで。 記憶がないとはいえ、今のリナとの関係にどこか懐かしさのようなものを感じているのもまた事実だった。 (兄さん、か) アルフォンスにとっての聖杯戦争は、すべてエドワードともう一度出会うためのもの。 もしも旅の記憶が戻れば、今よりもっと兄に、聖杯に近づけるのだろうか。 ▼ ▼ ▼ 【 15: Operate Heavy Machinery 】 勇者、《三好夏凜》には兄がいる。 文武両道で、完璧超人で、それなのに自分のことをいつも気にかけてくれて。 そんな兄と自分を比べて、どうしても追いつきたくて、認めてほしくて。 それが夏凜にとっての出発点であり、勇者に選ばれるための努力を始めた最初のきっかけだった。 だけど、今はそれだけじゃない。認められたいから戦うんじゃない。 勇者であること、それがみんなとの絆だから。 大切な人を守るために勇者になったんだって、今なら胸を張って言えるから。 だから、あの時『満開』したことにも、後悔はきっと無い。 「考え事か、夏凜?」 「そういうんじゃないけど。まぁ、勇者の憂鬱ってやつよ」 「そうだな。勇者であろうとも、時には思い悩むこともあるさ」 「何よ、凱! 勝手に理解者みたいな顔しないでくれる!」 夏凜と凱、すなわちライダーのサーヴァント《獅子王凱》は今、アーカムの上空にいる。 といっても飛行機をチャーターしたわけでも、魔術的な手段を使って飛んでいるわけでもない。 凱の最終宝具、『勇気ある者たちの王(ガオガイガー)』の部分展開。 本来莫大な魔力を必要とする宝具ではあるが、ファイナルフュージョンを伴わない場合、実は個々のマシンの神秘性は低い。 あくまでガオガイガーの神秘は凱・ギャレオン・Gストーンの三位一体にあり、あくまでガオーマシンはテクノロジーの産物。 ゆえに例えばこのように、航空機ステルスガオーⅡを召喚し、騎乗スキルで操縦することは可能である。 「それにしても、こうして上から見ると、本当に普通の街ね……ここで戦争が起きてるなんて信じられない」 「だが、事実だ。夏凜と俺は、夏凜の世界と友達を守るために戦う。そうだろ?」 「もちろんよ。私の世界は……私の友達は、絶対に助けて見せるんだから」 「その意気だ。だが、お前一人で戦うんじゃない。俺たちの勇気を信じろ」 最初は暑苦しくて馴れ馴れしい奴だと思ったけれど、凱の言葉には確かに人の心を勇気付ける力があるようだ。 これが、自分だけでなく人にまで勇気を与えられるのが、本物の勇者なのだろうか。 友奈が、夏凜に戦う勇気をくれたように。 (まだ一人倒しただけ。この街にはまだまだ戦うべき相手はたくさんいる。でも、勝たなくちゃ) そういえば、凱が最初に倒したあのサーヴァントのマスターはどうなったんだろうと、夏凜は頭の片隅で考えた。 ▼ ▼ ▼ 【 16: Biology 】 「き、きんいろのらいおんがくるの……わたしをいじめにくるのよ、おかあさん……」 駄目だな、これは。 《Dr.ネクロ》は、拾った女魔術師から証言を聞き出すのを早々に諦めた。 このアーカムにおいてネクロに割り振られた役職は、ロウワー・サウスサイドの闇医者である。 医術の心得はあるし、この少女の姿では他の地区では大っぴらに動きにくい。 治安の悪さゆえに余計な詮索を済むロウワーを拠点と出来たのはネクロにとってありがたいことだった。 おまけに闇医者ともなれば、公にしにくい理由で怪我をした者が勝手に寄ってくる。 聖杯戦争においては悪くないポジションなのではないか……そう思っていたのだが。 「かくいう私も精神科の心得は無いんだよなぁ……こいつはミスカトニックの精神病院にでも放り込むか」 ぶつぶつとうわ言を言いながら歩く女からネクロのサーヴァントが魔力の残滓を嗅ぎ取って、 雑居ビルの診療室に引きずり込んだまではいいものの。 どうやら彼女は完全に精神に異常をきたしているらしく、まるでまともな証言が取れはしない。 聖杯戦争の関係者なのは間違いないのだろうが、こうなってはお手上げだ。 「そう上手くは事は運ばないか……どうした、シン」 部屋の隅に目をやる。 精悍な、しかし眼光の鋭い黒髪の青年、《仮面ライダーシン》に人間体・風祭真が、静かに唸り声を発していた。 彼が感じているのは、怒りだろう。狂化し感情を抑えきれなくなった結果、怒りだけが表出している。 「許せないのか、シン。命を弄ぶ魔術師が」 「…………」 答えは無い。だが、仮に答えられたらイエスと言うだろうということは、ネクロにも分かっていた。 「……なぁ、シン。私もきっと、お前にとっては極悪非道の魔術師だぞ。お前の怒りは、私にも向いているのか?」 答えは無い。だが、仮に答えられたら。 (……アレックス。やはり、私には正義の味方の相棒をやるのは向いていないのかもな) かつての相棒へと向けた呟きは、幸い、今の相棒へは届いていないようだ。 ▼ ▼ ▼ 【 17: Persuade 】 「……それで? 私に何が言いたいの?」 マスターの冷酷な声にその小さな肩をピクリと震わせながら、それでも槍の英霊《セーラーサターン》は毅然として言った。 「お願いです、マスター……不必要に、命を弄ぶのはやめてください……!」 しかし彼女の呼びかけに、マスターたる魔術師《プレシア・テスタロッサ》は溜め息だけで応える。 二人の間には、気を失った少女が一人。このミスカトニック大学の学生である。 彼女は、応用科学部の教授であるプレシアを追って、『工房』のあるこの研究棟まで足を踏み入れた。 勉強熱心な学生なのだろう。手元には講義の資料やノートが束になっている。 恐らくは、プレシアを研究棟で捕まえて、質問攻めにするつもりだったに違いない。 もっとも、猜疑に歪んだプレシアの目にはそうは映らなかったようだが。 「この人は、聖杯戦争の関係者じゃありません……! 命を奪う必要なんて、ないはずです……!」 「私の周りに付き纏っていたのは確かだわ。誰かに暗示を掛けられていた可能性も十分にあるはず」 「で、でも……! 何も殺すことは……それに、あんな」 「あんな? 『魂食い』の対象とする、その命令が貴女にとっては不満なの、ランサー?」 その単語を聞き、サターンは唇を噛んだ。 「……マスターからの魔力供給は十分です。魂食いで魔力を補給する必要なんてないはずです」 「いざという時のこともある。一人分でどれだけの魔力を補給できるのか、知っておく必要はあるわ」 「それでも……!」 「くどいわね! やりなさいと言っているの! 貴女、私に令呪を使わせるつもり!?」 プレシアは激昂し、サターンはただ項垂れる。 それからどれくらいの時間が経ったか、サターンはよろよろと歩き、その槍の先端を少女に向けた。 次に起こったことは、時間にすれば一瞬だった。だが、それだけで済ませてはならない行いだった。 サターンは槍を取り落とし、呆然自失の表情を両手で覆い、その隙間から嗚咽だけを漏らした。 「あはははっ! いいわサターン……貴女のそういうところが見たかったの。これからもアリシアのために尽くしなさい、英霊様!」 死すら気に掛けない魔術師と、優しく気高い英霊の、決定的な断裂がそこにあった。 ▼ ▼ ▼ 【 18: Sneak 】 死すら超克する。 冥界の管理者たる亡霊姫、《西行寺幽々子》にはそれだけの力がある。 死者に生を与えるのではなく、死者を死によってすら開放させない、という意味でだが。 「ガンバルゾー!」 「ガンバルゾー!」 「はいはい、頑張ってね」 気合の叫びを挙げているヨタモノ二人は、数日前に彼女が魂を奪ったチンピラである。 宝具『反魂蝶』で命を抜き取られた者は成仏することは出来ない。 この世とあの世の中間に囚われたまま、幽々子の死霊統率スキルで使い魔として使役される運命である。 「えげつないもんだな、まったく」 「あら、宝具を試せって言ったのはあなたよ?」 「そりゃそうだ。だがな、まさかサンズ・リバーを渡れもしないようになるとは」 「思わなかった?」 「ああ」 「他人の生き死ににそんなに興味のなさそうな顔してるのに」 「そりゃあいい。メンポ越しでも分かるのか」 「分かるわよ。あなた、半分は死んでるようなものだから」 死人か。まったくもってその通りだ、と《シルバーカラス》は自嘲する。 半分死んでいる、ではなく、完全に死んでいるはずだ。それがどういうわけかここにいる。 このアーカムの住人のメンポを被り、聖杯戦争という新たなイクサに身を投じようとしている。 これもまたブッダ殿の思し召しなら、随分と人生というものを弄んでくれるものだが。 (イクサの中で生き、イクサの中で死ぬ。それが少しばかり延びた。それだけのことだ) シルバーカラスの心中に感慨というものはない。 他人の生き死にどころか……今は自分の生き死ににすら。 振り返った幽々子が、これから妖怪桜を植える場所を探さないとね、と言った。 ▼ ▼ ▼ 【 19: Ride 】 サクラ咲く未来、恋、夢。高まる鼓動、抑えずに。 初音島――枯れない桜が咲き誇ったあの島から、この街までいったいどれくらいの距離があるのだろう。 この高らかに響く蹄の音が、《芳乃さくら》の心をアーカムから遠く、故郷へと誘おうとする。 だって彼は……剣の英霊である彼女のサーヴァントは、さくらにとっては昔からずっと英雄だったのだから。 「揺れるか、我が主よ」 「い、いえ! そんなことは全然無くて、その、光栄です、新さん!」 「はっはっは、ならばよい。そのまま掴まっておれ」 「はいっ!」 端的に言えば、夢のようだ。 徳田新之助、もとい、英霊《徳川吉宗》はさくらが幼い頃から憧れ続けた人物で。 彼の白馬にこうして一緒に跨っているという事実が、自分を舞い上がらせてしまう。 あくまでこれはアーカム市の外縁がどうなっているかの確認のため。 それは分かっているのだが、逸る心は抑えきれないものなのだ。 「……ふむ。どうやら地図の外側は森になっているようだが。魔性の気配がするな」 「魔性の気配?」 「踏み込めば取って食われるかもしれん……なに、物の喩えよ」 「つまり外まで出れば逃げられるわけじゃないのか。まぁ、ボクは元々逃げる気なんてないけど」 しかし、浮かれてばかりはいられない。 このアーカムは、確かに聖杯戦争のために作られた舞台のようだ。 逃げ出そうとすれば、何らかの手段でマスターを抹殺してこようとするに違いない。 マスターである以上は、もはや戦うしかないのだ。 「あの、そういえばなんですけど、新さん」 「どうした、我が主?」 「その、恐れ多くも八代将軍ともあろうお方に主と呼ばれるのはなって……」 「なるほどな。あい分かった。ならば、これよりは『さくら』と呼ばせてもらおうか」 「さ、さくら!!!」 ――負ける気がしないと、さくらは思った。 この英霊と一緒なら、自分はどんなに過酷な戦争であろうとも、負ける気がしない。 だって彼は……暴れん坊将軍は、ずっとヒーローだったから。 どんな神話の英雄にだって、物語の英雄が負ける道理は、ない。 ▼ ▼ ▼ 【 20: Art 】 嗤う。嗤う。物語を嗤う。 嗤う。嗤う。舞台を嗤う。 嗤う。嗤う。役者を嗤う。 演出家は誰だ。脚本家は誰だ。舞台監督は誰だ。 狂人《シュバルツ・バルト》は嗤う。 この馬鹿げた舞台に上がったすべての物どもを、嗤う。 まだ気付いていないのか。自分たちの滑稽さに。 何も知らずにいるのか。そんなにも愚かなままで。 ならばいい。知らしめてやろう。この聖杯戦争という舞台のおぞましさを。 黒き森(シュバルツ・バルト)とは、暴き立てることを恐れる深き森を指す。 近づかなければ、何も知らずに済んだのに。だが、もう遅い。もう遅い! 寄り添う影が、《ワラキアの夜》が、小さくカットと呟き、嗤った。 この物語を、嗤った。 ▼ ▼ ▼ 【 21: Conceal 】 ――彼を主役に物語を書くとすれば、それはきっと、悲劇だ。 《金木研》――彼の足取りは、彼自身を除いて誰にも掴めていない。 ただ彼の通った後には、ウォッチャー――《バネ足ジョップリン》の撒き散らす都市伝説が残るだけ。 曰く。 アーカムには、『白髪の喰屍鬼(グール)』がいる、と。 ――この物語をもって、舞台の幕は上がる。 ▼ ▼ ▼ 【 ???: Chutulhu Mythos 】 「これでマスター、サーヴァント、共に二十一。すべての主従が出揃ったわけか」 男の声に、秘匿者(キーパー)《オシリスの砂》は、正しくは26騎です、と応えた。 「既にセイバーが大英雄カルナに、ランサーが勇者王・獅子王凱に、アサシンがドッペルゲンガー・アルルに敗れています。 キャスターに至っては……リーズバイフェのマスターに始末されたようです。ウォッチャーの宝具が彼の礼装に神秘を付与したようですね」 「そしてアーチャーのマスターは戦うことなく発狂、その死は君が見届けたそうだね?」 「ええ。ですから21騎でも間違いは無いといえば、その通りですが」 オシリスの砂が振り返ると、そこにいた赤いローブの男は大げさに頷いた。 奇妙なほど肌の黒い男だった。黒色人種というだけでは説明の付かないほど、漆黒の男。 それだけにその赤い衣装と真っ白な手袋が目を引く。 物腰は紳士的だが、決して心を無条件に許せる男ではないような、奇妙な違和感があった。 「ナイ神父」 オシリスの砂が彼の名を呼んだ。 「当初の予定通り、私は監督役としてアーカムに出よう。何、聖杯戦争では神父が場を監督するものなのだろう?」 「私の邪魔はしないと、約束していただけますね?」 「当然だとも。私の目的は最初から、この舞台を最後まで見届けることなのだから」 神父がそう言って歩き去ると、オシリスの砂は無感情に掃き捨てた。 「……這い寄る混沌め。この聖杯戦争をあざ笑うつもりなのでしょうが、せいぜい見ているがいい」 背後に彼女の宝具たる巨像、『永劫刻む霊長の碑(モニュメント・トライヘルメス)』が出現する。 その手のひらの上で、オシリスの砂は告げる。 アーカムの聖杯戦争、それに関わるすべての人間、そして英霊に向かって。 「探索者(マスター)たちよ。そして銀鍵の守り手(サーヴァント)たちよ――運命の呼び声の時です」 賽(ダイス)は投げられた。 探索者ならば、今こそ、狂うまで戦え――運命の呼び声と。 