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基本情報 攻略情報 誤植とか 基本情報 Music, Lyrics Designed by wowaka BPM 159 難易度 Total Notes ♪ 特殊歌詞 Max Score Movie Easy ★★★ 93 - - 49,950 Normal ★★★★ 185 17 24 128,356 Hard ★★★★★★★ 241 34 36 175,573 Extreme ★★★★★★★★ 287 51 43 213,790 BTL - 1,020 51 - 791,590 iPhone 攻略情報 Extremeの「目玉を欲しがっている、生」の「せい」などで両方Coolを取るには、両手でフリックするか、先の「せ」を早めにフリックすると良い。 BTLは特に今作の仕様ではほとんど点が取れない。まとまりの先頭で少しずつ点を回収するより無いだろう。 誤植とか 多分なし 『せい』や『ない』は両手フリックでやったほうが簡単にcoolが取れて安定しますよ。Extremeをperfectしたい人は『しししたたしつ ああああ』をどう上手くcoolとるかですね。 -- 飛び込んでいけ (2012-08-15 15 31 30) 私は逆に両手だと不安定になっちゃいますね。そこら辺はやはり人それぞれって感じでしょうか。 -- 名無しさん (2012-08-16 01 18 42) BTLの「ああああ」は高速でア段のフリックしてたやすいです。 -- たくあん (2013-02-14 18 57 43) 名前 コメント
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BPM EASY BASIC ADVANCED EXPERT MASTER 159 2 5 7 11 13+ EASY BASIC (159.0){1},,, {2}2,2, {2}1,1, {2}2,2, {1}1-4[4 1], {2}6,6, {2}5,5, {2}6,6, {1}5-8[4 1], {4}2,2,,2, {4},2,,2, {4},3,,4, {4},5,,6, {4}7,7,,7, {4},7,,7, {4},6,,5, {4},4,,3, {4}2,2,,2, {4},1,,1, {1}1h[2 1], {4}8,8,8,, {4}7,7,,7, {4},6,,6, {4}7,7,8,8, {1}1h[4 3], {2}1,1, {2}8,8, {2}2,2, {2}7,7, {2}1,1/2, {2}8,7/8, {2}6,5/6, {2}3,3b/4b, {4}5,5,,5, {4},6,,6, {4},4,,4, {4},3,,3, {4}2,2,,2, {4},1,,1, {4}8,8,1,1, {4}8,8,1h[2 1],, {4},1,,2, {4},3,,4, {4},5/6,,4/5, {4},3/4,3,3, {2}2/3,1/8, {2}6/7,4/5, {4}4,4,5,5, {1}3h[2 1]/6h[2 1], {4}5,5,6,, {4}4,4,3,, {4}5,4,5,, {1}4-1[4 1], {4}7,7,7/8,, {4}2,2,1/2,, {4}8,1,1/8,, {1}1-4[4 1], {4},5,,4, {4},3,,2, {4},1,,8, {4}7,7,7,7b, {4}7/8,7/8,7/8,, {4}5/6,5/6,5/6,, {4}3/4,3/4,3/4,, {1}2-6[4 1], {4}7/8,7/8,7/8,, {4}1/2,1/2,1/2,, {4}3/4,3/4,3/4,, {4}5,6,7,8, {1}1b/8b, E ADVANCED (159.0){2}3,2, {1}1b, {4},,1/8,1/8, {4}1,1,3,3, {4}8,8,6,6, {4}2,2,4,4, {4}7,7,5h[4 1],, {4}1,2,3,4, {4}8,7,6,5, 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1,,2,,3,,7,8,,8,7,,65,,,, 8,,7,,6,,2,1,,1,2,,4,,5,, 7,,7,,2,1,2,,6,5,6,5,7,5,6,, 3,4,3,4,3,,7,8,7,8,7,,2,1,2,1, 2,,6,5,6,5,6,,34,,2,1,8,7^2[16 9],6h[8 7],, ,,,,,,,,,,5,,5-1[8 1],,,, 3-8[8 1],,,,6-1[8 1],,,,4-8[8 1],,,,,,,, 2,,3,,4,,7,8,,8,6,,5,,4,, 7,,6,,5,,2,1,,1,3,,4,,5,, {4} 1-6[8 1],8-3[8 1],2-5[8 1],7^4[2 1], ,,1-5[8 1],1b, {16} 7,,3,4,3,2,3,,68,,7,,56,,,, 2,,6,5,6,7,6,,31,,2,,43,,,, 7,,3,4,3,2,3,,7,,6,,58,,,, 2,,6,5,6,7,6,,2,,3,,41,,,, 2,,6,4,5,7,5,,7-3[8 1],,6,,,,,, 7,,3,5,4,2,4,,2-6[8 1],,3,,,,,, 2,,6,4,5,7,5,,7-3[8 1],,6,,,,,, 1,5,2,6,3,7,4,8,3,7,2,6,1,5,8b,, 2,,1,,8,,3,4,,6,5,,23,,4,, 7,,8,,1,,6,5,,3,4,,76,,5,, 2,,1,,8,,3,4,,6,5,,23,,34,, 7,,8,,1,,6,5,,3,4,,76,,,, {8}1-4[8 1],4^1[8 1],,,5-8[8 1],8^5[8 1],,, 4,3,2,1-4[8 1]/5-8[8 1],4^1[8 1]/8^5[8 1],,,, {16} 3,4,,4,5,,5,6,,6,7,,7,8,,8, 1^4[8 1],,4^7[8 1],,,,,,8h[4 1],,,,,,2-5[8 1],1, 2,,,,6,6,,3,4,3,,34,,,7-4[8 1],8, 7,,,,3,3,,6,5,6,,65,,,2,1, ,38,,,7,8,,16,,,4,5,,36,,, 4-1[2 1]/5,,5,,6,,7,,8-5[16 1],,8,,,,,, 3,,6,5,6,,2,1,2,,7,8,7,,3,4, 3,,6,5,6,,3,4,{8}3,5,6,7, 8b,,2b,,4b,,6b,, 1-4[8 1],1-6[8 1],1-5[8 1],1^4[8 1],1^6[8 1],1,1b,, {16} 5,,3,4,3,2,3-7[8 1],,6-1[8 1],,,,,,,, 4,,6,5,6,7,6-2[8 1],,3-8[8 1],,,,,,,, 5,,3,4,3,2,3-8[8 1],,6-3[8 1],,,,,,,, 4,,6,5,6,7,6-2[8 1],,2-6[8 1],,,,,,,, 6,,3,5,4,2,3-8[8 1],,7-4[8 1],,,,,,,, 3,,6,4,5,7,6-1[8 1],,2-5[8 1],,,,,,,, 6,,2,5,4,2,{8}3,3,4,5,6, 78,,56,,34,,12,, 8^3[16 3]/7b,2^5[16 3],,,1^6[16 3],7^4[16 3],,, 8^3[16 3],2^5[16 3],4^7[16 3],,7-3[8 1],,,, {16}3,4,3,4,2,1,{8}2,6,5,6,7, 2-7[8 1],,4-8[8 1],,5-1[8 1],,7b,, {16} 6,5,6,5,6-3[8 1],7,6-1[8 1],,6-2[8 1],,,,,,,, 3,4,3,4,3-6[8 1],2,3-8[8 1],,3-7[8 1],,,,,,,, 6,5,6,7,6-3[8 1],5,6-1[8 1],,6-2[8 1],,,,,,,, 3,4,3,2,3,4,3-7[8 1],,7-3[8 1],,,,,,,, 7,8,7,6,7-3[8 1],8,7^2[8 1],,7^4[8 1],,,,,,,, 2,1,2,3,2-6[8 1],1,2^7[8 1],,2^5[8 1],,,,,,,, 7,8,7,6,7,8,7^2[16 3],,1^4[16 3],,3^6[16 3],,,,,, {4} 1-6[8 1],8-3[8 1],2-5[8 1],7-4[8 1], {1} ,, E よろしくお願いします -- 竹川由起子 (2023-01-04 18 20 52) 名前 コメント
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https //www.nicovideo.jp/watch/sm8082467 投稿者 wowaka ボーカル 初音ミク 登場回 順位 マイリスト数 #20 5 2189 #21 20 266
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原曲・wowaka feat.初音ミク 作詞作曲・wowaka ボカロP・wowakaが2009年に発表した楽曲。歌唱は初音ミク。 【登録タグ 2009年の楽曲 VOCALOID wowaka(現実逃避P) ニコニコ動画 初音ミク】 カバーした声優 ニーコ
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トップ 静寂22号 『さよならの裏表』伊万里楽巳 名前 コメント すべてのコメントを見る
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裏表ラバーズ/ぐるたみん(うろおぼえ) うらおもてらはあすくるたみん【登録タグ:VOCALOID ぐるたみん 曲 曲う 曲うら 現実逃避P】 曲情報 作詞:現実逃避P 作曲:現実逃避P 編曲:現実逃避P 唄:ぐるたみん? ジャンル・作品:VOCALOID カラオケ動画情報 オフボーカルワイプあり オンボーカルワイプあり 裏表ラバーズ(本家)との比較ワイプあり コメント 名前 コメント
