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10月13日 11 00分 オペレーション・ロメオ 実行まで あと1時間10分 リリカル自衛隊1549 第10話 「状況開始」 東富士演習場の倉庫では、作戦の編成式が行われていた。 防衛省内局の高官、陸自の将官、さらには時空管理局からリンディ・ハラオウン提督を始めとして、数人の高官が参加している。 「改めて説明するが、今回の任務は特殊である。我々は1549年に時間転移し、第3特別実験中隊を捕捉。1週間後の揺り戻しが発生する前に、我々が時間転移した場所―――スリッピングフィールドに戻り、現代に帰還する」 森が先程から、作戦の詳細について説明している。 ロメオ隊員達は迷彩服を着て、管理局の魔導師達はいつものバリアジャケットを展開させていた。 倉庫の中には物々しい雰囲気が漂い、ピリピリした空気が張り詰めている。 「今回の任務が失敗した場合、わたし達の帰る世界そのものが無くなってしまう可能性があります。だから、この作戦は絶対失敗させたらあらへんのです」 はやてが森に続けて言う。 「この作戦では余計な影響を現代に与えないため、極力現地人の発見されないよう、行動は夜間に限定して行う。発見されてしまった場合は、全力で後退、回避し、無用の戦闘を避けろ。 やむを得ず交戦する場合、麻酔弾での発砲のみ許可する。この麻酔弾は薬莢が土中分解するため、現代に与える影響を極力減らす事ができる」 「わたし達は、非殺傷設定の魔法のみ使用できます。ですが、やはり発見されない事が第一です」 森が一発の銃弾を手にとって説明する。その銃弾は弾頭が麻酔針となっており、極力まで減装薬されて人体に着弾してもダメージを与えないようになっている。 なのは達の非殺傷設定の魔法は、相手にダメージを与える事無く昏倒させられる。 このように現地の人員を殺傷せず、任務を遂行することが今回の任務での優先事項なのだ。もし過去の人間を殺傷した場合、現代に多大な影響があると判断されたからだ。 「ではここで、今回の作戦に参加して頂くオブザーバーを紹介しよう。鹿島元2等陸尉だ」 森の紹介で、ロメオ隊の列から1人の男が抜け出した。 その姿を見て、なのはは1週間前の七兵衛の説得が成功したことが判った。やはり、男同士で話合った方が早いこともある、となのはは改めて思い、同時にあの鹿島を説得できた七兵衛を少し尊敬した。 「鹿島です。どうぞよろしく」 鹿島はそう言って、皆に頭を下げた。 「森1佐、質問があります」 「何だ?」 「実弾は装備するんですか?」 いきなり鹿島が実弾の話をしたことにより、倉庫内が一瞬ざわついた。 実弾の使用―――明らかな戦闘行為だからだ。その話を積極的にするという事は、鹿島は戦闘を予測しているのだろうか、となのはは思った。 「装備はする。だが、発砲は許可あるまで厳禁だ」 「魔導師の方々の、殺傷設定の魔法とやらはどうなんですか八神2佐?資料映像を見せてもらった限りでは、かなりの威力があると思いましたが」 鹿島は続けてはやてに問う。はやてはその質問を予測していなかったのか、一瞬答えるのに戸惑ってしまった。 「ええと、こちらも許可あるまでは非殺傷設定のみ使用可能です」 「鹿島君、君は戦闘行為を行うつもりなのか?」 森が鹿島に、低い声で言う。 「いざという時の備えです。他意はありません」 「鹿島君、君はオブザーバーだ。不用意な発言で、隊の皆を不安にさせてもらっては困る」 鹿島は森の言葉に一瞬顔をしかめたが、自分の発言は無用な混乱を生むと判断したのか黙っていた。 森は鹿島が黙ったのを確かめ、再び皆に向き合った。 「この作戦はあくまで秘匿行動が第一である。それを忘れるな」 「もう一度言いますけど、この作戦が失敗したら、わたし達の知る世界は消えてしまいます。大切な人達のためにも、絶対作戦を成功させて帰ってきましょう!!」 はやてがそう締めくくり、作戦編成式は終了した。 そして、1時間後・・・・・・。 《電圧正常、全ての電子機器に問題なし》 《太陽からの電磁波到達まで、後10分》 《ロメオ隊、ホール対策特別部隊は指定の車両、航空機へと搭乗して下さい》 その合図で、ロメオ隊員と魔導師達は、一斉に車両やヘリへと走って行った。 今回「オペレーション・ロメオ」に参加する車両は 管理局仕様の指揮通信車1両 82式指揮通信車1両 87式偵察警戒車1両 96式装輪装甲車1両 軽装甲機動車4両 燃料タンク車2両 偵察用バイク5台 73式大型トラック3両だった。 対して航空戦力は AH-64D「アパッチ」攻撃ヘリコプター1機 OH-1「ニンジャ」偵察・観測ヘリコプター1機 UH-60JA「ブラックホーク」輸送ヘリコプター1機 CH-47J「チヌーク」大型輸送ヘリコプターが1機 JF704式改ヘリコプター2機だった。 ロメオ隊の使用する無線機は念話と交信できるよう改造されており、個人で携行する無線機でロメオ隊員と魔導師との間で意思疎通が可能だ。 58名のロメオ隊員と64名の魔導師達は、それぞれ指定された車両、ヘリへと乗り込む。 はやては指揮通信車へと乗り込み、森や鹿島達は82式へ。なのは達元機動6課メンバーは、アルトが操縦するJF704式改ヘリへと乗り込んだ。 ティアナとスバルはJF704の後部ハッチから乗り込み、備え付けの椅子に腰掛ける。ティアナの隣ではフェイトがバルディッシュの最終点検をしており、正面ではエリオとキャロが緊張をほぐす為か談笑していた。 「ティア大丈夫?手が震えてるけど」 先程までなのはと話していたスバルにいきなり話しかけられ、ティアナは少し身を震わせた。 「だ、大丈夫よ。アンタに心配される程緊張してないわよ」 「? そう。ならいいんだけど・・・・・・」 とスバルは言い、再びなのはと話し始める。 ティアナは自分の手を見た。わずかにではあるが、スバルの言ったように震えていた。 怖い。ティアナはそう思った。 これから行くところは、毎日のように合戦が繰り広げられ、血で血を洗う戦いが繰り広げられている。 最悪、死ぬかもしれない。 ティアナは手を握り締め、集中する。 (大丈夫、わたしは出来る。落ち着け、落ち着け・・・・・・!!) そう念じていると、いつの間にか手の震えは止まっていた。 手の震えが止まったのを見て、ティアナは窓の外を眺めた。小さな窓の外では、侍―――七兵衛が鎧兜を着け、馬に乗っていた。 七兵衛は鹿島と二言三言話すと、馬に跨った。おそらく、七兵衛と一緒に戦国時代からやって来た、彼の愛馬だろう。 ティアナは馬をしばらく眺めた後、イメージトレーニングを行う為瞼を閉じた。 作戦参加要員が全てスリッピングフィールド内に収まり、人工磁場シールド発生装置のうなりが増す。 《太陽からの電磁波到達まで、後1分》 《オペレーション・ロメオ。状況開始》 82式指揮通信車の車内では、神崎が本部との通信を行っていた。 「電磁波到達。人工磁場シールドに異常発生」 神崎が淡々と伝える。 車両群の外ではあっという間に濃い霧が発生し、ロメオ隊、ホール対策特別部隊を飲み込んだ。 「霧状の渦が発生」 神崎の報告で、指揮通信車内の鹿島は、小さな窓から外を眺めた。 車外は霧で視界が悪く、隣に停車していたはずの車両が視認できない。 霧の発生と同時に、車体が小刻みに揺れている。 《強烈な閃光が発生します。各員気をつけてください》 ティアナは無線通信から念話に変換された神崎の報告で、思わず身を低くした。 直後、強力な光が窓から差し込み、ティアナは目を思い切り瞑った。 霧が晴れた時、そこにはロメオ隊の車両はヘリは無かった。 かわりに、6年前と同じくススキの生えた土地が広がっていた。 自衛隊・管理局、さらには在日米軍の調査隊が早速スリッピングフィールド内に進入し、土壌の調査を行う。 調査機器が示す、土壌の年代は・・・・・・。 戻る 目次 次へ
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新暦76年 10月3日 17 45 第97管理外世界 日本国 東富士演習場 宿舎 1F休憩場 秋元と加賀は、コーヒーを飲みつつ今日の演習結果について話し合っていた。 「やっぱりあそこで、2発はてき弾を撃ちこんどきゃ良かったんじゃね?」 「いや1発撃った時点で猛反撃食らったし、やっぱり狙撃で牽制しながら直近で爆薬投げておけば、結構出来たんじゃ・・・・・・」 あーでもない、こーでもないと話し合い、頭を抱える秋元の隣で、加賀はコーヒーを飲みつつ呟いた。 「あ、そうだ。今日の深夜1時から新アニメだ。ワンセグで録画しておかないと・・・・・・」 「またかこのオタクめ」 「うるせー。アニメは日本の重要文化財だ!天然記念物だ!!」 「とりあえず黙れ」 そんな事を言い合っていると、2人に対して複数の足音が近づいてきた。 リリカル自衛隊1549 第8話 「親睦」 足音の主、それはフェイト、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、そして狼形態のアルフだった。 はやて達はロメオ隊の隊員達と仲良くするために、出会ったら積極的に話しかけるよう皆に言っていた。フェイト達もそれに従い、秋元達を見かけたので話しかけてきたのだ。 「こんばんはー」 秋元と加賀はフェイト達の姿を見て即座に立ち上がり、そして二人同時に見事な敬礼をした。 「テスタロッサ執務官どの!!気づかず申し訳ありません!!」 