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Chapter48「鉄のゴーレム4:意志の力」 「もしよければ、グリム。お主のその機械技師としての力、私たちのために貸してはくれんか」 この老人には私たちにはない力がある。 太古の技術、機械を作り出せるという点もそうだが、彼には執念めいた強い意志がある。竜族にはない、人間だけが持っている強い意志の力。 意思の力、それは奇跡の力だ。 筋力にしても体力にしても魔力にしても、人間は竜に比べればどれもが劣っており、そして貧弱な生き物だ。わずかな傷やちょっとした病で簡単に死んでしまう。 しかし、そんな弱い存在でありながら、時として人間は竜をも凌駕するとんでもない力を発揮してみせる。 例えば賢者や魔女の存在は、人間の本来の魔力から考えるとあり得ない。 それに物理的な力では竜に敵わないはずなのに、人間の英雄が竜を倒したというような伝説は、探せばいくらでも出てくるほどだ。 決して諦めない、絶対にやり遂げてやる。 そういう半ば狂気ともとれる『意志の力』……それが人間の強さだ。 この老人はとくにその強い意志の力を持っている。 大樹をトロウの支配から取り戻すためには、そして祖国の仇を討つためには、我々地竜族にとって、この男の力は絶対に必要だ。そう思った。 だから私はこの老人、グリムに仲間になってほしいと勧誘した。 「お主はこんな辺鄙な場所で一人で暮らしておるのか? だとしたら、何かと不便も多かろう。もし力を貸してくれるなら、お主もアルヴで暮らせるようアルバスにかけあってやる。悪い話ではないと思うが」 グリムは黙っていた。その沈黙が肯定なのか反対なのかは、彼の被っている銀の仮面のせいで表情から読み取ることはできなかった。 返答を待っていると、グリムはくるりと背を向けて歩き出した。 「ま、待つんじゃ! それは私には力を貸せないという意味か!?」 背中に向かって叫びかけると、グリムは足を止めて振り返ることなく言った。 「ワタシははぐれ者だ。今や機械弄りなど、この魔法の時代においては誰も見向きはしない。ワタシは時代を逆行する……いや、時代に取り残された存在なのだ。しかし、機械技師としての生き方は我がスヴェン家のルーツであり、そしてそれがワタシの選んだ生き方だ。今さらどうして人の輪の中になど戻れようか」 「自分の生き方は人々に受け入れられない、と?」 「……それもあるかもしれないが、それ以前にワタシは他人には興味がない。さっきも言ったがワタシには時間がないのだ。ワタシの研究を完成させるためには、いくらあっても足りない。だから他人を気にかけている暇など一切ないと言えよう」 なるほど、この老人は自分の人生をその研究とやらにすべて捧げる覚悟らしい。そのために不要なものは一切を切り捨てている。他者との関わりも含めて全て。 しかし、本当にそうなのだろうか。もしそうなのだとすれば、それならばあの金属の竜は何なのか。何のためにあれを使ってアルヴを偵察していたのか。 「ならば一旦話を変えさせてもらうぞ。そもそも私は最近アルヴの周辺を嗅ぎ回っている金属の竜を調査するためにアルヴから来ておってのう……。単刀直入に聞かせてもらうが、お主の目的は何じゃ? 本当に他人に興味がないなら、なぜ偵察のような行為を繰り返す?」 私の予想はこうだ。おそらくこの老人、口ではああ言っておきながら、やはり本当は寂しいに違いない。人恋しさから、あの金属の竜を使って近くの集落を眺めていたのではないだろうか。 アルヴ側から見れば、その位置が一定でない特性上、何度も追跡されているような印象を受けるが、もしかすればグリムは近くの集落を手当たり次第に観察していたのだ。つまり、アルヴ以外の街にもあの金属の竜は現れているはず。 どうやってアルヴの位置を特定してきたのかはさすがにわからないが、おそらく古代の機械技術というのは何かこう、そういうすごい秘められた特殊能力みたいなものがあるのだろう。 人恋しさから偵察の真似事をしていたのなら、それが突破口になる。あの老人は自分は一人で生きていく、それが生き方だ、と意地を張っているだけに違いない。 「隠しても私にはわかるぞ。お主、本当は寂しいんじゃろう? だからこの浮島で一人研究を続けながらも、あの金属の竜を飛ばして付近の街の様子を探っておる。それにセッテたちをここに招いているのも、その何よりの証拠じゃな」 「ほう……。なかなかの推理力である」 よし、一歩前進したか。 そう思ったのも束の間、予想は外れていたことを私はすぐに思い知った。 「しかしな。あの若者三人組はワタシが招いたわけではないのだ。あの金属竜……ワタシはあれをゴライアスと呼んでいるのだが、飛行テストのために自動操縦であれを巡廻させていたところ、あの三人組が勝手に乗り込んでここまでやってきてしまってな。どうしてもゴライアスに乗って空を飛びたいというので、研究の邪魔をしないことを条件に好きにさせている」 「そ、そうだったか。私はあやつらの保護者のようなもんじゃ。もし迷惑をかけていたのなら申し訳ない」 「問題ない。おかげで背中に人を乗せての飛行データが取れる。それによる燃料消費への影響を確認するのと、重心調整の精度を向上させるために必要なデータだ」 「そ、そうか。だがそれだけではまだ話は終わっておらんぞ。アルヴや周囲の街を観察していたのが何よりの証拠。人が恋しいのならこそ、私たちの仲間になってほしい。誰も研究の邪魔はしないと約束するし、そのための場所も提供しよう」 「……いつワタシが周囲の街を観察していると言った?」 「え?」 「たしかにワタシはゴライアスにアルヴのデータを集めさせていた。あれには高精度のカメラが搭載されている。分厚い雲の層を突き抜けて、その内部の様子を観察できる特殊なカメラだ。そしてアルヴにはマーカーを設定してあるので、位置が変わってもゴライアスにはすぐにわかる。マーカーの発する特殊な電波のおかげだ」 カメラ? マーカー? デンパ? おそらく機械に関する専門用語なのだろうが、私にはよく理解できなかった。 その後も専門用語満載の難しい話をグリムは続けた。 とりあえず理解できた範囲で話を総合すると、グリムが観察していたのはアルヴだけらしい。では何のためにアルヴを観察していたのかというと、そこに暮らす竜人が目当てだったらしく、竜人を観察することが研究に必要なのだそうだ。 「あそこはいい。竜人がたくさん集まっている。まさに資料の宝庫なのだ」 「資料? そもそもお主は時間がないというが、一体何の研究をしておるのだ?」 「ほう。聞きたいかね? ワタシの人生を賭けた情熱の一端を。そう、あれはまだワタシが青春の一途にあった頃――」 「……手短に頼むぞ」 この老人は無駄に長話を披露したがる傾向があるらしい。話の九割がたは結局のところあまり関係ない話だったのでばっさりと切り落とすとして、重要そうなところだけまとめると、つまりこういうことだ。 グリムは若い頃、機械に興味を持って最初にやろうとしたことが空を飛ぶことだった。彼の祖先が開発したという飛行艇は、現在の魔導船の原型にあたる機械であり、それは魔法の力に頼らず燃料と機械の力で空を飛んでいた。 それに感銘を受けたグリムは、まずは小型の飛行艇模型を作ることにした。スヴェン家には家宝として代々飛行艇の設計図が受け継がれていたらしいが、かなり古い時代のもののためか、紙はぼろぼろになり、そこに描かれた図もかすれてほとんど判別できなくなっていた。それに当時はありふれていた材料も今では希少だ。 そんな状態からグリムは、数十年かけてようやく実際に飛ばせる飛行艇模型を完成させることに成功した。 あとは同じものを大きさを変えて作ることができれば、古の飛行艇を今の時代に復活させることができただろう。しかし、魔導船が主流になっている現在にわざわざ飛行艇を復活させたところで、見向きもされないのは目に見えている。 そこでグリムは大型の機械に頼らず、小型の機械でなおかつ人間一人の力で空を飛べるものを開発しようと考えた。飛行艇は大型で大量の燃料を必要とするし、操縦には特別な技術が必要で、メンテナンスも大掛かりなものとなる。 そうではなくて、例えば小さな機械ひとつを背負うだけで手軽に誰もが空の旅を楽しめるようなそんな夢のような機械。そういうものをグリムは目指していた。 いわゆるジェットパック構想。過去の時代、機械技師たちが幾度と挑戦し、そしてとうとう成し遂げられなかったものだ。 まず背中に背負う形をしているので、機械そのものが身体にかなり近い位置にある。ジェット噴射の力で空を飛ぶというのが基本構想だが、火が身体に近すぎてそのままでは火傷をしてしまう。それに燃料タンクを直接背負っているようなものなので、万が一事故が起これば非常に危険だった。 そこでグリムはジェットパックに翼をつけて、その翼からジェット噴射を行うことで火を身体から遠ざけた。翼の形を工夫して空気抵抗を制御し、さらに浮力を生んで飛行を助ける設計。素材も試行錯誤の末に、十分な耐久性を備えるものを選んだ。 そして完成した試作品第一号、それをもってグリムは初のテスト飛行に挑んだ。 ――しかし、結果は失敗だった。 これがもし地上の実験なら成功していたかもしれない。しかしここは空の世界。 地上から飛び立った場合よりも、開始時点からすでに高度がかなり高い。そして高度が高くなればなるほど気温は低くなる。 結果、ほんの少し上昇しただけで燃料が凍結してしまい、グリムはそのまま空の底へと真っ逆さまに落ちていった。 死を覚悟したそのとき、彼を救ったのは名も知らない風竜だったという。 風竜はそれほど人間に対して友好的な態度ではなかったが、翼を持たない身でありながら空を飛ぼうとするその心意気だけは気に入った、と彼を称賛した。 これをきっかけに、グリムは竜に強くあこがれるようになっていった。 そして彼は空を飛ぶ研究に竜を取り入れることにした。