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彼岸花の咲く夜に 作品情報 公式HP http //07th-expansion.net/hgn/introduction.htm 2枚 森谷毬枝 彼岸花
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秋の放課後、私は一人部室から窓の外を眺めていた。 角度のせいで、グラウンドはまったく見えずガラスの囲いに区切られた空 だけがゆっくりと流れている。 『みんな薄情よね、せっかく団長が戸締りするって言ったんだから、待っ ててくれてもいいのに』 などとついさっきの行動と矛盾した思いを抱きながら私は、パイプ椅子より はましといった安っぽい回転椅子にアグラをかいていた。 ぼうっと茜色の空を見ているとふとさっきの事が思い出される。 何故言ったかは解らない唯そういう気分だったとしか言いようの無い位に、 些細なことを私は言ったつもりだった。 「今日は、私が戸締りして帰るわ」 皆の動きが一瞬だけ止まり、こっちを向く 一人は無表情に、もう一人は何時もの微笑に少々の困惑を交え、 もう一人も狐につままれたような顔をして そして、あと一人は興味なさそうに面倒くさげな顔をしていた。 「どうしたんですか涼宮さん、私今日は別に用事なんてないですよ」 と言う、みくるちゃんの戸惑いに満ちた声が私には無性に腹立たしい。 別に変なことを言ったわけじゃない、ただちょっとした親切心で言った 事に何故疑念を持たれなければならないのか、そりゃあ私はいつも 傍若無人な振る舞いをしているかもしれないわよ、でも親切で言った事 を疑われる程の悪人じゃあない。 「何、私がそんな事言ったら変なのかしら、そりゃあ――」 「おいハルヒ、朝比奈さんはそんな意味で言ったんじゃない、そう ケンカ腰に言うこともないだろ」 若干のあきれと怒気とを含んだ声が遮る。 またか、なんで私がみくるちゃんに突っ掛かるときだけこんなに 反応が速いのよ、いっつもぼけっとしてるくせに。 「解ってるわよ、とにかく今日は私が戸締りするからさっさと 帰りなさい。」 そのまま私は憤然として椅子に座り外を向く。 キョンの半ばあきれたかの様なため息が聞こえ悲しかった そしてそれから私はずっと空を眺めてる。 青と白のコントラストが気が付いたときにはもうすでに黄昏時に 変わり、小春日和の温かさも消え失せ少し肌寒い。 何故―― 私はキョンを愛してる。 この世界中で誰よりも。 なのに何故キョンは私に優しくさえしてくれないの、ううん違う キョンは優しい、でもそれは社交儀礼的な優しさ。 私はそれ以上が欲しい、誰にでも与えられる優しさじゃない、 慈しんで、愛して、抱きしめて欲しい。 でも違う 『私じゃない』 私は椅子を回し誰も居なくなった部室を眺めた。 そうすると地味な色彩の部室の中で一際異彩を放つ場違いな服の 数々が嫌でも目に入る。 あの女、あの女だけがキョンのトクベツな優しさを受けている。 今日の事を思い出すと、そう思えてしまう でも、そんなことある筈がないキョンがあんな売女に惹かれるなんて、 ただちょっと欲望持て余してあのいやらしい身体が気になるだけ、 キョンも男の子だしね、でも結構傷付いちゃうよ私スタイルには 自信あるのに。 あの夢、ううん夢じゃない、だって今でもはっきりと覚えてるもの キョンに握られた手の暖かさ。 抱き寄せられた肩の感触。 そして―― 奪われた私の唇 目が覚めたときは戸惑ったけど、私には解るあれは夢なんかじゃない。 何故と言われると返せないでも解るあれは、現実。 私は一人納得し、カバンをとって部室を出た。 茜色の光に照らされながら、私は一人坂道を下る。 もし…もし横にキョンが居てくれて手をつないで一緒に帰れたら等と 妄想する、ただそれだけで胸が熱くなる。 『ああだめだ、一人だからって』 私は妄想を振り払い景色を見ながら歩みを進める。 ふと、土手に彼岸花が群れて咲いているのが目に留まった。 嗚呼そういえばもうそんな季節なのかとちょっとした感慨に浸りながら 花々に近づく群れて咲いている彼岸花の中には、まだつぼみであったり 頃合を過ぎ紫がかって白んでいる物もあった。 私は無意識の内にその中で一番綺麗に咲き誇っている者を捜し、それに 目をやった。 細く華奢な花弁が魅せる儚さ、紅と豊かな弧が描き出す妖艶さに、私は しばし見惚れた。 妖艶な肢体、庇護欲をそそる華奢さどちらも私が持ち得ようのない魅力。 しかしそれを両方持っている女の姿が脳裏に浮かぶ、朝比奈みくる、 あの女の姿が―― あの売女どうせあのいやらしい身体でキョンを誑かそうとしてるんでしょうけど、 キョンはあんたみたいな卑しい女なんて相手にしないのよ、今かまってもらえて るのはキョンがどうしようもなく優しいから、無視したらあんたがあんまりに哀れ で可哀相だからよ。 そして彼岸花とあの女のイメージが重なる、すると何故だろうつい先程まで美しく 見えていたものが急に吐き気を催す程、醜悪で邪悪な物に見えてくる。 私はその一番に咲き誇っている彼岸花の茎に手をかける。 たいした力をいれずとも茎はポキンと心地よい音を響かせ折れた。 そして茎からは毒が一滴零れ落ちる。 まるであの女そのもの、私には解るどんなに上っ面だけ取り繕っても あの女は異質。 汚らわしい。何よりそんな女がキョンに媚を売っているのが気に入らない、 おまえなんか場末の浮浪者がお似合いだ。 手に持っていた花をぱっと離す、それは空気の抵抗を受けゆっくりと アスファルトの上に落ちる。 私はそれを下卑た眼差しで見つめながら、革靴の上からでも潰れる感触 が解る位にゆっくりと嬲る様に踏み潰す。 水気のある気持ち悪い感触が足下にひろがる、侮蔑がさらに大きくなり 私はそれを足で磨り潰す。 何度も何度も何度もあの女の顔を其処にうつしこんで。 そうして気がついた時には、それはもはや原形を留めておらず、紅と緑とが混じった 良く解らないモノとなっていた。 その無様で醜い姿をあの女に結びつける、すると自然と笑みがこぼれて来る。 あんまりしつこいならあの女もこうしないとね、でないとキョンが可哀想だもん。 清々しい気分で私は薄暗くなった坂道を下り家に帰った。 次の日、私は何故か早くに目が覚めていた。 時計は未だ五時にもなっていないが不思議と頭がぼやけ もう一度寝ることも出来ずリビングのソファに腰掛けていた。 風邪を引いたのだろか―― そう思い私は戸棚に入っている古い体温計を手に取り脇に挟む。 体調を崩す心当たりがなく半ば暇つぶし程度に計ったのだが しばしの後、その古びた体温計のちらちらとした水銀が指し示している 数字は38.5℃、疑いようもなく風邪を引いたのだろう。 しかし、私はその事実をさして辛い物とも思わずむしろ小休止が取れる事 を嬉しく思っていた。 昨日ああも煮え滾っていた嫉妬の感情はひどく遠いものに思え、ただ私は 呆けた頭で朝の静けさに身を委ねた。 薄いカーテンを透した淡い光が喧騒のない朝をより美しいものに演出する。 しばらくすると母が起き、私は風邪を引いたので今日は学校を休むという旨 のことを言うと、母は市販の風邪薬と水枕を寄越し学校に連絡するといって 私を部屋に戻す。 さして辛そうにもない私を医者に診せるまでもないと判断したのだろう、 年甲斐もなくはさびしさを感じつつ薬を飲みベッドに潜った。 次に目が覚めたときも少々の驚きを持ってだった。 理由は簡単、時計の指示すもうすでに四時を過ぎていたから 良く眠ったなあ、という妙な感慨とともにその時間が私に一抹の憂鬱を与える。 キョンはどうしているんだろう。 部室であの女の淹れたお茶をのでいるのかなそれとも部活はせずにもう帰った のかな。 私は少々の期待を持って、充電器に入った携帯電話をとり何か来ていないかを 確認する。 けど結果は着信0件と「新たなメッセージはありません」という虚しいもであった。 寝る前は不思議に泰然としていた感情も剥がれ落ち、私はただ落胆の感情と共に ベッドの上で膝を抱えて沈み込む。 カーテンを閉めているせいか、陽が上がっているはずなのに部屋は気持ちの悪い 暗さに包まれ、鬱陶しい外の喧騒と半端な静寂が脳をなでる。 気持ちが悪い、吐き気もする。 今朝から何も飲んでいないからかひどく口の中が渇く、そういえばおなかも空いた。 母は何か作ってくれているかな、いや忙しいあの人のことだ何もしてくれてはいな いだろう。 けどせめてこの渇きだけは何とかしよう、そう思い私は重い体を上げリビングに向かった 案の定、流し台は綺麗なもので昨日からまだ一度も使っていないのが見て取れる。 ピンポーンー 静寂の中に電子音が鳴り響く 誰だろう宅配便かなにかかな、 普通は出るのが筋なのだろうが私はどうにもそんな気力が出ず、それを無視し冷蔵庫 のドアに手を伸ばした時 「おーい、ハルヒいないのか」 伸ばしていた手が急に止まる。 あの声間違いないキョンだ。でも如何して、 もしかしてお見舞いに来てくれたの? もう一度電子音が響く はやく、はやく出ないとでも寝てたから髪の毛ぼさぼさだし、服だって でもそんなことしてたら帰っちゃうし 「いないのかー」 あーもう、私はもう気が付いた時には玄関のドアを開けていた。 「よう、見舞いに来たぞ」 と言い、キョンは優しい表情で手に持ったビニール袋をこちらに差し出す 「あ…ありがとう」 恥ずかしくて私は蚊のなく様な声しかでず、急いでビニール袋を引き取る。 重い、中を見るとスポーツドリンクと果汁100%のリンゴジュースが入っていた。 