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人物画像 基本情報 性格・容姿愛称 正体 能力閉鎖空間 時空改変能力 ループ現象 神人 情報爆発 時間震動 超能力者の発生 分裂 その他消失涼宮ハルヒ 渡橋泰水(わたはしやすみ) 超勇者ハルヒ 涼宮ハルヒ(スーパーSOS大戦) 偽涼宮ハルヒ その他(対極関係者) 脚注 関連記事 関連人物 人物画像 基本情報 声優は平野綾。 本作のメインヒロイン。県立北高校1年5組(第9巻『分裂』より2年5組)の女子生徒であり、SOS団団長。 キョンと同じクラスで、キョンのすぐ後ろの席に座る(何回席替えをしても、ハルヒの能力のためか位置関係は不変)。 学業の成績は学年上位に位置しており、身体能力も高く入学当初はどの運動部からも熱心に勧誘されていたほど。 また料理、楽器演奏、歌唱など多彩な才能を持っており、キョン曰く「性格以外は欠点は無い」。 東中時代は変人だと露呈していたが美少女ゆえに多くの男子に告白されて必ずOKしていたが、相手が「普通の人間」であることを理由にことごとく振っていた。 自分の都合のいい言葉しか耳に入らず、それ以外の言葉は聞き流す。 感情の起伏が激しく、情緒不安定になりやすい。また、退屈を嫌っており、何か面白いことをいつも探している。 己の目的のためには手段を選ばず、時には恐喝や強奪まがいの行為に及ぶこともある。 「恋愛感情は一時の気の迷いで精神病の一種」という持論を持つが、キョンの言動に極度に大きく機嫌が左右されたり、 キョンの過去の恋愛をやけに気にしたりしている。事実、劇中でキョンとみくるが同じペットボトルを使いまわす(間接キス)事を止めたシーンなどがある。 第10巻『驚愕(前)』(β-7)にて、長門が熱を出して学校を休んだため、SOS団初の活動休止宣言をした。 性格・容姿 一人称は「あたし」。身長158cm。 黒髪黒目の美少女で、プロポーションはキョン曰く「スレンダーだが、出るとこは出ている」。 入学当初は腰まで伸びるストレートヘアで曜日ごとに髪形を変えていたが、キョンにそのことを指摘されて以降は肩にかかる程度の長さで揃えている。 黄色いリボン付きカチューシャがトレードマークで、小学校時代から愛用している。 普段着は女の子らしい格好が多いが、時にはアウトドアな服も着る。 彼女の書く字は、キョン曰く「元気文字」【2】。 みくるや鶴屋さん、生徒会長など、年上の人物に対しても敬語を使わずタメ口でものを言う(初対面の者との挨拶などは、例外的に丁寧語を使う)。 口癖はキョン曰く「全然」らしい【3】。 唯我独尊・傍若無人・猪突猛進かつ極端な負けず嫌いであり、「校内一の変人」としてその名は知れ渡っている。 普段は自分勝手でエキセントリックな性格が目立つが、根底には常識的な感覚も持ち合わせており、宇宙人等の不思議な存在がいて欲しいと思う反面、 そんなものはいるはずない(少なくともそう簡単に見つかるはずがない)とも思っている矛盾した思考形態を持っている。 物語が進むにつれ人間的に成長したのか横暴さは僅かずつではあるが治まっていく。 また、長門が高熱で倒れたり【4】、キョンが事故で3日間意識不明に陥った際には【5】、必死に看病したり体調を気遣ったりするなど、仲間思いの面も強く見せることもある。 愛称 キョンからは「ハルヒ」、鶴屋さんとキョンの妹からは「ハルにゃん」と呼ばれている。 正体 「どんな非常識なことでも思ったことを実現させる」力を持つ神的存在。そのため様々な組織が彼女に関心を抱いている。 しかし本人はその力に全く気付いていない。 また、似たような能力を持つ佐々木と非常に近い存在であるが敵対という関係ではない【6】。 能力 無自覚の内にハルヒの願望が具現化され、キョン達は毎度それに翻弄されている。 その力のおよぶ範囲、期間等はハルヒの機嫌や望みの強さに影響されるため、法則性がない。 なお彼女の能力が際限なく発揮されたりせず、世界がいまだにバランスを保っている点について、 古泉は「彼女自身が奇抜な言動に反し常識的な精神をしており、不可思議な物事を心のどこかで否定しているから」と推測している。 一方でみくるは、「ハルヒの力は『世界を変える』ものではなく、最初から起こることであった『超自然的存在を無自覚に発見する能力』」としており、 組織によって見解は異なる。 閉鎖空間 「内面世界」のこと。 精神が不安定になると発生する空間で、古泉ら「機関」の超能力者が侵入可能。 (詳細は「超能力者関連」の項を参照) 時空改変能力 周囲の環境情報を操作し、非常識なことでも実現可能な能力。例として、秋に桜を満開にしている。 (詳細は「神的存在関連」の項を参照) ループ現象 第5巻『暴走』収録の「エンドレスエイト」、ゲーム『約束』、『戸惑』、『並列』にてハルヒの願望によって起こった現象。 (詳細は「神的存在関連」の項を参照) 神人 閉鎖空間にて、ハルヒのストレスが具現化した存在でストレスを発散するために周囲の建物を壊す。 情報爆発 3年前の中学1年の頃にハルヒを中心に起こった現象。詳細は謎のままである。 (詳細は「宇宙人関連」の項を参照) 時間震動 3年前の中学1年の頃にハルヒを中心に起こった現象。詳細は謎のままだが、未来人はこれより前の時間遡行が不可となっている。 (詳細は「未来人関連」の項を参照) 超能力者の発生 3年前の中学1年の頃にハルヒを中心に起こった現象。古泉に力を与えたようだが、詳細は分かっていない。 (詳細は「超能力者関連」の項を参照) 分裂 第9巻『分裂』にて起こった現象。 (詳細は「神的存在関連」の項を参照) その他 消失涼宮ハルヒ 登場作品は第4巻『消失』。古泉と同じく、改変世界にて共学となった光陽園学院の生徒となっており、髪型も北高入学当時の髪型であった。 キョンのことを知らなかったが、キョンからジョン・スミスであることを告げられ、繋がった。 また、北高の前で張り込みもしていたらしく、キョン(ジョン・スミス)が出てくるのを待っていたようだ。 渡橋泰水(わたはしやすみ) 初登場は第10巻『驚愕』(前)のα-9。ハルヒの入団試験を唯一突破し、入団した新人部員。ニコちゃんマークに似た髪留めをつけている。人懐っこい性格。 第9巻『分裂』のα-1にて、入浴中のキョンに電話を掛けてきたのが彼女である。古泉曰く純粋な個人で、長門曰く北高に在籍しておらず、宇宙人でも、未来人でも、 超能力者でも、異世界人でもない。αルートのみならず、βルートとも行き来できる。 その正体は藤原の歴史改変計画と、キョンと長門の危機を無意識に予知していたハルヒが無意識に作り出したもう一人のハルヒ。 藤原たちを止めるためには、「佐々木の閉鎖空間」に閉じ込められたキョンのもとに古泉たちを導く必要があり、 「佐々木の閉鎖空間」の中に古泉が侵入できる「ハルヒの閉鎖空間」を作る状況にするために世界を二つに分岐させる。 そしてβルートのキョンたちが「佐々木の閉鎖空間」の部室に着くのを見計らって、αルートのキョンを部室に呼び出し、 最後に二つの世界を統合させて「ハルヒの閉鎖空間」を呼び出した。閉鎖空間内において神人を操作する事も可能な力を見せた。 超勇者ハルヒ ゲーム『戸惑』にて完成したゲームの一つ「SOS団 QUEST 勇者と導かれし従者」にて登場する。「超勇者」と書かれた腕章を付けており、サーベルを武器とする。 涼宮ハルヒ(スーパーSOS大戦) ゲーム『戸惑』にて作成したゲームの一つ「スーパーSOS大戦 -地球が情報操作される日-」にて登場する。 キョンと長門のピンチを救うため、古泉、みくるとともに朝倉の異空間へと侵入する。 偽涼宮ハルヒ ゲーム『直列』のEpisode5「誰も寝てはならない」にて、昇降口にある鏡に映った。 性格はオリジナルとは正反対であり、自我を持たない。また、本人はいないはずだったが鏡に映り、目つきも他の偽物同様、怖くなっている。 その他(対極関係者) 佐々木 脚注 第8巻『憤慨』収録の「編集長★一直線!」70頁より。 第1巻『憂鬱』より。 第5巻『暴走』収録の「雪山症候群」より。 第4巻『消失』より。 第9巻『分裂』(β-4)より、キョン曰く「こいつ(佐々木)は敵にならない」。 関連記事 神的存在関連 関連人物 キョン 長門有希 朝比奈みくる 古泉一樹 鶴屋さん キョンの妹 谷口 国木田 阪中
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ハルヒ先輩から 「まあ、あんたは、鞭より飴が効くタイプだとは思ったけど、ここまでとはね」 「どっちかって言うと、ハルヒが事前にしてくれた家庭教師のおかげだと思う」 「それでもね。……あんた、平均で80点超えてるわ。これだと『愛の極上スペシャル・フルコース』になっちゃうけど、どうする?」 「……」 「そうよねえ。こういうのは、お互いの気持ちの高まり、とか、そういうのが大事なもんだし、賞罰のネタにするのはダメね。あたしが悪かったわ。代わりに、なんでもいいから、欲しいもの言いなさい。ちゃんとご褒美は用意するから」 「ハルヒ」 「なに?」 「子供扱いしてるだろ?」 「む。そんなこと、あるわけないじゃない。あんたは、たまたま年下だったけど、あんたが10才年上だろうが、逆に年下だろうが、キョンはキョンよ。あたしの気持ちに変わるところはないわ」 いや、さすがに10歳下はまずいだろ。 「じゃあ、なんで俺なんだよ。ハルヒなら、もっと……」 「もっと、何?」 「もっとイケメンとか、頭のいい奴とか、よりどりみどりだろ?」 ハルヒは、さもつまんないといった風に答えた。 「あんたがコンプレックスを持つのは勝手だけどね、キョン。あたし達の恋路にそんなもの混ぜこまないでちょうだい。あんたは恋をするのに、カタログのスペックを見比べて決めんの? 掃除機や冷蔵庫を買うんじゃあるまいし。アクセサリー用途の彼氏彼女が欲しいならそれでもいいわ。でも、あたしは、そんなくだらないことに時間を使う気はないの」 「……じゃあ、おれも欲しいもの言うぞ」 「どうぞ」 「これ。最初の約束とおりに」 「『愛の極上スペシャル・フルコース』!?」 「おれもハルヒでないと嫌だ。これって気持ちの高まりじゃないのか?」 ● ● ● 「あんたには、負けたわ。あ、でも、この借りは必ず返すからね!」 これって貸し借りなのか? どこまで負けず嫌いなんだ? っていうか、だいたい『負け』なのか? 「うっさい。今回はあんたの真剣さに免じて譲るって言ってんの。……あたしだって、はじめてなんだからね。気合いというか勢いが必要というか。とにかく、あんた以外は全然考えられないけど、そのあんたが相手でも、ちょっと、こう、緊張すんの!」 「あ、ごめん。そこまで考えられなかった」 「いいのよ。あたしも、あんたがそこまで真剣に受け止めてくれるなんて思わなかった。だから、うれしいよ、キョン」 「うん」 「で、あんたが脱がす? それともあたしが脱ごうか? 高校時代のあたしの脱ぎっぷりと来たら、ある種の伝説に……」 「ハルヒ」 「なによ?」 「いつも通りでいいと思う。話して、冗談言って、ふざけあって、キスして、抱き合って……ってやつ」 「あ、うん。そうね。そうよね」 「ただし、途中でごまかしたり、なかったことにするするのは、無しな」 「ぶー。わかってるわよ。恥ずかしいのよ、あたしだって」 「うん。でも、今日は、『恥ずかしい』の先に行きたい。ハルヒと」 「キョン……。ああ、だめ。あんた、なんていう着火材?」 わっふる、わっふる、わっふる ハルヒはゆっくりと、有無を言わさぬオーラを発しながら、体をよせ、腕を回し、唇を重ねてきた。 最初は軽いキス。それがすぐに、頭の芯から麻痺させるような奴になる。半開きの唇から、熱い舌が入り込んでくる。口の中だけじゃなく、頭の中を直接、かき回されているような動き。 「んんん……」 自分の体温が急上昇するのが分かる。それ以上にハルヒの体が熱い。 顔が一度離れる。艶やかに濡れたハルヒの口元に目が行ってしまう。 「キョン、今日はふざけてる余裕がないわ」 ハルヒの指先が、俺の胸を軽く引っ掻く。思わず声が漏れる。なにかといえば、すぐに抱きついてきて、あちこち触っていたな。今日みたいな日のため? 「敏感ね、キョン」 「ハ、ハルヒがそうしたんだろ」 精一杯の抵抗。 「そうよ。あたしにも同じようにしてみて」 促されて、俺の指がハルヒの胸の先に触れる。とろけるような声、そして体中にひろがっていく波紋。 「か、感じてるのか?」 「感じてるわ。触れられるだけで、かるくイっちゃいそうなくらい」 ハルヒが艶かしく笑う。 「いっぱい抱き合ったから、あんたの体も、あたしのことをよおく知ってるのよ」 二人が手を伸ばし合い、互いの体を探り合った。 漏れる声よりも、鼓動の方がうるさいくらいに耳の中で、頭の中で響く。 だが、相手の声が聞こえなくても、相手が何を感じているのか、それこそ手に取るように分かる。 何をすればいいかは、確かに、体の方が知っているらしい。 心は、それに駆り立てられて、後に続くだけ。それでも満たすだけでは終わらないほどの何かが溢れ出る。 「何でもしてあげるって言いたいけど、何にもできなくなりそう」 ハルヒ先輩3へ
