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次へ 《インターミッション》 ドラミです。 今お兄ちゃんやのび太さん達がどうなっているのか、おさらいしてみますね。 のび太さんは今キンセツシティ付近でお兄ちゃんやしずかさんを待ちながらジョギング中。 103番道路の川を越えちゃったせいで本来のルートを大幅にショートカットしちゃったわね。 手持ちポケモンは色違いメノクラゲLV29とスネ夫さんと無理矢理交換させられたナマケロ。 ナマケロは育て屋でかなり成長してるらしいわ。 お兄ちゃんとしずかさんはゲームとほとんど同じルートを通って今はムロタウン。 お兄ちゃんはそこで大怪我しちゃってポケモンセンターで療養中。 お兄ちゃんの手持ちはポチエナLV4。今はしずかさんが借りているわ。 しずかさんの手持ちはキルリアLV24、ジグザグマLV18、ジグザグマLV17、ジグザグマLV17、ジグザグマLV16、ジグザグマLV6 物拾いジグザグマが拾ってくる豊富なアイテムは旅の助けになっているわ。 スネ夫さんと剛さんは煙突山、次はフエンタウンに向かうらしいわ。。 今のところトップグループ、バッジも順調に獲得しているわね。 剛さんは気付いてないみたいだけど、スネ夫さんはかなりセコいやり方で剛さん以上に戦力をアップしてるみたい。 剛さんの手持ちはヌマクローLV26、スネ夫さんと交換したキャモメLV20、ココドラLV24。 ココドラを大切に育ててるようね。 スネ夫さんの手持ちはジュプトルLV25、ゴルバットLV27、ツチニンLV19、のび太さんと交換したマルノームLV26。 剛さんよりかなり戦力が高いわね。ツチニンが進化すればさらに戦力アップするわ。 そして出木杉さん。 トウカの森でしずかさんに完敗してから人が変わってしまったわ。 カナズミシティで見かけられたのを最後に消息は不明。 彼は今後どうなっちゃうのかしら…… 手持ちはバシャーモLV48、キノココLV22。 じゃあ私は未来に帰るわ、じゃあね! キンセツシティ。 のび太はただ途方に暮れていた。 「なんか全然強くなってる気がしないなぁ。しかもこいつのせいで恥をかきっぱなしだよ…」 のび太はナマケロを見ながらため息を吐いた。 さかのぼる事半日前、育て屋からナマケロを引き取ったのび太。 「ノビタさんのナマケロ……名前は「のびた」?ブフーッ!www」 育て屋のばあさんは笑いすぎて救急車で運ばれるし、せっかく引き取ったこのナマケロといったら全然動かない。 しかもあくびをしたり、物忘れが激しかったり、事あるごとに怠けている。 「ふう、勝った…」 ナマケロの力を借りる事無く、メノクラゲのみでトレーナー戦を勝利したのび太。 一応ナマケロも出してはいるが、ほとんど戦力になっていない。 勝利報酬を受け取りながら考え込むのび太。 「メノクラゲが進化するまで戦うしかない……って、なんだ?」 ナマケロの様子がおかしい。 その姿は徐々に変わっていき… 「な、ナマケロが進化したの?」 のび太、おめでとう!ナマケロはヤルキモノに進化したのだ! 「つ、強そう……やっと戦ってくれるんだね!」 ヤルキモノの強さはかなりのものだった。 技はナマケロのものを受け継いでいるが、唯一の打撃技の騙し討ちは次々とポケモンを撃破していく。 「すごいや、ボクのヤルキモノ!」 勢いに乗ってキンセツの東のトレーナーも撃破していく。 最後に対戦するのはギタリストのテリー。 ノーマルや悪の攻撃が効きにくいコイルの使い手だが、レベルの高さに任せてヤルキモノで力押しする。 そして…… 「やった、勝ったぞ!わーいわーい!」 のび太が飛び上がって喜ぶその横ではヤルキモノの体が大きくなっていく。 ナマケロの引き取り時のレベルは34、レベル35でヤルキモノに進化。 ということは… おめでとう!ヤルキモノはケッキングに進化した! いきなり巨大化したので、横にいたのび太は勢い良く体を押され、そのまますぐ横の川に落ちてしまった。 「かばごぼ、だずげごぼぼ…」 カナヅチののび太はそのまま川の底に沈んでいった。 「うーん、ここは……」 「大丈夫かい?」 釣り人がのび太を抱き起こす。 「偶然君が釣り針にひっかかってね。ボクの持っていたのがいい釣り竿だったから折れずに助けることができたよ」 ホエルコすら釣り上げるいい釣り竿、人間くらいではびくともしないのだ。 「ありがとうございます、あなたは命の恩人です!」 感激のあまり釣り人の手を握ろうとしたとき、のび太は手に持ったケッキングのボールに気付いた。 中にケッキングは入っていないようだ。 「戻れ!」 すると川の対岸から光がやってきてボールに収まった。 「ま、まさか……おじさん、キンセツシティはどっち!?」 釣り人が指差したのは川の向こう。 「そ、そんなぁ~~」 のび太は再び望まぬショートカットをしてしまった。 しかものび太はもっと重大なことに気付いていない。 ここから先ヒマワキシティまではかなり長い道程であり、それまでポケモンセンターは存在しない。 ドラえもん達との連絡もとれないのだ。 ショックを受けて崩れ落ちるのび太に釣り人は声をかける。 「いい釣り竿、いります?」 この日、のび太は初めての野宿をした。 近くになっていたオボンの実を食べて飢えを凌ぐ。 「さ、寒いや……どうしよう」 寒さと孤独に耐えかねてケッキングをボールから出してみる。 ケッキングはほんのり暖かかった。 石の洞窟。 しずかは自分のパーティーを育成しながらドラえもんのポチエナも育てていた。 しかしトレーナーとしてそんなに経験を積んだわけではない。 やっと噛み付くことができるようになったが、正直ポチエナでは頼りない。 「確かポチエナは悪タイプ、格闘タイプとは相性が良くないって習ったわ」 トレーナーズスクールでの授業を覚えているところはさすがしずかである。 「ドラちゃんに新しい友達を捕まえてあげればいいんだろうけど、どんなポケモンがいいのかしら……」 しずかはポケモンのタイプをよく知らない。 『とりあえず次会ったポケモンをドラちゃんにプレゼントしましょう』 その時、闇に輝く二つの瞳が近づいてきた。 「わぁ、きれい!」 宝石のような目を持つポケモンだ。 とりあえず捕まえるためには弱らせなくてはならない。 「キルリア、ねんりき!」 キルリアの念力は発動したはずなのに、相手のポケモンは全くダメージを受けていないようだ。 「効いてないみたい……もしかしてすごく強いポケモンなのかしら」 キルリアをひっこめて次はジグザグマを出してみる。 「ジグザグマ、ずつきで攻撃よ!」 しかし頭突きすら効果がないようだ。 ジグザグマは驚かされたが特にダメージはないようだ。 「どうすればいいの…」 このままでは弱らせることすらできない。 残るポケモンはただ一体。 「仕方ないわ、ドラちゃんのポチエナで!」 ジグザグマの代わりに現われたポチエナ。 「お願い、噛み付いて!」 ポチエナが勇猛果敢に飛び掛かり、噛み付く。 初めて相手のポケモンがよろめいた。 「効いてる、もう一回!」 敵がひるんでいる間に再び噛み付く。 「今ね、お願いモンスターボール!」 しずかが投げたボールは弱ったポケモンを吸い込み、そしてボールの振動が止む。 「捕まえた!やったわドラちゃん!」 しずかはそのポケモンの名前を図鑑でチェックする。 「んーと…あったわ。ヤミラミっていうのね」 偶然捕まえたこのヤミラミがただ一匹でトウキのポケモンを完封できる相性を持つということをしずかは知らない。 「やあ、見せてもらったよ」 洞窟の奥から拍手がこだまする。 暗闇から現われたのは一人の男…… 「おっと、まずは自己紹介を。私はダイゴだ」 偶然出会ったその男は、デボン社長からの手紙を渡す相手だった。 ムロタウン。 翌日になるとドラえもんの怪我はすっかり良くなっていた。 さすがポケモンセンター、瀕死のポケモンすら簡単に全快させる医学力は素晴らしい。 「ドラちゃん、今日こそは勝ってね!」 ドラえもんの手にはしずかが育ててくれたポチエナ、そして新しい仲間ヤミラミがいる。 「よし、行ってくるよしずかちゃん!」 しずかは徹夜でドラえもんのポケモンを育てていたので疲労がピークに達していた。 「ヤミラミを捕まえて、ダイゴさんに会って、手紙を渡して……」 そのまましずかはスースーと寝息を立てていた。 ムロジムではトウキVSドラえもんの戦いが行なわれていた。 ヤミラミは格闘とエスパーを無効化するのでトウキのポケモンは全くいいところを見せる事無く、ナイトヘッドをくらって沈んでいく。 「やった!勝ったぞ!」 トウキはやれやれといった顔をしながらドラえもんにジムバッジを渡す。 これでしずかもドラえもんも二個目のバッジを獲得したのだった。 119番道路。 「はひぃ、はひぃ」 のび太はただ一人、どうしようもない状況に陥っていた。 なぜなら現状の戦力がメノクラゲ一匹だからである。 最大の戦力であるケッキングはまるで動こうとしない。 実はのび太は気付いていなかったがナマケロの頃もほとんど動いておらず、ヤルキモノの時には勝手に暴れていただけなのだ。 そう、のび太はジムバッジを持っていない。 スネ夫から貰ったポケモンがいうことを聞かないのは当然のことである。 トレーナー達から逃げ回り、ようやく吊り橋を渡りきったが、辺りは見渡すかぎりの緑、そして頭上からは雨が降り続いていた。 『このままでは本当に死んでしまう!』 そんなのび太の眼前に巨大な影が現われる。 「わわわっ!」 長い首とシダ植物のような翼を持ったその生物はゆっくりとのび太の前を横切っていく。 その姿を見てのび太はとても懐かしいものを思い出した。 「ピー助……?」 そう、昔飼っていた首長竜のピー助だ。 「おーい、ピー助、ピー助!」 のび太の声も耳に入らないかのように悠然と歩いていく巨大生物。 のび太は咄嗟にメノクラゲを出し、命令した。 「メノクラゲ、ピー助を捕まえて!」 メノクラゲは絡み付いてその生物…トロピウスの動きを止める。 「いいぞ、このまま捕まえておくんだ……えーと……」 キンセツシティで買っておいたスーパーボールを投げる。 しかしボールはメノクラゲのほうに飛んでいってしまう。 「ああーーっ!」 ボールが直撃しようとした刹那、メノクラゲは触手でボールを邪魔そうに叩いた。 そのボールは偶然トロピウスに命中し、その巨体をボールに収める。 「やった、やったぁ!」 のび太は新しい仲間、トロピウスのピー助を入手したのだ。 手持ちポケモンが2体になった事でのび太の旅はかなり楽になった。 食糧問題もトロピウスの黄色い房を食べることで当面はしのげそうだ。 次へ
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前へ 炎の抜け道。 「ここにもない、あそこにもない……」 ドラえもんとしずかは探し物をしていた。 ドラえもんの四次元ポケットがなくなっているのに気付いたのは煙突山出口に出たとき。 結局後戻りすることになってしまった。 野生ポケモンとの戦いも多く、しずかのキルリアはサーナイトに、マリルはマリルリに進化していた。 「ドラちゃん、またアメ玉だわ」 しずかのジグザグマやマッスグマ達もポケット探しにあたらせているが、拾ってくるのはアメ玉ばかりだ。 『しずかちゃん、また不思議なアメ貰ってる……さすがあげま(ry』 そう、不運の塊であるのび太を世間一般の父親にできたのは彼女の幸運のおかげでもある。 「あ、あったー!!」 それは大きな岩のそばにあった。 ドラえもんはポケットをパンパンとはたき、再び腹に貼りつけた。 しずかが岩をじろじろと見ている。 「この岩、動きそう」 マッスグマに命令して岩を動かす。 その奥には赤く光る石が落ちていた。 「きれい……」 抜け道内にあった技マシンはドラえもんが貰い、石はしずかのものになった。 フエンタウン。 ドラえもん達は次のジムの情報を集めていた。 「炎タイプの……ジムなのか」 ドラえもんは肩を落とした。 グラエナもエアームドも炎タイプは苦手なのだ。 ヤミラミ1体ではいささか分が悪い。 「またボクが戦わなくちゃいけないのか……」 そんなドラえもんを見たしずかは手に持った袋を差し出した。 「ドラちゃん、これを使ってちょうだい」 「しずかちゃん、これは君の不思議なアメじゃないか!使うわけにはいかないよ……」 しずかは袋をドラえもんに無理矢理握らせた。 「二人で勝って早くのび太さんを探しましょ!」 ああ、のび太くんにはもったいないほどいい子だ。 ドラえもんはしずかの優しさに感謝した。 フエンジム。 ジムリーダー・アスナの前には勇ましい顔をしたドラえもんが立っている。 「がんばって、ドラちゃん!」 「見ててね、しずかちゃーん!」 アスナが首を傾げる。 「タヌキと女の子……妙な組み合わせね?」 「ボクはタヌキじゃない、高性能なネコ型ロボットだ!」 怒ったドラえもんは試合開始の合図も待たずにボールを投げる。 ドラえもんが出したのはヤミラミだった。 「ヤミラミ、ねこだまし!」 ドラえもんの命令を受けたヤミラミは相手の目の前でネコ騙しを仕掛ける。 ひるんだマグマッグにシャドーボールが炸裂。 アスナはその戦い方に感心する。 『ふーん、そういうことね』 攻撃を食らう前に攻撃して倒す。 これならば防御は気にしなくてもいい。 『それにしても……』 このヤミラミ、強すぎる。 アスナの目の前でナイトヘッド50超のダメージを受け、コータスが沈む。 「やった!やったよしずかちゃん!」 ドラえもんはバッジを受け取って満面の笑みを浮かべている。 ドラえもんが勝利した後にジム戦を行なったしずかもマリルリの力で圧勝し、無事二人はジムバッジを入手することができたのだ。 「次はトウカシティに逆戻りみたい」 「そこでようやく波乗りができるようになるのね」 次のジムさえ越えればようやくのび太がいるキンセツ対岸に行くことができる。 けどその前に…… 「ドラちゃん、今日はここに泊まりましょ、ねっ!」 そう訴えるしずかの目線の先は……そう、温泉。 ドラえもんは不思議なアメを貰った恩もあり、しずかの望みを断れなかった。 『ごめん、のび太くん……』 《インターミッション》 おう、俺はジャイアン。ガキ大将! 俺がフエンでどんな生活をしていたか特別に教えてやるぜ 6 00 起床 爺婆だらけの温泉街、みんな起きんの早すぎんだよ! しかもラジオ体操なんか始めやがって。うるせぇ! 6 30 朝食 ご馳走かと思ったら焼鮭定食なんだぜ。 しかも病院食みたいに味付けうっすいし……肉食わせろ! 7 00~10 00 デコボコ山道で特訓 もう厳しいのなんのって、ポケモン修行でなんで俺まで山登りしなきゃならないんだよ! つーか山男、てめえ「ゴミを捨てるな」なんて言いやがるがお前自身が生ゴミみたいな匂いがすんだよ! 11 00 温泉 灰もかぶっちまうし、風呂くらいは入らないとな。 中でおしっこしちまったのは内緒だ。 12 00 昼食 また病院食かよ。爺婆みんな死ねばいいのに。 13 00~17 00 ジムで特訓 ジムの奴らとスパーリングだ。 あのジム、サウナみたいでさ。 あんな中で特訓するもんだからもう俺も激痩せダイエットしてるみたいになっちまってさ。 それよりも……デカパイ姉ちゃんの……汗で……ムンムン……ウッ! 18 00 夕食 ジムの飯はうまいんだよなぁ、肉もあるし。 汗かいた分はここで全部補充しちまったぜ。 19 00 アルバイト 働かざるもの食うべからず、なんて誰が言いだしたんだよ! 温泉宿にありがちな歌謡ショーの手伝いだってさ。 21 00 謝罪 ちょっと歌っただけじゃんか! なんで町中に謝って回らなきゃならないんだよ。 しかもジジイの心臓止まったのは俺様のせいじゃないだろ、多分。 22 00 温泉 寝る前に風呂に入るんだ。 別にデカパイ姉ちゃんがこの時間に入るから合わせてるわけじゃないぞ。 23 00 男のたしなみ 覚えたばかりなんだが、こりゃ麻薬だな……ハァハァ、ウッ! 23 30 就寝 こんな感じだったのさ。 自分を鍛えたり、ポケモン育てたり、大人の階段登ったり…… とにかくいろいろな事があって俺様はあの強さを手に入れたわけよ。 旅をしている今だって毎日の修行はやってるぜ、あと男のたしなみもな。 そのためにデカパイ姉ちゃんの下着を何枚か失敬し(ry これからは俺様の天下だぜ! 注:鬼畜出木杉 「あたしの、負けだ…」 アスナは力なく膝をついた。 その少年の力は圧倒的だった。 「アニメみたいにやってみたかったんだ」 無邪気に笑う少年の手持ちはピカチュウただ一匹。 しかしそのピカチュウは限界まで鍛えられており、10万ボルトの破壊力は次々とアスナのポケモンを撃破していったのだ。 「以外とつまらなかったなぁ、電気玉持たせなくても大丈夫だったかも」 少年は何事もなかったかのようにピカチュウをボールに戻す。 「すごいね、あんた。じゃあ勝利の証、このバッジを……」 少年は懐から別のボールを取り出す。 「バッジ?ああ、そんなものはいりませんよ」 ボールから出されたポケモンは…… 「も、モンジャラ?」 アスナは驚いた。 モンジャラはホウエンには生息しない珍しいポケモンだ。 少年は不満そうに語る。 「まだデータの実体化が完璧じゃなくてね。この程度のポケモンしか出せないのさ」 この少年は何を言っているのだろう。 しかしそれを考える時間を少年は与えてくれなかった。 「モンジャラ、つるのムチ」 モンジャラから数本の蔓がのび、アスナを拘束する。 注:鬼畜出木杉 「な、何をっ…あううっ!」 少年は拘束されたアスナの前でぺこりと挨拶をする。 「ボクは出木杉といいます。貴女を部下にスカウトしにきました」 アスナはその発言の意味がわからない。 「あたし…はジムリーダーだよ、そんなの、受けるわけないじゃない!」 出木杉は頭を抱える。 「やっぱり貴女も一回リセットしなきゃいけないみたいですね」 出木杉が指を鳴らすとモンジャラの蔓がアスナの服に滑り込み、それを力任せに引き裂いた。 「い、いやぁぁぁぁぁぁぁっ!」 他人には見られたくない場所を隠したくても四肢は拘束されて動かせない。 アスナはその裸体を出木杉の前に晒している。 「お願い、見ないで…お願い……」 泣きながら嘆願するアスナ。 「貴女は明るさが売りなんですから、笑ってもらいますよ」 モンジャラは全裸のアスナをくすぐりはじめる。 アスナは恥辱で涙を流しながらも、無理矢理笑わされ続ける。 「ふふふ、笑いながら犯されるってどんな気分なんだろう」 出木杉は形のよいその胸を見ながら冷たく笑った。 その後、アスナは人知れずその姿を消した。 119番道路。 ジャイアンは一人、道に迷っていた。 「畜生、スネ夫のやつがいないからなぁ」 道案内は主にスネ夫の役目だったため、今までは迷ったこともなかったのだ。 ジャイアンもポケモン達もすっかり疲れ果てている、そんな彼らの前方に明かりが見えた。 「おっ、あそこで休ませてもらおう」 疲れた体を奮い起こし、ジャイアンは明かりに向かって歩く。 しかし明かりを灯していた建物に近づいたジャイアンはすぐにそれが失敗だと悟った。 ジャイアンを歓迎したのは青装束の輩達からの襲撃。 「こ、こいつらはアクア団!」 そう、ゲームをプレイしていたジャイアンは知っているはずだった。 しかし旅の疲れでこのイベントの存在を失念していたのだ。 「子供のくせに我らの存在を知っているとは、貴様何者だ!」 アクア団員達のズバットとキバニアが襲い掛かってくる。 「うわぁっ!」 ジャイアンは咄嗟にバクーダとラグラージで応戦する。 しかし2体とも技を使い尽くし、できることは悪あがきくらいだ。 相手のアクア団員の後ろからは新たなアクア団員が駆け付けている。 「ま、まずいぜこりゃあ!」 ゲームとは違い、敵も物量戦でくる。 ジャイアンの不利は明らかだった。 敵ポケモン6体を倒したところでラグラージとバクーダは自らも倒れてしまう。 「くそ、コドラ!マタドガス!」 ジャイアンの次のポケモン達がアクア団の前に現れる。 コドラの突進がポチエナに炸裂し、一撃で相手を倒す。 マタドガスのヘドロ攻撃もキバニアに毒を浴びせた。 「ど、どうだ……俺様の実力……」 しかしジャイアンは状況が絶望的だと悟ることになる。 倒したはずのポケモン達が再び襲い掛かってきたのだ。 後方で彼らは元気のかけらを使い、ポケモン達を復活させている。 「そ、そんな……」 それから2時間。 ジャイアンは全ての力を出しきって戦い続けたが、ついに最後のポケモン・ペリッパーも倒されてしまった。 「はぁ、はぁ、てこずらせやがって」 アクア団員のポチエナ達がジャイアンににじり寄る。 「う……こ、こんちくしょぉぉぉぉぉっ!」 ジャイアンは最後の力を振り絞り、ポチエナ達に拳を振るう。 そんなジャイアンを手に余ると思ったアクア団員達はズバットの超音波を浴びせ、ジャイアンを無力化するのだった。 「な、なに……しやがる」 ジャイアンは目の前が真っ暗になった。 ヒワマキシティ。 のび太はいよいよヒワマキジムに挑戦することになった。 「いっ、いいいいよいよだ……」 朝の日差しを受け、のび太は一歩足を踏みだ ……せなかった。 何か見えないものが目の前を塞いでいる。 「ど、どうなってるんだ!」 のび太は右へ左へ必死に前に進もうとする。 夕方。 「あ、そうだ…ダイゴさんから貰った……」 半日かけてようやくデボンスコープの事を思い出したのび太は、そのスコープ越しに覗き込む。 「か、カメレオン?」 そのポケモンはのび太と視線が合うとそそくさと退散していった。 ヒワマキジム。 のび太は並み居るトレーナー達を打ち破り、ついにジムリーダーと対面 ……できなかった。 「な、なんだよ!この邪魔な棒は~」 行く手をさえぎる棒に挟まれて進むことも戻ることもできない。 数時間後のび太はジムのトレーナーに救出され、彼のジム初挑戦は涙のうちに終わった。 翌日。 「あー、確かそこは右から押すんだったよな」 「その後は後ろから元の位置に、だっけな」 あまりに不憫なのび太の為に、ジムのトレーナー達がそこはかとなく(いや、露骨に)アドバイスする。 そのおかげでのび太はなんとかジムの最奥まで辿り着くことができた。 のび太の前に一人の女性が立っている。 「あの人がジムリーダー?」 「いらっしゃい。私がこのジムのリーダー、飛行ポケモン使いのナギです」 のび太はぎこちなく挨拶を返した。 最初に出したポケモンはのび太がトロピウス、ナギはチルット。 「ピー助、のしかかりだ!」 トロピウスがチルットにのしかかり、チルットはマヒしてしまう。 「しんぴのまもりよ!」 チルットはマヒしながらも不思議なフィールドを展開する。 マヒしたチルットは次のターンも遅れを取り、トロピウスののしかかりで倒されてしまった。 ナギはチルットをいたわるようにボールに戻す。 「次はこれです!」 ナギが繰り出したのはトロピウス。 「お、同じポケモンだって?」 のび太はあたふたとしながらも再びのしかかりを命令する。 ナギのトロピウスも負けずにのしかかり返し、互いのHPを削っていく。 「よし、もう一回…ってあれ?」 ピー助の動きが鈍い。 「トロピウス、のしかかり!」 ナギのトロピウスが再びのしかかり、ピー助に止めを刺した。 神秘の守りで守られていたナギのトロピウスはマヒする事無く、逆にピー助をマヒさせていたのだ。 「つ、次はドククラゲだ!」 のび太が出したのはドククラゲ。 溶解液でかなりのダメージを受けたトロピウスの様子を見て、ひと目でドククラゲの強さを見抜いたナギ。 「ふきとばしなさい!」 トロピウスの吹き飛ばしが炸裂し、後退したドククラゲの代わりに現れたのは…… ビチビチ、ビチビチ 地面でみじめにはね回る火ヒンバスだった。 ナギは苦笑しながらトロピウスに命令し、ヒンバスを踏み付ける。 しかし、ヒンバスは踏まれながらもじたばたと暴れ回り、トロピウスを倒してしまった。 「やった、やったぁ!」 