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子どもの権利委員会・一般的意見14号:自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(第3条第1項) 前編 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 第62会期(2013年1月14日~2月1日) CRC/C/GC/14(2013年5月29日/原文英語〔PDF〕) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-9)A.子どもの最善の利益:権利、原則および手続規則(パラ1-7) B.構成(パラ8-9) II.目的(パラ10-12) III.締約国の義務の性質および範囲(パラ13-16) IV.法的分析および条約の一般原則との関係(パラ17-45)A.第3条第1項の文理分析(パラ17-40)1.「子どもにかかわるすべての活動において」(パラ17-24) 2.「公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によって」(パラ25-31) 3.「子どもの最善の利益」(パラ23-35) 4.「第一次的に考慮される」(36-40) B.子どもの最善の利益と条約の他の一般原則との関係(パラ41-45)1.子どもの最善の利益と差別の禁止に対する権利(第2条)(パラ41) 2.子どもの最善の利益と生命、生存および発達に対する権利(第6条)(パラ42) 3.子どもの最善の利益と意見を聴かれる権利(第12条)(パラ43-45) V.実施:子どもの最善の利益の評価および判定(パラ46-47) → 以下、子どもの最善の利益 後編A.最善の利益の評価および判定(パラ48-84)1.子どもの最善の利益を評価する際に考慮されるべき要素(パラ52-79) 2.最善の利益の評価における諸要素の比較衡量(パラ80-84) B.子どもの最善の利益の実施を保障するための手続的保護措置(パラ85-99) VI.普及(パラ100-101) 「子どもにかかわるすべての活動において、その活動が公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によってなされたかどうかにかかわらず、子どもの最善の利益が第一次的に考慮される。」 子どもの権利条約(第3条第1項) I.はじめに A.子どもの最善の利益:権利、原則および手続規則 1.子どもの権利条約第3条第1項は、子どもに対し、公的領域および私的領域の双方における自己に関わるすべての行動または決定において、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される権利を与えている。さらに、同規定は条約の基本的価値観のひとつを表明するものでもある。子どもの権利委員会(委員会)は、第3条第1項を、子どものすべての権利を解釈しかつ実施する際の、条約の4つの一般原則のひとつに位置づける [1] とともに、特定の文脈にふさわしい評価を必要とする動的な概念としてこれを適用している。 [1] 「子どもの権利条約の実施に関する一般的措置」に関する委員会の一般的意見5号(2003年)、パラ12、および「意見を聴かれる子どもの権利」に関する一般的意見12号(2009年)、パラ2。 2.「子どもの最善の利益」の概念は新しいものではない。それどころか、この概念は条約以前から存在するものであり、1959年の子どもの権利宣言(第2項)、女性に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約(第5条(b)および第16条第1項(d))、ならびに、諸地域文書ならびに多くの国内法および国際法にすでに掲げられていた。 3.条約は、他の条文でも子どもの最善の利益に明示的に言及している。第9条(親からの分離)、第10条(家族再統合)、第18条(親の責任)、第20条(家庭環境の剥奪および代替的養護)、第21条(養子縁組)、第37条(c)(勾留中における成人からの分離)、第40条第2項(b)(iii)(法律に抵触した子どもが関与する刑事上の問題についての法廷審理に親が立ち会うことを含む手続的保障)である。子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の選択議定書(前文および第8条)ならびに通報手続に関する条約の選択議定書(前文ならびに第2条・第3条)でも、子どもの最善の利益に言及されている。 4.子どもの最善の利益の概念は、条約で認められているすべての権利の全面的かつ効果的な享受および子どものホリスティックな発達 [2] の双方を確保することを目的としたものである。委員会はすでに、「子どもの最善の利益に関するおとなの判断により、条約に基づく子どものすべての権利を尊重する義務が無効化されることはありえない」と指摘した [3]。委員会は、条約上の権利に優劣は存在しないことを想起するものである。条約に定められたすべての権利は「子どもの最善の利益」にのっとったものであり、いかなる権利も、子どもの最善の利益を消極的に解することによって損なうことはできない。 [2] 委員会は、締約国が、「子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含する」「ホリスティックな概念」として発達を解釈するよう期待している(一般的意見5号、パラ12)。 [3] 「あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利」に関する一般的意見13号(2011年)、パラ61。 5.子どもの最善の利益の概念を全面的に適用するためには、子どもの身体的、心理的、道徳的および霊的不可侵性を確保し、かつその人間としての尊厳を促進する目的で、すべての主体の関与を得ながら、権利基盤アプローチを発展させていくことが必要である。 6.委員会は、子どもの最善の利益が三層の概念であることを強調する。 (a) 実体的権利:争点となっている問題について決定を行なうためにさまざまな利益が考慮される際、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利であり、かつ、ひとりの子ども、特定のもしくは不特定の子どもの集団または子どもたち一般に関わる決定が行なわれるときは常にこの権利が実施されるという保障である。第3条第1項は、国家にとっての本質的義務を創設したものであり、直接適用(自動執行)が可能であり、かつ裁判所で援用できる。 (b) 基本的な法的解釈原理:ある法律上の規定に複数の解釈の余地がある場合、子どもの最善の利益にもっとも効果的にかなう解釈が選択されるべきである。条約およびその選択議定書に掲げられた権利が解釈の枠組みとなる。 (c) 手続規則:ひとりの子ども、特定の子どもの集団または子どもたち一般に関わる決定が行なわれるときは常に、意思決定プロセスに、当該決定が当事者である子ども(たち)に及ぼす可能性のある(肯定的または否定的な)影響についての評価が含まれなければならない。子どもの最善の利益を評価・判定するためには手続上の保障が必要である。さらに、ある決定を正当とする理由の説明において、この権利が明示的に考慮に入れられたことが示されなければならない。これとの関連で、締約国は、幅広い政策問題に関する決定であるか個別事案における決定であるかに関わらず、決定においてこの権利がどのように尊重されたか――すなわち、何が子どもの最善の利益にのっとった対応であると考えられたか、それはどのような基準に基づくものであるか、および、子どもの利益が他の考慮事項とどのように比較衡量されたか――を説明することが求められる。 7.この一般的意見において、「子どもの最善の利益」という表現は上述の3つの側面を網羅するものとする。 B.構成 8.この一般的意見が対象とする範囲は条約第3条第1項に限定されており、子どものウェルビーイングに関わる第3条第2項、ならびに、子どものための施設、サービスおよび便益が定められた基準を遵守すること、および、当該基準が遵守されるようにするための機構が整備されることを確保する締約国の義務に関する第3条第3項については対象としていない。 9.委員会は、この一般的意見の目的を述べ(第II章)、締約国の義務の性質および範囲を明らかにする(第III章)。また、条約の他の一般原則との関係を示しながら、第3条第1項の法的分析も提示する(第IV章)。第V章では、子どもの最善の利益の原則の実際上の実施についてもっぱら取り上げ、第VI章では一般的意見の普及に関する指針を提示する。 II.目的 10.この一般的意見は、条約の締約国が子どもの最善の利益を適用しかつ尊重することを確保しようとするものである。この一般的意見は、とくに個人としての子どもに関わる司法上および行政上の決定その他の行動における、また子どもたち一般または特定の手段としての子どもたちに関わる法律、政策、戦略、プログラム、計画、予算、立法上および予算上の発議ならびに指針――すなわちあらゆる実施措置――の採択のあらゆる段階における、正当な考慮の要件を明確にする。委員会は、この一般的意見が、子どもに関係するすべての者(親および養育者を含む)が行なう決定で指針とされることを期待するものである。 11.子どもの最善の利益は動的な概念であり、常に変化しつつあるさまざまな問題を包含するものである。この一般的意見は、子どもの最善の利益を評価・判定するための枠組みを提示するものであり、特定の時点における特定の状況下で何が子どもにとって最善かを明らかにしようと試みるものではない。 12.この一般的意見の主な目的は、自己の最善の利益を評価され、かつこれを第一義的な考慮事項として、または場合によっては最高の考慮事項として(後掲パラ38参照)扱われる子どもの権利についての理解およびその適用を強化するところにある。この一般的意見の全般的目的は、権利の保有者としての子どもの全面的尊重につながる、真の態度の変革を促進することである。より具体的には、これは以下のことに関連する。 (a) 政府がとるすべての実施措置の立案。 (b) ひとりのまたは複数の特定の子どもについて、司法機関もしくは行政機関または公共団体がその代表者を通じて行なう個別の決定。 (c) 子どもに関わるまたは子どもに影響を与えるサービスを提供する市民社会団体および民間セクター(営利組織および非営利組織を含む)が行なう決定。 (d) 子どもとともにおよび子どものために活動する者(親および養育者を含む)がとる行動についての指針。 III.締約国の義務の性質および範囲 13.各締約国は、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利を尊重しかつ実施しなければならず、またこの権利を全面的実施するためにあらゆる必要な、慎重なかつ具体的な措置をとる義務を負う。 14.第3条第1項は、締約国に対して3つの異なる態様の義務を課す枠組みを定めたものである。 (a) 公的機関がとるすべての行動、とくに子どもに直接間接に影響を与えるあらゆる実施措置、行政上および司法上の手続において、子どもの最善の利益が適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保する義務。 (b) 子どもに関わるあらゆる司法上および行政上の決定ならびに政策および立法において、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されたことが実証されることを確保する義務。これには、最善の利益がどのように検討・評価され、かつ決定においてどの程度重視されたかを説明することも含まれる。 (c) 民間セクター(サービス提供部門を含む)または子どもに関わるもしくは子どもに影響を与える決定を行なう他のいずれかの私的機関による決定または行動において、子どもの利益が評価され、かつ第一次的に考慮されることを確保する義務。 15.規定の遵守を確保するため、締約国は、条約第4条、第42条および第44条第6項にしたがって多くの実施措置をとり、かつ、あらゆる行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するべきである。このような措置には以下のものが含まれる。 (a) 国内法その他の法源を再検討し、かつ必要なときは改正することによって、第3条第1項を編入し、かつ、すべての国内法令、州または準州の立法、サービスを提供するまたは子どもに影響を与える民間機関または公的機関の活動を規制する規則、ならびに、あらゆるレベルにおける司法上および行政上の手続において、子どもの最善の利益を考慮する要件が、実体的権利としても手続規則としても反映されかつ実施することを確保すること。 (b) 国、広域行政圏および地方のレベルにおける政策の調整および実施において子どもの最善の利益を擁護すること。 (c) 自己に関連しまたは影響を与えるすべての実施措置、行政上および司法上の手続において、自己の最善の利益を適切に統合され、かつ一貫して適用される子どもの権利を全面的に実現するため、苦情申立て、救済または是正のための機構および手続を設置すること。 (d) 子どもの権利の実施を目的としたプログラムおよび措置のための国内資源の配分、ならびに、国際援助または開発援助を受けている活動において、子どもの最善の利益を擁護すること。 (e) データ収集を確立し、モニタリングしかつ評価する際に、子どもの最善の利益が明示的に説明されることを確保するとともに、必要なときは子どもの権利の問題に関する調査研究を支援すること。 (f) 子どもに直接間接に影響を与える決定を行なうすべての者(子どものためにおよび子どもとともに活動する専門家その他の者を含む)に対し、第3条第1項およびその実際の適用に関する情報および研修の機会を提供すること。 (g) 第3条第1項で保護されている権利の適用範囲が理解されるよう、子どもに対しては子どもが理解できる言葉で、ならびに子どもの家族および養育者に対して適切な情報を提供するとともに、子どもが自己の視点を表明し、かつ、子どもの意見が正当に重視されることを確保するために必要な条件を整備すること。 (h) 子どもが権利の保有者として認識されるようにするため、マスメディアおよびソーシャルネットワークならびに子どもたちの関与を得ながら行なう広報プログラムを通じ、自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利の全面的実施を阻害するすべての否定的な態度および物の見方と闘うこと。 16.子どもの最善の利益を全面的に実施する際には、以下の要素が念頭に置かれるべきである。 (a) 子どもの権利の普遍性、不可分性、相互依存性および相互関連性。 (b) 子どもは権利の保有者であるという認識。 (c) 条約の世界的な性質および対象範囲。 (d) 条約上のすべての権利を尊重し、保護しかつ充足する締約国の義務。 (e) 経時的な子どもの発達に関わる行動の短期的、中期的および長期的影響。 IV.法的分析および条約の一般原則との関係 A.第3条第1項の文理分析 1.「子どもにかかわるすべての活動において」(In all actions concerning children) (a) 「すべての活動において」(in all actions) 17.第3条第1項は、子どもに関わるすべての決定および活動においてこの権利が保障されることを確保しようとするものである。すなわち、子ども(たち)に関連するすべての活動において、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されなければならない。「活動」という文言は、決定のみならず、すべての行ない、行為、提案、サービス、手続その他の措置を含む。 18.行動をとらないこと、すなわち不作為もまた「活動」である(たとえば、社会福祉機関が子どもをネグレクトまたは虐待から保護するための措置をとらなかった場合)。 (b) 「にかかわる」(concerning) 19.この法的義務は、子どもに直接間接に影響を与えるすべての決定および活動に適用される。したがって、「にかかわる」とは、第一に、ひとりの子ども、集団としての子どもたちまたは子どもたち一般に直接関わる措置および決定をいい、第二に、たとえ子ども(たち)が措置の直接の対象ではない場合でも、子ども個人、集団としての子どもたちまたは子どもたち一般に影響を及ぼすその他の措置をいう。委員会の一般的意見7号で述べたように、このような活動には、子どもを直接対象とするもの(たとえば保健、ケアまたは教育に関わるもの)のみならず、子どもたちおよび他の住民集団を対象とする活動(たとえば環境、住宅または交通機関に関わるもの)も含まれる。したがって、「にかかわる」という文言は非常に広義に理解されなければならない。 20.実際のところ、国が行なうすべての活動は何らかの形で子どもたちに影響を与えるものである。だからといって、国が行なうすべての活動に、子どもの最善の利益を評価・判定する完全かつ公式なプロセスが組みこまれる必要があるわけではない。しかし、ある決定が子ども(たち)に重要な影響を及ぼす場合には、子どもの最善の利益を考慮するために保護の水準を高め、かつ詳細な手続を設けるのが適当である。 したがって、子ども(たち)を直接の対象としない措置との関連では、「にかかわる」という文言の意義は、当該活動が子ども(たち)に与える影響を評価する目的で、個別事案の事情に照らして明らかにされなければならない。 (c) 「子ども」(children) 21.「子ども」とは、条約第1条および第2条にしたがい、いかなる種類の差別もなく、締約国の管轄内にある18歳未満のすべての者をいう。 22.第3条第1項は、個人としての子どもに適用され、締約国に対し、個別の決定において子どもの最善の利益を評価し、かつ第一次的に考慮する義務を課すものである。 23.ただし、「子ども」(children)という文言は、自己の最善の利益を正当に考慮される権利が、個人としての子どものみならず、子どもたち一般または集団としての子どもたちにも適用されることを含意している。したがって、国は、子どもたちに関わるすべての活動において、集団としての子どもたちまたは子どもたち一般の最善の利益を評価し、かつ第一次的に考慮する義務を有する。このことは、すべての実施措置についてとりわけ明らかである。委員会は、子どもの最善の利益は集団的権利としても個人的権利としてもとらえられていること、および、この権利を集団としての先住民族の子どもに適用する際にはこの権利が集団的文化権とどのように関連しているかについて検討する必要があることを強調する [4]。 「先住民族の子どもとその条約上の権利」に関する一般的意見11号(2009年)、パラ30。 24.だからといって、子ども個人に関わる決定において、その利益が子どもたち一般の利益と同一であると理解されなければならないというわけではない。むしろ、第3条第1項は、ある子どもの最善の利益は個別に評価されなければならないことを含意している。個人および集団としての子ども(たち)の最善の利益を明らかにするための手続については、後掲第V章で説明している。 2.「公的もしくは私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関または立法機関によって」(By public or private social welfare institutions, courts of law, administrative authorities or legislative bodies) 25.子どもの最善の利益を正当に考慮する国の義務は、子どもが関係するまたは子どもに関わるすべての公的および私的な社会福祉機関、裁判所、行政機関ならびに立法機関を包含する包括的な義務である。第3条第1項では親については明示的に言及されていないものの、子どもの最善の利益は親の「基本的関心となる」(第18条第1項)。 (a) 「公的もしくは私的な社会福祉機関」(public or private social welfare institutions) 26.この文言は、狭義に解釈され、または厳密な意味での社会機関に限定して解されるべきではなく、その活動および決定が子どもおよびその権利の実現に影響を及ぼすすべての機関を意味するものとして理解されるべきである。このような機関には、経済的、社会的および文化的権利に関するもの(たとえばケア、保健、環境、教育、ビジネス、余暇・遊び等)だけではなく、市民的権利および自由に対応する機関(たとえば出生登録、あらゆる場面における暴力からの保護等)も含まれる。私的な社会福祉機関には、営利組織であるか非営利組織であるかに関わらず、子どもによる権利の享受にとって重要であるサービスの提供において役割を果たしており、かつ政府のサービス機関に代わって、または政府のサービス機関と並存する選択肢のひとつとして活動している民間セクター組織も含まれる。 (b) 「裁判所」(courts of law) 27.委員会は、「裁判所」とは、すべての場面におけるすべての司法手続――職業裁判官によるものか素人裁判官によるものかは問わない――および子どもに関わるすべての関連の手続をいうものであって、そこに限定はないことを強調する。これには、調停、仲裁および斡旋の手続も含まれる。 28.刑事事件においては、最善の利益の原則は、法律に抵触した(すなわち、法律を犯したとして申し立てられ、罪を問われ、または認定された)子どもまたは法律と(被害者または証人として)関わりを持った子ども、および、法律に抵触した親の状況から影響を受けている子どもに適用される。委員会は、子どもの最善の利益を保護するとは、罪を犯した子どもに対応する際、刑事司法の伝統的目的(禁圧または応報等)に代えて立ち直りおよび修復的司法という目的が優先されなければならないということである旨、強調する [5]。 [5] 「少年司法における子どもの権利」に関する一般的意見10号(2007年)、パラ10。 29.民事事件においては、父子関係の確定、子どもの虐待またはネグレクト、家族再統合、施設入所等に関する事件で、子どもが直接または代理人を通じて自己の利益を擁護しようとする場合がある。子どもは、たとえば、養子縁組または離婚に関する手続、子どもの人生および発達に重要な影響を及ぼす監護権、居所、面会交流等の問題に関する決定、および、子どもの虐待またはネグレクトに関する手続において、裁判による影響を受ける場合もある。裁判所は、手続的性質のものであるか実体的性質のものであるかに関わらず、このようなすべての状況および決定において子どもの最善の利益が考慮されるようにしなければならず、かつ、子どもの最善の利益を効果的に考慮したことを実証しなければならない。 (c) 「行政機関」(administrative authorities) 30.委員会は、あらゆるレベルの行政機関が行なう決定の範囲はきわめて広く、とくに教育、ケア、保健、環境、生活条件、保護、庇護、出入国管理、国籍へのアクセスに関する決定を包含するものであることを強調する。これらの分野で行政機関が行なう個別の決定は、あらゆる実施措置の場合と同様、子どもの最善の利益によって評価され、かつ子どもの最善の利益を指針とするものでなければならない。 (d) 「立法機関」(legislative bodies) 31.締約国の義務が「立法機関」にも適用されるとされていることは、第3条第1項が、個人としての子どもだけではなく子どもたち一般にも関連するものであることをはっきりと示している。いかなる法令および集団的協定――子どもに影響を与える二国間・多国間の貿易条約または平和条約等――の採択も、子どもの最善の利益によって規律されるべきである。自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利は、子どもにとくに関わる法律のみならず、あらゆる関連の法律に明示的に含まれるべきである。この義務はまた予算の承認にも適用されるのであり、予算の準備および策定に際しては、それが子どもに配慮したものとなるようにするため、子どもの最善の利益の視点を採用することが必要になる。 3.「子どもの最善の利益」(The best interests of the child) 32.子どもの最善の利益の概念は複雑であり、その内容は個別事案ごとに判定されなければならない。立法者、裁判官、行政機関、社会機関または教育機関は、条約の他の規定に則して第3条第1項を解釈・実施してこそ、この概念を明確にし、かつ具体的に活用できるようになる。したがって、子どもの最善の利益の概念は柔軟性および適応性を有するものである。この概念は、当事者である子ども(たち)が置かれた特定の状況にしたがって、その個人的な背景、状況およびニーズを考慮に入れながら個別に調節・定義されるべきである。個別の決定については、子どもの最善の利益は、その特定の子どもが有する特定の事情に照らして評価・判定されなければならない。立法者による決定のような集団的決定については、子どもたち一般の最善の利益は、特定の集団および(または)子どもたち一般の事情に照らして評価・判定されなければならない。いずれの場合にも、評価および判定は、条約およびその選択議定書に掲げられた権利を全面的に尊重しながら進められるべきである。 33.子どもの最善の利益は、子ども(たち)に関わるすべての事柄に対して適用されるべきであり、かつ、条約または他の人権条約に掲げられた諸権利間で生じる可能性のあるいかなる矛盾を解決する際にも考慮されるべきである。子どもの最善の利益にのっとった、可能性のある解決策を特定することに注意が払われなければならない。このことは、国には、実施措置を採択する際、すべての子どもたち(脆弱な状況に置かれた子どもたちを含む)の最善の利益を明らかにする義務があることを含意するものである。 34.子どもの最善の利益の概念は柔軟なものであることから、個別の子どもの状況を敏感に受けとめ、かつ子どもの発達についての知識を発展させていくことが可能になる。しかし、都合のいいように使われる余地が残る場合もある。子どもの最善の利益の概念は、たとえば人種主義的政策を正当化しようとする政府および他の国家機関によって、監護権をめぐる紛争で自分自身の利益を擁護しようとする親によって、また面倒を引き受けられず、関連性または重要性がないとして子どもの最善の利益の評価を行なおうとしない専門家によって、濫用されてきた。 35.実施措置との関連では、あらゆる行政レベルにおける立法および政策策定ならびにサービス提供で子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するために、子どもたちおよびその権利の享受に影響を及ぼすいかなる法律、政策または予算配分の提案についてもその影響を予測するための子どもの権利影響事前評価(CRIA)、および、実施の実際の影響を評価するための子どもの権利影響事後評価という継続的プロセスが要求される [6]。 [6] 「子どもの権利条約の実施に関する一般的措置」に関する一般的意見5号(2003年)、パラ45。 4.「第一次的に考慮される」(Shall be a primary consideration) 36.子どもの最善の利益は、あらゆる実施措置の採択において第一次的に考慮されなければならない。「される」(shall be)という文言は国に対して強い法的義務を課すものであり、国は、いかなる活動においても、子どもの最善の利益が評価され、かつ第一次的考慮事項として適正に重視されるか否かについて裁量を行使できないということを意味する。 37.「第一次的に考慮される」事項という表現は、子どもの最善の利益は他のすべての考慮事項とは同列に考えられないということを意味する。この強い位置づけは、子どもが置かれている特別な状況(依存、成熟度、法的地位、および、多くの場合に意見表明の機会を奪われていること)によって正当化されるものである。子どもが自分自身の利益を強く主張できる可能性はおとなの場合よりも低く、子どもに影響を与える決定に関与する者は子どもの利益について明確に意識していなければならない。子どもの利益は、強調されなければ見過ごされる傾向にある。 38.養子縁組(第21条)については、最善の利益の権利はさらに強化されている。これは単に「第一次的に考慮される」事項(a primary consideration)ではなく、「最高の考慮事項」(the paramount consideration)なのである。実際、子どもの最善の利益は養子縁組についての決定を行なう際に決定的要素とされなければならないが、これは他の問題についての決定においても同様である。 39.ただし、第3条第1項は幅広い状況を対象とするものであるため、委員会は、その適用について一定の柔軟性を認める必要性を認識する。いったん評価・判定された子どもの最善の利益が、他の(たとえば他の子ども、公衆、親等の)利益または権利と相反するおそれもある。個別に考慮された子どもの最善の利益と、子どもたちの集団または子どもたち一般の最善の利益とが相反する可能性があるときは、すべての当事者の利益を慎重に比較衡量し、かつ適切な折衷策を見出すことによって、事案ごとの状況に応じて解決が図られなければならない。他者の権利が子どもの最善の利益と相反する場合も同様である。調和を図ることができないときは、公的機関および意思決定担当者はすべての関係者の権利の分析および比較衡量を行なわなければならない。その際、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利とは、子どもの利益が、単に複数の考慮事項のひとつとして扱われるのではなく、高い優先順位を与えられるということである点を念頭に置く必要がある。したがって、子どもにとって最善と思われる対応がより重視されなければならない。 40.子どもの最善の利益を「第一次的に」とらえるためには、あらゆる活動において子どもの利益がどのように位置づけられなければならないかについて意識し、かつ、あらゆる状況において(ただし、とくにある活動が関係する子どもに否定しようのない影響を与える場合に)これらの利益を積極的に優先させることが必要である。 B.子どもの最善の利益と条約の他の一般原則との関係 1.子どもの最善の利益と差別の禁止に対する権利(第2条) 41.差別の禁止に対する権利は、条約上の権利の享受に関するあらゆる形態の差別を禁止するという消極的な義務ではなく、条約上の権利を享受する効果的かつ平等な機会をすべての子どもに対して確保するため、国が適当な積極的措置をとることも求めるものである。そのためには、現実の不平等の状況を是正するための積極的措置が必要となる場合もある。 2.子どもの最善の利益と生命、生存および発達に対する権利(第6条) 42.国は、人間の尊厳を尊重し、かつすべての子どものホリスティックな発達を確保する環境をつくらなければならない。子どもの最善の利益の評価・判定にあたっては、国は、生命、生存および発達に対するその子どもの固有の権利が全面的に尊重されることを確保しなければならない。 3.子どもの最善の利益と意見を聴かれる権利(第12条) 43.子どもの最善の利益の評価には、子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明し、かつ表明された意見を正当に重視される子どもの権利の尊重が含まれなければならない。このことは、やはり第3条第1項と第12条との切っても切れない関係を強調した委員会の一般的意見12号でもはっきりと述べられている。これら2つの条項は補完的な役割を有しており、前者が子どもの最善の利益の実現を目指す一方で、後者は、子どもに影響を与えるすべての事柄(子どもの最善の利益の評価を含む)において子ども(たち)の意見を聴きかつ子ども(たち)を包摂するための方法論を提供している。第12条の要素が満たされなければ、第3条の正しい適用はありえない。同様に、第3条第1項は、自分たちの生活に影響を与えるすべての決定における子どもたちの必要不可欠な役割を促進することにより、第12条の機能性を強化している [7]。 一般的意見12号、パラ70-74。 44.子どもの最善の利益および意見を聴かれる子どもの権利が問題になっている際には、子どもの発達しつつある能力(第5条)が考慮に入れられなければならない。委員会はすでに、子ども自身の知識、経験および理解力が高まるにつれて、親、法定保護者または子どもに責任を負うその他の者は、指示および指導を、子ども自身の気づきを促すための注意喚起およびその他の形態の助言に、そしてやがては対等な立場の意見交換に、変えていかなければならないことを明らかにした [8]。同様に、子どもが成熟するにつれて、その意見は、その子どもの最善の利益の評価においていっそう重視されるようにならなければならない。赤ちゃんおよび非常に幼い子どもも、たとえ年長の子どもと同じ方法で自己の意見を表明しまたは自己を主張することができない場合でも、自己の最善の利益を評価される、すべての子どもと同じ権利を有する。国は、このような子どもの最善の利益を評価するための適当な体制(適当なときは代理人を含む)を確保しなければならない。意見を表明できない子どもまたは意見を表明する意思のない子どもについても同様である。 前掲、パラ84。 45.委員会は、条約第12条第2項で、自己に影響を与えるいかなる司法的および行政的手続においても、直接にまたは代理人を通じて意見を聴かれる子どもの権利が定められていることを想起する(さらに詳しくは後掲第V章B参照)。 (子どもの最善の利益 後編へ続く) 更新履歴:ページ作成(2013年6月10日)。
