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character episode3-1 孤児ミリア 「ここが…教会…」 町のはずれにある割にはデカイ その大きさに、僕はただ呆然とするしかなかった 「うわぁ…でっけぇなぁ…どれくらいあるんだ?」 ヴェルンが手をサンバイザーのように当ててジャンプをしてみてる それ見そうだろう、ヴェルンが見てたとしても、これほど大きな教会は見たことはないだろう その時だった 「あの~…」 と、扉のそばでか細い声が聞こえた 見てみると、水色の髪の女の子がこちらを恐る恐る見ている 「この教会に、何かご用でしょうか…?」 「あ…えっと…お祈りです…」 そう言いながら、大きな扉―といっても、普通の教会の扉よりもちょっと大きいぐらい―の前に立つ これほどの大きさの扉だ、さぞ重いだろう… そう思っていると、フィリムが僕の目の前に立って 「あぁ、もう、イライラする!!ほら、さっさとあける!!」 と、思いっきり引いた、が、扉はびくともしなかった まぁ、幼い子、しかも女の子が引くんだからそりゃ僕よりも何倍も重く感じるだろう 自分も引いてみたが、やっと普通に引けるくらいだ そう思いながら、中に入って行った 中はすごく明るい、シャンデリアというのか…それっぽいのが天井に何個かつるされていて、とてもきれいだ ただ、シャンデリアにしては明るいと思う、そう考えると、それに似た電灯と考えるのが自然だろう 奥のほうに進んでいくと、神父さんが立っていた 「あ、こんにちは神父さん」 「おお、迷えるものですかな?何でも聞いてくだされ」 そう言ってくれたので、僕はとりあえず質問してみた 「あの…このあたりで、何か変わったことはありませんか?」 「変わったことですか…そういえば、セントシュタインの城のほうで、何やら大事が起こってるらしいですぞ、行って話を聞いてきた方が、貴方にとっても、そしてセントシュタインも幸せに導かれるでしょう」 「わかりました、ありがとうございます!!あと、一つ聞きたいのですが…」 「…?何ですかな?」 「扉の前にいた、水色の髪をした小さな女の子…できれば、誰なのかを教えてほしいんですが…」 神父さんは、少し考えたが、すぐに思いついたように 「…ああ、ミリアのことですね、ミリアは実は孤児なのですよ」 「…孤児?」 そう僕が聞くと、神父さんは重々しく話した 「ミリアは、とてもよい子です、しかし小さいころ、魔物の総攻撃に村があいまして…両親が亡くなったのですよ」 「…!!おじさん、それ本当か?!」 ヴェルンが激しく反応する、自分も両親どころか身寄りがいないので、同じ気分になってるのだろう 「…はい、彼女は大けがを負っていましたが、奇跡的に一命を取り留めて、今はこの教会で聖女になるためのいわゆる勉強をしてるところなのですよ」 「そうなんですか…ありがとうございました、それとヴェルン、神父さんにおじさんといったこと謝ったら?」 「うう…ごめんなさい…」 「別に大丈夫ですよ、では、神のご加護があらんことを…」 そういうと、神父さんが祈りを僕らにささげた 僕らは教会を出ようとしたその時 「ドカアアアン!!」 と、大きな音が教会に響いた
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三人の印象 ◆HlLdWe.oBM 合ったり合わなかったりと、共にある事とは、なんとも複雑な束縛の事らしい。 ▼ ▼ ▼ 「ああ!! イライラするんだよ……」 浅倉威はイラついていた。 使い込まれた蛇柄ジャケットを身に纏った獰猛そうな青年がイラついている理由はいくつかある。 一つ目は今に至るまで満足に戦えていない事――つまり浅倉がいつもイラついている理由である。 プレシアによってここに連れて来られた時、浅倉は心の底から湧き上がる歓喜という感情で満ちていた。。 元の世界で起こした事件は数知れず、常に何かを殴っていないと落ち着かないというクレイジー極まりない性格。 そんな浅倉にしてみればこの状況はまさしく地上の極楽とも言うべき場所であった。 元々13人の仮面ライダーによる戦いを行っていた事もあって、開始早々に喜々としてデスゲームに乗る事を決意したのだった。 しかしここに来てから浅倉が関わった戦闘と言えば数時間前に矢車とエネルと小競り合いをした程度。 この程度では浅倉の戦いへの渇きを癒すには全然足りない。 「――ぁ!?」 「ヴィ、ヴィヴィオちゃん!」 二つ目は後ろから必死に付いて来ている女子供、シャーリーとヴィヴィオである。 浅倉にとって後ろから勝手に付いて来る二人は正直なところどうでもよくて、戦いの邪魔にならない限りは放っておくつもりだ。 この時不意にシャーリーとヴィヴィオの声が聞こえたために振り返ってみると、二人は立ち止まっていた。 どうやらヴィヴィオが転んで顔に涙を浮かべ、シャーリーがそれを慰めている様子だった。 幸いこの辺りの地面は比較的柔らかい草で覆われていたためにヴィヴィオに大きな怪我はない。 心配そうにしているシャーリーは泣いているヴィヴィオを優しく抱きしめて宥めていた。 それは見る人が見れば母性本能をくすぐられるような微笑ましい光景だが、浅倉にとってはイラつきを増長させる光景でしかなかった。 明らかな不機嫌そうな表情を顔に浮かべながら浅倉は立ち止まっている二人の方へ戻り始めた。 「あ、すいません。ちょっとヴィヴィオちゃんが転んで――ッタ!!」 「ヒッ――」 そして二人の傍に近づくと、いきなりシャーリーに殴りかかった。 殴り飛ばされたシャーリーはまともに受け身も取れないまま少し離れた場所で倒れ伏す結果となった。 ヴィヴィオは浅倉のいきなりの凶行に驚きを隠せず、ただただその場で呆然としているしかできなかった。 今の浅倉は一触即発とも言うべき状態にまでイラついていた。 いつまでも戦いにありつけない事と余計な女子供に足を止められた事。 その二つだけでも浅倉をイラつかせる条件を十分満たしている。 「な、なにをしてい――」 「五月蠅い」 浅倉はやっとの思いで絞り出したヴィヴィオの問いを一蹴して、次いで邪魔だとばかりに払いのけた。 