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すると、一瞬だけ、本当に一瞬だけ、それまでカダージュの顔に張りついていた甘い笑顔の仮面が剥がれた。 そこにあったのは凶暴性を向き出しにした顔。世界の全てを憎んでいるような、邪悪な顔。 「社長…気づいてるんだろ?」 言うと、彼は突然ルーファウスの目の前に跪いた。まるで忠誠を誓う騎士の様に。 そして、視線を上目使いでルーファウスと目を合わす。その時、ルーファウスは彼の目が、なぜか蒼色に見えた。 瞬間、ルーファウスは右腕に、先ほどとは比較にならない痛みを感じた。 同時に、こちらを見るカダージュの顔が、彼以外の誰かの顔の面影と重なる。 長い銀髪、冷たく蒼い、刺すような眼。それは紛れもなく――― ドスッ。 クラウドは、倒されていたザックスの墓標を地面に刺しなおした。 「お前の分まで生きよう。そう決めたんだけどな」 そして、彼の形見のバスターソードに、誰にも聞かれない呟きを漏らした。いつものことだった。 もう、俺は長くないかもしれない。 そんなことをぼんやりと考え始めたのは、どのくらい前からだったか。 左腕を蝕む星痕は日に日に大きくなっていくし、それに伴って心はだんだん空虚になっていく。 もう1年と半年以上もみんなには会ってない。このまま死んで霧のように消えてしまうのも、それはそれでいいかもな。 最近では、そんな自虐的な考えも芽生え始めた。 自分勝手なのはわかっていた。だが、彼は今更どうすればいいのかわからなかった。 着実に体を蝕む不治の病、2年近くも絶縁状態になっている仲間、かつての罪。 彼もまた、苦しんでいた。
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「くそっ! くっそっ! くっそ!」 なぜこうなった? 自分は今何をしている!? どうしてこんなことをしなければならない! 起こってしまったことはしょうがない!? ただそれだけで納得できるわけがない たが自分が今している行為を止めることはできない。 既に攻撃手段を持たず虫の息である魔物にエッジは刃を突き付ける。返り血が幾度にわたって 白装束へと飛び散る。 手にしたくないは真っ赤に染まり、既に鋭さを失っている。 「許してくれ! 許してくれ!」 横たわる魔物にくないを振り下ろす行為をやめずにエッジは謝罪の言葉を繰り返す。 「許してくれっ! お袋、親父っ!!!」 「エッジ……」 目の前に繰り広げられる異常な光景を目の前にしてリディアはただ彼の名前を呟くことしかできなかった。 「やはり俺がやるべきだったか?」 普段は寡黙で自分以外の事なんか考えていない……リディアにとってはそんな印象であったカインが 珍しく他人の気を使う言葉を言っている。 「いや、彼がやるっていったんだ。納得してるはずだよ……」 セシルがカインの言葉を否定する。 どういうわけか、セシルはエッジに対して厳しい発言が多いような気がする。 年上なのにやんちゃ極まりないエッジと控えめで他人の事を優先しがちなセシル。(実際、戦闘中に自分やローザが危ないと身を ていして守ってくれたこともあった) 相性が悪いんだろうか? ここまでの道中をみる限りそうだとは決して思えないけど…… また無駄な事を考えている。そうやって嫌な事を少しでも忘れよとしているんだろうか? 自分は。 今の光景に涙は出なかった。 自分は辛抱づよいわけでもない。さっきもセシルやエッジ達が言い争っている時に感情を露わにして泣いた。 でも今の光景には涙が出ない。 白状なわけではないと思う。隣にいるローザを思えば…… 「どうして……どうしてこんな事に……」 ローザは今の状況に顔を両手で覆い隠して泣いている。 普段ならばローザはもっと強い。普通に本を読んだり、芝居を見たりした時、先に泣くのは自分の方だろう。 だが今はちょっと特別な状況だ。 「なんでこんな事をするんですか……ルゲイエ……せ…」 そう……今の状況にはローザの<せんせい>であるあのお爺さん――地底で出会って何処かに消えていったあの人が かかわっているからだ。 絆2
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カイナッツオォと名乗ったその者には。既にセシルが倒していたスカルミリョーネよりも自らの 強さを誇示するかのような口ぶりであった。 「ぬぐっぉおお!」 完全に壁と一体化した王――カイナッツォは少しの間が開いた頃、かけ声があがった。 同時に壁を突き破るかのように、腕が再出現する。 やがて、壁から全身を表し、その全貌が明らかになる。全身が青色の甲羅を装着し、四隅から手足 を表し、先端部に顔を覗かせる、その姿は亀のようであった。 「これがお前の真の姿か……!」 「そうとも!」 堂々と言ってのけた途端、急にカイナッツォの体周辺を取り囲むように何かが出現する。 これは…… セシルは驚かざるを得なかった。 何故か、周りには全身を包み込むかのように水柱がわき上がっている。 水をいきなり発生させる、これが水の四天王の力だというのか。 「気を付けろ!」 後ろでテラの声が聞こえる。 振り向くまでもなく、既に戦闘の準備に移っている事は分かった。 テラはあれが攻撃の準備であるといいたいのだろう。 セシルにもそれは分かっていた。 来る! 予兆した時には、カイナッツォの周囲の水――水の鎧とでも形容すべきものは、怒濤の勢いをつけて 目の前にいるセシル達に迫る。 「!」 その時の意志を何か声にして出そうが上手くはいかない。 思考を張り巡らせようとした時には既に、津波は無情にもセシル達を飲み込んでいた。