秋元が敬礼しつつ、斜め上を見つつ答えた。階級が絶対の自衛隊では、上官を見たら即敬礼しなければいけないのだ。これを怠ると、最悪、上官の鉄拳が飛んでくる。 一方加賀は、敬礼こそしているものの、視線はフェイト達に向かっている。 (うわー、金髪ロリショタツインテール短髪と、萌え要素がたっぷり詰まってんじゃねーか。やっぱりロリか?いやツインテールも捨てがたい・・・。でもここはスタイルのいい執務官殿か?あー、管理局とやらに転職したい・・・・・・) そんな事を思いつつ、加賀が変な視線で眺めるのに気づかずフェイトは苦笑しながら答えた。 「敬礼も敬語もいいですよ。わたしの方が歳も低いんですし」 「それでも!我々は管理局の方々皆を幹部相当で応対しろと、上官から言われていますので!!」 「それに執務官とは1尉相当の階級だと聞いております!」 ビシ!と秋元と加賀は斜め上を見つつ、はきはきした声で続ける。階級にうるさい自衛隊では、とても上官にため口なんて利けないのだ。 「じゃあせめて、テスタロッサ執務官殿じゃなくて、フェイトさんって呼んでください」 「フェイトさん・・・ですか?」 フェイトの提案に秋元は困惑したが、加賀はノリノリで言った。 「じゃあフェイトさん座って!!色々と話を聞かせてください!!」 「わ、わかりました・・・。ほら皆も座って」 加賀の猛烈な勢いにフェイトはタジタジになり、皆を促して休憩室のソファーに座った。 「自分は、秋元直樹2等陸曹です。歳は24歳。以前は第一空挺団に所属していました」 「加賀洋二2等陸曹であります。年齢と以前の所属は秋元と同じです」 秋元と加賀の自己紹介が始まり、フェイト達も自己紹介を行う。 「フェイト・テスタロッサ・ハラオウン執務官です。以前の所属は時空管理局、機動6課です」 「スバル・ナカジマ2等陸士です」 「ティアナ・ランスター2等陸士です。よろしくお願いします」 「エリオ・モンディアル3等陸士であります!」 「キャロ・ル・ロシエ3等陸士です・・・。よろしくです」 そこまでは、いたって普通の自己紹介だった。 『アルフだ。あたしはフェイトの使い魔だ。よろしく』 が、アルフが自己紹介を始めた事により、秋元と加賀は周囲を怪訝な目で見回した。 アルフは失念していた。第97管理外世界には、喋る動物はいないことを忘れていたのだ。 「・・・・・・あれ?今6人目の声が聞こえなかったか?」 「ん・・・?何か声が・・・・・・」 だが秋元達の疑問に気づかないアルフは、いたって普通に 『おーいお二人。喋ってるのはあたしだって』 しかし秋元と加賀は、アルフが喋ることにちっとも気づかず 「ん?誰かステルス迷彩でも着て潜入しているのか? スネーーーク!!」 「メタルギアネタはやめろ。それにしても、お清めの塩でも置いといた方がいいのかな?幽霊でもいるのか?」 そう言って、どこからともなくバンダナを取り出す加賀と、同じく食塩(明石産)と取り出した秋元の様子を見て、ようやくフェイトは秋元達の疑問に気づいた。 「アルフ、この世界には喋る動物はいないよ。とりあえず人間形態に戻って」 フェイトが犬(秋元と加賀には犬に見えた)に話しかけるのを、2人は怪訝な目でフェイトを見つめた。 アルフは人間形態をとり、改めて自己紹介しようとした、のだが・・・。 「あたしはアルフ。フェイトの使い魔だ。よろし・・・」 「イヌミミだーーーーーーッ!!」 突如叫び、アルフに駆け寄った加賀を見て、機動6課の面々は無意識にその場から一歩後退した。 「え?マジで!?マジで!?コレ本物!?」 「え、うん・・・。一応あたしの耳だけど・・・・・・」 「うわ尻尾まである!しかもスタイルも最高!!ヒャッハー!!」 戸惑うアルフと6課の面々を差し置き、何か喚きつつアルフを上から下までじっくり眺める加賀は、突如携帯電話を取り出し 「写真撮ってもいいですかね~?」 と携帯電話のカメラモードを起動。そんな加賀を、秋元は一発殴って 「すいません。ちょっとコイツに制裁食らわしときます」 と、男子トイレに加賀を引きずって行った。「え、ちょお前。まだ写真撮ってない」「うるせー」という声が後に続き、フェイト達の視界から秋元と加賀の姿が消えた後、 「ちょ、おま。うわなにをするやめ・・・・・・アッーーーーーーーー!!」 加賀の叫び声が響いた。 「グシャッ! という音が響いた気がする」と後にエリオは語ったそうな。 「すいませんね。あいつ、いわゆるオタクって奴で・・・」 数分後、加賀をトイレに置き去りにし、手に赤い液体を飛び散らせて戻ってきた秋元は、謝りつつ手の液体を拭った。 「「「へぇ~、そうなんですか・・・・・・(棒読み)」」」 と答えた機動6課の面々をよそに、秋元はアルフの姿をじっくり眺めた。 犬耳に尻尾、そしてスタイルがいいアルフは、秋葉原に立たせたらあっという間にオタク達が集まってくるだろう。それに普通に美しい。 少しは加賀の気持ちがわかった秋元だった。 「それで、秋元さんは何でこの任務に参加したんですか?」 と、スバルは話題を変えるため、明るい声で言い出した。 秋元はしばらく悩んだ後、 「約束、だからかな?」 「約束?」 とティアナが訊くと、秋元は続けた。 「俺、施設で育ったんですよ。施設の中でも結構年長だったんで、歳の低い子達の面倒もよくみてましてね。 んで、俺が自衛隊に入る時、皆に約束したんです。『お前らが大人になるまで、俺がお前らの未来を守ってやる』って」 秋元の話に、フェイト達は自分達の過去を思い出した。 フェイト達は皆、本当の意味での親や兄弟と家族と呼べる存在はほとんどいない。秋元の境遇も、彼女らと少し似ていた。 秋元は空気が変わったことを察し、勤めて明るい風に続けた。 「それに、俺の師とも呼べる人が第3特別実験中隊に参加してまして。その人の名は・・・」 「やれやれ、死ぬかと思った」 秋元が話を続けようとした時、復活した加賀が休憩室に戻ってきた。 「チッ・・・・・・。確かに殺したと思ったのに」 「わっはっはっは!今晩の新アニメを見るまで、俺は死なんさ!!」 物騒なことを呟く秋元の隣で、加賀は何事もなかったように笑った。 「あの、加賀さんが今回任務に参加した理由って・・・・・・」 フェイトが、恐る恐るといった風に訊ねた。 6課の面々は、演習中と現在の加賀のギャップに驚いていた。演習中は冷静沈着に一撃必中の狙撃を行っていたのに、ここでの加賀は、ただの変態にしか見えない(実際変態なのだが)。 フェイト達はマトモな答えを返してくれる事を願った。 が・・・・・・。 「今回の任務に参加した理由・・・それは!!」 「「「それは?」」」 「任務に失敗して世界が消滅すると、アニメが見れなくなるからだッッ!!!」 再び、休憩室に沈黙が降りた。 一方その原因を作った加賀は、そんなこともわからず 「いやー、来年にはアニメの2期が始まるし、俺のやってるギャルゲーの続編も出るからね~。アハハハハ」 と大笑い。楽しみにしているアニメやゲーム(主にギャルゲー。全年齢対象版)を指折り数える加賀の背後で、秋元が音もなく立ち上がり、 「世界が消滅する前に、お前を消滅させてやろう・・・・・・」 と呟き、再び加賀を引きずって行った。 「え、ちょまだ話は終わってない!」 「やかましい!!」 との声の後、 「ちょ、おま、それはマジで死・・・くぁwせdrftgyふじこlp;@:「」!!!!」 と絶叫が響き渡った。 「なんか、木が折れるような音がしました」と、後にキャロは語ったそうな。 戻る 目次 次へ
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新暦76年 9月24日 ミッドチルダ 時空管理局本局 「何、これ・・・?」 なのはは、目の前の画面に映し出された光景に絶句していた。 ミッドチルダの市街地の一角で、ブラックホールのような物が、周囲の物体を飲み込みつつ増殖していた。 「これが初めて現れたのが6年前、そん時はまだゴルフボール大の大きさやった。それがどんどん成長して、この様や」 「何で本局は隠してたの!?」 「対処のしようがないんや。これはあちこちの次元世界に発生して、次々と成長していってる。発表したところで、皆がパニックを起こすだけ・・・って説明をうけたわ」 八神はやて二等陸佐は、ため息を吐きつつ言った。 「じゃあ、このまま世界は飲み込まれるだけなの・・・・・・?」 フェイトは呆然と呟きつつ、画面を眺めた。 「いや、このブラックホールみたいな物を作り出している『原因』には対処できるって、本局の人が言ってたわ」 「原因・・・・・・?」 リリカル自衛隊1549 第3話 「転移」 新暦76年 9月25日 ミッドチルダ 時空管理局本局 ブリーフィングルーム 「ホール対策特別部隊の隊長、八神はやて二等陸佐です。皆よろしく」 はやてはそう挨拶し、ブリーフィングルームを見渡した。普段は100人程入れるブリーフィングルームは、殆ど満席だった。 「それでは今回の作戦の概要を説明します。資料の3ページを捲ってください」 今回進行役を勤めるリインフォースⅡ曹長が言うと、室内には一斉にページを捲る音が響き渡る。 「皆さんは一応知っているかも知れませんが、改めて説明します。今回わたし達が対処しなければいけないのは、ホールと呼ばれる空間です」 はやてがそう言うと、室内前方に立体映像が浮かび上がった。ミッドチルダで3週間前に発見されたホールの映像だ。 「ホールとは、ありとあらゆる物体、更には光まで吸い込んで成長する、ブラックホールのような物です。