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約束 今度の日曜は一緒にケーキを食べに行こうよ。 その次は遊園地に水族館。 クリスマスや誕生日には、ちょっとだけ高級なレストランに行こうね。 僕たちはいつも、たくさんの約束をした。 約束だよと指をからめ、見つめ合い、いつも二人で笑いあっていた。 † 「ウソなんか吐かないよ。口を閉ざすことはあってもね」 ある時から、君はそう言って笑うようになった。 そして、『約束』と言う言葉が何よりも嫌いだと、その表情のまま呟くようになった。 彼女は、とても美しい人だった。柔らかな黒髪に、黒い瞳。優しい声は静かで穏やかで、すっと空気に馴染む。鈴の音のように柔らかく軽やかな彼女の声は、何よりも心地良かった。 君はいつも、微笑んでいたね。 白いシーツに、白い壁。まっ白な部屋に押し込められて、腕に何本もの針を刺されていたのに。君はいつでも、僕に微笑みかけてくれた。 「あたしね、もうすぐ死んじゃうんだって」 そう言った時だって、君は扇のような睫毛を二、三度揺らしただけで、悲しい顔なんか少しも見せなかった。 君が教えてくれたその病名は初めて聞くものだった。 もう治らないんだって、などと言いながら、君はまるでコメディ映画でも見ているようにころころと笑っていた。 僕は、泣きたかったのに。 どうしてそうやって笑っていられるのと、泣いて喚いて叫びたかった。だけど笑っている君の横で泣くことなんか出来る訳もなくて、僕は以前よりも確実に小さくなった君を抱きしめて、こう言った。 「――僕は、君と一緒に居たいんだ」 何年も前から指輪を用意していた。だけど君は、元気になったらね、と言って受け取ってはくれなかった。結婚してすぐに死んじゃったら貴方が可哀そうだもの、と言って、指輪を僕に押し返した。決して受取ろうとはしなかった。 医者に聞いた話によると、その病気はかなりの痛みを伴うもので、彼女のように静かで穏やかに微笑んでいられる人はまずいないらしい。症例こそ少ないが、突き刺さるような痛みに涙を流し、呻き、嘔吐し、衰弱し、息絶えていくものがほとんどだと言う。 一体どれだけの痛みを呑み込んで、どれだけの苦しみを呑み込んで、彼女は生きているのだろう。そんなこと僕には想像することもできなくて、ただ無言のまま彼女を見つめていた。 ある時、僕は彼女に言った。 「嘘でも良い。僕と共に生きると言ってくれ。約束して、お願いだから…」 ごめんね、と君は言った。 どこまでも優しく、静かに、穏やかに。 『約束』 君は、この言葉が嫌いだと言った。 こんなにも現実味のない言葉は他にないから。何よりも嫌いな言葉だと、彼女は笑顔のままそう言った。 そして、とても饒舌に語るのだ。 「――『約束』って言うのはね、自分を安心させる為にするものなのよ。自分の世界は今と過去だけで構成されている訳じゃない、自分たちにはこれからの人生が、未来があるんだ、…ってね。言葉によって未来を確定させることで、その未来が確実にそこに存在するものなんだって思い込むために。皆、自分の未来は誰かと共有できて、確実に楽しいものになるって思いたいのよ。……だから、人はいつも誰かと『約束』をする」 彼女にとって、『約束』とはそういうものだった。 不確定な未来を確定させたいがために行う、空虚で愚かな行為。 未来がないと宣告された彼女にとって、『約束』とはそういうものでしかなかった。 この小さな病室みたいに真っ白で、空虚なものだった。 「そもそも、未来を確定させようとするその行為自体が間違っているわ」 そう言って笑う君は、このまっ白な部屋に溶けてしまいそうなくらい白くて、澄んでいて、細い体は触れれば折れてしまいそうで、痛々しかった。だけど、その姿はまるで妖精のようで、とても綺麗で、僕は見るたびに泣きそうになっていた。 ねぇどうか、楽になって。 僕は一つ、『約束』をした。 『必ず、会いに行くからね』 そう言って、僕は眠っている彼女の腕に注射針を刺した。 ゆるりと、眠るように逝けるように。 彼女の腕にささる全ての針を抜き、体を拭き、長い髪を梳かし、乾燥した唇に水を含ませ、口紅を塗った。そして、白くて細い指に銀色の指輪をはめた。やせ細った彼女の指には、その指輪は少し大きかった。 しばらくして、彼女の心音が止まった。ピー…、という無機質な機械音が病室に響き、彼女の死を僕に知らせる。 約束は、守らなければいけないよね。 僕は彼女の額に、頬に、唇に、首筋に、銀色の指輪に、ひとつずつ口付けをし、自分の腹にナイフを突き立てた。痛みで意識が飛びそうになったけれど、僕は何度も何度もナイフを突き立てた。 彼女の痛みを、苦しみを追うように。 痛みや苦しみを味わうように。 僕は繰り返し、自分の腹にナイフを突き刺した。 まっ白な病室は紅く、血の匂いに染まる。 血の臭いが濃くなる。 だんだんと視界がぼやけ、滲んでいく。 薄れていく意思気の中で、僕は静かに微笑んだ。 ――僕はね、君と一緒に居たかったんだ。 End 約束ってこういうものだと思うの。