「……まさかヒンバスに倒されてしまうとは、私も油断したということでしょうか……」 ナギが自己嫌悪で崩れ落ちる。 ヒンバスはナギのペリッパーに一蹴され、試合は仕切り直しになる。 のび太は再びドククラゲを繰り出す。 バリアーで防御力を上げたのび太のドククラゲはしぶとく、その上超音波でペリッパーは混乱させられてしまい、自滅してしまった。 「やはりそのドククラゲが一番手強そうですね、では次はエアームドです!」 ナギのお気に入りポケモン、エアームドだ。 ナギはエアームドのエアカッターで地道にダメージを積み重ね、バブル光線で落とされた時にはドククラゲは瀕死寸前になっていた。 「よくやったわエアームド…最後はこれです!」 ナギの最後のポケモンはチルタリス。 ドククラゲより素早く動き、つばめ返しであっさりと倒してしまった。 「あわわわ……ど、どうしよう……」 のび太に選択肢は無い。なぜなら彼の手持ちは最後の1体なのだ。 「え、えーい!」 希望をこめて繰り出したポケモンはなんとジュペッタ。 (特訓中迷い込んだ)121番道路でゲットしたカゲボウズを育成したのだ。 鬼火で火傷にされ、後はのび太の必死の傷薬使用でターン数を稼がれたチルタリスはついに倒れたのだった。 「はい、これがヒワマキジムのバッジよ」 「やった!僕だけの力でバッジを手に入れたぞ!」 ナギに渡されたバッジを受け取り飛び上がって喜ぶのび太。 そこに飛び込んできた一人の男。 「ナギ君、天気研究所がアクア団に占拠されてるらしい!」 それはのび太も見知った男だった。 「だ、ダイゴさん!」 ナギとダイゴは天気研究所の見取り図や人質リストを見て何やら相談している。 のび太はそれをのぞき見していた。 人質リストに目を通すと、そこには…… 「じ、ジャイアンだって!」 そう、彼も囚われの身になっていたのだ。 「失禁小僧」「股間ポセイドン」などとあだ名まで付けられ、スネ夫の二度目のトウカジム挑戦は終わった。 スネ夫の今の手持ちはゴルバット、ジュプトル、キノココ、ヌケニン、マルノーム、ジグザグマ。 テッカニンの育成はあきらめ、キノココを集中的に育てていた。 「キノコのほうしまではまだまだ長いな……」 状態異常技を多用するスネ夫にとってキノコの胞子は非常に魅力的だ。 しかしジャイアンに確実に勝つためにはなんとしてもレベル54まで持っていきたい。 「やるとすればルネシティかチャンピオンロードあたりか……」 そう考えながらスネ夫が歩いてると、前方に見慣れた二人組が歩いてくる。 「!!」 スネ夫は咄嗟に草むらに隠れた。 『ドラえもんと……しずかちゃんか』 戦力を把握していない相手と戦うのは得策ではない。 そう考えてやり過ごそうとしていたスネ夫だったが、そうはいかなくなった。 「しずかちゃん、ヤミラミにどくどくを覚えさせようか迷ってるんだけど…」 『どくどくだって!』 実はスネ夫が今から回収に向かおうとしていたのがまさに毒毒の技マシンだった。 『まさかドラえもんのやつに先に拾われていたなんて』 こうなったら…… 「やあ、しずかちゃん!ドラえもんも一緒かい?」 スネ夫は草むらから飛び出した。 「うわぁっ!……ってスネ夫かよ」 「久しぶりね、スネ夫さん!」 無邪気にリアクションする二人を見ながらスネ夫は必死に会話展開を計算する。「実はさ、落とし物しちゃってさ。毒毒の技マシンなんだけど知らない?」 『あくまでボクのものと言い張るんだ』 「ああ、毒毒なら炎の抜け道で拾ったよ」 案の定食い付いてくるドラえもん。 「よかったら返してくれないかな、礼はするから」 『適当なアイテムと交換してしまえば……』 しかしドラえもんは首を縦に振らなかった。 「けどさ、ボクが毒毒の話をしてた時になんて随分タイミングの良い話だなぁ」 ドラえもんの目が細くなる。 スネ夫は咄嗟に目をそらした。 「スネ夫、何か隠してない?」 「……隠してないよ」 「ウソ、ついたね」 もうだめだ、コイツは完全にボクを疑ってる。 こうなりゃ強引に奪いとるまでだ。 「毒毒をよこせ!でないとひどい目にあわせるぞ!」 スネ夫はゴルバットとマルノームを繰り出す。 「あやしいひかりだ!」 ゴルバットの怪しい光がドラえもんに命中し、ドラえもんは見えない蝶々を追い掛けはじめる。 「ざまあみろ、黙って渡してればこうはならなかったのに」 スネ夫がドラえもんの四次元ポケットを漁りだす。 「スネ夫さん……」 物色に夢中になっていたスネ夫はそのあまりにも感情のない声に一瞬寒気を感じた。 「し、しずかちゃん……」 「なんでドラちゃんにこんなことしたの?」 「ひぃっ!」 スネ夫は思わず後退りした。これはヤバい。 「ご、ゴルバット、しずかちゃんにもあやし…」 「サーナイト、サイコキネシス……」 瞬時に繰り出されたサーナイトがサイコキネシスでゴルバットを一撃で倒してしまう。 「つ、強…」 スネ夫が感想をいう間もなく2発目のサイコキネシスがマルノームを襲う。 『ヤバい、マジでヤバい!』 スネ夫の手持ちはほとんど弱点エスパーである。 これだけ育成されたサーナイトが相手だと何もできずに全滅だ。 唯一エスパーに対抗できるタネボーは育て屋に入れっぱなしだ。 「ボクを、ボクを守れ!」 スネ夫は次々とポケモンを出すが、サイコキネシスの前には無力だ。 「うわああああああああっ!」 スネ夫は一目散に逃げ出した。 しかしその眼前には混乱から立ち直ったドラえもんが繰り出したグラエナが立ちふさがる。 「はぁ、はぁ、どうしてくれようか」 ドラえもんの怒りは頂点に達していた。 ドラえもんは技マシンで覚えさせたばかりの技を命令する。 「グラエナ、どろぼう!」 グラエナはまるで手品のようにスネ夫の短パンを奪い取った。 「もう一回だ!」 二度目の泥棒でブリーフも奪われ、その惨めなモノを晒け出す。 「きゃっ!スネ夫さんエッチ!」 いや、どちらかといえばドラえもんの悪趣味を責めるべきだと思うが、しずかは顔を真っ赤にしている。 「返せよ、それ返せよ!」 ドラえもんはエアームドを出し、奪い取った布切れに対し非常な命令を下す。 「エアカッターだ!」 エアームドの空気の刃が短パンとブリーフを引き裂いた。 「あああああああ!」 絶句するスネ夫の横を通り過ぎるドラえもんとしずか。 「ドラちゃん、さすがに可哀想よ……」 しずかがドラえもんの肩をゆする。 「んー、わかったよ」 ドラえもんはスネ夫のところまで戻り、毒毒の技マシンを置いた。 「欲しかったんだろ、パンツの代金だ!」 その後、キンセツに着くまでスネ夫は下半身すっぽんぽん。 サイクリングロードから見下ろされ、トレーナー達の嘲笑がそこら中から聞こえてくる。 スネ夫はただ前を隠すしかなかった。 天気研究所。 ジャイアンは縄で縛られて小部屋に監禁されていた。 ポケモン達は全員瀕死、例え縄が解けたとしても無事に脱出できるとは思えない。 「俺、殺されちまうかもな」 ジャイアンの目から涙がこぼれ落ちる。 夜。 すぐ近くの林では、ダイゴ、ナギ、のび太の3人が最後の打ち合せをしていた。 「……というわけだ、わかったかい?」 「はい、僕やってみます」 のび太が決意を込めた顔で頷く。 ナギはそんなのび太の頭をそっとその胸に抱き寄せた。 「お友達はきっと無事よ、がんばりましょう」 その暖かさで震えは止まった。 ダイゴがボールを取り出す。 「いくぞ!」 「はい!」 ダイゴとナギが一斉に林から飛び出した。 「なんか外がうるさいな」 何やら爆音が聞こえ、ジャイアンは目を覚ました。 気が付けば、部屋の前の見張りもいなくなっている。 「何か起こりやがったな」 ジャイアンは体を捩らせながら必死で縄の拘束から抜け出そうとする。 「ちくしょう、今がチャンスだってのに……」 その時、不意に扉が開かれた。 「ジャイアン!」 突然名前を呼ばれ頭を上げると、そこにはいつも見ていたあの顔があった。 「の、のび太……なのか」 「よかった、今助けるからね!」 のび太はジュペッタを呼び出し、鬼火で縄を焼く。 ジャイアンが力を入れると、縄は焼けた部分からブチブチと切れた。 「のび太、ありがとう……心の友よ!」 ジャイアンはのび太を抱き締めた。 「じ、ジャイアン……くるし……」 「おう、すまねえ!」 のび太は咳き込みながら状況を説明する。 「今1階ではダイゴさんとナギさんが戦ってる。僕達はここ2階から研究所のみんなを助けるんだ」 ゲームをプレイしているジャイアンはダイゴとナギは知っている。 あの二人なら心配ないはずだ。 「けど俺のポケモンはみんな瀕死になっちまってて……」 のび太が懐からアイテムを差し出す。 「ダイゴさんから貰ったげんきのかたまりとピーピーエイダー、一匹分だけど……」 「かたじけねえ!」 通路はそんなに広くない。 とりあえずラグラージを回復させた。 通路を進むと、1階の階段方向から駆け上がる音がする。 のび太はとっさにケッキングを繰り出し壁にした。 「ケッキング、ひたすら怠け続けろ!」 これでしばらくは後ろの心配をしなくてすむ。 「のび太、すげぇ……」 ジャイアンはのび太の的確な行動に感心していた。 「ジャイアン、ボクのポケモンは悪タイプに弱いんだ。頼むよ!」 「まかされよー!」 ラグラージの濁流が敵のポケモンを押し流す。 弱ったズバットはジュペッタのナイトヘッドで止めを刺された。 アクア団員はその勢いに押され、奥の部屋に後退する。 のび太達がそのまま進もうとすると、通路の左右からアクア団員のポケモンが襲い掛かる。 「う、うわぁ」 腰を抜かしたのび太をジャイアンが引っ張る。 「ラグラージ、れいとうビーム!」 ポチエナがビームを受けて壁に叩きつけられる。 「お、おにびだ!」 ジュペッタの鬼火がアクア団員のバンダナに火を点ける。 「あ、あちっ!あちぃっ!」 「い、今のうちに……」 ジャイアンは通路の突き当たりの扉を蹴破る。 そこには幹部らしき女の姿と天気研究所の館長がいた。 「か、館長!」 「のび太くん!」 再会に割って入る女幹部。 「我々アクア団に逆らってタダですむと思ってるの?」 ジャイアンが腕を捲る。 「お礼はたっぷりさせてもらうぜ!」 ラグラージが突進する。 女幹部はグラエナとゴルバットを繰り出した。 「ゴルバット、あやしいひかり!」 ラグラージは光を受けて混乱し、自らを攻撃してしまう。 「ジュペッタ、シャドーボール!」 のび太のジュペッタがすかさずフォローに入るが、グラエナが噛み付いてくる。 「しまった、悪タイプの攻撃だ!」 「どうしたのかしら?手応えがないんだけど……」 にやにやと笑う女幹部。 ジャイアンのラグラージが混乱しながらも濁流で攻撃し、敵2体にダメージを与える。 しかし倒す迄にはいたらない。 『なんだコイツ、ゲームより強いんじゃないか!』 ジュペッタのナイトヘッドがゴルバットを撃墜するが、グラエナの噛み付きでジュペッタも倒されてしまう。 「ふふふ、中々楽しませてくれるわ……」 女幹部はキバニアを出す。 「ドククラゲ、頼むよ!」 部屋は以外と広いのでのび太はドククラゲを繰り出すことができた。 ジャイアンのラグラージは再び自らを攻撃する。 『ちくしょう、スネ夫との戦いと何も変わってねぇ』 ジャイアンは腑甲斐なさに唇を噛む。 「ドククラゲ、バブルこうせん!」 バブル光線がグラエナに直撃し、濁流で弱っていたグラエナが倒れる。 「ちいっ、厄介な奴が!」 ドククラゲは見た目に反してなかなか素早い。 「これが私の切り札よ……」 女幹部がボールを投げる。 そこから現われたのは巨大なサメ。 「さ、サメだぁっ!」 のび太が腰を抜かす。 「やばいぞ…あいつはサメハダー、かなり攻撃力が高いんだ!」 ジャイアンが焦る。 「とりあえずキバニアをしめつけろ!」 のび太のドククラゲがキバニアを締め付ける。 しかしドククラゲ自身も鮫肌で傷を負ってしまう。 「キバニア、サメハダー、かみくだきなさい!」 ドククラゲが二匹のポケモンに噛まれ、倒される。 その隙を付き、混乱の解けたジャイアンのラグラージのマッドショットがキバニアに止めを刺した。 ケッキングを欠いているのび太は最後のモンスターボールを握り締める。 「ジャイアン、2回でいいんだ。攻撃を受けとめてくれない?」 のび太には何か作戦があるみたいだ。 不安だが、それに乗るしかない。 「仕方ねぇ、心の友の願いだからな!」 「ありがとう、出てこいピー助!」 のび太が出したのはトロピウスのピー助。 「ピー助、最強技を使うよ!」 ピー助の羽が光り輝く。 ジャイアンと女幹部は同時に叫んだ。 「ソーラービームか!」 自慢のサメハダーとはいえ、ソーラービームを食らってはひとたまりもない。 眼前には弱ったラグラージが行く手に立ちふさがっている。 『ラグラージを切り裂いて、次にトロピウスより先に攻撃して止めを刺してやる!』 サメハダーがラグラージに襲い掛かる。 「邪魔だ、退きなっ!」 「そうはいかねえ!」 しかしラグラージに攻撃を耐える体力はない。 ラグラージはサメハダーに切り裂かれた! 『すまねぇ、のび太……』 ジャイアンは心の中で謝罪する。 しかし! 「なにっ!私のサメハダーのきりさくを受けたっ……」 「ラグラージ、どうなってんだ……」 ラグラージが使った技は『まもる』。 さっきのキバニア撃破でレベルアップし、会得したのだ。 「くそっ!」 女幹部はもう一度サメハダーに切り裂くを命令する。 ラグラージはその攻撃で瀕死になるが、倒れるラグラージの後ろには光り輝くトロピウスが構えていた。 「のび太、やっちまぇぇぇっ!」 ジャイアンが叫び、のび太も叫んだ。 「ソーラービーム!」 トロピウスから凄まじい光の束が放射され、サメハダーを飲み込む。 「ちぃっ、まさかサメハダーまで……」 女幹部は館長から書類束を奪い取ると、口笛を吹いた。 窓に脚をかけ、憎々しげな目でジャイアンとのび太を睨む。 「この借りは必ず返してやるわ!」 女幹部は窓から外に飛び出した。 天気研究所を占拠していたアクア団は撤退した。 ダイゴは天気研究所での後始末をするためにそこに残り、ナギ、のび太、ジャイアンはエアームドとトロピウスで空を飛んでヒワマキに戻る。 トロピウスの背中に乗るジャイアンとのび太。 「のび太、強えな」 「結局ジャイアンに助けられちゃったけどね」 のび太は申し訳なさそうにうつむく。 「うじうじすんな、心の友よ!」 ジャイアンはのび太の背中をバンバンと叩いた。 翌日、ヒワマキシティ。 「ジャイアン、ナギさん、行ってくるよ!」 のび太はトロピウスの背中に乗っている。 昨日ジャイアンの秘伝マシンで空を飛べるようになったピー助。 これでドラえもん達と合流するつもりなのだ。 ジャイアンはこのままバッジ集めの旅を続ける。 「じゃあ、ポケモンリーグで会おうねジャイアン!」 「おう!次にあったらバトルでコテンパンにしてやるよ!」 ナギもニコニコと手を振っている。 二人の見送りを受け、トロピウスは空高く飛んでいった。 「それでは」 「また後で会おうぜ、ナギの姉ちゃん!」 ナギとジャイアンは握手をして別れた。 次へ
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前へ 《インターミッション》 注:男のたしなみ 俺はジャイアン、ガキ大将。 ルネジムをクリアしてから俺様が何をしていたか教えてやるぜ。 ダイビングでルネを出た俺様はキナギタウンに向かうつもりだった。 しかしその道中、なんとあのマホとナホを見かけてしまったんだ。 俺は迷った。 このまま何の関わりにもならないまま二人から遠ざかるか、それとも後を尾行するか。 そして俺は後者を選択した。 理由はただひとつ、俺が持っている男のたしなみアイテム(今までの戦利品)が 限界を超えていたからだ。 新たなるオカズ…いやロマンを求めて俺は二人を追うことにした。 それからは一瞬一瞬が真剣勝負だった。 野宿しているマホとナホが寝静まるまでダイビングで海中に身を潜め、 そしてこっそりと下着を拝借した。 『絶対気付かれてはいけない』という緊張感と『二人が知らない』という 背徳感に俺様も興奮しっぱなしだ。 無論たしなんだ後は元に戻しておく。 そう、盗んでしまうと二人に警戒されるかもしれないからだ、俺って頭いいぜ。 こうして俺は毎日新鮮な使用済み下着を堪能しつつ、 二人の後を付かず離れず尾行していた。 注:男のたしなみ そして翌日はトクサネに到着しようかというその日の夜。 俺はついにやってしまった。 その日もいつものように、砂浜に寝ている二人のバッグから 使用済み下着を取り出す。 『1、2…ひとり4枚、合わせて8枚か』 彼女等は必要な枚数だけしっかりと替え下着を用意していたようだ。 約四日間の旅をしてきたことがわかる。 『今日は最後だから今までの分も全部使ってやるぜ』 さすが俺様、大物ならではの発想だぜ。 『頭部、そして腕部装着完了!』 せっかくだから4枚まとめてかぶってみる。 そして両手に2枚ずつ、準備は完了だ。 その時、不意に俺の目の前に一匹のポケモンが現れた。 青と白の2色で彩られた大きなポケモンは俺を不思議そうに見ている。 『コイツは……そうだ、ラティオス!』 ゲームではいつもすぐ逃げるからイライラしてぶっ殺してた あの伝説のポケモンが目の前にいる。 俺は別の意味で興奮しちまったね。 一発勝負、手持ちで最も捕獲率が高いハイパーボールで行くしかない! 「いけ、ハイパーボール!」 「うーん…なに~」 ボールを投げようとしたジャイアンの背後から声がする。 ジャイアンが思わず振り向くと、 目を覚まして体を起こしたナホと目が合ってしまった。 注:男のたしなみ 「……」 「……」 「……よ、よう。久しぶり」 気まずい沈黙を俺が破ると、ナホは大きく息を吸い込んだ。 「いやあああああああああっっ!!」 その声に驚いてラティオスは空高く飛んでいってしまう。 俺は千載一遇のチャンスを潰したわけさ…… だが今はそれどころじゃない。 「先輩、先輩!変態が!」 「ひいっ、以前私たちを視姦していたあの子供よっ!」 マホとナホが一斉にボールを投げる。 現れた2体のトドグラーは俺様を強襲し、 のしかかられて動きが取れなくなってしまった。 「さて、この変態小僧をどうしますか?先輩」 「やっぱり警察に突き出すしかないわね」 そんな二人の相談を聞いて俺はゾッとした。 さすがに犯罪者にはなりたくない。 俺は万引きGメンに許しを請うように二人に助けを求める。 「わ、悪かったよ。取った下着買い取るからさ、へへへ」 口に出した後で気が付いたが、これは完璧に援交オヤジの発言だ。 しかし、ジャイアンの発言は二人の少女に予期せぬリアクションを取らせた。 「先輩、お金だって……」 「そ、それは魅力的な提案ね……」 チャンス、お金は効果抜群だ! すかさず二回目の攻撃をたたき込む。 「俺様を警察に突き出しても一銭も入らないぜ。いくら欲しいんだよ、言ってみな」 もう完全に現行犯の痴漢の言う台詞である。 注:男のたしなみ マホとナホはひそひそと相談を始めた。 『ふ、俺は勝算があってこの提案をしたんだぜ』 そう、毎晩バッグを漁っていたので二人の経済状況も欲しい物も把握している。 こういうプチ情報も男のたしなみをするにはスパイスになるのだ。 「じゃあ、あんたみたいな子供に出せるかわからないけど……」 「下着1枚につき1万、計8万出せるなら許してあげるわ!」 俺様は想定内の金額が来たことににやりとした。 そして彼女等に次のトラップを仕掛ける。 「わ、わかった、8万だな…俺のバッグに財布が入ってるから取ってくれ」 マホとナホは俺を警戒しながらバッグを物色する。 中から取り出した俺の財布の中身を見て、二人の顔色が変わった。 「ナホ…80万以上入ってるわ」 「先輩、こいつすごい金持ちです……」 その光景に二人の目は釘づけになっていた。 『くくく、レイカやミツグを何度も狩っていた甲斐があったぜ』 そして俺はマホとナホに最後の選択を迫る。 「買うのは8枚でいいのか?まだ買ってもいいぞ」 そして俺様と二人はビジネスパートナーになったんだ。 注:男のたしなみ それから二人は俺の後を付いてくるようになる。 そして俺は毎日新鮮な素材を調達することができるようになった。 俺という消費者とマホ&ナホという生産者の付き合い。 それはだんだんと親密になり、流星の滝に着いた頃には「タケシ」と 下の名前で呼ばれるまでになったんだ。 今は俺がたしなんでいる最中を二人が普通に見物しているくらいの 空気感になっている。 流星の滝、深部。 「ふう、ごちそうさん」 「相変わらず盛ってるねぇ、タケシ」 「タケシくさーい、あははは!」 俺はいつもの行為を終えて、ガサガサとティッシュを取り出している。 この滝でゲットしたタツベイは順調に育成され、ボーマンダにまで進化した。 これで出木杉相手でも遅れは取らないだろう。 「なあ、おまえらお菓子残ってないか」 「手洗ってきたら分けたげる」 ナホにウェットティッシュを渡され、 俺は手に持っていた使用済みティッシュを放り投げた。 「ジャイアン…なんかベタベタしてるんだけど、これ」 聞き覚えのある声が聞こえた。 その方向を向くと、頭に丸めたティッシュを乗せたスネ夫がいたんだ。 「お、おまえ何やってんだ?」 スネ夫はダイゴに呼び出されてここに来たらしい。 「確かにゲームではここにダイゴさんがいるはずなんだけど……」 「あん?俺はここで修業していたが見てないぞ」 確かにここにいたのはドラゴン使いやら金婚式の老夫婦とか、そんな奴らばかりだ。 ダイゴの姿は見ていない。 「今回の呼び出しはなんかおかしいんだよな。 朝起きたら枕元にダイゴさんからの手紙があったんだ」 あまりに不自然な状況に、スネ夫も最初は出木杉の罠ではないかと疑った。 しかし結局のところ、真偽は行ってみないとわからない。 「だからこっそり身を隠しながらダイゴさんの姿を見にきたんだけど……」 「そこで俺を見つけたってわけか」 俺はスネ夫の背中をバンバンと叩く。 「とりあえず一旦休戦だ、二人でダイゴを探してみようぜ」 そして俺とスネ夫はダイゴさんと出会い、出木杉のルネシティ襲撃計画を知った。 ダイゴさんの調査、スネ夫がブレーン達から聞いた情報、 その二つを元に対伝説ポケモン対策を練ったんだ。 スネ夫はダイゴさんにはいくつか腑に落ちない点があると言ってたが、今はそれどころじゃない。 早くしずかちゃんを助けないとな。 なんたって俺はガキ大将、子分達を助けるのは当たり前だぜ! 注釈、マホとナホ:あさせのほらあなの前にいるトレーナー ポケモンリーグ。 チャンピオンの座に座る出木杉の前にジンダイが現れる。 「ご苦労さま、ジンダイ」 出木杉のねぎらいはジンダイの行なったしずか拉致に対してである。 ジンダイは何かを言いだしそうになるが、それをかろうじて抑えている。 しずかは眠り粉によって眠らされ、別室に監禁している。 出木杉はその様子を見ながら満足気に頷いた。 『今すぐヤッてしまいたいが、それでは僕の気が済まない』 出木杉の目的はひとつ、「しずかに最大の絶望を与えた上で」服従させることだ。 その為には、しずかの目の前でのび太達を叩きのめす事が必要。 「いつもみんなで大冒険をする時は団結するんだってね。僕は呼ばれたことすらないのに」 そう、出木杉を突き動かしているもうひとつの心情は疎外感。 しずかとのび太達の間にあり、出木杉だけにはない「絆と友情」を粉々に打ち砕き、 リセットする。 それこそが出木杉の求めるエンディングなのだ。 「ドラえもんとの接触、そして僕の下僕達の敗北…… いくつか腑に落ちない点があるな」 まず最初の疑問は「もしもボックスが破壊されている」ということだ。 破壊されたにも関わらず現状が維持できているということは、 おそらく元の世界に帰ることは困難なのだろう。 「それはこっちとしても願ったり叶ったりなんだが……」 いったい誰が? 出木杉本人以外に「この世界に留まりたい」という奴がいるというのか。 『それだけの行動を起こすからには、僕を倒す自信があるということなのか』 どちらにしろ、ボックスの存在を知っている誰かの仕業には違いない。 