最も、成長速度はブラックホール程早くは無いのが幸いですが・・・」 はやてはそう言うと、少し顔をしかめた。1週間前に見た、ホールによって頭を消滅させた少女の姿を思い出してしまったのだ。 今はこうして何とか復帰できたが、こうして対策部隊長となり、ホールの映像を見るたびにあの光景が浮かんでくるのだ。 「ホール対策室」は地上部隊や次元航行部隊関係なく、全て志願者で構成されている。志願者ははやてを含め404人で、実際に現場で行動する「ホール対策特別部隊」は64人だ。機動6課のメンバーも殆ど志願しているので、はやては見知った顔が多いのに安堵していた。 はやてが部隊長に就任した理由は、ただ単に実績があるからだけでなく、第97管理外世界で偶然ホールを発見してしまったからだ。どうやら管理局の上層部はこれ以上ホールと関わる人を増やしたくないらしく、はやてがホールを発見した3日後に対策特別部隊長就任を打診してきた。 「ホールの大きさは、現在確認できた中では最小でゴルフボール程、最大の物では直径100メートル近い大きさまで成長しています」 そこで画面が切り替わった。「第97管理外世界 日本国 富士山麓」と右下に書いてある立体映像を表示した途端、室内が一斉にざわめいた。 富士山麓に、巨大な大穴が開いている映像だった。周囲にはオリーブドラブ色のトラックが何台も停まり、迷彩服や白い防護服を着た人影が、周囲からホールを覗っているのが映っている。 「現在このホールは現地政府の治安維持組織によって、富士山麓に偽装基地を設置するということで、一般人の目には触れないようになっています。周囲には人口雲も展開され、全く外からは見えません」 はやてはそう言うと、手元のリモコンを操作して次の映像を映し出した。こんどは表とグラフが表示される。 「ホールは現在、93の次元世界で存在が確認され、その数はおよそ1万を超えます。その殆どは管理局によって隠蔽されてますが、これ以上は隠し切れないのが現状です。現に、次々と新たな次元世界にホールは出現してきてます。このままだとホールの発生した次元世界全てが、ホールに飲み込まれて消滅するでしょう」 表やグラフの内容は、各次元世界に現れたホールの数及び、その大きさである。ミッドチルダを例に挙げると、 ミッドチルダに出現したホールの総数 82個 ホールの最小の大きさ 直径約5cm ホールの最大の大きさ 直径約46m 一日に出現するホールの数 平均2.4個 などだった。 その時、席に座っていた一人の陸士の手が挙がった。はやては発言を許可する。 「陸士105部隊のレベッカ・グレイ一等陸士です。質問ですが、ホールを消去させる方法はあるんですか?または対処法は?」 「残念ですが、未だに発見されていないのが現状です」 はやてが即答すると、レベッカ一等陸士は少し困惑した顔をして着席した。同時にブリーフィングルーム内でも、対処法が無いという答えでざわついた。隣の人同士と話し合い、中には絶望したような表情を見せる人もいる。 「でも!ホールを発生させてる原因には対処出来ると思います!!」 収拾がつかなくなってきたので、はやては大声でその事実を告げた。その言葉に、室内の人間の視線が一斉にはやてに向けられる。 「資料の12ページを捲ってください」 リインフォースⅡがそう伝え、皆が一斉にページを捲った。 「なになに?『ヘリ墜落。200名死亡』?」 対策部隊に志願していた、スバル・ナカジマ二等陸士はそう呟いた。 「『昨夜防衛省は、陸上自衛隊東富士演習場で演習中の一個中隊約200名が、弾薬を積載したヘリの墜落で死亡したと発表した・・・・・・』。何コレ?スバル、意味分かる?」 「ううん。私もわかんない、ティア」 スバルと一緒に志願していた、ティアナ・ランスター二等陸士が隣のスバルに声をかける。スバルも困惑した表情を見せたので、ティアナは資料の続きを読んだ。 どうやらその資料は、第97管理外世界の新聞のコピーのようだった。一応訳してあったので、ティアナにも簡単に読めた。 「八神部隊長。この新聞のコピーは?」 一人の陸士が、意味が分からないといった表情で質問した。はやてはそれに、得意げな表情で答える。 「それが、ホール発生の原因です!」 はやてがそう言った途端、皆が「?」という表情をした。はやて自身、まだ完璧に理解しているとは思っていないが、とりあえず知っている事を全て話す。 「6年前、第97管理外世界である実験が行われました。詳細はわたしも理解できてないけど、軍用通信網を守るためのシールドを生成する実験のようです」 リインフォースⅡが立体映像を切り替えた。映像に直径数百メートルの円内に集められた、ありとあらゆる質量兵器とそれを囲む鉄塔が映る。 映った質量兵器の数々に、あからさまに顔をしかめる参加者が多くいた。質量兵器がご法度の管理局では、質量兵器は忌み嫌われる物なのだ。 「実験には現地の治安維持機関『自衛隊』が参加、シールドが装備品及び人体に与える影響を調べるため、シールド下に200名の1個中隊、『第3特別実験中隊』を展開させました」 「提供 日本国政府・防衛省」、「20××/10/13」のテロップが入った映像の中で、実験が開始された。ただシールド下で通信をやり取りするだけの実験で、外からは変わった所は見られなかった。 しかし数分後、突如として霧が発生。やがてその霧は渦を巻き、第3特別実験中隊を完全に覆い尽くした。 「実験は失敗しました」 そう言った直後、映像にノイズが走った。やがてカメラが動いているのか映像もかなりブレ、そしてすぐに画面に砂嵐が映った。 2秒ほどして、画面の砂嵐が消えた。だがカメラに映っていたのは、先ほどまで実験中隊が展開していた造成地ではなく、ススキが生えている草原だった。鉄塔の内部がきれいにススキ群と入れ替わっているのがわかる。 「え・・・?」 「どういうこと・・・・・・?」 スバルとティアナは呆然と画面を見つめ、他の参加者も同じような言葉を口にする。 「第3特別実験中隊は消滅、変わりにススキの生えた土地が現れました。土壌の調査の結果、この土地は460年程前の地層と一致しました。つまり、460年前の土地が、現在の土地と入れ替わってしまったんです。そして一週間後・・・・・・」 また映像が切り替わった。「20××/10/20」と右下に表示されているので、1週間後だとわかる。 誰もいないススキ群を、突如発生した霧が覆い隠した。霧は一週間前と同じく渦を巻き、そしてまた画面が砂嵐に切り替わった。 数秒後、画面が回復すると、そこにはススキ群ではなく造成地があった。元に戻ったのだ。 ただし、展開していた第3特別実験中隊は、そこにはいなかった。 「ねえ、あれ・・・?」 スバルが画面を指差したので、ティアナはスバルの指先に視線を巡らせた。 良く見ると画面の上方、つまり造成地の中心辺りで何か動いていた。カメラがズームし、動いていた物の正体が明らかとなった。 動いていたのは、馬に乗った武士だった。鎧兜を身につけ、背中から何本か矢のような棒が突き出ていた。 スバルもティアナも、武士というのはミッドチルダで放送していた第97管理外世界の大河ドラマでしか見たことがなかったが、それでも馬上の人物が本物だと悟った。 武士は馬から落ち、しばらく地面を這っていたが、やがて気絶したのか動かなくなった。 「保護されたこの武士の証言により、武士が来た時代は1543年・・・。つまり第3特別実験中隊は460年以上前に飛ばされてしまったと推測されます」 先程までの喧騒はいつの間にか収まり、ブリーフィングルーム内を沈黙が満たしていた。皆が真剣な表情ではやての報告を聞いている。 「ホールが現れ始めたのは、第3特別実験中隊が過去に飛ばされた直後。そして日本国の各地史跡にホールは現れはじめました。このことから勘案すると、第3特別実験中隊がホールの原因だと考えられます。そこで、わたし達ホール対策特別部隊の任務を発表します」 はやてはそう言って水を一口飲み、そして続けた。 「現地治安維持機関『陸上自衛隊』と合同で前回のタイムスリップした状況を再現します。そして我々も過去にタイムスリップし、第3特別実験中隊を現代に連れ帰ります!!」 戻る 目次 次へ
