約 834 件
https://w.atwiki.jp/vip0yuri/pages/99.html
スポーツプロット(大体の流れ) キャラ選1 4月 優奈があけみと共にグラウンド前を散歩中、人だかりを見つける。 何かと思い見てみると、和葉が2年の陸上部新部長候補(数人)の挑戦(100m)を受けているところ。 開始前、和葉が優奈とあけみの姿に気付き手を振ってくる。 選択肢 振り返す 好感度↑ 放置 好感度→or↓ 「振り返す」 少し遠慮がちに小さく手を振る。 周りからの(ファンの)視線が少し痛い。 勝負が始まると、和葉は陸上部を圧倒、10秒後半という五輪級のタイムで駆け抜け、そのまま優奈の元へと駆け寄ってくる。 またまた視線が痛い。 突如和葉が優奈を抱きしめる。 さらに視線が痛い。 「放置」 和葉はしばらく手を振り続けるものの、しばらくして諦める。 別の意味で周りからの視線が痛い。 勝負が始まると、和葉は陸上部と接戦、12秒代という中高生そこそこのタイムでギリギリで勝つ。 走り終わった後、和葉は優奈の元へ向かい、やはり抱きつこうとするが優奈はなぜか逃げ出してしまう。 キャラ選2 4月 休日 あけみと共に町に出向いて買い物等 じゃあ喫茶店にでもと、入った店で偶然にも和葉と薫にバッタリ おしゃべり的な キャラ選3 5月 まだ5月だというのに今度は水泳勝負をするという事を訊き、優奈は観戦に行く 今度の相手は水泳部の部長らしく、400mで勝負を始める。 制服ではあまり分からなかったが、和葉がかなりのボインだということを知る。 だが、そのボインが仇となり水の抵抗がなんたらで長距離は不利だなんたら。 でもそんなの関係ねえ 10秒近くの差を付けて圧勝 終了後、優奈は和葉に見つかり、またしても抱きつかれる。 ファンの視線がやっぱり痛いよ… どうしてそんなに私に構うのかを尋ねる。 「んーどうしてだろうね?」 なにかしら片鱗を見せ始めながら、その場はそれで終わる。 キャラ選4 5月 以後選択不可 優奈が、偶然一人でいた和葉を見つけて話しかける。 取り巻きが揃っていない事についてを訊くと、もとめの話をする。 朝、いつも通りもとめに話しかけると、突如キレられたらしく、それによって和葉は酷く落込んでいる。 原因は和葉の取り巻きにあるらしく、自身が直接の原因で無い事、 もとめにしろ取り巻きにしろどちらか片方を切らなければいけないかもしれないという状況にどうしたらいいか悩んでいる。 選択肢 どっちもとればいい 好感度↑ どう答えていいか分からない 好感度→ 「どっちもとればいい」 迷ったならどっちもとればいい、そう提案する優奈 だが、それはいくらなんでも無茶な事じゃないかと訊く 実はそこまで考えていなかった。 和葉、大笑いして流石優奈だと言いながら頭を撫でたり。 そこにもとめ登場 今朝はすみませんでした的な感じで、あっさり解決してしまう。 「どう答えていいか分からない」 和葉の話を聞き終えた後、黙りこくる優奈。もとめの過去についても、和葉の対処法もどうすればいいかわからず。 しばらくの沈黙後、和葉はこんな話をして悪かったと謝り、その場を去る。 数日後、和葉が自己解決をした事を知る。 キャラ選5 6月 サンプル2からの改変 (?) キャラ選6 6月 そろそろ姫百合祭 日が進むにつれて、和葉が体育系の部活の生徒と試合をしているシーンをよく見かけるようになる。 偶然観戦に来ていた薫に、どうしてかと訊く。 もうすぐ姫百合祭での入れ替え戦があるため、それの前哨戦のようなものだと教わる。 優奈、私もちょっとやってみたいなぁ等と無謀な発言 個別ルート 個1 さてさて今度はテニスの試合です。 勿論和葉の十八番、当然誰が勝てるわけでもない。 これも前哨戦の一つなのかと近くにいたファンAに訊き、次期部長の選出をしていと教えてもらう。 