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前ページルイズが世界を征服するようです 「じゃあ、行ってくるよ」 「……今からでも、考え直すつもりは無いの?」 「無いね。キュルケ、君だってわかってるだろう? あの主従を同時に敵に回してしまっては、倒すのはまず無理。 どちらかを先に叩く必要があるんだ。なら、潰しやすい方からやるだけさ」 トリステイン王城前。ローブに身を隠した2人が、細々と言葉を交わす。 「……ギーシュ。あんたのこと、嫌いじゃなかったわよ」 「おいおい、これで永遠の別れってわけじゃないんだ。縁起でもないことは言わないでくれたまえ。 ああでも、これを渡しておこう。モンモランシーに、頼む」 ギーシュは懐を漁り、封筒を取り出した。表に書かれたあて先は、 『永遠の愛を誓って モンモランシーへ』。 「……ごめんよ。自分で渡しなさい」 「はは。いや、そう言わずに。頼むよ」 無理やり手紙を押し付けられてしまう。 軽薄そうな態度を装いながら、ギーシュの瞳は酷く真剣だった。 ……ふと、元帥にまで上り詰める程に優秀な軍人であったという、ギーシュの父を思った。 獅子の息子は、やはり獅子だったか。 「じゃあね、キュルケ。僕も、君のことが好きだったよ」 背を向けながら手を振り、裏通用口の門番へ話しかけるギーシュ。 既に、ルイズの所へ辿り着くための話はつけていた。頷きと共に、門番はそのまま彼を通す。 ギーシュは、振り返らなかった。 「キュルケさん。どうですか?」 背後からかけられた声に振り返ると、同じようにローブ姿の3人。 「……行ったわ。打ち合わせ通り、15分後。突入するわよ」 そして、15分後。 「こちらです!」 城内を案内する近衛兵と共に、4人は走る。 強気を装うキュルケの胸中は、不安で押し潰されそうだった。 ――もし、そこの角を曲がった先に、ギーシュの屍が転がっていたら。 ――もし、階段を上りきったそこで、ルイズと使い魔が笑っていたら。 不安を振り飛ばすように、キュルケは走る速度を上げる。 「あと、もう2つ階段を上がれば――がっ!」 一際広い廊下に辿り着いた、次の瞬間。 先頭を走っていた近衛兵が、奇妙な声と共に立ち止まった。 「伏せ!」 背中を走る悪寒と同時に、キュルケは体を床に投げ出す。 他の3人も、キュルケの言葉に即刻反応していた。 4人が床に転がったその上を、質量を持った猛烈な風が通過する。 風の鉄槌を受けた近衛兵が、背後へと吹き飛んでいった。 その胸には、幾つかの氷塊が突き刺さっている。もう息はあるまい。 「ちっ……!」 立ち上がって体勢を整えながら、キュルケは舌打ち。 廊下の中心に目を向ける。そこに、 「ここから先は、行かせない」 かつての親友が、立ちふさがっていた。 ――ルイズが世界を征服するようです―― 数人の近衛兵と共に、タバサが攻撃を開始した。 背の丈3メイル程の石ゴーレムが突撃し、更に雷と炎が渦を巻いてキュルケ達に襲い掛かる。 「サイト!」 キュルケの言葉と同時に、2本の剣を構えた少年が迎撃。 左手の大剣で魔法をまとめて吸収、右手の聖剣を振りかざして風の刃を叩きつける。 対するゴーレムは腕を広げて刃を受け止め、背後の主達を守った。 「シエスタ! 下がってなさい! ティファ! サイトの援護! 私はあいつをやる!」 戦闘に関する打ち合わせは、既に済ませていた。瞬時に役割分担が成される。 ティファニアは『虚無』を発動させるべく詠唱をはじめ、サイトはゴーレムの腕を潜り抜けて兵達へと迫る。 「舐めるな、ガキが――!」 近衛兵達も腰から杖剣を抜き、サイトを迎え撃つ。 国の中枢の防衛を任せられた精鋭たちである。 数人が連携すれば、その力、決してガンダールヴに劣るものではない。 「『ディスペル』!」 剣が打ち合わされる甲高い音が響くと同時に、ティファニアの魔法は完成していた。 ゴーレムの体を維持していた魔法が消滅し、瓦礫となって崩れていく。 「――――」 「――――」 ゴーレムが崩れる轟音、剣戟の音が響く中。 2人のメイジは、無言で向き合っていた。 言葉は要らない。 別れは既に、あの時に済ませてある。 ここに居るのは、かつての友などではなく――敵だ。 「ラグーズ・ウォータル・イス・イーサ・ウィンデ――」 「ウル・カーノ・ジエーラ――」 先にタバサの『ウェンディ・アイシクル』が完成。 数十の氷の矢が、キュルケに殺到する。 「邪魔!」 『ファイヤー・ウォール』で迎撃。 氷の矢は溶け、炎と水が音を立てて水蒸気を作る。 視界を遮る霧の向こうへ、キュルケは続けて『フレイム・ウェーブ』を放った。 炎3つを組み合わせた、トランアングルスペル。波打つ炎の奔流がなだれ込み、風を呼んで霧を払う。 しかしその先に、タバサの姿は無い。 「しまっ――!」 ……確かにキュルケは優秀なメイジだ。あの年齢でトライアングルに達するなど、並みの才能と努力では達成出来ない。 決別から一年近く。魔法の腕も更に上がっているようだ。 が、しかし。それでも、自分には勝てないとタバサは思う。 戦いに必要なのは、魔法の腕などではない。 それを用いて、いかに殺すか――それこそが、戦闘の勝敗を分けるものに他ならない。 その技術においては、キュルケは自分に遠く及ばないと、タバサは確信していた。 「…………」 そもそも、タバサの戦闘スタイルは正面で魔法を打ち合うものではない。 その小さな体躯を逆に生かし、影から致命的な一撃を加える暗殺者のものである。 足音を『サイレント』で消し、風で移動を補助しての高速移動。 瞬時にキュルケの背後へと音も無く移動、腰のナイフを抜く。 狙うは肝臓。守るものも無い、人体における致命的急所の一つ。 ――殺った。 「っ!」 しかしその確信は、驚愕と共に覆された。 有り得無い速度でタバサに反応するキュルケ。 視界の端にタバサを捉えるや、体を捻り―― 「舐めるなっ!」 豪快な回し蹴りで、タバサを逆に吹き飛ばす! 「ぐっ!」 武器であった筈の軽い体は、劣勢になれば途端に致命的な弱点となる。 咄嗟に両腕でガードしたものの、衝撃は大きい。手からナイフがこぼれ、床に落ちた。 頭を混乱が支配する。決して反応できないタイミングと速度だった筈が、何故? 一瞬の迷い。そこを、キュルケは容赦無く突く。 神速の踏み込み。詰められた間合いに焦り、タバサは咄嗟に右腕の杖を突き出すが、かわされる。 その右腕を、キュルケは左手で掴む。捕まえた。 そのまま更に踏み込み。勢いと共に、右腕の肘をタバサの鳩尾に叩き込む。 「がっ!」 衝撃を逃がすことすら出来ず、息を漏らすタバサ。 暴風のごとき連撃はまだ終わらない。脇腹に左膝をぶちかまし、崩れかけるタバサの顔面にまた右の肘。 ここでようやくタバサの右腕を解放、空いた左で更に顔面を殴りつける。 床に崩れ落ちたタバサを右足で蹴り上げ、続けてバックステップ。右手の杖を構える。 キュルケが選んだ魔法は得意中の得意、『フレイム・ボール』。 巨大な炎の玉が瞬時に練り上げられ、床に這い蹲るタバサへと襲い掛かる。 ――勝った。 立場を逆転した勝利の確信はしかし、またも覆された。 「『バギマ』……!」 死に物狂いで搾り出された風の刃が炎球を迎撃。爆発と共に相殺する。 言葉一つで成立する異世界の魔法が、本来不可能なタイミングでの反撃を可能にしたのだ。 「ちっ……」 爆煙に包まれながら、千載一遇の好機を逃したことに舌を打つキュルケ。 一方、タバサは荒い息を何とか整えつつ、必死で頭を巡らせていた。 ――魔法の使用を許さない程の、超近接距離における戦闘術をキュルケは身につけていた。 確かに効果的だが――しかしそれだけならば、幾らでも対処の方法はある。 問題は、あの有り得無い速度だ。 風のメイジである自分を、炎のキュルケが速度で上回るなど、常識では考えられない。 補助の魔法を使っている様子も無いのに、一体どのようにして? 