第2の疑問は、「イズミの不可解な敗北」だ。 漂流していたイズミは、マユミによって無事助けだされた。 しかし、イズミ本人はなぜ自分が敗北したのかを全く覚えていなかったのだ。 『不意打ちで気絶させられたか、記憶をいじられているか……』 しかし誰がそれをやったのか。 イズミが覚えている時点ではしずかは逃亡し、ドラえもんは敗北している。 他の人間の行動もナギ、アスナ、ツツジ、そしてジンダイの監視により アリバイが確定しているのだ。 「あそこにいたメンバー以外にも僕に歯向かう愚か者がいるというのか」 抵抗勢力には心当たりがありすぎるが、イズミを倒せるほどの存在は記憶にない。 そして最後の疑問は、「伝説のポケモン達の不自然な敗北」である。 報告を聞いた出木杉もポケモンの技を使ってみたが、噛み付くなどの技のダメージが 明らかに変化していた。 ただならぬ事態に、出木杉はマユミに命じて事実関係を調査させている。 先程第一報が来たのだが、なんとすべての技が物理・特殊属性に分かれていたのだ。 噛み付くは悪タイプでありながら、攻撃の数値でダメージが決定しているのである。 「早急にデータを収集しないといけないな」 だが出木杉の頭には最大の疑問が残っている。 誰がこのようにデータを書き替えたのか、ということだ。 世界に干渉するような力を持つ存在といえば、ドラえもん以外には考えられない。 だがゲームを知らないドラえもんが設定したとは思えないくらいに理にかなった 設定改変である。 物理的な技と特殊的な技が見事に二分されており、一朝一夕に考えられたとは 思えないのだ。 「骨川君辺りが入れ知恵したか?」 深く考えても仕方がない。 世界の設定を変えたとしても、その土俵の上で叩きのめしてやればいいのだ。 出木杉はジンダイに下がるように命令すると、マユミの技データのチェックを始めた。 ルネシティ。 街の復興作業もそこそこに、主要メンバーがユニオンルームに集まっていた。 ドラえもん、のび太、ジャイアン、スネ夫。 フロンティアブレーンのヒース、ウコン。 そしてダイゴとマホ、ナホ。 「自己紹介も済んだことだし、とりあえず今後の事を話し合おう」 ダイゴがそう切り出し、机に紙を広げる。 それはサイユウシティとチャンピオンロードの詳しい見取り図だ。 「僕が得た情報では、デキスギはチャンピオンロードとポケモンリーグ周辺に大量の ポケモン、そしてデキスギに心酔し服従したトレーナー達を配置しているようだ」 地図にはトレーナーの巡回ポイントも示されているが、すごい人数である。 「こんな人数相手に僕らだけで勝てっこないよ!」 のび太が弱音を吐くが、皆口に出さないだけで本音はのび太の言うことを 肯定している。 「せめて四次元ポケットさえあれば……」 ドラえもんが自分の腹を見ながら落胆する。 ほとんどの道具がメンテ中とはいえ、通りぬけフープや石ころ帽子があれば 潜入はかなり楽になっていたはずだ。 しかし、のび太の部屋のスペアポケットまで何者かに盗まれており、 その希望は潰えている。 おそらく盗んだのは出木杉だろう。 しかし、あのポケットから望みの道具を出せるのはドラえもんとのび太くらいのものだ。 しかもほとんどの道具の効能を出木杉は知らない。 悪用されることはまずないだろう。 「ゴローンやゴローニャへの対抗策はすでに打ってある」 ウコンがヒースに目配せすると、ヒースは続けて話しだす。 「ダツラがキンセツでヌオーとニョロボンの大量育成を続けているのさ」 「ジンダイの情報は嘘ではなかったようじゃな。 奴は奴なりに筋を通したということか……」 対大爆発のために湿り気の特性を持つポケモンの育成を提案したのは 裏切ったジンダイなのだ。 二人のブレーンが複雑な思いで語り終えたとき、不意に立体映像が現れた。 「よう、久しぶり」 「だ、ダツラか!」 ヒースとウコンが同時に声を上げる。 ダツラは皆を見回すと、自己紹介を行なった。 「つーかそれどころじゃないんだ!足りないんだよ!」 ダツラが言わんとしていることがわからず、皆が首を傾げる。 「水の石が足りないんだ、ニョロゾをニョロボンに進化させられない……」 その言葉にダイゴが苦い顔をする。 「対岩ポケモンには水だけではなく格闘属性も重要だ、タイプ一致による攻撃力増加が ほしいところだが……」 その時、スネ夫が思い出したようにカバンをごそごそと漁りだした。 「確かここに……あったあった!」 スネ夫が取り出したのは大量の色とりどりの欠片。 「これをトレジャーハンターに渡せば進化石が手に入るよ!」 「ありがてえ!」 ダツラが拳を自らの手のひらに叩きつける。 「これで解決だな。では君たちには突入決行日までに万全の状態をしいてもらう」 ダイゴがドラえもん達の前に写真を出す。 それを見たジャイアンとスネ夫が同時に声を上げた。 「ら、ラティオス!」 「そう、無限ポケモン・ラティオスだ。こいつを君たちに捕まえてもらう」 ジャイアンが渋い顔をする。 「けどコイツは出会ったらすぐ逃げちまう……ゲットは大変だ」 「せめて僕のポケットがあったなら、桃太郎印のきび団子でなんとかなるかも しれないのに」 ドラえもんがしょんぼりとうなだれる。 「そこでボクの出番ってわけさ」 そう得意げに言ったのはスネ夫。 「技教えマニアに頼んで、ボクのクロバットにくろいまなざしを覚えさせれば 逃げることはないよ」 「では、君がラティオスを捕まえるんだ」 ダイゴはスネ夫の肩に手を乗せ、袋に入ったタイマーボールを渡す。 「了解、ボクにまかせてよ」 スネ夫の役割が決まり、ダイゴはドラえもん達にも提案する。 「さて、君らは自分の手持ちポケモンを厳選して育成するんだ」 「今のポケモン達じゃダメなの?」 のび太の問いにダイゴは淋しそうな顔で答える。 「敵は予想をはるかに超える強さを持っている。今の手持ちに愛着はあるだろうが、 万全の態勢で行ってもらいたいんだ」 ダツラが話に割り込んでくる。 「俺のポケモンコレクションを使ってタマゴを生ませれば、大抵のポケモンは 手に入るぜ」 それを聞いたスネ夫がジャイアンに話し掛ける。 「ならホウエン以外のポケモンも使えるって事だよジャイアン!」 「かなりの戦力アップになるな!」 のび太とドラえもんは二人の会話の意味がわからないが、とにかく朗報のようだ。 「わしらがスパーリングパートナーになってやる。育成も楽になるじゃろ」 ウコンとヒースも名乗り出る。 「よし、まずはここから始めるぞ。頑張ってくれよ、少年達」 「おおーーっ!」 ダイゴの激励にドラえもん達も気合いの応答で返した。 ポケモンリーグ。 出木杉の前にはひとりの少年が立っている。 その少年を見る出木杉の顔が笑みを浮かべた。 「君の目…いい具合になってるね。そう、僕と一緒の目だ」 少年は何も言わずにただ出木杉を睨み続けている。 「で、ツツジ達が不在だったとはいえ、ここまでやってきたんだ。 話くらいは聞いてあげるよ」 そう言われた少年はやっと口を開いた。 「あなたと組みたいんですが」 その突然の提案に出木杉が笑いだす。 「まさか君がそんな提案をしてくるとはね。望みはなんだい?」 少年はただひとつ、ぽつりと呟いた。 「誰の邪魔も受けずにノビタと戦いたい、それだけだ」 出木杉の目が怪しく揺らめき、値踏みするように少年を観察する。 『試練としてはちょうどいいか』 「じゃあ君にはチャンピオンロードの出口で彼らを迎え撃ってもらうよ」 少年は何も言わずに振り向くと、その場を立ち去っていった。 誰もいなくなった部屋でひとり残された出木杉。 先程のやりとりを思い返し、呟いた。 「ふふふ、せいぜい張り切ってくれよ、ミツル君」 次へ
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前へ 強い日差しの中、グラードンと対峙するジャイアン。 「くそ、次はコイツだ……ボスゴドラァッ!」 グラードンに負けじと現れたのはボスゴドラ。 圧倒的攻撃力と防御力を誇るジャイアンの主力ポケモンだ。 「ま、まもれボスゴドラ!」 再びグラードンから衝撃派が発せられ、ボスゴドラに襲いかかる。 かろうじて守ったが、あんな攻撃を食らえば一撃で終わりだ。 そしてジャイアンは分かっていた、このポケモンでは絶対に勝てないことを…… ジャイアンは手持ちのポケモンを確認する。 残るはトドゼルガ、そしてリザードン…… 「いや、リザードンじゃねえ。確か戦いの前に……」 最後の戦い、直前。 「ジャイアンの相手ってアスナだろ?リザードンは使いにくくないかな」 「ああ、けど炎と炎で全力でぶつかりたいって気持ちはあるんだよ」 ジャイアンは未だにアスナの変心を認めたくない部分があった。 炎ポケモンで戦えば、以前のように応えてくれるのではないか、と。 そんなジャイアンを、スネ夫は危ないと感じた。 アスナは使用ポケモンのこだわりを捨てつつある。 そんなアスナに対して、リスペクトを求めるのはあまりにも危険な賭けだ。 「ジャイアン、これは僕からのお願い。リザードンを止めて、このポケモンを使ってくれよ」 スネ夫はひとつのボールを手渡す。 「いらねーって、俺はリザードンで戦うんだよ!」 そう言い張るジャイアンに、ドラえもんが口を挟む。 「スネ夫は僕のためにもポケモンを育ててくれたんだ。これは絶対に助けになるよ」 ジャイアンはまだ納得しないが、この戦いは負けられない戦いだ。 『リスペクトより、友情をとるとするか』 ジャイアンはそのポケモンを受け取った。 再び舞台は戻る。 「グラードン、じしんよ!」 グラードンの放つ超衝撃が連続の守るを失敗したボスゴドラを一撃で葬る。 やはり圧倒的。 『こうなれば、友情の証を使うっきゃねーな』 飛行タイプを持つリザードンならば、この場をしのげたかもしれない。 『リザードンより弱けりゃ恨むぜ……』 日照りの中、汗を拭うジャイアン。 「信じてるぜ、スネ夫!!」 ジャイアンはそのモンスターボールを放った。 現れたのはかつてスネ夫が使っていたポケモン……ダーテングだ。 「ダーテング、炎ポケモンの使い手であるアタシに対してダーテングだって?」 アスナはその愚かなチョイスに笑いが止まらない。 「てっきり水タイプのポケモンでも出してくると思ったら……まさか草ポケモンとはね、ハハハっ!」 「ふん、コイツは対アスナ姉ちゃん用に育てられた特別製だぜ……」 ジャイアンが合図を送ると、ダーテングが矢のように飛び出す。 「は、速いっっ……」 アスナは失念していた。 おそらくダーテングの特性は葉緑素。 日差しが強い時には倍の速度で動けるのだ。 『だが、どんな攻撃も当たらないわ』 回避率の高さで敵の攻撃をかわし、カウンターで噴火を当ててやる。 「さぁ、来なさい!」 ジャイアンはスネ夫に言われたことを思い出す。 「ビルドアップ対策だったが、この場で使わせてもらうぜ……じこあんじィッ!」 ダーテングが自らに暗示をかけていく。 そして次の瞬間、すさまじい速さでグラードンの噴火攻撃を回避してしまった。 「じ、じこあんじ、ですって……」 まさかこのような切り返しをされるとは思っていなかったアスナ。 あのダーテングも攻撃と回避が限界まで上がった状態になったわけだ。 「やってくれる……だが、まだこちらが有利」 グラードンにはダーテングに効果抜群の技があるが、ダーテングが持つ技ではおそらく一撃で沈むことはないだろう。 「なんにせよ、時間がかかりそうね……」 だが態勢はこちらが有利。 「もう一度ふんかよ!」 アスナの命令を受け、噴火攻撃を行うグラードン。 だがやはりダーテングには命中しない。 『外れたか……ん、何か……おかしい……』 そう、葉緑素で素早さが倍になっているはずのダーテングの攻撃がこなかったのだ。 「あえて後攻になったの……ま、まさか!」 ダーテングが手に持っている扇を振りかざす。 「ダーテング、ふきとばせッ!!」 ジャイアンの叫びと共に、すさまじい風が巻き起こる。 「あああっ、ぐ、グラードンっ!」 グラードンはその風に耐えきれず、モンスターボールに戻ってしまった。 代わりに現れたのはグライガー。 「能力変化をコピーし、そしてふきとばし……こんな対処法があったとはね」 グライガーで再び補助効果を積もうとするが、日照りの効果が残っているこの場でダーテングより素早く動けるはずもない。 そして砂嵐はグラードンが出た時点で収まってしまっている。 「ダーテング、だましうちだ!」 グライガーは動くこともできず、騙し討ち一撃で戦闘不能になってしまった。 こうなった以上、おそらくグラードンを出しても勝つことはできないだろう。 自分の積んだ効果によって敗北する。 自分が育てたトレーナーに敗北する。 「自業自得……というやつか」 目の前のタケシは本当に強くなった。 そして今、アスナを越えていく。 グラードンが咆哮を上げながらゆっくりと倒れていく。 「グラードンも落ち、これが最後のポケモン……」 最後に残ったアスナのポケモン、それは草タイプでも地面タイプでもない。 「行きなさい、ブーバー!」 最後に現れたのは炎タイプのポケモン、ブーバーだ。 おそらく、勝つことはできないだろう。 だが、アスナは今まで繰り出したどのポケモンより心強いと感じていた…… アスナは大の字になって天井を見つめている。 タケシはすでに仲間たちを追ってこの場を立ち去っていた。 「タケシ、アンタの仲間……救ってやんな」 アタシのように。 アスナは心地よいバトルの疲労に包まれ、満足そうにそのまま眠りについた。 ポケモンリーグ、最後の間への階段━━ 「はぁっ、はぁっ……」 長い階段を必死で駆け上がるドラえもん。 早くのび太に合流し、協力して出木杉を倒す。 そしてもしもボックスを捜索しなければならない。 あれから何度も考えたが、やはりもしもボックスは「その道具の持つ役割」を分かっている出木杉が隠しているとしか思えない。 もしかしたら出木杉の部下の独断行動かもしれないし、それこそ推測はいくつでもできる。 だが、出木杉が絡んでいるのは確かだ。 「もしもボックスは多分、出木杉が持っているはずだ。それしかあり得ない……」 「残念、ハズレよ。ドラちゃん」 不意に浴びせられる応答に、ドラえもんはその顔を上げた。 階段の上にいる人影、それはドラえもん自身もよく知っている、そして探し求めていた人物だった。 「し、しずかちゃん!!」 なぜ捕えられているはずのしずかがこんな場所にいる? そして彼女はもしもボックスの行方を知っているのか? 現段階で導き出される結論はひとつだ。 ドラえもんはその最悪の推測を口にする。 「まさかしずかちゃんは、出木杉とグル……なのか」 『しずかちゃんを疑いたくはないけど、それならほとんどの疑問が解決する』 しずかの誘拐未遂から始まった一連の事件。 あらゆる事が、出木杉としずかを中心として動いている。 「残念、それもハズレね。私は出木杉さんの味方ではないわ」 全てを見切ったようなしずかの回答が返ってくる。 だが、ドラえもんは引き下がらない。 「いや、それはウソだ!じゃなければ君が出木杉から逃げ出してここにいる理由が説明できない!」 非力な女の子ひとりで、今の出木杉の手から逃げることは不可能だ。 だが、答えは意外なところから返ってきた。 「しずかちゃんを逃がしたのは私よ、お兄ちゃん……」 しずかの後ろから現れたのは、ドラえもんの兄妹であるネコ型ロボット。 本来ここにいすはずのない存在。 「ド、ドラミ……なんで……」 ドラえもんの目の前にはしずかとドラミ、あり得ない組み合わせが立ちはだかっている。 「お兄ちゃん、ごめんなさい」 ドラミが謝罪の言葉を述べるが、ドラえもんにはその意味がさっぱり分からない。 混乱するドラえもんを前に、ドラミが語りはじめた。 「全てはあの日から始まったのよ……」 それはいつのことだろうか。 セワシにせがまれて、ドラミは結婚したのび太としずかの様子を見に行ったのだ。 こっそり隠れて新郎となったのび太の様子を見るドラミ。 セワシは来るなり目的も忘れ、21世紀初頭の世界見物に行ってしまった。 「のび太さん、立派になって……」 ドラミは、兄の成果であるのび太の様子をみて満足そうに微笑んだ。 「ドラミちゃん……あなた、ドラミちゃんね」 「ひっ!」 不意に背後から声を浴びせられ、思わず声を漏らしてしまうドラミ。 恐る恐る顔を後ろに向けると、そこには美しい女性がニコニコと笑っていた。 その顔立ちには見覚えがある。 「し、しずかさん……」 野比しずかとドラミは、近くの喫茶店で積もる話をすることになった。 だがそこで聞かされた話は、ドラミの心を暗く沈めていくことになる。 「のび太さんはとってもいい人よ。だから私も彼を選んだ……」 しずかがそうのろける。 しずかが結婚に至るまでの思い出話を楽しそうに語っていく。 ほとんどはのび太の失敗談と、それをフォローするしずかのやり取りだが、しずかはそれを苦には思っていないようだ。 そんな幸せトークの中、ドラミはふと思った事を冗談半分で口に出してみる。 「のび太さんには悪いけど、しずかさんは出木杉さんを選ぶと思ってたわ」 その瞬間、しずかの顔が豹変する。 「あんな変態、近づくのもおぞましいっ!!!」 怒りと恐怖が混ざったような複雑な感情をぶつけてくるしずか。 そう、それが全ての始まり。 いや、二回目の始まりだったのだ。 「後は私が説明するわ」 ここまで語ったドラミを制するように、しずかが後を継いで語り始める。 「今の話を聞いて推測できるでしょうが、私はこの時代より未来から来たしずか。野比しずかよ」 「そうか、ドラミのタイムマシンで……けど、いつから入れ替わっていたんだ?」 ドラえもんはしずかと一緒に旅をしている間、しずかの変化に全く気付かなかった。 今のしずかの様子は明らかに大人びていると分かる。 あれだけの時間いっしょにいて、違和感が出ないはずがないのだ。 「私は入れ替わってなどいないわ、最初からこのゲームに参加していたのよ」 「そう、のび太さんがしずかさんをこのゲームに誘う時から全ては始まっていた」 しずかの説明にドラミが補足する。 ポケモンリーグ、第1の間。 氷漬けにされたスネ夫を見て、しずかが泣き崩れる。 「ごめんなさい、ごめんなさいスネ夫さん。もうひとりの私のせいで……」 ダイゴとミツルは辺りを警戒しながらその様子を見守る。 スネ夫と戦い敗北したツツジも、捕えたはずのしずかの出現に驚きを隠せない。 「やはり、彼女らの目的は……」 「ええ、ノビタとデキスギが戦い、ノビタが勝つ。そしてその記憶を消させない……」 もうひとりのしずかが、しずかに語った事。 全てが、野比のび太の成長のために仕組まれた事だったのだ。 チャンピオンの間の前。 ドラミが、しずかに聞いたことをドラえもんに語って聞かせる。 「しずかさんは小学生の頃、のび太さんに誘われてこのゲームに参加した……」 そして、出木杉の恐るべき本性を知ってしまったのだ。 そしてこの世界でしずかは今のように誘拐され、のび太達は出木杉に立ち向かったのだ。 「けど、のび太さんは勝てなかった。ドラちゃん、貴方が出木杉さんを倒したのよ」 そしてドラえもんは、このゲームに参加した全ての子供達の記憶を消し、現実世界は再びいつものように動き出したのだ。 「けど、しずかさんは記憶が消えなかった。どうやら何かの要因で、忘れろ草の香りを嗅がなかったのね」 鼻が詰まってたのよ、としずかが口を挟む。 そして、しずかは出木杉の本性を記憶に残したまま日常に帰った。 それから、出木杉はしずかに何度もモーションをかけてきた。 だが、その爽やかな物腰の裏にある黒いものを真のあたりにしたしずかは、決して出木杉に心は許さなかった。 そして、彼女は野比のび太を選ぶ。 「出木杉さんの闇を知った私にとって、のび太さんの愚直な純粋さは救いだった。彼を夫にしたことを後悔はしていない」 しずかが顔を赤らめる。 だが彼女にとってひとつだけ、どうしても許せない事があった。 のび太は、恋のライバルである出木杉に対してどうしようもないほどの劣等感を持っていたのだ。 結婚に関しても、しずかの側が気のある素振りを見せていなければのび太は切り出さなかったかもしれない。 「私は、何としてものび太さんに出木杉さんを乗り越えてもらいたいの」 しずかは目を閉じ、未来ののび太の優しい笑顔を思い出す。 そう、彼は出木杉などよりよっぽど素晴らしい男なのだ。 「だから、私は再びこのゲームに参加した。全てを変えるために……」 のび太の劣等感を打ち消し、成長してもらう。 しずかは、決意を込めた口調でそう言い放った。 再び、第1の間。 スネ夫を助けだしたしずかは、全てをスネ夫に説明する。 「私はもうひとりの私とドラミちゃんから全ての話を聞くと、部屋に閉じ込められた」 そして、もうひとりのしずかは小学生以降の記憶を封じ、小学生の姿でゲームに参加したのだ。 「記憶は、ジムバッジを手に入れるたびに徐々に戻るようになっていたみたい」 そう、だからドラえもん達はしずかが入れ替わった事に気付かなかったのだ。 スネ夫がワナワナと身を震わせる。 「そうか……僕らも、出木杉さえも手の平で踊らされていたってことか」 となると、おそらくのび太は出木杉に勝利することになるだろう。 だが、何かが納得いかない。 自分達の未来を全て操られているような、そんな感じだ。 「やっぱ、このままじゃいけないよね」 スネ夫の問掛けに、しずかも頷いた。 「皆のところに、行こう!」 ポケモンリーグ、チャンピオンの間。 全てがしずかが仕組んだこととも知らないのび太と出木杉。 だが、その戦いは始まってしまった。 (まずはこちらに有利な状態にしないと……) のび太はホウオウを前に、二個のボールをその両手で投げる。 現れたのはメタグロスとドククラゲだ。 その様子を見て出木杉もボールを構える。 「ダブルバトル……というわけかい?まあ、付き合ってあげるよ」 出木杉はもう一つのモンスターボールを投げる。 ホウオウに続いて現れたのは、銀色に輝く巨体を翻すポケモン……ルギア。 『馬鹿なのび太だ、この2体で瞬殺してくれる』 ルギアはドククラゲの弱点を突けるし、ホウオウはメタグロスの弱点を突くことができる。 「のび太、すぐに終らせてやるよ!」 ルギアが先制し、神通力をドククラゲに放った。 だが、その攻撃は見えない力に弾かれてしまう。 「ちっ、守ったか……」 いくらのび太とはいえ、ここまで勝ち上がってきたのだ、馬鹿ではない。 「だが、ホウオウの攻撃は避けられまい……せいなるほのお!」 吐き出された輝く炎はメタグロスに炸裂する……はずだった。 だが、メタグロスはその攻撃をわずかな動きでかわしたのだ。 「よし、やったぞ!」 のび太がガッツポーズをする。 「メタグロス、かげぶんしん!」 メタグロスの姿がぶれ、その回避率を上げる。 出木杉が舌打ちする。 「まさかヤツは、せいなるほのおが来ることを読んでいたのか?」 聖なる炎は破壊力が高いが、命中率が少し落ちる。 そのわずかな可能性にのび太は賭けたというのだろうか。 『なら、やはりコイツは馬鹿だ』 そんな無謀な確率論でバトルをするなど、やはり劣等生の浅知恵だ。 「まあいい、次は確実にドククラゲを落とす」 守るを連続して使うと成功率が落ちるため、ドククラゲは次のターンに守るは使わないはず。 「ルギア、ホウオウ、二人がかりでドククラゲを血祭りにあげろっ!」 二体の伝説ポケモンがドククラゲに殺到する。 「まずは一匹……」 のび太ごときに大人気ないことをした、と再びマユミの奉仕に体を預ける出木杉。 だが、そのまま快楽に身を委ねることができないような光景が目に飛び込んできた。 「な、なにっ!」 ドククラゲはルギアとホウオウの神通力をいとも簡単に弾いたのだ。 「ここで……二度目の守る、だと……」 のび太の馬鹿さ加減はつくづく分かっていたつもりだが、まさかここまでとは。 だが、そののび太の分の悪い賭けは今のところ成功を続けている。 「メタグロス、しねんのずつきだ!」 