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「風神様の神徳」 「風神様の神徳」 エンチャントF シンボル:白 必要コスト<白:4 無:2> 《自動》:このカードは、開始フェイズに活動状態にならない。 【無:0 自分の場の「八坂 神奈子」1枚を休息状態にする】このカードを活動状態にする。 【無:0 休】このターン、自分のキャラクターが戦闘ダメージを与えた場合、自分はその値と同じ点数のライフを得る。 「この調子で信仰も集まってくれると助かるんだがねえ・・・。」 illus 支倉ノイズ 最終更新:StigmA環境 コメント 関連 StigmA
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永遠亭と紅魔館と地霊殿は誰が一番ゲスまりさを捕まえるのがうまいか証明しようとしていた。 八雲紫は彼女らをテストすることにした。彼は森に一匹のゲスを放つと、それを捕まえてくるよう各々に指示した。 地霊殿の主は、自分のペットを森じゅうに配置した。さらに、ゆっくりたちを集めて心服させていった。 そうして三ヶ月に渡る徹底的な調査が終了した後、彼女らはゲスまりさは存在しないという結論を下した。 紅魔館の面々はレミリアが飽きるまでの間森の中を捜索し、主が退屈したとみると森に火をつけゲスもろともみんな殺してしまった。 彼女らは肩をすくめて、ゲスまりさに責任があると言った。 永遠亭の一同は注射器片手に二時間ほど森に入っていたかと思うと、焦点の合わない目をしたゆっくりれいむを連れてきた。 れいむはにへらと意思を感じさせない笑顔で答えた、「そうだよ、そうだよ、れいむはまりさだよ、ゲスまりさだよ」 食糧不足になった群れのドスまりさは畑荒らしを敢行するため、側近のまりさ、れいむ、ぱちゅりーに意見を募った。 まりさは「ゆっへっへ、まりささまがりーだーになれば、じゅうにんでじゅうぶんやれるんだぜ」といった。 れいむは「まりさはすぐうらぎるから、ゆっくりかんしするためにばいのにじゅうにんいるよ!」「どぼぞんのー!?」といった。 ぱちゅりーはそんな二匹とドスに半眼を向けて曰く、「むっきゅん。ぱちぇとドスのふたりいればじゅうぶんよ」 他の三人が「どうして二人で十分なの?」と聞いたところ、ぱちぇは取り澄ましてこう応えた。 「だって、はたけあらしにしっぱいしてつぶされるぱちぇと、あやまりにいってつぶされるドスいがいにだれがひつようなの?」 年老いたまりさが、同じ年頃のれいむに話しかけた。 「ねぇれいむ。まりさたちは、ほんとのゆっくりプレイスにたどりつくまでいきていられないよね。でも、おちびちゃんたちなら……」 れいむは楽しそうに飛び跳ねるおちびちゃんたちのゆっくりした将来を想像しようとして、 「ゆゆーん♪ そうだね、まりさ……ああ、なんてかわいそうなおちびちゃんたち!」 ドスまりさがきもんげにうーぱっくで伝言を送った。 「すばらしいゆっくりプレイスの紹介ありがとう! ほんと、どんどんみんなゆっくりしてしまうよ! ……次は、もっと別のゆっくりプレイスの紹介をお願いね」 ドスがぱちゅりーに群れの食料事情がよくない、なにかいい案はないかと訴えた。 ぱちゅりーが出した改革案は次の二つ。 「空想的なもの:みんなの努力で何とかする」 「現実的なもの:みんなで神様にお祈りして何とかしてもらう」 二人の男性が酒場で旧交を温めていた。以下その会話。 「悪い酒というのはあるのだろうか」 「ない。酒はいいか、またはとてもいいかのどちらかである」 「悪いゆっくりはいるのだろうか」 「いない。でも結果的に殴り足りないということはある」 とある子れいむとその親ゆっくりの会話 「おかーさん、れーむはいつまでもおかーさんたちをみすてないからね!」 「ゆっ!? おかーさんをおどすのはやめにしてね!」 白玉楼の門に、死んだゆっくりれいむとまりさがやってきた。 「れいむをはくぎょくろーにいれてね!」 「まりさはいいこだよ! はくぎょくろーにいれてね!!」 「それはできません。あなたの行くところは地獄と決まったはずです」 妖夢が応えると、二匹はとぼとぼとゆっくり地獄へと立ち去った。 やがて妙に機械的な発音をするゆっくりの一団が同じように白玉楼の門まで来たが、同じように地獄へと追い返された。 しばらくして白玉楼の門に、ゆっくり地獄の鬼に転職していた虐待お兄さんの一団がやってきた。 妖夢は驚いた。 「一体あなた方は何をしに来たのです!?」と妖夢は言った。するとしょげ返った虐待お兄さんたちが言うには、 「我々は地獄から亡命してきたのです。 上白沢慧音が八坂神奈子に尋ねた。 「神よ、人間の里の生活環境はいつ良くなりますか」 神奈子は答えた。 「貴方の寿命の内には良くなる」 博麗霊夢が神奈子に尋ねた。 「ねえ、うちの神社への信仰心はいつ回復するの?」 神奈子は答えた。 「貴方の寿命の続く内にはには無理じゃない?」 最後にゆっくりさなえが神に尋ねた。 「かみさま、ゆっくりのたいぐうはいつよくなりますか?」 少し悩んで神奈子は答えた。 「それは閻魔に聞いてみないと……」 文々。新聞助手のきめぇ丸に聞いた。 Q:「とかいはのあいはむげんなのよぉぉぉぉ!」 A: 「はてさて、どうですかね。どんなものにも限りはあるものです。 例えば都会派の愛ならば、「ばりざああぁ!」で始まり「もっどゆっぐり……」で終わるもので」 Q:「それじゃ、ありすがあいでえいえんにゆっくりすることってあるの?」 A:「いいえ。もっとも、相方はそういう訳にもいかないようですが……」 Q:「にゃああ。わからないよー? ばかなゆっくりとりこうなゆっくりのちがいはなんなのかなー?」 A:「明瞭です、明瞭です。馬鹿なゆっくりは人間さんが目の前に示す好意を愛情と受け止めますが、 利口なゆっくりは周囲に人間さんが周囲に現れない状況を愛情として受け止めます」 Q:「ドスはどうやったらむれのあかちゃんのかずをふやさないようにできますか?」 A:「おお、不可能です不可能です。残念なことに、赤ゆの再生産の手段はドスの所有権のもとにはありません」 Q:「にんげんさんにつかまったとき、かならずぬけだせるほうほうってあるの?」 A:「おお、存在します存在します。具体的には、魂だけの存在になることによって」 Q:「どうしてちぇんやぱちぇりーたち、おやさいさんをとるのはだめっていったゆっくりたちはむれからおいだされたの?」 A:「最良のゆっくりは、主に飼いゆっくりとして出荷されるからです」 Q:「まりさのむれにえーきがきたよ! なにかかわるかな?」 A:「おそらく、えーきの判決の前に制裁を行うことが禁止されるのではないでしょうか。結果は変わらないでしょうがね」 Q:「むきゅううぅぅ! どうしてまりさたちはにんげんさんのゆっくりプレイスにでかけていくのかしら!」 A:「おお、愚か愚か。自分を招待してくれた人を見つけるためにでしょう」 Q:「せかいじゅうのみーんなにゆっくりしてもらうことはできるみょん?」 A:「やめてください、せかいがほろんでしまいます」 _______________________________________________ ※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ありすを洗浄してみた。 ゆっくり石切 ありすとまりさの仲直り 赤ゆっくりとらっぴんぐ ゆねくどーと ゆっくり花粉症 十姉妹れいむ ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1~ このSSに感想をつける
