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種族 名前 ALIGN 出現数 月齢 相性 LV つよさ ちから 魔法・特技 攻撃回数 HP ちえ めいちゅう 基本経験値 まりょく まもり お金 MP たいりょく かいひ MAG はやさ まほうりょく アイテム CP うん まほうこうか ジャシン トウテツ LAW 1体 0 ボス0 71 28 141 デスタッチテンタラフーマハラギオン 1~2回 737 21 17 284 24 73 497 151 20 13 210 10 27 アシュラのて 38 8 24 ジャシン オーカス LAW 1体 4 ボス0 66 34 153 アギラオマカラカーンシバブー 2回 707 12 23 231 21 61 396 141 14 16 264 14 23 ペンタグラム 35 10 15 ジャシン テトカトリポカ LAW 1体 5 ボス0 62 32 142 デビルスマイルムドムドオン 1~2回 747 14 20 186 19 56 310 121 13 14 248 12 21 ひこうばり 32 10 16 ジャシン ミシャグジさま LAW 1体 5 ボス0 44 26 107 ジオンガマハジオンガムド 1~2回 505 10 17 132 12 50 220 212 15 11 176 10 13 まけんムラマサ 24 8 12
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空はいつもに勝り晴天であった。 そう、いい天気だ。こっちでも空は青かった。 太陽は、いつもと変わらずギラギラ輝いていた。 そう、清々しいまでにいい天気だ。太陽が二つあるとかではなく。 Ah.... 退屈だ。 俺は、頬杖をついて窓際からそれを見ていた。 吸い込まれるような青!一体空とはどんな仕組みなんだろう! などと考え出す時点で俺の思考回路はもう色々とお終いなのかもしれない。 正直欠片も興味がなかった。退屈を紛らわすには関係のない事を考えるに限るのだ。 まぁ…こうして眠気という名の三大欲求の一つに従ってみるのも悪くないだろう。 それもまた、一興…だ…。 …………。 『…島雄……』 え?何?シマオ? 『酉……也…!』 とり………ん…? 「酉島雄也!!!」 「わぁビックリした!!?」 突如、頭の中に男のものと思われる大声が反響する! 『酉島雄也』。 …忘れもしない…この名前……!!! うん、俺の名前で間違いない。 ならば、その俺の名を気安く呼ぶこの男は一体…!!! 「ハァ……酉島君……今日の曜日を言いなさい……」 俺を覚醒させた目の前の男性が、改まってそんなことを聞く。 それも冷淡にだ。一字一句ハッキリと…まるで幼児に絵本を読み聞かせるように。 しかし、その比喩は余りに不適切、か。 その声色は、まるで囚人に死刑宣告をするような冷酷さも持っていたのだ。 幼児になんてとても聞かせられないね! …まぁ仕方がない。 何が仕方ないって、何故ならここは『学校』だ。 それも少し特殊な学校だ。 一回りもふた回りも特殊な学校だ。 俺がふわふわ寝かけていれば、それを見た教師は当然呆れるか…もしくは怒り狂うことだろう。 しようがない。何故なら俺にとって、勉強などというものは無意味だ。 ふぅん…取り敢えず質問に答えてあげましょう。 ほほう、今日の曜日とな?何を言っているのかね?そんなこと聞くまでもない! 「日曜日です!」 「じゃあなぜお前はこの教室にいる?…しかも一人で。」 間髪を入れずまたもや質問をする。 どうやら相手は本気のようだ! 良いだろうならば俺も誠心誠意答えようじゃないか。 俺は態々本気をだしてくる相手に、本気で応えないほど野暮な人間ではない。 「俺だけが追試だからです!」 「その通りだ酉島!転校してから一週間とは言え、よくわかってるじゃないか!」 「お褒めに預かり光栄であります!!!」 我ながら完璧な言葉遣いだ。 先生はいい笑顔d── ──バリーーーーン!!── 次の瞬間、俺の耳に届いたものは教師の『もう帰っていいぞ♪』という優しい声色でも『もう帰れやァ!』という怒号でもなく、 なんと!ガラスの破壊音だったのである。 全く以て予想ができなかった。これは意外である。 適当に的外れな事を言っておけば帰れると思ったのに… 何故ガラスの破壊音なのだろう? そこで気づいたのだ。 自分が窓辺のガラスごと外へ吹き飛ばされていたということに。 直下、何百メートルだろうか!地面を歩く生徒達が小さく見えるぞ! 頬に鋭い痛みが如実に伝わってきやがった!野郎、顔を殴りやがったな。 さらには、俺を吹き飛ばしたと思われる男性教師の声が聞こえる。 こんな状況でここまで五感が働くのは些か人間離れしてるんじゃないかって? そんな野暮な事は聞くな。 さて、肝心の教師のセリフだが… 「もう帰れやァ♪」 なんと!我が予想の前者と後者が融合していた! 具体的には優しい声色で、汚らしい言葉をまき散らしていた。 生徒にもう帰れやとは……教師にあるまじき事だ!!!! それにしても…やはり俺には未来予知能力とかもあるっぽいな! まさかこんな正確に予想が的中するとは! ふふ…感動やら何やらで目から汗が出てきたぞ♪ ───説明しよう! ここは夢幻学園高等部! 夢幻というだけあってこの校舎、一言で言えば摩訶不思議だ! 具体的には、等部ごとに校舎が別れており、それら全てを見てまず比喩したくなるのがあの巨大な『バベルの塔』だ。 些か大言壮語であるが、バベルの塔の絵を見ればわかる通り…とにかく大きいのだ。 うん、そう。「とにかく大きい」。高等部が「とにかく大きい」なら、中等部とかは「めちゃくちゃ大きい」感じだ。 何故なら人口が多いからだ。あ…この話もうどうでもいいや 「でもこれはないんじゃないの?」 当然そんな巨大なバベルの塔から放り出され、挙句地面に激突でもしようものなら、普通即死は免れないだろう。 地面に赤い一輪の花を咲かせる事になるだろう。 俺はそんな状況の中ひたすら面倒臭かった。 『異能力』ッッ この摩訶不思議な世界では許され、現実世界では間違いなく人々の『驚異』になるであろうもの。 それがこの世界には…夢幻には跋扈しているというのだ。 とてもニワカには信じられぬ話である。 「あぁ、そうとも。普通なら即死…普通ならな。」 無慈悲にも近づく地面。しかし俺、酉島雄也は平然とした面持ちだ。 ものの数秒で地面に激突することだろう。 頭から落ちていく俺は、体勢を『調整』する事を試みる。。 手の人差し指と中指を、眉間に当てるという不可思議な動作の後… なんと、酉島雄也の体勢が頭から落下していた先程とは打って変わり足から落下するようになったのだ! 次に起こるミラクルは!酉島雄也の落下速度が著しく落ちていく!おお!なんということだろう! そしてェ!無事着地d 「ッッグェアァ!!!」 ちょっと落下速度が早すぎた!!!! 両足にかかる猛烈な激痛…!!! しかしそれをなかった事にする為、必死に堪えつつ俺は立ち上がった。何事もなかったかのように…! 「ッたく、生徒を窓からぶん投げるとは、全くろくでもない教師だぜ…!」ペッ 俺はそう悪態をつきつつも、一時は物凄い勢いで落下してた為に、乱れた服を整える。 フッ…今時能力に一個や二個持ってないと笑われるZE…☆ 自慢じゃないが、俺の能力は故郷(こきょう)オブ故郷(ふるさと)で多くの愚民共から持て囃されるほどのものである! 右に出るものなしと自負するこの能力の前には、超高層学校から転落しようが無為だ! とかなんとか思考しながら、俺は平然と校舎の方に唾を吐き捨てる。この間約0.1秒。 「ッたく、転校してきてから一週間がもう経過してるッてのに、友達の一人もいないとは…。 皆俺を本能的に恐れすぎ!もうっ!俺だって人間なんだよ!?そりゃあ怪物じみた強さだけどさ… まぁクラスメイトが俺含め三人しかいないからしょうがないとは思うけどさ!!それでもだよ! こんな辺境の地だから、DBとかに出てきそうな奴とかと友達になれるかもとわくわくしてたのに!」ペッペッカァーーーペッッ さて、唾もひと通り吐き終わったし、去るか。 説明するべき事は大体した感じでもあるしな…。 勿論去るっつっても、具体的にはゲーセンへ行くわけだが。 …うーん、何か大事な事を忘れている気がしないでもないが。 大丈夫だ。後で思い出すだろう。 とまで考えて、ナイスガイは踵を返すまでもなく、校舎を後にした── 「………おい。」 ──筈だった! 突如背後から声がかかるッッ それは紛れもなく女性の声ッッ それでいて殺意に満ちた声ッッ 俺は命の危機に近いものを察知し背後に振り向くッッ 「こ、こんにちは…酉島先輩…。教室から落下してくのが…み、見えたんですが大丈夫ですか…?」 そこには冴えない少年の顔があった。 無論、このような冴えない少年から、女性の声が出る筈がない。 実際、冴えない少年の声は、顔に似合って冴えない男のそれだった。 俺は先程の声が幻聴である事を確信し、胸をなで下ろした。 同時に俺は説明すべき事を思い出した。『友達』はできなかったが、『部下』ならできたのだ。 紹介しよう。 この少年の名前は白鳥裕也。厨房だ。 昨日見つけた俺のパシリでもある! 何故だか知らんが、いつも焦燥感に満ちた表情をしているのが特徴だ! 今日も随分と滑舌の調子がよろしくない様子だ。 なんだか自信なさげな表情が実に滑稽で頼れない感じでもある! 「ハッハッハ、この俺は『 能 力 者 』なんだぜ?大丈夫じゃないわけがないだろ?☆彡」 俺は少年に明るく振舞った。正直足がまだ痛かった。 やたら能力者の部分を誇張した感じだがまぁ何も問題はないな。 それぐらいの余裕があって当然!俺は高校生!こいつは中学生!格の違いは確定的に明らか! 何より…少年は無能力者!部下兼、パシリにするには最高の逸材である!そう思わんかね!? さて、もうおわかりと思うが…ゲーセンの財布はこいつってわけだ! 忘れていた事はこの財布のことだ!財布を忘れるなんて俺もどうかしてたな!やれやれ! さて、当のお財布くんは、俺の機嫌を取る為なのか相変わらずヘラヘラした感じだ。 こいつ媚びる才能あるんじゃないか?と思った。 いや…待てよ、ヘラヘラに焦燥感をプラスしたような感じかな。 先程も言ったがなんかめっちゃ焦っている!汗とか顔に浮き出てきている! ──ふと視線を横に流したそこには、見覚えのない女児の姿が! 身長的に小学生なのは確定的に明らかだった為、俺は指をさして言った。 「おい、白鳥君。誰だね?この小便臭いガキは。」 この時点で俺は深く考えていなかった。 ここに来て、よく見ると糞餓鬼の顔面には我が唾が吐き捨てられていたのだ。 先程からプルプル小刻みに震えながら40℃ほど顔を俯かせていたのはその為かぁ。 顔真っ赤で泣いてるわけだなぁ?ハッハッハ… いやぁ…悪いことをしてしまった! 「済まないねェ☆お兄ちゃん弱小な存在にはひたすら強気だからね☆ねぇ、今どんな気分だい?まぁそう泣くなヨ! 後でお菓子とか買ってあげるからさ!コイツの金で!」 一字一句ハッキリと…まるで幼児に絵本を読み聞かせるようなナメタ口調で幼女に話しかける! コイツとは当然白鳥の事だぜ! 俺はポンポンと、未だ口を開かない幼女の頭を笑顔で小突くとゲーセンへ歩き出す。 大人気ないって?ハッハッハ。 俺は子供が大嫌いなんだよ!! フン…途中白鳥君の顔がなんだか馬鹿みたいに歪んでいたがなんだったんだろうか? ひょっとして白鳥君は幼女性愛なのだろうか? だとしたら流石の俺もどん引きだ…早々に縁を切るべきかも知れないな! あー…こんにちは。もしくはこんばんは違ったらおはようございます! 白鳥裕也でございます!はい! 本日はお日柄もよく…えー…いやもういいや、以下省略以下省略。 こんな所に出てくるとは思わなかったでしょう?うん、俺も思わなかったよ。 さて、本題に入ろう。えっとね。なんだかんだで今ピンチです。ええ。厳密には俺がピンチなわけじゃないです。 …お金なんて手に入れようと思えばいつでも手に入ります。 ですが命はそれっきりです。命は儚いんです。 「じゃあゲーセン行くか!ハッハッハ!」 などと呑気にニヤケた顔の彼。彼の名前は酉島雄也。 奇遇にも同じ名前だね!いや、今そんな事はどうでもいいんだよ!! 何がそんなにピンチかって?もうおわかりと思うけど、俺の隣で震えているこの少女── 「シャラァァーーーーーーーーーッップ!!!!」 その名も若林子乃ッッまたの名を野獣ッッ美女は野獣ッッ ──!? 再び俺の第五感が『殺気』をキャッチする!今度は真っ先に殺しにかかるような殺気ッ! 一体何故俺が!?これでも人の恨みを買わないように生きてきた積もりですけど! 不意に背後を見るッ!弾かれるようにッッ 「シャラァァーーーーーーーーーッップ!!!!」 そこには…俺を睨みながら物凄い勢いで突撃してくる温厚生物『幼女』とは思えない形相な生物がいた! 俺の知ってる幼女と違う!って感じだ! 「子乃ちゃんストーップ!!!」 バギンッッ!!! 俺の足場が突如歪んだと思ったら…鉱物が破裂するような音を立てて砕けるコンクリィィイイートッッ!! ───この幼女…異能者!─── それも『不可視』の何かを操っている!もし念動力の使い手なら…ッ! 「くっ…白鳥!コイツは私の顔を汚したんだぞ!ソッコー殺して当たり前だ!ソッコー殺す!」 「まぁまぁ落ち着いて…大丈夫ですか?酉島さん…怪我はありませんか?」 白鳥が妙になれなれしく俺の心配をしてきやがる…ハッ! 「命拾いしましたね酉島。俺が止めてなかったらソッコー死んでましたねあなた。マジだせぇ。うはっ。」 と言いたいのか!!! それに物騒な言葉を連発する幼女。なんて生意気なガキだ! それを躾ける男白鳥裕也…ただの幼女性愛者かと思ったが、コイツ…幼女の皮を被った野獣を飼ってやがった! 油断したぜぇぇぇっ!これが夢幻の『驚異』!一見普通でも…かなり高確率で『ワケあり』であるという! 記録者に聞いたので間違いない情報だぜ…!白鳥と幼女…か… だがこの酉島雄也!!退かぬ!媚びぬ!省みぬゥーー!! 「かかってこんかいィー!『不可視』能力の真髄、見せてくれよォーう!」 「酉島さん煽らないでーッ!?」 白鳥が錯乱したように言う! しかし無視だッ!こいつはきっと、この野獣を使役する事で、いつでも背後から俺を殺せるんだぜェ?