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地球防衛戦線ダイガスト 第二話 この素晴らしき世界 三月に入って通常国会は一層の荒れ模様となっていた。 年明けに突如として表れ、世界各国で宣戦布告をおこなった銀河列強諸国。 彼らとの奇妙な戦争状態は、それ以上に奇妙な国体であった『平和国家日本』の屋台骨を、今も震撼させている。 帝政ツルギスタン、セラン諸惑星連合。 日本に宣戦布告した二つの星間国家との限定戦争は既に4回を数え、 その結果は自衛隊の多大な損害に加えて、北海道を帝政ツルギスタンに占領されるという事態にまで発展してる。 その上で、昨日の4戦目。 突如として総理の命令で派遣されたダイガストなるスーパーロボットにより、日本は初めての勝利を得た。 ――しかし、どうした訳かこれが新たな火種となった。 「総理、あなたは国民に隠してあのような兵器を作っていたと言うのですか!」 再び野党の首魁に転落した『鳩山田』前内閣総理大臣は、どこを向いているか解らないと定評のある目を 国場総理に向け、最前より的外れな質問を繰り返している。 最大野党 民権主体党――略して民主党――は一時マスコミの絶大な支持を得て与党をやっていたが、この鳩山田の隣人を無差別に愛せよという『YOU愛』政策により、 無差別外国人参政権とか無差別外国人子供手当てとか無差別外国人移住計画とか、ちょっとおかしな路線に舵を切りすぎて国民に総スカンを食らい、早々に野党に逆戻りをしていた。 だが行過ぎたリベラル主義を共有するマスコミの支持は相変わらずであり、今もマスコミ受けする政権叩きに余念がない。なにしろ、 「あのような凶悪な兵器を有すると言う事は、アジアの人々に60年前の侵略戦争の痛みを思いだせます。 早急にアジアの人々に謝罪し、平和的利用方法としてアジア各国との共有を図るべきです! 『YOU愛ロボット構想』です!!わたしはアジアの人々の命を守りたい!命を守りたい!命を守りたい!」 さすがに党員からも取り巻き以外からは拍手があがらない。 国場総理は『どこにでもいそうなおっさん』という寸評通りの外見で、場違いな野党党首の質問に疲れたのか、だるそうに息を吐いた。 政権与党に返り咲いた自立民主党――略して自民党――だったが、前政権が世界不況に無策であった分を取り返すため奔走する筈が、 何の因果か異星の侵略者という冗談のような問題を抱える羽目になっていた。 「あなたは列強諸国との『不平等』戦時協定を覚えていないのか?まぁ忘れているようだから教えて差し上げるが、 一、限定戦争は二週に一度。多数の国家と交戦中である場合、当事国家同士の話し合いで原則は履行される。 二、戦略兵器の使用は禁止。使用の際は戦争犯罪として彼らの法で裁かれる。 三、これは国家の命運をかけた正規戦である。当事国は如何なる軍事同盟の履行も許可されない。 ダイガストの共有は、これの三番に抵触するのでは?」 「なぜそんな不平等条約を勝手に結ぶのですか!?市民に対する裏切りだ!」 「いきなり北海道と太平洋に大使館と言い張る全長1キロ越えの宇宙船が降りて来て、 最初の宣言が戦線布告だった連中と、どうやって戦争意外の話し合いが可能と? それに対話の努力は今もって続いている」 「ならば直ぐにダイガストを出せば良かったでしょう」 「去年に事業仕分けとか言って関連費用を軒並みカットしたのは誰でしたかな? ロボットで世界一になる必要はあるんですか、でしたか? お陰で『大江戸先進科学研究所』でのダイガスト開発は遅延の一途だ」 「ですからEUのように彼らに国体として認めてもらえば良いのです! アジア共同体です!!私はアジアを守りたい!!」 「元総理の言うアジアとは、どこからどこまでで? 海岸部から焦土作戦を繰り返して後退を続ける中華人民共和国と、先日南北あわせて列強の手に落ちた分断国家ですか? もしも東南アジアも含めるのなら、関係諸国と、その交戦国の列強と、一体どれだけの国と調整をする必要があるのか、数えて言ってるのでしょうな? タイムリミットは?また3月ですかな?国民は在日米軍の撤退を、アナタがた民主党の沖縄基地移転問題での不手際だと認識していますよ」 「あれは米帝が自国防衛のために勝手に撤退したのです!後世の市民の皆さんはきっと判ってくれます! ゼロベースからです!異星人基地なき安保です! いや、そもそもわたしが聞きたいのは、ダイガストに関する情報公開が余りに少ないことです! これの理由を聞いているのです!ダイガストは非核三原則に抵触しているのか? ダイガストによって破壊活動が行われた場合の関係法整備は? 誰が、どのような資格と免許によって動かしているのか?」 そうだそうだ。取り巻き連中から同調の声があがる。 国場は眩暈を覚えた。こいつらは日本の存亡の危機を理解しているのか?自然、眉間の皺は深くなり、睨みつける様な顔になる。 「ダイガストは核動力ではありません。 ダイガストの協力による防衛活動によって生じた国民財産の破壊に関しては、まずは自衛隊の交戦規程と軍法から作成せねばならない。 ダイガストの操縦者達は然るべき訓練と資格を得た者が取り扱っている!」 あまりに馬鹿馬鹿しく、次第に国場の声のトーンが荒々しくなってくる。 「何よりダイガストに関する情報は原則非公開!国会中継もインターネットで配信されている。 ここでの答弁で、あたら銀河列強に利する情報を提供するわけにはゆかない!」 「横暴だ、ファシストめ!私は市民の権利を守るぞ!」 その権利自体が奪われかねない事態であるのだが、鳩山田のように政治活動が権力闘争のみという議員では、 政治というものを声を張り上げるためのツール以外には執れないのだろう。 名前を書いたら死んでくれるノートないかなぁ…先程から漫才のような議事録をせっせと作成している書記官は、ふと、そう思ったという。 「『皇国』の議会には道化師がいるのかね?」 見事なプラチナブロンドを後ろへ撫で付けたカイゼル髭の中年男性は、なんとも渋みのある声でそう評した。 そこは宮廷を思わせる煌びやかな広間だった。天井のシャンデリアも壁の燭台も光源はすべて電灯だが、意匠を凝らしたガラス細工はいかにも大時代的だ。 部屋の中央には縦に伸びた巨大な卓が一つ。卓には10名程の、これまた大時代的な騎兵将校のような制服を着用した男達が着席している。 そして彼等が苦笑やら嘲笑やらを交えて眺めているのが、壁面のモニターに映し出されている日本国の国会中継だった。 「かのロボットに関する質疑応答があると言うから見てみたが、収穫は無いようだな」 カイゼル髭の男、ハンス・グラーフ・ルドガーハウゼン大剣卿――いわゆる大将クラス――は元々期待などしていなかったのだろう、 形ばかりの溜め息をつき、視線を卓に着いた部下たちに向けた。 言うまでもなく、大時代的な格好をした集団とは日本国と交戦状態にある銀河列強、帝政ツルギスタンの将校達であり、 ルドガーハウゼンはその尖兵たる第三外征旅団の総指令官に他ならない。 卓の末席にはアフバルト・シュバウツァーの姿もあり、おそらくは高級将校のみが顔を連ねているのだろう。 居住まいを正したルドガーハウゼンは卓に肘をついて手の指を組むと、席次では中ほどに着席している男に声をかけた。 「それでは分析官の意見を伺おうか。あのダイガストというロボットに関して」 発言を促された分析官はテレビのリモコンほどの携帯端末を操作し、会議室のモニターを昨日の戦闘の映像に切り替える。 アフバルトだけが強く奥歯を噛み締めていた。 「結論から申し上げますと、かのダイガストなるロボットは、極めて攻撃能力にベクトルを偏らせたロボットであります。 その戦闘能力は先日の戦闘でも判明したとおり、対応を誤ればブレーディアンを凌駕します」 とたん、将校達がざわめく。分析官はかまわず続けた。 「まず最初にランツェタイプの儀仗兵を破砕した右腕部を射出する兵装ですが、直撃の瞬間に先端部に視認出来るほどのエネルギーフィールドが発生しています。 これは着弾点より内側に衝撃力が浸透する、いわば道の役割を果たしている攻性の力場です。 ゆえに、ランツェの内部を破壊した衝撃が、内部機構の破壊による爆発を伴い、着弾点の反対側にブラスト炎として噴出したのです。 この力場は後のブレーディアンとの格闘戦にも微量ながら確認されており、 ダイガストの拳に打擲(ちょうちゃく)以上の破壊力を与えていると推測します。 次にダイガストの腰部装甲を楔として射出した兵装ですが、機体と楔をつないでいた力場は、我々の艦艇の錨と同様のシステムだと思われます。 またダイガストの所持武装と思われる誘導弾、大砲、剣ですが、全て機体後方の空間を歪曲・圧縮し、格納している事が確認されました。 こちらもギャラクシー・ダイソン社の吸引力の弱まらない惑星改造掃除機等で用いられるシステムと酷似しています」 モニターでは調度ダイガストの腰裏あたりから、空間に波紋を描くようにしてミサイルの弾頭が顔を覗かせる動画が流れている。 「それはつまり…」 卓の末席の一人が、腕組みしをしながら口を開いた。 「列強のどこかと皇国がつるんでいると?」 忌憚無い意見を述べる場でもないだろうが、その男は不遜な物言いを気にした風もなしに続けた。 「もっと言うのなら、自分達の技術に敗れたわけかい、僕らは?」 ブラウンの髪を奇麗に撫で付け、口髭をたくわえた壮年の男は、なんとも呪わしい可能性を事も無げに言ってのけた。 黙っていれば伊達男だろうが、微かに愉快そうに細められた目や、端だけ器用に歪めた口、 なにより物怖じしない不遜な物言い、どれをとっても『イイ性格』をしているのが窺える。 ヘルマン・ファルケンハイム大刃士。不遜が軍服を着ていると渾名される、第三外征旅団の名物将校だった。 「大剣卿、これは由々しき事態ですな」 「ファルケンハイム、卿(けい)も愉しそうに話の腰を折らないでくれたまえ」 ルドガーハウゼンにぴしゃりと釘を刺されても、ヘルマンは肩をすくめておどけて見せるのみだった。 幕僚たちの中には露骨に顔をしかめるものもいたが、 なにしろヘルマン・ファルケンハイムは武名と浮名の両方をとどろかす伊達者で、GBCの人気投票にも名が挙がる有名人である。 全ての軍事行動が経済活動で括られる銀河列強においては、はっきり言って幕僚よりも影響力が強かった。 そして、誰しもがそんな軍隊を快く思っているわけでは無いという事実が、幕僚たちの表情から窺えた。 分析官は律儀にヘルマンがそれ以上口を開かないことを確認してからレポート用紙の次をめくる。 「…続けます。他にダイガストが用いた武装としては、戦闘機に搭載されている誘導弾に、巨大な大砲、 それに小口径――我々にとってですが――の電磁投射砲がありますが、どれも多少の改良はあれ、地球人の文明レヴェルを逸脱してはいません。 問題は最後の、ブレーディアンを斬り裂いた剣ですが…高確率で、ソルニウム製であるかと」 途端、これまで以上のざわめきが会議室に沸き立った。一様に恐れに近い感情が、各自の口から驚きの語句を伴って出ているようだった。 その動揺を遮り、ルドガーハウゼンは問うた。 「本当かね?」 「自ら発光する金属。発光の正体は分子間結合を崩壊させる波動。このような金属は我々の既知宇宙ではソルニウムの他にはありません」 「200年前の銀河帝国内の紛争で周辺宙域ごと消滅した惑星ソル… その原因である、惑星を構成した禁忌の物質ソルニウム…皇国人はどこで手に入れたのか、いや、その取り扱いを知っているのか?」 「今の時点ではなんとも」 分析官は首を横に振るう。 何しろデータが少ない。見たものを、見たままに答える他になかった。が、だからこそ分かった事もあった。 「以上の分析結果から、ダイガストは我々列強の技術を取り込んでいると思われます。 しかし光学兵器や粒子兵器の存在が確認できないことから、その技術水準はあくまで地球側がベースであり、おそらくは純粋物理力のみに偏らざるを得なかった… 現にシュバウツァー大刃士の攻撃は全てダイガストに何らかの損害を与えています。 ダイガストの拳を覆っていた力場を応用すれば、防御転用も出来た筈。 それが無いと言う事は、即ち、ダイガストは防御力に欠陥を抱えている、そう断言できます」 おお、と将校たちが賛嘆の声を上げる。その中でも最も声が大きかったのは、アフバルトやヘルマンと同じく、末席に座る中背で筋肉質の男だった。 なんと言うか、獣じみた印象の男だ。 大時代的なツルギスタンの将校団にあって、その容貌は明らかに異質だった。 顎鬚はモミアゲとつながり、両の眉毛も薄っすらと眉間で繋がっている。歪めた口元に見えるのは発達した犬歯。 そう、まるで映画の狼男が、月を見て変わってゆく途中のような。 ゲオルグ・バウアー刃士――いわゆる少尉~中尉と同等――は、勇猛というより獰猛な、第3外征旅団の斬り込み役だ。 彼とヘルマン、アフバルトの3人こそ、栄えある第3外征旅団の機甲部隊隊長。日本人にとっては忌むべき侵略者の現場指揮官達である。 「ならば『俺の獣達』が鎧袖一触に食い破ってくれよう」 ゲオルグが豪胆に言ってのけると、隣に座るヘルマンは片方の眉だけを器用に曲げ、冷ややかに呟く。 「聞いていなかったのかね、かのダイガストの攻撃力は強大であると。 卿の手勢では、みすみす向うの懐に飛び込むようなものだろう」 「ぬかせ。貴様の部隊こそ、あのヒョロヒョロ揃いでは荷が勝ちすぎるわ」 ふん、と荒い鼻息をつく。 どうも前線指揮官達は協調という言葉とは縁が遠いらしい。 確かに銀河列強のような限定戦争では個人技こそが華となり、異なる部隊間では協力する価値も薄くなる。 ダイガストの防御機能は脆弱。軽口が軽口を呼び、楽観論が会議の空気を支配していた。 アフバルトだけがダイガストと切り結んだ経験から難しい顔をしている。 いや、いま一人。ルドガーハウゼン大剣卿は沈思黙考し、場の空気に乗らない。 彼は考えていた。 『いかに脆弱な防御であろうと、外征旅団は儀仗兵に距離をとらせて、鉄の雨を降らすような戦を執れない。 視聴者がそれを許さないし、強い帝室を喧伝し続ける我が国も、たった一機のロボットにそこまでの作戦を容認しないだろう… 結局は正面きって殴りあわざるをえんのだ。絶対足る攻撃性能を持つ単騎… これほど限定戦争と相性の悪い相手はいない…狙って造られたのか?誰が?』 ルドガーハウゼンには会議室の空気が重苦しいものに感じられてならなかった。 四畳半ほどの部屋には4人掛けのシートが向かい合わせに二つ。 その間には空の大きな油缶が置かれ、室内で消費される大量の煙草の吸殻を飲み込んでいる。 他に何も無い事から、その部屋が専用であり、単能であることは確実だった。 つまりは喫煙室。他人に後ろ指差されながら、好き好んで自分の呼吸器を痛めつける行為を行う、神聖で犯されざる空間である。 そこで『わかば』をうまそうに吸いつつ、携帯電話で会話をしている初老の男は…なんというか、怪人物という表現が最も適切であろうか。 濃い黒髪とすっかりと色の抜けた白髪とがストライプになった頭髪を、首の後ろまで伸ばして講談の由緒正雪みたいに撫で鋤いている特徴的過ぎるヘアスタイル。 白衣を着用しているということは研究者なのだろうが、素足にゾウリ履きという何ともスマートでない格好。 顔に至っては四角四面で、白衣より作業服を着て現場を闊歩しているほうが似合いそうな風体だった。 「ほうほう、それで、いよいよか」 怪人物は親しげに電話の相手と会話していた。 電話口から聞こえる声は男の物で、日本国民なら最近のニュースでよく耳にする声だと思ったろう。その声は言葉少なであるが、厳かだった。 「ああ、決行だ」 「野党の了解は取っていなかったようだが…」 「あそこは前総理の基盤だからな、首を縦に振るわけがないさ。それに、野党の了解を待っていたら取り返しがつかなくなる。 民主党のおかげで官房機密費の自由度は減ったが、こんな時だ、使わせて貰った」 「野党連中には聞かせられん話だな」 「戦争だからな。やるからには『勝つ』さ。例え…」 そこで電話の向こうの男は言葉を区切る。電話口でも逡巡を感じ取れた。 「…例え、焼かれる国民が出たとしてもだ」 「戦後60年、ワシらが伝え損ねてしまった事だ…」 「もう目は背けられない。耳は塞げない。敵はそこにいるんだ。 しかし幸運じゃないか、え?誰憚る事無く言えるんだ、悪いのは異星人だ、なんて」 「そして人々の希望を一身に受ける正義のスーパーロボット。まるで子供の夢じゃないかね」 「君の研究費の明細は悪夢そのものだがね」 「はははは…その件についても頼むよ。ダイガストはまだまだ足りない物ばかりなんだ」 「期待はしないでくれよ。それじゃあ、な、『大ちゃん』」 「またな『国ちゃん』」 実に親しげに互いを呼び合うと電話は切れた。 怪人物はちびた『わかば』を缶に投げ捨て、喫煙室を出る。 開けた視界に飛び込んできたのは、なんとと言うか、案の定というか、巨体を横たえたダイガストの姿だった。 同時に金属の擦過音と人の怒鳴りあいで聴覚が飽和する。 天井の高い工場のような施設には多数の作業員が詰めていて、ダイガストの上を行き来しては装甲の張り替えやら、内部機構のチェックやらに従事していた。 と、怪人物が突然、大きなくしゃみをする。 「…むぅ、また誰かがワシの事を噂しとるな。 どうせ宇宙人連中だろうが、どんだけ雁首揃えたってこの地球が宇宙に誇る碩学、大江戸多聞(オオエドタモン)博士のダイガストに勝てるモンでないわ」 誰が聞いてもいないのに自己紹介をしつつ、怪人物こと大江戸先進科学研究所 所長兼主任研究員、大江戸多聞は『かか』と大笑した。 ちょうどその頃、北海道の大地に降り立った侵略者の宇宙船の中で、 ルドガーハウゼンが確かにダイガストに関して頭を痛めていたのだが、その事を大江戸博士が知る由もない。 それでも大江戸博士は、どこかで、誰かが、自分の天才を褒めちぎっていると思って疑わない。 しかし、ごく一般的な常識を持つ人にとって、大江戸博士とは号して以下の通りである。 天才と何とかの境界である紙一重を、またいで超えてしまった人、と。 次回予告 失落する北海道に国場総理が行った窮余の策とは… そして青森を掛けた限定攻勢に臨むダイガストは、陸上自衛隊に拒絶される。 官と民、軍人と文民。 敵を前にしても立場の壁は越えられないのか? 次回 地球防衛戦線ダイガスト『たずさえぬ手と手』 この国を好きではいけないのですか?
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デザイナー 声優 神姫解説 性格セリフ一覧 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 覚えるパッシブスキル一覧 神姫固有武器補正 神姫考察 総評・運用 神姫攻略法 お迎え方 アップデート履歴 コメント デザイナー かこいかずひこ(別名義で「トリガーハート エグゼリカ」を担当) 声優 遠藤綾(マクロスF:シェリル・ノーム、らき☆すた:高良みゆき、他) 神姫解説 鷲をモチーフに空戦用機としての性能を高めた神姫。推力重量比の向上に比重がおかれ、機動性を重視してスパンを短縮した主翼と強化スラスターによる豪快な高G機動は、対地目標攻撃に高い威力を発揮する。AIはバトルにおいて結果だけでなく内容にもこだわるタイプに設定され、高貴な印象を与える言動が多い。 名称:鷲型ラプティアス(わしがたらぷてぃあす) メーカー 素体:A/cute Dynamix 武装:A/cute Dynamix 型番:Acd023_e フィギュア発売:2010年12月16日 主な武装:フェザーエッジ(リアパーツの後ろに装備している、名前の通り羽根をモチーフとした小剣。後述するレッドスプライトの先端に装着して銃剣にしたり、腰裏に装備されているコヴァートアーマーに2つ装着して鋏のような武器にしたり(バトマスではこのフェザーエッジを2つ装着した状態でシールド扱いになっている)と汎用性が高い。バトコンではフェザーエッジのみ双斬撃武器として実装) レッドスプライト(ハンドガン。イラストでは銃口が赤いレンズっぽく描かれており、どう見ても光学系の銃に見える。レッドスプライトとは、雷の発生時に高度50~80キロ(つまり雷のはるか真上)で発生するという発光現象のこと。バトコンでは片手ライトガン) VGスラッシャー(リペイント版であるラプティアス・エアドミナンスの装備で、大型の斧に見えるがバトマスでは大剣。刃の部分は、エアドミナンスで新規採用された大型翼を転用する形となっており、VGの名称はおそら<VG翼(可変翼/Variable Geometory wing)から取られたもの)>。バトコンでは未実装) フロンタルシェル(ヘッドパーツ。開閉の差異などで水増しが多いバトコンで、なぜかこれだけフェイスオープン状態でのみ実装。ちなみにバトマスでは開閉の有無で二種類実装されており、RAを発動するにはクローズ状態が必要=顔が見れない、という有様だった) アキュート・ダイナミックス社が、アーティルと同時に開発した空中戦用MMS。通称「らぷちー」。 背部ハンガーに装備されたパーツの組み替えにより、ウェポンプラットフォーム、スラスターユニット等、多くの機能を付与することが可能な多機能モジュールシステムにより、高い拡張性を発揮する。 装甲部位や基本搭載武装を厳選、推力重量比の向上に比重を置いた仕様となっており、対戦では機動性を重視してスパン(横幅)を短縮した主翼と強化スラスターによる豪快な高G機動で敵を翻弄、ドッグファイトや対地目標攻撃に威力を発揮する。 また、フロンタルシェルと呼ばれるヘッドギアにより、ヘッド/フェイス部分の防御力を高めると同時に、強力な内装センサーにより、モチーフとなった猛禽類のような戦域情報把握能力を獲得している。 さらにタッグマッチにおいてはアーティルとの連携で全戦域をカバーすることが可能であり、戦術的に大きな効果を発揮する(バトコンではパッシブスキルとして実装されている)。 発売時期が公式展開の末期だったため、ナンバリングが存在せずバトロンに参戦していない神姫のひとり。バトマス以降のゲームには登場しているものの、その多くが公式展開初期の作品群であるコミックやノベライズには出番がなく、アニメでもモブキャラとしての参加に留まっていた。 なお発売当時、相方とのセット購入特典として大剣「ギュリーノス」がプレゼントされていた。 実神姫は3rdTall素体を採用し、長身でスリムな体型。 リカラー版のエアドミナンスは上記の通り武装が増えた反面、指で触れただけでも素体の塗装が剥がれてしまう個体がみられる。ユーザー責任になるが、中古でそういう個体と当たった場合はトップコーティングを施すと良いだろう。 性格 公式の文にもあるように、高貴なお嬢様…というかお姉さまといった性格。 また、よくある高貴=慢心しやすいというわけではなく、日々特訓を怠らない努力家でもある。 その熱意はオーナー自身にも向けられ、オーナー用の特訓メニューを用意してくれるほど。 余談だが、パートナーとのズレが大きいほど、お互いの歩幅がかみ合わずにギスギスしてしまうもの。 特訓はきついかもしれないが、努力をきちんと評価し、褒めてくれ、更なる高みへ共に行こうとする彼女は、 人生において最高のパートナーになりえるかもしれない。 凛々しい表情・ウィンク・笑顔ととても魅力的。ラプティアス様がみてる。 セリフ一覧 + マスター、ナイスファイト! ログイン時 通常(朝) ようこそ。やっと来ましたわね。さあ早く一緒に特訓いたしましょう。 おはようございます。今日もよろしくお願いいたしますわ。 通常(昼) ごきげんよう。ランチは何処へ参りましょうか? ごきげんよう。どうしまして?あたくしの顔に何か? 通常(夕) ごきげんよう。あら、もう夕刻ですの?時が経つのは早いですわね。 おかえりなさい。丁度今、負けないために何が必要か、考えていたところですわ。 通常(夜) 戻りましたのね。あたくしの力、余す所なく引き出してくださいましね? こんばんは。もういいお時間ですわね。あたくしはまだまだ戦えますわよ。 通常(深夜) おかえりなさいまし。特訓の成果が出ているか、早速バトルで試しませんか? こんばんは。遅くまで特訓ご苦労様。でも無理はなさらないようにね? 年始 マスター。あけましておめでとうございます。今年も自己研磨に努めて参りますわ。 (ボイス) あけましておめでとうございます。新年を迎えて、何か抱負などございまして?叶えられるよう、精進いたしましょうね。 バレンタイン こちら、大した物ではございませんがチョコレートを用意しましたので、よろしければ。もちろん、本命チョコなんですのよ ホワイトデー まぁ!バレンタインのお返しですの!?嬉しいですわ!早速お茶でも入れて、頂くとしますわね! エイプリルフール ゴールデンウィーク 夏季 夏ですわねぇ。たまには海水浴というのもいいですわね。遠泳なんていかがかしら? 水着キャンペ ただ今期間限定イベント、開催中ですわよ。特別に水着を着るそうですので、期待なさってくださいましね? 七夕 七夕ですわね。あたくしの願い…(プレイヤー名)はご存知でしょう? ハロウィン ハロウィンといえば仮装ですわね。お菓子をいっぱい戴けるよう、凄いお化けで挑んでみせますわ。 冬季 冬ですわねぇ。偶にはハイキングとか如何かしら?冬山登山など、鍛えられそうですわね。 クリスマス (プレイヤー名)。せっかくですからイルミネーションでも見に行きませんこと?エスコートしてくださいましね♪ (ボイス) メリークリスマスですわね。この聖なるよき日、よろしければあたくしと、共に過ごしていただけると嬉しいですわ。 神姫の発売日 まあ!発売日を覚えててくださったんですの?ありがとうございます。うれしいですわ! オーナーの誕生日 お誕生日おめでとうございます。これからも素敵な一年になるように、あたくしも尽力させていただきますわね。 神姫ハウス 命名時 呼び方変更 (オーナー名)。同じ呼び方も味気ない事ですしこの際、呼び方を変えてみませんこと? (→決定後) (オーナー名)ですわね。いいですわよ レベルアップ後 レベルアップしましたわ(オーナー名)!日々強くなってきた実感がしてきましてよ。 MVP獲得 3連勝後 おめでとうございます、(オーナー名)!あたくしたちの実力にふさわしい結果だと思いますわ! 親密度Lv5後 どうも最近、勝率が不安定で気持ちの良い勝ち方をしていない気がいたしますわ。もう少し(オーナー名)にも自覚を持っていただかないといけませんわね。 親密度Lv10後 (オーナー名)!最近、少々たるんでいる感じがいたしますので、心機一転、あたくしと特訓をいたしましょう!さあ、着いてきてくださいまし! 親密度Lv20後 まずは精神を鍛えるために滝行を行いましょう!何事にも動じない精神…。これこそがバトル常勝の秘訣ですわね! 親密度Lv30後 滝の水はかなりの冷たさになりますがこれに打ち勝ってこそとっさの判断力につながります。がんばってくださいまし、(オーナー名)! 親密度Lv40後 さすがですわ、(オーナー名)!何とか耐え切りましたわね! 少々くちびるの色が悪いようですが…、次の修行へ参りましょう! 親密度Lv50後 更に精神を鍛えるためには仏閣での座禅が最適ですわ!無の中から見つける境地…。これこそがバトル必勝の秘訣ですわね! 親密度Lv60後 足や背中が辛いでしょうが… これに打ち勝ってこそとっさの判断力につながります。がんばってくださいまし(オーナー名)! 親密度Lv70後 さすがですわ、(オーナー名)!何とか乗り越えましたわね! 少々両肩がはれ上がっているようですが…、次の修行へ参りましょう! 親密度Lv80後 最期は身体の鍛錬を行いましょう!継続して鍛られる自尊心…。これこそがバトル連覇の秘訣ですわね! 親密度Lv90後 (オーナー名)の動き、思考、決断力が以前とは比べ物にならないくらい向上していますわ!これも数々の修練に打ち勝った成果ですのね! 親密度Lv100後 (オーナー名)!厳しい特訓の成果、今こそ二人で見せて差し上げましょう!(オーナー名)と二人ならどんな困難にも打ち勝てる気がいたしますわ! 頭タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 胸タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 尻タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 通常会話 (オーナー名)はいつも礼節を重んじてらっしゃいますか?礼儀作法はその方の身分証明でもありますからね。 武装カスタム 戦闘力Up時 戦闘力Down時 武器LvUP時 素体カスタム 親密度LvUp時 限界突破時 出撃時 入れ替え あたくしひとりで勝たせていただこうかしら。 バトル開始時 必ず勝利へと導いてさしあげますわ! 格の違いと言うものを、お見せいたしますわ! → 真の強さと言うのをお見せしますわ! バトル中 撃破時 コンテナ入手時 いいものを手に入れましたわ! 被弾時 不覚でしたわ…! オーバーヒート時 オーバーヒートですの!? スキル発動時 (能力強化系)一気に決めましょう! (HP回復系) (デバフ系) (攻撃スキル)優雅に決めさせていただきますわ! (チャーミークリアボイス)行きますわ!私の 全力 その目に 焼き付けなさーい! 被撃破時 力無き者が受け取る報酬ですわね…。 あたくしが…、そんな…! 次出撃時 ここからはあたくしにお任せくださいまし! サイドモニター 応援時 すごいですわ! いい感じですわよ! 交代時 あたくしが行ってきますわ! いってらっしゃーい! 被撃破時 申し訳ございませんわ…。 よくがんばりましたわ。 バトル終了時 1位 マスター、ナイスファイト! → 勝利の後は休息しながら、甘い物でもいただきませんこと? 2位 もう少しでしたわね。次は1位を目指しますわよ! なぜ1位になれなかったのか、改善点の洗い出しと、反省が必要ですわね。 → あたくしも特訓して、更に研鑽を積んでまいりますわ! 3位 まだまだでしたわね。ふたりで1位をとれるように頑張りましょう? → くよくよなんてしていられませんわ。悪かった点を反省しながら特訓いたしますわよ。 4位 なんてことですの。まだまだ精進が足りていないようですわ… あたくしの完敗でしたわ。自分自身に負けた気分、まだまだ力不足という事ね… → この屈辱を糧に、更なる特訓を致しましょう! カラフルコンダクト 礼節を、重んじナイスファイト コンテナ獲得時 1位 大勝利でしたわね。プレゼントも手に入れましたわよ。さあどうぞ! 2位以下 LvUP時 神姫親密度 お互い深く繋がれたようですわね。 マスターレベル 神姫ショップお迎え時 はじめまして。お越しいただき、感謝いたしますわ。 はじめまして。お会いできて光栄ですわ。今後ともよろしくお願い致しますわね。 ゲームオーバー時 プレイお疲れ様でした。次の特訓のスケジュールですわ。遅れないようにして下さいましね? その他 + リセット開始 神姫の想い、大切に。 + 選択した神姫をリセットします。よろしいですか? リセット開始 リセットですって?何を言っていますの?本気でそんなこと仰っているんですの!? はい を押す 何故ですか!?わたくしがお嫌いになったのですの?嫌ですわ!…ウッ、まだ一緒に居たいんですの! はい を押す(二回目) 決心はお固いようですわね…分かりましたわ…わたくしとの日々…出来れば、忘れないで下さいましね…さよなら… リセット完了 はじめまして。お会いできて光栄ですわ。今後ともよろしくお願い致しますわね。 リセット取消 もぅ!脅かさないで下さいまし!でも、愛想を尽かされないよう、これからも研鑽を積んでまいりますわ。 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 マスター・オーナー・お兄様 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 親密度Lv1 ATK DEF SPD LP BST N 30 35 90 320 100 R 35 40 100 370 120 SR 40 45 110 420 140 UR 45 50 120 470 160 親密度Lv100 ATK DEF SPD LP BST N - - - - - R - - - - - SR - - - - - UR - - - - - マスクステータス 1/s ジェム回収展開速度 ブースト回復量 ダッシュ速度 ダッシュ時ブースト消費量 ジャンプ時ブースト消費量 対空時ブースト消費量 防御時ブースト消費量 N 1575 150 1230 85 70 20 90 R 1320 105 90 40 110 SR 1410 125 110 60 130 UR 1500 145 130 80 150 覚えるパッシブスキル一覧 全域カバー【A/cute Dynamix社専用パッシブ】応援中で同社が戦闘中の場合、ひん死状態になると能力アップ →応援中に一定の確率で瀕死状態になった神姫の能力アップ(シーズン2) 防御力アップ[小]防御力を上げる ブーストアップ[小]ブースト時の移動スピードアップ よろけ軽減[小]よろけの行動不能時間が短くなる 早熟型のパターンで覚えるパッシブスキル 攻撃スピードアップ[小]攻撃時のスピードが上がる 追加ダメージ軽減[小]敵からの最終ダメージを軽減する ため時間減少[小] *要限界突破(L110)ため時間を減少する ダッシュブースト消費量減少[中] *要限界突破(L120)ダッシュする際のブースト消費を減少する 通常型のパターンで覚えるパッシブスキル 攻撃スピードアップ攻撃時のスピードが上がる クリティカル発生アップ[小]クリティカルが出る確率が上がる ダッシュブースト消費量減少[小] *要限界突破(L120)ダッシュする際のブースト消費を減少する ため威力増加[中] *要限界突破(L120)タメ攻撃の威力を上げる 晩成型のパターンで覚えるパッシブスキル クリティカル発生アップ[小]クリティカルが出る確率が上がる よろけ軽減[中]よろけの行動不能時間が短くなる 全能力アップ[小] *要限界突破(L110)全ステータスがアップする 攻撃力アップ[中] *要限界突破(L120)攻撃力を上げる 神姫固有武器補正 ※レアリティが上がる毎に得意武器は-5%、苦手武器は+5%される。数字はレア度Nのもの。 得意武器 +30% 双斬撃武器・片手ライトガン 不得意武器 -30% 腰持ちヘビーガン・下持ちヘビーガン 神姫考察 攻撃力 素のATK値が低く、得意武器も単発火力の低い片手ライトガンか火力はあるが当てにくい双斬撃武器のみ。 総合すると火力面は低い方。 防御力 必ず防御力アップ[小]を覚えるとはいえそれでも低い方。当たらない立ち回りを。 機動力 専用スキル有り無しどちらも全神姫中トップクラスのダッシュスピードを誇る。攻めも逃げもなんでもござれ。 ただ強いて言うなら専用スキル発動中は少し扱いにくくなるのが欠点か。 総評・運用 同社開発のアーティルと比較するとこちらは近距離戦闘特化。 専用スキル実装当初は圧倒的機動力に付いて行ける神姫がいなかったのもあって環境トップの座に居たが、専用スキルの下方とゲーム環境のインフレ・似たような神姫の登場によって相対的にも厳しい立場に。実質速いだけの神姫と化してしまった。 ただ速さだけは現在もトップクラスなので、この速さをどう活かすかが勝利への鍵となる。 専用スキルは確実発動タイプ。効果上昇量は控えにいる同社製神姫の数×10%、攻撃力・攻撃スピード・防御力・歩行速度・ダッシュスピードが上がる。ブースト回復量20%/s上昇・ブーストダッシュ消費量20%/s増加。 瀕死時限定だからか結構強化される。ただ扱いにくさも増すので、攻めるか逃げるかどちらか一つに行動は絞らないと操作が追いつかずに簡単に撃破されるので、立ち回りはより慎重に。 まず専用スキルを発動させないとこの神姫である意味がないので編成には必ず一人は同社神姫を入れたい。残りの一人は同社神姫にしてより専用スキルの効果を伸ばすか、ハーモニーグレイスにして確実に専用スキルを維持させるかはお任せする。 しかしシーズン2以降は、この専用スキルの仕様が大幅に変更されてしまったので要注意。 そして被弾時・交代後のスキルゲージ上昇量が他神姫より約10%ほど溜まりにくいので、アクティブスキルをあてにした戦法は諦めること。全員この神姫のN→R→URの順で、URで始めてスキルが発動、撃破前になんとかもう一度発動できるかってレベルでスキルが溜まらない。 なので元々スキルゲージ上昇量が少ないNNN編成か、アクティブスキル無しでもなんとか立ち回れるUR編成、負担を半減できるSR編成がオススメになる。逆にスキルで挽回するRRRは非推奨。 アクティブスキルが発動できない分より堅実な立ち回りを求められるので、間違いなく玄人向け神姫。自分の実力がどれほどのものか気になるマスターや、自信があるマスターは是非。一回のミスは他の神姫以上に致命傷に繋がることを肝に銘じておくこと。 解放パターンは早熟型と晩成型は防御寄り、通常型はバランスとなっている。早熟型はジークフリートや下持ちヘビーガンからの被ダメを軽減し、通常型は得意武器がどちらも手数を稼ぎやすいので相性が良い。晩成型は通常型と比べて恩恵を受けにくいのがキツイか。 神姫攻略法 下方されたとはいえ圧倒的機動力は健在。おそらく今後も機動力だけならトップクラスかと思われるので、まずその機動力にどう対応するかである。 大抵の場合は機動力負けしているので、あえて一位にさせて全員で集中狙いさせる状況を作ること。専用スキルもあるとはいえ脆いので、割とあっさり撃破できるはず。逃げ切られないよう終盤にLPを半分以上削っていれば上適。 機動力で互角かそれ以上の場合は普通に戦おう。向こうはアクティブスキルが使えないのと火力防御力が貧弱とで、勝手にジリ貧になる。ただ自分にヘイトが向きすぎて逆転負けなんてしないように。 そしてどちらにも共通して言えることだが、この神姫は他の神姫以上に終盤で一気に巻き返す能力は低いので、基本中の基本である相手の撃破タイミングをコントーロルする立ち回りを心掛けよう。 お迎え方 稼動開始(2020/12/24~)から神姫ショップに登場 アップデート履歴 日時:2021.6.28 内容:能力アップの効果を下方修正。20%→10%。ブースト回復量上昇30%→20%。ブーストダッシュ消費量20%増加。 解放パターン晩成型によろけ軽減[中]を追加。スキル最大解放数が5つから6つに。 日時:2021.4.27 内容:防御時のブーストゲージ消費量が70/s→90/sに増加 日時:2021.2.25 内容:専用パッシブスキルの説明文変更 コメント 連勝ダンスでの個別歌詞「礼節を重んじナイスファイト」 ナイスファイトのあたりがちょっと自信ない -- 名無しさん (2021-01-09 12 49 34) 名前 コメント
