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【スピカ】 アイテム 販売相場 購入相場 備考 騎狼の箱 - - - 影狼の箱 - - - 輝獣の箱 - - - 三角龍の箱 - - - 炎獅子の箱 - - - 雲獅子の箱 - - - 飛鼠の箱 - - - 魔法飛鼠の箱 - - - パンダ風船の箱 - - - 子獅子風船の箱 - - - 子供風船の箱 - - - 機甲獣の箱 - - - 一角獣の箱 - - - アルパカの箱 17m - - カピパラの箱 45m - - イリアスの箱 - - - シュワルーの箱 - - - モノクロースの箱 - - - パンダの箱 - - - キリンの箱 - - - アーラの箱 ? 20m - コヌルの箱 40m~50m - - 紫炎獅子の箱 - - - 闘獣の箱 - - - メディコンダクトの箱 - - - ピンクアルパカ箱 - - - 宝船の箱 - - 福契ペットコンプCP - - - - - - - - 戦騎乗 アイテム 販売相場 購入相場 備考 装甲の箱 - - - ロゼットの箱 - - - 闇ロゼットの箱 - - - 古代のアルパカ箱 - - - 運命の輪の箱 - - - 闇のアルパカの箱 400m - - 逆位置の箱 - - - 機甲ティガの箱 - - - 運命の輪Ⅱの箱 - - - - - - - - - - - - - - - 【アルタイル】 アイテム 販売相場 購入相場 備考 騎狼の箱 - - - 影狼の箱 - - - 輝獣の箱 - - - 三角龍の箱 - - - 炎獅子の箱 - - - 雲獅子の箱 - - - 飛鼠の箱 - - - 魔法飛鼠の箱 - - - パンダ風船の箱 - - - 子獅子風船の箱 - - - 子供風船の箱 - - - 機甲獣の箱 - - - 一角獣の箱 - - - アルパカの箱 - - - カピパラの箱 - - - イリアスの箱 - - - シュワルーの箱 - - - モノクロースの箱 300m~400m - - パンダの箱 - - - キリンの箱 - - - アーラの箱 ? 20m - コヌルの箱 50m - - 紫炎獅子の箱 - - - 闘獣の箱 - - - メディコンダクトの箱 - - - ピンクアルパカ箱 - - - 宝船の箱 - - 福契ペットコンプCP - - - - - - - - 戦騎乗 アイテム 販売相場 購入相場 備考 装甲の箱 200m~ - - ロゼットの箱 - - - 闇ロゼットの箱 - - - 古代のアルパカ箱 - - - 運命の輪の箱 - - - 闇のアルパカの箱 300m~400m - - 逆位置の箱 - - - 機甲ティガの箱 200m~ - - 運命の輪Ⅱの箱 - - - - - - - - - - - - - - - 名前 コメント
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海の安全を願って催される盛大な祈願祭 もともとはウィディーネの沖で暴れていた海竜を鎮める目的で始まった祭り いつからか海の交通の安全祈願を願う趣旨へと変わり、祭りの規模も大きくなり、今では数日間に渡って行われる盛大なイベントへと変わっていった 海竜祭最終日には盛大な花火大会が開催され、最後のフィナーレは海竜祭の当初からの伝統である宝船の進水式で締めくくられる。
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海の安全を願って催される盛大な祈願祭 もともとはウィディーネの沖で暴れていた海竜を鎮める目的で始まった祭り いつからか海の交通の安全祈願を願う趣旨へと変わり、祭りの規模も大きくなり、今では数日間に渡って行われる盛大なイベントへと変わっていった 海竜祭最終日には盛大な花火大会が開催され、最後のフィナーレは海竜祭の当初からの伝統である宝船の進水式で締めくくられる。
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慶応遊撃隊 機種:MCD 作曲者:多和田吏 発売元:ビクターエンタテインメント 発売年:1993年8月6日 概要 収録曲 Track 仮曲名 補足 順位 02 タイトル 25 キャラ紹介 03 第壱話「宿敵、宝船の追撃」 第2回マイナーレトロ159位 04 第弐話「墨田川を下れ!」 05 第参話「江戸城下、沈黙す」 06 第四話「新たなる伏兵」 07 第五話「激烈、アララト山攻防戦を抜けろ」 08 第六話「カスビ海を血に染めて」 13 5・6面ボス後 5・6面ボス後のDr.ポン 09 第七話「神々の遺産」 10 ボス 11 ラストボス(さる、ひと) 24 ラストボス(てんぐ) 12 げーむ おーばー 23 エンドクレジット
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高校時代、妊娠するも出産前に赤子の父親が他界、出産を親に反対される。が、前院長雅仁の尽力で出産し赤子を養子に出す。 その後、上京(時期は不定) 北屋敷にある北村家は兄弟の誰かが継いだ模様。(若いお母さんと小さいお子さんの描写あり) 年下は趣味ではない。宝船の社長の息子、藤堂公平を振ったことも 美幸を妊娠中、三ヶ月間山野の家に居候していた。 谷口美幸 響子先生の親友、ウェディング・デザイナー花奈子の娘。谷口家へ養女に。結婚。姉弟の二人の子持ち 結婚式に密かに送られたドレスで結婚式をあげた。 名前 コメント
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奇々怪界 part40-70~71 70 :ゲーム好き名無しさん:2008/07/17(木) 17 47 40 ID NMKTEmW/0 古い記憶でだけど「奇々怪界」書きます。 やってたのはアーケードでだけど、 PCエンジン版も同じなんで問題ないと思うし、とりあえず投下します ほとんどストーリーなんて無いけどいいんだろうか? 71 :奇々怪界:2008/07/17(木) 17 49 09 ID NMKTEmW/0 七福神が船ごと妖怪達に攫われてしまう。 主人公で巫女の小夜(さよ)ちゃんが七福神を助けに妖怪の里へと向かった。 7種のステージで御札と御祓い棒を使って妖怪を倒していき、途中に落ちている鍵を拾ってボスの待つ部屋へいく。 ボスは七福神それぞれの神様が変化させられていた姿。倒すと元に戻り救出成功となる。 全員助け終えると、七福神に「宝船がないんですけど!」と言われる。 宝船のありかを示す3つの巻物を見つけ出し、宝船も回収し終えると無事終了。 おしまい。