そういえば陸上部を相手にそんな事をしていたなと思い出す優奈 しばらくして、和葉は浮かない様子 どうも今年は部長を任せられる部員がいないらしく、ええい面倒だハンデだ!2対2で一気にだ! 和葉に見つけられた優奈は強制的にコートに入れられる。 立ってるだけでいいから、と言われたので立ってるだけ。 しばらくすると、顔面に勢い良くボールが… ビックリして思わず打ち返す。 入っちゃう ……ぐ、偶然偶然! またくる。 打ち返す。 入っちゃう。 あれ? 私ったら、テニスの才能があるの?!と舞い上がる優奈 実際、優奈へと飛んできた球はほとんど的確に相手コートへと返る。 結果的には大勝(べつに和葉一人でも勝てるわけですが…) その舞い上がったテンションのまま、私も入れ替え戦に出ます!テニスで! これが優奈の志望フラグになろうとは(ry 『視点変更・和葉』 一人、部屋でボーっとする和葉 優奈とのダブルスを思い出す。優奈優奈優奈… 最近はずっと優奈の事を考えている気がする。なぜだろうか? この時点ではまだ無自覚 『視点変更・優奈』 門限ギリギリの時間まで、一人で壁打ちを試している。やはりその腕は初心者とは思えない動き。 練習を練習を…と、ひたすら壁打ち。 これに勝てば和葉先輩を…和葉先輩を何?と、こちらも口にしながら無自覚 本質はトレスフェミナになる事では無い様子 個2 ここから和葉指導のもと特訓の日々 個3 当日、入れ替え戦が始まる。 多種多様な競技で十数人の生徒が次々と挑み、轟沈していく。 そして最後は優奈の番 あんなに特訓したんだ。和葉先輩に指導してもらったんだ。できる! できない 和葉の本気モードから放たれた球は、半分も打ち返す事ができず、取ったボイントは偶然アウトになって転がり込んだ1ポイントだけ。 そして、ストレート負け。 終わってどこかに逃げて一人落込む。 ちょっと部員に勝てただけで舞い上がっちゃって何やってるんだろう…。 気が付けば夜、舞踏会がそろそろ始まる時間 目の前に和葉の姿 どうしてここに? ずっと優奈を探していたらしい。 もうすぐ舞踏会だから行こう、と誘われる。 勿論落込んでいるため、拒否する。 なにかしら説得されて付いていく 大勢のファンを掻き分け、和葉は優奈と舞踏しちゃったり。 勿論視線は今まで以上に痛く、逃げ出したいとも思うがそれでも舞踏 しばらくして、なんだろうこの感じ…的になり、回想(?) 私、和葉先輩が好き…みたいです。 場所を移す。 ここならだれも来ないと、和葉の部屋に入る。 再度告白 和葉はそれを聞いて、自身も恋をしていたことに気付き、受け入れる。 ちゅっちゅ あんあん 事後、余韻がまだ残る中、和葉の携帯に電話がかかってくる。 通話後どうかしたのかと優奈が訊くが、和葉は答えず浮かない顔 さらに、用事が出来たと言って部屋を出て行こうとする。 選択肢 ちょっと待って 好感度↑ 行ってらっしゃい 好感度→ 「ちょっと待って」 また明日も同じ時間に部屋に来ていいかと訊く、和葉了承 頬にキスをして見送る。 「行ってらっしゃい」 そのまま和葉を見送り、優奈は布団に潜り込んで少しふてくされる。 個4 翌日 自室にいると、和葉から電話が来る。 今から部屋に来てほしいとの事(前回の選択肢で微妙に優奈の台詞変化?) 部屋に行くと、浮かない顔の和葉が どうしたのかと訊くと、突然和葉は優奈に泣きつく お家柄政略結婚云々 どうしよう どうしよう(選択肢) 解決→GOOD 失敗→BAD GOOD 和葉の親を言いくるめ、結婚破棄 優奈との関係は認められないものの、実質放置 和葉にスポーツ留学等、ビッグな話が舞い込んでくるが全て蹴る。 理由は優奈との幸せな生活に邪魔だから。 そして、スポーツインストラクターの話が 二人は歓喜し、幸せな結婚生活を…(和葉…夫、優奈…妻、的な立場) 最後にやわらかくキスをして終了 BAD 結局どうしようもなく、二人で駆け落ち とある日(一ヶ月程度後?) しばらくの休学届けを二人で出し、少し学園から距離を置く(東京と静岡位の距離) ベッドであんあんしている二人 もう何回目かもわからない、気を紛らわすためにはそれしかない あんあん あんあん 自分のせいでこんな事になって申し訳ないと、謝る和葉 「いいんです。