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涼宮ハルヒの約束IVまでもマップ選択画面ではハルヒを優先的に選択しておく。 もちろん、ストーリーが進まなくなるほど選ぶのはタブー。 涼宮ハルヒの約束IV 午前に、ハルヒとのSOS会話を発生させ、エンブレムを出す。 ↓ 午後に、古泉との、難易度は普通にやれよで、ミニゲーム渚のビーチバレーで勝つ。 ↓ 最後に、夜にハルヒと会話して終了。 涼宮ハルヒの約束V 朝の古泉との会話で、信じるを選ぶ。 ↓ 午前に、ハルヒとのSOS会話を発生させ、エンブレムで終わらせる。 ↓ 午後と夜は、誰を選んでもいいが、シャミセンと話す場合、SOS会話あり。 ↓ 深夜のみくるとの会話での選択肢では、いきましょうを選ぶ。 涼宮ハルヒの約束VI 午前の古泉との会話で、古泉を止めるを選ぶ。 ↓ 午後はハルヒと、夜はみくるとの会話のみ。 涼宮ハルヒの約束VII 朝での会話では、団員として恥ずべきことだわを選択。 ↓ 午前は、ハルヒとの会話のみ。 ↓ 夜のハルヒとの会話。本物と偽者のハルヒとSOS会話を行う。 会話から違いを見つけ、偽者を見破る。 もし、失敗すると、基本的にはバッドエンド。 そして、エンディング。
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真夏のある日のこと。 SOS団の活動もない休日の午後、エアコンの不調により、うだるような暑さに耐えかねた涼宮ハルヒは、涼を求めて酷暑日の街を彷徨っていた。 「涼み処の定番、図書館はやっぱり人でいっぱいだったか……」 街中で配られていた、どこかのマンションの広告が入った団扇で扇ぎながら、街中を歩く。 「そもそもSOS団団長たるあたしが、人と同じ発想で涼を求めててどうすんのよ……」 さすがのハルヒも、この暑さに思考が常人並みに変化していた。 「あぢぃ……」 コンビニエンスストアでは、ごく短時間しか留まれない。北口駅前のショッピングセンターでは、時間は潰せるが座る場所がない。 「あ゛~……もうこうなったら、環状線にでも乗りに行くか!?」 その路線は最寄りの駅からさほど遠くはないにしても、別に鉄ちゃんではないハルヒにとって、ただ列車に乗っているだけという行為は、到底耐えられる代物ではない。 「雪でも降って涼しくならないかな……雪……ゆき……ユキ……有希……?」 「呼んだ?」 「うひゃあぁぁっ!?」 唐突に背後から掛けられた、見知った人の声に、ハルヒは飛び上がった。 「有希!? いきなり声掛けるからびっくりしたじゃない!」 振り返った先に居た文芸部部長、そしてSOS団員の長門有希は、珍しいことに私服だった。あまりの暑さに、制服ではもたないと判断したらしい。 「……いや、あの、有希……? 私服なのはいいことだし、今日は凄く暑いってことも分かるわよ? だけど……」 確かに、有希の服装は、理に適っていた。実に夏らしい。 「その格好じゃ、どう見ても男の子よ――――――――――――!!」 Tシャツ、短パン、サンダルに麦藁帽子。体格と相まって、可愛らしい小学生の男の子にしか見えなかった。知り合い以外に、この姿を見て「女子高生」と思う者は居ないだろう。 「この服装は、知り合いに『似合うし、機能的だから』と薦められた」 「確かに、これ以上ないくらいに似合ってるけど、似合う方向性が違うというか、何というか……」 「……?」 「……ま、いっか。それにしても、あんたと街中でばったり会うなんて、珍しいこともあるものね。てっきり図書館か本屋に入り浸ってるかと思ったのに」 とはいえ、海で遊んできた、という格好でもないわね、とハルヒは有希の姿を観察しながら言った。 「朝から図書館に居たが、人が多くなってきたので帰るところ」 「ああ、そういうこと。あたしもさっき涼みに行ってきたんだけど、人だらけで、あれじゃ落ち着いて読書なんてできないわね」 「涼みに?」 「うちのエアコンがぶっ壊れちゃってさ~、涼しい場所を求めて、このクソ暑い中を彷徨ってんのよ」 「……そう」 有希はハルヒに真っ直ぐな瞳を向け、 「それなら、うちに来るといい」 「え、マジ!?」 こくりと、無言でうなずいた。 ………… ……… …… … 「お邪魔しま~す!」 高級マンションだけあって、断熱がきちんとされている有希の部屋は、朝から無人で空調を効かせていなかったにもかかわらず、ひんやりとしていた。 「いや~~生き返るぅ~~~~」 「……飲んで」 有希はエアコンのスイッチを入れた後、冷蔵庫からキンキンに冷えた杜仲茶を出してきた。 「……ぷっは~! くぅ~~~~~~っ!!」 グラス一杯分を一気に飲み干したハルヒは、珍しく定時で上がったサラリーマンがビアガーデンで生中を飲み干したがごとき喜びの雄叫びを挙げると、そのままお替りを要求した。 「うまい! もう一杯!!」 「どうぞ」 こうして何杯か同じやり取りを繰り返した頃には、エアコンも効いてきた。 ハルヒは寝転んで全身からフローリングの冷たさを享受し、有希は借りてきた本の世界に旅立っていた。 エアコンの音をBGMに、ページをめくる音と、時折グラスの中で溶けた氷が立てる音だけが響く。 (暑い時には、何もない部屋っていうのも、いいものね……) やがてすっかり体力を回復したハルヒは、何となく、読書する有希を観察していた。 「……そっか。座椅子、買ったんだ」 孤島で合宿したときは、彼女は船の中で正座して読書していた。しかし今は、コタツの向かい側で、回転できる座椅子に座って読書している。 「……通販生活」 「買い過ぎには注意しなさいよ?」 「…………………………………………………………………………………………善処する」 「今の間は何よ、今の間は!?」 「気にしないで」 「気になるわよ!」 「…………」 「微妙な表情で見詰めるんじゃありません!」 「…………」 「しょぼーんってしてもだめ!」 「…………」 「こらー! 本で顔を隠すなー!!」 第三者がこのやり取りを目撃しても、有希の表情が変化しているとは思えないだろう。それだけ微細な表情の変化でも、ハルヒはきちんと見分けていた。 そんなやり取りもあった後、また落ち着きを取り戻した空間。ハルヒが一つ伸びをしたとき、それは起こった。 「ん? どうしたの、有希?」 有希の体が、不意にピクリと動いた。 「……足」 「足? ……ああ、当たっちゃったか」 ハルヒが伸びをしたとき、ちょうど前方に投げ出されていた有希の足の裏に、ハルヒのつま先が触れていた。 「を? ひょっとして有希は、足が弱いのかな?」 ちょんちょん、とハルヒがつま先で有希の足の裏をつつくと、その度に有希の体がピクリピクリと反応した。 「うりうり~」 ちょっと面白くなってきたハルヒは、次第に有希への攻めを強くした。 「……っ、うっ!」 「あ……」 一際大きく有希の体が跳ねた拍子に、彼女は膝をコタツにしたたかに打ち付けた。 「……………………………………………………………………………………………………」 「ごめん、ごめんってば! そんな涙目で、訴えかける視線を向けないでよ……」 ハルヒが必死に弁解するが、有希はハルヒにだけ分かる微妙な視線を送り続けていた。 やがてハルヒがいっぱいいっぱいになったところで、不意に有希は視線を逸らし、明後日の方向に視線を向けた。 「え……!?」 それで勝負はついていた。 ハルヒが自分の置かれた状況を把握したときには、背後に回った有希に床に倒され、脚を極められていた。 逸らした視線の先をハルヒが釣られて追いかけている間に、有希は超高速で移動していた。 「くっ、やるわね、有希! 今の技は、完全にやられたわ。でも、まだ負けないわよ!」 極められた技を外そうともがくハルヒに、有希は冷静に宣言した。 「あなたはもう、昇天している」 握り締め、中指の第二関節を突き出した有希の拳に、打撃が来るものとガードを固めたハルヒは、 「ひぎいっ!?」 悶絶していた。 「ちょ、ちょっと、有希! やめ……」 有希は構わず、固めた拳をハルヒの足の裏に突き立てて抉った。 「んのおぉぉぉぉぉぉぉっっっっ!?」 「ここは胃」 さらに有希は、拳を捻じりながら滑らせた。 「あおおおおぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!」 「ここは子宮」 有希の責め苦は続く。 「これは足の裏にある各臓器の反射区を刺激するマッサージ」 「足裏マッサージでしょ! 知ってるわよ! すんごく痛いんだから!」 「特に痛い所が、何らかのダメージを受けている部位」 「分かったから、離してよ!」 有希は無言でうなずき、掴んでいたハルヒの足を離すと、反対側の足を掴んだ。 「ちょっと、離してって言ってるでしょ!?」 「人体はバランス。片方だけの施術ではバランスを崩し、かえって悪影響を及ぼす」 有希はハルヒの足の指を強くしごいた。 「んぎひぃっ!?」 「じっくり丹念に凝りをほぐす」 「い、いやあっ! 痛いのいやぁっ!!」 ハルヒは涙目で、首を左右にフルフルと振りながら、イヤイヤをしている。 「にょああぁぁぁぁぁぁっっっ!!」 有希の拳が、無慈悲にハルヒの足裏に突き立てられた。 ………… ……… …… … 「ひゅーっ、ひゅーっ……」 じっくり丹念に足裏の凝りをほぐされたハルヒは、もはや虫の息だった。瞳孔が開いている。 「全体をほぐし終わった」 「も、もう勘弁して……お願いだからあっ……」 普段のハルヒからは信じられないような、情けない声で有希に懇願する。 有希は静かに、ハルヒの足を開放した。 「た、助かった…………」 有希はそのまま台所に消えると、湯気の立つタオルを持って帰ってきた。 「仕上げ」 「あー……蒸しタオル、気持ちいい……」 地獄から一転、今度は極楽を味わうハルヒ。恍惚とした表情で有希に身を任せる。 ハルヒの足を蒸しタオルでくるんだまま、有希は静かに告げた。 「あなたが特に弱っているところは分かった」 有希の言葉に、ハルヒは最も痛かった部分を思い出して、赤面した。 「恥ずかしがることはない。女性にはありがちなこと」 「やだ、そんなこと言わないで……」 ハルヒは両手で顔を隠している。 「最後に、そこを……集中的に施術する」 有希の言葉に、ハルヒは今度は顔を青くした。 「ちょ、有希、やめて! 後生だから!」 「あなたが特に弱っているところは……」 有希は親指を立てた。 「いやぁぁぁぁ!! ソコだけは! ソコだけはー!」 ハルヒは両手で顔を隠したままイヤイヤしている。 「肛門」 有希の指が、ハルヒの足裏に深々と突き立てられた。 「アッ――――――――――――――――――――!!」 ハルヒの悲鳴が部屋中に響き渡った。しかし、悲鳴はすぐにかき消された。 「このマンションの防音は完璧」 「……どうしたの?」 有希はハルヒに声を掛けた。 返事がない。ただのしかばねのようだ。
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ハルヒ先輩6から 「随分、成績も上がってきたな。これだと外の学校を受験しても十分勝算があると思うが」 「外の大学なんか行かないわ」 「……この進路志望調査票なんだが、第1志望から第3志望まで『ハルヒの嫁』っていうのは?」 「あ、それ、あたしが書いたの」 「……涼宮、なんでお前がここにいるんだ? なんで一昨年と同じ会話を、おれとお前はやってるんだ?」 「だって、これ、キョンの三者面談でしょ? あたしの時と事情は同じじゃないの」 「三者ってのは、本人と親と教師のことだ。おまえは何だ?」 「キョンの嫁よ。英語で言えばベター・ハーフよ。こいつの成績に関しては、あたしも責任があるし。あと、これ、キョンのお母さんからの委任状。ちゃんと話はつけてあるわ」 「あの、先生。ハルヒにはあとでよく言っておきますんで。とりあえず内部進学を希望するということで」 「すまんな、キョン」 「なによ、あたしが悪者みたいじゃないの! キョン、別によその大学受けてもいいわよ。あたしも同じとこ受けなおすから。東大でもハーバードでも好きに志望しなさい!」 「誰もおまえを悪者だなんて言ってないし、思ってない。俺の成績がここまで伸びたのは、ハルヒのおかげだし、おれのこと心配して今日も付いて来てくれたんだろ? それより、おまえの方こそ、どこか行きたい大学とか、やりたいことはなかったのか? なんか、おれと一緒にいるばっかりに、おまえを足止めしたんじゃないかって、思うことがあるんだ。おまえはいつも言下に否定するけどな」 「このお、バカキョン! あたしはあんたのために、なにひとつ我慢してもいなけりゃ、諦めてもいないわ! 自分にとって一番大事なことを、素直に優先してきて、そうやって今があるの! あんたといるのもそう! あんたの成績が上がるように、いろいろやったのもそう! この先、何かやりたいことを思いついたら、あたしはきっと、万難なぎ倒して、やりたいことをやるわ。でも、あたしはあんたとずっと一緒にいたいから、その時はキョン、あんたを説得してでも泣き落としてでも、引きずって行くから、覚悟しときなさい!」 「わかった。楽しみにしとく」 「楽しみじゃない、覚悟よ、覚悟」 「だって、どこに行くにしたって、ハルヒ、おまえといっしょなんだろ」 「キョン……。って、これ以上、あたしを萌えさせてどうするつもり!?」 「あー、すまんが二人に行く末が決まったところで、次の奴と交替してくれないか」 「あ、すいません。行くぞ、ハルヒ」 「まちなさい、キョン。それじゃ話が逆でしょ!」 「なに、ぼーっとしてんの、キョン?」 「ああ。ただの考え事だ」 「一人でうじうじ悩むんじゃなくて、あたしにどーんとぶつけて来なさい!」 「いや、悩み事じゃないんだけどな。三者面談って進路のこと話すだろ?」 「やっぱり、あたしが行ったの、よくなかった?」 「そうじゃなくて、決めてる奴はさ、医者になりたいから医学部へ、弁護士になりたいから法学部へ、とかそういう話をするんだろうな、ってちょっと考えてた」 「ふーん?」 