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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。(十回超の予定) ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』6 一週間が経った。 「ゆっぐ……えぐっ……うぐ……ひっぐ……」 マジックミラーの側で食事をするゆっくり共。 まりさ共は近寄る気力もなく床にへたり込み、 それでも目をそらすことはできずに泣きじゃくっている。 ずっと他のゆっくり共を見下してきたこのまりさ共。 悔しさはひとしおだろう。 「向こうに行きたいか?」 緩慢な動作で俺のほうを向くまりさ達。 言葉の意味を飲み込むのに時間がかかったようだ。 「行きたいか?」 「いぎだい!!いぎだいでずううううう!!」 顔中を涙でぐしょぐしょにして、まりさ共は声をあげた。 「いがぜでぐだざいいいいいいいい!!」 「行かせてやる」 「ありがどうございばず!!ありがどうございばずうううう!!」 泣きじゃくりながら礼を言い続ける四匹を、籠につめこんでカートに乗せる。 外側の廊下を通り、向こう側の扉に入った。 食事をしていたゆっくり共の視線が、一斉にこちらに集まる。 四匹のまりさ共を床に下ろすと、 目を血走らせて物も言わずに這いずりだした。 必死になって向かうその先は、やはり食事だ。 「あまあま!!あまあま!!ゆうううう!!」 「おなかすいたおなかすいたおなかすいたおなかすいた」 およそ一週間ぶりに食べられる、それだけがまりさ共を突き動かす。 あとは俺が手を下すまでもなかった。 積み上げられた食事にいましも喰らいつこうというその時、 まりさ共は体当たりを受けて突き転がされた。 「ゆびぃいい!?」 「ひとごろしゆっくりはこっちにこないでね!!」 「おぼうしさんのないゆっくりはゆっくりできないよ!!」 あらかじめ、このまりさ共はゲスだと言い聞かせてあったこと、 そして帽子がなかったことが致命的だった。 帽子のないゆっくりは、同族にいじめ殺されることは日常茶飯事である。 「ごはん………ごはんわけてくださいぃぃ………」 「おでがいじばず……おでがいじばずううう…… もうずっどだべでだいんでずうううううう………」 「しらないよ!おまえたちはゆっくりあっちいってね!!」 「きたないゆっくりだね!!」 あちこちから体当たりを受け、右に左に転がされるまりさ共。 数で負けていることに加え、ずっと食事をしていないために体力の差は歴然だった。 四匹のまりさは、十数匹のゆっくり共にリンチを受けていた。 「殺すなよ」 「ゆっくりわかったよ!!」 俺が言ってやると、ゆっくり共が返事をよこしてきた。 人間との上下関係は躾けてある。 「どうか……どうか……」 「なんでぼじばず……なんでぼじばずうう……」 「だったらゆっくりかえってね!!」 「くさいからちかよらないでね!!ごみくず!!」 さんざんに打ちすえられた後、 四匹のまりさ共は爪弾きにされて転がった。 食事を囲むようにして輪を作り、ゆっくり共は食事に戻った。 「あ………あ………あいぃぃぃ……」 「お……な…か…すい…た……」 それでもまりさ共はナメクジのように這いずり、 食べ物のところへ行こうとする。 何度弾き飛ばされても、まりさ共はやめなかった。 「ころさないでやってれば、ずうずうしいゆっくりだね!!」 一匹のゆっくりれいむが業を煮やし、 一枚のチョコレートを部屋の隅に放り投げた。 「きたないゆっくりはあれでもたべてね!!」 「ああああああああ!!!」 礼を言う余裕もなく、まりさ共はそちらの方へ這いずっていった。 しかし、四匹のまりさに対してチョコレートは一枚。 果たして争いが始まった。 互いに髪を引っ張り合い、邪魔をするまりさ共。 引っ張り、噛み、踏みつけ、醜い争いが繰り広げられる。 ゆっくり共はにやにやと侮蔑の視線を向けていた。 さんざんに打ち合ったあげく、体格差で親まりさが先にチョコレートに辿り着いた。 「ゆふううう……ゆっくりいただきますだよううう……!」 その瞬間、後ろから急激にお下げを引っ張られ、親まりさは引き戻されて転がった。 「ゆううう!?」 周囲を見回すが、ゆっくり共はにやにや薄笑いを浮かべているだけである。 当然、引きよせたのはゆっくり共だが、しらばくれていた。 空腹に耐えられず、再びチョコレートに向かう親まりさ。 何度も何度も、食べる直前に引き戻された。 泣きながら、舌を目一杯突き出しながら、 這いずっては戻され、這いずっては戻される。 「ゆぅうううううううううう!!!」 泣きじゃくり、ゆっくり共を睨む親まりさだが、 にやにや笑いを返されるばかり。 万に一つの可能性に賭けて、数十回目の接近を試みる。 そして、引きもどされる。 「がんばれ、ごみくず!!」 「がんばれ、ごみくず!!」 「ぎゃんばりぇ、ごみくじゅ!!」 一枚のチョコレートを目指して、 今、四匹のまりさはゆっくり共のエールの中、ナメクジのように這いずっている。 這いずっては引き戻され、這いずっては引き戻され。 「ゆわぁああああああ!!!」 一匹の子まりさが、這いずりながら大声で泣き喚いた。 それを聞き、ゆっくり共は心底楽しそうにゲラゲラ笑う。 「おかーしゃん、もっとたべたいー!」 一匹の赤ゆっくりが言うと、その親が答えた。 「ゆゆ?もうあまあまなくなっちゃったよ! しょうがないからあれをたべてね!!」 「ゆっくりわかったよ!!」 赤ゆっくりがぴこぴこと跳ね、 まりさ達とは反対側からチョコレートに向かっていく。 ゆっくり共が囃し立てはじめた。 「はやくたべないと、おちびちゃんにたべられちゃうよ~?」 「あまあまはあれしかのこってないよ!ゆっくりがんばってね!!」 「ゆぅううううううう!!?」 必死にペースアップを試みるまりさ共。 赤ゆっくりはわざとふざけて、ころころ転がりながら向っていった。 「ちゃ~べちゃうよ~♪ちゃ~べちゃうよ~♪」 「おでがいでずううう!!だべざぜでええええ!!」 喚く親まりさが、また引き戻された。 「ゆぅううぐうううううう!!うぐううううう!!」 泣き喚きながら這いずり続けるまりさ共の前で、 ついに赤ゆっくりがチョコレートにかぶりついた。 「ゆうううううう!!だべだいでええええ!!」 「む~ちゃ、む~ちゃ………ちちちちちあわちぇー!! こにょちょこれーちょ、ときゅべちゅおいちいいぃぃ~~~♪」 「あああああああがああああああ!!!」 後ろから髪を引っ張られて近づけないまま、 最後のチョコレートが赤ゆっくりの小さな口でゆっくりと食べられていくのを、 まりさ共はじっくりと見せつけられた。 壮絶な苛めである。 かつて威張り散らしていたまりさ共は、 今や屈辱と絶望に苛まれ、床に伏して泣きじゃくっている。 ゆっくりに苛めさせるやり方は、まずは上々の成果をあげられそうだ。 「さて、そのまりさ共は今日からここに住む」 俺は言った。 「ゆゆ!こんなきたないゆっくりいやだよ!!」 「とかいはなゆっくりぷれいすは、いなかものにはもったいないわ!!」 ゆっくり共からブーイングが上がる。 「そいつらはお前らの好きにしていい」 「ゆっ?」 俺の言葉に、ゆっくり共の反応が変わる。 「絶対に殺すな。それさえ守れば、何をやってもいい」 「ゆゆっ!!」 たちまち目を輝かせ、顔を見合わせるゆっくり共。 すでに嗜虐の快感を覚え、やみつきになっているようだ。 「れいむたちはごみくずといっしょにくらすよ!!」 「たっぷりあそんであげるからかんしゃしてね!!」 まりさ共を取り囲み、ゆっくり共は歓迎の挨拶を浴びせた。 まりさ共は周囲を見回しながら、媚びた笑みを浮かべた。 ここにいさえすれば、食べるチャンスがある。 媚びへつらえば、あまあまを分けてもらえるかもしれない。 そんな期待が表情に表れていた。 ゆっくり共の仕打ちは想像以上だった。 その日から、毎日まりさ共は虐げられ続けた。 部屋の中のどの遊具よりも、ゆっくり共にとってまりさ共は楽しい玩具だった。 日がな一日、ゆっくり共はまりさ共にかかりっきりになって遊んだ。 執拗に体当たりをしてはあちこちに転がす。 トランポリンのように上に乗って飛び跳ねる。 髪を掴んで壁に叩きつける。 舌を噛んで引きずりまわす。 「あがあああああ!!ああああぁぁぁ!!うぐぅあああああーーー!!」 舌を噛まれながら、まりさ共は悲鳴をしぼり出す。 新しい遊びを思い付くたびに、 ゆっくり共はどれだけ大きな悲鳴を上げさせられるかを競った。 はずみで殺してしまいそうになることもしばしばだったが、 その度に俺や世話係が中断させ、まりさ共を治療した。 当然、どれだけ懇願しても食事は与えられない。 体を拘束されながら、あるいは突き飛ばされながら、 わざと目の前で行われる食事を、まりさ共は涎を垂らして食い入るように見つめ続けた。 「ゆびぃいいいい!!あばあば!!あばあばぐだざいいいい!! びどぐぢだげ!!びどづだげ!!びどがげらだげええええ!!」 まりさ共の懇願を聞きながら、ゆっくり共は実に楽しげに笑い合うのだった。 「しょんにゃにおなきゃしゅいちゃ?」 ここに移されて三日が経ったころ、 涎を飛び散らして泣き咽ぶ親まりさに、一匹の赤れいむが問いかけた。 「ばいいいいい!!ずぎまじだ!!べごべごでずうううう!!」 自分よりずっと小さな赤ゆっくりに対し、慈悲を乞う親まりさ。 「じゃあたべちゃちぇてあげりゅ!!」 「あああああ!!あじがどうございばずうううう!!」 そう言うと、赤れいむはあにゃるを突き出し、いきみ始めた。 「ゆ………」 親まりさの表情がこわばり、みるみるうちに青ざめてゆく。 はたして、赤れいむはたっぷりとうんうんをひり出した。 「ゆっきゅりたべちぇいっちぇね!!」 素晴らしいとばかりに、ゆっくり共が声を合わせた。 「よかったね!!ゆっくりたべていってね!!」 「ゆああぁ………ゆああぁ……」 泣きはらした目を見開きながら、親まりさはいやいやと首を振った。 「ゆゆっ!せっかくめぐんでもらったのになんでたべないの!?」 「すききらいをいうなんておもいあがったごみくずだね!!」 「だめですぅぅ……ゆぅぅぅ………たべられませぇぇん……!」 人間から見ればただの餡子だが、 あにゃるから排出されたうんうんは、ゆっくりにとっては明確に排泄物である。 排泄物は汚く臭いものであるという認識は、ゆっくりも人間と同じようだ。 「ゆっぐ……ゆっぐ……ゆっぐり、でぎだいいぃぃ……」 「それをたべれば、もっとあまあまをあげるよ!!」 自分たちの食事のほうを向いてみせながら、ゆっくり共が宣言する。 「ゆぐうううう……!!ゆぅぐぅううううう……!!!」 涙をだらだらと流し、がたがた震えながら、親まりさは舌を伸ばした。 ゆっくりにとってひどい悪臭を放つ排泄物にのろのろと舌を近づける。 舌がわずかに触れ、弾かれるように引っ込んだ。 「はやくたべないと、あまあまがなくなっちゃうよ!!」 「ゆひぃぃぃぃ………!ゆひぃぃぃぃ…………!」 ぜえぜえと息をつきながら再び舌を伸ばす。 ほんの少しすくい上げ、口に入れたとたんに激しくせき込んだ。 「ゆごっ!!ごぼっ!!げぇ!ゆげぇええええ!!」 げらげら笑うゆっくり達に、親まりさは死にそうな表情で許しを求めた。 「だべでずぅ!!ゆるじでぐだざいいいい!! うんうんだんでだべられだいいいいいいい!!」 「たべたくないならいいよ!! そのかわり、いっしょうあまあまはあげないよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「うううううううううううううううーーーーーーーーっ!!!」 絶叫を上げると、親まりさは食い入るようにうんうんを口に運びはじめた。 激しくせき込み、幾度となく吐き出しながら、必死に飲み込もうとする。 隣ではひり出した当の赤れいむが、きゃっきゃと飛び跳ねていた。 「おいちい?おいちい?りぇいみゅのうんうんおいちい?」 「ゆぐぅぅぅぅ………!!」 「ちあわちぇ~ちないの?まじゅいの? りぇいみゅがめぎゅんであげちゃごはんまじゅいの?」 「おいじい!おいじいでずううう!! む~じゃ!む~じゃ!!じ、じ、じあわじぇええええぇぇ」 嘲笑の中、ついに親まりさは食べ終えた。 吐き戻しそうになるのを必死にこらえ、ゆっくり共に願う。 「ぐだざいぃぃ……だべばじだぁぁ…… あばあば…ぐだざいぃぃ……!!」 「いいよ!!たっぷりあげるね!!」 ぱぁっと表情が明るくなった親まりさの前で、 ゆっくり共は並んであにゃるを突き出した。 その時の親まりさの表情には、さすがに少々溜飲が下がった。 この部屋のゆっくり共に便所の概念はなく、 これまでは好きなときに好きなところで垂れ流していた。 今、このゆっくり共は、自主的に便所を定めていた。 「ゆっきゅりうんうんしゅるよ!!」 「しーしーしゅるよ!!」 「あうがあああああ!!いびああああああああ!!!」 食事が終わり、うんうんをする時間。 四匹のまりさ共が、それぞれ押さえつけられ、口を上向きに開けられていた。 その口には、ひり出されたうんうんが大量に積み重なっている。 成体ゆっくりはあにゃるを突き出し、 赤ゆっくりは顔によじ登り、その口の中にうんうんやしーしーを注ぎ込んだ。 悪臭と嫌悪感に絶叫しつづけるまりさ共。 その声量は、それまでの苛めとは段違いだった。 それを聞きながら、まだまだ痛めつける余地があるなと俺は意思を固めた。 さらに二週間が経った。 一切食事を与えられず、連日排泄物を食わされ、傷めつけられ続けたまりさ共。 うんうんでも多少は栄養になるらしく、体力的にはそれなりに回復しているようだ。 その体力は、全て泣き声を上げることに費やされていると言ってよかった。 「ゆひぃ……ゆひぃ……ゆううぅ……」 ゆっくり共が食事をしているその背後で、 まりさ共は排泄物まみれになりながら、部屋の隅で泣きじゃくっていた。 髪は乱れ放題、あちこちに痣ができている。 ぶるぶると身を震わせ、まりさ共の涙は止まる気配がない。 この食事が終われば、また排泄物を食わされるのだ。 その瞳は絶望に染まっていた。 頃合いと見て、俺は声をかけてやった。 「戻りたいか?」 「ゆっ?」 まりさ共が俺を見上げる。 その眼差しは萎縮した、卑屈なものだ。 「前の部屋に戻りたいかと聞いている」 「ゆぐうぅぅぅぅ………」 まりさ共がまた泣きじゃくり始めた。 毎日暴行を受け、排泄物を食べさせられる毎日。 考えるまでもなく、こいつらにとってここは地獄だろう。 これが人間だったらと思うとぞっとする。 しかし、ここには食糧があった。 たとえ排泄物ではあっても。 前いた隣の部屋に戻されたら、またなにも食べられない。 ただそれだけが、こいつらを迷わせる要因だろう。 俺は助け船を出してやった。 「飯はやる。食わせてやる」 「ゆゆっ!!ほんとう!!?」 「ああ本当だ。毎日、たっぷりと食わせてやる。 お腹がはち切れるぐらいたっぷりとな」 「ゆゆぅ~……!!やっどゆっぐりでぎるよぉぉぉぉぉ!!!」 「来るか?」 「いぐ!!いぐ!!いぎまずううううう!!」 「ここを出るなら、二度とここには戻れないぞ。 もう二度と、ここに来るチャンスは来ない。それでもいいのか?」 「こんなくずどものいるへやにはにどとこないよ!! はやくつれていってね!!」 まりさの罵声を聞きつけ、ゆっくり共がいっせいにこちらを向く。 「ゆっ!!ごみがなにかいった!?」 「うんうんぐいのごみくず!!もういっぺんいってみてね!!」 今にも飛びかかりそうなゆっくり共を、俺が制した。 「ゆっ!?おにいさん!!じゃましないでね!!」 「今日でこいつらはここを出る。今後は手出し無用だ」 「ゆぎぎぎぎぎ!!」 歯噛みするゆっくり共。 まりさ共はすっかり勝ち誇り、鬱憤を晴らすべく罵りだす。 「くず!くず!!ごみくず!!ごみくずはそっちなんだぜ!!」 「まりささまはあっちでゆっくりするんだぜ!! ごみくずはごみくずどうし、うんうんでもひっかけあってるんだぜ!!」 「あたまにのせてるそれ、ぜんっぜんゆっくりできてなかったんだぜ!! うんうんでもあたまにのせたほうがずっとゆっくりできるんだぜぇ!!」 「ばぁ~か!!ばぁ~か!!」 俺がカートに乗せて部屋を出るまで、 まりさ共はカートの上からゆっくり共を見下ろして嘲り続けていた。 再び元の部屋。 一面のマジックミラーは透過状態になっており、 隣のゆっくりプレイスとは互いにまる見えになっている。 「ゆっ!!おにいさん、ごはんください!!」 「おなかぺこぺこなんだぜ!!はやくもってきてね!!」 すぐに騒ぎ出すまりさ共。 俺はすぐに、部屋に用意してあったものを指し示した。 「それがお前らのごはんだ。全部食べろよ」 それには青いビニールがかかっており、中は見えなかったが、 部屋の真ん中でこんもりと盛り上がり、ボリュームを伺わせた。 「ゆうぅぅぅぅ~~~!!ゆっくりいただきますなんだぜぇぇ!!」 目をむいて涎を垂れ流し、まりさ共はそれに飛びつくとビニールをはぎ取った。 「ゆ」 まりさ共が固まった。 そこにあるのは糞だった。 床に置かれた低いコンテナの中に、 人糞、馬糞、牛糞、犬猫の糞、その他あらゆる動物の糞が混じっていた。 赤いもの黄色いもの黒いもの、白いの青いの緑色、固形下痢便赤痢便、 あらゆる生き物のあらゆる状態の糞が入り混じり、すさまじい臭いを放っている。 あちこちで蠢いているのは蛆虫や寄生虫のたぐいか。 たまらず俺はマスクを取り出して口にはめた。 それでも臭いが鼻を打ち、頭痛さえしてくる。 吐き気と闘いながら、それでも俺は見届けなければならない。 この臭気を自ら体験していないと、こいつらの苦痛が実感できない。 まりさ共がゆっくりと俺の方を向き、 がたがたがたと震えながら歯を噛み鳴らした。 「お、お、お、お、お、おに、おにいざ」 「毎日たっぷりと食わせてやる。俺はそう約束した」 「だだだだだだだめだめだめだめ」 もはや文章になっていない拒否を口にするまりさ共の頭部を掴み、持ち上げる。 「ゆびぃぃいいいいいいい!!!ゆびぃいいいいいいいいいーーーっ!!!」 恐怖そのものの表情を顔に浮かべ、まりさ共が泣き喚いた。 「おでがいじばず!!おでがいじばず!!おでがいじばずうううううう!! ぼがのごどならなんでもやりばず!!なんでも!!ごろじでもいいでずううう!! ごれだげはやべで!!!ごれだげはおでがいじばずううううう!!! ばりざが!!ばりざが!!ばりざがああああああああ!!!」 しばらく懇願を聞いた後、全てそのコンテナの中に放り込んだ。 「ゆびいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいーーーーーーーっ」 糞の海の中に身を浸したまりさ共は、 あまりの悪臭刺激臭に、全身を縦長にぴんと硬直させて目玉をぐるぐる回した。 歯茎をむいて歯を食いしばるも、歯と歯の間から糞が入り込んできて絶叫する。 「ゆごがっばあああぁぁーーーーーーーおおおぉぉげおおおーーーっ」 糞にまみれてのたうちまわるまりさ共。 目といわず口といわずあにゃるといわず穴の中に入り込み、 全身にまとわりつく糞の悪臭に狂ったように叫び続ける。 人間だったらたちどころに発狂まちがいなしだが、 そういう機能のないこいつらは苦しみ続けることになる。 ただ、苦痛を終わらせる方法はあった。それに注意しなければならない。 「ゆごげ!!ぼぇ!!ゆぼぇげげえええええっ!!!」 やはり、嫌悪感ですぐに餡子を吐き出し始めた。 餡子を吐き出し続け、その量が致死量を超えると、ゆっくりは死ぬ。 言ってみればこれが発狂の代わりだろう。 当然、そんな生ぬるい安らかな最期を迎えさせてやる気はない。 すでに俺は、全身を覆う作業着に身を包んであった。 餡子を吐き出したやつから、俺は手早く回収して手近の台の上に置く。 全員が吐き出しているので急がなければならない。 「ゆげぇ!!げっげっげっげっごえぇ!!!ぼげぇぇぇぇえがびゅっ!!?」 大口を開いてえずく子まりさの顎を殴りつけ、強引に閉じると、 強力なガムテープで一旦口を閉じた。 「んぐ、んぎゅっ、んぐむぅううーーぅ」 ばたばたと暴れ回る子まりさを放置し、 他の子まりさ二匹と親まりさも、同じようにして口を閉じる。 親まりさの口は大きいからやや手間取った。 台の上に転がしたまましばらく放置し、落ち着くのを待つ。 吐き気にびくんびくんと跳ね回るまりさ共。 その口内では、吐き出しては飲み込むのを繰り返しているのだろう。 まだほとんど口に入れていないうちから、なかなか苦しんでくれる。 数分してから、ようやく四匹とも荒い息をするだけになった。 吐き気がおさまったようなので、ガムテープを剥がす。 涙に濡れた眼をこちらに向けながら、まりさ共は力なく慈悲を求めてきた。 「ゆぐ、ゆ、ゆ、ゆるじで、ゆるじで……ゆるじでぐだざぃぃ……」 「だべらべばぜぇぇん………」 「おでがい……おでがいでじゅうう……」 一匹の子まりさを手に取り、持ち上げる。 「ゆぐじで!!ゆぐじで!!ばりざなにもわるいごどじでなぎぃいいい」 「口を開けろ」 「ゆぐっ」 身を震わせて口を閉じ、いやいや首を振る子まりさ。 その顔面を拳で殴りつける。 十五回ほど殴ったところで、子まりさの口が開いた。 「ゆべぇ……ゆべぇ……ぇぇぇぇ……ゆっぐ、ひぐぅ……」 大口を開いたまま泣き声を上げる子まりさ。 俺は、その口を天井から吊り下げられたフックに掛けた。 「ゆごぎぇえっ!!?」 鉤爪型の大きなフックは、 子まりさの上顎を貫通し、目と目の間を貫いて先端を露出させた。 「ゆぎょ!!ごぎょ!!えあ、えああああいいいいぎぃああああっ」 上顎を支点に天井から吊るされたまま、 激痛でぶるんぶるんと跳ね回る子まりさ。 続いて残るまりさ共も、同じように上顎をフックに掛けて吊るす。 こちらに向かって大口を上げたまま縦にだらんと伸び、 空中で身をよじり続ける肌色の奇怪なオブジェが四つ並んだ。 「えぎょおお!!あい!!ぃいいいいあいいいいぎゅううぐううーっ!!!」 次に、新しい道具を持ってくる。 それは鉄製の輪で、輪を丁度ふさぐ大きさの円盤がつながっている。 輪は、成体サイズの子まりさの口をぎりぎりの限界まで広げられる大きさだ。 もちろん親まりさの輪はさらに大きく、同じく限界まで広げられる。 吊るされたままの子まりさの口をこじ開け、 鉄の輪を強引に口にねじ込んだ。 「ゆげぅ、ご、ごっ、おぉおおおおおごごごごごごごごおおお、あああがががが」 子まりさの口が目一杯広げられ、口内を晒した。 ここまで伸びるものか、顔とほぼ同じぐらいの大きさにまでこじ開けられている。 上顎を支点に吊り下げているので適度に傾き、 開かれた口が斜め上方を向いた状態になっていた。 試しに、輪に繋がっている円盤を動かして輪にはめる。 丁度うまい具合に隙間なく輪にはまり、金具で止められた。 こうすることで口に蓋ができるようになっている。 こうして、まりさ共は蓋つきの容器となった。 ぎりぎりまで大口をこじ開けられる痛み、 上顎から眉間にかけてフックで貫通される激痛。 言葉を発することもできず、まりさ共はしきりに呻きながら涙を流して耐えるしかない。 準備は整った。 俺は大きな柄杓を手にした。 柄杓は大きく、両手を使ってバケツ一杯近くの量をすくえるようになっている。 その道具を見て、まりさ共の目が見開かれた。 がたがたがたがたと震えが大きくなる。 すでによほどの激痛だと思うが、明らかにそれ以上の恐怖を感じているようだ。 「食事の時間だ」 「ゆぐぅうううううううーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」 山と積まれた糞便をたっぷりと掬う。 それを、斜め上に向けて開かれた親まりさの口にゆっくりと近づけた。 「あう!!ゆぁう!!おぁあああああおおおおああああーーーーーー」 一杯に見開かれた目から涙をぼたぼたぼたと流し、 口内に運ばれてゆく糞便を凝視する親まりさ。 この世の苦痛をすべて身に受けたかのような表情だ。 だが、実際には、こいつらが受ける苦痛はまだまだ序盤にすぎない。 ついに口内に糞便が流し込まれた。 「ゆぎょおおがぁばああああああ!!!!」 口いっぱいに糞便を詰められ、すぐに吐き戻そうとする親まりさ。 俺はすぐに、口にはめられた輪の蓋を閉じた。 金具で強固に留められた蓋は、ゆっくりの舌ごときではびくともしない。 親まりさの瞳がぐるんと裏返り、一杯に開かれた目は白目になった。 しばらくの間びぐんびぐんと跳ね回り、やがてびくびくと小刻みな痙攣に変わる。 全身からじっとりとした体液が染み出しているが、 糞便や吐瀉物は密閉されて漏れず、消化されるまで親まりさの体内に居座り続ける。 頬張られたそれは、一体どんな味なのだろうか。 恐らく、もはや味とすら呼べない刺激、苦痛だろう。 マスクごしに嗅いでいるだけでも、俺のこめかみがずきずきと痛んでいる。 俺自身も相当辛いこの作業だが、次にかからなければならない。 これは俺自身への罰でもあるのだ。 ともに畜生道へ落ちよう。 俺の視線を受けた次の子まりさが、 言葉を発することができないまま、体全身を蠢かせて慈悲を乞い始めた。 「うまいか?」 声をかけてやるも反応はない。 四匹のまりさ共は、口に蓋をされたまま、 涙と涎と小便と大便をだらだらと垂れ流したままこちらを見ながら震えている。 気絶はできないのだから、その餡子脳は絶え間なく苦痛を受けているはずだ。 嘔吐を示す体の曲げ方を見る頻度は少なくなった。 最初は白目を剥いて口内に吐瀉物を溜めるばかりだったが、 やがて諦めたのだろう、一刻も早く消化して苦痛を終わらせようとしはじめた。 「焦らなくてもいいぞ。まだまだおかわりはたっぷりあるからな。 ゆっくり食事を楽しんでくれ」 そう言って糞便の山を指し示してやる。 まりさ共の目が絶望に歪み、ぎゅっと引き絞られて涙をさらに絞り出した。 なぜこんな目に遭っているのだろう。 なぜいつまでたっても終わらないのだろう。 まりさ共の中で、そんな疑問が渦巻いていることだろう。 しかし、これさえまだまだ序の口にすぎない。 すでに普通のゆっくりなら全身の餡子を吐きつくしているだろうが、 こいつらの罪は、ゆっくりが死ぬ程度の罰では軽すぎる。 ゆっくりの限界を超えて極限まで苦しみ、 極限に到達したなら、さらにその先まで苦しんでもらわなければならない。 マジックミラーで隔てられた隣の部屋のゆっくり共が、 飛び跳ねながらまりさ共を嘲り笑っていた。 続く 選択肢 投票 しあわせー! 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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。(十回超の予定) ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※最初の数回は読者様のストレスをマッハにすることに腐心しています。虐待は次回から。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※今回は人間が悲惨な目に会う描写があり、気分を深く害される恐れがあります。 一応、今回だけ読み飛ばしてもいいように書いていく予定です。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』4 ずっと俺には疑問だった。 突如として現実世界に現れた不可解な存在、ゆっくり。 こいつらは一体なんなんだ。 中身に詰まっているのは餡子のみ。 他のどの生態系にも類を見ない不可思議な機構で動いている。 小麦粉と甘味でほとんどが構成されたその肉体はひどくもろく、衝撃や苦痛でたやすく餡子を漏らして死ぬ。 なにより不可解なのはその知能だ。 言語を話す、という時点で他の動物とは比較にならないほど知能は高い。 ところがその行動は単細胞生物のそれで、 思考力や学習能力にひどく乏しく、目先のゆっくりしか目に入らず、 野生動物なら最低限あってしかるべきはずの危機管理能力が決定的に欠けている。 おそろしく弱いくせに自信に満ち溢れ、無謀なことばかり繰り返す。 こんな生物は、生態系としては下の下で、 とっくの昔に絶滅していておかしくないはずなのだが、 並はずれた性欲に支えられた繁殖力、ただそれだけを武器に、 ゴキブリ以上のしぶとさで地球にしがみついている。 俺にはわからなかった。 大学で少々生物学をかじった身として、 ゆっくりの生物としての整合性が理解できなかったのだ。 性欲以外のほぼすべての特徴が、生物としてマイナス要素しかない。 なぜ、そんな生き物が生まれてきたのだろうか。 生物に意味などあるはずはない。 しかしどの生物も、進化の過程を経て、 思わず感心してしまうほどの適合力を見せて、自らの生活圏とぴったりと結合している。 しかし、ゆっくりは見たところ、どの生活圏にも結合していない。 森に繁殖すれば、たちまちそこの食物を食べつくしてしまう。 町に住めば、人間どもに追われ、迫害されている。 こいつらはなんのために生きているのだろう。 どんなゆっくりプレイスも、例外なく破綻する。 生まれては死に、繁殖しては滅び、流れるようにあちらこちらをさまよう。 こいつらが生物としてぴったりとはまり、安定していられるのはどういう環境なのだろうか。 「何か月かね?」 「は、はい……三ヶ月ちょっとらしいです」 長浜氏はソファに身を沈めたまま、険しい表情をしていた。 「ゆぅ~ん、おじいちゃんどうしたの?なんだかこわいよ?」 「なんでもないよ。あっちへ行っていなさい」 「ゆっくりりかいしたよ!」 絨毯の上を跳ねながら、開け放したドアを出ていくゆっくりれいむ。 長浜氏の邸宅。 広い居間でテーブルをはさんで向かい合い、俺は恐縮しきっていた。 俺の隣には由美。 向かい合ったソファの正面には由美の祖父長浜氏が座り、 その隣に由美の両親が座っていた。 俺の返答を聞いたあと、長浜氏は黙ってこちらを見つめていた。 俺はうつむいて冷や汗をたらしながら、つけ慣れないネクタイの位置を直した。 由美の妊娠を知らされたときには、すでに受胎してから二か月半ばを経過していた。 毎日俺の部屋に通っていたはずの由美が、ある時を境に数日間来なくなった。 心配になった俺は電話で連絡した。 すると、由美は震える声で、産婦人科に行ってきたことを告げてきた。 妊娠を知らされ、俺の喉がひりついた。 ゆっくりの世話に追われてこのところすっかりご無沙汰だったが、 ゆっくりをここに迎える直前、すでにご懐妊なさっていたらしい。 どうする。 俺はしばらく悩み、時間をかけて由美と相談し、結論を出した。 「こういう事柄に関しては、君には忍耐力がなかったようだね」 やっとのことで、長浜氏が仏頂面で言った。 俺は恐縮して頭を下げるしかない。 「大切な孫娘なんだよ。たったひとりの……つい先日、成人式を挙げたばかりだ」 「は。はい」 「君はまだ働いていない学生の身分だろう」 「……はい」 「とんだことをしてくれたよね」 「は」 「嫁入り前の、人の娘に……娘というのは君、宝だよ」 「……」 「おじいちゃん」 「黙っていなさい!」 由美が口を挟もうとしたが、長浜氏がぴしゃりと遮った。 これほど険を含んだ長浜氏は初めてだった。 あの礼儀正しい老紳士が、静かに怒っている。 耐えがたい、重苦しい沈黙。 「どうするのかね」 やがて、ぽつりと長浜氏が聞いてきた。 震える手で膝を握りながら、俺は声を絞り出した。 「……由美さんを、僕にください」 「……今、なんと言ったのかね?」 「僕に由美さんをください!必ず幸せに、幸せにしてみせます!!」 俺は叫びながら顔をあげた。 長浜氏は、顔中をくしゃくしゃにして笑っていた。 「いやいやいやいや、さあさあどうぞどうぞ」 「いや、あの、僕は車なんで」 「いやいやいいじゃないか。帰りは送らせるよ、まあどうぞ」 俺の手に持ったグラスに、高そうな酒がどぼどぼと注がれる。 「いやあうん、懐かしいな。私もそうだったんだよ。 圭一くん、私も君といっしょでね、深窓の令嬢を結婚前に孕ませてしまった。 相手方のオヤジさんにはぶん殴られたよ」 「そうでしたか」 長浜氏は浮かれまくっている。 由美の両親はそれほど浮かれる気にはなれないようだったが、ともかく笑顔を作っていた。 「もしも君が逃げ出すようだったら、ただではおかなかったよ、うん。 しかし、これで全て丸く収まりそうだ。君なら大丈夫だろう、うん、ね。 困ったことがあるならいつでも言ってきたまえよ、我々は家族になるんだからね」 「ありがとうございます!」 「本当に、頼んだからね。由美、いい人を見つけたね」 「うん!」 涙を浮かべ、由美が頷いた。 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくり!!ゆっくり!!」 場の雰囲気を察知し、長浜氏の飼っているゆっくり共が嬉しげに絨毯の上で飛び跳ねている。 この時ばかりはゆっくりが可愛く見えた。 しかし多いな。大小さまざま、何十匹いるんだ。 「由美から聞いているよ」 「え?」 「例の、ゆっくりの事だよ。君の家で飼っている」 「あ、はい……」 声のトーンがわずかに沈んだ。思い出すことさえ不快だ。 「ものすごく大変らしいね。床のうんうんを舐めたんだって?」 「あ、いや、まあ……」 そんなことまで耳に届いていたとは。 あの姿だけは見られたくなかったなあ。 「君は今、ゆっくりが好きかね?」 「…………」 「嫌いだろうね。無理もないよ」 「はい……」 長浜氏の声は穏やかだった。 彼は由美に向きなおって言った。 「なあ、由美。もういいだろ。解放してあげなさい」 「……うん。圭一、今まで本当にごめんね」 「圭一君。そもそもは私までがぐるになって君に頼んだことだったが、 これまで本当に、よく由美に付き合ってくれたね。心から感謝しているんだよ。ありがとう」 ストレートに「試していた」と言ってくるわけじゃないが、 やはりあの計画で、俺が試されていたのは確かのようだ。 夫として由美と向き合っていく忍耐力を、俺は証明したのだ。 「ともかく、君たちは近いうちに夫婦になるのだろ?」 「はい、そのつもりです。準備は大変だと思いますけど……」 「もちろん手伝うよ。それでだ、そういう準備もあるし、 もうゆっくりに一日中かかずらっているわけにはいくまい」 「は……そうですね」 「あのゆっくりはこちらで引き取ろう。 もちろん最低限の躾は必要だろうが、責任をもってできるかぎりゆっくりさせるよ」 「あの、私が面倒見るから!」 「どうするつもりだい、由美。これまで通り自由奔放にゆっくりさせるのかい?」 「できれば、そうしたいんだけど」 長浜氏はしかしかぶりを振った。 「もうよしなさい。結果は出ているだろう」 「結果……」 「圭一君。君たちはゆっくり達の言うことをすべて聞いてきた。 すべてゆっくり達の思うままにさせた。そうだね?」 「はい」 「では改めて聞くが、あのゆっくり達は、 他のゆっくりに比べてゆっくりできていたと思うかね?」 俺は少し考え、答えた。 「いいえ」 「子供を殺したんだって?」 「えっ」 自分のことを言われてるのかと思い、一瞬どきりとした。 「れいむとありすがいがみ合い、互いに子供を殺し合ったそうじゃないか」 「あ、はい」 「そして結局、増えすぎた子供たちは間引かれていった」 「……はい」 「まりさ達は他のゆっくりを虐げた。 甘味を与えるたびに、その甘味を家族で奪い合った。 互いに憎み合い、相手の隙を窺い、強者の存在に怯え、強者は反発に苛立つ。 いつ子供たちが殺されるか虐められるかわからず、戦々恐々とする生活。 由美。そんなゆっくり達が、ゆっくりしていると思うのかい?」 由美は眼を伏せた。 「ゆっくりしていなかっただろう?」 「……うん」 「今回のことはいい経験だったな、由美。 ゆっくりという生物は、自分にとって一番いい選択をする判断力が足りていないんだ。 ただ目先の欲求だけで行動し、結局はそのつけが回ってきて面倒事を増やし、苦しむことになる。 ………もしかしたらそれは人間も同じことかもしれないね。程度は大きく違うが」 俺は頷いた。 まあ、ゆっくりと一緒にされたくはないが。 「お前の計画は、ここで終わりにしよう。 今回のことを糧に、改めてゆっくりが本当にゆっくりできる為にはどうすればいいか考え直してみればいい。 あのゆっくり達はこちらで引き取るよ。 もちろん一旦味をしめさせた責任はあるから、できるかぎりは贅沢をさせてやる。 他のゆっくりに悪影響が出るだろうから、個室で飼おう」 「うん。わかった」 由美は頷いた。 「でも、あたしも面倒見てもいいよね」 「うん。好きにしなさい」 好々爺の笑みで、長浜氏は頷いた。 すべて終わった。 運転手のハイヤーに乗せられて長浜氏の邸宅をあとにした今、俺はようやく肩の荷が下りた。 いや、これから結婚や求職もろもろで本当に忙しくなるのだが、 そんなものはあのゆっくり共の相手をすることに比べれば些細なことに思えた。 本当に大変だった。 しかしそれは報われた。 長浜氏は俺を認めてくれ、俺は由美と結婚できることになった。 こうして結果が出てみれば、自分でも驚いたことに、 あのゆっくり達に感謝の念さえ湧きあがってきた。 なにはともあれ、やつらは俺にチャンスをくれたのだ。 「今まで本当にごめんね。大変だったよね」 隣に座る由美が改めて詫びてきた。 「うん。大変だった。すごく」 強がってみせる余裕もなく、俺は正直に苦笑した。 「あんなゲスゆっくりが、本当に可愛いのか?」 俺はここで初めてゲスという言葉を使ったが、由美は否定しなかった。 「うん。おかしいよね」 「どこが可愛いの、あんなの」 「それは、ええと、ゆっくりと人間と同一視してるから可愛くないんだと思う」 「え?」 いつになく真面目な顔をして、由美は言った。 「礼儀とか思いやりとかは、人間のルールだよね。 そういうのがない人は、私も嫌い。 でも、ゆっくりは、人間とは違うルールで生きてる。 ふつうの人間にとっては不愉快かもしれないけど、私は人間とは別物だと思ってるから、腹が立たない。 私ってゆっくりオタクだから、人間の手垢がついてない純粋な子ほど可愛いと思っちゃうんだね」 「そんなもんか」 共感はできなかったが、素直に受け止めることができた。 「でも、今回の失敗でまたわからなくなっちゃった。 ゆっくりのルールって一体なんだろうね。 人間のルールを押しつけたほうが幸せになれるのかな? ゆっくりって、ゆっくりするために生きてるんじゃないの? どうしてなかなか、自分たちでゆっくりできないのかなあ……」 毎日ものすごい数が生まれ、そのほとんどが死んでいくゆっくり。 わざわざ人里に下りてきて、家や畑を荒らしては潰されるゆっくり。 ゲスやレイパーや共食い、同族で殺し合うゆっくり。 ゆっくりとは、一体なんのために生きているのだろうか。 「ゆっ、おそいよ!!ごみくず!!」 由美と一緒に家に戻れば、甲高い挨拶が飛んでくる。 「ぐずぐずしないであまあまをもってきてね!!」 「そのめはなんなの?ばかなの?たちばわかってるの?ばぁーか!!」 「まま、かちくがもどってきたわよ」 「あらそう、どこをほっつきあるいてたのかしら。 そろそろしつけなおしたほうがいいかもしれないわね」 「ゆっくりしないでしね!!げらげらげら!!」 「とっととうんうんをなめるんだぜ!!たっぷりためといてやったんだぜ!!」 子ゆっくり共は成体サイズになり、滑舌もまともになっていた。 改めて眺めると、よくもこんな連中と付き合ってきたものだと思う。 しかし終りが見えた今は、そんな声も耐えて受け流すことができた。 ゆっくり共の罵声を無視し、鞄を放り出して横になる。 無視できることがこんなに有難いとは。 「ゆっ!?ごみくず!!なにゆっくりしてるのぉ!?さっさとおきてせいざしてね!!」 「あまあま!!あまあま!!きいてるのかだぜ!?ゆっくりするんじゃないのぜぇ!!」 「くちをあけるんだぜ!!うんうんをじかにたべさせてやるんだぜ!!」 無視無視。 よじ登ろうとしてきたゆっくり共を適当にあしらって追いやる。 潰してやりたいところだが、こいつらは長浜氏の家に飼われるのだからそうもいかない。 「ぎいでるのがああああああああゆっぐりごろじいいいいいいいいい!!!?」 その言葉にはさすがにどきりとした。 一緒に来ている由美のほうを見る。 しかし由美はそれには触れず、かがみ込んでゆっくり達に言った。 「れいむちゃん、まりさちゃん、ありすちゃん。みんな聞いて。 明日、みんなでお引越ししましょうね」 「ゆっ!?」 「ここではもうゆっくりできないの。 もっとゆっくりできるゆっくりプレイスに連れていってあげる」 ゆっくり共は一瞬きょとんとしてから顔を見合わせ、その後げらげらと笑い合った。 