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奇々怪界 part40-70~71 70 :ゲーム好き名無しさん:2008/07/17(木) 17 47 40 ID NMKTEmW/0 古い記憶でだけど「奇々怪界」書きます。 やってたのはアーケードでだけど、 PCエンジン版も同じなんで問題ないと思うし、とりあえず投下します ほとんどストーリーなんて無いけどいいんだろうか? 71 :奇々怪界:2008/07/17(木) 17 49 09 ID NMKTEmW/0 七福神が船ごと妖怪達に攫われてしまう。 主人公で巫女の小夜(さよ)ちゃんが七福神を助けに妖怪の里へと向かった。 7種のステージで御札と御祓い棒を使って妖怪を倒していき、途中に落ちている鍵を拾ってボスの待つ部屋へいく。 ボスは七福神それぞれの神様が変化させられていた姿。倒すと元に戻り救出成功となる。 全員助け終えると、七福神に「宝船がないんですけど!」と言われる。 宝船のありかを示す3つの巻物を見つけ出し、宝船も回収し終えると無事終了。 おしまい。
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ラノで読む 戻 【波乗り船の音の良きかな 二】 ◇ 【なかきよのとおのねふりのみなめさめなみのりふねのおとのよきかな】 青々と広がっていた大海はその全てが干上がり、赤黒い焦土と化した大地は、かつてその地に繁栄していたはずの生命の存在さえ感じさせないほどに荒れ果てていた。 「また……か」 そのむき出しの大地の上、ひざの破れたジーンズを履き、素肌に白シャツを羽織っただけの男が一人、空を見上げ呟く。 その視線の先には、この海を大地を死の世界へと変貌させた、数倍、数十倍に膨れ上がった赤く巨大な太陽が今なお激しい熱量を降り注いでいる。 人類がこの地球《ほし》の支配者だった時代は遠の昔。五六億七千万年という途方もない年月によって、その面影は欠片も残されてはいなかった。 他の六人の仲間も信仰する者たちが死に絶えたと同時にその存在意義と共に消失してしまい、彼だけが一人―― 「くそっ、俺にどうしろっていうんだよ……」 吐き捨てるように呻《うめ》く。こんな時代に、こんな世界に、なぜ自分だけ、と……。 しかし。 彼はこれが夢であることを理解していた。 何故か幾度となく繰り返され続けて見た夢。目を覚ませば、そこにダイコクやエビスたち七福神の仲間がいる。自分を信仰してくれる人々もまだ……。 巨大化した太陽の熱線をひたすらに耐え、永遠とも感じ孤独に涙を堪《こら》え、彼はただ闇雲に『この時』が過ぎ去るのを待つことしかできなかった。 「うわっ、これがホテイさんの夢? 何ここ、あっつー」 我慢さえしていれば、待っていれば、いつものようにまたあちらの世界へ戻ることができる。 「んー、やっぱり悪夢《ナイトメア》が原因だったかぁ。しかもこれって……」 むこうでは最近何があったかと記憶を手繰《たぐ》る。そうそう、また正月を迎えたんだった。自分が宝船を台無しにしてしまって、皆に怒られて、そこに獏の少女が現れて……。 「あ、ホテイさんいた。おーいホテイさーん」 そうだ。彼女の能力をもってその年の初夢巡りへ出発して、そしてその途中に俺は……。 「ねぇ、ホテイさんってば」 とんとんと肩を叩かれふと我に返る。目の前には―― 「なっ……獏の嬢ちゃん!? なぜここに……?」 本来なら人などいるはずのないこの世界に、たった今思い返していたベンテンの羽衣を纏《まと》った少女の姿があった。 「助けに、来たよ」 「うーん、多少は覚悟してたけど、これは流石に予想外だったなぁ」 少女は腕を陰にし空に浮かぶ巨大な太陽を見上げながら呟いた。 「予想外?」 「うん、正直、やばいかも?」 なにがどう『やばい』のか白シャツの男――ホテイにはわからなかった。ただ一つ思い浮かんだのは、 「嬢ちゃんが話していた……俺たちの宝船を喰い荒らした悪夢《ないとめあ》って奴のこと……か?」 宝船の周りに漂っていた悪夢《ナイトメア》を思い出す。しかし、慌てて辺りを見回してみるがあの時の黒い塊の姿は何処にも見当たらない。 「いや、でもここにあの黒い塊がいたことはなかったはずだぜ?」 ホテイは小さく首を振って答えるが、少女は眩しそうに目を細め空を見上げたまま、 「ううん。いるよ」 はっきりと言いきった。 「いるって、どこに……」 少女がまっすぐに見上げる目線の先には巨大な太陽がギラギラと照らし続けているだけ。 「うーん、でも予想外にも程がある、よ。こいつ|終焉の悪夢《ナイトメア・グレイヴ》だ……」 呻《うめ》くように、嘆《なげ》くように。 「まさか、この太陽はあの|黒い塊《ないとめあ》が化けてるっていうのか!?」 「うん。悪夢《ナイトメア》の亜種の一つ、|終焉の悪夢《ナイトメア・グレイヴ》。その人の記憶から推測された『可能性として起こりうる最悪の最期』に姿を変えそれを悪夢として見せつける|化け物《ラルヴァ》」 「なっ……それじゃこれが俺の最期……?」 「うん。あの巨大化した太陽がこの夢の根元《ナイトメア》かな。たぶんあのままどんどん大きくなってこの地球《ほし》ごと一緒に……」 獏の少女の言葉によって、こちら側――巨大な太陽によって焼き尽くされた五六億七千万年という果てしなく遠い未来の地球――が夢であったという安堵感に包まれると共に、自分がここで一人寂しく命を落とすことになるのかもしれないという絶望感が襲う。 「可能性として一番最悪っていうだけだけどね」 少女が念を押して繰り返したが、今の彼には気休めにすらならなかった。 この地球《ほし》と共に、あの膨れ上がった太陽に飲み込まれ宇宙の塵と消える。運命に従い今この地にいるだけだというのに、なぜこのような最期を迎えなければならないというのか。 「大丈夫、だよ」 獏の少女はつぶやき、蒼白になったホテイの顔を見つめその手を取り、続けた。 「私が見つけた悪夢《ナイトメア》は絶対倒すから。きっと上手くいくはずだから。心配しなくても、大丈夫だよ」 しかしその表情は困惑の色が隠しきれてなく、目は潤み、繋いだ手も小刻みに震えていた。それでも、 「絶対、大丈夫、だから」 少女はホテイへと力強く言い放った。 ◇ 「さっきも言ったが俺らの中でこいつだけが唯一『神格化された元人間』なんだわ」 「今はこうやって七福神なんて言って、揃って一緒にダラダラやってるんだけどな」 「人々によって、人々のために生み出されたわしらと違って……」 「こいつには、避けることのできない運命みたいなもんを背負っているらしい」 「その運命がこいつの下《もと》に訪れたとして、その時私らが力になってやれるかどうか……」 「こいつは……ホテイの本当の姿は……」 ◇ 荒れ果てた大地に、一人の福の神と一頭の獏の姿があった。 先ほどまでの度重なる夢渡りによって獏の魂源力《アティルト》はすでに尽きかけている。今の少女の力をもってこの状況を打破できる算段などありえないことは日の目を見るより明らかだった。しかし……。 「オォォォォオオオオ!!」 大地を揺るがさんほどに獏が大きく吠える。 