かつての機械技師たちは地上で暮らしていた。だから竜という存在を知らなかった。彼らの知らなかった竜というものを取り入れれば、彼らの成し遂げられなかった研究を自分が達成させられるのではないか。そうグリムは考えたのだ。 まずは最初に、飛行艇の設計を応用して機械で竜を再現しようとした。竜を研究に取り入れるならば、まずは竜の構造を理解し、そしてそれを機械的な構造に落とし込む必要があったからだ。 その再現にまた長い年月を費やすことになるのだが、その結果としてできたのが例の機械の竜ゴライアスだった。 次はそれを小型化する番だ。模型から大型の飛行艇を作ったときの逆をすればいい。人ひとりが搭乗するサイズの機械の竜を作り出す。 だが実際に完成させてみると、それはグリムの思い描いていたようなものとは違っていた。 「やはりこれはあくまで乗り物だ。ジェットパック構想は、機械で補助はしながらも基本的には人ひとりの力で飛ぶイメージ。これには自分の力で飛んでいるという感覚が足りない。そう、風を感じられないのだ」 そこでグリムは、機械の竜を分解して鎧のように身体に装着できる形にしようと考えた。鎧が身体を護るので、火傷や事故の危険性も軽減できるはずだ。 しかし、これもうまくはいかなかった。まず全身を護る鎧では重過ぎて宙に浮かぶことすらできなかった。なんとか軽量化してみると浮かぶことはできたが、まったくバランスを取ることができずに振り回されたあげく、地面に激突した。 機械の竜はバランスが取れていた。竜の首や尾が長いのはちゃんと意味があったのだ。翼をブースターとした場合、大きくずっしりとした身体が中心に来るのは重心を支える上で非常に重要だ。そして前後に伸びる長い首や尾が細かいバランスを調整するのに一役買っている。 一方で人間の身体は細長い棒状だ。そして中心よりもむしろ頭が重いので、頭のほうにバランスを崩しやすい。人間は飛行に適した身体をしていない。 翼の大きさを調整したり、竜の尾を模した部品をつけてみたりと試行錯誤を繰り返したが、ここで彼の研究は行き詰ってしまった。 「先人たちが成し遂げられなかった研究。やはり人ひとりの力で空を飛ぶというのは、しょせんは夢物語なのだろうか……」 そんなときにグリムは竜人という種族の存在を知った。 竜人とは人間と竜族の間に生まれた存在。その姿は様々だが、中には翼を持ち、自由に空を舞うことができる者もいる。これだ、とグリムは思った。 当時迫害を受けていた竜人たちは身を隠して各地に散っており、彼らを探してグリムは空の世界中を旅して回った。 そしてついにアルヴという竜人たちの隠れ里の存在を嗅ぎ付けたのだった。 「……長すぎるわ!」 言っておくが、これで話の一割だ。ここにあと九割の無駄な話が加わるというのだから、本当にもう聞かされる身としてはたまったものではない。 「まったく。お主はまず結論を先に話すことを覚えるべきじゃぞ。ええと、つまりアルヴを観察しているのは、翼を持つ竜人を参考にするためなのか」 「左様ッ! 竜人のあの絶妙なバランス。あれこそまさに自然の生んだ奇跡のバランスだ! 人のように細長い体形でありながら、しかしわずかに長い首と体格にたいして不自然なほど長いと思われていたあの尾。だが翼を持ち空を飛ぶことを考えるとむしろあの長い尾は必然! あれこそ人が空を飛ぶために必要な究極にして完璧な形であり、あれを取り入れることによってワタシの研究は……」 「わかったわかった。頼むから落ち着いてくれんか」 つまりまとめると、グリムはアルヴの竜人を参考にして、空を飛べる翼のような機械を作ろうとしている。そういうことだ。 あの長い話がたった二行で終わってしまった。これだから、話の脱線の多い人間は困る。さっさと結論を言え。 ともかく、グリムがアルヴに関心があるということはわかった。これはこんどこそ突破口になるはずだ。 「時にグリム。ゴライアスを使ってわざわざ遠くから観察しておるようじゃが、それなら実際にアルヴへ行って竜人を観察したほうが良いのではないか? カメラ越しではなく直接その目で見ることで、より詳細がわかるやも知れんぞ」 「それはその通りだな」 「ならばそうすれば良いではないか。お主の目の前にそのチャンスが転がっておるのだぞ? なぜそれをつかもうとしない」 「今、努力をしているところだ。先程、ワタシは身体をいずれ脳以外すべて機械に置き換えるという話をしたな」 先程、というにはあの長い話のせいで違和感を覚えるが、たしかにそうだった。この老齢の男はすでに人間の寿命を遥かに超えて生きている。それは老化によって衰えた器官を機械で代用しているおかげだという話だったが。 「ワタシはいずれ身体の外部も機械に置き換える。そしてそのときは、竜人に模した姿で設計しようと考えている。アルヴは竜人の国なのだ。竜人の国に入るには、竜人にならなくてはな。それが礼儀というものだろう」 「何? ではお主は自らを改造して竜人になろうというのか」 「あくまで一時的な話だ。ワタシが真にあこがれるのは竜である。ゆえに竜人をモチーフにした飛行装置の研究が終わったら、ワタシは自分のための研究を始めたいと思っている。すなわち、ワタシ自身が機械の竜になるのだ」 「…………???」 「何を驚いた顔をしている。そもそも人間の身体は飛行に適していない。竜の身体こそが飛行に最も適している。ならば竜になればワタシは自由に空が飛べる。そうだろう?」 竜人になればアルヴに入れる。そして竜になれば空が飛べる。 そんなことを真面目な顔をして言い放つこの男の考えていることが、私にはよくわからなくなった。竜人とか竜になると言っている話のことではない。あくまで機械にこだわって、自分の身体を改造しようとしている点についてだ。 一時的に姿を変えるだけなら変性魔法を使えばいい。私やクエリアがよく人間の少女に変身しているように、あるいはオットーがフレイヤの魔法で竜と化していたように、どちらも魔法で簡単に解決することができる。 そもそも浮遊魔法が存在するこの世の中で、わざわざ機械のジェットパックとやらで飛ぶことにこだわるのはなぜなのだろうか。 そのことを直接聞いてみると、グリムはそれをばっさりと否定した。 「魔法など邪道である。そんなものはズルだ。ワタシは人間の力だけで空を飛びたいと考えている。魔法は人間が生み出したものではないのだからな」 私にはわからない。それを言うなら機械を作るための金属も大地が生み出したものだし、自分の魔力を使って魔法を使えば自分の力ということになるはずだが。 時に人間とは頑固である。一歩はなれて客観的に見てみれば、すごく効率の悪いことをやっているというのに本人はそれに気がつかない。そして時にはそれを最後までやり通してしまう。 無理も通れば道理になるとは言うが、私にはとても真似できない道理だ。 しかしそれをやり通してしまうその道理は、強い意志の力なくしては為しえないこと。その力は称賛すべきものだし、私が期待している奇跡の力だ。 「ふむ。なんて頭の固いやつじゃ。しかし、ますます気に入ったぞ。ならば私もその強い意志の力をいうのを真似してみようと思う。私は絶対にお主を仲間として連れて帰ると決めたぞ。さあ、私と一緒にアルヴへ来てもらおうか」 まだ私はその『強い意志』というものを完全に理解したわけではない。ここで力ずくでグリムを連れ帰ることもできるが、それは強い意志の道理に適った行為なのだろうか。それともあきらめずに説得を続けることこそが、強い意志らしい手段なのだろうか。 とにかくあきらめない。絶対にやってみせる。 その意気が大事に違いないと心に言い聞かせて、どんな長期戦になろうとも、なんとしてもこの男を仲間に引き入れてみせるぞ、と私は身構えた。 すると、 「よし。ではそろそろアルヴへ向かうとするか」 グリムはあっさりと承諾してみせたではないか。 「な、なんじゃと!? あれほど反対していたのに、どうしてそんな急に」 「何を驚いている。いつワタシが反対だと言った?」 「今さら人の輪には戻れないとか何とか言っておったじゃろうが」 「言ったな。しかし反対だと言った覚えは少しもないぞ」 「え?」 「あのフレイという青年から事情は聞いている。貴女が案内してくれるのだろう? さあ、早くワタシをアルヴへと連れて行ってくれ」 くそう。だから結論から言えと言ってるだろう! どうやらすでにフレイが説得して話がついていたらしい。 人の輪に戻るつもりはないし、まだ身体を竜人に改造していないので、アルヴァニアの街に住むつもりもない。 しかし観察を重ねたおかげでアルヴの地理にはけっこう詳しいらしく、街はずれの雲の森にすでに目星をつけていたらしい。そこに拠点を設けて研究を続けることを条件に彼はフレイの話に乗ったそうだ。 せっかく身構えていたというのに肩透かしを食らってしまった。 強い意志の力を持つグリムが仲間になってくれるのはありがたい。願ったり叶ったりだ。しかしせっかく絶対にあきらめないと心に言い聞かせた私の誓いは? このもやもやしたすっきりしない気持ちは一体どうすればいいのか。 私が意志の力を理解できるようになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。 やがて機械竜(ゴライアス)に乗って戻ってきたセッテたちとともに、私はグリムを連れてアルヴへと帰った。フレイはまだいいが、セッテとゲルダは一体何をしについてきたのだろうか。 帰りはグリムの操縦するゴライアスに三人を乗せてもらったので来るときほどは疲れなかったが、精神的にはどっと疲れる一日になった。 この疲れも意志の力で吹き飛ばすことができればいいのに。 Chapter48 END 魔法戦争49
