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<前2-5へ|次3-2へ> 魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」3-1 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 18 45 11.38 ID I63MLpWkP ――冬の王宮 冬寂王「こ、こんなことになるとは」ぐったり 執事「若、大丈夫でございますか?」 冬寂王「強い氷酒をくれ。――いや、酒は自殺行為だな。 茶をくれ。うんと濃くしたヤツだ」 執事「ははっ」 将官「王よ、次の一団が控えの間に」 冬寂王「うう、判った。五分だけ、五分だけ休憩をくれ」 執事「若、お茶でございます」 冬寂王「とんでもないことになってしまった」 執事「さようですなぁ。これはまったく」 ごちゃらぁ 冬寂王「早まった決断だったのだろうか」 執事「いえいえ、決断自体は決して」 冬寂王「しかしこの惨状では……」 執事「はぁ、いかんともしがたいですな」 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 18 53 04.67 ID I63MLpWkP 冬寂王「まさか、あの協定でここまで書類や陳情、 嘆願に取引が増えるとは」 執事「予想外でしたな」 冬寂王「そもそも税などと云うのは、 春と秋の2回にわけて、地主が城の倉庫へ運んできて 終わりだったではないか」 執事「さようで」 冬寂王「内政など、堤が切れたら賦役の発布し、 軍を養い食わせる程度であったのに、 ここまで仕事が増えるのか!?」 執事「南氷海の西側を通るルートと、港の使用権。 それに商人から上がる税収に、移民の申請……。 王一人で捌くのは無理がありますな」 冬寂王「そうだ。我が国の文官はどうした? 税務官も居ただろうに」 執事「あまりの激務に一週間で倒れましたな。 そもそも税務官など親子二人でやっていた仕事です。 これは我が国も、中央の大国のように 専用の役人を雇用しなければなりませんかなぁ」 将官「あのー。王? そろそろ次の商人を通して よろしいでしょうか?」 冬寂王「ええい、通せ!」 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 18 58 49.17 ID I63MLpWkP 商人子弟「お初にお目にかかります、王よ!!」 ごちゃらぁ 冬寂王「おお、良く来たな、若き商人殿よ」 商人子弟「はぁ」 執事「こっちか?」 将官「その山は、探しました。こっちでは?」 冬寂王「それともこれか? 違うではないか!」 商人子弟「何を探しておられるのですか?」 冬寂王「ああ、すまんな。立て込んでいて。 商人殿はニシンの交易であったか? 商人殿があらかじめ出しておいた書状が届いていたはずなのだが 確かここらに置いたと……それから今月の税の とりまとめも。すまぬ、取り紛れてしまって」 商人子弟「ああ、それなら」 すたすたすた ひょい。 商人子弟「これですね。紹介状です。……税のとりまとめは」 ひょい 「おそらく、この帳簿でしょう」 ひょい 「嘆願書はこれ。今月分は、 紐でまとめてあるようですね。几帳面だけど乱暴だなぁ」 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 06 17.82 ID I63MLpWkP 冬寂王「おお! 助かった。時間の節約になった」 執事「いやはや、毎日が戦争ですな」 将官「しかも乱戦気味です。消耗戦かも」 冬寂王「して、商人殿。ニシンであったかな?」 商人子弟「違います。僕は商人の家の三男坊でして ニシンを含む交易は次男の兄さんが、 商会と金貸しは長男の兄さんが継いだせいで、 仕事がないんですよ」 冬寂王「ふむふむ。それは大変だな。して、我が宮殿に どのような用件で参ったのだ?」 商人子弟「この紹介状を……」 「育てるのには飽きた。 あとは浴びるほど仕事を与えて 現場でこき使ってやってくれ。 ――紅」 冬寂王「……」 商人子弟「この宮殿で小さな船でも貸してくれるなら 僕も商売やら情報集めやらでお役に立てると思うんですよ。 一応商人の家の子ですからね」 ほやん 冬寂王「ふむ。いや、良いところにきた。あははは」 がしっ 執事「この国は、有望な若者を歓迎しますぞ」 がしっ 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 13 27.57 ID I63MLpWkP ――開門都市、大通りの縁日 ~♪ ~~♪ 勇者「へぇ、随分賑やかだな」 東の砦将「ああ、思いつきの突貫企画にしちゃ、良い線行ってるな」 勇者「良い匂いだ」 東の砦将「こいつぁ、焼き豚だな? おい懐かしいな! おい、黒騎士。一切れ買おうぜ」 勇者「おう、そうしよう、そうしよう!」 東の砦将「冷たいエールもなっ」 人間商人「らっしゃい!」 勇者「その良く味の染みてそうなところを4切れくれ!」 人間商人「ほいよ! 金貨2枚で良いよ!」 勇者「そんなに安くていいのかい?」 人間商人「この祭りの販売物の仕入れは、 半額は都市の委員会さんがもってくれるんだとさ。 それで今日は大盤振る舞いって訳だ!」 勇者「そうだったのか~。うっわぁ、良い匂いだなぁ!」 人間商人「そりゃそうだ。この焼き豚は、砂丘の国の 秘伝のスパイスで味付けしてあるんだから。 兄ちゃん、良い買い物をしたよ!」 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 22 34.47 ID I63MLpWkP 東の砦将「エールをくれ、ジョッキで二杯だ!」 魔族商人「こりゃぁ、東の大将じゃねぇですか」 東の砦将「ああ、すまねぇな。邪魔をして」 魔族商人「いやいや、とんでもねぇ。二杯ですね? きゅっと冷えた所を出しますから、待っててくだせえよ」 東の砦将「たのんだぜ。……どうだい? 案配は」 魔族商人「盛況ですねぇ。打ち壊し団も、今日ばっかりは 出ねぇと思いますよ。こんなに楽しい祭りなんだもの」 東の砦将「だといいがなぁ」 魔族商人「なんせ、戦いがないのが一番ですや。 もうね、戦争はまっぴらごめんですよ。焼け出されるのも おわれるのも、そりゃぁ辛いもんでがしょう?」 東の砦将「ああ、誓ってそんなことには 成らないようにするととっつぁんに約束するよ」 魔族商人「はははは! 人間の約束かぁ……。 でも、将軍様のだもんな! この都市ならそれも ありかもしれないなぁ。ほら、二杯だよ! 冷たいよ!」 東の砦将「おお、酒手はここに置くぜっ」 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 26 36.58 ID I63MLpWkP ~♪ ~~♪ 勇者「おー。大将、買ってきたぜ?」 東の砦将「こっちもエール仕入れてきたぞ」 勇者「食おう、食おう」 東の砦将「よしきた。くっはぁ! んめぇなぁ!」 勇者「この火傷しそうな所を噛みちぎって、じゅわーってのがな!」 東の砦将「そいつを、この冷たいエールで流し込むと! 最高だな、おい。やっぱ食い物ってのはこうじゃなきゃ!」 ~♪ ~~♪ 火竜公女「ここにおったかや」 魔族娘「あ、あの……ここ、こ、こんばんわっ」 勇者「あ?」 東の砦将「出たよ」 火竜公女「出た、とはなんですか。 視察も公務だと再三言っておいたではないですか。 それをお二人でこっそりと」 勇者「べ、べつにこっそりって訳じゃないし」 東の砦将「なぁ? 部下にだって云ってきたし」 勇者「俺……部下居ない……」 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 32 23.87 ID I63MLpWkP 魔族娘「ご、ご、ご……あぅあぅ」 火竜公女「妾を振り切って出掛けるのがすでに やましさの証です、黒騎士殿っ!」 勇者「は、はいぃ?」 火竜公女「妾は黒騎士殿の妻なのです。 なんて連れない態度なのですか? 火竜の一族でも涙が大河となってしまいましょう」 勇者「妻じゃないです」 火竜公女「そのような手練手管を用いずとも 妾の心も身体も、我が君の物」 勇者「俺のじゃないしっ。何の関係もしてませんしっ」 魔族娘「ご、ご、ご。ごめんなさいっ」 勇者「いや、魔族娘は悪くないから」 魔族娘「いえ、その……黒騎士様が、出掛けたの…… その……云ってしまった……ので、その ご、ごめんなさい」 勇者「まぁ、どっちにしろ、すぐばれたよ。うん」 がくり 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 39 47.33 ID I63MLpWkP ~♪ ~~♪ 東の砦将「それにしても、着飾ってるじゃないか?」 火竜公女「当然です。……だって東の砦将様が、 “縁日って云えば、庶民の娘も着飾ってくる”って 仰ったんじゃありませんか?」 勇者「でも、ちょっと布すくなくね?」 東の砦将「ははは! そうだそうだ、云ったんだっけ。 それになんだなぁ、見ようによっては、東の衣装に 似て無くもないような、奇天烈なような……」 火竜公女「急いでしらべさせたのですよ。 仕立てさせるのに手間がかかりましたが」 勇者「俺スルー……」 魔族娘「ううう、なんか、みなさんが……その…… み、見てるような……」 東の砦将「おお、魔族の嬢ちゃんも可愛い格好させてもらって」 火竜公女「この娘に着替えさせるのに手間取ったのですわ。 まったくとんだ愚図ですこと」 魔族娘「す、す、すみません……その、ごめんなさい」 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 45 50.35 ID I63MLpWkP 火竜公女「いいえ。良いんですっ」 魔族娘 びくっ 火竜公女「たかが下女とは云っても我が君に仕える以上 最低限この程度、と云うたしなみと 美麗さが必要なのです。 だいたい、魔族の未婚の女性が 肉体を誇示しなくてどうしますっ!」 魔族娘「それは竜族のことであって……ごにょごにょ……」 火竜公女「魔族の常識ですっ」 魔族娘「ひゃ、ひゃ……ひゃいっ!」 勇者「おー。焼き馬鈴薯だよ、こんなとこまで」 東の砦将「あれはこのあたりの食い物だぞ」 勇者「そういえば魔界原産だったっけ。食うか?」 東の砦将「食おう、食おう! 美味いぞ!」 火竜公女「我が君?」 勇者「美味いな、バターが最高だな!」 東の砦将「だろう? このまろやかな岩塩がな」 火竜公女「わ が き み っ!!」 勇者「はいっ!?」 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 53 09.65 ID I63MLpWkP 火竜公女「いかがです?」 くるんっ 勇者「いかがって? 良い縁日だな」 火竜公女「いかがでしょう?」 ふわり、くるんっ 魔族娘「ご、ご、ごめんなさい、黒騎士様」 勇者「美味いぞ、馬鈴薯食うか?」 火竜公女「い、い、いかがですか!?」 くるんっ 勇者「えーと」 東の砦将(小声)「おい、その、あんだろ、もうちょっとこう」 勇者(小声)「へ?」 東の砦将(小声)「服褒めるとかさ」 火竜公女 ゴゴゴゴゴ 勇者「あー、うん! よく似合ってるぞっ。 公女はスタイルが良いからどんな服でも似合うけれど、 今日のは異国情緒が合って素敵だな! ……その、ちょっと露出が多いような 気がしないでもないが、祭りだしな!」 東の砦将「あ、馬鹿。それは褒めすぎだ、知らんからなっ」 火竜公女「そ、そ、そうですかっ!? 我が君っ! 妾はっ。妾は三国一の果報者でございます!」 123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 04 29.19 ID I63MLpWkP ――冬越しの村、魔王の屋敷、執務室 魔王「ふむ……」 メイド長「今月に入って、もう2度ですから」 魔王「間隔も短くなってきているな」 メイド長「ええ、限界かと……」 魔王「あと、どれくらい余裕がある?」 メイド長「早ければ、早いに越したことはありませんが。 そうですね……一週間程度なら」 魔王「よかろう。一週間後だ」 メイド長「……心中、お察しいたします」 魔王「いや、なに。二年近くだ。良くもったものさ。 いずれこの日が来るとは判っていた」 メイド長「はいっ」 魔王「冥府宮に我が寝台を運ばせておけ」 メイド長「承りました」 魔王「人間界の仕事の後始末を急がねばな」 メイド長「はい」 魔王「そのような顔をするな」 メイド長「……」 魔王「すぐに戻れる。