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218 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 20 28.90 ID yUcxAZE0 どんだけ☆エモーション(その8) 「行ってきまーす♪」 実由はいつものように学校指定のバッグに母さんの弁当を詰め込むと 学校に出かける。 「行ってらっしゃい~」 「おう、頑張れ」 俺と母さんもいつものように返事をする。 いつもの朝の光景。 何事も無いいつもの日常。 いつもであれば俺もこの後準備をして学校に向かうところであるのだが。 「それじゃ、ミヒロちゃんお願いね~」 「うん、分かった」 …俺は母さんに頼まれて朝食の後片付けをしている。 何でこんな事しないとならんのだろうか。 今の俺の姿は女の子。 まだ女の子歴三日目ではあるがすっかりお料理と後片付けの仕事は板についてきている。 「今日は母さん、いろいろ用事があって忙しいからお昼は一人で済ませておいてね~」 「ふーん、どこか行くの?」 洗い物を済ませて居間のソファに腰掛けていると外出着でおめかしをした母さんが ぱたぱたと忙しそうに何やら準備をしていた。 「まぁ、いろいろね~、帰りは夕方になるからよろしくね~」 「うん」 …夕方、という事は夕食の準備をしないといけないな。 母さんが出かけた後、夕方の買出しまで時間がある俺はとりあえず編入試験に向けた 勉強などしてみる。性別が変わってから不思議に俺の嗜好が変わってしまったようで ネットはおろかPCもほとんど触れる事無く家事に専念するようになってしまった。 人間とは不思議なものだ。 (家事というより、買ってもらったお洋服の着こなしの研究で忙しくなってますよね) ええい、マルさん五月蝿い。 とにかく色々変わった事は事実なのっ! …とはいえ、勉強が好きで無いのは相変らずではあるが。 219 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 23 01.76 ID yUcxAZE0 「ふう…、ちょっと休憩するかな」 時計をみると勉強を始めてから1時間位経過していた。 久々の勉強なのでちょっと集中しただけで疲れてしまった。 今までどんだけ勉強を怠けてきたか、ホントに困ったもんである。 外の空気を吸うために庭に出る。 初夏を迎えつつある外の風景は好天のせいか空の青と草木の緑がやけに鮮やかに見える。 梅雨時であるにもかかわらず大気もスッキリしているし非常に気持ちがいいなぁ。 母さんの育てている庭の花々も咲いているものがあって、俺は不思議と 気持ちが浮き立ってくるのを感じざるを得なかった。 「ふふっ、母さんが育てた花がこんなに咲いているよ。男のときには 何とも思わなかったのに、どうしてこんなに嬉しくなるんだろ?」 (ミヒロちゃん、すっかり気持ちが女の子になりつつあるよね) 俺の心の中からもう一つの意識が浮び上がる。 色々あってすっかり親しくなったマルさんは俺のもう一人の人格のようになっている。 俺と同じ意識を共有する存在。多分考え方とか好みは違えども これだけ友人、親兄妹よりも深い関係の存在は有り得ないかもしれない。 「えっ? そ、そうかなっ? 自分はそんな風には感じないんだけど」 (いえいえ、ミヒロちゃんは明らかに変わりつつあるのはこの私が感じるところなの) 「う~ん、良く分からないなぁ…」 マルさんと(心の中で)会話しつつ、俺は庭の外から見える街並みを眺める。 いつもと変わらない街並みでいつもと変わらない日常のはずなのに 俺は外見はおろか気持ちまで変わりつつあるのか…な? 別に不安とか無いといえば嘘になるけど…なるようにしかならないしなぁ。 「ミヒロちゃん、こんにちは」 「え?」 俺の思考を不意に遮る声。俺は声の主の居る方向を見る。 「あ…サトシ、…くん」 塀を挟んでサトシが学校帰りと思われる制服姿で立っている。 (あ、サトシ君だww) …今週いっぱいまで定期試験だもんな。サトシの家の帰り道の途中に俺の家があるし、 タイミングが良いと言うか。 220 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 25 24.00 ID yUcxAZE0 サトシ君、今 帰りなの? 昨日といい、早いよね?」 とりあえず白々しいと思いつつも特に(今の俺の姿で)話す事も無いのだが ありきたりな会話をしてみる。 「うん、今試験期間中でさ。今週はずっと早く帰れるんだよね。」 「へーっ、試験かぁ、大変だね。どう? 調子は?」 「うん、まあまあかな。 一応ちょこちょこ試験対策はしてきているから 何とか答案は埋めれているけど結果はどうなるか」 「スゴイねー、勉強してるんだ。じゃあ、いつも学年トップ10に入っているんじゃない? サトシ君って頭良さそうに見えるし」 「えーと、そんな風に言われると…。まあ、確かに常連と言えば常連かも知れないけどね」 頭を掻きつつ何だか照れくさそうに答えるサトシ。 …知っているよ。サトシ、お前っていつも学年トップ10どころかトップだろうが。 俺はそう思いつつも顔には出さない。 (もう、ミヒロちゃんって意地が悪いというか素直じゃないというか) うるさい、マルさん。 「そういえば、ミヒロちゃんってウチの高校に編入するんだよね? 編入試験とか受けるの?」 「うん、受けるよ。今週受ける予定になっているけど?」 急なサトシの質問に怪訝な表情を浮べつつ答える俺。 「そうだ、良かったらさ、一緒に勉強しない? 俺は定期試験、君は編入試験で 同じ学年だからきっと何かの役に立てると思うし。」 「え?」 思わず固まる俺。試験勉強? 俺とサトシが? (うっわー二人きりww もう、サトシ君ったら、行動が早いんだからww) 「…」 「…?」 「…」 「ミヒロちゃん?」 思考が止まり固まっている俺に思わず声をかけるサトシ。 「あ、ハイ、勉強会だよね?」 ハッと気が付き答える俺。 …この姿でサトシと勉強会かぁ。マルさんの言うとおりサトシの奴、手が早いなあ。 「うーん、どうしようかな…」 「ミヒロちゃんが忙しいなら別にいいけど…」 悩む俺の姿を見てちょっと落胆気味のサトシ。 ああ、もう、そんな顔すんなよ。そんな顔されるとすごい罪悪感を感じるし、 俺の気持ちまで沈んで来るじゃないか。 「ううんっ、そんな事ないよ。私、勉強分からないところあるし、調度良かったよ」 …とりあえずサトシのお誘いに乗る俺。 別に奴のために誘いに乗ったわけでは有りませんから。 あくまでも自分の勉強のためです。ホント。 221 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 26 27.37 ID yUcxAZE0 「! 本当かい!? 良かった、じゃ、いつやろうか? 今週中なら早くやるに越した事は ないけど?」 打って変わって嬉しそうにするサトシ。 …あれ? サトシの笑顔を見たら俺も嬉しくなるのは何故? 「そうだね、じゃサトシ君、時間があるなら…えーと、今日でもいい? まだ夕方まで結構時間があるし、私ちょうど今試験勉強をしていたところなんだ。」 「そうなんだ? じゃ、これからやろうか? えーと、場所はどうしようかな…」 「ここでいいよ。サトシ君なら晴子さんや実由ちゃんが帰ってきても問題無いし。」 「確かにそうかも。それじゃ、俺の家はここから近いから準備をしに帰ってから ミヒロちゃんのところに来るよ。」 「わかった。じゃ、私も準備して待っているよ。」 「じゃ、この後すぐね」 俺の返事に嬉しそうに返すとサトシは自分の家に向かっていった。 「…」 (どうしたの? ミヒロちゃん?) 「いや、別に。」 …サトシと二人きりで勉強会かぁ。 不思議に胸が高鳴るんですけど。…仕様ですかね。 222 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 27 30.90 ID yUcxAZE0 ◇ サトシが来るまでの間、俺は急いで客間の掃除を済ませつつ何気に得意になるつつある 料理というか、お菓子作りに挑戦してみたりしてみる。 そんなわけでサトシが来るまでの30分位の間でおもてなしの用意を済ませてしまった。 (うわー、ミヒロちゃんって才能あるかもww) …うん、俺もそう思う今日この頃です。すぐにでもお嫁に行けますね、…って、ちっがーう!! ピンポーン。 おっと、サトシが来たみたいだ。 俺はサトシを迎え入れると客間に通す。 さすがに自分(ヒロアキ)の部屋はサトシには知られているので今のミヒロでは通せないよな。 客間のテーブルに勉強道具を広げ、俺とサトシはさっそく試験に向けた勉強を始める。 「…で、これはこうすると解けるんだ」 「へーっ、そうかぁ、なるほど」 さすがに頭のいいサトシだけあって面白いように様々な試験問題が解かれて行く。 うん、これは一人でやるより効率が良いな。 始めはテーブルを向かい合わせで各々の勉強をするつもりであったが 俺が余りにも色々と聞いてくるのでいつしかサトシは俺の横について教えてくれている。 「それじゃ、これはどうすればいいの?」 「…ミヒロちゃん、さっきからほとんど俺に聞いてばっかりだよね」 「だって分からないし。頭のいいサトシ君に聞けば一発で解るからいいよね」 「うーん、それじゃあんまり勉強にならないような気がする。 ミヒロちゃんのためにまずは自分で出来るところまでやってみないと。」 そう言うとサトシは俺の側から離れようとする。 「だめー、横に居ないと困るよっ!」 俺は立ち上がろうとするサトシの腕に両腕でしがみついた。 「ええっ!? ち、ちょっと、ミヒロちゃん!?」 「だめだよー、勉強見てくれないと。 誘ってきたのサトシ君でしょ? だから私の面倒みてよっ!」 223 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 29 29.88 ID yUcxAZE0 「えーっと…その…」 困った表情で俺を見るサトシ。 「その? 何?」 「勉強見るから、腕を離して欲しいかなって…」 「あ、ゴメンね」 サトシに言われてとりあえず腕を離す俺。サトシはそのまま座り直す。 「…」 「? どうしたの?」 サトシが黙り込んでしまったので思わず聞く俺。 何だかサトシの顔が赤くなっているような気がするけど、気のせいかな? 「…こうして勉強しているとヒロアキの事を思い出してさ。」 「え?」 急に俺の名前を言われ驚く俺。 俺の状況など知らないサトシは思い出し笑いを浮べつつ話しはじめる。 「ヒロアキは勉強が苦手でさ、試験のときにはいつも俺が勉強をみてやってたんだ。 あいつはやれば出来るのに普段全然勉強しないから試験前は自分の勉強よりも ヒロアキの勉強で忙しかったなって。本当に大変だったよww」 「ふーん…そうなんだ」 ちよっとムッとする俺。確かに俺は勉強は好きではないが サトシに迷惑に思われていたのかと思うと気分的に良くないなぁ。 「今回ヒロアキは出かけて居ないから勉強の面倒を見る必要は無いかなと思ってたんだけど …まさかこんな形で試験勉強を教えることになるなんてさ、ハハハ」 「…自分の勉強で大変なのに迷惑かけたなら、ごめんね」 笑うサトシとは対照的に棘のある言い方で返す俺。 「え? 別に迷惑なんじゃないよ、むしろ俺にとっては楽しかったんだよね。」 「え?」 「昔からヒロアキとつるんでいるのが俺にとっては当たり前でさ、あいつがサッカー部を 辞めてからつるむ機会がめっきり減ったせいかな? 何だか毎日がつまんなくてさ。」 「…」 「毎日学校の授業と部活と充実しているといえば充実しているのかも知れないけど、 ヒロアキとのやりとりが無いと何だか味気無いというか何というか…ね。」 「…」 「だから試験期間に行なう勉強会が俺にとってはヒロアキと馬鹿やりながら 昔のような時間を過ごす事の出来る貴重な機会だと思っててさ、 試験は試験で大変と言えば大変なんだけど不思議と楽しみにしているんだよね。」 俺は黙ってサトシの話を聞いていた。さっきまでのムッとした気持ちが サトシの話の中でどんどん無くなっていくのを感じる。 224 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 30 28.17 ID yUcxAZE0 「正直なところ俺が無理矢理勉強させていたからヒロアキのほうが 迷惑だったんじゃないかな、って俺の方がそう思うんだけどね。」 そういうとサトシは俺の顔を見てニコッと笑う。 「そ、そうなんだ、…そうかぁ、てへへ」 思わず何とも言えないこそばゆい気持ちになる俺。 不思議に顔がニヤニヤしてしまうのは何故だろう? ああ、もう何だかわかんないけど嬉しい気持ちだよっ。 「サトシ君って、ヒロアキ君の話をする時って結構楽しそうに話をするよね? ヒロアキ君の事をどう思っているの?」 「ヒロアキ、…うーん、そうだな…」 サトシは俺の問いにちょっと考え込む。 あれ? そんなに考え込む程の質問だったかなと不安に思う俺。 「…俺にとっては親友だよ。 すごく馬鹿な奴だけど…違うな、馬鹿やってる振りして周りを盛り上げるのが 上手いんだよな。そして周りの皆の事を大事に思っているすごくいい奴なんだよな。 あいつといると不思議に楽しいんだ。気持ちが乗らない時でもあいつと馬鹿やってると ホントやる気が湧いてくる。俺、あいつにはどれだけ励まされたか分からない位だよ。 今頃あいつは海外で何してるんだろうな…」 真面目な表情で俺の事について語るサトシ。 最後にちょっと遠い表情をしたのは俺が海外にいる(と思いこまれている)せいか。 (やっぱりサトシ君はヒロアキ君の事、親友として大事に思っているんだねー) ―うん、そうかも知れないなぁ。 マルさんのいう通り、俺の事について色々考えているんだな。 ふふっ、良かった♪ …って、あれ? そんな中ふと俺はある質問をしてみたくなる。 「…ねえ、サトシ君?」 「何? ミヒロちゃん」 興味深そうに俺の言葉を待つサトシ。 「もしもの話なんだけど、…ヒロアキ君が居なくなったらどう思う?」 225 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 31 40.21 ID yUcxAZE0 「え?」 急に表情が固まるサトシ。 一瞬俺が何を言ったのか理解できない表情をしている。 「ヒロアキが居なくなったらどう思う…って、なんでそんな事聞くの?」 「さあ。…何となく」 とぼける俺。 「うーん、例えば今頃ヒロアキ君は海外に居ると思うんだけど、そのまま帰って来なかったら? …事故とか? …可能性は有るよね。」 「…」 マルさんの話から俺はヒロアキの姿でサトシの前に現れることは二度とできないかもしれない。 そうなってくるとどうしてもサトシに俺が居なくなったらどう思うかを 確かめたくなるのが人情ってものかも? 俺としてはこの姿(ミヒロ)でもサトシに会えないことはないのでとりあえずは …問題は無い(訳が無い)が。 しかし俺はともかくサトシはそうはいかない。 ミヒロの正体がヒロアキだという事を知らない限り サトシにとっては親友、ヒロアキの存在が居ない事になるわけだから。 「…ミヒロちゃん」 「はい?」 サトシの声に反応する俺だがサトシの雰囲気がさっきとは 一変していることに気付く。 「…冗談でもそんな事言わないでくれるかい。言っていい事と悪い事があるよ。」 「え、…!」 俺はサトシの表情を見てビックリした。 今まで見た事の無い、いや一度だけあるかも、とにかくサトシの表情が もの凄く険しくなっている。…怒っている? 俺はサトシの表情を見てビックリした。 今まで見た事の無い、…いや一度だけあるかも。 とにかくサトシの表情がもの凄く険しくなっている。…怒っている? 226 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 34 21.84 ID yUcxAZE0 「ヒロアキは一人っ子だった俺にとってはかけがえの無い親友であり、兄弟みたいな ものだと俺は思っているんだ。」 「…」 黙り込む俺。 「例え話でもヒロアキが居なくなる、海外に行って何らかの状況で帰って来ない、来れない …ひょっとしたら最悪の事が有るかも知れない。 考えたくないけど俺にとって奴が居なくなるなんては有り得ないし想像もつかないし、 したくもない事だと思っている。」 「…」 「ヒロアキは俺の事をどう思っているのか俺には分からない。でも俺にとってはそのくらい 奴を重みのある存在だと思っているんだ。あいつに何かあったら俺はすぐにでも 飛んでいく覚悟はあるし、出来れば早く無事に帰ってきて欲しいと願っているよ。 …ミヒロちゃんにしたらほんの軽い気分の質問だったのかも知れないけど 俺にとっては我慢できない質問だ。」 「…」 「俺の前でそんな話は二度としないでくれるかい? 今は我慢しているけど次はどうなるか 分からない。たとえ、…俺は女の子でも許さないから」 「…」 (うわぁ…すごいね、サトシ君の友情は。) …うん、そうだね。 サトシがどんだけ俺の事を考えているか再認識する。 「…ごめんなさい」 俺はサトシに謝る。 俺の為を思って言ってくれた事に対し嬉しいといえば嬉しい事なんだけど。 …何だろう、この感情は。 「いや、俺も強く言ってしまって、ミヒロちゃんを驚かせてしまったね。」 さっきとは打って変わり穏やかな表情のサトシ。 「…ううん、私の方こそサトシ君に嫌な気持ちにさせてしまったよね…」 我ながら馬鹿な質問をしてしまったと反省する俺。 サトシはサトシで俺の存在を大事に考えているのに俺は無神経にも奴に何て事を 言ってしまったんだろうか。 227 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 36 35.42 ID yUcxAZE0 …。 そんな情けない気持ちだけでなく、 さっきサトシがミヒロ(俺)に向けた厳しい視線と口調が俺の頭の中で ぐるぐると回っている。何気に…いや、かなりショックを受けている俺。 さっきのサトシの姿が頭に焼き付いているだけでなく、 その姿を目の当たりにした状況で俺自身の身体が恐さですくんでいる。 悪いのは俺だ。分かっている。 …だけど。 だけどあんなに恐い顔で言わなくてもいいじゃないか。 あんなに強い口調で言わなくてもいいじゃないか。 ―私は"女の子"なんだよ? … …酷い。 …酷いよね? …酷いじゃないかよっ! 色んな感情が俺の中でごっちゃになっていく。 冷静になろうと努力してみる…でも、マイナスの気持ちが勝っているみたいで。 …。 …あ。 何だか目の前がぼやけてきた。何とか堪えようとする俺。 女になってから何だか変なんだよなぁ。気分がころころ変わるし、涙腺が緩いのか涙が溢れやすいし …。 「…ミヒロちゃん?」 俺の様子の変化に気付いたサトシは俺に呼び掛ける。 「…」 俺は溢れ出そうになる涙を堪えるのに必死だったが、 …駄目みたい。 泣いちゃうっ。 … …ポロポロ …ポロポロポロ 「!! ミ、ミヒロちゃん?」 俺を見て驚くサトシ、というか慌て気味のサトシ。 「…」 「ひょ、ひょっとして俺が怒ったから泣いてるの!?」 目の前で涙をボロボロこぼして泣くミヒロを見てどうしたらいいか分からず オロオロするサトシ。 228 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 37 40.17 ID yUcxAZE0 「…ううん、…そんな事無い、…けど」 溢れ出る涙を何とかしようとするのだがどうにもならずなすがままの俺。 「でも俺がミヒロちゃんの気持ちを害したから泣いちゃったんだよね? 本当にミヒロちゃんゴメン、ゴメンね!」 サトシはサトシでミヒロに必死に謝る。 「…謝らなくてもいいっ、…悪いのは自分だからっ」 あー、もう、どんだけ涙が出れば気が済むんだよっ、この瞳はっ。 必死に涙を両手で拭うが全然止まる様子が無い。 側にあったテイッシュペーパーを何枚かまとめて引っ張り出し、目にあてる俺。 「ミヒロちゃんゴメンね、ホントにゴメン」 「しつこいっ、サトシは謝らなくていいの!」 「でも…」 困った顔のサトシ。 「…もうすぐ、もうすぐで止まるから、待っててよっ」 …といいつつも俺の涙が止まるまで結構時間がかかってしまい、 その間サトシはずっとオロオロしっ放しであった。 229 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 38 44.20 ID yUcxAZE0 ◇ 結局あの後、盛り上がらないまま何となく勉強が始まり何となく時間だから 終了してしまった。 「ごめんね、今日は…」 帰ろうとするサトシを玄関まで見送る。 サトシの前で泣いたせいか何となく気恥ずかしい。 多分、顔も赤くなっているに違いない。 「いや、俺の方こそゴメンね。何ていうか…」 サトシは何か言いたそうであったが何も言えずもごもごしている。 「? 何ていうか?」 首をかしげる俺。 「何というか…」 サトシは下を向いたまま何か言うかどうか悩んでいる様子であったが とりあえず一呼吸置く。 「…あ~、もう、俺って駄目だな。あんまり普段女の子と接する機会が無いからさ、 あんな時どうすればいいのか分かんなくて」 「…」 「俺、ミヒロちゃんにどうすればいいのかずっと戸惑っていた。 気の利いた言い回しも浮ばないし、ずっと泣かせてしまったままで何のフォローも してあげられなかった。俺自身が原因とは言え、情けないなぁ…」 「…」 「俺は周りから何でも出来る人間とか言われているけど、女の子の扱いは なんとも…苦手というか…分かんないというか」 普段のサトシらしからぬ発言がミヒロ(俺)の前でこぼれる。 何だろう、この感じ。 クールなサトシがこんなに弱気になるなんてよっぽど俺(ミヒロ)を泣かせたのが 堪えたようで。…なんだかカワイイ。 230 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 39 44.12 ID yUcxAZE0 「サトシ君、私は別に気にしてないよっ」 「え?」 俺は俯き加減のサトシの前に立ち、両手でサトシの顔に触れると自分の顔の前に近づける。 「ミ、ミヒロちゃんっ?」 俺の行動が理解できずに目を白黒させるサトシ。自分の顔の前にミヒロの顔が接近したせいか どんどんサトシの顔が赤くなっていく。 …ふふっ、真っ赤になっちゃって。 「私だって人前で泣くなんて恥ずかしかった。サトシ君はそんな私をどうすることも 出来ずに自分自身を情けなく思った。これって…おあいこだよねっ?」 「ミヒロちゃん…」 「元はと言えば私がヒロアキ君の事でサトシ君を怒らせてしまった事がいけないんだもの。 サトシ君は何も悪い事は無いよ。 それとサトシ君が女の子の扱いが分からないっていったけど …私だって同じだよ? だから別に恥ずかしい事なんてないよっ」 「…そうかな?」 「そうだよっ、サトシ君っ」 「…ミヒロちゃん、…そうだね」 ミヒロの笑顔につられて笑顔を浮かべるサトシ。 「そうそう、笑顔が一番だよww」 俺はそう言うとサトシの肩口に手をかけ、Vサインをしてサトシに( ̄ー ̄)ニヤリッ、と笑いかける。 「…」 サトシは何も言わずに笑う。 「あ、そうだサトシ君、ちょっと待ってて」 「?」 俺はサトシを玄関に待たせたままキッチンに向かいあるものを手にするとすぐ戻る。 「実は休憩中に食べてもらおうと思ったんだけど…コレ貰ってくれる?」 俺は紙袋をサトシに渡す。 「これは?」 「私が作ったカップケーキ。急ぎで作ったから味は保証できませんww」 「見ていい?」 