メタグロスの突撃でホウオウが吹き飛ばされた。 「く……調子に乗るなよ、のび太……」 出木杉は欲望をマユミの口にたっぷりとぶちまけると、ゆっくりと自身を短パンに収める。 「僕が本気にならなければならないとはな」 うやうやしく下がるマユミを乱暴に追いやり、出木杉がバトルフィールドに立った。 「ルギア、めいそう。ホウオウはじこさいせいだ」 ルギアが目を閉じると、その戦闘力が上昇していく。 ホウオウはメタグロスに受けた傷を完全に癒してしまった。 「持久戦になればプレッシャーを持つこちらが有利。君の攻撃は全部受けきってやるよ」 『その前にルギアの攻撃に耐えられれば、だけどね』 瞑想を積んだことで、ルギア単体でもドククラゲは確実に落とせる。 そしてホウオウはメタグロスの攻撃を相手のPPが尽きるまで受け続けるだろう。 ルギアに攻撃を仕掛けてきたとしても、メタグロスの主力技にはルギアに大ダメージを与えるような技はないはず。 万が一敗北しても、こちらにはまだ伝説のポケモンがたくさん控えているのだ。 「遊びは終わりだ……」 ポケモンリーグ、第3の間。 スネ夫、しずか、ダイゴ、ミツルの四人は先を急いでいた。 「いいか、ドラミ達はおそらくドラえもん君やタケシ君をノビタ君に近付けまいと立ち塞がっているはずだ」 ダイゴの言葉に、スネ夫も思案する。 「!」 「どうしたの、スネ夫さん」 急に立ち止まったスネ夫に、しずかが心配そうに声をかける。 「いや、皆は先に行ってくれ。僕はやることがある」 スネ夫は先に行く皆と別れて、四天王控室への扉に向かった。 スネ夫は控室に入ると、PCを起動する。 「ダイゴさんの話を聞くに、のび太は出木杉に絶対勝つだろう」 実はのび太は自分も知らないうちに、ダイゴを通じてドラミの助力を受けているようなのだ。 『ドラミちゃんの力は脅威だ。こっちもそれなりに対処しなければ……』 使う予定のなかったあのポケモンを使うしかない。 スネ夫は自らのポケモン達を回復させながら、その控えポケモンが転送されてくるのを待つ。 「間に合えばいいんだけど……」 ポケモンリーグ、最後の間への階段━━ 「どうなってんだ……」 ジャイアンがこの場に来たとき、目の前は信じられないものばかりだった。 拐われたはずのしずか。 いないはずのドラミ。 それに対峙しているドラえもん。 全然状況が理解できないが、とにかく全員見知った顔だ。 「おい、おまえら!にらめっこしてないで皆でのび太を助けにいこうぜ!」 だが、ドラえもんはそれを制した。 「ジャイアン、あのドラミとしずかちゃんは敵だよ……」 ドラえもんはジャイアンにそれだけ言う。 おそらくジャイアンに詳しい事情を言ったからとて、理解はできないだろう。 「よくはわかんねえが、確かに素直に通してくれる雰囲気じゃねえな」 ジャイアンも分からないながらに、何か感じ取ったようだ。 「あらタケシさん、お久しぶり」 しずかが懐かしい者を見るような態度でそう言った。 「しずかちゃん、今はのび太を助けにいきたいんだ。どいてくれよ」 ジャイアンの言葉にドラミが返す。 「大丈夫よ、のび太さんは絶対に負けない」 「なぜそう言い切れるんだ!」 妹の言葉に、ドラえもんが問いかける。 あらゆる状況を考慮しても、のび太が出木杉に勝てるとは思えないのだ。 「それは……」 「私がノビタ君と接触したから、かな」 自分の背後から声が上がり、びっくりして後ろを振り向くドラえもんとジャイアン。 ドラミの発言をさえぎったのは、ダイゴだ。 そして、ダイゴの後ろには二人の子供が息を切らせて立っていた。 ジャイアンはその二人を見て、かろうじて声を絞りだした。 「ミツル……と、しずかちゃん?」 再び頭を階段の上に向けるジャイアン。 そこには全く同じ姿のしずかが立ちはだかっている。 「しずかちゃんが……二人……」 源しずかは、野比しずかを真っ直ぐに見据える。 「はじめまして、じゃないわね。子供の私……」 「ええ、二回目ね。未来のわたし」 今にも飛び出しそうなしずかを制し、ダイゴが声を上げる。 「私がノビタ君に伝授した戦術、あれはマトモなものではなかった」 ダイゴがのび太に指南した戦術は、戦術とはいえないほどのお粗末なものだった。 わずかな確率に全てを賭けるという、あまりにも楽天的な戦い方に技構成。 あれでは普通のトレーナーにすら勝てはしない。 「だがドラミ、君はそれでも勝てるといった。なぜだ?」 「その答えは、貴方も気付いてるんじゃなくて?」 ドラミはそう言った。 「ああ、大体見当はつく。私がノビタに渡した妙なトランプが関係あるのだろう?」 「トランプ……ま、まさかっ!」 ダイゴの言葉に反応したのはドラミではなくドラえもんだった。 「ドラミ、のび太くんに持たせたのは……」 「そう、しあわせトランプよ」 しあわせトランプ。 持つ者に幸せをもたらすひみつ道具だ。 だが、そんな道具には必ずデメリットが存在するのである。 「のび太くんはトランプを消費しながらポケモンバトルをしている。もし、ジョーカー以外を使い果たしてしまったら……」 そう、しあわせトランプを使い続け、最後に残ったジョーカーは持ち主に今までの幸せ全てと対等の、とてつもない不幸を見舞うのだ。 「ドラミ、そんなハイリスクな道具をのび太くんに渡すなんて……」 「それくらいでないと、のび太さんが出木杉さんに勝てるわけないじゃない」 確かにドラミの言う通り、道具の助けなしにのび太を勝たせることは不可能に近い。 だが人並み外れて不幸、そして頭の悪いのび太のこと、しあわせトランプを使いきってしまう可能性も十分にあるのだ。 「これはのんびりしてはいられない……」 ドラえもんはいてもたってもいられず、足を踏み出した。 「止まりなさい、ドラちゃん。これが見えないの?」 動いたドラえもんを見て、野比しずかが右手を差し出す。 その手に握られているのはボタンしかついていない小さな機械。 だが、それが恐るべき道具であることはドラえもんが一番よく知っていた。 「ど、独裁者スイッチ……」 ボタンを押すと、対象となった人間を消し去ってしまう道具。 『この状況で使われるとマズイ!』 本当に人間を消すわけではなく独裁者を戒める目的で開発された道具だが、一時的に消されてしまうことは確か。 そして、その間にのび太と出木杉の戦いは終わってしまうだろう。 「何を躊躇してるんだ、僕は行くよ!」 ミツルが我慢できずに駆け出した。 しずかがミツルに冷たい視線を浴びせながら、ボタンに添えた指に力を入れる。 「と、止まるん……」 だが、ドラえもんの声は最後までミツルには届かなかった。 目の前にいたはずのミツルの姿がかき消える。 その場にいた全員を沈黙が支配する。 ミツルは消えてしまった。 歯噛みするドラえもんに、ドラミが言葉をかける。 「次はお兄ちゃんに消えてもらうわ」 ドラミの言葉とともに、しずかがドラえもんに視線を向ける。 ダイゴも、ジャイアンも、そしてしずかも、何も出来ずにただ立っているだけだ。 「さよなら、ドラちゃん」 しずかがボタンにかけた指に力を入れた。 「……!!」 一瞬の沈黙。 だがドラえもんの身体はかき消えることもなく、その場に存在している。 「き、消えない……」 ドラミが信じられないといった顔でしずかのほうに振り向く。 彫像のように凍りついた野比しずかのその手には、何も握られていなかった。 「あ……」 そんな右手をただ見ているしずか。 ドラえもんは自分が消されなかった事よりも、何が起こったのかを把握しようとキョロキョロと辺りを見渡す。 「ふう、間に合ったみたいだね」 ドラえもん達の後ろから現れたのは、ひとり別行動をしていたスネ夫だった。 「スネ夫!」 ここにいる全員が理解できていないが、スネ夫が何かをしたのは確かのようだ。 不意に現れたスネ夫を唖然として見ていたしずかとドラミ。 思い出したかのようにドラミがポケットに手を入れようとする。 新しいひみつ道具を出すつもりだ。 だがそんなドラミの目の前に、突然黒い影が姿を現す。 その黒い影はスナップを効かせた手首の振りで、ドラミの胸から四次元ポケットをはたき落とした。 ポケットは階段左右の奈落の風にあおられ、そのまま奈落の底へと落ちていく。 「ああっ……」 ドラミが必死に手を伸ばすが、もう届く距離にはない。 そのまま闇の中へと消えていく四次元ポケット。 「あれは、ジュペッタ……はたきおとすを使ったのか!」 思わず声を上げたダイゴの言う通り、そのジュペッタは四次元ポケットに対してはたき落とすの技を使ったのだ。 「戻れ、ジュペッタ」 スネ夫がボールを掲げると、ドラミの目の前のジュペッタがスネ夫の手の中のボールへと収められた。 ジャイアンが思わずスネ夫に抱きつく。 「でかしたスネ夫ォッ!」 そんなジャイアンを邪険に振り払いつつ、スネ夫が得意気な顔でサムズアップする。 ドラえもんも思わず顔を緩めた。 「それにしても、よくあんなポケモン用意してたね」 「ああ、本当は出木杉に対して使う予定だったんだけどね」 ドラえもんが四次元ポケットを紛失したことを出木杉の仕業だと仮定する。 となると、そのポケットをまずは封じなければならないとスネ夫は考えていたのだ。 だが、今回は完全にスネ夫の思惑通りにはならなかったのも事実だ。 本来は四次元ポケットを泥棒し、ドラえもんに手渡すのがスネ夫の目論見だった。 だが、しずかの持っていた「何かのスイッチ」を先に泥棒したために、やむなく四次元ポケットははたき落とすことになったのである。 『まあ、この場はしのげたから上等とするか』 「ドラミちゃん、これでそっちにひみつ道具のアドバンテージは無くなったよ」 スネ夫に指を突きつけられ、何も言い返せないドラミ。 そんなドラミに、野比しずかは慰めるように話しかける。 「やっぱり、ひみつ道具に頼るのはダメね。郷に入りては……というし」 しずかは一歩踏み出すと、両手にモンスターボールを握った。 「この世界ではポケモンバトルが全て、ということね」 「ポケモンバトルで、ケリをつけるつもりらしいぞ」 ダイゴが皆に警告する。 スネ夫が必死で考えを巡らせる。 「バトルを挑まれたからには、この世界のルールで戦わなくてはならない」 こちらはしずかがポケモンを持っていないので、自分を含め四人が戦闘要員だ。 相手は二人。となると…… 『疲弊の激しいこちらは、二人がかりでダブルバトルに持ち込むしかない、か……』 「とっておきの三匹だけ回復させて、タッグで当たろう」 スネ夫の提案に、皆が頷く。 一通り回復を済ませた後、ダイゴはドラミのほうに歩を進める。 「ドラミには因縁があるからな……私はこちらを受け持つよ」 「ぼくも兄として、ドラミを止めなきゃならない……」 ドラえもんも後に続く。 「じゃあ、俺とスネ夫はしずかちゃんを倒すぜ」 「クラスメートだからね」 二人もゆっくりと階段を登っていく。 そんな4人を、源しずかはただ見ているしかなかった。 対峙する6人。 最初に動いたのはドラミだ。 「お兄ちゃんに、ダイゴさんが相手……でも、あなた達は私には勝てないわ」 そう言い放つと、ドラミは勢いよく2つのボールを投げた。 光と共に、2体のポケモンが姿を現す。だが…… 「な、なんだ、そのポケモンは!!」 ポケモンチャンピオンの称号も得たダイゴの口から、あり得ない言葉が吐かれる。 彼も知らないポケモン。 「私は未来から来たのよ。続編に登場する新ポケモンを持っていても不思議はないでしょ?」 ドラミが衝撃を受けているダイゴにそう説明する。 「さあ、行きなさい。エレキブル、マンムー……」 次へ
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前へ デボン・コーポレーションの御曹司で元ポケモンリーグチャンピオン。 ダイゴの静かな中に見え隠れする威圧感に、さすがのアスナも動揺を隠せない。 「厄介な奴が現れたわね。しかしこのグラードンに勝てるかしら?」 ダイゴはフライゴンを自らの傍に呼び戻す。 「さて少しだけ頑張ってもらうよ、フライゴン」 「2対1でいいのかしら、後で負けた言い訳にされちゃたまらないんだけど」 アスナはユレイドルとグラードンで牽制する。 しかしダイゴは顔色一つ変える事無くその言葉を受け流している。 その態度に気分を害したアスナは無言で2体のポケモンを促す。 それに呼応してユレイドルのソーラービームとグラードンの大文字が発射された。 光と炎が混ざり合い、我先にとフライゴンに炸裂する。 「ふん、他愛もない」 そう言うアスナの余裕の笑みも、その直後に砂煙から見える光景にかき消される。 「アスナ君、力押しの戦い方でチャンピオンを倒せると思っているのか?」 フライゴンが展開した防御フィールドが全ての攻撃を弾いている。 「ちっ……まもって攻撃を防いだのね。しかしこちらの攻撃は途絶えることはないわよ」 守るは連続で出すとその成功率は落ちてしまう技だ。 次の攻撃は防げない。 二回目の大文字とソーラービームがチャージされ、即座に発射される。 しかしダイゴは全く動じない。 「単調な攻撃だ……甘いな」 フライゴンはその身を地中に沈め、攻撃を回避した。 「次はあなをほるで逃げたっての……チャンピオンの戦い方ってのは その場しのぎの逃げの一手なのかしら?」 アスナが笑う。 そう、このターンの攻撃を回避したとて、 次に地中から現れれば無防備な姿を晒すことになる。 その時点でアスナの勝利だ。 2体のポケモンはその瞬間を逃すまいと攻撃態勢で構えている。 地中がわずかに盛り上がった。 『来る!』 アスナがそう思った瞬間、フライゴンが地中から飛び出し、グラードンに突撃する。 ダメージを受けたグラードンは思わず怯んで攻撃をやめてしまう。 「グラードン、何をしてるの!」 「王者の印の効果があったようだね。まぁグラードンの攻撃は受けるつもりだったが」 しかしユレイドルのソーラービームの照準はフライゴンを完全に捉えていた。 「けどソーラービームは直撃ね、吹き飛べっ!」 しかしアスナのその歓声を無視するかのように ユレイドルはソーラービームのチャージを続けている。 「そんな馬鹿な……チャージが終わっていないなんて!」 アスナの疑問にダイゴが答える。 「私が何の策もなく時間を稼いでいたと思っているのかい?」 ダイゴの背後で爆発が起こる。 その爆風の中から現れたのはなんとレックウザとボーマンダ。 「ナギのレックウザ……まさか!」 そう、レックウザの特性はエアロック。 全ての天候による効果をリセットしてしまうのだ。 ナギも目の前の状況を見て苦い顔をする。 「ここは…アスナのところまで誘導されたというの」 伝説のポケモンは互いがその特性を侵し合う存在、 だからナギ達もわざわざ離れて戦っていたのだ。 ジャイアンがダイゴの元に駆け寄る。 「ダイゴさん、作戦大成功だぜ!」 「ご苦労さん、タケシ」 ナギとアスナは合流し、二人の前には3体のポケモン。 対するジャイアンとダイゴはボーマンダとフライゴン。 「3対2、天候をリセットしてもそちらの不利は変わらないようね」 アスナの言葉にニヤリとするジャイアンとダイゴ。 「3対2?違うぜ、こっちも3人だ!」 ジャイアンの声と共に空から現れたのは流線型の美しいフォルムの赤白のポケモン。 ダイゴ達の背後から現れたのは…… 「3人目は僕だっ!」 「の、ノビタ!!」 対峙する6体のポケモン。 まず先に動いたのはダイゴのフライゴンだ。 「グラードンにすなをかけろ!」 フライゴンが砂を巻き上げ、グラードンの目をつぶす。 「まもる、あなをほる、すなかけ……完全にサポートに特化してるわね」 アスナは憎々しげに睨みつける。 グラードンの大文字は命中率に若干の不安があるのだ。 そして地震は彼らのポケモンに通用しない。 残る技は眠ると噴火しかないのだ。 続いてジャイアンのボーマンダが行動した。 「レックウザにドラゴンクロー!」 ボーマンダのドラゴンクローがナギのレックウザに命中する。 攻撃を受け、激しくのたうちまわるレックウザ。 「ど、どういうこと?」 ナギが焦るのも無理はない。 なぜかそのダメージ量が最初の遭遇時に食らった一撃よりかなり大きいのである。 『何かがおかしい』 アスナもレックウザの苦しみ様を見て何かがおかしいことに気がついたようだ。 しかしそれを考える間もなく、のび太のラティアスが波状攻撃をかけてくる。 「よし、トドメのりゅうのいぶきだ!」 ナギのレックウザが身構える。 いくら効果抜群とはいえ、竜の息吹のダメージなら なんとか耐えることができるはずだ。 これを耐えれば、後はこちらの圧倒的な攻撃力で 敵の主力であるラティアスを撃破してしまえばいい。 しかしナギの計算は脆くも崩れさった。 ラティアスから放たれた衝撃波は その一撃でレックウザの体力を全て奪ってしまったのだ。 「きゃああああああっ!」 乗っていたナギごとその巨体が落下していく。 瀕死になったレックウザはマスターボールに格納され、 体を横たえるナギだけが取り残された。 「ううっ……竜の息吹があんなに攻撃力があるはずないわ……」 伝説のポケモンの1体であるレックウザがわずか1ターンで撃破されてしまった。 「対策さえしていれば例え伝説のポケモンというど、どうということはない」 ダイゴは諭すように言い放った。 レックウザが撃破されたことで再び日照りがその場を支配する。 しかし、たとえソーラービームが連射できたとしても この不利な状況と不可解な謎は変わらない。 『ここはツツジに任せて、一旦退却すべきね』 アスナはナギに目配せすると、グラードンに地震を命令する。 「うわぁっ!」 ポケモン達は浮遊しているので影響はないが、 のび太達はその揺れの凄まじさに一瞬注意を逸らしてしまう。 その隙にアスナとナギはいずことなく姿を消してしまった…… 目覚めのほこら。 最深部にいるのはヒースとの戦いを回避したツツジ。 目の前には人ひとりが通れるほどの穴があいている。 「静かになったわね……どうやら他の女達は全員失敗した、ということかしら」 しかし賢明な出木杉はさらにもうひとつ手を打っていた。 ツツジのポケモンでルネの地盤を破壊するという最後の作戦だ。 その為にレジスチルとレジアイスはすでに街の東西の地下に潜らせてある。 「さて、景気よく吹き飛ばしてフィナーレとしましょうかしら」 しかし、2体のレジ系ポケモンが掘った穴から二つの光が現れ、 ツツジのボールに収められてしまう。 「レジアイスとレジスチルが瀕死になっている……」 さっきのは2体のポケモンが倒され、戻ってきた光。 「ふふふ、ボクはルネジムでの不自然な撤退からずっと君をマークしてたのさ……」 「……誰かしら?」 穴から現れたのは特徴的な髪型をした一人の少年だ。 「あんたは……たしか前に半殺しにした……」 そう、スネオという少年。 元・出木杉様の仲間だったグループの一員だ。 「出木杉も頭はいいんだけど、作戦にズルさがないよね」 スネ夫がいやらしい笑みを浮かべる。 そう、今回の戦いはダイゴとスネ夫の共同立案だったのだ。 「出木杉様と頭脳で張り合おうとは無謀もいいところね」 「そのご自慢の出木杉様の作戦はことごとく失敗してるじゃないか」 口の減らないスネ夫の態度に怒りを顕にするツツジ。 「出木杉様の作戦が失敗したのはあの女たちが腑甲斐なかったからよ…… でも私は違うわ」 「違う?」 スネ夫の疑問にツツジは無言で親指で合図する。 スネ夫がその指の示す先を目で追うと、そこにはぽっかりと穴が空いていたのだ。 「……まさかっ!」 「そう、そのまさかよ」 スネ夫はツツジのしたことを瞬時に理解した。 「倒されたレジロックを復活させていたのか……」 「ご明答」 しかもレジロックが掘った先はルネジムの真下だ。 あの位置で大爆発されれば避難所であるジムは湖に沈んでしまう。 「レジロックが瀕死だと思い込んでいた考えの浅さが敗因ね、ふふふ」 勝ち誇るツツジとガタガタと震えるスネ夫。 しかし、スネ夫の動きは突然止まった。 「『敗因ね、ふふふ』だって。ぶはははは!」 「な、何がおかしいの!」 そういうツツジの背後の穴から突然レジロックが弾き飛ばされてくる。 「な、なにッ!」 「フロンティアブレーンが全員上にいると思い込んでいた考えの浅さが 敗因じゃの、ふぉふぉふぉ」 そこにいたのはケッキング、そしてパレスガーディアン・ウコンだった。 「う、裏切り者のウコン…まさかこんな隠し玉がいたとはね」 倒されたレジロックを回収するツツジ。 スパイだったウコンを戦いに出すとは想定外だった。 『こいつらの人の良さには反吐が出るわ』 しかし今回は結果的にそのウコンが作戦を妨害した。 「今回は引き下がるしかないようね……まぁ、ここにウコンがいるなら 上はその分手薄ということ……」 ツツジは穴抜けの紐を使うとその場から姿を消した。 「上が手薄……まだ何かあるっていうのか?」 スネ夫はツツジの最後の言葉がひっかかっていた。 おそらく地上の戦いはこちらの勝利で終わっているだろう。 ルネシティの壊滅という出木杉の目的は阻止できたはずだ。 考えが煮詰まり、スネ夫は頭をかきむしる。 「大丈夫かの?」 心配するウコンを見て、スネ夫はある考えが浮かび上がる。 「そ、そうか…まずいぞ!」 スネ夫は急いで穴抜けの紐を使う。 スネ夫は出木杉の真の目的に気が付いたのだ。 そう、ルネシティの破壊などついでの事、陽動だったのだ。 「出木杉の真の目的はウコンさんの失敗の穴埋め、そう…しずかちゃんの誘拐だ!」 ルネシティ。 再会したジャイアンとのび太はがっしりと握手をかわしていた。 「ジャイアン、助かったよ」 「おう、心の友のピンチには必ず駆け付けるぜ!」 そんな二人の肩をダイゴが叩く。 「よくやったな、二人とも」 二人がダイゴの顔を見上げた瞬間、事件は起こった。 「きゃああああああーーーっ!」 悲鳴の上がったほうを向くと、フロンティアブレーン・ジンダイと、 その肩に担ぎあげられたしずかが目に入った。 「すまんな、彼女はいただいていく」 「しずちゃんっ!」 ジンダイはチルタリスを出すと、その背に乗って空に飛び上がっていく。 「のび太さん、のび太さんっ!」 「しずちゃん!」 次の瞬間、凄まじい速度でチルタリスは空の彼方に消えていった…… すぐに後を追おうとしたのび太はダイゴに止められた。 のび太の最大の主力であるラティアスもかなりのダメージを負っている。 今追い掛けて出木杉にでも遭遇すれば、まず勝てないだろう。 出木杉に勝てる唯一の希望であるラティアスを持つのび太を、 失うわけにはいかないのだ。 焼け落ちた建物から黒煙が上がっている。 多大な犠牲を払いつつ、そしてしずかをさらわれたが、 のび太達はルネを守り切ったのだ。 その夜。 海上で発見されたドラえもんはポケモンセンターで治療を受けているが、 まだ回復の見込みはない。 そしてのび太、ジャイアン、スネ夫の三人は再会の喜びもなく、 しずかを誘拐された傷を隠しながら三人でドラえもんの様子を見ていた。 ヒースとウコンは街の復興作業に手を貸している。 彼らのリーダー的存在だったジンダイの裏切りはショックだろうが、 彼らはそれを顔に出さずに廃材の撤去作業を行なっていた。 そしてダイゴは目覚めのほこらの最深部にいた。 しばらく待っていると、何もない空間から突然扉が現れる。 「きたか」 「遅くなってごめんなさい」 現れたのはドラミだ。 「全ては君のシナリオ通りになっているようだね」 ダイゴはそう言いながらも警戒を緩めようとはしない。 それはドラミの奇妙な力と、この世界の法則を変えた恐怖からだ。 「ドラミ、私は君が恐ろしい……タケシのボーマンダの攻撃を見て確信したよ」 「恐ろしい…確かにそうかもしれないわね」 そう、ダイゴは自らの知る世界の法則が変わっていたのをこの目で見たのだ。 あの時のボーマンダのドラゴンクロー。 特殊攻撃であるはずのドラゴンクローは物理属性に変化していた。 だから、本来攻撃の能力の高いボーマンダのドラゴンクローは ダメージ量がアップしたのだ。 そしてラティアスが放った竜の息吹。 あれはダイゴが前もってのび太救出に向かうマホとナホに預けた技マシンを、 のび太がラティアスに使用したものだ。 しかしあれは竜の息吹ではない。 「竜の波動」……ダイゴも知らない未知の技だったのである。 「世界の法則が変わり、しかも未知の技まで……これも全部君がやったというのか」 ドラミは申し訳なさそうにダイゴに頭を下げる。 「あの出木杉さんに勝つには、出木杉さんも把握できない状況にするしかないの」 そしてこの混乱に乗じて出木杉達を打倒する。 それがこの世界を救う方法だと、ドラミは静かに語った。 「でもなぜだ、なぜノビタやタケシ達がやらなければならないんだ。 私たちで出木杉を倒せば……」 「それはダメ。出木杉さんを倒すのは彼らでなければならないの」 そう、それこそがドラミの目的なのだ。 ダイゴとドラミはいくつかの打ち合せを済ませると、ダイゴは地上に帰っていった。 ドラミはひとり残される。 「これでポケモンのデータはダイヤモンド&パールに上書きされた…」 のび太達が暮らす本来の世界ではまだ発売も去れていないDS版ポケットモンスター。 タイプで物理と特殊が分かれるのではなく、技ごとに属性が設定されている世界。 そして新たなる技を会得していくポケモン達。 ドラミが本来存在しないはずのエレキブルを出したとき、 この世界のポケモンのバトルデータはダイヤ&パールが基準となったのだ。 この混沌化した状況なら、のび太達にも勝利の道が見えてくるはずだ。 「私もフィナーレに向けて準備をしなければ……」 ドラミは再びどこでもドアの向こうに消えていった。 次へ