凶悪殺人犯の力を受け止める事など幼いヴィヴィオにできるはずもなく、シャーリーと同様に地面に転がる羽目になった。 そんな事など一切眼中に無いと言わんばかりに浅倉は足元に転がっていたシャーリーとヴィヴィオのデイパックを漁り始めた。 デイパックの中に突っ込んだ手に触れた物を逐一外に出して確認する作業を続ける事10数分。 程なくして漁り終わった浅倉の手にあったのは二つのプレートがリングに通された形をした待機状態のデバイス、ヴィンデルシャフト。 もう一つが黒いボディーに白銀の銃口と剣を兼ね備えた対ワーム用の武器、マシンガンブレード。 「変身できない以上、今はこれで我慢するか」 そして浅倉がイラつく三つ目の理由。 それはキングから貰い受けたベルトが使えない事。 当初浅倉はカブトのベルトに何か嵌め込む箇所があったために自分達が使っているベルトと大差ないものだと思っていた。 だが、すぐにその考えは頓挫する事になる。 キングから受け取ったのはベルトのみ、つまり嵌め込む物がなかったのだ。 ベルトだけ渡されたのでこれだけで変身できるのかと試してみたが、全く変身できる気配はなかった。 ここに至って浅倉は確信した。 キングに一杯喰わされた、と。 だが既にキングと別れて時間が経っている以上、居場所不明のキングよりもある程度場所が分かっている奴の方が探しやすい。 そう考えて浅倉は内心苛立ちながらキングの示した南の方角へ向かっていたのだ。 だが変身できない以上自分の武器は生身の身体だけになる。 別にそれでも構わないが、何か武器があった方がいいのに越した事はない。 そこでシャーリーとヴィヴィオのデイパックの中に何か使えそうなものはないかと探っていたのだ。 二つのデイパックの中にはいくつか道具があったが、浅倉が使えそうな物はヴィンデルシャフトとマシンガンブレードの二つだけだった。 あとは自分にも配られていた食料や地図などの支給品、そして鍵やアクセサリー、使い慣れないローラーブレードだった。 ヴィンデルシャフトはまだそのまま叩きつけるというシンプルな使い方ができるので、無駄に素手を傷つけないで殴る事ができる。 そして新しく見つけたマシンガンブレードは重さも中々で浅倉でも十分取り回せる事ができるものだった。 浅倉は新たな牙を手に入れると地面に倒れている二人は無視して南へと向かって行った。 その顔には殴った事によって幾らかイラつきが発散されたのか、久方ぶりに笑みが浮かんでいた。 ▼ ▼ ▼ 「ぅう、お兄さん……」 ヴィヴィオは悲しんでいた。 灰色の質素な被験者服を身に纏ったあどけなさが残る純真そうな幼女が悲しんでいる理由はいくつかある。 一つ目の理由は浅倉の豹変。 今まで全く愛想はなかったが自分と一緒にいてくれた浅倉がいきなり殴りかかってきたのだ。 ヴィヴィオにしてみれば訳が分からなくて当然の事態であり、また今まで信じていた分ショックも大きいものだった。 「……ママ、なのはママ……ぅ……ぁあ……」 そしてヴィヴィオが悲しむ二つ目の理由。 それは高町なのはの死である。 ヴィヴィオは以前にも転んで泣いた事がある。 その時は近くにいたなのはとフェイトの二人の母親と機動六課の面々が見守っていてくれていた。 だがもう高町なのははいない。 先程の放送で死んだ事が判明したからだ。 ヴィヴィオは知ってしまった。 もう二度となのはママには会えない事を。 もう二度とあの優しい声を聞く事はない事を。 もう二度とあの温もりが自分を包む事はない事を。 それが分かった瞬間、ヴィヴィオの世界は闇に包まれた。 まるで皆と出会う前に排水溝を彷徨っていた頃に戻ったような錯覚を覚えた。 だがしばらくは浅倉やシャーリーに迷惑をかけないようにと平気な振りをしていた。 「強くなると約束した」から強くあらなくてはいけない。 そうヴィヴィオは心の中で必死に強くなろうとしていた。 だがそれも信頼していた浅倉に張り飛ばされたと同時に呆気なく吹き飛ばされてしまった。 もう倒れた身体を起き上がらせる気も起きなかった。 結局自分は強くない、弱いままのヴィヴィオなのだと思い知らされた気がしたから。 弱いヴィヴィオは守られるだけで何もできないちっぽけな存在。 何もかも諦めてしまおうかとヴィヴィオの心はそこまで落ち込んでいた。 「……ん?」 そのまま倒れた状態のヴィヴィオだったが、ふと目の前に誰かいる気配を感じた。 頭を持ち上げる事でさえ億劫だったが、なんとなく誰がいるのか気になって顔を上げてみる。 「え」 そこにいたのは蒼い狼だった。 首周り、そして足と尾の付け根の白以外の全身は映えるような蒼色。 一見すると勇猛な印象を抱くが、その赤い瞳がいつも自分を見守っていてくれていた事をヴィヴィオは知っている。 「ザッフィー?」 倒れたヴィヴィオの前に座している蒼い狼は紛れもなく盾の守護獣ザフィーラだった。 だがその姿は霞が掛かっているかのように不自然にぼんやりしていた。 それでもヴィヴィオは目の前にいるのが正真正銘のザフィーラだと思えた。 そのザフィーラはいつも通り寡黙のままにヴィヴィオを見ていた。 ヴィヴィオにとってザフィーラはなのはとフェイトの二人の母親を除けば寮母のアイナに次いで側にいた時間が長い 特定の役職に就いていないザフィーラがヴィヴィオの護衛役になっていたからだ。 ザフィーラはヴィヴィオの側にいても寡黙の姿勢を崩す事はなかった。 いつでも黙って側にいて見守ってくれている存在。 それがヴィヴィオから見たザフィーラの一面だった。 「……ザッフィー?」 そのザフィーラが目の前にいる。 相変わらず寡黙なままで赤い瞳をこちらに向けている。 そしてその瞳は何か訴えているように見える。 「ザッフィー……?」 相変わらずザフィーラは黙ったままだ。 だがヴィヴィオにはザフィーラが何を言いたいのか分かる気がした。 「うん、わかった。ヴィヴィオ、がんばるよ」 ザフィーラは何も言わない。 寡黙なままで何かを伝えようとしている。 それはヴィヴィオにもきちんと伝わっていた。 だからヴィヴィオは一度諦めかけた心を奮い立たせて、足に、手に、身体中に、力を入れる。 「見ていてね」 生まれたての動物が初めて立ちあがる時のようにぎこちないながらもヴィヴィオは懸命になっていた。 一度は諦めかけていた事だが、まだ諦めた訳ではない。 