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Runaway ◆qB2O9LoFeA 月海原学園は『方舟』内に現実にあるかのように造られたデータであるが、だからこそ現実の学校のように学校関係者以外の様々な人間が出入りする。 マイケル・スコフィールドはその日建築会社の社員として学校を訪れていた。高級スーツに身を包んだ青い目の外人は奇異に映るのだろう。生徒達が興味深そうに話している声が聞こえたが、彼の目はそちらへは向かわず学校の設計を観察していた。 ――ある日、ある建築会社に月海原学園から相談があった。なんでも不審者対策に監視カメラを増設したいという。その打ち合わせに訪れたのが彼、マイケルである―― 校舎をしばらく観察していたマイケルはややあって職員室へと向かった。 出迎えた教師への挨拶もそこそこに実際に工事の現場へと案内するよう促す。あまり時間をかけるわけにはいかない。既にここは聖杯戦争の戦場である。 「まずは配線を確認してみたいのですが、よろしいでしょうか?」 そうハリウッドスター顔負けの彼に見つめられて、その女性教師は直ぐに用務員を呼びいった。 その背を見送りながらマイケルは「やれるか、アーチャー。」と呟く。 「勿論デスマスター。」と答えながら、まるでそこに始めからいたかのようにサングラスの男が現れた。 白髪混じりの顔にサングラス、そしてコート。 マイケルのサーヴァントであるアーチャーである。 「ココナラ私ノ宝具ヲ効果的ニ使エマス。他ノマスターヲ殺スノハ簡単デス。」 「頼むぞ。」 そう短くマイケルは答えるとアーチャーを霊体化させる。そして用務員を連れて戻ってきた教師ににこやかに応対すると借りた道具で配線を調べ始めた。 当然だが、マイケルの目的は工事をすることではない。 彼が欲しかったのは配線に触れるチャンスだ。 アーチャーの宝具は監視カメラやレーダーなどを用いたときに効果を発揮する。そのためには回線のジャックやキャスタークラスのサーヴァントのサポートが欠かせない。 幸い、彼の現在の職業は建築会社の社員――記憶が戻ったとき皮肉かと思った――。他の業種に比べればいくらかはチャンスに恵まれていた。 「なんとかするしかないか‥‥いや。」 顔を曇らせながらマイケルはため息を吐く。監視カメラの映像をジャックできないかと考えていたが、予想以上に困難であった。今のままではアーチャーのサポートも情報収集――特に欲しいのは陣地作成のスキルを持ったキャスター――も行えないだろう。 だが、おあつらえむけに彼の会社に監視カメラの工事を発注しようと学園はしている。工事のためといってうまく仕込めばカメラに細工することは可能かもしれない。 そのためにもまずは工事を受注すべく交渉を行わなければならない。 聖杯戦争中に営業マンとして働くことになるとは思わなかったが聖杯への回り道だと考えて、道具を用務員に返すと職員室へ向かう。 (アーチャーとなら逃げるだけなら問題ない) 歩きながらマイケルは考える。この聖杯戦争をどうすれば勝ち残れるかを。 彼のサーヴァント――ワイルド・ドックと。 【マスター】 マイケル・スコフィールド@PRISON BREAKシリーズ 【参加方法】 SEASON2終了時の桟橋がゴフェルの木片でできていた。 【マスターとしての願い】 リンカーンとプエルトリコに移住。 過去も変えれるならそもそも事件を起こらなかったことにしたい。 【weapon】 なし。 【能力・技能】 上半身の刺青。 フォックスリバー刑務所から脱獄するために使った。 逃走術 瞬発力と持久力はどちらも一級品。 潜在制止の機能障害 頭に入る情報を制限できない。 知能が低い場合は注意力の散漫やストレスから精神の障害を引き起こすが、IQ200を越えるマイケルは情報を処理しきることでひらめきや逆転の一手を思いつくことができる。 ただし、脳を酷使する。 【人物背景】 アメリカ副大統領の弟を射殺した容疑で逮捕され、死刑判決を受けたリンカーン・バローズの弟。 兄リンカーンの無実を信じ、死刑執行から救い出す為に自らフォックスリバー刑務所へ収監。そこで兄弟と他の受刑者と共に脱獄するも、いろいろあって別の刑務所に入れられる。 本当はそのあともまた脱獄したり巨悪と戦ったりヒロインを脱獄させようとしたりするが今回は二度目の収監の前からの参戦。 【方針】 もちろん優勝狙いだが、アーチャーはいまいち頼りないので仲間が欲しい。 今は学校の監視カメラを利用して情報収集とアーチャーを支援するためにしばらく会社員として働く。他のサーヴァントの影を見たら直ぐに逃げて潜伏。 ※令呪は刺青に紛れてますが色合いが違うのでバレます。 【クラス】 アーチャー 【真名】 ワイルド・ドック@TIME CRISISシリーズ 【パラメーター】 筋力C 耐久C+ 敏捷D 魔力E 幸運D 宝具E 【属性】 混沌・悪 【クラススキル】 対魔力:- 無効化はできない。ダメージ数値を多少軽減する。 単独行動 E(A) マスター不在・魔力供給なしでも長 時間現界していられる能力。 マスターがいる場合はEランク相当だが、マスターがいない場合Aランクになり1週間は現界が可能。 【保有スキル】 爆破 A 戦闘から離脱する能力。 マスターが死亡している場合のみ効果があり、逃走できる可能性が圧倒的に上がる。 戦闘続行 C 往生際が悪い。 瀕死の傷でも戦闘を可能とし、致命傷を受けない限り生き延びる。 自己改造:E 自信の肉体に、全く別の肉体を付属・融合させる適性。 このランクが上がればあがるほど、正純の英霊から遠ざかっていく。 アーチャーは左手の義手に限り機械的に改造することが可能。火炎放射器とかトラクタービームとか。 【宝具】 『野犬、見果てぬ野望(タイム・クライシス)』 ランク:E- 種別:対人宝具 レンジ:100 最大捕捉:2 自身の名を冠した武装集団『ワイルド・ドック』を召喚する。 呼び出せるのは以下のとおり。 『通常兵』ピストル装備。最大100名。 『エリート兵』ピストル装備。最大25名。 『近接兵』鈍器装備。最大50名。 『ナイフ兵』ナイフ装備。最大50名。 『手榴弾兵』手榴弾装備。最大50名。 『マシンガン兵』マシンガン装備。最大30名。 『バズーカ兵』バズーカ装備。最大30名 『盾兵』盾装備。最大20名。 『忍者兵』忍者ブレード装備。最大10名。 『コピー兵』発動時のワイルド・ドックの装備と同じ。5名。 召喚する『ワイルド・ドック』の種類は組み合わせることができる(『通常兵』80名+『エリート兵』5名など)。 召喚した『ワイルド・ドック』はあらかじめ決められた行動しかとれず、また神秘がないため霊体化ができずサーヴァントを傷つけることもできない。 なお、通常時は隠れているマスターを相手にして一分あれば殺害できるようなフォーメーションになっている。 【Weapon】 『無銘・ガトリング』 左手の義手から7.62mm弾をばら蒔く。リロードの必要はない。 『無銘・モーゼルC96』 いわゆる拳銃。異様な連射性を誇る。本当に拳銃なんだろうか。 他に手榴弾など。 【人物背景】 武装集団『ワイルド・ドック』のボス。 20世紀末からクーデターやらテロやらいろいろ暗躍するがその度に雇い主が死ぬ。 別な裏切ったわけでもなくけっこう忠誠もあるほうだが、死ぬ。 【聖杯への願い】 世界征服? 【基本戦術、方針、運用法】 宝具と共に相手マスターを狙う。 監視カメラなどで相手マスターの位置を確認して数で攻め立てるのがセオリー。 問題は相手サーヴァントだが、ワイルド・ドックのガトリングで弾幕を張って牽制するのがやっと。 基本的にはキャスタークラスと組んで防衛戦に撤したい。 また、武器や乗り物を調達すれば『ワイルド・ドック』の戦力が向上する。 ‥‥もっとも彼のマスターになった次点でほぼ敗北は運命づけられている。しかも本人は逃げ延びるし。
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【マスター】 ホシノ・ルリ@機動戦艦ナデシコ~The prince of darkness 【参加方法】 ナデシコCとオモイカネを介した『方舟』への直接ハッキング。 【マスターとしての願い】 無し。『方舟』に侵入した目的はあくまで調査である。 【weapon】 無し。 【能力・技能】 遺伝子操作と体内のナノマシン、そして特殊な訓練による、「電子の妖精」と称されるほどのハッキング能力。 本来の世界では無縁だったものの、霊子ハッカーとしての魔術師適性は非常に高いだろう。 そのため、おそらく知識さえ獲得すればコードキャスト等の使用も可能と思われる。 【人物背景】 かつての「機動戦士ナデシコ」のクルーの一人であり、劇場版「The prince of darkness」の主人公。16歳。 とある国家の国王夫妻により遺伝上の娘である試験管ベビーとして誕生する予定だったが、誕生前に医療機関が爆破され、 流出した彼女の受精卵を入手した施設によって遺伝子操作と特殊なナノマシン適性を与えられて育てられる。 そのため特にナノマシンを介したハッキングに関しては超人的な適性を持つが、その複雑な出自は彼女の人格に影を落としていた。 銀髪に金の瞳、華奢な体形で白い肌。銀河の妖精と称される可憐な容姿を持つ。 抑揚のない口調が特徴で、基本的に淡々とした喋り方をするが、真顔での冗談や人を喰ったような物言いも多い。 反面、自分の葛藤を表に出そうとはせず、表面上は平然としていながら自身に課せられた重責とひとり戦い続けていた。 TV本編から5年後の劇場版では、謎の幽霊ロボットを巡る作戦中に復讐鬼と化したアキト(TV本編の主人公)と再会。 武装蜂起した「火星の後継者」達との戦いの中で、ルリは事態の収拾と大事な人を取り戻すため奔走する。 【方針】 聖杯戦争は二の次であり、まずは方舟の調査が優先。 ただ軍人である以上、止むを得ない命のやりとりは躊躇しないだけの覚悟はある。 登場話一覧 +... No タイトル 登場キャラクター 場所 時間 作者 014 ホシノ・ルリ&ライダー ホシノ・ルリライダー(キリコ・キュービィー) ◆Y4Dzm5QLvo 029 初陣 寒河江春紀&ランサーホシノ・ルリ&ライダールーラー B-9/市街地A-8/港の倉庫群 未明 ◆MQZCGutBfo 046 何万光年先のDream land ホシノ・ルリ&ライダールーラー B-8/町 早朝 ◆Ee.E0P6Y2U 062 再現された仮想現実世界 ホシノ・ルリ&ライダー B-9/住宅街(天河食堂前) 午前 ◆OSPfO9RMfA 083 end of hypnosis 「Standing for Defend You」 ホシノ・ルリ&ライダー美遊・エーデルフェルト&バーサーカー B-9/住宅街(とあるビルの屋上) 午後 ◆DpgFZhamPE 097 近似値 ホシノ・ルリ&ライダー衛宮切嗣&アーチャー美遊・エーデルフェルト&バーサーカー B-9/住宅街のはずれB-9/住宅街のはずれ(ルリ達とは離れている)C-8/図書館周辺 夕方 ◆FFa.GfzI16 101 めんかい ホシノ・ルリ&ライダー宮内れんげ寒河江春紀&ランサー B-9/キッチン・タムラ前B-9/キッチン・タムラ付近 夕方 ◆MQZCGutBfo 103 大人と子供 ホシノ・ルリ&ライダー宮内れんげアレクサンド・アンデルセン&ランサー B-9/田園地帯 夕方 ◆holyBRftF6
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英数字の用語 【28組/353組】 前者は本編に参加しているチームの数、そして後者は登場話候補投下期間中に投下されたチームの数である。 本企画は7月上旬〜下旬を登場話投下期間とし、候補作品の中から本編に参戦する28組を投票で決めるという方式を取った。 その結果、企画の注目度や投下期間の長さも相俟ってなんと総勢353話の候補作が投下された。 当初雑談スレでは「100作くらい来るかも」等と予想はされていたが、まさかここまで来るとは夢にも思わなかったであろう。 無論この投下数は登場話投票にも結果を及ぼし、353組の中から登場出来るのは28組のみという凄まじい倍率を齎した。 現在本編に出演している28組はいわば投票の激戦を勝ち抜いた猛者達なのである。
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ホシノ・ルリ&ライダー ◆Y4Dzm5QLvo 星の数だけ人がいて、星の数だけ出会いがあり――そして、別れ。 「――『方舟』、ですか」 西暦2201年――連合宇宙軍独立ナデシコ部隊所属『機動戦艦ナデシコC』。 その艦長席に腰掛けたまま、ホシノ・ルリは空中に浮かぶ平面ウィンドウと会話していた。 「うむ。それが連合宇宙軍におけるあれのコードネームだ」 「オーバーな名前ですね」 「そう言うなルリ君。実体を知ればそうも言えなくなる」 ウィンドウに映された連合宇宙軍司令ミスマル・コウイチロウは、ルリの歯に物着せぬ反応にも動じず答える。 その表情はいつもながらの様子に見えて、その実ひどく神妙な面持ちであった。 彼としても対処しかねているのだろう。突如地球圏に飛来した謎の構造物――『方舟』に対して。 「そもそも木星圏にまで展開された連合宇宙軍の索敵網を掻い潜って、月軌道まで接近されていることがまず異常なのだ。 統合軍にもカマを掛けたが、向こうも知らんと言っておる。静観できる事態ではない以上、隠蔽の線は考えられん」 「レーダーとか粒子反応とか、何か引っかからなかったんですか?」 「全くだ。電子的には一切反応がなかったようなものだし、ボース粒子の増大は確認されておらんからボソンジャンプでもない。 偶然の目撃例がなければ未だ見つかっていなかったかもしれん。いやはや、青天の霹靂とはこのことだよ」 「宇宙ですけどね」 誰にも気付かれずに地球圏へと航行してきた謎の方舟。 確かにそれが本当なら異常事態と言っていい。完全に地球圏のテクノロジーを凌駕している。 まるで火星遺跡に残された古代文明のブラックボックスだ。 「あの『演算ユニット』と同じような、未知の遺産ということでしょうか」 「もっと悪いかもしれん。月軌道に飛来した『方舟』は、月との間で何らかの交信を行っておる」 「交信? 月の何とです?」 「そこまでは分からん。主なデータの交信は恐らく未知の粒子を介したものだが、微弱ながら電磁波の送受信も確認した。 我々宇宙軍は、あれが新たなる『演算ユニット』そのものなのではないかと危惧しておる」 「……………………!」 『演算ユニット』。 先の大戦、そして火星の後継者の反乱においてもその切り札として争奪された古代文明の遺跡。 時空すら飛び越え、空間跳躍ボソンジャンプを制御しうる膨大な情報を処理できるオーバーテクノロジー。 そんなものがまた地球圏に飛来すれば、遠からず新たなる騒乱の原因になりかねない。 またその未知の技術そのものが地球圏のパワーバランスを変革する可能性すらある。 「そこでだ、ルリ君。ナデシコCには先行して『方舟』と接触し、可能ならば直接接触を試みてもらいたい」 「接触。平たく言えばハッキング、ですね」 「電波通信が可能ならば調査も可能だろう。あいにく私の独断で動かせる部隊は少なく、それに最も適任なのは」 「ナデシコC、そしてオモイカネ。了解です。ナデシコはこれから『方舟』へと進路を取ります」 「話が早くて助かる。頼むぞ、ルリ君」 その言葉を最後に平面ウィンドウは消失し、ルリはシートに腰掛けて、ふう、と溜息をついた。 まさか『あの人』の帰りを待つ間に、こんな事態に巻き込まれるなんて。 それでも、彼のようなテクノロジーの犠牲者をこれ以上増やすわけにはいかない。 ルリは宇宙軍から送られてきたデータを閲覧し始めた。 ▼ ▼ ▼ そして。 「目標、交信可能範囲に入ります」 「では、これよりナデシコCは目標の調査任務に移行します。ハーリー君、艦のシステムはお願い」 「了解です。気をつけてくださいよ、艦長」 心配そうに覗き込むマキビ・ハリ少尉に軽く手を振って返すと、ルリは直接ハッキングの体勢に移行した。 火星全土の機動兵器を単艦で制圧可能なハッキング機能を持つ『ナデシコC』と、それを支えるコンピューター『オモイカネ』。 そして、遺伝子操作とナノマシン移植、徹底した英才教育によって超人的な能力を得たハッカー『ホシノ・ルリ』。 確かにミスマル司令の言う通り、これ以上の適任は宇宙軍にはいないだろう。 「IFSのフィードバック、レベル10までアップ。艦内は警戒パターンA」 ルリのシートの周囲に、球状に無数のウィンドウが展開される。 「通信波長解析完了。侵入します」 ルリはオモイカネを介し、『方舟』へと直接干渉を――。 0 《GOFER》 「――えっ?」 《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》 《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》 《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》 《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》 《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》《GOFER》 「『GOFER(ゴフェル)』……トラップ!?」 ウィンドウを無数のメッセージが埋め尽くしていく。 止まらない――制御不能――逆にハックされている? いや違う、まるでルリが接触してくるのを待っていたかのような――! その直後、ルリの脳裏に映ったのは、二人の少女。 ――ルリと同じ銀の髪に金色の瞳を持つ法衣服の少女と、凛として旗を掲げた聖騎士。 そして、意識が反転した。 ▼ ▼ ▼ 「ここは……」 ルリは、燃え盛る街の中で一人立ち尽くしていた。 あたりは一面の廃墟。戦車や歩兵や、エステバリスとは違う機動兵器の残骸で溢れている。 そしてルリの鼻腔を満たすのは、戦場に染み付く、炎のにおい。 「ここは『方舟』の中? いえ、違う。ここは誰かの記憶、誰かのイメージ……」 硝煙で烟り、熱で揺らめく向こうから、誰かが歩いてくる。 その姿はシルエットになって判別が付かない。僅かに見えるは、赤い影、青い髪。 そして、神をも殺すその瞳。 「私はルリ。ホシノ・ルリ。……あなたは、誰?」 問いかける。陽炎の向こうの誰かに。 染み付いた炎のにおいにむせそうになりながら、ルリはその姿に目を凝らす。 曰く、巨大な不発弾。心臓に向かう折れた針。 歴史の裂け目に打ち込まれた楔。戦場へ向かう巡礼者。神を挑発する男。 生まれながらのパーフェクトソルジャー、異能者、神の子。 宇宙でたった一人その資格を持つ男。 「――キリコ・キュービィー」 かの生き様、かの瞳こそが炎のさだめ。 (アキトさん……?) 愛の炎にその身を焼いて、戦場を駆けた黒衣の王子をルリは思い出す。 あの瞳を知っている。失われた愛を求める、あの瞳を知っている。 その繋がりこそが、彼と自分を結びつけたのか。 幻が晴れる。戦場が消える。世界が真の姿を取り戻す。ただ、大きく輝く月だけが二人を照らしていた。 ▼ ▼ ▼ 騎乗兵のサーヴァント、キリコ・キュービィーは、自身を召喚したマスターを品定めするように見やった。 聖杯戦争の知識を得た彼女――ホシノ・ルリは、あくまで任務を続行するという。 すなわち、この『方舟』の調査。聖杯の確認は二の次だと。 「……構わん」 「いいんですか? ライダーさんにも叶えたい願いがあるのでは」 「俺は兵士だ。命令されればそれに従って戦うまでだ」 「そういうものですか。あ、死ぬ気はないのでそこは安心してくれていいですよ」 「十分だ」 死にさえしなければ、いずれは聖杯にも辿り着くだろう。 この聖杯戦争は全てのサーヴァントを倒した者が勝者なのではない。 最後に生き残った者が月へと辿り着くのだ。 だからキリコからマスターに要求することはただひとつだ。 「マスター。俺は兵士だ。命令には従う。令呪で命じられれば、それ以上のことにも従うだろう」 ルリが手の甲に刻まれた三画の印章に目をやる。 令呪。サーヴァントを絶対的に支配する魔術。キリコの力を持ってしても抗えぬ力。 「だが、これだけは言っておく。俺を真に支配しようとだけは考えるな……!」 キリコ・キュービィーにとって何よりも耐え難いのは、自身を支配しようとする者だ。 命令には従う。だが心だけは支配させない。それを侵す者は、たとえ神であろうと殺す。 それこそがキリコ・キュービィー。異能ではなく、精神の在り方として『触れ得ざる者』。 「そんな怖い顔しないでください。私はライダーさんに協力していただければ、それで」 ルリはキリコの殺気を前に僅かに怯んだが、すぐに今まで通りの淡々とした表情で答える。 思いのほか図太いのか、修羅場慣れしているのか。わざわざ小さくピースサインまでしている。 「…………」 「リアクション薄いですね」 「お互い様だ」 「ごもっともです」 キリコは目を閉じた。自身に対して害となるマスターでなければそれでいい。 今までも戦い続けてきた。これからも戦い続ける。ただそれだけだ。 キリコは月を見上げた。 ――聖杯。 キリコには、聖杯戦争に挑むだけの理由がある。 取り戻したいのはただひとり。共に生き、共に死にたいと願うひとりの女。 敢えて問うなら答えもしよう。望むことはささやかなりし。 この腕にかき抱けるだけの夢でいい。この胸に収まるだけの真実でいい。 たとえて言うなら、その名はフィアナ。 フィアナこそ我が命、フィアナこそ我がさだめ。 幾億光年の銀河を超えて、今一度、鉄の棺の蓋が開く。 【クラス】 ライダー 【真名】 キリコ・キュービィー@装甲騎兵ボトムズ 【パラメーター】 筋力D 耐久D 敏捷D 魔力D 幸運A+++ 宝具E 【属性】 中立・中庸 【クラススキル】 騎乗A 乗り物を乗りこなす能力。 