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前へ その場にいた全てのものが、その声のする方向に注目する。 そこから現れたのは、紛れもなくあの少年だった。 「で、出木杉……」 ドラえもん達の脳裏に最悪の想像が巡る。 だが、その想像を一番最初に口にしたのはドラえもんではなかった。 「ま、まさか……のび太さんが負けたというの……」 そう、この場で最もショックを受けていたのは野比しずか。 この計画はのび太の心身の成長を促し、彼が出木杉を越えるために仕立てた舞台なのだ。 だが現れたのは倒されるべき少年、出木杉。 「こ、答えなさい! のび太さんはどうなったのっ!」 出木杉はゆっくりと歩を進めると、しずかの前で立ち止まった。 「君が未来のしずかちゃんか……のび太と結婚するという未来の」 「答えろと言っているのよ!!」 出木杉は悲しげな瞳でしずかを見つめる。 だが、今は悲観している時ではない。 「以前のび太君がドラえもんから聞いた事を僕に聞かせてくれた。未来は確定されたものではなく、変わるものだと……」 「な、何を……」 「まだ僕にもチャンスがあるということさ!」 出木杉がそう叫ぶと、手に持ったモンスターボールを眼前に構えた。 「さあ、戦ってもらおう……この僕と!」 出木杉の思わぬ挑戦に、しずかは憤怒の視線で対抗する。 「……アンタの顔を見てるとヘドが出るわ」 そう、しずかの中では悪い想い出しか残っていないのだ。 そんな視線を受けながらも、怯むことなく出木杉は言い返す。 「しかし、それはあくまで君の記憶だ。現在のしずかちゃんの記憶じゃない!」 その言葉に、しずかが嘲るような笑みを返した。 彼の考えている事がわかったのだ。 「そう、そうなの……ふふふ、はははははははっ!」 しずかは人差し指を立て、ビシッと出木杉を指差した。 「現在のしずかに取り入って、歴史の流れを変えようってつもりね、なんて浅はかなの!」 しずかは刺すような視線を出木杉に浴びせかける。 「貴方のその性癖は治らないわよ、未来のカウンセラーがそう言っていたもの」 静観していたドラミが顔色を変える。 「しずかさん、そこから先は言ってはだめっ……」 だが、しずかの言葉は止まらない。 「貴方は未来で性犯罪を犯し、懲役をくらうのよ!」 全員がその発言に耳を疑った。 「ま、まさか……あの優等生の出木杉の野郎が……」 ジャイアンがフラフラと崩れ落ちる。 なんだかんだいって、彼も出木杉には一目おいていたのだ。 「……くっ!」 ドラえもんが顔を背ける。 実はドラえもん自身も知っていたのだ。 のび太の未来は定期的にチェックしている。それが本来の役目だからだ。 ひょいとした偶然でジャイ子と結婚する未来もあれば、なんとアイドルの星野スミレと結ばれるという未来もあった。 だがそんな未来もしばらくすると、結局はしずかとの結婚に落ち着くのだ。 人の未来とはそう簡単に変わるものではない。 それは出木杉の未来にも言えることだった。 彼の未来は差異はあれど、いつも行く末は性犯罪者になる。 それは簡単には変えられない、根本的な精神の問題だったのだ。 それは法廷での精神鑑定でも立証されている。 彼の性犯罪者としての基礎はすでに完成してしまっているのだ。 だから今回のように枷が外れると容易く道を踏み外す。 「だから貴方がいくら頑張ろうと、それは決して報われることはないのよっ!」 しずかは全てをぶちまけると、勝利を確信したかのように高らかに笑った。 だが衝撃の事実を聞かされたはずの出木杉は、笑顔だった。 「そうか、それは参考になったよ」 「な……」 「今までの僕はその事実を知らなかった。だが今はそれを知り、対処する準備もできる」 この事実を知った出木杉は、もう過ちを犯さないように意識して行動することができる。 「後は僕の努力次第……努力すれば、未来は変わるというわけさ」 ギリギリと歯ぎしりをするしずか。 そんなしずかを前に、出木杉はボールを構える。 「捨てたボールを拾うんだ。いくらダークルギアといえども、僕相手に1体で勝てると思わないことだね」 しずかはボールを1つ拾うと、それを構えた。 「他のポケモンは普通のポケモンだけど、ルギアとこれだけは別物なのよ」 ボールを拾うことはしずかのプライドを幾分か傷付けたが、出木杉の所有するポケモンは強力だ。 保険はかけておいたほうがいい。 「後悔することね……」 「ふん、後悔だって?」 そう言い返す出木杉の顔には、何かの覚悟が込められているかのようだった。 そんな出木杉の顔を見て、ドラえもんは不思議な感触を受けていた。 『あの顔、どこかで……』 人間があんな顔つきになる瞬間に、何度か立ち会っているようなそんな気がしたのだ。 出木杉君、君は…… 次の瞬間、相対する二人はモンスターボールを同時に投げた。 「出てきなさい、サンダー!」 しずかが繰り出したのは伝説の鳥ポケモン、サンダー。 その体は禍々しいオーラで包まれている。 そして出木杉のポケモンは…… 「その速さ、そしてクレバーな戦いを見せてやるんだッ!」 出木杉の声と共に現れたポケモンはジュカインだ。 「ジュカイン……伝説ポケモン達はどうしたのかしら?」 しずかが嘲るように笑みを浮かべる。 大方、こちらがのび太との対戦で疲弊している為の苦肉の策だとでも思っているのだろう。 だが、それは違う。 しずかは余裕の表情のまま、手を天にかざす。 「サンダー、ダークウェザー!」 輝く羽を羽ばたかせながらサンダーから発せられた闇のオーラが天に延び、辺りが闇に染まっていく。 「これでバトルフィールドは闇に包まれたわ!」 「まずは天候系の技で機先を制しようというのか……だが、それはミスだよ」 出木杉のジュカインは毒毒を使い、サンダーに猛毒を浴びせる。 その直後、サンダーは毒によるダメージを受け、ジュカインは天から降り注ぐ光に焼かれてダメージを受けてしまう。 「猛毒と天候ダメージ、互いにダメージは受けるがターン数をかけるほど僕が有利になるわけだ」 「くっ……まさかいきなり攻撃をしかけてくるとは」 サンダーのダーク技を食らえば、ジュカインの大ダメージは必至だ。 だからこそ、初ターンは守るなり見切るなりして様子をみてくると思ったのだ。 『となると、次はやはり……』 続けて繰り出されたサンダーのダークラッシュはジュカインに見切られ、かわされてしまう。 互いに毒と天候のダメージを受けるが、こちらのほうがやや被ダメージが多い。 「ちっ、このままでは……」 「舌打ちとは美しくないね、しずかちゃん」 今度は出木杉が余裕の笑みを浮かべている。 『やはり秀才、計算しつくされている……しかし!』 そう、次はかわせない。 見切りは連続して出すと成功率が下がる技だ。 「次はかわせないわよ、ダークサンダー!」 サンダーの雷は確実にジュカインに直撃する、はずだった。 だが黒煙の中から現れたのは、体を反らしたジュカインと膝をついた出木杉。 「ふう、危ない危ない」 「ま、まさか……見切りを発動させたというの?」 毒のダメージで苦しむサンダーを確認しながら、しずかが歯噛みする。 クレバーな出木杉からは考えられない選択だ。 「随分危ない橋を渡るじゃない、あなたらしくないわね」 出木杉は立ち上がり、服についたホコリをはたき落とす。 「それにしても、猛毒の後はひたすらターン稼ぎ。中々エグい戦い方ね」 しずかの問いに出木杉はニヤリと笑う。 「そりゃそうさ、このジュカインの名前は「スネオ」だからね」 「スネ夫……だって?」 その場にいる全員が唖然とした。 全てを敵対視していたあの出木杉が、かつての友達の名を冠したポケモンを使っているのだから。 「コイツは僕がみんなと、そう……みんなと冒険したような気分になるためのポケモンだったのさ」 ドラえもん達は今まで数々の大冒険を繰り広げてきた。 だが彼は、いつもその輪に入りそびれている。 誘われなかったからなのか、それとも都合が合わないのか。 理由などどうでもいい。 冒険を終え、自慢げにそれを語るのび太やジャイアン達。 出木杉は自分もそんな冒険を「彼らと」してみたかったのだ。 「仲間外れにされた心の隙間を埋めたポケモンってことかしら?」 しずかは思わず吹き出した。 この少年はそんな思いで日々を生活していたのだ。 いくら頭が良くても、容姿端麗でも、それではあまりにも惨めすぎる少年時代だ。 「いい笑い話を聞かせてもらったわ。じゃあその気持ち悪い思い出と共に、そのジュカインを葬ってあげる」 しずかのサンダーのダークラッシュがジュカインにヒットし、その体力を奪う。 ジュカインはよろよろと崩れ落ち、ボールに戻っていった。 「はい、まずは一匹……」 だが、サンダーも毒毒によるダメージを受けてかなり弱ってきている上に、天候も元に戻ってしまった。 出木杉は間髪いれずに次のポケモンを出す。 「その巨大な青き身体で敵を打ち砕け、ドラえもんっ!!」 現れたのは丸い巨体に頑丈な甲羅を備えたポケモン、カメックス。 「カメックス……水ポケモンだけど……」 しずかのサンダーはダークポケモン。 全ての通常ポケモンに効果抜群なので、相性は受けのみを気を付ければいい。 「とりあえず、その鈍重なポケモンなど動くことすら許さないわ!」 しずかの命令でサンダーはダークサンダーを撃とうとする。 しかし、そんなしずかに対し出木杉も無策ではない。 「カメックス、ねこだましだ」 サンダーが技を放つより早く、カメックスが走った。 パァン! ねこだましの音が響き、サンダーは思わず怯んでしまう。 動けないサンダーをさらに猛毒が襲う。 かなりのダメージが蓄積されている……このままでは後3ターンももたない。 「さすが出木杉さん、一筋縄ではいかないわね」 しずかが苦虫を噛み潰したような顔をしながら賞賛する。 だが、その心中は想像を絶するものだろう。 「さあしずかちゃん。僕は次のターン守らせてもらうよ」 出木杉は更なるターン稼ぎをすることを宣言する。 このまま流されては、サンダーは間違いなくやられてしまうだろう。 『ここは猛毒の蓄積をリセットするためにダークルギアと……』 ターン事に増加する猛毒のダメージをリセットするためにポケモンを交代するのは基本戦術だ。 しずかは懐のボールに手をかける。 だが、何かおかしい。 『まるでダークルギアを誘っているようだわ……』 しずかは一度手を戻すと、再び懐のボールに手をかけた。 「!!」 出木杉の口の端がわずかだが上がったのをしずかは見逃さなかった。 『やはり、これは罠か!』 どういう戦術かは分からないが、出木杉は確かにダークルギアを出されるのを望んでいるようだ。 「ふふ、ふ……はははははは!」 しずかが突然高らかに笑いだした。 「何を笑っているんだい、しずかちゃん」 「貴方の浅はかな考えを読みきった事、そして今から絶望する貴方の顔を想像して笑っていたのよ!」 しずかはそう言うと、ポケットに手をいれた。 ポケットから引き抜かれた手に持たれていた小さな瓶を見て出木杉の顔から余裕が消えた。 「ま、まさか……」 「そう、これは……かいふくのくすりよ!」 高らかに叫んだしずかは瓶の蓋を開け、サンダーに液体を振りかける。 サンダーの顔にみるみる生気が蘇り、その羽ばたきも力強さを取り戻した。 「ダークルギアを引っ張りだそうと何やら浅知恵を巡らせていたようだけど、甘かったわね!」 出木杉がガクリと膝を付く。 「分かって……いたのか」 「所詮は子供ね、簡単に表情が読めるわ。フフフフ」 出木杉は声を震わせながらも、まだ眼光は鋭いままだ。 「だが、かいふくのくすりを消費させただけでも……」 「消費させた?消費させたですって?」 しずかは出木杉の儚い努力の功績すら打ち砕く事実を突き付ける。 両手をポケットに入れ、しずかが取り出したもの。 それはさっきと同じ瓶、かいふくのくすりが両手合わせて4本。 「ふふ、同じ事をあと何回やる気かしら?」 その場にいた全員が凍りつく。 ダークサンダーの後にはダークルギアが控えており、しかも回復の薬が4本。 こちらは道具を使えないが、しずかは道具を使えるのだ。 「ダメだよ、勝てやしない……」 スネ夫が放心状態で呟く。 それは全員同じ気持ちだった。 だが。 「それを待ってたんだ」 片膝を付いたままの出木杉が足元の石を拾い、しずかに向かって投げつけた。 「きゃっ……」 不意の投石にバランスを崩したしずかは、瓶を持ったまま床に倒れこむ。 辺りの床は自らのダークルギアが放った攻撃により大小の石が散乱している。 『受け身を……っ!』 とっさにそう判断したしずかは、石のない安全な場所に手をついた。 ガシャン しずかが受け身を取るために手放した4本の回復の薬、そしてまだポケットに隠していた予備の回復の薬全てが砕け、中の液体を散乱させた。 「まだポケットに隠していたとは姑息な事をするね、しずかちゃん」 会心の笑みを浮かべる出木杉。 「あ、あぁ……あああぁぁぁーーっ!!」 しずかの絶叫が回廊に響き渡った。 「まずは道具による戦力差を埋める」、全ては出木杉の描いたシナリオだったのだ。 「ガキが……手加減していればいい気になりやがってぇぇぇぇっっ!!」 さっきまで余裕を見せていたしずかの姿は、今や憤怒に狂う女となっていた。 「殺シテヤル、殺シテヤル……」 しずかは足元に転がっているモンスターボールを拾う。 「コイツは……ちっ、役立たずか!」 しずかは先のジャイアン&スネ夫戦で戦闘不能になったブーバーンのボールを投げ捨てると、別のボールを拾う。 「これは大丈夫か……出てきな!」 しずかがボールを投げると、そこからは曲面で構成された奇妙なポケモンが現れた。 しずかがシングルバトルの理を破ったにも関わらず、出木杉はそれを止めようとも非難しようともしない。 まるでしずかがそう動くことが分かっていたかのような落ち着き方だ。 「なりふり構わなくなってきたね、しずかちゃん」 「うるさい!さっさと死になよっ!」 そんなしずかの暴言も意に介さずといった感じで、出木杉は新たなポケモンを繰り出した。 「猛る炎の意思、圧倒的火力、顕現しろ……ジャイアンっっ!」 現れたのは背中から炎を吹き出している大型の獣、バクフーンだ。 「次はタケシさんの名を付けたポケモンなの、アハハハッ!寂しい子!」 確かに激情的で乱暴そうなところはバクフーンの印象と似ているのかもしれない。 だが、そんな感傷や思い出で選ばれたポケモンでは…… 「特に耐久性に優れたポケモンでもない……襷で耐えて捨て身の攻撃といったところかしら?」 余裕を取り戻し、そう考えるしずかに出木杉が口を挟む。 「それは少し甘いんじゃないか?」 しずかの予想に反し、バクフーンがサンダーより先に動いた。 「最速バクフーンの素早さを甘く見たな!」 バクフーンはその見た目に反してかなり素早さが高い。 ジャイアンというNNも、しずかに鈍重さを錯覚させる心理的トラップだったのだ。 「ジャイアーーン、フレアァドライブゥッ!!」 バクフーンの身体が炎に包まれる。 そしてすさまじい破壊力の突進をサンダーにぶちかました。 サンダーは金切り声を上げながら弾き飛ばされ、壁面に激突する。 「くうっ、反撃のダークサンダーよ!」 だが、しずかの命令にも反応しないサンダー。 「早くなさい、サンダー!」 「無駄だよ、しずかちゃん。サンダーはひるんで動けないのさ」 バクフーンの胸には光輝く王者の印が付けられていた。 これでサンダーもかなりのダメージを受けたはずだ。 後はカメックスのハイドロポンプでトドメを刺すだけ。 『ここで畳み掛けないと、僕は負ける』 数の優位を保ったままダークルギアを引きずりださない限り、出木杉に勝ち目はない。 だが、そんな出木杉の計算を狂わせる要因がしずかの手の内にはあったのだ。 「まぁ、構わないわ。でんじは」 もう1体のポケモンから電撃が発射され、カメックスに直撃する。 電磁波を受けたカメックスは麻痺してしまい、ハイドロポンプを発射できなくなってしまった。 「ちっ、想定外の事態に……」 出木杉は舌うちをするが、次のターンに先に動けるのはバクフーンだ。 まだこちらの流れで戦いは進んでいる。 「ジャイアン、トドメのフレア……」 「遅いわね」 不意にバクフーンの前に現れたのはさっきカメックスに電磁波を食らわせたしずかの2体目のポケモンだ。 「そんな、なぜこうも速く動けるっ!」 出木杉がそう叫ぶが、その理由はすぐに判明した。 「トゲキッス、しんそく!」 「しまったあああっっ!」 トゲキッスと呼ばれたポケモンは、目にも止まらぬ踏み込みでバクフーンに体当たりを食らわせる。 先のフレアドライブで少なからず反動ダメージを受けていたバクフーンはその先制技の一撃を受けて戦闘不能にされてしまう。 「くっ、ドラえもん……」 「遅いわ!」 カメックスの名を呼んだ出木杉だったが、ただでさえ遅いカメックスが麻痺しているのだ、満足に動けるわけもない。 「ダークサンダー!」 サンダーから放たれた闇の雷がカメックスに直撃する。 効果抜群のダーク技を食らったカメックスだが、かろうじて体力を残している。 「は、ハイドロポンプッ!」 出木杉にとって幸運だったのは、ダークサンダーを受けたことにより激流の特性が発揮された事だろう。 破壊力が増したハイドロポンプにより、サンダーがついにその羽ばたきを止め、地に身体を横たえた。 だが、状況は芳しくない。 むしろ悪い方向に向かっている。 「あらあら、サンダーも落ちちゃったわね……」 しずかが邪悪な笑みを浮かべる。 ついにアイツが来るのだ。 『だがこちらの手持ちは瀕死のカメックスと、この手の中のポケモンだけ……』 2体ではアイツには勝てない。 アイツ……ダークルギアには範囲攻撃のダークストームがある。 トゲキッスというあのポケモンの神速も脅威だ。 しずかはゆっくりとした動作でボールを取り出すと、それを放り投げた。 「姿を見せなさい、ダークルギア……」 闇のオーラを纏った巨体が宙を染める。 自我を抑えられ、怒りのみが感じられるダークルギアの感情は破壊衝動となってその力を強くしているのだ。 「くっ……なんという……」 辺りを支配する重苦しい風に出木杉は必死で耐える。 ダークルギアを眼前にした瞬間頭をよぎった事。 勝算はなくなった。 だが、出木杉は最初から薄々と気づいていたのだ。 元々勝算などほとんどなかったことに…… 『やはり、最初に決意したようにシナリオを進めるしかないか』 出木杉は最後のモンスターボールを構えた。 「僕の最後のポケモンはこれさ、しずかちゃん!」 光と共に現れたのはメガニウム。 その優しい眼差しはしずかにそっくりだと思い、このポケモンを選んだのだ。 「私の名前も使ってたのね。気持ち悪い」 しずかがそう吐き捨てる。 出木杉は膝を付くとゆっくり呼吸を整え、そして眼前の敵を見据えた。 『これが、ラストターンだ!』 次へ