【邪神聖杯黙示録~Call of Fate~ ――開幕】 BACK NEXT "Watcher" 《神話生物》金木研&ウォッチャー 投下順 001 蒼い空 "Watcher" 《神話生物》金木研&ウォッチャー 時系列順 002 首括りの丘へ BACK 登場キャラ NEXT Saber01 《覇王の卵》ローズマリー・アップルフィールド&セイバー ローズマリー・アップルフィールド&セイバー(グリフィス) 006 God bless the child Saber02 《植物学》芳乃さくら&セイバー 芳乃さくら&セイバー(徳川吉宗) 007 接触 Saber03 《日本刀》パチュリー・ノーレッジ&セイバー パチュリー・ノーレッジ&セイバー(同田貫正国) 002 首括りの丘へ Archer01 《図書館》鷺沢文香&アーチャー 鷺沢文香&アーチャー(ジョン・プレストン) 011 Answer And Answer Archer02 《イグジスト》真壁一騎&アーチャー 真壁一騎&アーチャー(トレングス) 001 蒼い空 Lancer01 《天才》クリム・ニック&ランサー クリム・ニック&ランサー(リュドミラ=ルリエ) 010 妖怪の賢者と戦姫 Lancer02 《心理分析》プレシア・テスタロッサ&ランサー プレシア・テスタロッサ&ランサー(セーラーサターン) 002 首括りの丘へ Lancer03 《心理学》神崎蘭子&ランサー 神崎蘭子&ランサー(カルナ) 003 選択 Lancer04 《守護者》亜門鋼太朗&ランサー 亜門鋼太朗&ランサー(リーズバイフェ・ストリンドヴァリ) 004 アーカム喰種 Rider01 《勇気ある心》三好夏凜&ライダー 三好夏凜&ライダー(獅子王凱) 001 蒼い空 Rider02 《オカルト》アイアンメイデン・ジャンヌ&ライダー アイアンメイデン・ジャンヌ&ライダー(エネル) 006 God bless the child Caster01 《鍵開け》シルバーカラス&キャスター シルバーカラス&キャスター(西行寺幽々子) 008 Horizon Initiative Caster02 《錬金術》アルフォンス・エルリック&キャスター アルフォンス・エルリック&キャスター(リナ・インバース) 007 接触 Caster03 《芸術/演劇》シュバルツ・バルト&キャスター シュバルツ・バルト&キャスター(ワラキアの夜) 004 アーカム喰種 Caster04 《隠れる》白レン&キャスター 白レン&キャスター(ドッペルゲンガーアルル) 008 Horizon Initiative Assassin01 《民俗学》空目恭一&アサシン 空目恭一&アサシン(八雲紫) 010 妖怪の賢者と戦姫 Assassin02 《怒り》マスク&アサシン マスク&アサシン(傷の男(スカー)) 009 アーカム喰種[JAM] Assassin03 《真実》竹内多聞&アサシン 竹内多聞&アサシン(メンタリスト) 011 Answer And Answer Berserker01 《生物学》Dr.ネクロ&バーサーカー Dr.ネクロ&バーサーカー(仮面ライダーシン) 009 アーカム喰種[JAM] Berserker02 《劣等複合》木戸野亜紀&バーサーカー 木戸野亜紀&バーサーカー(広瀬雄一) 012 鉛毒の空の下 "Watcher" 《神話生物》金木研&ウォッチャー 金木研&ウォッチャー(バネ足ジョップリン) 004 アーカム喰種 INTRO 導入、あるいは名も無き魔術師の手記 キーパー(シオン・エルトナム・アトラシア?) 004 アーカム喰種 ナイ神父 007 接触
https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/6452.html
309 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 13 54 52.62 ID ??? そういや、クトゥルフ思い出したが。 どこぞの古き神を細々と信仰している村があって。 たまたまそこに行ったPCが、その神様を復活させようとしてる現場に立ち会って。 その神様がやばいものだとロールに成功したPCがいて。 それは危険だ、やめろと説得しても村人は言うことを聞かなくて。 儀式を中断させようと調べていたところ、RPとかのミスで間に合わないことが判明して。 数人のPCは、逃げ出して。 一人だけ、そんな災厄を世界に呼び出したお前らは悪じゃーと、村人と殺し合い始めて。 そして復活した神様に、村人ごとSAN値吹っ飛ばされて、PCロストしたやつなら知ってる。 310 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 13 55 41.26 ID ??? 正しいクトゥルフじゃないか 311 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 13 57 38.44 ID ??? 309 すまん それごく普通のセッションじゃね? 312 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 14 00 17.85 ID ??? おいおい、実演は困るぞw 313 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 14 01 38.06 ID ??? その最後に、PLもSAN値ロストして、GMとリアルファイト始めてたら面白いんだがなw 314 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 14 05 44.70 ID ??? ただシナリオのクリアには失敗してるな 別に逃げ出すのがシナリオの目的じゃなかったろう シナリオのクリア目的達成に失敗したことが確定したシナリオでどういうオチをつけたかというだけの話だな 315 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 14 05 44.99 ID ??? 正しい行いをしようとして、正しい筈が受け入れられなくて、 それでも何とかしようとする卑小な人間の思い上がりに対して 偉大なる神が鉄槌を下しただけだから普通だな。 まあ 309はゲーム(の世界観)によってキャラロストに対する 感覚は違いますよという実例を上げてくれたんだろう。 荒らしやレス乞食が跋扈するこのスレで、そんな気の利いたレスをする 309は困ということでw 317 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 14 07 50.53 ID ??? 309 模範的クトゥルフじゃん もしそれが失敗とか思ってるなら お前はクトゥルフに向いてない 320 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 14 13 03.21 ID ??? 309の一人だけ残って殺しあい始めたPCは、 間違いなくSAN値が減りすぎてたんだろうw 全く正しいクトゥルフだぜw 321 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 14 15 51.64 ID ??? 317 いやむしろこれをシナリオ失敗と思ってないなら、そいつこそクトゥルフを自殺ゲーと勘違いしてるだけと思うが 322 名前:NPCさん[sage] 投稿日:2011/11/11(金) 14 15 57.37 ID ??? これで 309が「クトゥルフの話を思い出したが」じゃなくて「クトゥルフで思い出したが」で クトゥルフ以外のシステムでやったシナリオの話だったら大笑いなんだが スレ293
https://w.atwiki.jp/21silverkeys/pages/120.html
妖怪の賢者と戦姫 ◆Jnb5qDKD06 『探索者(マスター)たちよ。そして銀鍵の守り手(サーヴァント)たちよ――運命の呼び声の時です』 * * * 聖杯戦争開幕の号令が空目恭一とアサシン『八雲紫』の脳髄に響く。 「蠱毒の始まりか」 「ええ、そうですわねマスター」 ミスカトニック大学のキャンパス。日本から取り寄せたという桜の下に彼らはいた。 「『あやめ』はまだ見つからないか」 「生憎と、マスターと違ってパスが繋がっていない子を見つけるのは難しいですわ。マスターの“鼻”はどうでしょうか」 「生臭い水の臭い以外に特に何も匂わん」 空目恭一の鼻は特別、と言うより異常だ。過去に神隠しにあったことにより彼の嗅覚は異界の存在や異形の匂いに敏感になっている。 そして彼が探している『あやめ』という少女もまた、神隠しの被害者である。 いや、正確には加害者でもあるし、神隠しそのものでもあるが、今の本人はそれを望まない。 「ともあれ、彼女の正体を嗅ぎ付けたら少々厄介ね。何をされるかわかったものじゃないわ」 「大抵の奴はあやめをどうこうできん。下手すれば自滅するだろう……が」 「だろうが?」 「お前クラスの〝怪談〟がゴロゴロいるならば話は別だ。あやめが取り込まれてしまうかもしれない」 あやめは異界の住人である〝異存在〟と呼ばれる存在だ。 『異界』とは文字通り、世界とは異なる世界。自分たちの世界の裏側。本来ならば人間が認識できないはずの常世である。 そしてそちら側にいる彼女と接触できるということは、『異界』に対して親和性を有する、つまり『異界』に惹かれる者である。 そうした人間を『異界』へ引きずり込んでしまうのが〝異存在〟であるあやめの力である。 そんな彼女がなぜ、空目と居られるか。それは──── 「異存在は認識される世界の住人となる……でしたね」 「そうだ。俺は文芸部や大勢の生徒にあやめを認識させて『異界』からこちら側へ引き込んだ」 「だが、魔王陛下(マスター)があやめという子を陛下側の世界に引き込んだように、このアーカムで大勢に彼女が認識されれば、この世界の住人となってしまう。 幻想郷とは真逆の仕組みなのね」 アサシンこと八雲紫のいた世界、『幻想郷』は忘れ去られて『幻想』になったものが最後に行き着く世界である。 幻想郷、異界、無何有の地、隠れ里、桃源郷、ニライカナイ、未知なるカダス。名は多くあれど実体はそんなところだ。 だからこそ八雲紫は『あやめ』という娘には興味がある。 「ともあれ……あら?」 「どうした」 「どうやらサーヴァントみたいですわ。感知できる範囲で二騎います」 サーヴァント。即ち敵がいるということだ。 近くにいれば互いの位置が大体分かるのがサーヴァントに与えられた能力のひとつである。 しかし、アサシンのクラススキル『気配遮断』は自分を感知させなくするスキルである。 攻撃の時にバレてしまうのが欠点だが今のような隠密活動状態では相手のサーヴァントに見つからないため先手が取れる。 「いかが致しますマスター? サックリやってもよろしいですが?」 「いいや、戦闘はしない。戦闘はしないが、実験はする」 「実験? 何の?」 「お前のスキルと宝具の実験だ」 * * * サーヴァント同士の戦いが始まった。 片方は侍。片方はセーラー服の少女。 片方の剣士のマスターはこの大学で何度か見た事がある。何度か図書館で見た顔だ。 確か彼女は大学の神秘学科で『七曜の魔女』と呼ばれていた少女。彼女もマスタ―だったのか どちらのサーヴァントも尋常ではない速度で武器を振るい、空目の動体視力を超える速さで戦闘を繰り広げる。 神速域の攻防が火花を散らし、周囲に破壊を撒き散らす。 それを空目はキャンパスからかけ離れた商業地区の南部。ノースサイド線の最西の地下鉄駅入口から視ていた。 勿論、空目恭一にアフリカのマサイ族並の視力は無い。 これはアサシンの宝具『境界を操る程度の能力』による空間接続で戦場の空間の一部を繋げて見ているのだ。 当然、この宝具を戦っている2人に気付かれる可能性も重々承知であるが、情報は集められるうちに集めた方がよい。 「マスターは結構大胆なのね」 「うるさい。黙っていろ」 「ああ、激しいわ」 「戦いがな」 「ノリが悪いですわ魔王陛下」 切妻屋根の鋭角に生じた『スキマ』から戦闘をじっくり観察する。 本来ならば宝具の発動自体にも多くの魔力が消費されるため、こんな近距離で宝具を使おうものならばすぐにもバレてしまうだろう。 そこでアサシンのスキル『神隠しの主犯』が活きてくる。 この宝具の発動中はそのスキルによって『気配遮断』が有効なまま発動できるらしい。 「本当に陛下は豪胆ね。 知識で可能と分かっていても相手が2騎もいる状態でいきなりやろうとは思わないわよ普通」 「実験にはリスクは付き物だ。いや、生きること自体リスクそのものだ。生きる時は生きる。 死ぬときは死ぬ……誰だってそうだ、例外は無い」 いつか、あやめを引き入れた時に文芸部のメンバーに言ったセリフだ。 戦況が動いた。セーラー服の少女が宝具を使ったのだ * * * 「《沈黙の鎌(サイレンス・グレイブ)》――――――!!」 英霊が名を呼ぶ、その時、伝説は蘇る。 * * * 「……………ッあ、ぐ」 目に焼き付く宝具の輝き。網膜から入って脳髄を冒す神秘。 ────人を買え。 ────首を括らせろ。 ────そして埋めてしまえ。 ────お前の怪談(きょうふ)はお前の中でできている。 それは常人を発狂させる法則であり、聖杯戦争のマスターとしてある程度の神秘保護を受けている空目とて例外ではない。 あれこそは滅びの具現。あれこそは刈り取る者の象徴。 腐肉に集る蝿の如く湧いてくる頭痛、吐き気、悪寒。恐怖、狂気。 かつて『異界』に連れ去られた際も心を乱さなかった自分が今、神秘の輝きに恐怖している。 (なんだ……コレは……) 手が震え、奥歯が震え、胃が蠕動した。 死を恐怖している、俺が? 文芸部の連中が知れば噴飯ものだろう。 こみ上げる吐き気を抑え込みながら視界の端にいた剣士のマスターに目が行った。 (あいつ……平衡感覚を失っている……それにあの表情……) パニックを起こしているのか? 