と俺に力の片鱗を見せたに違いない! 小動物みたいな面してんのに…なんて腹黒いんだッ!許せん! それに…生意気なガキは教育してやらねばならんッッ!! さぁ…どちらが最強の念動力がハッキリつけようじゃないかっっ!! 学園都市レベル5の重みを思い知らせてやろう…ッ!! 「そうか。では心置きなく死ぬがよい。」 「子乃ちゃーーーん!?」 子乃と呼ばれた幼女が謎の威圧感を放ちながら俺に近づく。 白鳥裕也は慌てるばかりだ。だが関係ない!財布に人権はないのだ! その距離───射程範囲内ッッッ!!! 「躾をしてやろう…糞餓鬼め!」 俺は手始めに幼女の腹めがけて『成人男性並みの鉄拳』程度の力を加えた! フッ…我ながら無容赦な攻撃だ…あ、俺やっぱり悪い奴かな?後で慰謝料ぐらい払ってやるか…白鳥の金で。 ──この間約5秒。俺にしては長考だったのかも知れない。 「何が躾だって?」 マッシブ!!!!!!! 自分でも驚くぐらいヘヴィな一撃を腹に感じるッッ!! 激痛を感じながら俺の体が容易く宙に浮くッ 馬鹿な…射程内での攻撃は、有無を言わさぬ速度で当たるはずゥッー!? く、くぉのような華奢なガキがそれを食らえばただでは済まぬはずゥッー!! 何故だ…何故…!! 理解不能…理解不能…! あ、避けられたのか。理解可能。 「空気の流れも把握できない青二才に…」 幼女が俺の頭上に現れるッ!馬鹿な…!戦闘慣れしすぎているッ!こいつはァァ! 「不可視の技で私に勝てるかッッこの馬鹿者がァアアアアアアアアアアアア!!!!」 アビバッッ!!! そんなマヌケな声を誰かが発した気がし、直後…俺の意識はどん底に沈んだ…… さて、どこから話そうか…。 「アビバッッ!!!」 アレだけ悠々とした顔をしていた酉島さんがマヌケな声を発し、地面に顔を埋めた辺りから話そうか。 その残虐な弱肉強食的光景を目撃した俺は、考える暇もなく…子乃ちゃんに向かって 「もうやめてぇ!」 と悲痛に(聞こえるように)叫びながら後ろから押さえつける。 子乃ちゃんは最近俺の言う事を聞いてくれるようになってきたので、 暴れる子乃ちゃんの鉄拳が腹などその他数カ所に突き刺さる程度の怪我(全治一週間)で何とか済んだ。 一昔前には考えられないぐらい穏便だ! だが、俺以外の相手には相変わらず無容赦に殺害を試みようとするので困ったものである。 酉島さんは正直最低な人間だが、それでも殺生はいけない。その一線は超えちゃいけない気がするのだ。まぁとっくの昔に超えてるけども。 「家に帰って顔を洗ってくる!白鳥!お前はもうコイツと会わなくていいぞ!」 大層ご立腹の様子の子乃ちゃん。正直子乃ちゃんを連れてきちまったのが運の尽きだったなぁ…。 それに、大の字で地面に顔だけ埋めるというシュールな図を形成している酉島さんとは、残念ながらもう会う事はないだろう。 残念ながら?いや、寧ろ会わなくて良いことしかないかも知れない。うーん…ま、いいか。 俺はビッコをひきつつも適当に決死の思いで保健室の前に到着する── ──そこで白鳥裕也の意識は途絶えたのだった。 説明しよう! 傍から見ればかなり壮絶だが、鬼畜幼女子乃ちゃんの剛拳に幾度と耐えてきた白鳥裕也にとってこの程度、朝飯前なのである! 白鳥裕也と若林子乃が去り、そこに残ったのは哀愁漂う一人の男の姿だった。 ──気づいたら夕方だった。 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!」 まさかあんな幼女に遅れをとるとは…ゲーセンに行けなかったじゃねぇか糞が! などと嘆く暇も与えぬとばかりに、倒れていた俺を写メに収めていた不良生徒共。 取り敢えず数名駆逐し、現金を手に入れた。上の断末魔は不良のそれである。 この世は弱肉強食という事だと言うことに、今身をもって知った気がする。 そして、同時に今気づいた。 「っべー…っべーよ…時間過ぎてーら…っべーー…」 さて、ここで一つ真剣な話をしよう。 この世界に俺が頼れる人間など只の一人もいない故、俺の住む場所は『寮』に決めていたのだ。 時は一週間前に遡るのである。 ~一週間前だよ~ 「えっとォ、君は寮に住みたいってわけね。寮なら沢山あるんですよ。」 「ほほうほう?」 「じゃあ学園内の地図渡しとくんでェ。ここ広いんでね。迷うと思うんでね。一週間後の六時にここに来ると良いよ。」 「え?じゃあ一週間の間どうすりゃいいんの?」 「ハッハッハ…そんなの知ったことか。俺とお前は他人だよ。この寮制は恩情による物でもなんでもない。 金も払えないんじゃあこれぐらいの待遇、当然だろ?何を期待していたんだ?馬鹿かい?」 男は冷淡だった。まるで囚人に死刑宣告をするような声色で俺にそう言い放ったのだ……。 ~海藻終了だよ~ 男の名前は鈴木權三郎と言って、俺の担任でもある。コイツを四字熟語にするとしたら間違いなく『他人行儀』になるだろう。 生徒の事など気にもかけんとばかりの男! 全くもって最低なクズ野郎だぜ! 何が權三郎だ。名前がダサ過ぎるんだよ死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね とか思っていたら寮に着いた。 「フゥン…ここが寮かね!」 見かけは白いアパート…と言った感じだろうか。期待はずれ…いや、勿論良い意味でな。 普通って素晴らしいね!普通は素晴らしいよ! ここに来て以来、悪い意味で裏切られてばかりだったが、ようやく『普通』の寮に辿り着いた。 この夢幻学園の敷地内には、多数の施設が存在するから、中には騙し絵のような構造の建物まで見かけたが、これなら安心だ。 ……いや待て。 何故夕方なのに玄関に電気がついてないんだ? というか… 「窓に電気がついてねェ…狂気の沙汰だ…。」 …それとも誰も住んでいないのか? 一先ず、疑念を振り払う事にした俺は、無事寮に一歩足を踏み入れることに成功したのだった。 そして、再び俺の思考は疑念に包まれた。 一言で表すならこうだ。 「意味不!」 「何が意味不、なんですか?」 「!?」 俺は驚愕した。俺の高尚な独り言に介入してきた奴がいたのなら、そりゃあ驚愕するだろ? 驚かせやがった声の主を見るため俺は振り返る! そこ再び俺は驚愕した!なんと女はメイド服を着こなす色々とアレな女だったのだ! ───ェエエエエエエエエエエエエエ!!!! 「ここは私が趣味でそれとなーく経営する『夢幻学園寮─アマゾン─』でございます。何か…用ですか?」 怪しげな人を見る目で俺を見てくるメイド。 つーか…アマゾンってなンだよ!!!つーか… 「メイドってなンだよ!ひょっとしてお前さんは、オタク文化とかいうキッショイものに踊らされてるわけですかァ~!?マジ・引くわ!」 ──おっとと…思わず突っ込むところだったぜ。口からでかけたが、なんとかそのまま飲み込む事に成功したぜ。マジ危なかったぜ。 こんな所で下手に煽って彼女の気に障ったら、何をされるかわからないからな。 自分で言うのもなんだが、ここで一週間サバイバル(ホームレス)しただけあって、我が第五感とかその他諸々は色々と鋭くなっているのだ。 この程度の地雷に引っかかるものか!フーハハハざまぁみろ!! 「ハッハッハ!メイドとはまた随分とお洒落ですね!私の名前は酉島雄也!今日ここに来る予定だったのですが!」 その後すぐに「遅れて申し訳ない!」とお辞儀する。 しかし、当のメイドさんは『お洒落』という言葉を聞いて頬を赤らめていた。しかしそんな反応は割とどうでもいい。 俺は今体中が痛いのだ。さっさと休まる場所で寝たいんだよ!! 「か…可愛いだなんて。ハッ…褒めたって何も出ませんよ?」 可愛いだぁ?言ってねぇよ!!! しかもメイドはそれに付け足して、「お世辞なんてやめてくださいな…」とかもじもじしながら言い出す始末。 「だからそんなんどうでもいいっつってんだろォロオロロロロ!!!」 っととと、危ない危ない。思わず口から出かけたぜ…「だ」まで出かけたぜ…。危ない危ない。 冷静になれ…クールになれ俺。目の前の壁を超えればすぐそこにベッドがあるんだぞ!それまでこらえろ! 「あ、私の名前はカーリー・デルタロイドと言います。どうぞよろしくお願いします。」 ぺこりと律儀に45度のお辞儀をするメイドさん。 反射的に俺もお辞儀をするものの… クソッ!この摩訶不思議なメイドさん如きに、どれだけ精神をすり減らせば良いんだァ! 「え、えーっと…そ、そんなことより…私の部屋なんですが…」 「はい。それならこっちです。」 メイドさんがようやく歩き出す。俺もそれに釣られて歩き出す。 この住宅街とかによくありそうな作りのマンションっぽい寮の全貌が酷く気になる。 ただの好奇心によるものではなく、自身の命の心配によるものだ。 俺は注意深く周囲を見渡す。 ………普通だ。 何ゆえか、電気がついていないという点を除けば普通だ。 一階上 たまに蜘蛛の巣が張っていたりする辺り、どこにでもある普通のマンションやアパートのようだ。 それにしても、このメイド…管理人か?寮長か?いや…メイド、つまり従者って事は、管理人のメイドなのだろうか。 つまり管理人が糞デブピザオタクって事か?うーん…長い付き合いなるだろうしそれは勘弁して欲しいな。 「あ、ここですね。あなたの部屋は。」 さて、肝心の俺の部屋の扉だが…。 ──これも、普通! だが中を確認するまで安心できぬ…! あまりにも用心深すぎると思うかも知れませんがね。 この学園は色々とガチなんだってばよ。マジで。 俺は保身の為ならどこまでも用心深い男なんだよ。 どんな些細な違和感だって見逃さない自信があるぜ。 「…すいませんちょっと、中見せて貰えますか?」 「ええ。結構ですよ…あ、ちょっと待ってください。」 「んー?」 「この名札に自分の名前を書いてください。」 メイドの声は酷く冷静で、冷淡で、それでいてどこか冷酷だった。 一言で表すなら、冷たい声だった。最初玄関で会った時もこんなんだっただろうか? まるで『仕事人』のようだ……必殺仕事人…アレかっこいいよなぁ。 俺の能力を使えばあんな芸当も夢じゃないわけだが。改めて自分の才能に嫉妬だわ。 「名前?お安いご用ですよ!はっはっは!サインを書くのは故郷で慣れているんでね!!!」 「ペンならこちらにあります。」 「はいはいっと。」キュッキュッ 俺は淡々と自分の名前を名札に書き記す。ただしサインっぽくアレンジしてな! しかしこんな事に何の意味があるのだろう?心底疑問だが、別にそこまで心底疑問じゃないのでまぁいいとしよう。 書き終えた頃には、何やらご満悦な表情メイドさん。何か良い事でもあったのか?とかもうそんなことはどうでもよかった。 既に俺の視界には手渡された鍵とドアノブしか映っていなかったのである。 「ではどうぞごゆっくり。うち、お金とかは取りませんので。お疲れのようですし…今日はおやすみになるとry」 俺は、メイドの言葉を最後まで聞かずに部屋に入った!なげぇんだよ! 部屋の中は……… 「普通だァァァァァ!!!!!」 ヒィーハァー!!!とけたたましく叫びながらも俺は押入れを開き借り物の布団を取り出すッッ 気が効いてやがるぜッッ 「ヨイショオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」 ビタァァァァァンと凄まじい勢いで畳の床に叩きつけられた布団は埃を巻き上げるッッ だが私は謝らないッッ 「あのー」 突如背後──玄関から上がる声!!!!その声は女性のものだった! 「ファンタスティィィイイイイッッック!!?(なんですか?)」 「このアパート…何か幽霊的な物で出ますから注意してくださいね。悪魔サタンとか出るかも…」 「ファンタスティィィイイイイッッック!!!(余裕です!!)」 俺は無事、恐らく本日最後の応対を終えると、踵を返しビタァァァァァンと敷かれた布団を視界に収める。 「ファンタスティィィイイイイッッック!!!!!!!!!」 俺はルパンダイブで布団へ飛び込むと、一週間分の疲労を耐えてくれた俺のマッスルボディ(妄想)に感謝しつつも、一瞬で眠りに落ちたのであった。 眠ることを死に例えると…まさに即死って感じカナ… こうして…この長き戦いはようやく落ち着いたのだ…死、という形でな…いや…本当に長かった…ぜ…… ここは…どこだ? 空はいつもに勝り晴天であった。 そう、いい天気だ。こっちでも空は青かった。 太陽は、いつもと変わらずギラギラ輝いていた。 そう、清々しいまでにいい天気だ。太陽が二つあるとかではなく。 だが一つ相違点があった。 海が赤い。 海が赤い上に何だか鉄の臭いがする。 酷く鼻につく臭いだ。 「馬鹿な…俺は確かに…あの…あそこで寝ていた筈!あの小汚い部屋で!」 俺はハッとなり、足場を見る。 なんと俺は海に立っていたのである!!!!! しかしそれはよく考えたら特筆すべき点ではなかったのだ。 何故なら俺は超能力者。念動力の使い手だ。 海など歩けて当然。寧ろ歩けない奴遅れすぎぃみたいな? 「フン!どこだかわからんが…この俺を連れてきた人間がさてはどこかにいるな! 無駄な事を!どこからでもかかってこんかい!それともこの俺が怖いのか!?そうだな!怖いんだな!? じゃあ出てこなくてイイぞ!泣いて喜べ俺は無駄な争いは好まないのだ!さぁもとの場所に戻せ!さもなくばァ…」 ひとしきり大声で恫喝した積もりだったが、見えるのは青い空 輝く太陽 そして赤い水平線だけだ。 「……マジで誰もいないのかァ?」 俺は赤い海を歩く。当てはないが何もせず突っ立ってるわけにもいかない。 やれやれ…面倒ごとはごめんだぜ。 とか気取った次の瞬間! 赤い飛沫が上がる!!! 「!?…糞が!一体何奴だ!」 飛沫の中から現れたのは…… ……幼女だった! 「ゲェー!!」 しかしそれはただの幼女ではなかった! 「昼間の糞餓鬼!!!」 「ワハハハハ!また会ったな!」 ワハハハハ!?どんな笑い方だ!生意気な! 幼女は赤い海水を返り血にように浴びながら生意気にふんぞり返る! なんだかさっき会った時と雰囲気が違う気がするが気のせいだろうか。 「今度こそ殺してやるぞぉう!」 「何!」 「ワハハハハ!この私が怖いだろう!命乞いをしろ~!」 「断る!」 「!?」 糞餓鬼が驚愕に満ちた顔になる! 正直興奮した! 「私が怖くないのかァ~!」 「黙れこの糞餓鬼がァァ!!!俺は餓鬼が大嫌いなんだよ!!教育してやる!!!!」 「!!?!?」 俺は幼女を追いかける! 「う…来るなァー!