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裏表トリーズナーズ(前編)◆GOn9rNo1ts シーン0 表(裏):表裏一対(Railgun Mad) 二人はコインの裏表。 決して相容れない二つのカタチ。 少女と男。 日本人とアメリカ人。 表の世界の学生と裏の世界の殺人狂。 21世紀を生きる現代人と20世紀を渡る過去人。 片割れが用いるのは己の肉体、人の手によって作られた数多くの道具。 外なる凶器をその手に握り、狂気によって人間を殺す。 「俺が殺すのは、殺して楽しいのはぁ、緩みきった奴よ、分かる? 自分は絶対安全な所にいて、次の瞬間自分が死ぬかも知れないってこれッッッッッッッッぽっちも考えてない奴だ!」 もう片方の身に宿るのは異能のチカラ、開発と努力によって得た超能力(レベル5) 内なる自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を雷電に変え、信念を持って不殺を誓う。 「――――それでも私は、きっとアンタに生きて欲しいんだと思う」 彼が愛した女のため、そして自身の欲望のために全殺戮を担うゲーム肯定派。 彼女が恋した少年、そしてこの地で会った恩人達の意志を継ぐゲーム否定派。 どちらが表でどちらが裏か、そんなの誰にも分かりゃしない。 綺麗な想いを持ってる方が表(善)、汚い望みを抱く方が裏(悪)? ルールに則り人を殺す方が表(正)、逆らって足掻く者が裏(誤)? そんなことはどうだっていいんだ、問題じゃない。 性別も特徴も思想だって違うけれど、彼らは同じコイン(人間)というモノ(者)じゃないか。 どちらの模様が表か裏かなんて、そんなの決められるなんて神様くらい。 勝手に決めても良いけれど、それは自己満足だってことは頭の隅にでも留めておいて欲しい。 さて、前置きはこのくらいにして。 二人を乗せてコインは回る、運命(さだめ)も回る。 物理法則に従って宙を舞う。神の気紛れに従い世界を舞う。 静かに迫り来る無表情な地面まで、無言で迫り来る無慈悲な現実まで。 回り狂ってしまいにゃ落ちる。 落ちた先にあるのは表(天国)か、はたまた裏(地獄)か。 それこそ正に――――神のみぞ知る。 裏(表):神はサイコロを振らない(Only Ronely Destiny) ◇ ◇ ◇ シーン2(裏) 表(裏):馬鹿騒ぎ前日譚(Before BACCANO!) 1931年、12月30日。 その日の俺は上機嫌だった。 なんでかって?決まってる。楽しい楽しいパーティだからな。 今まで色々世話になった叔父貴にも挨拶は済ませたし、これで何の憂いもなくぶっ放せるって訳だ。 まあ、元々憂いなんてこれーーーーーっぽっちも抱いちゃ居なかったがな。 真っ白なタキシードも頂いたし、もうあそこには用はねえ。 鼻歌を吹いて、仲間と一緒に目的地に向かうバスに乗り込む。 回りの奴らも皆浮かれてやがった。まるでサンタクロースを待ってるガキみたいにな。 ヘラヘラ笑いながら自分のチャカを何度もポケットから入れたり出したりしてる奴。 お偉いさんのディナーに出す時みたいに何本ものナイフをぴっかぴかに磨いてる奴。 近くの仲間と馬鹿で愉快なジョークを言い合ってゲラゲラ笑い合ってる奴ら。 俺もルーアと一緒に浮かれて浮かれて浮かれまくって、そしたらやっと駅に着いた。 「なあラッド、ホントにやるのか?今からでも遅くねえ、やっぱり……」 「なにふざけたこといってやがるんだ、フー? 目の前のご馳走どもを喰わないなんて、客として失格だぜ」 列車に乗り込む間も俺のボルテージは上がりっぱなしだ。 誰を殺す?何人殺す?どうやって殺す?楽しい妄想が脳内を駆け回る。 幼なじみのチキン野郎は今でもびびってるようだったが、そんなの関係ねえな。 ホームにたどり着き、哀れな犠牲者達を見定める。 さあて、どいつが『旨そう』かな…… 「ひょっとしたら、列車の中で結婚式でもやるのかな」 「ハッピーウェディングだね!」 頭が鶏並みに軽そうな馬鹿カップルどもがいた。カウボーイの格好なんざしやがって何時代の人間だお前は。 ハッピーウェディング?ああ、てめえらの骸の上で愉快に愉快に踊ってやるよ、今から楽しみにしてろ。 何も考えてねえような幸せそうな顔に、パチリと一つスイッチが入った。 「我々はシカゴペイサージュ交響楽団のものです。楽団の楽器はデリケートですので……」 「………………」 俺たちとのコントラストが引き立つ黒服どもがいた。どっかのすげえ楽団のメンバーらしい。 てめえらが今夜奏でていいのは楽器じゃなくて悲鳴だけだ、精々良い声で泣いてくれよ? 一号室に入っていく金持ちどものすかした態度に、俺の頭はもう一つバチンと音を立てた。 「おら、ドニー。早く行くぞ。後ろがつっかえてんじゃねえか」 「おお、分かった、多分」 「多分じゃねえ!早く行け!」 ぼろい服を着たガキどもがいた。なんだありゃ、でっけえやつだな。 まあ、相手がどんなやつでも殺して殺して殺すだけだがな。 自分たちが絶対に殺されるはずがないと思ってるんだろうな、と考えるとパチバチパチンと無数のスイッチが入る。 「全員が笑顔になれる、素晴らしい案だと思いますよ!」 「い、いやでも、この列車は……」 糸目のあんちゃんと老夫婦がなにやら話し込んでやがる。 切符とか料金とかの単語が耳に入るが、もしかすると…… 「だったら尚更買わせてください!」 やっぱり、糸目が老婦人からチケットを買おうとしているみてえだった。 馬鹿な奴だ、この列車は俺たち専用の貸し切り殺戮パーティーの会場だって言うのによお。不運な糸目の邪気のない笑顔を見て、パチリとスイッチを入れ直した。 「どうしたの、ジャッカローゼ?」 「…………乗るの止める」 不幸な奴が居るかと思えば、ここには幸運な奴もいやがったみてえだな。なあ帽子の兄ちゃん。 なんで止めたのか興味はねえが、てめえは大事な大事な一つしかない命を守ったんだからよお。拍手喝采だ。 ま、いつかどこかで俺に出会わないことを神様とやらにでも祈ってブルブル震えとけ、ってなあ! そして、列車はニューヨークに向かって動き出したってわけだ。 このフライングプッシーフットってのは悪趣味なもんでよお、正に成金趣味な代物だ。 なんでも基本構造はイギリスの王国列車を真似たもんらしくて、車輌の側面には彫刻みてえな装飾が施されてる。 ハッ、こんな豪華列車、それも一等客室に乗る奴らはどんだけ頭が緩んでるんだろうなあ。 きっと、静かで平穏な夜をロマンチックに過ごす、とかバターみてえな頭で考えてるに違いないのさ。 残念でした!テメエらはただのご馳走だ。 俺の脳味噌も胃袋も心までパンパンに満たしてくれる極上の獲物。それだけがてめえらの存在価値なのさ! さあ、今から始まる愉快なショー。死ぬまでその目に焼き付けとけよ、お客様! ってなかんじで最高の夜が始まる……はずだった。 ザーザーと、ぶっ壊れたラジオみてえに灰色の記憶が再生されていく。 くるくる、狂狂とここに来てからの記憶がノイズ混じりに回っていく。 ノイズの度にぶれる映像、俺の頭が内側からガンガン鳴っている。 どこからともなく込み上げてくる吐き気。ストレス性のものに違いねえ。 なんだこりゃ。ここからは見せられねえ、ってか? 俺の弱っちい心が必死になって俺自身を守ろうとしてんのか? 深層意識とやらがこれ以上の踏み込みを恐れてやがるってのか? 「舐めんな」 これを見なきゃ先に進めねえだろうが。ボケなすが。 ぶっ壊れた蓄音機みてえに、不快な音を混じらせながら記憶が進む。進めさせる。 『全員■■めた■な。■が君■を集めた■ラーミ■とい■者だ 』 黒く暗転した視界、起きたとたんに始まる馬鹿げた催しの説明。 居たのは俺と、ディーンとグラハムと、そして《ノイズ》と。 『な■お前。つまり■達を■し合■■て自分■高みの見■っての決め込むつも■かい。いい■え。そういうの』 ここにいる全員を殺せ、そういった糞野郎の顔が二重三重にぶれていく。 愉しみを邪魔された怒りを持って、そいつを最初の犠牲者に決定、執行。失敗。 『ラッ■・■ッソか。後■■居る■は君■婚■者の■■■・■■■■か』 背後から聞こえる、気の抜けるような爆発音。ザーザー。ノイズが強くなる。 振り向くと《ノイズ》。 ザーザー。 そこには《ノイズ》。 ザーザー。 血を流した《ノイズ》。 ザーザー。 《ノイズ》が《ノイズ》。 ザーザー。 《ノイズ》《ノイズ》《ノイズ》ルーアは《ノイズ》《ノイズ》死んだ。 ザーザー。 俺の目の前で。 ザーザーザーザー。 『……だ…………………い………す……………………………………き 』 ――――――――ルーアは、死んだ。 ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーープツン。 『バッ……バカヤロウっ!死ぬんじゃねえよ。俺に殺される前に死ぬなんてありえねえだろうが。おいっ!きいてんのか! 』 急に克明になる映像。灰色から彩りを増していく世界。 さっきからうるさかったノイズが消えて無くなった。へっ、ざまあみろだ。 自分の言葉が三流の役者みてえにはっきりと聞こえて来る。下手すぎて聞いちゃいられねえ。 映画みてえに最期の言葉を吐き出すルーア。がむしゃらに叫ぶ俺。 これはなんだ?できの悪い舞台か、質の悪い悪夢か、歪んだ妄想か? そんなわけあるか。現実なんざ、こんなモンだ。 いつ死ぬかなんて、俺たちにゃ分からねえ。一日後、一時間後、もしかしたら一分後かもしれねえ。 だからこそだ。そういう現実を分かってるからこそ、俺は俺で居られる。 そのことを全く理解してねえ奴らの腐った頭に鉛玉をぶち込むのが一番楽しいと、実感できる。 ルーアは死んだ。どうしようもなく、徹底的に決定的に、死んだ。 いや、殺された。 パチパチパチパチパチパチン! 頭のスイッチが小気味よく鳴り響く。 殺意が溢れる。熱く漲ってくる。 ぽっかり心に空いた喪失感を埋めるように。隠すように。 ひたすらに怒りが、憎しみが、俺の世界を埋め尽くす。 その矛先はギラーミン、一生こいつの名前は忘れねえ、ギラーミンに向かっていった。 だが、あいつはここにはいなかった。どこか遠くで俺たちを嘲笑ってやがる。 そして標的が消え去り、行き場を無くした矛先は、爆発した。 火傷顔と殺りあった。それを邪魔してくれやがった二人組に砲弾をぶち込んだ。 でっけえ十字架を持ったメイドを殺そうとして逃げられた。そこでようやく、俺は『覚醒』 したことに気付いた。 