神秘学科の新星は間違いなく恐慌している。 そしてそれが意味するところを理解する寸前、天を裂いて雷電が落ちる。 雷雲もなく、あんな狙い打ったように雷が落ちるなどあり得ない。 サーヴァントのものでもない。この場にいない誰かが攻撃を仕掛けたのだ。 強烈な光に空目の目が眩む。一秒、二秒、三秒、四秒…視界がやっと戻った時には既にサーヴァント2騎の姿はなく、戦闘も終わっていた。 既に異形特有の枯草のような匂いもない。 「アサシン、引き上げるぞ」 自分のサーヴァントに話しかけるも反応が無い。 振り向いてみると彼女は路地の闇を見つめていた。 「どうした?」 「どうやら敵のようですわ」 「何?」 警備員の巡回はまだだし、そもそもアサシンが〝敵〟と呼ぶのだから相手はサーヴァントだろう。 問題は『気配遮断』中になぜ見つかったかだ。 路地から人影が二つ現れた 「おや。そこにいるのはサーヴァントとそのマスターか?」 「本当に勘だけで見つけるなんて」 「何、天才ならではの直感というやつですよ」 茶髪のおかっぱの青年と青い髪の少女だった。 おそらく少女の方がサーヴァントだろう。 水晶と氷塊から削り出したような、輝く槍を持っているし、何よりも異界の者の〝匂い〟が濃い。 互いのマスターが相手のサーヴァントのステータスを視て、それを瞬時に念話で自分のサーヴァントに伝達する。 四者共に眉一つ動かさずにそれを知った。 「見つかってしまいましたね。 どうしますかマスター? ここで……」 「戦わん。こちらに害が無い以上戦う必要がない」 戦うつもりなど毛頭ないのにわざわざ喧嘩を吹っ掛ける必要もないだろう。 しかし、空目の態度は相手のサーヴァントの癇に障ったようだ。 「害が無い? へぇ、それは自信? 平民風情が出たわね死ぬほど後悔して逝きなさい」 「厳然たる事実だ」 空気が凍りつく。 一触即発、何か行動を起こそうものならば火薬庫に火をつけた如く爆発するだろう状況。 その中で、まず動いたのはアサシンだった。 * * * 突如、アサシンは片手で空目を抱え、もう片方の手で魔力の塊を弾丸にして放つ。 それは分裂して攻撃ではなく目眩ましとして機能し、槍のサーヴァントの視界を弾幕で覆い隠した。 弾幕が晴れた時、二人の姿は豆粒ほどにまで小さくなっていた。 「逃がすか!」 アサシンを追ってランサーも疾走を開始した。 マスターは何も言わない。お手並み拝見ということだろう。 アサシンがマスターを担いで走った先は地下鉄の駅ではなくアーカムの中央を流れるミスカトニック川。 「は、馬鹿ねどこへ行こうと……」 ミスカトニック川は浅瀬とは言えないし、川幅も決して狭くない。 サーヴァントといえど水中でマスターを担いだままでは十分に動けるはずがないしそもそもマスターの息がもたないだろう。 よって連中の行き先はデッドエンド。ミスカトニック川は物理的な三途の川として存在している。 かといって何処かで引き返そうものならば私と対峙することになる。 アサシンが暗殺者として召喚されている以上、三騎士のサーヴァントとは戦闘能力で差がある。 よってここで私に敗北はない。 ついに暗殺者の主従が川へと飛び出した。 そして、暗殺者の女の足が水面へ──着水しない。 「なっ」 まるでふわふわと浮くように、だが決して遅くない速度で反対側へと移動していく。 まずい。 ランサーの英霊『リュドミラ=ルリエ』の胸に焦りが募る。 この世界では大型の騎乗機械で空すら駆けると聞いていたが、それにしてもあれは反則だろう。 敵は飛行することで先ほどのミスカトニック川の地形の悪条件をクリアしている。 水中にいたくなければ空中にいればよいと理不尽な行為を現実にやってのけてしまった。 そして逆にリュドミラには浮遊や飛行の術はない。このまま水中に飛び込めば絶対不利の状態で戦わなければならない。 戻って地下鉄道から反対側に渡る術もあるがタイムロスが激しいし、何よりノースサイド線の土地勘がない。 そんなリュドミラの焦りを見透かしてか、アサシンの英霊は一瞥して 「では、さようならお嬢さん。帰りは車に気を付けるのよ」 と虚仮にしたような挨拶をかけやがった。 それでリュドミラの心に火がついた。 * * * 時刻は草木も眠る丑三つ時。魑魅魍魎が跋扈し、幽玄妖魔が隊を成すとされる時間帯である。 サーヴァントシステムによって英霊の属性に嵌められたアサシンであるが、スキル『妖怪』によって妖怪の属性も得ている。 故に本来のスキルとは効果の異なる二次的な効果であるが、魔力の回転率、判断速度、身体の活性率全てが好調だった。 「お姫様だっこされてどんな気持ちでしょうか、魔王陛下」 「あと川岸へはどのくらいだ」 「普通、この場合男女逆ね。 まぁ魔王陛下の細腕じゃあ幼子すら持てるか怪しいでしょうけど」 「冗談を言っている場合か」 「さっきから慌ててどうされました?」 「後ろを見ろ」 言われるままに振り向くとそこには蒼髪の少女が水面上を走って追いかけてきていた。 その足元にはミスかトニック川の流水を凍らせてできた氷の橋が作られており、更に周囲のみずも凍らせて足場を広げていった。 「あら素敵」 流れる水すら凍らせる彼女は氷使い。接近されることは死を意味する。 「マスター首に腕を回してください」 マスターと支えていた左手を自由にして、体の向きを180度変える。バックステップで移動しながら相手を沈めることにした。 アサシンの五指から生じる魔弾。 それはアサシン『八雲紫』のいた異界の技で遊びのルールそのもの。 魔力、妖力、霊力などを固めて撃つだけならばアサシンのクラスでも十分可能だ。 圧倒的な面制圧力は氷上のランサーが回避できるはずもない。 「ふざけているの?」 だが所詮は魔弾。それも魔術師ではないアサシンのものである。対魔力を持つランサーに命中したところで豆鉄砲ほどの効果も及ぼさない。 ただし、ランサーの足場を、氷橋を破壊していた。しかし、それで水没するランサーではない。 四散した氷の破片は木の根のように伸び、繋ぎ合って新たに足場を生み出す。 「これでは拉致が明きませんわね」 氷の軍勢は戦姫を筆頭にその領土を広げて進軍をしていた。 このままでは追いつかれる。 「やれやれ」 今まで黙っていた空目がポケットから紙束を取り出した。確か聖杯戦争開幕前に〝包帯男〟がばらまいていた紙を半分に折ったものだ。 それらは空目が手を離すと空気抵抗に煽られて紙吹雪のように舞っていく。 「“鋭角”ができたぞ」 「流石です魔王陛下」 異次元たる『スキマ』を展開するアサシンの宝具『境界を操る程度の能力』。 この聖杯戦争の仕様で鋭角がある場所のみに使用可能という制限がついているが、裏を返せばそれだけだ。数に制限などない。 次の瞬間、半分に折った紙の鋭角から射出されてきたのは道路標識。鉄骨。コンクリート塊などの物体。 出現したそれらは魔力を帯びてランサーへ迫る。加えてアサシン本体の魔弾掃射もまだ続いていた。 氷橋が落とされる。氷柱が砕かれ、衝撃波で荒立った波がそれらを呑み込んでいく。 一筋の光、一発の弾丸として放たれたそれらはランサーの領土(あしば)を食い散らかして破壊していった。 しかし── 「それがどうしたっていうのよ!」 一閃(にしか空目には見えなかった)でいくつもの火花が散り、スキマから射出された鋼鉄と魔弾が弾き飛ばされた。 更に返礼とばかりに氷の塊が生み出される。その数十。全てアサシン目掛けて発射された。 そして秒と経たずに、それら全てが役に立つことなく撃墜される──と思えば次の瞬間には三十の氷塊が迫っていた、 それを落としても次は四十が、その次は五十が、まだまだ増える。 なるほど、ここは水の上で彼女は氷使い。 凍らせるものは困らないというわけね。でも─── 「弾幕で私に挑むつもりかしら────幻巣『飛光虫ネスト』」 * * * ────く、面倒ね。 リュドミラのスキル『氷風の盾』はラヴィアスから出た冷気と衝撃波で矢などの飛び道具を吹き飛ばすスキルだ。 故に紙から飛び出す現代風の煉瓦や木材などはリュドミラへ届く前に消し飛ぶ。 しかし、鉄の表札(道路標識というらしい)や鉄棒はその限りではない。理由は単純にして明解。質量が大きい。 凍結から粉砕までの行程でも破壊しきれない、むしろ細かくになって防ぎにくいものとなる。 故にあれらは直接弾く方が効率が良いが、それだと足が止まる。 お返しに何発も氷塊を打ち出しているが、弾幕戦では相手に勝てない。 「弾幕で私に挑むつもりかしら────幻巣『飛光虫ネスト』」 アサシンの周りが一瞬光ったかと思えば、矢のように光る魔弾が進路上の氷を残さず砕いた。 「本当にアサシンなのあなた?」 「ええ。見ての通りアサシンです」 お前のような暗殺者がいるか──と否定できないのも事実である。 そもそもアサシンだから魔術が使えないと考えるのは誤りだろう。 魔術、呪術といった呪(まじな)いで人を密かに殺すためにするものもかなりある。故に魔術師と暗殺者を兼業できる者は少なからず存在する。 再び白光の魔弾が足場へ撃ち込まれる。その数、十発。残さず氷を砕いて再び足を止められる。 眩い光と氷の割砕する音が乱舞する中、リュドミラは相手の魔弾の特性を分析していた。 おそらく、あの白い魔弾は先ほどまで指から撃っていたものと大差違いはない。 連射していた弾を固めて放つ、量より質を重視した弾だ。その証拠に対魔力を持つ自分へ向けられる弾は一発もない。 よって気にかけるべきは紙から出てきた鉄塊のみ。 「空餌『中毒性のあるエサ』」 足元に的のような重層の正方形が出現した。 空中から前方と上空から先ほどまでと毛色の違う魔弾が迫ってきた。先ほどまでのよりも断然速い。 でも数が少ない分防げる。 道路標識を槍で撃ち落とし、蹴りで弾を弾いたその次の瞬間、足場の氷が割れた。 「な、に」 原因は水面下。水中からも弾が発射されていた。 アサシンが今まで撃った弾や道路標識は魔力を宿し、魔力のパスがアサシンと繋がっている。 それを手繰って水中で魔弾を作ったのだと、リュドミラが気付いた時は既に手遅れ。 足場を崩され、余裕も崩されて氷を再凍結するための集中が出来ない。 結果、ミスカトニック川へと落ちる。 (……まずい) 最悪だ。 今、相手が道路標識を撃ち込んできたら防御ができない。水中で冷気を使おうものならば凍結するのは自分だ。 霊体化は論外。再び浮上するしかない──と思ったところで足が地面を踏む感触を得た。 (川底!) 目を凝らせば、目の前には斜面が広がり、川底とは違った意匠の、治水工事の石畳が敷き詰められている。 そう、既に反対岸に着いていたのだ。 アサシンはまだ前方二〇メートル先を飛行している。ならば──── 川底の地面はぬかるんでいるが、即席の氷の足場と違い、揺らがないし崩れる心配も無用だ。 川底を思いっきり踏みしめて跳躍する。 「アサシン!!」 砲弾のように水中から飛び出したリュドミラはあっという間にアサシンまで詰めて竜具『氷槍ラヴィアス』で薙ぐ。 アサシンはそのゴシック・ファッションめいた服のフリルから傘を取り出し防ぐ。 手品のように現れた傘は恐ろしく頑強で、鋼鉄の鎧すら切り裂く『氷槍ラヴィアス』の刃を防いだ。 「頑丈な…傘ね!!!」 しかし、ステータスだけならばランサーの方が上だ。そのまま力任せに傘ごとアサシンを地面へ弾き飛ばした。 マスターを庇うべく、足で着地したアサシンをラヴィアスから発せられた冷気が覆って下半身丸ごと凍らせて縫い付ける。 遂にリュドミラの間合いでアサシンとそのマスターを捉える。 「終わりよ平民」 続いて着地し、ラヴィアスの刃を動けないアサシンのマスターの喉元に突きつけた。 「私を相手にここまで健闘できたことは褒めてあげるわ だから選ぶ権利を与えてあげる。 ここで死ぬか。忠誠を誓って私達の部下になる名誉を得るか」 「そこに対等の相手として同盟を結ぶという選択肢は無いのか?」 「殺されないだけ有り難く思いなさい。 対等? 笑わせないで。私からすれば貴方達は等しく下等よ。 身分が上。立場が上。力が上。だから私には勝てない」 そして事実そうなっている。 それを聞いて選択の余地がないと知ったアサシンのマスターは沈黙し、そしてその隣にいるアサシンは──── 「プッ、ハハ、ウッフフフフフフフフ」 爆笑していた。 「貴女、何が可笑しいの?」 「失礼。貴女のことを誤解していましたわ。 てっきり情け容赦の無い百戦錬磨の冷血な殺戮者かと思ったけど蓋を開けてみれば可愛らしいものでしたので」 そしてアサシンはリュドミラに微笑む。 まるで小動物を見る人間のように。 「ええ。貴女の言う通り。貴女は私よりも強いから私に勝つ。 寺子屋に通ってもいない稚児にすら分かる理屈ですわ」 つまり、とアサシンは付け足して。 「貴女って実は大したことはないでしょう?」 * * * 「貴女って実は大したことないでしょう?」 紫が言った瞬間に、ただでさえ低い周りの温度が更に低くなった気がした。 「なぜなら強者は力なんて誇らない。というよりそんなものに執着しない。 戦えば勝つのは本人にとって当たり前だから力は手段であって目的じゃない」 特に八雲紫のいた幻想郷ではそれが顕著だ。 ────吸血鬼は永遠の夜を生み出そうとした。 ────冥界の主が一切の春を奪おうとした。 ────鬼は宴会をするためだけに力を使う。 ────核融合の力を分け与えて文明を栄えさせようとした神もいた。 力自慢するために弱者を襲う強者はほぼ皆無。あくまで障害を排除するための手段でしかない。 「だというのに貴女ときたら平民だの格上だのまるで強者であることが存在意義みたい。 だから笑えるのよ」 次第に氷に圧迫されていく足と、強くなる凍気はまさにランサーの怒りを顕しているのだろう。 もはや下半身全体が壊死寸前まで冷やされながら、それでも紫は悪魔のごとき挑発を続ける。 「貴女は真っ当よ。少なくてもその判断基準は常人だわ。 だから、いつか必ず負ける。貴女は強者を倒す弱者に勝てない」 例えば妖怪を素手で打ち負かす人間のような──勇気やら気合いやらで弱肉強食を無視する手合いには特に。 「貴女は怪物でもなければ怪物を一人で退治しようとする狂人(えいゆう)でもない。 