「せ、せっかく来たんだから上がっていったら、私調子そんなに悪くないし」 今度はさっきより大きな声で言えたと思う 「そうだな、ちょっと上がらせてもらうよ」 多分私はこの一週間いや一ヶ月で一番いい顔をしていただろう。 私はすぐにキョンをリビングに通した。 さすがにいきなり部屋にとはいかないし、 キョンに何か出さないと、でも何も無いし今もらったばっかりの出すのも 失礼だし、インスタントコーヒー位しかないやキョン、インスタント飲む のかな。 私は一応インスタントをそれなりのティーセットで飾り、クリームとスティックシュガー を添えてキョンの前に出した。 「ありがとう、悪いな気使わせて」 「いいわよ別に」 と私は返事をしてキョンの近くに座る。 頭がぼおっつとして顔があついのは風邪のせいじゃなくて…… 無意識にキョンの行動を目で追っていた。自分でもどうしようもない位にキョン のことが気になる。 キョン、私はキョン以外の男は絶対見ない、私は、私はキョンだけを想うよ―― 気がつくとキョンは、ばつが悪そうにこちらをを見て口を開いた。 「どうしたんだおまえ、さっきからこっちばっかり見て」 「へっ」 恥ずかしい思いっきりまぬけな声を上げて私は視線をそらし口に力を入れる。 「な、なんでもないわよ、ただ風邪でぼおっとしただけ」 そう言い放って立ち上がると、視界が揺れ足元がふらついて 頭が動いたとき私はキョンの腕の中に抱きかかえられていた。 「おい大丈夫か、病人なんだ部屋まで連れってやるからちょっとゆっくりしとけ」 と、私を抱えていた腕を背に回す。 だめだ、心臓がうるさいくらいに脈うっている。 ちょっと静かになりなさいよキョンに聞こえちゃう 顔がたまらなくあつくなってるのが自分でも解る。 その後はもう呆けたを通り越してまともに動かなくなった頭でキョンの言うことを 生返事を返しベッドに寝かしつけられた。 「俺はもう帰るけど、ゆっくりしとけよなんだかんだでハルヒがいないと張り合い がないからな」 といい彼は部屋を出た。 もっと一緒にいたい、という気持ちもあったけれど病人の部屋に引き止められないな と思い私は生返事をした。 そしてなによりキョンの言った一言が私の心を熱くする。 「ハルヒがいないと……」 ねえキョンそれって私が私がキョンの中でトクベツだってことだよね。そうなんだよね。 私がいままで向けていた彼への恋慕その全てが報われる。 私はどうにも落ち着かなくなって起き上がり、カーテンを開けた。 勿論キョンを見送るため。 しかし其処に見えたものは、紅潮していた顔も舞い上がっていた気持ちもその全てを 叩き落すに十分なものであった。 キョンが見える、でもその横で手を繋いで一緒に歩いている女は誰。 小柄な背丈、長い栗色の髪、後ろ姿だが見間違う筈もない、あの女 朝比奈みくるだ。 なんで、なんであいつがキョンの隣に―― キョンもなんでそんな奴と売女と楽しそうに話すの。 私は動くことも、其処から目を背けることできず、ただ二人が視界から 消えるのを待つしかなかった。 あの女、あの女、あの女あんな薄汚い手でキョンに触れて許されるとでも お前なんか浮浪者でも勿体無い位だ。 キョンもキョンだよなんであんな売女と… ううん、違うよねキョン、キョンは優しいから売女が言い寄ってくるのが憐れで 付き合ってあげてるだけ、本当迷惑な女だよね、でも大丈夫 私が何とかするから。 次の日私はいつもどうり学校へ行き、いつもどうり授業を受けた。 ただ何時と違うのは 「キョン、私まだちょっと本調子じゃないから今日の部活は休みよ」 キョンはちょっと驚いたような顔をして 「俺は別にかまわないが、他の奴らには――」 「その点はぬかりないから、もう皆に連絡はつけてあるわよ」 キョンはいつもと同じやさしい表情で「へい、へい」といって席を 立つ 「あっ、それと明日はちゃんとあるんだから来なさいよ」 キョンはわかったよといった感じに手をひらひらさせ教室を出た。 必要だと解っていてもキョンに嘘をつくのは辛い。 でもしかたがない、それに私はキョンの幽鬱を消すのだから。 私はカバンを取り部室に向かう、中にナイフが入ったカバンを持って。 いつも部室には一番に有希がいて、私は結構その後だから一番に来るのは 少し新鮮。 団長席に座りカバンからナイフを取り出す。 昔、縁日かなにかで買ったそれは古びて、くすんだメッキのうえに所々赤い 錆びが浮いている。 私はそれを机の引き出しに突っ込み、何時かのように体を窓に向けた。 いつもと同じに見えて、どこか違うそんな詩的で美しい青と白のコントラストが 決して留まることなく悠然と流れる。 そんな全てを包括する壮大な時の流れに、私は飲み込まれかけた。 ちっぽけな欲望 感情の喜憂 私はそのちっぽけな物に流されようとしている。 けど迷いはない、それはこのちっぽけな物が私の世界の中の全て であり、何よりも大切なものだから だから私はこの気持ちを邪魔する奴を許さない。 コンコン 控えめなノックと共に部室のドアが開く。 私はそちらに向き直り入ってきた奴を確認した。 その女は部室に私しかいないことに面食らったのか少し立ち止まって入ってきた。 「こんにちわぁ涼宮さん、今日はまだだれもきてないんですか」 「ええ、そうよ」 そう、素っ気無く返すと、部室は嫌な沈黙が漂い、暫時のあと女が口を開く 「あっあの着替えてお茶いれますね」 そういって、小走りでメイド服に向かう女を遮る 「いいわよ、それに今日はキョン来ないから」 女の動きが変に止まる。 「ねぇみくるちゃんあなた、私に何か言うことがあるんじゃないの」 女の体は行き場をなくして立ち尽くし、その手は忙しなく小さな動作をしていた。 馬鹿なんだろうなコイツは、解り易すぎる。 「そ、そんな涼宮さん私に隠し事なんてできるはずが」 「ええ、そうよねみくるちゃんその通りだわ、あなたはとても素直だもんね」 女は私の上っ面の笑みに安心してか、顔に安堵の色を広げたがそれを遮るように 言葉をつなぐ。 「だから、あなたが今嘘をついてることも解るのよ」 女の顔が一気に青ざめ下を向く 嗚呼、うざったい 「みくるちゃん、私はこんな下らない茶番を何時までもする積もりは無いの できれば、あなたが自分から言い出してくれたら嬉しいんだけど」 女は下を向いたまま動かない。 人の話を聞いているのかしら、もし聞こえていて答えないなら失礼極まりないわね この売女。 ばらくの沈黙の後、私は痺れをきらし口を開く。 「そう、なら私が言ってあげる。これ以上キョンを唆すのは止めなさい」 「そっそんな私は――」 「うるさい!!」 「どうせその厭らしい身体使ってるんでしょうけど、キョンはあなたの事なんて 何とも思ってないのよ」 「涼宮さん、わたし達は……」 わたしたち?何で其処が複数形になってるのよ、それに言うならはっきり言いなさいよ この売女 「私達は何よはっきり言いなさいよ」 「私達は真剣に付き合っているんです。だから、だからそのことで涼宮さんにそんな風に 言われる筋合いはありません!!」 何この女、まともに口利いたかと思ったらえらい剣幕で人に自分の妄想聞かせるなんて、 頭がおかしいのかしら、でも此れでハッキリした。 こんな狂人キョンの傍にもうこれ以上一秒たりとも居させられない。 私は引き出しを開けナイフを取り出し立ち上がった。 「す、涼宮さん――」 嗚呼、この女の顔を見るのも此れが最後か……清々する。 女はやっと自分の危機を理解したのかドアに向かって走り出す。 のろいなぁ 私は女の髪を掴みそのまま引き倒して床に叩き付ける。 それは蛙の潰れるような声を出して醜くのびる。 そしてそのままそいつの胸倉を掴んで本棚に打ち付けた 「や…止めてください、すずみやさ――」 「うるさい、あんたみたいな狂人をこれ以上キョンの傍に居させる訳にはいかないのよ」 ナイフを顔に突きつけその刃先で頬を叩く 「この薄汚い面の皮を剥いで野良犬にでもくれてやりましょうか」 嗚呼、自然と笑みがこぼれてくる、唇がつり上がっていくのが自分でも解るもの けど次の瞬間私はドアが開く音と共に長机に弾き飛ばされた。 キョン―― うそ、何でなんでここに、ううん違うなんでみくるちゃんのあの女のところに行くの。 キョンが凄い形相でこっちを睨んでる。 やめてよキョンこわいよ…… 「ハルヒお前自分が何したか解ってるのか!!」 そう言ってキョンは私の胸倉を掴んで問いただす。 何で、何で私はキョンの為にキョンの為にしたのになんでそんなに怒るのやめてよこわいよ 「おい、ハルヒ!答えろ何でこんなこと」 「だって……、みくるちゃんがみくるちゃんが嘘つくからあんたとみくるちゃんが付き合ってるって……」 私はすがる様にキョンを見つめる。これでこれで解ってくれるよね 「ハルヒ、よく聴け」 えっ―― 「それは嘘じゃない」 「うそだ……違う、冗談だよね」 「冗談なんかじゃない、俺達は真剣に付き合ってるんだ」 で、ナンデ、ナンデ―― そんなことそんなことある筈ない昨日だってあんなにあんなに優しくしてくれたのに 違うの私じゃないの―― あの女が見えるあいつがあんな売女がキョンの恋人。 あいつがキョンと一緒に歩いて、手を繋いで、キスして、愛しあうの 許さない許さない許さない許さない許さない!!! 「みくるちゃんあなたキョンに何したの!!何でキョンにこんな事言わせるのよこの売女その 薄汚い体でキョンに迫ったんでしょ、何とか何とか言いなさいよ!!!」 「ハルヒ!!」 「返せ、私の私のキョンを返せでないと殺してやる絶対絶対殺してやる!!!」 私はキョンを押しのけ、あの女のところに行こうとした。 けどそれは阻まれて、そして私の体はもう一度宙を舞った。 頬が痛い殴られた。何故、目の前が滲んでいく嘘じゃないの…… こんなのこんなのイヤダ。 キョンがあの女の背に手を回して支えて部室を出ようとする。 