……和葉先輩と一緒ですから」 優奈の笑顔、もしくは絶頂描写で終了 ※怪しそうな部分 選1 手を振り返すとバリバリ日本新記録になりますが、大丈夫か 選3 もとめがはたしてキレるのか 選5 根本サンプルから改変していいのか 個1~3途中辺りまで テニスばかりではgdgdになりそうな悪寒、完成したとして飽きられないか 個1 視点変更 シチュエーションが被り気味なのは気のせい? BAD 休学なぞしてもいいのか 全体 容量が危険そう…
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/236.html
苦くて甘いもの とても天気の良い朝、和葉は部屋のカーテンを開けてうんと伸びをした。 「んん~~~~~~っ! いい天気っ!」 午前中というのに日差しは強烈で、夏の表情を全面に押し出していた。 ガタガタとサイドボードの上の携帯が揺れる。 「はいはーい、おはよ」 肇からの電話を受けながら和葉は部屋を出て洗面所へ向かった。 「ーーーえ? そうなの?」 全国大会では立海大付属は惜しくも優勝を逃し準優勝に終わった。 決勝戦を観に行っていた和葉は涙を流すブン太に声をかけることが出来ず、席を立った。 負ける悔しさは和葉にも分かる。 自分が高校の時、全国大会の決勝で負けた。 ブン太達とまったく同じ状況を味わったことがあったのだ。 会場の端、植樹されている植え込みの脇のベンチに座り、和葉は項垂れる立海大のメンバーの顔を思い浮かべていた。 ふと、大好きだった正太郎の顔が頭をよぎる。 「……正太郎、さん」 自分の口からその名前を出したのは3年ぶりだった。 ポロリと涙が零れた。 「和葉さん、どうしたのっ!?」 「えっ?」 驚いて顔を上げると、そこにはブン太が立っていた。 和葉の顔を見て慌てて駆け寄って来る。 「どこか痛いの?」 心配そうに和葉を覗き込むブン太に、和葉は初めて出会った時の事を思い出した。 あれからもう3ヶ月以上が過ぎた。 あっと言う間に過ぎた気もするし、ゆっくりと流れたような気もする。 「……ぷっ。あの時とは逆だね」 笑った和葉に安心し、ブン太は次に頬を膨らませた。 「もう、心配したんだぞ!? 泣いてるんだもんな……何かあったのか?」 「大丈夫。ブン太君達が負けたの見たら、私も悔しくなっちゃって」 涙を指でぬぐうと、和葉はブン太に笑いかける。 「ーーーありがと、応援してくれて」 ドキっとした。 和葉を見るブン太の瞳が綺麗で、全部見透かされている様な気がした。 ずっと過去を引きずる弱い自分を、明るくていつでもまっすぐなブン太が揺り動かす。 足を踏み出しそうになる。 それが恐ろしくて、不安になる。 先ほどまで泣いていたのに、今は和葉の事を気づかってくれている。 優しいブン太。 「ブン太君」 じっと見つめ合っていると、ふと視線を先に逸らしたブン太が立ち上がった。 「そうだ、和葉さん」 「なに?」 「負けて傷心の俺の為に、何か美味しいもの作ってなぐさめてくれよ」 和葉は苦笑する。 「甘え上手ねえ……うん、いいよ」 「マジでっ!? やった!」 「じゃあ今度うちにおいで。テニス部の皆も連れてね?」 「え~? あいつらはいいじゃん」 「何がいいとよ?」 「げ、仁王」 ブン太が面倒くさそうに両腕を頭の後ろにやって口を尖らせていると、後ろから仁王がジャッカルとやって来た。 「幸村が呼んでるぞ」 「おっと、やべー。んじゃあ和葉さん、約束だからな!」 「うん。仁王君もジャッカル君もお疲れさま」 「応援ありがとうございます」 「またの、和葉さん」 という訳で、今日はブン太達が夕方和葉の家にやって来る。 