「く……」 煙が徐々に薄くなっていく。 タバサは軋む体に鞭打ち、立ち上がった。 体の状態を確認。――あばら骨を何本か、持っていかれたか。 しかし、この程度ならば問題無い。 「『ベホイミ』」 癒しの力が、体を包み込む。 体力を回復させることは出来ないが、傷を塞げれば十分だ。 やがて煙幕は晴れ、キュルケが再び姿を見せる。 「……ふぅん。あんたも、あの使い魔の力を手に入れたってわけ」 「……あなたも。随分と、変な力を身に付けた」 「はん。あんた程じゃないわ」 そう嘯くキュルケの右腕には――流星の装飾が施された、美しい腕輪が嵌められている。 「――さて。悪いけど、通してもらうわ」 「そうは、させない」 彼女――ルイズ達に報いるためにも、ここを通すわけにはいかない。 ……確かに、彼女は邪悪だった。どうしようも無く悪だった。 だが。彼女達のおかげで、母は救われたのだ。 思い出す。母がこちらを見て、名前を呼んでくれた瞬間。 あの瞬間の喜びは、言葉に表せるようなものではない。 今まで、誰もその喜びを与えてはくれなかった。誰も、母を救ってはくれなかった。 悪こそが、母を救ってくれた。ならば、どんな悪だろうとも構いはしない。 ――神など、糞でも喰らっていろ。 「『ピオリム』」 速度を上げる補助呪文を使用。 相手が自分よりも速いのならば、自分が更に速くなるまでのこと。 速さで勝れば、あのような近接格闘術など恐るるに足りない。 深呼吸。目の前の敵を、睨みつける。 「――――!」 「――――!」 双方の声にならない叫びが、戦闘再開の狼煙を上げた。 そうして。 舞台は、アルビオンの草原へと移る。 「…………」 サイト達一行は、言葉を失っていた。 深紫に染められた巨大な体躯。広げられる翼。 地を踏みしめる脚はそれだけで人体よりも太く、牙が並ぶ口からは呼吸と共に炎が漏れる。 怒りの咆哮と共に、周囲の空気が振動して肌を叩く。 ――圧倒的な力が、そこに存在していた。 「竜……王……!」 ティファニアは震えと共に、この存在の名の由来を思い知る。 あの亜人の姿こそが、全力だと思っていた。 十分に勝算は存在すると、そう思っていた。 しかし――これでは。 「……まずい」 竜が首を掲げる。口腔から、抑えきれない炎の端が覗いていた。 4人は即座に陣形を組み、攻撃に備える。 サイトは2本の剣を掲げ、キュルケは詠唱を開始。 ティファニアは懐から、宝玉の取り付けられた杖を取り出した。 シエスタは何かを祈るように手を組み、俯いている。 「みなさん……凌いで!」 ティファニアの祈るような言葉と共に――業火が、パーティ目掛けて繰り出される。 相殺しようとロトの剣から繰り出された風の刃、キュルケの魔法『フレイム・ウェーブ』。 その2つを瞬時に飲み込み、凌駕して、炎は4人を襲う! 「あ……ああああああああああ!」 「くっ……!」 ――やがて。炎の奔流は途切れた。 草原は広範囲に渡って焼き尽くされ、火は更に広がり続けている。 その中心で、一行は何とか持ちこたえつつも……全滅寸前の状態にあった。 「けんじ……いしよ……!」 まともに声も出せないティファニアが何とか杖を掲げると、癒しの力がパーティを包む。 しかし、それを大人しく待つような敵ではない。 竜の巨大な腕が振り下ろされる。 その一撃は、例えるならば鉄槌。 巨大な質量で、容赦無く対象を叩き潰さんとする絶対の一撃。 人間では、決して生み出せない威力のものだ。 「おおおおおおおおおおお!」 殆ど癒えていない体の力を振り絞り、叫びと共にサイトが迎撃。左手のルーンが、輝く。 剣と巨腕が激突し、――サイトは、十数メイルを吹き飛ばされる。 そのまま、動かなくなった。 「く……」 キュルケは唇を噛み締める。 本来の予定ならば、近接戦闘ではこちらに分がある筈だった。 敵の魔法もサイトと自分が相殺することができ、仮に傷を受けてもティファニアが居れば問題は無い。 ……その筈が……! 敵が再び頭を掲げる。また、あの炎が来る。 先ほどと違い、サイトが居ない。こちらはもう満身創痍。 湧き上がる絶望を必死で押し込めながら、キュルケは詠唱を始める。 ――それでも。奴らに、屈するわけにはいかない。 煉獄のごとき炎が放たれる。魔法で迎え撃つが、呆気なく飲み込まれた。 視界を埋め尽くす劫火を前に、キュルケは覚悟を決め、目を閉じる。 全滅、か――。 「『フバーハ』!」 ……肌を焼く熱は、確かに強力ではあったが――覚悟していたものとはほど遠かった。 疑問に、キュルケは目を開く。 まず目に入ってきたのは、自分の体を包み込む薄い光の膜だった。 決して瞳を刺すことの無い、穏やかな、暖かい光。 視界を移せば、ティファニアや倒れているサイトにもその光は宿っている。 そして――やはり光に身を包むシエスタが、微笑んでいた。 「すみません。不慣れなもので、詠唱に時間がかかりました。 ティファさん、回復を頼みます」 ティファニアが慌てて再び杖をかざす。 火傷は癒えていき、視界の端にサイトが起き上がるのが見えた。 「これで炎への耐性がつきました。回復を怠らなければ問題はありません。 あとはあの打撃対策ですが――『スカラ』」 「うぉ?」 こちらに駆け寄ってきたサイトが、驚きの声を上げる。 「なんか、力が……」 「キュルケさんにも、『スカラ』。……これで、打撃への耐性がつきます。 それでもあの攻撃は脅威ですが、何とか持ちこたえて下さい。ティファさん、援護を頼みます。 私はまた魔法の詠唱に入りますので、――2分。 2分間、私に時間を下さい」 キュルケは目を見張った。 シエスタの半分以上焼き切れたローブの下、何かが輝きを放っている。 首から下げられた、半円のペンダント。 それはこの戦いに赴く前、この腕輪と、ティファニアが持つ石と共に 廃墟となったタルブから見つけた物だった。 『……おじいちゃんが、遺してくれたものです。 これは本来の三分の一でしかない、らしいですけど……』 そう笑って、彼女はそれを自分の首にかけたのだ。 ……そのペンダントが、この窮地にあって光を放っていた。 キュルケはシエスタを見つめる。シエスタの黒い瞳は、この窮地にあっても尚輝きを失っていなかった。 ああ、そうか。 これが、この瞳とペンダントの輝きこそが、彼らが恐れる唯一の――。 「……了解。サイト、私と一緒に前衛。遠慮なく攻めるわよ。 ティファ、回復を。隙があったら、大爆発を叩き込んでやりなさい」 2分間。 迎え撃つ相手を考えれば、永遠よりも尚長い時間ではあったが、キュルケは提案を受け入れた。 竜に向き合う一行。 ペンダントの光に対し、怯むような素振りを見せていた竜が再び咆える。 「仕切り直しね。いくわよ」 戦いが、再開された。 ――それは、まさしく。幾多の英雄譚に謳われる戦い、その再現だった。 圧倒的な力を持つ竜。 軽減できると言っても炎の威力は尚凄まじく、腕や尾から繰り出される一撃は必殺。 対する者達は、力の方向を逸らし受け流すのにすらも、全身全霊の力を振り絞る必要があった。 正面から相対すれば、即刻死が訪れる。それほどの戦力差。 また、癒しの力も万能ではなく、失われた体力を取り戻すことは出来ない。 時間の経過と共に、確実に追い込まれていく。 防御に専念してすらその有様、増してや打倒するなど――奇跡を幾度起こせば足りるのか。 しかし。 太古の英雄達はそれでも諦めず、全身から血を流しながらも、歯を食いしばって立ち上がり、 好機をただ待ち続け――そして、巨人や竜などの圧倒的強者を滅ぼしたのだ。 紫竜が再度、高く吼える。 そして、その口から青く凍てつく、力の波動を繰り出した。 「な……!」 「光が!」 その波動は、傷を与えることこそ無かったが―― 一行にかけられた補助魔法、『フバーハ』と『スカラ』。その2つを打ち消していた。 まずい、と歯噛みする間も無く、キュルケは絶望そのものの光景を目にする。 竜が、またもあの炎を繰り出そうと構えていた。 