イヤダ行かないで行かないで―― 「いかないで、いかないでキョンいかないで――」 うわ言ののように呟きながら私は手を伸ばした。 けど其の時にはもうキョンは手の届かない所にいて、私の方を一度も見ず部屋を出て行った。 私は私しか居なくなった部室で一人うな垂れ、涙を流した。 こんなこと―― キョンは私のこと見てくれてなかったの、そんなはずないだってキョンは私にキスしてくれて だって―― 私の中で最悪な結論がはじき出される。 「あれは唯のユメ」 ちがうそんなこと有り得ない、だってちゃんと覚えてる。 あのときキョンと二人だけの世界で手を掴まれて走ったこと、言い合いなったこと キスしたことも全部ユメ? ただの私の妄想? いやだいやだそんなことそんなこと絶対ある筈がない そうだこっちがこっちがユメなんだこっちが!! そうよこんな事こんな事ある筈が無いもの、目が醒めてキョンと二人だけの世界がある それが現実なの、だから速く醒めてよ―― 「大丈夫ですか、朝比奈さん」 俺は今、錯綜する頭をどうにか使って彼女に慰めの言葉を掛けている。 はっきり行って今でも何があったのか解らない、 何故だ、今日もいつも道理の何の変哲も無い普通の一日だったじゃないか。 ただ、何時もの待ち合わせ場所に朝比奈さんが来ないから二年の教室に行ったら 部活に行ったと言われて、そりゃあなんかおかしいなと感じはしたがハルヒが俺に 何も言わずに何かをするのは珍しい事じゃない、だから俺は何も疑わず部室に行き そのドアを開けた。 けど其処に見た光景は ハルヒが狂った笑みを浮かべ朝比奈さんにナイフを突きつける。 その後のことははっきりと覚えていない 唯俺が朝比奈さんと付き合っていることを告白した瞬間、ハルヒは一瞬無表情に成った 後、鬼の様な形相で狂ったように朝比奈さんを罵倒した。 俺は正直に言ってこの時ほど人に恐怖したことは無かった。朝倉に殺されかけた時も これ程の恐怖を抱かなかった。 それはいつも、わがままでいじっぱりで、不機嫌になったりもするけどいつも 太陽みたいに笑ってるやつが、 ナイフを持ち、鬼の形相で怒り狂いそれを友達の少女に向けている。 それが信じられなかったからだろう 最低なことをしたと思うだがもし俺があの時ああしなければ、まちがいなくハルヒの凶刃 は朝比奈さんを貫いていた。 そして俺は朝比奈さんを連れて逃げ出した。 ハルヒが何か縋る様な声で言っていたのが聞こえたが俺は逃げた、ただ怖くて。 混迷と絶望に押しつぶされ俺は廊下の隅に座り込む。 彼女は今手洗いに入っていった、おそらく一人になりたいのだろう。 頭を抱えても頬を抓っても変わらない世界に飲み込まれる。 しばらくして朝比奈さんの声が聞こえ俺は立ち上がるが、次の瞬間目の前が暗転し 俺は意識を失った。 色彩に乏しい灰色の世界、閉鎖空間。 そしてこの場所は俺とハルヒが神人に追われて、そして俺がハルヒにキスを したところだ。卑しくも頭にこびり付いている。 辺りを見回すが、誰も居ない、ハルヒすらも―― 一切の音が消え失せその向こうにたたずむCGの様に生気を感じさせない街々。 俺はふと自分の身を預けているグラウンドの砂を手に取る、表面の渇いた物だけが 僅かに手に残り掌を圧す。 小さすぎて在るか無いか其れすらも曖昧な感触、手をはたき砂を落とす。 俺は立ち上がり、胸ポケットに入っている生徒手帳を取り出し、挟んであった小さな 写真を手に取る。 そこに写っているいるのは、いつものSOS団の部室のただの何の変哲もない日常の一瞬。 でも今はその瞬間がもう手に入らない物の様に思えてしまう。 そしてその中でメイド服を着て笑っている女性、朝比奈みくる。 俺がこの人のことを本気で好きになったのは結構前からのことだ。 初めはその豊かな胸にばかり目が行っていたのだが、彼女の優しさや気遣いに触れているうちに この人のことばかりを考えるようになって、告白したのはつい最近だった。 俺は間違ったことをした、此処で俺は元の世界に戻りたいという理由で、ハルヒの唇を奪った。 そしてそれがハルヒを苦しめ続けてきて…… ハルヒが俺のことをどう思ってくれているかを俺は知っていた。 でも俺の中でのハルヒはかけがえの無い友達で、俺は何もせずあいつを苦しめてきた。 自業自得か―― 俺は校舎に向かう、薄暗く不気味なところをゆっくり進む、そしてSOS団部室のドアを開いた。 目が醒めたとき私はひどく落胆した。 それはわたしが一人でいて、なおかつ居た場所が同じだったから。 けどすぐに私は此処が違う場所であることが解った。 窓の外に広がる灰色の世界、私は吸い寄せられるように窓に近づく、一歩一歩踏みしめるごとに 悲しみも落胆も絶望もその全てが水泡の如く消え去り、希望と歓喜が湧き上がる。 私はただ窓の前に立ち天空を仰いだ。 月も星もない鉛色の空、けれど不思議と虚しさも寂寥感も沸いてこず、ただ三年前のことを思い出した。 あの日以来私はずっとジョン=スミスと名乗った変な男に想いを寄せていた。 そしてジョンが通っているといった北校に入学した。 私は自分でも呆れる位一途で、その思いだけで三年を生きてきたといっても過言じゃない、 一回しか会ったことのない男のことを三年間も想い続けて、挙句の果てに居ないと解っていながら 淡い期待と恋心だけを持って高校に入学。 そして現実はそんな私の希望を綺麗に叩き壊してくれたかの様に見えた。 けどそこに一人だけ残った人がいた、其れがキョン。 初めはぐだぐだ言うけどまあ役に立つ奴程度にしか思っていなかった。 けどそれから少し経っていくと私はひどく自己嫌悪に駆られる思いを見に宿す。 私はキョンの事を気になるようになった。 勿論それ自体が悪いのではなく、その理由―― ジョンに似ていたから。 声、しゃべり方、しぐさ容姿その全てが私の知っているジョンそのもの。 このことに気づいたときほど自分自身を嫌ったことはない、自分の実らない想いを ただ似ているだけの他人で慰め、癒す。 私はそんな醜い感情を抱きながらただ彼の優しさを甘受する。 そして時増すごとにその二つの感情は支えきれない物となって私を圧迫した。 けどキョンを見ていて新たに彼を知れることがあれば知りたいと思い、いつしか私は 気がつくと彼を見ていた。 そしてそれは、私の感情を大きくするばかりではなく知らなくても良いことまで私に 教えた。 キョンは皆にやさしい、別に私だけにではない此れにに気付いた時、私は唯でさえ 支えられなくなっていた想いが一気に決壊したような悲しみと、それを受ける全ての他者に 対しての憎しみに近い嫉妬を覚えた。 けどそれも私の醜い未練の上に成り立っているかと思うと自己嫌悪が止まらなくなって、ただ 八つ当たりをして逃げた。 けどそんな物に何かの効能がある訳でも無く、私は逃げ込んだんだ。 此処に―― 夜中目が覚めたとき、私は酷く混乱した。 今までに無く鮮明に頭に残る夢、体に残った感触、足の疲れ全てが現実にあって、 でもそれは有り得ない。でも私は覚えていた。 私の幼稚な駄々を聞きそれを諭してくれたキョンを、私にキスをしてくれたキョンを。 そしてそれを嬉しいと感じた瞬間、私の中の醜い感情は消え去り。 私の中にはただ純然たる想いが残った。 私が想っているのはジョンではなくキョンであるという想いが。 私はそれ以来あの出来事を虚構であると解っていながら真実と偽ることで、彼の想いが 私に向いていると思い込んでいた。 そうでもしないと私は彼が優しくする全ての人に対する嫉妬と憎悪を抑えきれなくなって 狂ってしまいそうだったから。 そして現実に私は狂った。 しかも最悪な形で、許せない真実が私の何よりもも大切な虚構を叩き潰す。 そして私はもう一度此処に来た。 窓を開く、風もなければ、温度も違わない。 全てが一体となって止まる、そして動いているのは私だけ、いや違うもう一人 キョンがいる―― 私は今までの悲しい思い出から解放されたようだった。 この広大な世界には私とキョンの二人しか居ない。 その事実が私の心を詩的な美しさと甘美な幻想とでつつむ。 楽園に住む二人の男と女 そうして私が唯祈るように天を仰いでいると、不意にゆっくりと部室のドアが開いた。 部室ではハルヒが一人祈るように天を仰いでいた。 そしてその微動だにしないハルヒはただ透き通るような静止画の一部の様にさえ思える、 だが俺はその絵を打ち壊すように口を開いた。 「ハルヒどうしてもういちど此処に来たいと思った。辛いことから逃げるためか。」 「それもあるかな」 透き通る落ち着いた声だった 「どういうことだ」 唯俺はハルヒの後ろ姿を見ながら言葉を紡ぐ。 「キョンはあの世界に帰りたいの」 「答えになって――」 「いいから」 俺のことばを静かに遮り、天を仰いでいたハルヒがこちらに向き直る、 その顔は何かに縋る様にも悲しみに耐えているようにも見えた。 「ああ、勿論だ。俺はあの日常に戻りたい」 出来る限りの自信と信念を込めて答える。 「でもどうやって、私とキョンのこの二人だけの世界で」 「それは――」 「ねえキョン、キョンは私の事どう思っているの」 唐突で包み隠しの無い言葉。 「大切な…大切なかけがえのない友達だ」 これが俺の嘘偽りの無い本音だった。 「そう、ありがとう」 ハルヒはただ純粋に喜んでいるようにも悲しんでいるようにも聞こえる 声と共にその顔に小さく笑みを湛えた。 「じゃあ、みくるちゃんは」 ただひたすらに悲しみと苦しみだけが部屋に残る。 「愛してる」 此れもまた俺の偽らない真実だった。 ハルヒは唯肩を振るわせ、手を握り締める。 「でも、ここにみくるちゃんは居なくてもう会えないかもしれないかも知れない それでも愛せるの」 「当然だ」 微かな嗚咽が部屋に響き渡り、ハルヒの頬を一雫の涙が伝う。 