すぐにまた会えるさ」 128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 12 48.73 ID I63MLpWkP ――鉄の国、郊外の丘の上 しゅいんっ! 魔王「ふぅ、こちらはまだ空気が湿っているな」 メイド姉「頭の中がくわんくわんします……」 勇者「大丈夫か」 メイド姉「は、はい……」 魔王「無理はせず、大きく息を吸え」 勇者「考えてみたら転移呪文は初体験だったな」 メイド姉「はい。なんだか、目眩みたいで……。 ふぅ、もう大丈夫です」 魔王「転移酔いだな、仕方がない」 勇者「ゆっくり歩けば、回復するだろう」 ざっ、ざくっ、ざくっ 魔王「街までは、20分と云うところか」 勇者「そんなもんかな」 メイド姉「あれが鉄の国の都ですか! 大きいですねぇ!」 魔王「うむ、煙がたなびいているだろう? 数多くの工房が並んでおるのだ」 132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 18 25.84 ID I63MLpWkP 勇者「それにしても、今日は何の仕事なんだ?」 魔王「ああ、頼んでおいた機械の試作が出来たそうでな」 勇者「見に来たのか? メイド姉も?」 魔王「最近、わたしの仕事を色々教えておるのだ。 貴族よりも商人よりも筋が良いぞ」 メイド姉「そんなこと、ないです……」 魔王「ほれ、市街地に入るぞ」 門衛「止まれ!」 門衛「どこからやってきた、商人か?」 魔王「冬の国の学者だ。これが身分証明」 門衛「冬の国の国王印。そうでしたか! どうぞっ!」 魔王「身分も、役に立つものだな」 勇者「面倒がないのはありがたいよ、ほんと」 メイド姉「すごいですねぇ! 家がみんな石で出来てますよ?」 魔王「こらこら、上ばかり見ては危ないぞ」 135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 23 40.86 ID I63MLpWkP 勇者「で、どこへ行くんだ?」 メイド姉「どこでしょう?」 魔王「うむ、判らん」 勇者「なんだよ、頼りないな。手紙を見せろよ」 魔王「これだ」 ぺらっ 勇者「ああ、これは川沿いの職人街だな」 メイド姉「お詳しいのですね!」 勇者「勇者は風来坊だからな、色んな街でもめ事を 解決する旅だから地理だけは詳しくなるんだよ」 メイド姉「すごい特技ですよ」 魔王「わたしの物だからな。ふふんっ」 勇者「はいはい」 魔王「ほほう、あれは鉄か? こちらの工房では、銀細工か」 勇者「興味津々だな」 魔王「現場を見るのは初めてだからな」 勇者「今日は、何の工房にいくんだ? 武器か、農具か?」 魔王「工房自体は、銅の鋳造を行っている工房だ。 だが武器でも農具でもないな」 141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 28 42.95 ID I63MLpWkP 魔王「勇者とは以前、教育について話したことがあったな」 勇者「ああ、そうだな」 メイド姉「……」 魔王「わたしは、教育はこの世界においてもっともっと 大きな力を持っているのじゃないかと思う」 勇者「……ふむ」 魔王「本当の世界の広さは誰にも判らないほど広いのだ。 それを人間は……魂ある存在は、己の常識や、知識に 当てはめて知ったつもりになる」 勇者「それは、覚えがあるなぁ。 自分のやり方しかないと思い込んだり、 自分が正しいと思い込んだり」 メイド姉「はい……」 魔王「それらの闇を払うには、教育が必要だ。 しかも、教育がより重要である理由は “教育が重要であるという事実”も教育がないと 理解されないという点にある」 勇者「ん? ちょっと難しいぞ」 144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 39 19.79 ID I63MLpWkP メイド姉「それは、そうなんです」 勇者「判るのか? メイド姉は?」 メイド姉「はい。そのぅ…… たとえば、農奴は、教育が、つまり知識が少なくて “もっと良い世界がある”事もよく判ってないんです。 だからずっと貧しいんです」 勇者「でも、地主だのなんだのは良い生活してるだろ? そういうの見てるじゃないか」 メイド姉「でも、“そっちに行く方法”が判らないんです。 ううん、正確には“そっちに行けるかもしれない”って 事すらも判らないんです」 勇者「……」 魔王「……」 メイド姉「それは、とても不幸なことです。 だからわたしには当主様の話はよく判ります」 勇者「そっか……」 154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 49 05.09 ID I63MLpWkP 魔王「さて、そんな風に重要な教育だが、 重大な欠点というか、弱点がある。判るか?」 勇者「なんだろう? なぁ?」 メイド姉「判りませんね……」 魔王「それは、速度が遅いと云うことだ。 一人の人間が持つ知識を他の一人に伝えるのには 莫大な時間がかかる。 しかも、同時に多数の人間に伝えるのには限界がある。 もし仮に、一人の教師が自分と同等の生徒一人を 育てるのに一生の時間がかかるならば、 知識を持っている人間は増えないことになるではないか」 勇者「あー。まぁ、云われてみればそうだなぁ」 メイド姉「でも、知識は尊い物ですからそれも仕方ないの ではないでしょうか? 当主様を学べば学ぶほど、 追いつける気がしませんし……」 魔王「それもまた、勝手に思い込んだ限界だ」 勇者「そう、なのか?」 159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 53 49.16 ID I63MLpWkP ――鉄の国、職人街、大型工房 がちゃり 職人長「やぁ。これは学士様! 長旅、お疲れになったでしょう!」 魔王「世話になっているな、職人長」 職人長「いやなんの! この年齢になって まだこんなに面白い仕事をくださるなんて、 みなの意気も上がっておりますよ」 メイド姉「広い工房ですね!」 職人長「ああ、あまり歩き回ると危険ですよ、お嬢さん」 プシュー!! 職人長「熱い蒸気なども使っていますからね!」 メイド姉「はいっ」 職人長「さて、お疲れでしょう。お茶でも入れますので、 裏の屋敷の方にでも……」 魔王「いや、結構。何よりも、まずは試作品を見たい」 職人長「あははは。冬の国で話したときと その性急さは変わりませんなぁ! さぁ、お連れ様も こちらへどうぞ。専用の倉庫を設けたのですよ」 162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 57 58.44 ID I63MLpWkP 魔王「これか!」 勇者「でかいなぁ!」 メイド姉「これは、なんですか……? 脱穀機に似ているような、もっと大きなような……」 職人長「外側は仮組ですから、 どうしても大きくなってしまいました。 もっとも本体は小さい物です。巨大に見えるのは、 ある種の棚というか、倉庫ですね」 勇者「倉庫?」 職人長「いらっしゃい」 カツン、カツン、カツン メイド姉「引き出しと、棚がすごい数ですね」 職人長「これが入っているんですよ」 コロンッ 勇者「これは、印章?」 メイド姉「ハンコですか?」 職人長「ええ、『活字』と呼んでいます」 魔王「これが、私たちの新しい武器さ」 職人長「活版印刷機と名付けました」 169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 03 57.87 ID I63MLpWkP ――冬越しの村、魔王の屋敷、深夜の廊下 女騎士「……」じぃぃっ 魔王「……」じぃっ 女騎士「な、なんで、こ、こんなところにっ」 魔王「それはこちらの台詞だ」 女騎士「いや、その洗面所はどこかなぁと」 魔王「洗面所は廊下の反対だ」 女騎士「大体、魔王は何でこんな所に?」 魔王「そっ、それはだな」 女騎士「それは?」 魔王「ええい、なんだ! 女騎士のその白いふりふりの寝間着は! これは、き、き、絹ではないかっ!!??」 女騎士「いいではないか、人が何を着ようとっ!」 魔王「良くはないぞっ。そんなもの」 女騎士「それを言うなら、魔王は何で枕を抱えているんだっ」 177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 10 37.74 ID I63MLpWkP 魔王「……それはその」じりじり 女騎士「そこ、ドアににじり寄るんじゃない」 魔王「べつにそんなことはしていない」 女騎士「勇者の部屋にこんな夜更けに行くつもりなのか?」 魔王「か、かまわないではないか。夜の茶会だ」 女騎士「それならこっちだって夜のお茶会決行だっ」 魔王「どこの世界に絹の寝間着で男の部屋に 尋ねるお茶会があるのだ! この馬鹿!」 女騎士「枕持参でお茶会と言い切る馬鹿よりは まだましな馬鹿だ!」 魔王「うむ。あー、こほん。女騎士」 女騎士「なに?」 魔王「わたしは女騎士を人間界で ほとんど唯一の友達だと思っている……」 女騎士「……うん、そうだね。魔王」 魔王「だから見逃してくれ」 女騎士「それはダメ」 186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 15 46.92 ID I63MLpWkP 魔王「後生だ。事情があるのだ」 女騎士「こっちだって事情があるの」 魔王「どんな?」 女騎士「これだっ」 ばっ! 魔王「なになに? 『我が君への永久の忠誠を誓って』? これは女物のハンカチではないか……。 え? ええっ!?」 女騎士「そうだ、あんの火竜公女だ。 こっちがなんやかやの仕事で忙殺されていると思って、 こんな粉かけるとは喧嘩を売るにもほどがある」ゴゴゴ 魔王「確かに……」ゴゴゴ 女騎士「そういう訳なので、今宵の私は退くに退けん。 愛剣・神性惨殺も血に飢えている」 魔王「どんな事情だ! こちらだって、残り数日のっ」 女騎士「?」 魔王「いや、なんでもない。とにかく、こちらも退けないっ」 メイド長「それでは私めが」 魔王・女騎士「え?」 193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 24 27.59 ID I63MLpWkP 魔王・女騎士「えぇっ!?」 メイド長「夜伽でしょう? そんなことでもめるなんてはしたないですわ。 不肖、私がお務めさせて頂きます。 それで角が立たないでしょう?」 魔王「なんて事を云うんだメイド長!?」 女騎士「まったくだ、なんて横暴なんだ! 恥を知れっ!」 メイド長「だいたい未経験者の相手なのですから そんなにぴりぴりした気持ちで居てどうします? 成功もおぼつきませんよ。 こんな時こそ包容力と寛容の精神が必要なのです。 閨房で殿方を甘えさせられなければ一人前とはいえますまい」 魔王「それは、そうかもしれんが……」 女騎士「たしかに婦女としてはずべきであった」 メイド長「ではちゃっちゃと済ませてきますので、 そこで待っててくださいますね」 魔王「それとこれとを一緒にするなぁ!」 女騎士「それは騎士として諾とは云えないぞ!!」 メイド長「では、廊下でなんか騒がないで お二人で。いえ、三人で仲良くしてください」 にこりっ がちゃ! ポポイッ! 199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 29 42.50 ID I63MLpWkP ――冬越しの村、魔王の屋敷、勇者の部屋 ごろごろごろ、ズテン! 魔王・女騎士「ふぎゃっ!!」 勇者「……なにやってるんだ? お前ら」 女騎士「いや、その。こ、これはな! 事情があるんだ」 魔王「うむ、話せば長い事ながら深くやむにやまれぬ事情が あるのだ知っての通り世界情勢は混迷を極め我らが立場も また深い迷夢の中と言って良いというこの時期にだな」 女騎士「他人の錯乱を目にするとちょっと落ち着くな」 魔王「つまり、今後の展望と展開を踏まえた思索の果てに 光明を見いだすべき勇者と我らが腹を割って話すことこ そが今もっとも求められていることなのではないか? たしかにぷにぷにと云われるリスクはあるのだが、 我らはそろそろ次のステップを踏むべきなのではないかと」 勇者「落ち着け」 スコン! 