「進路と未来というか将来が、直結してる奴もいるってことだ。おれの場合、そういうの、ないな、と思ってな」 「ちょっと、あんた、さっきと話が違うわよ。あんたの進路と未来も直結してるわよ」 「そうだな。進路先でも将来でも『ハルヒと居る』、それは変わらない。でも、たとえば、どんな仕事して家族を食べさせていくんだろうとか、おれにはまだ、そういうの全然ないな、と思ったんだ」 「そんなの高2で決まってる奴の方が少ないわよ」 「進路はとりあえず、将来は未定、ってのも悪くないけど、おれの場合、確定してる部分が人よりでかいから、その次の話にどうしても頭が進んじまうんだ。ハルヒとの暮らしをどうやって支えていこうかとか、生活じみてるが、そういうのを。悩んでる訳じゃないから心配はするな。でも、ちゃんと考えなきゃいけないって思ってる」 「……キョン」 「いや、ハルヒ、頭は撫でなくてていい。むしろ撫でないでくれ」 「大丈夫。禿げても、あたしの愛は変わんないわ」 「そっちかよ! いや、こんな髪質だけど、禿げるとは限らないだろ!」 「……意外と気にしてたのね。まあ、あたしも考えてないように見えるだろうけど、実はいろいろ考えてるわ。ううん、ついつい考えちゃうと言った方が正確ね」 「そうなのか?」 「多分、あんたと出会ったからよ、キョン。あたしだけだったら、今でもあたしには『現在』しかなかったと思うわ。その時のあたしも嫌いじゃないけどね」 「ハルヒはどんな風に考えたりするんだ?」 「あんたと別れることになったら、とか、あんたがいなくなっちゃったら、とか」 「おい、ちょっと待て、ハルヒ」 「そういう夢を続けて見たことがあってね。大長編だったわ。あたしはあんたを、あんたとのいろんなことも、忘れようとして、長い長い旅をするの。でも忘れられなくて、なんであの時ちゃんと『好き』って言わなかったんだろう、とか、なんで素直に『行かないで』って言わなかったんだろう、とか、延々と後悔するの。……夢よ、夢の話よ。目が覚めて、夢だと気付いて、あーよかったと思ったわ。寝ながらボロボロ泣いてたから、目なんか真っ赤ね。こんな顔、あんたに見せたくないけど、そんなことであんたに会わないなんて我慢ならないから、徹夜したとか嘘ついたりしたわね」 「覚えてるぞ。なんだよ、そう言う時は、胸ん中にためたりせず話せって、お互いに言ってるだろ」 「さすがに、『夢の中で素直になれなくて、あんたと別れて泣いた』とは言いにくかったのよ。付き合い出してすぐだったし。あんたをあたしの好き勝手に引っ張り回してるけど、あんたはやさしいんでぶつぶつ言いながらも付き合ってくれてるけど、この先どうなるかわからないって、きっと内心不安だったんだと思うわ。悪夢はそういう弱みにつけ込んで来るのよ」 「確かに、そういうものかもしれないけどな」 「でもね、悪夢に泣かされっぱなしにはさせなかったわよ、キョン! 確かにあたしは不安だったわ。でもね、この不安は、あたしがキョンに『好きだ』と告白したから、今一緒にいてすごく幸せで充実しているから、はじめて感じる不安よ。悪夢が見せるような『言えなかった』『素直になれなかった』っていう後悔とは大違いよ! その後悔の前に、夢の中のバカなあたしは『告白して断られたら』とか『素直になってもダメかも』っていう不安を抱えてたんでしょうね。だから、その娘は、かつてのあたしに似てるけど、今のあたしとは全然ちがう。あたしはもう、ちがう道を歩いてるわ。夢のあたしが立ち止まった崖っぷちを、あたしは踏み切ってジャンプして渡って来たの! 悪夢もお門違いもいいところよ!」 「ハルヒ……」 「今はね! あんたと一緒に明日はどうしよう、明後日は、1年後は、10年後は、とどんどん考えが膨らんでいくの。それに、昨日はキョンとこんなことしたわね、一昨日はこれ、1ヶ月前は、1年前は……ってね。過去や未来の存在意義がようやくにしてわかってきた感じよ! 加えて、今現在も、あたし史上最高に充実しているわ……って、キョン、何、笑ってんのよ?」 「いや、ハルヒにはかなわないな、って思ってるだけだ」 「その割には、お腹抱えて笑ってるわよ、キョン!」 ハルヒ先輩8へ
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※「時系列……文化祭→サウンドアラウンド後 CD曲パラレルdaysのオマージュ(?)有り」 こ…この歌は… 「えぇ…、まさに…」 ハルヒそのもの…だな… 現在部室内では諸々の事情によりハルヒが一人アカペラでその歌声を部室内に響かせている―― これよりちょっと前の事―― 前の文化祭のあとに、団でバンドを結成して割と真面目に練習したりしてビデオテープだったか、(ここのとこ記憶が曖昧なんだが…原因はハルヒに振り回されて疲れているためとしよう。決して老化などの類ではない。) まぁ演奏した曲を録ってそういうのをなんかのオーディションに投稿したりした訳だが、努力も空しくあえなく落選した。 だが我が団長は諦めきれないのか、その後も持て余す情熱のほとぼりが冷める事もなく、目標が曖昧な練習を始めたり、歌詞を作ってきたりと、非常に意欲的な活動を絶賛持続中である。やれやれ…いつまで続くのやら… さて、現在部室にはハルヒ以外の団員皆が揃っており、今見てるのは例によってハルヒが持って来た歌詞を古泉と将棋ついでにいつものように見ていたのだが… 「曲名はパラレルDaysですか…」 古泉は歌詞の題を読み上げる。よく意味のわからない名だ。 しかしなんというか…これ、ハルヒそのものを唄った歌詞にしか感じられんのだが。 というか、むしろここまで自分で自分の心情を表現出来る事に驚嘆すら感じせざるを得ない。 「どうしたんですかぁー?」 俺と古泉が二人してハルヒの作ってきた歌詞について得体のしれない感心を抱いていると、横から朝日奈さんが可愛らしく参入してきた。カチューシャがピョコンと揺れる。 ハルヒが今日持って来た歌詞を見せると、朝比奈さんは暫く真面目な(しかし可憐な可愛さが欠ける事ない)顔で歌詞を注視する。 大変カワいくてよろしい。 「ふふ…ここの『パラソル パーッと開いたりね』の部分が気に入りました」 そこの部分を細い指で示しながら天使も羨むような微笑を浮かべる朝比奈さん。 そっちですか?とツッコミが口から出かけたが止めた。 まぁ確かに…パラソルを開いて空中浮遊を連想させるここの部分はなんとなく朝比奈さんが好みそうだし…、実際、その穏和な風景を朝比奈さんと照らし合わせて想像すると、脳内で素晴らしく可愛い絵が完成する。 「しかしながら、その後に『東?南?知らないわ』ときていますね。」 古泉が、朝比奈さんから流れ出た微笑ましさ溢れる空気をまるで無視するかように何やら歌詞の論評を始めた。 一体なんだよ 「恐らくみなさんは、ここの部分で空中浮遊を連想させたと思いますが…さて、ここの部分ですが、僕たちの…つまりSOS団の動向を表してるとは思いませんか?結局は行き着く先がわからず、そのさまはまるで、空中を緩やかに落下しているようだと…ね」 コイツは一体何を言いだすかと思えば……作品に対する個人の解釈は自由だがな古泉。言わせてもらうが、それは飛躍し過ぎだ。 お前の言い方だとまるで俺達のやってる事が全て落下に向かってるみたいな言い方じゃないか。 そりゃ、俺達の行動はハルヒの気まぐれで決定されるからこの歌詞と似たようなものだし、実際その通りだと思うとこはまあ、ある。 だがな、現実世界でやること成すこと何もかも結局は落下に向かってるって言われちゃたまらんぜ。ハルヒの奴は確かに変態だが、んな悲観的な事を考えるような頭してないだろ。誰がみてもよ。 「ふふ…涼宮さんがどのようなつもりで書いたかはわかりませんが…、 ですがこれは案外、この世の理というやつかもしれませんよ?」 横を見ると朝比奈さんがおろおろとしていた。 古泉の度が過ぎた解釈によるものだろう。 その姿は庇護精神を大きく揺さぶられるがここは押さえる。 「大体この歌詞自体、お前が言ったように暗く出来てない。空中浮遊で着陸した先は『まさかのモノリス』だ。恐らくハルヒの事だ、自分の銅像にでも着陸したんじゃないか? しかもその後に続く歌詞で『妄想』だと認めてるじゃないか。つーかどうしたらそんな解釈に至るんだよ。 大体お前だって困るんじゃないか?ハルヒがそんな引きこもりがするような考え方したらよ」 「えぇそうですね。そこを引き合いに出されると、僕としても打つ手はありません。…まぁ涼宮さんの意思とは関係なしに、暗くなるように虚無的な解釈を無理矢理考えてみるというのも面白そうですが…とりあえずここいらで止めておきましょう。 冗談のつもりが、段々と険悪な雰囲気になっていくというのは僕の好むところではありませんし」 …逆だろ? 「…涼宮ハルヒが書いたの?」 突然発せられた声は長門のものだった。 古泉と険悪な(古泉の腹の内はわからないが少なくとも俺は何故か微妙な腹を立てていた)空気が立ち込めようかと思われた時、いつの間にか、向かいの席の古泉の隣に長門が立っていた。 「あ、あぁ…そうだ。またハルヒの奴が例によって書いてきたんだよ。みるか?」 長門は数ミリうなずくと差し出された紙を受け取り、表情の無い顔で暫く紙と見つめあう。 「…わからない」 長門は起伏のない口調で静かに言った。 「…なにがだ?」 「これの文体が」 しばし、俺は長門の言うところの意味が理解できなかった。長門の口からわからない、などという単語が出てくるなど俺の現実逃避の際に繰り広げる妄想にも出て来ないぞ。 「文章の展開が唐突過ぎる。しかも短い。これでは意味が明確に伝わらない。」 …つまるところ、どうやら長門はまだこういう歌詞といったものの文化については未開拓だったようだ。 歌詞の文が、本のそれと違うのは当たり前なのだが… というか、長門にとってバンドでのハルヒの歌は音の一つとしてしか捉えられていなかったのか。 今更にもほどがある、ここにきてようやく歌詞には音以外の意味があることに気付いたらしい。 「歌詞ってのはそういうものなんだよ。 まぁ確かに、歌詞の文みるだけじゃわかりづらいだろうな。ハルヒが実際にこの歌詞を歌ってるときに理解しようとして聞いてみたら、長門も自分なりの歌詞の解釈というのが出来るだろうさ。こればっかりは自分の感覚だからな」 「…そう」 俺が諭すように言うと、長門が物分かりのいい子供のような瞳の色を一瞬浮かべたかと思ったのは俺の錯覚だろうか、3ミリほどうなずいて音もなく席に戻った。 「ところで」 それから微妙な間が出来たところに依然としてニヤケ面の古泉が声を発した。先ほどの長門効果により、険悪となりつつあった空気はすっかり霧散されていた。 なんだよ? 「個人的にBメロ部分の『遠い空間の果てが~』の部分、最初目にした時は正直驚きました。この部分はこれまでの内容とは、とりわけ意味深ですから」 …まぁ…その歌詞の部分に対しては、多分、古泉と同じような事を俺も思っただろう。なにせこちらとしてはあの趣味の悪い灰色空間しか思い浮かばないからな。 ハルヒが一体なぜこのような文節を書いたのか唯一、まったくもって意味が理解出来ない。まぁ今に始まったことじゃないが。 すると突然、部室のドアが蹴破られたように勢いよく開いた。 「イヤッホー!みんな居るわねー!」 こんな入り方する奴は決まってハルヒであり、今の様に元気溢れる姿であれ不機嫌な姿であれ、ドアを蹴破るというのはもはや規定事項なのか。 「それ、なによ?」 入って来るなりハルヒは歌詞の書いた紙を指さしている。 これはお前に今日渡された歌詞だよ。 「あぁそういえばそうだったわね… で?どうだった?」 は?いきなりどうって言われてもなあ… ハルヒが歌詞の感想を聞いてくるなんぞ今までなかったもんだから、些細ではあるものの想定外の質問に俺は次の言葉を出すまでに暫く時間を要した。 「うーん…今まで恋愛系のやつばっかだったけど、なんでまた今日のは違うんだ?」 「うっ…」 ボディブローを思いがけずもらってしまったボクサーのような声を出すハルヒ。 今のはなんだ?…うめいたのか? 「ふ…ふんっ!いつもおんなじ様な歌詞じゃつまらないと思ったからよ。何でも変化が必要ってこと!」 見るからに動揺しているのは果たしてなぜだろうかな。 「今までの歌詞もとても素晴らしい出来栄えでしたけどね」 微笑を浮かべながら古泉は言う。 そういや恋愛は精神病の一種だと豪語するハルヒだが、なぜそのコイツが今まで恋愛系の歌詞をポンポンと書いてくる事が出来たんだろうか?内容もひねくれてなかったし… 「あーもう!!今までの歌詞の事なんてどうでもいいのよ! アタシが聞きたいのは今日書いてきた歌詞がどうだったかって事!」 なぜ今日に限って意見を求めるんだろう? …まぁ見たとこ、いい加減怒りそうな雰囲気だったから余計な詮索はしない事にするが。 「うーん…実にハルヒらしさを表してる歌詞だと思う」 「…ふーん」 …反応それだけかよ 「古泉君は?」 「僕も彼と同じ意見です。大変よろしいかと」 「そう。じゃあ、みくるちゃんは?」 「え?私ですか?」 どうやらハルヒは全員に意見を聞くようである。 「パラソルパッと~の辺りが好きですね」 「あぁ、あそこね。確かにあそこはみくるちゃんが好みそうな部分ね。じゃあ次は有希」 「…歌を聞きたい」 …この長門の言葉が部室内の時間を一瞬凍らせたかのように思われた。 淡々と流れるようにそれぞれの意見を聞いてたハルヒだが完全に固まってしまったようにみえた。目がまん丸になってるぞ。 「え?」 想定の範疇を大きく外れた長門の言葉に対し、ハルヒがようやく出した言葉はたったのこの一文字だけ。 