しかしホテイには、少女のなけなしの魂源力《アティルト》が込められたその雄叫びも、徐々に膨れ上がっていく|巨大な太陽《ナイトメア・グレイヴ》を前に虚《むな》しく響きわたるだけにしか感じられなかった。 『絶対、大丈夫、だから』 少女の言葉を思い出す。なにをもって少女は大丈夫などといえたのか。 その言葉がたとえ虚勢だとして、ホテイが目を覚ませば消えてなくなる夢の世界で、何故少女は身を呈してまで命がけでホテイを助けに来たのか。 もし何らかの勝算があるのなら、こんな遠吠えなどに労せずその方法をもって打破するはずだろう。つまり……。 そして、獏の力も及ばずといったペースで、今まさに驚異的な速度で|巨大化していく太陽《ナイトメア・グレイヴ》に飲み込まれんとする地球、そしてそこに残された彼らの前に―― 一隻の木造船――宝船が姿を現した。 「今ここにダイコク様と愉快な仲間たち参じ――――なんじゃこりゃ暑いわボケェ!!」 開口一番、ダイコクの悲鳴がこだまする。 「おいおいジュロウの爺さん、干からびちゃったか? あ。そのしわは元々か」 「うるさい! 貴様こそつやつやてかてかと暑苦しいんじゃ!!」 フクロクとジュロウはこの状況においても相変わらず罵り合い、 「ちょっとー、なにここー。私日焼けしたくないんですけどー」 ベンテンはどこから取り出したのか宝船の甲板にビーチチェアと巨大なパラソルを用意していた。 「いやしかし、洒落になってないな。この暑さは」 ビシャモンにいたってはラセツとヤシャに大きな団扇で扇がせている。しかし二人の表情から察するにそれは決して献身的な行動というわけでもなさそうだ。 その横ではエビスが汗だくになりながらその三人に向かって叫んでいた。 「ビシャモンずるいぞ、一人俺の方にも扇《あお》がせろよ!!」 そんなエビスに向かって、ラセツは目配せすらせず小声で、 「チッ……うるせぇな、失せろその他大勢」 「おいお前|裏表《うらおもて》ひどいな。ってか俺も七福神だから! むしろその他大勢はお前らだろ!? なぁヤシャ、頼むから俺扇いで俺」 「ちょ、邪魔。タモさん三分経ったら俺らと交代っすからね、約束っすよ」 「うぉい!! のけ者にすんな! ビシャモーン、俺にも扇ぐようにこいつらに言ってくれよー」 「……エビス。心頭滅却すれば火もまた涼しと言うじゃないか」 「部下に無理矢理扇がせてる奴が言っても説得力ないわぁ!!」 地面から数メートルの空中に浮かぶ宝船から聞こえてくる七福神《なかま》たちの声。ホテイの目に不意に涙が浮かび、ぐすりと鼻を啜《すす》る。 「宝船……どうしてここに……?」 「お前を一人に――」 「――できるかよ!」 船の上からフクロクとダイコクが格好良くポーズを決め、大声で答えた。 ホテイの隣で再び人型へと戻った少女が息を切らしながら小さく呟《つぶや》いた。 「やったぁ、なんとか間に合った……」 「間に合った……?」 ホテイが少女へと尋ねる。少女は力なく微笑むと、 「うん。|あの太陽《ナイトメア・グレイヴ》に、負ける前に勝つことに」 腰に手を当て胸を張ってみせた。 「さっきの『大丈夫』って、こいつらを呼ぶことだったのか……しかし――」 「獏の嬢ちゃんの言ったとおりだったな」 ジュロウが舷側板《げんそくばん》から上半身を乗り出す。続けてベンテンとビシャモンが姿を見せ、ホテイが彼らに現状を尋ねた。 「――しかしお前ら、どうやってここへ……?」 「獏の嬢ちゃんの提案さ。ホテイの夢がもしヤバい場合はとにかく穴を開けるからそこへと宝船を無理矢理突っ込んでくれってね」 「ぶっ壊れてるとはいえ元々は夢渡りの能力を持った船だからこそできた裏技ってやつだな」 二人の部下をひとまず帰したビシャモンが、バシバシと船の縁《へり》を叩きながら答えた。 ホテイは一瞬呆気にとられた表情で彼らを見上げていたが、ふと獏の少女へ向き直ると、 「ってことは、さっきの雄叫びはあの|巨大な太陽《ないとめあ・なんとか》ってやつを倒すためじゃなくて、こいつらを呼ぶため?」 「うんそう。ぶっつけ本番だったけど上手くいってよかったよ」 そして少女は再び微笑み答えた。 「さぁさぁ、お喋りしてる場合じゃないだろ。こちとら日焼けなんかしたくないっつってるんだからとっとと片づけちまうよ」 「「「「「ガッテン!!」」」」」 ベンテンがパラソルの陰《かげ》から発破を掛け、他の男衆が悪ノリして片手でガッツポーズをとった。 「おいホテイ、お前の体も持ってきたからとりあえずこっち戻れ!」 「あ、あぁ」 ダイコクの言葉を受けホテイは宝船に飛び乗ると、財宝(に見えるようカモフラージュしたガラクタの山)に埋もれて眠っている本体へと同化する。先ほどまでの「夢を見ていたホテイ」の姿が完全に埋もれた瞬間、本体側のホテイがむくりと起き出す。 「うわぁ、なんでもありだなぁ」 そんな光景を見ながら獏の少女が小さく呟いた。 元の姿に戻ったホテイは大きくあくびをすると、首をコキコキと左右に鳴らしながら、 「……で、戻ったはいいけどどうするんだ。いくら俺らが揃ったところであんな巨大な太陽相手に……」 弱気になっているホテイをベンテンが鼻で笑うと、 「はー? なんだいあんた、私らがアレに打ち勝てるとでも思ってるのかい? あんなの相手じゃ一瞬で消し炭に鳴っちまうよ」 「ったく、変に気負ってんじゃねぇ。俺たちゃ七福神だろが。福の神に出来ることをやっときゃいいんだよ」 「俺たちに、出来ること……」 そんなエビスとホテイのやりとりを聞き、少女が口を挟む。 「そう。この悪夢がホテイさんにとっての『可能性として最悪の最期』なんだから……」 「わしら全員で福を与えてこの夢を上書きしてしまえば、いくらでも上方修正出来るんじゃないかって寸法だ」 そしてジュロウが身を乗り出しおいしい台詞をかっさらっていった。 「ってそんな都合よく上手くいくわけが……」 しかしホテイは不安げにうつむく。 そこへビシャモンがサングラスを外しホテイへ詰め寄り睨みこむと、 「なんだ、お前はこの獏の嬢ちゃんの案、試してみる価値もないとでも言うのか?」 低く嗄《しゃが》れたような声で吐き捨てる。 「俺たちゃ七福神なんだ、こんな状況にびびってんじゃねぇぜ」 続けてエビスがにやけ混じりにホテイを肘でつついてやると、「それもそうだ」とようやくホテイにいつものへらりとした表情が戻った。ホテイの気持ちの変化に気づいたのか、 「それに……お前も気づいてんじゃねぇか? この夢が意味する『ホテイ《おまえ》の運命』ってやつを」 「五六億七千万年後の未来、ホテイ……いや弥勒菩薩《みろくぼさつ》の化身としての、な」 フクロク、そしてジュロウが何かを思い返すかのように、遠い目でホテイを見つめながら呟《つぶや》く。しかし間髪入れずに、 「グダグダしてても始まらねぇ!!」 ダイコクが一歩踏みだし大声で割って入った。そして、 「まぁ、こんなくだらないことであんたらと心中なんか御免だしー」 言って、ビーチチェアに寝そべっていたベンテンがパラソルの影から起きあがる。 