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http //www.okinawatimes.co.jp/day/200801301300_02.html 2008年1月30日(水) 朝刊 2面 首相、問題視せず/記述訂正申請 【東京】福田康夫首相は二十九日の衆院予算委員会で、昨年十二月に承認された沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書記述の訂正申請について「教科用図書検定調査審議会における慎重かつ丁寧な審議の結果に基づいていると承知している」と述べ、問題視しない考えを明らかにした。赤嶺政賢衆院議員(共産)の質問に答えた。訂正申請承認後、福田首相が「集団自決」問題で国会答弁したのは初めて。 赤嶺氏は検定審委員を務める筑波大の波多野澄雄副学長への聞き取りで、「集団自決への日本軍の強制の有無について審議会では方向性を出さなかった」との回答を得たことを説明。 審議会が訂正申請審議に際して取りまとめた「とらえ方」にも、軍の強制をどう位置づけるか明記されていなかったと指摘し「『とらえ方』に一言もないのに、なぜ軍の強制を訂正申請で削除したのか」と追及した。 これに対し、渡海紀三朗文部科学相は「強制性があったかなかったかについて、断定すべきだというとらえ方はされていない。当時の県民から見れば強制的といわれる事実があったと記述された申請も、承認されている」と述べるにとどめた。
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http //www.okinawatimes.co.jp/news/2008-12-12-M_1-028-1_003.html?PSID=dfd46d4a697989ed13f9b52af2883bf7 2008年12月12日【朝刊】 社会 審議会、文科省案了承/教科書検定 【東京】沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書検定問題を受け、検定手続き見直しを検討している教科書検定審議会作業部会は十一日、文部科学省が示していた改善策を盛り込んだ報告書案を大筋で了承した。二十五日の検定審の総括部会で正式決定し、塩谷立文科相に提出する方針。 改善策をまとめた教科書検定基準や検定規則は、来年四月以降の検定に間に合わすため、約一カ月のパブリックコメント(意見公募)を経て、来年二月上旬に官報で告示したい考え。 改善の在り方について「外部からの圧力がなく静謐な環境で自由に議論することが重要」と指摘。具体的な意見のやりとりや会議自体の公開は「審議に支障が生じる恐れがあり適当でない」とした。 報告書案で、今回の見直し論議に至った経緯を説明する部分に、昨年の沖縄戦をめぐる一連の問題が触れられていない点を問題視する意見も出た。ある委員は「なぜ文科相から審議要請があったかを書き込むべきだ」と指摘した。 一方、今回の報告書案について、「集団自決」訴訟の被告側を支援する市民団体などは十一日、文科省で会見し、「情報公開制度などで既に公開されているものを制度化するにすぎない。あたかも『改善策』のように見せかけ、改悪を進める狡猾なやり方だ」と批判した。 沖縄戦ニュース
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http //www.okinawatimes.co.jp/news/2008-10-31-M_1-001-1_003.html 2008年10月31日【朝刊】 社会 「集団自決」訴訟 きょう控訴審判決 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、座間味島と渡嘉敷島に駐屯していた旧日本軍の元戦隊長やその遺族が、住民に「集団自決」を命じたとする著作の記述は誤りとして、作家の大江健三郎氏と岩波書店に「沖縄ノート」などの出版の差し止めと謝罪広告の掲載、慰謝料を求めている訴訟の控訴審は、三十一日午後二時から大阪高裁(小田耕治裁判長)で判決が言い渡される。 今年三月の一審・大阪地裁判決は、「集団自決」に対する日本軍の深い関与を認め、両戦隊長による関与も「十分に推認できる」と判断。「自決命令まで認定するのは躊躇を禁じ得ない」としたが、各書籍に記載された事実には十分な資料や根拠があると結論づけた。 沖縄戦ニュース
