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"碧陽学園"生徒会長「桜野 くりむ」 読み:"へきようがくえん"せいとかいちょう「さくらの くりむ」 カテゴリー:Chara/女性 作品:生徒会の一存 属性:風 ATK:1(+3) DEF:5(+2) 太ったら見捨てられるんだ~ illust: SI-S11 収録:スターティングデッキ 「OS:生徒会の一存 1.00」
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先日、妹が地方公務員試験に合格した。高校卒業以来1年間、必死に勉強してきたんだ。努力の成果が実ってよかったなと大いに祝福してやりたい。兄としても、非常に鼻が高い。 しかしそのおかげで、俺の現状がより肩身の狭いものになったのもまた、否めない事実なのだ。妹に先を越された兄。その重みが十字架となって俺の双肩にのしかかる。 そもそも俺は年の離れた妹に対して、並々ならぬ威厳を持って接してきた。妹がおいたをした時も、冷静に実父のような対応をしてきたものだ。 その俺の兄としての立場が、一気に瓦解した。3日前、妹が満面の笑みで合格通知の入った封筒を俺の部屋に持って駆け込んできた瞬間から、だ。 俺の考え過ぎだろうか。妹が俺を呼ぶ時のイントネーションが、いつもの「キョンく↑ん↓」ではなく、目上の者が下の者を諭すような「キョンく↓ん↑」だったような気がする。 とにかく。その時以来、ガラス張りのようにデリケートな俺の心は無残にも粉々に打ち砕かれてしまったのだった。 寝ボケ眼をこすりながら、ボーっとした頭でベットから起き上がった。昔はよく妹が俺を起こしに来てくれたもんだが、今じゃ当然そんなことはない。 妹が小学生だった頃のことだとはいえ、今さらのようにあの遠慮のない起こし方が懐かしまれた。 階下に下りて行くと、聞いてもないのに妹が本採用のための健康診断に病院へ行ったと教えてくれた。なんでも医療機関の健康診断には実費が1万円近くかかるらしい。 今日は懐の具合が切なくなっていたので揉み手をしながら母親に金銭を無心しようと思っていたのだが、今日はやめておいた方がよさそうだ。 俺は居づらさをこらえながら速やかに朝食を食べ終えると、そのまま自室へ戻って行った。 妹が狭き門である公務員試験に通って以来、両親の機嫌は際限なしに良い。俺の無職なんて帳消しになるくらいだ。いや、帳消しになんてなるはずないのだが。 妹が就職したことは俺も嬉しい。それは疑いようのない事実だ。だが、その反面悲しい気持ちになっていることも事実なのだ。 このままでは、家に俺の居場所がなくなってしまう。 現状打破のためには、何か行動を起こすのが大事だということは重々承知しているのだが、いかんせんモチベーションが上がらない。まあ、それもいつものことだが。 とにかく昼真っから自室で漫画を読んでいるというのも落ち着かないため、目的も無しに外へ出た。いや、目的はあったか。 俺が、無職たちが心安くいられる唯一の場所。仲間たちが待つ、約束の大地。公園に行こう。 「あら、キョン。今日も朝っぱらから辛気臭い顔して公園通いかしら?」 缶コーヒーを飲みながら公園に到着した俺を出迎えたのは、公園のブランコで楽しげにはしゃいでいるハルヒだった。こういってはなんだが、二十代半ばの女性の姿とは到底思えない。 こんなやりとりをしていると、どこからもとなくハルヒに向けて「お前の言えた義理か!」と鋭いツッコミが入りそうだが、こいつと長い付き合いの俺にそんな気概は一切芽生えない。 これが涼宮ハルヒという人物なのだ。 高校を卒業してからも以前SOS団を存続させ続けるエネルギーを持つ彼女に、そんなツッコミなど屁のつっぱりにもならない些事に過ぎない。 「おはようございます、キョンくん。今お茶をいれますね」 そう言って、魔法瓶から注いだお茶を差し出してくれたのは、我らがメイド朝比奈さんだ。 彼女も未だにハルヒの元に捕らわれ続けており、いつもこの公園のベンチで魔法瓶を脇に提げて俺たちを暖かく向かえてくれる。 俺としては非常にありがたいことなのだが、その姿は世間的には非常に痛々しいもので、既にご近所さま方の口端には朝比奈さんに対するあらぬ推論が公然と飛び交っている。 しかしよく考えるとこの人の場合、これが仕事なんだよな。こうして日夜ニコニコしながらハルヒの傍にいることで給料をもらっているのだ。実に羨ましい限りである。是非俺を時空管理員の末席に推薦してほしいものだ。 さらにその隣に腰を降ろし、黙々と図書館から借りてきた本を読んでいるのは、他でもない長門有希だ。 こいつもこいつで高校時代から何も変わっていない奴である。SOS団内でのポジションはもちろん、姿格好まで一切変化していない。 もう外見年齢では二十代中盤にさしかかっている設定なのだからもっと外見を変化させないと、と思うのは俺の独りよがりだろうか。 「おめでとうございます」 いつもの7割増しくらいのニヤケ顔で、古泉が俺の隣へにじり寄ってきた。こいつがこういう対応をとる時は、決まって俺にとっておめでたくないことがあった時である。 「あなたの妹さんが、公務員試験の難関を突破されたらしいですね。いやあ、実に素晴らしい」 さすがに耳が早いヤツである。近所のオバサマ方たちの井戸端会議にでも顔を出しているかのような情報網である。 「え、キョンの妹ちゃんって公務員になったの? へ~。兄貴とは大違いね」 あからさまに愉快そうな顔をしたハルヒは、ブランコから飛び降りながらそう言った。実に意味深な言い方である。 悪かったな。どうせ俺は公務員試験どころか、一般企業の審査にも通らないようなダメな兄貴だよ。 「なによ。そう自虐的になることもないじゃない。別に私はあんたのことを馬鹿にしたわけじゃないのよ」 今の言い方を聞いて、俺のことを小馬鹿にしている以外の解釈方法があるというのなら、聞かせてもらいたいものだな。 「公務員なんてつまらない仕事よ。何でもかんでも規則規則で、条理不条理を問わず決まりごとや上司の言うことを最優先させられて。本当に退屈なものよ?」 それでも俺はなれるものなら公務員になりたいものだな。不況にも強いしな。 「ほんっとに退屈なヤツね、あんた。もっとこう、ベンチャー企業を立ち上げてやるぜ! みたいな意気込みはもてないわけ?」 ふん。そんなこと微塵も思わんね。そんな戯言は余裕のある人間の言うことだ。 「やっほー、みんな! 今日もめがっさ人生エンジョイしてるかい!?」 我々無職団の中でも、もっとも現状に危惧をもたない大人物、鶴屋さんが大通りの向こうから駆けてくるのが視界にはいった。 平日の朝っぱらから公園に集合する若者たち。近所の奥様方でなくとも眉をしかめるってもんだ。 だが、俺はこんなSOS団に居心地のよさと愛着を感じているのだった。 昔となにも変わらないもの。今じゃ、そんなのはこのSOS団くらいのものだからな。 「あ、鶴屋さん。お茶飲みますか?」 「おー、今日もみくるお手製のお茶をいただくとするかなぁ! うむ! うまい!」 長い髪をかき上げながら、鶴屋さんは長門の背中にもたれかかり、長門の読む本に目を落としているようだった。 これで無職SOS団全員集合ってところかな。そろったところで、何をするわけでもないのだが。 「ねえねえ、この求人誌みた!? 最新刊なんだけどね。ホントに笑っちゃうような求人ばっかなのよね! これからの日本は本当にこんなんでいいのかしら!?」 求人誌を笑える立場にないお前が、何を遠大なテーマを投げかけているんだ。春闘にでも参加してきたのか? 「日本国民の私がこの国の未来を憂いて何がおかしいのよ。まったく、あんたって変なことばかり言うのよね」 お前の理論にかかれば大抵の物事は変なことなんだろうな。 ハルヒに求人誌を見せてもらったのだが、やはりこいつは面白そうつまらなそうの二極論で求人情報を判断しているようだ。なにを考えて無職やってるんだこいつは。 おいハルヒ。あまり舐めたことを言うんじゃないぞ。無職を舐めると痛い目に遭うぜ。 「なによ、痛い目って」 無職はな。伊達や酔狂でやれるもんじゃないんだよ。文字通り身体と精神を賭けてやってるんだよ。 ひとつの職業理念にとらわれることなく、多角的な視点から社会全体を眺望できる位置にいる。それが俺たち無職なんだよ。 それをお前。面白そう面白くなさそう、だなんて。現状に諦めを抱いて開き直っているとしか思えないぞ。 将来に対して、発展的な見方のできる無職となれ! それが俺たち無職リストたちの使命なんだ! シ-ソーに腰をかけて力説した俺の顔を、みんなが見ていた。無言のその視線には、なにやらみんなの熱い思いが込められているように感じられた。 「キョン、あんた。たまにはいいこと言うじゃない」 ……良いことだったんだろうか。何かカッとなって心にもない言い訳がましいことを口走ってしまったような気がしたのだが……。 「キョンくん……立派です! そこまで深い考えがあって無職を貫いていたなんて!」 「立派」 感心したふうな朝比奈さんと、無表情の中にも驚きのような色合いを見せる長門がそう言った。 「深謀あってのことだとは。さすがの僕も見抜けませんでしたよ。いやあ、感服しました」 「すごいね、キョンくんは! 私は日々をただ楽しく過ごせればいいやとしか思っていなかったのに。反省しなきゃだね!」 古泉と鶴屋さんも俺の無職正統派演説に感心しているようだった。自分的には、そんなに心をゆさぶるようなものだったかは甚だ疑問なのだが……。 「いよっ! エブリデイがフリータイムのみなさん!」 不意に公園脇の街路から聞き覚えのある声が聞こえてきた。 「今日も朝っぱらから公園の見回りですか。最近は物騒な事件が多くて、公園も子どもが安心して遊べる環境じゃないからね。そうやってパトロールしてくれる人がいると本当に助かるよ」 暖かい雰囲気が流れかけていた俺たちの間に、突如氷河期のように冷たい空気が訪れる。 親の七光りで一流会社に就職した腰抜けのヘナチン野郎、谷口だ。 「ふん、つまらない会社に毎日毎日セコセコと通う人生の負け犬さんのおでましかしら?」 よせハルヒ。向こうは親のコネとはいえ、一流企業に勤めるリーマン様だ。俺たちにはどうあがいても勝ち目がない。自重するんだ。 「誰かと思えば、いい年こいてSOS団なんて称して公園にたむろしている団体の総元締め、涼宮ハルヒ嬢ではないですか。お元気そうでなにより」 やたらめったらご機嫌そうな様子で、谷口は会釈する。しかしその慇懃な態度から俺たちに対する敬意など感じられるわけもない。 くぅっ、と古泉の歯ぎしりの音が耳朶を打つ。お前の気持ちは痛いほど分かる。だが耐えるんだ、古泉。 「あんたこそ血色のいい顔してるじゃない。やっぱ親のコネで入ったお坊ちゃんじゃ、ろくな仕事が回してもらえず暇なのかしら?」 勝てぬ勝負だと分かっていても、SOS団の名誉を守るために戦う。それが涼宮ハルヒなのだ。無茶しやがって……。 「それが逆なんだよな。なんつうの? ついに俺の時代がきたっていうのかな。取引先の社長さんが俺のことを気にいってくれてさ!」 やたらと嬉しそうに胸をはって高笑いする谷口。そのまま氏ねばいいのに。 「これからその取引先へ、大事な商談に行くところなんだよね! 会社の浮沈がかかった一大商談に参加できる栄誉が、顔色にも出たのかな? なんてね!」 その後にも単発的に浴びせられるハルヒの罵声をものともせず、谷口は黒光りする鞄を脇に抱えてタクシーに乗って去って行った。 谷口に対する怒りは、あいつがタクシーに乗って姿が見えなくなった時点で消えていた。 後に残ったのは、ただただ虚しいだけの脱力感だった。 俺たちは……俺たち無職は、無力な存在なのか? 就職している者としていない者の間には、これほどの力の差があるのか!? そんなはずはない! 収入を得ている者とそうでない者は、ただそれだけの違いなんだ! 人間的な優劣にまで影響するようなことは断じてありえないはず! 「……ああ。働きたいですね」 自問自答を繰り返す俺の心に、古泉のつぶやきが深々と突き刺さった。 天真爛漫な笑顔で俺に合格通知をつきつける妹。胸を反らしてSOS団を嘲笑する谷口。 脳裏にその姿が浮かんでは消え、消えては浮かんでするうち、いつしか俺の目じりには涙がうかんできた。 くそっ、くそっ、くそっ! 俺はダメじゃない! ダメな人間なんかじゃない! 今はちょっとダラダラしてるけど、かならず将来は社会のために貢献できる人になるんだ! 「こうなったら、最終手段しかありませんね」 どんよりと沈んだ空気のハルヒたちに背を向け、古泉はそっと俺に語りかけてきた。 「涼宮さんに、心の底から就職したいと願わせるんです」 それは、悪魔のささやきのように俺の心を甘美にくすぐった。 つづく?