「げらげらげらげら!!ばかがなにかいってるのぜぇ!?」 「ゆっくりプレイスはここなんだぜ!!まりささまがきめたんだぜ!!」 「いいのよ、おねえさん。かちくがむりにあたまをつかわなくてもいいの。 かんがえることはとかいはなありすたちにまかせておきなさいね」 「むのう!!のろま!!ばぁーか!!ろどん!!」 予想できていた反応に、由美は困ったように笑った。 「ね、これからは人間さんの話を聞いて。 今度のゆっくりプレイスでは、人間さんがみんなをゆっくりさせてくれるわ。 でも、人間さんの言うことを聞かなくちゃだめよ」 ぼひゅっ、という音が響く。 ゆっくり共が吹き出したらしい。冗談じゃないという驚き、ちゃんちゃらおかしいという嘲笑の両方だろう。 「ばかなの?しぬの?あたまつかってる? そんなところでゆっくりできるわけないでしょぉぉ!!」 「いーい?にんげんさんはごみくずでのろまな、かとうなせいぶつなの。 ゆっくりがみちびいてあげなきゃいけないの。いうことをきくのはにんげんさんのほう。 わかるかしら?もういちどいってあげましょうか?」 「かわいがってやっていればつけあがるなだぜ!! にんげんのいうことをきくぐらいならゆっくりするんだぜぇ!!」 最後の発言は意味がおかしい。 「勝手よね、私たち。今更しつけようなんて」 「そうだな」 由美に頷いてやる。 虐められているうちは、叩き潰してやりたいと渇望していたものだが、 このゆっくり共もある意味では被害者、もとい被害ゆっくりなのだ。 そう思うとなんだかどうでもよくなった。 ただし、あくまで「ある意味で」という前置きつきでの穿った見方だ。 ガラスを割って侵入してきたこのゲス、追い払ったところで別の人間に潰されるか、 群れの中で孤立して自滅するかだろう。 まあifの仮定なんかしたって無意味だが、こいつらが不幸だなどとは言わせない。 最低限のルールは課されることになるが、これから行くところだって、 死ぬまで存分にゆっくりできる夢のようなゆっくりプレイスだ。 とにかく、明日の昼には迎えが来て、 こいつらは長浜氏の邸宅に移されることになる。 その旨を伝えると、ゆっくり共は俄然騒ぎ出した。 「なにいってるのぉおお!?ばかなのぉぉぉぉ!!!」 「まりささまはここにすむんだぜぇぇぇ!!しねぇ!!!しぬんだぜぇぇぇ!!!」 「このかちくはもうだめね! そこのおすにほかのつがいをさがさせましょう」 「おい、なにゆっくりしてるんだぜぇ!! このばかをなんとかするんだぜ!!あのことをいわれてもいいんだぜぇ!!?」 「あのことって?」 由美が聞いてきた。 「全部話すよ。それより、もう出よう。 もう一晩だってこいつらといたくないよ」 俺は由美を近くのファミレスへと誘った。 「おいぃ!!にげるなだぜぇ!!ごみくず!!もどれぇぇ!!」 「ゆっくりごろし!!ゆっくりごろし!!あかちゃんごろしいいいい!!」 結局、俺は子殺しに加担した全てを、ショックを与えないように細部は省いて話した。 俺がゆっくり愛好派ではないことはもともと承知の上だし、 計画が失敗に終わったという結論が出た今、取り繕うこともなかった。 由美は悲しんだが、結局は許してくれたようだ。 「全部、私のせいよね」 「よせよ。みんな悪かったんだ、俺もお前もおじいさんも、もちろんゆっくりも。 後悔したって始まらない。みんなでやり直そうぜ」 「そうね」 あのゲスどもに関しては、俺はもう関わらないけど。 その日は、由美を送り返したあと近くのビジネスホテルに泊まった。 問題は山積みだが、それでもあのゲスのいない生活を考えるだけで心は浮き立った。 翌日から、俺はそれまでの鬱憤を晴らすかのように勉学に打ち込んだ。 もともと勉強好きな俺は、遅れを取り戻すべく、大学でも自宅でも猛烈に並び、 一時落ちていた成績を再び大学トップクラスにまで戻した。 同時に、就職活動も行った。 有名大学で優秀な成績を収める俺にとって、そう難しいことではなかった。 だが、結局は長浜氏の強い勧めで、長浜グループ関連の建築会社に内定が決まった。 コネを使うことになってしまったが、実力的にも不足はない。 在学中に結婚までしてしまった。 長浜氏の願いで、俺が婿養子として迎えられることになった。 由美は一人っ子だし、家柄を考えれば無理もないか。 順風満帆だった。 我ながらなんというシンデレラボーイ。 あの地獄に堪えた報酬は、十分見合ったものだった。 だが、そんな地位や収入などよりも、 俺は何より、由美との結婚生活が楽しみだった。 愛する妻、子供、ピクニックやキャッチボール。 陳腐だが愛にあふれた家庭生活を想像するだけで、俺はすでに幸福の絶頂にいた。 俺は長浜氏の邸宅に一時的に住んでいた。 就職するまでは、という長浜氏の強い勧めだった。 あの人はなんだかんだで、いろいろと強引に勧めてくる。 一人ではしゃいでいる祖父に比べ、 由美の両親のほうは少々ぎこちなかったが、おいおい打ち解けていけるだろう。 「おにいさん、ゆっくりしていってね!!」 「ごはんのじかんになったらあまあまをおねがいね!!」 長浜氏の邸宅には、ゆっくりが大量にいた。 れいむ種、まりさ種、ありす種、ぱちゅりー種、ちぇん種やみょん種などレアなものも。 正直うざったかったが、あのゲスどもに比べれば天地の差。 これだけしつけが行き届いていれば問題なく付き合っていけそうだ。 問題のゲス共は、ひどいものだった。 ここに連れてこられてすぐに個室に移されたが、 しつけをしようとしても全く言うことを聞かない。 人間は自分たちの奴隷だ、黙って言うことを聞け、あまあまをもってこいの一点張りで、 そればかりか嬉々として嫌がらせをしてくる。 少々強く言うと、ものすごい剣幕で火がついたように暴れまわった。 長浜氏の知人である有名ゆっくりブリーダーに見てもらったが、これはダメだろうとのことだった。 「ここまでつけ上がったゆっくりは、多分もう無理だと思います。 人間をなめているばかりか、明確な悪意を向けてきている。 しつけるにしても、ものすごく強烈なやり方でないと。 もしかしたら死んでしまうかもしれませんよ」 さすがにそこまですることもない、という長浜氏や由美の意見で、 結局このゆっくり共は、郊外に外出する時以外は個室から出さずに寿命まで勝手にやらせることにした。 といっても、こいつらは外出することはあまりないが。 「しかし、よくもまあここまでつけ上がらせましたね。びっくりしました。 ここまでの個体は初めて見たかもしれません。 逆にゆっくりブリーダー向きかもしれませんよ、あなた」 俺はそう言われたが、勘弁してくださいと首を振った。 そんなゲスどもを、由美は相変わらず面倒を見ている。 長浜邸では、家族だけでなく使用人も大勢のゆっくり共の面倒を見ているが、 あのゲスは使用人でさえ関わりたがらず、結果としてほとんど由美が面倒を見ることになった。 結局相変わらず甘やかしているようだ。 「おねえさんはゆっくりしないでおうたをうたってね!!」 「きたないうたなんだぜ!!ゆっくりできないからとっととやめるんだぜぇ!!」 「げらげらげらげら!!」 しかし、ついに別れのときがやってきた。 俺が就職し、なかなか広いアパートに住むことも決まった。 子供が生まれたら、最初は自分たちの家に迎えたい。 そういう俺の希望で、出産の前に引越しの手続きを済ませることになった。 一応、出産前後は由美の母がアパートに通っていろいろ手伝ってくれる。 由美のお腹の子は五か月になっていた。 お腹の膨らみもはっきりとわかる。 俺の宝だ。 引っ越し前日の夜になって、 由美はあのゲス共に別れの挨拶をしてくると言った。 俺は挨拶などする気も起らず、寝室で由美を見送った。 俺はずっと疑問だった。 身体能力や耐久性はあまりに弱いゆっくり。 しかし、その自意識は身の丈をはるかに超え、 危険な場所やより強大な敵に、自分から飛びこんでいく。 その構造は一体なんなのだろう。 生物として、全く理にかなっていない。 何度考えても、生物学的にまったく説明がつかなかった。 ゆっくりとは一体なんなのか? 由美はいつまでも帰ってこなかった。 十二時時を過ぎて深夜になっても、由美は二人の寝室に戻ってこなかった。 由美がゲス共に会いに行ってからすでに三時間。 いくらなんでも別れを惜しみすぎではないのか。 俺は立ち上がり、ゲス共の部屋に向かった。 「由美。俺だ。いるのか?」 ドアをノックしたが、返答はなかった。 しかし気配はあった。 中でわめき声が聞こえている。ゆっくり共が騒いでいるのだ。 いつもの事だった。 しかし、その声に俺はどこかいつもと違う空気を感じた。 なんだ? 俺はドアを開けた。 「ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!」 「んほぉおおおおおおおおすっきりいいーーーーーーーーーっ!!!」 「ゆっくりするなだぜぇ!!さっさとおきるんだぜぇ!!!」 由美と娘はそこにいた。 「ゆっ!!ごみくずがやってきたんだぜ!!」 「ゆゆっ!?いまごろきてもおそいよ!!げらげらげらげら!!」 「んっほぉぉぉぉおおお!!!きもちいいわああああああ!!!」 俺は膝をついた。 言葉が出なかった。 脳が思考を放棄し、体が震えて動かなかった。 「ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっ!!」 執拗に飛び跳ね、踏みつけていたれいむは、 俺を認めると、そこに乗ったままで罵ってきた。 「くそじじいのあかちゃんはしんだよ!! れいむだっておちびちゃんをころされたんだからね!! ゆっくりりかいしてくるしんでね!!ざまぁ!!」 まりさ共が、由美の体に体当たりを繰り返している。 「まりささまのゆっくりベッドでゆっくりするんじゃないんだぜぇ!! くそどれいにそのふかふかはもったいないのぜ!!おきるんだぜえぇ!!」 由美は動かなかった。 頭をまりさ用の天蓋つきベッドに突っ込んだまま、ぴくりともしなかった。 天蓋は一部の骨組が折れ、由美の頭の下に敷かれている。 「あかちゃんのおはだすべすべよぉぉぉぉぉ!! なんかいでもいけるわあああああんほおおおぉぉぉすっきりいいいいいーーーーっ!!!」 ありす共が粘液にまみれながら絶叫している。 親子五匹のありす共が、それにまとわりついて蠢いていた。 地獄。 無間地獄。 こいつらは。 俺は泣きながら這いずっていった。 震える喉からやっとのことで絞り出したのは、次の問いかけだった。 「どうして」 それは、このゲス共に向けた質問ではなかった。 俺は何に向かって問いかけたのだろうか。 「ゆっ!!ごみくずはばかすぎてあきれるんだぜぇ!! ごみくずのたくらみなんてまりささまはすべておみとおしなんだぜ!? おきのどくなんだぜぇ!!げらげらげらげら!!ふっきんほうかい!!」 まりさが笑っている。 「ゆふぅ~……とかいはなせれぶのありすには、 いなかもののかんがえることなんておみとおしよ」 「ままはおみとおしよ!あてがはずれたわね!!んほっ、んほほぉぉ!!」 「どうしてわかったかおしえてあげましょうか? ありすがまえにすんであげていたゆっくりぷれいすのにんげんは、 はじめはありすにぞっこんで、かいがいしくありすにほうししていたわ。 ありすがいえば、すっきりようのゆっくりをつぎつぎともってきた。 にんげんがあれこれやってくれというから、 やさしいありすはおのぞみのぷれいをみせてあげもしたわ」 このありすの飼い主が、あの技術を教えたのか。 「でも、そのにんげんは、あれほどかわいがってもらったおんもわすれて、 このありすをうらぎった。 にんっしんっしたのよ。 にんっしんっしてこどもがうまれたたとたんに、 そのにんげんはありすをゆっくりぷれいすからほうりだした。 じぶんのこどもにかまけて、 ほんらいのしごと、ありすのどれいのせきむからにげだしたのよ!」 「んほっ、まったくにんげんはいなかもののかとうどうぶつよね! ちゃんとみてないとすぐににげだすんだから!!」 「このおねえさんがにんっしんっしたときから、 ありすにはこうなることはわかっていたわ。 あなたたちにんげんは、こどもができると、まわりがみえなくなる……」 「だからまりささまがまびいてやったんだぜ!!」 まりさが引き継いだ。 「こどもをみてしこうていしするまえに、 まりささまがまよいのたねをつみとってやったんだぜ! ごみくずどもはいままでどおり、つよくてかっこいいまりささまにしんすいして、 まりささまだけにつかえていればいいんだぜ!!」 「あらりょうじだったけど、れいせいになってよくかんがえなさい。 おちついてかんがえればこれがただしいとわかるはずよ。 いなかもののかとうせいぶつでもね!!」 「れいむはおまえにこどもをころされたんだよ!! こどもをころされるくるしみがわかった!?もっとくるしんでね!!げらげら!!」 ゆっくり共は、悪意の塊のような表情を浮かべてせせら笑っていた。 それはひどく醜く、どれほど憎んでも足りなかった。 「こどもはありすにおかされてしんだよ!! くやしい?くやしい?ねぇねぇ、いまどんなきぶん?どんなきぶん?ゆっゆっゆ~♪」 震えて泣きながら、俺はゆっくりと疑問が氷解していくのを感じていた。 「ざまぁ!!ざっまぁぁぁぁ!!くやちぃくやちぃ~~~~~♪」 ああ。 「げらげらげら!!そしてこのかお!!ないてるときがいちばんばかみたいなんだぜぇ!!」 そうか。 「ごみくずはむせびなき~♪れいむたちはいいきぶん~♪ゆっゆ~~ゆゆゆ~♪」 お前たちは。 「このおねえさんひっどいかおよねぇ、みっともないったらありゃしない! とかいはにこーでぃねーとしてあげるわ!んほおおぉぉすっきりいいーーーーーー!!!」 苦しむために生まれてきたんだな。 由美は死んではいなかった。 しかし、病院で医師に宣せられたことは死と同義だった。 頚椎骨折。 あの部屋で倒れたとき、首の部分がちょうどまりさの天蓋つきベッドを下敷きにして、 その骨組をなしていた木材にぶつかり、頚椎を折っていた。 脊髄を損傷して由美は全身不随となり、意識も失ったまま戻らなかった。 病院のベッドで点滴を受け、なにも映さない目で天井を見つめるだけの生活になった。 子供は女の子だった。 発見したときにはすでに手遅れになっており、 その亡骸は、長浜家の墓に埋葬された。 俺が決めてあった名前が、その墓には彫られた。 長浜氏と俺の意向を受け、 その事件は日本中に大々的に報道された。 その主犯であるあのゲス共は事情聴取を受け、 警察やテレビの取材班に喜々として自分の所業を語り、 その様子は日本中に放映された。 「まずまりささまがあしにまりさしゃいにんぐあたっくをくらわしたんだぜ!!」 「そしたらおねえさんがぶざまにたおれたんだぜ!!おとうさんはつよいんだぜ!!」 「たおれたところにれいむがおなかのうえでぴょんぴょんしたんだよ!! ごみくずのあかちゃんはすぐにでてきたよ!!にんげんさんはもろいね!ぷげら!!」 「あかちゃんのおはだはとってもすべすべもちもちしていてとかいはだったわ。 またもってくるならすっきりしてあげてもいいのよ?」 「おなかすいたあああ!!れいむおうちかえるうううう!!」 それは飼いゆっくりによって人間が殺された日本史上初の事件だった。 日本中がその事実に震撼し、愛護派の多くが認識を改め、虐待派がさらなる気炎をあげた。 その日から、日本中で捨てゆっくりの数が増大し、 同時にむごたらしく殺されたゆっくりの死骸が町に散乱し、市民はその処理に追われた。 だが、殺されるゆっくりに同情する者はいなかった。 日本の法律では、ゆっくりを罰する法は制定されていない。 人を殺し、全身不随に追いやったそのゆっくり共を憎み、処刑を望む声は高かったが、 俺はそのゲス共を手元にとどめた。 長浜氏は憔悴しきってうなだれていた。 俺はあの居間でテーブルをはさんで向かい合い、黙っていた。 居間にゆっくりの姿はない。 長浜氏の邸宅から、ゆっくりの姿は一掃されていた。 すべて加工所に送られていた。 もはやゆっくりの姿を見るのも嫌なのだろう。 先日は、道端で出会った野良ゆっくりにあまあまを要求され、 長浜氏らしからぬ激昂を見せて踵で一息に踏みつぶしていた。 いまではゆっくり愛護会の会長も退いている。 重苦しい沈黙が流れたが、 やがて長浜氏が言った。 「すべて私のせいだ」 孫と同じ事を言う老人が悲しかった。 「ただ一度だけ、一度だけ叱りつけてやればよかった。 強くたしなめれば、あの素直な孫は言うことを聞いてくれ、あんなことはやめたろう。 私がそれをせず甘やかしたために、たった一人の孫娘とひ孫を、君の妻と娘を死なせてしまった」 「お祖父さん」 「私を恨んでくれ」 震える老人はひどく小さく見えた。 「それは僕の言う事です……あなたの孫娘を守れなかったこと、深くお詫びします。 このことは、一生をかけて償うつもりです」 「圭一君」 俺は長浜氏に向かって、毅然として言い放った。 「僕は誰も恨んでいません。 僕の恨みは、あのゲスゆっくり共に全て向けられています」 「君の注文どおり、やつらは元の個室でのうのうと贅沢三昧の日々を送っておるよ」 「そのようですね。ありがとうございます」 「どうするつもりかね?」 「どう、とは」 「やつらをどうするのかね」 「質問で返すことをお許しください。 お祖父さんはどのようにしたいとお思いですか?」 「殺してやりたい!」 テーブルに拳を叩きつけて長浜氏は叫んだ。 「この手で引き裂いてやりたい、踏みつぶしてやりたい!! やつらは、やつらは……私は今まで………今ごろになって………」 すべては遅すぎた。 長浜氏は自分を責めていた。 あの日から眠れた日がどれだけあったろうか。 「僕に任せてくださいませんか」 「……どうするのかね」 「一息に殺したところで、この恨みは晴れるものではないでしょう」 俺はノートを取り出し、長浜氏の前に置いて言った。 「僕は人をやめます。どうぞ軽蔑してください」 俺の顔を見てから、長浜氏はゆっくりとページをめくった。 彼は眼を見開いた。 ノート一冊分にびっしりと書き込まれたそれは、俺の計画書だった。 「これは……」 「あの日から書き続けていました。まだ未完成ですが」 眉をひそめてそのノートを食い入るように見つめていた長浜氏は、 自分の頬を掴みながら呻いて言った。 「……わたしはかまわない。 しかし君は……それでいいのか」 「はい」 「君にはまだまだ先の人生が残っている。 こんなことに……こんなことで……人間を捨てることはない」 「僕はこれから先の人生を、あのゆっくり共に捧げるつもりです」 「私がやる。これは私がやろう。しかし君は」 「これから先、同じ犠牲者を生まないためです。 そしてこれは、ゆっくり達のためでもあります」 「こんなことが?」 俺は頷いた。 狂人と思われようとかまわなかった。 「ゆっくりは苦しむために生まれてきたんですから」 「……それは」 「あの生物がどういう生き物なのか、ようやくわかったんです。 あいつらは弱い。痛みに弱く、耐久性もなく、ひどく簡単に苦しみ、壊れる。 そのくせ悪意や闘争心が強く、強い外敵に向かって無謀な喧嘩を売り、執拗に挑発する。 どこにも根付くことができないくせに、どこにでも入り込む。 そんなゆっくり共が生物として安定している状態は何か、ずっと考えていました。 そしてそれは、苦しんでいる状態でした」 「それは、君……いくらなんでも」 「そう考えれば、すべてにつじつまがあいました。 やつらの行動はすべて、苦しむというただそのことに向けられている。 生まれては死に続け、憎まれ虐げられつづけるゆっくり共は、 そのことですでに生物としての目的を達しているんですよ」 「………」 「僕は残りの一生を、やつらのために捧げます。 今こそ僕は、苦しむために生まれてきたやつらの奴隷になりましょう。 人間のために、ゆっくりのために、お互いの種の安定を目指そうと思います」 「圭一君」 力なくうなだれ、長浜氏は言った。 「君は変わったな」 「変わりました」 俺は答えた。 計画は実行されることになった。 計画には長浜氏が全面的に尽力してくれることになり、 さらに二か月間が準備期間にあてられた。 都心からそう遠くない、しかし奥まった山奥の廃墟が選ばれ、 目的のために改築された。 その間、ゲスどもはあの個室で贅を尽くしていた。 長浜氏や俺の指示に従い、使用人たちは毎日やつらの面倒を見ていた。 実行の日。 今、俺は改築された建物の中で、 大きなテーブルの前に立っている。 テーブルの上には、睡眠薬を食事にまぜられた十三匹のゆっくりが眠っている。 「ゆぴぃ……ゆぴぃ……ゆぴぃ……ゆぴぃ……」 あの日、俺の部屋に侵入してきたまりさとれいむ。 まりさが外から連れ込んできたありす。 それぞれが50cmのバランスボール大だった。 そしてその子供、子れいむが三匹、子まりさが三匹、子ありすが四匹。 十匹とも30cm大のバスケットボール大。 テーブルを囲むのは、計画の実行に関わる人々。 長浜邸の使用人やゆっくりの研究者たち。 計画のリーダーは俺だ。 俺の計画を、これからこの手で実地に行うことになる。 こいつらのために、持てるすべてを捧げよう。 涎を垂らしながら泥のように眠りこむゆっくり共に向かって、 俺は静かに声をかけてやった。 「ゆっくりしていってね」 続く 選択肢 投票 しあわせー! 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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。(十回超の予定) ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』5 カートの上に四匹のまりさ共を乗せ、俺はある一室に入った。 この部屋は、通常の人間の居住空間になっており、 家具や調度が一通り揃っていた。 実際に、俺はここで寝泊まりをすることになる。 八畳ほどのこの部屋には、 冷蔵庫や布団をはじめ、必要な生活用品が揃っている。 特殊なのは、壁のうちある一面が全面鏡張りになっていることだった。 そして、部屋の一角には頑丈なケージがあり、 およそ2m余り四方を区切っている。 この部屋に、まりさ種の四匹を放した。 カートの籠から持ち上げ、部屋の真ん中に投げだしてやる。 「ゆぎゅっ!」 顔面から板張りの床に叩きつけられ、呻く親まりさ。 俺を見上げて悪態をつく。 「ゆゆっ!!なにやってるんだぜごみくず!! このまりささまをいたいめにあわせて、ぶじですむとおもってるのかだぜ?!」 無視して、今度はバスケットボール大の子まりさを出す。 こちらはケージの中に放り込む。 「ゆぎゃ!」 「なにしやがるんだぜ!?」 「あやまったってゆるしてやらないんだぜ!どげざするんだぜ!!」 少しの間喚いていたが、 やがて部屋全体を見渡し、様子を見てとると、 親まりさが予想通りの言葉を吐いた。 「ゆゆっ!!ここはまりささまのゆっくりぷれいすにするんだぜ!! おい、ごみくず!!しごとをめぐんでやるんだぜ? はやくあまあまをよういするんだぜ!!」 「はやくするんだぜごみくず!!」 「ここでもどれいにしてかいごろししてやるんだぜ!! まずはかんしゃのどげざをするんだぜ!!」 「あまあま!!あまあま!! もってきたらしーしーをのませてやるんだぜ!!」 相変わらずの罵詈雑言を聞き届けると俺は息をついた。 早速始めることにする。 まず、ケージの中の三匹の子まりさ。 その後に親まりさの順で、おれは手早く帽子を取り上げた。 「ゆっ!!?なんのつもりなんだぜ?!」 「まりささまのおぼうしがああああ!!」 「ごみくずううううう!!かえせええええええ!!」 「ごみくずはじぶんのたちばがわかってないんだぜええ?! しつけなおしてやるからぼうしをかえすんだぜえ!!」 「返してほしければ、俺から奪い返してみろ」 「ゆっ?」 俺の前にいる親まりさが、小馬鹿にした笑みを浮かべた。 「じぶんがなにをいっているのかわかってるんだぜ? まりささまにけんかをうっているんだぜ!? もしかしてまりささまにかてるとおもっちゃったんだぜ? ばかはすくいようがないんだぜ!!ゲラゲラゲラゲラ!!」 子まりさともどもひとしきり嘲笑した後、 真顔に戻ってまりさは侮蔑の視線を送ってきた。 「ぼうしをかえすんだぜ、ごみくず。 こうかいしないうちにかえしたほうがいいんだぜ。 いまならはんごろしでゆるしてやらないこともないのぜ?」 俺は手に握った帽子をぐしゃぐしゃに握り潰し、ズボンの裾に突っ込んだ。 まりさの目が怒りに燃え上がる。 「ごみくず…… くそのやくにもたたないおまえを、 まりささまはきょうまでがまんしてかってきてやったんだぜ? それはまりささまのなさけだったんだぜ。 そのまりささまにたいして、おまえはそんなたいどをとるんだぜ?」 「おとうさん!!そいつをころすんだぜ!!」 「こわれたどれいはようずみなんだぜ!! たっぷりいじめころしてやるんだぜ!!」 「はじめておとうさんのけんかがみられるんだぜ!!わくわくだぜ!!」 子まりさ共が口々に叫ぶ中、親まりさは宣告した。 「もうあやまってもゆるさないんだぜ。 いくらないても、あやまっても、まりささまはゆるさない。 じっくりとなぶりごろしてやるんだぜ。 ごみくずはたっぷりこうかいしながらしぬんだぜ!!」 親まりさが跳び、俺の足に体当たりをしてきた。 直径50cmの饅頭の体当たりは、さすがにそれなりの質量がある。 不意打ちで喰らえば、尻餅をついてしまいそうだ。 しかし正面から向かってくる今、まるでダメージにはならない。 親まりさは何度も何度も体当たりを繰り返してきた。 俺はそれを見下ろしながら黙っていた。 十分ほどそうしていた後、 ぜえぜえと息をつきながら、親まりさはこちらの顔色を伺っていた。 なぜ倒れないのか不思議そうな顔だ。 「痛くない」 俺がそう言うと、愕然として口を半開きにした。 子まりさ共が、おかしいとばかりに口々に叫ぶ。 「おとうさん!おあそびはもうおわりにするんだぜ!!」 「そろそろとどめをさしてやるんだぜ!!」 「ゆ、と、とどめなんだぜ!!」 親まりさは数歩下がってから、 助走をつけて全力で体当たりをしてきた。 俺は少しばかり腰を落として構えただけで、小揺るぎもしなかった。 ぜひ、ぜひ、息をつくまりさの前に屈み込み、その顔を覗き込む。 「な、なんでなんだぜ……?」 その左頬を、右腕で力を込めて殴りつける。 これだけ成長した饅頭なら、 そう慎重に手加減しなくても、そうそう死ぬことはないだろう。 「ぐびゅえっ!!」 あえなく悲鳴を上げる親まりさ。 俺は親まりさの頭を左手で押さえつけ、同じ場所を殴り続けた。 「ゆがびゅっ!!ぼびゅっ!!ばっ!!ゆびぃっ!!ぼぉ!!」 何十発殴っただろうか。 親まりさの顔面の左側は、今や全体が内出血ならぬ内出餡で黒ずんで腫れあがり、 左目は開かなくなっていた。 手を休めて眺めていると、ごほごほと咳き込み、 口から少量の餡子とともになにかをばらばらと吐き出した。 歯だ。 腫れあがってでこぼこになった左頬を、そっと触れる。 「ゆぎぃ!!」 それだけで悲鳴が上がった。 左頬をつまみ、つねり上げてやると、涙を流して呻いた。 「やべで!!やべで!!づねらだいでええええ!!」 「ゆっくりぷれいすにするって言ったな?」 「いだい!!いだい!!いだいいいいいい」 また左頬を殴りつける。 「ゆびいいい!!」 「俺の話を聞くんだ。いいな?」 状況が掴めていない様子で、不思議そうに親まりさの右目が俺を見上げる。 また右手を振り上げてやると、親まりさは泣き喚いた。 「ぎぎばず!!ぎぎばずうう!!なぐらだいでえええええ!!!」 「ここをゆっくりぷれいすにするって言ったな?」 「ばいいい!!いいばじだあああ!!」 「いいだろう。ここは俺の部屋だが、俺から奪ってみろ。 俺を倒せば、この部屋はお前らのものだ。お前らの帽子も奪い返せる」 半ば子まりさの方を向きながら、俺は説明した。 「この部屋に住めば、毎日山ほどのあまあまが運ばれてくる。 沢山の人間達や美ゆっくり達がお前たちの世話をするし、すっきりもし放題だ。 楽しい玩具だってふかふかのクッションだっていくらでも、前の部屋なんかより沢山ある。 お前らはここで存分にゆっくりできるんだ」 その言葉を聞き、それまで呆然と成り行きを見守っていた子まりさ共は、 声を奮って親まりさを叱咤激励した。 「おとうさん、たちあがるんだぜ!!なにしてるんだぜ!?」 「まりさたちはゆっくりしたいんだぜ!!」 「おぼうし!!ゆっくりぷれいす!!はやくするんだぜ!!」 「ゆ……ゆ……」 哀れっぽい視線を、子まりさ達、そして俺に向ける親まりさ。 がたがたと震えている。 「さあ、準備運動はここまでだ。 お互い本気で戦おうじゃないか」 そう言って俺が立ちあがると、親まりさの顔が一瞬歪み、次に命乞いをした。 「も、もうやべで……」 「なに、やめるのか?」 「まりささまは……もうたたかえないんだぜ……」 「やめるって言ってるぞ」 子まりさ共のほうを向いてそう教えてやると、 ケージの中で三匹の子まりさ共は飛び跳ねて激昂した。 「なにいってるんだぜ!! まりさたちがゆっくりできなくなってもいいんだぜえ!?」 「おぼうし!!おぼうし!! おぼうしがないとゆっくりできないいいい!!」 「はやくたたかええええ!!なにふざけてるんだぜえええ!!? おとうさんはつよいっていつもいってたんだぜええええ!!」 「ゆあぁ……ゆあぁ……」 呻く親まりさ。 この饅頭は、以前まではあの家の主に君臨し、 普段から子供に対しても威張り散らしていた。 面倒を見もせずに親れいむ達に任せ、それどころか旨いものを横取りしてもいた。 その親まりさを子まりさ達が慕っていたのは、ひとえに強さへの羨望と尊敬によるものだったのだ。 帽子を奪われ、ゆっくりぷれいすを前にした今、 その親まりさが戦わないとすれば、 子まりさが今まで親まりさの横暴に耐えてきた意味がなくなる。 ここで子まりさ達が親まりさの降参を許すはずがなかった。 親まりさにも、それはよくわかったようだ。 「ごべん……ごべんだざい…… まりさ……だだがえだい……」 「ばやぐじろおおおお!!ぐぞまりざあああああ!!」 叫ぶ子まりさ達に、俺は確認した。 「始めていいんだな?」 「はやくはじめるんだぜ!!さっさとやられるんだぜ!!」 「ゆ、やべぶぎゃぁ!!」 懇願しようとする親まりさの口内を、つま先で蹴り抜く。 これだけの大きさの饅頭はそうそう蹴り飛ばせるものじゃないが、 それでも親まりさは少しばかり浮き、後方に着地して倒れ込んだ。 「ゆばぁ……あがぁ……」 涙を流しながらえずく親まりさの口から、また歯がこぼれる。 前歯が殆どいかれたようだ。 「やべで……やべびぇっ!!」 腫れあがった左側面にローキックを叩きつける。 「びぎぃいい!!びぎぃいいい!!!」 飛び跳ねてもんどりうつ親まりさ。 ここにきて親まりさはようやく立ち上がった。 しかし、こいつが選んだのは闘うことではなく逃げることだった。 「にげるなああああ!!なにしてるううううう!!」 「さっさとたたかえええええ!!」 「まりさたちがゆっくりできなくてもいいのかああああ!!? それでもちちおやなんだぜえええええ!!?」 「ぶひゅう……!ぶひゅう……!!」 部屋の隅に背中を押しつけ、泣きながら荒い息をつく親まりさ。 俺はあえて追わず、子まりさ共に向かってルールを説明した。 「勝負が終わる条件はふたつ。 親まりさが死んだときと、子まりさ達が負けを認めたときだ。 あいつが死ぬか、おまえ達が負けを宣言すれば、勝負は終わりだ」 おかしなルールだが、これはもとから勝負ではない。 「負けた時点で、お前たちは俺の奴隷になる。 そうなったらゆっくりさせない。ずっとゆっくりさせない。 これから先、お前らが死ぬまで、 あまあまももう食べられない。すっきりもできない。 遊ぶ時間なんかないし、眠ることも許さない。 永遠に痛めつけ続けてやる。 ここで負ければ、お前たちは、 ずっと、ずっと、永久に、ゆっくりできない」 まりさ共の顔色がみるみるうちに青ざめていった。 ゆっくりすることが全てに優先し、 ゆっくりするために生きているゆっくりにとって、 それは死刑宣告よりもずっと恐ろしい成り行きだろう。 「だだがえええええ!!だだがえええええええ!!」 「ぐぞまりざあああああああ!!!わがっでるのがああああ!!!」 「ゆびゅうううう!!ゆびゅううううう!!」 涙を流し続ける目を見開き、親まりさは鳴き声を発していた。 闘うしかない。 それはわかっていたが、体がついていかなかった。 がたがた震えつづける体を引き摺り、親まりさは少しずつ前に出てきた。 俺の目の前にやっとのことで辿り着くと、 親まりさは息をついてから、緩慢な動きで体当たりをしてきた。 ぼでんと足に当たった後、親まりさは悶絶した。 「びぃいいい!!いだい!いだいよううう!!」 歯が折れ、腫れあがった顔面では、 体当たりをすると自分が痛い目を見ることになる。 ゆっくりの唯一といっていい攻撃手段が、ここにきて用をなさなくなった。 この一発で、親まりさは早くも音をあげた。 「だべでずうう……だべでずうう……だだがえまぜん…… ばりざをだすげでぐだざい……だずげでぐだざい……」 「負けか?」 「まげまじだあ……ばりざのまげでずうう……」 「お前には聞いてない。お前の子供たちに聞いてる」 親まりさの顔が絶望に歪む。 「負けか?」 「まげじゃないいいいい!!!がづ!!がでええええ!!」 「だだがえええええええ!!!ばがあああああ!!ぐぞまりざあああ」 「がでええええ!!ぼうじがえぜええええええ!!! ゆっぐりでぎないのいやだあああああああ!!」 「じねえええええ!!!がでなぎゃじねえええええ!!! まりざだぢをゆっぐりざぜないぢぢおやはじねえええええ!!!!」 「むりだよおおお……いだいよううううう……」 ぼろぼろぼろと涙を流し、子供たちを見つめる親まりさの頭を、 俺はしたたかに踏みつけた。 「あぎゅううっ!!」 踵で踏みつける。踏みつける。何度も何度も踏みつける。 「あぎゅ!!ぐゆう!!びゅう!!びゅ!!ぎゅぶぃいい!!」 踏みつけるたびに上顎と下顎を叩きあわせる音が響く。 次に右足を頭に押し付け、体重をかけて押しつぶす。 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 押しつぶしながら、ゆっくりと足を左右にこじってやる。 ぺきぺきと、口の中で歯が折れる感触が伝わってきた。 「ゆうぐううううううううううう!!!」 失禁した。 よく見ると脱糞もしている。押しつぶしたせいもありそうだ。 足をどけて開放し、また横に蹴り飛ばす。 「さあ、頑張って帽子を奪い返そうか」 俺が近づいていくと、親まりさは必死に起き上がり、 ずりずりと這いながら逃げていった。 再び部屋の角にすがりつく親まりさの上に、 俺は覆いかぶさるように立ちはだかった。 「ゆぐ……ゆぐ……ゆぐじでぐだざいぃ………」 「命乞いなら子供に言うんだな」 そう言ってやり、今度は右頬を蹴りつける。 壁に両手をついて体を支えながら、俺は蹴り続けた。 「ばっ!!ゆびぃ!!びぃ!!ぎゅう!!ゆぶじびぇっ!!」 何十発と蹴っていくうちに、右側もぱんぱんに腫れあがった。 もう親まりさの顔面に腫れていないところはなくなった。 黒い風船のようにいびつに膨れ上がり、一回り大きくなったように見える。 両目は開かず、歯もほぼ全部抜け落ちた状態だ。 「あいいいいいぃぃぃぃ……あいいいいいぃぃぃぃ…………」 小休止をして眺める。 親まりさは、今や壊れたおもちゃのように音をたてるだけだ。 「負けか?」 「ば……ばりざは……ぼう……」 「じねえええええ!!じねぇええええええ!!」 子まりさ共の叫びは、もはや「闘え」でも「勝て」でもなかった。 「おで……おでがい………ばりざ……ばりざの…おぢびぢゃん……」 見えない目で、声を頼りに親まりさは子供のところへ這いずっていった。 ひどく遅い歩みを、休憩がてら邪魔せずに見守ってやる。 親まりさにとっても必死だろう、今やすがれるものは子供だけだった。 ケージの格子に頬を押し当て、親まりさは懇願した。 「ゆぶじで……ゆぶじで……」 「もどれええええ!!ぐぞまりざああああ!!」 「だだがえまじぇえん……いだい…いだいんでずううう…… まえもみえだい……がらだがいだぐで……はねられだい……」 「まげるなあああ!!だだがえ!!だだがえええ!! まりざざまはづよいんだろおおおおおお!!?」 「おぢびぢゃん……おぢびぢゃん……」 「負けたら永遠にゆっくりできない。 思いつく限りの方法でいじめ抜いてやる。 それでもいいなら、お父さんを助けてやるんだな」 俺が念を押してやると、 子まりさ共は恐慌をきたし、ケージにしがみつく親まりさに体当たりを始めた。 「いげえええええ!!ぐぞまりざあああああ!!」 「ゆぎゅうぅ!!」 腫れあがった顔には、ケージの格子ごしでも痛みは大きいようだ。 それでも親まりさは離れようとせず、子まりさに懇願を続けた。 「おぢびぢゃん……おぢびぢゃん…ゆぶっ…… ばりざの……びぃ!……がわいいおぢび……ぶっ……ぢゃん…… おどうざんを……おどうざんをだず……げで……… いいごだがら……あびゅう!………………おでがい……おでがい……」 負けを認めたとき、子まりさ共の末路は決まっている。 それがわかっていながら、この親は自分の命を懇願していた。 口では猫なで声を出していても、このまりさは全く子供を愛していない。 餡子脳でもそれぐらいはわかるようで、 子まりさは懇願されるほどに憎悪をむき出しにして罵った。 「ぐぞまりざあああ!!ぎだないがおをみぜるなあああ!!」 「だまれ!!だまれ!!だまれ!!だまれえええええ!! おまえだげはゆっぐりずるなぁあああああああ!!!」 「じねええええ!!おまえがじねええええ!! だだがっでがっでじねええええええええ!!!」 体当たりでは飽き足らず、 格子の隙間からはみ出る親まりさの皮膚に噛みつき始めた。 「あいいいぃ!!」 弾かれるようにケージから離れる親まりさ。 「話し合いは終わりだな」 「ゆぶ!ま!まっで!!まっでぐだざい!! ごどもだちはごんらんじでるだげなんでず!! いま!いまばなじあいをぉ……ゆぎいいぃ!!」 親まりさのお下げを引っ掴み、引きよせる。 泣き喚き謝り懇願する親まりさを、俺は殴り続けた。 皮が裂かれて中の餡子が出ないように打ち方には留意し、 ひたすら打撲傷のみを与え続ける。 こめかみを殴りつけた。 体中を張り手で叩き続けた。 口をこじ開けて下顎を踏みつけた。 逆さにして頭を床に叩きつけ、底面を何度も踏みつけた。 持ち上げて、顔面と言わず顔と言わず背中と言わず壁に叩きつけた。 全身が赤黒いいびつな饅頭と化し、親まりさは床に転がっていた。 もはや、髪がなければどこが顔なのかよくわからない。 それでも、荒い息と断続的なうめき声、 そして流れ続ける涙が、意識を保っていることを示していた。 もともと、ゆっくりは人間と違い、気絶も発狂もしない。 人間なら苦痛から精神を守るためにそういう現象が起こることもあるが、 ゆっくりの精神にそんな高度な活動は不可能だった。 「あび……………ゆび……………」 呻く親まりさ。 ここまでしても、俺の心は全く晴れなかった。 それどころか、こいつらに対する憎悪と、そして虚しさがつのるばかりだ。 こんな脆弱で醜い生き物が、俺の家族を殺し、俺の人生を壊した。そしてそうさせたのは俺だ。 「お前らの負けだ」 俺は宣告した。 「ゆゆっ!?」 「なにをいってるんだぜごみくず!!くずまりさはまだいきてるのぜ!!」 「あれ、いきてるのぜ?」 「いきてるんだぜ!!まだうめいてるんだぜ!!」 「もういい。負けだ。俺が決めた」 文句を言う子まりさ共に、俺は繰り返した。 「やくそくをまもるんだぜ!!ごみくず!!」 「おぼうしかえせええええええ!!」 「今度はお前らの番だ」 俺の言葉に、子まりさ共がびくりと身を震わせる。 親まりさの戦いを見て、自分たちでは勝てないことぐらいはわかるようだ。 俺は子まりさ全員をケージから出して言った。 「三匹一緒にかかってこい」 「ゆ!?」 「さんにんならかてるのぜ!!」 「ごみくずはつくづくばかなんだぜ!! ひとりにかったからってちょうしにのってるんだぜ!? さんにんならまけるわけがないんだぜ!! なぶりごろしにしてやるんだぜえええ!!」 詳細は省く。 今、俺の前には、ぐずぐずの風船になって転がる親まりさと、 全身の半分を赤黒く腫れあがらせた子まりさ三匹が転がっている。 やや面倒になったので、子まりさのほうは親ほどには傷めつけていない。 それでも全員、言葉にならない呻きを漏らして涙を流している。 「今日からお前たちは俺の奴隷だ。いいな?」 俺は言い渡した。 