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下級魔族・上級魔族について 個人的には下級魔族はいらないでおk -- 名無しさん (2010-03-31 22 21 49) 魔族に弱点つけようぜ -- 名無しさん (2010-03-31 22 32 23) 魔系には//無効で下級は残してほしいかな 上級はいらない -- 名無しさん (2010-04-01 00 53 22) 魔族戦記にしたのかよ出現率意外と高いんだぞ? -- 名無しさん (2010-04-01 10 49 16) そしたら下級魔族の能力で条件を上級魔族のにするとかは? -- 名無しさん (2010-04-01 18 42 44) そもそも惜しいから何か付けるとかいう考えが安易すぎる バランス面からいえば改悪以外のなにものでもない -- 名無しさん (2010-04-02 02 45 55) でも多数決は意外に賛成派が多いんだな -- 名無しさん (2010-04-02 02 54 02) あれだなよく考えずに新しいものにとびつくやつらが多いんだな 魔法戦記は好きだけど深く考えたり議論したりするほどは好きじゃないってやつが多いんだよ -- 名無しさん (2010-04-02 02 59 15) ダメだわ。下級魔族の条件だと確かに魔族戦記になる -- 名無しさん (2010-04-02 03 16 10) 下級だけは反対にいれたな 上級とかは悪役やりやすくていーんじゃない -- 名無しさん (2010-04-02 03 20 00) 魔族だろうと魔法使って「魔法」戦記してんじゃん 平和ボケを壊しやすくていいけどね -- 名無しさん (2010-04-02 03 53 30) 確かに平和ボケ壊してくれていいよな まさか魔族まで平和ボケしないだろうし -- 名無しさん (2010-04-02 04 00 17) そのうち平和ボケするようになると思うよ下級魔族は よくでるからね -- 名無しさん (2010-04-02 08 55 08) 早速面倒くさがりの魔族は出てた 強制する訳じゃないけど魔族になった人は争乱を起こしてほしい -- 名無しさん (2010-04-02 15 29 07) それやると魔族以外が争乱起こしにくくなるような 後上級は大文字2小文字1だけでよくない? -- 名無しさん (2010-04-02 17 48 50) いや、魔族と言うか、能力が高い人が派閥作って乱闘がいいんだよ でも最近は能力高くてものんびりする人が多いから、魔族(能力高い)が出やすいことで派閥つくって乱闘しやすいってこと -- 名無しさん (2010-04-02 18 51 37) 魔族はなくていいな せめて/無効か光弱点とか弱みを付けて欲しい -- 名無しさん (2010-04-21 22 23 58) 弱点案はわりと出ているよな 光が弱点なら闇も同等にした方がいいような気もするけど -- 名無しさん (2010-04-26 23 56 30) 下級の属性付加は2属性でいいだろ -- 名無しさん (2010-06-07 00 11 00) 下級魔族を二属性にして 例えばXyzみたいな小文字ニ個のものに四属性の中級魔族的な何かを って案を思いついたんだけども…… -- 名無しさん (2010-11-27 01 09 50) 上級の一部が弱体化って事? -- 名無しさん (2010-11-27 11 02 40) 下級を弱体化して上級も一部弱体化したらバランス取れるんじゃないかと思った次第ですはい -- 名無しさん (2010-11-30 03 12 49) 成程、でも下級はすでに廃止されちゃったんだ -- 名無しさん (2010-12-01 17 34 15) そうですかありがとう失礼しましたごめんなさいそれでは永久に採用されないシチュ案をメモ帳に書き溜める作業に戻りますね -- 名無しさん (2010-12-01 22 45 12) 単属性は多属性よりその属性は強いとかはどう? -- 名無しさん (2011-04-01 20 37 03) ロールしやすいように 1のコンマで最初の場所だけ決めないか? 別に強制ではないけど目安として -- 名無しさん (2011-08-27 19 53 05) 目安となるとネタ帳とかへの記載かな? 面白そうとは思うがどうにも実感がつかないので 会話か議論あたりにでも場所の実例を上げてみていただけないだろうか -- 名無しさん (2011-09-02 23 03 22) 名前 意見 武器システム 武器の属性を自分に付加できるってどゆこと あと鉄持ちと戦士以外に武器いるの?“魔法”戦記だろ -- 名無しさん (2010-04-01 09 33 16) 俺も戦士と鉄以外は持たせなくて良いと思う。 -- 名無しさん (2010-04-01 09 53 14) まーた改悪か -- 名無しさん (2010-04-01 10 47 04) 魔法使いが武器持って何するの? 雰囲気のために杖装備するくらいしかないだろ -- 名無しさん (2010-04-02 02 42 29) 煙、音単体とか戦えないやつの救済になる -- 名無しさん (2010-04-02 02 53 34) それただの戦士涙目じゃないか 煙、音単体でも戦えるぞ -- 名無しさん (2010-04-02 03 00 10) うぃきの説明見る限りじゃ戦えたとしても戦闘能力ほぼ0 戦士のほうが武器の扱いに優れるだろ? まあおとなしく多数決の結果でも待つか -- 名無しさん (2010-04-02 03 19 07) 改悪改悪言ってるのは自治厨 多数決に従えば -- 名無しさん (2010-04-02 03 51 45) ↑↑ 煙は相手の動きを制限しながら武器持てば 音は自分の身体能力あげて武器持てちゃえば 戦士ともまともに接近戦できちゃうわけですが まぁまともに戦うかどうかはその人次第だけどね 煙や音は武器なくても複数戦ならかなり強いしね 一人でも工夫して頑張れば他の属性ともまともに戦える さらに魔法は戦い以外にも応用できる ほら戦士涙目だろ 唯一特化していた接近戦を他の属性にとられちゃうんだぜ -- 名無しさん (2010-04-02 08 44 59) あと↑↑↑と↑↑にいいたいがなぜおとなしく多数決結果待たなければいけないのさ 何のためにこういう議論の場が設けられてると思ってるの? 少数派が多数派になりたいために自分たちの意見の理由をだしたらだめなの おとなしくしとけっていうのは今多数派だから「とりあえず少数派は黙っとこうか^^」って感じに見えるぞ -- 名無しさん (2010-04-02 08 52 31) 戦士涙目を防ぐためにも魔法使いは果物ナイフ握ってるくらいでいいんじゃないか?もしくは戦士と魔法抜いて戦闘したらどれだけ蹂躙されても文句言えないくらいにするか -- 名無しさん (2010-04-02 16 24 55) もともとどっちにしろ戦士涙目じゃん レベル1だからかわらない 結局お互いが楽しめるように戦うしかないでしょ? 武器があれば様々な魔法が見れて楽しい -- 名無しさん (2010-04-02 18 36 58) 武器に属性不可は、作るときにしかできないもんだと思ってたんだけど 鉄持ちただ武器つくるだけじゃん 後から属性追加してるやつ意味わかんない -- 名無しさん (2010-04-02 18 58 31) ↑ あきらめろ新参の影響だ 新参来るのが悪いとはいわんが -- 名無しさん (2010-04-04 12 48 16) 新参新参言ってるけどそんなに大事ならテンプレに書いとけばいいだろ -- 名無しさん (2010-06-07 00 26 59) 武器システムについて、武器の入手及び携帯に関する新案(暫定版) 魔法使い、戦士は以下の基準により入手、及び携帯できる武器に制限がある 器。 魔法使い(+なし)杖、ナイフ まで 魔法使い(+1)軽量武器 まで 魔法使い(+2)軽量武器、技量武器 まで 魔法使い(+3以上)軽量武器 技量武器 重量武器 戦士(+なし)軽量武器 技量武器 まで 戦士(+1以上)軽量武器 技量武器 重量武 各武器の分類は下記の表を参照。 +無し魔法使い用武器 杖、ナイフ 軽量武器 杖、ナイフ、短刀、小刀、匕首、ダガー、カタール、フランベルジェ、パタ 棒、寸鉄、扇、十手、手裏剣 技量武器 弓、刀、片手剣、片手斧、ヌンチャク、ブーメラン、鉄甲、吹き矢、スリング、鎖鎌、 棍、刺突剣(レイピアやエストック)、釵、トンファー、サップ、投槍 重量武器 両手剣、両手斧、太刀、ポールウェポン(ハルバードやサイズ、槍、薙刀)、ハンマー、 盾、金属防具 -- 名無しさん (2010-08-14 04 20 07) 戦士の武器制限には反対かな -- 名無しさん (2010-08-15 12 58 18) 俺は賛成だな -- 名無しさん (2010-08-16 01 17 13) 盾と金属防具が重量武器に入るのか? 防具の中にも種類は色々あるから重さで縛るのは無理だろう 武器だって重いから駄目だって言うなら風魔法を付与して軽くしてしまえばいいんだろ? まぁ、ある程度までしか軽く出来ないだろうけど -- 名無しさん (2010-08-16 11 12 10) 戦士は何だって持てていいと思う +は純粋に上手さだけに作用するとかで。 後鉄魔法使いの優位はなくなったんだっけ? -- 名無しさん (2010-08-16 16 31 06) 名前 意見
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蒼空の守護者エルス C 光文明 (1) 500 クリーチャー:ガーディアン フレーバーテキスト DMO-01 ナサエルは人間界から、マジカル・ガールとなるであろう人間をこの世界に呼びつけた。 作者 広ヒロ 評価・意見 名前 コメント 収録セット DMO-01 基本セット