今はまだ何もできない弱いままの存在かもしれない。 でも、これからずっと弱いままかどうかは分からない。 だから今は一歩ずつ進む。 「――っはぁ」 そして、ヴィヴィオは立ち上がった。 だが不思議な事に既にザフィーラの姿はどこにも見当たらなかった。 ヴィヴィオは気付いていない。 いつのまにか右手には浅倉によって散らかされていた道具の一つ、三日月型の飾りを持つチョーカーが握られていた事に。 それの名前は1st-Gのデバイス鎮魂の曲刃レークイヴェムゼンゼ。 ヴィヴィオは知らない。 ザフィーラが既に死んでいる事を。 先程見たザフィーラが冥府の向こうからほんの少し出てきていた事に。 レークイヴェムゼンゼの能力、それは冥界との境を開いて魂の協力を得るというもの。 それは小さな偶然が生んだちょっとした奇跡だった。 ▼ ▼ ▼ 「どうしよう、これから」 シャーリーは戸惑っていた。 涼しげな印象を与える浴衣を身に纏った少女が戸惑っている理由は今後を思っての事だった。。 シャーリーにとって浅倉がいきなり殴って来た事はそれほどショックではない。 元より危ない感じを周囲に放っていたのでこうなる事も半ば予想していた。 もっともあれほど脈絡もなく強く殴られるとは思ってもみなかったが。 何はともあれシャーリーが起き上がった時には既に浅倉はどこかへ立ち去った後だった。 追いかけるという選択肢もあったが、少し離れたところでヴィヴィオが蹲っているのを発見した事でその選択肢は放棄した。 元々浅倉に付いて行ったのはゼロを追いかけるという目的からだ。 ゼロの居場所が分かった以上一緒にいる理由も希薄になる。 (そういえば、さっきキングって言う人はゼロの事を『天道』って言っていたわね) 名簿を確認してみると確かに『天道総司』というイレブンの名前があった。 ブリタニアに反旗を翻す黒の騎士団のリーダーがイレブンである事は自然な事だ。 これで間違いない、ゼロの正体は天道総司というイレブンだったのだ。 シャーリーは憎きゼロの本名を知って少し気持ちが楽になった。 得体のしれなかった者のベールが少しだけ剥がれたような気がしたからだ。 「シャーリーお姉ちゃん」 そこでシャーリーは目の前に立っているヴィヴィオに気付いた。 どうやら考え事をしている間にヴィヴィオは自力で立ち上がっていたようだ。 まだ涙を流した後が見られるが、もう大丈夫そうだった。 「ヴィヴィオちゃん、怪我はない?」 「うん、だいじょうぶ。あ、ザッフィー見なかった?」 「え……ザフィーラ? ううん、見なかったけど」 シャーリーはザッフィーと言われて、少ししてからそれがヴィヴィオが話していた大型犬ザフィーラの事だと分かった。 だがいくらなんでもそんな犬が近付いてきたら気づくはずだ。 とは言うものの今さっき考え事をしていてヴィヴィオの接近に気付かなかった例もある。 だが本当にザフィーラが近くにいたのなら今頃ヴィヴィオと一緒にいるはずだ。 ヴィヴィオの話からするとザフィーラは人並みに知識があるらしい。 もしかしてヴィヴィオの側にいられない理由でもあるのだろうか。 (待って、もしかしてザフィーラがデスゲームに乗っていたとしたら? 後ろめたい気持ちから会えないって説明が付く。 近くまで来たのはヴィヴィオの泣き声を聞いたからで、いなくなったのは無事を確認したからじゃ) だがこれは根拠もないただの妄想でしかない。 しかし本当ではないとも言い切れない。 実際に会って確かめれば一番だが、もし推測が正しければ追い付く事は難しいだろう。 結局真相は分からずじまいだ。 「ん、どうしたの?」 「え、あ、ちょっと考え事を……これからどうしようかって」 こんな事はヴィヴィオに話せない。 高町なのはという母を失ったと思っている上にこんな残酷な推測を聞かせる事などできるはずなかった。 これは確信が持てるまで自分の胸に留めておこう。 シャーリーはザフィーラの問題を一旦保留にする事にした。 「お兄さんを追いかけないの?」 「んー、どこに行ったかも分からないから追いかける事は出来なさそう、ごめんね」 それを聞いたヴィヴィオは複雑そうな表情を浮かべていた。 それも当然だろう。 慕っていた相手がいきなり殴ってきて立ち去ったとあれば会うのは気不味くなる。 「とりあえず怪我していた天道って人の治療に役立つ物や私達の知り合いを探そうか」 「天道さんって、あの怪我のお兄さん? うん、そうする!」 シャーリーがこう提案したのは何も善意からではない。 キングは温泉に行くと言っていたが、既にあそこには治療に使える物は取り立てて無い事をシャーリーは知っていた。 もちろんキングが治療に関する道具を持っている可能性はあるが、もし無かったらゼロは手遅れで死ぬ可能性がある。 そんな最期はシャーリーにとって許せるものではなかった。 ゼロは今までしてきた事を悔いて苦しんで死ぬべきだ。 そうなるべきだとシャーリーは強く思っていた。 それから二人は浅倉が辺りに散らかした道具を拾う作業に努めた。 以前のように大半の道具はシャーリーが持つようにしたが、レークイヴェムゼンゼだけはヴィヴィオに持たせたままにした。 どうやら何か感じるらしくそれなりに気に入ったようだ。 元々ヴィヴィオに支給された物だった事もあり、シャーリーはヴィヴィオの好きにさせる事にした。 一応説明書にも目を通していたが、今一つ理解できない内容だったのであまり覚えていない。 危険なものではないみたいだったのであまり心配はしていないが。 「じゃあ一応の予定として駅、ガソリンスタンド、ホテル、映画館、デュエルアカデミア、病院の順番で行こうか。 名前のある場所に行けば他の人に出会える可能性もあるし、じゃあ頑張ろっか」 「うん、ヴィヴィオもがんばる!」 声を掛け合ってシャーリーとヴィヴィオの二人は決意を新たに歩み始める。 一方は暗い感情から、一方は明るい感情から。 ――共にある事とは、なんとも複雑な束縛の事らしい。 【1日目 午前】 【現在地 D-7】 【シャーリー・フェネット@コードギアス 反目のスバル】 【状態】健康、悲しみ 【装備】浴衣、クラールヴィント@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ゼロの銃(10/10)@コードギアス 反目のスバル 【道具】支給品一式、デュエルアカデミア売店の鍵@リリカル遊戯王GX、ジェットエッジ@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:ルルーシュ達と一緒に帰りたい。 