約 2,348,911 件
https://w.atwiki.jp/ryouohgakuen/pages/50.html
―――週末、泉邸。 ズキューン、バキューン、ティウンティウン 「あっ、くそっ、またやられたっ!」 こなた「ふふーん、精進が足らんよキミ~」 「もう一回!今度こそ勝つ!」 こなた「ふははは、何度でもかかってきたまへ~」 かがみ「・・・飽きないわねーあんたら・・・」 みゆき「ふふっ、いいですよねこういうの」 つかさ「どんだけ~★」 かがみ「・・・つかさも飽きないわね・・・」 ガチャッ ゆたか「・・・みなさん、おやつにしませんか~」 こなた「おぉっゆーちゃんナイス!とゆーわけで一旦休憩~」 「くそー。負けっぱなしで休んでなんかられるか、修行だ修行!」 ゆたか「ダメですー。休憩しましょう先輩っ」 ギュッ 「こ、小早川さん!?」 ゆたか「えへへっ///、こっちこっち」 「え、あの、ちょっ」 ゆたか「はい座って下さいっ。」 「あの・・・」 ゆたか「ぷぅ。早く座って下さいっ」 「は、はい・・・」 ゆたか「先輩は、飲み物何がいいですかぁ?」 「あ、あの、小早川さん」 ゆたか「コーラも、紅茶もオレンジジュースも有りますよ。」 「いやだから小早川さ・・・」 ゆたか「あ、先輩はコーヒー派ですか?だったらすぐに入れてきて・・・」 みなみ「・・・・・・ゆたか」 ゆたか「ぎくッ!!!」 みなみ「・・・近すぎ、離れて」 ゆたか「み、みなみちゃーん」 みなみ「ゆたか?」 ゆたか「は、はい~」 そう。 私は今日、母の用事をキャンセルして、泉先輩の家にいる。 母は悲しんではいたが。 でも『好きな人と一緒にいるため』と言ったら目を輝かせていたから、気にしなくていいと思う。 そんなわけで、私は先輩の隣に腰を下ろす。 自然と、何の違和感もなく、先輩とくっついて、座る。 周りの人たちも、もう何も言わない、今朝からの風景。 ゆたか「う~、みなみちゃ~ん」 みなみ「・・・聞こえない」 ゆたか「ふえ~ん」 みなみ「泣いても許さない」 ゆたか「ぷぅ。みなみちゃんばっかりズルい」 みなみ「恋人だもの」 ゆたか「・・・うぅっ、告白はさせてくれたのにっ」 みなみ「好きになるのは自由。でも先輩の恋人は私。」 ・・・そう。 あの後、泣き疲れて二人眠ってしまった後。 実は、なんと、呼び出して、告白したのだ。 ゆたかが。先輩に。 私は、行かなかった。 先輩を信じていたから。 ゆたかを、信じていたから。 結果は、聞いていない。 聞く必要もない。 こなた「いーねー。ラヴラヴだねぇ。両手に花だねぇ。」 「あのね・・・こなたさん・・・」 こなた「ついでに私たちも攻略してみる?ハーレムフラグは立ってると思うよん?」 「やめて・・・」 こなた「特にかがみんとk」 ゴツッ かがみ「・・・殴るぞ」 こなた「だから殴ってから言わないでってばっ(泣」 かがみ「くだらないこと言ってるからよ。ほら、みなみちゃん怒ってるじゃない」 みなみ「いえ・・・私は・・・」 想像してみる。 ソファに座っている先輩。 ゆたかをひざにのせて。 右側に私。 左側にかがみ先輩。 背中からみゆきさんがしなだれかかって。 足元に泉先輩。 つかさ先輩がお茶を入れて。 ・・・すごく、頭に来た。 「い、岩崎さん?なんかオーラが・・・」 みなみ「駄目です」 「はぃ?あの、何を・・・」 みなみ「絶対駄目です」 「いや、だから」 みなみ「満足させますから」 「は!?いわ、岩崎さんっ!?」 みなみ「は、恥ずかしいですが、先輩が望むなら、何でもしますから」 「はい!?」 みなみ「だから、私だけを見て下さい」 「お~~~い!岩崎さんっ!!何を言っちゃってくれますか!?」 慌てる先輩。珍しく、私が主導権を握った瞬間。 ・・・だけど。 みなみ「・・・先輩は、こんな私は、キライですか?」 「えっ???」 空気が止まる。 ただのふざけあいだったはずが、私も先輩も、真剣な顔になる。 みなみ「私は、こんな嫉妬深い女です」 みなみ「先輩が、私を好きだって言ってくれた頃の私なんて、消えて無くなってしまうくらい」 みなみ「きっと、もっと嫉妬深くなります」 みなみ「先輩を、困らせます」 みなみ「先輩が、好きです」 みなみ「たとえ嫌われても、好きです」 みなみ「嫌いになんて、なりません」 みなみ「・・・先輩は、こんな女、キライですか?」 「岩崎さん。」 ―――抱き締められた。 強く、強く。 そして、優しい、声。 みなみ「・・・先輩」 「俺は、岩崎さんが好きだ。」 みなみ「・・・はい。」 「これから、たぶん、もっと好きになるよ。」 みなみ「・・・はいっ」 「だから、俺のことも、もっと好きになって欲しいな。」 みなみ「・・・はいっ!」 少しだけお互いの体を離す。 見つめ合う、私と先輩。 だんだんと、顔が、近付いて。 そして・・・ みなみ「・・・んっ・・・」 こなた「・・・あー、ゴホン。