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あらすじ 異次元機関建造阻止のために26世紀の地球へと跳躍したラパウディア艦隊とマクロス・ストライクス。 異次元機関建造予定地の山村へ降り立ったマクロス・ストライクス。そして異次元機関建造計画自体をぶっつぶすためにラパウディア艦隊は首都へ向かうのであった・・・ 第2話「ケダモモノメザメ」 26世紀 地球 日本列島付近海上 ラパウディア艦隊旗艦「ファーレンフォーム」ブリーフィングルーム AM6 00 「・・・ストライクスが降下したのがこのあたりだから・・・首都へ向かうに当たり、ほぼ現在地からまっすぐ行けば上陸できるということね。」 「そして、戦闘の可能性もあり得るのか・・・」 ファーレンフォーム内部にあるブリーフィングルームにて、今後の進路を話し合うラパウディア艦隊。現状、海上ルートを通れば首都へは直通だが、時間がかかりすぎる。だが、今回選ぶ陸上ルートは戦闘はあるものの、首都へは海上ルートより早く着ける。 「ミウル艦長。ルート上の敵勢力の割り出しが完了しました。上陸場所付近は軍事基地があるらしくそれ以外はわれわれが上陸後に展開する可能性が高い部隊が中心だとおもわれます。」 「わかりました。僚艦に通達。これより上陸作戦を決行します。」 ラパウディア艦隊上陸地点 日本極東国軍基地 AM11 00 日本極東国軍基地 オペレ-タールーム 「謎の熱源を確認!数5!距離・・・およそ100!」 「バカモン!なぜ今の今までに気がつかなかった!」 「ジャミングによりレーダーに反応しなかったのだと・・・」 「早くスクランブルかけろ!あと研究施設に連絡しろ!「研究対象」ごと避難しろと!」 「りょ、了解!」 日本極東国軍基地 研究施設 「なに!?敵襲だと!?それはいかん!早く「研究対象」と資料、あとデータ類すべて移動できるように準備するんだ!」 「了解!移動準備完了までに敵が帰ってくれればいいのですが・・・」 ラパウディア艦隊上陸地点 ラパウディア艦隊旗艦「ファーレンフォーム」ブリーフィングルーム AM11 30 「これより作戦を説明します。現在わが艦隊は上陸のため、日本極東国軍基地に強襲をかけます。敵戦力はこうなっています。」 敵戦力 AJF-1A戦闘機×10機 AJA-1A戦闘攻撃機×10機 VDG-4型ミサイル戦車×8機 BGG-2型地上戦艦×4 「次にわれわれの戦力です」 ラパウディア艦隊戦力 ヘイムダル級(旗艦) 所属機 バリエス隊 R-9A、R-9/0、RX-10、TL-3N、R-9DP3(隊長機) テムロック隊 TW-2、R-9A2、R-9ER、TP-2、R-9AF(隊長機) ボマー隊 R-9B2×4、R-9B3(隊長機) ガナー隊 THw-01×2、R-9DH2×2、TL-2B(隊長機) 第5小隊:編成中につき出番なし フレースヴェルグ級 所属機 カイバシ小隊 TP-1×2、TW-2×2 R-9E(隊長機) 第2小隊:編成中につき出番なし ヴァナルガンド級 所属機 ポリスティック隊 R-11B×3(隊長機含む)R-9/02 第2小隊:編成中につき出番なし 第3小隊:編成中につき出番なし ヤールンサクサ級 所属機 プディング隊 TP-2M×2、R-9D2、R-9ER、R-9A3(隊長機) デルフ隊 R-9LEOⅡ、R-9S×2、R-9B3×2(隊長機含む) レックス隊 TW-2×3、TL-2B×2(隊長機含む) 第4小隊:編成中につき出番なし 第5小隊:編成中につき出番なし 第6小隊:編成中につき出番なし 第7小隊:編成中につき出番なし 第8小隊:編成中につき出番なし 「以上の戦力です。なおドック艦は安全が確認され次第合流するとのことです。では、作戦開始!」 ラパウディア艦隊上陸地点 日本極東国軍基地上空 PM0 00 「くそっ!なんだあの機体は!うわぁぁぁぁ!!」 ドォン! 「ボマー隊各機、バルムンクは戦艦用に取っておけ。」 「「「「了解」」」」 「バリエスワンより各機!完食するぞ!食いぱっくれるな!」 「「「「了解」」」」 日本極東国軍基地 PM0 05 「こちらカイバシ小隊。なんか変な施設を発見した。今から制圧する。」 「こちらテムロック隊、援護します。」 「プディング隊、援護にはいります。」 日本極東国軍基地 研究施設 「・・・中に入ったのはいいが・・・」 「た、隊長!逃げようとしていた研究員達を確保しました!」 「た、たすけてくれ!い、いのちだけわぁぁぁぁぁぁぁ!」 「こちらカイバシ小隊。研究員を確保した。後で尋問して情報吐かせる。」 「こちらプディング隊突入班。こっちはこっちでいいデータがあった。」 「テムロック隊だ。・・・どうも変なコンテナを見つけた。カイバシ小隊、尋問内容にコンテナのこと追加してくれ。」 「了解。通信終了。」 研究施設 事務室 「でだ、あんたらはここでどんなことをやっていたんだ?クスリ?兵器?それとも・・・」 「わかったから知ってること全部はなすから!」 (おい、見張り、敵部隊はどうなんだ?) (ここ目がけてくる敵部隊は多少ありますが、プディング隊の狙撃手が全部仕留めてます。) (そうか。わかった。) 「で、ださっきうちの仲間が見つけたコンテナ、あの中身は何だ?」 「・・・軍の新兵士研究のために拉致した子供たちだ。ご丁寧に親を消してだ。」 「よくある生体実験ってわけだ。」 ガチャッ 「隊長。プディング隊突入班が調査した結果、パスワードが判明しました。現在テムロック隊がコンテナの開放作業を行っています。」 「ご苦労。・・・でその実験とはなんだ?よくある身体能力超強化か?超能力か?それとも・・・」 「・・・あんたが言ってることの多少が正解だ。」 「やはりな。」 日本極東国軍基地 司令室 「なんだと!?研究施設が制圧されただと!?」 「は、はい!敵の進行速度は高く・・・!陸上戦艦全滅!出せる機体はもうありません!」 「っく・・・白旗を上げろ。」 「はっ!」 ラパウディア艦隊旗艦「ファーレンフォーム」艦橋 「艦長!敵基地に白旗が上がりました!」 「わかりました。僚艦に通達。直ちに白兵隊をだすように。後ドック艦を前進。」 「了解。」 研究施設 事務室 「・・・ちょっとくすぐったいぞ。」 バチバチバチバチ 「へ?・・・うぎゃぁぁぁぁぁ!!やめてくれ!やめ・・・アヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!ウギャギャギャギャギャ!は、腹がよじれる!アババババババババ!!し、しってること全部はなすから!!」 「よーし。いい子だ。んじゃ知ってること全部吐いてもらおうか。」 「あ、ああ。ここの研究施設は「生体AI」や人体改造、擬体化などを行っているが、それをのせる機体も開発している。名称は「カラドリウス」・・・素体フレームでも戦闘可能な高スペック機体で、パイロットに合わせた調整や換装を可能とした超汎用機だ。」 「ほー・・・それでだ。ほかには?」 「「ベルセルクル」・・・無人の近接戦闘用人型機動兵器だが、生体AI搭載仕様のテストもここを含め数個所で行われている。」 「・・・次」 「・・・「ペリュトン」。これも生体AI用人型機動兵器で異次元機関護衛用に開発された物だ。」 「!異次元機関だと!?それの詳細もだ。教えないというのなら・・・」 バチバチバチ 「ひ、ひぃ!お、教える!・・・異次元機関は私の大学の先輩らが考え出した物で、恒久的なエネルギープラントとして利用される。しかし問題点も多く、しかも動力炉部分はもはやオカルトじみていて・・・」 「それぐらいでいい。」 「艦長。確保した研究員が情報を吐いた。あとはこちらでなんとかします」 『了解』 続く・・・ 次回予告 ついに上陸を果たしたラパウディア艦隊。そして視点は幻想郷に移る! 次回バトロイ大長編・Mr・Hside第3話!「夜鷹の夢」。 追記:ついに尋問シーン入れました。MGSPWやってて良かったと思う
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前へ 陸の洞窟。 アスナは日照りの強い地域をしらみつぶしに散策し、ようやくこの洞窟を発見した。 最奥では赤い体色の巨大なポケモンが眠るように立ちすくんでいる。 その鼓動はこの距離からでもアスナに無言の威圧をかけているかのようだ。 「炎ポケモン使いなら一度はゲットしてみたい伝説の炎ポケモン……」 これが送り火山の伝説にあった大陸ポケモン、グラードン。 確実に命中する距離まで近付き、アスナが手に持っているマスターボールを投げようとしたその時。 「誰!」 グラードンの足元で何かが動いた。 「やはり来よったか」 暗闇から現れたのは一人の老人。 その熟練した動きはアスナの投げる動作を牽制している。 「お前さんたちの自由にさせるわけにはいかんのでの。バトルフロンティアでのリベンジをさせてもらおう」 このままではグラードンを捕獲できない。 「ちっ、ジジィ、後悔するよ」 「爺ではない、私の名はウコンだ」 ウコンは杖を振りかざす。 「ウインディよ!」 ウコンが出したのはウインディ。 「あたしと炎ポケモンでやり合おってのかい?上等だよ」 ウインディに対しアスナはバクーダで応戦する。 「しんそくじゃ!」 ウインディが凄まじい速度で先制攻撃をかける。 「バクーダ、じしんで粉砕しな!」 アスナは命令するが、バクーダは動かない。 「どうした、早くやるんだよ!」 「無茶を言うな、そのポケモンは怯んでおる」 ウコンの言うとおり、バクーダは怯んで動けないようだ。 『くっ、なぜしんそくで怯むの?』 アスナはウコンのポケモンに不気味さを感じ、再び地震で攻撃する。 しかし、それは守るによって無効化されてしまう。 「ふぉふぉ、お前さんのバクーダは何をしてるんじゃ?」 『このジジィ、強い……』 「もう一回じし…」 「そろそろ退場してもらおう、ほえろウインディ!」 ウインディが吠えると、バクーダはボールに戻ってしまった。 「ちっ、戦いにくいったらありゃしない!」 アスナは代わりにマグカルゴを繰り出した。 「まぁこいつでも勝利はかたいさ、いわなだれ!」 「すまんな、まもらせてもらう」 ウインディに岩が直撃するが、ダメージがない。 アスナは舌打ちした。 『吠えて1ターン稼いで守るの成功率を上げたのか』 「久々にポケモンにめいれいするんでな、ふぉふぉふぉ」 ウコンは相変わらず笑っている。 「しかし次は防げないよ、いわなだれ!」 「それは痛いからの、交替じゃ」 ウインディが下がり、代わりに現れたのはケッキングだ。 岩雪崩が当たるが、さほどのダメージにはなっていない。 『ケッキングだって!これは本気になったウコンの手持ちね……』 となると、三匹目はアスナと最も相性の悪いあの水ポケモンのはずだ。 「ケッキング、じしん!」 ケッキングの地震攻撃がマグカルゴに直撃し、一撃でその体力をゼロにする。 「ま、まずいわね……」 再びバクーダを繰り出したアスナ。 ケッキングは生来の怠けグセで2ターンに一回しか動けない。 「じしんを食らいな!」 ケッキングに地震がヒットする。 しかしケッキングはまだ沈まない。 『どういうこと?』 岩雪崩と地震の累積ダメージはケッキングといえども耐えきれないはずだ。 その様子を見てウコンの目がさらに細く、鋭くなる。 「アスナとやら、力に溺れてバトルへの集中力を失っているようじゃな」 敵であるウコンに指摘され、神経を研ぎ澄ませるアスナ。 その目がケッキングに付けられている鈴を発見した。 「か、貝殻の鈴……」 「わかったところでもう遅い」 ケッキングの地震がバクーダを直撃した。 貝殻の鈴の効果で再びケッキングの体力が回復する。 「まさか貝殻の鈴、とはね」 「いつもはピントレンズなんじゃが、今回は負けられない戦いでのう」 先のウインディもおそらく王者の印を持たせていたのだろう。 『けど、タネがわかっても不利なことには変わりないわ』 次にアスナが出したのはバクフーン。 しかしウコンは回復の薬でケッキングを完全回復させてしまった。 「このケッキングを一撃で落とせるポケモンを私は持っていない……」 アスナは敗北を予感した。 しかし敗北を悟ったその時、アスナの頭に逆転勝利できる手段が思い浮かんだ。 「バクフーン、えんまく!」 バクフーンから黒い煙が吹き出す。 「ほう、命中率を下げようというのか。しかし一度の煙幕くらいでどうにかなるとは思えんが……」 そういうウコンの後ろで、不意に気流が乱れた。 思わず振り向いたウコンは、「そこにいたはずの」グラードンが消失しているのを目の当たりにする。 そしてグラードンがいたはずの場所にはマスターボールが転がっていた。 「し、しまった……」 マスターボールは煙幕の中から現れたアスナの手に戻る。 「ふふふ、ごめんなさいね」 「ぬぬ、まさかバトル中にグラードンをゲットされてしまうとは……」 ウコンは自分のミスを呪ったが、とりあえず戦うしかない。 ケッキングの地震がバクフーンを戦闘不能にする。 「じゃあ、グラードンのデビュー戦をしましょうか」 アスナが投げたボールから現れるグラードン。 覚醒したグラードンが現れると、一気に洞窟の気温が上昇していく。 「これがグラードンのひでり……」 周囲の天候すら変えてしまうその力にウコンも焦りを隠せない。 「だが、ワシの最後の切り札で倒してみせる。いけ!」 ウコンが繰り出したのは青く輝く四つ足の獣。 その美しい姿からオーロラポケモンと呼ばれる、伝説のポケモン・スイクンだ。 「なみのりを食らえ!」 スイクンの周囲から水が湧きだし、津波となってグラードンに襲い掛かる。 しかしその体力の高さに阻まれ、倒す迄には至らない。 「あら、まずいわね。じゃあ満タンの薬を使うわ」 アスナはグラードンの体力を回復させる。 「何度でも、何度でもなみのりをお見舞いしてやるわ!」 ウコンも一歩も引かない。 その様子を見て、アスナはにやりと笑った。 14回目の波乗りがヒットし、グラードンの巨体が揺らぐ。 しかしその体力はアスナの薬で回復されてしまう。 「まだまだ……もう、一回…波、のりを……」 ウコンの体がふらふらと傾く。 再び波乗りがグラードンを襲うが、やはりアスナの道具がグラードンを回復させてしまう。 ウコンの目が霞む。 「はははっ、じいさんもうダウン寸前じゃないか?」 洞窟内はグラードンの日照り、そして蒸発した波乗りの水蒸気でサウナ状態になっている。 温泉街育ちで耐性のついているアスナに対し、老いたウコンはすでに体力の限界を越えていた。 うすれゆく意識の中、ウコンはフロンティアブレーンの誇りを思い出し、最後の力をこめる。 「負けん、ワシは負けるわけにはいかんのじゃ……なみのりっ!」 しかしウコンの決死の思いも虚しく、スイクンは動かない。 「な、なぜ、じゃ……」 アスナがゲラゲラと笑う。 「じいさん、もうろくしたな。もう波乗りは15回使っちまったよ」 「ぐ、まさかワシが……そんなミスを……」 まだスイクンには吹雪がある、だがそれでも波乗りと同じ結果だ。 「くそ……勝てんかったか、ダツラ……ヒース、お主らに武運を……」 ウコンはゆっくりと崩れ落ちた。 海の洞窟。 イズミは最奥にいた伝説のポケモン「カイオーガ」を捕獲し、意気揚揚と帰るところだった。 「あのアオギリがアクア団を組織してまで追い求めたポケモンが、まさか私の物になるとはね」 アオギリの心酔ぶりも分からないでもない。 カイオーガにはそれだけの力があるのだから…… 「おっと、俺様の前でタダで帰ることはできねえぜ」 前方の岩影から現れたのは一人の男。 「あんた、誰よ」 イズミも突然の遭遇に呆れ返る。 「俺はファクトリーヘッドのダツラだ」 ファクトリーヘッド……確かバトルフロンティアのブレーンに与えられる称号だ。 「バトルフロンティアは出木杉様によって壊滅したはず。再就職先でも探してるのかしら?」 挑発するイズミにもダツラは微動だにしない。 「イズミ、だったな。アクア団より極悪な事に手を染めやがって……」 「あなたに出木杉様の素晴らしさなどわかるはずもありませんわ」 双方の話は噛み合う事無く平行線だ。 ダツラはボールを手に構える。 「フロンティアブレーン相手にカイオーガの使い勝手でも試してみましょうか」 イズミはカイオーガとキングドラを繰り出した。 「ダブルバトルか、おもしろい!」 ダツラも二つのボールを投げた。 現れたのはライチュウとライボルト。 レンタルポケモンを大量に抱えるバトルファクトリーのヘッドらしく、ダツラはかなりのポケモンコレクターでもある。 「カイオーガ対策は万全、ということなのかしら」 イズミは全く動じていない。 『ファクトリーから持ち出せたのはレベル50のものだけだが、勝てない相手ではないはずだ』 ライチュウの10万ボルトがカイオーガを襲う。 「カイオーガ、ねむりなさい」 カイオーガは目を閉じ、体力を回復させる。 「カイオーガのしおふきは脅威、ならば先に倒すしかない!」 続けてライボルトもスパークで攻撃する。 「カイオーガばかり狙ってくるなんて、あなたえげつないわね」 カイオーガはカゴの実を食べて目を覚まし、イズミは回復の薬を使う。 「このまま押し切る!」 ダツラのライチュウが再び10万ボルトでカイオーガを攻撃する。 『これでライボルトのスパークさえ当たれば!』 しかし、そのスパークより先にイズミが叫ぶ。 「カイオーガ、めいそう!」 特防が上がり、スパークを受けても耐えきったカイオーガ。 イズミはキングドラの命令ターンを回復の薬の使用に充てたのだ。 ダツラが歯噛みする。 「ちっ、ダブルバトルじゃなけりゃ……」 「シングルじゃ勝機はゼロでしょうに」 確かにそうだ。 イズミはまた回復の薬を使っている。 このままでは回復と瞑想を繰り返されて敗北してしまうのは明らかだ。 『もう一匹をやるか!』 ダツラはキングドラをターゲットに定めた。 「ライチュウ、10まんぼ…」 「かげぶんしん!」 ライチュウより先にキングドラが動き、影分身でライチュウの攻撃をかわしてしまった。 キングドラはすいすいの効果で素早さが上がっているのだ。 スパークは命中するものの、倒すまでには程遠い。 巧妙に回復を繰り返しながら回避と特防を上げていくイズミ。 すでにダツラのポケモンでは手に負えない事態になっていた。 「俺の負けのようだな」 「あんたが馬鹿だからね」 ダツラが首を傾げる。 水ポケモン対策もしてきた、戦術にもこれといって間違いはないはずだった。 分かっていないダツラにイズミがトドメを刺す。 「その場限りの借り物のポケモンばかり使ってるから、敵の技のデータすら覚えようとしないのよ、アンタは」 そう、カイオーガは捕獲したばかりではレベルが足りず、潮吹きは使えない。 ダツラは基本的な間違いを犯していたのだ。 「そうだ、確かに潮吹きは使えない……しかしそれなら瞑想も使えないはずでは」 イズミが部屋の奥を指差す。 そこには小太りの男が顔面を腫らして気絶していた。 「あれは、技おしえマニア……」 「グラードンを捕獲しにいった奴から連絡があってね。アンタが襲ってくることはお見通しだったのさ」 すべてを見抜かれていた。 ダツラががっくりと肩を落とす。 「俺の負けだ、ここは退くしかないな」 後退りするダツラにイズミが言い放つ。 「だからアンタは馬鹿だっていうのよ、私が危険因子を黙って見逃すとでもいうの?」 イズミの合図と共にカイオーガの鼻先が光り輝く。 「な、なにを……」 「ぜったいれいど!」 カイオーガから放たれた冷気の奔流がダツラを襲い、その体を瞬時に凍らせる。 「絶対零度は瀕死技、だけどそんな状態で何時間もいれば瀕死ではすまないわね」 イズミはカイオーガとキングドラをボールに収めると、悠々と去っていった。 「ん……」 ダツラは意識を取り戻した。 体はまだ自由には動かないが、生きているようだ。 自分は絶対零度を受け、凍らされてしまった。 『なぜ、俺は生きている……』 その時、体に生暖かい物を感じた。 「あ、意識が戻ったみたいですね」 その声を発した主を見てダツラは絶句した。 豊富な脂肪を持つ技おしえマニアが全裸でダツラの体を暖めていたのだ。 「あのまま、死なせてくれればよかったのに……」 体の自由が利かないまま、ダツラの生き地獄は続くのであった。 121番道路。 スネ夫はルネジムに挑戦する前に、戦力アップのためにサファリゾーンに向かっていた。 「出木杉がクリアフラグを立てたとしたら、おそらくあそこも拡張工事が終わってるはずだ」 サファリゾーンには殿堂入り後に現れる新たなゾーンがあり、そこではホウエン以外のポケモンを捕獲できる。 「ツボツボあたりをゲットできれば助かるんだけど……」 ツボツボの防御力は状態異常を使う自分と相性がいい。 その時。 スネ夫の体が影で隠れる。 上を向くと、白と赤の二色で彩られた大きな姿がこちらを見ていた。 「あ、ああああれあれあれは!」 スネ夫はあわててモンスターボールを投げた。 現れたのはクロバット。 「そうか、クリアフラグが立ったということはコイツも現れるんだ!」 黒い眼差しを忘れてしまったことが恨めしい。 「かみつくんだ!」 クロバットに噛み付かれて苦しがる紅白のポケモン。 それはクロバットを振り払うと、再び空へと消えていった。 スネ夫はその興奮にポケモンをボールに戻すことすら忘れて立ち尽くしている。 「そうか、あのポケモンだけは出木杉も容易にはゲットできないんだ」 あれこそが出木杉に対抗できる可能性がある唯一のポケモンかもしれない。 「もしかしたら今のポケモン……ラティアスだけでなく、ラティオスも飛び回ってるかもしれない」 スネ夫は一縷の希望が見えたことに胸を躍らせていた。 空の柱。 レックウザを捕らえるためにここへとやってきたナギ。 しかしレックウザのいる最上階手前には妙な格好をした優男が立ちふさがっていた。 「貴女をレックウザの元に行かせるわけにはまいりません。元ヒワマキジムリーダー、ナギさん」 「ここはカーニバル会場じゃなくてよ」 確かに目の前の男の姿はあまりにもこの場に似付かわしくない派手な姿だ。 羽飾りもかなり痛々しい。 しかしその珍妙男は恥じる事無く自己紹介をはじめた。 「ボクはフロンティアブレーンの一人、ドームスーパースターのヒースと申します」 フロンティアブレーン。 実力はジムリーダーをも凌ぐというポケモンバトルのプロフェッショナルだ。 「そ、そうは見えないわね」 「天空の神と交信しなくなった貴女には、私についている神の姿も見えないんでしょうね」 「天空の神……そんなものもいたわね」 ヒースのその言葉に動揺するも、ナギは引こうとはしない。 「神に愛された男であるこのヒースに貴女は絶対に勝てません……」 「あなたと一緒にその恥知らずな神様も倒してあげるわ」 ナギはチルタリスのボールを放った。 ヒースが繰り出したのはラグラージ。 「厄介なポケモンを持ってるわね」 ナギが呟くのも無理はない。 ラグラージは弱点が少なく有効打を与えにくいポケモンである。 しかしその主力攻撃は地震、水攻撃に注意していればさほどの敵ではない。 「ゴッドバード!」 チルタリスの全身に力がみなぎっていく。 しかし、その攻撃が炸裂することはなかった。 「ラグラージ、れいとうビームを放て!」 ラグラージから発射された冷気のビームが一瞬にしてチルタリスの体力を奪う。 いくら高レベルチルタリスでも、氷攻撃の前にはひとたまりもない。 「神の声が聞こえていれば、ラグラージの氷技も分かっていたかもしれないね」 「そ、そんな……」 ヒースのキザな物言いにムカつくよりも、自分の勝負勘がにぶっていることに愕然とするナギ。 力に溺れるあまり、強引な戦術を使ってしまっているのだろうか? 『そんなことはない、私は以前より強くなったはずよ』 ナギは続けてエアームドを繰り出した。 「かげぶんしん!」 エアームドが何体かに分身する。 「しかし、神に愛されているボクには効果はない!」 分身したにも関わらず、ラグラージの波乗りがエアームドに直撃する。 「う、運がよかったようね」 ナギの言葉にヒースは悲しい顔をする。 「これを運だと思っている時点で貴女に勝ち目はないよ」 ヒースに馬鹿にされたように感じナギは怒りを顕にする。 「エアームド、もう一度かげぶんしん!」 さらに残像が増え、エアームドの本体はどこにいるかわからない。 ラグラージの波乗りも外れてしまった。 「あなたの神様が昼寝している間に、もう一回積ませてもらうわ」 三回目の影分身を行なうエアームド。 ラグラージは攻撃を当てることもできず、ドリルくちばしを連続で受けて戦闘不能になってしまった。 ヒースは無言でラグラージをボールに戻す。 「やはり神を断った貴女のバトルは美しくない。早く終わらせましょう」 現れたのはリザードン。 「華麗にオーバーヒートです!」 リザードンからすさまじい熱波が撃ち出される。 「そんな命中率の低い技が当たると思っているの!」 ナギの言葉にヒースはくるくると回転する。 「ボクはここで攻撃を当てる!それがスーパースターというものさ!」 ヒースの叫びどおり、オーバーヒートがエアームドにヒットし、撃墜する。 「やはり貴女は神に見離されているんだ!」 ヒースの奇妙な動きはさらに速さを増していく。 「あんなナルシスト男に……私が負ける……」 ナギは膝をついた。 「さあ、次のポケモンを出したまえ」 ナギの手持ちはあと2体。 そのうち1体は秘伝要員で戦闘力はゼロ。 『神よ、この状況で私に勝利の秘策をお教えください!』 ナギはあの日以降怠っていた毎日の儀式に身を委ねた。 しかしその返事は返ってこない。 『やはり私は……神に見離された……』 ナギに残されたのはただひとつのモンスターボール。 出木杉から貸し与えられたリザードンだけだ。 「私には、これしか残っていない……」 ナギは力なくボールを宙に投げた。 そこに現れたのはまばゆく輝く神の化身。 七色に輝く羽がはばたく度に虹のような光が放たれている。 「まさか……ホウオウ!」 敵であるヒースも自分以上の美しい姿に思わず見とれてしまう。 「なんで、ホウオウが……」 そういえば旅立ちの直前に出木杉が意味深に笑っていた。 あの時にはもうボールはホウオウにすり替えられていたのだろう。 「出木杉様……私などのために……」 ナギはすでに神など信じていなかった。 信じられるのはこのホウオウの持ち主であるあの方のみ。 ナギは勝ち誇ったようにヒースを見下す。 「そのチンケな劣化ホウオウで本物に勝てるかしら?」 ヒースは立ち直ったナギの顔に迷いが消えているのを感じた。 『神への祈りが通じたとでもいうのか?』 「しかし互いに炎ポケモン同士、ダメージを与えるのは易しくないぞ!」 ヒースの言葉にナギが呆れたように答えた。 「その程度のポケモンと同列にしないでほしいわ。げんしのちから!」 「そ、そうか!しまったぁぁっ!」 ヒースの後悔もすでに遅く、ホウオウのすさまじい怪力がリザードンを襲う。 岩技である原始の力はリザードンの最大の弱点。 その攻撃に耐えられるはずもなく一撃でやられてしまった。 「あははは、ホウオウがさらに力を増したわ!」 ホウオウのオーラがさらに強くなっている。 原始の力の能力上昇効果だ。 「くそ、最後に残されたのはこの一体のみ!」 ヒースが投げたボールから現れたのはメダグロス。 何人もの挑戦者を退けたヒースの切り札である。 「神よ、私に力を与えたま……」 ヒースの言葉はここで止まった。 目の前のホウオウが七色の炎を吐き出したからだ。 