「なんで、なんでそんなにあの女だけを見るの、私だってキョンを愛してるそれだけは誰にも負けない キョンが望むならこの身体を好きにしたって良い、 キョンが望むならこの世界を棄ててもいい キョンが私の死を望むならそれでもいい だから、だから―― 私を愛して」 悲痛な叫びと最後の光に縋るような響きが消え、ただ沈黙だけが灰色の世界に残り 俺はただその中に入り込むしかなかった。 俺の中で全ての感情と決意が途切れそうになった。 でもハルヒ、欺瞞は何も解決しはしない、 此処でお前が俺の偽りで安らぎを得たところでそれはハルヒお前を苦しめるだけなんだ。 「それは、出来ない」 深く低い声が染み渡り、ハルヒは涙を流し嗚咽と共に沈み込んだ。 俺はどうしようもない愚か者だ馬鹿野郎だ罪人だ。 ハルヒが立ち上がり静かに立っていた。 その目は赤く濁り、握り締めていた手からは紅い血が流れていてた。 ハルヒは何も言わず、ゆっくりと唯その身を俺の目の前まで持ってきて 俺を見詰めた、その瞳は涙に潤み、頬には其の痕が白い肌を削るように残っていた。 血に濡れた手がゆっくりと俺の首を絞めつける。 血の暖かさが優しく俺の身に滴る、其の手は唯繊細な物に触れるように弱弱しい力で俺の 首を絞めつける。 だが目の前のハルヒの生気を無くした虚ろで悲しげな瞳が、俺の心を強く締め上げる。 動こうと思えば動けただろう、振り払うのも簡単だ。 けど俺もハルヒも何もしなかった。 不意に部屋に青白い光が差し込む。 神人か―― しかし俺はそれを己の目で見ることなく唯ハルヒを見詰めていた。 ハルヒも唯俺を静かに見詰めている、まるで一対の人形の様に止まり続ける。 けどハルヒの手から流れ続ける暖かな命がそれを否定する。 俺はハルヒの美しく真直ぐな髪を撫でた。 優しく羽飾をつけるように そして俺とハルヒは世界の崩壊する音と共に光に飲み込まれた。 優しい光と共に……
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秋の放課後、私は一人部室から窓の外を眺めていた。 角度のせいで、グラウンドはまったく見えずガラスの囲いに区切られた空 だけがゆっくりと流れている。 『みんな薄情よね、せっかく団長が戸締りするって言ったんだから、待っ ててくれてもいいのに』 などとついさっきの行動と矛盾した思いを抱きながら私は、パイプ椅子より はましといった安っぽい回転椅子にアグラをかいていた。 ぼうっと茜色の空を見ているとふとさっきの事が思い出される。 何故言ったかは解らない唯そういう気分だったとしか言いようの無い位に、 些細なことを私は言ったつもりだった。 「今日は、私が戸締りして帰るわ」 皆の動きが一瞬だけ止まり、こっちを向く 一人は無表情に、もう一人は何時もの微笑に少々の困惑を交え、 もう一人も狐につままれたような顔をして そして、あと一人は興味なさそうに面倒くさげな顔をしていた。 「どうしたんですか涼宮さん、私今日は別に用事なんてないですよ」 と言う、みくるちゃんの戸惑いに満ちた声が私には無性に腹立たしい。 別に変なことを言ったわけじゃない、ただちょっとした親切心で言った 事に何故疑念を持たれなければならないのか、そりゃあ私はいつも 傍若無人な振る舞いをしているかもしれないわよ、でも親切で言った事 を疑われる程の悪人じゃあない。 「何、私がそんな事言ったら変なのかしら、そりゃあ――」 「おいハルヒ、朝比奈さんはそんな意味で言ったんじゃない、そう ケンカ腰に言うこともないだろ」 若干のあきれと怒気とを含んだ声が遮る。 またか、なんで私がみくるちゃんに突っ掛かるときだけこんなに 反応が速いのよ、いっつもぼけっとしてるくせに。 「解ってるわよ、とにかく今日は私が戸締りするからさっさと 帰りなさい。」 そのまま私は憤然として椅子に座り外を向く。 キョンの半ばあきれたかの様なため息が聞こえ悲しかった そしてそれから私はずっと空を眺めてる。 青と白のコントラストが気が付いたときにはもうすでに黄昏時に 変わり、小春日和の温かさも消え失せ少し肌寒い。 何故―― 私はキョンを愛してる。 この世界中で誰よりも。 なのに何故キョンは私に優しくさえしてくれないの、ううん違う キョンは優しい、でもそれは社交儀礼的な優しさ。 私はそれ以上が欲しい、誰にでも与えられる優しさじゃない、 慈しんで、愛して、抱きしめて欲しい。 でも違う 『私じゃない』 私は椅子を回し誰も居なくなった部室を眺めた。 そうすると地味な色彩の部室の中で一際異彩を放つ場違いな服の 数々が嫌でも目に入る。 あの女、あの女だけがキョンのトクベツな優しさを受けている。 今日の事を思い出すと、そう思えてしまう でも、そんなことある筈がないキョンがあんな売女に惹かれるなんて、 ただちょっと欲望持て余してあのいやらしい身体が気になるだけ、 キョンも男の子だしね、でも結構傷付いちゃうよ私スタイルには 自信あるのに。 あの夢、ううん夢じゃない、だって今でもはっきりと覚えてるもの キョンに握られた手の暖かさ。 抱き寄せられた肩の感触。 そして―― 奪われた私の唇 目が覚めたときは戸惑ったけど、私には解るあれは夢なんかじゃない。 何故と言われると返せないでも解るあれは、現実。 私は一人納得し、カバンをとって部室を出た。 茜色の光に照らされながら、私は一人坂道を下る。 もし…もし横にキョンが居てくれて手をつないで一緒に帰れたら等と 妄想する、ただそれだけで胸が熱くなる。 『ああだめだ、一人だからって』 私は妄想を振り払い景色を見ながら歩みを進める。 ふと、土手に彼岸花が群れて咲いているのが目に留まった。 嗚呼そういえばもうそんな季節なのかとちょっとした感慨に浸りながら 花々に近づく群れて咲いている彼岸花の中には、まだつぼみであったり 頃合を過ぎ紫がかって白んでいる物もあった。 私は無意識の内にその中で一番綺麗に咲き誇っている者を捜し、それに 目をやった。 細く華奢な花弁が魅せる儚さ、紅と豊かな弧が描き出す妖艶さに、私は しばし見惚れた。 妖艶な肢体、庇護欲をそそる華奢さどちらも私が持ち得ようのない魅力。 しかしそれを両方持っている女の姿が脳裏に浮かぶ、朝比奈みくる、 あの女の姿が―― あの売女どうせあのいやらしい身体でキョンを誑かそうとしてるんでしょうけど、 キョンはあんたみたいな卑しい女なんて相手にしないのよ、今かまってもらえて るのはキョンがどうしようもなく優しいから、無視したらあんたがあんまりに哀れ で可哀相だからよ。 そして彼岸花とあの女のイメージが重なる、すると何故だろうつい先程まで美しく 見えていたものが急に吐き気を催す程、醜悪で邪悪な物に見えてくる。 私はその一番に咲き誇っている彼岸花の茎に手をかける。 たいした力をいれずとも茎はポキンと心地よい音を響かせ折れた。 そして茎からは毒が一滴零れ落ちる。 まるであの女そのもの、私には解るどんなに上っ面だけ取り繕っても あの女は異質。 汚らわしい。何よりそんな女がキョンに媚を売っているのが気に入らない、 おまえなんか場末の浮浪者がお似合いだ。 手に持っていた花をぱっと離す、それは空気の抵抗を受けゆっくりと アスファルトの上に落ちる。 私はそれを下卑た眼差しで見つめながら、革靴の上からでも潰れる感触 が解る位にゆっくりと嬲る様に踏み潰す。 水気のある気持ち悪い感触が足下にひろがる、侮蔑がさらに大きくなり 私はそれを足で磨り潰す。 何度も何度も何度もあの女の顔を其処にうつしこんで。 そうして気がついた時には、それはもはや原形を留めておらず、紅と緑とが混じった 良く解らないモノとなっていた。 その無様で醜い姿をあの女に結びつける、すると自然と笑みがこぼれて来る。 あんまりしつこいならあの女もこうしないとね、でないとキョンが可哀想だもん。 清々しい気分で私は薄暗くなった坂道を下り家に帰った。 次の日、私は何故か早くに目が覚めていた。 時計は未だ五時にもなっていないが不思議と頭がぼやけ もう一度寝ることも出来ずリビングのソファに腰掛けていた。 風邪を引いたのだろか―― そう思い私は戸棚に入っている古い体温計を手に取り脇に挟む。 体調を崩す心当たりがなく半ば暇つぶし程度に計ったのだが しばしの後、その古びた体温計のちらちらとした水銀が指し示している 数字は38.5℃、疑いようもなく風邪を引いたのだろう。 しかし、私はその事実をさして辛い物とも思わずむしろ小休止が取れる事 を嬉しく思っていた。 昨日ああも煮え滾っていた嫉妬の感情はひどく遠いものに思え、ただ私は 呆けた頭で朝の静けさに身を委ねた。 薄いカーテンを透した淡い光が喧騒のない朝をより美しいものに演出する。 しばらくすると母が起き、私は風邪を引いたので今日は学校を休むという旨 のことを言うと、母は市販の風邪薬と水枕を寄越し学校に連絡するといって 私を部屋に戻す。 さして辛そうにもない私を医者に診せるまでもないと判断したのだろう、 年甲斐もなくはさびしさを感じつつ薬を飲みベッドに潜った。 次に目が覚めたときも少々の驚きを持ってだった。 理由は簡単、時計の指示すもうすでに四時を過ぎていたから 良く眠ったなあ、という妙な感慨とともにその時間が私に一抹の憂鬱を与える。 キョンはどうしているんだろう。 部室であの女の淹れたお茶をのでいるのかなそれとも部活はせずにもう帰った のかな。 私は少々の期待を持って、充電器に入った携帯電話をとり何か来ていないかを 確認する。 けど結果は着信0件と「新たなメッセージはありません」という虚しいもであった。 寝る前は不思議に泰然としていた感情も剥がれ落ち、私はただ落胆の感情と共に ベッドの上で膝を抱えて沈み込む。 