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ホド男の扱いが「灰身滅智」以上に酷いのと、赤毛の存在そのものが酷いのに耐えられる方だけどうぞ。 性描写はありませんが、発禁ワードもどきを某オリジナルが連呼しているので注意。 それは長期ロケ、「灰身滅智」収録後の、スタッフ達の朝の食事風景での出来事だった。 Guess what’s in the sheets 「今日もいい天気ですねー、イオンさまー」 「そうですね、アニス。あ、シンク、スミマセンがそこの醤油差しを取って貰えますか?」 話を振られて、一応はイオンの方へ顔を向けやるが、結局自分と同じ顔に阿呆面が張り付いているのを見ていられなくて、僕はため息一つ吐くフリをしながら、顔を逸らした。勿論、醤油差しを取ってやる気なんぞさらっさら無い。 「シンク…あの、醤油差し…」 「塩分取りすぎて、成人病にでもなったらどうするわけ?」 しつこく醤油を要求するイオンに、今度は一瞥すらくれてやることもせず言い放った。やれやれ、と言った様子でウ゛ァンの主人兼手癖の悪い男兼ガガガな男、もといガイラルディア・ガラン・ガルディオス(21歳、女性恐怖症である為恐らく童貞)が醤油差しをイオンにくれてやった。チッ、余計なことを。 「あ、ありがとうございます。ですが、矢張りシンクの言うとおりにしようと思います。折角取って下さったのに、スミマセン、ガイ」 あー…まぁた何か勘違いしてんじゃないか、このお気楽導師は。んで、止せばいいのに顔なんか上げちゃうから、視線が合っちゃうわけだ。 「心配して下さってありがとうございます。シンクは優しいんですね」 笑顔でサラリと言われた。鳥肌がたった。 「え~…イオン様、考えすぎですよぉ~う。今のは絶対嫌味ですってー」 よくぞ言った導師護衛役。全く以てその通りだ。 「そうでしょうか?シンクはあれでいて、とても優しい人だと思いますよ」 「え~え!きっとその通りでしょう。証拠に、あの仮面は照れ隠しの意味合いが含まれているのです」 「クソ眼鏡が余計なこと言ってんじゃないよ!」 ガイラルディア・ガラン・ガルディオスから哀れみを込めた視線を投げ掛けられる。や、やめろ…やめてくれ!童貞(偏見)風情が、僕をそんな目で見るんじゃない!! 「ふむふむ、成る程ねー。アニスちゃん、解っちゃった。つまり、シンクってばテレテレシャイシャイのツンデレボーイなんだねー」 「まあ!シンクはツンデレボーイでしたの!?ツンデレというのは、つまりジェイドと同じ、ということなのですわね?」 「おやー、そこで私に来ましたか」 話が…話が妙な方向に…………って、 「人が黙って聞いてれば好き放題玩具にしてくれるじゃあないか!」 「ほほぉーう。自分で自分が玩具にされている自覚がありましたか」 ぷっつーん。 「ー~~~……ッッッアカシックー…」 「シンク、食事中に暴れるな」 ゴスッ そう言ってリグレットは僕に裏拳を決めると、また何事もなかったかのように優雅に味噌汁を啜り始めた。渋々着席すると、アリエッタと目が合った。 「……シンク……お行儀、悪い……」 ……何故だろう、リグレットの裏拳に因る顎のダメージをも、一瞬忘れる痛恨の一撃を食らった気がするのは。え、って言うか…何で僕、こんなショック受けてるのさ。 「シ、シンク…俺の卵焼き、やろうか」 ラルゴ、慰め方が微妙だよ。でも卵焼きは貰う。うん、美味しい。 「ハーハッハッハッハッハッ、アリエッタの言動と卵焼き一つに一喜一憂するなんて、シンクもまだまだお子様ですね!」 こ、この偏執狂が言わせておけば…!あー…でも、ここでまた秘奥義発動なんかしようものなら、またリグレットの裏拳(いや、今度は銃を持ち出してくるかも知れないけど)と、アリエッタの軽蔑しきった視線が…。 僕が躊躇していると、結局あの嫌味眼鏡が唾を飛ばしながら高笑いするディストを黙らせた。これでやっと落ち着いて食事が出来るー…そう思った僕が甘かった。 「そういえば…あの二人は朝食は宜しいのかしら?」 「ナ、ナタリア!」 天然ボケ王女のとんでも発言に、童貞(推測)が悲鳴とも非難とも言えない声で彼女の名を呼んだ。だが、思わず声を荒げる、その気持ちが僕には嫌と言うほどよく解かった。いや、僕だけじゃあない。天然ナッちゃんの発言に、僕だけでなく周りの空気が凍りついた。いつでも冷静沈着なリグレットと、その事態の深刻さをイマイチ飲み込めていないアリエッタだけが、相変わらず淡々と食事を続けている。 そして、その男は行動を起こした。勢い良く、まるで叩きつけるかのような強さで机に手を付くとその男―…ヴァンデスデルカ・ムスト・フェンデ(微妙に変態チックな趣味で部下を編成する27歳に見えない27歳)が立ち上がる。さっきから黙りっぱなしで、しかもホド男とは思えないオーラのなさだけど、まあ、うん、きっと……いいことあるよ。 「に、兄さん!」 ヴァンの妹が縋るようにして腕を掴むが、そのんなのはものともしないで、ヴァンはある一つの扉へと突き進んで行った。ヴァンの妹だけでは事態の収拾がつかない、と判断した童貞(多分)が立ち上がり、後ろから羽交い絞めにするが矢張り彼は無言で前進を続けるのみだ。 「きょ、教官!兄を止めて下さい!!」 「そうしてやりたいのは山々だがな、残念な事に私はまだ食事中なのだ、ティア」 「きょ、きょーかぁーん!!」 そうして、ヴァンの妹の叫びも虚しく、ヴァンは扉の前に辿り着いてしまった。……って、まあ、開けるんだよな…あれ。 「…シンク、もしもの時に備えて、俺達だけでも一時食事は中断しておかないか」 「……ったく、何で僕がこんな貧乏くじ…」 でも、まあラルゴの提案を一応は呑んで、僕は箸を置いて立ち上がった。決してアリエッタの為とか、そんなじゃない。そんなじゃないからね。 「まあ、ラルゴ!勇敢ですわ!それでこそ殿方の鑑というものです!私にも是非お手だー…」 「王女様は大人しく食事を続けていろ」 ……親心だね、ラルゴ。 そしてラルゴと一緒にヴァンの後ろに立つ頃には、扉はエンシエント・レクイエムで木っ端微塵になっていた。童貞(察するに)の話では、鍵が掛かっていたらしい。…………まあ、本人達の自己防衛が、結果的に僕らの平和に繋がってたわけなんだけど、その辺差し引いて差し置いても、ヴァンは馬鹿を見ないと解からないらしい。仏ホットケ神構うな……祟りを知らぬ愚か者目が……せめて僕とアリエッタの目の届かないところで勝手にやっててくれないかなぁ。 部屋の中の灯りは付いておらず、カーテンの隙間から差し込む朝の光がやけに清々しい気がするー…が、僕は知ってる。本当に、気がするだけだから。寧ろ如何わしいから。ここは目くるめく淫縦相姦、ソドムの巣窟なんだから。ってか、あの平和な食卓と扉一枚で隔てられてただけでも、幾分かの救いになるかのよーな……ってか、アリエッタが食事を続けるあの空間に、この部屋の中の空気が流れてくのがスッゲー嫌。寧ろおんなじ空気吸ってたくないし、吸わせたくないし……って、あれ?何か僕、さっきからアリエッタのことばっか考えてない?ま、まー…兎に角!この部屋の中の空気が如何わしいってことを理解してよ。その証拠にほら、ベッドの上のシーツの、あの異様な盛り上がり。大人二人分くらいの膨らみ。……僕、実質まだ二歳なんだけどねぇ。 ヴァンは妹と童貞(恐らく)を背中と腰周りにくっつけたまま、つかつかと、しかし無言でベッドに近付いていくとシーツの上の塊をー…蹴飛ばした。シーツに包まれたままの、同じ顔した赤毛が二人床下に落っこちた。僕は食べかけの卵焼きのことを思い出していた。勿論、現実逃避だ。 赤毛の一人は床にへたり込みシーツに包まったまま、涙目でヴァンを見上げている。何が起きたのか解からないらしい。まあ、フツーそうだよな、うん。アンタが素っ裸でさえなければ、僕は結構同情してたと思うよ。で、もう一人はといえば、片割れと違って落とされるや否や、素早く受け身を取って立ち上がると、怯むことなくヴァンと対峙したー…のはいいんだけど、やっぱフルち●で仁王立ちされても、迫力ないなぁ。 「ホモ共め……」 凄惨な光景を、半ば諦念の眼差しで見つめながら、それでも僕は呟いた。せめてもの抵抗だと思いたい。ラルゴなんて男泣き始めちゃってるんだけど。ああ、男ムサイ。でもその気持ち、よく解かる。ああ、卵焼き……やっぱ食べてからこっち来れば良かった。 「ヴァン!貴様、一体何のつもりだ?邪魔するんじゃねぇッッ」 そうだよ、そっとしておきなよ。アンタの軽率な行動が、結果的に僕ら全員に迷惑掛けてるんだからさぁ(まあ、元を正せばあのお姫様の発言で、ヴァンがプッツンしちゃったんだけどさ)。 「アッシュ!お前は、私とい&%$#‘&(%&$’%$&‘)ッッ$%&&’$%$!!?」 「はぁ?意味解かんね」 ヴァン、ショックなのはよく解かった。でも、言葉になってないから。 「+*` (‘ %’&&%$&)*>>*L++`!!!」 ……………だぁ~めだこりゃ。 「兄さん!兄さん止めてーーーーッッ」 「そうだヴァンデスデルカ!戻ってくるんだ!俺達の世界に!!」 ほら、聞く耳持ちなよ。妹泣いてるよ、ご主人様も泣いてるよ、きっと天国だか地獄だかのお父さんお母さんだって泣いてるよ。 「ヴァン、お前がどうしてもというのなら俺も受けて立つ。師匠の暴走を食い止めるのは、弟子である俺の役目だ」 暴走してるのは何もヴァンだけじゃないと思うけどね。それ以前にアンタら二人、いい加減コッチの世界帰って来るか、いっそ誰の目も届かないトコ行ってくんない?そうすりゃ被害だって色々抑えられると思うんだよね、僕。アリエッタに汚いもの見せたくないしさ。そーすればきっと、色ぉーんなことがまぁるく収まるんだから、さ。ヴァンだって多分きっと恐らく元に戻るだろーし。多分きっと恐らく。 「さぁ、剣を抜け!もう俺はテメェを煽ててチヤホヤ祭り上げてやる必要はねぇんだからな、手加減は一切しねぇ!」 「$&&(‘)()」’ $%%#$#% ~==ッッッ*P`=~{+*KLIO()?*==}!!!」 「うっるせぇ、しつこい!俺はまだこれからこのレプリカ野郎と●●●●●って●●●んだら、俺の●●にレプリカの●●を×●●●●んだよ!」 「―――――――――――――ッッッッッ」 ………公爵子息が聞いて呆れるね。童貞(推定)も何気にショック受けてるしさぁ…やっぱ童貞(憶測)には刺激が強すぎんじゃない? 「アッシュ!これ以上兄さんを煽るのはやめて!!」 ぅわー…妹強ぇー…。素っ裸の成人男子が仁王立ちして発禁ワード連呼してんのに、言うことそれかよ。 「ッッッッッアーーーーーーッシュ!!!!」 ヴァンの怒声が響き渡る。あ、何か久々にちゃんとした言葉喋ってんじゃん。お帰り総長。床にへたり込んだままのレプリカルークが、その声に漸く我に返ったようにはっ、とする。 「せ、師匠……」 うろたえている。ああ良かった、一応アッシュのレプリカでも、この事態が異常だってことは解かるらしい。ってか、何でアンタのオリジナルはそのことが解かんないんだろーね。でもまあ、アンタもそんな異常事態引き起こしてる当事者の一人なんだけどね、で僕はその他大勢の被害者。 レプリカルークは床の上に相変わらずの乙女座りのまま、困り果てた顔をしてヴァンとアッシュを見上げている。昔アリエッタが読んでいた少女漫画の中に、似たようなシュチュエーションの絵があったかなぁ、とか考える。何か、「やめてー。私の為に争わないでー」とかそんなだった気がする。当時はその滑稽さを鼻で笑ったもんだけど、今目の前で繰り広げられてる地獄絵図と違って、吐き気をもよおさない分、幾らかマシだったんだろう。しかもヴァンが争ってる原因は、争ってる相手自身だったり、横恋慕(?)の相手こそが、小動物のよーにプルプル震えていたりと、もう何が何だか、だ。 「テメェ、ヴァン!レプリカが怯えてるじゃねぇーか!!」 シーツを引き上げるようにしてレプリカルークに掛けると、その肩を抱いて安心させるように擦る。そしてヴァンを見上げて睨みつける。もう好きにしてよ。眼前の悪夢と、背後で繰り広げられる団欒の温度差に、僕は少しだけ泣きたくなる。そして、過保護でレプリカ馬鹿なアッシュに、やっぱヴァンがキレた。 「‘」(==*)=~)’%$&%=***==―――――――ッッッ」 「兄さん!」 「ヴァン!止せ!!」 剣を抜くヴァンに、アッシュも身構える。でもやっぱフル●んなので、凄味がない。いや、寧ろ変質者っぽい。………ああ、違う違う。「っぽい」んじゃなくて、自分のレプリカに欲情してる時点で充分変態なんだっけ、この被験者は。 ――と、銃声が響き渡った。ってか、僕の頬を掠めて弾丸が飛んでった。 「……??」 流石に、これには僕も動揺を隠せない。うろたえていると、僕とラルゴの間を縫うようにして、リグレットが前へ歩み出る。そして彼女が室内に足を踏み入れる頃、ヴァンの身体が床に沈んだ。どうやら食事が終わったらしい。背後では食後のお茶なんかが煎れられ始めてる。僕の卵焼き、まだあるかなぁ…。 「きょ、教官……」 「よく耐えたわね、ティア。安心なさい、麻酔銃よ」 麻酔銃って……あー…まー…それくらいでないと、ヴァンの右腕なんて勤められないか…うん、そうだよね。右腕って言うか、お目付け役って言うか……。 「教官!流石です!私も教官のように華麗に迅速に冷静に兄を仕留められるようになれますか!?」 「そう、では、先ずは肉親としての情は一切捨てることね」 「はい!楽勝です!」 楽勝だってさ。ヴァン、意識が無くて良かったね。 「ったく……おい、大丈夫かレプリカ」 「う、うん……なぁアッシュ……師匠、何怒ってたのかな?」 気付け。 「俺がお前の●●×を●●●×●したり、お前が俺の●●に●●×を●●●●×●するのが気に入らねぇみたいだな」 「はぁ?そうだったのか??」 事態を漸く理解したらしいレプリカルークが、一転してヴァンに哀れみを込めた眼差しを向ける。その表情は僕もよく知ってる……アッシュがよくヴァンにするやつだ。あー……揃いも揃ってやぁ~なオリジナルとレプリカだね。 「師匠ぇ~…アッシュ俺のなんだけど」 「まあ、その辺はどーでもいいんだけどな、これいつまでも転がしとくの邪魔だから、そっちで処分してくれ」 「全く。我々は清掃業者ではないのだぞ」 アッシュが顎でしゃくってヴァンを示すと、やれやれといった様子で、リグレットが力なく頭を振った。そういえば、何気にレプリカの言葉否定しなかったな、アッシュ……。いいんだ、それで。………まあ……僕は、僕が平和に生きてける分には何も言わないよ。 「ラルゴ、すまないが閣下をお運びしてくれ」 良かった、僕の方に話振られなくて。 「ガイ。アンタもヴァンの主人なら、部下の不始末くらい拭ってやれば?」 声を掛けると童貞(きっと)は我に返ったように、はっとした後ラルゴを手伝ってヴァンの足を抱えた。うーん……童貞(推察)にはやっぱ刺激が強すぎたらしい。七歳児のレプリカに先越されるようじゃね…。しかも、赤毛は赤毛で何かまたいそいそとシーツ被ってベッドの上に戻ってるし。 「いやー、二人ともほんっと、仲が宜しくて大変いい迷惑ですねー」 事態が漸く収拾しかけた頃になって、眼鏡が現われた。ああ、ヴァンが扉壊しちゃったから、あの淫楽の間の尽くが食卓に筒抜けなわけだ。超嫌。 「ホントホント~。ってゆーかぁ、ヴァン総長との折り合いとかつけてから乳繰り合って欲しいと思いまーす」 「でも、仲が良いのは本当に良いことだと思いますよ」 「……イオン様、意味解かって言ってますかぁ?」 蠢くシーツ見ながら、何を暢気な。解かってないだろうな。 まあ、これ以上茶番に付き合う義理もないし、ということで僕は食卓へ戻る事にした。と、アリエッタがこちらへ歩いて来る。ヤヴァイ。 「……アリエッタ、あっちには行くなよ」 「でも…イオン様向こう……アリエッタもイオン様のところ、行きたい……です」 って、あの自堕落な自己愛赤毛共の淫行をアリエッタに見せるわけに行くかぁッッ そのまま走って行こうとするアリエッタの腕を強く掴む。 「ぼ、僕が行くなって言ったら行くな!」 「痛い!シンクのいじわるー!シンク嫌い!」 「!!」 「イオン様~」 ……………悲しい?あれ??目から何か水みたいなものが流れて溢れ出て来ます、よ?? 「ハーッハッハッハッハッハ、この残った卵焼きは誰のものです?食べますよ?食べますからね?……食べましたよー!!」 「……ッッッッッアカシック・トーメントォォォォ~~~~~ッッッッ」 教訓:赤毛は相思相愛にするとロクなことにならない。 一応私はルクアシュのつもりで書いたんですが、周りからは「え、アシュルクじゃないの?」と言われ通しなので、もうどっちでも良いです(笑)。