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450 名前:星空のフロンティア[sage] 投稿日:2005/06/05(日) 01 02 45 星空の失踪日記 【ネタバレ】名作を要約するスレ【上等】
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Chapter50「ちびっこ戦記5:青い猫」 ティエラの杖の先には激しく燃える火の玉が浮かんでいる。 どうやら相手は火の魔法が得意のようだな。それならば楽勝だ。 なんたって、わたしは水竜なのだ。水の扱いはお手のもの。火と水、相性ではどちらが有利かなんて、誰が見たって明らか。この勝負はいただきだ。 「でも本当にいいのか、猫の魔女さん? こんな場所で火の魔法なんて使ったら、せっかくの木の家が黒コゲになってしまうんじゃないの?」 「おっと、心配してくれるのかい。それなら大丈夫さ。すでにこの島全体に耐火魔法をかけてある。だから、地獄の業火が燃え盛ろうともぼやひとつ起こさないよ」 「ふぅん、そう。だったら耐水魔法もかけたほうがいいな。家が洪水で流されちゃうかもよ!」 家のすぐ外に泉があったのをわたしはよく覚えている。 魔法媒体としては十分だ。大地の魔法は土や植物などの自然を、火と風は空気を媒体とするが、水は当然ながら水分を媒体とする。 空気中にも水分はあるので、ムスペのような乾燥した場所でもなければ、空気がある限りは水の魔法は力を発揮することができる。 が、もちろん大きな媒体が近くにあれば、それだけ魔法の力は大きくなる。 わたしは泉の水を呼び水として、鉄砲水を生み出した。 呼び出された水は木の玄関扉を突き破り、一直線に獲物を呑み込む大蛇が如くティエラに襲い掛かる。 相手は火の魔法使い。逆立ちしたって、火は水に敵うわけがないのだ。 この勝負、勝ったな。そう思って拳を握りしめガッツポーズを決める。 が、握りしめたはずの拳に違和感がある。 (なんだ? うまく握れない……?) 握りかけた右拳を見ると、わずかに指が短くなっていて、握り拳を作るには長さが足りなくなっていた。 (なんだこれ。またニンゲンに化ける魔法を失敗したのかな) それだけではない。握りかけていた指が自分の意思に反して勝手に開いていく。 いや、よく見るとそうではない。現在進行形で徐々に指が縮んでいるのだ。 やがて指はかなり短くなってしまい、その手はものをつかむのが困難な形に変わってしまった。慌てて左手を見ると、そっちも同じ有様だった。 「な、何これ。もしかして、これも敵の攻撃!?」 顔を上げると、目の前にはさっきと変わらない場所で、腕を組んで不敵な笑みを浮かべている三毛猫の姿が目に入った。 「まさかそんな、なんともない!? さっきの鉄砲水はどうなったんだ」 「ああ、あの水? あの程度なら簡単に蒸発させられるよ。一瞬にしてね」 「なんだって! わたしの渾身の一撃だったのに!!」 「あれで全力? 悪いけどあの程度じゃあんたの力を認めるわけにはいかないね」 「ま、まだまだ! わたしには氷魔法だってあるんだ。まだ終わってない!」 たしかに氷は火に対して不利だ。なぜなら氷は火に溶かされてしまう。 だけど忘れてならないのは、わたしは水の魔法の使い手でもあるということだ。 氷が溶ければ何ができる? そう、氷は溶けて水になる。わたしはその水を操ることだってできるのだ。つまり、わたしの能力は水と氷の複合攻撃。氷が溶かされても、そのままその水を攻撃に転化させられる。水と氷を同時に扱えるのがわたしの強みなのだ。 「なるほど。だったらあたいだって火だけじゃないよ。もう忘れたのかい? あたいは魔法で猫になっている。そういう魔法もあるってことだよ」 なんだか頭がむずむずする。くすぐったいというか、ぞわぞわするというか、今までに感じたことのない不思議な感じがする。 それになぜだろう。さっきよりもティエラの声がよく聞こえる。周囲の音がいつもよりも大きな音に感じられる。 「へぇ。なかなか似合うじゃないか。ほら、そこに鏡があるから見てごらんよ」 「えっ?」 頭上の違和感から、それが頭の上のことを言っているのはすぐにわかった。 思わず頭の上に手を伸ばしてみると、何か柔らかい感触がそこにはあった。 硬い感触が返ってくるのであれば何もおかしなことはない。わたしには珊瑚のように美しい自慢のツノがあるからだ。しかしこの柔らかい感触。こんなのは初めてだ。それに自分の手でそれに触れると、柔らかいのと同時に少しくすぐったい。 「どういうことなんだ!?」 わたしはティエラに促されて、壁際の鏡に自分の顔を映して見た。 するとわたしの頭の上には、ふわふわとした毛で覆われた三角の物体がふたつついている。鏡を見ながら恐る恐るその三角に手を伸ばしてみると、さっきと同じように柔らかさと同時に来るくすぐったさを感じた。 この三角は……いや、この耳はわたしから生えている。わたしの耳だ。 「これってまさか、猫耳!?」 鏡の中の猫耳はわたしの意思で自在に動かすことができた。 間違いなく、この猫耳はわたしの身体の一部だった。 「青い毛の猫耳だって? これは珍しいね」 「クエリアちゃんの本当の姿は青い鱗の竜なのよ。だからきっとその色が出たんだと思うわ。青い猫……いいわねぇ。ぬいぐるみにしちゃいたい」 「やめてよ、プラッシュ。青い猫はあたいのコレクションに加える。これはあたいの魔法なんだからね」 ずいぶんと勝手なことを言ってくれている。 やっぱり魔女というのはロクなもんじゃない。そう思うと無性にはらが立ってきた。こんな猫バカになんて負けるわけにはいかない。 「もう怒った。こうなったら本気を出してやる。家が壊れたら気の毒かなーと思って抑えてたけど、もう我慢できない。わたしの真の姿を見せてやる!」 わたしは変身を解いて水竜の姿に戻ることにした。 この家は竜には小さすぎる。だからティエラの家はきっと壊れてしまうだろう。 だけどもう気の毒だなんて思わない。そもそもケンカを売ってきたのは相手のほうなのだから、自業自得というやつなのだ。 「見よ! これぞわたしの真の姿ッ!」 両手を高く頭上に掲げ、力強く叫ぶ。 するとわたしの両手がブルーの光に包まれ、そして愛らしい肉球を備えた猫の前脚へと変わった! ――――むむむ? 「あら、かわいい。ねぇ、本当にぬいぐるみにしちゃダメかしら」 なんだ、まさかこのタイミングで不発なのか。 咳払いをして、わたしは改めて叫んだ。 「こ、こんどこそ、これがわたしの本当の姿だッ!!」 するとわたしの顔からは、にゅっと猫ヒゲが生えて、おしりからは猫のシッポが伸びてきた。 「ふにゃぁぁぁあああぁっ!? な、なんじゃこりゃぁぁぁ!!」 元の姿に戻れなくなっている。いや、それどころか、戻ろうとすればするほどに猫化が加速してるんですけどッ!? なにこれ、猫なの? 死ぬの? ぞわぞわとした感覚は背筋に走った寒気と冷や汗だけのものではない。その感覚が身体中に広がるとともに、全身をもふもふとした、それでいてしなやかな猫毛が覆い尽くしていく。心なしか身体も小さくなっていっているような気がする。 「もしかして何か変性の魔法を使おうとしてる? だったらそれは残念だったね。どうやらその魔法に関してはあたいのほうが実力が上みたいだ。だからあたいのかけた魔法がそれを上書きしてしまっているってわけさ」 輝くブルーの光が収まると、そこには小さな青い毛の猫が丸くなっていた。 言うまでもない。わたしだ。 (お、おのれ。わたしは竜族だぞ! それをこんな……よくも侮辱したな!!) わたしはそう叫んだつもりだったが、 「ふ、ふにゃっ! ふぎゃぎゃっ!!」 口をついて出るのは猫の鳴き声だけだった。 『おやおや、これはかわいい子猫ちゃんだ。ハロー、おともだち』 うるさい、おまえは黙ってろ。 『うるさいとは冷たいなぁ。その青い毛皮と同じように冷たい。同じ猫同士、仲良くしようじゃないか。ミーは猫仲間はいつでも大歓迎だよ』 黙れ、クソ猫。わたしはおまえなんかと馴れ合うつもりはない。 『ふ~ん。いいのかな、そんな態度取っちゃって。すぐにユーはミーに泣きついてくると思うけどなぁ』 なんだと。それはどういう意味だ。 『じきにわかるよ。じきにね……ニヒヒヒ! まぁ、もう少し”猫”を楽しんでいなよ。それでは邪魔者はひとまず退散しま~す』 シャノワールはそう言い残すと、プラッシュの肩に駆け上った。 一方プラッシュはわたしのほうを見下ろしながらこう言った。 「どうやら勝負あったみたいね。残念だけど、この賭けはあたしの負けね」 賭け? 一体何の話をしているんだ。 「そのようだね。それじゃあ約束通り、この子はあたいが預からせてもらうよ」 「しょうがないわね。クエリアちゃんなら勝てると思ったんだけど、どうやら買いかぶりすぎていたようね。残念だわ」 「まぁ、よかったらまた挑戦しに来なよ。あたいはいつでも大歓迎さ」 「そうするわ。そうねぇ……いっそ次はフリードちゃんあたりをぶつけてみようかしら。まぁ、負けは負けね。とりあえず今日のところは出直すことにするわ。それじゃあ、クエリアちゃん。元気でね」 元気でね? なんだそれ。 またね。とかじゃなくて、元気でね? おい、ちょっと待て。どこに行くつもりだ。 まさかこのままわたしを置いていくのか。おい。 ちょっと。ねえ。プラッシュ? 待って、冗談でしょ。プラッシュ!? しかし、プラッシュはそのままわたしに背を向けた。 彼女はシャノワールを連れて出て行った。そして戻ってくることはなかった。 (だ、騙された! 賭けって一体何の話? わたしは一体これからどうなるんだ) 途方に暮れるわたしの背後には、仁王立ちする三毛猫の魔女が立っていた。 「それじゃあクエリアといったっけ。元竜だろうが、元人間だろうが、ここではみんなが平等さ。すべては猫であり、それ以上でも以下でもない。それはもちろん、このあたいも含めて、ね。猫同士、仲良くやっていこう。よろしくね」 ち、違う! わたしは猫なんかじゃない。 わたしは、わたしはッ! ニヴルの第二王女のアクエリアス! 猫じゃない。わたしは竜だッ! 水竜なんだよぉぉぉーッ!! しかし、わたしの叫びは誰にも届かない。 誰もわたしの言葉を理解してくれない。 なぜなら、わたしの口から出るのは猫の鳴き声だけだったからだ。 Chapter50 END 魔法戦争51