答えがなかったので、一匹ずつ蹴りつける。 「あじゅ!!」 「ゆびゃっ!!」 「だいぃいいい!!」 「ゆがぁあ!!」 「返事をしろ。いいな?」 「「「「いいいいいいでずううううう!!」」」」 「立て」 のろのろと立ち上がる子まりさ達。 親まりさは全身の痛みに苦悶しながら、だいぶ遅れてどうにか立ち上がった。 「背中を向けろ」 子まりさ達がすぐに背中を向ける。 親まりさはずるずると床の上で回転したが、あらぬ方向を向いて止まった。 両瞼が腫れあがり、目がふさがっているので自分の向きがわからないようだ。 「あいぃいいい!!」 髪を掴んで持ち上げ、強引に背中を向けさせる。 俺は太い注射器を取り出すと、 背中を向けて並んだまりさの一匹を選び、 背中に注射器を突き立てた。 「ぐいいいいい!!いだいごどじだいでええええええ!!!」 悲鳴をあげる子まりさの内部に、注射器内の液体を注ぎ込む。 オレンジジュースだ。 どれだけ消耗していても、これを与えればゆっくりは回復する。 三匹の子まりさ、そして親まりさに、同じように処置を施す。 親まりさには表面のキズがいくつかあったので、 小麦粉の溶液をちょいちょいと塗り込む。 放っといてもいいが、なにかのはずみで傷から餡子が漏れないとも限らない。 これで、しばらくおけば普通に動き回れるようにはなるはずだ。 その前に、最初の子まりさに命じる。 「こっちに来い」 怯えながら、子まりさはこちらに這いずってきた。 その頭を押さえつけ、したたかに殴りつける。 「ぎびゃああっ!!」 「お前、さっき俺に「痛いことしないで」と命令したな」 「べいれいじゃありばぜええんん!!おでがいでずうううう!!」 「同じだ。いいか、饅頭共、お前らは俺の奴隷だ 奴隷に、俺に対して要求する権利はない。わかったな?」 言いながら、俺は同じ箇所を何度も何度も殴りつける。 「あぎいいいいわがりばじだあああああ!!!」 さんざん殴り、子まりさの右頬はぱんぱんに腫れあがった。 再び、背中からオレンジジュースを流し込む。 二度手間だが、上下関係ははっきりさせておく必要がある。 他のまりさ共も、がくがくと震えながらこちらを見ていた。 しばらく待った後、俺は頃合いを見て壁のスイッチを押した。 とたんに、鏡張りになっていた一面の壁が、隣の部屋の光景を移した。 この壁はマジックミラーで、鏡の状態と透明な状態を、 ボタン操作で切り替えることができるようになっていた。 今は向こうからも見えるようになっている。 部屋の向こう側は、本当のゆっくりプレイスだった。 部屋の間取りはこちら側と同じく八畳程度だったが、 壁には草花や青空や動物たちがデフォルメした可愛らしい画調で描かれ、 ふかふかのクッションやソファがあちこちに山ほど積まれている。 ブランコや滑り台や砂場、遊び場や玩具もふんだんにあった。 部屋の隅には餌場があり、いつでも砂糖水が飲め、 定期的にお菓子が補充されるようになっている。 そこには大小さまざま、およそ十数匹のゆっくり共がくつろいでいた。 ソファに寝転び、滑り台で遊び、家族で歌を歌う。 この部屋には常時二人ほどの人間が世話係を勤めており、 好き勝手に垂れ流される排泄物をはしから処理したり、 求められれば遊び相手になったりしていた。 「ゆぅうううううう…………!!」 おおむね体力を回復させたまりさ共は、 眼前に広がるゆっくりプレイスに目を輝かせた。 「ゆぅうううう!!すごいのぜ!!とっっっってもゆっくりできるのぜ!!」 「あれはまりささまのゆっくりぷれいすにするんだぜ!! あいつらはおいだしてやるんだぜ!!」 自分たちの状況を完全に忘れて騒ぎ立て、壁に体当たりする子まりさ共。 壁が破れないとみるや、俺の方を向く。 「おい、ごみくず!まりささまをあっ……」 俺の顔を見たとたんに、状況を思い出したようだ。 子まりさは失言に気づき、口を閉ざして震えだした。 親まりさは失言こそしなかったものの、期待に目を輝かせていた。 その目が、すがるように俺を見上げている。 「俺は言ったはずだ。ずっとゆっくりさせないと」 そう言ってやりながら、俺は失言した子まりさを踏みつける。 「びゅぇええっ!!」 何度も踏みつけてやりながら、俺は説明する。 「あのゆっくり共はお前らとは関係ない。 あいつらはあそこでゆっくりするが、お前らはここでずっと苦しんでもらう。 わかったな」 「ゆひぃぃいいい………」 慈悲を求めるように目を潤ませるまりさ共。 「わかったな!」 「わがりばじだあああ!!」 踏みつけていた子まりさを蹴り飛ばし、親まりさに叩きつけると、 ようやく返事が返ってきた。 ゆっくりプレイス側のゆっくりが、不安げにこちらを見つめていたが、 隣にいる世話係の人間が説明してやると安心したようだ。 どこか侮蔑を顔に浮かべ、にやつきながら眺め始めた。 踏みつけた子まりさにオレンジジュースを軽く注入してから、 親まりさ共に言ってやる。 「さて、その前に、飯の時間にしようか」 「ゆゆっ!?」 まりさ共の目が輝く。 オレンジジュースを注射器で注入されてはいても、 口からではないので味は楽しめないし、満腹感もない。 人間でも、栄養剤をいくら注入されても腹は膨れないのと同じことだ。 すでに丸一日、こいつらには何も食わせていない。 さんざん甘やかされてきたこいつらにとって、空腹は耐えがたいだろう。 口には出さずとも、軽く飛び跳ねて催促するまりさ共。 通信機で連絡をつけると、ほどなくして食事は運ばれてきた。 食事が、隣のゆっくりプレイスに運ばれる。 そこに運ばれてきたのは、信じられぬようなごちそうだった。 大皿に盛られたケーキ、プリン、フルーツ。 数多のトッピングがちりばめられたあまあまだ。 かつてこのゲス共が食べていたものとは比べものにならない高級品である。 「ゆっ!!ゆっくりできるごはんだよ!!」 「あまあま~、あまあま~!!」 「あわてなくてもたくさんあるからね!!なかよくゆっくりたべようね!!」 隣のゆっくり共の声が聞こえてくる。 マジックミラーで遮ってはいても、 スピーカーによって、こちらによく声が通るようにしてある。 「あまあま……あまあまたべたいぃ……」 「おなかすいたぁぁ……」 涎を垂れ流しながら、マジックミラーにへばりつくまりさ共。 向こうのゆっくり共は一心不乱に食べている。 「うっめ!めっちゃうっめまじうっめ!うっめ!ぱねぇ!!」 「むーちゃ、むーちゃ……しあわせえぇぇぇ!!」 「ちちちちちちあわちぇええええ!!」 「すっっごくゆっくりしてるよぉぉ……」 「ゆっくりしたいよぉぉぉ………」 「おにいさん……まりさにも、まりさにもあまあま……」 「お前らの飯はない」 俺の言葉に愕然とするまりさ共。 「ゆゆっ!ご、ごはんのじかんだよ?」 「向こうのゆっくり共のことだ。お前らに関係ない」 「おねがいします!ごはん!ごはんくださいぃぃぃ!!」 要求してきた子まりさの顔面を爪先で蹴る。 「びぃゆううう!!」 「さっき言ったはずだ。 お前らは俺に負け、奴隷になった。 もう飯はやらない。ましてあまあまは一生食べられない」 「ぞんな………ぞんな………」 「ゆっぐり、でぎだい………」 「何度でも言う。お前らはもう一生ゆっくりできない」 絶望と悲しみに大口を開けて震えるまりさ共。 子まりさが一匹失禁した。 「ちちちちあわちぇー♪」 「む~ちゃ!む~ちゃ!ゆっきゅりできりゅよぉぉぉ!」 ゆっくりプレイスの赤ゆっくりの歌が響く中、 まりさ共は絶望の淵にいた。 しかし、まだまだこいつらには余裕がある。 今後しっかりと、さらなる絶望を堪能してもらわなければならない。 とりあえず、少しずつ段階を踏んでいく。 この部屋にまりさ共と共に寝泊まりしながら、 最初のうちは手を下さず、餌を与えずに放置した。 ゆっくりという生物(と呼ぶべきなのかどうか)は、 非常に脆い反面、おそろしく頑丈な面もある。 どれだけ傷をつけられようと、 体内の中心部にある中枢餡が破壊されるか、 もしくは中の餡子があらかた漏れ出さないかぎり死なない。 餓死や病死という死因もあるが、 適当に室内で世話していれば、よほどのことがないかぎり病気にはならない。 餌は、一月ほど与えなくても大丈夫らしいが、 食欲はおそろしく旺盛なので、 一日抜いただけでも天地がひっくり返ったように暴れる。 まずは食からだ。 三日目にして、すでにまりさ達はこの世の終わりのような表情で、 だらしなく床に寝そべっていた。 初め、三匹の子まりさは親まりさを罵っていた。 「おまえのせいだ!!おまえがまけたせいでゆっくりできないんだ!!」 「さんざんいばってたくせにぜんぜんよわかったんだぜ!! くそまりさのうそつき!!ぺてん!!さぎ!!」 「やかましいんだぜええ!! おまえらだってまけたんだぜ!!ごみくず!!」 傷があらかた回復した親まりさは、子まりさに叫び散らしていた。 もはや威厳も何もないが、力だけはあり、 子まりさ共に襲いかかられても勝てる。 もはや暴力だけで、親まりさは子まりさ共を恫喝していた。 何度となく掴み合いの喧嘩、というか殺し合いを始めたが、 その度に俺が蹴りをくれたので、ほどなく罵り合うだけに留まった。 そして今、疲れきって体力もなく、 四匹とも力なく床に横たわるだけである。 一日中、獣じみた呻きを発するか、ぶつぶつと文句を言うばかりで、 暴れたり罵ったりする気力はないようだ。 最初の頃は俺に食事を懇願していたが、 その都度顔中が腫れあがるほど殴られたため、 いまではびくびくして俺に近づかないようにしている。 それでも、一日に五度の隣の食事が始まると、 全員でマジックミラーにへばりついた。 幸福にのたうちながら舌鼓をうつゆっくり共の姿を、 涙と涎を垂れ流しながら恨めしそうに眺めていた。 このゲスまりさ共は、かつて俺の部屋でずっと主として君臨していた。 他のゆっくり共を目下に従え、ふんぞり返って威張っていた。 そのプライドが、これまでまりさ共の口を閉じていたが、 ついに親まりさの心が折れた。 「おねがいです!まりさたちにもわけてください!!」 プライドをかなぐり捨て、向こうのゆっくり共に物乞いを始めたのだった。 それを皮切りに、子まりさ共も喚き始める。 「おねがいしますうう!!」 「おなかがすいてしにそうなんですううう!!」 「すこしだけでいいですから!!あまあまくださいいいい!!」 隣のゆっくり共がこちらを振り向いた。 その後、ゆっくり同士でひそひそと何事か囁いていたが、 やがてこちらを向いて言った。 「ひとごろしまりさにあげるあまあまはないよ!!」 「ゆっくりくるしんでね!!」 「そんなあああああ!!おねがいしますうううう!!」 「ば~きゃ!ば~きゃ!」 「よだれでべちょべちょ!みっともないね!!」 「おちびちゃんたちはあんなふうにならないよね!!」 「うん!あんなばかにはぜったいならないよ!!」 その時は、食事が残らず食べ尽くされるのをじっと見守るしかなかった。 その日、次の食事がやってきた時も、まりさ共は懇願した。 懇願するまりさ共を、始めのうちは罵っていた隣のゆっくり共だったが、 やがて、それまで部屋の中心で食べていた食事を、 まりさ共の鼻先にまで押しやってきた。 「あああああありがどうございまずううううう!!!」 「あまあま!!あまあまありがどうございまずううううう!!!」 分けてもらえると思い、嬉し涙を流して叫ぶまりさ共。 しかしそこまでだった。 まりさ共の目の前に積み上げられた食事を、ゆっくり共が食べ始めた。 マジックミラーに遮られて手を出すこともできず、 すぐ目の前で、まりさ共は食事を見せつけられることになった。 「む~ちゃ♪む~ちゃ♪しあわせぇ~♪」 「このくっきーあまあまだよぅ~♪ゆっくりぃぃぃぃ~~」 「たべないの?とぉ~~~ってもゆっくりできるよぉ~? む~ちゃむ~ちゃ……しししししあわせぇぇ~~~~!!」 まりさ達の方を向きながら、ことさら美味そうに食べてみせるゆっくり共。 涙を流し、まりさ共はぎりぎりと歯噛みしていた。 ゆっくりという生物は、弱い者を苛めるのが大好きである。 どんなに性格がよさそうに見えるゆっくりでも、 自分より弱い者や無抵抗の者を見ると、たちまち嗜虐心を燃え上がらせる。 その陰湿さは、俺自身が体験してきてよく知っている。 「ゆぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎいいいいいいい!!!」 怒りと悔しさと空腹に歯ぎしりするまりさ共。 「ゆぎぎぎぎ~~~♪」 「おなきゃすいちゃ~♪あみゃあみゃくだしゃ~い♪」 マジックミラーごしに、赤ゆっくり共がまりさ共の顔真似をしてみせ、 大人ゆっくり共がそれを見て笑う。 親たちが喜ぶのを見て、赤ゆっくり共はあの手この手でまりさ共をからかう。 地獄だった。 その地獄が、食事のたびに繰り広げられた。 続く 選択肢 投票 しあわせー! 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※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』15 その日は特別暑い日だった。 私は疲れ果てていたが、ゆっくりに囲まれて歌わされていた。 無理に笑顔を作り、リズムをとって声を絞り出す。 「ゆっゆっゆ~……ゆ~ゆ~ゆゆゆ~……」 「ゆゆっ、ぜんぜんだめだよ!!やるきあるの!?」 「にんげんさんはほんとうにゆっくりできないわ、むきゅ!」 その時、突然、上空で物音がした。 バシュウウウ、となにかが吹き出すような音。 上を見ると、穴の口から見える空が、薄いピンク色の霧に包まれている。 「ゆゆっ!?なんなの!?ゆっくりできるもの!?」 「けむりさんはゆっくりしていってね!!」 ゆっくり達はしばらくうろたえていたが、やがて弛緩して地面に横たわり始めた。 「ゆゆぅぅ~~~……なんだかとってもゆっくりできるよ……」 「ゆゆゆぅ……ゆっくりしていってね……」 「ゆっくりするよぉぉ~~………」 だらしなく顔をゆるめ、地面に延びるゆっくり達。 声をかけてみても、ゆっくりするのに夢中といった様子で無反応だ。 しばらくしてから、ヘリコプターの音が聞こえてきた。 待っていると、果たして人間の姿が見えた。 「圭一さん!須藤さん!」 渇望していた人間の声だった。 あの施設の男たちらしい。 あれほど見つかるまいとしていた相手に対して、私はうれし涙を浮かべて声を返した。 「助けて!!助けてーっ!!」 すぐに縄梯子が垂らされた。 「圭一さん、来たわ!助けが来たのよ!!」 「ああ」 長浜圭一はさして感動もない様子で頷いた。 「大丈夫?登れる?」 「左足だけでも充分登れるさ」 長浜圭一を先に行かせ、尻を押してやる。 彼が無事に上がったのを確認すると、私も続いて梯子を登っていった。 「ゆっくりぃぃ~~~……」 「ゆっくり………ゆっくり………」 「ゆふぅ……ゆふぅ………」 地上に上がると、全てのゆっくり達が弛緩して地面に広がっていた。 どれもが究極のリラックスといった表情で、侵入者の人間たちを前にしてさえ反応しない。 ドスまりささえ弛緩してだらしなく広がり、その下に数匹のゆっくりを下敷きにしているが気づいていない。 十何メートル離れた草地にヘリコプターが止められており、 十数人のスタッフが集まって何事か準備している。 縄梯子を垂らしてくれた二、三人の男たちに聞いた。 「これは……何をしたの?」 「『ゆっくりオーラ』ですよ。 ドスゆっくりが常に微量のゆっくりオーラを放っていて、 周囲のゆっくりをゆっくりさせていることはご存じかと思います。 そのゆっくりオーラの成分を凝縮して強化し、さらにゆっくり以外に効力が現れないように合成したものを、 ガス爆弾にして上空からここに投げ込みました」 「そんなものまで作ったの?」 「いえ、あなたの娘さんの作品ですよ」 「……そう」 ゆっくり研究の第一人者である娘なら、こういうものを作ってもおかしくなかった。 一瞬聞き流しそうになったが、私は思い当たり、聞いてみた。 「そういうものを、娘があなたたちに預けていったの?」 「そうです」 「いつ?」 「出発の直前です」 「出発前って、誰の……?」 男は肩をすくめ、地面に腰を下ろしている長浜圭一のほうを見た。 長浜圭一が言った。 「ああ、もう言ってもいいだろう。あんたがあの施設を出発する前日だよ、須藤さん」 どういうことなのか飲み込めなかった。 混乱する思考がまとまらないままに、私は質問を繰り返した。 「出発………って?どういうこと?娘が……え?」 「あとは娘さんに直接聞いたほうがいい。 おい、博士はどこにいるんだ?」 長浜圭一が男たちに聞くと、ノートパソコンを携えた男が答えた。 「今から突き止めるところです。録画した映像です」 ノートパソコンの画面に映像が表示される。 それはひどく低い視点の映像で、暗い洞窟の中を映していた。 その洞窟の中、正面にいるのは……長浜圭一だった。 視界の隅には私の姿が時々覗いている。 「昨日録画したものです」 言葉を失って凝視しているうちに、視点が変わっていく。 映像は洞窟の中から地上に移り、森の中を縫って進んでいた。 「ありすの映像ですが、この後須藤春奈博士のところへ向かいます。 たどっていきましょう」 ノートパソコンの映像で道筋を確認しながら、長浜圭一が男たちの肩を借りて森の中へと進んでいく。 私はわけもわからず、その後を追った。 「んほおぉぉぉぉ!!おねえさんのまむまむぎもじいいいいぃぃぃ!!!」 「にんげんのおはだとかいはだわぁぁぁ!!んっほおおおぉぉぉぉ!!!」 「んほほほほほほほすっきりいぃぃぃーーーーーーっ!!!」 岩壁に穿たれた自然の洞窟の中に、私の娘はいた。 上半身を露わにして横たわる娘に、何匹ものゆっくりが身をこすりつかせていた。 スカートとパンツの他に何もつけていない春奈の体中がゆっくりの粘液にじっとり濡れている。 一週間もの間、恐らく何も食べていないだろう春奈がゆっくり達の慰みものになっていた。 脳髄に焼けた鉄が詰まったような怒り、いや激怒。 怒りのあまりに声も出せず、私はその洞窟に踏み込んだ。 「ゆゆっ!!にんげんさんだよ!!かってにぬけだしたの!?」 「かってにでちゃだめよ!!ゆっくりできないわね!!」 「れいむがおくってあげるからおうちにかえろうね!!」 順番待ちらしき、入口近くにたむろしていたゆっくり達が私のほうへ跳ねてきた。 その横っ面を力まかせに蹴りつける。 「ゆびぇ!!?」 蹴ったのは一匹のありす種だった。 そのありすは蹴られた勢いで吹っ飛び、洞窟の壁に叩きつけられて潰れ、カスタードをまき散らした。 明確な殺意をもってゆっくりを殺したのは初めてのことだったが、 怒りにかられている今の私は、そのことを意識さえしなかった。 放心状態で呆然としているゆっくり達を無視し、春奈の元にたどり着く。 春奈の体に身をこすりつけているゆっくり達、いや、ゆっくり共はすっきりに夢中で私に気づかないようだった。 「まむまむ!!まむまむ!!にんげんまむまむぎもじいいぃぃぃぃんほほほほほおおおお!!」 そのれいむは、春奈の口にぺにぺにを突っ込んで顎を振っていた。 私に背を向け、全身から粘液を飛び散らせながら一心不乱に顎を振るそのゆっくりの頭には、見慣れた飾りがついている。 私の……私がつけてあげたゴールドバッジ。 「んほっ、んほっほっほっほっヤバヤバヤバイ、イクイクイクイクイクんほっほっほおおおおおーーーーーっ!! でるっ、でるでるでるよおおおおいっぱいでちゃうううぅぅ!! かわいいれいむのおちびちゃんのもとたっぷりのんでねえぇぇぇぇ!!! すっ、すっ、す、すすすすすっっっっきりいいいいいーーーーーーーーーーっ!!?」 れいむは、春奈の口の中に精子餡を流し込むことはできなかった。 射精の瞬間に後頭部を掴まれたれいむは、 私の手に掴み上げられた状態で空中に精子餡をまき散らしている。 「ゆっ!?ゆっ!?ゆゆゆゆゆっ!?ゆっゆっ!?」 「………れいむ。何をしてるのかしら?」 「ゆっ!?すっ、すっきりっ!?ゆううぅ!?れいむじゃないよ!?れいむなの!?ゆっゆゆゆゆゆ」 射精直後の放心状態も手伝って状況がつかめずにいるらしいれいむを、私はそっと地面に下ろした。 下ろされたれいむは、すぐにぷるぷると体を振り、正気を取り戻したようだ。 私のほうに向かって叫びはじめた。 「おねえさんなにしてるのおおおぉぉぉ!? かってにでてきちゃだめでしょおおぉぉぉぉ!!!だれがでてきていいっていったのおおおぉぉぉ!? おねえさんはまだまだゆっくりしてないんだよ!!べんきょうしなきゃいけないんだよぉ!! わかってるの!?わがままもいいかげんにしてねえぇぇぇ!!」 バァン!! 私は靴を脱ぎ、靴の底をれいむの眼前の地面に叩きつけた。 「ゆっ」 れいむは硬直し、私の顔を見上げた。 その表情には、かつての「主」に対する感情が戻り始めていた。 「もう一度聞くわ、れいむ。私の娘に何をしていたの」 「ゆっ………ゆっ…………か、かわ、かわいいれいむをおこらないでね?ゆっくりして」 「答えなさい!!!」 再び靴を地面に叩きつける。 れいむのまむまむからちょろちょろと小便が漏れ始めた。 「ゆ…………ゆ…………ごべ、ごべんなざ……」 「誰が謝れなんて言ったの?何をしてたのかと聞いてるのよ」 「ず、ず、ずずずずずっぎ、ずっぎ………ごべ………ゆるじ、ゆるじでぐだざ……」 「すっき、何!?最後まで言いなさい!!」 「すっ、すっき……すっき……しょ………しょうがないでしょおおおおおおおおおお!!!?」 れいむは逆ギレして叫び始めた。 「これぐらいしかにんげんさんのおしごとがなかったんだよおおぉぉぉ!! かりもできないし!おうちもつくれないし!かわいくないし!ゆっくりできるおうたもうたえないし!! なんのやくにもたたないからすてようってみんながいうのをれいむがかばったんだよ!! そしたら、そしたら、ありすがいったんだよ!にんげんさんはすっきりできるってえぇ!! だからおしごとをあげたんだよ!!やっとにんげんさんのおしごとがみつかったんだよおおぉ!! おしごとをしないとおいてあげられないでしょおおおぉぉぉ!!?」 言葉を失っていると、春奈が起き上がってきた。 「春奈!」 「やるって言ったのはあたしだよ、ママ」 そう言い、春奈は周囲のゆっくり達を掴んで投げ捨て、上半身裸のまま伸びをした。 「服はどうしたの!?」 「ゆっくりが持っていっちゃった。布団にしてるってさ。 スカートとパンツは髪の毛だと同じって言ったから助かったけどね」 「春奈……」 下半身のほうを見る。足は粘液に濡れていたが、内部まではわからない。 私の視線の意味を察知した春奈が説明してきた。 「大丈夫だよ。まむまむっていうのは、ここ」 春奈は自分の口を指差した。 「ここがまむまむだって教えてあげたの。それで、みんなこの中に出す出す。 つまり、食べ物には困らなかったってわけ」 それでも、娘は辛そうに息を吐いた。 「お茶飲みたい……一週間胸焼けしっぱなし」 「水なら持ってきていますよ」 「ありがと」 男の一人が水筒を差し出し、娘はごくごくと飲んだ。 「よかった………」 私は春奈を抱きよせた。 「わっ、ママ臭っ」 「あ……ごめんなさい」 「お互い様だけどね」 春奈が立ち上がり、男から差し出された大きなタオルを肩からまとう。 「本当によかった……あなたに何かあったら、ママは……」 「ファミリードラマをやってる状況じゃないんだ、ママ。 全部計算ずくだよ、こっちは」 「……何を言ってるの?」 「あのね、ママ。もう言っちゃうけど、最初から全部バレてるの」 春奈が言うには、私がゆっくり達をあの施設から逃がすと言い出したときから、 すべては施設のスタッフに筒抜けだったらしい。 春奈が早々にスタッフに伝えたこともあるが、そもそもはすべて監視カメラに映っている。 あの施設には、ほぼすべての部屋に監視カメラがあったらしい。 最新技術による監視カメラは小型かつ目立たない形状で、私には見つけられなかった。 「ママ、ドラマや映画の見過ぎ。 ヒーロー気取るのは簡単だけどさ、正義感だけじゃ運も環境も味方してくれないよ。 ママの脱出計画じゃ大雑把すぎて、気づくなってほうが無理だったよ」 「…………じゃあ……なんで止めなかったのよ」 「使えるかなって思ってさ。 あのゆっくり達の髪飾りに細工してあるのね、カメラと発信機。 あれがあれば、どこに行っても居場所はわかるし、カメラで見てる景色や話し声も筒抜け」 「…………」 「あたしは考えたのね、もしかしたらもっとドラマができるんじゃないかって。 一旦は人間に捕まって、ひどい復讐を受けるゆっくり。 ところが心優しい人間がゆっくり達を逃がしてくれる。 さて、人間に逃がしてもらったゆっくり達はどうするか。 逃がしてくれた恩人に対してどういう態度をとるか。 そういう事、全部記録してみたくてさ」 「……どこまでもゆっくりを悪役にしたいわけね」 「そういうこと。万一あれらが、もう人間に関わらないようにしたとしても、 こっちから細工してそうせざるをえないように仕向けるつもりでした。 キャンペーンのために、そういう映像は沢山あったほうがいいし、 それから生態研究のためもあるし、あと他にも映像の使い道を考えててさ」 私はがっくりとうなだれた。 ひどい徒労感に襲われて顔を上げることもできなかった。 「……あんたって子は………」 「でも、何が起こるかなんてわかんないもんだよね、ママ! あんな穴があって、そしてこの一週間でしょ。 こんなに面白い映像が撮れるなんて思わなかったよ。ゆっくり達みんな、 あたしたちが仕向けるまでもなく、たっぷりと悪役を、というか敵を演じてくれたわ。 すぐに助けを呼ばなかったのも、たっぷり記録するためよ」 そう言って、春奈は携帯電話らしきものをポケットから取り出した。 普通の携帯のようには見えない。特殊な通信機らしい。 「すぐに駆けつけて、皆さんを助けだすことは容易でした」 背後で男が言う。 「ですが、須藤春奈博士のご指示により、しばらく時間を見ました。 すべては記録されております」 「………私のことも?」 「……失礼ながら。 ただ、あの……『問題の場面』に関しては……遠隔操作で映像記録は中断しております。 どうか御信用ください」 排便させられていた事を言っているのはすぐにわかった。 「あとね、『処置』はもう全部終わってるの」 春奈が言った。 「ママ止めようとしてたけど、出発する前にあのゆっくり達はもう処置しちゃった。 もう手遅れだよ。『計画』はもう始まってるんだ」 私は顔を上げたが、言葉は出なかった。 暴れ出したかったが、それよりも脱力感が勝っていた。 なにを言っても無駄なのはわかっていたし、自分一人だけが道化を演じ続けていたことがわかった今は空しいだけだった。 ここで怒り散らしたところで、道化は道化でしかないだろう。 「こんなこと言うのはなんだけどさ、ママは怒る権利ないんじゃない? あたしたちがこんな目に逢ったのも、元をただせばママの失態でしょ。 あたしがもし携帯電話持ってなかったら、どうする気だったの?娘の人生」 洞窟の地面を眺めながら、私は春奈の言葉をぼんやりと聞いていた。 その声を聞いても、自分の娘の声だという実感はわかなかった。 袂を分かったのだ、という気がした。 住む世界も歩む道も、娘はもう私には理解できないところにいるのだ。 「長浜さんもごめんね?足は大丈夫?」 「俺の心配はしなくていい」 「でもごめんね。まあ、もともと長浜さんが勝手に追いかけてきたんだし。 なんであんなことしたの?」 「……さあね。見届けたかったのかもな」 「わっかんないなあ」 「ゆっくりそこまでだよ!!」 振りかえると、洞窟の入り口近くでゆっくり達が固まっていた。 私のれいむ始め、娘に群がっていたゆっくりが徒党を組んでこちらを睨んでいる。 「いうことをきかないおねえさんはゆっくりできないよ!!」 「よくもありすをころしたね!!ありすにはちいさいおちびちゃんがいたんだよ!! もうしわけないとおもわないのおぉ!?」 「にんげんなんかかおうとおもったのがまちがいだったね!! こんなにあたまがわるいなんておもわなかったよ!!」 「おねえさん!!」 顎を反らし、れいむは居丈高に言い放ってきた。 「れいむはおねえさんがだいすきだけど、こんかいばかりはおおめにみられないよ!! れいむはむれのなかまだから、むれのるーるはまもらなくちゃいけないよ! ゆっくりごろしはどすにどすすぱーくをうってもらうよ!!」 「どすすぱーくだよ!!どすすぱーくだよ!!」 「ゆっくりどすのところまでついてきてね!!にげようとしてもむだだよ!! おねえさんはゆっくりつみをはんせいしてね!!れいむだってつらいんだよ!!」 私たちを促しながら、れいむ達は歩きはじめた。 私たちは眼を見合せてから、ゆっくり達の遅々とした歩みについていった。 歩きながら、れいむは何度も何度も私たち親子に話しかけてきた。 「れいむはがんばったんだからね!!ずっとがまんしておしえてたんだよ!! わるいのはおねえさんたちだからね!!」 「なんでわかってくれなかったの?そんなにれいむがきらいなの? れいむはおねえさんがだいすきだったんだよ!!」 「そのめはなんなのぉ!!わるいことしたってわかってるの!?」 「れいむはおしおきなんかしたくないんだよ!! どんなにあたまがわるくても、ゆっくりできなくても、 れいむはずっとおねえさんたちといっしょにいたかったよ!! それなのにおねえさんたちはれいむをうらぎったんだよ!!れいむのかなしみがわかってるのぉ!?」 私たちは一度も答えなかった。 「ゆゆっ!!みえてきたよ!!どすたちがいるよ………ゆゆゆっ!?」 ドスまりさを始め、群れのゆっくり達は全員が補縛されていた。 施設の使用人たちが数台の車やトラックで乗りつけており、 トラックの中に網でまとめて補縛されたゆっくりが次々と押し込められている。 すでにゆっくりオーラガスの効力は切れたらしく、 網の中のゆっくり達は口々に人間を罵っていた。 「だしなさいいぃぃ!!いなかものおぉぉぉ!!」 「わからないよー!!わからないよー!!」 「ひきょうなのぜ!!まりささまとしょうぶするんだぜぇぇ!!」 「かわいいれいむをここからだしてね!!だしてねえぇ!!」 見ると、ドスまりさは網ではなくロープで、横向きに板に固定されていた。 まだトラックに運び込まれていないが、帽子を奪われてなすすべなく泣き叫んでいる。 「おぼうしいいぃぃぃ!!どすのおぼうしかえしてねぇぇ!! おぼうしさんがないとゆっくりできないよおおおおぉぉぉぉ!!」 ドススパークを撃つのに必要な特殊なキノコも帽子の中なので、 帽子が奪われて固定された今、ドスまりさは無力だった。 「むきゅううぅぅぅ!はなしなさいいぃぃぃ!」 ドスまりさの傍らには、参謀役のぱちゅりーがやはり縛られている。 「ゆ、ゆ、ゆゆゆゆゆ…………?」 「ゆゆゆっ!!たすけがきたよ!!れいむはゆっくりしないでたすけてねぇ!!」 「まりささまをたすけるんだぜ!!はやくするんだぜぇぇぇ!!」 「むきゅ!れいむ、むれをまもりなさい! むれのみらいはあなたにかかってるのよむきゅうううぅぅ!」 やってきたれいむ達に向かって、網の中のゆっくり達が一斉に助けを求めはじめた。 れいむ達は「ゆっ?ゆっ?」と鳴きながらおろおろと右往左往するばかりだった。 「例の十三匹はすでに車に乗せてあります」 「御苦労さま」 男たちの報告を受け、春奈が頷いた。 「群れは全て運び出しますか?」 「うーん、こんなにいらないかな。ドスとぱちゅ、あと五十匹ぐらいで、他はほっといていいよ」 「では、ドス達を。すでに五十匹以上集まってます」 指示していた春奈が、私に向かって聞いてきた。 「それはどうしようか?あたしはどっちでもいいけど」 春奈が指したのは、私のれいむだった。 れいむを連れて帰るのか。 ドスがいなくなったこの群れで、飼いならされたれいむが生き抜き、まして冬が越せるとは思えない。 放っていくことは殺すことと同義だろう。 しかし、今のれいむを私の家に迎え入れたいとはどうしても思えなかった。 善意からであれ、れいむがここで私にしたことを忘れ、水に流すことは私にはできなかった。 それでも、私は踏ん切りがつかず、対話を求めた。 「……れいむ」 「ゆゆゆっ!!」 トラックに運び込まれていく群れを呆然と眺めていたれいむが、 ぴょんっと軽快に跳ねてこちらを振り向き、満面の笑顔を浮かべて叫んだ。 「ゆっくりしていってね!!」 「……え?」 何を言われたのか一瞬わからなかった。 「おねえさん!れいむおいたをしちゃったね!! ゆっくりごめんなさいだよ!れいむをおこってる?」 「………」 「ゆゆゆっ!!おこらないでね!!おこらないでね!! れいむにおしおきしてね!おしおきはつらいけどがまんするよ!! そしたられいむいいこになるからね!!」 「れいむ……」 「おねえさんがおこってるとれいむはかなしいよ!! れいむはんせいするからね!ゆっくりしていってね!!」 「あなたは悔しくないの!?」 「ゆゆゆっ!?」 私はれいむの前に膝をつき、助けを求め続けている群れを指差して叫んだ。 「これを見てなんとも思わないの!?」 「ゆゆっ!おこらないでね!おねえさんこわいよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 「いいから聞きなさい!! あなたの群れでしょう!?このゆっくり達があなたの家族でしょう!? 家族を縛られて連れ去られて平気なの!?怒らないの!?」 「ゆゆゆっ!?きっとみんながわるいんだよ!! わるいことをしたからにんげんさんにおしおきされるんだね!! れいむもおいたしちゃったからおしおきがまんするよ!!」 「悪いことって何よ!? あなたたちが何をしたのよ!言ってみてよ!!」 「ゆゆっ!?」 れいむはわざとらしく、可愛い仕草で小首をかしげてゆんゆん鳴いた。 かつては、この仕草をされると私は怒る気が削がれてつい甘くなってしまったものだが、 今、その仕草は火に油を注ぐ効果しかなかった。 「ゆっ!ごめんなさい!れいむはゆっくりわからないよ!! れいむにおしえてね!ゆっくりがんばっておぼえるよ!!」 「私が大好きなんでしょう!? 好きだから!ここで!私を飼ってたんでしょ!? 私が群れの仲間になるためにしつけてたんでしょ!!?」 「ゆゆゆ!だいすきだよ!!れいむはおねえさんがだいすきだよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 れいむは突然にこにこして飛び跳ね始めた。 それが伝わっているなら安心だ、と思っているのだろうか。 「だから私を飼ってたんでしょ!?」 「ゆゆゆっ!?ちがうよ!おねえさんがれいむをかってるんだよ!! れいむはわかってるよ!ゆっへん!!」 「さっきまで言ってたことと全然違うじゃない!!」 またわざとらしく首を振り始めた。 眉を八の字に困らせ、もみあげで唇をつついて考えるふりをしている。 無知ゆえの過失ということにしてごまかそうとしているのは明白だった。 「ゆゆぅ~?れいむ、わからないよ? れいむ、なにかゆっくりできないことをいったの?おねえさん、おしえてね!」 「私を!ここで!飼うんでしょう!? 私たちをゆっくりの仲間にするんでしょう!!」 「ゆゆゆっ!!そんなこといったの!? きっとれいむはかんちがいをしてたんだよ!!れいむ、ゆっくりできないね!! ゆっくりできなくてごめんなさい! れいむがゆっくりできるいいこになれるように、れいむがわるいことしたらおしえてね!!」 かつて私が躾けた、人間に対する挨拶をれいむは繰り返し叫んだ。 私はそれから、れいむがやったことを一つ一つ並べ、どういうつもりだったのか問い詰めた。 私を穴に閉じ込め、どれだけ拒否しても雑草や虫を与えようとし、排便までさせたこと。 いじめられている長浜圭一を助けようとしなかったこと。 そして、私の娘を犯したこと。 しかし、まったく会話にならなかった。 私が何を言ってもれいむは空とぼけて、 「れいむはわからないからわるいところはゆっくりおしえてね!」を繰り返すばかりだった。 「ゆゆゆ~♪かわいくてごめんねっ♪」 ついには媚びはじめた。 「かわいくてごめんね」を繰り返し、小首をかしげてみせる。 この仕草が私は昔大好きだった。 こうすれば私の機嫌がよくなると、このれいむは知っていた。 ちらちらとこちらの表情を窺いながら、ひたすら無知を装い、媚び、へつらい、 こちらの怒りが逸れ、うやむやになって収まるのを期待して待っている。 なぜ私が怒っているのかという原因には、全く関心がないらしかった。 それは、かつて私が愛したゆっくりの姿だった。 躾の行き届いた、飼い主に愛らしさを振りまく、理想的なゆっくりだった。 このれいむだけではない、私がかつて世話した何百匹のゆっくりが、 根気強い躾の末に、こういうゆっくりになった。 しかしそれは、心底から礼儀作法を重要視しているのではなかった。 自分たちのほうが立場が強く、人間の言うことを聞かなくてもいい、 そんな状況になれば、あっさりと脱ぎ捨てられる程度の仮面でしかなかった。 立場が逆転したのを理解した今、このれいむは、あわててその仮面をかぶり直そうとしている。 私はそこでようやく、苦い事実を知った。 「あんたは………」 「ゆゆっ?」 「あんたは私と話すことなんかないわけね」 「ゆゆっ?おはなしするよ!れいむはおはなしがとくいなんだよ! どんなおはなしがしたいのかいってね!ゆっくりがんばるよ!!」 「命令を聞くだけなんだ……家族なんかじゃなかった……」 「ゆゆゆっ!そんなことないよ!れいむはおねえさんがだいすきだよ! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 私が、生まれてから世話し、その死を看取った何百のゆっくり。 その中で、ただの一匹として、私に心を開いたゆっくりはいなかった。 私ひとりだけが空回りして、家族だと思っていたのだ。 ゆっくりにとっては、 「とにかく言う事を聞いてさえいれば世話してくれる便利な生き物」でしかなかったのに。 私は地面に突っ伏して泣いた。 「当たり前じゃん」 後ろで春奈が言っていた。 「人間の言う論理なんて、ゆっくりの価値観じゃぜんぜん理解できないの。 理解できない躾にハイハイ従うっていうのは、つまり強者への盲従で、思考停止だよ。 思考停止してる相手に、情も信頼もないでしょ」 続く