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ワールドメイトとは ワールドメイトは、菊理姫大神、御親元素大御神、天照皇大御神をはじめ、八百萬の神々を崇敬する神道系宗教団体である。 「来るもの拒まず、去るもの追わず」の民主的な団体。 会員に布教義務は無く、神事や講演会への出席の義務もない。 情報源は、郵送物、電話、ホームページ、メールマガジン、書籍、カセットやCD、ビデオやDVDなどから、会員が自由に選択することができる。 会員本人の意志を尊重しているため、他宗教、他宗派の信者・信徒でも入会できる。また、強要や退会の妨害などは一切ない。 日本国内15ヶ所のエリア本部と183ヶ所の支部、ニューヨーク、ロンドン他10ヶ所の海外支部などがある。 ワールドメイトの特色 『実在の神を掌握し、神を行じ、神人合一の道が降りている』ということを特色としている。 ミロクの世の五箇条 信仰心・・・・神が持っている真(学問)・善(宗教、福祉)・美(芸術)を憧れ敬い、会得しようとする姿勢を宗教心とする。 その宗教心を、一生涯をかけて、貫き通す精神こそが信仰心であり、 貫き通す精神のない人は、宗教心はあっても、信仰心はないということになる。 また、宗教的分野に限らず、学問や芸術を一生涯かけて、貫き通す精神も『信仰心』とする。 愛念・・・・・隣人愛のような、普遍的な愛の念、思慕の念のこと。 「相手よし、我よし」の相互の幸福と発展を願う心でもある。 秩序・・・・・善因善果、悪因悪果の法則という大秩序が我々の運不運に強く影響を及ぼしている。 調和・・・・・秩序が極まると、調和の心となる。 秩序は縦、調和は横のつながりのことでもある。 調和の心により、別々の物事が、互いに長所を発揮して、活かし合うことが可能になる。 平和の心・・・上記の心を全て持ち合わせていても、平和の心がないと、戦争が起こる可能性がある。 世界の国々の為政者や国民が、平和の心を前に立てて、手を取り合うときに、初めて戦争のない世界がやってくる。 上記5つの要素(ミロクの世の五箇条)が、神人合一の人には備わっているとしている。 沿革 1977年 植松の内弟子となり、宗教的生活を開始 1984年 宗教団体コスモコアを設立神道をベースとした講演会活動を開始 1985年 深見東州が『神界からの神通力』を出版会員が増加し、宗教活動が活発になる 1988年 皇大神御社を建立し、総本部に定める会員参加型の祭祀・祭事(祭)や神事を行う 皇大神御社(すめらおおかみおんやしろ) 御親元素大御神、神仕組の神に坐す菊理姫大神、天照皇大御神をご祭神としてお祀りする御社。 御親元素大御神が祭祀された地上でただ一つの神社。 皇大神御社には、それぞれ専門のお働きをなす神々様が集われている。    主な行事     ・歳旦祭     ・節分大祭     ・立春祭     ・月次祭・・・・・・・毎月 朔日     ・九頭龍祈願祭・・・・毎月 一度(3のつく日)     ・トカラ龍神祭・・・・毎月 16日     ・七五三祭・・・・・・毎年 11月     ・人形・形代祈願・・・毎年 6月・12月 活動紹介 2月 節分神事    神霊界で2月3日は『天界の大晦日』、2月4日は『天界のお正月』である。    天界のお正月を迎える恩赦・特赦で、地獄の奥底に沈んでいる獄界先祖霊を救う、『豆木祈願』が行われる。 5月 ゴールデンウィーク神業    生まれ持った星(命運)を変える、救済のための『宇宙秘儀』が、神様から許されて行われる。    許されるのは年に一度だけである。 6月 鹿島神業    ワールドメイト二大神事の一つである。    上半期の神業をしめくくり、日本国と一人ひとりの運勢を強化する神事を行う。    『人形・形代』の炊き上げも行う。 8月 お盆神業/灯籠流し    深見東州が『先祖供養』と『大救霊』を行う。    先祖が本当に喜ぶとされている『灯籠流し』も行われる。 10月 富士箱根神業    日本屈指の大神域で、本当の神様を動かすさまざまな神法が伝授される。 12月 伊勢神業    ワールドメイト二大神事の一つである。    一年の間に積んだけがれを払い、翌年の国運と、一人ひとりの運勢を強化する神事を行う。    『人形・形代』の炊き上げも行う。 毎月行われる行事 ・月次祭/諸願成就祈願    原則として朔日、15日に行われる。    日本国民や人類全体の幸せと、日本と世界の平和、神仕組の弥栄を祈願する。    また、ワールドメイト全会員の幸せも祈る。 ・霊峰富士クリーン化キャンペーン    毎月22日を「富士の日(22・フジの日)」と定めていて、    富士山麓の清掃活動『霊峰富士クリーン化キャンペーン』を行なっている。    平成7年4月に始まって以来、毎月1回、富士山麓の清掃活動を続けている。 ・神伝密教 護摩祈願    不動明王の日(毎月28日)に、全国各支部で、行われている。    神伝密教師による護摩祈願と悩み相談。 その他の行事 ・クリスマスチャリティー・何が起きるかわからんぞ神業    毎年12月に東京で開催される。    深見東州の講演と、運がよくなる秘儀が行われる。    衛星放送で、全国エリア本部、支部でも参加が可能。 ・面白!ありがた!講演会!!    ワールドメイトの認定講師による講演。    全国で開催している。 主なご祈願 救霊 ワールドメイトの「言霊救霊」はたたり霊(家を先祖代々恨んでる霊)や、先祖霊(獄界で苦しんでいる霊)、不成仏霊(霊界へ帰ることがわからず迷っている霊)に、 それぞれの前世の因縁因果から神霊界の法則までを分かりやすく丁寧に説いて諭していく。 神様や仏様の力によって、その霊たちの苦しみや痛みを癒し、迷いや葛藤を解き、新たなる悟りや霊明・霊位を与えて、 霊界へと送ってあげるもの。 獄界に落ちている先祖霊の救済も行うので、なによりの先祖供養になる。 救霊を行うのは深見東州に直接指導を受けた直弟子で、神様から許可された救霊師が、マンツーマンでお取り次ぎする。 九頭龍祈願 九頭龍大神様は、箱根大神のご眷属として箱根の芦ノ湖に鎮まっている。 1986年からすの神の大命を受け、萬民救済のために働いている。 神力の強さ、すさまじさは、日本に現れる正神界の龍神のなかでも三指に入るほどのものである。 事業繁栄など現実的な願いはもちろん、難病や事故による命の危機にいたるまで、ここ一番の祈りには必ず大神力を発揮、奇跡的な霊験をはっきりと顕して下さる神様である。 九頭龍神法 ワールドメイトの全国支部で毎月行われている。 1ヶ月の金運・健康運・事業運を強化し、神徳授けてもらうもの。 九頭龍遠隔法施 深見東州が直接ご祈祷してくれる。 継続性の必要な病気平癒祈願や、身体を根本的に丈夫にする。 “火の気”によって、パワーと即効性と元気がみなぎるような神徳授けてもらうもの。 九頭龍緊急祈願 緊急を要する生死にかかわる問題や、一生を左右する大問題など、ここ一番の危機を救ってほしい場合のためのご祈願。 危機一髪の状態から身体を回復させるパワーは随一で、その神力・神徳は、即効力があって絶大である。 九頭龍神法特別強力祈願 九頭龍師が直接祈願し、強力な現実への顕現力で成就していただこうというもの。 結婚や事業や学業や金運などのあらゆる願望成就について現実界に顕現するパワーを働かせる。 薬寿祈願 神伝密教 人形・形代
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《風神様の神徳》 カウンター罠 自分フィールド上に「山坂と湖の権化 八坂神奈子」が表側表示で存在する場合に発動する事ができる。 効果モンスターの効果の発動を無効にし破壊する。 神奈子様が存在する時にのみ発動できるノーコスト《天罰》。 ノーコストで使えるカウンター罠の強さ、専用カードの弱点はどちらも今さら記述するまでもないだろう。 《あヽ風の神よ、神湖の地に》,《神さびた古戦場》と併用することで戦闘(と一部のリリース強要カード)以外の全ての相手の行動から神奈子様を守ることができる。 このカードの登場により儀式サポートの天使族だけでなく、【エンジェルパーミ】に採用される天使族とのシナジーも期待できるようになったため、天使族軸の神奈子様デッキも構築しやすくなった。 発動時メッセージは以下の通り 「カウンター罠発動『風神様の神徳』!」 ○○の効果を神奈子の神気が消し去った! 関連カード 《山坂と湖の権化 八坂神奈子》
https://w.atwiki.jp/yukkuri_gyakutai/pages/4510.html
