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「ゆーっくり♪ゆーっくり♪」 ここは冥界から程近い野原。人里離れ、妖怪も少ないため、ゆっくり達にとって理想的な生活環境になっていた。 今日も今日とて、沢山のゆっくりが食事をしたり、跳ね回っていたりした。 「むーしゃ♪むーしゃ♪しあわせー!」 お決まりの台詞を吐きながら花を食べるゆっくりれいむ。 その体が突如として宙に浮いた。 「ゆっ?ゆゆっ?」 ひょっとして鳥にでも捕まったのか?それともれみりゃ? 恐怖に捕らわれそうになったれいむだが、頭を捕まれた感覚はない。よく見ると他のゆっくり達も沢山宙に浮いている。 「なんでー?どうしてー?」 まわりのゆっくりと考え込むれいむ。だが浮かんだ疑問は、すぐに消え去った。 生まれて初めての浮遊感。ふわふわと浮かんでゆく感覚が実に心地よい。 「たかーい♪ひろーい♪」 一緒になってはしゃぐゆっくり達。その数は優に一万を超える。心地よい一体感の中、皆一斉に叫んだ。 「「「ゆっくりしていってね!」」」 それより少し時間を遡った、ここは白玉楼。 幽々子と紫がお茶を飲んでいた。だが、その雰囲気は険悪なものだ。 「こしあんのほうが美味しいでしょうに。」 そう言って一匹のゆっくりれいむを口に頬張る幽々子。 「い゛だあ゛い゛い゛い゛い゛い゛ぶぴゅ!」 咀嚼され即座に絶命する。 「貴方は粒あんのことをちっとも分かっていないわ。」 紫がゆっくりまりさを摘んで二つに割る。 「や゛べでえ゛え゛え゛え゛え゛ぶばっ!」 「見てご覧なさい。この小豆、これが大事なのよ。小豆と餡子。分かる?その境界を味わうのが粒あんの醍醐味なのよ。」 説明すると紫は、ゆ゛っゆ゛っと痙攣するまりさの片方を口に運んだ。お茶を挟んで、残った方も食べる。 「分からないわ。貴方長生きしすぎて感性が磨り減ってきたんじゃないの? だからそんな理屈っぽいんじゃないかしら。心の赴くままに味わうのが一番よ。それにはこしあん。」 「駄目よ。そんな浅はかだから千年たっても未だにトゥシャイシャイガールなのよ。もっと思考を働かせないと。だから粒あん。」 またこれか。妖夢が呆れた顔をした。 二人はほぼ一年ごとに、この餡子論争を始める。 そうして結局はお互い説得出来ないまま、次の論争が始まるまで緊張状態を維持し続けるのだ。 今回は紫がお土産にゆっくりを持ってきたのが発端となった。 「じゃあ出ましょうか。」 「そうね。貴方のお家を壊すのは気が引けるし。私は貴方を潰せば満足ですもの。」 二人は空に舞った。 妖夢は茶を持って縁側に座った。毎度の弾幕勝負が始まる。巻き込まれたらひとたまりもない。どうせそのうち疲れて帰ってくるだろう。 だが今回は勝手が違った。 白玉楼の上空。二人が手をかざすと、遠くから何か丸いものが沢山飛んでくる。 「?」 妖夢が目をこらして見るに、それは大量のゆっくりだった。およそ一万。 幽々子と紫が、一匹のれいむを、まりさを、手に取った。 「じゃあ始めましょうか!」 言うが早いかれいむを投げつける幽々子。 「ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛ゆ゛う゛っ?」 「相変わらず単純ねえ。」 言いつつまりさを投げる紫。 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」 二人の間で、れいむとまりさがぶつかり合う。激しい衝撃で二匹は瞬時に四散した。 残りのゆっくりが絶叫する。 「な゛ん゛な゛の゛お゛お゛お゛お゛お゛!」「や゛め゛でえ゛え゛え゛え゛え゛!」 それに気を取られた風もなく、二人はお互いの距離を測っている。 幽々子が手をかざす。十匹ばかりのれいむが飛んでゆく。それを簡単に避ける紫。 だが、通り過ぎたれいむは放物線を描いて反転し、紫の背後から襲う。 上昇して逃れる紫、舌打ちする幽々子。 「今度はこちらの番ね!」 紫の傍のまりさが二十匹程横に飛ぶ、明後日の方向に飛んだそれが瞬時に消えた。 「!」 位置を変える幽々子。空間を渡ったまりさが通り過ぎた。 「やるわね。」 「あなたもね。」 繰り返される二人の攻撃と沸き起こるゆっくりの絶叫。妖夢は為す術もなく見るしかない。 段々とヒートアップした二人は遂に大技を繰り出した。 ゆ曲 「リポジトリ・オブ・ユックリ -菓霊-」 己の行為のために死んだゆっくりの、魂すら材料に使う鬼畜技。 結界「生と死のゆっくり」 ゆっくりとゆっくりの死体が断末魔の形相のまま襲いかかる攻撃は、常人なら発狂レベルの代物である。 決着の付かないまま必死の応酬が続く。 「反芻菓 -腹八分目-」 半霊半消化状態のゆっくりが元の姿を求めて対象を襲う。 紫奥義 「ゆっくり結界」 対象の回りを囲んだゆっくりが収束・凝縮し、それを逃れたとしても爆発状態の餡子が襲いかかる必殺の技。 大量の餡子が降り注ぐ。 「やめてくださあいいいいい!掃除するの私なんですううううう!」 妖夢の絶叫が白玉楼に響き渡った。 このSSに感想を付ける
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※虐待描写、極小。 ※設定が各作品で違っていたり、相反する物が複数ある事への理由付けが欲しい方向け? ※スレで時々ある、 「こんな設定どう?→おかしいぜ!→いやいや妖夢」 「こういう設定で決まってるんだよね?→設定は決まってないよ。自由だよ」 ってな感じの会話読んで受信した電波で、自動筆記しちゃったと思いねぇ。 「いろんな幻想郷」 午後の日差しが温かな草原。 幻想郷の中心部から見て、ここは博麗神社と全く逆方向の外れである。 そこはゆっくりたちのユートピアであった。 様々な種類のゆっくりたちが、若きは赤子から老いてはそのまま命尽きそうな老体まで、 およそ100匹のゆっくりたちが、のんびりとゆっくりしている。 「ゆっくりしていってね!」 「あ、ありすぅ……おまえのまむまむ、きっきもちいぜぇ……ありすぅ……」 「ゆっ!? れいむ! ちょうちょがいるぜ! いっしょにたべようぜ!」 「あふっ! まりさぁっ……ふぁっ、あんっ……いっ、いいよぉぅ……」 ここにいるゆっくりたちは、苦難の旅の末にたどり着いたためか、おおむね他の地のゆ っくりたちと違って協調性があると言うか、ケンカも仲良くケンカ程度で、いじめもじゃ れ合いの範疇ぐらい、そしてタチのありすが皆無であった。 「むーしゃむーしゃ、しあわせー♪」 「ゆぅ~……むにゃむにゃ、もうたべれないよー……すぅ……」 「ぱちゅりー……だいすきよ……」 「ゆっへっへっへ! のろまのれいむー♪ やーいやーい!」 ゆっくりを虐める人間や妖怪はもちろんの事、捕食種もこんな外れにまでは、まず来な いため、外敵の心配もなかった。 「おかぁしゃん、ありすがまりさをへんなめでみるよー」 「もぉう! まりさったらまってよ~! ゆっくりしようよ~!」 「むきゅぅ~……ありすぅ、ぱちぇもありすのこと……ずっと……」 「ゆっ! ねぇ、おかあさん、あそこのまりさとありすなにしてんの?」 ある者は眠り、ある者たちはじゃれ合い、ある者は草花を食み、ある者は蝶を追い、あ る者たちは交尾を行い、ある者は何もせずぼーっとするなど、ゆっくりたちは存分に好き なようにゆっくりライフを満喫していた。 ──その時までは。 虚空に裂け目が生まれ、その中から一人の少女が現れた。 「……少し早かったかしら?」 黄色とオレンジが目に優しくない、やや少女趣味過剰なデザインの服を身にまとった、 緑色の髪の少女は呟きながら周辺を見回した。 人間や妖怪、妖精などの人語を操ることが出来、知能も備えた生命体が、周囲に他に居 ないかざっと探す。 幻想郷の有名人の顔に似た、ゆっくりと呼ばれる生首生命体の姿が見えた。 だいたい50メートルほど離れたところで多数のゆっくりが、その名の通りにゆっくりし ているのを、少女は視界に捕らえた。 何匹かのゆっくりが少女に気付き、声を上げた。 「ゆっ? おねえさん、どこからきたの?」 「おねえさんはゆっくりできるひと?」 「ここはまりさたちがみつけたゆっくりプレイスだぜ! ゆっくりしたいんならごはんを よこせだぜ!」 「むきゅっ! にんげんだわ! に、にげないと……!」 近寄ってくる者もいれば、その場から声を掛ける者、離れて行く者など様々である。 「あら……こんな外れを選んだのに……目障りね」 服と同じ黄色の日傘を、少女は遠くに見えるゆっくりに向ける。 「消えなさい」 傘の先端から幾条もの光線が迸る。 「ゆぎゃぁぁぁぁっ! いだぃぃぃぃっ!」 「ゆぐっ! ひっ、ひどいんだぜぇぇぇぇっ!」 「むぎゅぅぅぅぅぅっっ!」 「い゛や゛ぁぁぁぁぁぁぁっ! れっ、れい゛むのごどもがぁぁぁぁぁっっ!」 断末魔の叫びとともに、ある者はその場で炭化し、ある者は光線に身体を断ち切られの たうち回り、またある者は親しき者の死を嘆き叫ぶ。 ゆっくりたちにとっては、まさに地獄絵図であった。 「さすがに数が多すぎたわね……やれやれ、面倒ね」 うんざりした顔で呟きながら、少女は再びレーザーを放った。 「や゛べでぇぇぇぇっ! お゛ね゛え゛……ごぶぁっ!」 「ま゛り゛ざぁぁぁぁっ! に゛、に゛げ……い゛ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」 「も、も゛っど……ゆ、ゆ゛っぐ、り……じだ……が……っだ……」 たちまち上がる絶叫の声。 そして失われてゆく五分足らずの命。 「本当に、こいつらうるさいわね」 声が聞こえなくなるまで、少女は何度も光線を放った。 「あらまぁ、ずいぶんと派手にやってるわね」 まだ声がしないかと耳を澄ます少女に、後ろから語りかける声がした。 声の方向に、少女はゆっくりと振り返る。 そこには、少女と全く同じデザインの、色だけが違う服を身につけた少女が佇んでいた。 白と紫が目に付く少女趣味過剰な服を着た金髪の少女が。 俗に言うスキマ妖怪、八雲紫である。 紫と少女の顔立ちは──瓜二つという表現では不足を感じるほどに、言うなれば全く同 じであった。 「私が遅いから悪いのよ」 紫に向かって、少女がとがめるように言った。 「仕方ないじゃないのよ。私だってこの時間は普通寝てるでしょ?」 わかってるくせに、と言いたげな態度で紫は言い、 「それで、ゆっくりのことだっけ?」 と続け、早く本題に入るよう促す。 「私のくせにせっかちね……まだ寝たかったのかしら?」 一転して、からかうような調子で少女は言った。 「当たり前よ。私は日没後にお目覚めが基本よ……私もそうでしょ?」 「そうよ。こっちの幻想郷で、ゆっくりをどうしてるのか聞きたいの」 おもむろに少女は本題の話に入った。 「どうしてるかって聞かれてもねぇ。私は放置してるわ。興味無いし、危険も無いから」 「それはわかるわ。もし可愛がってるなら、さっき文句の一つぐらい言ったでしょうから ね」 ちらりと、餡子や炭化した破片などの残骸に視線を向ける。 「私はやっぱ察しがいいわね。でも、あれを可愛がる私なんかいるの?」 「何人かいたわ。逆に率先して駆除に動く私、私と同じように調べてる私も居たわ」 第三者が聞いていたとしたら、非常に意味が分かりづらい会話は続く。 「あれを可愛がるなんて私にしても、いや私らしい悪趣味ね」 「ふふっ、それなら私も可愛がってみたら?」 「遠慮するわ。ああ、こっちだとあれは永琳が調べてるわね。あと、アリスも。他は……」 紫は何人かの知人の名前を挙げながら、彼女たちがゆっくりにどう対応しているのかを 話した。 「永琳はほとんどの幻想郷でゆっくりを研究してるわ。全く月人は本当に閑人ね」 「あらあら、月人はどの幻想郷でも似たようなものみたいね。本当に閑人よね」 色以外全く瓜二つの、二人の少女は同時に笑った。 ひとしきり笑い合ってから、再び少女が口を開く。 「そうね……玉兎は嬉々として手伝っていたり、嫌々手伝っていたり、違いが結構あるわ。 そうそう、違いと言えば人間についてだけど」 「人間がどうかしたの? ああ、こっちでは"異変の前兆"って説が人間たちの間では有力 ね。ゆっくりにはあまり関わらないようにしてるわ」 紫の言葉に、少女は意外そうな表情を浮かべる。 「なるほど、ここの人間はそう解釈したのね……それは少ないケースよ」 「あら、そうなの? 他の幻想郷の人間は好奇心旺盛ね。ここだと、人語を操る生首って 時点で気味悪がって避ける人間が多いわ。ゆっくりも積極的に関わってこないし。他では どうなってるの? ゆっくりと人間の関係」 希少なケースであると聞き、紫は他がどうなのか興味を持ったようで、はじめて自分か ら他の幻想郷の状況を質問した。 「無関心じゃなかったの、私? ふふっ、そうね……一概には言えないけど、半家畜化し ている幻想郷が意外と多かったわ。加工所とか作っちゃったところも、結構あるし」 「加工所? こんなのをどう加工するって言うの?」 先ほど少女が虐殺──いや、処理したゆっくりたちに紫は視線を向ける。 「様々ね。人間の発想力には、私もちょっと驚かされるわ……だいたい共通しているのは、 食品としての加工がメインみたいね。と言うか、これが大好物の私もいたわ」 「あらやだ、食べるの? これを……私はともかく、人間がこれをねぇ」 食べることも出来るし意外と美味とは聞いていたが、人語を話す生き物を人間が食う姿 はあまり想像したくなかった。 だが、同時に紫は、人間こそどんな妖怪よりも恐ろしい生き物だと熟知しているので、 やりかねないとも考えていた。 「ええ、生きたままナマで食べちゃう人間が珍しくないようなところも多いわよ」 「ますます意外ね……自分と同じ言葉を話す生き物を、生かしたまま食べるなんて……人 間が妖怪化しちゃってんじゃないの、そういうところは?」 冗談めかして言いながらも、紫はそんな幻想郷で妖怪はどうなっているのか、一抹の不 安を抱いた。 同じ言葉を操る知的生命体を、日常的に生きたまま食うと言う行為は、妖怪が人間に対 して行使できる特権の一つであったはずだから。 「妖怪は相変わらずよ、だいたいどこも。ただ、人間がゆっくりを積極的に虐めたり、殺 したり、食べたりしているところでは、妖怪も同じようにゆっくりに相対してるわね…… 心配しなくても、バランスが崩れた幻想郷はほとんど無いわ」 「ふふっ、さすが私ね。そうよ、私もでしょうけど、私も一番の心配は幻想郷のバランス。 それが崩れた例もあるのね?」 バランスが崩れた、それは紫にとって最も避けたい事態である。 崩れたなら戻さねばならないから睡眠時間を削ることになるし、最悪の事態である幻想 郷崩壊の危険も発生するのだから。 「ええ。だから、私は私の幻想郷がそうならないために、こうやって睡眠時間を削って調 べているのよ」 「なるほどね……わかったわ。こっちのゆっくりは私がよく監視しておくわ。バランスを 崩すほどの状況になる前に対応するから」 完全に無関心ってわけにも行かないのね、とため息をつく。 「私同士だと話が早いわね。ごくごく少ないケースとは言え、幻想郷ばかりか外の世界も 含めて、全てがこいつらのおかげで滅んだ例もあるし」 忌々しげに少女は眉根を寄せた。 「にわかには信じられない話ね……まぁ、私が私に言うんだから間違いないんでしょうけ ど」 「ふふっ、とりあえず他の私にもだいたい話は通してあるわ……ああ、そうそう。こいつ らが現れていないところもあるみたいだから」 「あら、それは羨ましい私がいたものね……ただでさえバランス維持が面倒だって言うの に、こんな不確定要素抱えずに済んでるなんて」 「なに言ってるのよ。どうせ私も、私と同じように藍にも手伝わせるんでしょ?」 「言わなくてもわかるでしょ?」 再び二人は同時に笑い合った。 真面目な話──彼女たちにとって最も避けたい忌まわしい事態について、今さっきまで 話していたとは思えない変わり身の早さである。 「さて、それじゃ私はまた別の私と会ってくるから──詳しいことが知りたい時は、弾幕 りたい時と同じように、ね」 「わかってるわ。スキマに手紙ね……それじゃ、今度はまた弾幕りましょうね」 「ふふっ、その用件だったら私じゃない私でも、簡単に相手見つかるでしょ」 言うと、少女は空間に裂け目を生み出し、その中へ消えて行った。 「それもそうね……ってもう行っちゃったわ……あの私は働き者ね」 しばらくの間、紫はその場に佇んでいた。 用が済んだのだから、スキマを使ってすぐさま帰って寝ても良いだろうに、じっと立っ て思考をまとめていた。 思考がまとまったのか、紫は誰に言うともなく独り呟き始める。 「……そうね、私はこいつらを甘く見ていたのかも知れないわね」 空間の裂け目──スキマに消えた少女が処分した、ゆっくりたちだったものに紫は忌々 しげな視線を向けた。 「──とは言っても……正直、私にもこいつらがどうなるのかなんてわからないわね…… 他と同じようにここでも、人間や妖怪とこいつらがもっと接触した方がいいのか、それと も折角のレアケースとやらを大事にすべきかしらね」 紫は視線を上に向け、抜けるような蒼穹を眺める。 「幻想郷ばかりか、外の世界も、この地球さえもゆっくりが滅ぼした例か……平行世界は 無限にあるのだから、そんな結末となった世界があってもおかしくない、と……あら?」 風が草を揺らす音とは別の音が、紫の耳に届いた。。 音は──ただ腐り土に帰るのを待つ残骸が、散乱している方向から聞こえた。 音の方へと紫は視線を向け、ゆっくりとそちらへ向かって歩き出した。 「……ゅ……ゅっ……」 奇跡的に生き残っていた一匹のゆっくりが、そこには居た。 髪の毛と飾りのリボンは一部焦げ、右頬のあたりをざっくりとレーザーに抉り取られた 瀕死のれいむが、少しでもこの場を離れよう、生き延びようと這っている。 「……全く、私のくせに作業がいい加減ね……この分だと、他にも生き残りが居てもおかしくないわね」 やれやれと呟きながら、紫は首を振った。 「……ゅ……っ……ぁ……」 自分が何故いきなりこんな目に遭ったのか、仲間たちがどうして死んだのか、れいむに は全く訳がわからなかった。 ただ、生き延びたい。それだけを考えて、ずりずりと這っている。 中身の餡子が漏れ出すのも構わず、ひたすらに。 「ふふっ、ちっぽけな……本当に小さな命が、こうやって懸命に足掻く様は、感動するわ ね」 にっこりと紫は優しく微笑んだ。 「……そうね、脆弱な身体に似合わないこの生命力、生への渇望──やっぱり不確定要素 ね……死にやすく、生まれやすいのならば、世代交代が早く、それだけ進化の可能性も秘 めているわけだし……」 れいむの真上、何もない空間へと紫は視線を動かす。 「その生命へ敬意を表したわけじゃないわよ。見つけてしまった自分のやり残しを、始末するだけ──開けて悔しき玉手箱」 紫が見つめている空間にスキマが生じ、そこから墓石が落下して来た。 「ゆ゛べっ!」 短い断末魔とともに、れいむは死んだ。 この幻想郷では、はじめて八雲紫によって殺されると言う栄誉とともに。 「危険だと感じたら絶滅させるわ。それまでは、私の気分次第かしらね」 そう言うと、自分の目の前に紫はスキマを作った。 「さて、帰って……もう一度寝るとしますわ」 紫がその身を中へ滑り込ませたと同時に、スキマは閉じた。 後には永遠に静かになったゆっくりたちと、ただ風に吹かれて揺れる草原が残される。 今日も、この幻想郷は平和である──。 唐突に、再びスキマが開いた。 スキマから顔だけ出して、紫が"こちら"に語りかける。 「あなたの知ってる幻想郷は、どんな姿かしら? そして、これからあなたが知る幻想郷は、どんな姿かしらね……。 私に言えることは、どの幻想郷の姿も全てを受け入れた結果。 あなたが嫌だと思っても、それも一つの世界──可能性だと言う事……忘れないでね」 言うだけ言って、紫は再びスキマに消えた。 ■END■ あとがき ご笑覧いただきありがとうございます。A.Hでございます。 なんか電波受信して、ちびちび書いてたのが上がったので。 東方の原作知らない方もいるようなので、ちょっと解説しますと、緑髪の少女ってのは 緋想天での色違いゆかりんです……2Pカラーってやつですね。萃夢想でも同じだったか は忘れました……ここ長らく萃夢想は美鈴でしかやってないので。 はい、美鈴のストーリーモードが追加パッチで出たときに備えての練習です。 内容は、まぁ要するに「パラレルワールドがたくさんあるんだから、設定が違っても気 にしなくていいじゃん!」ってな私見を、みたいな。 次は……他の書き途中のやつらを片付けるか、きめぇ丸を先にヤるか……なんか、きめ ぇ丸を見てると「やめてください(泣)おしりこわれちゃいます(泣)」って言わせたく なりますからねぇ。私が。 掘りながら顔面舐め回して「くさいです(泣)つばくさいです(泣)」って言わせたり、 泣いて謝るまで全身の臭い嗅いで感想述べながら舐めまわしたりしてぇですよ。私が。 このSSに感想を付ける