その買い出しに今から肇と行く予定なのだが、父親に急に仕事の手伝いを頼まれたので代わりの荷物持ちを寄越したというのが電話の内容だった。 「分かった。じゃあ夕方にね」 そう言って和葉は電話を切った。 洗面台で鏡に映る自分の姿を見る。 「……荷物持ち誰かな? ま、いいか……はあ。さすがに老けてきたなあ」 ブン太の張りのある肌を思い出し、和葉はため息を吐く。 10も年が違うのだ、当たり前なのだが改めて自分との大きな差に嫌な気分になる。 正太郎も今の自分と同じ様な気持ちだったのだろうか。 バシャン! と勢い良く水で顔を洗いながらふと考える。 ちょうど和葉と正太郎も10歳離れていた。年若い和葉の事を本当に大切にしてくれていたが、年下だからといって扱い方が子どもに接するようではなかった事を思い出す。 男女や年齢など関係なく、正太郎は自分のことを同等に扱ってくれていた。 蛇口をひねって顔を洗う手を止める。 私は? 私はブン太君をどう扱ってるーーー? 濡れた顔を鏡で再び見る。 あんなに慕ってくれているブン太を、和葉は子どものように扱っていることに気付いた。 その途端和葉は胸が苦しくなった。 「? う、嘘……ちょっと、これはーーー」 ヤバい。 そう思った。 頭に浮かんだ考えを振り払うように、和葉はタオルで顔を拭いてTシャツを脱いだ。 カシャリと音がして首に下げたシルバーのチェーンが揺れた。 そのチェーンの先に通された指輪。 正太郎がくれた結婚指輪だ。 それを指で触り、和葉はぐっと目をつぶる。 過去へ自分を縛り付ける唯一のもの。正太郎はいつも笑っていた。和葉を不安にさせないために。 もっと素直に弱い部分を見せて欲しかった。 和葉を同等に扱ってくれていたのに、自分は弱い所を見せない。それはきっと年上だからという正太郎の意地。 大きくて優しかった正太郎。 死の間際には痩せて力強さなどなかったのに、痛みと苦しみの中、一度も和葉に辛いと言わなかった強い正太郎。 その正太郎を忘れて、ブン太の事を好きになりかけている自分が憎くて堪らなかった。 裏切れない。 あんなに優しかった正太郎を裏切ることなんて、和葉には出来なかった。 ピンポ~ン 着替えて化粧を終えた所でチャイムが鳴った。 えっ? ブン太君? 画面に映ったブン太の姿に、和葉は驚く。 「はい」 『おはよ~、和葉さん』 「おはよう。ブン太君どうしたの?」 『肇さんが仕事で行けなくなって、和葉さん一人で買い出しになるから手伝いに行けって。お前が食べる料理の材料買いに行くんだから、お前が行くのが当たり前だろって言われた』 ぷうっとガムを膨らませるブン太に、和葉は肇の顔を思い浮かべる。 肇の奴、代わりの人ってブン太君の事だったのね…… 一緒に立海大の試合を観に行った時、ブン太の事を10歳も年が下だから眼中にないのかと尋ねてきた。 もしかすると肇は和葉の中に芽生え始めたブン太への思いに、和葉より先に気付いていたのかも知れない。 察しの良い弟で何よりだ。 心の中でぼやきながら、それでもブン太の声を聞いて嬉しいと思ってしまう自分が確かにそこにいた。 「そう、ごめんね。そこで待ってて。すぐ降りてくから」 『ああ、分かった』 「いつもこんなに買い出しするの?」 両手一杯の買い物袋に、ブン太が尋ねる。 「ん? いつもはもっと多いよ。今日はお店休みだし、ブン太君達の分だけだから少ない方」 「これでっ!?」 「肇がいるといくらでも買えるのよね。力持ちだし」 そう言って笑う和葉に、ブン太はちょっと傷ついた。 やっぱり和葉は大きな男が好きなのだろうか。 「あの子無駄に大きいからね~」 「ーーーまあ、確かに同じ遺伝子とは思えないよな。和葉さんと肇さん」 「でしょ? 私の方がよく食べるんだけどね。不思議」 和葉の方がよく食べるというのは想像出来なかったが、ブン太はこうして和葉と休日に一緒に過ごせる事に幸せを感じていた。 いくら和葉が自分の事を子どもとしか見ていなくても、自分は和葉といられるのが嬉しいのだ。 チラリと隣りを歩く和葉を見る。 