必死に頭を巡らせる。今あれをまともに喰らえば、パーティは確実に全滅するだろう。 それだけは、何としても避けなければならない。 ……ならば……! 「サイト! 先に叩くわよ!」 言葉と共に、竜へと全力で突進する。 振り下ろされる腕をかわし、振り回される尾の下を潜り抜け、竜にたどり着いた。 体の凹凸を足場に、1度、2度と跳躍を繰り返す。 最後に、一際強く肩をけりあげ―― 「だ、あああああああああああああああああああああ!」 空中から、竜の横っ面を渾身の力で殴りつけ、 「おおおおおおおおおおっ!」 更に反対側から、サイトが両腕の剣、そして風の刃で3連撃を叩き込む! 「――――――!」 轟音。 発射口を叩かれ、行き場を無くした炎が口腔内で爆発したのだ。 自らの炎で身を内部から焼かれ、一歩後退する竜。 まさに、絶好の好機。 いかなる奇跡か、まさしくその瞬間に詠唱を終えたシエスタが叫んだ。 「いきます! 離れて!」 着地と共に、サイトとキュルケが竜から飛び退く。 シエスタはそれを確認、練りに練りこんだその力を解放する――! 「『ギガ』――――」 それは、勇者のみが扱える最強の呪文。 空を引き裂き、天空からの一撃を叩き落す神の鉄鎚! 「――『デイン』――!」 幾条もの白い稲妻が、竜に殺到。 全身を、凄まじい威力で焼き尽くす! その一撃、たとえ竜族の王であろうと耐えられるものではない――! 「――――!」 声にならない絶叫を上げる竜。 これを逃してはもう終わり、全力で畳み掛ける! 「『エクスプロージョン』!」 ティファニアの一撃。 不得意な魔法でありながら、それでもありったけの精神力を叩き込んだ大爆発が竜を包む。 「おおおおおおおおおっ!」 サイトの一撃。 防御用の大剣を捨て、聖剣を全力で頭部に叩き込む! 「サイト、離れなさい! これで終わりよ。……『爆熱』――!」 そして、キュルケの一撃。 禿頭の師より授けられ、更に改良した彼女最強の禁呪。 空気中の水蒸気を錬金、空気と攪拌して点火。 凄まじい衝撃波と共に、数千度に達する超高熱の大爆発を引き起こす。 これだけでも既に十二分に強力だが、この魔法が特殊なのは、ここからだ。 まず、爆発の保持時間が長い。爆風が従来の魔法よりも長く維持されるため、 相手はその間焼かれ続け、爆風に晒され続けることとなる。 更に、第2段階。 周囲の酸素を急激に消費した結果発生するのが、急激な気圧の変化。 人間ならば内臓破裂を引き起こす程のものであり、その威力は至近距離においては凄まじいレベルに達する。 また、空気中の酸素バランスが崩れることにより、いくら呼吸しても酸素が取り込めないという状況を作り出し、 加えて酸素不足の状態で燃焼するため大量の一酸化炭素が発生、中毒を引き起こす。 ……限定された空間内だけにこれらの効果を発生させるのは極めて困難であり、 また、余りに過ぎる破壊力のため、師より使用を禁じられた大魔法だ。 「どう、だ……!」 文字通り、全ての力を注ぎ込んだ連続攻撃。 体力も精神力も、徹底的に使い果たした。 これで、倒せないようならば――終わりだ。 竜はその全身を焼かれ、立ち尽くし―― 轟音と共に、その身を地に横たえた。 「…………」 「…………」 「……やっ……たのか……?」 剣を杖に立ちながら、疑問の声を上げるサイト。 一行が顔を見合わせ、喜びを浮かべかけた瞬間、 「――『ベホマ』」 「…………え?」 絶望の、声が、響いた。 竜の全身を、癒しの力が包む。 呆然と見守る4人の前、竜の傷が次々と癒えていき――やがて竜は、再びその体を掲げた。 『なるほど、人としては中々だが――しかし、それまでだな』 脳裏に、嘲笑の声が響く。 ティファニアが膝から地に崩れ落ち、サイトが絶望に呻く。 「うそ、だろ……?」 『これが、人と我らの、決定的な力の差というものよ』 ククク、と笑う竜。 キュルケがよろめきながらも杖を構え、シエスタは再び魔法の詠唱を始める。 『無駄なことだ、かの者達の子よ。最早、貴様の仲間に戦意など――』 突然、りゅうおうは念話を打ち切る。 目の前のことなど些事でしかない、というように首を回し、遥か遠くの空を見つめ始めた。 『…………まさ、か…………!』 りゅうおうの視線の遥か先、ガリア王国ヴェルサルテイル宮殿。 ……いや、元宮殿と言うべきか。 既に建造物はあらかた崩壊し、そこにあるのはただ瓦礫の山だった。 「は、ははははははははははははははは! 待っていた! 待っていたぞ、そなたのような存在を!」 その瓦礫の中。 宮殿を失った王は、しかし狂ったように笑い続ける。 巨大な『それ』を見上げながら、腕を広げ、踊るように回る。廻る。 「ははははははははははははは! さぁ、壊してくれ! ……世界を! 全てをだ!」 踏み潰され絶命するその瞬間まで、王は嬉しくてたまらない、というように笑い続けていた。 『それ』は辺りを見回し、そして自身の力を解放する。 ――その夜、ガリア王都リュティスは、氷の海に沈んだ。 それは全てを滅ぼすもの。 全ての命を生け贄とし、世界を絶望で覆い尽くさんとするもの。 ……それは、かつてとある異世界を闇に封じ込めた、大魔王と呼ばれるもの。 前ページルイズが世界を征服するようです
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前ページ次ページルイズが世界を征服するようです 「始めるわよ」 首都トリスタニア、某所。 明かりはただ一本の蝋燭のみという、薄暗く狭い小部屋に、数人が集まっていた。 いずれもローブに身を包み、フードで顔を隠している。 「……まずは、現状確認からいきましょうか」 アルビオンを制圧したトリステインは、すぐさま帝政ゲルマニアに宣戦を布告。 同日、ゲルマニア首都ヴィンドボナは壊滅した。 ……噂を信じるならば、ただ1騎の竜騎士によって。 主要都市をわずか数日の内に陥落させられたゲルマニアは、成す術無く降伏した。 現在、トリステインはロマリア連合皇国と交戦中。 トリステインはトロルやオークなど亜人に加え、エルフ、 更には無数の強力なドラゴンまでも戦線に投入している。兵力差は圧倒的だった。 アルビオン、ゲルマニアを傘下に加え、更には『東方』――エルフ達と同盟を結ぶことにすら成功。 最早、トリステインは小国などでは無く、世界有数の覇権を誇る大国だ。 「そして、それを操るのがあの2人。 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールと、その使い魔ね」 女王に即位したアンリエッタ。 それを傀儡とし、裏から操る者が居た。 マザリーニなど、優秀な人物は既にあらかた粛清され、この世から去ってしまっている。 「このままでは、世界は本当に、あの2人のものになってしまう」 無論、ルイズ達に対する抵抗が無かったわけではない。 送り込まれた暗殺者は、既に3桁にまで上る。 しかし。グリフォン隊隊長を務めるジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵や、 『シュヴァリエ』の称号を持つ少女といった凄腕の側近。 そして何より、本人達の力の前にあっては、暗殺者などカス同然だった。 「そうはさせない。絶対にね。 ――ここに、レジスタンスの結成を宣言するわ。 同意する者は素顔を晒し、血判状にサインを」 そう言い放った人物が、まずフードを脱ぐ。 素顔が、蝋燭の淡い光に下から照らされた。 キュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。 祖国を蹂躙され、復讐に燃える火のトライアングルメイジである。 「――彼女らは。私の、敵です」 シエスタ。 かつて魔法学院にて、メイドを務めていた少女。 「あいつらを、許しておくわけにはいかないよな」 「はい。頑張りましょう。 ……それに、彼らはウェールズ兄様を……!」 異世界人であり、伝説の『ガンダールヴ』である平賀才人。 そして、その主、ルイズと並ぶ『虚無』の使い手、ティファニア。 「人数こそ少ないけど、十分ね。 このメンバーならば、十分あいつらに勝利し得るわ」 朗々と、誓約の言葉を読み上げる面々。 それは、遥か昔よりこの大陸に伝わる、死地へ赴く人々が交わす誓いの証である。 この言葉が一体、どこで生み出され、どう伝わったのかは定かではない。 一般的には、始祖とその仲間達の言葉が、その始まりであるとされる。 ――だが。 それは、遥か異世界、とある冒険者が集う酒場にて、 今まさに邪悪に立ち向かわんとする1人の少年、そして3人の仲間達が交わした言葉と。 奇しくも、まったく同じものであった。 "我はここに集いたる戦友の前で厳かに精霊に誓わん。 我が生涯を光と共に過ごし、我が使命を忠実に果たさんことを。 我は全ての邪悪なるもの、闇たるものを絶ち、 悪しき力を用いることなく、また知りつつこれを許さざるべし。 我は我が命の限り、我が意志の揺るがざることをつとむべし。 我が使命にあたりて、与えられし力に驕らず、慢心に捉われることなく、幾万の敵を恐れることも無し。 我は心より人々を助け、 我が手に託されたる未来の幸のために身を捧げん。" ――アリアハン戦士誓詞 「――さぁ。反撃開始といきましょうか」 キュルケは、獰猛に笑った。 ――ルイズが世界を征服するようです―― 「ウェールズ様……」 「アンリエッタ可愛いよアンリエッタ」 ぶちゅー。 「はん。よくもまぁ、飽きないものね」 「クク。1度離れた分、余計に愛が深まったということであろうよ。麗しきものではないか」 トリステイン王国、王宮。 人目を憚ることもなくウェールズと抱き合うアンリエッタに、主は呆れ、使い魔は哂う。 「水の指輪。アルビオンでは苦しめられたけど、手に入れてしまえばこんな便利な物も無いわ」 右手中指に嵌められた指輪を眺めながら、ルイズは漏らした。 アルビオン侵攻の際にクロムウェルから奪ったマジックアイテム、『水の指輪』。 ルイズは先住魔法の力がこめられたそれを使い、ウェールズの死体を操ることでアンリエッタを骨抜きにしていた。 (※これも、前編にてルイズがウェールズを殺害する際、 きちんと死体に傷がつかない方法で殺していたからこそ成せる業である。 仮に、『イオ』で爆破するなどという愚かこの上無い方法を取っていたならば、まず不可能であっただろう。 筆者が前編投下真っ最中にこのミスに気付いて頭を抱えたなどという事実は決して存在しないので、 その旨ご了承いただきたい。というか、正直ごめん) 「ヴァリエール宰相。前線より伝令です」 「聞くわ」 「最前線にて、極めて強力な竜騎士と遭遇。 交戦の結果制空権を奪われ、現在戦線は膠着状態にあるとのことです」 報告を聞いた小竜が顔をしかめる。 「何? スカイドラゴン大隊はどうしておる」 「……そのほとんどが戦死。残った者も、本格的な戦闘は不可能と聞いております」 「バカな。我がスカイドラゴンが、そこらの竜騎士隊に劣る筈が――」 「それが、その。……相手は、僅か一騎だと、報告にはあります」 「何だと?」 りゅうおうはしばし黙考する。 ……ただ一騎にスカイドラゴン隊がやられるなど、通常ではまず考えられない。 いや、それどころか、あれ一体で竜騎士小隊を壊滅させられる程の戦力差なのだ。 それは敗れるとなると――相手も、この世界の常識では計れないクラスの戦力か。 「……やむをえんな。すぐにしんりゅう大隊の出撃をさせよ。 同時に、地上戦力も補強する。 そうだな……ダースドラゴン連隊を、しんりゅう隊に載せてゆけ」 「了解しました」 下がろうとする武官を、ルイズは引き止める。 「ちょっと待ちなさい。――ワルド?」 「何かな?」 「いくらりゅうおうのマジックアイテムで遠距離からすぐ連絡出来ると言っても、 いちいちこちらに指示を仰いでいるのでは対応が遅れる。 アンタ、前線指揮官として行ってきなさい。全て任せるわ。 必要なものがあれば送るから、何でも遠慮せず伝えなさいよ」 「しかし、護衛はいいのかな、ルイズ?」 ルイズは鼻息を漏らす。 「ここ1ヶ月は暗殺も減ってきてるし、シャルロットだけでも十分よ。 いいから行ってきなさい。 そしてとっとと、その竜騎士とやらの首を晒しなさい」 「このような時のために力を授けたのだ。わかっておろうな?」 ワルドはりゅうおうの指導と『改造』により、 『バギ』系統の全ての呪文を、更に『ピオリム』『スカラ』などの補助魔法すらも身につけていた。 「わかった。行ってくるよ、ルイズ。 さぁ、行ってらっしゃいの接吻を――」 「2週間以内に教皇の首を持ってきたら、褒美にね」 「マジで!?」 「マジよ」 うっしゃー、と全力で走り去るワルド。 「よいのか?」 「いいのよ。どうせ、私のファーストキスはあんたなんだから。もうどーでもいいわ」 「カカカカカカカ! そうであったな!」 ――数日後。 「やぁ、ルイズ。いや、ヴァリエール宰相とお呼びするべきかな?」 「どうでもいいわ。とっとと用件を言いなさい、ギーシュ」 王宮の片隅、一室。 突然姿を見せた元級友相手に、ルイズはうんざりと返す。 今は、少しの時間であっても無駄にしたくない状況なのだ。 深く椅子に体を沈め、ルイズはため息をついてから促した。 「こんな時に何なの?」 「今日はグラモン家の代表として来たんだ。父も兄さん達も、それどころではないようでね。 ロマリア侵攻の状況について、グラモン家として――と、」 そこでギーシュは言葉を切り、室内を見回した。 「あの使い魔はどうしたんだい?」 「りゅうおうなら、戦力の補強のために部下を召喚中よ。いいから、とっとと話しなさい」 「やれやれ、忙しないねルイズ。まぁいいか。こちらも、遊びに来たわけじゃないんだ。 まずは、この資料を見てもらえるかな?」 ギーシュが懐に手をやると、ルイズは背もたれにもたれたまま、無言で右手を伸ばし、 「驕ったな、ルイズ」 瞬間。 鋭利な何かが、背後からルイズの胸を貫通した。 「がっ……!」 吐血。 思わず体を丸めようとするも、椅子に縫い付けられているような状況では、それすら許されない。 続けて2、3と、何かがルイズの体を貫通する。更に大量の血を吐き出し、ルイズは痙攣した。 必死で痛みを堪えながら、自らの体を貫通し、突き出ているものを確認。 鋭く、槍のように尖った青銅。……椅子を、『錬金』したのか。 懐から出した杖を突き出すギーシュを、睨みつけた。 「油断したね、ルイズ。 護衛の1人もつけないとは、僕も舐められたものだ。ドットメイジごとき、警戒する必要も無い? いや、それとも信用してくれていたのかな? だとしたら、嬉しいね。 そのおかげで、君をこうして葬れるのだから」 「……ギーシュ……あんた……!」 ギーシュは暗い瞳でルイズを見下ろした。 「ゲルマニア戦で父は死んだよ。2人の兄も、ロマリアでね。 知っていれば、さっきの僕の言葉がおかしいことに気付いた筈だ。 仮にも、元帥の死を知らなかったのかい? だとすれば、僕がこうして直接手を下すことも無かったかな。 そんな有様では、いずれ誰かが君を殺しただろう」 喋ることすら出来ず、血にまみれ、痛みにあえぐルイズ。それを眺めながら、ギーシュは哂う。 傍らのランプを手に取り、『錬金』。青銅の剣を作り出し、構えた。 「あぁ、でも。こうして君を直接殺すことが出来て、嬉しく思うよ。 ――さらばだ、『魔王』ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 貴族の誇りなど欠片も無い、愚かな侵略戦争で多くの命を散らした罪。死で償え」 剣が、振り下ろされる。 早く、速く、疾く迅く捷く! 転移魔法『ルーラ』を超短距離間で使用、それを連発することで限りなく最速に近づく。 扉を吹き飛ばし、階段の上を飛翔して、目的の一室へと全力で向かう。 