魔王「ぐっ!」 203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 34 04.82 ID I63MLpWkP 勇者「で、要約するとどういう事なんだ」 魔王「……」ちらっ 女騎士「……」ちらっ 勇者「アイコンタクトとってんじゃねぇよ」 魔王「ではタイムだ」 勇者「は?」 魔王「あちらで作戦会議をするから、聞くなよ?」 勇者「はぁぁー?」 こそこそっ 女騎士「作戦ってどんな作戦があるんだ」 魔王「これでも私は話し合いの魔王なのだ。 交渉は我が領域。話し合いで決着をつけよう」 女騎士「どんな?」 魔王「上は私で下が女騎士でどうだろう」 女騎士「どこの変態なのだっ。魔王はっ!?」 勇者「ひまだなぁ」 209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 38 10.54 ID I63MLpWkP 魔王「変態とは何だ? ベッドの上下だ」 女騎士「そ、そうか。済まない、誤解した」 魔王「それでいいか?」 女騎士「ちょっとまって、勇者は?」 魔王「ベッドの上に決まってる」 女騎士「私だけ下じゃないか、どこのいじめだ!」 魔王「だめか、ではタイムシェアリングはどうだ?」 女騎士「たいむしえあ? なにそれ?」 魔王「時間によって案件を共有するのだ」 女騎士「マシそうな提案ね」 魔王「生産性向上のための基礎知識だ」 女騎士「で、具体的には?」 魔王「勇者のベッドを陽のある間は女騎士が、 陽が落ちてからは私が使う」 女騎士「魔王だけ勇者つきではないかっ!?」 勇者「なんか小腹へってきたし」 216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 46 44.50 ID I63MLpWkP ――冬越しの村、魔王の屋敷、勇者の部屋 勇者「なんだこの状況は。何が起きてるんだ!?」 魔王「交渉とは妥協の婉曲な表現でもある。 その現実の哀しい写し絵だ」 女騎士「私だって不本意だ。しかし、しかたない。 “パンが一つ無いときは半分で感謝しなければならない” そうお祖母ちゃんも云っていた」 勇者「すげぇ粗末な扱いだよなぁ、俺」 魔王「何を言うんだ! 両手に女を抱えて!! まさか、勇者。……ふ、ふ、不満なのか」 女騎士「火竜のなんとかの方が良いって 云うんじゃないでしょうね!?」 勇者「いや、そうじゃなくてっ」 魔王「ぷ、ぷにぷにだからダメなのか!? 駄肉だからか!? 勇者は私の所有契約なのだぞ」むぎゅっむぎゅっ 女騎士「胸がないとだめなのかっ!? そんな腐った肉がいいのか? 乙女の最上級は清らかさだぞっ。 神に捧げられた純潔の方がいいに決まってるっ」すりすり 勇者「ううう、なんでだよう。なんでこうなんだよ」 230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 52 09.48 ID I63MLpWkP 魔王「むぅ。このままではメイド長のいうとおりだ」 女騎士「……腹立たしいけど、そうだな」 魔王「一次休戦だ」 女騎士「心得た」 勇者「いつも俺の頭越しに会談がまとまるよ」 魔王「頭越しではないぞ? こうやって耳元で横になっている」 女騎士「うむ、肩に頭をもたせかけているだけだ」 勇者「……」びくびく 魔王「勇者は緊張しているのか?」 女騎士「自分の寝床なんだからそんなことはないだろう」 勇者(緊張してるよっ! しないわけないだろがっ!?) 魔王「まあ落ち着け」 女騎士「うん、戦場では冷静が生死を分けるぞ」 勇者(絶体絶命だ!) 魔王「暖かいなぁ! もふもふだ!」 女騎士「うむ、意外なほどに寝心地が良いな」 241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 22 02 03.90 ID I63MLpWkP 勇者「……すー……すー」 魔王「寝たのか? 勇者」 女騎士「かもしれないな。疲れているのだろうし」 勇者(寝れるかっ。この状況下で寝れる童貞が居たら 俺が全部雷撃魔法で電気椅子にしてやるわっ!!) 魔王「勇者の髪は、もふもふだ」 女騎士「うん、大きな犬みたいだね」 魔王「この髪を触るのが好きなのだ。 勇者の髪を整えているのはわたしなのだぞ?」 女騎士「わたしの方が付き合いは長いから。そんなの知ってる」 勇者「……すー……すー」 勇者(だ、だめだ。寝たふりをするしかない。 精神を鎮めるんだ!! 高まれ俺の魂!) 魔王「……」 女騎士「……」なで、なで 魔王「なぁ、女騎士」 女騎士「なに?」 249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 22 08 26.33 ID I63MLpWkP 魔王「わたしは、来週にでも魔界へ帰る」 女騎士「へ?」 勇者(え?) 魔王「いや、なに。魔王の免許更新のようなものでな」 女騎士「免許? 免状みたいなもの?」 魔王「そうだ」 女騎士「そっか……。すぐ帰ってくるの?」 魔王「いや、どうかな。早くて数ヶ月はかかると思う」 女騎士「何かあるの? 魔王……躊躇ってるよね?」 魔王「いや迷いはない。仕方ないことだ。 魔王というのは、何というか……。 魔王以外には上手く説明できないこともあってな。 代々の魔王の墓があるんだが、そこへ詣らないといけない」 女騎士「……」 魔王「それに、魔界にはたくさんの氏族があるが、 それらの多くは人間界侵攻に賛成なのだ。 今戦争が小康状態なのは、魔王であるわたしが 勇者と相打ちになり怪我の療養をしているという話に なっている事が大きい。 そろそろ姿を見せて、魔族の心をまとめなければ、 かえって暴走した一部の氏族が勝手に戦争を再開する かもしれない」 251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 22 21 00.90 ID I63MLpWkP 女騎士「でも、それなら……」 勇者(……) 魔王「ん?」 女騎士「魔王は、魔界で戦争賛成派のまっただ中に 取り残されることになるんじゃないのか? それはすごく危険なように聞こえる」 勇者(……) 魔王「わたしの専門は経済、すなわち交渉だ。 そこまで酷いことにはならないさ。だいたい金も 食料も無しで戦争を続けられる生き物なんて居ないよ」 女騎士「しかし誰か連れてった方が良いだろう? その……。勇者とか。なんならわたしが行こうかっ」 魔王「いや……」なで…… 女騎士「……」 魔王「いいんだ。魔王の墓は、冥府殿というのだが、 そこにはどうせわたし以外は誰も入れないのだ。 ついてきて貰うには及ばない。一人で行く」 253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 22 23 31.94 ID I63MLpWkP 女騎士「そう……なのか……」 魔王「うん、だから、ちょっとだけ勇者の体温が欲しくてな」 勇者(……) 魔王「駄々をこねてしまった。許されよ」 女騎士「いや……」 魔王「もちろんメイド長はつれてゆく。身を守る程度なら 二人でどうとでもなる」 女騎士「そうか」 ほっ 魔王「こちらの世界のことは、書類を残してゆくし、 馬鈴薯や農業については女騎士も知っての通りだ」 女騎士「うん、修道会に任せて欲しい」 魔王「『同盟』に頼んだニシンも届こう。 そろそろ風車の代金や新型羅針盤の契約料も入ってくるはずだ。 これらの利益管理も『同盟』に依頼してある。 必要なときは相談してくれ」 女騎士「承知した」 魔王「細かいことはみな、メイド姉に教えてある。 そして……。 勇者のことを頼む」 女騎士「わかった。――その命、この剣に賭けて守ろう」 366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 37 01.74 ID CkBATQ0gP ――冬越し村、魔王の屋敷、執務室 魔王「さて」 メイド姉「はい」 メイド妹「はーい」 魔王「大体飲み込めたか?」 メイド姉「判りました」 メイド妹「よくわかんない」 メイド長「妹は、お姉さんの云うことをちゃんと聞いて 毎日のやることをこなしていくんですよ?」 メイド妹「はーい!」 メイド長「語尾を不必要に伸ばさない」 メイド妹「は、はいっ」 魔王「なに、気負うことはない」 勇者「やはり長引きそうか?」 魔王「メイド長の手の者に調べて貰っているが、 氏族の長の中には頑固者も居るからな。 人間世界が宝の山に見えている者も居るだろうし。 何を考えているやら……。 そんなものは、隣の芝生に過ぎないのだが」 370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 42 05.60 ID CkBATQ0gP 勇者「やっぱり俺も行くべきじゃないか?」 魔王「一人で行く」 勇者「……」 魔王「そのような顔をするな。 どちらにせよこれは魔王の仕事なんだ。 魔王でなければ出来ないこともする。 約束する、無理はしない」 メイド長「わたしがまおー様のことは守りますわ」 魔王「うん、メイド長が居るからな」 勇者「……」 魔王「それに、この世界のことだって心配だ。 南部諸王国は安定してきたし、農業改革も順調だとは云えるが 聞いた話だと、白夜王国は政情不安定になってきていると 云うじゃないか」 勇者「らしいな」 魔王「わたしがこの世で一番信頼しているのは、勇者だ。 何せわたしの持ち主だからな」 372 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 47 53.84 ID CkBATQ0gP 魔王「だから、この場所に勇者を残していくのは、 心強いことなんだ。 前回は勇者が魔界に行って、わたしは残った。 農業改革や技術指導は、わたしにしか出来なかったからだ。 だが、今回は違う。 開門都市の件で勇者がもうただの戦士じゃないことは判っている。 もう一人のわたしだ。 だから、ここを任せる」 勇者「……判った」 魔王「それから、メイド姉」 メイド姉「はい」 魔王「これを預けよう」 メイド姉「指輪、ですか?」 魔王「ああ、知り合いの地妖精に作らせたんだ。 大したことはないが、姿変えの幻術が仕込んである。 幻術だから声や仕草はどうにもならないが、 わたしの姿になれるぞ」 メイド姉「どういうことでしょう?」 魔王「商人からの代金の受け取りや、尋ねてきた客人 と 会わなければならないときもあろう? 大抵は勇者がうまくやってくれるだろうが、 どうしても必要なときは、この指輪でわたしの替え玉を やってくれ」 373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 53 26.57 ID CkBATQ0gP メイド姉「判りました」 メイド妹「当主のおねーちゃん!」 魔王「ん、なんだ?」 メイド妹「おみやげ。ね♪」にぱ メイド長「これ!」 魔王「あははは。うん、何か見繕ってこよう」 勇者「……」 メイド姉「無事のお帰りを祈っております」 メイド妹「お祈りしてるー!」 魔王「うむ。早ければ三ヶ月、長くても半年といったところか」 メイド長「おなかを出して寝ちゃいけませんよ?」 メイド姉「いってらっしゃいませ」 メイド妹「いってらっしゃーい♪」 しゅいんっ! 376 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 57 38.85 ID CkBATQ0gP ――開門都市、街外れ ひゅわんっ! 魔王「やはり勇者の転移魔法は便利だな」 勇者「運び屋は任せてくれよ」 メイド長「まおー様のよりずっと転移酔いが少ないですね」 魔王「うん、久しぶりの魔界だ!」 メイド長「そうですね、緑色の太陽。懐かしいですわ」 魔王「ここは――うん。大体判った、都市の南の外れだな」 勇者「そうだ、丘を下れば開門都市の南門に出る」 魔王「よし、ではここでお別れだ」 勇者「いや、街までは送るよ」 魔王「いいや、ダメだ。勇者は街に近づくな」 勇者「へ?」 魔王「と、とにかく禁止だ。 ……そんな、そのぅ。火竜の小娘に会いに行かなくても……」 勇者「?」 魔王「ええい。勇者!」 勇者「おう?」 魔王「もふもふさせろ!」 わしゃわしゃ! 378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 16 03 27.05 ID CkBATQ0gP 勇者「なっ、なんだよいきなり!」 メイド長「あらあら、まぁまぁ」 魔王「なぁに。ちょっとした燃料補給だ」 勇者「――大丈夫なのか?」 