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+※商品数が10個以上あるので隠しています、情報を見る際は+をクリックして表示させて下さい。 ヴァイスシュヴァルツ 「とある科学の超電磁砲」 美琴&黒子 特製スリーブ ヴァイスシュヴァルツ 「とある科学の超電磁砲」 美琴&黒子 特製スリーブ 50枚 発売日 :2013年4月26日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67×92mm ・50枚入り スペシャルサプライセット付属 「どある科学の超電磁砲」 妹達 特製スリーブ スペシャルサプライセット付属 「どある科学の超電磁砲」 妹達 特製スリーブ 発売日 :2013年4月6日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67×92mm ・60枚入り スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」御坂美琴VerM 特製スリーブ スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」御坂美琴VerM 特製スリーブ 発売日 :2013年4月6日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67×92mm ・60枚入り スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」御坂美琴 特製スリーブ スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」御坂美琴 特製スリーブ 発売日 :2013年4月1日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67×92mm ・60枚入り スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」白井黒子VerM 特製スリーブ スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」白井黒子VerM 特製スリーブ 発売日 :2013年3月7日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67×92mm ・60枚入り 電撃20年祭限定 スリーブコレクションエクストラ Vol.21 『とある科学の超電磁砲』【美琴&黒子】 電撃20年祭限定 スリーブコレクションエクストラ Vol.21 『とある科学の超電磁砲』【美琴&黒子】 発売日 :2012年11月25日 発売 商品情報 ・縦92×横67(mm) ・60枚入り ブシロードスリーブコレクション HG(ハイグレード) Vol.9 とある科学の超電磁砲 『初春 飾利』 ブシロードスリーブコレクション HG(ハイグレード) Vol.9 とある科学の超電磁砲 『初春 飾利』 発売日 :2010年5月29日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67mmx92mm ・60枚入り ブシロードスリーブコレクション HG(ハイグレード) Vol.10 とある科学の超電磁砲 『佐天 涙子』 ブシロードスリーブコレクション HG(ハイグレード) Vol.10 とある科学の超電磁砲 『佐天 涙子』 発売日 :2010年5月29日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67mmx92mm ・60枚入り ブシロード スリーブコレクションHG(ハイグレード) Vol.8 とある科学の超電磁砲 『白井 黒子』 Part.2 ブシロード スリーブコレクションHG(ハイグレード) Vol.8 とある科学の超電磁砲 『白井 黒子』 Part.2 発売日 :2010年4月24日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67mmx92mm ・60枚入り ブシロード スリーブコレクションHG(ハイグレード) Vol.7 とある科学の超電磁砲 『御坂 美琴』 Part.2 ブシロード スリーブコレクションHG(ハイグレード) Vol.7 とある科学の超電磁砲 『御坂 美琴』 Part.2 発売日 :2010年4月24日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67mmx92mm ・60枚入り ブシロード スリーブコレクションHG Vol.3 とある科学の超電磁砲 白井黒子 ブシロード スリーブコレクションHG Vol.3 とある科学の超電磁砲 白井黒子 発売日 :2010年2月20日 発売 商品情報 ・サイズ:67×92mm ・60枚入り ブシロード スリーブコレクションHG(ハイグレード) Vol.1 とある科学の超電磁砲 『御坂 美琴』 ブシロード スリーブコレクションHG(ハイグレード) Vol.1 とある科学の超電磁砲 『御坂 美琴』 発売日 :2010年1月23日 発売 商品情報 ・本体サイズ:67mmx92mm ・60枚入り スペシャルサプライセット 「禁書目録&超電磁砲」 スペシャルサプライセット 「禁書目録&超電磁砲」 発売日 :2011年1月29日 発売 商品情報 ・ジャンボストレイジBOXサイズ:約200mm×約230mm×約80mm ・4ポケットバインダー・・・2種(各1個)(サイズ:約205mm×約160mm×約10mm) ・スリーブ60枚セット・・・2種(各1個) ※スリーブコレクションHG仕様 ・デッキセパレータ・・・2種(各1枚) ・上記3アイテムがジャンボストレイジBOXに封入 ※中に封入するアイテムは全てこのセット限定のものとなります。 スペシャルサプライセット 「とある科学の超電磁砲」 スペシャルサプライセット 「とある科学の超電磁砲」 発売日 :2010年9月3日 発売 商品情報 ・ジャンボストレイジBO×サイズ:約200mm×約230mm×約80mm ・スリーブ60枚セット…2種(各1個) ※スリーブコレクションHG仕様 ・デッキケース…2種(各1個) ※組立式ではありません。 ・デッキセパレータ…4種(各1枚) ・布製プレイマット…1枚(サイズ:幅500mm×高さ300mm) ※Wスエード生地を使用した高発色のハイグレードプレイマット ・ジャンボストレイジBOXに封入 ※中に封入するアイテムはこのセット限定のものとなります。 スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」 VerM 特製デッキホルダー スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」 VerM 特製デッキホルダー 発売日 :2013年4月6日 発売 スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」 特製デッキホルダー スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」 特製デッキホルダー 発売日 :2013年4月6日 発売 スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」 VerM 特製バインダー スペシャルサプライセット付属 「とある科学の超電磁砲」 VerM 特製バインダー 発売日 :2013年4月6日 発売 商品情報 ・4ポケットバインダー
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記 かおり 「なんて酷いお方なんですか!! そのトウマとやらは!!」 「そうよね!! やっぱりそう思うわよね!!」 そろそろ隣の泡浮と湾内が苦笑しているのに気がついて欲しい。 もう、日差しが大分傾いてきていた。 4人はレストランから場所を移して、学舎の園の喫茶店、その外の席でお茶をしていたのだった。 つまり婚后と美琴の叫び声は通行人に騒音として認識されている。 「まったく信じられませんわ!!」 「そうそう!!」 「こっちが一緒にいたいという気持ちも考えず」 「まったくまったく!!」 「自分勝手に好きなことを言って!!」 「そーだそーだ!!」 間に赤面もののセリフがあったのだが、美琴は気付かない。 なんていったって嬉しいのだ 最近美琴の回りの対応が雑なのだった。 こうやって上条の愚痴を聞いてもらおうとしても、 佐天は「そうですか~」と言いながらニヤニヤしたあと、いつの間にか自分が赤面する展開になるし、 白井なんて論外だし 初春は「たいへんですね~」と言いながら、パフェに感動したりパソコンで仕事したりしている。つまりは聞き流している。因みに、白井の美琴に対する愚痴でも同じ対応なのを美琴と白井は知らない。 とにかく、美琴は一緒に怒ってくれる人が欲しかった。 しかし、少しずつ事情が変わってきたのだった。 「こんなに一緒にいたいと言っているにも関わらず……」 「あ、ごめん、わたし一緒にいたいとか、言ってないんだ」 言えたら苦労しないのだった 「……そ、それでも御坂さんの家から御坂さんを追い出すなんて!!」 「え、えーと、自分から出て来ちゃってたり」 「うっ…………か、関係ない御坂さんを無理やり巻き込み育児の苦労を押し付けて……」 「家事も育児もきれいに分担してるし、わ、わたし、自分から手伝いたいって言った気が……」 「か、カンザキとやらを呼び寄せて御坂さんを余所にイチャイチャするなんて!!」 「……えーっと、別にイチャイチャしてなかったし、そもそも神裂さんは呼ばれたんじゃなくて自分から来たような~……あれ?」 と、いうことはつまり 「そ、それではそのトウマとやらにはなにも過失がなくなってしまいますわ」 それではおかしい、では何故自分はイライラしていたのだ? 誰に対して腹をたてていたのだ? 「…………あっ」 そっか 「わたし」 すぐに、否定して欲しかったんだ 「関係ないと、言われたくなかったんだ」 しばらく、音が消えていた。 それを打ち破ったのは、あの パンッ という威勢のいい扇子の音 「甘いですわ!! 御坂さん!! あなたらしくもない!!」 一方、 「お、お前らが話を聞いてくれるって言ったから話したのに、ふ、不幸だ」 上条はベンチの上でボロ雑巾と化していた。 青髪、吹寄、姫神が、どうかしたのか? と聞いてきてくれた。 だから、現状を説明した。 終わった瞬間にゴッド・デコとエロサタンに殺されかけた。 上条に同情するやつはいないのだった。 「で。御坂さんと住んでることは置いといて。何を悩んでたのか教えてほしい」 上条は、何も言わず起き上がる。 口を動かしたのは、少ししてからだった。 「……美琴に、無理させてたんじゃないかって思ってさ。アイツ、この夏休みほとんど遊びに出掛けてないんだ。実家にも帰ってない。 もし、オレたちが美琴と関わらなければ、アイツはもっと夏休みを楽しめたんじゃねーかって思って……」 夕日が上条の表情に影を作る。 そんな上条に、静かに声がかけられた。 「……違う。上条くんの悩みはそれじゃない」 3人が驚きの表情を姫神に向ける。 しかし、上条と他の2人は驚きの中身が異なる。 青髪と吹寄もそれには気付いていた。しかし、それを口にできなかった。 彼女のことを思って。 「ど、どういうことだ? 」 「……それは。上条くんじゃなくて。御坂さんが悩むような内容。上条くんが悩むなら……」 そこまで言って、姫神は口を閉ざす。 上条には、夕日が逆光となり、姫神の表情がよく見えない。 でも、その表情は、泣いているように見えた。 「……上条くんが。悩むなら。どうやって御坂さんと一緒にいられるか。とかになる」 風が吹く 扇子が婚后の髪をなびかせた。 「直接言葉にせずに、自分の考えをわかってもらおうなんておこがましいですわ!! いつも、まっすぐに自分の考えを行動に移していた御坂さんらしくありません!!」 夕日が姫神の髪を焼く 彼女は凛と言い切った。 「正しいとか。迷惑とかじゃなくて。上条くんがどうしたいのかだと思う。そして。ダメもとで一回。御坂さんに頼んでみたらいい」 私なら、という言葉は飲み込まれた。 上条と美琴は素直ではなかった。 今回は単にどちらからでもいい、一緒にいたいと言えばよかっただけの話。 そして、それを望むものはもう1人いる。 夕日は神裂とインデックスにも降り注ぐ とある二人がおいかけっこをしていた土手を神裂は歩いていた。 「ぱーぱ、まーま?」 「ぱっぱまんま? 早く食事にしたいと? ……この姿でもあなたは相変わらずですね。でももう少し待ってくださいね。今日は、御坂にありがとう、またね、パーティーですよー」 草がざわめく、 何かを、インデックスは感じ取った。 「御坂には感謝しなければいけませんね」 インデックスの瞳が揺らぐ。 「楽しみですね、明日からは私と上条当麻、そしてあなたの3人での暮らしが始まるんですよ!!」 それを言った瞬間、神裂の視界がぶれた。 頭部に衝撃を受けたのに気付き、平衡感覚を取り戻すより先だって、反射的にきれいな体勢で着地したのは、さすが神裂であるというべきだろう。 神裂は戸惑う。 なぜ、こうなったのかわからない。 目の前には、何本もの空を舞う巨大な黒い刃。 それを自在に操るは 「う~~~~~~」 赤面し、目に涙を浮かべ、 宙に浮く赤ちゃん。 いや、魔道図書館だった。 「だーーー!やーーーーー!めーーー!!」 全ての刃が神裂に襲いかかる。 「!!! インデックスが、泣いてる?」 美琴は倒れる椅子に目もくれず立ち上がった。 一瞬3人は驚いたが、静かに微笑む。 「御坂さま、是非行ってあげてくださいな」 「え?」 「その赤ちゃんが泣いているのでしょう? ママがいてあげないと可哀想ですわ」 「……湾内さん、泡浮さん……」 「御坂さん、今日は、心ここにあらずというようにお見受けしました。きちんと、自分の気持ちを伝えてきてくださいな。その後、機会があれば、また遊びましょう」 「婚后さん……ありがとう」 美琴は笑って、近くの建物を使い、飛んでいった。 走っていくことすらしなかった。 一瞬あっけにとられた3人は少しして微笑む。 「素敵、ですね」 「そうですね、うらやましいですわ」 「でも、少し悔しいです、御坂さんにそこまで思われるお友達なんて」 「「………………え?」」 「え? なんです?」 上条はふと立ち上がると、顔を姫神から反らし別の方向に視線を向ける。 多摩川の方向だ。 姫神がその横顔に、静かに語りかける。 「いろいろ複雑に考えないで。上条くんがどうしたいかで動いた方がいい。その方が上条くんらしい」 上条は驚いた表情で姫神の顔を見た。 彼は微笑むと、再び顔を多摩川の方に戻す。 そして、言った 「前、美琴にも、同じこと言われたなぁ」 姫神の表情が固まる。 上条は何かを感じ、横を向こうとした。 しかし、背中から衝撃を受け、強制的に体ごと多摩川の方を向く。 それをした犯人の青髪が無理やり上条と肩を組んだ。 「あーあーカミやん!! 楽しそうやね!! 夏休みに嫁さんと赤ちゃん作って夫婦ごっことはさすがのボクもそこまで「う、うるせぇ!! そんなんじゃねぇよ!! 耳の近くでマシンガンのように大声出すな!!」のことは妄想でもしなかったわ。とにかくカミやんをその御坂さんと赤ちゃんが待っとるんやろ? さっさと帰ってあげてーや」 後ろを見ずに全力疾走してくれへん? 後ろを見たらぶっ殺すで。 なんて理不尽に対して文句を言う前に、 よーいドーンという吹寄の声と共に青髪に背中をおもいっきり叩かれた。 いつものセリフを口にしながら上条は走る。 未だに青髪がなにか叫んでいた。 上条は振り向かないでくれた 涙は吹寄の肩が受け止めてくれた 嗚咽は青髪の声が打ち消してくれた そして、 一人の少女の恋が終わった。 「ねぇ、これから3人でどこかいかない?」 「お、ええね。いこうや」 「コイツが奢ってくれるって」 「あれ? 姫神はともかく吹寄にも奢ることになってへん?」 「細かいことは気にしないの。姫神さん、とことん付き合うわよ」 「…………ハンバーガー。20個。やけ食い」 「……容赦ないね。ま、新学期にどうやってカミやんを懲らしめるか相談といこか」 神裂は、紙一重で攻撃をかわす。 「どうしたというのですかインデックス!!」 「だぁーーーーーーーーー!!やぁーーーーーーーーー!!」 神裂は かわすことに専念する。 下手に反撃してインデックスを傷つける訳にはいかない。 しかし、先程より少しずつ刃の数が増えていく。 このままではいつか刃が神裂に届くだろう。 思考を重ねている間にも刃は増えてゆき、ついに神裂の頬に届いた。 そして神裂を包囲する。 しかし、その時間は一瞬で終わった。 「こら!!! 何してるのインデックス!!」 雷電が刃を消し去ったからである。 神裂とインデックスの間に降り立ったのは、 超電磁砲、御坂美琴だ。 神裂は助けられたが、 その美琴を止めようとした。 先程の雷撃が危うくインデックスを傷つけるところだった。 しかし、声をかけようとした神裂の動きは止まる。 それは、 「魔術は私達が周りにいて、いいって言わないとつかったらダメだって、何度言ったらわかるの!!」 その、怒気に飲まれたからだ。 インデックスも体をびくつかせ、ふわふわと着地する。 静かにインデックスに近づく美琴。 インデックスはつい目をつぶった。 そのインデックスを美琴は そっと抱き上げた。 「どうして魔術を使ったの? 何か嫌なことがあったのかな?」 インデックスが目を開くと、 優しい、それでいて怒ってて、さらに悲しみを帯びた美琴の顔が見えた。 安心した。 「ま、むぁ~~ま~~、ピぇ~」 「ん? どうしたのかなー、よしよし」 ようやく神裂は気づく。 隣に上条が立っていることに。 「大丈夫か? 神裂?」 「え? ええ」 「悪いな、最近は魔術使うことがなかったんだけど」 「…………最近?」 「あぁ、最初は大変だったんだ。 ちょっと嫌なことがあったらすぐ魔術を使ってさ、しかもものすごいのを。 オレと美琴が全力で止めてたんだぞ」 そこで、ようやく気づく。 ここに彼女が到着したときの雷電がインデックスを傷つける訳がなかったのだった。 あの雷電は経験に則り、適切な加減で放たれたものだから。 「インデックス、なんで魔術使ったんだ?」 ふと、気づくと、上条は自分の横から彼女達の隣に移動していた。 「ぱ、ぷわぁ~~ぱ~~」 「お? どうしたどうした?」 「なんか今日は甘えん坊ね、どうしたんだろ?」 神裂はその光景に見覚えがあった。 ただ1つ違うとしたら、 あの子の表情だけだった。 だから……決めた。 「……美琴、ちょっと話したいことがあるんだ」 「……奇遇ね、わたしも話があるんだ」 少しの間お互いを見ていた上条と美琴だが、近づいてきた足音に顔を向ける。 「お二人に、話があります」 上条当麻、御坂美琴、そして神裂火織の3人はなぜかフローリングに正座していた。 上条の右隣が美琴、二人の正面に神裂が座る。ちなみにインデックスは上条と美琴の間に座り、二人のズボンとスカートをぎゅっと握りしめている。 どこかからかししおどしの「カコーン」という音が聞こえた。 「すみませんでした!!」 大和撫子の美しい土下座である。 