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子どもがつくる子どものまち「ミニ☆大阪」 年齢や学校を超えて子どもたちが、仕事を楽しみ、友達をつくった。狭い会場なので横つながりもうまれた様。知らない人に「いらっしゃいませ」と自分から声を出す。思ったことは人に伝える。大人にだって意見する。それを、ささやかだけれど、大切にしました。今年度は有志で開催を、と始動したばかり。皆さん、知恵をわけてくださ~い! 目次 1概要 2歴史 3仕事ブース 4大人の会議(例) 5子どもの会議(例) 6話題(例) 6.1(始まりの頃の特筆すべき点) 6.2(現在の特筆すべき点) 6.3(外部の協力者) 7参考文献 8関連項目 9外部リンク 概要 大きな研修室をメイン会場に2日間開催。定員100名のうち30名は事前に小5~高3を対象に募集した子ども実行委員。ミニミュンヘンのことを最初に紹介し、まちの仕組みづくりに興味深々。準備に当初の倍以上の時間を重ねた。 「自分達がまちを動かす主人公である」実感に心を動かした様で「まちに詳しい人」「まちを動かしてゆける環境」づくりに工夫し、「ワニタン府民」という具体的なシステムをつくった。 歴史 第1回 2008年 3月25日・26日 国際障がい者交流センタービッグアイ 仕事ブース 職安、 銀行、 市役所、 議会、 デパート、 放送局、 新聞社、 大学、 広告代理店、 写真屋、 病院、 レトロ菓子店WATAGASI、 びっくりカフェ、 ホットドッグ店 ※ 2009年度は 保育士も入り、保育所も開催予定。 大人の会議(例) こどものまちを主催する大人による会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 子どもの会議(例) こどものまちの主役である子どもによる会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 話題 (始まりの頃の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (現在の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (外部の協力者) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 主催団体 2007年のスタッフ有志で実行委員会をつくり開催 〒●●●●●●● ●●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●● 参考文献 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 関連項目 ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●。
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子どもの権利委員会・一般的意見14号:自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利(第3条第1項) 後編 (子どもの最善の利益 前編より続く) V.実施:子どもの最善の利益の評価および判定 46.前述したとおり、「子どもの最善の利益」とは、特定の状況における子ども(たち)の利益のあらゆる要素の評価を基礎とした権利であり、原則であり、かつ手続規則である。特定の措置について決定するために子どもの最善の利益を評価・判定する際には、以下の段階を踏むことが求められる。 (a) 第一に、当該事案の特定の事実関係において、何が最善の利益評価に関連する要素であるかを見出し、その具体的内容を明らかにし、かつ、各要素が他の要素との関係でどの程度の重みを有するかについて判断する。 (b) 第二に、その際には法的保障およびこの権利の適切な適用を確保する手続にしたがう。 47.子どもの最善の利益の評価および判定は、決定を行なう必要がある場合に踏まれるべき2つの段階である。「最善の利益」評価は、特定の子ども個人または特定の子ども集団について、特定の状況において決定を行なうために必要なあらゆる要素を評価し、かつ比較衡量することから構成される。この評価は、意思決定担当者およびその部下――可能であれば学際的なチーム――によって実施されるものであり、その際には子どもの参加が要求される。「最善の利益判定」とは、最善の利益評価に基づいて子どもの最善の利益を判定するために行なわれる、厳格な手続上の保障をともなう正式な手続をいう。 A.最善の利益の評価および判定 48.子どもの最善の利益の評価は、それぞれの子どもまたは子どもたちの集団もしくは子どもたち一般の特有の事情に照らして個別事案ごとに行なわれるべき、独自の活動である。これらの事情には、当事者である子ども(たち)の個人的特質(とくに年齢、性別、成熟度、経験、マイノリティ集団への所属、身体障害、感覚障害または知的障害があること等)、ならびに、子ども(たち)が置かれている社会的および文化的文脈(親の有無、子どもが親といっしょに暮らしているか否か、子どもとその親または養育者との関係の質、安全に関わる環境、家族、拡大家族または養育者が利用できる良質な代替的手段の存在等)が関連する。 49.何が子どもの最善の利益にのっとった対応であるかの判定は、その子どもを他に比べるもののない存在としている特有の事情の評価から開始されるべきである。このことは、利用される要素と利用されない要素があることを含意するとともに、これらの要素の比較衡量がどのように行なわれるかにも影響を与える。子どもたち一般については、最善の利益の評価には同一の要素が用いられる。 50.委員会は、子どもの最善の利益の判定を行なわなければならないいかなる意思決定担当者による最善の利益評価にも含めることができる諸要素を、非網羅的にかつ序列を設けずにリスト化することが有益であると考える。リストに掲げられた諸要素が非網羅的な性質のものであるということは、これらの要素に限ることなく、子ども個人または子どもたちの集団の特有の事情に関連する他の要素を考慮することも可能だということである。リストに掲げられたすべての要素が考慮に入れられ、かつそれぞれの状況に照らして比較衡量されなければならない。このようなリストは、具体的な指針を示しつつも、柔軟なものであるべきである。 51.このような諸要素のリストの作成は、国または意思決定担当者が子どもに影響を与える具体的分野(家族法、養子縁組法および少年司法法等)の規制を行なう際の有益な指針を提示することになるであろうし、必要であれば、自国の法的伝統にしたがって適切と考えられる他の要素を追加することもできる。委員会は、リストに要素を追加する際には、子どもの最善の利益の最終的目的が、条約で認められた諸権利の完全かつ効果的な享受および子どものホリスティックな発達を確保するところに置かれるべきであることを指摘したい。したがって、条約に掲げられた諸権利に反する要素、または条約上の権利に反する効果を有するであろう要素は、何が子ども(たち)にとって最善かを評価するうえで妥当なものと見なすことができない。 1.子どもの最善の利益を評価する際に考慮されるべき要素 52.以上の予備的検討を踏まえ、委員会は、子どもの最善の利益について評価・判定する際、当該状況との関連性に応じて考慮されるべき要素は以下のとおりであると考える。 (a) 子どもの意見 53.条約第12条は、自己に影響を与えるすべての決定において自己の権利を表明する子どもの権利について定めている。子どもの意見を考慮に入れない、または子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視しないいかなる決定も、子ども(たち)が自己の最善の利益の判定に影響を及ぼす可能性を尊重していないことになる。 54.子どもが非常に幼く、または脆弱な状況に置かれている(たとえば障害を有している、マイノリティ集団に属している、移住者である等)からといって、子どもが自己の意見を表明する権利を剥奪され、または最善の利益の判定の際にその子どもの意見が重視される度合いが低くなるわけではない。このような状況に置かれた子どもが権利を平等に行使できることを保障するための具体的措置が、意思決定プロセスにおける役割を子ども自身に対して保障する個別の評価が行なわれ、かつ、必要なときは、自己の最善の利益の評価への全面的参加を確保するための合理的な配慮 [9] および支援が提供されることを条件として、採用されなければならない。 [9] 障害のある人の権利に関する条約第2条参照。「『合理的配慮』とは、……他の者との平等を基礎としてすべての人権及び基本的自由を享有し又は行使することを確保するための必要かつ適切な変更及び調整であって、特定の場合に必要とされるものであり、かつ、不釣合いな又は過重な負担を課さないものをいう。」〔川島聡=長瀬修仮訳〕 (b) 子どものアイデンティティ 55.子どもたちは均質な集団ではないことから、その最善の利益を評価する際には多様性が考慮に入れられなければならない。子どものアイデンティティには、性別、性的指向、民族的出身、宗教および信条、文化的アイデンティティ、性格等が含まれる。子どもと若者は基礎的な普遍的ニーズを共有しているものの、これらのニーズがどのように表出するかは、広範な個人的、身体的、社会的および文化的側面(子どもおよび若者の発達しつつある能力を含む)次第である。自己のアイデンティティを保全する子どもの権利は条約によって保障されており(第8条)、子どもの最善の利益の評価においても尊重・考慮されなければならない。 56.たとえば子どものために養護施設または里親への委託を検討する際の宗教的および文化的アイデンティティについては、子どもの養育に継続性が望まれることについて、ならびに子どもの民族的、宗教的、文化的および言語的背景について正当な考慮を払うものとされており(第20条第3項)、意思決定担当者は、子どもの最善の利益についての評価・判定を行なう際、この具体的文脈を考慮に入れなければならない。子どもの最善の利益を正当に考慮するということは、子どもが、自国および出身家族の文化(および可能であれば言語)にアクセスでき、かつ、当該国の法律上の規則および専門職向けの規則にしたがい、自己の生物学的家族に関する情報にアクセスする機会を与えられることを含意する。 57.子どものアイデンティティの一部としての宗教的・文化的価値および伝統の維持が考慮されなければならないとはいえ、条約で定められた権利に一致せず、またはこれらの権利と両立しない慣行は、子どもの最善の利益にのっとったものではない。意思決定担当者および公的機関は、文化的アイデンティティを理由とすることによって、条約で保障された子ども(たち)の権利を否定する伝統および文化的価値を許容しまたは正当化することはできない。 (c) 家庭環境の保全および関係の維持 58.委員会は、子どもの最善の利益の評価および判定を、子どもが親から分離されることも考えられる(第9条、第18条および第20条)という文脈のなかで行なうことが不可欠であることを想起する。委員会はまた、前述の諸要素は具体的権利であり、子どもの最善の利益の判定における唯一の要素ではないことも強調するものである。 59.家族は社会の基礎的集団であり、かつ、その構成員、とくに子どもの成長およびウェルビーイングのための自然な環境である(条約前文)。家族生活に対する子どもの権利は条約に基づいて保護されている(第16条)。「家族」という文言は、生物学的親、養親もしくは里親、または適用可能なときは地方の慣習により定められている拡大家族もしくは共同体の構成員を含むものとして広義に解されなければならない(第5条)。 60.家族の分離を防止することおよび家族の一体性を保全することは、子どもの保護制度の重要な構成要素であり、「このような分離が子どもの最善の利益のために必要であると決定する場合」を除いて「子どもが親の意思に反して親から分離されない」ことを要求する、第9条第1項で定められた権利を基礎としている。さらに、親の一方または双方から分離されている子どもは、「子どもの最善の利益に反しないかぎり、定期的に親双方との個人的関係および直接の接触を保つ」権利を有する(第9条第3項)。このことは、監護権を有するすべての者、法律上または慣習上の主たる養育者、里親、および、子どもが強い個人的関係を有する者にも適用される。 61.親からの分離が子どもに及ぼす影響の重大性を踏まえ、このような分離は、子どもが切迫した危害を経験する危険がある場合またはその他の必要な場合に、最後の手段としてのみ行なわれるべきである。分離は、より侵襲性の低い措置によって子どもを保護できるときは、行なわれるべきではない。国は、分離の手段をとる前に、親が親としての責任を担うことに関する支援を提供するとともに、子どもを保護するために分離が必要である場合を除き、子どもを養育する家族の能力を回復しまたは増進させるべきである。経済的理由は、子どもを親から分離させることの正当な理由とはなりえない。 62.子どもの代替的養護に関する指針 [10] は、子どもが不必要に代替的養護に措置されないこと、および、代替的養護が行なわれる場合、子どもの権利および最善の利益に応じた適切な条件下で提供されることを確保することを目的としている。とくに、「金銭面および物質面での貧困、またはそのような貧困を直接のかつ唯一の理由として生じた状態のみを理由として、子どもを親の養育から離脱させること……が正当化されることはけっしてあるべきではなく、このような貧困または状態は、家族に対して適切な支援を提供する必要性があることのサインと見なされるべきである」(パラ15)。 国連総会決議64/142付属文書。 63.同様に、子どもまたはその親の障害を理由として子どもを親から分離することもできない [11]。分離を検討することができるのは、家族の一体性を保全するために家族に提供される必要な援助では、子どものネグレクトもしくは遺棄のおそれまたは子どもの安全に対する危険を回避するのに十分に効果的ではない場合のみである。 [11] 障害のある人の権利に関する条約第23条第4項。 64.分離が行なわれる場合、国は、条約第9条に一致する形で、子どもおよびその家族の状況が、可能な場合には十分な訓練を受けた専門家から構成される学際的チームによって、適切な司法の関与も得ながら評価されたことを保障するとともに、他のいかなる選択肢によっても子どもの最善の利益を充足させることができないことを確保しなければならない。 65.分離が必要なときは、意思決定担当者は、子どもが、その子どもの最善の利益に反しないかぎり、親および家族(きょうだい、親族、および、子どもが強い個人的関係を有している者)とのつながりおよび関係を維持することを確保しなければならない。このような関係の質およびこのような関係を保持する必要性は、子どもが家庭外に措置される場合の、面会その他の接触の頻度および期間に関する決定において考慮されなければならない。 66.子どもと親との関係が移住(親が子どもをともなわずに移住する場合または子どもが親をともなわずに移住する場合)によって切断されている場合、家族再統合に関する決定において子どもの最善の利益を評価する際に、家族の一体性の保全について考慮することが求められる。 67.委員会は、親としての責任が共有されることは一般的に子どもの最善の利益にのっとったものであるという見解に立つ。ただし、親としての責任に関わる決定においては、何が特定の子どもにとっての最善の利益であるかが唯一の基準とされなければならない。法律により、親としての責任が一方または双方の親に自動的に委ねられるのであれば、これは子どもの最善の利益に反している。子どもの最善の利益を評価する際、裁判官は、事件に関連する他の要素とともに、双方の親との関係を保全する子どもの権利を考慮に入れなければならない。 68.委員会は、子どもの最善の利益の適用を促進し、かつ、親が異なる国々に住んでいる場合のその実施の保障について定めている、国際私法に関するハーグ会議諸条約 [12] の批准および実施を奨励する。 [12] これには、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する第28号条約(1980年)、国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関する第33号条約(1993年)、扶養義務に関する判決の承認および執行に関する第23号条約(1973年)、扶養義務の準拠法に関する第24号条約(1973年)が含まれる。 69.親または他の主たる養育者が犯罪を行なった場合、影響を受ける子ども(たち)に対してさまざまな刑が及ぼす可能性のある影響を全面的に考慮しながら、個別の事案ごとに、拘禁に代わる措置が利用可能とされかつ適用されるべきである [13]。 [13] 親が収監されている子どもに関する一般的討議の勧告参照。 70.家庭環境の保全には、子どもが有するより幅広い意味の紐帯を保全することも包含される。このような紐帯は、祖父母、おじ/おばのような拡大家族ならびに友人、学校およびより幅広い環境に適用され、親が別居して異なる場所で生活している場合にとくに関連してくる。 (d) 子どものケア、保護および安全 71.ひとりの子どもまたは子どもたち一般の最善の利益を評価・判定する際には、子どものウェルビーイングのために必要な保護およびケアを子どもに対して確保する国の義務(第3条第2項)が考慮されるべきである。「保護およびケア」の文言も広義に解されなければならない。その目的は、限定的なまたは消極的な文言(「子どもを危害から保護するため」等)では述べられておらず、むしろ子どもの「ウェルビーイング」および発達を確保するという包括的理想との関連で述べられているからである。広義の子どものウェルビーイングには、物質面、身体面、教育面および情緒面で子どもが有する基礎的なニーズならびに愛情および安全に関するニーズが含まれる。 72.情緒的ケアは子どもが有する基礎的なニーズのひとつである。親または他の主たる養育者が子どもの情緒的ニーズを充足しない場合、子どもが安定した愛着を発展させられるように措置がとられなければならない。子どもは非常に幼い段階でいずれかの養育者に対する愛着を形成する必要があるのであり、このような愛着は、それが十分なものである場合、子どもに安定した環境を与えるために長期間維持されなければならない。 73.子どもの最善の利益の評価には、子どもの安全、すなわち、あらゆる形態の身体的または精神的暴力、侵害または虐待(第19条)、セクシュアルハラスメント、仲間からの圧力、いじめ、品位を傷つける取扱い等からの保護 [14]、ならびに、性的搾取、経済的搾取その他の搾取、薬物、労働、武力紛争等からの保護(第32~39条)に対する子どもの権利も含まれなければならない。 [14] 「あらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利」に関する一般的意見13号(2011年)。 74.意思決定に対して最善の利益アプローチを適用するということは、現時点での子どもの安全および不可侵性について評価するということである。ただし、予防原則により、決定が子どもの安全にとってもたらす将来の危険および危害ならびにその他の影響の可能性について評価することも要求される。 (e) 脆弱な状況 75.考慮すべき重要な要素のひとつは、子どもが置かれている脆弱な状況(障害があること、マイノリティ集団に属していること、難民または庇護希望者であること、虐待の被害者であること、路上の状況で暮らしていること等)である。脆弱な状況に置かれた子ども(たち)の最善の利益を判定する目的は、条約で定められたすべての権利の全面的享受と関連するだけではなく、これらの特定の状況(とくに、障害のある人の権利に関する条約、難民の地位に関する条約で対象とされている状況)に関わる他の人権規範とも関連するものであることが求められる。 76.特定の脆弱な状況に置かれた子どもの最善の利益は、同じ脆弱な状況に置かれたすべての子どもの最善の利益と同一にはならないであろう。子どもは一人ひとり独自の存在であり、かつ各状況はその子どもの独自性にしたがって評価されなければならないので、公的機関および意思決定担当者は、子ども一人ひとりが有する脆弱性の種類および度合いの違いを考慮に入れなければならない。子ども一人ひとりの出生時からの生育史が個別に評価されるべきであり、同時に、子どもの発達過程全体を通じ、学際的なチームによる定期的再審査が行なわれ、かつ合理的な配慮に関する勧告が実行されるべきである。 (f) 健康に対する子どもの権利 77.健康に対する子どもの権利(第24条)および子どもの健康状態は、子どもの最善の利益の評価において中心的重要性を有する。ただし、ある健康状態について複数の治療が考えられる場合、または治療の結果が不確実である場合には、考えられるあらゆる治療の利点が、考えられるあらゆるリスクおよび副作用との関連で比較衡量されなければならず、また子どもの意見がその年齢および成熟度に基づいて正当に重視されなければならない。これとの関連で、子どもは、当該状況についておよび自己の利益に関わるあらゆる関連の側面について理解できるように十分かつ適切な情報を提供されるべきであり、また可能なときは十分な情報を得たうえで同意を与えることが認められるべきである [15]。 [15] 「到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利」に関する一般的意見15号(2013年)、パラ31。 78.たとえば、思春期の子どもの健康について、委員会は、締約国には、すべての青少年が、健康に関わる適切な行動を選択できるようにするため、学校に行っているか否かを問わず、自己の健康および発達にとって必要不可欠な、十分な情報にアクセスできることを確保する義務があると述べた [16]。このような情報には、タバコ、アルコールその他の有害物質の使用および濫用、飲食、性および生殖に関する適切な情報、早期妊娠の危険性〔ならびに〕HIV/AIDSおよび性感染症の予防に関する情報が含まれるべきである。心理社会的障害を有する青少年は、可能なかぎり、自分が生活しているコミュニティで治療およびケアを受ける権利を有する。入院または入所施設への措置が必要なときは、決定を行なう前に、かつ子どもの意見を尊重しながら、子どもの最善の利益についての評価が行なわれなければならない。同様の考慮は年少の子どもについても当てはまる。子どもの健康および治療の可能性は、他の態様の重要な決定(たとえば人道的理由による在留許可の付与)との関連でも、最善の利益評価・判定の一部に位置づけられる場合がある。 [16] 「子どもの権利条約の文脈における思春期の健康と発達」に関する一般的意見4号(2003年)。 (g) 教育に対する子どもの権利 79.乳幼児期の教育、非公式な教育および関連の活動を含む良質な教育に無償でアクセスできることは、子どもの最善の利益にのっとっている。特定の子どもまたは子どもたちの集団に関わる措置および活動についてのあらゆる決定は、教育に関わる子ども(たち)の最善の利益を尊重するものでなければならない。教育またはより良質な教育に対していっそう多くの子どもがアクセスできることを促進するため、締約国は、教育が、未来に対する投資であるのみならず、楽しい活動、尊重、参加および大志の充足のための機会でもあることを考慮に入れながら、十分な訓練を受けた教員および教育関連のさまざまな場面で働くその他の専門家を確保し、かつ子どもにやさしい環境ならびに適切な教授法および学習法を整備する必要がある。このような要求に対応し、かつ、いかなる種類の脆弱性であってもそれによる限界を克服する子どもの責任を増進させることは、子どもの最善の利益にのっとった対応となろう。 2.最善の利益の評価における諸要素の比較衡量 80.基礎的な最善の利益評価とは子どもの最善の利益に関連するすべての要素の一般的評価であり、各要素の重みは他の要素次第で変化することが強調されるべきである。すべての要素がすべての事案に関連するわけではなく、また事案が異なれば用いられる要素およびその用いられ方も変わってくる場合がある。各要素の内容は、決定の態様および具体的事情に応じ、子どもごとおよび事案ごとにさまざまであるのが当然であるし、全般的評価における各要素の重要性についても同様である。 81.最善の利益評価における諸要素は、特定の事案およびその事情について検討する際に相反する場合がある。たとえば、家庭環境を保全することは、親による暴力または虐待のおそれから子どもを保護する必要性と相反するかもしれない。このような状況においては、子ども(たち)の最善の利益にのっとった解決策を見出すため、諸要素の比較衡量を行なわなければならない。 82.さまざまな要素を比較衡量する際には、子どもの最善の利益の評価・判定を行なう目的が、条約およびその選択議定書で認められた諸権利の全面的かつ効果的な享受および子どものホリスティックな発達を確保するところにあることを念頭に置かなければならない。 83.状況によって、子どもに影響を及ぼす「保護」関連の要因(これは、たとえば権利の制約または制限を含意する場合がある)を、「エンパワーメント」(これは、権利を制限なく全面的に行使できることを含意する)のための措置との関連で評価しなければならないことがあるかもしれない。このような状況においては、諸要素の比較衡量にあたり、その子どもの年齢および成熟度が指針とされるべきである。子どもの成熟度を評価するためには、その子どもの身体的、情緒的、認知的および社会的発達を考慮に入れることが求められる。 84.最善の利益評価においては、子どもの能力が発達することを考慮しなければならない。したがって、意思決定担当者は、決定的かつ変更不可能な決定を行なうのではなく、しかるべき変更または調整が可能な措置を検討するべきである。そのためには、決定を行なう特定の時点における身体的、情緒的、教育的その他のニーズを評価するだけではなく、考えられる子どもの発達の道筋も考慮し、かつその道筋を短期的および長期的に分析することも求められる。この文脈で、決定においては、子どもの現状および将来の状況の継続性および安定性についても評価を行なうべきである。 B.子どもの最善の利益の実施を保障するための手続的保護措置 85.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利が正しく実施されることを確保するためには、子どもにやさしい若干の手続的保護措置を設け、かつこれにしたがわなければならない。このように、子どもの最善の利益の概念は手続規則なのである(前掲パラ6(b)参照)。 86.子どもに関わる決定を行なう公的な機関および組織は、子どもの最善の利益を評価・判定する義務に一致する形で行動しなければならない一方、子どもに関わる決定を日常的に行なう者(たとえば親、保護者、教師等)は、この2段階の手続に厳格にしたがうことは期待されない。とはいえ、日常生活のなかで行なわれる決定も、子どもの最善の利益を尊重・反映するものでなければならない。 87.国は、子どもに影響を与える決定のために子どもの最善の利益についての評価および判定を行なうことを目的とした、手続上の厳格な保護措置をともなう正式な手続(結果を評価するための機構を含む)を整備しなければならない。国は、とくに子ども(たち)に直接影響する分野において立法者、裁判官または行政機関が行なうすべての決定を対象とする、透明かつ客観的な手続を策定しなければならない。 