魔王「勇者は心配性だな。男が廃るぞ」 勇者「とは云ってもなぁ」 魔王「大丈夫だ。今エネルギーを貰ったからな。 先代たちが束になってかかってきたところで 負ける気はしない」 勇者「……」 魔王「それに、やっとここまで来た。 わたしにも開門都市の明るい空気が感じられるぞ。 人間と魔族が一緒に暮らしている街があるじゃないか。 もう、丘の頂上は見え始めているんだ」 勇者「ああ、そうだな」 魔王「だから行ってくるぞ――わたしの勇者」 勇者「おう、いってきやがれ。――俺の魔王」 魔王・勇者「「また会おう、すぐにでも」」 383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 16 07 45.08 ID CkBATQ0gP ――冬越し村、実りの秋 小さな村人「ほーうぃ! ほーうぃ!」 中年の村人「おんや、こんにちはぁ」 羊毛職人「こんにちはぁ!」 小さな村人「きょうは一杯だぁね、どうするんだい?」 羊毛職人「ああ、もう秋だからねぇ。チーズの仕込みをしないと」 小さな村人「ああ、そうかぁ。今年はどんな案配だい?」 中年の村人「アーモンド入りのは作るだか?」 羊毛職人「良いよぉ、ミルクの出も良いし。 もちろんアーモンド入りのも作るだぁよ。 クローバーの葉をたっぷり食べてるせいかなぁ。 今年のミルクは、すごく甘いだよ」 小さな村人「そりゃぁ、良いことを聞いただよ」 中年の村人「小麦か馬鈴薯ととりかえてくれるだか?」 羊毛職人「もちろんだよ。銀貨でもかまわないよ?」 小さな村人「そういや、銀貨も使うようになっだぁね」 中年の村人「そうだなや。うちは埋めて貯めてるだよ」 羊毛職人「あんれまぁ。そうだね、用心せんとね」 386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 16 11 55.63 ID CkBATQ0gP 小さな村人「こっちは馬鈴薯の畑に、灰と魚カスを撒くだよ」 中年の村人「撒くのかい?」 羊毛職人「魚カスってなんだべ?」 小さな村人「教会で教えて貰った、肥料だなや。 大地の恵みが弱らないように撒くと良いらしいだよ」 中年の村人「でも、お金がかかるんがなぁ」 羊毛職人「そうなのかぁ」 小さな村人「まぁ、でも、たいした金額じゃねぇさ。 修道士様が教えてくれた馬鈴薯で作った金だ。 その修道院にお返ししたって罰は当たらないべ」 中年の村人「そりゃ、そうかもしれんなぁ」 小さな村人「それに、撒かないと馬鈴薯は病気に なりやすいっていうべさ。うちんとこは小麦の畑は 減らしたから、馬鈴薯病気になったら困っちまう」 中年の村人「そうか、そうか。おらんとこも撒くかなぁ」 羊毛職人「おらは、自分の腹にニシン詰めてぇな」 小さな村人「あははは! 酒場でバター焼きを詰めるべ」 中年の村人「ああ、そりゃいいだなや!」 羊毛職人「チーズが一杯売れたら考えるだぁよ」 小さな村人「そうすべなぁ!」 387 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 16 17 57.20 ID CkBATQ0gP ――聖王都、貴族院 がやがやがや 軍閥貴族「――開門都市を放棄して――」 富裕貴族「おめおめと――退却――とは」 司教「精霊の――にも――処罰――」 軍閥貴族「さすがは――弱腰の貴族――」 富裕貴族「――妾腹――な」 司教「王国臣民――100万の――」 軍閥貴族「この罰――」 富裕貴族「極刑――磔刑――」 司教「塩――すりこみ――焼きごて――」 がやがやがや 軍閥貴族「判決を――」 富裕貴族「いや、いまこそ――軍事法廷――」 司教「しかるべき――宗教裁判――」 軍閥貴族「敵前逃亡――任務放棄――」 富裕貴族「王国に対する裏切り――利敵行為――」 司教「神聖冒涜――」 ページトップへ <前2-5へ|次3-2へ> <前2-5へ|次3-2へ> 魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」3-1 63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 18 45 11.38 ID I63MLpWkP ――冬の王宮 冬寂王「こ、こんなことになるとは」ぐったり 執事「若、大丈夫でございますか?」 冬寂王「強い氷酒をくれ。――いや、酒は自殺行為だな。 茶をくれ。うんと濃くしたヤツだ」 執事「ははっ」 将官「王よ、次の一団が控えの間に」 冬寂王「うう、判った。五分だけ、五分だけ休憩をくれ」 執事「若、お茶でございます」 冬寂王「とんでもないことになってしまった」 執事「さようですなぁ。これはまったく」 ごちゃらぁ 冬寂王「早まった決断だったのだろうか」 執事「いえいえ、決断自体は決して」 冬寂王「しかしこの惨状では……」 執事「はぁ、いかんともしがたいですな」 71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 18 53 04.67 ID I63MLpWkP 冬寂王「まさか、あの協定でここまで書類や陳情、 嘆願に取引が増えるとは」 執事「予想外でしたな」 冬寂王「そもそも税などと云うのは、 春と秋の2回にわけて、地主が城の倉庫へ運んできて 終わりだったではないか」 執事「さようで」 冬寂王「内政など、堤が切れたら賦役の発布し、 軍を養い食わせる程度であったのに、 ここまで仕事が増えるのか!?」 執事「南氷海の西側を通るルートと、港の使用権。 それに商人から上がる税収に、移民の申請……。 王一人で捌くのは無理がありますな」 冬寂王「そうだ。我が国の文官はどうした? 税務官も居ただろうに」 執事「あまりの激務に一週間で倒れましたな。 そもそも税務官など親子二人でやっていた仕事です。 これは我が国も、中央の大国のように 専用の役人を雇用しなければなりませんかなぁ」 将官「あのー。王? そろそろ次の商人を通して よろしいでしょうか?」 冬寂王「ええい、通せ!」 73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 18 58 49.17 ID I63MLpWkP 商人子弟「お初にお目にかかります、王よ!!」 ごちゃらぁ 冬寂王「おお、良く来たな、若き商人殿よ」 商人子弟「はぁ」 執事「こっちか?」 将官「その山は、探しました。こっちでは?」 冬寂王「それともこれか? 違うではないか!」 商人子弟「何を探しておられるのですか?」 冬寂王「ああ、すまんな。立て込んでいて。 商人殿はニシンの交易であったか? 商人殿があらかじめ出しておいた書状が届いていたはずなのだが 確かここらに置いたと……それから今月の税の とりまとめも。すまぬ、取り紛れてしまって」 商人子弟「ああ、それなら」 すたすたすた ひょい。 商人子弟「これですね。紹介状です。……税のとりまとめは」 ひょい 「おそらく、この帳簿でしょう」 ひょい 「嘆願書はこれ。今月分は、 紐でまとめてあるようですね。几帳面だけど乱暴だなぁ」 78 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 06 17.82 ID I63MLpWkP 冬寂王「おお! 助かった。時間の節約になった」 執事「いやはや、毎日が戦争ですな」 将官「しかも乱戦気味です。消耗戦かも」 冬寂王「して、商人殿。ニシンであったかな?」 商人子弟「違います。僕は商人の家の三男坊でして ニシンを含む交易は次男の兄さんが、 商会と金貸しは長男の兄さんが継いだせいで、 仕事がないんですよ」 冬寂王「ふむふむ。それは大変だな。して、我が宮殿に どのような用件で参ったのだ?」 商人子弟「この紹介状を……」 「育てるのには飽きた。 あとは浴びるほど仕事を与えて 現場でこき使ってやってくれ。 ――紅」 冬寂王「……」 商人子弟「この宮殿で小さな船でも貸してくれるなら 僕も商売やら情報集めやらでお役に立てると思うんですよ。 一応商人の家の子ですからね」 ほやん 冬寂王「ふむ。いや、良いところにきた。あははは」 がしっ 執事「この国は、有望な若者を歓迎しますぞ」 がしっ 82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 13 27.57 ID I63MLpWkP ――開門都市、大通りの縁日 ~♪ ~~♪ 勇者「へぇ、随分賑やかだな」 東の砦将「ああ、思いつきの突貫企画にしちゃ、良い線行ってるな」 勇者「良い匂いだ」 東の砦将「こいつぁ、焼き豚だな? おい懐かしいな! おい、黒騎士。一切れ買おうぜ」 勇者「おう、そうしよう、そうしよう!」 東の砦将「冷たいエールもなっ」 人間商人「らっしゃい!」 勇者「その良く味の染みてそうなところを4切れくれ!」 人間商人「ほいよ! 金貨2枚で良いよ!」 勇者「そんなに安くていいのかい?」 人間商人「この祭りの販売物の仕入れは、 半額は都市の委員会さんがもってくれるんだとさ。 それで今日は大盤振る舞いって訳だ!」 勇者「そうだったのか~。うっわぁ、良い匂いだなぁ!」 人間商人「そりゃそうだ。この焼き豚は、砂丘の国の 秘伝のスパイスで味付けしてあるんだから。 兄ちゃん、良い買い物をしたよ!」 90 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 22 34.47 ID I63MLpWkP 東の砦将「エールをくれ、ジョッキで二杯だ!」 魔族商人「こりゃぁ、東の大将じゃねぇですか」 東の砦将「ああ、すまねぇな。邪魔をして」 魔族商人「いやいや、とんでもねぇ。二杯ですね? きゅっと冷えた所を出しますから、待っててくだせえよ」 東の砦将「たのんだぜ。……どうだい? 案配は」 魔族商人「盛況ですねぇ。打ち壊し団も、今日ばっかりは 出ねぇと思いますよ。こんなに楽しい祭りなんだもの」 東の砦将「だといいがなぁ」 魔族商人「なんせ、戦いがないのが一番ですや。 もうね、戦争はまっぴらごめんですよ。焼け出されるのも おわれるのも、そりゃぁ辛いもんでがしょう?」 東の砦将「ああ、誓ってそんなことには 成らないようにするととっつぁんに約束するよ」 魔族商人「はははは! 人間の約束かぁ……。 でも、将軍様のだもんな! この都市ならそれも ありかもしれないなぁ。ほら、二杯だよ! 冷たいよ!」 東の砦将「おお、酒手はここに置くぜっ」 93 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 26 36.58 ID I63MLpWkP ~♪ ~~♪ 勇者「おー。大将、買ってきたぜ?」 東の砦将「こっちもエール仕入れてきたぞ」 勇者「食おう、食おう」 東の砦将「よしきた。くっはぁ! んめぇなぁ!」 勇者「この火傷しそうな所を噛みちぎって、じゅわーってのがな!」 東の砦将「そいつを、この冷たいエールで流し込むと! 最高だな、おい。やっぱ食い物ってのはこうじゃなきゃ!」 ~♪ ~~♪ 火竜公女「ここにおったかや」 魔族娘「あ、あの……ここ、こ、こんばんわっ」 勇者「あ?」 東の砦将「出たよ」 火竜公女「出た、とはなんですか。 視察も公務だと再三言っておいたではないですか。 それをお二人でこっそりと」 勇者「べ、べつにこっそりって訳じゃないし」 東の砦将「なぁ? 部下にだって云ってきたし」 勇者「俺……部下居ない……」 98 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 32 23.87 ID I63MLpWkP 魔族娘「ご、ご、ご……あぅあぅ」 火竜公女「妾を振り切って出掛けるのがすでに やましさの証です、黒騎士殿っ!」 勇者「は、はいぃ?」 火竜公女「妾は黒騎士殿の妻なのです。 なんて連れない態度なのですか? 火竜の一族でも涙が大河となってしまいましょう」 勇者「妻じゃないです」 火竜公女「そのような手練手管を用いずとも 妾の心も身体も、我が君の物」 勇者「俺のじゃないしっ。何の関係もしてませんしっ」 魔族娘「ご、ご、ご。ごめんなさいっ」 勇者「いや、魔族娘は悪くないから」 魔族娘「いえ、その……黒騎士様が、出掛けたの…… その……云ってしまった……ので、その ご、ごめんなさい」 勇者「まぁ、どっちにしろ、すぐばれたよ。うん」 がくり 104 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 39 47.33 ID I63MLpWkP ~♪ ~~♪ 東の砦将「それにしても、着飾ってるじゃないか?」 