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「ミサカ、巫女と美琴(みさかみことみこと)」第4話「ホワイトバニーの幻影」 (Chap.4) 土曜日19:55 第21学区天文台へ続く道路 天文台へと続く片側1車線の道路には山側に歩道があり街灯が30mごとに設置されている。点 在する街灯の下だけは明るいものの辺りはすっかり暗闇に包まれている。道路以外に人工物など 何もないその山腹の路肩に一台のオープンカーが駐車していた。 そのオープンカーに小さな電子音が鳴り響くと運転席の影がゴソリ!と動く。リクライニングさせた 運転席に寝そべっていた一方通行が視線を向けたバックミラーには暗闇の中、道路を照らす街灯 のみが映っている。その一つの街灯の明かりの下に暗闇から1つの人影が吐き出された。 「ちッ、場所も時間も予定通りか。まあいい。誰が黒幕だか知らねェが今回は掌の上で遊ンでやる」 オープンカーから飛び降りた一方通行の紅い瞳は15m先の街灯の下に佇む人影を捉える。そ れは長い髪をポニーテールに括り、Tシャツに片方の裾を根元までぶった切ったジーンズそして 腰のウエスタンベルトには七天七刀という格好をしたウエスタンルックサムライガールだった。 そこから少し離れた林の中ではその様子を覗き見る香焼と建宮が小声で会話を交わしていた。 (教皇代理。プリエステスはホワイトバニーで出撃していただけるって話じゃなかったんすか?) (そうなのよ。それが相手が上条当麻殿ではないと判った途端、ならばホワイトバニーになる必要 などありません!とか言って嬉々としてあのまま突撃されたのよ。くそッ!詰めを誤ったのよな!) 「天草式十字凄教の神裂火織と申します。故あって貴方とお手合わせさせて頂きます」 「ふン!オマエが誰でもイイけどよォ。本気で俺と殺す(やり)合う覚悟があるなら掛かってきな!」 「参ります!!」 轟(ごう)ッッ!! 神裂火織が流れるような動作で右掌を前方に差し出すと爆炎が一方通行目指して噴き出した。 噴き出した爆炎は一方通行から見ればあたかも神裂火織が爆発したように見えたはずだ。しかし 一方通行は動じない。 (ふン!そっちが能力を使ってくれるなら手間も省けるってもンだぜ。 これ程の業火ならテメェは骨も残せねェだろうが、恨むならテメエの強すぎる能力を恨むンだな) だが爆炎が神裂火織の身体を焼くことはなかった。 一方通行に触れた爆炎は相手に反射することなく七色の光の粒に分解されてしまったからだ。 光の粒に分解された爆炎は一方通行の身体にまとわりつく感触を残して左右に流れ、路肩に留め ていた車を歩道へ押し流し激しく横転させる。 (…………何だ?今のは…………) 不可解な現象に一方通行は眉をひそめる。 (さっきの炎は学園都市の能力者の炎とも、今まで闘ってきた雑魚魔術師どもの炎とも違う!) 一方通行が思考をめぐらせようとした時、大気が震えだし突如轟音が鳴り響いたかと思うと上空 300mの何もないハズの場所から真横へと直径50mはある巨大な火柱が噴き出した。一方通行は その火柱を一瞥するとこの不可解な現象を引き起こした目の前の敵を睨み付ける。ところがその相 手も一方通行同様に今の状況に戸惑っているようだった。 (なンだァ?こいつまでキョトンとしやがって。どォいゥことだ? クソッ!初めてテレポーターと殺し(やり)合った時のことを思い出しちまった。あン時はまだ3次元 空間限定の演算式しか組んでなかったから5次元空間を通って3次元空間に跳躍してくる攻撃を 上手く反射できなかったからな。5次元空間に拡張した演算式の組み直しにもう少し手間取って いたらヤバかった!だが今度のはテレポーターの攻撃とも何かが違う) 一方、神裂火織も今の現象に戸惑っていた。ただ相手の怪訝そうな顔つきから相手もこの現象が 何であるか良く判っていないことだけは理解できた。 (このままではラチがあきません!もう一度行きます) ドバッ!!と冷気の固まりが一方通行を襲う。 冷気とは言え神裂火織の放つ冷気はいわば-196℃の液体窒素の奔流であり生身の人間が喰 らえば数秒で氷柱と化すほどの威力だった。 一方通行は右手をかざして迫り来る冷気のベクトルを反転させる。しかし今回も冷気は反射され ずにまるで指の間から水がすり抜けていくように一方通行の右後方に七色の光となって流れ木々 をなぎ倒していった。 そして不意に地鳴りが起こりドゴッ!と大きく揺れたかと思うと500m程離れた山腹が突然爆発 し、大量の木々や岩や土砂を空中へ撒き散らした。これが通常の爆発と違うのは明らかであった。 なにせ爆発した山肌の下から何千本もの氷の槍が剣山のようにせり出していたのだから。 (この攻撃もやっぱり今までの能力者とも魔術師とも違う!なんだ一体?) 神裂火織自身も気付いてはいないが神裂火織が繰りだす炎や冷気は7次元世界の炎や冷気で ある。人間が認識できるのはたかだか3次元世界に顔を出したその一部であるが魔術の真の威力 は高次元世界に隠れたその本体の大きさによって決まる。上位の魔術師ほどより高次元の炎や 冷気を扱うため見た目は下位の魔術師のものと同じでもその威力は桁違いになるのだった。 一方通行は7次元世界の炎を5次元世界で反射したため5次元世界で引き千切られた7次元世 界の炎がその原型を失い七色の光へと分解されたのだ。しかも一方通行は巨大な氷山を水上部 分だけベクトル変換により押し戻したようなものであるから、その衝撃で水面下にある氷山の本体が 砕け水上に顔を出したのが先ほど空中に生じた火柱や山腹に現れた数千本もの氷の槍であった。 結局、神裂火織も何故このような現象が起こるのか理解できなかったがこのまま一方通行に魔術 攻撃を繰り返せば周りに及ぼす被害が甚大になることだけは容易に理解できた。だから一方通行 に向けていた右手を降ろすと七天七刀の柄を強く握りしめるのだった。 「どうした?もう手品はお終いか?」 「いいえ!まだまだッ!七閃ッッ!!」 神裂火織が操る七本の鋼糸(ワイヤー)がアスファルトを削りながら四方八方から一方通行に迫 る。しかし目標を切り裂くはずの鋼糸は一方通行に触れた途端ギン!と金切り音を立てて弾かれ、 一方通行から四方のアスファルトに亀裂が入ったかと思うと、進行方向ににある街灯や横転した オープンカーをズタズタに切り裂きスクラップに変えていく。 反射してきた2本の鋼糸の先端を神裂火織は両手を振るい鋼糸の根本を操って迎撃する。僅か 0.1秒の間に神裂火織と一方通行の間にいくつもの火花が炸裂する。そして一瞬遅れて一方通 行の背後の木がなぎ倒された。 「オイ!今のは一体何のお遊戯なンだァ?いい加減、本気を出さねェと速攻でブッ殺すぞ!!」 「時間差をつけた最後の一本が本命だったのですが………… やはり貴方の反射に死角は無いようですね。ではこれではどうです?」 「グダグダ言ってねェで、さっさと掛かってくりゃいいンだよ。三下!」 相手が聖人だろうが何だろうが関係ない。 一方通行はあくまで面倒くさそうに言い放つ。 事実、ここで一方通行がすることなど何もなかった。能力を反射に設定している以上、相手がどん な能力を繰り出そうが一方通行には関係ない。