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性能詳細 [#v15aa30b] 入手方法 [#e993bf72] 品質 [#l784fbfa] コメントフォーム [#qb5c4d63] 性能詳細 愛する人にプレゼントすると、恋が成就するという神秘的な指輪。 互いを信じて一生を共にしようと誓う日、約束の証としても使われる。 アイコン 名称 Lv 部位 種類 力 敏捷 知能 意志 +α attachref 永遠の約束 10 指輪 アクセ 1 1 1 50 - 種族:リシタ,フィオナ,イヴィ,カロック 関連セット:なし 入手方法 専門技術(細工) 材料 個数 熟練度 250 シルバーリング 1 永遠のエルグ結晶 33 サファイア 4 品質 専門技術(細工) 品質 防御 力 敏捷 知能 意志 +α ★1 - 1 1 1 40 - ★2 - 1 1 1 55 - ★3 - 1 1 1 60 - ★4 - 1 1 1 62 - コメントフォーム 名前 コメント
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約束への帰路は遠からじ あの人は、罪は償えないと言った。確かにそうだと思う。 あの人が母さんを殺したという事実は、これからもずっと変わらない。 父さんを殺したのはクレス。ロニやジューダスを殺したのがリオン。 リアラを殺したのがミトスやアトワイトさん、止め切れなかったオレ。 そして母さんを殺したのが……あの人。 もしオレがあの人のことを許さず、復讐すると言ったら、甘んじて首を差し出すのだろうか。 いや、違う。あの人は罪を受け止めて生きることを選んだんだから、オレの言葉を拒否するだろう。 なら、あの人にとっての罰は、いつまでも罪を背負い、呵責を続けながら人生を歩むことなのだろうか? あの人は、罪を償えないと言った。そうだ、あるのは償いではなく罰だ。 死という形ではなく、生きて、本当なら普通に過ごすはずだった時間を奪い去られる罰。 ――例え罪は消えなくとも、オレが許したとしたら、それは変わるのだろうか? 許し許されることは、本当に自己満足なんだろうか。 ――それでも、やっぱり母親を殺した人を許すことなんてできない? 罪を背負い続けることが罰だとするなら、一思いに許さない方がいいのか。 こんなことを考えるのは、オレもリオンとリアラの命を奪ったからなんだろうか。 たった15歳の自分が断定できるものなんて、見渡してもどこにもない。 ならせめて、一体自分の気持ちはどこにあるのだろう。 身体の中のものを全部吐き出したとしても、そこに自分の名を冠するものはあるのだろうか。 何が、あの人のためになるのか。 「自分の気持ちに嘘を吐くな」 あの人の言葉が頭に蘇る。中でがんがんと響いて、跳ね返って、オレの心を強く揺さぶる。 はっと視界が白くなっていき開けていく。 心の淀みがさっと押し出され、まっさらな地平線が広がる感覚。 足りなかったのは1歩踏み出す勇気だ。あの人がオレにすべてを告げるのが怖かったのと同じように。 自分の気持ちに素直になるのなら、答えなんて―――― 夜空に輝く一番星。落ち始めた夜に煌く、1つの希望。 互いに素直になって元の親友同士に戻った2人は、肩を組んで――というよりは1人はいやいや組まされている状態で―― 残された少年の下に戻ろうとしていた。 肩にかかる重さは鬱陶しくも心地よく、懐かしさすら覚える。 それほどこの重みは今まで遠くにあって、自分にとって大事なものだったのだ。 振り返ったヴェイグは、1つの違和感に気付いた。 弾き飛ばしてしまったディムロスは地に転がっているはずなのに、地面に肝心の影はない。 どこに行ったのかと目を配らせると割とあっけなく見つかった。 炎の大剣は後方で待機し、箒に乗ったカイルの手に握られていたのだ。 そのカイルは、じっとディムロスを見つめている。 ヴェイグがティトレイの腕をほどきカイルに近付いても、顔を上げずただ鈍く光る刀身と、そこに映り込んだ自分の顔を見つめていた。 光源が沈みかけていることによって少しだけ影に隠されたカイルの表情は、 口元をきつく縛り、眉間を寄せるシリアスなものだった。 15歳とはいえまだ幼さの残る顔立ちに、その表情は相応の重みを伴って浮かび上がっていた。 カイル、とたまらずヴェイグは一声かける。 「……ヴェイグさん。罪は、償えないんですよね」 返答が来るのにもやや時間がかかった。 静かな、搾り出すような声音と、その発言自体にヴェイグは驚いて身を震わせる。 「……ああ」 しかし彼はそれが真実だとでも言うように、カイルの言葉を肯定した。 夕方の空気は冷え込み始め、肺を満たす酸素は爽やかだ。 ティトレイに向けて叫んだ言葉たちは決して自分にとって偽物ではない。 罪は償えば消えるものではなく、いつまでも付いてくるものなのだと。 カイルは未だ顔を上げていない。 今更ヴェイグは当然だと思い、何も知らないカイルの表情が罪の証だと感じた。 肉親の命を奪ったのである。自らの行いは許されていいものではない。 少なくとも誰かを殺したとは知っているのだから、もしかしたらカイルは、償えないと断定したことを 「罪なんて忘れてしまえばいい」と捉えたのかもしれない。 償わないのに生きるなんて、聞き方によってはそれこそ傲慢だ。 ヴェイグは沈黙を続けるカイルに、自然と頭をうなだらせていた。 「罪を受け止めて、生きることが大切なんですよね」 ディムロスを見たまま、カイルは再び口を開いた。 「ああ」 「自分の気持ちに嘘をつくのは、間違いなんですよね」 「……ああ」 ただ頷くしかなく、ヴェイグはそれ以上を何も言えなかった。 カイルが顔を上げ、揺れた髪の隙間に残っている明かりが差し込んだ。 照らされた真摯な顔が、目の前の青年を見つめた。 「なら、オレはこれから北に向かいます」 少年の口から発せられた言葉はあまりにも予想からかけ離れたものだった。 見当違いも甚だしいと、少々間抜けた顔をしてしまったほどである。 意識が定まり両目の焦点も適合したところで、カイルの真剣な面持ちにやっと気付く。 即座に彼は首を大きく振った。 「正気か!? 北は禁止エリアに」 「だからです。北には、アトワイトさんがいます」 けれども、カイルは動じずにすぐさま答えた。一寸のぶれさえない。 むしろ、ヴェイグの反応があらかじめ分かっていたかのような淀みのない回答だった。 「アトワイトはミトスが持っているんだぞ。それにお前の怪我ではろくに戦えないだろう? さっきの戦いを忘れたのか!?」 事実や経験に裏打ちされた、確定事項による論理。まさに正論だった。 カイルもそれを承知しているからこそ、ここだけは反撃できないようだった。 一層表情が険しくなり、視線の方向がヴェイグからずれる。正視できないのを隠すように目を伏せる。 両肩が持ち上がっている姿は、感情が溢れ出てしまいそうになるのを抑えているようだった。 「……それでも行かなきゃいけないんです。例え命を投げ出すのに等しいことでも、これだけは譲れません」 カイルの手の内に握られたディムロスが一驚したような息をこぼす。 少年の顔付きはまるで諦めの兆しが見えなかった。 どれだけ力を加えようが、反射する鏡を置こうが曲がりようのない意志。止められないのか、と彼は思った。 「なら、俺も北へ行く。お前1人をみすみす行かせる訳にはいかない」 「……ヴェイグさんなら、そう言うと思ってました」 目を閉じたままのカイルの表情がふっと柔らかくなり、彼に笑いかける。 期待がヴェイグの顔に表れ、彼にしては珍しく明るくなる。 だが、カイルが瞼を上げることでそれもあっけなく裏切られた。 「でもダメです。オレ1人で行きます」 目の色はまるで先程と変わっていなかったのだ。 何者も寄せ付けない、あまりに強く眩すぎる眼光。そこに踏み込んでしまえば、逆に呑まれて足場を見失ってしまう。 決意は誰にもへし折りなどできなかった。 「何故だ? 無茶というのが分からないのか!?」 カイルはうーん、と唸り、少し考え込んでから答えた。 「あなたまで危険に巻き込む訳にはいきませんから。それに十分あなたも傷がひどいです」 先程のヴェイグの理論とほぼ同じ内容だった。すなわち、彼もまた反駁することはできない。 それでも、と彼も言えばよかったのだろうが、E3にいたときのカイルの言葉が脳裏に再生され、口は開かなかった。 自分は1度でもカイルの意思をちゃんと尊重したことがあっただろうか? 自分の求めるものは償いによる自己満足ではないと知った今、 カイルに一方的に同伴することは、結局は自己満足の域を出ていないのではないか? シャーリィの術を防いだあのときのように、カイルを「死なせたくない」のではなく、「死なせてはいけない」だけだと。 「大丈夫です。