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こんにちは、真実を常に追い求める孤高の記者、射命丸文です。 今回の取材にいきますのは、人間たちの畑。 最近、話題になったある作物に関する畑です。 おっと、「文々。新聞」は別に農業の業界紙ではないですよ。 私が出向くのは、そこに読者の興味を引く異変があるがゆえ! これから赴きますのは、家屋内にある大農園。それも、場所はあの知る人ぞ知る加工所です。 どうです、少しは興味がわいてきたでしょう。 では、興味がわきましたら、この「文々。新聞、購読申込書」へサインをどうぞ。まずは六ヶ月間購読でいかがでしょうか。 大丈夫、内容は保障します。どこぞの賽銭箱に投げ捨てるより、よほどいいお金の使い道になるでしょう。 それに、今なら毎月うちの犬走椛を集金に向かわせますよ。毎月、上目遣いで「お、お願いします、怒られちゃいます……」と涙目であなたの袖にすがりつくんですよ! ……はい、まいどありー。 『射命丸の突撃リポート、ゆっくり農園の謎』 「量産化の成功が、業績悪化のきっかけとなってしまいまして」 ため息混じりにそう語ったのは、今回、我々を案内してくださるゆっくり加工所の主任さん。 その指し示すグラフを見ればわかるとおり、ゆっくりの繁殖と効率のいい餡子の収穫方法で潤沢な在庫を抱えることになりましたが、そのために単価が暴落。気候で収穫量が激変することから、かつては赤いダイヤモンドとまで呼ばれた小豆市場も見る影もなしという有様で、バランスシートを見るまでもなく採算割れがうかがえます。 「甘味だけでは需要の限界があるのですよ」 在庫の山を見た記憶が蘇ったのか、主任さんは若干青ざめた顔色。 確かに甘味というのは嗜好品。その上、ゆっくりの案は腐敗します。需要を上回るだけ生産しても、消費されずに損が増えて単価を押し下げるだけ。 生産調整をするのが一般的だとは思うのですが…… 「ゆっくりは繁殖が簡単ですから、うち以外にも生産者がたくさんおりまして……正直、把握しきてれいないために音頭をとって調整とはいかないのです」 なるほど、中々利害関係の絡みそうな話で大変面白そうですね。 その辺のこと、詳しく。 ……あ、今日の取材とは関係ないですか。 「もちろん、うちもただ手をこまねいているわけではなく、いろいろと新商品の開発で需要の掘り起こしを狙っているのですが」 あ、今年はゆとり線香に大変お世話になりました。 ゆっくり羊羹、大変おいしゅうございました。水羊羹、この時期には堪りません。インスタントゆっくり汁、椛の哨戒の必需品です。 はい、ヒモ付き取材なのですいません。でも私、嘘は申しません。真実の報道記者、射命丸ですから。 そんなことを考えながら、文花帖にペンを走らせていますと、主任さんのため息が聞こえてきました。 「とはいえ、焼け石に水といった有様で、ついに資金繰りに窮してゆっくりの買取も中止したこともあります」 覚えています。加工所のゆっくり買取の中止は、野良ゆっくりの放置と生息数の拡大、人間社会への被害をもたらしました。 完全にゆっくりを駆除する選択肢も検討されましたが、結局は補助金がついて、かろうじて存続できた制度。 それがこのところ、急にゆっくり需要が高まってきました。 益獣から害獣となって絶滅すら視野に入ってゆっくりを救う、突然の需要増。当然、裏には加工所の存在がありました。 それこそが、私が今回こちらに取材に参りました最大の理由です。 さて、おとなしく吐いて下さいね。 「それは、発想の転換でした。私たちは餡から野菜に生産をシフトすることで、苦境を乗り越えたのです」 野菜? ゆっくり加工場から野菜とは面妖な話です。 「まあ、百聞は一見に如かず。ちょうどこれから作業が始まるところですから、行ってみましょう。農園へ」 頭をかきながら立ち上がる主任さん。 私はその後姿を追いかけて、加工所の最深部へと向かいます。 「ここが、ゆっくり農園です」 主任さんの肩越しに見える室内。 まず、驚いたのはその広さです。 私の速さをもってしても向こう側の壁まで、分単位を要するでしょう。紅魔館の図書館を移設できそうなほど。 次に目を引いたのは床の構造ですね。その床には向こう側の端まで続く長方形の四角い窪み。それが何列か並んでいます。 四角い溝が何本もの入った床とだだっ広い空間。この部屋を端的に言い表すと、そうなります。 思わず写真を一枚。 薄暗い室内に輝くフラッシュの光。 そういえば、この暗さで植物が育つのでしょうか? 「射命丸さん。あちらの区画で今から栽培を始めます」 主任が指し示した一角は、不思議な光景となっていました。 前述の四角の窪み。 ですが、よく目をこらすとその溝はぎっしりと肌色の何かで覆い尽くされています。 あれこそが、この加工所の秘密なのでしょう。 私は主任さんに案内されるのを待つことすらもどかしく、その傍らに降り立ちました。 その窪みに詰め込まれた肌色を覗き込もうとして、私は気づきます。 いえ、正確にはそいつら自身から答えが聞こえてきました。 「ゆっぐり……ざぜでええ……」 「ゆゆゆ……」 「おねーさん、ここからだして……おうち、かえる……」 それらは、なんと巷で話題のゆっくりたちでした。 れいむ種、まりさ種などの雑多な種類のゆっくりたちが、天井を向けられた体勢で隙間無く四角の窪みに敷き詰められ、気色の悪いゆっくりプールができあがっています。 上を向いて身動きもとれず、お気に入りの帽子もリボンもひしゃげたまま、ただ流れる涙。 その珍妙な姿に、私の部下カラスの文々丸も興味を引かれたのでしょう。 いつの間にか、ゆっくりの絨毯をきょろきょろと動き回っていました。 こらこら、商品を傷つけたらだめじゃないですか。 「ゆぐっ!」 「づめが、いだひいいい!」 ……まあ、いいような気がしてきたのはなぜでしょう。 ともかく、私たちがいるこの空間は、果たして何なのでしょうか。敷き詰めたゆっくりの意図は一体? 「それは、苗床です」 疑問に応えてくれたのは、私に追いついてきた主任さん。 苗床という言葉の意味を確認しようとしたその時でした。 「あ」 短い主任さんの声。その視線は私の後方、『苗床』の位置で固まっています。 なんでしょうか。 振り向く私。そして、その視線も固まります。 「カラスさん、まりさをゆっくりもちあげてね!」 「ずるいよ! れいむも連れてってね!」 苗床のまりさの口に足でも突っ込んだのか、噛み付かれている文々丸。 ばたばたと翼をはためかせて逃げようとする文々丸を離すものかと、真っ赤な顔でしつこく食い下がっている。 あの腐れ饅頭野郎、私の可愛い文々丸になんてことを! 「ガア!」 無論、文々丸はゆっくりごときにどうにかできるようなカラスじゃない。だって、私の部下なんだから。 「まりざのおめめがあああああああ!!」 一際高いまりさの悲鳴。 文々丸のくちばしには、たった今えぐりとったばかりのまりさの眼球らしきものが。 「まりさのきれいなおめめがあああ!?」 「からすさん、か゛え゛し゛て゛ええええ!」 ひたすら泣き叫ぶまりさに代わり、隣のれいむの絶叫。夫婦なのだろうか。 まあ、そんなことは文々丸には興味がないことだろう。 「ゆぐううう! 今なら許すから、かえじでぐだざいいいい!」 そんなこと言われても、文々丸はもう目玉をのみこんでますよ、ごくんと 「どうじでぞんなごどするのおおおおっ! まりさを怒らせたら、からすさんもただじゃおかないよおおお!!」 えらい剣幕ですが、毛づくろいにふける文々丸に耳に届いたかどうか。 代わりに私が怖がってあげましょう。 おお、こわいこわい。 ……て、我に返ってみると、これはまずいですね。 取材対象の財産を損壊したことになります。 ちらりと主任さんの顔を見てみます。 私に向けられていたのは請求書ではなく、なぜか笑顔でした。 「いや、別にゆっくりは生存していればどんな状態でもいいんですよ……おや、準備ができたようです。さ、作業開始ですよ」 言いながら、部屋の隅に向かって手を振る主任さん。 気がつけば、そこに作業服姿の従業員さんが数人。それぞれ、その両手に抱えるのは柵。手馴れた動作で、ゆっくりの苗床を囲むように 柵を立てていきます。 ただし、完全には囲みません。 一方に出入り口をつくって、そのまま部屋の片隅へと柵で通路をつくっていきます。その通路の先は、壁面に小さく張り出した扉へと。 こうして出来上がったのは、扉から苗床までをぐるりと囲む柵の通路。 主任さんは準備が整ったのか、こほんと咳払い。 「まずは、種まきからです」 種まき。 主任さんの言葉に、私は籠に種籾を入れた農家の姿を思い浮かべますが、それから始まった光景は、まったくそれとは似ても似つかぬものでした。 主任さんの合図に合わせて開放される通路に接した扉。 同時に、加工所を揺るがした凄まじい振動でした。 「まっまっまっ、まりさああああ!!!」 「まりさはどこおおおおお!!!」 「れいありもいいよねええええ!!!」 「ぱちゅありも、じゃすてぃいいいいっす!」 扉の向こうには、地鳴りを響かせてゆっくりありすの、顔、顔、顔。 何十匹いるのでしょう。 魔法の森のアリスさんとは似ても似つかぬゆっくりアリスの群れが、性欲にテカテカと輝くアリスの瞳が、次から次と扉の向こうから姿をあらわします。 共通するのは発情しきって上気した赤みと、血走ってまりさを求めるその眼。 すごいです。 そういえば、先日うっかり毒きのこを食って寝込んでしまった魔理沙さんを、文句を言いながらも看病を続けたアリスさん。 深夜二時頃、熱にうなされ、胸元をはだけて荒い寝息を吐き出す魔理沙さんをじっと見下ろすアリスさんの相貌を、なぜか不意に思い出しました。 もちろん、それは本件とはまったく関係ございません。上海人形に八つ裂きにされたネガも戻ってきませんし。 さて、ゆっくりありすの集団は後続に押し出されるように、通路を前に前に進んでいきます。 向かう先は、ゆっくりの苗床。 その待ち受けるゆっくりたちは怒涛のように押し寄せるアリスの足音には気づいていますが、なにせ天井しか見えない体勢のため、何が起こっているのかわかりません。 歯を食いしばり、流れる涙を増やすばかりです。 ですが、足音が止んで見えるのは、覗き込む同じゆっくりの顔。通常なら、親切な性質を持つゆっくりありすのものです。 助かったと思ったのでしょうね。 「ゆっくり、ひっぱりだしてね!」 髪の毛や装飾品すらも詰め込まれて、唯一相手が噛んで引っ張り出せる舌を伸ばします。 けれど、ありすの受け止め方は違いました。 「いきなり、でぃーぷなんて、まりさは焦りすぎよ!」 「でも、大丈夫! ありすがきちんとリードしてあげるね、まりさああああ!」 数十匹のアリスが、ゆっくりの苗床にびっしりと圧し掛かり、下を向くなりいきなり響きわたる湿った音の大合唱。 くぐもった下のゆっくりの絶叫と、とろけたようなアリスたちのあえぎ。 新しい拷問のようで、思わず私は耳を塞ぎたくなるものの、加工所の方々はまったく平気な顔。 顔色一つ変えず、今回の予想収穫量なんかを話しています。 人間の主な特徴、適応性というものは一種の狂気ですね、ほんと。 「まりさまりさまりさああああああ!!!」 「やめでええええ!!! すっ、すっきりしちゃううううう!」 「やめては、とかいではやめないでということよおおお、いぐううううううんほおおおおおおお!」 「ひぎいい、隣にれいむがいるのにいいいいい、いぎだぐないいひぎいいいいいい! ずっぎりいいいい!」 最後の抵抗の声もむなしく、まりさたちの悲鳴をバックに種まきは終わりました。 いや、終わったと思ったのですが。 「あと、2セット」 冷静な主任の言葉に応じて、一斉に苗床に向かう職員たち。 ご丁寧にも、すっきり満足していたアリスたちを揺らし、再び発情へとのぼらせていきます。 こんな変態生物の発情を助けるぐらいなら馬でも種付けでもした方が100倍マシだと思うのですが、そこはプロ根性。匠の技です。 「だめだよおおお! あかじゃん、ごんなにでぎだら、じぬのおおおおお!!」 ねとねとの粘液に覆われたれいむの顔が、目を血走らせて必死に叫んでいます。 「そんなことより、アリスをちゃんとすっきりさせてね! きっと、愛があればだいじょうぶなの!」 ですが、そんな愛の足りない戯言はアリスに通じません。すぐさま、欲情の囀りにかき消されるばかり。 結局、アリスが職員に引き離されて扉に蹴りこまれるまで「種まき」は続きました。 ゆっくりの生態の神秘は、やはりこの生殖後の反応でしょう。 犯されつくしたゆっくりたちから、次々と発芽する茎たち。 通常茎が生える頭の上は他のゆっくりや壁に塞がれているので、唯一の隙間、天に向けてにょきにょきと伸びていきます。 これが、種まきの成果。 この伸びた茎が、加工所の新たな生産物とのことです。 出産後、親が朽ちても赤ちゃんをしばらく育てられるほどに栄養価が高く、人間にとっては煮ると口当たりのよい、ほのかな甘味が野菜嫌いのお子様にも人気の新商品。ゆっくりの茎。 まさか、ゆっくりから野菜がとれるとは驚きです。 「次は、肥料ですね」 ですから、各工程の呼び名が農業のような呼び名になるのでしょう。 確かに、アリスに蹂躙されて黒ずみ始めたゆっくりたちの様子からすると肥料は必要なように思えますが、さて何を与えるのでしょうか。 応えは、手押し車に詰まれた黒い物体でしょう。 植物であれば、まず間違いなく腐葉土の黒土でしょうが、相手はゆっくり。 「あれは、餡子ですか?」 「そのとおりです」 私の問いかけににっこりと応じる主任さん。 こうしている間にも、「むーしゃ……むー……」「……しあわせー」「めっちゃ……うめ……」と、かすれた声が響いてきた。 ゆっくりの中身も餡子だけに、効果は抜群といったところでしょうか。 「餡子は、繁殖もできなくなった末期のゆっくりや、商品にならなかったもの、間引きした子供らを与えています。化学肥料を使わず、コストにも気を配っています」 主任さんの淡々とした説明に、経営不振を乗り越えたこの加工所に培われたコスト意識が伺えます。 こういう企業は力があります。株を上場するときは教えてください。けして、私はインサイダーなど行いません。 それはともかくとして、ゆっくりたちはその栄養満点の肥料に元気を少しだけ取り戻していました。 そんな中、主任さんは次の指示を伝えます。 「さて、次はお水をあげましょう」 水? 見れば、桶に汲まれたオレンジ色の水がめを台車にのせて、従業員たちが押してきます。 はてさて、あれは一体なんなのでしょうか。 膨らむ私の期待でしたが、私の期待は報われません。 本当に、主任さんの言葉とおり、染料でオレンジ色に着色されただけのただの水でした。 ですが、それを知るのは私と職員の方々だけ。当然、ゆっくりは知りません。 「ほうら、口を開けろ。オレンジジュースだぞー!」 棒読みの職員の台詞を耳にするなり、一斉に口を開くゆっくりたち。 ひしゃくで注ぐそのオレンジ色の液体を一滴ももらすまいと、食虫花のようにぱっかりと大口を開けています。 その間抜けな光景に脱力の私ですが、ゆっくりたちの反応は、さらに私の足腰から力を奪うものでした。 「うっめ、これ、めちゃうめ!」 「しゅっごく、おいしい♪」 「あんまあああああい!」 なんですか。 ゆっくりとはいえ、蒙昧すぎるでしょう。 「プラシーボもあるでしょうが、たっぷり口に水を含んだせいで、口の中の餡子が溶けているんですね」 「でも、それじゃあプラマイ0では」 「いいんです。これは、ゆっくりたちの心のケアですから」 ゆっくりの心なんか、ケアする必要があるのでしょうか。 それならば、霊夢さんに「印刷してある文字が邪魔だから、今度から白紙で頂戴。森近さんに売るから」と、凄まじい要求をされた私の心をまず最初にケアしてほしいところですが。その日の夜のお酒は、ひどくしょっぱい涙酒。霊夢さんは時々、無意識に萃香さん以上の鬼ですよね。 そんな感じに私がちょっぴりブルーになっているというのに、ゆっくりたちからは案の定な能天気な声が沸き始めます。 「すっきりしたよ」 「この子のために、がんばれるね!」 顔面から伸びていく茎も色艶がよく、その先に鈴なりにふくらみつつある子供の実。 実ってしまえば、可愛いわが子なのでしょう。 「ゆー……♪ ゆゆーゆー♪」 「ゆっくりそだってね」 「まりさの赤ちゃんが、いちばん大きくてゆっくりしているー♪」 歌ったり、話しかけたり、自慢したり、ゆっくりたちはたちまちのうちに元気を取り戻していきます。 もうすぐ、この実がぷっくりと膨らんで子供をなすのでしょう。 「では、次は害虫駆除と茎の手入れです」 主任さんの宣言に、不意に私はリグル・ナイトバグさんを思い出します。なぜでしょうか。 ともかく、確かに害虫というのは問題ですね。 風見幽香さんなら、リグルさんの首に腕を回しながら耳元にそっとお願いすれば済む話でしょうが、人間はそうもいきません。 まず、職員が最初のまりさと向き合うように覗き込みます。 