Aランクは幻獣・神獣ランク以外を乗りこなすことが出来る。 【保有スキル】 戦闘続行:A 戦闘を続行する為の能力。 決定的な致命傷を受けない限り生き延び、瀕死の傷を負ってなお戦闘可能。 異能の因子:A 死なない能力。致命傷でさえなければ、自身の負傷の治癒に必要な魔力は大幅に少なくなる。 そして後述の理由から、基本的にキリコが致命傷を負うことは、無い。 心眼(真):B 地獄以下の戦場を巡り歩く中で培った洞察力。 窮地において自身の状況と敵の能力を冷静に把握し、その場で残された活路を導き出す戦闘論理。 神殺し:C アストラギウス銀河の神を殺した男。 神性に由来するスキル、および精神干渉系の能力の影響を軽減する。 【宝具】 『棺たる鉄騎兵(スコープドッグ)』 ランク:E 種別:対人/対軍宝具 レンジ:1~50 最大補足:20人 キリコがレッドショルダー時代から愛用し続けているAT(アーマードトルーパー)。 全高3.8メートル。頭部には回転するターレット式三連カメラ、右腕には炸薬で伸縮するアームパンチ、 脚部にはグライディングホイールの回転で地上を高速疾走するローラーダッシュ機構を装備。 武装はヘビィマシンガンを中心に多種多様な装備から作戦に応じたセッティングが可能。 アストラギウス銀河において数十年に渡り運用され続けているATの基本にして完成形というべき機体である。 しかしその半面パイロットの生存性は著しく悪く、装甲も部位によっては歩兵の携行火器で貫けるほど。 宝具としてEランク相当の対魔力は持つが気休めにしかならず、単体では生身のサーヴァント相手でも分が悪い。 その戦力差を埋め得るのがキリコの卓越した技量であり、彼の持つ別の宝具である。 『最低野郎(ボトムズ)』 ランク:E 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:- 乗機を次々に乗り捨てながら戦場を渡り歩いたキリコの生き様。 キリコは自身の宝具である『棺たる鉄騎兵(スコープドッグ)』を、マスターの魔力を媒介に再調達することが出来る。 前述のとおり『棺たる鉄騎兵』は極めて破壊されやすい宝具であるが、キリコにとってはその喪失は痛手にはならない。 それどころか騎乗兵のクラスにあるまじき「乗機を使い捨てる」戦い方を可能とするのがこの宝具である。 なお調達時に過去の戦闘データをあらかじめ機体のミッションディスクに登録可能。経験が兵士を強くする。 『異能生存体』 ランク:EX 種別:対人宝具 レンジ:- 最大補足:1 異能者。不死身の兵士。触れ得ざる者。遺伝確率250億分の1の衝撃。神の後継者。 キリコの遺伝子に刻まれた『死なない』因子。 自動発動型宝具であり、キリコが致命傷を負う状況に陥るとその因果を捻じ曲げ、その死を回避する。 その際、幸運値依存の宝具や能力の判定は全てキャンセルされ、あらゆる致命的な一撃に対して必ず生きるための『偶然』を創り出す。 ぶっ潰しても、切り刻んでも、焼いても死なない。時に利己的に、時に利他的に、取り巻く環境を変えてまで生き延びる。 ただしその発動タイミングは選べず(死を回避するのであって負傷や敗北はそれが死に繋がるものでなければ回避できない)、 また完全にオートで発動するため、キリコが死に瀕するたびマスターの負担を無視して突発的に多大な魔力を吸い上げることとなる。 更にこの宝具はキリコ自身のみに働き、味方(マスターを含む)を巻き込んででもキリコだけを生き残らせようとする。 キリコ自身にも一切制御不可能の、アストラギウス銀河の因果律を超えた力であるため、宝具ランクは測定不能。 【weapon】 「アーマーマグナム」 AT(アーマードトルーパー)の装甲も貫徹可能な徹甲弾を装填したハンドガン。 あくまで対ATを目的とした護身用の武器だが、キリコはこれを対人兵器として使ったことがある。 【人物背景】 「装甲騎兵ボトムズ」シリーズを通しての主人公。 無口で無愛想、一見して無感情に見えるが、実際は自身の感情の出し方を戦火の中で忘れてしまった不器用な男。 彼なりに人との繋がりを求め、仲間を案じ、愛を求める心はあるが、彼を取り巻く運命がそれを許さない。 幼少期は軍の施設にて育つがメルキア軍将校ヨラン・ペールゼンにより施設の関係者は皆殺しにされ、自身も全身を焼かれる。 それでも「死ななかった」ことでペールゼンに目を付けられ、軍に入った後は特殊部隊レッドショルダーに配属される。 そこで『異能生存体』の素質を見出されるがキリコはペールゼンには従うことなく、以後各地を転戦する。 大戦末期、キリコは小惑星リドにて目的不明の作戦に参加する。 その作戦で出会った『素体』――謎の美女、パーフェクト・ソルジャー『フィアナ』。 彼女に惹かれたキリコは、謎の秘密結社に追われながらも、ウドの街、クメン王国、惑星サンサ、そしてクエントを巡る。 その中で、アストラギウス銀河の統合意志たるコンピューター『ワイズマン』に神の後継者の座を与えられる。 その誘いに乗り銀河支配を目論むキリコだったが、その真の目的はワイズマンの破壊にあった。 「たとえ神にだって俺は従わない」――キリコはアストラギウスの神を殺し、余命少ないフィアナと冷凍睡眠に入る。 しかし32年後、宗教結社マーティアルにより二人の冷凍睡眠は解除される。 キリコは己と愛する者のため戦うが、皮肉にもフィアナの命の灯火は遂に尽きてしまう。 自分の全てとも言うべき存在を失い、それでも死ねないキリコはその後もアストラギウスを彷徨い続けてゆく。 装甲騎兵ボトムズ。それはキリコとフィアナ、60億年目のアダムとイヴの愛の巡礼の物語である。 【サーヴァントとしての願い】 フィアナと再会し、共に平穏な時を生きる。 【基本戦術、方針、運用法】 何度でも再生産可能な乗機と、因果を捻じ曲げ死を回避する『異能生存体』が武器。 たとえ敗北しようとも必ず生き延びて戦場に舞い戻り、燃える地獄をローラーダッシュで駆け抜ける。 あらゆる絶望を更なる奇跡でねじ伏せて、キリコは次の巡礼地へ向かう。 しかし生き延びたとして、その先がパラダイスのはずはない。 『異能』の力の因果歪曲はあらゆる他者を犠牲にし得る。己のマスターの生存すら誰も保証出来ない。 このサーヴァントを運用するにあたってまずすべきは、予測不可能な『異能』の脅威を知ることである。 ――キリコは巨大な不発弾。自爆、誘爆、御用心。 【マスター】 ホシノ・ルリ@機動戦艦ナデシコ~The prince of darkness 【参加方法】 ナデシコCとオモイカネを介した『方舟』への直接ハッキング。 【マスターとしての願い】 無し。『方舟』に侵入した目的はあくまで調査である。 【weapon】 無し。 【能力・技能】 遺伝子操作と体内のナノマシン、そして特殊な訓練による、「電子の妖精」と称されるほどのハッキング能力。 本来の世界では無縁だったものの、霊子ハッカーとしての魔術師適性は非常に高いだろう。 そのため、おそらく知識さえ獲得すればコードキャスト等の使用も可能と思われる。 【人物背景】 かつての「機動戦士ナデシコ」のクルーの一人であり、劇場版「The prince of darkness」の主人公。16歳。 とある国家の国王夫妻により遺伝上の娘である試験管ベビーとして誕生する予定だったが、誕生前に医療機関が爆破され、 流出した彼女の受精卵を入手した施設によって遺伝子操作と特殊なナノマシン適性を与えられて育てられる。 そのため特にナノマシンを介したハッキングに関しては超人的な適性を持つが、その複雑な出自は彼女の人格に影を落としていた。 銀髪に金の瞳、華奢な体形で白い肌。銀河の妖精と称される可憐な容姿を持つ。 抑揚のない口調が特徴で、基本的に淡々とした喋り方をするが、真顔での冗談や人を喰ったような物言いも多い。 反面、自分の葛藤を表に出そうとはせず、表面上は平然としていながら自身に課せられた重責とひとり戦い続けていた。 TV本編から5年後の劇場版では、謎の幽霊ロボットを巡る作戦中に復讐鬼と化したアキト(TV本編の主人公)と再会。 武装蜂起した「火星の後継者」達との戦いの中で、ルリは事態の収拾と大事な人を取り戻すため奔走する。 【方針】 聖杯戦争は二の次であり、まずは方舟の調査が優先。 ただ軍人である以上、止むを得ない命のやりとりは躊躇しないだけの覚悟はある。 BACK NEXT 013 寒河江春紀&ランサー 投下順 015 本多正純&ライダー 013 寒河江春紀&ランサー 時系列順 015 本多正純&ライダー BACK 登場キャラ NEXT 参戦 ホシノ・ルリ&ライダー(キリコ・キュービィー) 029 初陣
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テレビとか新聞とかちゃんと見ないとダメだって ◆IbPU6nWySo 「ジナコや……おきなさい、ジナコや…」 「う、ううーん…?」 謎の声に呼びかけられる。 確か自分はかわいい少女と共にお昼寝していたはず…… まさか再びあの気味の悪い夢を見るのだろうか… ジナコは恐る恐る目を開けた。 そこには肥満体質な男性がはぁーはぁーと息を荒げながらフワフワと浮いている。 まったくもって信じがたい光景が広がっている。 ジナコは怖い夢ではないと分かると安堵はしたが… 男に対してはギョッとして、嫌な汗を浮かべながら訊ねた。 「だ………誰ッスか……?」 「私はあなたの剣『魔剣アヴェンジャー』の精です(ネットで装備しているでしょ?)」 ……… 「擬人化したらこんなおっさんになるとか嘘ッス~!!!!!!」 「あぁっ!逃げないで!!逃げないでっ、っていうか引かないで!!お願い!」 自称:『魔剣アヴェンジャー』の精を名乗る男性は話を続けた。 「今日は毎日使ってくれたお礼に応援をしに参りました。 さぁ、この精霊様になんでも言ってみなさい」 「ん?今、なんでもって言ったッスね!?なんでも……」 ジナコは夢だと分かっていながらも真剣に問うた。 「ボク…死ぬのが怖いッス……死ぬって分かってても、それでも聖杯戦争を生き残りたいッス… あのょぅι゙ょちゃんを殺したくないッス……」 「ふーん?でも君、ショタコンでしょ?」(鼻ホジ) 「今はどうでもいいでしょうがっ!!精霊さん!ボク、あのょぅι゙ょちゃんと一緒なら大丈夫な気がするッス。 あの子もボクと一緒で死ぬのが怖くて…生き残りたいはずッス……ボク……ょぅι゙ょちゃんと一緒なら不幸にならないッスよね? あの子を守り続ければ、元の世界に帰れますよね?」 「……………そうでもないんだけど」 ……… 「うわああああああああああああああああああああああああああああああああああ」 「ま。待って!ジナコ!!今のナシ!ノーカン!ノーカン!! そんな事によりジナコ!よくお聞き。君、寝ている場合じゃないのよ。 君には今ゴイスー(※スゴイ)でデンジャーなことが迫っているのだよ」 「……へ?」 「さ、早く起きなさい。アーチャー=サンが待ってるから」 「は……はぁ…」 「ようやく起きたか、駄肉」 ジナコが目を覚ますと見知らぬ男性がいた。 夢で見た自称:『魔剣アヴェンジャー』の精よりは断然若く、いい顔の方に近いだろうが 果たしてこの状況はどういうことなのか…… ふと体を起こすと、もう一人。 赤いコートの男性…いや、サーヴァントの姿を見た。 ジナコは途端に焦りが沸騰した。 「ああああああぁぁああぁあああぁっ!!!ごめんなさいいぃぃぃいぃいぃぃ!!! ロリコンじゃないのぉぉおーー!!ショタコンなのぉおぉおぉっ!!!」 「おい」 「もう駄目だ、あたし終わった、死ぬんだ。殺される。こ、ころ、し、死ぬし、死んじゃ……」 「黙れ」 「……」 はぁと男性――ジョンス・リーが溜息をついて改めて話をする。 「いいか、お前がサーヴァントを呼び出すより先に俺とアーチャーは お前にトドメをさせる。分かったな」 ジナコはただ頷くしかなかった。 ちらりとジョンスの手の甲にある令呪を見る。 どうやらすでに二画ほど消費しているようだが、間違いはない。この男はマスター。 状況がうまく飲み込めずジナコはただ話を聞くだけであった。 「この戦争をどうするつもりだ」 「し…死にたくないッス……」 「…聖杯は」 「そんなのどうでもいい!ま、まだやっぱり死にたくないッス…」 「れんげを殺すつもりないってなら、それでいい」 れんげ? あ、あぁ、…ょぅι゙ょちゃんのこと……? 徐々に落ち着いてきたジナコが整理していく。 どうやらこの男(ジョンス)はれんげを保護しているようだった。 もしかしたら家族か何かかもしれないし、とにかく事情があるのだろう。 口ぶりからして聖杯戦争にも積極的ではないのかもしれない。 もし聖杯を狙っているなら、れんげもジナコも殺しているはず。 ジョンスは続けて言う。 「何もするつもりねェなら、れんげを保護してろ」 「え……っとぉ…このょぅι゙ょちゃん?れんげちゃんを…ッスか?」 「あぁ」 「なんで…?」 「…」 「あっ、すいません!聞きません!!何でもアリマセン!!」 「とにかく、れんげは状況を理解してねェ。かといって状況を教えたら何をしでかすかわからねェ 適当に遊んでやれ。わかったな」 「わ、わかったッス!それで見逃してくれるならっ……」 沈黙していたサーヴァント・アーカードが口を開いた。 「迷いはないのだな?我が主」 「二度も言わせるな」 ジョンスが下した決断は――れんげを置いて行く事だった。 ジナコに任せる不安要素があるものの。 彼女の態度を見てハッキリと、これならいいと判断した。 理由としては、やはり二人で闘争を行うとなればれんげを守ることに集中できないからだ。 れんげの存在はそれなりに重要だが、かといってジョンスたちの一番の目的。 闘争そのものを捨てるのならば――彼女はやはり切り捨てなければならない。 戦意のないジナコの意思を確認したところでジョンスの決断は決定されたのだ。 「で、後はだな……」 計画は完璧に通ったものの。 問題はアサシン――カッツェの詳細を掴み、闘争するとなった場合。 奴をすぐに捕捉することであった。 簡単な方法はアサシンをれんげが令呪で呼び出す。 もしくは、あえてれんげを危険に晒す。 これでアサシンがれんげの元へ現れざるおえないだろう。 他には―― 「アーチャー」 「?」 「もしカッツェがお前のところに現れたらすぐ知らせろ。いいな」 「了解した。しかし、それはあるだろうか?」 「大いにある。かなり気にいられてるぞ、お前」 お世辞として受け止めているのか、アーチャーはくっくっと笑う。 ジョンスが冷たくあしらっているからこそ、アーチャーの方へアサシンの意識が向かうのは必然であった。 逆にジョンスのことは避けている態度がある。 その程度のことはジョンスにも感じられた。 だからこそ、ジョンスが目を離した隙にアサシンがアーチャーへ接触することは十分ある。 次はアサシンがれんげの元へ向かった場合。 「おい、駄肉」 「あのー…さすがにいいッスか。ボク、ジナコです。ジナコ・カリギリッス」 「電話番号教えろ」 「はい?」 「ここの。携帯でもいい」 「わっ、わかりました……」 これでれんげの所在が掴めればいい。 いっそこのことアサシンのように携帯を盗んでしまうのも手だったが ルーラーの一件がある以上、ジョンスは目立つ行動を控えようと用心していた。 唯一気になるのはアサシンの行動…… 何かしらやっているかもしれないのはジョンスも分かっているものの。 具体的に何をやらかすのかは…ジョンスよりもアーチャーの方が理解しているかもしれない。 「か、書き終わりましたっ!これでいいッスよね!?」 「あぁ」 それは別にいいか。ジョンスは思考放棄した。 ジナコから電話番号が書かれた紙を受け取ると、ジョンスはそれ以上は何も語らず立ち去る。 同時にアーチャーも霊体化した。 ジナコはポカンとジョンスを見送り、玄関が閉まる音をハッキリと聞いた後 れんげを剥がし、普段は見られない俊敏な動きで鍵をかけた。 「よし!これでよし!!………はぁぁあぁぁあぁ~~~~……」 壮大な溜息をついたジナコだったが 冷静になればあの赤いサーヴァントはれんげのサーヴァントではないということに気づく。 じゃあ……れんげちゃんのサーヴァントは…? なんだろう…思い出したくない…… 何か忘れている気がするが、彼女は体の痛みと吐き気を催したので思考を止めた。 部屋に戻るとまだれんげはスヤスヤと眠りについている。 「…ま、いっか。れんげちゃんから後で聞けばいいッス あの人たちも悪い人じゃなさそうッス!……怖かったケド」 この程度ならアサシン(ゴルゴ)に怒られる事態には陥らないだろうとジナコは慢心する。 「あーあ!完全に目が覚めちゃったし、ネトゲやろーっと」 建前としてはれんげを起こさない為と評して。 カチャカチャとジナコがパソコンを操作し始めた……が。 どうしても気になったのでジナコは交流サイトで月海原の様子を確かめた。 確か、ヤクザさんも調べてたみたいッスけど……どうなっているんだろ… どっか建物でも壊れたり、物騒な事あるんスかね… カチッ 「え……なに…ヤダ、これ…………嘘…」 『なんだこりゃ…』 ランサーの呻きは春紀の思いと重なった。 春紀のバイト先であるケーキ屋が野次馬に囲まれていたのである。 そして、警察の姿。 パトカー。 何もかもか無茶苦茶だ。 茫然とする彼女のところにケーキ屋の店長が姿を現した。 「あっ!春紀ちゃん!!」 「店長…これ、何があったんですか?」 「そ、それが…」 興奮する店長から何とか聞きだしたのは妙な女性が鉄パイプを手に、店内を荒したという。 彼女は駆けつけた警察官にも喧嘩を吹っ掛け あげく、女性は混乱に乗じて逃亡したらしい。 春紀の隣では、その警察官が刑事らしい男性に叱られていた。 「犯人の挑発に乗るなんて、頭に血が昇りすぎだ。現場では冷静になれ」 「は、はい!申し訳ありませんでした!堂島刑事っ!!」 「ったく…あー、そこの――店長さんか?犯人の特徴を知りたいんだが、詳しく話してくれるか?」 「じゃあ、春紀ちゃん。今日のバイトなしってことで…また後で連絡するよ」 「はい。……店長!ちょっと荷物取って行きたいんで店内に入って良いですか?」 店長は返事を堂島と呼ばれた刑事に頼んだ。 堂島は軽く店内を覗いてから 「現場検証は大体終わった。邪魔にならない程度なら構わない」 「ありがとうございます」 春紀が直接店内を見ると、確かに酷い有様だ。 元の店内を知る春紀だからこそ被害を親身になって受け止められる。 しかし、ここが襲撃されたということは―― (まさか……サーヴァント?) ランサーは不満げな声で返事をした。 『さぁ、どうだろうね……あたしらを知っているのはせいぜいライダーたちだけだ。 女性って言うからには可能性としては十分あるけど…こんなことするか?普通』 (他のサーヴァントの可能性もある、か) 『少なくともあのライダーのマスターは、こんな手使う奴には見えなかったけどな』 春紀は調理場へ移動すると、そこには作りかけのケーキや出来たてのものまで放置されているのを発見する。 (どうせ捨てられるんだ。杏子、これも貰っていこう) 『お!ケーキ!!いいところバイトしてんじゃん♪』 (バイトに来たのって、そもそもコレ目的だしな) ランサーの魔力回復にはもって来いである。 ケーキを回収した後、バイトの時間を何に潰そうか春紀は考える。 春紀は念の為、ケーキ屋を襲撃した犯人の情報収集をした。 移動しながら最低限の情報をと春紀は携帯を開いた。 するとすぐに犯人の顔写真、犯行現場を捉えた写真などが交流サイト、掲示板にある。 しかも本名も割れている。 ジナコ・カリギリ…… ランサーもそれを見て悪態をついた。 『おいおい、いくらなんでも酷ぇな……』 (あぁ) 確かに酷い… ネットでの誹謗中傷は常識の範囲だが、これは… 死ねだの、デブ女だの、ただの悪口まで書かれている。 だが春紀は画像を確かめて行く内にジナコという女性の手に令呪があるのが分かった。 マスター!? こんな目立つことして何がしたい訳!? それとも他のマスターたちをおびき寄せる…為……? なんだか罠くさい… 「…?」 その時、春紀の令呪が強く反応を示した。 感覚は魔術師の才がない春紀にも感じられるほどだった。 (杏子、今のって――) 『…こっちだ、あたしも魔力を感じた』 「ああ……ああぁあぁっ……う、あぁ……イヤ…何これ……何これ!」 ジナコはパソコンを叩きつけてしまった。 彼女にとって命より重いかもしれないソレを、思い切り。 何故だが知らないが自分が犯罪を行う写真や動画が出回っている。 よく分からないが、自分が犯罪者だと誹謗中傷されている。 さらには彼女がNPC時代の知り合いの誰かがプライベートな写真が。 どうして? どうして!? どうしてっ!!? このままじゃ無実の罪で警察に捕まる。 そしてそのまま犯罪者のレッテルを永遠に貼られる。 たとえここが方舟だろうが、どこだろうが。 これほどまでに絶望的な状況はない。 「や、ヤクザさん…」 アサシンを呼んだところで何になる? ジナコは途方に暮れた。 何をどうすればいいのか分からない。 「あたし……アタシ…これ……」 ジナコは死ぬのが恐ろしかった。 なのに あれほど死を身近に感じていたのに、恐ろしかったのに。 今は、信じられないほど――死にたいと思えた。 「はは……ははは…はははは……」 彼女は全てから裏切られた。 知り合いからも、知らぬ人間からも、社会からも この世の全てから。 もう、どうでもいいや…こうなったら本当にどうでもいい。 …どうせ皆死ぬ。殺されてもいい。死ぬのは怖い。生きていたい。 でも 「んー……」 れんげが目を覚ました。 混乱しているジナコの前に無垢な少女は周囲を見回した。 カッツェも、アーカードも、ジョンスもいない。 いたのは、カッツェが連れてきたあの女性だけである。 「あの、かっちゃんたちどこですか?」 「…」 ジナコもれんげに気づくと、冷えた目で彼女を見下した。 