※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ありすを洗浄してみた。 ゆっくり石切 ありすとまりさの仲直り 赤ゆっくりとらっぴんぐ ゆねくどーと ゆっくり花粉症 十姉妹れいむ ゆねくどーと2 ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1~ ※注意事項 まず、上掲の作成物リストを見てください。 見渡す限り地雷原ですね。 なので、必然的にこのSSも地雷です。 では、地雷原に踏み込んで謙虚ゲージを溜めたい人のみこの先へどうぞ。 _______________________________________________ ゆっくり。 それはヒトの頭部に良く似た形状を持つ、だが地上のあらゆる生物と隔絶した生態、そして体組織を持つ不可思議なナマモノ。 彼女たちが忽然としてこの地上に現れてから、既に十数年という月日が過ぎ去っていた。 多くの論争と紛争、対話と挫折と理解と誤解を超えて、いつしか諦めに似た感情と共にゆっくりたちは人間の生活の傍らに 存在することを許されるようになった。 最初は極東の片隅に存在する島国、日本で。 そしてそこから、海も山も大河も彼女たちの拡大を妨げることなく、北米の大平原からアフリカのサバンナにいたるまで。 ありとあらゆる土地に、ありとあらゆる言語を操り、彼女たちは極々自然にその土地の環境に馴染んでいった。 平和な土地にも、争い絶えぬ土地にも。人に溢れた街中にも、人跡未踏の秘境の奥底にも。 その土地の言葉で「ゆっくりしていってね!」を叫び、彼女たちは気ままな、だが儚く、人の意向に左右される生を送っている。 そして、今。 「ゆっくりしていってね!」 遠く、モスクの四囲に聳えるミナレットから早朝の礼拝を呼びかけるアザーンが朗々と響く夜明けの街中にも、彼女たちは在った。 彼女たちの扱いは、どこの土地でもそう大差はない。 犬猫とさして変わらぬ、だが多少の知恵を持ち、人語を解するだけに理解と誤解が発生しやすい見慣れた生き物。 人に飼われる少数のものがある一方で、野生や野良として暮らす数多のものがいる。 今、モスクに行きかう人が絶えない通りの真ん中で、お決まりの台詞を連呼しているのは野良のゆっくりまりさだった。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!」 そう叫ぶまりさの形相は、その言葉に反してちっともゆっくりしていない。 必死の様相である。よく見れば、まりさの底部――あんよと呼ばれるゆっくりの移動の要となるその器官は、真っ黒に焦げ付いていた。 「にんげんさん、まりさにちかづかないでね! まりさはゆっくりできないよ!!」 誰かの悪戯で足を焼かれ、そして大通りに放置されたのだろうか。 だが、それにしては叫びの内容がおかしい。 ゆっくりは、如何に自分がゆっくりした存在であるかを己のステータスにしている。 確かにあんよを焼き焦がされ、移動もままならない状況ではゆっくりできないゆっくりであるのは確かだが、 ゆっくりが自分自身をそのような存在であるとアピールするのはそうそうありえることではなかった。 「ちかづかないでね! ちかづかないでね! ゆっくりできなくなるから、ちかづかないでね!」 ましてや、助けを求めるでもなく近づく人間を牽制するとはどういうことだろう。 さらに不可解なことには、そのまりさの威嚇――というよりは懇願に近いそれに、多くの人々が素直に従っていたことだった。 みな、通りの真ん中に据え置かれたまりさを避けるかのように道の端を走っていく。 人々のまりさを見遣る眼差しは、アザーンの朗誦を遮るほどの大声で喚く彼女をことさら疎む訳でもなく、 むしろ一抹の哀れみさえ湛えているようにも見えた。 そんな、モスクへと向かう人々の波がひと段落するまでの十分ほどの時間。その間を、ずっとまりさは叫び通した。 ミナレットのスピーカーもいつしかアザーンの朗読を終え、夜空は群青の領域が少しずつ青に駆逐されつつある。 人通りがわずかでもある間は止むことなく大声を放ち続けていたまりさは、喉を悪くでもしたかはたまた体力の限界か、 潰れるようにして人の消えた未舗装の路上の上にだらしなく伸びていた。 その体が、びくりと震える。 アザーンとまりさの叫びが絶えた街中に、遠くから低く重く唸るエンジン音と、キャリキャリと耳障りな金属音が響いてきた。 「ゆゆっ!?」 まりさはガバリと跳ね起きる。 そして、自分の立つ一直線の路上、その彼方に目を凝らした。 「ゆがーん!?」 そして予め知っていた破滅の時の到来に、恐怖と絶望も露わにその相貌を醜く歪める。 「ゆ、ゆっくりしていってね!」 まりさは、叫んだ。前方から来る破滅に向かって。 「ゆっくりとまってね! ゆっくりこないでね!」 聞こえぬと知りつつ、聞こえたところでその言葉が通じぬと知りつつ。 アラビア語を話すまりさは、枯れ果てたかに思われた声を振り絞って破滅へと呼びかけた。 「ゆっくりできないよ! こっちにきたら、ゆっくりできなくなるよ!!」 誰が? まりさではない。前方から来る破滅は、まりさを永遠にゆっくりさせる。 だが同時に、その破滅もまたまりさに近づくことによってゆっくりできなくなるのだ。 そのことを、まりさはカチカチに焼き固められたあんよの下にある冷たい感覚によって気づいていた。 「こないでね! ゆっくりひきかえしてね! それいじょうきたら、まりさおこるよ!」 前方から近づいてくる破滅は、止まるどころかその速度を落とす様子も見せない。 焦るまりさはいっぱいに空気を吸い込み、ぷくーと頬を膨らせ威嚇のポーズをとった。 怯ませるためではない。まりさはゆっくりとしては賢い部類で、そんなことでこの相手が怯むはずもないことは承知している。 ただ、体を大きくして自分に気がつかせたかったのだ。 自分の存在に気がつけば、自分が何を伝えようとしているのかに気づいてもらえれば、止まってくれるかもしれないと思ったから。 実際には、破滅――十数両の戦闘車両で構成された車列はとっくにまりさの存在に気がついていて、しかしその意図を理解せず、 ただ愚かなゆっくりが威嚇している程度に捉え、従ってその前進には何らの躊躇もなかったのだが、それはまりさの知るところではない。 ましてや、車列の先頭にある戦車の車長と操縦士はゆっくりを薄気味悪い怪物と見て忌避する類の人々であり、 また民衆から常に敵愾心を向けられる占領者として重度のストレスを溜め込んでいることなど、まりさは知るはずもなかった。 言葉が通じず、不遜とも取れる顔つきで人間に接する首だけの生物。その威嚇行動。 それは、極度の緊張感と悪意の中に溺れる人からその攻撃性を引き出すには十分すぎる要因だったのだ。 「どおじてどまってぐれないのおおおおぉぉぉ!? まりさ、ゆっぐりできないんだよおおおぉぉぉ!!?」 結果として。 まりさの試みた決死のぷくーっ、は前方から迫る車列の足を止める役割など欠片も果たさず、 却ってその無限軌道がまりさをひき潰すべく一直線に突き進んでくる結果を招来することとなった。 (まりさは……にんげんさんにゆっくりしてもらいたかっただけなのに……) 轟音を立てて近づくキャタピラがまりさを文字通り粉砕する瞬間、彼女はぎゅっと双眸を瞑り、一滴の涙を零す。 (まりさのせいで、にんげんさんが……) たくさん、ゆっくりできなくなる。たくさん、何人も。 永遠にゆっくりしてしまう。まりさが、殺すんだ。 それは、彼女をそう仕向けた人間の悪意によるものだったが。その全てをまりさは自分の咎と受け止めて。 「ゆ゛っ」 『カチッ』 自分の短い断末魔と、何かの金属音をキャタピラの轟音の中に聞いて、まりさは逝った。 * * * 彼女の遺体は、この地上に残らなかった。 キャタピラにひき潰されたから、ではない。 その直後、まりさの下に埋められた対戦車地雷が炸裂し、さらにその爆発がより深くに隠された航空爆弾の誘爆を引き起こし、 彼女を引いた戦車ごと吹き飛ばしたからだった。 まりさは全て、この為の撒き餌だったのだ。 悪意的な占領者が車両でひき殺せば、地雷の感圧信管が作動しその車両と周囲を吹き飛ばす。 好意的な占領者が助けるために近づけば、遠隔操作で爆破しその占領者たちを吹き飛ばす。 ゆっくりが好意と悪意、その両方を受け止めやすいことを利用して仕掛けられたIEDに、まりさはパーツとして用いられたのだった。 ゆっくりがこの世に登場して十数年。 平和な土地にも、争い絶えぬ土地にも。人に溢れた街中にも、人跡未踏の秘境の奥底にも。 その土地の言葉で「ゆっくりしていってね!」を叫び、彼女たちは気ままな、だが儚く、人の意向に左右される生を送っている。 このSSに感想をつける