「どうぞ」 サトシは紙袋を開けて中身を見る。中には俺手作りのカップケーキが3個入っている。 一応、生地の中にドライフルーツを入れたもの、アーモンドやナッツ類を入れたもの、 ココアパウダーを生地に混ぜ込んだものと3種類のケーキとなっている。 「ありがとう、嬉しいなぁ、ミヒロちゃんの手作りが食べられるなんて」 本当に嬉しそうなサトシ。 そんなに喜ばれるとあげた甲斐があるよねっww 俺自身もなんだか嬉しくなってくるよっ。 231 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 40 39.96 ID yUcxAZE0 「…それじゃ、ミヒロちゃん」 「うん、またね」 サトシが帰った後俺は部屋の片付けをする。 片付けをしながら俺はさっきのサトシのやり取りを思い出す。 サトシの前で泣いた自分とそれを見て慌てふためくサトシ。 その光景を思い出すと非常に滑稽で笑ってしまう俺。 …それにしても。 さっきのサトシの帰り際の状況で俺はサトシに対してすごく自然に女の子らしく 振舞う事が出来たような気がするなぁ。 サトシを気遣うセリフも何だか自然に出来たし、まるで元がガサツなヒロアキとは 思えない位可愛いミヒロを演じていたような気がする。 (ミヒロちゃん、私に感謝してねww) ―え? (私、意識をミヒロちゃんに重ねたんだよね。…上手くいって良かった) ―え? え? え? (でもミヒロちゃんもまんざらでも無いし、私もミヒロちゃんと同じ気持ちだし、 …いいよねww うふっ♪) ―ひょっとして、マルさん!? 意識をシンクロさせた? 操られた? まさか? でもこれまでも俺の知らないうちに自分の身体が活動した形跡があったりして、 …マルさんって、一体? 232 :vqzqQCI0 :2008/09/27(土) 03 42 31.89 ID yUcxAZE0 ガチャ。 入り口の扉の鍵の開く音。 「ただいま~、あら? どうしたのこんな所で~」 俺が玄関で思考を回転させていると母さんが帰ってきた。 「あ、母さんお帰り。別に何も無いけど」 「ふ~ん、それならいいけど。あ、そうそう決まったわよ~」 母さんは靴を脱ぐと脇に抱えた紙袋を持って居間に向かう。 「え? 何が決まったの?」 俺も母さんの後について行く。 「ミヒロちゃんの編入試験よ~。いきなりだけど明日だって~」 「え? 明日? ちょっとぉ、まだ心のじゅんb」 「試験は簡単な面接だけだから大丈夫だって~」 「え?」 動きが止まる俺。え? 勉強しなくていいの? 「良かったよね~、ヒロちゃん、勉強苦手だもんね~」 …あの~、お母様? 自分の子供にそんな事言いますか? とはいえ、正直安堵する俺。 そうかぁ、勉強しなくて済むんだ。エヘヘっ。 着替えを済ませて普段着に戻ると母さんは居間のソファに腰掛ける。 俺は自分と母さん用に紅茶を淹れると母さんに渡す。 「母さん、今日は学校に行ってきたんだ?」 「うん、そうなのよ~、色々手続きがあってね~大変だったのよ~」 「そうなんだ、俺のためにわざわざありがとう」 俺はそう言うと紅茶をすする。 「だめ~! ミヒロちゃん!!」 急に俺に強い口調で言うとビシッと指をさす母さん。 「え? な、何?」 驚く俺。思わず紅茶がこぼれそうになったよ。 「もうあなたは女の子なんだから『俺』なんていうの禁止~!」 「え? ええっ!?」 驚く俺、じゃなかった、わたし? 「ミヒロちゃんみたいな可愛い女の子が『俺』なんて凄く変~! だから駄目~!」 「駄目って、そんなぁ…」 「いい~? 数日後には確実にミヒロちゃんは学校に通うことになるのよ~? 今のうちから特訓しておかないとこの先苦労するのは目に見えているわよ~」 「でも…」 「でもも何もないのよ~? 今から特訓開始~」 「えー…、そんなぁ…」 俺はうなだれる。ただでさえ色々あって今の自分を保つのに苦労しているのに 振る舞いまで気を遣わないといけないなんてっ。 (晴子さん、大丈夫です。私がミヒロちゃんを立派な女の子として 育て上げますから。) 「あ~、そうよねぇ~、マルちゃんが居れば安心よねぇ~」 妙に自身満々のマルさんとマルさんの発言に嬉しそうに納得する母さん。 実由といい、母さんといい、マルさんといい、この3人は どんだけ俺を引っ張り回してくれるのか。 …もう、やだ。 それはともかく、明日は学校に行くのか。 う~、どうなるんだろうかぁ…。
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総括所見:イラク(OPSC・2015年) 第1回(1998年)/第2~4回(2015年)OPAC(2015年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/IRQ/CO/1(2015年3月5日)/第68会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2015年1月22日に開かれた第1962回会合(CRC/C/SR.1962参照)においてイラクの第1回報告書(CRC/C/OPSC/IRQ/1)を検討し、2015年1月30日に開かれた第1983回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国の第1回報告書および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/OPSC/IRQ/Q/1/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、ハイレベルなかつ部門横断型の締約国代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、2015年1月30日に採択された、子どもの権利条約に基づく締約国の第2~4回統合定期報告書についての総括所見(CRC/C/IRQ/CO/2-4)および武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書に基づく第1回報告書についての総括所見(CRC/C/OPAC/IRQ/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 II.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、選択議定書の実施に関連する分野で締約国がとった以下の措置を歓迎する。 (a) 人身取引対策法(法律第28号、2012年)。 (b) アフターケアおよび家族統合プログラム。 (c) 2つのチャイルドヘルプラインの開設。 (d) 被害者支援部署、人身取引被害者のための国営シェルターおよび家族保護部署の設置。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことにも、評価の意とともに留意する。 (a) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、陸路、海路および空路により移民を密入国させることの防止に関する議定書(2009年2月)。 (b) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2009年2月)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約(2008年3月)。 (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(1999年)(2001年7月)。 III.データ データ収集 6.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされている犯罪についての体系的データを収集するためのいかなる機構も有していないことに、懸念とともに留意する。 7.委員会は、締約国が、選択議定書で対象とされているすべての分野のデータ収集、分析、監視および影響評価のための包括的かつ体系的な機構を発展させかつ実施するよう勧告する。データは、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもに特段の注意を払いながら、とくに性別、年齢、国民的および民族的出身、地理的所在、先住民族としての地位ならびに社会経済的背景別に細分化されるべきである。犯罪の性質別に細分化された、起訴件数および有罪判決件数についてのデータを収集することも求められる。 IV.一般的実施措置 立法 8.選択議定書のさまざまな規定を締約国の法律に統合しようとする努力は歓迎しながらも、委員会は、このような努力において、ほぼ人身取引および買売春だけにしか焦点が当てられていないことを懸念する。委員会はまた、選択議定書で対象とされているすべての犯罪が現行法で明示的に取り上げられているわけではないこと、および、締約国の法律における子どもの売買の定義が議定書と一致していないことも懸念するものである。 9.委員会は、締約国が、選択議定書を国内法体系に全面的に編入し、かつ、選択議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施する目的で国内法における子どもの売買(これは人身取引と類似してはいるものの同一ではない)の定義を改正するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 包括的な政策および戦略 10.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と闘うための包括的な政策および戦略を直ちに採択し、かつ、その作成および実施に市民社会の関与を得るよう勧告する。 調整および評価 11.委員会は、情報がないことを遺憾に思うとともに、締約国が、選択議定書上のすべての犯罪と効果的に闘うための調整機構を速やかに設置するよう勧告する。 市民社会との協力 12.被害者を保護サービスに付託するために法執行官が時として非政府組織(NGO)および国際機関と協力していることには留意しながらも、委員会は、選択議定書の実施に関して締約国と市民社会との間で全般的に協力が行なわれていないことを懸念する。委員会は、以下のことをとりわけ懸念するものである。 (a) NGOに対し、選択議定書の犯罪の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子ども全員の収容保護が認められているわけではないこと。 (b) NGOが、国から必要な保護を与えられないまま、依然として過激主義集団による暴力の脅威にさらされていること。 (c) 被害者に保護サービスを提供しているNGOに対し、締約国が資金または現物による援助を提供していないこと。 13.委員会は、締約国が、選択議定書の実施に関する市民社会との協力を強化するとともに、選択議定書で対象とされている犯罪の被害者となった子どもに保護および支援を提供しているNGOに対し、十分な技術的資源および財源を配分するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、NGOが過激主義集団による攻撃から全面的に保護され、かつ活動の遂行に際していかなる法的障害にも直面しないことを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促すものである。 普及、意識啓発および研修 14.委員会は、裁判官、法執行官ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働く専門家を対象とする研修が不十分であることを遺憾に思う。委員会はまた、親および子どもたち自身を含む公衆の間で子どもの性的搾取に関する意識が欠けていること、ならびに、慣習および伝統により、性的虐待および性的搾取の被害を受けた子どもおよびその家族が辱めの対象とされており、そのためこれらの犯罪の通報が十分に行なわれていないことも、懸念するものである。 15.委員会は、締約国が、選択議定書を広く周知するためにあらゆる必要な措置をとるとともに、以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 裁判官、法執行官(とくに警察)ならびに子どもとともにおよび(または)子どものために働くその他の専門家が、選択議定書で対象とされている犯罪から子どもを保護するために自己の知識およびスキルを効果的に実践できるようにすることを目的として、これらの専門家を対象とする学際的な研修プログラムを発展させること。 (b) コミュニティ、地元の教員、若者グループおよび子どもグループの関与を得ながら、選択議定書の規定に関する集中的な意識啓発活動(マスメディア上のキャンペーンを含む)を実施すること。これらの意識啓発活動においては、性的搾取の防止、被害者に付与されるスティグマへの対処、ならびに、とくに被害者がアクセスできるすべての通報方法についての情報を被害者に提供することによるこれらの犯罪の通報の強調および奨励に対し、特段の注意が払われるべきである。 V.子どもの売買、児童買春および児童ポルノの防止(選択議定書第9条第1項および第2項) 選択議定書で禁じられた犯罪を防止するためにとられた措置 16.委員会は、現行の政策およびプログラムが、子どもの売買、児童買春および児童ポルノの根本的原因(ジェンダーを理由とする深刻な差別および暴力、貧困、マイノリティに属する子どもの差別、国内避難および移住、教育へのアクセスの欠如、ならびに、子どもが路上で生活しかつ(または)働くことを余儀なくされる状況を含む)に対応するためには不十分であることに、懸念とともに留意する。委員会は、以下のことを著しく懸念するものである。 (a) 多くの子どもが依然として登録されていないために、選択議定書上の犯罪の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていること。 (b) シリア・アラブ共和国からイラクに帰還した子どものイラク人難民(とくに女子)が、帰るべきコミュニティを持たないことが多く、かつ国からのいかなる種類の支援にもアクセスできないために、あらゆる形態の搾取および人身取引の被害をとりわけ受けやすい状況に置かれていること。 17.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の根本的原因に対応し、かつもっとも被害を受けやすい状況に置かれている家族および子どもを明確に対象とするために包括的アプローチおよび具体的措置をとるよう促す。とくに委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告するものである。 (a) 委員会が条約に基づいて行なった勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4)、とくに生活水準(パラ63)、差別の禁止(パラ17)、子どもの国内避難民および難民(パラ67)、路上の状況にある子ども(パラ75)、職業訓練および職業指導を含む教育(パラ65)ならびに家庭環境を奪われた子ども(パラ47および49)に関連するものの全面的実施を確保すること。 (b) いわゆるイラク・レバントのイスラム国(ISIL)の支配下にある子どもを救出するためにあらゆる必要な措置をとり、かつ、これらの子どもが回復および再統合のための十分なサービスにアクセスできるようにすること。 (c) すべての子どもが出生時に登録されることを確保するための措置を継続しかつ強化すること。 (d) 帰還民に対して支援へのアクセスを確保するとともに、もっとも被害を受けやすい状況に置かれている子どもを対象とする防止プログラムを発展させ、かつ、とくに、子どもの国内避難民、移住の状況にある子どもおよび路上の状況にある子どもに対して十分かつ安全なシェルター、保健ケア、教育および衣服が提供されることを確保するためにあらゆる必要な措置をとること。 子どもの売買 18.委員会は、いわゆるISILの支配下に置かれたままの子どもが多数にのぼっており、かつ、誘拐された子どもおよび女性(とくにマイノリティ集団出身の子どもおよび女性)がISILの構成員間で性奴隷として売買される「市場」が存在することに、深い懸念とともに留意する。委員会はまた、以下のことを深く懸念するものである。 (a) 女子が引き続き「贈り物」「報酬」または「取引手段」として利用され、または部族間の紛争解決のための「賠償品」として交換されていること。 (b) 婚姻した後に女子に売春を強要するための「一時的婚姻」であるムタア(muta a)の慣習が締約国でふたたび行なわれるようになり、多数の家族が、しばしば貧困および(または)失業をきっかけとして、娘(11歳という低年齢の女子も多い)をこのような結婚のために売り渡していること。 (c) 誘拐および(または)売買の被害者となった女子が深刻なスティグマに直面するために、これらの女子に対して行なわれた犯罪の通報が十分に行なわれず、かつ、これらの女子が家族から拒絶され、誘拐犯との婚姻を余儀なくされ、またはいわゆる「名誉」の名のもとに行なわれる犯罪の被害者となるおそれが高まっていること。 (d) 女子が締約国の内外で(国外の目的地国にはヨルダン、シリア・アラブ共和国、アラブ首長国連邦およびイエメンが含まれる)売買および取引の対象とされており、かつ、シリア・アラブ共和国に逃亡したイラク人女子の多くが性産業に売られているという報告があること。 (e) 女子(非常に低年齢の者を含む)が、偽造旅券により、かつ(または)「夫」とされる者と同伴してきわめて容易に渡航しえいると報告されていること。 19.委員会は、締約国に対し、女子および女性のいかなる形態の売買(とくに、奴隷市場におけるもの、ムタアによるものおよび部族裁判所または宗教裁判所における紛争解決を背景として行なわれるものを含む、女子および女性の売買もしくは交換または贈り物もしくは賠償品としての使用)も全面的に犯罪化され、捜査されかつ訴追されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。委員会はまた、委員会が条約に基づいて行なった早期婚および強制婚についての勧告(CRC/C/IRQ/CO/2-4、パラ42)に対する注意も喚起し、かつ、締約国に対し、貧困下で暮らしている家族を支援するためにあらゆる必要な措置をとることおよび以下の措置をとることを促すものである。 (a) 売買および(または)誘拐の被害者となった女子に対する差別的態度を変革するためにあらゆる必要な措置をとること。 (b) 国境を越える女子の売買と闘い、入国審査を強化し、かつ女子の身元を同伴者とは別に確認するため、近隣諸国と緊密に協力すること。 VI.子どもの売買、児童ポルノおよび児童買春の禁止ならびに関連の事項(選択議定書第3条、第4条第2項および3項ならびに第5~7条) 現行刑事法令 20.委員会は、人身取引が最近犯罪化された一方、締約国の国内法で選択議定書上のすべての犯罪(子どもの売買など)が網羅されているわけではないことに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、刑法(法律第111号(1969年))第398条において、子どもに対する性犯罪の加害者が被害者である子どもと有効に婚姻したときは罪を免除されると定められていることを、非常に懸念するものである。 21.委員会は、締約国に対し、選択議定書上のすべての犯罪が全面的に犯罪化されることを確保するために迅速な法的措置をとるとともに、刑法(法律第111号(1969年))第398条、および、子どもの性的虐待の加害者の罪を免除するために用いられうるすべての法的規定を速やかに廃止するよう、促す。 不処罰 22.委員会は、選択議定書上の犯罪に関する捜査、訴追および有罪判決の件数がきわめて限られていることに、懸念とともに留意する。さらに委員会は、警察その他の法執行当局が子どもの人身取引の共犯者になっているという多数の報告(政府職員による書類の偽造の援助および警察官による売春宿の庇護を含む)について深い懸念を覚えるものである。委員会は、政府職員が人身取引関係の犯罪の共犯者となった事件に関する捜査および訴追がきわめてまれにしか行なわれないことを懸念する。 23.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の実行犯(政府職員を含む)の捜査、訴追および処罰を精力的に進めるよう促す。 域外裁判権および犯罪人引渡し 24.委員会は、刑事訴訟法において、選択議定書第3条第1項に掲げられているすべての犯罪についての明示的な域外裁判権が設定されているわけではないことに、懸念とともに留意する。 25.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 犯罪を行なったとされる者が締約国の国民でありまたは締約国の領域に常居所を有する者である場合または被害者が締約国の国民である場合に、選択議定書第3条第1項に基づく犯罪についての域外裁判権を設定すること。 (b) 二国間条約の存在を条件とすることなく、選択議定書を犯罪人引渡しの法的根拠として用いることを検討すること。 VII.被害を受けた子どもの権利の保護(選択議定書第8条ならびに第9条第3項および第4項) 選択議定書で禁じられた犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 26.委員会は、15歳未満の子どもが犯罪の被害者または証人である場合、その証言が正当に考慮されないことがあり、かつ15歳未満の子どもは親の同意がなければ告訴ができないことを非常に懸念する。さらに委員会は、以下のことに懸念とともに留意するものである。 (a) 人身取引および買春の被害者が、尋問中に不当な取扱いまたは虐待を受け、かつ、売春および出入国管理法違反のような不法行為を理由として収監され、罰金を科され、有罪判決を受け、退去を強制されまたはその他の形で処罰されているという報告があること。 (b) 買売春のために売られた女子が、家族/コミュニティに恥をかかせたことに対する報復から「保護」するために刑務所に収容されたままとなる場合があること。 (c) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもを特定するための機構が整備されておらず、かつ、官吏に対し、被害を受けた子どもまたはとくにリスクの高い状況にある子ども(在留資格を有していない外国籍の子どもの移住者または買春容疑で逮捕された子どもなど)を特定するための研修または指針の提供が行なわれていないこと。 27.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 子どもの証言が完全な証拠とみなされることおよび子ども自身による告訴が認められることを確保するために迅速な措置をとること。 (b) 保護のためと称して拘禁されているすべての女性および女子を刑務所から直ちに釈放するとともに、これらの女性および女子に対し、必要なあらゆる支援を提供すること。 (c) 子どものプライバシーおよび尊厳が全面的に保護される、子どもに配慮した調査手続および司法手続を備えた効果的な通報制度を確立すること。 (d) 被害を受けやすい状況に置かれていて選択議定書上の犯罪の被害者となるおそれのある子どもを特定し、発見しかつモニターするための効果的機構を確立するとともに、これらの機構に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもまたはそのおそれがある子どもを特定するために必要な人的資源、財源および技術的資源ならびに研修の機会を提供すること。 (e) 選択議定書上のいずれかの犯罪の被害者となったすべての子どもが、いかなる場合にも犯罪者として扱われず、常に被害者として扱われること、ならびに、これらの子どもに対し、必要な保護、支援ならびに再統合および回復のためのサービスにアクセスする機会が提供されることを確保すること。 (f) 人身取引の被害者が、法執行官と接触する際にいかなる形態の不当な取扱いおよび虐待からも保護され、かつ通報のための経路にアクセスできることを確保すること。 被害者の回復および再統合 28.人身取引被害者のための国営シェルターが設置され、かつ虐待および人身取引の被害を受けた女性および子どもを援助する家族保護部署が警察署内に設けられたことは歓迎しながらも、委員会は、締約国に人身取引被害者が存在するにもかかわらずシェルターに入所者がいないと報告されていること、および、保健省によって運営されている支援部署が、2013年の設置以降、人身取引被害者を特定しかつ援助するためのいあkなる努力も行なっていないことを懸念する。委員会はまた、以下のことを懸念するものである。 (a) 買春の被害を受けた子どもが、刑務所からの釈放と同時に、援助をなかなか見つけられない状況に置かれること(とくに、家族によって買売春のために売り渡された場合)。 (b) 人身取引被害者の付託のための全国的機構が2012年に創設されたものの、まだ完成および実施の段階に至っていないこと。 (c) 保健ケア施設が性的搾取の被害者を治療するための体制を整えておらず、または治療に後ろ向きである事例が報告されていること。 29.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書上の犯罪の被害者である子どもの効果的特定のためのプログラムおよび政策を策定すること。 (b) 選択議定書上の犯罪の被害者である子どもに支援および保護を提供するとともに、これらの子どもが心理的援助およびカウンセリングならびに医療ケアにアクセスできることを確保すること。 (c) 保健サービスにおいて、選択議定書上の犯罪の被害者である子どもに対し、その身体的および精神的回復のためのあらゆる便宜が提供されることを保障するために、すべての必要な措置(法的措置を含む)をとること。 ヘルプライン 30.委員会は、バグダード県で2つのチャイルドヘルプラインが――カルフ地区の家族福祉局に1か所、および、ルサファ地区に設けられたコミュニティ基盤型の家族保護警察署に1か所――開設されたことを歓迎する。しかしながら委員会は、全国的なヘルプラインが設置されておらず、かつ、既存のヘルプラインおよびその安全な利用に関して子どもの意識を高めるための十分な取り組みが展開されていないことを懸念するものである。 31.委員会は、締約国が、全国的な単一のヘルプラインの設置に対して十分な人的資源、技術的資源および財源を配分するためにあらゆる必要な努力を行なうよう勧告する。委員会はまた、締約国が以下の措置をとることも勧告するものである。 (a) 選択議定書で対象とされている犯罪の防止およびこれへの対応を効果的に進めるため、既存のヘルプラインの運営担当者を対象として体系的な研修および能力構築を実施すること。 (b) 全国的ヘルプラインが、国全体のすべての子どもにとって全面的にアクセス可能でありかつ知られた存在となるよう、当該ヘルプラインにアウトリーチの要素が備えられることを確保するとともに、当該ヘルプラインと、子どもに焦点を当てるNGO、警察、ヘルスワーカーおよびソーシャルワーカーとの連携を促進すること。 VIII.国際的な援助および協力(第10条) 多国間、二国間および地域間の取り決め 32.委員会は、締約国と近隣諸国との間で選択議定書上の犯罪と闘うための地域的取り決めが締結されていないことに、懸念とともに留意する。 33.締約国が地域的取り決めを締結していないことに照らし、かつ選択議定書第10条第1項に鑑み、委員会は、締約国に対し、議定書上の犯罪を防止し、摘発しかつ訴追するための、とくに近隣諸国との多国間、地域間および二国間の取り決めを通じて、引き続き国際協力を確立するよう奨励する。 IX.フォローアップおよび普及 フォローアップ 34.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を関連の政府省庁、議会ならびに国および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 総括所見の普及 35.委員会は、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、締約国が提出した報告書および文書回答ならびに関連の勧告(総括所見)を、インターネット等も通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、若者グループ、専門家グループおよび子どもが広く入手できるようにすることを勧告する。 X.通報手続に関する選択議定書の批准 36.委員会は、締約国が、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書を批准するよう勧告する。 XI.次回報告書 37.選択議定書第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、議定書の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく次回の定期報告書に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年5月18日)。
https://w.atwiki.jp/childrights/pages/303.html
総括所見:ベルギー(OPSC・2010年) 第1回(1995年)/第2回(2002年)/第3回・第4回(2010年)OPAC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/OPSC/BEL/CO/1(2010年6月18日)/第44会期 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2010年6月2日に開かれた第1521回および第1523回会合においてベルギーの第1回報告書(CRC/C/OPSC/BEL/1)を検討し、2010年6月11日に開かれた第1541回会合において以下の総括所見を採択した。 序 2.委員会は、締約国の第1回報告書が提出されたこと、および、委員会の事前質問事項に対する回答が時機を失することなく提出されたことを歓迎する。委員会はまた、部門を横断した代表団の出席、および、代表団との率直なかつ開かれた対話も評価するものである。にもかかわらず、委員会は、締約国が、選択議定書に基づく報告についてのガイドライン(2006年採択)にしたがわなかったことを遺憾に思う。 3.委員会は、締約国に対し、この総括所見は、締約国の第3回・第4回定期報告書について2010年6月11日に採択された総括所見(CRC/C/BEL/CO/3-4)、および、武力紛争への子どもの関与に関する選択議定書への締約国の第1回報告書について2006年6月9日に採択された総括所見(CRC/C/OPAC/JPN/CO/1)とあわせて読まれるべきであることを想起するよう求める。 I.一般的所見 積極的側面 4.委員会は、以下の法令が採択されたことに評価の意とともに留意する。 (a) 人身取引および人の密輸ならびに搾取的施設経営者の行動との闘いを強化する目的でさまざまな提案〔規定〕を改正する2005年8月10日の法律。 (b) 人身取引および人の密輸との闘いに関する2004年5月16日の勅令。 (c) 刑事案件についての国際司法共助に関する2004年12月9日の法律。 (d) 刑事犯罪からの未成年者の保護の範囲を拡大する2000年11月28日の法律。 5.委員会はまた、締約国が以下の文書を批准したことも称賛する。 (a) 人身取引と闘う行動に関する欧州評議会条約(2009年4月27日)。 (b) 国際的な養子縁組に関する子の保護および協力に関するハーグ条約(2005年5月26日)。 (c) 国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を補足する、人(とくに女性および子ども)の取引を防止し、抑止しおよび処罰するための議定書(2004年8月11日)。 (d) 最悪の形態の児童労働の禁止および撲滅のための即時的行動に関する国際労働機関(ILO)第182号条約(2002年5月8日)。 6.委員会はさらに、以下の措置を歓迎する。 (a) 人身取引・人の密輸対策国家行動計画(2008年7月)。 (b) 人身取引・人の密輸情報分析センター(CIATTEH)の設置。 (c) 人身取引および人の密輸との闘いに関する省庁間調整班(主管庁:司法省)の再開。 (d) 判事、連邦警察および締約国の軍隊を対象として実施されている、選択議定書で対象とされている分野についての具体的研修。 (e) 選択議定書で対象とされている分野における国際的な援助および協力のための幅広い活動。 II.データ データ収集 7.条約およびその選択議定書で対象とされているすべての分野についてのデータ収集の調整を〔国家〕子どもの権利委員会が担当するようになったことには留意しながらも、委員会は、利用可能なデータおよび調査研究が限られていること(とくに、児童セックスツーリズムについて、子どもの売買、児童買春および児童ポルノ目的の人身取引の対象とされた子どもについて、ならびに、選択議定書上の犯罪の被害者に対する回復および再統合のための援助ならびに補償についての、信頼できるデータが存在しないこと)を遺憾に思う。 8.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) とくに被害者および加害者の年齢、性別、出身別に細分化されたデータを収集するための機構を設置すること。 (b) 国家子どもの権利委員会に対し、データに関する調整役を効果的に果たすために必要な財源および人的資源を提供すること。 (c) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノ対策の実施状況を評価する目的で、収集されたデータが注意深く検討されることを確保すること。 III.一般的実施措置 立法 9.委員会は、司法機関がいまなお選択議定書の適用可能性について決定する手続を終了していないことに懸念を表明する。委員会はまた、締約国の法律で人身取引と売買が混同されている結果、選択議定書第3条で定義されている子どもの売買が、締約国の刑法において、具体的に犯罪とされていないことも懸念するものである。 10.委員会は、締約国に対し、国内法体系において選択議定書が直接適用されることを保障するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、議定書に掲げられた子どもの売買に関する規定を十分に実施するためには、法律において子どもの売買(この概念は人身取引に似てはいるものの同一ではない)に関わる自国の義務が充足されていなければならないことを想起するとともに、選択議定書上の犯罪であるこの行為に明示的に言及されることを確保するよう、求めるものである。 11.委員会は、子どもの調達および児童ポルノに関する事件で手続を打ち切るための法的事由(「社会的影響が限られていること」、「散発的行為であること」または「事件を調査する能力が制限されること」など)が存在していることに、深刻な懸念を表明する。委員会は、これらの法的事由が、被害を受けた子どもが救済を得る権利を侵害するものであり、かつ加害者の不処罰につながると考えるものである。 12.委員会は、締約国に対し、子どもの調達および児童ポルノに関する事件で刑事手続を打ち切るための法的事由を見直し、かつ、選択議定書出対象とされているすべての犯罪が適正に訴追されることを確保するよう、促す。 国家的行動計画 13.委員会は、具体的な「人身取引・人の密輸対策国家行動計画」が2008年7月11日に採択されたことに、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、選択議定書の実施ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノの撤廃のための全般的戦略が締約国で定められていないことに、懸念を表明するものである。委員会はさらに、2001年の「子どもの商業的性的搾取対策国家行動計画」および同計画の評価に関する情報がないことを懸念する。 14.委員会は、締約国に対し、2001年の「子どもの商業的性的搾取対策国家行動計画」が部門横断アプローチを基礎とし、かつ選択議定書のすべての分野に関する行動のための一貫したかつ包括的な枠組みのもとであらゆる関係者を結集させることを確保することにより、同計画を速やかに改訂するよう促す。委員会はまた、締約国に対し、同計画の実施のために十分な資源が配分されかつ監視機構が確立されること、ならびに、同計画の活動および同計画の評価に市民社会および子どもたちが高い水準で参加することを確保することも促すものである。 選択議定書の実施の調整 15.言語共同体レベルで調整機構が設置されていることには留意しながらも、委員会は、さまざまな省庁および言語共同体レベルの関係公的機関の間で子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関連する政策の調整を担当する特定の機構が連邦レベルで設けられていないことを懸念する。 16.委員会は、締約国が、締約国による選択議定書の実施を、連邦レベルでならびに省庁間および公的機関間(言語共同体レベルの機関を含む)で、子どもたちの積極的参加を得ながら調整しかつ評価するための機関を設置するよう勧告する。さらに、締約国が、当該調整機関に対し、その任務を効果的に遂行できるようにするための具体的かつ十分な資源を提供することも勧告されるところである。 普及および意識啓発 17.委員会は、2004年と2005年に実施された子どもの性的搾取に関する意識啓発キャンペーン、および、人身取引に関する意識啓発のために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、関連の専門家集団、子どもたちおよび公衆一般の間で選択議定書の具体的規定に関する意識を高めるための努力が不十分であることを懸念するものである。 18.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) とくに、教育制度のあらゆる段階の学校カリキュラムに選択議定書の規定を統合し、かつとくに子どもを対象とする適切な資料を作成することにより、選択議定書の規定を、公衆一般、とくに子どもたちおよびその家族に対して引き続き広く知らせること。 (b) 市民社会と協力しながら、かつ選択議定書第9条第2項にのっとり、あらゆる適切な手段、教育および研修による情報提供を通じて、選択議定書に掲げられたすべての犯罪の有害な影響に関する公衆一般(子どもたちを含む)の意識を強化しかつ促進するとともに、このような意識啓発プログラムおよび広報・教育プログラムへの、コミュニティならびにとくに男女双方の子どもおよび被害者である子どもの参加を奨励すること。 研修 19.人身取引に関する若干の研修活動が実施されてきたこと(連邦警察の人身取引担当部署が外交職員向けに実施した研修会など)には留意しながらも、委員会は、このような研修において、子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家が対象とされているわけではなく、または選択議定書のすべての規定が十分に含まれているわけではないことを懸念する。 20.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 関連のすべての専門家および公衆一般を対象とする、選択議定書で対象とされているすべての分野についての研修資料および研修課程の開発に対し、十分な、かつ使途指定された資源を配分すること。 (b) 警察官、検察官、裁判官、医療スタッフ、社会福祉職員ならびにメディアおよび他の関連の専門家集団を含む専門家を対象として、選択議定書のすべての分野を網羅した研修活動(研修資料および研修課程の開発を含む)をを継続しかつ強化すること。 資源配分 21.委員会は、選択議定書を実施するために行なわれる活動に割り当てられる、明確に特定可能な予算配分が行なわれていないことを懸念する。委員会はまた、警察および司法制度に対し、選択議定書で対象とされている犯罪についての告発を捜査するための十分な人的資源および財源が提供されていないことも懸念するものである。 22.委員会は、締約国に対し、選択議定書の実施に関連する活動のための予算配分額を明確に特定するよう求める。委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされている犯罪の防止、時宜を得た捜査および効果的訴追ならびに被害を受けた子どもの保護、ケアおよび社会的再統合を国内全域で確保する目的で、使途指定をともなう予算基金を通じ、さまざまな地方行政地域間で平等に資源を配分するよう促すものである。 IV.子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーの防止 選択議定書で禁じられている犯罪を防止するためにとられた措置 23.委員会は、「ベルギー・インターネット安全向上プロジェクト」および不法養子縁組を防止するための措置など、非政府組織(NGO)と提携した防止措置の発展を歓迎する。しかしながら委員会は、ベルギーにおけるこれらの現象の発生件数は比較的少ないため、言語共同体はこれまでのところ選択議定書の主題をとくに対象とする政策を定めまたはこのような政策に投資していない旨の、締約国の発言について懸念を覚えるものである。 24.委員会は、締約国に対し、児童買春に関する現象学的研究を実施するべきである旨の国家子どもの権利委員会の勧告をフォローアップするとともに、この研究の範囲を、選択議定書出対象とされているすべての分野(これらの現象の根本的原因を含む)に拡大するよう奨励する。 セックスツーリズム 25.委員会は、セックスツーリズムに関連した刑法上の域外適用規定の存在について外交官全員の注意を喚起した外務省の通達、および、セックスツーリズムと闘うためにフランドル地域でとられているさまざまな措置に、肯定的対応として留意する。しかしながら委員会は、児童セックスツーリズムに関与したベルギー国民に対してとられる措置についての情報がないことを懸念するものである。 26.委員会は、締約国に対し、児童セックスツーリズムの防止およびこれとの闘いについて第一義的責任を負うのは締約国であることを想起するよう求める。委員会は、締約国に対し、この点に関していっそう実際的な行動をとるとともに、とくに、観光客をとくに対象とする大規模な啓発キャンペーンを組織し、かつ、旅行および慣行におけるあらゆる形態の子どもの性的搾取と闘うために旅行手配業者、メディア、NGOおよび市民社会組織と緊密に協力するよう、促すものである。 V.子どもの売買、子ども買春および子どもポルノグラフィーならびに関連する事項の禁止 現行刑事法令 27.委員会は、刑事司法制度における未成年者の保護に関する新たな法律(2000年11月28日)、および、人身取引および人の密輸ならびに搾取的施設経営者の行動との闘いを強化する目的でさまざまな提案〔規定〕を改正する2005年8月10日の法律の採択を歓迎する。しかしながら委員会は、選択議定書の批准時に締約国が行なった宣言および同意に関する締約国の国内法(2006年2月9日)に掲げられた児童ポルノの定義が、子どもを視覚的に表現したものに限られていることを懸念するものである。 28.委員会は、児童ポルノに関する国内法において、実際のまたはそのように装ったあからさまな性的活動に従事する子どもをいかなる手段によるかは問わず描いたあらゆる表現または主として性的目的で子どもの性的部位を描いたあらゆる表現が対象とされることを確保するため、締約国が刑法を改正するよう勧告する。 29.第3条第3項にしたがい、選択議定書上の犯罪が適切な刑罰による処罰の対象であることには留意しながらも、委員会は、子どもに対する性的犯罪に関する有罪事件で禁固刑が言い渡される割合がきわめて低いことに懸念を表明する。委員会はまた、子どもが関わる買春のための売春宿を経営していたとして2000~2007年に有罪判決を言い渡された者のうち収監刑に処された者がひとりもいないことに、特段の懸念とともに留意するものである。 30.委員会は、締約国に対し、選択議定書で対象とされている犯罪がベルギー刑法においても犯罪とみなされること、および、これらの犯罪が科料または自由の剥奪をともなわない制裁のような軽い刑による制裁の対象とされないことを確保する目的で、刑法の規定の改正を検討するよう促す。 裁判権および犯罪人引渡し 31.委員会は、2000年11月28日の法律によってベルギーの裁判所および審判所の域外裁判権限が拡大されたこと、および、たとえ被害申立てまたは正式な通告が行なわれていない場合、不法行為がその行為地国で犯罪とされていない場合および当事者がベルギー国籍を有していない場合であっても、裁判官には子どもの性的搾取の事件を審理する権限があることを歓迎する。しかしながら委員会は、締約国の域外裁判権において被害を受けた16~18歳の子どもが対象とされていないことを懸念するものである。委員会はまた、締約国が裁判権を設定した事件に関する情報がないことも懸念する。 32.委員会は、締約国に対し、ベルギーの裁判所および審判所の域外裁判権限が16~18歳の子どもの性的搾取にも適用されることを確保するために法改正を行ない、かつ、この選択議定書をこれらの犯罪に関する犯罪人引渡しの法的根拠とみなすよう促す。 VI.被害を受けた子どもの権利の保護 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するためにとられた措置 33.委員会は、選択議定書で対象とされている犯罪の被害を受けた子どもの保護のためにとられた措置(連邦警察内に人身取引対策部署が設けられていること、あらゆる形態の子どもの虐待を担当する付託判事が裁判管轄区ごとに指名されていること、および、被害を受けた子どもの二次被害を防止する目的で2000年から聴聞の録画が使用できるようになったことを含む)を歓迎する。