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「これで詰み、だな」 「おやおや…参りました。今日のあなたはことの外、お強いですね」 「いや、いつも通りだろ」 そう、この日も涼宮ハルヒ団長閣下を始め、SOS団の面々は文芸部室でいつも通りの放課後を過ごしていた。ハルヒには悪いが、平穏無事で何よりだね。 「しかし、将棋も飽きたな。次は何か他のにしないか」 「そうですね。では久々にダイヤモンドゲームでも」 そうして古泉が駒を片付けている間、手持ち無沙汰だった俺は何気なく部室を見回して――偶然“それ”に気付いちまったのさ。ああ、あれは単なる偶然だった。と、そう思いたいんだがなあ。 「おい、ハルヒ。ちょっとパソコンに近付き過ぎじゃないのか」 「え、そう?」 正確には、ハルヒが顔を近付けていたのはディスプレイであってパソコンじゃないんだが、それは瑣末な相違だろう。 俺の指摘に、朝比奈さんと古泉もハルヒの方へ顔を向ける。長門だけは相変わらずハードカバーに目線を落としたままだが、こいつはそれでも状況は理解できるわけで、まあご愛嬌だな。 「確かにキョンくんの言う通り、近頃の涼宮さんは少し猫背っぽいかも…」 「ん~、集中してるとついつい画面に見入っちゃうのよね」 「それはあまり良い事ではありませんね。視力も落ちてしまいますし、背骨の歪みは様々な体調不良をもたらすそうですよ」 朝比奈さんに続いて古泉にもそう言われ、ハルヒは団長椅子の上で、うーっと大きく伸びをした。しかしそれでもスッキリしなかったのか、ハルヒは肩口辺りを押さえて難しい顔をしている。 と、不意にその顔をこちらに向けたかと思うと、ハルヒは左手の人差し指の先をくいくいと曲げて、不遜に俺を手招きした。 「…なんだよ」 「なんだ、じゃないでしょ。畏れ多くも団長様の気分転換の手伝いをさせてあげようっていう、ありがたい思し召しよ。ほらキョン、さっさとこっちに来なさい」 「手伝えって、何をだ」 「ストレッチ。どうせあんたヒマでしょ?」 正直「アホか」と一蹴してやりたかったが、よくよく考えてみるに、確かに今の俺はヒマだった。将棋の盤面を片付けた古泉は、これからダイヤモンドゲームの駒を並べ始める所で、それまで俺はやる事が無い。でもって古泉は、いかにも「よろしくお願いします」と言いたげな笑顔を俺に向けている。 まあいい、たまには団長様のご機嫌でも取ってやろう。将棋で3連勝していた気分の良さもあり、俺は従順に席を立つ事にした。 「で、どうすりゃいいんだ?」 「手首を持って、上に引っ張って」 そう言ってハルヒは両腕を上に伸ばす。指示のままに、俺はハルヒの座る椅子の後ろに回り、両の手首を掴んで引っ張り上げてやった。 「どうだ?」 「うーん、肩は伸びるんだけど背骨はあんまり…」 「じゃ、もう少し後ろに反らしてみるか」 言葉通り、俺は後ろに向かって力を入れる。だが結果的に、それは椅子が後方へずり動くだけに終わった。 「椅子に座ったままじゃうまく行かないな。ハルヒ、ちょっと立ち上がってくれ。で、腕を横に…」 「あいたっ。ちょっと、ヘンな事しないでよっ!?」 「するかバカ。痛いのはずっと同じ姿勢で筋肉が強張ってるからだろ。ほら、力抜いて体を伸ばせ」 背後からハルヒを羽交い絞めにした俺は、そのまま胸を反らせてハルヒの体を持ち上げた。 ここから後ろに放り投げればフルネルソンスープレックスだが、もちろんそんな事はしない。つーか出来ない。俺はゲーリー・オブライトではないし、たとえ空想でもハルヒにそんな事をしたら、いったいどんな報復を受ける事か。俺はまだまだ命は惜しいつもりだ。 ともかく宙に足が浮いた状態のハルヒを、軽く上下に揺すってやる。もちろん肩を痛めないように、ゆっくりと。始めの内はぎこちない様子だったハルヒも俺の意図を汲んで、だんだんリラックスしてきたみたいだな。 「あ、コレいいかも。背筋が伸びて、うん、いい気持ちだわ。キョンにしては上出来ね」 「へいへい、そいつはどうも」 素っ気なく応じてはいるが、自分の工夫を褒められれば、俺だって悪い気はしない。と、ここで調子に乗っちまったのが運の尽きだったのかね。 「よし、それじゃハルヒ、こいつはサービスだ」 「へっ? ちょっとキョン、何を…」 ハルヒが何事か言いかけた時にはもう、俺はハルヒの脚を左右に揺らし、その勢いでくるりと回転を始めていた。 このまま上昇して宇宙まで飛び出せば廬山亢龍覇だが、もちろんそんな事はしない。つーか出来ない。俺はドラゴン紫龍ではないし、まだまだ命は惜しいつもり…って、いいかげんしつこいな。 ともかく、俺はハルヒを抱え上げた状態のまま、その場でくるくる連続で回転してやったわけだ。 「どうだハルヒ、面白いか?」 「やっ、ちょっ…バ、バカっ! 面白いわけないじゃない! もうやめ、やめてよっ! ふあっ、目がまわる…」 なに? 予想に反して悲鳴じみた声を上げるハルヒに、俺は慌てて回転を止め、ハルヒを床に降ろしてやった。 すると本当に目を回していたのか、ハルヒは床にくてっとへたり込んでしまう。そして焦点の合わない瞳で、キッと俺を睨み上げた。 「こ、このバカ! バカキョン! なんでいきなりあんな事すんのよっ!?」 「いや、すまん。本当にサービスのつもりだったんだ。 妹が小さい頃に、よくこういう遊びをやっててさ。どんなにむずがってても、『ほーら人間メリーゴーラウンドだぞー』って振り回してやると、あいつはすぐに機嫌を直してきゃらきゃら笑ってたもんだから、お前も面白がると思って…」 頭を掻きつつそう弁解して、ハルヒに片手を差し出す。だが、む~っと唇を尖らせたハルヒは、べしっと俺の手を払いのけた。 「人を子供扱いしてんじゃないわよ、このアホキョン! もう、なんか興が削がれちゃったわ! 今日はこれで解散っ!」 言うなり鞄を引っ掴むと、ハルヒはおぼつかない足取りで、左右にふらつきながら部室を飛び出して行ってしまう。なんだかなあ、と俺が半開きのままの扉を眺めていると、今度は俺の鞄が目の前に差し出された。 「…何のつもりだ、古泉?」 「差し出がましい真似をして申し訳ありません。ですが」 「ダメですよぅ、キョンくん! すぐに涼宮さんを追いかけて、家まで送ってあげてくださいっ!」 と、古泉のセリフを掻き消す勢いで詰め寄ってきた朝比奈さんが、俺の正面で両手と共に声を震わせていた。 「涼宮さん、あんなにふらふらしてたじゃないですかっ! もし事故に遭ったりしたら…」 「あなたとしては非常に寝覚めが悪くなるのではないか、とお察しいたしますが」 見透かしたような笑顔で、古泉がそう続ける。ちっ、俺の味方はいないのか。思わず窓辺へ視線を向けると、まるで俺の心情を見越したかのごとく長門が顔を上げた。そして。 「人間の概念で言うならば」 無機質な黒の瞳で、長門は静かにそう述べた。 「たとえ悪気が無くとも、己の行動が起こした結果に対して、人はその責任を負うべき」 ぐはっ、宇宙人に道徳を説かれちまった! ええい、分かってるよ俺だって。ただなんとなく、あいつに涙目で睨み上げられて、思わずたじろいじまっただけで…って、いたずらがバレても素直に謝れない小学生か俺は。 くそっ。結局、無言で古泉の手から鞄を引ったくった俺は、足早に部室を後にする事となったのだった。出来うる限り「嫌々ながら仕方なく」って顔をしてたのは、意地っ張りな俺のささやかな抵抗だとでも思ってくれ。 しかし、この歩行スピードだとその内ハルヒに追いついちまうわけで、追いついたらやっぱりあいつを無視する事など出来ないわけで、詰まる所、今日の俺はハルヒを家まで送る事を余儀なくされるんだろうな。 ああ忌々しい。まったく忌々しい。忌々しい。 翌朝、俺が教室へ顔を出すと、ハルヒは頬杖をついて窓の外へ顔を向けていた。その背中には、薄暗いどんよりオーラが漂っている。 あまりこのセリフを使いたくはないんだが…やれやれ。昨日はわざわざ遠回りしてやったっていうのに、ハルヒの奴はまだ不機嫌を引きずったままだってのかよ。どうしたもんかな、とその背中を眺めながら掛けるべき言葉を考えていると、逆に俺の方が後ろから声を掛けられた。 「キョンくん、どうかしたのね?」 「ああ、阪中か。いや、別にどうも…」 「もしかして昨日、涼宮さんと何かあったのね?」 うお? 今日の阪中はやけに鋭いな、と内心で驚いていると、向こうから勝手にそのタネ明かしをしてくれた。 「実はわたし、昨日見ちゃったのね。涼宮さんとキョンくんが、帰り道に二人で仲良く買い食いしてるとこ」 あー、そうだったな。むくれたハルヒをなだめるために、俺は道すがらの販売車経由で、焼き芋をハルヒに献上する羽目になったのだった。もちろんあいつの事だから1個や2個で済むはずも無く、俺の財布の中身は惨憺たる有様だ。今は思い返したくもないね。 っていうか阪中、お前はなんでそうニコニコ顔なんだ。二人で仲良く、だと? 絶対何か勘違いしてるだろ。 確かに公園のベンチで並んで焼き芋は喰ったが、ハルヒの奴はその間ずっと「あたしは妹なんかじゃないんだから!」とか延々文句を垂れてたし、挙句には俺の食べかけの芋まで取り上げて喰っちまうわで、ちっともフレンドリーな雰囲気なんざ無かったんだぞ。 「あのなあ、阪中。俺がハルヒに声を掛けるのをためらってたのは、そういう事じゃなくてだな」 「じゃあ、どういう事だっていうのよ」 なにっ、気配を全く感じさせずにこの俺の背後を取るとは!? って、単に俺が阪中の方に気を取られていただけだが。 振り返って、俺は盛大に溜息を吐いた。なんだよハルヒ、そのわざと作ったようなしかめっ面は。昨日あれだけ焼き芋貪っといて、まだ足りないってのか? いいかげん機嫌直せよ。 「なあに、その言い草は。開き直っちゃって。 いい、キョン! 今度またあんな真似したら死刑だからねっ!」 「キョンくん、何か涼宮さんを怒らせるような事したのね?」 「いや、俺は別にそんな」 「しらばっくれるつもり!? だいたい、あんたが強引にあたしを抱き上げたのがそもそもの発端でしょ!?」 つんざくようなハルヒの怒声に、教室の中がざわ、と揺れた。なんだよ、それじゃ俺が一方的に悪いみたいじゃないか。 「ちょっと待て、最初に『気分転換したいから手伝え』って言ってきたのはお前の方だろうが」 「いきなり背中から抱きかかえられて、ゆさゆさ揺すられるなんて思いもしなかったけどね」 「ちょ、ちょっと涼宮さん…声が大きいのね…」 阪中があたふたとハルヒをたしなめる。まったくだ、声を荒げれば自分の主張が通るとでも思ってるのか? 「まあ、一万歩譲ってそこまでは許してあげるわ。初めは痛かったけど、だんだん気持ち良くなってきたし」 「き、気持ち良かったのね?」 「でもね、そこからがヒドいのよ! キョンの奴ったら『これはサービスだ』とか言って、あたしをぐるぐる回し始めたの! 信じられる、阪中さん!?」 同意を求められた阪中は、やたらとおろおろしていた。ハルヒに詰め寄られて焦っているのか、その顔は茹でダコみたいに真っ赤だ。 「え、えええっ!? あのその、回すって…そ、それはキョンくんとくっついたままで…?」 「そうよ、キョンを中心にして。って言うか、くっついてなきゃ回しようがないじゃない? なに言ってんの?」 「ご、ごめんなさいなのね」 おいおいハルヒ、今度は阪中まで吊るし上げるつもりか。ほら見ろ、教室のそこかしこで、こっちを見ながらひそひそ話の花が咲き乱れてんじゃねえか。もう少し落ち着けって。 けれどもハルヒはやはりというか何というか、外野の事など全く気にも掛けていない様子だった。 「ホントにもう、あたしがやめてやめてって言ってんのに、キョンったら『人間メリーゴーラウンドだ』とか自慢そうにへらへら笑っててさ。 ようやく床に降ろされた頃には、もうあたしはフラフラでまともに立つ事さえ出来なかったわよ」 「だから俺はお前を喜ばせるつもりだったんだって、何度も――」 「そっちこそ! あたしはもう子供じゃないって、いったい何度言えば分かるのよ!?」 「に、人間メリーゴーラウンド…? 悦ばせ…? ふぇ~、もうダメ、わたしには刺激が強すぎるのねぇ~」 「えっ、ちょっと阪中さん!? どうしたの、しっかりしなさい!」 いや本当に、これはどうした事だろうか? まるで長湯にのぼせたみたいに上気した顔で、鼻血を噴きながらぶっ倒れてしまった阪中に、ハルヒも俺も慌てて駆け寄る。そうして成り行き上、二人で阪中を保健室に運ぶ事となり、俺たちの口論は棚上げになってしまったわけなのだが…。 当事者が揃っていなくなった、その後の教室では。 「そうか、あの二人がついにねえ」 「でも、聞いた? あの涼宮さんを足腰立たなくさせたって!」 「ああ見えて、キョンくんってば意外と絶倫なのかも…」 「さすがだ、キョン! 俺は前々から只者じゃないと思ってたぜ!」 などと尾ヒレが付きまくった憶測が錯綜していた、というのを俺が谷口や国木田から聞いたのはしばらく後の事であり、その頃には俺とハルヒは翔んだカップル(死語)としてクラス中、どころか全校にまで認知されてしまっていて、面目やら世間体やらの失われた諸々が俺の元に還ってくる事は、もう決してなかったのだった。 ええい、みんな落ち着け! これは孔明の罠だ! ああ、絶対にそうだ…。そうに違いな…い…。 ………… ……… …… … ぼんやりと薄目を開けるなり、俺は顔をしかめちまった。 ちぇっ。どうせなら、もっと愉快な夢を選んでくれりゃいいのにな。どうして脳って奴は、思い出したくもないような事柄に限って夢に見させようとしやがるんだろうげほっ!? 「もうっ、パパったらいつまでおねむなのーっ!? せっかく公園に来たのに、つまんないつまんないつまんない!」 つまんないの連呼と共に、5歳児相当の重量が俺の腹の上でバウンドする。おかげで俺は、むっくり起き上がらざるを得なかった。 やれやれ、娘には「起こすなら起こすで、せめて優しく頼む」といつも言い含めてるんだがなぁ。ちっともさっぱり聞き入れてくれる様子が無い。この辺りは妹の小さい頃にそっくりというか、俺の家系の形質なんだろうな。でもって、全く悪びれもせずに俺を見据えるくりくりとした大きな瞳は、あいつの形質か。 本当、見事に双方の女性的形質が遺伝したもんだ。ダーウィン先生には平伏する他ないね。 「分かった分かった、一緒に遊ぼうな。さーて、何がいい?」 「ん~っとね、ぐるぐるってやって! ぐるぐる!」 やっぱりか。お前は本当にこれが好きだな。 苦笑しながら俺は娘を胸に抱え上げ、芝生の上でくるくると横回転を始めた。途端に、娘はきゃらきゃら楽しそうに笑い出す。さっきまでのふくれっ面がウソのようだ。まったく、我が子ながら現金な奴だなあ。 とか思いつつ、俺もつられてはしゃいでるんだけどさ。 「ようし、スピードアップだ!」 「きゃははははっ! パパすごいすごいっ!」 「あら、また『人間メリーゴーラウンド』? 飽きないわねえ、あんたたちも」 唐突に、からかうような声が響く。遊ぶのに夢中になっている内に、いつの間にか妻がすぐ傍まで歩み寄って来ていた。 いかにも呆れたような表情で、そのくせこいつは眩しいものでも見るみたいに目を細めて、俺たちを見つめている。何というか、思い出すのさえ恥ずかしい誤解から成り行きで付き合って、そのまんま結婚しちまったような俺とこいつだが、可愛い子宝にも恵まれて、今の生活は割と悪くない、かもな。 「買い物は済んだのか?」 「うん、大漁大漁! 今日の夕飯は腕によりをかけちゃうからね、せいぜい期待してなさい!」 日頃の運動不足がたたってか、さすがに息が切れた俺に向かって、腕まくりをした妻がにぱっと自信ありげに笑う。それから妻はすっとこちらに歩み寄り、俺の腕の中の娘の、親子お揃いのリボン頭をいとおしそうに撫ぜ回した。 「あんたも良かったわね、今日はパパにたくさん遊んで貰えて」 すると娘は、何やら不満そうに唇を尖らせてみせる。 「ぶーっ! 違うもんっ!」 「え?」 そうして俺たちの愛娘は、100Wの笑顔でこう言い放ったのだった。 「ママったら勘違いしてるっ! パパが遊んでくれてるんじゃなくてぇ、あたしがパパと遊んであげてるんだからねっ!!」 大回転勘違い おわり