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読
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総 説 先代旧事本紀によれば石上神宮の鎮魂祭は神武天皇の御代に初めて宮中に於いて行われ、以来勅命に依って毎年取り行われた国家の祭儀として存在して居た。これをそのまま信じる訳にはいかないが、文武天皇の御代に令が制定されてそこに「伯一人掌鎮魂」とあるから、奈良時代以前より存在したのは間違いない。御祭神は石上神宮の御主人に坐す布都御魂大神(ふつのみたまのおおかみ)で、祭主が神業を行じつつ、饒速日尊(にぎはやひのみこと)が天神から受伝えた鎮魂の十種の瑞寶(とくさのみづのたから)を用いて、宝祚の弥栄と国家の地鎮を修する特殊神事であると同時に、また鎮魂の法を伝える儀式でもある。 祭日は毎年仲冬の寅の日に行われるのが普通で、臨時に行うこともあったがこの場合は特にこれを平国祭と呼んでいた。 う第10代祟神天皇の御代、御祭神が宮中から石上の地に御遷座になられたので、この鎮魂の祭儀も石上に於いて行われることとなり、以来次第に変遷して今日に至った。 古、これに奉仕して鎮魂の祭儀を司る者は必ず物部連の祖“宇摩志麻治命(うましまじのみこと)”の末裔で、これを連綿と受け継ぎ祭主として奉仕していた。これが国家のために行う本来の鎮魂祭であったが、後世に至って宮中でも別に鎮魂祭を行うこととなった為に、憚りに鎮魂祭と称さず宮中の祭儀と区別して石上神宮鎮魂祭と名付けることとなった。 名称の意義 鎮魂祭は「みたましづめのまつり」と唱え、神武天皇の勅命に依って制定され永く之を行う事となったが、其の意義は鎮魂祭の御祭神に坐す石上神宮の御神徳を列挙することによって窺うことが出来る。 石上神宮の記録によれば御主神の布都御魂大神は武甕槌神(たけみかづちのかみ)が国家平定に御佩用になった十握剣(とつかのつるぎ)の神の御気(神剣そのものではない)を、神籬(ひもろぎ)に招請して大神と称え奉った神で、その御神徳は「百王萬代之奉平ノ守護神」「天下泰平ノ守護明神」「天下の人民を平安に治護する大神」「豊葦原を安国と平けく又天下国家を理平にする大神」「剣振国家納ノ大神」などと尊称され、また鎮魂を司る天璽瑞宝十種(あまつしるし みずたから とくさ)はその神として働く御気を布留御魂大神(ふるのみたまのおおかみ)と称えて、石上神宮の御祭神として祀られ、御主神と併せて二座となった。 鎮魂を司り魂を招き、「痛み病む所もなく、鳥獸鱗虫の災いもなく打拂うて幸へ(さきわえ)給ふ故に布留御魂大神と云う也」とも、「神を返し魂を招き、天壽天寿を終へずして死る(まかる)人も此の神寶によつて性命成就長壽長寿たり」、また「人間及畜類迄にも及ぼす壽命寿命の祭神也」「萬物成就の體也」などとも称せられ、この布都御魂大神と布留御魂大神の二神を併せた石上神宮の御神徳としては「天下泰平、五穀成就、性命長壽、疾病を攘厭(じょうえん)払い厭うする平國-國家を平安にする-鎮魂祭を取行ふ故に百姓に至る迄當宮当宮の恩頼(みたまのふゆ)を蒙りて皆驗有り、鎭護國家の爲の祭祀也。巧徳廣大舉げて量り難く鎭魂祭執行の事日本第一の祭祀、韴靈(ふつのみたま)の神劍並十種神寶靈威煒煌(いこう)盛にして荒を治め寶祚を護り人間離遊の魂魄を鎭めて壽考の域に遊ばしむ、國家安全の御祈禱此の上はあらず」など記してある。これを要するに石上神宮の御神徳は平国鎮魂祭を生命とするものであると言うことが出来る。 後に石上神宮には前記二柱神の外、素盞鳴尊の佩いていた十握剣の神の御気を迎え、この御気を布都斯御魂神として併せ祀り、更にまた草薙剣の神の御気を迎えて摂社出雲建雄神社(いずもたけおじんじゃ)(式内社)に祀っている。この神等の御神徳も平国である。 これら石上神宮に於ける御祭神悉くが剣或いは瑞寶そのものを神とせず、その神の御気を認め抽出して御祭神としたという点は特に注目すべきである。 なお、鎮魂祭の意義に就いてさらに補足すれば、天下泰平・国家安穏の鎮魂は布都斯御魂大神の御守護の下に行われ、斎主が自ら鎮魂の神業を修めて自らの魂を鎮め、その威力を増強して鎮魂の神業を行う事によって始めて祭儀の意義をなすのだ。前記布留御魂の御神徳に依り、鎮魂の神業を自修または他修によって行い、その境地に至れば人々はその諸魂の調和を得、天凛の技能を発揮し、無病長寿を得る事ができる。 布都御魂を祭神とする国家鎮魂は自らの魂の中に神気を呼び起こし、神祇の御気に接して、敬神祭祖の道を知るに至り、ひいては天下泰平宝祚の弥栄の結果となるので、神武天皇が天壌無窮の裏の行事をして永遠に遺された誠に意義深い儀式である訳だ。 鎮魂祭の起源及び沿革並びに宮中儀式との関係 鎮魂祭は、物部氏の祖である宇摩志麻治命が神祖 饒速日命より受伝えた鎮魂十種神宝を神武天皇に奉り、その元年十一月宮中に神楯を立てて十種神宝を斎い、今木(賢木)をさし巡らし、神籬を造り、その中に韴霊の剣を納めて布都御魂大神を招請し、鎮魂の神業を行って天皇皇后の壽祚を祈請し、神宝を布都御魂大神の許に韴霊の剣と同じように納めて宝祚の鎭めとせられたことが起源となっている。その後、神武天皇の御代の七年、物部連祖 伊香色雄命(いかがしこをのみこと)が勅命によって宮中に奉安した布都御魂大神と布留御魂大神-十種神宝の神気-の御神体を共に大和国山辺郡石上の地底に埋蔵し、その上に霊畤祭場を作り奉斎する事となってからは此の平国鎮魂の祭儀は石上神宮において行われる事となり、祭主としては常に宇摩志麻治命の裔孫(えいそん)遠い子孫が連綿として相承けて歴代奉仕したが、外教伝来や物部氏の衰微、その後の国変などで神道の衰微を来し、遂にこの重大な儀は廃絶に等しい状況に立ち至った。その間、中世において石上神宮の祭儀の一部が宮中に入って、天皇の大御身(おおみみ)のための御鎮魂を行ったものと推定される。それは伯家部類鎮魂祭の条を参考すればただちに首肯されるものだ。即ち「神祇官にあった祝部殿の御祭神は石上神宮の御祭神に坐す布都御魂大神・布都斯御魂大神・出雲健雄神となっているのである。又祝部という職名は石上神宮の神職の中に古来あったものか、もしくは石上から奉仕のために宮中に入ったものか」とある。また或る説に「石上の式に着鈴賢木を用いる事から宮中でも同じ着鈴賢木を用い、また祝部殿の御神体が鈴なる由等にも関係あるものと考察される。また宮中の御儀は国家鎮魂の本系でないことは、その祭神が布都御魂大神に坐さずして天皇大御身御守護の神、神祇官八神を祀り、十種神宝の御霊を招請して御鎮魂の神業が行われる。故に石上神社備考には神祇官八神殿は天皇のための鎮魂の神なり。初めの祭式は国家鎮魂なり」と記され、石上神宮略記には「八神は十種神宝を司る神なり」などと見えて、両者の区別を明らかにしている。 宮中鎮魂が令の制定以前すでに石上から移って行われていたことは、神祇令に鎮魂の条があることからも明らかだ。物部氏が盛大であった頃はこの儀式も古式厳かしく行われたように思考される。即ち、祭主であった物部 尾輿(もののべのおこし)連の奏に曰く、「我が国家の天下に王とましますは、恒に天地社稷百八十神を以て春夏秋冬祭り拝み給うことを事とす。令改めて蕃神を拝せば恐らくは国神の怒を致さむ」と。 同じく守屋連の言に「如何でか国神に背きまつりて他神を敬ふことあらむ。由来如斯ことを識らず」と。 石上神宮の古伝によれば、伯家部類祝部殿中の祭神の一柱である出雲健雄神は、天武天皇の朱鳥元年六月十日鎮座せられたという。また栗田寛が著した『物部氏纂記鎮魂祭』の註に「(上略)・・・かくて上代の様を推し測るに、凡て此の祭には専らと布都御魂大神又天瑞寶を以て天皇命ろ皇后の御魂を鎮め奉り壽祚を壽ぎ奉ることなりしが、漸く移りて祈年祭祝詞にある八神の神徳など自ら之に通ひて聞ゆる故に此の八神を祀れるなるべし」と。