しかしながら委員会は、保護者のいない外国人の子どもの事件で、子どもの聴聞の録画を認めた規定がほとんど活用されていないことを懸念するものである。 34.委員会は、締約国に対し、選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもの権利および利益を保護するための努力を強化するよう奨励する。委員会はまた、締約国に対し、聴聞の録画の使用を認めた規定が保護者のいない外国人の子どもにも平等に適用されることを確保することも求めるものである。 35.委員会は、人身取引の被害を受けた外国人の子どもが締約国で十分に保護されていないことにより、子どもが選択議定書上の犯罪の被害をいっそう受けやすくなっていることに、深い懸念を表明する。とくに、委員会は以下のことを懸念するものである。 (a) これらの子どもが、捜査に協力した場合に限って在留を認められていること。 (b) 2004年5月の後見法において、保護者のいないヨーロッパ出身の子どもが、後見人による援助を受けることから排除されていること。 (c) 1999年から2005年にかけて、人身取引の被害を受けた数百人の子どもが受け入れセンターから失踪していること。 (d) とくに小規模都市において、子どものための受け入れセンターの定員が不足しているために、人身取引の被害者であって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもが成人とともにセンターに措置されていること。 36.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう促す。 (a) 選択議定書上の犯罪(人身取引を含む)の被害を受けたすべての子どもに対して保護を提供する自国の義務を遵守し、かつ、これらの子どもに対し、法的手続に協力する意思または能力の有無にかかわらず在留許可を付与すること。 (b) 保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもであるすべての庇護希望者に対し、その国籍にかかわらず、庇護手続の期間中、後見人が任命されることを保障すること。 (c) 養育者から分離された子どもおよび保護者のいない子どもの保護、とくにその特定、年齢鑑別、登録、家族追跡、後見、最善の利益の判断、処遇および治療を向上させること。 (d) 受け入れセンターおよびシェルターに収容された子どもがすべての言語共同体で十分な援助を受け、かつ人身取引または再度の人身取引のおそれにさらされないことを確保するため、被害を受けた子どもにこれらのセンターで対応する専門家の、子どもの権利に関する知識およびスキルを増進させること。 (e) 選択議定書上の犯罪の被害を受けた子どもに援助を提供する入所施設を増設すること。 (f) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いについての委員会の一般的意見6号(2005年)を考慮すること。 VII.国際的な援助および協力 多国間、地域間および二国間の取り決め 37.選択議定書第10条1項に照らし、委員会は、締約国に対し、選択議定書が対象とするすべての犯罪の防止、摘発、捜査ならびに当該犯罪に責任を負う者の訴追および処罰を向上させる目的で、(とくに近隣諸国との)多国間、地域間および二国間の取り決めを通じ、引き続き国際協力を強化する(当該取り決めの実施を調整するための手続および機構を強化することによるものも含む)よう、奨励する。 法執行 38.委員会は、締約国に対し、子どもの売買、児童買春、児童ポルノおよび児童セックスツーリズムをともなう行為の防止、摘発、捜査、訴追および処罰を目的とする多国間、地域間および二国間の取り決めによって国際協力を強化するための努力を継続するよう、奨励する。 VIII.フォローアップおよび普及 フォローアップ 39.委員会は、締約国が、とくにこの総括所見を内閣、議会(上院および代議院)ならびに該当するときは言語共同体および州レベルの政府および議会に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、この総括所見が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 普及 40.委員会は、締約国が提出した第1回報告書および委員会が採択したこの総括所見を、とくに学校カリキュラムおよび人権教育を通じ、締約国のすべての公用語で子どもおよびその親が入手できるようにすることを勧告する。委員会はまた、締約国が、選択議定書、その実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、選択議定書を子どもおよび公衆一般に広く周知することも勧告するものである。 IX.次回報告書 41.第12条第2項にしたがい、委員会は、締約国に対し、選択議定書およびこの総括所見の実施に関するさらなる情報を、子どもの権利条約第44条にしたがって提出される、条約に基づく第5回・第6回統合定期報告書(提出期限・2017年7月14日)に記載するよう要請する。 更新履歴:ページ作成(2017年3月31日)。
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NPO法人日本アニマシオン協会の会報最新号(会報アニマシオン11号)に管理人による以下の記事が掲載されました。寄稿に際し頂戴した原稿料は募金に加えさせていただきました。ありがとうございました(2011年4月28日・5月11日) タイトル: 被災地の子どもたちに本を届けよう! http //www45.atwiki.jp/slls 支援サイトをたちあげるまで 3月11日を境に世界は大きく変わってしまいました。マグニチュード9という激震の影響は、いまや東北や日本に留まらず、地球規模で暮らしや生き方を見つめ直し、政治的な転換を迫るところにまで及んでいます。一方で震災から一カ月たっても未だ被害の全貌がわからず、水や電気の供給が止まっている現地の状況もグローバル化と同時に起きている厳しい現実です。大局に立ってものを見ることと、目の前の日々を生きることの間で、かつてない混乱にさらされているのが現在の私たちの姿でしょう。 震災当日、会議出席のため都心にいた私は、多くの人と同様に帰宅難民となり、翌日千葉県内の実家に6時間かけて辿り着きました。その日のメールで、東京郊外にある勤務先大学の私の研究室は、壁にビスで固定してあった書架3連がすべて倒壊し、部屋に入れない惨状であることが判明。校舎は安全確認のため立ち入り禁止となり、政府の通勤自粛勧告や計画停電などの影響で出勤できない日々が続きました。今思うと不思議なことですが、半日程度の外出にはノートパソコンを持ち歩かない私が、地震当日はなぜか持参していました。地震直後からPHS経由でインターネットに接続できたため、パソコン上で出来る仕事を再開継続しました。3月14日に「被災地の子どもたちに届けたい本@ウィキ」をインターネット上に開設しました。次々に明らかになる被災地の惨状に居ても立ってもいられず、そのとき自分ができる範囲で考えたことでした。不特定多数の人に向けて呼びかけることは勇気の要ることでしたが、幸いサイトを閲覧し賛同してくださる方が日を追って増えています。 「ウィキ」というのは、インターネット上に情報を掲載するホームページの一種ですが、無料で制作でき、開設した人間だけではなく、そこを訪れる誰でも書き込みが出来、共同制作ができることが最大の特徴です。ウィキサイトでは「被災地の子どもたちに届けたい本」として、「自分だったらこの本を子どもたちと読みたい・共有したい」という1冊を参加者の方々に登録してもらう仕組みをまず作りました。筆者が主宰するSLLS(学びの場としての学校図書館)研究会有志の協力も得ています。 学校図書館復興支援ということ 私は新潟中越地震の際に、慶應義塾普通部司書教諭の庭井史絵さんが率いた学校図書館支援活動に参加させていただいた経験があります。そのときに痛感したことは、学校図書館という社会的認知度の低い施設が災害に見舞われたとき、復興への手立てを見つけることが非常に難しいということでした。このとき既存の図書館団体が被災地支援に動かないことにも憤りと失望を感じました。それが今回のウィキ開設の動機にもなっています。最終的には、学校図書館の復興支援に貢献することを目指しています。 今回、図書館や美術館などの関係者による活動も活発ですが、公共図書館や大学図書館とは異なり、学校図書館は学校行政の影響を直接受けるために、往々にして図書館の枠組みから外されてしまいます。かといって学校行政の枠組みにおいても学校図書館の存在は中核的とは言えません。 学校図書館の復興は、本来的には学校の復興計画の中に位置づけられ、公的な予算配分の中で行われるべきものですが、日本の学校図書館には「人」がいません。全国約40,000校の小・中・高校の半数には、学校図書館法で定められた「司書教諭」という専門の教員は配置されていません。現場のニーズを吸い上げる人的システムがそもそも整備されていないのです。実際に今回も東北の学校図書館関係者の声はほとんど聞かれません。まだその時期には至っていないこともあるのでしょうが(ご存知のように公務員でもある先生方は現在避難所運営要員として活動されています)、専門の教職員がいない学校図書館では支援を求める声を上げることすら覚束ないのではないかと危惧しています。 新潟中越地震時に学校図書館復興支援にうかがった先は避難所として使われていた小学校でした。図書館は診療所として使われていたために、書架や本はすべて図書館から持ちだされ、そのままでは図書館としての使用が出来ない状態にありました。大型バス1台に図書館関係・大学生・一般市民など50名ほどのボランティアが同乗し、日帰りで図書館復旧のお手伝いをしました。このときに仲介をしてくださったのは小学校の教員ではなく地元高校の専任司書の方でした。学校図書館専任の教職員がいない小学校が直接声をあげにくい状況はそのときも同じだったのです。今回、被災あるいは避難所になっている学校数の多さから見て、ボランティアのニーズはさらに大きいはずですが、被害地域が広範囲におよび、支援活動をどう展開していくのか、今後の大きな課題です。 今後はウィキサイトの構成自体を変えて、被災地の学校図書館のニーズと、SLLS研究会を含む専門的な集団が提供できる支援を結び付けていくことも検討しています。現時点でどなたにもご協力していただけることとしては以下の内容があります。 ウィキに登録して本を推薦する 支援活動のための募金に参加する(募金は本の購入などに充てられます) 学校図書館を含めた子どもの読書環境の復興・整備は、ライフラインといった一次的な支援よりも優先順位が低いため、開始までに時間がかかる作業だと思います。その時までに支援熱が冷めてしまうことがないよう、息長い支援が継続できるよう尽力したいと思っています。支援についてのご意見・ご提案がありましたらお寄せください。 皆さまのご協力をお願い申し上げます。(了) 2011年3月14日開設時のページは 3月14日開設時トップページ こちら。 2011年3月14日以降の経緯につきましては、 管理人より をご参照ください。 このサイトの管理は、河西由美子とSLLS(学びの場としての学校図書館)研究会有志が担当しています。 - -
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総括所見:ネパール(第1回・1996年) 第2回(2005年)/第3回~第5回(2016年)OPSC(2012年)/OPAC(2016年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.57(1996年6月7日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、1996年5月29日および30日に開かれた第301回~303回会合(CRC/C/SR.301-303)においてネパールの第1回報告書(CRC/C/3/Add.34)を検討し、以下の総括所見を採択した(注)。 (注)1996年6月7日に開かれた第314回会合において。 A.序 2.委員会は、ネパール政府に対し、第1回報告書、事前質問事項(CRC/C.12/WP.3)に掲げられた質問への回答としての文書による情報、および、委員会との対話の過程で締約国によって提供された追加的情報の提出に、謝意を表する。対話の過程で、締約国の代表は、政策およびプログラムの方向性のみならず、条約の実施の過程で直面した困難も、自己批判的な形で明らかにしてくれた。 B.積極的な側面 3.委員会は、法改正の領域で政府がとった努力、とくに、子どもの権利を確保するための特別な節を設けた新憲法、および、子どもの権利に関わる多くの領域を対象とする子ども法の採択に、留意する。委員会は、拷問および他の残虐な、非人間的なまたは品位を傷つける取扱いまたは刑罰の禁止ならびに被害者補償制度に関するものを始めとして、政府が現行法の再検討に前向きな姿勢を見せていることに、満足感とともに留意するものである。委員会はまた、政府が国際労働機関第138号条約の批准に前向きであることを代表団が認めたことも、歓迎する。 4.委員会は、子どもの問題および子どもの権利の問題に対処する機構、とくに中央子ども福祉委員会および郡子ども福祉委員会を設置するための政府の努力を歓迎する。委員会はまた、「女性および子どもの発達のための国家評議会」および国家計画委員会事務局内の「子ども女性開発部」が最近設置されたことに、満足感とともに留意するものである。 5.委員会はまた、差別、児童労働、子どもの取引、子どもの売買および少年司法の運営の領域に関するものを始めとして、子どもの権利に関する条約の規定が全面的に実施されるようにするための国際的助言および技術的援助に関して、締約国が開かれた態度をとっていることにも、評価の意とともに留意する。 6.委員会は、締約国が国家行動計画を採択し、かつ、「1990年代における子どもと開発のための10か年国内行動計画」を策定したことに、満足感とともに留意する。 7.委員会は、締約国が、子どもたちの組織を始めとする非政府組織との協力に前向きであることを歓迎する。このことは、政府報告書の作成過程に、かつ対話の過程で非政府組織の子ども代表が出席した事実に、反映されているものである。 8.委員会は、子どもの権利を促進しかつ保護するために行なわれている国際的な取り組みに関して一般大衆の意識を喚起する手段として、政府が、委員会による第1回報告書の検討に先立ってネパールで記者会見を開くと決定したことを歓迎する。委員会は、ネパールへの帰国にともなってあらためて記者会見を開き、委員会の総括所見を公にすると代表団が述べたことに、さらに心強い思いを感ずるものである。 C.条約の実施を阻害する要因および困難 9.委員会は、ネパールが、人口の半数以上が絶対的貧困下で暮らしている世界の最貧国のひとつであることから、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に主として影響が生じ、かつ子どもの権利の享受が阻害されていることに留意する。この現実は、対外債務および債務調整措置に加えて、条約に基づく政府の義務の履行の程度に影響する深刻な困難を代表するものである。 D.主要な懸念事項 10.委員会は、国内法が条約の原則および規定に全面的に一致するようにするための措置が十分でないことを懸念する。委員会はとくに、差別の禁止(婚姻、相続および親の財産に関するものを含む)、拷問および体罰に関わる法規定が条約との一致を欠いていることに留意するものである。委員会はまた、現行法とその実際の実施との間に乖離が存在することについても懸念する。 11.委員会は、締約国が、条約の一般原則──第2条(差別の禁止の原則)、第3条(子どもの最善の利益の原則)、第6条(生命、生存および発達への権利)および第12条(子どもの意見の尊重)──を、立法および政策立案において全面的には考慮に入れていないことに、懸念を表明する。 12.委員会は、差別の禁止の原則が効果的に実施されるようにするためにとられた措置が不十分であることを、とりわけ懸念する。委員会は、息子優先の風潮が支配的であること、早期婚が根強く残っていること、女子の通学率が男子よりも目立って低いことおよびその中退率が男子よりも高いことに表れているように、女子に対する差別的態度が根強く残っていることに留意するものである。婚姻年齢が女子と男子で異なることも、条約第2条と一致しておらず、懸念される。委員会はさらに、デウキ、クマリおよびデビスといったカーストの制度および伝統について懸念を覚えるものである。委員会はまた、子ども法第7条により、親、家族構成員および教員が「子どもの利益にかなうと思われる場合」に子どもを叩くことが許されていること、および、締約国の報告書が認めるように、子どもの意見が尊重されることがないという事実にも、懸念を表明する。このような伝統的な慣行および態度が根強く残っていることは、子どもの権利の享受を深刻な形で阻害するものである。 13.委員会は、子どもの権利の促進および保護のための政策を実施するに際し、関連省庁間ならびに中央当局と地方当局との間に効率的な調整機構を確立することに関して、締約国の歩みが遅いことを懸念する。 14.委員会は、体系的かつ包括的なデータの収集および適切な指標の確立、ならびに、条約が対象としているすべての領域およびすべての集団の子ども(マイノリティに属する子ども、低層カーストに属する子ども、きわめて貧しい家庭の子ども、農村部の子ども、障害児、施設に措置されている子ども、売買、取引および買春の被害を受けた子どもならびに路上で生活しかつ/または働いている子どもを含む)に関する監視機構の設置に対し、十分な注意が向けられていないことを懸念する。 15.条約第4条の実施に関して、委員会は、利用可能な資源を最大限に用いて子どもの経済的、社会的および文化的権利を実施することに対し、政府が優先順位を与えていないことを懸念する。委員会は、都市部においても農村部においても、もっとも不利な立場に置かれた集団に十分な注意が向けられていないという見解に立つものである。 16.委員会は、とくに遠隔地に住んでいる子どもについて、子どもの出生登録を確保するために十分な措置がとられておらず、かつ、そのためにこのような子どもの基本的権利の享受に悪影響が生じていることを、懸念する。 17.委員会は、学校中退率がとくに農村部に住む女子の間で高いことおよび児童労働が数多く行なわれていることを憂慮する。委員会はまた、保健、社会サービスおよび教育といった基礎的サービスを確保するうえで農村部および遠隔地に住む子どもならびに障害児が困難に直面していることも懸念するものである。 18.第28条に照らし、委員会は、初等教育がすべての子どもにとって義務的となっていないことに、深い懸念を表明したい。委員会はまた、子どもおよび成人の間で非識字率が高いことも懸念する。 19.委員会は、いかなる形態のものであれ、家庭における子どもの不当な取扱いおよび体罰を効果的に防止しかつそれと闘うための適切な措置が、いまなおとられていないことを懸念する。委員会は、条約第39条に照らし、被害を受けた子どもの回復および復帰を確保することを目的とした十分な立法および機構が存在しないことを深刻に憂慮するものである。 20.農村部からの集団移住、極度の貧困ならびに家庭における暴力および虐待のために路上で暮らすことを余儀なくされ、かつ、基本的権利を奪われてさまざまな形態の搾取にさらされる子どもが多数存在し、かつその人数が増加していることは、深い懸念の対象である。 21.委員会は、インフォーマル部門(とくに家事労働、農業および家族内労働)におけるものを含む児童労働に従事する子どもが多数にのぼることを憂慮する。 22.子ども、とくに女子の売買および取引の問題の規模にかんがみ、委員会は、この現象と闘うための具体的な法律および政策が存在しないことを深く懸念する。 23.委員会は、児童買春の現象がますます増加しており、とくに低層カーストに属する子どもに影響を与えていることを、懸念する。委員会は、この現象と闘うための措置がとられていないことおよびリハビリテーションのための措置が欠けていることを憂慮するものである。委員会はまた、薬物依存の子どもの状況に取り組むための措置が十分ではないことも懸念する。 24.少年司法の運営の状況、および、とくに、条約第37条および第40条ならびに北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則のような他の関連の基準にその状況が一致するかどうかは、委員会にとって懸念の対象である。委員会はとくに、刑事責任年齢が低すぎること、国法典(ムルキアイン)第2号の規定によって精神病の子どもを収監しかつ鎖で拘束することが認められていること、および、拷問の法的定義が条約第37条(a)に一致していないことを、懸念する。 E.提案および勧告 25.委員会は、締約国が、条約のすべての規定と法律との全面的な一致を確保するため、とくに条約の一般原則(第2条、第3条、第6条および第12条)を考慮にいれながら、あらゆる必要な領域で十分な法改正を行なうよう勧告する。 26.根強く残って女子に影響を与えている差別的な態度および好ましくない伝統と効果的に闘うため、委員会は、締約国に対し、社会における、かつ、とくに家庭における子どもの権利を促進することを目的として、包括的かつ統合的な広報キャンペーンを行なうよう奨励する。委員会はまた、締約国が、子どもとともにおよび子どものために働く専門家集団(教員、ソーシャルワーカー、保健従事者、裁判官および法執行官を含む)を対象とした、条約に関する具体的研修を確保することも勧告するものである。この目的のため、とくに〔国連〕人権センターおよび国連児童基金との国際協力を求めることが考えられる。 27.委員会は、条約第12条および第42条に照らし、条約の規定および原則が子どもにも大人にも同様に広く知られかつ理解されることを確保するため、さらなる努力が必要とされているという見解をとるものである。委員会は、締約国に対し、子どもの参加権に関する公衆の意識をさらに高めるとともに、学校カリキュラムに条約を編入することを考慮するよう、奨励する。 28.委員会は、子どもの権利に関わるさまざまな政府機構間の調整を中央レベルにおいても地方レベルにおいても強化し、かつ、非政府組織との密接な協力を確保するために、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 29.委員会はさらに、締約国が、条約が対象とするさまざまな領域について、かつ、もっとも脆弱な立場に置かれた集団に属する子どもを含むすべての集団に関して、子どもの状況に関するあらゆる必要な情報を収集するよう勧告する。委員会はまた、経済政策が子どもたちに与える悪影響に特段の注意を払いつつ、条約が認める権利を中央レベルおよび地方レベルで実現するにあたって達成された進展および直面した困難を評価するための、学際的監視システムを確立するよう提案するものである。このような監視システムは、締約国が、適切な政策を策定し、かつ、蔓延する社会的格差および伝統的偏見と闘うことを可能にするはずである。