「この歌が聞いてみたい」 繰り返し長門は起伏のない声量で喋る。が、何か形容し難い気迫が迫る感じだ。 「え…えぇ。もちろんいいんだけど…今日は音楽室、軽音部が使ってるのよね」 …思えばこの言葉が、ハルヒの戦略的不利な状況を一気に作り上げたんだと思う。 曲はまだ出来てないとか言えばその場を退けられただろうに。 「…歌を唄うだけならば音楽室を使用する必要性と必然性は無いと思われる」 初めてみる長門の積極的な態度にハルヒはすっかりペースに乗せられているのかいつもの様な傲岸不遜な態度はさっぱり見られない。その様は、従順な妹に突如として反抗されて困惑する姉のよう、とでも言えばいいのか。 「そ、それは今ここで唄えって事かしら?」 「…おおむね」 …お…おいおい。 長門よ…あのハルヒが完全にうろたえているぞ。ハルヒは自分の意思を表明をせず、もしくは長門の液体ヘリウムの真っ直ぐな瞳に圧倒されていて出来ないのか、とにかく言われるがままではないか。いったい長門はなにやってんだろう。 「ま…まぁ有希の頼みなら仕方ないわね… ……なんでこんな事に?…ていうかどっちかっていうとこれってみくるちゃんの役回りじゃないの?」 最後のは明らかに愚痴だが…ぶつくさ言いながらもハルヒは俺から歌詞を受け取った。 ハルヒは歌詞を暫く見つめ、独言を拝見する限り、アカペラとはいえ結構真剣にやるようだ。 「じ、じゃあ唄うわよ…」 心なしかハルヒは緊張しているような面持ちで…ってなに顔を隠してんだよ。おい。 ハルヒは歌詞が書いてあるB5サイズの紙を丁度俺らの視線とを隔てるように被せやがった。 「うるさいわね!いいじゃないのよ!伴奏ありで唄うならともかく…そもそもアカペラに向いてないのよ!この歌は!」 どうやらハルヒにも羞恥心とやらがあるようで、男子の前で平然と着替えたり平気でバニー姿になったりとか色々とするのに、ここで何故恥じらうのか甚だしく疑問なんだが…、顔を紅くさせながらも歌唱中は顔を隠すことを皆に強制的に了承させた。 「じゃあしきりなおして…行くわよ」 「そのかわり歌詞の最後まで歌わないとダメ」 長門のとどめの一言にハルヒはまた低いうめき声を上げたが、たまにはハルヒのこういう姿も見物である。 まもなくしてハルヒ作詞兼作曲兼歌のパラレルDays(アカペラver)が唄われた。 ―― ハルヒは、歌う前までは恥ずかしがってはいたものの、その歌声は歌い手の照れというものを一切感じさせない元気で堂々としたものだった。 それに歌い方と歌詞の内容とが見事に合致しており、もはやそれはやはり、ただ見事としか表現しようがない程だった。 …ただ歌ってる時に、顔を隠し、足で少しリズムを取る以外はまるで微動だにしないというのはちょっと…お前それって。 数分後…、やがて、ハルヒの歌が唄い終わり… 「って、あ!おい! ちょっと待て!どこ行くんだハルヒ!」 歌を終えるやいなや、ハルヒは猛然とした勢いで部室から出て行ってしまったのである。 「え?え?す、すす涼宮さんどうしたんでしょう~?」 朝比奈さんはあたふたとしながら聞いてくる。 いや、俺にもさっぱりなんですが… 「やはり恥ずかしかったんだと思いますよ」 微笑の古泉がいつもの調子で言う。 あぁ…そうなるか。やっぱ。 「まぁ、僕もどうやらバイトが入ってしまったようなのでこの辺りで失礼します」 微笑な表情を一切変えずに古泉はまるで普通のバイトがあるかのように普通な言い方で言った。 同情してやらなくもないが俺が労いの言葉かけたって状況が変わる訳でもない。何せ俺は自他ともに認める普通の一般人だからな。だから俺は古泉に言ってやった、 「そうだろうな。」 「…私のせい。…ごめんなさい」 …この声は長門のものである。なんというか…これは珍しいとかの生易しい事態ではない。受け取りようによってはちょっとした事件になるのではないか。 で、長門に謝られる対象となった古泉はというと、さすがに虚を突かれたのか少し丸くした目で長門を凝視している。古泉のこういうナリも至って珍しい。 「はは…気にしないで下さい。長門さん。閉鎖空間といっても、彼絡みのモノと比べればたいして大きい規模のものではありませんから」 …俺を引き合いに出すんじゃない 「それに、長門さんのおかげで涼宮さんの素晴らしい歌声が聞けましたしね。むしろ礼を言います。まぁ閉鎖空間に関してはそのお礼の代わり、とでも思って下さい」 「…申し訳ない」 再び発せられた長門の短い謝罪を聞くと、ニヤケ面の古泉はさらに三割増しの微笑を浮かべたあとに、「それでは」と一言、言ってから部室を退出した。 そうして部室には俺、長門、朝比奈さんの三人が残された。 …そういやハルヒはどこ行ったんだ? 「…既に校舎内からはいない。恐らく自宅に向かったと思われる」 つまり帰ったわけか… 長門は4ミリほどうなずく。 「キョン君、これからどうするんですか?」 なぜだか朝比奈さんは俺に指示を仰いできたが、まあ…やることもないし… とりあえず…俺らも帰りましょうか。 ふと窓の外を見ると日は地平線に沈むか沈まないかの位置におり、外はオレンジ色の光に染まっていた。 「なぁ長門」 「なに」 現在、俺は長門と二人ゆっくりとした歩調で校舎内を歩き、下駄箱に向かっている。 朝比奈さんはメイド服から着替えるため遅くなるので、まあ俺らにはそのうち後から追いつく事だろう。 「そんなハルヒの歌聞きたかったのか?」 「そう」 長門が自分から人にものを頼むなんてのは大変珍しい事であり、ましてやさっきの様にあのハルヒに対して歌うよう頼んだという事はこれは結構スゴい事なのである。 なので、なんで長門がそこまでしてハルヒの歌が聞きたかった理由は実はすごい気になるわけだが、その答えはたったの二文字で完結されてしまった。 なんだかわからんが長門は、あまりしつこく聞いてくるなというのを態度で示しているのか、それとも単なる俺の過ぎた思い込みか、とにかくそれ以上同じ質問するのは何か聞き辛い。 「じゃあ…ハルヒの歌、聞いてみてどうだった?」 「…」 沈黙が生まれ、感想を聞くのはやはり無理かと諦めかけた頃… 「あの歌詞の概要がわかったような気がする」 え?どんな風に? 長門のようやく出した返事に、俺はつい反射的にものを考えずにまた質問してしまった。 それから廊下を数歩歩いたところで長門は再び口を開いた。 「…涼宮ハルヒが現状を楽しんでいるということ。正確な言語伝達が出来ないけれど……共感する部分を感じた。 言語では表しようがない不可思議な感覚」 そういうと長門は鞄から本を取り出し、歩きながら本を読み始めた。 …共感とは…数ヶ月前の長門からは考えられない言葉だな… しかしながら俺もさっきのハルヒの歌を直に聞いたら何か不思議な感覚になった。ハルヒの歌を聞く前に、俺はハルヒの歌詞に目を通していて既に曲に対してはそれなりの解釈を持ってはいたが、実際に聞いてみるとまた違う解釈が生まれた。 そういうのは往往にしてよくある事なんだろう。 これは多分長門と同じようなものだと思う。…まぁしかし長門も言うように、言葉で表現出来ないので俺と感じとったものが一緒だとは確認しようもないが。やれやれ…言語表現とは難しいものである。などと妥協する。本当ダメなやつだなオレ。 それでもまぁ一応言っておく、 「長門、不可思議な感覚とやらは俺も感じた。断言は出来ないがたぶんお前と同じようなものだと思う。こう思うんだがあの場でハルヒの歌を聞いた団員は皆が皆、何か一つ同じものを共有出来たんじゃないかな。このSOS団にいるものにだけしかわからないものが。 そう俺は勝手に思ってる」 何を論拠に、とツッコミ入れられたら答えようがない。具体的に表現出来ないんでな。よくある事だ。うん。 長門は聞いてんのか聞いてないんだかわからない感じだったが、(いやまあ、そんな長門だからこんな恥ずかしい事言えるんだが) 7~8歩あるいた所で、 「そう」 とだけ言っていた。 …個人的にハルヒが今日歌った歌詞の中で気になった部分があった。 …みんなたまに喜んでるね……か… この歌詞をハルヒがどういうつもりで書いたのかわからないが…実際その通りだな… (厳密には喜ぶとは違う種類の感情かもしれないが…まぁ似たようなもんでいいだろ) もし、それを知ってて書いたのだとしたら、自分が楽しめりゃそれだけでいい的な事だけしか考えてないと思われたハルヒも、実はアイツはアイツなりに俺らの事を見ている…ということになるのだろうか… しかし…まぁ、さすがにハルヒもアカペラであの歌はキツかったろうな… …我ながらメリハリの無い感慨にふけっていると、やがて朝比奈さんも俺達に追いつき、俺の不毛な思考も朝比奈さんとの会話のために一時中止された。 団長、副団長が不在の状態という点を除いて、俺達はいつもの帰り道を途中まで共にし、やがてそれぞれの家へと別れていった。 明日もまたハルヒはなにかしでかすのだろうか。あの太陽フレアに負けず劣らずの輝かんばかりの笑顔が浮かぶ。 ハルヒの持ち込んでくる気まぐれに思い立っただけのまるで計画性のない無意味な提案は、表面的には朝比奈さんと俺に、裏方では長門と古泉に甚大な迷惑をかけるのだが、その一方でどういう訳か不思議と俺は楽しんでいたりするのだ。確かに。 …オレンジ色の夕日の空を見上げつつ、明日ハルヒがどんな事をしでかすのか、そんな意味もない妄想をしながら俺は今日の帰り道を歩いていった 終わり
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ハルヒ先輩5から 「ちょっと待て、ハルヒ。なんだ、その格好は?」 「あんたの高校の体操着(女子用)よ」 「なんで、おまえがそんなものを着てる?」 「加えて言うなら、あたしの母校でもあるわ」 「それは知ってる。尋ねてるのは理由だ」 「どこかの誰かさんみたいに、卒業後、使用済みの制服その他を売り捌いたりしてないの、あたしは」 「思い出は心に、衣類はタンスにしまっておけよ」 「普段はしまってあるわよ」 「今日もしまっておけよ」 「そうはいかないわ。今日はいつもと違うもの」 「何が違うんだ?」 「あんたの誕生日でしょ」 「それって、まさか……」 「そ。『プレゼントはあたし』ってやつよ」 「まてまて。それは一旦置いておくことにしよう。だが、なんで、よりにもよって体操着なんだ?」 「あんたの、その反応がすべてを物語っていると思うけど」 「あう」 「どうしても、あたしの口から聞きたいっていうなら、聞かせて上げるわ」 「うわ、待て。やっぱ、いい」 「もう遅い。あんたのスケベな心臓は、今ロック・インしたわ」 「おれを殺す気か?」 「せめて気持ちよく昇天させてあげるわ。ひとーつ、あんた、まずブルマ萌えね」 「ぎゃふん!」 「ふたーつ、そして、体操服のすきまからのぞく、おへそ萌え」 「ぎゃふん、ぎゃふん!」 「みーつ、元々あたしがあんたに気付いたのは、そのエロい視線で体操着姿のあたしを視姦してた時だったわね」 「きゅうううん」 「あ、死んじゃった」 「……言い直せ。視姦じゃない。見とれてただけだ」 「あたしが、つかつか近づいて行って、他の一年坊主たちが、蜘蛛の子散らすように逃げ去ったのに、あんただけは、じっとあたしを見てた、目もそらさずに」 「おまえに凝視されて、視線を外せる奴なんかいるもんか」 「2〜3メーターの距離ならともかく、20センチ近くになっても」 「ヘビににらまれたカエル状態だったんだ」 「あたしの唇が、あんたの口をふさいでも」 「どうせ見納めなら、死ぬ間際まで、焼き付けとこうと思ったんだ!」 「あたしゃ、メデューサか?」 「ほんとに腰が抜けて立てなかったんだ」 「別のところは、立ってたけどね」 「わー、わー、全年齢対応!」 「正直、あんなに至近で見つめ返されたのは、あたしも初めてだったわ」 「見たこともないような、どえらい美人が、マクロレンズでなきゃ撮れない近さにいるのなんて、俺だって初めてだった」 「ま、というわけで、出会いのシーンを演出してみました」 「いや、ものすごくやばいぞ、ハルヒ」 「去年まで普通に着てたもの着て、何がやばいのよ?」 「確かに物理的にはそうなんだが、今は本来着るはずのないものを着てるってだけで、社会的にというか心理的に、ものすごくイケないことをしてる感じがする。これがコスプレの真の威力か? というか、おまえだって狙って着てるんだろ?」 「まあね」 「だいたい、その体操着、ちょっと小さくなってないか?」 「胸の分だけね」 「そ、育ってるの?」 「そ、育てたんでしょ、あんたが……」 「は、反則だぞ、ハルヒ。今までオラオラ・モードだったくせに、急に顔真っ赤にしてうつむくなんて」 「確かに今、真芯をとらえた感覚があったわ」 「ま、まじに心臓が痛い」 「といいながら、うれしがってるでしょ?」 「さっきまでなら、部分的にイエスだったが……今はピンク色に白濁した脳みそに生理機能が付いて来れない」 「わかりやすく言いなさい。妄想がエロすぎて、心臓が持たないんでしょ?」 「そ、そのとおりだ。こんな企画なら予告してくれ。体操抜きで寒中水泳するようなもんだぞ」 「任せなさい。この夏、ライフセーバーの資格を取ったから、人工呼吸も心臓マッサージもお手の物よ」 「また、そんな、無駄スキルを……」 「わかってるわよ、あんた専用だからね。どんないい男が溺れてても見殺しにするから、妬かないように」 「だから無駄スキルだと……」 「それにしても、体操着だけで、こんなに引っ張るとは思わなかったわ。まだオードブル(前菜)に過ぎないわよ、キョン」 「いや、マジやばいから、一旦『わっふる』を入れてくれ」 「いいけど、『わっふる あけ』したら、もっと飛ばすわよ!!」 