お二人さんお二人さん?」 「・・・はっ!!!」 みなみ「!・・・あっ」 驚いて、飛び退く。 振り返ると、周りは皆食い入るように私たちを見つめていた。 皆、顔は赤い。 当たり前だ。目の前で、いわゆる『ラブシーン』を演じられたのだから。 こなた「いやーアハハ///、滅多に見られないもの見せてくれたトコ、悪いんだけどねぇ」 つかさ「///こ、こなちゃん、凄く良い雰囲気だったのにぃ///」 かがみ「い、いや///・・・あれで正解でしょう、さすがに。」 みゆき「・・・は、はぅ////・・・素敵でした」 ゆたか「・・・うぅ~」 「あ、アハハハハハハ、ハ」 みなみ「//////」 私は、先輩が好き。 ゆたかも、先輩が好き。 きっと、他にも、先輩を好きな人が、できる。 ・・・選ぶのは、先輩。 そして、先輩を選んだのは、私。 私は、今まで通り先輩を好きでいればいい。 先輩に、好きでいてもらえるように、努力すればいい。 いつか、例えば、ゆたかを選んでしまう日がきても。 また、取り返せばいい。 それは、嫌な気持ちじゃない。 好き。 先輩も、ゆたかも。 これは、矛盾しない。 そう、これが――― 人を、好きになるということだから。
https://w.atwiki.jp/ryouohgakuen/pages/118.html
―――翌日、昼休み屋上。 ゆたか「・・・で、あっさり断ってきちゃったんだ。」 みなみ「うん。」 ・・・さっき、告白の返事をしてきた。 返事は、ただ二言。 『・・・好きになってくれてありがとう。でも、ごめんなさい。』 ・・・相手は、本当に、辛そうな、悲しそうな顔で、去っていった・・・ ゆたか「・・・ええと、私と先輩との会話はどこにいっちゃったの?」 みなみ「・・・それは、ゆたかだもの・・・。先輩だって、他の人ならちゃんと断ると思う」 ゆたか「・・・優しさ、は?」 みなみ「優しいから、断るの」 ゆたか「・・・ぇええ・・・」 ・・・ちなみに、ゆうべのことも、ゆたかには話した。 ゆたかも、あの日、先輩に話したのだし。 ゆたか「・・・なんか、みなみちゃん、図太くなった?」 みなみ「・・・そうかも・・・」 いろいろな気持ちを知る度に、なんだか少しずつ変わっていってる。 もちろん、一度には変われない。変わった気になってはいても、すぐに元に戻る。 ・・・でも、確実に。 前には進んでいるはず――― ひより「・・・あ、岩崎さーん!小早川さーん!」 ゆたか「・・・あれ、田村さんだぁ」 みなみ「・・・うん」 田村さんが駆け寄ってくる。かなり走ってきたらしく、息が荒い。 ひより「・・・っ、ハアハア、岩崎さん岩崎さんっ」 みなみ「・・・お、落ち着いて・・・どうしたの?」 田村さんが詰め寄ってきた。目には、怪しい光を携えて。 そして。 ひより「聞いたよ、聞いたっスよ~。告白されたんだって?」 みなみ「・・・ぇ、えっ?誰から?」 何故?私なんかの話題が、こんなに早く広まるの? ひより「もうクラス中のウワサだよー。岩崎さんが、一年のアイドルを振った、って」 みなみ「・・・アイ、ドル・・・?」 ・・・何、それ。 ひより「知らないの?相手の人、1年で一番カッコいいって、クラスでも有名なんだよ?」 ・・・いや、そんなこと知るわけが・・・たしかに、いい人だとは思ったけど・・・ ひより「狙ってる子も多くて、平和協定なんかも結ばれてるくらい。学園の王子様だね。」 ゆたか「お、王子様・・・?」 みなみ「・・・ぇ・・・え・・・?」 ・・・何、この展開 ひより「・・・おかげで大騒ぎ。私にもみんな『なんで?岩崎さん彼氏いるの?』って」 みなみ「・・・・・・・・・・・・ぇ」 ちょっと待って。まさか。 ひより「・・・いやー、だからその、三年生の恋人がいるよ、って言っちゃったー」 みなみ「・・・・・・・・・ぇ」 何故。どうして。 ひより「・・・しばらくうるさいかもねぇ。他の狙ってた子とかから」 ゆたか「・・・・・・えーと・・・みなみちゃん・・・」 みなみ「・・・・・・何も言わないで・・・」 みんな知ってる。 ・・・ということは、その彼にも。時間の問題。 みなみ「・・・・・・・・・・・・ハァ・・・」 ゆたか「そ、その・・・ふぁいとっ」 みなみ「・・・うぅぅ・・・」 ・・・もうしばらく、溜息は続きそうだ。
https://w.atwiki.jp/ryouohgakuen/pages/115.html