委員会はまた、締約国に対し、子どもの権利の実現を監視し、かつ、これに関する個別の苦情申立てに対処するために、オンブズパーソンまたは人権委員会のような独立の機構の設置を検討するよう奨励する。 30.条約第4条の実施に関して、委員会は、差別の禁止および子どもの最善の利益の原則に照らし、経済的、社会的および文化的権利を実施するための予算配分を、利用可能な資源を最大限に用いることにより確保する必要性に対して特段の注意を向けるよう、勧告する。国際協力に基づく資源は子どもの権利の実現に向けられるべきであり、かつ、対外債務および債務調整が子どもたちに与える悪影響を軽減するための努力が追求されるべきである。 31.すべての子どもが人として認められ、かつその権利を全面的に享受できることを確保するために、子どもの出生登録に優先順位が与えられるべきである。委員会は、移動登録所および学校登録部の設置を含む、子どもの出生登録を確保するためのさらなる措置を奨励する。 32.条約第2条に照らし、委員会は、農村部および都市部における女子の中退率を削減し、女子が児童労働または買春に関与することを防止し、かつ、基礎的サービス(保健、教育および社会的ケア)に対する農村部の子どもおよび全国の障害児のアクセスを強化する目的で、締約国があらゆる必要な措置をとるよう勧告する。政府はとくに、最低層カーストに属する子どもをいかなる形態の搾取からも保護するために、好ましくない態度を変えるための意識向上キャンペーンを含む具体的措置をとるべきである。 33.難民の子どもの保護を促進するため、委員会は、締約国に対し、難民の地位に関する1951年の条約の批准を検討するよう奨励する。 34.条約第19条に照らし、委員会はさらに、家庭におけるものを含むいかなる形態の子どもの不当な取扱いおよび性的虐待とも闘う目的で、政府が、立法上の措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。委員会はとくに、この問題の性質および規模に関する理解を深め、かつあらゆる態様の児童虐待およびネグレクトを防止するための社会プログラムを確立する目的で、公的機関が情報を収集し、かつ包括的な研究に着手するよう提案するものである。 35.委員会はさらに、ネパールのすべての子ども(路上で暮らしかつ/または働いている子どもを含む)の生存権を確保するために確固たる措置をとるよう、勧告する。このような措置においては、あらゆる形態の搾取、とくに児童労働、買春、麻薬関連の活動ならびに子どもの取引および売買から子どもを効果的に保護することが目的とされるべきである。 36.児童労働の問題に関して、委員会は、ネパールが、就業が認められるための最低年齢に関するILO第138号条約の批准を検討するとともに、国内法を子どもの権利条約その他の関連の国際基準に一致させる目的で、関連するすべての国内法を見直すよう、提案する。児童労働に関する法律が執行されるべきであり、査察制度が確立されるべきであり、苦情申立てが調査されるべきであり、かつ違反については厳しい処罰が課されるべきである。家事労働を含むインフォーマル部門の労働に従事している子どもの保護に対し、特段の注意を払うことが求められる。委員会は、政府が、この分野に関してILOに協力を求めることを検討するよう、提案する。 37.子どもの国際的取引および売買と効果的に闘うため、委員会は、ネパールが立法上および行政上の措置を含むあらゆる適切な措置をとるよう提案するとともに、締約国に対し、このような現象を防止しかつ解消するために二国間の措置をとることを検討するよう、奨励する。コミュニティ段階における意識啓発キャンペーンを発展させ、かつ、徹底した監視制度を確立するべきである。 38.少年司法の運営の分野において、委員会は、法改正を追求し、かつ、子どもの権利条約、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドラインおよび自由を奪われた少年の保護に関する国連規則といった他の関連の国際基準を全面的に考慮にいれることを勧告する。その際、刑事責任に関する最低年齢の引き上げ、少年裁判所の設置、現行法の執行、少年非行の防止、自由の剥奪および施設養護に代わる措置、少年司法制度のあらゆる側面における基本的権利および法的保護の尊重、ならびに、少年司法の完全な独立性および公平性に対し、特段の注意が払われるべきである。精神障害を有する子どもを刑務所に措置することを認めた法律は、緊急に見直されなければならない。 39.委員会は、子どもの権利の分野における法改正および子どもとともに働く専門職の研修の分野等において、〔国連〕人権センターとともに技術的援助プログラムを発展させるよう、提案する。その際、とくに裁判官、法執行官、矯正担当官およびソーシャルワーカーを対象とした、関連の国際基準に関する研修プログラムに特段の注意が払われるべきである。子どもの権利条約についての意識啓発キャンペーンおよび情報提供キャンペーンにも注意を向けることが求められる。さらに、子どもの権利に関わる問題がどのぐらい実現されているかを監視するための、人権委員会その他の独立の機構の設置に関して引き続き検討が行なわれるべきである。 40.委員会が懸念を指摘した分野および委員会が行なった勧告に照らし、委員会は、政府が、国際労働機関、国連難民高等弁務官、国連児童基金、世界保健機関を含む関連の国際機関に対して技術的援助を求めることを検討するよう、提案する。条約に規定された権利を促進しかつ保護する目的で、締約国で活動している国際機関のタスクフォースの設置を検討することも考えられる。委員会はまた、国際社会に対し、締約国が現在行なっている努力を援助するよう奨励するものである。 41.委員会は、締約国に対し、第1回報告書、討議の議事要録、および、報告書の検討後に委員会が採択した総括所見を広く普及するよう奨励する。委員会はまた、委員会による提案および勧告のフォローアップを確保する手段として、これらの文書に対して議会の注意を喚起するよう提案したい。 更新履歴:ページ作成(2012年11月1日)。
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総括所見:アイスランド(第2回・2003年) 第1回(1996年)/第3回・第4回(2011年)OPAC(2006年)/OPSC(2006年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/15/Add.203(2003年1月31日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2003年1月28日に開かれた第856回および第857回会合(CRC/C/SR.856 and 857参照)において、2000年4月27日に提出されたアイスランドの第2回報告書(CRC/C/83/Add.5)を検討し、2003年1月31日に開かれた第862回会合において以下の総括所見を採択した。 A.序 2.委員会は、第2回報告書が委員会の報告ガイドラインにしたがっていることに留意するとともに、豊富な情報を含む文書回答が提出されたことを評価する。委員会はまた、ハイレベルな部門横断型の代表団の出席が、締約国における条約の実施に関する開かれたかつ率直な対話に貢献したことも評価するものである。 B.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、前回の勧告にしたがって締約国がとったフォローアップ措置に評価の意とともに留意する。委員会はさらに以下の措置を歓迎するものである。 (a) 武力紛争への子どもの関与ならびに子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する条約の両選択議定書の批准。 (b) 2002年子ども保護法の採択。 (c) 子ども保健センターの設置。 (d) アルコールおよびタバコの消費への対応および精神医学サービスの範囲の拡大ならびに事故に関連する負傷および死亡の削減を目的とする子どものための戦略を含む、国家保健計画の採択。 C.主要な懸念事項および勧告 1.実施に関する一般的措置 宣言 4.委員会は、条約第9条および第37条を全面的に遵守するために締約国がとりつつある措置(とくに、2002年子ども保護法の規定、および、間もなく通過することが期待されている、子ども保護事件における唯一の決定権限を裁判所に与える法案、ならびに、警察保護観察局と政府子ども保護庁との間で1998年に締結された、18歳未満の受刑者を本人の申請により子ども保護庁の監督下にある処遇施設に収容できるようにする協定)について代表団から提供された情報に留意する。にもかかわらず、委員会は、締約国が第9条に関する宣言をまだ撤回していないことを遺憾に思うものである。さらに委員会は、1998年の協定は、条約第37条C項〔ママ〕に掲げられた、成人からの分離の法的保障には至らないと考える。 5.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 条約第9条との全面的一致を確保するための法律の公布を急ぐこと。 (b) 条約第37条C項〔ママ〕にしたがい、拘禁された子どもと成人との分離を法律で保障すること。 立法 6.委員会は、とくに子どもの監護に関わる子どもに関する法律案について締約国から提供された情報に留意する。 7.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 同法および子どもに関わるその他の法律ならびに行政規則が、人権を基盤とし、かつ条約に一致したものであることを引き続き確保すること。 (b) これらの法令の効果的実施にために十分な体制(予算配分を含む)が整えられることを確保すること。 (c) 法律、政策および予算の立案における子どもの権利影響評価の制度的活用を検討すること。 調整 8.委員会は、包括的な、部門横断型の国家子どもの権利政策を立案しようとする締約国の努力を歓迎する。委員会はさらに、2002年子ども保護法で、社会問題省および各自治体当局が、子どもの保護に関する4年間の行動計画を提出しなければならないとされていることを歓迎するものである。 9.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 2001年5月の議会決議に基づき設置された委員会に対し、条約の実施に関する部門横断型の調整を行なう恒常的な権限を与えることを検討するか、そのような職務を果たすための、十分な権限および資源を与えられた他の機関を設置すること。 (b) 子どもの権利に関する国家計画および2002年子ども保護法で求められている計画の作成および実施が、人権を基盤として、かつ開かれた、協議型および参加型のプロセスを通じて進められることを、引き続き確保すること。 (c) とくに自治体レベルで(すなわち自治体均等化基金を通じて)、諸計画を実施するための十分な資源が配分されることを引き続き確保すること。 データ 10.委員会は、文書回答で提供された統計データを歓迎するとともに、子どもに関するデータを組織化されたやり方で収集しかつ分析する必要性を締約国が認めていることを、心強く思う。 11.委員会は、締約国に対し、以下のを措置をとるよう奨励する。 (a) 条約が対象とするすべての分野について、18歳未満のすべての者(移住者である子どもを含む)に関する統計を引き続き収集すること。 (b) 当該データを、進展を評価し、かつ条約実施のための政策を立案する目的で引き続き活用すること。 (c) この点に関する統計について包括的な年次調査を行なうことを検討すること。 監視体制 12.委員会は、子どもオンブズマンによって行なわれている卓越した活動を歓迎する。しかしながら委員会は、締約国による資源の提供が、調査件数の増加を含め、オンブズマンの活動に十分に釣り合っていないことを懸念するものである。 13.委員会は、同機関が条約の実施を監視する職務を効果的に遂行できるようにするため、締約国が、同機関に対して十分な人的資源および財源が与えられることを確保するよう、勧告する。 資源配分 14.委員会は、子どもの経済的、社会的および文化的権利のための包括的かつ漸進的な資源配分が中央および自治体のレベルで行なわれていることに留意する。しかしながら委員会は、この点に関していっそうの努力を行ないうるという見解に立つものである。 15.条約第4条に照らし、委員会は、締約国に対し、子どもの経済的、社会的および文化的権利のための資源配分を――利用可能な資源を最大限に用いて――増加させるよう奨励する。 国際協力 16.委員会は、国際協力の分野で締約国が行なっている貢献およびさまざまな子どもの権利関連の活動に、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、政府開発援助が、絶対額では増加していながらも、対国内総生産(GDP)比では増加していないことに留意するものである。 17.委員会は、締約国に対し、とくに国際開発援助にGDPの0.7%を配分するという国際連合の目標達成のために努力することにより、国際協力の分野における活動を継続しかつ強化するよう、奨励する。 研修/条約の普及 18.委員会は、条約を普及するために締約国が(たとえば「私の権利」というブックレットおよび条約に関する教員向けハンドブックを通じて)行なっている努力を歓迎する。 19.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励するものである。 (a) 子どもおよび親の間、市民社会の間ならびにすべての行政部門および行政段階で条約およびその実施に関する情報を普及するためのプログラム(非識字であるまたは正規の教育を受けていない、脆弱な立場に置かれた集団に情報を届けるための取り組みを含む)を強化し、拡大し、かつ継続的なものとすること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(たとえば裁判官、弁護士、法執行官、公務員、地方政府職員、教員および保健従事者)を対象とする、子どもの権利を含む人権に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 2.子どもの定義 20.アイスランド法(たとえば1997年成年法)で子どもが18歳未満の者と定義されていることには留意しながらも、委員会は、この定義と一致しない規定が他の法律に残っていること(たとえば子ども手当が支給されるのは16歳まで)を懸念する。 21.委員会は、締約国が、現行法(たとえば1997年成年法)との年齢制限の一致を確保するために法律を見直すよう、勧告する。 3.一般原則 差別の禁止に対する権利 22.アイスランドで外国系の人々の人数が増加していることから、委員会は、そのニーズに対応するために(たとえば、外国人に関する2003年法の採択、国家警察における特別代表の任命、保健専門家向けの文化的寛容に関する刊行物およびレイキャビクにおける異文化間センターの設置を通じて)締約国が行なっている努力を歓迎する。にもかかわらず、委員会は、アイスランドにおける移民の増加にともなって生じる可能性がある人種主義の問題に率先して対応するため、さらなる努力が必要であることを懸念するものである。 23.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 第2条にしたがい、自国の管轄内にあるすべての子どもに対して条約に掲げられたすべての権利を保障すること。 (b) 発展しつつある移民の現象に対応するための包括的なかつ調整のとれた政策(寛容を促進するための広報キャンペーンも含む)を策定するとともに、人種主義的動機に基づく行為を監視し、かつこのような行為に関するデータを収集すること。 (c) 自治体、とくに学校制度における移民の子どもの状況、および、その統合を促進するためにとられている措置の有効性について研究を行なうこと。 (d) 「人種主義、人種差別、外国人排斥および関連のある不寛容に反対する世界会議」で採択されたダーバン宣言および行動計画をフォローアップするために締約国が実施した措置およびプログラムのうち条約に関わるものについて、条約第29条1項(教育の目的)に関する一般的意見1号も考慮に入れながら、次回の定期報告書で記載すること。 子どもの最善の利益 24.委員会は、子どもの最善の利益の原則が2002年子ども保護法第4条に編入されたことを歓迎する。 25.委員会は、締約国が、子どもに関連するすべての法律および実務に条約第3条を全面的に編入するための努力を引き続き行なうよう、勧告する。 子どもの意見の尊重 26.委員会は、ユースネット議会をはじめ、子どもたちが自己の意見を知らせることのできるいくつかの体制がアイスランドで設置されたことを歓迎する。にもかかわらず、委員会は、子どもたちに対し、自己に影響を与える政策(たとえば学校運営、規律措置の管理、有害物質濫用の防止、関連のコミュニティ計画問題など)に直接貢献する機会が十分に与えられていない可能性があること、および、どのようにすれば効果的に貢献でき、かつその意見(たとえばユースネット議会の決議)がどのように考慮されるのかについて十分な情報を与えられていないことを、懸念するものである。 27.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 資源を十分に提供すること等も通じ、ユースネット議会への支援を強化すること。 (b) 条約第12条にしたがって、引き続き、家庭、学校、裁判所、行政機関および地方当局における子どもの意見の尊重を促進し、かつ自己に影響をあたえるすべての事柄への子ども参加を推進すること。 (c) 親、教員、ソーシャルワーカーおよび地方公共職員を対象として(たとえばパンフレット「土地を受け継ぐ者たち……その声は聞こえない」を活用しながら)コミュニティの現場で行なう、子どもたちに対して十分な情報に基づく意見および見解を表明し、かつその意見を考慮してもらうよう奨励するためのスキル訓練プログラムを開発すること。 4.家庭環境および代替的養護 暴力/虐待/ネグレクト/不当な取扱い 28.委員会は、家庭におけるネグレクトおよび不当な取扱いから子どもを保護するための包括的な諸規定を掲げた2002年子ども保護法の採択を歓迎する。委員会はまた、性的虐待を受けた子どもを治療する「チルドレンズ・ハウス」が設置されたことにも留意するものである。 29.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 現行法の規定に基づく体罰の禁止(家庭におけるものも含む)に関する親、その他の養育者および公衆一般の意識啓発を図ること。 (b) 引き続き、締約国全域で「チルドレンズ・ハウス」の考え方を強化し、かつそれが設置される地域を拡大すること。 (c) 子どもの不当な取扱いの悪影響に関する公衆教育キャンペーンを実施するとともに、体罰に代わる手段として積極的かつ非暴力的な形態の規律およびしつけを促進すること。 (d) 被害者に対してケア、回復および再統合を提供するために十分な資源を配分すること。 (e) 教員、法執行官、ケアワーカー、裁判官および保健専門家を対象として、不当な取扱いの事案の発見、通報および処理についての研修(虐待の被害を受けた子どもにとってもっとも害が少ない事情聴取法に関わるものも含む)を行なうこと。 親の援助 30.委員会は、子どもがいる家族への支援に関わる事柄についての包括的政策に対する締約国のアプローチを評価する。このようなアプローチは、公式な家族政策に関する議会決議、家族評議会の設置、ならびに、男女の平等な地位および平等な権利法(2000年)および父性母性法(2000年)の採択から明らかである。しかしながら委員会は、以下のことを懸念する。 (a) 自治体による家族政策の策定が十分に重視されていないこと(いまのところ数件しか策定されていない)。 (b) ひとり親家族に対する支援が不十分であること。 (c) 子どもが病気の親に与えられる休暇が不十分であること。 (d) より一般的には、親の援助の分野における取り組み(評議会の活動の効果を含む)が、人的資源および財源の十分な配分なしには限られたものになるであろうこと。 31.条約の規定、とくに第18条および第27条にしたがい、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 自治体に対して公的家族政策の策定を奨励するためにいっそうの努力を行なうとともに、その際、当該政策が人権を基盤としたものになること、および、自治体に対して目標達成のための十分な資源が提供されることを確保すること。 (b) ひとり親家族への支援を強化するためにいっそうの努力を行なうこと。 (c) 子どもが病気の親が利用可能な休暇期間を延長すること。 (d) 家族評議会に対し、その任務を効果的に遂行するための十分な資源が提供されることを確保すること。 5.基礎保健および福祉 障害のある子ども 32.委員会は、締約国が障害のある子どものインクルージョン政策をとっていることを歓迎するとともに、最近採択された、慢性疾患児に関する政策(保健、社会保障、教育および費用の提供を含む)に留意する。委員会はさらに、長期疾患児および障害児をケアするための施設が最近開設されたことにも留意するものである。 33.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 障害児の家族に対する支援を増強すること。 (b) 障害のある子どもによる権利の享受についてのデータの収集および分析を引き続き行なうこと。 (c) 障害のある子どものすべてのニーズを満たすための努力を継続しかつ強化すること。 思春期の健康 34.委員会は以下の情報を歓迎する。 (a) アイスランドの一部の保健センターが、有害物質の濫用、性感染症、リプロダクティブヘルス情報および精神保健カウンセリングに関するものも含む青少年向けの特別サービスを提供していること。 (b) 保健庁長官が自殺防止のためのプログラムを開始したこと。 35.委員会は、締約国に対し、以下の措置をとるよう奨励する。 (a) 保健サービスへのアクセス(教育制度を通じてのものも含む)を拡大するための努力を強化すること。 (b) 思春期の健康問題の性質および規模についての研究および評価を継続するとともに、青少年の全面的参加を得ながら、これを政策およびプログラムの策定のための基礎として活用すること。 6.教育 36.委員会は、多くの学校でいじめ反対キャンペーンが採用されていること、および、ライフスキルに関する科目が含まれていることに、評価の意とともに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを懸念するものである。 (a) 条約第29条に掲げられた教育の目的(すなわち、人権、寛容ならびに男女間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等の尊重の発展)が、締約国全域のカリキュラムに明示的に含まれているわけではないこと。 (b) とくに中等段階において移民の子どもの中退率が高いこと。 37.委員会は、締約国が、教育の目的に関する委員会の一般的意見1号を考慮しながら以下の措置をとるよう、勧告する。 (a) とくに人権、寛容ならびに男女間ならびに宗教的および民族的マイノリティ間の平等の尊重の発展との関連における人権教育(子どもの権利を含む)を、すべての初等中等学校のカリキュラムに明示的に含めること。 (b) 移民の子どもの中退の問題に対応するための措置を強化すること。 7.特別な保護措置 性的搾取 38.委員会は、児童ポルノに関する法律(2000年)が新たに採択された旨の情報を歓迎する。委員会はさらに、さまざまな勧告を掲げた、児童買春および児童ポルノの規模に関する政府研究報告書を歓迎するものである。しかしながら委員会は、性的同意年齢がどちらかといえば低い(14歳)ことから、14歳以上の子どもが性的搾取から十分に保護されない可能性があることを懸念する。 39.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 前掲政府報告書に掲げられた勧告を速やかに実施するため、あらゆる必要な措置をとること。 (b) 14歳以上の子どもが性的搾取から効果的に保護されることを確保するための立法措置をとること。 (c) 1996年および2001年の子どもの商業的性的搾取に反対する会議で採択された宣言および行動綱領ならびにグローバル・コミットメントにしたがい、性的搾取と闘うための国家的行動計画を策定しかつ実施すること。 少年司法の運営 40.委員会は、いくつかの特別措置(たとえば、逮捕者の法的地位および尋問に関する規則第395/1997、および、性的犯罪の被害を受けた子どもの事情聴取に関する改正刑事訴訟法の規定)を除き、締約国で包括的な少年司法制度が整備されていないことに留意する。 41.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 少年裁判所を含む少年司法制度を確立すること。 (b) 条約の規定、とくに第37条、第39条および第40条、ならびに、北京規則、リャド・ガイドライン、自由を奪われた少年の保護に関する国連規則および刑事司法制度における子どもに関する行動についての指針のようなこの分野における他の関連の国際基準が、刑事司法制度に関わる法律および実務に全面的に統合されることを確保すること。 8.報告書の普及 42.条約第44条6項に照らし、委員会は、締約国が提出した報告書および文書回答を広く公衆一般が入手できるようにするとともに、関連の議事要録および報告書に関する委員会の総括所見とともに報告書を刊行することを検討するよう勧告する。このような文書は、締約国の行政のあらゆる段階においてかつ一般公衆(関心のあるNGOを含む)の間で条約ならびにその実施および監視に関する議論および意識を喚起するため、広く配布されるべきである。 9.次回報告書 43.委員会が採択し、かつ報告書(CRC/C/114およびCRC/C/124)に掲載した報告の定期性に関する勧告に照らし、かつ締約国の第3回定期報告書の提出期限が第2回報告書の検討から2年に満たないことに留意し、委員会は、締約国に対し、第3回・第4回統合定期報告書を2008年5月26日(すなわち、第4回定期報告書の提出期限として条約で定められた日の18か月前)〔まで〕に提出するよう、慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2012年4月2日)。
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443 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 00 58 31.67 ID RFUPpyI0 どんだけ☆エモーション(その13) サトシが帰った後、母さんは俺を呼びに部屋にやって来た。 「ミヒロちゃ~ん、いいかしら?」 「…」 相変らず俺はベッドに突っ伏していた。 「サトシちゃん、帰ったわよ~。」 「…」 母さんはベッドに腰掛けると俺の上半身をやさしく起こす。 「も~、涙で折角の可愛い顔が台無しじゃない~?」 「…グス、グスッ」 なかなか気持ちの治まらない俺は泣き続けていた。 …涙が止まらない。 何とかして心を静めようと努力しているんだけど、さっきのサトシと母さんのやり取りが 頭の中から離れないんだ。 …自分の中で分かっていたのに。 今後はヒロアキじゃなくてミヒロとして生きていかなくてはならない事。 分かっていたからこそ気持ちを切り替えてやっていこうとしていたのに。 だけどあのサトシの姿を見た時に俺の中で全てが崩れてしまった。 どうすることもできないからこそ、つらい気持ちだけが俺の中でループしている。 いつまでもこのままで居ても何の進展も無いのは分かっているけど …涙はいつまで経っても止まらないんだよね。 「もう、泣き虫さんね~、ミヒロちゃんは何時からこんなになっちゃったのかしら~?」 そう言うと母さんは俺を抱きしめる。 「…」 母さんの柔らかい胸の中に顔をうずめると不思議に心が落ち着いてきた。 …確か女の子になってしまった初めの頃、マルさんとの出会いで気持ちが混乱した時も 母さんに抱きしめられて気持ちが落ち着いたよな。 ホント不思議だよなぁ、母さんって。 実由もそうだけど暖かい感触に包まれて、トクントクンと一定のリズムで続いている心音を 聞いていると心がすごくリラックスする。 444 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 00 59 45.37 ID RFUPpyI0 「ミヒロちゃん、つらいのよね~?」 「…うん」 精神的に参ってしまったせいか、母さんの問いかけに素直に答える俺。 「どうしてつらいの~?」 「…それは…」 母さんの問いかけに言い淀む。様々な思いが俺の中で渦巻いて混乱しており、 何から言えばいいのか分からない。 「これまでのようにサトシちゃんと仲良く出来ないからかしら~?」 「…それもある」 「ミヒロちゃんはどうしたいの~? 昔のように仲良くしたいの~?」 「…うん、…でも無理だよ」 「どうして~?」 「だって、俺は男のヒロアキじゃないから。すっかり姿かたちが変わってしまって、 サトシはきっと俺だって信じてくれないよ」 「果たしてそうかしらね~? 意外にあの子、鋭いところあるわよ~」 微笑みながら俺の表情をのぞき込む母さん。 「…」 確かに、と俺は一瞬思う。 サトシって結構鋭いところを持っているのは俺が知っているところではある。 女の子に変わってしまった俺と初めて会った時に俺に対して妙な親近感を持ったらしいから ミヒロとヒロアキとの関係に心のどこかで気づいているのかも知れないが 俺はサトシじゃないからその辺りは分からない。 「ミヒロちゃんが思っている以上にサトシちゃんは分かってくれるわよ~? だって、ホントに友達思いのいい子だもん~。」 「うん…」 思わず頷く俺。 俺も今回の一件が無ければサトシの事は単なる親友という"言葉"の括りの中でしか 奴のことを捉えられなかったかも知れない。 そう考えると俺はサトシという本当の親友に出会えた事を幸せに思うべきであるし、 奴に感謝すべきであろう。 445 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 01 45.32 ID RFUPpyI0 「今回の件は私も実由ちゃんもヒロちゃんの為に秘密にすべきところは 徹底してきたけれど、今後の事を考えるとサトシちゃんという理解者が あなたにとって必要だと思うの~」 「…うん、そうだね」 母さんの言葉に素直に頷く俺。理解者は多ければ多いほど良いだろう。 サトシであれば尚更良いに決まっている。 …だけど。 「素直にサトシちゃんに自分の事話したらどう~?」 「…」 答えられない俺。その言葉が俺の中でずしっと重くのしかかってくる。 「ミヒロちゃん~?」 「…うん、母さんの言いたい事は俺も分かっているつもりだよ、だけど」 「だけど~?」 「…怖いんだ、自分の正体を晒してもしサトシが俺のもとから 居なくなってしまったらと思うと…」 …そうなんだ。 俺が女の子になった事によって一番恐れている部分、 それはサトシに俺の存在を否定される事。 これまで築いてきた関係が壊れてしまう事。 「…ミヒロちゃん」 「…だから俺はサトシにミヒロがヒロアキである事を話すつもりも無かったし、 ヒロアキという存在が海外から帰って来ない話になった時も それでいいかなって、思ってたんだ」 「駄目よ~、ミヒロちゃん、現実から目を逸らしたら~。 あなたはどこまでいってもヒロちゃんだもの。 サトシちゃんとのこれまでの関係を全て無かった事にできるの~?」 「そ、それは…」 言葉に詰まる俺。 「出来ないでしょ~? それはヒロちゃんを否定する事になるし、 サトシちゃんに対する裏切りにもなるわよ~?」 これまでの自分の否定とサトシに対する裏切り。 …母さんの言葉が俺に重くのしかかる。 「そ、そんなの嫌だよ、サトシを裏切るなんて! …俺はそこまで考えてなかった」 「じゃあ、伝えないと~、サトシちゃんに本当の事をね~」 446 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 03 16.76 ID RFUPpyI0 …母さんの言っている事はもっともだと思う。 俺の事を本気で心配してくれているサトシ。 それに応えることの出来ない俺。 だけどサトシに対して俺のすべき事が無いわけでは無い。 それは本当の自分をあいつに教える事。それが今の俺に出来るサトシへの誠意かも知れない。 …だけど、だけど。 「でも、怖いよ。…あいつに拒絶されたら、俺はどうしたらいいのか分かんないよ…」 … あ、やだ。 …サトシに拒絶されるイメージが浮んできた途端に悲しくって涙が出てくる。 「大丈夫よ~! ミヒロちゃんっ!!」 それを察知したのか母さんは俺をギュッと力強く抱き締める。 「か、母さん!?」 「もう、ミヒロちゃんったらホント泣き虫さんね~。こんな泣き虫な女の子は もう"俺"なんて言う資格がないわよ~」 以前母さんに禁止されていたにも関わらず「俺」を使い続けている事について 母さんは不満に思っていたらしく、珍しく怒った表情をしている。 「え…、でも…」 急に話の展開が変わった事に戸惑いの表情を浮べる俺。 「でも、じゃ無いの~! 駄目ったら駄目~!!」 「…ヤダよ、"私"なんて。格好悪い…」 「可愛い女の子が"俺"という方がずっと格好悪いわよ~! もう、そんな事いうなら こうしちゃうんだから~!」 母さんはいきなり俺の脇やら腰やらをくすぐり始めた。 「ひ、ひゃんっ!? や、やだっ」 母さんの行動の意図が分からず焦る俺。 「う~ん、恥じらいにまだ"照れ"があるわね~、まだまだ足りないかしら~」 母さんはそういうとさらにくすぐりを続ける。 「やっ、あうっ、んっ」 俺は一応抵抗しているものの、腕力が普通の女の子並なので母さんに敵わない。 為すがままにくすぐられる。 447 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 04 26.63 ID RFUPpyI0 「こちょこちょこちょ~」 「うう~ん、ああっ」 「それそれそれ~」 「ひゃは、はあんっ、くううっ」 母さんはどさくさに紛れて俺の胸まで揉んできた。 ち、ちょっと、母さん!? 「ミヒロちゃんの反応があまりに可愛すぎるから、ついつい~、ね~」 「…ああん、やだっ」 気がつかないうちに嫌がる仕草が女の子のようになっている俺。 「うふふ~、可愛い~」 小悪魔的な笑みを浮べつつも手の動きを止めない母さん。 …母さんの攻撃に何とか我慢し続けていたのだが …あ~っ あ~! も~っ!! 限界っ~!! 「わ、分かりましたっ!! 俺、止めるからっ! 私って、いうから!!」 「ホント~?」 「ホ、ホントですっ! 私、言いますっ!」 母さんの攻撃(?)に陥落する俺、と言うか私? … はあはあと息を切らす俺と母さん。 「ふふっ、多少は気は紛れたかしら~? 」 「母さん…」 母さんが俺の気持ちを紛らわすためにこんな事をしてきた事に気付く。 …でも何だかさっきの母さん、いつもより生き生きしてたような気がするのは気のせい? さっきの騒ぎで荒れ果てたベッドのシーツや布団を整えると 俺と母さんは座り直して向き合った。 「どう~、ちょっとは落ち着いた~?」 「…うん、ありがとう、母さん」 母さんは俺の頭を撫ぜつけながら俺を抱きしめる。 「大丈夫よ~、あの子を信じてあげて~。 あなたが思っている以上に サトシちゃんは強い子よ~。 あなたの全てを受け入れてくれるだけの強さをもっているわ~。…だから、ね。」 「…うん、おr、じゃなかった、私、頑張って…みようかな」 母さんの言葉に俺の中で不思議に気持ちが強くなっていくのを感じる。 448 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 05 33.03 ID RFUPpyI0 ピンポーン。 再び、玄関のインターホンの鳴る音。 「あら~? 実由ちゃんが帰ってきたようね~?」 「そうみたい」 「それじゃ~みんなで夕食の準備をしましょ~」 母さんはそう言って玄関に向かっていく。 「うん、そうだね」 (……) …ん? マルさん? (……) 反応が無い。 さっきまで母さんと一緒になって盛り上がっていたのに 今はマルさんの心の動きが全然感じられないのですが。 (ミヒロちゃん…ごめんね) ―…ん? マルさんの声がする。 明るくホンワカとした雰囲気の彼女と打って変わって暗く沈みがちな声。 (…私のせいだよね、ミヒロちゃんがこんなに苦しむ事になったのは…) ―…え? どうしたの? マルさん、急に。 母さんと一緒に夕食の準備に取り掛かろうとしていた俺だったが マルさんの状況に思わず動きを止めて彼女の様子を窺う。 (あの時、私がミヒロちゃんと一緒にならなければミヒロちゃんが女の子になる事は 無かった…だからこれは私のせい…) ―ち、ちょっと、マルさん? マルさんのいきなりの行動に焦る俺。 考えてみたらここまでマルさんの落ち込んだ状況は初めてだ。 どうしたらいいのか分からなくなる。 449 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 06 54.36 ID RFUPpyI0 (…ミヒロちゃんの気持ち、ココロの辛さ、…一心同体の私だからこそ良く分かる。 …そもそもの原因である私にはミヒロちゃんに謝って済む問題じゃないけど、 本当にごめんなさい…謝るしか…これしか無いから…私には…) ―な、何言ってるんだよ? 馬鹿な事言うなって。 …俺は別にマルさんのせいだなんて思ってないよっ。 (…でも…) さっきまでメソメソしていた自分の事は棚に置いて 俺は頭の中でマルさんに強い気持ちで話しかける。 ―…結果的にはこんな事になってしまったけど、俺はマルさんのお陰で生きていられたんだし マルさんとの出会いだってそんなに悪くないって思っているんだよ? (…私の…お陰…?) あの時、あの場所で俺とマルさんが衝突してしまったことによって起こってしまった悲劇。 実際であれば双方ともに生きている事が出来ない状況だった(とマルさんが言っていた)が、 本来持っていたマルさんの"能力"によって俺とマルさんは一つになって生きている。 …俺は女の子になっちゃったけど。 ―俺とマルさんとの事故について起こってしまった事については仕方無いよ。 別に誰かを責めるつもりなんて俺は全然考えてないし、責めたところで何かが変わる 訳でもないし。 (……) ―とりあえず俺にとってはこれからの事が大事だと思う。 今後女の子として生活していく俺にとって気持ちが揺らぐ事があるかも知れない。 だけどマルさんが居るなら俺は何とかやっていけると思うんだよね。 (……) 450 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 08 08.61 ID RFUPpyI0 ―マルさんは俺の事をどう思っているのか分からないけど、俺はマルさんの事、大好きだよ。 今は居てくれなきゃ困る位の存在になっているもの。 (…私だって、ミヒロちゃんの事、……大好き…) マルさんの意識が俺の中に流れ込む。か細くも照れてはにかんだ感じ。 ―だから、マルさんはマルさんらしくいつものように振舞ってくれればいいんだよ? そうしてくれた方が俺としては嬉しいから…、ね? 我ながら恥ずかしい事を言ってしまったような気がするが これでマルさんが元気になればいいと思う。 (…ミヒロちゃん…、あり…が、…と…グスっ、グスッ) ―ちょ、ちょっと、マルさん、泣かないでよっ!? 慌てる俺。俺の意識の中にマルさんの色んな感情が雪崩れのように入りこんでくる。 でもその感情のほとんどは俺の言葉に感激している気持ちが大半を占めているようで。 (…ゴメ…わたし…限界っ、…ふぇえぇぇぇ~ん!!) 「ち、ちょっと、マルさんって、…グス、グスッ」 マルさんの感情に感応されたのか俺までがポロポロと泣き出す。 (グスッ…だって、嬉しいんだもん、グス…実はずっと私、気にしていたから…。 …私のせいでミヒロちゃん、いえ、ヒロアキ君が女の子になって苦労していたから。 ずっと私は目の当たりにしていたから…申し訳ない気持ちにいつも苛まれていたの…。 だからミヒロちゃんにそんな風に言ってもらえると…グスッ、嬉しいよぉっ! うぇえええ~ん!!) 「グスッ、わ、分かったから、マルさん、感情を抑えてっ! 感情が洪水のように押し寄せてくるもんだから…おr、じゃなかった、私まで…泣いちゃうよっ!」 一心同体の俺とマルさん。 2つの意識が同じ身体を共有しているもんだから、これはこれで大変な事で。 結局、大泣きのマルさんに感応されて俺までも一緒に泣いちゃって 母さんと帰ってきた実由の二人になだめられることになったのは言うまでもない…。 451 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 09 19.33 ID RFUPpyI0 ◇ 「それにしてもビックリしたよっ、帰ってきたらお姉ちゃん達があんなに泣いているんだもん」 夕食の肉ジャガを頬張りながら実由は呟く。 「えーと、…まぁ」 (エヘヘ…そんな訳ですww) 俺とマルさんの二人は恥ずかしそうにして夕食を食べる。 「まぁまぁ、いいじゃない~、本当に二人とも仲が良いんだからね~」 母さんは俺たちを微笑ましそうに見ている。 本来であれば俺(ミヒロ&マルさん)と母さんと実由で夕食を作る予定であったのだが、 なかなか泣き止まない俺達をなだめる為ずっと実由が付きっきりになり、 母さんが一人で夕食の準備をすることになってしまった。 …ゴメン、母さん。 「…でも、何だかいいよねっ♪ 前よりも二人の気持ちが繋がったというか、 ものすごく仲が良くなったというか、そんな感じがするのはあたしの気のせいかな?」 「…そう?」 (どうなのかしら…?) 本人たちは全く意識は無いのだが、言われてみると違うのかも知れない。 日を追う毎にシンクロが進んでいるのもあるけど、さっきの一件でお互いの壁がさらに一つ 取っ払う事が出来たのかな? (…私は嬉しいよ…ミヒロちゃんと仲良くなっていくのは……) ―俺だって嬉しいよっ、今更言うまでも無いけどねっ。 (……) 452 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 10 22.03 ID RFUPpyI0 「はいはい、ご馳走様☆」 「ふふっ、ホント仲が良い事は良いことよね~。…それはそうと、 ミヒロちゃん~わかってるわよね~」 母さんの目がキラリと光る。 「わ、分かってますっ! "私"ですよねっ! ちゃんと言いますからっ!」 (ふふ…ミヒロちゃん、大変…ww) もう、何と言いますか。脳内で自分の事を"俺"って言っているもんだから 心の中が読まれているおr、じゃなかった、私としてはナレーションしづらいの何の。 母さんの表情が笑っているのが…何だか恐いんですけど! …でも、ナレーションの時位は勘弁して下さい。 一応はHKOKな話ですので。 …ホントだよ? 「仕方無いわね~」 …え? ◇ 453 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 12 16.51 ID RFUPpyI0 …こうして夕食も終わり、片付けを終わらせると自分の部屋に戻る俺。 何だか非常にぐったりしてしまったせいかまだ寝る時間には程遠いがベッドに寝そべる。 「…ふぅ」 本日も色々有って思わず溜め息をつく。 (…ミヒロちゃん) 心配そうなマルさんの意識。 ―マルさん、大丈夫だよ。そんな心配そうな気持ちにならないでよ。 (うん、…そうだね) とは言えマルさんには俺の心に迷いがあるのはモロバレなんだろうな、と思う。 …俺にとっての"迷い"とはサトシに俺の事を打ち明ける事。 正直なところ決断がつかないし、そのきっかけをどうやって作るか見当もつかない。 でも母さんにも言われたようにここで決着をつけない事には サトシも俺も苦しみ続けるのは言うまでも無い事である。 …俺はともかく、サトシが俺の事で悩み苦しむのは耐えられないよ。 とにかく、こうしていても事態が進展しないのは言うまでも無い事で、 何かいい方法は無いものか。 「ふぅ、それにしても何だか身体が重たいなぁ…、昨日の疲れが溜まっているのかな?」 昨日の今日でかなりの疲労だったのか、自分の手足が重く感じる。 (……) …あらためて自分の体力が女の子になっているんだなぁ、と実感する俺。 あんまり無茶しちゃ駄目なんだな…。 …ぱたぱたぱた。 一階の方から人の動く物音がする。 「ミヒロちゃ~ん、電話よ~」 ぼんやりとしながら色々な考え事をしていると母さんがいきなり俺を呼ぶ。 454 :vqzqQCI0 :2009/01/17(土) 01 13 18.72 ID RFUPpyI0 「…電話?」 思わず呟く俺。 って、…誰? 電話って? 現状の俺(ミヒロ)に電話で心当たりのある相手。 実際のところ今の俺と関係のある人間って誰だろうか? …母さんや実由、学校関係だと千絵先生? 色々考えてみるが他に思い当たる人物が居ないぞ。 母さんが普通に俺に繋ぐ相手だから特に問題は無いのだろう。 とりあえず呼ばれたので行ってみることにする。 ちなみに俺の携帯電話は一応持っている事は持っているのだが ほとんど使っていない。…というか、"ヒロアキ"所有のものなので ミヒロが持っているのはおかしいし、使うわけにもいくまい。 現状は母さんや実由との連絡用として持っているだけである。 「母さん、おr、じゃなかった、私に電話って誰?」 怪訝な表情を浮かべ尋ねる俺。 「うふふ~、誰でしょうね~?」 なんか嬉しそうな表情の母さん。…怪しいな。 「怪しくなんてないわよ~、ホラ、受話器を取って~」 「…大丈夫なんだろうね?」 「へいき、平気よ~」 言われるままに受話器を取る俺。 「…もしもし?」 相手が誰だか分らないので恐る恐るなのは言うまでもありません。 『…あ、ミヒロちゃん?』 若い男性の声。 …というか聞き覚えがありますよ? この相手って… 「サトシくん!?」 思わず声を上げる俺。 先ほど俺の家に来ていたサトシが何故、電話を? しかも俺宛てに?