オレには生きて戻る理由があります。 生きて、あなたに言わなきゃいけないことがあります」 え、とヴェイグは呟いた。カイルの顔を見れば、何かを取り払ったような晴々とした表情だった。 反して彼の顔には明らかな困惑がにじみ出ている。そして彼はまさか、と思った。 否定の言葉にすらならない文字の羅列が、意味もなく紡がれていた。 心の奥で誰かが囁く。 ほら、全て喋って吐き出して楽になってしまいなよ。すぐに頭と身体は離れてもう何も考えずに済むから。 「いいじゃねえか、行かせてやれば。それがカイルの気持ちなんだろ?」 唐突に響いた埒外の声に、2人はほぼ同時にそっちの方を向いた。 頭に腕を組んでいるティトレイはごくごく普通の面持ち、すなわち当然だとでも言いたげな表情だった。 ヴェイグの口から言葉が出る前にティトレイはカイルへと近付き、何かを差し出す。 「お前がそうしたけりゃ、そうすりゃいい。きっとお前は1人で行くことの意味もリスクも分かってるんだろ?」 カイルは差し出されたものを受け取る。 「なら、俺に止める理由はねえ」 へへ、とティトレイは笑う。ヴェイグは黙ってその様子を横で見ているしかなかった。 「……さっき聞いてたなら分かってっと思うけど、昨日の夜、お前を地下に突き飛ばしたのは俺だ。 悪かった、っつっても簡単に許してもらえるとは思ってねえ。 けどな、お前を行かせるのは引け目があるとか、そんなんじゃない。それがお前の決めたことなら、止めるべきじゃねえから」 頭を掻きながらとつとつと語る青年に、カイルは頷くことも否定することもなく笑っていた。 ティトレイの言葉に、先刻のある言葉を思い出していた。 沈み込んでいたかと思えばいきなり高々と演説を始めた、痛みを伴った青年の繰る言葉。 血を吐いてまで伝えたかった、何かを失った自分たちへの真っすぐな言葉。 自分の意思を尊重しろ。その言葉通りなら、ヴェイグの阻止も自分の意思ゆえなのだからあながち間違いではない。 だが、それ以上に彼は自分の行いを疑問視し、カイルの「自分」の意思が気にかかっていた。 これまでが何らかの形で誤っていたのなら、違う一手を出すべきではないのか? 首輪、禁止エリア、命を奪い合うゲーム、効率化、守るということ、罪と償いと罰、それらはある前提の上に成り立った概念である。 すなわち、バトル・ロワイアルという枠組みの。 そこまで考えて、自分はこの殺し合いの一部として取り込まれているのだと理解した。 「本当に、それでいいんだな?」 ヴェイグは一息分の沈黙ののち、カイルへ向かって言う。 ひどく抑圧された低声だったが、それは我を押し殺しているというよりは、真剣に相手の意思を確かめる意味合いが強かった。 カイルはただ黙って頷いた。 そうしてヴェイグもまたティトレイと同じように、何かを差し出す。 「なら、俺も止めはしない。ただ」 彼は目を細め、少しだけ俯く。 「必ず、生きて戻れ」 迂遠な約束だった。今は聞かないから、代わりに生きて会えたら聞くから、すべてを話すからと。 横でティトレイが罪を明かすのを聞きながら、語らぬのは卑怯だ、ともヴェイグは思った。 しかしこれが約束の形だ。後ろ向きの感情も消え去ってしまう。 ティトレイの差し出したものが餞だとするならば、ヴェイグが差し出したものは無事への願いである。 別にカイルにルーティのことを告げられるのを恐れている訳ではない。 むしろ、すべてを明かす勇気を持てたからこそ、ここで告げてはならないのだ。 今、限りある時間をカイルから奪う訳にはいかない。 何よりも、ここで吐露して満足してしまってはいけない。彼にとって重要なのは明かした先にある行程だ。 帰還を信じるために、それを残しておかねばならないのだ。 ヴェイグの重々しくもはっきりとした言葉に、カイルはアイテムを受け取り別の手へと移し、そしてもう1度手を差し出して応えた。 グローブのはめられた手の1番下、小指がちょこんと飛び出ている。 「約束といったら、指切りでしょう?」 何事か、と小指をしげしげと見つめていたヴェイグは、その言葉でようやく意図を理解した。 指切りなんて子供の時分からどれくらいしていないか、覚えてすらいないほどだが、 彼は気恥ずかしさを抑え小指を出して相手の指に交わした。 この小指ほどに細く心もとないが、せめてこの繋がりが絶たれぬように。 指を離したヴェイグは、どこかすうっとしたカイルの表情を見ながら一言、「行け」とだけ言った。 口に自らの感情の支配権を委ねてしまえば、時間を食うどころか 一体どんな言葉が出てくるか分からない。やはり止めてしまうかもしれない。 カイルの思いを優先するとしても、それほどカイルは危険な状況に乗り込もうとしているのだ。 少年は彼にただ笑って応えた。何の余韻も残さぬよう、そのまま箒を反転させ、フルスロットルで発進させる。 夕闇に七色の軌跡を残し、カイルの姿はあっという間に溶けて消えてしまった。 今になって、どこか後悔めいたものが胸を過ぎる。 「やっぱ止めときゃよかった、とか思ってるか?」 横に立っていたティトレイが、完全にカイルの姿が消えたのを見計らって声をかける。 「半々、だな」 ヴェイグは顔を背け答えた。 「カイルはああ言うが、帰ってこれる保障などどこにもない。 このまま何も告げることなく、約束は約束のまま終わるかもしれない」 「けど、な」 「止めてもあいつは……振り切ってでも行っただろう」 分かっているからこそカイルを止めるべきでもあり、しかしどうしようもなかった。 こうしてカイルは2人の目の前から消えてしまった。 約束を交わした手を見つめ、握った拳をゆっくりと開く。5本の指は伸び、小指は特別な存在ではなくなってしまった。 彼の頭を過ぎるのはいつも最悪の結末だった。 それを思い描くということは、カイルの死とは一体どれだけ自分に比重があるものなのか。 自分の背中にかかる重み以上に、少年の存在は大きいのかもしれない。 違う、と思った。 少年はこの背中にかかる重さが現世に形を持って表れた、罪の象徴なのだ。 目に見えるうちはまだ自分の過ちを自覚でき、取るべき道の標榜として先へと歩むことができる。 だが象徴自体を失ってしまえば、彼の罪は浄化されることなく姿を消し、行き場を失ってしまう。 残るのはその場で跪くことだけだ。 「でも、お前は確かに言ったよな。行け、って」 「そうだ」 「少なくとも、お前はカイルを行かせることを選んだんだ。それは大事な一歩だ。 中途半端に行かれてそのまま死なれるよりは、よっぽどマシだろ?」 彼は罪の証をあえて突き放した。道を見失うことを恐れるよりも、これから新たな道を歩む一歩にしようとするために。 カイルを自由にすることは、同時に自らを自由にすることに他ならないのだ。 親友の方を向くと、にかと笑っている。 「行かせるって決めたんなら、胸張ってしっかり前を見てろ。それで信じてればいいじゃねえか。 この今は、間違いじゃねえ」 ヴェイグは顔を北へと向き直させ、見えない影を視界に捉え、ただまっすぐに見つめていた。 両目をしっかりと開け、どんな結末になろうと、その結果をしかとこの目に焼き付けるように。 それでも、「死なないでほしい」と祈りながら。 カイルに全てを告げ罪を少年から乖離させたとき、そのときが真に2人の道を分かつのだろう。 「ちょっと休んでようぜ、俺らは。くたくただしな」 一番星の下、ティトレイはその場にどっかと座り込み、ヴェイグはなお北を見つめていた。 『本当に、これでよかったのか?』 宙を疾走し耳が空気を切る音しか聞き取らない中、その声は頭の内側で響いた。 ばさばさと髪がはためき、ときおり隠される顔の上に笑みは広がっていた。 「その割にずっと黙ってたくせに。じゃあどうして止めなかったんだよ?」 芯を貫くほどに的確に打たれ、見事にソーディアン・ディムロスは沈黙した。 その指摘の鋭さといったら、不用意に打ったパンチをすいと避けられ理想的なカウンターフックが頬を打ち抜いたようなものだ。 関節の骨1つ1つが突き出され、えぐるように肉を削いでいく。そしてダウン。 『……期待、という甘い棘なのだろうな』 ディムロスは観念したように言葉を吐き出した。 『最後かもしれないが、まだチャンスはある。 もし、彼女を取り戻すことができるなら……そうでなくとも、せめて何か一言でも伝えられるなら』 「大丈夫だよ。必ず一緒に帰れる」 風が裂かれる音で少年の声は聞き取りにくいものだったが、炎の剣は確かにその一言を聞いた。 重みは確かに剣の内に響いた。 「過去……過ちは、去るんだから」 コアクリスタルがもう一方の反応を感じ取り、彼らは発生源である森の奥へと入る。 『カイル、お前がここへ来たのは、本当に私のためだけか?』 生じた風で葉が揺れ、がさがさと盛大な音を立てる。 ディムロスの言葉にカイルは黙ったまま、前方を向いて箒を走らせていた。 涼しい気の流れに草木の匂いが混じる。