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。もはや虐待メインではない。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』13 「ゆっくりこっちだよ!どすはこっちだよ!!」 施設を抜け出すのは簡単だった。 博士として信頼、優待されている娘のおかげで、警備の目はたやすく抜けることができた。 いったん家に帰って身辺を整理し、計画に集中したい、という名目を奴らは信じ、 車さえ提供してくれた。 車で森の中を走る。 助手席には娘の春奈、その膝に私のれいむ。 後部座席では十三匹のゆっくりががなっていた。 「まりささまはまちくたびれたんだぜ!!しーしーするんだぜ!!」 「くそどれいはゆっくりしないでさっさとしてね!!ついたらしんでね!!ごみくず!!」 「とかいはなゆっくりぷれいす!!いなかものはとうぜんゆっくりさせないわよ!!くやしいかしら?ばーか!!」 その声は、人間の感性では聞くに堪えない。 生まれてから一切の躾を受けず、その上人間に迫害を受け続けた。 人間への侮蔑と憎悪が、このゆっくり達から拭い去られることは永久にないだろう。 心の中で、私はこのゆっくり達に詫び続けていた。 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 私たちに罵声が飛ぶたびに、私のれいむがゆっくり達を必死になだめようとする。 しかし無益とわかると、やがて残念そうにあきらめ、道案内のみに集中するようになった。 あの呪われた施設から、すでに数十キロほども離れている。 向こうではすでに感づかれているだろう。 本来、提供されたのは車だけでなく、運転手もついていた。 送り迎えと言えば聞こえはいいが、ただの監視役だ。 私が変な気を起こさないように監視するためである。 施設から充分に離れたところで、私は後部座席から武器をつきつけた。 数万ボルトを流せる強力なスタンガンは、施設から持ち出したものだ。 ゆっくりを苦しめるための道具だった。 首筋にスタンガンをつきつけられた運転手の男は、 私に促されるまま車を降り、私たちが走り去っていくのを見送った。 街に近いところで下ろしたし、どうせ携帯電話かなにかですぐに連絡するだろう。 男を降ろしてからしばらく後に、 後部トランクに隠していたゆっくり達を引っ張り出した。 大きく成長したゆっくり達は、袋の中にぎゅうぎゅう詰めにせざるをえず、 どうしても騒ぐので、口をテープでふさぐしかなかった。 今、後部座席のゆっくり達が罵詈雑言を叫んでいるのはこのためも大きい。 何日もの準備期間で、春奈がじっくりと根回しをして連中の注意をそらしていたので、 ゆっくり達が監禁されていた部屋の警備は甘かった。 隙をついてゆっくり達を逃がし、車のトランクに詰めるのは造作もなかった。 今、車は人里離れた森の中を走っている。 助手席のれいむの道案内で、目的地ははっきりしていた。 これだけ遠ければ問題ないだろう。 「ゆっくりできるよ!!ゆっくりできるよ!!どすはもうすぐだよ!!」 ドス。 私が探しているのはそれだった。 突然変異で異常に大きくなったゆっくりは(ほとんどがまりさ種である)、 リーダーシップを発揮するようになって、多くのゆっくりを従え、群れのボスとなる。 ドスの統制する群れは行き届いた統制のもと安定した食糧確保が保障されており、 ゆっくりにとっては最上級のゆっくりプレイスとなる。 道案内はれいむがしてくれた。 ドスの発する「ゆっくりオーラ」は、ある程度離れたゆっくりにも影響を及ぼし、 ゆっくりできると感じたゆっくり達はドスのもとに自然と集まる。 なるべく人里離れた道を走っていたが、思ったよりは早く見つかった。 「ゆゆゆっ!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 「くそどれい!!かわいいれいむをおろしてどすのところへつれていってね!!」 「はやくしなさいよ!!ぐず!!のろま!!」 後部座席のゆっくり達が騒ぎ始めた。 彼女たちもドスの存在を察知しているようだ。 私たちは車の中で夜明けを待つことにした。 ゆっくりの住むところには、時として捕食種のれみりゃ種やふらん種が住んでいることがあり、 それらは夜行性で、非捕食種のれいむ種やまりさ種を襲ってしまう。 ドスのところに連れていくにせよ、少なくとも夜のうちは動くわけにはいかない。 「なにとろとろしてるんだぜええ!!まりささまのありがたいめいれいがきけないのかぜえ!?」 「おろしてね!!おろしてね!!ごみくず!!あんこのう!!ゆっくりしね!!」 自分からは一切動こうともせず、後部座席で騒ぎつづけるゆっくり達には正直辟易させられた。 「この子たち、森で生きていけるかな」 春奈がつぶやいた。 人間のもとで、ずっと甘やかされ、その後虐げられつづけてきたこのゆっくり達。 どちらにせよ、自分では何もせず、なにもさせてもらえず、ただされるがままの生活だった。 今、この子たちに自分たちで生きていく力があるだろうか。 それは賭けではあった。 ドスの率いる群れの統率力、指導力に期待するほかない。 群れのルールに従ってさえいれば、ドスの群れは野生にとっては一番の良環境だ。 どちらにせよ、もう人間の元においておけないのは確かだ。 人間への憎悪を溜め込んだこのゆっくり達の世話を人間がしようとしても、互いにいら立つだけだろう。 このゆっくり達の侮蔑と憎悪が、同じゆっくりに向けられないことを祈るばかりだ。 ドスが強者、指導者として上に立ってくれれば大丈夫だとは思うが。 「信じましょう」 私はそう言うしかなかった。 何時間が経っただろうか。 うとうととしはじめていた時、突然強い光が視界に広がった。 車の前方に光るそれは、バイクのヘッドライトだった。 目が慣れるまでに時間がかかったが、 バイクに乗っているその男は知った顔だった。 「長浜圭一……」 長浜圭一はバイクから降りると、車のほうへ歩いてきた。 ぐずぐずしてはいられない。 私もすぐに車から降りると、スタンガンを構えた。 「近づかないで!」 スタンガンを突き付けられ、長浜圭一は両手を上げた。 どうやら丸腰のようだった。他に人がいる気配もない。 「一人で来たの?」 「そうだ」 「どうやってここがわかったの」 「車に発信機がついている。その車でどこへ行こうとすぐに足がつく」 周到な話だ。 心の中で舌打ちをしながら私は言った。 「ゆっくり達を取り返しにきたのね?」 「そうだ。そして須藤春奈博士もね」 「娘は渡さない。娘も、もうあなたたちに協力はしないわ」 長浜圭一が車の中の娘に目をやる。 娘はうなずいてみせた。 「逃げられると思うか?」 「逃げてみせるわよ」 「そのゆっくり達を逃がしたところで、別のゆっくりを使うまでだよ」 「すべてを公表するわ。世間にね。 一般市民たちが、あなたのしていることを聞いてなんと言うかしら? 人を殺したわけでもないゆっくりを使って世論は納得する?」 「さあね」 「あなたがしようとしていることは、人類の歴史上最悪の迫害よ。 あなたたちは平気らしいけど、普通の人間がその罪悪感に耐えられるものじゃないわ!」 「ゆっくりを苦しめるのが、そんなに嫌かい」 愚問だ。 「人の言葉を使う、人間以外では唯一の生き物よ。 価値観は多少違っても、共存の道があるはず、共に生きるべきよ!」 「あんたは、ゆっくりが友達だとでも言う気か?」 「そうよ。人間は、初めて対話できる別の生物と出会ったのよ。 その奇跡を、あなたたちの悪意と私欲で汚させはしないわ。世間に判断してもらいます」 「同じ言葉を使う、ただそれだけでそこまで感情移入できるとはね」 「それだけじゃない。私はずっとゆっくりと向き合ってきました。 子供のころからゆっくりは友達だった。 ゆっくりブリーダーとして、何千匹のゆっくりと対話したこともある。 あらゆる個性のゆっくりと、考えうるかぎりの接し方を経験して、仲良くする方法を学んできたわ。 あなたに何がわかるの? あなたたちなんかよりもずっと、私はゆっくりをよく知ってるのよ!!」 両手を上げたまま、長浜圭一は肩をすくめた。 「それはご立派なことで」 「本当に何も持たないで来たの?」 「そうだよ」 「私を説得できると思っていたわけ?」 「どうかな。正直わからない。 もしかしたらあんたの話が聞きたかったのかもしれない」 「話すことなんかないわ。後ろを向きなさい」 長浜圭一に背中を向けさせ、その背中にスイッチを切ったスタンガンを押し付けた。 「少しでも妙な動きをしたらスイッチを入れるわよ」 「わかった」 「春奈、出てきて」 車から出てきた春奈に指示する。 「れいむも一緒に連れてきて。 それから、あのゆっくり達をまた袋に入れてちょうだい」 「入れるの?」 「あの子たちにこの男を見せたら刺激させてしまうわ」 「わかった」 「ゆゆっ!!だすんだぜ!!だすんだぜえええ!!」 「ぐぞどれいいい!!ごみぐずうううう!!だぜえええええーーーーっ」 「とかいはなありすになんてことするのよおおおお!!!しね!!しね!!いなかものおおおお!!」 大きな袋に再びつめられ、文句を言うゆっくり達。 「ごめんなさい。後で出してあげるわ」 袋の口を縛ると、長浜圭一に持たせた。 これだけ成長したゆっくりが十三匹というのは相当重い。 一人だけでは辛いようなので、結局は私と春奈が加わり、三人で運ぶことになった。 中で暴れているのでさらに大変だ。 長浜圭一に先を歩かせ、森の中に入りこむ。 夜中の行軍になったが、人間がついていれば捕食種のゆっくりを撃退するのはわけない。 「ママ、森に行くの?」 「そうよ。あの車に乗っているかぎり足がつくわ。 この子たちを森の中に離して、そのあとあの車でなるべく遠くに逃げましょう」 「この人が群れの場所をバラしちゃわない?」 「そうね」 私は手荷物の中からハンカチを出し、長浜圭一に目隠しをした。 「あなたはこのままで歩きなさい」 長浜圭一は抵抗しなかった。 結局、これが間違いのもとだった。 「こっちだよ!!こっちだよ!!ゆっくりできるよ!!」 朝が近づいてきたころ、れいむがさらに声をはりあげた。 いよいよドスが近いようだ。 「あなたたちでも歩いていける?」 「ゆゆっ!れいむでもすぐにつくよ!!ゆっへん!!」 「そう。なら、ここで放しましょう」 袋から出されたゆっくり達は、堰を切ったように叫んだ。 「よくもまりささまをとじこめたなあぁ!!しね!!いますぐあんこはいてしねぇ!!」 「ぐずぐずしないでとっととどすのところにつれていってね!!それからしんでね!!」 「ゆっくりぷれいすがすぐそこよ!!いなかもののどれいはさっさとえすこーとしなさいよ!!ぐず!!」 口々に罵り、私に体当たりをしてくる。 幸い、薄暗い中で長浜圭一には気づいていないようだ。 目隠しをしているのも識別を妨げているのだろう。 「自分たちで歩いていくのよ」 私が言うと、ゆっくり達は文句を言った。 「はあぁぁああ!?ありすが!?ありすたちにあるかせるのおぉぉ!? ばかなの!?ほんもののばかなの!?ぶっさいくなかおよね!!」 「まりささまがめいれいしてあげてるんだぜぇ!!ありがたいとおもわないのかだぜぇ!?」 「ばかはかんがえなくていいよ!!れいむのいうことをきくんだよぉ!!」 やはり、ずっと閉じ込められたせいで積極的に動かなくなっているようだ。 それでもこれだけ元気なら、すぐ側のドスのところには行けるだろう。 私は背を向け、歩き出した。 「まつんだぜぇ!!どれいのしごとをほうきするのかだぜぇ!?」 「かわいいかわいいれいむがめいれいしてるんだよぉ!?たちばかんがえてねぇ!!」 ドスのところに、私が行くわけにはいかない。 人間の姿を見せると警戒させてしまう。 善良なドスほど、ゆっくりオーラは強くなる。 あれだけ遠くかられいむが察知できたなら、よほどよくできたドスだろう。 このゆっくり達はすでに野生の食べ物に慣らしてあるし、問題なくやっていけると信じるしかない。 「帰りましょう」 長浜圭一にそう声をかけ、二人で空き袋を持った。 そうして帰ろうと振り向いたところで、突然の衝撃が襲った。 全身を襲う痛みで、しばらくは動けなかった。 呻きながら、苦労して周囲を見渡す。 辺りは真っ暗だったが、頭上を見ると、2メートル以上はあろうか、 高みに穴が開いていて、そこから白みはじめている空が見えた。 状況を理解するのに少しかかった。 どうやら地面に穴が開いていたらしい。 目隠しをしたままの長浜圭一が足を踏み外し、 一緒に袋を掴んでいた私も、それに引っ張られて穴の中にずり落ちたのだ。 それなりに広い穴で、深さは3メートル近く、広さも3メートルはありそうだった。 自然にできたものにしては、入口の穴が内部に対して狭い。 どうやら誰かが掘った穴のようだ。 恐らく、ゆっくりが掘ったものだろう。 穴の内壁は壺状になっており、上方にかけてすぼまっている。 これではとてもよじ登れそうにはない。 全身を打ちつけ、声を出すのにも苦労したが、 なんとか長浜圭一を見つけ、声をかけた。 「大丈夫?」 長浜圭一はうずくまって呻いている。 その足に触れると、びくりと震えて悲鳴を上げた。 「触るな!」 見ると、長浜圭一の左足が微妙におかしな方向に曲がっていた。 着地の衝撃で折れたらしい。 「大変……ごめんなさい」 「………目隠しを取ってもいいんだろ」 「あ、ええ」 自分で目隠しのハンカチをはぎ取り、長浜圭一は穴を見渡してから穴の内壁にもたれて溜息をついた。 「あんたが俺をここに落としたのか?」 「いいえ、違うわ。足を踏み外して落ちてきたみたい」 「お母さん!」 「おねえさん!!どこ!?ゆっくりしていってね!!」 上から声がする。 見上げると、春奈がれいむを抱えてこちらを見下ろしていた。 「お母さん、大丈夫?」 「私はなんとか大丈夫よ。でも、この人の足が折れたようなの」 「大変じゃない。どうしよう……電話で助けを呼ぶよ」 「駄目よ、春奈」 「なんで!?」 「誰に助けを呼ぶの?住所もわからないのに。 捜索を待ってたら、あの連中に捕まっちゃうわよ」 「でも、あたしじゃ助け上げられないよ」 「どすならたすけてくれるよ!!」 れいむが叫んだ。 「どすはゆっくりしてるよ!!れいむがたのめば、きっとおねえさんをたすけてくれるよ!!」 果たしてそうだろうか。 ドスの群れに関わりたくはなかったが、今となっては命と、ゆっくり達の未来がかかっていた。 一刻を争う状況でさえなければ、人間の助けを待つのだが。 それでも、どのみちここにいればゆっくりに見つかるかもしれない。 この穴はゆっくりが掘った公算が高かった。 「くそどれいはなにしてるんだぜ!?さっさとあがってまりささまをはこぶんだぜぇ!!」 「いいきみだね!!ばぁ~か!!ばぁぁ~~か!!べろべろばぁ~♪」 「とってもとかいはなあなね!!にげだしたいなかものにはおにあいよ!!」 あのゆっくり達が穴の淵から見下ろして叫んでいた。 あの連中に捕まれば、このゆっくり達は地獄に叩き落とされ、人間は拭えない罪を背負うことになる。 選択の余地はなかった。 「春奈。ドスを探してくれる?」 「お母さん」 「ゆっ!どすはすぐそこだよ!!あんないするよ!!」 「ドス達にお願いしてみて。なにか太いロープか蔦をを下ろしてもらえればいいわ。 ここから抜け出せれば、あとはその子達を預けて、車で町へ行ける」 「わかった。待っててね」 春奈はそう言うと、れいむを抱えたまま姿を消した。 他のゆっくり達も、しばらく私たちを罵っていたが、 やがてドスまりさのオーラに惹かれたのだろう、春奈に呼ばれて穴の淵から退いていった。 ドスは助けてくれるだろうか。 私も、ドスゆっくりに会ったことはない。 ドスにも善良なドス、悪いドスがいて、 田舎のほうだと、悪いドスが人里に下りてきてドススパークをたてに「きょうてい」を結ぶことを要求することもあるという。 人里から離れたこのあたりのドスが、人間に対してどういう認識を持っているか未知数だった。 「足は大丈夫?」 「……痛い。叫び出したいぐらいだ」 長浜圭一は辛そうだった。 「接ぎ木ができればいいんだけど。何もないし、暗くて」 「俺のことは気にするな。あんたとは敵同士なんだ」 「たとえ敵でも、怪我人を放っておくほど冷酷にはなれないわ。あなたと一緒にしないで」 「…………」 「痛む?」 長浜圭一は笑った。 「面白いな」 「何が面白いのよ?」 「俺があのゆっくり共にやろうとしていることを考えれば、この程度で痛がってちゃお笑いだよ」 「別に痛がっていいわよ。絶対にやらせないもの」 「いい人だな、あんたは」 「皮肉?」 「いや。本心から言ってる。あんたはいい人だ。好きにはなれないが」 意外に素直なことを言うかと思えば、やはりねじくれた男だ。 上から声が降ってきたのは、完全に朝になったころだった。 恐らくは朝になり、夜行性の捕食種が巣に帰るのを待っていたのだろう。 「ゆゆっ!!ほんとににんげんさんがいるよ!!」 「わかるよー、おちちゃったんだねー」 「ちーんぽ!!」 大小さまざま、数十匹、あるいは百匹以上のゆっくり達が穴の淵を取り囲んでいるようだった。 れいむ種、まりさ種、ありす種、そしてちぇん種やみょん種といった希少種もちらほら見受けられる。 「お母さん!大丈夫?」 「おねえさん!!ゆっくりしていってね!!どすがくるからゆっくりできるよ!!」 春奈と私のれいむが姿を現した。 「ありがとう。呼んで来てくれたのね」 「ドスまりさに事情を話したの。来てから考えるって。いま来るわ」 果たして、大きな足音が聞こえてきた。 巨大なものが、ゆっくりと地面を這いずってくる音。 「ゆゆっ!!」 重低音の声とともに、巨大なドスまりさがぬっと顔を見せた。 この穴の底からでは目測しにくいが、身長3メートル以上はあろうか。 「ゆっ、ほんとだね!にんげんさんがおちてるよ!! ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりしていってね!」 私は笑顔で挨拶を返した。 さん付けで呼んでくれ、最初に挨拶をしてくれた。期待していいかもしれない。 「初めまして、ドスさん。とってもゆっくりした群れね」 「ゆっ?ゆっへん!!ドスのむれはゆっくりしてるよ!! おねえさんはみるめがあるね!!とくべつにみていってもいいよ!!」 素直なドスらしく、胸を反らしていい気分のようだ。 春奈がドスまりさに対して訴える。 「ドス、お母さんを助けて!」 「ゆっ?どうすればいいの?」 「ロープとか、なにか丈夫な蔦とかない?」 「ゆゆ?う~ん、あったようなきもするよ。みんな、つたさんをさがしてみてね!!」 「ゆっゆ~!!」 群れのゆっくり達が声を上げる。 どうやら助けてもらえそうだ。 そう安心しかけたところに、制止する声が響いてきた。 「むきゅ!どす、ちょっとまつのよ!」 特徴のある鳴き声は、ぱちゅりー種のものだった。 声量は小さかったが、鋭いその声に群れが一斉に注目した。 「むきゅ、にんげんさんはゆっくりできないわ!!」 「ゆゆっ?どういうこと?」 「ぱちゅりー、ゆっくりせつめいしてね!!」 ドスまりさの傍に寄り添うようにしているぱちゅりーが、群れに向かって講義をはじめた。 尊敬されている個体らしく、ドスを含めた群れはその声に耳を傾けている。 善良ではあるがどこか緊迫感のないドスを、知識に優れるぱちゅりーが参謀として補佐している。 恐らくはそんなところだろう。 これはよく見られるケースで、ドスが一人で何もかも取り仕切る群れよりも、 むしろこうした形式の群れのほうが成功しやすいようだ。 「もりのけんじゃであるぱちゅりーのことばをよくききなさい、むきゅ! にんげんさんはゆっくりできないの。 このむれはにんげんさんのむれからはなれているから、 にんげんさんをしらないゆっくりのほうがおおいとおもうけど、 ほかのところからうつってきたゆっくりのなかには、にんげんをみたことがあるゆっくりもいるはずよ」 「ゆっ!!まりさはみたことがあるよ!!」 「ちぇんもみたことがあるんだねー、わかるよー」 「れいむもにんげんさんをみたよ!!ゆっくりできなかったよ!!」 数は少なかったが、何匹かのゆっくりがぱちゅりーに同意していた。 「にんげんさんは、まったくゆっくりできていない、きけんでかとうなせいぶつよ。 おやさいさんをひとりじめしたり、 おなかをすかせているゆっくりにあまあまをあげないでむししたり、 ゆっくりのおうたをきいたのにおれいをしなかったり、 あとからやってきたくせに、ゆっくりぷれいすをよこどりしたりするわ、むきゅ! にんげんさんは、めにうつるものはなにもかもじぶんのものだとおもっているやばんないきものなのよ!」 ぱちゅりーの演説に、移住組らしきゆっくり達が声をあげる。 「そうなんだぜ!!まりさはおやさいさんをよこどりされてつまをころされたんだぜ!!」 「れいむはおうたをうたってあげたのにあかちゃんをつぶされたよ!!」 「ありすはにんげんをかってたわ!! ゆっくりぷれいすでにんげんのめんどうをみてあげてたのに、 ありすがとかいはなおよめさんをつれてきたとたんにうらぎって、 ゆっくりぷれいすをのっとってありすをおいだしたわ!!」 人間と接したことのある移住組のゆっくり達の話を聞いて、 群れのゆっくり達は口ぐちに悲鳴をあげた。 「ひどすぎるわぁぁ!!にんげんはぜんっぜんとかいはじゃないわああぁぁ!!」 「わからないよ!!にんげんさんはわからないよー!!」 「どぼじでぞんなびどいごどがでぎるのおおぉぉぉ!!?」 「ゆゆっ!!にんげんさんはゆっくりできないんだね!!」 群れを見渡してドスまりさが叫んだ。 「どすすぱーくをうつよ!!ゆっくりできないにんげんさんはしね!!」 「ま、待って!!」 なんて事だ。 こんなところで殺されてしまうのか。 やはりドスのいる群れに不用意に近づくべきじゃなかった。 「ゆっくりまってね!!」 その時、さらに制止の声が響いた。 ドスまりさの前で飛び跳ねているのは、見間違えようもない、私のれいむだ。 「ゆゆっ!!よそもののれいむはだまっててね!!」 「ゆっくりきいてね!!おねえさんはとってもゆっくりできるんだよ!! おねえさんはずっとれいむにゆっくりさせてくれたよ!!ころさないでね!!」 「ゆぅぅ!?」 「みんなもきいてね!!にんげんさんはゆっくりできないにんげんさんばかりじゃないよ!! おねえさんみたいに、ゆっくりをゆっくりさせてくれるにんげんさんもいるよ!!」 群れは静まり返った。 余所者のれいむの言葉だったが、たしかに効果があったようだ。 それはおそらく、れいむが丁寧な手入れをされている美ゆっくりだったからだろう。 美人に弱いのは人間もゆっくりも同じようだ。 「むきゅ!どす!まようことはないわ、どすすぱーくを!」 「ゆゆっ!?でも、このれいむはすごくゆっくりできるよ!!」 「む、むきゅう……!」 会話になってないように聞こえるが、ぱちゅりーは返答に詰まっている。 ゆっくりできている、ということはすなわち説得力につながるらしい。 「ゆっへっへ!!どす!!どすならはやくまりささまをゆっくりさせるんだぜ!!」 「ゆふぅ、ゆふぅ……ありすはつかれてるのよおお!!なんであるかせるのおお!!」 また新しい声が加わった。 聞きおぼえのあるその声は、施設から連れてきたあのゆっくり達のものだった。 遅れてやってきたのは、自分で跳ねるのは久しぶりで思うようにいかないからだろうか。 「ゆゆっ!ようやくついたよ!!どす、はやくにんげんさんをころしてね!!」 施設のゆっくり達の声が聞こえる。 やはり、この子達は私たちが助かることは望んでいないようだ。 「むきゅ!あなたたち、ぱちゅりーのしつもんにこたえなさい!」 「ゆ!?なんでもきいてね!!」 「このにんげんさんたちはゆっくりできる!?」 「ゆゆっ!!もちろんゆっくりできな――」 改めて穴をのぞき込み、私たちの顔を見た十三匹のゆっくり達は眼をむいた。 「ゆぅあああああああぁぁぁぁーーーーーーーーーっ!!?」 「むっきゅうぅ!?どうしたの!?きゅうにさけばないでね!」 「なんでおまえがここにいるんだぜえええええぇ!!?」 その子達が見ているのは、明らかに長浜圭一のほうだった。 昨晩は目を隠していたのと、宵闇であること、穴の底の暗がりだったために判別できなかったが、 太陽の下、いまや長浜圭一の正体は文字通り白日のもとにさらされていた。 自分たちをさんざん苦しめた長浜圭一を前にして、ゆっくり達はいきり立った。 「しね!!しね!!しね!!しね!!ひきょうなにんげんはいますぐくるしんでしねぇぇ!!!」 「かえせ!!かえせ!!れいむのあかちゃんかえせぇぇぇ!!!ゆっくりするなぁぁぁぁ!!!」 「よくもよくもよくもありすのとかいはなぺにぺにをいじめたなああぁぁーーーーーーっ」 悪罵を投げつけられながら、長浜圭一はどこか疲れた無表情で上を見上げていた。 「どういうことなの……」 十三匹の恐ろしい剣幕に、群れのゆっくり達はたじろいでいた。 「む、むきゅ!ぱちゅりーにせつめいしてね!」 「ゆっ!!このくそにんげんをいますぐころしてね!!」 「きゅうにいわれてもわからないわよ!このにんげんがなにをしたの!?」 「ゆっくりせつめいするよ!!れいむたちはとってもかわいそうなひがいしゃなんだよ!!」 十三匹のゆっくり達は群れに向かって、 自分たちがあの施設で長浜圭一にされていたことをすべて話した。 ゆっくりの、しかも感情的な説明なのでなかなか要領を得なかったが、 長浜圭一が恐ろしい人間である、という認識自体はたやすく群れに浸透した。 群れのゆっくり達は悲鳴をあげ、憎悪の声をあげはじめた。 「ゆうううぅぅぅ!!ゆっくりできないいいいいいぃぃ!!!」 「わからないよー!!わからないよー!!」 「ころせぇぇ!!ゆっくりしないでころせえええーーっ!!」 最悪の事態になりつつあるようだった。 私はなんとか弁解したかったが、火に油を注ぐだけだろう。 本来、野生のゆっくりが人間の論理に耳を傾けることはまずない。 どうすべきか迷っているうちに、ドスまりさが再び口を開いた。 「こんどこそどすすぱーくをうつよ!!むれのみんなはゆっくりはなれてね!!」 「やめてね!!やめてねぇぇ!!」 私のれいむが必死に止めようとして、ドスまりさの髪飾りに捕まっていた。 「ゆゆっ!れいむははなれてね!!」 「はなれないよ!!れいむのおねえさんをころさないでね!! おねえさんはこのまりさたちにはなにもしてないよ!! おねえさんがまりさたちをたすけだしてここにつれてきてくれたんだよ!!」 「そうなの?ゆっくりこたえてね!」 ドスまりさに問われて、施設のゆっくり達は飛び跳ねながら答えた。 「ゆっ!あのおねえさんはどれいなんだぜ!!」 「れいむたちがめいれいしてここまでつれてこさせたんだよ!!」 「でもにげだそうとしたわ!!やくにたたないいなかもののかちくだからころしてもいいわよ!!」 「ちがうでしょおおぉぉ!?おねえさんがいなかったらにげられなかったでしょおおぉ!!」 私のれいむが訂正しようとするが、施設のゆっくり達は悪びれる様子もない。 「にんげんさんがかわいいれいむをたすけるのはあたりまえでしょおおぉ!?」 「まりささまのみりょくにめろめろになったからたすけたんだぜ!! だからこれはまりささまのちからなんだぜぇ!!」 しばらく言い争っていたが、やがてドスまりさが言った。 「どすはゆっくりわかったよ!! あのおにいさんにどすすぱーくをうって、あのおねえさんをたすけるよ!!」 「ゆゆっ!!すごいめいあんだよぉ!!」 「かんどうてきなおおおかさばきだよ!!さすがどすだね!!」 迷っていた群れは、解決策を打ち出したドスまりさを称賛して飛び跳ねた。 しかし、またも制止の声が上がった。 「むきゅう、おまちなさい!」 「ゆゆっ!?どすのめいあんだよ!どこもおかしいところはないよ!」 「あのおねえさんをたすけたあとはどうするのかしら、むきゅ?」 「ゆっ?おうちにかえらせてあげるよ!」 「だめよ、どす!おねえさんをにがしたら、ほかのにんげんさんたちにこのむれのことをいうわ! おそろしいにんげんさんたちがこのゆっくりぷれいすのことをしったら、よこどりしようとするにちがいないわ!」 「言わないわ!絶対に秘密にしておくわ」 私はそこで口を挟んだが、黙殺されてしまった。 「それに、にんげんさんはゆっくりできないけど、ちからだけはあるわ。 にがすよりも、このむれでかってあげたようがいろいろとやくにたつわ、むきゅ!」 「ゆゆっ!ぱちゅりーはかしこいね!そういえばそうだよ!!」 「ゆゆっ!!すごいめいあんだよぉ!!」 「てんさいてきなゆっくりできるひらめきだよ!!さすがぱちゅりーだね!!」 ドスまりさ以下の群れのゆっくり達は、ぱちゅりーの提案に満足して飛び跳ねていた。 「じゃあ、おねえさんはここでかってあげるよ!おにいさんにはどすすぱーくをうつよ!」 「むきゅ、まって!つがいがいないのはかわいそうだわ。 せっかくおにいさんとおねえさんがそろっているんだから、つがいでかってあげましょう! かわいいあかちゃんがうめないと、すとれすでにんげんさんがしんでしまうわ!」 「ゆゆぅ~!!ほんとにそのとおりだよぉ!!」 「さすがぱちゅりーだね!どすはそこまできがまわらなかったよ!!」 「あかちゃんがうめなかったらゆっくりできないもんね!!」 「すっきりができなかったらすとれすでしんじゃうところだったわ!あぶないところだったわね!!」 ドスまりさが穴の口からこちらを覗き込み、満面の笑みを浮かべて猫なで声をかけてきた。 「ゆゆぅ~♪よかったね、にんげんさん! にんげんさんたちはこのむれでかってあげるよ!! こわいあめさんやれみりゃからまもってあげるからね!!もうあんしんだよ!!」 「ゆっゆっ♪ゆっくりしていってね!!」 「にんげんさんも、こうしてみるとかわいいかもしれないのぜ!!」 「がんばっておせわするんだねー、わかるよー」 ペットを手に入れたゆっくり達は浮き立っていた。 冗談ではない。ここから出られなければなにも解決しないのだ。 あの車の発信機をたどって、この群れはすぐに発見されるだろう。 あの十三匹のゆっくりが再び施設に連れ戻されてしまう。 「みんな、お願い、聞いて!私たちはここに住めないの。 お願いだから家に帰らせて!」 「ゆっ、れいむのおねえさんをかえらせてほしいよ!」 私のれいむがドスまりさに要求するが、ドスまりさ達は答えた。 「ゆゆっ!だいじょうぶだよ!ちゃんとゆっくりできるごはんをあげるよ! おねえさんをいじめるゆっくりはどすがゆるさないよ!だからあんしんしてね!」 「ゆっ、がんばってかわいがってあげるよ!」 「でも、れいむのおねえさんにはおうちがあるよ!かえりたがってるよ!」 「しらないところでふあんなんだねー、わかるよー」 「むきゅ、れいむ、よくきいて。 じこちゅうしんてきでみがってでらんぼうでちせいのないにんげんさんたちにかこまれて、 おねえさんはほんとうにゆっくりできていたかしら?」 「ゆゆっ?」 「もちろん、にんげんさんは、さいしょはにんげんさんのなかにいたいとおもうでしょう。 でも、それではにんげんさんはずっとやばんなかとうせいぶつのままだわ。 ゆっくりのなかでそだてて、にんげんのしらないしんじつのゆっくりをおしえてあげれば、 いままでよりもずっとずっとゆっくりすることができるのよ。 ながいめでみれば、それがにんげんさんのためなのよ!むきゅ!」 「………ゆっくりわかったよ!」 私は耳を疑った。 何を言った? 私のれいむは、今、何を言ったのだ? 「このむれはすごくゆっくりできてるよ!おねえさんもゆっくりさせてあげてね!!」 「だいじょうぶだよ!!どすたちにまかせてね!!」 「ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 穴の淵を取り囲み、「ゆっくりしていってね」を連呼する群れのゆっくり達。 その表情には心底からの善意と愛情が浮かんでおり………私はぞっとした。 「れいむ!!聞いて、れいむ!! 私はここにはいられないのよ!!帰らなくちゃいけないのよ、れいむ!お願い!!」 「だいじょうぶだよ!!このむれはほんとうにゆっくりできるむれだよ!! おねえさんがすんでいたおうちよりもずっとずっとゆっくりできるんだよ!! れいむもここにすむことにしたよ! れいむがずっといっしょだよ!だからあんしんしてね!!」 私のれいむ。 お祖母ちゃんのれいむも、お母さんのまりさも、そしてこのれいむも、 生まれてからずっと私が面倒を見てきた。 ずっとれいむは私になついていた。 私もれいむも互いに愛し合い、人間とゆっくりではあっても、家族だった。 家族だった、そう信じていたのに。 「駄目なのよ、れいむ!お願いだから私の話を聞いて!本当に時間がないの!」 「ほんとうにだいじょうぶだよ!!むれのみんながおねえさんのめんどうをみてくれるよ!! とっても、とってもゆっくりできるんだよ!!れいむのいうことをしんじてね! あんまりわがままをいうとどすにしかられちゃうよ!!」 信じていたのに。 それなのに今、私のれいむは、私を裏切って―― 裏切って? なにを裏切った? なにが変わった? 「もりのなかでくらすのはふあんだとおもうけど、 むれのみんながなんでもおしえてくれるからね! これからはゆっくりみんなのいうことをきいてね!!だいじょうぶだからね!!」 いや、れいむは裏切ってはいない。 れいむは依然として家族だった。 家族として、私を愛し、私の幸福を第一に考えていた。 変わったのは立場だけだ。 今ここでは、ゆっくりが人間よりも強い。 そしてこの場では、あらゆる幸福と正誤は、ゆっくりの基準で定められることになる。 今、恐ろしい実感が背中を這い回り、私は震えていた。 完全な善意に対しては、一切の反論が無力だ。 逃げ場はなかった。 続く
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』18 荒涼たる岩場とゆっくりプレイスを隔てるマジックミラーは、 一日のうち一度、三十分程度のわずかな時間だけ透明なガラスになった。 ゆっくりプレイスの中では、Y飾りのゆっくり達が、 山ほどのあまあまと遊具で、存分にゆっくりを堪能していた。 楽しげな話し声や室内の音楽も聞こえてくる。 「れいむもいれてねええ!!ゆっくりしたああいい!!」 「おなかすいたあああぁぁ!!あまあま!!あまあまわけてぇぇ!!」 「おでがいじばず!!おでがいじばずうう!!めぐんでぐだざいいいぃ!!」 ガラス越しに群れのゆっくり達は懇願したが、 聞き入れられないどころか、嘲笑と罵倒をもって応えられた。 懇願のうちに三十分は過ぎ去り、壁は再び鏡に戻る。 例え侮蔑と悪意を向けられていてさえ、 極上の美ゆっくりであるY飾りのゆっくり達の姿そのものが、 群れのゆっくり達にとってはゆっくりできるものだった。 壁が鏡に戻る瞬間、 ゆっくりプレイスは内部の音も含めてすべてこちら側と遮断される。 群れのゆっくり達はその時、眼前の鏡に移る自分たちの、 痩せて汚れた、涙に濡れるみすぼらしい姿を見せつけられた。 ゆっくり達はそんな自分を嫌悪し、みじめな気分になり、 なるべく鏡と離れ、岩場の真ん中で日がな一日泣きじゃくった。 どこを向いても、目に映るのはぶざまで醜い自分たちだった。 互いの姿が醜く思え、口を開けば愚痴や喧嘩ばかりだった。 家族と一緒にいても、何をしても、 脳裏にあのゆっくりプレイスが常にちらつく状態では全くゆっくりできなかった。 今となっては、あの三十分だけが唯一の楽しみだった。 あの美しいY飾りのゆっくり達を見てゆっくりしたい。 ゆっくり達は毎日それだけを楽しみに待っていた。 一週間近く何も口にせず、ゆっくり達はほぼ餓死寸前だったが、 食欲よりもむしろ、その渇望のほうが強かった。 一週間が過ぎたその日に、変化が起こった。 群れのゆっくり達が透明なガラスに張り付いてゆっくりプレイスを眺めているとき、 突然Y飾りのゆっくり達が騒ぎはじめた。 「ゆっ!!にんげんさんがきてくれたよ!!」 「ゆゆゆっ!!いそいでおむかえするよ!!」 ゆっくりプレイスの中に人間が入ってきていた。 大人のメスだ。 たちまちのうちにゆっくり達がプレイスの床で整列し、 人間を前にしてはきはきと挨拶をした。 「にんげんさん!きょうもきてくれてありがとうございます!!」 「「「「ありがとうございます!!」」」 「にんげんさんのおかげでゆっくりできます!!」 「「「「ゆっくりできます!!」」」」 お姉さんがそれに答えた。 「はいはい、ゆっくりしていってね」 「ゆっくりおめぐみありがとうございます!! ゆっくりさせていただきます!!」 異常な光景だった。 あんなにゆっくりできるY飾り達が、ゴミクズの人間に挨拶をしている。 群れは戸惑う。特に親れいむ達には理解不能だった。 とはいえ、群れのゆっくり達はそれを千載一遇のチャンスと捉えた。 人間に命令すれば、中に入れてもらえるのではないか。 なにしろ、可愛いゆっくりをゆっくりさせることは他種の幸せなのだ。 断られることは考えられない。 「ゆっくりしていってね!!」 親れいむは大サービスで挨拶をしてやった。 まずは可愛い姿を見せてやり、メロメロにしておくのだ。 人間とY飾り達の視線が一斉にこちらに集まった。 そして、Y飾り達が叫び始めた。 「ゆっくりできるわけないでしょおおお!?」 「なにがゆっくりしていってなのおおお!? おまえらがいるとゆっくりできないんだよ!!」 「おまえらににんげんさんをゆっくりさせられるとおもってるのおおお!? うすぎたないごみくずがおもいあがらないでねえええ!!!」 「ゆゆゆゆ………!?」 れいむ達は狼狽した。 たとえY飾りに比べれば醜かろうと、まがりなりにもゆっくり。 人間が自分たちを見てゆっくりするのは確実だろうと思っていた。 当のお姉さんも、苦笑まじりにこちらを見ているだけで挨拶には答えない。 しかし、ゆっくり達はこのチャンスにしがみつき、 お姉さんに向かって食事を要求し始めた。 「おねえさん!!かわいいれいむのためにあまあまをもってきてね!!」 「まりささまはおなかがぺこぺこなんだぜ!!はやくするんだぜええ!!」 「れいむはしんぐるまざーなんだよ!!かわいそうだとおもわないの!?」 「ゆがあああああああああぁぁぁ!!!」 吼えたのはY飾り達だった。 ぎょっとして硬直しているうちに、Y飾り達は猛烈な勢いで扉に殺到し、 扉を開いてこちらになだれ込んできた。 「いいかげんにしろごみくずどもおおおぉぉぉ!!!」 Y飾りのまりさが、群れのゆっくりに体当たりを見舞った。 通常のゆっくりよりもはるかに強烈な衝撃に、 喰らったまりさが歯をまき散らしながら大きく吹き飛ぶ。 「にんげんさんにそんなくちをきいていいとおもってるのかああぁぁ!!」 「このごみくずどもが!!にんげんさんにっ!!あんなことを!!あんなことを!!」 「なにがしんぐるまざーなの!?ごみくず!!もういちどいってみろおぉぉ!!」 「ゆびぇええええええええーーーーーーっ!!?」 Y飾り達のリンチが群れのゆっくり達を蹂躙した。 吹き飛ばされ、踏みしだかれ、噛みつかれる。 巧みに致命傷を与えることだけは回避しているようだが、群れのゆっくり達はも激痛に泣き喚いた。 「やべで!!やべで!!ぼうやべでぐだざいいいいい!!!」 「ゆっぐりでぎないいいいい!!ゆっぐりざぜでええええ!!!」 「ごべんなざい!!ごべんなざい!!あやばりばずがらゆるじでぐだざいいい!!!」 親まりさが叫ぶと、Y飾り達は暴力の手を止めて問い詰めた。 「なにがごめんなさいなの!?はっきりいってね!!」 「ゆっぐ、ゆっぐ………うずぎだないごみぐずでごべんなざい………」 「ちがうでしょおおおぉぉぉ!!!」 「ゆびぇえええぇぇぇ!!」 再び体当たりを受け、親まりさが転がされる。 「おまえらごみくずなんかが!!にんげんさんにためぐちをきいたからだよ!!」 「ゆ、ゆ……?」 「あまあまをもってきてねだって!? なんでおまえらなんかににんげんさんがあまあまをもってきてあげなきゃいけないの!?」 「ゆ、ゆ、ゆっくり……れいむはゆっくりできるから……にんげんさんが……」 「だまれええええぇぇぇ!!」 「ゆぎゅっ!!?」 今度は口を挟んだ親れいむが舞わされた。 「もういちどいってみろおおぉぉ!! にんげんさんが!!おまえみたいな!!うすぎたないごみくずをみて!! ゆっくりするわけないでしょおおおぉぉ!!? ぶじょくしたな!!にんげんさんをぶじょくしたな!!あやまれ!!あやまれえぇ!!」 ばしばしと踏みつけられ、親れいむが泣き叫ぶ。 「ごべんなざい!!ごべんなざい!!ぼういいばぜん!!ごべんなざいい!!」 「なにがごめんなさいなの!?」 「にんげんさんをぶじょくしましたああぁぁ!!」 「もういちどきくよ!! だれがおまえをみてゆっくりするの!?そんないきものがどこにいるの!!?」 「いばぜん!!いばぜえええん!! でいぶをみでゆっぐりずるいぎぼのはいばぜえええええぇん!!」 「やっとわかったね!!ごみくず!! ごみくずなりにゆっくりはんせいしてね!!」 ぺっ、と唾を吐きかけてYまりさはようやく身を引いた。 ぼろきれのように横たわり、親れいむは泣きじゃくる。 Yまりさは群れのゆっくり達に向きなおって叫んだ。 「おまえらもゆっくりりかいしてね!! おまえらはだれもゆっくりなんかさせられない、きたないやくたたずのごみくずなんだよ!! とくに、とくに、にんげんさんをゆっくりさせられるなんておもわないでねえぇぇ!!! ゆっくりわかったの!?へんじしろおおぉ!!!」 「ばいいいいいぃぃ!!わがりばじだあああああ!!!」 涙を流し震えおののきながら、ゆっくり達が答える。 「ごみくずはそこでのたれじんでいってね!!」 「まりさ、もういいわ」 「ゆっ!!ゆっくりわかりました!!」 Yまりさを制止したのはお姉さんだった。 ガラス壁の向こうからお姉さんは言った。 「その子たちにも食べ物をあげましょう」 「ゆゆっ!?でも、こんなごみくずたちにごはんさんはもったいないとおもいます!!」 「いいのよ」 「ゆっくりわかりました!!」 プレイス内の大皿から菓子を集め、大皿に盛っていくY飾りのゆっくり達。 充分な量の菓子が盛られたところで、お姉さんが皿を手に取った。 「ゆゆっ!?まりさたちがはこびます!!」 「ごみくずどもににんげんさんからあげるなんておそれおおいです!!」 「いいの。さ、どいて」 「ゆっくりごめんなさい!!」 そうして、皿を運んでくるお姉さん。 その様子を見て、群れのゆっくり達は飛び跳ねた。 「ゆっ!!ありがとうにんげんさん!! はやくあまあまおいていってね!!」 「おれいにおうたをうたってあげるよ!! あまあまちょうだい!!あまあま!!」 一刻も早く菓子を受け取ろうと、扉のほうに集まっていく。 親れいむも、痛む体と空腹を引きずりながらそちらへ向かっていった。 やがて、扉を開いてお姉さんが現れた。 「はいはい、がっつかないの」 その瞬間、親れいむの中枢餡を衝撃が貫いた。 恐ろしく空腹だったが、もはや菓子などは眼中になかった。 わけがわからない。 わからないが、とにかく、このお姉さんにすりすりしたくて仕方がなかった。 