腕が刀になる女、宇宙人、馬鹿でけえロボットを操るガキと殺り合って、卑怯者を嘲笑った。 電気女やらサングラス男やら腕が再生する怪人やらを相手に派手に暴れちぎった。 鳥みてえに空を飛ぶガキを打ち落としたと思えば、そのガキはグラハムの坊やのことを知ってやがった。まあ死んじまったが。 馬鹿でけえ劇場で黒服とその連れを殺そうとして、失敗した。 あほくせえ玉男を、不意を突いてぶっ殺してやった。 宇宙人と刀女と殺りあってる最中にあの仮面野郎に手足をもぎ取られた。 おかしかったのはここからだ。 『そう、あの子は最期まで優しかったのね――』 『ラッド。貴方がどう思っても構わないけれど、私はあすかを誇りに思うわ――』 『先に逝った人達に、胸を張れる生き方が出来たのだから――』 電気女も人形も、俺を憎んでやがるくせに、それでも俺を殺さない。 玉男をぶっ殺したのに、仲間だったはずこいつらは俺を傷つけようとさえしねえ。 自分が殺されるリスクを恐れて、玉男の仇をとるのを諦めたのか? 『仇はとるわ。でも……殺してなんか、あげない』 ……ありえねえな。あの二人はどっちも俺を殺す機会があった。 こちとら、あの憎たらしい仮面野郎に芋虫みてえにされちまってたからなあ。 文字通り、手も足もでねえ、って訳だ、ヒャッハッハッハッハ! ……じゃあ何故だ?先に逝った奴らに胸を張れる生き方、とやらをするためか? 分からねえ、俺にはあいつらの考えてることがさっぱりわからねえ。 ただ一つだけ言えることは。 『先に逝った、ね……。さて、ルーアが惚れた俺はどんな奴だったかな』 ちょっとは頭が冷えたってことだな。 再生し終わるまで時間もあったし、俺はちょっと冷静になって考えてみることにした。 復讐を止める気はもとよりこれっぽっちもねえさ。 ただ、俺よりも年下のガキンチョが俺よりも冷静に考えてるってのが気に食わなかっただけだ。 俺だって、冷静に考えて考えて考え抜いて、それで最善の結果を出してきたのが常だったからな。 まず、今更ながら気付いたことが一つ。 あの糞野郎の言いなりになってもメリットなんぞねえ。 決闘だかなんだかしらねえが、この首輪がある時点であいつが約束を守るはずがねえ。 他の奴らを全員ぶっ殺して最後まで残っても首が破裂して終わり。 万が一決闘なんざ実際にやっても、それはあいつが絶対勝てるように仕組んだ出来レースになるに違いねえのさ。 こちとら最低で最悪なマフィア組織の一員だったからよ。口約束が信用できないなんざ百も承知だ。 じゃあ、なんで俺はこのゲームに乗った? いつも計算高くギリギリの範囲で殺し続けてきた俺が、なんでこんなイカサマゲームに嵌っちまった? 今なら分かる。俺は目の前にぶり下げられたエサに食いついた馬鹿魚だったってな。 ここに来た俺は完全に冷静さを欠いてた。 殺意ゲージは振り切れるどころかぶっ壊れて、限界をぶっちぎって回転した。制御不可能って言葉がよく似合う。 零%から百%に、百から千に、千から万に。もはやただの苦しみだ。 婚約者を失い、愛に飢え、負の感情だらけの俺の世界。 俺は紛争地帯の飢餓で苦しんでるガキみてえに腹が減った。 俺はエサに、俺の生き甲斐でもあり趣味でもある『殺し』に食いついた。 考えてみろ、腹を極限まで空かした状態で目の前にあるのはエサだ。 空腹は最高の調味料、とは良く言ったもんだ。俺は食って食って食い尽くした。 普段の俺みてえに選り好みしてる暇なんぞ無かった。空腹を満たすため、心に空いた空白を埋めるために。 俺は必死にそれに食らいついた。それがここのマナー(ルール)だったからな。 どんな不味くても、俺の口に合わなくても、喰わなきゃやってられなかった。 やけ食いってやつだ。俺らしくもねえ。 その餌に針が刺さってることも無視して、俺は馬鹿な魚みてえにただ目の前のエサを喰ったのさ。 食いつけば食いつくほど、俺(魚)はどんどんバッドエンド(陸)に近づいてくってのにな。 俺はルーアが死んだって現実を、弱っちい心の何処かで認めたくなかったのかも知れねえ。 ルーアのためとほざいておきながら、馬鹿正直に糞野郎の言葉を鵜呑みにして一直線に突っ走りやがってよお。 ハッ、笑えるぜ。今まで計算尽くで殺して殺して殺し尽くしてきたこの俺が、一人の女の死で俺自身を見失っちまうとはな。 ……天国でも地獄でもどっちでも良い。待ってろよ、ルーア。 絶対テメエの仇はとってやる。あのギラーミンって糞野郎を爪先から髪の毛一本まで殺し尽くしてる。 そのためなら、手段を選ばねえ。 そこまで考えてようやく、意識が浮上する。 くるりくるりと回りながら、記憶の海の深淵から抜け出していく。 楽しいパーティーに向かうまでの記憶が、俺の回りを逆巻いてから散り散りに散っていく。 パチンと記憶の気泡がはじけ、細かい残滓が無意識下へと還っていくのが見えた。 糞ったれなパーティの記憶が、透明な泡となって静かに上へと向かう。 俺もそれに追随するように、ただひたすら上へと、昇っていく。 上から降り注がれる光が徐々に強さを増し、現実の到来を予想させる。 茫洋から明瞭へ、纏まりのない不透明な意思が力強く明確な意志へと変化する。 暗転、そして再び暗転、目の前に夜の帳が落ちてきた。 夢と現実の狭間で、俺は壊れそうなルーアの笑顔をみた気がした。 『……ラッド』 それはとても美しくて、可愛らしくて、愛しくて。 『頑張って』 殺したいほど、愛したい顔だった。 裏(表):空騒ぎ後日談(After Genocide) ◇ ◇ ◇ シーン2(表) 表(裏):鬼の居ぬ間に洗濯(When the Demon s away, the Cat will play) ゴミの山を、ひたすら突き崩す。 細かな破片を掻き分け、大きな瓦礫は出力を絞った電撃の槍で撃ち貫く。 病院のなれの果てというだけあって、全貌はまさに「山」といった感じだ。 こんな大質量の中から真紅のローザスミスティカが見つかったのは運が良かった。 願わくば、アレも見つかってくれますように…… 「……っくしゅん!」 訳の分からない薬品の臭いがツンと鼻を刺激する。危ないモノで無ければいいのだが。 ゼロによって放たれたハドロン砲により吹き飛ばされたのは一階部分のみ。 つまり、そこから上は自重により倒壊しただけで消滅はしていない。 時々顔を覗かせる患者用のベッドや、原型を留めている椅子や机がその証拠だ。 ある程度検分すると、次は3,4メートル離れた山へと分け入り再度同じことを繰り返す。 これはあれだと分かるものは結構少ない。塵やら砂やらを被って余計に判断が付きにくい。 破損して、かろうじて液晶画面からノートパソコンだと分かるモノはまだ良い方だ。 ちらちらと目の端に見える、潰れてしまったため何か判断の付かない精密機械。 いくらするんだろう、と関係ないことを考えた。いけないいけない。集中しなければ。 新たな盛山に手を突っ込み、邪魔な廃棄物をどかしていく。 「……!?いったあ……」 ガラスか何かで少し手を切った。絆創膏が落ちていないか現金に探してしまう。 ぽたり、と少しだけ流れた血に思わず笑えてくる。 あの仮面とやり合った時は、どれだけ血を流しても身体がボロ雑巾みたいになっても戦い続けたというのに。 やはり人間は窮地に追い込まれると感覚が麻痺してしまうものなのだろう。 そう、あれは正しく窮地だった。絶体絶命、風前の灯火という言葉が似合う。 仮面の男の圧倒的な力に、為す術もなく戦闘不能に追い込まれた私達。 戦いなんて対等なものではなく、もはや作業の領域に入っていたはずだ。 どちらの、とも、何の、ともあえて言わないけれど…… 「……あの時、一体何があったのかしらね」 少しすると傷は塞がってしまった。まるで自分たちの世界の 肉体再生(オートリバース)だ。 自分の中の何かが変わってしまったのだと思うが、何が変わってしまったのかまでは理解が追いつかない。 ただ、それを不気味だ、とか嫌だ、とか考えてはいけない。そう思っている自分がいる。 あくまでも只の直感だけれども。女の勘ってやつだ。 肉体が滅びかけ、死の螺旋の中に墜ちていたあの時、確かに声が聞こえた。 「美■を■けて……ア■ァロ■……」 何と言ったのか所々が朧気で、そもそも夢だったのかも知れない。 力強く、それでいて繊細な手が奈落から私を引き寄せ、代わりに墜ちていった気がする。 意識の片隅に見覚えのある泣きそうな顔が有った気もするし、無かった気もする。 恐らく、あの時に自分はどこか変わってしまった。その結果一命を取り留めた、と言ったところか。 まあ儲けものだ、と考えてしまうのは感覚が麻痺してきた証拠なのかも知れない。 アルターやらローゼンメイデンやら魔王やらなんやら。 意味の分からないモノが多すぎて、逆にどんなことでも素直に受け止めている自分がいる。 こんなモノなんだ、と。一種の思考の放棄かも知れないけれど。 流石に、自分の身体までそうなるとは予想も付かなかったが。 ……もしも学園都市に帰れたら、検査でも受けなければいけないかも知れない。 右手をみると心電図と思しき画面が真っ二つに割れていて、少し嫌な気分になった。 さて、頭ではなく手を動かそう。 探す。希望を持って。 探す。懇願を抱いて。 こんなこと、勝手な望みなのかも知れない。 何を悠長な、と、あの殺人鬼には馬鹿笑いを持って迎えられるかも知れない。 それでも、今の自分には必要なのだ。 ここじゃなくても手に入る、とか。 あるはずがない、とか。 理性が囁いていたが、ここまで来て諦めがつかない。 ただの意地、大いに結構だ。 せめて、時間までは……………あれ? 「……あった?」 確かに、それらしきものが回りの瓦礫から独立して存在している。 恐るべきことに、本当に恐るべきことに、原形を留めている。 やはり塵芥を被り、いささか形が歪んではいるものの全壊とはほど遠い。 いや待て、喜ぶのはまだ早い。重要なのはこれそのものじゃない。 中身を伴っていなければただのガラクタ。何の役にも立たない。 むしろ希望から絶望へと落とされる分、余計に酷い。 だから落ち着け、クールだ、クールになれ御坂美琴。 はやる心を抑えながら、少し傾いたその筺を手で無理やり押し開ける。 こればかりは、電撃を使うわけにはいかない。中身を傷つけると本末転倒だ。 開けた先、目に飛び込んでくる…… 「……マジで?」 中身が……ある。ちゃんと、ある。 喜びよりも驚きの方が勝っているのはどうにかならないもんか、と他人事のように思った。急いで取り出し、確認。うん、全然使える。 この仄暗い悪夢のような舞台にも、希望はあった。 神様、ありがとう。そう祈らずには居られない。 