露知らず、れんげはのんびりと話す。 「どうしたん?気分悪いん??」 「…まさか……あの赤い人のせいなの…?」 「赤い?あっちゃんのことなん?」 「…アタシをこんな目に合わせたの……」 ジナコはれんげに近付く。 どことなくその雰囲気でれんげは悪寒を感じた。 恐怖が生まれ、彼女から後ずさると、栓が抜かれたかの勢いでジナコがれんげを掴もうとする。 何故、彼女がこのような行為をするのか。 れんげにはまったく理解できない。 襲いかかろうとするのを見て、いよいよれんげは逃げた。 初めて見る家だったが、居間を挟んだ先に玄関があったのが幸運である。 礼儀よく靴を履いている暇はない。 靴を掴んで、靴下だけの状態でれんげは外を飛び出した。 「う……」 同時に呻いた。 恐怖で呻いた。 誰もいない、一人ぼっち。 アーカードもジョンスも、カッツェすらいない孤独の彼女に希望はなかった。 「うぅううぅっ……!!」 れんげは必死に走った。 一方のジナコは放心した状態で、玄関で立ちつくしていた。 れんげの悲痛な叫びを聞いて、ジナコは正気を取り戻している。 「あ…アタシ……」 何を考えていたのか。 あんな少女が自分を陥れる訳がない。 少女を守るよう頼んだあの男がこんなことする訳がない。 なのにどうして信じなかったのか。疑ってしまったのか。 ジナコは涙を流す。 「アタシのこと心配してたじゃない…れんげちゃん…… れんげちゃんのこと、強引だけど頼まれたじゃない……! なのに、なんで…アタシッ……!!こんなことも出来ないの…」 ごめんなさい… 【B-10/街外れの一軒家/一日目 午前】 【ジナコ・カリギリ@Fate/EXTRA CCC】 [状態]脇腹に鈍痛、精神消耗(大)、トラウマ抉られて情緒不安定、ストレス性の体調不良(嘔吐、腹痛) 昼夜逆転、現実逃避、空腹、悲しみと罪悪感 [令呪]残り3画 [装備]なし [道具]なし [所持金]ニートの癖して金はある [思考・状況] 基本行動方針:??? 0.どうしよう… 1.れんげやジョンスに謝りたい、でも外に出るのは怖い [備考] ※彼女のパソコンは破壊され、ネトゲ内の装備も消失しました。 ※密林サイトで新作ゲームを注文しました。二日目の昼には着く予定ですが…… ※カッツェにトラウマを深く抉られました。ですがトラウマを抉ったのがカッツェだとは知りませんし、忘れようと必死です。 ※ジョンスが赤い人(アーチャー・アーカード)のマスターであることを把握しました。 ※ジナコ(カッツェ)の起こした事件を把握しました。 (杏子、この反応って何を意味しているんだ?) 『ライダーの時と同じだ…サーヴァントの宝具に反応しているはずだよ』 移動しながら春紀とランサーは念話により会話を続ける。 『しっかし、昼間から宝具を解放してるってのは工房作っているかもしんねーキャスターか… せいぜいアサシンってところだな。アサシンだったら厄介だよ。気を引き締めな』 (あぁ) そう会話している矢先に彼女たちの前に何かが飛びだす。 一人の少女である。しかも小学生くらいの幼い少女だ。 そして、こけた。 「あっ」 思わず春紀は足を止めた。 少女はしばらくじっと動かず、テンポを遅らせてから立ち上がると膝から血が滲み出ている。 ボロボロと涙が溢れだす。 だが、少女は大きく泣き喚く事はなく、声を抑え気味に泣いていた。 「ああぁ……」 春紀は非常に戸惑った。 放っておけない。 しかし、この辺りにはサーヴァントがいるかもしれない。 だけども…… 「あーもう!」 春紀は優しく少女に話しかける。 「大丈夫?ちょっと痛いかもしれないけど、傷触るよ。いいか?」 (ランサー、水持ってるだろ?) 『はぁ!?……ったくしょうがねぇな…』 ランサーは少し離れ、突然出現したように見せぬように春紀たちに近付いた。 しぶしぶ貴重な食料の一つを渡す。 「ほらよ」 「ごめんごめん、また後で調達しよ」 水で傷口を最低限に消毒してやる。 だが、春紀はハンカチを忘れたことに気づき、代わりになるものを探した。 ふと、少女の手に巻かれてある包帯に目が魅かれた。 手の甲……嘘だ…まさか…… 震える声で春紀は言う。 「ちょっとだけ…この包帯、くれる?」 少女は痛みと悲しみを堪えながら頷いた。 恐る恐る春紀が包帯を解くと――その下から特徴的な痣が露わになった。 この子がマスター…!? するとまた令呪が反応する。警戒したが、やはりサーヴァントの姿はない。 冷や汗を浮かべながらランサーは呟く。 「どういうことだ…?こいつのサーヴァント、何してやがる……」 「取りあえず――」 包帯の半分で傷を覆い、残りで痣を隠してやる春紀。 少し迷ってから春紀は少女に対してしゃがみ込み、背を向けた。 「おんぶしてやるよ。ホラ」 「…ありがとなん」 初めて少女は言葉を発する。 ランサーは思わず「おい!」と声をあげる。 「こいつマスターだろ!?」 「……ごめん、ちょっとだけ…」 「…好きにしな。あたしはマスターの決定には逆らわないからさ」 幼い少女。 二人はこのキーワードにそれなりの思い当たる部分を抱いているのだ。 春紀は妹。 ランサーは死んだ妹。 少女はその影と重なり合う存在である。 ランサーは霊体化して、周囲の警戒に当たる事にした。 春紀は少女から話を聞きだした。 少女は宮内れんげ。 彼女は怖い女性から逃げてきた。 攻撃してきた事から、その女性はマスターか…あるいはサーヴァントと分かる。 他にも『あっちゃん』と『八極拳』なる人物を知っていた。 二人組なのでそれも聖杯戦争の参加者だろう。 れんげの話によれば、二人はれんげを保護していたらしい。 殺意がないのだろうか…… 何より重要な、れんげのサーヴァントについてだが。 そもそも、れんげは聖杯戦争すら理解していなかった。 ルーラーが説明しなかったのか? いや、もしかしたら彼女には説明を理解できる知力がないのかもしれない。 春紀はあえて聖杯戦争には触れずにサーヴァントらしき存在を聞き出そうと試みた。 するとそれらしい『かっちゃん』と呼ばれる存在がいた。 『かっちゃん』は宇宙人で性別はよく分からない?、れんげの親友。 れんげが楽しそうに話す内容から仲の良さは十分伝わった。 「それじゃあ、れんげの家はどこ?」 「うち、家は村にあります」 「えっと…そうじゃなくってだな。ここで住んでる家みたいなの、あるだろ?」 「……?よく分からないん…それ八極拳も聞かれたん……うちの家は、村にしかないん」 「…家。ないのか?まさか――」 「ここには家ありません!いつの間にかここにいました!」 『おいおい…マジかよ……』 さすがにランサーも驚いていた。 きっと八極拳といった人物も苦労しただろう。 春紀は非常に悩む。 ここは警察に保護を頼むのもありだろうか? 春紀たちが見知らぬ少女を連れているのは、周囲の目がどのように見るか分からない。 れんげは春紀の思考を知らずに訊ねた。 「はるるん……かっちゃんたち、探して欲しいんな。 かっちゃん、いつも一緒にいてくれたん。だけど、今はどこにもいないん。 かっちゃん。大丈夫なんな?」 「大丈夫だって。探してやるから」 「会ったら、はるるんもかっちゃんと友達! かっちゃん。ほたるんたちと友達になってないん、でもここで友達沢山できるん!」 「…そうだな」 「かっちゃん…ちょっと恥ずかしがり屋みたいなん。うちの村で皆と会おうとしなかったん」 「へーそうなんだ」 何気なく春紀は話を受け流していた。 が、ただ一人。 ランサーはある事に気づく。 こいつ…今、『村』で……そう言ったよな? サーヴァントは――『ここ』で召喚されるんだ。 だけどこいつ。『自分のいた村』でサーヴァントを呼び出したって、そう話してねぇか…… 大体、NPC時代もないし家もないと来たもんだ。色々変だぞ?こいつ…… 異端。 イレギュラー。 予想外の存在。 普通には存在しえない存在。 いるはずのない参加者。 …いいや、まさかなとランサーは れんげの言いまわしのせいかとマスターである春紀には告げないでおいた。 【B-10/町はずれの住宅地/一日目 午前】 【寒河江春紀@悪魔のリドル】 [状態]健康 れんげをおんぶ [令呪]残り3画 [装備]ガントレット&ナックルガード、仕込みワイヤー付きシュシュ [道具]携帯電話(木片ストラップ付き)、マニキュア、Rocky、うんまい棒、ケーキ [所持金]貧困レベル [思考・状況] 基本行動方針:聖杯戦争を勝ち抜く。一人ずつ着実に落としていく。 1.れんげをどうするか考える。 2.食料調達をする。 [備考] ※ライダー(キリコ・キュービィー)のパラメーター及び宝具『棺たる鉄騎兵(スコープドッグ)』を確認済。 ※テンカワ・アキトとはNPC時代から会ったら軽く雑談する程度の仲でした。 ※春紀の住むアパートは天河食堂の横です。 ※定時制の高校(月海原に定時制があるかは不明、別の高校かもしれません)に通っています。 ※昼はB-10のケーキ屋でバイトをしています。アサシン(カッツェ)の襲撃により当分の開業はありません。 ※ジナコ(カッツェ)が起こした事件を把握しました。事件は罠と判断し、無視するつもりです。 ※ジョンスとアーチャー(アーカード)の情報を入手しました。 ただし本名は把握していません。二人に戦意がないと判断しています。 ※アサシン(カッツェ)の情報を入手しました。 尻尾や変身能力などれんげの知る限りの能力を把握しています。 【ランサー(佐倉杏子)@魔法少女まどか☆マギカ】 [状態]健康 魔力補充(おにぎりとパンを消費) [装備]多節槍 [道具]Rocky、ポテチ、チョコビ、ペットボトル(中身は水、半分ほど消費)、ケーキ [思考・状況] 基本行動方針:寒河江春紀を守りつつ、色々たべものを食う。 1.春紀の護衛。 [備考] ※ジナコ(カッツェ)が起こした事件を把握しました。 ※ジョンスとアーチャー(アーカード)の情報を入手しました。 ただし本名は把握していません。二人に戦意がないと判断しています。 ※アサシン(カッツェ)の情報を入手しました。 尻尾や変身能力などれんげの知る限りの能力を把握しています。 ※れんげの証言から彼女とそのサーヴァントの存在に違和感を覚えています。 れんげをルーラーがどのように判断しているかは後の書き手様に任せます。 【宮内れんげ@のんのんびより】 [状態]魔力消費(小)(睡眠により回復) ジナコへの恐怖 左膝に擦り傷(治療済み) [令呪]残り3画 [装備]包帯(右手の甲の令呪隠し) [道具]なし [所持金]十円 [思考・状況] 基本行動方針:かっちゃんたち探すん! 1.はるるんと友達なん! 2.はるるんとかっちゃんを友達にしたいん! 3.怖かったん…… [備考] ※聖杯戦争のシステムを理解していません。 ※カッツェにキスで魔力を供給しましたが、本人は気付いていません。 ※昼寝したので今日の夜は少し眠れないかもしれません。 ※ジナコを危険人物と判断しています。 【B-10/図書館へ移動中/一日目 午前】 【ジョンス・リー@エアマスター】 [状態]健康、アサシン(カッツェ)に対する苛立ち [令呪]残り1画 [装備]なし [道具]ジナコの自宅の電話番号を書いた紙 [所持金]そこそこある [思考・状況] 基本行動方針:闘える奴(主にマスターの方)と戦う 1.アサシン(カッツェ)を八極拳で倒す方法を探す 2.基本行動方針と行動方針1.を叶えるため、図書館へ向かう 3.ある程度したらジナコに連絡をする [備考] ※先のNPCの暴走は十中八九アサシン(カッツェ)が関係していると考えています。 ※現在、アサシン(カッツェ)が一人でなにかやっている可能性が高いと考えています。 ※宝具の発動と令呪の関係に気付きました。索敵に使えるのではないかと考えています。 【アーチャー(アーカード)@HELLSING】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:主(ジョンス・リー)に従う 1.新たな闘争のために図書館へ向かう。 2.アサシン(カッツェ)が起こそうとしている戦争には興味がある。 3.アサシン(カッツェ)が接触してきた場合、ジョンスに念話で連絡する。 [備考] ※野次馬(NPC)に違和感を感じています。 ※現在、アサシン(カッツェ)が一人で何かしている可能性が高いと考えています。 BACK NEXT 065 喰らう者たち 喰われる者たち 投下順 067 勇者の邂逅、聖者の会合 065 喰らう者たち 喰われる者たち 時系列順 068 異邦の地で生きるということ BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 053 落とし穴の底はこんな世界 寒河江春紀&ランサー(佐倉杏子) 086 槍は甘さを持つ必要はない 060 Imitation/午前9時52分 宮内れんげ ジョンス・リー&アーチャー(アーカード) 080 対話(物理) ジナコ・カリギリ 091 ひとりぼっち ▲上へ
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生きろ、そなたは美しい ◆Ee.E0P6Y2U 「チャンスの神は前髪しかない」という言葉がある。 ここにおける神とはギリシア神話の男性神、カイロスのことであり、かのゼウス末子が“前髪は長いが後頭部が禿げた美少年”という風貌だったに由来している。 またカイロスとは“チャンス”の語源であるが、クロノスと同じく“時”を意味する言葉でもあった。クロノスが客観的な“時刻”であったのに対し、カイロスの“時間”は主観的、意識的なものであったという。 ◇ ああ、夜だ。 辺りでは深い闇が充満している。ふと目を上げれば空は藍を垂らしたかのような深みある色をしている。 そんな中、目を引くのは煌々と照り光る月だ。かの月は夜を我が物顔で見下ろしており、また照らし出した雲をはべらせる様はまるで女王のようであった。 月は依然と変わらぬ光を放っているのだ。星々は見えないというのに。恐らくあれは気が強いのだろう。 アシタカはその夜を、じっ、と見つめていた。 風が頬を撫で、艶のある黒髪がふわりと舞った。音のない夜だ。都心から離れているのもあるが、今日の夜はおかしなくらい静かだ。 別に不吉なものを感じている訳ではない。広がる夜に耳を澄ませているが何も感じることはない。 そう、何もないのだ。恐れるとしたらその空白だ。 ちら、と後ろを窺う。そこではようやく目的地にたどり着き一息ついている早苗の姿がある。 特に怪我などをした様子はないが、息を吐く彼女には疲労の色が滲んでいた。 無理もない。特に目立った交戦はなかったとはいえ、街中を歩き回り聖杯戦争に臨んでいたのだ。 朝からここまで、まる一日彼女は考え、気を張り続けたに違いない。 アシタカは思った。とにかく、ここまで来ることはできた、と。 また帰ることはできた。 生きることができた。絶対に達成すべきことは達成できたのだ。 だが、とアシタカは思う。 考え、見つめなくてはならないこともある。 この聖杯戦争、昨日まではまだ始まってすらいなかった。サーヴァントが出揃い、本格的に動き出したのは今日からだ。 その一日目、自分たちは何を行い、そして何ができなかったのか。 考える必要がある。 初めは迷っていた早苗も、テンカワアキトとの接触を経て、決意した。 これはいい。最適解かは分からない。けれど他の道はなかっただろう。ならば自分はその選択を護るだけだ。 たとえそれが聖杯戦争そのものの否定であっても。 アシタカはそこで、すっ、と目を閉じる。 街の音、風の音、そして夜の音、多くのものが感じられる。 この夜に彼は耳をそば立ててている。 そうしているうちに目蓋の裏にあの赤い夕暮れが蘇ってくる。 あの時、あの選択をしたのは果たして正しかったのか。あの時受けた痛みは記憶に新しい。 ◇ 真っ赤な夕陽の下で、生徒たちは各々の帰路に着こうとしていた。 人が溢れている。 学園の騒ぎもあり、バス亭は普段よりずっと混雑している。辺り一帯はがやがやと騒々しかった。 その雑踏の片隅に、アシタカはいた。 道行く人々の流れを感じ取るべく、彼は意識を研ぎ澄まさせているのだった。 彼は今白いシャツに紺のズボンという現代風のいでたちだった。直に肌を晒すことで彼の感覚は鋭敏になる。 そうして彼が今突き止めようとしている気配は―― 『その、これ……』 『静かに』 早苗の念話にアシタカは短く答える。 彼らの懸念は他でもない――他のサーヴァントである。 アシタカはそのスキルを持ってしてサーヴァントの気配を捉えた。 が、しかしそこまでなのだ。“近くにいる”ことを感じ取るも、“どこにいる”かが分からない。 気配は分かる。何かがいる筈なのに、しかし視えない。 その状況に動揺しつつも、アシタカは冷静であることに務めていた。 取り乱す訳にはいかない。それこそ致命的な隙になる。 『大丈夫だ。恐らくここでは仕掛けてこない』 故にアシタカはそう言い切ることにした。 早苗は動揺している。なまじ見えているからこその恐怖だろう。 それを落ち着けるためにも、必要なのは冷静な分析だ。アシタカは辺りに気を配りつつも早苗に語りかけた。 『“隠れ潜む”ことに長けたサーヴァントのようだ。 どのようなスキルか、あるいは宝具かは分からないが“気配遮断”のほかに何らかの“隠れ潜む”手段を備えているらしい。そうでなくてはこの状況に説明がつかない』 アシタカの“気配察知”は“気配遮断”に対応することができる。 流石にAランク以上のものになると察知は難しいが、しかし今回は少なくとも“いる”ことまでは分かるのだ。 ならばそれが以外のスキルをこのサーヴァントは身に着けていると考えるのが妥当だ。 『問題は逆に敵がこちらのことを察知しているかだが、 私がこうして直に姿を見せてしまっている以上、これは既に見つかっていると考えた方がいい。 その上で私たちが“気付いている”ことに気付いているかは分からないが』 『……じゃあ』 『だがここは人々の往来が激しい上、逃げ場も多い。私が狩人ならばこのような状況で不用意に攻めることはしない。仕掛けるとしても機会を窺う。 それにこのサーヴァントも、この場が危ういバランスの上に立っていることは把握している筈だ』 先ほど確認した三騎、あるいは四騎のサーヴァントのことからも、学園に多くの聖杯戦争関係者がいることは明白だ。 あの中の一騎か、それかまた別の者か。何にせよこの学園はあまたの魔力が充満している。それを感じ取れないとは思えない。 ならばこそどの主従も慎重にならざるを得ないだろう。 感覚を研ぎ澄ませつつも、アシタカは次なる方策を告げた。 確かなことはサーヴァントがどこかに“いる”こと。その上でそれらはもうこちらに気付いていて、かつ攻撃の機会を窺っていると仮定しておく。 “隠れ潜む”ことを得意とする以上、暗殺を狙ってくるのは道理だからだ。 『マスター、とりあえず取れる道は二つだ。逃げるか、接触するか。 どちらにせよあのバスというのは使わない方がいい』 『バスを?』 『ああ、前にも言ったが、ああいった閉じた空間は危ない。加えてこの混雑ではこちらの対応も遅れざるを得ない』 恐れるべくは最初の一撃だ。“隠れ潜む”者の有利は必ず先手を取れることにある。 そういう意味では“気配察知”が働いたことは僥倖といえた。不用意にバスに乗っていてはどうなっていたかは分からない。 『逃げるならば人通りの多い道を歩くのがいいだろう。街へ出れば手を出しづらい筈だ』 『……接触するならば』 『逆だ。人のいない場所、あの山のあたりに行くべきだ。 向こうが襲ってくるならば、私が迎え撃ち、どうにかして敵の一撃を止めよう――その上でマスターが語りかけることになる』 早苗が息を呑むのが分かった。 逃げるか、それとも相対するか。言うまでもなく接触には危険が伴う。 こちらが後手に回らざる得ない状況である以上、多少の不利は見えている。 その上向こうが攻めてくるかも分からない。接触は空振りに終わる可能性もある。 とはいえ逃げたところで完全に安全とも言い難い。そういう意味で迎撃を選ぶのも一つの策ではあった。 アシタカはそうした分析と、この場で取り得る選択肢を告げた。 早苗は黙っている。迷っているのだろう。恐らく彼女はできることならこのサーヴァントとも接触し、話し合いたいと考えている。 だがそのリスクもまた彼女は分かっている。だからこそ迷うのだ。 アシタカはその選択を急かすようなことはしない。最終決断はマスターに委ねる。 早苗がどちらを選ぶにせよ指示には従おう。そして尽力する。 そんな心積もりであった。 だが、ここで状況に変化が生じた。 舞い降りた巨大な影に、ふ、とアシタカは顔を上げた。 そこには夕暮れに沈む赤い空と、学園、そして幾多にも連なる民家がある。 この方舟において、現代、とされる時代の風景だ。 穏やかな街の風景。そこに、ずん、と水面を揺らすように大きな何かが落とされた。 「これは」 キッ、と空を見上げるそのまなざしは凛々しくも険しかった。 アシタカは何も言わず、しかし確かに危急を感じ取っていた。 その気配はどこかに“隠れ潜む”サーヴァントとは違うものだった。 この何かは隠れ潜んでなどいない。隠れ潜む訳がない。これは解き放たれたものだ。 これは怒っているのだ。猛り狂う鬼の力をアシタカは感じ取った。 “気配察知”と“千里眼”によるものだろう。アシタカは近くの街に現れたその“怒り”――鬼眼の王を感じ取ることができた。 彼がまず初めに連想したのは猪神の長、乙事主(オツコトヌシ)だ。 生前縁があった齢五百歳を越える白き猪神。彼が抱いたヒトに対する怒りと、現れた存在が似通っているように思えたのだ。 無論、性質自体はまるで別のものだ。しかしその指向性においては通じるものがある。 『マスター、状況が変わった。今はここを離れよう』 アシタカはきっぱりと告げた。 突然のことに早苗は当惑した顔を浮かべ「え?」と漏らした。 『どうしたんですか、アーチャー――』 『近くに別の何かが現れた。それもかなり大きな力だ』 『サーヴァント……なんですか?』 