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作業用 MG キット評価表 2001年発売分 45 RX-77-2 ガンキャノン 2001.12発売 3150円 (本体3000円) 総合◎ 関節◎ ギミック◎ 武器◎ 総評 MG/ドムと並び評されるMG屈指の傑作キット。HGUC版に準じるカトキ画稿でMG化されており、「カイではなくアムロが乗った時のガンキャノン」と評されるほど劇中よりもかなり精悍でヒーローっぽい印象。 全身のフレーム再現、可動範囲とリアリティを重視した新解釈の関節機構、完全変形するコアファイター等、文句の付け所がない出来。MGのクオリティを知る上で入門者にもオススメの逸品。 ただ完璧な色分けがされているため非常に小さいパーツが存在するので組み立てる際には注意が必要。 関節 非常に良好。グラつくところは特になし。片ヒザ立ちが綺麗に決まる他、首基部の可動、腰の捻りと前後スイング等盛り沢山な内容。 ヒジが90度までしか曲がらず、足首の前方可動の際、アキレス腱部のスカスカが露出するのが欠点。 ギミック 腰、ヒザの新解釈の内部装甲を再現。ヒザの内部装甲は関節の動きに連動するギミックあり。 キャノンの給弾ベルトを軟質樹脂で再現。キャノンとミサイルランチャーは交換可能。 手首の可動する平手が付属。劇中の屈み砲撃ポーズが再現できる。コックピットハッチ、グレネードラックが展開。 コアファイターはMG/ガンダム1.0、MG/ガンダム1.5に付属のものよりも大型化。尾翼と機首が連動してコアブロックに完全変形する。機体との接続部分もポリキャップに変更され保持力が増している。 武器・付属品 ビームライフル キャノン砲 スプレーミサイルランチャー ハンドグレネード(劇場版で使用) その他平手、内部機構を再現したコアブロックが付属する。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 44 GF13-017NJII ゴッドガンダム 2001.11発売 2625円 (本体2500円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 MGファイティングアクションシリーズ第1弾。G系ガンダムであるが故に求められる「可動性」にこだわった内部フレームが最大の特徴。PG/ウイングゼロカスタムから流用された肩の前後大幅可動と、胸部マルチプライヤー部の胴体への押し込みにより腕組みポーズが決められるようになったところに話題が集中。 足の裏がラバーなどの細やかな配慮がなされているものの、キット情報公開時に付くといわれた背部バインダーに取り付ける日輪クリアパーツが結局ボツになったり、頭部が小さいなどの点でガッカリな方も多く見受けられた。 関節 グリグリ動くことを最重視したフレームだけに実に良く動くが、スカートが邪魔して脚部の大胆な動きが制限されるなどの不満が残る。 ギミック ゴッドガンダムに必須であり、MG化を待望したものが切に願った「エネルギーマルチプライヤーの差し替え無しで開閉可能」の実現が見事になされたものの、逆に真正面から顔が見えなくなってしまったのが痛し痒しといったところ。 その他コアランダー脱着・バインダー展開など基本も高いレベルで再現。 武器・付属品 ゲンコでボコるのが主なG系に「武装」というのも何だが、とりあえず武装らしい武装として、肩部マシンガンはきっちりフタ開閉付きで搭載。 ビームソードは旧BB戦士ですらあった刀身に「G GUNDAM」のロゴがなかったり、本来クリアピンクのはずなのにクリアグリーンだったりするのはどうかと。 メインのゲンコはグー・腕組みにも使えるし構えにも使える手・サーベル保持用手・ゴッドフィンガー向けクリアオレンジ手と豊富。また新BB戦士(Gジェネ)の手と共用できるというのはプレイバリューの高さを物語る。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 43 MSZ-006A1 ゼータプラス テスト機カラータイプ 2001.10発売 3150円 (本体3000円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 MG/Z1.0における関節のゆるさや変形機構の問題点(ロック機構の欠如)を必要十分に改善し、MG/Z2.0を予感させた好キット。執念の色分け(パーツ分割)が美しい。 関節 MG/Z1.0は時間が経つとともに関節がゆるゆるになって自立すら困難になるというのは周知の事実だが、このキットではそういった問題点が高いレベルで改善されており、たとえ20回連続で変形を繰り返してもロック機構が損なわれないほどである。 ギミック 変形機構に尽きる。WRモードにしてもかっちりと組みあがっており、設計の超絶さとMGの進歩の過程を十分に思い知ることの出来るエポックメイキングなキットである。 武器・付属品 ビームライフル(新設定) FSS(フライトサブシステム=シールド状のもの) ビームサーベル×2 大腿部ビームカノン 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 42 FA-010A FAZZ (ファッツ) 2001.09発売 6300円 (本体6000円) 総合× 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 フルアーマーZZのバリエーションキット。 カラバリ(一部新規パーツ)ではあるものの、センチネルから初のMG化ということでその後のラインナップにも期待を持たせることにもなった。1/100スケール初キット化。 MG/FA-ZZとの相違点は、頭部(元のMG/ZZのパーツも付属)、バックパック、及びつま先の形状、背部ビームキャノンがMG/Sガンダムと共通デザインであること。 デカールにはα任務部隊での機体ナンバー、04、05、06等が付属する。 一際目を引くFAZZの特徴であるハイパーメガカノンは、バックパックの基部によって支えられる構造になっているためよく安定する。MG/FA-ZZ同様延長されたヒール、及びFAZZ独特の長いつま先のおかげで自立にも問題ない。 しかし元がMG/FA-ZZなのでFAZZには不要な可変機構も作る必要があるため、人によってはストレスに感じることも。また同時に割高感も生じている。 加えて、今一つピリッとしないキットのプロポーションやアレンジに不満の声が上がったため評価的には微妙だが、キットの出来そのものはそれほど悪くない。 プロポーション センチネル設定画での独特の体型からは離れて、MG画稿は立体的整合性を意識した現実的なものとなっている。 だがキットは、各装甲パーツがまるでただの箱を取って付けたような浮いた印象で、ボリュームはあるのだが重厚さを感じるようなプロポーションではない。ゴワゴワとしてほとんど動けなさそうな、やや情けない印象。 関節 保持力は良好。加えて延長されたつま先とヒールのおかげで自立には何の問題もない。 フルアーマーの宿命ではあるが、可動範囲は広くない個所が多い。また肩が胸部装甲と干渉して根元から外れやすく、サイドアーマーは特に欠落しやすい。 ギミック 胸部増加装甲のマイクロミサイルハッチが取り外し式、腕部ミサイルポッド、バックパックのミサイルポッドが開閉可。 設定では固定式の増加装甲だが、キットでは取り外してMG/ZZ状態にすることも一応可能。だがAパーツ主翼となるシールド等が付属せず、頭部やバックパック、つま先等の形状の違いから完全なMG/ZZにすることはできない。 武器・付属品 ハイパーメガカノン ダブルビームライフル(右腕前腕部にマウント) 胸部増加装甲とメガカノン下部が干渉しやすいため、塗装&デカール剥げに注意。 ビームサーベルは設定通りなし。MGでおなじみのクリア刃も当然付属しない。 スカートの動力パイプはメッシュチューブ。 ハイパーメガカノンのエネルギー供給ケーブルは、帯状のリボンケーブルに節パーツを30個通して作る構成。MG/ザク1.0、MG/グフ1.0等でパイプを作り疲れてる人は注意。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 41 AMX-004 キュベレイ 2001.08発売 4200円 (本体4000円) 総合◎ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 MGシリーズ屈指の傑作キット。好評だったHGUC/キュベレイを更に洗練させたプロポーション&ギミックとなっており、ガレキなども含めたキュベレイの立体物の中でも決定版と言える内容となっている。 装甲の白いパーツにはパール粒子の入った樹脂が使用されており無塗装でも美しい。素組派にとって嬉しい配慮となっている。キュベレイのデザインにに抵抗がある人でも手にすれば好きになってしまう。そんな素晴らしい出来のキットです。オススメ。 ただ、一部に設定のデザインとは違う箇所(肩バインダーの背中側のパーツが前側と共通になっていない等)があり、ほとんど重箱の角だがマニアからすると惜しい点ではある。 関節 肩、胴体が固めになっており、保持力には問題ない。しかし軸の根元に負荷がかかりやすく、無理に動かしたり抜き差ししたりすると折れる危険性もあるので、ちょっと不安がある。他は特に問題なし。良好。 ギミック 首が上に大きく可動し、飛行形態を再現できる。指が可動する手首が付属。 ファンネルコンテナの内部メカ再現。ファンネルも着脱可能。 武器・付属品 ビームサーベル×2(クリアイエロー成形) ファンネル×10 手首3種(可動指手首、握り手首、開き手首) 1/100 ハマーンカーンフィギュア(座/立) 武装は少ないが、手首はどれも出来が良く、良い感じです。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 40 RGM-79(G) 陸戦型ジム 2001.07発売 3150円 (本体3000円) 総合◎ 関節○ ギミック○ 武器◎ 総評 手堅い出来の良作。MG/陸戦型ガンダム、MG/Ez8とフレーム共通。 良好なプロポーションとしっかりした可動部、また付属品が充実しておりプレイバリューも高い。 プロポーション 良好。 キットはリファイン画稿のメリハリをさらに強調したプロポーションとなっており、アニメ設定画のゴツさ・骨太さと劇中のスマートなイメージの両方をうまく取り入れている。 成形色のオレンジはキレイだが、劇中からすると明る過ぎるのでもう少し落ちついた色だと良かった。 頭部のゴーグルはクリアグリーン成形で、今あるジム系MGの中ではMG/ネモと並ぶ数少ない色付きのキットである。 関節 関節部は非常にしっかりとしたつくりで信頼がおける。 ヒジの二重関節はABSのフレームをビス止めで挟みつけてテンションを調節する構造。大型の武器も楽々保持できる。フレームのディテールも充実しており、MG/ガンダム1.5などによく流用される。 しかしながら手首はポーズ付けの際に袖口のカバーパーツと干渉して抜け落ちやすくなっており、武器の安定した保持に難点あり。これは干渉する部分を削り込む、一回り小さい他キットのカバーパーツと交換する、等で改修可能。 股関節軸の可動により片ヒザ立ちが可能。ヒザ、足首は保持力もしっかりしているが挟み込みが多く、塗装時にはやや面倒か。その他の可動は標準並。 ギミック 各種装備が豊富に付属し、ロングレンジビームライフルを片ヒザ立ちで構えることが可能。 ふくらはぎのビームサーベル収納ギミックは隙間が目立つので、いっそ固定してしまうのも手か。 コクピットハッチは開閉し、乗降用クレーンのアームも可動するが出来はそれなり。 MGオリジナルのギミックとしてMG/陸戦型ガンダム、MG/Ez8のコンテナ付きバックパックを装備することができる。 武器・付属品 ミサイルランチャー(分解可)+ミサイル(格納状態と飛行状態) ロングレンジビームライフル(右の握り手付属) ビームライフル 100mmマシンガン+マガジン×3(マガジンは脱着してサイドスカートにマウント可) シールド ビームサーベル×2(脚部に収納可) 肩アーマーのフックのバリエーションパーツ 1/100 パイロットフィギュア(座/立) ディテールアップ用パーツ ミサイルランチャーは分解してコンテナに収納可能だが、肝心のコンテナそのものは付属しないのでMG/陸戦型ガンダム、MG/Ez8から流用。 MG/陸戦型ガンダム、MG/Ez8も参照のこと。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 39 RGZ-91 リ・ガズィ 2001.06発売 4200円 (本体4000円) 総合× 関節○ ギミック◎ 武器○ 総合 ×? 頭部が大きい割に下半身がボリューム不足で全体的にチグハグな印象。「MGシリーズならではの整合性を持ったZガンダムの進化版」を期待するとガッカリすると思う。BWS形態は良好。 比較的大掛かりな内容なのに地味。原作中の位置付けからするとこれも一つの答えか。成形色は弱そうな青緑が再現されている。頭部が縦に長く、下膨れ感がある。さらに腰のブロックとアーマーの間に隙間ができてしまう。また太ももが貧弱で全体のシルエットのバランスが悪い等不満点は多い。しかし頭部を小改造、腰アーマーの位置修正など少しの工夫でかなり格好よくなります。 関節 ○ まずまず。足首、ビス固定式のヒザ、股関節と足回りの保持力は良好。ただしヒザ関節の変形機構が複雑で左右バランス調整が面倒。股関節は左右に約40度、前後にも相当量の可動を確保。 肩関節は若干弱く、また肩ブロックの前後スイングなし。シールドを腕のラッチに装備すると重さで肩が下がり気味に。 腰をひねる事ができるが上記の構造的問題で見栄えは悪い。総じて標準的な強度と可動域はあり、及第点。 ギミック ◎ 何と言っても変形。BWS形態はかなりのボリューム感がある。パーツ構成はかなり大味で薄いパーツが変形時歪みやすい。設定通り横から見ると余りスマートではないが全体としては良好。バックパックのサーベル収納ラッチや、左右サイドスカートと前腕部のグレネードランチャーのスライド展開など地味なギミックが豊富。 武器 ○? ビームライフル ビームサーベル×2(刃の部分は独特の形状のクリアイエロー成形) ビームサーベルのグリップ×2(バックパック内に収納可) グレネード×4(サイドスカート内に収納可、スライドギミック有り) シールド(ハンドグレネード×3のディテール有り) BWS+シールド接続パーツ(シールド内にビームライフルをマウント可) 展示用スタンド(WR形態の他にBWS単体でも展示可) もっと武器に愛を。相変わらず大雑把なパーツ構成。ライフルは小さめで左右分割。ビームサーベルは幅広刃を再現しているがこのMSに関してはサーベルを持たせて映えるポーズ付けは難しい。シールド裏のグレネードは3個一体成形で取り外し不可。一揃いある点は評価できる。BWS用のスタンドは恐ろしく使いにくい。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 38 RX-78GP03S ガンダム試作3号機 ステイメン 2001.04発売 3675円 (本体3500円) 総合○ 関節○ ギミック◎ 武器○ 総評 HGUCデンドロビウムの影に隠れてしまうことが多いが、内容の充実した良キット。 ギミック、プロポーションとも高水準の出来。 劇中に登場しなかった裏設定としてコアファイター収納ギミックが新しく追加された。 プロポーション アニメ設定画稿にあるような下半身のボリュームは抑えられ、標準的な体型で立体化されている。 キットのプロポーションは非常に良好。MG/GP01での反省を活かしてか各部の面構成も張りのあるものになっており、適度なボリューム感とメリハリ、独特の柔らかさ、丸みを感じさせるものになっている。付属する平手の表情も良い。 強いて難点を挙げれば、各部の黒穴ディテールの彫刻表現がやや固い点、スカート・肩アーマーの黒穴や各部の黒いラインが色分けされていないため、パチ組み状態ではややのっぺりとした印象を与える点か。いずれも些細な点。 関節 可動範囲や保持力は標準的。他の関節に比べればヒザ二重関節の太腿側の保持力がやや弱めだが、自立に支障が出る程ではない。 テールバインダーとバックパックの重さのため後ろに倒れることがあるが、ポーズ付けで十分にバランスを取れる範囲である。 フォールディングアームはABS成形。挟み込みが多く塗装時にはやや面倒。 ギミック 新設定のコアファイターの変形機構や通常型パックパック+コクピットブロックとの換装、フォールディングアームの展開可動、ビームサーベルラックの開閉とバックパックの可動、など盛りだくさんの内容。玩具的プレイバリューは高い。 武器・付属品 ビームライフル(フォアグリップ可動)+Eパック×1 フォールディングバズーカ(折畳み可) ビームサーベル×2(バックパック内に収納可) フォールディングシールド(折畳み可)+ビームライフルのEパック×4(シールド裏にマウント) コアファイター(変形収納可) 平手(左右)(固定式、ABS成形) 可動指(握り手と銃持ち手の2種、それぞれ左右分で計4つ付属。ABS成形) オーキスは付属しない。 通常型パックパック+コクピットブロックを胴体に収納しておけば、本体とコアファイターを別々に飾ることができる。 シールドは一見上下対称に見えるが、マウントラッチ基部の台形には上下の向きがあるので注意。逆にすると当然シールドははまらない。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 37 MSN-00100 百式 2001.03発売 4725円 (本体4500円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 HJのキット化希望ランキングで当時常に上位にいた黄金色の憎い奴。 全身に施された金メッキは非常に見栄えのする美しい仕上がりだが、無塗装派には値段高騰の原因、塗装派には二度手間の原因と賛否両論である。 このメッキはアンダーゲート処理されておりランナーから切り離しても跡が見えない方式だが、背中の一番目立つバインダーが何を考えているのかド真中分割となっている。馬鹿め。 これにはセメダイン社から出ているラピー(←通販サイトHobbyWorldへのリンク)を貼って処理することをすすめる。 2009年02月12日にはカラーバリエーションとして百式 HDカラー(5040円税込)という商品も発売された。マーキング用水転写デカールが追加された他、金色は従来のメッキ等ではなくしっとりと落ちついたメタリック処理となっている。金色の色調もシックで雰囲気のあるものとなっており非常に評価が高い。HDカラーシリーズの中でも特に好評。 プロポーション 関節 強度、可動範囲ともに良好。立ヒザもできる。 関節はあまり固くはないが、特に重い装備もないので自立に支障はない。 また手首が従来の仕様とは異なり、親指以外の4本がまとめて可動する。 これにより可動軸が目立ちすぎず見栄えは良いが、意外と保持力は大したことなく、あまり好評でもなかったのか以降のMGでは元の仕様に戻っている。 また足首がボールジョイント1本での接続なので、接地性が今一つよろしくない。 ギミック 背中のバインダーにライフルとバズーカをマウント可能。 またこれはギミックと呼べるかは微妙だが、ランドセルを接続するポリキャップがMG/Mk-II1.0のものと同一で、ランドセルの交換が可能。開発時期等の整合性を感じる事ができる。 コレを利用し、Gディフェンサーと合体して「スーパー百式」等といった遊びも可能である。 武器・付属品 ビームライフル クレイバズーカ ビームサーベル×2 備考 前述の通りこの模型の最大の特徴である金メッキは上からクリアーイエローを吹くことで非常に美しい光沢を得ることができる。せっかく高い金を出してメッキ処理された物を買うのだからメッキの質感を活かした工作をしてみるのもいいのではないかと思う。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 36 MS-07B3 グフカスタム 2001.02発売 3150円 (本体3000円) 総合○ 関節× ギミック○ 武器◎ 総評 MG/グフ1.0のバリエーションキット。その為かカトキ氏のアニメ設定画とは違う印象で、頭部が大き目で短足である。だがそれを指摘するユーザーは少なく、プラモとしてはバランスの取れた正しいアレンジであったと思われる。 ガトリングシールドは迫力があり、見栄えの良い好キット。 プロポーション HG08小隊のグフカスタムやHGUC/グフと比較するとかなり骨太な印象。より漢のMSっぽくなったと言えよう。難を言えば指が細く華奢であることで、全体的に見ればさほど気にならないものの残念な点である。 関節 製品によって多少の個体差があるようだが、股間、ヒザ、足首関節がゆるい。大きく重量のあるガトリングシールドを装備した際に自立に困難をきたすことがある。要補強。 またヒザ関節を補強でキツくしすぎると関節パーツ(H2)の根元が折れる可能性があり、こちらもパテや真鍮線などで補強しておいた方が無難。 ギミック ヒートロッドをリード線で再現。他はコクピットハッチの開閉、ガトリング砲の回転など。 武器・付属品 ガトリングシールド 35mmガトリング ヒートロッド ヒートサーベル(刃はクリアパーツで着脱式) 1/20 ノリス・パッカードフィギュア 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント 35 MS-18E ケンプファー 2001.01発売 4200円 (本体4000円) 総合◎ 関節○ ギミック○ 武器◎ 総評 2001年、そして21世紀の幕開けを飾るに相応しい出来となった秀作。「強襲用」らしい機動性と重厚観を兼ね備えたフォルムを十分に再現している。それもさることながらこのMSに欠かせない豊富な銃火器も忘れてはならない。 関節 肩・ヒジ・ヒザをビス止めしている。ヒジはビス頭のフタ代わりのパーツが独立しているのでピッチ変更が容易だが、肩とヒザは覆いかぶさるパーツの関係で分解せざるを得なくなる(特にヒザは脚部をほぼ完全に分解しないとピッチ変更できない)ので、予めピンを少し切って短めにし、分解作業を容易にしておくとよいかも。 特に肩周りの可動に優れており、手に何を持たせても決まるポーズが取れる。保持力に問題のあったMG/グフ1.0、MG/グフカスタムと共通のフレームを採用しているためヒザ関節に不安がある? ギミック MGお約束のコクピット開閉は当然ながら、股裏バーニアの伸縮が可能。 そのほかチェーンマインとショットガン1個以外の武装をすべて本体にマウント可能であり、またそのマウントラックも本体から取り外すことが可能である。 武器・付属品 ショットガン×2(エキストラストック有り無しの変更可、1つは腰裏にマウント可) ジャイアントバズ×2(背中にマウント可) シュツルムファウスト×2(脚部にマウント可、飛行状態も付属) ビームサーベル×2(柄尻のパーツのみ股に取り付け可、柄尻から先の柄は別パーツ) チェーンマイン(リード線使用) 平手(左右)、左右の可動指 1/100 サイクロプス隊員フィギュア チェーンマインの○ディテールのズレは特に気にならないと思うが、どうしても気になるのでありば接着するとよい。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 27 名前 コメント
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作業用 MG キット評価表 2002年発売分 57 RX-78-2 ガンダムVer.Ka 2002.12発売 3360円 (本体3200円) 総合× 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 「MGデザイナーズバージョン」と銘打ったキット。キットそのものはMG/ジム改の大幅パーツ変更といった感じだが、パッケージや説明書がスタイリッシュなデザインのものになる等、通常のMGとはやや趣の異なる商品となっている。 このVer.Kaシリーズでは他にMG/ウイングガンダムVer.Ka等がリリースされている。 この商品名と商品パッケージングを見れば、LD-BOXのジャケット等に見られるいわゆる「カトキ版ガンダム」をイメージするファンは多いと思うが、キットは各部のディテールこそ「カトキ版~」に準じているものの、全体のプロポーションは「カトキ版~」からは大きくかけ離れたものとなっているため総合評価では×がついている。 これがもし「RX-78-2 ガンダム another Ver.」といったような商品名で通常のパッケージであったなら、キットそのものは過不足のないまずまずの出来であるため総合評価では○に相当するものと考えられる。 「カトキ版ガンダム」を期待していたファンの間では、胴体を丸々MG/ジムカスタムから流用するなど徹底改修することが前提と考えられており、ファンは購入の際その点に厳重注意。武器類の形状や、成形色、マーキングは大変素晴らしいものとなっているため、プロポーションの面で大きく評価を落とす結果となってしまったのは非常に残念。 プロポーション 当時の画稿ともMG化にあたって新たに描き起こされた画稿とも異なり、キットはMG/ガンキャノンと同規格のコアファイターを収納するスペース確保のためか相対的に胴体部がかなり大きく、頭部のサイズなど各部がそれに合わせた骨太なバランスでの立体化となっている。 これを「ガンダム another Ver.」として見るならば、スマートなヒーロー体型でこそないもののそれほど問題のあるプロポーションではない。むしろ完成度の高いコアファイターのギミックはキットの有力なアピールポイントになりうる。 だが「カトキ版ガンダム」として見れば、過去の多くの画稿からイメージされるスマートで一種独特なプロポーションとは明らかに異なり、頭部、胴体は大きく、脚部は太く短い。腕部はボリュームやメリハリが足りず、その他各部の一つ一つの形状にも不満が。 MG/ジム改で不満の挙がった足首の形状が新設計のものになったり、股関節の軸の位置を変更したりと一応の努力の跡はみられるものの、到底ファンが満足できるものにはなっていない。 コアファイターを諦め、過去の画稿とは言わないまでも、MG新画稿に近いバランスでの立体化となっていればこれほどの不評は買わなかっただろう。ファンがさほど重視しないギミックを優先したために、最も重要視するプロポーションが大きく影響を受けるというミスマッチが、よりによって「デザイナーズバージョン」というファンが大きく期待したキットで発生してしまったのは本当に残念。リベンジを望む声は現在も大きい。 関節 基本的にMG/ジム改、MG/ジム改(スタンダードカラー)に準ずる。肩スイング機構等の派手な可動ギミックはないが、キャラクター的に素立ちポーズがメインとなるため問題はない。 ヒジ、ヒザはABSの挟み込み式、ヒザの二重関節は太腿側、スネ側ともにビス止めとなっており、保持力も十分。 ギミック コアファイターはMG/ガンキャノンと同規格のもので、従来のものよりも大型化し、尾翼と機首が連動してコアブロックに変形する。ダミーのコアブロックも付属し、現行のRX-78キットの中ではコアファイターのギミックの完成度が最も高い。 その他コックピットハッチや腰裏のバズーカラックが開閉する。 色分け ほぼ完全に色分けされている。メインカメラ&ツインアイ、武器スコープ部は無色のクリアパーツ。 成形色は各色とも微妙な色合いで雰囲気のある仕上がり。大量のコーションマーク類がフィルムシールで付属。 武器・付属品 ビームライフル+銃持ち手(右)(PS成形) ハイパーバズーカ(腰のラックにマウント可) ビームサーベル×2(クリアピンク成形) シールド(連邦の星マークなしのタイプ、裏面にビームサーベル×2を取付可) コアファイター(変形収納可) コアブロック 握り手(左)(PS成形) 手首はABS製の可動指のものと、PS製のライフル持ち手&左握り手が付属。PS製のものは非常に良好な形状。 説明書には「カトキ版ガンダム」の成り立ち等についての解説が収録されている。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 56 RGM-79C ジム改(スタンダードカラー) 2002.11発売 2625円 (本体2500円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 MG/ジム改のカラーバリエーション。成形色が赤と弱緑になり、ライフルにロングライフル用のパーツが付属。不死身の第4小隊などのマーキングシールも付属する。 GMらしく派手なギミック等はないが、特に変な味付けもなくプレーンで堅実な印象の良作。可動部の処理も手堅く、スタンダードな仕上がりで値段分の仕事をきっちりこなしている。 MG/ガンダムVer.Ka発売以降?股関節軸のパーツがガンダムVer.Kaと同様のものに仕様変更されたようで、股関節軸の位置が2mm程度、パーツ下端ギリギリまで下げられている。結果関節部がより目立つようになり全高も伸びていると思われるが、可動範囲やプロポーションに大きな変化はない。 プロポーション アニメ設定等と比較すれば明らかに骨太体型だが、プロポーションそのものは良好。 ただ頬のダクトは肉厚が厚く、下膨れの印象を与えてしまっている。これは削り込み等で対処可能。 ヒザ関節裏のパイプ状ディテールはメッシュパイプによる再現。 関節 引出し式関節などの可動ギミックはなく、派手なポーズこそ取れないものの可動範囲は標準並。 保持力も堅実で、ヒジ、ヒザはABSの挟み込み式、ヒザの二重関節は太腿側、スネ側ともにビス止めとなっている。 腰はボールジョイントによる接続。 ギミック ライフルはパーツを差し替えることで90mmマシンガン/GMライフル/ロングライフルに組換え可能。 組換えで余った部品の1組を腰にマウントすることも可能だが、こちらは考証的には疑問。もう1組の部品は完全に余ってしまう。 ヒザの二重関節ブロックはシリンダーが連動可動するが、内側のシリンダーの径が細く実感に欠ける。 