このおねえさんはゆっくりできる。 親れいむの本能が、それを告げていた。それもこれまでにないほど強烈に。 菓子皿が地面に置かれたが、 親れいむは脇目もふらずにお姉さんに向かっていった。 「お、おねえさん!!すーりすーり!!れいむとすーりすーりしてね!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 先ほどYまりさにされた制裁も忘れ、人間にすり寄っていく。 見ると、群れの他のゆっくり達も同じようにお姉さんの方に向かっていた。 遅れてはならじと、親れいむは必死に這いずっていく。 しかしお姉さんは首を振り、立ち上がった。 「だめだめ。ゆっくりできないわね」 「どぼぢでぞんなごどいうのおおおぉぉぉ!!?」 群れの中から絶叫が響く。 「だーめ。みんな汚いもの。じゃあねー」 「ま!まって!!おねえざん!!すーりすーりしでえぇ!!」 「ずーりずーりじだああいいいい!!おねえざん!!もどっでぎでええええ!!」 「おねえざああああん!!おねえざああああんん!!おでがいいいいいぃ!!!」 「ゆっぐじじで!!ゆっぐじじでよおおおおぉぉぉ!!!」 飛び跳ね、追いすがり、懇願する群れに背を向け、 お姉さんは足早に扉の内側に引っこんで扉を閉めてしまった。 ゆっくりプレイス内では、 Y飾りのゆっくり達が、存分にお姉さんの腕や足にすりすりをしている。 どれもが恍惚の表情を浮かべ、このうえなくゆっくりしていた。 これまでで一番強い、身を焦がす羨望に親れいむは身悶えする。 ゆっくりしたい。 食欲とも性欲とも違う、そのどれよりも遥かに強い衝動。 気も狂わんばかりのその衝動に突き動かされ、 置かれた菓子の皿には目もくれず、Y飾り達の怒鳴り声にもひるまず、 親れいむ達はガラス壁に体当たりし、壁の向こうのお姉さんに懇願し続けた。 壁が再び鏡に戻ってしまうまでそれは続いた。 「………なんだこれ」 「ね、すごいでしょ」 「信じられない。あれだけ腹をすかしたゆっくりが、食事も忘れて人間にすり寄るなんて。 食欲がほぼ最優先で、人間を見下している生き物が……どういうわけなんだ?」 「問題。ゆっくりが一番ゆっくりできる状態って、なんだと思う?」 「………俺に聞かれてもわからないが、甘いものを食べてるときか?」 「ブー。解答。お母さんの中にいるとき」 「口の中に入って……いや、母胎か!」 「そういうこと。生まれる前、母親の子宮の中にいるときが一番ゆっくりしてるの。 人間と同じで、生まれた後はほとんど忘れちゃうようだけど、 胎内にいる間のゆっくり波は、生まれた後にどんな事をしてもまず到達できない数値なんだな」 「ゆっくり波?」 「脳波のゆっくりバージョンで、ゆっくり具合を数値化してみたのね。 で、研究してみた結果、にんっしんっしているゆっくりの子宮内の液体が鍵だとわかったの。 胎ゆっくりが浮かぶ海、人間でいう羊水ね。便宜上、「ゆー水」と名付けました」 「ゆーすい……」 「そのゆー水を大量に摂取し凝縮して、香水にしてみたわけ。 それを肌にふりかければ、人間だろうとブタだろうとれみりゃだろうと、あらゆるゆっくりがすり寄るようになるよ」 「そりゃまた。つくづく単純な生き物だな」 「コレが開発できた時点で、 ゆっくりに関するほとんどの問題は解決できたようなもんね。 あとはじっくり手間をかけていくだけってわけ」 鏡を前にしてゆっくりプレイスと遮断された群れは、 意気消沈の体で、それでも菓子を盛った皿に這いずっていった。 「むーしゃむーしゃ……しあわせー……」 「うっめ……これめっちゃうっめ……」 一週間ぶりの、それも初めて食べるほどの美味だったが、 その量は群れに対してとても充分とはいえなかったし、 何より、先ほどの人間にすげなくあしらわれたのが、なぜか無性に辛かった。 あの人間に褒めてほしい。可愛がってほしい。 餡子の底から湧き起こる、説明しようのない本能が思考を苛む。 その日の夜、岩場に身を横たえて眠りながら、 親れいむは夢を見た。 遠い遠い記憶。 すでに忘れかけていた、魂のゆっくり。 自分たちゆっくりが毎日本能的に追い求めている、 すべてが全く満たされた夢のような時が、 かつてたしかにあったのだ。 夢の中で、親れいむは、 大きく温かく優しい母親の頬にすーりすーりをしていた。 起きると、親れいむは泣いていた。 周囲には、同じように泣いているゆっくり達が多くいた。 同じ夢を見たのだろう。 互いに言葉を交わすでもなく、再び一方の鏡を凝視する。 あの三十分がその日も訪れ、群れのゆっくり達はガラス壁にしがみついた。 一同はY飾り達の暴力を恐れ、声をあげずに張り付いているだけだったが、 やがて人間の姿が現れると、無意識に鳴き声を上げた。 「ゆうぅ~~……ゆぅぅう……」 「ゆっくり……ゆっくりしたいぃ……」 しかし、その日やってきた人間は別のお姉さんだった。 親れいむ達は落胆したが、 扉が開かれ、菓子皿を手にそのお姉さんが現れると、 再び電流のような渇望に打たれ、お姉さんにすり寄ろうとした。 そしてまた拒絶される。 「ゆっくり!!ゆっくりしたああいいいい!!!」 「おでがい!!おでがい!!でいぶをゆっぐりざぜで!!ずーりずーりじでぇぇ!!」 「なんでぼじばず!!ずごじだげでいいんでず!!なーでなーでじでぐだざいいいい!!」 「ああやだやだ、汚い汚い」 泣きながら這いずってにじり寄るゆっくり達を振り切って、 お姉さんはさっさとゆっくりプレイスに戻って扉を閉めてしまう。 「ゆっぐじざぜでえええええええぇぇぇ!!!」 再び一週間が過ぎた。 わずかなあまあまで日々を食いつなぎ、 今日こそは、今日こそはと、毎日違うお姉さんに懇願する。 ゆっくり達はやつれ果て、疲れきっていた。 毎日泣きはらし、目の下には深い隈ができている。 最初は群れで固まっていたが、今ではそれぞれが勝手に動き、 会話をしようともしない。 薄汚れた互いの姿を見てもみじめになるばかりだった。 「今、あのゆっくり達は、 ゆー水の効果で人間に母親を見てるわけ」 「まさかそんな事ができるとは思わなかったな」 「母親に捨てられた子供ほどみじめなものはないよ。 アメリカのほうじゃたまに見かけたけど、ひどいもん。 お母さんに拒絶されるというのは、トラウマになるぐらい辛いことみたいだね」 「君も、もう少しお母さんを大事にしてやればいいだろう」 「そうだねー。週末には帰ろうかな。 じゃ、そろそろ次いこっか。ここからが面白いよー♪」 「おねえさんとすーりすーりしたいの?」 その日、外に出てきたY飾りのまりさが聞いてきた。 ゆっくり達が沸き返り、絶叫する。 「ゆ!!したいい!!ずーりずーりじだいいいぃぃ!!!」 「ばりざをおでがいじばず!!ずーりずーりじだいいいいい」 「ゆっぐりいいいい!!ゆっぐりいいいいいいい!!!」 「いまはだめだよ!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉぉ!!?」 泣きわめくゆっくり達に、Yまりさが毅然として答えた。 「うすよごれたやくたたずのごみくずが、 にんげんさんにさわるなんておそれおおいんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「ううううう!!ゆううううううう!!!」 「でも、やくたたずだけど、がんばればあっちにいれてあげてもいいよ!! おねえさんともすーりすーりできるよ!!」 「ゆ!!がんばる!!がんばりばずうううううぅぅぅ!!!」 初めて目の前にぶら下がる希望に、ゆっくり達は眼を輝かせた。 「そのためには、「しんっこうっ」のみちにはいるんだよ!」 「ゆ?」 「しんっこうってなに?」 「「ゆっくりきょう」にはいって、 にんげんさんのやくにたつゆっくりになれるようにしゅぎょうすることだよ! そのためにはたくさんおぼえなきゃいけないよ!!しゅぎょうはつらいよ!! つらいけど、がんばればおねえさんとすーりすーりできるよ!!」 「ゆゆゆゆ!!よくわからないけど、ありすはしんっこうっするわ!!」 「まりさもしんっこうっするんだぜ!!すーりすーりするのぜ!!」 群れのゆっくり達から次々と声があがる。 「しんっこうっのみちにはいるには、きまりごとをいっぱいおぼえなきゃいけないよ!! それをおぼえたら、このばっじをあげるよ!!」 Yまりさが取り出したのは、 自分が頭につけているのと同じY字型の飾りだった。 「このばっじをつければ、ゆっくりきょうのいちいんだよ! ゆっくりぷれいすにいれてあげるからね!!」 歓声をあげる群れに、Yまりさは一冊の本を取り出して言った。 「それじゃ、これからゆっくりきょうのおきてをおしえるからゆっくりおぼえてね!!」 「ゆゆぅ!!ゆっくりおぼえるよぉ!!」 「すーりすーり♪すーりすーり♪」 「ゆっくりはゆっくりできません!!」 「ゆっ?」 不思議そうに小首をかしげるゆっくり達に、Yまりさは怒鳴った。 「ゆっくりふくしょうしてね!! ゆっくりはゆっくりできません!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉ!!?ゆっくりできるよぉ!?」 「ゆっくりだまってね!! さからうならゆっくりきょうにははいれないよ!! おねえさんにすーりすーりしてもらえないよ!!」 「ゆゆうぅぅ!?」 「ふくしょうしてね!! ゆっくりはゆっくりできません!!」 「「「ゆ……ゆっくりはゆっくりできません!!」」」 お姉さんに触りたい一心で群れは復唱する。 「このよのすべてのいきものは、 どんないきものでもゆっくりできます!!」 「「「ゆっくりできます!!」」」 「けれど、ゆっくりだけはゆっくりできません!!」 「ゆゆゆぅぅぅ!?」 「ふくしょうしてね!!」 「「「ゆっくりだけはゆっくりできませんん!!」」」 「ゆっくりは、なんのやくにもたたないごみくずです!!」 「「「……ごみくずですぅ!!」」」 「このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです!!」 「「「にんげんさんです!!」」」 ちがうでしょおおおおぉぉぉ!!? 親れいむはそう叫びたくて仕方がなかった。 しかし、以前にY飾り達にリンチを受けた体験を思い出し、 逆らうのは思いとどまった。 何より、あのお姉さんたちがゆっくりできるのは確かだった。 掟は続く。 「やさしいにんげんさんは、 ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます!!」 「「「みちびいてくれます!!」」」 「ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして、 にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと!!」 「「「いうことをきくこと!!」」」 「そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます!! それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです!!」 「「「ゆいいつのほうほうです!!」」」 最後に、Yまりさは一際声を張り上げて締めた。 「にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです!!!」 「「「ゆっくりのゆっくりです!!!」」」 「きょうおしえるのはこれだけだよ!!ゆっくりおぼえていってね!!」 「ゆ、ゆ、おかしいわ!」 不平を鳴らしたのは参謀役のぱちゅりーだった。 「なにがおかしいの?」 Yまりさがじりじりと詰め寄りながら聞き返す。 ぶるぶると震えながら、ぱちゅりーはそれでも答えた。 「ゆ、ゆ、でも、でも、にんげんさんはひどいことをするわ! おやさいさんをひとりじめしたり……」 「おやさいさんはにんげんさんがそだててるんだよぉ!!!」 凄い剣幕でYまりさが怒鳴った。 「にんげんさんのおやさいをたべたの!?」 「ぱ、ぱちゅりーはたべてないわ……」 「ほんとう!?たべてたらこのばでつぶしてるよ!!」 その剣幕におののき、 群れの中の、畑に侵入した前科のあるゆっくりも黙り込んでしまう。 「にんげんさんがそだてたおやさいをぬすむゆっくりはゆっくりできないよ!!」 「お、おやさいはかってにはえて……」 「ぱちゅりぃぃぃ!!そんなこともしらないでもりのけんじゃなのおおぉ!?」 涙を一筋こぼし、ぱちゅりーは口をつぐむ。 子めーりんに負けて以来、ぱちゅりーは自分の知識に全く自信が持てなくなっていた。 「ゆゆぅ……でも……」 群れの中から、れいむ種の反論がさらに出てくる。 これほど自信を失い、これほど強い相手を前にしても、 人間が一番ゆっくりでき、ゆっくりはその奴隷になるべきだという理屈は、 ゆっくり達にとって到底すんなり受け入れられるものではなかった。 「おうたをうたってあげても、 にんげんさんはおれいをしてくれなかったよ……」 「おうたぁ!?」 Yまりさが向きなおって怒鳴る。 「おうたって、まさかあれのこと!? ゆーゆーうめいてるだけの、あのひどいざつおんのこと!?」 「…………!!」 群れのれいむの脳裏に、テストの時の屈辱が甦る。 「そんなものをにんげんさんにきかせたのおおぉぉ!!? そのせいでにんげんさんはゆっくりできなかったんだよ!! おれいってなんなのおぉ!?ごみくず!!おまえがおわびするんだよ!!」 「……ゆ、ゆ………ごべんなざいぃ……」 反論したれいむは泣きながらうなだれた。 その後も弱々しい反論が群れから発せられたが、 そのどれもが、Yまりさの激しい叱責で切って捨てられた。 「にんげんさんがよこどりするうぅぅ!!? ぜんぶにんげんさんのものなんだよ!! このせかいのなかで、ごみくずのものなんかどこにもないんだよおぉ!! にんげんさんがおめぐみしてくれるものだけがゆっくりのものだよ!!」 「ゆぐぐぐぐぅぅ………」 「わかったらおきてをおぼえてね!! ゆっくりはゆっくりできません!!」 「「「ゆっくりはゆっくりできませええん!!」」」 その日は、その掟を何度も何度も復唱させられた。 それでも最後まで暗記できた者はいなかった。 暗記できるまで練習するよう命じると、 本を投げてよこし、Yまりさはゆっくりプレイスに帰っていった。 その大きくて薄い本には、先ほどの掟が簡単なひらがなで書いてあった。 字の読めるゆっくりがそれを手に取り、 群れといっしょに音読しはじめた。 ゆっくりの本能に抗うその掟は到底受け入れ難いものだったが、 お姉さんとすりすりしたい、ただその事のために、 他にやることもない無聊も手伝い、ゆっくり達は掟を繰り返し続けた。 無心でそれを繰り返していれば、少なくとも現状のみじめさを忘れることはできた。 ゆっくりはゆっくりできません このよのすべてのいきものは どんないきものでもゆっくりできます けれど、ゆっくりだけはゆっくりできません ゆっくりは、なんのやくにもたたないごみくずです このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです やさしいにんげんさんは ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです 一番覚えのよかった一匹のまりさ種が、丸一日かかって暗記した。 翌日、Yまりさの前で、そのまりさは掟を暗唱した。 「ゆ!!ごみくずなりによくおぼえたね!!」 「まりさはがんばったんだぜ!!すーりすーりするんだぜ!!」 「このぐらいでみとめられるとおもわないでねえぇぇ!!」 怒鳴られ、委縮するまりさ。 しかしその時、人間の声がかかってきた。 扉を開けてやってきたのはお姉さんだった。 お姉さんはまりさを見下ろして笑った。 「よく覚えたわね。偉いわよ、まりさ」 「ゆゆゆゆううぅぅ!!!」 感極まってぶるぶると震え、目をきらきら輝かせるまりさ。 「ご褒美をあげるわ。ほら、撫でてあげる」 「ゆ!!おねえさん!!すーりすーり!!すーりすーりしてええぇぇ!!!」 まりさの薄汚れた頬にお姉さんの手が触れ、優しく撫ぜた。 「ゆっ……………くりいいぃぃぃぃぃぃぃ~~~~~~~~~~~………!!!」 あひる口で涙と涎を垂らし、頬を紅潮させて震えながらうれちーちーを漏らすまりさ。 恐らくは生涯最高にゆっくりできているだろうその表情が、群れの羨望をかきたてる。 「はい、おしまい」 「ゆゆうううぅぅぅ!!?もっと!!もっとすーりすーりいぃぃ!!」 「だーめ。もっと頑張ったらまたやってあげるわね」 そのまま立ち上がり、お姉さんは扉の向こうへ消えていってしまった。 群れは泣きながら追いすがり、すーりすーりを懇願したが、 Yまりさの怒鳴り声に追い返された。 あのまりさだけが、いまだに余韻にひたってうれちーちーを漏らし続けていた。 何日もかかって群れのゆっくり達は最初の掟を覚え、 お姉さんからご褒美のすーりすーりを受けて、その快感に魅せられた。 掟はそれだけではなく、 それから数多くの掟を教えられた。 にんげんさんにさからってはいけません ゆっくりはみにくいいきものです てとあしがないのはみっともないことです ゆっくりはよわいいきものです にんげんさんがまもってくれるおかげでいきていけます ゆっくりはよくぶかい、あさましいいきものです にんげんさんにしどうしてもらいましょう 反発したいもの、意味がよく掴めないものが多かったが、 お姉さんのご褒美をもらいたいというそのためだけに、 群れのゆっくり達は必死に覚え続けた。 通常のゆっくりでは、それらのすべてを暗記することは不可能だったが、 それでも掟は少しずつゆっくり達の無意識に浸透していった。 たとえ心で反発していても、口に出して音読しているうちに抵抗が薄れていく。 なにより、あのすーりすーりへの燃えるような渇望が、 ゆっくり達から思考能力を奪っていた。 「このせかいは、かみさまがつくったんだよ。 いぬさんもおはなさんももりさんもうみさんも、ぜんぶかみさまがつくったんだよ。 かみさまはさいごに、じぶんににせたいきものをつくって、 このせかいをかんりするやくめをあたえたんだよ。 それがにんげんさんだよ」 Yまりさは群れに講義していた。 「かみさまはいろんないきものさんをつくったけど、 つくったものには、わるいところがすこしずつあったよ。 そのわるいところを、かみさまはていねいにとりのぞいたよ。 いろんないきものさんのわるいところを、ちぎってまとめてすてたんだけど、 そのわるいくずがあつまって、ひとつのいきものになっちゃったよ。 それがゆっくりだよ」 群れの中から、かすかに嗚咽が漏れてくる。 その頃になると、群れのゆっくり達は素直にYまりさの教えに耳を傾けていた。 「にんげんさんは、ぜんちぜんのうのそんざいなんだよ。 にんげんさんにはなにもかもわかってるし、 ゆっくりたちがなにをしてるか、ぜんぶおみとおしなんだよ」 ゆうぅぅ、という嘆息が群れから上がった。 「ゆっくりがゆっくりできているかどうかは、 にんげんさんがぜんぶおしえてくれるよ。 まよったときは、にんげんさんにおしえてもらってね。 ゆっくりできることをしていたら、にんげんさんはゆるしてくれるし、 ゆっくりできないことをしていたら、にんげんさんがばつをあたえてくれるよ」 Yまりさは一旦言葉を切り、群れを見回した。 そして頷きながら続ける。 「それはとてもありがたいことなんだよ。 ばつをあたえてもらえば、ゆっくりははんせいできるよ。 そうすればもっとゆっくりできるようになれるよ。 でも、にんげんさんのばつで、ゆっくりがころされることもあるよ」 再び言葉を切り、間を置いてからYまりさは強い口調で続けた。 「それも、すごくありがたいことだよ!! ゆっくりできないゆっくりは、 ころしてもらうことで、もうだれにもめいわくをかけずにすむよ。 そして、にんげんさんのばつをあたえてもらってしぬことで、 じごくへいかずにすむんだよ!」 「ゆゆっ?」 「じごくってなに?」 群れの中から質問が上がり、Yまりさはそれに答えた。 「じごくっていうのは、とってもとってもゆっくりできないところだよ。 にんげんさんのためにはたらいたゆっくりは、 えいえんにゆっくりしたあと、おそらへいくよ。 だけど、わるいことをしたゆっくりは、 おそらへいけないで、じごくへいくんだよ。 じごくでは、ずっとずっと、いたくてくるしくてゆっくりできないことをされるよ。 じごくにおちたゆっくりは、にどとしねないよ。 えいえんに、ずっと、ずっと、ずっとずっとくるしみつづけるんだよ。 えいえんにくるしくて、えいえんにゆっくりできないんだよ」 「ゆゆゆうううううぅぅぅぅ!!!」 群れのゆっくり達が恐怖の叫びを上げる。 Yまりさは満足げに見回して続けた。 「みんな、じごくへいきたい?」 「いぎだぐないでずううぅぅ!!」 「いやあぁぁ!!じごくいやああぁぁ!!」 「そうだよね。だから、ゆっくりできるゆっくりにならなきゃいけないよ。 にんげんさんのいうことをよくきいて、にんげんさんのためにはたらこうね。 そうすれば、おそらでゆっくりできるようになるよ。 それに、わるいことをしたとしても、 にんげんさんにばつをあたえてもらってしねば、 わるいことはゆるしてもらえて、やっぱりおそらでゆっくりできるよ。 みんな、よくおぼえてね!!にんげんさんにかんしゃしようね!!」 「はいいぃぃ!!」 「…………そんなに面白いか?自分でやっといて」 「あははははは、あははは、ははは、あっははははははは!」 「まさか宗教なんてものを持ち出すとはな」 「あははは、あのね、人間だってそうだけど、群れをまとめるには宗教が一番なの。 神様に天使、自分たちより上の存在が決めたルールならみんな素直に従うでしょ。 でも人間の場合、問題は、神様も天使もいないこと。 だから信仰心に頼るしかなくて、結局ルールとしては不安定になるよね。 でも、ゆっくりには、本物がいるんだからね。 人間がなってやればいいんだからさ、その、天使に、ぷはっ! あは、あはははは、天使だって、あっはははは、ひい」 「君が笑っているのはゆっくりか?」 「ははははははは、あは、あは、うひっひっひ、あはははは」 「それとも人間のほうか?」 毎日、群れのゆっくり達はY飾り達の講義を受けた。 他にやることもない状況下、 皆が「ゆっくり教」の教えを理解し、覚えることに全霊をかたむけた。 定期的に、お姉さんの立ち会いのもとにテストが行われた。 暗記を要求されたのは一番最初の掟だけで、 それだけは毎回テストの最初に暗唱させられたが、 それ以外の教えについては、一問一答の形で試された。 ゆっくりできないこと、人間に対してやってはいけないこと、 様々な設問を受け、群れのゆっくり達が答える。 素早く答えられたものには、お姉さんがすーりすーりをしてくれた。 ゆっくりプレイス内のガラス近くに、外側に向けて大画面のテレビジョンが設置され、 ガラス越しにビデオを見せられた。 そのビデオを通して、ゆっくり達は毎日ゆっくりの悪行を見せつけられた。 人家に侵入し、中のものをひっくり返して汚すゆっくり達。 街中で人々にあまあまを要求するゆっくり達。 歌を歌い、おひねりを要求するゆっくり達。 ゴミ箱をあさり、通路にゴミをまき散らすゆっくり達。 そうしたゆっくり達の騒音や通行妨害に迷惑をこうむる者たちの声が、 市民、公務員、飼いゆっくり、さまざまな立場から語られる。 農家で野菜の栽培を生業とする人々が映され、 農業にかかる膨大な手間が詳細にわたって解説される。 その営みの苦労、それを乗り越えてもたらされる収穫の喜びに、 群れのゆっくり達が感動を覚え始めた頃、 「おやさいはかってにはえてくるんだよ!」を合言葉に畑に侵入するゆっくりが映される。 ゆっくりによって荒らされる畑、その害に苦しむ農家の声がたっぷりと流れる。 「とかいはなあい」と称して、飼いれいむを強姦する野良ありす。 犯し殺されたれいむの家族、そして飼い主の悲しむ姿が延々と映される。 レイパーありすの強姦から、人間の手当によって運よく生き延びた大勢のゆっくりが、 レイパーに対する恨みつらみと憎悪を激しい口調で並べ立てる。 ドスまりさが人間の村を訪れ、「きょうてい」を要求する映像。 ドススパークを盾に一方的な不平等条約を結ばされ、 村の糧を奪われて汲々とする村人たちの苦しみが、 特別貧乏な一家の子供たちを中心に描かれる。 自分たちがそれまで思ってもみなかった視点から描かれるゆっくり像に、 多くのゆっくり達が悔悟に苦しみ、自省の涙にくれた。 自分たちのことを憎々しげに語る大勢の人々の声は、自尊心を錐のように貫いた。 特に、ありす種の打ちひしがれようは激しかった。 レイパー被害のビデオを見せられたありす達は、 静かな、しかし激しい涙にくれ、その日は一睡もしなかった。 それ以後どこか卑屈になり、こそこそと群れの後ろのほうに隠れるようになった。 「ずいぶんと素直なんだな。ゆっくりに罪悪感があったのか」 「ゆー水で人間に依存させてるのが大きいんだけどね。 あのね、はっきり言うけどさ、ゆっくりって平和主義なんだよ。 人間から見れば唯我独尊の極致に見えるけど、 自分たちの可愛さで他の生き物をゆっくりさせてあげてるって本気で思ってるの。 レイパーにしたって、「とかいはなあい」で相手が幸せになるって本気で信じてる。 つまり、無償の愛で周囲に奉仕しているつもりでいるんだよ、ゆっくり達は。 実情はどうあれ、平和を愛するという点では人間以上みたいだよ」 「俺の子供を殺したのも平和を愛するからだっていうのか?」 「それ飛躍。あの十三匹はゲス素材を限界までつけ上がらせた個体で、 例としては極端すぎるね、根っこは同じだけど。 でもまあ、ゆっくりが一番偉いっていう自尊心の強さ、ふてぶてしさは、 自分たちが世界に奉仕しているという誇りに支えられてるわけね。 多いよね、人間にも。そういう人」 「まあ……そうだな」 「というわけで、そこを崩してやる。 理屈で言い聞かせたって、普通ゆっくりの頭じゃすんなりとは理解できないから、 物量作戦で、とにかく大勢の声を浴びせてやります。 ゆっくりを嫌っている、迷惑を被っている人たちを、映像として突きつけてやる。 その事実を突きつけられれば、ゆっくりのアイデンティティはガタガタってわけね。 自尊心を壊されたゆっくりは悲惨だよ~」 群れのゆっくり達は、いよいよ口数が少なくなり、 ゆっくり教の教えを復習する以外は、 うなだれ、うつろな暗い目でただただ地面を見つめて暮らすようになった。 自分たちが他の生き物たちをゆっくりさせている。 そう思えばこそ、ゆっくり達は堂々と生き、ゆっくりしてこれていた。 しかし、害獣として疎まれ憎まれている現状を知らされた今、 世界のどこに行っても憎まれ追い返され、迫害されるという不安感に苛まれた。 これまで、愛されているという確信のもとにゆっくりしてきたゆっくり達にとって、 世界中に憎悪されるというストレスはきりきりと精神を苛んだ。 そんなゆっくり達がしがみついたのは、ゆっくり教の教義だった。 最初の頃は、暴力を振るわれるのが怖さに、 そしてお姉さんにすーりすーりしてもらうために機械的に従っていたが、 いまでは心底からゆっくり教の教えを求め、理解しようとしていた。 打ち崩されたゆっくりの誇りと存在意義を、教義は新たに与えてくれた。 このよでいちばんゆっくりできるのはにんげんさんです やさしいにんげんさんは ゆっくりがゆっくりできるいきものになれるようにみちびいてくれます ごみくずのゆっくりにてをさしのべてくれるにんげんさんにかんしゃして にんげんさんがゆっくりできるように、にんげんさんのいうことをきくこと そうすれば、にんげんさんがゆっくりをゆっくりさせてくれます それが、ゆっくりがゆっくりするゆいいつのほうほうです にんげんさんのどれいになることがゆっくりのゆっくりです 「しかし、ずいぶんと手間をかけるんだな」 「ん。た~っぷりとね。最低一年はかけたいね」 「俺が当初予定した計画より、だいぶ回りくどくなったようだ」 「これはね、圭一さん。もう圭一さん個人の復讐じゃないよ。 このゆっくり達への制裁でもない。 あたしたちが今やってるのは、 現在から未来にいたるまでの、全てのゆっくりの洗脳なんだからね。 じっくり丁寧にやらなくっちゃなのよ」 続く
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』17 「さていよいよ、本格的に苦しめる下準備に入りましょっか。 春奈流のゆっくり虐待は手間かかってるよ~。 すごく時間かかるけど、協力お願いね」 「例の「処置」を施した時点で、俺の目的はほとんど達せられたようなものだ。 あとは君に任せるよ」 「はいはい。じゃ、ゆっくり虐待のレクチャーを始めましょ。 圭一さんが前にやっていた方法はね、 スタンダードなんだけど、虐め方としては中の下ってところ」 「そうか」 「ゆっくりを苦しめる方法はいろいろあるけど、 一番効果的なのはやっぱり次の二つ。 「後悔」と「絶望」。 絶望を与える下準備はもうできてるから、後悔のさせかたをお見せします」 「後悔させることが重要なのか」 「それがあるとないとじゃ雲泥の差だねー。 圭一さんのやり方だと、ゆっくりはね、相手を憎むの。 苦しめられるほどにその相手を憎み、 そして、被害者としての自分を憐れむ。 憎悪と自己憐憫、この二つがね、ストレスを発散させちゃうんだな。 プライドの高い生き物だからね、この発散がバカにならないのよ」 「一切発散させずにやるっていうのか」 「そう。そのために必要なのが、後悔。 というわけで、ひとつあたしの手並みを見てってちょーだい」 「ゆっくりしていってね!!」 目覚めた直後、親れいむはすぐに挨拶をした。 「ゆっくりしていってね!!」「ゆっくりしていってね!!」 周囲のゆっくり達から、反応はすぐに帰ってくる。 傍にいるのは、自分を入れて総勢十三匹の家族。 まりさ種もありす種も揃っており、プラチナバッジを見るまでもなく頭の飾りですぐに判別できる。 今後、長浜圭一に飼われていた十三匹のゆっくりについては、 親れいむ、子れいむというように、「親」と「子」をつけて特に表記する。 そのほかにも、大勢のゆっくり達がいた。 れいむ、まりさ、ありす、ぱちゅりー、ちぇん、どの個体も見知った顔だ。 人間ををペットにしたあの森で知り合った群れだ。 ドスまりさは見当たらなかった。 「ゆっくりしていってね!!」 そう言ってぽんぽん跳ねてきたのは、ゴールドバッジをつけたあのれいむだった。 「ゆゆっ、れいむのおはなし、とってもゆっくりしてたよ!! れいむのおねえさんははんせいしてないてたよ!!」 「ゆゆゆ!あたりまえのことをいっただけだよ!!ゆふぅ~♪」 つい顎を反らしていい気分になる。 すでに話は広まっているらしく、群れのゆっくり達もれいむに駆け寄って賞賛しはじめた。 「れいむったらとってもとかいはなのね!!ほ、ほめてあげてもいいのよ!?」 「わかるよー、ゆっくりはせかいいちゆっくりできるんだねー」 「もうをひらかれたわ!ゆっくりのかくめいよ、むきゅ!」 家族たちや金バッジが、自分が人間に向かってしてあげた説教の内容を群れに伝えたらしい。 「とってもゆっくりできるおはなし」として、群れの皆が感動していた。 親れいむはいまや革命家、ヒーローとなり、一目置かれ尊敬されている。 周囲で飛び跳ね、自分を称賛するゆっくりに囲まれ、 親れいむはいよいよ顎を反らし、ブリッジせんばかりにひん曲った。 「ゆっふぅぅぅ~~~~~ん♪ にんげんさんはばかだから、 あんなかんたんなこともおしえてあげなきゃいけなくてゆっくりできないよ! ゆふんっ♪ゆふんっ♪」 仲間同士でひとしきり盛り上がったあと、親れいむはふと我に返って聞いた。 「ゆっ、ここはどこ?」 そこは見渡す限りの荒野だった。 荒野というよりも岩場。地平線まで無限に続くその荒れた地面には、 ぺんぺん草一本生えておらず、水の気配もない。 しかし、ゆっくりは大勢いた。 自分たちの群れと離れたところに、 ちょうど自分たちと同じ規模の群れが固まっているのが見えた。 他のあらゆる方向にも、ほぼ同じぐらいの間隔を開けて、同規模の群れがいる。 なかば群れのリーダー的な気分になっていた親れいむは、 声をはりあげて、前方にいる群れに向かって挨拶をした。 「ゆっくりしていってね!!」 同時に、向こう側の群れも挨拶をしてきた。 挨拶に挨拶を返すのではなく、まったく同じタイミングで挨拶をしたのだ。 「ゆゆっ!!ゆっくりできるね!!ゆっくりしていってね!!」 そう言い、ゆっくり達が互いに近づいていく。 しばらくの間群れは跳ねながら相手の側に近付いていった。 見ると、自分たちの左右方向にいる群れも、 自分たちと同じように、前方に向かって進んでいるようだった。 突然、先頭のゆっくりが向こう側の先頭のゆっくりに激突した。 「ゆびゃっ!!なんでよけないのおぉぉ!?」 あちこちで激突が繰り返され、互いに罵り合うゆっくり達。 「ゆゆっ!!これはかがみさんだよ!!ゆっくりやめてね!!」 金バッジのれいむが叫んだ。 「ゆっ?なにそれ?ゆっくりおしえてね!」 「かがみさんはきれいなかべさんなんだよ! それで、れいむたちのすがたがみられるんだよ!! ここにうつっているのはれいむたちなんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 そんな事が、と疑いながらも、 鏡の前で動いているうちに、目の前にいるのが自分の鏡像だということを理解するゆっくり達。 「ゆゆっ!かがみさんはおもしろいよ!!」 「ゆっくりできるね!!」 始めて見る鏡にはしゃぎ、跳ねまわってゆっくり達。 たっぷり一時間は騒いでいたが、 そのうちに、一同は空腹を感じ始めた。 「ゆっくりごはんさんをさがすよ!!」 群れは再び鏡にそって移動しはじめた。 しかし、どこまで行っても岩場と硬い土だらけで、雑草さえも見当たらない。 長い探索を経て、 一見どこまでも広がる荒野に見えたこの土地は、 四方が鏡張りの壁に囲まれた、密閉された空間であることがわかった。 初めは沢山いると見えた群れもどうやらすべては鏡像で、 実際には群れひとつ、自分たちしかここにいないようだった。 当然、どちらを向いても餌になるようなものは一切見受けられない。 「ゆぅ~……ゆっくりできないよ……」 「おなかすいたよ!!かわいいれいむをゆっくりさせてね!!」 「まりさはかりがとくいなんでしょおぉぉ!?はやくごはんさんをあつめてねぇぇ!!」 口々に不平をこぼしはじめるゆっくり達。 空腹はつのるばかりだった。 何時間かが過ぎ、ゆっくり達の不平が頂点に達したころ、状況に変化が現れた。 鏡張りの壁のある一面が、突然ぱっと向こう側の風景を映し出した。 それまでこちらの姿を映しているだけだった壁が、いきなり隣の空間を映し出し、 ゆっくり達の視線は自然とそちらに集まった。 そこは天国だった。 こちら側よりもずっと広く、天井が高い。 そこは階段やしきりがあちこちに配備された多層的な空間になっており、 数多くのゆっくり達がそこかしこにひしめいている。 ふかふかしたクッションの載ったソファや天蓋つきのベッドの上でゆっくり達が心地よさげに眠っている。 ブランコや簡易メリーゴーラウンドやトランポリン、 マットの上で飛び跳ねることでゆっくりでも操作可能な単純なビデオゲームなど、 飼いゆっくりでさえ想像したこともないほど豪華で楽しそうな遊具で、ゆっくり達が遊びに興じている。 床にはとても食べ切れないほどの果物やお菓子が盛られた大皿があり、 小腹がすいたゆっくりが、気の向くままに近づいてはかじりついていった。 ソフトクリームやオレンジジュースのサーバーがあり、 使い慣れたゆっくりは器用にハンドルを操作してコップに注いでいる。 壁の透過に伴い、向こう側の音も伝わってきていた。 家族ですーりすーりしてリラックスしているゆっくり達。 遊具で飛び跳ね、歓声をあげる子ゆっくり達。 室内には、なんだか複雑でよくわからないが、非常にゆっくりできる音楽が流されていた。 そして、そこにいるゆっくり達は、どれもが極上の美ゆっくりだった。 手入れの行き届いたさらさらの髪ともっちりした肌、きらきらした瞳に色鮮やかな髪飾り。 かつて群れの中ではあこがれの的だったゴールドバッジのれいむでさえ、 このゆっくり達を前にすると、急にみすぼらしく思えてきた。 「ゆゆゆうううぅぅ~~~~~………!!!」 群れの全員が、きらきらと目を輝かせて涎をたらす。 これ以上ないゆっくりプレイスの現出。 自分たちもその恩恵に浴することができると全員が確信している。 「ゆっくりしていってね!!!」 群れの全員がガラス壁に駆け寄り、飛び跳ねて挨拶をした。 それは向こう側に伝わったらしく、向こう側のゆっくり達がこちらに視線を向けてくる。 群れのゆっくりはますます声を張り上げて要求した。 「れいむたちもいれてね!!れいむたちはそこでゆっくりするよ!!」 しかし、答えは返ってこなかった。 返答するどころか、不快そうに眉をひそめるもの、 せせら笑うもの、こちらを無視して何事かひそひそ話しているもの、 どれもこれもとても友好的とは言えない反応だった。 苛立ちながら親れいむ達は要求を重ねる。 「ゆゆっ!!きいてるの!?かわいいれいむたちがおなかをすかせてるんだよ!! きこえないの!?ばかなの!?しぬの!?ゆっくりいれてね!!」 叫びながらガラスに体当たりをしはじめたゆっくり達を見ながら、 向こう側のゆっくり達はひとしきり相談したあと、こちらに向かってきた。 「ゆゆゆっ!!れいむたちをいれるきになったんだね!! そこはれいむのゆっくりぷれいすにしてあげるからね!!ゆっくりしていってね!!」 向こう側のゆっくりは、荒野とゆっくりプレイスを隔てるガラス壁の隅まで行き、 そこの扉を開いた。 隅のそこだけは扉になっており、開くようになっていた。 「ゆゆうぅぅ!!」 矢も盾もたまらず、扉に殺到してゆく群れ。 しかし、小さな扉の前に立ちはだかり、そのゆっくり達は言い放った。 「ゆっくりできるね!!」 「ゆゆっ!?」 珍妙な声を受け、群れは戸惑った。 今のは何だろうか。 ひとまず、普段どおりに反応してみる。 「ゆっくりしていってね!!」 「ゆっくりできるね!!」 向こう側のゆっくりは、先ほどと同じ挨拶を繰り返した。 「ゆゆっ!?そのあいさつはへんだよ!!ゆっくりできないよ!!」 「そっちのほうがゆっくりできないよ!ゆっくりりかいしてね!!」 理解し難いことを言ってきた。 なんだこいつらは? 扉から出てきた向こう側のゆっくり達は、 おおよそ総勢十匹程度だった。 種族は、れいむ、まりさ、ありす種の基本三種に加え、希少種もちらほら見受けられる。 図抜けて美しいということを除けば、一見ごく普通の外見だったが、 よく見ると、全員がリボンに特殊な飾りをつけていた。 白く光る銀製のその飾りは、アルファベットのYの形をしている。 「よくわからないけど、さっさとれいむたちをいれてね!!」 「だめだよ!! ここにはいっていいのはにんげんさんと、ゆっくりできるゆっくりだけなんだよ!!」 Yの飾りのまりさがはっきり言い放った。 「ゆゆっ!?うそはゆっくりできないよ!! にんげんさんなんかいないよ!!」 「いまはいないけど、ときどききてくれてゆっくりさせてくれるんだよ!!」 「ゆっ!!どれいにしてるんだね!!」 そう言った瞬間、Y飾りのゆっくり達が大声で怒鳴った。 「どれいじゃないでしょおおおおおお!!!くちをつつしんでねえええぇぇ!!!」 「ごみくずがにんげんさんにそんなくちをきいていいとおもってるのおおおおぉぉ!!?」 「ごめんなさい!!ごめんなさい!!にんげんさんごめんなさいいい!!」 異常なほどの怒りをあらわにして食ってかかってくる。 この場にいもしない人間に向かって詫びはじめるやつまでいた。 「ゆゆゆっ!?にんげんさんなんかにあやま」 「ゆっくりだまってね!!!」 Y飾りのれいむが叫ぶ。 群れのゆっくり達は、その迫力に思わず身をすくませてしまった。 「れいむたちはゆっくりできないね!!ここにはむかえいれられないよ!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおおぉぉぉ!!? れいむたちはとってもとってもゆっくりできるんだよおおぉぉぉ!!!」 「どこがゆっくりできるの?」 「みてわからないのおおぉぉぉ!?ばかなのおおぉぉ!?」 「それじゃあ、これからてすとをするよ!!」 Y飾りのまりさが鋭く叫んだ。 同時に、固まっていた十数匹のY飾りのゆっくり達が散らばって移動し、 品定めするように群れの先頭にいた親れいむを取り囲んだ。 「ゆゆっ?