自分より背の低い和葉。ブン太の目の辺りが和葉の頭だから、10センチくらい低いだろうか。 視線を頭から少しずつ下へ移動させる。 今日はいつものパンツスタイルではなく、スカートを履いていた。 大人の女性だけあって、ブン太達の周りにいる子よりも随分丈の長いスカートを履いているが、それが似合っていた。 膝が隠れるくらいの柔らかな生地のスカートは、ヒラヒラと和葉が歩く度に軽やかに揺れる。 普段見られない足に、ブン太はドキッとする。 白くてほっそりとしたふくらはぎに締まった足首。 やべえ。俺、変態みたいだ…… 視線を違う方へやり、ブン太はぷうっとガムを膨らまして誤摩化した。 「ちょっと休憩しようか?」 「ん? ああ」 近くの喫茶店に入ってメニューを見る。 「買い出し手伝ってくれたお礼に何でも好きな物奢ってあげる」 優しい笑顔の和葉に、ブン太はまた切なくなる。 「いいよ、いつも奢ってもらってばっかだし」 「遠慮しないで。私、ブン太君が何か食べてる姿見るのが好きなんだもん」 ブン太は心臓が止まりそうになった。 和葉の口から出た「好き」という言葉。 どれほど欲しいと思ったか分からないその単語に、どんどんと心音が速くなる。 もちろんブン太自身の事を好きだと言っている訳ではないけれど、それでも嬉しいのだから仕方ない。 「おっ、俺だって男なんだぞ? たまには俺に奢らせてくれよなっ」 嬉しすぎてつい緩みそうになる口を必死で通常の位置に保ちながら、ブン太が言った。 そこで和葉ははっとしたような顔をして、少し俯いてブン太を見た。 「じゃあ……今日はお言葉に甘えようかなーーー」 え? ブン太は驚いた。 いつもなら 子どもは大人に甘えればいいのよ。 というはずなのに、今日の和葉はちょっと違う。 「任せろぃ!」 もう今すぐにでも仁王にそれみろと電話を掛けてしまいたい所だ。 初めて和葉が自分を子ども扱いしなかった。たったそれだけなのに、こんなに嬉しいだなんて。 先ほどのブン太が何かを食べている姿を見るのが好きだという言葉といい、幸せすぎて怖いくらいだ。 注文を取りに来た店員に和葉が注文をする。 「私はブレンドコーヒーとサンドイッチを。ブン太君は?」 「俺はチョコレートパフェとミルクレープとホットサンドと……」 そこで言葉を切ったブン太に、和葉が首を傾げる。 「飲み物は?」 「あ、えっと……ブレンドコーヒー」 本当はミルクティーにしようかと思ったのだが、ブン太はどうしても早くコーヒーをブラックで飲めるようになりたくて、最近は頑張ってコーヒーに入れる砂糖やミルクの量を減らしていた。 それは、和葉と同じブラックコーヒーを飲んで味を共有したいから。 ジャッカルと柳と柳生に健気と言わしめたブン太の乙女的思考に、仁王だけは腹を抱えて笑った。 くそっ、仁王の奴…… 人をバカにした仁王の笑い顔を思い出し、ブン太はちっと舌打ちをした。 目の前に運ばれて来たパフェにブン太はキラキラと目を輝かせる。 「くう~っ! 美味そう! いっただっきま~す!」 「そんなに慌てなくてもパフェは逃げないよ」 幸せそうにパフェを口に運ぶブン太に、和葉が苦笑する。 「逃げなくても溶けるだろぃ?」 「確かに」 何気ない会話なのに、和葉は楽しかった。 こんなにブン太と過ごす事が心地よくなるとは、正直想像もしなかった。 偶然助けただけの、高校生。 カフェの店長と客。 それだけのはずだ。 笑顔でどんどんパフェを胃の中に入れて行くブン太の幸せそうな顔に、もっと見たいと思ってしまう。 自分が作った料理やデザートを食べて、美味いと言って微笑んで欲しい。 失いかけていた感情を呼び覚ますこの目の前の少年に、和葉は切なくなった。 「和葉さん」 「ーーーえ? あ、なにっ?」 ぼんやりしていた和葉に、ブン太が不思議そうに首を傾げて尋ねる。 「いや、全然手が動いてなかったから」 「ごめん、ちょっとぼーっとしてた」 取り繕って笑う。 