また鈴木重胤が著した『祝詞講義鎮魂祭』の講義に「(上略)・・・後に神祇伯の職掌とすることをぞ宇摩志麻治命は行ひて、それ即ち其の氏人の職なるをや、良其家の衰ふる運にあたりて神祇伯といふ職の出で来れるより遂に物部は其家業を失ひて伯の職掌とはなれるなり」とあるなど、合わせて大略を知ることが出来る。また石上神宮記録にはその後も物部氏の正統は神主家となり、市川臣の末裔が神主或いは祝部となって同宮の祭儀を奉仕していることが記されている。 桓武天皇の御代延暦二十四年石上神宮の造宮使石川吉備人が工程を支度して太政官へ報告したものを見ると、造宮料軍功十五万七千余人とあってその巨費と社頭の壮大なのは天皇を驚かし奉ったと云うことが記されている。また石上神宮の宝物を平安に運收せしめられた際、たまたま桓武天皇が御不豫(みやまい)にわたらせられたので、特に宣命(*1)を賜り、天皇の御衣を御輿に乗せ石上神宮に送って社頭に幄屋(あくのや)(*2)を設け鎮魂を申し上げたことが日本後記に記載されている。 下って白河天皇の御代、石上神宮高庭の前に建てられた勅符の神門を改めて現今の拝殿を造らせられたが、これは毎年仲冬の中の寅の日鎮魂祭に際しての雨の妨害を考慮しての事と記録に見えている。森氏所蔵の古記録に「往昔は十人神主、五人神人、三十六人蔵人、八人神女、六人童子、十二人児、罷り在り神式相勤め罷り在り候。」などとあるによっても、祭儀が厳重に執り行われていたことが窺われる。また延喜式や江家次第によると神祇官の笛師と琴師が伴奏し、神部および雅楽の歌人が唱和するにつれて御巫が舞ったとある。 鎮魂式の種類と祭神 鎮魂式には本系の祭儀すなわち公式の祭式として国家鎮魂の祭を行って天下泰平宝祚無窮を祈請するものと、傍系の祭儀すなわち天皇、中宮、院、皇太子の御平安を祈請するものと二種があり、更にまた鎮魂には自己のために行う自修鎮魂式と他を鎮魂救渡せしめる他修鎮魂式の二種がある。 以上、四種の鎮魂式の内、 (1)国家鎮魂の祭儀には石上神宮の祭神である、平国の剣の神気たる布都御魂大神と十種神宝の神気たる布留御魂大神の二座を祭神として拝祭。 (2)宮中鎮魂の祭儀には八神及び特に祀る大直神を中心として十種神宝の神業を行う。 この場合、布都御魂大神など石上神宮の祭神は、御玉緒が斎い納めてある祝部殿の守護神として招請されることになったのである。また私的鎮魂の場合には、 (3)自修的鎮魂と他修的鎮魂ともに鎮魂の司の神たる布留御魂大神を祀る。 鎮魂式の種類はおおよそ以上の四種類に分かれるのであるが、何れの式にしても行者は必ず自修鎮魂を修め、その境地に達することを基本的必要条件とするのである。 鎮魂の神業 ここに鎮魂の神業とは自修鎮魂に入る神業をさすので、鎮魂の神業は石上神宮記に次のごとく記されている。 天神御祖ハ皇孫天火明櫛玉饒速日命ニ詔シテ天璽瑞寶十種ヲ授ケタマフ。 所謂瀛都鏡一ツ、邊都鏡一ツ、八握剣一ツ、生玉一ツ、死反玉一ツ、足玉一ツ、道反玉一ツ、蛇比禮一ツ、蜂比禮一ツ、品物比禮一ツ、是レ也。 天ツ御祖教ヘ詔シテ曰ク若シ痛處者有ラバ玆ノ十種ヲ令テ一二三四五六七八九十謂ヒテ、而布瑠部由良由良、由良止フ、布瑠部、 此ノ如ク之レヲ爲セバ者、死人モ反リ生ク矣。是レ即チ所謂ル布瑠部之言ノ本矣。 これによって見れば、神業の根元とするところは天神の神勅であり、口授に渉る秘法は石上神宮相伝の鎮魂神業によって知ることが出来る。 この神業の目的とする所は云うまでもなく鎮魂であって、神祇令鎮魂の義解に 「謂フ鎭ハ安也。人ノ陽氣ヲ魂ト曰フ也。言ハ離遊ノ運魂ヲ招キ、身體之中府ニ鎭ムルヲ鎭魂ト曰フ也」とあるによっても知ることが出来る。 また岩上神社備考に「離遊の運魂とは亂雜之心也、身體之中府に鎭むるとは清浄正直の本心なり」とあり、また宮地博士著『神祇史』には「魂の調和狀態なり」ともあり、これを信仰的に見れば宇宙の元霊に通じるとも言われている。この行の結果現れる功験中最も尊いものは無病長寿であるから、上に掲げる布留御魂神の神徳の主なるものと称えられているのである。 もっともこの神業には十種神宝の霊能が行の中心を成すものであるから、一二三四五六七八九十と唱えるは、神宝十種の隠語であり、猿女君氏の宇氣槽を衝くときに一二三四五六七八九十と唱える十度の数、玉緒を結ぶ回数の十度、玉緒を入れた葛筥を結ぶ時の「ソロヘテ、ナラベテ、イマハリ、サラニ、タネ、チラサズ、イハイ、ヲサメテ、ココロ、シヅメテ」と唱えること十度、神業に両手を組み合わせて前後左右中と各十度づつ振ること十回などの数は、いずれも神宝十種の数に因るもので、また両掌を握ることは神宝を掌中に納めた形をするものであって、すべて十種の霊能の導きに重きを置くことと知るべきである。これがこの瑞寶を鎮魂の司としその働きを布留御魂大神と尊称する謂である。 十種神宝はそれぞれの功徳の種類を現すのであって、古来種々の説明が行われている。十種神宝の本体は布都御魂大神の許に国家の鎮めとして治め、その神気を布留御魂大神として祀られ神業守護の神となっているのである。一般の神業には代物あるいは図形を用いるか、或いは十種を観念しつつ行うのである。 この神業はおおよそ唱言と布留業と息との三部に分かつ事が出来る。詳しくは口授に譲って、実習に当たって参考となるべきことを二三挙げる事とする。 一、神業の中に一二三四五六七八九十と唱える言葉を一ツ二ツ三ツ四ツ五ツ六ツ七ツ八ツ九ツ十ヲとも記されて津の音を口を閉じる音すなわち陰に当てはめて十ヲの雄音を口を開いて吹く陽に当てて、陰陽の妙理にあてて居るとも言われている。津の振り仮名は口をすぼめて“ツ”と唱える標である。 二、上文の布留部由良由良止布留部は口授神業の中の身体をユラユラと振り動かす事であって、その振る時の心得を「十種を振る時心を天地一杯にして心身共に動揺し天地と共に運転する」。また「天地の霊これを布留という。十種寶死を返す。それ生類氣を調うにその身を振う」ともいい、また「神宝を左右の手の内に握り指を組み合せて振う也。月日の運転し給う如く氣を天地一杯に充満して天地と一体になりユラユラと振って魂魄を招ぎ反して身体の中府に鎮める神術なり」などとも記している。 三、口授神業の中に息の神業がある。これを息を長く吹く業であって、息を吹く事は神道の特殊神術である。この神業を妙法に行う時は殊勝の功験があることは熱心に修してみた者の初めて知るところである。 鎮魂祭の時期および場所 石上神宮の鎮魂祭の祭日は神武天皇の御時「毎年仲冬寅日有司事を行ひ永く鎮祭せよ」との勅命に依って毎年この日を以て行われる事となり、また「仲冬上卯の日の次の寅の日行はれ、尤も二ツあらば後の寅の日行はる」ともしるしてある。また或いは「毎年仲冬の中の寅の鎭魂祭を行ふ」また異説としては「仲冬の上の寅の日行はる」などとある。 この国家鎮魂祭祭儀の場所は石上神宮において行うことを根本としているが、その他各所でこの祭儀を執り行ったことがある。 自修鎮魂式相伝覚書 前述のごとく、石上神宮鎮魂の秘法は中古以来同宮社家の転退と共に、永く煙滅の状態であったが、明治の初め松山藩儒であった三輪田高房翁が、同宮の小宮司として在職中、専ら探求研鑽し漸く得るところあり、その後これを神宮奉斎会主禮叶眞吉翁に伝えられた。 昭和九年森津倫雄氏がたまたま石上神宮宮司となるや、旧知の故を以て叶翁より石上神宮に秘法返納の申し出があったので、同年二月十八日を卜し、当時の神宮奉斎会専務理事藤岡好春氏、国務中社敢国神社宮司櫻井稻麿氏、石上神宮嘱託住田平彦氏など立ち会いの上、これが相伝を受けた。次にこの際の「自修鎭魂式相傳覺書」を記す。 +森津倫雄氏略歴 明治10年2月5日 :奈良県宇智郡宇智村に出生 明治29年7月 :東京國學院大學卒業 明治35年7月 :東京和佛法律学校卒業 明治40年2月 :官幣大社多賀神社禰宜 明治45年4月 :国幣中社気多神社宮司 大正5年3月 :神宮神部署岡山支署長 大正13年12月 :神宮神部署広島支署長 大正14年7月 :官幣大社廣田神社宮司 昭和4年4月 :官幣大社賀茂御祖神社宮司 昭和8年4月 :官幣大社石上神宮宮司 昭和12年12月 :勅任官を以て待遇 昭和13年2月 :叙従四位 昭和13年12月 :神宮奉斎会岡山本部長 昭和14年3月 :神宮奉斎会理事 ◎自修鎮魂式相伝覚書 ・時 刻 夜一時 ・次 第 修祓 燈火を滅す 降神 座を直し安座となり姿勢を整う(口授あり) 左右の手を組み合わす(口授あり) 手を組みたる侭、日文の神語「ヒフミヨイムナヤコト」を称えつつ身体を振る ※左振り右振り前振り後振り中振り(口授あり) 上終わりて息気を鼻孔より吸い込み臍の下にある丹田に留め貯め徐々に口より吹き出す(一回) 昇神 点火 退出 ◎伝授式状況 石上神宮拝殿に於いて執行する。