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俺とゼルは、伝令のセルフィと共に、電波塔施設内部に足を踏み入れた。 中には誰もいない。 部屋の中央にエレベーターがあった。ランプは最上階を示している。 「サイファーは上か。どうする、スコール」 「どうするって、行くしかないだろ」 「そうそう、行くしかな~い!待ってろ班長~」 俺たちはエレベーターに乗り込んだ。 電波塔最上階。エレベーターのドアが開く。 「よう、お前ら。遅かったじゃねぇか」 サイファーが出迎えた。相変わらず、自信たっぷりの表情だ。 「遅かったじゃねぇ!」 ゼルが抗議の声を上げる。 俺は周囲を見回した。何人ものガ兵が倒れている。 「どいつもこいつも期待外れだ。ガ軍にはホネのある奴がいねぇらしい」 サイファーがうそぶいた。 「ありゃ何だ?」 ゼルが壁際にある黒い物体を見つけて言った。 何かのコントロールボックスらしい。広場で見たガ兵が担いでいたものだ。 ボックスからは無数のコードが伸び、建物の配電盤に接続されている。 「ガ軍の連中、いったい何がしたかったんだ?」 「そんな事より、B班班長、伝令~」 セルフィが一歩前に出てそう言った時、背後のエレベーターのドアが開き、 二人のガ兵が姿を現した。
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力強く言い放ったベイガンは更に続けた。 「王への忠誠は決して曲げないつもりでいました……ですが! 今のこの国を見て私はこうも思ったんです。 今のバロンは何処かがおかしいっ! このままでは良くないと! だから今まで王へ何とか従っていましたが もう限界です!」 セシルは今までこのベイガンの事を過小評価していたと思った。 以前のベイガンはどちらかというと部下には無駄に厳しく、王への態度はやけに謙虚であったのだ。 人によって態度を変えるというやつだろうか。 正直ベイガンのその態度をセシルはあまり快く思わず、王がおかしくなり始めた以降も態度を変えぬ時には、 嫌悪すら覚えるようになった。 だが、今の彼からは今までとは何処か違うものを感じられた。 何かを成す為に行動している。そう映った。 「それでまずは牢に捕まっている人々を助けようとした所、少し気配を感じまして……そしたらセシル殿が……」 「では、協力してくれるか、どうやら目的は同じだろうし」 君がいれば心強い!」 既にセシルはベイガン自身を完全に信頼しきっていた。 「分かりました……」 その問いに、ベイガンは満面にほほえみ、了承した。
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「今回は私も参加するわよ!」 前回参加できなかったからだろう、いつも以上にティファが張り切っている。 「今回の標的は伍番魔光炉だ!詳しい説明は列車の中でな!」 「クラウド!今日もがんばろうな!」 「今日は足手まといにならないようにがんばるね!」 みながクラウドを頼りにしている。頼られていることが嬉しいのか恥ずかしいのか クラウドは少し照れた表情で下を向く。 「おっと忘れてた!今回はウェッジも同行するぜ!」 ウェッジと呼ばれた男が挨拶をする。 「クラウドさん、今日はよろしくたのんます!」 「ああ…」 相変わらずなクラウドの返答に苦笑する面々。 「…んでよクラウド。我ながら情けねぇんだがオレはマテリアの扱い方がよくわかんねぇ! オマエなら詳しいだろうからちっと教えてくれ!」 「やれやれ…少々長くなるがしっかり聞いてくれ。マテリアというのは…………… マテリアとは『material(素材・材料)』が原語で、そこから派生している。 この世界を取り巻く生命の流れ『ライフストリーム』中の様々な故人の知恵や魔力が宿っている。 それらが圧縮されたのがこのマテリアであり、見た感じは宝石のようである。 大きさは手の平に収まる程度で非常に扱いやすい。といっても様々な種類があり、中には素人では扱えないようなものも。 これらマテリアを武器や防具の穴にはめ込み、自らの精神と連動させて効果を発揮する。 人によって異なるが、精神への負担が大きいため過度の使用は危険である。 …………というわけだ」 「ぜっんぜんわけわかんねぇ!マテリアの管理はオマエに任せる!!」 まぁ、そうだろうなというような表情のクラウド。 「それじゃ出発だ!マリン!留守番頼んだぜ!」 「お留守番任せたわよマリン。それじゃあね!」 FF7 12