「ゆ? お兄さん、まりさのこどもゆっくりしているでしょ♪」 「れいむの方がもっとゆっくりしているよ! とくべつに、お兄さんもゆっくり見ていっていいよ!」 対抗するれいむたちの声は、おそらく職員の方にとって耳朶を吹き抜ける風のうねりのようにしか感じていないのでしょう。 無言でその手を茎へと、その茎に実る赤ちゃんへと伸ばしていきます。 「ゆ! 赤ちゃんを、いいこいいこしてあげ……」 ブチャ。 湿った破裂音が響きました。 職員の方は一瞬で至福から白目をむいた表情の親を気にもとめず、その手を次の実へ。 「お、おにいさん?」 ブチ。 「なっ!?」 ブチ。 「やめ……」 ブチャ。 「あがちゃ……!」 ブチャ。 ろくな台詞言えないまま、瞬く間に手馴れた手つきで赤ちゃんを全て潰された親まりさ。 もう、口を開いたまま固まってしまっているが、やがてぷるぷると震えだします。 「ま、まりさのあがぢゃんがあああああああああ!!!」 その言葉がゆっくりたちの間を漣のように駆け巡っていく。 「どうじだの、まりさああああ!?」 不安と恐怖にまみれた仲間たちの声も、あえぐような嗚咽が応じるのみ。 再び始まる身動きできず、周囲の様子も伺えない狂乱のゆっくりタイム。 特に、その隣で赤ちゃんの顛末を視界の端に捕らえていたれいむは、笑顔がひきつって今にも崩れだしそう。 そのこわばった笑顔は、やがて媚びの色彩をともなって職員の方に向けられるのですが。 「れ、れいむの赤ちゃんは大丈夫だよね! だって、こんなにかわい……」 ブチ。ブチャ。ブチャ。プチ。 「がわいいのにいいいいい、なんでええええええっ!?」 職員の指先は熟練の動きでした。 一息に、れいむに芽生えた命をこそぎ落とします。 あとはもう、流れるような作業の連続でした。 「こどもだけは、ゆっぐりさせ……ああああああああああ!!!」 「早く、うまれでええええええ……っ! ゆっくりしないでえええ、ゆぎいいいいいいい!!」 「初めてのこどもなのおお、もってかないでえええ……むきゅううううううううん!」 職員の方が一歩進むたび、茎の成長を阻害する害虫たちは的確に駆除されていきます。 食の安全が叫ばれる今、このように薬品に頼らず、手作業で剪定していく細やかさに思わず感動してしまいます。 「さて。この作業はしばらくかかりますので、一足先に収穫間際の畑をごらんにいれましょう」 私が一通りその様子を写真に収めると、それを見計らって声をかけてくれる主任さん。 案内されて行ったのは、今の畑とは反対側の一角。 青々とした茎は豊かで、かすかに揺れる様子はまるで湖畔の波のよう。圧巻の光景。 害虫をきっちり駆除して手入れをすれば、ゆっくりの茎ですらここまでに実りを結ぶのでしょうか。 「これでも、本職の農家さんに比べるとまだ素人仕事なのですが」 主任さんの言葉は明らかに謙遜ですが、新規事業として進出しただけに農家への兼ね合いもあるのでしょう。 私も余計なことは言わず、ただその鮮やかな緑に見蕩れていました。 とはいえ、私には記者としての役目があります。しゃがみこみ、その茎を一本もちあげてみますと、ずっしりとした手ごたえ。 「おもい……よ……」 「ちぎれえ……」 「あかちゃん……あかちゃん……」 かすかに聞こえるのは、ゆっくりのうめき。 新鮮なはずです。苗床すら生きているのですから。 「実は、先ほどの状態からここまで育つのに十日もたっていません」 主任が自負と、ちょっぴりの自慢を秘めた口調で話し始めます。 ゆっくりの生命力は、まさに恐るべし。 けれど、脅威の生命力に驚くにはまだ早い。 「それどころか、数日おけばまたこの畑で連作が可能なのです。」 それは、人間生活にどれだけの恩恵を与えることでしょう。 うまく流通にのれば、博麗神社の貧乏人ですらビタミンB2やベータカロチンを摂取できます。もう、障子の紙を食べる必要はありません。 ……ごめんなさい、一部悪意に基づいた偏向記事がありました。 それはともかく、ゆっくり農園。 実に魅力的な存在ではないでしょうか。 おかげさまで、取材当初の思惑を超えて実に有意義な取材となりました。 そのことを、快く取材に応じていただきました関係各位に深く謝意を表し、今回の取材の終わりの言葉と代えさせていただきます。 以上、現場の射命丸文でした。 PS: 以前のゆっくりの単価暴落で一時は捕獲者がいなくなり、触れすぎた野生ゆっくりたち。 有益性も低い害獣のために全面駆除が検討されておりましたが、今回の発明と、ゆっくりを 愛好する諸氏及びゆっくりを虐待する諸氏の嘆願により、全面駆除は見合わせとなりました。 ゆっくりは、いつ幻想から消え去るかわからない、儚いもの。 息の長いお付き合いを、節に望むところであります。 by小山田 茎トークから、妄想拡大。 あと、地霊殿の委託までちょっとだけお休みします。 このSSに感想を付ける
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表示について 星の数はレア度を表す 最大で★5 ★1:N(通常種) ★2:PN(通常種~準希少種の間) ★3:R(準希少種) ★4:PR(希少種) ★5:SR(超希少種) 共通 〈通常時〉 ゆっくりしていってね!!! ゆっくり! ゆん! ゆん、ゆん、ゆん! にんげんさん、おはようございます!(善良種のみ) にんげんさん、こんにちは!(善良種のみ) にんげんさん、こんばんは!(善良種のみ) ねーねー、あそぼー、あそぼー?(愛で時、善良種のみ) もっとなでなでしてー(愛で時、善良種のみ) ゆっくりーのひー、まったりーのひー、らんらんらん! すーりすーりすーり(愛で時) こーろこーろ(旧バージョンのみ) ころころころー(旧バージョンのみ) ぜんそくぜんしーん!(ダッシュ移動中) わーい、まてまてまてー(ダッシュ移動中) わぁーい、ゆーっくりまってねぇ(ダッシュ移動中) わー、おそらをとんでるみたーい!(おそら) ぺーろぺーろ(他のゆっくりに対する慰め。食事時とは違い、イントネーションが観察日記におけるぺーろぺーろ) 〈おちび・家族関連〉 おちびちゃん、これからもずっといっしょだよ! いもうと、はやくおっきくなってね!(姉ゆ) おちびちゃーん! おかーちゃん! おとーちゃぁ〜! おねーちゃん! いもーとぉー! れいむぅー まりさぁー ありすぅー ぱちゅりー れみりゃー ふらぁーん ちるのぉー (みょん、さくや、ちぇんの名前呼びは未実装?) うまれるー、うまれるー!(出産時) 等 〈虐待時〉 やめてぇ!やめてね!やめてね! ゆんやぁゆんやぁゆんやー! ぷっくー!(ぷくー時) かえしてぇー かえしてよぅ(おぼうし没収) ごめんなさい、ゆるしてください!(善良種のみ) どうしてこんなことするのぉ!(基本ゲスのみ、子ゆを攻撃して怒らせると善良種も言う) やーじゃやーじゃ、おうちかえるぅ!(ゲスのみ) ゆっくりにげるよ(ゲスのみ) さむいーさむいよーだれかたすけてー(さむい…時) あついーあついよー!たすけてー!(炎上・あつい…時) もえてる〜もえてるよぉ(炎上・炎接近・あつい…時) どうしてほのおさんここにいるのぉ?(炎接近時) ほのおさんは、ゆっくりできないんだよぉ(炎接近時) ゲホッゲホッゲホッゲホッ(瀕死からの回復後) 等 〈食事時〉 わーい、ごはんさんだー! わーいわーい! ぺーろぺーろ むーしゃむーしゃ もーぐもーぐ ごはんさん、ありがとう!(善良種のみ) うめぇ!ぱねっ!(ゲスのみ) これめっちゃうめ(ゲスのみ) はっぱさんは、たべたくないんだよー(葉っぱ) これ、にがーい!(葉っぱ) なにこれ、すごーくまずいよ!(葉っぱ、ゲス) げろまず〜(葉っぱ、ゲス) おいしくないけど、がまんしようね!(葉っぱ、善良種のみ) くさーい! うんうん、くっさいよー!(うんうん) くさいよー! うんうんさんあっちにいってね!(うんうん) 〈空腹時〉 おなか、ぺこぺこー ゆんやぁゆんやぁゆんやぁ…(悲しい時とは別の泣き方) 〈うんうん体操〉 うんうんでりゅう〜 ゆっち、ゆっち ゆん! ゆん、ゆん、ゆん! 〈降雨時〉 あめさんだよー、ゆっくりできないよー あめさん、はやくあっちにいってねー とけちゃうよー、からだがとけちゃうよー 〈非ゆっくり時〉 おうちにかーえろっと! わーい、おはなさんだぁ! ゆっくりーのひー、まったりーのひー、らんらんらん! 〈非ゆっくりなりかけの時〉 やだやだやだぁ〜 やじゃやじゃおうちかえるぅ… おかーちゃん おとーちゃん 準共通 2〜4種間で共通のセリフ。 〈れいむ まりさ ちるの〉 ばーかばーか!(ゲス) 〈れいむ ぱちゅりー ちるの〉 もーっと、きもちよくしろー!(愛で時、ゲス) 〈ぱちゅりー ちるの〉 ごはんさん、ありがとうね(食事時、善良) 〈れいむ ふらん〉 あそんで、あそんでー!(愛で時) 〈ありす ぱちゅりー みょん さくや〉 はやくあやまりなさい!(ぷくー時 ゲス化) がんばりなさい、いまいくわ(他ゆへの虐待時) これはけんこうにいいわ!(食事時、葉っぱ) ごはんさんはどこかしら(狩り時) 〈ありす ぱちゅりー さくや〉 とーってもたのしいわぁ! 〈ありす ぱちゅりー〉 あまあまをはやくよこしなさい!(ゲス) そんなんじゃ、ぜんぜんかんじないわ!(愛で時、ゲス) そんなことしちゃ、だめなのよ(ぷくー時、善良) とってもおいしいわ!(食事時、善良) かりさんにいくわ!(狩り時) おなかがすいたわ(空腹時) 〈ぱちゅりー みょん さくや〉 わたしに、かわいいあかちゃんができたわ!(妊娠時) 〈れみりゃ ふらん〉 うー☆ うー☆うー☆うー☆ はやくあまあまをよこすんだどー(ゲス) ぎゃおー たーべちゃうぞー(ゲス ぷくー時 ゲス化) もうおこったどー(ぷくー時) どうしたんだどー、だいじょうぶかどー?(他ゆへの虐待時) とってもおいしいどー!(食事時、善良) ごはんさんどこだどー?(狩り時) おなかがすいたどー(空腹時) すごいどー、あかちゃんができたんだどー(妊娠時) れいむ 画像左側の個体が胎生妊娠形、画像右側の個体が植物妊娠形 通常種 レア度:★x1 1~9円(ランクC) 200~3000円(ランクB以上) 最もよく見かけるゆっくり。特徴は赤いリボンと2つのもみあげ。中身は漉し餡。 オプションパーツ(ランダムに装備する、プレイヤーが着脱させられない小物)はお花。左もみあげに握っている。王冠を被せると魔法少女ステッキに変化。 もみあげは長毛型・短毛型・わさ型の3種類があり、現行版では左右で種類が異なる場合もあるため、もみあげの形状だけでも合計9種類のバリエーションが存在する。(性格に影響は無い) 胎生妊娠形のれいむは黒髪で、植物妊娠型のれいむは茶髪。 主なボイス 通常時(全て善良種のみ) ゆっくりしようね! れいむね、しあわせだよー! れいむね、おうたがじょうずなんだよ! いっしょにうたおうね! れいむのもみあげさんをゆっくりみてね、すごーくかわいいでしょー? れいむのもみあげさん、おかーさんにほめられたんだー、れいむのたからものさんだよ れいむはしょうらいね、りっぱなおかあさんになるんだよ!そして、ずーっとずーっと、みんなとゆっくりしつづけるんだよ~! わぁーい、きーもちぃー!(愛で時) 等 れいむ種の通常時ボイスは善良とゲスとで完全に独立しており、共通のものは無い。 虐待時 たすけてー、れいむをたすけてー!(ゲスのみ、善良は固有ボイスなし) ゲス種 ここをれいむのゆっくりプレイスにするよ! このうんこどれい れいむ、おこるとすっごくこわいんだよ? れいむ、あかちゃんがいっぱいほしいよ!そしたら、みーんな、ゆっくりできるのにねー 等 ゲス種(愛で時) ぜんぜんきもちよくないよ? れいむはね、みんなのアイドルなんだよ れいむ、かわいすぎてごめんねー ぷくー時 れいむまけないもん! れいむ、おこるとすっごくこわいんだよ? ごめんなさいしようね!(善良種のみ) 他ゆへの虐待時 どうしたの、だいじょうぶ? がんばれ、がんばれー! ゲス化すると れいむまけないもん! れいむ、おこるとすっごくこわいんだよ? 等(いずれもゲス種、ぷくー時と共通) 食事時 おいしい! 狩り時 かりさんにいくよ! ごはんさんどこなのー? 空腹時 れいむおなかすいたよー? 妊娠時 あかちゃんができたよ!れいむにあかちゃんができたよ! おそら れいむはちょうちょさんだよー! かつてのれいむはもみあげが現在より若干上にあった まりさ 画像左側の個体が胎生妊娠形、画像右側の個体が植物妊娠形 レア度:★x1 通常種 2~15円(ランクC) 200~3000円(ランクB以上) れいむ種と同じく見かける頻度が高いゆっくり。 特徴は黒いとんがり帽子と片方だけ編まれたおさげ。中身は粒餡。 オプションパーツは木の棒(えくすかりばー) おさげに握っている。王冠を被せるとおもちゃの剣に変化。 現行版では長毛型・通常型・短毛型・めさ型(0.5a5~0.5b9では未確認)の4種類のおさげがある模様。 どの個体も語尾は「のぜ」となっており、いわゆる「だよまりさ」は存在しない。 胎生妊娠形のまりさは髪が黄土色で、植物妊娠型のまりさは髪が茶色っぽい。 主なボイス 通常時 まりさはおまえをぜったいにまもるのぜ! まりさはぼうけんのたびにでるのぜ! まりさはしょうらい、さいきょうのどすになるのぜ!おとーさんがそういってたのぜ! がんばるのぜ、がんばるのぜー!(うんうん体操中) おちび、はやくおおきくなるのぜ!(おちび保有時) まりちゃのちゃちゃちゃ~、まりちゃのちゃちゃちゃ~、まりちゃまりちゃのちゃ・ちゃ・ちゃ〜(愛で時) 等 善良種 まりさといっしょにぼうけんのたびにでるのぜ! まりさはしあわせなのぜ~ ゆっくりするのぜ きもちいいのぜ〜、くせになるのぜ〜(愛で時) もっとツンツンしてほしいのぜ(愛で時) 虐待時 まりさをはやくたすけるのぜ~!(ゲスのみ、善良は固有ボイスなし) ゲス種 おまえはゆっくりできないのぜぇ〜 まりさこのまえ、ひとゆでありさんをたおしたのぜ! まりさは、つよいてきとたたかいたいのぜ!もうありさんはらくしょうなのぜ! まりさは、けんかでまけたことないのぜ! まーりさーはつよいー、いーちばーんつよいー まりさはつよいのぜ ま・り・さ・は・つっよい・の・ぜ~! 等 ゲス種(愛で時) ツンツンがぜんぜんたりないのぜ もっとツンツンするのぜ! まりちゃのきゅーとなひっぷで、みんな、めろめろなのぜ! 等 ぷくー時 まりさはつよいのぜ まりさはおまえを、ゆるさないのぜー! まりさとしょうぶなのぜ!まりさはぜったいにまけないのぜ! はやくごめんなさいするのぜぇ? 等 他ゆへの虐待時 どうしたのぜ? がんばるのぜ まりさはおまえをぜったいにまもるのぜ! ゲス化すると まりさとしょうぶなのぜ!まりさはぜったいにまけないのぜ! はやくごめんなさいするのぜぇ? 等(いずれもぷくー時と共通) 食事時 とってもおいしいのぜ! まりさはこれで、がまんするのぜ!(葉っぱ、善良種のみ) これ、すごーくまずいのぜ(葉っぱ、ゲス) あまあまがたべたいのぜ!(葉っぱ、ゲス) ケーキ投与時 すごいのぜ~、ケーキさんなのぜ~ ケーキさんっ、ケーキさんなのぜー 等 狩り時 ごはんさんどこなのぜ〜? かりさんにいくのぜ! 空腹時 おなかすいたのぜぇー 妊娠時 できたのぜ!まりさにあかちゃんができたのぜ! ありす 画像手前側の個体が胎生妊娠形、画像奥側の個体が植物妊娠形(この画像ではみょんを妊娠) レア度:★x1 通常種 5~40円(ランクC) 800~6000円(ランクB以上) れいむ種やまりさ種の次によく見るゆっくり。 特徴は赤いカチューシャと金髪。中身はカスタード。 オプションパーツはお花。カチューシャの装飾として頭に付ける。 前作においてはゲス個体のありすが他のゆっくりを捕まえて強制的にすっきりーを行う「れいぱー」という仕様が存在した。 今作でもCランクはれいぱーとして描写されているが、それらしいセリフを言うのみで実際にゲーム内の行動としてれいぽぅを行う事は無い。 植物妊娠型のありすは髪色が茶色ぽく、胎生妊娠形の髪色は黄土色。 主なボイス 通常時 とっかい!とっかい! とかいは! ありすはとかいはよ すてきなであいがしたいわ! 等 善良種 すっごく、いいきぶんよ あなたとかいはね ありすとってもしあわせよ わたしがこーでぃねーとをしてあげるわ! わ!とーってもおしゃれね! 等 ゲス種 わたしのあいを、うけとりなさーい! んほぉお〜 んっほ、んっほ、んほぉお~ そこのあなた! そこのあなた、いっしょにあいしあいましょう! いいわ〜!もっともっとついてちょうだい!(愛で時) 等 食事時 とかいはなごはんをありがとう 妊娠時 ありすにたからものができたわ!すてきなあかちゃんよ〜 ぱちゅりー 画像左側の個体が植物妊娠形(赤紫色)、画像右側の個体が胎生妊娠形(青紫色) レア度:★x2 通常種 15~50円(ランクC) 1000~9000円(ランクB以上) ありす種とちるの種の中間ほどの頻度で見るゆっくり。 特徴は桃色の帽子と紫色の髪。中身は生クリーム。 オプションパーツはまどうしょ。口の下あたりの位置に固定されている。 森や海では出現率が上昇する。ぱちゅりー種を多量に用意したい場合は森を探すと良い。 観察日記と同様、他種より寿命が短く設定されている。(v0.29fまで) 胎生妊娠形のぱちゅりーは、髪色が青紫色で、植物妊娠型は、髪色が赤紫色。 主なボイス 通常時 むっきゅっきゅー! むきゅ、むきゅ! むきゅーぅ まどうしょによるとね ふむふむ、なるほどぉ 等 善良種 わたしにわからないことは、なにもないわ! わたしはしあわせものね からだのちょうしがいいわ! なんでもきいてね! 等 ゲス種 あなたはおばかさんなのね ゲホッゲホッゲホッゲホッ 等 ちるの 画像左側の個体が胎生妊娠形、画像右側の個体が植物妊娠形 レア度:★x2 飛行種 15~80円(ランクC) 1000~15000円(ランクB以上) おかざりによる追加特性を除けば非捕食種では唯一の飛行種であるゆっくり。 特徴は青いリボンと氷のような6枚羽。中身はアイスクリーム。 オプションパーツはカエル。頭の上に乗っけている。 飛行種の性質について 飛行能力を持ち、マップ内を三次元的に移動できる。挙動としては浮上(空中ジャンプ)と滑空を繰り返す形を取っており、空中で停止するような動きはできない。 手動操作モードではジャンプボタン(旧Aボタン)で飛行できる。ゆっくりと一緒にプレイヤーも移動するため、通常では登れないような高所に降り立つこともできる。 左右の髪の房(れいむ種のもみあげに相当する、破壊可能な部位)を破壊すると同時に羽も千切れ、飛行能力は失われる。 元ネタでは希少種扱いされる事も多いが、出現頻度はそこまで低くもない。 ゆっくり同士の戦闘において、攻撃時に相手を冷やす効果がある。逆にちるのは全ての寒冷効果を無効にする。 