油断した。驕っていた。 いくら主が大丈夫だと主張しようと、聞き入れるべきではなかったのだ。 その傲慢こそ、敵が狙っていた隙に他ならないというのに――! 最後の扉を中級火炎魔法『メラミ』で焼き尽くし、部屋に文字通り飛び込む。 目に入ったのは、振り下ろされる剣、歪んだ笑みを浮かべた少年、そして血に塗れ瀕死の主。 怒りに、視界が赤く染まった。 轟音。 大量出血のせいか、霞む目を凝らす。 ――自分とギーシュの間に、紫のローブを纏った背中が立ち塞がっていた。 ああ、きてくれたんだ。よかった。もう、あんしんだ。 「りゅう、おう」 「喋るな、主」 杖でギーシュを牽制しながら、片手でルイズを即興の槍から引き抜くりゅうおう。 苦悶の息が漏れ、血が噴き出す。りゅうおうはすぐに回復魔法『ベホマ』を起動。ルイズを床に寝かせる。 あまりに深い致命傷だったが、何とか間に合ったらしく、傷は塞がっていった。 怒り狂う使い魔は後ろ手に回復を続行しつつ、剣を下ろした少年を睨みつける。 ギーシュは、全てを諦めたかのように笑みを浮かべていた。 「好機を逃したか。――無念だよ」 「我が主をここまで傷つけた罪、千度殺しても尚余りある。死ね」 りゅうおうの杖に、膨大な量の魔力が集中する。発動すれば、塵も残さずギーシュを焼き尽くすだろう。 ルイズは震える腕を何とか動かし、ローブの裾をつまむ。 「りゅうおう、まって」 「喋るな、主。傷はまだ塞がっておらん」 使い魔の言葉を聞き流し、ルイズは掠れた声で続けた。 「ギーシュ、みごとだったわ。 ドットメイジでありながら、ここまでのけいびをすりぬけて、わたしにいちげきをくわえるなんてね。 みなおした。やるじゃないの」 「は。ここまで絶好の条件でありながら、殺せなかったのは僕の落ち度だ。 褒められるようなことじゃないよ」 「喋るなと言っておろうが、貴様も黙れ!」 激昂するりゅうおうを尻目に、ルイズは荒い息を隠そうともせず言葉を継ぐ。 「いいえ。たまたまりゅうおうはいなかったけれど、 そうでなくともあんたはやったはず。 すぐにころされるのをかくごで、いちげきにすべてをかけてね。 そのかくごとじっこうりょく、しょうさんにあたいするわ。 ねぇ、いまからでもおそくはないわ、わたしたちのなかまにならない? あんたになら、せかいの5%くらいはくれてやってもいいわ」 ギーシュは鼻を鳴らした。 「冗談にしても最悪の部類だね。殺せ」 「ならばその望み、叶えてやろう!」 杖を振り下ろそうとするりゅうおうはしかし、後ろからローブを引かれる感触に動きを止める。 「主よ……! 何故止める!」 「ひつようだから。……そいつをちかろうに。けっしてみはりをおこたらないよう」 「は、はい!」 ようやく現れた武官達に命じるルイズ。 ギーシュは杖を取り上げられ、数人に拘束されて運ばれていった。 「まったく。あるじのいうことはちゃんとききなさい、りゅうおう」 「何故止め……いや、いい、喋るな主」 「だいじょうぶよ。あんたがこうしてくれてるんだから。 あいつはグラモンけのゆいいつのいきのこり。いかしておけば、なにかとべんりよ」 「回復魔法では傷を塞ぐことしか出来ぬと、知っておろうが! いい加減に黙らんかこの痴れ者が!」 激怒する使い魔を前に、ルイズは青白い顔でくすりと笑う。 「ふふ。しんぱいしてんのね、あんた」 「当たり前であろうが! 黙れ!」 ルイズはその笑みをやがて大きくし、肩を震わせて笑い始めた。 「ふ、ふふふふ! ねぇりゅうおう、あんたはわらう? たかがどっとめいじひとりとゆだんして、そのけっかがこれよ! あはははは! こっけいね! これが『まおう』ですって!」 「主!」 「ふふふふふふ! ねぇきいてよ、わたしね、もしかしたら、 じぶんからいけんをいいにくるなんて、ギーシュはなかまになるのかもっておもってた! もとは、おなじがくいんせいなんだしって! あはははははは! ここまでしておいて、なにをいまさら! はははは!」 ルイズは自嘲する。 ――ああ、そうだ。愚鈍なことこの上無い。 私は、人に恨まれることをしてきた。 数え切れない程に人を殺し、多くの村を、町を、国を、叩き潰し、蹂躙した。 後悔はしていない。全ては、目的のため。必要な行動だ。 その私が! 今更! 「主……」 「あははは! そう、はじめから、こうしておけばよかった!」 ルイズは右手を掲げ、魔力を集中する。 『水の指輪』が起動。城内全てに、力の波紋を広げていった。 「ギーシュがつえをもってここまではいってこれたということは、 じょうないにそのてびきをしたやつがいるはずよ。 これで、あんしん。じょうないのほとんどのにんげんは、かんぜんにあやつれるわ」 有事にそなえ、『水の指輪』を使うための下準備は済ませてある。 特に城内の人間には、秘薬を混入した食事や水を摂取させることで、 『完全盲従』という暗示をかけることに成功していた。 「わかった、もうよい。休め、主」 「あはは……はぁ」 ルイズは再び、ローブの端を握り締めた。 ローブでルイズを包むように、抱きしめるりゅうおう。 「……あんたのからだ、つめたいわね」 「ああ。竜であるからな」 ルイズは微笑む。 それまでのような狂乱したものではなく、穏やかな、安心し切った赤子のような笑み。 「……ほんと、つめたい。ああ、でも――」 きもちいいわ、と呟き、ルイズは瞼を閉じた。 りゅうおうは睡眠魔法『ラリホー』を使った手を下ろし、杖をしまって両手でルイズを抱き上げる。 まさに、一国の姫を攫う魔王のような構図。 それにしては、その手つきは、酷く慈愛に溢れていたが。 「…………」 ルイズの寝室にたどり着き、ゆっくりとベッドに下ろす。 枕元に置かれた宝玉を起動。魔力で編まれた、緑色の幕が豪奢なベッドを包み込む。 元の世界にあった結界装置を更に改良したもので、 耐衝、耐熱冷、防音、更に魔法を反射する『マホカンタ』の機能をも併せ持ち、 りゅうおう以外の内部への侵入を決して許さない、鉄壁の守り。 例え城が崩落しようとも、ルイズはそれに気付かず眠り続けるだろう。 「…………」 りゅうおうはしばらくの間、眠る主の姿を見つめ、やがて部屋を出た。 廊下を渡り、階段を下る。進むにつれ、徐々に騒音が大きくなっていく。 爆発音に、風を切る音。何者かが、戦闘しているのだ。 「そこまでだ」 その階全体を貫く、一際広大な廊下。 護衛を勤めるタバサと共に、数人の近衛兵が奮戦していた。 相手は、4人。 その内の1人――燃えるような赤髪の少女が、現れたりゅうおうを見て目を剥く。 「な――!」 「そこの貴様ら。我が相手をしよう。それが目的であろう?」 驚きを露わにしてこちらを向くタバサ達に向けて、顎をしゃくる。 「貴様らは、上で主の護衛だ。決して誰も近づけるな」 「しかし――」 「行け」 たった二文字の言葉に込められた感情を瞬時に汲み取り、タバサは顔を青ざめながら頷く。 他の兵たちを引き連れ、上のフロアへと去っていった。 「まさか、そっちから来るとはな。前の戦いでつけられなかった決着、ここで決めてやる」 言葉と共に、2本の剣を構える少年。他の3人も体勢を整える。 りゅうおうは笑い、演説するかのように手を広げた。 「まぁ待て。ここで我が戦っては、城が無くなってしまう上に人的被害も膨大だ。 それは、貴様らにとっても不都合であろう? 場所を変えるぞ」 「ど――」 どこに、とメイドが続ける暇も無く、彼らの体は遠方へ転移されていった。 「……ここは、アルビオン?」 「そうだ。ここでなら、周囲を気にする必要はあるまい」 半年ほど前、7万のアルビオン軍とルイズ達が対峙した草原。 りゅうおうと4人は、一瞬にしてそこに辿り着いていた。 転移魔法『ルーラ』及び『バシルーラ』を併用した結果である。 「さて、戦う前にひとつ聞いておきたい」 「何でしょうか?」 ハーフエルフの少女が、背の丈ほどの大きな杖を構えながら返す。 「先ほどの小僧。あれは、貴様らの差し金か?」 キュルケが厳しい表情で答える。 「……ええ、そうよ。ここにあんたが居るってことは、失敗ってことだろうけどね」 「ククク。いや何、立派であったぞ。主も賞賛していた。 いやいやしかし、そちらも中々に残酷な作戦をとるものだな。 戦力にならないドットメイジに、一か八かの特攻をさせるとは」 りゅうおうの嘲笑に、キュルケは悔しげに唇を噛み締めた。 「……あいつの発案よ。私たちに、その覚悟を止める資格は無い」 「なるほど。ああ、しかしなるほどなるほど――貴様らの策か」 何を言いたいのか。シエスタは訝り、そしてすぐあることに気付く。 りゅうおうの瞳。 普段は黄色のそれが、真っ赤に染まっていた。 「…………っ!」 シエスタは直感する。まずい。 あれは、逆鱗だ。 「よくも、主をあのような目にあわせてくれたものだ」 戯れるような口調。 それを口にするりゅうおうの脳裏には――血まみれで苦しげに喘ぐ、主の姿があった。 りゅうおうの額のルーンが、輝き出す。 「――皆殺しだ」 りゅうおうは、真の姿を見せた。 前ページ次ページルイズが世界を征服するようです