小躍りしそうになる身を抑えながら、ふと視線を横にずらすと。 「……もう一つ?」 すぐ近くに、同じ筺が転がっている。 もしかすると……やっぱり。 中身を確認。優先度が低かった方の捜し物が、落下の衝撃で横たわっている。 なんという幸運。作為すら感じる運の良さに、もはや寒気すら感じてくる。 今まで、あいつを引き継いだみたいに運が悪かったから。 だから、今更その反動が返ってきているのだろうか。 「……って、何考えてんのよ、私」 頭に入ってきたナイーブな感情がもどかしい。 今は、そんなことを考えている時間じゃない。 ラッキースケベな事態に陥らないように、事は早急に済ます必要がある。 馬鹿みたいなことを馬鹿みたいに考えながら、私は早速作業に移った。 裏(表):鬼に金棒(Power Up!) ◇ ◇ ◇ シーン1 表(裏):殺生問答(Kill Or Live?) 「なあ、自分は死なないって思ってるか?」 空は暗く、星は瞬き、一日の終わりが近づいてきている。 この殺し合いが始まってから18時間以上が経過し、生まれた骸は半数を優に超してしまった。 生き残りはおよそ20余り。あと一日もあればけりが付くに違いない。 そんな中、廃墟と化した元病院に二つの影が何も言わず存在していた。 背が低く、若干丸みを帯びた女らしい人影。『超電磁砲』御坂美琴。 瓦礫にもたれかかりピクリとも動かない人影、『殺人狂』ラッド・ルッソ。 神秘、アヴァロンを身に宿した超能力者と、魔酒により不完全な不死者となったマフィア崩れ。 二人は互いに何も喋らず、お互いの傷が癒えていくのをじっと待っていた。 そして、両者の傷が完治して小さい方の影が動き出そうとしたその刹那、かけられた一声。 いつものように、獲物に嬉々として語るわけでもなく。 それでいて、悲しみや怒りは抱いていないその表情。 ただ純粋に疑問として発せられたその声を、御坂美琴は無視することが出来なかった。 「これっぽっちも、思っちゃいないわよ」 唇を震わせながら自然と答えを返していた。 理由は明白。彼女は本当に、これっぽっちも自分が死なないなんて思っていなかったからだ。 この瞬間に至るまで、何度命の危機に晒されてきたことか。 大きな風にその身を掬われ、地面と正面衝突した。当たり所が悪ければ脳内出血などで死んでいたかも知れない。 柄の悪い不良に襲われた。砂鉄の壁すら破壊するあの拳の一撃を受ければ、内臓破裂は間違い無しだ。 あの義手の男を倒した……いや、殺したときだって、衛宮さんがいなければ死んでいたのは自分だった。 その後も、今目の前に座っている殺人鬼に殺されかけたり、奇抜な髪型をした男に銃を向けられたり、休む暇もない。 ナインに殺されそうになった時も、今は亡き真紅とあすかがいなければどうなっていたか。 そして、先程の戦闘。 死にそうだった、等というレベルではない。 自分は確かにあの戦闘で死んだ、はずだった。 確かに感じた死の実感。 体内から消え去っていく生命の灯火。 冗談みたいに流れていく己の血潮。 満身創痍。起死回生の一撃も効かず、ただ意識を飛ばされた。 一種の臨死体験に近い経験が鮮明に身体に刻み込まれている。 死なない?ありえない。 己は本来なら既に数度は死んだ身。 何人もの命を犠牲にして運良く生き延びてきただけのことだ。 そう、何人もの命を犠牲にして…… 「で、それがなんだっていうのよ?」 少し入った暗い気持ちを誤魔化すために逆に質問を返す。 そもそも、この男に関してどうすればいいのか彼女は決めあぐねていた。 間違いなく殺し合いに乗っている存在。放置してはおけない。 しかし、さっきからこの男は何やら考え込み自分をガン無視する始末だ。 こうも無防備な相手に電撃を打ち込むのは、何というか気分が乗らない。 いっそのこと襲いかかってくれた方が気が楽になるのだが、コイツは思案に暮れっぱなしだ。 時間は惜しい。今こうしている合間にも誰かが誰かに襲われているかも知れないのだから。 そこで、完全に身体が癒えたのを見計らってアプローチをかけようとしたその時。 意外にも向こうの方からそれはやって来た。しかもまだ友好的もの、だ。 意図のつかめない質問。だけど、彼女の頭にキュピーンと電撃が走る(もちろん比喩である)。 言うならば、ある種の予感を感じたのだ。 「いやよお、ちーとばかし思うところがあって悩んでんだよなあ、俺」 風向きが変わる、予感を。 「どういうこと?」 「だからよぉ、このままここにいる奴ら全員ぶっ殺してもあのギラ-ミンって野郎にたどり着けるのか…… 俺の中でその辺が曖昧になってきちゃってるわけよ、マジで」 この男は、迷っている。 切っ掛けは些細なものかも知れない。 だが、思考になんらかの綻びが出来たのならば、必ずそれはどんどん大きくなっていく。 ならば、今の美琴にできることは、それを広げること。 この殺し合いは無意味なものだという認識を、相手に与えること。 自分はナインに唆され、一度は乗ってしまった身だ。 そして、それが間違いだと知ったからこそ、柔軟に対応できる。 ただ相手の考えを否定しても反発を生むだけ。 緩やかに、そして正確に相手の理論の隙を突く。 どんな狂人でも、行動に何らかの意味があるはずなのだ。 殺し合いに乗った人間も、様々な理由によってそうした、そうせざるを得なかったのだろう。 元の世界に帰りたいから。 好きな望みを叶えたいから。 ただ、殺したいから。 本当ならば、知り合いでもない限りその思考を辿るのは困難。 人間は互いを完全に理解することなど不可能だし、それが赤の他人ならば尚更だ。 しかしこの男、ラッド・ルッソに関しては違う。 ヒントはオープニング。記憶力がそこそこあり、場を見極める能力があり。 そして、彼と同じような『片割れ』を持っているものならば誰でも理解できる、その心情。 きっと彼は、自分の大切な人を殺した主催者に復讐がしたいのだ、と。 「例え最後の一人になっても、あんたの願いは叶わないわよ」 彼もようやく気付いたらしい。このゲームの異常性に。 何の断りもなく突然拉致された参加者達。 首輪が一切の反抗を無効化し、逆らう者には死、あるのみ。 生き残れるのは一人のみ、生き残った者はギラーミンと決闘し、勝ったならば願いを一つだけ叶えられる。 どんな馬鹿でも、しないだろう。 主催者がどんな馬鹿でも、自分が殺される危険のあるレールを敷く、はずがない。 これがまだ、生き残った者の望みを叶えてやる、というものだけならば変わったかも知れない。 しかし、決闘だ。それに勝ったならば、全ての参加者を甦らせることさえ可能だという。 実際に蘇りという奇跡が出来るか出来ないか、というのはここでは問題にならない。 そもそもの前提として、そんなリスクを背負う必要性がギラーミンには存在しない。 名誉回復?ここにいる全員を気付かれず拉致し、命の選択権を握っている時点で勝負は既に付いている。 なのに、わざわざ殺し合いなんて手間のかかることをやらせ、生き残った一人と闘って勝利するなんてまどろっこしいことをする必要は皆無だ。 あまりにも、ギラーミンの理論は破綻し尽くしている。 おかしすぎて逆に気付かない、その理屈。 今ゲームに乗っているのは、それに未だ気付いていない馬鹿か、あるいは…… 「ああ、十中八九あの野郎の決闘とか言うのはブラフだろうな。 殺し合いに乗るメリットはこれっぽっちも存在しねえ。どっちにしろ死んじまう。 ……だが、ここで問題が一つ生まれちまうんだよなぁ」 「…………なによ」 「果たして、てめえらみたいにこのゲームに反抗したとしてよ。 『本当に脱出、そしてあの糞野郎をぶっ殺せるのか』ってとこだ」 あるいは状況を冷静に、冷酷に判断できる切れ者なのだろう。 「俺の知り合いにグラハムって坊やが居てよお。俺とは別の方向にぶっ壊れてやがるんだ。 あいつの手にかかれば、どんな機械もイチコロってな。車やら、下手すりゃ列車でも解体しちまう馬鹿なのさ」 ラッドの言いたいことが、嫌なほど分かってしまう。 一方通行という反則じみた力を持つ知り合いが参加しており。 また彼女自身も最高の電撃使い(エレクトロマスター)だからこそ。 分かってしまう。理解してしまう。 「破壊のために生きてるあいつが参加してる、っつーことはよ。 そのレベルの奴でもこの首輪は外せねえ、ってことの裏返しだよな?」 ラッドは一つ勘違いしている。 単純な技術だけじゃない。超能力でも、アルターでも、恐らくここに呼ばれたものの中に首輪を解除できる力を持った人間はいない。 わざわざそのことを指摘するつもりなんかこれっぽっちも無いけれど。 仮に、殺し合いを肯定する人間が全員居なくなったとする。 それから、どうすればいい? 24時間以内に一人も死ななければ、全員の首輪が爆破されるという。 タイムリミットは、たったの一日。 彼女のように能力のあるものだけじゃない。この男のように、首輪解除に何の役に立たない人間は確実にいる。 というか、普通に考えればその手の人間の方が大いに決まってる。 下手をすれば、生き残っているのは自分以外誰も首輪解除の役に立たない人間かも知れない。 そうなれば、詰み。ゲームオーバー。勝率0%だ。 出来ることと言えば、一日に一人だけ殺して残りの大多数を生かすことだけ。 それだって、増えていく禁止エリアを考えると四日も持たない。 誰だって死にたくない。誰が好んで犠牲になどなろうか。 もしもそうなったら、誇りも何もかも捨てて大抵の人間は死にものぐるいで殺し合う。 正しく主催の思う壺。だが、なんとしても生きたいと思う意志を否定することが出来ないことも確か。 知り合いのために自ら死を選ぶ聖人だっているかもしれない。 だけれど、それは何の解決にもならない。残されたものの気持ちを考えると逆効果にもなりかねない。 結局、全員死ぬか一人だけ生きるかだけの違いだ。 この男はそのことを懸念している。 自分と、そして他の殺し合い否定派と組んでも意味がないのではないかと。 只の馬鹿じゃない。理論的に考えて、それで殺し合いを続けるべきか否か、悩んでいる。 (これは……どう答えるべきかしらね) 下手な慰みは恐らく逆効果。 彼は馬鹿っぽい言動とは裏腹に頭が切れる。 適当なことを言っても、すぐさま論破されてしまうだろう。 「力を合わせればなんとかなります」なんて言った日には殺されること請け合いだ。 ならば、ここで言うべきことは…… 「まだ情報不足よ。他の生き残り達と合流して情報を交換しなきゃどうにもならないわ」 とりあえず保留とすること。これぐらいしかできない。 時間稼ぎだと思われようが、本当にそうなのだから仕方ない。 