88.委員会は、国および子どもの最善の利益を評価・判定する立場にあるすべての者に対し、以下の保護措置および保障に特段の注意を払うよう慫慂する。 (a) 自己の意見を表明する子どもの権利 89.手続のきわめて重要な要素のひとつは、意味のある子ども参加を促進し、かつその最善の利益を特定するために子どもとコミュニケーションを図ることである。このようなコミュニケーションには、手続についてならびに考えられる持続可能な解決策およびサービスについて子どもに情報を提供すること、ならびに、子どもから情報を収集することおよび子どもの意見を求めることが含まれるべきである。 90.子どもが意見表明を希望しており、かつこの権利が代理人を通じて充足される場合、当該代理人の義務は、子どもの意見を正確に伝達することである。子どもの意見が代理人の意見と食い違う状況においては、必要に応じて子どもに別の代理人(たとえば訴訟後見人)を選任するよう、子どもが公的機関に対して求められるようにするための手続きが設けられるべきである。 91.集団としての子どもたちの最善の利益を評価・判定するための手続は、子ども個人に関する手続とは若干異なる。多数の子どもたちの利益が争点となっている場合、政府機関は、当該集団に直接間接に関わる措置の計画または立法上の決定を行なう際、すべてのカテゴリーの子どもたちが対象とされることを確保する目的で、当該集団の代表性を確保するやり方で抽出された子どもたちの意見を聴き、かつその意見を正当に考慮するための方法を見出さなければならない。その方法としては、子ども公聴会、子ども議会、子ども主体の団体、子ども組合その他の代表機関、学校における討議、ソーシャルネットワークサイト等、多数の例が存在する。 (b) 事実関係の確定 92.最善の利益評価のために必要なすべての要素をまとめるため、特定の事案に関連する事実関係および情報は、十分な訓練を受けた専門家によって取得されなければならない。これには、とくに、子どもに近い立場にある者、子どもと日常的に接触している他の者、特定の出来事の目撃者等から事情を聴取することが含まれることもある。収集された情報およびデータは、子ども(たち)の最善の利益評価において用いられる前に、検証・分析されなければならない。 (c) 時間知覚 93.時間の経過は、子どもとおとなとではその知覚の仕方が同一ではない。意思決定が遅滞しまたは長期化することは、子どもの発達にともない、子どもにとりわけ有害な影響を及ぼす。したがって、子どもに関わる手続または子どもに影響を及ぼす手続は、優先的処理の対象とされ、かつ可能なかぎり短い期間で完了することが望ましい。決定の時期は、可能なかぎり、それが自分にとってどのような利益となりうるかに関する子どもの認識に対応しているべきであり、また、行なわれた決定は、子どもの成長発達およびその意見表明能力の発達にしたがい、合理的な頻度で再検討されるべきである。ケア、治療、措置および子どもに関わるその他の措置に関するすべての決定は、その子どもの時間知覚ならびに発達しつつある能力および成長発達の観点から定期的に再審査されなければならない(第25条)。 (d) 資格のある専門家 94.子どもは多様な集団であり、一人ひとりが独自の特性を有しているのであって、そのニーズを十分に評価できるのは、子どもおよび青少年の発達に関わる事柄について専門性を有する専門家のみである。だからこそ、正式な評価手続は、とくに児童心理学、子どもの発達ならびに人間の発達および社会的発達に関わる他の関連の分野で訓練を受け、子どもとともに活動した経験があり、かつ入手した情報を客観的に考慮する専門家によって、親しみやすく安全な雰囲気のもとで進められるべきである。子どもの最善の利益を評価するにあたっては、可能なかぎり、学際的な専門家チームの関与が求められる。 95.解決策の諸選択肢から生ずる結果の評価は、子ども個人の特性および過去の経験を踏まえつつ、考えられる各解決策によって生ずる可能性のある結果についての一般的知識(すなわち法学、社会学、教育学、ソーシャルワーク、心理学、保健学等の分野における知識)に基づいて行なわれなければならない。 (e) 弁護士代理人 96.子どもの最善の利益が裁判所またはこれに類する機関によって公式に評価・判定される場合、適切な弁護士代理人が必要になろう。とくに、子どもの最善の利益判定が行なわれる行政上または司法上の手続に子どもが付託された事案であって、決定当事者間で争いが生じる可能性がある場合、後見人、または子どもに代わってその意見を伝える代理人に加えて、子どもの弁護士代理人が任命されるべきである。 (f) 法的理由の説明 97.自己の最善の利益を評価され、かつ第一次的に考慮される子どもの権利が尊重されたことを実証するため、子ども(たち)に関わるいかなる決定においても、立証、正当化および説明が行なわれなければならない。立証においては、その子どもに関わるすべての事実関係、最善の利益評価において関連性を有すると認定された諸要素、個別事案における諸要素の内容、および、子どもの最善の利益を判定するために行なわれた当該諸要素の比較衡量の経緯が明示的に明らかにされるべきである。子どもの意見と異なる決定が行なわれた場合、その理由を明確に示すことが求められる。例外的に、選択された解決策が子どもの最善の利益にのっとったものでない場合は、そのような結果にも関わる子どもの最善の利益が第一次的に考慮されたことを示すため、その根拠が明らかにされなければならない。他の考慮事項が子どもの最善の利益に優越すると一般的に述べるだけでは十分ではない。すべての考慮事項を当該事案との関連で明示的に明らかにし、かつ、当該事案においてそれらの考慮事項がいっそう重視された理由を説明しなければならない。理由の説明においては、子どもの最善の利益が他の考慮事項にまさるほど強力ではなかった理由も、信頼できるやり方で実証されなければならない。子どもの最善の利益が最高の考慮事項とされなければならない状況(前掲パラ38参照)があることも考慮されなければならない。 (g) 決定を再審査しまたは修正するための機構 98.国は、子どもに関わる決定が子ども(たち)の最善の利益を評価・判定する適切な手続にしたがって行なわれなかったと思われる場合に、当該決定について異議を申し立て、または当該決定を修正するための機構を、自国の法体系内に設けるべきである。当該決定の再審査または当該決定に対する異議申立てを国レベルで行なえるようにすることが常に求められる。これらの機構は、子どもに対して知らされるべきであり、かつ、手続上の保護措置が尊重されなかった、事実関係が誤っていた、最善の利益評価が十分に行なわれなかった、または競合する考慮事項が重視されすぎたと考えられる場合に、子どもが直接または弁護士代理人を通じてアクセスできるようなものであるべきである。再審査を行なう機関は、これらのすべての側面を検討しなければならない。 (h) 子どもの権利影響評価(CRIA) 99.前述のとおり、あらゆる実施措置の採択も、子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保する手続にしたがって行なわれるべきである。子どもの権利影響評価(CRIA)は、子どもおよび子どもの権利の享受に影響を与えるいかなる政策、法令、予算またはその他の行政決定の提案についてもその影響の予測を可能とするものであり、諸措置が子どもの権利に及ぼす影響の継続的な監視および評価を補完するものとして用いられるべきである [17]。CRIAは、子どもの権利に関するグッド・ガバナンスを確保するため、政府があらゆるレベルで進めるプロセスに、また可能なかぎり早い段階で政策その他の一般的措置の策定に、組みこまれなければならない。CRIAを実施する際には、さまざまな手法および実践を発展させることができる。これらの手法および実践においては、最低限、条約およびその選択議定書が枠組みとして用いられなければならず、また、とくに、評価に際して〔条約の〕一般原則が一貫して適用され、かつ検討中の措置が子どもたちに及ぼす種々の影響について特別な考慮が払われることを確保しなければならない。影響評価そのものを、子どもたち、市民社会および専門家ならびに関連の政府機関、学術的調査研究および国内外で記録された経験から得られた知見に基づいて行なうこともできる。分析の結果、変更、代替策および改善のための勧告が行なわれるべきであり、また当該分析結果は公に利用可能とされるべきである [18]。 [17] 「企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務」に関する一般的意見16号(2013年)、パラ78-81。 [18] 各国は、貿易協定および投資協定の人権影響評価に関する指導原則についての、食料への権利に関する特別報告者の報告書(A/HRC/19/59/Add.5)を参考にすることができる。 VI.普及 100.委員会は、各国が、この一般的意見を、議会、政府および司法機関に対し、国および地方のレベルで広く普及するよう勧告する。この一般的意見は、子どもたち――排除の状況に置かれている子どもたちを含む――、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家(裁判官、弁護士、教師、後見人、ソーシャルワーカー、公立または私立の福祉施設の職員、保健職員、教師〔重複ママ〕等を含む)ならびに市民社会一般に対しても知らされるべきである。この目的のため、一般的意見を関連の言語に翻訳し、子どもにやさしい/ふさわしい本案版を利用可能とし、かつ、これを実施する最善の方法に関する模範的実践を共有するための会議、セミナー、ワークショップその他のイベントを開催することが求められる。関連のあらゆる専門家および専門職員を対象とする正式な着任前研修および現職者研究にも、この一般的意見が編入されるべきである。 101.国は、委員会に提出する定期報告書に、直面した課題に関する情報とともに、子ども個人に関わる司法上および行政上のあらゆる決定ならびにその他の活動において、また子どもたち一般または特定の集団としての子どもたちに関わる実施措置の採択のあらゆる段階において、子どもの最善の利益を適用しかつ尊重するためにとった措置についての情報を記載するべきである。 更新履歴:ページ作成(2013年6月10日)。
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子どもの権利委員会・一般的意見16号:企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務 後編 (企業と子どもの権利 前編より続く) VI.実施の枠組み A.立法措置、規制措置および執行措置 1.法令 53.法令は、企業の活動および操業によって子どもの権利に悪影響が生じ、または子どもの権利が侵害されないことを確保するために必要不可欠な手段である。国は、第三者によって子どもの権利が実施されるようにし、かつ、企業が子どもの権利を尊重できるようにする明確かつ予測可能な法的環境および規制環境を提供する法律を定めるよう、求められる。企業が子どもの権利を侵害しないことを確保する目的で適切かつ合理的な立法措置および規制措置をとる義務を満たすために、国は、懸念の対象となる特定の企業部門を特定する目的でデータ、証拠および調査研究の結果を収集することが必要になろう。 54.第18条第3項にしたがい、国は、働く親および養育者が子どもに対する養育責任を果たすことを援助する雇用環境を企業内で創設するべきである。このような環境としては、家族にやさしい職場方針(育児休暇を含む)の導入、母乳育児の支援および推進、良質な保育サービスへのアクセス、十分な生活水準を維持するに足る賃金の支払い、職場における差別および暴力からの保護、ならびに、職場における安心および安全などがある。 55.非効率的な税制、腐敗、および、とくに国有企業への課税および法人課税から得られた政府歳入の不適切な管理は、条約第4条にしたがって子どもの権利を充足するために利用可能な資源の制限につながる可能性がある。贈収賄・腐敗対策関連文書 [19] に基づいてすでに負っている義務に加え、国は、透明性、説明責任および公正性を確保しながら、あらゆる財源から歳入フローを獲得しかつ管理するための効果的な法令を策定しかつ実施するべきである。 [19] OECD・国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約および(または)国連・腐敗防止条約など。 56.国は、子どもの経済的搾取および危険な労働が禁止されることを確保するために条約第32条を実施するべきである。国際基準にのっとった最低就労年齢を越えており、したがって被用者として合法的に働ける一方、なおも(たとえばその子どもの健康、安全または道徳的発達にとって危険がある労働から)保護される必要があり、かつ教育、発達およびレクリエーションに対するその子どもの権利が促進されかつ保護されることを確保されなければならない子どもも存在する [20]。国は、最低就労年齢を定め、労働時間および労働条件を適切に規制し、かつ、第32条を効果的に執行するための罰則を確立しなければならない。国は、労働監察および執行のための、十分に機能する制度および能力を整備しなければならない。国はまた、児童労働に関する基本的なILO条約 [21] を双方とも批准し、かつ国内法に編入するべきである。条約第39条に基づき、国は、いずれかの形態の暴力、ネグレクト、搾取または虐待(経済的搾取を含む)を経験した子どもの身体的および心理的回復ならびに社会的再統合を促進するためにあらゆる適当な措置をとらなければならない。 [20] 休息、余暇、遊び、レクリエーション活動、文化的生活および芸術に対する子どもの権利(第31条)に関する一般的意見17号(2013年、近日発表)参照。 [21] 最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関するILO第182号条約(1999年)および就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約(1973年)。 57.国はまた、子どもの権利、健康およびビジネスに関する国際的に合意された基準(世界保健機関の「タバコの規制に関する枠組み条約」ならびに「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」および世界保健総会がその後採択した関連の決議を含む)の実施および執行も要求される。委員会は、製薬部門の活動および操業が子どもの健康に深い影響を及ぼすことを認識する。製薬会社は、既存の指針 [22] を考慮しながら、子どものための医薬品のアクセス、利用可能性、受け入れ可能性および質を高めるよう奨励されるべきである。さらに、知的財産権は医薬品の負担可能性を促進するようなやり方で適用されるべきである [23]。 [22] 医薬品へのアクセスに関する製薬会社のための人権指針(人権理事会決議15/22)。 [23] 一般的意見15号、パラ82;世界貿易機関「TRIPS協定と公衆衛生に関する宣言」(WT/MIN(01)/DEC/2)参照。 58.マスメディア産業(広告・宣伝産業を含む)は、子どもの権利に対して肯定的な影響も否定的な影響も及ぼしうる。条約第17条に基づき、国は、民間メディアを含むマスメディアに対し、子どもにとって社会的および文化的利益のある情報および資料(たとえば健康的なライフスタイルに関するもの)を普及するよう奨励する義務を負う。メディアは、情報および表現の自由に対する子どもの権利を認めつつも有害な情報(とくにポルノ的な資料、または暴力、差別および子どもの性的イメージを描写し若しくは強化する資料)から子どもを保護するため、適切に規制されなければならない。国は、マスメディアに対し、すべてのメディア報道において子どもの権利が全面的に尊重されること(暴力からの保護および差別を固定化させる描写からの保護を含む)を確保するための指針を発展させるよう、奨励するべきである。国は、視覚障害その他の機能障害を有する子どもにとってアクセス可能な形式で書籍その他の印刷物を複製することを認める、著作権上の例外を定めることが求められる。 59.子どもは、メディアを通じて伝達される宣伝および広告を真実であって偏りのないものと考える場合があり、したがって有害な製品を消費しかつ使用する可能性がある。広告および宣伝はまた、たとえば非現実的な身体イメージを描いている場合などに、子どもの自尊感情に対しても強力な影響力を持ちうる。国は、適切な規制を行なうこと、ならびに、企業に対し、行動規範を遵守し、かつ親および子どもが消費者として十分な情報に基づく決定を行なえるようにする明瞭かつ正確な製品表示および製品情報を用いるよう奨励することにより、宣伝および広告が子どもの権利に悪影響を与えないことを確保するべきである。 60.デジタルメディアは特段の懸念の対象である。多くの子どもは、インターネットの利用者であると同時に、ネットいじめ、ネットを通じての勧誘、人身取引またはインターネットを通じた性的な虐待および搾取のような暴力の被害者ともなりうるためである。企業はこのような犯罪行為に直接関与しているわけではないかもしれないが、その行動を通じてこれらの権利侵害に加担する可能性はある。たとえば、インターネット上で操業する旅行代理店によってセックス・ツーリズム活動の情報交換および計画が可能になるので、児童セックス・ツーリズムがこれらの代理店によって促進される可能性がある。児童ポルノは、インターネット企業およびクレジットカード業者によって間接的に促進されうる。国は、子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書上の義務を履行するとともに、子どもがリスクに対応し、かつどこに助けを求めればよいか知ることができるよう、ウェブ関連の安全に関する、年齢にふさわしい情報を子どもに提供するべきである。国は、情報通信技術産業が子どもを暴力および不適切な資料から保護するための十分な措置を発展させかつ整備するよう、当該産業との調整を図るよう求められる。 2.執行措置 61.一般的に、子どもにとってもっとも重大な問題となるのは、企業を規制する法律が実施されず、または十分に執行されないことである。効果的な実施および執行を確保するために国が採用すべき措置としては、以下を含む多くのものがある。 (a) 子どもの権利に関連する基準(健康および安全、消費者の権利、教育、環境、労働ならびに広告および宣伝に関するもの等)の監督を担当する規制機関を強化することにより、これらの機関が、苦情申立てを監視しおよび調査しならびに子どもの権利侵害に対して救済を提供しおよび執行するための十分な権限および資源を保持するようにすること。 (b) 子どもの権利と企業に関する法令を、子どもおよび企業を含む関係者に対して普及すること。 (c) 条約および企業と子どもの権利に関するその議定書〔訳者注/「条約およびその選択議定書に掲げられた企業と子どもの権利に関する規定」の意か〕、国際人権基準および関連国内法が正しく適用されることを確保し、かつ国内判例の発展を促進する目的で、裁判官および他の行政官ならびに弁護士および法律扶助の提供に従事する者の研修を実施すること。 (d) 司法的または非司法的機構を通じた効果的な救済措置を提供し、かつ司法に効果的にアクセスできるようにすること。 3.子どもの権利と企業によるデュー・ディリジェンス/相当の注意 62.企業が子どもの権利を尊重することを確保するための措置をとる義務を履行するため、国は、企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うよう要求するべきである。そうすることにより、企業として自社が子どもの権利に与える影響を特定し、防止しかつ緩和すること(当該企業の事業関係全体および自社の世界的操業全体においてこのような取り組みを行なうことも含む)が確保されよう [24]。操業の性質または操業の状況からして企業が子どもの権利侵害に関与しているおそれが強い場合、国は、より厳格なデュー・ディリジェンス手続および効果的な監視制度を要求するべきである。 [24] UNICEF, Save the Children and Global Compact, Children s Rights and Business Principles (2011) 参照。 63.子どもの権利に関するデュー・ディリジェンスがより一般的な人権デュー・ディリジェンス手続に包含されている場合、条約およびその選択議定書の規定が決定に影響を与えるようにすることが不可欠である。人権侵害を防止しかつ(または)是正するためのいかなる行動計画および措置においても、子どもが受ける異なる影響について特別な考慮がなされなければならない。 64.国は、国有企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払い、かつ自社が子どもの権利に与えた影響についての報告書(定期報告を含む)を公に送達するよう要求することにより、範を示すべきである。国は、企業が子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うことを条件とした、輸出信用機関によるもののような支援およびサービス、開発金融および投資保険を公表することが求められる。 65.大企業は、子どもの権利に関するデュー・ディリジェンスの一環として、子どもの権利への影響に対処するための自社の努力について公表することを奨励され、かつ適当なときは要求されるべきである。このような発表は、入手可能であり、有効であり、かつ諸企業間で比較可能なものであるべきであり、かつ、自社の活動によって子どもに対して引き起こされる可能性がある悪影響および現に生じた悪影響を緩和するために企業がとった措置を取り上げることが求められる。企業は、自社が製造しまたは商品化する製品およびサービスが、奴隷制または強制労働のような深刻な子どもの権利侵害をともなわないものであることを確保するためにとった措置を公表するよう要求されるべきである。報告が義務とされている場合、国は、コンプライアンスを確保するための検証・執行機構を整備することが求められる。国は、子どもの権利に関する望ましい取り組みについての基準を定め、かつそのような取り組みを認めるための手段を創設することにより、報告を支援することもできる。 B.救済措置 66.自己の権利侵害に対する効果的救済を求めるために司法制度にアクセスすることは、子どもにとって、企業が関与している場合にはしばしば困難である。子どもは法的地位を有しないことがあり、その場合には請求を行なえない。子どもおよびその家族は、自己の権利についてならびに救済を求めるために利用可能な機構および手続について知らないことが多く、または司法制度を信頼していない場合がある。国は、企業による刑事法、民事法または行政法の違反を必ずしも調査しないこともある。子どもと企業との間にはきわめて大きな力の不均衡があり、かつ、企業を相手取った訴訟にかかる費用が訴訟を不可能にするほど高いことおよび代理人弁護士を見つけるのが困難であることも多い。企業が関わる事案は法廷外で、かつ発展した判例法がないままに決着をつけられることがしばしばある。司法的先例が説得力を持つ法域の子どもおよびその家族は、結果をめぐる不確定さに鑑み、訴訟の遂行を放棄する可能性がより高い可能性がある。 67.企業の世界的操業を背景として生じた権利侵害について救済を得ることには、特段の困難が存在する。子会社等は保険に加入しておらず、または有限責任しか負っていないかもしれない。多国籍企業が別々の事業体に組織されていることにより、法的責任を明らかにして各事業体に帰することが困難である可能性もある。請求をまとめ、かつその正当性を主張する際に、異なる国々に存する情報および証拠へのアクセスが問題になることもありうる。国外の法域では法律扶助を受けることが困難な場合もあり、また域外請求を行なえないようにする目的でさまざまな法律上および手続上の障害が利用される可能性もある。 68.国は、子どもがいかなる種類の差別もなく効果的な司法機構に実際にアクセスできるよう、社会的、経済的および司法的障壁を取り除くことに焦点を当てるべきである。子どもおよびその代理人に対しては、たとえば学校カリキュラム、ユースセンターまたはコミュニティ基盤型プログラムを通じ、救済措置に関する情報が提供されるべきである。子どもおよびその代理人は独自に手続を開始することが認められるべきであり、かつ、武器の平等を確保するため、企業を相手取って訴訟を起こすにあたって法律扶助ならびに弁護士および法律扶助提供者の支援にアクセスできるべきである。集団訴訟および公益訴訟のような集団的苦情申立ての制度をまだ設けていない国は、企業の行為によって同じような影響を受けている多数の子どもにとっての裁判所へのアクセス可能性を高める手段として、これらの制度を導入するよう求められる。国は、たとえば言語もしくは障害を理由としてまたは年齢が低すぎるために司法へのアクセスを妨げる障壁に直面している子どもに対し、特別な援助を提供しなければならない場合もあろう。 69.年齢は、司法手続に全面的に参加する子どもの権利に対する障壁とされるべきではない。同様に、委員会の一般的意見12号にしたがい、民事手続および刑事手続に関与する子どもの被害者および証人のための特別な体制が発展させられるべきである。さらに、国は、子どもの犯罪被害者および証人が関わる事案における司法についての指針 [25] を実施するよう求められる。秘密保持およびプライバシーが尊重されなければならず、かつ、子どもに対しては、その子どもの成熟度およびその子どもが有している可能性がある発話上、言語上またはコミュニケーション上の困難を正当に重視しながら、手続のあらゆる段階において、進捗状況に関する情報が常に提供されるべきである。 [25] 経済社会理事会決議2005/20により採択されたもの。 70.子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する選択議定書は、国が、企業を含む法人に対しても適用される刑事法を制定するよう要求している。国は、子どもの権利の深刻な侵害(強制労働等)に関わる事案における、企業を含む法人の刑事法上の責任――または同一の抑止効果を有する他の形態の法的責任――の採用を検討するべきである。国内裁判所に対しては、裁判権に関する受け入れられた規則にしたがい、これらの深刻な権利侵害についての裁判権が認められるべきである。 71.調停、斡旋および仲裁のような非司法的機構は、子どもと企業に関わる紛争解決のための有用な代替的選択肢となりうる。これらの機構は、司法的救済に対する権利を損なうことなく利用可能とされなければならない。このような機構は、それが条約およびその選択議定書に一致しており、かつ有効性、迅速性ならびに適正手続および公正性に関する国際的な原則および基準に一致していることを条件として、司法手続と並んで重要な役割を果たしうる。企業が設置する苦情受付機構は、柔軟な、かつ時宜を得た解決策を提供できる可能性があり、かつ、時には、企業の行為について提起された懸念をこのような機構を通じて解決することが子どもの最善の利益にかなうこともあるかもしれない。このような機構は、アクセス可能性、正当性、予見可能性、公平性、権利との両立性、透明性、継続的学習および対話を含む基準 [26] にしたがったものであるべきである。いずれにしても、裁判所、または行政上の救済措置その他の手続の司法審査にはアクセスできることが求められる。 [26] 人権と多国籍企業その他の企業の問題に関する事務総長特別代表(ジョン・ラギー)報告書「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護・尊重・救済』枠組みの実施」(A/HRC/17/31)、指導原則31。 72.国は、子ども個人もしくは子どもの集団またはその代理人として行動する他の者が、企業の活動および操業との関連で国が子どもの権利を十分に尊重し、保護しかつ充足しなかった場合の救済を得られるよう、国際的および地域的人権機構(通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を含む)へのアクセスを容易にするためにあらゆる努力を行なうべきである。 C.政策措置 73.国は、子どもの権利を理解し、かつ全面的に尊重する企業文化を奨励するべきである。この目的のため、国は、条約を実施するための国家的な政策枠組みの全般的文脈に子どもの権利と企業の問題を含めるよう求められる。国は、企業が自社の企業活動の文脈において、また国境を越えて操業している場合には国外での操業、製品またはサービスおよび活動と関連した事業関係において子どもの権利を尊重することに関する政府としての期待を明示的に明らかにした指針を策定するべきである。これには、企業のあらゆる活動および操業における暴力を絶対に許さない政策の実施を含めることが求められる。国は、必要なときは、企業の責任に関する関連の取り組みの参考例を明らかにし、かつこのような取り組みを支持するよう奨励するべきである。 74.多くの状況下で経済の大きな部分を占めているのは中小企業であり、国として、これらの企業に対し、不必要な経営上の負担を回避しながら子どもの権利を尊重しかつ国内法を遵守する方法についての、容易に利用可能であり、かつこれらの企業にふさわしい指針および支援を提供することがとりわけ重要である。国はまた、より規模の大きな企業に対し、自社のバリューチェーン全体で子どもの権利を強化するために中小企業への影響力を活用するよう奨励することも求められる。 D.調整措置および監視措置 1.調整 75.条約およびその選択議定書を全面的に実施するためには、政府省庁間で、かつ地方から広域行政圏および中央に至るまでの諸段階の政府間で、部門横断型の調整が効果的に行なわれなければならない [27]。一般的に、企業政策および企業実務に直接関与している省庁は、子どもの権利を直接担当している省庁とは別に活動している。国は、企業法および企業実務を形づくる政府機関および議員が子どもの権利に関わる国の義務を知っていることを確保しなければならない。これらの政府機関および議員は、法律および政策を策定する際ならびに経済、貿易および投資に関する協定を締結する際に条約の全面的遵守を確保する備えを整えられるよう、関連の情報、研修および支援を必要とすることがあろう。国内人権機関は、子どもの権利および企業に関わっている種々の政府部局の連携を図る触媒として、重要な役割を果たしうる。 