カーテンを閉めているせいか、陽が上がっているはずなのに部屋は気持ちの悪い 暗さに包まれ、鬱陶しい外の喧騒と半端な静寂が脳をなでる。 気持ちが悪い、吐き気もする。 今朝から何も飲んでいないからかひどく口の中が渇く、そういえばおなかも空いた。 母は何か作ってくれているかな、いや忙しいあの人のことだ何もしてくれてはいな いだろう。 けどせめてこの渇きだけは何とかしよう、そう思い私は重い体を上げリビングに向かった 案の定、流し台は綺麗なもので昨日からまだ一度も使っていないのが見て取れる。 ピンポーンー 静寂の中に電子音が鳴り響く 誰だろう宅配便かなにかかな、 普通は出るのが筋なのだろうが私はどうにもそんな気力が出ず、それを無視し冷蔵庫 のドアに手を伸ばした時 「おーい、ハルヒいないのか」 伸ばしていた手が急に止まる。 あの声間違いないキョンだ。でも如何して、 もしかしてお見舞いに来てくれたの? もう一度電子音が響く はやく、はやく出ないとでも寝てたから髪の毛ぼさぼさだし、服だって でもそんなことしてたら帰っちゃうし 「いないのかー」 あーもう、私はもう気が付いた時には玄関のドアを開けていた。 「よう、見舞いに来たぞ」 と言い、キョンは優しい表情で手に持ったビニール袋をこちらに差し出す 「あ…ありがとう」 恥ずかしくて私は蚊のなく様な声しかでず、急いでビニール袋を引き取る。 重い、中を見るとスポーツドリンクと果汁100%のリンゴジュースが入っていた。 「せ、せっかく来たんだから上がっていったら、私調子そんなに悪くないし」 今度はさっきより大きな声で言えたと思う 「そうだな、ちょっと上がらせてもらうよ」 多分私はこの一週間いや一ヶ月で一番いい顔をしていただろう。 私はすぐにキョンをリビングに通した。 さすがにいきなり部屋にとはいかないし、 キョンに何か出さないと、でも何も無いし今もらったばっかりの出すのも 失礼だし、インスタントコーヒー位しかないやキョン、インスタント飲む のかな。 私は一応インスタントをそれなりのティーセットで飾り、クリームとスティックシュガー を添えてキョンの前に出した。 「ありがとう、悪いな気使わせて」 「いいわよ別に」 と私は返事をしてキョンの近くに座る。 頭がぼおっつとして顔があついのは風邪のせいじゃなくて…… 無意識にキョンの行動を目で追っていた。自分でもどうしようもない位にキョン のことが気になる。 キョン、私はキョン以外の男は絶対見ない、私は、私はキョンだけを想うよ―― 気がつくとキョンは、ばつが悪そうにこちらをを見て口を開いた。 「どうしたんだおまえ、さっきからこっちばっかり見て」 「へっ」 恥ずかしい思いっきりまぬけな声を上げて私は視線をそらし口に力を入れる。 「な、なんでもないわよ、ただ風邪でぼおっとしただけ」 そう言い放って立ち上がると、視界が揺れ足元がふらついて 頭が動いたとき私はキョンの腕の中に抱きかかえられていた。 「おい大丈夫か、病人なんだ部屋まで連れってやるからちょっとゆっくりしとけ」 と、私を抱えていた腕を背に回す。 だめだ、心臓がうるさいくらいに脈うっている。 ちょっと静かになりなさいよキョンに聞こえちゃう 顔がたまらなくあつくなってるのが自分でも解る。 その後はもう呆けたを通り越してまともに動かなくなった頭でキョンの言うことを 生返事を返しベッドに寝かしつけられた。 「俺はもう帰るけど、ゆっくりしとけよなんだかんだでハルヒがいないと張り合い がないからな」 といい彼は部屋を出た。 もっと一緒にいたい、という気持ちもあったけれど病人の部屋に引き止められないな と思い私は生返事をした。 そしてなによりキョンの言った一言が私の心を熱くする。 「ハルヒがいないと……」 ねえキョンそれって私が私がキョンの中でトクベツだってことだよね。そうなんだよね。 私がいままで向けていた彼への恋慕その全てが報われる。 私はどうにも落ち着かなくなって起き上がり、カーテンを開けた。 勿論キョンを見送るため。 しかし其処に見えたものは、紅潮していた顔も舞い上がっていた気持ちもその全てを 叩き落すに十分なものであった。 キョンが見える、でもその横で手を繋いで一緒に歩いている女は誰。 小柄な背丈、長い栗色の髪、後ろ姿だが見間違う筈もない、あの女 朝比奈みくるだ。 なんで、なんであいつがキョンの隣に―― キョンもなんでそんな奴と売女と楽しそうに話すの。 私は動くことも、其処から目を背けることできず、ただ二人が視界から 消えるのを待つしかなかった。 あの女、あの女、あの女あんな薄汚い手でキョンに触れて許されるとでも お前なんか浮浪者でも勿体無い位だ。 キョンもキョンだよなんであんな売女と… ううん、違うよねキョン、キョンは優しいから売女が言い寄ってくるのが憐れで 付き合ってあげてるだけ、本当迷惑な女だよね、でも大丈夫 私が何とかするから。 次の日私はいつもどうり学校へ行き、いつもどうり授業を受けた。 ただ何時と違うのは 「キョン、私まだちょっと本調子じゃないから今日の部活は休みよ」 キョンはちょっと驚いたような顔をして 「俺は別にかまわないが、他の奴らには――」 「その点はぬかりないから、もう皆に連絡はつけてあるわよ」 キョンはいつもと同じやさしい表情で「へい、へい」といって席を 立つ 「あっ、それと明日はちゃんとあるんだから来なさいよ」 キョンはわかったよといった感じに手をひらひらさせ教室を出た。 必要だと解っていてもキョンに嘘をつくのは辛い。 でもしかたがない、それに私はキョンの幽鬱を消すのだから。 私はカバンを取り部室に向かう、中にナイフが入ったカバンを持って。 いつも部室には一番に有希がいて、私は結構その後だから一番に来るのは 少し新鮮。 団長席に座りカバンからナイフを取り出す。 昔、縁日かなにかで買ったそれは古びて、くすんだメッキのうえに所々赤い 錆びが浮いている。 私はそれを机の引き出しに突っ込み、何時かのように体を窓に向けた。 いつもと同じに見えて、どこか違うそんな詩的で美しい青と白のコントラストが 決して留まることなく悠然と流れる。 そんな全てを包括する壮大な時の流れに、私は飲み込まれかけた。 ちっぽけな欲望 感情の喜憂 私はそのちっぽけな物に流されようとしている。 けど迷いはない、それはこのちっぽけな物が私の世界の中の全て であり、何よりも大切なものだから だから私はこの気持ちを邪魔する奴を許さない。 コンコン 控えめなノックと共に部室のドアが開く。 私はそちらに向き直り入ってきた奴を確認した。 その女は部室に私しかいないことに面食らったのか少し立ち止まって入ってきた。 「こんにちわぁ涼宮さん、今日はまだだれもきてないんですか」 「ええ、そうよ」 そう、素っ気無く返すと、部室は嫌な沈黙が漂い、暫時のあと女が口を開く 「あっあの着替えてお茶いれますね」 そういって、小走りでメイド服に向かう女を遮る 「いいわよ、それに今日はキョン来ないから」 女の動きが変に止まる。 「ねぇみくるちゃんあなた、私に何か言うことがあるんじゃないの」 女の体は行き場をなくして立ち尽くし、その手は忙しなく小さな動作をしていた。 馬鹿なんだろうなコイツは、解り易すぎる。 「そ、そんな涼宮さん私に隠し事なんてできるはずが」 「ええ、そうよねみくるちゃんその通りだわ、あなたはとても素直だもんね」 女は私の上っ面の笑みに安心してか、顔に安堵の色を広げたがそれを遮るように 言葉をつなぐ。 「だから、あなたが今嘘をついてることも解るのよ」 女の顔が一気に青ざめ下を向く 嗚呼、うざったい 「みくるちゃん、私はこんな下らない茶番を何時までもする積もりは無いの できれば、あなたが自分から言い出してくれたら嬉しいんだけど」 女は下を向いたまま動かない。 人の話を聞いているのかしら、もし聞こえていて答えないなら失礼極まりないわね この売女。 ばらくの沈黙の後、私は痺れをきらし口を開く。 「そう、なら私が言ってあげる。これ以上キョンを唆すのは止めなさい」 「そっそんな私は――」 「うるさい!!」 「どうせその厭らしい身体使ってるんでしょうけど、キョンはあなたの事なんて 何とも思ってないのよ」 「涼宮さん、わたし達は……」 わたしたち?何で其処が複数形になってるのよ、それに言うならはっきり言いなさいよ この売女 「私達は何よはっきり言いなさいよ」 「私達は真剣に付き合っているんです。だから、だからそのことで涼宮さんにそんな風に 言われる筋合いはありません!!」 何この女、まともに口利いたかと思ったらえらい剣幕で人に自分の妄想聞かせるなんて、 頭がおかしいのかしら、でも此れでハッキリした。 こんな狂人キョンの傍にもうこれ以上一秒たりとも居させられない。 私は引き出しを開けナイフを取り出し立ち上がった。 「す、涼宮さん――」 嗚呼、この女の顔を見るのも此れが最後か……清々する。 女はやっと自分の危機を理解したのかドアに向かって走り出す。 のろいなぁ 私は女の髪を掴みそのまま引き倒して床に叩き付ける。 それは蛙の潰れるような声を出して醜くのびる。 そしてそのままそいつの胸倉を掴んで本棚に打ち付けた 「や…止めてください、すずみやさ――」 「うるさい、あんたみたいな狂人をこれ以上キョンの傍に居させる訳にはいかないのよ」 ナイフを顔に突きつけその刃先で頬を叩く 「この薄汚い面の皮を剥いで野良犬にでもくれてやりましょうか」 嗚呼、自然と笑みがこぼれてくる、唇がつり上がっていくのが自分でも解るもの けど次の瞬間私はドアが開く音と共に長机に弾き飛ばされた。 キョン―― うそ、何でなんでここに、ううん違うなんでみくるちゃんのあの女のところに行くの。 キョンが凄い形相でこっちを睨んでる。 