きたら殺すぞーっ!」 「ッヒヒヒヒャ!!いいぜ!殺してやるよ糞餓鬼が!そこで首洗ってろ!辺りにゃ血しかねぇけどなァー!」 「ひえぇぇー!」 逃がすかボケェェ!とけたたましく叫びながら俺は幼女を縦横無尽に追いかけまわす! 急に弱気になったのが意味不!だが別に良いだろう。そんなことは些細なものだ!夢だし! なんて幸せな夢なんだろう!俺は今幸せの絶頂にある! 「うわぁぁぁーー!!!」 「………ハッ!」 「!?」 「俺は何をしていたんだ…これではまるで性犯罪者じゃないか!」 「…!?なんだか知らないが勝機!」 「最初から“こうしていれば”良かったのにね!」 「!?」 感嘆符&疑問符を連発する糞幼女! いいぞ!その顔!絶望に染まっていくその顔!!!実にいいッッ そう…最初から『能力』を使っておけばよかった! 「いやぁぁあーーー!」 幼女が甲高い叫びを上げながら我が念動力に持ち上げられ、思い切り引き寄せられるッ! 次の瞬間、俺のモーレツゲキレツハイパー頭突きが炸裂── ──その時、男は突如として グワァン!!! と飛び起きた!!! 「ユアマザァァァファッカァアアアアアアアアアアア!!!!」 それも奇声を上げながらである! 「ハァッ…ハァッ……なんだ…夢かッ!?」 汗が肌を伝う感触…否!汗が肌を包みこむ感触! 汗など寝ている間にとっくに大放出していたということだ。 「ハァ…フゥッ…」 ちょ…これ予想外に呼吸を整えるのがキツい…。 「ヒィッ…ヒギィッ…ヒッヒッフッー……酷い悪夢だった気がする!」 フry ─数分後─ 「やれやれ…どんな夢だったか覚えてないが…悪夢を見て飛び起きるなんざ、随分恥ずかしい所を見せちまったな。」 誰に言っているのだ…。 外を見るまでもなく、現時刻は夜!時刻と言っているのに朝昼夜の三択から言葉を選ぶのは些か気が引けたがとにかく夜! 今まさに俺の視界は闇夜にザワールドに包まれ暗視ゴーグルがあればソッコー装着する勢いで目を闇に慣らそうと踏ん張った! でもよく考えてみろ! ここは寮だ! 明かりがあったのだ! もうホームレスじゃないんだ! 「そう思った俺はようやく、暗い部屋を見渡す覚悟ができたのである(説明しよう!俺は暗い所が苦手だ)!」 「グワァン!」 「と立ち上がり!」 「明かりを!」 「探す!」 「俺!!」 「ヒギッ!?」 「ここにきて、自分の頭に鈍痛が走っていることに気づいた!」 「寝違えたか!?久しぶりの寝床にはしゃぎ過ぎたようだ!ファッキン!」 「え!?なんで態々声に出すのかって!?」 「うるせぇな!!黙ってろ!!」 「そんなに俺をショック死させたいのか!?」 「糞が!」 「この!」 「くそったれが!」 「フゥ…俺は自分の心拍数が低下していく気がした。落ち着いてきたということだろう。」 「そろそろグダグダになってきたし電気でも付けるか…。」 「俺が怖いものは、俺より強いものとなんか超常現象的なアレのみだ!」 「だから普通に生活してて俺に怖いものなんて基本的に現れないのだ!」 「ざまぁみろ!俺は学園都市LEVEL5の男!最強の念動力使い!」 switch on!!!! 「俺は壮大に体を仰け反らせてながらも部屋の電気をつけた。」 「それに応えるように、ペカペカーッと我が家を照らす照明!!」 「光とは実に頼もしい限りだ!」 「これぞ日本のyうわっ!」 『日本の夜明け』と最後まで言えず、俺は突如前のめりにブッ倒れる! 足に何かが引っ掛かったようだ! 派手に動きすぎたか!何もないこの部屋でまさか躓くとは! 何もないところ? え、ちょっと待て。 足に何かが引っ掛かったんだぞ? あぁ、布団だな。布団に躓いたんだ。 俺は顔をあげる。 目の前にある俺のモーレツゲキレツハイパー寝相によってバイオレンスの限りを尽くされた敷き布団がそこにあった。 この部屋は、明かりをつけてみて四畳半程度の広さしかなく…── ──またテレビやそういったものから、生活必需品など何から何まで揃っていない。 揃っているとしたら、不自然にもこの布団と掛毛布のみ。 …………。 俺は現実逃避の為に始めた考察が何だかアレな方向に走り始めたので、中断する。 「何を恐れているのだ?俺は学園都市LEVEL5…恐れるものなど何もないに決まっ───」 ブツッ 次の瞬間、突如消灯する我が太陽。 「エヒョッ……!!?!?J#」 俺は言葉が出ないぐらい同様しながら立ち上がり、思い切り振り返る!!!! 誰も!!!いない!!! 「ヒィッヒィッフゥーーー……!!」 ラマーズ法で息を整えるものの、なんだか脳がこんがらがってきた。 取り敢えず、俺は、なんか今にも死にそうだった。ヤバい。 「…………いたたたたた…頭が痛い!うー…おのれ、矮小な人間め…こ…この私の顔に傷をつけるとは…うう…」 …………俺は急に冷静になると、目線を地面に落とす。 そこには小ぢんまりとした尊厳の欠片もない格好(恐らく黒色無地のポンチョ)の糞餓鬼が涙目で蹲っていたのだ。 まるで一昔前に規制された黒いゴミ袋のようだ。 髪は黒を極めたような黒。まさに真っ黒で、肌は日本人らしい色をしていた。 なんだかそこらへんのゴミ捨て場とかに落ちてそうな薄汚いポンチョ…これがこの餓鬼が糞餓鬼に至る要因に違いない。 ま、そんなことはどうでもいいとして… 「……!や…やい貴様!先程はよくも私に頭突きを「ユアマザァァァファッカァアアアアアアアアアアア!!!!」アビバッ!」 無論、俺は幼女の頭上にカカト落としを決めたのである!!!!!!!!!!!!!!!!
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逢合 死星 ■キャラクター名:逢合 死星 ■ヨミ:アイアイ シスタ ■性別:女性 ■武器:泰平銀剣 特殊能力『赦サレム巡礼』 死星が対象を殺害したとき、対象を殺すのではなく、死星を害する。 対象が死星を殺害したとき、死星を殺すのではなく、対象を害する。 この2つの効果はループし得る。世界一やさしい魔人能力。 設定 公同衆の比丘尼(sister)。長身で痩せぎす。 切れ長の垂れ目、その双眸はくすみふやけている。 ぼろの修道着は頼りなく、深海から引き上げたようにひどく潮臭い。 戦闘能力は、 身体能力が卓越しているものの、反応速度は人並以下。頭が悪いようにも思える。 殺害経験◎、戦闘技術× 無呼吸で生活できる時間は、だいたい40日ほど。 公同衆とは、 キリスト教カトリックの伝来により教義を戴き、信仰承認された異端教会。 青森県磯浦辺郡某村に土着し、なによりも魚と海底の神Cを信仰する。 遡ること400年の歴史を持つが、語り手はただ一人。そして口を閉ざしている。 泰平銀剣とは、 イスカリオテの男が裏切りの代価として得た銀貨、それを鋳したと伝えられる曇りなき銀の剣。 とても軽く、しかし欠けることがない。 人を相手にするのであれば、人の武器で足りるだろう。 山乃端一人との関係 波にさらわれた。 ただ、海中にあっても生きている。いったい海でなにが起きているのだろうか。(レギュレーション的に生きていると確約されている。ククク……) プロローグ:雰囲気
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UNDERGROUND SEARCHLIE ◆HOMU.DM5Ns ―――このアーカムという街は多くの噂に溢れている。 人が集団を成し、街といえるだけのコミュニティを築いてる場であれば当然の現象だろう。 だがアーカムのそれはあまりに多すぎた。質と量が膨大に尽きた。 加えて、噂の種類はその全てが陰鬱な、後ろ暗い背景で綴られた内容ばかりだった。 ―――曰く、ミスカトニック大学にある禁書指定されたその魔術師を読んだ者は精神を貪られ生きながら亡者と化した。 ―――曰く、フンチヒルにいた優れた感性を備えた芸術家は魂を囚われ、今も狂った神を慰撫する演奏を強制され続けている。 ―――曰く、太平洋の漁業から帰って来た船乗りは毎夜悪夢に怯え、最期は人間では発音不可なはずの言語を撒き散らし狂死した。 ―――曰く、白昼公然のダウンタウンの往来で、不可視の怪物に捕らわれ、恐怖で凍りつく大衆の前で貪り喰われた科学者がいる。 魔術師たる者が都市伝説に気を揉むとはお笑い草、そう受け取るのも当然だろう。 事実私とてかつてはその無知なる哀れな―――そして幸運な―――衆愚の一員だったのだ。 九分九厘噂の出どころは根も葉もない出任せであり、そこに協会が神秘の香りを嗅ぎ取ることは決してない。 才ある者が偶然にも正しい儀式の手順を成功させてしまう事例は少なからずある。しかし百年単位で流布している伝承ならいざ知らず、現代都市で生まれた噂に神秘が付与されるわけもないのだ。 仮に噂が真実であったとしても、問題と受け取りはしない。それこそ魔術師にとっては垂涎ものの話題に他ならない。 禁忌。怪奇。異常。どれも神秘には付き纏う付属物。魔の深奥ほどそれは色濃く増していく。 必要ならば女の血肉を裂く。重要であれば老人の骨を割る。素材なら幼子の臓腑を吐き出させ、獣の脳髄を晒す。 どれも必要なやってのける。人道の外にこそ神秘は存在する。更なる神秘の発見に魔術師は眼を血色に染める。 その解明の足掛かりになるのなら、私は喜んで都市伝説(フォークロア)の蒐集家になっていたであろう。 ……今は後悔している。 知ってしまった真実を悔いている。 見つけてしまった闇の底からこちらを覗くふたつの目を、記憶から忘却したくて仕方がない。 噂が真たることは魔術師にとって幸運だ。だが実態が伝聞を遥かに超える領域であった場合、それは不幸と反転する。 源流たる根源が幾つもの魔術体系に枝分かれする度に流れが弱まり幅が狭まるように、噂が恐るべき真実を覆い隠す慈悲なるヴェールであることを私は思い知ったのだ……。 話を最初に戻そう。 このアーカムにある数多ある噂、そのひとつについて。 私が軽率にも足を踏み入れ、その語るもおぞましき狂気の世界を体験する羽目になった話だ。 ―――曰く、アーカムには幻の地下鉄道が存在する。 (古ぼけた一冊のノートから抜粋) ◆ ◆ ◆ 現在アーカムには三つの路面電車がある。 北部のノースサイドから東のイーストサイドを周回するノースサイド線。 南部のアップタウンからキャンパスを通り川を越え、ノースサイドまで登るチャーチストリート・ホスピタル線。 そして南東部フレンチヒルからダウンタウンまで伸びるフレンチ・ヒル線である。 これら以外にもかつて路線があったが今は廃止され、使われなくなって久しい。 今のアーカムの街並みになってこの三つが使われてるが、五年ほど前に第四の線路の話が持ち上がってきたらしい。 交通の便をより快適にし、アーカムを更なる近代都市に発展させる、地下鉄建造の計画だ。 だがその計画は開始間もなくして水泡に帰した。 莫大なコスト、フレンチヒルにいる旧い名士からの反対、理由は多々あるとされはっきりとしていない。 中には掘り進めた地下から金塊が見つかった、明らかに人為的な空洞が形成されていた、作業員が闇の中で消息を断ったなどの眉唾な噂すら立ち上ってる。 事実として計画は立ち消えとなり、既に着手していた出入り口は撤去されぬまま、奇怪なオブジェとしてアーカムの異物として残っている。 全ては過去の遺物となり、人々の記憶から風化される。 それで終わるはずだった話が蘇ったのが、新しく生まれた噂だった。 始まりは平凡な民家の家主の男。 寝静まった深夜の家の中で、男は振動を感じた。一定の間隔で線路を走る電車のような音を。 路面電車の運航時刻はとっくに過ぎており、またその住まいは路線から離れた位置にある。昼間でも電車の騒音に悩まされたこともない。 しかも音の震源は家の外の街道からではなかった。 男の眠る家の下……即ち地下だ。 始めは物取りが潜んでいるのかと警戒していたが、音は一定周期で通り過ぎ、響いては消えを繰り返すばかり。 そもそも長大で巨大な物体が土を駆けていく音はとても人間が出せるものではありえなかった。 地下鉄の話を知っていた男は、計画が頓挫していることも知っている。地下に電車など通っているはずはないと。 ではこの振動はなんなのか。まるで、人間を丸呑みに出来るほど長く、大きな蟲(ワーム)が這いずっているような音は……。 結局男は恐怖で一睡もできず一夜を明かす。そのまま隣人に相談を求めたが、そこでも驚愕した。 近隣に住んでいた誰も、夜にそんな音を聞いていないと言うのだ。 気のせいだ、仕事のストレスだ、幻聴だ、そう丸め込められその日は引き下がる。 だが次の夜、その次の夜と、地下鉄の通過音は鳴り止まなかった。 何度問い詰めてもやはり誰も知らない。聞こえるのは自分だけ。 孤立は精神の均衡を失わせ、止まない音は剥き出しの精神を軋ませる。 異変が一週間過ぎ、いよいよ友人も病院の勧めを考えた時。男はある場所へ向かった。誘われるように。両の眼を血走らせて。 男の家、商業地域の外れの近くにあるもの。 廃棄路線を撤去し立てたまま放置された、地下鉄に繋がる入口跡だった。 以降、男の姿を見た者はいない。 「家の地下から聞こえてくる男の叫び声」が新たな噂に立ち上ったのは、その後すぐのことだった。 ◆ ◆ ◆ 『……気が滅入る話ばかりよね、この街って』 念話で呟く三好夏凛は現在、フレンチヒル線の路面バスに揺られていた。 『それは、さっきの女の子から聞いた噂のことか?』 『そう。幻の地下鉄の噂。工事が半端なまま終わったのに巨大な何かが地面の下を通り過ぎる音が聞こえてくる、ってやつ』 問いかける声は他の乗客には届くことはない。 契約したサーヴァント、ライダーの声は、マスターである夏凛にだけ聞こえている。今は姿も見ることはできないが。 霊体化という状態はやはり慣れないと思う。 コストとリスクの面から見れば合理的であると分かっていても、そう思う時がある。 そこに在る筈のものに触れることも出来ず、すぐ傍にいる誰かの声すらも聞こえない。 それはまるで、五感の幾つかが失くしてしまったかのような感覚だから。 『……ふむ、怖かったのか?』 『はあ!?』 反射的に出しそうになった声を手で塞いで抑える。 バスの中の乗客は多い。空に向かって叫ぶ少女と奇異な視線を受ける羽目になってしまう。 それこそ新たな噂に取り込まれかねない。 『こ、怖くなんかないわよ、ばか!あれはホラ、話し手の上手さってやつよ!あの子えらく迫真だったし!』 『そうか?