火竜公女「当然です。……だって東の砦将様が、 “縁日って云えば、庶民の娘も着飾ってくる”って 仰ったんじゃありませんか?」 勇者「でも、ちょっと布すくなくね?」 東の砦将「ははは! そうだそうだ、云ったんだっけ。 それになんだなぁ、見ようによっては、東の衣装に 似て無くもないような、奇天烈なような……」 火竜公女「急いでしらべさせたのですよ。 仕立てさせるのに手間がかかりましたが」 勇者「俺スルー……」 魔族娘「ううう、なんか、みなさんが……その…… み、見てるような……」 東の砦将「おお、魔族の嬢ちゃんも可愛い格好させてもらって」 火竜公女「この娘に着替えさせるのに手間取ったのですわ。 まったくとんだ愚図ですこと」 魔族娘「す、す、すみません……その、ごめんなさい」 106 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 45 50.35 ID I63MLpWkP 火竜公女「いいえ。良いんですっ」 魔族娘 びくっ 火竜公女「たかが下女とは云っても我が君に仕える以上 最低限この程度、と云うたしなみと 美麗さが必要なのです。 だいたい、魔族の未婚の女性が 肉体を誇示しなくてどうしますっ!」 魔族娘「それは竜族のことであって……ごにょごにょ……」 火竜公女「魔族の常識ですっ」 魔族娘「ひゃ、ひゃ……ひゃいっ!」 勇者「おー。焼き馬鈴薯だよ、こんなとこまで」 東の砦将「あれはこのあたりの食い物だぞ」 勇者「そういえば魔界原産だったっけ。食うか?」 東の砦将「食おう、食おう! 美味いぞ!」 火竜公女「我が君?」 勇者「美味いな、バターが最高だな!」 東の砦将「だろう? このまろやかな岩塩がな」 火竜公女「わ が き み っ!!」 勇者「はいっ!?」 109 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 19 53 09.65 ID I63MLpWkP 火竜公女「いかがです?」 くるんっ 勇者「いかがって? 良い縁日だな」 火竜公女「いかがでしょう?」 ふわり、くるんっ 魔族娘「ご、ご、ごめんなさい、黒騎士様」 勇者「美味いぞ、馬鈴薯食うか?」 火竜公女「い、い、いかがですか!?」 くるんっ 勇者「えーと」 東の砦将(小声)「おい、その、あんだろ、もうちょっとこう」 勇者(小声)「へ?」 東の砦将(小声)「服褒めるとかさ」 火竜公女 ゴゴゴゴゴ 勇者「あー、うん! よく似合ってるぞっ。 公女はスタイルが良いからどんな服でも似合うけれど、 今日のは異国情緒が合って素敵だな! ……その、ちょっと露出が多いような 気がしないでもないが、祭りだしな!」 東の砦将「あ、馬鹿。それは褒めすぎだ、知らんからなっ」 火竜公女「そ、そ、そうですかっ!? 我が君っ! 妾はっ。妾は三国一の果報者でございます!」 123 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 04 29.19 ID I63MLpWkP ――冬越しの村、魔王の屋敷、執務室 魔王「ふむ……」 メイド長「今月に入って、もう2度ですから」 魔王「間隔も短くなってきているな」 メイド長「ええ、限界かと……」 魔王「あと、どれくらい余裕がある?」 メイド長「早ければ、早いに越したことはありませんが。 そうですね……一週間程度なら」 魔王「よかろう。一週間後だ」 メイド長「……心中、お察しいたします」 魔王「いや、なに。二年近くだ。良くもったものさ。 いずれこの日が来るとは判っていた」 メイド長「はいっ」 魔王「冥府宮に我が寝台を運ばせておけ」 メイド長「承りました」 魔王「人間界の仕事の後始末を急がねばな」 メイド長「はい」 魔王「そのような顔をするな」 メイド長「……」 魔王「すぐに戻れる。すぐにまた会えるさ」 128 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 12 48.73 ID I63MLpWkP ――鉄の国、郊外の丘の上 しゅいんっ! 魔王「ふぅ、こちらはまだ空気が湿っているな」 メイド姉「頭の中がくわんくわんします……」 勇者「大丈夫か」 メイド姉「は、はい……」 魔王「無理はせず、大きく息を吸え」 勇者「考えてみたら転移呪文は初体験だったな」 メイド姉「はい。なんだか、目眩みたいで……。 ふぅ、もう大丈夫です」 魔王「転移酔いだな、仕方がない」 勇者「ゆっくり歩けば、回復するだろう」 ざっ、ざくっ、ざくっ 魔王「街までは、20分と云うところか」 勇者「そんなもんかな」 メイド姉「あれが鉄の国の都ですか! 大きいですねぇ!」 魔王「うむ、煙がたなびいているだろう? 数多くの工房が並んでおるのだ」 132 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 18 25.84 ID I63MLpWkP 勇者「それにしても、今日は何の仕事なんだ?」 魔王「ああ、頼んでおいた機械の試作が出来たそうでな」 勇者「見に来たのか? メイド姉も?」 魔王「最近、わたしの仕事を色々教えておるのだ。 貴族よりも商人よりも筋が良いぞ」 メイド姉「そんなこと、ないです……」 魔王「ほれ、市街地に入るぞ」 門衛「止まれ!」 門衛「どこからやってきた、商人か?」 魔王「冬の国の学者だ。これが身分証明」 門衛「冬の国の国王印。そうでしたか! どうぞっ!」 魔王「身分も、役に立つものだな」 勇者「面倒がないのはありがたいよ、ほんと」 メイド姉「すごいですねぇ! 家がみんな石で出来てますよ?」 魔王「こらこら、上ばかり見ては危ないぞ」 135 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 23 40.86 ID I63MLpWkP 勇者「で、どこへ行くんだ?」 メイド姉「どこでしょう?」 魔王「うむ、判らん」 勇者「なんだよ、頼りないな。手紙を見せろよ」 魔王「これだ」 ぺらっ 勇者「ああ、これは川沿いの職人街だな」 メイド姉「お詳しいのですね!」 勇者「勇者は風来坊だからな、色んな街でもめ事を 解決する旅だから地理だけは詳しくなるんだよ」 メイド姉「すごい特技ですよ」 魔王「わたしの物だからな。ふふんっ」 勇者「はいはい」 魔王「ほほう、あれは鉄か? こちらの工房では、銀細工か」 勇者「興味津々だな」 魔王「現場を見るのは初めてだからな」 勇者「今日は、何の工房にいくんだ? 武器か、農具か?」 魔王「工房自体は、銅の鋳造を行っている工房だ。 だが武器でも農具でもないな」 141 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 28 42.95 ID I63MLpWkP 魔王「勇者とは以前、教育について話したことがあったな」 勇者「ああ、そうだな」 メイド姉「……」 魔王「わたしは、教育はこの世界においてもっともっと 大きな力を持っているのじゃないかと思う」 勇者「……ふむ」 魔王「本当の世界の広さは誰にも判らないほど広いのだ。 それを人間は……魂ある存在は、己の常識や、知識に 当てはめて知ったつもりになる」 勇者「それは、覚えがあるなぁ。 自分のやり方しかないと思い込んだり、 自分が正しいと思い込んだり」 メイド姉「はい……」 魔王「それらの闇を払うには、教育が必要だ。 しかも、教育がより重要である理由は “教育が重要であるという事実”も教育がないと 理解されないという点にある」 勇者「ん? ちょっと難しいぞ」 144 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 39 19.79 ID I63MLpWkP メイド姉「それは、そうなんです」 勇者「判るのか? メイド姉は?」 メイド姉「はい。そのぅ…… たとえば、農奴は、教育が、つまり知識が少なくて “もっと良い世界がある”事もよく判ってないんです。 だからずっと貧しいんです」 勇者「でも、地主だのなんだのは良い生活してるだろ? そういうの見てるじゃないか」 メイド姉「でも、“そっちに行く方法”が判らないんです。 ううん、正確には“そっちに行けるかもしれない”って 事すらも判らないんです」 勇者「……」 魔王「……」 メイド姉「それは、とても不幸なことです。 だからわたしには当主様の話はよく判ります」 勇者「そっか……」 154 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 49 05.09 ID I63MLpWkP 魔王「さて、そんな風に重要な教育だが、 重大な欠点というか、弱点がある。判るか?」 勇者「なんだろう? なぁ?」 メイド姉「判りませんね……」 魔王「それは、速度が遅いと云うことだ。 一人の人間が持つ知識を他の一人に伝えるのには 莫大な時間がかかる。 しかも、同時に多数の人間に伝えるのには限界がある。 もし仮に、一人の教師が自分と同等の生徒一人を 育てるのに一生の時間がかかるならば、 知識を持っている人間は増えないことになるではないか」 勇者「あー。まぁ、云われてみればそうだなぁ」 メイド姉「でも、知識は尊い物ですからそれも仕方ないの ではないでしょうか? 当主様を学べば学ぶほど、 追いつける気がしませんし……」 魔王「それもまた、勝手に思い込んだ限界だ」 勇者「そう、なのか?」 159 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 53 49.16 ID I63MLpWkP ――鉄の国、職人街、大型工房 がちゃり 職人長「やぁ。これは学士様! 長旅、お疲れになったでしょう!」 魔王「世話になっているな、職人長」 職人長「いやなんの! この年齢になって まだこんなに面白い仕事をくださるなんて、 みなの意気も上がっておりますよ」 メイド姉「広い工房ですね!」 職人長「ああ、あまり歩き回ると危険ですよ、お嬢さん」 プシュー!! 職人長「熱い蒸気なども使っていますからね!」 メイド姉「はいっ」 職人長「さて、お疲れでしょう。お茶でも入れますので、 裏の屋敷の方にでも……」 魔王「いや、結構。何よりも、まずは試作品を見たい」 職人長「あははは。冬の国で話したときと その性急さは変わりませんなぁ! さぁ、お連れ様も こちらへどうぞ。専用の倉庫を設けたのですよ」 162 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 20 57 58.44 ID I63MLpWkP 魔王「これか!」 勇者「でかいなぁ!」 メイド姉「これは、なんですか……? 脱穀機に似ているような、もっと大きなような……」 職人長「外側は仮組ですから、 どうしても大きくなってしまいました。 もっとも本体は小さい物です。巨大に見えるのは、 ある種の棚というか、倉庫ですね」 勇者「倉庫?」 職人長「いらっしゃい」 カツン、カツン、カツン メイド姉「引き出しと、棚がすごい数ですね」 職人長「これが入っているんですよ」 コロンッ 勇者「これは、印章?」 メイド姉「ハンコですか?」 職人長「ええ、『活字』と呼んでいます」 魔王「これが、私たちの新しい武器さ」 職人長「活版印刷機と名付けました」 169 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 03 57.87 ID I63MLpWkP ――冬越しの村、魔王の屋敷、深夜の廊下 女騎士「……」じぃぃっ 魔王「……」じぃっ 女騎士「な、なんで、こ、こんなところにっ」 魔王「それはこちらの台詞だ」 女騎士「いや、その洗面所はどこかなぁと」 魔王「洗面所は廊下の反対だ」 女騎士「大体、魔王は何でこんな所に?」 魔王「そっ、それはだな」 女騎士「それは?」 魔王「ええい、なんだ! 女騎士のその白いふりふりの寝間着は! これは、き、き、絹ではないかっ!!??」 女騎士「いいではないか、人が何を着ようとっ!」 魔王「良くはないぞっ。そんなもの」 女騎士「それを言うなら、魔王は何で枕を抱えているんだっ」 177 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 10 37.74 ID I63MLpWkP 魔王「……それはその」じりじり 女騎士「そこ、ドアににじり寄るんじゃない」 魔王「べつにそんなことはしていない」 女騎士「勇者の部屋にこんな夜更けに行くつもりなのか?」 