やめてよキョンこわいよ…… 「ハルヒお前自分が何したか解ってるのか!!」 そう言ってキョンは私の胸倉を掴んで問いただす。 何で、何で私はキョンの為にキョンの為にしたのになんでそんなに怒るのやめてよこわいよ 「おい、ハルヒ!答えろ何でこんなこと」 「だって……、みくるちゃんがみくるちゃんが嘘つくからあんたとみくるちゃんが付き合ってるって……」 私はすがる様にキョンを見つめる。これでこれで解ってくれるよね 「ハルヒ、よく聴け」 えっ―― 「それは嘘じゃない」 「うそだ……違う、冗談だよね」 「冗談なんかじゃない、俺達は真剣に付き合ってるんだ」 で、ナンデ、ナンデ―― そんなことそんなことある筈ない昨日だってあんなにあんなに優しくしてくれたのに 違うの私じゃないの―― あの女が見えるあいつがあんな売女がキョンの恋人。 あいつがキョンと一緒に歩いて、手を繋いで、キスして、愛しあうの 許さない許さない許さない許さない許さない!!! 「みくるちゃんあなたキョンに何したの!!何でキョンにこんな事言わせるのよこの売女その 薄汚い体でキョンに迫ったんでしょ、何とか何とか言いなさいよ!!!」 「ハルヒ!!」 「返せ、私の私のキョンを返せでないと殺してやる絶対絶対殺してやる!!!」 私はキョンを押しのけ、あの女のところに行こうとした。 けどそれは阻まれて、そして私の体はもう一度宙を舞った。 頬が痛い殴られた。何故、目の前が滲んでいく嘘じゃないの…… こんなのこんなのイヤダ。 キョンがあの女の背に手を回して支えて部室を出ようとする。 イヤダ行かないで行かないで―― 「いかないで、いかないでキョンいかないで――」 うわ言ののように呟きながら私は手を伸ばした。 けど其の時にはもうキョンは手の届かない所にいて、私の方を一度も見ず部屋を出て行った。 私は私しか居なくなった部室で一人うな垂れ、涙を流した。 こんなこと―― キョンは私のこと見てくれてなかったの、そんなはずないだってキョンは私にキスしてくれて だって―― 私の中で最悪な結論がはじき出される。 「あれは唯のユメ」 ちがうそんなこと有り得ない、だってちゃんと覚えてる。 あのときキョンと二人だけの世界で手を掴まれて走ったこと、言い合いなったこと キスしたことも全部ユメ? ただの私の妄想? いやだいやだそんなことそんなこと絶対ある筈がない そうだこっちがこっちがユメなんだこっちが!! そうよこんな事こんな事ある筈が無いもの、目が醒めてキョンと二人だけの世界がある それが現実なの、だから速く醒めてよ―― 「大丈夫ですか、朝比奈さん」 俺は今、錯綜する頭をどうにか使って彼女に慰めの言葉を掛けている。 はっきり行って今でも何があったのか解らない、 何故だ、今日もいつも道理の何の変哲も無い普通の一日だったじゃないか。 ただ、何時もの待ち合わせ場所に朝比奈さんが来ないから二年の教室に行ったら 部活に行ったと言われて、そりゃあなんかおかしいなと感じはしたがハルヒが俺に 何も言わずに何かをするのは珍しい事じゃない、だから俺は何も疑わず部室に行き そのドアを開けた。 けど其処に見た光景は ハルヒが狂った笑みを浮かべ朝比奈さんにナイフを突きつける。 その後のことははっきりと覚えていない 唯俺が朝比奈さんと付き合っていることを告白した瞬間、ハルヒは一瞬無表情に成った 後、鬼の様な形相で狂ったように朝比奈さんを罵倒した。 俺は正直に言ってこの時ほど人に恐怖したことは無かった。朝倉に殺されかけた時も これ程の恐怖を抱かなかった。 それはいつも、わがままでいじっぱりで、不機嫌になったりもするけどいつも 太陽みたいに笑ってるやつが、 ナイフを持ち、鬼の形相で怒り狂いそれを友達の少女に向けている。 それが信じられなかったからだろう 最低なことをしたと思うだがもし俺があの時ああしなければ、まちがいなくハルヒの凶刃 は朝比奈さんを貫いていた。 そして俺は朝比奈さんを連れて逃げ出した。 ハルヒが何か縋る様な声で言っていたのが聞こえたが俺は逃げた、ただ怖くて。 混迷と絶望に押しつぶされ俺は廊下の隅に座り込む。 彼女は今手洗いに入っていった、おそらく一人になりたいのだろう。 頭を抱えても頬を抓っても変わらない世界に飲み込まれる。 しばらくして朝比奈さんの声が聞こえ俺は立ち上がるが、次の瞬間目の前が暗転し 俺は意識を失った。 色彩に乏しい灰色の世界、閉鎖空間。 そしてこの場所は俺とハルヒが神人に追われて、そして俺がハルヒにキスを したところだ。卑しくも頭にこびり付いている。 辺りを見回すが、誰も居ない、ハルヒすらも―― 一切の音が消え失せその向こうにたたずむCGの様に生気を感じさせない街々。 俺はふと自分の身を預けているグラウンドの砂を手に取る、表面の渇いた物だけが 僅かに手に残り掌を圧す。 小さすぎて在るか無いか其れすらも曖昧な感触、手をはたき砂を落とす。 俺は立ち上がり、胸ポケットに入っている生徒手帳を取り出し、挟んであった小さな 写真を手に取る。 そこに写っているいるのは、いつものSOS団の部室のただの何の変哲もない日常の一瞬。 でも今はその瞬間がもう手に入らない物の様に思えてしまう。 そしてその中でメイド服を着て笑っている女性、朝比奈みくる。 俺がこの人のことを本気で好きになったのは結構前からのことだ。 初めはその豊かな胸にばかり目が行っていたのだが、彼女の優しさや気遣いに触れているうちに この人のことばかりを考えるようになって、告白したのはつい最近だった。 俺は間違ったことをした、此処で俺は元の世界に戻りたいという理由で、ハルヒの唇を奪った。 そしてそれがハルヒを苦しめ続けてきて…… ハルヒが俺のことをどう思ってくれているかを俺は知っていた。 でも俺の中でのハルヒはかけがえの無い友達で、俺は何もせずあいつを苦しめてきた。 自業自得か―― 俺は校舎に向かう、薄暗く不気味なところをゆっくり進む、そしてSOS団部室のドアを開いた。 目が醒めたとき私はひどく落胆した。 それはわたしが一人でいて、なおかつ居た場所が同じだったから。 けどすぐに私は此処が違う場所であることが解った。 窓の外に広がる灰色の世界、私は吸い寄せられるように窓に近づく、一歩一歩踏みしめるごとに 悲しみも落胆も絶望もその全てが水泡の如く消え去り、希望と歓喜が湧き上がる。 私はただ窓の前に立ち天空を仰いだ。 月も星もない鉛色の空、けれど不思議と虚しさも寂寥感も沸いてこず、ただ三年前のことを思い出した。 あの日以来私はずっとジョン=スミスと名乗った変な男に想いを寄せていた。 そしてジョンが通っているといった北校に入学した。 私は自分でも呆れる位一途で、その思いだけで三年を生きてきたといっても過言じゃない、 一回しか会ったことのない男のことを三年間も想い続けて、挙句の果てに居ないと解っていながら 淡い期待と恋心だけを持って高校に入学。 そして現実はそんな私の希望を綺麗に叩き壊してくれたかの様に見えた。 けどそこに一人だけ残った人がいた、其れがキョン。 初めはぐだぐだ言うけどまあ役に立つ奴程度にしか思っていなかった。 けどそれから少し経っていくと私はひどく自己嫌悪に駆られる思いを見に宿す。 私はキョンの事を気になるようになった。 勿論それ自体が悪いのではなく、その理由―― ジョンに似ていたから。 声、しゃべり方、しぐさ容姿その全てが私の知っているジョンそのもの。 このことに気づいたときほど自分自身を嫌ったことはない、自分の実らない想いを ただ似ているだけの他人で慰め、癒す。 私はそんな醜い感情を抱きながらただ彼の優しさを甘受する。 そして時増すごとにその二つの感情は支えきれない物となって私を圧迫した。 けどキョンを見ていて新たに彼を知れることがあれば知りたいと思い、いつしか私は 気がつくと彼を見ていた。 そしてそれは、私の感情を大きくするばかりではなく知らなくても良いことまで私に 教えた。 キョンは皆にやさしい、別に私だけにではない此れにに気付いた時、私は唯でさえ 支えられなくなっていた想いが一気に決壊したような悲しみと、それを受ける全ての他者に 対しての憎しみに近い嫉妬を覚えた。 けどそれも私の醜い未練の上に成り立っているかと思うと自己嫌悪が止まらなくなって、ただ 八つ当たりをして逃げた。 けどそんな物に何かの効能がある訳でも無く、私は逃げ込んだんだ。 此処に―― 夜中目が覚めたとき、私は酷く混乱した。 今までに無く鮮明に頭に残る夢、体に残った感触、足の疲れ全てが現実にあって、 でもそれは有り得ない。でも私は覚えていた。 私の幼稚な駄々を聞きそれを諭してくれたキョンを、私にキスをしてくれたキョンを。 そしてそれを嬉しいと感じた瞬間、私の中の醜い感情は消え去り。 私の中にはただ純然たる想いが残った。 私が想っているのはジョンではなくキョンであるという想いが。 私はそれ以来あの出来事を虚構であると解っていながら真実と偽ることで、彼の想いが 私に向いていると思い込んでいた。 そうでもしないと私は彼が優しくする全ての人に対する嫉妬と憎悪を抑えきれなくなって 狂ってしまいそうだったから。 そして現実に私は狂った。 しかも最悪な形で、許せない真実が私の何よりもも大切な虚構を叩き潰す。 そして私はもう一度此処に来た。 窓を開く、風もなければ、温度も違わない。 全てが一体となって止まる、そして動いているのは私だけ、いや違うもう一人 キョンがいる―― 私は今までの悲しい思い出から解放されたようだった。 この広大な世界には私とキョンの二人しか居ない。 その事実が私の心を詩的な美しさと甘美な幻想とでつつむ。 楽園に住む二人の男と女 そうして私が唯祈るように天を仰いでいると、不意にゆっくりと部室のドアが開いた。 