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出前を予定(グーグルカレンダー)に書く場合 1.出演者が決定し次第、基本出前の依頼を受けた人が書く。 2.一般の人が参加可能かも書く。 (敬老会などの内輪限定なのか、一般参加可能なイベントなのか) 出前の記事を書く場合 1.日にちが近づいてきたら(一般参加可能ならば宣伝効果をかねて早めに、 2週間ぐらい前とか?)基本出前の依頼を受けた人、 もしくは打ち合わせをした人が書く。 2.出前が終わったら基本出前に出た人が感想を書く。 出前の感想書くのめんどいよー 1.行ってきた日にち、時間をかく 2.どんな会、客層だったかを書く 3.やってみての感想を書く 4.出来上がり
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「よしっ!洗濯完了」 私は快晴の空を見上げベランダを後にする。今日の家事も一段落したし昨日録画したドラマでも観ようかなっと…あれ? 「鍵?なにこれ?」 畳に落ちていた玩具の鍵を拾った。シンジのかしら?でも見覚えが無い… ううん、違う… 確かこの鍵… 「……分かった!『宝箱』の鍵だっ!確か…押し入れに……んしょっ…」 「あったわ!」 懐かしい。私が子供の時に大切な物を入れてた『宝箱』この鍵はその宝箱を開ける魔法の鍵だ。 「どうせ…玩具か何かかな?」 おはじきにビーダマ…色々懐かしい物の隅に 「日記帳だ…何、書いてたっけ私」 その日記帳には、ミミズみたいな文字や訳分かんない絵が一杯書いてあった。 「うふふっ、昔の私って字下手ね…あっ!ここから読める」 「なになに。『きようはしんじくんからじをおしえてもらた』、『きようはしんじくんとあそんだ』『きようは…』やだぁ…シンジの事ばっかり」 昔から私、シンジの事好きだったんだ。 あっ… 『きょうはしんじくんとけんかした。しんじくんのばか。』 字が滲んでる… そっか涙で滲んでるんだ… そして次は最後のページ… 『おとなのあすかえ。いましあわせですか。しんじくんとけっこんしてますか。にじゅねんごのきょうのやくそくはちゃんとまもりましたか』 約束?日記帳の日付は…今日! なによ約束って… 約束…約束…分かんない! 私は必死に思い出した。けど全然思い出せない…時間だけが過ぎていく。 「ただいま~」 「あっ…おかえりなさい」 「お腹空いたよアスカ」 「ごめんシンジ…夕飯の支度してない」 私は『約束』が気になって夕飯の支度をすっかり忘れていた。私は急いで台所へ向かう。 「すぐに簡単な物作るから待ってて」 「いいよ。アスカそれより…」 「今日は『約束』の日だったね。ごめん忘れてた。」 嘘。シンジは分かってるの?二十年前の約束… 「行こうか。二人の秘密基地に…」 「…思い出した…」 幼い頃遊んだ自然公園の林の中、目印の木は大きく成長していた。この土の下に… 「あった…」 「凄い…昔埋めたまんまだ」 「開けるよアスカ」 「うん」 中にはボロボロの紙に… 『けっこんおめでとう シンジ あすか』 そして…玩具の指輪が… シンジが指輪を掴み私に渡す。 「流石に小さいから填められないね」 シンジは私の正面に立ち 「アスカさん僕と結婚してくれますか?」 そう言ってシンジはまた私にプロポーズしてくれた。 「はい…シンジさん…大好きです」 私は泣きながら指輪を握り締める。今幸せだよ…シンジと結婚出来たよ…素敵な指輪ありがとう… 「しんじくんあたしのことすき?」 「うん。あすかちゃんすきだよ」 「じゃあ、いまけっこんしてくれる?」 「けっこんはむりだよ。おとなになってから」 「おとな?おとなっていつ?」 「ん~…にじゅうねんご!」 「じゃあ、にじゅうねんごね!」 「やくそくよ」 【終り】