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「これで詰み、だな」 「おやおや…参りました。今日のあなたはことの外、お強いですね」 「いや、いつも通りだろ」 そう、この日も涼宮ハルヒ団長閣下を始め、SOS団の面々は文芸部室でいつも通りの放課後を過ごしていた。ハルヒには悪いが、平穏無事で何よりだね。 「しかし、将棋も飽きたな。次は何か他のにしないか」 「そうですね。では久々にダイヤモンドゲームでも」 そうして古泉が駒を片付けている間、手持ち無沙汰だった俺は何気なく部室を見回して――偶然“それ”に気付いちまったのさ。ああ、あれは単なる偶然だった。と、そう思いたいんだがなあ。 「おい、ハルヒ。ちょっとパソコンに近付き過ぎじゃないのか」 「え、そう?」 正確には、ハルヒが顔を近付けていたのはディスプレイであってパソコンじゃないんだが、それは瑣末な相違だろう。 俺の指摘に、朝比奈さんと古泉もハルヒの方へ顔を向ける。長門だけは相変わらずハードカバーに目線を落としたままだが、こいつはそれでも状況は理解できるわけで、まあご愛嬌だな。 「確かにキョンくんの言う通り、近頃の涼宮さんは少し猫背っぽいかも…」 「ん~、集中してるとついつい画面に見入っちゃうのよね」 「それはあまり良い事ではありませんね。視力も落ちてしまいますし、背骨の歪みは様々な体調不良をもたらすそうですよ」 朝比奈さんに続いて古泉にもそう言われ、ハルヒは団長椅子の上で、うーっと大きく伸びをした。しかしそれでもスッキリしなかったのか、ハルヒは肩口辺りを押さえて難しい顔をしている。 と、不意にその顔をこちらに向けたかと思うと、ハルヒは左手の人差し指の先をくいくいと曲げて、不遜に俺を手招きした。 「…なんだよ」 「なんだ、じゃないでしょ。畏れ多くも団長様の気分転換の手伝いをさせてあげようっていう、ありがたい思し召しよ。ほらキョン、さっさとこっちに来なさい」 「手伝えって、何をだ」 「ストレッチ。どうせあんたヒマでしょ?」 正直「アホか」と一蹴してやりたかったが、よくよく考えてみるに、確かに今の俺はヒマだった。将棋の盤面を片付けた古泉は、これからダイヤモンドゲームの駒を並べ始める所で、それまで俺はやる事が無い。でもって古泉は、いかにも「よろしくお願いします」と言いたげな笑顔を俺に向けている。 まあいい、たまには団長様のご機嫌でも取ってやろう。将棋で3連勝していた気分の良さもあり、俺は従順に席を立つ事にした。 「で、どうすりゃいいんだ?」 「手首を持って、上に引っ張って」 そう言ってハルヒは両腕を上に伸ばす。指示のままに、俺はハルヒの座る椅子の後ろに回り、両の手首を掴んで引っ張り上げてやった。 「どうだ?」 「うーん、肩は伸びるんだけど背骨はあんまり…」 「じゃ、もう少し後ろに反らしてみるか」 言葉通り、俺は後ろに向かって力を入れる。だが結果的に、それは椅子が後方へずり動くだけに終わった。 「椅子に座ったままじゃうまく行かないな。ハルヒ、ちょっと立ち上がってくれ。で、腕を横に…」 「あいたっ。ちょっと、ヘンな事しないでよっ!?」 「するかバカ。痛いのはずっと同じ姿勢で筋肉が強張ってるからだろ。ほら、力抜いて体を伸ばせ」 背後からハルヒを羽交い絞めにした俺は、そのまま胸を反らせてハルヒの体を持ち上げた。 ここから後ろに放り投げればフルネルソンスープレックスだが、もちろんそんな事はしない。つーか出来ない。俺はゲーリー・オブライトではないし、たとえ空想でもハルヒにそんな事をしたら、いったいどんな報復を受ける事か。俺はまだまだ命は惜しいつもりだ。 ともかく宙に足が浮いた状態のハルヒを、軽く上下に揺すってやる。もちろん肩を痛めないように、ゆっくりと。始めの内はぎこちない様子だったハルヒも俺の意図を汲んで、だんだんリラックスしてきたみたいだな。 「あ、コレいいかも。背筋が伸びて、うん、いい気持ちだわ。キョンにしては上出来ね」 「へいへい、そいつはどうも」 素っ気なく応じてはいるが、自分の工夫を褒められれば、俺だって悪い気はしない。と、ここで調子に乗っちまったのが運の尽きだったのかね。 「よし、それじゃハルヒ、こいつはサービスだ」 「へっ? ちょっとキョン、何を…」 ハルヒが何事か言いかけた時にはもう、俺はハルヒの脚を左右に揺らし、その勢いでくるりと回転を始めていた。 このまま上昇して宇宙まで飛び出せば廬山亢龍覇だが、もちろんそんな事はしない。つーか出来ない。俺はドラゴン紫龍ではないし、まだまだ命は惜しいつもり…って、いいかげんしつこいな。 ともかく、俺はハルヒを抱え上げた状態のまま、その場でくるくる連続で回転してやったわけだ。 「どうだハルヒ、面白いか?」 「やっ、ちょっ…バ、バカっ! 面白いわけないじゃない! もうやめ、やめてよっ! ふあっ、目がまわる…」 なに? 予想に反して悲鳴じみた声を上げるハルヒに、俺は慌てて回転を止め、ハルヒを床に降ろしてやった。 すると本当に目を回していたのか、ハルヒは床にくてっとへたり込んでしまう。そして焦点の合わない瞳で、キッと俺を睨み上げた。 「こ、このバカ! バカキョン! なんでいきなりあんな事すんのよっ!?」 「いや、すまん。本当にサービスのつもりだったんだ。 妹が小さい頃に、よくこういう遊びをやっててさ。どんなにむずがってても、『ほーら人間メリーゴーラウンドだぞー』って振り回してやると、あいつはすぐに機嫌を直してきゃらきゃら笑ってたもんだから、お前も面白がると思って…」 頭を掻きつつそう弁解して、ハルヒに片手を差し出す。だが、む~っと唇を尖らせたハルヒは、べしっと俺の手を払いのけた。 「人を子供扱いしてんじゃないわよ、このアホキョン! もう、なんか興が削がれちゃったわ! 今日はこれで解散っ!」 言うなり鞄を引っ掴むと、ハルヒはおぼつかない足取りで、左右にふらつきながら部室を飛び出して行ってしまう。なんだかなあ、と俺が半開きのままの扉を眺めていると、今度は俺の鞄が目の前に差し出された。 「…何のつもりだ、古泉?」 「差し出がましい真似をして申し訳ありません。ですが」 「ダメですよぅ、キョンくん! すぐに涼宮さんを追いかけて、家まで送ってあげてくださいっ!」 と、古泉のセリフを掻き消す勢いで詰め寄ってきた朝比奈さんが、俺の正面で両手と共に声を震わせていた。 「涼宮さん、あんなにふらふらしてたじゃないですかっ! もし事故に遭ったりしたら…」 「あなたとしては非常に寝覚めが悪くなるのではないか、とお察しいたしますが」 見透かしたような笑顔で、古泉がそう続ける。ちっ、俺の味方はいないのか。思わず窓辺へ視線を向けると、まるで俺の心情を見越したかのごとく長門が顔を上げた。そして。 「人間の概念で言うならば」 無機質な黒の瞳で、長門は静かにそう述べた。 「たとえ悪気が無くとも、己の行動が起こした結果に対して、人はその責任を負うべき」 ぐはっ、宇宙人に道徳を説かれちまった! ええい、分かってるよ俺だって。ただなんとなく、あいつに涙目で睨み上げられて、思わずたじろいじまっただけで…って、いたずらがバレても素直に謝れない小学生か俺は。 くそっ。結局、無言で古泉の手から鞄を引ったくった俺は、足早に部室を後にする事となったのだった。出来うる限り「嫌々ながら仕方なく」って顔をしてたのは、意地っ張りな俺のささやかな抵抗だとでも思ってくれ。 しかし、この歩行スピードだとその内ハルヒに追いついちまうわけで、追いついたらやっぱりあいつを無視する事など出来ないわけで、詰まる所、今日の俺はハルヒを家まで送る事を余儀なくされるんだろうな。 ああ忌々しい。まったく忌々しい。忌々しい。 翌朝、俺が教室へ顔を出すと、ハルヒは頬杖をついて窓の外へ顔を向けていた。その背中には、薄暗いどんよりオーラが漂っている。 あまりこのセリフを使いたくはないんだが…やれやれ。昨日はわざわざ遠回りしてやったっていうのに、ハルヒの奴はまだ不機嫌を引きずったままだってのかよ。どうしたもんかな、とその背中を眺めながら掛けるべき言葉を考えていると、逆に俺の方が後ろから声を掛けられた。 「キョンくん、どうかしたのね?」 「ああ、阪中か。いや、別にどうも…」 「もしかして昨日、涼宮さんと何かあったのね?」 うお? 今日の阪中はやけに鋭いな、と内心で驚いていると、向こうから勝手にそのタネ明かしをしてくれた。 「実はわたし、昨日見ちゃったのね。涼宮さんとキョンくんが、帰り道に二人で仲良く買い食いしてるとこ」 あー、そうだったな。むくれたハルヒをなだめるために、俺は道すがらの販売車経由で、焼き芋をハルヒに献上する羽目になったのだった。もちろんあいつの事だから1個や2個で済むはずも無く、俺の財布の中身は惨憺たる有様だ。今は思い返したくもないね。 っていうか阪中、お前はなんでそうニコニコ顔なんだ。二人で仲良く、だと? 絶対何か勘違いしてるだろ。 確かに公園のベンチで並んで焼き芋は喰ったが、ハルヒの奴はその間ずっと「あたしは妹なんかじゃないんだから!」とか延々文句を垂れてたし、挙句には俺の食べかけの芋まで取り上げて喰っちまうわで、ちっともフレンドリーな雰囲気なんざ無かったんだぞ。 「あのなあ、阪中。俺がハルヒに声を掛けるのをためらってたのは、そういう事じゃなくてだな」 「じゃあ、どういう事だっていうのよ」 なにっ、気配を全く感じさせずにこの俺の背後を取るとは!? って、単に俺が阪中の方に気を取られていただけだが。 振り返って、俺は盛大に溜息を吐いた。なんだよハルヒ、そのわざと作ったようなしかめっ面は。昨日あれだけ焼き芋貪っといて、まだ足りないってのか? いいかげん機嫌直せよ。 「なあに、その言い草は。開き直っちゃって。 いい、キョン! 今度またあんな真似したら死刑だからねっ!」 「キョンくん、何か涼宮さんを怒らせるような事したのね?」 「いや、俺は別にそんな」 「しらばっくれるつもり!? だいたい、あんたが強引にあたしを抱き上げたのがそもそもの発端でしょ!?」 つんざくようなハルヒの怒声に、教室の中がざわ、と揺れた。なんだよ、それじゃ俺が一方的に悪いみたいじゃないか。 「ちょっと待て、最初に『気分転換したいから手伝え』って言ってきたのはお前の方だろうが」 「いきなり背中から抱きかかえられて、ゆさゆさ揺すられるなんて思いもしなかったけどね」 「ちょ、ちょっと涼宮さん…声が大きいのね…」 阪中があたふたとハルヒをたしなめる。まったくだ、声を荒げれば自分の主張が通るとでも思ってるのか? 「まあ、一万歩譲ってそこまでは許してあげるわ。初めは痛かったけど、だんだん気持ち良くなってきたし」 「き、気持ち良かったのね?」 「でもね、そこからがヒドいのよ! キョンの奴ったら『これはサービスだ』とか言って、あたしをぐるぐる回し始めたの! 信じられる、阪中さん!?」 同意を求められた阪中は、やたらとおろおろしていた。ハルヒに詰め寄られて焦っているのか、その顔は茹でダコみたいに真っ赤だ。 「え、えええっ!? あのその、回すって…そ、それはキョンくんとくっついたままで…?」 「そうよ、キョンを中心にして。って言うか、くっついてなきゃ回しようがないじゃない? なに言ってんの?」 「ご、ごめんなさいなのね」 おいおいハルヒ、今度は阪中まで吊るし上げるつもりか。ほら見ろ、教室のそこかしこで、こっちを見ながらひそひそ話の花が咲き乱れてんじゃねえか。もう少し落ち着けって。 けれどもハルヒはやはりというか何というか、外野の事など全く気にも掛けていない様子だった。 「ホントにもう、あたしがやめてやめてって言ってんのに、キョンったら『人間メリーゴーラウンドだ』とか自慢そうにへらへら笑っててさ。 ようやく床に降ろされた頃には、もうあたしはフラフラでまともに立つ事さえ出来なかったわよ」 「だから俺はお前を喜ばせるつもりだったんだって、何度も――」 「そっちこそ! あたしはもう子供じゃないって、いったい何度言えば分かるのよ!?」 「に、人間メリーゴーラウンド…? 悦ばせ…? ふぇ~、もうダメ、わたしには刺激が強すぎるのねぇ~」 「えっ、ちょっと阪中さん!? どうしたの、しっかりしなさい!」 いや本当に、これはどうした事だろうか? まるで長湯にのぼせたみたいに上気した顔で、鼻血を噴きながらぶっ倒れてしまった阪中に、ハルヒも俺も慌てて駆け寄る。そうして成り行き上、二人で阪中を保健室に運ぶ事となり、俺たちの口論は棚上げになってしまったわけなのだが…。 当事者が揃っていなくなった、その後の教室では。 「そうか、あの二人がついにねえ」 「でも、聞いた? あの涼宮さんを足腰立たなくさせたって!」 「ああ見えて、キョンくんってば意外と絶倫なのかも…」 「さすがだ、キョン! 俺は前々から只者じゃないと思ってたぜ!」 などと尾ヒレが付きまくった憶測が錯綜していた、というのを俺が谷口や国木田から聞いたのはしばらく後の事であり、その頃には俺とハルヒは翔んだカップル(死語)としてクラス中、どころか全校にまで認知されてしまっていて、面目やら世間体やらの失われた諸々が俺の元に還ってくる事は、もう決してなかったのだった。 ええい、みんな落ち着け! これは孔明の罠だ! ああ、絶対にそうだ…。そうに違いな…い…。 ………… ……… …… … ぼんやりと薄目を開けるなり、俺は顔をしかめちまった。 ちぇっ。どうせなら、もっと愉快な夢を選んでくれりゃいいのにな。どうして脳って奴は、思い出したくもないような事柄に限って夢に見させようとしやがるんだろうげほっ!? 「もうっ、パパったらいつまでおねむなのーっ!? せっかく公園に来たのに、つまんないつまんないつまんない!」 つまんないの連呼と共に、5歳児相当の重量が俺の腹の上でバウンドする。おかげで俺は、むっくり起き上がらざるを得なかった。 やれやれ、娘には「起こすなら起こすで、せめて優しく頼む」といつも言い含めてるんだがなぁ。ちっともさっぱり聞き入れてくれる様子が無い。この辺りは妹の小さい頃にそっくりというか、俺の家系の形質なんだろうな。でもって、全く悪びれもせずに俺を見据えるくりくりとした大きな瞳は、あいつの形質か。 本当、見事に双方の女性的形質が遺伝したもんだ。ダーウィン先生には平伏する他ないね。 「分かった分かった、一緒に遊ぼうな。さーて、何がいい?」 「ん~っとね、ぐるぐるってやって! ぐるぐる!」 やっぱりか。お前は本当にこれが好きだな。 苦笑しながら俺は娘を胸に抱え上げ、芝生の上でくるくると横回転を始めた。途端に、娘はきゃらきゃら楽しそうに笑い出す。さっきまでのふくれっ面がウソのようだ。まったく、我が子ながら現金な奴だなあ。 とか思いつつ、俺もつられてはしゃいでるんだけどさ。 「ようし、スピードアップだ!」 「きゃははははっ! パパすごいすごいっ!」 「あら、また『人間メリーゴーラウンド』? 飽きないわねえ、あんたたちも」 唐突に、からかうような声が響く。遊ぶのに夢中になっている内に、いつの間にか妻がすぐ傍まで歩み寄って来ていた。 いかにも呆れたような表情で、そのくせこいつは眩しいものでも見るみたいに目を細めて、俺たちを見つめている。何というか、思い出すのさえ恥ずかしい誤解から成り行きで付き合って、そのまんま結婚しちまったような俺とこいつだが、可愛い子宝にも恵まれて、今の生活は割と悪くない、かもな。 「買い物は済んだのか?」 「うん、大漁大漁! 今日の夕飯は腕によりをかけちゃうからね、せいぜい期待してなさい!」 日頃の運動不足がたたってか、さすがに息が切れた俺に向かって、腕まくりをした妻がにぱっと自信ありげに笑う。それから妻はすっとこちらに歩み寄り、俺の腕の中の娘の、親子お揃いのリボン頭をいとおしそうに撫ぜ回した。 「あんたも良かったわね、今日はパパにたくさん遊んで貰えて」 すると娘は、何やら不満そうに唇を尖らせてみせる。 「ぶーっ! 違うもんっ!」 「え?」 そうして俺たちの愛娘は、100Wの笑顔でこう言い放ったのだった。 「ママったら勘違いしてるっ! パパが遊んでくれてるんじゃなくてぇ、あたしがパパと遊んであげてるんだからねっ!!」 大回転勘違い おわり