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『・・・たった今入ってきた速報です。防衛省は先ほど記者会見を開き、陸上自衛隊東富士演習場にて、演習中の1個中隊約200名がヘリの墜落により死亡したと発表しました。詳しいことはまだわかりませんが、発表された情報によると、弾薬を積載した攻撃ヘリコプターが演習直前に密集した車両群の上に墜落し、車両群に搭載された弾薬類が誘爆し付近の隊員達を巻き込んだとの事です。詳しい事は情報が入り次第お伝えします・・・』 リリカル自衛隊1549 第2話 「侵食」 新暦76年 9月19日 第97管理外世界 日本国 静岡県 某城 「すみませんね~。改修工事が始まって、今は誰も中に入れないんですよ~」 「そんな・・・」 係員の言葉にそう言って床に崩れ落ちたシグナムは、この世の終わりのような顔をしていた。どよんとした空気を漂わせるシグナムの周りでは、他のヴォルケンリッターの面々と八神はやてが、彼女を慰めるように肩を叩いている。 最近日本の城や武家屋敷を見ることに興味があるらしいシグナムは、休みを利用して度々それらを訪れている。 「もう3回目・・・。主はやて、私は何かしたのでしょうか?」 最近シグナムが日本を訪れる度に、それらの城や武家屋敷が改装だったり改修だったりで閉鎖されているのだ。具体的にいうと、 一ヶ月前に有名な城を訪れようとしました。→ちょうど二日前に改修工事が始まっていました。 3週間前にある武家屋敷を訪れようとしました。→ちょうど前日から改装工事が始まっていました。 そして今日ある城を訪れました。→今日からいきなり改修工事が始まりました。 「そんなん偶然やて。なあヴィータ?」 「そうそう。古い建物だからいっぺんにボロくなってきてるだけだ。だから落ち込むなってシグナム」 一緒に城を見に来たはやてとヴィータ、シャマル(城内は動物禁止なので、ザフィーラは車で待機中)はそう言ってシグナムを慰めようとしたが、絶望オーラを醸し出しているシグナムには効果が無い。 「・・・・・・最近どんどん古い建築物が閉鎖されています。何か私がしたのでしょうか・・・」 そうぶつぶつ呟くシグナムを引きずって、はやて達は城の外に出た。 昨年、科学者ジェイル・スカリエッティはガジェットドローンや戦闘機人を使い、次々とロストロギア「レリック」を強奪していた。はやて達機動6課の面々もスカリエッティを追跡していたが、1年前にスカリエッティが突如として襲撃を止めた。 最初は何か大きな事件を起こそうと企んでいるのでは、と管理局は考えたが、一月たち、二月たっても一向にスカリエッティは何も行動を起こさなかった。 やがて管理局は捜査の末にスカリエッティのアジトを発見、武装局員3個中隊をもって強襲したが、アジトはもぬけの殻だった。ありとあらゆる機材が持ち出されていて、しかも大分前に放棄されていたらしい事がその後の調査で判明した。 当初1年限定で設立された機動6課も、スカリエッティが捕まらなく、彼の持つロストロギアも行方不明であるために、ずるずると運用期間が伸びていった。 しかし依然としてスカリエッティは行動を起こさず、しかも目立ったロストロギア関連の事件・事故も起きないため、機動6課は実質新人の教育をメインにする部隊となってしまっている。 そんな訳ではやて達は休暇を取り、地球にやってきたのだ。 座り込んで動かないシグナムをどうにかして城から連れ出し、はやて達は近くの高台にある公園で昼食を食べた。昼食を食べた後しばらく公園を散策し、することも無いので帰ることになった。 「あ、ごめん、ちょっとトイレ行って来るわ。先に車に戻っといて」 はやてはそう言い、公園に設置されている公衆トイレへと向かう。今日は休日なので、公園には親子連れも何組か見受けられる。 はやてがトイレにたどり着くと、5歳くらいの少女がトイレの前でしゃがんで何かを覗き込んでいる。何だろうとはやては思い、少女に声をかけた。 「こんにちは。何見てんの?」 はやてがそう訊くと、少女は無言で自分の前を指差した。どれどれ?とはやてが覗き込むと、そこには異様な物体があった。 何か黒い塊が、トイレの外壁部分にあったのだ。昼間だというのに、その物体は光を吸収しているかの如く光を反射することさえ無い。 (なんやこれ?今までこんなもん見たことない) はやてはそう思い、もっとよく観察してみた。よく見ると、近くの落ち葉や枯れ枝が、わずかにではあるがその物体に引き寄せられているのがわかった。 気味が悪いとはやては思い、ヴォルケンリッターの面々を呼んでみようとした、その時。 少女が、黒い物体に頭を突っ込んだ。 「なっ・・・・・・!?」 慌てて少女に駆け寄り、急いでその物体から頭を出させようと少女の腰に手をかけ、はやては思い切り引っ張った。少女は地面に手をついた格好のまま倒れ、そしてはやては悲鳴をあげた。 少女の頭があった所には、何も無かった。血の一滴すら流さず、少女の頭は消失していた。 「あ、あああ、ああ・・・・・・」 いきなり頭を消失させた少女の体を見て、はやては震えながら叫んでいた。 「あああああああああああああああああ!!」 その後すぐさま駆けつけて来たシグナム達は、その異様な光景を見て目を見開いた。すぐさまシャマルによって周囲に結界が形成され、ひとまず死体を一般人が見ることの無いようにした後、時空管理局に一報が入れられた。 ????年 第97管理外世界 日本国 某所 広い草原が、延々と死体で埋め尽くされていた。死体の殆どは鎧兜を装着し、刀や槍、矢を持っている。ある者は目を見開き、ある者は何かから逃げようとするように手を伸ばし、ある者は喉をかきむしって死んでいた。 「・・・ええ。敵対勢力は壊滅。こちらの損害は皆無です」 死体で埋め尽くされた草原を、死体を踏みながら歩く人影が数個あった。数人は迷彩服を着て89式小銃を所持し、残りは鎧兜を装着して帯刀していた。 ただ一つ共通している事は、それらの人物全ての顔に、ガスマスクが装着されていることだった。彼らの上空を、装飾の施されたUH-1Jヘリコプターが飛び去ってゆく。 迷彩服を着た男が、部下の背負う無線機で今回の戦果を報告しつつ、足元の死体を検分している。 「現在第3小隊と第4小隊が、羅漢兵1個中隊を率いて残敵を掃討しています」 《・・・了解。“ドクター”製作のガスの効力はどうだ?》 「素晴らしい効力です。これを使えば、戦闘を効率的に進められると思われます」 そう言って迷彩服の男は、足元の死体を眺めた。足軽らしき男は口から泡を吹き、顔が真っ青になって死んでいる。 《わかった。“ドクター”にもガスの製造数を増やすように要請しておく。他に何か報告は?》 「敵の総大将を確保しました。処遇はいかがしますか?」 しばし沈黙のあと、 《殺せ。そいつに用は無い。殺した方が歴史の変革も進む》 「了解しました」 そう言って男は、一度無線を切った。そして別の相手と交信を開始する。 「1-1より2-1、目標射殺の許可が出た」 《2-1了解。命令を実行する》 すぐに遠くから銃声と悲鳴が聞こえ、そしてすぐに沈黙した。 《2-1より1-1、目標の死亡を確認》 「1-1了解。これからヘリを寄越す。それでこちらに合流せよ」 それだけを言って交信を終了する。そしてすぐに先程の男との交信を再開した。 「目標を射殺しました。私もこれからヘリで帰還します。それでは」 「的場1佐」 戻る 目次 次へ
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新暦76年 10月3日 11 00 第97管理外世界 日本国 東富士演習場 森林地帯 今日は管理局・ロメオ隊合同で森林戦の演習が行われていた。約2キロのコースの中に大量のオートスフィアを配置し、2人1組でそれらを全て撃破しゴールへと向かう演習だった。 機動6課でスバルやティアナに行ったテストによく似ていたが、今回の演習場所は廃棄都市ではなく、障害物の多くある森林だった。そのため管理局部隊もいつもの実力を発揮できず、やられる事は無かったが苦戦していた。 自衛隊部隊はもっと危ない。このような実弾を使った演習を行うことは余り無く、しかも相手が撃ち返して来るような事を想定した実戦同様の訓練はさらに少ない。だがそれでも陸自の精鋭を集めた部隊なので、訓練の成果を発揮し管理局に比べればゆっくりと、しかし着実にオートスフィアを撃破していった。 リリカル自衛隊1549 第6話 「演習」 陸上自衛隊・ロメオ隊所属の秋元直樹(あきもと なおき)二等陸曹は、折りたたみ式ストックの89式小銃の微調整をしつつ、管理局の持ち込んだ立体映像のモニターを見ていた。モニターには、次々と撃破されるオートスフィアと、ディバインバスターやアクセルシューターを撃ちまくるなのはとフェイトが映っていた。 「もはや魔法じゃなくて、魔砲じゃねえか・・・・・・」 秋元が呟くと、隣で64式小銃を整備していた狙撃手の加賀洋二(かが ようじ)二等陸曹が口を開いた。 「あんなの、敵に回したくないよな。下手したら蒸発させられるかも」 「まったく、その通り」 そう言い、秋元は89式小銃の整備を終えた。加賀は64式小銃のスコープを弄りつつ、近くにいたシグナムとヴィータを見て言った。 「なあ秋元、お前あのポニーテールの人と幼女、どっちがいい?俺はようzy」 「黙れロリコン」 秋元はそう言って足元の石を投げ、石は加賀の顔面にクリーンヒット。それでも加賀は動じない。 《8番の秋元さーん、加賀さーん。出撃の準備をしてください》 アナウンスで、秋元と加賀はいよいよ自分達の番が来た事がわかった。今回、二人一組で行動することになっていて、秋元は加賀と組んでいる。 本部のあるテントまで行き説明を受けた後、弾薬を受領する。最後に装具の総点検をした後、2人は森の入り口に立った。 現在の最速タイムは、なのはとフェイトが叩き出した9分32秒。陸自部隊の最速タイムは16分22だった。 このままでは、ロメオ隊が管理局に圧勝されるという非常に情けない結果となってしまう。せめて10分台前半を叩き出さないといけないのが、秋元と加賀の置かれた立場だった。 2人は同時にボルトを引いて初弾を装填し、スタート地点にたった。 「行くですー。3、2、1、スタート!!」 リインフォースⅡの合図で、2人は駆け出した。 ルートはあらかじめ頭に叩き込んでいるが、オートスフィアの位置や数は教えてもらえない。なので出来るだけ早く発見し、殲滅する事が重要だった。 スタート地点から100メートル程行ったところで、視力2,0の秋元の目が何かを捉えた。ハンドシグナルで加賀に『止まれ』と合図した秋元は、双眼鏡で確認した。 「いたぜ・・・・・・、右前方、距離300に3体のオートスフィアを確認」 秋元は小声で加賀に伝え、加賀はすぐに64式小銃のスコープで確認した。