当然2人は慌てた 「な、なんだよ!!」 「先ほど、イギリス清教より、連絡がありまして、至急戻るようにとのことでした」 「……神裂さん、許可取って無かったんだ」 「そのため、その子と上条当麻の面倒をみるということは、できそうにありません」 神裂は、美琴を見つめる。 「そこで、御坂にお願いがあります。二人の面倒を、このまま見続けてくれないでしょうか?」 「へ? え? はい、わかりました」 「即答かよ!!」 つい隣の上条がつっこみ、 それに、「だ、だって」なんて応える美琴。 そんな二人を見つめていた神裂は、微笑み、立ちあがる。 何故か口論になっていた二人はそこでようやくケンカをやめた。 「それでは、失礼します」 「へ? もう行くのか?」 「1泊くらいしていけばいいのに」 「いえ、仕事がたまっていますので」 「……神裂、仕事も置いて来たのかよ」 「それでは、また会いましょう、インデックス」 そう言って、赤ちゃんに顔を近づけた神裂の顔が驚きに染まる。 「かおり、よししー」 神裂の頭をなでなでするインデックス。 (……まったく、敵いませんね) 「ありがとう、インデックス」 そうして、彼女は窓から飛んでいった。 「……って、窓はこのまま放置かよ」 「……そういえば、当麻、話があるとか言ってなかった?」 「ん? あぁ、さっき美琴が即答した神裂のお願いと同じさ」 「なんだ、それか」 「で、美琴たんの話ってばなによ?」 「たんいうな。さっきわたしが即答した神裂さんのお願いよ」 「同じかよ」 「同じね」 真顔のまま話していた二人は、そこで笑いあった。 月光が差すビルの屋上。 「おっす、ねーちん」 暗闇の中から音もなく出てきたのは、 金髪に青いサングラス、 アロハシャツという、「胡散臭い」を体現した男だ。 「学園都市に来るんだったら前もって言って欲しかったぜい。そうしたらオレが新兵器『堕天使エロメイド防御力30%ダウン』を貸してやったんだがにゃー」 「土御門……ありがとうございました」 「……は?」 土御門は真顔になった。 彼の想定ではここで真っ赤になった神裂を拝みながら、彼女の突っ込みモーションを回避。 それが「ありがとうございました」とは不穏である。 まさか、今までありがとう、てめえのことは忘れないからさっさと地獄に行けコノヤロウってことなのか? 「……どうして顔色がサングラスと同じになってるんです?」 「ま、待ってくれ、ま、まだオレにはやることが……」 「は、はぁ」 「……コホン、ありがとうってどういうことだ? 感謝されることした覚えは無いぜよ」 「……今まで、私の恩返しに付き合ってくれたことへの礼ですよ。彼への恩返しの方法がわかったんです。彼とインデックスと……御坂の平穏を、全力で助けることです」 闇が静寂を強調する。 最初は動揺していた土御門は、 少しの間、言葉を真剣に考えた。 しかし、 「……ねーちん、いいんだな?」 そんなありふれた言葉しか出ない。 月光が、神裂の瞳に浮かぶ雫を光らせた。 「はい、私は、彼に感謝しています。……彼は、始めて、私を……」 不幸(幸せ)にしてくれたのだから。 同じく、月光が降り注ぐ研究室。 「……ついに、ついに、完成したか」 かつて幻想御手を作成した女性の瞳が暗闇の中で光る。 「フフッ、フハハ、ハーッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!」 下着姿な彼女に対し、ツッコミ役が誰もいないことを嘆きつつ、 このあたりで今回は終わりとします。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/育児日記
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『とある上嬢の日常とイベント』 「はぁぁぁ、不幸だぁー」 本日の不幸とは、何故かこの私がバレンタインのチョコレートを手作りする羽目になった。 事の起こりは学校でのこんなやり取りからだった。 私が何時もの様に自分の机で優雅なひと時を送っていると、 「やっほーカミやーん、今日もアンニュイな感じで寝不足なん?」 ドカッと背中に重みを感じたかと思うと、聞こえてきたのは青髪の馬鹿声だった。 「くぉら、青髪ィ、テメェは何時になったら自分のうすらでかさを自覚するんだこのヤロー!」 文句を言いながら肘打ちをかましてやると、 「ぐッ!? カ、カミやん……、中々鋭いツッコミやね、うぅ、お、おき、に……」 ずるずると、私の背中から剥がれていった。 まったくあの図体でのしかかりやがって、これ以上背が伸びなかったらどうしてくれるんだ、ったく! と、思ったのもつかの間、今度は頭上から何かがガッと私の頭を鷲掴みにすると、ぐぐぐっと机と顎でディープキスをする様に圧力を掛けてきやがる。 こんな悪ふざけをする馬鹿は……、 「土御門ォ! な、何すんだこのヤロー」 「朝の挨拶だにゃーっととぉ!? チッチッ、カミやんカミやん、青ピと同じ手は食わんぜよ」 くそ! 距離を取ってやがるから手が届きやがらねぇ!! 仕方が無いから自分の頭を鷲掴みしている手首を掴んでぐいっと捻ろうとするがビクともしやがらねぇ!? それどころか土御門のヤロー、掌の力を上げて来やがった!? 「痛、いたた、つ、土御門、痛ッ! 痛い!」 「にゃーカミやん、これがカミやんと俺の実力の違いだにゃー、放して欲しけれ……ガッ!?」 はーはー、ざけんな土御門、いくらお前でも脛を蹴り上げられたら痛いだろーが。 「っくく、さ、流石カミさん、いい右足持ってるにゃー、将来は世界を目指した方がいいにゃー」 手を外すのには成功したみたいだが、どーもダメージは大して無いみたいだな……、ま、期待もしていなかったけどな。 「時にカミやん、今度の土曜日は何の日やか知っとるん?」 「いやいや青髪、カミやんは天然だからにゃー、はっきり言ってやらにゃ判らんぜよ」 「チョコならやらねーぞ」 これでもかってくらい冷たく言い放ってやった。 「何でやのん、カミやん? ボクとカミやんの仲やないか~」 「えーっ!? それはつれないぜよカミや~ん」 「えぇーいい、うるさいうるさい! 何で私がオマエらなんかにチョコをやらにゃいかんのだ! むしろ私がオマエらからチョコを貰いたい位だッ!!」 ホントこのお祭り好き男どもには呆れ返る。 ここは一つ現実っちゅーモンを叩き込んでやろうと思う。 「だいたい考えてみろ! カミジョーさんの逼迫した経済状況の何処にチョコを買う金があるんだ!! おい、青髪ピアス! オマエ説明してみろ!」 「んな!? 堪忍してぇ~なぁ。そんなん言われたかてボクにはカミやんの家計の事なんて判らへんよ~」 ズバァーン! と青髪ピアスを指差してやった。どうだ馬鹿ヤローが!! 「んふふふ、カミやん貢いでるからにゃー」 土御門……、お前は今何と……、 「な、なんやて土っちー!? カ、カミやんが貢いでるって……、カミやん貢いでるってどういう事なん!?」 ホ、ホラ大変な事になったじゃないか!! 青髪が興奮してコワヒッ!? 「お、ちょ、ちょっと待て青がっ!? オイ土御門ッ!!」 テメ責任とって収集しろ! 何笑ってやがる……、オイ、止めろ、それ以上カミジョーさんのプライヴェートを……。 「事実は事じ、ぶぉべ!?」 目、目の前から土御門が消えたッ!? で、今目の前にいるのは……、 「吹、よ、せ」 「…………」 何だ? 声が小さくて良く聞こえない。 顔を近づけて「どうした吹寄?」って聞いてみると、 「今の話は本当なのって言ったのよ!!」 み、耳痛ぁ……。 な、何だこの状況は? 何故、吹寄が興奮していらっしゃるのか? 「お、落ち着け吹寄。カミジョーさんにはさっぱり状況が飲み込めないどぇぇええええ!!?」 胸倉つかまれると一気に持ち上げられるとは、なんつー力なんだかコイツはって、感心してるばあいじゃねぇ!? 「だ、か、ら、貴様は何処の馬の骨に貢いでるって言うのォ!!」 「ごか、ごか、ごか、誤解だぁぁぁああああああ!!」 あわあわあわ、ゆするのは反則ですよ吹寄サン! 暴力反対!! ってそこにおわしますのは、キングオブ■■の 「ひ、姫神、お願いだから吹寄を止めてくれ、いや止めてくださいお願いします」 「たまに声を掛けてもらえば。そんな事ばかり。しかも。今。私の事をなんと呼んだの?」 「いやいやいや、そんな女性だからキングじゃなくてクイーンでしたねぇぇぇって、お、お願いします! 助けてください姫神さま、秋沙さまぁ」 「し。下の名前で呼ぶのは。ちょっと反則。取り合えず了解」 何か急に頬を赤らめたりして、様子が何時もより2割り増しでおかしくなった姫神が両手をワキワキさせながら吹寄の影に入っていった? 「んにゅわ!? ひ、ひィィィィィ!!」 「ぐふぁー!! ぜー、ぜー」 と、取り合えず何だか助かったぜ。 で、姫神のヤツ、どうやって魔人吹寄に悲鳴ををををを!? 「相変わらず。布越しでもかなりのもみ心地で。結構結構」 すげぇ、姫神の指が吹寄の胸に埋まってる! 私じゃああはならねぇーよなぁ、なんて自分の胸に手を当ててみたり。 「い、いやッ! やめ、やめ、止めて姫神さんンンン!!」 それにしても目の前で身悶える吹寄って迫力あるなぁ~、なんて思ってたら吹寄はしゃがみこんでしまった。 見ると目の前にはVサインを示す無表情の姫神が、 「貸し一つで。よろしく」 いやもとい、姫神の口元のニヤリとなってる。 私はもしかして、地獄から逃げるのに悪魔に魂を売ってしまったんでしょうか? 「体で払え」とか言われそうで怖い……。ま、私に出来るのは力仕事くらいだけど。 そして結局騒ぎを誤魔化す為に私はチョコを配る羽目になった。 しかも何故か吹寄と姫神にも……。 女からチョコ貰って何が嬉しいのか? 正直彼女らのテンション高くて少し引いた。 そして更に何故か手作りまで約束させられた。 「やーカミやん、まっさかそこいらでチョコ買(こう)て来てなんて、そっないな事思って無いやろね~?」 「こらこら青髪さん、カミやんこれでも(ぶきっちょ)なんだから、そんなに追い詰めちゃかわいそうだにゃー」 「ま、貴様の事だから、そこら辺に売ってるのをそのまま持ってきても驚かないわね」 「貴女から貰えるなら。特に何でも構わないから」 自分の勝気な性格が恨めしい限りだ。 ま、無駄な出費を抑えるためにも、手作りするのはやぶさかでは無い。 そう言う訳で、私は今スーパーの買い物袋なんかを提げて帰宅途中なのだが。 お? 御坂じゃーん。 毎っ回毎回電撃ご馳走いただいてるんだから、たまには先手必勝と行きますか! 私は買い物袋をその辺に置いて、すすすっと御坂の背後に、そして。 「み・さ・かぶぁ!?」 「んぎゃー!!」 例に漏れず滑っちゃいました、ハハハ。 ま、今回は転ばずにすんだので痛くは無かったんだけど、こけた瞬間「ブチッ」って何か聞こえたような……。 だいたい私が顔を埋めてる場所、ムニムニって……、ずりずりっと顔を上げると……、アハハ、ここ御坂のオシ――。 「ちちち、ちか、ちか、ちか、痴漢ンンンンンンンンンンンンンン!!」 「ワギャァァァァァアアアアアアア!!」 死ぬ死ぬ!! カミジョーさんマジあの世行きですって!! 今、目の前に雷の柱が現われましたのことよ!? 「ま、待て御坂、私、私、カミジョーさんですよ?」 取り合えず呼びかけてみたら御坂と目が合った。 ずり落ちたスカートと多分中の短パンその他を押さえて顔を真っ赤にして涙目になった御坂に、流石の私もばつが悪いわこりゃ。 「ワリッ御坂ぁ、カミジョーさんちょーっと悪ふ・ざ・け・がぁ……」 「ッザケンンンンンンンンナァァァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!」 「ワヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!?」 ひええ、御坂経由カミジョーさん行きの特急雷撃が休み無く降り注いできますって!! 自分が悪いとは言え、ここで死ぬわけにいかんし、墓碑銘に『上嬢、女性を襲って返り討ちに遭う』なんて彫られた日には末代までの恥になるってか、ここで上嬢家が途絶えてしまう!! ここは一つ、 「御坂ァー!!」 「キャ!?」 一気に飛び掛って抱きしめて……、あ、れ? 抵抗が無いな? 「御、坂、さん?」 あの、目を瞑ってどうしましたか? 「あの……御坂?」 「ぁぇ……? しないの?」 「『しない』って何を?」 意味が判らん? ってどうして其処で節目がちに視線を外されますか御坂さん? 「しないんだ……」って何でそんなに残念そうなんですか御坂ァ!? ま、たまにはこんなしおらしい御坂もかわゆくていいんじゃないか? 「可愛いし暖かいし、ま、いっか……どうした御坂?」 御坂が固まってしまった……、あ!? 「そうだ御坂。さっきお前のスカート『ブチッ』とかいっただろ? カミジョーさんこれでも裁縫セットは常備ですから、お詫びに直させて下さい」 「え? あ?」 御坂は戸惑ったが、ここは先手必勝! 一旦買い物袋を拾いに離れると、戻って御坂の手を引いた。 「そこらの公衆トイレはっと」 「え? も、いいから止めて、お願い……」 「まま、可愛い御坂タンにお詫びさせてくださいまし」 「…………(ズルイ)」 「え? 何か言った?」 「な、何にも言って無いわよ……」 「?」 何時も思うけど、御坂ってホントおかしいよな。 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ その後、一緒のトイレで御坂のスカートを直した私は――短パン履いてる癖に随分恥ずかしがって、やっぱ変なヤツ?――まっすぐ家に帰ってチョコレートの作成に入ったわけだが。 「こーらー!! イーンデーックスゥ」 「ンぐッ。何かな、とうこ?」 「何かなじゃ無いでしょうが! おま、今、そこにあるチョコ食べただろ?」 結局こうなる訳だ。 だから私は嫌だったんだ。 インデックスが食べ物を目の前にして我慢できる筈が無いじゃないかよ。 それにしても今日は目つきが違う。 明らかに全部平らげてやるって気が満々だ。 やっぱり女の子だけあって甘いものには目が無いんだな。 「インデックス? 後でちゃーんと別のを用意してあげるから、少しだけ待てって――コ、コラ、喰うなって言ってるだろうが!?」 どうしたんだ今日のインデックスは? 腹ペコ度5割増ですか!? 「とうこの物は私の物、私の物は私の物――だからとうこが作ったチョコレートはみんな私のものなんだよッ!」 「んがぁっ!? な、何と潔いまでのジャイアニズム宣言!! イイイ、インデックスッ!! 私はお前をそんな子に育てた覚え……」 「最近は放って置かれてばっかりだからそこまで言われるのは心外かも」 ああ言えばこう言うって、まぁまぁ、なんて子なんでしょうコイツわぁぁぁぁああああ!? 「だから食べるなって!? コラ、止めろ!!」 「止めてももう遅いかも。と言うか今の私はもう誰にもとめられないんだよ!!」 あああ……、私の数時間の苦労が……。 「うう……」 「え? とうこ……?」 折角食費を切り詰めて材料を買ってきたのに……。 「わーん!! もぉ、インデックスの馬鹿ぁ……!!」 もうあったま来たから恥も外聞もかなぐり捨てて、インデックスをギャフンと言わせてやるのだ!! 取り合えず、童心に帰って泣きながら手足をバタバタさせてみたりッ! お、インデックスのヤツ困ってるな? しめしめこれで少し反省して食費……って、オイオイどちらへ向かわれますかインデックスさん? 「…………」 インデックスが居なくなってしまったので駄々っ子作戦は中止。 てか、一人でこれは流石のカミジョーさんもハズい訳ですよ。 あ、インデックスが戻って……。 「インデックス……、頭のリボンは……何?」 「とうまのチョコ食べちゃった代わりに……、その……、私を食べるといいかも」 ~・~・~・~・~・~・~・~・~・~ インデックスは取り合えず闇咲直伝の縛縄術で梱包しておいた。 縛られてる間のインデックスが何か大人しいと言うか、熱い眼差しをこちらに送って来たのは何の魂胆があっての事か? 後で解くのが恐ろしいが、取り合えず放置して寮を出てきた私は、インデックスに喰われてしまった分+インデックスを鎮める為に買出しにスーパーに来た。 「ん゛ー、結局こんだけ金使ったら売ってるの買っても一緒じゃねーのか? くぁー、ふっこぉーだぁぁああ」 あ、やべ……、店の中で騒いでたら注目浴びてしまった。 げっ!? 生クリームが無いんでやんの。えぇーどうしたもんか……、お! 天の助けとばかりにありゃ店員さんじゃねぇ? 「あっ、すいませーん、生クリームってまだありますか?」 近づくとデカイなこの人。しかもバリッバリの外人さんじゃん!? に、日本語で通じたかしら……? 「生クリームは……、出ていないのであるか。確認してくるので申し訳ないが少し待って欲しいのだが」 「あっ、お願いしまーす」 デカイ店員さん、体の割りに身のこなしが機敏だなぁ。 日本語も流暢でカミジョーさん助かったぜ。 暫くして外人さんは……、おいおい、ダンボール箱を、2、4、6、8……8箱抱えて帰って来た。なんつー力だ。 てか私箱では買いませんよ!? 「お待たせした。銘柄がこれしかないのであるが、いくつ必要ですか?」 「2つ……、いや4つ……、いやいや6つもらいます!」 ああ良かった。箱の梱包を開けて6つ籠に入れてくれた。 って6つは買いすぎ……いやもういいや……。 「はい、では6つ、清算はレジでお願いするのである」 「あっ、後、ラム酒も欲しいんですが……」 「あ、それはこちらです」 何処までも親切な店員さんだなぁー、私この店の常連になろうそうしよう。 「ありがとうございました!」 さて、さっさと帰ってチョコチョコっと。 「お役に立てて光栄である。ああ――」 「ぅおわッ!?」 んぎゃ!? すべ……あ、あれ? 「走ると危ないのである」 「す、すいません」 そっと床に下ろして貰ってから、買い物籠を受け取った。 うははは、見ず知らずの男の人に抱っこされちまった――片腕だったけど。 その後赤面したままさっさとお金を払うと逃げるようにスーパーを飛び出してきた。 う゛ーむ、すっかりあの店員さんのお世話になってしまった。 いやー、ちょっと格好よかったかな? 「さぁーて、結局材料を余分に買い込んじまったし、よぉーし気合入れてチョコを作るのである!」 なんつって。 私は、気合を入れると買い物袋をぶんぶん振り回しながら、珍しく気分良く寮に帰るのである。 あれ? END