相手は反射した自身の能力に傷つき倒れていくだ けなのだから。 しかし次の瞬間一方通行が予期せぬ事が起こる。 眉間に皺を寄せる一方通行の瞳はスパッと縦に裂けた自身のシャツの右袖を捉えた。身体に傷 が付いた訳ではない。しかし敵の攻撃が反射をすり抜けたという事実は一方通行を驚愕させた。 (なンで俺のシャツが裂けてンだ!?一体何が起こりやがった? 妙なもンは何も通過しなかったハズだ) 一方通行の動揺する表情を見て神裂火織は薄く笑みを漏らす。 同時に自嘲気味にまるで独り言のように言葉を吐き出した。 「ふっ!やはり『西新宿のせんべい屋』のようにはいきませんね。まだまだ未熟です。 でも、この方法ならあなたを傷付けることぐらいはできそうですね」 (何しやがったンだ、コイツは!?未知の能力でも使いやがるのか?) 「種明かしをさせていただくと先ほど貴方のシャツを切り裂いたのは直径1000分の1ミクロン のチタン合金製の糸なんです」 (ざけンな!たとえ目に見えねェぐらい細い糸だろうが俺の反射をくぐり抜けられるハズはねェ! 欺瞞情報で俺を混乱させる気か?こいつァ!?) 「今のをハッタリだと思っているようですね?ではもう一度行きます!」 今度はシャツだけでなく一方通行の左肩までもが音もなく裂けた。傷は浅いものの鮮やかな切り 口から滲む血が一方通行のシャツを赤く染め始める。 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 『出現した敵戦力は1名のみ。とミサカは大気中のお姉様方に現状を簡潔に報告致します』 御坂妹からの戦況報告は上条、御坂美琴、姫神秋沙のインカムに届いていた。 『やっぱり、予告ビデオに出てきた女(ヤツ)なの!?』 『観測された顔立ちならびに体格より東洋系の若い女性である確率は78%、ただし予告ビデオの ようなバニーなコスチュームではありません。残念でしたね。当麻さん!っとミサカはちょっとトゲの ある言い方で当麻さんに向けたメッセージをこっそりと報告致します』 「痛って────ッ」 両耳を御坂美琴と姫神秋沙に同時に左右から引っ張られ上条は思わず声をあげてしまう。 「へ────ッ!やっぱりバニーが良いんだ!アンタってッ!!」 「なんせ相手は見事な巨乳。そうだったね。上条君ッ!!」 「待て、そんな目で俺を睨むんじゃない! だから落ち着けって!止めろ!ビリビリするんじゃねえ!それに特殊警棒も出すんじゃないッ! そもそも俺はそんなこと一言も言ってねえだろうがッ!!」 『てっきり当麻さんはガッカリされるものだと思っていました、っとミサカは追い打ちをかけてみます』 『こら!御坂妹。だ・か・ら・俺はガッカリなんかしちゃいねえよッ!!』 『まあ良いわ!それよりさっき空から噴き出した炎とか山腹を突き破った氷の槍は一体何なのよ!』 『わかりません!とミサカは潔くキッパリと回答します。先ほどの現象とこちらの戦闘との因果関係は 不明。ただし、敵戦力の火炎攻撃ならびに冷気攻撃に関連していた可能性は高いと判断します』 「火炎に冷気かね。多重能力者(デュアルスキル)な訳ないからやっぱり今回の敵も魔術師ね!」 『でっ。どうなの。戦況は』 『一方通行の左腕からの出血を確認、っとミサカはあの一方通行が傷付いたことに驚きつつ戦況が 膠着状態に入ったことを報告します』 「あの一方通行に傷を負わせるって……………………キシサクマアの首領って一体どんな化け物 なのよ!まったく!」 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 二度も身体を傷付けられれば一方通行も敵の攻撃が反射をすり抜けたのだと認めざるを得ない。 (クソッ!判らねえェ。 さっき俺の反射を通過したのは必要最低限の可視光と可聴音に重力に酸素ぐらいなもンだ。 チタンなんてもンは通過しなかったハズだ。一体コイツは何を使って攻撃してやがるッ!?) 「まだ判りませんか?あなたを傷付けたのは正真正銘チタン合金製の不可視の糸です。 とはいえ、本来ならこんなものであなたを傷付けることなどできるはずもありません。 ですから今回は糸の表面に少々細工を施しておきました。」 「表面に細工だァ?………………………………まさか、そォ言ゥことか!?」 「気付きましたか?間違っていたら今度地面に落ちるのはあなたの首ですよ」 次の瞬間、キンッ!という微かな音が鳴り響く。すると一方通行の背後にあった街灯の支柱に細 い斬線が走り照明がスッと消え落ちる。そして斬線に沿って街灯の上部構造がずり落ちズゴッ!! と音を立てて道路に突き刺さるとゆっくりと傾き始め大音響を響かせて横倒しになった。 「なるほど。 まさかチタンの糸の表面を酸素分子でびっしりコーティングしてやがったとはなッ! そりゃ俺の反射にも引っ掛からねェ訳だ。 オマエ達もなかなかどォして大した(科学)技術を持ってるじゃねェか?」 「見事です。 でもひとつだけ訂正して頂きます。 学園都市の科学技術をもってしてもこの不可視の糸は作れません!僅か1000分の1ミクロンの チタン合金製の糸に金属を切り裂く強度を与えることも、そして斬撃に耐えられるほど強固に酸素 原子をチタン合金に吸着させることはできません。それを可能にしたのは技術ではなく魔術です」 「そんなこたァ、どうでもイイ。 で?どォすンだ。せっかく俺に勝てる唯一のチャンスをみすみす手放すなンてよォ! オマエ、そんなに早死にしてェのか?」 手の内さえ判ればそれが科学だろうが魔術だろうが関係ない。 しかし神裂火織を指差す一方通行の言葉が終わらない内にその手に鋭い痛みが走る。思わず 手を引いた一方通行の手の甲には一本の朱線が走っていた。 「あなたこそ、そんなおしゃべりをする余裕なんてあるのですか? 本来、私は攻撃する前にわざわざあなたに予告する必要など無いのですよ」 (ちィィィ!) 再びキンッ!という音が鳴り響くと今度は一方通行の右隣の大木がなぎ倒される。 「そうです。この攻撃から逃れるためにはあなたは酸素を全て反射し続けるしかありません。 しかし無酸素状態であなたはあと何分耐えられますか?」 (確かにこのままじゃヤバイ!なら、酸欠になる前に速攻ォで片ァ付けてやるッ!) 地面を軽く蹴っただけで一方通行は矢のようなスピードで神裂火織に迫る。その意図は単純だ。 不可視の糸を防ぐことができないのならそれを操っているものを倒せば良い。ただそれだけだ。 相手の切り札を封じた以上一方通行を遮るものなど何もない。相手がテレポーターでもない限り 一方通行から時間稼ぎの逃走を図ることも不可能であろう。しかし神裂火織まであと7mと迫った とき、突然地面が眩く発光し一方通行はその光に飲み込まれてしまった。 (なンだァ、この光は?攻撃じゃァねェが…………チッ!目くらましか!?クソッ、逃がすかよ!) 眩い発光は一瞬で収まったが今敵を見失えば敵の射程を把握していない一方通行が不利にな るのは明白である。逃走に転じたハズの相手を逃がすまいと一方通行は素早く周囲を探索する。 しかし意外にも前方7mの場所すなわち地面が発光する前と同じ位置に神裂火織は立っていた。 先ほどの発光が逃走用の目くらましでは無かったことに少々気抜けしたせいで一方通行は自分に 起こった不思議な現象に気付くのが遅れてしまった。 (???なンで、さっきから同じ場所にいるんだ俺は!?) 先ほど地面が発光してから既に3秒は経っているハズなのに一方通行は今なお発光前と同じ位 置にいた。一方通行がその能力を打ち切った訳ではない。外部から加わる力を全てベクトル変換 し推力に変換している手応えはある。一方通行の感覚としてはスピードを落とすことなく今なお前 進しているハズなのに相手との距離が一向に縮まらない。まるで一方通行が今存在している空間 ごと同じ速度で引き戻されているかのようだった。 (なんだァ!?ミサカネットワークとの接続をジャミングされた訳じゃない。 俺の能力は正常に働いている。じゃァなンでヤツに近づけねェ!?。 念動力?…………いや!周りに念動力者の力場なンて存在しちゃいねェし、そもそもそンな もンで俺が止められるハズはねェ。 催眠術…………そんなチンケな心理攻撃でもねェ。 じゃァ一体何が俺の身体を拘束してやがる?) その時一方通行は気付いていなかった。その足下の地面に描かれた魔法陣に。 一方通行を襲った七閃が跳ね返された時、神裂火織は弾かれた鋼糸を使って一方通行と自分と の間に魔法陣が描いていた。それはある方向へは進めるが反対方向には進めなくなるように空間 を湾曲させる『無限回廊』という名の高位魔法陣である。 (早くコイツの攻撃を解析しないと流石の俺もヤバイ。タイムリミットまで30秒位しかねェ! さっきの火炎に冷気といいコイツの攻撃は一体どォなってやがる。 テレポーターと殺し(やり)あった時の奇妙な現象とも違う。…………待て…………そうかっ! もしかしてそういうことか。なンてこった。気付くのが遅すぎた。今から間に合うか!?) %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 『一方通行が敵に突進するも現在何らかの方法で敵にその動きを拘束されている模様、とミサカ は手に汗握りつつ戦闘の実況を続けます』 「あの一方通行を拘束するって…………魔術ってそんなこともできる訳?」 「俺に聞かれたって、俺だって判らねえよ!」 「ごめんなさい。わたしにも判らない」 「魔術っていったい何なのよ!?」 『御坂妹!もう少し詳しく教えてくれないか?』 『……………………』 『おい!御坂妹!どうした!?』 %%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%%% 一方通行は目を閉じると推進力へのベクトル変換を止めて静かに地面に降り立った。その額には 珠の汗が浮かんでいる。一方、目の前で突然地面に降り立つ一方通行に神裂火織は緊張感を高 める。 (タイムリミットまで30秒は残っているはずですが、ひょっとして降参する…………訳ありませんね。 しかしこの無限回廊はそう易々と突破できませんよ。さあ!どうします?) 10秒後、一方通行は口元に笑みを浮かべると静かに右足を一歩踏み出す。すると神裂火織との 距離が一歩分近づいた。そして突然笑い声を上げた。それは正確には声では無い。前方の空気 を直接振動させて自分の声を作り出しているのだ。 『フハハハッ!まったくもって愉快だぜ! まさか7次元世界を経由して俺という存在に干渉してやがったとはな!恐れ入ったぜ。 だがタネがわかりゃァあとは簡単じゃねェか!』 一方通行が左足を踏み出すと当然のように神裂火織との距離が一歩分縮まる。その当たり前の ような光景に神裂火織は戦慄する。無限回廊を正面から突破した魔術師など一人も存在しない。 無限回廊はその性質ゆえに敵の侵攻ルートが限定できる拠点防衛では絶大な効果を発揮する ものの遊撃戦で使われることはなかった。魔術を知らない科学サイドが相手ならと考えていた神裂 火織も一方通行がカラクリに気付いてしまえば一旦後退してから回り込んでくるだろうとは想定して いた。しかしまさか正面からこの術式を破ってくるとは夢にも思わなかった。 無限回廊はハムスターが遊ぶホイールに例えることができる。ハムスターが1次元世界(ホイール 内壁)をどれだけ走ろうとも2次元世界において連結された世界(ホイール)からは決して抜け出せ ないように無限回廊は3次元世界の特定の領域を7次元世界において連結させる術式である。 もっとも無限回廊は囚えたモノの前進を阻むが後退を妨げるものではない。それは一本の紐で作 る蚊取り線香のような渦巻きを思い浮かべれば理解しやすいだろう。渦の内側に向かって進む限り 終端に辿り着いても1周前に通過した場所に落ちてしまうため渦を抜け出すことは永遠にできない が、逆方向に進みさえすれば簡単に脱出できる。 だが一方通行はあえて前進を続けた。その上湾曲させた3次元世界を連結する7次元世界から の干渉をベクトル変換し閉ざされた世界の秩序(ルール)を強引に書き換えていく。魔術師である 神裂火織は自分の使う術式の科学的原理を理解している訳ではない。しかし展開した術式が一方 通行によって浸食され喰い荒らされていく感触は神裂火織を震撼させた。 (まさかこの無限回廊を正面から突破してくるとは…………さすがは学園都市第一位。 まさに化け物レベルですね) まるで散歩するかのように無限回廊を歩いて来る一方通行に神裂火織はもはや無意味となった 無限回廊を解く。同時に魔法陣を描いていた鋼糸が地面から飛び上がり一方通行の身体に絡み つく。それら鋼糸の終端は周囲の木々に巻き付けられていた。 『馬鹿が!こンなもンで何秒俺を止められると夢見てンだァ!オマエ』 一方通行が一歩進むたびに鋼糸が巻き付けられた周囲の木々がミシミシと音を立ててたわんで いく。神裂火織の鋼糸は左文字の銘を継ぐ刀鍛冶が打ち上げた国宝級の一品である。それら異常 な程の頑強性を持つ鋼糸でさえもギリギリと悲鳴を上げ、一方通行があと3歩あるけば鋼糸の戒め は限界を迎えるだろう。 『大見栄切って登場したくせにセコい手ばっか使いやがって! それがオマエの器の小ささを表していることに気付かねェのかよォ!』 一方通行の宣言に神裂火織は目をしばたたくと少し自虐的な笑みを浮かべる。 (フッ!…………その通りです。痛いところを突かれました。 やはり相手を酸欠にして穏便に勝利しようなどという考えがそもそも甘かったようです。 こちらも捨て身でいかなければなりません。…………ならば!) 唐突に一方通行に巻き付いていた鋼糸がシュルルッ!と解けると神裂火織の元に引き戻される。 『ン??』 「あなたの仰るとおりです。姑息な作戦は止めにしました。 糸も戻しましたからどうぞ深呼吸なさって下さい」 『俺がそンな見え透いた手に引っ掛かる間抜けだと思ってるのか?それともしおらしくすれば俺が 見逃してくれるとでも勘違いしてンのか?』 「いいえ、あなたが私の術を正面から破ったように私もあなたの能力を正面から打ち破りたくなった だけです。それにあなたが負けた理由を後で酸欠のせいにされても困りますから」 『ぬかしやがれ!』 一方通行はそんな言葉を素直に信じるほど甘くはない。だが余裕の表情で隠してはいたがその 時点で一方通行に余裕がなかったのも事実だ。酸欠に加えてミサカネットワークへの過負荷(オー バーロード)が問題だった。7次元世界から干渉する力の解析と演算式の書き換えが代理演算を 圧迫し3次元世界での有害な酸素分子の反射という本来なら戦闘の片手間にできたハズの演算式 の書き換えすらできなかったのだ。暫しの休戦状態を利用してあるサイズ以上の酸素クラスターが 反射フィルターをすり抜けないように演算式を組み直すと慎重に外気を吸い込んだ。 (フ──ッ、本当にあの糸は引っ込めたみてェだな。しかしコイツは何を考えてやがる。 攻撃の前にいちいち俺に予告したり対策を練る余裕を与えたりするのはなンでだ!?) 一方、神裂火織は呼吸を浅く時に深く繰り返し魔力を極限まで練り上げる。そして己が身を『神を 殺す者』へと作り替えていく。血管筋肉神経内臓骨格、それら全てが『神を殺せるように』組み替え られていく。 「やはりあなたには最初から私の魔法名を名乗るべきでした」