疾走の最中にそれを感じ取ったほど、カイルの意識はどこか茫然としていた。 「……分かんない」 ぽつり、とカイルは小さく呟く。 『お前は怖くないのか?』 「……分かんない」 連続した問いにも首を横に振って同じことを返す。 かといって箒の速度を落とす訳でもない。引き返すような素振りも見せない。 非凡なる力の軌跡はただ真っすぐに。前へ前へ、それしかできないかのように進んでいく。 「でも、これだけは分かってるよ。このままじゃ納得はしないって」 木と木との間をくぐり抜け、深い森の中を進んでいく。 置かれた2つの碧眼は暗闇の中に確かな光を宿している。 「助けて、って言うのはそんなに悪いこと? 辛い気持ちを隠し続けて、それで何が手に入るんだ? 1人でいることの方がよっぽど寂しくて悲しいよ」 欝蒼とした森は、光が乏しくなったことで本来の薄闇を更に増して暗がりを作っていた。 風でがざがざと木の葉が揺れ、鋸でこすり合わせたようながさつな音を立てる。 誰1人として招かぬように、と森自体が不快な要素を作り出し弾こうとしているようだった。 しかし、招かれざる客は箒を駆り、気味の悪い緑の中を進む。 目当ての剣は、ある1本の木の下に腰かけていた。 小ぶりの刀は金髪と緑の目を持った少年の傍らに突き刺され、ただ無意味に時間を過ごしていた。 互いに、特に少年の方はこの闇と同化してしまうのではないか、そう思えるほど存在は弱々しい。 長い前髪の間から少年は来訪者を確認すると、億劫そうに口を開いた。 「何しに来た、帰れ」 訪れた少年とさほど外見の年は変わらないのに――むしろ幼いのに――その声は恐ろしく低かった。 声だけで相手をねめつけるような、希薄な存在のはずなのに覇気すらある。 しかし、来訪者ことカイルは退きはしない。 「用はある。だけど、オレじゃない……アトワイトさんにだ」 少年は無言で地から抜き取り、カイルにソーディアン・アトワイトをかざした。 同じく、カイルも腰に納められたディムロスを抜き払う。 暗闇の中、赤と青のコアクリスタルの輝きが森を照らす。片や憂い気に、片や複雑そうに。 『アトワイト……』 『……今更、何の用? ディムロス』 名を呼ぶ声にもそっけなく、抑えられた声で返したアトワイトに、ディムロスは苦しそうに息を呑んだ。 変わってしまった彼女と対面することがディムロスにとっては1番辛く、そして1番に乗り越えなければならなかった。 『……確かにあの夜、私はお前の声を受け取った。それでも向かわなかったのは私の落ち度と言える』 『今頃になって詫びを入れようとでもいうの?』 『そうだ。結果としてリアラという少女を死なせ、お前を傷付けた。それは、拭い切れない罪の1つだ』 アトワイトは静かに笑った。 乾いた響きが森の中で幻の反響を作り出し、暗い森の色合いを更に黒く塗り替えていき、緩やかにディムロスの心をえぐりこんでいく。 『……何も変わらないわ。何も戻ってこない』 暗がりに紫色の髪が流れ、冷たい微笑を浮かべた彼女の姿が浮かび上がる。 対峙する2人。今、互いは敵である。向かい合ったまま剣を交えるのが正しき光景である。 歯をむき出し、目をぎらつかせ血肉を滴らせ食らい奪い合う、実に醜い光景。 『ああ。だが、これからを変えることはできる』 けれども、ディムロスは肯定を手に、理性の輝きを灯して剣を構える。 無意味に奪うのではなく、失ったものをもう1度この手で抱き止めるために。 『そのために……私はお前を取り戻す。 覚悟は決めてきた。例えなんと謗られようと、今度は2度と手放さないッ!』 一瞬の剣閃が闇を切り裂き、彼女の幻と共に霧消させる。 アトワイトは瞳孔が瞠るのを必死に抑えていた。 意気を吐くディムロスを尻目に、少年はくつくつと笑っていた。 その熱さすらどこか郷愁めいた、むしろもうどうでもいいとでも言うかのような笑い方だった。 「だってさ。いいよ、アトワイト。お前の好きにすれば?」 アトワイトの方へと首を動かし、光の輝きを確かめる。 『……私は、もう戻ることなどできません。私の居場所は、あなたと共に』 彼女は淡々と答え、反発の意を示した。 少年は納得したように小刻みに首肯し、改めてカイルたちの方へと向き直る。 「……ってことだから、帰ったら?」 小馬鹿にしたように彼は言うが、カイルたちが退く様子はない。 逆に、どう言おうが必ず連れて戻るつもりなのか、戦意の高まりすら感じる。 そのとき、彼は自分の中に何かが湧き出たのを感じた。 何もかも分かっているような、同情でも寄せているのかと思えるカイルの目付き。 それをくり抜いて落してやらなければ静まらない。お前に一体何が分かる。 やがて生まれたものは内発的に生じた心地よいリズムとなり、胸を踊らせるような愉しい感情へと変遷する。 叩き落としねじ伏せねば気が済まない、そんな嗜虐的なもの。 彼は口元が弧を描いていることに気がついた。 「……姉さまにも棄てられて、正直もう何もすることがなくなったんだけど。2つ忘れてたことがあった」 ゆっくりと立ち上がり、彼はアトワイトを握り締める。 「1つは僕がこいつの飼い主で、ソーディアンマスターであるということ。 一応は、ソーディアンの顔くらい立てておかないと示しがつかない」 緩慢に胸元の輝石に触れると、周囲にこの闇を照らす純白の光の羽根が散り始める。 「2つ目は、ああ、もの凄く個人的な、どうでもいいことなんだがな……そう、昨日の夕方を思い出したんだ。 堕ちたかと思ってたのに、顔付きがまるで変わっていない。むしろ強くなったくらいだ。 つまり……何が言いたいか分かる?」 ミトス・ユグドラシルは自身の湛えられた幼い双眸と、射抜くような冷徹かつ鋭い眼光を以ってカイルを睨みつけた。 カイルは無言のまま相手を睨み返す。 あの殺意に満ちた目はどこへ行ってしまったのか。ミトスはなんだか笑ってしまった。 「直にここも禁止エリアになる。アトワイトさえ見捨てれば、僕は追わないよ。 まさか僕を倒してからアトワイトも拾って悠々と戻れるとは……思ってないよな?」 ミトスの威圧的な問いに、カイルは臆することなく、 「思ってたら?」 いつものように楽天的かつ自信ありげに笑って答えた。 ミトスの顔が一気に歪む。 「……上等。どこまでもムカついて素晴らしい」 純白は彩となり、一閃の光ののちミトスの背に、他のどの天使も持たぬ七色の羽が広がった。 その光だけで森の暗黒を全て払ってしまいそうな、そんな厳かなものすら感じさせる。 カイルは静止させていた箒に再び晶力を込め、いつでも発進できるようにブーストをかける。 手にディムロスを握り、その刃を以って成し遂げてみせると力を込めた。 「アトワイト、射撃は任せる。残った魔力も半分は使っていい」 『……了解しました。フルショットで行きます』 七色の光の中に青い輝きが混ざり合い、冷気が周囲を満たす。 「ディムロス、箒をお願い。オレを届く位置まで運んでくれ」 『……承知。セミオートで行くぞ』 七色の光の中に赤い輝きが交わり合い、熱気が辺りを包み込む。 決戦と呼ぶに相応しい、僅かに残された時間の中で、強大な力と力はぶつかり合う。 「行くぞ、英雄!」 「来いよ、英雄!」 【ティトレイ=クロウ 生存確認】 状態:HP10% TP30% リバウンド克服 放送をまともに聞いていない 背部裂傷 所持品:フィートシンボル メンタルバングル バトルブック(半分燃焼) チンクエディア オーガアクス エメラルドリング 短弓(腕に装着) クローナシンボル 基本行動方針:罪を受け止め生きる 第一行動方針:カイルの帰還を待つ 第二行動方針:ミントの邪魔をさせない 現在位置:C3村北地区 【ヴェイグ=リュングベル 生存確認】 状態:HP20% TP20% 他人の死への拒絶 リオンのサック所持 刺傷 両腕内出血 背中3箇所裂傷 胸に裂傷 打撲 軽微疲労 左眼失明(眼球破裂、眼窩を布で覆ってます) 胸甲無し 所持品:忍刀桔梗 ミトスの手紙 ガーネット 漆黒の翼のバッジ 45ACP弾7発マガジン×3 ナイトメアブーツ ホーリィリング 基本行動方針:罪を受け止め生きる 第一行動方針:カイルの帰還を待つ 第二行動方針:ロイド達の安否が気になる 第三行動方針:カイルに全てを告げる 現在位置:C3村北地区 ※2人のアイテム欄はそのままの表記になっていますが、この内の「何か」がカイルの手に渡されています。 何が渡されたかは次の人にお任せします。 【カイル=デュナミス 生存確認】 状態:HP35% TP25% 両足粉砕骨折(処置済み) 両睾丸破裂(男性機能喪失) 右腕裂傷 左足甲刺傷(術により処置済み) 背部鈍痛 所持品:S・D フォースリング ウィス 忍刀血桜 クラトスの輝石 料理大全 ミスティブルーム 首輪 レアガントレット(左手甲に穴)セレスティマント ロリポップ 魔玩ビシャスコア アビシオン人形 漆黒の翼のバッジ ペルシャブーツ 基本行動方針:生きる 第一行動方針:ミトスを倒し、アトワイトを連れ戻す 第二行動方針:守られる側から守る側に成長する 第三行動方針:ヴェイグにルーティのことを話す SD基本行動方針:アトワイトを取り戻す 現在位置:B3森林地帯 【ミトス=ユグドラシル@ミトス 生存確認】 状態:HP70% TP30% 拡声器に関する推測への恐怖 ミントの存在による思考のエラー グリッドが気に入らない 左頬に軽度火傷 右頬に小裂傷 所持品(サック未所持):S・A ミスティシンボル ダオスのマント 地図(鏡の位置が記述済み) 基本行動方針:無し。ほぼすべての事象に無関心 第一行動方針:カイルを撃破する 現在位置:B3森林地帯 前 次