旧バージョンではぱちゅりー種と同様の寿命となっている(v0.29fまでクリーム系ゆっくりは寿命死が多かった) 胎生妊娠形のちるのは髪色が青で、植物型妊娠のちるのは髪色が水色。 主なボイス 通常時 さーいきょ! さいきょ、さいきょ! あたいったらさいきょーね! 等 ゲス種 おいおまえ! あたいのこぶんにしてあげる! あまあまもってこい! あたいにさからうの? 等 ゲス化すると あたいにさからうの? 等 食事時 さいきょうにおいしい! 空腹時 おなかぺこぺこぉ!(他種とはイントネーションが異なる) ちぇん 画像左右側の個体が胎生妊娠形、画像左側の個体が植物妊娠形。 レア度:★x4 準希少種 40~180円(ランクC) 8000~75000円(ランクB以上) 0.5にて追加 観察日記には登場しない、今作で新規実装されたゆっくり。 特徴は緑の帽子と猫耳。 少し出現頻度が低い。「わかるよー」が口癖。中身はチョコレート。 体の強度が低く、人間の攻撃などで1発攻撃すると2発分ぐらい食らう。ライトセーバーだと一発攻撃だけですぐに非ゆっくり症になる。 耳と尻尾は引き抜いてもロードを挟むと再生するため、他のゆっくりと同じようにいわゆる「ハゲ饅頭」にする事はできない。 植物妊娠型のちぇんは瞳の色が濃く、胎生妊娠形のちぇんは瞳の色が薄い。(v0.5から胎生妊娠形のゆっくりは瞳の色が変わった) 主なボイス 通常時 わかるよー、とーってもわかるよー? そうなんだねー ゆっくりーのひー、まったりーのひー、わっかるんだよー! ちぇんはかけっこがとくいなんだねー!だれにもまけないんだねー!わかるよー! とーってもきもちいいんだねー、わかるよー!(愛で時) もっとなでなでするんだね、わかってねー!(愛で時) うんうんがでるよーわかってねー!(うんうん体操中) 等 善良種 こんにちはなんだねー、わかるよー! こんばんはなんだねー、わかるよー! ちぇんといっしょにかけっこするんだねー!わかるよー! ちぇんはしあわせなんだねー!わかるよー! ちぇんはうれしいんだねー!わかるよー!(愛で時) 虐待時 どうしてこんなことするの~、わからないんだよ~ わからない〜わからないんだよ〜! ごめんなさい!わかってほしいんだよぉ!(謝罪形式だがゲス種でも発言する) かえすんだね〜すぐにかえすんだね〜!(おぼうし没収) あつい〜あついよ〜わかってねぇ!(炎上・あつい…時) さむい〜さむいんだね〜だれかたすけてほしいんだね〜!(さむい…時) ちぇんはにげるんだねー!わかってねー!(ゲスのみ) 等 ゲス種 ここはちぇんのゆっくりプレイスなんだねー!わかるよー あまあまをもってくるんだねー!わかれよー? ちぇんはさいきょーなんだねー!わかれよー? わからないよー? わかれよー! ちぇんにはさーっぱりわからないよー? ちぇんがかわいすぎてしかたないんだねー!(愛で時) 等 ぷくー時 わかるよー? ちぇんはもうおこったんだねー! 他ゆへの虐待時 だいじょうぶなんだね~、ちぇんがまもってあげるんだね~ がんばるんだね~、ちぇんがいまいくんだね~ 等 食事時 ちぇんはいっぱいたべるんだねー うんうんさんあっちにいくんだよぉ、わからないよー!(うんうん) ケーキ投与時 ケーキさんっ、ケーキさんなんだねー! 等 狩り時 ごはんさんでてきてねー?わからないよー? はっぱさんのにおいがするんだね、わかるよー?(葉っぱ) 妊娠時 ちぇんにあかちゃんができたんだね、わかるよー! おちびちゃんは、ゆーっくりできるんだねー、わかるよー おそら ちぇんはおそらをとんでるね、わかるよー ちぇんはつばさをてにいれたんだね、わかるよー 非ゆっくり時 わかるよーにんげんさんはちぇんのことがすきなんだよーわかるよー どうしてこんなことするの~、わからないんだよ~ みょん(ようむ) 画像左側の個体が植物妊娠形、画像右側の個体が胎生妊娠形 レア度:★x4 準希少種 100~200円(ランクC) 15000~90000円(ランクB以上) v0.28kで追加 ありす種、ぱちゅりー種、ちるの種よりも出現頻度の低いゆっくり。(観察日記の頃よりも更に出現しなくなった?) 特徴は黒いカチューシャと銀髪。中身は白餡。 オプションパーツは木の棒(はくろーけん) 口に咥えている。 原点では通常種扱いだが、このゲームでは希少種扱いなのか売値も極めて高い。また淫語しか喋れない「淫語みょん」は登場しない。 基本的に語尾に「みょん」と付くが、一部のボイスはありすやぱちゅりーと同じ女言葉の汎用セリフになっている。 植物妊娠型のみょんは髪色が白色で、胎生妊娠形は髪色が灰色。 主なボイス 通常時 みょんみょんみょーん ゆっくりのーみょーん、まったりのーみょーん、みょんみょんみょーん みょんはともだちだみょん(善良種のみ) うんうんでるみょーん(うんうん体操中) 等 ゲス種 みょんにかてるとおもってるみょん? みょん、そこのおまえみょん! はやくあまあまもってくるみょん! 虐待時 ごめんなさいみょーん(善良種のみ) ぷくー時 みょんとたたかうみょん! みょんにかてるとおもってるみょん? 食事時 とーっても、おいしいみょん! ごはんさん、ありがとうだみょん これはみょんのごはんだみょん(ゲス) 出産時 うまれるみょん、うまれるみょん さくや 画像左側の個体が胎生妊娠形、画像右側の個体が植物妊娠形 レア度:★x5 希少種 100~200円(ランクC) 25000~120000円(ランクB) 原点でも希少種とされているゆっくり。 特徴はプリムと銀色のおさげ。中身は(このゲームではそうは見えないが少なくとも原点では)プリン。 オプションパーツは歯ブラシ。口に咥えており、近くに汚れ状態のゆっくりがいると磨いて綺麗にする事がある。 今作ではみょんと同等以上に出現頻度が低くなっており、売値も最高クラスとなっている。 観察日記と同様、基本的にはゲス捕食種の捕食対象にならない。 植物妊娠型のさくやは髪色が白色で、胎生妊娠型は、髪色が灰色。(みょんと同様) 主なボイス 通常時 おじょーさま、おじょーさま おじょーさま! なにかごようですか あなたにちゅうせいをちかいます(善良種のみ) うんうんがでますぅ(うんうん体操中) 等 ゲス種 あなたはめしつかいね はやくおじょーさまにごはんをはこびなさい 等 食事時 とってもおいしいですね! すてきなおりょうりですね! これはわたしのごはんです(ゲス) 等 空腹時 はやくおりょうりしないと… 出産時 うまれますぅ、うまれますぅ れみりゃ(れみりあ) 画像左側の個体が胎生妊娠形、画像右側の個体が植物妊娠形 レア度:★x3 捕食種 60~150円(ランクC) 7000~50000円(ランクB以上) 廃墟でよく見かけるゆっくり。 特徴はこうもりのような羽と牙。中身は肉饅。 捕食種の性質について ランクC〜Bの捕食種は設定次第で他のゆっくりに対して、身体に噛み付いて引き摺り回し体力を吸収する「捕食」を行うようになる。羽の破壊やあんよ焼きなどで移動能力が損なわれている状態でも行う事ができ、与えるダメージ量は体格差によって変動する。 同じ捕食種であるふらん種も同様の性質を持ち、また捕食種同士は捕食の対象にならない。加えてさくや種も例外とされている。 設定についてはゆっくりにっきのステージ①の「タイトル画面」を参照 過去版では他のゆっくりと比べて移動速度・飛行速度が速かったが、現行版では個体ごとにランダムの模様。(他の種類のゆっくりも同様)また、0.5a~0.5a5では飛行できないバグがあった。 現行版では糸目型と丸目型の2種類のバリエーションがある模様。丸目の方が若干少ない。 胎生妊娠形のれみりゃは髪色が紫色で、植物妊娠形のれみりゃは髪色が赤紫色。 主なボイス 通常時 ゆっくりの~うー☆まったりの~うー☆れ・み・り・あ・うー☆ れみりあうー☆ もっとぷにぷにするんだどー(愛で時) 等 善良種 れみりゃといっしょにゆっくりするんだどー いっしょにあそぶんだどー れみりゃしあわせ〜(愛で時) とってもきもちぃーどー!(愛で時) 等 ゲス種 さくやぁ!さくやぁ! ぷにぷにがたりないどー(愛で時) 等 ふらん 画像左側の個体が胎生妊娠形、画像右側の個体が植物妊娠形 レア度:★x3 捕食種 60~150円(ランクC) 7000~60000円(ランクB以上) 廃墟でよく見かけるゆっくり。 特徴は枯れ枝に結晶が生えた様な羽と牙。中身は餡饅。 捕食種の為、設定次第でランクC〜Bは他のゆっくりを襲いはじめる。 れみりゃと共通するセリフは語尾に「どー(だどー)」とつく。 植物妊娠型のふらんは瞳の色が濃く、胎生妊娠形のふらんは瞳の色が薄い。髪の色も胎生妊娠型のふらんがべたっと塗ったような色をしており、植物妊娠型のふらんは胎生妊娠型に比べ、髪色が薄い。 主なボイス 通常時 おいかけっこしよ! いっしょにあそぼー!(善良種のみ) なにしてあそぶ?(善良種のみ) 等 ゲス種 わたしとあ・そ・べー! つまんない、つまんなーい! 等 過去版ではサイドテール有りの髪型がデフォルトだったが、現行版ではサイドテール無しがデフォルトとなっている。 コメント(編集できない場合やメモなどに) コメントログ 名前 昨夜は☆3じゃない?普通にレミフラと同じ頻度で出てくるし。 - え (2024-04-30 22 36 37) まりちゃにリンゴのかぶりものはよくにあうのぜ - 名無しさん (2024-02-20 17 27 34) 可愛いらしいでしょうか -  (2024-01-14 14 02 38) おいかけっこしよ -  (2023-12-29 16 45 59) ↓ゆっくすで合ってます。前作からの変更点はれいぽぅをやらなくなっただけで普通のゆっくすはやります - れみどん (2023-12-25 18 04 24) ありすを2ゆんくっつけてたらBありすがAありすの後ろに回ってBありすが腰?をめっちゃ振ってました。そしたらそれが終わった時に、Aありすが妊娠してました。これってゆっくすですか? - フシギダネ (2023-12-25 17 09 49) なんかとてもいい -  (2023-12-17 16 44 31) 捕食種はつい愛でちゃうな - ソンス (2023-07-18 10 42 10) 糸目れみりゃが死ぬとき目を開くことがある - 酒 (2023-07-17 12 12 40) お腹すいたときの台詞が可愛い - 名無しさん (2023-06-29 19 55 26)
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ゆっくりれみりゃが空き家に住んでいた。 空き家でもそれなりに丈夫な外観、そしてまだ綺麗な状態のベッド。 自称紅魔館のお嬢様を自負するれみりゃのぷっでぃん脳では、随分と豪華なお屋敷に映っている事だろう。 「う~♪ さくや~だっご~♪」 起き掛け、一人空き家でそんな事を言うれみりゃ。 れみりゃは取り合えず朝はこう言って起きる、たとえ咲夜が居なくても。 しかし、このれみりゃは違った、きちんと咲夜がいたのだ。 「おぜうさま!! さくやがまいりましたぁ!!!」 勢いよく寝室に入ってきたのは、一匹の饅頭。 青紫の髪の毛にカチューシャ、そして青い瞳。 ニコニコとれみりゃに話している顔。 その外見的特長からゆっくり咲夜と呼ばれている。 「う~♪ しゃくや♪ だっご~♪」 そう言って手を伸ばすれみりゃ、しかしどう考えても体の大きいれみりゃを饅頭の咲夜が持ち上げられるはずも無く、渋々ベッドから降りるれみりゃ。 「おぜうさま!!! おきがえのじかんです!!!!」 笑顔のまま、そう言ってれみりゃに着替えを促す。 勿論、紅魔館でご寵愛を受けて無残に食べられるれみりゃは代えの服は有るのかも知れないが、唯の空き家に住んでいるぷっでぃん脳しか持たないれみりゃに代えの服が有るはずも無く、一度服を脱いでまたその服を着る、という作業をするだけである。 「う~♪ れみりゃはひどりでおきがえできるぉ~♪」 前が見えなくなり十六回ほどあちこちにぶつかりながら上着を脱ぐ。 足がもつれ、十六回ほどあちこちにぶつかりながらスカートを脱ぐ。 裏返しになりながらシャツを脱ぎ、一回頭をぶつけてドロワーズを脱ぐ。 それを逆に繰り返せばお着替えは終了である。 「はぁはぁ!! おぜうさま!! おうつくしい!!!」 その様子をじっと見ていた咲夜はそんな台詞を呟きながら、何故かある鼻から蕨餅を滴らせていた。 「しゃくや~♪ れみりゃおぎがえおわっだどぉ~♪」 俗に言うれみりゃスマイルと言う破壊力抜群の笑顔で咲夜に報告する、自分でパチパチと拍手までしている。 「おぜうさま!! さすがです!!! ……そろそろちょーしょくです!!」 「う~♪ しゃくやおがじたべどぅ~♪」 二つの食べ物は仲良く一階に移動する。 奥の部屋、そのぽっかり空いた床は二メートルほどの穴が開いていた。 穴を見ればゆっくり霊夢一家。 「ゆ!! おかーさんおなかへったよ!!!」 「ゆっくりできないよ!!!」 「がんばってここからでようね!!!」 どうやらここに落ちたらしい、しきりにジャンプして上がろうとする一家。 それが叶わないとピラミッドを組んで上がる。 しかし、重みと人数が足らずそれも無理。 するとさっきの事は忘れてまたジャンプ。 その繰り返し。 一日三回ピラミッド中に潰れた子供を食べるので、ドンドン人数が減っていく一家。 そうやら霊夢の中でもオツムが極端に弱いらしい。 「う~♪ おまんじゅ~おまんじゅ~♪」 言うが早いか穴に飛び込むれみりゃ、勿論今日の朝ごはんだ。 「ゆゆ!! こんにちは!! れいむたちゆっくりできないの!! ゆっくりたすけてね!!!」 「「「ゆっくりしようね!!!」」」 「う~♪ た~べちゃ~うぞ~♪」 大きい母親霊夢から食べ始める。 「ゆ!!! なにずるのーー!!!」 必死に抵抗するが、今まで散々意味の無い運動を続けていたゆっくり達は殆ど抵抗できない。 「ゆゆ!! ゆっぐりやめでね!! れいむはだめののじゃないよ!!!」 「「「やめてね!!! おかあさんをゆっくりはなしてね!!!」」」 「う~♪」 子供たちの抵抗なんて何のその、ゆっくり半数の饅頭を食べ終えたれみりゃはお腹を擦りながらご機嫌な様子で穴から出てくる。 「ゆっ! ゆっくり、……ゆっくりしてたけっかがこれだよーーー!!!」 「おがーざーん」 「どうじでおがあざんをたべだのぉー!!!」 今度はそのゆっくりが掴まれた、感動の親子再開である。 「う~♪ おいじがっだどぉ~♪」 「おぜうさま!!! それはよかったですね!!!!」 それを聞いて、ゆっくり独特の笑顔で返答する咲夜。 この穴に一家が入ったのは偶然ではない、このゆっくり咲夜がやったのだ。 「ゆっくりしていってね!!!」 と屋敷の周りで言えば。 「ゆっくりっするよ!!!」 とゆっくりが駆け寄ってくる。 「なかでもっとゆっくりできましゅよ!!!」 そういってすんなりと中へ招き入れる。 「ほんとだ!!」 「おかーさん!! ここれいむたちのおうちよりおおきいね!!!」 「ここならもっとゆっくりできるよ!!!」 「そうだね!! ゆっくりみんなではなしあったけっか、ここはれいむたちのおうちになったよ!!!」 「ゆっくりできないゆっくりは、でていってね!!!」 れみりゃスマイルと同程度の破壊力を持った発言。 それを聞いてもゆっくり咲夜は顔色一つ変えないで言い放つ。 「いいですよ!! でもこのおくに、もっとゆっくりできるばしょがありましゅよ!!!」 「ゆ!! さっさとはやくあんないしてね!!!」 つまりはこういう訳である。 これで食事に事欠かなくて済むれみりゃ。 咲夜の自身は他のゆっくりと同様の食事で困らないので、これは全てれみりゃのご飯になる。 れみりゃが足りないと我侭を言っても、直ぐに咲夜が調達してくる。 やはり、れみりゃは何処でも我侭なのだ。 そのご飯に今までゆっくりアリスが入っていなかった事を付け加えておく。 「う~♪ おでかけするぉ~♪」 「おぜうさま!!! ごいっしょいたしますわ!!!」 安っぽい、一部剥がれたビニール傘をさしながらお屋敷を出る。 特に目的は無い、ただ周りを見て回るだけだ。 「う~♪ おはないっぱいだどぉ~♪ !!! じょうじょだどぉ~♪ までー♪」 「おぜうさま!!! おまちになってください!!!」 とてとて歩くれみりゃの後ろをピョンピョン付いていく、れみりゃは目の前の蝶を追いかけるので精一杯だ。 「う~? じょうじょどご~? どご~?」 蝶が目の前から居なくなり、漸く周りの景色に目を向ける。 「おぜうさま!!!」 「う~♪ おっきなおやしぎ~♪」 目の前に映る屋敷に目を奪われているれみりゃ。 追いついた咲夜も目を奪われる。 それは正真正銘の紅魔館。 当然、れみりゃは大きなそのお屋敷に吸い込まれるように近づいていく。 「う~♪ れみりゃのおやしきだどぉ~♪」 辺りをぐるっと回って正面へ、勿論門番が立っていた。 のだが先ほどの魔理沙との先頭で気絶中。 「う~♪ ばぁ~か♪」 その横を得意げに通って行くれみりゃ、勿論傘で叩くのも忘れない。 「う~~~~~♪」 目の前には綺麗な庭、そして大きなお屋敷。 そして…… 「「「「う~♪」」」」 数匹のゆっくりれみりゃ、みな一様にれみりゃスマイルでヒゲダンス。 「う~♪ れみりゃもずるどぉ~♪」 当然ものれみりゃも参加する。 口をニヘラァと開けて笑顔を作る、両手を腰にあてお決まりの言葉を発すれば、そこには楽しそうに踊っているれみりゃの姿を見ることが出来る。 「うっう~♪ あうあう♪」 本人達は楽しそうに踊っていたその頃、ゆっくり咲夜は未だばてている門番の所に居た。 「も~しょうがないわね!!!」 がぶり。 普通のゆっくりより遥かに鋭いその歯で門番の腕に噛み付く。 「!!! ちゅ~~~~ごっく!!!」 鋭いとはいえゆっくりの歯、妖怪やましてや人間の皮膚を傷つけるには居たら無いが、門番を起こすことは出来るようだ。 意味不明な叫び声をあげて飛び起きる、必死に咲夜の姿を探すが近くにはその顔をしたゆっくり咲夜だけ。 「??? 咲夜さん……?」 完全に覚醒しきれていない門番は何が起きたのか理解できない。 「もう! はやくゆっくりしごとにもどってね!!!」 それだけ言って屋敷の中へ消えていく咲夜の頭。 「?」 取り合えず、言われたとおり仕事に戻った門番だった。 「うっう~♪ れみりゃう~♪」 その頃庭では踊りも終盤、全員が肉汁だらだら出しながら満面の笑みで踊っていた。 「う~、……! れみ☆りゃ☆う~☆ ニパ~」 極上の笑顔を残し、肉まん集団御遊戯会は終了した。 それを待っていたかのように、屋敷から一人の人影が近寄ってくる。 「れみりゃ様。すばらしいダンスでしたよ!! さぁさぁ疲れてでしょう? プリンをお持ちしました」 本物の十六夜咲夜だ。 差し出されたプリン丁度全員分、ご丁寧にスプーンまで用意されている。 