特別な玩具を手に入れて浮かれている、ただの──小さな子どもよ」 「黙れよ貴様ァ!」 * * * リュドミラの怒りが爆発した。 先ほどの部下云々の話し合いは三千世界の彼方へ消し飛び、もはや息の根を止めずにはいられない。 コイツは殺す。 私は戦姫で、ラヴィアスの戦姫である誇りこそが私の全てだ。 母が、祖母が、私に託してくれた戦姫のバトン。それに恥じない戦姫であろうとする矜持。 それを踏み躙らせていいわけがないでしょう。ねぇ、ラヴィアス。ねぇ、■■グル、エレオノー■。 氷槍の刃がアサシンの胸元、霊核へ真っ直ぐ突き入られ、氷の刃は過たず、アサシンの胸に深くめり込む。 しかし──── 槍の手応えがない。まるで空を突いたように何かに刺さった衝撃がまるでない。 「フフフ」 アサシンが微笑む。 何ら傷を負った風にも見えない。 次の瞬間──── 槍が引っ張られる。アサシンの胴体へずるりと、一切の障害なく。 吸い寄せられる。奪われようとしている。戦姫の証、いやそれ以上にかけがえのない宝物が。 よって奪われないようにと力を込め、その結果見る羽目になる。 氷槍ラヴィアスの穂先を。 何がそこにあるのかを。 「──────」 〝それ〟は言語化できない異常な角度を持つ空間だった。 妄念、欲望、悪性渦巻く醜悪な隙間。 人間ならば受け入れられない、いやそもそも見たいとも思わないはずだ。 内側から溢れ出す理解不能の負の感情に手の力が弛んだ。 結果、ラヴィアスを奪われる。凍漣の槍自身も奪われまいと氷を張るがもう遅い。隙間の中へ取り込まれる。 「あ、ああ……」 * * * 寝静まったオフィス街。 人間の文明開花はこの魔市街たるアーカムをも浸食し、その穢れた土壌から4、50階建てのビルディングを無数に生やしていた。 特にオフィス街のノースサイドでは他の地区より多くのビルディングが立ち並ぶ。 そこを背景にして二騎のサーヴァントの戦いに決着が着いた。 槍の穂先、それが服を突き破る前に生まれた鋭角。そこにアサシンはスキマを作り短槍を異次元へ吸い込んだのだ。 短槍を奪われた少女は今にも憤死しそうなほど怒りと恥辱に顔を歪め、そしてもう一人はしたり顔で微笑んでいた。 それっと掛け声をしながら魔弾によって己とそのマスターを捕らえていた氷を弾く。 空目はこの結果が予測出来ていた。 八雲紫は最優の妖怪であり、遥かな太古に最強の妖怪達を率いて月へと進軍したという伝承は伊達ではない。 元々のステータスはきっと知略、暴力、能力の全てのバランスが高水準で整っていたのだろう。 特に知略・経験値においてはアサシンとして召喚されたところで失われるわけではないのだ。 ────式神が呼び寄せられない、あら大変。 ────結界が巧く編み込めない、それは困りましたわ。 ────能力による論理崩壊ができない、で、それが何か? 八雲紫という神隠しの妖怪が最上級であるという事実は揺るがない。 「逃げてもよろしいですよお嬢さん」 この妖怪は悪辣……というより老獪なのだ。 この戦いは最初から最後まで八雲紫の掌の上だったと言っていい。 * * * 戦姫の証たるラヴィアスを奪われた。ルリエ家最大の失態である。 リュドミラの冷徹な頭は失態を恥じるより早く、何故こうなったかを冷静に分析していた。 まず河川上の戦い。 この段階で敵の攻撃は始まっていたのかもしれない。 最初の会話でリュドミラが誇り高い人物だと看破したアサシンは川岸で挑発してリュドミラを誘い出したのだ。 マスターとの連携を絶ったアサシンはそのままゆるりと引き付けつつ後退、反対岸まで誘い込み私に捕まる。 よくよく考えればあんな水中から攻撃可能な弾幕を最後に使った時点でおかしかったのだ。 あれを最初から使えばリュドミラが反対岸まで追うことなど不可能だったのだから。 そして、凍らされた後に挑発して私に攻撃をさせて逆に私から槍を奪う。 詰まるところリュドミラが挑発に乗らなければ回避できた状況なのだが、相手は必ず怒るように仕向けたのだ。 リュドミラはこれでも戦いの中での自制心には自信がある。 敵軍が罵詈雑言や挑発的な行動をとっても冷静に軍を動かし、堅実な戦いで勝利したことなど限りなく、それ故に英霊として信仰されたのだ。 しかし、アサシンの挑発はリュドミラ個人の、それもアイデンティティーを攻撃するものだった。 リュドミラの家系は代々竜具『氷槍ラヴィアス』によって戦姫に選ばれた珍しい一族だった。 故に戦姫として誇りがある。 先達から誇りを継いだという矜持がある。 その誇りを守り抜いて見せるという気概がある。 アサシンの毒舌はそこを精確につついたのだ。 戦姫(おまえ)は大したことない。 力など所詮は手段で戦姫(そんなもの)に意味はない。 誇りたい? むしろ滑稽だぞ笑えるな、と。 その戦術は悪辣。この一言に尽きるだろう。 人の気持ちに唾を吐くような下劣さと、そんな不確定要素を精密に計算して事を運ぶ悪魔じみた演算能力が合わさっている。 そして事実としてリュドミラの宝具を奪い、マスターとの連携も絶っている以上、認めざるを得ないだろう。こういう強さもあるのだと。 「さて、では降伏していただけますか?」 「はっ、ふざけるないで。槍を奪われたくらいで私が降伏なんてすると思うの?」 ブラフである。ラヴィアスのないリュドミラの戦力はサーヴァントを相手にするには低すぎる。 しかし、既にリュドミラの宝具は非戦闘用の紅茶(チャイ)一つ。 一方でアサシンの宝具は未だ未知数だし、リュドミラ同様に一つとは限らない。 故にリュドミラは詰んでいた。マスターと離れているこの状況では令呪の支援など望めまい。 しかし、いや、だからこそ。彼女は最後まで誇り高くありたい。 嘲笑われたまま、踏み躙られたままで終われないのだ。 「では、さようならお嬢さん」 * * * 「では、さようならお嬢さん」 「茶番はそこまでだアサシン」 空目がアサシンの茶番を止める。 ここで彼女を殺すのは空目の意図するところではない。 「槍も返してやれ。この状況では同盟も休戦協定もできん」 「それは止めておいた方がよろしいでしょう。次やれば負けるかもしれません」 八雲の言うことも一理ある。むしろ聖杯戦争の参加者ならばこの状況を逃す者はいないだろう。 しかし、好んで殺し殺されをする趣味は空目にはない。 「十分に承知している。その上で休戦協定を──」 「その協定、乗ろう!」 現れたのはランサーのマスターだった。 「マスター? どうやってここまで?」 「遊覧用のボートがあったので漕いできた。 それで、首尾は?」 「槍を奪われたわ」 「そうか、ならば槍と交換で同盟を結ぶというのはどうだろう?」 どちらが不利な立場なのか全く考えてもいない発言であるが、そこには不思議と人を不愉快にさせない何かがあった。 アサシンも知り合いを思い出したように外の世界にもこういう人いるのねー、と呟く。 「こちら側としては問題無いが槍を返した途端に攻撃されては敵わん」 「でしたら魔王陛下。実はこんなものが」 アサシンが服の袖口をまさぐって出したのは紙だった。何やら古びた護符だった。 「〝匂う〟な。これは牛王符か?」 「ええ牛王符……正式には『熊野牛王符』」 「〝本物〟か?」 「ええ〝本物〟です。マスターの嗅覚と同じく」 「で? 何なのそれは?」 勝手に話を進めるアサシン主従にランサーは口を挟む。 「簡単に言うとこの紙に一度誓えば絶対破れない誓約紙ですわ」 「あら? 〝絶対に〟破れないですって? 仮に破ろうとするとどうなるの?」 「破れば烏がやってきて血を吐いて死にます。そして裏切り者もそれに続いて死にます。おしまい」 昔は絶対に破らぬ誓いとして血判状に使われた護符だが、電子的な誓約書や契約書がポピュラーとなった現代では幻想入りした物である。 しかし、現代で淘汰されたからといってもその力が失われたわけではない。 今、八雲紫が取りだした物は『本物』だった。 「ではこちらに血の判を」 スッと差し出された牛王符にはこう書かれている。 〝此度の聖杯戦争においてアサシンのマスターである空目恭一及びランサーのマスターであるクリム・ニックは以下を誓う 1.互いに三日間攻撃しない。 2.同期間の間、互いの情報を第三者に漏洩しない。 3.この誓約はランサーがアサシンから槍を返却された時点から有効となる。〟 「問題ない」 クリムは親指の端を噛み千切って血の判を推す。 その瞬間、両マスターの背筋にゾワリと寒気が走り、呪術契約が開始した。 「ではこちらをお返しします」 いつの間にかアサシンの手に槍が握られていた。それをランサーに柄の方を差し出す。 仮にこのまま握って刺し貫こうとしても勝てるという算段なのか、それとも単純に嘗めているのか。 「…………」 形容し難い感情と共に槍を受け取った。そしてこう告げる。 「せいぜい三日間生き残りなさい。三日後に必ず殺してあげる」 そのまま霊体化して姿を消すランサー。 「あらあら大変。長生きしないといけませんわ」 余裕綽々の様子でアサシンも姿を消す。 そして、残された(正確にはサーヴァント二騎共ここにいるが)のはマスター二人。 空目にとってここからが本題だった。 「ランサーのマスター。依頼したいことがある」 「ほう、なんだ?」 「あやめという少女を見つけたら連絡してほしい」 「どんな姿だ」 「人種はアジア系、髪は黒、年齢は10代前半だ」 「ふむ。覚えておこう。 だが妙だな。何故さっきの契約に入れなかった? 例え見つけても君に教えないのかもしれないぞ」 「保護者を見失って、戦地で迷子の少女を見捨てられる人種か?」 「まさか」 「そういうことだ」 【ノースサイド/1日目 未明】 【空目恭一@Missing】 [状態]健康 [精神]疲労(ほぼ回復済) [令呪]残り3画 [装備]なし [道具]なし [所持金]学生レベル [思考・状況] 基本行動方針:あやめを探す 1.ノースサイドでも探す [備考] ※邪神聖杯戦争の発狂ルールを理解しました ※ランサー(セーラーサターン)とその宝具『沈黙の鎌』を確認しました。 ※セイバー(同田貫)とそのマスターを確認しました。 ※ランサー(リュドミラ=ルリエ)とそのマスターを確認しました ※クリム・ニックとの間に休戦協定が結ばれています。 四日目の未明まで彼とそのサーヴァントに関する攻撃や情報漏洩を行うと死にます。 【アサシン(八雲紫)@東方シリーズ】 [状態]健康 [精神]健康 [装備]番傘、扇子 [道具]牛王符(使用済) [所持金]スキマには旧紙幣も漂っていますわ。 [思考・状況] 基本行動方針:??? 1.マスターの支援 [備考] ※ランサー(セーラーサターン)とその宝具『沈黙の鎌』を確認しました。 ※セイバー(同田貫)とそのマスターを確認しました。 ※ランサー(リュドミラ=ルリエ)とそのマスターを確認しました ※クリム・ニックとの間に休戦協定が結ばれています。 四日目の未明まで彼とそのサーヴァントに関する攻撃や情報漏洩を行うと死にます。 「ごめんなさい」 「いきなりいかがされました姫様?」 「貴方は成果を上げたのに私は何も出来なかったわ」 「気にしないでいただきたい。死ななかっただけマシです」 最悪の場合、サーヴァントを失う状況だったのだから生きているだけ儲けものだろう。 「サーヴァントのステータスの違いが、戦力の決定的差でないということを教えられましたね」 ステータス、スキル、宝具だけが全てではない。様々な能力が英霊には備わっている。 つまりスキル化してなくても生前持っていた能力を持ちうるのだ。 軍の元帥ならば戦術眼を、怪物を殺した者ならば勇猛さを。 マスターの権限であるステータス可視ですら見抜けぬ落とし穴がある。 「ええ。そうね。反省したわ」 でも、と付け足し。 「それを踏まえた上で三日後、必ず私はアサシンを倒すわ。 アサシンに嗤われた借りを取り返すために」 今回の戦い。リュドミラは確かに命を拾った。 だが、代わりに失ったのは誇り。それを取り戻さなくてはならない。 何よりあのアサシンに戦姫という存在の気高さを痛感させてやる必要がある。 誇りを取り戻す聖戦は三日後。 「では奴等を死なせてはなりませんね。 まぁ、奴等は死なないでしょうが」 「何か根拠があるの?」 「私と同盟を結んだのです。つまらない奴に殺されるはずがない」 自信満々でクリム・ニックは歩き出す。 そうとも彼は負けるつもりなど微塵もない。〝戦えば勝つのは天才である自分なのだから〟 未だ夜は明けない。 【ノースサイド/1日目 未明】 【クリム・ニック@ガンダム Gのレコンキスタ】 [状態]健康 [精神]疲労(全速力で舟を漕いだため) [令呪]残り3画 [装備]なし [道具]なし [所持金]クレジットカード [思考・状況] 基本行動方針:天才的直感に従って行動する 1.とりあえず休む 2.同盟相手を探す 3.あやめとやら、見つければアサシン主従の貸しにできるな [備考] ※アサシン(八雲紫)とそのマスター『空目恭一』を確認しました ※空目恭一との間に休戦協定が結ばれています。 四日目の未明まで彼とそのサーヴァントに関する攻撃や情報漏洩を行うと死にます。 【ランサー(リュドミラ=ルリエ)@魔弾の王と戦姫】 [状態]健康 [精神]若干の精神ダメージと苛立ち [装備]氷槍ラヴィアス [道具]紅茶 [所持金]マスターに払わせるから問題ないわ [思考・状況] 基本行動方針:誇りを取り戻す 1.四日目の未明にアサシン主従を倒す 2.それまではマスターの行動に付き合う 3.朝の紅茶を飲むわ [備考] ※アサシン(八雲紫)とそのマスター『空目恭一』を確認しました ※アサシンの宝具『境界を操る程度の能力』を確認しました。 ※空目恭一との間に休戦協定が結ばれています。 四日目の未明まで彼とそのサーヴァントに関する攻撃や情報漏洩を行うと死にます。 彼女は歩く。彼女は詠う。 それは人とは触れ合えぬ、枷を纏うて歌うもの。 彼女は聖杯戦争のイレギュラー。本来ならば呼ばれるはずの無い一般人である。 しかし彼女は空目恭一の〝所有物〟としてアーカムに来ていた。 元々あやめは人身売買の末に神隠しの山神に生け贄として隠された少女である。 彼女は買われた。首を吊るされ、そして埋められた。 ──彼女の怪談(せかい)は彼のものである。 【???/1日目 未明】 【あやめ@Missing】 [状態]不明 [精神]不明 [令呪]なし [装備]不明 [道具]不明 [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:空目恭一を探す 1.詠う [備考] ※空目恭一の所有物です。持ち主を探して詠い歩いています。 ※アーカム市内のどこかにいます。 ※魔術師等の神秘の使い手ならば視認で、それ以外ならばコミュニケーションを取った瞬間に、 一時的に『異界』に引きずり込まれ正気度を失います。 ※サーヴァントがいればあれに関わるなと助言を受けられます。 BACK NEXT 009 アーカム喰種[JAM] 投下順 011 Answer And Answer 002 首括りの丘へ 時系列順 001 蒼い空 BACK 登場キャラ NEXT OP 運命の呼び声~Call of Fate~ クリム・ニック&ランサー(リュドミラ=ルリエ) 016 BRAND NEW FIELD 空目恭一&アサシン(八雲紫) 017 それぞれのブランチ あやめ