まさかブン太の事を考えていたからぼんやりしていただなんて、知られたら大変だ。 「もしかして、迷惑だった?」 急にしょんぼりとなったブン太に、和葉が眉間にしわを寄せる。 「迷惑? 何が?」 「だって折角の休日なのに、俺達の為にまた料理作らせるからさ……嫌なら嫌って、はっきり言っていいんだぜ? 断られたくらいで、俺ショック受けたりしねーし」 「嫌な訳ないじゃない。ブン太君達が楽しんでくれるんならね。それに私、料理くらいしか出来ないし」 「そんなことねー」 「え?」 ブン太は食べる手をすっかり止めて和葉を見つめた。 その真摯な眼差しにどきりとする。 「和葉さんは、料理が上手なだけじゃねー。優しいし、一緒にいると、楽しいし……」 ブン太なりの精一杯の告白。のつもりだった。 しかし和葉はブン太が気を遣ってくれていると思ってにっこりと微笑んだ。 「ありがと、ブン太君って優しいね」 そうじゃねーのに…… 仁王だったらこんな時相手にどんな言葉をかけるのだろう? ふっとまたあの爆笑する仁王の顔を思い出し、ブン太はこめかみに青筋を作ってホットサンドにフォークを突き立てた。 やっぱりあいつムカつくっ! きっと大人びた顔で相手を見つめて、キザなセリフを言うに違いない。 続く… 管理人の中で、仁王はたらし…w しかし死ネタ多くて本当にスンマセ……(汗) 次へ → 苦くて〜.5 お帰りの際は、窓を閉じてくださいv 立海大トップに戻る
https://w.atwiki.jp/keimi/pages/27.html
プロット一覧へ戻る スポーツプロット(大体の流れ) キャラ選1 4月 優奈があけみと共にグラウンド前を散歩中、人だかりを見つける。 何かと思い見てみると、和葉が2年の陸上部新部長候補(数人)の挑戦(100m)を受けているところ。 開始前、和葉が優奈とあけみの姿に気付き手を振ってくる。 選択肢 振り返す 好感度↑ 放置 好感度→or↓ 「振り返す」 少し遠慮がちに小さく手を振る。 周りからの(ファンの)視線が少し痛い。 勝負が始まると、和葉は陸上部を圧倒、10秒後半という五輪級のタイムで駆け抜け、そのまま優奈の元へと駆け寄ってくる。 またまた視線が痛い。 突如和葉が優奈を抱きしめる。 さらに視線が痛い。 「放置」 和葉はしばらく手を振り続けるものの、しばらくして諦める。 別の意味で周りからの視線が痛い。 勝負が始まると、和葉は陸上部と接戦、12秒代という中高生そこそこのタイムでギリギリで勝つ。 走り終わった後、和葉は優奈の元へ向かい、やはり抱きつこうとするが優奈はなぜか逃げ出してしまう。 キャラ選2 4月 休日 あけみと共に町に出向いて買い物等 じゃあ喫茶店にでもと、入った店で偶然にも和葉と薫にバッタリ おしゃべり的な キャラ選3 5月 まだ5月だというのに今度は水泳勝負をするという事を訊き、優奈は観戦に行く 今度の相手は水泳部の部長らしく、400mで勝負を始める。 制服ではあまり分からなかったが、和葉がかなりのボインだということを知る。 だが、そのボインが仇となり水の抵抗がなんたらで長距離は不利だなんたら。 でもそんなの関係ねえ 10秒近くの差を付けて圧勝 終了後、優奈は和葉に見つかり、またしても抱きつかれる。 ファンの視線がやっぱり痛いよ… どうしてそんなに私に構うのかを尋ねる。 「んーどうしてだろうね?」 なにかしら片鱗を見せ始めながら、その場はそれで終わる。 キャラ選4 5月 以後選択不可 優奈が、偶然一人でいた和葉を見つけて話しかける。 取り巻きが揃っていない事についてを訊くと、もとめの話をする。 朝、いつも通りもとめに話しかけると、突如キレられたらしく、それによって和葉は酷く落込んでいる。 原因は和葉の取り巻きにあるらしく、自身が直接の原因で無い事、 もとめにしろ取り巻きにしろどちらか片方を切らなければいけないかもしれないという状況にどうしたらいいか悩んでいる。 