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迷言集別館。純粋無垢な女の子編。 迷言集のところに神騎さんが貼り付けてくれたのですが、ちょと分からなかった(見つけられなかった)方も居る様でしたので改めて…。 2010年1月4日。 VANさんの奥様、まにちゃん編。 ・同伴…一緒に連れて行くこと。多く、男女・夫婦が連れ立って行くことにいう。 ・同伴出勤…それ系のお店で使われる事がほとんどです…。 話題が切り替わろうかというタイミングで爆弾を投げて行ってますねw まにちゃんw そして、このやりとりの後に何も知らずにインしてきたるーちなさんw 2010年1月4日。 いつも元気な女の子。るちなん編。 ・テラ(tera, 記号 T)は国際単位系 (SI) における接頭辞の一つで、基礎となる単位の10の12乗(=一兆)倍の量であることを示す。 ・モエス…萌える。ドキドキづるとかそういう意味…ですよね? ・足してテラモエス…と解釈しています。中川祥子さんが良く使う言葉ですね。 完全に混乱してたみたいですね…(^-^;) 意味不明のまま突っ走っちゃってごめんなさいッw このページへのコメントは以下へどうぞ☆ 編集権限出しておきました。 -- ラクシュミィ (2010-01-05 23 11 16) …編集終わったかな?しかし、何度見ても笑えるな -- 神騎 (2010-01-06 00 43 27) どなたか知りませんが、編集ありがとうでしたーw まにちゃんとるちなんさんが汚されていく…気もしますが…(^-^;) -- Estia (2010-01-06 00 56 31) あ~……こっちのページができたついでに改めてアップして貼ろうかとも思ったんだけどね。ラティさんのSSあるから良いかな~、とか思ってみたりw -- 神騎 (2010-01-06 01 09 56) かなり受けるw にぎやかそうでテラウラヤマシス|-`)・・・ -- まどたか (2010-01-07 00 35 59) 1/3~6にかけて死んでいた人が通ります。生気を少し取り戻しましたw -- とくめいっぽい人 (2010-01-07 02 01 40) 同伴ってなんですか? -- イカ (2010-01-07 23 46 18) やべぇwww今見てもやはり神展開www -- 徳之輔 (2010-01-08 01 22 38) 箸が転げても笑える年頃ってSさん該当?(ヤベッ -- まどたか (2010-01-08 01 34 14) 何度も泣けたー(ワライスギw -- ◎hireki◎ (2010-01-08 14 09 33) しばらくはネタにされるんかね。いや~、改めて……ベイまにさんナイスb -- 神騎 (2010-01-08 18 12 30) まどたかさん始め他のクランの方にも何人かにネタにされました…お恥ずかしい限りでございます -- まに (2010-01-09 00 30 48) tyoto -- Estia (2010-01-09 01 45 25) ちょと可哀想になってきたw あと、まどさん何を言ってるのかしら?w -- 永遠の22歳Estia (2010-01-09 01 46 16) エステさんはまどさんにどんなほーふくするのかなぁ~♪ -- tossy(本当に18歳) (2010-01-09 22 16 36) 名前 コメント
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「ねぇ、ジラーチ」 ソラリスがジラーチに呼び掛けた。 ポッチャマの小さな手でジラーチの子供を抱えるのは一苦労だったが、 ジラーチが甘えた目で見返してくるので、何が何でも離すもんかと一生懸命抱えたままだった。 じっと此方を観察しているピカチュウの相棒、ショウに抱っこしたいなら代わろうかと言うと、 「いらん」とつっけどんに言うので、ジラーチの教育に悪いといけないし、彼女には任せないことにした。 口調といい仕草といい、如何見ても男の子のようなショウだが、アレでも立派に女の子である。 「君は何処から来たの?家はわかる?」 ソラリスはきんいろグミを美味しそうに頬張るジラーチをあやしながら、促した。 ジラーチはきょとんとして暫く無垢な瞳でソラリスを見返していたが、 口の中のグミがなくなると、ゆっくりと、けれどはっきりと空に瞬く一番星を指差した。 え、とソラリスが呆けて瞬く。星?星から? 僕達が上った、あの空の上よりもまだ先の? ショウは特に驚いてはいなかった。予想通り、とでも言いたげに、頭を押さえている。 その意味は「面倒なモン拾っちまった」。流石に子供の前で言うほど大人気なくはないらしいが。 「・・・うそぉ」 ソラリスは呆然と、ジラーチが嬉しそうに指差した一番星を見つめていた。 あそこにこの子の両親が居るというのなら、居るべき場所へ返してやるのが一番良い。 マナフィーの時だって、それがマナフィーにとって、悲しい別れではあっても、結果的に一番良かった。 何より、本当の両親のところで育つのが、子供には一番良いだろうから。 でも、だけど・・・。 ソラリスはショウを見た。ショウは「我関せず」と言った風にそっぽを向いて、オレンの実を齧っている。 まぁ流石のショウだって、星に行く方法なんて検討もつかないだろう。 考えてみたが何も浮かぶ訳も無く、思わずジラーチに引き攣った笑顔を向けた。 星になんて、どうやって行けばいいんだ? 「・・・・どーしよーか・・・?」 「・・・う?」 空から落ちてきた星の子は、勿論、愛らしく首を傾げただけだった。・・・当たり前だが。 (お父さん、お母さん、居るなら早く。一分一秒でも早く、この子を迎えに来てあげて・・・) ++++++++++++ 今回は、短く、繋ぎを。 変じゃないかなおかしくないかな。 何でもいいですが、誤字とか見つけると「うわ・・・うわー!」ってなります。 恥ずかしいですね、マジで。だからこそこそ、読み返して見つけたら直してたり・・・。 誤字見掛けたら、どうぞ教えてやって下さいませ・・・orz
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総括所見:ドイツ(第3回~4回・2014年) 第1回(1995年)/第2回(2004年)OPAC(2008年)/OPSC(2014年) CRC総括所見日本語訳(国別)/CRC総括所見日本語訳(会期順) CRC/C/DEU/CO/3-4(2014年2月25日) 原文:英語(平野裕二仮訳) 原文は国連人権高等弁務官事務所のサイト(国別情報のページまたはCRC会期一覧ページ)を参照。 1.委員会は、2014年1月27日および28日に開かれた第1866回および第1867回会合(CRC/C/SR.1866およびCRC/C/SR.1867参照)においてドイツの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/DEU/3-4)を検討し、2014年1月31日に開かれた第1875回会合において以下の総括所見を採択した。 I.序 2.委員会は、締約国における子どもの権利の状況についての理解を向上させてくれた、ドイツの第3回・第4回統合定期報告書(CRC/C/DEU/3-4)および事前質問事項に対する文書回答(CRC/C/DEU/Q/3-4/Add.1)の提出を歓迎する。委員会は、締約国のハイレベルなかつ多部門型の代表団との間に持たれた建設的対話に評価の意を表するものである。 II.締約国によりとられたフォローアップ措置および達成された進展 3.委員会は、以下の立法措置の採択を歓迎する。 (a) 法律上の父ではない生物学上の父の権利を強化する2013年7月4日の法律。 (b) 互いに婚姻していない両親の監護権を改革する2013年4月16日の法律。 (c) 後見監護法を改正する2011年6月29日の法律。 (d) 2011年12月22日の連邦子ども保護法。 (e) 2008年12月16日の子ども支援法。 (f) 子どもの最善の利益に危険が及ぶ場合の家庭裁判所による措置を促進するための2008年7月12日の法律。 (g) 2007年1月1日の連邦親手当および育児休暇法。 (h) 2005年10月1日の子ども・青年福祉発展推進法。 4.委員会はまた、以下の文書の批准にも評価の意とともに留意する。 (a) 通報手続に関する子どもの権利条約の選択議定書(2013年2月)。 (b) 子どもの売買、児童買春および児童ポルノに関する子どもの権利条約の選択議定書(2009年7月)。 (c) 強制失踪からのすべての者の保護に関する国際条約(2009年9月)。 (d) 傷害のある人の権利に関する条約(2009年2月)。 (e) 人身取引と闘うための行動に関する欧州評議会条約(2012年12月)。 5.委員会は、以下の制度上および政策上の措置も歓迎する。 (a) 「連邦早期介入イニシアティブ」の確立(2012年)。 (b) 子どもの健康を促進する「連邦政府戦略」の策定(2008年)。 (c) 「子どもにやさしいドイツのために」(Fur ein kindergerechtes Deutschland)と題した2005~2010年の国家行動計画。 6.委員会は、締約国が、条約第40条第2項(b)(ii)および(v)に付した留保を撤回したことを歓迎する。 III.主要な懸念領域および勧告 A.一般的実施措置(条約第4条、第42条および第44条第6項) 委員会の前回の勧告 7.委員会は、締約国の第2回報告書に関する2004年の総括所見(CRC/C/15/Add.226)を実施するために締約国が行なった努力は歓迎しながらも、そこに掲げられた勧告の一部について十全な対応がとられていないことに、遺憾の意とともに留意する。 8.委員会は、締約国が、条約に基づく第2回定期報告書についての総括所見の勧告のうち十分に実施されていないもの(とくに調整、独立の監視、庇護を希望している子どもおよび移住の状況にある子どもに関するもの)に対応するため、あらゆる必要な措置をとるよう促す。 条約の法的地位 9.委員会は、ほとんどの州が州憲法で子どもの権利を明示的に認めていることに、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、ハンブルグ州およびヘッセン州の憲法ならびに連邦憲法(基本法)で子どもの権利が明示的に認められていないことを依然として懸念するものである。委員会はさらに、基本法第59条第2項に基づき、条約が普通連邦法の段階に位置づけられていることに留意する。 10.前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ10)に照らし、委員会は、締約国に対し、条約が、基本法に編入されることを通じ、または他のいずれかの手続により、連邦法に優越することを確保するためにあらゆる必要な措置をとるよう促す。 包括的な政策および戦略 11.委員会は、2005~2010年の国家行動計画によって子どもの権利に関する幅広い議論が開始されたことに留意する。しかしながら委員会は、同計画を実際に実施するにあたり、地方レベルで市民社会組織その他の主体の関与を得ることが十分に行なわれなかったことを遺憾に思うものである。青少年および若年成人に焦点を当てた新たな若者政策が2011年に開始されたことには留意しながらも、委員会は、子どもの権利に関するすべての問題が同政策で対象とされているわけではないように思えることを、依然として懸念する。 12.委員会は、締約国が、子どもの権利に関する包括的な政策を策定するための措置をとり、プログラムおよびプロジェクトの策定を進めるために必要な人的資源、技術的資源および財源を関連機関に提供し、かつ、これらのプログラムおよびプロジェクトの監視および評価のために、連邦および州のレベルにおける関連機関の役割および責任についてはっきりと明らかにしたシステムを確立するよう、勧告する。 調整 13.委員会は、締約国における条約の実施を連邦、州およびコミュニティのレベルで調整する中央機関が存在しないことにより、包括的かつ首尾一貫した子どもの権利政策の達成が困難になっていることを、依然として懸念する。 14.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)に照らし、委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ12)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、条約の実施を効果的に調整するための十全な能力および権限ならびに十分な人的資源、技術的資源および財源を備えた十分なかつ常設の機関を国レベルで設置しまたは指定するよう、求める。このような調整には、連邦レベルのさまざまな省庁間、連邦と州の間および諸州間で横断的に存在する問題への対応も含まれるべきである。 データ収集 15.委員会は、締約国が包括的なデータ収集システムの設置の重要性を認識していることに留意する。しかしながら委員会は、締約国が、条約が対象とするすべての分野についてのデータを収集するための包括的なシステムを有していないことを懸念するものである。このことは、とりわけ子どもに対する暴力、傷害のある子ども、少年司法および子どもの難民(とくに保護者のいない子どもの難民)の分野において、子どものための政策、プログラムおよびプロジェクトの効果的な計画、監視および評価を行なう際の主要な障壁のひとつとなっている。 16.条約の実施に関する一般的措置についての一般的意見5号(2003年)を想起しつつ、委員会は、締約国に対し、すべての州および18歳に至るまでの子ども時代の全期間を網羅した子どもに関するデータを収集するための包括的かつ統合的なシステムを設置し、かつ、これらの権利の実現における進展を分析しかつ評価するために活用できる、子どもの権利に関する指標を導入するよう、促す。子どもの全般的状況に関する評価を容易にし、かつ、条約を効果的に実施するための政策、プログラムおよびプロジェクトの立案、監視および評価の指針とする目的で、データは年齢、性別、障害、地理的所在、民族、移住者としての地位および社会経済的背景ごとに細分化されるべきである。 独立の監視 17.委員会は、連邦、州およびコミュニティのレベルにおける条約の実施を監視するための、また子どもの権利侵害の苦情を受理しかつこれに対応する権限を与えられた独立の中央機関が引き続き存在しないことを、依然として懸念する。 18.前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ16)にのっとり、委員会は、締約国が、ドイツ人権研究所に対し、連邦、州および地方のレベルで条約の実施を監視する権限を委任するよう勧告する。委員会はさらに、同研究所に対して十分な人的資源、技術的資源および財源が配分され、かつ、同研究所の権限に、子どもの権利侵害の苦情を子どもにやさしいやり方で受理し、調査しかつこれに効果的に対応できることが含まれるべきことを勧告するものである。 普及、意識啓発および研修 19.子どもにやさしい方法で条約を普及するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、おとなおよび子ども(とくに、被害を受けやすい状況に置かれた子ども)が子どもの権利に関する情報に不満足な形でしかアクセスできていないことを懸念する。委員会は、締約国が、条約に関する普及、意識啓発および研修のための十分な活動を、とくに学校において、また子どもとともに働く専門家を対象として、体系的かつ対象を明確にするやり方で行なっていない旨の前回の懸念をあらためて表明するものである。 20.これまでの勧告(CRC/C/15/Add.43、パラ26およびCRC/C/15/Add.226、パラ20)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 学校カリキュラムに条約および人権一般に関する必修単位を含めるとともに、庇護希望者、難民および民族的マイノリティ等の被害を受けやすい立場に置かれた集団にこのような情報を提供するための十分な取り組みを発展させること。 (b) 子どものためにおよび子どもとともに働くすべての専門家集団(裁判官、弁護士、法執行官、公務員、教員、心理学者を含む保健従事者およびソーシャルワーカー等)を対象とした、条約に関する体系的かつ継続的な研修プログラムを発展させること。 (c) とくにソーシャルメディアの(同時に出版、ラジオ、テレビその他のメディアの)いっそうの活用を通じ、子どもにやさしい方法による条約についての意識啓発にメディアがいっそう取り組むことを奨励するとともに、公的な積極的周知活動への子どもたち自身の積極的関与を奨励すること。 国際協力 21.委員会は、欧州連合政府開発援助目標の枠組みのなかで締約国が示している、対国民総所得比0.7%という国際的に合意された目標を2015年までに達成することについての決意を歓迎する。委員会は、締約国に対し、当該目標を達成するとともに、開発途上国との間で締結される国際協力についての取決めにおいて子どもの権利の実現が最優先課題となることを確保するよう、奨励するものである。委員会は、その際、締約国が、当該援助受領国に関する子どもの権利委員会の総括所見を考慮するよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、関係国における緊縮政策の実施によって子ども政策のための資源配分に悪影響が生じないことを確保するよう欧州連合に求めることを勧告するものである。 子どもの権利と企業セクター 22.委員会は、締約国が発電のために相当量の石炭を用いていることに留意するとともに、石炭からの放出物が子どもの健康に及ぼす悪影響について懸念を覚える。委員会はまた、国外で事業を行なっており、かつ子どもの権利その他の人権を侵害しているとの報告があるドイツ企業に対して締約国が十分な措置をとっていないことも懸念するものである。 23.企業セクターが子どもの権利に与える影響に関わる国の義務についての一般的意見16号(2013年)にのっとり、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 締約国で操業する産業を対象とした、その活動が人権に影響を及ぼしまたは環境その他の問題に関する基準(とくに子どもの権利に関わるもの)を脅かさないことを確保するための明確な規制枠組みを確立すること。 (b) 子どもの権利に影響を及ぼす企業への補助金の配分といった予算措置をとる際、子どもの最善の利益を考慮すること。 (c) 締約国の領域で操業しまたは締約国の領域から経営されている企業およびその子会社が、子どもの権利および人権のいかなる侵害についても法的に責任を問われることを確保する目的で、民法上、刑法上および行政法上の枠組みを検討しかつ修正すること。 (d) 人権理事会が2011年に採択した「ビジネスと人権に関する指導原則:国際連合『保護・尊重・救済』枠組みの実施」にのっとり、企業活動から生じるいかなる悪影響からも地域コミュニティ(とくに子ども)を保護する目的で、ビジネスと人権に関する国際基準および国内基準を遵守すること。 B.一般原則(条約第2条、第3条、第6条および第12条) 差別の禁止 24.委員会は、締約国がとった反差別のための措置、とくに理解および寛容の文化の促進を目的とした措置を歓迎する。しかしながら委員会は、障害のある子どもおよび移住者としての背景を有する子どもが、とくに教育および保健ケアサービスに関わって、締約国において引き続き差別に直面していることを依然として懸念するものである。 25.委員会は、締約国が、教育、保健および発達へのアクセスにおける不平等を縮小するためのプログラムおよび政策を通じ、差別(とくに障害のある子どもおよび移住者としての背景を有する子どもへの差別)と闘うための措置を増進させるよう、勧告する。委員会はまた、締約国が、学校および子どものためのその他の空間において差別に関する意識を高め、かつインクルーシブで寛容な環境を醸成するための努力を継続することも勧告するものである。 子どもの最善の利益 26.子どもの福祉が締約国の法体系における指導原則のひとつであり、かつますます適用される原則となっていることには留意しながらも、委員会は、子どもの最善の利益の原則がまだ連邦法に全面的に編入されておらず、かつ、子どもの最善の利益の優先がまだ立法府、行政府および司法府のすべての分野に統合されていないことにも、懸念とともに留意する。とくに、教育面および社会経済的側面で不利な立場に置かれている子ども(子どもの難民および庇護希望者を含む)に関わる事件で、子どもの最善の利益が無視されることが多い。 27.委員会は、自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に対して締約国の注意を喚起する。前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ27)にのっとり、委員会は、この権利が、すべての立法上、行政上および司法上の手続、ならびに、子どもに関連し、かつ子どもに影響を及ぼすすべての政策、プログラムおよびプロジェクトに適切に統合されかつ一貫して適用されることを確保するための努力を、締約国が強化するよう勧告する。これとの関連で、締約国は、すべての分野で子どもの最善の利益について判断することおよび子どもの最善の利益を第一次的考慮事項として正当に重視することについての指針を、権限を有する立場にあるあらゆる関係者に対して示すための手続および基準を策定するよう、奨励されるところである。このような手続および指針は、私立の社会福祉施設、裁判所、行政機関、立法機関および公衆一般に対して普及されるべきである。 C.市民的権利および自由(条約第7条、第8条および第13~17条) 出生登録 28.委員会は、国民および外国人であるすべての子ども(難民および庇護希望者を親とする子どもを含む)の出生登録についての締約国における発展を歓迎する。しかしながら委員会は、証明書の発行を担当する登録官が在留資格を確認し、かつその結果を出入国管理機関に通知しなければならないことに鑑み、在留資格が非正規である新生児のための出生証明書の取得に関して実際上の困難が残っていることを懸念するものである。 29.委員会は、締約国に対し、出生登録が、親の法的地位および(または)出身にかかわらず、すべての子どもにとって可能なかぎり早期に利用可能とされることを確保するために適切な措置をとるよう、促す。委員会は、その際、締約国が、教育施設の職員について2011年に行なったように、登録担当官について、出入国管理機関に情報を通知する義務を免除するよう勧告するものである。 アイデンティティに対する権利 30.委員会は、新たな赤ちゃんボックスを設置しない旨の決定が行なわれたことおよび匿名出産の規制が計画されていること、ならびに、遺棄される新生児の人数を減らすことを目的として妊婦および最近出産した女性への支援が提供されていることに留意する。しかしながら委員会は、赤ちゃんボックスが規制されておらず、かつ使用され続けていること(これは、とくに条約第6条~9条および第19条に違反する)を遺憾に思うものである。 31.委員会は、締約国に対し、匿名で子どもを遺棄する慣行を終了させるために必要なあらゆる措置をとり、かつ、可能なかぎり早期に代替的選択肢を強化しかつ促進するよう、強く促す。委員会はまた、締約国に対し、新生児の遺棄の根本的原因を研究し、かつこれに対処するための努力を増進させることも促すものである。このような対応には、家族計画およびリプロダクティブヘルスのためのサービスの提供、計画外の妊娠の場合の十分なカウンセリングおよび社会的支援、高リスク妊娠の防止、困窮している家族への支援、ならびに、最後の手段としての、病院における匿名出産の可能性の導入を含めることが求められる。この点に関して、締約国は、条約のすべての規定を全面的に遵守する義務を考慮し、子どもが将来的にアクセスできる、親に関する秘密の記録を保存しておくべきである。 D.子どもに対する暴力(条約第19条、第24条第3項、第28条第2項、第34条、第37条(a)および第39条) 体罰 32.委員会は、子どもが暴力を受けない養育に対する制定法上の権利を有していることに、評価の意とともに留意する。にもかかわらず、委員会は、相当数の子どもが家庭においてさまざまな形態の暴力を経験していることを、依然として懸念するものである。 33.委員会は、締約国が、暴力を受けない養育に対する権利がいっそう効果的に実施されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。さらに委員会は、締約国が、体罰に代えて行なう積極的な、非暴力的なかつ参加型の形態の子育ておよびしつけを促進するために現在実施されている意識啓発プログラムを発展させかつ強化するよう、勧告するものである。 性的搾取および性的虐待 34.委員会は、性的搾取および性的虐待を防止し、かつ性犯罪の被害者に援助および支援を提供するための措置が不十分であることを懸念する。これには以下のことが含まれる。 (a) 学校および子どもが通っているその他の施設における防止措置が不十分であること。 (b) 同国の一部でカウンセリングサービスが不十分であり、かつ性暴力の被害を受けた子どものための治療施設が不十分であることから、とくに東部の州および農村地域において欠落が生じていること。 (c) 専門的サービスに対する資金拠出が不十分であること。 (d) とくに男子、障害のある子どもおよびドイツ語をまったくまたは十分に知らない移住者の子どもにとって、支援およびカウンセリングサービスへのアクセスが不平等であること。 (e) 子どもの性的虐待問題に関する独立コミッショナーに恒久的地位が認められていないこと。 35.委員会は、締約国に対し、以下のことを確保する目的で、すべての保護制度関係者間の調整を強化し、かつあらゆる必要な人的資源、技術的資源および財源を配分するよう促す。 (a) 学校および障害のある子どものための施設ならびに青年福祉施設その他の施設(宗教部門、スポーツ部門および文化部門の施設等)における、子どもに対する性暴力の防止。 (b) 性的搾取および性的虐待の被害を受けた子どもを対象とする、十分なカウンセリングサービスおよび治療施設への無制限のアクセス。 (c) 専門的サービスに対する資源配分。 (d) 外国語および手話による通訳の提供を通じた、カウンセリングサービスおよび治療施設へのバリアフリーなアクセス。 (e) 子どもの性的虐待問題に関する独立コミッショナーの恒久的地位。 36.教会職員が行なった児童虐待事件を捜査するために締約国がとった措置には留意しながらも、委員会は、複数の事件について捜査が行なわれていないことを懸念する。 37.