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約束 約束分かったこと あなたは狂喜して叫んだ! やる夫の約束 分かったこと イヴの友達(ハヤテのごとく!/鷺ノ宮伊澄とラーゼフォンとズ・バヅー・バ) あなたは狂喜して叫んだ! 名前 内容 条件 済 1@1000 GEアリサ登場 特殊シナリオを攻略 済 1@2000 ポケモン的ポジで恋するドラゴン(竜†恋)登場 畑イベントで仲間に 済 1@3000 面白い素材を手に入れる 散歩とか 済 1@4001 好感度が上がりやすくなる 次コミュ時 済 1@7000 金策方法を教えてもらえる 済 1@9000 デスペナ回避 死亡時 1@10000 アティ先生好感度イベント 思いついたら 済 やる夫の約束 名前 内容 条件 済 アティ 料理をご馳走してもらう 熟練度を何でもいいから一つカンスト 済 メルパトラ キリノを紹介してもらう コミュ以外でメルパトラと交流 済 りずむ 牛乳と果物で作った料理をだす 依頼中 済 きりの PTに誘う 素材、緊急依頼以外 済 きりの 孤児院でお礼がある その他で孤児院へ行く 済 ルカ デートに行く 次のコミュ シェリル 舞踏大会の相談 46日まで交流、その他を取る、大会は47日 済 りずむ 舞踏大会の相談 46日までに交流をとる 済 戻る
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約束 約束 アーティスト Roselia 発売日 2020年1月15日 レーベル ブシロード CDデイリー最高順位 1位(2020年1月15日) 週間最高順位 1位(2020年1月21日) 月間最高順位 1位(2020年1月) 年間最高順位 17位(2020年) 初動総合売上 36388 累計総合売上 51299 週間1位 月間1位 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 1 約束 BanG Dream! 2 “UNIONS” Road CD/総合ランキング 週 月日 CDシングル 総合シングル 順位 週/月間枚数 累計枚数 順位 週/月間枚数 累計枚数 1 1/21 1 29524 29524 1 36388 36388 3 1/28 6 6810 36334 8 8245 44633 3 2/4 14 2226 38560 17 3168 47801 2020年1月 2 38560 38560 1 47801 47801 4 2/11 11 1404 39964 15 1905 49706 5 2/18 20 1543 41507 24 1543 51181 6 2/25 227 41734 227 51408 7 3/3 185 41919 185 51593 2020年2月 31 3359 41919 37 3359 51593 8 3/10 139 42058 139 51732 9 3/17 129 42187 129 51861 10 3/24 161 42348 161 52022 11 4/14 66 42414 66 51299 配信ランキング 約束 週 月日 デジタルシングル 順位 週/月間DL数 累計DL数 1 1/21 5 6469 6469 3 1/28 1539 8008 2020年1月 22 8008 8008 “UNIONS” Road 週 月日 デジタルシングル 総合シングル 順位 週/月間DL数 累計DL数 順位 週/月間枚数 累計枚数 1 1/21 8 4852 4852 8 4276 4276 関連CD イニシャル/夢を撃ち抜く瞬間に! DRIVE US CRAZY FIRE BIRD
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曖昧さ回避のためのページ A-9の曲約束/A-9 霧四面体の曲約束/霧四面体
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約束(やくそく) 約束 EXスキルカード 使用条件:黄黄黄 ターン終了時まで、相手が相手キャラをバトル参加キャラに指定した場合、そのキャラに100ダメージを与える。 「やくそく…した……まってるって、やくそくした…っ」 カード番号 Ver5.0/EX0046 レアリティ K/サイン コメント コメントの入力。必須ではない。