一般的意見5号、パラ37。 2.監視 76.国は、企業によって行なわれまたは助長された条約およびその選択議定書の違反(企業の世界的操業のなかで行なわれまたは助長された違反を含む)を監視する義務を負う。このような監視は、たとえば、問題を特定しかつ政策の参考とするために活用できるデータを収集すること、人権侵害を調査すること、市民社会および国内人権機関と連携すること、ならびに、自社が子どもの権利に及ぼす影響に関する企業の報告を実績評価のために活用することによって企業に公的な説明責任を負わせることを通じて、達成可能である。とくに、国内人権機関は、たとえば違反に関する苦情の受理、調査および調停、大規模な権利侵害に関する公的調査の実施、紛争状況下での調停、ならびに、条約の遵守を確保するための法律の見直しに関与することができる。必要なときは、国は、国内人権機関の立法上の権限を拡大して子どもの権利と企業の問題を含めるべきである。 77.国は、条約およびその選択議定書を実施するための国家的な戦略および行動計策を策定する際、企業の活動および操業において子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するために必要な措置への明示的言及を含めるべきである。国はまた、企業の活動および操業における条約の実施の進展を監視することも確保するよう求められる。このような監視は、子どもの権利に関する事前および事後の影響評価を通じて内部的に達成することも、議会委員会、市民社会組織、職能団体および国内人権機関のような他の機関との連携を通じて達成することも可能である。監視の一環として、企業が自分たちの権利に及ぼす影響に関する意見を子どもに直接尋ねることが求められる。若者評議会および若者議会、ソーシャルメディア、学校評議会および子ども団体のような、協議のためのさまざまな機構を活用することが可能である。 3.子どもの権利影響評価 78.すべての行政段階における企業関連の法律および政策の策定および実施において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保するためには、継続的な子どもの権利影響評価が必要である。これにより、子どもおよびその権利の享受に影響を与える、企業関連のいかなる政策、法令、予算またはその他の行政決定の提案についてもその影響を予測することが可能になる [28] とともに、法律、政策およびプログラムが子どもの権利に与える影響の継続的な監視および事後評価が補完されるはずである。 [28] 一般的意見5号、パラ45。 79.子どもの権利影響評価の実施にあたっては、さまざまな方法論および実践を開発することができる。これらの方法論および実践においては、最低限、条約およびその選択議定書の枠組み、ならびに、委員会が明らかにした関連の総括所見および一般的意見が活用されなければならない。国が、企業関連の政策、立法または行政実務に関してより幅広い影響評価を実施する際には、これらの評価において、条約およびその選択議定書の一般原則が基調とされ、かつ、検討中の措置が子どもたちに及ぼす種々の影響について特別な考慮が払われることを確保するべきである [29]。 [29] 一般的意見14号、パラ99。 80.子どもの権利影響評価は、特定の企業または部門の活動によって影響を受けるすべての子どもへの影響について検討するために活用できるが、措置が一部のカテゴリーの子どもに与える異なる影響についての評価を含めてもよい。影響評価そのものを、子ども、市民社会および専門家ならびに関連の政府機関、学術的調査研究および国内外で記録された経験から得られた知見に基づいて行なうこともできる。分析の結果として、変更、代替策および改善のための勧告が行なわれるべきであり、また当該分析結果は公に利用可能とされるべきである [30]。 [30] 前掲。 81.プロセスが公平かつ独立であることを確保するため、国は、部外者を指名して評価プロセスを主導させることを検討してもよい。このような対応には重要な利益をもたらしうるものの、国は、結果について最終的に責任を負う当事者として、評価を実施する部外者が有能、誠実かつ公平であることを確保しなければならない。 E.連携措置および意識啓発措置 82.条約上の義務を負うのは国である一方、実施の作業には、企業、市民社会および子どもたち自身を含む社会のあらゆる層の関与を得る必要がある。委員会は、国が、企業にはその操業場所を問わず子どもの権利を尊重する責任があることについて、子どもにやさしく、かつ年齢にふさわしい伝達手段等も通じて(たとえば金銭感覚に関する教育の提供を通じて)、すべての子ども、親および養育者に対して情報提供および教育を行なうための包括的戦略を採択しかつ実施するよう、勧告する。条約に関する教育、研修および意識啓発は、人権の保有者としての子どもの地位を強調し、条約のすべての規定の積極的尊重を奨励し、かつ、すべての子ども(ならびに、とくに、被害を受けやすい状況および不利な状況に置かれた子ども)に対する差別的態度に異議を申立てかつこれを根絶する目的で、企業を対象としても行なわれるべきである。このような文脈において、メディアは、企業に関連する子どもの権利についての情報を子どもに提供し、かつ、子どもの権利を尊重する自社の責任に関する意識を企業の間で高めるよう、奨励されるべきである。 83.委員会は、国内人権機関が、たとえば望ましい実践のあり方に関する企業向けの指針および方針を策定して普及することにより、条約の規定に関する企業の意識啓発に関与できることを強調する。 84.市民社会は、企業操業の文脈において独立の立場から子どもの権利を促進しかつ保護するうえで、きわめて重要な役割を有している。これには、企業を監視し、かつその説明責任を問うこと、子どもが司法および救済措置にアクセスできるよう支援すること、子どもの権利影響評価に貢献すること、ならびに、子どもの権利を尊重する自社の責任に関する意識を企業の間で高めることが含まれる。国は、独立した市民社会組織、子どもおよび若者が主導する団体、学界、商工会議所、労働組合、消費者団体ならびに職能組織との効果的連携およびこれらの団体への効果的支援を含め、活発かつ鋭敏な市民社会のための条件を確保するべきである。国は、これらの団体およびその他の独立団体への干渉を控え、かつ、子どもの権利と企業に関する公的な政策およびプログラムへのこれらの団体の関与を促進するよう求められる。 VII.普及 85.委員会は、締約国が、議会に対してかつ政府全体で(企業の問題に取り組んでいる省庁および自治体/地方レベルの機関、ならびに、開発援助機関および在外公館など貿易および国外投資を担当する機関を含む)この一般的意見を広く普及するよう勧告する。この一般的意見は、国境を超えて操業している企業を含む企業ならびに中小企業およびインフォーマル部門の関係者に対しても、普及されるべきである。また、子どものためにおよび子どもとともに活動している専門家(裁判官、弁護士および法律扶助関係者、教職員、後見人、ソーシャルワーカー、公立および私立の福祉施設の職員を含む)ならびに子ども全員および市民社会に対しても、この一般的意見を配布しかつ周知することが求められる。そのためには、この一般的意見を関連の言語に翻訳すること、アクセスしやすく、かつ子どもにやさしい翻案版を利用可能とすること、この一般的意見の意味合いおよび最善の実施方法について討議するためのワークショップおよびセミナーを開催すること、ならびに、関連するすべての専門家の養成および研修にこの一般的意見を編入することが必要となろう。 86.国は、委員会に対する定期的報告に、直面している課題、ならびに、企業の活動および操業との関係で子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足するためにとった措置(国内的措置および適当な場合には国境を越えてとった措置の双方)についての情報を含めるべきである。 更新履歴:ページ作成(2014年3月23日)。
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子どもの権利委員会・一般的意見20号:思春期における子どもの権利の実施(前編) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 CRC/C/GC/20(2016年12月6日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-6) II.目的(パラ7) III.思春期の子どもに焦点を当てることの正当性(パラ8-13) IV.条約の一般原則(パラ14-25)A.発達に対する権利(パラ15-20) B.差別の禁止(パラ21) C.最善の利益(パラ22) D.意見を聴かれる権利および参加権(パラ23-25) V.特別な注意を必要とする思春期の子ども(パラ26-36) VI.一般的実施措置(パラ37) VII.子どもの定義(パラ38-40) VIII.市民的権利および自由(パラ41-48) IX.子どもに対する暴力(パラ49) → 思春期の子どもの権利 後編 X.家庭環境および代替的養護(パラ50-55) XI.基礎保健および福祉(パラ56-67) XII.教育、余暇および文化的活動(パラ68-75) XIII.特別な保護措置(パラ76-88) XIV.国際協力(パラ89) XV.普及(パラ90) I.はじめに 1.子どもの権利条約は、子どもを18歳未満のすべての者(ただし、子どもに適用される法律の下でより早く成年に達した者を除く)と定義するとともに、国は、いかなる種類の差別もなく、自国の管轄内にある子ども1人ひとりに対し、条約に掲げられた権利を尊重しかつ確保するべきであると強調している。条約では18歳未満のすべての者の権利が認められているが、権利の実施にあたっては、子どもの発達状況および発達しつつある能力を考慮に入れることが求められる。思春期の子どもの権利の実現を確保するためにとられるアプローチは、より年少の子どもを対象としてとられるアプローチとは相当に異なるのである。 2.思春期は、機会、能力、大望、エネルギーおよび創造性の増進を特質とするライフステージであるが、あわせて相当の脆弱性をもその特質としている。思春期の子どもは変革の主体であり、かつ、その家族、コミュニティおよび国に前向きに貢献できる可能性を持った重要な資産および資源である。思春期の子どもは、世界的に、保健・教育キャンペーン、家族支援、ピアエデュケーション、コミュニティ開発の取り組み、参加型予算編成および創造的芸術を含む多くの領域で前向きな活動に従事しており、また平和、人権、環境の持続可能性および気候の公平性に向けた貢献を行なっている。思春期の子どもの多くはデジタル環境およびソーシャルメディア環境の最前線に立っているが、これらの環境は、思春期の子どもの教育、文化および社会的ネットワークにおいてますます中心的な役割を果たすようになっているとともに、政治参加および説明責任の監視という観点からも可能性を有している。 3.委員会の見たところ、思春期の子どもの可能性は、締約国が、これらの子どもが自己の権利を享受できるようにするために必要な措置を認識せずまたはこのような措置への投資を行なわないために、広く損なわれている。年齢、性別および障害によって細分化されたデータはほとんどの国で利用可能となっておらず、政策の参考とし、欠点を明らかにし、かつ思春期の子どものための適切な資源の配分を支えることができていない。子どもまたは若者を対象とする一般的な政策は、思春期の子どものさまざまな多様性に対応していないことが多く、これらの子どもの権利の実現を保障するためには不十分である。不作為および失敗のコストは高い。情緒的安定、健康、セクシュアリティ、教育、スキル、レジリエンスおよび権利の理解という観点から思春期に整えられた基礎は、個々の最適な発達にとってのみならず、現在および将来の社会的・経済的発展にとっても深甚な影響を及ぼすことになろう。 4.委員会は、この一般的意見において、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」も認識しながら、思春期において子どもの権利の実現を確保するために必要な措置についての指針を各国に提示する。ここで強調されるのは人権を基盤とするアプローチの重要性であり、これには、思春期の子どもの尊厳および主体性の承認・尊重、思春期の子どものエンパワーメント、市民性および自分自身の生活への積極的参加、最適な健康、ウェルビーイングおよび発達の促進、ならびに、思春期の子どもの権利を差別なく促進し、保護しかつ充足していくことに対する決意が含まれる。 5.委員会は、思春期の定義が容易ではないこと、および、個々の子どもが成熟に至る年齢もさまざまであることを認める。第二次性徴が表れる年齢は男女で異なっており、またさまざまな脳機能が成熟する時期も異なる。子ども期から成人期へと移行していく過程は文脈および環境の影響を受けるのであり、このことは、各国の国内法において思春期の子どもに対する文化的期待が著しく異なっており、大人の活動への参入についてもさまざまな基準が定められていること、および、国際機関も思春期を定義するために多様な年齢幅を採用していることに表れている。したがって、この一般的意見では思春期の定義は試みないこととし、データ収集における整合性を促進する目的で、子ども期のうち10歳から18歳の誕生日に至るまでの期間に焦点を当てる [1]。 [1] www.who.int/maternal_child_adolescent/topics/adolescence/dev/en/ 参照。 6.委員会は、委員会の一般的意見のいくつか、とくに思春期の健康と発達、HIV/AIDS、女性と子どもにとって有害な慣行の根絶、保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもならびに少年司法に関連するものが、思春期の子どもについて特段の共振性を有していることに留意する。委員会は、デジタルメディアと子どもの権利に関する一般的討議を受けてまとめられた勧告が、思春期の子どもにとってとりわけ重要であることを強調するものである。この一般的意見は、思春期のすべての子どもとの関連で条約を全体としてどのように理解しかつ実施しなければならないかについての概要を示すために作成されたものであり、他の一般的意見および一般的討議の勧告を受けてまとめられた文書とあわせて理解することが求められる。 II.目的 7.この一般的意見の目的は次のとおりである。 (a) 各国に対し、思春期の子どもの権利の実現と一致する包括的な思春期の発達を促進するために必要な立法、政策およびサービスについての指針を示すこと。 (b) 思春期によって与えられる機会および思春期のあいだに直面する課題についての意識を高めること。 (c) 思春期の子どもの発達しつつある能力およびそれが思春期の子どもの権利の実現にとって有する意味合いについての理解および尊重の念を増進させること。 (d) 思春期の子どもをいっそう目に見える存在とし、かつ思春期の子どもについての意識を高めること、および、思春期の子どもが成長していく過程全体を通じてその権利を実現できるようにするために投資することの正当性を強化すること。 III.思春期の子どもに焦点を当てることの正当性 8.委員会は、思春期の子どもの権利の実現を促進し、前向きかつ漸進的な社会変革に対して思春期の子どもが行ないうる貢献を強化し、かつ、グローバル化および複雑さの度を増しつつある世界において、子ども期から成人期への移行の際に思春期の子どもが直面する課題を克服していくために思春期の子どもに焦点を当てることが強力な正当性を有することについて、締約国の注意を喚起する。 9.思春期の子どもは急速な発達局面に位置している。思春期における発達上の変化の重要性は、乳幼児期に生じる変化と同程度にはまだ広く理解されていない。思春期は、その後の人生のあり方を左右する、人間発達におけるかけがえのない段階であり、急速な脳の発達および身体的発育、認知能力の増進、第二次性徴および性的意識の開始ならびに新たな能力、強さおよびスキルの出現を特質としている。思春期の子どもは、依存の状態からいっそうの自律の状態へと移行していくなかで、社会における自己の役割に対する期待の増進および友人関係の重要性の高まりを経験する。 10.子どもは、生まれてから2度目の10年間を通過するなかで、自分自身の家族および文化史との複雑な相互作用に基づき、個人およびコミュニティとしての自分なりのアイデンティティの模索および形成を開始するとともに、しばしば言語、芸術および文化を通じて表明される新たな自己意識の生成を、個人としても、友人とのつながりを通じても、経験する。この過程は、多くの子どもにとって、デジタル環境との関わりをめぐって、かつデジタル環境による示唆および影響を相当に受けながら、進んでいくものである。アイデンティティの構築および表現の過程は、思春期の子どもにとってはとりわけ複雑なものとなる。思春期の子どもは、マイノリティ文化と主流文化とのあいだに隘路をつくり出すからである。 思春期をライフコースの一部として認識する 11.すべての子どもの最適な発達を子ども期全体を通じて確保するためには、人生の各期間がその後の段階に与える影響を認識する必要がある。思春期は、それ自体が子ども期における貴重な時期のひとつではあるが、ライフチャンスを高めるための移行および機会がともなうきわめて重要な時期でもある。乳幼児期の前向きな支援介入および経験は、乳幼児が思春期に到達していく際の最適な発達を促進することにつながる [2]。ただし、若者に対するいかなる投資も、思春期全体を通じた子どもの権利に対して十分な注意が向けられなければ無駄になってしまうおそれがある。さらに、思春期における前向きかつ支援的な機会は、乳幼児期にこうむった危害の影響の一部を相殺し、かつ、将来の被害を緩和するためのレジリエンスを構築する目的で活用することが可能である。そこで委員会は、ライフコースの視点の重要性を強調する。 [2] 乳幼児期における子どもの権利の実施に関する子どもの権利委員会の一般的意見7号(2005年)、パラ8参照。 環境の変化 12.思春期に達するということは、デジタル環境によって強化されまたは悪化させられたさまざまなリスク(有害物質の使用および有害物質への依存、暴力および虐待、性的もしくは経済的搾取、人身取引、移住、過激化またはギャングもしくは民兵への加入など)にさらされることを意味しうる。思春期の子どもが成人期へと近づくにつれて、地域的および国際的課題(貧困および不平等、差別、気候変動および環境悪化、都市化および移住、高齢化社会、学校での成績に関するプレッシャーならびに高まりつつある人道上および治安上の危機など)に取り組むための適切な教育および支援が必要となる。国際的移住が増加した結果、不均質性が高まった多民族社会で成長していくためには、理解、寛容および共生のための能力の強化も必要である。これらの課題を克服しまたは緩和し、思春期の子どもを排除しかつ周縁化させる機能を果たしている社会的動因に対応し、かつ、課題が多く変化しつつある社会環境、経済的環境およびデジタル環境に立ち向かっていくための備えを整える思春期の子どもの能力を強化するための措置に、投資していく必要がある。 健康上のリスクをともなう時期 13.思春期には他の年齢層に比べて死亡率が総体的に低いという一般的特質があるものの、思春期における死亡および疾病のリスクは現実のものであり、これには出産、安全性を欠いた中絶、交通事故、性感染症(HIVを含む)、個人間暴力による受傷、精神保健上の問題および自殺が含まれる。いずれも特定の行動と関連するものであり、部門を横断した連携が必要である。 IV.条約の一般原則 14.条約の一般原則は、実施過程のあるべき姿を映し出すレンズであり、かつ、思春期における子どもの権利の実現を保障するために必要な措置を判断する際の指針として機能するものである。 A.発達に対する権利 建設的かつホリスティックなアプローチ 15.委員会は、思春期およびこれに関連する特質を、子ども期の建設的な発達段階として評価することの重要性を強調する。委員会は、思春期の否定的なとらえ方が広がっているために、思春期の子どもの権利を保障し、かつその身体的、心理的、霊的、社会的、情緒的、認知的、文化的および経済的能力の発達を支援するための最適な環境を構築していくことを決意するのではなく、問題に焦点を当てた視野の狭い介入およびサービスが行なわれていることを遺憾に思うものである。 16.各国は、国以外の主体とともに、思春期の子どもたち自身と対話しかつこれらの子どもの関与を得ることを通じて、思春期の固有の価値が認知される環境を促進するとともに、思春期の子どもが豊かに成長すること、自己の新たに生じつつあるアイデンティティ、信条、セクシュアリティおよび機会を模索すること、リスクと安全とのバランスをとること、十分な情報に基づいて自由かつ前向きな決定および人生の選択を行なうための能力を構築していくことならびに成人期への移行をうまくやりとげることを援助するための措置を導入するべきである。これらの機会を阻害する障壁に対応しつつ、あらかじめ備わっている強さに立脚し、かつ思春期の子どもが自己および他者の人生に対して行ないうる貢献を認めるアプローチが必要とされる。 17.思春期の子どものレジリエンスおよび健康的発達を促進することがわかっている要因としては次のものがある――(a)人生における重要な大人との強い関係およびこのような大人からの支援、(b)参加および意思決定の機会、(c)問題解決および対処のスキル、(d)安全かつ健康的な地域環境、(e)個性の尊重ならびに(f)友情を構築しかつ維持する機会である。委員会は、思春期の子どもがこのような社会的資産を構築しかつ享受する機会を得ることにより、心身の健康の維持、リスクをともなう行動の回避、不運な出来事からの回復、学校における成功、寛容の実践、友情の構築およびリーダシップの発揮等の手段によって自己の権利に貢献する能力が高められることを強調する。 発達しつつある能力の尊重 18.条約第5条は、親の指示および指導が子どもの発達しつつある能力に一致する方法で行なわれることを要求している。委員会の定義によれば、発達しつつある能力とは、子どもが漸進的に能力および理解を身につけ、かつ、責任を引き受けかつ自己の権利を行使する主体性の水準を高めていく成熟と学習のプロセスを扱った、権利行使を可能にする原則 [3] である。委員会は、子ども自身の知識および理解力が高まるにつれて、親は指示および指導を注意喚起に、そして徐々に対等な立場での意見交換に変えていかなければならないと主張してきた [4]。 [3] 前掲、パラ17。 [4] 意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)、パラ84参照。 19.委員会は、高まりつつある水準の責任を行使する権利によって、保護を保障する国の義務 [5] が不要になるわけではないことを強調する。思春期の子どもは、家族またはその他の養育環境の保護から徐々に脱することにより、相対的な経験不足および権力の欠如とあいまって、権利侵害を受けやすい状態に置かれうる。委員会は、潜在的リスクの特定ならびに当該リスクを緩和するためのプログラムの策定および実施に思春期の子どもの関与を得ることが、より効果的な保護につながることを強調するものである。意見を聴かれる権利、権利侵害に異議を申し立てる権利および救済を求める権利を保障されることにより、思春期の子どもは自分自身の保護について漸進的に主体性を発揮できるようになる。 [5] たとえば条約第32~39条参照。 20.思春期の子どもの発達しつつある能力の尊重および適切な水準の保護とのあいだで適切なバランスをとろうと努める際には、意思決定に影響を及ぼすさまざまな要因を考慮するべきである。このような要因としては、関連するリスクの水準、搾取の可能性、思春期の子どもの発達に関する理解、能力および理解力は必ずしもすべての分野にわたって同一のペースで発達するわけではないという認識、ならびに、個人の経験および能力に関わる認識などがある。 B.差別の禁止 21.委員会は複数の形態の差別を特定してきたが、その多くは思春期において特有の意味合いを有しており、部署の枠を超えた分析および狙いを明確にしたホリスティックな措置を必要とするものである [6]。思春期そのものが差別の源となりうる。この時期、思春期の子どもは、そのような地位の直接的結果として、危険なもしくは好ましくない存在として扱われ、収容され、搾取されまたは暴力にさらされる場合があるのである。逆説的なことに、思春期の子どもは、能力を欠いており、自分の人生について決定を行なうことができない存在として扱われることも多い。委員会は、思春期のすべての男女のあらゆる権利が平等に尊重されかつ保護されること、および、あらゆる集団の思春期の子どもに対する、あらゆる理由に基づく直接間接の差別につながる条件を減少させまたは解消するために包括的かつ適切な積極的差別是正措置が導入されることを確保するよう、各国に促すものである [7]。各国は、異なる取扱いについての基準が合理性および客観性を有しており、かつ当該取扱いが条約に基づく正当な目的の達成を目指すものである場合には、すべての異なる取扱いが差別になるわけではない [8] ことを想起するよう求められる。 [6] www2.ohchr.org/english/issues/women/rapporteur/docs/15YearReviewofVAWMandate.pdf 参照。 [7] 条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)、パラ12参照。 [8] 差別の禁止に関する自由権規約委員会の一般的意見18号(1989年)、パラ147参照。 C.最善の利益 22.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利は実体的権利、法的解釈原理および手続規則であり、かつ個人としての子どもおよび集団としての子どもたちの双方に適用されるものである [9]。立法、政策、経済的および社会的計画策定、意思決定ならびに予算上の決定を含む条約のあらゆる実施措置は、子どもに関わるすべての活動において思春期の子どもを含む子どもの最善の利益が第一次的に考慮されることを確保する手続にしたがってとられるべきである。委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての子どもの権利委員会の一般的意見第14号(2013年)において、子どもの意見が、その発達しつつある能力と一致する方法で [10]、かつその子どもの特質を考慮に入れながら考慮されるべきであることを強調している。締約国は、思春期の子どもが理解力および成熟度を身につけるにつれてその意見が適切に重視されることを確保しなければならない。 [9] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての子どもの権利委員会の一般的意見14号(2013年)、パラ6参照。 [10] 一般的意見12号、パラ70-74および14号、パラ43-45参照。 D.意見を聴かれる権利および参加権 23.条約第12条にしたがい、締約国は、自己に関わるすべての事柄について、その年齢および成熟度にしたがって意見を表明する権利を思春期の子どもに保障し、かつ、たとえば教育、健康、セクシュアリティ、家族生活ならびに司法上および行政上の手続に関わる決定においてその権利が正当に重視されることを確保するための措置を導入するべきである。各国は、学校ならびにコミュニティ、地方、国および国際社会の各レベルで、思春期の子どもの生活に影響を与えるすべての関連の立法、政策、サービスおよびプログラムの策定、実施および監視に思春期の子どもが関与することを確保するよう求められる [11]。オンライン環境は、思春期の子どもの関与を強化しかつ拡大するための、新たに生じつつある重要な機会を提供してくれる。これらの措置にあわせて、思春期の子どもが申し立てる請求について判断する権限を有する、安全かつアクセスしやすい苦情申立ておよび救済のための機構が導入されるべきであり、かつ、費用援助をともなうまたは無償の法律サービスその他の適切な援助へのアクセスが保障されるべきである。 [11] 一般的意見12号、パラ27参照。 24.委員会は、政治的および市民的関与の手段としての参加の重要性を強調する。思春期の子どもたちは、このような参加を通じて自己の権利の実現のための交渉および主張を行ない、かつ国の説明責任を問うことができるのである。各国は、主体的な市民性の発達において有用である政治的参加の機会を増やすための政策を採用するよう求められる。思春期の子どもは、仲間とつながり、政治的プロセスに関与し、かつ、十分な情報に基づく決定および選択を行なうための主体性の感覚を高めることができるのであり、したがって、デジタルメディアを含むさまざまな手段による参加を可能にする手段である団体の結成について支援を受けられなければならない。国が投票年齢の18歳未満への引き下げを決定するときは、市民性教育および人権教育、ならびに、思春期の子どもの関与および参加を妨げる障壁の特定およびこれへの対応等の手段により、思春期の子どもが主体的市民としての自己の役割を理解し、認識しかつ充足することの支援となるような措置に投資するべきである。 25.委員会は、思春期の子どもが参加権を享有するためにはこの権利に関する大人の理解および意識が重要であることに留意し、国に対し、とくに親および養育者、思春期の子どもとともにおよびこれらの子どものために働く専門家ならびに政策立案および意思決定に携わる関係者を対象とした研修および意識啓発に投資するよう奨励する。思春期の子どもが自分自身の生活およびまわりの人々の生活に対していっそうの責任を引き受けられるようにするため、大人がメンター(良き導き手)およびファシリテーターになれるようにするための支援が必要である。 V.特別な注意を必要とする思春期の子ども 26.思春期の子どもの一部の集団は、差別および社会的排除を含む複合的な脆弱性および権利侵害の対象にとりわけされやすくなる場合がある。思春期の子どもに焦点を当てた立法、政策およびプログラムに関わってとられるすべての措置において、相互に交差しあう権利侵害およびそれが関係の思春期の子どもに及ぼす複合的悪影響が考慮に入れられるべきである。 女子 27.ジェンダーの不平等は思春期にいっそう著しくなる。