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SF・バトル作品 一方通行「実験してたら変なオッサンに邪魔された」 作者「左手◆RimiCaa2OU」 この作品を読む 指定したページに飛ぶ 感想などコメントをお書き下さい 名前 コメント
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演技力とビジュアルを備えた俳優たちが総出動する時代劇「客主 DVD」が視聴率1位を獲得できるのか注目されている。 23日、ソウル永登浦(ヨンドゥンポ)区汝矣島(ヨイドドン)のある飲食店でKBS 2TV新水木ドラマ「商売の神-客主2015」(脚本:チョン・ソンヒ、イ・ハンホ、演出:キム・ジョンソン、制作:SM C&C)の記者懇談会が行われ、カン・ビョンテク責任プロデューサー、キム・ジョンソンプロデューサー、俳優チャン・ヒョク、キム・ミンジョン、ユ・オソン、ハン・チェアが出席した。 キム・ジュヨン作家の歴史小説「客主」を原作にした「客主」は、廃業した“天氏客主”の後継者チョン・ボンサム(チャン・ヒョク)が、市場の客引きから始まり、商団の頭、大客主を経て、巨商として成功していくストーリーを描いていく作品。本日(23日)韓国で放送がスタートする。 何より注目されているのは「客主」が水木ドラマの視聴率競争において1位を獲得できるのかという点だ。「客主」はSBS「ヨンパリ」、MBC「彼女は綺麗だった」と競争することになった。さらに「ヨンパリ」の後番組としてムン・グニョン&BTOB ソンジェ主演の「村」が10月7日から放送される。 これに関連して「客主」に出演する女優キム・ミンジョン、ハン・チェアに「ヨンパリ」のキム・テヒ、「彼女は綺麗だった DVD」のファン・ジョンウムと競争する感想を聞く質問があった。キム・ミンジョンは「自信がある、自身がないと言うのは難しい。私自身にとっては重要じゃないような気がする。演技が大好きだった小さい頃の自分に戻って演技してみたいという思いがあまりにも強かった。私が切実に必要としている思いだ」と話した。 ハン・チェアも「裏番組の女優と比べながら演技したことはない。私の出演作が私によって左右されると思ったこともないし、そんな作品に出演したこともない」と答えた。 今回が5作目の時代劇となるチャン・ヒョクは“時代劇の男神”として知られている。チャン・ヒョクはチョン・ボンサムという役を通じて新しい姿を見せると伝えた。彼は「喪主はいつも訪問客の立場で考えなければならない。相手に合わせて笑ってあげたり、哀歓を慰めたりもする。こっけいだと思った」と話した。 また「客主」は正統派時代劇で若者の好みに合いそうな作品ではないが、ドラマのきちんとしたストーリーが視聴者に伝わるだろうと自信を示した。 キム・ジョンソンプロデューサーは80年代の「客主」と比較して欲しいと言われ、「時の流れと共に物語も流れる。韓国ドラマDVD『客主』は30年前に放送された。当時はそれなりの状況があったはずだ。今この時代に必要な状況は何なのか、たくさん悩んだ。視点が様々であるため、以前の作品は良くて今回は良くないと断言することはできない」と話した。 続いて「今回のドラマは原作小説の叙情性や商人たちの生活を描いている。多数の役者が出てくるが『商売の神-客主2015』はチョン・ボンサムを基本的な枠にして、現代における最も大きなテーマは何か、お金という大きな絵をどうやって管理するかについて取り上げる」と説明した。 キムプロデューサーは「視聴者にはお金がないことや、お金が偏っていて足りないことではなく、他人の富に嫉妬することに問題があると伝えたい。私から見ると大体努力せずに他人が自分の問題を解決してくれると思って自分自身のことを解決できていないと思う。そのため、チョン・ボンサムを通じて夢と希望を見せたい」と付け加えた。 これと共に「商売の神-客主2015 DVD」の制作陣と俳優は高い視聴率に対する自信を示した。キム・ジョンソンプロデューサーは「視聴率には期待しない」と言いながらも、「高ければいいと思う。全36話であるため、逆転の機会が3回来ると思う。それでも逆転できなければ全面的に私の責任だ。逆転できる時間があると思う」と話した。
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#blognavi 久しぶりにコンニチハ(´_ゝ`)ノ どうも、毎度おなじみのあひるです(・д・)ノ えー、ホムホムの助言を参考にして「ぶらり大阪一人旅」逝ってまいりました。 ぶっちゃ言うと 一人っていうのもたまには(・∀・)イイ!! ・・・というのが感想ですた。 集団ではまず歩きそうにない裏道とか細い道通ったり、好きなものを好きなだけ食いまくりましたよw 嗚呼これぞ一人旅(*ノノ) 決して負け惜しみとかそういうのじゃ・・・ナイカモw まぁ、実際すき放題やってたら旅行中はたこ焼きとラーメンだけで過ごしていたようなものでした。 ちなみに、USJははずしました。 流石に一人では行けませんよ・・・orz これはまた次の機会にでも(ノД`) それにしても道頓堀ってすごかったですね~。 例のグリコの看板が本当にありましたよ。 フェンスがあって今はダイブできないのか~。 あ、キャバ嬢の勧誘してるお兄さんがしつこく若い女性を勧誘してる~。 呼び込みの人(明らかに風俗)に「どう?」って言われちゃった(*ノノ) ・・・なかなかステキでした。 とにかく、たこ焼きのおいしい土地柄でしたとさ。 めでたしめでたし。 カテゴリ [日記] - trackback- 2006年03月22日 13 38 31 一人旅、いいですね^^ たまには、いってみようかのぉ^^ -- 珠子 (2006-03-24 01 28 49) 札幌にも来たらいいんだべさ。なまらウマいど、海の幸。休み取って来たらいいしょ。ん?無理矢理方言使うと不自然だなオイW -- カムイ (2006-03-24 13 54 36) ちょうど、北海道にうちのぶらぢゃーがいたりするのでもしかしたらホントに逝くカモw(*ノノ) -- あひる艦隊 (2006-03-24 19 59 32) お好み焼きは?ねえお好み焼きはー?? -- 真綾 (2006-03-26 14 25 30) 名前 コメント #blognavi