「う~♪ ぷっでぃん♪ ぷっでぃんだべどぅ~♪」 「ぷっでぃ~~~んちょ~だい~♪」 一目散に咲夜に駆け寄ってプリンを奪い取っていくれみりゃ達。 「う~? う~♪」 勿論、あのれみりゃも例外ではない。 少し不思議がってはいたが、一目見るとあっという間に上機嫌。 「うっう~♪ おいち~♪」 他のれみりゃと同じように、スプーンをグーで持って食べ始める。 たくさんのれみりゃがニコニコしながらプリンを食べている。 「「「「「ん~♪ おいちいどぅ~♪ れみ☆りゃ☆う~☆ 」」」」」 それをニコニコしながら見つめる咲夜。 と。 「さくやさ~ん? どこですか~♪」 自分を呼ぶ小悪魔の声、仕方が無いがその場を後にする咲夜。 なに、これだけ人数が増えてのだ、また明日見ることが出来るだろう。 「どうしたの小悪魔?」 「はい。ぱちゅりー様が御用時があるそうです」 「そう」 連れだって図書館へ赴く。 この時、小悪魔が後ろを振り向いてプリンを貪るれみりゃ達に笑みを浮かべたことは、咲夜は死んでも知らない。 「うっう~♪ ぷっでぃ~んおいしいどぉ~♪」 「うーー!! もっどぷでぃんだべたいどぅ~♪」 「「「「「「「ぷっでぃ~んたべたいどぅ~♪」」」」」」」 「おぜうさま!!!」 ゆっくり咲夜が着いた時には、既にプリンは食べ終えられ高級なカップが地面に転がっていた。 「う~♪ ざぐや~♪」 ゆっくり咲夜のもとへ、あのれみりゃが近づいてゆく。 「しゃくや? しゃくやどご~♪」 「どご~、ざぐや~♪」 その一声に、他のれみりゃも近づいてくる。 「う~ざぁぐや~♪」 「おぜうさま!!! なんでしょう!!!!」 腰を屈めて、両手を自分の胸の前に持ってくる。 所謂ぶりっ子の仕草をする、このれみりゃがゆっくり咲夜に我侭を言う時のポーズである。 周りを見ると、他のれみりゃも大分近寄ってきた。 ぷっでぃん脳でも人間ではなくゆっくりだと理解できるらしい。 始めてみるゆっくり咲夜だが、生得的なものか、これが自分に対してどういう存在か知っているようだ。 「れみりゃね~、おがしだべだいの~♪」 代表して言うのは勿論あのれみりゃ、ここぞとばかりにれみりゃスマイルを浮かべて話を続ける。 「おぜうさま!!! おがしですね!!!! れいむですか?まりさですか?」 「ん~ん♪ れみりゃ、ぷっでぃ~んがたべたいのぉ~♪」 にぱーっと笑顔を浮かべてゆっくり咲夜にお願いするれみりゃ。 外野でもぷっでぃ~んコールが沸き起こる。 「ぷっでぃ~ん? ぷっでぃ~ん。……ぷっでぃ~ん!!!!!」 「う~♪ ぷっでぃ~ん♪ ぷっでぃ~ん♪」 咲夜が連呼したぷっでぃ~んに合わせて自分も叫ぶ。 咲夜の目が真っ赤になっているとも知らないで。 「しょくりょーが!!!」 そのまま声を張り上げ目の前のれみりゃへ。 勢いよく跳躍し、自慢の歯でれみりゃの両腕を噛み千切る。 「ほんじゃぎゃーーーーーーー!!!!!!」 今まで自分の我侭を聞いていたゆっくり咲夜の突然の行動と腕の痛みに、涙を流しながら転がり悶えるれみりゃ。 「こんなのおぜうさまじゃないわーーーーー!!!!!!!」 そう言って、引きちぎった両腕を貪る咲夜。 「うがぁ!! れみりゃの! ……それはたべものじゃなぐでれみりゃのー!……」 そんな声はお構いなしにそのまま全身を貪っていく咲夜。 「う~!! ♪ えい! えい♪ うっう~れみりゃはつよいどぉ~♪」 咄嗟に、回復した右腕でビニール傘を使い反撃にでる。 しかし、お世辞にも早いとは言えないその攻撃を食らうほどゆっくり咲夜は馬鹿ではない。 「むっしゃむっしゃ!!!」 あっけなく再生したての右腕を再び口ちぎられ、その牙はれみりゃの頭に向けられる。 「おぜうさまとはちてもにつかないわ!!!」 「んぎゃーーー!!! うっ、う゛わ゛ーーー!!!」 頬を食いちぎる、そのまま顔面を恐ろしいスピードで飲み込んでいく。 周りのゆっくりは逃げもせずただおろおろするばかりである。 「う~!! う~~~~!!!!」 「ばっ、ばぁ~か!! ざぐやにいいづげでやどぅ~!!!」 「ざぐや!!! ざぐやーーー!!!! どごーーーーー!!!!」 通常自分たちが食すゆっくり饅頭。 それが攻撃してくると、れみりゃは唯おろおろしてなすがままにされるしかない。 それは、アリスに襲われた時、自らの子孫を残すためでもあるのだ。 それだけを遺して息絶えるれみりゃ。 間髪居れず次の肉まんへ狙いを定めるゆっくり咲夜。 「こんなにぐまん!!!! しょぶんじますーーーー!!!!!」 次の肉まんも圧倒的だった。 足を食いちぎりそのままお腹へ。 たくさんの肉まんの具を掻き出しながら飲み込んでいく。 「ざぐやーーー!!! ごわいひどが!!! ごわいひどがいるどぉーー!!!」 それを言い終わる頃には既に残すは首から上のみ。 「ざぐやーー!! だずげでーーー!!! それがらぷっでぃ~ん!!!」 それが最後の言葉になった。 次の肉まんは珍しく、飛んで逃げようとした。 「う~♪ れみりゃはどべるんだぞぉ~♪」 しかし、見せびらかすようにゆっくり咲夜の目の前で浮かんでいたため即座に羽が食べられる。 そして落下する体。 「んびょん!! ……!! う~!!」 勢いよく地面にぶつかったこのれみりゃはそこで抵抗を諦めたようだ。 それ故、一番早い時間で完食された。 「ふー……。!!!」 まだ残っているれみりゃ達の方へ向き直るゆっくり咲夜。 「う……。う~♪」 「う~♪ う~♪」 「うっう~あうあう♪」 一致団結してご機嫌をとる、それを白けた顔で眺める咲夜。 「う~~♪」 「「「うっ~♪」」」 れみりゃ達も、その様子を見てほっと一安心、もう食べる気は無いと判断したのであろう。 「れみ☆ry、うーーーー!!!」 咲夜のもとへ近づいてきた一匹に狙いを定めて食事を再開する咲夜。 御遊戯の雰囲気から一変、再びそこは地獄絵図と化した。 「おぜうさまのにせものめ!!!」 「う゛わ゛ーーーー!!! ざぐや゛ーーーーーー!!!!!」 今まさに食べられている一匹が発した言葉、それが咲夜に届くことは無かった。 そして、ゆっくり咲夜に耳にも届くことは無かった。 ……。 「それではこれで失礼します」 「ご苦労様」 「おう、ありがとさん」 「お二人とも、プリン食べたくないですか?」 パチュリーと魔理沙に紅茶をだして図書館を後にする咲夜。 「今日は安心して普通の紅茶を飲みたい」 そう言われて小悪魔に変わって紅茶を淹れた。 時間を止め、出来る限り最速で淹れ終えたのだが、時間を戻した時に運悪く躓いていた小悪魔とぶつかって淹れなおし&後始末。 おかげで大分時間が掛かってしまった。 そうだ、何時も一つで不満げだったからたまにはもう一つ作ってあげよう。 それで機嫌がよくなれば、もう一度可愛い可愛い御遊戯会が鑑賞できる。 先ほどよりも、本気を出してプリンを作っていく咲夜。 おいしければおいしい程御遊戯会を見れるチャンスが増すのだ、そう考えれば一段と気合が入る。 「できた」 何時ものプリンの上にさくらんぼと生クリーム。 その懇親の一品をお盆に載せる。 そうだ、と思い立ち以前ご機嫌を取るのに使ったきぐるみの帽子も被る。 準備万端、いざ庭へ。 「れみりゃさまー!! ぷっでぃ~~んをお持ちしましたよ!!! ……」 元気よく先ほどまでれみりゃが居た場所に向かった咲夜。 そこにはパラパラと散らばっている肉まんの具と人数分のれみりゃの服と帽子。 そのうち一枚は何故かシャツが裏返っていた。 呆然と立ち尽くす咲夜。 ゆっくりフランなら唯の悪戯だけだし、門番はきつく言い聞かせているから食べない。 ……? 全く原因が分からず呆然としている咲夜、一点を見つめたまま辛うじてお盆を支えている。 そこに近づく一人の人影。 「さくやさん。おいしそうなぷりんですね♪ もらってもいいですか?」 「…………」 無言で首を縦に振る咲夜。 「えへへ、有難うございます♪」 そう言って彼女は、もと来た道を戻っていった。 その頃、ゆっくり咲夜は紅魔館の中へ入り込んでいた。 「ゆ! そこ、ちゃんとしごとしなしゃい!!!」 「そこはみょういいわ!! こっちのおしょうじをよろしくね!!!!」 そんな事を言いながらまるで本物のメイド長のような態度で屋敷をうろついて行く。 「咲夜~? 紅茶を入れて欲しいんだけど」 「ゆっ!」 昼間、博麗神社へ行っていたため起きていたこの屋敷の真の主、レミリア・スカーレット。 従者に紅茶を入れて貰おうと、掴まらない咲夜を探していた所だった。 それと丁度かち合ったゆっくり咲夜。 ゆっくり咲夜の顔に笑みがこぼれる。 「おおおお!!!! おぜうさまー!!!!! ほんもののおぜうさまーーー!!!」 鼻から蕨餅をダラダラ垂らし、まるで発情したゆっくりアリスの様にピョンピョンと近寄っていく。 勿論、今のコイツは素面である。 対するレミリアは特に驚かず、一瞥の後に。 「何、コイツ?」 「はぁはぁ、おぜうs……んびゃお!!!」 一発の弾幕で中の餡子を飛び散らせて朽ち果てるゆっくり咲夜。 勿論意識は一瞬で途切れた。 「? まぁ良いわ。さくやー! ……庭かしら?」 …… 「このプリンとても美味しいわね。小悪魔が作ったの?」 「いえ、咲夜さんが作りすぎたようなので、貰ってきたんです」 「こいつはうめぇぜ! 流石メイド長だけはあるぜ!」 「はい、(元に)戻ったら伝えておきますね♪」 …… 「ゆっくりたすけてねーーー!!! おかーさーん」 「ゆー!!! ゆっくりたすけてねーー!!!」 「おなかへったねー!!!」 「はやくおうちにかえって、おかあさんたちとゆっくりたべようね!!」 「ゆー、おにゃかへったー」 「……。!!! まんじゅう!! いっぱい!!!」 「ゆゆ!! れいむはまんじゅうじゃないよ!!! ぷりてーなかわいいれいむだよ!!!」 「むっしゃ!! これめっちゃいめぇ!!!!」 True End
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「じゃあ行って来るわね」 「行ってらっしゃいませ、幽々子様」 冥界を管理する事を仕事とする西行寺幽々子はこの日、閻魔と大事な話し合いがある為早朝から出かけていった。 残された庭師兼幽々子の剣術指南役である魂魄妖夢は、滅多に無い事実上の休暇という事になる。 「とりあえず庭の手入れをやってしまおう。その後は……昼寝でもしようかな。最近夜遅かったし」 確認するように呟くとすぐさまと広い庭の手入れにかかる。 太陽が高く昇る頃、漸く手入れを一通り終えた妖夢は、後の事を他の使用霊に任せて自室に向かう。 畳の上に寝そべってぽかぽかとした陽光を全身に浴びながらとろとろと目を閉じる。 意識が途切れる直前、何かが近付いてくる気配がする。 使用霊だろうか、と思いゆっくりと視線を気配の方に向ける。その瞬間、 「みょんっ!?」 妖夢に電流走るっ……!一瞬で眠気が吹き飛ぶ妖夢。 一体何事かと見てみると、そこには妖夢の半霊にかぶりつくゆっくりの姿が! 「んなっ……!」 この冥界にゆっくりが居る事なんて滅多にある事ではない。というか、まずありえない。 どうやって結界を越えてきたのか、そして何故半霊にかぶりついているのか。様々な疑問が妖夢の頭に浮かぶ。 「ゆゆ~!あま~!!」 どうやら半霊を食べようとしているらしい。自身の数倍の大きさの半霊に食いつくとは、見上げた食欲だ。 半ば感心している妖夢はやはりまだ寝ぼけているのかもしれない。 そんなうっかり者の妖夢を余所に、ゆっくりゆゆこは半霊にかぶりつき続行。途端、 「ひゃあっ!?……んんっ…!」 再び妖夢に電流走るっ……!まずい。呆けている場合では無い。早く止めないと半霊が食べられてしまう! 慌てて起き上がり半霊の救出に向かおうとする妖夢。だが、 「ゆっゆっゆゆ~っ!ちゅっぱちゅっぱ!」 「はひぃっ!……っくぁん……あふっ!」 どこぞのちゅぱ衛門の如き勢いで半霊にしゃぶりつくゆっくりゆゆこ。 まるで糸の切れたマリオネットのように畳に倒れこむ妖夢。起き上がろうと膝を付くも、足腰がガクガクと震えている。 (何だ、これは…?か、体に力が入らな ここから先は脳内で補完して下さい ぽたぽたぽた、と音がする。気付けば妖夢が先程まで寝そべっていた畳に水溜りが出来ている。 (ああ、やってしまった……いい年をしてこんな粗相を……もう駄目だ、これでは幽々子様にも軽蔑される……) 色々な意味で崩れ落ちる妖夢。もう先程まで全身を襲っていた電流は無い。 見ればゆっくりゆゆこは半霊を食べるのを諦めたのか、横ですやすやと眠っている。 「お、お前が…お前のせいでえぇぇぇ!!」 その安らかな顔を見てカッとなった妖夢は背中の刀を引き抜き、一瞬で間合いを詰めてゆっくりゆゆこを切り裂いた。 悲鳴すら上げる間も無く寸断されるゆっくりゆゆこ。顔や半霊に返り血、いや返り餡を浴びる妖夢。 その時、 「妖夢~?居るならちゃんと返事しないと駄目よ~って……妖夢!?」 「あ……幽々子、様……お、おかえりなさい……!あ、ああ!!?」 慌てて刀を納め、水溜りを隠すように立つ妖夢。 顔に付いた返り餡、透明な液体に塗れた妖夢の脚、畳の水溜り、半霊にかかっている大量の餡と歯型。 そして部屋に漂う香り。 それらの状況から瞬時に事の成り行きを把握する幽々子。何も言わずに、妖夢をそっと抱き寄せる。 「あ、あの…幽々子様…?あっ!こ、これはですね!その、決しておもらしとかそんなではなくてですね!!」 「妖夢…とりあえずお風呂に入って来なさい。ここは私が片付けておくから」 「へ?で、でも幽々子様にそのような事をさせる訳には……」 「いいから行きなさい。これは命令よ?」 「は、はぁ…分かりました」 箪笥から着替えを出し、ぱたぱたと風呂場へ向かう妖夢。 妖夢を見送った後、雑巾を持ってきて部屋の掃除をする幽々子。 その顔には、妖夢が見た事も無い程の怒気が滲み出ていた。 「ゆっくり……まさか逃げ出すとは思わなかったわ。しかも妖夢に手を出すなんてね……」 そう、あのゆっくりゆゆこは幽々子が妖夢にも内緒で飼っていたものだった。 夜中にこっそり食べる秘密のおやつとして。 「ゆ、許さん……絶対に許さんぞ饅頭ども!ジワジワと嬲り殺しにしてやる!一匹たりとも逃がさんぞ覚悟しろ!!」 とりあえず叫んでみた。その怒声は屋敷内にいる全てのゆっくりにまで届いていた。 風呂から上がった妖夢に食事の用意をさせている間、幽々子は屋敷内に散ったゆっくり達を探し始めた。 次々と見つかり、不可視の籠に放り込まれていくゆっくり達。 屋敷内全てのゆっくりが籠に入った頃、妖夢が夕食が出来上がった事を知らせに来た。 「幽々子様~!お食事の用意が出来まし…た……ゆ、ゆっくり!?」 昼間の出来事がトラウマになっているのか、ゆっくりの姿を見るなり後ずさる妖夢。 「大丈夫よ、妖夢。こいつらはちゃんと籠に入ってるから」 「は、はぁ、そうですか……そ、そう、お食事の用意が出来ましたよ幽々子様」 「そう、ありがとう。じゃあ行きましょう。丁度いいデザートも手に入ったから、食後にいただきましょう?」 妖夢の背を押して食卓へ向かう幽々子。途中、厨房にゆっくり入りの籠を置いて行く。 「ゆ゛っぐりじだい゛よ゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「ゆ゛っぐりざぜでよ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「わ゛がら゛な゛い゛よ゛お゛お゛お゛お゛!!」 「ぢんぼお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「や゛だや゛だお゛うぢがえる!ざぐや゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」 「たべられちゃうんだってさ」「おお、こわいこわい」 厨房に、自らの運命を知らされたゆっくり達の絶望の叫びが木霊する。 「ごちそう様。今日も美味しかったわ妖夢」 「お粗末さまでした」 二人分の食器を片付ける妖夢。幽々子は手ぶらで厨房まで付いて行き、 泣き叫ぶのに疲れて眠っているゆっくり達の入った籠を取る。 「じゃあ、早速いただきましょう。妖夢、お茶の用意をして」 「分かりました」 手早くお茶の用意をしてお盆に載せて、先導する幽々子に従う妖夢。 「どうぞ、幽々子様」 「ありがとう。ささ、妖夢もお一つ」 そう言って籠からゆっくりようむを取り出し、無造作に半分に千切る。 「ぢい゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛んぼお゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!!」 「あ、あの……幽々子様?これは一体……」 「お饅頭よ、お饅頭。美味しいわよ」 「は、はあ……ではいただきます」 悲鳴を上げて苦しむゆっくりを平然と差し出す幽々子に戸惑いながらも受け取り、食べる。 「い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛い゛ぎい゛い゛い゛い゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛え゛!!!」 一口齧る度に凄まじい悲鳴を上げる饅頭。だが 「あ、美味しい」 「でしょう?」 そんな苦痛の叫びも気にならない位、口の中に広がる芳醇な甘みは脳を痺れさせた。 「すごく美味しいです、これ。私こんな美味しいお饅頭食べた事ありません」 「そうでしょうそうでしょう。それに加えてこの音楽がたまらないわよねぇ」 「音楽、ですか?……いや、私はそういう趣味は無いんですけど……」 「あらそう?これの良さが分からないなんて、妖夢もまだまだ半人前ねぇ」 「そうでしょうか……?」 絶対それは関係ないと思う、とは言わず黙ってゆっくりを食べ続ける。 幽々子と並んで月を見ながら、美味しいお茶とお饅頭を食べるのはこの上なく幸福な時間だった。 ……いちいち耳をつんざくような悲鳴が無ければ、もっと良かったのだが。 「あの、幽々子様……昼間の事……怒らないんですか?」 「あら?私が可愛い妖夢の事を怒ったりなんてすると思う?」 「いや、結構怒られてますが……」 「そんな事は無いわよう。愛よ、愛の鞭」 「はあ……私は剣士なんですが」 ズレた回答をしながらも、内心で胸を撫で下ろす妖夢。 「ねえ妖夢。今夜貴女と一緒に寝てもいいかしら?」 「ええ?どうしたんですか急に?」 「妖夢は私と寝るのは嫌なのね……そうよねぇ、私なんて……」 「あっあっ!嫌じゃないです、嫌じゃないですよ!だから泣かないで下さい!」 「そう?嬉しいわ。妖夢と一緒に寝るなんて何年ぶりかしら。ふふ、楽しみだわ」 「もう……」 自然と顔をほころばせる妖夢に満足して、最後のゆっくりを手に取る幽々子。 「あっ!幽々様いつの間にそんなに食べてるんですか!ずるいですよ!」 「いいじゃない少しくらい」 「少しじゃないです!私まだ2個しか食べてないんですよ!」 「じゃあ半分こね。ん」 ゆっくりを口に咥えて、目を瞑って妖夢に顔を突き出す幽々子。 「な、何をやってるんですか幽々子様!そ、そんな事……」 耳まで真っ赤にしてもじもじする妖夢。そんな妖夢に目だけでニヤニヤと笑いかけながら促す。 「じゃ、じゃあ、いただきます……」 「い゛だい゛い゛だい゛い゛だい゛い゛い゛い゛!!や゛べで!どうじでごん゛な゛ごどずる゛の゛お゛お゛!!」 (あなたの同族が私の可愛い可愛い妖夢を傷付けたからよ) 内心で答える幽々子。一瞬その瞳に冷たいものがよぎったのに、無意識の内に目を閉じていた妖夢は気付かなかった。 LOVELY LANDSCAPE GOOD NIGHT... 作:ミコスリ=ハン