あの時の夏凛の気配を感じていたが、時々震え声が聞こえていたような……』 『あー!知らないったら知らない!もう蒸し返すな!』 口に目に頬はなるべく無表情のまま顔を崩さず念話で叫ぶ、という無駄に高度な真似をして気さくな青年に抗議する。腹話術でもやっている気分だ。 こうしたやり取りは初めてではない。人口の多い場所での連携、遠隔での連絡の手段として念話の感覚は練習している。 『それじゃあ話を変えるが……夏凛はその話を信じてるってことか?』 『……普通なら信じてないでしょうね。だって滅茶苦茶だし、荒唐無稽だし。 元々アンタのマシンを動かせるか調べてる途中で地下鉄の話を聞いたとこからのオマケみたいなもんでしょ。 けど実際に行方不明者はいるし、鉄道があるのなら私達にも無関係じゃない。線路が通ってたら、ちゃんとそこでも運転できるんでしょ?』 路線を使ってライダーの宝具が使用できるかの確認と同時に、ダウンタウンのボランティア施設に行き情報を得る。それが今日での夏凛の指針だ。 自分と同じく休校で暇を持て余した学生も来ていたため、広い地域での話を聞くこともできた。 それも施設に向かった理由のひとつ。多様な仕事の人間が集まるからであり、皆一様に不穏な話題を持っていた。 『幻の地下鉄』も、その中に含まれていた噂だ。 『ああ。今回使った線路はライナーガオーで走行可能だが、人の密集する地域では不安がある。フレンチヒルもそういう場所だった。 地下鉄がありそれが河を超えているのなら、移動の面で俺達にとって大幅に有利になれる』 『本当にあれば、だけどね。残った入口もただの不良のたまり場みたいだし』 件の失踪が発覚してから警察も跡地を調査したが、底は計画が頓挫したままの半端な空洞があるままで線路など通ってるはずもなかった。 現状では噂は噂でしかなく、積極的に調べに行くだけの価値もないというのが夏凛の決定だった。 『まあ、いざとなればドリルガオーで掘り進めばわかるさ』 『……何でもありなのも程があるでしょ』 そのうえ空から行く選択肢もあるのだから、豊富すぎるほど移動手段は備えている。 小規模な市街地戦には向かず、どこにでも瞬時に移動できる機動力がライダーの持ち味なのだと夏凛は理解していた。 「……ん、着いた?ありがと」 同学年くらいのボランティア仲間に呼びかけられ、バスから降りる。 ロウワー・サウスサイドで起きた『事故』の影響か、街全体にピリピリした空気が感じられる。 『白髪の屍食鬼(グール)』の名はアーカム中に知れ渡っている。報道を受け、全体的にボランティア活動も自粛気味である。 安全の為活動は常に複数人で行動し、学生は夜間での活動を禁止することになっている。今も奉仕用の荷物を持った大人たちが保護者役を兼ねて同行している。 住民票もあるか怪しい浮浪者や札付きの不良とはいえ、犠牲者は既に何人も出ている。 にも関わらず『事件』でなく『事故』として報道している。監督役とやらが手を伸ばしたのかもしれないが、それだけではない。 生まれた被害が人為的とは考えられない規模であるのが原因だ。自然災害、爆弾の暴発とでもしなければまともに公表できない程、それは壊滅的な惨状だったのだ。 隠された真実は聖杯戦争による爪痕。その正体を知る者は同じ神秘を携える者。 三好夏凛と同じ、マスターのみである。 ―――……けど、今はこっちに集中しないとね。 今確実に聖杯戦争絡みと確定できる場所。しかしそれを知ってなお、夏凛は当初の予定を変えずにいる。 物件が入り組み幅が狭く、ライダーの戦いには向いていない地域。警察や報道後で密集した野次馬。同じように集まる他のマスター達。 統合する状況は全てライダーの不利に働く。交渉の機会を得る可能性はある。しかし未知数の相手に戦闘での枷をかけてまで接触するには時期尚早だ。 以上の判断は夏凛でなく、他ならぬライダーからの助言だった。 これを意外に思ったのが夏凛だ。輝けるほどに熱く勇者を名乗る戦士。 そんな印象で固定されていた夏凛にとっては。時折暑苦しくも感じる炎のような性格でありながら、戦略を冷静に分析する一面を見て気を改められたのだ。 英霊と呼ばれるほどの勇者の、戦士として積み重ねた経験則をここでは信用した。 だからまだ勇み足には遠く、今は地道に歩いていく。 目の前に近づいた孤児院での奉仕活動に精を出すことに、ひとまず夏凛は集中した。 ◆ ◆ ◆ フレンチヒルに建つ教会は歴史ある建造物だ。 アーカムが都市という形を取り、やがてミスカトニック大学と名される院が設立され始めるより前に宣教師によって建立されたという。 今でこアーカムに受け入れられてるが、設立時は土着の宗教との対立が絶えなかった。その宗教の痕跡は今も街のそこかしこ残っているという。 孤児院が運営されたのも少し後であり、以後アーカムの風土と共にこの教会はある。 名だたる大学の一に数えられる栄光、魔女狩りを始めとした闇を同時に見てきた。 だが歴史あるということ、年月を重ねてるということは、つまり古いという意味である。 教えを受けている育ちざかりの孤児達の手で痛む箇所は増えるばかり。清貧が旨になる教義故、大規模な改修の目途もままならない。 つまり常に人手を求めており、夏凛達も仕事の荒波に揉まれることになった。 とはいえ中学生(ジュニア)の夏凛にそこまで酷な労働は求められていない。 割り当てられた役目は、夏凛と同学年以下の子供との交流。 年配者の大人が多い運営者にとっては元気が有り余る子供の相手は体力が保たないため、これはこれで重要な役目でもある。 とはいえ一緒に遊んでいれば済むことなの、だが。 「あ"~~…………」 数時間後、施設の遊び場である中庭にある長椅子。 そこには髪をバラバラに乱し、椅子に全てを任せ寄りかかっている少女が出来上がっていた。 「抜かった……演舞にあんなに食いつくとか予想外過ぎた……」 確か折り紙を折って見せるまでは普通に好感触だったはずだった。 雲行きが怪しくなったのは、話題が街の治安の悪さに移り空気が沈みかけた時だった。 子供達に元気を出させようと、適当な木の枝でいつもの訓練の舞を見せたのだが……それが引き金だった。 これが見事に大ウケしたらしく夏凛目がけて殺到。繰り返しねだる、伝授をせがむ、果ては配給の菓子を賭けて対戦を望むと発展してしまった。 あまりに露骨な反応に夏凛は一瞬固まり、熱意に押されるまま律儀にも全ての要望に応え、代償に体力の大幅な消耗を払ったわけだ。 肉体的な体力だけならまだ余裕があるのだが、子供に気を遣いながらの応対は精神的に疲弊した。 全力はもってのほかだし気を抜き過ぎれば子供が不満をこぼす。派手にやらかしてはシスターに大目玉を食らってしまう。 勇者部の活動で子供の扱いには順応していてこの有様だ。以前の夏凛なら投げ出していたかもしれない。 『大人気だったじゃないか夏凛。立派だったぞ』 背後から―――厳密には脳に直接伝わるものだし発言主の姿は消えているのだが、多分後ろにいるのだろう―――ライダーの言葉がかけられる。 ……理由もなく、笑っているなと夏凛は想像した。 『立派……か。みんな、やっぱり不安だったのかしらね。 元気そうにしてたけど、どこか怖がってる気がした』 『ああ。だから皆の不安を一時でも取り除いた夏凛は立派だ。これも勇者の務めのひとつだな。 本当なら俺も手伝ってやりたいぐらいだが……』 まるで勇者部の面々のような台詞だった。あの部室にライダーが入っている絵面はまるで釣り合いが取れないのは想像に難くない。 だが同時に、あの部屋の面々とはこすぐに馴染むのだろうなと思って微笑ましくなる。 『あんたも……こういうのは勇者にとって必要な活動って思う?』 『もちろん。とても必要で、大切なことだ』 晴れやかな即答だった。 考え無しなのでまかせではない。姿が見えなくともわかる迷いのない断言。 考えるまでもないのだと、ライダーは自分にとって当然の事を言っているのだ。 『勇者は世界の平和を守る為に戦う。体を張るし時には命だって賭ける。それが使命だからな。 だったら、俺達は世界の平和を知っていなくちゃならない。その街の生活や笑顔。大切な人の姿を。 戦うだけが目的になればいつか足は止まってしまう。俺達が守っているものが何なのか、何のために守るのか。それを心に刻み込むんだ。 その思いを憶えていれば理由を見失わなず戦える。いつどこに、どんな敵が相手でも勇気を生み出す源になる。俺はそう信じてるからな』 その声には、表にも裏にも悲観はどこにも感じられない。 ライダーは誇っているのだ。サイボーグと変わった自分の身体を。 鋼鉄のような意志。揺るがぬ迷わぬ不変。敗北の可能性が現実を侵す中で己の勝利を疑わぬだけの根拠に転換している。 本当に純粋に、信じているのだろう。思い出が熾す種火を。それを炎に燃え盛らせる勇気。そこから繋がる勝利を。 「―――っ」 喉元までせり上がった声を押し留めた。決して声にしないように、今度は必死に。 今言おうとしたことは伝えるべきではない言葉だ。 自分の身体が失われても誰かの為に戦えるのか――― 夏凛が言われても良い気はしない。例え答えが分かり切っていてもだ。 若草の香りと、子供の笑い声。 頭の中だけで流れる会話は外に聞かれることなく。穏やかな空気が気まずくて。 『それ、じゃあさ』 切り上げる。無理やりにでも。 『情報、まとめましょうか。もうすぐお昼だし。色々話も聞いてきたしね』 多少不自然であっても、この話題は終わらせたかった。 『ああ、そうだな!』 ライダーはやはりあっさりと同意した。 アーカム内でも歴史のある古い教会。 専門でない夏凛なりに考え、神秘や魔術と結びつきやすい寺院だからということで目星をつけていた施設だ。 マスターとサーヴァントがいたわけでも、その痕跡が発見された等の、分かりやすい成果はまだ見つかってはいなかった。 夏凛の想像を超えていたという、別の意味での成果はあったが。 「頻繁に教会を訪れていた信心深い男性が雷に打たれて死んだ」「今度テストで赤点とったらゲンコツじゃ済まない、勉強を見てくれ」 【日本から来たアイドルがとても可愛い、今度やるコンサートに行きたい】「幽霊とか怪物とかそういう話はアーカムには昔からある。今更起きても飽きるくらいだ」 「リバータウンの河のほとりにある喫茶店のカレーが美味かった」「孤児院出の青年がミスカトニック大学に合格した、お祝いをしよう」 「夜に子供たちが宿舎を抜け出してるらしい。治安も悪いし目を光らせておかねば」「寝ている時地響きがした。地震というより何かが下を通っていくような感じだった」 「教会の何処かに職員でも知らない地下室がある。古株の神父なら知っているかも」【包帯男のビラを拾った。気持ち悪い】 「同じクラスの銀髪の女子を見ると胸が痛くなる。どうすればいいのか」「孤児の一人が富豪の家に養子として引き取られた。今日も院からの友達と遊びに出かけて羨ましい」 「怪しげな男が不遜な言葉を吐きながら施設に入ろうとした。警備を強化しなくては」【『白髪の屍食鬼』を見た。体格の大きい爬虫類じみた顔をしていた】 夏凛は交流した孤児との会話で最近起きた変わった出来事を聞き出し、大人の職員からはスクールでの課題と偽ってアーカムにまつわる逸話を訊ねて回った。 ライダーも霊体化し、存在が露見しない範囲で施設の間を回り調べを進め、集めた情報を二人は揃えて出し合った。 『多いわね……』 『多いな……』 只の世間話の類を除いてもなお余りある「噂」の数々に、夏凛は重く息を吐く。 膨大な情報と目撃証言。聖杯戦争に関係しているかの見極めは難航しそうだった。 アーカムは怪奇と異常に慣れ過ぎている。どんな事態が生まれてもそれを受け入れてしまう空気が出来上がってしまっている。 纏めて当たれば、現実との照らし合わせにどれだけ時間がかかるかも分からなくなる。 『これ全部サーヴァントの仕業なのかしら……多すぎるのにも限度ってものがあるでしょう?』 『……いや、そういうわけでじゃない。聞いた話からすると、噂にも二種類あるように俺は感じる』 『二種類?』 『簡単に分ければ、古い噂と新しい噂、昔から伝わるものと新しく生まれたものだな』 山積みの情報に辟易してた夏凛に先駆けて、なんとライダーは一歩進んだ推論を展開していた。 『多くの噂が伝播し、実際に被害が出た事件が複数存在する。犠牲者が生まれてそれに恐怖した人々が大勢いる。 俺達英霊とは無関係に、この街には多くの伝説が息づいてるんだ。その恐怖と伝説を―――利用してる奴がいる気がしてならない』 『マスターやサーヴァントの誰かが……自分達のやった事を噂の一つにして隠してるってこと?』 情報操作の一種だ。完全な秘匿の出来ない事象を、一部以外を脚色して表に露出させる。 アーカムという怪奇を受け入れやすい広大な森に紛れれば、無数の噂という木の葉の一枚としてしか外には認識されなくなる。 そう推理する夏凛に、ライダーは更に言葉を上塗りした。 『あるいは、逆かもしれないな』 『逆?』 『自分達を恐れさせる、噂を流す事自体が目的かもしれない。人の感情を媒介に強化される……そういった能力を持つ敵が』 『はあ?』 困惑した夏恋の声も尤もだった。自身を堂々宣伝するサーヴァントなど想像だにしない。 本質的に魔術師ではない夏恋にとっては、英雄ならそんな威風ある真似はするかも知れないと思いはする。だとしてもこんな婉曲的にする意味が分からない。 だがライダーは『人の感情を媒介にする』といやに具体的な例を出してその説を口にした。 それはつまり、彼自身の『前例』を参考にした意見……生前で戦った敵にそれがいたからに他ならない。 『俺達GGGが戦ったゾンダーという敵が似たような力を使っていた。奴らは人間に憑りつき、宿主のストレス……マイナスエネルギーで成長し巨大なロボになるんだ。 知名度や信仰で英霊が強化される現象があるが、それをより限定的に能力化したものだな。後世の伝聞や風評で姿が変化する、そんなサーヴァントはけっこういるらしい』 勇者の英霊獅子王凱の戦歴を紐解き始めに開かれる敵。宇宙の海を超え地球に現れた機界生命体ゾンダー。 全ての生命体を惑星ごとゾンダー化―――機界昇華する為未曾有の危機を地球に振り撒いた暴走プログラム。 仕事の失敗、将来の不安。猟奇的な噂に溢れ、日々恐怖を抱えて生きる人々を飲み込む怪物(ゾンダー)。 街と市民の様子を観察したライダーはその存在を思い出し、外部からの情報の誘導の可能性を見出したのだ。 