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生徒会長 北城学園の生徒会長。山城重広(やましろ しげひろ)(高2)。 本来ならこの時期は3年が生徒会長になるのが普通なのだが、なぜか彼しか立候補がいなく、生徒会長になってしまった。先生方も異論を唱える人はいなかったという。 独自の情報網を持っており、先生方も彼には逆らえないのでは無いかという噂あり。その一つに、「○○先生に株の情報を教えて儲けさせた」とかなんとか。本当かどうかはわからない。 すごくもってまわった口調で話すので、理解し辛い部分が多々見受けられる。
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前回のあらすじ 涼宮ハルヒの自宅へお見舞いに出かけたキョンたちSOS団団員たち。朝比奈みくるに怒られた古泉一樹はちょっとしょんぼりしています。長門有希はあくまで普段通りの様子です。 涼宮ハルヒは思ったよりも元気そうでした。そう振舞っているだけということは、誰の目にも明らかだったのですが。 団員のメンバーたちと話す中で、涼宮ハルヒは今朝見た夢の内容を思い出してしまいます。とても悲しい夢です。まあ、そっちも現実なわけですが。 ~~~~~ 最近やたらと妙な夢を見るようになった。俺も生活に疲れてきた証拠なのだろうか。 末期的な症状なのか、今朝見た夢などは自分が高校時代にタイムスリップしてハルヒたちと一緒に将来の夢のためにラーメンを作るというわけの分からない内容だった。おかしな内容ではあるけれど、何故か現実感がある夢だったんだよな。 俺は、しがないただのフリーターだ。うだつの上がらない日々にうんざりして過去へ時間移動したいとでも願っているんだろうか。現実逃避にもほどがある。 「あれ、キョンくん、今日はひとりで起きられたんだ」 何故かフライパンを片手に持ち、驚いた表情の妹が俺の部屋の扉の前に立っていた。また朝食を作っているんだろうか。飯を作ってくれるのはありがたいんだが、焦げついたスクランブルエッグは勘弁してくれよ。 それにしても、まるで俺がひとりじゃ朝も起きられないような物言いだな。ひとりでできるもん!みたいな言い方はやめてくれ。 「やっぱりキョンくんには私がいてあげなくちゃね。朝ごはんもうすぐできるから、そろそろ降りてきてね」 上機嫌にそう言うと、妹はトントンとテンポよく階下へと降りて行った。やれやれ。困ったヤツだ。 それはそうと、一体なんだったあの夢は。夢の中で夢を見て、その夢に振り回される夢だなんて。我ながらワケが分からない。 ハルヒのあのとんでもパワーで高校時代に逆戻りするなんて、あるはずが……ないよな? いくらなんでも。ははは……。 しかし、常識的に考えてありえるはずがない事を引き起こしてくれるのが涼宮ハルヒのミステリアスポテンシャルパワーなわけで。 寝起きの頭をぼりぼりと掻きながら、一抹の不審感を感じた俺はのそのそとした動作で机の上に置いていた携帯を手に取った。 『どうやら、あの夢は夢ではなかったようですね』 携帯のむこうから、やけに機嫌の良さそうな古泉の声が返ってきた。聞くところによれば、生まれて初めてタイムスリップができたので嬉しくて仕方ない、とのことだ。全くもっておめでたいヤツだと思う。 『さっき朝比奈さんと長門さんにも確認をとったのですが、やはりあの夢は現実で、僕らは本当に高校時代へ遡行してしまっていたらしいですよ』 無慈悲な古泉の能天気声が、俺の寝起き頭に突き刺さる。 なんてこった。あまりのバカバカしさに笑って済まそうと思っていたのに、あれが現実だったなんて……。 SOS団メンバーと後で公園で会う時間を取り決め、俺は古泉とのホットラインを切った。俺は今日バイトが休みだし、SOS団はフリーランスの集団だ。待ち合わせをするなんてテレビのリモコンを探すより容易いことだ。 俺はベッドに腰かけてうなだれ、まだ覚醒しきっていない頭を覚ましつつ、さっきまでいた世界、高校時代の時間軸のことについて考えていた。 ハルヒは何か思うところがあって世界中の時間を巻き戻した。あの夢が現実ならば、それは疑いようのない事実。それはいいとしよう。常時前向きなハルヒだって、たまには疲れて思い出にひたってしまいたい時もあるさ。 問題は、どうして俺たちはこの元の時間軸へ帰還できたのかだ。ハルヒが時間を巻き戻した理由が 「1日だけ高校生になりたい」 という、温泉につかりながら半目で寝てるOL的なものじゃない限り、1日で高校時代リターンが終了するはずはなかったに違いない。 なのに俺たちは、あの未成年時代からこうして還ってこられた。ということは、あの過去の世界でハルヒの目的が達成された、もしくはハルヒの願望が翻されたということだ。 硬質ゴムのように凝り固まった身体を伸ばして深呼吸しながら、俺は窓の外へ目を移した。今日もいつもと変わらない静かな日だ。 果たしてハルヒは何を思い、何を願って過去の世界へ時間を巻き戻したのだろう。それは本人にしか分からないことだが、いや、ひょっとしたら本人もよく分かってないかもしれないな。 とにかく、ハルヒには昔に帰りたいと思うような都合があり、過去の世界でその都合が解消され、こうして今の世界に戻れたんだ。思えばあの世界でハルヒの様子はずっとおかしかったし、何かハルヒにとって切羽詰った事情があったに違いない。 なのに、ハルヒが何に悩んでいるのかを聞くために涼宮宅へ訪問したにも関わらず俺たちがしたことといえば、俺のとってつけた将来の夢 (ラーメン屋) のためのラーメン修行と称した夕食のラーメン作りだけ。 SOS団が一丸となってラーメン作りにいそしんだのは始めての経験だったが、ハルヒがラーメンを作りたいがために時間を巻き戻したわけではないことは容易に想像できる。ハルヒの突飛な思いつきでSOS団が働かされるのはいつものことだしな。 うむ。さっぱり分からん。寝ぼけまなこの凡人が独りでアレコレ考えても答えなんて出ようはずもないか。古泉なら分かるかもしれないな。後で聞いてみることにしよう。 ま、知ったこっちゃねえや。早々に推測を諦めた俺はあくびを漏らしながら、妹の待つ下の階へと歩き出した。 ハルヒに対してどんな態度で臨むべきかと思案しながら、公園まで重い足取りでたどり着くと、魔法瓶を小脇に抱えた朝比奈さん、本を提携した長門、そしていつも通りのスマイル古泉がベンチ前に待機していた。 いつもより早めにやってきたとは言え、ハルヒも鶴屋さんも来ていないなんて珍しいな。 「涼宮さんはちょっと遅れるそうですよ。先ほど連絡がありました。遅れるけれど必ず行く、とおっしゃられていました」 前髪をかきあげつつニコニコ顔の副団長がハルヒの伝言をご丁寧にも伝えてくれた。別に集合の義務があって集まっている団体でもないんだから、連絡をする必要もないのだが、手が空いていればとりあえず集まるのが今のSOS団の暗黙の掟だからな。 「鶴屋さんからは私の方に連絡がありました。今日は家庭の事情で来られないそうです」 魔法瓶から注がれたお茶が白い湯気をあげながらコップに注がれ、朝比奈さんの御手から俺に手渡される。ありがたやありがたや。これだけがここへ来る楽しみだと言えなくもないからな。 しかし、都合よくハルヒと鶴屋さんが席を外したもんだな。まるで俺たちに例の時間移動の件を議論する時間を与えてくれたみたいな感じだ。 「ご都合主義的と思えるほどタイミングよく涼宮さんと鶴屋さんが公園へ来られていませんが、ご安心ください。れっきとした偶然ですよ。念のため断っておきますが、我々は何も裏工作などしておりませんよ」 誰もそんなこと言ってないだろう。少しだけそうじゃないかな、とも思ったが。 「そうでしたか。てっきりあなたのことですから、僕らのことを疑っているのかと思いましたよ。幸運な偶然もあるものですね」 まあ、都合の良いことがあったらたいていお前らかハルヒの超人能力の賜物と考えて間違いない人生を送ってきたからな。ここ数年。 「昨日、あなたはご自分が何をされていたか記憶に残っていますか?」 俺にベンチの真ん中を譲り、その隣へ腰を下ろす古泉。まるで事件の容疑者から情報を引き出そうと身構える刑事のようだ。また古泉の持って回った長い話が始まるんだろうか……。 「ああ、もちろんじゃないか。あんな大それた事件があって、それを忘れているようじゃ重度の痴呆を疑った方がいい。常識的に考えれば痴呆どころか頭がおかしいと思われかねないことだが、ハルヒパワーに引っ張られて過去の世界にダイブしていたよ」 「いえ、そうではありません。確かにそれも昨日のことですが、それは過去の時間軸のことです。僕がお聞きしたいのは、この時間軸での昨日のことです」 ややこしいこと訊いてくるな。つまり、ハルヒが世界中の時間を巻き戻して時間をリセットする前の昨日ってことか。 そんなどうでもいいことを改まって訊くなよ。と言い返してやろうと思ったが、様子がおかしい。普段見せないような真面目な顔をした古泉、その隣ではどこか真剣な雰囲気を漂わせる長門が俺の目を見つめている。 何故だか分からないが、朝比奈さんにいたっては少し怒ったふうな色さえ表情に浮かべている。一体なんだってんだ? 「昨日は、バイトをシフトで変わってもらって、用事をしてたんだよ」 「用事とは、どのようなご用件です?」 「別にこの場で言うような用じゃないよ。ちょっとした野暮用ってやつさ」 「そうですか。その野暮用ですが、どなたかがご一緒されていたのではないですか?」 俺を取り囲むSOS団員の視線がより一層強くなる。なんだってんだよ、一体!? 昨日俺は佐々木と一緒だった。佐々木と一緒に町で買い物をしていたんだ。それがどうしたってんだ? 同じバイト仲間で旧友の佐々木とショッピングしていたことが何なんだよ? 俺が困惑の面持ちでみんなを見返していると、古泉がふっと表情をやわらげて肩をすくめた。 「すいません、問い詰めるような言い方をしてしまって。あなたを責めているわけではないのですよ」 いや、それはいいんだが……。一体なにがあったんだ? 「実は我々 『機関』 や朝比奈さん、長門さんたちの調査により明らかになったことなのですが、涼宮さんが世界中の時間を巻き戻してしまった直接の原因が、あなたと佐々木さんが一緒にいたことにあるのではないか、ということになっているのです」 はあ?と眉をひそめて素っ頓狂な声をもらしてしまった。俺が佐々木と一緒にいたのをハルヒが見て、それが原因であいつは世界中の時間をネジを巻くように巻き戻したってのか? 確かに俺たちとハルヒがコンビニの前で出会った時、ハルヒの様子がおかしいなと思いはしたが。なんでまた、そんなことが原因なんだ? 自分も買い物について行きたかったってのか? 「そうではないのですよ。あなたがショッピングをしていたことが問題なのではないのですよ。問題なのは、あなたが佐々木さんと一緒だったという点です」 だからなんでだよ。ハルヒは俺がSOS団以外の人間と仲良くしてるのが気に入らないとかいうんじゃないだろうな。 「当たらずとも遠からず、と言ったところですね。涼宮さんは、あなたと佐々木さんが肩を並べて歩いていたことに、なんと言いますか、一種の反感を覚えたのです」 皮肉のつもりで言ったセリフを肯定され、俺は少なからず面食らった。俺と佐々木が一緒にいたのが気に入らなかった? 俺と佐々木の友情を認めないということか? SOS団以外の人間と仲良くするななんて、どんな暴君だよ!? 「そういう意味じゃないんですよ。涼宮さんは、語弊を招きかねない言い方ですが……」 古泉は考え込むように口端へ手を当てる。 「佐々木さんに嫉妬したようです」 はあ? 嫉妬? ハルヒが? 佐々木に? 「涼宮さんの中でのあなたはSOS団の雑用係で、そして非常に心やすい仲間でもあります。そのあなたが、涼宮さんに内緒でバイトを休み、佐々木さんと二人っきりで買い物をしていた」 そういうこともあるだろう。確かに俺とハルヒは高校時代からの長いつきあいだが、だからって他の友人と遊びに行くのにあいつにお断りをしなきゃならないなんて決まりはないだろう。 いくらSOS団の団長様だからって、プライベートにまで踏み込んでもらいたくないもんだな。 俺は昨日の、今の時間軸で言うところの昨日の、ハルヒの様子を思い返す。頭に血が昇ったように息巻いて俺に詰め寄るハルヒ。我慢を腹に溜め込んでいるように、黙り込んで目を吊り上げるあいつ。 「そうです。あなたが誰とどのように親交を持っていたとしても、それを咎める権利は誰にもありません。もちろんSOS団の上司である涼宮さんであっても、です」 けれどそんな理屈は抜きにして、涼宮さんはキョンくんと佐々木さんに反感を感じてしまったんです。と悲しげな表情の朝比奈さんが古泉の後を次ぐ。確かに理屈では分かっていても、感情が先立ってしまうこともありますが。 ひょっとしてハルヒのやつは、俺と佐々木がハルヒに内緒で一緒に買い物してたのに腹を立てて世界をおかしくしてしまったというのか。相変わらずムチャクチャだな。 「違うんです。涼宮さんは分かっていたんです。確かに感情に任せてキョンくんに当たってしまったようですが、それが直接の原因ではないのです」 どうにも話が見えてこない。もっと平均的な頭脳の俺にも分かるよう要約してもらいたいですね。 「涼宮ハルヒはあなたたちに反感を感じた。同時に反感を感じた自分の狭量に気づき、自己嫌悪に陥った。その結果、過去の世界へ帰還したいという結論に達したと推測される」 依然、頭上にハテナマークが点滅する俺のために長門が懇々と、そして淡々と事情説明を始めてくれた。 長門の話を、そして古泉や朝比奈さんの言いたいことをまとめると、どうやらこういうことらしい。 ハルヒは前々から胸の内に、SOS団と称して活動し就職もせずにふらふらしている俺たちを統率していることに罪悪感を感じていた。 