委員会は、締約国が、教会職員が行なったとあsれる児童虐待事件の捜査および訴追を速やかに進めるため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 有害慣行 38.委員会は、締約国に住んでいる相当数の女子が、性器切除の影響を受けており、または性器切除が実行されている国へ一時的に送られもしくは締約国内で性器切除の対象とされる危険性にさらされていることを懸念する。委員会はまた、医師、助産師および病院職員が性器切除ならびに防止措置および保護措置について十分な情報を得ていないことが多く、そのため助言および援助ができないことにも、懸念とともに留意するものである。 39.委員会は、前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ47)をあらためて繰り返すとともに、締約国に対し、女性性器切除を禁止する国家的な政策および戦略を作成し、かつ以下の措置をとるよう勧告する。 (a) すべての関連の専門家集団(とくに医師、助産師、病院職員、教員、ソーシャルワーカーおよび子どもヘルプライン相談員)を対象として、女性性器切除の防止およびこれへの対応に関する研修を実施すること。 (b) とくに市民社会およびメディアの関与を得ることにより、この慣行を防止するための情報普及・意識啓発キャンペーンをさらに強化しかつ組織すること。これとの関連で、危険な状況に置かれた女子を対象とする、援助および助言へのアクセスに関する情報を提供するキャンペーンにとくに焦点が当てられるべきである。 (c) とくに、女性性器切除が実行されている国に対する財政的および技術的援助を拡大することにより、国際協力プログラムにおける女性性器切除の撤廃のための措置をさらに強化すること。 あらゆる形態の暴力からの子どもの自由 40.委員会は、学校その他の施設において子どもが経験している継続的な暴力(身体的暴力、いじめおよび増加しつつあるネットいじめを含む)について懸念を覚える。さらに委員会は、この問題に対応する十分な資格を有する教員およびスクールソーシャルワーカーが一部の学校で存在せず、かつ他の施設でも資格を有する職員が存在しないことを懸念するものである。 41. 子どもに対する暴力に関する国連研究(A/61/299)およびあらゆる形態の暴力からの自由に対する子どもの権利に関する委員会の一般的意見13号(2011年)を想起しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止しかつこれに対応するための、包括的な国家的戦略を策定すること。 (b) 子どもに対するあらゆる形態の暴力に対応するための国家的な調整枠組みを採択すること。 (c) 暴力の発生を認識し、かつこれに効果的に対応できるようにするための学習を目的とした、教員およびソーシャルワーカーを対象とする全国的な意識啓発・研修プログラムを実施すること。 (d) 子どもに対する暴力に関する事務総長特別代表および他の関連の国際連合機関と協力すること。 E.家庭環境および代替的養護(条約第5条、第9~11条、第18条第1~2項、第19~21条、第25条および第27条第4項) 42.親の関係の規制について締約国が行なった重要な変更、とくに子どもの共同監護権の確立に向けた大きな流れは歓迎しながらも、委員会は、締約国が、法律において、条約でおよび子どもの権利条約の発効後に採択された国際文書のいくつかで用いられている「親の責任」(parental responsibility)ではなく「監護権」(custody)という用語をいまなお用いていることに留意する。 43.委員会は、締約国が、条約の趣旨および目的にのっとり、「監護権」という用語に代えて「親の責任」を用いる可能性を検討するよう勧告する。 家庭環境を奪われた子ども 44.委員会は、家族再統合に関する締約国の厳格な規則について懸念を覚える。当該規則では、残された子どもが欧州連合市民ではない場合に締約国で親とともに暮らすことを認められるのは、その子どもが16歳未満であり、かつその生計維持手段が保障されている場合に限ると規定されている。 45.自己の最善の利益を第一次的に考慮される子どもの権利についての一般的意見14号(2013年)に照らし、委員会は、締約国が、家族再統合に対する外国人の子どもの一般的権利を制定法により18歳まで確保するよう勧告する。 46.親としての義務の履行に関して親を支援するために締約国がとった立法措置は歓迎しながらも、委員会は、以下の問題について懸念を覚える。 (a) 家庭環境を奪われて公的ケアの対象とされる子どもの人数が増えていること。 (b) 危険な状況に置かれた家族を支援するための公的青年福祉サービスに十分な資源が配分されておらず、かつ、親の言語によるサービスまたは通訳を提供している地方当局の数が少ないこと。 (c) 行動障害のある子どもを、適正な監督および評価を行なうことなく、欧州連合の他の国で里親委託する慣行が行なわれていること。 47.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 家族支援制度を向上させ、かつ、子どもの里親委託が子どもの最善の利益にかなう場合にのみ用いられることを確保すること。 (b) 社会的および経済的困難に直面しているすべての家族(とくに言語の障壁の克服に関して困難を有している移住者家族を含む)が福祉サービスを利用できるようにするため、福祉サービスに十分な人的資源および財源を提供すること。 (c) 子どもを欧州連合の他の国に措置する政策を修正するとともに、十分な監督、フォローアップおよび評価を行なうこと。 48.乳幼児期の教育およびケアを拡大するために締約国が行なっている努力は歓迎しながらも、委員会は、一部の州で、とくに3歳未満の子どもが利用できる乳幼児期の教育およびケアのためのサービスが少ないこと、ならびに、乳幼児期の教育およびケアのための施設の質的基準に関して州の間で格差があることを、依然として懸念する。委員会はまた、脆弱な状況に置かれた家族(とくに移住者家族)にとってそのようなサービスへのアクセスが困難であることも懸念するものである。 49.委員会は、締約国が、欧州2020年成長戦略にしたがって乳幼児期の教育およびケアに関する包括的な国家的政策を採択するとともに、すべての子どもが差別なく質の高い乳幼児期の教育およびケアにアクセスできることを確保するよう、勧告する。 F.障害、基礎保健および福祉(条約第6条、第18条第3項、第23条、第24条、第26条、第27条第1~3項および第33条) 障害のある子ども 50.委員会は、障害のある子どもの状況を分析しかつ向上させるために締約国が行なっている取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、教育が、とくに中等学校段階でインクルーシブな性質を有していないことを懸念するものである。この文脈において、委員会は以下のことにも懸念とともに留意する。 (a) 教育部門において連邦レベルと州のレベルとの間の協力が不十分であること、および、カリキュラムの適合が図られておらず、または、教育に対するインクルーシブなアプローチについての、すべての教員および学校職員を対象とする体系的な研修が実施されていないこと。 (b) 教育分野における個別支援および合理的配慮の必要性が認識されておらず、かつ、手話に関する規則が州によってさまざまであること。 (c) 一部の州で、初等段階の子どもがその親の意思に反して特別学校に就籍させられていること、障害のある児童の圧倒的多数が特別学校に通っていること、および、障害のある子どもの多数が修了証を得ないまま学校を離れていること。 51.条約第23条および障害のある子どもの権利に関する委員会の一般的意見9号(2006年)に照らし、委員会は、障害に対する人権基盤アプローチをとるよう締約国に促すとともに、具体的に、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 全国的なインクルーシブ教育の確立を追求するとともに、特別学校で利用可能な資源を活用すること等も通じ、必要な資源が利用可能となることを確保すること。 (b) インクルーシブ教育に対する権利が障害のある子どもに保障され、かつ、教育分野における個別支援および合理的配慮への権利が当該権利に包含されることを確保するため、あらゆる必要な法改正および構造的改革を行なうこと。 (c) 障害のある子どもおよびその家族が、当該の子どもが特別学校に通うべきか否かについて決定が行なわれる際に発言権を有することを確保すること。 52.委員会は、締約国が実施した最近の研究における、障害のある女子がしばしば性暴力を含む暴力の危険にさらされている旨の知見について懸念を覚える。 53.委員会は、締約国が、障害のある女子の安全に特段の注意を払いながら、障害のある子どもに対するあらゆる形態の暴力を防止するためにすべての必要な措置をとるよう、勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、暴力の被害者となった障害児を対象とする、保護および苦情申立てのための特別な機構を設けるよう勧告するものである。 54.委員会は、移住者家族の障害児が、情報がないために、または親が必要な書類および申請書になかなかアクセスできず、かつ(もしくは)障害について無知であるもしくは意識を欠いているために、移住者としての背景を有さない他の障害児と同一の支援を得られないことが多いことに、懸念とともに留意する。 55.委員会は、締約国が、移住者としての背景を有する障害児がいる家族に対して支援へのアクセスに関する十分な情報および援助が提供されることを確保するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告する。 健康および保健サービス 56.委員会は、以下の問題について懸念を覚える。 (a) 愛着障害(これは完全母乳の減少と関連している可能性がある)、ならびに、学校でよい成績を収めなければならないというプレッシャーを理由とする子どもの情緒的問題および行動上の問題と関連した、子どもの新たな不健全状態への対応が不十分であること。 (b) 庇護希望者である子どもおよび非正規移住の状況にある子どもが、急性疾患の治療、予防的保健ケアおよび心理社会療法を含む保健サービスに十分にアクセスできていないこと。 57.委員会は、締約国が、運動ならびに健康的な食習慣およびライフスタイルの重要性を強調しながら、学校および家族を対象とする働きかけおよび意識啓発のプログラムを実施するよう勧告する。締約国はまた、保健上の成果に関して存在している格差に対応するためにもあらゆる必要な措置をとるべきである。脆弱な状況にある子どもおよび若者、とくに社会的に不利な立場に置かれた背景または移住者としての背景を有する子どもおよび若者に、特段の注意を払うことが求められる。さらに委員会は、到達可能な最高水準の健康を享受する子どもの権利についての委員会の一般的意見15号(2013年)に対して締約国の注意を喚起するとともに、締約国が、母乳代替品の販売促進を規制し、かつ、新生児と母親との絆の向上を促進するはずである母乳育児を行なうよう締約国内の母親に奨励するため、あらゆる必要な立法上および制度上の措置をとるよう勧告するものである。 精神保健 58.委員会は、子どもに対する精神刺激薬の処方が増加しており、かつ注意欠陥多動性障害(ADHD)および注意欠陥(ADD)の診断が過剰に行なわれていること、ならびに、とくに以下のことを懸念する。 (a) 精神刺激薬であるメチルフェニデートが過度に処方されていること。 (b) ADHDまたはADDであると診断/誤診された子どもが家族から強制的に分離され、かつ、その後、里親委託または精神病院への措置の対象とされていること(精神病院に措置された子どもの多くは向精神薬による治療の対象とされている)。 59.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 子どもの里親委託または精神病院への措置が、適正な診断後、最後の手段としてのみ用いられることを確保すること。 (b) 家族が心理カウンセリングおよび情緒的支援にアクセスできるようにすること。 (c) ADHDおよびADDの診断ならびに子どもを対象とする薬物治療の使用に関する、独立の専門家による監視制度を設置すること。 (d) 関連の保健機関が教室における注意欠如の根本的原因について判断し、かつ子どもの精神保健問題の診断を向上させることを確保すること。 (e) 医学的証拠によって確認されていない事案で子どもが「精神医学上の問題を有している」というレッテルを貼る慣行に終止符を打つこと。 思春期の健康 60.青少年の喫煙が減少していることは歓迎しながらも、委員会は、アルコールの消費が相当に増加していることを依然として懸念する。 61.思春期の健康と発達に関する一般的意見4号(2003年)を参照しつつ、委員会は、締約国が、薬物、アルコールおよび有害物質の濫用の悪影響に関する正確な情報が子どもに提供されることを確保するよう、勧告する。締約国は、このような濫用の有害な影響に関する当該情報が学校カリキュラムによりよい形で統合され、もってこのような濫用を防止するためのライフスキルが教えられることを確保するとともに、有害物質濫用を防止するためのメディアによる報道の増加を奨励するべきである。委員会はさらに、締約国が、秘密が守られる依存症のカウンセリングおよび治療に子どもが十分にアクセスできることを確保するよう、勧告する。 母乳育児 62.委員会は、締約国における母乳育児率の低下に留意しつつも、調製粉乳および離乳期用調製粉乳に関する欧州委員会指令(2006年)の採択のような、母乳育児を促進するための取り組みを歓迎する。しかしながら委員会は、生後6か月間の完全母乳育児率を上昇させるために行なわれている努力が十分ではない可能性があることを懸念するものである。 63.委員会は、締約国が、資料にアクセスできるようにし、かつ母乳育児の重要性および調製粉乳の利用のリスクについて公衆の教育および意識啓発を図ることにより、完全母乳育児および母乳育児の継続を促進するための努力を強化するよう勧告する。委員会は、締約国に対し、「母乳代替品の販売促進に関する国際基準」を厳格に執行するよう促すものである。 生活水準 64.委員会は、子どもの貧困率および貧困リスク率が高く、かつ、ひとり親家族、大家族および民族的マイノリティの背景を有する家族の子どもが(とくに成人が失業しておりまたは不安定な就労状況にある場合に)とりわけ影響を受けていることを懸念する。さらに委員会は、失業扶助と関連する義務の不遵守があった場合に制裁を課すという、制定法により定められた慣行が、家族または失業中の青少年に対して制裁が課された場合には子どもの生活水準に影響を与える可能性があることを懸念するものである。 65.委員会は、締約国が、子どもの貧困の根本的原因に取り組むために必要な資源の配分および追加的努力を行なうとともに、家族がとりわけ貧困に陥りやすい地域の包括的評価を実施し、かつ適切な是正戦略の策定および実施を進めるよう勧告する。委員会はさらに、締約国が、すべての子どもが十分な生活水準を享受することを確保する目的で、経済的に不利な立場に置かれた家族への物質的援助および支援を増強するよう勧告するものである。 G.教育、余暇および文化的活動(条約第28条、第29条、第30条および第31条) 教育(職業訓練および職業指導を含む) 66.委員会は、教育分野についての責任がほぼ完全に州にあることに留意する。しかしながら委員会は、さまざまな制度の調和が図られておらず、重要な分野で州による差異が生じていることを懸念するものである。委員会はまた、ほとんどの州で学校制度が初等学校、中間学校および進学学校に分類されていることにも留意するとともに、選択を非常に低い年齢で行なわれなければならず、かつその後に進路を変更するのは難しい場合があることを懸念する。委員会はまた、民族的マイノリティの背景を有する子どもの学校における成績が他の子どもよりも相当に低いことも遺憾に思うものである。民族的マイノリティの背景を有する子どもは、民族的マイノリティの背景を有しない生徒と比較して、修了資格を得ないまま学校を離れる人数が2倍にのぼる。 67.教育の目的に関する委員会の一般的意見1号(2001年)、および、2006年のドイツ訪問についての報告書(A/HRC/4/29/Add.3)のなかで教育への権利に関する特別報告者が行なった勧告を考慮しつつ、委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 州の間で生徒が移動することの便宜を図るため、すべての州の間で学校プログラムをいっそう調和させるために必要な措置をとること。 (b) 生徒が非常に早い段階でさまざまな進路に分離させられる現行教育制度の見直しを実施し、かつ教育制度をいっそうインクルーシブなものとすること。 (c) 民族的マイノリティの背景を有する子どもに対して学校施設のなかで追加的支援を提供するための十分な人的資源、技術的資源および財源を配分すること。 H.特別な保護措置(条約第22条、第30条、第32~33条、第35~36条、第37条(b)~(d)、第38条、第39条および第40条) 子どもの庇護希望者および難民 68.委員会は、条約第22条について締約国が行なった宣言の撤回を歓迎するとともに、締約国が、多くの国からやってきた数千人の子どもの庇護希望者および子どもの難民を受け入れていることに留意する。しかしながら委員会は、以下のことを依然として懸念するものである。 (a) 庇護手続法において、16歳の子どもは自ら庇護手続を開始する行為能力があると定められていること。その結果、実際には、16歳以上の子どもが、青年福祉サービスによる全面的保護の利益をしばしば享受できず、かつ成人の庇護希望者を収容するために設計されたセンターに措置されていること。 (b) 締約国における年齢鑑別手続で、品位を傷つけるおよび屈辱的な慣行が行なわれる可能性があり、かつ正確な結果が出ていないこと、および、子どもの庇護希望者および難民の相当数が成人と判断されていること。 (c) 子ども兵士または強制徴募を逃れてきた子どもの特定に欠陥があり、かつこのような事案で庇護申請が却下されるために、これらの子どもの保護のニーズに関して十分な評価が行なわれず、かつこれらの子どもに適切な注意が向けられないこと。 (d) 子どもに言い渡された退去強制が実行されるまでの収容が最長18か月まで継続しうること。これは、自己の最善の利益を第一次的に考慮される権利を直接侵害するものである。 69.委員会は、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 18歳未満のすべての子どもに対し、平等のかつ子どもにやさしい取扱いを確保すること。 (b) 出身国外にあって保護者のいない子どもおよび養育者から分離された子どもの取扱いに関する一般的意見6号(2005年)で勧告されているとおり、子どもの庇護希望者および難民に適用される年齢鑑別手続が、科学的に承認された手法を基盤とし、かつ子どもの尊厳を全面的に尊重するものであることを確保すること。 (c) 子ども兵士および徴募される危険がある子どもの保護のニーズの評価を向上させ、かつこれらの子どもが十分な心理的および社会的支援を得られることを確保する目的で、このような子どもの特定を向上させ、かつこれらの子どもに難民資格が付与されることを確保すること。 (d) 子どもの庇護希望者および移住者の収容が、条約第37条(b)にしたがい、常に最後の手段としてかつもっとも短い適当な期間で用いられること、および、当該収容が期間の制限および司法審査に服することを確保すること。 移住の状況にある子ども 70.委員会は、締約国のさまざまなサービス施設が、その知るところとなった者であって在留許可を得ていないすべての者(子どもを含む)について出入国管理機関に通知する、連邦法上の義務を負っていることを懸念する。実際上、これにより、在留資格が非正規な状態にある子どもが、とくに退去強制につながる可能性がある非正規な地位が発覚することを恐れて、サービス事務所への接触をためらうことになっている。 71.委員会は、締約国に対し、すべてのサービス施設に対して課された、非正規移住の状況にあるいかなる子どもについても出入国管理機関に通知する制定法上の義務を廃止するよう促す。 人身取引 72.委員会は、在留法において、子どもを含む人身取引被害者への在留許可の付与について法執行機関への協力が条件とされていることを懸念する。 73.委員会は、締約国が、人身取引の被害を受けた子どもに対する在留許可の付与と結びついたいかなる条件も撤廃するため、在留法を改正するよう勧告する。 少年司法の運営 74.委員会は、拘禁中の子どもを24歳以下の者とともに収容することを禁じた法改正に、満足感とともに留意する。しかしながら委員会は、すべての州が「最後の手段としての自由剥奪」の原則を適用しているわけでないことを遺憾に思うものである。 75.前回の勧告(CRC/C/15/Add.226、パラ61)にのっとり、委員会は、自由の剥奪があらゆる場合に最後の手段として、かつ可能なもっとも短い期間で用いられるべきことを勧告する。これとの関連で、委員会は、締約国が、保護観察または地域奉仕命令のような代替的刑の可能性を拡大するため、あらゆる必要な措置をとるよう勧告するものである。 武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に基づく締約国の第1回報告書に関する総括所見(CRC/C/OPAC/DEU/CO/1)のフォローアップ 76.委員会は、武力紛争への子どもの関与に関する子どもの権利条約の選択議定書に関わる委員会の前回の勧告を実施するために締約国が行なった努力を歓迎する。しかしながら委員会は、以下の問題について懸念を覚えるものである。 (a) 訓練目的での軍への志願入隊に関する最低年齢が17歳であること。さらに、志願入隊した子どもは、試用期間終了後に脱退を決めた場合に訴追の対象とされるおそれがある。 (b) 軍のための広告キャンペーンの一部がとくに子どもを対象としており、かつ、軍の代表が時として学校の場にいて生徒に話をしたり活動を組織したりしていること。 (c) 子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地である場合における武器の販売を明示的に禁止する法律上の規定がないこと。 77.委員会は、前回の勧告(CRC/C/OPAC/DEU/CO/1)をあらためて繰り返すとともに、締約国が以下の措置をとるよう勧告する。 (a) 軍への入隊に関する最低年齢を18歳に引き上げること。 (b) 子どもを対象とした、ドイツ軍のためのあらゆる形態の広告キャンペーンを禁止すること。 (c) 武器の移転に関して最大限の透明性を確保するとともに、子どもが徴募されもしくは敵対行為において使用されていることがわかっているまたはその可能性がある国が最終目的地であるおそれがある場合の武器の販売を法律で明示的に禁止すること。 78.委員会は、締約国刑法第8条に掲げられた戦争犯罪に関する規定、および、15歳未満の子どもが軍隊または武装集団に徴募された場合は域外裁判権を行使できる旨の締約国の発言に、満足感とともに留意する。委員会は、15~17歳の子どもについても裁判権を設定できることには留意しながらも、これが双方可罰性の条件に服することを遺憾に思うものである。 79.委員会は、締約国が、子どもの徴募および敵対行為における子どもの使用の防止を目的とした国際的措置をさらに強化するよう勧告する。委員会はまた、締約国が、子どもを徴募することおよび敵対行為に関与させることに関する犯罪についての域外裁判権を、双方可罰性の条件に服させることなく拡大することを検討することも、勧告するものである。 I.国際人権文書の批准 80.委員会は、子どもの権利の充足をさらに強化する目的で、締約国が、まだ当事国となっていない中核的人権文書、とくに経済的、社会的および文化的権利に関する国際規約の選択議定書およびすべての移住労働者およびその家族構成員の権利の保護に関する国際条約を批准するよう、勧告する。 J.地域機関および国際機関との協力 81.委員会は、締約国が、締約国および他の欧州評議会加盟国の双方における子どもの権利条約その他の人権文書の実施に向けて、欧州評議会と協力するよう勧告する。 K.フォローアップおよび普及 82.委員会は、締約国が、とくにこれらの勧告を国家元首、議会、関連省庁、最高裁判所ならびに連邦、州および地方の公的機関に送付して適切な検討およびさらなる行動を求めることにより、これらの勧告が全面的に実施されることを確保するためにあらゆる適切な措置をとるよう勧告する。 83. 委員会はさらに、条約および選択議定書ならびにそれらの実施および監視に関する議論および意識を喚起する目的で、第3回・第4回定期報告書、締約国の文書回答およびこの総括所見を、インターネット等を通じ(ただしこれに限るものではない)、公衆一般、市民社会組織、メディア、若者グループ、専門家グループおよび子どもが同国の言語で広く入手できるようにすることを勧告する。 L.次回報告書 84.委員会は、締約国に対し、次回の第5回・第6回統合定期報告書を2019年4月4日までに提出し、かつ、この総括所見の実施に関する情報を当該報告書に記載するよう慫慂する。委員会は、2010年10月1日に採択された委員会の条約別調和化報告ガイドライン(CRC/C/58/Rev.2 and Corr.1)に対して注意を喚起するとともに、締約国が、今後の報告書は当該ガイドラインにしたがうべきであり、かつ60ページを超えるべきではないことを想起するよう求めるものである。委員会は、締約国に対し、当該ガイドラインにしたがって報告書を提出するよう促す。2012年12月20日の総会決議67/167にしたがい、ページの制限を超えた報告書が提出された場合、締約国は、前掲ガイドラインにしたがって報告書を見直し、かつその後再提出するよう求められることになる。委員会は、締約国に対し、報告書を見直しかつ再提出することができないときは、条約機関による審査のための報告書の翻訳は保障できないことを想起するよう、求めるものである。 85.委員会はまた、締約国に対し、2006年6月の第5回人権条約機関委員会間会合で承認された統一報告ガイドライン(HRI/GEN/2/Rev.6, chap. I)に掲げられた共通コア・ドキュメントについての要件にしたがい、最新のコア・ドキュメントを提出することも慫慂する。 更新履歴:ページ作成(2014年5月6日)。/パラ18の「ドイツ人権機関」を「ドイツ人権研究所」に修正(2019年5月14日)。