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剣系 黒鳥の邪剣 ( ) 【剣】 基本性能 価値 重量 攻撃力 耐久度 4 12.4 21 38 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +2 +2 − +20 装備可能 侍、神、鍛 装備区分 剣術系武器 必要Lv 付与効果 知力+2 備考 信濃の黒烏のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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剣系 黒鳥の邪剣 ( ) 【剣】 基本性能 価値 重量 攻撃力 耐久度 4 12.4 21 38 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +2 +2 − +20 装備可能 侍、神、鍛 装備区分 剣術系武器 必要Lv 付与効果 知力+2 備考 信濃の黒烏のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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剣系 黒鳥の邪剣 ( ) 【剣】 基本性能 価値 重量 攻撃力 耐久度 4 12.4 21 38 命中補正 回避補正 物理耐性 妖術耐性 +2 +2 − +20 装備可能 侍、神、鍛 装備区分 剣術系武器 必要Lv 付与効果 知力+2 備考 信濃の黒烏のドロップ 情報募集中 名前 コメント
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【作品名】とある魔術の禁書目録 【ジャンル】ラノベ 【名前】垣根帝督 【属性】超能力者 【大きさ】180cmくらいの人間に数十mの羽が6本ついてる 【攻撃力】翼・一本でビルの屋上から中腹までを破壊する。射程数十m 太陽光・翼を通し変質させた太陽光で人間を焼き殺せる 作中では一方通行に回避されたため未遂 【防御力】素は男子高校生並みか? 未元物質・不意打ちで120mの風圧とそれにより飛来したATMをぶつけられて無傷 あらゆるベクトルを操り、素材に関係なく内部破壊する能力ですら無効 ただし作中では帝督の能力の正体を見破られ、ベクトルを読まれ突破された 【素早さ】銃弾並みの速度で数十mを移動しながら、自分と同程度の速度で移動する 一方通行と戦闘できる。飛行しつつ、ビルを飛び移れる 【特殊能力】未元物質(ダークマター)により上記のように物理法則を改ざんできる 体表面に触れたあらゆるものを反射する一方通行が 「生活に必要なので無意識のうちに受け入れているものとベクトル」 を読みとり翼で反射をすり抜けたり、太陽光で焼こうとしたりした 【長所】超電磁砲より順位高い 【短所】一方通行のかませ 【備考】描写はないが下記能力者を倒した 麦野・本来『粒子』や『波形』の性質を状況に応じて示す電子を、 その二つの中間である『曖昧なまま』の状態に固定し強制的に操ることができる。 『曖昧なまま固定された電子』は『粒子』にも『波形』にもなれずその場に「留まる」性質を持ち、 擬似的な「壁」となった『曖昧なまま固定された電子』を能力で動かし高速で叩きつける事で絶大な破壊力を引き出す。 正式な分類では粒機波形高速砲。見た目は白く輝く光線。金属すら容易く貫き溶解させ、四方八方へ同時に放つことも可能。 絹旗・窒素を操り狙撃銃を防ぐ能力者 【解説】 学園都市第二位のレベル5、 垣根帝督が有する「この世に存在しない素粒子を生み出し(または引出し)、操作する」能力 。 及びそれによって作られた「この世に存在しない素粒子(物質)」。 元ネタのダークマターと異なり、未元物質(ダークマター)は『まだ見つかっていない』『理論上は存在するはず』といった物ではなく、 本当にこの世界には本来存在しない物質である。 未元物質は「この世の物質」ではない以上、この世の物理法則には従わないし、 未元物質と相互作用した物質もこの世のものでない独自の物理法則に従って動き出す(例:翼で回折した太陽光が殺人光線になる)。 単に変わった物質を作るというだけでなく物理法則全体を塗り替えてしまう能力。 天使のような白い6枚の翼の形態を持ち、飛行や防御・打・斬・風・衝撃波・光攻撃などかなりの応用性を持つ。 垣根帝督は太陽光と烈風に注入した併せて五万のベクトルにより一方通行の「無意識の内に受け入れているベクトル」を逆算、 偽装した「ありえないベクトル」の翼を、物理法則に従うが故の『隙間』へ打ち込むことで一方通行の反射をすり抜けダメージを与えた。 が、逆にその独自の物理法則を解析されてしまい、その法則を反射の設定に組み込まれた事で通用しなくなってしまう。 一方通行の黒い翼を見て未元物質というモノを理解し、更なる成長を遂げ数十メートルにも及ぶ白い翼を展開したが、 その真価を発揮する前に一方通行の圧倒的な力の前にねじ伏せられて敗北したため詳細は不明。 地の文では 「こことは違う世界における有機」「神にも等しい力の片鱗を振るう者」とされた一方通行に対して 「こことは違う世界における無機」「神が住む天界の片鱗を振るう者」と表現されていた。
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【種別】 超能力 【元ネタ】 bomber lance = 「爆撃の槍」 【初出】 新約一巻 【解説】 『暗闇の五月計画』によって生み出された、 黒夜海鳥が所有するレベル4の能力。 空気中の『窒素』を自在に操り、圧縮した窒素の塊を制御することで、 掌から無色透明の『窒素の槍』を生み出す。 槍の長さは3メートルほど。 普通の槍と同じように振るう事も、生み出した槍を射出して杭のように打ち込む事も可能。 APFSDSのように莫大な圧力を生み出すことで、 触れただけで金属すら切断する威力を発揮し、徹底的な指向性で制御された槍は戦車さえも貫く。 ちなみに槍の噴出を応用し、短距離の飛行もできる。 『暗闇の五月計画』においては「一方通行の攻撃性」を植え付けられて発現したテストモデルであり、 同じ方式で「一方通行の防護性」を植え付けられた絹旗最愛の『窒素装甲』と対照的な存在。 思考パターンの一部を植えつけられた関係上、 能力使用時は一方通行の思考や言動に本来の人格も引き摺られてしまう。 単一の能力としてはレベル4クラスの範疇を出ないが、 黒夜は自身の身体をサイボーグ化しているため、無数の義手を接続し、 全ての義手を自身の「肉体の一部」とすることで瞬間的な出力・発射数を増大させている。 その規模は強大で、槍を一本に纏め上げて数百メートルの槍をも生み出せる。 強化された出力を用いれば、同系統で相性の悪い『窒素装甲』を貫通する事も可能になる。 また、一気に窒素を奪った空間を用意することで、間接的な大気の制御も可能で、 空白地帯に酸素や水素が雪崩れ込むようにすれば、爆発を起こすことも自由自在。 弱点として、攻撃特化の能力であるため防御にはあまり向いていない点が挙げられる。 これは「一方通行の攻撃性」、すなわち複雑な計算を必要とする「ベクトル操作」が基礎となっているため。 防戦ができないわけではないが、それは一方通行曰く「盾を捨てて槍で弾丸の雨を弾く、曲芸みてェなもンだ」。 そのため浜面掌握の『ファイブオーバー』に対し本能的に防戦を行った結果、砲弾を捌ききれず敗北している。 また掌からしか能力を出せないため、二本の腕しかない場合軌道が読みやすいことも弱点といえる。 そして『窒素装甲』と同様、空気中に窒素が存在しなければ能力が発動出来ない点も共通。 コンセプトは「超能力者(レベル5)1人と大能力者(レベル4)数千人分の力、どちらが強い?」。 ただし、能力を出力する為の大本はあくまで黒夜一人のため、最大出力時の継戦能力は高くない。