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森でまもなく子供が生まれるゆっくりれいむとそれを見守るゆっくりまりさをみつけた。 「どうしたんだい?」 「ゆっ!?まりさ、にんげんだよ!」 「おにーさんどうしたの!ゆっくりしていってね!」 俺の声かけに気づいたゆっくりまりさがれいむを守るように俺の前に立ちはだかる。 すこし膨れているのでだいぶ警戒しているのだろう。 れいむはまりさに隠れながら自分の頭の上の実を気にしている。 その後ろは土が崩れている用に見える。 「もしかしてここに巣があったのかな?」 「ゆぅ・・・おにーさんにはかんけいないよ!はやくかえってね!」 「そうだよ!れいむはふたりでゆっくりしたいよ!」 「まぁまぁ。この様子だと巣を掘りなおすにはしばらく掛かるんだろう?」 「ゆぅ・・・」 「その間うちに来ないかい?」 俺の質問にまりさとれいむは俺を気にしながら相談を始める。 ゆっくりにとって人間は捕食者の一つである。 昔は人間を気にせず人の畑や家に入り込んで食料を漁っていたが、人間によってゆっくりが殺されだすとゆっくりは森の奥に逃げ出した。 森の中で人間にあってもすぐに逃げるようになったので一部を除く人間は無視するようになった。 これにより人間とゆっくりは上手く生活できるようになった。 しかし、一部の人間がゆっくりを捕まえに森に入っていたので、このように人間を警戒するのである。 「おにーさんのていあんはうれしいけどまりさたちはもりでくらすよ!」 「でも近くに身を隠せる場所は無さそうだけど。」 「でもにんげんはしんようできないよ!」 「子供達がどうなってもいいのかい?」 「ゆゆゆゆ・・・」 人間は怖い。しかし、このまま森でいるとやがて夜になり、捕食者が目を光らす時間になる。 まりさは何とかなるかもしれないが、実を生やしたれいむは明日にはいなくなるだろう。 まりさは決断を迫られた。 「ゆっ!おにーさんすこしゆっくりさせてね!」 「まりさ!?」 「だいじょうぶだよれいむはまりさがまもるよ!」 「じゃあ俺の後についてきてね。」 まりさは子供とれいむを見捨てれなかった。心配するれいむをなだめるまりさの目にはれいむを護るという決意の火が見えた。 もうすぐ日が暮れる。このままでは俺も危ないので崩した巣穴を離れた。 俺は後ろからついてくるまりさとれいむを気にしながらゆっくりと家に帰った。 帰る間俺は一度もれいむに近づけなかった。 近づこうとするたびにまりさが間に入るのだ。これなら夜も過ごせたかもしれない。 家につくと庭の一角にある小さな小屋に連れて行く。 「ゆゆっ!これはほかのゆっくりのすだよ!」 「そうだよ!かえってきたらゆっくりできないよ!」 「あぁ前にも使ってたゆっくりがいるだけだよ。」 「ゆぅ?」 「ここは巣をなくしたゆっくりに使わせるために作ったんだ。 今までに何匹ものゆっくりがここで巣が見つかるまで暮らしてたんだよ。」 「じゃあいまはいないの?」 「そうだよ。今は誰も使ってないからそこでゆっくりしていってね。」 「ゆっくりしていくね!」 「おにーさんありがとう!」 ちゃんと俺にお礼を言うゆっくり。 家に来るまではだいぶ警戒していたが、先ほどの話とこの巣に残っていたのだろうゆっくりの気配から俺を少しは信用したようだ。 しかしまだ完全に信じきってはいないようで巣箱の入り口は俺の手が入らないように枝や木の葉で隠せるようにしていた。 「ずいぶん厳重だね。」 「しらないばしょだからね!なにがくるかわからないもん!」 「まりさ!ごはんはどうしよう?」 「ゆぅ・・・」 「こんな時間だしね。何か食べれるものを持ってこよう。」 「ゆ!おにいさんいわるいよ!」 「まりさ!ここはおにーさんにたすけてもらおうよ!れいむはおなかがぺこぺこだよ!」 「ゆゆゆゆ・・・」 「料理に使わなかった野菜屑だから平気だよ。俺は捨てるものがなくなってうれしい。君達は食べれるものがもらえてうれしい。」 「ゆっ、じゃあへいきだね!おにーさんごはんください!」 「じゃあこっちにきて一緒に食べようか。」 そういってまりさとれいむを家の中に招待する。 れいむは縁側を登るのに苦労しそうだったので俺が持ち上げることにした。 まりさはいやがってたがお腹がすいたれいむはすぐに持ち上げてと言って来た。 まりさも言葉では嫌がっているがよだれがすこし見える。 朝早くに巣を壊したのでほとんど一日何も食べてないのだからしょうがないのかも知れない。 「うっめぇ、これめっちゃうめぇ!」 「むーしゃむーしゃしあわせー!」 野菜屑を一心不乱に食べるゆっくり達。それを見て俺も夕食を食べだした。 夕食を食べ終わるとこれからのことを話し合う。 「ゆっ!あさになったらでていくよ!」 「おにーさんありがと!」 「でも巣の当てはあるのかい?」 「ゆっ・・・でもなんとかするよ!」 「まぁまぁもうすぐ雨が良く降るのは知ってるだろう?」 「うん!もうすぐゆっくりできなくなるよ!」 「巣ができる前に雨が降っちゃうと溶けちゃうよ?それでもいいのかい?」 「ゆぅぅぅぅぅ・・・」 「だからさ、巣が出来るまであそこを使ってほしいんだ。餌は俺がやっても良いし自分でとってきてもいい。」 「おにーさんいいの?」 「ああ、もちろんその代わり話し相手になってくれないかな?ひとりだと退屈でね。」 「いいよ!ゆっくりしていってね!」 餌は雨の日以外は自分でとって来るそうだ。俺としては毎日上げてもよかったがまりさが嫌がった。 「かりのしかたわすれちゃうとだめだからね!」 「まりさはとってもじょうずだもんね!」 「れいむもすごいじょうずなんだよ!」 「はいはい。」 次の日からまりさとれいむの新しい生活が始まった。 朝のうちからまりさは巣のあった場所に出かけて穴を掘りに、れいむは新しい巣で子供達が落ちないようにじっとしている。 俺はまりさについていき一緒に森で食べ物を集めた。 森のことはゆっくりの方が詳しいのだ。まりさに連れられてかごをいっぱいにして家に帰る。 まりさは帰るとすぐに巣にいきれいむにご飯をあげる。そして次の日までれいむやおれとゆっくりして過ごす。 物覚えもよく、人の畑の餌をとらないなど俺が教えたことはすぐに覚えた。 どうやらゆっくりしているときに教えてもらったことはちゃんと覚えるらしい。 昔はゆっくりに厳しく教えていたそうだから逆効果だったのだ。 そんな生活も1週間続くと終わりが見える。 れいむの実がだいぶ育ち、赤ちゃんゆっくりの形が分かるようになった。 ゆっくりれいむが6匹、ゆっくりまりさが同じく6匹。 まりさの巣ももうすぐ完成だという。 「おにーさんいままでありがとう!」 「れいむたちはあしたにはでていくよ!」 「急だね。赤ちゃんが生まれてからでもいいんじゃないか?」 「にんげんになれちゃうよだめだからね!」 赤ちゃんが俺になれてしまうと、親ゆっくりがいない間に人里に近づくことを心配しているのだ。 「うーん、明日は止めた方がいいかな。」 「ゆ?」 「明日の天気予報は雨なんだ。」 「だいじょうぶだよ!あさはふらないよ!」 「しかし、もうすぐ赤ちゃんが生まれるれいむが昼までに巣までいけるのかな?」 「ゆぐぅ・・・」 俺はまりさたちがここに一日留まるように雨のことをはなす。 実際に雨が降るのでまりさも困っているのだろう。 「まりさ!まりさ!」 「れいむどうしたの!」 「あかちゃんみてみて!もううごいてるでしょ!」 「ほんとだもうすぐゆっくりだね!」 「うん!あしたにはうまれるよ!」 「ゆゆっ!?じゃああしたはここでゆっくりしようね!」 「うん!あそこならゆっくりうめるよ!」 実を宿したれいむが言うのだから本当なのだろう。明日には赤ん坊が生まれるのだ。 「じゃああとすこしだけここにいさせてね!」 「分かったよ。そのかわり後で赤ちゃんを見に行っていいかな?」 「ゆっ!うまれたあとならいいよ!」 「あといえにはあげれないよ!」 「うん。本当はおいしいものをあげたいんだけどそれもだめだよね?」 「だめだよ!もりでくらせなくなるよ!」 「じゃあ明日はすこし多く野菜屑をあげよう。れいむはゆっくりがんばってね。」 「ゆっくりがんばるよ!」 胸?をはるゆっくりれいむ。赤ちゃんが生まれる姿を見れないのは残念だがしょうがない。 俺はゆっくりをおいて部屋の奥で作業を始めた。 その夜、ゆっくり達が寝静まったのを確認してゆっくりの巣箱に向かう。 餌に睡眠薬を入れていたので朝までぐっすりだろう。始めのうちは警戒していたが今は無警戒だったので楽だった。 巣箱につくと屋根の上の鍵を外して屋根を持ち上げる。 巣の入り口は枝や石で入れないようになっていたが、そんなものは意味がない。 屋根を外すとゆっくり寝ているまりさとれいむが見えた。 朝まで時間がない。急ごう。 俺はれいむを持ち上げ外にだす。 次に実の大きさを測り、2番目に大きいれいむを手に取る。 そして用意していたライターで赤ちゃんゆっくりの底部を焼く。 焼きすぎると動けなくなるので、跳ねれない程度にライターであぶる。 これまで何度もやってきたので感覚でライターをうごかす。 一番大きいれいむ以外を焼くと、まりさのほうも同じように焼く。 これで、一番大きい赤ちゃんまりさとれいむ以外は生まれて来ても跳ねることができないだろう。 焼けた後が見えないように小麦粉で隠し、れいむを元の場所にもどして屋根を置く。 明日が楽しみだ。 赤ちゃんが生まれる日。妙にげんきなまりさとれいむに赤ちゃんが生まれたら教えてほしいと言い、家の中で待つ。 しばらくすると、巣が騒がしい。どうやら全部生まれたようだ。 まりさはまだやってきてないが俺は巣箱に近づく。 巣箱の前まで行くと外にまりさとれいむのこれが漏れていた。 「ゆっくりしていってね!」 「「「「「ゆっくちちていっちぇね!」」」」」 親ゆっくりの声に元気に答える赤ちゃん達。 俺はまりさに呼びかける。 「あかちゃん、生まれたみたいだね。出て来て見せてほしいな。」 「ゆっ!!ちょっとまってね!」 「ん?どうしたんだい?」 「なんでもないよ!ゆっくりまっててね!」 どうやら子供達のことで焦っているようだ。 俺はゆっくり出てこいとまりさを説得する。やがてあきらめたのか、れいむとまりさが出てきた。 「みんなでてきてね!」 「ゆっ!ゆっ!」 れいむのこえに赤ちゃんまりさが一匹と赤ちゃんれいむが一匹巣から出てきた。 元気に親まりさのまわりを跳ねる。 しかし、親まりさとれいむはうかない顔だ。 その原因が巣から出てきた。 「ゆっ!ゆっ!」 小さいまりさと小さいれいむが五匹ずつ、巣から這いずって出てきた。 「おかーしゃんまっちぇ~!」 「ゆっ!ゆっくりはねてね!」 「ゆうううう!できないいいいい!」 5匹は上手く焼けたのかずるずるすべるしかできないようだった。 親まりさとれいむは必死に飛び跳ねさせようと口に咥えて目の位置ぐらいから落とす。 元気な赤ちゃんれいむとまりさはぽよんと地面で跳ね返った。 しかし残りの十匹はべちょっと地面に引っ付く。 「どうしてええええええ!」 「これはいったい!?」 「まりさにもわからないよおおおおおお!」 我慢していたのだろう。泣き出すまりさとれいむ。 この赤ちゃん達は外敵から逃げることも餌を取ることも出来ない。 親ゆっくりもそんな赤ちゃんを養い続けれないので赤ちゃんゆっくりはやがて餓死する。 そんな未来を思い描いてないているのだろう。 「ゆぅ・・・おにーさんありがと。まりさたちはここをでていくね・・・」 「子供達はどうするんだい?」 「がんばってそだてるよ!できるだけがんばるよ・・・」 最後まで元気が続かないれいむ。まりさも子供達を捨てることを考えているのがうかない顔だ。 そこで俺が提案する。 「もしよければ、その10匹預からせてくれないかな?」 「ゆ!でもこの子達は・・・」 「俺なら十分な量の食事を与えれるから。だめかな?」 「ゆぅぅぅぅ・・・」 捨てることを考えてた親ゆっくりにとっては願ってもないことだろう。 ゆっくり理解するのを待ってると 「まりさ、おにーさんにおねがいしようよ!」 「ゆっ!そうだね!おにーさんならだいじょうぶだね!」 信用してくれて何より。 ところで今までの話を子ゆっくりも聞いていたんだけど大丈夫なのだろうか。 「「「おかーちゃんおなかしゅいた~」」」 ・・・どうやら自分のことを話していたとは考えてないようだった。 元気な子ゆっくりはともかく、飛べないゆっくりはもう少し危機感を持つべきだろうに。 まぁその方が話が楽だ。飛べないゆっくりを手にとって手元に集める。 「じゃあ確かに預かったよ。」 「おにーさんまりさとれいむのあかちゃんをおねがいします!」 「あぁ、ちゃんと育てるよ!」 親ゆっくりは安心したのか子供達に餌をやり始める。元気なゆっくりにはもちろん、飛べないゆっくりにも餌を渡そうとする。 「おにーちゃんはやさしいからね!げんきにそだってね!」 「とべるようになったらもどってきてね!」 親ゆっくりはまだ子供達が跳ねれるようになると思ってるのだろう。 もう無理なんだけどね。 まぁ最後になるだろう子ゆっくりとの時間を潰すのはかわいそうなのでそのままにしてあげることにした。 次の日の朝親ゆっくりと元気な子ゆっくりは親ゆっくりの作った巣へと旅立っていった。 俺は残った赤ちゃんゆっくりを用意してあった箱に落とす。 「ゆべっ!」 「ゆぐっ!」 べちゃべちゃと床に引っ付く赤ちゃんゆっくり。 始めはこちらに文句を言ってきたが、しばらく無視しているとこちらを気にせず集まってゆっくりをしだす。 全部がゆっくりしだしたところで話を切り出した。 「それじゃこれから君達を鍛えるよ。最後までついてきたら親ゆっくりの元に帰れるかもね。」 「ゆっ!ゆっくちがんばりゅよ!」 元気よく返事した赤ちゃんゆっくりを確認すると赤ちゃんゆっくりから離れた場所に旗を立てた。 「じゃあ今からこの砂時計が終わるまでにあそこについてね。たどりつけたらおいしいご飯をあげるよ。」 「ごはんごはん!」 「おなかしゅいたー!」 「ご飯はたどり着いてからだよ。それじゃスタート。」 スタートと同時に砂時計をひっくり返す。赤ちゃんゆっくりも同時に旗を目指して動き出した。 跳ねると楽に間に合う距離だったが跳ねれない赤ちゃんゆっくりには遠い距離だ。 必死に這っていく赤ちゃんゆっくり。俺はそれを横から眺める。 「ゆ~!砂しゃんゆっくちちてね!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 「ゆっくち!ゆっくち!」 砂にお願いするもの、無言で這う物、声をあげながらがんばってるもの。 赤ちゃんゆっくりはそれぞれ思いつく方法で旗を目指す。 やがて一匹、二匹と旗にたどり着く。差が出るのは途中で休む休まないの違いだ。 今回は最後まで見るためにかなり距離を短くしていたので全匹たどり着くことが出来た。 それでも予想していた時間よりはだいぶ掛かっていたが。 「つかれちゃ~」 「ゆっくちきゅうけいだよ!」 「ゆっくちちていっちぇね!」 さて約束どおりおいしいものを上げよう。 「よくがんばったね!じゃあおいしいものをあげよう。」 「やっちゃね!」 「これれゆっくちできるよ!」 「はやくちてね!」 うれしそうな赤ちゃんゆっくりの下にお菓子を置いていく。 「さぁお食べ。」 「むーしゃ!むーしゃ!・・・しあわちぇええええええ!」 「うっめ!これめっちゃうめ!」 「ゆっくちたべるよ!」 さっきまでの疲れはどこへやら、夢中にお菓子を食べるゆっくり。 やがて食べ終わった赤ちゃんゆっくりは思い思いにゆっくりしだす。 と、言っても跳ねれないので壁に寄り添ってたり、赤ちゃん同士で話すぐらいなのだが。 ゆっくりしだしたのでもう一つルールを教えることにする。 「さてじゃあ次からは食事にも砂時計を使うよ。」 「ゆゆ?」 「この砂時計の砂が落ちる間だけご飯の時間だからね。」 「それじゃゆっくちできないよおおおおー!」 「ご飯を取り上げるだけだからゆっくりはできるよ。それに砂時計ゆっくりしてたでしょ?」 「ゆっくちちてたよ!ごはんだけならゆっくちできるね!」 「でも次の旗も同時に置くからね余りゆっくりしてるとたどり着けなくなるから気をつけてね。」 「わかっちゃよ!」 「じゃあ次を始めるよ!」 そういって今度は先ほどよりすこし遠い距離になるよう旗を置く。 今回は最初と違って赤ちゃんゆっくりは二つに別れた。 旗に向かうものとゆっくりしてるものだ。 先ほどは旗についてからもだいぶ時間があったからゆっくりしてるのだろう。 しかし砂時計はそんな赤ちゃんゆっくりを待たずに砂を落とす。 やがて全部の赤ちゃんゆっくりが旗を目指すが、砂が全部落ちたとき辿りつけていたのは半分だった。 たどりつけてなのはまりさ種の方が多い。這うだけでも身体能力の高さが出るようだ。 それに加えて最初にゆっくりしてたのはれいむ種が多かったのもあるだろう。 「今回は半分になったね。じゃあご飯の時間だよ。」 そういってたどり着いた方には前と同じようにお菓子を、たどり着けなかったほうには野菜屑や近くで取った虫を与える。 「「「むーしゃ!むーしゃ!しあわせ~!」」」 おいしそうにお菓子を貪る赤ちゃんゆっくり。対照的に、 「むーしゃ・・・むーしゃ・・・」 「ゆゆっ!むししゃんうごかないでね!」 「れいみゅもおかしがいいよ!」 こちらは野菜屑や虫の赤ちゃんゆっくり。 親ゆっくりが取ったのを食べたことがあるので食べないことはないが、食べやすいように口渡しだったので動く虫は食べずらそうだ。野菜屑も食べやすい大きさに切ってないのでうまく食べれない。 お菓子を食べてるゆっくりの方に向かおうとしたが透明な壁によって旨そうに食べる赤ちゃんゆっくりを見て涎をたらすしか出来なかった。 そうして食べている頃に砂時計の砂が落ちる。 「はい、時間切れー。次の旗はあそこだよ。」 「ゆ~!まだたべおわっちぇないよ!」 「もっとゆっくちちゃちぇてね!」 「だめだめ。砂はもう全部落ちたよ十分ゆっくりできたよ。」 「おにーしゃん!れいむちゃちにもおかしちょうだい!」 「旗まで辿りつけたらね。辿り着けなかったらさっきみたいな野菜屑と虫だよ!」 「「「ゆ゙ゔううううううううううう!!!」」」 砂時計は砂の量を少なくしていたので短いと感じるのは当然だったが、赤ちゃんゆっくりには砂の量の違いは分からない。 