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http //www.okinawatimes.co.jp/day/200803281700_01.html 2008年3月28日(金) 夕刊 1面 元隊長の請求棄却/「集団自決」訴訟 軍命に真実相当性/大阪地裁「深く関わった」 沖縄戦時に座間味、渡嘉敷島で起きた「集団自決(強制集団死)」は戦隊長が命じたとする本の記述をめぐる「集団自決」訴訟の判決が二十八日午前、大阪地裁で言い渡された。深見敏正裁判長は、大江健三郎氏(73)の「沖縄ノート」について、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏(91)と渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏への名誉棄損の成立を認めず、原告の請求を棄却した。梅澤氏が住民に「集団自決(強制集団死)」を命じたとする「太平洋戦争」(故家永三郎著)の記述にも真実相当性を認め、原告梅澤氏の訴えを退けた。原告側敗訴の判決で、梅澤氏らは控訴する。 判決は、梅澤氏の自決命令について、「自決命令があった」などとする体験者の証言を「実体験に基づく話として具体性、迫真性を有するもの」と認め、自決に軍所有の貴重な武器だった手榴弾が使われたことなどを指摘。「各書籍の記述どおりの自決命令」をそのまま認めることには「伝達経路等が判然としないため、躊躇を禁じえない」としたものの、「梅澤氏が集団自決に関与したものと推認できる」とした。 また、赤松氏の自決命令について、赤松氏がスパイ容疑で住民を処刑したことを指摘。米軍上陸後、北山陣地近くに集合した住民の元へ手榴弾を持った防衛隊員が現れた行動を「赤松氏が容認したとすれば、赤松氏が自決命令を発したことが一因ではないかと考えざるを得ない」とした。 さらに、「集団自決」に関する学説状況や「集団自決」への日本軍による強制を示す記述を認めてきた二〇〇五年度までの教科書検定の対応、大江氏、家永氏の取材状況などから「真実であると信じるについて相当な理由がある」と両著の記述の正当性を認め、慶良間諸島での日本軍の駐留状況などからも「『集団自決』については日本軍が深く関わったものと認める」とした。 一方、「『集団自決には軍命があった』という住民の話は、遺族年金をもらうための捏造」などとした、原告側証人の証言や文書は「証人の経歴や文書作成の経緯に照らして採用できない」とした。 沖縄戦での「集団自決」に対する日本軍の強制を示す記述を、高校の日本史教科書から削除させた二〇〇六年度の教科書検定で、文部科学省が根拠の一つに挙げており、今後の同省の対応が注目される。 ◇ ◇ ◇ 知事、妥当と認識/「体験伝えていくべき」 仲井真弘多知事は二十八日午前、「集団自決」訴訟判決で原告側の請求が棄却されたことについて、「正確には判決の中身を読ませていただきたい」とした上で、「やっぱりそういうものだったのか」と述べ、判決が妥当との認識を示した。 「集団自決(強制集団死)」に関しては、「証言されている一人一人は大変な勇気を持って表現されている。痛恨の体験をされた人々の気持ち、その社会的背景を含めて、きちっと伝えていくべきだと思う」との見解を述べた。
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http //www.okinawatimes.co.jp/spe/syudanjiketsu/jisso_wa01.html 教科書検定実相は遠く(上) 分かれる評価 (12月27日朝刊総合1面) 落胆と歓迎の声 交錯/強制 明確化を・記述ほぼ回復 「もうこれ以上のことはできないよ」 二十六日夕、国会内。県出身の安次富修衆院議員の携帯電話が鳴った。渡海紀三朗文部科学相からだった。 渡海氏は電話の直前、文部科学省で沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書六社・八冊の訂正申請を承認する手続きを終えていた。 年内の結論 「これが印刷ぎりぎりのタイミングだからね」 当初の目標だった「年内の結論」を実現した充実感を漂わせる一方、安次富氏が文科省の対応を一定評価した県民大会実行委員のコメントを伝えると、反応が変化した。 「あんまり喜ぶと…。立場があるから」と声のトーンを落として話した。