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第552話:道は通ずる 作:◆l8jfhXC/BA 「……そんな奴の、言うことなんて、聞く必要ないわ」 動揺を露わにする保胤に対し、リナは声を絞り出した。 呻き声のような弱々しさに自分でも頼りなさを覚えるが、仕方がない。 「……リナさん?」 訝しげに自分の名を呼ぶ声には、微笑だけを返した。 そして彼から周囲へと視線を巡らし、室内の惨状を目に焼き付ける。 この状況は、自分が作り出したものだ。 八つ当たりで感情を爆発させた結果、ベルガーを瀕死の重体にし、保胤を追い込むこととなった。 この島では、こんな暴走と空回りの連続だった。ガウリイの死に絶望してゲームに乗ったときから、歯車が狂い続けていた。 自分は何一つ救えていない。何一つ成していない。 だからもう、間違えたくはなかった。 改めて覚悟を決めると、わずかに眉をひそめた臨也が問いかけてきた。 「それは、どういう意味だい?」 「仲間を陥れようとする奴なんかに、扇動されるな、ってことよ」 切れ切れの声を発しながら、無理矢理口元を吊り上げた笑みを臨也に向ける。 言葉を紡ぐたびに命がすり減っていく感覚を覚え、目眩がした。 しかしまだ先は長く、我慢するしかない。視線だけを彼に向けながら、床に意志を刻むように指を這わせる。 あからさまな虚勢の挑発を受けた彼は、ただ目を細めるだけだった。 「失礼だなぁ。ただ心を鬼にして、現実を語ってるだけじゃないか」 「確かに、今のことだけなら、そうとも言えるでしょうね」 当事者でなければ、リナも同じことを保胤に言ったかもしれない。 半分の不死の酒で、二人とも助けられる可能性は薄い。 たとえ中途半端に助かったとしても、完全に治療できるメフィストが戻ってくるのはいつになるか。 彼とベルガー、終が向かった先からは、今も破砕音と咆哮が鳴り響いている。 状況が切迫しすぎていた。臨也の言うとおり、現実的に考えればどちらかを見捨てることが不可欠だった。 だからこそ。 同じ思考に行き着いたからこそ、こうして貴重な時間を割いて、口を動かしている。 「だけど、志摩子を殺したことは許せない」 致命的な言葉に、場の空気が凍る。 それにはかまわず床に腕を滑らせながら、続ける。 「声を聞いてたけど、あんたは保胤に不死の酒を渡して、志摩子に飲ませたわね? それなのに、ここにある酒の量が、半分から減ってないのはなぜ?」 「! 確かに……」 それに気づいたのは、ベルガーの刃に倒れた後だった。 皮肉にも臨也自身が話題に出さなければ、気づく機会はなかっただろう。 「へぇ、そうなんだ? 俺はあの時に見たのが初めてだったし、それもすぐに渡しちゃったから、元の量はわからないな。 それに、俺は渡しただけだよ? 実際に飲ませたのは保胤だ」 指摘に対しても、臨也は大仰に肩をすくめただけだった。 矛先を向けられた保胤は、顔を俯かせたまま何も言わない。歯痒さを感じながら、指が床を掻く。 確かにこの弾劾だけでは、彼に対して疑念が生じるだけだ。 だがもう一つの証拠と、先程彼が言った“友”という言葉が、リナに雑念を抱かせない。 (あたしは、保胤を信じている) 「あたしは、見てたのよ。 あたしが、ライティングを唱える前に、あんたが、デイパックに酒瓶を――中身が八割以上残った酒を、戻すのをね」 臨也の表情がわずかに強ばるのを見ながら、何かを掴んだ感触を得た。 「武装解除の際の、あのウォッカの瓶か……!」 証明の続きを、アラストールが継いだ。限界に近づいていたので助かった。 彼の行動を目撃した時点では、指摘以前に気にする余裕などなかった。思い出したのは、やはりたった今だ。 おそらく彼は、自分の酒を不死の酒とすり替え、保胤に使わせた後うまく回収したのだろう。 デイパックに戻された酒瓶を確認して、その残量が減っていれば言い逃れは不可能だ。 (まだ、大丈夫よね) 言うべきこととすべきことを終えた後、リナは同じく横たわるベルガーを見た。 両の肺を傷つけられても、彼は意識を保っていた。弱々しいが明確な怒りが込められた視線で、臨也を見据えている。 異種族の血が混じる彼は、リナよりもタフだ。肉体的にも、そして精神的にも。 (……この世界には光が必要だって、ダナティアは言ってたわね) ふと、そんなことを思い出す。 彼女はそのために感情を凍らせ、自らを犠牲にし、その存在を島中に訴えた。 リナに同じ真似はできなかった。ただ感情に振り回され続け、そこまでの強い決意を抱けなかった。 だからせめて、その意志を繋がなければならない。 と、ベルガーの視線がリナの腕に向けられ、その表情に驚愕が浮かんだ。 意図に気づかれたらしい。だが肺を損傷した彼は、それを仲間に伝えられない。 ただ苦笑だけを彼に送ると、視線をふたたび臨也に向けて、叫んだ。 「あんたなんかに、あたし達は弄ばれない。あんたなんかに、あたし達は負けない!」 宣言と同時に、最後の力を振り絞って腕を――光の剣の柄を握った腕を、胸部へと引き寄せた。 ベルガーに斬られ落としていたこれを掴むために、今までずっと注意をそらさせ、時間を稼いでいた。 見つかれば、絶対に止められるだろうから。 案の定青い顔で腕を伸ばす保胤を見つめながら、リナは小さく息を吸う。 最期の一瞬に考えたのは、この剣の本来の持ち主のことだった。 「光よ!」 胸を貫いたそれは、とても暖かかった。 「リナさん!」 保胤の手がリナに届いたときには、柄から伸びた光が彼女の命を奪っていた。 持ち主の死と共に光刃は消え、柄を握った手が血を流す胸に重ねられる。 「なぜ……」 呟きが漏れるが、答えは既に理解していた。 彼女は保胤の迷いを断ち切るために、自ら死んだ。 わかっていて、それでも否定したかった。 彼女は死んでいい人間などではなかった。彼女に生きていてほしかった。 こんな状況でも最後まで方法を模索して、二人ともを助けたかった。 そんな絶望に沈む保胤を引き戻したのは、場違いな両手を叩く音だった。 「いやぁ、まさかこんな展開になるとは思っても見なかったよ。 仲間の葛藤を潰すために――自分が死ぬために俺を利用するとはね! ああ、人間はいつも俺の想像を超えてくれる」 リナに対し純粋な感嘆を見せながらも、心底楽しそうに臨也は笑っていた。 