『つまり、最近作られた新しい噂は、ソイツが力を強くする為に自分で街に流したものだってアンタは言いたいわけね』 『全部が全部そうだとは限らないが……大体はそんな感じだ。だが直接起きたロウワーでの件は特に強いと俺は見ている』 白髪の屍食鬼の名は今や子供が話題が上がる度に口にする。アーカムの街に信じられない速度で浸透していた。他と比してもその認知度は倍近い。 屍食鬼自体は過去の記録にも載ってる情報であるにも関わらず、だ。明らかに何者かの意図が介在している。 これが今の敵の本命……主力だと、そう睨むのは自然だった。 『……ねえ、やっぱりこれへの対処って優先した方がよくない?』 『ああ、俺も今そう思ってたところだ。ゾンダーに近い特性があるとしたら、時間をかけるほど厄介な敵になるかもしれない』 魔術師であるキャスターのクラスは、陣地を確保し装備を増産し戦力を強化する。長期的なスパンを念頭に置いた戦術を用いやすい傾向がある。 ゾンダーロボも完全体と化せば、一体で星を機界昇華してしまう浸食度だ。 空想も信仰が深まれば幻想に階梯を上げる。ただの噂がそのレベルにまで達すれば、手の付けられない段階にまで成長してしまう危険性がある。 『それに―――勇者として、この惨状を起こした奴を認めるわけにはいかない』 『凱?』 この時、切り替わったという差異を体感した。 姿の見えないライダーの声を聞いてその姿を自然に投影させていた。 傍にいる勇者がいまどのような表情をしているか、夏凛に齟齬がなく伝わった。 『ゾンダーは暴走によって星をも滅ぼしてしまう危険極まりない存在になってしまった。けどその本来の目的は生命体からストレスを無くすという、平和の為のプログラムだった。 これを起こしてる奴はきっと、根底から違うものだ。無辜の人々を媒体にしながらその人々に牙を剥く。勝利という結果の過程にある、殺戮そのものを愉しんでいる』 聖杯戦争を戦うにあたっては不要な感情が顔から覗く。 サーヴァントと戦う為の戦術ならば否定はしない。マスターを狙うのも一つの選択だ。 ライダーもまた同じく聖杯を求むサーヴァント。相手のやり口を何もかも糾弾する資格はありはしない。 無関係の命を奪う邪悪。それだけは許容できない。 戦いでなく殺しを愛い、伝染病のように一帯に蔓延る恐怖を撒き散らす蠢く影。 それは英霊の誇りを穢す侮辱だ。勇者の使命として立ち向かうべき闇だ。 ただ一人の人間が抱く、原初に根差した場所からこみ上げてくる怒りだった。 獅子王凱の魂が熾す、炎の如し意志だった。 マスターの夏凛すらもがその熱の余波に驚く。恐怖ではなく、垣間見えた火の勢いに。 知らず漏れ出ていた内の感情を戒めるように、ばつが悪そうな口調でライダーは言った。 『……とはいえ、今の俺はサーヴァントだ。マスターの身を護る事が優先される。 この世界では俺は最終的な判断はお前に任せるつもりだ、夏凛。サーヴァントはマスターに従うものだからな。 なに、迷ったらすぐ相談してくれればいいさ、だろ?』 召喚されるにあたって、サイボーグ・ガイが連れてこれたのは半身たる愛機のみ。 背中を預け合う勇者ロボ軍団、後方で全面的なサポートを施すGGGスタッフ達はここにはいない。 勇者は孤高なるものに非ず、支え合う仲間と一丸となってこそ勝利した守護者だ。 ここではその道理は通用しない。 外部からの支援が届かない、孤立無援の状況。無数に潜む競合者。 苦い敗北の経験が蘇る。生前(いままで)の調子で戦えば、必ず手が間に合わない事が起きる。 若き勇者に二の轍を踏ませまいと、英霊に慎重な選択を取らせていた。 『……それ、うちの勇者部の条約じゃない』 一方の選択を委ねられた夏凛。 何を選び進むかは自分次第。マスターであり、生きている者である夏凛が決めるべき、そう言われた。 夏凛は当然決めている。告白すれば、初めて聞いた時から何をするかなど分かっていた。 噂を集めた最中の交流は、和やかなものばかりではなかった。 笑い話と受け取る中には、本当に怯え涙を目に滲ませる子供もいた。 自分の住む街の裏に密やかにいる闇。怯えは今も広がっている。 情報が揃った。正体が理解に届き始めた。早急に倒す事が最善と知った。 光明は見えている。この聖杯戦争を勝ち抜く一歩が。 そして―――そんな前提を打ち消せるだけの強い意志が、言葉となって背中を後押ししている。 何故か。問うまでもない。獅子王凱は勇者であり、 『―――叩くわよ、凱。勇者がいる場所で暴れたのが運の尽きだって、分からせてやるんだから』 三好夏凛もまた、勇者であるからだ。 『ああ。了解だ、マスター』 答えるライダー。反応は平静だ。始めから分かっていたように。 生粋の勇者であるライダーにとって後輩勇者ともいえる夏凛の精神の波長は親和性が高い。 双方の勇気こそが、あり得ざる二人の勇者の出会いの縁―――触媒となったのだから。 ―――故にこそ、彼らはじき理解する。 古今東西、次元星界を超えて普遍の絶対。 勇者が立ち向かう相手とは、世界を脅かす闇そのものであるという事を。 そして彼らは理解していない。この聖杯戦争を戦う行為の意味を。 アーカムに浸透する底のない沼のような闇。 魔王という渾名、それすら似つかわしくない無明の渾沌を知る事になる。 「あら夏凛さん、ここにいたのね」 そんな時に、霊体ではない生の声が夏凛に呼びかけた。 孤児院で教師もしている年配のシスターだ。職員達を主導する中心的人物で、作業でもしていたのか修道服は脱いでいる。 「あ、すいません。すぐ戻りますから……」 「いえいいの。子供たちとよく遊んでくれたらしいわね。みんな喜んでましたよ」 丁寧な所作でのお辞儀。こういう時夏凛はどうにも困ってしまう。ストレートな感謝に戸惑ってしまうのだ。 「い……いえ。当然のことをしたまででして」 「そんなことないわ。あんな元気な子供達の姿はここ最近見れなかったの。こんな年寄りじゃ運動で相手をするには厳しいし本当に感謝してるわ」 結果、こんなぎこちない返事しか出来なくなる。 友奈なら朗らかに笑って円満に済むものを、と臍を噛む。こればかりは性分なのだろう。少しばかりもどかしい。 「それじゃあ中に入りましょう。もうすぐお昼になりますからね。そうそう、食事時は子供たちにせがまれても暴れてはいけませんよ?」 「も、勿論です。あはは……」 シスターが後ろを向いて遠ざかっていくのを見て、黙っていたライダーも念話を再開した。 『俺はもう少し周りを見ている。教会にも気になる噂はあったしな』 『分かった。私も噂の奴を捜す方法を考えてみるわ』 何処に出現するかが事前に分かれば、ライダーの宝具で早急に現場に向かうことも出来るだろう。 クラスの特性を存分に発揮したやり方だ。こんな所でも鉄道の調査が役に立つ。 施設内の食堂に向かおうとする夏凛を、再びライダーの声が呼び留めた。 『―――夏凛』 『なに?』 『これからは本格的に戦いに介入していくかもしれない、しっかり食べて力をつけておけよ!好き嫌いとかないよな?』 「アンタは私のお父さんかっ!」 肉声で夏凛は怒鳴った。 【フレンチヒル(孤児院)/一日目 午前】 【三好夏凜@結城友奈は勇者である】 [状態]健康 [精神]正常 [令呪]残り三画 [装備]なし [道具]スマホ、ボランティア証、学生証、鞄(にぼしとサプリは入っている)、木刀袋(木刀×2) [所持金]一人暮らしをするのに十分な金額(仕送り、実家は裕福) [思考・状況] 基本行動方針:マスターやサーヴァントの噂を調査し判明すれば叩く。戦闘行為はできるだけ広い場所で行う。 1.アーカムに噂を流している敵を倒すための情報を集める。優先は『白髪の屍食鬼』。 2.各エリアのボランティア事務所へ行き、仕事を請け負いつつ敵主従の調査。 3.夕食はリバータウンの喫茶『楽園』で食べる? [備考] 令呪は右肩に宿っています。 ステルスガオーIIで街を上空から確認し、各エリアでの広い土地の位置を把握済です。 リバータウン一帯のスクールは休校中。 真壁一騎と出会いましたが、名前も知らず、マスターとは認識していません。一騎カレーの人かもしれないと思っています。 「アーカムで噂を流して市民の不安を煽る事で強化される敵」を仮定しています。 【ライダー(獅子王凱)@勇者王ガオガイガー】 [状態]健康 [精神]正常 [装備]ガオーブレス [道具]私服 [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターの願いを叶える。 0.教会周辺を調査、哨戒。 1.夏凜を守る。 2.ライナーガオーが使えるか、アーカムにある各路線をチェックしたい。 3.『幻の地下鉄』があるかいずれ確かめたい。ドリルガオーでの掘削も検討。 4.無差別に殺戮を愉しむ相手を許してはおけない。 [備考] 真壁一騎を見ましたが、マスターとは認識していません。戦士の匂いがすると思っています。 リバータウン線でライナーガオーを走行するのに問題ありません。ただし一部住宅密集地域があります。 「アーカムで噂を流して市民の不安を煽る事で強化される敵」を仮定しています。 BACK NEXT 015 Arkham Ghul Alptraum(前編) 投下順 016 BRAND NEW FIELD 015 Arkham Ghul Alptraum(前編) 時系列順 016 BRAND NEW FIELD BACK 登場キャラ NEXT 001 蒼い空 三好夏凜&ライダー(獅子王凱)
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《作曲家》西木野真姫&バーサーカー ◆vXLu8QOeNE 疲れた時に僕を励ます 君の笑顔は最高 そして少しずつ進むんだね ときめきへの鍵はここにあるさ ユメノトビラ 誰もが探してるよ―― ――ここに、ありますよ?夢のような扉がね……。 ◆ ◆ ◆ 午前7時。フレンチ・ヒルの邸宅にて。 それは他の豪邸群に比べればまだ小さい方だが、それでも中所得者層からみればなかなかの豪華さを誇る。 「……」 その邸宅のある寝室で西木野真姫は起床する。 けたたましく泣きわめく目覚まし時計を止め、ベッドに腰掛ける。 意識が完全に覚醒しておらず、大きく伸びをするもまだ眠気は取れない。 真姫の目つきは非常に悪く、寝心地は最悪だったことを窺わせる。 その原因は悪夢である。 あの妙にリアリティのあった夢は何日経っても忘れることができないほどに心に残っている。 心に残っている故に何度も繰り返し夢に出てきてしまうのだ。 しかもその夢は自分の作曲した曲の一部をBGMとしているのだからなお性質が悪い。 夢の中ではいつの間にか手に取っていたアラベスク模様の装飾が施された鍵と、目の前に大きな扉があった。 謎の声が響き、言われるがまま「夢のような扉」を鍵で開け、それをくぐってしまった。 目が覚めた時には、真姫は東京にある自宅ではなく、合衆国マサチューセッツ州の「アーカム」という都市にいた。 「はぁ……」 寝癖を手で直しながら、学校で使うテキストの整理をするために部屋にある勉強机の方へ向かう。 「聖杯戦争…なにそれ、意味わかんない」 初めてアーカムで目覚めた時は混乱こそしたが、どこか不思議な感覚が真姫を襲っていた。 何事もなかったかのように平然としている家族、なぜか不自由なく使えるようになった英語、アーカム市民としての記憶……。 そして、聖杯戦争こともいつの間にか真姫は『知っていた』。 しかし、いきなり万能の願望機を巡る殺し合いに参加しろと言われても現実味を帯びない。 尤も、扉を開く夢を見たと思ったら拉致されて仮の生活を送らされているという時点で十分現実味を帯びていないのだが。 本来、聖杯戦争にリアリティを持たせる要因の一つに、サーヴァントとの邂逅がある。 実在人物の霊が自分の元へ馳せ参じるという、本来ならばあり得ない経験が否が応でも聖杯戦争が現実だと認識させるのだ。 真姫にも、本来は頼りになるサーヴァントが存在するはずなのだが――。 テキストを鞄に詰めている途中で、真姫は『それ』を見つける。 「……ホントにこれが私のサーヴァント?」 真姫は自らのサーヴァントを手に取り、気持ち悪い虫を見るような目で眺める。 それは、楽譜だった。譜面が赤黒い血で作られており、不気味さを際立たせる。 題の部分には手書きで“ゴルゴダの丘”と書かれている。 バーサーカーのクラスで召喚された真姫のサーヴァントは、物言わぬ楽譜、SCP-012であった。 「サーヴァント(召使い)なのに物」という異質な矛盾は、真姫を大きく困惑させた。 それゆえに、SCP-012から聖杯戦争の詳細についてわかる情報が制限され、 真姫の聖杯戦争に参加しているという自覚をさらに薄めさせる結果となった。 現に、ここ数日の真姫は現状に疑問を抱きつつもアメリカでの日常を何とはなしに送っていた。 SCP-012に書いてある曲は途中で途切れており、 スクールアイドルユニット「μ s」で作曲を担当しているからかこの譜面の続きを書こうしたこともあった。 しかし、実際に演奏してみるとその曲はあまりにも耳障りで聞けたものではなく、続きを書くことをすぐに断念した。 「真姫、朝食の用意できたわよ」 部屋の外から真姫の母の呼び出しがかかる。文面上は日本語だが、実際は英語だ。 「今いくから!」 しばらくSCP-012を眺めていると時間が過ぎていたようで、真姫は急いで必要なテキストとSCP-012を鞄に詰めると、食卓へ向かった。 朝食はアメリカのホームドラマでよくあるようなチョコフレークの入ったボウルをミルクで満たしたものだった。 ◆ ◆ ◆ アメリカ、ある意味日本から近いようで遠い国の学校は日本とはかなり違う部分がある。 アメリカの高校は日本とは違い、制服といった概念はない。 さらに、学年も日本の小・中・高の6・3・3制にあたる区分けとしてアメリカで最も多いのは6・2・4制である。 そのため、アーカムにあるハイスクールに通う真姫は私服で通う。 学年も日本の高校では1年生であるはずだが、アメリカのハイスクールではセカンドグレード(2年)であった。 私服で通うということは毎日お洒落して学校へいけるので嫌いではなかったが、同時に真姫の通っていた音ノ木坂学院の制服が恋しくなり、気分は複雑であった。 この日の全授業が終わり、放課後。 真姫は音楽室にいた。 「アーカム」という都市での生活も数日が過ぎたが、未だにここに連れてこられた理由がわかっていない。 