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Break Card 極星帝国 3F/1C ウォリアー/スキャナー 5/5/4 【“カーラ・アステリオン”のみブレイク可能。】 ブレイクスルー/イニシアチブ このカードがセットされた場合、≪ネームレベルでない、▼を持つキャラクター全て≫を捨て札する。 No.1708/1717/PP260 Rarity R/SP/PP Illustrator 椋本夏夜 Expansion 審判の日 カード考察 セットした時にアグレッシブを持つキャラクターを問答無用で焼き払うという半端無い焼き能力を誇る。 ネームこそ焼けないものの、熱病をつかえば軽ブレイクやアグレッシブを持たないキャラクターも一掃できる。 アビリティなので無効にすることができず、ダメージを与えるわけではないのでシールドでは防げない、と言った感じで防ぐ手段がほとんど無いのが現状である。 その上でブレイクスルー、イニシアチブと優秀なスキルまで備えているので、所詮多段なんてただのネタですよw と言った空気をも豪快に焼き払ってくれた。 下段がシールドを持っているのも地味に便利。この下段は純血対策にもなる。 上段と下段ではスキルががらりと変化するため、ヒロイック・コマンドと組み合わせる事で 時にはバトル外ダメージから守り、時にはイニシアチブとブレイクスルーで攻撃と面白い事が出来るかもしれない。 なお、絵師が同じで同様にイニシアチブ持ちで▼持ちのアルテイアはネームレベルであるため彼女のアビリティを受けても残れる。 下段では重装備(シールド)、上段では高速(イニシアチブ)で雑魚を寄せつけず(ブレイクスルー)変身の際雑魚を一掃する、「お姉さま(おばあちゃん)は言っていた」等、おそらくキャラクターモチーフは仮面ライダーカブト。 ○関連カード 重戦士“カーラ・アステリオン”
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Chapter33「フレイと竜人2:竜人族と外から来た者」 ゲルダの家がなくなってしまったので、その日の夜はグリンブルスティに彼女を泊めた。ヴェンもフィンブルも戻ってこなかったのでゲルダと二人きりだ。 また火事を起こされないか心配ではあったが、まだ会ったばかりで年齢の近い男女が二人きりでいっしょに寝るというのはあまりよくないと思ったので、もちろん部屋は別々にした。 そのはずだったのだけど―― 嵐を抜けてのアルヴ入り。アルバスから突きつけられた衝撃の事実。そして純粋すぎるゲルダに振り回された一日。いろいろありすぎて疲れていたので、昨日は早めに眠ってしまった。そのせいか、今朝はいつもより早く目が覚めた。 アルヴの朝はとても静かだ。雲よりも高いこの空の世界には鳥はほとんどいないため、もともと空の早朝というのは静かなものだけど、今は自分以外の仲間たちはみんな出払っているせいもあってか、今日はとくに静かに感じる。 その静けさを耳で感じながら、清々しい気分で目を開ける。 と、目の前に静かに寝息を立てるゲルダの顔があった。 「…………え!? ちょ、な。なんでゲルダが隣で寝ているんだ!?」 寝相が悪いとか、そういうレベルの話じゃない。ゲルダとは別々の部屋で寝たはずだったじゃないか。それともあいさつ代わりに相手に抱きつくような竜人の文化では、添い寝がおやすみのあいさつ代わりだとでも言うのか。いや、あるいはあまりに疲れてたせいで記憶にないだけで、昨日の夜に何かあったのでは。 昨日グリンブルスティに戻ってから自分は何を話しただろう、ゲルダは何か言ってなかっただろうか、などと記憶の糸を懸命に手繰り寄せていると、そんな心配を知る由もなくゲルダが目をさまして、ぐーっと伸びをした。 「あ、フレイ。おはよ」 そしてあくびをしながらもう一度身体を伸ばす。 ううん。やはりゲルダは竜人だけどスタイルがいいな……じゃなくて。 「どうしてゲルダがここに? たしか別の部屋で寝てたんじゃ……」 「えへへ。フレイの船を見れたことが嬉しくてなかなか寝付けなかったんだ。だから昨日の夜はフレイと別れたあと船の中を探検してたんだけど、この部屋でフレイが寝てるのを見かけて。なんとなく面白そうだからいっしょに横になってたら、そのまま寝ちゃった」 えへへ、じゃない。まあ、何もなかったのならいいけれど。 フリードは羨ましがるだろうし、オットーには説教をされそうなので、とりあえずこのことは黙っておくとして、今日こそは竜人たちと直接会って話をしよう。 そもそも昨日ゲルダに会いに行ったのは、彼女から僕のことを紹介してもらう形で他の竜人たちに会えば、アルヴの外から来た僕のことを警戒せずに受け入れてくれるんじゃないかと思ったからだ。 それがなぜか昨日はゲルダの家に招かれることになって、気がつけば火事騒ぎ。そしてゲルダの家がなくなってしまった。どうしてああなったんだ。 とにかく今日こそは、ちゃんと僕のやるべき務めを果たしたい。 でもその前に朝食だ。朝食は一日の要だ、とはよく父上が言っていたことだ。 ゲルダをつれて船の中のキッチンへと向かった。グリンブルスティは小さな船ではあるが、キッチンやバスルームぐらいはある。もちろん、火や水は自前の魔法で用意する必要はあるけれど。 キッチンには冷蔵庫がある。これも魔具のひとつで、なんでも大昔に作られた機械を原型にしているらしい。かつては電気で動いていたらしいが、今は氷の魔力で動いている。クエリアやフィンブルがいるおかげでいつ魔力が尽きても心配はないが、人数が増えてきたので最近では容量のほうに心配がある。 それはさておき、とりあえず朝食として冷蔵庫からリンゴを取り出した。 ゲルダは火の魔法が得意みたいだが、また火事にされては大変なので火のいらないものを食べたほうが安心だと考えてのことだ。 「わたしが皮むこうか?」 「い、いやいいよ。僕がやるから座ってて。今はゲルダのほうがお客さんだし」 昨日得た教訓。危険すぎるのでゲルダに料理をさせてはいけない。 僕も慣れてはいないが、彼女にやらせるよりはずっとマシだろう。 「あ、痛っ」 「どうしたの? 切っちゃった?」 うっかり右手の親指の腹を切ってしまった。 やり慣れていないとリンゴの皮むきは親指を怪我してしまいやすい。それは包丁にばかり気を取られて、手のほうに注意が向かないせいだ。 「大したことないさ。ちょっと血が出ただけだよ」 「大丈夫、任せて。わたし回復魔法が使えるんだ」 そう言って患部に手をかざしながら、ゲルダは呪文を唱え始めた。 するとゲルダの手からは温かな光があふれ出し、それは優しく怪我をした親指を包み込んでいく。光は徐々に大きくなっていき、怪我をした僕の手全体をしばらく覆うとそのままゆっくりと消えていった。そして光が消えていくのと同時に指先の痛みも静かに消えた。 「どう? うまくいったかな」 たしかに痛みは消えた。怪我は治ったようだ。 しかし光が消えたあとの自分の手を見ると、なぜか指が六本になっていた。 「なんかひとつ多いような……」 「ええっ! ちょっと待って。もう一回やらせて!」 再びゲルダが回復魔法をかけると指の数は正常に戻ったが、こんどは指先の爪が鋭い鉤爪に変化していた。そして手の甲がゲルダと同じ色の鱗に覆われている。 「おかしいなぁ、呪文が違うのかな。じゃあもう一回」 「も、もういいよ! 気持ちはうれしいけど、僕は大丈夫だから! 怪我は治ったわけだし、これはあとで神竜様に元に戻してもらえばいいし」 「そう? まぁ、フレイがそう言うなら」 もうひとつ教訓。副作用が怖いのでゲルダに回復魔法を任せてはいけない。 そのまま見慣れない手でリンゴを切り分けて、二人で朝食をとった。 グリンブルスティはアルヴの街の外に停泊してある。中心部の竜人たちの区域、その外円部の竜人以外が暮らす区域、そのさらに外側にこの船はある。 まずは外円部を抜けて街の中心に向かい、竜人たちと話をしようと思う。 ゲルダと共に出発して街の外円部を歩いていると、人と竜の姿が交じり合った竜人とはまた違った奇妙な住人たちの姿が目に入った。 まるでブリキの人形のような金属の人間が歩いているし、脚の生えた鮫が水辺でもないのにうろついているし、やたら大きなカエルが二足歩行しているし。 ワケありの者たちがアルヴには集まってくるというが……なんというか、ワケありすぎる。人でも竜でもないが竜人でもなく、あれは一体どういう存在なんだ。 (ヴェンはこの外円部で自分の居場所を探すと言ってたけど、たしかにこんなにも濃い住人がいるなら、竜くずれが一人ぐらいいても全然違和感がなさそう……) トロウの手下のドローミに実験台にされてヴェンは竜くずれ、つまりはドラゴンゾンビに変わってしまったと聞いているが、さっき見かけたあの奇妙な住人たちもヴェンに負けず劣らず、壮絶な過去を背負っているのかもしれない。そう思うと、この外円部の集落はなかなかに闇が深そうだ。 そんな奇妙な住人たちのことを竜人たちはどう思っているんだろう。アルヴはもともと竜人たちが作った隠れ里だ。そこに彼らはあとから流れてきて住みついた。もしかしたら疎ましく思っていたりなんかもするんじゃないだろうか。 仮にそうだとしたら、竜人たちの部外者に対する目は厳しいはずだ。そしてアルヴの外から来た僕も、当然部外者ということになるわけだけど……。 僕は浮かんだ疑問を素直にゲルダに聞いてみた。 少し重い話題かと思ったが、ゲルダは全然気にしない様子で答えてくれた。 