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公式サイト→FORTUNE ARTERIAL公式サイト 2010年10月 FORTUNE ARTERIAL フォーチュンアテリアル 赤い約束 Blu-ray 第1巻 posted with amazlet at 10.10.27 video maker(VC/DAS)(D) (2010-12-24) 売り上げランキング 551 Amazon.co.jp で詳細を見る ブログ #blogsearch2
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クレイジートレイン/約束(前編) ◆guAWf4RW62 草木も眠る丑三つ時。 水瀬名雪は、とある作業を終えた所だった。 そう、『最強の機械』を手に入れる為の作業だ。 実際にやってみるまでは、単純な試行錯誤の繰り返しで、どうにかなると思っていた。 だが『最強の機械』は、ショベルカー程容易には動いてくれなかった。 見掛けとは裏腹に、動力部は最新技術が結集されており、車輪に該当する部分も、より幅広い環境で用いれる特殊なものだった。 運転席の周りには幾つかモニターが取り付けられており、周囲の景色を眺め見れるようになっている。 それ程高度な機械を、只の女子高生である名雪が、自身の持つ知識だけで扱える筈も無い。 そこで名雪は『最強の機械』内部をくまなく探索し、操作マニュアルと思われる本を見つけ出した。 そして―― 「あはっ……あはははははっ! やったよ、遂に動かせたよ! アハハハハハハハハハッッ!!」 名雪は周囲を警戒しようともせず、声を張り上げて哂う。 敵を誘き寄せてしまう可能性もあったが、そんなモノ今の名雪にとっては、何の脅威にも成り得ない。 そう――名雪は『最強の機械』を操る事に成功したのだ。 最早どのような敵が現われようとも、負ける可能性など皆無。 例え自分と同じように、パワーショベルカーを入手した敵が現われたとしても、造作も無く粉砕出来るだろう。 とは云え機械である以上、燃料が尽きてしまえばそれまでだ。 余程の強敵が現われない限りは、パワーショベルカーを中心に戦うべきかも知れない。 名雪はそう考えて、『最強の機械』をデイパックに仕舞い、代わりにパワーショベルカーを取り出した。 「さああゆちゃん、早く出てきてよ! ボロボロにしてあげる! グシャグシャにしてあげる! 一杯……いーっぱい、苦しめてあげるんだからあああああああああ!!!」 闇夜に響き渡る雄叫び。 運命に翻弄され、狂気に飲み込まれ、そして究極の力を手に入れた少女が、再び動き出す―――― ◇ ◇ ◇ ◇ 舞台は移り変わる。 広大な森の中、切り開かれた円形状の平野に聳え立つ、一際巨大な建造物。 ホテルの玄関で、朝倉純一とその仲間達は話し込んでいた。 純一は外に広がる暗闇を一瞥した後、不安げな表情で問い掛ける。 「なあ悠人、どうしても行くのか? せめて明るくなるまで待った方が、安全じゃないか?」 「そういう訳にも行かないさ……合流予定時刻はもう過ぎてしまってるんだ。 千影の無事も確認したいし、衛達だって病院で待ってる」 情報交換を行った後、高嶺悠人は純一達と別行動を取り、病院に向かおうとしていた。 この殺人遊戯に於いて戦力の分断は下策であるし、暗闇の中の行軍は危険極まりない。 そう云った理由から、純一は悠人に制止を呼び掛けている。 だが病院での待ち合わせ時刻は既に過ぎており、これ以上悠長にはしていられない。 次の放送で病院が禁止エリアに指定され、合流出来なくなる危険性だってあるのだ。 それに、今の悠人には頼もしき同行者が付いている。 「大丈夫よ純一。私が一緒に行くんだから、問題無いわ」 悠人と共に行動する事になった小町つぐみが、自信に満ち溢れた笑みを浮かべる。 何故つぐみが同行するのか、理由は簡単だ。 純キュレイ種であるつぐみは、赤外線を視覚で捉える事が可能な為、暗闇での行動を得意とする。 それに加え、純一や蟹沢きぬと違い、つぐみには『武を探す』という大きな目的もある。 人を探すのなら、一箇所に留まるよりも、動き回った方が遥かに効率的。 だからこそつぐみは悠人と共に病院へ向かい、その間純一と蟹沢きぬは、ホテルで待機する事になったのだ。 そして悠人とつぐみが玄関を潜り抜け、ホテルを後にしようとした時、後ろからきぬの躊躇いがちな声が聞こえてきた。 「……ちょっと待て、クラゲ」 「何よ?」 「変なトコでくたばんなよ。オメーみてえな奴でも、死なれたら気分悪いからよ」 「当然よ、武を残して死ねる訳無いじゃない。貴女の方こそ、精々純一の足を引っ張らないよう注意する事ね」 辛辣な言葉の交換は、別れの挨拶としては相応しくないようにも聞こえる。 だがつぐみも、きぬも、内心では分かっている。 お互いの言葉には、仲間を気遣う想いがちゃんと籠められているという事を。 悠人とつぐみは、純一達に見送られながらホテルを後にした。 【D-5 ホテル/2日目 黎明】 【蟹沢きぬ@つよきす-Mighty Heart-】 【装備:拡声器】 【所持品:竜鳴館の血濡れのセーラー服@つよきす-Mighty Heart-、地図、時計、コンパス 支給品一式x3、投げナイフ一本、ハクオロの鉄扇@うたわれるもの 散りゆくものへの子守唄、 麻酔薬入り注射器×2 H173入り注射器×2、食料品沢山(刺激物多し)懐中電灯、単二乾電池(×4本)】 【状態:強い決意、両肘と両膝に擦り傷、左手指先に切り傷、数箇所ほど蜂に刺された形跡、首に麻酔の跡】 【思考・行動】 基本 ゲームに乗らない人間を助ける。ただし乗っている相手はぶっ潰す。 0:つぐみ達の帰りを待つ 1:純一についていく 2:圭一、武を探す 3:ゲームをぶっ潰す。 4:よっぴーへの怒り 5:純一への不思議な感情 【備考】 ※仲間の死を乗り越えました ※アセリアに対する警戒は小さくなっています ※宣戦布告は「佐藤」ではなく「よっぴー」と叫びました。 ※つぐみを完全に信用しました。つぐみを椰子(ロワ不参加)に似てると思ってます。 ※鷹野の発言は所々に真実はあっても大半は嘘だと思っています。 ※純一と絆が深まりました。純一への不思議な感情を持ち始めました。 ※悠人と情報交換を行いました 【朝倉純一@D.C.P.S.】 【装備:釘撃ち機(16/20)、大型レンチ】 【所持品:支給品一式x4 エルルゥの傷薬@うたわれるもの オオアリクイのヌイグルミ@Kanon クロスボウ(ボルト残26/30) ヘルメット、ツルハシ、果物ナイフ、昆虫図鑑、スペツナズナイフの柄虹色の羽根@つよきす-Mighty Heart-】 【状態:若干の精神疲労・強い決意・血が服についている、顔がボコボコ、口の中から出血、頬に青痣、左腕と右足太ももに銃創(治療済み)】 【思考・行動】 基本行動方針:人を殺さない 、殺し合いに乗ってる人間を止め全員での脱出 0:つぐみ達の帰りを待つ 1:北川をホテルで待つ 2:つぐみと蟹沢で武を探す 3:つぐみと蟹沢を守り通す 4:圭一を探す 5:さくらとことりをちゃんと埋葬したい 6:理想を貫き通す 【備考】 ※純一の参加時期は、音夢シナリオの初キス直後の時期に設定。 ※つぐみとは音夢の死を通じて絆が深まりました。 ※北川、梨花、風子をかなり信用しました。 悠人もそれなりに。 ※蟹沢と絆が深まりました。 ※自分自身をヘタレかと疑ってます。 ※佐藤良美をマーダーとして警戒しています。 鳥も参加してる事も知りました。 ※盗聴されている事に気付きました ※雛見沢症候群、鷹野と東京についての話を、梨花から聞きました。 ※鷹野を操る黒幕がいると推測しています ※自分達が別々の世界から連れて来られた事に気付きました ※純一達の車はホテルの付近に止めてあり、キーは刺さっていません。燃料は軽油で、現在は約三分の二程消費した状態です。 ※山頂に首輪・脱出に関する重要な建物が存在する事を確認。参加者に暗示がかけられている事は半信半疑。 ※山頂へは行くとしてももう少し戦力が整ってから向かうつもり。 ※悠人と情報交換を行いました そして、数十分後。 「つぐみ、前方の様子はどうだ?」 「大丈夫。少なくとも私の見える範囲内で、誰かが隠れてる様子は無いわ」 戦力的に劣る純一達の事を考えて、車をホテルに置いてきた為、二人は徒歩で林の中を進んでいた。 周囲に居場所を悟られぬよう、照明器具は一切用いずに、悠人は暗視ゴーグルを装備し、つぐみは己が赤外線視力を頼りとしている。 この方法だとどうしても移動速度は遅くなってしまうが、慎重を期すに越した事は無いだろう。 悠人と同じように暗視ゴーグルを装備した殺戮者が、突然奇襲を仕掛けてくる可能性だってあるのだ。 「…………」 悠人は複雑な表情で、つぐみの背中を眺め見る。 頭の中に引っ掛かっているのは、佐藤良美が逃げ際に放った言葉。 ――『武さんはね、殺し合いに乗ったよ!』 自分がつぐみと共に行動した時間は、未だそれ程長くない。 それでもつぐみが、倉成武に対して非常に強い愛情を抱いているのは分かる。 良美の言葉が事実だったとしたら、そして武の説得に失敗したとしたら、つぐみはどのような行動を取るのだろうか。 諦めずに、何度でも説得を試みようとするだろうか。 それとも―― 悠人がそこまで考えた所で、前方を進んでいたつぐみがピタリと立ち止まった。 「――ねえ、何が音がしない?」 「……え?」 云われて耳を澄ましてみると、確かに何かの音がしているようだった。 音は遠くから聞こえて来ているが、段々とこちらの方へと近付いてくる。 「悠人、此処は一旦――」 「ああっ!」 悠人とつぐみは頷き合い、瞬く間に茂みの中へと身を隠した。 音は益々近付いてきており、最早騒音と云える程の音量になっている。 そのまま待っていると、やがて林道の向こう側から、音源と思われるモノがやって来た。 (な……あんな物まで支給されてるのか!?) 悠人は驚愕の声を上げたい気分だった。 現われたのは、一般的にはパワーショベルカーと呼ばれている代物だったのだ。 無骨なフォルムや圧倒的な大きさもさる事ながら、その走行速度も馬鹿にならない。 少なくとも、常人の全力疾走に比べればずっと速い。 いかな悠人とて、正面からやり合えば苦戦は免れないだろう。 だが幸いショベルカーの運転手は悠人達に気付いていないようで、真っ直ぐに林道を突き進んでいる。 (……あの方向は) パワーショベルカーが走り去ろうとしている方角、それは北だった。 自分の記憶に間違いが無ければ、北には学校や住宅街がある筈。 そしてそれらは、衛が病院に向かう道中で、立ち寄る予定の場所だ。 とは云え、普通に考えれば問題など無いだろう。 病院への集合予定時刻は既に過ぎている。 衛はもう、病院に到着していると判断するのが妥当。 だが悠人の脳裏には、とある不安がこびり付いて離れなかった。 (もし……衛も、俺と同じだったとしたら――) 自分と同じように、移動が大幅に遅れていたら? 何かのトラブルに巻き込まれて、相方とはぐれてしまっていたら? そして――衛が一人で、あのショベルカーと遭遇してしまったら? ……結末は考えるまでもないだろう。 普通の少女である衛が、あんなモノから逃げ切れる筈も無い。 そう判断した悠人は、ショベルカーの姿が消えるや否や、鞄からランタンを取り出した。 「……悪い、病院にはつぐみ一人で行ってくれ」 「え?」 「ちょっと気になる事があるんだ――俺はあのショベルカーを追い掛ける」 悠人がそう伝えると、途端につぐみは呆れ気味の表情となった。 わざわざ危険に飛び込もうと云うのだから、その反応も当然の事だろう。 「貴方、何考えてるの? まさか生身で、あんなモノとやり合うつもり?」 「ああ、必要ならな」 「……そう、分かったわ」 つぐみはそれ以上、何も云わなかった。 その場で悠人と別れて、目的地である病院に向かって突き進む。 つぐみにとって悠人は、あくまで出会って間も無い人間。 朝倉純一や蟹沢きぬのように、仲間として認めた訳では無い。 無謀な行動を諌めたり、一緒になって戦う義理など、有りはしないのだ。 武が対主催者同盟の一員となって、病院に滞在している可能性もあるし、ホテルでは純一達が自分の帰りを待っているだろう。 ならば今は悠人の愚かな行動に関与するよりも、逸早く病院に向かうべきだった。 【E-5 下部/2日目 黎明】 【小町つぐみ@Ever17 -the out of infinity-】 【装備:鉈@ひぐらしのなく頃に祭、スタングレネード×6、ミニウージー(6/25)】 【所持品:支給品一式x3、ベレッタ M93R(18/21)、天使の人形@Kanon、バール、工具一式、暗号文が書いてあるメモ、 バナナ(台湾産)(3房)、倉成武のPDA@Ever17-the out of infinity-、倉田佐祐理の死体の写真】 【状態:健康、肉体的疲労小】 【思考・行動】 基本:武と合流して元の世界に戻る方法を見つける。 ゲームを終わらせる。 0:まずは病院に向かう 1:病院に到着後、協力者を連れてホテルに戻る 2:武を探す、武を信じる 3:ゲームに進んで乗らないが、自分達と武を襲う者は容赦しない 4:圭一を探す(見つければ梨花達の事を教える) 5:四姉妹の話が真実か確かめる 【備考】 赤外線視力のためある程度夜目が効きます。紫外線に弱いため日中はさらに身体能力が低下。 参加時期はEver17グランドフィナーレ後。 ※純一 とは音夢の死を通じて絆が深まりました。 ※音夢とネリネの知り合いに関する情報を知っています。 ※北川、梨花をある程度信用しました。 ※投票サイトの順位は信憑性に欠けると判断しました。 ※きぬを完全に信用しました。 ※鷹野の発言は所々に真実はあっても大半は嘘だと思っています。 ※倉田佐祐理の死体の写真は額の銃痕が髪の毛で隠れた綺麗な姿。撮影時間(一日目夕方)も一緒に写っています。 ※悠人と情報交換を行いました ◇ ◇ ◇ ◇ 再び場所は移り変わり、地図上で云えばE-4とE-5の境目に位置する平原。 傷の手当てと短い睡眠を終えた佐藤良美は、小屋を出発して北へと向かっていた。 「まさか、この島でこんなモノを使う事になるなんてね……」 良美はデイパックを開き、中に入れてあった目覚まし時計を複雑な表情で眺め見た。 商店街で入手した目覚まし時計があったからこそ、自身の睡眠時間をコントロール出来た。 もっと長時間眠ろうかとも考えたが、単独行動の自分がそんな事をすれば、睡眠中の所を襲われかねないのだ。 眠ったのは一時間程度、それでも以前に比べれば、体調は大幅に回復している。 手の傷は未だ激しく痛むものの、両腕を用いれば銃撃は可能な筈。 当分の間、行動に支障が出たりはしないだろう。 そうして良美が歩き続けていると、前方にある茂みの辺りから物音が聞こえてきた。 姿こそ見えぬものの、誰かがこちらに向かって歩いて来ているのは確実。 「……………っ」 瞬間、良美は選択を強いられた。 無力な少女を演じるべきか、若しくは正体を露にして交戦すべきか、である。 出来れば上手く騙して利用したい所だが、もう自分の悪評は相当に広まっている筈。 此処は素直に交戦すべきか――そう考え、S W M627PCカスタムを構えようとしたのだが。 「……待つんだ。私は……殺し合いに、乗っていない……」 茂みの中から現われた少女――千影が、制止の声を投げ掛けてきた。 だが当然、その言葉を素直に信じ込む程良美は莫迦でない。 相手の右手には、しっかりと銃――恐らくはショットガンの類――が握り締められている。 相手は良美の正体に気付きながらも、敢えて何も知らぬ風を装い、隙を突こうとしているかも知れないのだ。 「ふうん……。じゃあまずは、その銃を放してくれないかな? 私だって殺し合いに乗っていないけど、そんなの持たれてたら怖いよ」 「それは……無理だね。これは最低限の……護身道具さ……」 そして千影もまた、相手をアッサリと信用したりはしない。 この殺人遊戯に於いて、安易に他人を信じる事は即命取りとなる。 無闇矢鱈に交戦する気など無いが、必要最低限の警戒は維持しておかねばならないだろう。 死んでいった姉妹達やトウカの為にも、下らぬミスで命を落とす訳にはいかないのだ。 「……そう。困ったねえ、それじゃ貴女を信じてあげられないよ」 「…………」 二人の間に漂う緊張感が、少しずつ高まって行く。 二人は未だ銃口を向け合っていないものの、何時でも回避動作に移れるよう、腰を低く落した態勢になっている。 「でも、一応聞いておくよ。貴女の名前は?」 「……私の名前は……千影」 「――――っ」 良美の眉がピクリと持ち上げられる。 告げられた名前には聞き覚えがあった。 千影――自分の記憶に間違いが無ければ、少し前まで高嶺悠人と共に行動していた少女。 悠人が自分の正体を知らなかった以上、千影も同様である可能性が非常に高い。 