そのため、本能的に恐怖を感じることもあり、しばしば元いた音ノ木坂に戻りたいという思いが湧く。 μ sで皆とスクールアイドルをすることも楽しみの一つであったため、その思いは日を経るごとに強くなっている。 恐怖とそれからくる悲しみを紛らわすため、放課後に自分の作曲した曲をピアノで弾くことが日課となっていたのだが……。 「うう、なんでコレが入ってるのよ…」 取り出したのはSCP-012。 朝、テキストの整理で急いでいたからか一緒に入れてしまったらしい。 「こんなもの持ってたら変な人だって思われちゃう」 一応作曲できることは周囲にも知られているため、こんな変な曲を作っていると誤解されたらたまったものではない。 真姫はすぐに鞄へ戻そうとしたが――。 「やっほー、マキじゃーん!何してるの?またジャパンで作った曲弾くの?」 そこにアメリカ人の知人が入ってきた。プライベートでともに行動することはないが、クラスメイトの中ではよく話す方だ。 「あ、新しい曲作ったの!?見せてよ!」 「あ、ちょ、見ないでよ!」 真姫が知人の方へ振り向く前に、彼女は真姫の手からSCP-012を抜き去って見てしまう。 それを真姫は数秒の内にぶんどるようにして取り返し、鞄の中に収めた。 真姫はまだ知らない。この刹那的なやり取りがSCP-012の恐ろしさを肌で感じることになることを。 「………」 彼女は無言かつ無表情で真姫を見つめている。 ……見られてしまったのだろうか。心の中で引いてはいないだろうか? 「……見た?」 「……なきゃ」 「…へ?」 「…完成させなきゃ」 真姫はその知人の顔を見て絶句する。 目は血走り、彼女の視線は真姫ではなくSCP-012の入った鞄に向けられている。 「な、何?」 真姫は恐怖から後ずさり、反射的に鞄を抱いて守る。 「完成させなきゃ、完成させなきゃ…その楽譜を、“ゴルゴダの丘”を…!」 「ひっ……!」 ――はじめに楽譜に接触した[編集済]は気が触れ、自らの血で楽譜を完成させようとし、ついには大量の失血と内出血を負いました。 SCP-012。通称『A Bad Composition(不吉な曲)』。 それに接触したものは気が触れ、自分の血で楽譜を完成させようとする。 真姫の知人は実際に目にしたことで正気度を著しく喪失し、発狂したのだ。 今は真姫のことなど意に介せず、楽譜を完成させることしか頭にない。 真姫がSCP-012を前にして平気だったのは、マスターであるがゆえにSCP-012の放つ神秘に耐性を持っていたからに他ならない。 バーサーカーとして召喚されたSCP-012。しかしそれは、狂ったサーヴァントではなく、『狂わせる』サーヴァントであった。 「書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい書きたい続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを続きを完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成完成させさせさせさせさせさせさせさせさせないとないと――」 「あ、あ、あ」 「どいてよ、マキ…続き書けないじゃないッ!!!」 先ほどの面影も感じさせず、豹変した知人に真姫は鞄を抱いたまま尻もちをつき、恐怖に満ちた表情で彼女を見つめることしかできなかった。 「お願い…近づかないでよ…」 何とか声を絞り出すも、その声は傷ついた小動物のように弱々しい。 「いいから続きを書かせろつってんだろオオオがああアアアアアアア!!!!!!!!!!!」 彼女は突然激昂して真姫に覆いかぶさり、固めた拳で頬を殴ってきた。 真姫は頬に押し寄せてきた痛みに「あぎゃっ…!」と漏らし、増大した恐怖心が涙となって溢れ出た。 「続き……書かせロ……カンセイ…さセろ……!」 「あ……あ……」 心を染める、混乱、恐怖、絶望。助けを呼ぶことも忘れて、別人のように鞄を奪おうとする知人を見上げる。 餓えた獣のように口で息をして、涎を垂らしており、真姫を睨みつけている。 これがバーサーカーの力なのか。無言で人を狂わせ、楽譜を完成させようとする。 バーサーカーがせめて犬程度に話の通じる生命体であれば。 「やめて」と必死に説得すれば関係のない他人に危害を加えることをやめてくれるかもしれない。 だが……バーサーカーは『楽譜』。 意思を持つかもわからないそれは無機質に、無差別に狂気をまき散らす。 真姫の心には、バーサーカーへの『意思を持たないがゆえに、底の知れない恐怖』がむくむくと広がっていった。 数瞬後…涙だけでは抑えつけられなかった負の感情が爆発し、真姫を無理やり行動へ駆り立てた。 「あああああああああああああああああああ!!!!!」 下から知人の腹を蹴り上げ、強引に束縛を解くと、鞄を持って真姫は全速力で音楽室を、学校を出た。 逃げている間は、後ろを振り向く余裕すらなかった。早く帰りたい。ここから逃げ出したい欲求が頭を支配していた。 ◆ ◆ ◆ アーカムの自宅に帰った真姫は母親に目もくれず一目散に部屋に戻る。 鞄を放り出し、ベッドに転がり込んだ。 「う…ううっ……ぐすっ」 枕に顔を押し付けて、嗚咽を漏らす。 真姫はSCP-012が人を狂わす場面を目の当たりにし、中度の正気度喪失を起こしていた。 「帰りたい……帰りたいよう……」 暗闇の中で想起するのは、μ sのメンバーのこと。 真姫はできることなら、今すぐにでも帰りたいと心から願った。 「誰か……誰か助けてよ……凛……花陽……にこちゃん……」 真姫の声は誰にも聞かれることはない。 ただ一つ、SCP-012を除いて。 SCP-012は鞄の中で、今も神秘を放ち続けている…。 【クラス】 バーサーカー 【真名】 SCP-012@SCP Foundation 【パラメータ】 筋力- 耐久- 敏捷- 魔力[データ削除] 幸運[データ削除] 宝具EX 【属性】 [データ削除] 【クラス別スキル】 狂化:- バーサーカーは物であり、狂っている様子もないのでこのスキルには該当しません。 代わりに狂気感染スキルを所有しています。 【保有スキル】 狂気感染:D 狂気を伝播させる能力です。 バーサーカーへ接触した時に精神抵抗判定を行い、失敗すればその者にDランク相当の狂化スキルを付与します。 このスキルは、スキル及び能力次第で抵抗可能です。 被虐体質:EX 集団戦闘において、敵の標的になる確率が増すスキルです。 EXランクともなると特殊効果がつき、 一度バーサーカーへ接触した者は他者に注意を向けず、バーサーカーのことしか考えられなくなります。 バーサーカーから離されることで効果は徐々に弱まり、消滅します。 検閲済み:EX バーサーカーはSCPと呼ばれる人知を超えた存在を確保、収容、保護するSCP財団に保護されていたSCPの内の一体です。 SCPの扱い方と概要を記したレポートは検閲を経た上で見ることができたという逸話から、 サーヴァントがバーサーカーについて知ることができる情報はほとんど限られています。 単独行動:A マスター不在・魔力供給なしでも長時間現界していられる能力です。 Aランクならば1週間の現界が可能です。 【宝具】 『不吉な曲(バッド・コンポジション)』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:[削除済] 最大捕捉:[削除済] SCPは人知を超えた存在で正体不明であるがために、財団に秘匿されており、非常に強い神秘を持ちます。 SCPであるバーサーカー自身が宝具であり、常時発動しています。 そのため、常に強い神秘を周囲に発しており、見ただけでも正気度は著しく喪失します。 ████████████はバーサーカーを少し見ただけで[編集済] バーサーカーへ接触した者は西木野真姫以外のマスター、サーヴァント、NPC問わず数秒の内に正気度に大きなダメージを負い、気が触れます。 そして自らの血で楽譜を完成させようとします。 血で楽譜の一部を完成させようとすることで、大量の失血と内出血、さらには精神病を発症し、重症を負いました。 バーサーカーに精神を侵された者は一節を書き終えると「完成できない」と言いすぐに自殺します。 なお、バーサーカーの宝具にはスキル及び能力次第で抵抗可能です。 【SCP背景】 SCP-012はSCP財団にて保護・収容されているObject Class EuclidのSCPの一種です。 SCP-012は考古学者K.M.サンドバルによってイタリアの北部にある嵐で荒らされたばかりの墓から発掘されました。 手書きで"ゴルゴダの丘"と題された一部大きいサイズも含んだ不完全な楽譜一式でした。 赤い/黒いインクは初めベリーか天然の染料かと考えられていましたが、後に複数人の血液であると判明しました。 最初の調査後、何度も楽譜への接触を試みました。 すべての実験でも被験者は自らの血で楽譜の一部を完成させようとしました。 これらの被験者は一節を書き終えると「完成できない」と言いすぐに自殺しました。 音楽を演奏してみると耳障りな不協和音と楽器に合わないメロディとハーモニーが流れるだけでした。 バーサーカーのクラスで召喚されましたが、SCP-012はただの楽譜であり、バーサーカーが自力で動くことはできませんし、霊体化もできません。 ですが、自力で動くことがない分、実体化していてもほとんど魔力を消費しません。 【サーヴァントとしての願い】 不明。 【マスター】 西木野真姫@ラブライブ! 【マスターとしての願い】 元の世界へ帰りたい…… 【weapon】 特になし 【能力・技能】 アイドルなのでダンスと歌ができ、作曲も担当しているため音楽(ピアノ)が得意。 特技に「テストで満点を取ること」を挙げられる程度には頭がいい。 【人物背景】 音ノ木坂学院の一年生で、スクールアイドルユニット『μ s』のメンバーの1人。 両親は地元の総合病院の医者で、別荘を持つほどのお嬢様。将来は実家の病院を継ぐ予定。 成績優秀で、特技はテストで満点を取ること。 ピアノも演奏できる事からμ sの楽曲の作曲を任されている。 アニメでは真面目だがちょっぴり皮肉屋なツンデレとして描かれている。 穂乃果の情熱に根負けして『START DASH!!』の作曲を担当した後、 花陽を後押ししてμ sへと導くと共に、凛と一緒に加入した。 先輩メンバーを呼び捨てで呼ぶことに対して最後まで抵抗があったが、希の計らいで克服している。 サンタの存在を信じているなど純粋で子供っぽい面もある。 バーサーカーが人を狂気に陥れる場面に直面したことで、中度の正気度喪失を起こしている。 【方針】 助けて…… 本SSは、クリエイティブ・コモンズ 表示-継承 3.0に従い、 SCP Foundationにてxthevilecorruptor氏が創作されたSCP-012の記事に記されたSCP-012を聖杯戦争のサーヴァント化したSSであることを明記しておきます。
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◆GOn9rNo1ts氏 氏が手がけた作品 話数 タイトル 登場人物 006 アーカム喰種[日々] 金木研&ウォッチャー(バネ足ジョップリン) 登場させたキャラクター 登場回数 キャラクター 1回 金木研&ウォッチャー(バネ足ジョップリン) 氏に寄せられた感想 名前 コメント
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《探偵》大十字九郎&アーチャー ◆HOMU.DM5Ns 合衆国はマサチューセッツ州に立つ地方都市『アーカム』。 貧富とインフラの格差は地区によってまちまちだが、 ここ『イーストタウン』においてははっきりと「貧」の雰囲気で保たれ固定している。 塗装は何十年も前から手つかずで久しく地面の罅割れは蜘蛛の巣のように網目を張っている。 時間は止まったわけでもなく、ただ風化するばかりの寂れた区画。 「うおおおおおおおおおおおおおおお―――!」 そんな取り残された世界の路地裏で大声を散らす男。 大十字九郎はただ今、路地裏の一本道を全力疾走していた。 走る。駆ける。疾走する。 肺に酸素が行き渡らず裂けるような胸の苦しみを押し殺して。 休みなく上下させられて、いい加減脳に反逆しようとする脚を黙らせて。 勢いよく踏みつけた水溜まりがズボンに汚い模様を着けようとも構わず走り続ける。 速度も、距離も、走っている時間も。 どれも、とても常人とは思えない新記録のオンパレードだ。 精神が肉体を凌駕する。人間の底力とはここまで果てしないものなのか。 その先に何があるというのか。 それほどまでに魂を猛らせる源泉とは何なのか。 男の少し前を進んでいる黒い影。 それは、 生の魚を口に咥える、黒色の毛並をした猫だった。 「待てええええええ!逃げるでない俺の晩飯いいいいいい!」 その形相は鬼か悪魔か。 顔面を憤怒に支配された九郎は、天の恵みを奪う狼藉者に鉄槌を下すべく追跡する。 たかが魚一匹に悪鬼と化す様は情けない事この上ないが、男とて譲れぬ事情がある。 何せこの大十字九郎、金が無い。 つまり食事も碌に買えない。この残飯(めし)を逃せば後は塩と酒のみでしか生きていけぬ身。 知り合いの漁師からおこぼれに預かった一匹の魚はまさに明日を生きる最後の希望。 美しい未来を思えばこの程度の無様など何するものぞ。今日よりも明日なのだ。 そして九郎の獲物(ターゲット)は黒猫も含まれる。 誤解無きよう説明するが、あれこそは九郎が勤める探偵事務所唯一の依頼対象。 さる夫人―――の十歳以下のいたいけな娘の屋敷より抜け出し捜索願いが出されていた飼い猫だ。 忌々しき泥棒猫は九郎に金をもたらす招き猫でもある。 奪われた魚も取り戻せれば、イーブンどころかお釣りが出る。借りた七輪で焼いて食おうとしたのは間違っちゃいなかった。 故に。空腹の身に鞭打ち残りの生命力の全てをこの走りに捧げる。 これで終わってもいい。だから、ありったけをッ!!! だが、黒猫とて明日への糧を手にする権利はある。 黙って捕まり九郎の腹の肥やしになる気は毛頭なかった。 人語を解せぬ畜生でも、危険の信号を理解する知能は持ち合わせている。 本能と呼ばれるそれは、迫りくる対象を「捕食者」と認識して生存本能に火を付けた。 両脇を塞ぐ住宅の壁の一部に生じた空白。 