わっふる、わっふる、わっふる 「キョン、誘惑を免れる道はただひとつしかないわ。誘惑に負けてしまうことよ。byオスカー・ワイルド」 「格言に見えて、それ自体が誘惑になってる!」 「少しは落ち着いた?」 「こうやって背を向けてれば、なんとかしのげ……るか!? おまえの腕が、もうおれの首の前まで来てる!」 「二人でいるのに、離れてるなんて、おかしいでしょ?」 「いや、人間は『人の間』と書くのであって、時と場合に応じた距離というものが……っておい!」 「なによ?」 「この感触は……なに?」 「わかってるでしょ?」 「わかってるとも。だ、だが背中にのしかかるな」 「別にいいじゃないの」 「普通の状態ならかまわんが……、こりゃいくらなんでも反則だ。おまえ、体操着の下に『着けてない』だろ!」 「さすが、エロキョン。背中に目があるかのごとし」 「目がなくてもわかるわ! この、なんというか、ぷにっとも、ぼよおんっとも、表現がつかない感触が、他の何だって言うんだ!?」 「キョン、鼓動が敵襲を知らせる早鐘のようね」 「くっ……のわあ! 押し付けたまま『の』の字を書くな」 「ふっ、なかなか手強いわね」 「いや、もう籠絡されてる、陥落してるぞ。むきゅう」 「あら。じゃあ、いただきます」 「そんな、カマキリの雌みたいな……って、いきなり剥くな!」 「つまらない。少しは抵抗しなさい!」 「いいのか、ハルヒ?」 「え?」 「自分にとっての体操着のまばゆさに、なかなか気付けなかったが……」 「やっと気付いたのね、ニブキョン」 「ああ。これ以降は、エロキョンでいかせてもらうぞ」 おれは、すでに体操着の上からでも、はっきりとわかるまでに固くなったハルヒの胸の先端をこするように、二本の指で撫でた。むろん二つの胸、両方をだ。 「あ…あん。いきなり、それ?」 「こんなに立たしてたら、当然だろ」 「あんたの背中にこすりつけたら、こうなったの!」 「エロハルヒ。そんなので感じてたら、もたないぞ」 「言ってくれるじゃないの」 「ああ、言ってやる。だけど、もう言うだけじゃない」 おれは再び、指での攻撃を再開した。今度は両乳首を倒すようにふにふにと柔らかく押す。ハルヒはコレに弱いのだ。 「ああ……ああん、こ、こら、キョン!」 それから人差し指と中指の間に挟むようにして、左右リズムを変えて震わせる。 「あんた、さっきから、そこ……ばっかり。……だ、だめ!」 「ハルヒが教えたんだぞ、これ。ほんと、気持ちよくなることにどん欲だよな」 「あ、あ、わ、わるい? ああん!」 「ちっとも悪くない。ハルヒに教えてもらったこと、全部返すからな」 右胸への指の攻撃をつづけたまま、おれはハルヒの左胸に体操着越しにキスをする。そのまま固くした舌で跳ね上げ、こすり上げる。一度口を離し、今度は強く吸い上げてやる。 「服の上からなんて! へ、へんたい! でも、気持ちいいよお」 「そうか。じゃあ、ずっと体操着の上から、してやろうか?」 「フェチキョン。もう限界。脱がせて、ちゃんとして」 「なんだって?」 聞き返しながら、手と舌の責めは休まない。 「はっきり言わないとわからないぞ」 「ああ……ああん。じ、じらす気ね? わかったわよ。言って上げる。あんたの大好きな体操着をはぎ取って、直に舐めて!」 ハルヒ先輩7へ
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涼宮ハルヒハルヒが上に乗ってきて強奪 ★イベント画像あり★ ハルヒの熱はかり ★イベント画像あり★ ハルヒのバーチャルバトル ★イベント画像あり★ ハルヒのポーズ指導 ★イベント画像あり★ ハルヒのどこかで見た夢 ハルヒと剣のデザイン ハルヒの告白練習 ハルヒの寝顔 ハルヒの弁当 ハルヒと消しゴム飛ばし ハルヒのものまね ハルヒと地震 ハルヒとゲームで勝負 ハルヒと実験 ハルヒと登校 ハルヒとジュース ハルヒの餌付け ハルヒから餌付け ハルヒとにらめっこ ハルヒのモーニングコール ハルヒの膝枕★イベント画像あり★ ハルヒと恋の始まり ハルヒに羽交い締めにされて強奪★イベント画像あり★ ハルヒと宿題と手伝い ハルヒとヘッドフォン ★イベント画像あり★ ハルヒの呼び名 ハルヒと呼び名の変更 ハルヒと公園カップル ハルヒの着替え中 ★イベント画像あり★ ハルヒと掃除 ハルヒのポニーテール ★イベント画像あり★ ハルヒのお見舞い ハルヒに肩揉み ★イベント画像あり★ ハルヒの変な踊り ★イベント画像あり★ ハルヒと勉強会 ハルヒのデバッグ ★イベント画像あり★ ハルヒの後6分 夕日のハルヒ ★イベント画像あり★ ハルヒとストローと1本 ★イベント画像あり★ ハルヒとお姫様抱っこ ★イベント画像あり★ ハルヒと意見の違い ハルヒと夜の並木道 ハルヒと夢の続き ハルヒのウェディング ★イベント画像あり★ [#q0d250ee] [#xccf1967] [#id157d81] [#r158d3cf] 涼宮ハルヒ ハルヒが上に乗ってきて強奪 ★イベント画像あり★ (※土曜でも可) 古泉・平日:シルエットシーン(グラフィック) ハルヒ・連続:キス音SE(サウンド) (変な踊りが不可に) ハルヒの熱はかり ★イベント画像あり★ ハルヒ・平日:画像表示調整(スクリプト) ハルヒ・連続:画像のズレを直す(スクリプト) (意見の違いが不可に) ハルヒ・連続:音のタイミング調整(スクリプト) ハルヒ・連続:難易度調整(スクリプト) (意見の違いが不可に) ハルヒ・連続:プレイ時間調整(スクリプト) (意見の違いが不可に) ハルヒのバーチャルバトル ★イベント画像あり★ ハルヒ・連続:敵パラメータ(スクリプト) (にらめっこが不可に) ハルヒ・連続:思考ルーチンフロー(スクリプト) ハルヒ・連続:マップ設定(スクリプト) (お姫様抱っこが不可に) ハルヒ・連続:イベントスクリプト(スクリプト) (弁当、ウエディング、お見舞いが不可に) 作業時間外・連続 ハルヒのポーズ指導 ★イベント画像あり★ ハルヒ・平日:背景探し(グラフィック) (夕日、膝枕、公園カップルが不可に) ハルヒ・連続:イベントキャラ構図(グラフィック) ハルヒのどこかで見た夢 ハルヒ・平日:イメージボード(グラフィック) ハルヒ・連続:異世界ラフ背景(グラフィック) ハルヒ・連続:現実世界ラフ背景(グラフィック) (夕日が不可に) ハルヒと剣のデザイン ハルヒ・別作業・平日:装備品考案(シナリオ) ハルヒ・連続:伝説の設定(シナリオ) ハルヒ・連続:衣装設定(グラフィック) (ウエディングが不可に) ハルヒの告白練習 ハルヒ・平日・かなり:外出してSE録音(サウンド) みくる・連続:告白シーン(スクリプト) ハルヒ・連続:役作り キャラ(サウンド) ハルヒの寝顔 ハルヒ・平日:音を鳴らす(スクリプト) ハルヒ・連続:BGM割り当て(スクリプト) ハルヒ・連続:ループチェック(デバッグ) ハルヒの弁当 ハルヒ・平日:デートシナリオ作成(シナリオ) (羽交い絞め、ストロー、夕日が不可に) ハルヒ・連続:イベントスクリプト(スクリプト) (ウエディング、お見舞い、バーチャルバトルが不可に) ハルヒと消しゴム飛ばし ハルヒ・平日:メインシナリオ作成(シナリオ) (夢の続きが不可に) ハルヒ・連続:キャラシナリオ作成(シナリオ) (地震、掃除、ものまねが不可に) ハルヒのものまね ハルヒ・平日:キャラ紹介文(シナリオ) ハルヒ・連続:キャラシナリオ作成(シナリオ)(消しゴム飛ばし、地震、掃除が不可に) ハルヒ・連続:台本作成(シナリオ) ハルヒ・連続:役作り 感情(サウンド) ハルヒと地震 ハルヒ・平日:シナリオネタ探し(シナリオ) (膝枕、恋の始まり、ゲームで勝負が不可に) ハルヒ・連続:キャラシナリオ構想(シナリオ) (登校、実験、掃除が不可に) ハルヒ・連続:キャラシナリオ作成(シナリオ) ハルヒとゲームで勝負 ハルヒ・平日・なぜか:シナリオネタ探し(シナリオ) (膝枕、恋の始まり、地震が不可に) ハルヒ・連続:説明書を読む(スクリプト) (膝枕が不可に) ハルヒ:作業時間外 ハルヒと実験 ハルヒ・木曜:選択肢考案(シナリオ) ハルヒ・連続:メインシナリオ構想(シナリオ) (登校、夢の続きが不可に) ハルヒ・連続:サブシナリオ構想(シナリオ) ハルヒ・連続:キャラシナリオ構想(シナリオ) (登校、地震、掃除が不可に) ハルヒ・日曜:時間外 (他の日曜イベントと併用可 ウエディングと一緒に出来るのを確認) ハルヒと登校 ハルヒ・平日:メインシナリオ構想(シナリオ) (実験、夢の続きが不可に) ハルヒ・平日:キャラシナリオ構想(シナリオ) (実験、地震、掃除が不可に) ハルヒ:作業時間外 ハルヒとジュース ※書き込み・シナリオ強化週が入手出来る ハルヒ・平日・2週目:シナリオテーマ考案(シナリオ) ハルヒ・連続:世界設定考案(シナリオ) (ハルヒの餌付けが不可に) ハルヒ・連続:世界年表考案(シナリオ) ハルヒ・連続:キャラ性格設定(シナリオ) (にらめっこが不可に) ハルヒ・連続:メインシナリオ設定(シナリオ) ハルヒ・日曜:作業時間外 ハルヒの餌付け ハルヒ・平日:世界設定考案(シナリオ) (ジュースが不可に) ハルヒ・連続:アイテム画像(グラフィック) (ハルヒから餌付けが不可に) ハルヒ・連続:選択肢考案(シナリオ) (実験が不可に) ハルヒ:作業時間外 ハルヒから餌付け ハルヒ・平日・午後:アイテムパラメータ(スクリプト) ハルヒ・連続・午後:アイテム画像 (ハルヒの餌付けが不可に) ハルヒとにらめっこ ハルヒ・平日:キャラ性格設定(シナリオ) (ジュースが不可に) ハルヒ・連続:敵パラメータ(スクリプト) (バーチャルバトルが不可に) ハルヒ・連続:キャララフ(グラフィック) ハルヒのモーニングコール ハルヒ・平日:特殊攻撃ボイス(サウンド) ハルヒ・連続・午前:ボイスデータ化(サウンド) ハルヒ・連続・午後:実機ボイスチェック(サウンド) ハルヒ・連続:作業時間外 ハルヒの膝枕★イベント画像あり★ ハルヒ・平日:音楽鑑賞(サウンド) ハルヒ・連続:背景探し(グラフィック) (ポーズ指導、夕日、公園カップルが不可に) ハルヒ・連続:シナリオネタ探し(シナリオ) (恋の始まり、ゲームで勝負、地震が不可に) ハルヒ・連続:説明書を読む(スクリプト) (ゲームで勝負が不可に) ハルヒ・連続・日曜:作業時間外 ハルヒと恋の始まり 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ハルヒのポニーテール ★イベント画像あり★ ※かなりでこちらが優先される ハルヒ・平日・かなり:コスプレ撮影(グラフィック) (着替え中が不可に) ハルヒ・連続:恥じらい表情(グラフィック) ハルヒのお見舞い 長門・平日・ハルヒなぜか:エフェクト割り当て(スクリプト) ※午前かつ長門少しだと、長門と相合傘が発生 ハルヒ・連続:シナリオコンバート(スクリプト) ハルヒ・連続・土曜・午前:イベントスクリプト(スクリプト) (弁当、ウエディングが不可に) ハルヒ・連続・土曜・午後:外出作業 ハルヒ・日曜:作業時間外 ハルヒに肩揉み ★イベント画像あり★ ハルヒ・平日・少し・憂鬱・疲労:デバッグ作業ならなんでも ハルヒ・連続:デバッグ作業 ハルヒ・連続:デバッグ作業 ハルヒ・連続:デバッグ作業 ハルヒの変な踊り ★イベント画像あり★ みくる・平日・別作業:特殊攻撃説明文(シナリオ) 古泉・連続:キス音SE(サウンド) (上に乗ってきて強奪が不可に) 古泉・連続:ラブリィなもの考案(シナリオ) (ストローが不可に) ハルヒ・連続:特殊攻撃の設定(スクリプト) ハルヒと勉強会 ハルヒ・平日・リラックス:教本探し(グラフィック) (羽交い絞めが不可に) ハルヒ・連続:教本で勉強(サウンド) ハルヒ・連続:作業時間外 ハルヒのデバッグ ★イベント画像あり★ 長門・平日:誤字脱字チェック(デバッグ) (宿題と手伝いが不可に) 長門・連続:サウンドチェック(デバッグ) (宿題と手伝い、後6分が不可に) 長門・連続:スクリプトチェック(デバッグ) (宿題と手伝い、後6分が不可に) 長門・連続:表示物チェック(デバッグ) 長門・連続:作業時間外 ハルヒの後6分 ハルヒ・平日:サウンドチェック(デバッグ) (宿題と手伝い、ハルヒのデバッグが不可に) ハルヒ・連続:シナリオチェック(デバッグ) (宿題と手伝いが不可に) ハルヒ・連続:スクリプトチェック(デバッグ) (宿題と手伝い、ハルヒのデバッグが不可に) ハルヒ・連続・午前:画像チェック(デバッグ) (宿題と手伝いが不可に) ハルヒ・連続:作業時間外 夕日のハルヒ ★イベント画像あり★ ハルヒ・平日・憂鬱:背景探し(グラフィック) (ポーズ指導、膝枕、公園カップルが不可に) ハルヒ・連続:デートシナリオ作成(シナリオ) 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第五章 ハルヒは放心状態、長門は朝倉と交戦中、朝比奈さんはハルヒの横で気絶している、古泉は神人と交戦中、俺にいたってはハルヒのいる病院の中で立ち尽くしてい。 不運と言うものは続くもので、ボロボロに破壊されたドアから人影が見えた。 見覚えのあるおとなしそうな生徒会書記担当、黄緑江美里だ。しかもその手には血のついた日本刀…え?日本刀? 今度は黄緑さんがエラーか?しかも血がついてるってことは誰かを殺したてきたと言うことなのだろうか。 長門は朝倉と交戦中である、よって黄緑さんに抵抗できる人間はいない、ここにいるのは俺とハルヒと朝比奈さんだけなのだ。 