『恐らくは……だが少々格が違う。大きな、そして猛り狂う恐ろしい力だ』 アシタカはどこか遠く――方角にして北西を睨みながら言う。 この力。これは単純に、強大である、というだけではないのだ。 箍が外れた状態とでも言おうか。制御されないが故のとめどない恐ろしさがある。 乙事主を連想したのもそのせいだろう。彼もまた傷つき、怒りに震え――祟り神となりかけた。 その時に感じた不吉と同じものを、今アシタカは感じている。 『鎮めなければ――この街すべてが危ない』 アシタカの緊迫した言葉に早苗が息を呑んだ。 事態は焦眉の問題だ。どう動くにせよ“隠れ潜む”サーヴァントに構っている余裕はなくなった。 故に――一先ずはここを離れる。 『じゃ、じゃあ……』 早苗の焦燥を感じ取り、アシタカはあくまで冷静に言う。 『この力を鎮めに行く、というのならば同行する。 しかし危険であることは確かだ。それは理解しておいて欲しい』 誰も殺したくはない。誰にも殺し合いをさせたくない。 そんな理念を掲げる早苗ならば街そのものを呑みこみかねない力の存在を止めるように動くだろう。 それを見越した上で、アシタカは早苗の顔を覗き込み、その言葉を強く突き付けた。 「…………」 早苗は少しの間その大きな瞳を揺らしていたが、不意に毅然とした表情で、 『分かっています。でも街が危ないならば……行きます』 迷いなくそう言った。 『了解した。ならば私に黙ってついてきて欲しい。 この力の場所まで連れて行こう。しかし“隠れ潜む”サーヴァントの存在もある。 常に気を張って、次なる状況に備えていて欲しい』 アシタカは早苗の手を取って歩き出した。 バス亭の人ごみから離れ、夕暮れの街へと進み出す。 あれだけ濃かった空の赤も徐々に薄れていた。もう少しほの暗い影、夜の色が溢れだすだろう。 道はバス停同様帰宅する生徒で溢れていた。 突然の事態だが彼らにしてみればまだ“日常”の範疇だ。 けだるそうに欠伸をする者。部活を中断させられたことに不平を言う者。ただ騒ぐ者。 その中に混じって早苗はアシタカに手を引かれて下校していく。 凛々しい男性に手を引かれていることを除けば、なんてことのない下校風景だった。 しかしこれはただの下校ではない。その道中にも、これから向かう場所にも、恐るべき危険がある。 命がけの下校だった。その事実に早苗が緊張していることがアシタカにも伝わってきた。 汗ばむ手のひらが熱を伝えてくる。 辺りに気を配りつつ、アシタカはこれから向かう存在について考えた。 アシタカが感じ取り、視たそれは――やはり祟り神に似ているように感じた。 距離がある為に細部までは読み取れないが、それでもおぼろげな指向性は感じられる。 力をこういった風に発揮することは、この力の主としても本意ではないだろう。 だからこそ危険だ。堕ちた力はすべてを呑みこみ破壊する波となり得る。 だからこそ急がねばならない。急ぎ、鎮めなければ。 こんな時にヤックルがいれば一気に駆け付けることができたろうに、“弓兵”の階位ではそれも適わない。 と、焦燥を抱えつつも、アシタカは務めて落ち着いていた。 早苗を護る、という己の役目を彼は忘れてはいない。 だからこそ急いではいたが、分け目もなく走り出す、というようなことはしていなかった。 それが功を奏した。 歩き出して矢先、月海原学園近くの交差点に通りかかった。そこでは歩道橋がかかっている。 アシタカは早苗の手を引き、一段目を登った、そしてその時、彼は気づいた。 アシタカは気配を“視る”ことに長けたサーヴァントである。だからこそ彼には視えた。 足を踏み込んだ瞬間――あるいは一瞬前だったかもしれない――踏み込んだ階段が、じん、と熱を帯びることが。 アシタカはその現象に覚えがあった。石火矢。エボシが主導しタタラ場で生産されたあの火器。あれと同じことが―― 故にアシタカはすぐさま足を止め、そしてそのまま後ろへと倒れ込んだ。 突如として抱きかかえられた早苗は「きゃっ」と声を上げる。 次の瞬間、ぼん、と爆ぜる音がしたかと思うと、衝撃と砕けた石の欠片がやってきた。 重い痛みが走る。アシタカは爆風の炸裂を背中で受けつつも、辺りを窺った。 下校途中と思しき奇妙な髪形をした男子生徒がいる。突如の爆発に、ぽかん、とした顔を浮かべる老婆がいる。その向こうでは信号待ちをしているサラリーマンがいる。 “いる” この中に仕掛けてきたサーヴァントが“いる”。それは分かる。 しかしそこまでだ。まるで視えない幕に覆いかぶせられたかのように、感覚が不明瞭になる。 『アーチャー、これは』 抱きかかえながらも事態を把握した早苗が問いかけてきた。 アシタカは小さく頷き、 『例の“隠れ潜む”サーヴァントだろう。仕掛けてきたようだ』 アシタカは早苗を起しながらも、いましがた爆ぜた歩道橋を見た。 階段は焦げ付き、アルミの欄干は砕けていた。小規模な爆発ながら早苗がまともに喰らえば危険だっただろう。 何かを踏み、それが爆発した。そういうことなのだろうが、しかし特に何かが設置させている様子はなかった。 あったのは塵だけだ。しかしそれでこの敵は攻撃をしてみせた。 何の変哲もない場所から、どこから知れず攻撃された。底の知れない技巧だった。 なまじ“いる”分かる分、その脅威が肌で感じられた。“暗殺者”という単語が脳裏を過った。 無論このサーヴァントがアサシンだと決まった訳ではない。とにかくこの透明な殺人鬼は静かに人を狙うことに長けているようだった。 『……このサーヴァント、慣れている。街というものをよく知っているのかもしれない』 街ならば仕掛けてこないのでは、というアシタカの予測は外れたことになる。自身の狩人としての感覚で敵を量り過ぎたか。 “いる”ことは分かっても、これでは反撃のしようがない。ルーラーの存在から当てずっぽうに弓を放つことはできないし、何より早苗もアシタカもそんな方策を取りはしない。 「でも」 「分かっている。行くのだろう。だからとにかく、気をつけて」 アシタカは臆することなく言い、そして再び早苗の手を取った。 反撃のしようがないとはいえ、しかし“いる”のは分かるのだから敵の攻撃に対応することはできる。 透明な敵の攻撃を退けつつ、降り立った怒りの力を鎮めに行く。 それが簡単な道でないことは分かっていた。しかしそれでも街を行くアシタカの足取りに迷いはなかった。 無論、早苗にも。 猛り狂う力を鎮めんとすること。 夕暮れと夜の境界線にて、彼らが選んだ道はそれだった。 ◇ 「でも……間に合いませんでしたね」 深まる夜の下、早苗はぽつりと漏らした。 その声音には疲労が滲み、どこか弱々しいものがあった。 アシタカは、ふっ、と顔を緩めた。穏やかな顔であった。 「私たちが行く前に誰かがあれを鎮めてくれたのだろう。 被害は最小限に留まったようだ。誰だかは知らないが、よくやってくれたと思う」 そして神妙にアシタカは言う。 あのあともアシタカは早苗の手を引き、“猛り狂う力”の下へと向かわんとした。 しかしその気配は途中――陽が沈み夜になった辺りだ――ふっ、と消えてしまった。 徒歩で、しかも“隠れ潜む”サーヴァントの攻撃を警戒しつつの行軍だった。 そうした要因がアシタカたちの到着を遅らせた。結果、彼らが目的地――B4マンションにたどり着いた時には、既に闘いは終わっていた。 サーヴァントたちはおらず、あったのは倒壊したマンションの惨状と、その処理に追われる警察の姿だった。 「もしかするとルーラーがあの場にいたのかもしれない。 あれほどの力、闇雲に振るえば聖杯戦争を揺るがすものであっただろう」 「あの人が……」 アシタカの言葉に早苗は言葉尻を濁す。 ルーラー、裁定者。彼女らと早苗は昼間言葉を交わした。 この聖杯戦争そのものへの疑問を投げかけ、そしてここまで至る方針ができた。 彼女らに対する早苗の心象は複雑なものだろう。掲げる理念からは相いれない。真っ向から対立してるといえる。けれど人としてそう嫌っている訳ではない。 ルーラーたちがここで戦っていたのならば、彼女らのスタンスに対する理解がより深まっただろう。 しかし入れ違いになったのか、早苗は誰とも会うことがなかった。 「…………」 早苗は無言で目の前のアパートを見上げた。 こじんまりとした建物であった。二階建て、各階四室の小規模な木造アパートで、外装もささやかなものだ。 建って以降結構な年数が経っているのだろう。ところどころ外殻の塗装も剥げ、風が吹けば、みしり、とどこかの壁が鳴いた。 都心より少し離れた立地も鑑みれば、その生活の水準も窺えた。 岸波白野の自宅であった。 戦いに遅れた以上、早苗たちがB4マンションに残る意味はない。 故に当初の予定通り岸波白野の自宅を尋ねることにしたのだ。 混乱の渦中であるB4マンションに近づくことを嫌ったのか“隠れ潜む”サーヴァントの存在は途中から消えていた。 “いない”ことを確認したが、念を入れて徒歩で移動し、そしてここ――岸波白野の自宅へと至る。 「……白野さん、来ませんね」 時刻を確認し、不安げに早苗が言った。 夕暮れ岸波白野へと入れた連絡――21時に自宅で待つというもの。 しかし如何な事情か彼から折り返しの連絡はなく、また約束の時刻にも彼は姿を現さなかった。 まさかあの教師が嘘を教えたとも思えない。となれば岸波白野側の問題らしいのだが。 何かの事情で連絡を見れない状況だったのならばいい。そもそもこちらを無視したのなら、それは仕方がないと思える。そもそも一方的な通知に過ぎないのだ。警戒されるのは見越していた。 「もしかすると白野さん、もう……」 だが早苗が恐れているのは、岸波白野が既に聖杯戦争から脱落し、この方舟から消え去っているのでは、という場合だった。 裁定者から名前を教えてもらった段階では生きていたのかもしれない。しかしその後、今まで生きている保証はない。 そう思うと否応なしに厭な想像が脳裏を過る。 同じ学校に通ってはいるが、元々縁があった訳ではないし、顔すら思い出せない。けれど会おうとした人がもう既に死んでいる。そんな状況は、聖杯戦争関係なしに、怖かった。 「マンションでも多くの人が死んでいました。きっと、聖杯戦争に巻き込まれて」 早苗は弱々しく言う。 最低限度の被害で済んだ。そんなアシタカの言葉も、彼女の慰めにはならないだろう。 たくさんの人が死んだ。もし自分たちが駆け付けることができれば、被害が減ったのではないか。そう思って自らを責めているのだろう。 だからこそ、岸波白野の死を恐れる。行こうとした場所、会おうとした人、それらが自分たちの手のひらをすり抜ける様に死んで行ってしまう。 そうした事態を、死を恐れているのだ。 「マスター」 そうした恐れを感じ取り、アシタカは口を開いた。 「生ある者は必ず死ぬ。そして死んでしまった者は還らない、決して」 決然とした言葉だった。 アシタカはかつて多くの生を見てきた。そしてその終わり、死も。 かつてモロの君は言った。死を恐れはしない。恐れず死を見つめている、と。 それは気高い犬神としての言葉だった。森に生きるもののけとして、モロの君はシシ神がもたらす生と死を知っていた。 「死に憑りつかれてはいけない。 私たちは生きている。だからこそ死を見つめなくてはならない」 早苗は黙ってアシタカを見上げている。 救おうとした。けれど救えなかった。そんな命がある。 「死という運命は覆せなくとも、選択はできる。ただ待つか、自ら赴くか」 それこそが生きるということだ。 死を悼み、死を想い、死を見つめ、そして道を選ぶ。 それこそがが我々の言う“生きる”ことであると、アシタカは告げた。 「だからこそ生きよう、マスター」 そう言ってアシタカは口を閉じた。 慰める訳でもなければ突き放す訳でもない。ただただありのままを述べる。 そしてそれこそが真実であると、知っているからこその言葉だった。 早苗はしばし黙っていた。考えているのだろう。これからのことを。 聖杯戦争一日目はもうすぐ終わる。救いたかった、多くの命が散ってしまった。 もしかすると自分たちは大きな好機を逃してしまったのかもしれない。あの夕暮れで別の道を選べば、別の答えがあっただろう。 今この状況がいいものか、悪いものかは正直なところわからない。 けれど、生きている。 自分たちはまだ生きている。 だからこそ、選び続けるのだ。死という運命を前にして、行くべき道筋を探し求める。 アシタカはその眼で夜を視た。 人がいて、獣がいて、木々の陰には神が宿っている。広がる夜には多くの命が息づいていた。その流れの一部に自分たちはいるのだ。 アシタカはその命を視つめながら、早苗に寄り添うように立っていた。 【C-8 /アパート(岸波白野在住)前/一日目 夜間】 【東風谷早苗@東方Project】 [状態]:健康 [令呪]:残り2画 [装備]:なし [道具]:今日一日の食事、保存食、飲み物、着替えいくつか [所持金]:一人暮らしには十分な仕送り [思考・状況] 基本行動方針:誰も殺したくはない。誰にも殺し合いをさせたくない。 1.岸波さんは…… 2.岸波白野を探し、聖杯について聞く。 3.少女(れんげ)が心配。 4.聖杯が誤りであると証明し、アキトを説得する。 5.そのために、聖杯戦争について正しく知る。 6.白野の事を、アキトに伝えるかはとりあえず保留。 [備考] ※月海原学園の生徒ですが学校へ行くつもりはありません。 ※アシタカからアーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しましたが、あくまで外観的情報です。名前は把握していません。 ※カレンから岸波白野の名前を聞きました。 岸波白野が自分のクラスメイトであることを思い出しました。容姿などは覚えていません。 ※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。 ※アキト、アンデルセン陣営と同盟を組みました。詳しい内容は後続にお任せします。なお、彼らのスタンスについて、詳しくは知りません。 ※バーサーカー(ガッツ)、セイバー(オルステッド)、キャスター(シアン)のパラメータを確認済み。 ※アキトの根城、B-9の天河食堂を知りました。 ※シオンについては『エジプトからの交換留学生』と言うことと、容姿、ファーストネームしか知らず、面識もありません。 ※岸波白野の家の住所(C-8)と家の電話番号を知りました。 ※藤村大河の携帯電話の番号を知りました。 【アーチャー(アシタカ)@もののけ姫】 [状態]:健康 [令呪] 1. 『聖杯戦争が誤りであると証明できなかった場合、私を殺してください』 [装備]:現代風の服 [道具]:現代風の着替え [思考・状況] 基本行動方針:早苗に従い、早苗を守る。 1.早苗を護る。 2.使い魔などの監視者を警戒する。 [備考] ※アーカード、ジョンス、カッツェ、れんげの存在を把握しました。 ※倉庫の火事がサーヴァントの仕業であると把握しました。 ※教会の周辺に、複数の魔力を持つモノの気配を感知しました。 ※吉良が半径数十メートル内にいることは分かっていますが詳細な位置は把握していません。吉良がアシタカにさらに接近すればはっきりと吉良をサーヴァントと判別できるかもしれません。 [共通備考] ※キャスター(暁美ほむら)、武智乙哉の姿は見ていません。 ※キャスター(ヴォルデモート)の工房である、リドルの館の存在に気付いていません。 ※リドルの館付近に使い魔はいません。 ※『方舟』の『行き止まり』について、確認していません。 ※セイバー(オルステッド)、キャスター(シアン)、シオンとそのサーヴァントの存在を把握しました。また、キャスター(シアン)を攻撃した別のサーヴァントが存在する可能性も念頭に置いています。 ※キャスター(シアン)はまだ脱落していない可能性も念頭に置いています。 BACK NEXT 149 甘い水を運ぶ蟲 投下順 150-bだから、みんな死んでしまえばいいのに 149 甘い水を運ぶ蟲 時系列順 150-bだから、みんな死んでしまえばいいのに BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 145 カイロスの前髪は掴むべきか? 東風谷早苗&アーチャー(アシタカ) 165 The DAWN
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せんそうびより ◆IbPU6nWySo れんげとアサシンが駆けている夜の街は田舎にはない異常な静けさを醸し出していた。 しかし、れんげは気に止めない。 彼女は周囲の建物ばかりに気を取られていた。 彼女の住む、のんびりのどなか村には決してないものに。 「夜なのにとっても明るいん……高いビルがみんな仲良く並んでるん」 チャンカチャンカと愉快そうなアサシンはそんなビルが並ぶ道をただ走るだけ。 ライオンの上にいるネズミのように、れんげはあるものに注目した。 それは崩壊したであろうビルだった。 今さっき崩壊したとは分からないだろうが、れんげは素通りしながら呟く。 「あのビルだけ可哀想なん。どうして倒れているのん?」 「れんちょんwwwwwここも誰もいないっすよーwwwww」 「都会は眠らない町じゃないんですか!?」 「眠らないwwwwwwwwそうっすねwwwwwww 明るいだけで取り得ないけどwwwwwwwwwwwwwwwwww」 そうしてしばらくまだ移動すると、れんげの視線の先に明るい建物があった。 れんげがハッと息を飲む。 「かっちゃん!あれ!!」 「アレってなんすかーwwwwwwwwwww」 「あれはまさか!ファミリーチェーンってやつですか!?」 「うはwwwwwwれんちょんwwwお子様ランチ初体験ワロスwwwwwwwww」 「お子様ランチにピーマン入っていますか!!!」 「はいwwww入ってません!!www大体wwwwwwwww」 「…あったら、かっちゃん。食べてくれるん?」 「モチのロンですよーwwwwwいつもそうして来たじゃなーいですかーwwwww」 発見したのは24時間営業のチェーン店である。 愉快な会話を終えて二人が足を運ぼうした時、足を止めたのはれんげを肩車していたアサシンだった。 二人の前に男が一人。 不敵に笑いながら姿を現した。 黒い髪、赤い瞳、人並より褐色のない白い肌、派手な赤いコート。 なにもかもが特徴的で視線を奪う。 カッツェ並に大男の姿をした化物――アーチャーことアーカードが言う。 「生憎、我が主は食事中だ。私が相手をしよう」 アーチャーは意気揚々と戦闘体勢であった。 一方のれんげというのは、まったくの警戒なしである。 そもそも、聖杯戦争というものを理解していない。 だからこそ彼女はアサシンに呼びかける。 「かっちゃん!降りるん!!」 「ん~?いいっすけど、どうするんすかー?」 「話聞くん!!」 「そうでしたねーwwwwwww 第一村人発見wwwww突撃インタビューwwwwワクテカですね!wwwwwww」 れんげがトコトコとやって来るがアーチャーは動かなかった。 というのもこれが彼のやり方だったし、クセのようなものだ。 化物であるアーチャーはたやすく化物を殺し、人間を殺すが、案外積極的ではない。 殺されたら殺すし、宣戦布告されれば戦争をする、命令されれば殺す。 それだけなのだ。 れんげは右手をゆっくりとかがげてから 「にゃんぱすー」 続けてアサシンも 「あwwwwどもwwwwにゃんぱすーwwwwwwwwwww」 「にゃん…ぱす…?」 どうにも魔術のような呪文でもないし、一見すればそれが挨拶だと分からないだろう。 アーチャーもキョトンとしていた。 れんげがアーチャーを見上げた瞬間、ただならぬ電流が走った。 「ハッ!この人!!」 「れんちょん?」 よく見たら! ……………すんごい、カッコイイ人だのん………… 「れんちょん?」 「……」 「れんちょーん」 「……あ!う、うち!宮内れんげ、です!!好きな食べ物はカレーと梅昆布茶で、嫌いな食べ物は… 嫌いな食べ物ないん、です!!ないんです!!!何でも良く噛んで食べます!!!!」 顔を真っ赤にしながら熱烈な自己紹介をしたれんげにアーチャーは沈黙していたが 水を差すようにアサシンが 「嘘でーすwwwwwwれんちょん、ピーマン嫌いでーすwwwwwwww」 「う、嘘じゃないのん!」 「嘘乙wwwwwwれんちょんのピーマン、ミィが食べてあげてまーすwwwwwww」 「嘘じゃないのん!う、嘘じゃないのん!!うう、かっちゃんのイジワルん!!!」 「嘘乙www嘘乙wwwwwwワロスワロスwwwwwwwwwww」 やかましい言い争いにアーチャーは続けていた沈黙を断ち切るかのように息を吐く。 凍てつく息の後から言葉を発した。 「闘争の空気ではないな」 「?」 「そこのお前は私と同じサーヴァントのはずだが」 ニィと口をつり上げてアサシンは聞かれてもいないのにこう答えた。 「イエース!アサシンのカッツェさん!ベルク・カッツェさん!!」 本来、真名を明かす事はサーヴァントにとっては致命的なことになりかねない。 だがあっさりと、アサシンはアーチャーの前で名乗った。 それは慢心か油断か故意か。バレても問題はなく、真名は大した意味を成さないのか。 アサシンの意図などアーチャーにとってはどうでもいい事である。 そして、アーチャーにとっても真名などどうでもよかった。 「ベルク・カッツェ。なるほど、私も例に倣おう。アーチャーのアーカードだ」 間接丁寧にアーチャーが返答すると、れんげがポカンとして。 「あ……あっちゃんって呼んでいいですか?」 「ところでれんげと言ったか」 「!!!!!!!!!」 再びれんげに衝撃走る! アーチャーの発した「れんげ」というキーワードが謎のエコーを続け、れんげの中に響き渡ったのであった。 それはある意味でれんげに精神的ダメージ(?)を与えている。 高鳴る胸を抑えつつ、れんげは慌てて返事をした。 「れれれれれ、れんちょんってよ、呼んで欲しいのん!!」 「れんげ、聖杯戦争をしにきたのだろう?