https://w.atwiki.jp/playyugiohvip/pages/287.html
上級×14 地縛神ccapac apu×3 大天使クリスティア×1 フェルグラントドラゴン×2 創世神×3 光神機ー轟龍×2 古代の機械巨竜×3 下級×7 創世の予言者×3 オネスト×3 メタモル・ポッド×1 魔法×16 死皇帝の陵墓×3 歯車街×3 テラ・フォーミング×3 トレード・イン×3 神秘の中華なべ×2 大嵐×1 死者蘇生×1 罠×3 王宮のお触れ×3 ハグルマガイは破壊されなければ意味を成さないという歯車陵墓と呼んで良いのかは疑問視されるデッキ。ロックにめっぽう弱い。天敵はギガンテックファイター。たまにお触れが砂塵になったり大災害になったりする。 歯車街の発動はカウンターしてはいけない… このデッキに良くあること ハグルマガイのエフェクト発動! 中華なべ発動して古代の機械巨竜をチャーハンにします。 フェルー!! 初手がフィールド魔法3枚にテラフォ2枚 創世の預言者のハイビート トレードインで下取りに出されるフェル setモンスターへのアタック→DEF1900のオネスト「ふん!」 お触れは常にデッキで待機
https://w.atwiki.jp/cf_clan/pages/308.html
設立日 :2009.09.26 かりっくす、きゃりっくすじゃありません 「かりす」です ほぼEcsIrAの面子で立てたクラン CMacrux→Mr.kurosu→acrux 解散しました(笑) またね☆ミ 8/25 再結成 11/3/2 また解散しちゃった(笑) CoDに行くわ またね☆ミ 11/4/28 はいさいしゅうごー クランサイト 公式ページ6082 コンタクト #Ca1iX レコード- CFJL 3rd 予選リーグF 1位通過 決勝トーナメント 1回戦敗退 8-9 vs 約束の時2軍 公式リーグ10 Season1 予選リーグ4 1位通過 決勝トーナメント 1回戦敗退 7-3 vs赤字食品 CFDT チーム 腐れ外道 三位 準決勝敗退 9-7 vs [Ceres] CFDTⅡ チーム 鴨all☆s 優勝 メンバー ID Type etc. acrux AR mjkt神CM [EC]Loro AR ばか ニンジャマン MR 台湾人 m0zilla* SR * Fortress MR キチガイ JXXXXXXXXXXL MR Joy Ho0ZuKi MR osu! 殺戮獄龍神 AR すれいぷにる MR Eden0 AR 鳥の小骨 AR 過去在籍メンバー なんなる アイアス とし坊 H^aPPy M.S. だめスナ ☆麻奈☆ ψまっちψ X-tend jake nE_MozIllaX ness.t last update 2011/12/14 01 20 44 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/teamsatisfaction0/pages/47.html
モンスター22 上級4枚 インフェルニティ・ジェネラル1、 インフェルニティ・アーチャー1、 インフェルニティ・デストロイヤー1、 地縛神CcapacApu(コカパクアプ)1 下級18枚 インフェルニティ・デーモン3 インフェルニティ・ネクロマンサー3 インフェルニティ・リベンジャー1 インフェルニティ・ミラージュ3 インフェルニティ・ビートル3 インフェルニティ・リローダー1 インフェルニティ・ガーディアン1 インフェルニティ・ナイト1 インフェルニティ・ビースト1 インフェルニティ・ドワーフ1 魔法6枚 インフェルニティ・ガン1 虚無の波動1 ZERO-MAX3 死皇帝の陵墓1 罠13枚 インフェルニティ・インフェルノ3 インフェルニティ・バリア3 インフェルニティ・フォース2 インフェルニティ・ブレイク3 ハンドレス・フェイク1 エクストラ ワンハンドレッドアイドラゴン3 インフェルニティ・デスドラゴン3 煉獄龍オーガドラグーン3 インフェルニティのサポートのみ(死皇帝の陵墓以外)で構築した鬼柳さんデッキ このデッキを使いこなすのはかなり難しくなりそうだ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/teamsatisfaction/pages/77.html
モンスター22 上級4枚 インフェルニティ・ジェネラル1、 インフェルニティ・アーチャー1、 インフェルニティ・デストロイヤー1、 地縛神CcapacApu(コカパクアプ)1 下級18枚 インフェルニティ・デーモン3 インフェルニティ・ネクロマンサー3 インフェルニティ・リベンジャー1 インフェルニティ・ミラージュ3 インフェルニティ・ビートル3 インフェルニティ・リローダー1 インフェルニティ・ガーディアン1 インフェルニティ・ナイト1 インフェルニティ・ビースト1 インフェルニティ・ドワーフ1 魔法6枚 インフェルニティ・ガン1 虚無の波動1 ZERO-MAX3 死皇帝の陵墓1 罠13枚 インフェルニティ・インフェルノ3 インフェルニティ・バリア3 インフェルニティ・フォース2 インフェルニティ・ブレイク3 ハンドレス・フェイク1 エクストラ ワンハンドレッドアイドラゴン3 インフェルニティ・デスドラゴン3 煉獄龍オーガドラグーン3 インフェルニティのサポートのみ(死皇帝の陵墓以外)で構築した鬼柳さんデッキ このデッキを使いこなすのはかなり難しくなりそうだ 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/revenator/pages/68.html
運命の遭遇 京都に住む高校生、結月響と如月彩音は、部活から帰宅中、町中にある住宅街にて奇妙な現象を目撃する。 それはブロック塀から光の亀裂が発生していることであった。しかし前を歩く人数名はそれに気づいているようには見えない。二人は恐る恐るその亀裂に近づくと、ある事を思い出した。 今から数年前、この京都に移住するきっかけとなった恐ろしい事件。その事件を引き起こした犯人の気配を感じとった響は、亀裂の中に入ろうとする。一旦は止めようとした彩音だったが、心配で後に続く。 するとそこには、巨大な怪しく光る黒白の狼のような怪物が立ちはだかる。二人は村の仇を取ろうとするが、歯が全く立たない。 逆に敵の攻撃で負傷した二人は、絶体絶命のピンチに陥る。 だがその時、二人の前に二人組の男が現れた。彼らはすさまじい攻撃で狼を撃退したのであった。そう、彼らこそがヴィダールが生み出した神の使徒、神造兵器。名前をハーネイト、サルモネラ伯爵と呼ぶ。 霊量士(クォルタード)の素質 ハーネイトは、響と彩音を事務所に連れて行き、そこでなぜ亀裂に入ったのかを質問する。そのうえで、彼らにはある力を使いこなす素質、潜在能力があると判断し自身の下で働かないかと提案する。2人は彼らのことを知りたいため仲間にしてほしいというが、ハーネイトはいったん頭を冷やしてからそのうえでもう一度事務所を訪れるといいと提案し、2人は伯爵に付き添われ自宅に帰宅したのであった。
https://w.atwiki.jp/shinmegamitensei2/pages/132.html
出現数 1体 性格 威厳B 防御相性 36:魔法喰い 月齢影響 C 攻撃回数 3~6回 魔法継承 1 経験値 1608 お宝 パール マッカ 804 MAG 402 【魔法・特技(敵専用):-】 【解説】太古の昔、宇宙から舞い降りてきた神。あらゆる魔法を無効にするか吸収し、攻撃回数もやけに多い。結構しぶといので倒すのが大変だが、経験値が多いのでただ単に嫌な奴というわけではない。 出現数 1体 性格 威厳B 防御相性 28:ザン使い 月齢影響 K 攻撃回数 2回 魔法継承 4 経験値 944 お宝 オパール マッカ 708 MAG 354 【魔法・特技(敵専用):-】 【解説】メソポタミア、熱風と疫病の魔王。麻痺引っかきが凶悪すぎる。ルシファーがどうしても倒せない人は合体で造ろう。 出現数 1体 性格 威厳B 防御相性 39:反魔法 月齢影響 J 攻撃回数 1回 魔法継承 2 経験値 848 お宝 ダイアモンド マッカ 636 MAG 318 【魔法・特技(敵専用):ぎゃくかいてん】 【解説】闇の跳梁者。魔法を反射する防御相性が特徴。どこぞの世界ではラスボスになったらしい。何気に経験値が高い。 出現数 1体 性格 威厳B 防御相性 23:強アンデッド 月齢影響 J 攻撃回数 1~3回 魔法継承 8 経験値 376 お宝 秘孔針 マッカ 564 MAG 282 【魔法・特技(敵専用):デビルスマイル】 【解説】メキシコの残虐な軍神。ザコ戦だけでなら結構使える。攻撃回数はそこそこあるし、魔法も強力だ。敵のときはエナジードレインを使ってくる点に注意したい。 出現数 1~4体 性格 古風男B 防御相性 23:強アンデッド 月齢影響 J 攻撃回数 1回 魔法継承 8 経験値 328 お宝 デスブリンガー マッカ 492 MAG 246 【魔法・特技(敵専用):-】 【解説】スリランカの悪魔。特技・魔法がいやらしい。HPも結構あるからしぶといし、なにより銃が効かないから戦いにくい。集団で出現した場合は、逃げた方がいいかもしれない。
https://w.atwiki.jp/21silverkeys/pages/181.html
Rising sun(後編) ◆HOMU.DM5Ns 動と静の視線が対になって交差する。 突き刺さった槍の側に立つカルナは背後に二人のマスターを抱え、この場で最も健常であり、強大であり、戦意を見せびらかしているライダーと向かい合っている。 「この魔力の名残り……そうか貴様だな、下の狼煙を起こしたサーヴァントは!」 新たな乱入者の正体に見当がついたのはエネル。 そもそもわざわざ端を越えたスタジオに赴いたのも、オフィス街から感じ取った濃厚な魔力を感じ取ったのが発端となる。 パチュリーとクリムにしても行動の契機になった点では同じ。狼煙、という言葉は言い得て妙であった。 なんにせよ当てが外れた二人と遊んでるうちに本命が自分から来たのだから願ったりである。 「得物から察するにランサーのサーヴァントか。それにこの気配……ほう、貴様さては神の血なり力を宿しているな?」 初見でありながら出自を的確に言い当てられたカルナの目が細められる。 「なるほど、慧眼だな。クラスはともかく見ただけでオレの血脈まで看破するか」 「当然だ。我は神也、青海以外の神性を見抜くのなどわけもない。 だが所詮は紛い物だな。真に神足るはこの私のみ、他の神なぞ有象無象の木っ端に過ぎん」 聖杯戦争に呼ばれる数多の英霊には自分と異なる神が集まってくるのをエネルは当然知っている。 さして気にする事でもない。恐れを神に置換するのはどの国でも同じだ。 むしろ、そんな相手を倒し誰が真に神を名乗るのに相応しいかを英霊共に知らしめるのも悪くない。そんな風に思ってすらいた。 「いいぞ、来るがいい。神のゲームは始まったばかりだ。 丁度よく準備運動も終えて興が乗ってきたところ、貴様も遊戯の駒ならば精々楽しませるがいい!」 挑戦者をエネルは拒まない。神にとって祭は大いに望むところにある。 一騎二綺湧いたところで己は揺るがない。倒れないと豪語して憚らぬ。 それは勿論、集まる衆生でなく自らを愉しませる生贄の祭壇と同義といえたが。 生前スカイピア全土の勢力、神隊、神官、シャンディアの戦士、青海から来訪した海賊一味を含めた争いをサバイバルゲームと評したように。 ひとりひとり追い詰め地に伏せていくのも快感だが、やはり蹂躙とは多勢を纏めて跪かせるのが格別である。 「いや、それには及ばない。オレには此処で戦う意思はない」 だが、完全に戦闘の享楽に傾けていた思考は、カルナの一言で一気に冷や水を浴びせられる格好になった。 「……………貴様は何を言っている?」 などと、心網(マントラ)を使うのも忘れ冷えた声色で問うのも無理からぬことであった。 「言葉通りの意味だが。オレがマスターから受けた命令は、この場で起きた戦闘を止めさせ、巻き込まれる犠牲者を生まない事の一点のみ。 退けばそれでよし、追いはせん。だが戦いを継続してこれ以上被害を広げるようならば、こちらも手を出させてもらう」 戦う気はない。だがここで続ける気であれば自分も加わり強制的にでも戦闘を止めさせる。 言わんとしている内容はそういうことだ。そういうことだが……それを実際の戦場で告げるのは話が別次元だ。 英霊同士の殺し合い。常在戦場が必然たる聖杯戦争において、勝ち誇るライダー(エネル)に対し、ランサー(カルナ)は戦闘を止めろと言ったのだ。 余程空気を読めてなければ口にすら出来ない発言である。 「……命乞いにしても度を越えたな。期待外れにも程があるぞ。とんだ臆病者のマスターもいたものだ。それに従う貴様もな」 「オレの意思は関係あるまい。