魔王「か、かまわないではないか。夜の茶会だ」 女騎士「それならこっちだって夜のお茶会決行だっ」 魔王「どこの世界に絹の寝間着で男の部屋に 尋ねるお茶会があるのだ! この馬鹿!」 女騎士「枕持参でお茶会と言い切る馬鹿よりは まだましな馬鹿だ!」 魔王「うむ。あー、こほん。女騎士」 女騎士「なに?」 魔王「わたしは女騎士を人間界で ほとんど唯一の友達だと思っている……」 女騎士「……うん、そうだね。魔王」 魔王「だから見逃してくれ」 女騎士「それはダメ」 186 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 15 46.92 ID I63MLpWkP 魔王「後生だ。事情があるのだ」 女騎士「こっちだって事情があるの」 魔王「どんな?」 女騎士「これだっ」 ばっ! 魔王「なになに? 『我が君への永久の忠誠を誓って』? これは女物のハンカチではないか……。 え? ええっ!?」 女騎士「そうだ、あんの火竜公女だ。 こっちがなんやかやの仕事で忙殺されていると思って、 こんな粉かけるとは喧嘩を売るにもほどがある」ゴゴゴ 魔王「確かに……」ゴゴゴ 女騎士「そういう訳なので、今宵の私は退くに退けん。 愛剣・神性惨殺も血に飢えている」 魔王「どんな事情だ! こちらだって、残り数日のっ」 女騎士「?」 魔王「いや、なんでもない。とにかく、こちらも退けないっ」 メイド長「それでは私めが」 魔王・女騎士「え?」 193 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 24 27.59 ID I63MLpWkP 魔王・女騎士「えぇっ!?」 メイド長「夜伽でしょう? そんなことでもめるなんてはしたないですわ。 不肖、私がお務めさせて頂きます。 それで角が立たないでしょう?」 魔王「なんて事を云うんだメイド長!?」 女騎士「まったくだ、なんて横暴なんだ! 恥を知れっ!」 メイド長「だいたい未経験者の相手なのですから そんなにぴりぴりした気持ちで居てどうします? 成功もおぼつきませんよ。 こんな時こそ包容力と寛容の精神が必要なのです。 閨房で殿方を甘えさせられなければ一人前とはいえますまい」 魔王「それは、そうかもしれんが……」 女騎士「たしかに婦女としてはずべきであった」 メイド長「ではちゃっちゃと済ませてきますので、 そこで待っててくださいますね」 魔王「それとこれとを一緒にするなぁ!」 女騎士「それは騎士として諾とは云えないぞ!!」 メイド長「では、廊下でなんか騒がないで お二人で。いえ、三人で仲良くしてください」 にこりっ がちゃ! ポポイッ! 199 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 29 42.50 ID I63MLpWkP ――冬越しの村、魔王の屋敷、勇者の部屋 ごろごろごろ、ズテン! 魔王・女騎士「ふぎゃっ!!」 勇者「……なにやってるんだ? お前ら」 女騎士「いや、その。こ、これはな! 事情があるんだ」 魔王「うむ、話せば長い事ながら深くやむにやまれぬ事情が あるのだ知っての通り世界情勢は混迷を極め我らが立場も また深い迷夢の中と言って良いというこの時期にだな」 女騎士「他人の錯乱を目にするとちょっと落ち着くな」 魔王「つまり、今後の展望と展開を踏まえた思索の果てに 光明を見いだすべき勇者と我らが腹を割って話すことこ そが今もっとも求められていることなのではないか? たしかにぷにぷにと云われるリスクはあるのだが、 我らはそろそろ次のステップを踏むべきなのではないかと」 勇者「落ち着け」 スコン! 魔王「ぐっ!」 203 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 34 04.82 ID I63MLpWkP 勇者「で、要約するとどういう事なんだ」 魔王「……」ちらっ 女騎士「……」ちらっ 勇者「アイコンタクトとってんじゃねぇよ」 魔王「ではタイムだ」 勇者「は?」 魔王「あちらで作戦会議をするから、聞くなよ?」 勇者「はぁぁー?」 こそこそっ 女騎士「作戦ってどんな作戦があるんだ」 魔王「これでも私は話し合いの魔王なのだ。 交渉は我が領域。話し合いで決着をつけよう」 女騎士「どんな?」 魔王「上は私で下が女騎士でどうだろう」 女騎士「どこの変態なのだっ。魔王はっ!?」 勇者「ひまだなぁ」 209 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 38 10.54 ID I63MLpWkP 魔王「変態とは何だ? ベッドの上下だ」 女騎士「そ、そうか。済まない、誤解した」 魔王「それでいいか?」 女騎士「ちょっとまって、勇者は?」 魔王「ベッドの上に決まってる」 女騎士「私だけ下じゃないか、どこのいじめだ!」 魔王「だめか、ではタイムシェアリングはどうだ?」 女騎士「たいむしえあ? なにそれ?」 魔王「時間によって案件を共有するのだ」 女騎士「マシそうな提案ね」 魔王「生産性向上のための基礎知識だ」 女騎士「で、具体的には?」 魔王「勇者のベッドを陽のある間は女騎士が、 陽が落ちてからは私が使う」 女騎士「魔王だけ勇者つきではないかっ!?」 勇者「なんか小腹へってきたし」 216 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 46 44.50 ID I63MLpWkP ――冬越しの村、魔王の屋敷、勇者の部屋 勇者「なんだこの状況は。何が起きてるんだ!?」 魔王「交渉とは妥協の婉曲な表現でもある。 その現実の哀しい写し絵だ」 女騎士「私だって不本意だ。しかし、しかたない。 “パンが一つ無いときは半分で感謝しなければならない” そうお祖母ちゃんも云っていた」 勇者「すげぇ粗末な扱いだよなぁ、俺」 魔王「何を言うんだ! 両手に女を抱えて!! まさか、勇者。……ふ、ふ、不満なのか」 女騎士「火竜のなんとかの方が良いって 云うんじゃないでしょうね!?」 勇者「いや、そうじゃなくてっ」 魔王「ぷ、ぷにぷにだからダメなのか!? 駄肉だからか!? 勇者は私の所有契約なのだぞ」むぎゅっむぎゅっ 女騎士「胸がないとだめなのかっ!? そんな腐った肉がいいのか? 乙女の最上級は清らかさだぞっ。 神に捧げられた純潔の方がいいに決まってるっ」すりすり 勇者「ううう、なんでだよう。なんでこうなんだよ」 230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 21 52 09.48 ID I63MLpWkP 魔王「むぅ。このままではメイド長のいうとおりだ」 女騎士「……腹立たしいけど、そうだな」 魔王「一次休戦だ」 女騎士「心得た」 勇者「いつも俺の頭越しに会談がまとまるよ」 魔王「頭越しではないぞ? こうやって耳元で横になっている」 女騎士「うむ、肩に頭をもたせかけているだけだ」 勇者「……」びくびく 魔王「勇者は緊張しているのか?」 女騎士「自分の寝床なんだからそんなことはないだろう」 勇者(緊張してるよっ! しないわけないだろがっ!?) 魔王「まあ落ち着け」 女騎士「うん、戦場では冷静が生死を分けるぞ」 勇者(絶体絶命だ!) 魔王「暖かいなぁ! もふもふだ!」 女騎士「うむ、意外なほどに寝心地が良いな」 241 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 22 02 03.90 ID I63MLpWkP 勇者「……すー……すー」 魔王「寝たのか? 勇者」 女騎士「かもしれないな。疲れているのだろうし」 勇者(寝れるかっ。この状況下で寝れる童貞が居たら 俺が全部雷撃魔法で電気椅子にしてやるわっ!!) 魔王「勇者の髪は、もふもふだ」 女騎士「うん、大きな犬みたいだね」 魔王「この髪を触るのが好きなのだ。 勇者の髪を整えているのはわたしなのだぞ?」 女騎士「わたしの方が付き合いは長いから。そんなの知ってる」 勇者「……すー……すー」 勇者(だ、だめだ。寝たふりをするしかない。 精神を鎮めるんだ!! 高まれ俺の魂!) 魔王「……」 女騎士「……」なで、なで 魔王「なぁ、女騎士」 女騎士「なに?」 249 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 22 08 26.33 ID I63MLpWkP 魔王「わたしは、来週にでも魔界へ帰る」 女騎士「へ?」 勇者(え?) 魔王「いや、なに。魔王の免許更新のようなものでな」 女騎士「免許? 免状みたいなもの?」 魔王「そうだ」 女騎士「そっか……。すぐ帰ってくるの?」 魔王「いや、どうかな。早くて数ヶ月はかかると思う」 女騎士「何かあるの? 魔王……躊躇ってるよね?」 魔王「いや迷いはない。仕方ないことだ。 魔王というのは、何というか……。 魔王以外には上手く説明できないこともあってな。 代々の魔王の墓があるんだが、そこへ詣らないといけない」 女騎士「……」 魔王「それに、魔界にはたくさんの氏族があるが、 それらの多くは人間界侵攻に賛成なのだ。 今戦争が小康状態なのは、魔王であるわたしが 勇者と相打ちになり怪我の療養をしているという話に なっている事が大きい。 そろそろ姿を見せて、魔族の心をまとめなければ、 かえって暴走した一部の氏族が勝手に戦争を再開する かもしれない」 251 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 22 21 00.90 ID I63MLpWkP 女騎士「でも、それなら……」 勇者(……) 魔王「ん?」 女騎士「魔王は、魔界で戦争賛成派のまっただ中に 取り残されることになるんじゃないのか? それはすごく危険なように聞こえる」 勇者(……) 魔王「わたしの専門は経済、すなわち交渉だ。 そこまで酷いことにはならないさ。だいたい金も 食料も無しで戦争を続けられる生き物なんて居ないよ」 女騎士「しかし誰か連れてった方が良いだろう? その……。勇者とか。なんならわたしが行こうかっ」 魔王「いや……」なで…… 女騎士「……」 魔王「いいんだ。魔王の墓は、冥府殿というのだが、 そこにはどうせわたし以外は誰も入れないのだ。 ついてきて貰うには及ばない。一人で行く」 253 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/08(火) 22 23 31.94 ID I63MLpWkP 女騎士「そう……なのか……」 魔王「うん、だから、ちょっとだけ勇者の体温が欲しくてな」 勇者(……) 魔王「駄々をこねてしまった。許されよ」 女騎士「いや……」 魔王「もちろんメイド長はつれてゆく。身を守る程度なら 二人でどうとでもなる」 女騎士「そうか」 ほっ 魔王「こちらの世界のことは、書類を残してゆくし、 馬鈴薯や農業については女騎士も知っての通りだ」 女騎士「うん、修道会に任せて欲しい」 魔王「『同盟』に頼んだニシンも届こう。 そろそろ風車の代金や新型羅針盤の契約料も入ってくるはずだ。 これらの利益管理も『同盟』に依頼してある。 必要なときは相談してくれ」 女騎士「承知した」 魔王「細かいことはみな、メイド姉に教えてある。 そして……。 勇者のことを頼む」 女騎士「わかった。――その命、この剣に賭けて守ろう」 366 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 37 01.74 ID CkBATQ0gP ――冬越し村、魔王の屋敷、執務室 魔王「さて」 メイド姉「はい」 メイド妹「はーい」 魔王「大体飲み込めたか?」 メイド姉「判りました」 メイド妹「よくわかんない」 メイド長「妹は、お姉さんの云うことをちゃんと聞いて 毎日のやることをこなしていくんですよ?」 メイド妹「はーい!」 メイド長「語尾を不必要に伸ばさない」 メイド妹「は、はいっ」 魔王「なに、気負うことはない」 勇者「やはり長引きそうか?」 魔王「メイド長の手の者に調べて貰っているが、 氏族の長の中には頑固者も居るからな。 人間世界が宝の山に見えている者も居るだろうし。 何を考えているやら……。 