1.治療の道具や知り合いを探すために駅、ガソリンスタンド、ホテル、映画館、デュエルアカデミア、病院の順で巡る。 2.ルルやスバルや六課の人(中でもヴィヴィオの為に優先的にフェイト)を探す。 3.もう1人いるなのはを探し、ヴィヴィオのママかどうかを確かめる。 4.ヴィヴィオを守る。 【備考】 ※ゼロ=天道総司だと思っています。 ※六課がブリタニア軍の特殊部隊で、スバルはその一員だと考えています。ザフィーラを大型犬だと思っています。 ※プレシアはブリタニアの偉い人で、この殺し合いを開いたのは六課や日本人及びその関係者を抹殺する為だと考えています。 ※ヴィヴィオの境遇を自分と重ねています。 ※ここには同姓同名の別人がいると思っており、放送で呼ばれたなのはが別人の可能性があると考えています。 ※デュエルアカデミアを決闘の学校で物騒な所だと思っています ※ゼロは苦しんで死ぬべきだと思っています。 ※ザフィーラが殺し合いに乗っているかもしれないと思っています。 【ヴィヴィオ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】 【状態】健康、悲しみ、決意、浅倉に対する複雑な感情 【装備】ヴィヴィオのぬいぐるみ@魔法少女リリカルなのはStrikerS、レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ 【道具】支給品一式 【思考】 基本:フェイトママや六課の皆と一緒に脱出する。 1.ヴィヴィオがんばる! 2.天道お兄さんを助けたいけど、浅倉お兄さんは……? 3.フェイトママを探す。 3.ザフィーラ、どこに行ったんだろう? 【備考】 ※浅倉の事は、襲い掛かって来た矢車(名前は知らない)から自分を救ってくれたヒーローだと思っています。 ※浅倉を信頼(?)しており、矢車とエネル(名前は知らない)を危険視しています。 ※キングのことは天道を助けてくれるいい人だと思っています。 ※この場にもう1人なのはがいる事に気付いていません。 ▼ ▼ ▼ 「ちっ、いないか」 浅倉はあれから急いで南下したが、結局それらしき人物と会う事は出来なかった。 どうやらもうどこかへ移動した後らしい。 では、その人物はどこへ向かったのだろうか。 「ふっ、決まっているだろ。人を殺そうとしているんだ、人が集まりそうな場所にいるはずだ」 浅倉の目にはビルがいくつも立ち並ぶ密集地帯が映っていた。 殺人犯の鋭敏な嗅覚は確かに視線の方角に血の匂いがある事を察知していた。 ――それは合ったり合わなかったり。 【1日目 午前】 【現在地 E-7】 【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】 【状態】右手に火傷 【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト 【道具】支給品一式、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS 【思考】 基本:戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物。 1.市街地で鎌を持った奴(キャロ)及び戦える者と戦う。 2.ついでに市街地にある施設に向かってみる。 3.回復した天道、キングと戦う。 【備考】 ※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています。 ※ヴィンデルシャフトのカートリッジシステムには気付いていません。 ※カブトに変身できる資格があるかどうかは分かりません。 【マシンガンブレード@仮面ライダーカブト】 ゼクトルーパーの主要武器。装弾数3000発のホローポイント弾を内装するマズル銃。右腕に装着して使用する。 トリガーを引く際に任意で発射弾数を変える可変バースト機能を備えており、通常の発射速度は600発/分。 最大射程は2000mを誇り、徹甲・炸薬・焼夷弾を装填選択することも可能。 白兵戦時には、先端に内蔵されたウーツ鋼鉄製・格闘専用ブレードを展開する。 【レークイヴェムゼンゼ@なのは×終わクロ】 1st-Gの魔女ブレンヒルト・シルトのデバイス(概念兵器)。意思はある。 普段は待機形態で三日月型の飾りがついたチョーカー、他に戦闘用の大鎌形態と飛行用の箒形態がある。 冥界との境を開いて死者と話せたり、一時的に実体化させる機能がある(ここで呼び出せる死者は元々の1st-Gの住人+この地で死んだ者)。 Back メビウスの輪から抜け出せなくて(後編) 時系列順で読む Next 暇をもてあました神々の遊び Back メビウスの輪から抜け出せなくて(後編) 投下順で読む Next 王蛇のブランチ Back 仮面ライダーらしく 浅倉威 Next 王蛇のブランチ Back 仮面ライダーらしく ヴィヴィオ Next 守りたいもの Back 仮面ライダーらしく シャーリー・フェネット Next 守りたいもの