午後八時。 先ず相伝奉告祭が執行される。終わって相伝準備。拝殿中央大前に祭壇を設く(まく)。 装 束 相伝者の叶眞吉翁は浄衣を着け烏帽子を冠す。 受伝者の森津倫雄宮司は狩衣に烏帽子を冠す。 立会人の藤岡・住田両氏は白衣白袴を着く。 神 体 神籬を起し樹つ。 ※但し清い薦を敷きその上に神座を設く。 神 燈 二基両側に設く。 ※但し油燈。 神 供 壹臺一台八足案の上に置く。 ※但し浄水浄鹽塩洗米を土器に盛り三方に並べ備える。 修 祓 中臣祓詞を奏す。終わって祓具にて打祓う。※(*3) 次 に 祭壇の前に着座拝礼をなす。 次 に 燈火を滅す。 次 に 降神の式あり。 次 に 鎮魂作業あり。 次 に 昇神の式あり。 次 に 点火をなす。 次 に 鎮魂作業の形を示し説明をなす。 安座を本来の形とするが、叶眞吉翁は常の習慣に依って端座を以て執行。 手の形 先ず左右の掌を組み合わすことなるも、その前提として結び合わす形を成す。 先に左の掌を上にして斜めに握飯の結びを作るように握りあわすこと、次に右の掌を上にして斜めに握り合わす、次に左の指を上にして四指と四指を組み合わせ、拇指は左右に並び合わせ、両掌は空虚にする。そして臍のあたりに構え措く。 左振り 作業は左より始める。一(ヒ)二(フ)三(ミ)四(ヨ)五(イ)六(ム)七(ナ)八(ヤ)九(コ)十(ト)ヲヲの声に連れて、組み合わせたる両手を臍の前辺りより左の方へ向けて布留(振る)。一(ヒ)に一度振る。二(フ)に一度振る。十までに十回振る。ただし振り方は、組み合わせてる両手を臍のあたりより前に出し、左方に向けて円形に振る。ゆえに臍の前方より出して円形に振って、臍前に戻る様である。 右振り 左振りと同様。ただし臍前から右の方へ向けて振る。 前振り 次に前振り。前振りの型は、臍の前より前方に向かって組み合わせた両手を出して、上の方に円形の形を作り、胸のあたりより上にせずして、元に復する如く振う。 後振り 次に後振り。臍の前で組んだ両手を、前振りのように前へ出さず、上方、すなわち胸の方に上げて、胸の前の方より前へ出して、円形の様に振り、元の臍の前に戻す。 中振り 臍のあたりで組み合わせた両手を顔の辺りに上げて、顔前より前方に向かって出し、胸の前の辺りに下げつつ、円形の様を作って振る。 息の術 次に空気を鼻から吸い、下腹に留め静かに口より吹き出す作業。中振りが終わった際、胸の前辺りにある組み合わせた両手を、鼻より吸気すると共に、臍の前に戻し、下腹に力を込めて息を留め、そして静かに口より吹き出す。(一回だけ) 以上を以て鎮魂作業の一回(一段)となり、この作業を十回(十段)繰り返すことを作業の定規とする。 ・付記 鎮魂神事の初めに唱える呪文は次の四十七文字であって、我が国文字発音の起源をはすものである。この四十七文字を僧空海がいろは歌に改作したことは有名である。 ひふみよいむなやこともちろらねしきるゆゐつわぬそをたはくめか うおゑにさりへてのますあせえほれけ なお、上の呪文と共に唱する十種神寶は以下の通り。 瀛都鏡、邊都鏡、八握剣、生玉、足玉、死反玉、道反玉、蛇比禮、蜂比禮、品物比禮。 石上神宮に於ける祭神奉祀の形式 石上神宮における祭神祭祀の形式は、明治七年神體を高庭から発掘して神殿に奉祀することに至るまで、神武天皇御創始以来すべて神籬祭祀の形式であった。 神武天皇の御創始の時の有り様は神楯を立てて、天璽瑞寶を鎮め今木五十串を刺し廻らして韴靈の御剣を内に鎮め、その神の気を大神として招請し神宝を共に蔵して殿内に奉斎せられたのである。神楯は現在、石上神宮に“日の御楯”と称する極めて古代の鉄楯高さ152cmくらいが二枚ある。また今木とは賢木をいい、天津比母呂岐といい賢木の神籬の事で、尚『石上神宮略抄下』に「今木神は日本武尊也、田村の宮の後に神籬を起し今木を立て日本武尊を祀りて鎭守とす」ともあり。依って今木は斎木の意であることがわかる。 次いで祟神天皇の御代石上邑に御還座の時の状態は、大和國石上邑に高き斎庭の地を作り件の二品(剣・瑞宝)の神宝を蔵めて祭り奉り、その上に霊畤を設けて祭祀をせられた。以来、この地を名付けて布留の高庭の地といい伝えている。その埋斎の様は、 「石上ノ地底磐石ヲ持テ境ト為シ、地石窟ヲ作リ布都御魂横刀ヲ以テ左座東方ト為シ、天璽瑞寶十種ヲ以テ右座西方ト為シ、同ジク共ニ藏ス焉。 其上ニ高ク地ヲ築キ。諸ヲ高庭之地ト謂フ。高庭之地ハ神器之上ニ當リ。磐座ヲ設ケ。神籬ヲ立テ。建布津大神布留御魂神ヲ拜祭ス也。 建布津大神ヲ以テ東座ニ齋ヒ奉リ第一ト為ス焉。布留御魂神ヲ西座ニ齋ヒ奉リ第二ト為ス。之ヲ ruby(マツリノニハ){靈畤}ト謂フ。 而シテ神殿無シ。東上ト以ハ爲ス所者。我邦左ヲ尚ブ故也。 布津御魂横刀之鉾ハ天ニ向ケ。而頭ハ(俗云津加 sub(){束})地に植ヘ。所謂十握劍ヲ倒ニ於ハ地植ヘル是レ也。」 また埋斎の理由を後世説明して「金は顯露れば人を傷り隱藏すれば人を利(をぎ)のふ」と言っている。 この高庭祭祀の事は新撰姓氏録布留宿禰の条、および延喜式臨時祭の条、白河天皇拝殿御造営の記録などいずれもその趣を説明しているのみならず、明治7年高庭を発掘して封土を崩し地底を窺って、古剣直刀二振り、内反り輪握刀二振り、および玉類などを得たが、これなどは御神体たる韴靈横刀、天羽々斬剣十種神宝のうち八握剣あるいは十種神宝などにあたるものであろう。実に千古の遺式がこの時の変革せられたと言わねばならない。
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※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ありすを洗浄してみた。 ゆっくり石切 ありすとまりさの仲直り 赤ゆっくりとらっぴんぐ ゆねくどーと ゆっくり花粉症 十姉妹れいむ ゆねくどーと2 ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1~ ※注意事項 まず、上掲の作成物リストを見てください。 見渡す限り地雷原ですね。 なので、必然的にこのSSも地雷です。 では、地雷原に踏み込んで謙虚ゲージを溜めたい人のみこの先へどうぞ。 _______________________________________________ ゆっくり。 それはヒトの頭部に良く似た形状を持つ、だが地上のあらゆる生物と隔絶した生態、そして体組織を持つ不可思議なナマモノ。 彼女たちが忽然としてこの地上に現れてから、既に十数年という月日が過ぎ去っていた。 多くの論争と紛争、対話と挫折と理解と誤解を超えて、いつしか諦めに似た感情と共にゆっくりたちは人間の生活の傍らに 存在することを許されるようになった。 最初は極東の片隅に存在する島国、日本で。 そしてそこから、海も山も大河も彼女たちの拡大を妨げることなく、北米の大平原からアフリカのサバンナにいたるまで。 ありとあらゆる土地に、ありとあらゆる言語を操り、彼女たちは極々自然にその土地の環境に馴染んでいった。 平和な土地にも、争い絶えぬ土地にも。人に溢れた街中にも、人跡未踏の秘境の奥底にも。 その土地の言葉で「ゆっくりしていってね!」を叫び、彼女たちは気ままな、だが儚く、人の意向に左右される生を送っている。 そして、今。 「ゆっくりしていってね!」 遠く、モスクの四囲に聳えるミナレットから早朝の礼拝を呼びかけるアザーンが朗々と響く夜明けの街中にも、彼女たちは在った。 彼女たちの扱いは、どこの土地でもそう大差はない。 犬猫とさして変わらぬ、だが多少の知恵を持ち、人語を解するだけに理解と誤解が発生しやすい見慣れた生き物。 人に飼われる少数のものがある一方で、野生や野良として暮らす数多のものがいる。 