「貴女が千影さん……か。うん、悠人君から話は聞いてるよ。 ――私は佐藤良美。ごめんね、疑っちゃって」 「……いや……構わない。それよりも良美くん、君は……悠人くんと会ったのかい?」 「うん、そうだよ」 念の為に自身の名前を告げてみたが、千影の表情に翳りは見られない。 寧ろ悠人と出会ったという言葉の方に、興味を惹かれているようだった。 自分の悪評は伝わっていないと判断して、ほぼ間違いない筈。 ならば此処は攻撃を仕掛けるよりも、懐柔を試みるのが最善手だろう。 良美は表情を緩めると、デイパックにS W M627PCカスタムを仕舞い込んだ。 千影もそれを見て、ショットガンをデイパックに戻そうとして―― 「「――――――――ッ!!」」 後方で鳴り響く爆音。 二人が同時に振り返ると、巨大なショベルカーが一直線に突っ込んで来ていた。 良美も千影も数々の修羅場を経験しているが、流石にこの事態には驚愕を隠し切れなかった。 「アハハ、千影ちゃんに佐藤さんだ! アハハハハハハハハハハハッ!!」 ショベルカーの運転手――水瀬名雪の哄笑が拡声器で増幅されて、周囲一帯に響き渡る。 哂う名雪の肉体は、正視に耐えぬ程にボロボロだ。 右眼球は破裂し、頭蓋骨には皹が刻み込まれ、右肩にも大量の出血が見られる。 だがどれだけ自らの肉体が傷付こうとも、今の名雪は止まったりしない。 けろぴーさえ動かせれば、狩猟を続ける事は可能なのだ。 名雪が駆るショベルカーは、点在する木々を薙ぎ倒しながら疾駆してゆく。 しかし千影と良美は、名雪と面識がある。 ならば二人は、説得を試みようとするのだろうか。 「なゆ……き……くん……」 千影はぐっと息を呑んでから、擦れた声を絞り出した。 ショベルカーから聞こえてきた声は、間違い無く水瀬名雪のもの。 そして今もショベルカーは、千影達の方へと突っ込んで来ている。 言動からして、明らかに千影や良美の姿を視認しているにも関わらず、だ。 つまり―― 「そうか……君は殺し合いに乗ったんだね」 ショットガンの銃口を持ち上げて、叫ぶ。 「やっぱり君が、衛くんを殺したんだね……っ!!」 瞬間、千影はショットガンのトリガーを引き絞った。 憎しみに身を任せ、何度も何度も。 そしてそれとほぼ同時に、良美もまた銃を構えた。 「いけないなあ、名雪ちゃん。折角千影さんとお話してたのに、邪魔しないでよ」 見境無く襲い掛かってくる狂人など、只の邪魔者でしかない。 良美の構えたS W M627PCカスタムが、続けざまに火花を吹く。 千影と良美の放った銃弾の群れは、ショベルカーの胴体部へと吸い込まれていった。 相手が生身の人間ならば、完膚無きまでに葬り去れるであろう集中放火。 だがショベルカーの前には、その程度の攻撃など無意味。 「――そんな攻撃、けろぴーに効くもんかあ!」 カンカンッ、と甲高い金属音が連続して鳴り響く。 ショベルカーを覆う鋼鉄の装甲は、造作も無く弾丸を弾き返した。 そのまま名雪は機体を前進させ、哀れな獲物達を踏み潰そうとする。 ショベルカーと千影達の距離は、もうごく僅かだ。 「行け、けろぴー! 二人纏めて潰しちゃええええええ!!」 「くっ…………」 「この――」 迫り来る危険から身を躱すべく、良美は左方向へ、千影は右方向へと飛び退いた。 周囲に点在した木々のお陰で、ショベルカーの勢いが若干削がれたのもあり、どうにか回避が間に合った。 千影と良美の間にある空間を、鋼鉄の車体が通過してゆく。 必然的に千影と良美は、ショベルカーの背後を取る形となった。 「良美くん……此処は一つ……共同戦線を張らないかい?」 「私もそれが良いと思うな。でも、どうやってあんなのを倒すつもり?」 「正面からじゃ分が悪い……左右から、挟み撃ちの形で……窓ガラスを狙おう」 千影は未だ良美を完全に信用してなどいないし、良美も千影の利用価値を測っている最中だ。 それでもこの場に於ける最優先事項は、問答無用で攻撃してくる名雪への対処に他ならない。 直ぐ様二人は走り出し、ショベルカーを挟み込むような位置取りとなった。 ショベルカーがスピードを緩め、Uターンするその瞬間を狙って、銃の照準を窓ガラスに合わせる。 「名雪くん……残念だけど――」 「――死ぬのは貴女一人だけだよ!」 良美と千影は同時にトリガーを引き絞って、各々に銃撃を行った。 未だ方向転換を終えていない名雪に、迫り来る銃弾の群れを回避する術は無い。 そして窓ガラスの耐久力は、鋼鉄で覆われた胴体部に比べ大きく劣っている筈。 そこを狙っての一斉射撃。 千影と良美が取り得る戦術の中で、最も効率が良いであろう攻撃方法。 だが名雪を守る防弾ガラスは、永遠神剣による連撃すらも防ぎ切る代物だ。 放たれた銃弾は全て、防弾性の窓ガラスに虚しく弾き返されるだけだった。 「それで終わり? 下らない……下らない下らない下らないっ! 私のけろぴーには、何をやっても勝てる訳ないんだよ!!」 『けろぴー』を駆る名雪にとっては、銃撃など警戒に値しない。 名雪は一方的な狩猟を行うべく、狙いを千影一人に絞って、ショベルカーを全速力で走らせた。 千影の眼前にまで詰め寄ってから、鋼鉄の牙――所謂シャベルを、勢い良く振り下ろす。 「くぅ――――」 千影は横に転がり込んで、迫るショベルから何とか身を躱した。 それまで千影が居た辺りの地面が、ショベルによって大きく削り取られる。 速度こそ大した事が無いものの、凄まじいまでの破壊力を伴った一撃。 直撃してしまえば――否、掠っただけでも致命傷になりかねない。 「あはっ、よく避けたね――でも次は絶対外さないよ。 じっくりと追い詰めて、カトンボのように踏み潰してあげるんだから!!」 「……名雪くん」 何とか難を逃れた千影は、近距離でガラス越しに名雪の顔を眺め見た。 血塗れで笑顔を浮かべる名雪の姿は、言葉では言い表せぬ程に禍々しい。 片方しかない瞳は狂気の色に染まり切っており、口元は歪に吊り上げられている。 それで、名雪は殺し合いに乗ったと云うよりも寧ろ、狂気に飲み込まれただけなのだと分かった。 「でも……私がやるべき事は、変わらない……」 原因がどうであれ、名雪が善良な人間達にとって有害であると云う事実は、そして衛の仇であると云う事実は変わらない。 ならば千影にとって名雪は、何としてでも打倒しなければならない怨敵だ。 千影はショットガンに予備弾を装填しながら、ショベルカーの側面へと回り込む。 続けて走る足は止めぬまま、再度銃撃を試みた。 だが結果は同じ。 ショットガンから放たれた散弾の群れは、堅固な防弾ガラスによって一つ残らず阻まれた。 只でさえ残り少ない千影の体力だけが、徐々に削り取られてゆく。 そんな中、良美は目立たぬ位置へと身を隠してから、冷静に戦況を分析していた。 「……これはちょっと、不味いね」 先程の斉射が通じなかった以上、並大抵の攻撃では名雪を倒せないだろう。 相手は小回りが効かぬのだから、耐え凌ぐだけなら十分に可能だが、それも長くは保たない。 戦いが長引けば、いずれこちらの疲労が限界に達して、無様に殺されてしまうだけだ。 銃撃戦に固執せず、ショベルカーの車体に飛び乗ってしまえば勝機はあるが、それは相当のリスクを伴う筈。 そういった予測を踏まえると、自然に一つの選択肢が浮かび上がってくる。 (勿体無いけど……此処は引いた方が良いかな?) 幸い、名雪の攻撃は千影一人に集中している。 今なら、大した苦労も無く逃げ果せられるだろう。 だが一方で、このまま千影を見捨てるのは惜しい気もする。 時間が経過すればする程情報は拡散していくのだから、今後は益々状況が悪化していくに決まっている。 多くの人間に警戒されている自分が、手駒を入手する好機は、今回が最後かも知れないのだ。 どうするべきか、良美は迅速に思考を巡らせる。 だが良美が結論を下すよりも早く、決定的な転機が到来した。 174 おとといは兎を見たの きのうは鹿、今日はあなた 投下順に読む 175 クレイジートレイン/約束(中編) 174 おとといは兎を見たの きのうは鹿、今日はあなた 時系列順に読む 175 クレイジートレイン/約束(中編) 173 地獄の島、向日葵の少女(後編) 朝倉純一 175 クレイジートレイン/約束(中編) 173 地獄の島、向日葵の少女(後編) 蟹沢きぬ 175 クレイジートレイン/約束(中編) 173 地獄の島、向日葵の少女(後編) 小町つぐみ 175 クレイジートレイン/約束(中編) 173 地獄の島、向日葵の少女(後編) 高嶺悠人 175 クレイジートレイン/約束(中編) 173 地獄の島、向日葵の少女(後編) 佐藤良美 175 クレイジートレイン/約束(中編) 174 おとといは兎を見たの きのうは鹿、今日はあなた 千影 175 クレイジートレイン/約束(中編) 174 おとといは兎を見たの きのうは鹿、今日はあなた 水瀬名雪 175 クレイジートレイン/約束(中編)