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蟹はライトアップされた舞台の上で、裸の蠍の前に立つ。 まだ表情を表に出せない蟹の前で蠍は静かに、幸福そうに微笑んでいた。 周りの音が何もかも消し飛んだような空気がひろがっていた。 蟹「これでよかったんだな?」 蠍「……(うなずく)」 蠍は何の芸もなく、舞台の上に仰向けになる。そこへ蟹が芸のない調子で、ぎこちなく蠍を抱く。 蠍は蟹の腕の中で生気を失っていった。口元に微かな微笑を浮かべながら、 蟹の動きに振り回されてぐらぐら揺れる。 蟹は蠍を抱くうち、苦しそうに泣き始める。 蠍(ああ、そんなに泣かないで。 俺はとても嬉しいんだ。あんたは昼の人だから。俺みたいな夜の住人が、 絶対に深く関わったり愛したりしちゃいけないと思っていたから。 こうやってあんたと繋がれるのは本当に嬉しいんだ。夢みたいだ。 俺の命をあんたにやろう。だって、もともとあんたがくれたものだ。 俺の魂もあんたにやる。俺の魂があればあんたはきっと戦えるはずだ。 本当に今死んであんたにやりたいくらいなんだよ。 ああでも、あんたは俺を殺したと本気で思ってくれるんだね。嬉しいよ) ショーが終わるころ、蠍は蟹の下で動かなくなっている。 身体から生気をすっかり失い、閉じた目の端から一滴の涙を流しながら。 観客はほとんど仮死状態に近い蠍の反応に蟹が彼を貫き殺したと錯覚した。 そのまま、蠍の身体は立つこともできずに裸のままステージ裏へ運ばれてゆく。 蟹は観客たちに背を向け、乱れた服を直すと立ち上がる。 それまで優しかった面影が嘘のように、何かを瓦解させてしまったうすら寒い背中。 ショーを見ていた羊たちはなぜかその背中に息を呑んだ。 長い沈黙の果てに蟹はこちらを振り向く。 なんと言い表したらいいのかわからない。人の道を踏み外した人でなしの顔がそこにあった。 羊などは、思わずその動物的カンから全身に寒気を感じて身をすくませる。 双子は口笛を吹きながら冷や汗をかき、水瓶は鏡のような目で平然としてそれを映しこむ。 山羊は蟹の出す異様な空気に対して反射的にどす黒い視線を返した。 蟹は黙っていた。「どうしてこんなことになった?」とは言わない。 今の彼にはもう、全てが破壊すべき対象なのだ。 続き
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鏡の国と不思議の国。両方を使えるようになって自分は強くなった それでも簡単に仇を討てるとは思っていない そこに足を踏み入れた時から、覚悟はしていた 敵の本拠地なのだ。どんな罠があるか想像もつかないし どんな罠でも叩き潰して仇を討つ。自分たち姉妹の運命を弄んだ仇 そして片割れである少女の仇を 敵の本拠地、と呼ぶには余りにも普通すぎる建物 どう見ても一般の建築物にしか見えない「それ」の戸を開け、少女は足を踏み入れる 首筋がチリチリして、背中がぞわぞわする この感覚は過去に何度も経験したことがある 突如、世界の姿が一変する。アリスの目の前に広がるその世界 花は咲き乱れ、青く澄み渡った空に、小鳥の囀りや小川のせせらぎが耳に心地良い (…ナイトメアコード? ううん、違う。これはそんなものじゃない…) それこそ、今は彼女が使う能力の一つ 不思議の国―ワンダーワールドそのものだった オリジナルは自分以外に存在するはずがない 存在するはずがないが、目の前に存在するそれは“オリジナル”そのものである 幻覚の一種かと思ったが、地面にも質感があるし、流れる川の水も冷たい もっとも高度な幻覚なら、その程度容易く再現できるのかも知れないが… どちらにせよ、アリスは怒った。これは自分たちに対する侮辱だ、と そして死んだあの子に対する侮辱だ、と怒った オリジナルと寸分変わらぬこのワンダーワールドを、“偽物”と断じたアリスは 「…許さない」 口元を固く結んだアリスの横に、巨大な有翼獣が顕現する ―グリフォン 鷲の上半身に獅子の下半身を持つ偉大なる翼の王 主に一瞥すると、グリフォンが世界を睨んだ。自分が住むべき世界と酷似した世界を そして自分が住む世界ではない、この世界を グリフォンの咆哮が世界に響き渡り、その翼が大きな音を立てて開かれる 偉大なる翼の王の羽ばたきが全てを吹き飛ばそうとした時であった 「あら…随分ひどいのね」 この“偽物”のワンダーワールドを見た瞬間、勿論彼女の偽物がいる事も予想していた 勿論“偽物”の世界にいる女王は“偽物”なのだから、出てきたら躊躇わずに倒そう そう決めていたはずなのに 「復讐の女神ネメシスのグリフォンは全身が漆黒に染まってると聞くけれども アナタのグリフォンも、そうなのかしら」 クスクスと笑う少女の髪が風に揺れる 少女の身を包むゴシック調のドレス 自分と変わらぬ背丈、そしてその自信に満ちた顔 どれをとっても、もう二度と目にする事はないと思っていたもの 「アナタがネメシスだというなら、何に対して復習をするのかしら」 少女は笑う。まるで自分は“本物”だと言わんばかり、その横に 白いグリフォンを顕現させ、クスクスと笑う (騙されちゃダメ、これはウソ。そんなハズない。そんなハズないんだから…) 少女が一歩近づく度に、アリスは一歩後ろに下がる アリスが一歩後ろに下がる度に、少女は一歩近づく (ダメ、このままじゃ…グリフォン!) アリスの心の呼び声に応え、黒い影は二人の間を割って入る グリフォンが使えるべきはワンダーワールドの女王のみ 偉大なる翼の王は女王を守るべく、少女の前に立ち塞がる 「私を偽物と思ってるのかしら。悲しいわ…私は本物よ?」 「ウソだ!許さない…!あの子の姿を偽って…絶対に許さないんだから…!」 「困ったわ。そうだ…。ねぇ、グリフォン。アナタなら分かるわよね?」 「グリフォン!? 嘘…」 少女は威嚇を続けるグリフォンに怯むことなく、その手を差し出し その頭を一撫でする。それは本来ではありえない事だ。気高き翼の王が気を許すのは 女王のみ。グリフォンにとって女王であったのは二人だけ だがそれでも、アリスは“その可能性”を否定した。ありえないからだ だが、それと同時に目の前でグリフォンが自分達以外に傅くのも、またありえない光景なのだ 「あの後ね、お父様が私を治してくれたのよ。だから私はホンモノ。信じて」 間に立つグリフォンを懐柔し、障害を乗り越え、アリスの前に立った少女は微笑む 「ねぇ、二人で一緒に。ううん。今度は家族みんなで暮らしましょう?」 「…本当にあなたなの??」 「そうよ。心配かけさせちゃってごめんなさい」 少女は白と黒のグリフォンを従えながら、優しく微笑みアリスに笑いかける その少女の目には涙が浮かんでいた 「さびしかった、こわかった、つらかった、いやだった、もう二度と逢えないと思ってた!」 「私も…私もだよ!お姉ちゃん…!」 アリスは泣いた。少女の胸の中でただひたすら泣いた 今まで押し殺し、凍りつかせていた感情。それら全てが涙と共に流れ落ちていった 嬉しい、ただ只管にうれしい。それしか考えられない ―ズキリ、と胸が痛んだ 「え…?」 「バーカ、生き返る訳ないじゃない」 少女の手には赤く染まったナイフが握られていた 十六聖天外伝 夢と、もう一つの世界 三話