部室ではハルヒが一人祈るように天を仰いでいた。 そしてその微動だにしないハルヒはただ透き通るような静止画の一部の様にさえ思える、 だが俺はその絵を打ち壊すように口を開いた。 「ハルヒどうしてもういちど此処に来たいと思った。辛いことから逃げるためか。」 「それもあるかな」 透き通る落ち着いた声だった 「どういうことだ」 唯俺はハルヒの後ろ姿を見ながら言葉を紡ぐ。 「キョンはあの世界に帰りたいの」 「答えになって――」 「いいから」 俺のことばを静かに遮り、天を仰いでいたハルヒがこちらに向き直る、 その顔は何かに縋る様にも悲しみに耐えているようにも見えた。 「ああ、勿論だ。俺はあの日常に戻りたい」 出来る限りの自信と信念を込めて答える。 「でもどうやって、私とキョンのこの二人だけの世界で」 「それは――」 「ねえキョン、キョンは私の事どう思っているの」 唐突で包み隠しの無い言葉。 「大切な…大切なかけがえのない友達だ」 これが俺の嘘偽りの無い本音だった。 「そう、ありがとう」 ハルヒはただ純粋に喜んでいるようにも悲しんでいるようにも聞こえる 声と共にその顔に小さく笑みを湛えた。 「じゃあ、みくるちゃんは」 ただひたすらに悲しみと苦しみだけが部屋に残る。 「愛してる」 此れもまた俺の偽らない真実だった。 ハルヒは唯肩を振るわせ、手を握り締める。 「でも、ここにみくるちゃんは居なくてもう会えないかもしれないかも知れない それでも愛せるの」 「当然だ」 微かな嗚咽が部屋に響き渡り、ハルヒの頬を一雫の涙が伝う。 「なんで、なんでそんなにあの女だけを見るの、私だってキョンを愛してるそれだけは誰にも負けない キョンが望むならこの身体を好きにしたって良い、 キョンが望むならこの世界を棄ててもいい キョンが私の死を望むならそれでもいい だから、だから―― 私を愛して」 悲痛な叫びと最後の光に縋るような響きが消え、ただ沈黙だけが灰色の世界に残り 俺はただその中に入り込むしかなかった。 俺の中で全ての感情と決意が途切れそうになった。 でもハルヒ、欺瞞は何も解決しはしない、 此処でお前が俺の偽りで安らぎを得たところでそれはハルヒお前を苦しめるだけなんだ。 「それは、出来ない」 深く低い声が染み渡り、ハルヒは涙を流し嗚咽と共に沈み込んだ。 俺はどうしようもない愚か者だ馬鹿野郎だ罪人だ。 ハルヒが立ち上がり静かに立っていた。 その目は赤く濁り、握り締めていた手からは紅い血が流れていてた。 ハルヒは何も言わず、ゆっくりと唯その身を俺の目の前まで持ってきて 俺を見詰めた、その瞳は涙に潤み、頬には其の痕が白い肌を削るように残っていた。 血に濡れた手がゆっくりと俺の首を絞めつける。 血の暖かさが優しく俺の身に滴る、其の手は唯繊細な物に触れるように弱弱しい力で俺の 首を絞めつける。 だが目の前のハルヒの生気を無くした虚ろで悲しげな瞳が、俺の心を強く締め上げる。 動こうと思えば動けただろう、振り払うのも簡単だ。 けど俺もハルヒも何もしなかった。 不意に部屋に青白い光が差し込む。 神人か―― しかし俺はそれを己の目で見ることなく唯ハルヒを見詰めていた。 ハルヒも唯俺を静かに見詰めている、まるで一対の人形の様に止まり続ける。 けどハルヒの手から流れ続ける暖かな命がそれを否定する。 俺はハルヒの美しく真直ぐな髪を撫でた。 優しく羽飾をつけるように そして俺とハルヒは世界の崩壊する音と共に光に飲み込まれた。 優しい光と共に……
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彼岸花の咲く夜に 学校妖怪七席 コメント 原作:竜騎士07(07th Expansion)、キャラクター原案:西E田、作画:つのはず壱郎による漫画作品。『月刊ドラゴンエイジ』にて連載された。タイトルは『彼岸花の咲く夜に』と、「咲」を赤文字で表記することもある。 2011年には、竜騎士07代表のサークルの07th Expansionにより同人ゲーム(サウンドノベル)として制作されている。 学校妖怪七席 ダストダス:校長先生 4コマ大百科ネタ コメント 名前 コメント すべてのコメントを見る 草案 主要キャラクター ゴチミル:彼岸花 長い黒髪でリボンを着けているので ピカチュウ:守谷鞠枝/めそめそさん 主人公且つポケモン4コママンガ劇場ではいじめられキャラなので めそめそさん編からの登場人物 ドサイドン:金森義仁 -- (ユリス) 2017-08-27 21 20 18
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登録日:2018/12/24 (月) 23 10 10 更新日:2023/08/17 Thu 20 20 40NEW! 所要時間:約 8 分で読めます ▽タグ一覧 3DS いじめ ゲーム ニンテンドー3DS フリュー 同人ゲーム 彼岸花 彼岸花の咲く夜に 竜騎士07 「彼岸花の咲く夜に」は、原作 竜騎士07(07th Expansion)による漫画作品、及び同人ゲームである。 なお漫画版は同人ゲーム版発売に先駆けて連載が開始されているが、本項ではエピソード数が多く原作者自身が執筆してる同人ゲーム版をメインに取り扱う。 ●目次 【同人ゲーム版】 【漫画版】 【その他】 【同人ゲーム版】 「めそめそさんが出たんだって」 「めそめそって泣いてたのを聞いたんだって」 “めそめそ、めそめそ。そこのあなた、哀れな私の話を聞いて下さいな。“ ◆概要 07th Expansion製作のサウンドノベルであり、2011年夏のコミックマーケット80で第で「第一夜」、同年冬のコミックマーケット81では「第二夜」が頒布された。 同サークルの『ひぐらしのなく頃に』や『うみねこのなく頃に』と同様のサウンドノベルであるが、前2作とは異なり1夜ごとに7つのエピソードが含まれる短編集である。 キャラクターの立ち絵は竜騎士07が担当しており、影の部分を強調した彩色が施されている。 とあるマンモス校を舞台として小学生、教師、学校妖怪の交流を描く作品だが、学校という閉鎖空間の異常性を強調する作風となっており「いじめ」「虐待」「自殺」などの陰惨な描写が多い。 その為、妖怪等は多数登場するがジャンルとしては怪奇ホラーより社会派ホラーに近い。 特にいじめに関しては複数のキャラクターが独自のスタンスで対峙している描写が見られ、本作の主題の一つと言える。 ◆収録エピソード 『第一夜』 「めそめそさん」 「心霊写真機」 「お姫様の嘘」 「鎮守神さまの祠」 「ハメルンのカスタネット」 「とある少女の一日」 「ユートピア」 『第二夜』 「お月見会」 「13階段の死神」 「鏡の世界へようこそ」 「少年たちの肖像」 「私の親友」 「復讐のアザミ」 「彼岸花の咲く前に」 ◆登場人物 [主要人物] 『森谷 毬枝』 「めそめそさん」から登場するキャラクター。めがね。多くのエピソードに登場する本作の主人公的人物。 気の弱い少女であり学校ではいじめられ、家庭では優秀な姉の陰に隠れて親からあまり省みられていなかった。 担任である金森義仁の助力により学校生活は多少改善されるが、今度はその金森に弱みを握られ旧校舎のトイレで性的虐待を受ける日々を送ることになる。 彼岸花との出会いで学校妖怪の存在を知り、新しい妖怪『めそめそさん』として生きる決意をするも金森に返り討ちにあい、遺体を便槽に遺棄されてしまう。 金森に勝利し正式に『めそめそさん』と認められて以降は、悩む少年少女たちを助けようとしたり、トイレを掃除したり、彼岸花のワガママに付き合ったりしながら暮らしている。 『彼岸花(踊る彼岸花)』 「めそめそさん」から登場するキャラクター。毬枝と共に多くのエピソードに登場する。 学校の七不思議序列第三位「保健室の踊る人形」として保健室を根城とし、他の学校妖怪にも恐れられる凶悪な存在。 子供に怪我をさせる事で保健室通いにし、怪我による現実からの逃避を教え込んだ末に自殺へと導く狩りを得意とする。 普段は保健室に飾ってある西洋人形とよく似た赤と白のドレスを着用しているが、気合を入れる時はより豪奢な姿をとることもある。 一見物静かな佇まいだが、獲物や邪魔者に対しては容赦なくその残虐性を顕にする。しかしながらその本質はズボラでぐーたら。 保健室のテレビで深夜アニメを見たり、毬枝の持ってきたお菓子をだらだら食べる姿に凶悪妖怪の風格は見られない。 「彼岸花の咲く前に」では彼女の前日譚が語られ、意外な一面を見ることができる。 [学校妖怪七席(*1)] 『校長先生』 序列第一位。「心霊写真機」で登場。 校長室の動く写真から抜け出たと噂される存在で装飾過多な西洋紳士のような出で立ちで現れる。 魂を食らった存在を人間世界から消す能力(*2)を持ち、魂の献上と引き換えに学校妖怪の狩りの後処理を行う立場を担う。 実際作中だけでも相当数の児童が自殺や事件で死亡しており、その能力の重要性が窺える。 『イザナミ』 序列第二位。「13階段の死神」で主に登場。 段数の増えた「13階段」を踏んだ人間に憑りつき、夢の中に現れて四十九日間追い回す。 1日ごとに追跡の時間は長くなり、追いつかれると永遠に胃袋で消化されることになる。 本人の性格は松岡修造を敬愛する熱血漢であり、魂を食らう為というより走る事の楽しさを広めるために狩りを行っている節がある。 普段はコタツ布団にしか見えないマントを羽織っているが、その下に着ているのはピンクのジャージ。 その姿で体育教師として体育の指導をする姿も見られた。 『彼岸花』 序列第三位。詳しくは主要人物の項を参照。他の妖怪の獲物に手を出す姿がしばしば見られる。 『アザミ』 序列第四位。