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Dear My Friend 「お前さ、一緒に遊びに行く友達とかいねぇの?」 そう言われて、ふと思った。 ――――――友達、ってなんだろう、って。 一緒に買い物に行く人? 一緒にクレープを食べる人? 一緒にファミレスでぐだぐだと過ごす人? どれもこれも、当たっているようで、少し違う気がする。 重要なのはそこじゃなくて。 もっと、なにか、抽象的な、そんなもののような。 黒子は友達というよりも、可愛い……うん、可愛い後輩、でいいのよね。 あとの二人、初春さんと佐天さんは、これもまた可愛い後輩……いや、黒子の友達という方が正しいと思う。 現にあの子達は敬語でしか話してこないし。 私からも『さん』づけで呼んでいるくらいだし。 少しは距離も縮んだかもしれないけど、どこか一線、溝というか山というか、そういうものがある気もする。 今まで、気の置けない友達、なんてものが必要だとは思っていなかった。 変に周りで噂を撒き散らされたり、親衛隊のように囲まれるくらいなら、一人でいいと思っていた。 元々、群れたり派閥を組んだり、なんてことはごめんだったし。 まぁ、そういう友達がいるに越した事はないし、心の奥で密かにそう言う関係に羨んでいた事も認めるけど……。「アイツのせいよね」 あの馬鹿のせいだ。 初めて会ったときから、私に馴れ馴れしく接してきたアイツ。 レベル0のくせに、私や、妹達を助ける為に学園都市最強に立ち向かって行ったアイツ。 そして、恐らく、家族以外で唯一、私を『超電磁砲』という名前なしに見てくれるだろう―――「あの馬鹿のせいよ」 つい溜息が洩れる。 自分の想いに気づいてしまってから、その気持ちはどんどん強くなって。 仲の良い友達が欲しい。 気を置かなくて済む、何でも喋れる親友が欲しい。 そして、アイツと、もっと仲良くなりたい、って。「まったく、まさか天下のレベル5に友達一人いないかもしれない、なんてね」 本当に、自嘲するしかない。 レベル5として、お嬢様として見られる事はあっても、中学二年生の女の子として見られていただろうか。 仲良くしてくれているあの子たちは、自分の事をどう思っているのだろうか。 例えば、前から歩いてくるあの子は―――。「あれ、御坂さんじゃないですか。こんにちは」「はろー、佐天さん。奇遇ね」 ホントですねー、と応えてくれる。 一人でいるところを見ると、初春さんは風紀委員のお仕事なのだろう。 そういえば黒子もぶつぶつ言いながら支部に向かって行ったっけか。「御坂さん、今から暇ですか?」 少し迷いを秘めたような目で、佐天さんは口を開く。 その気を遣ってくれるような視線が、なんというか、微妙な距離を感じる、と言えば贅沢なのかな。「アテもなくその辺をぶらつく予定でみっちり、ってとこね」「あはは。それって、暇ってことで良いんですよね?」 可笑しそうに笑う佐天さんの表情は太陽みたいだ。 私に同じ顔が出来るか、って言われるとなんだか自信がない。「新しい喫茶店がオープニングセールやるっていうんで行こうと思ってたんですけど、御坂さんも一緒にいかがですか?」「おーけーおーけー。せっかく会ったんだし、美琴センセーが奢ってあげよう」「あ、いいんですか? 実はちょっと高いお店みたいでどうしようか迷ってたんですよ」 えへへ、と舌を出す佐天さん。 悪戯がばれたような顔で頭をかいているところを見ると、元々そのつもりだったのかもしれない。「で、どこ行けばいいの?」「えっと、広告についてた地図によるとこの辺だと思うんですけど……ちょっと待ってくださいね」 くしゃくしゃになった広告とにらめっこして、佐天さんは首を捻っている。 あの道がこれだから、とか言って確認してるし、地図には強くないのかもしれない。 自然に頬が緩んでしまうのを照れくさく感じて、私は佐天さんの後ろの方へと視線を泳がせる。 わいわいと、女子学生で少し賑やかなテラスが眼に飛び込んできた。「ねぇ、佐天さん。探してるお店って、あそこじゃないの?」「え? あ、あぁ! あれです、あれです! さっすが、御坂さん!」 あたふたと広告をしまい、佐天さんは照れくさそうに笑う。 行きますよー、と私の手をとってぐいぐいと引いていく。 これくらいの積極性やパワフルさがあれば、私も苦労しないのかもしれないな。「ほら、なかなかいい感じじゃないですか?」「うん、思ったより気取らない感じでいいかもね」 カラン、というベルの音を聞きながら、私と佐天さんはお店の中へと入っていく。 漂うコーヒーの香りが心地いい。「御坂さんは何にします?」「うーん、そうね………」 メニュー表へと視線を走らせていく。 普段はあまりコーヒーを飲まないけど、せっかくだから挑戦してみようかな、と。そう思わせるようなお店だ。「グアテマラに、チーズケーキかなぁ」「おー、良く分かんないですけど、かっこいいですね」 きりんまんじゃろ、ってなんだろ―――なんて首を傾げる佐天さんの姿に私はふぅと息を吐いた。 楽しそうだな、と思う。 私に足りないのはそういう部分なのかもしれない。 物事を純粋に受け止めて、純粋に楽しむ。 佐天さんみたいに素直に生きれたら、どんなにいいだろ、なんて思ってしまう。「………御坂さん、悩み事、ですか?」「へ?」 メニュー表に向いていたはずの佐天さんの顔が、いつの間にかすぐ目の前にあった。 驚きやら恥ずかしさで、口をぱくぱくと、させてしまう。「あ、図星みたいですね。なんですかー? あたしでよければ、相談に乗りますよ」 メニュー表を投げ出し、ふふん、と鼻を鳴らす佐天さんに少しだけ引いてしまう。 浮かんでいる表情の感じでは、相談を聞くというよりも興味本位という方が強そうだ。「何を悩んでるんですか?」「べ、別に……相談するような事じゃないっていうか」「水臭いですよー。あたしと御坂さんの仲じゃないですか」 そう、それだ。 私と、佐天さんの仲。 それが、今の悩み。「それが、悩み、かな」「え?」「私と、佐天さん、初春さん、もちろん、黒子とも」「あたし達と、御坂さんの関係ってことですか?」「……うん」 キョトン、とした表情で、佐天さんは固まっている。 それもそうだ。 突然こんな事を言われたら、誰だって困る。「えっと………御坂さんにとって、あたしたちはどういう関係なんですか?」「………それが何か分かんなくてさ。あはは、らしくないよね、こんなの」 無理矢理に笑ってみせる。 こんなことで、話が逸らせるとは思ってはいないけど、今の私にはそれ以外にどうしていいのか、分からなかった。「あたしとしては………友達、以上には思ってるんですけど……ダメでした?」「え?」 佐天さんが遠慮がちに紡いだ言葉に、私は目を丸くする。「あ、後輩のくせに偉そうですかね? 御坂さんとは、色々ありましたし。正直、腹の立つ事もありましたけど……今は、憧れの先輩で、大切な親友だと、思ってます」「佐天さん……」「って、うわわわわわ、あたし何を言って……なし! 今のなしでお願いしますっ!!」 我に返ったような表情になって、顔を真っ赤にする佐天さんに、私は自然と笑えたような気がした。「ありがとうね、佐天さん」「え? あ、ハイ……なんか偉そうにすいません」「ううん、元気出た」「な、なら良かったです」「ふふふ、照れた佐天さんも可愛いんだなー、って。初春さんが放さないわけねー」「なななななっ、なに言ってるんですかっ!」 バタバタと手を振り、佐天さんは赤かった顔をもっと赤くする。 黒い髪と白い花が映えるくらいに。「佐天さんがそこまで思ってくれてるなら、呼び方も変えようかな」「………呼び方、ですか?」「うん、いつまでも佐天さんってのも他人行儀だし……涙子って呼ぼうかなー、って」「ううううううう。じゃぁ、あたしは、美琴さん、って呼ぶんですか、ね?」 はわわわわ、恥ずかしい、と言いながらブンブン首を振る佐天さん。 美琴、なんて呼ばれる事は滅多にないけど、いざ呼ばれてみるとすごく恥ずかしい。 そんな気持ちが顔に出ないように、必死に堪えて、私は佐天さんから目を背ける。 このまま見ていたら恥ずかしさに耐えきれないような気がしたから。「あ………」 視線の先にあったのは、鏡に映った真っ赤な私だった。「御坂さーん、次どこ行きますか?」「そうねー。いつも通り、セブンスミストかなー」 結局今まで通りに落ちついた呼び方も、今までと違った温かさを感じる。 心の距離が近くなったからだろうか。 それとも、そこにこもった気持ちが分かりあえたからだろうか。 表情も自然と、柔らかくなっているような気もする。 きっと初春さんや黒子とも、今まで以上に仲良くなれると思う。「おーっす、御坂」「アンタ………」 私と佐天さんの前に現れたアイツはいつも通りに、馬鹿みたいに普通に声をかけてくる。 いったい人をどれだけ悩ませたのか、思い知らせてやりたいくらいだけど、きっと言っても無駄だろうな。「……ほほーう、もしかしてもしかすると、悩みってこれのことじゃないんですかぁ?」「んなっ、何言ってんのよ、佐天さん!?」「この方の事も、あたしみたいに名前で呼んだりしないんですか? 美琴さん」 ニヤリ、と口元を歪める佐天さんを、私はキッと睨む。 てへ、と舌を出して頭を下げているけど、反省なんかしていないに違いない。「なんだ、友達いるんじゃねぇか」 アイツが笑う。 意外そうな顔をするかと思ったら、そうじゃなかった。 なんだか安心したような、そんな顔だった。「友達いねぇんだったら、俺がなってやるかな―、なんて思ってたけど余計な心配だったか?」「アンタね、そんな同情しなくても良いわよ」「そーかい」 アイツは肩をすくめるようにして、歩みを進める。 私の横を通り過ぎた、ちょうどそのとき。「ま、いてもいなくても、俺はお前の友達のつもりだったけどな」「えっ!?」 通り過ぎていくアイツの方へと、振り返る。 その背中は普段通り、頼りがいがあるわけでもないく、カッコイイわけでもない、普通の背中。 ゆっくりと、その背中越しに、アイツがこちらを向いた。「じゃ、そういうことだから、またよろしくな、美琴」 アイツの言葉に、私はなにも返せないまま、立ちつくした。
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とある乙女の菓子聖戦 「つ、作ってしまった……」常盤台中学の調理実習室を許可を貰い、一人で借り切っていた御坂美琴は目の前の物を見つめながら呟いた。なぜ借り切っていたのか、それは目の前のチョコレートを作成するために他ならない。つまり、目の前にあるものとは完全無欠の手作りチョコレート。「うう、こんなのあげられるわけ無いじゃない。」百歩、いや、一万歩くらい譲ってただの手作りチョコならばいい。しかし目の前にあるのはチョコはある特殊な形していた。これを使うのはとても勇気がいる、というか「使えるかーっ!」思わず握り締め、壁にぶつけようと振りかぶる、が出来ない。「ううっ、これは無し、これは無し……」舞夏に買ってと頼まれた漫画など読むのではなかった。そうすればこんな悪乗り以外の何者でもないチョコを作ることなんて無かったのに。後悔しつつ、とりあえずもう一つ普通の手作りチョコレートを作り始める、がそこで「おねーさま!まあまあまあおねーさま!」黒子が乱入してきた。とっさに目の前にある例のチョコを隠す。まさに電光の動きだった。。そのため、黒子はその動作には気づかなかった。まあ目の前には湯煎中のチョコレートがあり、そっちを凝視していたせいもあるだろうが。「おねえさまったら、わたくしの為に手作りチョコを作るためにこのような……ああ、黒子は感激ですの。」「……」感涙の涙を滝のように流す黒子を見てどうしようかと思案する。というか、とりあえずチョコをあげれば明日の邪魔はされないのではないか?と考え、「まあ、楽しみにしていなさい。」「!く、黒子は、黒子はもう!」失神した。とりあえず放置。「さあ。ちゃんとつくろう!」翌日、バレンタインデー。休日のまだ朝早くだというのに学園都市は男女で溢れ返っていた。何せここは学生の街。つまりバレンタインデーの商品の格好のターゲットなのだ。よって、メーカーの威信をかけたようなさまざまなチョコがいたるところで売っている。それを買い求める女の子。期待に胸を膨らませている男の子。甘いひと時とつらい現実が交差する街の中にものすごいげっそりとした美琴がいた。「何で失敗するの……」あの後、チョコを作ってみたものの、なぜか成功したのは一つ。それは黒子に上げないと何をされるかわからない。(うう、材料もうちょっとかっとけばよかった)美琴はお菓子はあまり作らないが、やろうと思えばつくることくらいできる。実際、最初のチョコは一発で成功したのだ。だから材料をあまり買わなかった。しかし、結果は見ての通り、最初の一つ以外ぜんぜん成功しなかった。(うう、やっぱりこれしかないの……?)ポケットの中の物に軽く触れる。(いや、やっぱりむりっ!)とりあえずデパ地下にいってそこそこ高いチョコレートを買う。「ラッピングはどういたしましょう?」笑顔で店員が聞いてきた。どうも本命用ラッピングというものがあるらしい。御坂美琴は見た目は可愛らしい女子中学生だ。その中学生がこの高級なチョコを買うということは本命だろう、と予想したらしく大量のハートマークが印刷されているラッピングを用意してきた。その真ん中にはひときわ大きなハートマークがあり、そこにLOVEという印字がされている。「……いえ、普通ので……」レベル5だってひよる時はある。一度寮に戻り、着替えをする。気合を入れて私服を着る。今日はバレンタインデー。乙女の決戦の日なのだ。あの寮監ですら私服で出かける生徒を見てみぬ振りしていた。可愛らしい服、では無くがんばって大人っぽい服を着た。自分の趣味は自分でもわかっているのでお店の人にいろいろ質問しながらそろえた一式だ。鏡に自分を映すと(うん、大丈夫)後は、アイツに渡すだけだ。黒子にはあの手作りチョコを上げて「手作りはこれだけよ」と言ったら失神した。これは好都合だ。携帯を取り出し、アイツの電話番号を画面に表示する。(コールボタンが押せない……)深呼吸を3回する。根性を決めて押す。お嬢様っぽいしぐさで携帯を当てる。1コール、2コール、3コール……コール音が続くたび、心臓の音が大きくなる。ぷっと短くコール音が切れた。「!えっと、アンタ!」「現在、電話に出ることが出来ません。」機会音声が聞こえた。とりあえず一回携帯を壁に向かって投げつけた。「不幸だー。」上条当麻は学校にいた。休みなのに。「まあまあ、カミやんは今日は学校にいるほうがいいぜよ」なぜか土御門と「バレンタインに小萌せんせーに会えるなんてぼかー幸せやでー。」青髪ピアスも一緒だ。今日は補習なのだ。しかも3人だけ。ほかに校内に生徒はいない。「まあ、確かに今日はバレンタインデーだもんな。外にいていちゃつくカップルを見るくらいなら補習もありか。」と、言ったところ青髪と土御門の友情ツープラトン、クロスボンバーが炸裂した。「はいはーい、そこまでですよー」小萌先生が入ってきた。手にはチョコレートが三つ。「今日はバレンタインデーですからねー。補習がんばったらプレゼントしちゃいますよー。」補習が始まる。内容はすけすけみるみるだった。ものすごいがんばった青髪が三つとも奪取していった。小萌先生は泣きそうだった。「だー、終わったー。」補習が終わったころには夕方になっていた。街には男がうろついていた。まだあきらめ切れていない野郎共だろうか。「まあ、カミジョーさんには関係ないですけどねー。」と、時間を確認しようと携帯を見ると「……なんだこれ」御坂美琴からの着信がものすごいことになっていた。「なんででないのよ……」ベットに寝転がりながら御坂美琴は落ち込んでいた。横には携帯電話が投げ出されていた。お昼前から何度もコールしたのにアイツはぜんぜんでない。また何かに巻き込まれているのか。それとも「今日がバレンタインだから私からの電話に出れないの……?」恋人達の日に自分以外の女の子と楽しそうにしているアイツが思い浮かび、目が潤む。もう夕方だ、だめなのかな。そのとき、電話が鳴った。心臓が飛び出そうだった。ゆっくりと携帯に手を伸ばす。着信は本当に心から待ちわびていた相手からだった。「すまん、補習でさ。電話しまっちゃってたからぜんぜん気づかなかった。」上条はとりあえず謝ってみた。あの数の着信だ。きっと大事な用事があったんだろう。いまから雷のような音量で発せられるであろう美琴の罵声に耐える心構えをしていたのだが電話から聞こえるのは嗚咽だった。「!御坂、何かあったのか!」一気に背筋が凍る。本当はあの電話は自分に助けを求める電話だったのではないか、ものすごい後悔の念が体中を駆け巡る。しかし、美琴の嗚咽はすぐに収まった。少し安堵したところで美琴からの声が聞こえた。「ううん、なんでもない。ねえ、アンタ今暇?」「ああ、暇だ。」とりあえず答えた。まだ安心できない。だから「そっちも暇なら今会おうぜ。場所は…」「あ、場所はあの橋のそばがいい。ほら、私があの日アンタと会った」向こうが場所をしてきた。あの橋、といわれてすぐ思いついたのは妹達を救うためにあったあの橋だ。異論は無いのでOKし、上条当麻は電話を切ると一目散にそこへと走り出した。夜の帳が落ちた。御坂美琴が橋に着くともう上条はそこにいた。あの日自分がいた場所に。まるであの日の自分と上条の位置が入れ替わったようだった。「御坂、どうしたんだよ。」「心配した?」ちょっと意地悪に声をかける。答えはすぐ帰ってきた。「心配したに、決まってんだろ……あんなに電話かけてきてて、俺本当に取り返しのつかないことをしたんじゃないかって。」アイツはそういうとうなだれていた。あわてて取り繕う「ち、違うの。ごめん。ちょっと……そう!あの時は漫画読んでてね!ちょっと感情移入しすぎちゃったって言うか!」あはは、とごまかしてみる。それを聞いて、アイツはちょっと安堵したようだった。「で、なんでしょーか美琴先生。上条さんは今日は補習でくたくたですよ?。」今度は軽口を聞いてくる。でも、その軽口のおかげで少しこちらも落ち着いた。「ん、今日何の日だか……知ってるわよね?」「煮干の日ですよね?」雷撃を放つ。しっかりと打ち消された。「バレンタインでしょ!ほんとにもう!」といって、朝に買ったチョコレートを突き出す。「えっと……これは?」なんか心底おかしなものを見るような目でチョコレートを見つめるアイツがいた。「だ、だからチョコレートよ!な、なんだかんだで世話になってるし!義理よ義理!」自分で言って、しまったと思った。だけどアイツは「ああ、なるほど。いや、義理でもうれしいぜ御坂。結局一個も貰ってないしな。」意外な答えだ。「へ?あ、ああそうなんだ。もてない男ってのは辛いわねー。」実際、今日家に帰ると山ほどチョコがあったりするのだが、この時点では上条はそれを知らない。「ありがたく受け取るぜ。サンキューな。御坂。」「デパ地下でなんか高そうなチョコレート選んできたから、そこそこ美味しいんじゃないかしら?後で感想聞かせなさいよ。」いつかのやり取りと似たようなやりとりだ。だから上条はこういった。「む、バレンタインデーのチョコレートなら手作りがベストですなー。」「……アンタ、私にどんなキャラ期待してるのよ。」「いやいや、あえて不器用なキャラが不器用なりにがんばってみたボロボロチョコレートってのがね。わかんねーかな?」笑みを浮かべながら言ってみた。美琴はきっとどんなキャラを期待してるのよ!って言いながら雷撃を放ってくると思っていたしかし、その幻想は木っ端微塵に打ち砕かれた。「……手作り、ほしい……?」顔が真っ赤の美琴を見てむしろ上条は顔が真っ青になった。(……どうしよう)例のチョコレートを使うのか?決心がつかない。(でもっ!)覚悟をきめた。「えっと……御坂さん?」真っ赤になったまま動かない美琴に恐る恐る声をかける。「返品絶対不可。」美琴がぼそっと呟いた。もしかして、本当にボロボロなのだろうか。だから出したくなかっただけ?「ああ、もちろん返品なんてしねーよ。お前が作ってくれたんだろ?ならどんなのでも俺は嬉しいよ。」といったのだが、美琴は続けてきた。「差し出したら、絶対に受け取ること。」どんだけボロボロなんだよ、と正直ちょっと笑いをこらえながら「ああ、もちろん受け取る。男に二言は無いぜ!」胸をたたきながら答える。「……絶対よ……」と、美琴は呟くと深呼吸を始めた。御坂美琴はポケットに手を突っ込んだ。最初につくったチョコレート。それがポケット入っている。それは小さな筒の形をしている。意を決し、それを手に取った。(美琴は何をするつもりなんだ?)ポケットに手を突っ込んで小さな丸い筒を取り出した。(リップクリーム?)筒を開けると、暗いのでよくわからないが色のついている棒が見えた。口紅?と思うと御坂はそれを唇に塗り始めた。「御坂、何で口紅なんて……」美琴は聞こえていないように、口紅をまだ塗っている。そして、塗り終えたようで、こういった「は、ハッピーバレンタイン……」目を瞑り、唇を差し出してきた。さっきの口紅はチョコレートだったのだ。(え?え?えー!!!!!!!!!!!?)上条当麻は目の前の出来事に硬直した。自分はさっきどんなものでも嬉しいといった。差し出したらもちろん受け取ると答えた。つまり、受け取らなければならない。このチョコを指で唇をつついて受け取りました!とかやったらたぶん殺される。(てか、指で唇をつつくのだって十分恥ずかしい!)美琴がうっすらと目をあけた気がした。早くして、といっているようだ。その美琴の顔はもう真っ赤だ。チョコが溶けそうなくらいだ。「……」覚悟を決めた。上条当麻は御坂美琴を抱き寄せて唇でチョコレートを受け取った。そのまま、時間がたった。どのくらいかはわからない。どちらが先に唇を離したのかもわからない。夜の静寂が二人を包んでいた。先に口を開いたのは上条当麻だった。「えっと……御坂さん。さすがに今のは……」というと、美琴はうなずいて「うん、本命チョコレート……」いつもの元気な御坂美琴からはちょっと想像できないようなか細い声だった。また静寂。今度は美琴が口を開いた。「ねえ……返事は?」若干目が潤んでる。そして答えた。「あのチョコを受け取った時点でわかるだろっ!」そういうが早いか、上条当麻は全力で走って逃げた。御坂美琴は走って逃げる上条当麻を追いかけなかった。受け取った時点、つまり「OKでいいのかな」人生で一番勇気を振り絞った気がする。あの日ここで死のうと覚悟したあのときよりも振り絞った気がした。だから追いかけなかった。明日からは探す必要もない。(う、嬉しい!)一人感動に浸っていると視界から消えようとしているアイツが大声で叫んだ。「来月、おぼえておけっ!」というとまた走りだし、夜の闇へと消えた。「楽しみにしててやるっ!」そう叫び返した。二人は夜の闇の中でもわかるくらい顔が真っ赤だった。そして、お互いの顔が見えないところで笑っていた。