日本軍の「強制」を削除した二〇〇六年度検定を評価し、今回の訂正申請の動きに反対する陣営への配慮だった。 矛を収める 県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」(会長・仲村正治衆院議員)は、文科省の布村幸彦大臣官房審議官らを通じ、訂正申請の状況を確認。承認される記述を事前に把握し、「矛を収める」(所属議員)方針を決めていた。 二十六日朝。上京中の県民大会実行委員が宿泊する東京・赤坂のホテルを西銘恒三郎衆院議員が訪ね、仲里利信実行委員長と面談した。 「発表される大臣談話を了とし、五ノ日の会として記者会見します」 これを受け、実行委は県東京事務所に移動。教科書記述の精査と、午後の記者会見に備えたコメント作成に着手した。 「記述の回復がほぼなされている」「県民の思いに真摯に応じていただいた」 会見で配布されたコメントには、記述をおおむね評価する文言が並んだ。伊波常洋幹事は「検定意見前よりもさらに踏み込んだ記述だ」と歓迎。玉寄哲永副委員長も「大臣談話に反省が含まれていないのは不満だ」とする一方、「それを言ってくれれば、事は片付いた」と限りなく「評価」に近い発言をした。 実行委の一人は会見後、「県民みんなで勝ち取った成果だ。実行委の役割はこれで終わった」。 納得できぬ ただ、県PTA連合会の諸見里宏美会長は「日本軍の強制を明確に打ち出してほしかった。がっかりした」と失望感を表明。 県内の研究者からは「納得できない。よっぽど軍命を認めたくないのだろう」(沖縄戦研究家の大城将保さん)などの指摘も挙がっており、関係者の間で評価は分かれている。(東京支社・吉田央) 「集団自決」をめぐる文科省の教科書検定問題で、六社・八冊の記述が修正された。体験者が主張する「軍の強制」の記述は認められなかったが、背景や要因など全体の記述量は増加。落胆と評価の声が交錯している。
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沖縄タイムス社の記事へ飛ぶ (魚拓) 2010年5月18日 10時01分 宮崎県で感染が拡大する口蹄疫(こうていえき)問題で、政府は鳩山由紀夫首相を本部長とする対策本部を設置、被害防止に本腰を入れた。農水副大臣らが現地で陣頭指揮する。 殺処分の対象となった牛や豚は8万頭を超え、国内で過去最大の感染拡大となっている。さらに広がれば、有数の畜産県が壊滅的な被害を受け、影響は全国に及ぶおそれがある。 徹底した被害予防を講じるほか、農家の支援に政府は万全を期してほしい。 口蹄疫は豚や牛、羊などひづめがある動物の家畜病で、発症すると口とひづめに水泡ができて発熱、やせ細って死ぬこともある。 空気感染するため、症例が見つかってからの被害拡大は早く、各国とも厳しい防疫体制をとっている。感染力が強く、有効な予防法が確立していないため、最もこわい伝染病の一つとされる。 国内での口蹄疫は、92年ぶりの2000年春に見つかって以来だ。そのときは宮崎県と北海道で740頭の牛が処分された。 先月9日に宮崎県都農町で和牛1匹に症状を確認した。感染報告は同月末に4000頭を超え、現時点では8万5700頭余に達した。前回より100倍以上とけた違いの被害が出ている。 今回は豚への感染も初めて確認された。牛よりも感染力が高く、5月に入ってからの感染は豚を中心に急増している。 被害は同県内にとどまっているが、感染力が強いだけに広い範囲で警戒が必要だ。 沖縄県は約4000戸の畜産農家に消毒用の消石灰を配布した。今月に入り家畜市場の開催を中止したほか、県外からの家畜持ち込みや、宮崎県を含む周辺地域からの飼料購入を自粛するよう呼びかけている。 農水省によると、宮崎県での感染は人や車両などの移動で拡散している疑いが強いという。観光客の出入りが多い沖縄では警戒を怠らないことが肝要だ。 畜産業が盛んな八重山では、関係者以外の農場立ち入り制限や感染ルートとなる車や機具類の消毒などに取り組んでいる。いったん発症例が確認された場合には一気に島内にまん延する恐れもあることから、関係者は不安を募らせている。 隣の台湾では1997年に400万頭近い豚が殺処分され、それまで輸出していた豚肉産業は壊滅的な被害を受けた。これらの被害を対岸の火事と油断してはならない。 消費者には冷静な対応が求められる。感染の疑いがある豚や牛の肉は市場に出回ることはないし、仮に食べたとしても人への影響はない。 九州内のスーパーで「宮崎産は使っていません」という張り紙が一例あり、九州農政局が撤去を求めた。また、近隣県の市役所が、南九州への旅行を自粛しよう、との文書を市民に配布した。風評被害をあおる過剰反応だ。 政府の対応は鈍い、との不満が地元にあるだけに感染封じ込めに全力であたってもらいたい。 5月 対応 防疫関係 風評被害