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とりあえず上条は町を歩いてみたが、やっぱり高校生以外の人影は何処にも居なかった。 (こんなに学園都市に高校生は居ないはずなんだけど……どうなってんだ?) 「ねえ」 誰かが呼ばれるような声が聞こえたが、別の人を呼んでいるんだと思ったので上条は無視した。 「ねえってば」 なんだか知り合いの声に似ているような気がしたが、さらに無視を続ける。 なんか後ろから静電気がバチバチと、そして殺気が放たれているような気がしても。 「……聞いてんのかコラァァァァァァァァァァ!」 相手が言い終わる前に上条は振り向いて、右手を前にかざす。予想通りに右手に雷撃の槍が飛び込んできた。 もちろん、煙の向こうにいたのはいつも通り、御坂美琴だった。こちらも体型が高校生になっている。見た感じ、サイズ的に親と同じぐらいだろうか?いや、少し大きいか? なんて、気になる一点を見ていると間違いなく命が危なくなりそうなので、全体を見ているフリをする。常盤台の制服ではなく、どこかで見たような高校の制服を着ていた。 「アンタ途中から絶対分かってたでしょ?」 「まあ、そうだけど」 「じゃあ無視すんなやぁぁぁ!」 もう一発来たので右手で打ち消す。さすがに、三発目は撃ってこないようだった。 「んで御坂」 「何よ?」 「常盤台の制服はどうした?」 そもそも高校生になっているのに中学の制服を着ているのもおかしいと言えばおかしいのだが、御坂が着ている服があまりにも自分がいる高校のものに似ているので、遠まわしに上条は聞いてみた。 わずかに沈黙したあと、御坂が手を上条の額に当ててきた。 「……何やってるの?」 「いや、熱でもあるんじゃ……と思って」 俺は大丈夫だって、と御坂を引き離す。御坂の感じからすると、本当に心配しているらしい。 上条は今の『御坂美琴』に関する知識は無に等しいので、じゃあどこの高校に通っているのかと聞いてみた。 「何聞いてんの?アンタと同じ高校じゃない」 その答えは予想していたが、本当に返ってくると上条は思っていなかった。 (御坂が俺と同じ高校なのか……でも霧ヶ丘もあるのになんでこっちなんだ?) せっかくだから聞いてみる。 「御坂、霧ヶ丘もあったのになんでこっちにしたんだよ?」 「霧ヶ丘は長点上機と一緒に無くなったじゃない」 「無くなった……?まあそれは置いておくとして、じゃあなんでうちに来たんだよ?」 別に大したことは聞いてないはずなのだが、なぜか御坂の顔が赤くなる。 「そ、そりゃあ決まってるじゃない。あ、アンタと……」 一言喋るたびに、どんどん御坂の顔が赤くなって、うつむいていく。 なんか悪いこと言ったかな?と上条が思っていると、 ぐるる、と上条のお腹が鳴った。 御坂が顔を上げると、いつもの表情に戻って言った。まだ顔は赤いままだったが。 「と、とりあえず、そろそろ昼だし、ご飯食べに行かない?」 「いや、でも俺お金が無いんだけど……」 「私が奢るから大丈夫!」 という事で、御坂に手を引っ張られて近くのレストランに向かうことになった。 一方通行の朝は遅い。 少し前まで能力を補助無しでは使えなかったころまでは、常に周囲に気を配っていた。 が、現在は完全とは言えないが、能力を取り戻しているので、またかつてのように自分の気が済むまで寝るようになっていた。が、そんな一方通行を邪魔する人影があった。 「起きろー!!」 (?、どォなってやがる) 聞こえてきた声は、番外個体に似ているのだが……少し感じが違う。おそらく、番外個体が明るい声を出したとするとこんな感じになるのだろう。もしくは、番外個体が打ち止めのような性格になったらこんな感じだろうか? (なんでこンな悪ふざけをしてやがる?アイツはこンな事しねェはずだが) なので一方通行は目を開けず、睡眠を続行する。 「じゃあ強硬手段だー、くらえミサカの全力!」 一方通行は能力を取り戻しているが、全身を反射の膜で包むことはできない。 だが、どちらにしろ番外個体がこんなことをする訳が無い。ただの冗談だろうと思って寝続けていると、 本当にボディプレスが叩き込まれ、高校生一人分の体重が一方通行に強烈なダメージを与えた。 「ごはぁっ!?」 ベクトル操作で体の上から番外個体……と思われる人影を押しのけ、同時に跳ね起きる。 「テメェ何しやが……」 言いかけた言葉が途中で止まる。そこに居たのは、番外個体ではなく打ち止めだった。 ただし、番外個体と同じ高校生程度まで成長しているが。 「何って、昼まで起きないのは良くないと思ったんだよ」 「起きるのが遅くても別に良いだろォが」 「身長伸びないよ?」 「そンな俺の身長は低くねェだろ」 「そうかな?」 なぜか意地悪い笑みを浮かべる打ち止め。 「どっちにしろオマエには抜かれてねェ。つーか、俺の身長なんてどォでも良いだろ」 話しながら着替え、外出する準備を整える。 「どこ行くの?外食?」 「オマエの期待通り、飯食いに行くンだよ」 「やったー!」 結構大人びた外見に似合わず、幼児のようにはしゃぐ打ち止め。 そして準備が終わったころ、一方通行の携帯が鳴った。どうやら土御門かららしい。 『やっほー、元気かにゃー?』 「俺が元気じゃねェ時があるのかよ?」 『ま、そうだけどな。とりあえず、今からこっちに来てくれないかにゃー?』 「何でだよ」 『一つ、話があるんだぜい』 「そォかよ」 話という事は、『グループ』絡みだろうか。無くなった筈なのだが。とりあえず、場所を教えてもらう。 どうやら、丁度行こうとしていたレストランに居るらしかった。 「行くぞ」 「んじゃ、ミサカは先に行ってるねー」 (……打ち止めは場所分かってンのか?) そして打ち止めは家を出て走っていった。レストランと反対方向に。 「アイツ、場所分かってねェのに走るんじゃねェェェェェェェ!」 ベクトル操作で飛び出し、一方通行は打ち止めを追いかけていった。 「ありがとう御坂!今ちょうど金欠だったんだ!」 レストランに着いた上条と御坂は、とりあえずいろいろと食べ物を注文した。 全部御坂の奢りらしいので、上条はありがたく食べさせてもらっている。 「まあ、別に気にしなくてもいいわよ」 「いや、でもありがとう!上条さんはここ数週間で一番幸せです!」 なぜか、また御坂は顔を赤くする。 そして、しばらくの間黙って食べていると、上条は一つ気になったことがあった。 「なあ御坂」 「何よ?」 「ここ食べ物持ち込んでいいのか?」 「さあ?」 すぐ近くの席に女子4人組が座っているのだが、一人はレストランの中なのにコンビニ弁当を食べながら、「今日と昨日のシャケ弁は違う気がするなー?あれー?」と言っていたり、一人は大量にサバの缶詰を食べてたり、一人は名前も聞いたことの無いようなマイナーな映画のパンフレットを読み、一人はボーっとしているだけだった。一人が弁当を食いながらしきりに時計を見ているところからすると、誰かを待っているらしい。とりあえず弁当を食っている人に心の中だけで「弁当なんてどこでも変わんないですよ」とツッコんでおく。 その近くの席では、土御門が座っていた。 何話してるんだろう?と上条が思っていると、土御門がこちらに気づいた。 「カミやーん、ちょっとこっちに来てくれないかにゃー?」 断る理由は特に無いので、席を立つ。 「んじゃ少し行ってくる」 御坂はなぜか残念そうな顔をしたが、了承してくれた。 とりあえず土御門の隣に座る。すると、土御門の表情が真面目になる。 「カミやん、今、何かおかしいと思っていることは無いか?」 「ああ……ってことは土御門は気付いてるのか?」 「ああ。なんとか結界で守ったんだが……今回もご覧の通りでな」 土御門の服の下から、包帯が覗く。そして、スピーカー機能がONになっている通話中の携帯を見せる。 「ただ、今回はオレたちだけじゃないんだぜい。海原も今回は自分を守れた みたいだからな」 『ええ。ですので、今土御門さんと何故こんな事になっているのか話していたんですよ』 土御門は海原と言ったが、恐らくはかつて上条を襲った偽海原なのだろう。 「で、答えは出そうなのか?」 「お互いの知識を最大限出してみたが、まったく……って所だぜい。恐らくインデックスなら 答えが出せるんだろうけどにゃー……」 「いや、インデックスも無理みたいだ」 『じゃあ、どうします?科学の方も調べてみます?』 「でも、科学じゃこんなの説明できないぞ」 「んじゃ海原、町をもう一回調べにいこうぜい」 『じゃあ先に調べてますね』 通話を切り、土御門は立ち上がろうとした。しかし、店の入り口のほうを見ると、腰を下ろした。 「どうした?」 土御門の目線の先を見てみる。そこには、 銃を持った男が入店しようとしていた。 「ッ!」 上条は立ち上がろうとするが、土御門が制止する。 「何でだよ!」 口の動きだけで土御門は言葉を伝えてきた。 (まずは相手の出方を見るぞ) 「……わかった」 上条は座りなおす。 男が入店した。と同時に、男は声を張り上げる。 「全員動くんじゃねえ!」 と同時に、男は懐から音楽プレーヤーを取り出した。そして再生ボタンを押す。数秒変な音が流れ、音は止んだ。と同時に、 レストランにいた半分以上の人間が、突然頭を押さえ、うめき始めた。 その中には、御坂も含まれていた。 「御坂!?」 「ありゃあ、恐らく能力者の『演算』を妨害する装置だろうな」 「じゃあ何で御坂は……!」 「恐らく、能力と行動の両方を妨害するために、思考も『演算』として 見てる……ってとこだろうな」 「くそっ!」 再び上条は立ち上がろうとするが、また土御門が制止する。 「冷静に考えろ、カミやん!お前は素手で銃に勝てるのか!」 「っ……」 ただ見ていることしか出来ないのか?そう上条は思う。 だが、『不幸』は加速する。 「やっと着いたー!……ってあれ?」 一人の少女が入店してきた。と同時に入り口で固まった。 (あいつは……打ち止め!?) 高校生くらいになっているが、御坂とそっくりなので間違いない。 打ち止めが入ってきたのを、男は見逃さなかった。 ナイフを懐から取り出し、固まっている打ち止めを羽交い絞めにし、ナイフを突きつける。 「こいつが殺されたくなけりゃ、早く金を出しやがれ!」 入り口から上条の席は結構離れているので、走っても間に合わない。警備員(アンチスキル)を待てばいいのだろうが、それまで打ち止めの安全は保証されている訳では無い。 (どうすればいいんだ……何か逆転の手は?) 上条が考えていると、さらにもう一人入店してきた。 もちろん、男は振り向く。そしてそこに居たのは、 その『逆転の手』だった。 服も、肌も、髪の色も、全てが白い学園都市最強の超能力者(レベル5)。 一方通行。 (あいつは……!?) 「なんだテメエ!死にたくなけりゃ床に伏せろ!」 なぜか、男は一方通行の事を知らないらしい。 それに対して、一方通行の答えは簡単だった。 腕を振り抜き、ボディブローを男の脇腹に叩き込む。 車が激突したような轟音が響いた。 「ごは……あっ?」 男は何が起きたのか理解できていない様子だった。そして、そのまま床に倒れた。 一方通行は足元を見回し、音楽プレーヤーを踏み砕く。そして打ち止めの方を向いた。 「帰るぞ」 「えっ?」 「こンなに暴れて飯が食えると思ってンのか?」 「……そうだね」 そして踵を返して店を出ようとする。だが、店長らしき人物に呼び止められた。 「なンだよ?」 「いえ、お礼の代わりに食べて行ってはくれませんか?お代は結構ですので」 「いいンだな?」 店長は頷いた。一方通行は店内を見回す。そして、土御門たちが座っている席を見つけた。一方通行と打ち止めが座る。 少しの静けさの後、再び、レストランに騒がしさが戻ってきた。 「で、何だよ、用事ってのは?」 「ちょっと待った」 上条が割り込む。 「その話、打ち止めは聞いても良いのか?」 一方通行は少し考え、言った。 「良くねェだろォな」 「んじゃ、俺は打ち止めとあっちに行ってるからな」 上条は立ち上がって、打ち止めを連れて御坂の方に向かった。 上条には一つ、気になることがあった。 (なんで、ただの強盗があんな物を持っていたんだ……?) ただの強盗が、あんなアンチスキルが使うような、いや、アンチスキルでも持っていないような装備を簡単に入手できるのか? イギリス、ロンドンの市街に、傭兵、ウィリアム・オルウェルは一人佇んでいた。 (一体何がどうなっているのであるか) ウィリアムの体には、『聖人』としての力が戻り、若返って、高校生ほどになっていた。筋肉の量も、服の上からではわかりにくいほどまで減っている。とはいえ、『聖人』の力には筋力はあまり関係ないので、結果的には第三次世界大戦の後よりは腕力は上がっているのだが。 そんなウィリアムの後ろに、立つ影があった。 「騎士団長であるか」 「名前を呼んで欲しいものだが……まあいい」 背後に立つ騎士団長もまた、高校生ほどになっていた。とはいえ、ウィリアムとは違い、それほど見た目が違ってはいない。それだけ騎士団長が若作りだという事なのだろう。 「何の用であるか」 「聞かなくても分かるだろう?今何がどうなっているのか」 確認するように騎士団長は視線を投げかける。 「ということは、そちらでも起こっているのであるか?」 「ああ、たまたまウィンザー城にいたのだが、それでもこの魔術からは逃れられなかったようだ」 「ウィンザー城クラスの魔術防壁でも防ぎ切れなかった、という事であるか?」 「ああ。とはいっても、今のところ実害は無い様だ。ただ、原因に関しては今も調査中だ」 ウィリアムは、軽くうなずくと、振り返る。 「では、何故ここに来たのであるか?」 「ああ、それは簡単だ」 いつの間にか騎士団長の手にはロングソードが握られていた。おそらくフルンティングと呼ばれる霊装だろう。 「普段なら出来ない事をしたいだろう?」 「手合わせはいつでもできるであろう?」 ウィリアムの言葉に、軽い調子で騎士団長は返答する。 「まあ、確かにそうといえばそうだが、『聖人』の力が戻っているお前と勝負したいからな」 (ブリテン・ザ・ハロウィンの時に剣は交えたはずであるが……殺し合いではなく勝負をしたい、という事なのであろうな) ウィリアムは頷いて、 「では、行くとしよう」 騎士団長と共に郊外へと、家の屋根を飛び移りながら移動していった。 第三次世界大戦を潜り抜けても、やっぱり浜面仕上の人生は変わらなかった。いや、元に戻ったと言うのかもしれない。 「遅い、はまづら」 「超遅いですね。やはり浜面は超浜面ですね」 「結局、そこがダメなんだよね」 「……大丈夫。それでもはまづらははまづらだから」 待ち合わせの時間には数分遅れただけなのだが、それでこの対応である。一応、滝壺は擁護してくれているようだが、意味がさっぱり分からない。 (『アイテム』再結成なんて、言わなきゃ良かったかもなぁ……) などと考えても、現実は変わらない。パシリなのは相変わらずだった。 「で、今日はなんで俺を呼んだんだ?」 「買い物に行くから、荷物持ち」 麦野に一瞬で返答された。 「麦野一人で持てるだろ」 一見麦野の手は細く、非力に見えるが、これでも浜面並、もしかすると浜面以上の腕力がある。 いくら浜面がパシリポジションだと言っても、荷物持ちが必要だとは思えないし、そもそも女性の買い物に男がついていくのもどうかと浜面は思うのだが…… 場が凍った。 「……超本気ですか?」 「……結局、やっぱりダメダメだね、浜面」 「……はまづら……」 麦野以外の全員に、まるでゴミをあさるホームレスを見るような目を向けられた。 「え?何でだよ……」 どういうことなのか分からない。 「もしかして、浜面は超鈍感なんですか?」 絹旗に質問された。 「分かった分かった、ついて行けばいいんだろ」 刺すような視線に耐えられないので、浜面は反論を諦めた。 「それじゃ、行こうか」 麦野が立ち上がり、絹旗、フレンダ、滝壺も続いて立ち上がる。 そしてそのまま立ち去ろうとする。 「っておい!代金は!?」 麦野は振り返って、 「よろしく」 そのまま店の外に4人で出て行った。 机の上には意外と多い量の料理が置かれている。フライドポテトなど、軽い物が多いが、それでもこれだけあると…… (俺の財布が……) そんなに浜面は金持ちではない。財布に与える影響を考え、膝をつきたくなる。 が、浜面には別に気になることがあった。 (なんか今日は違和感を感じるな……なんか一人多いような……っていうか全員同じ年だっけ?まあいいか) 結局どうでもいいという結論に達し、また怒られる前に代金を支払って麦野を追いかける事にした。