女子に対する差別、不平等およびステレオタイプ化の表れ方が激しさを増すことが多く、それがいっそう深刻な女子の権利侵害(児童婚および強制婚、若年妊娠、女性性器切除、ジェンダーを理由とする身体的、精神的および性的暴力、虐待、搾取ならびに人身取引を含む)につながる [12]。女子の地位を低めている文化的規範のために、家庭に閉じこめられ、中等教育および高等教育にアクセスできず、レジャー、スポーツ、レクリエーションおよび所得創出活動の機会を限定され、文化的生活および芸術にアクセスできず、かつ、負担の大きな家事および子どもの世話の責任を負わされる可能性が高まりうる。多くの国で、健康および生活満足度の指標の水準は女子のほうが男子よりも低く報告されており、その差は年齢とともに徐々に広がっていく。 28.各国は、市民社会、女性および男性、伝統的指導者および宗教的指導者ならびに思春期の子どもたち自身を含むすべての関係者と協力しながら、女子に対する直接間接の差別に対処していく目的で、女子のエンパワーメントを促進するための積極的措置に投資し、家父長制的その他の有害なジェンダー規範およびステレオタイプ化を問い直し、かつ、法改正を進めていかなければならない。あらゆる法律、政策およびプログラムにおいて、男子との平等を基礎として女子の権利を保障するための明示的措置が必要とされる。 [12] A/HRC/26/22、パラ21参照。 男子 29.伝統的な男らしさの概念ならびに暴力および支配と結びつけられたジェンダー規範は、男子の権利を阻害することにつながりうる。これには、有害な通過儀礼を課されること、暴力にさらされること、ギャング、民兵〔または〕過激主義的グループへの加入を強制されることならびに人身取引の対象とされることなどが含まれる。男子が身体的および性的虐待ならびに搾取の被害を受けやすいことを否定すれば、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる情報、物資およびサービスに男子がアクセスしようとする際に広範かつ相当な障壁が生じ、結果として保護サービスが存在しないことにもなりうる。 30.委員会は、国に対し、このような権利侵害に対処するための措置を導入するよう促すとともに、男子に対する否定的な見方を問い直し、建設的な男らしさを促進し、マチズモに基づいた文化的価値観を克服し、かつ、男子が経験する虐待のジェンダーの側面がいっそう認識されることを促進するよう、奨励する。各国はまた、ジェンダー平等を達成するためにとられるすべての措置において、女子および女性のみならず男子および男性の関与も得ていくことの重要性も認識するべきである。 障害のある思春期の子ども 31.委員会は以前、障害のある多くの子どもが直面している広範な偏見、排除、社会的孤立および差別に光を当てた [13]。障害のある思春期の子どもは、多くの国で、思春期の他の子どもが利用できる機会から排除されているのが通例である。社会的、文化的および宗教的通過儀礼への参加を禁止されることもある。相当数の子どもが中等教育もしくは高等教育または職業訓練へのアクセスを否定されており、その結果、将来就労先を見つけ、かつ貧困に陥らないようにするために必要な社会的、教育的および経済的スキルを獲得できないでいる。障害のある思春期の子どもは、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる情報およびサービスへのアクセスを広く否定されるとともに、権利の直接の侵害であり、かつ拷問または陵虐にも相当する場合がある強制的な不妊手術または避妊手術の対象とされる場合もある [14]。障害のある思春期の子どもは、身体的および性的暴力ならびに児童婚もしくは強制婚の被害を不均衡なほど受けやすい状況に置かれており、かつ司法または救済措置へのアクセスを恒常的に否定されている [15]。 [13] 障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)、パラ8-10参照。 [14] A/HRC/22/53 参照。 [15] A/66/230、パラ44-49参照。 32.締約国は、条約第23条および障害のある子どもの権利についての一般的意見9号(2006年)に掲げられた勧告と一致する方法で、このような障壁を克服し、障害のある思春期の子どもの権利の平等な尊重を保障し、その全面的インクルージョンを促進し、かつ思春期から成人期への効果的な移行を促進するための措置を導入するべきである。加えて、障害のある思春期の子どもに対し、自己に関わるすべての事柄への積極的参加を促進する目的で、支援を受けながら意思決定を行なう機会を提供することも求められる。 レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子ども 33.レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもは、虐待および暴力を含む迫害、スティグマの付与、差別、いじめ、教育および訓練からの排除に直面し、かつ、家族および社会による支援を受けられず、またはセクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わるサービスおよび情報にアクセスできないのが通例である [16]。極端な場合には、性的攻撃および強姦ならびに死にさえ直面している。これらの経験に関連する形で、自尊感情の低さならびにうつ病罹患率、自殺率およびホームレス率の高さが生じている。 [16] 子どもの権利委員会ならびにその他の国連人権機構および地域人権機構による2015年5月13日付の声明を参照。www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=15941 LangID=E より入手可能。 [17] 前掲。 34.委員会は、思春期のすべての子どもに、表現の自由に対する権利ならびに自己の身体的および心理的不可侵性、ジェンダーアイデンティティならびに高まりつつある自律性を尊重される権利があることを強調する。委員会は、性的指向の修正を試みるための「治療」と称されるもの、および、インターセックスである思春期の子どもに対する強制的な手術または治療が押しつけられていることを非難するものである。委員会は、各国に対し、そのような慣行を解消し、性的指向、ジェンダーアイデンティティまたはインターセックスであることを理由として個人を犯罪者として扱いまたは差別するすべての法律を廃止し、かつ、これらの理由による差別を禁止する法律を採択するよう、促す。各国はまた、公衆の意識啓発を図ることならびに安全および支援のための措置を実施することにより、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもをあらゆる形態の暴力、差別またはいじめから保護するための効果的行動もとるべきである。 マイノリティおよび先住民族である思春期の子ども 35.マイノリティおよび先住民族の集団の出身である思春期の子どもの文化、価値観および世界観に対する注意および敬意が十分でないことは、差別、社会的排除、周縁化および公共空間での包摂拒否につながりうる。これにより、マイノリティおよび先住民族である思春期の子どもは、貧困、社会的不公正、精神保健上の問題(不均衡なほど高い自殺率を含む)、学業成績の低迷および刑事司法制度における拘禁の多さの被害をいっそう受けやすくなる。 36.委員会は、締約国に対し、マイノリティおよび先住民族のコミュニティの出身である思春期の子どもが自己の文化的アイデンティティを享有し、かつ自己の文化の長所に立脚しながら家族生活およびコミュニティ生活に積極的に貢献していけるようにするため、思春期の女子の権利に特段の注意を払いながら、これらの子どもを支援するための措置を導入するよう促す。その際、各国は、先住民族の子どもとその条約上の権利に関する委員会の一般的意見11号(2009年)に掲げられた包括的な勧告に対応するべきである。 VI.一般的実施措置 37.条約の実施に関する一般的措置(第4条、第42条および第44条第6項)についての一般的意見5号(2003年)および子どもの権利実現のための公共予算(第4条)についての一般的意見19号(2016年)にしたがい、委員会は、思春期における子どもの権利の実現のための枠組みを確立するために次の措置を実施する締約国の義務に対して注意を喚起する。次に掲げるものを含むこれらのすべての措置を策定するにあたっては、思春期の子どもたち自身の経験および視点を十全に認識し、かつ真剣に受けとめるべきである。 (a) 思春期の子どもが直面している権利侵害の根底にある構造的な社会的および経済的原因に対応し、かつ政府省庁全体で調整のとれたアプローチを確保するための、思春期の子どもにもっぱら焦点を当てた、かつ条約に根差した、包括的および分野横断的な国家的戦略。 (b) 立法、政策およびサービスにおいて思春期の子どもの権利が尊重されることを確保するための、実施状況の監視。 (c) 思春期の子どもたちの生活を可視化するための、少なくとも年齢、性別、障害、民族および社会経済的状況ごとに細分化されたデータの収集。委員会は、各国が、思春期の子どもの権利の実施における進展を監視するために用いる共通の指標について合意を形成するよう勧告する。 (d) 競合しあう優先的支出の均衡を図り、かつ十分性、有効性、効率性および平等の原則を遵守する際に思春期の子どもたちについて正当な検討が行なわれることを確保するための、透明な予算上のコミットメント。 (e) 思春期の子どもとともにおよびこのような子どものために働くすべての専門家を対象として実施する、子どもの発達しつつある能力にしたがいながら思春期の子どもとともに働くために必要な能力に焦点を当てた、条約および条約関連の義務に関する研修。 (f) とくに学校カリキュラム、メディア(デジタルメディアを含む)および広報資料を通じて行なう、子どもの権利およびその行使の方法についてのアクセスしやすい情報の普及。その際、周縁化された状況に置かれている思春期の子どもに積極的に情報を届けるため、特段の努力を行なうものとする。 VII.子どもの定義 38.条約はジェンダーに基づくいかなる差別も禁じているのであり、年齢制限は女子および男子にとって平等であるべきである。 39.各国は、自己の生活に影響を与える決定についていっそうの責任を引き受けていく思春期の子どもの権利を認める立法を見直しまたは導入するべきである。委員会は、各国が、保護に対する権利、最善の利益の原則および思春期の子どもの発達しつつある能力の尊重と一致する方法で、法律上の最低年齢制限を導入するよう勧告する。たとえば、年齢制限においては、保健サービスもしくは治療、養子縁組に対する同意、名前の変更または家庭裁判所への申立てに関わる決定を行なう権利を認めることが求められる。いずれにせよ、当該最低年齢に達していないいかなる子どもについても、十分な理解力を有していることを実証できる場合には、同意を与えまたは拒否する資格を認められる権利が承認されるべきである。何らかの治療または医療措置については、親または保護者の同意が要件とされているか否かにかかわらず、自発的なかつ十分な情報に基づく思春期の子どもの同意を得ることが求められる。思春期の子どもは、セクシュアル/リプロダクティブヘルスに関わる予防的なまたは急を要する物資およびサービスを求めかつこれにアクセスする能力を有するという法的推定を導入することも検討されるべきである。委員会は、思春期のすべての子どもが、希望する場合、年齢にかかわらず、親または保護者の同意がなくとも秘密裡に医療上の相談および助言にアクセスする権利を有することを強調する。これは医療上の同意を与える権利とは異なるものであり、いかなる年齢制限の対象にもされるべきではない [18]。 [18] 一般的意見12号、パラ101参照。 40.委員会は、締約国に対し、18歳に達していない者にはあらゆる形態の搾取および虐待から引き続き保護される資格があることを認める義務を想起するよう求める。委員会は、関連するリスクおよび危害の度合いに鑑み、婚姻、軍隊への徴募、危険なまたは搾取的な労働への関与ならびにアルコールおよびタバコの購入および消費については、最低年齢制限は18歳とされるべきであることを再確認する。締約国は、性的合意に関する法定年齢を決定する際には、保護と発達しつつある能力とのバランスをとらなければならないことを考慮して、受け入れ可能な最低年齢を定めるべきである。各国は、事実として同意に基づいている非搾取的な性的活動について、年齢の近い思春期の子どもを犯罪者として扱うべきではない。 VIII.市民的権利および自由 出生登録 41.出生登録が行なわれなければ、思春期において、基礎的サービスを受けられないこと、国籍を証明できずまたは身分証明書類を受け取れないこと、搾取または人身取引の危険性が高まること、刑事司法制度および出入国管理制度において必要な保障措置の対象とされないことならびに法定年齢に達しないうちから軍隊に編入されることなど、相当のかつ複雑な追加的問題が生じる可能性がある。出生時または出生直後に登録されなかった思春期の子どもに対しては、遅れての出生証明書および民事登録が無償で提供されるべきである。 表現の自由 42.条約第13条は、子どもが表現の自由に対する権利を有すること、および、当該権利の行使に対しては第13条第2項に定められた制限しか課せないことを確認している。思春期の子どもの発達しつつある能力にしたがって適切な指導を行なう親および養育者の義務は、表現の自由に対する思春期の子どもの権利の妨げとなるべきではない。思春期の子どもには、情報および考えを求め、受け、かつ伝える権利およびそれを普及するための手段(話し言葉、書き言葉および手話ならびに画像および芸術作品のような非言語的表現を含む)を利用する権利がある。表現手段には、たとえば、書籍、新聞、パンフレット、ポスター、横断幕、デジタルメディアおよび視聴覚メディアならびに服装および個人的スタイルが含まれる。 宗教の自由 43.委員会は、締約国に対し、条約第14条に付したいかなる留保も撤回するよう促す。同条は、子どもには宗教の自由に対する権利があることを強調するとともに、子どもに対し、その発達しつつある能力と一致する方法で指示を与える親および保護者の権利および義務を認めたもの(第5条も参照)である。すなわち、宗教の自由に対する権利を行使するのは親ではなく子どもであって、親の役割は、子どもが選択権の行使に関して思春期全体を通じてますます主体的な役割を果たしていくようになるにつれて、必然的に後退する。宗教の自由は、学校その他の施設において、宗教の授業への出席をめぐる選択との関連も含めて尊重されるべきであり、また宗教的信条を理由とする差別は禁じられるべきである [19]。 [19] たとえば、CRC/C/15/Add.194、パラ32および33ならびに CRC/C/15/Add.181、パラ29および30参照。 結社の自由 44.思春期の子どもは、同世代の友人と過ごす時間を増やしたいと考えており、かつそうする必要がある。これに関連する利点は、社会的なものだけに留まらず、人間関係、就労およびコミュニティ参加の成功の基礎となる能力への貢献でもある。こうした時間は、とくに情緒的リテラシー、所属感、紛争解決などのスキルならびにいっそうの信頼感および親密感を構築することにつながる。同世代の友人とのつながりは思春期の発達における基礎的要素であり、その価値は、学校および学習環境、レクリエーション活動および文化的活動ならびに社会的、市民的、宗教的および政治的関与のための機会において認められるべきである。 45.各国は、あらゆる形態の結社および平和的集会の自由に対する思春期の子どもの権利が、女子および男子の双方を対象とする安全な空間の提供等を通じ、条約第15条第2項に定められた制限と一致する方法で全面的に尊重されることを保障するべきである。思春期の子どもが、学校の内外で自分たちの結社、クラブ、団体、議会およびフォーラムを結成し、オンラインネットワークを形成し、政党に加入し、かつ自分たち自身の労働組合に加盟しまたはこれを結成することを、法的に承認することが求められる。人権擁護のために活動している思春期の子ども、とくにジェンダー固有の脅迫および暴力に直面することの多い女子を保護するための措置も導入されるべきである。 プライバシーおよび秘密保持 46.プライバシーに対する権利の重要性は、思春期においてますます高まる。委員会は、たとえば医療上の助言の秘密保持、施設における思春期の子どもの居所および私物、家庭またはその他の形態の養育環境における通信その他の意思疎通ならびに刑事手続に関与させられた子どもの身元等の暴露との関連で、プライバシー侵害についての懸念を繰り返し表明してきた [20]。プライバシーに対する権利はまた、思春期の子どもに対し、教育、保健ケア、子どものケアおよび保護のためのサービス機関ならびに司法制度が保持している自己についての記録にアクセスする権利を認めるものでもある。このような情報は、適正手続上の保障を遵守して、かつ当該情報の受領および使用を法律で認められている者に対してのみ、アクセス可能とされるべきである [21]。各国は、思春期の子どもたちとの対話を通じて、プライバシー侵害(デジタル環境への個人的関与および商業的その他の主体によるデータの利用に関連するものを含む)が生じた場合には確認を行なうことが求められる。各国はまた、思春期の子どものデータの秘密保持およびプライバシーの尊重を、その発達しつつある能力に一致する方法で強化しかつ確保するためにあらゆる適切な措置をとるべきである。 [20] United Nations Children s Fund (UNICEF), Implementation Handbook on the Convention on the Rights of the Child (2007), pp.203-211 参照(www.unicef.org/publications/files/Implementation_Handbook_for_the_Convention_on_the_Rights_of_the_Child_Part_1_of_3.pdf より入手可能)。 [21] プライバシーに対する権利についての自由権規約委員会の一般的意見16号(1988年)、パラ2-4参照。 情報に対する権利 47.情報へのアクセスにはあらゆる形態のメディアが包含されるが、デジタル環境に特段の注意を向ける必要がある。思春期の子どもはますますモバイル技術を利用するようになりつつあり、またデジタルメディアは思春期の子どもがコミュニケーションならびに情報の受け取り、作成および流布を行なう第一次的手段になっているためである。思春期の子どもはとくに、自己のアイデンティティの模索、学習、参加、意見の表明、遊び、交流、政治的関与および就労機会の発見を目的としてオンライン環境を利用している。加えて、インターネットは、健康関連の情報、保護のための支援ならびに助言先および相談先にオンラインでアクセスするための機会を提供してくれるものであり、各国は思春期の子どもたちとのコミュニケーションおよび交流の手段としてこれを活用することが可能である。関連の情報にアクセスできることは、平等に対して相当に前向きな効果を発揮しうる。メディアに関する一般的討議(1996年および2014年)の結果としてまとめられた勧告は、思春期の子どもたちにとってとりわけ重要である [22]。各国は、障害のある思春期の子どもを対象とするアクセシブルな形式の促進等も通じて、思春期のすべての子どもがさまざまな形態のメディアに差別なくアクセスできることを確保し、かつ、デジタル・シティズンシップ〔適切かつ責任あるテクノロジー利用の規範〕への平等なアクセスを支援しかつ促進するための措置をとるよう求められる。思春期の子どものデジタルリテラシー、情報・メディアリテラシーおよび社会的リテラシーのスキルの発達を確保するため、基礎教育カリキュラムの一環として訓練および支援が提供されるべきである [23]。 [22] 1996年の討議については www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2014/DGD_report.pdf を、2014年の討議については www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/Recommendations/Recommendations1996.pdf を参照。 [23] www.ohchr.org/Documents/HRBodies/CRC/Discussions/2014/DGD_report.pdf〔2014年の一般的討議勧告〕、パラ95参照。 48.デジタル環境は思春期の子どもをリスクにさらすことにもなりうる。オンライン上の詐欺、暴力およびヘイトスピーチ、女子ならびにレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーおよびインターセックスである思春期の子どもを対象とした性差別的発言、ネットいじめ、性的搾取、人身取引または児童ポルノを目的とする勧誘、過剰な性的対象化ならびに武装集団または過激主義集団による標的化などである。ただし、そのためにデジタル環境への思春期の子どもによるアクセスが制限されるべきではない。そうではなく、思春期の子どもの安全はホリスティックな戦略を通じて促進されるべきであり、これには、オンライン上のリスクおよび自分の安全を保つための戦略に関わるデジタルリテラシー、オンライン上の人権侵害に対処し、かつ不処罰の状況と闘うための立法および法執行機構の強化、ならびに、親をおよび子どもとともに働く専門家を対象とする研修などが含まれる。各国は、ピアメンタリング等も通じてオンライン上の安全を促進するための取り組みの立案および実施に際し、思春期の子どもたちの主体的関与を確保するよう促される。防止および保護に関するならびに援助および支援の利用しやすさに関する技術的解決策の開発への投資が必要である。各国は、デジタルメディアおよび情報通信技術を利用する際に諸リスクが子どもの権利の及ぼす影響を特定し、防止しかつ緩和する目的で、企業に対し、子どもの権利に相当の注意(デュー・ディリジェンス)を払うことを要求するよう奨励される。 (思春期の子どもの権利 後編に続く) 更新履歴:ページ作成(2016年12月25日)。
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子どものまち「ピンポン横丁」 「こどものまち●●●●●●」は、●●市で年に●回行われている「まち」を模した遊びのプログラム。●●市における子ども達のためのプログラムの一つで、●●●●支援団体や●●●●団体、●●●●等が実施主体となって●●●●達の準備により、実行されている。 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という特徴を持つ。 目次 1概要 2歴史 3仕事ブース 4大人の会議(例) 5子どもの会議(例) 6話題(例) 6.1(始まりの頃の特筆すべき点) 6.2(現在の特筆すべき点) 6.3(外部の協力者) 7参考文献 8関連項目 9外部リンク 概要 こどもNPOの活動拠点で、もと卓球場を併設した民家であるピンポンハウスで開催しているため、規模は小さいが子どもの要求に柔軟に対応でき、ピンポン横丁の企画、運営、開催に至るまでほとんど子どもが主体で決定している。 また、店は事前に募集。 子どもがやりたい店の企画書を提出しMFP(中心メンバー)が決定する。お店の材料費は参加費で賄うため、1店舗の予算も子ども会議で決める。 歴史 第1回 2003年12月23日~25日 第2回 2005年 3月28日~30日 第3回 2006年 3月25日~27日 第4回 2007年 3月31日・4月1日~3日 第5回 2008年 3月27日~29日 仕事ブース 当市のこどものまちの仕事ブースは●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●という特徴を持つ。 例年用意される、または少数回でも特徴的に設置された仕事ブースは、次の通り。 案内係、 役場、 銀行、 職安、 べっこうあめ、 たません、 文房具、 看板や、 看板や、 選挙管理、 町長&秘書、 ピンポン食堂、 相談所、 フリーター、 ホットケーキや、 くじや、 ストラックアウト、 幼稚園、 マッサージ、 木を育てる、 掃除や、 靴並べ、 ラーメン屋、 折染め、 裂き織り、 雑貨や、 化学実験道具貸しや、 漫画喫茶、 新聞社、 折り紙、 クッキーや、 チラシ配り、 ジュースや など 大人の会議(例) こどものまちを主催する大人による会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 子どもの会議(例) こどものまちの主役である子どもによる会議は、●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 ●●月 ●●●●●●として開催 話題 (始まりの頃の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (現在の特筆すべき点) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 (外部の協力者) ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 主催団体 (特非)こどもNPO 2000年1月子どもの参画を理念に発足。2001年3月NPO法人認証。 子どもが自然や地域や人々との協働の体験の中から成長し主体的に生きることを支援するとともに、まちづくりや環境活動などさまざまな分野での子どもの社会参画を推進します。 事務局: 〒458-0031 名古屋市緑区作の山6番地ピンポンハウス Tel/Fax 052-896-4295(ビッグバン) kodomonpo2000@yahoo.co.jp 参考文献 ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●。 関連項目 ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●● ●●●●●●●●● ●●●●●●●●●●●●●●●●●。