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約束 ◆6MJ0.uERec 黒い黒い、どこまでも黒い森の中。 どこからが闇で、どこからが夜空なのかもわからない場所。 その闇の中に一人の少女がいる。 蒼黒の髪をたらして、白と青で彩られて。 一人静かに、待ち人が迎えに来てくれるのを待っている。 息の詰まるような恐怖に、市原仁奈は堪らず目を開けた。 目を閉じたままだったなら、瞳に焼き付いた意識を失う直前に見せつけられた光景が、何度も何度もリフレインしてしまいそうだったからだ。 だが、開けた瞳が明るい世界を映すとは限らない。 光を求めたはずの彼女の瞳に映ったのは、変わらず深い闇の世界だった。 無理もなかろう。 今はもう夜なのだ。 しかもそれが深い森の中だろ言うのなら、その暗さは常の夜闇と比べても更に深いものだ。 もっとも、当の仁奈にはそんな当たり前のことさえも、当たり前のこととして受け入れることができなかったのだが。 眠らされ、攫われ、また眠らされ、時間感覚をめちゃくちゃにされた状態で、突如場所も告げられず森の中に放り込まれたのだ。 冷静に自身の状態を把握し、まずはデイバックの中身を検分しろというのは酷な話であろう。 況や、それが年端もいかない幼子ならば、むしろ冷静に現状を見極め、自分の成すべきことを見極めている方が、よっぽど狂っていると言えよう。 だがこの場合、狂っていないというのは果たして幸せなことなのか。 闇から逃れようとして目を覚ました先にまで、闇に追われるなどと。 「あ、いっ、あ。プ、プロデューサー。プロデューサー、どこ、ですか? どこにいやがりますか……」 仁奈は、悪夢覚めぬ現実でも、逃げることを選んだ。 森の中をただ闇雲に走って、彼女を置いて行ってしまった誰かを探し続けた。 それは、いつかの約束。 置いて行ったら食べに参上すると笑い合ってた日々の約束。 けれども、今の彼女は狼ではない。 孤独の闇に迷える子羊にすぎない。 狼の餌食となる哀れな赤ずきんにすぎないのだ。 当然の帰結として、狼の待つ家へと辿り着いてしまった。 「に、仁奈はここでごぜーますよ? プロデューサー、プロデューサー、いやがりますよね……。そこに、いやがりますよね?」 木々が途切れ、開けた森の一角に月光が降り注ぐ。 照らしだされたのは、一軒の古惚けた丸太で組まれたログハウスだった。 藁にもすがる想いで逃げ込もうとした少女は、後一歩のところであることを思い出してはたと立ち止まった。 「だ、誰もいやがらねーですよね……?」 玄関に通じる樹でできた階段を忍び足で踏みしめながら、先ほどまでとは一転した願いを口にする。 迷子の末に家に辿り着いたというあまりにも出来過ぎた状況に、仁奈の記憶が警告を発したのだ。 読み聞かせてもらった絵本では、こういう一軒家には決まって人食い魔女の老婆が住んでいた。 包丁を研ぎ、獲物が飛び込んでくるのを今か今かと待ちわびていてもおかしくない。 「いやがらねーですよね、いたりしねえですよね……」 ドアノブにかけた手の震えが止まらない。 子どもじみた幻想の恐怖は、体感した恐怖と結びつき姿を変えていく。 悪夢の中の魔女は千川ちひろの顔をしていた。 骨と皮だけにまで痩せこけて、脚に至ってはむき出しの骨だけの姿をした老婆は、しかし顔だけは若い女のものを貼り付けて迫ってくる。 獲物がかかったと喜びながら、両の手で這いずって扉を開け仁奈の前で満面の笑みを浮かべ直前まで食べていた首のない誰かの―― 「…………いる……ここに……。……私…ここにいる……」 囁かれたピュアボイスに、幻想が霧散する。 「だ、誰でごぜーますか!? 魔女じゃねえですよね!?」 扉は開け放たれてなどいなかった。 声がしたのは正面玄関からは死角となっているロッジの側面。 軒下のウッドデッキで、揺り椅子に声の主は座っていた。 「……魔女? ……私……違う。……まほうつかい……レナ………」 歳の頃は仁奈と同じか、少し上辺りだろうか。 少なくとも想像していたような老婆の姿には程遠い。 長い青髪に、透き通るような白い肌、ヨーロッパの貴婦人を思わせる幻想的な装いも相まって、人形じみた美しさを感じさせる少女だった。 「…………?」 仁奈と目線を合わせた少女が椅子に座ったまま小首を傾げる。 「……羊……」 言葉足らずな呟きからは、いまいち意図が読めなかったが、仁奈は少女の表情が僅かに緩んだのを見逃さなかった。 「モ、モフモフ……モフモフしやがりますか? そんなにモフモフしてーのでごぜーますか?」 