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「おはようございます、みずきさん」 「おはようございます、橘先輩」 野球部や後輩達がみずきに朝の挨拶をする 「うん、おはよう」 みずきも普通に挨拶を返す 「あっ、おはよう、みずきちゃん!」 小波も声をかける 「おはよう、小波君」 みずきは嫌そうな顔を浮かべて挨拶を返した 「……みずきちゃん、嫌そうな顔しないでよ」 「それは”命令”なの?」 小波の不服そうな声に対してこれが"命令"である事を確認するみずき 「いや、そうじゃないよ」 「ならいいでしょ?」 みずきはツンとしたまま校舎の中に入って行った 「はぁ…」 みずきは大きなため息をついた 先日に小波とみずきが交わした約束、それは… 「卒業するまでみずきちゃんは俺のラブ奴隷」 これがみずきの頭の中をグルグルと回っていた (ラブ奴隷って何よ!奴隷ってことは何でも命令に従うってことでしょ?でもラブって…) そんな事を考えていた時、丁度 「では橘さん、この問題を解いてください」 「へ?あっ、はい!」 先生から指名されてしまった そしてお昼休み みずきは小波の教室へやってきた 「小波君いるー?」 みずきは教室内を見渡した 「小波君なら屋上へ行ったでやんす」 同じクラスである矢部はそう答えた 「うん、分かった」 みずきは教室を後にして屋上へ向かった 屋上に着くとそこには小波が購買部で買ったパンを食べていた 「あっ、小波君」 「あれ、みずきちゃん、どうしてここに?」 小波はみずきに声をかけた 「一応、約束の確認しにきただけよ」 「そうなの?」 「そうよ」 みずきはグラウンドの方を見る 「まあ、ここには誰もいないからいいか」 小波はパンを食べ終えるとみずきの隣に立った 「ええっと、確か私をラブ奴隷にするって言ったわね」 「ああ、卒業するまでね」 小波は屋上のフェンスに寄りかかる 「ラブ奴隷って何?」 みずきは小波のほうを見る 「そのままの意味だよ」 「そのままってどういうことよ!」 みずきは怒った口調で小波に聞く 「みずきちゃんは俺の命令を絶対に守らなきゃいけない、でもただ守るだけじゃ駄目」 「守るだけじゃ駄目ってどういうことよ?」 みずきは首をかしげる 「喜んで俺の命令に従うこと」 「はぁ?」 みずきは呆れた声を出した 「例えば…」 小波が突然みずきに抱きついた 「キャァ!」 みずきは思わず小波を突き飛ばした 「もし、これが命令として行使されたらみずきちゃんは守ったことにならないってこと」 「そうなの?」 「そうなの」 驚いてばかりいるみずきに対して小波のほうはニヤニヤと笑みを浮かべていた 「拒否するってことは出来ないの?」 「出来ません、だってみずきちゃんは奴隷だから」 「……」 言い返そうにも命令の一言で片付けられてしまいそうだ そして小波は水木のほうを向いて言った 「さて、早速最初の命令を言わせて貰おうか」 「な、何でも言いなさいよ」 みずきはそっぽを向いてぶっきらぼうに言った 「…みずきちゃん、約束を守れてないよ」 小波は怒る様子もなく静かに言った 「へ?」 「ラブ奴隷はご主人様の命令を喜んで聞くって言ったよね?」 「うっ…ご命令を、ご主人様」 みずきは硬い笑顔で答えた 「…まぁ、いいか。じゃあ放課後、付き合ってくれないか」 「え?はい、分かりました、ご主人様」 みずきがその言葉を口にすると同時に予鈴がなった 「そろそろ教室に戻らないといけないな」 「そうね」 「じゃあ俺は行くよ」 小波は屋上から出ようとする 「うん、じゃあ放課後ね」 みずきはやる気無く手を振った 「あっ、一つ言い忘れてたけど…俺は矢部君よりマニアックな部分があるから…」 「えっ?」 小波の一言にみずきはあっけに取られる 「そこのところ、よろしく頼むね」 そう言って小波は屋上から去っていた 「…」 みずきは扉を見ながら固まっていた 放課後、みずきは小波を待っていた 「ふう、遅いわね…」 みずきは携帯電話の時計を見る 授業が終わって早5分が経とうとしていた 待つのが苦手なみずきには5分という時間は十分長いものだった 「あっ、みずきちゃん!」 小波がやってきた 「おそーい!いつまで待ったと思ってんの!」 「まだ五分しか経ってないじゃん…」 小波は呆れながら答える 「それでも十分待ったの!」 みずきは拗ねた口調で文句を言った 「ハイハイ…」 小波はみずきの頭をポンポンとたたきながらなだめた 「で、どこへ行くの?」 みずきはやる気なさそうにに聞いた 「デパートの下着売り場だよ」 小波はそう言い放った 二人はデパートの下着売り場へやってきた 「…それでここで何をしようっていうのよ」 みずきはあいかわらずやる気がなさそうだ 小波は色々な女性下着を見ながら何かを考えているようだ 男性が女性の下着を見る 一人で同じ事をすれば変態だろうが今はみずきと一緒だ 周りからはせいぜいマセた高校生のカップルにしか見えなかった そのうちみずきも色々と下着を眺め始めた 「あっ、これ可愛い!」 みずきはフリルが付いたピンクの下着を手に取る それに小波が気づいたようでみずきの近くにやってきた 「欲しい?」 「え?うーん…」 突然の質問にみずきは困ってしまった 欲しいかと聞かれればそんなにでもなく買わなくてもいいといえば後で後悔しそうであった 「別のにするわ」 みずきはそう答えると小波はまた別の下着を見始めた (一体何を考えてるんだろ?) みずきはふと疑問に感じた 小波が色々見ていると何かを見つけたようだ みずきはそれに気が付くと小波の近くにやってきた 「何かいいものあったの?」 みずきは小波に聞く 「ああ、あったよ」 「どれどれ?」 小波が見つけたもの、それは… 「そ、それって…」 「そう、エロ下着」 小波が手に取った下着はかなり薄手でTバック気味の赤い下着であった ブラジャーもブラジャーできちんとブラジャーの機能を果たしているのかどうか分からないものだった 「ま、まさか…これを着て来いって言うんじゃ…」 「そう、そのまさかだ」 小波はニヤニヤしながらみずきに言う 「こ、こんなの着て学校へ行ったら恥ずかしくて死にそうだわ!」 みずきは顔を真っ赤にして小波に言う しかし、小波は涼しい顔をして言い放った 「みずきちゃん、これは命令だよ」 「うっ!」 この一言を言うとみずきは固まってしまった 「別に俺は良いんだよ、みずきちゃんは約束を守らなかったって言うだけだから」 「うう~小波君の鬼畜ぅ!」 みずきは小波の襟首をつかみ思いっきり振った 「それにお金は俺が出すからいいでしょ?別にみずきちゃんが損をするわけじゃないんだから」 小波は甘い言葉を囁くようにみずきの耳元で言った 「う、うん…」 みずきは思わず頷いてしまった 「よし、決まりだ」 こうしてみずきは小波が買った下着をつけて登校する命令を受けた その日の夜 「………」 みずきの目の前には小波が贈った赤いエロ下着がある (着けるってやっぱり心の準備が…) 胸の鼓動が高鳴る (無心よ!何も考えず単なる下着としてつけるのよ、みずき!) まだ鼓動は止まらない、いや、むしろ早くなっている パンティーを手に取る (ええい!ピッチャーは度胸!) みずきはパンティーを穿いた! 下着がみずきの下腹部を締め付ける (次はブラ!) カップもあっているようでぴったりと合った 「はぁ…はぁ…」 みずきは肩で息をしていた (し、下着を着けるだけでこんなに疲れるとは思わなかったわ…) みずきは興奮しながら辺りを見回すと鏡に目が行った 鏡の自分を見る、そこにはいつもの自分ではなく明らかに男を誘惑する女がそこにいた その姿を見てさらにみずきは興奮してきた (も、もし、この姿がお姉ちゃんや聖に見られたら…) ごくりと唾を飲み込む 想像するだけで体が熱くなってきた 「そ、そろそろ寝ちゃおうっと!明日も早いし!」 恥ずかしさを隠すかのようにパジャマを着て布団の中に入る 「……寝れないわね…」 興奮が収まらず、むしろどんどん高ぶっていくようだ 胸に手を当てる 「!?」 いつもより気持ちがいい (しちゃおうかな?) またに手を伸ばそうとした時、なぜか小波の顔を思い出した 「!?やっぱやめ!」 みずきはそういって目をつぶりそのまま寝てしまった つづく プロローグ その2