ここまでかと思ったそのとき、またドアの奥から人影が見えたと思った瞬間である、人影がすごいスピードで黄緑さんに近づき持っていた薙刀で黄緑さんの体を真っ二つにした、そしてポケットからビンを取り出し中に入っていた液体を真っ二つになった黄緑さんにかけた、すると黄緑さんは塩をかけられたナメクジの様に縮み消滅した。 そして黄緑さんを切り殺した人物に俺はとてもびっくりした。 なんと久々の朝比奈さん(大)である。俺はハルヒや朝比奈さん(小)の前に現れていいのかという疑問の前に朝比奈さんの身体能力に驚いていた。 アホみたいに口をあけている俺に朝比奈さんは「久しぶり。」と、そしてハルヒに向かって「久しぶりです、でもこの姿では始めましてですね。」 そして朝比奈さんは説明してくれた。「黄緑さんは情報統制念体によってコピーされました、そしてそのコピーはオリジナルを抹殺しあなた達を抹殺しに来ました、それを止めるために来たんです、他にも目的はあったのですが。本当はこういうことをしてはいけないんですが私にとっても規定事項なので大丈夫です。」 朝比奈さん(大)が説明を終えた後、ハルヒが突っ込んだ「あんた、誰なの?みくるちゃんのお姉ちゃんか何か?この姿って…」 その質問には俺が答えた「この人はここにいる朝比奈さんの未来の姿だ、何度か会った事がある。」 そして朝比奈さん。「そうです、なんなら今までにしたコスプレ全部言いましょうか?」と笑顔で言った。 そして真剣な顔をして続けた。「私がここに来たのは黄緑さんからあなた達を守るためだけではありません、もう一つ重要な仕事があるんです、でもその前にキョン君、涼宮さんにあなたの正体を教えてあげて下さい。」 「キョンの正体?」とハルヒがいいこちらを見る。 俺は言った。「そういえば言おうとして朝倉が来たんだったな。いいかハルヒ、よく聞け?俺の正体はな…」ジョンスミスなんだ、と言うつもりだった。 「そいつの正体はジョンスミスさ。」とまたドアの奥から人影が現れる。またも見覚えがあるやつだった、しかもいけ好かない未来人、花壇で会った奴だ。 なんでこの事を知っている?そんなことを考えているとハルヒが「キョンがジョンスミス…?本当なの?キョン」 「そうだ、俺は確かに4年前の七夕の日にハルヒに会って落書きの手伝いをしたジョンスミスだ。だが何でお前が知っている。」恐らくこのときの俺はきっとものすごい顔で睨んでいたのだろう。 しかし煽るようにそのいけ好かない未来人は言った。 「何故知っているかって?それは俺がジョンスミスだからさ。」 朝比奈さん(大)以外の顔が凍りついた。 こいつがジョンスミス?そりゃ俺だろう、こいつがジョンスミスなわけがない。それともジョンスミスって結構多い名前なのか? 昔の船長にそんな名前の奴がいたっけ? などと脳内で思考を巡らせていると、 朝比奈さんがまじめな顔でこう言った。 「キョン君、この人は未来のあなたなんです。それは間違いありません。そしてこの人の目的は…」 いけ好かない未来人が割って入った、しかもまたとんでもないことを言い出した、俺はその言葉にこいつがジョンスミス…つまり俺なのだということ以上にショックを受けた。 「涼宮ハルヒと朝比奈みくるの暗殺だ。もちろん過去の自分であるお前は殺さない、俺が存在できなくなるからな。」 なんだって?未来の俺が朝比奈さんやハルヒを殺す?一体全体何があったら俺はそんなことをするような人間になるんだ? 大体、朝比奈さんやハルヒを狙っていることを知っているはずの朝比奈さん(大)は何故何もしないんだろうかという疑問を朝比奈さん(大)に向かって視線に込めて送ってみた。 すると朝比奈さんは「まだ大丈夫です。」とだけ言った、まだ? そしてその未来人は続けた。 「俺の来た未来では朝比奈みくる、長門有希、古泉一樹、涼宮ハルヒはとっくに死んだ人間になっている。 涼宮ハルヒ、朝比奈みくるは俺に殺され、古泉は神人に敗れ、長門有希は朝倉に殺された。 そういうことになっている。しかしこいつらを殺すのは長門有希、古泉一樹が敗れた後、俺も難しいことはわからないがその両名が敗れたショックでハルヒが完全に能力を失うらしい、恐らく自分の能力で友達が傷ついたことで自ら能力を消したんだろう。 そしてそんな能力を持った涼宮ハルヒを殺し、まあ口封じっって奴だ、そして朝比奈みくるからTPDDを奪い殺し、ほんのちょっと未来のお前に渡してやるんだ。それで万事解決だ。」 いやいやいやこれはないって、絶対ないよ。何で朝比奈さんまじめな顔してんの?こいつおもしろいこといってんだから笑ってあげなよ。 などと考えていたらやっぱり朝比奈さんが「全部本当です。」 …やれやれ。 そしてその未来人は喜んでいいのか泣いたらいいのかわからんことを言った。 「そこでだ。当然朝比奈みくるのふけたほうがここにいるってことは当然勝ち目もあるってことだ。なぜか2つの異なった未来が繋がってしまったらしいからな、それも涼宮ハルヒの影響か?それに全部規定事項って奴ですか?朝比奈みくる。まあどうなるかはお前しだいって奴だな。まあがんばれよ」 朝比奈さんによると全部事実で間違いなさそうだ。 奴の言うと通り、俺達が勝つ道もあるみたいだしな。 って言うことはやっぱり長門、古泉を何とかしないとだめみたいだ。 長門、古泉両名が死ぬまでこいつはハルヒや朝比奈さんみたいに手をだぜないみたいだし。 長門は何とかなるとして、まず古泉を何とかしてやろう。 第六章
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「なによ。ずいぶんとご機嫌ね?」 カーペットに寝転んでTVを見てるのは親父。いい大人が日曜の朝からアニメ見ておもしろい? 「そうとも。気分がいい。だが、お前には負けそうだ」 「どういう意味かしら?」 「年頃の娘の幸せそうな姿を見るのは親冥利に尽きるが,男親としては寂しさに悲しさが添加されるようだ」 「な・に・が・言いたいのかしら?」 「ハル、お父さんと遊んでいいの? 思ったより時間過ぎてるわよ」 と助け舟を出したのは母さん。どっちにとっての助け舟かしらね。 「ええ、うそ。やばい。じゃ、行ってくるね」 「まて娘。行きがけの駄賃だ」 そういってバカ親父が何か放ってくる。と、と、と、キャッチ。え、あたしの携帯? 夕べ、居間でテレビみながらメールして、そのままだったんだ。 「心配するな。何も見てない。それから充電なら、しといた」 何も聞いてないでしょ! ……見てたら殺すけどね。 「楽しんでこい。だが、孫はまだいらんぞ」 「母さん、グーで殴っといて。いってきます!!」 「はいはい、いってらっしゃい」 ああ、もう! だから親父が家にいると、調子狂うのよ! 今日だって、ほんとだったらキョンに迎えに来させるはずだったのに。キョンの奴、「俺はかまわんぞ」って言ってたけど、あたしがかまうの! あんなセクハラ親父、見せられないわよ。こんなあたしを見せたくない、ってのもあるけど。 「いっちまったか」 「お父さん、さみしそうなのに、何だかうれしそうですね」 「何故だか当てたら、母さん、デートしよう」 「そうですね。とてもいいお天気で、お洗濯日和だこと」 「わかった、ヒントを出そう。これ、なーんだ?」 「お父さんの携帯でしょ。……あなた、まさか? またハルに怒られますよ」 「俺の娘のくせして、機械に弱いからな、あいつ」 「機械に弱いというより、せっかちなんですよ、お父さんに似て」 「『携帯なんて電話とメールができれば十分よ!』って、どこの親父かと思うよ」 「で、何したんですか?」 「あいつはマニュアルなんて絶対読まないからな。自分の携帯の機能も知らないんだ。母さん、最近の携帯にはGPS機能というのがあってな」 「はあ。なんだか、わかっちゃいましたよ」 「さすがだな、母さん。デートしよう」 「はいはい。でもハルの邪魔しちゃ駄目ですよ」 「それぐらいの慎みはある。だが歯止めが効かない恐れもある。だから、母さん」 「デートというか、お守りじゃありませんか。……すこし支度に時間がかかりますよ」 最悪よ、最悪。 集合場所(じゃなくて今日は待ち合わせ場所よね)には約束の10分前に着いたわ。予定では30分前につきたかったとこだけど。 物陰から恐る恐る覗くと、キョンの奴はまだそこにはいなかった。そこにはね。 「なにしてるんだ、ハルヒ」 「!」 いきなり背後から声かけないでよね! 「あたしがどっかのスナイパーなら、撃ち殺してるところよ……」 じとっとした目でにらんでやる。 「おれも今来たところだ。どっちにしろ、今日は俺のおごりだから、安心しろ」 缶コーヒーを二つ持って後ろから登場したキョンは、はあ、とため息をつく。でも、不機嫌というわけじゃないわね。まあ、これはもう癖みたいなものね。多分。 「あんたの情けは受けないわ」 キョンの奴は一瞬あ然として、それから吹き出した。 「な、なんで笑うのよ!」 「いや、すまん。というか、おれはおまえに情けをかけた覚えは一度だってないぞ。まあ、かけられた覚えもないが」 まだ笑ってるし。何がそんなにおかしいのかしら。 「し、知ってるわよ、そんなこと」 少しくらいは、優しくしてくれてもいい、と思う時もなくはないけどね。まあ、いつだって、ある意味「やさしい」のだけれど。特殊すぎて、時々腹が立つわね。 「出掛けに何かあったか?親とやらかしたとか?」 それに、普段は極端に鈍いくせに、時々ムダに鋭い。わざとやってるんじゃないかしら。 「親父と、ちょっとね」 「ケンカか?」 「ケンカというか、いたぶられた、わね」 なに、その「お前がか?」みたいな顔は。むかつくわね。 「まあ、おまえの親だもんな」 「どういう意味?」 あたしじゃなけりゃ、頬をはられて一発で退場ものよ。 「別に。まあ、強いて言えば、俺にも据えられる腹がなくはない、ってことだ」 「意味分かんない。ああ、言わなくいい!」 あたしは、このバカの手を引いて歩き出す。この場で、これ以上の言葉は不要だわ。 「用意できたか。じゃ、出発!」 「ハルとは2時間遅れですけど」 「小娘には、それくらいのハンディはやらんとな。俺も鬼じゃない」 「……これで、結構仕事ができるっていうんだから、不思議ね」 「うん。多分世の中には2種類の人間が要るんだな。一つは壊す人間、もう一つは修復する人間。壊す人間がいるから新しいことが起こるし、直す人間がいるから毎日が続いていく。俺やハルヒは壊す方だし、おまえや、えーと……」 「キョン君」 「そうそう、そのキョン君は、直す方の人間だな」 「苦労しそうですね」 「俺は仲良くなれそうな気がする」 「不憫になってきますよ、キョン君が」 「なあ、おまえの家って、普通か?」 「はあ?なに?」 「ああ、NGワードだったか。いや、ただ家族仲とか、どうだと思ってな」 「それを知って、あんたはどうしてくれる訳?」 「ふう。確かにできることしかできないけどな。手順を踏めば、もう少しできるかもしれん」 「どういう意味?」 「いや、とにかく、雑用係にも、愚痴ぐらいは聞けるって話だ。おまえが話したいこと限定でな」 「いまは雑用係に用はないわ」 「そうか。じゃ、暫定彼氏志望者じゃどうだ?」 「・・・」 「……黙るなよ。情けないが、これでも、なけなしの勇気なんだ」 「出直してきなさい。あと『志望者』ってのは、外してきて」 「へ?」 「あー、もう、うっさい。あんたが変だから調子狂うわ。どうしちゃったのよ、今日は?」 「知らん。……父親って聞いたらかな?」 「言っとくけどね!」 「……おう」 「あたしは親父似だからね!」 こ、こらキョン、なんでそこで笑うのよ!バカにしてんの!? 「おまえはキョン君に何度か会ってるんだろ?」 「ええ。よくハルを送って来てくれますし、遊びに来たことも何回か」 「拗ねてるように聞こえるかもしれんが、初耳だ」 「ええ、はじめて言いましたよ。拗ねてるんですか?」 「正直言うと拗ねてる」 「私は感謝してますよ」 「俺だって感謝してるよ。娘と軽口を言い合える日が来るなんてな。うれしくて頬刷りしたくなる」 「愛情表現が相変わらず下手ですね」 「いまのは冗談だぞ、母さん」 「私のも冗談ですよ」 「ハルヒの中学時代を思うとな」 「あら、『俺はハルヒを信じる。信じて待とうと思う』と言ってたじゃありませんか」 「父に二言はない。が、つらくなかったと言えば嘘になる」 「ハルヒ似のお父さんが、よく切れずに我慢しましたね」 「それ、ほめてくれてるんだろうが、ハルヒが俺に似てるんだ」 「どっちもどっちですよ」 「いや、時間の順序とか、遺伝とか、そういうのがあるだろう」 「冗談ですよ」 「で、母さん。映画と買い物と、どっちがいい?」 「映画見てから買い物するか、買い物してから映画を見るか、ですね」 「買い物はいいが、あまり荷物になると、映画も見にくいし、第一フットワークが悪くなる」 「あら、その後、追いかけっこでも?」 「娘と彼氏を追い回す、いかれた親父か。悪くないな」 「一生、口を聞いてもらえなくなりますよ」 「まあ、荷物なんか預けてもいいし、送らせてもいいか」 「とりあえず映画見てから、買い物で時間をつぶしましょうか」 「で、キョン君って、どんな奴なんだ?」 「そうですねえ。一言では言えないけれど、やさしい子ね」 「最近の男はみんなやさしいぞ。中には例外もなくはないが」 「ハルがどんなわがまま言っても、照れ隠しに怒っても、許してくれる。でも、ハルのためにならないと思ったら、嫌われようが苦言するし本気で怒ってくれる」 「ほんとはその役をやりたかったんだ」 「お父さんは何をやっても、真剣に怒っているときも、どこか楽しげですもの」 「そうでもない。