「う、うつく…しい……」 聖なる炎の洗礼を受け、ヒースとメダグロスは光の中に消えていった。 「ふう、終わったわね」 ナギの足元にはキモイ服装のところどころが焼け焦げたヒースが倒れている。 「貴女は…神と話せたのか……」 そう問い掛けるヒースの顔面を踏み付けるナギ。 「いぎっ!顔は、顔はやめろ!」 「神なんていないわ。私を救ったのは私の主人、神ではない」 ナギはヒースの背中に付いている羽飾りを乱暴に引きちぎる。 「や、やめてくれっ!羽がないと、羽がないと……」 「羽をもがれたスーパースターがどんな様で帰るのか見物ね」 ただのタイツ男にされてしまったヒースを放置し、ナギは空の柱の最上階に向かう。 そこには緑色の巨体がとぐろを巻いて横たわっている。 ナギはその緑の塊…レックウザにマスターボールを投げた。 「ふふふ、これで我々の戦力は完璧。誰であろうと出木杉様に手を出すことはできないわ」 レックウザの収められたボールを握りながら冷たく笑うナギ。 その心はすでに出木杉のほうしか向いていない…… しばらく後。 「ヒース、無事か!」 ナギとの戦いの跡地に現れたのはジンダイ。 ヒースは塔の壁にその体を横たえていた。 ジンダイはヒースの無残な姿を見て目論みが失敗したことを感じた。 「やはり、勝てなかったか」 「その口振りからすると、ダツラやウコン爺も勝てなかったんですね」 ヒースの問いに無言で答えるジンダイ。 ヒースは塔の天井を見上げ、ぽつりと呟いた。 「あーあ、フロンティアブレーンもこれじゃ形無しですね。」 「ああ、我々は決められたルール内で戦いすぎた。彼らのような相手を戦うのは難しいのかもしれん」 そういうジンダイの顔が暗い。 「ジンダイさん、どうしたんですか?」 ヒースに問われ、ジンダイが重い口を開く。 「私のポケモンが盗まれた……」 「盗まれた?どういうことでしょう」 ヒースが疑問に思うのも無理はない。 データ通信以外の手段で他人のポケモンを奪っても、それを扱うことはできない。 「盗まれたのはフリーザー、サンダー、ファイヤー。俺の切り札だ」 ジンダイは探検家、冒険家としても有名だ。 いくらかの幻といわれるポケモンも所持しているが、その中でも別格の3体だ。 「暗がりでしか確認できなかったが、盗んだのはそれは「2頭身で丸い頭を持つ奇妙な生物」だった」 ヒースは首を傾げる。パッチールだろうか? 二人にもそれが何なのかは分からなかった…… キナギタウン。 再び集結したフロンティアブレーン達はウコンの病室にいた。 ダツラ、ヒースの怪我はそれほどでもなかったが、ウコンはまだ体を動かせるほどには回復していない。 「全員失敗か。我らの力も堕ちたものだ」 ウコンがベッドから体を起こす。 ヒースもダツラもただ悔しさを噛み締めるだけだ。 ジンダイがヒースとダツラにサイコソーダの缶を投げ、話し始める。 「我らの直面した問題はふたつ。まずはポケモンリーグ占拠事件」 デキスギという少年が不当な行為でポケモンリーグを占拠し、自らをチャンピオンとして部下(ツツジ、ナギ、イズミ、アスナ)を四天王に据えたこと。 彼らはホウエン地方に伝わる伝説のポケモンを入手し、その力を欲しいままにしている。 「バトルフロンティアも壊滅し、有望なトレーナー達はほとんど再起不能だ」 「リラ、アザミ、コゴミもな……」 ダツラが行き場のない怒りを壁にぶつける。 「しかし希望がないわけでもない。デキスギの元仲間だった少年達は力をつけてきているはず」 ジンダイの見つけたスネ夫という少年、彼とその仲間達ならこの事態をなんとかできるかもしれない。 「彼らには我々が極力バックアップをしてやろうと思う」 全員が頷く。 自分達は戦いに敗北した、リベンジするよりは若い可能性に賭けてみるしかない。 ウコンが口を挟む。 「だがバックアップしようにも、もうひとつの問題が邪魔をしよった」 ジンダイが悔しそうに頷く。 「ウコン殿の言う通りだ。第2の問題、伝説のポケモンの窃盗事件だ」 ジンダイの3鳥が盗まれた事件。 これは犯人の目的もデキスギとの関連も分かっていない。 「そしてついさっき分かったことだが、ウコン殿のスイクンも盗まれている」 ウコンはアスナとの戦いのあと、ジンダイに助けられて気が付いたときにはスイクンのボールは失われていた。 「どうなってるんだ?」 ヒースも空の柱から帰ってくるまでにいろいろ考えてみたが、答えは見つからない。 「とにかく、何かが動いてるのは確かだ。ヒース、お前のラティアスは大丈夫か?」 ヒースは複雑な顔で答えた。 「今となってはよかったのか悪かったのかは分からないが、ラティアスは空の柱に向かう前に逃がしたよ」 ダツラが驚く。 「お前のお気に入りだったじゃねえか!」 「あのラティアスを捕獲できるほどのトレーナーが現れればもしや、と期待しちゃってね……」 さびしく笑いながら遠い目で窓の外を見るヒース。 「とにかく、今の我らにできることをやるしかない」 ジンダイの言葉に皆が頷く。 「窃盗事件は私に任せてくれ、犯人の姿を見たのは私だけだからな」 ジンダイがそう言うと、ダツラはありったけのモンスターボールを抱えながら笑う。 「オレはキンセツに向かう。ファクトリーヘッドにしかできないことがあるからな」 「ボクはウコン爺が回復したらルネに向かうよ。その少年達に合流する」 ヒースが新しい羽飾りをひらひらさせる。 「では、何かあればポケナビで連絡を取り合おう」 ウコンの言葉を最後に、ジンダイとダツラはこの場を去り、ウコンは再びベッドに体を沈めた。 「ヒース」 「なんだい?」 ウコンは何かを言おうとしたが、その言葉を飲み込んだ。 「いや、なんでもない。ただ……」 ウコンは目を閉じながら呟く。 「決して油断するでないぞ。どんなときも、どんなときもじゃ」 「?」 その言葉の意味が分からず、ヒースは首を傾げた。 127番水道。 ドラえもん、のび太、しずかの三人はポケモン達を鍛えながらルネに向け進んでいた。 のび太は結局ドラえもんのホエルオーに乗って移動していた。 「あーあ、僕もポケモンで波乗りしたいや」 「じゃあ君のスターミーに乗る?」 「……」 ヒトデマンからスターミーに進化させて少しは大型化したが、やはり乗り方は二択。 以前のような嘔吐や遭難はこりごりと、のび太も仕方なく諦めていた。 そのとき、先行してミロカロスで波乗りしているしずかから声がかかった。 「ん、どうしたんだろ……」 しずかの指差す先には怪しげなヒレが波を割いて泳いでいた。 「あれは、サメハダー?」 以前のび太が釣ろうとしても釣れなかったキバニアの進化系だ。 「ドラえもん、あれに乗りたい!」 「いや、のび太くん、あれはやめたほうが……」 そう忠告ドラえもんの声は全く聞こえていない。 『あーあ、あんなのに乗ったら鮫肌で傷だらけになっちゃうよ』 のび太はホエルオーの先端に立ってすでに戦闘準備万端だ。 「よし行け、ピー助!」 トロピウスが現れ、サメハダーの上空を旋回しはじめる。 「のび太くん、ソーラービームは倒しちゃうから使っちゃダメだよ!」 ドラえもんのアドバイスが飛ぶ。 「そんなことわかってるよ。ピー助、そらをとんで攻撃だ!」 のび太の命令でピー助が天高く舞い上がる。 サメハダーは嫌な音を出すがトロピウスには聞こえていない。 十分な距離をとったトロピウスが急降下し、サメハダーに一撃を加える。 鮫肌と、返す刀で切り裂かれたダメージがあるが、トロピウスはまだまだ元気だ。 「のび太くん、今だ!」 「よし、いけ!ハイパーボール!」 のび太が渾身の力を込めて投げたボールは サメハダーから遠く離れた右の空に飛んでいった…… 「あれれ……」 ドラえもんは思わず顔を覆った。 のび太が野球が下手なことは分かっていたはずだ。 この距離での命中率はいいとこ40%だろう。 「あれっ?」 のび太の声が聞こえる。 恐る恐る顔を上げてみると、のび太は左下を見ている。 正面のサメハダーはすでに海面から姿を消していた。 ドラえもんものび太の視線を追うように左下の海面を覗き込む。 「え?どうして……」 そこには右の空に飛んでいったはずのハイパーボールが波間に浮かんでいた。 ハイパーボールを回収するのび太。 ドラえもん、そしてホエルオーに乗り移ったしずかも駆け寄ってきた。 「どういうこと?」 「私はサメハダーを見てたから……」 ドラえもんの問いにしずかは首を振る。 二人がのび太のほうを向くと、のび太は起こったことを語り始めた。 「ボールが跳ね返ったんだ。で、目の前を通って左側に……」 ドラえもんがハイパーボールを見てみると、中に何かが入っているようだ。 「ねえのび太くん、何か入ってるよ」 のび太は恐る恐るボールから「何か」を解放する。 紅白に彩られた大きなポケモンが現れた。 宙に浮くそのポケモンは不思議そうな顔をしてのび太を見つめている。 「あら、かわいい」 しずかが場違いな声を上げる。 「もしかして空を飛んでたコイツに偶然当たった……なんてことは……」 あるはずがない、と言おうとしたドラえもんは口をつぐんだ。 のび太はどちらかといえば不幸だが、時々とんでもない幸運を呼び込む事がある。 「ど、どうだい!こんなすごいの捕まえちゃった!」 ドラえもんは図鑑を調べる。 無限ポケモン、ラティアス。 どうやら人前に姿を現さないかなり珍しいポケモンのようだ。 「過程はどうあれ、すごいやのび太くん……」 ドラえもんは呆れたような感心したような、複雑な気持ちだった。 ルネシティ。 スネ夫がラティアスに傷を負わせたおかげで、のび太がそれをゲットしたことを当の本人は知らない。 「よし、さっさとルネジムを攻略するか」 スネ夫はルネジムに入った。 メモ帳とにらめっこしながら氷の床を踏むスネ夫。 答えはすべてそれに書いてある。 順調に氷の床を渡り最奥まで行き着くと、そこにはジムリーダーであるアダンが立っていた。 「よ、よかった。どうやら普通の挑戦者みたいだな」 アダンは何やら落ち着きがない。 「どうしたの、おっさん」 「おっさ……まぁいい。実は先日の挑戦者がひどい少年でな。無礼だし歌は騒音だし」 アダンがこめかみにしわを寄せる。 『アダン様が愚痴っておられる』 『確かに前回のバトルはひどかったからな』 ギャラリーからひそひそ声が聞こえる。 スネ夫はすぐにピンときた、その挑戦者はジャイアンだ。 「さて、バトルを始めようか」 アダンはラブカスのボールを投げ、スネ夫はジュカインを繰り出した。 「そっちの手持ちは全て研究済みさ、リーフブレード!」 ジュカインのリーフブレードがラブカスを一閃した。 「やはりラブカスでは力不足だな」 アダンがポケモンを収める。 『って、多分毎回言ってるんだろうな』 スネ夫が心の中で笑う。 「次は…」 「ナマズンでしょ。ぶった切ってあげるから早くだしなよ」 アダンは憎々しげにスネ夫を睨みながらナマズンを繰り出す。 そしてスネ夫の予告どおりリーフブレードの一撃で沈んでしまった。 『ああ、また無礼な挑戦者だわ』 『手持ちを先読みされて、アダン様のあの屈辱に歪んだ顔、りりしいわ』 外野の声にさらに顔を歪ませるアダン。 そんなアダンを知ってか知らずか、スネ夫のつぶやきが聞こえる。 「あー、あとはトドグラー、シザリガー、キングドラか。全部一発だな」 「これがバッジだ、さっさと持って帰ってくれ」 完全に不貞腐れたアダンからバッジをもらったスネ夫。 ついでにアダンに質問する。 「あの、ミクリって人を探してるんだけど」 秘伝マシンを入手するため、ミクリに会わなければならない。 だがアダンから返ってきた言葉はその計画をブチ壊すものだった。 「ミクリはポケモンリーグで何者かに敗れて行方不明だ」 そうか、ミクリはチャンピオンだった。 『これじゃあポケモンリーグに行けないじゃないか!』 スネ夫は目の前が真っ暗になったが、まだ望みはある。 「くそ、手間はかかるけど仕方ないか……」 スネ夫はルネジムを後にした。 次へ
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前へ ポケモンリーグ、第3の間 「ゲンガー、シャドーボール!」 ドラえもんのゲンガーが眠っているナギのチルタリスに攻撃する。 眠らされた上に数度のシャドーボール、さすがにチルタリスも耐えられない。 「やはり催眠術主体、しかも素早い……」 ナギのチルタリスも素早さに自信はあったのだが、やはり催眠ゲンガーの素早さは脅威だ。 「どうだ!スネ夫から託されたゲンガーの力は!」 ドラえもんが勝利をガッツポーズでアピールする。 だが、ナギはその言葉を聞き逃さなかった。 『託された……なら、もしかしたら』 データによればスネオは状態異常主体の戦術で攻めてくるタイプ。 催眠術さえ封じれば付け焼き刃……ボロが出るはず。 「催眠戦術の対策も抜かりはないのよ……次はコレよ!」 ナギが繰り出したのは人ほどの大きさの鳥ポケモン。 「なんだ……フクロウ?」 ドラえもんの記憶にあのポケモンのデータはない。 特に注意すべきポケモンではなさそうだが、何らかのカウンター技や即死技を覚えているかもしれない。 「とりあえず催眠術だ!」 ゲンガーの目が怪しく光る。 だが、相手のポケモンは催眠術を受けても全く眠る様子がないのだ。 「ど、どうして……」 数日前…… 「ふーん、じゃあこのゲンガーってポケモン最強じゃないか」 スネ夫からその戦術を聞いたドラえもんは素直に感嘆する。 敵より速く行動し、眠らせるというシンプルだが強力な戦術。 現実のゲームでは眠りのステータス異常に制限がかけられているというが、それも無理はないだろう。 だが、スネ夫はドラえもんに釘を刺す。 「最強のポケモンなんていないさ。いいかい、今から言うパターンでは催眠戦術は使えない……」 舞台は戻る。 ドラえもんはスネ夫の忠告を思い出す。 「確かカゴの実を持たせていたり、周りが騒がしかったり……そうか、特性か!」 敵はフクロウのポケモン。 おそらく夜行性ならではの特性が備わっているのだろう。 ナギが拍手する。 「ご名答。このヨルノズクは「不眠」の特性を持っているわ……そして!」 ヨルノズクの目が怪しく輝くと、それを直視したゲンガーはうとうとと眠りについてしまった。 「催眠戦術のお返しよ」 「そ、そんな……」 素早さの高いゲンガーが眠らされるとは想定外である。 『交換するべきか、このまま耐えるべきか……』 だが、交換したとしてもまた次のポケモンが眠らされてしまうかもしれない。 「このまま、使い続けるしかないか……」 苦渋の決断をするドラえもん。 「じゃあ遠慮なくやらせてもらうわ、しねんのずつき!」 ヨルノズクが急降下し、眠っているゲンガーに一撃を加える。 「まずい、体力を半分以上持っていかれた……」 思わず呟いてしまったドラえもん。 ナギはその言葉を聞きのがさない。 「じゃあ、もう一発くらわせてトドメを刺してあげるわ!」 再び高度をとり、急降下を開始するヨルノズク。 眠っているゲンガーは避けることもできず、直撃してしまった。 『やったわ!』 しかしナギの思惑とは裏腹に、ゲンガーは僅かな体力を残して持ち堪えている。 驚いてドラえもんを見ると、その顔はしてやったりといった笑みを浮かべている。 「僕はのび太くんの後を追わなきゃならないんだ」 「そのためには卑怯な駆け引きも辞さないということ……なのね」 出木杉様から聞いた話では、彼はのび太の世話係のようなロボットらしい。 フィールドの様子を見て、ナギは自嘲気味に笑った。 「呆れた忠誠心だけど、それが通じたという事かしら」 ナギのその言葉を聞きながら、ドラえもんのゲンガーはゆっくりとその瞳を開いた。 『やっと起きた……だが、やはりこちらが不利だ』 図鑑でヨルノズクをチェックすると、飛行・ノーマルタイプだった。 つまり、ゲンガー唯一の攻撃技であるシャドーボールが効かない。 「ごめん、スネ夫……アレを使うよ」 催眠術とシャドーボールが効かない今、後はあの技しかない。 「……だいばくはつっ!」 ゲンガーの体が輝いたかと思うと、轟音と共に大爆発を起こす。 「くっ、やはりそう来たわね……」 ナギが爆風から顔を守りながらうめく。 ヨルノズクはゲンガーの捨て身の攻撃を受けて壁に叩き付けられ、それっきり動かなくなった。 「ごめんよ、ゲンガー……けど!」 そう、ナギのポケモンを4匹まで倒した。 まだ出ていない最後のポケモンはアレしかない。 「ナギさん、いよいよ追い詰めたよ……出てこいホエルオーッ!」 ドラえもんが繰り出したのは、旅の最中に海での足になってくれたホエルオー。 その巨体らしい体力の高さには定評がある。 「その程度のポケモンで勝てるかしら……出てきなさい、レックウザ!!!」 ナギが投げたボールから、長大な緑のボディが現れる。 空中でとぐろを巻きながらその異様を見せつけるのは伝説の天空ポケモン、レックウザだ。 「レックウザ、しんそく!」 先手を取ったレックウザがすさまじいスピードで飛び込み、ホエルオーの体を打つ。 その先制攻撃だけで体力の半分を奪われてしまうホエルオー。 「……眠れ、ホエルオー!」 ルネでの戦いで、レックウザの主力攻撃は破壊光線だと分かっている。 となると、体力を減らしたままでは危うい。 『破壊光線も神速もPPは少ない、なんとか使わせるんだ!』 眠りから覚めるまでの2ターン、そこが勝負だ。 だが、そんなドラえもんの計画は脆くも崩れさった。 「レックウザ、りゅうのまい……」 レックウザが雄大に宙を舞うと、その戦闘力が上がっていく。 「ま、マズイ!もう1回使われたら……」 「さて、どうなるかしらね」 二度目の舞をただ見ているしかないドラえもん。 ようやく目を覚ましたホエルオーだが、その眼前には再びレックウザが迫っていた。 『ど、どうするっ……』 瞬時に考えを巡らせるドラえもん。 ここで敵の攻撃を受けた後に眠らせればもう数ターンは持つかもしれない。 だが、おそらくナギは更に竜の舞を積んでくるだろう。 そうなればおそらく勝ち目はない。 『なら、攻めるだけだ!』 神速をくらい、大ダメージを受けるホエルオー。 だが、カウンターとして放った一撃がレックウザにヒットした。 「これは、どくどく……」 ナギは思わず声を上げてしまう。 そう、例え伝説のポケモンといえど等しく体力を削っていく毒。 『厄介な……だが、レックウザは眠ることができる』 そう、レックウザはいざとなれば眠って体力と状態異常を回復できるのだ。 「とりあえず、そのホエルオーは倒しておく!」 再度の神速がホエルオーに直撃し、戦闘不能に陥らせる。 「ありがとう、ホエルオー」 ドラえもんはホエルオーをボールに戻すと、大きく深呼吸した。 『2匹、この2匹で決めてみせる……』 そのためには、なんとしてもレックウザの動きを止めなければならない。 「……いけっ、サマヨール!」 ドラえもんが出したのは、耐久力に優れるゴーストポケモン、サマヨール。 『こいつで神速と破壊光線は防げる』 ナギはサマヨールを見てほくそ笑む。 「まさかレックウザの攻撃を封じたつもりじゃないわよね、ドラゴンクロー!」 ナギも元ジムリーダー、それくらい想定できる。 レックウザの爪が不定形のサマヨールのボディにヒットする。 だが、レックウザの爪は寸前で見えない防護壁に阻まれてしまう。 「まもるを使ったわけね……」 猛毒のダメージを受け、体力を削られるレックウザ。 「だが、2度は使えないわよ」 ナギの指摘に、ドラえもんは笑みを浮かべた。 「……?」 その癪に触る笑みを見たナギは、瞬間的に警戒心が芽生えた。 『何かがおかしい』 「ドラ…いや、りゅうのまい!」 ナギは自分の勘を信じて、この場はさらにレックウザの戦闘力を上げる。 「さすがナギさん、やっぱり罠にはかからなかった……」 ドラえもんの言葉を聞き、サマヨールの姿を確認する。 『あ、あれは、おんねんのの態勢……』 危ういところだった。 あそこでドラゴンクローをくらわせ、サマヨールを倒していたらレックウザのドラゴンクローは使えなくなっていた。 そして相手の最後のポケモンがゴーストなら完封されてしまう。 「守ると怨念、交互に使って時間稼ぎ……」 猛毒に侵されているレックウザにとってかなり厄介な戦術である。 『ここはまず毒を消さなくては……』 怨念のPPが尽きるまで長期戦になる、そう予測したナギ。 「眠れ、レックウザ」 ナギの命令でレックウザは目を閉じ、毒に蝕まれた体を癒していく。 「かかった!」 ドラえもんが思わず叫んだ。 最後の技が破壊光線だと思っていただけに、眠ってくれるとは嬉しい誤算だ。 「戻れサマヨール、そしていくんだ、ドーブル!」 サマヨールの代わりに現れたのは一見ひ弱そうなポケモンだ。 だが、このポケモンには他のポケモンにない特徴がある。 「こころのめを開け、ドーブル!」 ドラえもんの指示でドーブルはその心眼をレックウザに向ける。 それから逃れることはできない。 『そう、そういうことなのね』 ナギは全てを理解した。 おそらく次に来るのは一撃必殺技。 あれは対伝説ポケモン用に特化したドーブルなのだ。 「だけど詰めが甘いわね、このターンでレックウザは目を覚ますわ!」 そう、素早さに劣るドーブルがレックウザより先に攻撃はできない。 「これが力の差よ、しんそくっ!!」 ナギのレックウザはトドメとなる最後の一撃を放った。 だが…… 「持ち堪えた……ですって」 ドーブルは失いそうな意識をタスキ一本で支えていた。 「気合いの、タスキ……そう……そうなの」 ドーブルの放つ絶対零度を受け、ナギのレックウザは断末魔の悲鳴を上げながら地に落ちていった。 レックウザが倒れた。 「私が、私が負けたというの……」 全身が虚脱し、崩れ落ちるナギ。 全てを犠牲にしてまで手に入れた力は打ち砕かれた。 もう彼女には何も残っていない…… 「私は……全てを失った……」 「いや、まだ終わってないよ!」 ドラえもんの叫びに、ナギは自分を取り戻した。 そう、レックウザの力に溺れていてすっかり忘れていた。 「出てきなさい、エアームド!」 ボールから解き放たれたエアームドは悠然と宙を旋回する。 「ああ、まだ残っていたのね……」 ナギはポロポロと涙を溢す。 あのエアームドとヒワマキの空を駆けた毎日、そしてジムリーダーとして暮らした思い出が溢れだしてくる。 「私、私は……間違っていたのね……」 そこにいたのは邪悪な出木杉の手下ではなく、優しいヒワマキのジムリーダーだった。 そんなナギの様子を感慨深げに見ているドラえもん。 だがここで立ち止まってはいられない、のび太を助けに行かなければ。 「今行くよ、のび太くん」 ドラえもんはナギを背にし、先へ向かって走り出した。 ポケモンリーグ、第1の間。 スネ夫の目の前には2体のレジスチルが鏡像のように立ちはだかっている。 スネ夫は2体のレジスチルを相手にしなければならないのだ。 「よりによってレジスチルが2体……けど!」 スネ夫がカビゴンに寝言を命令する。 するとカビゴンは寝返りを打ちながら現れたばかりのレジスチルにのしかかった。 「これでカビゴンとユレイドルの技構成が分かったわ」 ツツジは今までの戦いで敵の技を大体把握できた。 ユレイドルは守る、毒毒、エナジーボール。 レジスチルにとってはさしたる脅威ではない。 だが、ねむねご地震のカビゴンは厄介な相手だ。 「まずはカビゴンを潰す!」 一体目のレジスチルが腕を振りかぶる。 「アームハンマー!」 鋼でできたレジスチルの拳がカビゴンにヒットし、大ダメージを与える。 「カビゴンっ……」 「続けて行くわよ、ラスターカノン!」 だが、2体目のレジスチルは動かない。 さっきののしかかりで体が麻痺しているのだ。 「ら、ラッキー!」 思わず幸運に感謝したスネ夫だが、現状は不利と言わざるを得ない。 「ここからは一手読み違えると負ける……」 スネ夫の灰色の脳細胞がフル回転する。 まずは敵のレジスチルだ。 片方は守るとアームハンマー、おそらく物理攻撃タイプなのだろう。 となると、麻痺している方は特殊攻撃タイプのはずだ。 