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クリスマスの奇跡 第03話12月19日 午後9時 8月21日のあの橋の上なんでここに来たんだろうな・・?街をさまよいなぜか来てしまったここ。なぜ逃げ出したんだろう?(そうね、多分アイツにAAAを使っていることをやましいとおもっているからかな)妙に鋭いアイツは、あの鼻血がAAAの、アイツが「魔術」という異形のテクノロジーの副作用を感知している。それは間違いない。多分アイツの言うとおりなのだ。学園都市でも殊に電子制御系でトップの自分、御坂美琴はこんなものに頼らなくも十分すぎる戦力を持っていると・・10日前の私の状況とは違う。木原唯一を訴追する過程で膨大な情報を入手した私は迷えるか弱い乙女は卒業した。食蜂に教わり、食蜂と手を携え、木原唯一とその後ろ盾に完全な報復を果たした。学校は再建され、その事業の中で私と常盤台生は格段に強くなった。だけど、そんなものではアイツに全然足りない。魔神を知った私は、魔神が別世界に隔離されたことを知っても安心できない。だから・・アイツになんと言われようとAAAを手放すつもりなどない。だが・・アイツの正論に私は立ち向かえるだろうか?私はその件については今一つ自分を信用できない。だから・・弱い自分は、アイツに立ち向かうことができない私は逃げてしまった・・・・・・・・・・どこをどう走ったかわからない。気がつけばここへきてしまった。私の心の闇の中を示すかのように多摩川の川面から欄干を北風が吹き抜ける。あの晩夏の夜、私は一方通行と言う怪物へ、ささやかな・・でも自分にとっては最後の特攻をしようとしていた。今となっては、あの時の心境はどこか悪夢のように漠然としつつあるものの雷としかいいのようのない飾り物ではない、本気のそれをぶつけた事実だけがこの腕に感覚として残っている。あの時に膝上の死にかけたでもとても暖かい上条当麻の、一旦止まった鼓動が、滴り落ちる涙とともに、復活し、命を懸けて化け物へ立ち向かった、魂のやり取りが、心の中でよみがえる。私のクローン 9969人と、そして私を悪意に満ち溢れた学園都市から救いあげた。その大恩に比べたら、何をしても小さく感じてしまうのだ。私は、いつも彼の為に何かをしようと焦っていた。受けた大恩を1日でも早く返そうと気がせいていた。だけど、世界の最深部で、そして世界の頂点で戦う彼の姿はいつも遠く、追いかけては置き去りにされた。やっとデンマークの雪原でファイブオーバーの大群から彼を守ることで追いつけたと思ったのもつかの間、あの僧正に、そして彼の右手に私の自分だけの現実は木っ端みじんに打ち砕かれた。あの晩、私はベッドへふさぎ込んだ。アイツが遠く感じた。所詮自分は、安定戦力の自分は尖った個性がないゆえに彼の力になりえない、周回遅れの存在。もう私は、上条当麻の傍で戦うこともできないのか?大恩を返すこともできないのか?本来なら、好きな男に打ち勝ちたいとか、一緒に戦いたいとか、そんなことは普通の女の子は考えないだろうな・・(まあ、守られる女なんて、私には似合わないわね)小学校のころから、男にだけは負けたくなかった負けず嫌いの自分その負けん気が、私のパーソナルリアリティの根本を形成する。今もそれは基本変わらない。上条当麻に守られるだけの女になんかなりたくもない。彼と共に、支え合う関係になりたい。だから泣いた、あまりに遠いアイツの距離に打ちひしがれた。だから・・AAAを知り、閉塞が打ち破られた時は本当に嬉しかった。ためらいはあった。だけど私は一歩を踏み出した。(そうだから、これを掴んだことは後悔はしない。)全部は守れなかったかもしれない。失敗もあった、だけど私は一番大事なものを守ることはできた。(私には全部を守る力はない、だから自分の一番大事なものだけを必死に守る)私は拳を握り、欄干を軽くたたく。気合を入れなおす。(そうね、アイツはまだ私を振っていない、だから自分の気持ちだけは確定させない)諦めない気持ちが今の私を作ってきたのだから。私はすべてをアイツにぶつける。今度こそ逃げないと・・気持ちが固まり、ホテルへ向かおうとする。(今日はもう遅いし・・寮はやめましょう、もともと外泊予定だし)だが、私が困ったときにいつも駆け付けるアイツは、・・こんな時も私にとっても都合のいいヒーローをやめなかった。私が踵を返したその時、息を切らしたアイツが病院を脱走してアイツが私の視界へ現れる。そして、・・・アイツは、上条当麻は言い放つ、私の一番聞きたかった言葉を「御坂美琴・・俺は魂をぶつけに来た、だから逃げるな」「ええ上条当麻、私も全力をぶつける、アンタをこの場で叩きのめす」すべてが似通った、本質的にヒーロー体質の2人があの日のように、ぶつかり合う。・・・・・・・・・・・その1時間前、病室御坂美琴が病室を去った後、俺は呆然としてすぐに後を追うことができなかった。美琴に告白されたという事実が、俺にはすぐに自分のものとして理解できなかった。ましてやAAAの副作用をちょっと言っただけで美琴が逃げ去るように退出した事はなおさら理解できない。(それにしても、告白か・・)俺が御坂美琴をどう考えているか?恋愛というものを、不幸という幻想に包まれていた俺には、自分のモノとしてどうにも実感を持って理解できない。美琴は、普段は、俺の前では、不器用な情緒も不安定な年相応の女の子だ。だが、訳もわからず、ただ目の前の女の子を助けた、最初はそんないつもの俺の日常の一コマにすぎなかった。だが、・・8月31日にアステカの魔術師に「御坂美琴とその周りの世界を守る」と約束したその瞬間から運命の糸に導かれるように何かが変わり始めた。そして・・あの僧正襲来の中、フィアンマという俺が知る限り最強の男がまったく歯が立たない、危機的な状況で、自分の能力が全く役に立たない状況で、臆することなく、最善手を模索し続けていた美琴。美琴は、自分の役割が不満でしょうがないようだが、客観的に見て、あの僧正をいらいらさせるほど、美琴の頭脳は冴えていた。何より、あの絶望的な状況で、美琴がいるだけでどれだけ心が落ち着いたか。魔術の事なら、確かにインデックスやオティヌスはいる。だけど・・あの状態で、美琴なしにどれだけ落ち着いたか俺にはわからない。何より、美琴は命を懸け、俺の為にAAAを起動させ、死にかけても、俺の手を振り払った。守っているつもりだった。だけど、俺はそれが俺の思い上がりであることをいやでも認識せざろう得ない。客観的に、俺は御坂美琴がいなければ、ここにいない。「何が都合のいいヒーローだ」俺は手を握りしめる。「はっきり言って、俺は美琴にとって本当にヒーローなのか?」俺は、「御坂美琴」という存在に何を感じているのか?いろいろ考えるが、はっきり思考がまとまらない。はっきりしているのは、アイツは凄いいい奴だ。どんな状況でも折れず、自分を投げ出して周りを守ろうとする。善性の塊、いるだけで、心地の良さと安心感と爽快感を周りにもたらす。そして俺にとって御坂美琴の存在がとてつもなく、大きな存在であること。その事実は、はっきりわかる。だけど、・・それが恋愛対象かどうか・・美琴を大事な存在に思うがゆえ、俺は簡単に告白を受けいることができない。とても、身近で頼りになる存在だから、それだからこそ、俺は考え込む。この学園都市、いや日本という、さらに言うなら世界的に見ても屈指のお嬢様学校、その頂点に君臨する御坂美琴。その本物のお嬢様の御坂美琴は、何に恋しているのか?俺にも、答えは分かっている。要するに、この右手が一方通行を叩きのめしたからだろう。美琴の目には、俺は地獄の底から引き揚げた、とてつもない能力者・・そう映っているだろう。だが、美琴の目には、俺の学校の悲惨な日常は見えているだろうか?御坂美琴の目には、竜王の首を持つ、とんでも能力しか見えてないかもしれない。それが、俺自身にも制御不能で、簡単には使いこなせない、能力である事さえ、多分知らない。だけど・・俺は頬を叩く結局は御坂美琴に本気の告白にどう考えるかそれだけじゃねえか・御坂美琴という本気の告白が俺の鈍感な心を揺り動かす。そして、彼女と積み上げた激動の特に12月以降の日々が脳裏を駆け巡るそうだな、俺は気が付いてはいなかった、でも俺も心のどこかで、美琴を求め続けていたのかもしれない。それがどうゆう感情か、俺は知らないだけだったのかもしれない。だが、今なら言える、俺にとって御坂美琴はかけがえのないそして俺が命をかけるべき唯一の存在であることを、だから、・・俺はそれを告げる。・・・・・・・・・・・・・・・再び橋の上私は、上条当麻とあの因縁の橋の上で対峙している。ある意味くだらない素直になれない男女の意地と意地のぶつかり合い。だが、その関係も終わりが近づいている。2人ははっきりと、似た者同士の性根にひかれあい、その惹かれ合う心に気が付こうとしている。「なあ美琴」「何?」私は、当麻が初めて、私を美琴と呼んだことに心音が高くなる。「俺は、この前までお前のことを異性と思っていなかった」「ふ・・アンタらしいわね、どうせ喧嘩友達くらいにしか思っていないでしょ」「はは、確かに、な・・」「だけど、お前は、いつも俺を体を張って助けてくれた。ロシアでもハワイでも東京でも、そしてデンマーク、でも」「何より、熱波でもな・・俺とその仲間をエレメントから救ってくれた」「本当にありがとうな」私は胸が熱くなる、手段はともあれ、上条当麻にはっきりと頼っていると言われた。まだまだその背中は遠く、簡単には届きそうもない。、だけどしっかりと、一歩づつ、彼の力になれている。顔を綻ばせ、しっかりと彼に答える。「ありがとう、少しは頼ってもらえるようになったかな」「正直、12月以降は美琴がいなければ俺は詰んでいた、それが事実だよ」私は、当麻のいつもの鈍感さに警戒心をいただきつつ、答えを期待してしまう。それに、もう曖昧にしたくない。だが、現実は甘くなく、当麻は私の触れられたくない不都合な真実に触れてくる。「俺は、美琴を信頼できる友人だと思っているし、とても頼りになる存在と思っている」「だから、お前にとって不都合な事実でも言わなくていけないと思っている」私は大凡当麻が言いたいことは理解し、身構える。どちらにせよ、この問題は避けては通れない。だから私はこの目の前の男を論破しなければならない。場合によっては殴り飛ばしても「はっきり言う。もうAAAは捨てろ」「電子制御系で圧倒的な能力者、あらゆる駆動鎧を制作・運用できる御坂美琴には無用なはずだ」私はおかしくなる。そう・・レベル5で済む事態ならAAAなんていらない。木原唯一の研究成果を調べ上げ、あらゆる小細工の仕組みと制御方法を脳コピーした今では、大概の敵はどうにでもなる。だけど・・そんなものは上条当麻の八竜には遠く及ばない。「心配してくれてありがとう。だけど、まだAAAを手放すわけにはいかないわ」「確かに副作用はある、死にかけたこともある。だけど、私はこの奥底にあるアレイスタークロウリーも、魔術も全然理解できていないわ」「そんなんじゃ、魔神達には全然足りない」・・・・・・・・・俺は、美琴の心に僧正が残した傷跡の深さに愕然とする。表面上に毅然と、常盤台中学のエースを貫いている美琴が心の奥底で、魔神に踏みにじられた、自分だけの現実の喪失感にさいなまされている現実に、身を焦がされる。「美琴はまだ僧正の事を気にしているのか?」「気にしていないと言えば嘘になる」「正直、こんなAAAに頼りたくなるほどね、自分のポリシーをまげてまで、副作用があるとわかりつつ、でも・・やっぱり捨てられない」(俺は、美琴が自分だけの現実が崩壊するほどのショックに耐え、必死に周りの世界を守り続けるようもがき苦しんでいた現実に、その心が痛む)「私は、AAAに手を出したことは決して後悔しない」「失敗したこともある。でも、守れた命もある、それに・・」「常盤台中学の件、覚えている?」美琴の目が真剣なものに変わるのを俺は見逃さない「ああ確か校舎が全壊した・・」俺は、胸が締め付けられる、俺の力不足で、早々にリタイヤし、結局美琴一人に押し付けてしまった常盤台防衛戦、美琴は絶望的な状況の元、一人で惨劇に立ち向かった。「私はあの崩壊した常盤台を仲間とともに再建した」「え?・・」「私は、自分の力不足で、木原唯一に敗北し、学校のみんなに迷惑を掛けた」「それを、みんなの支えによって、どうにか取り戻すことができた」美琴の顔に決意がみなぎり始める。責任感、自責の念、そして悪意や、闇に立ち向かう「お姉様」の凛とした顔に変わる。「今の私のパーソナル・リアリティ(自分だけの現実)は、AAAの使用を前提に最適化している、今更それを捨てることはできないわ」「それでも・・」俺は悟る。御坂美琴は、常盤台・学舎の園を守れなかったことを、自分自身の自責の念として心に深く刻み込んでいる。(だけど、このままではロシアンルーレットのようにいつか美琴は致命的な重傷を追う)俺は、美琴にどうにか説得しようと試みる、美琴は本質的には理性的で話せば分かるタイプの人種だからだが、俺が言う前に美琴が先に口を開く「私はね、正直僧正くらいでこんなに取り乱したりしないのよ」俺は美琴に意外な話に耳を傾ける「上条当麻の右腕に潜む、八竜の力に絶望させられたのよ」「私は、アンタの傍にいた、アンタの力に少しでもなれると思っていた、だけど上条当麻の右腕は、日常の世界に住む私の理解では想像すらできない性質のものだった」「だから・・こんなものに手を染めたのよ」俺は、あの誇り高い強靭な精神を持つ御坂美琴を苦しめていたのが俺の右手だった現実にぶちのめされる。「だけど、今の私はある意味AAAに救われたわ、これで失敗をなんとか取り戻した木原唯一の一味を打倒し、壊れた学舎の園の日常を短期間に再建した」「だから・・これを手放すわけにはいかないわ、何より」「私は、決めたのよ。上条当麻が、私とその周りの世界を守るなんて幻想は私がぶち壊してやるとね」「神は自らを助けるものにしか手を伸ばさない」「私が、自分の手で周りの世界を守り、アンタを、上条当麻をその周りの世界ごと守るとねそのためには手段は選ばないわ」「もちろん、あのシスターも、元魔神の妖精も猫もね」俺は、覚悟を決めた美琴のただならない雰囲気に圧倒される。あの8月21日の橋の上なんて比べようもないほどの圧力を感じる腹をくくった本気の御坂美琴学園都市の闇の木原一族の狂気を知り、それでも折れることなく立ち向かうとても強い少女。あのデンマークの頃よりもさらに科学を極めた女。だけど・・その少女が本当は性根の優しいただの少女であることを俺は知っているそしてその少女を何があっても守ると決めた以上は・・俺は・・・俺がなすべきことは・・ひとつしかない俺に取って御坂美琴はただ一つの守るべき存在である事実を今告げる。「美琴、・・俺は・・御坂美琴のすべてを受け入れる」「お前一人で戦わせない、俺も一緒に立ち向かう、だから」俺は美琴の前に進み、華奢な腰に手を回す。美琴を引き寄せ、顔をみつめるこわばった美琴の顔色が驚愕につつまれ、ほのかに紅く染まる俺は、美琴の端正な顔に頬を寄せる。「だから・・もう一人で悩むな、命を捨てるなんて言うな」美琴が万感の思いに、包まれたのか、目から透明な液体がこぼれ落ちる。よほど耐えていたのだろうか、常盤台のお嬢様たちの前で決して見せることのない表情を俺に向ける。やがて少し落ち着いたのだろうか、涙を拭い、端正な顔を作り直す。そして美琴は形のよい唇を俺の頬に寄せ、意思の籠った声で語り始める。「当麻はずるいわ・・私の心のなんて、すべて当麻のものよ。8月21日からね」「だから・・」「これは、私からのファースト・キスよ」美琴の、端正な顔、意思の強そうな瞼、その今まで気がついていなかった異性としての美琴に俺の鼓動が高まる。(よく見れば、美琴て本当綺麗な女の子だな・・今更だけどな)俺は、美琴軽く抱擁し、接吻を促す。美琴が、俺の口に、軽く口を合わせる。そして・・・その瞬間、二人の距離が0になる。2人の口がひとつになる。熱い何かが通い合い、魂が交わり合うとても似通った、自分の命よりも周りの世界を大事にする2人がお互いを認め合い一つになった瞬間、感極まった美琴が、その意思の示す凛とした瞼をつぶり枯れたはずの液体を滴り落とす。漆黒の闇の中、数々の試練を乗り越えた2人はしばし、お互いの思いを知った喜びに身を任せ、時の流れに身を任せていた。だが、・・歩み寄った2人が本当にひとつになるまでまだ、大きな課題が残っている事を2人はまだ知らない。だけど、共に手を取り合った2人なら、どんな艱難辛苦も乗り越えるだろう。2人はそう信じていた。続く