てすと?」 「れいむたちがほんとうにゆっくりできるゆっくりかどうかてすとをするよ。 れいむたちがみんなをゆっくりさせられたら、ゆっくりぷれいすにいれてあげるよ!」 「ゆゆっ!!かんたんだよぉ!!」 「それじゃあ、みんなをゆっくりさせてね!! ゆっくりはじめてね!!」 「ゆゆゆっ!!」 テストが始まり、親れいむは気合いを入れた。 「がんばってね!!がんばってね!!」 「ゆっくりぷれいす!!ゆっくりぷれいす!!」 群れの仲間たちが応援している。 全力でこいつらをゆっくりさせてやる。れいむは意思を固め、行動に移った。 「ゆっくりしていってね!!!」 全身にゆっくりパワーを漲らせた、渾身の挨拶だった。 顔に浮かべた笑みも、飛び跳ねる高さも、これまででの自己ベストを叩きだしたという自信があった。 親れいむは勝利を確信した。 しかし、帰ってきたのは冷たい沈黙だった。 Y飾りのゆっくり達は、誰もが冷やかな無表情で親れいむを眺めている。 「ゆゆゆっ!?」 取り囲むY飾り達を前にきょろきょろして狼狽する親れいむ。 どうしたのだ。 もしかしてよく見ていなかったのだろうか。そうだ、そうに違いない。せっかくの渾身の挨拶を。 腹が立ったが、それより空腹のほうがせっぱつまっていたので、 さっさと終わらせるべく親れいむは再度挑戦した。 「ゆっくりしていってね!!!」 それでも、帰ってきたのは失笑だけだった。 そればかりか、Y飾りのまりさが言い放ってきた。 「はやくゆっくりさせてね!てすとはもうはじまってるよ!!」 「ゆゆゆっ!?なんでゆっくりしないのおぉぉ!!?」 「ゆっ?もしかして、いまのがゆっくりさせてたの?!」 不思議そうに聞き返され、親れいむは屈辱に赤面した。 今まで、あの挨拶をされたゆっくりは皆が笑顔で挨拶を返してくれた。 れいむの可愛い挨拶を見れば、誰もがゆっくりするはずなのだ。 その確信が、今揺らぎはじめていた。 「れいむはゆっくりできないね!しっかくだよ!!」 「ゆゆゆぅぅぅ!!?まってね!!まってね!! かわいいれいむのゆっくりしたあいさつだよ!!こんどはほんきだよ!!」 三度目の、渾身の「ゆっくりしていってね!!!!」。 こんなにゆっくりできる挨拶は、本来、心を許した親友や家族にしか見せない。 しかし、返ってきたのは侮蔑と嘲笑だった。 「れいむ。ぜんっぜんかわいくないよ」 「じぶんのことをかわいいとおもってるんだねー、わかるよー」 「いたいたしいね……」 「みてるほうがつらいから、もうやらないでね。ごめんね」 親れいむは顔中を真赤にして涙を浮かべていた。 「ゆ………ゆ………」 恥辱と悔しさに歯軋りし、とめどなく涙があふれ出す。 生涯最高の屈辱だった。 「泣いてる、泣いてる。効くねえ」 「こんな顔は初めて見るな。子供を殺してみせた時でさえ、こんな表情は見られなかった」 「この前確認したとおり、ゆっくりにとっては可愛さが最高の価値観であり存在意義なの。 ゆっくりが可愛いからこそ他の生き物はゆっくりしている、だからゆっくりが一番偉いと信じてるぐらいだから、 可愛くない、ゆっくりできない、と言われるのがゆっくりには何よりの苦痛なんだね」 「同じゆっくりに言わせる、というのがやっぱり重要なんだな。 人間が言ってやったところで一蹴されるだろうし」 「しかも、言ってるのは極上の美ゆっくり達だもんね。 そんな相手に言われちゃ反論もできない。 自分の存在価値を全否定されるというのは、人間だったら自我が崩壊するくらいの苦しみだろうねー」 その他にも、自信家のゆっくり達が何匹か挑戦したが、 どのゆっくりの挨拶も侮蔑と冷笑で応えられ、屈辱に歯噛みすることになった。 ついにはY飾りのまりさが宣告した。 「あいさつはもういいよ!! それしかできないならゆっくりできないね!ゆっくりぷれいすにはいれられないよ!!」 「ゆゆううううぅぅぅぅ!!?」 群れに背を向け、ゆっくりプレイスに戻っていこうとするY飾り達。 親れいむが必死になって呼び止めた。 「ゆ、ゆっくりまってねぇ!! まだあるよ!!れいむはとってもゆっくりできるんだよ!!」 「あいさつならもういいよ!」 大義そうに振り返るY飾り達に、親れいむは跳び上がって言い放った。 「れいむはゆっくりできるおうたがうたえるよ!!」 「ゆゆっ!?」 Y飾りの目の色が変わる。 「おうたがうたえるゆっくりはとかいはよ!!むしできないわね!!」 「それをはやくいってね!!まりさたちもおうたがだいすきなんだよ!!」 「ゆゆっ、どんなおうたかたのしみね!!」 「おうたはゆっくりできるよ!!てすとをさいかいするよ!!」 いそいそと親れいむを取り囲み直すY飾り達。 余程歌が好きらしく、期待に目を輝かせている。 その反応を見て、得たりとばかりに親れいむは顎を反らした。 「ゆっふっふ!!れいむのびせいによいしれていってね!!」 早くも勝ち誇り、親れいむは歌いはじめた。 「ゆっゆっゆ~♪ゆゆゆゆゆ~♪ゆ~ゆ~ゆゆゆ~♪ゆゆゆ~ゆっくり~♪」 群れのゆっくり達が、親れいむの歌に合わせて体を揺らしてリズムをとっている。 いつもながらの自らの美声に陶然となり、親れいむはますます声をはりあげた。 「ゆっくり~のひ~♪すっきり~のひ~♪まったり~のひ~♪」 目を閉じながら自らの音韻に心身をゆだねて歌い続ける。 「ゆっゆゆ~ゆゆ♪ゆっゆっゆ~♪ゆっくり~ゆっくり~♪」 喉の調子は最高だ。 これならこのY飾り達もゆっくりせざるをえまい。 山場にさしかかり、親れいむは片目を薄く開けて観客の反応を確かめた。 これ以上ないほどローテンションの無表情がれいむを取り囲んでいた。 「ゆ、ゆゆゆっ?」 思わず歌を中断してしまった。 うっとり聞き惚れているはずのゆっくり達が、全くゆっくりしていない。 親れいむの心に、再び不安の影が差し始める。 親れいむが歌いやめたのを見て、先頭のY飾りまりさが面倒臭そうに言った。 「れいむ。それはなに?」 「ゆゆっ!?おうたでしょおぉ!?」 「…………ゆっくりわかったよ……」 Y飾りまりさは深いため息をひとつつくと、仲間たちとひそひそ話し始めた。 どのY飾りもゆっくりしていない、不快そうな顔で喋っている。 親れいむは、冷や汗が自らの全身をつたうのを感じた。 やがてYまりさが向きなおって言った。 「れいむ。れいむはおうたをしらないんだね?」 「ゆゆゆっ!?なにいってるのおぉ!?れいむはおうたがとくいなんだよおぉ!?」 「まりさ。もういいわ、ほっときましょう」 「いなかものにきたいしたありすがばかだったわ」 Y飾り達の会話に、れいむは再び赤面する。 Yまりさが言い渡した。 「おうたはこうやるんだよ。みんな、じゅんびしてね!」 たちまち、Y飾りのゆっくり達が散開して扇型に並び直した。 居並ぶY飾り達の前方にYまりさが向かい合って立つ。 おさげには妙な棒を握っていた。 Yまりさが棒をひと振りすると、Y飾り達がいっせいに歌い始めた。 群れのゆっくり達を衝撃が襲う。 それは音の乱舞だった。 Y飾り達が声をあげ、転がし、跳ね、躍らせる。 まりさの振るタクトに合わせ、あちらのゆっくりが歌えばこちらのゆっくりが休む。 何重にも重なる音階とリズムが繰り広げるメロディーの洪水。 それらの音韻はゆっくり達をおののかせた。 歌い終え、Yまりさが振り返って言った。 「これがおうただよ。「じーせんじょうのありあ」っていうんだよ」 よくわからない。 ゆっくりできた、というわけでもないが、 その歌を前にした親れいむは、 自分のがなり立てていた雑音がたまらなく恥ずかしくなっていた。 自分が歌だと思っていたのは何だったのだろう。 「もういちどきくよ。れいむはなにがうたえるの?」 「ゆ……ゆ……れいむ…れいむは………」 親れいむはまた涙目で赤面し、へどもどと口を濁すしかなかった。 見切りをつけ、Y飾り達が再び戻ろうとする。 しかしまた、それを呼び止める者がいた。 親まりさだった。 「ゆっへっへ!まりささまがほんきをだすときがきたようなんだぜぇ!!」 「……まりさはゆっくりできるの?」 「ぐもんなんだぜ!!まりさいじょうにゆっくりできるゆっくりはいないんだぜ!!」 「どうゆっくりできるのかいってね!」 「まりささまはとってもつよいんだぜ!!つよいまりささまがおまえたちをまもってやるのぜ!! まりささまがまもってやってるからこのむれはゆっくりできるんだぜえ!!」 群れのほうから不平の声がいくつかあがったが、親まりさはまるで聞いていない。 Y飾りのまりさが答えた。 「ゆっ、じゃあまりさのつよさをてすとするよ! まりさたちのだれかとたたかってかったら、ゆっくりできるとみとめてあげるよ!!」 「ゆっへっへっへ!!さっさとするんだぜええ!!」 Y飾り達が顔を突き合わせて相談していると、一際高い声が上がった。 「むきゅ!!ぱちゅりーがいきゅわ!!」 「はああぁぁぁ~~?」 親まりさが唇をゆがめていると、そのぱちゅりーが前に進み出てきた。 Y飾りをつけたそのぱちゅりーは、年端もいかない子ゆっくりだった。 ゆっくりの中でも特別脆弱なぱちゅりー種の、それも子供。 意外な挑戦者の登場に、群れが騒ぎ出す。 「ゆゆっ!!あぶないよ!!やめてね!!」 「ゆっくりごろしはみたくないよー、わかってねー」 Y飾りの側も騒いでいた。 「ぱちゅりー!ゆっくりかんがえなおしてね!!あぶないよ!!」 「ぱちゅりーはまだこどもでしょおぉ!?おかあさんにまかせておきなさい、むきゅ!!」 「しんぴゃいいらにゃいわよ!!ぱちゅりーはもうおとにゃなのよ!!」 「ゆっへっへっへっへ!!とりけしはきかないんだぜええ!! いちどやるといったからにはさいごまでやるのがゆっくりできるのぜええ!!」 親まりさは得たりとばかりにY子ぱちゅりーににじり寄った。 なんだか知らないが、勝てばテストに合格できるのだ。 「ちゃんすをみのがすほどまりさはばかじゃないんだぜえ!!ゆっへっへっへえ!!」 「ゆ、しかたないよ………」 Yまりさがあきらめたようにうなだれた。 「それじゃあ、ゆっくりはじめ………」 「ゆっくりしね!!!」 開始が宣せられる前に、親まりさはつっかけていた。 大きく跳び、Yまりさのほうを向いていたY子ぱちゅりーにのしかかる。 Y子ぱちゅりーは親まりさの下敷きになって見えなくなってしまった。 「やったのぜ!!かったのぜ!!しとめたのぜぇ!! げらげらげらげら!!やるっていったのはそっちなんだぜぇぇ!!!」 「………ゆっくりはじめてね」 Yまりさが、改めてテストの開始を宣告した。 「ゆっ?もうおわっt」 「むっきゅ!!」 親まりさは、ひねりを加えて高々と投げ飛ばされた。 きりもみながら頭から地面に激突し、 状況が理解できないまま激痛に身もだえる。 「ゆがあああぁぁ!!いたいのぜえええぇぇ!!」 「むっきゅうぅん!!」 横っ面に体当たりを受け、親まりさは再び大きくバウンドして転がった。 欠けた歯を吐き出し、泣き叫ぶ一方で、親まりさの視界は向かってくる相手を捉えていた。 まごうかたなき、それはY子ぱちゅりー。 「なんなのぜええええぇぇ!!?」 「むっきゅりしにぇ!!」 猛烈な頭突きを顔面の中心に受け、親まりさはさらに吹っ飛んだ。 Y子ぱちゅりーは縦横無尽に飛び回り、その後も親まりさを蹂躙しつづけた。 親まりさはほぼ無抵抗で、泣き叫びながら逃げ惑うばかりだった。 群れは呆然とそれを眺め、Y飾りのほうは焦って騒いでいる。 「やっぱりぃ!!こどもだからてかげんができてないよ!!」 「むきゅ!!ぱちゅりー、もうやめなさい!!しんじゃうでしょおぉ!?」 「こにょまりちゃはひきょうなてをつかっちゃわ!! にゃにをされちぇももんきゅはいえにゃいわよ!!むきゅ!!」 「いいかげんにしてね!!にんげんさんにおこられるよ!!」 「むきゅっ!!」 Yまりさに叱りつけられ、Y子ぱちゅりーはしおらしくなって仲間の元に帰った。 「むきゅう、ごめんなしゃい……」 「わかればいいんだよ!よくやったね!!」 群れは言葉もなく立ち尽くしているばかりだった。 親まりさのほうは、また何本も歯を折られ、傷だらけでゆっゆっ呻いていた。 「とかいはなありすがゆっくりさせてあげるわ!!」 次に進み出たのは親ありすだった。 「……ありすはどうやってゆっくりさせるつもり?」 「ゆふんっ!!」 親ありすは顎を反らした。 その顎の中心ではぺにぺにが屹立している。 「ありすのとかいはなてくにっくですっきりさせてあげるわ!! ありすのあいをうけたゆっくりはとってもゆっくりできるのよ!!」 「…………」 Y飾り達が軽蔑の視線で親ありすを眺めているが、親ありすは頓着する様子はない。 「ゆふふ、みんなつんでれさんねええ!! はずかしがらなくていいのよ?!えんりょなくとびこんでいらっしゃああい!!」 「……ちょっとだまっててね」 Y飾り達が再び相談し、結果、また一匹が選び出されて進み出た。 「まりしゃをしゅっきりさせちぇね!!」 進み出てきたY飾りのまりさは、またも子ゆっくりだった。 早くもぺにぺにから先走り汁を垂らし、親ありすは猛り狂った。 「ゆっほほほほおおおおおおお!!」 「それじゃあてすとをはじ」 「こどもまむまむこどもまむまむこどもまむまむうううううぅぅぅぅ!!!!」 はやくも理性を飛ばし、先ほどの親まりさと同じく開始宣告前につっかける親ありす。 激突するようにY子まりさに密着し、素早くへこへこと顎を振り始める。 Y飾り達はこれ以上ないほどの蔑みの視線で眺めていた。 群れの仲間たちの中にも目をそらす者は多かった。 「んほっほっほっほほほほおおおおお!!! まりさかわいいよまりさああああああ!!! まりさのおはだすべすべでとってもとかいはよおぉぉぉ!!!」 涎と体液をまき散らしながらピストン運動を速める。 手入れの行き届いたY子まりさの肌は親ありすの快感を著しく高め、 早くも絶頂が訪れようとしていた。 「いぐ!いぐいぐいぐいぐいぐぅぅぅ!! あでぃずのどがいばなあいをうげどっでねえええぇぇぇ!!! す!!すすすすすすっきりいいいぃぃーーーーーーーーーーー!!!」 絶叫しながらびくんびくんと痙攣する親ありす。 絶頂を迎えてようやく余裕ができた親ありすは、Y子まりさを見下ろしながら声をかけた。 「ゆふう、ゆふう……まだまだあいしあいましょうねえ……?」 「………………」 親ありすはぎょっとした。 Y子まりさは妊娠もせず、冷めた目でありすを見上げているだけだった。 「ゆゆゆっ!?まりさったらつんでれさんねえええ!! すなおにかんじてもいいのよおおおおぉ!!」 「……にゃにしてるにょ?」 「ゆっ!?」 親ありすの目元に狼狽が浮かぶ。 「と、とかいはなあいにきまってるじゃない!!いわせるなんてやぼないなかものね!!」 「まりしゃ、しゅっきりちてにゃいよ。 しゅっきりならはやきゅちてにぇ」 「も、も、も、もちろんよおおぉぉぉ!! こんどはほんきであいしてあげるわあああぁ!!!」 言うが早いか、屹立したぺにぺにをY子まりさのまむまむにつき立てて顎をふり始める。 再び涎をまき散らし、親ありすは極楽浄土の快楽に身をゆだねた。 Y子まりさの胎内に精子カスタードを放出し、親ありすは愛の成就を確信した。 「ゆふう………ありすのあかちゃん、だいじにそだててね!!」 「あかちゃんってにゃに?」 Y子まりさはやはり冷めた目で眺めていた。 「ゆゆゆっ!?」 ゆっくりの交尾は、互いがすっきりすることでにんっしんっする。 仮に意にそまない強姦であっても、性欲が高く感じやすいゆっくり種はたやすくオーガズムに達し、 ほぼ100%の確率でにんっしんっに至る。 しかし、Y子まりさはにんっしんっしていなかった。 すっきりしていないのだ。 それどころか、親ありすの粘液にまみれながら、自身は粘液の一滴もしたたらせていない。 「よだれをまきちらしてるよ。みっともないね……」 「あんなけだものがとかいはをなのってるの?いなかはそうぞうをぜっするわね」 「ひとりよがりなおなにーなんだねー、わかるよー」 「せんずりー!!」 Y飾り達が蔑んでいる。 親ありすはうろたえたが、すぐに気を取り直した。 「ゆふふ!!まりさはちょっとつんぞくせいがつよすぎるわね!! ありすのてくにっくではやくでれなさああああい!!」 まむまむに舌を這わせ、体をからみつかせ、 かつて人間に教わったあらゆるテクニックを駆使して親ありすはY子まりさを責める。 しかし、どれだけやってもY子まりさには快感のきざしさえ見受けられなかった。 親ありすばかりがすっきりし、無為に精子カスタードを吐き散らすばかりだった。 「ゆふう……ゆふう……なんでえええ……… ぜつりんすぎるわああああ………」 「もういいよ!!きもちわりゅいだけだっちゃよ!!」 Y子まりさは苛立って叫んだ。 「ありしゅはじぇんじぇんへたくちょだにぇ!! しゅっきりはこうやりゅんだよ!!」 Y子まりさは舌を伸ばし、親ありすの体に這わせた。 「ゆふんっ」とよがり出す親ありすの体を慎重に丹念に調べていき、 親ありすの反応が強くなる部分を確かめると、 その性感帯を、バイブレーターのように舌を動かして攻めはじめた。 「ゆゆゆゆゆゆゆゆゆほほほほほほほほほおおおおおお!!!」 たちどころに親ありすはすっきりさせられた。 それでも休むことなく、Y子まりさの舌は別の性感帯を探り当て、再び振動を始める。 「ゆっほほほほほおおおお!!!ずっぎりいいいいいぼうやめでええええええ!!!」 子ゆっくりに、しかも舌だけですっきりさせられるという屈辱に顔を歪めながら、 衆目の注視のもと、親ありすはのたうちまわりながら何十回もすっきりさせられた。 自らの精子カスタードの海の中でぐったりしている親ありすに向かって、 Y子まりさは言い放った。 「こりぇはいちびゃんきほんてきにゃてくにっきゅだよ! こんにゃのでこんにゃにしゅっきりしゅるゆっきゅりははぢめちぇだよ!!」 Y飾り達がせせら笑った。 恥辱に歯噛みする親ありす。 「ありしゅのきゃお、しゅっごくばきゃみたいだっちゃよ。 ちょきゃいはにゃあいをうけちょっちぇにぇええええ~~!!」 親ありすの顔真似をして、 子まりさは歯をむき出し舌をへろへろさせてみせる。 Y飾り達ばかりか、群れのゆっくりまでが笑いだした。 「ありしゅはちょっちぇもちょかいはだにぇ!! こんにゃにわらわしぇちぇくれちゃもんにぇ!! でみょ、でおちだきゃらもうにどとやらにゃくちぇいいきゃらにぇ!!」 笑いながら、子まりさは群れの元に帰っていった。 親ありすは地面に突っ伏して泣きじゃくっていた。 「ぱちゅりーはもりのけんじゃなのよ!」 最後に叫んだのは、群れの参謀役を務めていたぱちゅりーだった。 「……ぱちゅりーはなにができるの?」 「ぱちゅりーのちしきはぼうだいなのよ。 このほうふなちしきで、ぱちゅりーはむれをゆっくりさせてきたわ。 あなたたちもゆっくりさせてあげられるわよ!」 「はいはいゆっくりゆっくり……」 いい加減うんざりしているらしいY飾り達だったが、 それでもまた相談を始めた。 群れの中から選ばれて進み出たのは、またも子ゆっくり。 「じゃおおおおおん!!」 めーりん種だった。 「むきゅぅぅ!?」 「このこよりちしきがあったら、ゆっくりできるとみとめてあげるよ!!」 「むきゅう!ばかにしないでよ!」 ぱちゅりーは怒った。 子ゆっくりの、それもめーりん。 めーりん種は希少種の一角だが、 「じゃおーん」という鳴き声しか発せられないために、 ゆっくりの中では蔑まれ、苛められている。 そんなめーりんと知恵比べをさせられるという状況が、 ぱちゅりーのプライドを傷つけていた。 「こんなばかがぱちゅりーのあいてになるわけないでしょ!? しょうぶするならほかのにしなさいよ!」 「はいはい、はじめるよ。 まりさがしつもんをするからゆっくりこたえてね!!」 そう言い、Yまりさが二匹の前に立った。 「それじゃだいいちもんだよ!! 「みろのびーなす」のみろは、なにからつけられたなまえ?」 「むきゅ?」 ぱちゅりーは首をかしげた。みろのびー、何? 何を言ってるのかよくわからない。 隣では、Y子めーりんが鉛筆を咥えてスケッチブックに何か書きつけていた。 書きつけたスケッチブックを差し上げ、Y子めーりんが高らかに叫ぶ。 「じゃおおおん!!」 スケッチブックには、「発見された島の名前」と書いてあった。 「ゆっ!めーりん、せいかいだよ!!」 「じゃおおおぉん!!」 「ま、ま、まちなさいよ!」 ぱちゅりーは叫んだ。 「も、もんだいのいみがわからないわ!ひきょうよ!」 「なにがひきょうなの?」 「いみがわからないって……まさか、みろのびーなすをしらないの?!」 心底驚いたという風で聞き返してくるY飾り達。 ぱちゅりーは言葉につまり、必死に取り繕った。 「ちょ、ちょっとめんくらっただけよ! こどもあいてだからようすをみたのよ!」 「そうだよね!!つぎはほんきをみせてね!! だいにもんだよ!! せかいいちめんせきのひろいさばくは?」 さばく? その意味をなんとか推測しようとしているうちに、 Y子めーりんがまたもスケッチブックを差し上げて叫んだ。 「じゃおおおん!!」 「さはらさばく!めーりん、せいかいだよ!!」 「むっきゅうううぅぅ!!?」 その後、何回にもわたってぱちゅりーの自信は粉々にされていった。 「せかいしぜんいさんにはじめてにんていされたのはどこ?」 「がらぱごすしょとう!めーりん、せいかいだよ!!」 「えんしゅうりつの、しょうすうてんだいじゅういのすうじは?」 「ご!めーりん、せいかいだよ!!」 「せかいでいいちばんながいきょくはなに?そのえんそうじかんは?」 「えりっく・さてぃの「う゛ぇくさしおん」、じゅうはちじかん!めーりん、せいかいだよ!!」 「ぱちゅりー、さっきからぜんぜんこたえてないよ!!どうしたの!?」 「む、む、むきゅうぅ……!」 「もしかしてひとつもわからないの!?」 ぱちゅりーは涙目になり、ぎりぎりと歯を食いしばるしかなかった。 「………ゆっくりわかったよ。もういいよ。 めーりん、もどってきてね。よくやったね!」 「じゃおーん」 テンションの低い鳴き声を上げ、 いかにも無駄な時間を過ごしたというようにY子めーりんは仲間の元に跳ねていった。 「ほかにゆっくりできることはないの?」 Yまりさが群れを見渡したが、もはや答えるものはいなかった。 何をしようとせせら笑われるだけだとわかった今、 挑戦しようという気概はすでに消え去っていた。 「ゆ、ぜんぜんだめだったね。 かわいくないし、おうたもしらないし、よわいし、すっきりもへただし、あたまもわるいよ。 そんなんでだれをゆっくりさせるつもりなの? そんなゆっくりできないいきものはなかにいれられないよ!!」 群れのいずれもが、プライドを完全に破壊されて泣きじゃくっていた。 その後、群れは泣き喚いて懇願したが、 Y飾り達に体当たりを受けて転がされ、拒絶された。 扉は閉まり、ほどなくしてガラスの壁は元の鏡に戻ってしまった その晩、群れは岩場の真ん中ですすり泣きながら眠った。 「よしよし、うまくいってるね」 「おいおい、なんなんだ、このゆっくり共は……」 「ハーバード大学のほうで実験してたゆっくりでね、 ま、ちょろちょろっと改造してみただけ。 ゆっくりの潜在能力っていうのはすごくてね、 ちょっとリミットをいじってやるだけでいくらでもすごい事ができるようになるよ」 「言葉もないな」 「このゆっくり達を使って、自尊心と価値観を徹底的に壊し、洗浄する。 まずこれをやっておかないと、何を教えようとしても無駄だからね。 第一段階は順調ってとこかな」 続く
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。二十回はいかないと思う。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※ここから虐待パートは小休止になります。あとで本気出す。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』12 気がつくと、私はその男の頬を打っていた。 「恥を知りなさい!!」 ふつふつと沸き上がる怒りが体の中で渦を巻いていた。 怒りにかられながら、頭の中で繰り返す。「この男は人間じゃない」 「ゆっくりできないよ!ゆっくりできないよ!」 れいむが飛び跳ねながら叫んでいる。 長浜圭一は、頬を打たれても、 眉を少々ひそめただけで平然としてこちらを眺めていた。 その無感動な視線が私の怒りをさらに掻き立てる。 「恥を知りなさい」 私は繰り返した。 「こんな事をしてて恥ずかしいと思わないの!?」 「思いません」 長浜圭一は感情のこもらない声で答えた。 「コーヒーでも飲みますか?紅茶もありますが」 「いらないわ。すぐにお暇します」 「お子さんにはジュースがいいですか?オレンジジュースならいくらでもありますよ」 「コーラある?」 私の娘、春奈が男の質問に答えた。 「いりません!!」 私が叫ぶと、春奈は首をすくめて黙ってしまう。 十一歳になる、このごろなにを考えているかよくわからない娘だったが、 この男にだけは近づけるわけにはいかない。 「とにかく座ってくれませんか?」 長浜圭一が椅子を薦めてきたが、一蹴する。 「あなたたちと話すことなんかありません。帰ります! 春奈、れいむ、行くわよ!」 娘の手を引き、れいむを抱え上げて出ようとしたが、 応接室の戸口のところに男どもが回り込んで道を塞いだ。 「どきなさい!」 「奥さん、どうか落ち着いてください」 「なにが落ち着いてよ! あなたたちはこんなことをしてなんで平気でいられるの?!」 「須藤君。どうか話を聞いてくれまいか」 声をかけてきた長浜吉隆先生に向きなおり、私は怒鳴った。 「長浜先生、見損ないましたわ。 こんなことが許されると思ってらっしゃるの!?」 「須藤君、君は一面的に物事を見過ぎている。 私を軽蔑してくれて構わない。だがこの計画は」 「軽蔑しますわ!」 「コーラの用意ができましたよ」 涼しい顔で、長浜圭一が口をはさんできた。 「春奈さん。こちらへ」 母親の私を完全に無視し、娘の方へ声をかけている。 怒りでかっとなった。 私の顔色を伺って、行きたそうにしている娘がますます腹立たしい。 「いらないと言ったでしょ!?」 「あなたに用はありませんよ。僕がお呼びしたのは娘さんのほうです。 気に入らなければ帰ってくださって構いません。送らせましょう」 話にならない。 無視して娘の手を引いて帰ろうとしたが、男どもは戸口からどこうとしない。 「もう君の一存でどうこうできる話ではないのだ」 長浜先生が言った。 「これはもはや国家単位のプロジェクトなのだ。 確かにわれわれの私怨から始まった計画だが、 もはや個人の人間性を問題にして難癖をつける段階はとうに過ぎている。 すでに多くの人間と金が動き過ぎた。 君がどう言おうと、もう覆らんよ」 「長浜先生!!」 私は詰め寄った。 「一体先生はどうされてしまったんですか!? 昔はあんなに、あんなに心からゆっくり達の幸福を考えていらしたのに……」 「……事情は知っているはずだ、須藤君」 「知っていますわ。私も娘のいる身ですから十分にお察ししますし、 先生が会を脱退されたときも、だからお止めしませんでした。 ですが……あまりにも、これはあまりにもひどすぎます!」 「選択肢はありませんよ」 長浜圭一が言い、腕を振った。 それを合図に、男どもが私の腕を取った。 「離しなさいっ、離してよ!!」 抵抗も空しく、強引に椅子に座らされた。 娘はそれを見届けてから、薦められるままにれいむを抱えて自主的にテーブルについた。 怒りもあったが、それ以上に悔しかった。 この異常者どもに囲まれて、私ひとりがだだをこねているのか。 かつて、大きなゆっくり愛護団体の会長を務めていた長浜吉隆先生が、 不幸な事故にあい、団体を脱退したときは胸が痛んだ。 団体の幹部を務めていた私も、その時はかける言葉がなかった。 しかしその後、ハーバード大学に在籍していた娘が長浜氏から連絡を受け取った。 帰国した娘を伴い、保護者として案内された建物に入ったとき、 私は、今度は別の理由で言葉を失った。 あの事故の原因となった十三匹のゆっくり達が苦しめられていた。 その手法は想像を絶するもので、それはまさに地獄だった。 人間とはここまで残酷になれるものなのか。 「春奈さんとは、すでに数か月前から連絡を取っていました。 ゆっくり研究の第一人者である春奈さんのご意見を仰ぎたかったのです」 長浜圭一が喋っている。 長浜先生の孫娘と結婚した、長浜家の婿養子。 そしてこの計画の発案者だった。 「私の計画に、春奈さんは興味を持ってくださり、 そして、ここに来て計画に尽力してくださると申し出てくださいました。 すでに新薬の構想は出来ており、あとは材料と実験期間だけとのことです」 「春奈」 初めて聞く話に、私は耳を疑った。 娘に聞く。 「まさか、嘘よね? 本当に……こんな計画に協力するわけじゃないわよね!?」 春奈はそっぽを向いて、ストローでコーラをすすっていた。 私はその肩を掴んで引き寄せた。 「答えなさい!本当なの!?嘘でしょ!?」 「痛いっ、ママ、痛いよ!」 男どもに取り押さえられたが、私は叫び続けた。 「嘘でしょ!春奈!!嘘だって言ってよ!!」 春奈。 小学校の教師の仕事をしながら、苦労して育てたたったひとりの娘。 私は夫と離婚し、仕事に追われ、家に残した娘の寂しさを紛らわせるために、 愛するゆっくり達と一緒に育てた。 娘が天才だと知ったときは、初めは舞い上がった。 五歳の時には、すでに小学校高学年の算数の問題を解き、 八歳のときにはゆっくりの生態研究における新発見を論文にして学会に発表し、 あれよあれよと思っているうちに十歳で渡米し、ハーバード大学に在籍していた。 春奈は神童として、日本中、世界中から持ち上げられたが、 母親の私は、年を重ねるごとに娘が自分から離れていくようでさびしかった。 小さいころは、家にいるゆっくり達と一緒に楽しそうに遊んでいたが、 大きくなっていくにつれて、娘とゆっくりとの距離感を感じるようになった。 どこか距離を置いた接し方をしていたように見えた。 しかし、春奈がゆっくりを研究したいと言ってきたときは、 ゆっくりが嫌いになったわけではなかったのだと思って嬉しかった。 春奈はゆっくりの生態系を研究し、ゆっくりにとって効率のいい栄養になる食べ物を見つけ、 飼い野性を問わず、ゆっくり達の知られていなかった特性をいくつも発見して、 それらの発見はゆっくりを飼う人々の役に立った。 その功績と学力が評価され、春奈は渡米し、ハーバード大学に籍を置いた。 在学中にもゆっくり研究の分野で目覚ましい功績をあげ、博士号まで取ってしまった。 我が子ながら恐ろしくなるほどの才能だ。 その才能を、ゆっくり達のために使ってくれることがうれしかった。 ゆっくりが好きで仕方がない私。 その娘も、ゆっくりが好きで。 ゆっくり達の幸せを願っている、それが何よりうれしかった。 それなのに。 「周知のように、ゆっくりの餡子はゆっくりが苦しむことで糖度が上がり、甘味を増します。 そればかりか苦しみの種類によっても、甘味の種類が違ってきます。 その糖度は、本来ならば不可能であると思われていた密度をはるかに超えることが確認されています」 長浜圭一はボードに何か書きつけながら説明している。 「生きている饅頭であるゆっくりは、存在そのものがこの世界の物理法則を覆すものでした。 世界中の学者たちがゆっくりの構造を解明しようとしましたが、 須藤春奈さんの力で、その複雑かつ不可思議な構造がもうすぐ整理され解明されようとしています。 それに合わせ、私たちは提案をさせていただきました」 「複雑じゃないよ」 春奈が妙なところで口をはさんでいた。 「単純。すっごく単純。他の生き物とルールが違うだけ」 「なるほど、後で教えてもらうよ。 さて、ゆっくりの体内で極限まで圧縮された糖度が、なんらかの形で有効に活用できるのではないか。 素人の思いつきではありましたが、春奈さんと書簡を交わすうちに現実味が出てきたのです。 たかが糖とお思いかもしれませんが、水素爆弾などの例を見てもわかるとおり、 凝縮された物質をエネルギーに変換することで生まれる力は測り知れません。 糖分をエネルギーに変換する方法がまた難しいのですが、これも春奈さんが解決してくれそうです。 ゆっくりを使うことで……」 「春奈!!」 叫んではみたが、すぐには言葉が続かなかった。 ゆっくりを極限まで苦しめ、その糖度を利用する。 そんな計画の首謀者として、娘が関わっていることが信じられなかった。 「こんなことはすぐにやめなさい、あなたは騙されてるのよ!!」 「ママ、ちょっと落ち着いてよ」 「本気なの!? あの子たちを苦しめるなんてことに、あなた本気で協力するつもりなの!? 春奈、あなたは自分が何をしてるかわかってないのよ!!」 また男どもに取り押さえられ、娘が複雑な視線を向けてきた。 一人前に気遣っているつもりなのか。 怒りと焦りが交錯する。 やはり、私がきちんと向き合っていなかったのがいけなかったのだ。 「どうかな?」 長浜圭一に差し出された餡子を、春奈が指ですくい取ってまじまじと見つめる。 それは、ここで苦しめられ続けているあのゆっくり達から採取した餡子だった。 指でなめ取り、春奈が答えた。 「うん。全然、ダメ」 「やはりそうか」 「素人さんにしてはすごく頑張ってると思うよ。ちょっと驚いちゃった。 でも、この程度じゃ計画は進まないね」 「ゆっくりを死なせずに苦しめるのは難しいな。 方法だけはいくらでも思いつくんだが、どれもこれも殺してしまいそうで実行に移せない」 「結局、そこがネックだよね。もろすぎるんだ。 だからあたしが呼ばれたんだと思うけど、いろいろ手はあるよ、硬化剤とかね」 「ふむ」 「というか、問題はそこじゃないんだな。 ゆっくりを苦しめるのに一番大事なことが、全然なってない」 「どういうこと?」 自分の頭を指で叩きながら、春奈が言う。 「精神面からのアプローチがほとんどできてないよね。ただ事務的にえんえんと痛めつけてるだけ」 「れいむ種に関しては、精神を痛めつけたつもりだったが」 「あたしの言ってる意味はそういうことじゃないの。あのれいむ達にやってることは、せいぜい嫌がらせ。 本当にゆっくりを苦しめるなら、プライドと希望、この二つを徹底的にやるのが一番よ」 「精神的な苦痛を受けるにも、それなりの知性が必要だろう。 ゆっくりは、単純に痛い苦しいを繰り返すだけかと思ってたが」 「違うんだなあ。プライドにかけては、ゆっくりは人間以上って言っていいぐらいなのよ。 侮辱や悪意に敏感に反応する。そこを利用しない手はないよ」 「俺としても、そのあたりを君にご教授願うつもりで、あえて深追いはしなかった」 「オッケー」 春奈はいきいきとホワイトボードに何事か書きつけ、講義を始めた。 部屋の隅で、私はそれを呆然と聞いていた。 これが本当に私の娘なのか。 れいむを別室で預かってもらってよかった。 こんな話をあの子に聞かせるわけにはいかない。 ひとしきり講義をぶった後、春奈はひとまず打ち切った。 「とりあえず、何はなくとも、罪を自覚させないとね」 「罪なんてないわ」 口をはさまずにはいられなかった。 長浜圭一がこちらを向く。 「あの子達に罪なんかないわ」 「ママ、あのね」 「罪があるのはあなたたちよ」 長浜圭一、そして長浜吉隆氏に向かって言い放つ。 「あの子達を怨んでいるの? あの子があなたの子供を殺し、あなたの妻を全身不随に追い込んだ? そう思ってるなら全然筋違いよ。 妻と子供を事故に追いやったのはあなたたちよ、長浜さん」 長浜圭一が答えた。 「これは国家レベルの計画だと、はじめに聞かれたはずですが。 今更、そのレベルの問答はしたくないですね」 「あなたたちがあの子たちを人殺しに追いやったのよ!」 怒りにまかせて叫ぶ。 「責任がないとでも思ってるの!? 甘やかされきった子供に、やっていいことと悪いことの区別がつくわけがないわ。 それは人間だってゆっくりだって同じことよ!」 「おっしゃる通り。全て僕のせいです」 両手を上げ、長浜圭一は認めた。 「妻も娘も、僕が死なせました。ゆっくりにはなんの責任もありません。 以上です。それはそれとして、計画の話に戻っても?」 挑発的な言葉にかっとなる。 「わかってるならこんな事はいますぐやめなさい!! 逆恨みでここまでやるなんて、いい大人が恥ずかしくないの!?」 「この計画は、一見非人道的なものです。 生物を苦しませつづけることで利益を得るなど、仮にも生き物を相手にやっていいことじゃない。 世間の反発は大きいでしょう」 長浜圭一がとうとうとご高説を垂れた。 「だから、このゆっくりなんです。 これらが起こした事件は世界中を震撼させました。 人を殺して悪びれず、それどころか悪意からの喜びさえ感じているゆっくり共。 これらを使うのであれば、世間の反発もだいぶ緩和できるでしょう。 あなたのように割り切れない人もいるでしょうがね………要するに、それだけの話ですよ」 「悪いのはあの子たちじゃない、適切な教育を施されなかったからよ!!」 「では、適切な躾をしていれば?」 「人間とゆっくりは、本来共存できるはずよ。 同じ言葉を使う相手と、どうして仲良くできないわけがあるの? まっとうに向き合ってさえいれば、あの子たちは……!」 「仮にそうだとしても、悪を演じてもらいます。 計画のためにはそのキャンペーンが必要ですから」 「悪はあなたよ!!」 叫ぶ私に対し、長浜圭一は涼しい顔で答えた。 「人類の発展のためです。 ノーベルが発明したダイナマイトも、アインシュタインの理論を下地にして開発された核爆弾も、 ともに多大な犠牲を出しながら、人類の発展に大きく貢献しました。 科学を発展させてきたのはいつも戦争だったと言っていいぐらいです。 それに比べれば、十数匹のゆっくりなど犠牲としては数にも入らないと思いますがね」 私は吐き捨てた。 「あなたは悪魔よ」 「人類を発展させてきたのは悪魔ですよ、須藤さん。 あなたが利用しているテレビも飛行機も、悪魔が発明したものです」 この異常者どもは、全く聞く耳を持たなかった。 ゆっくりという生物を食い物にし、苦しめて、まるで悪びれる様子もない。 鬼畜だった。 春奈は、そんな鬼畜生と同じだというのか。 そうは思いたくなかった。 どんなに天才でも、あの子はまだ子供なのだ。 まだやり直せるはずだ。 母親として、あの子を見捨てるわけにはいかなかった。 私は名目上は、春奈の保護者として付き添いにやってきた。 そして今、ここの連中は私を煙たがっているようだが、追い出すつもりはないようだ。 半ば監禁状態におきながら、妙に機嫌を取ってくる。割り当てられた部屋も豪華なものだ。 私が今の印象を抱いたまま外に出れば、ゆっくり愛護団体に訴えて計画の邪魔をしかねないと考え、 なんとか説得し懐柔し、神童の母親として宣伝に協力させようというつもりなのだろう。 いまいましいが、チャンスでもあった。 あの子たちの苦しむ姿を見たときから、私はすでに決心を固めていた。 あの子達を救うのだ。 そして娘も。 「ゆぅぅ……ゆっくりできないよ……」 私の可愛いれいむは、すっかり怯えてしまっていた。 十年間苦楽をともにしてきた、自慢のゆっくりれいむ。 そのリボンには年季の入ったゴールドバッジが輝いている。 両親も祖父母も私の家で育ち、代々ゴールドバッジを受け継いできた優秀な家系だ。 生まれたときから愛情を注ぎ、躾も栄養状態も行き届いている。 十年という、ゆっくりとしては驚異的な長さのゆん生を生きながら、 そのサイズは30cm大に抑えられ、肌のつやも年を感じさせない。 長年の経験に即した健康管理のたまものだ。 人とともに共存することを学び、人とゆっくりが一緒にゆっくりすることを心から望む、 心やさしいれいむ。 そのれいむも、ここで行われている所業を見て胸を痛めていた。 「おねえさん、あのれいむたちはそんなにわるいことをしたの…? だからおしおきされてるの?」 「違うのよ、れいむ。悪いのは人間さんたちなの。 あの子たちは悪くないの。なにも知らないだけよ」 「あのれいむたちををたすけてあげてね……ゆっくりできないよ」 「もちろんよ。れいむも手伝ってくれるわよね?」 「ゆっくりてつだうよ!なんでもいってね、おねえさん!!」 れいむは力強く頷き、ぴょんととび跳ねた。 春奈はいつも、男どもと何事か相談していた。 そのため手間取ったが、夜にはようやく二人きりになれた。 仮眠室に踏み込み、寝ようとしていた春奈の頬を叩く。 「ママ」 頬を抑えながら声を震わせ、潤んだ瞳で春奈は見上げてきた。 とてもあの男どもを相手に一歩も引かず講義をしていた少女とは思えない。 やはりまだまだ子供なのだと私は確信し、少し安心した。 「くどくどお説教はしないわ、考えなくたってわかることですものね。 春奈。 あなたは大人たちにもてはやされるのがうれしかったのよね」 春奈は答えない。 