「いいかお前ら、気合い入れてけ!!」 エビスが檄を飛ばす。ホテイはニッと笑い、拳《こぶし》を打ち合わせ、 「……おーしっ!!」 息を吐き捨てるように猛る。 「いくぞ、悪夢《ないとめあ》だかなんだか知らねぇが……」 「「「「「「「七福神《おれたち》を舐めんじゃねぇ!!」」」」」」」 七人の叫びが夢の世界に響きわたった。 ◇ 宝船の甲板の上、七人と一匹の獏が、我関せずと言わんばかりにギラギラと照らし続ける巨大な太陽を見上げる。 「最初が肝心だぁ! やれ!! ベンテン、エビス!」 吹き出る汗もものともせず、その太い両腕を組み仁王立ちしたフクロクが声を張り上げた。 「あいよー、まかせな!」 キセルをくわえたベンテンがエビスの背をポンと叩く。エビスはそのまま宝船から身を投じると、再び大きな鯨へと変身し、 「よっしゃあ! 大漁追福!!」 その姿が焼けた地面に触れる瞬間、叫びと同時に鯨が力強く光輝き……その身の周りにどんどんと大量の海水が発生していった。 止めどなくあふれ続ける海水がその焼けた地面の低地だった部分を徐々に大海原へと変貌させていく。激しく立ち上る水蒸気が空を覆い日差しを遮り、そして強い熱風と共に大雨を降らせ出した。 一帯が嵐と化し、豪雨と高波で荒れ狂う海面に宝船が着水する。 「ふん、上出来だよエビス」 ベンテンがニヤリとしてみせると、激しく揺れる甲板の上をものともせず船首へと優雅に歩みを進め、そして両腕を大きく広げた。 「私がいる限りこの船は沈まない。収まりな」 水難回避。ベンテンの力が高波に煽られる船を鎮め、続けて高波そのものまでもを静かにさせていった。 程なくして大雨も止み穏やかになった海面に、宝船と一頭の鯨がたゆたっていた。 「続けていくぜ!」 肩に俵《たわら》を担いだダイコク、続けてフクロクとジュロウが、海へとならなかった高台だった陸地へと飛び移ると、 「五穀豊穣!!」 ダイコクは担いでいたその俵を天高く放り投げた。 俵は空中でほつれ分解し、中に蓄えられていた米や麦、豆などの穀物の他、多種多様な草木の種が辺り一面に撒かれる。 「よぉし、俺の撒いた種はどんなことにも負けやしねぇ! 後は頼むぜ、フクロク! ジュロウ!!」 「任された。来い! 福星、禄星!!」 両腕を上下に広げたフクロクの手から蝙蝠《こうもり》と鹿が姿を現す。それぞれが空を飛び、そして地を駆り……二匹が通った後に次々と草木の芽が吹き出していった。 同じくして、あたりを見回しながらジュロウが一歩一歩と足を進めていく。すると、ジュロウの見て回る範囲がまるで数ヶ月数年数十年と月日が流れたかのように、荒れ地から草原へ、そして林、森へと姿を変えていった。 一面に生い茂る緑の中、ダイコク、フクロク、ジュロウの三人は引き続き何かを探し出すかのようにあたりを身て回り続けた。そして…… 「あったぞ! この木だろ!?」 それは、ひょろりと先の伸びた大きな葉を持つ一本の木。三人は駆け寄ると揃って両手で木を触れ、それぞれの福《ふく》『五穀豊穣』『無病息災』『不老長寿』を与え込める為に力を込めた。 彼らの力《ふく》を得て、木は勢いを増して成長していく。蔓を延ばし近くに生えていた他の植物さえも次々と絡め取っていった。 「来い……来い、来い、来い……、来た……来た、来た、来たぁ!」 「いいぞいいぞ、この木こそが――」 「――この木の下《もと》で仏様が悟りを開いたという『菩提樹』なのか……」 三人は手をついたまま自分たちの福を得てぐんぐんと成長していくその『菩提樹』の姿に感嘆の声をあげた。 その時。 業を煮やしたのか、ようやく事態の変化に気づいたのか、それともただの偶然なのか、空に浮かんでいた巨大な太陽に化けた|終焉の悪夢《ナイトメア・グレイヴ》が突如、激しく紅炎《プロミネンス》を吹き上げた。 発生した火柱は火球となり、海面へ地表へと降り注ぎ――、中でも一際巨大な火球がまっすぐにジュロウたち三人のいる『菩提樹』へと向かい落下してきた。 三人は自分たちへと加速していく火球を見上げ、それでもなお木から手を離すことなく福を与え続けていた。 逃げない理由。それは、諦めでもなく腹をくくるわけでもなく。 それは、この状況を打破できる仲間が彼らの中にいるから、であった。 「――ヤシャ、ラセツ」 宝船の上で様子を見守っていたビシャモンが再び部下の二人を呼ぶ。 ビシャモンの両サイドに同じライダースーツのヤシャとラセツが姿を現し「チィーッス」と小さく会釈した。 ビシャモンは再びサングラスをかけ直し前髪を掻き上げ、その手に三叉戟《さんさげき》を生成する。続いてヤシャとラセツも手に直刀を持つと、 「この勝負、俺らに敗北の二文字は存在しない。あの木とジュロウたちを死守する、ついてこい」 「「了解っす、タモさん!」」 三人は甲板を強く蹴り、落下する火球へと飛んだ。 ビシャモンは部下二人を連れ、ジュロウたちのいる菩提樹の上空へと立ちはだかると、 「悪・即・斬」 今まさに迫り来る火球に向けて三叉戟を大きく振り下ろした。 轟音と共に三本の刃による斬撃が火球を四つの塊に砕き割る。しかし、高々度落下による加速を殺すには力不足だったのか四散した火球はそのまま菩提樹、そしてビシャモンたちへ向かって落下し続けた。 止まらぬ火球を相手にもビシャモンは一切表情を変えることなく、大きく息を吐くと、左手と三叉戟の切っ先を突き出し同時に右肘を後ろへ大きく引き、片手刺突の構えを取る。 両サイドのヤシャ、ラセツも倣《なら》うように直刀を同じく構えると、 「悪夢《ないとめあ》……お前の全てを否定してやる」 ビシャモンの言葉に合わせ、突き出された三人の刃が迫る火球を粉々に砕いた。 「ふぅ、寿命が縮んだわぃ。わし長寿の福の神じゃけど」 「まったく、こういう時だけは相変わらず頼りになりやがる」 「ってか最初の一発で壊せよ! ちょっとびびったじゃねーか!!」 ビシャモンは菩提樹の周りで叫ぶ三人を見向きもせず、手にした三叉戟を太陽へと突きだすと、 「悪夢《ないとめあ》よ、何度でも来い。俺らがいる限り貴様の勝利は存在しない」 「「やったー、カッコイイー!」」 ふたりが拳を突き上げて、ビシャモンを誉め囃した。 ビシャモンたちは、なお降りそそぐ火球を次々と砕き潰し、そして右へ左へと切り払っていく。程なくして、|終焉の悪夢《ナイトメア・グレイヴ》が攻撃の手を止めたのか、それとも単に巨大化した太陽の噴火が収まっただけなのか、熱気を残したまま火球の落下は鎮静化した。 「ふん、他愛もない。お前たちご苦労だった」 ビシャモンは手にした武器を霧散させ、共闘した部下たちを労《ねぎら》う。ビシャモンの言葉にヤシャとラセツは相変わらずの軽い挨拶を返すとまたその姿を無に帰していった。 「首尾はどうだ」 部下を見送ったビシャモンはジュロウたちの下《もと》へと降り立ち尋ねる。ジュロウたち三人も既に木の幹からその手を離していた。木の育成もほぼ同時に完了していたようだ。 