オートスフィアを確認すると加賀はすぐさま地面に伏せ、64式小銃の二脚を立ててスコープを覗き込んだ。 「風はほぼ無風、射撃に支障は無い」 臨時の観測手を勤める秋元の情報で、加賀は単発で64式小銃を撃った。300メートル前方のオートスフィアは秋元と加賀に気づく事無く、加賀の狙撃で沈黙した。 「お見事」 「どうも」 そう言葉を交わし、2人はまた駆け出した。さらに200メートル進んだところで、大きな岩がルートの真ん中を塞いでいた。このコースを通る為には岩を迂回するしかないが、岩の向こうでオートスフィアが待ち受けているかもしれない。 秋元はポーチの中から伸縮する棒についた小さな鏡を取り出し、岩肌に沿って進んで岩の向こうを鏡で覗いた。 鏡には、空中に浮遊する5体のオートスフィアが映っていた。 秋元はハンドシグナルで『5体確認』と加賀に伝えると、加賀は『手前の3体をやってくれ。俺は奥の2体をやる』と返した。 秋元が加賀の前に立ち、銃口を下に向けて岩肌の淵に立つ。背後から加賀が秋元の肩に手をのせ、そして軽く叩いた。 その合図で秋元は岩陰から飛び出し、素早く手前の1体にドットサイトの光点を重ねた。 すぐさまセミオートで発砲し、オートスフィアに穴が開く。続けて2体を倒した秋元の背後で、加賀が奥にいた2体を狙撃で続けて破壊した。 5体のオートスフィアは5秒もしない内に全て破壊され、地面に落下した。 その様子を、なのはとフェイトは本部のモニターで確認していた。 「早いね。このペースでいくと、10分台を切るかも」 「うん。長距離からの狙撃と、近距離での素早い射撃。魔法無しでここまでやれるなんて、正直言って凄い」 そう言ってフェイトはモニターを操作した。別の場所の映像が映し出され、そこでも次々オートスフィア群が撃破されていくのが映っていた。 「もう16体撃破、早い・・・・・・」 「でも、まだ最後の難関が残ってるよ」 なのははモニターを操作し、コースの最終地点の映像を映し出した。大きな円筒形のオートスフィアが映し出される。 「自動追尾狙撃型のオートスフィア。形こそ新人達の訓練に使うのに似てるけど、性能は大幅に上がってる。自動攻撃する距離も伸びたし、装甲も硬くなってる。長距離狙撃するには、ちょっと厄介な相手」 「どう切り抜けるかな?今までの人達は遠距離から集中砲火を少しづつ浴びせてたけど。でも時間が多くかかっちゃうから、あまり良くはない戦法だね」 なのは達はそう言葉を交わし、再びモニターを見つめた。 その頃秋元と加賀は、ゴール地点の500メートル前を走っていた。 「このままだと、俺ら10分切るんじゃね?」 「油断するな加賀。最後は長距離狙撃型が居座ってるって、説明でお前も聞いてるだろ」 加賀が何か言おうとした瞬間、森の奥から青い光弾が飛んできた。2人は素早く伏せ、どうにか狙撃を回避する。 そのまま近くの岩まで匍匐前進し、岩を障害物にしてオートスフィアを確認しようとした。秋元は棒付の鏡を取り出し、岩からそっと突き出した。 が、次の瞬間には、小さな鏡は光弾によって木っ端微塵にされていた。 「うひょー、正確無比な遠距離狙撃。ちとキツイわな」 「ふざけてないで、さっさと作戦を再確認するぞ」 そして何事か話し合った後、秋元は防弾チョッキを脱いだ。防弾チョッキは重過ぎるので、全力で走るのには障害になるからだ。 秋元は89式小銃のストックを折り畳み、動きやすいようにスリングで背中に回した。加賀はスコープの倍率を変更し、秋元が走り出すのに備えた。 「3、2、1、行け!!」 加賀のカウントで軽装になった秋元は岩陰から飛び出し、そして走り出した。すぐさまオートスフィアが狙撃を開始し、秋元はジグザグに走ることによって光弾を回避する。 しばらく秋元が走ってガジェットの注意を引きつけると、加賀は隠れていた岩に64式小銃の2脚を載せ、オートスフィアに照準を重ねた。 加賀は数発発砲し、発射された弾丸は全てオートスフィアに命中した。が、弾丸は全て分厚い装甲に弾き返される。 だがその発砲で、オートスフィアの攻撃対象が加賀に変更された。オートスフィアが加賀を狙撃し始めたのを見計らって、秋元は手近な岩に隠れた。 (アブねー。もう少しでやられるところだった) 実際何発か光弾が秋元をかすめ、飛び散った岩の破片で頬から血が出ていた。非殺傷設定とはいえ、直撃したらまずいだろう。 秋元は加賀がオートスフィアの攻撃を引きつけている間に、06式小銃てき弾を取り出し、89式小銃の銃口に装着した。 そして岩から身を乗り出し照準を定め、てき弾を発射した。発射されたてき弾は弧を描いて、光弾を撃ち続けるオートスフィアに直撃し、爆発した。 が、表面にヒビが入っただけで、オートスフィアは活動を継続している。むしろオートスフィアは秋元だけに狙いを定めたようで、秋元に対する攻撃は激しくなり始めた。 「加賀ー!!早く何とかしろ!!このままだと俺がやられる!!」 秋元は無線へ叫んでいた。現に秋元の隠れる岩はオートスフィアの攻撃によって、どんどん削れていっている。あと少ししたら岩はばらばらになって、秋元に光弾が直撃する羽目になる。 『大丈夫、どうにかなるって』 「てか、さっさとやれ!!もうヒビが入ってるから、そこを叩け!!」 攻撃は苛烈さを増し、秋元は動こうにも動けない。 加賀はそんな秋元の様子をスコープで覗き、続いて光弾を乱射するオートスフィアを照準に納めた。倍率を上げ、スコープにオートスフィアのヒビが大きく映る。 (オーケー、いつも通り冷静に) そう思いつつ、加賀は64式小銃のセレクターを単発の“タ”から連発の“レ”に切り替えた。息を止め、照準がブレるのを防ぐ。 (今だ!!) 加賀はオートスフィアが動きを止めた一瞬を見計らい、引き金を引いた。 フルオートで発射された10発の7.62mm弾は、全てがオートスフィアの装甲のヒビに直撃した。最初の6発が割れた装甲を完全に破壊し、残りの4発がオートスフィアの内部に到達した。 普通は7.62mm弾の連射は制御出来るものではない。だが64式小銃の減装薬された銃弾と遅い連射速度、そして加賀の射撃の技量がそれを可能にしていた。 最後の大型オートスフィアも、機体に電流を走らせた後、爆発を起こした。 なのははゴール近くの森で、大きな黒煙が立ち昇るのを目撃した。 「そろそろ、かな?」 「最後のオートスフィアも破壊されたし、もう来る・・・・・・」 フェイトがそこまで言ったとき、ゴール直前の道に人影が現れるのをなのはは見た。 秋元と加賀だった。2人は重たい装備をものともせず、走ってゴールの線を飛び越えた。 「つ、つかれた・・・・・・」 「やばい、これは死ぬ。ほんとに死ぬ・・・・・・」 2人は地面に倒れ込み、口々に喚く。秋元は仰向けになって空を眺め、ゴールを超えた直後に転んだらしい加賀は地面とキスしていた。 「タイムは・・・・・・、12分21秒!?」 タイマーに映った経過時間の表示を見て、フェイトは驚嘆の声を漏らした。 12分といえば、スバルとティアナが叩き出したタイムに近い。魔法無しでは、驚異の速さだった。 秋元と加賀の2人は、彼らより早く出撃した陸自隊員達にもみくちゃにされていた。「やったー!」だの「うおっしゃー、やったぜ!!」等の声がなのは達にも聞こえる。 「すごいね・・・・・・。これで、少しはロメオ隊の人達と仲良くなれればいいんだけど・・・・・・」 なのははそう呟きつつ、再びモニターに目をやった。新たなチームが出撃するところが、モニターに映し出された。 とその時、なのはとフェイトの元へ念話が入った。相手ははやてだ。 『2人とも急で悪いんやけど、ちょっとロメオ隊の司令室まで来てくれんか?森1佐から呼び出されて』 『別にいいけど・・・・・・』 なのはとフェイトは一緒に歩き出した。なのはは、何か嫌な予感を感じていた。 戻る 目次 次へ
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一週間の番組表 →→ 12月29日(火) 12月30日(水) 12月31日(木) 1月1日(金) 1月2日(土) 1月3日(日) 1月4日(月) 2009年12月31日(木曜日)の番組表 04 00 Oha!4 NEWS LIVE 05 20 朝イチテレビTHB 今年一年ありがとうございましたSP 08 00 イナズマイレブン 熱血アンコール! 一挙放送 09 00 映画 「戦国自衛隊1549」 11 30 NNN・THBストレイトニュース 11 55 ダイレクトテレショップ 12 00 ぶら~りゴルフ~女だらけの日帰りゴルフ旅~ 13 30 天空の教室 ~中国四川省・標高3000mの希望 14 55 おとなのバンド大賞2009 15 50 絶対可憐チルドレン ベストセレクション 16 50 ニュースセンターTHB 17 00 第42回 年忘れにっぽんの歌 21 30 DARKER THAN BLACK 流星の双子 22 00 THB年越しスペシャル2009 24 50 吉本年末スペシャル