特に娘に『楽しんでる』『好きでやってる』といわれのない非難を受けることほど悲しいものはないぞ」 「ハルはお父さんにはそうあって欲しいのよ。でも私はハルがちゃんと涙を流せる女の子に育ってうれしいわ」 「……」 「どうかしました?」 「いや、黙ったら少しは悲しげに見えるかなと思って」 「自分で解説が必要なら、まだまだですね」 「キョン君に聞いといてくれ。ハルヒの叱り方」 「『親のプライドが微塵もない』ってハルの声が飛びそうですねえ」 「あいつときたら、父親をグーでなぐるんだぞ。俺のお仕置きビンタはスウェイでかわすくせに」 「そんなの教えたの、お父さんじゃありませんか」 「父親のこめかみにハイキックするんだぞ。父親に関節技つかう娘が他にどこにいる?」 「それでも少しも効いてない振りして笑っているからですよ。あ、でもハイキックはキョン君に叱られたみたい。『スカートの中とかいろいろ見えるだろ』って」 「……」 「なんですか、そのOh, my god!! みたいな身振りは?」 「感情表現が下手なんだ」 「『別に減るもんじゃないでしょ!』ってハルが言い返したら、『減るんだよ。俺のHPとかLPとか、なんかそんなのが』とキョン君が」 「そんな話したのか?」 「ええ、ハルが声帯模写付きで話してくれたのよ。『自分のものでもないのに何言ってんのよ!』とか、ぶつくさ言ってたわね。あら、私の声真似もなかなかいけてた?」 「ハルヒが母さんにいじめられている映像が、何故だか頭に浮かぶんだが」 「ええ。ハルが照れ隠しに不機嫌ぶるのがかわいくて、ついついからかちゃうんだけど」 「今度そういうことがあったら、喜びは二人で分かち合おう。写メで送ってくれ」 「そんなに変なのか、ハルヒの親父さん」 今日は日曜、俺的には近頃すっかり定番となった市内、もとい「市街探索」だ。参加者は、土曜に定例で行われる市内探索と違って、団長と団員その一。今、二人は移動中、電車の中で隣り合って立っている。 前の日の探索の終わった後か、その夜の電話などで、日曜の集合時間とだいたいの行き先が決まる。目的は「市内探索」と大同小異、つまりあってないようなものだが、参加者によってはいくらかの意見の相違はあるかもしれない。あっても別にかまわん。他人と付き合うのは、いやそういう意味じゃないぞ、異なる意見の持ち主と共にいること、なんだろう。多分な。 「変ってもんじゃないわ。あれはヘンタイの域に達しているわね」 「さっき、ハルヒは親父さん似だ、と聞いたような気がしたんだが」 「何か言った!?」 「いや、続けてくれ」 「娘を叱る時まで、おもしろ半分なのよ。一応、顔は怒ってる訳。でも、目がいかにも 『怒り顔、演じてます』って感じにニヤケてるの」 「気のせいじゃないのか?」 「ないわよ。叱り終わったら、さっさと隣の部屋へ行ったの。で、こっそり後付けてみたら、突っ伏して、文字通りお腹を抱えてるのよ!『すまん、母さん。限界だ』だって。母さんもその時ばかりは離婚を考えたって。あたしもそれで一時、人間不信に陥ったわよ」 突っ込んでいいのか、笑っていいのか、わからんぞ、ハルヒ。 「ある時、また親父のひどい悪ふざけで、何だったかは忘れちゃったけど、すごく頭にきて、親父のこめかみにハイキックをあびせたの。ああ、昔の話だし、あんたに会う前だし、部屋着に着替えてたし、スカートじゃなかったんだから、ノーカウントよ。……話もどすわ。とにかく親父の側頭部を蹴ったの。クリーンヒットだったわね。で、親父どうしたと思う? 屁でもないって顔でせせら笑ってるのよ。レバ—打ち→ガゼル・パンチ→デンプシー・ロールでとどめ刺そうとしたら母さんに止められたけど。ったく、思い出すだけで腹立つわ」 「子どもみたいだな」 おまえみたいだ、とは言わなかった。いかに俺でもそれくらいの空気は読める。というか、そう言った際の「不幸な俺」の映像を思い浮かべることはできる。 「そうよ、ガキなのよ、ガキ!」 「しかし父親と殴り合ってる中高生は、ざらにはいないと思うぞ。男女問わず」 「誰と誰が殴り合ってるのよ!? 向こうがこっちに一方にやられてるんでしょ。直ちに修正しなさい!」 「いや、ハルヒのケリを頭にくらって立っていられること自体、想像しにくいんだが。お前の親父はレスラーか何かか? 首まわりがお前のウエストより太いとか?」 「フツーのサラリーマンだと言い張ってるけどね。ああ、でも『相手の攻撃をよけてもいい格闘家がうらやましい。どんな技でも一度は受けるのがプロレスラーだ』とか、ふざけた台詞を吐いてたことはあったわ」 「ハルヒ、それに似たようなセリフ、俺もマンガで読んだことあるぞ」 「ああ、そうなの。それ知ってたら、その時突っ込んでやったのに」 やれやれ。なんだかハルヒの無駄な攻撃能力の育成環境を垣間見た気がする。 「お父さん」 「なんだ、母さん?」 「ロードショーじゃなくて名画座、というのはいいんですけど」 「すまんな。実は古い映画が好きなんだ」 「それは知ってますけど、この3本立て」 「ルトガー・ハウアー特集。『ブレードランナー』(1982年)、『ヒッチャー』(1986年)、『聖なる酔っぱらいの伝説』(1988年)。うむ、確かに右肩下がりだな。いい役者なんだが、この後、いい映画と役にめぐまれなかった」 「それはいいんですけど」 「あとサム・ペキンパーの『バイオレント・サタデー』(1983年)とリチャード・ドナー 『レディ・ホーク』(1985年)があれば完璧だったんだが」 「お父さんの見た映画は大抵見るようにしてるんですけど」 「それは、なにげにすごいな」 「『ヒッチャー』って、デートで見に来るような映画だったかしら?」 「ご立腹はごもっとも。しかし、いささか都合があってな。これ」 「携帯?」 「実は今さっき、ハルヒの携帯に特殊なメールを送った」 「大丈夫なんですか?」 「問題ない。このGPS機能のおまけだ。そのメールを送ると、ハルヒの携帯から、現在いる位置情報を知らせる返信メールが俺の携帯に来る。すると、地図の上にハルヒの現在位置が表示されるというシステムだ」 「いくら熱々カップルでも、メールが入ったら気付くんじゃないかしら?」 「恋する乙女の手を煩わすまでもない。今朝、ハルヒの携帯をいじって、『GPSメールを自動返信』モードにしといた。もともと迷子や徘徊老人の位置把握に使う機能なんだ」 「おもしろがって、その説明をハルにしないでくださいね。種明かしとか言って」 「駄目か?」 「そんな肉を川に落とした犬のような目で見ても駄目です」 「あいつの怒った顔を見るのが、唯一の生き甲斐なんだ」 「寂しい老後ね。いずれは出て行く娘ですよ」 「キョン君に婿に来てもらえばいい。あいつは話せる奴だ、多分」 「まあ、会ったこともないのに」 「もうすぐ会えるさ。だが今はまずい」 「どうしてです?」 「演出上の都合だ。さっきチェックしたところ、あいつらも映画を見るらしい」 「ロードショーを、ですか?」 「そう。だからあの界隈をうろうろしたくない」 「お父さん、嘘と尾行は下手ですものね」 「そうなんだ。よくサラリーマン社会でやっていけると思う」 「では、こうしましょう。交換よ」 「携帯をか。で、どうする?」 「お父さんはルトガー・ハウアーをご覧になって。私は買い物と尾行を楽しみます」 「母さん、今日はデエトだぞ」 「発音を気取っても駄目よ。デートなら、嘘でも私とルトガー・ハウアーを見る必然性を力説しなきゃ」 「ダシに使ったみたいで悪かった。素直じゃないんだ。ツンデレなんだ」 「本当にルトガー・ハウアーが見たかったのね」 「そっちじゃない。いや、完敗だ。最初から勝てる気がしない」 「では集合時間を決めましょ」 「12時半に○○屋(本屋)の哲学・思想書コーナーでどうだ? 誰も近づかん。その時間でもすいてるぞ。なんなら合言葉も決めようか」 「じゃあ、私が『ハルヒ』といったら、あなたは『キョン』ね」 「逆にしないか? 父親の男心も察してくれ」 「いいけれど、ダメージという点では同じじゃないかしら」 「本当だ。ハートブレイクだ、母さん」 「はいはい。じゃあ、また後でね」 「映画、よく見るのか?」 キョンが尋ねる。映画館でする質問じゃないわね。間抜けっぽい。キョンらしいといえば、キョンらしいけど。 「そうでもないわ。親父は家にいると絶えず何か見てるけど。多分、その反動ね」 キョンはいつものように少し困った風に笑う。あたしの方がもっと自然に笑ってるわね。それは多分、こいつの前だから。以前は少し悔しい気がしたけど、今は認めてあげるのもやぶさかじゃない。というくらいには、寛大になれた気がする。「寛大」というには、ほんとは程遠いけどね。はあ、自分につっこむ癖がついた気がするわ。誰のせいかしらね。 「で、今日の映画、おもしろいんでしょうね?」 「正直よくわからん。ふつうの映画とごくふつうの映画とへんな映画とすごくへんな映画があったんだが」 「なによそれ?」 「今、この辺りでやってる映画だ。あとは、怖い映画とすごく怖い映画だったな」 「すごく怖い映画がよかったわね」と言ってやると、キョンの顔に少しだけど焦りの色が見える。そこはポーカーフェイスで華麗にスルーでしょ。いつもみたいにやる気なさそうな顔でいいのよ。あたしはニヤリと笑ってやる。 「まあ、ヒロインが白血病で死ぬとかでない限り、暴れ出さないわよ」 声には出さないけど、やれやれ、って言ってる顔ね。 「まあ、『暴れる』と口で言ってるうちは大丈夫か」 うっさいわよ、キョン。 「ハルヒ」 「キョン。……母さんの言うとおりだった」 「何がです?」 「映画だ。『ヒッチャー』。確かにデエトで見る映画じゃない」 「そうですよ」 「ごついおっさんが、若い者を延々と追いかけ続けるんだ。自己嫌悪だ」 「あらあら」 「殺しても死なないんだよ、そのおっさん」 「ルトガー・ハウアーですから」 「それでさらに、若い者を延々と追いかけ続けるんだ。自己嫌悪だ」 「お昼、どうします?」 「携帯、とりかえてくれ」 「はい」 「ピ。ピ。ピ。……おいおい」 「どうしました?」 「あいつらだ。高校生らしく、ファストフードで済ませると思ったんだがな」 「この地図、小さいわ。どの辺りにいるのかしら」 「ここだ。こじゃれたイタメシ屋なんかあるところだ」 「よくそんな細かいところまでわかりますね」 「この辺りのメシ屋、ゲーセンの類いはすべて暗記した。基本だ」 「少年課の刑事さんみたいね。娘に似て、無駄に高いスペックね」 「娘が俺に似たんだ。……無駄に高いか?」 「キョン君が奮発したんですよ、きっと」 「イタメシ屋か? ランチだと1500円からある」 「そこまで覚えてるの?」 「基本だ……無駄に高いかな?」 「ええ、きっと。でも、嫌いじゃありませんよ」 「よかった。凹むところだった」 「で、鉢合わせはまだ避けたいの?」 「劇的な登場と行きたいもんだ」 「すてきな昼食と、わたしたちもいきたいわ」 「ガキが来そうにないそば屋があるんだが。そのイタ飯屋からすると駅を挟んで反対側だ」 「落ち着いて食べられそうね。天ざるなんて、どうかしら?」 「人におごりたくなるほど、うまいのが食える」 「すてきね。ごちそうになるわ」 「イエス、マム」 映画は可もなく不可もなく、といった感じだった。 泣かせどころが2〜3カ所、笑いどころが5〜6カ所。まあ,普通に「へんな映画」だったわ。 それも、前半はハラハラドキドキ手に汗にぎって見てたのに、後半はグーグーいびきかいて寝てる奴ほどではなかったわね。呆れるのを通り越して、笑えたわよ。 言い訳がまた古典的というかベタというか、「明日が楽しみで、夕べ寝られなかった」と。あんた、何時代の人間よ? 思いついても普通口に出来ないわよ。事実なら、なおさらね。 まあ、あたしも終わり三分の一は寝てたし、この件はこれ以上追求しないわ。あんたも忘れなさい。いいわね、キョン? いいのよ。こういうのは何を見るかより、誰と見るかが,重要なのよ。自爆?どこの誰が? へえ、あんたも言うようになったわね。でも、顔真っ赤にしてちゃ説得力は1ピコグラムもないわよ。うっさい。トマトとか言うな。指をさすな。小学生か?! ……ああ、待って。以後、恥ずかしいこと言う度に一回、グーで殴るから。はい、どうぞ。 ……ヘタレ。いくじなし。 まあ、食事は、おいしかったわね。 「ほんと、食べてる時は幸せそうだよな」 わるい? おいしいもの食べて幸せになるのは当然よ! 何食べても見境なく笑ってたら多幸症だけどね。あんたも、あんなにおいしいお弁当、持ってきてるんだから、笑顔で幸せを噛みしめて食べなさい。あれは、いつ取られるかわからんから、周囲を警戒してる表情だ? 上等よ、表へ出なさい! あ、そ。確かに混んでるしね。随分、並んでるわね。で、この後どうするの? はあ、誘ったの、あんたでしょ。しょうがないわね。ほら。何かって? 見てわかんない? 怪しげな収蔵品を展示してる博物館というか室内テーマパークの割引券。新聞屋が置いて行ったのよ。うっさい。行くの?行かないの? あたし?行くに決まってるでしょ。じゃあ、早く来なさい! 「で、どこで劇的な登場をするんです?」 「俺の計算だと、黄昏どきの展望台だな。みんな景色を見るふりをして、お互いを見ないお約束だから、若いアベックの宝庫だぞ」 「そこに乗り込むの?」 「命知らずだろ? 惚れたか?」 「あの二人、照れ屋だから、いっそ観覧車にするかもね」 「だから町の中にあんなもの建てるのは反対だったんだ」 「ロンドン・アイ、ふたりで乗ったわよね?」 「テームズ川は、心のふるさとなんだ」 「いいところでお父さんが現われたら台無しよね」 「馬に蹴られるような真似はしない。