そんなものは、隣の芝生に過ぎないのだが」 370 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 42 05.60 ID CkBATQ0gP 勇者「やっぱり俺も行くべきじゃないか?」 魔王「一人で行く」 勇者「……」 魔王「そのような顔をするな。 どちらにせよこれは魔王の仕事なんだ。 魔王でなければ出来ないこともする。 約束する、無理はしない」 メイド長「わたしがまおー様のことは守りますわ」 魔王「うん、メイド長が居るからな」 勇者「……」 魔王「それに、この世界のことだって心配だ。 南部諸王国は安定してきたし、農業改革も順調だとは云えるが 聞いた話だと、白夜王国は政情不安定になってきていると 云うじゃないか」 勇者「らしいな」 魔王「わたしがこの世で一番信頼しているのは、勇者だ。 何せわたしの持ち主だからな」 372 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 47 53.84 ID CkBATQ0gP 魔王「だから、この場所に勇者を残していくのは、 心強いことなんだ。 前回は勇者が魔界に行って、わたしは残った。 農業改革や技術指導は、わたしにしか出来なかったからだ。 だが、今回は違う。 開門都市の件で勇者がもうただの戦士じゃないことは判っている。 もう一人のわたしだ。 だから、ここを任せる」 勇者「……判った」 魔王「それから、メイド姉」 メイド姉「はい」 魔王「これを預けよう」 メイド姉「指輪、ですか?」 魔王「ああ、知り合いの地妖精に作らせたんだ。 大したことはないが、姿変えの幻術が仕込んである。 幻術だから声や仕草はどうにもならないが、 わたしの姿になれるぞ」 メイド姉「どういうことでしょう?」 魔王「商人からの代金の受け取りや、尋ねてきた客人 と 会わなければならないときもあろう? 大抵は勇者がうまくやってくれるだろうが、 どうしても必要なときは、この指輪でわたしの替え玉を やってくれ」 373 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 53 26.57 ID CkBATQ0gP メイド姉「判りました」 メイド妹「当主のおねーちゃん!」 魔王「ん、なんだ?」 メイド妹「おみやげ。ね♪」にぱ メイド長「これ!」 魔王「あははは。うん、何か見繕ってこよう」 勇者「……」 メイド姉「無事のお帰りを祈っております」 メイド妹「お祈りしてるー!」 魔王「うむ。早ければ三ヶ月、長くても半年といったところか」 メイド長「おなかを出して寝ちゃいけませんよ?」 メイド姉「いってらっしゃいませ」 メイド妹「いってらっしゃーい♪」 しゅいんっ! 376 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 15 57 38.85 ID CkBATQ0gP ――開門都市、街外れ ひゅわんっ! 魔王「やはり勇者の転移魔法は便利だな」 勇者「運び屋は任せてくれよ」 メイド長「まおー様のよりずっと転移酔いが少ないですね」 魔王「うん、久しぶりの魔界だ!」 メイド長「そうですね、緑色の太陽。懐かしいですわ」 魔王「ここは――うん。大体判った、都市の南の外れだな」 勇者「そうだ、丘を下れば開門都市の南門に出る」 魔王「よし、ではここでお別れだ」 勇者「いや、街までは送るよ」 魔王「いいや、ダメだ。勇者は街に近づくな」 勇者「へ?」 魔王「と、とにかく禁止だ。 ……そんな、そのぅ。火竜の小娘に会いに行かなくても……」 勇者「?」 魔王「ええい。勇者!」 勇者「おう?」 魔王「もふもふさせろ!」 わしゃわしゃ! 378 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 16 03 27.05 ID CkBATQ0gP 勇者「なっ、なんだよいきなり!」 メイド長「あらあら、まぁまぁ」 魔王「なぁに。ちょっとした燃料補給だ」 勇者「――大丈夫なのか?」 魔王「勇者は心配性だな。男が廃るぞ」 勇者「とは云ってもなぁ」 魔王「大丈夫だ。今エネルギーを貰ったからな。 先代たちが束になってかかってきたところで 負ける気はしない」 勇者「……」 魔王「それに、やっとここまで来た。 わたしにも開門都市の明るい空気が感じられるぞ。 人間と魔族が一緒に暮らしている街があるじゃないか。 もう、丘の頂上は見え始めているんだ」 勇者「ああ、そうだな」 魔王「だから行ってくるぞ――わたしの勇者」 勇者「おう、いってきやがれ。――俺の魔王」 魔王・勇者「「また会おう、すぐにでも」」 383 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 16 07 45.08 ID CkBATQ0gP ――冬越し村、実りの秋 小さな村人「ほーうぃ! ほーうぃ!」 中年の村人「おんや、こんにちはぁ」 羊毛職人「こんにちはぁ!」 小さな村人「きょうは一杯だぁね、どうするんだい?」 羊毛職人「ああ、もう秋だからねぇ。チーズの仕込みをしないと」 小さな村人「ああ、そうかぁ。今年はどんな案配だい?」 中年の村人「アーモンド入りのは作るだか?」 羊毛職人「良いよぉ、ミルクの出も良いし。 もちろんアーモンド入りのも作るだぁよ。 クローバーの葉をたっぷり食べてるせいかなぁ。 今年のミルクは、すごく甘いだよ」 小さな村人「そりゃぁ、良いことを聞いただよ」 中年の村人「小麦か馬鈴薯ととりかえてくれるだか?」 羊毛職人「もちろんだよ。銀貨でもかまわないよ?」 小さな村人「そういや、銀貨も使うようになっだぁね」 中年の村人「そうだなや。うちは埋めて貯めてるだよ」 羊毛職人「あんれまぁ。そうだね、用心せんとね」 386 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 16 11 55.63 ID CkBATQ0gP 小さな村人「こっちは馬鈴薯の畑に、灰と魚カスを撒くだよ」 中年の村人「撒くのかい?」 羊毛職人「魚カスってなんだべ?」 小さな村人「教会で教えて貰った、肥料だなや。 大地の恵みが弱らないように撒くと良いらしいだよ」 中年の村人「でも、お金がかかるんがなぁ」 羊毛職人「そうなのかぁ」 小さな村人「まぁ、でも、たいした金額じゃねぇさ。 修道士様が教えてくれた馬鈴薯で作った金だ。 その修道院にお返ししたって罰は当たらないべ」 中年の村人「そりゃ、そうかもしれんなぁ」 小さな村人「それに、撒かないと馬鈴薯は病気に なりやすいっていうべさ。うちんとこは小麦の畑は 減らしたから、馬鈴薯病気になったら困っちまう」 中年の村人「そうか、そうか。おらんとこも撒くかなぁ」 羊毛職人「おらは、自分の腹にニシン詰めてぇな」 小さな村人「あははは! 酒場でバター焼きを詰めるべ」 中年の村人「ああ、そりゃいいだなや!」 羊毛職人「チーズが一杯売れたら考えるだぁよ」 小さな村人「そうすべなぁ!」 387 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/09(水) 16 17 57.20 ID CkBATQ0gP ――聖王都、貴族院 がやがやがや 軍閥貴族「――開門都市を放棄して――」 富裕貴族「おめおめと――退却――とは」 司教「精霊の――にも――処罰――」 軍閥貴族「さすがは――弱腰の貴族――」 富裕貴族「――妾腹――な」 司教「王国臣民――100万の――」 軍閥貴族「この罰――」 富裕貴族「極刑――磔刑――」 司教「塩――すりこみ――焼きごて――」 がやがやがや 軍閥貴族「判決を――」 富裕貴族「いや、いまこそ――軍事法廷――」 司教「しかるべき――宗教裁判――」 軍閥貴族「敵前逃亡――任務放棄――」 富裕貴族「王国に対する裏切り――利敵行為――」 司教「神聖冒涜――」 ページトップへ <前2-5へ|次3-2へ>
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ニュース @wikiのwikiモードでは #news(興味のある単語) と入力することで、あるキーワードに関連するニュース一覧を表示することができます 詳しくはこちらをご覧ください。 =>http //atwiki.jp/guide/17_174_ja.html たとえば、#news(wiki)と入力すると以下のように表示されます。 マニュアル作成に便利な「画像編集」機能を提供開始! - ナレッジ共有・社内wikiツール「NotePM」 - 川崎経済新聞 【グランサガ】リセマラ当たりランキング - グランサガ攻略wiki - Gamerch(ゲーマチ) 「Wiki」創設者のPC 競売に - auone.jp 篠原悠希×田中芳樹が明かす「歴史ファンタジー小説ならではの悩み」(現代ビジネス) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース 【Apex Legends】ヴァルキリーの能力と評価【エーペックス】 - Gamerch(ゲーマチ) モンハンライズ攻略Wiki|MHRise - AppMedia(アップメディア) 【ウインドボーイズ】リセマラ当たりランキング(最新版) - ウインドボーイズ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) ポケモンBDSP(ダイパリメイク)攻略wiki - AppMedia(アップメディア) 【テイルズオブルミナリア】リセマラ当たりランキング - TOルミナリア攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) SlackからWikiへ!シームレスな文章作成・共有が可能な「GROWIBot」リリース - アットプレス(プレスリリース) 【ダンカグ】登場キャラクターと担当声優一覧【東方ダンマクカグラ】 - AppMedia(アップメディア) 【ウマ娘】チャンピオンズミーティングの攻略まとめ - Gamerch(ゲーマチ) 【ウマ娘】ナリタブライアンの育成論|URAシナリオ - Gamerch(ゲーマチ) ドラゴンクエストけしケシ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【シャーマンキング】リセマラ当たりランキング【ふんばりクロニクル】 - ふんクロ攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) サモンズボード攻略wiki - GameWith 【スタオケ】カード一覧【金色のコルダスターライトオーケストラ】 - Gamerch(ゲーマチ) 【スマブラSP】ソラのコンボと評価【スマブラスペシャル】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ブレフロレゾナ】リセマラ当たりランキング【ブレイブフロンティアレゾナ】 - ブレフロR攻略Wiki - Gamerch(ゲーマチ) 【ポケモンユナイト】サーナイトの評価と性能詳細【UNITE】 - Gamerch(ゲーマチ) 【ENDER LILIES】攻略チャートと全体マップ【エンダーリリィズ】 - Gamerch(ゲーマチ) 新庄剛志は「監督」か「ビッグボス」か...肩書き巡りWikipedia大荒れ 「自称に過ぎない」の意見も - ニフティニュース 【ウマ娘】あんしん笹針師の選択肢はどれを選ぶべき? 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https://w.atwiki.jp/plum1122/pages/46.html
イサドラ autolink フェレの女騎士。フェレ侯エルバートの妃・エレノア付だったが後にエリウッド軍に参画。 女パラディンは【トラキア】ぶりであるということを考えると,貴重ではあるのだが,いかんせん,柔らかいところと成長率が使いにくい。しかし【烈火】には自軍お姉さま系が彼女くらいしかいないので(フィオーラ・ルイーズあたりは微妙なところだがヴァイダは以下略)やはり貴重な人材ではある。 が,すでにハーケンという立派なコブつき。でもそのおかげで行き遅れずに済みそうな,ちょっとそろそろ適齢期など考えてみるお年頃の女性であった。 それでも場合によってはラガルトとの悲恋フラグ?も立ったりするので、女騎士はやっぱりあんまり浮かばれない。 タグ:【烈火】 い リキア 人名 女性 騎士 上へ