「…………」 こくり。 恐る恐る尋ねた仁奈に、少女が頷き、ロッキングチェアが大きく揺れる。 少女が身を起こしたのだ。 肩にかかっていた髪を払いのけると、少女は音もなく仁奈の方へと歩み寄る。 「仕方ねえですね。プロデューサーが選んでくれやがったキグルミですが、特別にモフモフしてもいいでごぜーます」 それほどまでにモフりたいのか。 そう解釈した仁奈は、大好きな人が選んでくれた着ぐるみの良さを分かってもらえたことが嬉しくて伸ばされた少女の左手を甘んじて受け入れた。 「…………もふもふ」 少女の片手が仁奈を抱きしめ力の限り抱え込み、首の後に回される。 もふもふというにはあまりにも強い力の込めように、仁奈は苦痛を訴える。 「い、いてえです! もっと優しくしてくだせー!」 その叫びが受け入れられることはなかった。 「……あなた……猫の着ぐるみだったら……本当にもふもふして……友だち……なってた……」 辺りが一瞬、僅かに暗くなった。 風が雲を運んできて月を覆い隠したのだ。 暗い森の中を風が過ぎ去り、木々の梢を揺らして行く。 ざわめく葉の音は、まるで何かの予感に脅え、森が震えているようだった。 「よかった………あなたで…………猫じゃなくて。私…………………待ってた………」 再び月が出たその時には、少女の手に“それ”は握られていた。 「な、なんでごぜーますか、それは……」 “それ”を目にした仁奈の表情は恐怖に引き攣っていた。 月光を反射し、少女の手の内で輝く“それ”は、子どもにとっては銃や包丁といった凶器よりも怖い、現実的な恐怖の象徴だった。 何度も怯えながらもお世話になった、ポンプに接続された銀色の針を見紛おうことはない。 注射器だ。 注射器を持った少女の姿をした魔女が、ふふ、うふふっと微笑みを浮かべながら月を背に仁奈を見下ろしていた。 「…………………安心して………痛く……ない」 ポンプの中に何が入っているかなんて仁奈は知らないし、そもそも考えもしなかった。 ただ疑うことも知らない仁奈は、幼い故に誰よりもその恐怖を知っており、ひたすら暴れて逃げようとした。 開いている両の手で突き飛ばし、首に回されていた拘束を振り払う。 魔女もまた追いすがり払いのけられた左腕で仁奈の右手首を掴み引き寄せ、利き腕で注射しようとするが、幸い仁奈は左利きだった。 右手を魔女の左手で捕まえられていようとも、開いた左手で魔女の注射器を持つ右手の侵攻を封じることができた。 ならばとばかりに魔女は身長差を活かし、ありったけの力と体重を載せて抑えこむようにのしかかる。 たまらず、短い悲鳴と共に仁奈がバランスを崩す。 尚も抵抗するも、デイバックの紐がちぎれ落ちるくらいに激しく揉み合いながら地面を転がった末に、組み敷かれてしまった。 「……私……信じて……大丈夫…」 互いに両の手が塞がっていることには変わりはしないが、馬乗り状態である以上、魔女の方が力をかけやすく有利となる。 徐々に、徐々に、拮抗が崩れて、注射器の針が、仁奈へと近づいていく。 「何を」 しかし、間もなく命を奪われるという窮地にもかかわらず、仁奈の内側からは恐怖が消えていた。 「何をしやがりますか……」 いや、違う。 消えたのではない。別の感情に上書きされたのだ。 初めに抱いたのは悲しみだった。 魔女と揉み合っている内に、プロデューサーからもらった大切な羊の着ぐるみは無残にも汚れぼろぼろになってしまった。 そのことがとても悲しくて、まだお礼も言えていなかったことを思い出して、悔しくなって。 「プロデューサーが選んでくださりやがったキグルミに、プロデューサーに、何をしやがりますかああああっ!!!!」 次に抱いたのは怒りだった。 もう二度と、プロデューサーに会ってお礼を言うことができないかもしれないという理不尽への怒りだった。 目の前の少女への怒りだけではない。 一緒にいようというただそれだけの、細やかな約束さえも叶えさせてくれない、ありあとあらゆる不条理への怒りだった。 「約束したのでごぜーますよ! これからもずっと仁奈のそばに居やがってくださいって! もし置いてったら食べに参上しやがりますって! それを、その約束を、汚すんじゃねーですよ!」 キグルミアイドルは伊達ではない。 掴まれていた部分を素早く脱ぎ去ることで右腕の自由を取り戻すした仁奈は、傍らに転がっていたデイバックを掴み全力で魔女へと打ち上げる。 倒れた状態で利き腕でもなかったが、デイバック分の質量と振り回す遠心力を味方につけた一撃は十分な勢いを誇っていた。 