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というわけで海岸まで来ると・・・ 青髪ピアス「おーい、カミやーん こっちやでー。」 上条「おっす。ところで土御門は?」 青髪ピアス「ええやんええやん。とりあえずこっち来て。」 上条「?」 言われるままに海岸へ。 すると 後ろから誰かに肩をつかまれた! 上条「うげっ って土御門何してるんだ!?」 土御門「にゃー。カミやんにはこれから不幸になってもらうぜい。」 上条「な、なぜにー!?っておい、二人で両手両足もって・・もしや!!」 土御門、青髪ピアス「「せーの!!」」 ざっぽーん 哀れ上条さんは海に落っこちた! 上条「ぶはっ ってこら!!何しやがる!!」 土御門「にゃー 悪い悪い。こうでもしないと気が済まなかったにゃー。」 青髪ピアス「ほな、気が済んだところでカミやん引き揚げまひょ。」 上条さん 回収。 土御門「カミやんほんとに悪い。そこの小屋で火をおこしてるから暖まってくれい。」 青髪ピアス「いやー。ほんにわるい。しっかりあたたまってやー。」 そういって二人は上条を海岸にある小屋へといざなう。 そして 土御門、青髪ピアス「「とりゃー。」」 上条さんは小屋に投げ入れられた!! 上条「なんでー?ってここ寒い!!氷室じゃないかー!! 出せー、出してくれー。凍えちまうー!!」 そう、その小屋の中には大量の雪。 さかのぼること数十分前 青髪ピアス「なあ、白雪。雪降らしてくれへん?」 白雪「?、どーしてー?」 青髪ピアス「いやー二日目のレクにな、雪像造ろ思ってんねん。そんための雪なんやけど 沢山いるから 二日に分けて降らせてもらおおもってん。 白雪だっていちどに何十トンも降らせるのは大変やろ。」 白雪「んー、確かに。そんじゃ降らせるねー。」 青髪ピアス「おおきに。恩に着ますー。」 白雪「良いよ良いよ。」 こうして降った雪を小屋に運び込んだのである。(クラス男子全員で) 上条さんが小屋に入ったと見るや、どこからともなくその雪運搬人達が現れた。 「入った入ったー。」「日頃の恨み、思い知れ!!」「死ぬ前に出してやっから」 と勝手なことを言い合っている。 その時ふと 青髪ピアスが不思議そうに言った 「なんでやろ?」 「どうしたにゃー?」土御門が言う。 「いやなー。こういう時ってたいていけったいなおなごが出てきてカミやん最後は 『不幸だー』とか言ってベストポジションゲットするやろ。 なのに今回はなぜかけったいなおなごが出えへん。」 「・・にゃー。」 これにも種がある。 さかのぼること1時間前。 上条さんに肝試しで海岸に来いと言った後で土御門はある男に真剣に相談した。 土御門「ステイル、頼みがある。」 ステイル「君が相談してくると言うことは何かあったのかい?」 土御門「人払いのルーンって【女子のみ人払い】とかできないか?」 ステイル「はいっ?? いやできない、というより一体全体どういう訳で そんなことを聞くんだい?」 土御門は説明した。「男子の 男子による 男子のための(上条討伐)作戦であり、 男子には出てきてもらいたいが (上条を救う)女性が出てきては困る」ということを。 ステイル「どうして僕がそれに荷担しなければならないのかな? ルーンのカードをまくのだって結構大変なんだぞ。・・ それに君さっき僕のルーンをはいだことを謝ってないぞ!! 都合のいいときだけ・・」 土御門「インデックスの時のことを忘れたのかい?」 ステイル「なに!?」 土御門「ステイルはインデックスの記憶消去を防ごうと努力した。なのに 結局はカミやんの右手で 良いとこを盗られた。違うか?」 インデックスのことを持ち出せれてあっさりステイルは計画に荷担することにした。 ステイル「・・・しかし【女性だけ】というのはないぞ。どうする?」 土御門「考えがある。この旅館から海岸までのルートは3つ。それ以外のルートは 障害物が何かしらあって通行不可能だ。だからこのルートの中にいくつか 人払いのポイントを置く。海岸を人払いするのではなく 『海岸までのルートを人払いによって遮断する』のだ。 これならできるか?」 ステイル「・・かなりの枚数が必要だ。 時間が足りるかどうか。」 土御門「クラスの男子に何か適当な理由つけてはらせるさ。 カミやんを怖がらせるためといったら間違いなくやってくれる。」 ステイル「・・まったく、いろんな意味ですごい奴だね、彼は。」 こうして上条さんに救いの女神が参ることはなく・・・ 「ああもう 不幸だー!!!!」 という叫びが響き渡ったという。 上条さんが風邪を引かずに済んだのは幸か、 それとも翌日のレクに参加させられるという不幸への入り口か・・ 上条「寒い、寒すぎる。早く布団に入って温まろう」 氷室から帰った上条はその後どうにか脱出と主犯格を氷室に閉じ込めることを終え、帰ってきた 一方通行と打ち止めが一緒の布団で寝ていたのはスルーしたが、 上条「スー・・スー・・」その後5分ぐらいして簡単に寝れた上条だったが、 御坂(ア、アイツの寝顔があぁぁぁぁ!!) 上条が帰ってくるまで心配で寝れなかった御坂はこのあと1時間以上も眠ることができなかった 朝になって独りでに目覚めた上条、昨日の疲れは完全にとれている自分に驚きながら (なんか違和感が、布団が狭いような・・・) 体を回して振り返ってみるとそこには御坂の顔があった。昨日の夜なんとか寝た後、無意識に上条の布団に潜り込んでいた 上条「わぁ!」驚いて大声を出してしまったため、 御坂「ん・・・」起きてしまった御坂と目が合った。(距離15cm) 【上条さんが起きたのは起床一時間前。と言う設定で御願いします】 距離15センチ!! ラブコメの準備完了いつでもOKです監督!!という状況の二人。 御坂・上条 (一瞬の沈黙、そして見る見る赤くなり・・) 御坂「ふにゃー。」 上条「ふにゃーじゃねえええぇぇぇぇぇぇ。」 大慌てで右手を美琴の口にあてて電撃&大声を防ぐ。 上条(小声で)「ばかっ、ここでびりびりしたらシャレになんねえだろーが。」 御坂「ムグ、ムググ」(息ができず、つらい) 上条(手を離し)「ていうか何でおまえがここ(上条の布団)に?」 御坂「ア、アンタが私の布団に入ってきたんじゃないの!」 上条「もしもし御坂サン、どう見てもここ私の布団ですから。」 御坂「っ!・・ど、どうでもいいでしょ!起床までもう少しだからそれまで位一緒にいたって・・・・いい、でしょ。」 上条「イヤー、さすがにそれは・・・・いえなんでもありません、何でもありませんよ 御坂様!どうぞごゆっくりしていって下さい!」 御坂さんがビリビリし始めたためあわててOKを出す上条さん 御坂「んじゃ、もう一回寝るわ。昨日は寝れなかったんだから。」 上条「??、そういや俺が帰ってきたときも起きてたなー。何かあったのか?」 御坂「な、なんの事?(アンタが心配だったからに決まってんじゃん、この馬鹿!!)」 上条「?」 そうして起床時間が近づいた。(といっても御坂はその後眠れずに起きていたが) 打ち止め「ムムム・・・。朝だぁー・・・って!!!!!!」 (打ち止め曰く)パパとママが添い寝しているのを見て、 いつもの口調を完全に喪失して呆然としていた。 そして・・・。 打ち止め(わわわわ、こういう時ってどうすればいいのってミサカはミサカはパニック状態に陥っちゃったり。) もはや唇と唇の距離10センチくらいになっているパパとママを見てパニックに陥った打ち止め。 結果、意図せずしてミサカネットワークに現在の状態が全て流されてしまった。 妹達「「「「「「「「「「「「「「「!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」」」」」」」 ミサカネットワーク全体に走る戦慄と怒号 御坂10032号「と、とりあえず第21554回臨時全ミサカ評議会の招集をミサカは提案します!」 妹達「「「「「「「「「「「「「「「異議なし!」」」」」」」」」」」」」」」 10032号「まずはラストオーダー、あなたが近くにいながらなぜこのような状態になったのか説明しなさいとミサカ10032号は爆発寸前な怒りを抑えつつ冷静に質問します。」 打ち止め「っていつの間にネットワークにつながっちゃたのってミサカはミサカは驚きを口にしてみる、そして寝ている間にこうなっちゃってて気が付いたときにはもう手遅れだったのってミサカはミサカは他のミサカの殺意をひしひしと感じつつ命乞いにも似た説明をしてみる!!」 100875号「ラストオーダーへの処分は後で検討するとして、とミサカ100875号は現状への対処方法を最優先に議論すべきだと提言します。」 妹達「「「「「「「「「「「「「「「っ!確かにその通りです」」」」」」」」」」」」」」」 10032号「それでは具体的にどのような方法があるのでしょうとミサカは他のミサカ達へ質問します。ミサカたちはテレポートできるわけでもありませんし、とミサカは前振りをしつつ事態は急を要し対処可能なのは10032号を含めた学園都市内の10名しかいないという最大の問題点を指摘します。その上でこの10人でできる最も効果的な方法と全ミサカは大至急立案してください。とミサカは内心の焦りを押さえつつ依頼します。」 妹達「「「「「「「「「「「「「「「了解!(ラジャー!)」」」」」」」」」」」」」」」 こうしてミサカ達は打倒御坂美琴の旗印の下、高速で立案 そしてツリーダイアグラム顔負けの演算で成功確率をはじき出し最も良い作戦を見つけんと努力するのであった ミサカ10572号「良い考えがあります。とミサカはおのがひらめきに感動しつつ発表します!」 妹達「「「「「「「「「「「「「「「何ですか!?」」」」」」」」」」」」」」」 ミサカ10572号「噂に聞いたのですがこの世の中には『堕天使エロメイド』『大精霊チラメイド』などといった最終決戦兵器があるそうです、とミサカは自分がいるロンドンのデザイナーが作り上げたゲテモノメイド服の仕様を提案します!」 ミサカ10032号など最終決戦兵器を見たことがない妹達↓ 「「「「何なんですか、それは?」」」」 ミサカ10032号「それにあなたの発言から察するに噂ではなくあなたはもうすでにそれを見たことがあるのでは?」 ミサカ10572号「!?い、いえちがいます 言葉のあやです、とミサカは実はそれを試着したことがありそれを着用して第7学区のとある学生寮に行こうとしたことがあること隠しつつ 冷静な振りをしますと・・・はっ!!」 ミサカ10032号「ミサカネットワークの中でそんな情報を開陳するとはいい度胸だとミサカは10572号への警告を発信します。」 ミサカ10572号「そ、それではネットワークを通じてイメージ画像を送ります。とミサカは本作戦の採用を確信しつつ内心の動揺を隠してミサカネットワーク全体にあの兵器を発表します!」 ミサカ10032号など最終決戦兵器を見たことがない妹達↓ 「「「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」 あまりの破壊能力に絶句するミサカ達。 ややあって ミサカ10032号「・・・わたくしは着用することにためらいはありませんが、とミサカは他のミサカの疑念を払拭しつつ他の9名の意見を問います。」 8名のミサカ「「「「「「「「全く問題有りません!」」」」」」」」 ミサカ19090号「ミ、ミサカは・・・」 10032号以下9名のミサカ「「「「「「「「「?」」」」」」」」」 一瞬間が空く。そして ミサカ10032号「ああ、そういえばミサカ19090号は他のミサカより痩せていてサイズが違いましたねとミサカは19090号の背信行為(ダイエット)に対する怒りを抑え、努めて冷静な客観的意見を述べます。」 ミサカ13577号「まったく、そのせいで作戦発動が遅れてしまうと・・・それ以前にこの作戦では絶対に間に合わないではないかとミサカは10572号の提案の根本的欠陥に気づいたことを発表し、併せてこんな不毛な議論に時間を消耗したことを心から悔やんでいると発言します。」 妹達「「「「「「「「「「「「「「「!しまった!!」」」」」」」」」」」」」」」 ミサカ10032号「他に良い考えはないのですかと、ミサカは暗澹たる気持ちを隠してさらなる発言を・・・・・」 打ち止め「追加情報!!ってミサカはミサカは叫んでみる!」 ミサカ10032号「今度は何事ですか、とミサカは最悪の事態が起こったのではないかと危惧しつつ先を促します。」 打ち止め「起床時間の後、朝の集いというのがあってみんな行っちゃったってミサカはミサカは一方通行に手を引っ張られつつ追加情報を流してみたり。」 ミサカ10032号「まったく、そういうことですかとミサカは安堵しつつ、わたくしの発言を途中で遮った打ち止めへの多少の怒りを表明します。」 だが、この情報には続きがあった。 打ち止め「でね、そのあとは全員で朝ご飯なのってミサカはミサカはどうでも良さそうだけど重要そうな気がする情報を流してみる。」 妹達「「「「「「「「「「「「「「「!!!確か昨日の夕食では!!」」」」」」」」」」」」」」」 ミサカ10032号「あの事態を繰り返してはもうミサカ達に打つ手はないでしょう、とミサカは半分あきらめた意見を出します。」 妹達「「「「「「「「「「「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」」」」」」」」」」」 暗澹たる気持ちになるミサカ達。 このあとしばらく頑張ったが・・・・ ミサカ12057号「今回は食事に遅れることはないはずなので、自分の食事が残ります。 このまま無駄な案を出しても時間の無駄でしょう、とミサカはあの必殺技は起こらないことを信じます」 ミサカ10032号「仕方ありませんね。その場の雰囲気に身を任せることにしましょう、 とミサカは第21554回臨時全ミサカ評議会を閉会したいと思います」 妹達「「「「「「「「「「「「「礼」」」」」」」」」」」」」
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前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲 胸ポケットと手のひらに あれからというもの、上条と美琴は楽しい生活を送っていた。ある日上条がついに 「今日、俺んち寄らねえか?」 と美琴にとってたまらなく嬉しい誘いが。もちろん二つ返事で応え、早速上条はスーパーで買い物を済ませ、 (なんでこんなに大量に買うんだろう?と美琴は思った)スーパーを出た。 「み、美琴、実は黙っていたことがある」 「何?どうせろくでもないことでしょうけど」 「俺の部屋に・・・インデックスも住んでいるんだ」 「は、はぁ!!!?」 当然の反応だ。でも信頼してきた仲でもあるので一応説明は求める。 「理由くらいは聞いてあげる」 「そ、そうか。あのな・・・」 上条は話した。記憶喪失になってから最初に出会ったのがインデックス。退院して部屋に戻っても インデックスは当たり前のように上条の部屋で生活していることを。 「ということは、あの子を助けたって訳だ。記憶を失う前の当麻が」 「だと思う。でも変なことは全くないぞ?」 「わかってるわよ。私よりも長く一緒にいたって考えると少しムカつくけどさ・・・」 「ありがとう・・・あぁ~助かった・・・」 いざ部屋の前に到着。 「あの子にまずなんて言って入ればいい?」 「ん?付き合ってるってちゃんと言おう。何言われるかわかんねえけどそれも覚悟の上だ。 もし困ったら常盤台直伝の美味い料理をたらふく食わせてあげりゃ問題ねえと思う」 「だからこの買い物の量なのね・・・」 部屋に入ろうとした時、 「おんやぁ?女の子を連れてくるとはいいご身分だにゃ~カミやん?」 「げっ!土御門!」 「一応俺が恋のキューピット役ってことになるんだぜい?そういえばまだ感謝の言葉も聞いてないにゃ~」 「るせえ!お前はただあそこの部屋に俺を放り込んだだけだろ!」 「いい度胸だぜい。ここでまずカミやんを殺してクラス中にチクッてやるにゃ~!!」 「上等だこの野郎!!」 何故か玄関前で大喧嘩をやり始めた恋人と隣の住人らしき人。とりあえず恋人を傷つけるのは許せないので 軽く美琴は土御門とか言う金髪の男を焼いて済ませた。(舞夏の義兄とは露知らず) 部屋に入ると案の定インデックスはいて、美琴を見るや否や敵意を丸出しに。 「インデックス、俺と美琴は付き合ってるんだ」 事情を説明され、そのことにショックを受けるインデックス。やはりこの子も・・・と思ったが 「短髪、こんなとうまだけどよろしくね」 と祝ってくれ、上条が言うように腕を振るった料理を出すとすっかりご機嫌も戻り、 「毎日来てくれると嬉しいな」 と満面の笑顔を見せてくれた。 そんなこれからも楽しくなりそうな日々が続いていたのだが・・・ 日曜日の朝、白井黒子は目覚めた。彼女が起きてまず最初にすることとは。 「おっねえっさま~!気持ちの良い朝ですわよ~」 美琴の起こすため、普段ならベッドにダイブして速攻で電撃の餌食になるのだが今日は「優しく」毛布をガバっと奪っただけ。 「ん・・・」 毛布を奪われた美琴は寒さで体をこれでもかと丸くする。がここはやはり常盤台のお嬢様。 ものの1分で体を起こし、大きなあくびをした。 「ふわぁ・・・おはよう黒子。日曜なんだしもうちょっと遅くてもいいんじゃない?」 あくびをしたからか目に涙を浮かべて白井を見るが、 「・・・・・・・・お姉さま、どうしたんですの?」 「えっ?」 白井はこれでもかと言うくらい美琴を驚いたような顔で見ていた。何か変な所があるの? と思いパジャマの袖を見たり髪を触ったり確認したが白井が驚くようなことは発見できなかった。 「何もないけど?」 「ち、違いますの!!それですわよ!!」 ズイっと顔を近づけてくる白井。近いというより・・・大きくみえる。 「お姉さま、まだ自分でお気づきになってませんの?」 「え?うん。そりゃあ」 「ではこれでどうですの?」 白井は呆れたような様子で美琴にあるものを投げ渡す。それは美琴の夜の相棒きぐるまー。 これでどうって何が?と美琴はわからなかったが深く理解するハメになった。 「え?」 白井が投げ渡したきぐるまーはぽすんとベッドの上でバウンドした。美琴はというと・・・ きぐるまーの下に埋もれていた。 「黒子!!苦しい!!早くどけて!!」 慌てて白井はきぐるまーに埋もれていた美琴を助け出した。 「大丈夫ですの?お姉さま?」 「こ、これって・・・どういうこと?」 ぬいぐるみにしては大きい部類に入るきぐるまーだが投げ渡されてこんなにダメージを喰らうはずがない。 受け取ろうとしたら・・・ズドンと落ちてきた、とても大きな物が落下してきたと表現したほうが美琴としては理が合う。 「まだ気づきませんの?では失礼して・・・」 え?え?とまだ驚きを隠せない美琴に無礼を承知して黒子は一番わかりやすい行動をとった。 美琴のパジャマの襟をつまんで美琴は白井にされるがままの状態に。 「あれ?黒子ってこんなに力持ちだったっけ?」 「パニックになるのもわかりますがお姉さま・・・」 白井はつままれてプラ~ンとしていた状態の美琴をもう片方の手に乗せた。 「体が小さくなっていますわよ」 「うぇえ!?」 「小さくなったって・・・私が!?」 「はい、女性でも小さいほうに入る私ですがその私の手のひらサイズに見事に・・・」 「そんな・・・どうして!?」 小さくなった美琴はあわわと焦り白井の手のひらでちょこちょこ動く。その動きが白井にはたまらないのだが ここはグッと堪えた。 「能力者の仕業という可能性もありますわね?お姉さまに恨みを持った人とか」 「そんな!私最近何もしてない・・・」 「こうしてはいられませんわね。至急風紀委員に行って能力者を調べてきますわ」 「あ、なら私も一緒に連れて行って!!」 「ですがお姉さま、着替えるにもそのサイズになられてしまっては着るものがないのでは?」 「うぅ・・・ならこのままでいい!!」 美琴はパジャマ姿のまま制服に着替えた白井の胸ポケットに入り風紀委員支部へ足を運ぶ。 (ぐっへっへ・・・小さくなったお姉さまが私の胸ポケットの中に・・・走る度にお姉さまの 重みが私のポッチにいい刺激を与えてくれますの!) 「黒子?変なこと考えたら怒るからね!」 「な、何も変なことなんて考えてませんの」 風紀委員177支部。 非番だった固法先輩、美琴の情報を聞きつけてやってきた佐天まで巻き込み、支部の中は大賑わいだった。 