だからみんなで就職して一人前の、年相応の大人になろうと悪戦苦闘していたらしい。だがハルヒ本人があの通りの性格だし、俺たちもご覧の通りの集団だ。平穏無事に就職できるわけがない。 そしてハルヒの中には、職に就かねばならないという義務感とは逆に、このままSOS団を継続していきたいという思いもあったようだ。その気持ちは俺にもよく分かる。SOS団は俺たちにとって馴染み深い、居心地の良いサークルだもんな。 だがSOS団のメンバーたちが就職すれば、SOS団は今までのように集まって楽しく過ごすことなんてできない。働いていれば、個人が自由にできる時間なんて限られているからな。 労働に服して一人前になりたいという社会通念と、SOS団を失いたくないという願望がハルヒの中でせめぎあっていた。どちらに傾くともなく、天秤はほぼ一定を保った状態で、ハルヒの心の中で拮抗していた。 そのままズルズルとこの年まできてしまったわけだが、今になってハルヒの中の天秤を大きく揺さぶる事件が起こった。何を隠そう、俺が谷口に進められてアルバイトを始めたことだ。 SOS団はずっと、みんな一緒で、仲良くやっていく。そんな幻想を夢見ていたハルヒの理想に、初めて現実の亀裂が入った瞬間だったに違いない。 あれ以来ハルヒは、あらゆる意味で涼宮ハルヒらしさを失った。傍若無人なリーダーが、急に大人しくなり始め、周囲に理解を示し始めたのもこの頃からだと記憶している。 俺がバイトを始めたことで、ハルヒの心の中のSOS団存続の夢が、淡くかすみ始めたのだ。 俺のバイトはハルヒにとっては、確かに朗報だったに違いない。ハルヒはSOS団メンバーたちが職に就いて一端の社会人になることを望んでいたんだからな。 しかしSOS団の継続は不可能になってしまうという事実も見え隠れし始めて。 そんな時だった。俺が佐々木と一緒にいるところを、ハルヒが目撃してしまったのは。 ハルヒは憤った。こんなにもSOS団の危機について悩んでいる自分を差し置いて、平団員のキョンごときがのうのうとバイト休んで友人とショッピングなんて。団員のくせに団長に隠れてこそこそするなんて許せない!と。 しかしそこで、頭の回転の速いハルヒは気づいたんだ。 キョンがどこで何をしようが本人の勝手。それを自分の監視下において、逐一の行動まで管理しようなど、単なるひとりよがりの押し付けじゃないか。 たとえ親であっても自分の子供に人生の進路や期待をおしつけて良いという法はない。家族であろうとも、人の人生は本人だけのもの。まして親しい友人といえど、他人が人のプライベートに口を挟むのはおかしいことだ。 そこでハルヒの中にひっそりと積もっていた罪悪感が一気に芽吹き、胸の内にざわざわと繁り始める。 私は今までみんなにSOS団であること、自分の仲間であること、昔のままで変わらずに在り続けることを強要してきたのではないか? みんなが未だにフリーターとしてブラブラしているのは、自分に責任があるのではないのか? 「もしそうだったとしたら、私はどう責任をとればいいのか。彼女には、そう思い込んでいる節さえありますね。涼宮さんはあれでなかなか責任感の強い方ですから」 腕を組んでうなだれる古泉がベンチに深く腰を落とす。 「涼宮さんは今でも突飛な行動をとったりしてますけど、昔に比べれば常識的というか、周りを考慮する部分も出てきていますし。そう思って思い悩んでいても不思議ではないと思います」 涼宮さんは元々常識的な考え方もできる方ですし。と結び、朝比奈さんはすっかり覚めてしまった手の中の紙コップに視線を下ろした。 秋の深まりを感じさせる乾いた風が、俺の前髪をかきあげるように通りすぎていった。 敢えて言うまでもないことだが、俺たちが無職やってるのは、当然ながらハルヒのせいじゃない。俺たちそれぞれに事情があり、その上でこうやって公園に来てる身なのだ。誰もハルヒに責を求めてはいない。ハルヒを悪く思ってなどいない。 しかしそれはあくまでも俺たちの目線だ。ハルヒにそれを察しろというのは無理な相談だ。まして一度思い込んだハルヒが、容易に自分の考えを変えるわけがないことを俺たちは知っている。 ということは、あいつはずっと余計な悩み事を抱え込んで、余計な心配をして、余計な自責の念に苛まれていたってことか? 「そう言えなくもないですね。少なくとも我々の中に、現状が涼宮さんのせいだなんて思っている人はひとりもいないのですから」 馬鹿なやつだよ。まったく。 いつもいつも独りで突っ走るところは、昔っから変わらないな。 「だから涼宮さんは時間を巻き戻してまでも、一番SOS団が輝いてた時期に帰還することを望んだんでしょうね。時間が逆回転するなんて本気で信じていたとは思えませんが、そこを曲げてまで過去に戻ったわけですから、相当深い後悔を感じていたんでしょうね」 胸の内側に隙間風が吹き込んでくるように、心が冷たくなっていくのが手に取るように感じられた。 俺のせいなのか? 知らなかったこととはいえ、俺が佐々木と一緒にいたから。そこをハルヒに運悪く見られてしまったから……。 「それは違いますよ。最初にも言いましたが、あなたが悪いわけではありません。しかたのないことだったのです。遅かれ早かれこうなることは必至だったのです。むしろ、遅すぎたくらいだと思いますよ」 それでも……それでも、よりによって、あの日にそんなことがあったなんて……。 俺を気遣う古泉や朝比奈さんの声が頭にまで響かない。俺はじんじんと痺れた頭で、手提袋からゴソゴソとちゃちな作りの箱を取り出した。本当に、みっともないような紙の箱だ。 「キョンくん。その箱は、なんですか?」 俺はのろのろとした手つきで箱を開け、その中に収めてあった金属の輪を取り出した。あまり派手ではないが、きらきらと光を反射する銀色のブレスレットだ。 不思議な物を見つけたような顔つきで、朝比奈さんたちが一斉に俺の手の中のブレスレットに視線を集中させる。 「ひょっとして、あなたが昨日佐々木さんと一緒に買いに行った物とは、そのブレスレットですか?」 俺は力なく、ああ、と古泉にうなづき返した。 俺には女物のプレゼントなんて、何が適当か分からなかったからな。SOS団のメンバーに尋ねるのも恥ずかしかったし、身近な人物の中で話しやすかった佐々木に頼んでこれを選んでもらいに行ってたんだ。 もうすぐ、ハルヒの誕生日だろ? 古泉も朝比奈さんも、長門も。しんみりとした表情で黙り込んでいた。 ハルヒを喜ばせてやりたい。そう思って、これを買いに行ったんだ。なんだかんだ言っても、やっぱあいつは仲間だからな。仲間の誕生日を祝ってやりたいと思うのはごく普通のことだろ? 「キョンくん……」 哀れみさえ感じさせる調子で朝比奈さんが頭を垂れる。 あいつに内緒でプレゼントを買いに行ったことが、まさかこんな形で仇になるなんて……。 「キョンくん……涼宮さんの誕生日、まだだいぶ先ですよ?」 ……え? 俺の思考が一瞬停止する。あれ? ハルヒの誕生日って……ええと…… 「もうすぐ誕生日を迎えるのは、お恥ずかしながら、この僕です」 ……マジで? やばい。気まずい空気が流れている。朝比奈さんだけでなく、あの長門でさえ心なしか呆れているように見える。 俺はブレスレットを手にしたまま、苦笑を凍りつかせてバツの悪さを感じていた。そりゃねえよ……。なんて馬鹿な自分……。 「僕にくれるんですか? そのプレゼント」 やらねえよ。 つづく
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盆休み恒例戦争スペシャル ◆第〇七〇七小隊SOS団◆ 1日目 8/10(月) 20 30~25 00 2日目 8/11(火) 21 00~未定 3日目 8/15(土) 7 00~12 00 序章 月月火水木金金 第一章 曉に祈る 第二章 異國の丘 第三章 同期の櫻 第四章 壯行譜 第五章 戰友 最終章 海ゆかば その後
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前回のあらすじ 涼宮ハルヒはおかしな夢を見ました。自分たちSOS団がみんなして無職のまま公園でブラブラしたり暇にかまけて大型特殊免許を取ってみたりしている夢です。 夢を夢のままで終わらせておけばよかったのですが、何故かいつになく涼宮ハルヒはその夢に思い悩まされてしまいます。 というのも、その夢が彼女にとってもっとも考えたくない、目を反らしていたかった問題に関することだったからです。 ずっとひとりで考え込んでいた涼宮ハルヒでしたが、そんな彼女の家へSOS団のメンバーたちがお見舞いに現れました。 ~~~~~ SOS団を結成してから長い時間が経つけれど、私の家へ皆がやってきたのは初めてのことだわ。来てくれるのは嬉しいんだけど、何かあったのかしら。 私は扉の施錠を開け、みんなを玄関に招きいれた。何故だかみんな一様に愛想笑いを浮かべたふうに微笑んでいる。ああ、そうか。私、今日は学校で調子悪そうにしてたから、みんなでお見舞いにきてくれたんだ。たぶんそうだわ。 家に帰ってからも谷底を這うような晴れない気分だったけど、みんなの顔を見ると少し元気が戻ったような気がした。本当はとても嬉しかったけれど、素直に小躍りするのも恥ずかしかったので、ちょっと訝しむ素振りをしてみせた。 「お前今日、調子悪そうだったよな」 私に促され、客間にやってきたみんなは遠慮がちに振る舞いつつも、思い思いの場所に腰を下ろす。 「別に調子が悪かったわけじゃないわよ。なに? みんなして私のお見舞いにでも来てくれたの?」 せっかく私を気遣ってみんなが来てくれたんだもの。あまり心配をかけるのも悪いし、無理にでも笑顔を作っておこう。 今日は本調子じゃないなんて思ってたけど、なんだかんだ言ってもみんなと話していると胸の底の方が暖かくなっていくのが感じられる。今日一日、気持ちが不安定だったからだろうか。みんなの気遣いが耳から胸へ染み込んで行くように、とても嬉しい。 本当は素直にお礼を言いたいところだけど、しおらしくするよりも普段の私通りに振舞った方がみんなも安心するに違いない。だから私は、心の中で感謝の言葉を思い浮かべ、いつも通りの調子で笑顔を作った。 「やっぱり持つべきものは出来た団員よね。私も団長として鼻が高いわ。ちょっとキョン、ぼさっとしてないでジュースでも持ってきてよ。冷蔵庫に入ってるから」 「俺がかよ!? お前ん家は、客にお茶を出させる流儀なのか?」 「何言ってるのよ。雑用はあんたの仕事でしょ? 私がジュース持ってきてもいいんだけど、それじゃあんたの仕事をとっちゃうものね。役割分担は組織の基本よ」 とても客に対して言うセリフじゃないわよね。でもまあ、キョンならそれくらいのことで怒ったりしないわよね? ちょっとくらい甘えさせてくれるわよね? ほんの少しだけ、胸の外側を針がかすめるように鋭い痛みが走る。 でもいいの。いいのよね。これくらい遠慮ない方が、きっと私らしいのよね。 ぶつぶつ文句を言いながらもキョンは台所へ向かってくれた。なんだか今の状態がやたらと嬉しくて、私はクッションに腰かけるみくるちゃんの隣にくっついて座った。みくるちゃんの髪、きれいでいいにおい。 そういえば、私の家に友達が来るなんて、小学校の時以来だ。なんだか新鮮だわ。 「彼から涼宮さんの具合が悪そうだと聞いていたのですが、お元気そうで安心しました。部室にもお顔を出されなかったので、たちの悪い風邪にでもかかってしまったのかと思いましたよ」 「風邪にやられるほどヤワじゃないのよ、私は。ちょっと考え事してただけよ。キョンがそれを大げさに吹聴するから、みんなにも心配かけちゃったみたいね」 いつものように人あたりのいい笑顔を浮かべる古泉くん。その隣には、口数は少ないけれどSOS団にはなくてはならない文芸部員の有希が床に正座で座っている。 感謝の言葉を口に出せない分、行動で示そうとみくるちゃんに抱きついてみる。素直じゃない私にはこれくらいしか気持ちを伝える方法がないから、いつも私の抱擁を受け止めてくれるみくるちゃんは何だかんだで大人だなと実感できる。 さすがにキョンと古泉くんには恥ずかしくて抱きつけないから、今日は有希にも、男2人分を余計に計上して抱きつくことにしようっと。 「やっぱり有希って小柄ね。外見もだけど、抱きついたらもっと線が細いって分かるのよね。古泉くんもちょっとさわってみる?」 「ははは。大変名誉なことですが、辞退させていただきますよ。僕が長門さんに抱きついては、いろいろ問題があるでしょうし」 「問題なんてないわよ。同じSOS団の団員同士なんだもの。たまにはこうやってスキンシップを図っておくのも良いことよ」 紳士な古泉くんが有希に抱きついたりしないことは分かって冗談で言ってたけど、やっぱり古泉くんはマメよね。 言葉遣いに気を配りながらも、他人を安心させられる古泉くん。私は余計なことばかり言って、思ったことを言葉に出せない性格だから、そんな古泉くんが羨ましいわ。 みくるちゃんに抱きついたりキョンに雑用を言いつけたり。謝辞のひとつも満足に言えない自分って、やっぱり寂しい人間なのかしら……。 自分が望んだ道とはいえ、私の中学時代は荒れっぱなしだった。 目の前にちらつく普通の人生が嫌で、変化のない退屈な生活が耐えられず、そして私を異端視する世間に苛立っていた。 そんな目に見えない物事に対して憤ってばかりの灰色の時間を過ごし、紆余曲折あって、私は今この位置にいられる。 SOS団の団長という立場は第三者にしてみれば猿山の大将みたいな物なんだろうけれど、私にとってはかけがえのない物。それは団員に対して威張れるからとか、そんな下らない理由じゃない。 私がSOS団の団長という肩書きに殊更思い入れを持つのは、みんなが私を見てくれるから。 中学時代は、私が何を言おうと、誰も振り向いてはくれなかった。誰も私を見てくれなかった。物質的な意味で、ではない。誰も私の言い分を理解してはくれなかったという意味だ。 