十分、過ぎた。 「……あ」 呆然と呟いたのはどちらだったのか。 ――とっさに、魔女は利き腕を盾に襲い来るデイバックを防ごうとして ――かざした手には注射器を握ったままで ――衝撃に耐えられなかった細腕は魔女自身へと向かって押し切られてしまって ――そのまま、そのまま、そのまま 勢いを減じること能わず、吸い込まれるように主自らの首元へと銀の針は突き立てられてた。 「……え?」 少女から力が抜け崩れ落ちたその意味を、仁奈は理解できなかった。 だけど、自分が何か、取り返しの付かない何かをしてしまったことだけは、誰に言われるまでもなく分かってしまった。 ピピピという幻聴が仁奈の脳裏に鳴り響く。 「何でごぜーますか、これは」 誰かのプロデューサの首がなくなった時の光景が、蹲る少女へと重なっていく。 それはつまり、この幻聴が鳴りきった時、またあの光景が繰り返されるということで。 ピピピピピピピピ。 その引鉄を引いた魔女は、他ならぬ自分自身だった。 「えぐえう、なんなんでごぜーますか、この今はああああああっっっ!!!!」 ちひろ、少女と移り変わっていた魔女は、今度は仁奈の顔で嗤っていた。 「……あなた………あなた……」 「来やがるな、来るんじゃねえです! わあああああああ! 来るな来るな来るな来るな来るなあああああああああっっっ!!!!」 ふらふらと起き上がり呪詛か何かを吐き出そうとしていた少女を、有らん限りの力で突き飛ばした。 大きな音を立て、少女がロッジの壁に激突したのを見届けることなく、仁奈は背を向け再び走りだす。 ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピと鳴り響く幻聴と直後に訪れる悪夢の再来から逃れるために。 仁奈は涙を浮かべながら狂乱のままに、月明かりの舞台から森の奥へと、更なる深き闇へと呑まれていった。 【C-6/一日目 深夜】 【市原仁奈】 【装備:ぼろぼろのデイバック】 【所持品:基本支給品一式×1、不明支給品1~2(ランダム支給品だけでなく基本支給品一式すら未確認)】 【状態:疲労(中)、羊のキグルミ損傷(小)、パニック状態】 【思考・行動】 基本方針:プロデューサーと一緒にいたい 1:怖い。寂しい。プロデューサー、プロデューサーはどこにいやがりますか。プロデューサー……ッ! 「………………っあ」 僅かに荒い息遣い、激しい心臓の鼓動、全身が僅かに汗ばみ、頬が上気している。 不意に頭の芯を走った鈍い痛みに、少女は、佐城雪美は端正な眉を顰めた。 (………………痛い………苦しい……) 自分の身に何が起きているのかは、文字通り、痛いほどに理解している。 雪美に支給されていたのは注射器と毒薬だった。 ご丁寧に子どもでも読んで分かるよう端的に書かれた取扱説明書までついており、それによるとこの毒薬を注射されれば大人でも数分足らずで死に至るらしい。 ただし、若干の苦痛はあれど、肌の色を変色させるなどの外見的な影響は全くないそうだ。 事故死にも見せかけられますね☆と見覚えのある女性の字で追記されていた。 (………でも………………これで………いい……) 雪美が抱いたのは別の感想だった。 ああ、これなら、綺麗に死ねる、と。 相手がではない、自分自身がだ。 佐城雪美には最初から最後まで、誰かを殺そうとする意思なんてなかった。 悩まなかったわけではない。葛藤しなかったといえば嘘になる。 少女には約束があったから。大切な人との約束があったから。 大好きなあの人とずっと手を繋いでいたかった。いつも一緒にアイドルでいたかった。 でも、約束は一つだけじゃなかったから。 一方通行なものではなかったから。 少女のプロデューサーが少女に約束してくれたように、少女もまたプロデューサーに一つの約束をしていたから。 (……これで……いい……? …………私…………あなたの……望み……私が……叶えた……?) 少女の望みをプロデューサーは知っている。 プロデューサーの望みを少女が叶える。 それが、約束。 二人で交わし合った何よりも、大切な約束。 けど、だけど。 (………きっと………よくない……あなた……悲しむ……私…わかってる……心…通じるから……) 雪美はその約束を二つ共自らの意思で破った。 プロデューサーは雪美が自分と一緒に居続けるために人を殺すことなんて望みはしなかっただろう。 あの人が見たかったのは他者を拒絶する殺戮者ではない。 人々と心通じてみんなを笑顔にするアイドルだ。 