「これだけ育てば問題ないじゃろう」 四人が見上げるその『菩提樹』は大地に力強く根付き、神々しく天高く数十メートルを誇る大木へと成長していた。 「ま、俺らにできることはここまでだな」 「来いホテイ! あとはお前次第だ!!」 フクロクとダイコクがいつの間にか沿岸に停泊されていた宝船で待つホテイを叫び呼ぶ。 「こんなクソな夢、お前の真の力でとっとと終わらせやがれぇ!!」 「みんな……ありがとう」 ホテイは仲間の目すら気にせず、再び鼻を啜りながら答え、宝船から飛び降り菩提樹へと駆けだしていった。 ◇ 駆け寄るホテイと入れ替わるようにジュロウたち四人は宝船へと足を向けた。そしてすれ違いざまにホテイはビシャモンと拳を合わせ、ジュロウとフクロクの二人とハイタッチし、そしてダイコクからはケツを蹴られ――彼らの手で守られ育成されたその『菩提樹』の下《もと》へたどり着いた。 ホテイは木の幹へ触れ、巨大な太陽へと突き抜けるかのように天へと伸びる木を見上げ……緩やかに瞳を閉じた。 「俺の運命……この星の未来……」 わかる。 この木が教えてくれる。 自分がいったい何者なのか。 この場で何をすべきなのか。 突如、額《ひたい》を中心にホテイの体が激しく光り輝いた。光は目を射るほどに眩《まばゆ》く、辺り全てを白く染めあげていく。 「悪夢《ないとめあ》……この夢、消させてもらうぞ」 純白の世界でホテイの声がこだまする。ホテイから放たれた光は、強い『富貴繁栄』の福をもって彼自身の夢を強制的に浄化していった。 「我は――我は、弥勒如来《みろくにょらい》! 五六億七千万年の時を経て、この菩提樹の下にて仏となりて世を救済せし者なり!」 そして。 ホテイの放つ光が収まっていく。 辺りに、七福神たちの再興した風景が再び浮かび上がっていく。 そこには―― ――そこには、肌を焼かんほどに照らしていた『巨大化した太陽』は消えてなくなっていた。 代わりに現世のものと大差ない大きさの|本物の太陽《・・・・・》と、そしてホテイの力で視覚的にそれと同等のサイズまで萎んでしまった|終焉の悪夢《ナイトメア・グレイヴ》だったものとが空に白と黒でひとつづつ浮かんでいた。 「獏の嬢ちゃん、やってくれ!!」 ホテイが宝船の上で事のいきさつを見守り続けていた少女を叫び呼ぶ。 「まかせてっ! こんなサイズなら今の私でも……!!」 少女は残りわずかな魂源力《アティルト》を振り絞って再度獏化し、獣の四肢で甲板を激しく蹴り、縮まった|終焉の悪夢《ナイトメア・グレイヴ》へ向かって空高く飛び上がった。 「オォォォォォオオ!!」 激しく雄叫び、鋭い獏の牙が先ほどまで大地を焼き尽くしていた|巨大な太陽だったもの《ナイトメア・グレイヴ》を一飲みで噛み砕いた。 「これで……これで……」 ホテイは菩提樹の下《もと》から、遙か上空で悪夢《ナイトメア》を飲み込んだ獏の勇姿を、潤《うる》む目を擦りながら見上げ続けていた。 ホテイの『可能性として最悪の最期』の夢は終わりを告げた。 菩提樹から歩み戻るホテイと、そして人へと戻り上空から降り立つ少女を、宝船に残った六人のあげる歓喜の声が温かく迎えた。 獏によって夢の根源を食べられたホテイは、今起きたことは後に忘れてしまうかもしれない。 それでもなお七人と一人は、互いを称《たた》え合い悪夢を討ち去った喜びをいつまでも分かち合い続けていた。 ◇ 「それじゃ今度こそ本当にみんなお疲れさま。また何処かで……」 昨晩に七福神と獏の少女が出会った彼らの聖域に戻ると、うつむき加減に別れを名残惜しむ。しかし彼女の言葉に割って入るように、ダイコクはあっけらかんとさも当たり前かのように、 「おう、それじゃ明日の晩も頼むぜ。獏の嬢ちゃん」 あっさりと次の予定を打ち出した。 「えっ……え!? さっきの七人で終わりじゃなかったの!?」 「今夜の分は、な。それに本当の初夢は一月二日の夜に見るものだし、つまり今さっきまで回ってきた七人は早とちりさんたちってことだ」 「えっと、じゃ明日と明後日と七人ずつ……あと十四人も回る、の?」 最後に一仕事あったとはいえ、息も絶え絶えに疲労困憊の少女はダイコクの言葉に軽く目眩を起こしかける。 知ってか知らずか、ダイコクはぽんぽんと少女の肩を叩くと、 「あぁ、よろしく頼む」 「えー、そんなぁ」 獏の少女はそのまま膝から崩れ落ち、地に両手を突いてうなだれてしまった。 ◇終 「ただいま、リム。起きてるー?」 一月四日の昼下がり。帰省先の地元から双葉学園へと戻ったコトは自室に鞄を放ると、合い鍵を手にすぐリムの部屋へと訪れた。 「うーん……お帰り、コト。疲れた、よぅ」 普段ぐぅぐぅ寝てる割に朝だけはしっかり起きるはずのリムが、今日に限って正午過ぎまでベッドで横になっており、コトは小さく首を傾げる。 「疲れたって……三が日のあいだ何かしてたの?」 「ううん、ずっと寝てた、よ」 「……うん?」 それじゃいつもと同じじゃん、というツッコミを辛うじて飲み込んだ。 「そういえば私、初夢でリムと七福神を見たよ」 むずがるリムを無理矢理ベッドから引きずり下ろし、パジャマから普段着へと着替えさせると、二人一緒に遅い昼食を取る。 「へっ!? あ、そうなんだ」 トーストを頬張りながら、突如振られた「コトの見た初夢の話」にリムはむせ返りながら頷き返した。 「なんかねぇ、リムがすごいセクシーな格好してて、何故か七福神と一緒に行動してたような気がする」 そして、はっきりとは覚えてないんだけど、と付け加える。リムは目を泳がせながら、 「えーと、うーん。不思議な初夢を見たんだね」 誤魔化せているのかどうかわからないほど曖昧な返答で受け流した。 「でさ、七福神の初夢って縁起物じゃん? だから私、元日に家族で初詣へ行ったときにお願い事したんだ。『リムといつまでもずっと一緒にいられますように』って」 「あははっ。そうだね、どんなことがあっても、私とコトはいつまでもずっと一緒、だよ」 いつまでもずっと一緒。 互いにトーストの粉を頬につけたまま、コトとリムは微笑み合った。 「ってか、私がいないあいだ寝っぱなしってことはリムは初詣まだだよね? 双葉神宮まで一緒に行かない?」 「うん、行こう行こう。……あ、そうだコト」 「ん?」 「あけましておめでとう、今年もよろしくね」 【波乗《なみの》り船《ふね》の音《おと》の良《よ》きかな】終 トップに戻る 作品投稿場所に戻る