普通じゃなくて、他の誰もが経験したことのないような、トビッキリに不思議で、愉快で、心躍る体験をしたいと思っていた。ただそれだけだったのに。本当に私という人間を理解してくれる人はいなかった。 当時はなぜ自分が苛立っているのかすら分からず、私は必死になって欲しい物を手に入れようと、足掻き続けていた。 今だから分かる。欲しかった物を手に入れ、それが大切な宝物だと知ることができた今の私だから、過去の自分の姿を客観的に省みることができる。 あの頃の私は、寂しかったのだ。 誰かに抱きしめてほしかった。誰かに手を引いて、背を押して、肩をたたいて、隣に並んで、私の心を酌みとってもらいたかった。 だから私はSOS団団長という立ち位置をとてもとても大事に思っている。 声を張り上げなくても、私の言葉は聞いてもらえる。私の心を、みんなが感じてくれる。共感してもらえる。だから私は、救われる。 みんなが救ってくれた。私を助けてくれた。つまらない普通の生き方を享受している奴らはみんなバカだと貶めることでしか自分を確立できなかった自暴自棄の私を、色あせた世界から掬い取ってくれた。 みんなが教えてくれたんだ。ひとりでは出来ないことでも、みんなで力をあわせれば何でもできるって。 それは、重い荷物は一人より複数人で運んだ方が効率的だとか、そういう意味じゃなくって…… 「す、涼宮さん、どうしたんですか? おなかが痛いんですか?」 言葉にしなきゃいけないと思っている。きっといつかは言葉にして伝えようと思っている。 「涼宮さん、やはりお加減が良くないんじゃないですか?」 『ありがとう』 の一言だけだもの。口にすれば1秒もかからない、一息分の言葉なんだもの。簡単よ。 「涙をふいて」 そうしたら、みんな分かってくれるわ。私がどれだけみんなに 『ありがとう』 と思っているか。 「ジュース持ってきたぞ……って、どうしたんだよ? ハルヒ、お前大丈夫か?」 もう大丈夫だから。私は、もう、大丈夫だから……。みんながいてくれれば、私は絶対に大丈夫だから。 だから…… ~~~~~ 長門の胸に顔をうずめて肩をゆらしていたハルヒも、ようやく落ち着きを取り戻してきたようだ。ちょっと取り乱しちゃった!と明るく振舞うハルヒだが、赤く泣き腫らしたその目元が痛々しい。 こいつはいつも強がっていて、自分の気持ちを表に出すことを極端に嫌うやつだから、こんな状況でも 「なんでもないのよ!」 と言い張って普段通りの自分を貫こうとしている。 なんでもなくないことは一目瞭然なのに、プライドの高いハルヒは涙を、弱みを見せまいと強がって、弱音を抑止しているに違いない。 言いたいことがあるんなら何でも話せよ。力になれるかどうかは分からないが、話すだけで楽になれることだってあるんだぜ。 しかしハルヒは絶対に本音を口にしないだろう。そういうヤツだから。 だから俺たちには、いつものようにハルヒに接し、少しでも気持ちを和らげてやることしかできない。 「ほら。ジュース持ってきてやったぞ。好きなだけ飲め」 「なによ、これうちのジュースでしょ。あんたに飲めなんて言われなくても飲むわよ」 「何言ってるんだよ。持って来たのは俺だぜ」 俺とハルヒが言い合いをしている間に朝比奈さんがジュースをコップに注ぎ分け、それを古泉と長門が眺めている。いつも通りの、当たり前の光景だ。 これでいい。ハルヒも自然体でいられれば、思い悩んだりはしないだろう。 しばらく俺たちは涼宮家の客間で談笑していた。顔をつき合わせて世間話、なんていつもやってることだが、いつもと場所が違うと気持ちまで新鮮になってくるから不思議なもんだ。 最初のうちは照れ隠しのように率先して会話を進めていたハルヒだったが、しばらくするとその好調も次第に失速し、朝比奈さんにくっついたまま黙り込んでしまった。 そんなハルヒの様子は今朝からずっと変わらないものだが、何故だろう。朝とは少し違って見えた。 今朝ハルヒを見た時は落ち込んでいるのかと思ってしまったが、よく見るとそうではない。覇気もなく落ち着いているが、思い悩んでいるという感じはない。ただ何かを考え込み、思考に夢中になっているという具合だ。 原因は分かっている。おそらく、ハルヒも俺たちと同じ 『夢』 に見たに違いないのだ。その夢の内容が胸にひっかかり、考え込んでいるのだろう。 ずいぶんリアルな夢だったからな。まあ実際には夢じゃなかったわけだからリアリティーがあって当然なんだが。 「ねえ、キョン」 「なんだ?」 「あんた、将来の夢とかある?」 ハルヒ自身に悩みを打ち明けているという意識はないだろうが、まさか直球で尋ねられるとは思わなかった。 「将来の夢ねえ。特には考えてないな。夢があれば、もっと根を詰めて勉強なりなんなりしてるだろうし」 ハルヒは何とも言えない意味深な表情で黙り込むと、続けて朝比奈さんに同じ質問を投げかける。 「私ですか? う~ん、私もあまり詳しく考えたことはないですね。一応、大学へ進学できたらいいな、とは思ってますが」 「みくるちゃんはそうでしょうね。有希も進学?」 「そう」 「まあ、そうよね。有希ならどこの学校にでも行けるわよ。古泉くんは、もちろん進学よね?」 「いえ、お恥ずかしながら僕はまだ決めかねているのですよ。大学と言ってもピンからキリまでありますし、それに大学に進学したからといって必ずしも良い方向に進めるとは限りませんので」 「ふぅん。でも、やっぱり進学が多いのね」 そういうお前はどうなんだ。ほとんど無意識のうちに口にした何気ないその俺の一言で、一瞬ハルヒの表情が固まった。ひょっとして、マズイこと言ったか、俺? 「私ももちろん進学よ。どこへ進むかとかはまだ考えてないけど、私の能力を開花させることができるなら、四年生大学でも短大でも専門学校でもどこでもいいわ」 ハルヒにしては歯切れが悪い、と思った。良くも悪くも感情的な性格のハルヒだ。嘘をつけば、すぐにそれが嘘だと分かる。 ハルヒは、まだ決めかねているんだ。進路を。いや、決める決めない以前に、進路そのものを真面目に考えたことが無いのだろう。場当たり的というか、刹那主義というか。 「私のことはどうでもいいのよ。来年中に考えておけば済むことだから。私や古泉くんたちは進学だろうが就職だろうが、大した問題はないわ。問題はあんたよ、あんた。キョン!」 まずいな、話の矛先がこっちに向いてきたぞ。ハルヒが調子を取り戻したのを見て安堵しているふうな古泉のニヤケ顔が、「僕にとってはまるっきり他人事ですね」 と物語っているようで腹が立つぜ。 「あんた、成績は大丈夫なの? 赤点ギリギリで落第寸前なんじゃないでしょうね? 少数精鋭のSOS団からおちこぼれを出すような事態だけは避けてちょうだいよ」 「心配するなよ。そこまで酷くはないつもりだから。俺には谷口という心強い友がいるんだからな」 「クラスのブービー賞争いに精を出しても仕方ないでしょう。進学するにしても就職するにしても、成績はそれなりに良くないと惨憺たる未来が待ち受けているのよ。理解してるの?」 「なんとかなるって……だからそんなに脅すなよ」 まあ、なんとかならなかったからこそ、長いこと無職やっていたんだが。 「私はね、あんたのためを思って言ってるのよ。何をするでもなく日がな毎日ぶらぶら公園と家を行き来するような人生なんて……」 威勢よく能書きを垂れていたハルヒの顔に、再び陰がさし始める。 「……そんな生活……離れ離れなんて……」 「……いやだ」 窓の外から聞こえる風の音のように、小さな声でハルヒはそう呟いた。 「みんな……一緒がいいよね。これからも。ずっと」 ハルヒは目を細め、遠くを見るように宙を眺めながら朝比奈さんの肩にしなだれかかった。 ハルヒがみんなの前で弱気になるなど、そうそうあることじゃない。誰も、何も、口にしない。室内は水を打ったように静まり返っていた。声を発すること自体が憚られる、いつの間にかそんな雰囲気が辺りに漂っていた。 言葉にしたい事は頭の中にたくさんある ──ハルヒを除くSOS団メンバーたちの暗黙の了解── それらひとつひとつが、些細なことまでも、走馬灯のように鮮明な像をもって脳内に浮かび上がっては消えていく。 けれど、それらは、語ることはできない。どうハルヒに伝えて良いかも分からない。ピアノの旋律から受ける感動を言語で説明しかねるように、俺たちは俺たちの思いを言葉でハルヒに伝えきれない。 人は誰しも、自分という存在の居場所を捜し求めている。居場所とはつまり、自分が安心していられる心のよりどころという意味だ。人に限らず、動物だってそうだ。自分が安心して休める巣を作ることは、生物が持つ本能的な欲求だ。 人によってはそれが自宅であったり家族の輪であったり、仲の良い友人たちの中であったりするわけだ。羽を伸ばせる場所があるからこそ人は安定して日々を過ごすことができるし、いろいろな方向に目を向けることができるんだ。 人と違った特殊な価値観を持つハルヒは、いろいろと足掻いてみても、結局過去に自分の居場所を見つけることができなかったのだ。 閉鎖空間なる奇怪な空間を作り出して世界を壊してしまいたくなるほど悩んで悩んで、ようやくあいつは自分の存在をさらけ出し、安心して心を休めることのできる居場所を手に入れた。 それがSOS団だったのだ。 SOS団のメンバーが散り散りになってしまうということは、すなわちハルヒにとっては、自分の巣が無残に崩れ去っていくように感じられるのだろう。 考えてもみてもらいたい。たとえばある日を境に、突然自分の家族がバラバラになってしまうとしたら、どう思うか。うっとうしいと思っている親兄弟たちでも、離れ離れになってしまうのは悲しいことじゃないかと思う。 非公認同好団体と家族を比較するということ自体が詭弁っぽいが、しかしハルヒにとってはそれに類する苦痛であることに違いない。なぜなら、涼宮ハルヒという人間をさらけ出せる場所はSOS団の中にしかないのだから。 日頃の言動からもハルヒが並々ならぬ愛着をSOS団に抱いており、いくらこいつに行動力とパイオニア精神があろうとも、SOS団を解散させてまで新しい新天地を目指そうとしているとは思えない。 常に目新しいことを求め続け、普通を嫌っていて、エキセントリックな人間・涼宮ハルヒ。そんなふうに認識されているこいつだが、その心の奥底は俺たちと同じ、普通の人間なんだ。 俺だって、できることならずっとSOS団を続けていきたいぜ。ハルヒほどじゃないだろうが、俺だってこのアホバカ集団に居心地の良さを感じているんだからな。 だがな。それは理想でしかなく、無理な相談なんだ。お前だって分かってるんだろう。本当は。 人は変わらずにはいられない。変わらなきゃいけない。変わるってことは不安と苦労の塊で、膨大なエネルギーを使うことだけど、ずっと昔のままで生きていけるわけなんてないんだ。 遠くない将来、俺もハルヒも朝比奈さんも長門も古泉も、自分だけの道を進み始める時がくる。それが自然な流れなんだ。そうなれば、SOS団の存続は困難だ。 SOS団を解散するしかないと言ってるわけじゃないぜ。今までと同じ形のSOS団は存続できない、と言いたいんだ。 俺は今までたくさんのことをハルヒから学んできた。当時はこいつの思いつきに振り回されて疲労困憊の毎日だなんて思っていたが、そんな新鮮な体験のひとつひとつが、実は俺にとってかけがえのない人生経験になっていたんだ。 高校時代のSOS団を思い出してみても、心底つまらないと感じられる活動は何一つなかったように思う。当時は大変だとか辛いと思っていたもんだが、大人になって考えてみればそれらはどれもこれもが誇ることの出来る思い出なわけで。 恥ずかしくって口が裂けても言えないことだが、俺はSOS団に、涼宮ハルヒという人間に出会えて本当によかったと思っている。 だから、今度は俺が。 俺がハルヒに教えてやる番なんだ。 人生をリセットしてもう一度同じ時間をやり直したって、考え方を変えなければ何の意味もないということを。 それはつまり、SOS団という組織の変化を受け容れる覚悟を持て、という意味だ。 「俺、将来はラーメン屋になろうと思うんだ」 意を決した俺の突発的な発言に、落ち込み気味だったハルヒの表情にクエッションマークが浮かび上がる。 「ラーメン屋? なんでラーメン屋なのよ。あんた、料理とか好きだったっけ?」 口をついて出ただけなんで、別に意味なんてない。俺が社会に出た経験といえば、バイト先の中華料理屋だけだ。あのバイトが結構気に入ってたから、ラーメン屋になるのも悪くないなと思っただけだ。ただそれだけの内容の発言だ。 「ほら、うまい料理を作って食べてもらって、食った人に 『うまい』 って言ってもらえると、嬉しくなるだろ」 「そんな理由でラーメン屋になりたいと思ったの?」 「なんだよ。俺の将来の夢にケチつけるつもりか?」 曇天の空に太陽が顔を出すように、曇りがかっていたハルヒの瞳に徐々に輝きが戻っていく。 突拍子も無いことを言い出して、俺たちを引っ張りまわす前兆、涼宮ハルヒ団長殿ご乱心の兆候だ。 「へえ。あんたにそんな夢があったなんて、知らなかったわ。なんで今まで黙ってたのよ?」 「別に黙ってたわけじゃないさ。ラーメン屋になりたいって言ったって、料理の勉強をしているわけでもないし。小学生がサッカー選手になりたいって言ってるようなもんだ。気にするなよ」 「ダメよ。少しでも憧れるものがあるなら、その目標にむかって全力で取り組まないと。じゃないと、どんな悔いを残すか分かったもんじゃないわよ。あんたの年で将来に具体的な夢が持てるって結構ステキなことよ?」 それはどうも。ごもっともな意見だが……何故お前が悪巧みするような顔をしているのか。それが非常に気になるのだが。 「いいこと思いついたわ!」 すっかり血色のよくなった顔を上気させ、ハルヒは拳をにぎりしめて仁王立ちに立ち上がった。 なんとも言い難い表情で、古泉が俺の方にアイコンタクトを送ってくる。「余計なことを言いやがって」 という合図なのか、それとも 「よく言ってくれました」 という意味なのか。俺には分かりかねるね。こっち見んな。 そんなことより、今にも光を放ちそうなほどにまぶしい笑顔を浮かべた朝比奈さんが無言で俺に向かって小首をかしげてくれたことが嬉しかったね。 「一人はみんなのために。みんなは一人のために。とっても良い言葉だと思うわ」 付き合い長いんだ。こいつが何を言わんとしているのかは、もう分かった。だからハルヒが全員を見回している間からもうため息が漏れ出ていたね。 「みんなでラーメン作りの修行をするわよ!」 やれやれ。言うと思ったよ。 でも、悪い気はしないな。 つづく