いくらか推測は立ててあるものの、今は纏まりのないただの妄想だ。 故に、とりあえず引き延ばす。 今は駄目でも、他の対主催と出会えば活路が開けるかも知れない、という希望を含ませながら。 「はん、そんなこったろうと思ったぜ。 結局テメエも一人じゃ何も出来ない他人頼みか」 喉元まで出かかっていた反論の言葉をぐっと押さえ込む。 ここでいがみ合ってもこちらに得はない。 出来る限りは、この男を味方にする努力をするべきだ。 「で、どうするってのよ」 挑発を無視する形で会話を継続する。 一体どうするというのか。 主催は信用できない。脱出派も信用できない。 この状況で、彼はいかなる選択をとるつもりなのだろう。 警戒は怠らず、相手の反応を待つ。頬に一筋の冷や汗。 向こうが持っているのは一本の槍のみ。いざとなれば対応できるが…… 仲間は、欲しい。 切嗣さんと一緒だった時。 真紅やあすかと一緒だった時。 私はかけがえのない一時を得ていた。 誰から何処から襲われるか分からないこの世界。 もう孤独は嫌だった。一人は嫌だった。誰かが死ぬのも嫌だった。 こんな男でも、話し合って、協力して、共にハッピーエンドを迎えたい。 仲間を殺した憎い仇でも、殺し合いなんてしたくない。 温すぎる想いかも知れないけれど、もう人が死ぬのは沢山だ。 「コインかなんか、持ってねえか?」 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、運命は回り出す。 確かな変化を持って、うねりを上げて襲いかかる。 望もうと望むまいと、それは私を捕らえて放さない。 逃げられないなら、飛び込んでいくしかない。 「おお、すまねえな。えーと、こっちが表でこっちが裏ってことで。 ……てめえは、どっちを選ぶ?」 私は自分の手で、幸せな未来を切り開く。 「表」 表にしたことに意味なんて無い。 ただ、今はそういう気持ちだった。 そして、二分の一の闘いが幕を開ける。 ♂♀ 貴方は運命というものを信じるだろうか。 「表が出たらてめえに付き合ってやるよ」 目に見えない不確かなもの。それを信じる気があなたにはあるだろうか。 「裏が出たら?そんときゃ皆殺し再開だ、そんじゃ行くぜ」 彼女は信じた。彼はどうなのか分からない。 コイン(運命)がくるりくるりと宙を舞う。 それは大して高くは飛ばなかったかも知れないけれど。 落ちるまでの時間はひどくゆっくり、緩慢なものだった。 「ああ、そういやよお、一つ聞き忘れてたわ」 焦らすように跳ねるわけでもなく。 ドラマチックに回転するわけでもなく。 地面に落ちて、それでおしまい。 「お前、まさか口だけ野郎って事は……ねえだろうなぁ!」 男が低体勢で地を駈ける。 一息で僅かな距離を詰め、目の前の少女に接近する。 一切の迷いもなく。欠片の躊躇もなく。 シュレディンガーの猫は未だ箱の中。 表か裏か、観測するまで両者は均衡し続ける。 ラッド・ルッソは約束を破らない。 ただ、約束は未だ果たされていないだけだ。 彼は、御坂美琴が今までどのような変遷を経てきたか知らない。 彼女が学園都市序列第3位『超電磁砲』と渾名されていることも。 ここでどれほどの化け物達と闘いを繰り広げてきたか知らない。 彼女と共有した時間はほんの僅かでしかないから、仕方のないことだろう。 戦闘になってからでは遅いのだ。彼女がどれほど「使える」かを知る必要がある。 そんな打算も含めて、ラッドは先程の言葉を確かめたかった。 『自分が死なないだなんて、これっぽちも思っていない』 (本当にそう思ってんなら、目の前の「敵」を警戒しない、なんてことはありえねえよなあ!) 銃弾のように、拳が大気を貫いていく。 可愛らしい超電磁砲の顔に暴力の塊が向かって行く。 踏み出した一歩の先、突き出した腕の目の前、眩い閃光が彼の視界を覆い。 「……合格だ」 そして、殺人狂は一瞬早く放たれた電撃によって夢の世界へと旅立っていった。 「……馬鹿みたい」 実は、殺す気など無かったのだろう。 本気で殺すつもりなら、彼は槍を使っていたはずだ。 そんなことに今更気付いて、美琴はラッドの寝顔を覗き見る。 どこか満足そうなその顔に蹴りの一発でも叩き込みたかったが、自制。 そして、彼と自分自身を見て、比べて。 溜息をつきながら、とあるものを探しに瓦礫の中へと消えていった。 裏(表):陽気なギャングが運命を回す(Turning Point) ◇ ◇ ◇ 時系列順で読む Back タイプ:ワイルド(後編) Next 裏表トリーズナーズ(後編) 投下順で読む Back 忘れてはならないもう一人 Next 裏表トリーズナーズ(後編) Back Next あなたに会いたくて 御坂美琴 裏表トリーズナーズ(後編) あなたに会いたくて ラッド・ルッソ 裏表トリーズナーズ(後編)
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おはなさん! おはなさん! 裏表紙なのでこれくらいシンプルでもいいと思いますが、もう少し空間部分に書き込んでもよかったと思います。あと、単なるグレスケっぽいので、トーン化してみると綺麗に出るかもしれません。トーン化の方法は3年前の部誌に掲載されてたのでそれを見るか、ググれば見つかると思う。(冴凪さやか) コメント
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登録日:2023/03/30 更新日:2023/03/30 Thu 20 34 03NEW! ▽タグ一覧 犬 プロフィール 身長: 体重: 年齢: デビューした日:2020年11月6日 誕生日: 好きなもの: 苦手なもの: エピソード 配信タイトル コラボ相手一覧 リンク YouTube
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裏表トリーズナーズ(前編)◆GOn9rNo1ts シーン0 表(裏):表裏一対(Railgun Mad) 二人はコインの裏表。 決して相容れない二つのカタチ。 少女と男。 日本人とアメリカ人。 表の世界の学生と裏の世界の殺人狂。 21世紀を生きる現代人と20世紀を渡る過去人。 片割れが用いるのは己の肉体、人の手によって作られた数多くの道具。 外なる凶器をその手に握り、狂気によって人間を殺す。 「俺が殺すのは、殺して楽しいのはぁ、緩みきった奴よ、分かる? 自分は絶対安全な所にいて、次の瞬間自分が死ぬかも知れないってこれッッッッッッッッぽっちも考えてない奴だ!」 もう片方の身に宿るのは異能のチカラ、開発と努力によって得た超能力(レベル5) 内なる自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を雷電に変え、信念を持って不殺を誓う。 「――――それでも私は、きっとアンタに生きて欲しいんだと思う」 彼が愛した女のため、そして自身の欲望のために全殺戮を担うゲーム肯定派。 彼女が恋した少年、そしてこの地で会った恩人達の意志を継ぐゲーム否定派。 どちらが表でどちらが裏か、そんなの誰にも分かりゃしない。 綺麗な想いを持ってる方が表(善)、汚い望みを抱く方が裏(悪)? ルールに則り人を殺す方が表(正)、逆らって足掻く者が裏(誤)? そんなことはどうだっていいんだ、問題じゃない。 性別も特徴も思想だって違うけれど、彼らは同じコイン(人間)というモノ(者)じゃないか。 どちらの模様が表か裏かなんて、そんなの決められるなんて神様くらい。 勝手に決めても良いけれど、それは自己満足だってことは頭の隅にでも留めておいて欲しい。 さて、前置きはこのくらいにして。 二人を乗せてコインは回る、運命(さだめ)も回る。 物理法則に従って宙を舞う。神の気紛れに従い世界を舞う。 静かに迫り来る無表情な地面まで、無言で迫り来る無慈悲な現実まで。 回り狂ってしまいにゃ落ちる。 落ちた先にあるのは表(天国)か、はたまた裏(地獄)か。 それこそ正に――――神のみぞ知る。 裏(表):神はサイコロを振らない(Only Ronely Destiny) ◇ ◇ ◇ シーン2(裏) 表(裏):馬鹿騒ぎ前日譚(Before BACCANO!) 1931年、12月30日。 その日の俺は上機嫌だった。 なんでかって?決まってる。楽しい楽しいパーティだからな。 今まで色々世話になった叔父貴にも挨拶は済ませたし、これで何の憂いもなくぶっ放せるって訳だ。 まあ、元々憂いなんてこれーーーーーっぽっちも抱いちゃ居なかったがな。 真っ白なタキシードも頂いたし、もうあそこには用はねえ。 鼻歌を吹いて、仲間と一緒に目的地に向かうバスに乗り込む。 回りの奴らも皆浮かれてやがった。まるでサンタクロースを待ってるガキみたいにな。 ヘラヘラ笑いながら自分のチャカを何度もポケットから入れたり出したりしてる奴。 お偉いさんのディナーに出す時みたいに何本ものナイフをぴっかぴかに磨いてる奴。 近くの仲間と馬鹿で愉快なジョークを言い合ってゲラゲラ笑い合ってる奴ら。 俺もルーアと一緒に浮かれて浮かれて浮かれまくって、そしたらやっと駅に着いた。 「なあラッド、ホントにやるのか?今からでも遅くねえ、やっぱり……」 「なにふざけたこといってやがるんだ、フー? 目の前のご馳走どもを喰わないなんて、客として失格だぜ」 列車に乗り込む間も俺のボルテージは上がりっぱなしだ。 誰を殺す?何人殺す?どうやって殺す?楽しい妄想が脳内を駆け回る。 幼なじみのチキン野郎は今でもびびってるようだったが、そんなの関係ねえな。 ホームにたどり着き、哀れな犠牲者達を見定める。 さあて、どいつが『旨そう』かな…… 「ひょっとしたら、列車の中で結婚式でもやるのかな」 「ハッピーウェディングだね!」 頭が鶏並みに軽そうな馬鹿カップルどもがいた。カウボーイの格好なんざしやがって何時代の人間だお前は。 ハッピーウェディング?ああ、てめえらの骸の上で愉快に愉快に踊ってやるよ、今から楽しみにしてろ。 何も考えてねえような幸せそうな顔に、パチリと一つスイッチが入った。 「我々はシカゴペイサージュ交響楽団のものです。楽団の楽器はデリケートですので……」 「………………」 俺たちとのコントラストが引き立つ黒服どもがいた。どっかのすげえ楽団のメンバーらしい。 てめえらが今夜奏でていいのは楽器じゃなくて悲鳴だけだ、精々良い声で泣いてくれよ? 一号室に入っていく金持ちどものすかした態度に、俺の頭はもう一つバチンと音を立てた。 「おら、ドニー。