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子どもの権利委員会・一般的意見19号:子どもの権利実現のための公共予算(第4条)(後編) (子どもの権利と公共予算 前編より続く) IV.子どもの権利のための公共予算編成の原則 57.前掲第II節で明らかにしたように、委員会は、締約国には、自国の予算編成過程において、子どもの権利を実現するのに十分なやり方で歳入創出および支出管理を進めるための措置をとる義務があることを強調する。委員会は、子どもの権利を実現するための十分な資源の確保を達成するには、条約の一般原則および予算原則(有効性、効率性、公平性、透明性および持続可能性)を考慮することも含め、多くの方法があることを認識するものである。条約の締約国は、子どもの権利を実現する予算上の義務を果たすことについての説明責任を有する。 58.委員会は、条約の一般原則および以下の予算原則を自国の予算編成過程に適用することに関して各国がすでに専門的知見および経験を有していることを認識する。締約国は、優れた実践の共有および交流を進めるよう奨励されるところである。 A.有効性 59.締約国は、子どもの権利の増進につながるような方法で計画、策定、執行およびフォローアップを進めるべきである。締約国は、自国の文脈における子どもの権利の状況を理解することに対して投資するとともに、子どもの権利の実現に関わる課題の克服のために戦略的に立案された立法、政策およびプログラムを策定しかつ実施するよう求められる。締約国は、予算がさまざまな集団の子どもたちにどのような影響を与えているかを常に評価するとともに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもにとくに注意を払いながら、自国の予算決定が最大多数の子どもたちにとって可能なかぎり最善の結果につながることを確保するべきである。 B.効率性 60.子ども関連の政策およびプログラムのために投入される公的資源は、費用に値する価値を確保するような方法で、かつ子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する義務を念頭に置きながら、管理されるべきである。承認された支出は策定された予算にのっとって執行することが求められる。子どもの権利を増進させるための財およびサービスは、透明なやり方でかつ時機を失することなく調達されかつ提供されるべきであり、また適切な質を備えているべきである。さらに、子どもの権利に対して配分された資金は無駄に使用されるべきではない。締約国は、効率的な支出の妨げとなる制度的障壁を克服する努力を行なうべきである。公的資金の監視、評価および監査は、健全な財務管理を促進するチェック・アンド・バランスとなるようなものであることが求められる。 C.公平性 61.締約国は、資源の動員または公的資金の配分もしくは執行を通じ、いかなる子どもまたはいかなるカテゴリーに属する子どもたちも差別してはならない。公平な支出とは、必ずしも子ども1人ひとりに同じ金額を支出することを意味するわけではなく、むしろ子どもたちの実質的平等につながるような支出決定を行なうことを意味する。資源は、平等を促進するため、対象の公正な設定に基づいて用いられるべきである。締約国には、子どもが自己の権利にアクセスするさいに直面する可能性があるすべての差別的障壁を取り除く義務がある。 D.透明性 62.締約国は、厳格な検討に対して開かれた公的財務管理の制度および実践を発展させかつ維持するべきであり、公的資源に関する情報は時宜を得たやリ方で自由に利用可能とされるべきである。透明性は、効率性ならびに汚職および公的予算の誤った管理との闘いに寄与し、ひいては子どもの権利の増進のために利用可能な公的資源を増やすことにつながる。透明性はまた、行政府、立法および市民社会(子どもたちを含む)が予算編成過程に意味のある形で参加できるようにするための前提条件でもある。委員会は、締約国が、子どもに関連する公的な歳入、配分および支出についての情報へのアクセスを積極的に促進すること、ならびに、立法府および市民社会(子どもたちを含む)の継続的関与を支援しかつ奨励する政策を採択することの重要性を強調するものである。 E.持続可能性 63.現在および将来の世代の子どもたちの最善の利益が、あらゆる予算決定において真剣に考慮されるべきである。締約国は、子どもの権利を直接間接に実現することを目的とした政策の採択およびプログラムの実施が継続的に行なわれることを確保するような方法で、歳入を動員し、かつ公的資源を管理することが求められる。締約国が子どもの権利に関連する後退的措置をとれるのは、前掲パラ31で述べたような場合のみである。 V.公共予算における子どもの権利の実施 64.委員会は、本節において、公的予算編成過程を構成する以下の4つの段階との関連でどのように子どもの権利を実現すればよいかについて、より詳細な指針および勧告を提示する。 (a) 計画 (b) 策定 (c) 執行 (d) フォローアップ 〔訳者注/図は略。PDFファイル参照〕 65.本節で焦点を当てるのは国レベルおよび国内下位レベルの公共予算編成過程だが、委員会は、国際協力を通じて条約の実施を促進することも締約国の義務であることを強調する [19]。このような協力は、該当するときには、国レベルおよび国内下位レベルの予算で目に見えるようにされるべきである。 [19] 前掲第II節および条約第45条参照。 66.委員会はまた、条約およびその選択議定書を全面的に実施するためには、予算編成過程全体を通じて部門横断型の、省庁間および機関間の効果的な調整および協力を図ることが重要である点も強調する。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルでそのような調整を維持するために、資源を利用可能としかつ情報システムの整備を図るべきである。 A.計画 1.状況の評価 67.予算の計画のためには、経済状況についてならびに現行の立法、政策およびプログラムがどの程度十分に子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足しているかについて、現実的な評価を行なうことが必要である。国は、マクロ経済、予算および子どもの権利の状況の現状および将来の見通しの双方について、信頼できる、時宜を得た、アクセス可能な、包括的なかつ細分化された情報およびデータを、再利用可能な形式で保持しなければならない。このような情報は、直接間接に子どもの権利を対象とし、かつこれを増進させる立法、政策およびプログラムを策定するために根本的重要性を有する。 68.締約国は、予算の計画にさいし、過去(少なくとも過去3~5年)、現在および将来(少なくとも今後5~10年)の状況を考慮に入れながら、さまざまな集団の子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)の状況を詳しく検討するべきである。子どもたちの状況についての信頼性がありかつ有益な情報へのアクセスを確保するため、締約国は以下の措置をとるよう促される。 (a) 子どもに関わる人口動態データその他の関連データの収集、処理、分析および普及のために設置されている統計機関および統計制度の権限および資源を定期的に再検討すること。 (b) 子どもたちの状況に関して利用可能な情報が、さまざまな集団の子どもたちおよび条約第2条の差別の禁止の原則を考慮するうえで有益なやり方で細分化されることを確保すること(前掲第III節Aも参照)。 (c) 子どもたちの状況に関する、利用者にやさしくかつ細分化されたデータを、国レベルおよび国内下位レベルで予算編成に関与する行政府職員および立法府議員ならびに市民社会(子どもたちを含む)に対し、時宜を得た方法で利用可能とすること。 (d) 子どもたちに影響を与えるすべての政策および資源のデータベースを設置しかつ維持することにより、対応するプログラムおよびサービスの実施および監視に関与する人々が、客観的なかつ信頼できる情報に継続的にアクセスできるようにすること。 69.締約国は、以下の措置をとることにより、予算決定が子どもたちに与えた過去の影響および今後与える可能性のある影響を調査するべきである。 (a) 過去の公的歳入徴収、予算配分および支出が子どもたちに与えた影響についての会計検査、評価および研究を実施すること。 (b) 子どもたち、その養育者および子どもの権利のために活動している人々との協議を行ない、かつ、予算決定において当該協議の結果を真剣に考慮すること。 (c) 予算年度全体を通じて子どもたちと恒常的に協議するための現行の機構を再検討し、またはそのための新たな機構を創設すること。 (d) 子どもの権利に関わる効果的な予算計画を支えるために新たな技術を活用すること。 2.立法、政策およびプログラム 70.財政問題、予算編成手続または子どもの具体的権利に関連する立法、政策およびプログラムは、子どもたちに直接間接の影響を及ぼす。締約国は、すべての立法、政策およびプログラムが条約およびその選択議定書にしたがったものとなり、子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)の現実を反映し、かつ子どもたちを害しまたはその権利の実現を妨げないことを確保するため、あらゆる可能な措置をとらなければならない。 71.委員会は、マクロ経済および財政に関する立法、政策およびプログラムが、子どもたち、その保護者および養育者に直接間接の影響を及ぼしうることを認識する(保護者等は、たとえば労働立法または公的債務管理による影響を受ける可能性がある)。締約国は、子どもの権利の実現が損なわれないことを確保する目的で、あらゆる立法、政策およびプログラム(マクロ経済および財政に関するものを含む)について子どもの権利影響評価を実施するべきである。 72.子どもに関連する立法、政策およびプログラムは、国際開発協力に関する決定およびその運営ならびに国際機関における締約国の構成員資格の一部に位置づけられるべきである。国際的な開発協力または金融協力に関与する国は、当該協力が条約およびその選択議定書にしたがって進められることを確保するためにあらゆる措置をとるよう求められる。 73.委員会は、必要な財源の水準を確認すること、および、予算計画担当者ならびに行政府および立法府の関連の意思決定担当者が実施のために必要な資源について十分な情報に基づく決定を行なえるようにすることを目的として、締約国が、子どもに影響を与える立法、政策およびプログラムの提案について費用見積もりを行なうことの重要性を強調する。 3.資源の動員 74.委員会は、子どもの権利のために利用可能な資源を維持するうえで、歳入動員および資金借入れに関する締約国の立法、政策およびプログラムが重要であることを認識する。締約国は、税および税外収入等を通じて国レベルおよび国内下位レベルで国内資源を動員するため、具体的かつ持続可能な措置をとるべきである。 75.締約国は、子どもの権利を実現するために利用可能な資源が不十分であるときは、国際協力を求めなければならない。そのような協力においては、受入国とドナー国の双方とも、条約およびその選択議定書を考慮に入れることが求められる。委員会は、子どもの権利の実現のための国際的または地域的協力には、対象を明確にしたプログラムに対する資源の動員、および、徴税、脱税との闘い、債務処理、透明性その他の問題に関連する措置も含まれうることを強調するものである。 76.子どもの権利に関する公的支出のための資源の動員は、それ自体、第IV節に掲げた予算原則を遵守するやり方で行なわれるべきである。資源動員システムにおいて透明性が欠けていれば、非効率、誤った財務管理および汚職につながる可能性がある。これが、ひいては、子どもの権利に支出するために利用可能とされる資源が不十分になってしまうことにつながりうるのである。家庭の支払い能力を考慮しないさまざまな税制は、不公平な資源動員につながりうる。そのために、すでに乏しい財源しか有していない人々(そのなかには子どもを養育している人々もいる)が不相応な歳入負担を負うことになりかねない。 77.締約国は、以下の措置をとることにより、自国が負う実施義務と一致するやり方で利用可能な資源を最大限に動員するべきである。 (a) 資源の動員に関連する立法および政策について子どもの権利影響評価を実施すること。 (b) 歳入の垂直的な(国の異なる段階間の)分配および水平的な(同じ段階における諸部局間の)分配の双方に関する政策および方式を債券投資、かつ、これらの政策および方針において居住地域が異なる子どもの間の平等が支持されかつ増進させられることを確保すること。 (c) 租税に関する立法、政策および制度を立案しかつ運営する自国の能力を再検討しかつ強化すること(脱税を回避するために諸国間で協定を締結することも含む)。 (d) あらゆる段階で、非効率または誤った管理を理由とする資源の無駄を防止し、かつ汚職または不法な実務と闘うことにより、子どもの権利を前進させるために利用可能な資源を保全すること。 (e) 第IV節に掲げた予算原則をあらゆる資源動員戦略において適用すること。 (f) 自国の歳入源、支出および負債が現在および将来の世代にとっての子どもの権利の実現につながることを確保すること。 78.委員会は、国が債権者および貸方に代わって行なう持続可能な債務管理が、子どもの権利のための資源の動員に寄与しうることを認識する。持続可能な債務管理には、借入れおよび貸付けに関する明確な役割および責任を定めた透明な立法、政策および制度の整備、ならびに、債務の管理および監視が含まれる。委員会はまた、持続可能性を欠いた長期債務が、子どもの権利のために資源を動員する国の能力にとっての障壁となりえ、かつ、子どもに悪影響を与える課税および受益者負担につながる可能性があることも認識するものである。したがって、債務協定との関連でも子どもの権利影響評価を実施することが求められる。 79.債務救済は、子どもの権利のために資源を動員する国の能力を高めうる。締約国が債務救済を受けたときは、当該救済の結果として利用可能となった資源の配分に関する決定において、子どもの権利が真剣に考慮されなければならない。 80.締約国は、天然資源の通じた資源動員に関する決定を行なうさい、子どもの権利を保護しなければならない。たとえば、そのような資源に関する国内的および国際的取決めにおいては、それが現在および将来の世代の子どもたちに及ぼす可能性のある影響が考慮されるべきである。 4.予算編成 81.予算編成方針および予算案は、国にとって、子どもの権利に対する自国の決意を、国レベルおよび国内下位レベルの具体的な優先課題および計画として実現していくための強力な手段である。締約国は、以下の措置をとることによって、予算関連の方針および提案を、子どもに関わる予算の効果的な比較および監視を可能にするような方法で作成することが求められる。 (a) 分野別分類(部門または下位部門)、経済的分類(経常費および資本支出)、行政上の分類(省庁)およびプログラム別分類(プログラムに基づく予算編成手法が活用されている場合)などの国際的に合意された予算分類システムを、それが子どもの権利と両立するかぎりで遵守すること。 (b) この一般的意見との一致を確保する目的で、予算編成方針および予算案の作成に関する行政上の指針および手続(標準ワークシートおよび協議対象関係者に関する指示など)を再検討すること。 (c) 分類システムをさらに再検討することにより、そこに、最低限、後掲パラ84に掲げたすべてのカテゴリーにしたがって予算情報を細分化した予算項目および予算コードが含まれることを確保すること。 (d) 自国の予算項目および予算コードが国レベルおよび国内下位レベルで対応していることを確保すること。 (e) 利用者にやさしく、時宜を得ており、かつ立法府、子どもたちおよび子どもの権利擁護者にとってアクセス可能な予算編成方針および予算案を公表すること。 82.予算編成方針および予算案には、子どもの権利に関わる自国の義務を国がどのように果たそうと計画しているかについての必須情報を伝えるものである。締約国は、予算編成方針および予算案を活用して以下の措置をとることが求められる。 (a) 子どもたちに影響を与える立法、政策およびプログラムがどのように資金の手当てをされ、かつ実施されているかについて説明すること。 (b) どの予算配分が子どもたちを直接対象としたものか、明らかにすること。 (c) どの予算配分が子どもたちに間接的に影響を与えるか、明らかにすること。 (d) 過去の予算が子どもたちに与えた影響についての評価および監査で得られた知見を提示すること。 (e) 子どもの権利を前進させるために最近とられた措置またはこれからとられようとしている措置の詳細を示すこと。 (f) 子どもの権利に関わる支出のために利用可能な資源の過去の状況、現在の状況および将来の見通しならびに実際の支出についての財務データおよび解説を提示すること。 (g) 成果および子どもたち(権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたちを含む)への影響に関する監視ができるよう、子ども関連のプログラム目標を予算配分および実際の支出と関連づける実績達成目標を定めること。 83.予算編成方針および予算案は、子どもの権利関連の団体、子どもたちおよびその養育者にとって重要な情報源である。締約国は、この点に関わる利用者にやさしくかつアクセス可能な情報を作成し、かつそれを公衆に向けて普及することにより、自国の管轄内にある人々への説明責任をいっそう果たすことが求められる。 84.明確な予算分類システムは、子どもたちに影響を与える予算配分および実際の支出が予算原則との関連でどのように運用されているかについて、国およびその他の主体が監視するための基盤となる。そのためには、最低限、予算項目および予算コードにおいて、計画されている支出、予算として策定された支出、改訂された支出および実際の支出であって子どもたちに影響を与えるもののすべてが、以下の要素によって細分化されていなければならない。 (a) 年齢(年齢層の定め方が国によって異なっていることは認識する)。 (b) ジェンダー。 (c) 地域(たとえば国内下位レベルの地域分類による)。 (d) 権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもの現在の分類および将来的に考えられる分類(条約第2条を考慮するものとする。第III節Aも参照)。 (e) 歳入源(国レベル、国内下位レベル、国際地域レベルまたは国際レベルのいずれであるかを問わない)。 (f) 国レベルおよび国内下位レベルの担当部局(省庁など)。 85.締約国は、予算案において、子ども関連のプログラムのうち民間部門への委託を提案するものまたはすでに委託済みのものがあればそれを明らかにするべきである [20]。 [20] 企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)、パラ25参照。 86.委員会は、予算における子どもの権利の可視化に関してもっとも進んだ取り組みを行なっている国では、予算編成に対するプログラム基盤アプローチを適用する傾向があることに留意する。締約国は、このアプローチに関する経験を共有し、かつ、それを自国の状況に適用しかつ適宜修正するよう促されるものである。 B.策定 1.立法者による予算案の吟味 87.委員会は、国レベルおよび国内下位レベルの立法者が、子どもたちの状況についての詳細かつ利用者にやさしい情報にアクセスでき、かつ、予算案がどのように子どもの福利の向上および子どもの権利の増進を図ろうとしているかについて明確に理解することの重要性を強調する。 88.国レベルおよび国内下位レベルの立法者には、子どもの権利の視点から予算案を吟味し、かつ、必要なときは、さまざまな集団の子どもたちにとって予算配分がどのような影響を持ちうるかについて究明するための分析または調査研究を実施しまたは委託するための、十分な時間、資源および自律的権限も必要である。 89.立法者が子どもの最善の利益に奉仕するという監督者としての役割を果たせるようにするため、立法機関およびその委員会の構成員には、予算案が条約の一般原則および予算原則と一致するやり方で子どもの権利を前進させることを確保する目的で、予算案について質問し、これを検討し、かつ必要なときは予算案の修正を要請する権限が認められるべきである。 90.締約国は、国レベルおよび国内下位レベルの立法府(関連の立法委員会を含む)について以下のことを確保することにより、立法府の構成員が、予算立法の成立前に、予算案がすべての子どもたちに与える影響について分析しかつ討議するための準備を十分に整えられるように貢献するべきである。 (a) 子どもたちの状況に関する、わかりやすく利用しやすい情報にアクセスできること。 (b) 子どもたちに直接間接に影響を与える立法、政策およびプログラムがどのように予算項目に移し替えられているかについて、行政から明確な説明を受けること。 (c) 予算過程において、予算案を受け取り、これについての検討および討議を行ない、かつ子どもに関連する修正を策定前に提案するための十分な時間を与えられること。 (d) 予算案が子どもの権利にとって持つ意味合いに光を当てる分析を独立の立場から行ないまたは委託する能力を持つこと。 (e) 市民社会、子どもの擁護者および子どもたち自身を含む国内の関係者を対象として、予算案に関わる公聴会を開催できること。 (f) たとえば立法府の予算局を通じて、前掲(a)から(e)で述べたような監督活動を行なうために必要な資源を有すること。 91.締約国は、予算の策定段階において、国レベルおよび国内下位レベルの予算に関して以下のような文書を作成しかつ配布するべきである。 (a) 一貫した、かつわかりやすいやり方で予算情報を分類していること。 (b) 他の予算案および支出報告書との矛盾を回避することにより、分析および監視の便が図られること。 (c) 子どもたちおよび子どもの権利擁護者、立法府および市民社会がアクセス可能な刊行物または予算概略を含んでいること。 2.立法府による予算の策定 92.委員会は、立法府によって策定される予算が、計画されている支出および実際の支出との比較ならびに子どもの権利との関連における予算の実施の監視を可能にするようなやり方で分類されることの必要性を強調する。 93.策定された予算は、国ならびに国レベルおよび国内下位レベルの立法機関にとってきわめて重要な公文書と見なされるのみならず、子どもたちおよび子どもの権利擁護者を含む市民社会もアクセスできるようにされるべきである。 C.執行 1.利用可能な資源の移転および支出 94.締約国は、子どもの権利を前進させるための財およびサービスが購入されるさいに金額に応じた最大の価値が確保されるようにするため、透明かつ効率的な財務機構および財務制度を採用しかつ維持するべきである。 95.委員会は、締約国には、公共支出が有効性および効率性を欠いていることの根本的原因(たとえば、財またはサービスの質の貧弱さ、財務管理または調達のための制度の不十分さ、漏損、時機を失した移転、役割および責任の不明確さ、情報吸収・応用力の弱さ、予算情報システムの貧弱さならびに汚職など)を明らかにしかつ是正する義務があることを強調する。締約国は、子どもの権利を前進させるための資源を浪費したときまたはその管理を誤ったときは、これがなぜ生じたかを説明し、かつ原因にどのように対応したかを示す義務を負う。 96.子どもたちを対象とする政策およびプログラムには、所期のすべての受益者を予算年度内に計画どおりに網羅することができず、または意図していなかった結果につながる可能性もある。締約国は、必要なときに介入を図り、かつ迅速な是正措置をとることができるよう、執行段階において支出の成果を監視するべきである。 2.予算に関する中期報告 97.締約国は、策定された予算で定められているように子どもの権利を前進させるうえで見られた進展を国および監督機関が追跡できるようなやり方で、子どもに関連する予算についての恒常的な監視および報告を行なうべきである。 98.委員会は、予算報告が時宜を得たやり方で公に利用可能とされること、および、当該報告において、子どもに影響を与える立法、政策およびプログラムに関連して策定された予算、修正された予算ならびに実際の歳入および支出との間にある食い違いを浮き彫りにすることの重要性を強調する。 99.委員会は、締約国が、子どもの権利に関連する支出の報告、追跡および分析が可能になる予算分類システムを活用すべきであることを強調する。 3.予算の執行 100.締約国は、さまざまな集団の子どもを対象とする歳入徴収ならびに実際の支出の対象範囲および成果を、予算年度中および複数年次について、かつ、たとえばサービスの利用可能性、質、アクセス可能性および公正な配分の観点から、監視しかつ分析するべきである。締約国は、そのような監視および分析(民間部門に外部委託されたサービスに関するものを含む)を実施するための資源および能力が整えられることを確保するよう促される。 101.締約国は、策定された予算の実施状況を恒常的に監視し、かつ公に報告するべきである。これには以下の措置が含まれる。 (a) さまざまな社会部門を横断する形で、さまざまな行政段階において予算で策定された内容と実際に支出された内容とを比較すること。 (b) 予算年度の中間期までに実際に行なわれた支出、動員された歳入および生じた債務を網羅した包括的な中期報告書を刊行すること。 (c) 中期報告書をより頻繁に(たとえば毎月または四半期ごとに)刊行すること。 102.締約国は、子どもたちを含む市民社会が公的支出の成果を監視できるような、公的な説明責任を確保するための機構を設置する義務を負う。 103.締約国は、子どもの権利に関わる実際の支出との関連で規則および手続が守られること、ならびに、説明責任の履行および報告に関する手続が遵守されることを確保するための、内部的な統制および監査の手続を整備するべきである。 D.フォローアップ 1.年度末報告書および評価 104.年度末予算報告書により、国は、国レベルおよび国内下位レベルで、子どもの権利に関わる歳入、借入れ、国際協力および実際の支出についての説明責任を果たすことが可能になる。年度末予算報告書は、市民社会および立法府が、過去の年の予算実績を吟味し、かつ、必要に応じ、子どもたちおよび子どもの権利関連のプログラムに対して行なわれた実際の支出についての懸念を表明するさいの基盤となるものである。 105.委員会は、締約国が、年度末報告書において、子どもの権利に影響を与えるすべての歳入徴収および実際の支出についての包括的な情報を提供すべきであることを強調する。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルの立法府向けに利用者にやさしい報告書を発表するとともに、年度末報告書および評価を、時宜を得たやり方でアクセス可能としかつ公に入手可能とするべきである。 106.国および独立の評価機関が行なう評価およびその他の態様の予算分析は、歳入徴収および実際の支出がさまざまな集団の子どもたち(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたち)に及ぼす影響についての貴重な洞察を提供しうる。締約国は、以下の措置をとることにより、予算が子どもたちの状況に与える影響についての恒常的な評価および分析を実施しかつ奨励するべきである。 (a) そのような評価および分析を恒常的に実施するための十分な財源および人的資源を配分すること。 (b) 予算過程全体を通じてそのような評価および分析の知見の厳密な評価および検討を行ない、かつ、それらの知見に関連して行なわれた決定を報告すること。 (c) 子どもの権利に関連して行なわれた実際の支出の有効性、効率性、公平性、透明性および持続可能性について評価する、独立の評価機関(研究機関など)を設置しかつ強化すること。 (d) 子どもたちを含む市民社会が、たとえば子どもの権利影響評価を通じて、評価および分析に貢献できることを確保すること。 2.監査 107.最高監査機関は、公的な歳入徴収および支出が策定された予算にしたがって行なわれているか否か検証することにより、予算過程においてきわめて重要な役割を果たす。監査においては、支出の効率性または有効性を調査し、かつ、特定の部門、国の統治機構または分野横断的な問題に焦点を当てることも可能である。子どもの権利との関連で行なわれる専門監査は、国が子どもに関する公的な歳入動員および支出を評価しかつ改善するうえで役に立ちうる。締約国は、監査報告書を、時宜を得たやり方でアクセス可能としかつ公に入手可能とするべきである。 108.委員会は、最高監査機関は国から独立しているべきであり、かつ、独立した、説明責任の履行につながる、かつ透明なやり方で子ども関連の予算に関する監査および報告を行なうために必要な情報および資源にアクセスする権限を認められるべきであることを強調する。 109.締約国は、以下の措置をとることにより、子どもの権利に関する公的な歳入徴収および支出に関連して最高監査機関が果たす監督の役割を支援するべきである。 (a) 最高監査機関に対し、時宜を得たやり方で、包括的な年次会計報告書を提出すること。 (b) 最高監査機関が子どもの権利に関連して監査を実施するための資源が利用可能とされることを確保すること。 (c) 実際の支出が子どもの権利に与えた影響に関連する監査に対し、公的な応答(国が監査の知見および勧告にどのように対応するかを含む)を行なうこと。 (d) 国の職員が、立法府の委員会に出頭して、子どもの権利に関連する監査報告書において提起された懸念に応答する能力を有することを確保すること。 110.子どもたちを含む市民社会は、公的支出の監査に対して重要な貢献を行ないうる。締約国は、以下の措置をとることにより、子どもの権利に関連する実際の支出の評価および監査への参加に関して市民社会を支持し、かつそのエンパワーメントを図るよう奨励されるところである。 (a) このような目的で公的な説明責任を確保するための機構を設置するとともに、これらの機構がアクセス可能であり、参加型であり、かつ有効であることを確保するために定期的にその再検討を行なうこと。 (b) 国の職員が、子どもに関連する公的支出の監視および監査を行なう市民社会および独立機関の知見に対し、十分な識見のあるやり方で応答する能力を有することを確保すること。 111.締約国は、子どもの権利に関連する従前の公的な資源動員、予算配分および支出に関する監査の内容を、予算過程の次の段階で参考にするために活用するべきである。 VI.この一般的意見の普及 112.委員会は、締約国が、この一般的意見を、自国のすべての行政部局、行政段階および行政機構、子どもたちおよびその養育者を含む市民社会、ならびに、開発協力機関、学術研究機関、メディアおよび民間部門の関連する部分を対象として広く普及するよう勧告する。 113.締約国は、この一般的意見を関連の言語に翻訳するとともに、子どもにふさわしい版を利用可能とするべきである。 114.この一般的意見に関連する最善の実務のあり方を共有し、かつ一般的意見の内容についてあらゆる関連の専門家および専門職員を研修するためのイベントが開催されるべきである。 115.委員会は、前掲のすべての関係者に対し、この一般的意見の内容に関連した優れた実務のあり方を共有するよう奨励する。 116.締約国は、委員会への定期報告書において、自国が直面する課題ならびに自国の予算および予算過程でこの一般的意見を適用するためにとった措置についての情報を記載するべきである。 更新履歴:ページ作成(2016年10月27日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/231.html