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http //www.okinawatimes.co.jp/day/200712271300_01.html 2007年12月27日(木) 朝刊 1・2・3面 「軍が強制」認めず/関与記述復活 「軍が強制」認めず/関与記述復活検定審の結論承認/文科省「意見は有効」 重く受け止める/福田首相 密室審議で灰色決着/文科省、体面に固執 「強制」に照準 「自主的」強調 制度改善遠く 知事は関与記述評価 「主張認められた」 県民への配慮必要性を強調 「関与」回復と県教育長評価 渡海文科相 一問一答 専門家9人から意見聴取 審議会の日本史小委員会委員は次の通り。(一人は本人意向で非公表) 検定審の結論承認/文科省「意見は有効」 【東京】高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する検定問題で、教科書会社六社から提出された八冊の訂正申請を審議していた教科用図書検定調査審議会(検定審)の杉山武彦会長は二十六日午後、渡海紀三朗文部科学相と会談し、審議結果の報告書を手渡した。これを受け、渡海文科相は全社の記述を承認した。「集団自決」について「日本軍によって追い込まれた」など軍の「関与」を示す記述は復活したが、「日本軍が強制した」など主語の「日本軍」と「強制」を直接つなげる表現は認められなかった。大半の会社が検定審の方針に沿う形で、「集団自決」の背景・要因を詳しく記述した。 一方、「集団自決」に関して「『強制集団死』とする見方が出されている」(三省堂)、「強制的な状況の下で追い込まれた」(実教出版)など、主語を明示しない表現に限って「強制」の文言が容認された。 九月二十九日の県民大会で決議された「検定意見の撤回」は検定審で議論されず、実現しなかった。記述が修正されたことで「事実上の撤回」との指摘も挙がっているが、文科省は「検定意見を変更するものではない」(伯井美徳教科書課長)とし、今後の検定でも有効との認識を示している。 検定審が承認した記述では、「集団自決」が起こった背景や要因として、六社のうち五社が「戦時体制下の日本軍による住民への教育・指導や訓練」(第一学習社)、「敵の捕虜になるよりも死を選ぶことを説く日本軍の方針」(東京書籍)などを詳述した。 清水書院も県内議会の意見書可決の動きを年表に記載した。 検定審は二十五日午後に日本史小委員会と第二部会(社会科)を相次いで開き、訂正申請された六社・八冊すべての記述について「承認することが適当」との意見を付すことで一致した。 日本史小委は審議の過程で指針に当たる「基本的とらえ方」をまとめ、文科省教科書調査官を通じて教科書会社側に伝達。「過度に単純化した表現」は「生徒の理解が十分にならないおそれがある」として、日本軍だけが住民に「集団自決」を強制したと読み取れる表現を事実上、禁じた。また、「集団自決」が起きた背景に複合的な要因があったことを詳述することなどを求めていた。 重く受け止める/福田首相 福田康夫首相は二十六日夜、沖縄戦の「集団自決」をめぐる教科書検定問題の決着について「記述を学術的、科学的に決めていく制度だから、われわれの口から良い悪いを言う立場にない。ただ沖縄県民の思いは重く受け止めている」と述べた。 ◇ ◇ ◇ 密室審議で灰色決着/文科省、体面に固執 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる日本史教科書検定問題が二十六日、決着した。県民の猛反発を受けた政府が、教科書会社の「自主的な」訂正申請を誘導する異例の展開。あくまで検定意見は撤回せず、実質的な記述復活で丸く収めようとする教科書検定審議会は、教科書会社と“密室”で交渉を続け、「軍の強制」は許さないが「関与」「心理的強制」は容認するという“灰色判定”で幕引きを図った。 「強制」に照準 「直接的な軍の命令を示す根拠は確認できていない」。十二月三日、検定審の日本史小委員会が三回目の非公開審議を終えた直後、各教科書会社の役員が文部科学省に呼び出された。