今、モスクに行きかう人が絶えない通りの真ん中で、お決まりの台詞を連呼しているのは野良のゆっくりまりさだった。 「ゆっくりしていってね! ゆっくりしていってね!」 そう叫ぶまりさの形相は、その言葉に反してちっともゆっくりしていない。 必死の様相である。よく見れば、まりさの底部――あんよと呼ばれるゆっくりの移動の要となるその器官は、真っ黒に焦げ付いていた。 「にんげんさん、まりさにちかづかないでね! まりさはゆっくりできないよ!!」 誰かの悪戯で足を焼かれ、そして大通りに放置されたのだろうか。 だが、それにしては叫びの内容がおかしい。 ゆっくりは、如何に自分がゆっくりした存在であるかを己のステータスにしている。 確かにあんよを焼き焦がされ、移動もままならない状況ではゆっくりできないゆっくりであるのは確かだが、 ゆっくりが自分自身をそのような存在であるとアピールするのはそうそうありえることではなかった。 「ちかづかないでね! ちかづかないでね! ゆっくりできなくなるから、ちかづかないでね!」 ましてや、助けを求めるでもなく近づく人間を牽制するとはどういうことだろう。 さらに不可解なことには、そのまりさの威嚇――というよりは懇願に近いそれに、多くの人々が素直に従っていたことだった。 みな、通りの真ん中に据え置かれたまりさを避けるかのように道の端を走っていく。 人々のまりさを見遣る眼差しは、アザーンの朗誦を遮るほどの大声で喚く彼女をことさら疎む訳でもなく、 むしろ一抹の哀れみさえ湛えているようにも見えた。 そんな、モスクへと向かう人々の波がひと段落するまでの十分ほどの時間。その間を、ずっとまりさは叫び通した。 ミナレットのスピーカーもいつしかアザーンの朗読を終え、夜空は群青の領域が少しずつ青に駆逐されつつある。 人通りがわずかでもある間は止むことなく大声を放ち続けていたまりさは、喉を悪くでもしたかはたまた体力の限界か、 潰れるようにして人の消えた未舗装の路上の上にだらしなく伸びていた。 その体が、びくりと震える。 アザーンとまりさの叫びが絶えた街中に、遠くから低く重く唸るエンジン音と、キャリキャリと耳障りな金属音が響いてきた。 「ゆゆっ!?」 まりさはガバリと跳ね起きる。 そして、自分の立つ一直線の路上、その彼方に目を凝らした。 「ゆがーん!?」 そして予め知っていた破滅の時の到来に、恐怖と絶望も露わにその相貌を醜く歪める。 「ゆ、ゆっくりしていってね!」 まりさは、叫んだ。前方から来る破滅に向かって。 「ゆっくりとまってね! ゆっくりこないでね!」 聞こえぬと知りつつ、聞こえたところでその言葉が通じぬと知りつつ。 アラビア語を話すまりさは、枯れ果てたかに思われた声を振り絞って破滅へと呼びかけた。 「ゆっくりできないよ! こっちにきたら、ゆっくりできなくなるよ!!」 誰が? まりさではない。前方から来る破滅は、まりさを永遠にゆっくりさせる。 だが同時に、その破滅もまたまりさに近づくことによってゆっくりできなくなるのだ。 そのことを、まりさはカチカチに焼き固められたあんよの下にある冷たい感覚によって気づいていた。 「こないでね! ゆっくりひきかえしてね! それいじょうきたら、まりさおこるよ!」 前方から近づいてくる破滅は、止まるどころかその速度を落とす様子も見せない。 焦るまりさはいっぱいに空気を吸い込み、ぷくーと頬を膨らせ威嚇のポーズをとった。 怯ませるためではない。まりさはゆっくりとしては賢い部類で、そんなことでこの相手が怯むはずもないことは承知している。 ただ、体を大きくして自分に気がつかせたかったのだ。 自分の存在に気がつけば、自分が何を伝えようとしているのかに気づいてもらえれば、止まってくれるかもしれないと思ったから。 実際には、破滅――十数両の戦闘車両で構成された車列はとっくにまりさの存在に気がついていて、しかしその意図を理解せず、 ただ愚かなゆっくりが威嚇している程度に捉え、従ってその前進には何らの躊躇もなかったのだが、それはまりさの知るところではない。 ましてや、車列の先頭にある戦車の車長と操縦士はゆっくりを薄気味悪い怪物と見て忌避する類の人々であり、 また民衆から常に敵愾心を向けられる占領者として重度のストレスを溜め込んでいることなど、まりさは知るはずもなかった。 言葉が通じず、不遜とも取れる顔つきで人間に接する首だけの生物。その威嚇行動。 それは、極度の緊張感と悪意の中に溺れる人からその攻撃性を引き出すには十分すぎる要因だったのだ。 「どおじてどまってぐれないのおおおおぉぉぉ!? まりさ、ゆっぐりできないんだよおおおぉぉぉ!!?」 結果として。 まりさの試みた決死のぷくーっ、は前方から迫る車列の足を止める役割など欠片も果たさず、 却ってその無限軌道がまりさをひき潰すべく一直線に突き進んでくる結果を招来することとなった。 (まりさは……にんげんさんにゆっくりしてもらいたかっただけなのに……) 轟音を立てて近づくキャタピラがまりさを文字通り粉砕する瞬間、彼女はぎゅっと双眸を瞑り、一滴の涙を零す。 (まりさのせいで、にんげんさんが……) たくさん、ゆっくりできなくなる。たくさん、何人も。 永遠にゆっくりしてしまう。まりさが、殺すんだ。 それは、彼女をそう仕向けた人間の悪意によるものだったが。その全てをまりさは自分の咎と受け止めて。 「ゆ゛っ」 『カチッ』 自分の短い断末魔と、何かの金属音をキャタピラの轟音の中に聞いて、まりさは逝った。 * * * 彼女の遺体は、この地上に残らなかった。 キャタピラにひき潰されたから、ではない。 その直後、まりさの下に埋められた対戦車地雷が炸裂し、さらにその爆発がより深くに隠された航空爆弾の誘爆を引き起こし、 彼女を引いた戦車ごと吹き飛ばしたからだった。 まりさは全て、この為の撒き餌だったのだ。 悪意的な占領者が車両でひき殺せば、地雷の感圧信管が作動しその車両と周囲を吹き飛ばす。 好意的な占領者が助けるために近づけば、遠隔操作で爆破しその占領者たちを吹き飛ばす。 ゆっくりが好意と悪意、その両方を受け止めやすいことを利用して仕掛けられたIEDに、まりさはパーツとして用いられたのだった。 ゆっくりがこの世に登場して十数年。 平和な土地にも、争い絶えぬ土地にも。人に溢れた街中にも、人跡未踏の秘境の奥底にも。 その土地の言葉で「ゆっくりしていってね!」を叫び、彼女たちは気ままな、だが儚く、人の意向に左右される生を送っている。 このSSに感想をつける
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前田智徳は誤解されている 【説明】 広島電鉄の市内電車内に貼られたカープ球団の宣伝ポスターの文句。 「前田智徳は誤解されている 決して天才ではありません。ひたむきな野球馬鹿の背番号1はグラウンドでご賞味ください。」 という文句に話題をさらい、前田自身も実際オフ番組では普段から考えられないくらいに豹変することから前田のネタ文句の一つと化す。 たまに名前を変えて活用されることもある(例:山ちゃんは誤解されている)