武器・付属品 90mmマシンガン/GMライフル/ロングライフルのコンパチライフル ビームスプレーガン(センチネル0079デザイン、サイドスカートにマウント可) ビームサーベル×2(クリアピンク成形) シールド(裏面のラッチにビームサーベル×2を取付可) 1/100 パイロットフィギュア(立ち/座り) 手首は可動タイプのみが付属。 不死身の第4小隊、教導部隊などのマーキングシール、ガンダムデカールも付属。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 55 MSA-0011 Sガンダム 2002.10発売 6300円 (本体6000円) 総合○ 関節○ ギミック◎ 武器× 総評 その変形機構の複雑さからたとえMGであろうとも変形はオミットだろうと思われていたが、蓋をあけてみればなんと完全変形を実現させた執念の一作。 レドームのないビームスマートガン、あるはずの大腿部ビームカノンが付属しない、思い入れのある人から見ると手を入れたくなる頭部造型、強度に若干難があり下半身変形作業中に折れる足首の関節、脚部周辺のビスの尺が合っておらず回しすぎると突き抜ける、といったマイナス要素を抱えてはいるが、概ね好評を得ている。 MG/Ex-Sガンダム発売以降、金型改修が行なわれたらしく、該当パーツは補強されたものになり問題はやや改善されている模様。 関節 上述の、足首の関節が若干強度に不安がある点以外にはUC系可変機として問題なく動く。可変機構のためプラモ素材だけでは脆くなりがちな部分には適切にビスを打ってあり、またそのほとんどは分離するだけで容易にピッチ変更できるようになっている。 だがビームスマートガンのその長さが脚の可動を妨げ、その上射撃姿勢に構えるには腕周りの可動が若干きついか。当然射撃状態ではほとんど脚を動かすことができない。 ギミック なんといっても完全変形。 上半身のGアタッカー・下半身のGボマーとも前例のZ+2機を踏襲したロック機構のおかげでへたれることなくカッチリ固まる。しかし割と手順が長く複雑なため、破損への注意も怠ってはならない。 そのほかGアタッカー・GボマーのコクピットとGコアは合体し、飛行状態・コアブロック状態への変形が可能。そのままSガンダム内部に収容することも可能。 またビームスマートガンは本体に付けた状態のまま、伸縮アームで背部に回すことも、射撃位置に構えることも可能である。 武器・付属品 ビームスマートガン(レドームなし、右足大腿部に接続)ビームスマートガンサポートユニット(左足大腿部に接続) 頭部インコム(ケーブル類は付属しない) ビームサーベル×2(クリアブルー成形、ニークラッシャーにマウント可) 確かにスマートガンとの選択装備ではあるが、あって当然という印象の強い大腿部ビームカノンが付属しないのが非常に残念。よって武装の評価には×がついている。 またMG/Ex-Sガンダムとは異なり展示用スタンドは付属しないので注意。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 54 MS-06F2 ザクIIF2 (連邦カラー) 2002.09発売 3150円 (本体3000円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器◎ 備考 MG/ザクF2型のカラーバリエーション。ザクマシンガン、ヒートホーク、頭部アップリケアーマー、武器持ち用手首が新規に付属する代わりに、MMP-80マシンガン、ロケットブースター、脚部ミサイルポッドが付属しなくなる。 武器保持専用の固定手首も付属(ただし色分けなし)。マーキングシールもペイント弾の弾着再現シール等に変更されている。 武器・付属品 ザクマシンガン+ドラムマガジン、対空砲弾マガジン+銃持ち手(右)(色分けなし) ヒートホーク 頭部アップリケアーマー ザクバズーカ(スコープ部を回転させて腰部ラッチにマウント可) シュツルムファウスト×1 グレネード 可動指(左右) 平手(左右) 握り手(左)(色分けなし) 1/100 パイロットフィギュア(座/立) 各種武器はラッチパーツを介してスカートにマウント可。 マーキングシールもペイント弾の弾着再現シール等に変更されている。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 53 RX-78/C.A ガンダム(キャスバル専用機) 2002.08発売 3150円 (本体3000円) 総合○ 関節○ ギミック◎ 武器◎ 総評 PS2「ギレンの野望」に登場するキャスバル専用機にしてMG/ガンダム1.5の色替え版。成形色がピンクとダークブラウンに変更された他に、MG/ガンダム1.5との主だった違いは特にない。 ただし、本来キャスバル機にはないはずの盾の星とチンポー上のVマークもそのまま残っているので、各々パテ埋めするのが良い。 キャスバル専用ガンダム用デカール及び、マーキングシール付属。 関節 これといって緩い箇所は無い。ヒザ部はビス止めであり、保持力良好。 ギミック MG/ガンダム1.5と同じ。 武器・付属品 ビームライフル(サイドスカートにマウント可) ハイパーバズーカ(腰のラッチにマウント可) ガンダムハンマー ビームジャベリン ビームサーベル×2 シールド MG/ガンダム1.5と同じ。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 52 GF13-021NG ガンダムシュピーゲル 2002.08発売 2625円 (本体2500円) 総合◎ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 MGファイティングアクション第4弾にして「よくぞ出してくれた」との声も高かったG系シリーズ珠玉の逸品。シリーズ共用の問題点をやや残しつつもそれでもイメージを崩さないプロポーションには賞賛が高い。それもさることながら、購入者の心をがっちり掴んで離さなかったのは、インスト機体解説中のフレーズ「ネオドイツの科学力は世界一」であろう。 関節 シリーズ前3作(MG/ゴッドガンダム、MG/マスターガンダム、MG/シャイニングガンダム)と共用のフレーム・構成のため欠点もほぼ似たり寄ったり。 ギミック コアランダー脱着・胸のへこみで腕組みといったシリーズの基本はちゃんと押さえてある。ちなみにMG/ゴッドガンダム、MG/シャイニングガンダム、シュピーゲルのコアランダーはそれぞれ交換可能。共用フレームのなせる技である。 武器・付属品 ゲンコ・腕組みにも構えにも使える手・シュピーゲルブレード保持用手・平手の4種。両腕のシュピーゲルブレードも映える作りになっている。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 51 MSN-02 ジオング 2002.07発売 6300円 (本体6000円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器- 総評 6000円という割高感を煽る高額な定価と、素晴らしい出来のHGUC/ジオングのせいで敬遠されがちな不運の良作キット。HGUCの原作重視のスタイルを継承しつつ、より洗練された印象であり、まさにボスメカといった迫力がある。 全身の内部機構の作りこみも非常に精密。スカートのワンパーツ成形に見られるように外装のパーツが非常に大きいためヒケが目立ちやすいのが難点か。 とにかく実際に手にとって見ないと分からないMGサイズならではのボリューム感がある。安売りされているなら買って損なし。 関節 このキット最大の売りである部分。全身に表情をつけるための可動を重視した独特の構造をもつ。 特筆すべきは手で基部のボールジョイントの他、手首の90度スイング。さらに指はすべての関節の可動を再現。表情のつけ方は自由自在である。先端のメガ粒子砲口が再現されてないのは少々お粗末か。 その他、襟と首基部の二重関節やバーニア基部のせり出し等盛り沢山である。 全体的に径の大きなポリキャップを用いており保持力は十分である。 ギミック モノアイは設定通りの可動ギミックを再現。前後左右に動く。構造上頭がスカスカが目立つのが気になる。ジオングヘッドは分離可能で左右のバーニアが可動。本体との接続部には往還通路の隔壁が再現されている。 また胸部前後四基のバーニアは前後に可動。コックピットハッチの他、後頭部の脱出用ハッチの開閉も再現している。 オールレンジ攻撃は黒のリード線パーツを取り付けることで再現。専用のスタンドも付属する。 武器・付属品 本体用スタンド 両手用スタンド×2 1/100 シャアのフィギュア(軍服姿) マーキングシール 本体用スタンド、両手スタンド共細かな角度調節が可能になっている。ガンダムデカールが全く付かないのも特徴的。マーキング類は全てマーキングシールとなっている。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 50 RGM-79C ジム改(トリントン基地仕様) 2002.06発売 2625円 (本体2500円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 GMらしく派手なギミック等はないが、特に変な味付けもなくプレーンで堅実な印象の良作。可動部の処理も手堅く、スタンダードな仕上がりで値段分の仕事をきっちりこなしている。 後にカラーバリエーションとしてMG/ジム改(スタンダードカラー)も発売された。付属品がついて値段も据え置きのため、そちらを買うのも手。 ガンダムVer.Ka発売以降?股関節軸のパーツがガンダムVer.Kaと同様のものに仕様変更されたようで、股関節軸の位置が2mm程度、パーツ下端ギリギリまで下げられている。結果関節部がより目立つようになり全高も伸びていると思われるが、可動範囲やプロポーションに大きな変化はない。 プロポーション アニメ設定等と比較すれば明らかに骨太体型だが、プロポーションそのものは良好。 ただ頬のダクトは肉厚が厚く、下膨れの印象を与えてしまっている。これは削り込み等で対処可能。 ヒザ関節裏のパイプ状ディテールはメッシュパイプによる再現。 関節 引出し式関節などの可動ギミックはなく、派手なポーズこそ取れないものの可動範囲は標準並。 保持力も堅実で、ヒジ、ヒザはABSの挟み込み式、ヒザの二重関節は太腿側、スネ側ともにビス止めとなっている。 腰はボールジョイントによる接続。 ギミック ライフルはパーツを差し替えることで90mmマシンガン/GMライフルに組み換え可能。 組み換えで余った方の部品を腰にマウントすることも可能だが、こちらは考証的には疑問。 ヒザの二重関節ブロックはシリンダーが連動可動するが、内側のシリンダーの径が細く実感に欠ける。 武器・付属品 90mmマシンガン/GMライフルのコンパチライフル ビームスプレーガン(センチネル0079デザイン、サイドスカートにマウント可) ビームサーベル×2(クリアピンク成形) シールド(裏面のラッチにビームサーベル×2を取付可) 1/100 パイロットフィギュア(立ち/座り) 手首は可動タイプのみが付属。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 49 GF13-017J シャイニングガンダム 2002.05発売 2625円 (本体2500円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 アクションフレームシリーズ第三弾。開発陣もこのシリーズの形式に慣れ小粒ながらも充実した出来上がりを見せる一作。手首は毎度のゴムパーツでシャイニングフィンガーはプラ製の半透明緑。 大きな問題点が一つ。胸部形状が素人目に見ても設定画ともTV作画イメージとも違うため、本当に思い入れのあるファンにとっては最も許せない箇所であるだろう。なまじ出来が悪くないだけに残念がる声も格別。 関節 シリーズ共通のフレームのため他のキットの項(MG/ゴッドガンダム、MG/マスターガンダム)を参照のこと。外装がシンプルなため不満無くポージング可なので二重丸でよいのでは? ギミック 顔のマスク以外は差し替えなしでハイパーモードへ変形可能。腕組み時に胸部が内奥へ引き込み可能。コアランダーも本体との着脱および変形が可能だがポーズ変更中に本体から外れやすい等あまり出来は良くないので本体に接着してしまうのがよいだろう。 武器・付属品 ビームサーベルが大小二本付属。 破損防止のために頭部アンテナに軟質素材を使ったものが予備で付属。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 48 MS-06F2 ザクIIF2 2002.04発売 3150円 (本体3000円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 MG/ザク1.0の完全バージョンアップ版とも言えるキット。足首、肩関節、フロントアーマーの可動範囲拡大や脚部動力パイプの抜け止めなど、MG/ザク1.0の反省を活かした造りになっている。 ちなみに発売発表当初バンダイに上げられていた見本作例の塗装がひど過ぎた為に前評判はガタガタだった。 後に成形色と武装を変更したMG/ザクF2型(連邦カラー)も発売。ザクマシンガンは連邦カラーの方にしか付属しないのでこの点厳重注意。チグハグな商品構成に閉口したファンは多い。 プロポーション プロポーションや細部ディテールはマッシブで男らしく、作中のF2とは異なるためその意味では減点要素か。 だがMGにおける統一性には順じておりかっこ悪いわけではない。 MG/ザク1.0と比べて頭部が非常に小さいのも特徴。 関節 胴体が無可動なのを補う為か股関節が前後に可動、微妙だが良い効果を上げている。 ヒジ関節は90度までしか動かないが肩のギミックと連携すれば武器の保持やポーズにさして影響は無し。 脚部関節はどこもよく動く。どの部位もしっかりと固く、不安要素は皆無。 ギミック 肩に堅牢な引き出し関節を採用、腕を真横に上げることも可能なほか武器を構えた姿に一層の迫力が増し、バッチリ決まるのがザクファンには嬉しいところ。 他にカカト部分の装甲が可動に連動してはね上がるが、これは蛇足。潰してしまっていいだろう。 武器・付属品 MMP-80マシンガン+マガジン マシンガン予備マガジン 脚部ミサイルポッド バックパックのロケットブースター ザクバズーカ(スコープ部を回転させて腰部ラッチにマウント可) シュツルムファウスト×1 グレネード 可動指(左右) 平手(左右) 1/100 パイロットフィギュア(座/立) と豊富に付属するが、ザクマシンガンとヒートホークという主要な武器が抜けているので評価もせいぜい○止まり。全くもったいない。 各種武器はラッチパーツを介してスカートにマウント可。 備考 キットはすこぶる良い出来なのに、カラバリキットに付加価値を付けるために内容を貶めるという本末転倒の商品戦略によって結果的に不評を呼んでしまった馬鹿馬鹿しいMG。まったくの自社本意で消費者を顧みないバンダイの態度・戦略には閉口した方も多いのではないだろうか。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 47 GF13-001HN2 マスターガンダム 2002.03発売 2940円 (本体2800円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器○ 総評 MGファイティングアクション第2弾にしてMG/ゴッドガンダムが出るなら誰もが出ると信じて疑わなかった一品。マント開閉ギミックを完全にオミットすることで自立を優先させた英断は大当たりだったと言えよう。 旧1/100キットとの成形色の差や頭部などで若干の不満が残る。装甲裏面やフレームにさりげなく施してあるDG細胞をイメージしたモールドが心憎い演出となっている。 関節 やはり最大のウリである可動性は高い。スカートと脚部の干渉も「スカートをゴムパーツで繋ぐ」という方法を取ることである程度の解決を図った。 ギミック マント開閉をオミットした代わりに旧1/100キットの開閉ギミック付きマントを流用可能になっている他は、腕組みが出来るように胸部がへこんだり、差し替えながらもリード線を使うことでディスタントクラッシャーを再現。当然ニアクラッシャーも再現。 武器・付属品 抜き手 構えと腕組みの状態で使用する手 ビーム布持ち右手 ダークネスフィンガー状態の手(クリアパープル成形) ゴッドフィンガーVSダークネスフィンガー再現用の双方の右手掌底(クリアパープル成形) ゴッドVSダークネス再現用の手は、ゴッドフィンガー側も紫に成形されているのが痛い。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント 46 MSZ-006C1 ゼータプラスC1 2002.02発売 3150円 (本体3000円) 総合○ 関節○ ギミック○ 武器◎ 総評 先に発売されたMG/ゼータプラス(テストカラー)のバリエーションキット。 色以外の具体的な違いは武装と一部装甲の形状、背中にバックパック、主翼に4基のプロペラントタンクが追加されたこと、ランディングギアが車輪タイプからスキッドタイプに変わっていること、である。 大砲のような長物が好みならばこちらのゼータプラスを買うべきであろう。 関節 MG/ゼータプラス(テストカラー)同様MG/Z1.0における諸問題が改善されており、自立には何の問題もない。ちなみに変形するギミックの都合からヒザがかなり深く曲がり、片ヒザ立ちも容易にできる。 関節を固くしておけばスマートガンの片手持ちでもある程度は大丈夫。 WR状態では、プロペラントタンクとの干渉を避けるためもあってか機体後部を支えるギアがスマートガンに集中している。若干重心が前に寄ることになるが自立に問題はない。 ギミック 各部のロック機構の改善により、MG/Z1.0に比べてはるかに優れた変形機構となっている。 ビームスマートガンの長さがあるが、ランディングギアを使っても問題なくWR状態で立たせる事が可能。なお、ビームスマートガンはMS形態では多少重いが接続部がスライドしてロックされるので外れにくくなっている。 武器・付属品 ビームスマートガン(飛行用サブユニットと一体) 大腿部ビームカノン ビームサーベル(クリアブルー成形) MG/ゼータプラス(テストカラー)にあったオリジナルのビームライフルは付属しない。 関連ページ 最終更新 2011/09/12 21 38 名前 コメント
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前ある日の朋与2 洗面所に入った朋与は、まず流水で口をすすぎ、軽く歯を磨いた。 精液が不快だったのではない。できることなら、いつまでも味わっていたかった。 しかし、この後の事を考えると、眞一郎への配慮を欠くわけにはいかない。 タオルで顔を拭ってから、口を手で覆い息を吐き出してみる。 口臭に異常は無い。生臭さは残っていなかった。 (よし、大丈夫) タオルを片付けようとした時、鏡に映る自分と目が合った。 一週間前に自室で出会った淫乱な女が、再び朋与の前で薄笑いを浮かべている。 (本当に……いやらしい顔……) 期待している顔……眞一郎とこれから『する』ことに期待している淫乱な牝の顔。 (……違うわ。これは仲上くんのために……彼のためにしている事……) そう、これはあの『石動乃絵』にも出来ない……自分にしか出来ない事なのだ……。 ………… ………… 寒気を感じた。屋内とはいっても、全裸でウロウロ出来る気温ではない。 (……戻らなきゃ) 照明を切って洗面所を出る。 廊下から居間の時計を見ると、まだ六時を少し回ったところだった。 時間は……十分過ぎるほど残っている。 部屋に戻ると、眞一郎はベッドの縁に腰掛けていた。 「あ、お帰……」 言い終わるのを待たずに、朋与は眞一郎に飛びついて、その唇を味わった。 冷気に晒されていた身体に、眞一郎の体温が伝播して気持ちいい。 上唇、下唇と交互に甘噛みし、仕上げに全体を吸い上げてから、わざと「チュッ」と音を立てて離れる。 (気持ち良くしてあげなきゃ。もっともっと気持ち良く……) 体重をかけて眞一郎を押し倒し、股間の硬直へと手を伸ばす。 「してあげる。仲上くんのして欲しい事、全部してあげる」 再び硬度を取り戻した陰茎に摩擦を加えながら、朋与は眞一郎に問い掛けた。 「ねぇ、言って。して欲しい事……」 「……く、黒部……」 朋与は眞一郎の要求を全て受け入れるつもりだった。 今の朋与なら、眞一郎に「尻を舐めろ」と言われれば、躊躇する事無く菊座に舌を這わせるだろう。 答えが待ちきれず、朋与は眞一郎の乳首へと狙いを定める。 唇が上下に開き、その間から現れたサーモンピンクの物体が攻撃を始めようとしたその時……。 ………… 「待てよ」 眞一郎の両手が朋与の肩を強い力で掴んで、その動きを止めた。 (……あ……) その瞬間、朋与は身体に強烈な電流が駆け抜けるのを感じた。 一週間前と同じ、あの全身を蕩けさせる電気の流れを。 「今度は俺がしたい」 そう告げると、眞一郎は力任せに体勢を入れ替え、朋与の身体をベッドに押し付けた。 「俺が……と、朋与のこと、気持ち良くしたい……」 眞一郎の手から加えられる圧迫感。拘束される快感が全身を貫く。 そしてなによりも、眞一郎が自分の事を名前で呼んでくれたことが、 朋与の神経を痺れさせ、麻酔を打ち込まれた様に身体を弛緩させた。 ………… (あぁ……どうしよう……でも……) 眞一郎が『したい』のなら、させてあげた方がいいのかもしれない……朋与そうは思った。 身体を開いて……全てを任せて……眞一郎の望むままに……蹂躙…される……。 ………… (……それ…………いいかも……) 下腹部の奥にある『女の器官』が、ゆっくりとその位置を変えていく。 これから起こることを想像して、朋与は堪らなく興奮した。 沈黙を了承と解釈した眞一郎は、片方の手を朋与の肩から胸に移動させた。 手の平で半ば硬化していた乳首を円を描くように愛撫したあと、指先に力を込めて全体をグッと鷲掴みにする。 「ッ!!」 発生した痛みが朋与の脳に伝わる。だがそれは『快感』として身体の主には認識された。 「…痛い……か?」 朋与は口元に悦楽の笑みを浮かべながら、首を左右に振った。 「……ううん……凄く……凄くいいッ!!」 自分の膣が、与えられる刺激に反応して収縮するのをハッキリと知覚する。 そこから眞一郎の怒張を受け入れる為の潤滑油が湧き出し始めているのが分かる。 「してっ!もっとしてっ!眞一郎っっ!!」 被虐の悦びの中、朋与は初めて『仲上』という苗字ではなく、眞一郎の名を大声で叫んでいた。 朋与はベッドの上に座り込む形で、眞一郎に後ろから抱きかかえられていた。 眞一郎の両手は、朋与の胸にある二つの膨らみに伸ばされ蠢いている。 眞一郎の才能は本物だった。まさに『性技』の天才と言っていい。 本能的に女の弱点を嗅ぎ取り、そこに相手の最も好む刺激を加える。 「んぁっ……はぁ……眞一郎……眞一郎……」 乳房を強い握力で揉まれながら、朋与が甘い声をあげる。 朋与の胸は大き過ぎず、小さ過ぎず、高校生としては標準的なサイズだった。 眞一郎の直感が、その大きさに合った最適な力を判断し加虐する。 「!!……くぅぅ……」 肋骨に影響が出ないギリギリの圧迫を受けた朋与は、誰にも見せたことのない嬌態を晒した。 (自分でする時よりいいっ……全然気持ちいいっっ!!) 身体をくねらせ、身悶えする朋与。だが、眞一郎の手がポイントを外れることは決して無い。 全体を解す動きから、乳腺を揉む形に動作を移行すると、首筋に顔を埋め込む。 「……朋与……」 深く息を吸うと、朋与から発せられる甘い匂いが眞一郎の肺を満たした。 甘さの源を味わいたいという思いが、眞一郎の舌先に朋与の『うなじ』を襲わせる。 「はうぅぅっ!!」 堪らず首を折って眞一郎の頭を追い立てる朋与。だが、それは無駄な抵抗だった。 眞一郎は変幻自在に左右の首筋、うなじ、耳たぶを舐め上げ、時に噛み付き、 存分に朋与という甘味を味わっていく。 「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ……」 まるで短距離疾走の直後のように、呼吸が激しくなる朋与。が、変調はそれだけではない。 子宮が訴える疼きに耐えられず、両脚をモゾモゾと擦り合わせ始めたのだ。 「下も……触っていいよな……」 目ざとく変化を観察していた眞一郎は、乳房を弄っていた手を片方、朋与の脚の付け根へと向かわせる。 「…いや……恥ずかしい……」 生まれて初めて、男の子が自分の性器に手を触れようとしている……。 (だめ……今…眞一郎に触られたら……それだけで狂う、狂っちゃう!!) 緊張の連続で普段の力の半分も残っていない筋肉に必死に命令し、太腿を閉じ合わせる朋与。 しかし、性に目覚め掛けている牡の突進力は、少女の予想を遙かに越えていた。 眞一郎の「女の子の性器に触れたい」という願いの方が、朋与の防御本能より、数段強力だったのだ。 「い……いやぁ…」 両腕も援軍に加えて抵抗する朋与だったが、眞一郎の欲望の前に、壁は脆くも崩壊する。 …………くちゅ………… 朋与は恥ずかしさで死んでしまうのではないかと思った。 眞一郎の指が触れたその場所は、すでに朋与の胎内から湧き出た淫水で、ビショビショに潤っていたのだ。 暖かな粘液が、眞一郎の指先を濡らす。 「……朋与……これ……」 「…………」 なにも言えずに俯いてしまう朋与。身体が勝手に「私は淫乱です」と宣伝しているようで、本当に気が狂いそうだった。 そんな朋与をよそに、眞一郎は予想もしない行動に出る。 …………ペロッ………… 眞一郎が朋与の愛液に濡れた指を、自分の口に運んだのだ。 「!!!……や、やだ!なにしてるの!?」 水飴でも舐めるように、指を咥えている眞一郎。朋与は咄嗟にその手を口から引き剥がした。 「……き……汚いよ……シャワーだって……浴びてないし……」 朋与はつい先刻、自分が汗にまみれた眞一郎の陰部に、夢中でしゃぶりついていた事を棚に上げて言った。 「朋与もさっきしてくれたじゃないか。…それに、朋与に汚いとこなんかない」 「…………」 声がでなかった。嬉しくて……嬉しくて……嬉しくて……。 朋与の上半身を優しく抱きかかえ、ベッドへ寝かせる眞一郎。 「もっと…呑みたいよ……朋与…」 軽く立てられていた朋与の膝に、眞一郎の手が掛けられ大きく割り拡げられる。 「……いいよ……眞一郎のしたいだけ……して……」 枕に顔を埋め、瞳を閉じる朋与。ささやかな抵抗は完全に止んでいた。 朋与が顔を伏せて大人しくしていられたのは、ほんの数秒だった。 眞一郎の執拗な舌攻めに屈服した外陰部が、すぐに花開き始める。 敏感な粘膜への直接攻撃が始まると、もう声を抑えることは出来なかった。 「つあああっっ!…………だ……いや……くっ!!」 眞一郎の舌先が、八の字を描いて朋与の内陰部を動き回る。 (やっぱり天才だ……眞一郎って天才だ……) 普段の生活態度から推して、眞一郎が女慣れしているとは到底思えない。 間違いなく、眞一郎もこれが『初体験』のはずなのだ。それなのに…… (……くっ……でも……ホントに上手……気持ちいい……) 大陰唇に親指が掛けられ、朋与の女性器が限界まで解放される。 膣口から染み出てくる愛液を舌の上に掬い取り、性器全体に塗り込めて行く眞一郎。 使い切れなかった淫水を飲み込むと、陰核に口付けて「チュゥゥゥ」と吸引する。 「はあああああっっ!!!」 最も敏感な部分を攻められ、朋与の身体が仰け反った。 咄嗟に朋与の手が、眞一郎の髪に伸びる。先ほどとは真逆の構図だ。 「だめぇぇっっ!!……くぁぁっ……そこ…だめぇぇぇぇ!!!!」 朋与の鋭い拒絶の声を聞いても、眞一郎は吸引を止めない。 それどころか、朋与の太腿を腕で抱え込み、逃げられないように固定してしまった。 さらに強さを増す眞一郎の吸い込み。包皮がめくれてクリトリスが強制的に勃起させられる。 剥き出しとなった弱点に眞一郎の舌先があてがわれ、細かな振動を送り込む。 ……そしてそれが『とどめ』となった。 「あああああ!!!…い……いっちゃう……い、イクぅぅっっ!!!!」 眞一郎の頭髪に指先が食い込み、全身の筋肉が極限まで緊張する。 ……そして性器とその周辺の筋肉が、朋与の制御を離れて暴走を始めた。 …………ぴゅ!ぴゅ!ぴゅ!………… 悦楽に支配されながら、朋与は自分の股間が、何か得体の知れない液体を吐き出しているのを感じた。 ……そう……眞一郎の顔めがけて……何度も……何度も……。 眞一郎がティッシュで口元を拭っている横で、朋与は顔を手で覆い泣いていた。 「うぅ……ぐすっ……ぐすっ……ごめんなさい……ごめんなさい……」 幼い子供のように泣きながら、朋与は何度も眞一郎に詫びた。 実際、朋与の射出した『潮』は微量で、眞一郎の顎を僅かに濡らした程度だったのだが、 女の自分が男性に排泄物を吐き出したという事実は、決して容認できるものではなかった。 「朋与」 眞一郎が朋与の顔から両の手を引き剥がし、そのまま全身を抱きしめる。 恥ずかしくて眞一郎の顔をまともに見られない。朋与は視線を逸らした。 「ごめん、俺が悪かった。……少し強引な方が好きかと思って……ホントにゴメン」 快楽の追求という点では眞一郎は何も間違ってはいないのだが、 乙女心はそれとは別の次元に存在するものなのだ。 「…………」 眞一郎の肩に額を付けてもたれていると、不思議と愚図りが収まっていた。 顔を上げると眞一郎と目が合う。朋与は目を瞑りキスを求めた。 ………… 「あの……俺、口すすいでないんだけど……いいの?」 ………… 「ぷっ」と吹き出してしまった。なんだか凄く可笑しい。 ………… 「気にしてくれたんだ」 「だってさ……嫌だろ?」 なんだか凄く間抜けだ。愛撫は一級品なのに、会話の仕方は三級品。……でも…… 朋与は眞一郎を押し倒し、唇を重ねた。 性的な意味のない、愛情表現としての軽めのキス。……そして改めて告げる……。 「好きよ……眞一郎……大好き……」 組み敷かれた眞一郎が、一瞬の躊躇いの後、口を開こうとする。 「…………俺も…」 その先を言わせるわけにはいかなかった。もう一度、キスで唇を塞ぐ。 今度は舌を絡ませるディープキス。『アレ』をする前の挨拶のキス……。 ………… 「……セックス……しよ……」 「…………うん……」 朋与の腕が眞一郎に、眞一郎の腕が朋与にかかる。 ふたりは徐々に四肢を絡ませあて、剥き出しの身体を密着させていった。 体勢を入れ替え、再び朋与が下になる。 平静を装っていたが、朋与は胸の高鳴りを抑えられずにいた。 もうすぐ自分は眞一郎と『ひとつ』になる……。 破瓜の痛みに対する恐怖は拭いきれなかったが、それよりも眞一郎と繋がる悦びの方が勝った。 脚を大きく開き、性器を眞一郎に開放する。もう恥ずかしいとは思わなかった。 「……きて……眞一郎……」 「……朋与……」 ………… 圧し掛かってきた眞一郎の表情が変わる。何か大事なことを思い出したようだった。 「ちょっと待って」と短く言うと、枕の下を探り始める。 (……?……なによ……もう……) 眞一郎が何か小さな袋のようなものを摘み出す。朋与は一目で、それが何なのか分かった。 (……スキン……なんで私の枕の下に?) もちろん、それは朋与の持ち物ではない。……ということは…… (……眞一郎……の?) 朋与に背を向けて、なにやら悪戦苦闘している眞一郎。 少し『醒めて』しまった朋与は、嫌味のひとつも言ってやりたい気分になった。 「そんなの、いつ用意したの?」 「え!?……あぁ……え~っと……さっき朋与が下に降りてる時に……」 装着に手間取っている様子からして、使用するのは初めてと見て間違いない。 「持ち歩いてるんだ」 「三代吉…………の、野伏がさ、くれたんだ。……男の嗜みだから持ってろって……」 「…………」 情交の相手が避妊に気を使ってくれるのは、女としては喜ぶべき事だったが、朋与はとても不満だった。 理屈ではない。眞一郎と自分を隔てようとするモノに、激しい怒りを覚える。 「お待たせ」と振り向いた眞一郎の陰茎を乱暴に掴む朋与。 先端部分を摘んで思い切り引っ張ると、パチンと音を立ててゴムの皮膜は眞一郎から離れた。 朋与は伸びきったスキンを床に投げ捨て、眞一郎に抱きつき訴える。 「こんなの要らない。そのままして」 真剣な朋与の眼差しに、眞一郎は困惑しているようだった。 当然だろう。女に「避妊するな」と言われれば、大抵の男は慌てる。 「俺……自信無いんだ……。初めてだしさ……入れたら途端に出しちゃうかもしれない……」 フェラチオでの失敗が、眞一郎を少々弱気にさせている様だった。 (……もう……優しすぎるんだよ、眞一郎は……) これは眞一郎を癒す為にしている事なのだ。眞一郎は何も心配しなくていい。 ……ただ……好きなようにすればいい……。……今この瞬間、全てを忘れるために……。 「……眞一郎は……したくないの?……その…ナマで……」 「…………」 したいに決まっている。何の障害も無い『膣内射精』は男の遺伝子に刻み込まれた本能だ。 「心配ないよ……その…私、今日……安全日…………だから……」 「!!」 瞬間、眞一郎の手が朋与の上腕を掴み、興奮の極みに達した瞳が朋与の顔を覗き込んでくる。 鼻息が荒い。二つの眼が「本当にいいのか」と真摯に問うていた。 朋与は言葉ではなく、キスと態度で気持ちを表す。 身体を横たえ、両腕を大きく広げて眞一郎を待つ。膣から再び『潤み』が湧き出すのを感じる。 心も身体も、眞一郎を迎える準備は、とっくの昔に出来ていた。 お互いの肌と肌を摺り合わせると、下降気味だった性感はすぐ上昇に転じた。 朋与の全身を薄い汗のベールが包み込み、半開きの唇からは吐息が漏れる。 「はぁ……はぁ、はぁ、はぁ……はぅっ!……」 眞一郎が剥き出しの陰茎を朋与の『溝』に合わせて滑らせる。 それは意図的に調節される『手』の力とは異なり、ごく自然な圧力で朋与の性器を愛撫した。 「うっ……はぁ、はぁ……き、気持ちいいっ……眞一郎ぉ……」 花弁は完全に濡れ開き、牡の侵入を待ち焦がれていた。 「と……朋…与……」 眞一郎の肉茎も自らの淫水と朋与の愛液に濡れ、限界まで張り詰めている。 ……ふたりとも、もう限界だった…… 「……朋与…挿れるよ……」 眞一郎が茎の根元を握り締め、狙いを定める。 朋与は荒い呼吸のまま黙って頷くと、両脚の開きをM字に変えて性器を上向かせた。 そして眞一郎が迷わぬように、陰茎の先端に手を添えて胎内への入口に導く。 亀頭の先端が膣口に触れ、互いの淫水が混ざり合った。 ………… 「……痛がっても止めないで…………最後までして」 さすがに『無理矢理されるのが好き』とまでは白状できなかった。 「…………いくよ……」 眞一郎は朋与の背中と肩に腕を回して逃げられないようにすると、一気に朋与の『ナカ』に押し入る。 「ッッ!!!!!……あ……あ……痛……」 ブツッと何かが千切れる感覚と異物感。閉じられていた空洞がこじ開けられていく。 (……痛い……身体が裂けちゃう……) 充分に愛撫を加えられ解きほぐされていても、やはり処女膜が破れる時の痛みは避けられない。 眞一郎の侵入は続き、裂傷を負った膜が竿の部分に擦られてさらに傷つく。 「うっ…痛……っぅぅっ!!」 額に汗が滲む。眞一郎の背に爪を食い込ませて耐える朋与。……そして…… 「朋与っ!!」 渾身の力を込めて、眞一郎が最後の一突きを送り込むと、陰茎は完全に朋与の膣内へと埋没した。 「かはぁっ!!」 『とどめ』を打ち込まれた瞬間、苦しみとも悦びともつかない声を上げ、仰け反る朋与。 亀頭が内側から子宮を押し上げ、茎の部分が膣の内壁を限界まで拡張する。 ………… (……は……入った……) 舌と口腔で散々味わった眞一郎の分身が今、自分の胎内に埋め込まれている。 入口付近の鈍痛を無視して膣に意識を集中すると、その形が良く分かった。 「朋与、大丈夫か?」 目を開けると眞一郎の顔がある。苦痛の為に歪んだ朋与の眉間を、眞一郎の指がスッと撫ぜた。 不思議と痛みが引いていく気がする。額に浮かんだ険が自然と消えていった。 「……平気よ……痛いけど…気持ちいい。眞一郎は?」 「俺も。朋与の膣(なか)、暖かくてヌルヌルしてて……動いたら出ちゃいそうだ……」 平凡な表現だったが、褒められるのは気分が良い。 朋与としては、すぐに射精されても構わなかったが、この時間を少しでも長く続けたいという想いもあった。 「ちょっと……こうしていようか……」 意外に広い眞一郎の背中に腕を回し、両脚で腰を引き付けて身体を密着させる。 隙間を作りたくなかった。このまま溶けて、本当にひとつになりたかった。 「朋与……」 眞一郎が体重を預けてくる。その重さが心地いい。 (セックスしてる……私……眞一郎とセックスしてる……) 『女』になった充足感と眞一郎のしなやかな腕に包まれて、朋与はこの上なく幸福だった。 どのくらい静止していただろうか。 朋与の息遣いが落ち着いてきた頃、眞一郎の腰が、もどかしげに動き始めた。 「……したくなったの?」 摺り寄せていた頬を離して聞いてみる。 「……うん……したいよ……」 恥ずかしげに視線を逸らす眞一郎。その仕草は子供みたいで可愛いかった。 「……このままじっとしてても…………出そう……うっ!」 眞一郎がうめき声を上げる。 朋与には自覚が無かったが、朋与の膣は高まる性衝動の影響を受け、自然に蠕動していたのだ。 静止したままでも、眞一郎の陰茎を処女特有の膣圧力と『ひだ』の微振動で無自覚に攻め立てる。 快楽から注意を逸らすためか、大きく息を吐き出す眞一郎。 朋与は眞一郎の言葉を待った。 「でも……朋与、まだ痛いんだろ?」 呼吸が安定してきた朋与とは逆に、眞一郎は興奮で息切れしそうだった。 (眞一郎、苦しそう……私が…我慢しなくちゃ) 朋与はそう思った。 「もう大丈夫よ、落ち着いた。……ねぇ、ちょと動いてみて」 生殖行為の開始を促す朋与。眞一郎は指示に従った。 陰茎が半分ほどゆっくりと引き抜かれ、同じ速度で再び埋め込まれる。 「…うっ……」 やはり痛みは残っている。だが、耐えられない程ではなかった。 それに膣奥を……子宮の入口を柔らかな亀頭で刺激されるのは、やはり気持ちがいい。 「つ…つづけて……」 「…………わかった……」 朋与の反応を観察しつつ、二度目、三度目の挿入を施す眞一郎。 肉竿を鞘に収めきったところで、ふたりの目と目が合う。 どちらからともなく唇を求め、舌を絡めた。 「平気、痛くないわ。……して……眞一郎」 「……いいのか?……」 朋与が頷くと、眞一郎の顔が喜びで輝いた。 「優しくするから……」 眞一郎としては精一杯の言葉のつもりだった。だが、朋与は首を横に振る。 「いいの、私の事は考えなくていい。眞一郎がしたいようにして……」 「……朋与……」 少し寂しげに翳った表情とは裏腹に、眞一郎の下半身はゆっくりと連続した前後運動を始めていた。 陰茎の抜き差しが段々と激しさを増していく。 徐々に上昇していく性感と眞一郎のとろけた顔が、朋与に痛みの存在を忘れさせてくれた。 「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、……と、朋与……」 ピストン運動の速度が更に上がり、眞一郎が興奮の高みに昇り詰めて行くのが分かる。 「んん……っふう……はぁ、はぁ……し、眞一郎……眞一郎……」 いつ射精してもおかしくない状態に追い詰められながらも、天性の技を発揮する眞一郎。 無意識のうちに朋与の最も好むリズムを掴み取り、恥丘の裏側にある敏感な部分を刺激する。 浅く、浅く、深く。引き抜く時は膣天井を擦りあげる肉茎。 最深部に到達しては、鈴口から出る分泌液を子宮口に塗りつけ、圧迫する。 「はあああっっ!!!」 注挿の開始から僅か数分で、朋与は自分自身を見失い始めていた。 膣口から僅かに流れていた出血は既に止まり、そこから愛液とは違う白濁した液体が溢れ出す。 (……くっ……眞一郎っ……ホント……凄い……) 注挿運動以外の愛撫は完全に停止していたのだが、それが全く気にならない。 それほどまでに、朋与は眞一郎との結合部に集中していた。 (処女なのに……さっきまで処女だったのに……) 朋与は薄々気づいていた己の淫乱さに呆れながらも、 眞一郎という最良の相手に『初めて』を捧げる事が出来た幸運に感謝した。 (……イける……初めてだけど…………イける……かも……) 喪失による痛みはほとんど無くなって、快感だけが朋与の脳髄を犯し始める。 眞一郎の気持ちを気遣う余裕は消し飛び、己の悦楽だけを追及する利己的な朋与が顔を出す。 「と、朋与っ……はぁ、はぁ……朋与ぉっっ!!」 朋与の名を連呼して悦びを表現する眞一郎に、我慢の限界が近づいていた。 そして牝としての本能的欲求が朋与の精神をを完全に侵食する。 「出してっ眞一郎!……私の中に……精子……いっぱい出してぇぇっ!!」 ふたりの四肢に最大の力が込められ、お互いの身体を抱きしめ合う。 眞一郎の恥骨が朋与の陰核を押し潰し、肉茎が根元まで膣内に突きこまれて痙攣を始める。 「と、朋与っ…出るっっ!!!」 朋与の両脚が眞一郎の腰裏で交差し、ガッチリと食い込む。 肉茎の先端が朋与の子宮を限界まで押し上げた状態で、それは始まった。 ドピュッ!!ドピュッ!!ドピュッ!!ドピュッ!! 「あああああああぁぁっっ!!!」 第一撃を感じ取った朋与の口から、甲高い悲鳴が上がり、絶頂へと押し上げられる! 「い、イクぅっ!!!!」 二撃目、三撃目が膣奥に命中すると、朋与は悦楽の言葉を吐き出して、身体を海老反らせた。 眞一郎の二度目の射精は、口腔で行われたそれとは比較にならない激しさであった。 短時間で再蓄積されたとは思えぬ『量』と『濃さ』のスペルマが、 次々と鈴口から射出され、我先にと朋与の子宮口に襲い掛かる。 (……あぁ……あぁ……出てる…………暖かい……) 朋与は恍惚とする意識の中で、膣奥に生暖かい精液のプールが形成されるのを知覚した。 眞一郎のヌルヌルとした命のスープで、胎内が白く満たされるのをハッキリと感じる。 眞一郎の腰は本人の意思とは関係なく、射出した精液を奥へ奥へと送り込む動きを続けていた。 膣内をいっぱいに満たし終え、行き場を無くしていた精液が、 そのピストンの力を借りて、開きかけた子宮口から胎内深くへ侵入していく。 子宮内の感覚までは明確ではなかったが、朋与には眞一郎の精虫がどこを目指しているか分かっていた。 (……はぁ……きて……眞一郎の…赤ちゃんたち……私のお胎に……きて……) 『眞一郎』そのものの暖かさが子宮を中心に全身へと拡散していく……そう朋与は感じていた。 それは麻薬のように、朋与の身体を弛緩させていく効果があった。 (…………しん…い……ちろ……う…………) 意識が霞んでいく。 あの自慰の時と同じ白い霧が朋与を包み、どこか違う世界へと魂を連れ去っていった。 [つづく] ある日の朋与4
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第十二話 お父さんのお仕事は 侵略地上げ獣『宇宙大帝グソクムシ』登場 五月頭。 新緑で山は沸き立つようだった。萌木色の若葉が輝くようで目に眩しい。そんな山中のハイキングコースを歩く小学生の我が子の姿は、同じ様にまた眩いものだった。少なくとも東和樹三佐にとっては、再編成が済めば妻子の疎開先でもある富士駐屯地界隈を離れて出征せねばならない身であるため、その感情はひとしおだった。 2年になる娘の父兄同伴の遠足に平日を潰して参加できたのも、今のうちに少しでも思い出を作っておけという連隊長らのはからいである。 正直なところ北海道から疎開してきた自衛隊員の娘が、転校先で何らかの不利益を被らないか不安だったのだが、今も同級生の手を握って三つ編みと一緒に無邪気に振るっているのを見ると無用な心配だったと言うか、むしろ手を取ってるのが男子生徒であって仲良すぎませんか、ねぇ、おとーさんは許しませんよとか別の心配を抱いてしまう。 件の男子生徒の父親だろう、東とさして年齢の変わらないように見える30代の男性が、彼の気持ちを察してか苦笑いを向けてきた。 「有給ですか?」 「ええ」東は曖昧に頷いた。「そちらも?」 はい、と男性は微笑みでもって返してくる。 「忙しい時と暇な時が極端な職場でして。ああ、土岐と言います。そこの虎太郎の父です」 そういって男性は東の娘と手をつないだ少年を指さす。そういや娘が疎開先で最初にできた友達だとか、妻が言っていたような。思い出して東はぺこりと頭を下げた。ついつい脱帽時敬礼にならないように、ちょっと腰を曲げる角度を浅くする。 「娘が…優希がお世話になってます。父の東和樹です」 「いえいえこちらこそ」 とかなんとか、大人の処世の遣り取りを数度繰り返すと、当然のように互いの職業の話になるわけで、 「ところで東さんのご職業は?あ、自分は技術屋なんですが」 「(特別国家)公務員です」 とっさに無難なところを口にしていた。自衛官の子息をつかまえて人殺しの子供呼ばわりする教師がいるが、そういう政治活動にだけ無駄に熱心な人間がどこにいるとも判らない。まして決して義務を遂行できていると思えない現状では、部下や僚友には後ろめたかったが、娘のためにも身分を明かす気にはなれなかった。まぁ、公務員だとしても目の敵にする人間はいるものだが。 少なくとも虎二郎はそういうい妬み嫉みとは無縁の普通の大人であるため、奇跡的なこの邂逅の意味に気付く訳もなく、 「それはまた…親方日の丸といっても、銀河列強のせいで(失職的な意味で)不安もあるんじゃないですか?」 「ええ、(戦力的な意味で)不安はありますね」 「でも日本にはダイガストもありますよ」 そう言われるのが一番堪えるんですよ。東は追従の笑みを浮かべながら心中でそう思った。 もちろん虎二郎は駿河沖で海堂に話したように、ダイガストが全てを解決するジョーカーだとは思っていない。しかし東が自衛官だとは知らないので、どうしてもダイガスト=無敵のロボットという一般の方向けの宣伝文句を口にすることになる。 要は大人になって家庭を持つと、いろいろと気にしなけらばならない事が増える訳だ。 もちろん、彼らの子供たちにはそんな事は関係無いわけで、 「おとーさん達、仲よさそうだね」 東優希は父の心配をよそに上機嫌だ。栗色の髪をツイストドーナツみたいにふわりと一つに編んだのが、子供ながらの清涼感を醸して似合っていた。いかにも現場の男然とした父と違って優しげな面立ちなのは母親似だろうか。 彼女としては初めてのお友達である虎太朗くんの『おとーさん』と自分の『おとーさん』が――外見上は――意気投合しているというのは嬉しいことだった。そこは子供だけあって算段は無く、まして父親の嫉妬じみた視線など判る筈もない。 それは虎太朗少年にしても同じことで、優希が転校してきた時にクラスの悪童どもが北海道から来たと知った途端『やーい、おまえん家、つるぎすたーん』とトトロが聞いたら全力で殴りに来るレベルの暴言を吐いたとき、少年ながらの正義感に任せたら、こうなっていた。 担任の女性教師は悪しき平等で悪名高い組合には入っていなかったが、教師としてケンカは絶対的に悪の立場であったから、事態は早々に電話連絡で虎二郎の知る処となる。 その晩、父は通念的な注意を息子にしたのち、誇らしげに頭を撫でてやった。 ちなみに鷹介は時折夕飯などに招待されるようになった土岐家の子供に、年長者としての義務である喧嘩の仕方を教える、いわゆる『おにーさんかぜ』を吹かせようとチャンスを窺っていたのだが、透に引っ叩かれて未遂に終わっている。 一方でそんな微妙な立場の優希であったが、彼女にしてみれば周囲の反応など何処吹く風で、あくまで天真爛漫に春の終わりを謳歌していた。 「緑色がいっぱいで目がふわふわするねー。北海道じゃ、まだ桜が咲いてるのに」 「へー」 虎太朗少年はそろそろ女の子と手をつなぐのが恥ずかしいお年頃で、無難に相槌をうっていたものだが、 「お引越ししたら、こっちの桜はもう咲いてなくてね、今年のお花見はできなかったの。おかーさんは、もうおうちには帰れないんじゃないかって言ってるし…帰りたいなぁ…」 優希はツルギスタンに占領された故郷をおもい、幼い貌を曇らせる。女心と秋の空じゃないが、虎太朗は『あれ、何か地雷踏んだかな?』と』仰天した。 後ろで見ていた虎二郎は『地雷を踏んでも足を離さなければ大丈夫だ』と、そこからのフォローを期待して息子を応援していたが、東父は『残念、最近の地雷は踏んだら側、爆発するのだ』と早速突入のタイミングを計りはじめる。 いささか大人げない東父の介入が実現しなかったのは、先頭グループから聞こえてきたどよめきに邪魔をされたからだった。子供たちの悲鳴じみた声までが聞こえたとき、東は娘を虎二郎に任せるや、様子を見てきますと言って走り出していた。 彼の目は既に三等陸佐のものにかわっていた。 ハイキングコースは山中の空き地に続いていて、そこで喫食と散策の予定であったのだが、空き地は目も覆わんばかりのゴミの山に様変わりしていて、到底のどかな昼を過ごす場所では無くなっていた。赤錆びた機械部品がうず高く積まれ、破れた管や接続口からはパステルカラーや蛍光色の液がダダ漏れている。その液は刺激臭を発していて、草むらの所々で気化なのか腐敗反応なのか、得体の知れない白煙が立ち上がる有様だ。 山道からどうやって持ち込んできたものか、ゴミの山の間には作業服の男たちが行き来していた。さらに現場監督らしき人物から説明を受けているのは、でっぷりと太った水ぶくれの肥体をビジネススーツに押し込んだ五十絡みの胡散臭い男…言わずと知れた広域指定銀河暴力団モンタルチーノ商会のボス、ドン・モンタルチーノその人である。 「小悪党役でも出番やからな、頑張っちゃうで、わし」 「モンタルチーノ様、誰に向かって話しているのですか?」 いつもの若頭も黒服サングラスの変わらぬいでたちで、モンタルチーノの奇矯な発言に突っ込みを入れる。 「いやいや、全国の女子高生ファンのみなさんに挨拶をやな…それよりも、何や煩そうてあかんな、何事や?」 「地元の子供のイベントのようですね」 「そりゃあ間が悪い話やな。せやけどこっちもお仕事やから、お帰り願おか」 モンタルチーノが山道と空地を区切った木柵の前まで行くころには、続々と到着する遠足参加者たちで何重もの人垣が出来上がっていた。先頭では若い女教師が予想外の事態にパニックになりかけている。 「一週間前の下見じゃこんなの無かったのに…」 「あー、お嬢さん、引率の先生か?」 モンタルチーノは海苔のような眉と、色の悪くなった明太子のような唇でもって不細工な営業スマイルをつくり、 「ここ、産業廃棄物の処理場になるんや。作業の邪魔しちゃいかんよ、じきに重機もくるさかいな。危ないから、子供らをはやく引き揚げさせてんか」 両生類ににじり寄られるような不快感に女教師は怯んだ。重機も来るというし、確かに言うとおりかも。言いくるめられる寸前の彼女を引き留めたのは、父母の列から上がった手と声だった。 「私は市役所職員ですけど、そんな話は聞いてないです。処理場認可の提示をしてください」 「非番の警察です。重機と言っていましたが、積み下ろしに公道を止めるのなら届け出は?」 「消防士だが、廃液から煙が出ているぞ。対策と届出は出ているのか?」 この国、面倒くせぇ。モンタルチーノは思わず喉まで出かかった言葉を頑張って飲み込んだ。 お役所の突っ込みに父兄たちのボルテージが徐々に上がっていた。ここまでの山道で適度に疲労し、テンションも上がっている。どよめきの中に舌打ちや詰問の声が混じり始めていた。 東三佐はどうもおかしな空気になっている事に顔をしかめる。衆をたよりに気が大きくなっているような。そう思っていると、ふと近くの父兄の一人がこちらを見ているのに気づく。間借りしている駐屯地の、普通科の曹長だったか。特段親しい訳でもなかったが、こういう時だからだろう、彼は話しかけてきた。 「ちょっと、嫌な空気ですね」 「そうだね」 生返事を返した東は、次の下士官の言葉にドキリとする。 「ざっと見たところ、三佐が最上級です」 「機甲科だけどね」 「いざ悶着が起これば兵科の違いなんて些細な問題になりますよ。どうにもあの連中、堅気の雰囲気じゃありません」 「根拠は?」 東も同じような印象を持っていたが、何となくで将校の権限を振るうわけにはゆかない。それは曹長もわかっていたようで、 「地元の土建屋連中には見えません。ガタイの良すぎるのが柵の向こうで作業してますが、中東人とも南米人とも違います。アングロサクソンにしては肌が浅黒すぎる。それに、むこうに積み上がっている機械類はちょっと見たことがないですね。少なくとも車両や重機の部品じゃあないですよ」 じゃあ何処の誰で何の機械なのかとの疑問が湧くが、最近じゃあそういう輩は違法の星間商人とかいう一昔前なら正気を疑われるオチがつく。 そやつ等の跋扈のせいでひと月前にエライ目にあった事だし、東の口ぶりは必然、真剣みを帯びてくる。 「戦車の機関にも見えないしな…わかった、では曹長、この遠足に同伴している『知り合い』の数はわかるか?」 ああ畜生、有給取ったってのに、何でこんな事口走っているんだ、俺は。 ふと気づいて、内心で自己嫌悪が渦を巻く東をよそに、そっちも子持ちであろうに曹長は嬉しげに答える。 「知ってる限りで5名です」 「手分けして避難路の確保と誘導の準備をたのむ。参加者の安全が第一だ」 「避難路の確保と誘導を行います。タイミングはどうしますか」 「各自の判断で」 「承りました」 「よろしく頼む」 会釈のような脱帽時敬礼を交わすと、曹長は人ごみの中を器用に縫って消えた。実際の流れは向こうで考えてくれるだろう。それくらいの機転が利かねば最上級の下士官なんぞ就けはしない。要は先刻の会話は東の責任で曹長にフリーハンドを与えた訳だ。 あれ、気が早かったか?今のは最善の選択だったか?今更のように自分の行動に疑問が湧いてくるが、たぶん幾ら考えてもベストの答えは出ない。 「おとーさん!」 背後から娘の声がした。振り返ると追いついた優希が不思議そうな顔をしている。 「お弁当、食べれないの?」 「そうだね」純真な目がつらく、東は困ったような笑みをつくる。「また来よう」 「でも、おとーさん、また仕事でしょ。いつ帰ってこれるの?」 「ちょっと判らないな…でも、次に帰ってきたら山でも海でも、遊園地でも、優希の行きたいところに連れて行ってあげるよ」 遊園地との言葉に優希の目が輝く。東は今日ほど娘との約束が重いと感じた事はなかった。 一種異様な父娘のやり取りに虎二郎は首を傾げる思いだったのだが、北海道からの引っ越しと、なかなか家に帰れない公務員というキーワードから、東の職務に思い当ってハッとなる。 「なぁ虎太朗、優希ちゃんのお父さんの仕事って、もしかして…」 「自衛隊で戦車に乗ってるって言ってた」 「そうか」 ダイガストと戦車では安全性に天と地の開きがあるだろうが、それでも同じ舞台に立つ子を持つ身として、虎二郎は身につまされる思いだった。そう思うと東親子の姿は荘厳なものに見えてくる。しかし、この光景をいつまでも続けさせてはならないし、いくつもの家庭に広げさせてもいけない。 それに眼前のゴミの山。弱者の無知につけ込み、未来に渡る負債を押し付ける強者の傲慢。それって先進国がやって来た事じゃないの、とか思わない事も無いが、この際こっちが被害者なので知らんぷりを決め込んでおく。 まして鷹介の青森での悶着からモンタルチーノ商会の事を周知されている大江戸先進科学研究所のスタッフであれば、この光景が意味することは分かっていた。 どうせ銀河列強の活動で生じた雑多なゴミをまとめて引き受け、人知れず山中に遺棄するハラだろう。銀河帝国文明圏にとって地球は辺境の最外殻のひとつだ。より外延へと調査を進めるための中継基地に使うもよし、銀河連邦警察の目の届かぬ辺境を危険な産業廃棄物の処分場にするのもよし。彼らにとって地球の商業的価値など、その程度だった。そこに暮らす人々が顧みられる事はない。 「宇宙ヤクザめ、俺の第二の故郷を薄汚い欲望で汚させはせんぞ」 「ぶえっくしょいっ!」 誰かが噂をしているのか、モンタルチーノは盛大なくしゃみを吐いた。 「こりゃあ、どこかで女子高生が噂してるんやな」 とか下世話な軽口をたたいてみるが、どうせ恨み言の類だと内心では分かっている。なんてったって悪党だから、恨みを買った記憶には事欠かない。 モンタルチーノもできれば自分と関わりのある人間とは全てwin‐winの関係――越後屋、そちも悪よのぅ、ではあるが――でありたいと思ってはいるが、そうなるために強引な地ならしが必要な場合も多々ある。それが文字通りの意味であったりするあたりが、正に悪党の面目躍如であるのだが。 今も教師にPTAに公務員がこぞって説明を求めていたが、いちいち取りあうつもりもない。場を占拠しているのはこちらであり、主導権をくれてやるつもりも無いのだから、立場の違いは明らかだ。 「それじゃそろそろ、お暇願おか」 モンタルチーノの命令一下、ガタイの良い作業員たち…つまるところ宇宙ヤクザの構成員達が、横にズラリと並んで父兄の列を押し戻し始める。 父が突き飛ばされ、母が追い散らされ、子供の泣き声が混じる。誰かが拙いと思った時には混沌の火蓋が切って落とされていた。突き飛ばされた父親たちが立ち上がりざまに宇宙ヤクザに掴み掛り、あるいは胴にタックルをする。暴力の応酬に前列から雪崩を切ったような壊乱がおこり、後続の父兄と子供を物理的に巻き込んで無秩序な流れが起こり始めていた。 先刻の曹長が人の雪崩から抜け出て、秩序立った列を作るように避難誘導を始める。幾人かの年嵩の教師も声を張り上げて誘導を行っていた。しかし絶対的な流れは壊乱に変わりない。 最前列の取っ組み合いも見る間に苛烈なものになっていた。参加者は昭和の香りのする喧嘩っ早い土建屋の方々は言うに及ばず、先ほど抗議の声を上げていた非番の警官や消防士も交じっており、荒事慣れしている者が多かった。しかもここまでのハイキングコースで体も温まっており、適当な見回りをしていた宇宙ヤクザの面々と違っていきなりフルスロットルだ。 形勢不利と見たヤクザ者が武器を使ったのは、自然の流れであった。 リレーバトンほどの白い発信器の先端からプラズマの刃が発生する。金属加工用のプラズマ溶断機を違法改造したもので、彼らはDOS(ダイナミック・オプティカル・ソー)と呼んでいる。ちなみにプラズマの刃渡りが長いのは、もちろん長DOSである。いずれにせよ出力は最低にまで絞るが、アーク光への暴露時間が長ければ結構な火傷を負うし、目によろしくない不可視光線の類も出ていた。で、それを両手で握って腰だめに構える。術理もへったくそもない、体ごとぶつかる事が前提の荒くれ殺法だ。 いかん。東は光の刃を確認するや、優希を虎二郎に預けると駆け出していた。手には熱い茶の入ったステンレスボトル。横合いから駆け込みながら、そいつで宇宙ヤクザの向う脛を引っ叩く。 響き渡る金属音が二度、三度。東は一撃くれたやつには目もくれず、次々とDOSを抜いた者に襲い掛かる。攻撃を察知して避けるやつには、続けざまに顎なり鼻っ柱なりにステンレスボトルの角が飛んできた。 血の気の多い父親たちは奇襲で生じた綻びから木柵に取りつくと、怒りのままに引っこ抜こうと手をかける。それで何が好転する訳でもないのだが、動き始めてしまった暴力はきっかけが無ければ中々止まれない。 それはモンタルチーノこそ理解していた。不甲斐ない一家の荒くれたちの根性は後で叩き直すとして、携帯電話型の通信機を懐から取り出すと、何やら言葉少なに指示を飛ばす。 通信を切り、葉巻に持ちかえて隅を口で噛み切る。口腔から鼻へと甘い香りが抜けて、イライラを瞬時忘れさせた。 若頭がモンタルチーノの葉巻に火をつけた時、それは唐突に始まった。 山が激しく揺れ、木々が倒れる。間欠泉のように土が空高く吹き上がり、その中に巨大な影が立ち上がる。影の巨大さに地震では起こらなかった悲鳴がたちまち巻き起こった。 現れたのは全長40メーターに達するダンゴムシのような生物だった。しかし地球では石の下などに生息する種より足が太く、甲殻の最後尾部分はエビの尻尾のように左右に広がっている。節の端々には棘のような突起が目立ち、全体の印象を凶悪にしていた。 「宇宙大帝グソクムシ!!」 虎太朗が例によって銀河最強甲虫DVDの映像から、その名前を思い出して指差した。 「海洋惑星の暴君!凄い!大きい!」 巨大甲虫に目をキラキラさせる虎太朗に優希の方はドン引きである。女心が分かるにはマダマダと、息子の行動に虎二郎は淡い笑みを浮かべ、それから二人の肩に手を添えて空の一点に目を向けた。 「さぁ、こっちも準備が整ったみたいだ」 ジェットエンジンの轟音と共に何かが近づいていた。 ほどなく空の青にスコップの先のようなシルエットが浮かび上がり、それがどんどん高度を下げてくる。 子供たちは知っていた。大江戸先進科学研究所の大型輸送機。それが運んでくるものを。 「ダイガストだー!!」 幾人かのソプラノが唱和し、悲鳴と怒号の喧騒の中に確かに響き渡った。大人たちも足を止め、手を止めて、子供たちの声の示す先を見上げる。 確かに鋼鉄の巨翼に吊り下げられた機械人形の雄姿があった。 歓声が上がる。ついでに宇宙ヤクザ達の動揺も。 「なんつー御都合主義や…」 モンタルチーノのタラコ唇から葉巻が転げ落ちた。 時系列は僅かに戻る。 整備を終えたダイガストは自衛隊の富士演習場で火砲の試射を行った。これまでの如何にも日本的な何となくの協力体制が実を結んでの、これまた何となくの使用許可だった。そして、つつがなくテスト工程を終え、大鳳に吊り下げられての帰途のこと。 「…それで、同期のやつらは速成でパイロットになるそうで」 鷹介はダイガストのコクピットから大鳳の機長に、愚痴のような、整理しきれないモノをうち明けていた。数日前に再会した柘植隼人から聞かされた件だった。 「末期の予科練みたいなもんか…まぁ、皆、何がしかの覚悟があって続ける事を選んだんだろ」 会話の相手である権藤機長はそろそろ頭に白いものが混じり出した中年男だが、鷹介と同じように元々は航空学生出身者であり、脂っ気の抜け始めた顔貌には任務と訓練とで自分を律し続けた凄味が滲み出ている。現役時代は輸送機のパイロットではあったが、イラクでの空輸任務もこなした実際の戦地を知る貴重な人物だった。 そんなベテランが退職して大江戸研に席を置いていると云うのも、あの博士や人の悪い総理の暗躍があったのではないかと思われる。 権藤機長は計器類を確認しながら会話を続ける。大鳳は大型機ではあるが、人手不足のために副機長の席は常に空いていた。 「戦争資源ってやつは、人間の調達が一番難しいんだ。それなのに教育用の機体まで持ち出すって事は、後のパイロット育成計画にまで影響が出るって意味だぜ。それも次があれば、って話だが…」 権藤にはどこか自棄な言動があった。若い鷹介はそれこそがベテランの醸す空気だと思っている。 「大体、お前の同期だって直ぐに実戦配備ってわけでも無いだろ。小松や築城のパイロットと入れ替えるのが先じゃないのか?まぁ北海道、青森と盗られて、そっちからの引き上げ組の受け入れで、方々の基地もてんやわんやらしいが」 それは企業にも言える事で、ツルギスタンやセランの統制下でどのように振る舞うかで、経団連の混乱が続いている。なお、ツルギスタンは占領地への製造業者の帰還に優遇措置を発表しているが、それは取りも直さずメイド・イン・ツルギスタンを名乗る事であり、日本にとっては利敵行為と成り得る。 外資系企業の中には早くも占領地で別法人を作ろうという動きが出始めており、各国の経済関連の役人の頭を抱えさせていた。銀河列強ではその流れを歓迎し、新たな胴元となってマネーゲームの参加者を募っている節もある。世界経済の停滞で息も絶え絶えだったファンドがこれに触発され、目を血走らせて次なる賭場への種銭のために新興国への投資を引き揚げさせると、それがまた新たな要素となって世界経済を混迷させる。 一方、先進主要国では戦備のために雇用が生まれ、徐々に経済が上向き始めているが、それを支えているのは金にモノを言わせての資源争奪戦であり、資源産出国――大抵は後進国――への拙速すぎる金の流れは現地での格差を拡大させ、末端の人々の目に見えぬ不満もまた膨れてゆく。 自由主義経済の構造の行き詰まりに端を発する混乱によって遅滞していた地球の歴史の歯車は、銀河列強の介入によって再び回り始めるが、歯車に点されるのは潤滑油で無く混乱であり、いやな軋み音を響かせていた。 ダイガストもそういった流れの最先端に存在するものであるが、運用に関わる鷹介や権藤がその事を認識するのも無理な話であった。彼らの居場所はコクピットであり、そして彼らが信頼する機械たちが予定外の通信を受けたのは、そんな時だ。 「こちら土岐です。権藤さん、今どの辺ですか!?」 「はいよ、こちら権藤。現在は静岡上空3000フィート。どうした?そっちは有給じゃないのか」 「その有給中に宇宙ヤクザと鉢合わせしたんです。遠足のコースで不法投棄の真っ最中。ダイガストをこっちに回せませんか?」 「俺の方は構わんが…」権藤は操縦桿を握りながら器用に首をかしげる。「大江戸博士は何て?無許可じゃ動かせんぞ」 「列強の鉄くずを分捕るチャンスですと言ったら、二つ返事でOKが」 「ひと様のゴミを掻っ攫うのが国防の重責かい…」 皮肉をこぼしながらも権藤は大鳳のスロットルをしぼると、大型機を最小の旋回半径で見事に回頭させ、虎二郎の通信機めざして高度を下げていった。 一方で蚊帳の外だった鷹介は『主人公(笑)』というフレーズを感じずにはおれなかった。だから山肌に巨大な甲殻類を視認した時には、ようやくの出番にちょっとの興奮を憶えたものだった。 逆に心配したのは権藤だ。 「地上げ獣とやらかい…風見、山肌のハイキングコースには土岐さん達がいるからな、近づくなよ。火砲にも頼るな。ツルギスタンとの戦闘じゃ無ぇんだ、戦域外への柵越えを防いでくれるバリアなんざ無いぞ」 「つまり巨大カブトムシの時と概ね一緒。頼れるのは自分の拳一つ、と」 「あとは知恵と勇気だ。高度よろし、投下するぞ!」 「ロック解除確認。行ってきます!」 大鳳の腹の下に無理やりな風情で抱えられていたダイガストが、重力と慣性に従って降下を開始する。速度エネルギーも位置エネルギーも十分にあるため投弾にも等しい有様だが、権藤も手慣れたもので、ダイガストは地上げ獣の目の前に弾着する見事な放物線を描いていた。 着陸地点が近づくと、腰裏のスラスターが噴射を開始して慣性に抗い始める。着火した気化燃料とともに空間中の微量の重力子にもはたらき 掛け、見た目以上の制動効果が生まれていた。それでも相殺し切れない慣性がダイガストの着陸と共に盛大な土煙となって巻きあがり、その重量感を居合わせた人々に伝えてくる。 光の国の巨人か、自我を持った勇気あるロボットか。ダイガストがファイティングポーズを取るや、子供たちから割れんばかりの歓声が巻き起こった。 こりゃ、無様な戦いは出来ないな。鷹介は思わぬ見学者達の視線を感じながらダイガストのコンディションを確認する。 斜面で足を取られて滑落しないよう足回りは敏感に。子供たちの只中に飛び込まないよう行動禁止区域を策定。虎二郎がいないため出力調整は自動で。ダイガストの制御プログラムは日々、情報の蓄積と共に最適化を繰り返してきたので、東北でギャラクシー・コーカサス・オオカブトと戦った時のようなギリギリの制御を強いられはしないが、さりとて全力全開で機体を振り回せるわけでもない。 注意点ばかりだが、ともかく、ここから引き離そう。鷹介は行動指針を決し、ダンゴムシとウチワエビの不義の子のような巨大甲殻類の側面に回り込むと、両手でもって押し込んだ。いつぞやの巨大カブトムシと同じく、全高はダイガストの胸くらいまでだ。やってやれないサイズではない、はず。 しかし巨大甲殻類も節くれ立った太い脚でふんばって微動だにしない。 それならばと拳を固めて引き絞り、殴りつける様子を見せるや、今度は甲殻類がごろりと体を丸め、ダンゴムシよろしく球形になって転がり出した。動かない物と思っていたせいで、ダイガストは盛大な空振りをうつ。 コミカル回じゃ無いんだぞ。鷹介の脳裏に泣き止まない怪獣に肩をすくめた光の国の巨人の姿が思い起こされる。だがダイガストに怪獣墓場まで飛んで行く機能はない。気を取り直し、腰のアンカーを一つ発射して球状になった甲殻類に巻きつける。そこで軽く横に振って球体にベクトルを与えてやれば、アンカーが解けて外れた後も、山の斜面を転がり落ちてゆく寸法だ。 巨大甲殻類はうまい具合に丘陵を転げ降り、麓の原野で球体を解くや、地に足を突き立てて踏みとどまった。 高い所から見渡すと麓では至る所で赤色灯を点けた車両が走り回り、引っ切り無しに巨大生物の出現と避難を訴える防災無線が鳴り響いている。 これはツルギスタンやセランの軍勢から遠く離れた内地での椿事だ。あり得ない事態に誰しもが浮足立っている事だろう。何より最初に巻き込まれた小学生たちが哀れだ。 「まったく…こういった手合いの、人の迷惑を顧みたい事と言ったら!」 モンタルチーノのふてぶてしい面を思い出し、ふつふつと湧き上がる憤りと共に鷹介はフットペダルを踏む。ダイガストが斜面を下って巨大甲殻類に追撃をかけようとした、まさにその時。 「!」 鷹介の視界が突然、紫の光に照らされたかと思うと、驚きよりも早く閃光がモニターを充たした。 衝撃がコクピットを揺さぶり、機体の表面温度が跳ね上がった事をコンソールパネルと警報とが伝えてきた。被弾個所である腹部の積層熱制御フィルムが次々と蒸発する事によって、機体が受けた熱エネルギーは即座に大気に発散されていたが、それは使い捨ての防御装置を失った事を意味した。 鷹介はすぐさま、ダイガストをその場から離れさせる。役目を終えた熱制御フィルムの薄片が風に舞った。 常ならば虎二郎なり大江戸博士なりが事態の解析を始めてくれるのだが、今日の彼は一人きりだ。 やけにコクピットが広いな。鷹介を得体の知れない不安感が包んでいた。 十三話に続く