「街の外側の人たち? わたしたちとは交流は少ないけど、たぶん誰も嫌ってはいないと思うよ。なにより彼らを受け入れるように言ったのは神竜様だもん」 神竜アルバスはこのアルヴにおいては長老のような存在らしい。直接アルヴを治めているわけではないようだが、神竜様と呼ばれて大切に扱われている。 なんでもゲルダが言うには、かつて竜人たちのために魔法を駆使してこの土地を用意したのがアルバスなのだとか。そして彼の名をもとにして、この土地がアルヴと呼ばれるようになったのだそうだ。 そういう経緯もあって、竜人たちはアルバスの考えに同意して、外から来た者たちも隠れ里の秘密を漏らさないことを条件に受け入れているのだ。 「なるほど。それなら僕らも心配はなさそうだな」 「心配って?」 「いや、別に何も。じゃあゲルダは外側の人のことはどう思ってるの?」 「わたし? うーん、わたしはそうだなぁ。わたしが生まれたときから、もう外側の人たちは住んでたし……。よくわかんないかな」 「そっか。いるのがあたりまえの感覚か」 「でもまぁ、強いて言うなら面白いかな。アルヴの外のことが色々聞けるからね」 なるほど、ゲルダはアルヴの外の世界にあこがれているんだった。そんな彼女にとっては、外から来た者たちの話はとても興味深いものに聞こえるんだろう。初対面のときに、彼女が僕の旅のことを食い入るように聞いてきたように。 「それにアルヴの外にはいろんな種族がいるんでしょ! 楽しそうだなぁ」 それはもしかして、あの金属人間や歩く鮫とかのことを言ってるんだろうか。 夢を壊しそうなのでとても言えないけど、あれはさすがに外にもいません。 「フレイにそっくりな種族も住んでるんだよ。人間っていうんだよね?」 「へぇ、アルヴで暮らしてる人もいるんだ」 「うん。一人だけなんだけどね。蒼くて剣を持っててときどき変なこと言うの」 「……なんか、どっかで聞いたような特徴だ」 「しかも名前がたくさんあるんだよ! 蒼き勇者とか双剣の覇者とか、戦場を駆け抜ける一陣の風、親愛なるあなたの傭兵。それから……」 「ああ、たぶんその人知ってる……。すごくよく知ってる……」 そういえばフリードは傭兵としてアルバスの依頼を受けていると言っていた。 アルヴを拠点にしているとも言っていたけど、どうやら普段フリードはこの外円部で暮らしているようだ。 あれ? でも僕たちはフリードからこのアルヴのことを教えてもらってここに来たわけで……。明らかに隠れ里の秘密を漏らしてるんだけど、いいのかそれ。 「外側の人はあまり竜人たちと話さないんだけど、蒼き勇者さんだけはすごく気さくで、誰とでも話してくれるんだ。面白い人なんだよ! わたしにも頻繁に声かけてくれるし、とくに女性には優しくしてくれる感じ。いい人だよね」 ううん、明らかに下心がありそう。 でもそんな気さくなフリードの知り合いとわかれば、少しは僕のことも信用してもらえるかもしれない。まさか下心に手助けされることになろうとは。 そう思うと、呆れるべきなのか頼もしく思うべきなのか微妙な気持ちになった。 「え、ええと。フリー……蒼き勇者さんも外円部に住んでるってことは、外の世界から来たってことなんだね。どこから来たとか、聞いたことはある?」 とりあえずフリードの残念な点は目をつぶろう。あれでも剣の腕前は抜群だし、勇者を名乗るだけあって、彼が戦いにおいて苦戦している場面を僕はまだ見たことがない。かなり腕が立つのだけは確かだ。 しかしそれだけの腕前を持ちながら、フリードと出会うその前までは蒼き勇者の話なんて一度も聞いたことがなかった。あんなに強ければ、さすがに噂になるような気もするのだが。となると、少なくとも彼はユミルやムスペ、ニヴルのあるこの周辺の空域よりもずっと遠いところから来たことになるのだろうか。 持ち前の気さくさで、すぐに僕たちの仲間の一員として馴染んでしまったが、言われてみれば僕たちはフリードの素性については何も知らなかった。 アルヴの外に興味があるゲルダなら、何かフリードの故郷についても聞いているのではないかと思ったが、残念ながら彼女は首を横に振った。 「これまでに任務で行ったことのある場所はいろいろ教えてくれたけど、勇者さんがどこから来たかは話してくれなかったよ。『いい男には秘密がつきものだ』ってはぐらかされちゃって」 素性は不明。通称はいくつもあるのに本名はない。しかも秘密まで抱えているだなんて。なるほど、彼もワケありの一人というわけか。一体何者なんだろう。 「でも悪い人じゃないのは確かだよ。子どもとかにも優しいし」 ゲルダにはわるいけど、それを聞いてすぐに幼女(クエリア)をからかうフリードの図が頭に浮かんだ。まさか、何か問題を起こして遠い故郷から追放されてきた……とかそんなの、ないよね? フリードに対して小さな不安と疑念を抱えつつも外円部を抜けて、僕たちは外円部と竜人たちの居住区の境目にたどり着いた。 アルヴァニアの建物はすべて雲を固めて作られているが、大きさや形こそ違えど竜人たちの家にはある程度共通したデザインが見られる。それはおそらく竜人たちが培ってきた文化の表れなんだろうと思う。 対して外円部の建物は、様々な地方から様々な理由で流れてきた者たちが、それぞれの慣れ親しむ文化に従った方法で雲の家を作るので、その見た目に統一感はほとんど皆無で、彼らの奇妙な外見を反映しているかのように奇抜な建物が多い。 そのため外円部と竜人居住区に明確な線引きはないが、雰囲気でどこが境界なのかはひと目でわかった。秩序の竜人に対して、混沌のワケありたちという具合だ。 「まるで別の街みたいだ」 「面白いでしょ。同じ街なのに、まるで別の世界みたい。そしてそこで聞けるのはアルヴの外のもっと別の世界のお話! そういうのを聞いて育ったからこそ、わたしはアルヴの外の世界にあこがれるようになったと思うんだよね」 「ふぅん、そうなんだ」 こんな言葉がある。 『井の中の蛙大海を知らず。されど空の深さを知る』 ゲルダはアルヴから出たことがない。だから外の世界のことを何も知らないが、そんな彼女だからこそ、きっと外の世界は僕が見るそれよりもずっと輝いて見えるんだろう。 外の世界には竜人に対する差別もあるし、トロウの脅威もあるけれど、そんなことを心配することもなく、純粋に広い世界というものにあこがれをもっている。 (そういうのって……なんか夢があって、ちょっとうらやましいな) まっすぐに前を見て、何も恐れることなくその夢に向かって行動できるのはひとつの才能だ。大抵は何かを恐れたり不安を感じたりして、その一歩がなかなか踏み出せなかったりする。 そもそも自分の夢が何なのか、わからなくなってしまうことさえあるのだから。 (僕の夢って一体何だろう。トロウを倒して父上を正気に戻す。ユミルに平和を取り戻す。それは確かに僕の目指す道だけど、でもそれは夢とは違う) 父上を助けることも、祖国をトロウの支配下から解放するのも、もちろん僕自身がそうしたいと思って行動していることだ。しかしそれは、そうしたいのであると同時に、そうしなければならないことでもある。ユミルの王子としての責務だ。 それは確かに自分がそうしたいと思っていることではあるけど、何かにあこがれるような夢とはまた違ってくるものだ。 (僕は一体何にあこがれているんだろう。今はトロウのことで気持ちに余裕がないせいかよくわからない。すべてを終えたときにはわかる日が来るんだろうか……) 強いて言うなら、しっかりとあこがれるべき夢を持っているゲルダに、僕はあこがれているのかもしれない。ああやって、純粋に自分の好きなものに向かってまっすぐに向かっていけたらどんなにいいだろう、と。 「ゲルダはすごいね。自分の夢というものをしっかりと把握してるんだから」 「そう? ただわたしは、好きなものを好きって言ってるだけだよ」 「外の世界が見たいんだったね。今はやらなければならないことがあるけど、いつかそれが片付いたとき、もし良かったらグリンブルスティでいっしょに――」 外には竜人差別の問題もあるし、理想とは違う現実を知ることでゲルダをがっかりさせてしまう心配だってある。それでもゲルダと共に旅ができたら、きっと楽しいんじゃないかとふと思った。 だからなのか、気がついたらゲルダをまだ見ぬ未来の旅にさそっていたのだが、その言葉は最後まで言い切る前に遮られてしまった。というのは、突然僕たちの目の前に一人の竜人が飛び出してきたからだ。 「止まれ! 見かけない奴だな。おまえが外から来たという噂の奴か」 見たところまだ子どもの竜人のようだが、その子どもは鋭い目つきでこちらをにらみつけて、ぎりぎりと拳を握り締めている。 「他の奴らは騙せても、俺は騙されないぞ! おまえからは邪悪な気を感じる。アルヴに邪悪なものを持ち込む奴は、この俺が成敗してくれる!」 ああ、もしかしてとは思っていたが、やはり警戒されているのか。 邪悪な気と言われても心当たりなどないのだが、竜人の少年はいくら弁解してもこちらの言い分にはまったく聞く耳を持とうとしなかった。 ひとつ言えるのは、少年が僕に対して敵意があるのは間違いないということだ。 Chapter33 END 魔法戦争34
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新システム ◆オーブ合成 複数オーブを合成して強力なオーブに。合成には合成書が必要。 ◆MP(まもりびとポイント) 任務で得られるMPをMP交換所で色々なものが交換できる。 ◆マイセット 武器(オーブ含む)を登録しておくと、瞬時にその職業のその武器をもった状態になれる。 ◆アクティブスキル サポートスキルが二種類に分かれたもの。セットすることで能力を発揮する?(まだ取得してないので詳細不明) ◆パッシブスキル サポートスキルが二種類に分かれたもの。取得することで能力を発揮する?(まだ取得してないので詳細不明) ◆長時間採取 MPを消費することで30分、60分採取などが行える。60分まであるのを確認。360分もあるらしい その他 おともびとは自分のレベルで成長ではなく、MPを消費して強くする 単騎戦がすべてランキングではなく、単騎戦内のランク戦のみがランキング対象 オーブのかけらというものがない オーブは1つで1回使用可能 ひとつのオーブを複数の武器に装着可能っぽい