個別に面談した教科書調査官からは「基本的とらえ方」と題する検定審の指針が口頭で伝えられた。 各社が十一月上旬に提出した訂正申請には、「強制」「強要」など軍の直接的関与を示す表現が盛り込まれていた。その内容変更を暗に求める指針の告示。執筆者の一部は反発したが、調査官は「調整」と呼ばれる各社との意見交換の場でも「強制」の文言を削るようさらに迫った。 教科書会社の立場は「一方的に指示を受けるだけで、質問すらできない」(社員)ほど弱いという。約一カ月後、各社は訂正申請をいったん取り下げ、軍による教育・指導で住民が自決に追い込まれた状況を詳述するなどした修正版を再提出。「軍が強制」の記述はきれいに消えていた。 「自主的」強調 だが一方で、いくつかの教科書は「軍によってひきおこされた『強制集団死』」「軍とともに死ぬ(『共生共死』)ことを求められた」など新たな記述を追加。全体としては「集団自決」と軍の関与についての記述が大幅に増える結果になった。 文科省幹部はこの間の経緯を「あ・うんの呼吸で決まった」と表現するが、ある教科書執筆者は「文科省と検定審は最後までメンツにこだわった。検定意見の維持という『名』を取る代わりに、沖縄戦の記述が増えたり、(軍の強制と)ほぼ同じ意味の表現になることは認めて『実』を捨てたんだ」と指摘する。 今回の検定結果について発表した文科省の記者会見。担当幹部は「あくまで教科書会社の自主的な申請に基づいたもの」「具体的な文言はすべて各社の創意工夫」と原則論を繰り返し、具体的な判断基準についての質問には「審議会のことなので」と応じなかった。 制度改善遠く さまざまな圧力の影響を受けない「静ひつな環境」を保つとの目的から検定審の審議は公開されず、議事録すらない。事実上の方針転換となった今回のケースも、代弁役の文科省が「当初の検定意見や審議に問題はなかった」と評価すれば、それ以上の検証は困難だ。 「透明性の向上や細やかな審議の必要性などについてさまざまな指摘があった」。渡海紀三朗文科相は二十六日、検定制度の改善を検討する意向を示したが、文科省の担当幹部は「具体的な改善策は、ケースに応じその都度考えていく」と慎重な姿勢を崩さない。 今回、修正を迫られた執筆者の一人は「今のままでは検定制度も教科書も信頼を失ってしまう。子どもにとってどんな教科書が必要なのかを、開かれた場でみんなで考える仕組みが必要なのに…」と危機感を強める。県民を巻き込んだ今回の“再検定騒ぎ”が将来の制度改善に資するかどうかは不透明だ。 知事は関与記述評価 教科用図書検定調査審議会(検定審)の審議結果について、仲井真弘多知事は二十六日、記者団に対し、軍の「関与」を示す記述が認められたことについて、一定の評価を下した。 県庁で、記者団の質問に答えた仲井真知事は「百点とはいえなくても、まずまずの配慮というか受け止め方を文部科学省がやっているのではないか。後退した印象を与える面もあるが、県民大会のマグマというかエネルギーを受けて、今の審議会や文部科学省で、ぎりぎり受け止めてもらったという線まで来ているのではないか」との見方を示した。 教科書会社からの訂正申請に伴って、「集団自決(強制集団死)」に関する記述が大幅に増えることについては、「一つの背景説明とか、いろんな様相がある。そういうものを簡潔に分かりよく、背景とかさまざまなことを表現しているということは、立体的というか理解はしやすいと思う」と歓迎の意向を示した。 「主張認められた」 五ノ日の会仲村正治会長 高校歴史教科書の沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する検定問題で、文部科学省が教科書会社からの訂正申請を承認したことについて、県選出・出身の自民党国会議員でつくる「五ノ日の会」の仲村正治会長(衆院議員)は二十六日、「主張が認められた」と評価した。 後援会事務所で会見した仲村氏は「『集団自決(強制集団死)』をはじめ、沖縄戦の実態を詳しく記述し、われわれが主張してきた内容が認められた」と評価。 訂正内容について、「実質的に軍の関与や強制を示す表現になっている」との見方を示した。 また、検定意見については「教科用図書検定調査審議会の再審議を経て訂正されたことで、事実上撤回されたと判断した」との考えを示した。 県民への配慮必要性を強調 岸田文雄沖縄担当相 【東京】岸田文雄沖縄担当相は二十六日、沖縄戦「集団自決(強制集団死)」に関する教科書検定問題で、渡海紀三朗文部科学相が訂正申請を承認したことを受け、コメントを発表した。 