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野性を縛る理性はいらない ◆I0g7Cr5wzA 一面の銀世界。 陽光が照り付け、鏡のように反射し辺りを白く染め上げる。 静寂の中、空を駆ける黒い戦闘機のようなシルエットが一つ。 クロ―アームを収めたガンダムアシュタロン・ハーミットクラブのコクピットにて。 ソロモンの悪夢と呼ばれた男、アナベル・ガトーは周囲の索敵に余念がなかった。 「連邦の新型、これほどの性能とはな。もはや一年戦争は遥か過去と言うことか……」 動かしてみてわかったのだが、ガトーが現在身を預けているこのガンダムは奪取した詩作二号機を遥かに凌駕していた。 いや、おそらくは宿敵の乗る一号機をも。 変形機構と飛行能力、高い攻撃性と単騎にてモビルアーマー並みの力を示すこの機体にガトーは驚嘆しきりだった。 だがあのジュドーという少年、そして新手の少年。共に乗っていた機体はこれまた明らかにモビルスーツではなかった。 可変機ではあるが、両機とも人型へと変形していた。モビルアーマーとも考えにくい。 主催者、シャドウミラーが新たに開発した機体群であろうか? 「だが……あれほどの機体を有しているなら、何故我々へ差し向けなかった? もし二号機の追撃にあれらが回されていれば、あるいは星の屑は失敗に終わったかも知れん。 核を必要以上に衆目に晒すのを防ぐためか……?」 しばし考えてみたが答えはない。 地球連邦軍特別任務実行部隊――シャドウミラー。 連邦の特殊部隊というならその存在は秘されていても当然だが、だからと言ってここまで大がかりな私闘を行えるものなのだろうか? 「そう……それに、私はいつ奴らに拉致されたというのだ? 私はグワダンの自室で眠りについたはずだ」 いくら特殊部隊と言えどもデラーズ艦隊の本拠地であるグワダンに侵入できるはずがない。 考えられる可能性としては―― 「裏切り者がいる……とは、考えたくはないな。誇り高きジオンの士にそのような痴れ者がいるはずはない……、む?」 がなり立てるアラームが苦い思いを振り切らせる。近辺に熱源がある。 空を飛んでいればいい的だ。人型へと変形して降下、索敵を開始。 ほどなくその反応は見つかった。雪山に埋まり込んだ一機のモビルスーツだ。 「ガンダム……!」 モニターに映ったのは紛れもなく連邦の旗印であるガンダム、その後継機であると思しき機体。 頭部に巨大な砲、連装式のライフル、背部のミサイルポッド。そして生半可な攻撃では撃ち抜けない分厚い装甲。 名を、ダブルゼータガンダム。 野性児アポロが駆るダンクーガに敗れた藤原忍の乗機。 既に誰かと交戦したのか、左腕がひしゃげ頭部メインカメラにも損傷が見られる。 おそらくパイロットは気絶しているか機を捨てたのであろう。この距離まで接近してもピクリとも動かない。 ギガンティックシザーズを展開し、慎重に接近していくガトー。 手を伸ばせば届く距離にあっても、反応がない。 雪山に埋まる姿勢、そして閉じたままのコクピット。おそらくはまだ中に人が乗っているはずだ。 だがガトーは非情なる決意を漲らせ、シザーズへと命令を下す。 「……このような振る舞いは武人の道に外れる。が、これも大義のため……。済まんが、討ち取らせてもらうぞ」 参加者を減らし、かつガンダムという連邦のフラッグシップマシンを粉砕するため。 戦場に名を馳せるエースほど、倒された時は味方の士気は上がる。そして逆に敵の士気は下がる。 眠り続けるガンダムのコクピットめがけ、シザースを突き出した。 「――――ッ!?」 穂先が鋼鉄を食い破る刹那、背筋を這い上がった悪寒に逆らわずガトーは操縦桿を倒す。 シザーズが大きく横滑りし、本体も引っ張られるように横へ跳ぶ。 直後、寸前までガトーのいた位置を数条の光芒が貫いた。 (新手――!) 一瞬にして機体をコントロールし、動かないガンダムと乱入者から挟撃されない位置へと後退する。 間を置かず、雪原の向こうから新たな機影が現れた。 右手に銃、左手に大きな盾を構えた純白の機体。 そして頭部はまたも、ガンダムタイプ。 「貴様、殺し合いに乗っているのか?」 新手のガンダムから通信。 若い。おそらくは先ほどのジュドー少年より二つ三つ上というところだろう。だが声に漲る戦意は明らかに熟練の戦士のそれだ。 機体ごしにビリビリと叩き付けられる気迫がガトーの肌をチリチリと泡立たせる。 だが、恐れなどない。そして勝ち残ると決めた時より口先で言い逃れるつもりも毛頭ない。 「見ての通りだ。私はアナベル・ガトー。ジオンの志を継ぐ者である!」 「ふん、最初にあった奴がいきなり当たりとはな。だがまあいい、貴様がそのつもりなら俺も躊躇う理由はない。 俺の名はカナード・パルス。このガンダムXディバイダーで、貴様を倒すッ!」 「よかろう、来いッ!」 裂帛の気合を吐き出し、カナードと名乗った少年が駆るガンダム――ガンダムXディバイダーが、背のX字状のバーニアを吹かし飛びかかってくる。 瞬時に持ち替えられ振り下ろされたビームソード、ガトーもビームサーベルを抜き放ち剣閃に応じる。 撒き散らされるプラズマの粒子が雪を溶かし、白い霧となって立ち込める。 至近で睨み合う二機のモビルスーツ。ガトーは敵機のメインカメラ目がけマシンキャノンを連射する。 だが敵手の想定内だったか、瞬時に割り込んだ大型の盾が銃弾を弾いた。 「甘いな、少年!」 「むうっ……!」 ガトーの攻撃は止まらない。カメラを保護するため自ら視界を閉ざした形の敵機へ、背部のシザーズを左右大回りに展開し叩き付ける。 大型の武器を受け切れないと悟ったか白のガンダムが逆に一歩踏み込み、鋏の殺傷圏内から離脱。 盾による突貫をもろに受け、アシュタロンが揺れる。 未だ鍔迫り合いを続ける右腕のビームサーベルがへと意識を移す。手首の返しによって敵ガンダムが剣を保持する手首へ。 一瞬速くガンダムXが拳を開きビームソードを置き去りに腕を引き戻す。 ジュッ、と小気味いい音を立ててビームソードの柄頭が灼け、爆発。 追撃を、と再び敵機へと踏み込もうとしたガトーだが、その鼻先にちらついたのは黒光りする銃口。 カナードは腕が破壊されると判断した瞬間、ビームソードを囮にして後退を選んだ。 あらかじめ想定していた被害だったので動揺はない。遅滞なく腰裏のアタッチメントに接続されていたビームマシンガンを引き出した。 「今度は俺の番だ!」 声と共に放たれた二条の閃光。回避は間に合わないと見てシザースを前面に構え即席の盾に。 連続する衝撃がアシュタロンを揺らす。 「ぐっ……!」 ガンダムXディバイダーが装備するビームマシンガンはフリーデンが誇る天才メカニック、キッド・サルサミル謹製の一品だ。 名前こそマシンガンではあるが、その実戦艦の主砲を連装式に改造しエネルギー効率を調整したカスタム銃。 結果、そこらのビームライフルを遥かに凌駕する威力と連射効率を獲得することに成功している。 「……おおおおッ!」 並のモビルスーツだったならこの一撃で既に破壊されていただろう。 だが、このアシュタロンとてガンダムの名を冠するモビルスーツ。そう容易く他のガンダムの後塵を拝することはない。 何より、ジオン軍人たるガトーに取って、ガンダムに敗れることは最大の恥辱。 シザーズが地面を叩き、雪を吹き上げさせる。アシュタロンの全長以上に舞い上がった雪のカーテンは一瞬確かにカナードを惑わせた。 もちろん、熱源反応は感知されているだろう。視界を遮ったところで大した意味はない。 欲しかったのは一瞬の間だ。このアシュタロンの本領、もう一つの姿へと転身するための。 瞬時に変形を終えたアシュタロンが砲弾のように飛び出す。 全ての推進系を前進へと回せるこの形態は、人型と比べて圧倒的な加速力を誇る。 この状態のデメリットは腕部を使えない、つまりはビームサーベルを使えないというだけだ。シザーズは問題なく使用できる。 高速移動と巨大質量による攻撃。ある意味では人型よりもこのモビルアーマー形態の方が強力と言える。 「くっ……速いな!」 地上から空を飛び回るアシュタロンへ向けて、ガンダムXから次々に光が伸びる。 だがいずれもアシュタロンを貫くには至らず、乱された気流によって尾を引く雲を再び吹き散らすのみ。 ガトーは小刻みに機体を制御、ガンダムへとアプローチできる針路を取る。 いくつかのビームがアシュタロンを捉えるも、前方へ掲げられたシザーズの壁は突破できず。 加速の勢いを活かし一気呵成にガンダムを砕くべく加速するアシュタロン。 ガンダムXは空中における機動性でアシュタロンへ後れを取っている。回避は不可能――とガトーは確信していたが、 「ぬおおおおおッ!」 「させるかぁ!」 ガンダムが盾を構えるのが見えた。 「笑止! そんなもので我が信念は止められんぞ!」 「言われるまでもない……!」 ガトーの嘲りに構うことなく、カナードは盾を背へと回す。 てっきり盾で攻撃を防ぐと思っていたガトーが怪訝な顔を浮かべる。 刹那、二機の距離はゼロになる。 音速にまで達した破壊鋏の先端は、過たず白いガンダムを――捉えられは、しない。 シザースは瞬時に上昇したガンダムの足先を掠めただけだ。 交錯の勢いを止めないまま、アシュタロンが飛び離れる。ガンダムXはバランスを崩したか膝をつくが、損傷がある訳ではない。 距離を取ってよく観察すればすぐに答えは出た。 あの盾は盾としてだけではなく、背中に接続することで上部下部に増設されたバーニアにより推進力を加味するようだ。 目に見えて機動性の上がったガンダムも飛翔し、アシュタロンを追う。 人型のまま、高い機動性を保持し空中戦もこなす。これまたガトーの想像を超える性能のガンダムのようだ。 「なるほど、さすがはガンダムと言ったところか。だが……!」 盾を移動に回しているのであれば、その分だけ身を守る術は減ったということだ。 クローを開き、内蔵されたビームキャノンを連続して浴びせかける。 右に左にと忙しなく機体を揺らし、ガンダムがビームを回避していく。 だがその動きはやはりどうしてもアシュタロンには及ばない。汎用のモビルスーツと一点特化のモビルアーマーの差。 「この勝負、君の負けだ!」 一瞬たりとも減速せずに、モビルアーマー形態のアシュタロンが縦横無尽に空を舞う。 その状態でも自在に動くギガンティックシザーズは近接戦の打撃武器であり、距離を取れば射角の広いビームキャノンでもある。 特にアームを引き出せばその砲塔は進行方向の真後ろすら捉えることができる。 死角を狙うべく何度かカナードは体当たりを避けて背後を取ったのだが、その瞬間狙い澄ましたように砲撃が飛んでくる。 普通に追うだけではアシュタロンのスピードにはついていけず、ビームマシンガンでは360度をカバーするシザーズを破壊できない。 ビームが少しずつガンダムの装甲を削り取る。 「くぅ……!」 カナードの手が汗に濡れる。どうにか致命的な一撃は受けてはいないものの、このまま翻弄されればいつかは直撃する。 相手のペースに呑まれているのだ。攻勢に出なければ一気に押し切られるだろう。 「若輩の身で私にここまで食い下がる手腕、見事と言っておこう。だが惜しいな、その機体では私には勝てん!」 アナベル・ガトーとカナード・パルス。 異なる世界、だが共にガンダムを操るパイロット。 経験では一年戦争、そしてデラーズ紛争を今も戦い抜く前者が勝る。 身体能力・反射神経に置いては失敗作の烙印を押されたとはいえスーパーコーディネイターであるカナードに軍配が上がる。 技量はおそらくほぼ互角と、ぶつかり合う両者が共に感じている。なれば明暗を分けるのは機体の性能だ。 ガトーの看破した限り、ガンダムXディバイダーという機体は機動性に秀ではするがこれと言って尖った点はない。 何でもできる半面、全てがそこそこにしかこなせない。物資をふんだんに有する連邦らしい機体であるとガトーは見ている。 対してこのアシュタロン、設計思想は割とジオン側に近い。平均的に優れるよりも、どこか一点を突破させるという点でだ。 広範囲大威力の兵装はないものの、優れた加速力と衝撃を全て破壊力に転化できる質量打撃武器。 平たく言えばガンダムアシュタロン・ハーミットクラブはジオン製モビルスーツ全般に乗り慣れたガトー向きの機体だということだ。 付け加えるなら基礎的な性能も決して低くはない。文句のつけようがないと言ったところ。 「己の運のなさと、その機体を支給したシャドウミラーを恨むがいい!」 「黙れ……ッ!」 焦りが色濃くにじむカナードの声。 ガトーの見つめる先でガンダムが背中の盾を取り外し構えるのが見えた。 攻撃を避けきれないと見て防御に専念する気だろうか。 だが、外部バーニアスラスターとして使用していた盾を外せば当然機動力は落ちる。 目に見えて動きの遅くなったガンダムへ向けて、ガトーはビームキャノンを乱射する。 掲げられた盾がビームをことごとく弾いた。 まあ、予想通りだ。遠距離からのビームではあの盾は破壊できない。 針路を変え、一直線にガンダムへと向かうコースへ。同時にシザーズをセットアップ。 いかに耐ビームコーティングが施された盾といえど、重量の乗ったシザーズを止められはしない。 「突き崩してくれる!」 ガトーの叫び。瞬きの間に彼我の距離が消し飛んでいく。 敵ガンダムは回避機動に入らない。盾を前面に押し出しただけだ。 (わかっているはずだ、カナード君……その盾では受け止めきれんぞ!) 敵手の身を案じた訳でもないが、その不可解な行動に思わず生まれる疑念。 眉をひそめたガトーの目前で、ガンダムXディバイダーの『盾』が開いた。 「俺を……! 俺と、このガンダムXを、舐めるなぁぁぁッ!」 現れたのは、19の砲門だ。 全てが滾り、解放の瞬間を待っている。 「ディバイダー……行けぇッ!」 「ぬおおおおッ!?」 光が瞬く刹那、ガトーは操縦桿を渾身の力で引き倒した。 まるで巨人の見えざる手で殴られたかのようにアシュタロンが急速に進路を変え、その直後に灼熱の奔流が駆け抜けた。 巡る視界の先、光芒の直撃を受けた雪山が爆発し、盛大に雪崩を起こす。 同時に叩き込まれた19のビームは連鎖的に炸裂、上から降ってくる雪の塊を順々に融かし流す。 強烈なGを歯を食い縛って耐えたガトーが機体を制御し、着地したガンダムXへと向き直った。 「ぬかった……! あれが奴の切り札か!」 「あの距離で避けただと? チッ、面倒だな……!」 お互いがお互いの敵の腕の冴えに戦慄する。 これだけの威力のある武器を温存しガトーと渡り合ったカナード。 苦心して力を温存し、ここぞというタイミングで繰り出したディバイダーを初見の敵に見破られた動揺は大きい。 カナード渾身の、必殺必中の一撃を回避したガトー。 だが喜ぶ訳にもいかない。敵方にも戦況を覆す一手があるということだからだ。 「…………」 「…………」 両者、攻めあぐねる。 ガトーがシザーズを振るうべく接近すれば先ほどの連装ビーム砲が飛んでくるだろう。もう隠す理由がない。 逆にカナードが接近しようとすればガトーは空に逃げる。距離を開ければディバイダーも回避されやすくなる。 となれば相手の動きに対応して迎撃するのがベターかと、二人が同時に至った瞬間。 「うおおおおおおおおおおおおおおッ! ハイメガキャノン――やぁぁぁぁってやるぜッ!」 オープン回線で放たれた、第三の男の声。 アシュタロンとガンダムXのちょうど中間を、ディバイダーすら比較にならないほどの極太のビームが駆け巡った。 「何……!?」 「さっきのガンダムか!」 飛び退り距離を開けた二機のガンダムの前に新たにもう一機、最後のガンダムが現れた。 そう――実は最初からこの戦場にいて、だがずっと動きのなかったダブルゼータガンダムが。 「人がいい気持ちで寝てたら、やかましいんだよテメーらッ! おまけに何だぁ、勝手に人を生き埋めにしやがって! おう、どっちがこの俺の上で雪崩なんか起こしやがった! 事と次第によっちゃただじゃ済まさねーぞ!」 一言で言うなら、大激怒。 まさしくそんな状態で喚き散らす男、藤原忍がカナードとガトーの戦いに割って入った。 言葉通り先ほどの雪崩でダブルゼータガンダムは雪に埋もれたらしい。機体のあちこちが雪の白に染まっている。 衝撃で覚醒、その怒りのままに額のハイメガキャノンを(照準せずに)発射するほどに、忍の野性は爆発寸前だった。 ただでさえダンクーガを奪ったアポロに敗北し、気が立っていたのだ。 他人の喧嘩とは言え口を挟まずにはいられないのがこの忍の忍らしいというところ。 だがその糾弾の飛んだ先、当の本人であるカナードは邪魔が入ったといわんばかりに顔をしかめ、モニターの中の血に濡れる顔を睨みつけた。 「おい、気がついたなら早く逃げろ。こいつの狙いはお前だぞ」 と、ビームマシンガンの銃口で対峙するアシュタロンを示す。 怪我人を庇いつつやり合える相手ではない。カナードとしては別に忍がどうなろうと構わないのだが、さすがに目前で死なれるのも寝覚めが悪い。 「あん……? するって―と何か、お前は俺を守ってくれてたってことか?」 「ああ、そうだ。わかったなら早く行け。邪魔だ」 「んだと……!?」 にべもないカナードの言葉に、一瞬軟化しかけた忍の野性が再度沸騰する。 カナードは決して人付き合いが得意なタイプではない。本人としては忠告のつもりだったのだが、実際口から出たのは多分に刺々しい言葉だった。 そして忍は導火線が極端に短い、激しい気性の男。 有り体に言えば、忍はカナードを気に入らない奴として認定した。 「ハッ、逃げろと言われてハイわかりましたなんて言う奴は獣戦機隊にゃいやしねえよ。おい、テメー名前はなんてんだ」 「カナード・パルスだ」 「おし、じゃあカナード。下がってな、選手交代だ」 「は?」 ダブルゼータがガンダムXの前に躍り出る。つまりは、未だ一言もないガトーのアシュタロン、その矢面に。 「テメーにも一応聞いとくぜ。こいつ――カナードの言うことに嘘はないか?」 「ない。私が身動きの取れない君を殺そうとしたのは紛れもない事実。言い逃れるつもりはない」 「へっ、随分殊勝じゃねえか。だがまあいい、それなら俺もやりやすいってもんだ。 ――この戦い、獣戦機隊の藤原忍が預かる! こっからは俺がやってやるぜ!」 そして見栄を切るダブルゼータ。 呆気に取られていたカナードが我に返り、憤る。 「おいお前、俺の話を聞いていたのか? お前の代わりに俺が戦ってたのに、お前が出たら意味がないだろうが!」 「るせえ! 元々向こうのご指名は俺なんだろうが。だったら俺が出るのがスジってもんだろ!」 「その身体で何ができる! 少しは考えて行動しろ!」 忍の頭部からの出血は止まっていない。 さほど重傷ではないものの、決して無視していい傷でもない深さなのは容易に見て取れる。 カナードにしては珍しく純粋に他人の身を案じての言葉だったのだが、 「考えろだぁ? 冗談じゃねえ。獣戦機隊の辞書にはな、考えるだの冷静になるだの小賢しいことは書かれちゃいねーんだよ! そうさ……俺たち獣戦機隊に、野生を縛る理性はいらねぇ! 己の内の野性が叫ぶままに走り続けるだけだ!」 「な……!」 ギラギラと光る忍の眼光に気圧されるカナード。それは気迫やプレッシャーと表現するには相応しくない。 ダンクーガを奪われ、そして初めて乗ったであろうド素人のアポロに敗北した屈辱。 知らない間にただ守られていたという自分への怒り。 何より、胸にある鬱憤を発散したいという衝動。 そう、まさしく野性――人間の持つ根源的な力の発露。 忍はシャツの袖を引き千切り、即席の包帯として頭部へ巻いた。 そして、改めてダブルゼータはアシュタロンへと向き直る。 「待たせたな。さあ、おっ始めようぜ……!」 「私としては二対一でも構わんが。こちらから手を出したのだ、不公平などとは言わんぞ」 「冗談……俺が受けた借りは俺が返す。カナード、テメーが俺を助けたってんなら俺がテメーを助ける。 オッサン、あんたが俺を殺そうとするなら俺があんたを殺す。ダンクーガを盗んだアポロってガキも俺が叩きのめす! 何もおかしくはねぇ……やられたら十倍返し、それが俺だ、藤原忍だ!」 「その意気やよし……よかろう! フジワラよ、このアナベル・ガトーが冥府への案内仕る!」 カナードが口を挟む間もなく、二機のガンダムは同時に発進した。 左腕を損傷したダブルゼータは右腕にハイパービームサーベルを握り、斬りかかる。 対するアシュタロンもビームサーベルを抜き、光刃を受け止める。 「ぬうっ!?」 「そんなチャチな剣で、こいつを止められるかよッ!」 機体サイズは一回り、重量に至っては三倍の差でダブルゼータが勝っている。 そしてハイパーの銘は伊達ではなく、アシュタロンのビームサーベルはより強い出力の前に押し込まれていく。 膝をつくアシュタロン。その隙に後方で隙を窺っていたカナードのガンダムXがディバイダーを展開した。が、 「手出しするんじゃねえ! こいつは俺とオッサンの勝負だッ!」 「……!」 忍の一喝により、その動きは止まる。 まるで、邪魔をするのならお前も敵だと言わんばかりの激しい舌鋒。カナードも苦い思いで介入を断念する。 「オッサン、アンタも気を散らすなよ。今戦ってるのは俺とアンタだぜ……!」 「フッ……腐った連邦にも、貴様のような骨のある男がいたとはな!」 「連邦? 俺は地球連合の士官だよ!」 損傷した左腕で殴り付ける。アシュタロンの頭部が軋み、衝撃に揺れた。 「調子に乗るなッ!」 背部のシザーズが伸び、ダブルゼータを打つ。 体勢が崩れた隙を逃さず、アシュタロンは後退。同時にビームキャノンを置き土産に放った。 「逃がすかよッ!」 だが、ビームの弾幕をダブルゼータは真正面から突っ切ってきた。 全身に施された耐ビームコーティング装甲を信じ、忍は更に攻勢に出ることを選んだのだ。 止むを得ずガトーはダブルゼータの足元へビームを集中させ、前進を止める。 一瞬にしてモビルアーマー形態になったアシュタロンが空へ。さっきのカナード戦と同じく高速の一撃離脱を狙うためだ。 高く高く、雲より上へ。 急降下するべく反転したアシュタロン。その鼻先に、多数のミサイルが群れをなして殺到する。 「な……!」 感性を殺し切れず停止したアシュタロンをいくつもの火球が包み込む。 その向こうに、高速で接近する戦闘機の影が一つ。 「逃がすかって……言っただろうがよッ!」 ダブルゼータガンダムのもう一つの姿、Gフォートレス。 アシュタロンと同じく機動性を大幅に向上させた形態。豊富な武装もそのまま使用できる。 平時はビームサーベルとして使われる発振器がダブルビームキャノンとして機能し、マウントされたダブルビームライフルと共に火を噴く。 反撃もままならないまま必死に回避するガトー。その動きを予測していたかのように、ミサイルが次々に回り込んできた。 「ぐう……おおおおッ!」 「もらったぁッ!」 ダンクーガに合体する前、藤原忍が駆る獣戦機は頭部となるイーグルファイター。すなわち戦闘機だ。 そして戦闘機操縦に置いて天性の素質を持つ忍にかかれば、異世界のメカだろうとこの通り。 一瞬にして再度人型に戻ったダブルゼータが突進の勢いを全て集約させ、アシュタロンを蹴り付けた。 二機の総重量に加えて加速した運動エネルギーを全て叩き込まれたアシュタロンは、きりもみしつつ地上へと落下する。 「ぐああああっ!」 轟音。 雪原が大分衝撃を吸収したとはいえ、ランダム運動の衝撃は鍛え抜かれたガトーの肉体を消耗させるには十分すぎた。 横倒しになったアシュタロン。上空から落下したダブルゼータがその上に着地し、馬乗りになる。 アシュタロンの右腕、左腕をダブルゼータのそれが掴み取る。 「へへへ……さあッ! こいつでトドメだ!」 ダブルゼータの額に全身のエネルギーが集中していく。 ハイメガキャノン。ダブルゼータ最大最強の兵装。 「貴様、正気か!? この距離でそんな大砲を撃てば、貴様も無事では済まんぞ! 「そりゃ俺だってこんな分の悪い博打は打たかねえがよ……そろそろ俺も限界なんでな。 手早くケリ付けるためにはこれしかねーのさ……!」 優勢に立ち回っていたダブルゼータだが、それは忍の身体にかかる負担を無視していたからこそだった。 目が霞む。手の感覚も薄れてきた。 だがもう一手で勝利を掴むことができる。ならば、行くしかないではないか―― 「そうだろ、みんな……! ああ、そうだ……獣戦機隊に後退の二文字はねえ! だから……ッ!」 ダブルゼータが身を反らし、強烈な頭突きをアシュタロンへと浴びせた。 密着する二機の頭部。ハイメガキャノンの輝きはいよいよ強まっていく。 「行くぜ……受けてみろ、俺たちの野性ッ……!」 「ぬ……おおおおおおおおッ!」 「ハイメガキャノン――いいやッ! ハイメガ断空砲ッ! やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁってやるぜぇぇぇぇッ!!」 まるで抱き合うように、二機のガンダムが身を寄せ光に包まれる。 その光量は傍から見ていたカナードですら怯ませるほどに強い。 ディバイダーを突き立て、その陰で衝撃を耐える準備をしたカナード。 「くう……フジワラぁぁぁぁッ!」 見えなくとも、せめて声だけは届かせんと叫ぶ。 そして、野性が炸裂した。 ◆ 波のように拡がる光と衝撃。駆け抜けた端から雪が蒸発し、雪原に巨大なクレーターが穿たれている。 立ち尽くすモビルスーツは一機。 カナード・パルスの駆る、ガンダムXディバイダーただ一機。 ガンダムXはその手にダブルゼータのハイパービームサーベルを握っている。 辺りを見回すも、動くモノはない。何も……ない。 ただ、バラバラに砕け融けたダブルゼータの残骸が散らばっているのみ。 「フジワラ……俺は傭兵だ。気の利いた言葉は思いつかん。だから、俺は依頼を請け負おう。報酬はこれでいい……」 ガンダムXのコクピットでカナードは呟く。 残骸の中に黒いパーツ、すなわち敵ガンダムの残滓はない。つまり奴は、アナベル・ガトーはいまだ健在。 全身を包むやり切れない無力感。 だが、その瞳だけは熱い炎が灯っている――野性という炎が。 「アナベル・ガトー! アポロというガキ! そして戦いに乗った者全て! この俺が一人残らず狩り尽くしてやる……!」 誓う。 どこまでも己の野性を貫いた一人の男のために。 さして仲間意識はないカナードだが、それでも同じ地球連合の元同僚だったらしい男だ。 「プレア……俺は戦う。だがそれは俺がそうしたいから、だけじゃない。 どうやらここには思った以上に馬鹿が多いようだ。かつての俺の様な馬鹿がな……。 俺にはお前がいた。だから留まることができた。 ああ、奪われてからじゃ遅いんだ。フジワラも、アポロと戦っていなければこうはならなかったかもしれない」 幻影のプレアが、見える。 心なしかこう言っているように感じる――みんなを助けてください、カナード。 それはカナードがこうありたいと望む錯覚かも知れない。かつてのプレアのような存在になりたいと。 それでもいい。いまはただ、この胸の内に芽生えた熱い、確かな想い――野性のままに、走り出すのみ。 行き先はどこでもいい。 ガトーを追うか、もしくはアポロを叩きのめして元はフジワラの物だというダンクーガを奪い返すか。 どの道を選ぶにせよ戦いは避けられない。 死は怖くない――怖いのは、何もできないこと。 漠たる死に安らぎはない。 死力を尽くした曲折の果てにこそ、生きる実感がある。 ナチュラルでなくとも、スーパーコーディネイターでなくとも。 ただ己の意志が赴くままに、カナード・パルスは進み続けるだけだ。 それこそが、亡き友が我が身と引き換えに繋いでくれたこの命の証明になると、カナードは信じている。 だから―― 「カナード・パルス……やぁぁってやるぜッ!」 昂る野性を、抑えはしない。 【藤原忍@超獣機神ダンクーガ 死亡】 【ZZガンダム 大破】 【一日目 8 30】 【カナード・パルス 搭乗機体:ガンダムXディバイダー(機動新世紀ガンダムX) パイロット状況:疲労(小) 機体状況:EN70%、ハイパービームサーベル所持、ビームソード一本破損 現在位置:D-6 雪原 第1行動方針:主催者打倒の方法を探す 第2行動方針:戦いに乗った者は倒す 第3行動方針:ガトーを倒す。アポロを叩きのめしダンクーガを奪い返す 最終行動方針:バトルロワイアルの主催者を徹底的に叩き潰す】 ◆ 機体のコンディションチェック終了。被害は甚大。 ガトーは息をつき、汗に濡れた額を拭う。 「一人倒すだけでこれか……厄介だな、全く」 場所は雪原ではなく、E-6の平原エリア。 丘の影に機体を隠し、先ほどの戦いを反芻する。 敵ガンダムの砲撃が炸裂するあの瞬間。 全身のエネルギーを額に集中し、また元々半壊していたため力の緩んだダブルゼータの左腕。 ガトーはとっさに戒めを脱したアシュタロンの右腕をダブルゼータの額に叩き付け、同時にマシンキャノンを集中させた。 一瞬にして溶解する自機の腕。だがその一瞬、おかげでダブルゼータの狙いは僅かに逸れた。 機体スレスレに駆け抜けるメガ粒子。地表で爆発する前にガトーはギガンティックシザーズを持ち上げダブルゼータに叩き付けていた。 コクピットを抉る鋏の先端。忍は痛みを感じる間もなかっただろう。 制御を失いハイメガキャノンが暴発する前に、巴投げの要領でダブルゼータを投げ飛ばし、変形。 モビルアーマー形態のまま雪に突っ込み、閃光から逃れた。カナードの位置からは確認できなかっただろう。 そして離脱してきたこの平原でようやく警戒を解いた。 「フジワラ……あのような猛者が、我がジオンの同志であったなら、な。もはや詮無いことだが」 宿敵と認めた男、コウ・ウラキに勝るとも劣らぬほどに手強い相手だった。 彼が言うところの野性。ガトーをして驚嘆させるほどに苛烈。 この場に集められたのが彼やカナードのような強敵ばかりとするなら、力押しだけでは勝ち残るのは難しい。 少し、戦い方を変える必要があるかもしれない。 だがとにかく今は、あの尊敬すべき戦士の冥福を祈ろう。 「シノブ・フジワラ……二度と忘れん」 心に刻む。 二度と巡り合えない強敵、駆け抜けた野性を。 ソロモンの悪夢、アナベル・ガトー。 撃墜数、一。 【一日目 8 50】 【アナベル・ガトー 搭乗機体 ガンダムアシュタロンHC(機動新世紀ガンダムX) パイロット状況:疲労(大) 機体状況:右腕欠落、全身の装甲にダメージ、EN40%、マシンキャノン残弾80% 現在位置 E-6 平原 第1行動方針:敵は発見次第仕掛けるが、無理はしない。まずは補給する 第2行動方針:コウ、カナードとはいずれ決着をつける 最終行動目標 優勝し、一刻も早くデラーズの元に帰還する】 BACK NEXT 038 たかやの唄 投下順 040 超高空攻撃の下 053 SWORD×AX 時系列順 042 破滅を望む者、破滅を呼ぶ物 BACK 登場キャラ NEXT 023 それぞれの事情 アナベル・ガトー 066 儚くも永久のカナシ 002 Xと呼ばれたガンダム カナード・パルス 061 混浴上等 028 俺たちの野生 藤原忍