野菜屑はもう嫌なのか先ほど辿り着けなかったゆっくりは我先にと旗へと向かう。 お菓子だった赤ちゃんゆっくりも野菜屑を食べないように旗に向かうが野菜屑だったゆっくりよりはゆっくりしていた。 「ゆっくち!ゆっくち!」 今回の旗はさっきよりはかなり遠くにおいているからしばらく掛かるだろう。 砂の量は増やしたので全匹辿り着けないことはないはず。砂が落ちる頃に見にこよう。 赤ちゃんゆっくりの必死な声を聞きながら俺は部屋を後にした。 「じゃあご飯の時間だよ!」 「むしゃむしゃむしゃ・・・」 旗に向かうってご飯と言うことを3日間繰り返した赤ちゃんゆっくりはもはや喋ることもせずに黙々とご飯を食べる。 一口でも口に含もうと必死なのだ。それは野菜屑と虫の方も変わらない。 この三日間で野菜屑にならなかった赤ちゃんゆっくりはいなくなった。 まだ野菜屑と虫を食べにくそうにしている赤ちゃんゆっくりもいるが、慣れて普通に食べる赤ちゃんゆっくりも出始める。 「はい時間切れ~。次はあそこだよ。」 「ゆ・・・ゆっくちがんばりゅよ・・・」 次の場所を教えると赤ちゃんゆっくりはゆっくりせずに旗に向かう。 お菓子のほうはだいぶ食べられているが野菜屑はまだ残っている。 タイムアップと同時にご飯の時間が始まり、食べる場所は旗の近くなので遅れたゆっくりは食べ始める時間もそれだけ短いのだ。 この3日間で距離と時間はだいぶ延びた。 今では俺と同じ時間に食事をするように砂時計と距離を合わせている。 赤ちゃんゆっくりは朝昼夜と制限時間内に旗に辿り着けるように一度もゆっくりせずに旗を目指し。 夜と朝の長い時間の間にだけ眠ることが出来た。 それもゆっくりしすぎると旗までたどりつけないのでゆっくり眠れない。 野菜屑をあげるのは朝の時間が多く、昼夜は余り野菜屑が必要なくなっていたが、野菜屑なんてそんなに多くでないので好都合だった。 お菓子を食べてる間は幸せそうに思えるだろうが、忙しなく食べていてはおいしさも分からないだろう。 現に今は小麦粉をこねてお菓子に見せたものなのだ。 遅れてご飯を食べれずに衰弱していく赤ちゃんゆっくりも出始めるが、寝ている間に果実の汁をかけてやれば元気になる。 死んでゆっくりさせないようにゆっくりの体調管理には気をつけねば。 赤ちゃんゆっくりを鍛えるようになって1週間、うれしい誤算があった。 赤ちゃんゆっくりが心配になった親ゆっくりが現れて、旗に向かって懸命に這う赤ちゃんゆっくりをみてマツタケを置いていったのだ。 どうやら、ちゃんと育ててくれていると勘違いしたようだ。 もっとも勘違いするように音は届かないようにしているし、近づくと気が散るからと言って遠くから見せたから当然だが。 赤ちゃんゆっくりも必死なので周りに目がいかず、親ゆっくりが来ても気づかなかった。 「どうだい。がんばってるだろう?」 「ゆっ!あかちゃんたちがんばってるよ!」 「そうだろう。みんな君たちに会うためにがんばってるんだ。」 「あかちゃんたちにももってきたものたべさせたいよ!」 「あとで俺がちゃんと食べさせるよ。」 「ゆ~、まりさがちょくせつわたしたいよ!」 「それはだめだね。今は君達に会うためにがんばってるから今あっちゃうと今までの苦労が無駄になっちゃうんだ。」 「ゆゆゆ・・・」 「まだ野生に耐えれないから我慢してね。」 「ゆっくりりかいしたよ!」 「よし、じゃあこの野菜屑をやろう。こんなものしかないがよければもっていってくれ。」 「おにーさんありがとう!」 それからも親ゆっくりは俺にいろいろなものを持ってきた。 どれも山で取れる珍しいもので、赤ちゃんゆっくりのためにがんばって取ってきたのだろう。 ありがたく全部いただくとする。 赤ちゃんゆっくりは一度もゆっくりさせずに這い回っている。 今は平地だけじゃなく、砂利道や坂など様々な障害を加えている。 今は綱渡りだ。 旗は立方体の箱の上にある。跳ねれればいいのだが跳ねれないゆっくりは崖で止まってしまう。 そこで坂がついた箱を用意し、そこから旗の箱まで綱を引いてやるのだ。 旗に辿り着くには綱を渡らなければならず、綱から落ちたら最初からだ。 これだと辿り着けない赤ちゃんゆっくりは一度も食事を出来ずに衰弱してしまい、果実汁に頼りっぱなしになるが、 親ゆっくりが持ってきているものの中に果物が含まれているので余り負担は増えなかった。 それに赤ちゃんはまったく育ってない。 実は親ゆっくりに遠くから見せていたのは育っていない赤ちゃんを気づかせないためでもあった。 こいつらはゆっくり出来ないと成長も出来ないらしい。 おかげで餌代も増えず、場所もずっと同じでいいので楽だ。ご都合設定バンザイ。 「もっとゆっくちちたいよおおおお!」 「ゆぅ、れいみゅがんばっちぇね!」 「ゆっくちがんばりゅよ!まりしゃもがんびゃろうね!」 相変わらず食事中は声もなく急いで食べるが、ほとんど旗に辿り着けるようになって赤ちゃん達はお互いに助け合うようになった。 協力しないと辿り着けないようなギミックを増やしたせいもあるだろう。 これはどんどん無口になっていく赤ちゃんゆっくり対策だ。 綱を渡るゆっくりをもう渡りきったゆっくりが応援する様子を見ながら、 まだまだ退屈させない赤ちゃんゆっくりのために次はどんなギミックにしようか考えるのはもう日課になっていた。 「おにーさんまりさたちはしばらくこれないよ!」 「ん、そうかもう冬篭りか。」 「そうだよ!あしたにはあなをふさぐんだよ!だからはるまであえないけどあかちゃんをよろしくね!」 「それなら餌が必要だろう。よければもってけ。」 「ゆゆっ!おにーさんありがとう!」 そうかもう冬篭りか、ゆっくりが言うのだからそろそろ雪が降るだろう。 ゆっくりは天候に敏感だ。身の危険と直結してるから当然だろう。 そろそろ虐待の手段に欠いてきたのでここらで赤ちゃんゆっくりをかえしてやるか。 最後の旗とりをさせた次の日、俺は赤ちゃんゆっくりを外に出してやる。 「ゆー!おしょとだー!」 「しゃ、しゃぶいよおおおお!」 「ゆっくちできないいいいいい!」 「あぁ悪い悪い、これを着ればゆっくりできるよ。」 そういってゆっくりを綿で包んで外れないように止めてやる。 「どうだ?まだ寒いか?」 「ゆゆ~!あっちゃかぃ~」 「これなりゃゆっくちできるよ!」 「よし、じゃあゆっくり親の元へお帰り。これまでがんばってきたから野生でもゆっくりできるよ。」 「おにーしゃんありがちょー!」 「巣の場所は教えたとおりだからね。がんばって帰るんだよ。春にはまたおいで。」 「おにーしゃんまちゃね~!」 そういって綿に包まれた赤ちゃんゆっくりは森に入っていった。 今日巣を閉じると言っていたから間に合うだろう。 今までの訓練から野生でゆっくりと生きる赤ちゃんゆっくりを想像しながら俺は雪の降る道を帰っていった。 「おかしいな。あいつらがゆっくりしてる姿が想像できないぜ。」 続く このSSに感想を付ける
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幻想郷にゆっくりたちが現れて早数年。 そんなゆっくりに対して、人は愛でたり、駆除したり、いじめたりと十人十色な対応をした。 私はというと正直生活に関わってくることも無かったし特にかわいいとも思わなかったので 別にどうでもいいという態度を取っていた。 ただ、夜空の星を眺めているようなゆっくりとなると話は違った。 星好きの私は、夜、平原で星を眺めていたゆっくりの隣に座って尋ねた。 「何をしているんだい?」 「ゆ?おそらのおほしさまをゆっくりみてるよ!」 そのゆっくりは笑顔を浮かべて私の質問に答えた。 「星、好きなのか?」 「ゆ~!まりさはおほしさまだいすきだよ! おにいさんも?」 「ああ」 星のことを尋ねられてゆっくりはぷよんぷよんと跳ねた。 私はそれを見ながら軽くうなずく。 余り周りに星好きの仲間が居ない私はそのゆっくりに興味を覚え、色々と教えてやろうと思い立った。 「星座って知ってるか?」 「ゆ~しってるよ!みせてあげるね! ……………… まりさのあしじゃできないよぉ…」 ゆっくりはしゅんっとして俯いた。 その正座じゃない。 「そういうのじゃなくてだな、星と星を繋げると動物なんかの形に見えるんだ」 「ゆ!?ほんとに!?」 「ほんとほんと、例えばあの星と星をつなげるとだな…」 俺は指差して星座を示した。 「こーなってそーなって…と、あれがやぎ座」 「ゆ~~ぜんぜんやぎさんにみえないよぉ~~」 ゆっくりはぷく~っと頬を膨らませて不満を言った。 「でもおもしろいよ!ゆっくりしてる!」 が、それなりに気に入ったようだ。 「あっちが射手座でそっちだな…」 「ゆ~!すごいすごい!」 ゆっくりは目を輝かせて私の話を聞きながら星を眺めた。 「やぎさん!おそらでずっとゆっくりしていってね! まりさもふゆごしがおわったらまたあいにくるよ!」 「いや、冬越えたら見えなくなるんだけどね 一年中見えてる星座ってそんなにないから」 「ゆぅ!?」 俺の何気ない一言にゆっくりは口を大きく開き、愕然とした表情を見せた。 一体何事かと俺が話しかけようとすると、突然ゆっくりは泣き叫んだ。 「どおぢでゆ゛っぐり゛ぢでいっでぐでないのおおおおおお!? やぎざんどばがああああああああああああああああ!!」 「いや、だって秋の星座だしあれ」 私は額から汗を垂らして困ったように頭をかいた。 「ゆぅぅぅううう!ゆっくりしてないやぎさんはしね!!」 ゆっくりは憎しみを込めた顔で天を仰いで唾吐いた。 さっきとは打って変わって酷い言い草である。 「そうは言うけどさ、そんなこと言ったらこの星だってゆっくりしてないことになるぞ」 「ゆぶぇ?!ど、どういうこと!?」 ゆっくりはガタガタと震えながら不安そうな顔でこちらに向き直った。 「いやそんなに怯えなくてもいいから」 私は手でゆっくりの頭を撫でて落ち着かせた。 「ゆぅ~、ゆっくりせつめいしてね!」 「わかった、この地面も実はあの空の星みたいに空に浮いてる球体なんだけどさ わかるか?」 「ゆっくりりかいしたよ!」 ゆっくりは顎を膨らまして自慢げに言った。 「そうか、理解が早くて有難い で、その地面は実はすごいスピードで太陽の周りをぐるぐる廻っているんだ」 「ゆうううううううううう!?どお゛い゛う゛ごどおお!?」 「こういう風にさ、お前を太陽に見立てると…」 私は指をぐるぐると回しながらゆっくりの周りをぐるりと一周させた。 「とまあこういう風に動いてるわけだ」 「ゆ…ゆ…い、いいいいいつゆっくりするの!?いつゆっくりするの!?」 「いや、ずーっと動きっぱなしだからゆっくりすることはないな で、そういう風に地面が動くから星が動いているように見えたり 星座が時期によって見えたり見えなかったりするだけで別に星座がゆっくりしてないということは」 「い゛や゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」 そこまで言って、ゆっくりの悲鳴が私の話をばっさりとさえぎった。 「お、おいどうした?」 私は慌ててゆっくりに話しかけたがもはやそれどころではないらしく ゆっくりは白目をむいてガタガタと震えながら絶望の表情を見せていた。 「ごごじゃゆっぐりでぎないいいいいいいいいいいいいいいい!!!」 そう叫ぶと、ゆっくりは凄まじいスピードでゴロゴロとどこかへと転がっていった。 「おーい!星は丸いからどこまで転がっていっても同じ星の上だぞー!!」 「ゆ゛っぐり゛いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?!!?!?!?!?」 そう言うとゆっくりはさらにスピードを上げてどこへともなく消えていった。 「いらんこと言ったかなぁ…」 私はせっかくの星好きの仲間があんなことになってしまって残念だなぁ嘆きつつ頭をかいた。 それから数日後 どこかの平原で 「ここじゃゆっくりできない!ここじゃゆっくりできないよおおおおお!!」 と叫びながら空にむかって必死にジャンプし続けるゆっくりまりさが目撃されたとか。 このSSに感想を付ける
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ゆっくりと勇気あるゆっくり 森の奥には、ゆっくりと言えど近づくことはない。 人間が入ってこれなくとも、更なる脅威が待ち受けていることを、ゆっくり達 は理解しているのだ――。 ・ ・ ・ 「みんな、ゆっくり理解したかな!」 「「「ゆー!」」」 ここは、森の中にあるゆっくり教室。 大人のゆっくりが、周辺の子ゆっくりを集めて、生きる術を教えるプレイスだ。 その間親ゆっくりは狩りにいそしむことが出来るため、この一帯に生きるゆっく り達は、他よりも比較的にゆっくり出来ていたのだ。ゆっくり教室を立ち上げた のは、一人のゆっくりれいむであった。回復の早いゆっくりであるに関わらず、 頬や頭に穿たれた古傷は癒えることはなく、子ゆっくり達に威圧感と、それに勝 る信頼感を与えていた。 数年前に行われた、ゆっくりプレイス調査。森の中で、さらにゆっくり出来る プレイスを探し出す、主に子ゆっくり達が大人に隠れて行った大探検だ。探索は 複数回に渡り行われ、その都度新しいゆっくりプレイスを見つけることが出来た。 その歩みを森の奥へと進めるまでは。 彼女はその「生き残り」であった。子供たちが尋ねても、森で何があったのか を詳しくは語らない。だが、森の奥にだけは行かないように、周りのゆっくり達 に話して聞かせるのであった。 「いいかい、草と草がこう絡まっていたら――」 「少し地面の色が違う場所、一部だけ草に覆われたがあったら――」 「敵を攻撃するには必ず集団で、連携をして攻撃――」 「複数の敵に襲われた時に姉妹が怪我をしたら、すぐ逃げるんだよ、それはおび き寄せるために殺していないのだから――」 などと、講義の内容は自然を生き抜くだけでなく、罠の見分け方、殺戮下にお ける生存方法などが主眼となされていた。そのため、大人達は彼女のことを、 「きっと狡賢い人間に酷い目に遭わされたのだろう」と考えていた。また、この 教育を受けた子供たちは、人間の罠に掛かることも、逃げ帰ることも多かったため、 教室が潰されることはなかった。 「あう゛っ! い、いだいよー!」 殺傷能力の少ない罠に掛かった子れいむが、涙ながらに彼女の元へ寄ってくる。 「どれどれ……ああ、これならすぐゆっくり治るよ」 「ほんとう?」 「ゆっくりしていなさいね」 子れいむの傷口に口をあて、モゴモゴと舐める仕草をする教師れいむ。彼女に は不思議な力があり、簡単な怪我であれば治すことが出来た。特殊能力と言うわ けではない。口内の傷口から餡子を出せるようになってしまっただけだ。重傷の ゆっくりを直すには自分の餡子に限りがあるが、軽傷であれば負担にもならない。 多少重い傷のゆっくりに、自分の頬を食べさせたこともあった。 「う゛ー、う゛ー、……う? 痛くない! ゆっくり治ったー!」 「「「せんせいすごおおおおおい!」」」 彼女は騒ぎ立てる子ゆっくり達をまとめながら、新たな罠について説明をする のであった。 「ゆっくり帰ってきたよ!」 一日も終わり、住処へと帰る教師れいむ。 「ゆっくりお疲れさま!」 「「ゆっくりしていってね!」」 つがいのゆっくりまりさが優しく出迎える。教師れいむはこのつがいのことを、 誰よりも深く愛していた。共に野原を駆け回った幼馴染。そして自分のせいで怖 い思いをさせた「生き残り」の一人。彼女はゆっくりまりさの愛らしい顔に刻ま れた、幾筋かの古傷を見るたびに、あの出来事を、考えの至らなかった自分の態 度を、深く憎むのであった。 「学校はゆっくり出来るの、れいむ?」 そんな自分の思いを見透かしたかのように、まっすぐ自分を見つめて話を振る つがいに、照れたように視線をそらすゆっくりれいむ。 「もうすぐみんな、卒業だね。これで皆ゆっくりできるよ!」 自分が教えることはもうあまり残っていない。後は自分達で考え、生き残る努 力をするだけだった。それに秋も深まっており、そろそろ餌集めの手伝いをしな ければいけない時期に差し掛かっていた。そこまで考えた彼女は、自分を見つめ る熱を帯びた視線に気が付いた。 「ま、まりさ……っ」 「れいむっ! わ、私の子をゆっくり生んでねっ! みんなを守れるくらい、勇 気に満ちた、可愛らしいまりさ達の赤ちゃん産んでねっ!!」 当たり前だよ、と、れいむは微笑んだ。だって、自分とまりさの子供なのだから。 優しく口付けをするつがいに、そう心で呟いた。 ・ ・ ・ 襲撃があった。 これから生まれる赤ゆっくりに思いを馳せて、次第に育つ枝ぶりを愛おしく眺 めていた、そんな時に限ってだ。 襲撃者は群れはぐれゆっくりだそうだ。飾りを失い、生き延びて、なお生き残る ために群れ、ゆっくりを襲うはぐれゆっくりだ。襲ったゆっくりから飾りを得る のではなく、命を奪い去るのであるから性質が悪い。飾りを奪い取ったとたん、 他のはぐれから裏切りの烙印を押されるのであるから、彼女らにすればそれは当 然なのだろうが。 きゅ、と唇をかみ締める。「生き残り」であるからには、例えゆっくりだとし ても忘れることの出来ない思い出があるのだ。教師れいむは、つがいのまりさと 共に住処を飛び出した。 ・ ・ ・ 「生き残り」の教育とその場の指示が的確であったためか、騒ぎは次第に沈静 化していった。死傷者は少なからずいたが、被害はそれほど多くは無かったのだ。 生存者を探し、残党を狩りつつ、ゆっくり教室を開いている広場にたどり着い た彼女達が見たものは、複数のはぐれゆっくりと、襲われ嬲られている教師れい むの教え子達であった。 「いっくぞー、ほーれ♪」 「ぎゃはははは! ゆっくりしね~♪」 「ゆ゛っぐぢいいいい」 「きゃっちぼーるはゆっくりできるなあ~♪」 ただ投げあうのではなく、皮を毟るように子ゆっくりをほおり投げるキャッチ ボールなど、存在していいはずがない。 「ほーら、まりさの体はゆっくりしてて美味しいだろ~?」 「あがががが! あがっががが!」 小さい口に無理やり大人の体をねじ込んで、顎を引き裂く真似など許せるはず がない! 「ほーれ、ぷっすぷっす♪」 「いだあああ! ゆっぐぢおうじがえどううううう!」 体を貫く細い枝は迫害された時に埋め込まれたのだろうか、悪意を憎悪として 他者に向けるなど、してはならないのだ!! 教師れいむはその鬼畜どもに体当たりを食らわせた。 「ゆっくりとしんでね!! ゆっくりとしんでいってね!!」 憎い憎い飾り付きをいたぶっていたお楽しみを邪魔されたはぐれゆっくり達は、 いきりたちその牙を彼女へと向けた。注意をこちらに引き付けたところで、死角 に回り込んだつがいまりさが攻撃を仕掛ける。一撃必殺とまでは行かないが、目 の部分に体当たりをすることで大幅に戦闘力を削ぐことは出来る。 一撃ごとに姿をくらまし、教師れいむが挑発し、また一撃を加えるという作戦 は、極めて効果的であった。