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♪~放課後 音楽室~♪ その日は午前中で授業が終わった。 先日起きた「男の怪事件」について職員会議を行うらしい。 学生達は強制的に帰宅させられたが、さわこのおかげで音楽室で練習することができた。 律・澪・紬は梓と憂の勝負を盛り上げるべく、各々必死に練習をしていた。 また、憂・梓は互いの持ち駒を探り合うかのように、 時折自分の練習を中止し相手の練習を偵察するようにしていた。 律「いっや~、午前中で授業が終わってくれて助かった~。 おかげでこの曲と歌詞、マスターできたもんな!」 (ちょっと切ない歌詞だったけど…) 憂「じゃ~ん…と …そうだね、私もなんとか勝負できるくらいにはなってきたよ。」 (律さんはこのリズムでよし、澪さんは…梓ちゃんに合わせるだろうからこのくらいかな? 紬さんは…途中から悶絶しはじめるだろうから…このくらい?) … ジャーン!ララッ! 澪「梓!すごいじゃないか…!」 (あずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃん、 その指先をペロペロして、ちゅぷちゅぷして、私のアソコに挿入したぃぃ! ああぁ!私の…澪の梓っ!!) 梓「よし、リズムキープは完璧!チューニングもベスト!」 (これで唯先輩を追い出せる… そして…憂と組める!!) … 日も暮れ始め、西日が音楽室を照らす… 律「それじゃ、はじめるぞ~! Lost my music!」ワクワク チャンッ! チャン! チャンチャンチャンチャン!!! ギャァァァ-ン! 律のシンバルでカウントダウンが始まり、 梓と憂のギターで戦いの火蓋が切られた! ズッタン ズッタン ッタン! ッタン!… … 梓(このリズムなら…イける!) ジャカジャカジャジャジャジャ… 憂(ここはまだこのリズム…ここから先、きっと律さんはペースを上げる!) ズッタッ! ズッタッ! ズタタタタタッ! 律(一緒に観たシネマ、ひとりきりで流す…か…澪。) ズッタ! ッタ! ッタ! タタタタタッ! 律(大好きな人が遠い…ここの歌詞…嫌いだな…) ッタンッ!ッタン! タ! ッタ! 梓(えっ!?ペースが上がった!) 憂(やっぱり…予想通り) ジャジャジャ…キュゥーン! 澪「おい!律、飛ばしすぎだぞ!!」 (私のあずにゃんがついていけてない、負けないで!あずにゃん! でも、負けそうになって悔しがっているあずにゃんの顔もたまらない!) 律(くそっ…澪っ…) 律はこみ上げる涙をグッと堪え、苦痛と感じた歌詞の部分を早く終わらせようと ペースを上げた…ドラムを叩く音は強く、そして悲しくも聞こえる。 …それは澪に届くことはなかった。 … タンタンタンタン! タタンタン! ズタタタタン! 律「Hi!」 ジャーン…キュァァァ…アンッ …張り詰めた緊張から解き放たれ、演奏を終えた二人は肩で息をする。 梓「ハァ… ハァ…」(…ふぅ… ふぅ…途中から全くついていけなかった。) 憂「ふっ… はぁ…」(ぴったり合わせることができた…) 澪「律!ちゃんとリズムを合わせないとだめじゃないか!」 (あずにゃんの吐息、あずにゃんの湿った吐息!…直接吸いたいよぅ! むちゅって口付けして鼻息をかけあって、もう!もう!!) 律「ご…ごめんっ!つい調子に乗っちゃって」アセアセ (やっば…マジ泣きするところだったわ…) 梓「澪先輩、いいんです…律先輩に合わせられなかった私がダメだったんです。」 (次は澪先輩の番…そこで挽回すれば…) 澪「梓…」 (あずにゃん、くやちかったよね?"みお"って呼んでいいんだよ? あずにゃんをなでなでして、ぎゅってしてなぐさめたいよぉ!) 紬「この勝負…唯ちゃんの勝ちね。」 … 連曲で勝負できるほど、彼女達に体力・精神力は無い。 紬はそれを気遣い、曲の間にティータイムを入れることにした。 律「ぷっはぁ~~!一発ヤったあとの一杯ってウマいね!」 憂「も~、りっちゃんたらオジサンみたい♪」 澪「ったく、下品な言い方だな…」 (あずにゃんと1発じゃなく体中の水分が出来るほどヤりたいよぅ! 一緒にクンニしあって、お汁を飲みあったりしたいぃぃぃ!!) ほのぼのとした空気でテーブルを囲む4人。 しかし、端の方で小さく音を立てて紅茶をすする少女の姿があった。 落ち込んでいる様子はなく、憎悪が満ち溢れている。 澪「おい、梓もこっちに来いよ!」 (あずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃん! 膝の上にちょこんと乗っていいんだよ?髪の毛くんくんしてあげるからっ! ツインテールの毛先を使って、私の体を這わせて遊びたいぃっ!) 見つめ合うふたり… 梓「ズズッ…」パチン いつになく真剣な表情をしている梓、ウィンクを澪に送った…アイコンタクトだ。 澪は全てを読み取り、コクリとうなずいた。 澪(あずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃんあずにゃん! あずにゃんあずにゃんあずにゃんがウィンクしたよ、コレって求愛よね?だよね? 私をみおのペットにしてくださいにゃ~ って言う合図だよね! …先手、取らせてやるか。) … 澪「次は、私の番だな…この曲はギターが始まりだから、梓…たのむよ。」 (あずにゃんお願い!みゅーみゅー鳴いて!) 澪「唯は私が弾いた後に始めるんだ… Link!」 梓「は…はい!」 (この勝負は貰ったも同然、絶対勝てる!) ジャーン… ジャーン… キューンキュラララ… ヴゥ~ン ヴヴヴヴン ヴン ヴンヴン 憂(先手を取られた。さっきのアイコンタクト…やっぱり…ね。) … ヴゥ~ヴヴヴヴヴン… キュァ~ンキュラキュラキュラ 澪(よし、梓に合わせることができてる…このまま… このまま体も一緒にあわさりたいよぉ~あずぅぅぅ!!!) 梓(上手くできてる、澪さんのペースに合わせることができてる!!) キュララ~キューキューン 憂(少しずつ、少しずつ澪さんを誘って… 澪さんのペースを上げて…下げて…そして私のリズムに乗せる!) ヴヴヴヴ ヴン ヴン ヴン 梓(澪先輩のテンポが少しずつ不変になってきた… 併せづらい…っ!) キャァーン キュン キュン キュン キュン 憂(澪先輩…少しずつ私のリズムに合ってきた… あずにゃん!このまま勝たせてもらうよ。) ヴン ヴヴン ヴン ヴン… 澪(梓…ペースがわたしとぴったり合っている。 …コレって両想いってことだよね!?あずにゃ~ん!) キュラ キュンキュン キュン キュン… 憂(よし…誘い込みは完了… 梓ちゃんと澪さんはもう合わせることはできない!) … ジャーン ジャッ ジャッジャッジャジャーン 澪(ふぅ、なんとか梓に併せることができかな♪ このまま、あずにゃんはお持ち帰りにゃ~!) 梓「はぁ… はぁ…」 (だめだ…全く併せられなかった。) 憂「ふはぁ… ぁ…」 (澪さん、完全に私の方に乗っていた…) … 律「み~お~、戻ってこ~い」 澪「」ハッ 梓「澪先輩…どちらがイチバン合っていましたか?」 (これも私の負け…) 澪「ご…ごめんっ!…わからなかったっ!」 (だって、あずにゃんのことばっかり考えていたから! 膝の裏、ふともも!ぺろぺろしたいっ!! 後ろから見ていると、あずにゃんのかわいいお尻も見えるしなで回したい! ぷりぷりしたお尻が左右に動くなんて、目の前にエサがあるようなもんじゃない!) 律「へっ??」 澪の意外な返事に戸惑う律、いつも頼っている澪がこんな返事をするとは思わなかったのだ。 判定は、幼い頃から音楽と触れ合っていた彼女に委ねられた。 紬「…残念だけど、これも唯ちゃんの勝ちね。 梓ちゃん、途中で変わったテンポについていけてなかったもの…」 梓「…」 … 再度休憩を挟み、最後の曲が始まろうとしている。 紬「最後は私の番ね…うふふ… 梓ちゃんと唯ちゃんの為に、弾きながら歌いま~す♪」ぽわぽわ 律「澪っ!」ガシッ 律は澪を羽交い絞めにした。 澪「ななななな…何するんだよ、律!!」 (あずにゃ~ん!助けてよ!) 律「だって、この曲聴いたら…澪逃げるだろうから、捕まえておかないと…」ニヤリ (あ~っ、久しぶりの澪の香り…こりゃええわ~) 紬「魔法のおしごと いっきま~す♪」ニコニコ トゥッタカタカカカ… ズッチャ! ズッチャ!ズッチャ! ズチャッチャ~! トゥラララッ ラッラッ チャッチャチャ~♪ ミャゥミャゥ ワゥワゥ 器用にエフェクトを鳴らし、キーボードを弾く紬。 カタタンッ!カタタンッ!と、楽しそうに弾いている。 キュラララッラッラッラー 梓(これ、何のアニソンだろう?) ジャジャジャジャッジャジャー 憂(これは引き分けかな?) 紬「恥ずかしいって気持ちって、本当に魔法ね~♪」 澪「お、なんか良い曲じゃないか?」 (まるで…私のことを歌っているみたいだ…///) … 紬「…だけ~どね~♪ 言え~な~い~よ♪」 (いよいよ…サビに入るわよ!) 紬「わたしのお○○○(パパパン)に あついせ○○○(パパパン) あふれるくらいにいっぱいください な~んて~♪」 (わたしって大胆///) 梓「!?」ビクッ! ポンッ! ガタンッ! 梓は突然すぎる歌詞に驚き、ギターを落とし…顔を紅潮させた。 そして縮こまり、プルプルと体を細かく震わせている。 梓(何あの歌詞!?あんなのアリなの!?発禁ものじゃなの!!?) キュラララ チャカチャカチャカチャカ 憂(ふふ、梓ちゃんたらウブなんだから♪) 澪「…こんなのはずかしぃぃっ!」ジタバタジタバタ (赤面しているあずにゃんかわいいよぅ! あずにゃんのお○○○に、私の熱い指を入れたい!挿れたい!) 律「ほら~、逃げるな逃げるなw」 (ああ~、澪の体やわらけぇ…) … 演奏が終わった。 ギターの前に座り込む梓の前に立ちはだかる憂。 "死ね"と唯に言われたあの日の目、その刺さるように鋭く冷たい目で梓を見下した。 憂「あずにゃん…何で軽音部に入ったの? いつもあずにゃんが言っていたように、今日は特にみんな一生懸命頑張って練習したんだよ…? りっちゃん、みおちゃん、ムギちゃんに申し訳ないと思わないの?」 梓「う…ううっ グスッ」 ポロポロと瞳から落ちる滴、次第に溢れてくるその滴をブレザーの裾で必死で拭う。 止まらない涙…何度も何度も拭い、梓の瞳はウサギの眼の様に赤らめた。 憂「以前"憂と組ませてください"って言われたけど、この程度で組もうなんて… 憂がかわいそうだよ!」バンッ! 澪「唯!言い過ぎだぞ!」 (あずにゃんの涙ちゅちゅしたい、あ…もう少しで鼻水もでるかな? あずにゃん抱きしめてあげたいよぅ!あぁ~っ!あずにゃ~~~ん!) 憂「あっ…ごめんっ! そこまで言うつもりなかったんだけど…あずにゃん…ごめんなさいっ!」 (これで再起不能かな? クスッ) 梓「いいんでず… グズッ、唯ぜんばいのほうが…上だったんですがら… でも、私からの勝負も受けでぐだざい…グジュグジュ」 澪「梓…」 (あ、鼻水でたよ、あずにゃんの鼻水ぅ!じゅるじゅるしてあげたい! あずにゃんの歪んだ顔、これは至高のオカズだよ~!) … ガサゴソ… 梓は自分のスクールバッグを漁り、1枚の譜面を出した…曲目は「God knows...」 あのリズム・テンポを人間が奏でることはまずできないだろう。 梓「これをどちらが上手く弾けるか…それで決着にしませんか?」 ぺらっ 律「あ~、これ…やめとけ。人間が弾ける曲じゃない。」 (梓…かなりマジになってる!) 律が珍しく真面目な声で答える…。 憂「…やるよ!」 (梓ちゃんに止めを刺さないといけない…) 律「!?」 (マジかよ…) 澪「ふむ…律の言うとおり、これは非常に難しい… 日も暮れたことだし、互いの練習含めて決着は明後日にしないか?」 (あずにゃ~ん、わたちが手ほどきしたげるよぉ~! お手手さわり放題、密着し放題!あずにゃんの髪の毛くんくんできるぅ!) 梓「そうですね…」ギロッ (絶対に…この曲では負けられない、私の十八番でもあるこの曲…) 梓のその真っ赤に染まった瞳で憂をにらみ付ける。 もはや子猫という名前はふさわしくない…血に飢えたコウモリと言うべきだろう。 憂「ひっ!」 普段あまり同様しない憂も、このときばかりは血の気が引いた。 … ♪~夜 平沢家~♪ 憂「ただいま~…」 し~…ん 憂(よし、お姉ちゃんはまだ起きていない…少し練習してみよう。 譜面は… …何これ!? お姉ちゃんのギター、ボロボロになっちゃうかもしれない… …でも、梓ちゃんに勝たなくちゃいけないんだよね… ギー太… ボロボロにしちゃうけど、許してっ!!) … カチャカチャ… インターネットでサンプルを視聴した憂は愕然とした。 自信は無くなり、憂の表情は徐々に青ざめて行く。 キャンキャンキャンキャ キュラララ キャンキャンキャラララ ララララララッ! キャンキャンギャーン! 憂(テンポが物凄く早い…リズムも上手く掴めない! これ… …ヒトが弾ける曲なの!?) … ギー太を肩に下げ、練習を始める。 キャンキャンキャンキャ キュラララ キャンキャンキャラララ ララララララッ! キャンキャンギャー… スパッ 憂「つっ!!」 憂の指先は弦で切れ、指先が赤く染まる。 しかし…痛みに負けず弾きつづける憂。 ギャギャギャギャギャ… パッ…ピーンッ! ツッ…! 憂「痛っ!」 荒々しく扱ったせいか、 追い討ちをかけるようにギターの弦が切れ…憂の頬をかすめた。 憂「ギー太、ゴメン…こんな使い方したくなかったんだけど… 梓ちゃんに勝たないと、お姉ちゃんがかわいそうな目に合っちゃう。 だから…チカラを貸して!」ぎゅっ 憂の谷間に強く強く挟まるネック… ギターからの返事は無いことは承知している。 しかし、憂は必死でギターに懇願した…姉の為、唯の為に…。 … …2時間後… ジャジャッ… ふと大事なことを忘れていた…それは晩御飯。 憂「没頭して…晩御飯作り忘れちゃった…今日は出前でいいよね♪」 トントントン 憂「憂、起きて…もう夜になっちゃったよ?丸1日寝ちゃって…もう…」 唯「むにゃ…うーいー?お姉ちゃん?」 (あれ…?1日中寝てた?) 憂「もー、何寝ぼけているの…憂ったら。 晩御飯食べようか、今日はピザ取ったんだよ」 (もうちょっと…かな?) 唯「やった~、ピザだ~♪」 (憂?あれ…目の前にいるのは私?憂?) 憂(あんなにはしゃいじゃって、お姉ちゃんかわいい///) … -リビング- 憂「ピザ…まだ来てないや… それじゃ、ピザが来るまで宿題やっておこうね」 唯「あれ?宿題なんてあったかな?」 憂「とぼけたってダメだよ、お姉ちゃんはなんでも知ってるんだよ♪」 コツンと唯のおでこを軽く小突く。 唯「うー…」 憂「ほら、こことここ、あと…この教科書のここ」 (昨日の復習と、今日の分、そして明日の予習、これだけやれば大丈夫だよね。) 憂「それじゃ、お姉ちゃんといっしょにやろうね」 唯「えへへ…ありがとう」 … 唯「おなかすいたぁピザまだ~? …うーいー、あいすー」きゅるるる 憂「!?」 (え…気づかれた?) 憂「う…憂ったら、まだ寝ぼけているの~? ほら、そこの姿見で自分を見てみて?」 唯の両肩に手をかけ、姿見へと移動した。 両肩に手を置かれた少女の髪型はショートポニーテール、 寝起きということもあり、ボサボサしている。 唯「???」 (なんで、憂って呼んだんだろう?) 憂「ピザ屋さん、もう少しで来ると思うからガマンしてね。 ここは…ほら、こう解けば…っと」カキカキ 唯「わ~、ほんとだ!!」 (でもこの問題…なんか昔にやったことあるような気がする?) … ♪~食事中~♪ 久しぶりの出前、いつも頬張っている憂の料理とはまた異なり、 二人は舌鼓を打つ。 唯「あ、お姉ちゃんほっぺたにケチャップついてるよ?」フキフキ 憂「憂も、ほっぺたにチーズついちゃってる」そっ… ぺろっ…ちゅっ… 舌を尖らせ、ゆっくり頬を舐め回す。 憂「よし、これで取れた…と。 憂、顔を真っ赤にしてどうしたの?? ぼーっとしていると、ピザの具が落ちるよ!?」 唯(ぽ~…)ハッ パクパク 憂「もう、憂ったら♪」 (キスだけで赤くなってるお姉ちゃん、今晩はどうなっちゃうのかな///)ドキドキ … 「食後のデザート一緒に食べる?」 憂のその甘い一言につられた唯がいるところは…憂の部屋だった。 ぺちゅ…くちゅっ… 憂の部屋に響く、濃密な粘液の音… 唯「ふぁ…んふぁ、ふぁっ!」 喘ぎ声は吐息とともに熱く溢れ、時折小動物の様に鳴く。 唯「おねえちゃ…ん… お風呂まだなのに…そんなところ舐めたら汚いよ… んんっ!」 ちゅくっ… ぷちゃ 憂はいつものように、唯の桃色の肉壁を舌でかき回す。 憂(寝汗いっぱいかいたのかな?いつもよりもお姉ちゃんの匂いが強い…んっ) くちゅっ、ぷちゅっっ! 憂は自分の右手で秘部をまさぐり、花弁を弄び… そして、自分のデリケートな部分へ指を入れ掻き混ぜ始めた。 くちゅ…くりゅっ! 憂「はぅんっ!」ビクンッ!! (あっ…間違ってイチバン感じるところ触っちゃった…) 唯「お姉ちゃん、大丈夫!?」 憂「ん…ふぁ…憂、大丈夫だよ…」 憂は止めることなく、唯のクレバスに沿って舌を這わせる。 ぬるっ… ぬりゅっ… ちゅるりゅ… 唯「ふあっ… お姉ちゃん、そんなにゆっくり舐めたらだめぇっ!!」 弱い電気を走らせたように体をぴくんっ!ぴくんっ!と動かし、悶える唯。 ちゅ… 憂「どう…?気持ち良い…かな??」 唯「ん~…良くわかんない? くすぐったくて、アソコがなんかぽかぽかしている気がする。」 6
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亀の横について腰で相手の肩を抑えて絞める技です。 腰絞めともいいます。 試合での使用例1 試合での使用例2(1:00過ぎ相手が背負いで亀になったところに) 試合での使用例3(5:00過ぎ相手が背負いで亀になったところに) 不用意に相手の脇に手を入れると巻き込み後ろ袈裟で反撃を食らいます。 横絞めからの変化 →横絞め返し →横絞めエビ固め 山下泰裕闘魂の柔道―必勝の技と心