「先の大戦で国内最大の地上戦を経験し、多くの方々が犠牲になり、つらく悲しい経験をした県民の思いは、沖縄担当相として重く受け止めなければならない」と県民への配慮の必要性を強調した。 「この機会に、内閣府としても沖縄戦について一般の方々に理解を深めていただくため、沖縄戦関係資料の閲覧事業でインターネット閲覧の充実など、利用者の利便性向上を図る」として、内閣府が所管する「沖縄戦関係資料閲覧室」の機能を強化する方針をあらためて示した。 「関与」回復と県教育長評価 「思い伝わった」 仲村守和県教育長は二十六日、教科用図書検定調査審議会の審議結果について、「来年四月から子どもたちが使う教科書で、日本軍の関与という主語が回復されていると考える。沖縄戦の実相を正しく伝えることができることから大きな意義があり、評価したい」と歓迎した。 記述回復がなされた理由については、「九月二十九日に結集した十一万余の平和を希求する県民の強い思いが、国や文部科学省に伝わったと思う」と話した。 渡海文科相 一問一答 検定審の報告を受け、渡海紀三朗文部科学相は二十六日午後、省内で記者会見した。一問一答は以下の通り。 ―検定審報告への感想は。 「手続きは大変真摯にやっていただいた。先生方の結論なので、私の立場からコメントすることは差し控えたい」 ―この結果を県民は理解すると思うか。 「審議会の審議を明らかにし、専門的・学術的に審議していただいた。理解をいただきたいとは思う」 ―大臣談話にある沖縄戦学習の一層の充実には、「沖縄条項」の検討も含まれるのか。 「第二次世界大戦では広島、長崎、東京など多くの国民が被害にあった。特定の地域を取り上げて条項をつくるのは適切ではない」 ―結論は、二〇〇六年度検定が「歴史の教訓を風化させる内容だった」という意味にならないか。 「検定はあくまで、その時の知り得る学術的・専門的な意見や著述などを総合的に審議会で判断するもので、今回の訂正が現在の説に対して、どうなのかを審査したものだと理解している」 ―今回は検定審の審議の前に、文科省の方針が示されたことが問題なのではないか。 「それはなかった。通常の手続きにのっとり、先生方が審議した。それ以前に何らかの(文科省の)結論が出ていたと言われたが、承知していない」 ―「政治介入」という指摘もされているが。 「(教科書会社の)訂正申請を誘導したのではという指摘もあるが、大臣就任後に一番心掛けたのは、『政治的な介入』にならない検定制度をどう守るかが私の一番の責任だと考えていたので、それはない」 ―今回の承認と06年度検定意見の間で齟齬はないという認識か。 「そういうことです。報告書を読めば理解いただける。私は報告書を読んでそう思った」 ―県民が納得しない場合の手だてはあるか。 「基本的にはない。納得していただきたいと言ったが、中身についてではなく、手続きを踏んだことを納得していただけるという意味です」 ―県民大会の怒りは何だったと思うか。 「沖縄の方々には『これは違う。歴史がゆがめられた』という思いがあったのではないか」 ―検定意見を撤回せずに記述を変えられるなら、今後の検定でも同じことが起こり得るのか。 「絶対ないとは言えないが、あくまで通常の検定手続きにのっとりやった結果である。より良い記述にしようと教科書会社から訂正が出た。こういうことが起こらないように、検定の過程の透明性を上げるなど検討していく」 専門家9人から意見聴取 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」をめぐる教科書記述について、教科用図書検定調査審議会は九人の専門家に意見を求めていたことを明らかにした。 このうち、元陸上自衛官で軍事史専門家の原剛氏や日本大学講師で現代史家の秦郁彦氏は、梅澤裕氏ら「集団自決」訴訟の原告や原告側証人の証言などを引用し、「集団自決」への日本軍による命令や強制を否定した。 沖縄県史編集委員で沖縄戦研究家の大城将保氏や、関東学院大教授で日本近現代史専門の林博史氏は体験者の証言、「軍官民共生共死」が徹底されていた状況などを踏まえ、「集団自決」には日本軍による命令・強制・誘導があったとした。氏名と意見内容の非公表を望んだ一人を除く、八人の意見要旨は次の通り。 大城将保・沖縄県史編集委員 「敵の捕虜になる前に潔く自決せよ」という軍命令は沖縄全域に徹底されていた。地上戦となった沖縄戦の悲劇を象徴するのは「集団自決」と「住民虐殺」。