マスターが臆病なのは認めるがその上で自らの意思選択をした。その選択を咎めることは誰にもできない。オレはその意のまま動くだけだ」 生真面目に返答するカルナにも、エネルは無関心だった。既にこの相手に戦いを愉しもうという気は萎えていた。 「もういい。貴様は不要だ。即消えろ」 不愉快そうに、虫を払う動作で雷霆を投げる。 出力は一千万。塵を跡形も残さず掃除するためには勿体ないぐらいの破壊力。 白光が迫り、逃れようのない死の洗礼である暴雷を―――――――装甲を張った右腕を軽く振っただけで明後日の方角に飛んでいった。 「それが答えか。いいだろう」 片手で弾かれた雷は儚いまでに霧散した。 振りぬいた右腕には何の痕跡も残っていない。 代わりに燃え上がるのは炎。火傷とは違う、カルナ本人の内から出し揺らめき。 「ならばマスターの命により、お前を此処から退かせる」 地に縫い止められた槍を引き抜く。炎は槍に移り、眠れる神気を顕にした。 「不遜なり!青海の白ザル如きが神に退場を迫るとは!」 怒気に満ちたエネルの叫びが、稲妻となって周囲に飛び散った。 輝く腕が輪郭を解れさせる。悉くを打ち砕く神の弾丸を撃ち出すための大砲の筒へと変化し、溢れる魔力が装填される。 「座興は終わりだ。そこの雑魚諸共消し飛ばしてやろう!"神の裁き(エル・トール)"!!」 鼓膜を破壊する、号砲の快音にしか聞こえない雷鳴。 天頂からの落雷ではなく、真横に吐き出される魔力はまさしく、巨大な大砲の砲撃そのものだった。 カルナのみならず、背後のパチュリー達をも纏めて一網打尽にする規模。サーヴァント二綺を戦闘不能にした雷の大波濤が再び襲いかかる。 そんな必滅の魔力を前に、カルナは見る者の眼を疑う行動を取った。 正確には、動かなかった。 横に避けるでも、迎撃するのでもなく、両腕を交差し仁王立ちの姿勢に構えたのだ。 「愚か者めが!ハエを庇って死に急ぐとはな!!」 余波を食らったに過ぎない胴田貫やリュドミラと直撃の"神の裁き(エル・トール)"とでは話が違う。俄かの防御策や気合で耐えきれるほど温い熱ではない。 誰もが地に横たわるざを得ないからこそこの技は裁きと呼ばれる。サーヴァント一体の壁なぞ容易く貫通してパチュリー達も焼き焦がすだろう。 まして自分のマスターですらない、他のサーヴァントと契約するマスターを守るために残るなど何の意味もない。愚かな自殺行為としてしか映らなかった。 水平方向に撃ち出した"神の裁き(エル・トール)"はランサーを消し、その向こう側の広告塔の看板に風穴を空けて彼方に消えていく。 高所なのだからビル階層でも狙わない限り通行人を巻き込むわけがない。ちゃんと計算に入れての攻撃だった。 ……なのにいまだ雷撃はカルナを貫けず、それ以上の前進を押し留められている。 海岸に押し寄せる大波に人が立ち塞がるようなもの。自然の猛威には人間なぞなす術なく一呑みにされるしかない。 けれど、カルナの五体は緻密に計算して積み上げられた防波堤のように立ち塞がり、粛正の雷を抑えていた。 神の裁きを受け止めるカルナの姿は、天の蒼穹を両腕と頭のみで支える巨人の逸話を再現しているようでもあった。 「……!?」 よもやの事態にエネルの思考が乱れた隙に、逆にカルナが前進した。 痩身でありながら踏み出す足の力強さは巨象が豹の速度で駆けるにも等しく、押し込まれた"神の裁き"が遂に臨界に達した。 飛行船並のバルーンにナイフが刺さったみたいに割れる、肝の小さい者であれば心停止に陥るほどの破裂音。 さしたる損傷もないままに"神の裁き(エル・トール)"が通っていた道を抜ける。 エネルが大砲ならば今のカルナは発射された弾丸そのもの。 背に炎を背負ってジェット加速する、一本の槍となってエネルの元へ疾走する。 「2000万V放電(ヴァーリー)!!」 迎撃は素早かった。 両の掌から打ち出された稲妻の檻が徒手の間合いにまで肉薄していたカルナを挟み込んで撃ち抜く。 白雷に絡め取られたのも、しかし一瞬のことだった。 エネルは目の当たりにしたのだ。 浴びせた雷が肉体にまで流れることなく、それより前に表面の鎧を伝って空中に散っていくのを。 まるで宇宙に煌々と燃え盛る太陽に、星の下を走るだけの稲妻が届かないのが当然だと教え込むように。 電流が意思を持ち、その鎧に触れる恐ろしさのあまり我先にと虚空に逃げていく、悪夢のような光景を。 その瞬間のエネルの表情を、どう表したものだろうか。 眼窩から飛び出しそうなほど目を見開き、顎も関節が外れかねないぐらいに大口を開けている。 焦燥と驚愕と困惑と絶望が一斉に押し寄せ、ない混ぜになって処理が追い付かない。 絶対と信じ切っていたものが目の前で音を立てて崩れ去っていくのを目の当たりにした時、こういう顔をするものだろうか。 生前の体験がリフレインされる。 忌まわしき敗北の記憶。 認めがたい屈辱の記録。 無敵を誇り、最強に何の疑問も持たず神の座に君臨していた絶頂の頃に現れた、ある青海の人間。 取るに足らぬいち海賊に過ぎぬはずが、頼りにしていた力が一切通用せず無防備に拳を食らった謎の体質。 エネルは思い出した。 記憶から忘却し封じ込めていた、かつての『恐怖』の感情を。 「貴様、まさか『ゴム人間』……!!!」 それより先を言い切ることは出来なかった。 黄金の手甲とそこに纏われる炎、そしてカルナ自身の燃え上がる『覇気』が込められた拳は。 エネルの生身のままの頬を、すり抜けることなくごく当たり前に打ち抜いた。 「!!!???」 受けた衝撃と痛みへの理解も追いつかぬまま。 エネルの体は殴られた勢いのまま彼方へと飛ばされ、向こう側の広告塔の看板に風穴を空けて落ちていった。 ▼ ▼ ▼ 炎を背に纏って軽やかにカルナは着地した。 我が手を見つめ、手応えを得たのを確かめる。 肉を打ちすえ、頬骨を砕いた。エーテルの体に記憶と共に染みついている、生前何度も重ねた打撃の感触だ。 鎧で雷撃を受け止め、魔力放出で一息の間に距離を詰め、炎を纏わせた手甲を嵌めた拳で殴る。 以上三手が、カルナがエネルに一撃を喰らわせるに要した工程であった。 瞬間的に魔力を引き出した全開の一発は、無敵を誇っていた神の体に誤魔化しの利かない痛打を与えた。 エネルが有する常時発動型の宝具『神の名は万雷の如く(ゴッド・エネル)』。 悪魔の実『ゴロゴロの実』を食した事で身についた特質こそはエネルの自信の理由。 肉体自体が雷電となり大自然の力を自在に行使でき、凡そ物理的な打撃は透過される。 自然(ロギア)系と呼ばれる強力な悪魔の実でわけても最強に数えられる、神を称するに相応しい能力だ。 しかし全てに例外はある。抜け道のないルールはない。 相互能力の相性。神秘はそれを上回る神秘を前に塗り潰されるという絶対則。明暗を分けたのはその二つだ。 カルナの全身に埋め込まれている防具型宝具、『日輪よ、具足となれ(カヴァーチャ&クンダーラ)』。 父なる太陽神スーリヤの威光が形をとった是こそは、カルナが不死身の英雄と呼ばれた所以。 あらゆる敵対干渉を九割方削減させる神の恩寵は、たとえ神域の雷撃といえど貫けるものではない。 加えて鎧部分が全身に及ぶ以上腕の手甲にも恩恵があるのは自明の理。 降り注ぐ災禍を退ける防備は、単純な神秘性の高さで雷化による透過を防ぐ攻めの一助と機能したのだ。 しかも念の入ったことにカルナは拳に自らの魔力を炎として付与していた。それが第二の相性。 エネルの世界、青海の強豪達が使う"覇気"のうち武装色と呼ばれる種類がある。 拳や武器に力を注入する事で、形なき自然系の能力者を捉える代表的な対抗手段として知られている。 カルナの炎は自然系共有の無敵を破る、武装色と同等の効果に含まれ更なる決定打を与えることに成功していた。 鎧と覇気。期せずしてエネルに対するふたつの特効を併せ持っていた因果。 空島には存在しない絶縁体であるゴム。その特性を悪魔の実で身に着けた『ゴムゴムの実』能力者。 生前自身の天下を脅かした天敵の再来は、その結果すらも再現したのだった。 しかしカルナは表情を崩さず、あくまでも正確に分析する。 神の無敵性を破り痛打を与えたるために、カルナは自ら課していた魔力のセーブを一時解かなくてはならなかった。 ただでさえ超級の宝具を幾つも揃えたサーヴァントとしての現界は劣悪な燃費を要求している。 そこに魔力放出の重ねがけを無遠慮に行えば、未だ発展途上のマスターの蘭子へ命に関わるほどの大きな負担を強いることになる。 強力なサーヴァントほどその実力を発揮するのにより多くの魔力を要する。カルナもまたその例外に漏れないでいた。 "―――そう容易く攻め切れはしないか" 今の一発は運が向いただけだ。油断しきっていた相手の隙に差し込んだ形だけでしかない。 それも魔力放出による加速がなければかわされた可能性がある。 マスターを慮りはしても、戦士であるカルナはエネルの力量を侮らず真摯に向き合う。 弱みにつけ込むのみが能の悪夢(タタリ)とは違う大英雄の観察眼は、此度の相手を易々とねじ伏せられる相手ではないと判じた。 「―――で、どういうつもりなのかしら、貴方」 黙考するカルナに、不愉快さを隠さず冷たく問い詰める声があった。 全身の痺れから復帰を果たしたリュドミラだ。 よく体を見れば、小柄な手足には髪の色と同じ衣服とは違う薄い透明な膜に覆われている。 それに周りの空気も、カルナが発した熱気のせいでほぼ分からなくなってるが雪が降っていてもおかしくない気温にまで落ち込んでいた。 ラヴィアスの常時流している冷気を意識的に放出して、火傷の応急措置を施しているのだ。 これをクリムと、ついでに胴田貫にも施してある。持ち前の継戦力と合わせて回復した胴田貫は唯一雷を受けてないパチュリーを守るように立っている。 二綺が戦端を開いた最中にも、戦姫は抜け目なく再起の手筈は整えていたのだ。 そしてリュドミラは今、もう一人のランサーに対して槍を突き付けている。 結果を見れば、突如として姿を見せたこのランサーに助けられた形だ。 だがそれで安易に気を許して下出に出るべきではない。 付け加えれば、下での火災がこの男の仕業であれば自分達を誘い出す算段の可能性もある。狙いが不明瞭な限りはまだ要警戒対象だ。 「それは戦いに割り込んだことに対してか? 戦士にとっては斃されるより横やりを入れられる方が誇りに抵触する……その気持ちは理解しているが、これも命令だ。間が悪かったと諦めてもらおう」 「よく回る口ね。それで、見逃せば勝手に消えてくれた敵をわざわざ助けて、どう恩を売るよう命令されたのかしら?」 リュドミラの言には自虐が混じっている。 聖杯戦争がバトルロワイアルの形式を取る以上、落としやすい陣営は早期に落とすのが定石である。 先ほどまでのリュドミラ達は、業腹なことにそれだった。 その絶体絶命の窮地を救ったランサーはまさに天の恵み、差し伸ばされた救いの手に等しかった。 尤もそれは、こちら側から見たのみの場合だ。 他陣営同士の戦闘は初めは見に回るのが定石だ。 遠目から成り行きを観察して情報を得るもよし、潰し合わせて互いに疲弊したところを討つもよし。 そこに割り込んできてひとり戦果を丸ごと掠め取るのなら、野蛮ではあるがまだ理解できる。 だが殺し合う敵、それも初見の相手を体を張って守護しに来たなどと、どうして信じられよう。 だからリュドミラは何らかの利用価値を見出されて助けられたものと真っ先に疑ってかかっていた。 敗死寸前を救われたのだから、何か法外な報酬でもふっかけられるのではないかと内心穏やかではなかった、のだが。 「いや、特には」 簡素に、そしてあっさりと、カルナはそれを否定した。 「マスターの命令は先ほど言った通りだし、それ以外の含みはない。 そして"守るべきこの館内の者"に、他のマスターやサーヴァントも含まれるのも当然の帰結だ」 事実、本人には含むものなど始めからないのだから、そう言うしか他にないのだった。 「つまり利益も見返りも勘定に入れずに、ただ私達を助けるためだけに動いたとでも言うわけ?」 「ああ」 「…………本気?」 「嘘を言った憶えはない」 開いた口が塞がらない、とはこういうことか。 無私無償。溺れる者の手を掴み義によって助太刀する。 英雄らしいといえばらしい、典型的な行動原理ではあるが、これは限度を超えている。 それでいてお人好し、というわけでもない。マスターの判断らしいがこのサーヴァント自身の感情はどうなのか。リュドミラにはまるで読み取れない。 損得で動かないというのは、悪辣な取引を迫る輩よりもある意味タチが悪いものだ。 「オレにしろ奴にしろ、続けるというならばそれも構わん。 だが最低でもマスターは遠ざけてからにした方がいい。回った毒が抜けなくなるぞ」 リュドミラの動揺をよそにして、カルナは構わずに言葉を紡ぐ。 「毒ですって?」 「この聖杯戦争が異形であることには気づいているだろう。オレ達サーヴァントの神秘は変質している。 英雄の光は眼を潰す闇に堕ちた。人の精神を冒す悍ましき狂気に満ちている。 現に、戦意を向けたわけでもないオレを見ただけでそちらは中てられてしまっている」 そうして視線をリュドミラから外す。 目を向けた方向には、胴田貫の後ろで、膝を折って項垂れたまま動かないパチュリーがいた。 連続して雷と炎の神秘に晒された精神は既に許容量を超え、一時的な虚脱状態に陥ってしまっている。 目の焦点は合わず憔悴し切っている。ここでの会話も聞こえているかどうか。 「奴はこちらで引き受けよう。オレからは以上だ」 そう締め括り、身を翻して未だ煙る広告塔に向き直る。 晒した背中は無防備に見えていて、けれど隙が見当たらない。 舐めているのか。絶対の自信の表れか。それとも本気で疑ってないのか。 ……ラヴィアスで冷やした思考の最も凍り付いた部分が計算を組み立てる。 明らかに自陣営は瓦解している。 マスターは傷つき同盟相手は意識が朦朧。態勢の立て直しはどうしても必須だ。 二度に渡る敗北と、助け舟を出される屈辱。舌を唇を噛み切りたくなる激情が今も口腔を満たしている。 しかし、そう……だからこそ見直さなければならない。 二度も起きた幸運。誇りを引き裂かれながらも繋いだ命脈。 マスターに意識があったら、これも己の才智が引き寄せた好機とでも軽口を飛ばすだろうか。 