「うわ~!御坂さん本当にちっちゃ~い!パジャマ姿って所にグッと来る属性の人には危険ね。はい佐天さん」 「ほ、本当に御坂さんですか?いつも可愛いのにこんなに小さくなると可愛さとキュート2倍増しですね!」 「初春、それよりも該当する能力者を今すぐ探してくださいな」 「ふえ~ん、私も御坂さん触りたかったです~」 「動物園の触れ合い広場にいる動物たちってこんな気持ちなのかしら・・・」 着くやいなや、白井は「今朝起きたらお姉さまがこうなっていましたの」とみんなの前で美琴を制服の胸ポケットから出し、 テーブルに置かれた美琴はちょこんと座って一同にぺこりと挨拶をする。 その仕草を見た途端、白井以外のみんなは「可愛い!!」と一斉に歓声を上げ、固法が美琴を手に乗せ十分に堪能したあと 佐天に渡し、初春は白井に釘を刺されパソコンの前で作業中という状況。 触られまくっている美琴からすればあまりいい気分はしなかった。 小さい頃母親に撫でられた感触とは違い、このサイズになってしまったからなのか、何故か人差し指だけで頭を撫でてくるし、 やたらとほっぺをツンツンしてくる。 白井と初春は能力者捜索に没頭していたが固法と佐天は美琴に夢中。 「御坂さんのほっぺってこんなに柔らかいのね~。御坂さんに悪いけどペットにしたいかも」 「固法先輩・・・やめてくださいよ」 「あ~固法先輩だけずるい!私ももっと触りたいです」 「はい、優しく持ってあげるのよ?」 「は~い、御坂さんを手玉に取るってこういうことを言うんですかね?」 「佐天さん、アンタね~・・・」 「・・・へ?」 佐天の手の上で少し我慢ならなかったのか頭からバチバチ聞こえてきた。 「み、御坂さん?私はレベル0ですよ?」 「黒子よりは優しくしてあげるから黒子みたいに一回なりなさい!」 「ひいぃ!!・・・ってあれ?」 確かに美琴は佐天の手の上で放電をしたが佐天にダメージは全くと言っていいほどない。 ピリッと静電気が来たかな~と思うかそれ以下。 「うそ?体が小さくなって能力までも落ちてるなんて・・・」 「え、あの、御坂さん?」 「そんな、私もうずっとこのまま・・・」 「大丈夫よ御坂さん!白井さんと初春さんが今原因を探してくれているし、ほら、初春さんどうなの?」 佐天の手のひらでシュンとなった美琴を見て慌てて先輩である固法はフォローと話を逸らそうとする。 だが初春は誰もが求めていない返答をした。 「う~ん、該当する能力者は見つかりませんね。前回あった キャパシティダウンのような能力に影響を及ぼすような機械があるという 情報もありませんし」 「今のとこ手がかりナシですわ。お姉さまには申し訳ないですが しばらくこのままの姿で生活してもらうしかありませんの」 「そう・・・」 最初のテンションが嘘のように177支部の空気が静まり返った。が、 その空気を引き裂くように緊急招集のサイレンが鳴り響いた。 「こんな時に召集なんて。固法先輩、厄介な事件のようなので私たちとご一緒に出動してもらっても?」 「ええ、構わないわよ?」 白井の呼びかけに快く応える固法。腕には既に風紀委員の腕章が付けられていた。 「佐天さん、私も出動しないといけないのでここを閉めないといけません」 「えぇ初春も!?お留守番はダメなの?」 「風紀委員の一人でもここにいれば問題ないんですけどそれができないのでここを出てもらわないと・・・」 「じゃあ御坂さんは?」 「申し訳ないですが佐天さん、お姉さまを頼みますわ」 「え?」 佐天と佐天の手のひらに乗った美琴は突然外に放り出されてしまった。 「ええっと、御坂さんどうします?」 「こうなったら仕方ないじゃない。どこか落ち着く場所に行かない?」 「は、はい!」 気持ちを切り替えたのか美琴の顔はさばさばしていた。今は佐天の胸ポケットに入り、 「今の私は佐天さんにおんぶにだっこされてる状態って言うんじゃない?」 と冗談も飛ばしてくる。 「じゃあ、ずっとパジャマ姿だと辛いでしょ?セブンスミストに行ってサイズが会う服でも探しましょう!」 「あるのかな?こんな大きさの人ってどこ探してもいないわよ?」 「その時はシルバニアファ○リーの服で我慢してくださいね?」 「パジャマのままでいい気がしてきた・・・」 こうして2人はセブンスミストに着いて美琴に会う服のサイズを探すが・・・ なんと奇跡的にあった。有名ブランドの超ミニサイズというモデルが売ってあり、 しかも種類も結構な数が揃っており、美琴と佐天は意外な形でショッピングを楽しめた。 「み、御坂さん!!これ!」 「なんて都合がいいのかしら・・・」 2人が目にしたのは超ミニサイズ常盤台中学制服。小さいサイズなのに常盤台中学の制服は 結構な値段を張っていた。当然美琴はこれを買う。「やっぱり小さくなってもこれがしっくりする」らしい。 だが佐天は「せっかくだしこれも!」と柵川中学の超ミニサイズの制服を見つけて買った。 そしてセブンスミストを後にし、美琴はミニ常盤台中学の制服に着替え、再び佐天の胸ポケットに収まった。 「まあ、持つのは私なんですけどね?」 佐天の持つ袋は小さいのでそんな大きな荷物になっているわけでもないのだが。 「その辺は・・・申し訳ないです」 「いやいや、たまには私も御坂さんの役に立てたと考えればいいですよ」 「あはは・・・ってん?」 「どうしました御坂さん?」 佐天の胸ポケットに入りながら目を細めて遠くを見る美琴。その瞬間美琴の顔が緩んだのを佐天は見逃さない。 「佐天さん、荷物持たなくていいかもしれないわよ?」 「え?」 「あのツンツン頭の男に声をかけてくれない?」 美琴が指した相手は金髪の男と青い髪の男と歩いていたツンツン頭の男。 佐天はもちろんえぇ~という顔をする。いきなり知らない男に声をかけるのも・・・ 「誰ですかあの人?御坂さんの知り合いですか?」 「ふふん、みんなには黙っていたけどアイツ、私のか、かかかっか、彼氏なの」 「え、ええええええええええええええええええ???????」 佐天の驚きっぷりに美琴は胸ポケットの中でどや!と腕を組む。今まで内緒にしていてこんなに驚かれるのも 悪くないかも。でも内心ぶっちゃけた自分も動揺はしている。彼氏という単語を人前で口にするなんて 考えていなかったお姫様だったもので・・・ 「ま、そ、そそそそう思うわよね!で、でででもアイツなら何か解決策を見つけてくれるかもしれないと思う!!」 「み、御坂さんに彼氏がいたなんて・・・信じられない」 「ま、まあ話せば長くなるけどアイツ、彼氏だけど鈍い所結構あるし、 私のこの姿じゃ気づいてくれそうにないから。お願い佐天さん!」 「・・・わかりました。お二人の馴れ初めを後でじっくり教えてくれたらいいですよ」 「う・・・それ以外はダメ?」 「今は他にいい案が浮かばないのでダメです」 「わ、わかったわよ。後で話すからアイツに声かけて!!」 「了解!」 これは逆に面白いおもちゃをゲットしたぞといわんばかりに顔をニヤつかせる佐天。金髪でもなく青髪でもない あの人だっけ?ス~っと背後から近づきこっちに気づくのを待とうとしたが・・・ 三人の会話が聞こえた。 「なあ青髪、もう帰ろうぜ?」 「ここは珍しくカミやんと同意するぜい」 「ダメや!カミやんは既に彼女がいて幸せを堪能し、ツッチーは義妹と仲良くご奉仕三昧!なのに何で僕だけ 素敵イベントが起こらへんのや!?せやから2人の匂いに釣られて逆ナンしてくる女の子をガバ!っとお持ち帰りする ご予定なんやで?ええか?もしこの3人の誰かに声をかけてきた女の子がいたら君たち2人はまず僕に譲るんやぞ? そこんとこわかった?お返事は!?」 「・・・にゃ~」 「・・・不幸だ」 結構近い場所でその話を聞いてしまった。美琴と佐天は・・・ 「み、御坂さん。彼氏さんに声をかけた所で私があの青髪の人にお持ち帰りされそうなんですが・・・」 「それはさすがに困るわね・・・ならこうしよう!ヒソヒソ・・・」 「えぇ!?それは私が恥ずかしい目に合うじゃないですか!!」 「私も今これ以外にいい案が浮かばないの!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・ダメ?」 「う・・・ダメじゃないです・・・」 小さくなった美琴の胸ポケットからの上目使い攻撃は佐天の心までもKOしてしまった。 美琴の作戦とは、まず距離を3人との距離をさっきより大きくとり、できるだけ人が少ない時を狙う。 そして、 「御坂さんの彼氏さーーーん!!大事なお話があるのでちょっとこっちに来てもらってもいいですかぁぁぁ!!?」 と、とても大きな声でツンツン頭の少年に叫んだ。青髪の変態を警戒しての最善の行動だが周りからは 「やだ、あれって三角関係?」 「昼間からやるわね~」 等と聞こえてくる。佐天は既に「あはは」と笑顔で涙を流していた。 (これって風評被害っていうんだよね初春?この前の社会の授業にあった単語だよね?) そんなことを考えていたが、あちらの3人の空気がどうもおかしい。金髪と青髪の男の表情がクワ!っとまるで 超ニッコリスマイルしている鬼のように変化していた。 「カミやん、お前はどうしてそういつも女の子が話しかけてくるのかにゃ?」 「せやな。いきなり声をかけてくる相手が彼女やったら100歩譲って許せるがあんなカワイ子ちゃんにまで フラグ立てたっちゅうんかいな?」 「は?ちょ、俺はあの子知らない!!」 「でもあの子はカミやんを知っている訳ぜよ。この浮気現場を彼女と吹寄に報告する前に・・・」 「ここで息の根を止める必要があるみたいやなツッチー?」 「珍しく青ピに同意するぜい」 「・・・・・・・・・・・・・・」 金髪と青髪の男が黒いオーラを出したと同時にカミやんと言われていた少年は一目散に走った。 「待たんかいカミやん!」 「今回ばかりは俺も許さんぜよ!」 2人も少年を追いかける。 「え?え?きゃっ!」 「こっちだ!」 カミやんと呼ばれた少年は佐天の腕を取り二人から逃れるためにひたすら走った。 「ちょっと!当麻!!佐天さんの手握るなぁ!!」 佐天の胸ポケットから嫉妬心を露にしてピーピー叫んでいた美琴だが必死に走る二人には聞こえない。 「はあ、はあ、巻いたか?」 「もう追いかけて来てないみたいですよ?ぜえ、ぜえ・・・」 なんとかあの2人を巻いて逃げることに成功したツンツン頭の少年と佐天。少年は「巻き込んで悪かった」 とさっそく佐天にこれ以上ない綺麗な土下座をする。 「え?何をしてるんですか?」 「俺のことなのに巻き込んで悪かった。この通りです。でも上条さんはお詫びをしようにも お金も知恵もないのでこうやって精魂込めて謝ることしかできないんです!!」 「いえ、巻き込んだのは私というか、御坂さんというか・・・」 頭をかきながら佐天は少し言いづらそうな表情で言葉を選ぶ。 「御坂?あぁ、そういえば何で俺が美琴の彼氏って知ってんだ?」 「(うわぁ、下の名前で呼んでる)そ、その、御坂さんに聞きまして・・・ついさっき」 「ついさっきってアイツどこか近くにいるのか?そういえば連絡しても珍しく電話もメールも来ないけど」 「いえ、ここに・・・」 佐天が自分の胸ポケットに指差すと、美琴がムスっとふくれた顔を赤くしてこっちを見ている姿があった。 「えっと、え~っと君は・・・」 「佐天涙子です」 「佐天さん?君はこの小さくて可愛らしいこの生き物が美琴であると言いますのでしょうか?」 「はい、学園都市レベル5第3位、常盤台中学のエース、通称、超電磁砲の御坂美琴さんです」 「あの、電波的な会話は上条さん着いていけませんので・・・」 「電波じゃない!!だったら自分の手で確かめてみてください!!はい!」 いきなり電波扱いされてご機嫌斜めになった佐天は美琴をむんずとつかみ上条に渡す。 渡された上条は手のひらに乗り、正座をしている美琴らしき生き物をマジマジと見つめる。 「じー・・・・・・・・・・・・・・・」 「にゃ、にゃによ!そんな顔で見にゃいでよ!////」 ふむ。確かに反応は美琴にそっくりだ。じゃあこれはどうだ? 「ビリビリ?」 「がぶっ!」 「痛てっ!指を噛むな!なら・・・御坂?」 「ふん!」 「美琴?」 「なぁに?当麻。えへへ」 うむ、これでほぼわかった。最後にこれを・・・ 「今の上条さんの待ち受け画面は?」 「昨日勝手にプリクラの写真に変えちゃったけどもしもしその後変えたならわからないわ」 「・・・・佐天さん・・・・・・コイツは美琴だ」 「だから最初から言ってるじゃないですか。ていうか土下座は今のタイミングでしてほしい所なんですけどね」 目の前でこんな赤裸々にいちゃいちゃされてもなぁ・・・突っ込めないじゃん。と佐天はやれやれとため息を吐いた。 「・・・ということらしいです。御坂さんは上条さんなら何とかしてくれると思って」 「そうだったのか・・・」 場所を変えて一通りの少ないカフェのラウンジ。席の場所も奥でこれなら聞き耳を立てられることもないだろうし まず小さくなった美琴も目立たない。と言っても美琴は上条の手のひらで嬉しそうに「えへへ」と笑っているだけだが。 一通り事情を聞いた上条。だがない頭で考えても解決策が浮かばないのは仕方ない。 「でも俺の右手で美琴を触っても何も起きないし・・・」 「右手?」 「あぁ、俺の右手は異能の力ならどんなものでも打ち消す不思議な能力なんだ。美琴の超電磁砲もな。 でもレベルは0。お世話になるけど俺にもよくわからない能力なんだよ」 「レベル0?御坂さんの彼氏が?」 「お高いレベルじゃなくて悪かったですよ・・・」 「いえ、そんなつもりじゃなくて。ならその右手で触っても何も起きないなら一体どうしたんでしょう・・・」 確かに上条は今、美琴を右手で触っている。左手に乗せ、右手で頭をなでなで、ほっぺをぷにぷにと手癖のように美琴を扱う。 上条が頼んだホットドッグを美琴サイズに切ってあげたものをむしゃむしゃ食べながらも嫌がる様子は全く見せない。 先ほどの風紀委員の時に触られまくった時とは反対でとても嬉しそうな顔をしている美琴を見て佐天は なんとなくだが腑に落ちない。 「そうだ御坂さん、先ほどの約束果たしてください!二人の成り初めを教えるって約束」 「んにゅ・・・あと5時間待って・・・」 「御坂さぁぁん!上条さんも撫でてあげるのやめてください!!」 「だって手の上にいるからつい・・・俺からでいいなら簡単に話すけど?」 「いいんですか?御坂さん、どうやら白井さんにも教えてないみたいですけど私がバラしちゃっても?」 「その時は俺が白井に殺されるだけだ。そうだなぁ・・・」 上条は全てを話した。美琴が自分の影響で「自分だけの現実」を失いかけたこと、それがきっかけで 共同生活を学園都市から強いられたこと、生活していく中で自分が美琴をどう思っているのか気づいたこと、 美琴が自分をどう思ってくれていたのかわかって美琴の「自分だけの現実」を取り戻せたこと・・・ と二人が付き合うまでのきっかけとなった全てを佐天に話した。 「だ、大恋愛じゃないですか・・・」 「えへへ~。誉めても何も出ないわよ佐天さん?」 上条の手の上で偉そうにいばる美琴。このバカップル、そう簡単に弄れない。 「いいなぁ、私も彼氏欲しい!大恋愛したい!」 佐天は何も突っ込める所が見つからずあぁ~と思わず言葉に出てしまった。 「それなら俺という素敵な王子様がおりますぜい?」 「「「!?」」」 その言葉の先に上条当麻のことなら「何でも」知っている土御門元春がいた。 「つ、土御門?」 「焦るなカミやん、たまたま見かけただけぜよ。それに俺はお前の手の上にいる子に用事があるぜよ」 「?」 美琴はこの男を知っていた。先ほどいたのを見かけたからではない。上条と寮の前で大喧嘩した金髪。 そしてサングラス越しに見える怪しい眼。美琴はあまり信用してはいけない人だと思った。 「その様子だとまだやってないみたいだにゃ~」 「やってないって?」 「いんや、それはカミやんと超電磁砲が気づかないといけないぜよ」 「何よ、突然現れて何か知ってそうなのに教えてくれないってどういうこと?」 「口に出すだけじゃいけないってことだぜい?」 「は?」 「おっと、もうこんな時間だぜい。行かないといけないにゃ~」 「何だったんですかね?あの人・・・」 さっさと消えてしまった土御門の背中を見て佐天は一番意味がわからなかっただろう。 「カミやん、ちょっといいかにゃ?外で話をしたいんだが」 カフェの入り口付近で突然土御門は振り返り上条を呼ぶ。 「ちょっと行ってくる。佐天さん、美琴をちょっと頼む」 「は、はい」 上条は手のひらに乗っていた美琴を佐天に渡す。体全体で上条の手の感触に包まれていた美琴は残念そうな顔をした。 それに気づいた上条は 「美琴、ほれ」 「きゃっ、何これ?」 「口についたマスタード、ちゃんと拭いておけよ?」 「!!!!!」 慌てて美琴は上条が渡してきた物で顔を隠す。それは・・・・・・上条が持っていたハンカチ。 「あ、ありがとう」 「おう、お安い御用だ」 「当麻、早く戻ってきてよ。あの人なんか・・・信用できない」 「その通りだ。アイツは良くも悪くも嘘つきだから。でもアイツは俺を何度も助けてくれた友達だ」 んじゃ、と手を振って上条は土御門に促されて店を出た。 「相思相愛ですね~御坂さん?」 「や、やめてよ!恥ずかしいんだから!!戻ってきたら怒ってやるんだから、もう////」 佐天の手の上でギャースと反論するが顔が赤くて可愛いだけの生き物だ。今ではレベル5の威厳というものは 上条の前と、この小さい体になってしまってからなくなってしまったのかもしれない。 「ではでは、上条さんが戻ってくるまで御坂さんからお話を聞きましょうかね?いちゃいちゃっぷりを」 「やだ!当麻がさっき教えてくれたでしょ!?」 「でも御坂さんの口からも聞いてみたいな~と後輩である私は思うのですが?」 「じゃあ、少しだけだからね?」 そうして美琴は佐天の手の上で上条が佐天に話した内容とほとんど変わらなかったがあの時の感情も含めて 話した。佐天はその話に笑い、驚き、そして悲しみを乗り越えたハッピーエンドを迎えた今の2人があることに祝福した。 話しているとようやく風紀委員から開放された白井と初春も合流してきた。だが美琴は 「まだこの状態だしみんなには言えないから付き合っていることは内緒にしてて?」 と佐天にお願いし、佐天も了承した。 だがその日、上条当麻は美琴の元に帰って来なかった。 前ページ次ページ上条さんと美琴のいちゃいちゃSS/壊れかけの超電磁砲