早く行くぞ。後ろがつっかえてんじゃねえか」 「おお、分かった、多分」 「多分じゃねえ!早く行け!」 ぼろい服を着たガキどもがいた。なんだありゃ、でっけえやつだな。 まあ、相手がどんなやつでも殺して殺して殺すだけだがな。 自分たちが絶対に殺されるはずがないと思ってるんだろうな、と考えるとパチバチパチンと無数のスイッチが入る。 「全員が笑顔になれる、素晴らしい案だと思いますよ!」 「い、いやでも、この列車は……」 糸目のあんちゃんと老夫婦がなにやら話し込んでやがる。 切符とか料金とかの単語が耳に入るが、もしかすると…… 「だったら尚更買わせてください!」 やっぱり、糸目が老婦人からチケットを買おうとしているみてえだった。 馬鹿な奴だ、この列車は俺たち専用の貸し切り殺戮パーティーの会場だって言うのによお。不運な糸目の邪気のない笑顔を見て、パチリとスイッチを入れ直した。 「どうしたの、ジャッカローゼ?」 「…………乗るの止める」 不幸な奴が居るかと思えば、ここには幸運な奴もいやがったみてえだな。なあ帽子の兄ちゃん。 なんで止めたのか興味はねえが、てめえは大事な大事な一つしかない命を守ったんだからよお。拍手喝采だ。 ま、いつかどこかで俺に出会わないことを神様とやらにでも祈ってブルブル震えとけ、ってなあ! そして、列車はニューヨークに向かって動き出したってわけだ。 このフライングプッシーフットってのは悪趣味なもんでよお、正に成金趣味な代物だ。 なんでも基本構造はイギリスの王国列車を真似たもんらしくて、車輌の側面には彫刻みてえな装飾が施されてる。 ハッ、こんな豪華列車、それも一等客室に乗る奴らはどんだけ頭が緩んでるんだろうなあ。 きっと、静かで平穏な夜をロマンチックに過ごす、とかバターみてえな頭で考えてるに違いないのさ。 残念でした!テメエらはただのご馳走だ。 俺の脳味噌も胃袋も心までパンパンに満たしてくれる極上の獲物。それだけがてめえらの存在価値なのさ! さあ、今から始まる愉快なショー。死ぬまでその目に焼き付けとけよ、お客様! ってなかんじで最高の夜が始まる……はずだった。 ザーザーと、ぶっ壊れたラジオみてえに灰色の記憶が再生されていく。 くるくる、狂狂とここに来てからの記憶がノイズ混じりに回っていく。 ノイズの度にぶれる映像、俺の頭が内側からガンガン鳴っている。 どこからともなく込み上げてくる吐き気。ストレス性のものに違いねえ。 なんだこりゃ。ここからは見せられねえ、ってか? 俺の弱っちい心が必死になって俺自身を守ろうとしてんのか? 深層意識とやらがこれ以上の踏み込みを恐れてやがるってのか? 「舐めんな」 これを見なきゃ先に進めねえだろうが。ボケなすが。 ぶっ壊れた蓄音機みてえに、不快な音を混じらせながら記憶が進む。進めさせる。 『全員■■めた■な。■が君■を集めた■ラーミ■とい■者だ 』 黒く暗転した視界、起きたとたんに始まる馬鹿げた催しの説明。 居たのは俺と、ディーンとグラハムと、そして《ノイズ》と。 『な■お前。つまり■達を■し合■■て自分■高みの見■っての決め込むつも■かい。いい■え。そういうの』 ここにいる全員を殺せ、そういった糞野郎の顔が二重三重にぶれていく。 愉しみを邪魔された怒りを持って、そいつを最初の犠牲者に決定、執行。失敗。 『ラッ■・■ッソか。後■■居る■は君■婚■者の■■■・■■■■か』 背後から聞こえる、気の抜けるような爆発音。ザーザー。ノイズが強くなる。 振り向くと《ノイズ》。 ザーザー。 そこには《ノイズ》。 ザーザー。 血を流した《ノイズ》。 ザーザー。 《ノイズ》が《ノイズ》。 ザーザー。 《ノイズ》《ノイズ》《ノイズ》ルーアは《ノイズ》《ノイズ》死んだ。 ザーザー。 俺の目の前で。 ザーザーザーザー。 『……だ…………………い………す……………………………………き 』 ――――――――ルーアは、死んだ。 ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーープツン。 『バッ……バカヤロウっ!死ぬんじゃねえよ。俺に殺される前に死ぬなんてありえねえだろうが。おいっ!きいてんのか! 』 急に克明になる映像。灰色から彩りを増していく世界。 さっきからうるさかったノイズが消えて無くなった。へっ、ざまあみろだ。 自分の言葉が三流の役者みてえにはっきりと聞こえて来る。下手すぎて聞いちゃいられねえ。 映画みてえに最期の言葉を吐き出すルーア。がむしゃらに叫ぶ俺。 これはなんだ?できの悪い舞台か、質の悪い悪夢か、歪んだ妄想か? そんなわけあるか。現実なんざ、こんなモンだ。 いつ死ぬかなんて、俺たちにゃ分からねえ。一日後、一時間後、もしかしたら一分後かもしれねえ。 だからこそだ。そういう現実を分かってるからこそ、俺は俺で居られる。 そのことを全く理解してねえ奴らの腐った頭に鉛玉をぶち込むのが一番楽しいと、実感できる。 ルーアは死んだ。どうしようもなく、徹底的に決定的に、死んだ。 いや、殺された。 パチパチパチパチパチパチン! 頭のスイッチが小気味よく鳴り響く。 殺意が溢れる。熱く漲ってくる。 ぽっかり心に空いた喪失感を埋めるように。隠すように。 ひたすらに怒りが、憎しみが、俺の世界を埋め尽くす。 その矛先はギラーミン、一生こいつの名前は忘れねえ、ギラーミンに向かっていった。 だが、あいつはここにはいなかった。どこか遠くで俺たちを嘲笑ってやがる。 そして標的が消え去り、行き場を無くした矛先は、爆発した。 火傷顔と殺りあった。それを邪魔してくれやがった二人組に砲弾をぶち込んだ。 でっけえ十字架を持ったメイドを殺そうとして逃げられた。そこでようやく、俺は『覚醒』 したことに気付いた。 腕が刀になる女、宇宙人、馬鹿でけえロボットを操るガキと殺り合って、卑怯者を嘲笑った。 電気女やらサングラス男やら腕が再生する怪人やらを相手に派手に暴れちぎった。 鳥みてえに空を飛ぶガキを打ち落としたと思えば、そのガキはグラハムの坊やのことを知ってやがった。まあ死んじまったが。 馬鹿でけえ劇場で黒服とその連れを殺そうとして、失敗した。 あほくせえ玉男を、不意を突いてぶっ殺してやった。 宇宙人と刀女と殺りあってる最中にあの仮面野郎に手足をもぎ取られた。 おかしかったのはここからだ。 『そう、あの子は最期まで優しかったのね――』 『ラッド。貴方がどう思っても構わないけれど、私はあすかを誇りに思うわ――』 『先に逝った人達に、胸を張れる生き方が出来たのだから――』 電気女も人形も、俺を憎んでやがるくせに、それでも俺を殺さない。 玉男をぶっ殺したのに、仲間だったはずこいつらは俺を傷つけようとさえしねえ。 自分が殺されるリスクを恐れて、玉男の仇をとるのを諦めたのか? 『仇はとるわ。でも……殺してなんか、あげない』 ……ありえねえな。あの二人はどっちも俺を殺す機会があった。 こちとら、あの憎たらしい仮面野郎に芋虫みてえにされちまってたからなあ。 文字通り、手も足もでねえ、って訳だ、ヒャッハッハッハッハ! ……じゃあ何故だ?先に逝った奴らに胸を張れる生き方、とやらをするためか? 分からねえ、俺にはあいつらの考えてることがさっぱりわからねえ。 ただ一つだけ言えることは。 『先に逝った、ね……。さて、ルーアが惚れた俺はどんな奴だったかな』 ちょっとは頭が冷えたってことだな。 再生し終わるまで時間もあったし、俺はちょっと冷静になって考えてみることにした。 復讐を止める気はもとよりこれっぽっちもねえさ。 ただ、俺よりも年下のガキンチョが俺よりも冷静に考えてるってのが気に食わなかっただけだ。 俺だって、冷静に考えて考えて考え抜いて、それで最善の結果を出してきたのが常だったからな。 まず、今更ながら気付いたことが一つ。 あの糞野郎の言いなりになってもメリットなんぞねえ。 決闘だかなんだかしらねえが、この首輪がある時点であいつが約束を守るはずがねえ。 他の奴らを全員ぶっ殺して最後まで残っても首が破裂して終わり。 万が一決闘なんざ実際にやっても、それはあいつが絶対勝てるように仕組んだ出来レースになるに違いねえのさ。 こちとら最低で最悪なマフィア組織の一員だったからよ。口約束が信用できないなんざ百も承知だ。 じゃあ、なんで俺はこのゲームに乗った? いつも計算高くギリギリの範囲で殺し続けてきた俺が、なんでこんなイカサマゲームに嵌っちまった? 今なら分かる。俺は目の前にぶり下げられたエサに食いついた馬鹿魚だったってな。 ここに来た俺は完全に冷静さを欠いてた。 殺意ゲージは振り切れるどころかぶっ壊れて、限界をぶっちぎって回転した。制御不可能って言葉がよく似合う。 零%から百%に、百から千に、千から万に。もはやただの苦しみだ。 婚約者を失い、愛に飢え、負の感情だらけの俺の世界。 俺は紛争地帯の飢餓で苦しんでるガキみてえに腹が減った。 俺はエサに、俺の生き甲斐でもあり趣味でもある『殺し』に食いついた。 考えてみろ、腹を極限まで空かした状態で目の前にあるのはエサだ。 空腹は最高の調味料、とは良く言ったもんだ。俺は食って食って食い尽くした。 普段の俺みてえに選り好みしてる暇なんぞ無かった。空腹を満たすため、心に空いた空白を埋めるために。 俺は必死にそれに食らいついた。それがここのマナー(ルール)だったからな。 どんな不味くても、俺の口に合わなくても、喰わなきゃやってられなかった。 やけ食いってやつだ。俺らしくもねえ。 その餌に針が刺さってることも無視して、俺は馬鹿な魚みてえにただ目の前のエサを喰ったのさ。 食いつけば食いつくほど、俺(魚)はどんどんバッドエンド(陸)に近づいてくってのにな。 俺はルーアが死んだって現実を、弱っちい心の何処かで認めたくなかったのかも知れねえ。 ルーアのためとほざいておきながら、馬鹿正直に糞野郎の言葉を鵜呑みにして一直線に突っ走りやがってよお。 ハッ、笑えるぜ。今まで計算尽くで殺して殺して殺し尽くしてきたこの俺が、一人の女の死で俺自身を見失っちまうとはな。 ……天国でも地獄でもどっちでも良い。待ってろよ、ルーア。 絶対テメエの仇はとってやる。あのギラーミンって糞野郎を爪先から髪の毛一本まで殺し尽くしてる。 そのためなら、手段を選ばねえ。 そこまで考えてようやく、意識が浮上する。 くるりくるりと回りながら、記憶の海の深淵から抜け出していく。 楽しいパーティーに向かうまでの記憶が、俺の回りを逆巻いてから散り散りに散っていく。 パチンと記憶の気泡がはじけ、細かい残滓が無意識下へと還っていくのが見えた。 