猫は意を決し、空白に飛び込んだ。 落ちる矮躯の先には水の絨毯。 街中を流れる下水道に繋がっている。 これこそ野生が生んだ逃走経路だ。 「ぬうううおおおりゃああああああああああ――――――――!!」 その陥落に、九郎は足を止める動作を一切しないまま躊躇なく飛び込んだ。 例えうだつのあがらなくても、彼は探偵。 一帯の地図の見取り図など頭脳に叩き込んである。 更に、散々逃げられた苦渋は対象の行動パターンを予測する材料と変わっている。 ここに追い込んだ時点で、勝利の方程式は出来上がっている! 虚空に浮かぶ一人と一匹。 猫はもがき、男は足掻く。 そこに差は歴然となり。 降下(ダイブ)、&確保(キャッチ)。 「レパードちゃん、とったどおおおおおおおおおおおおッッッ!!」 アーカム在住私立探偵、大十字九郎。 本日の依頼(ミッション)―――無事に完了(コンプリート)。 ◆ ◆ ◆ 「ここで会ったが百年目え!今からお前は俺の朝餉のジャム(いちご味)になるのだあ――――っ!」 ……再度訂正するが、男の発言の意味は 『迷い猫を確保→依頼達成→報酬ウマー→パンに塗るジャムを買える』 という正しい論理的帰結からくるものであり、決して生きた猫を鍋に入れて喰う、などといった 『いくら赤貧だからって社会に生きる人としてそれはどうなのよ?』という真似に及ぼうとしているわけではないことを、 ここに表明しておく。 飯の種ではあるが猫を飯にするわけがない。そんな真似は『二度と』御免なのだ。 だが、黒猫とて明日への糧を手にする権利はある。 黙って捕まり九郎の腹の肥やしになる気は毛頭なかった。 人語を解せぬ畜生でも、危険の信号を理解する知能は持ち合わせている。 本能と呼ばれるそれは、迫りくる対象を「捕食者」と認識して生存本能に火を付けた。 両脇を塞ぐ住宅の壁の一部に生じた空白。 猫は意を決し、空白に飛び込んだ。 落ちる矮躯の先には水の絨毯。 街中を流れる下水道に繋がっている。 これこそ野生が生んだ逃走経路だ。 「ぬうううおおおりゃああああああああああ――――――――!!」 その陥落に、九郎は足を止める動作を一切しないまま躊躇なく飛び込んだ。 例えうだつのあがらなくても、彼は探偵。 一帯の地図の見取り図など頭脳に叩き込んである。 更に、散々逃げられた苦渋は対象の行動パターンを予測する材料と変わっている。 ここに追い込んだ時点で、勝利の方程式は出来上がっている! 虚空に浮かぶ一人と一匹。 猫はもがき、男は足掻く。 そこに差は歴然となり。 降下(ダイブ)、&確保(キャッチ)。 「レパードちゃん、とったどおおおおおおおおおおおおッッッ!!」 アーカム在住私立探偵、大十字九郎。 本日の依頼(ミッション)―――無事に完了(コンプリート)。 ◆ ◆ ◆ その依頼は唐突にやってきた。 探偵への依頼など大抵は突然なものだが、今回のそれは一際脈絡のない内容だった。 魔術理論の最先端。人類の繁栄の再頂点。 一部の特権者が握るのみだった魔術実社会に普遍化するまで進んだ科学の時代。 巨大財閥の投資によって田舎町から合衆国にある世界の中心と呼ぶべき大都市、アーカムシティ。 そこに在住する一般(?)市民、事務所は電気もガスも水道も止められている瀬戸際の私立探偵、 大十字九郎に一か月ぶりの仕事の依頼が舞い来んできた。 "報酬は問いません。我が祖に伝わるこの鍵に合う"孔"を捜してもらいたいのです" 名前は伏せさせて欲しいと言った、紫の長髪をまとめた年若い女性は鈍く光る銀色の鍵、 札束の詰まったアタッシュケースを差し出した。 何でもこの鍵は彼女の祖先が遺していった形見の一つで、長年死蔵されていたものを発見、 だが肝心の"鍵を刺すべきもの"が家で見つからず、鍵屋から玩具屋まで回っても何に使う鍵なのか分からない。 分かったのはただ一つ、これが"魔術に関わるもの"というだけ。 知己を頼ってるうちに自分の来歴―――魔術を学んでいたという情報を掴み、ここに頼りに来たという。 魔術。 それは九郎の人生を狂わせたもの。 おぞましき知識で、ろくでもない内容で、関わるもの全てをどうにかしてしまう禁断の箱。 今でこそ科学と並び流通しているが、そこには手を伸ばしてはいけない"深み"の領域がある。 この鍵がそこに通じていないとは限らない。 しかし外道の知識の集大成―――魔導書のような品でない限りはまだ安全な可能性もある。 だったら先祖の思い出が何なのか調べるくらいはいいかもしれない、とも思った。 というか札束を見せられてから0.2秒で快諾してしまったので、後の祭りというやつだった。 ともあれ引き受けてしまった以上はきっちりとこなすしかない。 手がかりは鍵という現物。古い骨董屋等を当たっていけば見つかるかもしれない。 そしてもう一つ。鍵をかけた物の名称らしき単語だ。 それだけあって見つけられないものかと怪訝に思いながらも、黙って少女の声を耳に入れた。 "――――――――――――■■メ■。" ◆ ◆ ◆ 結果として、やっぱりろくでもないものだった。 それも最低、最鬱、さらに最悪の部類でだ。 まずアーカムシティから一時代程逆行した都市に突如として飛ばされた事が最低。 歴史で名を挙げた英雄の魂―――それこそ魔導書そのものを呼び寄せるという事が最鬱。 そして数十人規模で一人になるまで殺し合えという事が最悪だった。 どうしてこうなったのか。 古書店を回ってる中で『偶々』女店主が持っていた書物を勧めてきて、 その本に『偶々』鍵がかかっていて中身が読めない仕組みになっていて、 物は試しと例の鍵を冗談で刺したら信じられない事にピッタリと孔に吸い込まれて、 まるで鍵がひとりでに動いたみたいに孔を回して、気付いたらここだ。 帰れたら真っ先に依頼主に文句を言ってやりたいところだ。 ……いや、逆にあの娘がこんな事に巻き込まれなかったのに安堵するべきなのか。 魔術を齧っただけの半端者ですら吐き気がこみ上げている。常人なんかがいたら一瞬で廃人コースまっしぐらだ。 「いて、いてててっあんま暴れんなよそんなに。 家でミルク……じゃなくて水……もないな。 …………布で拭くぐらいはしてやるからさ」 ずぶぬれの全身で、腕の中で暴れる押さえつける。 何もわざわざこっちでも貧乏にすることはなといのに。 おかげで戦争そっちのけでその日の生活費を稼ぐ事から始めなくてはならないのだ。 この舞台を設定した主催者サマよ。 自分、拳いいっすか?。 「くそう、せめて財布にもう少し現金詰めておけばよかった……」 現地の我が家である事務所(ご丁寧にボロっぷりまで再現してある)に到着する。 気が重いのは始まる戦争に滅入っているから。というわけでもない。 むしろその段階にすらいってない事が殊更頭を悩ませている。 事務所に住む同居人。即ちサーヴァントと呼ばれる英霊の存在。 聖杯がどうとかよりも、まず目先の問題の方がずっと厄介だった。 「帰ったぞーアーチャー、電話番ぐらいきちっとしてたろうなー。 まあそもそもうちの電話が一か月以内に二度鳴った試しなんかな―――」 「『Devil May Cry』―――あぁ、仕事の依頼? 悪いが今日は休業だ。他をあたりな。 ならいつやってるか?うちの主義は週休六日だ。なんであと五日は看板だぜ。そん時よろしくドーゾ」 「アンタ何やってるンですのゥ―――――――っ!?」 今まさに奇跡の月二の依頼がかかった受話器を、投げて電源を落とした男に盛大に突っ込んだ。 「ようクロウ。相変わらず喧しい声だな」 HAHAHA!と陽気なアメリカンスマイル(アメリカ人かは知らん)をかましつつ、 部屋で唯一まともな調度品の机に両脚をのっけて踏ん反りがえってる、銀髪の半裸男。 鍛え上げられた身体は鋼の如く硬く、鋭い。 人間の体では到達実現出来ない密度の筋肉が詰まっている。 その内側からは、燃え盛る炎のように込み上げてくる膨大な魔力の熱気。 気を張っていなければ、飛び火して一瞬で魂ごと焦熱してしまう程、圧倒的に濃い。 目にするだけで理解する。 こいつと俺の格差。いや、魔術師と英霊の格差。 魔導書を読み解き外法の知識を紐解いたけの人間など、正真の怪物には紙を裂く軽さで消し飛ばせる砂粒でしかない。 人の形をしていながら、人の領域を超えたもの。 それこそがサーヴァント。クラス・アーチャー。 大十字九郎の聖杯戦争の剣となる、射撃手の英霊だった。 「よう、じゃねえよ!何爽やかスマイルで決めてんだ! ていうか何でピザとか食ってんの!?お前金持ってたっけ!? まさか英霊サマともあろうものが食い逃げとかしたんじゃないだろうな……!」 「HA!ナメてくれるじゃねえか。そこまで落ちた覚えはねえぜ。 出前で頼んで、時計の裏に置いてあった金でしっかり払ったに決まってんだろ」 「それは隠したっていうんですよオオオン!?」 信じられない。 非常時―――本当に食うものが無くなった場合―――に厳重に封じていたヘソクリをかっぱらったというのだ。 英雄っていうなら普通、鎧着た品行方正な騎士で『あなたが私のマスターか?』、なのじゃないのか? 尊大で傲岸極まった態度は、英霊というよりどっちかというとチンピラの類じみている。 仮にも英霊。実力の差など試すまでもなく分かってる。 だが、かといってここまでされて黙ったままでいられようか―――いやない! 戦力差など先刻承知。 正しき怒りを胸に激しく食って掛かる。 「ええいいいから言え!さっきのは誰からの電話だ!どんな依頼だった! 俺のジャムトースト何枚分だああだだだだだだだだあああああーーーッッ!!?」」 無数のガラスの破片が刺さったような激痛が両手に起きる。 原因は無事確保した筈のレパード(猫)。 ちょっと爪で引っ掻いて痛いで済んでいた今までとは違う。 これはもう刺突、爪で直接ブッ刺している! 余りにも埒外の激痛で思わず掴んでいた手を離してしまう。 「おっと」 空中に放られたところを、アーチャーは指でつまみ上げられるレパード。 途端、壊れた目覚まし同然の悲鳴。 口角に泡をつけながらも絶叫する。 明らかに狂乱していた。 知性が薄い動物ですら、英霊の気に怯えている。 強大な魔力に直接当てられたことで本能が過剰に刺激されているのだ。 「恐がるなよ。取って食ったりなんかしねえよ。コイツじゃあるまいし」 「お前に怯えてんだよ!あともう食うつもりもねえ!」 食ったのは否定しないのかよと、軽く引いたアーチャーから猫をひったくり、脱いだ上着を覆い被せる。 これなら引っ掻かれる事もないし、アーチャーも見えなくなる。 しかし、ヤバイ。 ヤバすぎる。 このまま狂死させたら報酬どころか逆に賠償請求だ。ブタ箱行き待ったなしだ。 ともかくここにはいられない。 アーチャー(こいつ)の気配が感じられなくなるまで遠くに移動しなければ……! 「待ちな、マスター。 出る前に聞いておきたい事がある」 「後だ!この仔を落ち着けて依頼主に届けてからゆっくり聞いて―――」 「サーヴァントが揃ってきてるのが感じる。 そろそろ始まるぜ。聖杯戦争が」 その言葉を聞いて。 先を急き立てる心臓の早鐘が、ピタリと治まった。 「最初に聞いた時は、『願いなんざねえ、とにかく帰りたい』とか言ってたっけな。 今になってからもう一度聞くぜ。クロウ、お前はここで、何をする?」 アーチャーの声は何でもない、いつもの口調だ。 だがそこにほんの僅かばかりの気が入るだけで、こんなにも重みが増している。 何をするのか。 それはずっと心の中で定まる事なくゆらゆらとしていたものだった。 叶えたい願いなんて、今でもない。 欲しいものはそりゃあるが、人を殺してまでかと問われれば、やっぱり首を横に振るだろう。 金とか食い物とか住居とか、そういうのは生きるのに必要なものだ。 ……まあ要するに、情けなさでしかない。 他人を理不尽に踏みにじって得たもので飯を食えるような人生を、自分は許容出来ないだけだ。 「―――望みなんざ、今でもねえよ。 早く帰りたいってのも変わっちゃいねえ。いい加減ライカさんのメシも恋しいんだ」 けれど。 ああ、けれど――――――。 「けど――――――この場所で誰かが泣いていて。何もかも奪われようとする人がいて。 そいつらを嗤いながら殺そうとする奴がいるなら。誰も彼もを殺し合わせようとする奴がいるなら」 きっと、命(それ)を見捨てる事が出来ない。 邪悪(それ)を許す事が出来ない。 それは、あまりにも現状を知らな過ぎる、恥知らずな言葉だ。 だってこの身は強くなんかない。魔術を知っているだけの、ただの人間でしかない。 正義の味方でもヒーローでも、勿論英雄なんかでもない。神様に抗う力なんて有るわけもない。 戦う力など皆無。あったとしても雨の一滴よりも小さな微力。 ああ、分かってる。分かっているんだ。 逃げればいい。捨て去ればいい。責任なんかまったくない。 もっと強くて相応しい、本物のヒーローみたいな奴はきっといる。 そいつに何もかも任せてしまえば万事解決だ。 ああ、何て愚かなんだろう。 ……そんな当たり前を、自分自身が許せないなんて。 「俺は、正義の味方になりたい」 ……扉を思いっきり蹴って開けて外に出る。 かっこつけた台詞をかました羞恥心とか馬鹿らしさとかその辺を投げ捨ててひた走る。 見上げたアーカムの空は、陽も見えない厚い雲で覆われていた。 ◆ ◆ ◆ 「―――それだけ啖呵を切れれば上等だな」 無人になった事務所で、一人納得する。 アーチャーの顔は満足げに緩んでいた。 アーチャーにも、聖杯に託す望みなどない。 やり残した無念も叶えたい願も、とうに品切れだ。 それでも召喚に応じたのは、聖杯戦争には用があったからだ。 英霊の座からすらも届いた悪臭。 人の悲鳴と怪物の嘲笑しか聞こえない街。 そんなものが世に表れた事に、どうしようもなく怒りが沸いたのだ。 だからアーチャーはここにいる。 誇りある魔剣士と同じように、邪悪渦巻く聖杯戦争という存在そのものを封じる為に。 「いいぜマスター、その線に乗ってやるよ。 悪魔でも天使でもカミサマでも、まとめてかかって来な」 ハンガーにかかった赤いジャケットを素肌の上から羽織り、立ち上がる。 腰には白黒の双銃。 背には銀色の刃金をした大剣。 魂には―――父の誇り。 これがアーチャーのサーヴァント――――伝説のデビルハンター、ダンテの装束。 剣の柄を握り、やたらめったらに振り回す。 乱雑でありながら閃は全て過たず、木製のテーブルに文字を刻み付ける。 「臨時の看板にはこんなもんでいいだろう」 『Devil May Cry』 さあ悪魔よ。