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そして親衛隊は釘をさす 御坂美琴はお昼を食べに、一人ファミレスにいた。最近発見してお気に入りの、通称『巨乳ファミレス』である。(しかし、今日は『あの日』を思い出す顔ぶれだわね…)美琴は一人で4人テーブルを占拠している。昼前でやや混みだしていたがまだ余裕はありそうだ。見回すと、前にいた巨乳ジャージ教師、巨乳オデコ高校生が今回もおり、美琴が「巨乳ファミレス」と名付けた所以でもある。(ここで携帯でも掛かってきたら、『あの日』の再現ね)ゲンかつぎではないが、あの時と同じくハンバーグ定食を注文し、ふっ、とため息をつく。思いはまた上条当麻の元へ舞い戻る。――まだ、一端覧祭に誘えていない。もう数日もないのに。『あの日』にココでかかって来た携帯の話、シャッターの件で貸しはある。しかし、そもそも上条には返し切れない借りがある以上、真面目に主張するだけ人間としてダメだろう。何より、大覇星祭の罰ゲームで懲りていた。嫌々付き合わせても、結局何も残らないのだ。だから、真正面から行くしかない―――が、動けない。何かささいなキッカケはないか。それがあれば今度こそ…と考えている間に今日に至る。「美濃牛ステーキ定食お待たせしました」「ん?」わたしじゃないで…すよ、と答えかけた美琴は、固まった。上条当麻がニヤニヤしながら立っていた。…幼女を連れて。「残念、違ったか。お前ならコレかなと思ったんだけどなー」「な…な…な?」考えていた相手がいきなり目の前に現れたのだ。言葉が出てこない。「席空いてっか?何なら一緒に食おうぜ」「あ…うん、いいけど」「んじゃ先生、奥へずずいっと」せんせい?「先生はお邪魔じゃないのですかー?」「あー、気にしなくっていいっすよ」「え、えーっと?」「御坂、この人は俺の担任の先生で、月詠小萌先生。見た目で分かるとおり、学園の秘密兵器だ。」「なんて紹介してるんですか上条ちゃんはー!小萌先生、って呼んでくれると嬉しいです、よろしくですよー。」「よ、よろしくです小萌先生。常盤台中の御坂美琴です。」「お~、やはり御坂さんですかー!御坂さんのLV5へ至る過程は皆のお手本ですからねー。すごいですよー」「あ、どうも…です」やっぱり面とむかって言われると照れてしまう。「その点、上条ちゃんはほんとに…」「やっぱりそうきますかね先生!? 頑張ってますって!頑張ってLV0なんですって!」「女の子が絡んだ時の行動力と思考力を、勉強に使ってるとは先生には思えないのです」美琴が上条をジト目で睨む。「ちょ、ちょっと待って先生。えーっと、先に注文しよ注文!」2人は注文し、美琴もさっきの注文を2人のに合わせて出してもらうよう、頼んだ。「小萌先生、コイツってほんとに無能力者なんですか?ちょっと疑問があったりするんですけど」「機械はウソつけませんからねー。上条ちゃんは純正LV0、まったく無いですねー」上条は右手を左手で差し、そのあと両手で『バッテン』とジャスチャーをしている。どうやらイマジンブレイカーを秘密にしたいらしい。「でもですねー」小萌は続ける。「あたしは上条ちゃんには何かあると思ってますよー」「何か…?」「現在のカリキュラム上、微かにでも能力は発現するはずなのですよー。それなのに皆無ということは」「ということは?」「レベル…次元が違いすぎて、発現してるのに我々が判定できないモノを持っている、という可能性があるのですー」上条と美琴はギクッッッ!として顔を見合わせる。頼んでいたモノが届き、各々食べ始める。「そもそも上条ちゃんは、御坂さんとどうやって知りあったのですー?」上条は記憶喪失のため覚えていない。美琴は(ちょうどいい機会かしら)と思いつつ、言葉を選んで話す。”幻想殺し”には繋がらないように。「えーと、今年の6月くらいだったかしら、私が不良に絡まれているのを助けてくれたんです。」「御坂さんなら、助けてもらわなくても大丈夫なんじゃないですかー?」「そうです、ただのおせっかいですね。」「ただの、とか言ってんじゃねー」「まあそこからは、会うたびに口ゲンカみたいなことしてまして。」実際は一歩間違えれば死に至る電撃であったが。「で、まあ私がちょっと大きい問題を抱えて悩んでいた時に、それを解決して貰って」ちょっと美琴は顔を赤らめ、「それで、えっと、今は仲良くさせていただいてます。ハイ。」上条はまさかそんな言葉で美琴が締めるとは思わず、ナイフを持つ手が止まった。「上条ちゃんは~~~~!」小萌はポカポカと殴りだした。「あっちこっちでフラグ立てすぎです!良い事してるのは分かってますけど、それにしても!」「いやだから!フラグフラグって皆いうけど、次なにかイベント起こるからフラグでしょ!?なんにも起こんないし!」「…! じゃ、じゃあ仮に、仮によ?」美琴は思わず口に出す。「あたしが『妹の件ではありがとう。お礼に映画などご一緒にいかがですか?』とか言ってたら」仮の話でも上条を正視できない美琴はうつむいて言う。「それはアンタにとってイベント発生だったのかしら?」上条は腕を組んで考えている。「映画に誘われるってのはイベントだな。でもそのケースはちょっと違うかなー」「なにが?」「俺は俺が助けたいから動いたんであって、お前たちが助かった時点で、もう終わってるんだよ」「…」「そこからお礼ってのが分からな・・・い?い、いたいいたいー」上条は思いっきり小萌にツネられる。「御坂さん、この子にはあとで説教しときますー。聞いてると御坂さんまで馬鹿になっちゃいますよー」「それ生徒に向かって言う台詞かフツー!?…っていたいいたい~」「はあ…」(イベント起こさせる気がないだけじゃないの!ほんとにもー!)その後、小萌と美琴はやたら高度な話で盛り上がっていた。『AIM拡散力場を利用したネットワークを用いる科学者に…』『能力開発に用いるガンツフェルト実験で…』『でも絶対能力者実験っていうのが…』『神ならぬ身にて天上の意思に辿り着くもの…』上条は全然ついていけず、寂しそうにポテトをつまんでいる。そこに上条の携帯が鳴る。電話に出た上条は、少し話すと、会釈して席を立ち、コーナーで長話の体勢に入った。その姿を眺めつつ、「今日は御坂さんとお話しできて良かったですよー。あたしが感心したのはー…」小萌は微笑みながら美琴に話しかける。「上条ちゃんみたいな無能力者相手でも、分け隔て無くお話しているのは、素晴らしいことですよー。」「…」「学生のレベル分けの弊害ですねー。人をレベルで判断する人が多いんですよー」「いえ…間違いなく、あたしもそうでした。今でも変わらないかもしれません。」美琴はつぶやく。「あたしって友達少ないんですよ。でもそれは強さを求めた代償かな、なんて思い込んでて… でもアイツは…あたしより強いのに、どんどん人が集まってくる。」―――LV5を軽くあしらうだけの力を持ちながら、無能力の烙印を押され、―――そんな不当な扱いを『どうでも良い』と切り捨て、―――その絶大な力を持ちつつも奢らず、どんな弱者にもどんな強者にも分け隔てなく対等に接し、―――そして、、、「アイツの近くにいれば、あんな風にあたしも変われるかなあ、なんて…」小萌は美琴を見つめ、ウンウンと頷きながら、「若者はどんどん悩んで、そして思ったことを行動するのです!正解なんてないのですよー!」(んー、ちょっとスッとした)とりあえず誰かに心の中を話せたことで、美琴は心が軽くなった気分だった。すこし考え込んでいると、フ…と影が差した。ん?と顔をあげると…巨乳に囲まれていた!厳密には巨乳2人+1だったが。「んじゃあ月詠センセお先じゃんよ」「小萌先生、お先です」「…(黙礼)」巨乳ズが挨拶する。このオデコな人、大覇星祭でアイツに介抱されてたような気がする。…お先、といいながら何故か動かない?そして何故ミツメル?「さて、御坂さん」小萌を見ると…今までみたことのない黒い笑顔が!「上条ちゃんは皆のアイドルですから~」え?「もし抜け駆けして一端覧祭で独り占めしようとか~」ええ?「不埒なことを考えているとー、このお姉様がたや、幸せを許さないお兄様がた…」え、ええ?「いろんな人達が、”かわいがり”にきますからねー?」ひええええええええっ!「いやー、わりぃわりぃ。じゃあ先生そろそろ戻ろっか」そう言って戻った上条の前に映ったものは。ニコニコしている小萌と、「高校生…コワイ…先生…コワイ」とつぶやいている視線の定まらない美琴の姿であった。fin.
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「ふうん。私ったら一ヶ月半も眠ったままだったのか。海の底で意識が無くなったはずなのに、ここが現世で良かったわ」 御坂美琴は再びベッドに横たわって顔だけを横に、すなわち、この部屋に今いるインデックス、白井黒子、御坂妹、神裂火織を見て、なんとも細い笑顔を浮かべている。 しかし、即座にハッとして、 「で、あの馬鹿は?」 「大丈夫だよ。とうまも助かったから」 「そう、良かった」 インデックスの返答を聞いて、安堵の溜息を一つ。再び、笑顔も戻る。 一度、視線を天井に向けて、 「で、あいつはアンタに謝れたの?」 美琴は何気なく聞いた。 美琴が上条当麻を助けよう、と思った理由のひとつは、インデックスに謝罪させるためだったからだ。 それが叶っているかどうかは知りたいことである。 知りたいことではあるのだが、インデックスに目を合わせられない、というのは微妙な乙女心と言ったところか。 白い天井を見上げて美琴はレスポンスを待つ。 誰も何も言わなければ、この白い空間に響くのはデジタル時計の音だけになる。 「ん?」 なんだか思っていたよりもレスポンスが遅過ぎる。と言うか返事が来ない。 「どうしたの?」 思わず、再び視線をインデックスに向けた。 そこに居るのは当然、インデックスなのだがどうも様子がおかしい。 (変ね? この子が『あいつは助かった』って言ってたのに……って、ちょっと待って、何か表現がおかしくない?) 美琴は思う。 確かにインデックスは『とうまも助かった』と言った。 『も』と言うことは、美琴同様に、という意味であり、それはすなわち、命に別状はない、と見て構わないことだろう。 しかし、何かが引っかかる。 「ね、ねえ……まさか、あいつはまだ……」 嫌な予感が過ぎる。美琴本人は一ヶ月半、意識不明だったわけだから、もしかしたら上条も、と考えても不思議はないし、というか、命に別状がないだけで、無事じゃない可能性があるのではないか、とか疑ってしまう。 「ち、違うよ! とうまは元気だから! 目が見えなくなったり口が利けなくなったり手足がなくなったりとかじゃないから!」 手をばたばた振って、美琴の悪い予想を否定するインデックス。 「五体満足、なのね?」 「う、うん! もちろんだよ! 短髪と違って、とうまはもう自分の足で動き回れるようになってるし、ちゃんとごはんも食べられるようになってるんだよ!」 ふむ、と美琴は思う。 とりあえず身体的に問題はなかった、ということだけは分かった。 ところが、それでもインデックスは『無事に』と口にしていない。 つまり、命には別状ないし、体もいたって健康なのかもしれないが、どこかに異常があることになる。 それはどこだろう? 答えは既に出ている。 「……もう一回聞くけど、あいつはちゃんとアンタに謝罪した?」 今度は、まっすぐにインデックスを見て問いかける。 「……………………………………………………………………まだ」 随分と長い間があって、ようやくインデックスが絞り出した声を漏らした。 「……………………………………………………てことは、また?」 「うん……あ、でも今回は大丈夫なんだよ! 記憶はちゃんと戻せるんだよ!」 深刻な美琴の声に、肯定はしつつも即座に、元気付けるように声を上げるインデックス。 それは自分にも言い聞かせていることなのだが、それに関しては自覚なし。 「そうなの?」 「はい、と、ミサカはお姉さまの疑念を振り払います」 美琴の確認に答えたのは、今度は御坂妹の方だった。 その事務的で平坦な言葉には、一片の迷いもなく、漲る自信が宿っていた。 「で、インデックスさん? あなたはここで何をしているのでしょうか?」 翌日、再び、上条当麻の病室を訪れたインデックスは、お見舞い用に飾ってあった花瓶を上条のベッドの横にある小さな三段引き出しの上に置いて、空っぽになった小さなテーブルでレポート用紙に何やらボールペンを走らせていた。 「あなたの記憶を、彼女があなたと関わった記録を書いてもらってます、と、ミサカは現状報告します」 答えたのは、インデックスと供に現れた御坂妹だった。 どうやら夕べもインデックスは御坂妹の病室に泊まったようである。 「俺の記憶?」 「そうなんだよ。とうま! 私ととうまの回顧録をパーフェクトクールビューティーがとうまの頭に書き込むんだよ!」 「は?」 「厳密にはミサカではなく、ミサカが用意する学習装置(テスタメント)が入力します、と、ミサカは補足説明します」 はじけんばかりの笑顔で答えるインデックスと、淡々と呟く御坂妹は、手持ちのノートパソコンをソファーに座り、太ももの上に置いて、広げて、何やら打ち込んでいる。 「で、あなたも何をやっているので?」 「私にも、あなたと過ごした記録があります。それをまとめています、と、ミサカは一心不乱に打ち込みながら答えます」 回答している時点で一心不乱とは言えないのだが、それは言うまい。 「ええっと、てことは俺の頭に、君たちが俺と一緒だった過去を入力する、と?」 「その通りです、とミサカは肯定します。ご安心ください、と、ミサカはあなたの不安を取り除きます。学習装置は元々、学園都市の能力開発装置を応用したもので、耳から直接電極を刺して稼動させますが、それは、能力開発時にあなたも経験済みのはずです、ではなく、この学園都市の入学条件を知っているはずですから、記憶はなくても、そういうことがあったことは認めるはずです、と、ミサカは懇切丁寧に説明します」 「まあ……この町にいる時点で、それはそうなんだが……」 「学習装置の安全性については問題ありません、とミサカは保証します。なぜならミサカ自身に使用されたからです、と、ミサカは実体験を遠い思い出のように語ります」 経験者は語る、というやつだ。 しかも御坂妹は、クローン体であり、生命の理に基づいて生まれた者たちと比べると、どうしても体調的に弱い部分がある。 しかし、そんな御坂妹だからこそ、文字通り身をもって学習装置の安全さをアピールできるのだ。 「し、しかしなあ、それだと俺の記憶というか、君らだけとの記憶しか入力できないんじゃないか?」 「うん知ってる。だから、私たちだけじゃないよ。短髪もくろこもこもえもあいさもかおりもサーシャもシェリーもオルソラもアニェーゼもルチアもアンジェレネもオリアナもいつわもエリザードもリメエアもキャーリサもヴィリアンもレッサーも協力してるよ。……って何か女の人ばっかりだし、ちょっとむかつくかも」 白いシスターの目がとっても怖くなって、上条は身震いする。 身に覚えはないのに、なぜか、あのシスターのあの表情は直感的に非常によろしくない気がする。 「同感です、と、ミサカは、あまりのあなたのフラグ乱立ぶりに辟易します」 ……いや、それは今の俺ではなくて、前の俺ですよね? というか前の俺! どんだけ羨ましい目にあってんだーーー!! と、ツッコミを入れたが最後、なんとなく命の危険が真近に迫ってきそうな気がしたので、心の中でだけ絶叫する上条当麻。 もし、記憶を失う前の彼が二人ともいたならこう言って、焼け石に水の反論をしたことだろう。 ステイルと偽海原光貴と建宮斎字は? ちなみに数多くの女性と確かにお知り合いの上条当麻ではあるが、それは全て別に、ギャルゲーのように幼馴染だったり出会いがしらにぶつかったり突然声をかけられたり木の影から見られていたり事ある度に勝負を挑まれたりしたわけではなく、清々しいくらいとっても命と紙一重の危険な目にあって生き残った成果だったりするから、それが羨ましいかどうかは正直、疑問を感じるところではある。 もちろん、今の上条当麻はそれを知らない。 って、あれ? 一つだけ実話なのでは? 「ああ! なんて素晴らしい空間! お姉様が! お姉様が二人もわたくしを囲うなんて! これもひとえにお姉さまの身を案じて一ヶ月半を一人寂しく過ごしてきたわたくしへのご褒美なのでしょう!!」 上条が滞在している隣の病室では、同じように御坂美琴と白井黒子が、上条当麻との回顧録レポート作成に勤しんでいた。 この二人はさすがに用紙にボールペンというアナログではなく、手持ちのノートパソコンでキーボードを叩いている。 叩いているのだが、実のところ、叩いているのは白井黒子だけであって、御坂美琴はベッドに横たわったまま、傍にいる自分のクローン・妹達の一人、一〇〇三九号に口述筆記させていた。 なぜなら、美琴はまだ、キーボードを叩くどころか、ペンを持つ以前に、自力で起き上がることさえできないくらい体力が回復していない。 何と言っても、美琴が覚醒したのは前日の晩で、それまで一ヶ月半、まるで動かなかったのだ。栄養点滴だけでは当然追いつかず、ようやく、今日の朝、オモユを口にできた程度。これで動けという方が無理である。喋ることさえ、結構億劫なのだが、今の美琴ができるのはここまでだ。 「ねえ黒子……あんたのハイテンションは諦めるけど、ちゃんと言われたことやってんの……?」 美琴が呆れて呟くと、 「もちろんですわ、お姉様! あの腐れ類人猿との回顧話などものの数行で終わりますもの!」 「だあー! それじゃ意味ないじゃない! 妹達の一人が言ってたでしょうが! あいつと一緒に居たときのことを覚えている限り、詳細に書かなきゃいけないって!」 「むぅ。ですが、わたくしとあの殿方だけの接点となれば、八月二十一日の夜と大覇星祭前のビル崩壊から救われた二つしかありませんの。あとはお姉様もご一緒でしたから、別段、わたくしが書く必要は無いのではないかと。お姉様と一緒にいたときであれば、わたくしよりもお姉様の方が、詳しく書けるのではなくて?」 「ななななななな何言ってんの黒子! 私とあいつは別に、その、何と言うか……」 「それでも、あなたにも詳しく書いてもらいます、と、ミサカはあなたの目をまっすぐ見つめて懇願します」 美琴がどもると同時に、ミサカ一〇〇三九号はじとっとした声で白井黒子に希望する。 「う……お、お姉様と瓜二つのあなたに促されるとわたくしとしても何と仰いますか……逆らえないと言いますか……」 多少顔を赤くして、妙に鼓動が加速する白井黒子はしどろもどろしている。 ちなみに、白井黒子に妹達のことを教えたのは御坂妹だ。 上条の部屋に移る前に、この病院にいるあとの三人の内、今日の調整が済んでいた一〇〇三九号をを呼んだ。満足に動くことができない美琴のフォローのために。 それゆえ、どうしようもなかったのである。 自分と一〇〇三九号という二人の御坂美琴そっくりの存在と出くわした白井黒子は、すでにこの件に大きく関わってしまっている。 昨日までであれば、御坂美琴第一だったため、周りにまで気が回らなかったのだが今日からは違う。 御坂妹と会っていることは当然記憶に残っている。 いずれ、追求されるなら、と考え、他言しない、という条件の下、妹達のことを説明した。 ただし、実験のことや最終信号、そして最近増えた番外個体のことは伏せて、自分たちが美琴のクローンであること、噂にあったレベル5の軍用量産モデルであること、というところまで、で。 さて、なぜ一〇〇三九号が白井黒子にも再度、記録作成を依頼したのか。 その理由は、 「これを見てください、と、ミサカはあなたにパソコンモニターを突きつけます」 「はい?」 なんとなく、やさぐれている雰囲気を醸し出す一〇〇三九号に従って、白井はモニターに映し出された文章を読んでみると、 「…………………………お姉様、これは惚気話でございますか……?」 「ぶっ!」 「そういうことです。お姉さまとあなたたが一緒にいるときに、あの人と接点があったならば、あなたの記録の方が客観的かつ適切に処理できるからです、とミサカは砂を吐きながら嘆息します」 「何でそうなるのよ! わ、私はちゃんと事実関係に基づいて!」 「その割には、私から見てもこれは主観が混ざり過ぎているように思えますわよ。何ですの? この『何でも解決してくれるヒーローのように』とか『何かこっちを意識しているみたいで』とか『本当に嫌われていたらどうしようと思いつつ』とか。もしかして、こちらの方も、逐一訂正しておられるのではないでしょうか?」 「その通りです、と、ミサカは呆れて首肯します」 確か、この病院の防音施設は完璧なはずなのだが、いきなり、うぎゃー!!、という叫び声とかビリビリとかバリバリとか、遠くから聞こえたような気もするが、聞かなかったことにしよう、と、隣の部屋にいる上条は心の底から思う。 