私と戦争をしにきた」 「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 梅干しのように赤面しながられんげは胸を押さえていた。 (人生の中で一番の強敵だのん!勝てないん!!胸が爆発しそうなん!!!) 逆にお前の人生はたかが数年程度だろう、という突っ込みをしてくれる者は残念ながらこの場に居合わせておらず。 れんげの状況は全く改善されていない。 無論、アーチャーの後半の言葉は馬の耳に念仏であった。 さすがのアーチャーも理解したのか、改めて問う。 「聖杯戦争をしにきたのだろう」 「!………せーはいせんそー……?」 「れんちょんれんちょんwwwwwそれ、ふぇすてぃばるんの正式名称ねwwwwwwwwwww」 「あっちゃんもふぇすてぃばるん参加してるん?」 アーチャーは何も語らない。 語らずともアサシンとはまた違う不敵な笑みを浮かべ、れんげは気づいていないが すでにジリジリと『影』を揺れ動かしている。 するとアサシンが言う。 「はいwwwwここでれんちょんに問題です!!デデンwwwwwwwwwwwwww このふぇすてぃばるんは、どういうふぇすてぃばるんでしょーかー?wwwwwwwww チッチッチッチッチッチッwwwwwwwwwww」 「………ハイ!ハイ!!」 「れんちょん、答えをどうぞ!」 「かっちゃんも得意な変装を競うのん!変装ふぇすてぃばるん!!!」 これにはアーチャーだけではなくアサシンも言葉を失った。 間を開けてからのちに 「オウフwwwwwwwwwwwwwれんちょんwwwwwwwwwwwww ちょおまwwwwww予想外っすよーwwwwwwwwwwwwwww」 「え、違うん?」 「んーwwwwwwwwwwwwwwwwww ま、いっか。面白そうなのでカッツェさん変装ふぇすてぃばるんしまーすwwwwwwwwwww」 宣言した瞬間、アサシンはアーチャーの目前で『宮内れんげ』に変身したのである。 まさに瓜二つ。 双子どころではなく、髪のクセから骨格の位置、細胞の一つ一つ、指紋や声帯まで『宮内れんげ』そのものだ。 アーチャーはアサシンの能力に関心をした。 吸血鬼の目を以てしても本当に区別がつかない。 思わず溜息を漏らした。 「ほう、素晴らしいな」 近くにいた本物の『宮内れんげ』と合流するとごちゃごちゃに入れ違う。 一見した人間であればまったく区別がつかないだろう。 この状態で 「はい!本物のれんちょんはどっちで「左」……早いんーーーーーーーーーーー!!!!」 「どうして分かったん!?なっつんもほたるんも皆かっちゃんの変装見破れなかったのん!!」 「目で追っていたからな」 バレてしまったのでアサシンは元に戻ったが子供らしい意地を持ったれんげが言う。 「次は見えないところでかっちゃん変装するん!そうすれば絶対分からないん!!」 「れんちょん、同じパターンじゃつまんなーいのでちょっと変えません?wwwwwww」 「どうするん?」 「そうっすねーwwww……たとえば」 刹那、アサシンの雰囲気が一変したのをアーチャーは見逃さなかった。 同時にアーチャーはアサシンと似たものを感じた事があると確証を得る。 しかし、それが『何か』はまるで見当がつかない。 あまりに遠く、薄れた感傷だからこそすぐに理解する事ができなかった。 ただ攻撃がくると理解する。 アーチャーが攻撃を受けようといつものように構えていた。 アサシンに体を掴まれる、否――不思議なくらいに甘い抱擁。 それからキスされるなどアーチャーには予想外だった。 ありのまま起こった事を話す…… 『腹が減ったんで食事をしていたらアーカードが二人に増えていた』 何を言っているかわからねーと思うが、俺にも分からねぇ。 頭がどうにかなりそうだ。 催眠術だとか八極拳だとか、そんなんじゃなく聖杯戦争のせいだろうが。 なんというか、気味が悪い。 「だからどういうことだ…」 ジョンス・リーはこの奇怪な光景に戦慄を通り越して呆れていた。 前述の通りアーチャーが二人いる。 服装から顔立ちまで瓜二つの双子のような存在がジョンスの前にいたのだ。 夜遅い時間に何故かいる子供――れんげがジョンスに気づくと声をかける。 「そこの人!どっちが本物だと思いますかっ」 「……」 そうだろうと思ったが本当にそういう奴…なのか……面倒だ… 面倒だしアーチャーの事なんてそんなに分からねぇし…はァ…… ジョンスにとって深く考える事は難儀である。 手っ取り早く分かる方法があれば、と自然にある事を思い出す。 ――そういえば我が主、基本的にサーヴァントに物理攻撃は通用しない。私は特別だ 「なるほどな。要するにぶっ飛ばせって事か」 「え!?な、なにするん!?」 「子供のお前にも分かりやすく教えてやるよ。八極拳を」 「は……八極拳…?」 ジョンスは臨戦態勢をとった。 腰を低く落とし、右手は軽く前に出して左手は引く。 独特なフォームと威圧感に子供のれんげにも何か起こることは一目瞭然であった。 さて、次はどっちを狙うかだが…… 右のアーチャーは不敵に笑う。 まるで攻撃されるのを望むかのような瞳でこちらを見つめている。 左のアーチャーも不敵に笑う。 それから―― 「キラリンッ☆」 攻撃するまでもなかった。 「右だろ」 「すごいん!どうして分かったん!?今度は入れ替わるところ見せてないん!!」 「いや、明らかにおかしいだろが。左」 「れんちょん分かりませんでした…」 一方で偽物のアーチャーがジョンスの前で変身を解いていた。 その姿はアーチャー並の長身、モジャモジャのクセが強そうな長い赤髪、耳まで裂けそうなニタリと笑う口。 まるで不思議な国にいる猫を思わせる派手な容姿に、ジョンスは少しだけ顔をしかめる。 本物のアーチャーは悠々とジョンスのところへ戻り。 「我が主、サーヴァントだがどうする?」 「…まさか」 あの子供… ジョンスは溜息をついた。 聖杯戦争なんて名ばかりでまさか子供がいるだなんて。 いや、子供にしても戦える子供ではなく、いかにも貧弱そうな少女なのだから希望も持てない。 しかもサーヴァントの方はヘンテコリンなものだ。 「戦うつもりあるのか…?」 「あるん!かっちゃんの変装すごいん!!かっちゃんよりすごい変装できないん!」 しかも話が斜め上に飛んでいる。 ジョンスに対してアーチャーはいたって真面目に「フム」と呟いてから 「変装というのは――これでもいいのかね」 一瞬にしてアーチャーが変貌したのは以前ジョンスにも見せた無精ひげの生やした歴戦の王の姿だ。 突然の変化にれんげは理解に時間がかかった。 我に返ってから驚く。 「お、おじいちゃんになったん!?」 「まじっすかー?wwwwwwwwwwww あれれーwwwwwアーチャーですよねー?wwwwwwwww クラス詐欺してません?wwwwwwwwwwwwwww」 「でも、かっちゃん女の子にもなれるん!!!」 「女の子というのはこうかね?お嬢ちゃん」 次にはジョンスも目を疑った。 アーチャーの姿は白い衣服を纏い、白いロシアン帽をかぶる、ロングヘアーの少女に変貌したのだから。 先ほどの男よりも全くアーチャーを思わせない姿に脱帽するしかない。 れんげも呆気に取られている。 「女の子になったんー!!!!!!」 「ははは!要するに引き分けってところさ、お嬢ちゃん。気がすんだかい?」 「ぐぬぬ」 「……おい、アーカード。お前」 「おっと我が主。この姿がお気に召したなら、この姿でいてやっても私は一方的に構わ――」 「気が狂うから早く戻れ」 「なんだつれないな」 むしろその気があったのか、とジョンスはしぶしぶ青年の姿に戻るアーチャーを見届けた。 それからアーチャーに聞く。 「ガキの遊びに付き合ってるのはなんだ」 「あちらが戦う気配を見せない」 ジョンスも思ったし、仕方ないとしてもまさか本当に戦意がないと言えるのだろうか? たとえばサーヴァント・アサシンの方は。 アサシンは聖杯戦争を理解しているはずだ。 生と死のやり取りと、血で争う聖戦であることは知っているはずだ。 もしかしたらジョンスたちの隙を伺っているのかもしれない。 だとしたらアーチャーが何もされていないのは…少々妙な気もする。 あの時のように、あえて攻撃を受けるアーチャーのままであれば可笑しさが加速する。 シラを切らしたジョンスはキャイキャイと騒いでいるれんげたちに声をかけた。 「おい、お前ら…本気で戦うつもりはねぇのか」 れんげは首を傾げたが、アサシン・カッツェの方はピタリと動きを止め、振り向いた。 目を覆う前髪の隙間から、不気味な瞳がジョンスを捉えている。 攻撃するのかとジョンスは体勢を取れる状態を保つ。 ニィっとアーチャーとは種類の違う笑みを浮かべてからアサシンはれんげに告げた。 「れんちょん、カッツェさん真面目なお話するけどいいっすかー?wwwwwwwwww」 「真面目なお話なん?」 「はーいwwwwwwwwww」 「…分かったん!」 れんげが落ち着きを見せたのを確認してから、アサシンは至って真面目に話しだす。 「ご無礼をお詫びします。改めて自己紹介いたしましょう。アーチャーのマスター。 アサシンのベルク・カッツェでございます」 「…戦うつもりなのか答えろ」 「いいえございません。ミィとしては我がマスターを保護したい所存です。 ミィにとっては我がマスターは大切な友人ですから」 「友人ねェ…」 「ですから、ミィはあなた方に協力いたします。その代わりミィのマスターを守って欲しいのです」 「……なんだと」 要するに同盟を組め、という事だ。 一応ヘラヘラとした先ほどの態度とは一変してなるべく生真面目に語っている事から この同盟要求は本気なのだろうとジョンスにも分かる。 分かる、のだが。 なんっつーんだ、この……胸糞悪い感じは… ジョンスが誰かと協力する事が主義ではない、のではない。 このただならぬ感覚が『何』なのか、ジョンスには分からなかった。 しかし、マスターと呼べるのは子供だ。 アサシンの言葉を疑う理由はない。 それでも…… ジョンスが思い悩んでいるとアーチャーがくくっと笑いを零した。 「お世辞はいらん。つまるところどうするつもりだ?」 静寂が訪れた。 ジョンスが反応した時には遅い。 いつの間にかアサシンはアーチャーの眼前まで来ていたのだ。 しかし攻撃することはなく、れんげには聞こえない程度の音量で面白おかしくアーチャーに囁きかけてきた。 「ミィはあなた方の望みを叶えてあげたいだけですよぉ 闘いたぁい、殺したぁい、弄って、刺されて、轢かれて、縛られて、傷つけあって。 血がみぁたい。真っ赤な真っ赤な血がみたぁい!!…そぉでしょぉ?」 くっくっとアーチャーはまだ笑う。 それから童謡を語るかのように話を始めた。 「ようやく思い出した。私はお前のような男を知っている。 昔々あるところに狂った親衛隊(SS)の少佐がいた 『不死者たちの軍隊を作ろう 不死身の軍隊を作ろう』 膨大な血と狂気の果てにその無謀を成就しつつあった だが 私とある『死神』がその計画を台無しにしてやった。 それでもなお 連中は心底あきらめなかった 誰も彼もが彼らを忘れ去り忘れ去ろうとした だが連中は暗闇の底で執念深く 確実に存在してきた ゆっくりとゆっくりとその枝葉を伸ばしながら」 吸血鬼の戦闘集団 不死身の人でなしの軍隊 シークフリートの再来 神話の軍勢 第三帝国 最後の敗残兵 『最後の大隊』 「あの少佐によく似ている」 「ミィをどこかの誰かと一緒にされるとちょっぴり心外ですねー だが断るってことっすかぁー?」 「いいや、むしろ受けて立とう。戦争は好きだ、何度だってお前のようなものは滅ぼしてやろう。 私も楽しみだ。実に楽しみだ。…我が主はそうは思わないかもしれんが」 アーチャーはジョンスをチラリと見た。 ジョンスの表情は見えない。 が、ゆっくりと呼吸をしてから静かに口を開いた。 「なぁ…お前。お前みたいな奴が世間体でなんて言われるか……知ってるか? 反吐の出るクズ野郎だ」 「………あ?」 アサシンはらしくない威圧の籠った声を漏らすがジョンスは止まらない。 「お前みたいなのはよォ…大概、高見の見物して人を馬鹿にして、自分は悪くねェだの余裕ぶっこいてやがる。 つまりただの野次馬だ。本ッ当、胸糞悪い。お前みたいな典型的な奴がいるとは夢みたいだな。 お前はあの主催者の野郎と大差ねェ」 「あのぉー!話聞いてますぅー?ミィはお前らと手を組みたいって言ってるんすけどぉー!! 争いに来た訳じゃないんすけどぉー!!人の話聞いてますかぁー!?」 「お前こそ、俺の話聞いてたかクズ野郎」 ビキッと何かが切れる音がした。 両者の間に独特の雰囲気が流れる。 ジョンスはハッと音を発しながら身構えを取る。 「ようやく本性が出たか。いいぜ、来いよ」 「やめるん!!!」 ここで割り込んで来たのがれんげだった。 れんげはいつになく厳しい顔つきでジョンスの前に立ちはだかる。 「かっちゃん、いじめるの駄目なん!かっちゃんの悪口はうち許さないん!!」 「…」 「かっちゃんに謝るん!!」 ゴッ 幼い少女の頭に銃口がつきつけられた。 白い銃の持ち主は言うまでもなくアーチャー・アーカード。 ジョンスもアーチャーの行動に姿勢を緩める。 アーチャーは表情一つ変えずに淡々と語りかけた。 「我が主、殺すか?」 「………」 「私は微塵の躊躇もなく 一片の後悔もなく鏖殺できる この私が化物だからだ ではお前は ジョンス・リー」 「か…かっちゃんに謝るん」 大の男が二人ともれんげの言葉にピクリともしなかった。 れんげはまるで異国に放り込まれ様な孤独感と絶望感を味わう。 アーカードの言葉はまだ続く。 「銃は私が構えよう 照準も私が定めよう 弾を弾装に入れ 遊底を引き 安全装置も私が外そう だが 殺すのはお前の殺意だ さあ どうする 命令を!! 八極拳士、ジョンス・リー!!!」 「か…かっちゃんに……」 自分の思い通りにならなくて、れんげの瞳に涙が現れた。 だからといってアーチャーが銃を下げる事はない。 本当ならば怖くて逃げ出したい。 泣き喚きたい。 友人たちともう一度会いたい。 のんびりのどかだったあの村に帰りたい。 それでもれんげはカッツェの『友達』として必死に立ちふさがった。 「か、かっちゃんに謝るん!かっちゃんはうちの友達だのん!!」 「止めろ」 「……」 アーチャーは信じられずに呆けていた。 ジョンスはもう一度言う。 「さっさとその物騒なものをしまえ」 「…本気でか」 「俺はいつでも本気だ」 信じられずにアーチャーはしばらくその状態であったが、しぶしぶ銃を降ろした。 れんげは涙を浮かべたままハッとする。 「かっちゃんに謝るん!」 「あぁ、悪かった」 「あっちゃんも謝るん!」 「…そうだな」 うん!と頷いてから、れんげはアサシンに振り向いた。 「かっちゃんも謝るん!」 「えー」 「謝るん!!」 釈然としない風にアサシンはわざとらしく頭を下げた。 「あーはいはいどうもすいやせんでしたーサーセンでしたー」 「これで皆仲良しなん!!」 「…さっすがマイマスター!れんちょんカッコヨスでしたよぉwwwwwwwwwwww ますます好きになっちゃいましたよぉーwwwwwwwwwwwwww ミィたち大親友ですねぇーwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww」 「照れるんっ」 キャイキャイと騒ぎ合う二人を眺めながらジョンスは溜息をつく。 友達?親友?何がだ ジョンスはあれほど命の危機にあったれんげを助けようともしないアサシンを見過ごしてはいなかった。 ジョンスは待っていた。 試していた。 アサシンがれんげを庇うか助けるか、何かするかどうかを。 しかし希望は砕かれた。 必死であったれんげを見下していたアサシンの姿をはっきりと捉えていた。 あのクズ野郎 「我が主、聖杯はどうする?アレを殺さないのか?」 「あの子供を殺したところで…あの野郎に勝った気にはならねェ」 「ならばサーヴァントを殺すか?」 ジョンスはもう一度溜息のような大きな息を吐くと。 「最初はそのつもりだったんだが…あの野郎……あいつは俺がブッ飛ばす…… お前は手を出すな。俺がこの『手』で奴を倒す」 「我が主…サーヴァントは――」 「分かってる。だが、方法がねェことはねェだろ」 アーチャーは大きく目を見開いた。 ジョンスに迷いはない。 「戦争だろうがなんだろうが、奴は俺が倒す。いいな」 その姿にアーチャーは感動を覚え、やはりこの男がマスターとして選ばれた理由に確信を得た。 「そうか。やはり人間は素晴らしいな」 化物を殺すのはいつだって人間なのだ。 【C-10/ファミリーチェーンレストラン前/一日目 未明】 【ジョンス・リー@エアマスター】 [状態]健康、アサシン(カッツェ)に対する苛立ち [令呪]残り1画 [装備]なし [道具]なし [所持金]そこそこある [思考・状況] 基本行動方針:闘える奴とは戦う 1.アサシン(カッツェ)を八極拳で倒す方法を探す 2.れんげを殺しても意味はないので、一応保護する 【アーチャー(アーカード)@HELLSING】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:主(ジョンス・リー)に従う 1.アサシン(カッツェ)が起こそうとしている戦争には興味がある しかし、ジョンス・リーの命令を優先する 「…おい、ちょっと待て」 「どうしたん?八極拳」 いきなり、れんげのネーミングセンスにジョンスはつまずいたが、あえてスルーした。 「お前、家は」 「うちの家は村にあります!」 「ここには」 「ここはうちの村じゃないん……あっ!ここってどこですか!?東京ですか!?」 「…俺も知らないが……」 ジョンスに戦慄走る。 まさかこいつ家がないんじゃ!? もしかして一文なしでは!? ジョンスは家こそないが、金はチンピラたちから散々貰い受けたものがあるのでいい。 しかし、まさかまさか、れんげに家がないというのは―― 「何か持ってねェのか!」 「あ!あります!!」 「何が――」 「十円!!!!!!!!」 「ちょwwwwwwえwwwwwww何?wwwwwwwwwwwwwwwww もしかしてミィたち家無し子ですかwwwwwwwwwwww まじっすかぁ?wwwwwwwwwww なんでミィたちだけサヴァイバル生活しているんですか?wwwwwwwwww ねぇ、馬鹿なの?ねぇ馬鹿なのぉー?wwwwwwwwwwwwwwwwwww」 【C-10/ファミリーチェーンレストラン前/一日目 未明】 【ジョンス・リー@エアマスター】 [状態]健康、アサシン(カッツェ)に対する苛立ち [令呪]残り1画 [装備]なし [道具]なし [所持金]そこそこある [思考・状況] 基本行動方針:闘える奴(主にマスターの方)と戦う 1.アサシン(カッツェ)を八極拳で倒す方法を探す 2.れんげを殺しても意味はないので、一応保護する 【アーチャー(アーカード)@HELLSING】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:主(ジョンス・リー)に従う 1.アサシン(カッツェ)が起こそうとしている戦争には興味がある しかし、ジョンス・リーの命令を優先する 【宮内れんげ@のんのんびより】 [状態]健康 [令呪]残り3画 [装備]ないん! [道具]ないん! [所持金]十円!! [思考・状況] 基本行動方針:ふぇすてぃばるん! 1.あっちゃん(アーカード)と八極拳(ジョンス・リー)と友達なん! 2.変装ふぇすてぃばるん! [備考] ※聖杯戦争のシステムを理解していません。 【アサシン(ベルク・カッツェ)@ガッチャマンクラウズ】 [状態]健康 [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:真っ赤な真っ赤な血がみたぁい!聖杯はその次。 1.ジョンス・リーたちを利用してメシウマする [備考] ※他者への成りすましにアーカード(青年ver)が追加しました。 BACK NEXT 030 ザ・ムーン・イズ・ア・ハーシュ・エンペラー 投下順 032 凛然たる戦い 029 初陣 時系列順 032 凛然たる戦い BACK 登場キャラ NEXT 007ジョンス・リー@エアマスター、アーチャー ジョンス・リー&アーチャー(アーカード) 047 形なき悪意 022宮内れんげ+アサシン 宮内れんげ&アサシン(ベルク・カッツェ)