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新暦76年 10月6日 9 00 なのはは途方に暮れていた。 本来ならなのは、フェイト、はやての3人で鹿島の説得に来るはずだったのだが、はやては昨日から突然時空管理局本局からお呼びがかかり、フェイトはまた別のところから呼び出されてしまった。 そんなこんなでなのはは隣にいる、マッチョなサムライと2人っきりで鹿島の住む安アパートにやって来た。 リリカル自衛隊1549 第9話 「説得」 今日は休日なので鹿島は部屋にいると思ったのだが、何度インターホンを鳴らしても鹿島は出て来なかった。家の電話にかけても、留守電に設定されていたのだ。どうやら出かけているらしい。 「困ったな・・・・・・。早く話さないといけないのに・・・・・・」 なのはがそう焦る横で、連れの侍―――七兵衛はずっと黙っていた。体格はがっちりしていて、顔立ちも整っている。 取り敢えずなのはが鹿島の勤める会社に電話すると、鹿島は営業に行っているとの事だった。休日出勤してまで働いているのは、おそらく営業成績が悪いせいだろう。 鹿島が営業に行っていると聞き、なのは達が出直そうとアパートを出た、その時だった。 「なんか用か?」 聞き覚えのある声で振り向くと、背広を雨で濡らした鹿島がそこに立っていた。 「俺が着替え終わったら、さっさと出て行ってくれ。平成のサラリーマンは忙しいんだ」 どうやら鹿島は営業先に傘を忘れてきてしまったらしく、雨に濡れながら着替えに戻ってきたらしい。 鹿島は濡れた背広を脱ぎつつ、なのは達にに言った。他人と関わるのが面倒だとあからさまに言っているようなものだ。 「武士が刀を捨てて商いか」 と、七兵衛が鹿島に問いかける。鹿島は最初、七兵衛が侍だったのに驚いていたが、すぐに慣れたようだった。 七兵衛の問いに、鹿島は 「俺は武士じゃない。第一、今の世の中に職業の貴賎はねえんだ。6年もこっちにいたら、それくらい知ってるだろ」 と、ぶっきらぼうに言い放った。濡れた背広をハンガーにかけ、クローゼットから別の背広(とても安そうな背広だった)を着た鹿島は、 「それで、俺に何の用だ?どうせ俺を連れて来いって頼まれてんだろうが」 となのはに言った。 やはり、この男は鋭い。なのははそう思いつつ、正直に答えた。 「はい・・・。といっても、やっぱり駄目って言うんでしょうね?」 「当たり前だ。こんな世界、守る価値も義理もない。消えた方が、むしろすっきりしていいんじゃないか?」 鹿島の最後の一言に、なのはは少し怒った。 ―――わたし達がどんな気持ちで今回の作戦に参加したか、知らないくせに。 なのははそう思い、少し強い口調で話そうとした直前、七兵衛が鹿島の部屋を眺めながら言った。 「おぬしは己の性分に背を向けているように見える。それが平成の世の生き方というなら、わたしもおぬしの言い分を認めよう。そんな世界、消えてしまった方がよい」 「七兵衛さん、何言って―――」 なのはは七兵衛に抗議しようとしたが、七兵衛はなのはの肩を掴み、顔を寄せて 「男同士で話し合った方が早いこともある。高町殿は少し、席を外してくれないか?」 「でも、七兵衛さん・・・」 「頼む。必ず翻意させてみせる」 そう頼まれたので、なのはは渋々部屋から外に出た。傘を広げ、 (これじゃあ来た意味ないじゃん・・・・・・) と思いつつ、なのははひたすら外で待った。 なのはが部屋を出て行った後、七兵衛は鹿島に向き合った。 鹿島は着替え終わり、さっさと帰れとばかりの視線を向けていたが、七兵衛は無視し、 「おぬしは先程、職業に貴賎はないと言ったな。だが、わたしは貴賎はあると思う。職業ではなく、人の心に」 「・・・・・・」 「うつけが一国の主になることもあれば、無学な百姓に天賦の才が宿ることもある。それが戦国の世だった。 しかしこの平成の世はどうだ?己の思うが侭の行動がとれ、己の才を活かせる。平和で民百姓も死ぬことの無い。それはそれで、十分守るに値する世界だと思うが」 淡々と続ける七兵衛の言葉を、鹿島は黙って聞いていた。 訛りとは違う、400年以上の歳月で変わってしまった日本語のイントネーションが、七兵衛の言葉を重々しく聞こえさせているのだろう。 「・・・だが、この世界は平和なようでいて歪だ。この国は平和だが、他の国じゃ毎日数え切れない人間が、一部の人間の利益の為の紛争で死んでいる。 この国だって、『意見を言わないことが意見』なんて詭弁がまかり通る国だ。政治は国民のご機嫌取りが第一で、国家の為の政治なんて行っていない。俺はそんな世界の為に働きたくはない」 「おぬしは見返りを求めて行動する男なのか?」 最後の一言に、鹿島は虚を突かれた気がした。鹿島は窓から、表に立っているなのはの顔を見つけ、Fユニット時代の自分を思い出した。 あの時、鹿島はは何か守るべきものがあると信じ、Fユニットに参加した。たとえそれが見返りのない行動で、それを知っていても鹿島達はFユニットに居続けた。 いつからだろう。それが虚しいことだと感じ始めるようになったのは? Fユニットの解散が決まった時?それに抗って的場1佐について行った時?最終的にFユニットの存在そのものが消し去られ、それに失望した時?それとも、その判断に従った的場1佐に、魅力が無くなって、自衛隊を去った時・・・・・・? 「おぬしの過去について、わたしは知らない。知ろうとも思わない。だが、過去は変えられない。変えられるのは、現在という時だけだ」 「変えられるのは、現在だけ・・・・・・」 「わたしと一緒に来た高町殿には養子がいるらしい。その子供は過去につらい経験を重ねてきたと、高町殿は申された。 同時に高町殿は、その子供の為に希望のある未来を残したい、だから作戦に参加したとわたしに語った」 なのはの瞳の輝きは、昔の自分や仲間のに似ていた。その瞳は、何か守るべきものを持つ者の瞳だった。 「神崎殿は、自分の過ちで失ってしまった的場殿を連れ戻したいと言っていた。自分の功名心がゆえに、実験を中止しなかった、そのせいで的場殿達は過去に飛ばされてしまった、と。 最後にもう一度言う。おぬしのような考えの人間ばかりがいるような世界ならば、そんな世界は消え去ってしまえばよい。 だが、おぬしに助けが必要な人間もいることを忘れるな。希望のある未来を求め、そのために全てを投げ出す覚悟のある人間の言葉を、おぬしは無視するのか?」 そう一息に言った後、七兵衛は頭を下げ、鹿島の部屋から出て行った。 すぐに窓から外を覗いた鹿島は、七兵衛となのはがこちらを振り返り、何事か話し合った後車に乗り込むのを見た。 鹿島は部屋の机の引き出しを開け、そこにあった一枚の写真を取り出した。 その写真には、迷彩服を着た若き日の鹿島と仲間達、それと的場が並んで写っていた。 鹿島はその写真をしばらく眺め、そして引き出しに戻し 「やれやれ・・・・・・」 と呟いた。 「七兵衛さん、どうでした?」 なのはは戻って来た七兵衛に対してそう訊いたが、七兵衛は無表情のまま答えた。 「あの男には昔のわたしに通ずる物があると感じた。わたしは思った事を全て伝えた、あとはあの男がどう判断するかだ」 「そんないい加減な・・・・・・」 「なに、今は少し拗ねているようだが、じきに何が正しいことかわかるだろう」 七兵衛はそう語り、鹿島の部屋を振り返った。なのはも鹿島の部屋を眺め、鹿島が窓からこちらを見つめているのに気づいた。 鹿島はしばらくこちらを眺めていたが、すぐに部屋に引っ込んだ。 なのはは七兵衛に促され、不安を感じつつ車に乗り込んだ。 それと同時刻、時空管理局本局にて。 「・・・という訳で私達ホール対策特別部隊は、1週間後の10月13日、12 05に現地治安機関の一部隊『ロメオ隊』と合同作戦を決行。1549年に向かい、歴史の歪みの原因となっている第3特別実験中隊を救出、1週間後に発生する揺り戻しによって現代に帰還します。何か質問はありますか?」 はやては目の前に並んだ管理局のお偉方に向き合い、作戦概要の説明をしていた。この作戦は極秘であり、今まで管理局の大半の幹部はほとんど作戦自体を知らなかった。 そういう作戦を知らない幹部達に現状と作戦の説明のために、はやては本局に呼び戻されたのだ。 「あ~、どうして第97管理外世界の部隊と合同で作戦を行わなければならないのかね?こちらでその、人工磁場シールド装置とやらを作り、タイムスリップしてしまえば良いのでは?資料は現地政府から手に入れたのだろう?」 髭を生やした偉そうな幹部の1人が、いかにも不満であるという口調で言った。管理局では質量兵器は嫌われていて、その質量兵器を扱うロメオ隊と合同作戦を行うのが不満なのだろう、とはやては考えた。 「こちらで人工磁場シールドを建設し、時間転移するという案は既に実行されています。ですが、それらの案は全て失敗しました。 いくら似た状況を作り出しても、何かが違うんです。電磁波、大気成分、重力、磁力・・・・・・。それら以外の何かが。だから、今は第3特別実験中隊が時間転移した東富士演習場で前回と同じ状況を再現し、我々も時間転移するしかないのが現状です。 それに、管理局の存在を知らない第3特別実験中隊と遭遇した場合、彼らがわたし達を敵対部隊と判断する可能性もあります」 はやてが説明すると、髭の幹部は不承不承といった風に頷いた。 実際、管理局は日本政府から「友好的に」手に入れた研究成果を用い、既にあちこちの世界で人工磁場シールドを建設した。しかし、そのどれらも機能しなかった(「友好的」というのは、管理世界化を推し進める云々という脅し文句と、他世界の資源の無償提供という利益をちらつかせたのだ)。 すると、別の若そうな幹部が手を挙げた。 「八神2佐、この作戦に参加する人員の数と、装備の説明をお願いします」 「今回作戦に参加する人員は、陸戦・空戦魔導師、ヘリパイロット、車両運転手や整備員合わせて64人、ロメオ隊の方は、戦闘員、ヘリパイロット、車両運転手とそれら整備士、そして通信士を合わせて58人です。なお装備の方は通常の携行デバイス、銃器の他に、わたし達はJF704式改ヘリ2機、指揮通信車両1両を装備。 ロメオ隊の方は装甲車両6両、指揮通信車両1両、偵察用バイク4台、輸送トラック3両、燃料タンク車2両。航空機は、大型輸送ヘリ2機、偵察ヘリが1機、そして攻撃ヘリコプターが1機です。 ロメオ隊の武器弾薬は、土中分解する薬莢を用いた麻酔弾を主な装備としていますが、通常の実弾も装備・・・」 「ちょ、ちょっと待ってください!実弾はいいとして、何で攻撃ヘリなんで重武装の装備まで持っていくんですか?彼らは戦争をしに行く訳じゃないんでしょう!?」 はやての弁を遮って、中年の女性幹部が声を張り上げた。 そんな事はロメオ隊に言って欲しい、とはやては思いつつ、仕方ないので説明する。 「第3特別実験中隊が意図的に歴史を改変している可能性も考えての結論です。いざという時には、『歴史を狂わせる要因の排除』の為に、第3特別実験中隊の殲滅もやむなし。と、第97管理外世界の政府は考えているようです」 はやてがそう言うと、中年幹部は黙って席に着いた。長話する手間が省けた、とはやては考えつつ、また幹部達を見回した。 「それで、他に質問は?」 戻る 目次 次へ