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第五章 生徒会長(せいとかいちょう) □ 難しそうで簡単で。 簡単そうで難しい。 そんな生徒会長のお話。 ◇ まぁなんていうか私は飛ばされたわね。 春日君酷いわ。春日君って誰かしら。 それはそうとして前置きね。 ちなみに私の名前は豊橋 亜紀 (とよはし あき)よ。 よろしくね。 …いい加減に前置きを言わなきゃね。 あぁでもこれは必要な情報だから言っておくけど、私は生徒会長です。 そして私は二年生です。 はっきりいってこれは珍しい事かなぁって思うわ。 しかし、これはこの学校の嫌な特色であっちゃう、 『殺し合い』があるからだと私は考えるわ。 『殺し合い』に置いて、目立つということは、意外と欠点なんだわ。 まずなにより、スタンスが特定されやすい。 これは日常生活から、なんとなく特定できるもの。何も知らない者どおしの殺し合いじゃないんだから。 そして会話の流れ上察しはついたと思うけど、生徒会長って目立つのよね。 うん、目立つわ。 だから三年生はやりたがらないし、仕方ないっちゃあ仕方ないわよね。 まぁなんかもう時間らしいから、前置き終わりますわ。 え?やってないって?気のせいですわ。 ◇ ここは生徒会室。 私は会長席に着き、昨日決まった新生徒会の面々を見渡す。 まず、副会長席には、白 次に、書記席には、青 次に、会計席には、赤 次に、庶務席には、茶 ちなみに会長席には、黒 これは第一印象ですわね。何かって髪の色。 うん。中々カラフルだね。この高校はこういうのには疎いからね。 ちなみに、名前は。 副会長:白虎 大我 (はく たいが) 書記:青龍 螺魂 (せいりょう らごん) 会計:朱雀 尽 (すざく つくす) 庶務:玄武 蛇取 (げんぶ たとる) ……なんか後半に行くにつれ適当になっているのは気にせいよね? まぁいいわ。なんか私が疎外されているような気もするけど。 ……いいわよね? うん、そういうことにしときましょう。 まぁなんて一人でブツブツしていても仕方ないし、新生徒会の初生徒会活動でもしましょうか。 「というわけで、私は新生徒会長、2‐豊橋亜紀です」 どういうわけなのかしらね。と一人ツッコミ。何だか悲しいわ。 だけど、それに答えてくれて、副会長から順番に自己紹介をしていった。 「俺の名前は白虎大我だ。以後宜しく」 「ボクは青龍螺魂です。変な名前だけどよろしく」 「わたしは、朱雀尽ね。まぁよろしく」 「俺玄武蛇取。俺変、宜しく」 まぁ、個性豊かってわけではなさそうね。漫画じゃないんだし。 ちなみに、玄武君はO組で、蛇と亀のハーフってのも変だけど、そんな感じらしいわ。 ……生態系が崩れているわね。 まぁいいんだけどね。よくわからないから。 さてと、今日はこれで終わりよ。 もう? って感じる人がいるかもしれないけど、今日はただの顔合わせよ。それが仕事。 だからしょうがない。しょうがないのよ。 そうね。 だけど、これが私の大まかな日常。詳しい事は後々言うわ。 けど、このままだと、前置きいれても、人物紹介の方が長くなりそうね。 それもしょうがないんだけどね。 だから、これにて、 本日の生徒会活動、終了!! 第五章 終わり 【豊橋 亜紀 (とよはし あき)】 [性別]女 [種族]人間 [適性]遠距離 [職業]高校二年生 [容姿]黒髪ショート、目つき鋭い、けど可愛い(エー [性格]明るいが、独り言が少し多い。苦労人 [備考] 生徒会長。何でこいつがなったかはおいおい。 主要キャラの一人。けどキャラが地味な感じがするねぇ。 だからここから崩せるといいな。と思う。 【白虎 大我(はく たいが)】 [性別]男 [種族]人間 [適性]近距離 [職業]高校二年生 [容姿]目つき鋭いパートⅡ、白髪白眼。 [性格]勝気、正義感はあるが、協調性は皆無。ボサボサ髪 [備考] 生徒会の面子。 虎の獣人とかより虎の獣人っぽい。 まぁ仕方ない。 名前は虎の英語、タイガーより。 四人で一番まともな名前。 【青龍 螺魂 (せいりゅう らごん)】 [性別]男 [種族]人間 [適性]中距離 [職業]高校二年生 [容姿]青髪碧眼、背は高い [性格]不良、オールバックしかし協調するのを好む [備考] 生徒会の面子。 龍の獣人は多分にいないからいいだろう。 名前は龍の英語だと思うドラゴンより。 無理やりだよねぇ。 【朱雀 尽 (すざく つくす))】 [性別]女 [種族]人間 [適性]中距離 [職業]高校二年生 [容姿]紅髪紅眼。髪はロングストレート。可愛い、というか子の作品に出る女は基本可愛い設定。たんに僕の趣味。 [性格]被虐趣味、強がり [備考] 生徒会の面子。 不死鳥もいねぇと思うからいいよね。 名前は不死鳥の英語だったと思う、フェニックスのックスから。 無理やり?そう無理やり。 【玄武 蛇取 (げんぶ たとる)】 [性別]男 [種族]蛇と亀のハーフ [適性]近距離 [職業]高校二年生 [容姿]茶髪、目は糸目。髪はショート [性格]温厚 [備考] 生徒会の面子。 つーかなんだろうね。蛇と亀のハ―フって。 名前は亀の英語だったはずのタートルから。 無理やり。無理やり。 始業式後 投下順 確認試験 GAME START 豊橋亜紀 [[]] GAME START 白虎大我 [[]] GAME START 青龍螺魂 [[]] GAME START 朱雀尽 [[]] GAME START 玄武蛇取 [[]]
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・第1問 ~初級編~ うっかりお酒を飲んでしまったハルヒがべろんべろんになってキョンにからんでいます。 「ちょっと~、あんたも飲みなさいよ~」 「うわ、くさ! ちょ、酒くさいってお前!」 「なによぉ、失礼ね。だれがくさいってのよ。レディーにむかってひふれふぃはぁn」 けらけら笑うハルヒはもう、誰がどうみてもテンション上がりまくりです。 「いっぱつげいやりましゅ! 谷口のものまね! WAWAWAわすれもの~。きゃきゃきゃ」 へらへら笑いながら、ハルヒは地面を転げまわる猫のように床の上を転がりまわっています。 問題。ハルヒが持っている文房具は? キョン「ヒントは……そうだな。ハルヒのやつ、2つも持っていやがる。やれやれだ」 ~~~~~ ・第2問 ~中級編~ 今日はSOS団のみんなは、山へきのこ狩りにやってきました。 木々の根元にいろんなきのこが生えています。 「目標は10kgよ! みんな、とってとって、とり尽くすのよ!」 ハルヒは上機嫌です。お目当てのきのこが狩れて満足なのでしょう。 でも退屈の嫌いな彼女は、きのこを刈るだけの単調な作業にすぐ飽きてしまいます。 「古泉くん。なにか面白い話でもしてよ」 こういう時に話をふられるのは、インテリ派の古泉です。 「そうですねぇ。それじゃ、せっかく山に来たことですし、山に関係のある話でもいたしましょうか」 古泉の話を聞きながらきのこを取るSOS団のみんなは、とっても感動してしまいました。 問題。古泉のしたお話はなに? 古泉「ヒントは、きのこ狩り。そして、山に関係ある話ですよ。おっと。ちょっとヒントを出しすぎましたか? ふふふ」 ~~~~~ ・第3問 ~上級編~ 海へでかけたSOS団はテントを張って海水浴をするようです。 とても良いお天気です。もう紫外線も気にせず、みんなはしゃぎまくっています。 遊びまくって一息ついた時、ハルヒは気づきます。ご飯がありません。 「今日のご飯、買ってくるの忘れてたわ! どうして言わなかったのよ、この馬鹿キョン!」 キョンが悪いというわけではありません。みんなが偶然わすれていただけです。 でもこういうことのとばっちりは、いつもキョンに回ってくるのです。雑用係は大変です。 仕方ないので、キョンは浜辺の町までご飯を買いに行きました。自腹です。 ぶつぶつ文句を言いながら帰ってくると、浜辺にはハルヒしかいません。 「おいハルヒ。みんなはどうしたんだ?」 キョンが尋ねます。涼しい顔をしたハルヒは飯ごうを蒸しながら答えます。 「魚を釣りに行ってもらったわ。アウトドア志向でいいでしょ?」 ちょうどそこへみくるが帰ってきました。手には大きな魚をかかえています。 「こんな大きな魚が釣れましたぁ! うふふ。私もやる時にはやるんですよ」 大漁を祝うハルヒをわき目に、キョンがみくるに尋ねます。長門と古泉はまだですか? 「私が帰ってくる時には、まだふたりとも岩場で、うきを垂らしてましたよ。長門さんか古泉くんのどちらかが魚を釣り上げたようでしたが……どっちだったっけ?」 問題。みくるの次に魚を釣ったのは、長門? 古泉? どっち? みくる「ヒントは、下3つですよ~」 ~~~~~ キョン「……で?」 ハルヒ「どうよ。この難問の数々。不真面目なあんたに解けるかしら?」 キョン「部室に入ってくるなり人の眼前におかしなクイズを突き出しておいて、理由の説明もなしに挑発かよ」 ハルヒ「ま、あんたのような凡人には、クイズなんて高等な頭脳スポーツはできないでしょうね!」 みくる「キョンくん、ここにお茶おいておきますね」 キョン「朝比奈さん、いったい何なんですかこれは?」 みくる「さあ。私もさっき部室にやってきた瞬間に、涼宮さんに似たような問題を出されて面食らったんですよ」 ハルヒ「まったく。みくるちゃんもキョンも大したことないわね。たまには頭の体操でもして、頭脳を柔軟にしておかないとダメよ」 キョン「なんの状況説明もなしに突然他人にダメ出しかよ。お前の中の常識が、俺たちにとっても常識だとは限らないという意識をもう少し持ったらどうなんだ?」 キョン「だいたい。俺は一言もその出題の答えが分からないとは言っていないぞ」 みくる「え? キョンくん、このなぞなぞが分かったんですか? 私はさっぱりでした……」 ハルヒ「へえ。言ってくれるじゃない。なら答えてみなさいよ」 キョン「1問目はのり。2問目は竹取物語。3問目は古泉。ちがうか?」 ハルヒ「!?」 ハルヒ「や、やるじゃないの……」 みくる「???」 ~~~~~ 主「主流派になんでもおまかせのコーナー」 主「このコーナーは、『どこの馬の骨とも分からんヤツに娘はやらん!』 でおなじみの長門パパ、情報統合思念体主流派がいろいろおまかせされてしまおうというコーナーです」 主「さて、涼宮ハルヒが部室に持ち込んだ上記の3問の問題。朝比奈みくるはすべて分からなかったようですが、キョンはなんと全問正解を出したようです」 主「まず1問目。これは、いわゆるごく普通の基本的ななぞなぞ」 主「ハイテンションになっている人とは、つまり、ノリノリになっているということ」 主「ゆえに、答えはのり」 主「そして2問目。これもなぞなぞらしい問題ですね。ただ、『きのこ』 を 『茸(たけ)』 と変換するのが少し難しかったかな?」 主「これをふまえて考えれば、答えはおのずと出てくるのではないかな? きのこ狩り中にする話とは、茸取り物語。そう。かぐや姫で有名な、竹取物語ということにあるわけだね」 主「3問目。これも2問目と同じく、言葉を変換する問題です。変換する内容は以下のとおり」 長門有希 → nagato yuki 古泉一樹 → koizumi ituki 主「3問目のヒントは、下3つ。だったね。ここでそれぞれの名前の下 (後ろ) 3つの文字を見比べてみよう」 長門 … ato 古泉 … umi 主「つまり、古泉と長門のふたりを比べた時、長門有希の方が 『後(ato)』 になってしまうということ」 主「ということは。朝比奈みくるの次に魚を釣り上げたのは、古泉一樹になるということになるね」 主「………」 主「かわいそうな有希……」 ホロリ ~~~~~ キョン「どうだ。これでもまだ、俺のことを凡人だなんてせせら笑っていられるのか?」 ハルヒ「ふふん。ちょっとはやるじゃない。まさか、あんたの頭がここまで回るとは思わなかったわ。うれしい誤算ってやつね」 ハルヒ「でも、だからこそ今日のSOS団の活動に参加する資格があるってことよ」 キョン「はあ?」 ハルヒ「そんじゃ、発表するわよ! 今日のSOS団の壮大な活動内容を!」 みくる「そ、壮大な活動ですか?」 ハルヒ「今日はSOS団主催で、大クイズ大会を催すわよ!」 キョン「……は?」 ハルヒ「は? じゃないわよ。なんて間抜け面してるのよ。クイズよ、クイズ」 キョン「クイズはいいんだが、大会ってなんだよ」 ハルヒ「大会は大会よ。みんなでクイズを題材にして、大盛り上がりするのよ!」 みくる「くく、クイズですか?」 ハルヒ「そうよ。学校中を巻き込んで、大々的にパーッと遊んじゃうの! ね、楽しそうでしょ?」 みくる「そうですねぇ。私はクイズとかあまり得意じゃないですけど、なんだか面白そうですね」 ハルヒ「でしょ!? そんじゃ、さっそく始めましょ! 善は急げ! 時間は有限なんだから、1秒だって無駄には費やせないわよ!」 キョン「そうか。そりゃ楽しそうだな。まあせいぜい頑張ってくれよ。面倒くさそうだから、俺はハタから見守らせてもらうぜ」 みくる「え、キョンくんは参加しないんですか?」 