「あなたは……!」 「俺に構うよりも先にすべきことがあるだろう? 彼女の命を無駄にしないためにもさ」 非難を遮る声も、惨劇が起こる前と変わらず軽い。殺人を暴かれた直後だとは到底思えない態度だった。 しかし、ベルガーの治療を最優先で行うべきなのは確かだ。 警戒は緩めぬまま、不死の酒を手に取る。 「確かに俺は、藤堂志摩子の命よりも不死の酒を優先させた。でも、こんな状況でそれを責められる筋合いはないよ? 彼女に不死の酒を使っていれば、選択すらできずに二人とも死ぬしかなかったんだから」 淡々と紡がれる言葉に反論はせず、ただ唇を噛んでベルガーの方へと向かう。 向けられた彼の視線は弱々しかった。その口が何かを告げようとして動くが、空気が抜ける音しか届かない。 「ああ、それともやっぱり、二人よりも志摩子ちゃんの方が大事だった? 確かに今よりも、志摩子ちゃんのときの方が焦ってたね」 予想外の指摘に、腕の動きが止まる。 保胤にとっては、三人ともが大切な仲間だ。そこに差異はない、と自分では思っている。 「それなら理解できるよ。 確かに君は、仲間を利害でしか考えていないと俺を非難していた。 もし今回の選択肢に志摩子ちゃんがあれば、君は彼女を選んだんだろうねぇ。 この緊迫した状況よりも二人の命よりも、何よりも彼女が大事なんだからさ」 「そんな――」 「俺の行為を否定するってことは、そういうことだよ? しかし今となっては、君はもうダウゲ・ベルガーを助けることしかできない。 藤堂志摩子が死んでくれたおかげで、生き残れる彼をね。 ……いや、あくまで感情を貫き通すってのもありかな?」 言葉と共に、酒瓶が保胤の足下まで転がってきた。 臨也が持っていた、スピリタスという名の酒だった。こちらが葛藤している間に、デイパックから取り出したらしい。 不死の酒とは瓶の形こそ似ているが、よく見れば中身や瓶の色、ラベルなどが明確に違っていた。 リナの言葉を証明するように、その中身は武装解除時に確認された状態よりも、少し減っていた。 これが、志摩子を殺した。――そして、ベルガーを生かすこととなった? 「……僕に、何をしろと言うのですか」 「ん? 俺は何も言わないよ? ただ選択肢を増やしただけさ。その内容はわかるだろう? ――選ぶのは君だよ、慶滋保胤。今度こそ、君自身が選ぶのさ」 顔を上げた先の臨也は、やはり笑んでいた。吐き気がするほど悪意に満ちた笑顔で、こちらを見据えている。 答えなんて決まっている、はずだ。ベルガーは、助けなければならない。 しかし、臨也の言葉が頭にこびりついて離れない。 ベルガーの命を助けることが、志摩子の死の肯定に繋がるのか。 志摩子の死を拒絶することが、ベルガーの命の否定に繋がるのか。 「惑わされるな!」 迷走する思考を断ち切ったのは、アラストールの言葉だった。 遠雷のような重い声が、ベルガーの胸元から響き渡る。 「偶然で生じた結果からのこじつけなど、何の意味もない。 こんな下衆の詭弁で、リナの犠牲を無駄にする気か? 先程彼女が言った言葉を忘れたか!」 ――あんたなんかに弄ばれない。負けない。 「確かに藤堂志摩子の命は失われて、戻らぬ。それはもう覆せないだろう。 だが、おまえには今この時に取り戻せるものがあるだろうが! それを見捨てることは、彼女の――なによりおまえの意志に適うことか!?」 頭に雷を撃たれたような一喝だった。 自分の命が危ぶまれる状況でさえ、他人を慈しんでいた志摩子が望んでいたこと。 そして何よりも、自分が願っていること。 「……ありがとうございます、アラストールさん」 それが明確に思い出されると、迷いは消え去った。 コキュートスに向けて礼を言うと、保胤はふたたび臨也を見据えた。 先程とは変質した眼光を受けて、彼に緊張が走る。 「これが、僕の答えです」 その視線はそらさぬまま片手でスピリタスを取ると、保胤はそれを床に叩きつけた。 高い音と共に呆気なく瓶が壊れ、こぼれた中身が床と直垂を濡らす。 それにはかまわず、すぐにもう片方の手にあった不死の酒の栓を抜き、ベルガーの口に付けた。 彼の意識は既にない。まだ息はあったが、そこまで時間を浪費してしまったことに自責の念を覚える。 「……凄いな。今、何が“出た”?」 畏怖と興奮が入り交じった声が聞こえたが、答える暇などない。 注意は臨也に向けたまま、慎重に酒瓶を傾け続ける。 当然ではあったが、志摩子のような拒絶反応がないことに安堵した。 「死者をどうこうできる力の他に、そんなものもあるとはねぇ。 そっちのアラストールとやらも、あのシャナちゃんの身内だ、さぞかし凄い存在なんだろうな」 「あの子の名を、貴様のような人間が気安く呼ぶな」 「本人は別に嫌がらなかったよ?」 抵抗も逃亡もせず、開き直ったかのように臨也は喋り続ける。 実際のところ、彼にこの状況を打開できる手段はなかった。 この場にある武器はすべて、保胤の近く――倒れ伏すリナとベルガーの付近にある。 彼が元から所持していたものは、既に雑貨を除いてすべて没収されている。 荒事には慣れているが、卓越した戦闘能力はないとセルティから聞いていた。ならば、こちらが符で動きを止める方が早い。 それでも念のため、警戒は一切緩めなかった。 「しかし、本当にこの集団はもったいなかったなぁ。興味深い人間がたくさんいた。脱出できる力も意志もあった。 こんなに運が悪くなければ、もっと色々楽しめただろうにねぇ。 ああ、本当に――」 だから、すぐに対応できた。 半分残っていた酒の、三分の二程度を飲ませた直後だった。 視界の端で、臨也の左手が動きを見せた。 その指が袖口に収まったかと思うと、何かが高速で投げ放たれた。小さな銀色の、直方体の箱。 咄嗟に片手を瓶から離し、手首で払いのけ、その直後初めて気づいた。 箱の裂け目、蓋のように開いた部分から、小さな火が漏れていることに。 「とても残念だ」 酒で濡れた床に落ちた瞬間、それは紅蓮の猛火に変化した。 「ぐああああああああああああっ!?」 ジッポライターの火が引火したスピリタスは、瞬く間に保胤の全身に燃え移った。 叫びながら彼は床を転がり続けるが、火の勢いは衰えない。 (本当にもったいないんだけど……まぁ、バレたら仕方がないよね?) 予想通りの状況を冷静に眺めながら、臨也は荷物を持って退避する。 あの程度の揺さぶりで、保胤をどうこうできるとは端から考えていなかった。 ただ自然な成り行きで、スピリタスをあちらに移動させられればよかった。割ってくれたのは嬉しい誤算だ。 スピリタスは、消毒剤としても利用できるほどの高アルコールを持つ。 そこに火をくべれば、当然面白いほど燃え上がる。 ほぼ瓶一本分がぶちまけられ、床だけではなく当人の服にも染みこんでいるのならなおさらだ。 (しかし、突然出てきたと思ったらまた消えて……どこに行ったんだろうね) 炎が床と保胤に燃え移った瞬間、その足下で横たわっていたベルガーの姿が消え失せた。 先程、シャナを追っていたはずの彼が突然現れたように、またどこか別の場所に転移したのかもしれない。 次の放送で呼ばれなかった場合、クエロ同様何か対策を考える必要があるだろう。そのためには新たな物資も必要になる。 スピリタスを出すついでに、テーブルの上にあった携帯電話と探知機は手に入れた。 