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085話 大人の責務 案ずるより産むが易し、とはよく言ったものだ。少し明るくなった気分で、菓子パンの棚を物色する。 コンビニまでの道程は五十メートル足らず。誰にも会わず、何事もなく通過することができた。 カウンターの奥から煙草を数箱と、予備のライターをまず入手した。 パッケージが少し違って、いつもの銘柄の煙草を探し出すのに少し苦労した。 この銘柄が存在する、しかしパッケージは違う、そんな程度のパラレルワールド。 不思議なものだと、つくづく思う。そういえばコンビニの店名も知っているものだ。 パラレルワールドというのは、過去のどこかで枝分かれして生まれたものであるはず。 自分の知っている世界と今いるこの世界は、どんな違いで生まれたものなのか。 ザインが住んでいた世界、少年が学校にも行けず秩序を守らなければならないような世界は、どうして生まれたのか。 自分のいた「現代」からそのまま時が流れたら、そんな未来に辿り着いてしまうのだろうか。 思考することは嫌いではなかった。だから、世界の繋がりを考えることはいい気分転換になった。 出会った人々の姿から垣間見た別世界は決して幸せそうなものではなかったが、考えている間は恐怖を忘れられた。 棚に並ぶパンの中から、ある程度なら日持ちしそうな物を選んでビニール袋に詰めてゆく。 何でも一緒くたにザックに放り込むのも抵抗があったので、この袋もレジから拝借した。 食品用、飲料用、雑貨用と三枚。これ以上に増やすと荷物になりすぎる。 パンを選んだ後は、奥の冷蔵棚に並んだペットボトルを眺める。 あまり多く持っては嵩張るので、ミニボトル入りの水を五本とスポーツドリンクを二本取り出して袋に入れる。 電気は通っていないのだろう、ボトルの中の液体はあまり冷えてはいない。 栄養ドリンクの棚が目に入る。適当な一本を手に取って蓋を開け、そのまま一気飲みした。 これだけで疲労が取れれば苦労はしないが、気分だけでも元気を出しておきたかった。 次に、菓子の棚を覗く。食料が乏しい時のエネルギー源と言えば、チョコレートと相場が決まっている。 この街の中に存在する量的には食料は乏しい訳ではないが、いつでも入手できるとは限らないのだ。 雪山での遭難者がチョコレート一枚で生き延びた、などという話は昔からよく聞く。 実際の栄養価がどの程度のものかは知らないが、こういう時、イメージの影響力は絶大だった。 棚にあるだけの板チョコを袋に詰める。十枚近いだろうか。 嵩張らないから持ち歩くにはいいものの、こんなにチョコレートばかり食べ続けたくはないな、と思った。 最後に、店の入口近くの棚にある雑貨を見る。 タオル、剃刀、石鹸、ウェットティッシュ。あれば便利そうな物が並んでいて、どれを持っていくか悩む。 傷を負った時などは、清潔にしておくことは重要だ。雑菌が入ったりすると厄介なことになる。 それを考え、まずウェットティッシュを一パックとチューブ入りのハンドソープを袋に詰めた。 もう少し見回すと、バンドエイドと消毒液が目に入る。 この状況ではバンドエイドは大した役には立たないだろう。消毒液だけを手に取り、袋に投げ入れる。 武器になりそうな物もないかと期待したのだが、せいぜい文具店にもあった鋏やカッター程度しかない。 他に役に立ちそうな物と言えば電池くらいだ。今は電池を使うような道具は持っていないが、後々役立つかも知れない。 十本で一纏めになっている単三のアルカリ電池を、取り敢えず袋に入れる。 ここで入手できそうな物はこんなところか。 隠れ場所からは近いのだから、後で何か思い出したらまた取りに来ればいい。 店を出ようと、ドアの前に立つ。本来ならば自動ドアなのだろうが、電気の通っていない今は動かない。 手動で開けようと透明なドアに手を触れ、外の様子を窺ったところで――異変に気付いた。 来た時は人の気配などまるでなかった静かな通り。そこに、人影に似たものが見えた。 似たもの、であって人影ではない。正確には、人間の影ではなかった。 背中に、鳥に似た大きな翼――それさえなければ、その影は人間に見えていただろう。 このような生き物を何と呼ぶかは知っていた。 天使、或いは悪魔だ。 冷や汗が流れる。確かに放送の声は悪魔が出現するようなことを告げてはいたが、市内全域にではなかったはずだ。 悪魔が出現する場所はあっても、それは一部。他の場所には悪魔はいないはず。 現に、今まで移動していた間には一度も悪魔とは遭遇していない。 いるはずのない場所に悪魔がいるとすれば、理由は一つ。 新のような人間――サマナー、と言ったか。悪魔を召喚し、使役する者がいるのだ。 充分に考えられることだ。今手元にあるこのPCにも、悪魔召喚プログラムがインストールされている。 同じものを支給され、使いこなしている人間がいたとしても不思議はない。 それが新であればいいのだが、今この場からそれを判断する術はない。悪魔本人に聞く訳にもいくまい。 あの天使を使役しているサマナーが殺し合いのゲームに乗っていたなら、見付かった瞬間襲われる可能性さえあるのだ。 (どうする?) じっと動かず、天使の様子を見守る。 これほど近くに人がいるとは気付いていないようだが、その動作からは慎重さが窺えた。 何かを探すように、周囲を見回している。幸い、このコンビニの方向には視線は向けられていなかった。 こちらには背を向け、反対側に視線を巡らせている。 (待てよ。あっちは……!) 幸いなどとは言えない状況であることに、一瞬遅れて気付く。 天使が立っているのは、つい先程歩いてきた道の真ん中。その視線が向いているのは、文具店の方向だった。 戻ろうとしても、あの天使に気付かれずやり過ごすことは至難の業だ。 何しろ相手は道の真ん中に堂々と立っているのだ。来た時と同じ道は通れない。 別の通りに抜けて大回りをして戻ろうとしても、目的地である文具店の方向を奴は監視している。 再びこの通りに姿を現した瞬間、見付かってしまうだろう。 しかし、独りで逃げる訳にはいかない。 