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禁止カードリスト 禁止カードリスト 900円モダンにおいて、下記のカードが禁止カードとなります。 《古えの居住地》 《アーカムの天測儀》 《出産の殻》 《猛火の群れ》 《黄泉からの橋》 《金属モックス》 《雲上の座》 《暗黒の深部》 《死儀礼のシャーマン》 《時を越えた探索》 《戦慄の復活》 《ウギンの目》 《信仰無き物あさり》 《死者の原野》 《ギタクシア派の調査》 《垣間見る自然》 《ゴルガリの墓トロール》 《大焼炉》 《緑の太陽の頂点》 《甦る死滅都市、ホガーク》 《超起源》 《クラーク族の鉄工所》 《夢の巣のルールス》 《精神的つまづき》 《オパールのモックス》 《マイコシンスの格子》 《神秘の聖域》 《王冠泥棒、オーコ》 《むかしむかし》 《思案》 《罰する火》 《炎の儀式》 《教議会の座席》 《第二の日の出》 《煮えたぎる歌》 《師範の占い独楽》 《猿人の指導霊》 《頭蓋骨絞め》 《欠片の双子》 《花盛りの夏》 《ティボルトの計略》 《宝船の巡航》 《伝承の樹》 《梅澤の十手》 《自然の怒りのタイタン、ウーロ》 《囁きの大霊堂》 《空を放浪するもの、ヨーリオン》 晴れる屋参考価格1000円以上のカード 基本的に公式に準拠する形になるので、随時確認して下さい。
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ラノで読む 戻【長き夜の遠の睡りの皆目覚め】 ◇序 七福神と獏を乗せた宝船が一隻、音もなく大空へと現れた。 新造船さながらに丁寧に鉋《かんな》をかけ精巧に仕上げられた綺麗な木目。ぴんと張った帆には鮮やかな紅色《べにいろ》で記された「宝」の文字。目映《まばゆ》いほどに金銀財宝を積み込んだその姿は優雅にして荘厳。 しかしその実、表面上「そのように見せている」だけであり、宝船の本体そのものは悪夢《ナイトメア》に蝕まれたボロ船のままであった。 「うわっ、初めて試したけど、これすっごい疲れる」 巨躯の獏の姿からほっそりとした人型へと戻った少女が大きくため息をつく。 少女が元々着ていた衣服は獏への変身で既に破れてなくなっており、現在はベンテンに貰った薄布の羽衣を纏《まと》っただけの姿となっていた。 これまで一人気ままに夢渡りをしてきた彼女にとって、自分以外に七人とそして船一隻をも引き連れてでは、あまりに勝手が違いすぎたのだろう。初回にして早速肩で息をしている。 「おいおい大丈夫か、まだ一回目だぞ」 赤キャップをかぶりライフジャケットを身につけたエビスが、額に浮かんだ汗を手首で拭う少女の顔を覗き込む。 「うーん、なんとか……」 少女は全身を大きく伸ばし深呼吸をすると、 「大丈夫、約束通り七人分は頑張るよ」 両腕でガッツポーズを作り、力《ちから》ない笑顔で答えてみせた。その姿にホテイは心配そうな表情で、 「……そういうなら信じるけどさ、あまり無理はするなよ」 「うん、ありがとう。でもほんと、大丈夫だから」 「さぁさぁ、そんなことよりこの夢の主はどいつなんだい?」 キセルをくわえたままベンテンが少女へと詰め寄った。その煙を避けるかのように少女は無意識に一歩さがると、 「一応『七福神の初夢を求める人』って条件で同調して渡って来てみたけど……」 そして「だからたぶん枕の下に七福神の絵を敷いて寝てる人の夢へと入って来てるはず」と続けた。 少女は船の縁《へり》から身を乗り出すと、きょろきょろと眼下を見回す。ホテイが少女と並び同じように見下ろした。 二人の目線の先には一人の少女の姿があった。獏の少女はそれを見るなり、 「……ってあれ? これコトの夢だ」 「コト……? ってなんだ、あの子知り合いか?」 「知り合いっていうか……私の一番の友達、かな。そういえば数日前にコトと一緒に初夢の話したんだった」 思い返すように頷く。そして七福神たちのほうへ振り向くと、 「ちょっと先に降りてみても、いい?」 「おー、行ってこい行ってこい」 「ありがとう、ちょっと行ってきます」 少女は彼らに手を振ると、高度数十メートルに浮遊している宝船から、躊躇《ためら》いもなく飛び降りていった。 ◇一 * * * 「コトー」 見知った人影が突如眼前に降り立ち、コトと名を呼ばれた少女は面食らったかのように目を丸くした。 現れたのはいつも見慣れた、それでいて、どことなく雰囲気の異なる親友の姿。 まっすぐの綺麗な黒髪は赤黒い巻き毛へと変わっており、なにより普段は身につけないような露出度の高い、その豊満な胸元をぎりぎりまで大きく開いた薄地の衣装が目に付いた。 「……リム? ……なんか見た感じいつもと違……ってか、何その際どい服装は」 「これ? ベンテンさんに貰ったの。可愛いでしょー」 リムは両腕を大きく広げ袖を振り、そして同時にその大きな胸をもゆさゆさと揺らしながら答える。コトはその言葉に眉をしかめ首を傾げながら、 「可愛い……うーん、可愛いけどそういったエッチっぽい服はあまり関心しないよ」 「コトはシックな格好が好きだもんね」 「そだねぇ。……って、ベンテンさんってどなた?」 ふと出てきた心当たりのない人名にコトは再び首を傾げる。 「えーっと、そうだコト。空を見てみて」 「空……? 何あの船」 リムの指さしたはるか上空を見上げるとそこには、本来空中にあるはずのない大きな木造船がふわふわと浮いていた。 「あれ、宝船だよ」 「へぇ、宝船……って宝船!? それじゃなに、これは初夢!? ベンテンさんって弁財天のこと!?」 「そう。ほかの七福神さん達もみんな乗ってるんだよ」 「うわぁ。ダメ元で枕の下に七福神の絵を敷いて寝てみたけど、これって本当だったんだ……」 「みたいだねぇ、私もビックリしちゃった」 「……って、あれ? それじゃなんでリムが七福神と一緒に?」 「え。あー、うん。なんでだろう、ね」 突然の質問にリムはちょっとバツが悪そうに口ごもった。しかしコトはその返答を待つことなく、 「そうか。縁起のいい初夢だから、私の好きなリムの夢を見ることができたのかもしれないね」 自分勝手な解釈で頷き納得してしまった。 「……ん? えーっと……」 「ううん、なんでもない」 そして首を傾げるリムに対しコトは微笑みあしらうと、 「そっかぁ。それじゃあこれで私も今年一年安泰ってことなのかな」 「あ、どうなんだろ。七福神のみんなは「福を与えて回るだけだ」って言ってたけど」 「……どうしてリムが七福神と一緒にいるんだろう。そういえばリムの出てくる夢って珍しい気もするし」 「あ……あははは。そうなんだ……」 リムは少々ひきつった笑顔で答える。そしてコトへと手を振り、 「それじゃ、私ちょっと、これで船へ戻るね」 「うん。またね、リム……って飛んで行くんかい!!」 地を蹴りふわりと上空へ昇っていくリムを見上げながら、コトが大声で叫んだ。 * * * 「なんだ。もういいのか?」 船へと戻った少女にフクロクが声をかけた。少女は指先で頬を掻き、 「うん、ちょっとうっかりしてた。今夜は知り合いの夢でもちょっと降りるのは注意していかないと」 ぺろりと舌を出す。 「うん?」 少女は再び船の縁《へり》から眼下を覗くと、 「でもまぁコトもこの夢自体を「私の出てくる初夢を見た」って思いこんでくれたみたいだし、結果オーライ、かな」 うんうんと頷き、続けた。 「いつもはこうやって共有した夢は食べて消しちゃうから、強制的に『なかったこと』にできるんだけど……でもまぁこの程度なら消さなくても自然と忘れると思うし、たぶんおそらくきっと大丈夫のはず」 「それもそうだ。