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Chapter62「フリード遠征8:イケメンかよ。惚れちまうだろ」 地獄だ。 フレイヤ王女の姿に変えられて、王女の格好をして人前を歩かされているだけでも苦痛なのに、なぜ大臣の息子なんかに言い寄られなくちゃならんのだ。 何度も言うが俺は男だからな。男色の趣味なんて微塵もないんだぜ!? しかしそんな魂の叫びも届かず、大臣の息子オスマンは力ずくで俺の身体を押さえつけると、目を閉じて口を突き出しながら顔を近づけてくるではないか。 てめえ、冗談じゃねえぞ! まじで無理! やめて、死ぬ!! なんとか逃げ出そうと抵抗するも、こいつやけに力が強い。 いつもの俺ならこの程度の男に力で劣ることなど絶対にあり得ないのだが、今はフレイヤの姿になっているせいか、自分の力もそれ相応に弱体化しているのだ。 振り返ってヴァルキュリアの面々に助けを求めるも、彼女たちは怒りに身を震わせたり真っ青になって慌てたりするだけで、助けの手を差し伸べてはくれない。 いや、できないのだ。ただの従者にとって、大臣の権力というのは抗うことのできない絶対的な力。下手なことをすれば城から追放もあり得るらしい。 ちょっと待て。フレイヤ王女には権力はないのか? 大臣に頭上がんないわけ? ユミル国の権力事情なんて俺は知らない。そんなことはどうでもいい。 とにかく今はこの人生最大の窮地をどうにかしてくれ! 誰でもいいから!! だが無常にもオスマンの顔は着実に近づいてくる。 ああ、その光景がスローモーションで見えるぞ。そして脳裏には走馬灯が。 脳裏? そうだ、俺の脳内にはフレイヤの意識が憑依している。 精神だけの状態でも魔法は使えるとフレイヤは言っていた。 この危機的状況を打破するにはもう魔法に頼るしかない。 フレイヤ様、どうか! なにとぞ、お願いします! しかしいくら念じても唸っても、脳内にフレイヤからの返事は届かなかった。 ……はぁ!? もしもし、ちょっとお姫さん? 返事がない、お留守のようだ。まさか逃げやがったのか。 そういえば憑依はいざとなればいつでも解除できるとか言ってたような……。 万事休す。 そして脳内には最悪の想像が展開され始めた。 結局抵抗虚しく、このいけ好かない野郎に手篭めにされた俺はあんなことやこんなことをされて陵辱されるに違いない。 中身が男だということも知らずに、このオスマンはそのままフレイヤ王女(俺)を手中に納め、権力にものを言わせて結婚を迫ってくるってわけだ。 そして初夜は見たくもない男の裸体を……地獄だ。 さらに俺は男なのに、この男によって抱かれ……地獄だ。 やがて望んでもいないこの男の子を孕むという展開……地獄すぎるぜ。 (……はぁ。さすがにその想像は下品すぎるんじゃないの。ドン引きね) 脳内に響く鈴を転がすような声。 おお、神さま女神さま。じゃなかった、フレイヤ様! このやろう、おまえ一人で逃げたんじゃなかったのか。 (人聞きが悪いわね。ちょっと魔法を使うために集中してただけよ。念波で助けを呼んだから、もうすぐ助っ人がやって来るはずだわ) その言葉通り、すぐに城の奥のほうから一人の青年が走ってくる。 そしてがっしりとオスマンの腕をつかまえて言った。 「やめないか! フレイヤ様が困っておられるではないか。いくら大臣の息子とはいえ、このような無礼な振る舞いは許さんぞ」 「ん? なんだ、エインヘリアルの隊長か。君さぁ、バルハラの治安維持部隊が城で何をやってるんだい? こんなところで油を売ってないさっさと仕事に行けよ」 「もちろん仕事中だとも。城だってバルハラの中にあるのだからな。その治安を乱すような行為を見逃すわけにはいかん」 「なんだと? 僕はただフレイヤ王女と楽しくお話してただけじゃないかぁ」 「ほう。では本当にそうなのかフレイヤ様に聞いてみようじゃないか。そうだ、せっかくだから大臣にも立ち会ってもらおうか。もしおまえの言う話が事実なら、フレイヤ様とお近づきになれるいいチャンスかもしれないぞ?」 そう言って、エインヘリアルの隊長はこちらに視線を送った。 なるほど。つまりは、おまえの親父に言いつけてやる作戦か。気に入った。 俺は返すように頷いてみせると、覚悟しとけと言わんばかりにオスマンをきつくにらみつけてやった。 「そ、そうだ。父上から大事なお使いを頼まれていたんだった。いやー残念だ。フレイヤ王女を父上に紹介するのはまたこんどにしよう。はっはっは……失礼っ!」 するとオスマンは慌てた様子で一目散に逃げていくのだった。 父親の権力を借りて威張ってるくせに、肝っ玉はずいぶん小さいようだ。 「行ったみたいだな。大丈夫だったか、フレイヤ?」 オスマンが視界から消えたことを確認すると、エインヘリアルの隊長は笑顔を見せながらこちらに手を差し伸べてきた。……というか呼び捨てかよ。 助けてくれたのはありがたいが、王女に対してやけになれなれしいな、こいつ。 一体何者なんだと考えていると、フレイヤが彼について説明してくれた。 この男の名はスキルニル。 さっきも言われていたが、バルハラ治安維持部隊の隊長をやっている。 もともとは城下街のガキ大将で、どうやらフレイの幼なじみらしい。 子どもの頃から親しい相手で、フレイヤにとっても兄弟のような感覚らしい。 (少なくともあなたよりもずっと信頼できる人よ) はいはいそうですか。 どうせ俺はうさんくさい男ですよ。 「どうしたフレイヤ。ぼーっとして、おまえらしくないな」 おっと、返事もせずにこいつを放っておくわけにもいかない。 とりあえず適当に話を合わせておかなければ。 「な、なんでもありませんよ。お、私は大丈夫です。助けてくれてありがとう」 「…………? なんか変だぞ。本当に大丈夫かよ」 「いえいえ、本当に大丈夫ですんで。それじゃあ私は急ぎますからこれで」 スキルニルだかなんだか知らないが、こんなやつに構っている暇はない。 こんな過酷な任務はさっさと終わらせてしまうに限る。トロウの元へ急ごう。 もちろん助けてくれたことには感謝しているがな。 ありがとう。そしてさらばだ、青年よ。 彼を後にしてその場を去ろうとすると、しかしスキルニルはフレイヤ(つまりは俺のこと)を引き止めた。 「待て。おまえ、本当にフレイヤか?」 げっ。さすがに幼なじみの目は欺けないのか。 慌てて言い訳をしてもボロを出すだけだ。俺は素直にフレイヤに助言を求めた。 (さっき魔法で彼の精神を読んだのだけど、どうやら彼は大丈夫みたいよ。ここは事情を話して彼を味方につけるべきだと思うわ) なるほど、それなら安心だ……ってちょっと待て! 事情を話すっていうことは、つまり俺の正体が俺、じゃなくてこのフレイヤの中身が実は俺だってことを、わざわざ俺の口から教えるってことだろ。 つまり俺がフレイヤ王女の姿になっているってことを話すってことで……。 (あら。何か問題でも?) そりゃ問題あるだろ。だって王女様の中身が男なんだぜ? (ないでしょ。そういう作戦なんだから、話せばわかってもらえるわよ) なくないだろ! 色々とほら、例えば俺の気持ちの準備とか……。 (そういうことなら全く問題ないわね。いいから早く話しなさい。王女命令よ) ひでえ。 俺はしぶしぶこれまでの経緯をスキルニルに説明した。 ヒルデたちも一緒になって説明してくれたので、変な誤解をされることなく彼は作戦に理解を示してくれたようだ。 「ははぁ、なるほどな。それで合点がいったよ。前からフレイヤの様子がおかしいとは思ってたんだ。やっぱりトロウに洗脳されてたんだな」 「うすうす感じていたのか」 「オレは昔からフレイヤのことを見てきてるんだ。気付かないわけがない」 「なるほど。ところでずっと思ってたんだが、おまえは洗脳とかされてないのか」 「ああ、大丈夫だと思う。たぶん城のみんなはトロウにうまく騙されてるだけで、操られたりはしていないんじゃないかな」 スキルニルの話を聞いてずっと疑問に思っていたことが解決した。 外の世界ではムスペやニヴルが攻め落とされたり、バルハラ城がいかにも怪しい暗雲に包まれたりときな臭いことこの上ない。しかしどうやら城内に暮らす者たちはトロウにいいように言い包められて、一切の疑問を抱くこともなく普通に生活を送っているらしい。……いや、それまさに洗脳って言うんじゃないのか? ともかく、フレイヤのように操られていたわけではないらしい。 「ムスペの件は先にあちらが手を出したので正当防衛の結果ということになっているし、ニヴルまでトロウの支配下になっていたとは知らされていなかった」 「そうか……。それにしてもフレイヤが操られていると知っていたなら、なおさらさっきはよく助けに来てくれたな。罠とは思わなかったのか?」 「ああ、フレイヤの声が聞こえた気がしたんだ。操られていたときのフレイヤじゃない、オレのよく知るフレイヤの声がね。そのあとで変な態度を取られたんで、やっぱりおかしいと思って疑ってしまったんだが」 「すまんな。その声はたしかにフレイヤ本人だが、おまえの目の前にいるのは中身が俺のフレイヤ王女だ」 「まったく驚いたよ。身代わりが男だなんて。誰か他に代役はいなかったのか?」 「そりゃ俺が聞ききたいぜ……」 フレイヤとの脳内会話は俺以外には聞こえないが、だからといってフレイヤが他人と話せない状態にあるわけではないらしい。 助けに彼を呼んだときと同様に、テレパシーの魔法を介してフレイヤはスキルニルと会話することができるようだ。 もっともその場合は、フレイヤとスキルニルの会話は俺には聞こえないのだが。 