「言ってみれば、出来レースって言うか。 相手は俺が当然断るのを知ってて、相手もそれを望んでいて、俺もそれをわかっていて。 それでも、そうせざるを得ない状況で。」 みなみ「・・・・・・・・・・・・」 「・・・苦しかった」 苦悶。先輩の横顔は、ひどく歪んでいた。 「『ゴメン』、って、ただ一言言えば、それで終わりなんだけれど」 「・・・どうしても、言葉にならなくて」 「・・・ただ、しばらくじっと固まってた」 「そうしたら、小早川さんが、言ったんだ」 ―――『ゴメンナサイ。先輩を困らせるつもりじゃなかったんです』 『ただ、伝えたかっただけ』 『答えは、いりません』 『だから、せめて』 『・・・嫌わないで、いて下さい』 『・・・それだけが、私の願いです。』 みなみ「・・・・・・・・・先輩」 「これで終わり。・・・情けないよなぁ、俺には、岩崎さんがいるのに。」 みなみ「・・・そんなこと、ありません」 よく、わかる。私だって、そうだから。 ほとんど知らない人に言われた私でさえ、こんなに心苦しいのに。 ・・・先輩は、ゆたかに言われたのだから。 みなみ「・・・先輩」 「・・・・・・・・・」 みなみ「・・・先輩は、情けなくなんか、ないです。」 「・・・でも、俺は・・・」 みなみ「先輩」 私は、先輩の手を、取って。 みなみ「・・・情けないから、断れなかったんじゃ、ないです。」 先輩の手を、強く握って。 みなみ「・・・それは、きっと。」 ・・・先輩の目を、見て。 みなみ「・・・先輩が、優しいから。優しすぎるから。」 それは、時には、ただの優柔不断に思われるかもしれないけれど。 みなみ「優しすぎて、壊れてしまうくらいに」 みなみ「・・・先輩の心が、暖かいから。」 「・・・岩崎、さん」 みなみ「・・・ありがとう、ございます」 みなみ「少しだけ、わかりました」 みなみ「・・・人に、好きに、なってもらった気持ち」 みなみ「嬉しいけど、苦しい気持ち」 みなみ「・・・とっても、難しい気持ち。」 「・・・それじゃあ、おじゃましました。」 母「ええ、またどうぞ。・・・でも、できれば今度は、昼間にね?」 「・・・う///ハイ。」 母「それじゃ。みなみ後はよろしく~」 ・・・もう、日は変わった。明日も学校だ。先輩も早く帰らなくては。 「・・・岩崎さん、ゴメンね?相談に乗りに来たのに逆に乗られちゃった感じだ。」 みなみ「・・・そんなこと・・・ありません。すごく参考になりました。ありがとうございます」 「そう?」 みなみ「ハイ」 「・・・・・・なら、良かったよ。また明日、っと、今日、か。学校でね?」 みなみ「・・・・・・はいっ」 ・ ・ ・ 母「行った?」 みなみ「・・・うん」 母「・・・泊まっていけばいいのにね~」 みなみ「っっ!なっ//////」 母「冗談よ。お父さん仕事でいなくて良かったわねぇ。いたら、何て言われることやら」 みなみ「/////////」 母「さ、早く寝なさいよ~」 みなみ「///・・・うん。」 今日、知った事。 それは、誰かを好きになるよりも、 ・・・誰かが、自分を好きになった時の方が、大変だということ。 ・・・だって、それは、人の気持ちだから。 自分の気持ちだって、簡単には変えられないのだから。
https://w.atwiki.jp/ryouohgakuen/pages/45.html
「・・・落ち着いた?」 みなみ「・・・ハイ」 あれから数分。ようやく呼吸も落ち着き、冷静に考えられるようになった。 それでも、さっきの醜い自分を思い起こすとまた苦しくなるが、これ以上迷惑はかけられない。 無理やり思考を外に追いやり、精神を安定させる。 ゆたか「みなみちゃん、大丈夫?いったいどうしたの?」 ゆたかが、まるで自分のことのように私を心配してくれる。 これではいつもの逆だと苦笑したところで、またしても自分の醜さに気付く。 いつもの逆。いつも。 いつも、私はゆたかを助けて『あげてた』。そんな傲慢。 ・・・違う。 みなみ「ゆたか。」 ゆたか「えっ?」 少し、詰め寄るような言い方で。 みなみ「・・・話が、あるの。ゆたかの家に、行っていい?」 ゆたか「え、え、あ、うん。いいけど・・・」 そう言ってゆたかは先輩を見る。 先輩は、いったい何事か、といったようなまなざしで私たちを見ている。 みなみ「先輩、すみませんが、ゆたかと二人で話がしたいんです。 失礼していいですか?」 「は、はい??・・・あ、あぁ、うん。わかった。じゃあ、俺は一人で先に帰るよ」 二人とも、流れについて来れないようだが、なんとか私の意図は理解してくれたらしい。 「えっと・・・先に帰るけど・・・岩崎さん、体は本当に大丈夫?」 みなみ「はい」 原因はわかっているのだから。何も心配はいらない。それを伝えることはできないけど。 ただ一言大丈夫だと伝えると、先輩は安心して荷物を抱えた。 「じゃあ、二人とも、また明日。小早川さん、もし岩崎さんに何かあったらすぐ連絡してね」 ゆたか「はい、わかりました。お疲れさまでしたー」 去り行く先輩の後ろ姿を、二人で見つめる。 横目で見たゆたかは、やっぱりどこか淋しそうで。 それを見た私は、また、胸が痛んで。 みなみ「ゆたか」 ゆたか「えっ、あ、うん。何?みなみちゃん」 二人、向き合う。ゆたかの眼は、もう普段通り。 私の錯覚なら良かった。光の加減とか、角度とか。 でも、その眼は。 先輩を見つめる時と、それ以外とでは、こんなにもちがうから。 だから私は、聞かなくてはならない。 みなみ「・・・ゆたか。」 ゆたか「・・・う、うん。」 何を言われるのか、困惑しているゆたか。 いや、もしかしたら、何を言われるか分かっていて、ただそれを恐れていたのかもしれない。 でも私は言わなくてはならない。 自分の醜さと向き合うために。 みなみ「ゆたか。先輩のこと・・・好き?」 ゆたか「!!!」 ゆたかと、そして、私自身と、闘わなくてはならないのだ。