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発言者:天魔・宿儺 神咒神威神楽 曙之光のキャラ崩壊が著しい特典ドラマCD、打ち上げパーティで出てきた迷言の一角。 打ち上げは複数のグループで集まっており、一つは気弱なシスコン、屈指の常識人、オタクの申し子、子持ちの奥さんがいる宿儺で固まっていた。 その宿儺は現役バリバリの中二病であり、その言動は自分の世界に入って周りの話を聞かない困ったさんである。 +邪気眼 フッ、ハッハッハッハッハッ!大宇宙の意志が世界を壊せと囁いている。 その確かな兆候が今、俺の背に降り立ったー!(シャキーン 偏に是も定めか。神から過酷な運命と力を負わされ、現世に舞い降りた宇宙の破壊者ってやつのよぉ。 そう、俺こそはこのステージに呪われたシーンの最☆前☆線!卑怯な程に孤高の美!! Foooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooooo!!!※甲高い声 +ネタバレ クッ、観測者の意思が俺に自由という名の楽園を許さない。 やはり自滅因子の運命からは逃れられないとでも言うのかっ! 万が一此の儘不能にでも至ろうものなら、座が興亡期に入っちまうじゃねえか! ちぃぃ!全く気に入らねえ!!唸れよ、俺のエクスカリバァァァッ!!! +おしめ代えてた 何せあの時の撮影は戦の趨勢を左右するヤマだったからな。 そんな刹那に餓鬼の渇望の残滓を所構わず撒き散らされても困るってもんだろが。 そして、だからこそ俺の手腕に狂いはねえ。溢れ出る愛のダークマター、一切漏らさず包んでやったぜ。 +余談 感性自体はまともであるため、ある爆弾発言にはドン引きのあまり素に戻った。 発言の中身自体は完全なネタバレだよなぁコレ -- 名無しさん (2016-08-07 12 15 47) アラヤが俺にもっと輝けと言っている… -- 名無しさん (2016-08-07 12 39 53) その後の素に戻るのは笑えた -- 名無しさん (2016-08-07 15 15 43) 文字にすると中二感が一段階上がるな -- 名無しさん (2016-08-08 10 45 37) ナラカ「おいやめろ」 -- 名無しさん (2016-08-08 12 38 57) ↑ やーい、お前のキャラクリ中学生w -- 名無しさん (2016-08-08 13 21 44) 「※甲高い声」でもうダメだったwww -- 名無しさん (2016-08-08 18 07 03) 餓鬼の渇望の残滓はうまいこと言ったなと普通に感心した -- 名無しさん (2016-08-08 21 48 47) 十年砲 -- 名無しさん (2017-01-07 13 13 05) 名前 コメント
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通常放送 話数 1 2 3 4 5 1 52.3 23.0 16.9 5.9 1.9 2 56.3 23.8 12.9 5.1 1.9 3 57.5 19.5 17.0 4.3 1.6 4 63.0 18.0 13.4 4.1 1.5 5 54.1 19.5 14.4 7.3 4.6 6 47.0 16.3 14.0 14.0 8.7 7 53.4 15.1 15.8 9.1 6.7 8 43.0 15.4 18.3 15.1 8.1 9 60.3 18.1 12.3 5.5 3.9 10 59.1 18.2 13.1 5.5 4.1 11 55.2 16.5 14.3 7.7 6.3 12 50.7 15.6 16.6 8.7 8.4 平均 54.33 18.25 14.92 7.69 4.81
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■【JCは世界を救う!リレーラジオ】は2009/11/08(日)にDJ如月によって行われたリレーラジオ。 その19:00からの一時間枠が第4走者真姫のターン。 代走者を含め出演者はみな個性的なDJ達。 【色気-朗読-天然-声真似-親フラ-プロ-運営】 それぞれのDJが他とはかぶる事の無い素敵な個性を発揮できたこのリレーラジオ。 企画運営の如月にとっては涙なしでは語れない大成功だったようだ。 19:00からスタートの真姫枠、それはゴールデンタイム。 真姫は適度な緊張の中で前走者の放送を静かに聴く。 (このこしってる・・・) 前走者枠では3桁突破・・・ けども今の真姫にはそんな事はすでに気にならない。 なぜならば真姫はすでに3桁DJ。 ハードルの高い月イチ!リレーラジオにも出演。 それらの経験を乗り越えてきた真姫には不安などなかった・・・と言えばウソになる。 適度な緊張感が真姫のテンショを程よくあげる。 ■前走者の放送終了から真姫のターンは開始 すでに多くのリスナーに囲まれた真姫の登場を今かと待っていたリスナーども。 その仲にはやはり・・・数が増えれば味方だけではなく敵も出てくる。 つまりはアレだ・・・荒らしがいたってこった。 だがこれまでの放送で経験値を稼ぎレヴェルをあげて来た真姫にはたいした問題ではなかった。 真姫最大の武器”声マネ”の駆使”レス読み”のうまさはしだいに荒らしすらも黙らす。 かと思いきや・・・ 長文連投の強敵出現。 (スルーすればいいのにね・・・) 真正面から挑む真姫!さらに襲いかかる長文! 【早読み真姫vs長文】 この戦いがこのターンのクライマックスとなった。 真姫は結果として自分の時間内に入ったレスを全て消化、悔いはないはずだ・・・ だが上がったレヴェルに比例して上がった真姫のネガティブ思考は放送後みずからを悩ませたらしい。 ■全員のリレーが終わり最後の集合 真姫はマイクをつないだり切ったりで空気を読みながら受け答えや発言をする。 このリレーラジオは多分成功だったのだろう。 予告した時間になってもレスは一向に止まる気配はなくレス読みをバトンタッチされ困るDJ達。 すでに終了予定時間を越えたとき・・・真姫にそのバトンは渡される。 じゃあ真姫ちゃんレス読んでのお願いに答える真姫はレス読みを開始する。 真姫『なんでみんな黙るんだ!!?』 にこる『だって・・進行が・・・』 真姫(よっしゃああ任せとけ!オレの嫁!!) 真姫『おっけわかった・・』 ここから末期真姫の真骨頂が繰り広げられる・・・ すでに溜まったレスは数十以上。 ダレもが終われない夜に不安を感じていた・・・ その不安を跳ね除けるように真姫の高速レス読みはSTART!! (早口!!?じょうとおおおお 末期真姫にしてやんよおおおおおお) その高速レス読みはひとつのレスもスルーすることはなく!! なおかつ他DJに振られた話題が有っても、ふって一瞬で返さなければ真姫が変わりに返す。 次々消化されるレス だが増えるレス (れーすです。) その早い流れの仲でもレスナーからの苦情がないのは早いながらもレスを大事に扱う真姫ゆえになのだろう。 適度に自重しているリスナーの書き込みも手伝いようやく追いつく。 ダレもが数十分はかかると思われた大量のレスを5分で消化した・・・ 終わりが見えないこの夜に終わりを訪れさせた勇者(真姫) 末期真姫の名に恥じないすばらしい活躍だったらしい。 ※おまけ 全てを開放した真姫の熱はこの後収まることはなく・・・終了後まき☆らじを開始。(短時間の反省?打ち上げ?) この放送では上がったテンションで真姫は自分を自重できなくなり一夜限りの関西弁放送となった。