糞尿と血の詰まった怪物(けもの)共よ。 後悔と絶望の協奏曲を奏でよ。 涙無き貴様らに、次の夜は亡い。 イカれたパーティの始まりだ! 「This party s getting crazy!」 【出展】 Devil may cry3 【CLASS】 アーチャー 【真名】 ダンテ 【ステータス】 筋力B 耐久A+ 敏捷B 魔力A 幸運E 宝具A 【属性】 混沌・善 【クラス別スキル】 対魔力:C 第二節以下の詠唱による魔術を無効化する。 大魔術、儀礼呪法など大掛かりな魔術は防げない。 単独行動:B マスターからの魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクBならば、マスターを失っても二日間現界可能。 【保有スキル】 半人半魔:B 神ではなく、悪魔との混血度を表す。 伝説と謳われる魔剣士と人間の女性との間に生まれた双子の兄。 体のつくりが人間と異なるため、人間では致命傷となるような傷でも死に至ることがなく、治癒力も高い。 戦闘続行:A 往生際が悪い。 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、決定的な致命傷を受けない限り生き延びる。 スタイルチェンジ:A+ 数多の武器を使い、数多の戦い方で敵を倒した技巧の冴え。 戦闘中に自由に戦法(スタイル)を変更し、それに対応したスキルを獲得できる。 該当するスキルは勇猛、千里眼、仕切り直し、見切り等。 【宝具】 『奴原よ泣き叫べ、空に夜に響き渡れ(Devil May Cry)』 ランク:A++ 種別:対人(自身)宝具 レンジ:0 最大捕捉:1人 クール&スタイリッシュ、悪魔も泣き出す男の伝説の具現。 敵を斬る度、魔を掃う度に魔力が蓄積され、ダンテの能力を底上げする。 蓄積量には独自のランクが設定され、ランクが上がる度に能力も増していく。 一回一体では微々たるものだが、連続して無数の敵を倒していけばその力は果てしないものとなる。 最大限溜め込めれば、やがて肉体を悪魔の姿に変える「魔人化」が解禁される。 肉体ブースト以外に一撃に全魔力を注いだり、他の宝具の出力(ランクアップ)に転用も可能。 『魂よ誇れ白銀の魔刃(Rebelion Of Spada)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~2 最大捕捉:1人 父から受け継いだ銀の大剣。 悪魔の手に握られながら無数の悪魔を屠ってきた対魔に特化した宝具。 ダンテの魔力の受け皿でありその力を存分に行使させる、魔を断つ剣。 『泪無き世界よ、終幕の鐘だ(Devils Never Cry)』 ランク:B 種別:対人宝具 レンジ:1~10 最大捕捉:1人 魔帝を始めとする仇敵の止めに下された銃撃(ラストショット)。 解放された『Ebony & Ivory』の銃弾を受けてHPがゼロになった相手は あらゆる再生も蘇生も機能せずそのまま死に至る。 因果改変による回避すら許さない、物語を締め括る終わりの一撃(デウスエクスマキナ)。 悪魔、それに類する種族であればダメージは倍増(クリティカル)となる。 撃つ際の決め台詞は、『Jack Pot!』」。 【weapon】 『Ebony & Ivory』 ダンテのためだけに制作された二丁拳銃。リベリオンに並ぶダンテのトレードマーク。 速射性重視のアイボリー(白)と精密性重視のエボニー(黒)。宝具としてのランクはC-に収まる。 コルトガバメントをベースに、ダンテの超人的連射速度に耐えられるべく魔改造されている。 『アミュレット』 母エヴァの形見でもあるアミュレット。 これ自体に特殊な力はないが、兄の持つ片割れのアミュレットとを合わせると 父スパーダの名を冠する最強の魔剣を手にするための鍵となる。 【人物背景】 悪魔も泣き出す男。涙を流せる悪魔。 父の力と誇り、母の血と優しさを受け継いだ銀髪の青年。 表では非合法の便利屋、裏では悪魔退治を請け負うデビルハンター。 魔界の神を封じ、絶望の覇王を滅し、血を分けた実の兄弟と殺し合い、偽りの神の野望を阻み、 それでも永遠に尽きぬ戦いに身を投じ続ける。無二の相棒と共に、魔を討つ剣として。 【サーヴァントとしての願い】 聖杯戦争を開いた奴を止め、聖杯を封じる。 【基本戦術、方針、運用法】 スキルとステータスのバランスの良さから、あらゆる状況に対応できる万能型。 宝具はどれも対人だが殲滅力自体は極めて高い。 特に相性がいいのは人海戦術を頼みとする相手や、再生力や耐久力が並はずれた相手。 素の実力が高い相手とはガチンコにならざるを得ないが、戦闘経験も豊富なため数値以上の活躍も見込めるだろう。 ちなみにサーヴァントとしての全盛期はフォルトゥナの魔剣教団事変の頃(『4』)だが、 マスターの精神性に合わせて、最も若いテメニングルでの兄との相争った時期(『3』)の姿で現界した。 【出展】 機神咆哮デモンベイン 【マスター】 大十字九郎 【参戦方法】 依頼にあった銀の鍵を調べる内に『偶然にも』招かれてしまった。 依頼主は「紫の長髪であった」事以外不明である。 【マスターとしての願い】 聖杯戦争を止めたい。 理不尽な争いで失われる命を見捨てるのは、少しだけ後味が悪い。 それだけしかなく、それだけで十分だった。 【能力・技能】 『魔術師』 ミスカトニック大学でかつて魔術を学んでいたが、あるおぞましい体験により半ばで中退している。 それなりに素質はあるようだが、今の腕では未熟極まりない。 『探偵』 貧乏。タカり。猫を食った事のある男。つまりはそういう職事情である。 ただ探偵としての腕前は悪いわけではない。 【人物背景】 アーカムシティ在住の私立探偵。 魔道の知識はあれど魔術師ではなく、正義の味方でもヒーローでもない。 宇宙を覆す力など持ち合わせてるわけがない、弱い人間だ。 大十字九郎は少しだけ他人より優しい、ただの人間だ。 【方針】 大十字九郎は神などではないので、直接戦うのは望むべくもない。 マスターらしくサーヴァントのサポートに回りつつ、事態を解決すべく奔走していくしかないだろう。 探偵のスキルも上手く使えば有用な情報を得るか情報源にもなる。 気合と根性で神話生物を乗り越えられるなら苦労はない。 だが気合と根性なくしては大十字九郎足り得ないのだ。
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【マスター】 芳乃さくら@D.C.II ―ダ・カーポII― 【マスターとしての願い】 願いの桜の制御方法を知る 【サーヴァント】 セイバー 【weapon】 なし 【能力・技能】 『願いの桜の魔法使い』 優れた魔法使いであった祖母の血を強く引いており、本人の魔力も高い。 不老の魔術が掛けられており、実年齢は70歳近くだが、身体成長は小学校高学年程度で止まっている。 (成長が止まっている間寿命も延び、不老の魔術が解除された時点から普通通りの成長が進行する。) 実戦型ではなく研究型の魔術師であり、数十年『願いの桜』を完成させるため、古今東西の魔術を研究していた。 不完全ながらも『願望機』としての『願いの桜』の作成自体は成功したことから、魔術知識についてはかなり豊富である。 攻撃魔術を使用している描写はないが、心を読む力を魔術で防いでいる描写はあるため、 対魔力については(現代の魔術師レベルで)持っているものとする。 『植物学』 少女時代、アメリカの大学で植物学の博士号を取得している。 枯れない桜を作るため、植物学の面からもアプローチをかけていた。 【人物背景】 風見学園の学園長。年齢65~70歳程度。 明るく感情表現が豊かで子供っぽい部分もあるが、年相応の分別と母性が強くなっている。 趣味は時代劇や任侠映画を見ること。 中学生時代、戻ってきた初音島に別れを告げ、アメリカで長い年月、枯れない桜の研究を続けていた。 ふと気が付いた時、自分一人の見た目が変わらないまま、親しい人間が老いていき、孤独になっていくことに不安を抱いた。 研究の末に枯れない桜のレプリカを作り上げ、初音島に持ち帰った。 その桜に「あったかもしれない現在の可能性」を望み、自分と想い人の子供のコピーにあたる『桜内義之』をこの世に生み出した。 義之という念願の家族を得て、さくらは『家族の温かさ』を感じながら暮らせるようになった。 しかし、願いの桜には人々の真摯な願いだけでなく、他者を傷つける歪んだ願いまでも叶えてしまうという不具合があり、 桜を枯らし義之を消すのか、自らが桜に取り込まれ内側から制御するのか、の二択に迫られることとなった。 【方針】 神の願望機たる聖杯を出現させ、願いの桜に足りない力、制御方法を見つける。
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【クラス】 キャスター 【真名】 アルル・ナジャ(ドッペルゲンガーアルル)@ぽけっとぷよぷよ~ん 【パラメータ】 筋力:にがて 耐久:なかなか 敏捷:そこそこ 魔力:ばつぐん 幸運:すごい 宝具:すごい 【属性】 ? 【クラススキル】 陣地作成:にがて ダンジョンには潜る方。 道具作成:にがて カレーなら作れる。 【保有スキル】 ぷよぷよ:とくい ぷよぷよ勝負が上手い。 どんな状況であっても直接戦闘を行う事なく別の方法での勝負を行う隠された効果があるが、聖杯戦争では封印されている。 被虐体質:それなり 集団戦闘において、敵の標的になる確率が増す。 アルル・ナジャは複数の人物から頻繁に狙われていた。色んな意味で。 迷宮探索:とくい 探索技術。 他者が作成した陣地内でのアイテムの発見率、鑑定成功率が上昇し、戦闘時に有利な補正がかかる。 基本的には有用なスキルだが、この聖杯戦争での『アイテムの発見』は時に損害をもたらす。 変化:それなり 自らの姿を仮面を被ったピエロに変化させる。 変化中は他のスキルが封印され、パラメータも大幅にダウンする。 【宝具】 『魔導物語(アルル)』 ランク:すごい 種別:対界宝具 レンジ:? 最大捕捉:? 魔導師の女の子、アルル・ナジャ。彼女とその周辺の人物達を主役とした物語が宝具化されたもの。 アルルが登場する伝承の大半は、語られる物語によって設定が説明無しに追加・変更されるという、 良く言えば大らか、悪く言えばいい加減なものである。 その殆どがパラレルと言ってもよい――のだが、ある物語はそれとは別の物語を前提として作られたものもあり、という具合で、非常にややこしい。 主要人物の設定や性格は徐々に統一されていったが、それも初期に語られていたものとはかけ離れたものとなっている。 キャスターの性質とパラメータは常に変動を続け、一定しない(筋力が最も低く、魔力が最も高いという傾向は存在する。人格に影響する事はない)。 パラメータを参照して判定を行うスキルや宝具が使用された場合、その成功率を低下させる。 また、キャスターとそのマスター、及び彼女達に干渉する相手は、自身と相手、 双方のあらゆるパラメータ(残体力、魔力量、SAN値、サーヴァントのステータスなど)を具体的な数値として認識する事が不可能となる。 これに対抗するためには、ファジーパラメータ――表情や仕草を観察し、正確に判断する能力が必要となる。 『真・魔導物語(リリス)』 ランク:EX(A-) 種別:対界宝具 レンジ:- 最大捕捉:自身 ――曰く。 アルル・ナジャは因果律から逃れた、創造主に対抗出来る唯一無二の存在であり、 悪魔王ルシファーと人類庇護者リリスの奇跡の産物、輪廻外超生命体である。 数百年に及ぶ戦いの果てにアルルは創造主を倒し、結果として世界は崩壊。 かつてルシファーと呼ばれた魔界の王サタンはそれを悲しみ、在りし日の世界を元に新たな世界を創造した。 同じ色をした魔物をくっつけて時空の彼方に送り込む『ぷよぷよ勝負』に興じるアルルは、その世界で新生したアルルなのだ、という。 またそれを元にした別の解釈では、世界崩壊後にアルルは二人に分裂しており、片方だけが新世界へと到達していた。 もう一人のアルルはそのまま世界の外に漂い続けていたが、ある時、 もう一人の自分と入れ替わって自分が『本物のアルル』となる為にある事件を起こす事になる。 キャスターの存在をある物語におけるアルル・ナジャに固定する。この宝具の発動中は『魔導物語』は無効化され、通常のステータスとなる。 その際のステータスは『筋力E 耐久B 敏捷C 魔力A++ 幸運E 宝具A-』。 具体的に何をどうやって創造主を倒したのかは語られていないため、 効果としては高い戦闘能力を常時確保するのみに留まるが、同時に英霊としての格も大幅に上昇する。 イコール、キャスターの姿を見た相手への精神ダメージも向上する事になる。 なお、この宝具はあくまでも『魔導物語』の一部であり、御多分に漏れず矛盾満載である。別に正史とか真の宝具とかいう訳ではない。 一定時間の経過、もしくは魔力が保てなくなった場合、普通に元の状態に戻る。 【weapon】 各種攻撃魔法。 最も基本的な魔法である『ファイヤー』『アイスストーム』は魔力を消費する事なく使用可能。 魔法攻撃力を上昇させる『ダイアキュート』、敵をのーみそぷーにする『ブレインダムド』、 感動させて一時的に行動不能にする『ばよえ~ん』等が有用か。 『グランドクロス』『ラグナロク』『アーマゲドン』等、なんか凄そうな名前の魔法も使えるようだが、効果が一切不明なので基本的には考慮不能。 【人物背景】 もう一人のアルル・ナジャ。 『ドッペルゲンガーアルル』は複数の作品に登場しているが、召喚されたのは『ぽけっとぷよぷよ~ん』に登場したもの。 自分こそが本物のアルルである、と主張してアルルと成り代わろうとしていた謎の存在。 アルルに敗北した後、彼女の言葉を受けて「今度はボクがボクとして会いに行く」と言い残し、姿を消した。 なお、目的自体はハッキリしているのだが、その正体は不明である。 何故アルルと同じ姿なのか、等という事は全く語られていない(宝具欄に記されたものは本編に登場していない裏設定である。しかも例によって矛盾する)。 据え置き版の『ぷよぷよ~ん』では目的さえ不明の上に敗北すると逆ギレして消えていったのでそちらに比べると進歩はしている。 【サーヴァントとしての願い】 確固たる存在となって、アルルと再会する。