スキルニルの返答と相槌だけが俺には聞こえるのだが、なにやら楽しそうな会話をしているようなので少し悔しい。 もしかしてフレイヤって俺にだけ厳しく接してないか? その後、フレイヤに説得されたスキルニルは、このまま俺たちに同行して力を貸してくれることになった。 もともと彼はトロウに支配されたこのユミルでエインヘリアルの隊長として動いていたので、フレイヤの隣に彼が立っていても怪しまれる原因にはならない。 「トロウはおそらく王の間にいるはずだ。所詮オレは治安維持部隊。そう気軽に陛下とはお会いできない。だけどフレイヤ王女なら話は別だ」 「ああ。さっさとトロウを騙してこんな陰気なところはトンズラしたいね」 「ところで協力してやる代わりにひとつだけ言わせて欲しいことがある」 「おう、なんだ?」 「あまりフレイヤの顔で品の無い言葉を口にしないでくれないか」 「……すまん。努力はする」 その後スキルニルに案内されて、俺たちはバルハラ城の王の間へと向かった。 城のホールを抜けて中庭を囲む回廊を通り奥へ。再び屋内へ入るとそこは謁見などに使われる玉座の間だ。 その部屋の左右にある階段を上ると兵士の訓練場。そこから複数の通路が伸びていて、そのうちのひとつを行くと螺旋階段があり、それを上り切ったさらに先の通路を行くとようやく王の間が見えてくるという。 ……ううむ、これは俺一人じゃ絶対に迷子になりそうだ。 天馬は階段を上れないのでヴァルキュリアたちは中庭で待機だ。王の間は塔の上にあり広いバルコニーが隣接しているので、いざというときにはそこから救援に駆けつけることができる。 その螺旋階段へと向かう通路を抜けた頃……いや、王の間への通路だったか。 やけにこの城は迷路のように入り組んでいるのでよくわからなくなってきたが、とにかくヴァルキュリアたちと別れたあとのどこかで俺たちは一人の男に声をかけられた。 「おっと……。ちょっと待ちな、お二人さん。この先は王の間だ。あんたらのようなのが一体何の用があるっていうんだい?」 これまでにすれ違った誰とも雰囲気がまるで違う男だった。黒ずくめの服装をしていて、一目で使用人や兵士のような城に仕える者ではないことがわかる。 「その言葉、そのまま返させてもらおうか。おまえはどう見てもこの城の者じゃないな。一体ここで何をしている。貴様、何者だ?」 スキルニルは腰に提げていた剣を抜き放つと、その切っ先を突きつけながら鋭く問いかけた。 そんな様子を見て黒ずくめの男はふっと鼻で笑ってみせる。 「ニンゲンというのは視覚に頼りすぎているんだよなぁ。だから見た目だけでしか物事を判断することができない。だったら、これなら俺がわかるかな?」 そう言うなり男の姿が瘴気のような黒い霧に包み込まれる。そして霧が晴れるとそこには見上げるような漆黒の竜の姿があった。 「お、おまえは……第一竜将のアリアス!!」 スキルニルは驚いたような声を出した。 俺はそのアリアスとやらは知らなかったが、竜将というキーワードには聞き覚えがあった。 第五竜将ヴァルト、第四竜将ファフニール、第三竜将イフリート……。 トロウの手下どもに与えられている称号だ。 (第一竜将アリアス……。私も操られていた間のことは記憶が少し曖昧だけど、あいつのことはわかるわ。アリアスはトロウの配下の中でも特別よ。あいつだけはトロウに意見することができる。トロウの右腕だとも言われていた気がするわね) くそっ、そいつはとんだ大物だ。 だが慌てるのは早いんじゃないか。まだこちらの正体がバレたとは限らないぞ。 うまいこと言ってやり過ごせるのでは。そう思って俺は第一声を発した。 「わ、私はフレイヤです。トロウ様に次の作戦のことで呼ばれたので城に戻ってきたところです。そういうあなたこそ、トロウ様の腹心なら私のことを知らないわけじゃありませんよね? それを知らないというのなら、それはおかしい。もしかしてアリアスを名乗る偽者なんじゃないですか?」 我ながらけっこう強気に出たものだ。偽者はこっちなのに。 もしかしたらフレイヤの精神を憑依させていることで、お姫さんの強気な本性が少し俺の精神に影響したのかもしれない。 それを受けて漆黒竜は再び笑ってみせた。 「へぇ……。フレイヤ王女だったのか。そいつは気がつかなかったなぁ。なにぶん俺はハナが利くもんでね。臭いが違うからてっきり別人なのかと思ったぜ」 「に、臭いが違う!?」 「ずいぶん男臭くなったようだが……香水でも変えたのかな、フレイヤ王女様?」 まじかよ。これ絶対にバレてるぞ。 アリアスのやつめ、絶対に確信した上でおちょくってるに違いない。 おい、フレイヤ。魔法で何とかならないのか。 (臭いを変える魔法!? たしかにものの性質を変えるのは変性魔法の領域ではあるけど、物質でも動物でもないなんて……そんなのやったことないわよ!) なんてこった。まさかトロウに会う前に作戦が失敗することになるなんて。 こうなったら仕方がない。振り返って猛ダッシュでヒルデたちと合流してマッハで逃げる! もうこれしかないな。 撤退することを告げようとスキルニルに一歩近寄ると、なんとスキルニルは俺の両手を取って正面からこちらに向かい合うように立った。 ……え? おまえ何やってんだ、こんなときに? 「いや、この方は間違いなくフレイヤ王女だ。その王女様を男臭いだと? 貴様、第一竜将だかなんだか知らないが、無礼が過ぎるのではないか?」 「ああ、そうかもしれない。もし本当にそれが本物の王女ならな」 「だったら今からそれを証明すれば、信じてそこを通してくれるんだな」 「証明だと。はんっ、そんなことできるわけがないだろう」 「ならばこれを見るがいい」 そう言ってスキルニルは勢いよく俺の身体を引き寄せた。 あまりに一瞬のことなので何が起こったのか、すぐには理解できなかった。 ただハッとしたときには、スキルニルの顔がものすごく近くにあった。 「んんんんん~っ!?」 そのとき俺の脳内にはある効果音が再生されていた。 なんというか、こう、ズキュゥゥゥン! という感じのあれが。 いやいやいやいやいや、ちょっと待て。 俺は一体どうなったんだ。こいつ何しやがった。 スキルニルはアリアスに向かってこう言った。 「おまえが言うように、もしこれが偽者のフレイヤ王女で、しかも男だったとしたら、こんなふうにキスなどできるわけがない。これでは証明にならないか?」 な、何を言っているんだこいつは!? というかそれってつまり俺は……。 嘘だろ……運命の人のために残していた大事なファーストキスだったのに……。 それがまさかこんな形で奪われてしまうなんて! そんなひどい! しかしなぜだろう。 オスマンのクソ野郎とは違って、絶望的な地獄のような嫌悪感はなかった。 そりゃたしかにスキルニルは男だけど、よく見ると顔も整っているし、中身が俺とはいえフレイヤ王女を全力で守ろうとしてくれているのが伝わってくるし、なんと言えばいいのだろう。 不思議と悪い気持ちはしなかった。 (は!? ちょっとやめて) もしやフレイヤの精神を憑依させている影響がここにも!? ああ、俺の中の何かが目覚めようとしているのか! しているのかッ!? そう思うとスキルニルってけっこうイケメンだし、アリな気がしてきた♂ (黙らないと消し炭に変えるわよ) ……俺は正気に戻った! ともあれこの衝撃的な行動は効果があったらしく、アリアスは唖然とした顔をしながらも黙って俺たちを見逃してくれた。 いや、せめて何か言ってくれ。なんか気まずいじゃねえか……。 後にスキルニルはこのときのことをこう語っている。 「中身がフリードだろうが、同じ身体にフレイヤが憑依してるんだろ? それにここで正体がバレたらいずれフレイヤの身に危険が迫ると思った。そう思ったからこそオレは迷わず行動に移れたんだ。それがフレイヤを守ることに繋がるんだから」 イケメンかよ。スキルニル、おまえ性格がイケメンかよ。 まあとにかく、こうしてアリアスの追及が逃れた俺たちは、なんとか王の間の前までたどり着くことができた。 目の前には金色に縁取りされた重厚そうな立派な扉がそびえ立っている。 この先にトロウがいる……。 隣に立つスキルニルと顔を見合わせ、互いに頷き合う。 そして武者震いを抑えながら、俺は王の間の扉に手をかけた。 Chapter62 END 魔法戦争63
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88☆彡/星空のメロディー 88☆彡/星空のメロディー アーティスト ワンダーランズ×ショウタイム 発売日 2023年8月2日 レーベル ブシロード CDデイリー最高順位 2位(2023年8月2日) 週間最高順位 2位(2023年8月8日) 月間最高順位 7位(2023年8月) 初動総合売上 19858 累計総合売上 23983 収録内容 曲名 タイアップ 視聴 1 88☆彡 プロジェクトセカイ キャラソン 2 星空のメロディー CD/総合ランキング 週 月日 CDシングル 総合シングル 順位 週/月間枚数 累計枚数 順位 週/月間枚数 累計枚数 1 8/8 2 7452 7452 2 19858 19858 2 8/15 10 1131 8583 11 2706 22564 3 8/22 13 597 9180 597 23161 4 8/29 308 9488 308 23469 2023年8月 6 9488 9488 7 23469 23469 5 9/5 184 9672 184 23653 6 9/12 121 9793 121 23774 7 9/19 110 9903 110 23884 8 10/17 99 10002 99 23983 配信ランキング 88☆彡 週 月日 デジタルシングル 順位 週/月間DL数 累計DL数 1 8/8 14 1149 1149 関連CD ショウタイム・ルーラー/にっこり^^調査隊のテーマ