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「くそっ!」 まさか、雪崩を引き起こしたとは。 あの女、かなり冷静だな。 やっとの思いで雪の中から這い出したヘンリーは悪態を着いた。 …ここは、どこだ? 現在位置の感覚が麻痺してしまっている。 体も冷え切ってしまっている。体を温めないといけない。 辺りを見回してみる。真っ白なゲレンデに二種類の足跡が。 アイラとアグリアスとの戦闘の跡であるがそれは彼の知る所ではない。 誰かが戦った跡だというのは容易に想像できるが。 「…まだ、新しいな。これを辿っていけば誰かがいる。」 そう呟いたヘンリーは片方の足跡をたどっていった。 【ヘンリー 所持品:ミスリルアクス イオの書×3 第一行動方針:アイラかアグリアスの足跡をたどる 最終行動方針:皆殺し】 【現在位置:祠西の山岳地帯】 ←PREV INDEX NEXT→ ←PREV ヘンリー NEXT→
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だれかがわらう【登録タグ た どーなっつP 初音ミク 曲】 作詞:どーなっつP 作曲:どーなっつP 編曲:どーなっつP 唄:初音ミク 曲紹介 donuts氏ことどーなっつPのデビュー作。 歌詞 (ピアプロより転載) 忙しい毎日に不満は無くて 明るい声 分かっているのに 不安は増していく 何気ない言葉に 苛立ちは募る 張り詰めた糸千切れ落ちて それでも今日も笑顔で隠して そんな私を笑わないで 不真面目な人達は知らない振りで 今日も明日も笑い合って 誰かは泣いている 嘘つきは嫌い 自分が嫌い 一人きりずっと塞ぎ込んで それでも誰か愛して欲しくて そんな私を構わないで 誰かが笑う 張り詰めた糸千切れ落ちて それでもいつも笑顔で隠して そんな私を笑わないで コメント 自分と重なって泣いた -- 名無しさん (2011-01-01 19 32 31) 名前 コメント
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「ハンマーハンマー!」 「なんだお前は」 「ハンマーハンマー! ハン……マァァァァ!」 「何を言っている?」 「ハンマー……ハンマー!」 「……ハンマー」 「ハンマー!」 「マーマーハンマー!!」 ジャックが仲間に加わった! 【一日目・2時22分/韓国】 【室伏広治@陸上日本代表】 【状態】ハンマー状態 【装備】ゴルディオン・ハンマー 【道具】不明 【思考】基本:ハンマーハンマー! 1:ハンマーハンマーマーマー 2:マーマーハンマー 3:……ハンマー…… 【備考】 ※ハンマーハンマーハンマー。 【ジャック・ハンマー@グラップラー刃牙】 【状態】ハンマー状態 【装備】ハンマースーツ@スーパーマリオブラザース3 【道具】支給品一式 【思考】 基本:ハンハンハンマー! 1:ハンマー……ハンマー! 2:マハンマ! ※室伏に洗n……説得されました
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ミストラルシティ上空に浮かぶピエタ帝国。そこに現れた起源のオリジンとの死闘。迎え撃つ十也たち。 次々とやられていく仲間たち。そして十也の鎧も破壊されるのであった。しかしそれをきっかけに自分の力に気づき始める十也。 彼にウルズから渡される赤い箱。それは世界にとっての希望となりえるのだろうか。 十也「オリジン!」 オリジンのもとに現れる十也。 オリジン「自分から現れるとは殊勝な心掛けだ。そなたを倒せばあとはもうこの世界に我を邪魔するものはいない」 コード・ウルズは右腕を切断され(機械の腕だが)満身創痍の状態。他のメンバーは全員オリジンに吸収されている。残った最後の砦…それが天十也なのだ。 オリジン「そなたの鎧は破壊された。おとなしく我の力の一部となるのだ!」 十也「いいや!俺はあきらめない!みんなを救い出すんだ!お前を倒して!」 オリジン「愚かな…実に愚かだ!地球人よ!その愚かな行いを悔いて朽ちよ!『喰邪(はじゃ)の翼』!」 オリジンから放たれる無数の羽根。それに触れればオリジンに吸収されてしまう。生身の体の十也がそれを受ければ終わりだ。 十也「ウルズ…お前からもらったこれを使う!」 小さな赤い箱を手に取る十也。 オリジン「なんだ…それは?」 十也「解除コード!『ユナヴォイド』!」 十也の言葉に呼応して箱が開く。 オリジン「なんだ!?」 箱から放たれる光。その光の中に無数の羽根が打ち込まれていく。 オリジン「ただのこけおどしか…」 十也「うぉぉ!!」 無数の羽根が吹き飛ばされていく。 オリジン「なっ!」 光の中から姿を現す十也。その姿は鎧に包まれていた。以前の鎧『コート・オブ・ブラスト』とは違う鎧だ。 十也「これが…新たな力」 その鎧は全身が赤を基調としたカラーとなっており、その見た目は以前よりも攻撃的なイメージを感じさせる。 オリジン「なんだ?それは?」 十也「これが俺の新たな力!『ブラスト・ユナヴォイド』だ!」 オリジン「だが!何をしようと!『喰邪の剣(はじゃのつるぎ)』!」 オリジンの翼から放たれる無数の剣が十也を襲う。 十也「はぁぁ!!」 オリジン「なっ!」 一瞬でオリジンの目の前に移動し拳を打ち込む十也。オリジンはその衝撃で吹き飛ばされる。 十也「す、すごい。力があふれてくる…。」 ピピピ 十也の鎧から機械音が聞こえてくる。 ???『やぁ。XXXX』 XXXX。その名前は覚えがある。過去の俺の名だ。そしてこの声!記憶の中で出てきた老人だ! ジャーデ『この音声を聞いているということはわしは死にお前はこの鎧を使っているということじゃな』 十也「これは録音されていたもの…なのか?」 あの老人が死ぬ前に録音していたらしい。ということはウルズの言っていた信用できない人物とは… ジャーデ『XXXX。この鎧はお前の能力を最大限に引き出すことのみを考えて作ったものじゃ。お前の力を存分に振るうがいい。ちなみにこの鎧にはシフトR2はない。じゃが代わりに…』 十也に剣が飛んでくる。とっさに避ける十也。 オリジン「地球人ごときが!調子に乗るなよ!」 オリジンだ。 ジャーデ『じゃあの。』 老人からの録音は終わったみたいだ。 十也「これなら…いける!」 オリジン「図に乗るでない!我の真の力を受けよ!『吸喰転生(きゅうしょくてんせい)』!」 オリジンの翼がオリジン自身を包み込む。 十也「なにをする気だ…」 まるで卵のようだ。 オリジン「ぐぉぉぉ!!」 翼の中からオリジンが姿を現す。その姿は先ほどまでとは別物だ。まるで全身を鎧に包み込んだ鬼のような姿になっている。 オリジン「これが我の究極の姿『喰邪星神(はじゃせいしん)』!地球人ごときにこの姿をつかうことになるとはな」 十也「や、やばい。さっきまでと全然違う…」 オリジンから放たれる殺気。それは先ほどまでと比べ物にならない。 