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【クラス】 セイバー 【真名】 勇者ロト(DRAGON QUESTⅢ ~そして伝説へ~) 【属性】 秩序・善 【性別】 ??? 【ステータス】 筋力B 耐久B 敏捷B 魔力B 幸運A 宝具A 【クラス別スキル】 対魔力:A A以下の魔術は全てキャンセル。 事実上、現代の魔術師ではセイバーに傷をつけられない。 鎧の効果により大幅にランクアップしており、火炎や氷結への耐性の他 非戦闘時に限りHPを自動回復する効果(オートリカバー)も含まれる。 騎乗:A セイバークラスに現界したことでランクダウン。 幻獣・神獣ランクを除く全ての獣、乗り物を自在に操れる。 【保有スキル】 勇者:A+++ 正しき精神と信念を持ち、英雄的運命を辿る勇気ある者。 悪に組みせず屈せず、属性が悪である相手からの精神干渉を無効化する。 また良し悪しを別にして異常な事態や状況を招きやすい。 勇者伝説の始祖とも言えるセイバーの勇者としての格は、最高クラスと言える。 精霊の加護:A 精霊ルビスからの祝福により、危機的な局面において優先的に幸運を呼び寄せる能力。 その発動は悪しき者どもとの戦いのみに限定される。 見切り:B 敵の攻撃に対する学習能力。 相手が同ランク以上の『宗和の心得』を持たない限り、 同じ敵からの攻撃に対する回避判定に有利な補正を得ることができる。 但し、範囲攻撃や技術での回避が不可能な攻撃は、これに該当しない。 【宝具】 『闇祓う蒼穹の神器(フォース・オブ・ロト)』 ランク:D~A 種別:対人、対軍宝具 レンジ:1~50 最大捕捉:1~100人 かつて大魔王を討伐した際に使用した勇者の剣、鎧、盾、兜、装飾品の総称。 鎧は各種耐性を付与し、兜には真名秘匿効果が含まれる。 中でもオリハルコン製の聖剣、『王者の剣(ソード・オブ・ロト)』は勇者に対する救世の信仰と、 精霊ルビスからの祝福によりランクアップしている。 またあまりに多くの魔物を斬ってきたために、“魔”に類する対象に対して追加ダメージを与える。 真名開放を行うことで、全てを斬り刻む大竜巻を発生させるが、使用した瞬間セイバーの真名は露呈してしまうだろう。 【Weapon】 ロトの装備のみ。呪文はクラス制限に引っかかるため置いてきた。 【人物背景】 ドラゴンクエストⅢの主人公。初代勇者であり、勇者伝説の始祖。 仲間と共に各地を周りオーブを集め、全世界に平和をもたらした。 しかし大魔王討伐後、自らの装備品を残し大衆の前から忽然と姿を消してしまう。 その後人知れず死去し英霊の座に昇るが、果てなく続く“勇者と魔王”の戦いに精神を摩耗させる。 性格は恐ろしく無口であり、基本「はい」「いいえ」か、「バッチリがんばれ」など極簡単な作戦命令しか行わない。 ただの口下手なのかもしれない。 【サーヴァントとしての願い】 永劫に続く“勇者と魔王”の物語を終結させる。 【基本戦術、方針、運用法】 『最優のクラス』に相応しく安定したパラメータを誇る。 どの相手とも安定して戦える能力を持つが、『王者の剣』の真名解放を行った場合、 真名が完全に露呈してしまうというリスクを秘めている。 呪文は置いて来ているため、マスターとともに接近戦で「ガンガンいこうぜ」 しかしマスター、サーヴァントと共に戦略・戦術的方面には決して明るくはない。 聖は戦闘を生業としているわけではないし、ロトも最大4人までの冒険・戦闘指揮経験しかないためである。 「戦争」であるこの戦いにおいて、戦略に疎いという点は致命的な弱みとなり得る。 【備考】 彼の真名は『ああああ』、『くっきい』、『アベル』、『あまの』など複数の説が存在し、 またその性格も『ねっけつかん』、『きれもの』、『おちょうしもの』、『むっつりスケベ』など伝承によりまったく異なっている。 便宜上“彼”と記しているが、当然のように女性説が存在しているため、セイバーの性別すら不明となっている。 この逸話から真名はもちろん宝具や固有スキルといった重要な情報を隠蔽する能力が兜に付与されており、 手にした剣の意匠から敵が真名を想起するのを阻害する。 (というかご丁寧にも刀身に『DRAGON QUEST』とルーン文字で刻まれているため、この能力がないと真名が即バレする) 勇者としての名だけが伝えられ、真実の姿が消失してしまったことから得た能力。 ―――ただロトという称号のみが残る。 ※ロトの兜については『鉄仮面説』、リメイク版での『オルテガの兜説』などが存在しますが、ここでは前者を採用しています。 (グラフィック的には後年(ドラクエ1・2時代)に作り直されたのかも) (というか『オルテガの兜』だったとしても、オルテガのグラが覆面パンツなのでやっぱり顔を隠すタイプの兜なんじゃ(ry) ※見切り能力はセーブ&ロードや、ゲームを攻略するプレイヤー側の学習・対応能力として付与しました。 登場話一覧 +... No タイトル 登場キャラクター 場所 時間 作者 003 序曲 聖白蓮セイバー(勇者ロト) ◆/Q5EWoTDcQ 067 勇者の邂逅、聖者の会合 聖白蓮&セイバー言峰綺礼&セイバー B-1-C-1/命蓮寺 早朝 ◆HOMU.DM5Ns 072 Devil Flamingo 聖白蓮&セイバー B-7/海浜公園 午前 ◆IbPU6nWySo 080 対話(物理) 聖白蓮&セイバージョンス・リー&アーチャー C-8/図書館付近C-8/図書館 午後 ◆OSPfO9RMfA 104 殺人考察(前兆) アサシン(吉良吉影)聖白蓮&セイバー C-4/街中(東)C-4/街中(中央) 夕方 ◆DpgFZhamPE 120 勇者よ―― 聖白蓮&セイバー C-4とB-3の境 夕方 ◆TAEv0TJMEI
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凛然たる戦い ◆OSPfO9RMfA 月と街灯の弱い光が照らす夜道を、言峰綺礼は歩いていた。 ただ夜風に当たりたかっただけではない。 聖杯戦争が開始された。最後の一組になるまで行われるバトルロワイヤルだ。隠れ続けるのも一つの作戦だろう。 しかし、今は身体、魔力、令呪、サーヴァント、全て万全の状態だ。今の内に情報収集を行い、敵となるマスターやサーヴァントの情報を得られれば、後々役に立つだろう。 その為、野外に出て散策を行っているのだ。 「キレイ、一ついいだろうか」 霊体化して同行しているセイバー、オルステッドから声を掛けられる。 いちいち確認を取る辺り、オルステッドの律儀さや几帳面さ、あるいは融通の効かなさが垣間見れる。 「何だ?」 「ここから南西に300mの位置、公園の入り口に強い『憎悪』を感じる」 「宝具の力か」 『憎悪の名を持つ魔王(オディオ)』 オルステッドを、魔王オディオと化すセイバーの最終宝具。その完全解放は綺礼とオルステッドの全魔力、令呪三画を持ち得ても使用不可能だと言うことも聞かされている。 そして、その宝具の一部の力を使い、負の感情や記憶に反応する能力は使用していることも。 だが。 「それで、それがどうしたと言うのだ? それがマスターやサーヴァントとは限るまい」 「確かに、誰もが『憎しみ』と呼ばれる感情を持つ。だが、この聖杯戦争においてNPCは平凡な日常生活を行わさせられている。ここまで強い『憎悪』はマスターかサーヴァントでしかたり得ないと判断した」 「なるほど……」 この街は聖杯戦争の為に『方舟』が用意したものだ。唐突にNPC同士が殺し合いを始め、その流れ弾でマスターが死んでしまう……等という展開は余り好ましくないはず。 ならば、NPCが戦いの火ダネとなる強い『憎しみ』を抱いているはずはない、と言うのがオルステッドの推論である。 「一理あるな。では、そちらに向かってみよう」 仮に推論が外れたとしても、大きなリスクはない。オルステッドの助言を聞き入れ、足を公園へと向ける。 「ところで、セイバー。その宝具でどこまで探知できる?」 「魔力のある限り、としか言えない。だが、私の魔力はそう強くない。時を超えることは無理だ。この街全てを把握しようとすれば、令呪一画分の補助は必要だと思われる」 「ふむ」 オルステッドは生前、太古の昔からはるかなる未来まで、時代や場所の垣根を越えて『憎悪』を探り当て、力を与えたと言われる。底知れぬが、逆に大食らいな宝具とも言える。 そして、負担にならない程度の魔力消費量で常時稼働させたときの探知範囲が300m程なのだろう。相手がアーチャーの場合、その範囲外から攻撃を仕掛けてくることも可能であるし、相手が強い『憎悪』を持ち得ているとは限らない。 センサーとしては頼り過ぎるには、やや不安が残る。しかし、この感知能力はアドバンテージに成りうる。 「悪くはないな」 綺礼は今後の戦略を練りながら、歩を進めた。 ◆ 『方舟』が用意した公園。それはジャングルジムや滑り台などの遊具、木製のベンチに街灯……日本の公園らしすぎる、特に意匠も無い公園だった。 それでも日中は子供達が遊びに来るであろうそこに居たのは、黒いバイザーとマントを身につけた男だった。オルステッドが指摘するまでもなくわかる。この男が強い『憎悪』の持ち主だと。 男は綺礼が視界に入るや否や、拳銃を突きつけた。互いの距離は公園の端と端で50mほど。一足飛びに駆けるには、やや遠い。 「マスターか?」 「……そうだ」 男の問いに正直に答えるかどうか一瞬迷ったが、正直に答えた。その問いをすると言うことは、男は紛うことなくNPCに非ず。故に、否定したとしてもすぐにばれる薄っぺらい嘘にしかならない。 「そうか」 独り言のように呟くと、男は躊躇いもなく拳銃の引き金を引いた。月と街灯の弱い光の下ではマズルフラッシュがよく見えた。 オルステッドは即座に実体化すると、綺礼の前に立ち、剣を用いて銃弾を弾く。 「それがお前の英霊か」 男は先に英霊を出させた優越感か、唇を釣り上げる。そして左手を掲げ、声高らかに宣言する。 「こい、バーサーカー!!」 「■■■――――!!」 男の前に、咆吼をあげながらバーサーカー、ガッツが実体化する。 鉄塊と表現する方が正しい大剣を携え、禍々しい黒の鎧を身に纏った巨大な体躯の英霊。獣のような兜が、綺礼とオルステッドを睨み付ける。 「(まずい……セイバーにバーサーカーは相性が悪い)」 懐から黒鍵を三本取り出し、刀身を具現化させながら心の中で舌打ちをする。 即時撤退を視野に入れるが、それを指示するよりも早く、ガッツが動く。 「■■■――――!!」 「キレイ!」 大剣を振り上げながら、猪突猛進に綺礼達に襲いかかる。綺礼達との間に障害物は無く、例えあったとしても何の障害にもならず突き進んでくるだろう。 オルステッドが応戦するために前に出て駆ける。相性が悪いとは言え、撤退のタイミングを逃した以上、サーヴァントにはサーヴァントが応戦するしかない。 二騎のサーヴァントは剣を交えながら、少しずつ戦場をずらしていく。 「そこだ」 そして二人のマスターの射線が通ると、再び男は綺礼に向けて拳銃の引き金を引いた―― ◆ オルステッドとガッツの相性は極めて悪い。致命的だと言っても良い。 ひとつ、『対英雄』 オルステッドの持つ保有スキルで、英雄的な英霊と戦う際、相手の英霊のパラメーターを1ランク下げる。これがオルステッドの持つ最大のアドバンテージの一つである。しかし、反英雄的な英霊や、狂人、悪人には効果がない。そして、ガッツは狂人だ。 ふたつ、宝具の差。 オルステッドは宝具として魔剣を持っている。だが、ランクがCであり、その能力も解錠、結界破壊に傾倒し、攻撃的な宝具ではない。対するガッツの『狂戦士の甲冑』 はランクBであり、攻撃を通すのも容易くない。さらに、オルステッドには防具となる宝具は無い。 最後に、パラメーターの差。 バーサーカーとして現界し、さらに狂化のスキルで強化されたガッツのスペックに、オルステッドは圧倒的に負けている。 故に。 「■■■――――!!」 オルステッドが地を這うのは、戦う前から明白であった。 「ぐっ」 身体を起こそうとして、脱臼した左肩の痛みに顔をしかめる。鉄塊の暴風と表現すべき攻撃は全てブライオンで受けて直撃は無いものの、遊具や地面に身体を何度も叩きつけられた。身体はきしみ、金色の髪の一房が赤く染まっていく。 対するガッツは無傷。何度か直撃を入れたが、甲冑にヒビ一つ付かない。それどころか、攻撃を通らないことを察したのか防御を捨て、全力で攻撃に費やしてきた。 令呪でオルステッドをブーストしたところで、勝機があるかどうかも分からない。 「人の心は弱く脆い……」 それはオルステッドが身をもって知ったこと。 だから、折れた心の刃は脆い。 故に。 「だが、私は信じると決めたのだ! マスターを!!」 だからこそ、折れぬ心の刃は強いのだと。 勝機無き相手に対しても、戦え抜けると。 オルステッドは地を踏みしめ、剣を構えた。 「■■■――――!!」 狂戦士は立ち上がり、戦意を見せる勇者に何も思うことなく、鉄塊を掲げるように振り上げ―― 「バーサーカー!!」 ――背を向け、駆けだした。 ◆ 黒衣の男、テンカワ・アキトは23歳だ。 彼は妻との新婚旅行出発の際に妻と共に「火星の後継者」に拉致された。そして救出された後、彼は妻を取り返すために体術等の訓練を積んだ。厳しい訓練を血が滲むような努力を復讐心で成し遂げ、一級として使えるまでに成長した。 しかし、それでもわずか数年。 十年以上、聖堂教会の代行者として数々の死徒や悪魔憑き、魔術師を葬り去ってきた綺礼にとっては、付け焼き刃でしかない。 アキトは綺礼との射線が通ると、拳銃の引き金を引いた。 綺礼は弾丸を避けた。 「なに……?」 その余りにも容易く行われる行為に、アキトは動揺を覚える。 綺礼は黒鍵を手に構え、駆け出す。 再び鳴る銃声。二発、三発。 それをかわし、または黒鍵で受け流す。銃弾に恐れることなく、真っ直ぐアキトに向けて走る。 綺礼の右手から黒鍵が投擲される。 動揺が身体を支配し、避けられないと悟ったアキトはとっさに左腕で顔を庇う。 熱さと痛みがアキトの左腕と左腿を襲う。それから即座に、綺礼の右足刀蹴りがアキトの胸に突き刺さる。突き刺さった三本の黒鍵を抜く暇も無かった。突風に煽られた枯れ葉のように吹き飛ばされていく。 「バーサーカー!!」 「■■■――――!!」 一人では勝ち目はないと、アキトはサーヴァントを呼ぶ。 マスターの声を受けたガッツは、オルステッドに背を向け綺礼を目指し駆けた。 「キレイ!!」 オルステッドの声が公園の闇を切り裂く。 意図は伝わっている。 綺礼は後ろに下がりながら、懐から取り出した黒鍵を投擲する――足を負傷し動けぬアキトに向けて。 「■■■――――!!」 マスターを失うとサーヴァントは現界出来ない。 狂化を受けても主従の関係を理解しているのだろう、ガッツは自身の腕で黒鍵を防いだ。 宝具である甲冑には黒鍵は刺さりもせず、金属音を鳴らして弾かれた。 「■■■――――!!」 そしてガッツが来た方向から飛んできた真空波も、大剣で防いだ。 オルステッドが放った真空の刃も、アキトを狙っている。ガッツはその方向に投げナイフを放つが、当たった気配はない。 綺礼とオルステッドは射線がちょうどVの字になるように遠距離攻撃をしつつ、距離を取って闇へと消えていく。ガッツはアキトの目の前で防衛に徹するしか無かった。 公園には、狂戦士と黒衣の男だけが取り残された。 ◆ 綺礼は路地裏に逃げ込むと、背を壁に委ねた。まだ緊張は解かない。 およそ数分後。霊体化したオルステッドが綺礼の元まで辿り着くと、実体化する。 「キレイ、先ほどと同じ憎悪の反応は無い。少なくとも、300m以上は離れたはずだ。もう少し魔力をつぎ込めばさらに捜索範囲を拡大できるが」 「いや、周囲に居ないと言うだけで十分だ」 黒鍵を服に収納し、一息付く。綺礼にとって、このぐらいの戦闘は準備運動でしかない。故に、呼吸が乱れた訳ではない。 実体化したオルステッドを目視する。 額には裂傷、血が流れて金色の髪が一部赤く染まっている。先ほどから左の二の腕を右手で押さえている。痛むほどの傷を負ったのだろう。左肩も脱臼している。 「危ないところだった。一番会ってはいけない相手に一番最初に遭遇するとはな」 「すまない、キレイ」 「謝る必要はない。令呪の損失も無く切り抜けたのは申し分無い成果だ。それに、セイバーの感知能力を使えば、同じ相手に正面から当たることも無くなるだろう。悪くはない」 申し訳なさそうに項垂れるオルステッドにそう言って宥める。事実、オルステッドにとっての天敵をマーク出来たのは、十分な成果である。 もし、オルステッドが負傷した時に出会っていたら、もっと酷い損害になっていただろう。万全の時に会えたのは、不幸中の幸いだ。 「セイバーがバーサーカーをマスターから遠ざけて、時間稼ぎをしてくれたからこそだ。感謝する」 感謝の言葉を述べると、オルステッドは澄んだ瞳で綺礼を見つめ返す。 「私はキレイ、あなたを信じると決めた。だから、その為に全力を尽くす。それだけだ」 オルステッドのその瞳を見て、その言葉を聞いた綺礼は―― ――私が裏切ることによってその瞳が濁ったら、どれだけ美しいことだろうか―― 「……セイバー。霊体化し、身体を癒すことに専念してくれ。この状態で敵と遭遇した場合、令呪による治癒も考える」 沸き立った感情を良識で握りつぶし、苦虫を噛みしめたような声で呟いた。 オルステッドが霊体化したのを確認すると、歯を食いしばり、壁を殴りつけた。 【B-8/公園北の住宅街/1日目 未明】 【言峰綺礼@Fate/zero】 [状態]健康、魔力消費(微) [令呪]残り三画 [装備]黒鍵 [道具]特に無し。 [所持金]質素 [思考・状況] 基本行動方針:優勝する。 1.オルステッドが治癒するまで身を潜める。 2.黒衣の男とそのバーサーカーには近づかない。 [備考] バーサーカー(ガッツ)のパラメーターを確認済み。宝具『ドラゴンころし』『狂戦士の甲冑』を目視済み。 【セイバー(オルステッド)@LIVE A LIVE】 [状態]額裂傷、左腕二の腕の骨にヒビ、左肩脱臼、全身打撲、魔力消費(微) [装備]『魔王、山を往く(ブライオン)』 [道具]特になし。 [所持金]無し。 [思考・状況] 基本行動方針:綺礼の指示に従い、綺礼が己の中の魔王に打ち勝てるか見届ける。 1.霊体化し、治癒に専念する。 [備考] 半径300m以内に存在する『憎悪』を宝具『憎悪の名を持つ魔王(オディオ)』にて感知している。 アキトの『憎悪』を特定済み。 ◆ 公園から少し離れた草むらの中で、アキトは身を潜めていた。 左腕と左腿に刺さった黒鍵を抜くと、予めコンビニから手に入れたガーゼを当て、包帯を巻く。 ガッツは手伝ってくれない。一人で行った。 「……」 無言で地面を殴りつける。 アキトは怒りを覚えていた。 綺礼とオルステッドにではない。 自分にだ。 先の戦闘は勝てた戦いだった。 『慢心』と『出し惜しみ』。その二つで痛み分けという結果になった。 一つ、己より強いマスターが居ないと過信してたこと。拳銃と体術、そのアドバンテージがあるからと慢心していた。 二つ、道具の出し惜しみしていたこと。 拳銃はNPC時代に手に入れたCZ75B。アキトからすれば骨董品だが、使用には問題がない。しかし、替えのマガジンが無く、現在装弾されている10発しか無い。コンビニでは売ってないので、どこかで手に入れなくてはやや不安が残る。 そしてもう一つ、温存していた物がある。ズボンのポケットに手を入れて、中に入れてあったものを取り出す。 ――チューリップクリスタル。 テンカワ・アキトはA級ジャンパーである。 A級ジャンパーとは、生身でボソンジャンプが行える人間のことである。 ボソンジャンプとは一種の瞬間移動、正確には時空間移動のことで、その為には演算ユニットとチューリップクリスタルが必要である。 演算ユニットは手元になくても、『方舟』の外であっても、『どこか』に存在すればいい。そして、演算ユニットが『どこか』にあることは確認済みである。 チューリップクリスタルはボソンジャンプをするための消耗品である。 平たく言うと、テンカワ・アキトは瞬間移動をすることが出来、その為に必要なチューリップクリスタルを手にしている。 2つ。 そう、『2つ』だけなのだ。 こちらは銃弾のようにコンビニどころか、『方舟』の中をひっくり返しても存在するかどうか分からない。 令呪と同等の、それ以上の切り札となりうる存在。 だが、先の戦闘で、この切り札を切れば――ボソンジャンプしてアキトが安全な所に移動し、ガッツに戦闘を任せれば、痛み分けなどという結果ではなく、勝利をもぎ取れたはずだ。 それを『まだ序盤だから』『2つしか無いから』等と言う躊躇いと、『銃弾を避ける常人ならざるマスター』に動揺したせいで、このような結果を招いてしまったのだ。 それがもの凄く、憎い。 己が憎い。 ユリカをむざむざと拉致させた自分の非力さは、今もなんら変わってはいない。 己の中の『憎しみ』が、どす黒く、強くなっていくのを感じる。 「――」 いつの間に実体化したのか、無傷のガッツがアキトを見下ろしていた。 「大丈夫だ。今度はしくじらないさ……」 アキトは自戒を独り言のように呟きながら、拳を強く握りしめた。 【B-8/公園/1日目 未明】 【テンカワ・アキト@劇場版 機動戦艦ナデシコ-The prince of darkness-】 [状態]左腕刺し傷(治療済み)、左腿刺し傷(治療済み)、胸部打撲、疲労(小)、魔力消費(小)、強い憎しみ [令呪]残り三画 [装備]CZ75B(銃弾残り10発) [道具]チューリップクリスタル2つ [所持金]貧困 [思考・状況] 基本行動方針:優勝する。 1.次こそは勝利のために躊躇わない。 [備考] セイバー(オルステッド)のパラメーターを確認済み。宝具『魔王、山を往く(ブライオン)』を目視済み。 演算ユニットの存在を確認済み。 【バーサーカー(ガッツ)@ベルセルク】 [状態]健康 [装備]『ドラゴンころし』『狂戦士の甲冑』 [道具]義手砲。連射式ボウガン。投げナイフ。炸裂弾。 [所持金]無し。 [思考・状況] 基本行動方針:戦う。 1.戦う。 [備考] 特になし。 BACK NEXT 031 せんそうびより 投下順 033 新しい朝が来た、戦争の朝だ 031 せんそうびより 時系列順 035 働け BACK 登場キャラ NEXT 001 言峰綺礼・セイバー 言峰綺礼&セイバー(オルステッド) 067 勇者の邂逅、聖者の会合 028 テンカワ・アキト&バーサーカー テンカワ・アキト&バーサーカー(ガッツ) 050 主よ、我らを憐れみ給うな