「だから、周りの大人たちに言われるままに結果を出してきた。 ゆっくりを苦しめろと言われれば苦しめた。 でも、そんなのは間違っているわ。頭を冷やして目を覚ましなさい」 「ママ……でも……」 娘の頭に手を置き、私は優しく言葉をかけた。 「いいのよ、春奈。ママは怒ってない。 春奈は優しい子だもの。それはママがよく知ってるわ。 とっても単純なこと。生き物をいじめるなんてよくない、そうよね?」 しばらくためらっていたが、やがて春奈は小さくうなずいた。 「いい子ね」 私は娘を抱きしめた。 「全部やり直しましょう、春奈。あの子たちを助けるのよ」 「うん」 春奈は小さな声で答えた。 春奈はやっぱり春奈だった。 あの、やさしい私の春奈だった。 私は安堵していた。 春奈に案内された先に、あの子たちはいた。 暗い部屋の壁にしつらえられたケージの中に、一匹ずつ押し込まれている。 ちょうどペットショップの店先のようだ。 この子たちは器具に縛られて苦しめられていたはずだったが、 春奈の提言で、苦痛は中断されてここに安置されていたのだった。 あの単調な苦痛を繰り返してももうあまり意味がないから、 オレンジジュースや薬品を節約するためにも一旦中断したほうがいいと判断した、と春奈は言った。 私たちが部屋に入ると、ゆっくり達が視線を向けてくる。 どれもひどい有様だった。 まりさ達はすべての歯を抜かれ、涙を流してふがふがと食料を懇願していた。 「ゆっ、まり……まりふぁに…ごはんんひゃべひゃひぇてくだびゃいぃ……」 「おなかひゅいひゃんひゃへ……」 れいむ達は憎悪に染まった視線を向けながら罵倒してくる。 「かわいいれいむをさっさとここからだせぇぇ!!」 「にんげんさんはゆっくりするなぁぁ!!ゆがああああ!!」 ありす達はぐったりと横になって動かなかった。 子ありす達はあまりに何度もすっきりと出産を繰り返したせいで、 全身の皮が胎生で引き伸ばされ、まむまむがだらしなく広がっている。 親ありすは、処置を施されて変わり果てたぺにぺにを垂れさがらせていた。 「ひどい」 私は呻いた。 「ゆっくりしていってね!!」 連れてきたれいむをみんなの前に座らせ、挨拶をさせると、 弱々しい挨拶が返ってきた。 「ゆっくりしていってね……」 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくり、して、いってねえ……」 警戒する者、体力のない者もいたが、 なかには同族の姿を見て喜ぶ者もいるようだった。 「ゆゆぅ、みんなゆっくりしてないよ……」 「今、元気の出るごはんをあげるわ」 持ってきたゆっくりフードを取り出すと、それぞれのケージの中に取り分ける。 「ゆっ!!ゆっゆっゆっゆっ!!!」 まりさ達はわき目も振らずにがっついた。 柔らかいペースト状のゆっくりフードなので、歯がなくてもなんとか食べられるはずだ。 「むーひゃ、むーひゃ!!ゆふぅぅぅひあわひぇええええええ!!」 あまりのおいしさに涙を流している。 れいむ達はしばらく警戒していたが、やがて舌を伸ばした。 咀嚼しながらも「しあわせ~」とは言わず、憎しみの視線をこちらに向けている。 ありす達はぐったり横たわっていたが、舌だけは伸ばしてなんとか口に運んでいた。 「外に放すの?」 一旦仮眠室に戻ったところで、春奈が聞いてきた。 あのゆっくりフードは特別なもので、 効率よく栄養を摂取できるうえ、極力野草の味に近づけてある。 ゆっくりの舌が肥えて野生で生きていけなくなるようなことがないように、 ゆっくりの頭数調整の一環として、愛護団体やゆっくりショップで愛用されているものだ。 かつて舌の肥えきったこの子たちが食べてくれるか不安だったが、 ずっとまともな食事ができなかったために喜んで食べてくれたようだ。 「そうよ。 これだけ人間を憎んでしまったゆっくりが、 人間社会の中で生きることはもう絶望的だわ。 私たちにできることは、せめて責任をもって治療してから、森に帰すことぐらいだと思う。 春奈、あなたなら治せるわよね?」 「簡単に治療できるよ。れいむ達は外傷はないし、 まりさ達には飴で作った差し歯を入れて、ありす達はぺにぺにをちょっと手術というか取り換えて、 栄養のあるものを食べさせるだけで済むと思う。 素人でもできるよ」 「お願い。あの人たちにはなんとか治療の必要があると思わせて、治療しておいてね。 それかられいむ、手伝ってもらえるかしら?」 「ゆっくりなんでもいってね!!れいむがんばるよ!!」 「準備ができるまでは、あの子たちの話し相手になってあげてね。 あの子たちが口をすべらせたら大変だから、逃がすという計画は秘密にしておいて。 でも、また元気を出してもらえるようなお話をしてあげて」 私はそこで、改めて春奈に協力を約束させた。 「あなたの言うことなら、みんな耳を傾けると思うわ。 なるべくごまかして、逃げ出しやすいようにお膳立てを整えてちょうだい。 みんなが回復したらすぐに決行するわよ」 その日から、あの子達の治療が始まった。 次のステップに進むうえで、健康状態にあったほうが都合がいい。 春奈がそう言っただけで連中は簡単に納得し、手早く治療が進められた。 まりさ達の体の傷跡は治療され、口には飴細工の差し歯が差し込まれ、 ありす達のぺにぺに兼まむまむは、小麦粉とカスタードで作られた精巧なものと取り換えられた。 栄養剤の混ざった食餌療法で、皮にも張りが戻ってきたようだ。 「ゆっくりしていってね!!」 毎晩、監視の目を盗んでゆっくり達の部屋に入り込み、 れいむがみんなの話し相手を務めた。 「ゆっくりしていってね!!」 ゆっくり達の返答も、日を追うごとに明るくなっていった。 どれも表面上の傷跡はすっかりなくなり、健康体そのものだ。 「そのにんげんさんはれいむのどれいなの?!」 「ゆゆっ!!おねえさんはどれいじゃないよ!!れいむのかいぬしさんだよ!!」 「にんげんにかわれているなんてれいむはむのうなんだね!!ゆっくりできないよ!!」 「れいむはむのうじゃないよ!!にんげんさんはゆっくりできるんだよ!!」 「ゆっくりできないよ!!にんげんはぜんぶごみくずなんだよ!! くそじじいがれいむのあかちゃんをころしたんだよおぉ!!!」 すぐに仲良く、というわけにはいかなかったようで、 人間とゆっくりの接し方に関する思想の違いで、しばしば口喧嘩が起こった。 生まれたときから由緒正しい飼いゆっくりで、 心から人間を信頼している私のれいむは、 人間を奴隷呼ばわりし、憎しみを向けるこのゆっくり達に戸惑いを見せていた。 「ゆぅぅ……みんなゆっくりしてよぉ……」 無理もないことだった。 あれほどひどい目に逢わされたこのゆっくり達に、人間を信頼しろというほうがむちゃだ。 私はれいむをなだめ、その件についてはそっとしておくように言った。 「この子たちは森に帰るのよ。もう私たち人間とは関わらないわ。 そのことについてはそっとしておいてあげて?」 「ゆっくりわかったよ……ゆぅぅ、にんげんさんはゆっくりできるのに……」 不満げだったが、れいむは納得したようだ。 その後は森の話をした。 ゆっくりできる群れ、温かい巣、すてきな家族、頼もしいドス。 飼いゆっくりとはいえしばしば森に遊びに行くれいむが、思いつくかぎりの森の魅力を伝えた。 かつては森にいたらしいゆっくり達はすぐに目を輝かせ、森での生活に思いをはせた。 「ゆゆぅぅ……あかちゃんといっしょに、もりでゆっくりしたいよ……」 「やくたたずでひきょうなにんげんなんかもういらないのぜ!」 「とかいはなもり……せれぶせいかつねぇ……」 会話の得意なれいむの巧みな誘導で、すっかり森に憧れを抱いたようだ。 これなら移送はスムーズだろう。 一週間ほど期間を見た後、私はついに計画を実行に移した。 人間は今、償いようもない罪を犯そうとしている。 どんな犠牲を払っても、なんとしても止めなければならなかった。 続く
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※虐待パート小休止中。虐待のほかにもいろいろ書きたいことはある。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』14 この群れの中で、私たちは飼われることになった。 どれだけ懇願しても聞き入れられなかった。 群れはもとより、私のあのれいむさえ、私の懇願に耳を貸さなかった。 「おねえさん、いいかげんにしてね! むれのみんながそろそろおこりはじめてるんだよ!! ききわけがわるいとおもわれるとおしおきされちゃうよ!!」 「れいむ。本当に、お世話してくれるのは有難いと思うわ。 だけど、私たち人間は、あなたたちゆっくりとは違うの。ここではゆっくりできないわ」 「おねえさんはまだほんとうのゆっくりをしらないんだよ!! にんげんさんのむれより、ここのほうがずっとゆっくりできてるよ! ほんとうのゆっくりをおしえてあげようって、おねえさんのためにみんながんばってるのに、 おねえさんがすなおにいうことをきかないからみんながおこってるんだよ! ゆっくりりかいしてね!!」 「れいむ……」 「きょうのごはんだよ!!ゆっくりたべていってね!!」 上から落とされるのは、私たちの食事だった。 野草、茸、芋虫、蝶の死骸。 とてものこと食べられる代物ではない。 「こんな……食べられないわ。人間はこういうものは食べないのよ」 「もんくをいわないでね!! むれのみんなが、とくべつゆっくりできるごはんをおねえさんたちのためにわけてくれてるんだよ!! ごはんはそれしかないからね!すききらいをいうともうあげないよ!!」 れいむのその言葉を、私は苦い気持ちで聞いていた。 それは、かつて私がれいむに言っていた言葉だった。 『ご飯はそれしかありませんからね。好き嫌いするならもうご飯はあげませんよ』 『ゆゆぅ~!ごみぇんなちゃい!!むーちゃむーちゃ、それにゃりー……』 『わあ、ちゃんと残さず食べられたじゃない。偉いわよれいむ!』 『ゆっへん!れいみゅはしゅききりゃいしにゃいよ!』 『いい子のれいむはなでなでしてあげましょうね』 『ゆゆっ!おねえしゃんのなじぇなじぇだいしゅき~!』 「れいむ……お願いよ、せめてここから出して。逃げたりしないわ」 「ゆっ!おねえさんはまだゆっくりできてないからだめだよ!」 「でも……」 「くちごたえしないでね!むれのなかには、にんげんさんをきらってるゆっくりもいるよ!! ゆっくりできないままでそとにでたら、ほかのゆっくりにいじめられちゃうよ!! いいこになったらおそとにつれていってあげるからね!!ゆっくりいっしょにがんばろうね!!」 『おしょとにでちゃいよ!!おしょとにでちゃいよ!!おしょとでゆっきゅりしちゃいぃ!!』 『まだ駄目よ、れいむ』 『なんじぇえぇ!?おしょとであちょびちゃいぃ!!おちょもだちちゅくりちゃいいぃ!!』 『お外には、野生のゆっくりを嫌っている人もいるの。 今のままで外に出たら、そういう人たちに苛められちゃうわよ』 『ゆゆっ!?いじめりゃれるのはいやぢゃよ!!ゆっきゅりできにゃいよ!!』 『そうね。でもね、れいむが言うことをよく聞くいい子になれたらバッジをもらえるわ。 バッジをもらえば、もう人間さんにいじめられないの。 そうしたらお外に連れていってあげられるのよ』 『ゆっ!!ゆっきゅりわかっちゃよ!!れいみゅがんばっちぇいいきょになりゅきゃらね!!』 『うふふ、一緒に頑張りましょうね』 毎日、ゆっくり達は丈夫な蔓を垂らし、 その蔓に掴まってこの穴の底まで下りてきた。 その蔓を奪って上に登る手も考えたが、蔓がどこに繋がれているかもわからない。 ゆっくりが地上で蔓を掴んでいるだけかもしれず、だとしたら、 ゆっくり程度なら支えられはしても、人間が体重をかけたとたんに蔓ごと落ちてきかねない。 何より、そういう時は決まってドスまりさが笑顔で見守っていた。 ドススパークという兵器を備えているドスの監視下では、どんな抵抗も無意味だろう。 「ゆっゆっ!!おねえさんはゆっくりできてる?!」 「だめだよ!きょうもごはんさんをたべてないよ!!」 「ゆっくりできないね!!おねえさん!ぐずぐずしないでごはんをたべてね!!」 群れのゆっくり達は、降りてくるたびに食事をすることを要求した。 私はその度に首を振ったが、ゆっくり達の苛立ちは日増しにつのるようだった。 「なんでごはんさんたべないのおぉぉ!!?ゆっくりできないでしょおおぉぉ!!」 「わかるよー、すききらいするにんげんさんはゆっくりできないよー」 「むきゅう、あまやかされてしたがこえちゃってるのかしら? みんな、しんぼうづよくしつけましょう!」 「ゆっくりわかったよ!おねえさん!!さっさとごはんをたべてね!!」 施設から運び出したあのゆっくり達も毎日降りてきていた。 この子達の目的は明確に長浜圭一だった。 「ゆっへっへ!!ごみくず!!きょうもかわいがりにきてやったんだぜ!! かんしゃするんだぜ!!どげざしておれいをいうんだぜええ!!」 「ひきょうなてをつかってまりささまにかったぐらいでかんちがいするなだぜぇ!! いまこそけっちゃくをつけるんだぜ!!ゆっ!!ゆっ!!ゆっくりしね!!」 「しね!!しね!!あかちゃんかえせぇぇぇ!!!ゆっくりするなあぁぁ!!!」 「ごみくず!!よくもよくもあんなことができたね!!なんとかいってねぇ!!」 「すっきりするな!!ゆっくりするな!!いなかものおぉぉぉ!!!」 「あやまれ!!あやまれえぇぇ!!」 十三匹のゆっくりが、寄ってたかって長浜圭一に体当たりを浴びせる。 本来なら人間にとってたいした痛手ではないが、 折れた脚をかばっている状態では相当辛いらしく、 長浜圭一は黙って受けながら、しばしば苦痛に顔をしかめていた。 「ゆっ!ころしちゃだめだよ!!つがいがしんだらおねえさんがゆっくりできないよ!!」 群れのゆっくりは止めるでもなく、遠巻きに声をかける。 「ゆっくりわかってるよ!!」 「いわれなくてもすぐにはころさないのぜ!!いっしょういじめぬいてやるのぜぇ!!」 長浜圭一は何も言わず、うつむいたままただ黙って耐えていた。 この男があのゆっくり達にしてきたことを考えれば、止める気は起こらなかった。 ざまあみろ、という子供じみた心情がなくもなかったが、 しかし、正直、見ていて楽しい光景でもなかった。 「ゆっ!!おねえさん、よくみててね!! ゆっくりをいじめたにんげんさんはああいうめにあうんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「ああなりたくなかったら、とかいはなありすたちのいうことをよくきいてせれぶなにんげんさんになりましょうね!!」 「ゆぅ~、れいむのおねえさんはだいじょうぶだよ!!あんなふうにはならないよ!!」 「でもこのおねえさん、わがままだよ!!いうことをきかないよ!!」 「ゆっ、とまどってるだけなんだよ!!そのうちおちついたらいうことをきくはずだよ!!」 群れのゆっくり達が諭してくる。 しかし、私は頭上に開いた穴から覗きこんでいるドスまりさに向かって今日も訴えた。 「ねえ、私の言うことを信じて! 本当に危ないの。もうすぐここに人間さんがやってくるわ!」 「ゆゆぅ~、それはききあきたよ!!もういいよ!!」 「取り返しがつかないことになるのよ! あのゆっくり達が、いいえ、もしかしたら他のゆっくり達も巻き添えになるかもしれない。 次に人間に捕まったら、本当の地獄の苦しみを与えられることになるわ! それこそ、あのお兄さんがやったことなんてままごとよ!それぐらいの目に逢うのよ!!」 「ゆふぅ~、どすはにんげんさんなんかにまけないよ!! ゆっくりできないにんげんさんはどすがどすすぱーくでやっつけるよ! どすのむれはどすがまもるからね!ゆっくりあんしんしてね!!」 「ゆぅぅ、どすはゆっくりできるね!!」 「どす!!どす!!ゆっくり!!ゆっくり!!」 この話を持ち出すたびに、いつもこのパターンでうやむやにされる。 威勢のいいことを言うドスに、群れのゆっくり達は興奮して飛び跳ね騒ぎ、私の言うことになど耳を貸さない。 無力感に襲われながら、私はもう一つの訴えを口にした。 「ねえ、春奈はどこ!?」 「ゆっ?ちいさいおねえさんのこと?」 何度も名前で呼んでいるが、人間の名前は覚えてくれない。 「私の子供、おちびちゃんなのよ。お願いだから子供に会わせて!」 「むきゅ、なんどもいってるわよ!!だめよ!!」 今度はぱちゅりーが口をはさんでくる。 周囲のゆっくり達がひそひそと言葉を交わした。 「ゆぅ、やっぱりにんげんさんはあたまがわるいんだね!」 「なんどもいってるのにおぼえられないみたいだよ!かうのはむりだよ!!」 「ゆゆっ、れいむのおねえさんならだいじょうぶだよ!! なんかいもいっていればおぼえてくれるよ!みんな、がんばってしつけようね!!」 ぱちゅりーは私に向かって続けた。 「おねえさんのおちびちゃんはほかのところにかくりして、むれのためにはたらいてもらってるわ! だからあんしんしなさい、むきゅ!」 「一目でもいいから会わせて!食べるものもないのよ!」 「むきゅ、ちゃんとたべてるからしんぱいしなくていいわ!」 「たべてないよ!」 群れの中から、口を挟むゆっくりがいた。 「ごはんはあげてるけど、ちいさいおねえさんもたべてないよ!」 「むきゅ、よけいなことをいわないでね!! よけいなしんぱいをさせたってなんにもならないでしょ!!あんしんさせようときをくばってるのに、むきゅ!!」 「ゆゆっ!!ゆっくりごめんなさいだよ!!」 ぱちゅりーの一喝でそのゆっくりは口をつぐんだ。 「ねえ、食べてないの!?お願い、会わせて!!ここじゃ生きていけないのよ!!」 私はそのゆっくりにすがったが、そのゆっくりは口をつぐんだままそそくさと群れの後方へ引っこんでしまう。 代わりにぱちゅりーが言葉をかぶせてきた。 「おだまりなさい、むきゅ! かんたんなことよ!にんげんさんがいいこでいれば、すぐにこんなところはだしてあげるし、 おちびちゃんにもあわせてあげるわ! いまおちびちゃんにあわせたら、にんげんさんだけでゆっくりしすぎて、むれではいきていけなくなるおそれがあるのよ! ゆっくりりかいしてね!」 群れの他のゆっくり達が、ぱちゅりーに同調して飛び跳ねる。 「おねえさん!れいむたちだって、おねえさんにおちびちゃんとゆっくりしてほしいよ!!」 「そうだよ!!かぞくでいっしょがいちばんゆっくりできるよね!!」 「だけど、いまゆっくりしすぎたらゆっくりできるにんげんさんになれないよー。 ちぇんたちだってつらいんだよー、わかってねー」 「ねんをおすけど、すっごくかんたんなことなのよ、むきゅ! みんなのいうことをすなおにきいて、ゆっくりできるにんげんさんになればいいだけよ! おちびちゃんにあいたかったらよくかんがえなさい!」 夜になれば、穴はふさがれた。 ドスまりさが蔦を結び合わせて作った大雑把な網が穴の口に差し渡され、 葉の多い木の枝が何本も網にかけられてカモフラージュされた。 この穴は、もともとゆっくりの巣だったらしい。 地下に掘られていた巣が、天井が崩れて大穴があいたために捨てられたのだろう。 空腹と心労で眠るどころではなかった。 ここに来てからもう三日が経つ。その間何も食べていないし、飲んでもいない。 腹がぐうと鳴り、みじめな気分になる。 穴の壁にもたれかかり、私は呻いた。 「腹が減ったか?」 見ると、長浜圭一が近付いてきていた。 暗がりでよくわからなかったが、片膝立ちでこちらににじり寄ってきたらしい。 「あなたは?」 「俺はいい。あんたは?」 「お腹すいてるわよ」 「食うものならあるぞ」 そう言って、長浜圭一は右手に何かを載せて差し出してきた。 暗くてよくわからなかったが、近付いて目をこらすと、餡子らしかった。 「あなた……どうしたの、これ?!」 「別にゆっくりを潰したわけじゃない。 昼の間、あのゆっくり共が俺をいじめていたろう。 その時に糞もかけられた。それを集めたんだ」 「………うんうんなの?」 「人間にとっちゃ、ゆっくりの排泄物はただの餡子だ。問題なく食えるだろう」 「……あなたは食べないの?」 「俺の分はもう食った。食え」 差し出されるまま、私はその餡子を受け取って口に入れた。 水がほしかったが、それでも餡子はとてもおいしかった。 私が食べるのを見届けると、長浜圭一はすぐに離れ、 穴の反対側の暗がりに引っこんでしまった。 すでに三日目の夜がふけようとしていた。 進退きわまり、私はこの穴の底で思い悩んでいた。 予想していたよりも遅すぎる。 あの車の発信機で、長浜圭一はバイクですぐにここをつきとめた。 長浜圭一と須藤春奈、計画の首謀者が二人行方不明となっている今、捜索が始まっていないということはないだろう。 捜索が始まったなら、足跡を辿るなり付近のゆっくりを問い詰めるなりして、 一日もかからずにここは突き止められるはずだ。 しかしすでに三日が経とうとしている。 想像していたよりも捜査が困難なのか、 それとも、考えにくいことだが、なにかの事情で見捨てられたか。 携帯電話があれば知人に連絡がとれるのだが、 悔しいことに、携帯を含めた荷物はすべて車の中に置いてきてしまった。すぐに戻ってくるつもりだったからだ。 長浜圭一はといえば、目隠しをしている間になにかの拍子に落としたと言っている。 外界と連絡する手段は一切が立たれていた。 本来、望ましい成り行きのはずだった。 あのゆっくり達を追っ手から逃がすためにここまで来たのであり、 探しても見つからないのであれば喜ぶべきなのだ。 しかし、私はどうなる? 穴の底から這いあがれず、ドスまりさに見張られてどうすることもできない。 助けがこないなら、私と長浜圭一は、ここでどうすればいいのか。 いや、どうなるのか? ゆっくりの排泄物を口にしながら、ここでずっとゆっくりに飼われながら生きていく? その可能性に思い当たり、私は心底ぞっとした。 悪寒、屈辱、閉塞感。 冗談じゃない。 「おねえさん…」 暗闇の中に、声が響いてきた。 見上げると、穴の口をふさぐ枝の一部をどかし、一匹のゆっくりが見下ろしているようだ。 声のニュアンスで、私のれいむだと知れた。 「おねえさん、ゆっくりできてる?」 「…………ゆっくりできてないわ」 「ゆゆ~、ゆっくりしていってね……」 私は立ち上がって叫んだ。 「れいむ!お願いだから話を聞いて!!」 「ゆゆっ?なんでもいってね!」 「今すぐここから出して!春奈にも会わせて! ドスまりさのいない今ならできるわ!」 「ゆっ!だめだよ、おねえさん!! ここじゃないとほんとうにゆっくりできないんだよ!!おねがいだからゆっくりりかいしてね!!」 もしかしたら助けに来てくれたのではないかという淡い期待はもろくも裏切られた。 本心から、このれいむは私をペットだと思っている。 「おねえさん……どうしてみんなのいうことをきかないの?」 「人間はここじゃ暮らせないのよ。 あなたたちゆっくりの食べ物は私たちは食べられないわ!」 「ゆっくりがまんしてね!ここのごはんさんはそれしかないよ!」 「私の家に住んでいた時は、あなたももっとおいしいご飯を食べていたでしょう?」 「ゆゆっ!あまあまはゆっくりできたよ! でもむれのみんなとむーしゃむーしゃするほうがもっとゆっくりできるんだよ!! にんげんさんのむれはゆっくりできなかったよ!!」 「にんげんさんはゆっくりできる」、それがこのれいむの口癖だった。 そのれいむが今、人間はゆっくりできなかったと断定していた。 いざという時のことを考え、日頃から甘くない食事をする訓練をしていたことを、 私は初めて後悔した。 いっそのことあまあまばかりを食べさせて舌を肥えさせておけば、 野生の群れに溶け込むこともできず、私の脱出に協力してくれただろう。 「そんなにここがゆっくりできるの?」 「ゆっ!あたりまえだよ!!ここはさいこうのゆっくりぷれいすだよ!! おねえさんもすなおになってこころをひらけばすぐにわかるよ!!」 「群れは楽しいことばかりじゃないのよ?冬籠りは辛いわよ。 森の食べ物なんてすぐに食べつくして、いつも移動しているのがゆっくりの群れ。 れみりゃやレイパーに襲われることだってあるのよ?」 「ゆゆぅ~、だいじょうぶだよ!みんなとちからをあわせればのりこえられるよ!!」 ゆっくりの群れに初めて参加したばかりのれいむは舞い上がっているようだった。 大勢の同種の仲間ができたことを今はひたすら喜んでいるが、 自然の厳しさがまるで実感できていない。 人里に近い群れでは、冬籠りを初めとした自然の厳しさに苦しみ、人里に下りてくるゆっくりが後を絶たないというのに。 冬が来れば、人家の庇護に慣れきったれいむが早々に根をあげることは目に見えている。 しかし、今は夏だった。 どれだけ言葉をつらねても、「みんなとちからをあわせればへいきだよ」の一点張りで一蹴された。 「おねえさんはゆっくりできてなかったよ!」 れいむはそう言った。 「にんげんさんのむれは、みんないつもいそがしそうにうごきまわっててゆっくりしてないよ! おねえさんだって、まいにちおそとにいって、れいむたちとあそんでくれなかったよ!!」 「それは……しょうがないのよ、れいむ。 人間の群れでは、みんな働かないと御飯が食べられないのよ。 ゆっくりだって狩りをするでしょう?」 「そんなのおかしいよ!ゆっくりよくかんがえてね!! かぞくやおともだちといっしょにゆっくりするのがいちばんだいじなおしごとでしょお!? かりもだいじだけど、それがおわったらみんなずっとゆっくりしてるんだよ!! おねえさんのかりはながすぎるよ!!ぜったいおかしいよ!!」 『おねえしゃん!!どきょいきゅのおぉぉ!?』 『お姉さんはお仕事よ。いい子でゆっくり待っててね』 『いやぢゃ!!いやぢゃ!!ここにいちぇよおぉ!!あしょんでよぉぉ!!しゅーりしゅーりしちぇえぇ!!』 『めっ!わがまま言わないの。おしおきよ?』 『ゆうぅ!おしおきはやめちぇぇ……ゆっきゅりわかっちゃよぉ……』 『いい子ね。帰ってきたらたっぷり遊んであげるわ。お土産買ってくるからね!』 『ゆうぅぅ!!はやきゅ!はやきゅかえっちぇきちぇにぇぇぇ!! おねえしゃんもゆっきゅりしちぇねえぇえ!!』 「……れいむ、ごめんなさい………」 「ゆっ!だいじょうぶだよ!!ここならおねえさんもゆっくりできるんだよ!! たっぷりゆっくりしていってね!!」 私は首を振るしかなかった。 れいむはそれからも説得を重ねてきたが、私はうなずくわけにはいかなかった。 こんなところで一生を過ごすなんて考えられない。 ついにはれいむが癇癪を起した。 「いいかげんにしてよおぉ!!なんでわかってくれないのおぉぉ!!? れいむやむれのみんながきびしいことをいうのはぜんぶおねえさんのためなんだよぉ!! にんげんさんなんてゆっくりできないのに、 みんなはやさしいからおいださないでめんどうをみてくれてるんだよ!! おねえさんがわがままをいってもがまんしてかってくれてるのに、 なんでおねえさんはじぶんのことしかかんがえられないのおおぉぉぉ!!?」 「れいむ…………」 れいむは怒鳴り、そのまま穴の淵から消えてしまった。 『わがままを言うんじゃありません!なんでわからないの?』 『ゆゆっ……』 『おねえさんはれいむには厳しく見えるかもしれないわ。 でも、れいむが憎いわけじゃないの。 れいむがいじめられたりしないように、れいむにはバッジが必要なのよ。 今はつらいけど、一緒にがんばりましょう』 『ゆゆぅ~……ばっじしゃんはゆっきゅりできりゅ?』 『ええ、とっても!』 『ゆっ!れいみゅ、がんばりゅよ!』 『そうね。そのためには自分のことばかり考えてちゃだめよ? 他の人やゆっくり達がゆっくりできるにはどうするかを考えられるのが本当のゆっくりなの』 『おねえしゃん……でも、れいみゅにはわきゃらにゃいよ……』 『それはこれからお姉さんが教えてあげるわ。少しずつ覚えていきましょうね』 『ゆっ!!みんにゃをゆっきゅりさせりゅよぉ!!』 苦い回想を噛みしめていると、数分後にれいむが再び顔を出した。 れいむは言った。 「……おねえさん。 ついきびしいことをいったけど、ほんとうにおこってるんじゃないよ。 れいむはいつもおねえさんのみかただからね。 みすてないからあんしんしてね。……ゆっくりおやすみなさい」 それきり、れいむは本当に行ってしまった。 私は泣いた。 悔しかった。 生まれたときから何年も躾け、愛し、人間との上下関係を教えてきた。 生来プライドの高いゆっくりを辛抱強く訓練し、 私の方が飼い主であり、人間に飼われているという立場を自覚させ、 その線引きをわきまえてこそゆっくりできるのだと教えてきた。 ゆっくりの本能に打ち勝ち、れいむの心身に沁み込んだと思いこんでいたその教えが、 ゆっくりの群れに入ったとき、一瞬でたやすく覆されてしまった。 今、私のれいむは、大勢の仲間たちに同調し、私をペットとして下に見ている。 理性では、当然のこととして理解できていた。 違う種族よりも、自分と同じ種族の言うことに従うのは生物として自然なことだろうし、 人間のもとで躾られ、様々なことを我慢させられてきたれいむにとって、 ゆっくりすることが何より優先され、正義とされるこの群れはまさに天国だろう。 今のれいむがやっていることに、生物として、不自然なところは全くなかった。 しかし、理屈でそう理解できても、感情まではコントロールできなかった。 私は地面に突っ伏して泣きじゃくった。 「あらゆるゆっくりと、考えうるかぎりの接し方を経験し、ゆっくりと仲良くなる方法を研究してきた」 長浜圭一が、暗がりの奥で喋っていた。 「あんた、そう言ったな」 「…………」 「ゆっくりに飼われる、というパターンは試さなかったのか?」 返答する気力もなく、私は泣きつづけた。 四日目の昼が訪れようとしていた。 「ゆっ!!ゆっくりしないでごはんさんをたべてね!!」 「おちびちゃんたちもおしえてあげてね!!」 「ゆゆっ、おねえしゃん!!ごひゃんしゃんはゆっきゅりできりゅんだよ!! みちぇちぇにぇ!!むーちゃむーちゃ、ちあわちぇ~♪」 「ほら、おちびちゃんにだってできるんだよ!おねえさんもがんばろうね!!」 ゆっくりに囲まれながら私は苦しんでいた。 服の下を脂汗がしたたる。 切実な問題が私の体を襲っていた。 便意だ。 もともと多少便秘気味ではあったが、いいかげん限界だった。 オシッコの方は、真夜中に暗がりの奥でなんとか気付かれないようにすませたが、 大きいほうは気付かれないようにというわけにもいかない。 なにしろ証拠が残るのだ。 とうは立っているが、女として、排便を見られるのだけは避けたい。 そんなところを見せるぐらいなら死んだほうがましだ。 そう思って耐えてきたが、もう限界だった。 痛む腹を抑えながら、私はゆっくり達に訴えた。 「お願い……お願い、ここから出して……」 「またわがままいううぅぅ!!」 「いいきゃげんにしちぇにぇ!!れいみゅもおきょるよ!!」 「駄目よ。本当に駄目なの………あの、あれ、うんうんしなきゃ……」 「ゆゆゆっ!!」 ゆっくり達が顔を見合わせた。 「ゆっ!おといれさんをおしえるちゃんすだね!!」 「おねえさん!うんうんはきめられたところでしかしちゃいけないんだよ!!」 「いまおといれさんをつくってあげるからね!!」 見る間に数匹のゆっくりが、上から草の束を運んで洞窟の端に積み上げた。 「ちょっと……何、それ……?」 「ゆっ!おといれさんだよ!!うんうんはここでしてね!!」 血の気が引いた。 どうあってもここでしろというのか。 「い、嫌!嫌よ!絶対に嫌!!」 「なんでいうこときかないのおぉぉ!!?」 「おねえさんのためにせっかくつくってあげたんだよおぉ!!もんくいわないでつかってねえぇ!!」 私は拒否したが、拒否したところで事態は好転しそうになかった。 私は、せめてもの譲歩を願った。 「わかった……そこにするわ、するから……見ないで。みんな上に上がって待ってて」 「ゆっ!!だめだよ!!」 「そうだぜ!!まりさたちがおしえてあげないと、きっとまちがえるのぜ!! なれるまではうんうんのしかたをおしえてあげるんだぜ!!」 「間違えない……間違えないから!!」 「いいかげんにしてねぇ!!さいしょからじょうずにできるわけがないでしょおぉぉ!!? だまってれいむたちのいうとおりにしてねぇ!!」 ゆっくり達が意地になって飛び跳ねる。 私は長浜圭一の方を見た。 長浜圭一はいつもの様に、施設のゆっくり達に取り囲まれて体当たりを受けていたが、 今の話を聞いていたのか、こちらには完全に背を向けてうずくまっていた。 気遣いはありがたかったが、それでも踏ん切りがつかなかった。 わめきたてるゆっくり達に、私は首を振り続けた。 その時、施設のありす達が蔦に捕まって降りてきた。 今日も長浜圭一を苛めにきたようだが、遅れてきたのは珍しかった。 「ゆっ!おそかったね!」 施設のまりさがありす達に声をかける。 ありすは紅潮した頬を震わせて答えた。 「ゆふぅ~……きょうもたっぷりすっきりしちゃったわ! にんげんはやくたたずのいなかものだけど、おはだとまむまむだけはとかいはね!!」 人間? すっきり? 「どういう事?」 私は思わず聞いていた。 「ゆゆ?かちくのくせにありすにはなしかけないでね! ごみくずとちがってありすはこうきなせれぶなのよ!」 「すっきりって何!?人間って誰のこと!?」 「ゆゆっ、きまってるじゃない。おねえさんのおちびちゃ――」 「よけいなことをいわないでね!!」 私のれいむが遮った。 「むれになれて、けいかいしんがとけるまでいっちゃだめっていってるでしょおぉ!? せっかくおねえさんがなつきそうなのにいぃ!!」 「ゆふんっ、おしえてあげればいいじゃない!」 嗜虐を顔に浮かべて、ありすは言い放った。 「おねえさんのおちびちゃんは、むれのすっきりようにんげんとしてはたらいてもらってるわ。 にんげんのおはだはとってもすべすべですっきりできるってことを、 とかいはなありすがみんなにおしえてあげたのよ! それからみんなあのおはだとまむまむにむちゅう。 やくにたたないくそどれいだったけど、むれでのおしごとができてよかったじゃない。 にんげんがあいてならあかちゃんはできないから、めんどうごとがなくてべんりよね!」 「いいかげんにしてね!おねえさん、ぜんぶうそだからね!!ね、みんな!!」 私のれいむが群れに賛同を求めると、不自然に統一された返答が返ってきた。 「ゆゆっ!れいぷなんてしてないよ!おねえさんはあんしんしてね!!」 「まりさもしてないのぜ!!あんしんするのぜ!!」 「しんぱいしないでおねえさんはゆっくりにしゅうちゅうしてね!!」 「にんげんさんはきもちいいけど、れいむはしてないよ!!あんしんしてね!!」 「おねえさんはしんぱいしなくていいから、みんなのいうことをきいてね!!」 ドスまりさも頭上から叫んでいる。 春奈。 まだ十一歳になったばかりの私の娘。 私の春奈が、おそらく食事もできないまま、何十匹ものゆっくりの慰みものにされている。 私は生まれて初めて、ゆっくりを潰したいという強い衝動にかられた。 しかし自分の力では穴から出ることもできず、ドスまりさが見張っている状況下ではそれもできなかった。 「私の子供には手を出さないで!」 「ゆゆっ!だからなにもしてないよ!!ゆっくりしんじてね!!」 「だいじょうぶだよ!! にんげんさんはほかにおしごとがないからしかたないんだよ!!」 「おしごとをしないにんげんさんはおいておけないよー、わかってねー」 「そうなんだぜ!!でもまりさたちはなにもしてないのぜ!!」 「すっきりしたいなら私がしてあげるから!子供は許してよ!!」 私は叫んだが、あの施設のありすが断定してきた。 「くそばばあじゃすっきりできないわよ!いなかものね! おちびちゃんのおはだのほうがすべすべですっきりできるわ!! いちばんすっきりできるのは、うまれたばかりのおちびちゃんよ!! わかったらもっとあかちゃんをつくりなさい!!」 「そんな……!」 「ゆゆっ!!」 群れのゆっくり達が色めきたった。 「おねえさん!!あかちゃんつくってね!!」 「れいむたちはなにもしないよ!!あんしんしてあかちゃんつくってね!!」 「あかちゃんはすっきりできるよ!!……まちがえたよ!!ゆっくりできるよ!!」 「おちびちゃんにはなにもしないからね!!あかちゃんつくってね!!」 満面の笑顔で、ゆっくり達は要求しつづけていた。 一縷の望みでもあれば、土下座でもなんでもして懇願しただろう。 悪意からの監禁であれば、相手の気がすむように自分を貶めてみせただろう。 しかし、このゆっくり達は、善意で私を監禁していた。 こうしたほうが私のためになると、心底から信じこんでいた。 私が何を懇願しようと、万が一にも聞き入れられることはないだろう。 私の願いを聞けば、私のためにならないと思っているのだから。 道は一つしかなかった。 このゆっくり達に服従し、群れのペットとして言われるままに従う。 そうやって安心させれば、ここから出られる。 出られさえすればチャンスもあるだろう。 長浜圭一が依然として背を向けているのを確認した後、 私は泣きながら、ズボンのベルトに手をかけた。 「やったよおぉぉ!!うんうんできたよおおおぉぉ!!!」 群れのゆっくり達が飛び跳ね、はしゃいでいる。 「ここがおといれさんだからね!!うんうんはいつもここでしてね!!ゆっくりおぼえてねぇ!!」 「みんな!れいむのおねえさんはやっぱりいいこだったでしょ!!ゆっへん!!」 「みんなでがんばったかいがあったねえぇ!!」 「えらかったね!!えらかったね!!」 「すーりすーりしてあげるね!!すーり、すーり!」 「おねえさん、そのちょうしだよ! これからもいうことをよくきくいいこでいれば、いつもすーりすーりしてあげるからね!!」 「ごほうびをあげるね!!まりさのだいじなたからもののいしさんだよ!! おねえさんがはじめていうことをきいたきねんだよ!! これからもみんなのなかまになれるようにがんばろうねぇぇ!!」 「ゆゆぅ~、くちゃいよ!!にんげんしゃんのうんうんはゆっきゅりできにゃいよ!!」 「ゆゆっ、そんなこといっちゃだめだよ!!おねえさんはがんばったんだよ!!かわいそうでしょ!!」 自分たちの努力と勝ち取った美談に酔い、互いに頬を取り合って屈託なくはしゃぐゆっくり達。 そのどれもが、一点の曇りもない善意と達成の確信に満ちた表情を浮かべ、満ち足りている。 私は、うつむいてただ泣いていた。 泣いても無駄だとわかっていたが、どうしても涙を止めることができなかった。 その日から、私はゆっくり達の命令に服従した。 虫はどうしてもだめだったが、それ以外の食事はなんとか口に押し込んだ。 「うぶ……うぐっ」 「ごはんさんをたべたらむーしゃむーしゃしあわせーしてね!! しあわせーをしないとゆっくりできないよ!!」 「む……むーしゃ、むーしゃ、しあわせー……」 「もっとおおきなこえでわらいながらいってね!!ゆっくりできるよ!!」 「むーしゃむーしゃしあわせー!!」 「よくできたね!えらかったね!!ごほうびにすーりすーりしようね!!」 『むーちゃむーちゃ、しあわちぇー!』 『こら!しあわせーはまだ駄目!黙って食べなさい』 『どぼちちぇえぇ!?むーちゃむーちゃちあわちぇーちにゃいとゆっきゅりできにゃいよ!!』 『食べながらしあわせーを言ったらご飯がこぼれちゃうでしょ? ほら、こんなに散らばっちゃってるじゃない』 『ゆゆっ!!でもちあわちぇーちにゃいとおいちくにゃいよ!!』 『しあわせーは全部食べおわってからならしてもいいわ。 たくさん我慢してから最後にしあわせーしたほうがゆっくりできるわよ?』 『ゆぅぅ……ゆっきゅりわかっちゃよ……むーちゃ、むーちゃ』 『むーちゃむーちゃもだめよ。静かにお行儀よく食べてね。お行儀のいいゆっくりになればバッジがもらえるわよ』 『ゆゆぅ~………しあわせー!!』 『はい、よくできました!明日は「ごちそうさま」を覚えましょうね』 『れいみゅがんばっちゃよ!!なーでなーでしちぇにぇ!!』 「うんうんちゃんとしてるね!!いうことをきくおねえさんはゆっくりできてるね!!」 「うんうんをかたづけてくるからね!!おといれさんをきれいにしてあげるよ!!」 「おにいさんもおねえさんをみならってね!!そんなところにうんうんしちゃだめだよ!!」 長浜圭一のほうは、さすがに私の傍で便を処理するわけにもいかず、 夜中に反対側の壁に穴を掘ってすませているらしかった。 「おうちのなかでおといれさんいがいにうんうんするとゆっくりできないよ!!」 「おねえさんはいいこだからもうわかってるよね!!」 「ゆっくりできるね!!」 『これは何!?』 『ゆっ!おねーしゃん、おきょっちぇるにょ?れいみゅわりゅいこちょしちぇにゃいよ!』 『いいから答えて。これは何かしら』 『ゆゆっ!きゃわいいれいみゅのうんうんだよ!!』 『こら!決まったところ以外でうんうんしちゃいけません!』 『ゆっ!?れいみゅはうんうんがしちゃかっちゃんだよ!!ゆっきゅりきゃいしちぇにぇ!!』 『言い訳になってません!謝らないとおしおきよ?』 『ゆゆっ!やめちぇにぇ!やめちぇにぇ!!ごめんなちゃいぃ!!』 「ゆっくりおうたをうたおうね!!れいむがうたうからよくきいてね!! ゆっゆっゆ~~♪ゆゆゆゆゆ~♪ゆ~ゆ~♪」 「れいむのおうたはゆっくりできるんだぜ!! おねえさん、まねしてうたってみるんだぜ!!」 「……ゆっゆっゆ~~♪」 「ゆゆっ!やめてね!ゆっくりできないよ!!」 「きたないこえだね!!ゆっくりしたおうたをうたえないとなかまにはいれないよ!!」 「ゆっくりおしえてあげるからね!!がんばってゆっくりうたえるようになろうね!!」 「ゆっゆっゆ~~♪ゆゆゆゆゆ~……」 「きくにたえないんだぜぇぇ!!まじめにやるんだぜぇ!!」 『ゆゆ~ゆっゆ~♪ゆゆゆゆ~ゆ~♪』 『れいむ、静かにしなきゃだめよ。お隣さんの迷惑になっちゃうでしょ?』 『ゆゆっ!!れいみゅはおうちゃをうちゃいたいよ!!おうちゃはゆっきゅりできりゅよ!! おねーしゃんもれいみゅのおうちゃでゆっきゅりしちぇにぇ!!ゆっゆっゆ~♪』 『だめよ!むやみに歌っちゃだめ。ゆっくりのお歌が嫌いな人間さんもいるんだから』 『にゃんでぇぇぇ!?うちょいわにゃいでにぇ!!』 『嘘じゃないわ。これからは、お姉さんがいいと言った時だけ歌うようにしてね。 明日は広い野原に連れていってあげるから、そこで一杯歌ってね』 『ゆゆゆっ!たのちみ~♪』 いつまでたっても助けはこなかった。 夏場の洞窟はひどく蒸し、服を変えることもできず、 汗や便の悪臭が洞窟内に充満した。 その悪臭のために、ここに下りてくるゆっくりはやや減少したが、 教育熱心なゆっくりや、長浜圭一への復讐にかられた施設のゆっくりは毎日やってきた。 一週間が過ぎたころ、私の心にはあきらめの影が差しこみはじめていた。 本当に、一生をこの群れの中で過ごすのかもしれない。 よしんば仲間と認められて外に出られたところで、私に割り当てられる仕事は何になるのか。 まさか本気で、私に子供を産ませ、それをすっきりに使う気でいるのか。 人間の常識も倫理もここでは一切通用しない。 まして家畜の子供など、鶏の卵のように利用されるだけだとしても不思議はない。 自殺の可能性さえ頭をよぎる。 助かりたかった。 この地獄から一刻も早く抜け出したかった。 同時に悲しかった。 自分の中でのゆっくり像が、憎々しいものに変わっていくのをどうすることもできなかった。 毎日ゴミ同然の雑草を食べさせられ、大勢の注視のもと排便させられ、罵られながら喉が涸れるまで歌わされた。 この生き物を、もはや前のように愛することはできないだろう。 そしてまた、自分自身も悲しかった。 確かに、私が今されていることは、かつて私がゆっくり達にしてきたことなのだ。 食事中の「しあわせー」を禁じ、歌も制限し、好き嫌いを許さなかった。 ゆっくりの要求を殆ど抑えつけ、一方的に人間に都合のいい常識を押し付けてきた。 それでも、ゆっくり達は曲がりなりにも私になついてくれた。 私のれいむがここで私の躾をしているのも、私を愛しているからこそだろう。 意趣返しというか、上に立つことの優越感は十分楽しんでいるようだが、私にそれを責める権利はない。 ここで世話をされながら、私はゆっくりに感謝することができなかった。 かつて私のゆっくりたちがしてくれたようには、自分の常識を曲げてまで相手の善意に報いることができない。 あれほどゆっくりを愛していたはずなのに、その善意に応えることができない。 ゆっくりのように、自然に無邪気に、強者の膝元に這いつくばることができればどれだけ楽か。 明らかに相手より弱い立場にいながら、私は弱肉強食という自然の摂理に逆らい、 人間としてのプライドに縛られて相手を怨むしかできない。 あれほど、ゆっくりを愛しているつもりでいた。 それは結局のところ、自分のほうが上に立っているという安全地帯での傲慢なままごと遊びでしかなかった。 いまや私は、 はやく見つけ出してもらい、娘ともども助け出してほしいというただそのことのみを願い、 ゆっくりをあの悪魔のような計画から守るという当初の大義は雲散霧消してしまっていた。 そんな私の弱さが何よりも悲しかった。 やがて八日目の昼になると、助けが現れた。 続く