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マイスター4P@実況 ある日のプトレマイオス。 ティエリアがコンピュータールームを覗くと、 なにやらマイスター三人がPCを囲みわいわいやっていた。 「何かあったのか。」 ティエリアがPCに近づくと、ロックオンが楽しげに言った。 「ああ、ティエリア。ちょうど良かった。 刹那がヴェーダに搭載されてるサブプログラムを発見したんだ。」 「サブプログラム?」 「うん。どうやら、僕達のあらゆる行動や生活態度について検証するプログラムらしい。」 カタカタとキーボードを操作する刹那の後ろで、モニターを覗きながらアレルヤが言った。 「そうか・・・。それは初耳だな。 だが、今までの俺達の行動がどんな風に評価されているのか、 大変興味深いところではある。」 「いやな予感がするけど・・・ね。」ロックオンが苦笑しながら言った。 「同意、ですよ。」とアレルヤ。 「…。俺はガンダムだから…問題ない。」刹那は表情を変えずにキーを打っていく。 ティエリアは咎めるような目で3人を睨みながら言った。 「君達がいかにマイスターとして不適格な行動をしているか、 客観的な検証が必要だとは前々から思っていた。 いい機会だ。これで君たちも自分をきちんと省みる事が出来るだろう。」 カタッ・・・。刹那がキーボードから指を離した。 「おっ。出るぞ」全員で覗き込む。 各スレッドのタイトルがぱっと現れた。 「ああ・・・俺のスレ、悲惨だ・・・。死亡予測が多すぎる・・・。ハロが嫁になってるし・・・。」 ロックオンが頭を抱えた。 「僕は二重人格を見抜かれてるよ・・・。ハレルヤがちょっと出てきただけなのに・・・。 しかも全裸に蝶ネクタイでも爽やかって…一体どういう事だろう」 アレルヤは身震いした。 「・・・俺は、名前を笑われてる…。厨二病ってどういう意味だ…。 別に名前にこだわりなんてないのに…。ていうかマリナって誰だ…」 刹那は真剣に考え込んだ。 ティエリアは勝ち誇ったように三人を見回した。 「これで分かっただろう。君たちはマイスターとして適性に欠けるところがある。 ずっとそう思ってきたが、やはりヴェーダもそう判断したらしい。」 三人の顔色が変わった。 「ティエリア、そういう言い方は良くないよ。みんな一生懸命努力しているんだから」 「そうだそうだ。お前はいつも固すぎるんだよ。」 「…ティエリアの評価、見てみよう…。」 刹那がマウスをクリックした。モニターにティエリアのスレが映る。 <ティーたんはイオリアがお花から作った妖精さん> <なんでピンクのカーディガンなんだ?でもあのダサ加減がエロ可愛いw> <いつデレがくるか、裸で正座して待ってるお!> <ティエリアは俺の嫁だからお前にはやらん> <だが、阻止> <ティエリアが女とヤってる姿が想像できない。でも男となら(ry> <ティーたんの乳首を泣くまでこね回してやりたい> <あのケツまじでえろくね?> <ぬこ耳装着してにゃんって言ってほしいお!!> 「……。」 ぴきーんと場の空気が凍りつく。 「な、何だこれは…!」 ティエリアが微妙な空気を切り裂くように怒りの声をあげた。 「こんなのは客観的な行動評価などでは断じてない!ただの願望じゃないか!!」 「まあまあ。落ち着けよ、ティエリア」ロックオンが諭すように言った。 「そうだよ。ティエリアらしくもない…」 「……。つまりお前の評価はこういう事だ」 「ふざけるな!!俺はこんなものは認めない!!」 ティエリアは怒りで真っ赤になり、今にもPCをぶち壊しそうな勢いだった。 だがその後ろで、三人が顔を見合わせてにやっと笑ったのに、 ティエリアは気付かなかった。 「でも、僕は結構当たってると思うな。」 「なんだと?貴様頭がおかしいんじゃないのか?アレルヤ!」 ティエリアがアレルヤに詰め寄った。 「だから~。落ち着けって、ティエリア」 ロックオンがニヤニヤ笑いながら、ティエリアの後ろに忍び寄る。 「な…何をする!」 ロックオンが後ろから羽交い絞めにして、ティエリアを押さえつけた。 「あ…。新しいレスが来た…。」 刹那がモニターを見た。 <まい☆すた絡みキタ───(゚∀゚)───!!!> <実況誰かよろ> 「何が実況だ!!ふざけるな!!そんなプログラムはさっさと消去してやる!!!」 暴れるティエリアをアレルヤとロックオンが二人がかりでデスクに押さえつけた。 「だって…さあ。実は納得なんだよね、俺達も」 「ロックオン、何を言ってる!?」 「まったくその通りだよ、ハレルヤ…。やっぱり考える事はみんな同じみたいだね。」 「…すべてのAIが同じような意見を書き込んでる…。 どのスレを見ても、ティエリアはエロいという事で決着しているみたいだ…。」 刹那が画面をスクロールさせながら冷静に言った。 アレルヤがモニターを確認する。 「というか、むしろティエリアのスレってエロについての考察しかないよね。」 「ぐ……ッ!」 デスクに押し付けられたまま、ティエリアは屈辱に唸った。 「──という事で、ヴェーダも期待してくれてるみたいだから… やるとするか、アレルヤ!」 ロックオンがアレルヤに目配せした。 「そうだね…。ハレルヤ…頑張らないとね…。」 アレルヤが頷いた。 「ちょっと待て!一体なにをする気だ…!」 いやな予感が体中に広がり、心拍数が跳ね上がるのが分かる。 「新レスだ…」 <怯えるティーたんエロカバエエ(;´Д`)ハァハァ> 「ヴェーダは…続行を推奨している。」刹那が無常に言った。 「だ…だから、な…何をだ…!」 額に冷たい汗が滲んできた。 「おいおい。何かわいこぶってんだあ? お偉いティエリアさんは何でもご存知だろうが!」 言いながら、ロックオンの手が尻を軽くさすった。 「……ゃあ…っ!」 思わず声が出てしまった。 「…何だよ。ちょっと触っただけなのにエロい声出しやがって…。」 ロックオンの声が上ずる。 「やっぱり、ヴェーダの解析は正しい。ティエリアはこういう事が大好きみたいだ。 さすがだね…。でも、強引にやるのはいただけないな…。」 アレルヤが溜息を吐いた。ティエリアはアレルヤの良識に期待した。 <アレルヤのへタレっぷり情けねえwww> <それがアレルヤクオリティですよ旦那。> <ハレルヤに代わって鬼畜攻めすればいいのに> <そうか?むしろあのへタレっぷりには毎度感心させられるけどな。> 「…だそうだ。アレルヤ…ハレルヤってなんだ?」 刹那がアレルヤに問い掛けた。 ぶちぶちっ。血管が切れる音が聞えるような気がした。 アレルヤは顔を怒りに引きつらせた。 「誰がへタレだよ!!言っていい事と悪い事があるだろ!! 僕はへタレなんかじゃない!あなたたちには分からないさ。 漂流するものの気持ちなんて…!!」 <アレルヤキレた~> <キレてないっすよwwてかいっつも急にファビョッてね?> ぴくぴく。アレルヤは完全に頭に血が上ってしまった。 隣で腹を抱えて笑うロックオン。 「くくく…。ヴェーダの解析はすごいなアレルヤ。 完璧に見抜いてるぜ…!お前の中身をよ…」 <何エラそぶってんだか。お前はハロと掘りあってろっての> <誰もリーダーとか思ってないのに、イタイよねこいつ。ぷっ> <でも腐人気は一番なんだよね。> <ロックオン>刹那=アレルヤ>>>>越えられない壁>ティエリアって感じ?> <まじすか。我らがティーたんは人気ないのか…ハア…。> <逆に考えるんだ!むしろ腐にいじり倒されなくていいジャマイカ!!> ロックオンの笑顔が凍りついた。 「何わけわかんねえ事言ってんだか知らないが… ヴェーダの野郎…!誰がなんと言おうとリーダーは俺だ!やってやるぜ…!!」 怒りに震えるアレルヤとロックオンが、連携プレイでティエリアに襲い掛かり、 カーディガンを剥ぎ取って床に投げ捨てた。 ティエリアは抵抗して悶えたが、決して逃げ出すチャンスを与えない。 カタカタ…。 [ティエリアのカーディガンを脱がしました] 刹那が横目でその様子を見ながら打ち込んだ。 <実況キタ───(゚∀゚)──!> <でも実は見えてたりするわけだが> <どうでもいいよそんな事。現場の人、お願いします> [了解しました。ティエリアすごく嫌がってる] <嫌がるティーたん…。萌えたw> 冷静に実況する刹那の隣で、ロックオンとアレルヤが黄色シャツに手をかけた。 「おい…!やめろ…!!俺は男だぞ…!」 [俺は男だって言ってる…。本当に嫌なのかな?] <女にしか見えない件について> <だが通報しますた> 「おらぁっッ!!」 ロックオンが黄シャツのボタンを引きちぎった。 ティエリアの胸が丸出しになる。 「……!!」 すかさずアレルヤがシャツを脱がす。 ティエリアの白い肌があらわになった。 <エロい!!SUGeeeeeeee!!!!!> <ちょ…すげえピンク> アレルヤがティエリアの突起を規則正しく擦った。 「…ぁ……ッ!」 ティエリアの口から甘い息が漏れる。 「感じてるんだ…ティエリア…。」 アレルヤが耳元で囁きかけた。 「…だ…誰が…ッ」 「可愛くねえなあ…。素直になれよ。すげえ好きな癖に」 ロックオンがティエリアのベルトに手をかけ、素早く抜き取った。 <現場の人!ティーたんの乳首どうなってる?> [すごく立ってるみたいだ…。ちょっと赤くなってる?吐息がすごいよ] <うはああ!!うpうp!!> [携帯ないのでむりぽ。] ロックオンがティエリアの股間に手を伸ばした。 「…なんだよ。もう勃ってるじゃねえか。やっぱりヴェーダの言う通りだな」 そのまま上下に膨らみを擦る。ティエリアの声がさらに熱を帯びてくる。 「…うあぁっ…。ヴェ…ヴェーダは…あう…間違ってる…ッ」 ロックオンはグッと手に力をこめた。 「ぐ…ああッ!!」 ティエリアが不意に与えられた苦痛に顔を歪める。 「ロックオン…ダメだよ」 アレルヤが乳首への摩擦を続けながら咎めた。 「へっ!知るかよ。いつもヴェーダヴェーダって言ってつじゃねえか。 なあ、ティエリア!!なのに自分に都合の悪い事には間違ってるっていうのかよ?」 ロックオンが手をぐりぐり押し付けながら言った。 <ロックオンいい人だ…> <ちょっと見直した…> 「…ぃ…痛い…!う…」ティエリアがたまらず悲鳴をあげる。 [ティエリアがすごく痛がってる。なんか心配だよ…。]刹那が打ち込んだ。 <なにい!?それはいけないなあ!!> <現場の人、助けてやれないのか?> [無理です。僕はただの実況なんだから…] <何言ってんだ!おまいしかいないだろ…!!たのむ> [了解…。やってみます。] 「ヴェーダが優しくやってやれって…言ってる」 刹那が横の男たちに語りかけた。 ロックオンが刹那に目をやる。 「ちッ…わかったよ!ティエリア、良かったな。やっぱりヴェーダはお前の味方だ。」 そういうと、ズボンのボタンを器用に外し、片手と足を使ってずりさげた。 [ふう…なんとかなったみたいです] <GJ!!> <GJ!おまいは最強の戦士だ!!> [あっ!!ティエリアのパンツが脱がされた!!!]刹那が急いで打ち込んだ。 <うぎゃやああ!!kwsk> <ついにktkr> <ああ…ティーたんが…食われちまうort> [すごい…。さっきあんなに痛がってたのに…ティエリアのすごい大きくなってる。 あんなのはじめて見たよ…もう液が出てるみたいだ…] <紫煙> <4円> [ロックオンの右手がティエリアのあそこをすごい速さで擦ってる…。] <ハアハア> [アレルヤは乳首いじりながら…後ろから足を太ももの間に入れて 玉を刺激してるみたい…] 「…ぁああッ…ぁぁぁあ…う…っぁああ」 ティエリアの喘ぎが乾いたPCルームに響き渡った。 顔が紅潮しているのがはっきり分かる。 [ティエリアすごく気持ちよさそう…。声がめちゃ近くで聞える。 俺…もう我慢できないよ…ちょっとごめん] 自慰をはじめる刹那。 <エロいな、ティエリア> <いつもこうやって喘がされてるわけですね> <ティーたんはこうやって全ての性行為に介入するといいよ> <喘ぎ声うpしてほすい…> 「おい、刹那!何一人でやってんだよ!!」 「…俺は…実況だから…」 「?ヴェーダへの報告ってことかな…ハレルヤ…。」 ティエリアを擦りあげる音が規則正しく響く。 ティエリアの声がさらに大きくなってきた。 「っぁぁあぁ…ッ…やあっ…ぁぁあ……!も…何でもい…いか…ら…!早…く…」 ティエリアが苦しそうな息を吐きながら絞り出すような声を出した。 「どうした?ティエリア…。そんなにでかい声だして…。そんなに気持ちいいのか?」 「…ん…ッ…そん…なこ…と…!」 「ティエリア…僕ももうダメだよ…」 アレルヤが息を乱しながらロックオンの方を見た。 「はあ…はあ…ロックオン、いいかな…?」 言いながら、片手で自分のものを取り出した。 「しょうがねえなあ…。うちのマイスターは我慢が足りねえぜ…!」 「ありがとう…ロックオン…」 アレルヤはそのままティエリアの後ろに突っ込んだ。 「…くあぁあッ!!!!」 ティエリアが一際大きな声を出した。 ぴくんと体が跳ね上がる。 アレルヤはティエリアの腰を両手で掴んで、腰を動かした。 前ではロックオンの攻めが続いている。 ティエリアは気が狂いそうだった。 「ぁあぁ…!ッぁう…ああぁああ!…ぁぁああァあ」 アレルヤの突きに合わせて、我慢できずに大きな声が出てしまう。 「…も…ダメだ…!」 刹那がイスに座ったまま、うめいた。 怒張が発射直前の様相を呈している。 「ティエリア、刹那がイキそうだってよ…。飲んでやれ、お前…」 「…い…嫌…だ…!」 「ふーん…。そんな事言っていいのかな…?」 ロックオンはアレルヤの腰に手をやると、動きを止めるように促した。 「お前がこれを好きな事は分かってるんだ…!ヴェーダの解析は完璧なんだからな。 言うとおりにしないともう続けてやらねえぞ…!!」 「う……」 ティエリアは一瞬身を固くした。 そんな事、望むところだ!とでも言い出すかと思ったが、 ティエリアは意外にも目を潤ませてふるふると首を振ると、刹那の方にかがんだ。 「…驚いたね…。まさか本当にやるとは…」 アレルヤが埋め込んだまま、ティエリアの動きを見つめている。 「ティ…ティエリア…」 どんどん近づいてくるティエリアの唇に、刹那がぶるっと身震いした。 「うッ…!」 遂に、ティエリアが刹那を口に含んだ。 ぎゅっとティエリアの後ろがきつくなったのを、アレルヤは敏感に感じた。 我慢できずにアレルヤも腰を動かすが、彼もまた爆発寸前だった。 それを見て、ロックオンは自分の物を出して、スタンバイした。 ティエリアが上下に顔を動かした。 「くっ…!!ううっ!!!」 わずかな刺激で、刹那は達し、ティエリアの口中に精を出してしまった。 ティエリアの口元から刹那の白濁がつつと漏れる。 ティエリアがごくっと飲み込んだのが分かった。 [いってしまいました。すごく気持ち良かったです。舌が最高でした。 しかも飲み干すなんて…。こんなのは生まれて初めてです] すぐにキーボード打ち込んだ。 <うらやましいぜちくしょう!!> <俺もやりてえ…!!> <くっそおおお!こっちには相手なんか居ないって言うのに…! あれ?目から水が…。> アレルヤが腰を打ち付ける音が響く。 「ああぁぁぁぁあああ…ッ!!」アレルヤが叫び声をあげて硬直した。 [アレルヤが今いきました。中に出したみたい…。 ティエリアの体がすごく赤くなってる。 エロいよ…。本当に…。今、抜いて…うわすごい…。 穴から白いのが垂れてきてる…] <も…もう駄目だ…いってくる…宇宙の果てまで…止めないでくれ…。> <おい早まるな!だれか衛生兵を呼べえええ!!!> <ラジャーです。中佐!!> [アッ!!!ロックオンが今入れました。 ぶちゅって聞えた…!すごい勢いで突いてる。ぱんぱんって聞えてきます…! 痛くないのかな。 ティエリアがまた喘ぎだしました。] <なんですとおおお!!!!???> <写メ!!せめて声うp!うpしてくれえええ!! 生殺しoひおsどうあっくわせIPふじこ> [無理です。吸いません!今アレルヤが前を擦ってます。 すごいアンアン言ってる。 顔がすごく気持ちよさそうです。 ティエリアの腰がすごい揺れてます!!ティエリアのがすごい大きくなってる。 実況ヘタですいません] ロックオンのペースが速く、そして強くなってきた。 ティエリアはもう恥も外聞もなく大声を上げ続けている。 「…くっ…い…イクぞ…!!ティエリア!」 ロックオンがティエリアの腰をグイッと引き寄せ、中に発射した。 「やあぁあッあぁあああ!!」 同時に、トレミーに響き渡るような大声を出して、ティエリアが果てた。 はあはあ…。マイスター達はぐったりと座り込んで、静かに息を整えた。 「ははっ…。最高だったな」 ロックオンが荒い息を吐きながら、満足げに呟いた。 「そう…。同意…ですよ。本当に…」 アレルヤが目を瞑って答えた。 ティエリアは放心状態だったが、やがてぼそっと呟いた。 「…。刹那…。苦かったぞ…。何食べたらそんな味になるんだ。」 ティエリアが口元に白くこびりついた液を舐め取りながら言った。 その様子をじっと見ていた刹那だったが、おもむろにキーボードを打ち込み始めた。 [みんな満足したみたいです。 ティエリアも怒ってないみたい。またみんなでやりたいです] <乙…!!> <良かったよ。こっちも満足した…。> <また実況たのむ乙華麗> <やっぱりティーたんはえろ戦士だな…> 刹那はみんなを振り返った。 「ヴェーダは…ミッションの成功を…褒めてくれた…。 また頑張れ…って。」 マイスターの顔にやり遂げた満足感が浮かんだ。 ふふっ…。誰かの吹きだす声が聞えた。 それが突破口となって、誰ともなく吹き出した。 マイスターたちは久しぶりに腹の底から大声で笑った。