事実誤認と歪曲に基づく主張で、教科書から抹殺するような検定の在り方は許し難い暴挙というしかない。 我部政男・山梨学院大教授 沖縄戦末期にいわゆる「集団自決」が事実として起こった。その背景に「軍官民一体化」の論理が存在していたことは明確だ。因果関係を説明する方法として提示されているのが「軍命令」であり、「軍官民一体化」論理の範囲に入ると考える。 高良倉吉・琉球大教授 日本軍は本土上陸作戦を阻止するため沖縄での時間稼ぎが最大の課題だった。目前の住民の生死より作戦遂行を至上とした軍の論理があり、軍民雑居状態を放置した。慶良間諸島での「集団自決」も、軍の結果責任は明らかで、軍側の論理の関与を否定できる根拠はない。 秦郁彦・現代史家 渡嘉敷島を中心に考察するが、「集団自決」の軍命説は成立しない。自決の「強制」は物理的に不可能に近い。自決者は全島民の三割に及ばず多数が生き延びた。負傷者の治療に軍医らが当たったと村長が認めている。攻撃用手りゅう弾の交付と「集団自決」に因果関係はない。 林博史・関東学院大教授 沖縄戦での「集団自決」が、日本軍の強制と誘導で起きたことは沖縄戦研究の共通認識。捕虜になるのを許さない軍思想の教育などさまざまな方法で、軍は住民を「集団自決」に追い込んだ。私の著書を根拠に強制性の叙述を削除させたのは、著書内容を歪曲しており検定意見の撤回しかない。 原剛・防衛研究所戦史部客員研究員 沖縄戦では戒厳令は宣告されず、軍に住民への命令権限はなかった。関係者の証言などによると、渡嘉敷・座間味両島の「集団自決」は軍の強制と誘導によるものとはいえない。「鬼畜米英に辱めを受けるより死を選ぶ」という思潮が強かったことが原因。自ら死を選び自己の尊厳を守ったのだ。 外間守善・沖縄学研究所所長 日本本土の一億日本人のため沖縄島は防波堤として使われた。沖縄県民十余万人を犠牲とした、「集団自決」を含む責任は日本国にある。日本国、日本人に沖縄の痛みを理解してもらいたい。沖縄における軍の存在は住民にとって脅威だった。「集団自決」の問題にもこれらが通底している。 山室建徳・帝京大講師 軍人が死闘を繰り広げる中、日本人全体が屈服しないことを見せつけるべきだという考えが共有された状態で沖縄戦に突入したが、先祖伝来の地に住む沖縄県民の多くは「集団自決」の道をとらなかった。一部の軍が住民に自決を強要したとだけ記述するのは、事実としても適切ではない。 審議会の日本史小委員会委員は次の通り。(一人は本人意向で非公表) 【日本史小委員会委員】有馬学(九州大大学院教授)▽上山和雄(国学院大教授)▽波多野澄雄(筑波大副学長)▽広瀬順晧(駿河台大教授)▽二木謙一(国学院大名誉教授)▽松尾美恵子(学習院女子大教授)▽吉岡真之(国立歴史民俗博物館教授)
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きょう控訴審開始/「集団自決」訴訟 http //www.okinawatimes.co.jp/day/200806251300_03.html 沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、書籍に命令を出したと記され名誉を傷つけられているとして、座間味島と渡嘉敷島に駐屯していた旧日本軍の元戦隊長やその遺族が、「沖縄ノート」の著者で作家の大江健三郎氏(73)と発行元の岩波書店に、慰謝料や出版の差し止めなどを求めている訴訟の控訴審の第一回口頭弁論が二十五日、大阪高裁で開かれる。 今年三月の一審・大阪地裁判決は、住民の「集団自決」に対する日本軍の深い関与を認定。座間味と渡嘉敷の両島が、戦隊長を頂点とする上意下達の組織だったことを踏まえ、両戦隊長の「集団自決」への関与を「十分に推認できる」と導いた。 両戦隊長による自決命令は伝達経路がはっきりとせず、書籍に記載されている通りの自決命令の認定には「躊躇を禁じえない」としたが、二〇〇五年度までの教科書検定や学説、文献などを踏まえ、各書籍の記載には合理的な資料や根拠があると指摘。大江氏や「太平洋戦争」の著者の故家永三郎氏が、記した事実を真実と信じる十分な理由があったとして、元戦隊長らの請求を退けた。訴えているのは、座間味島の元戦隊長の梅澤裕氏(91)と、渡嘉敷島の戦隊長だった故赤松嘉次氏の弟の秀一氏(75)。一審・大阪判決について、法解釈や事実認定の誤りを主張し全面的に争う方針で、岩波側は控訴の棄却を求める。 戻る .