https://w.atwiki.jp/rowacross/pages/33.html
,. --- 、 ,. ´ \ / ト i | i | . ハi .ヽ l i l丁「∧| ,什ト リ、 | |i. 代テf! j/ィ'テf! .i .ト! Vr1 .{ .「´ `' リ . | .|. ヽ〉从 ト、. __'__ ,ィ! . i ハ 川 i .》≧寸V ∧/ ´ /ィ |で笊ゝ ≧ァTT个rミ、. ¨7=i=l!=≦フ `了 .「| . .| | ._| 辷〉 ー' 「泥棒猫は死ねばいい……」 6/の嫁。当初はネット的な意味での嫁だったが、カオスロワ5期で結婚式を挙げ本当の意味での嫁となった。 キャラ崩壊続出のカオスロワらき☆すた勢において、原作の面影を留める数少ないキャラであった。 ……のだが、クロススレでは6/を愛するあまり彼に近づく女性を排除しようとするヤンデレ気質が生まれている。 特にカオスかがみに対しては並々ならぬ敵対心を抱いており、面と向かって罵倒の言葉を吐いたりしている。
https://w.atwiki.jp/ryouohgakuen/pages/42.html
自分が、駄目な人間だということは知っていた。 家族以外とは、マトモに会話が出来なくて。 いつも孤立して、独りでいて、いつしか、そんな自分にも慣れてしまって。 ・・・それでも、少しは変われたと思う。 友達ができたから。守りたいと思える、大事な友達が。 ゆたかが、いてくれたから。 ゆたかのおかげで、私は少しだけ前に進めた気がする。 何人か、友達も増えた。優しい先輩たちとも知り合えた。 そして、・・・恥ずかしいのだけれど、その・・・好きな・・・人も、できた。 自分の世界が、瞬く間に広がって・・・まるで自分の体じゃなくなってしまったみたい。 だから、知ってしまった。 自分が知らなかった自分を。 知らなかった。 こんなにも、自分は、弱くて、・・・醜い人間なのだと言うことを。 そうして、先輩は私の隣に立って歩き出した。 近すぎず、遠すぎず。今の私と先輩を現しているかのような、曖昧な距離。 今はまだ、これでいい、とも思う。また、もう少し近づきたいな、とも思う。 どうしたいのかはよくわからないけど、不快ではない、恥ずかしいけど、心地よい悩み。 それが、ちくりと刺すような痛みに変わったのは、最近の話。 変わったのは私でもなければ、先輩でもなく。 ただ、ゆたかの居場所が変わっただけ。 今、ゆたかは・・・先輩の隣に。私の、反対側にいる。 会話も、先輩の周りが、大半を占めるようになった。 並びが変わった事に戸惑っているわけでも、中心から外れた事を寂しがっているわけでもない。 ただ、見えてしまっただけ。 今までは左右に見ていた二人を、同時に視界に入れた時に。 その中で、ゆたかが先輩を見ている眼を。 ・・・私と、同じ眼で・・・先輩を見つめるゆたかを。 いつからだろう。知ってしまったのは。 ゆたか「あ、先ぱーい!」 「あ、小早川さん、岩崎さん、こんにちは。」 優しい声。私の心を包み込んでくれるような、暖かい声。 みなみ「・・・こんにちは。」 ゆたか「こんにちは。今お帰りですか?」 「ああ、日直でね。こなたさんたちはもう帰ってるよ」 そう言って苦笑いするあの人の顔も、たまらなく愛しくて、つい見つめてしまう。 ゆたか「そうなんですかー。じゃあ一緒に帰りましょうか。 ・・・って、当たり前ですね。愛するみなみちゃんがいるんですしねっ」 「はは、そうだね」 時折交わす冗談は、私があわてるのを完全に分かっていて。何度言っても止めてくれなくて。 みなみ「ゆ、ゆたか・・・///」 ゆたか「あー、みなみちゃん照れてるー」 みなみ「//////」 「行こうか、岩崎さん」 みなみ「・・・はい。」 それでも、いや、だからこそ恥ずかしいくらいに、私はこの人が好きなのだと思う。
https://w.atwiki.jp/ryouohgakuen/pages/112.html