雪美だって、あの人に血に塗れた姿なんて見せたくなかった。 けれども、だからといって雪美に死んで欲しいとも望むはずもない。 他の誰をも騙せても、あの人までも欺けるとは思えない。 きっと気付かれてしまうと雪美は信じている。 それでも、この道しか選べなかった。 生きて、生きて、また一緒に、手を繋ごうと、あの人の方も願っていてくれていると断言できるのに。 約束よりも、もっと叶えたい想いを抱いてしまったから。 生きて欲しい。あの人に生きていて欲しい。 ただそれだけの切なる願い。 その願いが故に、雪美は自らの死を選んだ。 千川ちひろは実演した。 殺し合いに反抗的な態度を取れば、プロデューサー達の命はないと。 同時にこうも言っていた。 殺し合いさえすれば、そのままプロデューサーの“皆”は解放すると。 生き残った最後の一人のプロデューサーをではない。 殺し合いに従った全てのアイドルのプロデューサーを解放すると口にしたのだ。 おそらくその言葉に嘘はないと雪美は捉えた。 もしも、自分が死ぬことでプロデューサーも死ぬというのであれば、誰もが死ぬ可能性を恐れて命を賭けられなくなるからだ。 返り討ちのリスクや魔女狩りの恐れのある襲撃など、自分ならもっての外だ。 それでは殺し合いどころではない。 誰も彼もが他人を殺すよりも我が身を生き残らせることを優先してしまい、殺し合いを促すはずの人質が却って殺し合いを硬直させてしまうこととなる。 ばれないようにこっそりと始末するという手もあるが、それだと万一バレた時にやはりアイドル達の殺し合いへのモチベーションを下げることとなる。 雪美の知るあの千川ちひろなら、そんな不利益に繋がる方法は選ばないだろう。 だからこそ、これが雪美の願いを遂げうるたった一つの冴えたやり方になり得るのだ。 殺し合いに乗ったと思わせさえすれば、雪美の生死に関わらずプロデューサーは開放される。 返り討ちにあったように見せかけて自殺すれば、あの人の願いどおり誰も殺さないで済む。 もしかしたら他にもっと上手なやり方があるのかもしれない。 誰も殺さず、プロデューサーと再び手を繋げる日も来るかもしれない。 そんな甘い幻想を抱かなかったわけではないけれど、時が経てば経つほど、決心は鈍ってしまう。 あの人と会いたいという一心で、この手は誰かを殺してしまう。 それは、駄目だ。そんなことをしたら、本当の本当に、あの人と一緒にいられなくなってしまう。 二人を結ぶアイドルという名の絆が断ち切られてしまう。 そうなる前に。決心が固い内に。 私は、私を殺そう。 一度決めてしまえば、少女に迷いはなかった。 繋いだ手の温かさを覚えてた。 その温かさが力を貸してくれた。 少女は見事にアイドルとして、舞台を演じきった。 (………来てくれたのが………あなたで……よかった……) ふらつく足を動かしながらも想い描くは、騙す形でゲスト出演させてしまった一人のアイドル。 その姿を一目見た時から、彼女しかいないとそう思ったのだ。 何故なら少女が着ぐるみを着ていたから。 全身を毛で覆われたあの服の上からでは、もし何かの弾みで誤って注射してしまっても、肌にまで届くことはないと踏んだのだ。 着ぐるみ相手に注射器を穿つという愚行も、自分の年齢を鑑みれば、子どものやることだと嘲笑されることはあっても不可思議とはとられまい。 ただ一つ心傷んだのが、その着ぐるみが相手にとって大切なモノだったということだ。 着ぐるみを傷つけられた時の、少女の怒りと悲しみが入り混じった顔が、今もありありとリフレインする。 たかが着ぐるみと千川ちひろならせせら笑うかもしれない。生きて返り討ちにできたのですから安い犠牲ですよとほざくかもしれない。 黙れ プロデューサーからもらった服の価値をあなたなんかには測れはしまい 雪美も同じだった。 服をもらった時、嬉しかった。新しい服をもらった時は、もっともっと嬉しかった。 包丁でもなく、銃でもなく、毒薬を支給されてよかった思ったのは、これなら服を血で汚さずに死ねるからだ。 結果的には、雪美の服も少女との揉み合いで土に汚れてしまったけれど。 少女の大切な着ぐるみを意図して汚してしまった以上、嘆く資格はない。 嬉しそうにプロデューサーが選んでくれたのだと語る様子から、着ぐるみを傷つけたなら少女が反撃してくれると狙ってやったのだ。 そこに一切の疑いはなかった。 自分だってこの服を汚されたのなら、どんな相手にも、どんな凶器にも、立ち向かったことだろう。 (……そう……きっと……私……あなた…………似ていた…………あなた……約束……叶うと……いい……) 多くが偽りだったあの舞台で、少女にかけた言葉だけは全て、本物だった。 自分と少女は、こんな殺し合いの中でなければ、友だちになれていたに違いない。 ようやっと辿り着いた揺り椅子にもたれかかるように腰を下ろし、幸せなifを幻視する。 (………新しい服……新しい友達……ちゃんと…綺麗に……撮って……) 自分もあの子も、猫の着ぐるみを着ていて、それは、ああ、なんて、幸せな夢。 そういえば、誰か猫っぽいアイドルもいた気がする。 メアリーにでも紹介してもらって、その人も一緒に撮ってもらえたなら。 (……そうだ……メアリー……ペロ……お願い…………ペロ……ごめんね…………) 夢の中で友人に、置いてけぼりにしてしまう飼い猫を託す。 本格的に夢と現が混じり始めたことで、残された時間があと僅かなことを察する。 それならと、最後は大好きな人のことだけを思うようにする。 ずっと一緒にいてくれると約束してくれたあの人を。 置いて行ってしまうあの人を――否。 (………私…あなた……魂…繋がってる……離れても…ずっと…) 死すら二人を分てない。 約束は破られてなどいなかった。 約束は永遠だった。 「いつも……私を……感じて……私を……覚えてて……――」 最後に音ならぬ声で大好きな人の名前を呼んで、雪美は目を閉じた。 張り詰めていた少女の神経が全てを成し遂げたことにやっと安堵する。 ことりと、少女の頭が揺り椅子に寄りかかる。 自然と口ずさむは、あの人に教えてもらったミステリアスソング。 自身を送るレクイエム。 少女の頬に、涙の雫が伝った。 黒い黒い、どこまでも黒い森の中。 どこからが闇で、どこからが夜空なのかもわからない場所。 そこにはもう誰もいない。 覚めぬ眠りへと誘われた眠り姫に抱かれて。 約束だけが遺されていた。 【佐城雪美 死亡】 ※雪美の死体の傍に基本支給品×1、注射器が転がっています。毒薬は使いきりました 前:揺れる意志、変わらぬ夜空 投下順に読む 次:私たちのチュートリアル 前:揺れる意志、変わらぬ夜空 時系列順に読む 次:私たちのチュートリアル 前:~~さんといっしょ 市原仁奈 次:失敗禁止!火事場のチョイスはミスれない! 佐城雪美 死亡 佐城雪美補完エピソード:サグラダ・ファミリア ▲上へ戻る
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約束 No.9006 約束 イベントカード 使用:戦闘 条件:咲夜 咲夜 レミリア レミリア 呪力5 追加代償(使用):使用条件に『咲夜』が含まれている準備状態のスペル1枚を捨て札置き場に置く フェイズ終了時まで、使用条件に『レミリア』が含まれているスペル1枚は「攻撃+3」「迎撃+3」「命中+3」を得る。 イラスト:氷雨げんた 考察 考察の入力。必須ではない。
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【種別】用語 【登場】17話 過去のシベリア編で小夜がハジに「憶えてる?」と訊いた約束。 「私がディーヴァを狩ったら…」の後に続く言葉は、口の形だけで発音されていないが、「殺してね」と推測される。 46話で予想通り、約束の内容は「ハジ・・・全てが終わったら、貴方の手で私を殺して」と判明。 コメント 果たしてハジはこの約束を果たすのだろうか・・? -- 一緒に死んじゃうとかないよねーー? -- ハジって小夜を殺すとしてもどうやって?ディーヴァ以外で小夜を死なせる術があるのか?! -- 心中するのか?!ハジーーーーーー!! -- 小夜の子供がディーヴァを殺すとすれば、殺した後に私を「起こしてね」になると思います。どうでしょう? -- ここまで引っ張るとは思わなかった -- 46話の予告での「約束・・・・」のサヤの明るめの言い方が気になります。案外深刻なものでは無いんではない? -- やっぱり殺してねか… -- しかし、どうやって殺すんだ? -- 回復できないぐらい出血多量させるんじゃね? -- ↑死ぬには至らんだろ。ソロモンも来週まで生きてるし。かろうじてだけど。 -- 血あんまり飲んでないときに心臓刺せば多分いけるだろ。 -- 小夜とハジ、好きだけど最後は物語的に死んだ方が納得できるかも -- 果たして46話まで引っ張るほどの約束だったのだろうか。予想通り -- ↑カイを介入させるためじゃないかな? -- 名前 コメント