登場はその直後だ」 「『口づけを交わした日は、ママの顔さえも見れなかった』」 「なんだ、それ?」 「歌の歌詞ですよ」 「クールな自分を見失いかけた」 「ふつうですよ」 「目がきょどってないか?」 「ふつうよ」 「まあ、観覧車には爆破予告の電話をするとして、だ」 「いいけど、オカマ声はやめてね」 「母さん、念のため言っておくが、あれは悪ふざけだ」 「知ってるわ」 「信じてくれ」 「はいはい」 「結局、私たちが乗ることになったのね、観覧車」 「何事も予習復習だ。俺は照れ屋なんだ」 「行き当たりばったりも素敵よ。期待以上の事が起きるかもしれないし」 「たしかに。ぎちぎちのスケジュールだと、そもそもサプライズの生じる余地がない」 「どうしたの? 『しまった』って顔して」 「今のをハルヒに伝えるの忘れてた。ああ、親らしいこと、何もせずじまいだ」 「平気よ。どうせ聞く耳もたないもの」 「だが、母さん。あれは、ああ見えて勝負パンツをはいていくような娘だぞ」 「『お父さんの親心は、おじさんの下心』よ」 「なんだ、それ?」 「ことわざですよ」 「新しい自分を見つけ損なった」 「よかったですね」 「声、うらがえってないか?」 「大丈夫」 「しかし、こんな密室に二人きりで向かい合って、恥ずかしくて死ぬんじゃないか?」 「同じ側に隣り合って座る手もあるわね」 「ああ、それならお互いの顔を見なくて済む」 「こんなに近くにいるのに、もったいないわね」 「俺たちも、いいかげん素直になろう」 「あら、私はずっと素直ですよ」 「わかってる。我が家でツンデレは、俺と娘だけだ」 「三分の二いれば、憲法も変えられますよ」 「そうなのか?」 「違ったかしら」 「眼下の下界を見ろよ。人間がアリのようにたかってる」 「夜景には早いけれど、きれいね」 「母さん、吊り橋効果って知ってるか?」 「ええ、保健の時間に習いました。たしかシャクターの情動二要因説(1964)やダマジオのソマティック・マーカー仮説(2000)と一緒に」 「そうなのか?」 「違ったかしら」 「さあ、たっぷり楽しんだな」 「そうですね」 「あとは、若い連中をからかいに行くだけだ」 「ひかえめにね。『やーい、やーい』は、やめてね」 「あれ、嫌がるんだぞ」 「されるのが嫌というより、『これが自分の親』と思うのが嫌みたいですよ」 「うまいぞ、母さん。『親』と『嫌」をかけたんだな」 「いいえ」 「他に禁則事項はないかな?」 「女の子だから、残るような傷はちょっと」 「顔以外の傷は、見たらクーリング・オフは認めんぞ」 「ハルが小さい頃は、毎日、なま傷だらけで。きれいに治ってよかったわ」 「男の子がするような遊びしかしなかったからな」 「息子の方がよかったの?」 「息子だったら、俺が殺されてるか、殺してるよ」 「そうなの?」 「ああ、俺が息子だったらそうしてる」 「ふふ、ハルヒが女の子でよかったわ」 「心底そう思う。だが、うまく伝わらないんだ」 「表現方法を変えてみたら?」 「今度そうする。だが、恥ずかしくて死にそうだ」 「それもいい手かも」 「生まれ変わったら試してみる」 「あの子たち、この中にいるの?」 「隣のビルとつながってるチューブみたいのがあったろ。あれが展望台なんだ。今だと、夕日が正面でロマンチックだ」 「このロビーで待つの?」 「あそこの色の違うエレベータが展望台直通のやつ。あいつらは事がすんだら、あそこから出てくる予定だ。そっちに喫茶があるから、座れるし、お茶も飲める」 「ハルヒ、それとキョン君だったかな? Comment allez-vous?(コマンタレブー)」 「な、なにしてるのよ!?こんなところで」 「母さんと二人で青春してるんだ」 「まさか、つけてきたの? 最低!!」 「自分ばっかり幸せになれると思ったら大間違いだぞ。幸せは分かち合うもんだ」 「母さんまで、この悪魔に魂売ったの!?」 「キョン君、君はまだやり直せる。いっしょに日本へ帰ろう!」 「キョンに指一本でも触れたら承知しないわよ!」 「ラブラブだな、このツンデレ娘」 「親父にだけは言われたくないっ!」 「じゃあフラクラか?」 「娘相手にどんなフラグ立てようっての?」 「死亡フラグ」 「覚悟はできてるようね!」 どうしたらいいのか、いや何がはじまったのか、見当もつかず途方に暮れていると、いきなり襟首をすごい力でひっぱられた。 ハルヒ?は前にいるよな、ってハルヒの母さん? おまえのアレは、母親ゆずりだったのかよ。 「少し離れて見てましょうね。キョン君までケガしたら大変」 「止めなくていいんですか?」 普通は娘の心配をしませんか? 「もう無理よね。こんなにおもしろいもの」 ああ、最後の頼みの綱だったが、この人も駄目だ。 「仕事で家を空けることが多いせいかしら。会うと愛情表現が過激になっちゃうみたいなの」 ころころ笑うところじゃありません。 「ハル、今日はキョン君も呼んで夕食よ。母さん、本気出すから、早くしとめて帰りましょう」 ハルヒは顔は敵(父親)に向けたままだが、親指を立てて(いわゆるサム・アップだ)、多分「OK」の返事をした。 「いつもは、本気じゃないんですか」 と、当たり障りなくて、どうでも良さそうなところに突っ込んでしまう。 「そう毎日だと家計がねえ。普段はどうしても時間とか値段とか効率を考えてしまうの。今日はそういうリミッターなしだから、楽しみにしててね。『さすがハルヒの母さんだ』ってところをお見せするわ」 すみません。俺にはお見せできるようなものが何もないみたいです。 「いいのよ、そんな」 「今はこれがせいいっぱい……」 どこかで聞いたようなことを言って、俺は闘争オーラの震源地へ、びびりながらも2歩、3歩踏み出した。 「一家団欒のところお邪魔してすみません」 「キョン君、下がっていろ。手負いの娘が何をするかわからん」 「このバカ親父!!」 俺はすうと息を吸い込んで、低く押さえ込んだ、しかしよく通る声の出し方で言った。 「おいハルヒ、やめとけ」 「うっさい、邪魔するな!!」 「やめないとな・・・別れるぞ」 「「!!」」 音速の壁を越えて父と娘が同時に俺につかみかかってきた。ああ、ハルヒのお母さん、後のことはお願いします。 「お、親の前で、だ、だ、だれが、あんたと、つ、付き合ってるみたいなこと言うな!!」 「……」 「親父、何黙ってるのよ!!」 「いや、突っ込もうか、おちょくろうか、嬉しいような、寂しいような、複雑な心持ちでな。ところでハルヒ」 「なによ!?」 「キョン君、もうオチてるぞ」 「あ」 親の前だとか、いきなり既成事実だとか、パニっくって力の加減ができなかったとか、言い訳はしたくない。結局、意識を失ったキョンは親父が蘇生させて、そのまま親父がおぶって帰った。あたしが、と主張したんだけど、 「若い兄妹を売る奴隷商人に見られたらかなわん」 という訳のわからない親父の言い分が通ったのだ。無理を通せば道理が引っ込むって奴だわ。 母さんは母さんで、キョンの家へ電話をして何やら調子の良い嘘話をこさえて(確かにうちの娘が息子さんの首を絞めましたので、夕食を食べていってもらおうかと、とは言えないわよね)キョンの親御さんを説得し、その前に電話してあったのか、話が終わって建物の外に出ると、タクシーが私たちを出迎えていた。親父とキョンと母さんが後ろに乗って、あたしは一人、運転手さんのとなりの前の席。母さんが無言でそう促したのに従った。 キョンといるところをうちの親に見られて、ううん、うちの親をキョンに見られて、どうしようもないくらい動揺してたのは確か。怒りをあおった親父に乗ったのも,混乱と照れを隠すため。そこにキョン、あんたまで乱入してきて、さすがの私もオーバーフローよ。パニックにもなるわ。でも、あんた、あたしを止めようとしたんだよね。それくらい、分かるよ。分かる過ぎるくらい。あんたがどういう奴で、あの場面に居合わせたら、何を考えて、どうしようとするかぐらい、百もお見通しよ。だから,今は自分が情けない。 「おい、こいつ。なかなかやるな」 バカ親父が何か言ってる。もう黙っててよ。娘が泣いてるのに、責任ぐらい感じなさい。 「『こいつ』なんて呼ばないでよ。ちゃんと『キョン』って名前があるんだから」 「『キョン』は、ちゃんとじゃないだろ……。わかったよ。キョンはすごい奴だ」 「『キョン君』でしょ」 「はいはい。キョン君は、なかなかのもんだ」 「キョンが目覚ましたら、その無駄口、ふさいでよね」 「混乱に混乱を、か。ベタだがなかなか思いつかん。思いついても普通は選択せん。ずいぶんと修羅場をくぐってるのかな、この若者は?」 「知らないわよ」 「おいおい、知らなくていいのか?」 「知ってても、あんたに言う必要ないわ」 「そりゃそうだ」 親父はそっぽを向いて、アヒルみたいに口をとがらせる。子どもみたい。恥ずかしいから止めて。 「昔、父さんの親友二人がな、ちなみに男と女で、そのうち夫婦になるんだが、ちょっとしたレストランで痴話喧嘩を始めた。気性の荒い二人でな、飛び交うのは怒号だけじゃすまなくなって、両方が同時にナイフとフォークを握りしめて立ち上がった。俺はそいつらの向かいで飯を食ってたんだが、店中の人間が父さんを注目しているのに気付いた。『止めてくれ』ということらしかった。その国の言葉は、まだあんまり得意でなかったんで、細かいことはわからんが。父さんは、とっさに自分たちが食事していたそのテーブルを蹴り飛ばしてひっくり返す手を思いついた。でかい音と衝撃で、気をそげるかもしれんと思ったんだ。だが、実行は躊躇した。テーブル・マナーはいくらか教えてもらったが、犬も食わないケンカにテーブルを蹴飛ばしても可、なんて常識はずれもいいところだからな。もう一度、他の手はないか考え込んだ。父さんも若かったから口では『常識なんてくそくらえ』と言っていたが、いざそんな場面に投げ込まれると、自分が骨の髄まで常識に染まってるのを思い知ったよ。結局、父さんがテーブルを蹴飛ばすよりも早く、女のフォークが男の胸にぶすり。……ハルヒ、全然信じてないだろ、今の話」 「親父、その話、怪談になってる」 「しょうがない。母さん、胸の傷を見せてやれ」 「バカじゃないの。刺されたのは男でしょ」 「そうだ。言ってなかったが、母さん、昔は男だったんだ」 「だったら、あたしはどこから生まれたのよ」 「そりゃ、おまえ、コウノトリをおびきよせて孕ませたんだ。だが、そのコウノトリは本当はハゲタカだったんだ」 「母さん、このバカ、いますぐ捨ててきて」 「父さんは、この若者、気に入っちゃたな。お前が捨てるなら、俺が拾うぞ。お前にオトされるようじゃ、少々線は細いが、なに海兵隊に2年もぶち込めば、口で糞たれる前と後にSir.をつける立派な若造になる」 「訳わかんない。捨ててないし、勝手に拾わないで」 「今時の若いもんを見直したってことだ。……よし、来年は冬コミにサークル参加するぞ」 「はあ?」 「サークル名も決めた。涼宮家を大いに盛り上げるソフィスケイトされた大人の団、略してSOS団だ。ガキは入れないから安心しろ」 「母さん、親父が壊れた。新しいの買っていい?」 「はいはい」 はいはい、じゃないでしょ。誰か何とかして。キョン、いいかげん目をさましなさいよ。や、やっぱ駄目。寝てなさい。目が覚めても寝たふりしてて。 気がつくと、事態は修羅場から、魅惑の食卓へと激変していた。 俺たちはナプキンなどつけ、出ては下げられ、また出ては下げられていく何枚もの皿の上の料理を食べている。 「お、おい。ハルヒ」 「なによ。ちょっと、顔が近いって」 「すまん。しかし、これ家で出てくるような料理じゃないぞ」 「あの人は無駄になんでもできるのよ。若い頃、フレンチの店、してたこともあるみたいだし」 「まじか?」 「金持ちのじじいに金出させて、店出したんだって。シェフもギャルソンもソムリエもピアニストも全部自分ひとり。テーブルも一つっきりで予約のみ。親父と出会うまで続けてらしいんだけど。本人の話だし、あてになんないわ。『日本じゃないのよ』とか言ってたし」 「まじか?」 「小学校も途中までしか行ってないとか、14の時には日本にいなかったとか。そういう『伝説』みたいなことしか、自分のこと言わないの。たしかに語学は親父よりできるみたいだけど、発音はきれいだし。親父は何語しゃべってもカタカナね。あれでよく通じるわ。まあ母さんの方が、娘をからかわないだけマシだけどね。最近そうでもないけど」 そこで何故「じとっ」とした目で俺をにらむ? 「わかんないなら、いいわ。あ、親父、醤油とって」 「フレンチに醤油はないだろ?」 「何言ってんの?このソースにも使ってあるわよ。だったらソイ・ソースとって」 「それ醤油と同じだ。母さん、このソースだが……」 「ええ、使ってますよ、お醤油」 「……キョン君、お互い苦労するなあ」 「はあ」 「愚かしくもバカバカしい店があるんだが、憂さを晴らしに今度飲みに行かないか?新しい友情のはじまりだ」 「キョン、知らない親父に着いて行っちゃ駄目よ。死刑だから」 いや未成年だし。そんな店、行きたくないし。友人は選びたいし。親は・・・選べないんだよな。 「母さん、娘がグレた。次のと交換していいか?」 「次の、って何よ?」 「……教えない。だが、眼鏡っ子で巨乳とだけ、言っておこう」 「むー、巨乳は垂れるんだからね!」 論点が違う!・・・よな? おわり (別の日の食卓にて) 「そういえば、あたしが親父の頭を蹴って、親父が平気な振りして笑ってた話をしたら、キョンの奴、なんて言ったと思う?『子どもみたいだな』『でも、そういうの嫌いじゃないぞ、オレは』だって。ばっかじゃないの!」 「おお、心の友よ!!」 「あんたはジャイアンか!?」 ほんとにおわり ▲ページのトップへ