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EX tella ◆Ee.E0P6Y2U 猫歩く。 その様はそうとしか形容できなかった。 何せ猫である。猫が歩いているのだから、当然それは猫歩くである。 特徴的なのはその瞳で、ぎょろり、と巨大な瞳が飛び出ている。表情もどこかしまりがないというか、幼稚園児が適当に目と鼻と口を描いただけとでもいような不出来さを誇っている。 いや別にこの猫が実は妖怪変化の類であるとか、生体実験の結果生み出された哀しきキメラ的生物であるとか――はたまた地下に存在する猫王国の下っ端であるとか――そういうケッタイな話ではない。 その猫が変な顔をしているのはひとえに不細工だからであり、そこに特に切々と語られるべきバックグラウンドなどは存在しない。 ただただ不出来な顔をした猫が、クリーム色の体毛を揺らしながら薄汚れた賃貸のマンションの屋上を歩いているという――本当にそれだけの話であった。 この方舟に再現された冬木市には、数多くの人間が住んでいる。 聖杯戦争のために用意された仮初の住民たちは運営側からはNPCと呼称され、一律に管理されている訳であるが、さりとて街にいるのは人だけではない。 確かに人が住み出した途端、他の生き物が排斥されいなくなるというのはままある話である。しかし――けれども力強く、あるいは狡猾に生きる生物は存在する。 人の出したゴミを荒らすカラスであったりとか、家屋に入り込むヤモリだの蜘蛛だのといったものたちであるとか、幽霊など持ち出さずとも街には人以外の生物が溢れている。 この冬木市にもそうした生物/イキモノたちはいる。NPCと同じように配置されている。 ならば当然――猫もいるというものだ。 猫がいる。猫が歩いている。猫歩く。 そこに何もミステリーは存在せず、まぁ当然そういうこともあるかな……、という平凡な帰結であり、考えるところも描写するべき点も存在しない。 「今日もよく働いたにゃー。お腹すいたー」 ……ただの猫が喋ることは、まぁありえないので、これはあくまで彼ないし彼女が喋っていたら、という仮定の話である。 「んん? やることなかったらとりあえずアチシなんだからあの会社も現金っていうか、んんームーンイズブラック」 猫が支離滅裂なことを喋りながら歩いている。 もし猫が言葉が喋ることができる――と仮定したところで、何せ猫であるから、まともに論を立てた言葉など期待できる訳でもない。 その真意について考えるだけ無駄と言うものである。 「月には困った時の猫歩く、なんて格言があるそうだ。中々いい言葉じゃあないか」 と、そこで別の猫の声が響いた。 その猫の声は――猫であるにも関わらず、ダンディズムを感じさせる怪しい声色であり、しかし彼もまたただの猫であることに揺るぎはなく、良い声をであることにバックボーンはない。 いい声をしたその黒猫は、一方の不細工な猫と待ち合わせでもしていたらしく、こうして同じマンションに居合わせることになり、 「…………」 「…………」 二人、否、二匹の猫は互いに互いを見つめあい、にらみ合い、沈黙が緊張を含んだ。 空に浮かぶ大きな大きな月の下、一瞬の静寂を経て、猫たちは口を開いた。 「黒」 と、まずはクリームの方が口する。 「白」 間髪入れず黒い方が応対する。 「神」 「星」 「キャット」 「フード」 「ミート」 「フィッシュ」 ……と、人ではまるで理解できない猫次元の会話が繰り広げられたのち、彼らは「ふっ」と不敵に笑った。 歴戦の好敵手に対して、やるな、とでもいうような、緊張と親愛の込められた笑い方であった。まぁ猫には分かる何かがあるのだろう。 「しかし今日このマンションは静かだにゃー。昨日だか妙にうるさかったのに。 アチシは明日からセレブキャットたちとの対談で忙しいから寝ときたかったんだにゃ」 それで一通り、挨拶、のようなものを終えたらしくクリームの方が世間話を振った。 このマンション、とは深山町の片隅に位置する、一人暮らしの学生が主に住まうような、家賃安めの賃貸マンションである。 どうやら猫たちはこの辺りのマンションを根城にしているらしく(家賃を払っている訳でもないのに)騒音を気にしているようであった。 が、今日は静かで満足だ――とクリームの猫が満足げに頷くと、 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」 と。 まさに逆神。狙ったかのようなタイミングで怒号がマンションに走った。 時刻は既に零時を回り、普通ならば音を立てないよう腐心する時間である。 が、声の主――マンションに住む学生であろう――は気にしていないか、はたまた気にする余裕はないか、とにかく大きな叫びを上げてしまったようだ。 しかもそれに追随するようにドッコンドッコン音がする。クリーム猫の安眠は今日も阻害されそうであった。 「ふうむ、こらえきれぬ若さ、そしてその代償という奴だにゃ。 だが若人よ。覚えておくがいい、日はまた昇る。終わらない夜はない、と」 憤慨するクリーム猫を横目に、黒猫はやはり良い声で言った。 なんだか含蓄深そうな声であったが、所詮は猫なのでやっぱり大して意味はないだろう。 それにそもそも誰も聞いていない。良い声で紡がれた声は、騒々しい学生たちの夜に届くことなく、風に吹かれて消えて行った…… act1. 水の音がする。 それはザザザ――と断続的に、扉をいくつか隔てた向こうから聞こえてくる、シャワーの音。 その向こうでは一人の少女が今まさにシャワーを浴びている。彼女は、何時もウェイバーが使っている小さなユニットバスを占拠して―― うん、とウェイバーは意味もなしに唸った。 そして次に、はぁ、とやはり意味もなしに息を吐いた。 見慣れた風景。男一人暮らしの散らかった部屋。流石にパンツやら何やらが散乱してはいないが、決して綺麗といえるものではない。 そもそも人を自室に招くなどと言うこと自体、全く想定しなかったのだ。 無論、この部屋が魔術師の工房としての側面を持っている訳ではなく、呼ぶこと自体に問題はないのかもしれないが、しかし慣れないことは慣れない。 (時計塔にいた頃から、同性はもとより異性を部屋に招くなどウェイバー・ベルベットには縁遠い行為であった) ウェイバーは落ち着かない心地を抱えたままベッドに座り込み、もう一度唸った。 聞こえてくるシャワーの音が――何も変なところはないのにもかかわらず――どうしても気になってしまう。 と、そこで「あは!」と快活な声がシャワールームから聞こえてきた。 それだけでウェイバーの当代一を誇ると自負している頭脳は反応してしまい、濡れるつややかな紅い髪、水を弾くみずみずしい肌、気持ちよさそうな顔まで、勝手に補完してしまうのだった。 いや別にあの紅いランサーが好みとかそういう訳ではなく、小さく瘠せた身体や頭の足りない言動、と寧ろ彼が嫌う類の異性である筈なのだが、しかしそれはまた別の話だ。 少女の頭がいかに軽かろうと、一人の麗しい少女が自室でシャワーを浴びているという事実そのものが、多感な青年であるところのウェイバーには苦しく―― 「ああ、もう馬鹿か僕は!」 不埒な考えを振り払うべく、声を出したが――しかし誰もそれに反応はしない。 あ、と声が漏れた。今彼は部屋に一人なのだ。 そのことに気付くと、ウェイバーはベッドに沈み込むように横になった。 同行者は今少しの間いなくなっている。故にこの部屋には自分しかいないのだった。 ――さてその同行者であるところの、岸波白野がどこに行ったかというと 買い出しである。 因縁のアサシンとの戦いを経て、ウェイバーの部屋まで戻ることができた彼らであるが、みな疲れ切っていた。 簡単に言えば、眠く、そして腹が減っている状態である。 そこでとりあえず軽く何か食べるものを用意しようと、まだしも活力があった岸波白野は近くのコンビニエンス・ストアまで買い出しに行ったのだった。 部屋に集って夜食を買い出しに行く、という何とも学生らしい行動である。 だからウェイバーはいま部屋に一人だ。 シャワー音に混じって、ふーんふんふーん、と上機嫌な鼻歌が聞こえてくる。 くそううるさいな……、と思いつつもウェイバーは耳をそばだててしまうが―― 「うぉぉぉぉぉぉぉぉ!」 ――その時、悲鳴が上がった。 獣のような野太い叫びは、薄壁一枚隔てた隣部屋から聞こえており、ついでドッコンドッコンと暴れ回る音が響く。 ――更によーく聞いてみると女性の喘ぎ声のようなものまで聞こえてしまった。 うっ、とウェイバーは息を呑む。 隣の部屋、というか今の声の主を彼は知っている。 真玉橋孝一。 この方舟で知り合った友人……とまではいかない隣人であり、常に学ランを羽織っている変人である。 そして、いつも無理やりに卑猥で下品な本を押し付けてくる(なんだかんだウェイバーも受け取ってしまうのであるが)はた迷惑な男だ。 ちら、とウェイバーは時刻を確認する。もう夜の三時を回り、しばらくすれば陽が上ろうかと言う時分だ。 何時もならば、こんな時間に騒ぐ隣人に対し壁へのパンチの一発でもお見舞いしてやるのだが、しかしウェイバーはあらぬ想像をしてしまった。 獣様な叫び声。暴れ回る音。かすかに聞こえた女性の声…… 恐らくシャワーの音を聞きすぎたせいだろう。あの性欲の強い男が、一体今この時間に何をやっているのか。 想像し、じっ、と壁を見てしまった。何時もはただ憎らしいだけの騒音が、何だかひどく恐ろしいもののように聞こえてくる。 と、後ろからはシャワー音と少女の鼻歌だ。 ああもう何でアイツらはこう――白野も自分のサーヴァントくらい見ていればいいものを―― と、そこでウェイバーは気づく。 ランサーはシャワーに入り、岸波白野は買い出しに行った。だからウェイバーは今一人。 これは――おかしい。 疲労と湯立った頭でまともな思考ができていなかったが、この状況で“あの”サーヴァントが黙っている訳が―― 「いやウェイバーたんさぁ、確かにラッキースケベとか覗く覗かないとかそういうの前の話で振ったけど、本当にそれで一話使う? オレちゃんこう見えて割とシリアスもやってるし? さっきもシリアスパート担当したから、相方が何時までもキャラ立ち薄いと不安になるぜ」 「ラブコメ路線に梶切るならそれこそ風呂場突撃とか?」「身体が勝手に――くらいやってもらわないとなぁ」 あまりにもあんまりなタイミングでの闖入に、いいっ、とウェイバーは声を漏らした。 彼こそがバーサーカー、デッドプール。 時計塔を変革する筈の魔術師、ウェイバー・ベルベットがここまで流されっぱなしなサーヴァントである。 何時もは破天荒な言動をする、しかしここでは彼は、やれやれ、と呆れたような素振りを見せており、それがまた異様に憎たらしかった。 と、そこで彼はどこか虚空を見て、誰もいない筈の空間に語り出した。 「あ、今回はザッピング方式だからオレちゃんのシリアスパートは別の視点で語られるんでこうご期待! んー? ザッピングが分からない? “スナッチ”とか“パルプ・フィクション”とか“バンテージ・ポイント”とかいっぱいあんだろ。 「俺ちゃんの映画も時系列が乱れてるから注意な」「大丈夫だデビッド・リンチみたいな訳の分からない話じゃないから」 ……相変わらず支離滅裂な言動だ。 ウェイバーは頭が抑えつつ、だがしかし今回は魔力消費がほとんどないことに安堵するのだった。 「おいおい、何時までも同じパターン繰り返しで生きていけるほど、この業界甘くないぜ。 分かってる? ウェイバーちゃん。ラッキースケベもどきで一話使えるほどもう序盤じゃないってこと。 大丈夫だ童貞は死なない、って言った奴は数シーン後には爆散してるんだぜ」 唐突に―― 唐突にそこでバーサーカーは銃を抜いた。 どこからともなく取り出した黒光りする拳銃をウェイバーの眉間へと突き付ける。 あまりにも脈絡のないウェイバーは目を見開く。は、と声が出た。そうだ。コイツは元々こういう何をしでかすか分からない奴だったんだ。 咄嗟に令呪を使おうとするが――しかし、カチャ、と突き付けられる銃口に震えて身体が動かない。 「オレちゃん、一応願いが“Fateシリーズの次の主役”じゃん? だからZEROとか事件簿とかで人気のウェイバーちゃん選んだってのに、150話かけて何もしてないとかヤバいぜ、ウェイバーたん。 ほらアレやれよアレ。計略だ! とか言いながらビーム撃つ奴。そんくらいの個性ないと、主役にはなれないよなぁ、ミスター・諸葛孔明」 何を言っているんだ、と聞き返そうになった時、玄関が開く音がした。 白野だろう。バーサーカーは首をそちらに向けながら、 「おー主役のご登場だ。いいよなぁ、登場シーンは必ず語り部ってのは。 アレ、モキュメンタリー映画のカメラみたいだよな? さながら気分は“ブレア・ウィッチ・プロジェクト”」 そんな意味不明なことを言いつつ、バーサーカーは銃を下げた。 な、なんだったんだ、と思わず声を漏らすが、しかしバーサーカーは答えない。 「お、ヒロインが増えてる。さっすがーはくのん。おい見とけよウェイバーたん。 あれが型月主人公って奴だぜ。あ、女が増えれば増えるほどでも死にやすいから注意な」 「は……?」 不審に思い、玄関の方を覗き込むとそこには白野と、そして見覚えのない少女がいた。 少女は白野と連れ添うように立ちながら、ウェイバー宅に上がろうとしている。 誰だアレ、問いかけるより早く、 「あー子ブタ帰ってきたの?」 そこでシャワー室から紅い少女――ランサーが出てきた。 湯気立つ髪を上機嫌に触りながら、さっぱりとした顔で顔を出している。 「ねぇ子ブタ――その女、誰?」 ――その様を見てウェイバーは思う。 なるほど、アレは主役だ。それも死にそうな類/ラブ・コメディの、と。 初めて己のサーヴァントの言葉が理解できた瞬間だった。 act2. 夜食。 三度の飯、というのは言うまでもなく、朝食、昼食、夕食、を指しており、それは即ち存在しない筈の四番目の食事と言える。 夕食を終え、夜間なにかしらをやっている最中にふと小腹がすいた時に取るものであるが、これは基本的に奨励されていない。 まずカロリー。気を抜いて夜食を頬張っていれば、みるみる内に“ふくよかな”身体になっていくだろう。 不規則なタイミングでの食事は生活リズムの崩壊を呼び、崩壊したリズムは内臓への直接的な負荷となる。内臓への負荷は体調ほか肌にも影響する。 歯にも悪い。寝ている間は口の中の菌が増殖しやすいため、虫歯のリスクも急速に高まる。 と、リスクを列挙すれば暇がない。 いくらそれで欲望が一時的に充たされようが、それと引き換えに身体が蒙るデメリットとは釣り合わない。 けれども――若さ故の過ちと言うべきだろうか。 学生が夜のマンションに集い、ひどく腹が減っている。少し歩けば何でも置いてあるコンビニが見える。 ほんの少し我慢すればいいのに。あるいは眠ってしまえばいいのに。 理性はそう言うだろう。それは正論で、全く反論のできない、完璧な意見だ。 だが――完璧な正論であろうとも、愚かなる人を動かすには足らない。 あるいはこういうべきだろうか。 たとえその道が間違っていると分かっていても、人は自らが抱いた“欲望/ねがい”のために歩き続けることができる生物である、と。 だから、もしかするとこれは愚かな選択なのかもしれない。 それでも自分はいまここにいる。ここにいるからこそ自分/きしなみはくのなのだ。 たとえそれが愚かであろうとも、ここまでたどり着いた軌跡は決して否定させない。 ……要するに、買い出しに来たということだった 真っ暗な街の中ほのかに青く浮かび上がる、owson、という看板が見える。 その場に向かいながら、さて何を買おうかと頭を悩ませる。同時に、辺りへの警戒も忘れなかった。 少なくともマイルームにおいての安息が約束されていた“月の聖杯戦争”での戦いと違って、この聖杯戦争にはインターバルが存在しない。 昼であろうと夜であろうと、休息中であろうと戦闘直後であろうと、この聖杯戦争では襲われる可能性がある。 そういう意味で休息を取るタイミングは非常に大事だ。食事や睡眠の際も細心の注意を払わなければならない。 何かあればすぐに令呪でランサーを呼ぶ。そのつもりで夜の街に出た。 ――そのことは、朝の襲撃で痛感した。 あの時感じたデジャビュは明日以降の課題だ。 欠損した記憶の欠片の鍵となる。それは確実だろう。 その回想が契機となって幾多ものの記憶が脳裏を流れていく。 自分の知らない、けれども“識っている”凛との邂逅、どこかで聞いた“カレン”の名を持つ監督役、そして多くの陣営を巻き込んだマンションに陣取ったキャスターとの戦い…… 多くの出会いと、多くの別れがあった。 “私の分までこの聖杯戦争を戦って、そして絶対に勝ち残りなさい!” ……たとえ全く違う歴史を生きた者であっても、どれだけ幼い日の彼女であろうとも、やはり彼女は彼女であった。 ――………… だから、自分は進み続けたい。 彼女と、彼女が信じてくれた自分のためにも。 そんな決意と共にコンビニエンス・ストアに足を踏み入れた。 明るく、空調の効いた店内に不思議な安心感を覚えつつ、あまり気張ってはいけないな、と自分に言い聞かせる。 休む時は休まなくてはならないのだ。そのためには、食べて寝ることがやはり大事だろう。 おにぎり、握り寿司、ホットスナックにカップラーメン…… さて何がいいだろう。店内には様々な夜食がある。適当に弁当を見繕ってしまえばいいだろうか。 食事の話はランサーの前ではしたくなかったのもあり、相談できていなかった。 >サンドイッチ うどんはアレだし、ボンゴレかな まっかな麻婆豆腐 うん、そうだ。 あの日、あの朝食べたもの。 思えばあの時の朝食、あそこで襲われたことがすべてのはじまりだった気がする。 たった一日前のことなのに、もはや大分昔のようにも感じられる。 そんな感慨に似た思いを経て食料品を買い込んで、コンビニを出ると…… 「なぁ、アンタ」 ――ふと、そこで。 誰かに声をかけられた。 どこかで聞いたことのある声だと思った。 しかし、それが誰なのか、どこで聞いたのかまでは全く分からない。 だからこそ、振り向いて確かめようとしたところ、目の前に鬼気迫る表情の誰かがいた。 学ランを羽織った彼ははぁはぁ、と鼻息荒く、そして問い詰めるように口を開いた。 「お前の妹はどこだ?」 ――は? 思わず、呆けた顔をしてしまう。 しかし、当の彼はなおも深刻/シリアスな表情で、 「だから――あのエッロい恰好したお前の妹はどこだって言ってるんだよ!」 そんなことを言い放った。 妹――妹とは、なんだろうか? 記憶に欠落がある身とはいえ、ここまで身に覚えのないことは初めてだった。 「……それでは駄目でしょう、マスター」 本当に意味不明です、と誰かが付け加えた。 マスター、その言葉を聞いた瞬間、身体に強い緊張が走った。 夜のコンビニの、ぼうっ、とした明かりの下、誰かが立っている。 腰まで黒く届く長い髪をした少女だった。 腰の部分で絞ったシャツにジーンズ、という現代風の恰好はしている。 けれども――その手には剣があった。 背丈ほどもあろうかという長さの大刀が、一見して華奢な腕に軽々と握られていた。 ああ――間違いない。今、駐車場に立っている彼女は剣の英霊《セイバー》だ。 ほかのすべての印象を吹き飛ばすほど、その剣は美しく、鮮烈だった。 ――そこまで認識したとき、いま自分の隣には誰もいないだということに気付いた。 凛も、ランサ―も、ラ二やウェイバーも、そして■■■■も。 すぐ近くにはもういない。なのに、ここでサーヴァントに行き遭ってしまった。 何かあれば、すぐに令呪を使うつもりだった。 しかし、ひと声あれば、かの英霊は剣をもってこちらを…… 「――聞かせてもらいましょうか。あの亡霊もどきが何だったのかを」 act3. アサシンあるいはのぞき見趣味のエロ親父とのやり取りを終えたあと、 真玉橋孝一は待っていた。 どこかからカレーの匂いが漂いだしても、夜が深まり道に人が消えても。 ずっと待っていた。 「…………」 「――――」 「…………」 「――――」 聖杯戦争からの脱落とは、即ち“死”を意味する。 それは決して覆らない。この戦争における絶対のルール。 そう知ったことで、彼らの陣営としては珍しく、少し緊張が走っていたが―― 「おせえ」 「遅いですね」 流石に日をまたいだあたりで、 その緊張の糸もほどけていた。 人間ずっと緊張することなどできない。 することもなしに数時間も待ちぼうけを喰らえば、普通は弛緩もする。 「ウェイバーの奴、一体どんな覗きスポットを見つけやがったんだ。 こんな時間まで夢中になるほど、エロエロしい場所なのかよ……!」 「――――」 馬鹿なことをのたまうマスターを尻目に、 セイバーは視線を少し下げ、缶コーヒーに口をつけた。 ちなみに待っている間、セイバーと孝一がかわるがわる近くのコンビニで食料調達をしていたため、 マンションの入り口前にはちょっと散らかってしまっている。 ――夜、何かがあったようですね。 そんな場所で、セイバーは冷静に思考を働かせていた。 アサシンとの会敵以来、ずっとこの場にいたが、 道行く人々の噂から聖杯戦争の余波を感じ取ることができた。 具体的には分からない。 もとより人の往来の少ない住宅街なうえ、この時間だ。 とはいえこの夜だって、確かに戦いは進んでいた筈なのだ。 だから、既にセイバーの中ではあのバーサーカー陣営は既に半ば脱落したものになっている。 昨日まで規則正しく帰っていた人間が、今日になって帰ってこない。 そんなもの――考えられるのは一つだけではないか。 そう思いはする。 しかし「おっせえな、なんてエロい奴なんだウェイバー……」と呟くかのマスターは、 そのような結末、予期すらしていないようにも見える。 ふと、思う。 もしかすると、彼はこの聖杯戦争で最も純粋で、かつ無垢なマスターなのではないか、と。 だからなんだということではない。 だが先のやり取り――誰も殺さずに聖杯を手に入れるという、あの言葉。 その理想が、こう、なんというか、ほんの少しだけ眩い。 生前彼女が深くかかわることになった、どこかの誰かが言いそうな響きがある。 「ぬあああああああああああ!」 と、何かの限界が来たのか孝一は突然叫びを上げた。 そして「おせええええ」と叫びを上げながら、その言葉とは一切の脈絡も関連もなく、セイバーの胸へと手を伸ばした。 さっとセイバーはその手から逃れた。 「どこ行ったんだウェイバー……ってん? なんで俺に乳を揉ませねえんだセイバー」 「……心底不思議そうな風に言わないでください」 「は? しゃーねえな、令呪をもって――」 「いっ――」 思わず変な声が出そうになった。 孝一は躊躇なく残った最後の令呪を切ろうとしたのである。 当然言わせる前にセイバーはその口をふさいだ。 「そろそろ分かってください。死んだら脱落ということは、貴方だって――あ」 今度こそセイバーは変な声を漏らした。 喘ぎ声だ。 もがもが、と口を震わせる孝一は、 口を押えながらセイバーの豊満な胸を揉んでいる。 結局、この状況に――と思うと同時に、さすがに慣れてきたのか、令呪を切られるよりマシだったか、と 冷静に考えている自分を見つけて、セイバーはどんよりした気分になった。 