先輩、仰天。 「こ、告白って・・・え、岩崎さんが?ぇえ?」 先輩、動揺。 みなみ「・・・落ち着いて下さい。もちろん、明日、断ってきますから」 「ぇ・・・あ・・・そ、そうね。ア、アハハ、ハハハ、・・・はぁ・・・びっくりしたぁ」 先輩、安堵。なんか可愛いかも。 ・・・いや、今はそんな場合じゃない。 みなみ「・・・先輩・・・・・ゆたかに、告白された時・・・・どう、感じました?」 「・・・・・・えっ?」 聞き返す先輩。繰り返す私。 あの時は、聞かなかった。 ・・・今は、聞きたい。あの日の、先輩の思いを。 みなみ「何を、考えました?教えてください・・・あの時、何を、思っていたのか―――」 「・・・・・・・・・」 みなみ「・・・・・・」 ―――質問の後から、先輩は、しばらく目を瞑っている。 私は、一瞬『やっぱり・・・』と、すぐ謝る気持ちになったのだけれど。 今は、黙って待っている。 ・・・ただ、待つ。先輩の言葉を。 「・・・岩崎さん」 みなみ「・・・は、はいっ」 先輩が目を開ける。その目は、やっぱり、いつも通り、とても優しくて。 ・・・最近の、ゆたかの目によく似ていた。 ・・・・・・違う、逆。 ゆたかが、先輩に似てきたんだ。 私が、ただ、先輩の優しさを享受しているだけの間に、 ・・・ゆたかは、大人になったんだ。先輩の背中を追って。 ・・・私も、いつかはこんな目ができるようになるのだろうか? ・・・道は、果てしなく遠い気がした。 ―――そして、先輩が言葉を紡ぐ――― 「・・・あの時」 「・・・小早川さんに、呼び出された時」 「最初は、一体なんだろうって思った。」 「別れる前に色々あったし、なんだか二人とも様子が変だったから」 「ひょっとしたら、喧嘩して相談にでも乗ってほしいのかな、なんて考えてた」 ・・・そう、あの日、先輩には悪いことをしたと思う。 とても心配をかけて、そのくせ勝手に『二人にしてほしい』なんて。 ・・・結局、後で謝った時にも、先輩は笑って許してくれたけど。 先輩の言葉は続く。 「・・・そしたら、いきなり」 「『先輩が、好きです。』って」 みなみ「・・・・・・」 先輩は、微笑んだまま。 でも、やっぱり、さっきよりは、困ったような笑み。 「・・・すごく驚いたよ」 「ずっと、妹みたいに思ってたから」 妹。ゆたかも、最初は、先輩をお兄さんみたいに思ってたのかもしれない。 ・・・でも、ゆたかは、それ以上を望んだ。 「・・・でも、なんとなく、なんとなくだけど、納得できた」 「いや、その、自慢とか、自惚れとかじゃなくて」 「・・・よく、わからないけど、なんていうか」 「ひょっとしたら、そんな『可能性』もあったんじゃないか、っていう」 「・・・ごめん、これじゃやっぱり自惚れかな」 そういって先輩はさらに困ったような顔をする。 自分でもなんて言ったらいいかわからない、というような顔。 ・・・でも、なんとなく、なんとなくだけど、私にもわかるような気もした。 ・・・可能性。 例えば、どこからか同じ人生をやり直せるとして、数回、数十回と繰り返したなら、その中には。 ・・・きっと、私以外の誰かが先輩の隣にいる時もある。 いや、私がいる可能性こそ、本当は少数派なのかもしれない。 数限りない、無限の可能性の中の、ほんの一筋の流れ。 ・・・そこに、今、私はいる。 「うーん・・・」 先輩はまだ、どう言えば良いか悩んでいるようだ。 とりあえず、私は先を促すことにした。 みなみ「・・・大丈夫です。なんとなくわかりましたから。続けてください」 「・・・あ、うん。まあ、その、そんなわけで、告白自体は、なんとか飲み込むことができたんだ」 「・・・そしたら、当然、今度は考えなくちゃならなくなった」 「どう、すればいいか」 「どう言えば、良いか」 「・・・小早川さんは、どんな答えを望んでいるのか。」 みなみ「ゆたかの・・・望み・・・」 きっと、それは・・・ 「・・・ちょっと考えれば、わかることだったんだ」 「小早川さんが、何を考えてるのか」 一瞬、目を閉じる。 ・・・次に開いたその目は、きっと、ゆたかを。 「小早川さんは、断って欲しかった」 「断って、諦めさせて欲しかった」 「俺に、岩崎さんがいるから諦める、っていうんじゃなく・・・」 「・・・俺の口から、はっきりと断って欲しかったんだ、と思う」
https://w.atwiki.jp/kagakyon/pages/499.html
相変わらず残暑が厳しいが、今日は久々に曇りで比較的過ごしやすい気温である。 陽射しも強くないので、夕方になる前に飼い犬の散歩を済ませてしまうことにした。 ……そう理屈を並べて、なんとなく期待を抱きながら出発する。 「あら、みなみさん」 庭から出たところで声をかけてきたのは、私が姉のように慕う高良みゆきさん。 今日は薄着のワンピースを着こなしている。相変わらず何でも似合う人だ。 ……私もワンピースを着てきた方が良かっただろうか。 そう思いはすれど、その発想がなかったのだから仕方が無い。このノースリーブと短パンで行く他になかろう。 「お散歩ですか?」 「うん……今日は涼しいので」 「ちょっとそこまで、ついていってもいいですか?」 