ここで身を潜めて待ち続ける訳にもいかない。天使の目的は定かではないが、文具店にはザインがいる。 無防備に眠っている彼が、奴に見付かってしまったら。最悪の事態も有り得るのだ。 いっそ堂々と出ていって声を掛けるというのも一瞬考えた。が、話の通じる相手とも限らない。 このPCに入っている例のプログラムがあれば、恐らく悪魔との交渉は可能なのだろう。 しかし、既に主人を持っている悪魔と交渉するというのは賢明とは思えなかった。 例えば、主人たるサマナーが「出会った者は全て殺せ」と命令していたら。 どんな風に話し掛けて何を提案したとしても、行動方針の優先順位を覆すことはできそうにない。 主人のいない悪魔ならば、利害が一致すれば味方に付けることも可能かも知れないのだが。 できれば見付からずに逃げたい。 しかし、奴を文具店から遠ざけておきたい。 恐怖と、仲間を助けたいという思い。二つの感情がせめぎ合う。 自分の身を守りたいなら簡単だ。奴が離れるまで、この店の奥で息を潜めていればいい。 ただし、隠れている間に何があっても――ザインが殺されようとしていたとしても、手出しはできなくなる。 文具店から遠ざけるなら? 無論、こちらに来させることだ。物音でも立てれば気は引けるだろう。 ただし当然、自分の身には大きな危険が降り掛かる。 (僕が無茶をして、共倒れになったら意味がない。いざという時に悪魔に対抗する力はザインの方が上だ) この選択肢が、運命の分かれ目だ。テレビゲームだったらどちらかがゲームオーバーに繋がっていそうな局面。 (それに、奴があっちに向かったからと言って……ザインが見付かるとは限らない。 あの店は目立たない位置だし、店に逃げ込む前には地面に血の跡が残らないよう注意してた) 記憶を辿り、安心できる材料を探そうとする。 (でも……) 安心は、できなかった。 後から後から湧き出るのは不安と、罪悪感。仲間よりも保身を選ぼうとしていることへの。 (見張ってるから安心しろって、僕が言ったんだよな。甘えてもいいって) その言葉を、ザインは信頼してくれたのだ。 裏切る訳にはいかないし、 (――子供を守れない大人なんて、最悪じゃないか) 彼が寄る辺ない小さな子供のように思えたことを、どうしても脳裏から拭い去れなかった。 手に持ったままだったPCの電源をそっと落として、ザックに入れた。 音を立てないように振り向いて、店内を見渡す。何か使えるものはないだろうか。 ――あった。家族で遊ぶような花火セットだ。 派手な打ち上げ花火こそ入っていないが、これで充分だった。 下手に派手すぎる花火を上げてしまっては、あの天使以外の危機まで呼び込みかねない。 足音を忍ばせて棚に近付き、手を伸ばす。袋を千切って鼠花火を取り出した。数は二つ。 それを手に持ったままドアの前に戻った。逃げられそうな道を確認する。 出てすぐ右手、来たのとは反対の方に曲がり道があった。隣の通りへ抜ける道だろう。 (……よし) 静かに、動かない自動ドアを手で開く。通れる程度の隙間ができたところで、ライターで花火の片方に点火する。 通りに飛び出すと同時にそれを路上に投げ出して、曲がり角へと躍り込んだ。 後ろからしゅるしゅると鼠花火が回転する音がする。煙も上がっているだろう。 「誰です!」 声がした。中性的な響き。声の主は天使と考えていいだろう。 飛び込んだ道をそのまま走る。一つ向こうの通りが見えた。確認する余裕もなく、そこへ飛び出す。 幸いこの通りにも人影はなかった。左へ曲がれば文具店からは遠ざかる。方向転換しながら、もう一つの花火にも点火した。 「そこか!」 曲がってきた道の方から、また声がする。狙い通り、こちらを追ってきてくれているようだ。 通りに鼠花火を投げて、また手近な曲がり角に飛び込んだ。 曲がった先には、ドアもなく開け放たれているビルの入口があった。そこに逃げ込み、身を潜める。 相手は翼を持つ生き物。道を走っていたのでは、空から探されたら丸見えだ。 ――案の定、やがて遠くから聞こえる鼠花火の音に混じって、鳥にしては大きな羽ばたきの音が聞こえた。 静かな街の中では、そんな小さな物音もはっきりと聞こえる。 乱れた呼吸の音も聞こえてしまわないかと恐ろしくなり、荒い息を必死に抑え込む。 ふと思い出して、手に提げたビニール袋から水のボトルを取り出し、半分程度まで一気に喉に流し込んだ。 それで息は幾分落ち着いたが、それと同時にこの袋の結構な重さに気付く。 ザックの中にもまだ水は入っていたはずだ。飲料と雑貨の袋はここに置いていくことにした。 花火の音も止んでしばらく経った頃、再び羽音が聞こえた。遠くはなく、近くもない距離に思える。 今度は羽ばたく音に続いて、アスファルトを踏む音がした。着地したのだ。 ここを見付かる前に、離れた方がいい。慎重に、今見える範囲の光景を観察する。 このビルの入口は曲がり道の途中にあった。その道を抜ければもう一つ向こうの通り。 コンビニのあった通りから見れば、二つ離れた通りということになる。今までの二本の通りに比べて広い。 (……待てよ?) この光景は、見たことがあるような気がする。 そう、つい数時間前だ。ザインと共に夢崎区に踏み込んで、最初に歩いた通りではないか。 つまり、この通りのどこかには戦いの跡があり、恐らくはまだ少女の死体が放置されているのだ。 また嫌な汗が出てくる。あの金髪の男も、近くにいるのかも知れない。 天使がうろついている以上、ザインの待つ文具店に戻るのは危険が大きすぎる。 かと言って、ここに留まっていたくもない。 となれば――残る選択肢は、気付かれないように通りに出て別の場所を目指すということになる。 金髪の男はゲームに乗っている、つまり人を探して殺そうとしているに違いない。 ならば、彼は人の多そうな夢崎区に留まっている可能性が高い。 出会いたくなければそれとは反対側、元来た蓮華台の方へ進んだ方が良さそうだ。 (ひとまず、天使は遠ざけた。あいつはしばらくこの周辺で僕を探すだろう。 だったら……ここを離れて、別の仲間を探してから戻ってきた方がいいかも知れないな) ザインの安全が確保されたと言い切れる状況ではない。しかし、天使を引き離したことで時間稼ぎにはなるはずだ。 しばらく経てばザインも多少は疲労を回復し、目を覚ますだろう。