ついた泥を洗い流し家名を穢された罪を清算するためにも、ここで消える訳にはいかない。 「……いいわ。なら殿は任せます。行くわよセイバー」 「おいおい、俺もついていくのかよ」 呼ばれるとは思ってなかった胴田貫は嫌々そうに顔を歪める。 「一度盟を結んだ相手を軽々に捨てはしないわ。まだ価値がある限りはね。 心配しなくても寝首を搔くなんて下水の鼠じみた真似はしないわよ。貴方一人で今の彼女を守り切れる算段があるのかしら?」 痛いところを突かれて押し黙るしかない。 切った張ったが専門分野の自分であるのに、刃を握るマスターがこの様子のままでいるのに大いに気を揉んでいたところなのだ。 治療を請け負ってくれるというのなら願ったりだ。 「……しゃあねえか。てなわけだ、動けるか大将?」 「……」 「駄目か。後でまた荒れるなあこりゃ」 頬をぺしぺしとはたいても反応を見せないパチュリーを大雑把に肩に担ぐ。 リュドミラは両腕でクリムを抱きかかえて手近なフェンスの上に乗り上げた。 「″赤″のランサー」 リュドミラが呼びかける。 呼称に特に意味はない。せいぜい炎を現出させた点から想起しただけ。 単に、同じランサークラスに区別をつけたかった程度だ。 「必ず生き延びなさい。そして事が済んだら、マスターを連れて会いに来なさい。 非礼とお礼その他諸々を纏めた茶会で、とっておきの紅茶(チャイ)をご馳走してあげるわ」 あくまで不敵に、誇り高く微笑んで。 自分にとって最大限の敬意を込めた誘いを送り、フェンスを蹴って下に降りて行った。 「じゃあな。縁があったら俺とも一戦交えてくれや」 胴田貫も続いて消える。 これで屋上にはただ一人。カルナも漸く肩の荷が降りる思いになる。 英霊の神秘性が狂気を呼び起こす聖杯戦争でカルナがマスター以外を守るのは不利が大きい。 庇ったマスターにカルナの魔力で脅えが生じる本末転倒になるためだ。 二人も別陣営のマスターを近くに置いて戦うのは枷をはめられるのと同義だ。無論それを不満に思うカルナではないが。 一時の静寂が訪れた空間が俄かに震動、いや鳴動する。 広告塔に空けられた虚空から、魔力の大塊が噴出した。溢れる熱気と怒涛の勢いはまるで間欠泉。 それをカルナは体で受けるのではなく、手にする槍で応じる。 霞をかき消す呆気なさで雷気に満ちた魔力が斬り裂かれた。 「よくも―――やってくれものだなランサァァァァァ!」 稲妻の残像をつけて、激憤の叫びを上げるエネルが帰還した。 拳を受けた左頬はまだ肉体の再構成が追いついておらず、肉も骨も見せず不定形に波打っている。 その形相は憤怒に染まり切っている。怒髪天を突く勢いで周囲に放電が舞い散った。 他の主従の姿が消えている事など完全に頭に入っていなかった。 「神である我の裁きを受け入れず、この身に傷をつけおって! あってはならない障害だ、愚かなりゴム人間!英霊となっても性懲りもなく私の道を阻みに来るか!」 「ならば降参するか。前言を違える気はない、退くなら追いはせんぞ」 「―――ッ!調子に乗るのも大概にしろ白ザルが!」 挑発―――エネルにはそうとしか聞こえなかった―――を聞き、雷鳴にも等しい怒号を上げてかき消える。 電速で飛び繰り出す三叉槍を、黄金の槍が猛然と撃ち落とす。 余人を寄せ付けさせない衝撃波の暴風域が形成される。 咲き乱れる雷花。踊り狂う気迫の嵐。衝突した力と力がせめぎ合う。 弾かれては引き合い、触れては弾く槍撃の電流火花。 見えない引力に引っ張られながらも、互いに合一する事を否定するように、二極の英霊は必殺の意志を武器に込めて交差させる。 打ち合いに優勢に立つのはエネル。 やはり"心網(マントラ)"による読心の利は多大なるもので、豪速のカルナの槍を全てかわしていく。 無味乾燥なほどてらいのない、容赦のない一撃は捕えられれば壮絶な威力を誇るだろうが、あくまでも当たった場合だ。 敵の気配を探り、常に"次の一手"を先んじて知れるエネルが、その身に宿る稲妻の速さを以てすれば避けられぬ道理はない。 シビれさせるだけが能ではない。たとえ雷が効かずとも肉弾だけでも他のサーヴァントを制する自信がエネルにはあった。 長大な槍の攻撃のほんの僅か、常人からすれば電流の走りに満たぬ間に次々と刺突がカルナの全身に入っていく。 しかしそれでカルナがなすがまま翻弄されているのかといえば、それは否だ。 「なんだこの硬さは……!貴様、ゴムではないのか!?」 「生憎と、そうした材木とは縁がなくてな」 三つ又の槍には常に手に持つエネルからは、電流とそれに伴う熱が伝導し一種の電熱スピアとして機能している。 ゴム人間も斬撃や熱には肉が焼け血も流れる。いやゴムでないにしても十分脅威になる攻撃だ。 にも拘わらず、当のカルナは一切の痛痒も見せない。 幾度となく刻まれながら、その白い痩躯にはひとつとして傷らしい傷が残らないでいた。 攻撃が当たらず、フェイントにもかからないと見るや、戸惑うどころかより槍の冴え渡らせるカルナ。 守りは最小限に。今は攻勢こそが守勢を上回る生存を切り開く。 動きを読まれているならば、さらにその先を読み予測も追従できぬほどに攻め続けて引き離せばいい。 そんな単純極まる、そして実現はおよそ不可能に見える荒業を槍の英霊は実行しようとしていた。 ―――その武練の卓越さは神域に至り。 一息をつき終えるまでに一体どれほどの突きが放たれたのか。時計が針を刻む数瞬にどれだけの戦闘の状況を想定しているのか。 右の薙ぎ払いをかわした次は。雷化して背後に回り込んだ次は。その次を。次を。誰も見通せぬ『次』を。 徒労は感じない。疲労は忘れた。処理が追い付かぬまで走り続ける。 読心があらずとも、己には神話の大戦を潜り抜けて練磨された眼力があり。 燃え盛る列火の絢爛さと、針の穴に糸を通す精密さが一体となった隙の無い体捌き。 一意専心を込めて果断に攻めるカルナの技量は、エネルの想定を遥かに超えていた。攻め手を逸し、回避に専念しなくてはならないほどに。 一方は全身が残像を遅いと嗤って置き去りにし。 一方は手足の末端部分を不可視の術をかけられたかのようにかき消す。 全体の速度ではエネルが勝り、微細な体捌きでの技量ではカルナが上回っている。 実際に電気を走らせ、サーヴァントすら目で追えない領域にまで突入しようかという超高速の斬り合いの中で、ついにたまらずエネルが距離を取る。 技巧の比べ合いを放棄。戦士として相手より劣る証明。 それがどうした。全ては神の力を以て斃せればそれでよい。 背中から太鼓のひとつを柄で叩く。すると太鼓はたちまちに膨張して形ある雷に変わる。 「三千万V、"雷鳥(ヒノ)"!」 迅雷という嘶きを張り上げ、殺戮の猛禽が飛翔する。 翼を広げ迫りくる"雷鳥"は逃げる獲物をどこまでも追いすがる。羽の一枚でも掠ればそこから絡めとり全身を焦熱させてでも狩り取りにくるだろう。 だが既に雷の洗礼を払っているカルナに怯みはない。心臓を啄みに来た嘴を五指で掴み、素の腕力で口腔まで握り潰す。 そのまま地面に叩きつけられてから拳を深く抉り込まれ、"雷鳥"は制御を失いその身を散逸させた。 「やはりな、あくまで弾くのはその鎧か!」 "雷鳥"は囮だ。高出力の技で出方を見て無敵の秘密を看破するのが本来の狙い。 見立て通り、奴は全身が雷を無効化しているわけではない。身に埋め込まれた鎧のある個所で迎えている。 "雷鳥"にかかずらってる隙に接近して、腕と肩の鎧部分に手を置く。 「"雷治金(グローム・パドリング)!!"」 発電熱による金属操作。 自身の「のの様棒」も同様にして矛に精錬させたものだ。 宝具であれ雷流を直接送られれば形状を歪めさせ、引き剥がしてみせるという目論見なのだ。 金属の融点なぞとっくに超え、上昇し続ける熱は周囲にも伝播し大気を浸食する。 おぞましき魔力の捻じれが空間をかき乱す。 繰り広げられる傲岸なる神の処刑場。 狂い悶えるが如く散る火花。 その中でも。 "融けぬか……!?" なお崩れぬ精神が在る。 原型を留める肉体が大地を踏みしめている。 鎧で分散されてるとしても生身に流れ続ける熱は零にはならない。 骨肉は融け、目玉も落ち、想像を絶する激痛が襲っている筈だ。 それなのにカルナの目はどこまでも清廉で。 苦痛に歪めもせずに。眼前のエネルから決して視線を逸らさず、滾る意志を放つ。 「―――梵天よ、」 「!」 そして前髪から覗く瞳に熱烈なる魔力が充填されていき。 「地を奔れ!」 それまで受けた熱を返すかのように照射された視覚化された眼力が、視界に収めた空間を焼き尽くした。 先ほどエネルが突っ込んだ広告塔は、今度は熱線により看板そのものの存在が滅却される。 咄嗟に上空に飛び難を逃れたエネルだが、予想しえなかった反撃に肝を冷やしたあまり"心網"の精度に陰りが生じる。 「しまっ……ッ!」 一泊置いて危機感に戦慄し下に目をやるが、時既に遅し。 既に敵者は同じく中空まで飛んだ位置から、黄金の左ストレートを腹腔にぶつけた。 「ガフ……ッ!!」 再び、拳の感触。 己の意思と無関係に急降下し、叩きつけられる体。 肉が弾ける衝撃は骨に伝導し臓腑を掻き乱す。思考が濁流に押し流されていく。 受け身も取れず地面に激突した衝撃で意識が霞む脳内は、ただ己が跪かせられているという事実を認識する。 「おのれェェェェ!!」 体を苛む痛み以上の激憤が、落ちかかっていた意識を覚醒させた。 すんでのところで雷化して槍の追撃から退避する。今の一撃をまともに食らっていたら絶命は免れなかっただろう。 一息で追いつかれない距離のフェンスの端で実体化し敵を睨む。 黄金の鎧の隙間から煙が吹いた姿は決して無傷ではない。ダメージは確かに与えている証拠だ。 それなのに安堵できない理由。神の雷霆を受けていながら衰えを見せない鋭い眼光。 神であるエネルを見据える視線には恐怖が全く見えない。 心網で読み取れる心理に偽りはなく、故に虚勢でないと否応なく理解させられ、その事実がより一層忌々しい。 「その槍、その鎧、その炎……そして何よりもその目!貴様の何もかもが私を苛立たせるな。 『恐怖の否定』は『神の否定』!遍く全ての神は絶対の存在として恐れられるよう出来ている!神の血を引きながらそんな事も分からぬか!!」 留まるところを知らない怒りがそのまま電気に変換され、今や空には邪悪なる樹(クリフォト)が根を張っているかのように稲妻が充満している。 そんな状況でもカルナは至極冷め切った声を返した。 「恐怖こそ信仰の源泉か、それもまたひとつの理だろう。神とは往々にして畏怖される事で信仰を保つものだからな。 だが神とは超越者であると同時に与えるもの。忌み嫌われる神もその根底には穢れを引き受けてくれる事への感謝がある。 畏れと敬いは表裏であり、だからこそ神は様々な側面を備えている」 自らを神の零落と謳い後世に真に神と結びつけられる英雄がいる。 偉大な事業を成した事で新たな神に召し上げられた聖者がいる。 エネルはそのどちらにも及んでいない。既存の神話を背景に置くことなく、人を畏怖させ、従えるのみで歪なる神性を得た。 外と分けられた小さな世界において、神(ゴッド)・エネルは正に唯一の君臨者でいられていた。 その信仰を基にして投影されたサーヴァントへの言葉は英霊の瑕―――生前の敗北の歴史を暴き立てる。 「人は理解できない恐怖に呑まれながらも、常にそれに抗い未踏を切り拓いてきた生命である。 その陥穽に気づいているか、奪う神よ。お前という恐怖に従わぬ者が現れた時点で、その信仰の礎は瓦解しているとな」 黄金の穂先が、証明するようにエネルの首元に向けられる。 「そして―――オレもまた英雄だ。この命ある限り、相手取るのが一国の軍勢でもおぞましき邪神であろうとも、等しく恐れる道理はない」 告げられた声には、決然とした信念。 呼吸の乱れなく佇む姿勢は万夫不当。地を焦がす万雷にも燃え尽きぬ灼熱の陽光を宿らせて、恐怖の象徴に宣言する。 「――――――よく言った。ならば見るがいい」 人の声に聞こえない、それまでの怒気が消え失せたと思えるほど底冷えた声がした。 だがそれも一瞬のこと。ある感情が臨界を超えるほど高まり振り切った時、一端ゼロにまで反転する錯覚でしかない。 「我が真なる裁き―――児戯とは比較にもならん神の力の降臨を! そしてその上で聞いてやる、今の痴れ言をもう一度言えるのかをなァ!!」 落雷の衝撃音に匹敵する怒声。 いま二人の頭上で、魔力が渦を巻く雷雲と化し、集合してひとつの形を成そうとしている。 湧き上がる凄絶たる魔力にカルナも目を見張る。言う通り、発揮される力の規模が違うと、顕現するよりも前に眼力が見抜いていた。 ライダークラスのサーヴァントは強大な宝具を乗機にする傾向が強い。 その例に漏れずエネルももうひとつの宝具を所有していた。 肉体そのものである宝具を全力稼働させて初めて機能を解放する、神(ゴッド)・エネルが実行しようとした最大の逸話の象徴を。 暗雲の中で、今度こそ質量ある物体がその実在を確固たるものにする。絶望を乗せたものが錨を下ろす。 「来れ『雷迎』!黒雲を走らせて現れ不出来な大地(ヴァース)を砕き散らし、目映き神の世界への道を開け! 宝具解放――――――――――」 『そこまでです、ライダー』 最終宝具の解放が行われんとした、まさにその寸前。 玲瓏な声が、聴覚を超えた感覚、精神に向けて直接二人に届いた。 人ならぬ小動物、鳥に羽虫、草花に土、街で起きた殺戮の被害者の霊までもがその声に聞き入った。 それほどまでに遍く存在に、奥深くまで届いていく響きがあった。 まるで、精霊か天使かの歌声の調べ。 そしてその思念の発信源は、二綺の英霊が居合わせるビル屋上のフェンスの上に乗っていた。 赤子ほどの背丈に垂れた尾。 短い手で抱えた分厚い書物と帽子は智慧を司る象徴か。 人の種では到底ありえない霊体的存在には違いない。 しかし規格外に余りある魔力は、実際はサーヴァントのものですらなかった。 それはこの聖杯戦争に召喚された、どのような神に連なるサーヴァントであろうとも絶対に、絶対に持っていない神聖さに満ちていたからだ。 その名をシャマシュ。 メソポタミア神話の太陽神にして、正義の法と裁判の神。 