「……どうぞ」 ちょっと想定外だが、みゆきさんが一緒の方が心強い。なにしろ、これから会うのは、 「よう、ふたりで散歩か?」 みゆきさんの同級生の……本名不詳の通称キョン先輩だからだ。 「奇遇ですね」 先輩にじゃれつこうとする我が飼い犬を制しながら、予め用意していた台詞を口にした。 つまり、私はこの時間にこの人がここを通るのを知っていた。 実のところ、今日早めに散歩をしようとした真意はこの人にある。 今までも鉢合わせすることはよくあった。あったのだが、大抵は、あいさつを交わしてそれで終わり。 しかし犬を連れていれば、散歩という用事があれば……あわよくば「いっしょにどうですか?」の一言も出てきそうなものだ。 少々強引かもしれないが、手持ち無沙汰でいるよりは上等だろう。 「奇遇というか、最近よく会うよな」 「あら、そうなんですか?」 「岩崎とはな。高良とここで会うのは初めてか……」 「ところで、キョンさん」 まず、早めに白状しておくと、私は女性として重要なある部分が著しく貧相である。胸だ。 おそらくは平均以上のみゆきさんと比べてみると、その圧倒的な差がよくわかってしまう。 お互い薄着をしている今日は特に、だ。だから、 「その……あまり見つめられると……」 「……すまん」 キョン先輩の視線が、みゆきさんに釘付けなのも無理はないことだとは思う。 ……ところで先輩、私もノースリーブで薄着なんです。 胸はありませんが、あなたの前で二の腕を晒しているんです。 誰とも会わないならいざ知らず、あなたが来ることを承知の上でこの服装を選んだんです。 コメントはなしですか、そうですか。 「どうしたんだ岩崎」 「……いえ。別に」 いっしょにどうですか? そんなことを言う気力も失せてしまった。もういいです、みゆきさんとよろしくやっていてください。 「それでは」とだけ言い捨てると、上級生ふたりを残して私と犬は駆け出した。 犬は先輩らと遊べなかったのが名残惜しそうだったが、さすがに付き合いの長い私の方を立ててくれるらしい。 先輩はともかく、みゆきさんには後で謝っておかないと。 しばらくして、雲行きが怪しくなってきた。これは一雨来るかもしれない……せいぜい夕立だろうけど。 そういえば午後からの降水確率は70%といっていた。 降り始める前に散歩できて良かった。 と、思っていたのが5分前。 私は土砂降りの中で立ち尽くすはめになっていた。 そんなまさか。いつもなら余裕で帰れていたはず……いつもより歩みが遅かったということか。 だとしたら原因は、キョン先輩以外に考えられない。先輩、恨みます。 いつまでもこうしているわけにもいかない。私もこの子も風邪をひいてしまう。 適当な軒下を見つけて、勝手にだが雨宿りをさせてもらうことにした。 「おーい、岩崎」 しばらくその場に留まっていると、迎えがやって来た。傘をさし、もう1本の傘を抱えて駆け寄るキョン先輩だった。 話を聞くに、みゆきさんの差し金らしい。気を遣ってくれたと思っていいのか……だとしたら、見透かされていることになる。 「……どうも」 正直、さきほどの怒りが収まってはいないのだが、傘を持ってきてくれたのだから邪険に扱うわけにもいかない。 ……そんな言い訳ができることを、内心嬉しく思っている。 いきなり何かを被せられる。 キョン先輩の上着だった。 「着ておいてくれ。その……目のやり場に困る」 そういえば、私はさっきまで雨に打たれていた。と、いうことは。 …………っ! やはり服が透けていた。薄着なので下着が丸見えで……確認はしていないが、下着まで透けていたかもしれない。 「……見ました?」 「……見た」 「見たんですね?」 「はい、見たんです」 じゃあ責任をとってください。 ……そう言いたかったけど、生来の口下手さが邪魔をする。 いや、言わなくて良かったに違いない。自分で言うのも難だが、私の普段のイメージは冗談とは程遠い。 不用意にそんなことを言ったら本気に取られかね――― 「……その方が都合がいいかも」 「何の都合?」 「いえ、何でも」 それでいて独り言はしっかり漏れてしまうのだから仕方が無い。 そんなことより言うタイミングを完全に逃してしまった。惜しいことをした。 ……何が惜しいものか。 私の胸など、見ての通り、見られても減るものではない……というか、これ以上減られたら困る。 キョン先輩だって私のぺたぺたな胸を見たところで、特に思うこともないだろう。 「そんなことはない」 いやしかし、みゆきさんの胸はしっかりと見ていたではないか。それだけで先輩の全てを判断するつもりはないが…… 少なくとも胸は大きい方が女の子として意識しやすいタイプの人に違いない。 「俺だって、胸のあるなしで全てを判断するつもりはない。岩崎のことは、ちゃんと女の子して扱ってるつもりだ」 ならいいのだが。しかし私の妄想とやらもたくましい。 