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第八話 獣たちの宴 その星は地球と比べると恒星より遠く、肝心の恒星もまた年老いていた。結果、ここ10000年で星の地表は霜に覆われ、大地には氷が混じった。 獣は厚い毛皮と脂肪に覆われ、鳥は赤道付近のまだしも温暖な地域へと逃れた。 人はと言えば、大地の下に潜って細々と都市を築き、生態系の上の下ほどに群れ固まるに過ぎない。 やがて宇宙時代が――外から――到来すると、彼等は自分達が過酷な環境で培った強靭な肉体が売り物になることを発見した。傭兵である。 爾後、その星は帝政ツルギスタンに組み込まれるまで良質な兵を輩出し続け、同帝国においては獰猛な前線の戦士たちの代名詞となった。 ゲオルグ・バウアー刃士は、その恵まれぬ星の歴史の体現者であった。 彼が率いる第一機甲部隊は外征旅団の最先鋒と言えば聞こえは良いが、実態はブレーディアンも与えられぬ殖民惑星出身者達によって固められた蛮族扱いで、それなりの星に攻め入るならば損耗は避けられぬ、まさにツルギスタンの弾除けである。 彼はこのホッカイドウとか言う大地が嫌いだった。凍てつく様が故郷に似て、ひもじかった幼年期を思い起こすからだ。しかも3月になって寒気が弛んでゆくのを肌で感じ取ると、嫌悪は嫉妬に変わった。ここはあの穴倉の故郷と違って雪が溶け、緑の茂る季節があるというのだ。 嫌悪は抵抗を続ける皇国の兵にも向けられた。 泥に塗れて抵抗を続ける様は、かつて、あんな故郷を守るために足掻いた時分を思い出すからだ。 「長ぁ、肉が出来てますぜ」 ゲオルグは部下の、そして傭兵時代からの同郷どもの声で、暗い思索から帰還した。見れば格納庫の軒先に吊るした熊や鹿の塩漬けが良い塩梅に飴色になっている。 ゲオルグは濁声を張り上げた。 「よぅし、さっそく炙って味見しようじゃねぇか」 豪快な、事によっては野卑な笑いが唱和する。 格納庫のキャットウォークからそれを眺める上級仕官二人の目も、けして肯定的でなかった。 「ああ、嫌だ嫌だ」 ヘルマン・ファルケンハイム大刃士は眉毛を器用にハの字に歪めて見せる。 「いくら外征旅団の先鋒は植民地兵に任せてるとは言えね、ボクはつくづく、ああいう類のと仲良く出来ないなぁ…文化を感じないよ」 隣で聞いているアフバルト・シュバウツァーは『だったら卿(けい)の毎夜のすすきの通いは文化的なのか』とか言おうと思ったが、それこそ文化的でない気がして止めた。 それに地球へ派兵された第3外征旅団の中でゲオルグ達が浮いているのは確かな事実だ。軍服を着崩し、所かまわず糧食を食べ散らかして、出先で酔っては騒ぎを起こす。ツルギスタン併合から10年。まだまだ彼等は蛮族の因習が抜けていないのだろう。 「…星々を併呑するごとに、我々はこんな苦労を抱えてゆくのだろうか」 アフバルトの呟きにヘルマンは極めて陽性の強い笑みを浮かべ、少々年下の同僚と強引に肩を組んだ。 「いちいち気にする事でもあるまい。新たな御婦人との出会いの機会が増えると思えば良い」 「それで喜ぶのは卿だけだ」 「キミこそ、本国を離れて婚約者殿の目も無いのだ。もう少し羽を伸ばしたらどうだ?」 「卿という男は、ほんとうに…」 アフバルトは若い身空に不釣合いな、疲れたため息を洩らすのだった。 第一機甲部隊の連中はいよいよ干し肉に火を入れ始めたのか、獣脂の溶ける香ばしい匂いが格納庫に満ち始めた。整備士達は絡まれるのを嫌がり、迷惑そうに遠巻きにしている。 こんな隔絶した風景が俺たちの求める国の姿なのだろうか。アフバルトはもう一度、溜息ををつく。 ふと頭をよぎったのは、アオモリで出会ったカザミ ヨウスケと名乗った若者の顔だった。あの時交わした笑顔は、爽やかな記憶として彼の心に刻まれていた。 4月頭。ツルギスタンの限定攻勢が再開された。 岩手県を賭けた戦争行為の舞台は、内陸部の岩手山麓に広がる演習場と定まった。 かなり空気も弛んできたとはいえ演習場の荒野から見上げる岩手山は未だ冠雪している。岩手富士とも称えられる整った形状と雪化粧とが、東北の澄んだ青空に清冽に映えていた。単独峰に近いその堂々たる景観が山岳信仰の対象となったのも頷ける眺めだ。 開始時間を間近にして演習場に居並ぶ岩手駐屯地 第9戦車大隊の搭乗員達の顔は、晴天に反して重い。 それも逐次退役が進んでいる74式戦車でもって、現行の主力たる90式戦車が歯が立たなかった敵と対峙せねばならないのだから、無理からん話だった。 戦域外ぎりぎりに停車した73式小型トラック――三菱パジェロの自衛隊用――の助手席で、双眼鏡をかまえた東和樹三佐には、戦車搭乗員たちの無力感が痛いほど伝わってくる。再編成中の彼は観戦に徹し、実戦経験者としての見地を求められていた。 彼の他にも自衛隊の非装甲車両の姿が見える。おそらくは似たような立場か、他人事でなくなりつつある近隣の駐屯地からの『偵察隊』だろう。皆の目なり双眼鏡なりは50両ほどの74式戦車の列と、そこから離れたところに立つ巨人の背とを行き来していた。 大江戸先進科学研究所と自衛隊は、内閣を挟んでのなんとなくの共闘を続けている。 東としては青森での敗北から、あのロボットがアニメのような完全無欠のスーパーロボットでない事は理解していた。が、まだまだ物珍しい者もいるのだろう、暢気に写メを撮っているのまでいた。 状況はまったく楽観できないと言うのに。 さりとて陸自にしろ、今回も直接戦闘には不参加の空自にしろ、あのツルギスタンのロボットの装甲を打ち破れないのだから、ダイガストとかいう民間のモノに子供じみた期待を向けるしかない。 東が歯がゆさにしかめっ面をしている内にツルギスタンの侵攻兵力も姿を現す。 早くもGBCから放映権を買い始めた民放ラジオ局によると、ゲオルグ・バウアー刃士率いる第一機甲部隊とか言っているが、東にとっては北海道で嫌と言うほど味わった衝撃の記憶の相手といった方が早い。 いつもの首無し西洋鎧よりもスマートで、手足には特殊鋼の鉤爪が鈍く光っている。何より印象的なのは、胸の部分に刻まれた猛獣の顔の彫金(エングレイブ)だ。なんでも儀仗獣兵とか言うらしい。 あくまで儀仗と言い張るのは、連中にとって他星への侵攻などは軍事パレードに過ぎない、という意思表示なのだ。他にもガーズ(衛士)・ヴィルデスティーア(野生動物)シリーズという単語も聞こえるが、その辺は彼らの双方向翻訳機の効きがイマイチなのか、英語と独語が混じっていた。 「…最悪だ」 東は思わず声に出していた。 戦車が相手取るには、まだしもあの『槍持ち』の方がマシだった。 彼の危惧を嘲笑うかのように戦闘開始を告げるサイレンが響き渡る。 殷々と鳴り響く警告音は、まるであの獣どもの咆哮のようであった。 開幕と同時に儀仗獣兵は思い思いに突撃を開始した。 と、それぞれの膝が出し抜けに前に折れ曲がり、急激な姿勢の変更に機体が倒れないよう手をついて支える。地面を見下ろす形になった胸の獣の彫金が90度起き上がり、その姿勢でなら正しい位置に移動した。 つまりは四足獣だ。 儀仗獣兵とはその名の通り、獣の似姿であった。そして北海道で90式戦車に捕捉を許さなかった俊敏さをここでも存分に発揮し、四つ足で駆けるや見る間にダイガストの間近に迫る。 いの一番に飛び掛ってきたのは、豹のような頭をしていた。 鷹介は踏み出して相手が質量分の加速を得る前に大振りの右拳で迎撃する。 重々しい衝突音と、一歩遅れて甲高い金属音とが演習場の原野に鳴り響いた。 頭部をひしゃげさせた儀仗獣兵が、放物線を描いて吹き飛んでゆく。派手な土煙を上げると、アクチュエーターがおかしくなったのか、そいつは生物のように痙攣していた。 「儀仗兵より脆いか?」 虎二郎が今しがたの一撃が機体に与えた負荷を確認しながら呟く。 「その分すばしこい様だが…」 彼らの目の前で獣たちは早くもダイガストを囲み、警戒するようにその周りを走りはじている。 儀仗獣兵の外部スピーカーから濁声がほとばしっていた。 「この獲物は今までとは少し違うぞ!獣の闘いを思い出せ」 そいつは剣のような二本の牙がついた剣歯虎だった。機体も一回り大柄で、いかにも群れを統率するボスの威容を備えている。そのコクピットではゲオルグ・バウアー刃士が愛機と同じように犬歯を剥き出しに、獣の群れを統率していた。 人の知恵を持った獣は包囲の輪を徐々に狭め、前後、左右から同時に飛び掛り始めた。獣より性質の悪いならず者の戦法だ。 ダイガストは地を転がって爪牙から逃れると、腰裏のバーニアを吹かしながら立ち上がり、人間には不可能な低姿勢から復帰する。余勢もそのままに囲みを破ろうと走るが、獣の包囲網は柔軟に形を変えて等距離を保ち続けていた。 軍内で蛮兵と後ろ指さされようが、彼らの連携は最高だった。いや、蔑まされるこそ強固になるのだろう。 「牙!」 ゲオルグの咆哮じみた命令に従い、二機の儀仗獣兵が上下から挟み込む様に跳躍する。 獣の顎門が閉じられる如く。しかし口の中の獲物は黙って牙を待つ被捕食者でなく、こちらも跳躍して足元に迫る一機を飛び越えると、空中で擦れ違う一機の胴に横薙ぎの鉄拳を叩き込む。 「浅いか」 鷹介が小さく舌打ちした。 一瞬の交錯では決定的被害は与えられなかったのだろう、そいつはふらつきながらも包囲の輪に戻る。同時にゲオルグの次なる攻撃指示が、着地で足を止めたダイガストに向けられた。 「爪だ!!」 包囲の輪から三機が飛び出して一斉に袈裟懸けに飛び掛る。力で押し切ろうというのだろう。 「おいでませだ!」 しかし虎二郎も敵がまとまる時を待っていた。出力を調整して発生させた余剰分を開放し、 「グラヴィティ・スプラッシャー準備完了!」 「放射っ!!」 鷹介がトリガーボタンを押し込むと、ダイガストの胸部から黒いヴェールが展張して、獣のひとかたまりを絡めとった。発生は瞬きするほどの時間だったが、その瞬間の中には激甚な重力の波が集約している。重力波による出鱈目な重量変動は容易く構造材の剛性の限界を迎えさせた。 三機の儀仗獣兵はたちまち吹き飛ばさせると、手足を有り得ない方向に捻じ曲げられて機能を停止する。 手痛い反撃にゲオルグは攻勢を一時中断し、包囲する各機のスピードを速めて隙を窺う。まさに獣の群れが大型獣を包囲し、その体勢を崩して喉元への一撃を狙うかのような光景だった。 ゲオルグとて猪武者ではない。多少の困難を力づくで噛み千切ってみれば獰猛などと後ろ指さされているが、それこそ絶えず変化する戦場というモノを理解していない外野の言う事だ。 彼の芯は冷徹であり、力の原理をよく理解していた。 夷狄の機械人形は儀仗兵の個々の性能を凌駕している。いわんや、その局地戦型である儀仗獣兵でも同じだろう。しかし所詮単騎であり、二週間などと言う馬鹿げた戦争の枠組みを取っ払って、波状攻撃を繰り返して修理の暇を与えねば容易く押しつぶせるものを。 もちろんゲオルグは彼らを率いるルドガーハウゼン大剣卿が、自分達の戦争形態に沿ったかのようなダイガストの存在に頭を痛めている事など知らない。 ただ獣の群れの長の如く、目の前の獲物に食らい付くチャンスを狙うのみだ。 そして、その時は意外に早く訪れた。 今回のツルギスタンは戦線突破を狙っているわけでは無いようだ。安堵する東三佐だったが、不意にダイガストが奇異な動きを見せ始めた事に別の不安を抱いた。 踏み出しては『獣型』に阻まれ、その包囲の外側を注視しているようだ。 東もそちらへ双眼鏡を向け、絶句した。 5台のSUV…いわゆる一般購買層向けのオフロード車が戦場に乱入し、猛スピードで接近していた。 と、助手席の窓から身を乗り出した乱入者が、どこの国のモノにも見えないゴツイ銃を構え、あろうことか銃口から目も眩まん光線を発射した。 派手なレーザー光は他のSUVからも放射され、ダイガストを囲む獣型に次々と命中する。 といっても装甲表面を赤熱させ、多少なりともケロイドじみた歪みを発生させるに過ぎなかったのだが。 放射は何度か続いたが決定的な成果は上がらず、乱入者達は口々に罵りをあげているようだ。 大体のところを東は理解した。 市井の『はねっ返り』達が昨今、世界各地で跳梁を始めている宇宙やくざや星間違法商人から武器を買い込み、それで侵略者達にひと泡吹かせてやろうと乱入してきたのだろう。 そんなモノで勝てるなら東も身銭で購入する。 実際のところ乱入者達は星間商人の航宙戦闘機のレーザー機銃という触れ込みを真に受けて購入していたが、携行用に収束器を外して軽量化している事や、軍用機の内部電源に依存している事等を理解する見識はなかった。そして違法商人にもクーリングオフの気は更々無かった。 この乱入者達にGBCの中継者は俄然盛り上がる。 「ああ、何と言うことでしょう!?不可侵の戦場で地球人が蛮威を振りかざして暴れております!おお、ツルギスタンの第1機甲部隊が鎮圧に向かうようです。それでこそ宇宙の範たる銀河列強の軍人の姿です!違反者には制裁を!なお、刺激が強い映像になりますので、銀河放送法に従いましてお子様のおられるご家庭では全自動フィルター放送に切り替わります、どうぞご安心ください」 家庭状況までつぶさにマスコミに監視されている状況が安心なのかはさておき、儀仗獣兵の囲みの中から二機が躍り出ると、即座にSUVへと襲いかかる。 たちまち二台のSUVが爪に吹き飛ばされ、炎に包まれた。犠牲者の悲鳴は金属音と爆発音に掻き消される。 「なんて事をするっ!?」 鷹介が咆え、無理やり囲みを破ろうと突進した。 そこに生じた隙を、ゲオルグは見逃さなかった 「狩れッ!!」 総攻撃の合図に獣が一斉に牙を剥く。 「邪魔を、するなぁぁぁっ!」 群がる獣に怒りの咆哮をあげる鷹介。 脚部に噛み付いた儀仗獣兵を振りほどいて踏み砕き、飛びかかってきた奴を左腕の装甲に噛み付かせて、反対から飛びかかる奴にぶつけて諸共に吹き飛ばす。 ここで見計らった様に味方の下を潜り出てきた一際大きな剣歯虎が、低姿勢で体当たりをしてくる。大きく揺らいで足を止めたダイガストに、続けて前足で圧し掛かり、押しつぶそうと重量をかける。 爪が肩口に食い込み、コクピットに嫌な軋みを伝えてきた。 「民間人への攻撃をやめろ!!」 鷹介はドスの効いた声で目の前の剣歯虎に要求する。 「あぁん?」しかし返ってきたのは小馬鹿にしたような濁声だった。「武器を持った時点で民間人なわきゃ無ぇだろうが!そういうのは犯罪者って言うんだよ!!」 統一の服装を整え、所属を明らかにしたもの同士で行われるのが『戦争』の原則である。 そして交戦の資格が明らかで無いのに『戦争』に参加すれば、スパイや破壊活動をはじめとした様々な容疑をかけられ、最悪、その場で射殺されても文句を言えない立場になる。 こういった取り決めは地球においてもハーグ陸戦条約で結ばれていた…イスラム諸国や共産国等の第三世界は大抵批准していないが。 現代におけるムスリム民兵=テロリストという図式も、こうして出来上がっている。もっとも、彼らは近代的な国家感や政体を先進国と共有していないのだから、このあたりの齟齬が解消されるのはずっと先になるだろう。 ともかく戦争におけるルールとは、際限なく拡大する戦闘行為とその被害とを局限しようと結ばれたものであり、ついぞ限定戦争という形態を執るに至った銀河帝国文明圏では、より強力な拘束力を持ったものが結ばれるに至った。大概はハーグ陸戦条約でうたっている虐殺・略奪の禁止、非人道的兵器の使用禁止と似たり寄ったりだったが、交戦資格者の定義には特に注意が払われている。 たぶん自国の兵の傷病保証や遺族年金で頭を悩ますよりも、相手側にルールを徹底する方が早いという魂胆だろう。もちろんゲオルグにとって、そんなことは重要ではない。むしろ、 「それともお前は、仲間に銃を向けてきたやつを言葉で止められるのか!?応戦するなと仲間に言うのかっ!?ルールも守れ無ぇ蛮族には、ゲリラは犯罪ってぇ事を、教え込ませにゃいけ無ぇだろぉがっ!!」 剣歯虎の背中越しに再び爆発が起こる。引火したガソリンが黒煙を伴う紅蓮の炎を高々と立ち上らせた。 「それは、侵略者に言われる事じゃ無いっ!」 鷹介も負けじと声を張り上げる。民間軍事会社の訓練キャンプでも戦争行為のグレーゾーンに関する座学を受けていた。それが自分の生まれた国で実際に行われてみれば、悪い夢でなくとも頭に血は昇る。 戦争を始めるのは兵士ではなく、しかし現地で命を失うは兵士である。それがゲリラ化した現地民の過熱した抵抗であれだ。 もはや何が悪いのかすら判断がつかない。ゲオルグ・バウアーは抵抗活動を行い手酷く鎮圧された過去があり、鷹介は正規の軍人ではないのに抵抗の急先鋒となりつつある。 砕けた牙と研がれる牙、猟犬と狂犬、過去と現在。どちらが、どれであるのか。少なくとも両者はその知らない方が幸せな仕組みを知悉し、なお、定められた戦場で対峙するという、ある種似通った立場であった。 そして違いはといえば、目下、上から圧し掛かった余勢のある分、ゲオルグの儀仗獣兵は受け止めたダイガストに優越していた事。ダイガストの腰が折れ、徐々に膝が曲がってゆく。 「さぁ、ダイガスト、お前ももう狩られろ。そして俺たちの栄光の礎に変われ!」 ゲオルグの吠声と、腹に響くような発砲音が重なった。 SUVを追い立てる儀仗獣兵を次々と打ち据える物があった。異星の特殊鋼を貫けずとも、直撃による衝撃と、次々にあがる足元への着弾による土煙は、パイロットに追跡を断念させるに充分だった。 「なんだとっ!?」 ゲオルグが俄かに戸惑う。 それは74式戦車の躍進射撃だった。小隊毎に土煙を蹴立てて急発進と急停車、そして発砲を繰り返す。90式の120mm砲で貫けない敵に、74式の105mm砲が通じるのかと言えば絶望的だろう。 それでも戦場に乱入した民間人が避退する時間は稼げる。誰からともなく出た――出てしまった?――意見が総意となり、大隊が突き動かされていた。 戦場に混沌が解き放たれる。誰しもが何かに忠実であろうとした結果として。 ゲオルグの脳裏に凍った大地を守るために泥濘に塗れた記憶が過ぎり、すぐにマグマのように湧き上がってきた怒りに呑まれた。 「狩り尽くせ!どいつもこいつも、死に急ぐなら望みを叶えてやる!」 激昂に突き動かされるままに彼はダイガストを突き放し、74式戦車の群れに襲い掛かった。 案の定105mm砲ではツルギスタンの主力兵器を相手取るには力不足であった。 儀仗獣兵に確たる被害は無く、74式戦車は次々に蹂躙されていた。土埃と発砲音と鋼の悲鳴が轟々と渦巻く地獄の光景の中を、一台の73式小型トラックが駆け抜けてゆく。 「どうしてこうなった」 東和樹三佐は助手席からフロントガラス越しの光景を睨みつけ、自分に問いかけ続けていた。 ダイガストは優勢とは言わないまでも、獣型を相手に一歩も退かない立ち回りをしていたはずだ。こんな消耗するだけの乱戦に発展する必要が何処にある。 何より今の自分の行動はどうだ。命令も無いのに独断専行、これは国家財産の無断使用ではないか? そう葛藤しながらも、土煙の中に逃げ惑うSUVの影を認めた東三佐は、窓から身を乗り出して大きく手を振るった。 「こっちだ!外まで先導する!こっちに来い!!」 SUVの運転手も気付いたのだろう、こちらにハンドルを切ると、悪路に車体を上下させながら急接近してくる。すぐ後ろにはもう一台。確認した爆発の数と合せれば、たぶん無事なのはそれだけだ。 東は乱入者達を何とか救出できそうだと胸を撫で下ろす。 土埃のヴェールを裂いて獣型が飛び掛ってきたのは、まさにその時だった。 黒い影が陽光を遮り、急速に死が降りかかってくる。 ああ、くそ。東の脳裏に妻子の像がチラついた。 アドレナリンでも出ているのか、そこから先の光景はやけに緩慢な、しかし映像だけはクリアな無音劇のように感じられた。 狼の様に見える機械の獣が顎門を開き、上下に文字通り機械的に並んだ歯が赤熱を開始した。 運転手の一曹が流れるような動作でギアを変え、体にかかるGが増加する。 降り来る獣の影が接近とともに濃くなった。 横合いから、もうひとつ影が飛び出し、獣の影と重なって悪路を夜のように塗りつぶす。 金属同士がぶつかり合う悲鳴が東の頭上で響き、騒音と埃っぽさが彼を現実に引き戻す。 振り仰げばダイガストの背中が見えた。 「庇われたのか…」 彼の呟きに答える者はいない。 少なくとも獣型はダイガストに群がるので追撃の手を回す余裕を失っていた。そして矢面に立った民間のロボットは手に足に噛み付く獣型を地面に叩きつけ、あるいは新たに飛び掛る敵に直接ぶつけて、七面六臂の暴れ振りを披露している。 相手が機械の獣なら、こちらはまるで鋼の鬼だった。 鬼の心にあたるコクピットでは、二人の男達が足元の情報と、目の前の敵とに悪戦苦闘している。 「土岐さん、ゲリラ車両と自衛隊の4WDが離れてゆきます!」 「こっちも戦車が後退を始めたのを確認した!もう巻き込む心配は無いぞ、鷹介、ぶんまわせ!」 「応さ!」 「ただし、足の損害が蓄積している。こっちの構造の痛い所を突いて来ているぞ、さっきみたいな無茶な反撃は控えてくれ」 「かといって、こう3次元方向にすばしこいヤツはヤマト砲や輝鋼剣じゃ捉え切れませんよ」 「そっちは任せろ。乱戦中に透(みなも)くんに頼んでおいた構造解析の結果が届いた。あとは…」 虎二郎が策を授けている最中に、土煙を引き裂いて四方と、それに上方から儀仗獣兵が一斉に襲い掛かってくる。 ダイガストの両腰からアンカーが臨機射撃で撃ち出されたが、それはどれにも命中せずに空しく駆け上がっていった。と思いきや、ダイガストのカメラアイが強い輝きを発したかと思うと、アンカーと機体を繋ぐエネルギー帯を左右の手にそれぞれ引っ掴み、猛速で振り回し始めた。 発生した二つの円運動はたち込める土埃を即座に吹き飛ばし、ダイガストの頭上に青空を取り戻す。 振り回されるアンカーが同時に儀仗獣兵を跳ね飛ばしていた。 俊敏さと軽量化は不可分であり、対して形状記憶合金の尾翼をまとめたアンカーに鋭さは無いが、打撃武器として振り回すのなら、儀仗獣兵を打ちのめすのに必要充分な衝撃力を発生させる。 虎二郎の策とは、それだった。 さらに土煙が晴れる事によって、後退した74式戦車も儀仗獣兵に砲撃を集中できるようになった。ダイガストの攻撃で動きの鈍ったところに砲弾が集まるや、運悪く裂けた装甲近辺に飛び込んで擱座する儀仗獣兵も出始める。 いつの間にやらダイガストがアンカーを振り回して儀仗獣兵を追い散らし、74式戦車が砲撃を集中する即席の連携が出来上がっていた。 「畜生ぅ!」 ゲオルグは次々と報告される損害に奥歯も砕かん勢いで歯を食いしばり、喉の奥で唸るような怨嗟の声を上げた。 豆鉄砲を撃ってくるあの小生意気な鉄の棺桶に報復しようにも、彼らの儀仗獣兵に火器は無い。植民地出身者として日の浅い者が集まる第1機甲部隊にそこまでの信用は無く、とどのつまり儀仗獣兵に期待されている事とは、派手に暴れまわって、盛大にやられる賑やかし役だった。 そして此処でも泥に塗れた彼らを、これだから植民地兵は、などと貴族仕官どもが後ろ指をさす。 結局どこまで行っても泥の中なのだ。ゲオルグは呪わしい現実に目も眩みそうな怒りを覚えた。 その怒りは自然とモニターに映る蛮族の機械人形に向かう。 常温核融合すら確立していない文明が、宇宙から負け犬を掻き集めて造った、度し難い往生際の悪さの極み。 愛機を突撃させるゲオルグは、ついぞ自分を突き動かす感情が嫉妬であると気付かなかった。 儀仗獣兵の隊長機は一般機よりも一回り大きく、唸りをあげるアンカーにも当たり負けを起こさない。旋風の中を損害を無視して強引に突っ切り、ダイガストに肉薄すると、勢いを乗せた鍵爪を見舞う。 ダイガストはアンカーの光帯を切断し、寸でのところで手を空けて腕部装甲で受け止めた。多重構造の装甲に特殊鋼の爪が食い込み、敵機の重量が機体の動きを束縛した。 ゲオルグは更に圧し掛かりながら儀仗獣兵の高熱溶断器の牙で顔面に噛み付きかかる。 鷹介が今度は左腕の装甲に噛み付かせると、赤熱した巨大な犬歯がバターを切る様に食い込んできた。 「死にたがりの蛮族どもがっ!文明の光の前にひれ伏せ!」 ゲオルグの怒声は皮肉にも、かつて母星の防衛戦で自分に投げかけられたものと同じであった。彼は唐突に理解した。たぶん、あの時そう叫んだ兵士は、今の自分と同じ立場だったのだと。 不快な妄念が操縦を鈍らせたわけではない。ただ彼が対峙している者達は、諦めの悪さで彼の想像を超えていた。 ダイガストの左腕が出し抜けに噴射炎をあげ、噛み付いた牙ごと射出された。牙の引っかかりが外れて妙なベクトルが付いたロケットパンチはクルクルと宙を回転して落下する。それでも一瞬の衝撃は剣歯虎をのけぞらせ、体勢を崩すには充分だった。 ダイガストは右腕に爪を食い込ませたまま儀仗獣兵の首を引っ掴み、不安定になった足元を蹴り刈って、腕一本でもって強引な払い腰を仕掛けた。 剣歯虎を大地にたたきつけ、その首を掴んでいた指をすぐさま拳に固めて、 「ブラストマグナム!」 剣歯虎の体がビクンと跳ね上がる。 密着状態では右腕は射出されなかったが、金属のボディを貫いた衝撃は大地に深く浸透し、一拍をおいて大量の土埃が舞い上がった。 「文明の光とやらがそんなに高尚なら…」 虎二郎は動かなくなった儀仗獣兵を見るとは無しに見ながら、誰にとでもなく呟いた。 「武器を持って乗り込んでくるような真似はしないさ」 損害が拡大していたツルギスタン第一機甲部隊は、隊長機が討たれた事によって組織的抵抗能力を喪失したと判断され、司令部から撤退命令が下された。 テレビ画面にゲームセットとの文字が表示されるや、おどろおどろしく溶け出す。それがツルギスタン向けの演出である事は、さも残念そうなレポーターの声からも判断できた。 「ああ、なんという事でしょう。やはり植民地兵には荷が重かったのでしょうか、ツルギスタン第1機甲部隊が敗れてしまいました。それにしてもダイガスト、見苦しさすら覚える激闘でした」 上空を旋回する円盤型の飛行物体が中継機なのだろう、カメラは機能停止した儀仗獣兵を仲間達が引っ張って回収してゆく光景を捉えていた。それに、そこかしこで引っくり返っている74式戦車を救出してまわるダイガストの姿も。 撃破された74式戦車の数は20に届こうか。大隊の三割以上が失われているから、全滅という判定がされるのだろう。 この被害を出した乱戦の原因である民間人の乱入者たちは警務隊(日本における軍警察)にしょっ引かれていった。武器の購入先や 工作活動の嫌疑など、ハッキリさせねばならない事もあるが、じきに警察が身柄を引き取りにくると思われた。 10人ほどの民間人の暴走で、その20倍もの公人が危険に晒される。 鷹介は釈然としないものを感じていた。しかも自分も民間人の側なのだから、立場はさらに曖昧になる。救助作業が一段落する頃には悶々とした物は随分と膨れ上がっていた。 『ああ、いっそそんな事に悩む暇なんて無い位の、ひどい戦いになっちまえばいい』 瞬時抱いた幼稚な発想は、虎二郎の一声で霧消した。 「何か物騒な事を考えているだろ」 「判りますか」 「お互いのコンディションはモニタリングされてるだろ。情報表示ディスプレイの右下な。メンタルがえらく乱れている」 「そういや、そうでした」 「まだまだ起こるぞ、こんな事は」 鷹介は図星を指されて、鉛の玉でも飲み込んだような気分で沈黙する。 後方上段のシートに座る虎二郎からはその顔は確かめられないが、彼は作業中のダイガストが何か踏み潰さない様に、足元の情報に注意しながら続けた。 「列強だけじゃない、星間商人や星間犯罪組織が手ぐすね引いて混乱が広まるのを待っている。負けが込めば、自棄を起こすやつも増える。判断力を失った者は食いものにされるだけだ。そうさせないために、ダイガストは戦い続ける必要がある。この戦争はショー紛いのロボット同士の殴り合いだと、皆を誤魔化し続けるんだ」 「その間に長期不敗の備えを整える、でしょう。大江戸博士から耳にタコが出来るほど聞かされましたよ」 「少なくとも、その時までは自棄になるのも贅沢ってことさ」 「欲しがりません勝つまでは…いつから大江戸研は戦時中に戻ったんですか?」 「うちの研究所はずっと未来に生きているぞ」 「つまりずっと未来までこの調子、と。凄いな、人類の本質は変わらないことの証明をしてる」 「しかもその最先端に立ってるわけだ、俺達は…その辺で納得しておけよ。先端には先端なりの苦労があるんだぞ」 「…了解しときます」 ああ、やっぱりひどい戦いじゃないか。 鷹介はまるで仏像のような微笑をうかべた。 戦闘中に起こった椿事を受け、その日の内に国場総理より談話が発表された。内容は主に国民に隠忍自重を促すものだった。 戦場への乱入者たちは自衛隊基地での取り調べもそこそこの内に、やはり警察が出てきて本来の司法権を寄るところとして身柄を引き取っていった。しかし事は国家の一大事であるため、結局は岩手県警から公安の手に移る事になり、その辺りの関連法の未整備が浮き彫りになったのだが、即時の改善は期待できなかった。 公安警察内では新たな課を設立し『宇宙人の犯罪』に対応しようという動きも出たが、漫画のような職務内容にいまいち腰は重い。とりあえず倍力服と個人用多脚戦車のどちらが必要かという議論がされている時点で、設立は未来の事と思われた。 過去の戦争を基準にした、昨日の戦争のための準備をもって、今日明日の戦争を執り行う。 未来が――まして異星人の来寇など――見れない以上、この矛盾はどこまでも人類に付きまとうのだろう。 続く
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地球防衛戦線ダイガスト 第一話 出撃!! JSDFダイガスト!! 軍楽を思わせる仰々しいファンファーレと供に、テレビ画面に大きくGBCとのロゴが映し出された。 地球各所に散らばる雑多な言語を解析した彼等、ギャラクシー・ブロードキャスト・カンパニーは、放送開始から一月にして、地球全土に『限定戦争』の様相を伝え始めていた。 ほぼ毎日のように地球のどこかで『開催』される領土戦争。未開惑星の蛮土を切り取るこの儀式が、娯楽としてお茶の間に供されるようになって久しい。 銀河列強諸国の市民、臣民は、スポーツ番組のように彼等の星の代表団たる兵士達に拍手喝采をおくる。 一方で、民主主義の名の元、地球人類に対してもそれらの映像は配信されていた。 外宇宙からの悪意によって形作られたその番組は、およそ地球人類にとって楽しからざる内容に充ちている。 最初(はな)から地球人を対等と見なしていない列強よりのリポーターのトークに始まり、CMには各列強主星の観光案内と、列強各軍の装備の玩具とフィギュア。 CMがあけると攻勢に参加する兵士のプロフィールが紹介され、その友人家族までが出てきてエールを送る。 当然、地球人側のコーナーは無きに等しい。 ボクシングや格闘技の試合か、はたまた高校野球か。ことに世界規模でジリ貧の撤退を繰り返している地球人類には、しらける事この上ない。 その日の限定攻勢の舞台は日本。 調度CMあけのエース紹介を終え、試合ならぬ攻勢開始まで10分を切り、攻撃を行う帝政ツルギスタン軍の行軍風景がテレビ画面に映し出される。 まずは土煙を立てて横隊を組んだ五つの影。お椀の下から生やした太い足で理路整然と隊列を組む様は、まさに侵略者の戦闘機械だ。 椀状の上半身からは装甲に包まれた腕も突き出ており、左には小楯、右には馬上槍のような武器を携帯している。全高は30メーター強。 ただでさえ非現実的――それと戦わせられる軍人にとっては悪夢――な光景は、その後ろにそびえ立つ影により、止めを刺される。 有り体に言うと、それは刃を下にして直立した、40メートルオーバーの巨剣だった。 それもファンタジーの悪役が持つような刺々しい装飾と、赤黒いペイントとで禍々しく彩られている。 両翼を広げたような柄飾りの両端には、肘から先が剣になったゴツイ腕がぶら下がり、威圧感をいや増していた。 まさに地獄の軍勢とでも言おうか。初めて見た不幸な者が何事かと目を疑おう頃合いに、ボイスオンリーになっている実況中継の解説者がようやく口を開いた。 「さぁ、限定攻勢三度目ともなりますと、帝政ツルギスタン外征旅団も堂に入って参りました。 ホッカイドウを奪取した実績が、その精強さの裏打ちをしております。 先ずお茶の間の皆様のお目に入りますのは、ツルギスタンMBM(メイン・バトル・マシン)儀仗兵ランツェ。 見事な隊列を組んでおります。その後ろに悠然と、そして雄々しい姿を見せますはツルギスタンの切り札、ブレーディアンであります。 その戦闘能力は同クラスの列強諸兵器でもトップクラスとの誉れ高き、ツルギスタン帝室の象徴です。 パイロットは外征旅団に隠れもない、燦然たる武功を誇る野戦指揮官、アフバルト・シュバウツァー大刃士。 本日は如何なる活躍を見せ、お茶の間の皆様を楽しませてくれるのでしょうか。 対するニッポンのジエイタイは、事前申告によりますと、相も変わらずの旧型、キューマルシキ戦闘車両です。 ツルギスタン・パイロット達は存分に撃破数を増やすことでしょう。 いかがでしょうか、解説のリッケントロップさん」 「はい、仰る通りとなるでしょう。いかな1600年以上の歴史を持つ皇国と言えど、 旧弊は否めないのでしょう。列強の進歩的民主主義に抗い得る訳ではないのです」 「早期の旧態然とした支配からの解放が望まれますね」 「特にジエイカン達の自殺的な戦闘行為貫徹は、列強諸国間でも戦争犯罪ではないかと問題となっています。 彼等蛮族の兵もツルギスタンから学ぶことが多いと思うのですが…」 「まったくですね」 フンと鼻を鳴らし、東和樹(アズマカズキ)三佐はテレビの主電源を手荒く落とした。幕下の自衛官がリモコンを渡そうと手に取ったまま、手持ちぶさたにしている。 「…どちらが蛮族か」 東三佐は堪えきれないように一言漏らすと、長机の上の地図に目を落とした。青森西部、自衛隊小谷演習場。 冬季山岳訓練に格好の舞台となる、山地と平野とが入り組んだ地形が描かれてはいるが、今この瞬間、その地図に意味は存在しなかった。 どうせ敵は馬鹿正直に平野部を突き進んでくる。地形を利用しないし、陣地を築くこともない。奴らは常に限られた兵力でもって、正面攻撃をかけてくる。 名乗りを上げての騎兵突撃か、馬鹿馬鹿しい。 東三佐はいたたまれない気分になり、野戦陣地の指令テントを後にした。そこにテレビがあったのは、GBCのバラエティ枠の番組の方が余程、直前までの敵情を伝えているからだ。 「だからといって…」 テントの外に居並んだ深緑の戦車の列を目の当たりにし、しかし彼は一縷の安心も抱けなかった。 主力戦車論によるところの第三世代戦車90式戦闘車両は、恒星間航行能力を持つ異星文明に対して無力であった。 ラインメタル社製120㎜滑腔砲は敵性兵器の装甲に無惨に弾かれ、 最新技術を惜しげもなく投入した快速な足回りを実現するはずのキャタピラは、それ以上の技術でもって作られた二本の足に及ばなかった。 日本が誇る冶金技術の粋を集めた複合装甲は、30メーターの人型が繰り出す純粋な物理衝撃の前に紙切れ同然に引き裂かれた。 ターレットのコマンダーズキューポラから顔を覗かせている幾人かの戦車長達は、強張った顔の者、 青ざめた者、呆けたような者、実に様々だったが、士気の低さだけは共通していた。 無理もない。東三佐は自分の中にもあるだろう、彼等と同じ感情のうねり――あるいは麻痺――に、拳を強く握り締める。 彼等は敗残兵だった。二度に渡るツルギスタンの攻撃に為す術もなく敗退し、北海道を守りきれず、 かといって死ぬことも出来ず、幸か不幸か青森死守戦に投じられた兵達。 皆、色々なことに疲れ切っていた。 これが負けると言うことか。 兵の前であることも忘れ、東三佐の顔からも覇気が抜けてゆきそうになる。 もともと覇気や威圧感には不自由していない、引き締まった顔貌と体躯とを誇っていたが、 いまやそこにうち続く撤退戦で伸びた無精髭が加わり、野犬のような悽愴な色合いを帯びていた。 いまさら覇気の一つが抜けたところで、なにをか睨み付けているようにしか見えないのは救いだったが。 と、そこへ本部テントから通信士が飛びだしてきた。 「三佐、『サンボン』から通信が…」 サンボンとは旧軍時代の参謀本部を指す隠語だった。現在は勿論存在しないが、幕僚長達からの通信を誰とも無くそう呼んでいた。 東三佐は通信士に一度頷くと、テントに戻りレシーバーを手に取る。 通信機の向こうにいたのは幕僚長どころでなく、内閣総理大臣その人であった。 「苦労をかけているな」 総理大臣、国場道昭(クニバミチアキ)はテレビで見る限り初老の域に入っているものの、張りのある声だった。聞いていると、自然と背筋が伸びてくる。 「苦労ついでにもう一つ、統幕議長と私からの頼みを聞いて欲しい」 「…つまりは命令ですね」 「君たちには承伏しかねる類かも知れないが…」 「何しろ、こんなのでも戦争ですからね。総員、靖国に凱旋する覚悟は出来ています」 「…噂通りの気骨ある人物のようだな。ならば一層、履行には覚悟が要るだろうが…撤退してくれ」 「何ですと?」 東は頓狂な声をあげていた。それから自分の頭の中にある様々な要素が、総理の言葉に停滞を許さず、野戦指揮官としての義務を果たさせようと動き出した。 「富士の機甲部隊とでも交代ですか?それとも関東一円から攻撃ヘリでも?」 「聞いて驚き給えよ」 直後、総理の口から出た言葉は、東三佐に撤退を伝えたときより頓狂な叫びを飛び出させるのだった。 銀河列強諸国は汎人類種恒星間文明である。 その姿形に大した違いがない、ホモ・サピエンスによる文明群ということだ。 特にツルギスタン主星は地球と変わらぬ1Gのため、面白味が無いほど両者に外見的差違は存在しなかった。 ブレーディアンのコクピットに座するアフバルト・シュウバウツァー大刃士――大抵の軍隊に於ける大尉相当――も、その外見はさながら大時代的な貴族士官そのものだ。 青を基調とした古めかしい騎兵将校のような軍服は、肩やら胸やらに金の飾り紐が幾本もはしり、宝塚歌劇の『薔薇』でも使用に耐えそうな豪奢なものだ。 それに身を包んだアフバルトも、高く、形の整った鼻梁に、切れ長の目と、その中に浮かぶ青い瞳とが大層印象的な、地球で言うところの典型的美形の白人だった。 ご丁寧に長めに伸ばした柔らかなブロンドまで見せられると、ツルギスタンの軍人というのはこういうものなのだなと、むしろ納得できるというものだ。 年の頃は二十代の半ばか、そろそろ職務が身に染みて、覇気と優雅さとに形を成しつつある。 「ジエイタイの陣容が変更?」 アフバルトは後方の司令部から届いた通達に形の良い眉毛を歪めた。 理由が解らない。自衛隊の大規模な移動は察知されていない。であるなら、単なる放棄か。それも考えづらかった。 