名を借りた神性ではない、英雄跋扈する聖杯戦争においてすらおよそ召喚される可能性のない、純全な神の化身。 『ここでの宝具の開帳は許可いたしません。我がサーヴァントよ、今すぐ戦闘を止め我が許に戻るがいい』 そして童子を通して発される少女の声は、幼げで無垢でありながら容赦のない鉄の苛烈さを伴っている。 霊を操り共に歩む者、シャーマン。 その枠組みの内でも最上級に分類される、神霊すらその身の巫力で実体化させる正真正銘の『神』クラスと称される存在。 十の法を行使するシャーマン組織『X-LAWS』のリーダー。そして今はサーヴァントを率い聖杯を望むマスターの一人。 『聖・少・女』アイアン・メイデン・ジャンヌは、己がサーヴァントに断とした口調で命令した。 「……なんのつもりだ、貴様?」 『汝は、その令呪の効果を忘れたか。無辜の民がいる場所での戦闘行為の一切を私は禁じていたはず』 少女期を超えていない声は、しかしあどけなさというものを感じさせない。 愛らしさが全面に出ているだろう年頃でありながら、宗教の組織の長であるような威厳との落差は恐ろしくすらもある。 そこに人は聖なる信仰を見て、あるいは人間ではないモノへの恐怖を抱くだろう。 幼く、純粋無垢で、穢れを知らない純粋さが想起させる色は白。 万象全てを塗り潰す、絶対の白だ。 「何を言い出すかと思えば……いつまでも物見遊山の気分でいるマスターに代わって自ら敵サーヴァントを探し出してやったのだぞ? 逃がした二匹とそこの愚か者を含めて都合三匹。首尾よく仕留められたものを邪魔しようとは。 聖杯を望むマスターの振る舞いとは思えんし、神に対する態度でもないな」 マスターの諫言にも、エネルは傲岸さを改めず鼻を鳴らす。 自分はあくまでサーヴァントの務めを果たしてるだけであり、感謝こそすれ諫言を受ける謂われなどどこにもありはしまいと。 『ならばこの場で続けますか。その英霊との戦いが早々に決着が着くと思っているなら今すぐ改めるがいい。 そしてこのような街中で宝具を解放しようものなら、如何なる結果が待つか読めないはずもないでしょう』 「……」 口元をひくつかせ、エネルは不快げに下の街を睥睨する。 負けはしない。そこは確信している。だが全力を以てあたる必要はある。 だがそうなれば確実に街の人間にまで影響を与える。それほどまでに秘蔵する宝具は大規模な範囲を誇る。 取るに足らない塵でも、被害を与えた時点で令呪は効果を発揮し身を縛る無数の鎖と化す。 マスターによって冷まされた思考は合理的な言葉を鬱陶しく呟き始める。 「興が削がれた。つまらん」 吐き捨てたその一言と共に、展開されていた魔力が薄れていく。 迸る雷気も、渦を巻く暗雲も、全てが夢幻の如く消え失せた。 「今回はここまでにしてやろう。臆病なマスターに感謝する事だな」 魔力は収まり、しかし視線の険しさだけは残したまま凝縮された殺意でカルナを睨めつける。 「次で終曲(フィナーレ)だ。度重なる屈辱と蛮行、最早貴様の死を以てしか償えん。必ずや神の名の許に我が裁きで誅を下す。 それまで下らぬ者共に掠め取られてくれるなよ」 絶対の死刑宣告に対してカルナが答えた言葉は―――これまで通りの冷静で、しかしとどこか違う質の意志がこもっていた。 彼をよく知る者でなければ気づく事もできない、些細な変化を。 「その確約、必ず果たそう。どうやら我等は互いに知らずとも切り離せぬ鎖に囚われてるらしい。 その神(な)を名乗り、その雷(ちから)を振るう以上、オレとお前が相争うのは偶然ではなく、ひとつの宿業だという事だ」 ―――その言葉の重さを知る者は、今ここにはいない。 英霊カルナ。インド叙事詩マハーバラタに名を遺す施しの英雄。 太陽神スーリヤより誕生時に賜った鎧と、神々の王インドラから返礼に授かった槍、それらを持つに相応しい器を兼ね備えた男。 その威光に恥じぬ生き方をする事こそを人生の指標とした男が、雷を統べ、唯一の神と奢る英霊(おとこ)と出会った意味を。 「……抜かせよランサー。貴様の最期にはそのご自慢の鎧を剥がし、目の前に揃えた上で殺してやる」 一瞬憎悪を宿らせたエネルだがすぐに感情を醒まして、そのまま放電と共に姿を消した。 甚大な破壊を齎した張本人が消えた事で空間も震えが解けたのか。今度こそ弛緩した空気が流れ出す。 残ったものはただ二人。 カルナとジャンヌのメッセンジャーの役を果たしている、シャマシュだけとなった。 『……感謝します。わたくしの至らなさの為にお手を煩わせてしまい申し訳ありません』 持霊越しの思念でジヤンヌは真摯に謝罪をする。 エネルの行動は全てが間違いとはいえない。 サーヴァントを見つけ戦おうとしたのはジヤンヌも同じ。それをいち早く察知し戦闘を始めたのは結果的に意の通りと言えなくもない。 だがエネルにそのような殊勝な心がけなどはない。 傲岸不遜なあの男は奔放に場を荒らし回り徒にアーカムを危機に陥れようとした。 自らのサーヴァントの制御もできず好き勝手に暴れ回して得た勝利が、ジャンヌの望む正義の道だといえようか。 かつての過ちを認めた今、そのような振る舞いを容認する事はできなかった。 「感謝はこちらがする方だ。オレ一人ではどこまで抑えられたか自信がない」 『ご謙遜を。わたくしが気付くまでに彼の齎す災禍を食い止められたのは、紛れもなくあなたの奮闘のおかげ。 いずこかの名高き神の血を引く英霊と存じますが、その技量と、無辜の民を守る高潔な精神に感服致します』 「守ると命じたのはマスターだ。その賛辞はオレにでなく我が主にこそ送ってくれ」 「まあ、それは」 互いに礼を尽くし、敬意を欠かさないやり取りは、宮廷の貴族と執事にも近い。 威厳の鎧を脱ぎ捨てたジャンヌの声は柔らかく、年相応のそれになっていた。 「それに、その霊もまた偽りならざる神の化身であるのはオレにも感じ取れている。 それを付き従えるだけのマスターが令呪を切ったからこそ、あの男も大人しく言葉を聞き入れているのだろう」 『恐れ入ります。あなたのような太陽のごとき素晴らしき英雄が従うとなれば、余程よきマスターなのでしょうね』 「……そうだな、恐らくあちらも大層喜ぶことだろう」 奇妙な構図だった。 今まで激しく首を狙って争ったサーヴァントが、戦ったサーヴァントのマスターとは実に友好的に接する関係にある。 共に神に通じ、神の力をその身に宿す事に通じ合う部分もあったのか。 もしジャンヌがこの場にいてそれを第三者が見ていたとしたら、二人が契約したマスターとサーヴァントだと疑いなく思ってしまうだろう。 『聖杯戦争の舞台である限りはいずれ争う運命ですが、この出会いをわたくしは幸運に思います。 ごきげんよう。神の在り方を自らをもって肯定する、輝けるひと。 どうかあなたとそのマスターに、神の恩寵がありますように」 主の言葉を伝え終わったシャマシュは能面のまま一礼をして、テレビ画面の電源を落とすようにぷつりと消えた。 実際に映ったわけではないが、その寸前に少女がニコリと微笑むイメージを垣間見た。 それは真夏の陽炎のようなもの。虚像でしかないが虚飾ではない。 未だ晴れない雲から差す陽光を見据えて、カルナは呟いた。 「……恩寵か。『オレ達とは違い』汚染されてない神からであれば、その加護も善因に結び付くだろう。 問題はそれまでにマスターの精神を繋ぎ止められるか……どうやら、オレのすべきことも見えてきたようだ」 そして自らも霊体化し、マスターの元へはせ参じる。 無人になった屋上に転がる残骸。 サーヴァント戦が行われた後、英雄達が消えた今残るものはこれら破壊の痕跡のみだ。 人々は何も知らず、ただ得体の知れない出来事が起きたというだけの、災いの証拠として心に刻まれていく。 ビル風がクスクスと、誰かが忍び笑いをするように妖しく吹いた。 【商業区域・スタジオ"ル・リエー"/一日目 午後】 【パチュリー・ノーレッジ@東方Project】 [状態]魔力消費(小) [精神]瞬間的ショック(虚脱状態) [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]なし [所持金]大学生としては余裕あり [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争に関わり、神秘を探る。 0.少女呆然中…… 1.さっさと大学へ行きたい。行きたいのに……。 2.ランサーのマスター、あるいは他の参加者を探り出す。 3.クリム達を護衛にして立ち回りたい。 [備考] ※ランサー(セーラーサターン)の宝具『沈黙の鎌(サイレンス・グレイブ)』の名を知りました。 ※ランサー(カルナ)の宝具発動の魔力を感じ取りました。 ※クリム組との同盟を結びました。 ※ランサー(カルナ)、ランサー(リュドミラ)、ライダー(エネル)の姿を確認しました。 【セイバー(同田貫正国)@刀剣乱舞】 [状態]全身やけど(冷気による処置)、ダメージ(中) [精神]正常 [装備]日本刀 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:敵を斬る。ただそれだけ。 1.敵を見つけたら斬る。 2.面倒な考え事は全てマスターに任せる。 [備考] ※ランサー(カルナ)の宝具発動の魔力を感じ取りました。 【クリム・ニック@ガンダム Gのレコンキスタ】 [状態]全身やけど(軽、冷気による処置) [精神]なぜか正常 [令呪]残り3画 [装備]なし [道具]なし [所持金]クレジットカード [思考・状況] 基本行動方針:天才的直感に従って行動する 0.…… 1.パチュリー達と連携し敵を探す。 2.あやめとやら、見つければアサシン主従の貸しにできるな [備考] ※アサシン(八雲紫)とそのマスター『空目恭一』を確認しました ※空目恭一との間に休戦協定が結ばれています。 四日目の未明まで彼とそのサーヴァントに関する攻撃や情報漏洩を行うと死にます。 ※ランサー(カルナ)の宝具発動の魔力を感じ取りました。 ※パチュリー組との同盟を結びました。 ※ランサー(カルナ)、セイバー(胴田貫正国)、ライダー(エネル)の姿を確認しました。 【ランサー(リュドミラ=ルリエ)@魔弾の王と戦姫】 [状態]全身やけど(冷気による処置)、ダメージ(中) [精神]正常 [装備]氷槍ラヴィアス [道具]紅茶 [所持金]マスターに払わせるから問題ないわ [思考・状況] 基本行動方針:誇りを取り戻す 0.雪辱は果たすわ、必ず 1.クリムの指示に従う 2.四日目の未明にアサシン主従を倒す 3.それまではマスターの行動に付き合う 4.ランサー(カルナ)とそのマスターが来たら紅茶でも振る舞ってあげましょう [備考] ※アサシン(八雲紫)とそのマスター『空目恭一』を確認しました ※アサシンの宝具『境界を操る程度の能力』を確認しました。 ※空目恭一との間に休戦協定が結ばれています。 四日目の未明まで彼とそのサーヴァントに関する攻撃や情報漏洩を行うと死にます。 ※ランサー(カルナ)の宝具発動の魔力を感じ取りました。 【ランサー(カルナ)@Fate/Apocrypha+Fate/EXTRACCC】 [状態]ダメージ(軽) [精神]正常 [装備]「日輪よ、死に随え」「日輪よ、具足となれ」 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターに従い、その命を庇護する 1.蘭子の選択に是非はない。命令とあらば従うのみ。 2.今後の安全を鑑みれば、あの怪異を生むサーヴァントとマスターは放置できまい。 3.だが、どこにでも現れるのであれば尚更マスターより離れるわけにはいかない 4.ライダー(エネル)との戦いは避けられない。いずれは雌雄を [備考] タタリを脅威として認識しました。 タタリの本体が三代目か初代のどちらかだと思っています。 ※ライダー(エネル)、ランサー(リュドミラ)、セイバー(胴田貫正国)の姿を確認しました。 【ダウンタウン/1日目 午後】 【アイアンメイデン・ジャンヌ@シャーマンキング】 [状態]健康 [精神]正常 [令呪]残り2画 [装備]持霊(シャマシュ) [道具]オーバーソウル媒介(アイアンメイデン顔面部、ネジ等) [所持金]ほとんど持っていない [思考・状況] 基本行動方針:まずは情報収集。 1.ローズマリー達と共にダウンタウンで過ごしながら情報収集 2.エネルを警戒。必要ならば令呪の使用も辞さない。 3.ランサー(カルナ)に興味の念。 [備考] ※エネルとは長距離の念話が可能です。 ※持霊シャマシュの霊格の高さゆえ、サーヴァントにはある程度近付かれれば捕捉される可能性があります。 ※ランサー(カルナ)の姿を確認しました。 【ライダー(エネル)@ONE PIECE】 [状態]ダメージ(中)、片側の頬の肉体化が不完全 [精神]憤懣やるかたない [装備]「のの様棒」 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を大いに楽しみ、勝利する 1.ランサー(カルナ)は必ず倒す。絶対に許せぬ 2.ジャンヌとは距離を取り、敵が現れた場合は気が向いたら戦う 3.「心網(マントラ)」により情報収集(全てをジャンヌに伝えるつもりはない) 4.謎の集団(『鷹の団』)のからくりに興味 [備考] ※令呪によって「聖杯戦争と無関係な人間の殺傷」が禁じられています。 ※ジャンヌの場にすぐに駆けつけられる程度(数百m)の距離にいます。 ※「心網(マントラ)」により、商業地区周辺でのランサー(カルナ)の炎の魔力を感じ取りました。 ※ランサー(カルナ)、ランサー(リュドミラ)、セイバー(胴田貫正国)の姿を確認しました。 BACK NEXT 026 The Keeper of Arcane Lore(後編) 投下順 026 The Keeper of Arcane Lore(後編) 時系列順 BACK 登場キャラ NEXT 025 Shining effect パチュリー・ノーレッジ&セイバー(同田貫正国) クリム・ニック&ランサー(リュドミラ=ルリエ) ライダー(エネル) ランサー(カルナ) 021 Pigeon Blood アイアンメイデン・ジャンヌ