これに関わるのもなんとなく身を滅ぼしそうな予感がしたから。 「はぁーい。みなさぁーん。大変、嬉しいことに上条ちゃんが無事発見されましたー」 とある高校の教室。その教壇で見た目小学生の月詠小萌はパンパンと手を叩きながら、教室中に甘ったるい、まだ子供らしさが残る声を響かせていた。 同時に、歓声とどよめきが上がる教室。 ここは上条当麻が所属するクラスだ。 「しかぁーし! 非常に困ったことに今、上条ちゃんは記憶喪失にあります! ですから、それを治すために、皆さんに『上条ちゃんとの思い出話』を最低原稿用紙五枚で書いてもらうのでよろしくですー!」 一見、軽いノリの小萌であったが、ここは学園都市だ。 学園都市に住む全員が、記憶喪失も直せるほど医療技術は発達しているだろう、と考えても不思議はない。 ええー、と不満の声も多少聞こえるが、それでも、この人物が言えば、クラス中はそれで纏まる。 「まあ、あんな奴でもいちおークラスメイトだし――」 言いながら、その人物は立ち上がり、教壇に向かいながら、一度顔を洗うように両手で表情を隠し、その両手を一気に上げて頭の後ろへ回して、耳に引っ掛けていた髪を完璧なオールバックの形に整え直した後、さらにいくつかのヘアピンでそれを固定していく。 彼女は本気だ。 クラスの誰かが叫んだ。 「――吹寄おでこDXッッッ!?」 「さあ!! この私が、後からあの馬鹿にまとめて渡してくるから気合入れて書くのよ!!」 振り返った巨乳女子高生・吹寄整理の仕切り屋魂にはゴウゴウと音を立てて燃えていそうな炎が宿っていた。 そして、教室が妙な迫力に包まれる中、学校指定のセーラー服よりも巫女装束の方が似合いそうな、上条当麻とは浅からぬ因縁を持つ者の一人、姫神秋沙は淡々とペンを走らせている。 しばらくして「にゃー! カミやんと言えばこれだにゃー!」とか「おうおう、ワテもそう思いまっせ」とか言う叫び声が、「貴様ら! これは上条当麻の記憶じゃなくて、人間性だろうが! 間違っていないけど間違ってるわ!」という叫びと供に妙な衝突音を響かせていた。 月詠小萌は教壇で自身もペンを走らせながら、なんとなく思った。 (上条ちゃんは幸せですねー、こんなにも上条ちゃんのことを心配してくれている人たちに囲まれているんですよー) その瞳には嬉しさのあまり、光るものがあったのだが、それに気づく者はいない。 神裂火織は本気で悩んでいた。 ここは上条当麻と御坂美琴が入院している病院の待合室。 むろん、神裂も上条当麻の記憶の1ピースをになっているので協力しなければならない。 持っているのが、白紙の巻物に毛筆というところが、なんとも説明し辛いところではあるのだが、これが幸いして、彼女に近づくものは誰もいない。 正確に言えば、近づきたくない、が本音だろう。 その隣にはテレビ電話付けっ放しの状態で、電源が入っているノートPCがある。 そこに映し出されている光景は、 『おいオルソラ! てめえ、全然違う方に話が言ってるじゃないか! あのガキとの回顧話が何をどうやったらお鍋の焦がさずに済むか、に変わるんだよ!』 『そうは申されましても、私としてはそれがとっても大切なのですよ、シェリーさん』 『シスター・アンジェレネ。それは今日の朝食の話です。あの男のこととはまったく関係がありません』 『そ、そうは言いますけどシスター・ルチア! あなたの文章もそれは主への感謝の意でしかないと思います!』 『あ、あのオリアナさん……? 本当にそのようなことを彼との間であったのでしょうか……?』 『なあに顔を真っ赤にして。さすがは第三王女・ヴィリアン様、真性のお嬢様なのかしら。うぶな子を見るとお姉さん、どきどきしちゃう』 『お母様、それは何か違うような……? 別に私たちはあの男に救われたわけではありませんわ。私の知性が――』 『ここではエリザード女王と呼ぶのじゃエメリア。というか、おぬしのは美味しいトコ取りだっただけではないか。おい、キャーリサ。おぬしのは文章ですらないぞ』 『はぁ……何で軍師の私がこんなことを……こういうものはそもそも書記の仕事であって……』 『ステイル、それは上条当麻への悪口だと思うんですがね?』 『君も人のことは言えないと思うよシスター・アニェーゼ。それはどうやって上条当麻を打倒しようかという作戦メモに過ぎない』 『第一の質問ですが、それは恋文じゃないですか?、と五和さんに問い質します』 『ち、違いますよ! ちゃんと上条さんとの回顧録です! サーシャさん!』 『そうですか? わたくしの目にもそれはラブレターにしか見えないのですが?』 『れ、レッサーさんまでー!!』 広い聖堂に集まり、ぎゃあぎゃあ言いながら何をやっているんだろう、と神裂は頭を抱えている。 自らの筆は自信はあるのだが、画面の向こうがこれでは本当に大丈夫なのだろうか。 『プリエステス!』 突然、自分を呼ぶ声が聞こえてきた。 画面を見れば、一匹の人の姿をしたクワガタ、もとい、建宮斎字の顔が画面いっぱいに映し出されていた。 『……なにやら、かなり失礼なモノローグをされてませんでしたか? プリエステス』 「気のせいです。して、何の用で?」 『いえ、是非、ここにいる連中に、参考のためにプリエステスとあの少年の回顧録を拝見させていただきたく、お声をかけさせていただいた次第ですのよ。でないとまともに完成しそうにありませんのことよ』 建宮の言葉には説得力があった。 確かに目の前のモニターを見れば、不安に駆られても仕方がないし、彼の気持ちも理解できる。 そして神裂自身も、一応は誰かに自分の文章を確認してもらいたかった。 入ってはいないと思うが、主観が入っていては意味がないからだ。 「では――」 言ってモニターに神裂が書いた回顧録を映し出す。 それを、じっくり拝見する向こう。 しばしの沈黙。 ややあって、周りは皆、納得したように頷いて、静かにペンを走らせるようになった。 自分の文章が、いい影響を与えたことに、神裂は、少し頬を紅潮させながらも満足げな笑みを浮かべて巻物を仕舞う。 しかし、 『プリエステス』 「ん?」 まだクワガタが映っている。神裂は静かに問うた。 「何か?」 至極真面目な表情で建宮が答える。 『堕天使エロメイドの件がございませぬが、それはマズイのではございませんか? 少年との回顧はありのままを伝えねばならないとお聞きしたのですが――』 神裂火織は迷わなかった。 一度深呼吸し、伏せた瞳の努めて冷静な表情で優雅な笑みを浮かべつつ、 建宮の顔面を記憶ごと粉砕する力を込めて、PCのモニターに強烈な鉄拳をめり込ませた。 一週間が経過した。 ようやく御坂妹の元に、上条当麻と関わりがあった人たち全てからの記録が届いたのだ。 神裂の分は手渡しで、クラスの分は吹寄整理が持ってきて、海外の分はEメールで送られてきて、美琴と黒子の分は御坂妹が直接取りにいった。一方通行と打ち止めの分はミサカネットワークが知っているので、御坂妹が代筆した。 記録としては、上条当麻が高校に入ってからのものであり、それ以前は含まれていない。 これは、上条当麻が両親にだけは記憶喪失のことを隠しておきたかったからだ。 ただでさえ、親元を離れて寮生活している上条当麻だ。それだけで両親に多大な心配をかけている。 だからこれ以上迷惑をかけたくない、という思いがはたらいたのだろう。 「ねえねえ、これでとうまの記憶が戻るんだよね?」 インデックスは嬉々として話しかけている。 「その通りです、とミサカも自然と笑顔になれます」 むろん、笑顔になっていない。 「じゃあ、とうま、明日は私のことを覚えてるとうまなんだよね?」 「そうなるかな?」 「……嬉しいかも」 「いきなりしおらしくなるなよ」 「だって仕方がないんだよ……私は…………」 昼間までのテンションはどこへやら。 インデックスの胸には再びこみ上げるものがあった。 涙も自然とこぼれてくる。 「なあ、俺、本当に何も悪いことしてないの? なんだか、君の顔見てると、すっごい悪いことしてる気がしてならないんだけど?」 上条は苦笑を浮かべるしかできない。 確かに見た目だけなら『聖少女』っぽい純粋な少女が泣いているのだ。これは効く。 「ん~~~そう言えば、私に酷いことしたかも」 「ええっ!?」 右手人差し指を頬につけ、小首を傾げるインデックス。 「あは、何をしたかは思い出して話すんだよ!」 なんて小悪魔っぽい笑顔のインデックスがきびすを返して走って病室から出て行く。 釈然としない上条。 「お、おいインデックス!」 呼び止められたインデックスは背を向けたまま、ぴたりと足を止めた。 しばし沈黙。 「……約束だよ」 「え?」 「明日になったら絶対に私のことを思い出していて……約束だから……」 上条の返答を待たずにインデックスは飛び出していく。 今日の行き先は、小萌のアパートだ。 御坂妹が今日は個室に戻れないから、ということだから。 二人残される上条当麻と御坂妹。 上条当麻は何故か、インデックスの約束という言葉が気になった。 なぜかは分からない。 漠然と、忘れてはいけない何かを突きつけられたような気がした。 御坂妹は自身の個室へと戻ってきた。 大量の書類が入った鞄と、キャリーケースに入った学習装置を取りにきた。 ようやく今晩、上条当麻の記憶が戻る。 上条当麻には伝えてある。 記憶は戻るが、今回の、目を覚ましてから今日まで過ごした記憶も消えることはない、と。 そういう記憶回復であることを伝えていた。 周りから見れば、とてもそうは見えないのだが、御坂妹は意気揚々と部屋を出る。 しかし―― 「ようやく君と話せる機会を得たよ。ここ最近、ずっとあのシスター少女が君の傍にいたからね。正直、あの子に、これ以上絶望感を与えるのは忍びなかった」 御坂妹が病院の自室を出たところで、背後から、普段は聞いたことも無いような真剣で重低音の声をかけられた。 「残念だが、それを大目に見ることはできない」 即座に、彼女は振り返る。 そこに居たのは、カエル顔の医者だった。 しかし、醸し出す雰囲気がいつもの『優しいお医者さん』ではなかった。 壁側の左半身を影で覆われ、鋭く睨みつける右目の眼光もさることながら、左目は完全に影の中の光と化している。 そこに居たのは、文字通り、冥土帰し(ヘブンキャンセラー)という二つ名に恥じない佇まいの迫力漲る漢(おとこ)だった。 「御坂くんのときは確証があったから、医者として医療以外の技術に頼れなかったから、見逃してあげたけど、今回はそうはいかない」 硬直していた御坂妹の体に自由が戻る。 「何故です? と、ミサカは尋ねます」 声はまだ震えていた。 本来感情に乏しいはずの彼女の声が、畏怖で震えていた。 この医者には全てが筒抜けだったことを突きつけられたからではなく、もっと別の何かが彼女に畏怖を与えているのだ。 「僕が、君がやろうとしている方法を思いつかなかった、と本気で思っているのかい?」 「え……?」 「――『学習装置』を利用した記憶回復、それを本気で、この僕が見落とした、と思っているのかい? と、聞いたんだ」 言いながら、ヘブンキャンセラーは重い足取りをものともせず、ゆっくり近づいていく。 カツン、カツン、という靴の音が、さらに重さに拍車をかけていくというのに、さらに彼の影を濃くしていくというのに。 「実際に、あなたはこの方法を提示していません、と、ミサカは反論します。もし、この方法を思いついたのであれば、あなたほどの医者であれば、間違いなく採用します、と、ミサカは確信をもって主張します」 そう。 確かにヘブンキャンセラーはそういう医者だ。 患者を助けるためであれば、医療技術に有効であると判断できれば手段は問わない。 それは、患者の負担が軽ければ軽いほどいい、というだけで既存の手術法ではなく、独自の手術法を編み出し、心臓手術を部分麻酔で成功させたことでも分かるし、脳に致命的な障害を受けた者を、クローン一万体近くのネットワークを電極チョーカーで繋ぎ、多少、体に障害が残ったとしても、それでも平常どおりの生活に戻せるほど、回復させたことでも証明されている。 「その通りだ。だからこそ、そんな僕が見落としたと本気で思っているのだとしたら、君自身が冷静ではないことを暴露しているようなものだ」 !!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!?! 今度こそ、御坂妹は完全に固まった。 「君は、いや、正確には、君を含めたミサカネットワークは、周りと違って冷静なつもりでいたのかもしれない。それはこの一ヶ月半を、あの少年と、あの少女の、危険な状態を目の当たりにして、なお、的確な処置が取れていたから、そう自負できたのかもしれない。しかしだね、こと『学習装置による記憶回復』に関しては、残念ながら致命的な見落としをしている。だから止めたまえ。人の命を助ける、というのは容易いものではない。熟慮に熟慮を重ねて、それでいて慎重に行動できなければ、逆に命を奪ってしまうものなのだよ」 ヘブンキャンセラーは『慎重』と『大胆』は相反するものだとは考えない。 そもそも、言葉の意味的にも対義語ではない。『慎重』の対義語は『軽率』で『大胆』の対義語は『小胆』だ。 だからこそ手段を選ばないでいられる。 それはヘブンキャンセラーである彼の真の能力とも言えるだろう。 「どういう意味ですか? と、ミサカは再度尋ねます」 学習装置が内蔵されたキャリーケースを脇に抱えて、まるでヘブンキャンセラーと対峙するような雰囲気で問う御坂妹。 対するヘブンキャンセラーは、そんな彼女の目をまっすぐ、ある意味、睨みつけて、 「君は、その『学習装置』がどんなものかを知っているはずだ」 静かに呟く。 「……『知識』を直接脳に入力する装置、と、ミサカは以前、ミサカが施されたことを思い出しつつ即答します」 「――やはり、冷静さを欠いている。僕が聞いたのは『取扱い』だ。しかし君の答えは『機能』だったよ」 御坂妹はヘブンキャンセラーの言葉にハッとした。 「要するに、君は学習装置の『特性』だけに目が行ってしまっていて、学習装置の全体像を完全に失念している。誤解の無いように言っておくが、君が想像しているとおり、学習装置による記憶回復は理論上可能だ。複数の関係者による『記録の照合書類』を読み取って、対象者の脳に書き込めば、間違いなく回復する。たとえ、それは擬似記憶でしかないとしても、本人にはその自覚は無い。『実際に体験した』という記憶にすり替わる。『空気が美味しい』とか『人がスシ詰め』とか言った『抽象的な表現』は分からないかもしれないが、『味覚』や『嗅覚』は体験が無くとも理解できるようになっているのと同じように」 御坂妹には狙いはまさにこの説明だった。 このことに関しては、九九八二号という、レベル6シフト計画の実験で命を落とした御坂妹の姉で証明されている。 美琴と供に行動した九九八二号は『初体験』であるにも関わらず紅茶やアイスクリームの味をちゃんと理解できていた。 また御坂妹自身も操車場での戦いを終えた翌日に、やったこともないブランコの『立ち漕ぎ』を遊びに来ていた子供たちに披露することができたのだ。 「しかしだね、その学習装置は『電気』で動く」 「あ……!」 「しかも、書き込む際は耳から直接電極を刺して入力する。つまり、書き込んでいる間中、脳には直接、電磁波が浴びせられることになる。それも強い電磁波が、だ」 御坂妹は理解した。 自分の計画の致命的な欠陥を理解した。 「学園都市の脳開発や君たちへの知識入力ですら、三十分内で留めているんだよ。今回の少年の記憶入力にかかる時間を算出しているのかい?」 「……二時間、と、ミサカは震えながら返答します」 「君は、そんな長時間を彼の脳が耐えられると思っているのか?」 彼女は答えられなかった。 沈黙の肯定が答えだった。 「そういうことだ。まあ、だからと言って気を落とす必要は無い。今回、集めた『記憶』を彼に話してやればいい。母親が子供に読んで聞かせる絵本のように、寝る前にでも毎日ね。それだけでも充分、彼の助けになるはずだ」 ヘブンキャンセラーの表情はいつもの『カエル顔のお医者さん』に戻っていた。 患者に不安を与えない。『町のお医者さん』に。 しかし、御坂妹は何も言えなかった。 自信を持って、少年を救えると信じていたことが粉砕されて、絶望してしまっていた。 クローンという人工生命体に心が宿ることは悪いことではない。 むしろ、それは上条当麻が、御坂美琴が、一方通行が、芳川桔梗が、あの実験に関わった『人の心を持っている』者、みんなが望んだことだった。 もっとも、だからと言って、このような『絶望』では、あまりに哀れ過ぎる。辛過ぎる。酷過ぎる。 もし、この場に『上条当麻』がいたならば。 そんな『幻想』をぶち壊してくれたことだろう。 しかし今、『彼』はいない。 御坂妹を命がけで救ってくれた『彼』は、いないのだ。 御坂妹の瞳から一滴、液体がこぼれる。 床に小さなしずくが月の明かりを反射して弾けた。 こんな悲しい涙はいらなかった。 こんな苦しい思いは抱いてほしくなかった。 もし、この場に『上条当麻』がいたならば、そう言ってくれたに違いない。 だが、現実は無情だ。 どんなに望んでも『上条当麻』はもういない。 どんなに望んでも『上条当麻』はもう二度と帰ってこない。 御坂妹は脇に抱えた学習装置が落ちたことに気づいていない。 自身も崩れて床に座り込んだことに気づかない。 震える体で、いつの間にか両手で顔を覆って。 初めて知った喪失感。 こんなに重く辛いものだと知った『心』。 しかし、彼女が何をしたのだと言うのだろうか。 大切な存在を失わなければならないほどの大罪を犯しただろうか。 カエル顔の医者は思う。 世界は確かに件の少年によって救われたのかもしれない。 それなのに、いまだ件の少年の周りは救われてはいない。 『不幸』は少年の元に集まるのかもしれないが、少年以外の周りまで巻き込んではなかったはずだ。 少年が『不幸』を背負う代わりに、少年の周りは幸福が溢れていたはずなのだ。 いや違う。 幸福は待っていても、やってこない。 救われたければ、救われるのを待っていたところで報われない。 それが『この世界』だ。 世界は都合よくできていないのだ。 しかし、『ミサカ』が嘆き悲しむことを誰よりも気に喰わない男が、世界で、たった一人だけいる。 その男は、『ミサカ』を助けるためであれば何でもする。それも、できないことでも無理矢理実行したほど、『上条当麻』に勝るとも劣らない、しかし『上条当麻』とは正反対の、学園都市一優等生の大馬鹿者だ。 「つーことはだ、電気を使わずに、体内の生体電気から脳内を読み取ることができりゃァ、問題ねエってことだよなァ?」 カエル顔の医者がいた向こう側、御坂妹の背後から声がした。 それは、地獄の底で捕らえられたヒロインを救うために颯爽と登場した主人公とは、あまりにもかけ離れた声だった。 「ったく、クローンどものネットワーク経由であのガキの元にたったひとつだけの情報が流れてきて、しかもソイツがあのガキども全体の総意だっつーから、やって来てやったンだが、なンだァ?」 恐る恐る御坂妹は振り返る。 愕然とした顔で肩越しに振り返る。 その眼前には細身の少年。 狂ったように白く、歪んだように白く、澱んだように白く。 どう考えても、場違いな存在。 どう考えても、この場に居る方があり得ない存在。 どう考えても、逆にヒロインを地獄の底で捕らえていそうな存在。 「俺にヒーローを助けろってか? 散々、不相応なことをやってきたが、これ以上はあり得ねえンじゃねエのか、オイ?」 自他共に認める、絶対にラスボスの方が相応しいはずの、最後の希望(アクセラレータ)がそこにいた。