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The Different Would and Different Day’s: シン・アスカの場合/中編 ガチャリ、キィィ… 態と音を立てるようにして扉の取っ手を捻り、そのまま俺がいる方とは逆方向…つまり、扉がそのまま開かれる右側へと任せるように開け放つ。一秒、二秒、三秒……うん、こないな。 (今回はあのタックルは無しか…しかし油断は禁物。何時襲撃してくるか分かったもんじゃないからな…) 元々はアカデミー時代、室内探索の際に扉を開けた瞬間に集中砲火を浴びないように、と教えられた事だが…まさか軍が存在せず(近いものはあるらしいが)、銃器も一般の手に入り難くなって久しいこの国でその教えが役に立つとは思わなかった。 と、いうのも、以前あいつが来た時に一度、不用意に扉を開けた瞬間に思い切り飛び付かれた事があったのだ。その時は本人曰く「スキンシップ」だったそうだが、予想だにしない衝撃に驚いた挙句、勢いに負けて後ろに倒れ込んでしまった俺からすれば嫌がらせ以外の何物でもない。……その時の姿勢が、まるで押し倒されているような姿勢になって、マウントのまま赤面してしまったのは一生の不覚だ…。 しかも尚悪いのがその反応(あいつ曰く「かわいい」らしい…本当に勘弁してくれ)に味を占めたのか、その後も来る度に何やかんやの手段を以ってその状況を作り出そうとする事で。一回、いないと安心した瞬間に後ろから襲撃してきたからな。いや、マジで。と、いうか逆セクハラじゃないのか、これって。 …まあ、そんなかんなで。警戒を崩さずに我が借家の玄関へと入った俺は、後ろ手で扉を閉めた後も、更に警戒を続ける。と、そんな警戒網に不自然なものが移った。 (……靴が…二足…?) はてな、と首を傾げる。そこにあったのは大きめの靴が一足と小さめの靴が一足の、計二足。小さめの靴はあいつのものだとして…もう一足は… ……嫌な予感がした。まるで視聴者の大半を敵に回したかのような、そんな覚えのあるような無いような…そんな予感。 (それとも『あ、ありのままを話すぜ。最終回が放映されると思っていたらnice bortになって、放映されなかった。例え放映されたとしても、殺されて首刈られた挙句「○死ね」とか何とか言われる始末。……な、何を言っているか解らねーと思うが、四馬鹿とかデス子とかそんなチャチなレベルじゃねえ。もっと恐ろしいヤンデレの原点と片鱗を同時に目の当たりにしたぜ。』…とか?……洒落にならんな。) はあ、とその本気で洒落にならない予想に思わず大息がこぼれた。まあ人数が二人に増えようがやる事に変わりはない…ないのだが。どちらにしろ、あいつには勝てる気がしない、というのも確かで。いやいや、そんなことがあろうとなかろうと、俺が今やる事は唯一つしかない。…面倒な事になる前に丁重にお帰り願おう。 そんな強気なのか弱気なのか解らない事を思いながら、俺は引き戸に指を掛け…開け放った。するとそこには…嫌な予想が的中したような二人が、いた。 「ん~、おっかえり~v」 「え、えっと…お邪魔しています?」 …本当に、勘弁してくれ。にこにこと笑顔で元気そうに挨拶をしてくる少女と、対照的に少し戸惑いがちに挨拶してくる、気の弱そうな少年。……それを見て俺はもう一度、いや、今日だけで(前回含む)既に三回目となるその事を思うのだった… ――――――――――――――― 「……で?勝手に人の部屋に入った事に対する釈明は全く無しか、あんたたちは。」 「え、別にいいじゃない。勝手知ったる仲…って奴でしょ?」 近くのコンビニから買ってきたのか、じゃが○こ(チーズ味)を咥えながら全く不法侵入に対して悪びれない、その少女の言動に、小さく溜め息を吐く。確かに勝手は知っている…と、いうかこんな学生アパートの勝手所(=台所)なんか、大抵は入り口の目の前にあるから解らない方がおかしい。 「……あんた、合鍵はどうしたんだよ。まさかとは思うけど、型採って作ったのか?」 「ん~?そんな面倒な事する訳ないっしょ。管理人さんに「姉(のような存在)です」…って言ったら、簡単に合鍵発注してくれたけど?」 「ふ~ん………ちょっと待て。誰が姉だ、誰がっ!」 どうでもいい構えで聞いていたために思わず流しそうになったが、聞き捨てならない関係を示す単語に気付き、思い切り突っ込む。が、不法侵入を既に侵しているこの少女には、相変わらず悪びれたところは全く見受けられない。 「でも心ちゃんも、『管理人さんに妹って言ったら楽勝っした』って言ってたからつい…てへっ♪」 「『てへっ♪』ってあんたのキャラじゃないだろ。にしてもあのおおぼけ管理人…この世界でも人の邪魔すんのかよ…っ!」 関係無い事ではあるが、このアパートはアスハ亜洲羽グループ系列の所有物で、ここの管理人は同グループ総帥の一人娘、しかも榊野学園の学生で、クラスメイトだったりもする…閑話休題。 「……まあ、あんたは百歩譲って良いとしても、だ。何でこの、超絶身勝手自己中心鈍感且つ三角関係に発展した挙句、とある一定のルート以外のほとんどのルートで殺されそうな野郎まで連れてきたんだよ。」 「い、いや~あはははは…」 …酷い評である。だが、これでもまだ言い足りない―――と言外に示すかのような非難の視線を篭めて少女…西園寺世界を見遣る。その視線を向けられた世界は予想以上に酷い自分の彼氏への評に乾いた笑いを挙げて、肩を竦めた。 「く、クラスメイトだって言うのに酷いね。僕には伊藤誠って名前が―――」 「黙れ、ほざけ、ふざけんな。何が『誠』だ…言葉と西園寺、どっちにも答え出さないで二股掛けようとしていた奴が。」 ギロリ、と今度はまるで積年の敵を見るかのような眼で、尚も何か言いかけた『伊藤誠』の言葉を遮りながら吐き捨てる。どうやら、素直に口を噤んだ事からすると、少しは(それがほんの僅かなものであっても)罪の意識を感じているらしい。……反省しているかどうかは別として。 「少なくとも俺は、絶対にあんたを許さないからな。……確かに距離を置いていて、言葉の実情に気付かなかった俺もそうだけど。責任転嫁した挙句、呼び出されて暴行される寸前の言葉を見捨てた挙句逃げ出したあんたを、許してなんかたまるか!」 「……でも、その事が切っ掛けで君たちは付き合い始めたんだから、良かったんじゃ…ほら、『雨降って地固まる』っていうし…ヒッ?!」 ドッ、と誠の顔の直ぐ横に何かが突き刺さる音がした。短い悲鳴と共にパラリ、と結構質が細そうな髪の毛が数本空に舞い、少し掠めたのか、頬から血が一筋流れ出す。 「あ、悪い。手が滑った。」 …一応謝罪はしたが、それを投擲した紅い瞳を細め、無表情のまま淡々と言い放っている事からも容易に解るように、決してその通りに受け取ってはいけない。第一決して広いとは言えない部屋内で、どう手が『滑った』らナイフが飛んでくるのだろうか。 と、いうか右手に携えた予備のナイフは一体…そこまでに思い当たったのか、誠が床にへたり込む。何とか立ち上がろうと努力しているようだが立てない…これが、腰が抜けると言う事だろうか。…まあ気が弱くなくても、何の予備動作も無くナイフを投擲されたら、普通の人なら腰が抜けるであろうが。 「それとこれとは話が別なんだよ。何とか暴行される寸前に助け出せたからまだ良かったものの…信じていたあんたに裏切られたも同然に逃げ出されて、言葉がどれだけ傷付いたのか、本当に解ってんのか、あんた!」 ……返事は無い。後悔しているのか、それとも剣幕に押されてか―――その姿に、舌打ちしながら制服の袖に隠した、木製(樫の木、内側は鉄張)の鞘を取り出して、その手に持った物騒な代物を収めようとし――― 「まあまあ、シンちゃん落ち着いて落ち着いて。一年以上経った今になって、誠を締め上げても仕方ないっしょ。」 「誰がシンちゃんだ。大体あれ一応あんたの彼氏…ってまだ抜身なんだから手を押さえるなまとわりつくな、危険だっ!」 ―――たところで、後ろからいきなり衝撃が襲い掛かった。いきなりの出来事に、鞘をポトリと落としてしまう。…羽交い絞めにするという予想外の行動を見せた西園寺に、しまった…っ!と思い多少焦りながらも、その拘束を何とか振り解こうとする。 しかし、後ろから不意を突かれた事に加えて、未だナイフを鞘に収める前だったので強く振り解く事も出来ない。……いくら余り気に入らない相手とはいえ、平凡な人生を送っている女の子に下手をすれば一生残ってしまうかもしれない切傷を負わせる訳にもいかないからな。 だが。そんな俺の小さな配慮(…敢えて心配とは言わない)を他所に、西園寺は尚も両腕を抑えてくる。さて…俺がいくら元軍人で、この世界に来てからも鍛えているとはいえ、身長・体格共に比べるとそうは変わらない(真を以って癪な事ではあるが)。そうでなくとも、バックアタックされた挙句そこから後ろに引っ張られるのは、非常に不安定な体勢になるものである。……引っ張られている対象がそれに抵抗した時は、尚更だ。 「うにゃ、っと、ったあ、うきゃあああっ!」 「うわっ…と!」 案の定、西園寺がバランスを崩す。俺は、その機に乗じて取り合えずその手を振り払った。無論、傷つけないようにナイフを床に落として、だが。更にその勢いを駆って、反転する。……そこまでは、よかった。だけど予想外だったのは、振り払った時の抵抗が余りにも少なかった事で。…てっきり、不安定な場所にいる時の心理として、何かにしがみつこうとすると思ったのにな。 ったく、仕方ない。叫び声?を挙げながら暫くふらふらと、文字通り爪先立ちで辛うじて踏み止まっていた西園寺が、耐え切れずに後ろ向きに倒れこんだ。…その身体を、腕を伸ばして咄嗟に受け止める。 「…はあ。手ぇ焼かせんなよ。」 「あ、あんがと。んー、やっぱ優しいなあ…シンちゃんは。」 「なっ!か、勘違いすんな!俺の不注意のせいで怪我させたらさすがに悪いから、仕方なく…」 「……飛鳥、何時まで支えているの…もとい、何時まで触ってるのかな。」 思いもよらない不意打ちに、そっぽを向きながら反論していると、少し怒気を含んだ声が壁際から聞こえてきた。…言うまでもなく、未だ床にへたり込んでいるへたれの言葉である。何だ、こいつにも嫉妬なんて感情があったんだな…と全国一千人くらい(当者比)の誠ファンが聞いたら怒りそうな事を思いながらも、その言葉に首を傾げる。 触っている…と、言う事は俺が今抱えている何かのことだよな。んで、今俺が抱えているのは…その言葉に従って西園寺の身体を支えている両腕を見てみる。すると… ……物の見事にラッキースケベが発動していました。別の言い方で言うとパルマ、某所の言い方で言うとらき☆すけ。まあ何が言いたいのかというと、西園寺さん(何故さん付け)の身体を支えようとした右手が、思い切りその胸を掴んでいた事で。 「ご、ごごごごめん!!!」 「ふふっ、あははははは…いやー、そこまで必死にならなくてもいいのに。ま、仕方ないか。シンちゃんも『男の子』だもんねー?」 「う、うるさいっ!」 しっかりと支えるためとはいえ、何て事をしでかしているんだ、俺は。そんなからかいのネタを与えてしまった事に対する後悔と、不可抗力に近いとはいえ胸を触ってしまった罪悪感、そしてそれ以上の羞恥心がせめぎ合うのが自分でも解り、更に顔がどんどん熱くなっていくのを感じる。恐らく、今の俺の顔は少し赤くなっている程度の西園寺の顔とは及びも着かないほど、真っ赤になっている事だろう。 (だ、だめだ。やっぱり勝てる気がしない…何で、俺の周りにはいつもいつもこんな奴らがいるんだよ!?) 溜め息の代わりに小さく頭を振りながら、今までの人生で傍にいた『こんな奴ら』を思い出す。アカデミー時代と戦争時にはホーク姉妹(特にルナ)に玩ばれ、終戦後にはラクス・クラインやアスハに色々と弄られ…そして、今になってもこうやってこいつに遊ばれる。……非常に、理不尽だ。 「と、とにかく。足は着いているんだから、もう立てるだろ。離すぞ…と、いうか早く離れてくれ。」 「ん、あんがと。でも…少し、遅かったかな?」 何がだ…と聞き返す前に、背後から金属が軋む微かな音が聞こえた。それと共に、晩秋の…いや、それも画やと言えるかもしれない突風が、部屋の中に吹き荒ぶ。まあ、実際には吹き荒んでなどいないのだが―――背後から徐々に圧力を増していく威圧感が原因である事は明白であった。 良く怪談物で『振り返れば奴が居る!』なんていうが、これもそうそう変わらないんじゃね?と多少の現実逃避をしながら、ゆっくりと背後に向けて身体を反転させる。と、そこには… 「………やっぱり、そうだったんですね…」 「こ、言葉…」 こっそりと、ドアの隙間から部屋の中を覗き込んでいた言葉の姿があった。…ああ、身に覚えがある冷気を感じた時から薄々思っちゃいたよ。嫌な予感も感じていたよ!だけど…よりにもよって、何て姿を、俺は…っ! もの凄い罪悪感と後悔を覚えながらも、とりあえずは言葉を部屋の中に招き入れようとドアを開ける。……威圧感が倍増したが、キニシナイキニシナイ。もう、慣れっこである。 そんな俺の姿に、言葉はとりあえずは一礼して玄関まで入る。それが、俺の態度に僅かな怒りを納めたのか、それとも小さい頃からの丁寧さが習慣になっているのかは解らないが…俺は、後者だと思う。……目が、死んだままだ。 「薄々、感じてはいました…もしかして、私だけでは(色々な意味で)満足出来ていないんじゃないかって。いえ、それに関しては別に良いんです…そんな中でも私を一番に想ってくれると言う実感がありますから。それに、確かに病弱な私だけでは活発なシンくんの相手は(色々な(ry)時折、出来かねるところがありますし。でも…」 ……あの~言葉さん、何でカバンの中に手を入れるんですか? と、いうか見え隠れするその鋭利な刃物は一体…って言ってる場合じゃない! 「でも、でも…っ、よもや、相手が彼氏がいる人だとは思いもよりませんでした。しかも…よりにもよって、西園寺さんですか?!私と西園寺さんに、一体どれだけの確執があったか知らないシンくんではないでしょう!?」 「お、落ち着け、言葉!大体が、今日は来る予定じゃなかったんじゃ…」 「あー、そういえば、心ちゃんから緊急連絡があったのすっかり忘れてたよ。ごめんっ!」 ごめんっ!…じゃねーっ!!心の中で絶叫しながら、やっぱりさっさと帰らせるべきだった…と先程とは別の意味で後悔する。ゆっくりさせた結果がこれだよ!という奴である。 「ままま。取り合えず、積もる話は中に入ってからにしよっか。」 「ええ、そうですね。さあ、シンくん…納得のいく説明をお願いしますね?ふふふ…」 西園寺の妥協案に乗ったものの、態々カバンに隠して運んできた凶器を最早完全に抜き放った言葉が、ハイライトの消えた瞳で、妖しく笑いながら俺に説明を要求する。……納得いかなかったらどうなるのか…考えたくも無いが、少なくともそれだけは止めたい。そう思い正直に釈明をする覚悟を決めて…一句、浮かんだ。 (『鳴かぬなら 殺してしまえ ほとときす』…だったか?) 日本史がすこぶる苦手なシンではあるが、この俳句だけはこれから一生忘れない自信がある。ああ、身をもって体験すれば、それはもう忘れなくなるさ。そう簡単な攻略法を実感しながら、俺は裁判の場へと向かう。……極刑だけは勘弁してほしい…と切に願いながら。