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長編 テイルズオブレジェンディア ~古の約束~ 蒼く、いつまでも――永遠に輝く『海』 いつまで 僕達を見守っていてくれるのだろうか いや―――― もう知らない所で 知らない朱鷺 約束してくれたのかもしれない 固い鎖で繋がれた 永遠の約束を―――― 人為的に作られた島のような外見を持つ遺跡船――。 その遺跡船でもっとも広い街――灯台の街ウェルテスは毎日のように人々が賑わっている。 その街の中心である『噴水広場』で、多くの人々が集まって楽しんでいた。人々が輪になり、4人の者達を囲んでいた。 それは―――― 「ヨウヨウ、そこ居るあーんちゃん、街の掟を知ってるか~い♪」 肌が黒い紫色の髪をした男女が2人がノリノリで歌っている。―フェロモン・ボンバーズだ。 そしてその2人の後ろで隠れるように突っ立っている少年、少女は―― 「なんで俺達がやらなきゃいけないんだよ……」 「でも、断れないよね…やらなくちゃ、いけないのかな……?」 銀髪の少年―セネル・クーリッジに、金髪のプラチナブロンドの少女―シャーリィ・フェンネスだった。そしてその前に立っている男性―エド・カーチス、女性―イザベラ・ロビンズは、呆れている2人を振り返り合図のようなものを出す。と、セネルはまたかよ、と溜息をつく。 「美しさは力!グレーーイト!フェロモン!」 「・・・フェロモン」 「美しさは罪!ワンダーー!フェロモン!」 「・・・フェロモン」 そしてまた、フェロモン・ボンバーズの歌が始まる。と、1人の少女が焦ったようにこちらへ向かってくる。 「――クロエ?」 「クーリッジ!シャーリィ!何してるんだ――っ早くこっちを手伝ってくれ!!」 頬についていた血を拭いながら、言う。セネルとシャーリィは顔を見合わせ頷き合うと、少女―クロエ・ヴァレンスと共に走っていった。 噴水広場の水が変わり果てた事を誰も知らなかった。 「ッ――ウィルさん、そちらは大丈夫ですか!?」 黒髪の少年が咳き込みながら、この中で長年者らしい―男性の方に声をかける。 「オレの心配をするくらいの暇があるのならまず敵を減らせ!」 「ウィルっち、冷たぁ~い」 「シャボン娘、ワレもちゃっちゃと働かんか!」 黄色いボンボンを身につけている少女が苦笑いをしながら、術――爪術と呼ばれるもので敵を攻撃する。 眼帯をした青年は槍を投げ、敵を近づけさせないようにする。彼の隙が出来たところに、黒髪の少年が猛攻撃を仕掛ける。 「だぁ~、もう!クーおっそい!!こんな数じゃキリがないよ~!」 「駄々を捏ねるな。もしも此処で足止めしなかったら、宿屋が壊されるぞ」 「いや!それだけはぁ~……――グランドダッシャー!!」 地系上級爪術を多くの敵目掛けて攻撃する。荒い息をつきながら、青年―モーゼス・シャンドルが黒髪の少年―ジェイに向かって話す。 「のう、シャボン娘いきなり強うなったのう……」 「何処かの誰かさんと違ってとっても役に立ちますねぇ?」 「誰や」 「……これだから馬鹿は…」 「ちょっ……ジェージェー!あたしを物みたいに言うな!!…後ろ!」 ジェイは素早くよけ、敵を蹴り飛ばすと小声でそうでしたっけ、と呟く。少女―ノーマ・ビアッティはその場でドタバタと暴れる。 「真面目に戦え!遊びではないのだぞ!!―アイシクルボルト!」 巨大な氷が雷光に包まれ出現し、そのまま敵に衝突する。そしてモーゼスの槍が敵を刺す。 「こいでも喰らえェ!戒心!!」 空中から強力な三連撃をお見舞いする。そしてジェイが懐に入り込み、 「浮雲!!」 敵を蹴り飛ばす。
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あらすじ 思い出の一場面。夕暮れの公園。駆けるふたつの影。互いに伸びた影を踏み合って。そして―― 球技大会実行委員。寝ている間に、悠介はいつの間にかそんな役職を割り振られていた。かったるいと思いながらも、第1回実行委員に顔を出すと……そこには実行委員長として、桜の姿が。 それ以来、桜は何かと委員の仕事絡みで悠介に話しかけるが、やっぱりどうにもぎこちない会話で終わってしまう。そんな中、委員会が終わったあと、桜は一念発起して、「一緒に帰ろう」と悠介を誘う。 途切れる会話と、その間のどうにも気まずい沈黙が続く帰り道。そしてすぐに、2人の家への分かれ道である公園に着いてしまう。幼い頃、いつも一緒に遊んだ公園……。桜は悠介に声をかけようとするが、そこにみさきが現れ、結局桜は何も言えずに帰ることに。 夜、湯船に顔の半分まで沈めながら桜は思う。どうして上手くいかないんだろう。昔みたいに、自然に話せないんだろう……。答えは出ないまま、桜は眠りにつく。 ……そして、夢を見た。幼い頃の夢。悠介と何か約束をした。指切り。だけど、何を約束したのか、思い出せない―― そして、球技大会当日。種目は、男子はサッカー、女子はソフトボール。悠介たち男子チームは2回戦で敗退するが、女子チームは桜と大樹の活躍で決勝まで勝ち進む。 そして決勝戦。4-3の1点ビハインドで最終回裏、2アウト2塁でバッターは桜。打席に立った桜の耳に届いたのは、たくさんの歓声の中に確かにあった、悠介の声だった。「行け、桜!」――と。 初球を、桜は完璧に振り抜く。蒼穹に吸い込まれるように、ボールは高々と舞い上がり―― その日の帰り道。桜はまた、悠介と一緒に歩いていた。 「しかし、最後のホームランは凄かったな」「ゆうくんのおかげだよ」「へ?」「応援、してくれたでしょ? 『行け、桜!』って」「……ま、まぁ、一応、な」 そんなやり取り。自然にこぼれる笑顔。――まるで、昔に戻ったかのように。 「……でも、これで、ゆうくんと一緒のお仕事も、終わりなんだね」 呟いた桜の言葉は、悠介の耳には届かない。 そして、辿り着いた公園。分かれ道。いつも遊んだ、思い出の場所。またな、と背を向けようとする悠介を、桜は呼び止めて。 「――影、踏んだっ」っと。 それは、幼い頃のさよならの合図。今日はおしまいだけど――また明日、一緒に遊ぼうという、2人だけの合図。今の2人の顔と、幼い頃の顔が重なって。そして桜は、踵を返す。「また明日ね」と、手を振って。 悠介も――それに、笑って手を、振り返した。 スタッフ 脚本:堺田有伸 絵コンテ:福井富之助 演出:神月翼 作画監督:高岸洋司 次回予告 頑張って背伸びしたって、君と同じ目線にはまだまだ足りない。 次回、「映る世界」 ねえ、30センチ上の景色はどんなもの? ストーリー トップページ
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ミッション別攻略へ戻る お約束か!?メデン誘拐!! パタポンたちの侵略に 国を追われたカーメンの敗残兵は 戦場をうろうろしていたメデンを まんまと誘拐した モアカン砂漠を逃げ去る武装馬車を猛追し メデンを救え! 攻略 モアカン砂漠~コラアカン熱砂でメデンが幽閉された馬車を追いかけ、救出しましょう。 途中、コラアカン熱砂を通るので 雨のミラクル をお忘れなく・・・ さらに厄介な事で、前作をやったことのある方なら分かると思いますが、馬車が着火してしまうとそれでメデンが焼け死んでしまうので以下の注意を。 着火性能のある武器 を持っていかない。 神様のシチュー は使用しない。(着火効果を持つ為) ギャバ系 ウホホ系 も連れて行かない。 上記のことに気をつけてもらえればダイジョウブかと思います。一応、着火してしまってもクリアできることはできるんですが、やり直しはメンドーだと思いますので・・・。 武装馬車の上には小さなボウガンがあり、そこからショボイ矢をカーメンが撃ってきます。しかし、1回1回装填しているし 攻撃力もなく、KB効果が付いてるだけなので気にしなくても良いと思います。 意外と馬車は耐久力があるので本気でかかりましょう。熱砂の最後には、砦があり、そこからカーメンどもが沸いてくるので注意! 馬車を破壊した瞬間、カーメン族は全滅します。 入手アイテム カーメン族 轟炎の斧 轟雷の斧 太陽の盾 轟炎の弓 轟氷の弓こおる馬まどろむ腕 炎の腕 雷の腕 轟炎のモリ羽のブーツ 炎の杖 轟氷の杖 羽のヘルム 雪のヘルム 盛り土 石ころ 砦 かちん鉄 ヨクアル枝 サクラン ギョロきゃべつ BGM ビビリッチのテーマ♪
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約束のケヤキ「悠木 かなで」 読み:やくそくのけやき「ゆうき かなで」 カテゴリー:Chara/女性 作品:FORTUNE ARTERIAL 属性:風 ATK:0(-) DEF:1(+1) [永続]このキャラにはセットカードを追加で1枚セットできる。この能力は【裏】でも発動する。このキャラはバトル以外によるダメージを受けない。 『先制攻撃』『貫通』 ……ごめんね。守ってあげられなくて illust:オーガスト AU-065 U 収録:ブースターパック 「OS:オーガスト1.00」 唯一のエクストラではなく先制攻撃と貫通を両方持つキャラ。 その分サイズは非常に小さく、月人の偏見を2枚着けたところで攻撃は8。 補正値も少ないためパートナー、フレンドの双方で使いにくだろう。