福を与えるための初夢だから俺たちとしても消されるわけにもいかねぇしな」 大声で笑いながらエビスが言った。 「さて、それじゃ今年の一発目、誰いくよ?」 船の隅《すみ》で横になって休憩している獏の少女を尻目に、集まった七人が互いの顔を見合わせた。 今年は「一人の夢につき一人が福を与えよう」と決めたので、結果的に七福神のうち一人づつ順番に、となるのだが……。 「んじゃ俺からいくわ。いい?」 ホテイがすっと手を挙げた。 「よぉし、船ぶっ壊した汚名挽回だな。行け、ホテイ!!」 バァン、とダイコクがホテイの背を平手で思い切り叩く。そんな二人を尻目にエビスが首を傾げながら、 「オメイバンカイ? 名誉返上だろ?」 「メイヨヘンジョウ?」 「……忘れてた、お前ら馬鹿だったんだよね……」 ベンテンがキセルをくわえたまま、まるで虫けらを見るかのような目で二人を下げずみ、フクロクは完全に二人を馬鹿にするかのように、 「ったく、名誉挽回で汚名返上だろうが。いちからか? いちからか説明しないと駄目か?」 厚い胸を張りニヤニヤと見下ろした。 「くっそー、余計なこと言わなきゃよかった」 「ホテイ、てめえのせいだからな。てめえが船こわしてなきゃ……」 「はいはい俺の不注意でした。スミマセンスミマセン。始めるからいいかげん黙っててくれ」 ホテイは喚《わめ》くエビスとダイコクを適当にあしらうと、船外へと向きまるで願掛けするかのように両手を合わせ深く瞑想し、 「我は布袋《ほてい》、名を釈契此《しゃくたいし》。弥勒菩薩《みろくぼさつ》の化身にして富貴繁栄《ふきはんえい》を司りし明州の僧なり……」 流れるような口調で緩やかに名乗りあげた。 しかし数秒と経たずにその姿勢を崩すと、 「はい終わり」 振り返ったホテイは既にいつものへらへらした表情へと戻っていた。 「できたか、んじゃさっさと次行くぞー。おーい、獏の嬢ちゃーん」 「あれ!? もう終わり? なにか変わったの?」 急に呼ばれ、少女はあわてて飛び起きた。 「あぁ、この初夢は俺たちの……今回はホテイの富貴繁栄で上書きされたよ」 ダイコクが答える。隣にいたビシャモンがサングラスの鼻もとを指で押し上げながら続けた。 「もっとも『福』という形でそのきっかけを与えるだけだがな。状況や見た目に影響がでることはほとんどない」 「そうか凄いな、何言ってんだお前」 「まぁ細かいことはいいんだよ。これが俺たちの仕事なんだからさ」 ビシャモンへ突っ込むダイコクに続き、ホテイがフォローを入れるように口を挟んだ 「ふぅん。なんだかよくわからないけど……これでコトにいいことがあるなら、まぁいっか」 フキハンエイって何だろう? などと多少の疑問を残しながらも少女は頷くと、次の夢渡りの準備へと取りかかった。 ◇二 「フィーッシュ!!」 宝船が次に訪れたのは双葉島近海の上空だった。 島からさほど離れていない距離に一隻の小船を見つけ、人型に戻った獏の少女が声をあげた。 「あ、今度は紫穏《しおん》さんだ」 船には釣りを嗜む二人の人影。一人は船主であろう初老の男性、もう一人はショートヘアの小柄な少女だった。 「シオン……ってあの女の子のほうのことか。もしかして知り合いを中心に夢渡りしようとしてないか?」 呆《あき》れたような表情で、迷彩服を着た体格の良いフクロクがため息をつく。 「え? うーん、えへへへへ」 恐らくは文字通りであろう、少女は笑って誤魔化した。 その言葉にフクロクは再びため息をつくと、 「まぁいいか、さて……」 少女と共に海に浮かぶ小船の様子を伺《うかが》った。 「ありゃあ船釣りか。んじゃエビスの出番だな」 「おうよ。海のことなら任せとけ」 エビスは得意満面に手にした釣り竿を掲げてみせた。 「調子に乗ってみっともなく溺れたりすんじゃねぇぞ」 「誰にむかって物言ってんだ。海なら俺の独壇場だっての」 罵るダイコクの言葉にエビスは舌打ちし、そして不意にニヤリとしてみせると、 「そうか、てめぇは農耕の神様だもんな。ここじゃ潮風や海水が怖いんだろ」 「ふん、言ってろ」 当たり前のように罵《ののし》り合い、そして互いにそっぽを向く。 「ねぇねぇ、ダイコクさんとエビスさんっていつもこうなの?」 そんな二人の様子を眺めていた獏の少女が、近くにいたフクロクの袖を引っ張り尋ねた。 「あぁ。これで親子なんだから世の中わからないもんだ」 「えっ!?」 「もちろん血が繋がってるわけじゃなく、信仰の都合によるものだけどな」 フクロクの意外な返答に少女は目を丸くして驚いた。 そしてその会話を耳にしたダイコクとエビスは互いを指さしながら同時に口を開く。 「愚息だ」「クソ親父だ」 「「…………」」 更なる罵倒の直後に一瞬の沈黙。そしてそれを破るかのように共に胸ぐらを掴み合うと、 「ンダァオ!?」「ッゾオラァ!!」 火花が飛び散らんほどに叫び、睨み合う。 「ったく、相変わらず仲のいい親子だよ」 「……これは仲がいい……の?」 二人の様子をおろおろと見つめる少女を余所に、フクロクはその太い腕を組み声高に笑い飛ばした。 「消えろダイコク、ぶっ飛ばされんうちにな」 エビスはダイコクに向かって中指を突き立て、グチグチと文句をこぼしながら遙か上空に浮かぶの宝船から身を投じた。 そして紫穏の乗った小船の近くの海面へ降り立ったエビスは、十数メートルはある巨大な鯨《くじら》の姿へと変える。 「我、海の神にして勇魚《いさな》の化身、外来より出し大漁追福《たいりょうついふく》を司る事代主かm……うぐっ!?」 そして、名乗りを上げている途中に突如口ごもり、ばしゃばしゃとそのあたりを暴れ回った。 「お、これは大物だっ。鯨《くじら》の一本釣りぃ!!」 「さっすがお嬢だ。ありゃあ近海の主《ぬし》かも知れないぞ」 もちろん本来ならば鯨など釣り上げられるはずもない。しかし紫穏の異能によって強化された釣り竿ならばそのような常識も簡単に覆されてしまう。紫穏の踏ん張る小舟もまた、暴れる鯨《エビス》によって起きた波の中でも安定してその海面を漂っている。 「にゃっはっはっ。今夜は醒徒会のみんなで鯨のフルコースだ!」 「ってエビスが釣られたぁ!?」 「ありえねぇ、なんだあの娘!」 「エビス……あいつは仕方ない奴だ」「そーだな仕方ないな」「仕方ないな」 海上の様子に、宝船の上では驚きと嘲《あざけ》りに包まれていた。ダイコクにいたっては腹を抱えて笑い転げている。 「違っ……そんな餌に俺が釣られるわけが……!?」 大暴れするエビスを、まるで海面を引きずるかのように紫穏の釣り竿がどんどん糸を巻き上げていく。 「わー、紫穏さんは相変わらず凄いなぁ」 「いっくぞー! フィーッシュ!!」 紫穏は大声で叫び、釣り竿を大きく振り上げた。釣り糸に引かれたまま鯨のエビスが水飛沫《みずしぶき》をあげ宙に弧を描く。 「エビスー! 人型に戻って手で釣り針を外せー!!」 「……なぁ、釣り針って外れないように返しが付いてなかったか?」 