マンションの外に隠しておいた、禁止エリア解除機も回収したいところだ。 移動の最中も思考は止めることなく、次の手を模索し続ける。 「……まさかとは思っていたけど、本当に“不死”の酒なのか」 そしていつでも逃げられる体勢になった後、改めて臨也は彼のなれの果てを見た。 炎に包まれ、直垂の大半が焼け落ちながらも、それでも保胤は生きていた。 焼け爛れた皮膚が時間が巻き戻るように蘇り、しかしすぐに炎に焼かれ、それでもふたたび再生され――という現象が、何度も繰り返されていた。 彼自身も途中でそれに気づいたらしく、火を無視してふらつきながらも片膝をつき、臨也を見据えていた。 全身を焼かれる激痛に顔を歪ませているが、鬼気と言うにふさわしい気迫と鋭い眼差しは、肌を粟立たせるには十分だった。 (それでも君は、絶対に俺を追いかけられない) あの惨劇の際、保胤自身が不死の酒を飲んだことを示唆していたため、こうなる可能性は予測済だ。対策はあった。 そもそも、制限などで完全な不死にはなっていないだろう。殺しても死なない存在がいては、殺し合いにならない。 現に炎の勢いが、皮膚の回復よりも上回りつつある。 「俺を睨める気力があるくらいなら、周りをちゃんと見た方がいいよ?」 それだけを言い残して、臨也は窓から飛び降りた。 不死の酒は延々と身体を焼かれる苦痛と引き替えに、保胤にある程度の思考と行動の自由を与えていた。 本当に“不死”になっていることに気づき、灼熱の中身体を支えることができるまでに、それほどの時間はかからなかった。 網膜が焼け、すぐに修復される感覚におぞましさを感じながらも、窓から逃げゆく臨也を睨みつける。彼だけは、どうしても許せなかった。 懐にあった符は既に塵と化している。光の剣の柄を回収する暇もない。 ただ追おうと床を這い、窓のすぐそば――にある机の前を抜けようとして、踏みとどまる。 それは、“計画”の会議や各自の知識をまとめる際に使用した机だった。 その上には、保胤自身も執筆した刻印の研究を記した紙や、悠二が残したレポートが置いたままになっている。 木製の机や紙片そのものに引火すれば、刻印解除や脱出の鍵の一片が、一瞬にして失われる。 さらに振り返れば、もう一方の出口も塞がっていた。 廊下へと続く扉の手前、惨劇の際に茉衣子が短剣を落とした辺りに、未だに千絵が横たわっている。 このような事態にも何ら反応を返さない無惨な状態の少女は、それでもまだ生きている。巻き添えにできるわけがない。 (……これも、考慮していた?) 最後に臨也が残した言葉を思い出し、その周到な悪意に炎熱の中でさえ寒気を覚えた。 これ以上犠牲を出さないためには、大人しくこの場で死ななければならない。 吸精術を使えば、逃げた彼を文字通り灰燼に帰せるが、やはり千絵やレポートは失われる。 それどころかマンションの周辺にいる者達も、無差別に朽ち果てる。 術が一度発動すれば保胤自身には止められず、その命が失われるまで滅びは続く。 唯一止められる訃柚は、ここにはいない。 もはや打つ手はなかった。一度そう確信してしまうと、意識は急速に薄れていった。 肺に吸い込んだ煙が呼吸を阻害し、爛れる皮膚の回復は次第に追いつかなくなっていく。 走馬灯のように、二度と取り戻せない過去の情景が浮かび始める。 (……あ) それに身を委ねようとした寸前、かすれゆく視界に映った何かに、保胤は目を見開く。 リナの死体のそばに、彼女が持っていた拡声器が落ちていた。 終の従姉とシズという青年が、そしてダナティアが、自らの意志を島中に告げるために使った道具。 何ら力を持たない、しかし使いようによってはどんな武器よりも強いものが、そこにあった。 (それなら、せめて――) 心地よい回想を振り払い、文字通り力を振り絞って、保胤はふたたび床を這う。 頭の中で聞き覚えのある声が響いていたが、その内容の把握に費やせる力はない。 ただそれが、時間帯から絶望を告げる主催者らの放送だと言うことは理解できた。 それを打ち砕くためにも、伝えるべきことがある。 臨也のことを言うべきかとも考えたが、すぐに打ち消した。 こんな状態で正確に人名を伝える自信はない。かつての自分と同じように、誰かに間違った疑念を持たせてしまうかもしれない。 だから告げるのは、意志だ。 確かにここにあった、十二の仲間の思いを。 慨然なきその遺志を、同じ思いを持つ者達が継げるように。 ダナティアが提示した光は、未だ消えていないことを知らせるために。 この最悪の遊戯に、最後の抵抗をするために。 やがて保胤は、それらを担う希望へと辿り着いた。 数秒でも熱に耐えてくれることを祈りながら、その取っ手にある突起を指で沈める。 そして最期になるであろう息を吸い、思いと共に吐いた。 ○ ゲーム開始から二十四時間が経過し、四回目の放送が生存者へと響き渡った。 放送は過去三回と同じように、死者の名と禁止エリアを告げ、最後に愚弄の言葉が吐かれて切れた。 しかしその直後に、異なる男の声が聞こえ出した。 無理矢理絞り出したような苦しげな、しかし力強い声だった。 告げられたのは、たった一言。 「継がれる意志がある限り、僕らの道は絶たれない!」 【026 リナ・インバース 死亡】 【070 慶滋保胤 死亡】 【残り 42人】 【C-6/マンション外/2日目・00 00頃】 【折原臨也】 [状態]:平常 [装備]:なし [道具]:デイパック(支給品一式・パン6食分・水2000ml)、探知機、携帯電話 救急箱、セルティとの静雄関連の筆談に使った紙 [思考]:ひとまずこの場から離れる。禁止エリア解除機を回収したい。 ベルガー、クエロに何らかの対処を。 ゲームからの脱出(利用出来るものは利用、邪魔なものは排除)。 残り人数が少なくなったら勝ち残りを目指す 【C-6/マンション1・2F室内/2日目・00 00頃】 【海野千絵】 [状態]:物語に感染。錯乱し心神喪失状態。かなり精神不安定 [装備]:なし [道具]:なし [思考]:不明 [備考]:吸血鬼だった時の記憶は全て鮮明に残っている。 ※メガホンと 強臓式武剣“運命”(ゲレーゲンハイト)(単二式精燃槽(フロギストンタンク)一つ装填・少量消費済)が床の上に落ちています。 光の剣(柄のみ)がリナの死体の上にあります。 【?-?/不明/2日目・00 00頃】 【ダウゲ・ベルガー】 [状態]:意識不明、両肺損傷(右肺の傷は塞いだが、どちらにせよ長く保たない) 不死の酒を瓶全体の1/3摂取したが、効果の有無は不明。 [装備]:PSG-1(残弾20)、鈍ら刀、コキュートス [道具]:携帯電話、黒い卵、単二式精燃槽(フロギストンタンク)三つ [思考]:不明 ※黒い卵の転移機能で、縁者のところへ転移しました。誰のところかは次の人におまかせ。 ※保胤が死亡したのは放送終了直後のため、第四回放送では呼ばれません。 2007/02/18 修正スレ294 ←BACK 目次へ(詳細版) NEXT→ 第551話 第552話 第553話 第549話 時系列順 第554話 第545話 海野千絵 - 第545話 リナ - 第545話 折原臨也 - 第545話 慶滋保胤 - 第545話 ベルガー 第560話 第545話 アラストール 第560話