ありもしないキョン先輩の返事が聞こえてくるとは。 「残念ながら、実際に俺が答えている」 ………………。 「岩崎――独り言には気をつけた方がいいぞ」 …………きっと私は今、とんでもなく火照った顔をしているのだろう。 何か言おうとしても、不器用な口が紡ぐのは「あうあう」ばかり。 これは恥ずかしい。というより先輩、なぜ黙っているんですか。 「いや、すまん。見入ってた」 …………なぜそんな恥ずかしいことを真顔で言われるんですか。もう「あうあう」も出ない。 「岩崎はクールなイメージがあるからさ。そういう表情もするのかと思ったら、つい……な」 はい、よく言われます。 「それに、俺の知り合いにお前とそっくりの奴がいるんだが」 はい? 「これがまた無感動な女子で……もし赤面するなら今のお前みたいになるのかな、と思うと感慨深くて」 とっちめますよ先輩。 ……まあいいです。とりあえずは女の子として見てくれている、そのことがわかっただけで上々の収穫とします。 それで、次はその無感動なお方に会わせてください。 私はその人とは違う、ということを教えてあげますから。 「じゃ、そろそろ帰るか」 犬を一通り撫で回したあと、そう言って先輩は傘を差し出す。ちゃんと2本あるが、私はある決心を固めていた。 さっき言いそびれたしまった言葉。意味合いは違えど、言うのには同等の勇気を要する。 差し出された傘をそっと押し返し、怪訝な顔をする先輩を見据える。 いっしょにどうですか? そう言おうと意を決して、ぐっと力をこめる。 しかし先輩は不意に目を細めて私から視線を逸らし。 「そうか、雨上がってるもんな」 見上げる先輩につられて視線を空に向けると、心地よいほどに青かった。 …………私のバカバカ。 しょげかえる私の横で、我が飼い犬はプルプルと水滴を払っていた。 結局、私たちは傘を無駄にして帰路についた。 しかし陽射しでいくらか乾いたとはいえ、服が濡れたのは事実。雨が強かったためか、キョン先輩もだいぶ濡れていた。 お客さんを丁寧に扱うのは当然だが……母がキョン先輩に躊躇なくシャワーを勧めたのは少々驚いた。 というより、何かを含んだような笑みをたたえて私たちを見ていたのが気になった。 言いたいことがあるならはっきり言って欲しい……私が言えたことではないのだけど。 「岩崎、先にどうぞ」 「先輩こそ」 「いや、お前の方が深刻そうだろ」 「でも……先輩はお客さまで……あ、でしたら、」 「いっしょにどうですか?」 冗談のつもりだったのだが、キョン先輩は卒倒してしまったようだ。 やはり、慣れないことはするものじゃない。 それとも、少し本気で言ってしまったのがまずかったか。 作品の感想はこちらにどうぞ
https://w.atwiki.jp/kagakyon/pages/830.html
だけど―― あの人を好きな人は多い、それは……なんとなく分かる それは涼宮先輩、かがみ先輩、泉先輩――この三人だろう、あくまでもこれは私の主観 仮に先輩達がキョン先輩を好きだろうとも私も彼を諦めはしない。絶対に―― 「みなみちゃん?どしたの?」 ゆたかに言われて我にかえる 「ううん、何でもない」 鼻歌混りで先頭に立つ涼宮先輩と泉先輩を見つめる 「~♪飛ぶより遅く~話すより早く~」 「君の全てを歌おう、世界を見つける為っに♪」 イェイ、とハイタッチをして二人は笑い合う 市街地を少し進んだところにあるカラオケBOXへ向かう、といってもすぐに着くのだけれど 「おいおい遅かったじゃねえか!」 「こんにちは」 「休日に呼び出してカラオケとは珍しいな」 そこにはすでにキョン先輩、古泉先輩と谷口先輩がいた キョン先輩は眠そうな顔をし、古泉先輩はいつもの笑顔で、谷口先輩は……締まりのない笑顔だった みゆきさんはどうしてこんな人と付き合ってるんだろう…… 「流石は我がSOS団の団員ね、今日は特別にワリカンにしてあげるからキョン!感謝しなさいよ」 「いや、なんで俺が払う前提だったんだ」 やっぱり少し言葉が詰まる。顔だってまともに見れない――ホントはあなたを見ていたいのだけれど 「そうか、みなみもか。お互い肩身が狭いな、見てみろよ」 そう言うとキョン先輩はクッ、と顔を動かした。気がつけばみんな予想以上に盛り上がっていた 涼宮先輩と泉先輩はデュエットをしているし合いの手を入れたり茶化したり 「この人お姉ちゃんと似てる……」 「ハルちゃんとこなちゃん上手いね」 「二人ともキャラが立っていますからね、つかささんご一緒にどうです?」 「お、俺達もどうだ?高良」 「ふふ、そうですね」 「アンタらキャラ被ってるってレベルじゃないわよ!」 「……ユニーク」 パッとキョン先輩の方へ顔を向ける、少し考えながら曲を探す姿も――やっぱりかっこよかった 「しかしあれだな、歌える曲が少ないというのは困りもんだな」 そうですね、私もあまり声を出すのは得意ではないので……困ります 「そうか?