選択肢 どっちもとればいい 好感度↑ どう答えていいか分からない 好感度→ 「どっちもとればいい」 迷ったならどっちもとればいい、そう提案する優奈 だが、それはいくらなんでも無茶な事じゃないかと訊く 実はそこまで考えていなかった。 和葉、大笑いして流石優奈だと言いながら頭を撫でたり。 そこにもとめ登場 今朝はすみませんでした的な感じで、あっさり解決してしまう。 「どう答えていいか分からない」 和葉の話を聞き終えた後、黙りこくる優奈。もとめの過去についても、和葉の対処法もどうすればいいかわからず。 しばらくの沈黙後、和葉はこんな話をして悪かったと謝り、その場を去る。 数日後、和葉が自己解決をした事を知る。 キャラ選5 6月 サンプル2からの改変 (?) キャラ選6 6月 そろそろ姫百合祭 日が進むにつれて、和葉が体育系の部活の生徒と試合をしているシーンをよく見かけるようになる。 偶然観戦に来ていた薫に、どうしてかと訊く。 もうすぐ姫百合祭での入れ替え戦があるため、それの前哨戦のようなものだと教わる。 優奈、私もちょっとやってみたいなぁ等と無謀な発言 個別ルート 個1 さてさて今度はテニスの試合です。 勿論和葉の十八番、当然誰が勝てるわけでもない。 これも前哨戦の一つなのかと近くにいたファンAに訊き、次期部長の選出をしていと教えてもらう。 そういえば陸上部を相手にそんな事をしていたなと思い出す優奈 しばらくして、和葉は浮かない様子 どうも今年は部長を任せられる部員がいないらしく、ええい面倒だハンデだ!2対2で一気にだ! 和葉に見つけられた優奈は強制的にコートに入れられる。 立ってるだけでいいから、と言われたので立ってるだけ。 しばらくすると、顔面に勢い良くボールが… ビックリして思わず打ち返す。 入っちゃう ……ぐ、偶然偶然! またくる。 打ち返す。 入っちゃう。 あれ? 私ったら、テニスの才能があるの?!と舞い上がる優奈 実際、優奈へと飛んできた球はほとんど的確に相手コートへと返る。 結果的には大勝(べつに和葉一人でも勝てるわけですが…) その舞い上がったテンションのまま、私も入れ替え戦に出ます!テニスで! これが優奈の志望フラグになろうとは(ry 『視点変更・和葉』 一人、部屋でボーっとする和葉 優奈とのダブルスを思い出す。優奈優奈優奈… 最近はずっと優奈の事を考えている気がする。なぜだろうか? この時点ではまだ無自覚 『視点変更・優奈』 門限ギリギリの時間まで、一人で壁打ちを試している。やはりその腕は初心者とは思えない動き。 練習を練習を…と、ひたすら壁打ち。 これに勝てば和葉先輩を…和葉先輩を何?と、こちらも口にしながら無自覚 本質はトレスフェミナになる事では無い様子 個2 ここから和葉指導のもと特訓の日々 個3 当日、入れ替え戦が始まる。 多種多様な競技で十数人の生徒が次々と挑み、轟沈していく。 そして最後は優奈の番 あんなに特訓したんだ。和葉先輩に指導してもらったんだ。できる! できない 和葉の本気モードから放たれた球は、半分も打ち返す事ができず、取ったボイントは偶然アウトになって転がり込んだ1ポイントだけ。 そして、ストレート負け。 終わってどこかに逃げて一人落込む。 ちょっと部員に勝てただけで舞い上がっちゃって何やってるんだろう…。 気が付けば夜、舞踏会がそろそろ始まる時間 目の前に和葉の姿 どうしてここに? ずっと優奈を探していたらしい。 もうすぐ舞踏会だから行こう、と誘われる。 勿論落込んでいるため、拒否する。 なにかしら説得されて付いていく 大勢のファンを掻き分け、和葉は優奈と舞踏しちゃったり。 勿論視線は今まで以上に痛く、逃げ出したいとも思うがそれでも舞踏 しばらくして、なんだろうこの感じ…的になり、回想(?) 私、和葉先輩が好き…みたいです。 場所を移す。 ここならだれも来ないと、和葉の部屋に入る。 再度告白 和葉はそれを聞いて、自身も恋をしていたことに気付き、受け入れる。 