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絶対音感という能力がついてからというもの放課後ティータイムの名は学園都市内で知る人はいないのではないかというくらいの知名度になった。もちろん、ライブの規模もでかく屋外だ。動員数も高校軽音楽部のそれを遥かに上回る。 そんなバンドのヴォーカル平沢唯は、先ほどの出来事を、なるべくなるべく思い出さないようにこれから始まるライブのために集中力を高めていく。そこでふと、彼女はあることを思い立ち、部長の田井中律に話しかけた。 唯「ねぇりっちゃん・・・・ちょっと、歌いたい曲があるんだ・・・・」 律「あ?どうしたよ、なんて曲だ?いきなり言われても演奏はできねぇぞ?」 唯「これなんだけど・・・・」 と、唯はその曲の歌詞カードを律に手渡す。律はそれを食い入るように見る。 律「・・・・・・まぁ、いいぜ。インストを後ろで流すだけになっちゃうけど・・・・いいか?」 唯「うん、充分。ありがとね、りっちゃん!」 そうして唯は踵を返し歩き出す。 律「唯・・・何があったかは、知らない。けど、これだけは忘れないでくれ。わたしは・・・・わたしたち放課後ティータイムは5人で1つ。みんな唯の味方だからな?」 唯は律のその言葉に返答せず、ツカツカ歩みを進める。目に大粒の涙をためて。 御坂美琴はいまだにネットカフェにいた。彼女の能力をもってすればネットカフェの端末から動画の発信元をたどることなどたやすいこと。彼女は学園都市第3位の電撃使い。電脳の世界で彼女に不可能は恐らく、無い。 そして、突き止めた。 動画を発信している端末の位置情報は同じ第5学区の端っこ。このネットカフェからも近く、今宵放課後ティータイムのライブが行われる会場からはたったの3キロ弱しか離れていない。そんな近い場所に、今回の元凶が潜んでいる。 もう、手遅れだろう。動画が配信されている時点でそうだ。すでにユイの体はこの動画のクソ男に汚されている。それでも、それ以上、悲しみが増えないように、ユイを助け出すために。 学園都市第3位の超電磁砲は走り出した。 御坂(待ってなさい、ユイ。かならず・・・助けるから!) ライブ開始までもう時間がない。 …… 薄暗い部屋の中。大いなる希望に満ちた未来を期待して生まれてきた量産型絶対音感の一人001号は、自分の心ではすでに受け止めることのできない絶望に打ちひしがれていた。 体にはいくつもの痣ができ、まだ未成熟な秘所からは赤いしずくが垂れている。破瓜の血ではなく、乱暴に扱われた末に垂れてきたおぞましい血。 男「おやぁ~?いけないなぁ~ユイちゃん・・・・綺麗にしとけって・・・さっきいったのになぁぁぁぁ!!」 ユイ「ひぃっ!・・・も、お嫌なのぉ・・・辛いの痛いの・・・・」 男「だめだねぇ~・・・・君に拒否権はないんだよぉ~・・・だって僕は君の”パートナー”だからねぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」 また、殴られる。ユイはそう思った。今まで何度も何度も、殴られてきた。でも、そのたびに耐えてきた。たまの外出も、許されていた。2か月前。オリジナルと接触するまでは。 あの日から、外出まで許されなくなった。男の家畜として生きる日々。絶望しつくした。希望なんてない。もう誰も助けにこない。男の平手がまたわたしの頬を襲う。痛い。痛いのは嫌だ。そう思った、その時。 ドッゴォォォォォォォォォン!!! けたたましい破壊音はドアを何かがぶち破った音。その何かは音速の3倍で飛ぶコイン。侵入するは1人の女子中学生。 御坂「ジャッジメントもどきですの~。ちょっとお話いいかしらぁ~!」 7人の最強の1人。超電磁砲がそこにいた。 律「唯。そろそろだぞ。一曲目。お前のリクエストだ・・・行って来い!」 バシン!と律は力強く唯の背中をたたく。部長のそれは唯にとっては少々痛くむせてしまったが、心は強く、とても勇気づけられた。 唯「・・・・・・うんっ!」 ゆっくり、ゆっくりとスポットライトの当たるステージへと唯は歩みを進めた。美琴を信じ、ユイの無事を祈り。唯は自分の戦場へと乗り上げる。 「こんばんわ!平沢唯です!!」 … 男「だ、だれだよお前・・・」 御坂「それはこっちのセリフよ。そこの子。わたしの友達の妹なの。だから返してよね」 男「は?お前知らないのか?これは量産型絶対音感だぞ?いわば、僕のおもちゃだよ。」 御坂「お、おもちゃですってぇ~~!!」 美琴の怒りの電圧がまた更に上がっていく、ビリビリバチバチと電気の余波がそこらじゅうに流れ出る。 男「うわわ!あっぶないじゃないか!」 御坂「あんたねぇ!その子たちだって生きてんのよ!歌うために生まれてきたって大義名分があるってのに!アンタはそれでもその子をおもちゃというのか!」 男「これはしょせんクローンだよ。変わりはいくらでもいるし、そもそも僕はこのユイちゃんには愛情を注いでいるつもりだよ?ねぇ、ユイちゃ~んw」 ビクッっとユイの体が震える。恐らく所有者である”パートナー”の人間には逆らえないようテスタメントでインストールされているのだろう。 ユイ「はい・・・・なの」 美琴の怒りの電圧がまた更に上がった。照明器具、電子レンジ、冷蔵庫。美琴の漏電によって室内のすべての電気機器が機能を失っていく。夕闇に1人、美琴だけ自身で発光している。 御坂「しょせんクローン!?たかがクローン!?あの子たちもこの世に生れて命を授かっているのに!」 御坂「それを変えのきく命だと!?何体も作れるからだと!?ふざけるんじゃないわよ!」 御坂「あの子たちだって生きてるのよ!歌うために!産まれて生きて!楽しむ、悲しむ、笑う、怒る、喜ぶ!」 御坂「それをたかがあんたみたいなゲスの欲望を満たすために奪うというのか!」 男「うるさいうるさいうるさい!関係ないくせに口はさむな!がきんちょがぁぁぁぁ!!!」 御坂「もう何を言っても無駄みたいね・・・・いいわ、アンタがあの子たちを自分のおもちゃとして好き勝手に扱っていいって思ってるんなら・・・・」 御坂「まずはその欲望をぶち殺す!」 …… 「こんばんわ!平沢唯です!」 唯が律に頼んでセットリストにない曲をわざわざ入れてもらった。その理由。 ユイにこの歌声が届くように・・・・ 美琴ちゃんに届くように・・・・・・ 自分のため、ユイのために、体を張って助けに行ってくれている美琴のための応援歌。 イントロから少しずつ少しずつアップへアップへとテンションを上げていくビート。 おもわず、体が上下に揺れてしまいそうになるその曲。 御坂「こ、この曲は・・・・!」 唯「1曲目!!only my railgun!!」 ユイ「お、お姉さま・・・!お姉さまの声なの!」 局が聞こえてきて一番に異変を見せたのはユイだった。それまで、脅えて絶望に満ちていた瞳に光が差す。希望を見つける。 ユイは一目散に部屋から飛び出していった。 男「あ、こら!なぜ!言うことをきかないんだ!」 御坂「唯の声が聞こえたからよ!」 美琴は右手を力いっぱい握り男へ鉄拳を放つ。 男「ぶへぇっ!」 御坂「アンタみたいなクズに能力すら必要ないわ!」 何度も、何度も何度も何度も何度も男を殴る。返り血で拳が染まろうとも、常盤台の制服が朱に染まろうとも、何度も何度も。 男「くっそぉ・・・!くっそぉ!ブヘッ!この・・・ヒュー・・・このヘンテコな曲さえ!グハッ・・・な、流れてさえいなければっ・・・」 御坂「この曲をバカにするな!わたしに対する応援歌よおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」 さらに殴る。殴る。拳が割れ。自身の血がこべりつく。涙が流れてくる。これは痛みなのか、悲しみなのか、怒りなのか。もはや美琴にはもう分らなかった。 しかし、男もしぶとい。苦し紛れに懐から取り出すのは、十数個の煙幕弾。 それらを美琴にめがけて一斉に放った。濃い煙幕が室内を覆う。 御坂「げほっ・・・けほっ・・・・っくそっ!」 美琴が視界を取り戻したとき、男はすでに室内から逃げていた。 御坂「お、おわなくちゃ!!」 ユイ「はっ・・・はぁ・・・・はぁっ・・・!」 夜道、まともな服も着ず、量産型絶対音感001号YUIは必死に走る。 レベル3程度の絶対音感のチカラをフルに使い。最短距離で唯のもとへ。 男「ユイちゃぁ~ん!まってよぉ~~!!」 ユイ「ひっ!・・・・」 男「速いだろぉ~!?僕はレベル4の空力使い。空を飛べるんだぜぇ~!」 ビクッっとまた、体が震える。冷静さを取り戻したユイはまた、この男の呪縛にハマってしまいそうになる。必死に声を捻り出すユイ。 ユイ「いや・・・もう、嫌なの・・・来ないでほしい・・・・なの・・・ってユイちゃんは・・・お願いしてみるの・・・っ」 男「ふふっ・・・・しょうがないなぁ・・・・だめに決まってんだろぉぉぉぉぉぉ!!!」 ユイ「いやっ・・・・いやぁぁぁぁぁぁ!!!」 男「ほらほら、もう少し!つーかーまーえー♪」 上条「たっ♪・・・・てか?」 見知らぬ男の右腕が男の肩をがしりとつかむ。 男「・・・・・・・はぁ?」 上条「んー、ライブを見に行こうかと思って夜道を歩いていたらまさか女の子を追いかけまわす男を捕まえてしまうとは上条さん予想しませんでしたよ?土御門さん」 土御門「いやぁー、かみやんが遅れたせいでええ席がとれんかったらどう落とし前つけようかとおもっていたがにゃー。まさかこんな場面に出くわすなんて、これは不幸中の幸いだにゃー?青髪ピアスさん」 青ピ「せやなぁー。唯ちゃんみるんも大切やけど、唯ちゃんにそっくりなこの子を助ける方がもっともっと大切なことなんかもしれへんなぁー。なぁ、上条さん」 男「な、なんなんだよおまえら!畜生放せ!僕はレベル4の!・・・・能力がでない!?」 上条「あ、俺ちょっと特殊な体質でさ。俺が触ってる間は能力でないから。」 上条「そこの子。行きなよ」 突然のことに話についていけないうえに突然声をかけられたユイはまたしてもビクッと震えた。 上条「急いでるんだろ?だったら早く行けよ。相手も、多分待ってるよ。」 ユイ「ありがとう、なの・・・ユイは、きちんとお礼の言える良いこなの・・・・・」 ペコっと頭をさげ、また、ユイは走り出した。 土御門「さぁーって!にがしたことだし!かみやんのそげぶの時間がやってきたぜぃ!?」 青ピ「うわぁー!生そげぶかいなぁ!やっとみれるんかぁ!僕感激やわぁー!」 上条「あ、あ゛ーごほん!・・・・それでは!」 少年はいったん右手を男から離す、とすかさず屈強なカラフル二人組が男を羽交い絞めにして離さない。 上条「てめぇが、逃げ回る女の子を追いかけまわして楽しんで、それが本当にいいことだと思ってやってるってんなら!」 上条「まずはその幻想をぶち殺す!」 男「ひ、」 「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 少年の無敵の右拳が炸裂した。 …… 「2曲目!ふでぺん~ボールペン~」 2曲目は、まるで必死に走るユイに送るかの様な、応援歌。 ユイ「は、はぁ・・・・はぁ!」 ユイはまた、ひたすら走る。何度も何度も転ぼうとも何度も何度も起き上がり、唯の待つ会場へ。 そして、着いた、会場。 満身創痍の体を奮い立たせ、最後列から人波をかき分けかき分け、最前列へ。 唯とユイの目線が交差する。その時、唯の歌が止まった。演奏も止まる。観客がざわめく。 ざわ・・・ざわ・・・・ざわざわ・・・文句を言う客、ブーブー言う客も出てきた、そんな中で、 律「うるっせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!黙ってみてやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」 田井中律の雄たけびが会場を包み込んだ。鶴の一声により、会場は途端に静かになる。 律「唯。行け」 ありがとう、りっちゃん・・・・今日何度目かわからない部長に対する感謝の言葉を心の中で述べ、唯は観客席に飛び乗り、ユイを抱きしめた。 唯「ごべんねぇー!ユイぃ!わだじが!わだじがしっがりじないばっがりにぃ~!!」 グズグズと唯はユイの体に鼻水を押しつけながら号泣する。今人気のガールズバンドのヴォーカルとは思えないその顔を見て、ユイももらい泣きをする。今まで辛かった分、悲しかった分、すべてを吐き出すように。。。。。。ユイも唯も、お互いの胸の中で泣き続けた・・・・ 能力使用中のため、泣き声のせいで近くにいる人間が何人か気絶したが、そんなこと二人には関係ない。会場も泣き声で包まれ、何人もの人間がもらい泣きをした。事情も知らないままに。 そして、同じく事情を知らない女、田井中律は考える。このままではらちが明かない。 いくら感動的だからといって今はライブ中。演奏しなければ終われない。律は声を張り上げた。 律「野郎どもぉぉぉぉぉぉぉぉ!!次がラストだ!気合いれていけぇぇぇぇぇぇ!!!」 きーーーーーん!というマイクのノイズが走る。まず訪れたのは静寂。そして次に訪れたのは我らが部長、田井中律に対するレスポンス! うおおおおおおおおおお!!!と会場が三度沸く。 律「澪!リズム隊しっかりがんばろうぜ!」 澪「おう!まかせろ!」 律部長の部員に対する声掛けが始まる。 律「梓!おまえはリードギターだ!練習の成果みせてやれ!」 梓「やってやるです!」 それはまるで、軽音部の絆を確かめ合うようで。 律「ムギ!綺麗な音色!期待してるからな!」 紬「あいあいさぁ~♪」 放課後ティータイムを一つにまとめる。魔法の儀式。 律「そして唯たち!」 泣き顔を一斉に律に向ける。次の言葉を、待つように・・・・ 律「何があったかは、わたしは知らない。でも、お前らは今二人揃ってここにいる。このライブ会場にいる。だったら、お前らがすべきことはなんだ?いつまでも鼻水たらして泣き叫ぶことか!?違うだろ! お前らはヴォーカルだ!いつまでもウジウジ泣いてんじゃねぇ!今この瞬間をこのライブのこの時を!オーディエンスのみんなと今ここにいられる喜びを分かち合えよ!さぁ、歌え! お前らのいるべき場所は観客席最前列じゃねぇ!お前らのすべきことはそこで泣き叫ぶことじゃねぇ!お前らの居場所はここだ!ここはお前らのためのステージだ!!」 律の啖呵にオーディエンスが今日一番の盛り上がりを見せた! そこらじゅうから聞こえる唯コール。 唯は、涙でグシャグシャになったユイの顔を拭い、そのまま自分の顔を拭う。 唯の目に、もう涙はない。もちろんユイも。二人は律の手を取り、トンッっと軽やかにステージに舞い戻った。 律「みんな・・・・唯たちが大好きだよ?」 唯「ありがとね・・・・わたし、ちゃんとするから・・・・すぅ~」 大きく息をすい。能力値最大。唯は会場、いや、学園都市中に響き渡るかの勢いで声を張り上げた。 「ラストっ!ふわふわ時間!!」 唯「いっくよぉ~!ユイ!」 ユイ「はいなの!お姉さまぁ!」 君を見てると~いつもはーとDOKI☆DOKI☆ 上条「よかったぁ~!最後には間に合ったみたいだな!」 土御門「間に合わないかとひやひやしたぜぃ・・・・」 青ピ「かわいいなぁ~!唯ちゃん!」 揺れる思いはマシュマロ見たいにふ~わふわ♪ 御坂「ったく・・・・まぁ、結果オーライっか・・・」 いーつもがんばーる!(いーつもがんばーる!) ミサカ「さすが、良い歌声ですねぇ~と、ミサカはうっとりしながら鑑賞します」 キーミのよこーがーおっ!(キーミのよこーがーおっ!) 打ち止め「きゃはははは!すごいすごーいってミサカはミサカは歓喜にひたってみる~♪」 一方通行「静かに聞けねェのかガキが!」 ずーっとみてーてもーきーづーかーなーいーよね? 黒子「ったく・・・せっかく人が気持ちよくライブに行っていたというのに緊急出動要請だなんて・・・・で、この男は一体何をしましたの?」 男「う・・・・が、は・・・・」 ゆーめのなかっな~らっ!(ゆーめのなかっな~らっ!) ふーたりのきょ~~~りぃ~~~!!! 唯・ユイ「ちっぢめらーれーるーのーになぁー♪」 サビに入り、二人は思う。やっと、やっとまた二人で歌うことができた。しかも今は軽音部として。 いつか、二人で歌った時よりも何倍も何倍も大きな快感が二人を襲う。楽しい。とても楽しい。 二人の感情はただそれだけで、いつまでもいつまでも、この時間の終わりが来ないことを祈っていた。 楽しくて、楽しくて。今日一日でいろいろあった。辛いことも、悲しいことも。それでも今は楽しい。 二人は、打合せもなく、演奏終了後、うれし涙の光る瞳で、震える声で、同時に叫んだのだった。 唯・ユイ「けいおん!サイコーーーー!!!」 ユイ「なのーーーーーー!!!」 完 戻る
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羽補充の仕方 12.06.14のバージョンアップより羽をアイテムにて交換することが可能になりました。 羽を入手するためには下記アイテムが必要となります。 レア・EXともにナシ。宅配・競売出品可能(雑貨枠)。 【エインヘリヤルの証】を所持していれば、ナシュモにいるNPC:Kilushaにアンプルにて交換して貰えます。 交換ページは眼帯と同じ最終ページ。 一回一回Kilushaに話しかける必要があるので、ちと面倒です。 羽交換アイテム 第Iウィング用 バルキリーの涙 清らかな涙に譬えられた美しい宝石。 1,000アンプル 第IIウィング用 バルキリーの翼 力強い翼に譬えられた軽やかな羽。 2,000アンプル 第IIIウィング用 バルキリーの魂 高潔な魂に譬えられた澄んだ水晶。 3,000アンプル 入手したい羽に対応したアイテムをハザルム試験場の扉右手奥のくぼみ部分にある、 ???にトレード。 ○○○を持ちし者、我が名を答えよ。というログとともに選択肢が出るので、 欲しい間の名前を選び羽を入手して終了です。 交換できるものがない場合は、???を調べても「特に何もないようだ。」と出るだけです。 最終更新日:2012年06月16日