オリジン「我にこの姿を使わせたことを後悔するがいい!『喰邪星剣(はじゃせいけん)ソウル・スクレイド』!その魂までこの星から消し去ってくれる!」 オリジンの手から出現した剣が黒い炎を纏い、十也に襲い来る。 十也「当たるわけには!」 オリジンの攻撃を避ける十也。オリジンの剣はピエタ帝国の大地を砕き崩落させる。 十也「なんて威力だよ…」 オリジン「次はあてるぞ!」 十也「こうなったら…!」 十也は覚悟を決める。 十也「使うぜ!コードCBT!」 ピピピ! 十也の鎧が機械音声を発する。 『音声コード承認。コードチェンジ・ブレイク・スルー。ブレイクモードに突入します』 十也の鎧が赤く輝く。 オリジン「『喰邪星神(はじゃせいしん)』となった我をたおすことなどできぬ!」 十也「やってみなきゃわからないだろ!いくぜ!」 十也は両手にエネルギーの塊を生成する。 オリジン「その技は効かなかったのがわからないのか?」 十也「趣向を変える!」 十也はエネルギーの塊を自身の両足に打ち込む。 オリジン「自らに打ち込むだと?何を…」 十也の両足に打ち込まれたエネルギーの塊はその両足を覆うように光り輝く。 十也「アペンド!」 十也が一瞬でその姿を消す。 オリジン「どこに行った…ぐっ!」 一瞬だった。十也が消えたと思った次の瞬間、オリジンはその頭にものすごい負荷を感じた。 十也「うぉぉ!!」 十也の蹴りがオリジンの頭に打ち込まれたのだ。続けて連続で蹴りを打ち込む十也。 オリジン「がっ…はっ…」 その蹴りは目にもとまらぬ速さだ。 十也「はぁぁ!!」 右足に力をためる十也。両足の輝きが右足へと集まっていく。そしてその輝きは右足の先端へと集中する。 十也「『ブレイク・シュート』!」 十也の右足から凄まじい速度の蹴りがオリジンの腹部に放たれる。そのままオリジンの体は吹き飛ばされる。 オリジン「なっ…」 オリジンが腹部を確認するとそこにはエネルギーの塊がくっついていた。十也が蹴り飛ばした瞬間に自分の右足の先端に集中したエネルギーをそのままオリジンの体にくっつけたのだ。 右手を広げ天に掲げる十也。するとそれに呼応したようにエネルギーの塊が強い光を放つ。 十也「ブレイク・アウト!」 右手を閉じる十也。エネルギーの塊はオリジンを巻き込みながら凄まじい爆発を放つ。十也の鎧から輝きが消える。 『ブレイクモード終了します』 十也「これで…やったか?」 爆発により凄まじい煙が発生し、オリジンの姿が見えない。 キン! 煙の中で何かが光る。 十也「なんだ?」 次の瞬間、十也に向かって無数の剣が飛んでくる。とっさに防御をとる十也。しかしその防御は間に合わない。 十也「ぐぁぁぁ!!」 十也の鎧に刺さる無数の剣。鎧を貫通し何本かは十也の体にも突き刺さる。 オリジン「先ほどよりも凄まじい力だな。だが…」 煙の中から姿を現すオリジン。あれだけの攻撃を受けたというのにまるで堪えていない。 オリジン「先ほどの力ももう発揮できまい。」 十也「はぁ…はぁ…」 オリジン「粒子の力…確かに強力な力だがそれでは我には勝つことはできん。我の能力『吸喰』は粒子を喰らう。粒子エネルギーの爆発では我の糧となるのみだ」 十也「く…そ…」 オリジン「だがよくここまで戦ったな。ほめてやろう。世界の理(ことわり)も知らない人間にしてはなかなかだったぞ。」 剣を振り上げるオリジン。 オリジン「さらばだ地球人!」 振り下ろされる剣。 十也「コードCBT!」 赤く輝く十也の鎧。そして一瞬のうちに姿を消した。 オリジン「なに!?まだそんな力が…。だが無駄なあがきだ。我にはそなたの力は通用しない。」 十也「それはどうかな…」 十也がオリジンの背後に立つ。 オリジン「いつの間に!」 十也の手には大剣が握られている。アポロンの大剣だ。 オリジン「剣を持ったところで…」 十也「お前は俺にヒントをくれた…お前を倒す…な」 十也は剣に意識を集中する。 十也(できるはずだ…今の俺なら!) 十也の両手からエネルギーの輝きが大剣に伝わる。光を放つ大剣。 十也「力を貸してくれ!アポロン!エクス=ペリエンス!」 オリジン「我を倒すことなどできぬ!『喰邪星剣(はじゃせいけん)ソウル・スクレイド』!」 オリジンの黒い炎を発する剣と十也のエクス=ペリエンスが激突する。 オリジン「ぬぉぉ!!」 十也「うぉぉ!!」 両社の力は拮抗しているように見える。いや少しオリジンの力の方が上のようだ。徐々に押し負けてくる十也。 オリジン「ふははは!」 十也「くっ!ここで負けるわけには…」 十也の肩には地球の未来がかかっている。そしてオリジンに吸収された仲間たち。彼らを助けるためにも負けるわけにはいかない。 十也「いかないんだぁぁぁぁ!!」 輝きを増すエクス=ペリエンスと十也の鎧。 オリジン「な、なに!」 十也の力が増していく。 オリジン「そ、そんな!これは!」 十也「たぁぁぁ!」 ガキン! オリジンの剣が弾き飛ばされる。 オリジン「そんな…ばかな!因子の力も持たないものが…この我の力を上回るだと!」 十也「これで!」 十也は大剣を再び振るう。その太刀筋はオリジンの体を両断する。 オリジン「ば…かな。シンコウシャである…我が…地球人…ごときに」 十也「ブレイク・アウト!」 光を放つオリジンの体。その体から無数の魂が抜け出る。 オリジン「我は…認めん!この我が…こんなところで!」 十也「おわりだ!オリジン!」 オリジン「我はぁぁぁ!!!」 オリジンの体が消滅する。十也の鎧とエクス=ペリエンスから輝きが消える。 『ブレイクモード完全終了』 強制解除される『ブラスト・ユナヴォイド』。 十也「危なかった…なんとか…なった…な」 『ブラスト・ユナヴォイド』に搭載された切り札ブレイクモード。『コート・オブ・ブラスト』のシフトR2と違い、ブレイクモードは制限時間60秒を好きなタイミングで切り、残り時間を温存することができるのだ。 オリジンに吸収されたアポロンたちが復活する。 アポロン「これは…」 ボルク「体が…」 キノ「やったんだね」 スライ「あれは!」 トニー「十也!」 十也のもとに駆け寄る一同。 十也「よかった…無事だった…んだな」 ディック「お前の方が無事じゃなさそうだぞ!」 にろく「急いでEGOまで連れていくぞ」 ナル「うん!」 十也「アポロン…お前のエクス=ペリエンスのおかげでかてた…ぜ」 気を失う十也。 アポロン「大したやつだ。あのオリジンを倒すとは…それはまぎれもなくソナタの力だよ」 結利「十也…(ありがとう。あなたのおかげで未来は救われたよ…本当に…ありがとう)」 ~~~ オリジンがやられた光を遠くで見ているウルズ。 ウルズ「さすがだな…十也。これでミッションコンプリート…だ」 ピピピ ウルズに通信が入る。 ウルズ「…わかった」 通信は終わったようだ。 ウルズ「十也。お前はお前の道を行け。天十也としてな」 いずこかへと去っていくウルズ。彼はいったい何者なのだろうか… ~数日後~ 十也「はっ!」 病院のベッドで目を覚ます十也。その横には結利がいた。 結利「十也!」 十也「終わったんだな…」 結利「うん。オリジンは消滅して、ピエタ帝国も元の場所へと戻ったみたい。地縛民たちもなんとか息を吹き返したみたいだよ」 十也「そうか。これで未来は救われたんだな…」 遠くを見つめる十也。 十也(グローリー。お前たちは自らの使命を全うするために作られた存在だった。それ以上にはなれなかった。) 過去の自分の境遇とグローリーたちを重ねる十也。 十也(おれはこれからも生きていく。天十也として!) 一部のものしか知らない世界を守るための戦い。人知れず世界を救った天十也たち。 彼らならこの世界に立ちはだかる脅威を退けられるだろう。たとえどんな敵が現れようと。 オリジネイター編~完結~ ASR to be continued
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