糞ったれなパーティの記憶が、透明な泡となって静かに上へと向かう。 俺もそれに追随するように、ただひたすら上へと、昇っていく。 上から降り注がれる光が徐々に強さを増し、現実の到来を予想させる。 茫洋から明瞭へ、纏まりのない不透明な意思が力強く明確な意志へと変化する。 暗転、そして再び暗転、目の前に夜の帳が落ちてきた。 夢と現実の狭間で、俺は壊れそうなルーアの笑顔をみた気がした。 『……ラッド』 それはとても美しくて、可愛らしくて、愛しくて。 『頑張って』 殺したいほど、愛したい顔だった。 裏(表):空騒ぎ後日談(After Genocide) ◇ ◇ ◇ シーン2(表) 表(裏):鬼の居ぬ間に洗濯(When the Demon s away, the Cat will play) ゴミの山を、ひたすら突き崩す。 細かな破片を掻き分け、大きな瓦礫は出力を絞った電撃の槍で撃ち貫く。 病院のなれの果てというだけあって、全貌はまさに「山」といった感じだ。 こんな大質量の中から真紅のローザスミスティカが見つかったのは運が良かった。 願わくば、アレも見つかってくれますように…… 「……っくしゅん!」 訳の分からない薬品の臭いがツンと鼻を刺激する。危ないモノで無ければいいのだが。 ゼロによって放たれたハドロン砲により吹き飛ばされたのは一階部分のみ。 つまり、そこから上は自重により倒壊しただけで消滅はしていない。 時々顔を覗かせる患者用のベッドや、原型を留めている椅子や机がその証拠だ。 ある程度検分すると、次は3,4メートル離れた山へと分け入り再度同じことを繰り返す。 これはあれだと分かるものは結構少ない。塵やら砂やらを被って余計に判断が付きにくい。 破損して、かろうじて液晶画面からノートパソコンだと分かるモノはまだ良い方だ。 ちらちらと目の端に見える、潰れてしまったため何か判断の付かない精密機械。 いくらするんだろう、と関係ないことを考えた。いけないいけない。集中しなければ。 新たな盛山に手を突っ込み、邪魔な廃棄物をどかしていく。 「……!?いったあ……」 ガラスか何かで少し手を切った。絆創膏が落ちていないか現金に探してしまう。 ぽたり、と少しだけ流れた血に思わず笑えてくる。 あの仮面とやり合った時は、どれだけ血を流しても身体がボロ雑巾みたいになっても戦い続けたというのに。 やはり人間は窮地に追い込まれると感覚が麻痺してしまうものなのだろう。 そう、あれは正しく窮地だった。絶体絶命、風前の灯火という言葉が似合う。 仮面の男の圧倒的な力に、為す術もなく戦闘不能に追い込まれた私達。 戦いなんて対等なものではなく、もはや作業の領域に入っていたはずだ。 どちらの、とも、何の、ともあえて言わないけれど…… 「……あの時、一体何があったのかしらね」 少しすると傷は塞がってしまった。まるで自分たちの世界の 肉体再生(オートリバース)だ。 自分の中の何かが変わってしまったのだと思うが、何が変わってしまったのかまでは理解が追いつかない。 ただ、それを不気味だ、とか嫌だ、とか考えてはいけない。そう思っている自分がいる。 あくまでも只の直感だけれども。女の勘ってやつだ。 肉体が滅びかけ、死の螺旋の中に墜ちていたあの時、確かに声が聞こえた。 「美■を■けて……ア■ァロ■……」 何と言ったのか所々が朧気で、そもそも夢だったのかも知れない。 力強く、それでいて繊細な手が奈落から私を引き寄せ、代わりに墜ちていった気がする。 意識の片隅に見覚えのある泣きそうな顔が有った気もするし、無かった気もする。 恐らく、あの時に自分はどこか変わってしまった。その結果一命を取り留めた、と言ったところか。 まあ儲けものだ、と考えてしまうのは感覚が麻痺してきた証拠なのかも知れない。 アルターやらローゼンメイデンやら魔王やらなんやら。 意味の分からないモノが多すぎて、逆にどんなことでも素直に受け止めている自分がいる。 こんなモノなんだ、と。一種の思考の放棄かも知れないけれど。 流石に、自分の身体までそうなるとは予想も付かなかったが。 ……もしも学園都市に帰れたら、検査でも受けなければいけないかも知れない。 右手をみると心電図と思しき画面が真っ二つに割れていて、少し嫌な気分になった。 さて、頭ではなく手を動かそう。 探す。希望を持って。 探す。懇願を抱いて。 こんなこと、勝手な望みなのかも知れない。 何を悠長な、と、あの殺人鬼には馬鹿笑いを持って迎えられるかも知れない。 それでも、今の自分には必要なのだ。 ここじゃなくても手に入る、とか。 あるはずがない、とか。 理性が囁いていたが、ここまで来て諦めがつかない。 ただの意地、大いに結構だ。 せめて、時間までは……………あれ? 「……あった?」 確かに、それらしきものが回りの瓦礫から独立して存在している。 恐るべきことに、本当に恐るべきことに、原形を留めている。 やはり塵芥を被り、いささか形が歪んではいるものの全壊とはほど遠い。 いや待て、喜ぶのはまだ早い。重要なのはこれそのものじゃない。 中身を伴っていなければただのガラクタ。何の役にも立たない。 むしろ希望から絶望へと落とされる分、余計に酷い。 だから落ち着け、クールだ、クールになれ御坂美琴。 はやる心を抑えながら、少し傾いたその筺を手で無理やり押し開ける。 こればかりは、電撃を使うわけにはいかない。中身を傷つけると本末転倒だ。 開けた先、目に飛び込んでくる…… 「……マジで?」 中身が……ある。ちゃんと、ある。 喜びよりも驚きの方が勝っているのはどうにかならないもんか、と他人事のように思った。急いで取り出し、確認。うん、全然使える。 この仄暗い悪夢のような舞台にも、希望はあった。 神様、ありがとう。そう祈らずには居られない。 小躍りしそうになる身を抑えながら、ふと視線を横にずらすと。 「……もう一つ?」 すぐ近くに、同じ筺が転がっている。 もしかすると……やっぱり。 中身を確認。優先度が低かった方の捜し物が、落下の衝撃で横たわっている。 なんという幸運。作為すら感じる運の良さに、もはや寒気すら感じてくる。 今まで、あいつを引き継いだみたいに運が悪かったから。 だから、今更その反動が返ってきているのだろうか。 「……って、何考えてんのよ、私」 頭に入ってきたナイーブな感情がもどかしい。 今は、そんなことを考えている時間じゃない。 ラッキースケベな事態に陥らないように、事は早急に済ます必要がある。 馬鹿みたいなことを馬鹿みたいに考えながら、私は早速作業に移った。 裏(表):鬼に金棒(Power Up!) ◇ ◇ ◇ シーン1 表(裏):殺生問答(Kill Or Live?) 「なあ、自分は死なないって思ってるか?」 空は暗く、星は瞬き、一日の終わりが近づいてきている。 この殺し合いが始まってから18時間以上が経過し、生まれた骸は半数を優に超してしまった。 生き残りはおよそ20余り。あと一日もあればけりが付くに違いない。 そんな中、廃墟と化した元病院に二つの影が何も言わず存在していた。 背が低く、若干丸みを帯びた女らしい人影。『超電磁砲』御坂美琴。 瓦礫にもたれかかりピクリとも動かない人影、『殺人狂』ラッド・ルッソ。 神秘、アヴァロンを身に宿した超能力者と、魔酒により不完全な不死者となったマフィア崩れ。 二人は互いに何も喋らず、お互いの傷が癒えていくのをじっと待っていた。 そして、両者の傷が完治して小さい方の影が動き出そうとしたその刹那、かけられた一声。 いつものように、獲物に嬉々として語るわけでもなく。 それでいて、悲しみや怒りは抱いていないその表情。 ただ純粋に疑問として発せられたその声を、御坂美琴は無視することが出来なかった。 「これっぽっちも、思っちゃいないわよ」 唇を震わせながら自然と答えを返していた。 理由は明白。彼女は本当に、これっぽっちも自分が死なないなんて思っていなかったからだ。 この瞬間に至るまで、何度命の危機に晒されてきたことか。 大きな風にその身を掬われ、地面と正面衝突した。当たり所が悪ければ脳内出血などで死んでいたかも知れない。 柄の悪い不良に襲われた。砂鉄の壁すら破壊するあの拳の一撃を受ければ、内臓破裂は間違い無しだ。 あの義手の男を倒した……いや、殺したときだって、衛宮さんがいなければ死んでいたのは自分だった。 その後も、今目の前に座っている殺人鬼に殺されかけたり、奇抜な髪型をした男に銃を向けられたり、休む暇もない。 ナインに殺されそうになった時も、今は亡き真紅とあすかがいなければどうなっていたか。 そして、先程の戦闘。 死にそうだった、等というレベルではない。 自分は確かにあの戦闘で死んだ、はずだった。 確かに感じた死の実感。 体内から消え去っていく生命の灯火。 冗談みたいに流れていく己の血潮。 満身創痍。起死回生の一撃も効かず、ただ意識を飛ばされた。 一種の臨死体験に近い経験が鮮明に身体に刻み込まれている。 死なない?ありえない。 己は本来なら既に数度は死んだ身。 何人もの命を犠牲にして運良く生き延びてきただけのことだ。 そう、何人もの命を犠牲にして…… 「で、それがなんだっていうのよ?」 少し入った暗い気持ちを誤魔化すために逆に質問を返す。 そもそも、この男に関してどうすればいいのか彼女は決めあぐねていた。 間違いなく殺し合いに乗っている存在。放置してはおけない。 しかし、さっきからこの男は何やら考え込み自分をガン無視する始末だ。 こうも無防備な相手に電撃を打ち込むのは、何というか気分が乗らない。 いっそのこと襲いかかってくれた方が気が楽になるのだが、コイツは思案に暮れっぱなしだ。 時間は惜しい。今こうしている合間にも誰かが誰かに襲われているかも知れないのだから。 そこで、完全に身体が癒えたのを見計らってアプローチをかけようとしたその時。 意外にも向こうの方からそれはやって来た。しかもまだ友好的もの、だ。 意図のつかめない質問。だけど、彼女の頭にキュピーンと電撃が走る(もちろん比喩である)。 言うならば、ある種の予感を感じたのだ。 「いやよお、ちーとばかし思うところがあって悩んでんだよなあ、俺」 風向きが変わる、予感を。 「どういうこと?」 「だからよぉ、このままここにいる奴ら全員ぶっ殺してもあのギラ-ミンって野郎にたどり着けるのか…… 俺の中でその辺が曖昧になってきちゃってるわけよ、マジで」 この男は、迷っている。 切っ掛けは些細なものかも知れない。 だが、思考になんらかの綻びが出来たのならば、必ずそれはどんどん大きくなっていく。 ならば、今の美琴にできることは、それを広げること。 