「外れねぇ……って、いってぇ! 何これクソ痛《いて》ぇ!!」 「ったく、何やってんだあの|バカ《エビス》は。……でもまぁ福はちゃんと上書きできたみたいだし、さっさと連れ戻して次行くぞ!」 「えぇぇ……鯨が人に変身して空の船に乗って逃げちゃった……せっかくの晩ご飯がぁ」 「夢でも見てるみてぇだが、まぁそんなこともあらぁな。ぼちぼち引き上げるかい?」 「ううんっ、今の分を取り戻さないと。それに今日はもっと釣れそうな気がするんだ」 首を振り、満面の笑みで答える。そして二人揃って釣り針へと餌を付け始めた。 紫穏の初夢はまだまだ覚めることなく、エビスの福『大漁追福』の恩恵もまたその効能し続けている様子だった。 ◇三 「がおー」 醒徒会室の会長席。肩に乗せた子猫サイズの白い虎が窓に向かって吠え、白いベレー帽を被った小柄な少女が訝《いぶか》しげにその先へと目線を送る。 「どうしたのだ、白虎《びゃっこ》。空に何か……あーっ!?」 少女は叫び、乱暴に窓を開けると上空を見上げ、 「宝船なのだ! ということは、これは初夢!?」 きびすを返し勢いよくドアを開け放つと、一心不乱に校庭へと駆けだした。 「おい、さっそく見つかったぞ」 グラウンドから宝船に向かって叫ぶ少女を見、ビシャモンが小さく呟《つぶや》く。隣のジュロウがそれに続けた。 「しょうがないのう、船を降ろすか。獏の嬢ちゃんは休んでな」 「はーい、頑張ってー」 * * * 「ひちふくじん、今すぐ私をナイスバディにして欲しいのだ!」 七人が降り立ったと同時に、白い虎を肩に乗せたその小柄な少女が、拳を力強く握り元気いっぱいに懇願した。 「……ないすばでぃ?」 「フクロク、わかるか?」 「こんな時ばかり頼るな。俺にだって……わからないことぐらいある……」 「使ええねぇ……ベンテン、お前はどうだ?」 「馬鹿にしないでくれる? 知ってるわよそのくらい」 「んじゃどういう意味だよ」 「あー、んー、そうだ。すばでぃがないんだよ」 「なんだよすばでぃって。お前らさっき俺らを散々馬鹿にしておいてそれかよ」 フクロクとベンテンのフガイなさに不甲斐無さにエビスが噛みつく。 「しょうがねぇな、ちょっと待ってろ。……おい獏の嬢ちゃん、ないすばでぃって何だ?」 最終的に、あまりに返答に窮したダイコクが宝船の舷側板《げんそくばん》越しに獏の少女へと尋ねた。 「えっ、えーと……うーん。ベンテンさんのような、誰もが見惚れるようなスタイル……えっと体型のこと、かな」 昨晩から続く七福神との会話で、今回のように舶来語が全く通用しないことがわかった彼らを相手に、獏の少女は言葉を選びながら答えた。 「あーなるほど。この小さな嬢ちゃんはつまり容姿端麗になりたいってことか」 「そうそう。私みたいな容姿端麗な美女のことをないすばでぃって言うんだよ。いやぁ嬉しいこと言ってくれるじゃないか」 その会話を受け、ベンテンが薄く頬を赤らめ照れ笑いしながら、指先だけで手を振り答える。しかしそんなベンテンに他の六人の誰もが見向きもするはずもなく。 そしてホテイとフクロクが口を挟む。 「っていうかそれなら獏の嬢ちゃんもいい線言ってると思うよ」 「確かに。出るとこちゃんと出ているし、顔立ちもなかなかの器量良しだ」 「そっ……そんなことな――」 「ちょっとあんたたち、なんだいその態度!! この弁財天様を無視しようってのかい!?」 突如、まるっきり相手にされず怒り心頭のベンテンによって振り降ろされたキセルをホテイはぎりぎりでかわすと、 「おい危ねぇな! そのキセル火ついてんだろ!!」 大声で叫び抗議する。しかし、 「うるさい! あんたら全員いったん焼け死ねばいい!」 有無を言わさずといった勢いでベンテンが右へ左へとキセルで殴りかかる。 「よせ! 振り回すんじゃない!!」 「わしの髭が燃えっ……燃えっ……!?」 「おいビシャモン、この女どうにか押さえこんでくれ!!」 「……いや、ベンテンとはいえ女性に手をあげるのはちょっと」 「くそ使えねぇ! 力仕事はお前の担当だろうが!!」 「ひちふくじん!! 遊んでないで早く! 早く!!」 内輪もめでもはやぐだぐだになっている七福神に、白いベレー帽の少女が堰《せき》を切らせた。 その言葉に、ベンテンのキセルから逃げ回っていた六人が足を止め困惑した表情で互いに目配せし合う。ベンテンはチッと舌打ちすると彼らの輪から数歩離れ、再びキセルをくわえ深く紫煙をくゆらせた。 ベンテンからの追撃がないことを横目で確認したダイコクは小さく安堵のため息をつくと、少女に向き直り、 「あー、ちっちゃなお嬢ちゃん。悪いが俺たちゃそういった個人的な願いを叶えてやれるような神様じゃあないんだ。悪いな」 「何故なのだ! 紫穏《しおん》はこの前そう教えてくれたのだ!」 「しおん、ってさっきエビスを釣り上げた娘のことか。そうは言ってもなぁ」 「まいったな……。ベンテン、ちょっとこっち来い!」 「あー? なんだい死に損ないどもが」 「根に持つなよ……。ちっちゃいお嬢ちゃん、今すぐってのは難しいんだが、将来この弁財天様のような体型になれるよう福を与えてくれるそうだ。よかったな」 「おい、ダイコク。私にはそんな福は与えられな……むぐっ」 ダイコクは咄嗟にベンテンの口を塞ぐと、耳元で小さく囁きかける。 「いいからちっと黙ってろ。嘘も方便って奴だ。お前は普通にお前の福を与えてやってやりゃあいい」 「チッ。神様が嘘つけっていうのかよ。……まぁいい」 ベンテンはダイコクから離れると、少女の前で屈み込み、 「おいチビっ子。ちょっと頭貸しな」 「むぅ……これでいいのか?」 「あぁ。ちょっと待ってろ…………………………………………」 そのまま少女と額を合わせ、誰にも聞き取れないほどに小さい声で何かを呟くと、 「……よし。これでお前さんの将来は安泰だ」 「本当か!? さすがはひちふくじん様なのだ!」 「もちろんチビっ子の言う理想体型を目指すための日々の努力は怠るんじゃねーぞ」 「わかったのだ! これでもかれこれ一週間ほどバストアップマシンを試しているのだ。これで将来ボンキュッボンなプロポーションの私になれるのだ」 「ばすとあ……ぼんきゅ……ぷろぽ……? 言葉の意味はわからんが、とにかく凄い自信だ。まぁ頑張れ頑張れ」 自身の胸元を見下ろし少々落胆気味のる少女へと、ベンテンは頭を撫でてやった。 「よーしお前ら、引き上げるぞ」 「ベンテン、ありがとうなのだ!」 宝船へと戻ったベンテンに獏の少女は歩み寄ると、 「ベンテンさんはさっきどんな福を与えたの?」 「あー? あぁ、学芸だ。あと水難回避」 「えーっと……」 少女の言葉にベンテンは気《け》だるそうに紫煙を燻らせ、 「文句はダイコクの野郎に言ってくれよ」 二人はちらりと視線をダイコクへと向けた。 当のダイコクはまたしてもエビスと何か言い争っているようだ。 「うーん、こんなんでいいのかなぁ……?」 続 【波乗り船の音の良きかな 二】 トップに戻る 作品投稿場所に戻る