問題は、駆逐に時間を要したことだ。 「ぜんでぇ……たずげ……」 「ひぃ……ゆっぐりじだ……」 「おがあじゃ……」 最後の一匹を屠るまで、生命力の乏しい子ゆっくりたちは着実に命を散らし始 めていたのだ。教師れいむが子ゆっくり達を助けるために番いの傍を離れた、そ の刹那。息を潜め、死んだふりをしていたはぐれゆっくりが、猛然とつがいまり さに襲い掛かった。 不意を付かれたつがいまりさに為す術はなく、教師れいむが助けに入るその数 瞬きの間に皮膚を割かれ、餡子をすすられてしまった。 ――致命傷。だが、自分の餡子を全て吹き込めば、つがいまりさは息を吹き返 すだろう。だがそれを押し止めたのは、他ならぬつがいまりさであった。 「どーじで! までぃさ死んじゃうよ!?」 「まりざより……あのご達を……お願いじばず」 「でも、でも……!」 「まりざをだすけだら、あのご達は……」 つがいのまりさは助けられるだろう。だが、つがいまりさを助けてしまったら、 今助けを求めている子ゆっくり達は、一体誰がその命を助けると言うのであろう か。教師れいむには、番いの言いたいことは痛いほどよくわかった。 「でもっ!」 「まりざばっ!!」 引きつったように笑みを浮かべて、送り出すように告げるつがいまりさ。 「か弱いゆっぐりを助ける、そんな優しいでいぶが、だいずきでず……っ!!」 「……!! ――ごめん! ごめんでばでぃざ! だずげらでなぐで、ごべんで えええ!」 一生をかけて愛した番いの最後に背を向けて、己の勤めを果たそうとする彼女 に向けられた一言は、彼女の勇気を奮い立たせるに足りるものであった。 ――ありがとう、ゆっくりと愛してくれて―― 「産むからで! でいぶだじのがばいいあがじゃんを、とてもいざまじいあがじ ゃんを! か弱いゆっぐでぃをだずげる、ゆっぐりなあがじゃんを産むがだで! だから、――ゆっぐりじでいっでで!!!!」 返事は聞こえなかったが、彼女の胸の中では、最愛のまりさがゆっくりと微笑み を浮かべていた。 ・ ・ ・ 生き残ったゆっくり達を迎えたのは、惨状であった。教室のあった場所に累々と 積もるはぐれゆっくり達の屍骸。痛ましく寄り添う教師れいむとその番いの屍骸。 そして教師れいむから猛々しく伸びる新たな命と、怪我も癒えた子ゆっくり達の姿 であった。 「「「ゆっくりしていってね!!」」」 敵が居ないこと、自分達の子ゆっくりが無事なことを喜び、集落の勇者達が命を 落としたことに絶望し、その勇者達が新しい希望を紡いでいたことを、複雑な心境 ではあるが、喜んだ。 頬の傷を癒してもらおうと教師ゆっくりを探していたゆっくり達は、彼女がも う居ないことを嘆いた。 「先生の顔を食べると、傷が治って、とてもゆっくり出来たんだよ!」 「ゆっ、本当だよ! 他にも直してもらったれいむもたくさんいるよ! 昨日も!」 「先生は食べた時もぜんぜんゆっくりだったよ! だから直してもらいたかったの に……」 なるほどと大人のゆっくり達は思いを馳せる。確かに、幾度か怪我を直してもら った覚えもあった。ある者が呟く。 この赤ちゃん、先生の子供だよね! じゃあきっと、……。 ・ ・ ・ 煌き始める地平線に、輝く未来に向かって伸ばされた枝は、ゆっくりを守り抜き、 ゆっくりと生きるはずの、勇ましく生きるはずのその命は、ただの一度も朝日を拝 むことはなかった。 このSSに感想を付ける
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幻想郷でもひときわ目立つ真紅の建物。紅魔館。 悪魔の館と名高いそこには、とても綺麗な紅い髪をした妖怪がいた。 紅美鈴。 紅魔館の門番である。 美鈴は困っていた。 ここ連日、なぜかゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙の大群が、この紅魔館を目指して襲撃してくるのだ。 一週間で、少なく見積もっても500匹は叩き潰したはずだ。 ゆっくり種というのは、簡単に言えば「動いて喋る饅頭」だ。決して妖怪ではない。 岩魚坊主と似た類の妖怪かと思っている人間もいるが、絶対に違う。あえて言うならナマモノだ。 ただの饅頭にスペルカードルールは適用されない。 わざわざ弾幕を張る必要がない戦闘。いや、殺し合い。むしろ虐殺。 拳打の一撃、足刀の一撃が文字通り必殺となって、ゆっくりたちを引き裂いていく。 美鈴は久しぶりの運動に心身が喜ぶのを感じていた。が、それも最初の二、三日だけだ。 四日目からは弾幕を織り交ぜた。 運良く接近してきたゆっくりたちも打撃で潰した。 五日目はもう、弾幕を張るのも億劫になって、気でやたらめったら吹き飛ばした。 その技に名前はなかったが、あえてつけるなら、かめはめ……とかそんな感じで吹き飛ばした。 そして、八日目の今日、美鈴は門を離れ、紅魔館周辺の森林に潜りこみ、元凶を探していた。 今、紅魔館門前には門番隊六大天王が陣取っている。 六大天王とは、門番メイドの中でも選りすぐりの精鋭で、虹符「彩虹の風鈴」の後に出てくるあいつらのことだ。 妖精ではあるが、ゆっくりなんぞが束になっても太刀打ちできるような相手ではなかった。 鬱蒼と茂る木々の間を、紅い髪が流れるように移動していく。 美鈴の服は暗緑色なので、森林のなかでは、普通に保護色の役目を果たしていた。 なんという、偶然ッ!!! やがて美鈴の広域レーダーに特異な気配がひっかかった。多い。200は蠢いている。 美鈴はこのレーダーに「円」と名前をつけている。最大半径約2kmのスグレモノだ。紅魔郷ではこれを使って、接近する紅白と白黒の迎撃に向かった。 結果は言わずもがな。 やがて、森の中でも一際暗い、多くの葉に包まれた場所に出た。 食肉植物が生息していても不思議ではないほどだ。美鈴はそこらじゅうに点在するゆっくりの姿を認めた。 それぞれが談笑し、思い思いにゆっくりしている。全てひとつの群れのようだ。 美鈴は一度目を閉じ、みっつ数えてから目を開いた。すでに戦闘モードに移行している。 「……っ!!」 不意打ちに声をかける馬鹿はいない。 美鈴は飛び出し、着地すると同時に強く足を大地に打ちつけた。 森が揺れる。 数多の木の葉がひらひらと落ち、リスなどの小動物は巣へと逃げ帰り、鳥の群れは空へと飛び立っていった。 美鈴はあたりを見回すと、ゆっくりに生き残りがいないことを確かめた。 今のは、足から放出した膨大な気を、大地に伝播させて広範囲の敵を屠る必殺の魔技だ。 人間が死ぬ程度の威力を持たせ、放った結果、先ほどまで存分にゆっくりしていたゆっくりたちは、皆そのままで死んでいた。 まるで死んでいるとは思えないほどに綺麗な顔をしていた。 「!?」 美鈴は気配を察知し、向き直る。そこは大きなしだの葉で巧妙に隠されていたが、洞穴があった。 巨大な気配はそこから出ていた。 よもや今ので死んでいないとは!そう思い飛び込む。 「んなにぃっ!?」 驚愕の声。その洞穴には巨大なゆっくり霊夢とゆっくり魔理沙がいた。 「だれ?ここはれーむとまりさのおうちだよ!ゆっくりでていってね!」 「まりさたちはおねーさんとゆっくりしてるひまなんかないの。じゃぁね!ばいばい!」 大きい。 高さは美鈴よりも高い。2メートルほどだろうか? その表面に触る。どこか滑らかで確かな存在感を持ったそれは、もはや饅頭の感触ではなかった。 「あんたたち、身篭ってるね?」 「ゆ?み=ご?もってないよ?」 「そんなゆごすのいきものなんかしらないよ」 「あ~~~、お腹ン中に子供がいるでしょ?」 なんだか意味の分からないことを言い返されたので、馬鹿でもわかるように言い直した。 とたんに朗らかになる二匹。子供が出来るのはどんな生き物でも嬉しいことなのだろう。とても幸せそうだ。 美鈴は慎重に気配を探る。これは? 「……やたら重なってる?ひょっとして」 思い浮かぶは先刻の光景。洞穴の前、おそらく、ゆっくりできる庭としていたであろうあそこに、思い思いにたむろしていた多数のゆっくり。 「外にいたやつらは、あんたらの子供?」 「ゆ!?こどもたちにあったの?どう、どう?」 「と~ってもかわいかったでしょ?ゆっくりめでていってね!」 「全員ブチ殺してやったわよ」 静寂。 「どぉしてそんなことしたのぉぉぉおおおぉぉおっぉっっ!!!」 「ゆるせない!ゆるせないよ!!おねー、おばさんはゆっくりしね!!」 怒気が膨れ上がった。洞穴内で渦巻くそれはまるで暴風のようだ。 「ハッ!望むところよ!こちとら食えない饅頭を叩き潰す日々にくさくさしてたんだ!お前らで鬱憤を晴らさせてもらう!!」 怒っているのはこちらも同じ。 この洞穴で、2メートルものゆっくりは飛び跳ねることは出来ない。天井がすぐそこにあるのだ。 では、この二匹の巨大ゆっくりたちはどうしたか?簡単だ。ただ美鈴に向かって倒れただけ。 しかもここまで巨大化するまでに、それなりの経験を蓄積したのか、空気を吸い込み出来るだけ転がりやすい形になっている。 相手が人間であればそれで終わっていただろう。そう、ただの人間であれば。 しかし紅美鈴は妖怪だった。 それをただ手を添えるだけで止めてしまった。 「ゆ?」 「ゆゆ?」 「てめぇら、おもてぇ出ろぉ~っ!!!」 巨大ゆっくりの表面を掴み、思い切り引っ張って無造作に投げ飛ばした。 「ゆぅううぅぅ~~~っ!?」 「ゆゆゆゆゆ~~~!?」 暗い洞穴を、地面と平行に飛んで生き、入り口を覆っていた葉を突き破り、陽光の下にさらされた。 「ゆげぇっ!?」 「ゆっぐ!!」 ずんっと音を立てて着地する巨大ゆっくり。 「ゆゆゆゆゆ」 「ゆ~~~」 痛みで身動きがとれないのか、ぶるんぶるんと揺れている巨大な塊。追って洞穴から飛び出す紅い髪の妖怪。 その澄んだ青い目は殺る気に満ち満ちていた。 だが巨大ゆっくりはすでに戦意を喪失していた。最大の攻撃だった押しつぶしが通用しなかったのだ、まだ飛び掛るというのが残っているが、身重でそれはできない。 「ゆっゆ!ゆっくりゆるしてね!ゆっくりごめんなさい!」 「おばさんっていったことはあやまるよ!ゆっくりさせてね!!」 「…………」 つかつかと近づく美鈴。そのまま平手打ち。中身が詰まっているからとてもいい音が森に響いた。 「ぶぎゅぅぇっ!」 「れいむぅうぅっ」 「お前も!」 「ゆげぇっ!」 「まりさぁぁああっ」 「うっさい!」 このまま殴り殺しても美鈴の気が晴れない。ぴたぴたと二匹の表面を撫でる美鈴。 「ゆっゆふふふふっ!ゆふっゆふっ!くっくっくすぐぐぐぐ」 「ゆっふっふふふふふ!や、やめてね!くすぐったいよっほほほほほ」 「ここか」 ずぶおぉっ! 「……っ!!」 思い切り息を吸う巨大ゆっくり霊夢。次の瞬間、 「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!」 「れ゛、れ゛い゛む゛ぅう゛ぅ!」 美鈴の腕は巨大ゆっくり霊夢の腹に刺し込まれていた。 いや、刺さっているわけではない。もともと開いている穴に突っ込んだだけだ。 口ではない、もっと下。そう、産道にだ。 そのままもぞもぞと動かす。 「う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!う゛あ゛っ!」 「へぇ~、あんた達の中ってこんなんなってるんだぁ~」 「や゛、や゛め゛でぇ~~~!れ゛い゛む゛がじん゛ぢゃう゛ぅう゛ぅぅぅ~~~!!」 「あ、これってあんたたちの赤ん坊?」 「ぶぶぶぶぶぶぶぶ」 「な、おねーさん、なにするきなのぉっ!?」 「ごたいめ~~~ん♪」 じゅりゅりぃっ。 美鈴の細腕の先には粘液にぬめったゆっくり霊夢が掴まれていた。 しかしまだ早かったのだろう、未熟児どころか、まだ目、鼻、口が開かれておらず、皮と髪の区別もなくリボンなどは影も形もない。 「なに、こいつ。変なの」 「れ、れいむのあ゛がぢゃん、かえ゛ぢでぇ。お゛な゛がに゛も゛どじでよぅ、まだゆっぐりざぜないどだめなのぉお」 「ふ~ん」 「がえぢでぇっ!もどじでよぅっ!!」 「うるさいなぁ。ほれ」 美鈴は浮かび上がると、手に持った物体を巨大ゆっくり霊夢の口に入れてやった。 「!?!!?」 「ちゃんとおなかにもどさないとね」 そのまま腕を肩まで突っ込んで、喉の奥まで入れてやる。 「お、おねぇいさ~~~ん!なにじでるのぉおおおおお!!」 巨大ゆっくり魔理沙が蒼褪めながら叫んだ。巨大ゆっくり霊夢のほうは、目を紅白させてがくがくと震えている。 「ん?おなかに入れてあげたんだよ?アレが自分で言ったでしょ、お腹に入れてって」 「ち、ちがうよぅぅおぉぉおおおぉぉお!!ちがうおなかだよおぉぉぉぉぅぅぅっぅ!!!」 「へー、そうなんだ~」 「う゛っう゛あ゛っう゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ」 巨大ゆっくり霊夢がいまさら叫ぶ。見れば涙を流しているではないか。身体が大きいから流す量も相当で、すでに地面には水溜りが出来上がっている。 「そういえばあんたたちの中に何匹詰まってんのさ?気配が重なり合っててよくわかんないんだよね、50匹くらいかなぁ?」 「っぴぃ!?」 「あっははははは!なぁにぃ?ぴぃって、鳥のまね?」 「や、やめてね!おねがいだからやめてね!」 「あんたは後回しだよ」 美鈴は巨大ゆっくり霊夢に向き直った。 「そうそう、逃げても無駄だよ。あんたたちの臭いは覚えた」 再び刺しこまれる美鈴の腕。 「ゆっぎゃぁああぁあああぁぁぁあああああっ!!!」 「そぉれ!いっぴきにひき~さーんびきよぉ~んひきごひきろぉ~っぴきなぁな~ひき」 「あ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っあ゛う゛っ」 お腹の中をかき回しては、引きずり出して、ごみのように投げ捨てる美鈴。 べちゃりべちゃりべちゃり、と音を立てて崩れていく未成熟のゆっくりたち。 二匹の目には紅い髪をした悪鬼にしか見えないに違いない。 おおよそ5分後、鬱蒼としていた植物たちは、饅頭の色をしたねろねろの物体に蹂躙されていた。 「ん~~~?もう打ち止め?赤玉なんか出てないゾぉ~?」 美鈴は、産道に刺しこんだ腕を肩までめり込ませて中を探っている。 巨大ゆっくり霊夢の胎内はこれ以上ないほどにかき回されていた。 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「おーい、話聞いてる?」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「蓄音機か?」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!」 「いや、もういいから」 「ゆっくりしていってね!ゆっくりしていってね!ゆっくりじでっ!!」 美鈴は肩口まで突っ込んだ腕をそのまま持ち上げるように動かし、巨大ゆっくり霊夢を縦に引き裂いた。 顔面を真一文字に切り裂かれ、餡子をブチ撒ける巨大ゆっくり霊夢。死んだのか、そのままぺちゃりと潰れていった。 「あらら、潰れちゃった。まぁ中身もあんまり残ってなかったしねぇ」 まるで血振るいのように、腕を振り粘液を落とす美鈴。すでに巨大ゆっくり魔理沙に向かっている。 「ゆふふゆふゆふゆふふふ」 気が触れてしまったのか、薄ら笑いを続ける巨大ゆっくり魔理沙。口からはよだれが垂れていたが、涙は枯れていた。 そんな巨大ゆっくり魔理沙にぽんっと軽く手を触れると、焦点の合っていない目が次第に鮮明になっていった。 狂気の世界に旅立った巨大ゆっくり魔理沙を正気の世界に引き戻したのだ。 気を扱う程度の能力ならではの荒業であろう。 「ゆ?ゆゆゆっ!?れ、れいむ?れいむ、だいじょうぶ!?」 「んにゃ、お亡くなりになりました」 「れ、れ゛い゛む゛ううううう!!!」 絶叫。 しかしそれに応えるものはもういない。 「いやぁ、50匹は詰まってるとは思ってたけど、凄いね!90匹近く入ってたよ」 「ゆ、ゆっくりさせてね!おねがいだよぅ!!おねがいじばずっ!!ぎれ゛い゛な゛お゛ね゛ーざん゛!!」 「わかった。ゆっくりしてあげるね♪」 ずぶり。 「ゆっぎゅぅうううぅうぁあぁぁぁぁっん!!!」 ゆっくりと産道に刺し込まれてくる長い異物。巨大ゆっくり魔理沙の視界がぱちぱちと発光したように眩しくなる。 神経がショートしているのだろう。 「お、いたいた。そぉれ!い~ち!にぃ~い!さぁ~ん!よぉ~ん!ごぉ~お!ろぉ~くぅ!なぁ~な!」 巨大ゆっくり魔理沙のお願いどおり、ゆっくりと取り出していく美鈴。おおよそ10秒に一匹のペースだ。 巨大ゆっくり霊夢と同じだけ入ってるとして、約15分も地獄の責め苦を受けることになる。 そして、美鈴が極力正気を保つように気を操作しているので狂ってしまうことも出来ない。 「あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!あ゛っぎゅん!」 巨大ゆっくり魔理沙はなんで自分達がこんな目にあっているのかわからなかった。 約15分経過。 巨大ゆっくり魔理沙も随分とぺっちゃりとしていた。皮がたるみ、当初の張りと艶が夢だったかのようにべろべろだ。 美鈴の背後には、まだ多くの粘液に包まれた物体が点在していた。 やはり打ち止めなのか、巨大ゆっくり霊夢の時と同じく肩口まで産道に腕を突っ込み、胎内を引っ掻き回している。 「ぼも゛っ、も゛う゛や゛べでね゛っ!も゛う゛な゛に゛も゛な゛い゛よ゛ぅ!!ぜん゛ぶでぢゃっだの゛ぉぅっ!!」 「う~ん、こっちも100の大台にはいかなかったかぁ、残念」 「お゛ね゛がい゛でず!ゆ゛る゛ぢでぐだざい゛!ごべん゛な゛ざい゛!ゆ゛づじでぐざざい゛!」 「もう怒ってないよお」 「……ぼん゛どぅでづが?」 「もちろん」 「あはっ、あははっあははははは。ゆっくりしていってね!!!ゆっくりさせてね!」 「さ、次は全部お腹に戻してあげるね♪」 「えっ」 「お友達のゆっくりの分もぜ~んぶ、お腹に戻してあげる♪」 「い」 「い?」 「いやぁあぁぁぁああああああああっ!!!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!」 「うぉい、またか」 「ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!ゆっくりさせてね!」 「ふぅ」 「ゆっ!」 美鈴のしなやかな人差し指が巨大ゆっくり魔理沙の眉間に深々とめり込んでいた。 たったそれだけで巨大ゆっくり魔理沙は声を発することが出来なくなってしまった。 「……!……!!~~~~~!!!~~~~~!?」 口をぱあくぱあくと動かすがそこからは何の音も発しはしない。 「さぁ、お片づけの時間ですよ?」 美鈴の蒼い目がぞっとするほど綺麗に深まった。 終わり。 美鈴大好きです。でも変にノってしまって、こんな話に。美鈴好きな人たち、ごめんなさい。 著:Hey!胡乱 このSSに感想を付ける