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断罪の騎士の頭を吹き飛ばした魔界大使が 自らの行いを悔い、『くっこれからは俺が断罪の騎士の跡をつぐ!』 と言って跡を継いだ。
https://w.atwiki.jp/eb_tw3/pages/1154.html
七勇者編主要登場人物主 七勇者編での主要な依頼やイベントに登場した人物をまとめた。 名前の下にあるのは世界の瞳編での初登場事件と初登場シナリオ。 七勇者 かつて世界を滅ぼそうとしたという大魔女『スリーピング・ビューティ』に立ち向かった7人の勇者。今では『七勇者の物語』で語られるだけの存在であったが、三塔戒律マギラントにて七勇者の一人勇者マギラントが敵として登場。他の七勇者も生存していることが示唆されている。 若草の乙女アリッサム時限トップ魔想紋章士のアビリティ「クイーンランサーの紋章」のモチーフとなっているナイトランスの女騎士。ランスブルグの建国女王であり、七勇者の一人。全身を銀の鎧で纏う美しい騎士。かつてはエリクシルの誘惑も撥ね退けるほど高潔な騎士であったが・・・。 マギラント シャルムーン カーニバル ジェスターを首魁とするマスカレイド集団。 ジェスター時限トップ不死身の身体を持ち、ラッドシティからエンドブレイカーと因縁を持つ強力なマスカレイド。マギラントでの戦いで撤退して以後、それまでの余裕がなくなっている。 関連項目 Ep7:七勇者編での出来事 山斬烈槍ランスブルグ
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「命をかけて、あなたをお守りします」 【固有スキル (LvMAX時効果) 】 衝波 敵1体に80%+7500のダメージを与える 騎士道精神 ランダムな敵1体に131.3%+13500のダメージを与える。自身が最大生命値の17%相当の【守護】を獲得。攻撃を受けた時、目標の速度−2%。効果2ターン。 護りの剣 生命値が最も低い敵に150%+15000のダメージを与える。自身の被ダメージ−30%。効果2ターン。 女騎士 自身の生命値+20%。味方が単体攻撃を受けた時、75%の確率で【援護】し、被ダメージ−40%。 キャラ説明 武属性の強タンクキャラ。 同ランクの老練な族長/ドミニクや鬼神/ゴウキ=サガと比べると、【守護】を自身にしかかけられないため利用価値が薄い。スキルも単体攻撃しかないため、自身の攻撃で状態異常を手広く付与する事は不可能である。 しかし、学院制服/リオに比べれば、敵の攻撃に対する【援護】率も被ダメージ率も良くなるため、結晶スキルの【凌駕】を入れて、状態異常付与を狙うのはアリ。 自身の防御力を上げる結晶スキルと併用し、仲間を庇いながら相手を苦しめていこう。 一時期、アクティブスキル2の名称が王たちの恩寵になっていたことがあった。 だが攻撃時には元の名称がはっきりと表示されていたため、無垢な少女/コモモ=サガの二つ名と同様不具合だったようだ。 おすすめスキル 書 上級攻撃系 中級攻撃系 結晶 連続技 無敵の力 復活 反骨心 凌駕 回復
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カード名 レアリティ カテゴリ レベル 詳細説明 海賊メアリ SR ソウル 1 【アシスト】使用可能レベルに達すると、以下の効果を発動する。〔小/中/大/特大〕 ▲最大MPが上がる〔小/中/大/特大〕 ▲ドロー攻撃力が上がる【ソウル】巨人召喚 強化陣【モチーフ作品】歴史上の人物、メアリー・リード【イラスト】かわく / 【CV】佐倉綾音 「行くっすよ、どっか~ん!」 ver1.5のソウル。 開幕からDSを補強できるのでファイターに向いているが、試合途中でMPが回復するわけではないのが難。 DSの威力だけならチェネレントラの方が圧力があるので、使うとしたら大聖やフックなどのLv1でもMPの心配が必要なファイターとなるか。 童話ゲーの今作において、海賊アビルダ、海賊ボニーと合わせて普通に実在人物である一人。 互換ソウル(MP&ドロー攻撃力) レアリティ Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5 Lv6 Lv7 SUPER RARE 海賊メアリ ジャジーなカッツェ 金精コボルト 純白騎士オーガスタス 黒魔女エスメラルダ 11を司る者キャド WONDER RARE 踊る紅剣士カーレン【常時MP回復速度UP】千匹皮のシュテル【停止時HPMP回復】 童話を守る者 ライテ【防具2枚でMP回復速度UP】蒼角の守女 サナ【武器2枚で回避距離UP】【道具1枚で兵士撃破MP回復】 獅子心王【防具3枚でHP回復効果UP】 武神 関羽【ゲージ劣勢時WS効果時間UP】 龍宮の舞妓 おタイ【LvUP時ドロー攻撃力UP&ドローMP軽減】 表を編集する ソウルカード一覧に戻る
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タモラ・ピアス 冒険のはじまりしとき 女騎士・アランナ1 女神に守られて 女騎士・アランナ2 砂漠を駆けぬける女 女騎士・アランナ3 トップページ>著者名索引>は行>タモラ・ピアス
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ページ未完成 ルール確認中 写真掲載予定 ヘクターとアキレス (原題:Hector and Achilles) 発売年 2003年 imageプラグインエラー 画像URLまたは画像ファイル名を指定してください。 プレイ人数 2人 プレイ時間 30分 対象年齢 ? デザイナー L.ColoviniM.MaggiF.Nepitello ゲーム概要 ルール(概略) コメント欠点 お勧めタイプ 【お勧め度:★★★★★★----】 ゲーム概要 ギリシャ神話のトロイア戦争における、トロイ軍とアケイア軍の戦いをモチーフとした2人対戦カードゲームです。 兵士カードのデッキで砦と本陣を作ります。そして戦いでは兵士と英雄が力を合わせ、各軍5枚ずつのカードが互いにぶつかり合います。 戦闘ごとに敗北した軍の兵士カードは減り、最終的に敵本陣を完全破壊したプレイヤーの勝利。 ルール(概略) コンポーネントの特徴 プレイヤーボードにはデッキを置く場所が描かれている。プレイヤーから見て奥側の横一列は「砦(1)」「砦(2)」「砦(3)」、手前側は「本陣(4)」。カッコ内の数字については追々解説する。 各プレイヤーが戦闘で使用するカードは、「兵士カード」48枚と「英雄カード」6枚の2種類。兵士カードはそれぞれ1~4の戦力値が割り振られ、4つに色分けされている。 英雄カードも同様に、3~6の戦力値と4色の内いずれか1色を持つ。 運命タイルは、兵士カードの背景色と同じ各色が、四角形の四辺に1色ずつ割り当てられている。 この他、少し特殊な効果をもたらす「神のご加護」「屈辱」を示す各マーカーがある。 セットアップ デッキを作る兵士カードをシャッフルして4つのデッキを作り、自分のプレイヤーボードの所定位置4箇所に無作為で置く 英雄カードをシャッフルし、別のデッキとして自分のプレイヤーボードの手前右手側に置く 神のご加護マーカーを3個受け取る 運命タイルを適当に混ぜて山を作る 屈辱マーカーは盤の外で待機 適当にスタートプレイヤーを決める プレイ上のポイント とにもかくにも、最初は本陣への突破口を作るべく、横一線に並んだ砦を崩していかなければならない。 スタートプレイヤーは攻撃側、対戦相手は防御側となる。1. 使用デッキの決定攻撃側プレイヤーが、いずれかの砦の山(砦にカードが無い場合は本陣)からカードを1枚めくって先兵として場に出す。ここで現れた兵士の能力値(1~4)を参照し、各プレイヤーは数字に対応するデッキ(*1)を使用。それぞれ、デッキからカードを4枚と英雄カードを1枚引く。 2. 運命タイル設置攻撃側プレイヤーは運命タイルをめくり、場の中央に 向きを設定 して置く。 3. 追加アクション(詳細は後述)手番は防御側プレイヤーから開始する。 4. カードをプレイ防御側プレイヤーが、手札から1枚出す。この時、場に出た兵士カードの数字の総和が相手を上回ったプレイヤーは、運命タイルを好きな向きに設定して良い。以降、攻撃→防御と繰り返し、その都度運命タイルを設定し直ていく。 5. 戦闘最終的に4枚のカードが場に出る(攻撃側は1枚余る)。自軍の基礎戦闘力は、 自分の方を指している運命タイルの色 と同じ背景色の兵士カードの数字を足したもの。英雄カードをプレイした場合は、その英雄と同じ色の兵士も加算する。 6. 戦闘後処理(詳細は後述) 勝敗が決定。勝ったプレイヤーが次の攻撃側を担当し、これを繰り返す。 戦闘後処理勝利したプレイヤーは、プレイしたカードと手札をそれぞれのデッキに戻す。 敗北したプレイヤーは、プレイしたカードを全て捨てる(ゲームから除外)。退却した場合は、屈辱マーカーを1個受け取る。そして使用した英雄カードを捨てる。その後、プレイしたカードと手札から、手持ちの屈辱マーカーの数だけ兵士カードを選んで捨て、残りを元のデッキに戻す(「手札-屈辱マーカー数」の差分の兵士のみ生き残れる)。 引き分けの場合は、両プレイヤーともプレイしたカードと手札をそれぞれのデッキに戻す。 使用した恩恵マーカーは、いずれの場合でも捨てられる。 追加アクション手札を1枚捨て、デッキから1枚引く。デッキが空の場合は本陣から引く。 英雄カードを伏せて英雄カードデッキの一番下に戻し、その山の上から1枚引く。 手札の英雄カードを、場に配置された兵士カードの上にプレイする。戦力は上書きされる。 (英雄カードが場に出ている場合のみ)場に出た兵士カードの上に神の恩恵マーカーを置く。この場合、その兵士カードの戦力+1。 退却。手番3回までは、場に出したカード類を全て廃棄し、屈辱マーカーを1個受け取る事で、それ以上の勝負を放棄できる。その戦闘は相手プレイヤーの勝利として扱われる。 その他のポイント戦闘に敗北して捨て札となる兵士と英雄は、代わりに恩恵マーカーを捨てても良い。 枚数が4以下になったデッキは、本陣デッキと混ぜる。 終了条件・得点計算 戦闘を繰り返し、以下の条件を達成したプレイヤーは勝利する。相手の前衛3デッキを全滅させる。 相手の本陣を全滅させる。 相手の本陣からカードを引く戦闘で、4枚引ききれない状態にする。 ゲームの流れ 先攻プレイヤー決定 戦闘戦闘でカードを減らしたデッキは本陣と統合され、空いたスペースから本陣へ攻撃の手が届くようになる 2を繰り返す。本陣を全滅させたプレイヤーの勝利 まず戦闘。勝負がつく。マーカーが動くか兵士カードが減るかして展開が進む。陣営が瓦解するまで以下繰り返し。 カードの動きに軽い変化はついているが、基本は戦闘、戦闘、また戦闘である。 コメント +プレイ感と感想について ゲーム性 考える点は、「戦闘の勝利」と「デッキの質的向上」の2つ。戦闘は英雄カードを使ったトリックがポイントであり、また敗北しても、被害を受けるのが弱いカードであれば以降の戦闘を御しやすくなる。運命タイルは防御側の方が比較的コントロールしやすく(攻撃側には先兵がいて、1枚目のカードを選べないため)、勝ち方にも負け方にもコツがあるタイプのゲーム。ただし、優勢な方が砦を1つ壊されそこからの集中砲火でいきなり敗北してしまう事は十分ありうる。詰めの部分は結構ファジー。 プレイ難度 デッキ選びやカード回しなど、個々の動きを把握するのには多少慣れがいるが、一回戦闘をこなせば慣れるレベル。恐らく簡単な方。 テーマ・コンポーネント トロイア戦闘という題材とゲーム内容は、概ね合っている。兵士カードのデザインも、センスが良いまでではないものの、取り立てて問題はない。ただし英雄カード、てめーはダメだ。設定上の名前も能力も異なる英雄がみな同じ絵柄の使いまわし。悲しい。 欠点 繰り返しになるが、カードイラストに魅力がない。兵士カードの方も、ダメでこそないが良いとも言えない。 お勧めタイプ 複数回の戦闘をこなすスタイルのカードバトルゲーム。英雄カードを使ったコンバットトリックが勝負のポイントとなる一方、有利なターンと不利なターンが交互にくるバランスで最終的な決着もテキトーにぼかされている分、一方的な試合模様にならず双方が安定して楽しめる。 そこそこのプレイ時間、そこそこの面白さ、そこそこのリプレイ性。多くの要素がそこそこ止まりとはいえ、その安定感は立派に個性と言える。かもしれない。 【お勧め度:★★★★★★----】