キョン「残念ですが、またの機会ということで」 ハルヒ「ふふふ。あんたのことだから、そう言うと思ったわよ。でも、せっかくだしあんたにも参加してもらうわ。それも、自主的にね」 キョン「馬鹿いうな。俺はさっさと帰って、ちょっこりひょうたん島の再放送を観るんだ」 ハルヒ「ふ~ん。そう。じゃあ、さっさと帰ってそうすれば?」 キョン「……やけに強気じゃないか。いつもなら眉をつり上げて文句を言うくせに。何か裏があるのか? 理由はあまり聞きたくないが、一応聞いてやろう」 ハルヒ「今回の大クイズ大会だけど、大会って言うからには1位から順番に順位を決めて、賞品を出すのが当然の流れよね」 キョン「それが何だってんだよ」 ハルヒ「あんたの宝物は預かったわ。今回の大会の賞品とするためにね!」 キョン「なに!? お、俺の宝物だって!? 宝物ったって……はっ、まさか!?」 かちゃかちゃかちゃ キョン「げええぇぇぇ! お、おお、俺の、俺のお宝フォルダが……パソコン内のどこにも、ない!」 キョン「Cドライブを探してもDドライブを探しても、ない!」 ハルヒ「ふっふっふ! あんた、パソコンに疎い私の目をごまかして例のデジカメ画像をこっそりちょろまかしていたようだけど、完全に私の目を欺けていたつもりなのかしら!?」 キョン「き、きさま、知っていたのか!」 みくる「???」 ハルヒ「いいのよ。参加を強制はしたりはしないから。クイズ大会に出場したくなければ、邪魔になるだけだからさっさと帰れば?」 ハルヒ「そして大事な物を失った失意に、枕を涙でぬらすと良いわ!」 キョン「ぐ、ぐううぅぅぅ! こ、この鬼め!」 ハルヒ「なんとでも言うといいわ! さあ、言ってみなさい。クイズ大会に参加するの? しないの?」 キョン「………俺に、選択権はないってことか……」 みくる「ん???」 ハルヒ「みんな注目! じゃあ、これからルールを説明するわよ」 ハルヒ「みんなはこれから、私の出す手がかりを元に校内を回り、私の密命を帯びた人物たちと接触し、クイズを解いていくの」 ハルヒ「最終的にもっとも早く、1問も間違えることなく全部のクイズを解き明かした人が優勝よ! 簡単でしょ?」 長門「了解した」 古泉「それで、優勝した人には豪華な賞品が授与されるということですね」 ハルヒ「そうよ。オリンピックの金メダルもかくやというほどに豪華なフラッシュメモリーをプレゼントするわよ!」 みくる「フラッシュメモリー、ですか?」 ハルヒ「そうよ。ねぇ、キョン?」 キョン「くそ、これじゃまるで俺に対してのみの嫌がらせじゃないか」 ハルヒ「それじゃ、はいコレ。みんなに一枚ずつ」 キョン「なんだこの紙?」 キョン「知ってる人の名前がたくさん書いてあるが……」 ハルヒ「そこに書いてる問題の答えが、次のクイズの出題者よ。さあ、頭をひねって考えなさい!」 古泉「なるほど。そういうことですか」 長門「分かった」 みくる「ひえぇぇ、全然わかりませんよぅ……」 キョン「古泉と長門は見た瞬間に答えが分かったみたいだな。どんな問題かは知らないが、早すぎだろ」 キョン「おっと。そんなことはどうでもいい。俺も早いところクイズを解いて次に進まないと、我が至福のエンジェル画像集が他人の手に渡ってしまう」 キョン「ええと、なになに…… ○問題 1.朝比奈みくる 2.古泉一樹 3.涼宮ハルヒ 4.???? 5.長門有希 6.藤原 7.森園生 4に入る人物は次のうち誰? ⅰ)谷口 ⅱ)国木田 ⅲ)阪中 キョン「………ふむ。なるほどね」 キョン「この程度の問題で、俺の足止めをできると思ったのか?」 ハルヒ「思ってないわよ。こんなのただの軽いジャブ。分かったのなら、早いところ次に進んだら? 古泉くんと有希はもう行っちゃったわよ」 キョン「言われるまでもないさ」 キョン「まってなよ、谷口」 ~~~~~ 主「主流派になんでもおまかせのコーナー」 主「キョンは紙に書かれた問題を、一目で理解したようです。漢字で書いてあると分かりにくいものですが、あんな顔してなかなか頭の回る男のようです」 主「さて。ここで出題されたクイズの人物名をひらがなに直してみましょう」 朝比奈みくる → あさひなみくる 古泉一樹 → こいずみいつき 涼宮ハルヒ → すずみやはるひ ???? 長門有希 → ながとゆき 藤原 → ふじわら 森園生 → もりそのう 主「ごらんの通りです。そう。上から順番に、あかさたなはま~と50音の行ごとに並んでいるようです」 主「ということは。4番目には、名前の頭文字がタ行の人が入るということです」 ~~~~~ 谷口「はっはっは! よくここまでやって来れたな、キョン!」 キョン「ここまでって言うか、お前が第一関門だ」 谷口「お前なんて第一関門のクイズで十分だぜ!」 キョン「言ってくれるじゃないか。それだけの自信が持てるってことは、さぞかし難易度の高い問題が用意されてるんだろうな」 キョン「腕がなるじゃないか」 谷口「ふふ。勇み足だけじゃ俺のクイズはクリアーできないぜ」 谷口「ここでお前をしとめられれば、お前の代わりにSOS団の正式メンバーにしてやるって涼宮に約束されてんだ。たとえ友人のお前相手だって、手加減はゼロでいくぜ!」 キョン「……お前、なんだかんだ言っても結局SOS団に入りたかったのか」 谷口「ちち、ちがうぞ! お、俺はSOS団なんて本当はどうでもいいんだ! お前が涼宮たちにいつも引っ張りまわされて大変だろうから、親友としてだな、お前を救ってやろうと思ってだな」 キョン「ああ、分かった分かった。そういうことにしといてやるよ」 キョン「いいからとっとと問題を出せよ。俺は1分1秒だって惜しいんだ」 谷口「くそ、馬鹿にしやがって! いいだろう、俺の本気をたっぷりと思い知らせてやるぜ!」 ○問題 たきたょたんたのたあたほ ヒント:TANUKI キョン「………」 谷口「どうだ! この超難しい暗号問題に手も足もでまい!」 キョン「俺、お前のそういうところ。嫌いじゃないぜ」 キョン「だがな」 キョン「アホはお前だあああああああああああ!」 谷口「ぎゃひいいいぃぃぃぃん!」 キョン「ふん。時間を無駄にしちまったぜ」 谷口「ここ、この俺の最高の問題が……こうもあっさり破られるなんて。さてはお前、北高に舞い降りた超天才か!?」 キョン「もうどうでもいいよ。いいからさっさと次の出題者を教えろ。俺は次は誰のところへ行けばいいんだ?」 谷口「阪中だ。次は阪中のもとへ行くがいい。そこがお前の新たな戦場だ」 谷口「だが覚えておけ、キョン。我々出題者の中でも、俺は最弱に部類される者。俺を倒したくらいでいい気になっているなら、今のうちに考えを改めておくことだぜ」 谷口「さあ、行けキョン! お前の戦いはまだ始まったばかりなんだから!」 キョン「まだ始まっていねえよ」 <<<act.2>>> 阪中「待っていたのね、キョンくん」 キョン「探したぜ、阪中。その様子だと、次の出題者は阪中で間違いないようだな」 阪中「そうなのね。私が今回の大クイズ大会の、キョンくんルート2人目の出題者なのね」 阪中「キョンくんから一本とればSOS団の団員にしてくれるって涼宮さんが約束してくれたのね。絶対にキョンくんに解けないクイズを出してあげるのね!」 キョン「……ハルヒめ、そんなことを阪中に約束したのかよ」 キョン「悪いことは言わないやめとけ。うちに来たって、苦労するだけで得るものなんて何もないぜ。SOS団の団員なんて、好んでなるものじゃない」 阪中「キョンくんはSOS団の中にいるから分からないのね」 キョン「なにが?」 阪中「キョンくんは大変な思いをしていると思うけど、でも周りから見れば、SOS団はうらやましくらいに楽しそうなのね」 キョン「あのハルヒの思いつきに振り回されて脱退も認められないファッショな非公認団体がか? 冗談きついぜ」 阪中「まあ、キョンくんがそう思うのも仕方ないことね」 阪中「まあそれはいいか。じゃあ、早速問題を出すのね!」 キョン「ああ。いつでもいいぜ!」 ○問題 文芸部室でキョンくんと古泉くんが将棋を指しています。 そこへやってきた涼宮さんは、「SOS団の活動をサボってゲームばっかりやってるんじゃないわよ!」と怒って将棋をとりあげてしまいました。 「で、どっちが勝ってたの?」 という涼宮さんの問いかけに、キョンくんと古泉くんは同時にこう答えました。 「渦、宵、右、腰」 涼宮さんに将棋を取り上げられる直前に、優勢だったのはキョンくん? 古泉くん? どっちなのね? キョン「………」 阪中「どうなのね? 分からないなら、遠慮なくギブアップしてね」 キョン「悪いな、阪中。お前の希望をかなえてやれなくて」 阪中「え……?」 キョン「答えは、古泉。そうだろう」 阪中「!」 キョン「一応俺の名誉のために言っておくが、古泉との対戦結果は俺の方が圧倒的に勝率が高いんだぜ」 阪中「ま、まけたのね……」 キョン「残念だが、まあ、SOS団に入らなきゃハルヒや俺たちと一緒にいられないってわけでもあいだろう」 キョン「クラスメイトの仲じゃないか。遊びたい時は、いつでも文芸部室にきなよ」 阪中「うん。また、おいしいシュークリームをたくさん作って持って行くのね」 キョン「期待しているぜ。俺もハルヒも阪中家のシュークリームが好きなんだ」 阪中「そう言ってもらえると嬉しいのね」 キョン「で、次の出題者は誰だ? このまま一気呵成に優勝してやるぜ」 阪中「キョンくんなら、きっと優勝できるって信じてるのね」 阪中「次の出題者は国木田くんよ。彼なら教室にいるのね」 キョン「サンキュー、阪中。またな」 ~~~~~ 主「こんばんは。特技は格ゲーの1フレームを見抜くこと。情報統合思念体主流派です」 主「さて早速ですが、情報統合思念体主流派になんでもおかませのコーナーです」」 主「キョンと古泉一樹が部室でボードゲームをしている風景はいつものことですが、それを涼宮ハルヒに妨害されてしまった、というのが今回の問題です」 主「ここで、このクイズの核ともなる部分、キョンと古泉一樹の発言を見てみましょう」 → 「渦、宵、右、腰」 主「なんのことだがよく分からないので、ひらがなに直してみましょう」 → 「うず、よい、みぎ、こし」 主「さて。話を元に戻します。将棋の対局中に涼宮ハルヒに将棋を取り上げられてということで」 主「この4つのワードから、し、よ、う、ぎ、を取り上げてみます」 → 「ず、い、み、こ」 主「残った言葉を組み合わせると……もうお分かりですね?」 古泉「僕になるわけです。はっはっは」 ~~~~~ 国木田「もうここまで来たのかい? 意外に早かったね」 キョン「昔から妹のなぞなぞごっこにつきあわされていてな。なぞなぞに限らず、こういうクイズには慣れているんだ」 キョン「で。お前はハルヒのやつから、一体どんな条件でつられたんだ?」 国木田「条件? なんの話だい?」 キョン「とぼけるなよ。谷口と阪中は俺に勝てばSOS団に入れてやるって言われて、ハルヒの手先になったんだ。お前だって、何か見返りがあってハルヒに力を貸しているじゃないか?」 キョン「まさか、お前までSOS団に入りたいって言うんじゃないだろうな?」 国木田「あはは。僕にそんなつもりはないよ。確かにそれもとても魅力的なことだと思うけれど、残念ながら僕にはもっと成績を向上させるという目標があるからね」 キョン「じゃあ特に見返りもなく、好奇心だけでハルヒに力を貸したっていうのか?」 国木田「そうだよ。気晴らしにちょうどいいゲームだと思ったし、こういうのも嫌いじゃないからね」 キョン「そりゃけっこうなことで。ちっとは手加減してくれよ」 国木田「それは無理無理。手加減なんかしたら、何のために3人目の出題者になったか分からないじゃないか」 キョン「それもそうだな。悪かったよ、妙なこと言って。さあ、とびっきり難しい問題を出題してくれよ」 国木田「いい覚悟だね。じゃ、いくよ」 ○問題 憂鬱 → 新川多丸圭一多丸裕森古泉一樹 溜息 → 国木田 退屈 → 森 消失 → ???? 暴走 → 朝比奈みくる藤原 動揺 → 橘 陰謀 → 涼宮ハルヒ 憤慨 → 中河 分裂 → 長門有希古泉一樹 Q.????に入る人物名を以下より選べ 1.情報統合思念体 2.朝倉涼子 3.喜緑江美里 国木田「さ。遠慮なく解いてみて」 キョン「………これは……各項目にどんな共通事項があるというんだ……」 国木田「どうしたんだい、キョン。ちょっと難しかったかな?」 キョン「くっ……!」 キョン「こんなところでつまづいていては、mikuruフォルダが古泉や長門の手に渡ってしまうことに……!」 キョン「いや、古泉や長門ならまだいい。まかり間違って朝比奈さんの手に渡りでもしたら」 キョン「『ひゃん、キョンくんのエッチ! もうお茶いれてあげません! ぷんぷん!』 ってことになりかねない」 キョン「そうなったら、俺はSOS団内での憩いのひと時を失い、過労と心労でブッ倒れてしまう! それだけは勘弁!」 キョン「うおおおぉぉおおぉぉぉ! 集中しろ、俺! 今こそ目覚めよ、深く眠りし我が脳細胞よ!!」 国木田「そんなにいきりたったところで、分からないものは分からない……」 国木田「な、なに? とつぜんキョンから、さっきまでとは異なる尋常ならざるオーラが立ち昇っている!」 キョン「この問題でもっとも鍵となる部分は、森さんと橘。原作中でも苗字だけでなく名前も出されているにも関わらず、この2名だけが苗字しか記載されていない」 キョン「最初は各項目に挙げられているキャラクターの人数が答えにつながるのかと思っていたが、それでは森さんと橘の件が説明できない」 キョン「ということは、鍵となるのは人数ではなく、名前の………そ、そうか! 分かったぞ、このクイズの答えが!」 キョン「国木田、見切ったり!」 国木田「へえ。けっこう難易度には自信があったんだけど、答えが分かったのかい? じゃあ是非、解説を聞かせてもらいたいものだね」 キョン「ああ、いいぜ」 キョン「まず、答えは3番。????