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現在 1549年 10月13日 12 15 開け放たれた指揮通信車のハッチから、強烈な日の光が差し込んでくる。 「間違いない。ここは、わたしの知る世界だ・・・・・・」 七兵衛が感慨深そうに、空を仰ぎ見ながら呟く。 「ここが、戦国時代・・・・・・」 「来たのか、俺達は本当に・・・」 心なしか、空は平成時代より、青く澄み渡っている気がした。 リリカル自衛隊1549 第11話 「戦国時代」 森の号令の下、全員が時計の時間を合わせる。 揺り戻しが起きるまで、あと169時間7分。 時計を合わせた後、すぐさま作業が始まった。帰還場所を見失わない為のランドマーカーの設置、侵入者を探知するセンサーの設置など、やることは色々あった。 はやてを始めとする魔導師も、結界などを張って協力する事が事前に決められていた。が・・・・・・。 「AMF?」 森は怪訝な表情で聞き返した。 先程シャマルがスリッピングフィールド一帯に結界を展開させようとしたのだが、上手く魔力が結合できなかったのだ。 不思議に思い調べてみると、この辺り一帯に高濃度のAMFが展開されている事が判明した。 「はい。Anti Magilink-Fieldと言って、簡単に言えば魔力を使いづらくするフィールドを展開させる魔法です」 と、今回の作戦に記録係兼情報係として参加したユーノが答える。 「我々のところで言うジャミングやECMみたいなものか・・・」 と森が呟く一方、鹿島はすかさずユーノに訊く。 「そのAMFとやらは、人工でしか生成できないのか?それとも自然発生することもあんのか?」 「自然に発生するってのは、結構低い確率だと思います・・・。人工に生成されていた方が多い気がします」 ユーノの言葉で、なのははスカリエッティを思い出した。彼の所有するガジェットドローンはAMFを展開出来、なのは達も大いに苦しめられた。 もしかしたら、スカリエッティがいるのではないか。そう思ったなのはは、すぐに自分の考えを否定した。 そんな偶然、ありえない。 「つまり、その超低い確率に当たっちまったのか、それともこの時代に魔導師がいるかのどちらかということか」 鹿島は腕を組んで、何か考え始めた。 「八神2佐、君達が行った人工磁場シールドの実験は、確か全て失敗したんだったな?」 森がはやてに問う。 「はい。あちこちの世界に施設を作って、条件も完璧に再現したんですけど、結局全部成功しませんでした」 「なら十分だ。おそらく自然現象だろう」 森はそう言って、大規模な周辺一帯の偵察を行わず、センサーの設置と警戒だけ行うよう命じようとした。が、鹿島がすかさず反論する。 「ちょっと待ってくれ。自然現象だと何故言い切れる?ここはちゃんとした偵察活動を行って、AMFの原因を調べるべきだ」 「部隊の行動は夜間に限定されている。昼間に移動すると、誰かに発見される恐れもある」 「能力が完全に発揮出来ない状況で襲われてみろ。あっという間に全滅するぞ。大体、こんな平地のど真ん中で密集してたら、それこそ襲ってくださいと言ってるようなもんだ」 「君はあくまで民間のオブザーバーだ。部隊運用権限は私にある」 そう喧々囂々の議論が始まってしまった。なのははそれを見て、エリートで規律を守る森と、直感で行動する鹿島の違いを感じた。 森は規律に従い、その通りに行動している。規律を守る事が最善で、部隊に混乱をもたらさないと考えているのだろう。反面、思考に柔軟性を欠き、規定通りの事態には完璧に対応できそうだが、規定にない突発的な出来事には対処できないかもしれない。 対して鹿島は直感で行動している。思考が柔軟でどんな状況にも対応出来そうだが、反面自衛隊という規律を重んじる組織では疎まれそうだ。 やがて、森は小規模な偵察隊の出発を命じた。鹿島は「偵察を出すならヘリも出すべき」と言い張ったが、森が指揮官権限で一蹴してしまった。森にはロメオ隊・ホール対策特別部隊の総指揮権限が与えられているため、鹿島も下手に太刀打ち出来なかったのだ。 こうして、七兵衛と乗馬の出来る隊員3名が、この時代の服装をして偵察を行う事となった。 ホール対策特別部隊の指揮車では、鹿島と森が激論を戦わせているのを、はやては念話に変換された無線通信で聞いていた。 隣で部隊展開の管制を行っているリインフォースⅡが、警戒の為に展開する魔導師達と連絡を取りつつはやてに話しかける。 「何か、上手くいってないですね~」 「ほんまやなあ。もちっと仲良くして欲しいもんや」 そう心から言ったはやては、目の前のモニターを眺めた。 モニターには、各魔導師の所有するデバイスからの映像が映し出されている。今のところ、大した動きは無い。 本当なら、魔導師による航空偵察が行われる予定だったのだが、このAMF下では飛行は困難だった。森は 魔導師達の体力温存を考え、航空偵察は夜間に偵察ヘリで行う事を決定した。 対して鹿島は、「魔導師が使えないならヘリを今すぐ出すべき」と森に提案したが、案の定、森は聞く耳を持たなかった。 魔導師はヘリに比べて小さく、ローター音も出さないので航空偵察にはうってつけだったのだが、このAMFが全ての計画を狂わせてしまった。 「はやてさん、森さんと鹿島さん、どっちの意見が正しいと思います?」 リインフォースⅡがモニターに目をやりつつ、はやてに訊く。 「正しいって言われてもな~。森さんの行動は組織としては常識的だし、鹿島さんの提案は実戦的発想に基づいておるから、どっちも間違ってはないと思うよ」 はやてはそう答えた。 するとその時、はやてに念話が届いた。ヴィータからだ。 『これから周辺一帯の警戒に行って来る。ロメオ隊の人間も一緒だ』 『ヴィータ、ちゃんと仲良くするんよ』 『っ、わかってるよ!じゃあな!!』 そう言ってヴィータからの念話は切れた。 はやては手元の地図に目を落とす。なのはを除くスターズ分隊は、スリッピングフィールド周囲の森林地帯を行う予定だ。万一敵襲があったら、一番危ない場所である。 (・・・ヴィータ。無事でな) はやてはそう願った。 その頃、「君がいると指揮系統が乱れる」と森に言われ指揮通信車を追い出された鹿島は、苛立ちながらポケットからタバコを取り出した。 電子ライターを何度か着火させようとしたが、ガスの残量が少ないのかなかなか点かない。仕方なく予備のライターを取り出そうとした時、横からライターを持った手が突き出されていた。 三國だった。三國はジッポのライターを着火し、鹿島に近づけた。鹿島は礼を言って、タバコに火を着ける。 「森さん、何度D-3に挑戦しても制圧出来なかったんです。あなたみたいな天才に嫉妬してるんでしょう」 三國はそう苦笑しつつ、ライターを懐に戻した。 鹿島はライターを持った三國に、礼にとタバコを一本差し出す。 「いいです。タバコは吸わないので」 「じゃあ、何でライターを?」 再びライターを懐から取り出し、三國は嬉しそうな表情で答えた。 「父の日に、息子がくれたんです。娘には『タバコ臭い』って言われまして、それで禁煙したんです。やっぱり、男同士の方が話が合いますね」 「そうですか・・・」 「ゴラン高原だの東ティモールだのイラクだの、方々派遣されましたがね、まさか戦国時代に派遣されるとは思わなかった。歴史好きの息子の見せてやりたいもんです」 三國はそう言った後、「タバコ、ちゃんと始末しておいて下さいよ」と言ってどこかに歩いて行った。 鹿島は深く煙を吸い込んだ後、近くをユーノが通りかかるのが見た。 「スクライア博士、ちょっと訊きたい事が」 「ああ、鹿島さん・・・って、タバコ吸っちゃ駄目じゃないですか!何も僕達の痕跡を残しちゃ・・・」 「後でちゃんと始末しとく。それで、話がある」 鹿島は短くなったタバコを口から離し、ユーノに向き合った。 「1つ訊きたいんだが、あんたが知ってる中で、AMFだっけ?を発生させられる人間は、どのくらいいる?」 「AMF自体、非常に珍しい魔法なんです。そうですね・・・、大体10人以下だと思います」 「一番こんな事が得意そうな魔導師は?」 鹿島にそう訊かれ、ユーノは腕を組んでしばし考える。 「・・・・・・やっぱり、AMFを使ってた中で印象深いのは、ジェイル・スカリエッティでしょうかね?」 