過去二度に渡る自衛隊員達の奮戦ぶりは、彼等の常識を上回っていた。一部のパイロットに恐怖感を植え付けるほどだった。 ある戦車が歩兵を守るために儀仗兵の槍の前に立ちはだかったことがあった。 また、ある戦車はキャタピラが切れても固定砲台となり、貫けもしない滑腔砲を撃ち続けた。 歩兵達は虎視眈々と戦車の影から対戦車ロケットを撃つチャンスを窺っていた。 まさに蛮勇と言うべきか。あれを見た後では、理由もない撤退はあり得ない、アフバルトは確信を得ていた。 「敵手はホッカイドウから下がり続けている『ノーザン・ブル』機甲師団ではないのか?」 「いえ、詳細がハッキリしないのですが…『ボランティア』であると…」 「『無償奉仕』だと?翻訳コミュニケーターが壊れていたのではないか?」 「ああ、いえ、『義勇兵』という意味もあるそうです、地球においては。むしろ『義勇兵』が語源なようですね。国家間で公に救援を送れない場合に執られる志願兵制度らしいです」 「なかなか複雑だな、地球の言葉というのは…レーダーが何か捉えた、一端切るぞ」 「御武運を!」 アフバルトはシートから気持ち、体を乗り出すと、前面モニターの一角を見据えた。 異性文明の兵器と言っても、そこは兵器だけあり、我々の知るコクピットとさして変わらない。必要最低限の設備を、結果的にはコクピット中にバラ巻く配置で。 「なんだと?」 アフバルトは疑問の言葉を口にすると、出撃前に時刻を合わせた腕時計を確認した。 約定の戦闘開始時刻まで、あと三分。が、『皇国人』が入谷演習場と呼ぶ原野に、敵影は二つしかない。 いつもの90式戦闘車両と、その上空を旋回するF-15/J戦闘機。 「隊長、連中、我々を舐めているのですか?」 儀仗兵のパイロットから嘲笑混じりの通信がはいる。 そんな筈はないだろう、自衛隊はこちらの戦闘力を自らの出血でもって熟知しているはずだ。 アフバルトは返事を返す前に、敵機を視認したブレーディアンのメインコンピューターからの反応を待った。彼の辞書には楽観も悲観も存在しなかった。 案の定、異変はすぐに出た。二機の発する赤外線量が尋常でない。 しかもF-15/Jは認識確度が65パーセントといって、コンピューターが小首を傾げている状態。 90式戦車に至っては、形状から予測する確度は90パーセントだが、それ以外の要因により同車両との認識は不可能、との判断が下されている有様だった。 何事かとアフバルトは計測した諸元をディスプレイから読みとる。軽い目眩を覚えた。あの90式戦車は『形こそ同じだが、サイズは二倍』との判断が下されていた。 「…諸君、どうやら皇国人は何かをする気らしいぞ」 アフバルトが各機に注意を促すと、いかにも戦意の高い歓声が返ってくる。勇ましい蛮声と言っても良い。 だが、ツルギスタンの将兵は『皇国人』の本当の反撃が、まだ始まっていない事を思い知ることになる。 戦闘開始を告げる喇叭の音が、入谷演習場に鳴り響いた。 F-15戦闘機とは70年代に於ける技術の未熟さを、潤沢な資金の投入とあらゆる装備の大型化によって、一つの形に押し込んだ代物と言える。 空力という概念が未だ未成熟であった頃に作られた先細りの円筒状の胴体と、それを挟み込んだ巨大で四角いエンジンブロック。 それらを、輪をかけて馬鹿でかいゲイラカイトの様な主翼の下に無理矢理吊り下げ、その後ろに水平尾翼と、二枚の垂直尾翼を立てている。 最高の性能を金に糸目をつけずに求めた、まさに冷戦時代の怪物機だ。 航空自衛隊は時代の寵児として誕生した同機に、更なる改修を加えた多段階能力向上機、F-15/J,MSIPを多数保有していたが、 その日、入谷演習場へと急行するF-15戦闘機は、MSIPとも形状を異にしていた。 長く迫り出した機首部分に、機体各所に生じた奇妙な出っ張り。 およそ空力を考慮に入れていないことに拍車をかけたような姿をしつつ、その戦闘機は実に軽やかに蒼穹を疾駆していた。 そのコクピットの中も、現実の戦闘機を凌駕している。 パイロットの足の間に操縦桿があるのだけは古典的だが――新鋭機は大抵コクピットの右隅に操縦桿がある――コクピットの両サイドにもレバーやらスティックやらが見えていた。 パイロットの前面コンソールには四枚の液晶ディスプレイが存在していた。 それらは現行機にも装備されているが、戦闘時にはそこへ視線を落とす暇がないため、より上部に必要な項目をまとめた電映ガラス板がある。 いざ戦闘となればその程度の意味しか持たないコンソールの筈が、その機体の液晶ディスプレイには常に四面全てに別個の情報が映し出され、自分と、その周囲を伺っているようだった。 何より妙なのはパイロットだ。 通常はゆったりとしたフライトスーツを着用しているが、そのパイロットはまるでライダースーツのようなガッチリとした『つなぎ』を着用していた。 与圧されていない超音速戦闘機につきものの酸素マスクも存在せず、パイロットの顔が確認できる。 意外に幼い、と言っても少年の域は越えている。青年と呼ぶ歳ではあるが、ただ、同年代の日本人によく見るダレた雰囲気は無く、 まさに戦闘機のコクピットに納まるべく引き締まっている。 眉毛の形や鼻梁は意外に整っているので、ヘルメットを脱げばちょっとしたいい男だろう。 もっとも、今の彼の表情はいささか困り気味であった。 「…だから、大丈夫だって言ってるだろ」 「ダメだよ。だって鷹(よう)くん、これが初めての出撃なんだよ!?」 と、四面のパネルの内の一つに顔を映して、しきりに彼の身を案じているのは、妙齢の乙女であった。 長い黒髪がたいそう印象的で、好意的な意味で飾り気が無い。 目鼻立ちは成熟した女性のそれだが、子供じみた心配の言葉が物語るように、どこかあどけなさが抜けきっていなかった。 パイロットと同じように、微妙なお年頃というわけだ。 「透(みなも)、これが最初ってわけじゃないんだ…黙ってたけど…」 パイロット、風見鷹介(カザミヨウスケ)は、堪り兼ねたように幼馴染に漏らした。が、それがいけなかった。 彼女、笠置透(カサギミナモ)は、鷹介のことを心配するのに理由が要らない性質だった。 「うそ?ひどいよ、鷹くん!!黙ってるなんて!?」 「しまった、逆効果…」 鷹介が天を仰ぎかける、その刹那、思わぬ救援が入った。透が占めていたディスプレイが半分に分かれ、これまた印象的な男性の顔が映る。 「透くん、それ位にしてやってくれないか」 張りと渋みのバランスが取れた、何ともセクシーな『男』の声だった。 彫りの深い顔立ちと、意志と知性を兼ね備えた瞳の輝きは、古典的な大人の男の美点を集約したかのようだ。 土岐虎二郎(トキコジロウ)。 彼は今、鷹介の足下を走る戦車のコクピット――今更、戦車は複数人で動かすもの、という常識を口にするのは適切でない――に納まっていた。 「大丈夫、鷹介君は必ず連れ帰るよ。怒るのは、帰ってからでも、遅くは無いだろう?」 「「土岐さん」」 鷹介と透はそれぞれ違うニュアンスを含んだ声で、同じ言葉を口にしていた。 それがなんとも可笑しく、またこの二人のことを代弁しているかのようで、彼の頬になんとも色気のある微苦笑を浮かべさせる。 「さぁ、反撃の狼煙を上げよう、鷹介」 「…応っ!」 一転、威勢の良い返事を返すと、鷹介は左手が握ったスロットルレバーを引き、同時にシートの脇に付いているレバーを右手で倒す。 四面の液晶コンソールに、それぞれ一文字ずつ、J・S・D・Fのアルファベットと、それが頭文字となる単語が表示される。 Jointo・Strugl・Defensive・Form 合体及び格闘による防衛的形態、とでも言おうか。自衛隊の意味でなく、なにか途方もない、子供心をくすぐられる響きだった。 そして、現実に、それは行われたのである。 F-15からウィングとコクピットが分離する。残ったボディが中心線から二つに割れ、それぞれの機首部であった部位が90度に反って折れた。 90式戦車が宙に浮かび上がり、主砲とターレットが分け放たれる。胴体が二つに折れると、左右のキャタピラ部分が別個に別れ、中からマニュピレーターが飛びだした。 二つに分かたれた戦闘機の胴体だった部分が、腕を突きだしている戦車の胴体に、下から突き刺さった。 残ったコクピットと主翼とが戦車の胴体前面に張り付くと、最後に戦車の胴体部から、人の顔が彫刻された、兜を被ったような頭部が突き出てくる。 隠すべくもない、それは、二つが合わさり、人型を成していた。 戦場に佇立する巨人。 我々はそれが何であるのかを知っている。子供心に、その存在を知っていた。渇望していた。 絶対の窮地に現れ、無敵の力をもって敵を倒し、幼心を満たしてくれたもの。 今こそ、何のてらいもなく、その名が叫ばれるとき。 そう、スーパー・ロボット、と。 人型兵器だと!? アフバルト・シュウバウツァーは信じられぬ思いでモニターに映る光景を睨み付けていた。頭のなかでは、冷静な思考と知識とが、総動員で回り続けている。 儀仗兵を含め、そういった兵器は決して珍しい訳ではない。 マニュピレーターを介した、豊富で簡便な武装。 足を使った不整地踏破力と、細やかな機動。 技術の進歩が実現させた、理想的兵力の運用であるところの、柔軟性の至極といってよかった。 だが、何よりの売りは、その判りやすさであった。判りやすい形で具現化した力は民衆の人気を得やすい。 それは商品価値に繋がる。全てが経済活動と直結した銀河列強にとり、軍とは、スポーツ選手のような側面を持っているのだ。 顧みるに、アレは何なのか。 地球人類は、それを実現する能力を持つのか。確かめねば。アフバルトはインカム越しに名乗りを上げる。 「我が名はアフバルト・シュウバウツァー、栄えあるツルギスタン第三外征旅団第三〇五機甲大隊大刃士である! 諸君らの管制名を述べよ」 返答は即座に行われた。 「大江戸先進科学研究所所属、スーパーロボット、ダイガスト!!」 ツルギスタン将兵からどよめきが湧き起こる。 民間研究施設所有のロボット。果たしてこの国は民生の方が技術レベルが上なのか、それとも唯の捨て石か。 アフバルトはあくまで紳士に、いやスポーツマンシップに乗っ取り、彼等に警告を与える。 「諸君らが立っている場所は、我等の神聖なる約定によるところの限定攻勢の開始線である。 諸君らに他意が無いのであれば、その場より立ち退き給え。これは最後通告であり、これより三十秒の後…」 「つべこべ言わずに掛かってきたらどうだ?あんたらこそ、日本国領度を不当に侵しているんだぜ?」 若者の声だとおもった。 アフバルトはいくつもの星系で戦った経緯から、攻勢初期にあのような果敢な若者がよく現れることを、それを打ち破らざるを得ない悲しみから、よく知っていた。 そんなとき、彼は自らが侵略者である悲しみを胸に秘め、いつもこう言ってきた。 「その意気や良し!!ならば私は君のようなものが二度と出ないよう、全力を持って応えよう!! 全軍、突撃にぃ、うつれぇっ!!」 歓声があがり、五機の儀仗兵が槍襖を敷きつつ人型兵器に突進した。 速い。土煙をあげ、儀仗兵ガーズ・ランツェは一本の楔と化す。異星の軍勢を突き破ってきた、必勝の突撃隊形だった。 迫り来る土煙を前に、ダイガストは右手を弓につがえるように引き絞る。肘の内部よりブースターが顔を覗かせ、噴射炎をあげた。 コクピット――復座式で、背後の一段高い場所に虎二郎の姿があった――で鷹介が右手で握ったサイドスティックを前に押しだし、先端のスイッチボタンを押し込む。 「ブラスト・マグナムッ!!」 右手が、撃ち放たれる矢の如く、肘の先から飛翔する。ある世代には実に見覚えの深い、ロケット・パンチという古色蒼然たるアニメの兵器だ。 対する突進状態の儀仗兵は、回避が効かない。とくにランツェタイプは軽快、突進力が売りであり、けして小回りが利く機体でなかった。 結果、楔の先端、中央の一機の正面に、ロケットパンチが直撃する。 直撃の瞬間、拳の先端に何やら光り輝く力場が視認できた。それから、儀仗兵に当たった部位でなく、その背後に、盛大なブラスト炎が吹き上がった。 儀仗兵はその一撃で機体中枢を貫通する甚大な被害を負い、膝からその場に崩れ落ちた。 GBCのレポーターが呆気にとられ、解説を忘れる。 その眼前で、儀仗兵を打ち砕いたロケットパンチ、いや、ブラスト・マグナムが、ダイガストの突き上げた右肘に帰還する。 楔の先端を砕かれた儀仗兵は、果敢にも二手に分かれてダイガストを挟撃する構えをみせた。 「流石に立ち直りは速いな」 虎二郎はどこか嬉しげだった。同時に、彼の指がシートの前を占有するコンソールパネルの上を、踊るように叩いてゆく。 索敵諸元が鷹介側の四面ディスプレイに投影され、最適の武装が選択される。 ミサイル、準備。 鷹介がコントロールスティックの先端のボタンを押し込むと、ダイガストの背後から生じたように、 どこからともなく二本のミサイルが発射される。下半身に変わったF-15が翼下に吊っていた物だ。 ミサイルは最右方の儀仗兵の足をそれぞれ打ち砕き、殻座させた。 が、右翼のもう一機は更に果敢に突撃の足を速める。その槍先がダイガストを補足した、その時。 「アンカー、発射!」 ダイガストの両腰、F-15の垂直尾翼と水平尾翼とが重なり合って出来た鏃のような装甲が、儀仗兵へと向かって飛びだした。 ダイガストと鏃との間は、輝く光帯が繋いでいる。まさにアンカー。 その鋭い先端が儀仗兵を貫くと、ダイガストは光帯を握り締め、自分と背丈の変わらない相手を軽々と振り回してみせる。 儀仗兵のパイロットの悲鳴が上がった。それからドップラー効果で、それが遠くへと離れてゆく。アンカーが抜けたのだ。 アフバルトは息を呑んだ。 いかに機動性のみを重視したランツェと言え、瞬時にして三機を倒されるなど、これまでついぞ無かった。 百戦錬磨のツルギスタン貴族士官は、その衝撃に、必然とも言える誤断を下した。 「転進!私の左右に付け!!」 忠良なる儀仗兵のパイロット達は即座に命令に従い、アフバルトに合流するための後退に移る。 ブレーディアンを中央に、ツルギスタンの精兵が再結集を果たす。と、アフバルトの側面モニターが、両脇をすり抜ける黒い影を捉えた。 次の瞬間、両サイドに着いたはずのランツェが、もんどりうって吹き飛んだ。四肢がちぎれ飛び、割けた石榴のような破孔を覗かせている。 一体、何が。そこまで考えて、アフバルトは自らの迂闊さに慄然となった。 モニターに移るダイガストは、身長と同じほどの長大な砲を両手でホールドしている。 俺は何をした、ヤツは何をした?無様な突進と転進とを繰り返した俺達を、ヤツはただ撃っただけではないのか。それも一歩たりとも動かずに。 何たる迂闊、何たる無様。 「しかし…だからこそ、アレは倒さねば!!」 アフバルトはブレーディアンの出力を上げ、ダイガストへと肉薄する。 逆さにした剣という奇妙な形状の兵器は、重力に反したかのように地表より僅かに浮き、スルスルと前進する。 見る間にモニターを占有してゆくその偉容に、彼は奇妙な荘厳さすら感じていた。かつて見た帝国聖教の『剣の御使い』の像のような。馬鹿な。 「アレは、敵だッ!」 左手で掴んだスルットルレバーを限界まで押しだし、乗機を最大戦足で疾駆させる。 同時にダイガストがあの巨砲をこちらへと向ける。砲口の形は真円に見える。こちらを完全に補足していた。 頭はそこから離れることを欲していた。だが、体はどうした訳か動かなかった。 アフバルトはそれを帝国軍人魂の精髄であると決めつけ――臆病風と思えば、正気を失いかねない――迷わずブレーディアンの剣状の両腕を振るう。 瞬間、ダイガストの巨砲が地獄の炎を上げ、真紅の鉄塊を吐きだした。 剣と砲弾とがガッチリと食い合い、一瞬の拮抗の後、砲弾がその使命を果たして爆発した。 モニターを紅蓮の炎が満たす。 同時に機体各所から注意を促す警告表示が、モニター上へと悲鳴のように乱舞する。 決してダメージを局限できた訳ではなかった。炸薬によって膨大な鉄量が金属粒子に分解し、高速高温のメタルジェットとなって機体表層を荒れ狂ったのだ。 原始的。だからこそ、恐ろしく信頼度が高い。おそらくあの巨砲も既存の何かを流用した物だろう。 そういえば、皇国がツルガオキ海戦と呼んでいる諸惑星連合との一戦、あの折轟沈した艦の中に、美しく巨大な艦があったな。 アフバルトは何とはなしにそう考え、それが衝撃による軽いショックであると思い至る。 「くっ!?」 頭を軽く振るい、操縦に集中する。既にブレーディアンの間合いの中なのだ。幾度となく蛮土を切り開いてきたブレーディアンの双腕の、その撃勺の間合い。 アフバルトは怒号と共にコントロールスティックのボタンを押し込む。 研ぎ澄まされた刃が左右から、鋏のように、ダイガストの首へと忍び寄る。教本にある類の攻撃ではない。幾多の戦場で切り覚えの、必殺の一撃だった。 だった。過去形である。 前面モニターを銀光が左右から行き過ぎてゆく。前面モニターと言っても、鷹介の前にある四面多目的パネルではない。その先にある、巨大なパノラマだ。 ダイガストの反応は上々だった。虎二郎が早期に発していてくれた警告に沿って、機体を滑るように後ろへと跳ねさせる。 同時に、鷹介の中のファイター・パイロットとしての本能が、殆ど無意識にトリガーボタンを押し込ませている。 ダイガストの胸部装甲の四隅から、それぞれ火線がほとばしった。 発砲炎の代わりに、微かにパルスが確認できた。それとほぼ同時にブレーディアンの前面に幾つかの小さな破孔が生じ、金属が同種の物を食い破る甲高い音が響く。 「ふん」 虎二郎が鼻を鳴らす。 「さすがに30mmでも向こうがデカけれりゃ、大した効果は無いな。試射は儀仗兵で済ましておくべきだったか」 「土岐さん、そういうのは勝ってからにしてくださいよ」 鷹介は虎二郎の肝の座りっぷりに苦笑いを浮かべた。このひと、ほんとにこれが初陣なのか? 彼もそれだけを気にしてはいられない。ブレーディアンの猛攻に、避けているだけでは勝てない。 「撃って、出る!」 サイドスティック――足の間の操縦桿は折り畳まれていた――を倒しながら、一転、ダイガストを突進させる。 機体の身長ほどもある砲を投げ捨て、両の拳を固めた。調度ブレーディアンが火砲を物ともせずに踏み込んできた、その鼻面に、カウンターで右ストレートをお見舞いする。 盛大な金属音が上がり、火花が散るや衝撃でブレーディアンの装甲が歪む。だが、その巨体は止まらない。 ダイガストと比して二まわりも大きいのだから、子供が大人に殴りかかっているようなものか。 ブレーディアンは両腕を縦に並べ、右から左へと同時に振りぬいてきた。 一つは止められても、二つならどうか。まさにブレーディアンの巨体を活かした猛攻だった。 喧嘩慣れしてやがる。鷹介は背筋に冷たいものを感じながらフットペダルを蹴り込む。 ダイガストの腰裏に移っていたF-15のエンジンノズルが炎を上げ、鋼の巨体を横っ飛びに跳ねさせた。 さらに左腕で、唸りをあげて飛んでくる二つの刃を受け止める。 刃を腕の装甲材に深々と食い込ませつつ、ダイガストはそこからバーニアを更に吹かし、自分からブレーディアンの攻撃が描く横薙ぎの軌道に乗ってやる。 振りぬいた腕に流されるまま、ブレーディアンの背後に着地する。 足元の大地を砕きながらダイガストはすぐさま突進、勢いもそのままにブレーディアンを背後から殴りつけた。 子供の喧嘩のようなひどい大振りを、敵が振り返るまで存分に、幾度も浴びせる。 その都度ブレーディアンの巨体が『起き上がりこぶし』のように揺れ、剣を思わせるボディに次々と歪みが作られてゆく。 「こざかしいっ!!」 アフバルトが吼える。それにブレーディアンが応え、剣の柄――おそらく頭部――が後ろを向くや、双眸にも見える紅い偏光器から二条の光線が照射された。 光線は偏光器と同じく、鮮やかなほどに赤い。 光線がダイガストの腕やら肩やらを舐めると、装甲材が瞬時に沸騰し、ケロイドのようにただれる。その出力に虎二郎が思わず嘆息を漏らすほどだった。 「こっちにも欲しいな、あれ」 「偏光レンズが精製できないんでしょ、博士が愚痴ってましたよ」 「技術が無ければ戦争もできん、か」 「無い物ねだってもしょうがないでしょ。今ある物で済ませないと。と言う訳で土岐さん、あれ、使いますよ」 「了解だ」 答えるや虎二郎の指が精密機械のようにコンソールパネル上を跳ね回る。 するとダイガストのコクピットにも伝わるほどの鳴動が始まった。 二人の前のデータ表示の中からエネルギーゲインのバーが急速に伸張し、ダイガストの巨体がこれまで以上の出力に震えていることが判る。 鷹介は高まった出力をダイガストの拳に、ブレーディアンへと叩き込んだ。 これまでを上回る衝撃にブレーディアンが吹き飛ばされる。 そして強引に距離をつくり、ダイガストは左手を自らの後方に回す。 次の瞬間、ダイガストの左手には――どこから取り出したのか――鞘に収まった一振りの太刀が握られていた。 「鷹介、知ってると思うが、事象転換炉が励起状態の輝鋼剣を制御していられる時間は僅かだ」 「わかってますよ、一太刀で仕留めます」 なんとも頼もしい事を口にして鷹介は操縦桿を押し込む。 ダイガストが太刀を地面と水平に、体の前に持ってくると、鞘と鍔とを繋いでいたメカニカルロックが音を立てて外れた。 鯉口が解かれ、鞘の中から眩い金色の奔流が溢れ出る。 「七度(ななたび)死地に赴こうと、我等必ず帰り、護国の刃たらん」 七生護国とでも言おうか、朗々と吟じる鷹介がダイガストに剣を素っ破抜かせると、地上に太陽が現れたかのごとく、神々しい輝きが周囲を照らし出す。 光の元たる、現れた金色の刃は、目も映えるほどの直ぐ刃の直刀だった。 刃その物が輝くという異常な光景にアフバルトは驚嘆する。 なんだ、これは。俺は何と戦っている? 居竦むアフバルトの眼前で、ダイガストのフェイスが面頬に覆われた。 それは彼が瞬時感じた神像のようだという印象から一転し、完全な戦装束への変貌を意味していた。 輝く太刀を八双に構え、ダイガストが踏み出す。 ブレーディアンは両の腕を交差して打ち込みを受け止めようとしたが、ダイガストの太刀はその腕ごと、音も無く侵略軍の巨大兵器を両断した。 崩れ落ちるブレーディアンにダイガストは背を向け、胸の前で鞘に太刀を収める。 「輝鋼剣 一刀両断」 鍔鳴りの音も涼やかに、鷹介の呟きが控えめに戦いの終わりを告げる。 いや、侵略者たちとの戦いは正にこれからであった。 全機能を停止したブレーディアンのコクピットでアフバルトは茫然自失となっていた。 GBCのレポーターも言葉を失い、終いには予定を変更する旨の謝罪広告と、客船の環境映像とが放映され続ける有様だった。 入谷演習場から離れてゆく自衛隊の車両だけは歓喜に包まれている。 初めて一矢を報いたのだ。歓声は止まず、しかしその狂乱の中、 東三佐だけはコマンダーズキューポラから身を乗り出し、複雑な表情で遠ざかってゆくダイガストの巨体を見つめていた。 「いったい何なんだ、あのロボットは…」 それは喜怒哀楽、人毎に違ってはいたろうが、その場に居合わせた者達に共通の言葉であった。 史家は言う、その日より銀河列強の長い悪戦が始まったのだと。
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猫の隠れ里を囲む林の中。私は平らな岩の上に膝を折って座った。 デイパックから地図を取り出して、放送で言っていた禁止エリアにDIOの館があることを確認する。 名前から判断して、本来は名簿のDIO(ディオ・ブランドー)の住処なのだろう。 DIOはヴァニラ・アイスと何らかの関係を持つ、暫定危険人物だ。 拠点になり得る場所がなくなるのはありがたい。 しかし先程知り合いの死を告げられたばかりだというのに、よくもまあ冷静に思考しているものだ。 我がごとながら少し嫌になる。 親しい者の死が始めてというわけではないし、取り乱せとは言わないが、もう少し何かあってもいいのではないだろうか。 「文、大丈夫か?」 私の感情の変化を目ざとく捉えたのか、横に座るジョニィさんが心配そうに、声をかけてきた。 前にいる露伴も、名簿に印をつけながらこちらを見ている。 だが二人が気にしているのは、私が知り合いの死にショックを受けているのではないか……ということだろう。 速く蓮子を助けに行くべき状況で、『何が起こるからわからないから、青娥と戦う前に情報を整理しておきたい』なんて提案を飲んでくれたのも、そこら辺への配慮かもしれない。 その気遣いが余計に私の気分を暗くさせる。 私がそんな提案をした本当の理由は、青娥に蓮子を連れて行ってもらうための時間稼ぎだ。 二人には悪いが私は一度あっただけの人間――それも何の力も持たない人間のために命を賭ける気にはなれない。 その臆病さが本当に嫌になるが表には出さず、いかにも『辛いのを耐えている』という笑顔で「大丈夫です」と答えた。 気を取り直して参加者名簿を取り出し、死亡者に印をつけていく。 幻想郷でも最強クラスの力を持つ鬼の二人が、早くも脱落している。 昨日飲みに行ったときに萃香に金を貸していたが、もう帰して貰うことはできそうにない。 紅魔館からは紅美鈴と十六夜咲夜が死亡している。 紅美鈴は元からそれほど強力な妖怪ではない。十六夜咲夜も時間停止は最長九秒までという制限を考えれば妥当なところか。 極限状況において親しい存在をなくし、冷静さを失うなんてよくある話だ。パチュリーとレミリアには警戒しておこう。 同じ理屈でナズーリン、二ッ岩マミゾウ、幽谷響子を失った、命蓮寺の者もだ。 魂魄妖夢の主の西行寺幽々子はどうだろうか。 案外ケロッとしてそうな気もするが、元々簡単に信用できる人物ではない。 アリス・マーガトロイドは特別強い力を持っているわけでもなければ、影響を与えるほど親しい者がいるわけでもない。特筆することはないだろう。 残りの九人は全員知らない名前。強いて気になるのをあげれば、ジャイロ・ツェペリと姓を同じくするウィル・A・ツェペリとシーザー・アントニオ・ツェペリくらいか。 改めて見ると同じ姓の者がずいぶんと多い。私が知っている八雲と古明地を抜いても、ジョースター三人、ツェペリ三人、空条二人、ブランド―二人で四組十人だ。 参加者のほぼ半分は幻想郷の者だ。残りの半分にもきっと何らかの繋がりがある。それを解く鍵がこの同じ名字を持つ者たちにあるかもしれない。 私はその考えを二人に話した。 「僕はジョースター家に縁のあるものじゃあないかと考えている」 露伴が言った。 「ジョースター家っていうのはつまり僕の一族のことか?」 ジョニィさんが聞き返す すでに参加者が違う時代から集められたことはわかっている。 ジョナサンとジョセフがジョニィさんの先祖か子孫という話も一度は出ていた。 「ああ。さっき話したときは性格や能力のことしか言わなかったが、実は承太郎や仗助もジョースター家の人間なんだ。苗字は変わっちゃいるがな。 つまりジョースターの者は三人じゃあなくて五人、承太郎と同じ名字の徐倫も入れば六人だ。 偶然にしちゃあ多すぎるが、そいつらを中心に集めたというなら納得がいく」 「確かにヴァニラはジョースターに憎しみを抱いていた。名簿の位置からして、たぶん承太郎か仗助の関係者なんだろう」 名簿には何らかの縁があるものが、並べて書かれているという話もすでにしている。 私達が知っているジョースターで、ヴァニラの近くに書かれているのは確かにその二人だ。 「だがそれなら蓮子はどうなんだ? 彼女はジョースターの名前を知らなかったし、幻想郷の人間でもないぞ」 「東方や空条は知っているかもしれないぞ。あるいは先祖の姓を知らないだけで、彼女自身がジョースターって可能性もある」 「そうかもしれないが……なんかしっくりこないな」 それは私も同意見だった。宇佐見蓮子の書かれている位置からして、空条や東方の知り合いとは思えない。 かといって肝の据わった男ばかりのジョースター家と、無力な少女の宇佐見蓮子ではどうにも繋がらない。 「……参加者が違う時代から集められているんなら、蓮子さんは後にジョースターか幻想郷に関わる人ということはないでしょうか」 「ジョースターはともかく、外に世界の人間が幻想郷に関わることなんてあるのか?」 露伴が聞いてきた。気のせいか、その目が怪しく輝いている気がする。 「幻想郷には外来人と呼ばれる外の世界から、迷いこんできた人間がいます。 蓮子さんとその友人のメリーさんはそれなのかもしれません」 「なるほど。じゃあ位置的に幻想郷の者でありながら唯一文が何も知らなかった岡崎夢美も、文より後の時代に幻想郷に来た者なのかもな」 ジョニィの言葉に「私も幻想郷の住人を全て知っているわけじゃないですけどね」と返した。 「話は逸れたが取り敢えず蓮子のことも説明できた。僕の説に反論はないな?」 「そうですね。ジョースターに縁のある者が集められているなら、空条はもちろん、ツェペリとブランドーが多いのもジョニィさんの代の縁が続いているから、で説明できますし」 「いや。それは違う。ディエゴは僕のいた時間では死んでいるし、家族もいない。ブランド―の血は途絶えたはずなんだ。それにこれを見てくれ」 ジョニィさんがそう言って名簿を置いた。 「ジョセフ、承太郎、仗助は生まれた年順に上から並んでいる。 もしツェペリ家との縁が僕の代からなら、ジョナサンとジョセフより僕が上に来るのが自然じゃあないか?」 「でもジョニィさんがその三人よりも、前に生まれているのは確かですよね。 生まれじゃなくて、単純に『今』の年齢順に並んでいるんじゃないでしょうか?」 「ジョースターの中では僕が一番若いってことか。なくはないかもしれないが……」 「まあ、その辺は他の参加者に会えば追々わかるだろ。 そろそろ行こうぜ。あんまりモタモタしてると蓮子を見失う」 もう少し時間を稼ぎたかったが、ここでゴネて疑いを持たれるわけにもいかない。私はおとなしく頷いた。そのとき、 「文!」 後ろから呼びかける声がした。 振り返るとそこには、氷のような水色の髪と透明な翅を持つ小さな子供。 「チルノさん!」 チルノはまるで逃げてきたかのように、一心不乱に走っていた。 チルノが殺し合いに乗るような奴じゃないことは、二人に話している。 私達は彼女に駆け寄った。 「文! 助けて! こいしが! こいしが!……」 チルノが目に涙を浮かべて、縋りつくように叫んだ。 私は片膝をついて目線を合わせる。彼女の肩に手を掛けて、ゆったりした口調で話す。 「落ち着いてくださいチルノさん。こいしというは古明地こいしのことですよね? いったいなにがあったんです」 「わ、私たちずっと一緒にいて、でもこいしのおかげで私だけ逃げられて。お願い文。こいしを助けて!」 あまり落ち着いてはいないが言いたいことはわかった。 『こいしと行動を共にしていたが、敵に襲われてしまった。 こいしのおかげで自分だけは逃げられたが、このままではこいしが危ない。お願いだからこいしを助けて!』ということだろう。 チルノとはそれなりに親しい仲だ。できれば助けたいという思いは私にもある。 しかしここで私が「こいしちゃんを助けに行きましょう」と言っても、ジョニィさんと露伴は蓮子を見捨てはしないだろう。 必然的に二手に別れることになる。おそらく私とチルノ、ジョニィさんと露伴という形に。 チルノとこいしは私に比べればずっと弱いが、それでも二人がかりで一人逃がすのやっとだった相手と戦うのは危険が大きい。もしもスタンド使いであった場合、歯がたたない可能性もある。 露伴の洗脳の件もあるからこの場で断るわけにはいかない。 だがチルノを助けてやりたいからというだけで、本当にそんな危険を犯していいのか、私の中で躊躇いが生じる。 「よし。それじゃあ猫の隠れ里には僕一人で行こう。文とジョニィは古明地こいしを助けに行ってくれ」 しかしそんな思いは露伴の言葉であっさりとかき消された。私は思わず振り返る。 「いいんですか。露伴さん」 「いいもなにもないさ。僕はできることなら最初から一人で青娥にリベンジしたかったんだ。蓮子がいるから言わなかっただけでね。 あの女、僕を甘く見やがって……。ギャフンと言わせてやりたいんだよ、僕だけの力で。 他に助けなきゃいけない奴がいるんならちょうどいいさ。君達はそっちに言ってくれ」 自信満々に言った言葉は、紛れもない彼の本心だろう。 だがその中に僅かだが優しさや気遣いのようなものが、あるように感じられた。 岸辺露伴は自分勝手でワガママだが情のある人間だ。 ヘブンズ・ドアーで私を始末せず洗脳したのも、単に利用価値があったからだけではない気がする。だから余計に嫌なのだ。 露伴がもっと自己中心的なだけの人間だったら、隙をついて殺すことに何の躊躇もなかったのに…… 「それじゃあ蓮子を助けたら猫の隠れ里で待っていてくれ。僕らも古明地こいしを助けたらすぐに行く」 「ああ。僕は待たされるのは嫌いだから、急いでくれよ」 ジョニィさんはそれだけで露伴との別れを切り上げ、チルノの側にしゃがんだ。 「チルノ、僕はジョニィ。文と一緒に君とこいしを助ける。案内してくれ」 ジョニィにそう言われてチルノが満面の笑みを浮かべる。私はその姿になぜだか強烈な違和感を覚えた。 なんだろうか。助けると言われたのだから、喜ぶのは当然なのに、私にはそれがいつものチルノなら絶対に有り得ないことのように感じた。 だけどそれも一瞬。今は「あたいどう歩いてきたんだっけ」と言いながら地図を取り出そうとあたふたして、ジョニィさんに地図を差し出されている。 その姿は私のよく知るおバカなチルノだ。 さっきのは気のせいだろうと思い、私は露伴に側に寄った。彼のことは好きになれないが、今は素直に感謝を伝えたかった。 「ありがとうございます露伴先生」 「さっきも言っただろ。あくまで自分のためだ。別に礼なんて……」 露伴は興味なさそうにあらぬ方向を見ていたが、突然悪巧みを思いついた子供のような顔をした。 「そうだな。そんなに礼を言いたいなら僕の頼みを聞いてくれ。 この殺し合いの終わったあとに一度幻想郷を取材させて欲しい。 妖怪と人間が一緒に暮らしてるなんて、まさに漫画みたいなはなしだ。是非この目で直接見てみたい」 「しゅ、取材ですか……」 「なんだよ、僕に感謝してるんだろ。だったらこれくらいの頼みは当然聞いてくれるよな?」 さっき目を輝かせたのはこれだったのか。 露伴はまるで頼みを断ったら極悪人だとでも言わんばかりに、こちらを睨んでくる。 ちょっと下手に出たら途端にこれだ。やっぱり露伴はワガママ人間だと改めて認識する。 でも、露伴が幻想郷に来たらきっと騒動を起こすだろう。それは私としても是非見てみたい。 「わかりました。私には露伴先生を幻想郷に連れて行く力はありませんが、それができる方に頼んでみます。 無事これたら私が直々に案内しますので、楽しみにしててください」 「何が案内だよ。君の方も取材がしたいだけだろ。でもそうだな。期待してるよ」 それが実現したならこんな殺し合いに巻きこまれたことにも少しは意味がある。完全に悪いばかりではない。 私は洗脳されていたときを除けばここに来てから始めて、演技ではなく心から笑った。 「文、場所がわかった。D-3の魔法の森だ。