「復讐のアザミ」で主に登場。 第七位スミレの姉であり、和服を着た妙齢の女性の姿で現れる。 いじめられっこにのみ発見できる魔法のアザミを食べさせることにより、いじめられっこに力を与えいじめるほうの立場へと変える。 一見すると慈悲深い物腰でいじめ返すことの正当性を説くが、真の目的はいじめの方向性を反転させ続けその内容を苛烈にしていく事である。 『キョウ』 序列第五位。「鏡の世界へようこそ」で主に登場。 現実世界と鏡の世界の境界を守る妖怪。動物霊であり尻尾と耳の映えた和服の男性の姿で現れる。 様々な物が反転した鏡の中の世界を自由に出入りすることが可能であり、キョウだけはどの世界でも性格や行動の反転が見られない。 人間に悪意を持っているとの説明があるが、事実その言動には邪気眼闇を感じる。 『ルノワール』 序列第六位。「少年達の肖像」で主に登場。 普段は休眠状態で滅多に狩りを行うことはなく、他の妖怪と獲物がかち合うことも少ないため弟のように扱われている。 『ルノワールに絵筆を借りてはならない』『ルノワールは美術室に掛けられた絵を指して、作者が誰かを尋ねてくる。その画家の名を正確に答えなければいけない』等のルールを破った人間を絵の中に引きずり込み、その絵に相応しい方法で殺害する。 容姿は中性的な少年。それ故に厄介な人間に目をつけられる。 『スミレ』 序列第七位。「ユートピア」で初登場。 日本人形として茶道室を根城にしており、和服を着た少女の姿で現れる。 かつては座敷童として子供に混じって遊ぶ妖怪だったが、時代の変化によりいじめを狩場とする性質に変化。 いじめやすい人物の姿で集団に紛れ込む事で周囲にいじめの魅力を教え込み、その被害の拡大を目論む。 彼岸花をライバル視しているが主に泣かされている模様。 第四位アザミの妹であり、姉をほめるつもりで余計な事を口に出してはこれまた泣かされている。 『めそめそさん』 序列第八位。旧校舎のトイレですすり泣く毬枝の声に尾鰭がついて怪談化した噂であり、後には毬枝自身が襲名した。 「扉越しの問いかけに答えると全身の骨を砕かれて殺されてしまう」という噂話の通りに扉を挟んだ状況には強く、そうでなくとも剛力の妖怪として知られるようになる。 [その他の妖怪] 『紅茶紳士』 「お姫様の嘘」で登場。 学校妖怪としての序列は持たないが校長先生の右腕を担っており、その為に他の妖怪からは「教頭先生」「影の序列2位」などと呼称される妖怪。勲章やバッジを多く身に着け、ティーカップを携えた紳士のような姿で現れる。 嘘を信じさせる力を持ち、子供たちを辛い現実から遠ざけ夢の世界に誘い込む。口癖は「気にしないことです」。彼の見せる幻で現状が改善することは無いが、同時に苦境を思い悩んで自死するようなこともなくなるため、そのような逃避も時には必要である旨が作中でほのめかされている。 一部では現実の学校における教頭と等しい存在であるような描写も見られた。 『さくのしん』 「鎮守神さまの祠」で登場。 鎮守の祠に住み着き付近の動物を治めている存在であり、正確には妖怪ではない。ちくわやはんぺんが好物。 外見はうみねこに登場したさくたろうと同一であり、一種のファンサービスだと考えられる。妖怪同様に一部の感性が鋭い人間以外には視認できないが、本人はやや臆病で心優しい無害な性格。 『ハメルン』 「ハメルンのカスタネット」で登場。 本作では珍しい学校外から縄張りを狙ってやってきた妖怪。自称「音楽室のハメルン」。 目元を隠すマスクとマントという、如何にもな怪人といった姿で現れる。素顔は美形らしいが残念ながら披露の機会は無い。 自身の奏でるカスタネットを聞かせた相手を動物に変える力を持ち、本編では子供たちや彼岸花をウサギに変えた。学校妖怪の地位を狙って彼岸花に挑むも、ウサギの彼岸花に内臓を食い破られて敗北。作中では唯一の消滅した妖怪となった。 『悪魔』 「私の親友」に登場。 死んだ親友を蘇らせるために桜田 みちるが召還した悪魔。 生活の一部を捧げることと引き換えに死者の魂を呼び戻すなど実際に悪魔らしい力を持つが、会話内容は常識的で細かい規則等も教えてくれる。学校妖怪ではないが、彼岸花とは比較的親しげに会話をしていた。 当該エピソードではそこそこ出番も多く重要なキャラなのだが、立ち絵が存在せず資料室でも特に語られることはなかった(*3)。 【漫画版】 月刊ドラゴンエイジ2010年5月号より連載が開始された。作画はつのはず壱郎。全6巻。 ゲーム版の第一夜から「めそめそさん」「心霊写真機」「お姫様の嘘」「ユートピア」を抜粋する形となっており、6巻には本作を題材とした小説コンテストの受賞作もコミカライズして収録されている。 ゲーム版と展開において大きな差異は無いが作画担当の性癖個性が遺憾なく発揮されており、(登場する少女たちが妙にムチムチしているだけでなく)いじめの描写や顔芸も鬼気迫るものとなっている。 【その他】 『学校妖怪紀行 第八怪談募集中』 ドラゴンエイジピュアで連載されていた本作のプロトタイプとなる小説作品(*4)。「学校妖怪紀行〜葉〜」として漫画連載も行われたが雑誌の休刊等により短期で終了している。大筋は後の「めそめそさん」に近いものだが細部の展開は異なる。 『3DS版』 フリューのインディーADVシリーズ「カタルヒト」の第一弾として本作の第一夜が発売されている。 さぁ、行きましょう。踊る彼岸花の手を取って。 残酷だけれど美しい世界へ、追記・修正の世界へようこそ…。 △メニュー 項目変更 この項目が面白かったなら……\ポチッと/ -アニヲタWiki- ▷ コメント欄 [部分編集] 今までなかったのか。この調子でローズガンズデイズの項目もお願いします -- 名無しさん (2018-12-25 18 18 22) 3DS向けに一夜だけ移植されたけど、なんで二夜も出してくれなかったのか。カタルヒトシリーズ自体のウケが悪かったのか -- 名無しさん (2019-02-22 22 40 13) 彼岸島で吹く夜に? -- 名無しさん (2023-08-17 20 20 40) 名前 コメント
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彼岸花 作詞/PZP 親しんだ街の 交差点 片隅に置かれた 花束が そこにある存在だった 誰かが言った 『運命は確率ではない』 儚い想いと 無惨な話だ 悲しみブルー 笑えない 果てしなく 広い世の中だと 自分のまわり しか 見られない 見下ろすと そこにある花束 サヨウナラ しか 言えなかった。 音源 彼岸花(オケ) 彼岸花(メロ)
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このページはこちらに移転しました 彼岸花 作詞/PZP 作曲/60スレ227 親しんだ街の 交差点 片隅に置かれた 花束が そこにある存在だった 誰かが言った 『運命は確率ではない』 儚い想いと 無惨な話だ 悲しみブルー 笑えない 果てしなく 広い世の中だと 自分のまわり しか 見られない 見下ろすと そこにある花束 サヨウナラ しか 言えなかった。 音源 彼岸花(PZPver)(オケ)HUG 彼岸花(PZPver)(メロ)HUG (このページは旧wikiから転載されました)
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作詞:オカメP 作曲:オカメP 編曲:オカメP 歌:初音ミク 翻譯:kyroslee (取用翻譯前請注意首頁的翻譯使用禮節, 並不要拿掉譯者的名字) 彼岸花枯楬之時 從灼熱的雙目流下的赤紅淚水 瘠薄的希望和夢想 伴隨幽暗天空一同消逝 被人粉飾裝點的花兒們的 故事即使閉合起來 騷動的記憶與後悔的聲音無法平息 彼岸花盛開之時 少女彷似誘惑般 委身於純潔的情慾之中 然後 為悲哀而打動內心 因悲痛的內心而郁悶 夜幕無盡幽深 無緣無故湧現而出 悲嘆着那被慾望沾污的你 僅是如此便使乾涸的內心得以治癒 捉緊那伸出了的手吧 不要離去 墮落了的我的內心為流下的淚水所沾染 想念着那被慾望沾污的你 僅是如此便使乾涸的內心得以治癒 遠方朦朧暗淡的聲音 溶化於天空之中 徹底忘卻然後墮落了 我的心已死 此刻灼熱的雙目什麼都沒流下 瘠薄的希望和夢想亦然 在彼岸花枯楬之時
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いらっしゃいませ!ようこそ! ここはオンラインゲーム「ラテール」にて活動中のギルド、「彼岸花」のHPです。
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カード画像 基本情報 カード名 彼岸花の李狐狸(ヒガンバナノリコリ) / Hula of the Spider Lily カード種類 ユニット レベル 2 所属軍 東妖 属性 怪異魔術師 ATK 2 HP 2 STK 1 カードID 2021GB03-060 レアリティ ★★★★ イラストレーター 七原しえ カードテキスト 【創生召喚】通常:これと、味方の怪異か魔術師のユニット1体以上を素材にしてデッキの下に置く。そうしたら東妖かウォルナーの、神か魔王かドラゴンを1体デッキから特殊召喚してもよい。■「救荒」 君のメインフェイズにこれが手札から捨てられた時、これを特殊召喚してもよい。そうしたら君は1ダメージ受ける。■これが場から墓地に置かれた時、相手は場の自身のカードか手札を1枚墓地に置く。 フレーバーテキスト 今を生き残らなければ、そもそも未来など無いじゃない。 ■解説・総評 関連 収録パック 第三弾「エース参戦!」 名前