――そう、信じたい。 (必ず、戻る。だから……僕が生きて戻るために、今は) ビルの入口から顔を出して、通りの様子を窺った。誰もいない。空も見上げてみるが、天使の姿はない。 音を立てそうなビニール袋は捨てていくことにし、食料はザックに入れた。パンが潰れそうだが仕方がない。 そっと外に出て、足音を殺しながら通りに出る。 左右を見ると、右側に少女の死体を見付けたマンションが見えた。蓮華台の方向は左だ。 あのマンションの前を通らなくていいことに安堵し、左へ曲がって歩道の建物側の端を歩き出す。 来た時は二人で通った道。独りで歩けば、蓮華台までの道はあの時より、長く感じるだろう。 <時刻:午前11時頃> 【スプーキー(ソウルハッカーズ)】 状態:少し疲労 武器:マハジオストーン(残り2個)、カッターナイフ 道具:ノートPC、メモ帳、ボールペン、食料少し(菓子パン数個と板チョコ約10枚) 現在地:夢崎区から蓮華台へ移動中 行動方針:仲間を見付けて夢崎区に戻る、PC周辺機器の入手、簡易マッピングプログラム作成 Back 084 Next 086
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3/2時点(14週経過、あと4週) 前週 変動 順位 HN(敬称略) 参加回数 累計HIT 平均HIT 今回得点 合計得点 ボーナス残 代パ 変動 2 1▲ 1 cobo 14 123 8.79 186 1794 2 2 1 1▼ 2 Schu 14 119 8.5 99 1747 2 1 3 - 3 YAIBA 14 122 8.71 99 1684 2 2 4 - 4 アクアフロート城也 13 115 8.85 89 1667 2 0 5 - 5 霜月猫 14 117 8.36 79 1510 2 0 6 - 6 SOW 12 105 8.75 88 1496 2 3 8 1▲ 7 レミニス 14 114 8.14 186 1413 2 3 7 1▼ 8 ふめい 13 109 8.38 79 1329 2 2 9 - 9 美鳥 11 93 8.45 186 1219 2 3 累計・平均HIT太字はトップ。 ボーナス欄について 代パは代理パーフェクト・変動は指定変動ボーナス。 代理パーフェクト使用=太字、指定変動ボーナス使用=成功:赤太字・失敗:青太字。
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20位からカウントダウン形式で発表します。まず11位まで。 20.oath sign/LiSA 「fate/Zero」OPテーマ。叫んでいるような、感情のこもった歌声が特徴的です。 19.mirrorballs/angela アルバム「mirror☆ge」収録。Cメロから大サビに向けての盛り上げが上手いですね。 18.Answer/ノースリーブス 「べるぜバブ」EDテーマ。聞きやすくて気合い入れたいときとかにふっと口ずさめるところが好印象でした。 17.Light My Fire/KOTOKO 「灼眼のシャナIII-Final-」OPテーマ。サビのShout out(いわゆる「シャナ」)がとにかく熱かったです。ライブでも大盛り上がりだった曲でした。(ただしTVサイズの切り方はひどかった) 16.ROMANCERS NEO/水樹奈々 「魔法少女リリカルなのはA sポータブル THE GEARS OF DESTINY」OPテーマ。実は今年の奈々さんはベスト20内この1曲だけ。11年の奈々さんは佳作は多かったけどそれを超えられなかった印象でした。 15.眠り姫/如月千早(CV今井麻美) 「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST2」収録・アニメ「THE IDOLM@STER」21話挿入歌。重厚なオーケストラに「月下祭」を彷彿とさせる民俗音楽風の旋律がなぜかよく合っていてキャラソンであることを忘れてしまう1曲です。 14.スマイル体操/高槻やよい(CV仁後真耶子) 「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST2」より。眠り姫より順位が上なのはおそらく再生回数の差でしょうか。電車の中で聞くと楽しい気分になれます。それと聞いて飽きない構成になってると思います。 13.キラフワ/angela 「アスラクライン2」最終回EDテーマ。放送以来待ち望んでいたフル音源のCD化がついに実現しました。 12.Brain Diver/May n 「ファイ・ブレイン-神のパズル-」OPテーマ。ANIMAX MUSIXでトリになって超高速でサイリウム振りまくったのは良い思い出です。 11.Unmei♪wa♪Endless!/放課後ティータイム 「映画 けいおん!」テーマソング。映画のCMで流れたイントロに引き込まれました。
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最終結果 前週 変動 順位 HN(敬称略) 参加回数 累計HIT 平均HIT 今回得点 合計得点 ボーナス残 代パ 変動 1 - 1 レミニス 17 146 8.59 242 2165 0 3 2 - 2 ふめい 16 139 8.69 129 2052 0 2 3 - 3 cobo 17 145 8.53 129 2035 0 0 5 1▲ 4 YAIBA 17 143 8.41 242 1976 1 1 4 1▼ 5 霜月猫 17 145 8.53 114 1954 0 1 6 - 6 美鳥 17 142 8.35 114 1784 0 3 7 - 7 Schu 16 130 8.13 129 1759 0 1 8 - 8 SOW 15 127 8.47 1590 1 3 9 - 9 アクアフロート城也 11 104 8.67 1309 1 1 累計・平均HIT太字はトップ。 ボーナス欄について 代パは代理パーフェクト・変動は指定変動ボーナス。 代理パーフェクト使用=太字、指定変動ボーナス使用=成功:赤太字・失敗:青太字。