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※最初で最後のゆっくり虐待に挑戦中です。 ※どくそ長いです。二十回は……ちょっとだけ超えそう。 ※うんうん、まむまむ描写あり。 ※標的は全員ゲスです。人間から見れば。 ※虐待レベルはベリーハードを目指します。 ※次回から虐待ラストスパート。 ※以上をご了承頂ける方のみどうぞ。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――― 『永遠のゆっくり』16 目が覚めたとき、しばらくは状況がつかめなかった。 最初に白い天井が見えた。 仰向けのままひとしきり天井を眺めてから、伸びをして起き上がると、 周囲に家族の姿があった。 まりさ種もありす種も全員含めて、 起きているもの、眠っているもの、とにかく十三人全員がそろっている。 「ゆゆっ!?ゆっくりしていってね!!」 考える前に、れいむは挨拶した。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね……」 主に自分の子供たちから挨拶は返ってきたが、元気のない声だった。 「ゆぅ~?ゆっくりしてね!」 しかし、周りを見渡し、自分たちの置かれている状況が飲み込めてくるにつれ、 れいむもなんだかゆっくりできない気分になってきた。 「ゆゆっ?とうめいなかべさんがあるよ!」 自分たち十三匹の四方を、大きくて透明な壁が囲んでいる。 どちらを向いても出口は見当たらず、 体当たりをしたところで壊れてくれるようなものでもないことを、れいむは体感的に知っていた。 「ゆっ……ゆっくりできないきがするよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 れいむは飛び跳ねて叫んだ。 子供のれいむ達も同調する。 「ゆっくりできないよ!!かべさんはゆっくりどっかいってね!!」 「れいむをここからだしてね!!ゆっくりしないでね!!」 「かわいいれいむがでたがってるんだよおぉ!?なんでむしするのぉ!?ばかなのおぉ!?」 どれだけ叫ぼうと、壁はどいてくれる様子がなかった。 れいむは知っていた。このかべさんはゆっくりできない。 前にもこのかべさんに閉じ込められたことがあった。 そしてその時、自分たちは何をされていたのか。 「ゆぅうううううううううぅ!!?」 不安感がますます膨れ上がっていく。 思い出したくもないトラウマがれいむを焦らせる。 あそこからは逃げ出したはずだ。 あんなゆっくりできないことは、もう終わったはずだ。 「だしてね!!だしてね!!かわいいれいむをだせえぇぇ!!ゆっくりするなぁぁぁ!!!」 暴れているうちに、ガラスケースが一つではないことがわかってきた。 殺風景な白い部屋の中心に、どうやら自分たちはガラスケースに入れられ、テーブルに載せられているらしい。 そして自分たちの右側、部屋の中心部からずれたところにもう少し小さいテーブルがあり、 その上では、小さなガラスケースの中にあのれいむが入っていた。 金色のバッジをリボンにつけたそいつは、 あの施設から脱出するときに案内させたれいむだった。 「ゆっくりしていってね!」 「ゆっくりしていってね!」 挨拶をすると返事が返ってくる。 れいむは金バッジに向かって質問した。 「かわいいれいむたちをゆっくりここからだしてね!」 「むりだよ!れいむもでられないんだよ!ゆっくりりかいしてね!!」 「ゆゆっ!れいむはやくたたずだね!!いいわけしないでどりょくしてね!!」 「どぼじでぞんなごどいうのおおぉぉ!?」 口論しているうちに、部屋の中に入ってきたものがあった。 「ゆゆっ!!にんげんさんがきたよ!! ゆっくりここからだしてね!!あまあまもちょうだいね!!」 「あまあまちょうだいね!!それからしんでね!!」 入ってきたのは人間だった。 顔の確認もせずにれいむは色めきたったが、やがて顔を確認すると、別の感情から騒ぎ始めた。 「ゆゆゆぅ!!?ごみくずぅぅ!! れいむのおちびちゃんをころしたごみくずはれいむをここからだしてゆっくりしねぇ!!」 「だせぇぇ!!ここからだせぇぇ!!ごみくずぅぅ!! またいたいめにあいたいのかぜぇぇ!!? まりささまはてかげんしてやってたんだぜぇ!!つぎはほんきでおしおきするのぜぇぇ!!」 「はやくだしなさいいいいぃぃぃいなかものおぉぉぉ!!!」 変な棒で体を支えながら入ってきたのは、 かつて自分たちをガラスケースに閉じ込め、とてもゆっくりできない目に逢わせていたゴミクズ。 そのゴミクズを前に、れいむは涸れることのない怒りを爆発させる。 他の家族たちも同じようだった。 あの群れの中で、自分たちはこのゴミクズにたっぷりとお仕置きをしてやった。 そのおかげで、あんな棒をつかなければならないほどよろめいている。 もちろんあんなもので済ませるつもりは毛頭なく、これからも死ぬまでいたぶるつもりだ。 しかしとにかく、言語を絶する暴力にさらされ、たっぷりと訓戒を受けたゴミクズは、 自分たちとの上下関係を理解し、自分たちを恐怖しているはずだ。 ちょっと脅してやればすぐに言うことを聞くだろう。 れいむは確信し、ここから出すように命令した。 「ごみくずはぐずぐずしないでれいむたちをゆっくりここからだしてね!!」 「いやだね」 ゴミクズの答えに、れいむは耳を疑った。 なんだと? もしかしてこの人間は、あれほどのお仕置きをもう忘れたのか? 「にんげんさんがばかなのはしってたけど!ここまでばかだとはおもわなかったよおぉぉ!! ここからだせ!!だせ!!おしおきしなおしてやるからだせぇぇぇ!!!」 「だめだよ。もう出さない。ここでずっと苦しんでもらう。 前に言ったろう?お前たちはもう、永遠にゆっくりできないんだよ」 見ると、ゴミクズのほかにも二人の人間が入ってきていた。 一匹は小さい人間で、あの群れですっきり用人間として飼ってやっていたペットだ。 もう一匹はもっと大きくて、ずっと言うことを聞かなかったのろまなペット。 「ゆっ!おねえさん!ゆっくりしていってね!」 金バッジが箱の中で飛び跳ねはじめ、大きいペットのほうに媚びた声をあげはじめた。 しかし、ペットのほうは黙って見ているだけだった。 「れいむはおねえさんがだいすきだよ!! ゆっくりしていってね!!ゆっくりしていってね!!」 くにゃりと頭を斜めにかしげ、にっこり笑ってみせている。 しかしペットのほうは、立場をわきまえていないらしく、話しかけてやっているのに返事をしようともしない。 「くそばばあ!かわいいれいむがはなしかけてあげてるんだよぉぉ!?へんじぐらいしてねぇぇ!!」 仲間が無視されているのにたまりかねてれいむは叫んだが、それでも返事は返ってこない。 「はーい、みんな、こっち向いてねー!」 小さいペットが両手を叩いてなにやらわめいていた。 皆がそちらを向くと、小さいペットは叫んだ。 「そっちのゴールドバッジをつけた子は別だけど、 プラチナバッジをつけたこっちのみんなは、これから死ぬまでゆっくりできませーん! 死ぬまで永遠に、痛くて苦しくて気持ち悪くてゆっくりできない目に遭ってもらいまーす。 ゆっくり理解してね♪」 その言葉を聞いた反応はさまざまだった。 「ゆっ!ゆっ!れいむはゆっくりさせてくれるんだね! おねえさんはれいむがだいすきなんだね!れいむもおねえさんがだいすきだよ!ゆっゆっゆ~♪」 自分は助かるという事実に安心してぴょんぴょん跳ねる金バッジ。 「げらげらげらげら!!やれるもんならやってみろだぜぇ!! すっきりさせるしかのうのないくそにんげんがまりささまをくるしめるとか、ぷげら!!」 「ほらほらぁ~♪くるしめてごらんなさぁ~い♪ゆっほほほほほほ!!」 自分よりはるかに劣る生物の妄言をせせら笑うまりさやありす達。 しかし、れいむは笑う気になれなかった。 「くそごみくずぅぅぅぅ!!!なにをいったああぁぁぁ!! れいむたちをくるしめるううぅぅぅぅ!!??そんなこといっていいとおもってるのおおぉぉ!? いっていいこととわるいこともわからないのおおおぉぉぉぉ!!!? あやまれ!!いますぐあやまれええぇぇ!!ぐずぐずするなぁぁぁぁ!!!」 どんなゴミクズだろうと、自分たちをゆっくりさせないなどと言う異常者は許すわけにはいかなかった。 れいむは怒りのあまりわめき続け、他のゆっくり達も同調して怒鳴り散らした。 「は~い、シャラ~ップ♪」 ガァン!! 小さいペットが、鈍く光る棒のようなものを握ってガラスケースに叩きつけた。 大きな音と伝わってきた衝撃に、一同は一瞬委縮する。 「みんな、これ覚えてるかな~?」 そう言って、小さいペットは部屋の隅にある黒い箱を指差した。 黒い箱はそれまで真っ黒なままだったが、その時ぱっと明るくなり、中に何かが映っているのがわかった。 「これは君たちです。二週間前の映像ですよー」 確かにそれらは自分たちだった。 頭の飾りと、そして置かれていた状況の記憶が認識する。 フックで上顎からつり下げられ、歯の抜けた口を限界まで開かされ、トウガラシを詰め込まれて痙攣するまりさ達。 我が子を救うために走り続け、歌いつづけ、様々な終わりなき苦行を強いられているれいむ達。 孫ありすの海の中で休みなく犯されつづける子ありす達。 電極を性器につなげられて際限なくすっきりしつづけるありす。 「ゆんやああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??」 極限の苦しみのトラウマがまざまざと甦り、れいむ達は絶叫した。 同時に、どうにもならなかったあの無力感が記憶に呼び覚まされる。 この人間共は、今また、同じ苦しみを味わわせるという。 「やべろおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーーーっ!!!」 まりさが叫んでいた。 「まりささまににどとそんなまねはさせないのぜ!!! あれはひきょうなてをつかったからそっちがかったんだぜ!! こんどはそっちがいじめられるばんなのぜええ!!」 「はいはい、じゃあさっさと済ませようね」 小さいペットが箱の中からまりさを掴み上げ、床に下ろした。 「じゃ、かかっておいで。あたしをいじめてごらん」 「ゆっ……ゆっへっへっへ!! くそごみくず!まりさのこわさがわかってないようなんだぜぇ!? まりささまのちからをおもいしらせてや」 「はいはい、時間が押してるよー」 「ゆぎぇべぇぇっ!!?」 たちまちのうちに、まりさが壁に叩きつけられていた。 何が起きたのか理解できなかった。 大きくて強いまりさは、ドスまりさを除けば、ゆっくりの中では一番強いと言っていい。 少なくともれいむはそう確信していた。 しかしそのまりさは、小さいペットの前に、なすすべなく蹂躙されていた。 「ゆびぇ!!やべ!!やびぇっ!!ぼっ!!げらだいでぇぇぇぇばっ!!」 「うん、負けを認めるかなー?」 「みどべばず!!みどべばずがらぼうやべでええええええ!!!」 「はいOK!」 言うが早いか、小さいペットはまりさを掴むと、 さっさとガラスケースの中に投げ込んで戻した。 「はい、他ににんげんさんと戦いたいゆっくりはいるかなー?」 「……………!!!」 一番強いまりさを赤子扱いした相手に対し、名乗りを上げる者はいなかった。 「はいじゃあ、また苦しんでもらいまーす。いいですねー」 そう言い、小さいペットはいまだに映像を流している黒い箱を指差す。 「い!!いやぢゃあああああああぁぁぁぁぁ!!!」 「わっがざんぼういやあああああああああああああゆっぐりでぎだいいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!」 「ゆっぐりでぎだいどいやあああああああああいやああああああああああああーーーーーーっ」 「もうべにべにいじべだいでえええええ!!!おでがいじばずうううううううううう!!!!」 「はい駄目でーす。逃げ場はないよー?逆らってもまりさみたいにやっつけられちゃうよー。 君たちにはどうすることもできませーん」 「ゆんやあああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁ!!!!」 なぜだ。 あの時、自分たちは人間たちに逆転勝利し、逆に人間を制裁してやったはずだ。 しかし、今また、どうしようもない窮地に追い込まれている。 なぜ勝てないのだろう。 なぜあの時は勝てたのだろう。 わからない。 しかし少なくとも、今自分たちは、どうあっても勝てない相手になすすべなく苦しめられるしかないことはわかった。 れいむの心を絶望が染める。 絶望に染められた心の中に、ひとつの衝動、疑問が渦巻く。 どうして。 どうして自分たちだけが、こんなひどいことをされなければいけないのだ。 「どぼぢで……………」 「ん、何かな?れいむちゃんどうぞ」 「どぼぢでごんなごどずるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉ!!!??」 絶叫するれいむに、小さいペットは手を叩いた。 「はい、いい質問ですね! あのね、これは罰なんだねー。 君たちが悪いことしちゃったから、お仕置きしてるの。わかるかなぁ?」 お仕置き? こんな下等で野蛮な獣どもが、自分たちにお仕置きするなどという傲慢さも我慢できなかったが、 それ以上に不可解なことがあった。 「れいむなにもわるいことしてないいいいいいいいいいいいいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」 「したよー。したした」 「れいむたちがなにをしたのおおおおおぉぉぉぉ!!? なんでっ!!れいむがっ!!わるいのおおぉぉ!!?むちゃくちゃだよおおぉぉぉ!!!」 「えーとね、根本的なことを言えば、ゆっくり風情が人間をバカにしたことだよねー」 れいむは耳を疑った。 自分たちゆっくりが、人間をバカにした。 それが悪いのか?それが罪なのか? 単なる事実ではないか。バカという言い方だって、人間ごときにだいぶやさしいほうだ。 「ばかでしょおおおおおおおおお!!!? ばかをばかといってなんでわるいのおおおおおおおぉぉぉぉ!!?」 「うん、ところで、それよりもっと問題なのはやっぱり人殺しだよね。 長浜さーん、あと、どうぞー」 「ああ、はい」 小さいペットが声をかけたのはあのゴミクズだった。 ゴミクズは椅子にかけたままで少しの間れいむたちを眺めわたしてから、口を開いた。 「お前たちは俺の子供を殺した」 「ゆっ?」 「覚えてないのかい。俺の奥さんを転ばせて怪我をさせ、そのお腹にいた子供を殺しただろ?」 おぼろげな記憶をたどる。 「ゆゆっ!!にんげんのあかちゃんはおはだがとってもとかいはだったわぁぁ!!」 ありすがぺにぺにを屹立させていた。 忘れられぬすっきりの快感を反芻してよだれをたらしている。 れいむの中にも、忘れかけていた記憶が甦る。 そういえばそんな事をした。 この男のつがいの腹を何度も叩き、子供を出させ、それをありすが犯し。 この男の泣き顔を眺めたときの快感。 まさか。 まさか、まさか、あの時のことを言っているのか? 自分たちをあんな目に逢わせ、死ぬまでゆっくりさせないというその理由が、 まさかあの時のことなのか? 「俺の奥さんは首を怪我して、ずっと眠ったままだ。 人間はあそこを怪我すると動けなくなるんだよ。 そして俺の赤ちゃんは、そこのありす達に犯されて死んだ」 れいむは、自分の耳が信じられなかった。 「だから……」 「うん?」 「だから……だから……あかちゃんをころされたから……れいむたちをゆっくりさせないの?」 「そうだよ。俺はお前たちを恨んでいるし許さない。一生ゆっくりさせないつもりだよ」 一瞬、思考が止まった。 ほぼ真っ白になりかけた視界がぐらぐらと揺れる。 あまりの怒りと、そして呆れが、れいむの体内の餡子を攪拌していた。 そんなことのために。 そんなことのために、この人間共は、れいむ達を憎んでいるのか。 そんなことのために、れいむ達の赤ちゃんを殺したのか。 そんなことのために、れいむ達は死ぬまでゆっくりできなくされるのか。 あまりにも理不尽で、想像を超えていた。 動機と行為がまったくつながっていない。 これではまるでギャグではないか。 このにんげんさんどもはいったいなにをいってるの? なんでそうなるの? 「なにばかなこといってるのおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!??」 口が勝手に叫んでいた。 どうしようもなく溢れてくる激情を抑えることができない。 「ばか!!ばか!!ばか!!ばか!!くそばかあああぁぁぁぁぁ!!!! そんなっ!!そんなかんちがいで!!あんなことっ!!あんなっ!!ぜったいにゆるさないよおおおぉぉぉ!!!」 「勘違い?」 ゴミクズが不思議そうな顔をして聞き返してくる。 見下げ果てた。呆れ果てた。こんな白痴どもに道理を説くことさえ空しい。 しかし、無駄とは知りながら、殺された子供たちのことを考えると叫ばずにはいられなかった。 「かんちがいでしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!! なんでっ!!それでっ!!れいむがわるいのおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!?」 「だって、お前………俺の子供を殺しただろう?」 「それがなんだっていうのおぉぉぉぉ!!?ゆっくりちゃんとせつめいしてみろおおぉぉぉ!!!」 「説明しろって……説明しなきゃ駄目なの? え、殺すのは悪いことだろ?」 「っっっっっばかあああああぁぁぁぁああああ!!!!」 取り返しのつかない失敗。れいむは自分を責めた。 人間の呆れるほどの馬鹿ぶりを軽視していたこと。 そして、一番基本的なことをきちんと躾けておかなかったこと。 まがりなりにも言葉を喋る生物なのだから、 そんなことぐらい、本能レベルで理解しているはずだと思っていたのが間違いだった。 低能すぎる人間に常識は通用しなかったのだ。 ほんの些細な教育の手間を惜しんだために、 自分たちは理不尽かつ筋違いの逆恨みを受け、子供たちは殺された。 「ごべんねえええええぇぇぇぇ!!! おぢびぢゃんだぢごべんねええええええええええええぇぇぇ!!! おがあざんがじづげをうっがりじでだがらぁぁぁぁあ!!おがあざんをゆるじでねええええぇぇぇーーーーっ!!!」 「お、おい………」 「ぐぞばがごみぐずううううぅぅぅーーーーーーーーーーーっ!!!!!! ゆるさない!!ゆるさない!!いまごろきづいたってゆるさないからねええ!! よのなかにはとりかえしのつかないまちがいがあるんだよおおおおおぉぉぉぉ!!!」 「あの、何かおかしかったんでしょうか?」 わざわざ言葉にして教えてやらなきゃならないということが、れいむはあまりにも情けなかった。 情けなさ過ぎて気分が萎えそうになるが、恨みを言葉に載せて叫んだ。 「ゆっくりとにんげんさんはちがうでしょおおおおおぉぉぉぉ!!?」 「うん、そりゃぁ、違うよ」 「ぜんっぜんちがううううううううううううううぅぅぅぅ!!! おまえらがじぶんのこどもをころされたからって!! ゆっくりのあかちゃんをころしていいわけないでしょおおおおおおおおおおおぉぉぉぉ!!? なんでっ!!そんなことが!!わからないんだあああああああああぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ」 「…………」 「おまえらのあかちゃんが!!さんびきころされても!! もっといっぱいころされても!!もっともっといっぱいころされても!! ゆっくりのおちびちゃんひとりだってころしちゃいけないんだよおおおおぉぉぉぉぉ!!! なんでわからないの!?ぜんっぜんちがうでしょ!? ひとりのゆっくりのおちびちゃんは、にんげんさんのこどもがなんびきあつまったよりゆっくりできるんだよおおおぉぉぉぉ!!」 「……………同感だな。一部を逆にすれば」 「にんげんさんなんかにっ!!いいこととわるいことのくべつがつくわけないでしょおおおぉぉ!! にんげんさんがゆっくりをおしおきしていいわけないんだよおおぉぉお!!ゆっくりりかいしてねえぇぇぇ!!!」 れいむの剣幕に、他のゆっくり達は黙って聞いていたが、 れいむの言葉が溢れだすうちに「ゆっ♪ゆっ♪」と飛び跳ね始めた。 応援しているのだ。 「ふ~ん」 あの小さいペットが何か言っていた。 「そんなにゆっくりって偉いんだ」 「あたりまえでしょおおおおおおおおおおおお!!!」 「人間より偉い?」 「にんげんさんなんかとくらべるなあああああぁぁぁ!!! なんでゆっくりとにんげんさんをくらべるなんてはっそうができるのおおおおおぉぉぉぉ!? にんげんさんよりしたのいきものなんかどこにもいないんだよおおおぉぉ!!!」 「あらら、ずいぶん嫌われてるね。 じゃあ、鳥さんは?犬さんは?魚さんは?」 「とりさんもいぬさんもさかなさんも!ゆっくりよりしただよおぉ!! くだらないしつもんをするなぁぁ!!!」 「この世界の生き物みーんな、ゆっくりより下なの? ゆっくりが一番偉いの?」 「そんなこともしらなかったのおおおおおおおぉぉぉぉ!!? ばか!!ばか!!くそばかぁぁぁ!! こんなにあたまがゆっくりできないいきものが、 ゆっくりとおなじことばをつかうなんてはずかしくないのおおおぉぉぉ!!? もうしゃべるな!!にどとしゃべるなああぁぁぁ!!!」 「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」 「ゆっくり♪ゆっくり♪」 家族たちが人間をせせら笑いながら、リズムをつけて飛び跳ねている。 あの金バッジもケースの中で嬉しそうにぽいんぽいんと跳ねていた。 「じゃあさ、聞くけど。 なんでゆっくりがそんなに偉いの?」 「じぶんでかんがえろおおおぉぉぉ!!! うまれたばかりのおちびちゃんだってそんなことぐらいわかってるよおおぉぉ!!」 「ごめんね、頭がゆっくりできないからわかんないや。 だって、ゆっくりに何の価値があるの? 少なくとも、人間よりは弱いよね。さっきわかったよね。 人間どころじゃなくて、犬にだって鳥にだって、ほとんどの生き物に勝てるとも思えないなぁ。 実際、森の中では強い敵から逃げ回ってるよね?」 「だからなんなのおぉぉ!!? つよいいきものがいちばんえらいなんていわないでねえぇぇ!! そういうのはやばんないきもののはっそうなんだよおぉ!!」 「……意外とまともなこと言うじゃん。 じゃ、ゆっくりの偉いところって何?」 「ゆはあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~………………」 そんなことまで説明してやらなきゃいけないのか。 あまりの馬鹿さに辟易し、れいむは深く深くため息をついた。 「れいむはなんだかばかばかしくなってきたよ………」 「ゆっ!れいむ、がんばるんだぜ!! こんどこそばかなにんげんさんをしつけてやるんだぜ!!」 「ありすもおうえんしてるわよ!!がんばりなさい!! ゆっくりできるとかいはなただしいことをしてるんだから!!」 「おかあさん、がんばってね!おかあさん、がんばってね!!」 「がんばってね!!がんばってね!!れいむのおねえさんにおしえてあげてね!!」 周りのゆっくり達(金バッジ含む)の声援に頷いてみせ、れいむは人間共に向きなおって静かに言った。 「………ゆっくりかんがえてね。 ごみくずはだれのおかげでゆっくりできてるの?」 「うん?」「へっ?」「え?」 白痴じみた表情で、三人の人間は聞き返してきた。 ふん、と鼻を鳴らしてれいむは講義を始めた。 「さいしょからかんがえてね。 おまえたちがゆっくりできるようになったのはいつから?」 「いつからって………別に、覚えてないけど。子供のころから?」 「れいむたちがおまえたちにはなしかけてあげたときからでしょおおぉぉ!!!」 「ええ?」 「………ほんとにおぼえてないんだね。 れいむとまりさがゆっくりぷれいすをみつけたときに、ごみくずがまよいこんできたよね。 かわいいかわいいれいむとまりさをみたしゅんかんに、うまれてはじめてゆっくりできたでしょ?」 人間への憎しみを今は抑え、辛抱強くれいむは諭してやった。 「あのゆっくりをおもいだしてね。 うまれてはじめてゆっくりできたあのよろこびをおもいだしてね。 それをおぼえていれば、れいむにかんしゃするはずだよ!!」 「…………」 「ゆっくりはね、このよのなかで、ゆいいつゆっくりできるいきものなんだよ。 ほかのいきものさんは、にんげんさんだってさかなさんだってとりさんだって、 どれもこれもぜんっぜんかわいくないし、みっともないし、こえもひどいし、せかせかしてるよ。 そんな、ゆっくりをしらないふこうないきものさんたちに、 ゆっくりはかわいいじぶんをみせてゆっくりさせてあげてるんだよ。 どうしてかわかる?ゆっくりはやさしいからだよ!!」 「…………」 「ゆっくりはやさしいから、ほかのいきものがゆっくりできないのがかわいそうなんだよ。 だから、わざわざじぶんのかわいいすがたをみせて、きれいなこえもきかせてあげるんだよ。 そうすると、ほかのいきものさんはうまれてはじめてゆっくりするんだよ。 おまえたちはじぶんでゆっくりできてるつもりかもしれないけど、 そのゆっくりをおしえてあげたのはれいむなんだよ!!」 「…………だから、人間の子供を殺してもいいって事かい?」 ゴミクズが痴呆じみた表情でとぼけたことを聞いてくる。 思わずかっとなったが、れいむは自分を抑えて言い聞かせた。 「ゆっくりをおしえてあげたれいむにかんしゃしないで、 れいむたちのせわからにげだそうとしたから、 それかられいむのかわいいあかちゃんをころしたから! ばつとしてごみくずのあかちゃんをまびきしてあげたんだよ。 おまえたちがわるいんだよ!!おまえがいってるのはさかうらみだよ!! れいむたちのこえをきいて、あかちゃんもみて、すっきりまでみせてもらって、 さんっざんゆっくりしておいて!!なんでそんなことでさかうらみできるのおぉぉ!!?」 「生き物を殺して平気なのか?」 「ゆっくりできないいきものさんなんか、ほんとうはいきてるかちがないんだよ!! ゆっくりできないゆんせいをおくるのはかわいそうでしょぉ!? ころしてあげるのもゆっくりがやさしいからなんだよ!!ゆっくりりかいしてね!!」 「そうよ!だいたいあのあかちゃんは、 ありすたちのとかいはなあいにつつまれてしあわせーにしんでいったのよ!! にんげんごときがとかいはなあいをうけるなんてとくべつなのよ!?かんしゃしなさいよ!!」 ありすが口を挟んでいた。 ゴミクズは口をつぐみ、椅子の上でうなだれた。 小さいペットも、大きいペットも、何も言わなかった。 「どうしてじぶんをきゃっかんてきにみられないのおぉ!!? おまえたちにんげんなんか!!ゆっくりできないよ!! ぜんぜんかわいくないみにくいすがたでそとをうろつきまわって、なんではずかしくないの!? ぜんぜんゆっくりできないがあがあしたこえでほえて、みっともないったらありゃしないよ!! おまえたちのどこが!!ゆっくりよりえらいっていうんだあぁぁあ!!!」 言ううちに、れいむは再び激しはじめてきた。 「ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪ゆっ♪」 「おかあさんすごいよ!!ゆっくりしてるよ!!かんどうしたよ!!」 「さすがまりささまのおよめさんなんだぜ!!ごみくずたちはぐうのねもでないんだぜ!!」 「とってもとかいはなたんかだったわ!!ほ、ほめてあげてもいいのよ!?」 「にんげんさぁ~ん♪じぶんがどれくらいばかなのかわかりまちたかぁ~?」 家族達はれいむの熱弁に感動し、勝ち誇って飛び跳ねていた。 一方の人間共は、言われながら反論の言葉もなく押し黙っている。 ようやく自分のしたことの重大さがわかりかけてきたらしく、悔悟の表情だ。 しかし許さない。 れいむはぜったいにおまえたちをゆるさないよ。 れいむは慈悲を捨て、厳かに厳罰を言い渡した。 「いまごろはんせいしたっておそいよ!! これから!いっしょう!!ばつをあたえつづけるからね!! もうゆっくりさせてあげないよ!!れいむたちのかわいいかおも、かわいいあかちゃんもみせてあげないよ!! かわいいこえもきかせてあげないし、おうたもにどときけないよ!! これからはれいむたちのかおをみることはゆるさないよ!!ゆっくりぷれいすにあまあまだけおいていってね!! しぬまでゆっくりはんせいしてね!!」 「そうだよ!!にどとうたってあげないからね!!それだけのことをしたんだからもんくないでしょ!?」 「いっしょうあかちゃんみられないよ~♪ くやしい?みたい?でもみせてあげなぁ~い♪」 「どげざしておねがいしたら、またありすのとかいはなすっきりをかんしょうさせてあげようかしら? まあ、ぜったいにみせてあげないけどね!!ばぁーか!!」 「ゆっ!!ゆっ!!きいた?れいむのおねえさん!!」 金バッジが大きなペットに向かって飛び跳ね叫んでいた。 「ゆっくりあやまってね!!いまならゆるしてあげるよ!!れいむはおねえさんがだいすきだからね!!」 大きいペットが、手で顔を覆って泣き崩れた。 それでも許そうとは思わなかった。 これから死ぬまで、一生苦しみ、反省し続けてもらう。 勝利に沸き、飛び跳ねるゆっくり達に囲まれながら、 れいむは毅然とした表情で、自分の犯した罪の大きさに狼狽する人間どもを睨み続けていた。 「いいよ。十三匹いれば充分だしね」 春奈は約束してくれた。 「ママのれいむは勘弁してあげる。 それどころか、世界一幸せなゆっくりの一匹になるんじゃないかな? ゆっくりの幸せなんか人間にはわかんないし、興味もないけどさ」 荷物を詰め込んだ鞄を肩に提げて、私は施設の門前に立っていた。 すぐ先には車が止められ、私が乗り込むのを待っている。 「ママ、これからどうするの?」 「何が?」 「またゆっくりを飼うのかな、てこと」 私は首を振った。 ゆっくりは家族ではなかった。 所詮、私たち人間が力で抑えつけ、服従させていただけだったのだ。 飼われる立場を自ら体験してそれが分かった今、 もはやゆっくりを飼う理由はなかった。 家にはまだ大勢のゆっくりがいるが、 野生に戻る訓練を施してから、みんな森に放すことになるだろう。 今はもう、一切ゆっくりに関わりたくはなかった。 「全部幻想だったってことね」 「まあそうですけど、飼われてたゆっくりはとりあえず快適だったんじゃないですか」 そう言って笑ったのは長浜圭一だった。 私は長浜圭一の顔を見た。 右足にギプスをはめ、松葉杖で痛々しく体を支えていたが、 その表情は不思議なほどに晴れやかになっていた。 始めてここに来て顔を見たときは、暗い酷薄な表情をしていたのだが、 今の彼はとても復讐者の顔には見えない。 「何です?」 「あなたは……まだゆっくりを憎んでるの?」 「俺ですか?うーん。どうかな」 長浜圭一は小首をかしげてみせた。 「もちろん嫌いですし、たっぷり苦しめてやる気でいますけどね。 憎んでるかというと、まあ、そこまで入れ込んではないですよ」 「どうして?」 「同じなんだもの」 明るい声で、彼は笑った。 「あいつらの話を聞いて、ようやく納得ができました。 俺の見たところ、ゆっくりと人間は全く同じです。 己の種族の価値観で全てを裁き、他の種族までもいい個体と悪い個体を選別して管理しようとする。 やってる事は全く同じですよ。たまたまこっちの方が強かった、それだけです」 「…………」 「今まで、俺はどこかでゆっくりを人間扱いしてたんだと思います。 だから、あいつらが「悪意ある人間」に思えて、憎んでました。 たとえそういうふうに育てたのが俺だとしてもね。 でも、あいつら独自の価値観がわかった今、憎めるものじゃないです。 あいつらも俺たちと同じく、種族の本能に従って自然に振る舞っていただけですよ」 「家族を殺されても……?」 「山奥に入り込んで熊に食われたり、海で沖に流されてサメに食われるのと同じですね。 俺達が自然を甘く見ていたということでしょう。 辛いことですが、誰を恨む筋合いもないです」 長浜圭一は、気持ち悪いぐらいに物わかりがよくなっていた。 「でも………計画は遂行するんでしょう?」 「そうです」 「今でも…ひどすぎるとは思わないの?」 「もちろんひどいですよ。 それでも、ひどいとわかっていながらやってきたのが人間でしょう。 あらゆる動物の棲家を奪い、木々を切り倒しながら地球に蔓延する。 自分の身の安全と快適な生活が確保されてから、ようやく他種を愛でる余裕ができる。 あらゆる動物を動物園に押し込んで鎖につないでから、動物愛護を唱えはじめるのが人間というものですよ。 所詮、動物愛護なんてのは個人の趣味、遊びです。俺はそういう趣味はない、それだけです」 長浜圭一の理屈は筋が通っていないように思えたが、 今更それに反論してみせる気力もなかった。 「ママはゆっくりが苦しむのが辛いっていうけどさ、 だったらどうして素直に飼われてあげなかったの? ゆっくりの価値観と幸せを知る貴重なチャンスだったのに」 「…………」 「自分が飼われる立場になってでも、ゆっくりを深く知ろうとする覚悟。 そういう覚悟が、結局ママにもなかったってことだよね。 人間の価値観しか受け入れずに押し付けるしかないなら、 愛護も虐待も、結局やってる事の本質は一緒だと思うな、あたしは。あはは、仲間じゃん」 私と長浜圭一を交互に指差し、春奈はけらけら笑った。 私は返す言葉がない。 それでも、私は、納得しきれず、なんとか声を絞り出した。 「………それでも、ゆっくりと人間は違うわ」 「そうですか?」 「ゆっくりは……生物として弱すぎるわ。 目先の快楽に捉われて、長期的に生き延びる選択肢をとることができない。 人間はそうじゃないわ。社会、歴史というスケールで物事を見て、種族の繁栄を志すことができる。 横暴かもしれないけれど、 人間がゆっくりを飼うことと、ゆっくりが人間を飼うことがお互い様だとは言えないわ」 「どうでしょうかね。 人間だけはそれを言う筋合いはないんじゃないですか」 「………」 「さんざん地球環境を破壊してきて、専門家がどれだけ危ないと警告しても、 先進国の国民や企業は、誰かがなんとかしてくれるだろうと思って誰一人真剣に考えず、日々ゴミを吐き出している。 結局、人類の自滅は目と鼻の先にまで迫っています。数多くの他種の生物たちを道連れにしてね。 ゆっくりに比べれば自分たちは賢いと言ってみたって、所詮はどんぐりの背比べ。 貧しいプライドというものでしょう」 「それは……飛躍じゃない?」 「ご自由に。 あのゆっくり達と同じで、人間も、はたから見れば身勝手な種族の価値観でしたい放題やってるだけです。 俺はただ、人類が少しでも長く生き延びられるように努力するだけですし、 ゆっくりが役に立つとなれば使うだけです。そういう事ですよ」 「……そう」 「あとは、ガキのケンカですね。 俺をナメる奴は許さねえ、思い知らせてやる、そういう衝動です。結局、そこに尽きるね」 長浜圭一はまた笑った。 私は打ちひしがれていたが、それでもなんとか答えた。 「今なら……あなたの気持が、ほんの少しわかるような気がするわ」 「ふざけるなよ」 私はぎょっとして顔をあげたが、長浜圭一は笑っていた。 「ま、お元気で。 あなたにはこういう場所は向かないですよ。早く忘れて、ご自分のお仕事をなさって下さい」 「…………ええ。娘を、よろしくお願いします」 「こちらこそ。娘さんにはお世話になります。 人類を代表して、お礼を言わせていただきますよ」 長浜圭一がうやうやしく頭を下げる。 春奈が手を振っていた。 「じゃ、元気でね。ときどきは会いにいくよ」 「ええ……」 私は頷き、車に乗り込んだ。 運転手がアクセルを踏み、車が走り始める。 私は、二度と後ろを振り返らなかった。 別れ際に春奈が言っていたことが、頭にこびりついて離れなかった。 「断言。ゆっくりを一番ゆっくりさせられるのはやっぱり人間だね。 証明してみせるから、まあのんびり待っててよ。 完璧なユートピアの正体ってものを見せてあげるからさ」 続く