この殺し合いは無意味なものだという認識を、相手に与えること。 自分はナインに唆され、一度は乗ってしまった身だ。 そして、それが間違いだと知ったからこそ、柔軟に対応できる。 ただ相手の考えを否定しても反発を生むだけ。 緩やかに、そして正確に相手の理論の隙を突く。 どんな狂人でも、行動に何らかの意味があるはずなのだ。 殺し合いに乗った人間も、様々な理由によってそうした、そうせざるを得なかったのだろう。 元の世界に帰りたいから。 好きな望みを叶えたいから。 ただ、殺したいから。 本当ならば、知り合いでもない限りその思考を辿るのは困難。 人間は互いを完全に理解することなど不可能だし、それが赤の他人ならば尚更だ。 しかしこの男、ラッド・ルッソに関しては違う。 ヒントはオープニング。記憶力がそこそこあり、場を見極める能力があり。 そして、彼と同じような『片割れ』を持っているものならば誰でも理解できる、その心情。 きっと彼は、自分の大切な人を殺した主催者に復讐がしたいのだ、と。 「例え最後の一人になっても、あんたの願いは叶わないわよ」 彼もようやく気付いたらしい。このゲームの異常性に。 何の断りもなく突然拉致された参加者達。 首輪が一切の反抗を無効化し、逆らう者には死、あるのみ。 生き残れるのは一人のみ、生き残った者はギラーミンと決闘し、勝ったならば願いを一つだけ叶えられる。 どんな馬鹿でも、しないだろう。 主催者がどんな馬鹿でも、自分が殺される危険のあるレールを敷く、はずがない。 これがまだ、生き残った者の望みを叶えてやる、というものだけならば変わったかも知れない。 しかし、決闘だ。それに勝ったならば、全ての参加者を甦らせることさえ可能だという。 実際に蘇りという奇跡が出来るか出来ないか、というのはここでは問題にならない。 そもそもの前提として、そんなリスクを背負う必要性がギラーミンには存在しない。 名誉回復?ここにいる全員を気付かれず拉致し、命の選択権を握っている時点で勝負は既に付いている。 なのに、わざわざ殺し合いなんて手間のかかることをやらせ、生き残った一人と闘って勝利するなんてまどろっこしいことをする必要は皆無だ。 あまりにも、ギラーミンの理論は破綻し尽くしている。 おかしすぎて逆に気付かない、その理屈。 今ゲームに乗っているのは、それに未だ気付いていない馬鹿か、あるいは…… 「ああ、十中八九あの野郎の決闘とか言うのはブラフだろうな。 殺し合いに乗るメリットはこれっぽっちも存在しねえ。どっちにしろ死んじまう。 ……だが、ここで問題が一つ生まれちまうんだよなぁ」 「…………なによ」 「果たして、てめえらみたいにこのゲームに反抗したとしてよ。 『本当に脱出、そしてあの糞野郎をぶっ殺せるのか』ってとこだ」 あるいは状況を冷静に、冷酷に判断できる切れ者なのだろう。 「俺の知り合いにグラハムって坊やが居てよお。俺とは別の方向にぶっ壊れてやがるんだ。 あいつの手にかかれば、どんな機械もイチコロってな。車やら、下手すりゃ列車でも解体しちまう馬鹿なのさ」 ラッドの言いたいことが、嫌なほど分かってしまう。 一方通行という反則じみた力を持つ知り合いが参加しており。 また彼女自身も最高の電撃使い(エレクトロマスター)だからこそ。 分かってしまう。理解してしまう。 「破壊のために生きてるあいつが参加してる、っつーことはよ。 そのレベルの奴でもこの首輪は外せねえ、ってことの裏返しだよな?」 ラッドは一つ勘違いしている。 単純な技術だけじゃない。超能力でも、アルターでも、恐らくここに呼ばれたものの中に首輪を解除できる力を持った人間はいない。 わざわざそのことを指摘するつもりなんかこれっぽっちも無いけれど。 仮に、殺し合いを肯定する人間が全員居なくなったとする。 それから、どうすればいい? 24時間以内に一人も死ななければ、全員の首輪が爆破されるという。 タイムリミットは、たったの一日。 彼女のように能力のあるものだけじゃない。この男のように、首輪解除に何の役に立たない人間は確実にいる。 というか、普通に考えればその手の人間の方が大いに決まってる。 下手をすれば、生き残っているのは自分以外誰も首輪解除の役に立たない人間かも知れない。 そうなれば、詰み。ゲームオーバー。勝率0%だ。 出来ることと言えば、一日に一人だけ殺して残りの大多数を生かすことだけ。 それだって、増えていく禁止エリアを考えると四日も持たない。 誰だって死にたくない。誰が好んで犠牲になどなろうか。 もしもそうなったら、誇りも何もかも捨てて大抵の人間は死にものぐるいで殺し合う。 正しく主催の思う壺。だが、なんとしても生きたいと思う意志を否定することが出来ないことも確か。 知り合いのために自ら死を選ぶ聖人だっているかもしれない。 だけれど、それは何の解決にもならない。残されたものの気持ちを考えると逆効果にもなりかねない。 結局、全員死ぬか一人だけ生きるかだけの違いだ。 この男はそのことを懸念している。 自分と、そして他の殺し合い否定派と組んでも意味がないのではないかと。 只の馬鹿じゃない。理論的に考えて、それで殺し合いを続けるべきか否か、悩んでいる。 (これは……どう答えるべきかしらね) 下手な慰みは恐らく逆効果。 彼は馬鹿っぽい言動とは裏腹に頭が切れる。 適当なことを言っても、すぐさま論破されてしまうだろう。 「力を合わせればなんとかなります」なんて言った日には殺されること請け合いだ。 ならば、ここで言うべきことは…… 「まだ情報不足よ。他の生き残り達と合流して情報を交換しなきゃどうにもならないわ」 とりあえず保留とすること。これぐらいしかできない。 時間稼ぎだと思われようが、本当にそうなのだから仕方ない。 いくらか推測は立ててあるものの、今は纏まりのないただの妄想だ。 故に、とりあえず引き延ばす。 今は駄目でも、他の対主催と出会えば活路が開けるかも知れない、という希望を含ませながら。 「はん、そんなこったろうと思ったぜ。 結局テメエも一人じゃ何も出来ない他人頼みか」 喉元まで出かかっていた反論の言葉をぐっと押さえ込む。 ここでいがみ合ってもこちらに得はない。 出来る限りは、この男を味方にする努力をするべきだ。 「で、どうするってのよ」 挑発を無視する形で会話を継続する。 一体どうするというのか。 主催は信用できない。脱出派も信用できない。 この状況で、彼はいかなる選択をとるつもりなのだろう。 警戒は怠らず、相手の反応を待つ。頬に一筋の冷や汗。 向こうが持っているのは一本の槍のみ。いざとなれば対応できるが…… 仲間は、欲しい。 切嗣さんと一緒だった時。 真紅やあすかと一緒だった時。 私はかけがえのない一時を得ていた。 誰から何処から襲われるか分からないこの世界。 もう孤独は嫌だった。一人は嫌だった。誰かが死ぬのも嫌だった。 こんな男でも、話し合って、協力して、共にハッピーエンドを迎えたい。 仲間を殺した憎い仇でも、殺し合いなんてしたくない。 温すぎる想いかも知れないけれど、もう人が死ぬのは沢山だ。 「コインかなんか、持ってねえか?」 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、運命は回り出す。 確かな変化を持って、うねりを上げて襲いかかる。 望もうと望むまいと、それは私を捕らえて放さない。 逃げられないなら、飛び込んでいくしかない。 「おお、すまねえな。えーと、こっちが表でこっちが裏ってことで。 ……てめえは、どっちを選ぶ?」 私は自分の手で、幸せな未来を切り開く。 「表」 表にしたことに意味なんて無い。 ただ、今はそういう気持ちだった。 そして、二分の一の闘いが幕を開ける。 ♂♀ 貴方は運命というものを信じるだろうか。 「表が出たらてめえに付き合ってやるよ」 目に見えない不確かなもの。それを信じる気があなたにはあるだろうか。 「裏が出たら?そんときゃ皆殺し再開だ、そんじゃ行くぜ」 彼女は信じた。彼はどうなのか分からない。 コイン(運命)がくるりくるりと宙を舞う。 それは大して高くは飛ばなかったかも知れないけれど。 落ちるまでの時間はひどくゆっくり、緩慢なものだった。 「ああ、そういやよお、一つ聞き忘れてたわ」 焦らすように跳ねるわけでもなく。 ドラマチックに回転するわけでもなく。 地面に落ちて、それでおしまい。 「お前、まさか口だけ野郎って事は……ねえだろうなぁ!」 男が低体勢で地を駈ける。 一息で僅かな距離を詰め、目の前の少女に接近する。 一切の迷いもなく。欠片の躊躇もなく。 シュレディンガーの猫は未だ箱の中。 表か裏か、観測するまで両者は均衡し続ける。 ラッド・ルッソは約束を破らない。 ただ、約束は未だ果たされていないだけだ。 彼は、御坂美琴が今までどのような変遷を経てきたか知らない。 彼女が学園都市序列第3位『超電磁砲』と渾名されていることも。 ここでどれほどの化け物達と闘いを繰り広げてきたか知らない。 彼女と共有した時間はほんの僅かでしかないから、仕方のないことだろう。 戦闘になってからでは遅いのだ。彼女がどれほど「使える」かを知る必要がある。 そんな打算も含めて、ラッドは先程の言葉を確かめたかった。 『自分が死なないだなんて、これっぽちも思っていない』 (本当にそう思ってんなら、目の前の「敵」を警戒しない、なんてことはありえねえよなあ!) 銃弾のように、拳が大気を貫いていく。 可愛らしい超電磁砲の顔に暴力の塊が向かって行く。 踏み出した一歩の先、突き出した腕の目の前、眩い閃光が彼の視界を覆い。 「……合格だ」 そして、殺人狂は一瞬早く放たれた電撃によって夢の世界へと旅立っていった。 「……馬鹿みたい」 実は、殺す気など無かったのだろう。 本気で殺すつもりなら、彼は槍を使っていたはずだ。 そんなことに今更気付いて、美琴はラッドの寝顔を覗き見る。 どこか満足そうなその顔に蹴りの一発でも叩き込みたかったが、自制。 そして、彼と自分自身を見て、比べて。 溜息をつきながら、とあるものを探しに瓦礫の中へと消えていった。 裏(表):陽気なギャングが運命を回す(Turning Point) ◇ ◇ ◇ 時系列順で読む Back タイプ:ワイルド(後編) Next 裏表トリーズナーズ(後編) 投下順で読む Back 黒の騎士団(後編) Next 裏表トリーズナーズ(後編) Back Next あなたに会いたくて 御坂美琴 裏表トリーズナーズ(後編) あなたに会いたくて ラッド・ルッソ 裏表トリーズナーズ(後編)