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http //www.okinawatimes.co.jp/day/200712281300_02.html 2007年12月28日(金) 朝刊 25面 「強制」削除市民怒り/運動の継続誓う 沖縄戦の「集団自決(強制集団死)」への日本軍の強制を示す記述を削除させた教科書検定問題で、「6・9沖縄戦の歴史歪曲を許さない!県民大会」実行委員会は二十七日、教科書会社からの訂正申請に、「軍強制」を示す記述を認めなかった文部科学省に抗議する緊急集会を那覇市の県民広場で開いた。約七百人(主催者発表)が参加し、「軍強制」の記述復活と検定意見の撤回などを求めた。 同実行委の大浜敏夫共同代表は「教科用図書検定審議会は『(日本軍)に強制、誘導された集団自決』は駄目で『追い込まれた』という記述なら良いという基準を設けた。絶対に許すことはできない」と語気を強めた。 「沖縄戦の歴史歪曲を許さず、沖縄から平和教育をすすめる会」事務局長の山口剛史琉球大学准教授は「文科省は教科書会社が申請した『日本軍が強制した』との訂正記述を書き直させ、二重に検定で事実を歪めた」と指摘。「教科書執筆者たちは『訂正申請は毎年できる。強制が認められるまで何度でも申請する』という決意だ。私たちも検定意見撤回まで共に頑張ろう」と呼び掛けた。 参加者からは九月二十九日の「教科書検定意見撤回を求める県民大会」の実行委員会に運動存続を求める声が相次いだ。 高校教員の新垣真理さん(54)=那覇市=は「実行委を中心にもう一度、沖縄の声を示すべきだ。せっかく声を上げた『集団自決』体験者らの証言を、後世に伝える方法も考えてほしい」と訴えた。 無職の照喜名朝寿さん(70)=同市=は「『軍強制』を認めないことがうそで、歴史歪曲だ。実行委は解散せず、今まで通りに検定意見撤回まで活動を続けてほしい」と期待する。 看護師の知花喬さん(38)=同市=も「国の方針で歴史の事実をすり替えるのは、やっぱりおかしい。九月の県民大会では、県民の総意として検定意見の撤回を求める声が出た。『軍強制』の記述回復も大いに期待していたのに」と納得いかない様子だった。 実行委解散を困難視 玉寄哲永副委員長 「教科書検定意見撤回を求める県民大会」実行委員会の玉寄哲永副委員長は二十七日、那覇市の県民広場で開かれた抗議集会に参加し、同実行委の二十八日での解散について「なかなかそうならないのでは」と述べ、早期の解散は難しいとの認識を示した。 玉寄副委員長は抗議集会で「文科省の対応には不満が残る。九月二十九日の県民大会で決議された検定意見撤回、記述回復を含め、政府に要求した四項目のすべてが実現が中途だ」と指摘。「二十八日の実行委でどのような反応があるのか、解散になるのかは不透明だ」と話した。その後、記者団の取材に「実行委の中には、文科省の対応に厳しい意見も多く、簡単に解散するとはならないのでは」との見通しを示した。 都内でも抗議の声 教科書検定審議会の結論を受け、教育関係の市民団体などが二十七日、東京都内で集会を開催、記者会見で参加者は「再び歴史の真実を歪曲したことに強く抗議する」と訴え、検定意見の撤回と記述の回復をあらためて求めた。 教科書執筆者の一人で歴史教育者協議会の石山久男委員長は「まったくのゼロ回答。沖縄県民の怒りを無視し、沖縄戦研究をも否定した」とした上で「検定意見の撤回や制度の抜本的改善が実現するまで戦い続ける」と宣言した。 九月の沖縄県民大会の実行委員らが一定の評価をしていることについて、高嶋伸欣琉球大教授は「一緒に運動している人は『首相らが謝罪するまでケリがつかない』という点で一致している」と述べた。 集会では、大阪市の社会科教諭(46)から「小手先の修正で子どもをごまかすのはやめてほしい」などの意見が出た。
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http //www.okinawatimes.co.jp/news/2008-12-05-E_1-007-2_003.html 2008年12月05日【夕刊】 政治 教科書検定改善案 文科相「信頼高まる」 【東京】塩谷立文部科学相は五日午前の閣議後会見で、教科書検定審議会作業部会が四日に了承した検定手続き改善案について「事後ではあるが、(審議の)内容が公開されることは透明性が確保され、信頼を高めると思う」との考えを示した。 議事録ではなく議事概要が公表される点については「静かな環境で議論して、審議委員や調査官の意見がストレートに出てくることは必要だと思うので、(今回の改善案は)バランスが取れていると思う」と述べた。 沖縄戦ニュース