「ジェイル・スカリエッティ?」 ロメオ隊には魔法技術を始め、次元世界のことについては殆ど知らされていない。もちろん、犯罪者であるスカリエッティの事なんて知らないだろう。とユーノは思った。 「広域指名手配されている次元犯罪者です。生命操作や生体改造、精密機械に関する違法な研究を行っていたり、管理局に襲撃を掛けてきた事もあります」 「そのスカリエッティって奴、設計図の図面さえあれば何でも作れるような奴か?」 鹿島が真剣な表情に訊いてくる。ユーノは何故だろうと思いつつ、答える。 「多分。ガジェットドローンっていう、この世界でいう無人戦闘機械を量産させてましたし」 「・・・そのスカリエッティが、人工磁場シールドに関する技術を得ていたりしている、何てことは?」 ユーノはその言葉の意味を考えてみる。 たしかにスカリエッティが人工磁場シールドに関する技術を得ていたら、装置を完全に再現させる事は可能だろう。タイムスリップへの個人的な興味もあるに違いない(現にユーノだって、過去の世界に行く事が出来るという事に興味を持って志願したのだ)。 「もし技術を得て、それで完成させたとしても、それで成功するなんて事は多分無いです。現に管理局が技術を提供されて、それを完全に再現させても効果を発揮しなかった訳ですし」 「過去に行ける魔法ってのは存在するか?」 「うーん、未だに見つかってませんね」 そう言うと、鹿島は黙り込んで何かを考え始めたようだった。 「あの、何かあるんですか?」 「いや、何でもない・・・・・・」 鹿島はそう答えた後、小さく呟いた。 「・・・見つけてるな、もう」 ユーノはその言葉の意味がわからなかったが、鹿島はそれっきり何も話しては来なかった。 戻る 目次 次へ
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偵察に出た七兵衛達は、明らかにこの時代の物ではない物を発見していた。 大量に遺棄されていた小銃の空薬莢だったり、戦闘糧食の空き缶だったり。近くの岩肌では、爆発で抉られたらしい痕跡もあったと、七兵衛達は報告してきた。 一方、無断で指揮通信車に戻った鹿島は、その報告に違和感を抱いていた。 何かが、おかしい―――。 リリカル自衛隊1549 第12話 「相反」 鹿島の疑問に気付く事無く、森はトラップの有無だけを七兵衛達に確認させ、ヘリ部隊のみ残して本隊をベースキャンプ予定地の高座山に前進させるよう命じた。 慌てて鹿島は、森に前進を中止するよう訴えた。一応鹿島はオブザーバーとして来ているので、渋々森は鹿島の意見を聞く。 「なぜ前進の中止を訴えるんだ?トラップは確認されていないし、問題は無い」 そう訊く森に、鹿島は理由を述べていった。 まず第一に、これだけの遺棄物が残されているのが不自然だった。近代ゲリラ戦の鉄則は、自分達の痕跡を残さないこと。遺棄物だけで自分達の存在・規模・位置が知られてしまうからだ。 薬莢はともかく、戦闘糧食の空き缶まで放置してあるのはおかしい。軍事組織では野戦時に、糧食の空き缶を埋めておくのは常識だ。そんな初歩の初歩の事すら偽装できていないのは、的場1佐が指揮する部隊にしては不自然―――、いや、後手に回りすぎている。 第二に、まだ現地住民に接触すらしていないことが疑問だった。 「偵察の報告じゃ、発見された民家は全て空き家だったんだろう?」 「それがどうした。戦に巻き込まれるのを恐れて、田畑を捨てて逃げ出したのかもしれない」 「だとしても全員いなくなるのはおかしい。ここは前進を中止して、観測へリで周囲一帯をスキャンすべきだ」 鹿島の言葉に、森は「それこそ藪をつついて何とやらだろうがね」と言い、再び部隊の前進を命じようとする。 鹿島はそのマイクを奪い、再び中止するよう訴え、森はそれを退け再びマイクを取り、また鹿島が―――。 その司令部の醜態を、秋元達は無線越しに聞いていた。 先程から秋元達はヴィータ達と協力し、センサーを設置した後周囲の警戒についていた。 「・・・なんか、纏まってないですね」 「ああ。さっさと方針を決めて欲しいもんだ」 秋元はティアナとそう言葉を交わし、再び周囲に目を凝らした。 先程から指揮通信車の通信士は「移動準備」と言っては「現状で待機」と取り消し、を繰り返していた。指揮車の様子がわからない秋元達は、指揮系統が乱れていると推測するしかなかった。 問題はヴィータを始めとする魔導師達だった。 今回の作戦の指揮権限は、ロメオ隊>管理局だったので、ロメオ隊の指揮権限が乱れると、魔導師達にも影響が出るのだ。森の方が階級が上で、地球で作戦を行う以上ロメオ隊が有利になるのは仕方なかったが、ヴィータは森と鹿島の不仲に苛立っていた。 「ったくアンタらの指揮官は無能じゃねえか!襲われた時にこっちが全滅したらどうすんだ!!」 「まあまあヴィータ隊長、落ち着いて」 そう怒るヴィータをスバルは宥めたが、ヴィータの怒りは止まらない。 「なんであんな奴が指揮官なんだ!?はやてが指揮官の方が、もっとしっかりしてたんじゃないか」 「一応森1佐はエリートですよ。防大卒でレンジャー徽章持ってて、海外派遣も何度もされてますし」 秋元が宥め、ようやくヴィータは静かになった。しかし、不満が大有りのようだ。 「そもそも実戦経験の無い奴が、何で指揮官なんだ。あんたらも不安じゃねえのか?」 「実戦経験って・・・・・・。自衛隊に実戦経験のある人なんて、そんなのいませんよ。指揮官を信じなきゃ、作戦どころか組織として成り立たないですし」 秋元が答えると、ヴィータはまだ不満がありそうな顔をしていたが、「他の警戒区域を見てくる」と言って歩き出した。 その背中を見つつ、漂ってきた異臭にティアナは鼻を塞いだ。 「それにしても、臭いですね」 「ああ、本当なら埋めるなり移動させるなりしたいんだがな・・・・・・」 そう秋元と言葉を交わしたティアナは、異臭の源へと目を向けた。 そこには、多くの死体があった。 矢が刺さったもの、胴体が一刀両断されているもの、頭が無いもの・・・・・・。様々な死体が、この森一帯に100体ほどあった。 合戦の死者らしく、本部はまだこのあたりに武装集団がいるのではと心配したが、死体の殆どはだいぶ前のものらしかった。現に日の当たる場所の死体は、殆どが白骨化していた。 それでも、一部はいまだに腐乱し蝿がたかり、壮絶な異臭を放っている。余りの凄惨さに、ロメオ隊・管理局を問わず何人かが嘔吐したものだった。 たまらず秋元達は遺体の埋葬許可を本部に求めたが、『遺体の移動によって歴史が変わるかもしれない』とのことだった。要するに、『何かあったらヤバイしそのまま放置しとけ』ということだ。 遺体の埋葬をしたかったのは、衛生上の観点からだけではない。無残に放置され、虫にたかられている彼らが可哀想だったからでもあった。 「ったく、遺体位で歴史が変わるんなら、俺達が来た時点で相当変わってるっての」 と、隣で64式狙撃銃を携えた加賀が呟く。ティアナも同じ意見だった。 ロメオ隊は、どうにも規則に縛られすぎている節がある。このままでは、敵に襲撃された時にあっという間にやられてしまう。 (―――敵?敵って誰?第3特別実験中隊の人?この時代の人?) ふとティアナはそう思った。 いつの間にか、自分は第3特別実験中隊を敵だと考えていたらしい。本来なら彼らは救出対象なのに、敵と考えるのは早すぎる。 そう自分を戒めたティアナは、再び前方の森を見つめた。自分の相棒、クロスミラージュを強く握り締めて。 数分後、ロメオ隊員の無線機が突如鳴り、続いて魔導師達にも念話が届いた。 鹿島と森の喧々囂々の激論の末、部隊をベースキャンプ予定地に前進させるらしい。もちろん、移動時に騒音をだすヘリコプターは除いてだ。 通信を受け取った隊員達は、即座に撤収準備を始めた。各々車両に登場し、警戒のため一部の隊員のみ残して出発した。 魔導師達も、AMF下での魔力の消耗を抑えるため、物資を下ろして身軽になったロメオ隊のトラックに分乗した。指揮系統がはっきりせず、そのことにより雰囲気が険悪になっていたが、とにもかくにも部隊は高座山へ向けて出発した。 一方車列から数メートル離れた場所では、地面から一本の指が突き出ていた。その指の先端には小さなカメラらしき物が付いており、カメラは移動している車列の方向に向けられていた。 しばらく車列を撮影した後、唐突に指は地面に沈んでいった。 戻る 目次 次へ
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2005/05/14 INいつもの公園 今日はあまり時間がなかったので、いつもの公園で練習しました。 相変わらずミカは頭を動かす癖があるし、体重移動がなんかいまいち・・・。 どーやったらうまくいくんだろうって考えても俺自身がダフって芝刈ってるから 俺も練習しなくちゃ・・・orz でも、始めた頃よりはきっとうまくなってるはず♪ 後はミカのマイクラブを買って練習をいっぱいしてくれたら 一緒にラウンドできるかな。 2005/05/15 IN成田シネマズ8 交渉人真下正義を見に行ってきました。 やっぱ踊るシリーズは観ていて楽しい。 クライマックスはイマイチって感じだけど・・・。 でもとても楽しかった。 次に観る映画のリスト 戦国自衛隊1549 6/11~ 容疑者室井慎次 8/27~ 一枚目:へたれミカ(いつものようにボールは右) 二枚目:矯正 三枚目:俺のおかげで真っ直ぐ飛んだ( ゚Д゚)ウマー