「まずはアイツを倒す、そして後は……」 スネ夫の綿密な計算は完了した。 「ユレイドル、まもれ。そしてカビゴンはねむるんだ」 まずここは馬鹿のふりをしなければならない。 ツツジはその対応を見てほくそ笑んだ。 『次ターンに寝言を使うと思ったが、まさかユレイドルがここで守るを使うとはね』 守るは連続で使用すると成功率が落ちる。 つまり、次ターンに味方を巻き込む可能性がある寝言(地震)は使ってこないはずだ。 『まさか、のしかかりの可能性に賭けるつもりじゃないでしょうね』 スネ夫がそんな部の悪い賭けをするわけがない。 「とりあえず、アームハンマーをカビゴンにっ!」 再び炸裂するアームハンマーがカビゴンの体力を奪う。 「そしてこの隙は逃さない、ラスターカノン!」 麻痺しながも、2体目のレジスチルが鋼の衝撃波をユレイドルに撃ち込んだ。 「これで、次のターンには2体とも……」 そう言うツツジは思わず言葉を止めた。 スネ夫が満足そうに笑っていたのだ。 「ツツジ、あんたなら必ず守るの隙は逃さないと思ったよ」 カビゴンが寝ていること、そしてユレイドルが守れない事でツツジは基本の『1体集中攻撃』を忘れ、分散攻撃をしてきた。 普通ならこれでよかったのかもしれない。 だが、スネ夫はそれをすべて読み切っていた。 「ユレイドル、ミラーコートだっ!」 ユレイドルがラスターカノンの倍の破壊力の衝撃波を放射する。 「そ、そんな……守るはフェイクだったというの」 ツツジの目の前でミラーコートの反撃を受け、崩れ落ちるレジスチル。 「ミラーコート、ミラーコートね……ふふふ、アハハハハハ!」 ツツジはひとしきり笑うと、憎しみの視線をスネ夫に叩き付ける。 「だが貴様のポケモンも瀕死だ!残り1体とはいえ、無傷のレジスチルに勝つつもり?」 「ふん、やってみなよ」 余裕を見せたスネ夫の様子に、逆上するツツジ。 「じゃあ死にな……じしんよ、レジスチル!」 だが、レジスチルの動きが鈍い。 「ユレイドル、まもる。カビゴンはねごとだ!」 レジスチルより先にカビゴンが寝返りをうつ。 すさまじい衝撃波が発生し、レジスチルは大ダメージを受けてしまった。 「なぜレジスチルより速く……そうか、しまった!」 2度にわたるアームハンマーのせいで素早さが落ちてしまっていたのだ。 「じ、じしんっ!!」 レジスチルも負けずに地震を発生させ、カビゴンを瀕死に追い込んだ。 「まさか、ここまで追い詰められるなんて……」 「これが最後の賭けだ、ツボツボ!」 スネ夫が戦闘不能のカビゴンに代わって繰り出した最後のポケモンはツボツボ。 防御に特化した持久型のポケモンだ。 「ツボツボ……レジスチルが完全ならさほどの脅威ではないけれど……」 実はカビゴンの地震のダメージが予想以上に大きい。 ツボツボやユレイドルの攻撃力は低いが、万が一ということもある。 「ユレイドル、エナジーボール!」 効果はいまひとつとはいえ、それなりのダメージが蓄積されてしまう。 「せっかくここまで削ったのに残念ね……レジスチル、ねむれ!」 レジスチルの体力がみるみる内に回復していく。 『エナジーボールの威力、そしてツボツボの予想される戦闘力なら、落ちるまで2ターンどころか5ターンはかかるわ』 ツツジは勝利を確信する。 だが、スネ夫は会心の笑みを浮かべた。 「やはり、そうくると思ってたよ」 「ま、まさかこれすら読んでいたというの!」 「ユレイドル、エナジーボール!」 スネ夫のユレイドルが再びエナジーボールをレジスチルにくらわせる。 だが、そのダメージはツツジの想定内だ。 「ふ、ふふ……全然ダメじゃないの!バッカじゃないの、アハハハハハッ!」 完全に勝利を確信したツツジは笑いが止まらない。 スネ夫はそれを聞きながら、静かに呟いた。 「ツボツボ、パワートリック」 ツボツボからすさまじい闘気が溢れだしてくる。 ツツジのその顔が引きつった。 パワートリック。 最高クラスの防御力を持つツボツボの攻撃と防御を入れ替える技。 これにより、ツボツボは最高の攻撃力を持つポケモンに生まれ変わる。 「だけど、これを使うターンは敵の攻撃に晒される事になる。それがネックさ」 「ま、まさか私が眠らせる事まで計算のうちだったというの……」 スネ夫はニヤリと笑うと、指をパチンと鳴らす。 「僕を誰だと思ってるんだい?」 その言葉と共に、ツボツボが味方のユレイドルを巻き込み地震を起こす。 「いやああああああーーー……」 ツツジの悲鳴と共に、レジスチルはその巨大を地に倒した…… 「ふうっ」 スネ夫は深呼吸をすると、その場にへたりこんだ。 なんとか戦いには勝利したが、手持ちで健在なのはツボツボだけだ。 「けど、のび太のやつを助けにいかないとね」 「勝ったのね、スネ夫さん」 聞き覚えのある声、だが決してここで聞くはずのない声が聞こえた。 声のした方向を向くと、部屋の横の扉(おそらく四天王が使うものだろう)から人影が現れる。 いや、人影というには丸すぎるのだ。 スネ夫はその声の主をよく知っている。 「ど、ドラミちゃん……」 そう、ドラえもんの妹のネコ型ロボットのドラミだ。 「ど、どうしてここにいるのさ!」 何が何だか分からないが、とにかく頼りになる援軍だ。 スネ夫は事情を説明しようとドラミに駆け寄ろうとする。 だが、その行く手に青い巨大鳥が立ち塞がった。 「ふ、フリーザーじゃないか……」 スネ夫もよく知っている、カントーに生息する伝説の鳥ポケモンだ。 『なぜこんなところにフリーザーが?』 疑問に思うスネ夫、だがその答えはすぐに分かった。 「フリーザー、れいとうビーム!」 ドラミの命令を受け、フリーザーがスネ夫のツボツボを一撃で戦闘不能にしたのだ。 この世界にいるはずのないドラミ、そしていきなり攻撃してくるフリーザー。 「な、なんで……」 「ごめんなさいね、スネ夫さん……」 ドラミはポケットから光線銃を取り出すと、スネ夫に光線を撃ち込んだ。 「ピギャーーーッッ!!」 奇妙な声をあげながら気絶するスネ夫。 ショックガンをポケットに戻すと、次は毛布を取り出す。 それをゆっくりとスネ夫にかけてやるドラミ。 「痛かったでしょう、ごめんなさい」 次に起きたときは彼にこの世界の記憶はないだろう。 ポケモンリーグ、チャンピオンの間。 その大きな入り口をくぐり抜けたのび太は、中央に立つ少年の元に歩み寄る。 「出木杉……」 一見いつもと変わらない様子の少年は、何も言わずに背を向けた。 「やっぱり、戦わなくちゃならないのかい」 対面するまではしずかを拐った憎き敵だったが、いざ面と向かうと懐かしさが脳裏をよぎる。 だが、出木杉は冷たく言い放つ。 「僕を倒さないと、しずかちゃんはヒドイ目に合うんだよ、ふふふ……」 出木杉は特設した大きな椅子に座ると、のび太を指で手招きする。 「さあ、ラストバトルを始めようじゃないか」 バトルフィールドの対面に立つのび太。 深刻な顔をするのび太に対し、出木杉はやれやれと肩をすくめる。 「もっと楽しくいこうよ、どうせゲームなんだしさ」 「しずちゃんに怖い思いをさせて、それをゲームの一言で片付けるな!」 さすがののび太も怒りがこみ上げてきたようだ。 「ふう、仕方ないな。しずかちゃんなんかどうでもいいくらいの快感を味あわせてあげるよ」 出木杉が合図すると、のび太の左右から三人の女性が近づいてくる。 のび太も見覚えのある顔だ。 「さ、サン・トウカの……」 そう、フラワーショップ「サン・トウカ」の名物3姉妹だ。 3姉妹はのび太にがっちりと掴みかかると、その体を押し付けはじめた。 「や、やめて……やめてよっ……」 「どうだい、しずかちゃんなんてどうでもよくなるくらいの快感だろう」 その様子をしずかは隠れて見ていた。 「出木杉さん、そうやってのび太さんを堕落させようとしてるんだろうけど……」 だが、出木杉は「野比のび太」という人間の芯にある強さを知らない。 「のび太さんは貴方とは違うわ」 しずかはそう確信していた。 注:微エロ 3姉妹がのび太の全身を舌や指、そしてその肉体で愛撫する。 女の匂いに当てられ、耐性のないのび太はすでに意識が混濁していた。 「のび太くん、無理しないで楽になろうよ……」 マユミに自らの下の世話をさせながら、出木杉が誘惑する。 だが、誘惑するまでもなくのび太はすでに快楽に身を浸していた。 このまま身を委ねたらどんなに楽だろう すべてが夢だったみたいだ そう、夢のようだ 『!!』 不意にしずかの泣き顔が頭に浮かんだ。 そして、自分をここまで連れてきてくれたドラえもんや仲間達。 「うわああああああっ!」 「きゃあっ!」 のび太は渾身の力を込めて3姉妹を押し退ける。 「僕は、しずちゃんを助けるんだあぁぁっ!」 再び目に生気が戻ったのび太を驚いたように眺める出木杉。 『未経験ゆえに誘惑を振り払えたのか、はたまたしずかちゃんへの恋心か……』 なんにせよ、のび太はその甘美な誘惑を振り払った。 「僕が直々に叩き潰さなきゃならないようだ」 マユミの頭を押さえながら、出木杉がマスターボールを投げる。 「こっちが済むまでコイツで相手してやるよ」 現れたのは虹色に輝く羽を煌めかせた鳥ポケモン、ホウオウだ。 ポケモンリーグ、第2の間。 ジャイアンのボーマンダがアスナのバシャーモを威嚇し、脅えさせた。 「いくぜ、すてみタックル!」 ボーマンダの巨体が急降下し、自らが傷つくことも顧みずにバシャーモに襲いかかる。 その質量を体に受けたバシャーモがたまらず吹き飛ばされた。 「さすがにあの攻撃力は脅威ね……」 アスナの顔も曇るが、バシャーモをここで下げるわけにはいかない。 『ここはひとつ、タケシの知識の少なさを利用させてもらうわ』 出木杉様が言うには、タケシはスネ夫というブレインがいなければタダの粗暴な少年だということ。 腕をクロスさせ防御態勢をとるバシャーモに、ジャイアンはここぞとばかりに追い討ちをかける。 「よっしゃ、次はドラゴンクロー!」 捨て身タックルによる反動を嫌ったジャイアンがドラゴンクローを命令すると、ボーマンダはバシャーモにその爪を振るう。 「ビルドアップ!」 バシャーモは攻撃を受けながらも、自らの能力を上昇させてきた。 「そんな状態で今更どうするってんだよ!」 「今の攻撃で倒せなかった事、後悔するわよ」 追い詰められているにも関わらず、アスナの自信は揺るがない。 「何か企んでるんだろうが、コイツでおしまいだぁっ!」 ボーマンダが再びドラゴンクローで攻撃する。 「こらえなさい、バシャーモ!」 バシャーモは身構え、その爪を真っ向から受け止めた。 その迫力にジャイアンが思わず後ずさる。 「こ、こらえるかよ……バシャーモってそんな技使えるんだ……」 だが、自分の優位は変わらない。 そう思っていた。 「ヒッ……!」 ジャイアンは思わず声を上げる。 バシャーモの体から炎のオーラのようなものが吹き出しているのだ。 バシャーモが視界から消える。 「つじぎり!」 バシャーモの爪がボーマンダの背中にヒットし、その身を地に叩き伏せる。 一撃でかなりのダメージを受けてしまうボーマンダ。 「あり得ない、あんなダメージあり得ない……しかもスピードまで上回って……」 アスナがニヤリと笑う。 「あんたも最初に貰ったポケモン達の特性は覚えておくことね」 そう言われてジャイアンがハッとなる。 『そういや滅多にピンチにならないから忘れてたけど……』 確か、最初に貰える三匹はHPが減少すると強くなる特性があったはずだ。 「猛火……なのか」 「ボーマンダ、ねむるんだ!」 著しく奪われた体力を回復するため、ボーマンダは眠りにつく。 その様子を見て、アスナはほくそ笑んだ。 『やはりひとりではあの程度のようね、すっかりビクついている』 バシャーモの猛火は、炎タイプの技しか強化されない。 相手より素早くなったのはカムラの実の効果であり、猛火ではないのだ。 『つじぎりが急所にヒットして、すっかり誤解したってわけね』 辻斬りの急所ヒット率の高さに賭けたが、どうやら誤解を誘導する作戦は成功のようだ。 「ビルドアップ!」 バシャーモがさらに戦闘力を上げていく。 目を醒ましたボーマンダより先に、バシャーモが再び辻斬りを炸裂させた。 再び急所に直撃し、何も出来ずに戦闘不能にされるボーマンダ。 「そ、そんな……一撃で……」 「さて、次はどうするのかしら?」 ジャイアンはエースであるボーマンダを失い、すっかり動転してしまっている。 数日前━━ 「スネ夫、お前のパーティーってチマチマした攻撃しかしないよな」 ジャイアンがバカにしたようにスネ夫を笑う。 だが、スネ夫は全く気にもせずに返した。 「ジャイアン、継続ダメージを馬鹿にするなよ」 「毒とか火傷とか食らっても、先に倒せばいいじゃん」 ジャイアンの軽率な考えに、スネ夫がやれやれと首をすくめる。 「まあジャイアンの持つアイツ、使ってみなよ。継続ダメージのありがたみがわかるからさ」 「そんな事ねえって」 ジャイアンはガハハと笑った。 そして舞台は戻る。 「相手HPは1。敵より先に、わずかでもダメージを……そうか、コイツで!」 ジャイアンは戦闘不能のボーマンダを収め、代わりに新たなポケモンを繰り出した。 「いけえっ、バンギラス!」 バンギラスの巨体が姿を現すとその周囲の砂が巻き上げられ、竜巻を形作る。 その砂嵐を身に受けたバシャーモは、ゆっくりと崩れ落ちた。 「やはりバンギラスを持っていたのね。以外と知恵が回る……」 バンギラスの特性、砂起こしによる砂嵐の継続ダメージは厄介だ。 だが…… 「アンタがバンギラスを使うだろうことも、アタシはお見通しだよ!」 アスナは4体目となるポケモンを繰り出した。 「いけっ、グライガー!」 現れたのは意外な伏兵、グライガー。 「グライガー、だって?」 進化ポケモンでもないグライガーを出してくる意味が分からない。 「グライガー、かげぶんしん!」 グライガーの姿がぶれ、その回避率を上昇させる。 「一回積んだくらいで調子に乗るなよ、バンギラス!」 バンギラスのストーンエッジがグライガーに襲いかかるが、ただでさえ命中率の悪いストーンエッジは命中しない。 「くそっ!」 悔しがるジャイアンを冷静に見つめるアスナ。 『やはりグライガーの特性も知らないようね』 グライガーの特性、それは砂隠れ。 バンギラスの砂嵐を逆に利用したアスナの戦術なのだ。 バンギラスは次々と技をくりだすが、グライガーには当たらない。 たまに命中してもグライガーは羽休めで体力を回復してしまう。 「ど、どうなってんだ……」 ジャイアンは自分の攻撃が当たらない事に苛立ちを隠せない。 「影分身は限界まで積んだわ、次はつるぎのまい!」 次にグライガーは攻撃力を増強していく。 バンギラスはストーンエッジや逆鱗で攻めるが攻撃は当たらず、逆に混乱して自らの体力を削ってしまった。 「そろそろいいようね……」 限界まで攻撃と回避を上昇させたグライガーは、アスナの命令を受けてボールに戻ってしまった。 「せっかく積んだ補助効果を……意味がわかんねぇ」 ポケモンを戻してしまっては、補助効果はリセットされてしまう。 全てが無駄になってしまったのだ。 ジャイアンが首を傾げるが、理由はすぐに判明する。 「グラードン、バトンタッチを受けて出てきなさい!」 アスナがボールを投げると、満を辞して現れる伝説のポケモン。 グラードンはその巨大な身体をゆっくりと動かす。 「グラードン、じしんっ!」 アスナが叫ぶと、グラードンは自らの右足を思いっきり踏み込んだ。 衝撃波が発生し、バンギラスを激しい揺れが襲う。 そのダメージはジャイアンが予想するより遥かに高く、一撃でその体力を奪ってしまった。 「つ、強すぎるっ!!」 バトンタッチによる補助効果受け継ぎで攻撃力が限界まで上がっているのだ。 しかも、このグラードンは回避率も限界まで積まれている。 「これじゃ、弱点ないじゃんかよ……」 ジャイアンには目の前の赤い巨獣が絶望の壁に見えていた。 アスナが笑う。 「さあタケシ、次の生け贄を出しな……」 「くっ……」 次へ
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前へ しずかのフィールドには無傷のダークルギアとトゲキッス。 そして出木杉のフィールドには瀕死のカメックスとメガニウム。 おそらくしずかはダークルギアの範囲攻撃ダークストームでカメックスを葬るついでにメガニウムにダメージを与え、トゲキッスが止めを刺してくるだろう。 『いや、トゲキッスは神速を使うだろうから攻撃順は逆か……』 だが、逆だったところでこちらが遅いのは変わらない。 『これが、最後だ』 出木杉は意を決して片膝をついた。 「敗北する覚悟はできたようね……」 しずかがゆっくりと右手を上げる。 「行くぞ、しずかちゃん!」 出木杉は気合を振り絞るかのように立ち上がった。 『これでおしまいね』 しずかの行動は出木杉が予測したものと同じ、神速→ダークストームである。 「トゲキッス、しんそく……!」 命令を出した瞬間トゲキッスがメガニウムの体力を削ろうと神速を放つが、メガニウムの周囲に輝く粉が目測を誤らせる。 「くっ、ひかりのこなね!」 「そう、そしてこのターンの僕の強運は約束されている」 そう口にする出木杉を睨み返すしずか。 「まさか、しあわせトランプを……」 出木杉が握っていたのはのび太に渡したしあわせトランプだ。 『そう、そういうことなの!』 恐らく足元に置いて、使うタイミングを調節していたのだろう。 事ある毎に片膝をついていたのはそのためだったのだ。 手元から離れたしあわせトランプは、どんなに離れていても所有者に戻ってくるのだが、若干のタイムラグがある。 そこまで計算された巧みな戦術だったのだ。 「アクアジェットっ!」 カメックスのアクアジェットがトゲキッスに炸裂し、かなりのダメージを与える。 しずかのダークルギアのダークストームが出木杉のポケモン達を襲うが、カメックスは倒せても体力に余裕のあるメガニウムは倒せない。 「ちっ、残ったみたいね……」 「しずか、はっぱカッターだ!」 しずかと名付けられたメガニウムから木の葉の刃が放たれ、トゲキッスとルギアにダメージを与える。 その一撃がトドメとなり、トゲキッスは地に落ちた。 「見事な戦術、さすがに秀才と言われているだけのことはある……」 戦力的に劣るポケモン達でここまで善戦したのだ、憎き相手とはいえ感心する行為だ。 だが、もう出木杉に勝ち目はない。 しかし出木杉の顔は全てをやりきった達成感が感じとれた。 戦力差は決定的。 そしてしずかにはもうひとつ勝利を確信できる理由があった。 出木杉のしあわせトランプの使い方である。 「大切に使っているようだけど、後何枚残っているのかしら?」 おそらくトランプの残り枚数は一桁だろう。 枚数があればトランプを常時持っていればいいのだから。 出木杉がトランプケースからカードを取り出す。 「!!」 出木杉の手はジョーカーを掲げていた。 「これが最後だ。だがしずかちゃん、君の手駒はしっかりと削らせてもらったよ……」 そう言い終えた瞬間、出木杉の足元の足場に亀裂が入る。 しあわせトランプの最後の効果、今までの幸運に匹敵する不幸が降りかかったのだ。 「あとは頼んだよ、のび太くん……」 そう出木杉が口にした瞬間、足場がガラガラと崩れ落ちる。 そして出木杉は奈落の底へと姿を消していった。 そして、退場した出木杉と入れ替わるようにして奥から現れたのは…… 「のび太くん!!」 傷つき倒れている全員が叫んだ先には、決意の目を輝かせたのび太が立っていた。 瓦礫と化した回廊、そして倒れている仲間達。 のび太としずかは、仲間達の安否を確認していく。 「ジャイアン……」 「ようやく来たか、心の友……」 ジャイアンは崩れた石壁にもたれながら親指を突き出す。 「スネ夫……」 「僕がいなくても……なんとかしろよ……」 そう言って、スネ夫は気を失った。 「ドラえもん……」 ダイゴに支え起こされたドラえもんは、激痛をこらえながら心配をかけまいと笑う。 「ボクは、大丈夫だ……しずかちゃんを……もうひとりのしずかちゃんを止めるんだ」 そう言われたのび太は、傍らのしずかに無言で頷くと横を向く。 そこには、野比しずかが立っていた。 「のび太さん」 「しずか、ちゃん……」 懐かしいものを見るような目で、しずかはのび太を見ている。 その顔は当時にいつも見せていた優柔不断な少年のものではなく、決意を秘めた男の顔だった。 『いい顔になったわね、のび太さん……』 しずかの目的はこれで果たされたともいえる。 出来杉は改心の色を見せ、のび太はこの旅で大きく成長したはずだ。 だがこうなってしまった以上、もう戻るべき道はない。 これまでの行為はのび太達に許してはもらえないだろうから…… だが、野比しずかは感傷に浸るわけにはいかない。 なぜなら、この計画における最後の障害を取り除かなければならないからだ。 それはドラえもん。 ドラえもんがいる限り、この計画は達成されないのだ。 もししずかが敗北したならば、ドラえもんはドラミの四次元ポケットを回収してこの悲しい冒険の記憶を全て消してしまうだろう。 だがそれでは意味がない。 のび太にも出木杉にもある程度の記憶を残留させなければいけないのだ。 それにはこの戦いで勝利し、こちらが先にドラえもんの記憶を消去するしかない。 『私がここにいる連中を全て打ち倒し、ドラミの道具で自分の都合のいいように記憶を部分的に消去する』 表舞台に出ざるをえなくなったしずか達の第2のプランである。 だが、ドラミは先ほどの落盤で出木杉と共に深淵に消えた。 ここからは自分ひとりで事を成し遂げなければいけない…… 「君は出木杉に戦力を削られ、もう戦う力がないはずだ。降参してくれよ……」 そう言うのび太を、野比しずかは冷ややかに見返す。 「どうやら出木杉さんと二人で示し合わせたようだけど……無駄だったわね」 しずかは含み笑いを浮かべながら懐から何かを取り出す。 「のび太さんなら、これが何か分かるわね?」 しずかの手に握られた物に、のび太よりドラえもんが先に反応した。 「それは、とりよせバッグ…!!」 「そう、ドラミさんから借りていたの。これさえ使えば……」 しずかがそのバッグの中に手を入れる。 最初に取り出されたのはモンスターボール。 「戦闘不能になったポケモンの変わりや……」 続いて小瓶が取り出される。 「ほら、回復アイテムも」 最後に取り出されたのは、チェック柄の布きれ。 「下に落ちたドラミさんの四次元ポケットも簡単に回収できるのよ。まあ私じゃ望みのひみつ道具を出せないんだけど」 つまり、先ほどの出木杉の戦い全てが無駄だったということなのだ。 『以前ののび太さんなら、ここで簡単に心が折れるんでしょうけど……』 しずかの視線の先にいるのび太はとりよせバッグの存在に動揺は見せたものの、目からは希望の光は消えていない。 『強く、なったわね』 未来の夫の成長に心を揺らしながらも、今やるべき事を忘れてはいない。 「これで私が降参する理由はなくなったわね」 のび太が口を開く。 「やっぱり、戦わなくちゃいけないんだね」 野比しずかが返す。 「ええ、そうよ」 しずかの意思は変わらないようだ。 例え未来のしずかとはいえ、自分の想い人と戦うのは気が重い。 『だが、僕は負けるわけにはいかない』 のび太はゆっくりと両手を左右のポケットに入れ、モンスターボールを出す。 「ダブルバトルで、勝負だっ!」 しずかもとりよせバッグから2つのボールを取り出す。 「わかったわ、6VS6のダブルバトル。これがこの世界最後のポケモンバトルよ」 未来のしずかとのび太の間に緊張感が満ちていく。 その空気を察し、源しずかはのび太から離れた。 「お願いのび太さん、わたしを止めて……」 それはしずかだけでなく、ジャイアン、スネ夫、そしてドラえもんの願いでもある。 ドラえもんは何もできない自分に歯噛みしながら、力の限り叫んだ。 「がんばれ、のび太くんっっ!!」 その声を合図に、皆の希望を背負った少年と、全てを敵にした孤独な少女が同時にモンスターボールを放り投げた……