子どもの権利委員会・一般的討議勧告:国際的移住の文脈におけるすべての子どもの権利 一般的討議勧告一覧 (参考)移住労働者権利委員会・一般的意見2号:不正規な状態にある移住労働者およびその家族構成員の権利(2013年) (第61会期、2012年) 原文:英語〔PDF〕 日本語訳:平野裕二 I.背景(略) II.開会会合(全体会)概要(略) III.作業部会討議概要(略) IV.勧告 56.国際的移住の状況にある子どもの権利の尊重、促進および充足に関して、国がその政策およびプログラムにおいて考慮すべき問題ならびに他の関連の主体が指針とすべき事項を明らかにする目的で、子どもの権利についての意識および議論を喚起する場を提供するというDGD〔一般的討議〕の趣旨にしたがい、委員会は、以下の勧告を支持する。これにあたり、委員会は、子どもはどのような環境にあってもまず何よりも子どもであることを強調するものである。委員会は、移住の影響を受けている子どもの権利を特定しかつこれに対応するに際して、国および関連の主体は、さまざまな態様の子ども、状況または権利を分類しまたは区別しないよう配慮しつつ、条約のすべての規定および原則に基づいたホリスティックかつ包括的なアプローチをとらなければならないことを、あらためて指摘する。国際的移住の当事者である子どもまたはその影響を直接受けているすべての子どもは、年齢、性別、民族的または国民的出身および経済的地位または在留資格の如何を問わず自己の権利を享受する資格があるのであって、このことは、子どもが自発的な移住および非自発的な移住のどちらの状況に置かれている場合にも、また保護・養育者がいるかいないか、移動中であるか何らかの形で定住しているか、在留資格を認められているか否か等の諸条件の如何を問わず、変わらない。以下の勧告は、その検討の便宜を図るため、条約の実施に関する各国の定期的報告書についての委員会の総括所見および勧告の構成にしたがって配列されている。 一般的勧告(立法、政策および調整に関するものを含む) 57.国は、条約に掲げられた権利が、子ども自身またはその親の移住に関わる地位の如何を問わず、国の管轄下にあるすべての子どもに対して保障されることを確保するとともに、これらの権利のあらゆる侵害に対応するべきである。国際的移住の状況にあるすべての子どもに関する第一義的責任は、出入国管理機関ではなく子どものケアおよび保護を担当する機関にある。 58.国は、国際的移住の当事者である子どもまたはその影響を受けている子ども全員が、年齢、経済的地位、自己または親の在留資格の如何を問わず、自発的な移住および非自発的な移住のどちらの状況に置かれている場合にも、かつ保護・養育者の有無等に関わりなく、時宜を得た形で条約の全面的保護を享受できることを確保するため、人権を基盤とする包括的な法律および政策を採択するべきである。 59.国は、移住に関連するすべての国内法ならびに地域的および(もしくは)国際的な枠組みまたは協定に条約が統合されることを確保するため、立法、政策ならびにプログラムおよび関連の研修を含む措置をとるよう、奨励される。 60.国は、空港および港のような移住者の到着/通過場所における実務が条約および国際人権基準に全面的に一致することを確保するための具体的指針を発布するよう、勧告される。 61.国に対し、移住および他のいずれかの問題に関する政策、プログラム、実務および決定が、国際的移住の影響を直接間接に受けているすべての子どもの権利、ウェルビーイングおよび発達に及ぼす影響について効果的評価を実施するとともに、条約の基本的原則が、移住政策その他の考慮事項との関連で効果的に優先されかつ意味のある形で実施されること、ならびに、移住政策および子ども保護政策のさらなる発展に〔評価の〕結果が反映されることを確保するよう、勧告されるところである。 62.国はまた、国際開発政策、移住政策および子どもの権利との連携を個別におよび集団的に強化することも、求められる。 データ収集および調査研究 63.国は、移住の状態および移住が子どもに及ぼす影響に関するデータ収集および分析を増進させかつ拡大するための具体的措置を確保するべきである。このようなデータは、とくに年齢、性別、出身国、教育歴およびその他の関連情報(移住に関わる地位、入国許可、出国許可および就労許可の発布ならびに国籍の変更など)の別に細分化することが求められる。さらに委員会は、国が、このようなデータが(とくに出入国管理当局によって)資格外移住者を害するようなまたは資格外移住者の不利益になるようなやり方で利用されないことを保障するための保護措置を確保するよう、勧告するものである。 64.国は、移住の影響を受けている世帯が、地方の統計制度およびデータシステム、ならびに、生活水準、支出および労働力に関する全国的標本調査で特定されることを確保するべきである。このようなデータおよび情報を、移住の影響を受けている子どもが科学的根拠に基づく社会政策、地方計画および予算策定プロセスの発展に包摂されることを確保するために活用することが、勧告される。また、国が、国の政策および(または)プログラムの立案に際して移住者である子どもおよび家族の意見および経験を考慮するため、これらの子どもおよび家族(とくに、脆弱な状況に置かれた子どもおよび家族)と協議することも、勧告されるところである。委員会に提出する締約国の定期報告書にこのような情報を記載することも求められる。 65.さまざまな組織からの呼びかけを認識し、かつ国際的な移住と開発に関するハイレベル対話(2013年)に鑑み、関係者は、国際的移住の文脈における子どもの権利を、移住に関する子どもの地位の如何を問わず確保するための具体的措置に関する世界的調査の実施を検討するよう、奨励される。 66.情報の監視および収集を推進するため、締約国は、自国の領域内にあって移住の影響を受けているすべての子どもに関わる条約実施の体系的評価を委員会に対する定期的報告に組みこむとともに、人権保障に責任を負う国内機関(オンブズマン、平等機関等)に対し、移住の影響を受けている子どもに対応することを具体的任務としながら条約の遵守状況の監視において鍵となる役割を果たす権限を与えるよう、求められる。 67.国は、移住者である子どもの状況を監視する責任が出身国にのみ負わされないこと、ならびに、情報およびデータが通過国および目的地国に転送され、かつこれらの国によって受領されることを確保するべきである。その際、国は、移住の際および到着時に子どもをとくに対象とする効果的なサービスを提供できるようにするため、ケースマネジメント・システムにおいて子どもの即時的および長期的ニーズを監視するための機構を確立することが求められる。 子どもの定義および18歳未満のすべての者への条約の適用 68.子どもの定義にしたがって18歳になるまで権利および保護が与えられていることを想起し、国は、16歳以上の者を含むすべての子どもに対し、かつ移住に関するその地位に関わりなく、平等な水準の保護が提供されることを確保するよう促される。 69.加えて、国は、18歳に達した子ども(とくに養護環境を離れる子ども)のために十分なフォローアップ措置、支援措置および移行措置を提供するべきである。そのための手段には、長期的な正規移住者としての地位へのアクセス、および、教育を修了し、かつ労働市場への統合を図るための合理的機会へのアクセスを確保することも含まれる。 差別の禁止 70.国は、いかなる事由に基づく差別とも闘うための十分な措置を確保するべきである。その際、外国人嫌悪、人種主義および差別と闘い、かつ、移住の影響を受けている家族の社会統合を促進するための努力を強化することが求められる。国はまた、移住者である子どもおよびその家族を暴力および差別から保護し、かつ諸権利へのアクセス、公平および尊重を促進する目的で、とくに地方レベルで、移住者に関する知識を向上させ、かつ移住者に関する否定的見方に対応するためのプログラムも実施するべきである。このような取り組みにおいては、迅速かつ効果的な救済機構ならびに言語的および文化的に適切な十分な支援措置への、移住者による公平なアクセスを確保することも求められる。 71.国は、自国の移民政策において障害のある子どもまたは親が障害者である家族の子どもが差別されないこと、および、障害を入国申請の却下事由と考えないようにすることを確保するべきである。 子どもの最善の利益 72.国は、子どもに影響を及ぼすいかなる移住手続についても、当該手続のすべての段階および当該手続に関する決定において、かつ子どもの保護に従事する専門家、司法機関および子ども自身の関与を得ながら、子どもの最善の利益に関する個別評価を実施するべきである。とくに、子どもまたはその親の収容、送還または退去強制につながるいかなる手続においても、子どもの最善の利益を第一次的に考慮することが求められる。 73.国は、自国の法律、政策および実務において、子どもの最善の利益の原則が移住に関する考慮事項、政策上の考慮事項その他の行政上の考慮事項に優先することを明確にするべきである。その際、国は、移住手続、リスクおよび権利、保健面および精神保健面での支援、法的代理および後見、面接ならびにその他の手続に関する情報が、子どもにやさしく、かつ文化的に配慮のあるやり方で利用できることを確保するよう求められる。 74.国は、子どもに影響を及ぼすいかなる移住手続についても、当該手続のすべての段階または決定において、子どもの保護に従事する専門家および司法機関の関与を得ながら、可能なかぎり最大限に、継続的かつ個別的な子どもの最善の利益評価および正式な認定手続を実施するべきである。これには、子どもまたはその親の退去強制につながるいかなる手続も含まれる。国は、法律、政策および実務において、子どもの最善の利益の原則が移住に関する考慮事項その他の行政上の考慮事項に優先することを明確にするべきである。その際、国は、移住手続、リスクおよび権利、保健面および精神保健面での支援、法的代理および後見、面接ならびにその他の手続に関する情報が、子どもにやさしく、かつ文化的に配慮のあるやり方で利用できることを確保するよう求められる。 訳者注/パラ72~74の重複は原文ママ。 意見を聴かれる子どもの権利 75.国は、自国の法律、政策、措置および実務において、移住の文脈における子どもの権利および(または)その親の権利に影響を及ぼすすべての移住手続および司法手続における適正手続が保障されることを確保するべきである。すべての子ども(親その他の法定保護者とともにいる子どもを含む)は権利を保有する個人として扱われなければならず、その子ども特有のニーズは平等にかつ個別に考慮されなければならず、またその意見は適切に聴取されなければならない。子どもは、自分自身の状況に関する決定またはその親に関する決定に対し、すべての決定が自己の最善にのっとって行なわれることを保障するための行政上および司法上の救済措置にアクセスできなければならない。 76.とくに、国は、年齢の鑑別および決定の手続、面接の実務ならびに法的手続が、子どもの権利についての十分な専門性を有する職員によって、迅速な、子どもにやさしい、学際的な、文化的に配慮のあるやり方で進められることを確保するべきである。 アイデンティティ(名前および国籍を含む)に対する権利 77.国は、すべての子どもの出生登録を確保するための措置(移住者である子どもの出生登録を妨げるいかなる法律上および実務上の要因も取り除くことを含む)を強化するとともに、国籍を付与しなければ子どもが無国籍となる場合、自国の領域内で出生した子どもに市民権を付与するべきである。 人身の自由に対する権利および収容の代替措置 78.子どもは、移住に関わる自己の地位または親の地位を理由として、犯罪者として扱われまたは懲罰的措置の対象とされるべきではない。移住に関わる自己の地位または親の地位を理由とする子どもの収容は、子どもの権利の侵害であり、かつ、子どもの最善の利益の原則に常に違反する。これを踏まえ、国は、出入国管理上の地位を理由とする子どもの収容を速やかにかつ完全に取りやめるべきである。 79.国は、子どもが、通過国および(または)目的地国に家族構成員および(または)いる場合にはこれらの者といっしょにおり、かつ、その出入国管理上の地位についての解決が図られるまでの間、収容されるのではなくコミュニティを基盤とする環境で家族として滞在できるようにする立法、政策および実務を通じて、子どもの最善の利益を、人身の自由および家族生活に対する子どもの権利とともに充足する収容の代替措置を、可能なかぎり最大限に、かつもっとも制約の度合いの少ない必要な手段を活用しながら採用するべきである。委員会の一般的意見10号(CRC/C/GC/10、2010年)を強調しつつ、国には、自由を奪われた少年の保護に関する規則(ハバナ規則)を含む、拘禁環境に関する国際基準(これらの基準は行政拘禁または非刑事的拘禁を含むあらゆる形態の拘禁に適用される)を遵守する法的義務があることが、あらためて指摘される。このような措置は慎重に立案されるべきであり、また子どもの代替的養護に関する国連指針その他の人権基準にもしたがう形で立案されるべきである。国は、収容センターから放免された子どもが支援措置および適切な代替的養護を利用できることを確保するよう求められる。 80.にもかかわらず子どもが自由を剥奪されるときは、国は、いかなる場合にも、そのような措置を、もっとも短い期間で、かつ少なくとも人権法に掲げられた拘禁に関する最低基準を満たすような条件下で課すよう促される。これには、子どもにやさしい環境の確保、子どもの親または保護者ではない成人からの分離(たとえ子どもが16歳以上であっても同様である)、子どもの保護に関する保障措置および独立の監視が含まれる。 81.受入れセンターおよび(または)これに類する他の施設から失踪しまたは行方不明になった移住者の子どもの状況に関する懸念に照らし、国は、受入れセンターの手続/施設および環境についての、条約および子どもの代替的養護に関する国連指針に全面的にしたがった具体的指針を確保するべきである。 あらゆる形態の暴力(移住の文脈におけるものを含む)からの子どもの自由 82.国は、学校およびコミュニティ環境にとくに焦点を当てながら、国際移住の影響を受けているあらゆる年齢の子どもが、移住に関する自分自身のまたはその親の地位の如何を問わず暴力から平等に保護されることを確保するため、法的拘束力がありかつジェンダーに配慮した積極的な政策、プログラムおよび行動を採択するべきである。子どもに対する暴力に関する特別報告者および国連システム内外で同特別報告者を支援する諸機関は、連携して、かつ移住の状況にある子どもたちの意見およびニーズを全面的に考慮にいれながら、国際移住の文脈において子どもが暴力の被害をとりわけ受けやすいことを調査研究および行動における優先的問題のひとつとして取り上げていくよう奨励される。 家族生活に対する権利 83.国は、移住に関する自国の政策、法律および措置において家族生活に対する子どもの権利が尊重されること、ならびに、いかなる子どもも国の作為または不作為によってその親から分離されないこと(このような分離が子どもの最善の利益にしたがって行なわれる場合を除く)を確保するべきである。このような措置には、とくに、家族再統合の申請に対して積極的、人道的かつ迅速に対応すること、可能なときは常に移住に関わる地位の正規化のための選択肢を提供すること、および、残された子どもが通過国および(または)目的地国において親と合流できる(または親が子どもと合流できる)ようにするための家族再統合政策を、移住のすべての段階でとることが含まれるべきである。 84.国は、子どもが目的地国の国民である場合、その親の収容および(または)退去強制を行わないようにするべきである。逆に、親の正規化を検討することが求められる。決定によって子どもの最善の利益が否定されないことを確保するため、子どもは、親の入国許可、在留または追放に関わる手続において意見を聴かれる権利を認められるべきであり、かつ、親の収容命令および(または)退去強制命令に対する行政上および司法上の救済措置にアクセスできるべきである。子どもの最善の利益にしたがった、収容および退去強制に代わる措置(正規化を含む)を、法律によっておよび実務を通じて確立することが求められる。 85.国は、移住に関わる地位の如何を問わず、すべての移住者を対象として経済的、社会的および文化的権利へのアクセスを確保するよう努めるべきである。国は、移住の状況にある子どもおよび家族にとくに注意を払い、かつ残された子どもおよび(または)非正規な移住状況にある子どもを包摂しながら、社会政策、子ども期政策および家族保護政策にこのことが含まれることを確保するよう、求められる。 生活水準、経済的、社会的および文化的権利の享受 86.国は、移住の状況にあるすべての子どもが、移住に関わる自己のまたは親の地位の如何に関わらず、経済的、社会的および文化的権利ならびに基礎的サービスに対して国民である子どもと平等にアクセスできることを確保するとともに、このような子どもの権利を法律で明確にするべきである。その際、国は、移住の影響を受けている子どもおよびその家族(とくに非正規な状況にある子どもおよび家族)が、とくに保健ケア、教育、長期の社会保障および社会扶助等のサービスおよび給付に効果的にアクセスすることの妨げとなる、またはこれらの子どもおよび家族を差別する法律、政策および実務の迅速な改革を図るよう、強く奨励される。サービスにアクセスしにくくなることによってもたらされるジェンダー特有の影響(セクシュアルヘルスおよびリプロダクティブヘルスに関わる権利ならびに暴力からの安全保障など)への対応に、とくに注意が払われるべきである。国は、「残された」子どもが権利およびサービスにアクセスしようとする際に直面する困難について、市民社会および地域コミュニティと連携しながら具体的対応をとるよう求められる。サービスへのアクセスを妨げる行政的および金銭的障壁は、身元および居住を証明する代替的手段(供述証拠など)を認める等の対応を通じ、取り除くべきである。住民登録機関および公共サービス提供機関への効果的アクセスを実際上も確保するため、これらの機関を対象とした研修および指導の実施が求められる。 87.国は、住民登録機関、公共サービス提供機関および出入国管理機関の間の情報共有について、このような情報共有が子どもの最善の利益に反せず、かつ子どもまたはその家族が潜在的な危害または制裁にさらされないことを確保するため、効果的な保障措置が設けられるようにするべきである。このような保障措置は、サービス提供機関を対象として明確な指針を発布すること、および、非正規な移住の状況にある者の間でこれらの保障措置に関する意識啓発プログラムを実施すること等の手段を通じ、法律上も実際上も実施されなければならない。 88.子どもを貧困および社会的排除から保護するための政策、プログラムおよび措置には、移住の状況にある子ども(とくに、出身国に残された子ども、および、移住者である親から目的地国で生まれた子ども)も、その地位の如何に関わらず、包摂されなければならない。移住に直接間接に関係する形で人が脆弱な状況に置かれるあらゆる事態を防止し、かつこれに対応するための、国家的な社会保護制度の能力強化が図られるべきであり、また移住の影響を受けている子どもおよびその家族は、移住に関わる地位の如何に関わらず、かついかなる種類の差別もなく、出身国、通過国および目的地国における社会政策および社会プログラムの具体的重点対象集団に位置づけられるべきである。社会保護政策には、移住の状況にある家族および養育者を対象とした、これらの家族および養育者が子どもの養育責任を果たすことの便宜を図るための支援(コミュニティを基盤とする社会サービスを通じて提供されるものを含む)に関する具体的規定を含めることが求められる。これらの規定には、代替的養護を受けている子どものための特別サービスも含まれるべきであり、また移住が子どもに及ぼす心理社会的影響の緩和にも焦点が当てられるべきである。 健康に対する権利 89.国は、移住の過程、庇護を求める過程または人身取引の対象とされた過程で子どもが経験したトラウマに対応するための、十分なかつアクセスしやすい措置を確保しかつ実施するべきである。子どもの最善の利益に関する評価および認定を行なう場合も含め、すべての子どもが精神保健サービスを利用できるようにすることに、とくに配慮することが求められる。 経済的搾取からの保護 90.国は、移住に関する自国の政策および措置において、条約、ならびに、就業が認められるための最低年齢に関する国際労働機関第138号条約、最悪の形態の児童労働の禁止および撤廃のための即時の行動に関する同第182号条約および家事労働者の適切な仕事に関する同第189号条約が考慮されることを確保するべきである。さらに、国が、労働の文脈で、とくにインフォーマル労働および(または)季節労働の状況で生じる子どもの権利侵害を特定しかつ是正するための監視制度および通報制度の設置を検討することも、勧告されるところである。 正規のかつ安全な移住経路および安定した在留資格へのアクセス 91.国は、可能なときは常に、正規のかつ非差別的な移住経路を利用できるようにするとともに、子どもおよびその家族が、家族の結合、労働関係および社会統合等の事由を根拠として長期的な正規の移住者としての地位または在留許可にアクセスできるようにするための、恒久的なかつアクセスしやすい機構を設けるべきである。これらの正規化プログラムにおいては、移住者の社会的統合の促進および子どもの権利(家族生活に対する権利を含む)の保護が目指されるべきである。 紛争状況 92.紛争によって生じた移住の状況等においても、国には条約および国際人権基準を遵守する法的義務があることを想起し、国は、紛争状況に関わる自国の移住政策および移住手続において子どもの権利に関する十分な保障措置が設けられることを確保するべきである。 V.結論(略) 更新履歴:ページ作成(2013年2月22日)。
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子どもの権利委員会・一般的意見19号:子どもの権利実現のための公共予算編成(第4条)(前編) 一般的意見一覧 子どもの権利委員会 CRC/C/GC/19(2016年7月20日/原文英語) 日本語訳:平野裕二〔日本語訳全文(PDF)〕 目次 I.はじめに(パラ1-17)A.背景(パラ6-10) B.理論的根拠(パラ11-13) C.目的(パラ14-17) II.公共予算との関連における第4条の法的分析(パラ18-39)A.「締約国は、……措置をとる」(パラ18-20) B.「あらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置」(パラ21-24) C.「この条約において認められる権利の実施のための」(パラ25-27) D.「経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」(パラ28-34) E.「および必要な場合には、国際協力の枠組の中で」(パラ35-39) III.条約の一般原則と公共予算(パラ40-56)A.差別の禁止に対する権利(第2条)(パラ41-44) B.子どもの最善の利益(第3条)(パラ45-47) C.生命、生存および発達に対する権利(第6条)(パラ48-51) D.意見を聴かれる権利(第12条)(パラ52-56) IV.子どもの権利のための公共予算編成の原則(パラ57-63) → 子どもの権利と公共予算 後編A.有効性(パラ59) B.効率性(パラ60) C.公平性(パラ61) D.透明性(パラ62) E.持続可能性(パラ63) V.公共予算における子どもの権利の実施(パラ64-111)A.計画(パラ67-86) B.策定(パラ87-93) C.執行(パラ94-103) D.フォローアップ(パラ104-111) VI.この一般的意見の普及(パラ112-116) I.はじめに 1.子どもの権利条約第4条は以下のように規定する。 締約国は、この条約において認められる権利の実施のためのあらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置をとる。経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、および必要な場合には、国際協力の枠組の中でこれらの措置をとる。 (訳者注/国際教育法研究会訳) この一般的意見は、締約国が公共予算との関係で第4条を実施するさいに役に立つはずである。ここでは、締約国の義務を明らかにするとともに、公共予算に関わる有効な、効率的な、公平な、透明なかつ持続可能な意思決定を通じて条約上のすべての権利(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもの権利)を実現する方法についての勧告を行なっている。 2.第4条が子どものすべての権利に関連するものであり、かつ、これらのすべての権利が公共予算の影響を受け得ることに鑑み、この一般的意見は条約およびその選択議定書に適用される。この一般的意見は、公共予算がこれらの権利の実現に資することを確保するための枠組みを締約国に対して提示するものであり、また第III節では、第2条、第3条、第6条および第12条に掲げられた条約の一般原則の分析を行なっている。 3.この一般的意見で「子ども(たち)」に言及するさいには、18歳未満のすべての者(いかなるジェンダーであるかを問わない)であって、公共予算関連の決定によってその権利に直接間接の影響(肯定的影響か悪影響かを問わない)が生じる者またはその可能性がある者を含むものとする。「権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども」とは、その権利が侵害される被害をとりわけ受けやすい子どもであって、障害のある子ども、難民状況にある子ども、マイノリティ集団の子ども、貧困下で暮らしている子ども、代替的養護のもとで暮らしている子どもおよび法律に抵触した子どもを含むが、これに限られない。 4.この一般的意見では以下の定義を適用する。 (a) 「予算」には、国の歳入動員、予算配分および支出を含む。 (b) 「実施義務」とは、後掲パラ27に掲げた締約国の義務をいう。 (c) 「条約の一般原則」とは、第III節に掲げた諸原則をいう。 (d) 「予算原則」とは、第IV節に掲げた諸原則をいう。 (e) 「立法」とは、子どもの権利に関連するすべての国際条約/法、地域条約/法、国内法および国内下位法令をいう。 (f) 「政策」とは、子どもの権利に影響を与えるまたはその可能性があるすべての公的な政策、戦略、規則、指針および声明(そこに掲げられた目標、目的、指標および目指される成果を含む)をいう。 (g) 「プログラム」とは、法律および政策の目標を達成する目的で締約国が定めた枠組みのことをいう。このようなプログラムは、たとえば子どもの特定の権利、公共予算編成過程、インフラストラクチャーおよび労働力に影響を与えることにより、子どもに直接間接の影響を及ぼす可能性がある。 (h) 「国内下位」とは、広域行政圏、州、郡または自治体など、国の下位の行政段階をいう。 5.第I節では、この一般的意見の背景、理論的根拠および目的を示す。第II節では、公共予算との関連で第4条の法的分析を行なう。第III節では、このような文脈における条約の一般原則の解釈を提示する。第IV節では、公共予算編成の原則を取り上げる。第V節では、公共予算が子どもの権利の実現にどのように資するかを検討する。第VI節では、この一般的意見の普及に関する指針を示す。 A.背景 6.この一般的意見は、「実施に関する一般的措置」という概念は複雑であり、委員会は、個々の要素に関するいっそう詳細な一般的意見を適宜発表していく可能性が高いと述べた、条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を踏まえたものである [1]。また、委員会が2007年に開催した、子どもの権利のための資源に関する国の責任についての一般的討議を踏まえたものでもある。 [1] 一般的意見5号の「まえがき」参照。 7.この一般的意見は、予算に関わる原則を人権の視点から掲げた国連のいくつかの決議および報告書を参考にしたものである。これには以下のものが含まれる。 (a) 子どもの権利への投資の改善を目指す人権理事会決議28/19 [2]、および、当該決議に先立つ国連人権高等弁務官の報告書「子どもの権利への投資の改善に向けて」(Towards better investment in the rights of the child)。そこでは、子どもへの投資との関連における国内政策の役割、資源動員、透明性、説明責任、参加、配分および支出、子どもの保護制度、国際協力ならびにフォローアップについて取り上げられている。 (b) 財政政策における透明性、参加および説明責任の促進に関する総会決議67/218。同決議は、財政政策の質、効率性および有効性を向上させる必要性を強調するとともに、加盟国に対し、財政政策における透明性、参加および説明責任を増進させるための努力を強化するよう奨励している。 [2] 同決議は無投票で採択された。 8.この一般的意見の作成にあたっては、委員会が調査を通じて各国、国際連合、非政府組織、子どもたちおよび個人専門家と行なった協議、ならびに、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ・カリブ海、中東・北アフリカおよびサハラ以南のアフリカで開催された会議および地域協議も参考にした。これに加えて、オンライン調査、フォーカスグループにおける討議ならびにアジア、ヨーロッパおよびラテンアメリカで開催された地域協議を通じて行なわれた、71か国から参加した2693人の子どもたちとの世界的協議 [3] も参考にしている。この世界的協議では、年齢、ジェンダー、能力、社会経済的状況、言語、民族、就学状況、避難を余儀なくされた状況および子ども参加型の予算策定の経験という観点からさまざまな背景を有する男女の子どもから貢献が行なわれた。公共予算の決定に携われる人々に対する子どもたちのメッセージには、以下のようなものがあった。 (a) ちゃんとした計画を立ててほしい。予算では、子どもたちのすべての権利に対応するのに十分なお金が用意されるべきです。 (b) 何に投資すればいいのか、私たちにきいてくれなければ、私たちに投資することはできません。私たちはわかっているので、私たちに尋ねるべきです。 (c) 特別なニーズがある子どものことを予算に含めるのを忘れないでほしい。 (d) お金は公正に、賢く使ってほしい。私たちのお金を無駄なことに使わないでください。効率的にやって、お金を節約しましょう。 (e) 子どもたちへの投資は長期的な投資で、たくさんの成果を生み出してくれるものなので、そのことを忘れずに考えてほしい。 (f) 私たちの家族に投資することは、私たちの権利を保障する重要な方法でもあります。 (g) 汚職が絶対ないようにしてほしい。 (h) 行政に関する問題についてみんなの意見を聴いて、若くても歳をとっていても、市民全員の権利を認めてほしい。 (i) 政府には、もっと説明責任と透明性を高めてほしい。 (j) お金がどのように使われたのか、記録を公表してほしい。 (k) 予算についての情報を、子どもたち全員に、わかりやすい方法で、ソーシャルメディアなど子どもたちに人気があるメディアを通じて提供してください。 [3] Laura Lundy, Karen Orr and Chelsea Marshall, "Towards better investment in the rights of the child the views of children" (Centre for Children s Rights, Queen s University, Belfast, and Child Rights Connect Working Group on Investment in Children, 2015). 9.すべての中核的人権条約に、条約第4条と同様の規定が含まれている。したがって、これらの規定に関連して発表されてきた、公共予算について取り上げている一般的意見は、この一般的意見を補完するものとみなされるべきである [4]。 [4] たとえば、締約国の義務に関する社会権規約委員会(経済的、社会的および文化的権利に関する委員会)の一般的意見3号(1990年)を参照。 10.この一般的意見は、締約国が有する、自国の管轄内にある子どもに直接間接の影響を与える財源の管理に関わるものである。この一般的意見は、アディスアベバ行動目標(第3回開発資金国際会議、2015年)および「世界の変革:持続可能な開発のための2030アジェンダ」(2015年)を認知する。これらのアジェンダでは、プログラム支援、セクター支援および予算支援、南南協力ならびに地域間協力など、子どもに影響を与える国際協力関連資源の国による管理について取り上げられている。委員会は、やはりこのような管理について取り上げている、「開発協力および開発計画に対する人権基盤型アプローチについての共通理解声明」(国連開発グループ、2003年)、「援助効果にかかるパリ原則:オーナーシップ、調和化、整合性確保、成果および相互説明責任」(2005年)、アクラ行動アジェンダ(2008年)および「効果的な開発協力のための釜山パートナーシップ」(2011年)を想起するものである。加えて、委員会は、公共財務管理に関して国内的、地域的および国際的に策定された基準および現在策定中である基準が、当該基準が条約の規定と矛盾しないことを条件として、この一般的意見にとって関連性を有する可能性があることも心に留める。