急ごう」 そう言ってジョニィとチルノは走りだした。私もすぐにあとをおう。 最後に一度だけ露伴に振り返った。 「露伴さん、死なないでくださいね」 自分の安全を考えるなら露伴には死んでもらった方がいい。でも何故か私はそう言ってしまった。 魔法の森の中は、民家を軽々と凌ぐ木から生い茂る葉で太陽を隠され、ジメジメとしていた。 土は落ち葉に覆われて、歩くたびにガサガサと音がなる。 それは私の知る魔法の森とほとんど同じだったか、瘴気を出す茸を始めとした危険な植物はあらかたなくなっていた。 あくまで参加者同士で殺し合わせたいという主催者の配慮だろうか。悪趣味な話だ。 しかしまだ着かないのだろうか。森に入ってからもうそれなりの時間が立っている。そろそろD-3とD-4の間あたりになるだろう。 烏天狗である私の視力は人間や妖精よりずっといいが、こいし達の姿は一向に見えなかった。 「チルノさん、まだ着かないんですか?」 「まって。確かここら辺のはずなんだけど」 それが本当ならこいし達は(生きているなら)別の場所に移動している可能性が高い。 この広い会場の中で、一度見失った人間を再び見つけ出すの困難だ。私は思わず舌打ちした。 せめて行き先を示すようなものはないかと辺りを見渡すが、手がかりどころか戦いがあった痕跡すら見当たらない。 『ここら辺』というのが、やはりチルノの記憶違いなのだろうか。 そう思い始めたとき、視界の隅に青白いものが映った。 よく見るとそれは氷だった。落ち葉の下に隠れるようにして氷が張られている。私は疑問を感じた。 ここで本当に戦闘があったなら何もおかしくはない。 チルノが張ったものがそのままになっているというだけの話だ。だがそれならもっと多くの氷が残っていてもいいはずだ。 周りにも戦いの余波を受けたような傷は見当たらない。 嫌な予感がする。先程チルノに感じた強烈な違和感が私の中で蘇る。 取り敢えず氷のことを教えようと、私はジョニィさんの方を向いた。 瞬間。 パアンという音が響いた。 私は考えるよりも先に地を蹴り、ジョニィさんに向かって跳んでいた。 両手で抱き抱えて、その勢いのまま移動。一瞬前までジョニィさんがいた空間を銃弾が貫いていき、土が跳ねる。 「なにっ!」 ジョニィさんが驚愕の声をあげた。 チルノがデイパックの中から黒光りする銃を取り出す。 私はもう一度地面を蹴ろうとして――そこにあった氷に足を滑らせた。 しまった。地面の氷は一つだけではなかったのだ。私の肉体はスピードが出ていたことが返って仇となり、勢い良く後ろに倒れる。 チルノが銃口をこちらに向けた。ジョニィさんが爪弾を撃つがあっさりと躱され、奥にある木に当たった。 もうチルノの銃撃を避ける手段はない。私は思わず目をつぶった。 ――突然、身体が捩れた感覚がした。全身の骨が痛みもなくありえない方向に曲がっていく。 目を開ける暇もなく誰かに引っ張られる。全身が浅く切られたかと思うと、背中から何かに打ち付けられた。 この感触は……木の幹? 「あ、あれ」 目を開けると私は相変わらず森の中にいた。しかしさっきとは位置が違う。チルノから二十メートル程離れた木の裏にいた。 何が何だかわからず、私は横に座るジョニィさんを見る。 「ジョニィさん、これはどういう、ジョニィさんがやったんですか?」 「僕の『穴』のことは文も知ってるだろ。あれを使ってさっき撃った木の裏まで移動したんだ」 「『穴』ですか? でもあれはヴァニラの暗黒空間と同じで、ジョニィさん以外の人は入れないはずじゃ……」 「僕に『穴』に僕以外の人間が入れないのは、回転の力で破壊されるからだ。 逆に言えば『穴』と同じ回転を加えて、引っ張り込めば問題ないと思ったんだが…… すまない。無傷というわけにはいかなかった」 言われてみれば、身体と服のあちこちに無数の切り傷がある。 一つ一つは小さいので気にするほどではないが、なるほどさっきの浅く切られた感覚は『穴』に入ったからなのか。 「これくらい平気ですよ。ジョニィさんが『穴』に引っ張ってくれなかったら殺されるところだったんですから」 「だが文が『穴』に入れるかどうかは賭けだった。理論はあっても実際にやるのは初めてだったからな。 今回は上手くいったが、次もそのくらいの傷ですむとは限らない。もうやらない方がいいだろう」 そう言いながらジョニィさんは木の横から顔を出して、チルノの方を見た。私も反対側から同じように見る。 「ところであれは一体どいうことなんだ? 君はチルノは殺し合いに乗るような奴じゃあないと言っていたが、とてもそうは見えないぞ」 ジョニィさんの言う通り、こちらを探すチルノの目には獲物を狙う野獣のような鋭さがある。 いつものチルノとはかけ離れた姿。それを見て私の中にある推測が浮かぶ。一度ヘブンズ・ドアーを受けた私だからこそ思いついた推測が。 「もしかした操られているのかもしれません」 「文、そう思いたい気持ちはわかるが……」 「殺そうとしてきたから言ってるわけではありません。なんというか、あまりにも違うんですよ。いつものチルノさんと。 私の知るチルノさんなら、たとえ殺し合いに乗ったとしても、あんなふうにはならないと思うんです」 「君の知るチルノというのが全て演技だったということは?」 「チルノさんにそんな頭はありません」 ジョニィは顎に手を当てて何か考え始めた。私も今の状況を整理する。 敵はチルノともう一人、上から狙撃からしてきた奴。 まったく気配を感じなかったことを考えると、かなり遠くから撃たれたということだろう。相手は銃の扱いになれた人物だ。 ここまでの経緯を考えると、チルノは洗脳の影響かかなり頭が良くなっている。力も強くなっているかもしれない。 地面の氷が二つだけとは思えない。おそらく他にも罠がある。 チルノの洗脳を解く方法も不明。彼女には悪いがここはジョニィさんを抱えて飛び、逃げるのが得策。 私はそう提案しようとして、それよりも先にジョニィさんが口を開いた。 「文、チルノを助けよう」 一瞬、ジョニィさんが何を言ったのかわからなかった。 「僕のタスクは殺さずに相手を止めるにはちょうどいい。ここで洗脳を解くのが無理だとしても、気絶させて露伴のところまで連れ行けばなんとかなるだろう」 「ちょ、ちょっと待ってください!」 私は思わず立ち上がり、ジョニィさんを見下ろして言った。 「無茶ですジョニィさん! 私達はいま罠に嵌められているんですよ! 向こうはこっちを殺す気満々ですし、倒すのも難しいのに助けるなんて…… 私だってチルノさんの放って置きたくはありませんが、もう一人、狙撃してきた奴だっているんです! 危険です。考えが甘すぎます!」 「文、君の言い分はもっともだ。 僕だってお人好しじゃあない。相手が自分の意思で襲ってくるんだったら、そこにどんな事情があろうと情けなんて掛けない。たとえ家族や友人が人質に取られているんだとしてもな。 でも……」 ジョニィさんは立ち上がり、私の目を真っ直ぐ見つめる。 「君の言うとおり彼女は操られているだけだとしたら、自分の意思なんてなくて、誰かに道具のように使われているだけだとしたら。 僕は助けたい。再び彼女に自分の意思で歩かせてやりたい。 それは僕だけの力じゃあたぶん無理だ。君の力を貸して欲しい」 その瞳の奥には前にも一度見た『黄金の輝き』があった。私は思わず目を逸らす。 ジョニィさんは勘違いをしている。ヴァニラとの戦いに私が割って入ったのを、私自身の意思だと思っている。だからそんな風に屈託もなく頼ってくるのだ。 違う。私はそんな善人じゃない。自分の身の安全ばかり考えて、そのためなら他人を見捨てるどうしようもない女だ。だけど…… 逸らした目をもう一度合わせる。この『輝き』を見ていると私にも少しだけ勇気が湧いてくるような気がする。 もしここでジョニィと一緒にチルノを助け出すことができれば、私にも宿るだろうか。『黄金の輝き』が。 私にはジョニィさんのような誰かのために戦える勇気もなければ、主催者に立ち向かう強い『意思』もない。それでも、できることなら皆で一緒に帰りたいという『思い』はある。 ならばその思いに殉じてみるのもいいかもしれない。ジョニィの中に見えた勇気と希望を信じて。 「それで具体的にはどうします? 相手は私のよりもずっと強そうな銃を持ってるチルノさんに、姿を見せない狙撃手。 戦場は相手の案内で連れて来られた場所で、おそらく罠だらけです。何か策はありますか?」 戦うとは決めたが、無策でどうにかなる相手ではない。 私達はチルノの様子を伺いながら、話し合う。 「あいにく策と呼べるようなものは、なにもないな。取り敢えず最優先なのは狙撃手の発見だと思う。 もしかしたらそいつがチルノを操っているのかもしれないし、そうじゃなくても何か知っているかもしれない」 「それでしたら私にお任せください。 私の風を操る能力は風を起こすだけでなく、風の声を聞いたり風の噂を掴んだりすることもできます。 風を私の元へ来るように吹かして、その中に狙撃手を入れれば大丈夫です」 「よくわからないが、とにかく見つけられるんだな。それじゃあ……」 私達は同時に横に跳んだ。直後に巨大なツララが木の幹を貫く。 「見つけた!」 チルノが叫けんだ、ジョニィさんに狙いを定めた銃口から、連続で弾が吐き出される。 私は翼をはためかせて飛び、再びジョニィさんを抱きかかえた。 低空飛行して周囲の木を盾にしながら銃撃を凌ぐ、同時に風を操作。全方位から自分に向かって風が吹くよう調整する。思ったよりも風を操れる範囲が狭い。主催者の制限か。 右上後方から発砲音。狙撃手だ。身体を左に傾けて回避。 距離が遠くまだ気配は感じられない。二度の銃撃がどちらも上からだったところを見ると、おそらく木の上。生い茂る葉の中に身を隠している。 「ジョニィさん、お一人でも狙撃を避けられますか?」 「いや。無理だな」 「ですよね」 ジョニィさんを抱えたまま、私は高度を上げずに発砲音がした方角に向かう。 これでチルノが走ってくれれば爪弾の『穴』を簡単に当てられたのだが、生憎向こうも翅で飛んで追ってきた。 後ろから迫る銃弾を風で補足。上下に動いて躱す。ジョニィさんが反撃に三発。爪弾がチルノに迫る。 しかしチルノは前進を続けたまま右手を前に出した。身体の前に手鞠ほどの大きさの氷の塊を無数に生み出される。氷は爪弾を全て防ぎ、そのまま扇状に飛んで攻撃してきた。 私は上に飛んで避けようとして――気配を感じた。狙撃手が真上にいる。 「ジョニィさん! 氷はお願いします!」 咄嗟に頼んで私は前方に加速。銃弾が私の後方に降り注ぐ。 ジョニィさんは上後方に爪弾を連射。木の枝を落として氷を押しつぶす。 同時に銃撃が止んだ。チャンス。私はこの瞬間を狙って狙撃手の元へ飛ぼうとした。そのときだった。 確かに感じたはずの狙撃手の気配が消失した。 えっ、と思ったのも一瞬。少し離れた位置に再び気配が出現。チルノが氷を扇状に放つと同時に発砲した。 今は頭上を塞がれていない。私は今度こそ上に避けようした。 「文、罠だ! 上を見ろ!」 「え?」 真上に人の胴体ほどの太さを持つ木の枝。氷で幹をくっつけられているのが見える。 その氷が突如消失。木の枝が私に向かって落ちてくる。このままでは衝突する。かといって枝を避けようと減速すれば氷と狙撃の餌食だ。 私は速度を保ったまま、身体を半回転。足を上にやりにチルノ目掛けて枝を蹴り飛ばす。 チルノは両腕でガードしたが、衝撃を抑えきれずに後ろに吹っ飛んでいった。 氷と銃弾が目の前を掠める。 体制を立て直し、狙撃手の位置を指さす。すぐにジョニィさんが爪弾を撃つが、またも狙撃手の気配は消えた。 私は手近な葉の束に突っ込み、身を隠す。 下にいるチルノを見る。木の枝に視界を一瞬覆われたからだろう。チルノは私達を見失っていた。 狙撃手の気配もない。私は枝の上に立ち、ホッと一息ついた。 「文、狙撃手が今どこにいるかわかるか?」 ジョニィさんが辺りに目を走らせながら言った。 チルノの視界から逃れた今、本来なら狙撃手を攻める絶好の機会だ。だが、 「それがだめなんです。何度か気配を感じられてはいるんですが、またすぐに消えてしまって」 「気配が消える? どういうことだ」 「おそらく古明地こいしです。彼女は自分の気配を消す力を持っています。 主催者の制限のおかげなのか、攻撃の瞬間だけは何とか感じられるんですが……」 うかつだった。チルノが名前を出していたというのに。 もっと早く狙撃手がこいしだと気づくべきだった。 「居場所がわかるのは攻撃の瞬間だけ。 それだけの時間じゃあ君のスピードでも足りないか?」 「さすがにジョニィさんを抱えた状態で、銃弾をかわしながら突っ込むのは無理ですね。チルノさんも妨害してくるでしょうし」 「まってくれ。その言い方だと僕を抱えていなくて、チルノの妨害がなければ何とかなるように聞こえるが?」 「はい。約束はできませんが、それなら大丈夫だと思います」 「……それじゃあこういうのはどうだ」 ジョニィの作戦を聞いて、私は驚くというよりも呆れてしまった。よくもまあそんな無茶苦茶な作戦が思いつくものだ。 「大丈夫なんですか? 何だかただ相手の意表をついてるだけのような気もしますが」 「だがこれなら僕を抱えなくて済むし、チルノの妨害も防げる。上手くいけばいっきに二人共止められる。君が平気ならやってみる価値はあると思う」 「……そうですね。他にいい案があるわけでもありませんし、やってみましょう」 私は深呼吸して心を落ち着かせる。 チルノの位置を確認。こちらに背中を見せた瞬間に飛び出す。 葉の揺れる音でチルノが気付き、振り返った。 ジョニィさんが爪弾を撃つ。チルノは無数の氷で防御。放たれる氷を避けながら、私はチルノの頭上を位置取る。 右から発砲音。身体をそらして回避。狙撃手はまだ気配が感じられる範囲には入っていない。 ジョニィさんが爪弾を撃ち続けるが、チルノは新しい氷を作り防御しながら、先に出した氷を射出。 右からの銃撃と下からの氷が同時に襲ってくる。 私は空中であることを生かして縦横無尽に動き、どうしても避けられない氷は蹴り壊す。 そうしてチルノの上で耐え続ける内に、狙撃手の気配を感じた。 狙い通りだ。こちらが躱し続ければ狙撃手は弾を当てるために近づかざるを得ない。 瞬間。私は両腕を離す。ジョニィさんの身体がチルノ目掛けて真っ直ぐ落ちていく。 私は気配に向かって突っ込んだ。銃声が鳴り、正面から弾が飛んでくる。それでも私は直進を止めない。 銃弾が胸に当たる直前、全神経を胸筋に注ぐ。銃弾は私の胸に突き刺さり――止まった。 私は幻想郷の中でも最高クラスの力を持つ天狗の中でも、最強の一画だと自負している。 来るのがわかっているなら、銃弾の一つくらい止められない道理はない。 幹を覆い隠すほど鬱蒼と茂った葉の中を突っ切り、銃を構えて驚愕を浮かべる古明地こいしの姿を捉えた。 私は思い切り振りかぶった拳を顔面にぶち込み、その勢いのままこいしの頭を木の幹に叩きつける。 その一撃でこいしの意識を奪った。事情がわからない以上、まだ殺すわけにはいかない。 胸に刺さった銃弾を抜き取り、ジョニィさん達の元へ向かう。 風が行く先の様子を伝えてくる。 ジョニィは落下しながら、驚きのあまり一瞬動きが止まったチルノに爪弾を連射。 チルノがハッとして氷を形成するとほとんどの爪弾は防がれるが、何発かが地面に当たった。 チルノが何か叫び氷を発射。ジョニィは自分に爪弾を撃った。 ジョニィの身体が『穴』に呑まれ、氷を空を切っていく。 ここまでは作戦通りだ。このままジョニィが、先程わざと地面に開けた『穴』から出ればチルノとの間合いはほぼ零。 氷で防がれる暇も与えず、爪弾を当てられる。私は自分達の勝利を確信する。 だがそのとき、チルノが氷である物を作った。 普通この状況では作ることはありえないそれは、私の脳裏にある考えを浮かばせた。 「ジョニィさん、だめ!」 私は速度を上げながら叫んだ。しかしその言葉が届くことはなかった。 『穴』から出てきたジョニィさんにチルノは氷の剣を突き出した。『穴』から出ることがわかっていたとしか思えないタイミングだった。 剣はジョニィさんの喉に深々と突き刺さる。チルノはそのまま剣に体重を掛けてジョニィさんの身体を縦に切り裂いた。 「ジョニィさん!」 私が悲鳴のような声を上げてジョニィさんに側にしゃがみこんだ。 ジョニィさんは首から下を縦に裂かれて斃れている。疑問を挟む余地はなかった。どう考えても生きているはずがない。 ジョニィ・ジョースターは……、私が希望を感じた人は……、あまりにも呆気なくその生を終わらせていた。 「どうして……」 私は震える声を出しながらチルノを見る。 絞り出した声は思いのほか冷静だった。 「どうして、ジョニィさんの能力がわかったの……」 「へえ。あれだけで私がジョニィの知ってるってわかったんだ。さすがね」 その言葉にはいつものチルノから感じる、子供らしい愛嬌はなかった。 あるのは問題を説いた教え子を褒めるときのような、上にいるという絶対的余裕。 これが今のチルノの本性。私の身体に寒気が走った。 「いいわ、教えてあげる。どうせもう死ぬことになるんだから、冥土の土産よ。 答えは簡単。私は事前に聞いていたのよ。ジョニィの能力、それからあなた達が向かった方角も。 ヴァニラ・アイスからね」 「ヴァニラ……アイス……」 ジョニィさんがやっとのことで追い払ったあの男。 奴がチルノに情報を与えて、ジョニィさんを殺させた。 じゃああの戦いは何だったの? ジョニィさんが他の参加者達のためにヴァニラを殺すといったとき、私は彼は勇気に憧れた。その気高い精神に希望を抱いた。 だが結局ヴァニラには逃げられ、しかもそのときの情報が原因でジョニィさんは死んだ。 何よそれ。 それじゃあやっぱり私の言った通り逃げるのが正しくて、ジョニィさんの行動は間違っていたってこと? いや違う。そうじゃない。あのときのジョニィさんの行動は敬意を表すべき、正しいことだった。 間違っていたのは人ではなく場所だ。 そうだ。最初からわかっていたことじゃないか。 ここでは正しさも、気高さも、誇りも、意思も、思いも何の意味もない。 だからこそ私は殺し合いに乗ろうとしたんじゃないか。 必要なのは生き残るための『力』と『悪意』だけ。ここはそういう場所だ。 口から自然に笑いが零れる。今まで悩んで来て、辿り着いた答えが結局これか。 ただ振り出しに戻るのに随分と時間がかかってしまった。 私は呆気に取られるチルノを殺意を込めた瞳で睨んだ。チルノが一瞬たじろぐが、すぐに睨み返してきた。 やはり私はジョニィさんとは別種の存在なのだと悟る。だって誰かのために戦うときはあんなに怖かったのに、自分のために戦う今はこんなにも楽だ。 チルノは両手で銃を構えている。表情からは自身と余裕が見て取れた。 ヴァニラから私のことも聞いているのだから、何らかの作戦が練られている可能性が高い。 だが負ける気はしない。あの支給品を使えば、事チルノ相手なら絶対に負けはない。 私はそれを取り出すべく右手を後ろにやった。 瞬間、私の両足が凍りついた。 「っ!」 「かかったわね。私が何の理由もなく話を始めたと思った? 地面を通ってあんたの真下まで氷を伸ばしていたのよ!」 チルノの指が引き金に掛かる。私は咄嗟にデイパックに伸ばしていた右手で腰裏の拳銃を抜き、チルノよりも速く引き金を引いた。 吐出された銃弾がチルノの額に向かう。情報外の攻撃に氷を出す暇もなかったのか、チルノは銃の側面で受けた。 チルノの銃が衝撃に歪む。おそらくもう弾は撃てない。 氷を出す暇を与えず続けて連射。動きが止まっている内に、左手でデイパックの中からあの支給品を取り出す。 同時にカチリと音がなった。弾切れだ。その隙をついてチルノが壊れた銃を投げてくる。 私は左手で弾こうとして――銃に赤い模様の描かれた紙が貼ってあるのを見た。 「霊撃札!」 気づいたときには遅かった。霊撃札の衝撃で紙が吹き飛び、チルノの手元へ流れていった。 チルノはそれを握りしめ、勝ち誇ったような笑みを見せた。 「残念だったわね、文。何を出すつもりだったか知らないけど……」 スパン、と。 チルノの持つ紙が真っ二つに切れた。 私の風は物を飛ばす程度のものではない。研ぎ澄ませれば鋭い刃にもなる。 紙を切り裂く程度の威力なら少し離れたところにも一瞬で出せる。 チルノは紙の見て、私を見る。怪訝そうな顔で口を開こうとして――全身を炎に包まれた。 「あああああああああああああああ!」 チルノが悲鳴を上げて倒れる。氷の妖精にとって炎で焼かれるのは相当の苦痛だろう。霊撃札を使ったあとなら、なおさらだ。 「手を離れたからって偶然あなたの方に飛ぶわけないでしょう。わざと掴ませたのよ」 聞こえた様子もなくチルノはのたうち回る。力を振り絞って身体中から冷気を出していた。チルノの氷は炎すらも凍らせる力がある。 私は風を吹かして炎を煽る。チルノは諦めず冷気を出し続けるが、私はその度に風を吹かせる。 繰り返す内に炎が森に引火した。私が何もしなくても木や落ち葉を燃やして勢いを増していく。 本当ならこの支給品――紙に入った炎を使えばチルノには簡単に勝てたのだ。ただチルノの命と、森が燃えることを考えて躊躇っていた。 その結果ジョニィさんが死に、炎も使ってしまうのだから救いようのない話だ。 足の氷が溶け始める。 もう私が消そうとしても炎は消えないだろう。 足掻く体力すらなくなったのか、チルノが力なく横たわる。助けを求めるように弱々しく手を伸ばした。 私は拳銃に弾を込め、チルノに向ける。 せめて苦しみを早く終わらせてやろうと思ったが、途中でやめた。 私はこれからも誰かを殺していく。中途半端な情けを持つべきじゃない。 徐々に身体が焼けていくチルノを見ながら、ふとチルノが死について悩んでいたことがあったのを思い出した。 あのとき私はなんと言ったんだったか。考えても思い出せそうにない。 ただ、自分がチルノを殺すことになるとは、思ってもいなかっただろう。 GDS刑務所刑務所の病室。ヴァニラは窓の外を眺めながら、ここに来た二人のことを考えていた。 チルノとこいし。この会場でDIOと出会い忠誠を誓ったという二人。 あの二人はジョニィ・ジョースター達を殺せたのだろうか。 二人とも妖怪だというが、見た目は妙な翅や触手がある以外はただの子供だ。あまり期待はしない方がいいだろう。 どちらにせよヴァニラにチルノ達のあとを追うつもりはない。 実に不愉快だが自分のスタンドとジョニィのスタンドは相性が悪い。 ジョニィの始末は他の参加者に任せるのが安全だ。 (私はDIO様にために生き延びねばならないからな) ヴァニラは当初、DIO以外の参加者を皆殺しにしたあと、自害することでDIOを優勝させるつもりでいた。 だがチルノ達から言っていた話が本当ならば、それはDIOの望むところではない。 天国へ行くための仲間を集めているというDIO。そしてDIOの対等の友人、プッチ神父。 この世にDIOと対等の存在がいるとは、ヴァニラには到底思えないし、天国とやらも何のことだかわからない。 それでもヴァニラはただDIOが望む事を為すだけだ。 ヴァニラは一度DIOにあってお伺いを立てた方がいいかと考える。 地図を広げてDIOが居そうな場所を探す。 チルノが会ったのがD-4の湿地帯近くだと言っていた。おそらくそこから然程遠くない日光を凌げる建物の中にいるだろう。 (とすると、ここから一番近いのはジョースター邸か) 忌々しいジョースターの名を冠する邸。 ここならDIOが居なかったとしても、ジョースターの者がその名に釣られて集まってくるかもしれない。 皆殺しはやめるとしても、ジョースターまで生かしておく理由はない。 ヴァニラはベッドから起き上がり、身体の具合を確かめる。 多少、痛みはあるが戦うのに問題はない。あの奇妙な右腕の力なのか傷の治りは異様に早かった。 ヴァニラはジョースター邸を目指し病室をあとにした。 「チルノちゃん、本当にジョニィって人を殺しにいくの」 「当たり前じゃない。何言ってるのよ」 「でもやっぱりおかしいよ。DIOに言われたからってそんな簡単に人を殺すなんて」 「こいし、あんたまさかDIO様に逆らおうっていうの」 「そ、そういうわけじゃなくて、私達だけで判断するのはやめた方がいいってこと。 そうだ、とりあえず神父様を探そうよ。神父様には何か別の意見があるかもしれないし」」 「はあ。こいし。あんたはもともとプッチさんに言われてジョセフと戦ったんでしょ。意見なんてわかりきってるじゃない」 「そ、それは……」 「殺しをためらう気持ちは私にもわからなくはないけど、後回しにするのはやめなさい。 どうせいずれは殺さなきゃいけない相手よ。DIO様に逆らう気がないならね」 「うん……」 「話は終わりね。それじゃあ私の背中におぶさりなさい。二人で走るより、それで氷の上を滑った方が速いわ」 こいしが言われた通りにすると、チルノは靴の裏に薄い刃のようなものを氷で作り、滑りだした。 でも本当にこれでいいんだろうか。こいしは自問する。 勢いに任せて戦ってはしまったが、こいしにはあのジョセフという人間が悪人とはどうしても思えなかった。 正しいのはジョースターの人たちで、間違っているのはDIOやチルノの方ではないだろうか。そんな考えが頭を過る。 だがどちらにせよ、今のこいしにチルノに逆らって自分の考えを押し通す勇気はなかった。 こいしが目を覚ますと、そこは葉っぱで覆い尽くされた木の枝の上だった。 「ここは……私、何をして……」 頭が酷く痛んで、記憶がはっきりしない。 視線を滑らし、自分の手の中にある銃を見てやっと思い出した。 「そうだ! 私、チルノちゃんと一緒にジョニィ達と戦って!」 眼前に迫ってきた射命丸文の姿を思い出す。あのときに気絶させられたのだろうか。 慌てて地上に目を向けて、事態が一変していることに気づいた。 「チルノちゃん!」 チルノは全身を炎に包まれ苦しそうにしていた。 炎は物凄い速度で勢いを増している。側に立っている文が何かしているに違いない。 助けないと。 そう思いこいしは銃口を文に向ける。 しかし後ひと押しで銃弾が発射されるというところで、引き金に掛けた指が止まった。 ――本当にチルノを助けるべきなんだろうか? 戦いを仕掛けたのはこちらの方だ。チルノが返り討ちにあって死んだとしても、それは自業自得ではないのか? 銃を撃ったとしてもどうせまた躱される。今更何をやったって助けるのは不可能だ。 何よりも、こいしは文に恐怖を感じていた。 その瞳には先程はなかった、冷たく黒い輝きがある もう一度戦ったら気絶ではすまない。きっと抵抗する間もなく殺される。 だったらこのまま逃げた方が―― 「だめ! 何考えてるの!」 こいしは自分の中に浮かんだ考えを首を振って否定する。 チルノは友達だ。例え間違っているとしても、助ける手段がなくても、見捨てていいはずがない。 だけど身体が動かない。あとほんのちょっと動かせば弾が出るのに、竦んでしまっている。 「お願い。動いて。速く」 炎はどんどん強くなっている。速くしないとチルノを助けられなくなる。 幻想郷でチルノと過ごした記憶が蘇る。特別仲のいい親友というわけではなかったが、一緒に遊ぶといつも楽しかった。 このままだとそれが二度とできなくなる。そんなのは嫌だ。 「速く。速く。速く!」 こいしがどんなに願っても、指はただ無様に震えを繰り返すばかりだった。 「速く動いてよ私の身体!」 叫んだ瞬間こいしは、ハッ、した。 「嘘……なにこれ……」 こいしはゆっくりと首を動かし、周りの景色を見る。 赤く燃える森と、それを遮るように流れる澄んだ川。森の中に比べれば視界の開けた林の先に、半分朽ちかけている洋館がある。 そこは魔法の森の外だった。 「まさか、私、無意識に逃げて……」 足の力が抜ける。呆然と地べたにへたり込んだ。 能力に所為にはできなかった。あのとき自分は確かに逃げたいと思っていた だからこれは無意識であっても自分の意思。 こいしはその事実に絶望して頭が真っ白になった。 黙っていると心が押しつぶされそうな気がして、こいしは叫んだ。 涙と鼻水を垂らしながら声が枯れるまで叫び続けた。 私は森の南側から外に出た。まだこっちの方までは炎も来ていない。 だがそれも時間の問題だろう。誰かが止めない限り炎は広がっていく。その結果、大勢の参加者が焼け死ぬかもしれない。 私はそれを想像して胃からせり上がってくるものを感じたが、何とか抑えつけた。 喉に水を流しこみながら、これからの事を考える。 殺し合いに乗るといっても、自分の力だけで最後の一人になるのは土台無理がある。 一先ず頼りになりそうな、殺し合いに反対するの者と行動を共にすべきだ。 DIOには近づかない方がいいだろう。ヴァニラから情報を得ていたことから判断するに、チルノを洗脳したのはDIOだ。 いつの間にか居なくなっていた古明地こいしは、できれば始末したい。私が森を燃やし、チルノを殺した事を広められるかもしれない。 チルノの殺害は正当防衛で言い訳できるが、森の放火は絶対にバレるわけにはいかない。 そのとき身体の中で何かが動いた気がした。 まただ。支給品を取るため、ジョニィさんの死体に近づいてから何度か同じことが起きている。 原因はわからないが、なぜだか悪いものではないという確信があった。それどころか力を与えてくれるような感覚すらある。 正体は気になるがジョニィさんのデイパックにそれらしき説明書はなく、確かめようがなかった。 私は諦めて地図を開く。目的地を定めて、そこに向かって歩き出した。 最後に一度だけ魔法の森を振り返る。 私はこれからジョニィさんや露伴の思いを裏切り、正義のない狡猾な道を行く。そこに躊躇いはない。 でも一つだけ、露伴に幻想郷を案内してやれなくなったことだけは少し残念に思った。 【ジョニィ・ジョースター@第7部 スティールボールラン】死亡 【チルノ@東方紅魔郷】死亡 【残り69/90】 【D-2 猫の隠れ里前/朝】 【岸部露伴@第4部 ダイヤモンドは砕けない】 [状態]:疲労(小)、体力消耗(小)、背中に唾液での溶解痕あり [装備]:マジックポーション×2 [道具]:基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:情報を集めての主催者の打倒 1:霍青娥を倒し蓮子を救出。その後ジョニィと文を待つ。 2:ついでにマンガの取材。 3:射命丸に奇妙な共感 [備考] ※参戦時期は吉良吉影を一度取り逃がした後です。 ※ヘブンズ・ドアーは相手を本にしている時の持続力が低下し、命令の書き込みにより多くのスタンドパワーを使用するようになっています。 ※文、ジョニィから呼び出された場所と時代、および参加者の情報を得ています。 ※支給品(現実)の有無は後にお任せします。 ※射命丸文の洗脳が解けている事にはまだ気付いていません。しかしいつ違和感を覚えてもおかしくない状況ではあります。 ※参加者は幻想郷の者とジョースター家に縁のある者で構成されていると考えています。 【C-2 GDS刑務所/朝】 【ヴァニラ・アイス@第3部 スターダストクルセイダース】 [状態]:疲労(小)、体力消耗(小)、左腕切断、右腕損傷(今は完治)、全身に切り傷と衛星の貫通痕(ほぼ完治) [装備]:聖人の遺体・右腕@ジョジョ第7部(ヴァニラの右腕と同化しております) [道具]:不明支給品(本人確認済み)、基本支給品 [思考・状況] 基本行動方針:DIO様のために行動する 1:ジョースター邸に向かう 2:DIO様にあってお伺いをたてる 3:地下にあるものとプッチを探す 4:ジョースターを始め、DIO様の害になるものは全て抹殺する 5:それ以外の参加者は会ってから考える [備考] ※参戦時期はジョジョ26巻、DIOに報告する直前です。なので肉体はまだ人間です。 ※ランダム支給品は本人確認済みです。 ※聖人の遺体の右腕がヴァニラ・アイスの右腕と同化中です。残りの脊髄、胴体はジョニィに渡りました。 ※チルノ達からDIOの方針とプッチのことを聞きました ※ほとんどチルノが話していたため、こいしについては間違った認識をしているかもしれません 【D-3 林/朝】 【古明地こいし@東方地霊殿】 [状態]:肉体疲労(大)、精神疲労(特大)、今は何も考えられない [装備]:三八式騎兵銃(1/5)@現実、ナランチャのナイフ@ジョジョ第5部(懐に隠し持っている) [道具]:基本支給品、予備弾薬×7 [思考・状況] 基本行動方針:………… 1:………… [備考] ※参戦時期は神霊廟以降、命蓮寺の在家信者となった後です。 ※ヴァニラからジョニィの能力、支給品のことを聞きました ※無意識を操る程度の能力は制限され弱体化しています。 気配を消すことは出来ますが、相手との距離が近付けば近付くほど勘付かれやすくなります。 また、あくまで「気配を消す」のみです。こいしの姿を視認することは可能です。 【D-4 魔法の森近く/朝】 【射命丸文@東方風神録】 [状態]:疲労(中)、体力消耗(中)、霊力消費(小、胸に銃痕(浅い)、服と前進に浅い切り傷、露伴による洗脳は現在解除されている [装備]:拳銃(6/6、聖人の遺体・脊髄、胴体@ジョジョ第7部(体内に入り込んでいます) [道具]:不明支給品(0~1)、基本支給品×3、予備弾6発、壊れゆく鉄球(レッキングボール)@ジョジョ第7部、 [思考・状況] 基本行動方針:どんな手を使っても殺し合いに勝ち、生き残る 1:力のある殺し合いに反対するものと行動を共にする。積極的には殺さない 2:古明地こいしは始末したい 3:DIOは要警戒 4:露伴にはもう会いたくない 5:体内の動き(聖人の遺体)については保留 6:ここに希望はない [備考] ※参戦時期は東方神霊廟以降です。 ※文、ジョニィから呼び出された場所と時代、および参加者の情報を得ています。 ※参加者は幻想郷の者とジョースター家に縁のある者で構成されていると考えています。 ※どこに向かったかは次の人にお任せします。 ※D-3の魔法の森で火災が発生しました。放って置くと広がっていきます 炎@現実 文に支給。 エニグマの紙には物体だけでなく、火や電気といったものも入れられる。 ただし一度出したらエニグマのスタンドを持っていない限り、元の紙に入れることはできない。 解説が書かれた説明書が最初は紙に結びつけてあった。 096:カーニバルの主題による人形のためのいびつな幻想曲 投下順 098:深淵なる悲哀 096:カーニバルの主題による人形のためのいびつな幻想曲 時系列順 098:深淵なる悲哀 058:Stand up~『立ち上がる者』~ ジョニィ・ジョースター 死亡 058:Stand up~『立ち上がる者』~ 射命丸文 104:カゴノトリ ~寵鳥耽々~ 058:Stand up~『立ち上がる者』~ 岸部露伴 110:ダブルスポイラー~ジョジョ×東方ロワイヤル 058:Stand up~『立ち上がる者』~ ヴァニラ・アイス 148:相剋『インペリシャブルソリチュード』 072:Trickster ーゲームの達人ー 古明地こいし 103:ワムウとこいしのDOKIDOKI添い寝物語 072:Trickster ーゲームの達人ー チルノ 死亡