に入る名前は、喜緑さんだ!」 国木田「そう思うにいたった理由を聞こうか」 キョン「さっきも言ったが、キーワードは森さんと橘の名前だ。新川さんや国木田は原作でも苗字しか登場していないから別として、森さん、橘はちゃんと原作では名前が公表されている」 キョン「なのに、その2名だけが姓しか表示されていないということは、列挙されている人物名は人数をさしたものではない。なら、何を表した物なのか?」 キョン「字数だ。文字の字数あわせのために敢えて森さんと橘の名前を書いていないと言うのなら説明がつく」 国木田「字数? 字数って、なんの字数だい?」 キョン「もう謎は解けているんだ。下手なトボケは野暮ってもんだぜ」 キョン「たとえば、『憂鬱』。人物名が字数を表しているとすると、憂鬱という単語に当てられる数字は、『新川田丸圭一田丸裕森古泉一樹』 の14文字」 キョン「憂鬱の何が14文字に当てはまるか。いろいろ考えたが、行き着いた答えはひとつ」 キョン「熟語を構成する漢字の画数の差だ」 憂(総画数:15画) 鬱(総画数:29画) → 差は14画 溜(総画数:13画) 息(総画数:10画) → 差は3画 退(総画数:9画) 屈(総画数:8画) → 差は1画 ※ 以下同じ キョン「熟語の、前後の漢字の画数。その差が、矢印で結ばれる人物名の文字数と全て一致する」 キョン「このルールでいけば、消失の????に当てはまる人物名は、文字数が5の人物。つまり、喜緑江美里しかないというわけだ」 国木田「………」 国木田「やるじゃないか、キョン。正直いってキョンでは答えられないんじゃないかと思っていたんだけど。驚いたよ」 キョン「見くびられたもんだな。だが、こうしてその誤解も解けてよかったぜ」 国木田「僕の負けだよ。結構自信はあったんだけど、負けてしまって残念だな」 国木田「でも、楽しかったよ。まさかクイズを出題する側がこんなにも楽しいとは思わなかったね。貴重な経験になった」 キョン「俺もだ。ちょっと焦ったが、なかなか良い問題だったぜ」 キョン「それで、次の出題者は誰だ? 俺は1分1秒でも早く優勝しなけりゃならないんだ。早いところ教えてくれ」 国木田「次の相手は曲者だよ。キミに、鶴屋さんの相手が務まるかな?」 キョン「鶴屋さんか……なるほど。手ごわそうな相手だぜ」 国木田「鶴屋さんは3年の教室にいるはずだよ。さあ、急いでいるんなら早く行きなよ」 キョン「ああ。じゃあ、行ってくるぜ!」 キョン「よし、この先の渡り廊下を過ぎれば鶴屋さんの待つ教室だ。あの底の知れない先輩が相手となれば、心してかからないとな!」 キョン「にしても、おかしいな。いくら放課後とはいえ、廊下で誰ともすれ違わないなんて。まるで校内から誰もいなくなってしまったかのように静かだぜ……人気がない」 朝倉「うふふふふ」 朝倉「人がくると面倒でしょ? だから、私が人払いをしておいたのよ」 キョン「あ!?」 キョン「お、お前は、朝倉涼子!? ば、馬鹿な、なんでお前がここに!?」 朝倉「驚いてる? そうでしょうね。私はあなたの目の前で長門さんに敗れ、有機生命体の身体を分解されちゃったんだもんね」 朝倉「でも、私はこうして還ってきたの。理由は難しいことじゃないわ。再び情報統合思念体の急進派が涼宮ハルヒに刺激を与えてみたくなったから、私が派遣された。ただそれだけのことなのよ」 キョン「迷惑千万な話だな……」 朝倉「うふふ。そんなに警戒しなくてもいいわよ。あなたを殺そうなんて、もう思っていないから」 キョン「信用できないな。一度は俺を本当に刺しやがったくせに」 朝倉「なんの話だか分からないけれど、あなたに危害を加えるつもりがないのは事実よ。だって、そんなことしたらまた長門さんがやってくるじゃない?」 朝倉「悔しいけど、バックアップの私に彼女に打ち勝つ力はないわ。だから、別の手段で涼宮ハルヒに刺激を与えようと思ってるの」 キョン「別の方法? 自分の正体でも明かそうってのか? それとも、ハルヒに頼んでSOS団の正式メンバーに加わろうってのか?」 朝倉「冗談」 朝倉「心配しないで。正攻法よ。今はあなたたち、クイズ大会の途中なんですってね。だったら、私からあなたにクイズ勝負を申し込むわ」 キョン「はあ!? お前が俺に、クイズ!?」 朝倉「そう。あなたがクイズに敗れて足止めをくらい、優勝を逃す。それは涼宮ハルヒの希望に反する事態。そうなれば、涼宮ハルヒになんらかのアクションが見られるはず」 キョン「そんな下らない理由で俺にクイズを申し込んできたってのか? 悪いが、俺は急いでいるんだ。お前の相手をしている暇はない」 朝倉「あら、私を無視して先に進むつもりかしら? 私はこの場で情報制御空間を発生させて、あなたをそこに閉じ込めたっていいのよ?」 キョン「くそ、俺に決定権はないってことかよ!?」 朝倉「ようやく了解してもらえたようね。安心して。あなたが私の問題に正解すれば、すぐにここを通してあげるから」 キョン「ちくしょうめ! もうヤケだ。問題を出すんならさっさと出しやがれ!」 ○問題 1+2 = 一 9+5 = 二 6+1 = 三 2×1 = QK 3×3 = ajae 4×5 = NE B = L J = T W = ag 問題)一2+15+53×52+3IO一四4+1一1+5ae 3+3Hae5+17+11+4ahE3×28+5ae2+2 DEHaeーHae四3+2JK2×14×34×4十四AS 2+22+5四十 ・ae八8+3ae3×2D → ???? ・7+29+1S3×2D → ???? ・八8+5aeDEae2+3四十二8+1 → ???? キョン「おまwwwwこれはwwwww」 朝倉「さあ、しっかり考えてね」 つづく
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人物画像 登場作品 基本情報 性格・容姿 正体 関連記事 関連人物 人物画像 登場作品 第8巻『涼宮ハルヒの憤慨』収録の「編集長★一直線!」 第9巻『涼宮ハルヒの分裂』 基本情報 県立北高校2年生(第9巻『分裂』より3年)の男子生徒。本名は不明。 初登場は第8巻『憤慨』収録の「編集長★一直線!」。第9巻『分裂』にも喜緑江美里と共に登場する。 性格・容姿 一人称は「私」だが、それはハルヒと喜緑がいる時のみで、キョン達の前になると「俺」になる。作中で「のっぽ」と称されていることから長身であることが伺える。 冷徹・陰湿な生徒会長で、非公式団体であるSOS団を疎ましく思っている。 仮面の下はかなり含むところがあり、その裏側を隠しているいわゆる不良ではあり、未成年であるにも拘らず、喫煙をしている。 本来の性格はある意味で「非常に正直」でもあるらしい。 正体 「機関」の外部協力者で、「涼宮ハルヒが望む生徒会長らしい生徒会長」を演じている。 生徒会長としての仕事に対して、最初のうちは「面倒だが交換条件のためだ」と割り切っていたが、徐々に仕事そのものや「別人格を演じる」ことに楽しみを見出すようになる。 関連記事 超能力者関連 関連人物 涼宮ハルヒ キョン 古泉一樹 喜緑江美里
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前回のあらすじ 涼宮ハルヒはおかしな夢を見ました。自分たちSOS団がみんなして無職のまま公園でブラブラしたり暇にかまけて大型特殊免許を取ってみたりしている夢です。 夢を夢のままで終わらせておけばよかったのですが、何故かいつになく涼宮ハルヒはその夢に思い悩まされてしまいます。 というのも、その夢が彼女にとってもっとも考えたくない、目を反らしていたかった問題に関することだったからです。 ずっとひとりで考え込んでいた涼宮ハルヒでしたが、そんな彼女の家へSOS団のメンバーたちがお見舞いに現れました。 ~~~~~ SOS団を結成してから長い時間が経つけれど、私の家へ皆がやってきたのは初めてのことだわ。来てくれるのは嬉しいんだけど、何かあったのかしら。 私は扉の施錠を開け、みんなを玄関に招きいれた。何故だかみんな一様に愛想笑いを浮かべたふうに微笑んでいる。ああ、そうか。私、今日は学校で調子悪そうにしてたから、みんなでお見舞いにきてくれたんだ。たぶんそうだわ。 家に帰ってからも谷底を這うような晴れない気分だったけど、みんなの顔を見ると少し元気が戻ったような気がした。本当はとても嬉しかったけれど、素直に小躍りするのも恥ずかしかったので、ちょっと訝しむ素振りをしてみせた。 「お前今日、調子悪そうだったよな」 私に促され、客間にやってきたみんなは遠慮がちに振る舞いつつも、思い思いの場所に腰を下ろす。 「別に調子が悪かったわけじゃないわよ。なに? みんなして私のお見舞いにでも来てくれたの?」 せっかく私を気遣ってみんなが来てくれたんだもの。あまり心配をかけるのも悪いし、無理にでも笑顔を作っておこう。 今日は本調子じゃないなんて思ってたけど、なんだかんだ言ってもみんなと話していると胸の底の方が暖かくなっていくのが感じられる。今日一日、気持ちが不安定だったからだろうか。みんなの気遣いが耳から胸へ染み込んで行くように、とても嬉しい。 本当は素直にお礼を言いたいところだけど、しおらしくするよりも普段の私通りに振舞った方がみんなも安心するに違いない。だから私は、心の中で感謝の言葉を思い浮かべ、いつも通りの調子で笑顔を作った。 「やっぱり持つべきものは出来た団員よね。私も団長として鼻が高いわ。ちょっとキョン、ぼさっとしてないでジュースでも持ってきてよ。冷蔵庫に入ってるから」 「俺がかよ!? お前ん家は、客にお茶を出させる流儀なのか?」 「何言ってるのよ。雑用はあんたの仕事でしょ? 私がジュース持ってきてもいいんだけど、それじゃあんたの仕事をとっちゃうものね。役割分担は組織の基本よ」 とても客に対して言うセリフじゃないわよね。でもまあ、キョンならそれくらいのことで怒ったりしないわよね? ちょっとくらい甘えさせてくれるわよね? ほんの少しだけ、胸の外側を針がかすめるように鋭い痛みが走る。 でもいいの。いいのよね。これくらい遠慮ない方が、きっと私らしいのよね。 ぶつぶつ文句を言いながらもキョンは台所へ向かってくれた。なんだか今の状態がやたらと嬉しくて、私はクッションに腰かけるみくるちゃんの隣にくっついて座った。みくるちゃんの髪、きれいでいいにおい。 そういえば、私の家に友達が来るなんて、小学校の時以来だ。なんだか新鮮だわ。 「彼から涼宮さんの具合が悪そうだと聞いていたのですが、お元気そうで安心しました。部室にもお顔を出されなかったので、たちの悪い風邪にでもかかってしまったのかと思いましたよ」 「風邪にやられるほどヤワじゃないのよ、私は。ちょっと考え事してただけよ。キョンがそれを大げさに吹聴するから、みんなにも心配かけちゃったみたいね」 いつものように人あたりのいい笑顔を浮かべる古泉くん。その隣には、口数は少ないけれどSOS団にはなくてはならない文芸部員の有希が床に正座で座っている。 感謝の言葉を口に出せない分、行動で示そうとみくるちゃんに抱きついてみる。素直じゃない私にはこれくらいしか気持ちを伝える方法がないから、いつも私の抱擁を受け止めてくれるみくるちゃんは何だかんだで大人だなと実感できる。 さすがにキョンと古泉くんには恥ずかしくて抱きつけないから、今日は有希にも、男2人分を余計に計上して抱きつくことにしようっと。 「やっぱり有希って小柄ね。外見もだけど、抱きついたらもっと線が細いって分かるのよね。古泉くんもちょっとさわってみる?」 「ははは。大変名誉なことですが、辞退させていただきますよ。僕が長門さんに抱きついては、いろいろ問題があるでしょうし」 「問題なんてないわよ。同じSOS団の団員同士なんだもの。たまにはこうやってスキンシップを図っておくのも良いことよ」 紳士な古泉くんが有希に抱きついたりしないことは分かって冗談で言ってたけど、やっぱり古泉くんはマメよね。 言葉遣いに気を配りながらも、他人を安心させられる古泉くん。私は余計なことばかり言って、思ったことを言葉に出せない性格だから、そんな古泉くんが羨ましいわ。 みくるちゃんに抱きついたりキョンに雑用を言いつけたり。謝辞のひとつも満足に言えない自分って、やっぱり寂しい人間なのかしら……。 自分が望んだ道とはいえ、私の中学時代は荒れっぱなしだった。 目の前にちらつく普通の人生が嫌で、変化のない退屈な生活が耐えられず、そして私を異端視する世間に苛立っていた。 そんな目に見えない物事に対して憤ってばかりの灰色の時間を過ごし、紆余曲折あって、私は今この位置にいられる。 SOS団の団長という立場は第三者にしてみれば猿山の大将みたいな物なんだろうけれど、私にとってはかけがえのない物。それは団員に対して威張れるからとか、そんな下らない理由じゃない。 私がSOS団の団長という肩書きに殊更思い入れを持つのは、みんなが私を見てくれるから。 中学時代は、私が何を言おうと、誰も振り向いてはくれなかった。誰も私を見てくれなかった。物質的な意味で、ではない。誰も私の言い分を理解してはくれなかったという意味だ。 普通じゃなくて、他の誰もが経験したことのないような、トビッキリに不思議で、愉快で、心躍る体験をしたいと思っていた。ただそれだけだったのに。本当に私という人間を理解してくれる人はいなかった。 当時はなぜ自分が苛立っているのかすら分からず、私は必死になって欲しい物を手に入れようと、足掻き続けていた。 今だから分かる。欲しかった物を手に入れ、それが大切な宝物だと知ることができた今の私だから、過去の自分の姿を客観的に省みることができる。 あの頃の私は、寂しかったのだ。 誰かに抱きしめてほしかった。誰かに手を引いて、背を押して、肩をたたいて、隣に並んで、私の心を酌みとってもらいたかった。 