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※今までに書いたもの 神をも恐れぬ 冬虫夏草 神徳はゆっくりのために 真社会性ゆっくり ゆっくり石切 ※今現在進行中のもの ゆっくりをのぞむということ1~ ※注意事項 くれんじんぐ♪ くれんじんぐ♪ えすにっく的な意味で。 俺設定満載。 人間は原則的に介在しません。 ただし、ぷろろぎゅーとえぴろぎゅーに東方キャラが登場します。 ついでに、ぷろろぎゅーとえぴろぎゅーには虐待らしい虐待が登場しません。 全般的にゆっくりは知能が高めです。 一般論で言えばゲスに分類されるだろうゆっくりが大勢出ます。 東のドス注意報。 ぼくのかんがえたさいきょうゆっくりがとうじょうしますがどこもおかしくはないな。 _______________________________________________ うっすらと襖を開けて外界の様子を覗き見れば、外にはまばらに雪が降り始めていた。 空を覆うのは、灰色の分厚い雲。 急に冷え込んだのも道理だった。これは、長く降るかも知れない。 部屋着の上に羽織ったショールのずれを直し、少女は襖を閉ざして「ふぅっ」と物憂げな溜息を白く吐く。 「穣子ちゃん」 「……んー?」 とある冬の日、山の中。 山奥の社、その一室。 装い質素な和風の部屋に響く声に、面倒を察した襖の少女は聞き流す事も出来ず、嫌々ながら声の主を振り返った。 「……炭が、足りないわ」 ぐでん、と掘り炬燵に腰から下を突っ込み、床に突っ伏しながらいうのは紅葉を司る神。 持ってこい、との意味が込められた無言の要求を受けてむっとした視線を紅葉の神の背に向けている――つまり襖の側の少女は、 その妹神たる豊穣を司る神である。 (――自分で取りにいきなさい、っての) この居間から炭の積んである土間まで、幾許の距離もない。幾ら実姉だからって、横暴が過ぎるのではあるまいか。 豊穣の神――秋穣子としては、そうも思うところではあったのだが。 「もぉ……しょうがないなぁ」 姉のリクエストからしばしの沈思の後で、結局不満たらたら腰を上げたのは穣子のほうだった。 何しろ、冬場である。 炭を取りに土間まで行くのも億劫だというのに、なおのこと面倒な姉妹喧嘩を演じるだけの元気もない。 無駄な労力払うのは止めにして、素直に自分が土間に炭を取りに行くのが自分自身にとっても幸福というものだろう。 それにまあ、確かに外に繋がる障子には穣子の方が近いし。 喧嘩するなり無視するなりして、その間に火鉢にくべる炭がなくなってしまえば寒くて困るのはお互い様である。 せめて、部屋を開けっ放しにしていってやろうかしら。 カラリと襖を押し開けて、吹き込む寒風に静葉が慌てて首までコタツの中に後退する姿を横目にそんなことを思ってみる。 いやこれもダメだ、とその悪戯心もすぐに没。 寒い所に出かけていって、帰って来た部屋が外気と温度が変わらないのでは結局穣子自身も涙目になるじゃないか。 「……真面目に、さっさと炭を取ってこようかな」 結局、『嫌な事はさっさと終わらせるに限る』、そんなまっとうな結論しか導き出せない自分が恨めしくて。 カラリと襖を閉じ、首筋を撫でる外気に改めてぶるりと一つ大きく身を震わせて、穣子は小走りに廊下を土間に向かって進み出した。 「……おや?」 視界の隅に流れ往く、社の庭と鎮守の森。 降りしきる雪、風にそよぐ葉の落ちた木々の枝、それ以外に動くものの見えないはずの光景の中に少しの違和感がある。 それが何であるか気付くのがやや遅れたのは、いつもはもっとけたたましいはずの存在であるためだった。 「なんだ……レイパーじゃない」 「……かみさまもわたしをレイパーってよぶの?」 縁側を降りて、数歩ほどの距離。 木の根元にわずかに出来た窪みに身を寄せるようにして、一匹のレイパーこと、ゆっくりありすが穣子を見上げていた。 ありすの評判は、ゆっくりにはそう詳しい訳でもない穣子もよく聞き及んでいる。 常時発情していて、手当たり次第に見かけたゆっくりを犯す生まれつき真性の強姦魔。 ありす種として生まれた全てがレイパーとして開花するのだとか、例外もごく稀には生まれるのだとか、色々言われているようだが。 別に、穣子は伝え聞くゆっくりの生態にちなんでそう呼びかけた訳ではない。 「みんなそう呼んでるもの、その方が通りがいいでしょ」 その呼び方が、誰にでもわかりやすいから。 その呼び方が、誰からも使われているから。 それ以上の理由なんて、あるはずがなかった。 「あんたはそう呼ばれるのは、嫌なわけ?」 嫌ならば呼び方を正してやろう、なんて配慮は穣子には欠片もなかった。 ただ、ありすの反応にほんの少し興味を惹かれたから、戯れに問うてみる。 対するありすの反応も、ゆっくりには珍しくごくごく淡白な代物だ。 「……べつに。ありすは、どうよばれてもありすだもの」 「それは殊勝な心がけだこと」 悟りきったというか、疲れきったというか。 ともかく面白みもない反応に、穣子がわずかに抱いた興味は急速に薄れて消えていった。 もう少し、「どぼぢでぞんな(略)」のごとく、面白おかしい反応をしてくれたらからかいがいもあるものだが。 「多産豊穣、結構なことだと思うけど。饅頭が人間みたいな付け焼刃の倫理振り回してどうすんのかしらね」 地獄の閻魔の言葉ではないけれど、人が人を裁けると思いあがったり、ナマモノに過ぎない饅頭が人間の倫理に囚われたり。 いろいろ、昔と変わってしまったものだ。大昔はもっと、地上の生物は純朴だったような気もするのだけれど。 穣子はつまらなさそうに呟くと、それきりその話題には興味を失い、本来の目的を遂げるべく土間へと向かって数歩歩いた。 歩いてから、ふと思い出し、「それで?」と動かずじっとこちらを見ているありすに目線を向ける。 「ここが神様の領域だって知ってるって事は、床下を借りに来たわけね?」 穣子の問いかけにありすは応えず、しかし小さく頷いた。 どこの神のものであれ、殺生が禁じられる鎮守の森は動植物の聖域ともなる。 基本的にゆっくりに対してもそれは同じことだ――むろん、図に乗って神域の主を取り違えるほどに愚かな個体は、 神か、神への畏れを知る個体によって即座に外界に放り出されるが。 逆に言えば、調子に乗りさえしなければこれほど安全な場所もないだろう。 この鎮守の森には、冬でも下草やコケが繁茂している。ゆっくりになら食べられる木の皮もそれなりにある。 贅沢さえ言わなければ、食べ物に困ることもおさおさないはずだ。 その点、最初からこのありすは穣子を『かみさま』だと認識していた。だから、穣子はありすが問題を起こすことは心配していない。 「いっとくけど、神域じゃ穢れは厳禁だからね。見てなくてもわかるんだから」 だからありすを軒下に放り込む際、ひとこと注意を与えたのはありすに向けたものではない。 数家族、すでに入り込んでいた先住者たち。 ありすという種そのものに、恐怖心や不快感を抱いてるかも知れない彼女たちに向けたものだった。 「むきゅ、わかってるわかみさま。みんな、すっきりやゆっくりごろしはぜったいにやっちゃだめ、ってことよ!」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「わかるよー、おそとにおいだされるとゆっくりできないからねー」 「ゆぅ。ありすでも、レイパーじゃないならいっしょにゆっくりできるよ!」 「かみさまも、ゆっくりしていってね!」 (それはちょっと違うんだけどなー) 床下から聞こえてくるゆっくりにしては殊勝な返事に、穣子はひとまず安心しつつも心中そんな突っ込みを入れた。 死に纏わる穢れである黒不浄は確かに日本の神様特有のものだが、出産絡みの赤不浄はヤマトの都がまだヤマト近辺にあった時代に 人間たちが『血=不浄』と錯覚するに至って勝手に祭祀に取り込んでしまったものだ。 実のところ、神様の都合は赤不浄(白不浄)に関してはあんまり関係ないのである。 あのぱちゅりーは、どこかで人間が作り上げた信仰の知識を教えられてしまったものだと思われた。 その辺の経緯を説明してやれば、『ごほん』と『ちしき』好きのぱちゅりーは喜ぶのだろうが、 残念ながら穣子は別にゆっくり愛好家というわけでもないのでそんな面倒なことまでしてやらない。 というより、せっかく暖の確保のために寒さを押して炭を取りに部屋を出たというのに、 いつまでも薄着でお外に佇んでいては寒くて凍え死んでしまう。いや、神様はそんなに簡単に死ねないけれど。 「だいたい、出産を不浄とされちゃ豊穣の女神の立場がないってのよね」 「なんの話?」 とりあえずぶつくさいいながら再び歩き出した穣子の背中に、不意にありすのものではない声が掛かる。 穣子と同じく、気だるさの抜けないその声音が姉の静葉のものだとわかっていたから、穣子は特に振り向かなかった。 大方、妹一人にやらせるのも悪いかと思いなおして炭運びを手伝いに来たのだろう。 「ううん、ちょっとね」 歩を早め、狭い廊下を自分の横に並んだ姉に一瞥だけ向けて告げる。 「お気楽お馬鹿に生きても、小難しく考えて生きても、報いがこれっぽっちも用意されてない生き物もいるんだなって思っただけよ」 だから、春まではせいぜいここでゆっくりしていけばいい、と穣子は思った。 そこから先は、どうせ彼女たちにはこれっぽっちもゆっくりできないゆん生しか存在しないのだろうから。 本編へ