だが、いろいろと慣れ始めているのは彼女だけではなかった。 孝一もだったのである。 「何故だ……昂らねえ」 ぴた、と彼は胸を揉みしだく指を止めた。 「え」とセイバーは声を漏らす。このパターンは今までになかったからである。 「これはまさか」 孝一の脳裏に過るのは、かつてダイミダラーに乗り始めたばかりのころのこと。 まだ経験の浅かった孝一はただパートナーである恭子の胸をただ揉み続けた結果、一つの壁にぶち当たってしまったのである。 「あ、飽きたのか……俺はセイバーの胸に」 高級牛肉も毎日食べ続ければ飽きがくる。 たまには違うもの、あっさりしたものも挟みたくなる。 そんな初歩的なミスを、まさかここでやってしまうとは―― 「はぁ?」 孝一の衝撃と裏腹に、セイバーが苛立たし気に眉を吊り上げる。 召喚されて以来、これまで何度も揉まれ、これも魔力のためと己に言い訳をして、ようやく慣れ始めたのに――飽きた? 基本的には温厚な彼女であるが、このときばかりは声を上げそうになった。 ふざけるな――とでかかった声であるが、 ――そんな二人の時間は、ふいに訪れた“おばけ”により、遮られることになる 賃貸マンションの入り口で騒いでいた二人の横を、 一人の少女が通り過ぎていった。 奇妙な外見をした少女だった。 だらり、と長く伸びた白いローブを身に纏っている。 いやに装飾の少ないその布地は、ちょうど歴史の教科書で古代人が羽織っているようなものに似ていた。 羽織っている少女自体は別段対して特徴のない容姿であったが、なおのことその存在の不自然さが目立ってしまっている。 そう、言ってしまえば――クラスの上から三番目にかわいい娘がローマ風の恰好をして出歩いているような、おかしな状況。 彼女はマンションの奥へと消えていく。 騒ぐセイバーや孝一には目をくれないまま。 「マスター」 セイバーは思考を切り替えながら言った。 ウェイバーはこなかった――しかし、彼女は、明らかなイレギュラーだ。 代わりにやってきたあの少女を追えば聖杯戦争について何かがわかるかもしれない。 「ああ、分かっている」 孝一も同様に頷いて、 「あんなスケスケな服着た女、放っておける訳ないだろ!」 ――この際、動機はなんでもいい。何となく、そんなことだろうと思った。 セイバーと孝一は駆け出す。 賃貸マンションなど構造は単純だ。 追えばすぐに見つかるはず――そのはずだった。 しかし、 「は? 誰だ、お前」 ……少女を追った先にいたのは、全くの別人であった。 そこにいたのは、同じようにローマ風の衣装に身を包んだ、一人の男だった。 茶色混じった髪色をした彼は、どことなく先ほどの少女と似た面影を漂わせている。 顔つきが似ているわけではない。纏う雰囲気が同一の骨子をできているのだ。 ――その少年は、孝一たちのことを見て微笑んだ――かと思うと、消えた。 まるで煙のように。 まるで亡霊のように。 act4. 突然現れた古代人風の装いの少女。 そしてそれと立ち替わりに現れた、似た雰囲気の少年。 それが――岸波白野(じぶん)であるというのか。 「答えてください、貴方は――何者ですか?」 セイバーはこちらの瞳を見据えて、そう尋ねてくる。 声色こそ穏やかであったが、しかし、そこには刃のような鋭さがあった。 おばけのように消えた岸波白野――のような人物を探して彼らはこのあたりをうろついていたところ、自分を見つけたらしい。 本来ならば自分がマスターであることは看破されるはずがなかった。 にも関わらず、襲われてしまった。 当然身に覚えなどない。 ――はずだ。 妹、自分に似た雰囲気の少女など全く知らない。 NPCとしての設定としても、元となった人間としても、 そんな情報を見た覚えはなかった。 しかし――この感覚は、なんだ? ふと、頭を押さえる。 この聖杯戦争開幕の際に、欠落した記憶を求めて自分は痛みにのたうち回った。 自分がいるべきなのはここではない。 こんな役割に――堕してはいけない。 そういう強い想いが自分を突き動かしたのだ。 ――■■ァー■となった白い■女を■■うため、■■■■は■ル■メデ■を■■した 痛みと共に、そんな言葉の欠片が脳裏をよぎった。 「……答えは、ないということですか?」 こちらが煩悶している様子を見て、セイバーはどう思ったのか、静かにそう漏らした。 その手は、刀の柄にそっと寄せられている。 ――逃げ場は、なかった。 今、自分がいるのはセイバー陣営の拠点、マンションの一室だ。 いかにも男子学生、というような散らかった部屋にて、自分は詰問を受けている。 マスターである学生は部屋の隅で何やら悩むように「飽きたのか、また俺はあの過ちを……」などと漏らしている。 この部屋に来る際に、彼の名は思い出した。 真玉橋孝一――月海原学園のちょっとした問題児で、いつも一成が頭を悩ませていた生徒のはずだ。 校則違反の制服や女生徒へのセクハラなどでよく問題にされているが、別段札付きのワル……などという訳でもない。 そんな彼がマスターだったこと。 そして――彼の部屋が、ウェイバーの拠点の隣にあったこと。 この部屋に連れられてわかったことはそれだった。 灯台下暗し、という奴だろうか。 この薄壁一枚先にはランサーやバーサーカーがいるはずだ。 なんとか彼らに助けを求めることができれば、窮地を脱することができるかもしれない。 「――まぁ、いいでしょう。 もしかするとあれはただのシステムエラーかサイバーゴーストの類だったのかもしれません」 思考を働かせていると、セイバーは質問を変えた。 「そのうえで問います。貴方はこの聖杯戦争を、どう戦いますか?」 と。 どう戦うのか。 刃のような鋭い口調で紡がれたその問いかけに、思わず息を呑んだ。 それはこちらの思想《スタンス》を探る声だ。 彼らが岸波白野に気付いたことは“おばけ”という奇妙な現象のせいだった。 しかし――何にせよ自分たちは出会ってしまったのだ。 聖杯戦争で、マスターとマスターとして。 ならば、当然に相対しなくてはならない。 本当ならば一刀に斬り伏せられてもおかしくはなかった。 しかし、セイバーらには自分に聞きたいことがあったために生かされていた。 それに答えられない、となると話はまた別だ。 だから、口を開いた。 >自分が、自分であるために 聖杯を手に入れるために 生き残るために この方舟から脱出するために 意を決して、自らの願いをセイバーに伝えると、 彼女は眉を吊り上げ「自分?」と彼女は漏らした。 ……そうだ。 自分が求めたのは、忘れてしまった■■■■の記憶。 すべてをリセットされても、それでもこの身体に宿った魂が、感情が、ささやくのだ。 このままではいられない、と。 「――つまり、貴方はある種の記憶喪失になっている、という訳ですね」 セイバーは何か含みのある面持ちでそうまとめると、 「それで、貴方はそのために他のマスターを倒す――殺す、と」 彼女はもう一歩踏み込んで、そう尋ねてきた ◇ 「たとえ弱き者であろうとも、 たとえ戦意なきものであろうとも、 貴方は戦う、とそう言っているのですか?」 セイバーは静かに問いかける。 それに向かい合い――自分は頷いた。 「……そうですか」 無感動にそう伝えると、彼女はその剣の柄に手をかけた。 カチャ、と金属がこすれる音が部屋に響いた。 当然だ。今の発言は、いわば敵対するといっているようなものなのだから。 >でも、ただ戦うだけじゃ駄目だ それでもまた、言葉を重ねた。 戦う――自分の願いのために闘うつもりはある。 けれど、それだけですべて終わるとは、もはや思っていなかった。 かつて月の聖杯戦争の最期にトワイスが待ち構えていたように、 きっとこの聖杯戦争にも――何かが隠されている。 「貴方は、ほかの聖杯戦争を知っているのですか?」 セイバーが驚いたように言った。 そう――自分は知っている。聖杯戦争のことを。 表側の闘争も、裏側の葛藤も、その先の■■も。 きっと自分の魂には刻まれていて、ここまで来た。 だから立ち止まるわけにはいかない。 闘うのは厭だと放棄する訳にはいかない。真実から目を背けて闇雲に走る訳にもいかない。 本来あり得ない筈のムーンセルの状況、この方舟の正体、そして自分の“おばけ”も、きっと何かしら意味があるはずだから。 「――なるほど」 その意志を伝えると、セイバーは一人そうつぶやいた。 その言葉に込められた感情の色は分からない。 ぐっ、とその拳を握りしめる。次の瞬間に斬られてもおかしくない。そのつもりだったが―― 「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」 次の瞬間、叫びを上げたのはセイバーでも自分でもなかった。 学ランのマスター、真玉橋孝一である。 部屋の隅で何やら難しい顔をしていた彼が、突如として野獣のような雄たけびを上げたのである。 突然の豹変に、思考が追い付かない。 それはなんとセイバーも同じなようで、自らのマスターの奇行に目を丸くしていた。 彼はセイバーに詰め寄ると、迫真の表情で、 「セイバー、頼む! 協力してくれ」 「はい?」 「俺がただ単に胸を揉むだけじゃ、もうダメなんだよ。 お前が! 俺に胸を揉ませてくれ!」 「はぁ?」 それまで泰然としていたセイバーの口調が、突然乱暴なそれへと変わった。 傍から見ていると、何一つ理解できないやり取りだったが、孝一はいたってまじめなようで、 「頼む……!」と切に懇願している。 「力を貸してくれ! 俺一人で掴めるおっぱいなんてタカが知れてる。 だから――お前の協力が必要なんだよ」 「って、何触って――マスター!」 「良いから良いから、ちょっとお前のおっぱいを貸してみろ。 やっぱ、恭子のおっぱいとはまた違う味がするぜ」 「――今、誰かと比べましたね。別の誰かと!」 「おお――コイツはエロい! これなら――どのおっぱいも犠牲にせずに聖杯を掴めるぜ!」 ……突然のやり取りに取り残されてしまう。 どうやらこの陣営は、どちらかというと月の裏側にいそうな人物のようだった。 ――しかし、何か重要な話をいま聞いた気がする。 act.5 「ねぇ子ブタ――その女、誰?」 ウェイバーの部屋に帰ってくると、ちょうど風呂上がりのランサーと行き遭った。 彼女は眉を吊り上げながら、隣に立つ女性を不審そうに見ている。 「サーヴァント、セイバー」 乱れた衣服を直したセイバーは、再度毅然としたたたずまいでそう答えた。 するとランサーと、その向こうにいるウェイバーらに緊張が走る。バーサーカーの方はよくわからないが。 ……しかし、今の態度を見ていると、先ほどの孝一にもてあそばれていた頃のアレは黙っていた方がいい気がする。 「と、俺だ! ウェイバー」 その隣から顔を出したのは、孝一だ。 彼はウェイバーの返事も聞かずにどかどかと上がり込んでいく。 「は? なんでオマエまで――」とウェイバーが声を上げようとするが、 「おお、久々の登場じゃーん。どうだった二年間も放置されて。 大丈夫大丈夫。ハリウッドじゃよくあることだから」 バーサーカーの相も変わらず意味不明な言葉でかき消されてしまった。 ……このセイバー陣営の目的は“聖杯戦争の打破”だった。 だから、こちらがマスターだと気づいても、すぐには襲い掛かってこなかったのだ。 そう気づいたことで、自分たちが“協力”できる間柄であることが分かった。 最終的な目標はどうなるかわからない。 しかし、とにかく今は――聖杯戦争の真実をさぐる、という意味ではここに集った陣営は協力できる。 そう気づいたことで、いまここに三人のマスターが終結したのだった。 孝一がどこまで考えていたのかはわからない。 けれど――結局彼は、おっぱいを揉むことで、待ち望んでいたウェイバーとの再会と、新たな協力者を見つけるに至ったのだった。 ◇ ――そして、夜明けが近づいてくる。 今日、この街ではマンション倒壊や街の暴動、学園の混乱など、多くの事柄があった。 しかし、その裏で別の噂が流れていた。 古代の衣装に身を包んだ少年/少女の幽霊。 そして同時に、実は多くの人間が同じ夢を見ているという噂も広がりつつあった。 きまって、それは“白い巨人の夢”なのだという。 【C-5/賃貸マンション・ウェイバーの自室/未明】 【真玉橋孝一@健全ロボ ダイミダラー】 [状態]瘤と痣、魔力消費(小) [令呪]残り1画 [装備]学生服、コードキャスト[Hi-Ero Particle Full Burst] [道具]ゴフェルの杭 [所持金]通学に困らない程度(仕送りによる生計) [思考・状況] 基本行動方針:いいぜ……願いのために参加者が死ぬってんなら、まずはそのふざけた爆乳を揉みしだく! 0.他のマスターを殺さずに聖杯を手に入れる方法を探す。 1.ウェイバーと岸波白野に話を聞く 2.ペンギン帝王のような人物(世界の運命を変えられる人物)を探す。 3.好戦性の高い人物と出会った場合、戦いはやむを得ない。全力で戦う。 π.救われぬ乳に救いの手を―――! 4.アサシン(カッツェ)の性別を明らかにさせる。 [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。正純がマスターだとは気づいていません。 ※アサシン(カッツェ)、アサシン(ゴルゴ13)のステータスを把握しました。 ※明日は学校をサボる気です。 ※学校には参加者が居ないものと考えています。 ※アサシン(ゴルゴ13)がNPCであるという誤解はセイバーが解きました 【セイバー(神裂火織)@とある魔術の禁書目録】 [状態]健康、魔力消費(小) [装備]なし [道具]なし [思考・状況] 基本行動方針:救われぬ者に救いの手を。『すべての人の幸福』のために聖杯を獲る。 0.他のマスターを殺さずに聖杯を手に入れる方法を探す。 1.マスター(考一)の指示に従い行動する。 2.バーサーカー(デッドプール)に関してはあまり信用しない。 3.アサシン(カッツェ)を止めるべく正体を模索する。 4.聖杯戦争に意図せず参加した者に協力を求めたい。 [備考] ※バーサーカー(デッドプール)とそのマスター・ウェイバーを把握しました。正純がマスターだとは気づいていません。 ※真玉橋孝一に対して少しだけ好意的になりました。乳を揉むくらいなら必要に迫られればさせてくれます。 ※アサシン(ゴルゴ13)、B-4戦闘跡地を確認しました。 ※アサシン(カッツェ)の話したれんげたちの情報はあまり信用していません。 ※アサシン(カッツェ)は『男でも女でもないもの』が正体ではないかと考察しています。 同時に正体を看破される事はアサシン(カッツェ)にとって致命的だと推測しています。 ※今回の聖杯戦争でなんらかの記憶障害が生じている参加者が存在する可能性に気づきました。 [共通備考] ※今回の聖杯戦争の『サーヴァントの消滅=マスターの死亡』というシステムに大きな反感を抱いています。 そのため、方針としては『サーヴァントの消滅とマスターの死亡を切り離す』、『方舟のシステムを覆す』、『対方舟』です。 ※共にマスター不殺を誓いました。余程の悪人や願いの内容が極悪でない限り、彼らを殺す道を選びません。 ※孝一自身やペンギン帝王がやったように世界同士をつなげば世界間転移によって聖杯戦争から参加者を逃がすことが可能だと考えています。 ですが、Hi-Ero粒子量や技術面での問題から実現はほぼ不可能であり、可能であっても自身の世界には帰れない可能性が高いということも考察済みです。 岸波白野@Fate/EXTRA CCC】 [状態]:ダメージ(微小/軽い打ち身、左手に噛み傷、火傷)、疲労(中)、魔力消費(大) [令呪]:残り三画 [装備]:アゾット剣、魔術刻印、破戒の警策、アトラスの悪魔 [道具]:携帯端末機、各種礼装 [所持金] 普通の学生程度 [思考・状況] 基本行動方針1:「 」(CCC本編での自分のサーヴァント)の記憶を取り戻したい。 基本行動方針2:遠坂凛との約束を果たすため、聖杯戦争に勝ち残る。 0.凛………………ありがとう。 1.今はウェイバーの自宅で休息する。 2.今日一日は休息と情報収集に当て、戦闘はなるべく避ける。 3.ウェイバー陣営と孝一陣営と一時的に協力。 4.『NPCを操るアサシン』を探すかどうか……? 5.狙撃とライダー(鏡子)、『NPCを操るアサシン』を警戒。 6.アサシン(ニンジャスレイヤー)はまだ生きていて、そしてまた戦うことになりそうな気がする。 7.聖杯戦争を見極める。 8.自分は、あのアーチャーを知っている───? [備考] ※“月の聖杯戦争”で入手した礼装を、データとして所有しています。 ただし、礼装は同時に二つまでしか装備できず、また強力なコードキャストは発動に時間を要します。 しかし、一部の礼装(想念礼装他)はデータが破損しており、使用できません(データが修復される可能性はあります)。 礼装一覧>h ttp //www49.atwiki.jp/fateextraccc/pages/17.html ※遠坂凛の魂を取り込み、魔術刻印を継承しました。 それにより、コードキャスト《call_gandor(32); 》が使用可能になりました。 《call_gandor(32); 》は一工程(シングルアクション)=(8); と同程度の速度で発動可能です。 ※遠坂凛の記憶の一部と同調しました。遠坂凛の魂を取り込んだことで、さらに深く同調する可能性があります。 ※エリザベートとある程度まで、遠坂凛と最後までいたしました。その事に罪悪感に似た感情を懐いています。 ※ルーラー(ジャンヌ)、バーサーカー(デッドプール)、アサシン(ニンジャスレイヤー)のパラメーターを確認済み。 ※アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による攻撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。 ※アーチャー(エミヤ)が行った「剣を矢として放つ攻撃」、およびランサーから聞いたアーチャーの特徴に、どこか既視感を感じています。 しかしこれにより「 」がアーチャー(無銘)だと決まったわけではありません。 ※『NPCを扇動し、暴徒化させる能力を持ったアサシン』(ベルク・カッツェ)についての情報を聞きました。 【ランサー(エリザベート・バートリー)@Fate/EXTRA CCC】 [状態]:ダメージ(大)、魔力消費(大)、疲労(中) [装備]:監獄城チェイテ [道具]:なし [思考・状況] 基本行動方針:岸波白野に協力し、少しでも贖罪を。 1.とりあえず、今はウェイバーの自宅で休む。 2.岸波白野とともに休息をとる。 3.アサシン(ニンジャスレイヤー/ナラク・ニンジャ)は許さない。 [備考] ※アーチャー(エミヤ)の遠距離狙撃による襲撃を受けましたが、姿は確認できませんでした。 ※カフェテラスのサンドイッチを食したことにより、インスピレーションが湧きました。彼女の手料理に何か変化がある……かもしれません。 【ウェイバー・ベルベット@Fate/zero】 [状態]:魔力消費(極大)、疲労(小)、心労(大)、自分でも理解できない感情 [令呪]:残り二画 [装備]:デッドプール手作りバット [道具]:仕事道具 [所持金]:通勤に困らない程度 [思考・状況] 基本行動方針:現状把握を優先したい 1.は!? 2.バーサーカーの対応を最優先でどうにかするが、これ以上令呪を使用するのは……。 3.バーサーカーはやっぱり理解できない。 4.岸波白野に負けた気がする。 [備考] ※勤務先の英会話教室は月海原学園の近くにあります。 ※シャア・アズナブルの名前はTVか新聞のどちらかで知っていたようです。 ※バーサーカー(デッドプール)の情報により、シャアがマスターだと聞かされましたが半信半疑です。 ※一日目の授業を欠勤しました。他のNPCが代わりに授業を行いました。 ※ランサー(エリザベート)、アサシン(ニンジャスレイヤー)の能力の一部(パラメータ、一部のスキル)について把握しています。 ※アサシン(ベルク・カッツェ)の外見と能力をニンジャスレイヤーから聞きました。 ※バーサーカーから『モンスターを倒せば魔力が回復する』と聞きましたが半信半疑です。 ※放送を聞き逃しました。 【バーサーカー(デッドプール)@X-MEN】 [状態]:魔力消費(大) [装備]:日本刀×2、銃火器数点、ライフゲージとスパコンゲージ、その他いろいろ [道具]:??? [思考・状況] 基本行動方針:一応優勝狙いなんだけどウェイバーたんがなぁー。 0.たやん真正面から倒すとか、はくのんやるなぁ。俺ちゃんも負けてらんねー! 1.一通り暴れられてとりあえず満足。次もっと派手に暴れるために、今は一応回復に努めるつもり。 2.アサシン(甲賀弦之介)のことは、スキル的に何となく秘密にしておく。 3.あれ? そういやなんか忘れてる気がするけどなんだっけ? [備考] ※真玉橋孝一組、シャア・アズナブル組、野原しんのすけ組を把握しました。 ※『機動戦士ガンダム』のファンらしいですが、真相は不明です。嘘の可能性も。 ※作中特定の人物を示唆するような発言をしましたが実際に知っているかどうかは不明です。 ※放送を聞き逃しました。 ※情報末梢スキルにより、アサシン(甲賀弦之介)に関する情報が消失したことになりました。 これにより、バーサーカーはアサシンに関する記憶を覚えていません………たぶん。 BACK NEXT 157a 聖‐judgement‐罰 投下順 158a いいから、みつげ 157a 聖‐judgement‐罰 時系列順 160 蒼銀のフラグメンツ BACK 登場キャラ:追跡表 NEXT 144 明日への飛翔 岸波白野&ランサー(エリザベート・バートリー) 163 ウェイバー・ベルベットの憂鬱(何度目) ウェイバー・ベルベット&バーサーカー(デッドプール) 126a 俺とお前はよく似てる/少年よ我に帰れ 真玉橋孝一&セイバー(神裂火織) ▲上へ