みなみは歌上手そうだけどな」 いえ……そんな事は…… 「おいキョン!お前一曲ぐらい歌えよ!」 「わりぃみなみ、また後でな」 キョン先輩が曲を入れる。これは聞いた事がある歌手だ 「よっ、待ってましたキョンキョン!」 「せいぜい場を盛り上げなさい!」 「キョン君頑張ってね」 スピーカーから軽快な音楽が流れてくる――これは知ってる曲 はねたリズムの明るい曲だ イントロ中キョン先輩が話しかけた 「どうだみなみ、一緒に歌わないか?」 え?わ、私ですか 「一曲も歌ってないんだろ?だったら今歌っちまおうぜ」 「お、みなみちゃんとデュエット?」 「うーん、キョンキョンはやり手だ」 「みなみちゃん頑張って!」 自信ないな…… そんな事を思いながら曲が始まる ~~~♪ 「♪絡ませる風をとき放とう」 「♪ずっとあなたを待っているはずだから」どんなに辛い事があっても目を背けないで―― 愛しい人よ…… ~~~~~~~~~~ 「上手い!キョンキョンは下手だけどみなみちゃんが上手い!」 「みなみちゃん、才能あるわよ!SOS団の歌姫って宣伝に使おうかしら」 「アンタは人をなんだと思ってるんだ」 良かった……上手く歌えて。キョン先輩の声渋かったな…… その時終了を告げる電話が鳴った 「じゃあカラオケもここで御開きね。ではワリカンで」 と言ってハルヒ先輩は笑顔で手を出した 今日は楽しかったです、キョン先輩、みなさん。また行けたら、ううん、また行きましょう またこのメンバーで……
https://w.atwiki.jp/ryouohgakuen/pages/46.html
――場所は変わって、泉邸。 こなた「いらっしゃーいみなみちゃん。はいお茶。ゆーちゃんもね。」 ゆたか「・・・ありがとう、お姉ちゃん」 みなみ「・・・あの・・・泉先輩」 こなた「ん?どしたの」 みなみ「あの・・・ゆたかと話があるんです。二人だけにしてもらえますか?」 こなた「・・・シリアスな話?」 みなみ「はい。」 こなた「・・・わかった。おとーさんにも近寄らないように言っとくよ。」 みなみ「ありがとうございます。」 こなた「いーよいーよ。ほいじゃ、ごゆっくり~」 みなみ「・・・はい。」 パタン。 ゆたか「・・・・・・」 みなみ「・・・・・・」 泉先輩が出て行ったその瞬間に、再び時が凍る。 家に来るまでも、お互い一言も喋ることはなかった。 私が、あの言葉を発したその時から。 ゆたかの眼は、私を見てはくれない。 みなみ「・・・ゆたか」 ゆっくりと、語りかける。 みなみ「もう一度、聞くよ。先輩のこと・・・好き?」 ゆたか「・・・・・・」 ゆたかは顔を上げない。じっと、何かを考えるように、目を伏せたまま。 みなみ「ゆたか。私は、怒ってるわけじゃない。お願い、答えて」 ゆたか「・・・なんで、そんなこと聞くの?」 ゆたかが、顔を上げる。先程以来、初めて私と顔を合わせてくれた。 それは、笑顔。 ・・・私が今まで一度も見たことのない、ゆたかの、つくりものの笑顔。 ゆたか「嫌いなわけないよ。お姉ちゃんの友達だし、尊敬できる先輩だし。 なんでいきなり、そんなこと聞くの?」 みなみ「・・・ゆたか」 ゆたか「優しいし、面白いし、・・・っ、それに・・・みなみちゃんの、恋人、だよ・・・? そんな人を、キライになるわけ、ない、よ。」 ゆたかは、笑顔を崩さない。 いや、もう、笑顔ではない。 石膏で固められた、仮面。偽りのペルソナ。 それが、悲しくて、哀しくて。 ・・・気がつけば、私はゆたかを抱き締めていた。 ゆたか「・・・っ!・・・みなみ、ちゃん」 みなみ「いいの、ゆたか。言っていいの。」 きつく、きつく抱き締めながら、言葉を探す。 ゆたか「・・・でも・・・でも・・・私、私はっ」 みなみ「『キライじゃない』じゃなくて、本当の気持ちを、教えて・・・?」 ゆたか「・・・っ!!!!」 そう、ゆたかはまだ一度も私の質問には答えてくれてはいない。 それはきっと、口に出してしまえば、止められないから。 友達に気軽に言える『好き』なんかじゃ、もう、なくなってしまったから。 みなみ「ゆたか・・・お願い、もういっかいだけ、聞くから、教えて?」 ゆたか「・・・ひっ・・・グスッ・・・うぇ・・・」 ポロポロと、涙を流すゆたか。 これが、最後になるはず。 そう、最後。 私が、いや、私も。 ・・・仮面を、かぶっていられる、最後。 多分、ゆたかを、ゆるせないから。 醜い自分が、出てくるから。 ののしるかも、しれない。傷つけるかも、しれない。 嫌われるかも、しれない。 でも、知ってしまったから。 何も知らない、『子供』では、いられなくなってしまったから。 だから、聞く。 全てを。 想いを。 願いを。 みなみ「ゆたか・・・先輩のこと、好き?」 そして。 答えは。 ゆたか「・・・・・・・・・好・・・き・・・。好き・・・先輩が、好き・・・好きっ!」