だから私はSOS団団長という立ち位置をとてもとても大事に思っている。 声を張り上げなくても、私の言葉は聞いてもらえる。私の心を、みんなが感じてくれる。共感してもらえる。だから私は、救われる。 みんなが救ってくれた。私を助けてくれた。つまらない普通の生き方を享受している奴らはみんなバカだと貶めることでしか自分を確立できなかった自暴自棄の私を、色あせた世界から掬い取ってくれた。 みんなが教えてくれたんだ。ひとりでは出来ないことでも、みんなで力をあわせれば何でもできるって。 それは、重い荷物は一人より複数人で運んだ方が効率的だとか、そういう意味じゃなくって…… 「す、涼宮さん、どうしたんですか? おなかが痛いんですか?」 言葉にしなきゃいけないと思っている。きっといつかは言葉にして伝えようと思っている。 「涼宮さん、やはりお加減が良くないんじゃないですか?」 『ありがとう』 の一言だけだもの。口にすれば1秒もかからない、一息分の言葉なんだもの。簡単よ。 「涙をふいて」 そうしたら、みんな分かってくれるわ。私がどれだけみんなに 『ありがとう』 と思っているか。 「ジュース持ってきたぞ……って、どうしたんだよ? ハルヒ、お前大丈夫か?」 もう大丈夫だから。私は、もう、大丈夫だから……。みんながいてくれれば、私は絶対に大丈夫だから。 だから…… ~~~~~ 長門の胸に顔をうずめて肩をゆらしていたハルヒも、ようやく落ち着きを取り戻してきたようだ。ちょっと取り乱しちゃった!と明るく振舞うハルヒだが、赤く泣き腫らしたその目元が痛々しい。 こいつはいつも強がっていて、自分の気持ちを表に出すことを極端に嫌うやつだから、こんな状況でも 「なんでもないのよ!」 と言い張って普段通りの自分を貫こうとしている。 なんでもなくないことは一目瞭然なのに、プライドの高いハルヒは涙を、弱みを見せまいと強がって、弱音を抑止しているに違いない。 言いたいことがあるんなら何でも話せよ。力になれるかどうかは分からないが、話すだけで楽になれることだってあるんだぜ。 しかしハルヒは絶対に本音を口にしないだろう。そういうヤツだから。 だから俺たちには、いつものようにハルヒに接し、少しでも気持ちを和らげてやることしかできない。 「ほら。ジュース持ってきてやったぞ。好きなだけ飲め」 「なによ、これうちのジュースでしょ。あんたに飲めなんて言われなくても飲むわよ」 「何言ってるんだよ。持って来たのは俺だぜ」 俺とハルヒが言い合いをしている間に朝比奈さんがジュースをコップに注ぎ分け、それを古泉と長門が眺めている。いつも通りの、当たり前の光景だ。 これでいい。ハルヒも自然体でいられれば、思い悩んだりはしないだろう。 しばらく俺たちは涼宮家の客間で談笑していた。顔をつき合わせて世間話、なんていつもやってることだが、いつもと場所が違うと気持ちまで新鮮になってくるから不思議なもんだ。 最初のうちは照れ隠しのように率先して会話を進めていたハルヒだったが、しばらくするとその好調も次第に失速し、朝比奈さんにくっついたまま黙り込んでしまった。 そんなハルヒの様子は今朝からずっと変わらないものだが、何故だろう。朝とは少し違って見えた。 今朝ハルヒを見た時は落ち込んでいるのかと思ってしまったが、よく見るとそうではない。覇気もなく落ち着いているが、思い悩んでいるという感じはない。ただ何かを考え込み、思考に夢中になっているという具合だ。 原因は分かっている。おそらく、ハルヒも俺たちと同じ 『夢』 に見たに違いないのだ。その夢の内容が胸にひっかかり、考え込んでいるのだろう。 ずいぶんリアルな夢だったからな。まあ実際には夢じゃなかったわけだからリアリティーがあって当然なんだが。 「ねえ、キョン」 「なんだ?」 「あんた、将来の夢とかある?」 ハルヒ自身に悩みを打ち明けているという意識はないだろうが、まさか直球で尋ねられるとは思わなかった。 「将来の夢ねえ。特には考えてないな。夢があれば、もっと根を詰めて勉強なりなんなりしてるだろうし」 ハルヒは何とも言えない意味深な表情で黙り込むと、続けて朝比奈さんに同じ質問を投げかける。 「私ですか? う~ん、私もあまり詳しく考えたことはないですね。一応、大学へ進学できたらいいな、とは思ってますが」 「みくるちゃんはそうでしょうね。有希も進学?」 「そう」 「まあ、そうよね。有希ならどこの学校にでも行けるわよ。古泉くんは、もちろん進学よね?」 「いえ、お恥ずかしながら僕はまだ決めかねているのですよ。大学と言ってもピンからキリまでありますし、それに大学に進学したからといって必ずしも良い方向に進めるとは限りませんので」 「ふぅん。でも、やっぱり進学が多いのね」 そういうお前はどうなんだ。ほとんど無意識のうちに口にした何気ないその俺の一言で、一瞬ハルヒの表情が固まった。ひょっとして、マズイこと言ったか、俺? 「私ももちろん進学よ。どこへ進むかとかはまだ考えてないけど、私の能力を開花させることができるなら、四年生大学でも短大でも専門学校でもどこでもいいわ」 ハルヒにしては歯切れが悪い、と思った。良くも悪くも感情的な性格のハルヒだ。嘘をつけば、すぐにそれが嘘だと分かる。 ハルヒは、まだ決めかねているんだ。進路を。いや、決める決めない以前に、進路そのものを真面目に考えたことが無いのだろう。場当たり的というか、刹那主義というか。 「私のことはどうでもいいのよ。来年中に考えておけば済むことだから。私や古泉くんたちは進学だろうが就職だろうが、大した問題はないわ。問題はあんたよ、あんた。キョン!」 まずいな、話の矛先がこっちに向いてきたぞ。ハルヒが調子を取り戻したのを見て安堵しているふうな古泉のニヤケ顔が、「僕にとってはまるっきり他人事ですね」 と物語っているようで腹が立つぜ。 「あんた、成績は大丈夫なの? 赤点ギリギリで落第寸前なんじゃないでしょうね? 少数精鋭のSOS団からおちこぼれを出すような事態だけは避けてちょうだいよ」 「心配するなよ。そこまで酷くはないつもりだから。俺には谷口という心強い友がいるんだからな」 「クラスのブービー賞争いに精を出しても仕方ないでしょう。進学するにしても就職するにしても、成績はそれなりに良くないと惨憺たる未来が待ち受けているのよ。理解してるの?」 「なんとかなるって……だからそんなに脅すなよ」 まあ、なんとかならなかったからこそ、長いこと無職やっていたんだが。 「私はね、あんたのためを思って言ってるのよ。何をするでもなく日がな毎日ぶらぶら公園と家を行き来するような人生なんて……」 威勢よく能書きを垂れていたハルヒの顔に、再び陰がさし始める。 「……そんな生活……離れ離れなんて……」 「……いやだ」 窓の外から聞こえる風の音のように、小さな声でハルヒはそう呟いた。 「みんな……一緒がいいよね。これからも。ずっと」 ハルヒは目を細め、遠くを見るように宙を眺めながら朝比奈さんの肩にしなだれかかった。 ハルヒがみんなの前で弱気になるなど、そうそうあることじゃない。誰も、何も、口にしない。室内は水を打ったように静まり返っていた。声を発すること自体が憚られる、いつの間にかそんな雰囲気が辺りに漂っていた。 言葉にしたい事は頭の中にたくさんある ──ハルヒを除くSOS団メンバーたちの暗黙の了解── それらひとつひとつが、些細なことまでも、走馬灯のように鮮明な像をもって脳内に浮かび上がっては消えていく。 けれど、それらは、語ることはできない。どうハルヒに伝えて良いかも分からない。ピアノの旋律から受ける感動を言語で説明しかねるように、俺たちは俺たちの思いを言葉でハルヒに伝えきれない。 人は誰しも、自分という存在の居場所を捜し求めている。居場所とはつまり、自分が安心していられる心のよりどころという意味だ。人に限らず、動物だってそうだ。自分が安心して休める巣を作ることは、生物が持つ本能的な欲求だ。 人によってはそれが自宅であったり家族の輪であったり、仲の良い友人たちの中であったりするわけだ。羽を伸ばせる場所があるからこそ人は安定して日々を過ごすことができるし、いろいろな方向に目を向けることができるんだ。 人と違った特殊な価値観を持つハルヒは、いろいろと足掻いてみても、結局過去に自分の居場所を見つけることができなかったのだ。 閉鎖空間なる奇怪な空間を作り出して世界を壊してしまいたくなるほど悩んで悩んで、ようやくあいつは自分の存在をさらけ出し、安心して心を休めることのできる居場所を手に入れた。 それがSOS団だったのだ。 SOS団のメンバーが散り散りになってしまうということは、すなわちハルヒにとっては、自分の巣が無残に崩れ去っていくように感じられるのだろう。 考えてもみてもらいたい。たとえばある日を境に、突然自分の家族がバラバラになってしまうとしたら、どう思うか。うっとうしいと思っている親兄弟たちでも、離れ離れになってしまうのは悲しいことじゃないかと思う。 非公認同好団体と家族を比較するということ自体が詭弁っぽいが、しかしハルヒにとってはそれに類する苦痛であることに違いない。なぜなら、涼宮ハルヒという人間をさらけ出せる場所はSOS団の中にしかないのだから。 日頃の言動からもハルヒが並々ならぬ愛着をSOS団に抱いており、いくらこいつに行動力とパイオニア精神があろうとも、SOS団を解散させてまで新しい新天地を目指そうとしているとは思えない。 常に目新しいことを求め続け、普通を嫌っていて、エキセントリックな人間・涼宮ハルヒ。そんなふうに認識されているこいつだが、その心の奥底は俺たちと同じ、普通の人間なんだ。 俺だって、できることならずっとSOS団を続けていきたいぜ。ハルヒほどじゃないだろうが、俺だってこのアホバカ集団に居心地の良さを感じているんだからな。 だがな。それは理想でしかなく、無理な相談なんだ。お前だって分かってるんだろう。本当は。 人は変わらずにはいられない。変わらなきゃいけない。変わるってことは不安と苦労の塊で、膨大なエネルギーを使うことだけど、ずっと昔のままで生きていけるわけなんてないんだ。 遠くない将来、俺もハルヒも朝比奈さんも長門も古泉も、自分だけの道を進み始める時がくる。それが自然な流れなんだ。そうなれば、SOS団の存続は困難だ。 SOS団を解散するしかないと言ってるわけじゃないぜ。今までと同じ形のSOS団は存続できない、と言いたいんだ。 俺は今までたくさんのことをハルヒから学んできた。当時はこいつの思いつきに振り回されて疲労困憊の毎日だなんて思っていたが、そんな新鮮な体験のひとつひとつが、実は俺にとってかけがえのない人生経験になっていたんだ。 高校時代のSOS団を思い出してみても、心底つまらないと感じられる活動は何一つなかったように思う。当時は大変だとか辛いと思っていたもんだが、大人になって考えてみればそれらはどれもこれもが誇ることの出来る思い出なわけで。 恥ずかしくって口が裂けても言えないことだが、俺はSOS団に、涼宮ハルヒという人間に出会えて本当によかったと思っている。 だから、今度は俺が。 俺がハルヒに教えてやる番なんだ。 人生をリセットしてもう一度同じ時間をやり直したって、考え方を変えなければ何の意味もないということを。 それはつまり、SOS団という組織の変化を受け容れる覚悟を持て、という意味だ。 「俺、将来はラーメン屋になろうと思うんだ」 意を決した俺の突発的な発言に、落ち込み気味だったハルヒの表情にクエッションマークが浮かび上がる。 「ラーメン屋? なんでラーメン屋なのよ。あんた、料理とか好きだったっけ?」 口をついて出ただけなんで、別に意味なんてない。俺が社会に出た経験といえば、バイト先の中華料理屋だけだ。あのバイトが結構気に入ってたから、ラーメン屋になるのも悪くないなと思っただけだ。ただそれだけの内容の発言だ。 「ほら、うまい料理を作って食べてもらって、食った人に 『うまい』 って言ってもらえると、嬉しくなるだろ」 「そんな理由でラーメン屋になりたいと思ったの?」 「なんだよ。俺の将来の夢にケチつけるつもりか?」 曇天の空に太陽が顔を出すように、曇りがかっていたハルヒの瞳に徐々に輝きが戻っていく。 突拍子も無いことを言い出して、俺たちを引っ張りまわす前兆、涼宮ハルヒ団長殿ご乱心の兆候だ。 「へえ。あんたにそんな夢があったなんて、知らなかったわ。なんで今まで黙ってたのよ?」 「別に黙ってたわけじゃないさ。ラーメン屋になりたいって言ったって、料理の勉強をしているわけでもないし。小学生がサッカー選手になりたいって言ってるようなもんだ。気にするなよ」 「ダメよ。少しでも憧れるものがあるなら、その目標にむかって全力で取り組まないと。じゃないと、どんな悔いを残すか分かったもんじゃないわよ。あんたの年で将来に具体的な夢が持てるって結構ステキなことよ?」 それはどうも。ごもっともな意見だが……何故お前が悪巧みするような顔をしているのか。それが非常に気になるのだが。 「いいこと思いついたわ!」 すっかり血色のよくなった顔を上気させ、ハルヒは拳をにぎりしめて仁王立ちに立ち上がった。 なんとも言い難い表情で、古泉が俺の方にアイコンタクトを送ってくる。「余計なことを言いやがって」 という合図なのか、それとも 「よく言ってくれました」 という意味なのか。俺には分かりかねるね。こっち見んな。 そんなことより、今にも光を放ちそうなほどにまぶしい笑顔を浮かべた朝比奈さんが無言で俺に向かって小首をかしげてくれたことが嬉しかったね。 「一人はみんなのために。みんなは一人のために。とっても良い言葉だと思うわ」 付き合い長いんだ。こいつが何を言わんとしているのかは、もう分かった。だからハルヒが全員を見回している間からもうため息が漏れ出ていたね。 「みんなでラーメン作りの修行をするわよ!」 やれやれ。言うと思ったよ。 でも、悪い気はしないな。 つづく