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「話は終わったようだな」 いつの間にか近くに来ていたテラが見計らったかのように訪ねる。 「あいつのバリアを破れる方法はあるのか?」 先のベイガンとの戦いも彼の力が勝利に大きく影響した。 「勿論だ」 きっぱり言うテラ。 「あのバリアは単純なものだ。本当に回りに水の壁をつくって、攻撃を防いでるだけだ」 本当にあっさりとそう述べただけであった。 「それで……」 「対策か? 水のバリアだ。此方もただ雷の魔法で対抗すればいいだけだ」 「では……さっそく」 やや拍子抜けした様子はあったが、ヤンは攻撃を開始しようとしていた。 「ではいくぞ!」 テラのかけ声と共に、ヤンはカイナッツォに向けて攻撃を開始しようとした。
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そして、独り寝室に残された彼女は、今もまだ待ち続けている。 だが、やはりというか、セブンスヘブンの固定電話機がなる気配はない。1時間がたち、2時間がたち…ティファはその間、レノに伝えられたことを頭の中で反芻していた。 カダージュ達がこちらに向かっているという事実は、クラウドの失敗を意味している。 それならクラウドは、そしてデンゼルは、マリンは、子供たちは一体どうなったのだろう。今のティファにはなにもわからない。 一晩中抱えられ、肥大し続けたティファの不安は、いまや耐え難い焦燥に変わっていった。 どのくらい時間がたったか、ティファは店の外がにわかに騒がしくなってきた。 窓から外を見ると、通りは何人もの人でごったがえしていた。人々は皆騒然とした表情で、先を急ぐように街の中央へと走っている。 ただならぬ雰囲気を感じたティファは店を出て、通りかかった人の一人をつかまえ、訊いた。 「あの、なにかあったんですか?」 「あんた、知らないのか」 その中年の男性は切迫した様子で答えた。 「中央広場の記念碑を壊そうとしてる奴らがいるらしい。それで、そこに昨日から見当たらなかった子供らもいるんだと」 ティファはもう一瞬たりとも待てなかった。気がついたときには、群集に混じってエッジの中央に立つ記念碑へと走っていた。 皮肉なことに。 あと少し、あと5分だけ待てば、あれほど待ち続けたクラウドからの電話に出られたことを、彼女は知らなかった。
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「何用ですか、お客人」 夕立を思わせる残響が収まると、神官は冠を脱いで、立ち尽くしていたセシルを見据えた。 「お立ちになられますか、バロンの将軍よ」 セシルたちの方を向いたまま、手で合図を送る。十人ばかりの巫女たちは、神官の手から冠と錫杖を受け取ると、斎域を示す枝を抜き取って奥の回廊に退いた。 さっき会ったときとは違い、化粧をしているせいだろうか。ひとり残った神官の表情は、ずいぶんと険しく見える。 「いや、違うけど……」 「そうですか。では、船を動かす際には、どうぞお声をいただけるようお願いします」 ようやくセシルは質問の意図を理解した。離陸の妨げにならないようにということだろう。言われずとも、そんな危険な真似をするつもりはないが。 「承知した」 「ありがとうございます」 こころなしか、表情から険が取れた気もするが、神官の口調は素気ない。 「そもそもあんたがた、ここでいったい何をしとったんじゃ?」 「御覧いただいたとおりです」 シドの質問を受け、神官の、深い青で縁取られた視線がエンタープライズに向かう。 「精霊たちがあまりに騒ぐので、お鎮まりいただくために舞を奉じておりました。 あるべきものが無いせいで、人も森も、皆浮き足立っているのです」 騒ぎの原因を、彼女は口にしない。しかし精霊とやらの気配はともかく、この巨大な来訪者が理由であることは明らかだった。 いくつもの苦難を切り抜けて、ようやく取り戻した翼。セシルにとってはどこまでも頼もしく、懐かしささえ誘う姿だ。 けれどトロイアの人々の目には、異様な怪物のように見えるのかもしれない。 柱の影から、窓の奥から、セシルに浴びせられる視線が不安で満ちているように。
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帆が無くなっていた。跡形も無く。 海王がその身を一振りしただけで、あれほど頑丈であった帆が、まるで小枝を折るように 吹っ飛ばされてしまったのだ。あまりにも圧倒的な力。 破壊された音すら聞こえなかった。・・ただ、風の音だけが。 「畜生め! どうしろってんだ!!」 「ヤン! 無事か!?」 腹立たしげに舵を叩く船長。一方セシルは、帆を抑えていたヤンの安否を求めた。 「ヤン!! どこだーーーッ!」 「ここだ、セシル殿!」 帆柱の陰からヤンの声が届く。