このような基準の例を3つ挙げるとすれば、公共財務管理における有効性、効率性および公平性を強調する『公共財務管理国際ハンドブック』(The International Handbook of Public Financial Management)[5]、財政運営および説明責任を向上させるために過去、現在および将来の公共財政についての公的報告において包括性、明確性、信頼性、適時性および関連性を求める国際通貨基金の「財政の透明性に関する規範」(2014年)、および、国連貿易開発会議が2012年に採択した「責任あるソブリン融資の促進に関する原則」がある。 [5] Richard Allen, Richard Hemming and Barry Potter, eds., The International Handbook of Public Financial Management (Basingstoke, Palgrave Macmillan, 2013). B.理論的根拠 11.委員会は、締約国が、国内の法律、政策およびプログラムを再検討し、条約およびその選択議定書と一致させるようにするうえで相当の進展を達成してきたことを認める。同時に委員会は、十分な財源が責任ある、効果的な、効率的な、公平な、参加型の、透明かつ持続可能なやり方で動員され、配分されかつ支出されることがなければ、そのような法律、政策およびプログラムは実施できないことを強調するものである。 12.委員会は、委員会に提出される締約国報告書の審査、締約国代表との議論および総括所見において、予算規模が子どもの権利を実現するうえで十分かどうかについての懸念を表明してきた。委員会は、条約で要求されているとおりに国・国内下位レベル双方の予算において子どもの権利を優先的に位置づけることが、これらの権利を実現していくことのみならず、将来の経済成長、持続可能かつ包摂的な開発および社会的団結に永続的かつ肯定的な影響を与えることにも寄与することを、あらためて表明する。 13.以上のことに基づき、委員会は、締約国が、国・国内下位レベルの予算編成過程および行政制度のあらゆる段階を通じてすべての子どもの権利を考慮すべきことを強調する。予算編成過程が国によってある程度異なること、および、独自の子どもの権利予算手法を開発した国もあることは認識しながらも、この一般的意見は、すべての国に関係する4つの主要な予算段階、すなわち計画、策定、執行およびフォローアップに関わる指針を示すものである。 C.目的 14.この一般的意見の目的は、子どもの権利のための予算に関わる条約上の義務についての理解を向上させ、もってこれらの権利の実現を強化するとともに、条約およびその選択議定書の実施を増進させる目的で、予算の計画、策定、執行およびフォローアップが進められるあり方に真の変革が生じることを促進するところにある。 15.この目的は、予算編成過程全体を通じて国の各統治部門(行政府、立法府および司法府)、各段階(国および国内下位)および機構(省庁など)がとる措置に関連するものである。これらの義務は、国際協力のドナーおよび受入国にも適用される。 16.この目的は、国内人権機関、メディア、子どもたち、家族および市民社会組織など、予算編成過程に関わる他の関係者にも関連するものである。締約国は、自国の状況にふさわしい方法で、これらの関係者が予算編成過程において積極的な監視および意味のある参加を行なえるような環境を整えるよう求められる。 17.加えて、この目的は、この一般的意見の内容についての意識啓発および関連する公的職員等の能力構築との関連でも、各国にとって関連性を有する。 II.公共予算との関連における第4条の法的分析 A.「締約国は、……措置をとる」(States parties shall undertake) 18.「措置をとる」という文言は、締約国には、子どもの権利を実現するために適当な立法上、行政上その他の措置(公共予算に関連する措置を含む)をとる自国の義務を果たすか否かについての裁量権はないことを意味する。 19.したがって、公共予算の編成において何らかの役割を果たす国のすべての統治部門、段階および機構は、条約の一般原則および後掲第III節・第IV節に掲げられた予算原則に一致する方法でその職務を果たさなければならない。締約国はまた、立法府、司法府および最高監査機関が同様の対応をとれるようにするための環境も創出するべきである。 20.締約国は、あらゆる段階の行政府および立法府の予算決定担当者が、必要な情報、データおよび資源にアクセスでき、かつ子どもの権利実現のための能力構築を図れるようにするべきである。 B.「あらゆる適当な立法上、行政上およびその他の措置」(all appropriate legislative, administrative and other measures) 21.「あらゆる……適当な措置」をとる義務には、以下のことを確保する義務が含まれる。 (a) 子どもの権利実現のための資源動員、予算配分および支出を支える法律および政策が整備されること。 (b) 子どもの権利を増進するための適切な法律、政策、プログラムおよび予算の編成および実施を支える目的で、子どもに関する必要なデータおよび情報が収集され、生成されかつ普及されること。 (c) 承認された立法、政策、プログラムおよび予算を完全に実施するための十分な公的資源が効果的に動員され、配分されかつ活用されること。 (d) 予算が、国および国内下位のレベルにおいて、子どもの権利実現の確保につながる方法で体系的に計画され、制定され、実施されかつ説明されること。 22.措置は、それがある特定の文脈(公共予算の文脈を含む)において子どもの権利の増進に直接間接の関連性を有する場合に、適当と判断される。 23.公共予算との関連で締約国がとることを義務づけられる「立法上の……措置」には、現行法の再検討、ならびに、国・国内下位レベルで子どもの権利実現のための予算が十分大規模なものとなることを確保するための立法の策定および採択が含まれる。「行政上の……措置」には、合意に基づき制定された立法の目的にかなうプログラムの立案および実施ならびにそのための十分な予算の確保が含まれる。「その他の措置」には、たとえば、公共予算編成過程に参加するための機構および子どもの権利に関連するデータまたは政策を発展させることが含まれると考えられる。公共予算は、これらの3つのカテゴリーの措置全体にまたがるものと理解できる一方で、その他の立法上、行政上その他の措置の実現にとっても不可欠なものである。国のすべての統治部門、段階および機構が、子どもの権利の増進について責任を有する。 24.委員会は、締約国には、自国が選択する公共予算関連の措置がどのように子どもの権利の向上に結びついているかを示す義務があることを強調する。締約国は、これらの措置の結果として子どもたちのために獲得できた成果の証拠を示さなければならない。条約第4条が履行されたというためには、結果についての証拠を示さないまま、措置をとったことの証拠を示すだけでは十分ではないのである。 C.「この条約において認められる権利の実施のための」(for the implementation of the rights recognized in the present Convention) 25.「この条約において認められる権利」には、市民的、政治的、経済的、社会的および文化的権利が含まれる。締約国は、市民的および政治的権利については即座に実現し、かつ、経済的、社会的および文化的権利については「自国の利用可能な手段(資源)を最大限に用いることにより」実施する義務を有する。すなわち、これら〔後者〕の権利の完全な実現は必然的に漸進的に達成されざるを得ないということである(後掲第II節D参照)。 26.子どもの権利の実現のためには、公共予算編成過程の4つの段階(計画、策定、執行およびフォローアップ)のすべてに緊密な注意を払うことが必要である。条約の一般原則およびこの一般的意見で概要を示した予算原則にしたがい、締約国は、予算編成過程全体を通じて、すべての子どもの権利を考慮することが求められる。 27.予算の観点からは、「子どもの権利を実施する」とは、締約国には、自国の実施義務を遵守するようなやり方で公的資源を動員し、配分しかつ使用する義務があるということを意味する。締約国は、以下のとおり、子どものすべての権利を尊重し、保護しかつ充足しなければならない。 (a) 「尊重する」とは、締約国は子どもの権利の享受に直接間接に干渉するべきではないということを意味する。予算との関連では、国は、たとえば予算の決定において一部の集団の子どもを差別したり、または子どもによる経済的、社会的および文化的権利の享受に対応するために現に実施されているプログラムから資金を引き上げたり資源を別に振り向けたりすること(後掲パラ31に掲げる事情がある場合を除く)によって、子どもの権利の享受に干渉することは控えなければならないということである。 (b) 「保護する」とは、締約国は、条約および選択議定書で保障されている諸権利に第三者が干渉することを防止しなければならないということを意味する。公共予算の観点からは、そのような第三者に該当する可能性がある主体として、公共予算編成過程のさまざまな段階で何らかの役割を果たす可能性がある企業セクター [6] および地域的・国際的金融機関を挙げることができよう。保護する義務が含意するのは、締約国は、自国の歳入動員、予算配分および支出が第三者によって干渉されまたは阻害されないことを確保するよう努めなければならないということである。そのためには、締約国は、そのような第三者の役割を規制し、苦情申立て機構を設置し、かつこれらの第三者による人権侵害事案に体系的に介入することが必要になろう。 (c) 「充足する」ためには、締約国は、子どもの権利の完全な実現を確保するための行動をとらなければならない。締約国は以下の対応をとるべきである。(i) 子どもが自己の権利を享受できるようにし、かつそれを援助する措置をとることによって子どもの権利の促進を図ること。予算に関わる文脈では、これには、すべての子どもたちの権利を包括的かつ持続可能なやり方で増進させるために必要な資源および情報を、行政府、立法府および司法府のあらゆる段階および機構が持てるようにすることが含まれる。そのためには、国の諸機関のあいだで条約およびその選択議定書についての知識および理解を高めるための措置を整備すること、ならびに、子どもの権利を尊重し、保護しかつ充足する文化を醸成することが必要となる。 (ii) 国が、やむを得ない理由により、自国が利用可能な手段により自らこれらの権利を実現できない場合に、子どもの権利のための対応をとること。この義務には、子どもたちがたとえば国の異なる地域で自己の権利をどの程度行使できているかを評価しかつ監視する目的で、信頼できる、細分化されたデータおよび情報を公に入手できるようにすることが含まれる。 (iii) 予算に関わる意思決定手続およびそれが及ぼす影響について適切な教育および公衆の意識啓発が行なわれることを確保することにより、子どもの権利を促進すること。これは、予算との関連では、子どもたち、その家族および養育者と、予算関連の決定(これらの決定に影響を与える立法、政策およびプログラムを含む)についてやりとりするための十分な資金を動員し、配分しかつ使用することを意味する。締約国は、より効果的な促進が必要とされる領域を特定する目的で、さまざまな集団に関する成果を継続的に評価するべきである。 [6] 企業セクターが子どもの権利に及ぼす影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)参照。同一般的意見において委員会は、「国が、企業が子どもの権利侵害を引き起こしまたは助長しないようにするためにあらゆる必要な、適当な、かつ合理的な措置をとらなければならない」ことを明らかにしている(パラ28)。 D.「経済的、社会的および文化的権利に関して、締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」(With regard to economic, social and cultural rights, States parties shall undertake such measures to the maximum extent of their available resources) 28.この義務にしたがい、締約国は、十分な財源を動員し、配分しかつ使用するためにあらゆる可能な措置をとらなければならない。条約およびその選択議定書上の権利の実現を前進させる政策およびプログラムに配分される資金は、最適なやり方で、かつ条約の一般原則およびこの一般的意見に掲げた予算原則にしたがって使用されるべきである。 29.委員会は、他の中核的国際人権条約における「利用可能な手段(資源)を最大限に用いること」および「漸進的実現」の概念の進展 [7] を認識するとともに、条約第4条はこの両方の概念を反映していると考える。したがって締約国は、国際法にしたがって即時的に適用される義務に影響を与えることなく、経済的、社会的および文化的権利の完全な実現を漸進的に達成する目的で、自国の利用可能な資源を最大限に用いることにより、かつ必要な場合には国際協力の枠組みのなかで、これらの権利に関する措置をとらなければならない。 [7] たとえば障害のある人の権利に関する条約第4条第2項参照。 30.「締約国は、自国の利用可能な手段を最大限に用いることにより、……これらの措置をとる」とは、締約国には、すべての子どもの経済的、社会的および文化的権利を充足させるための予算資源を動員し、配分しかつ使用する目的であらゆる努力を行なったことの実証を期待されているということである。委員会は、子どもの権利は相互依存的でありかつ不可分であること、および、経済的・社会的・文化的権利と市民的・政治的権利を区別するさいには注意しなければならないことを強調する。経済的・社会的・文化的権利の実現は子どもが自己の政治的・市民的権利を全面的に行使する能力にしばしば影響を与えるのであり、その逆もまた真である。 31.第4条によって締約国に課されている、利用可能な資源を「最大限に用いることにより」子どもの経済的、社会的および文化的権利を実現する義務は、締約国は経済的、社会的および文化的権利との関連で意図的な後退的措置をとるべきではないということでもある [8]。締約国は、子どもの権利の享受に関わる現行水準の低下を許すべきではない。経済危機の時期における後退的措置の検討は、他のすべての選択肢を評価し、かつ子ども(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども)への影響が最後に生じることを確保した後でなければ、行なうことができない。締約国は、そのような措置が必要であり、合理的であり、比例性を有しており、差別的でなく、かつ一時的なものであること、および、したがって影響が生じたいかなる権利も可能なかぎり早期に回復されることを実証しなければならない。締約国は、影響を受ける集団の子どもたちおよびこれらの子どもたちの状況について知悉しているその他の者が当該措置に関連する意思決定手続に参加するよう、適切な措置をとるべきである。子どもの権利によって課される即時的かつ最低限の中核的義務 [9] は、たとえ経済危機の時期であっても、いかなる後退的措置によっても損なわれてはならない。 [8] たとえば、子どもの権利のための資源に関する国の責任についての一般的討議(2007年)の勧告のパラ24および25、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての一般的意見15号(2013年)のパラ72、ならびに、社会権規約委員会の一般的意見3号のパラ9参照。 [9] 社会権規約委員会の一般的意見で明らかにされている中核的義務を参照(教育への権利に関する13号(1999年)、到達可能な最高水準の権利に関する14号(2000年)および社会保障への権利に関する19号(2007年)など)。 32.条約第44条は、締約国に対し、自国の管轄内にある子どもの権利の増進における進展を定期的に報告するよう義務づけている。利用可能な資源を最大限に用いることによる子どもの経済的、社会的および文化的権利の漸進的実現およびこれらの権利によって課される即時的義務の実現ならびに市民的および政治的権利の実現を実証するために、明確なかつ一貫した量的・質的目標および指標が活用されるべきである。締約国は、すべての子どもの権利のために資源が利用可能とされかつ最大限に使用されることを確保するための措置を定期的に見直しかつ改善するよう期待される。 33.委員会は、経済的、社会的および文化的権利を含む子どもの権利の実施のために必要な資源を獲得する手段として、国レベルおよび国内下位レベルで、説明責任が果たされる、透明な、包摂的なかつ参加型の意思決定手続が設けられることをおおいに重視するものである。 34.国の歳入動員、配分および支出における汚職および公的資源の誤った管理は、利用可能な資源を最大限に用いる義務を国家が遵守できていないことの表れである。委員会は、締約国が、腐敗の防止に関する国際連合条約にしたがい、子どもの権利に影響を与えるいかなる汚職も防止しかつ解消するための資源を配分することの重要性を強調する。 E.「および必要な場合には、国際協力の枠組の中で」(and, where needed, within the framework of international cooperation) 35.締約国は、子どもの権利を含む人権の普遍的尊重および遵守の促進に関して相互に協力する義務を有する [10]。条約およびその選択議定書に掲げられた権利を実施するために必要な資源を欠いている国には、二国間協力、地域的協力、地域間協力、世界的協力または多国間協力のいずれの形態をとるかにかかわらず、国際協力を求める義務がある。国際協力のための資源を有する締約国には、受入国における子どもの権利の実施を促進する目的でそのような協力を行なう義務がある。 [10] 国際連合憲章にしたがった諸国間の友好関係および協力についての国際法の原則に関する宣言(1970年)参照。 36.締約国は、必要なときは、子どもの権利を実現するための国際協力を求めかつ実施する目的であらゆる努力を行なったことを実証するべきである。そのような協力としては、予算編成過程における子どもの権利の実施に関連する技術的および金銭的支援(国際連合からの支援を含む)[11] も考えられる。 [11] 条約第45条参照。 37.締約国は、利用可能な資源を子どもの権利のために最大限に動員しようとする他の国の努力に協力するべきである。 38.締約国の協力戦略は、ドナーにおいても受入国においても、子どもの権利の実現に寄与するようなものであるべきであり、子ども(とくに、もっとも権利を侵害されやすい状況に置かれた子ども)に悪影響を及ぼすものであってはならない。 39.締約国は、国際機関の一員として開発協力に関与するさい [12] および国際協定に調印するさいには、条約およびその選択議定書に基づく自国の義務を遵守するよう求められる。締約国は同様に、経済政策の計画および実施にあたって、子どもの権利に生じる可能性がある影響を考慮するべきである。 [12] 一般的意見5号、パラ64参照。 III.条約の一般原則と公共予算 40.条約の4つの一般原則は、子どもの権利に直接間接に関連する国のあらゆる決定および行動(公共予算を含む)の基礎となるものである。 A.差別の禁止に対する権利(第2条) 41.締約国には、「子どもまたは親もしくは法定保護者の人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治的意見その他の意見、国民的、民族的もしくは社会的出身、財産、障害、出生またはその他の地位にかかわらず」、あらゆる種類の差別から子どもを保護する義務がある(第2条第1項)。締約国は、あらゆる行政段階において差別を防止するために行動するべきであり、予算関連の立法、政策またはプログラムにおいて、その内容面または実施面で、子どもに対する直接間接の差別を行なってはならない。 42.締約国は、十分な歳入を動員し、かつ資金の配分および使用をしかるべき形で進めることによって、立法、政策およびプログラムとの関連ですべての子どもにとって肯定的な成果を確保するための積極的措置をとるべきである。実質的平等を達成するため、締約国は、特別な措置を受ける資格を有する集団の子どもを特定するとともに、そのような措置を実施するために公共予算を使用することが求められる。 43.締約国は、差別が行なわれない環境をつくりだすとともに、国のすべての統治部門、段階および機構ならびに市民社会および企業セクターが差別を受けない子どもの権利を積極的に増進させることを確保するための措置を、資源の配分等も通じてとるべきである。 44.子どもが自己の権利を享受するという点に関わる肯定的な成果に寄与する予算を達成するためには、締約国は、関連の立法、政策およびプログラムを見直しかつ改訂し、予算の一定の部分について増額もしくは再優先化を図り、または予算の有効性、効率性および公平性を高めることにより、子どもたちの間に存在する不平等に対応することが求められる。 B.子どもの最善の利益(第3条) 45.条約第3条第1項は、子どもに関わるあらゆる行動において子どもの最善の利益が第一次的に考慮されると定めている。締約国には、子どもに直接間接の影響を与えるすべての立法上、行政上および司法上の手続(予算を含む)においてこの原則を統合しかつ適用する義務がある [13]。子どもの最善の利益は、予算編成過程のすべての段階を通じて、かつ子どもに影響を与えるすべての予算決定において、第一次的に考慮されるべきである。 [13] 自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)、パラ6(a)参照。 46.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)で指摘したように、条約およびその選択議定書に掲げられた諸権利は、子どもの最善の利益に関する評価および判断の枠組みを示すものである。この義務は、国が、予算の配分および使用に関わる優先的課題であって相互に競合するものの比較衡量を行なうさいに、きわめて重要となる。締約国は、予算に関わる意思決定において子どもの最善の利益がどのように考慮されたか(他の考慮事項との比較衡量がどのように行なわれたかを含む)を実証できるべきである。 47.締約国は、国レベルおよび国内下位レベルで立法、政策およびプログラムがすべての子ども(とくに、権利を侵害されやすい状況に置かれており、特別なニーズを有しているためにその権利の実現のために人口比に照らした割合よりも多くの支出を必要としている可能性のある子ども)に与えている効果を確認する盲的で、子どもの権利影響評価 [14] を実施するべきである。子どもの権利影響評価は、予算編成過程の各段階に位置づけられるべきであり、かつ監視および評価のために行なわれている他の取り組みを補完するようなものであることが求められる。締約国が子どもの権利影響評価を実施するさいに適用する手法および実践方法はそれぞれ異なることになろうが、その枠組みを開発するさいには、条約およびその選択議定書ならびに委員会が発表した関連の総括所見および一般的意見を活用するべきである。子どもの権利影響評価のさいには、子どもたち、市民社会組織、専門家、国の統治機構および学術研究機関などの関係者の意見を参考にすることが求められる。分析の結果は、改正、これまでのものに代わる対応および改善のための勧告としてまとめられるべきであり、かつ公に利用可能とされるべきである。 [14] 一般的意見5号のパラ45ならびに一般的意見14号のパラ35および99参照。 C.生命、生存および発達に対する権利(第6条) 48.条約第6条は、すべての子どもは生命に対する固有の権利を有しており、かつ、締約国はすべての子どもの生存および発達を確保しなければならない旨、定めている。委員会は、一般的意見5号において、子どもの発達とは「ホリスティックな概念であり、子どもの身体的、精神的、霊的、道徳的、心理的および社会的発達を包含するものである」こと、および、「実施措置は、すべての子どもが最適な形で発達できるようにすることを目指したものでなければならない」ことを指摘している(パラ12)。 49.委員会は、子どもが成長発達の段階の違いに応じてさまざまなニーズを有することを認識する [15]。締約国は、予算決定において、さまざまな年齢の子どもたちが生存し、成長しかつ発達するために必要なあらゆる要素を考慮するべきである。締約国は、予算のうちさまざまな年齢層の子どもに影響を与える部分を可視化することにより、子どもの権利に対するコミットメントを示すよう求められる。 [15] 乳幼児期における子どもの権利の実施についての一般的意見7号(2005年)および思春期の子どもの権利についての一般的意見20号(作成中)を参照。 50.委員会は、乳幼児期の発達への投資が、自己の権利を行使する子どもの能力に肯定的影響を与え、貧困のサイクルを打破し、かつ多くの経済的リターンをもたらすことを認知する。乳幼児期の子どもに十分な投資を行なわないことは、認知的発達にとって有害になりうるとともに、すでに存在する剥奪状況、不平等および世代を超えた貧困の強化につながる可能性がある。 51.生命、生存および発達に対する権利の確保には、現在世代に属するさまざまな集団の子どもたちのための予算を考慮する必要が含まれるとともに、歳入および支出に関して多年度にまたがる持続可能な見通しを立てることによって将来の世代を考慮に入れる必要も含まれる。 D.意見を聴かれる権利(第12条) 52.条約第12条は、自己に影響を与えるすべての事柄について自由に自己の意見を表明し、かつその子どもの年齢および成熟度にしたがってその意見を正当に重視されるすべての子どもの権利を認めている [16]。締約国は、国レベルおよび国内下位レベルで設けられた子どもの意味のある参加のための機構を通じ、子どもに影響を与える予算決定についての子どもたちの意見を恒常的に聴くべきである。これらの機構に参加する子どもたちは、自由に、かつ抑圧または冷やかしを恐れることなく発言できるべきであり、また締約国は参加者に対してフィードバックを行なうことが求められる。とくに、締約国は、意見を表明するうえで困難に直面している子どもたち(権利を侵害されやすい状況に置かれた子どもたちを含む)と協議を行なうべきである。 [16] 意見を聴かれる子どもの権利についての一般的意見12号(2009年)も参照。 53.委員会は、「自己にとってのあらゆる関心事について意見を聴かれ、かつその意見を正当に考慮される子どもの権利の実現に投資することは、締約国が条約上負っている明確かつ即時的な法的義務」であり、そのためには「資源および訓練に対するコミットメントも必要になる」ことを想起する [17]。このことは、子どもに影響を与えるすべての決定への意味のある子ども参加を達成するための資金が用意されることを確保する締約国の責任を強調するものである。委員会は、予算決定に関わる子ども参加を保障するうえで、行政府職員、独立した子どもオンブズマン、教育機関、メディア、子ども団体を含む市民社会組織および立法府が果たす重要な役割を認識する。 [17] 一般的意見12号、パラ135参照。 54.委員会は、予算の透明性が意味のある参加の前提条件であることを認識する。透明であるとは、予算の計画、策定、執行およびフォローアップに関連して、利用者にやさしい情報が時宜を得た形で公に利用可能とされるということである。これには、量的な予算情報と、立法、政策、プログラム、予算編成過程のタイムテーブル、支出の優先順位および決定の論拠、支出額、成果ならびにサービス提供情報についての関連情報の双方が含まれる。委員会は、締約国が、意味のある参加を可能にするための、状況にふさわしい資料、機構および制度 [18] のための予算を用意し、かつこのような資料、機構および制度を整備しなければならないことを強調するものである。 [18] 条約第13条第1項参照。 55.予算編成過程への意味のある参加を可能にするために、委員会は、締約国が情報の自由のための立法および政策を整備することを確保することが重要であると強調する。これには、予算編成方針、予算案、策定された予算、中期報告書、年度末報告書および監査報告書のような重要な予算文書にアクセスする権利が含まれ、または少なくとも子どもたちおよび子どもの権利擁護者がそのようなアクセスを妨げられないことが含まれる。 56.委員会は、多くの国が、予算編成過程のさまざまな部分に子どもたちの意味のある参加を得てきた経験を有していることを認識する。委員会は、締約国に対し、そのような経験を共有し、かつ自国の状況にふさわしい優れた実践のあり方を特定するよう奨励するものである。 (子どもの権利と公共予算 後編に続く) 更新履歴:ページ作成(2016年10月27日)。
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子どもひらがなキャンププログラム 日時 2010/07/31(土)~08/02(月) 場所 東海大学湘南校舎 内容 日本に住む外国籍の子どもたちを招き、国際交流のためのキャンプを実施する。今回は「子どもひらがなキャンプ」と題して、子どもたちに遊びながらひらがなに触れてもらうというワークショップを中心にいくつかのアクティビティーを行う。 ★プログラム★ 1日目(7/31) 12:00 参加者集合 13:00 ペットボトルロケット制作 @教室(未定) 15:00 クラブハウス入室 15:30 ペットボトルロケット @グラウンド(未定) 16:00 スイカ割り @グラウンド(未定) 17:00 シャワー @クラブハウス 19:00 夕食(ビュッフェ) @8号館食堂 21:00 肝試し/コンサート @学内 2日目(8/1) 7:00 起床/朝食 @クラブハウス 9:00 ひらがなカルタ @ネクサスホール 12:00 昼食 @野外(未定) 13:00 平和の巨大な絵作成 @13号館外 15:00 ビオダンサ(大人対象) @ネクサスホール 17:00 シャワー(子どものみ) @クラブハウス 18:00 夕食(BBQ) @ログハウス(未定) 20:00 シャワー(大人のみ) @クラブハウス 3日目(8/2) 7:00 起床/朝食 @クラブハウス 10:00 クラブハウス退室 10:30 活動報告会(大人対象) @ネクサスホール 外の遊び(子ども対象) @グラウンド(未定) 12:00 解散