ちゅっちゅ あんあん 事後、余韻がまだ残る中、和葉の携帯に電話がかかってくる。 通話後どうかしたのかと優奈が訊くが、和葉は答えず浮かない顔 さらに、用事が出来たと言って部屋を出て行こうとする。 選択肢 ちょっと待って 好感度↑ 行ってらっしゃい 好感度→ 「ちょっと待って」 また明日も同じ時間に部屋に来ていいかと訊く、和葉了承 頬にキスをして見送る。 「行ってらっしゃい」 そのまま和葉を見送り、優奈は布団に潜り込んで少しふてくされる。 個4 翌日 自室にいると、和葉から電話が来る。 今から部屋に来てほしいとの事(前回の選択肢で微妙に優奈の台詞変化?) 部屋に行くと、浮かない顔の和葉が どうしたのかと訊くと、突然和葉は優奈に泣きつく お家柄政略結婚云々 どうしよう どうしよう(選択肢) 解決→GOOD 失敗→BAD GOOD 和葉の親を言いくるめ、結婚破棄 優奈との関係は認められないものの、実質放置 和葉にスポーツ留学等、ビッグな話が舞い込んでくるが全て蹴る。 理由は優奈との幸せな生活に邪魔だから。 そして、スポーツインストラクターの話が 二人は歓喜し、幸せな結婚生活を…(和葉…夫、優奈…妻、的な立場) 最後にやわらかくキスをして終了 BAD 結局どうしようもなく、二人で駆け落ち とある日(一ヶ月程度後?) しばらくの休学届けを二人で出し、少し学園から距離を置く(東京と静岡位の距離) ベッドであんあんしている二人 もう何回目かもわからない、気を紛らわすためにはそれしかない あんあん あんあん 自分のせいでこんな事になって申し訳ないと、謝る和葉 「いいんです。……和葉先輩と一緒ですから」 優奈の笑顔、もしくは絶頂描写で終了 ※怪しそうな部分 選1 手を振り返すとバリバリ日本新記録になりますが、大丈夫か 選3 もとめがはたしてキレるのか 選5 根本サンプルから改変していいのか 個1~3途中辺りまで テニスばかりではgdgdになりそうな悪寒、完成したとして飽きられないか 個1 視点変更 シチュエーションが被り気味なのは気のせい? BAD 休学なぞしてもいいのか 全体 容量が危険そう…
https://w.atwiki.jp/vip1yuri/pages/43.html
プロット一覧へ戻る スポーツプロット(大体の流れ) キャラ選1 4月 優奈があけみと共にグラウンド前を散歩中、人だかりを見つける。 何かと思い見てみると、和葉が2年の陸上部新部長候補(数人)の挑戦(100m)を受けているところ。 開始前、和葉が優奈とあけみの姿に気付き手を振ってくる。 選択肢 振り返す 好感度↑ 放置 好感度→or↓ 「振り返す」 少し遠慮がちに小さく手を振る。 周りからの(ファンの)視線が少し痛い。 勝負が始まると、和葉は陸上部を圧倒、10秒後半という五輪級のタイムで駆け抜け、そのまま優奈の元へと駆け寄ってくる。 またまた視線が痛い。 突如和葉が優奈を抱きしめる。 さらに視線が痛い。 「放置」 和葉はしばらく手を振り続けるものの、しばらくして諦める。 別の意味で周りからの視線が痛い。 勝負が始まると、和葉は陸上部と接戦、12秒代という中高生そこそこのタイムでギリギリで勝つ。 走り終わった後、和葉は優奈の元へ向かい、やはり抱きつこうとするが優奈はなぜか逃げ出してしまう。 キャラ選2 4月 休日 あけみと共に町に出向いて買い物等 じゃあ喫茶店にでもと、入った店で偶然にも和葉と薫にバッタリ おしゃべり的な キャラ選3 5月 まだ5月だというのに今度は水泳勝負をするという事を訊き、優奈は観戦に行く 今度の相手は水泳部の部長らしく、400mで勝負を始める。 制服ではあまり分からなかったが、和葉がかなりのボインだということを知る。 だが、そのボインが仇となり水の抵抗がなんたらで長距離は不利だなんたら。 でもそんなの関係ねえ 10秒近くの差を付けて圧勝 終了後、優奈は和葉に見つかり、またしても抱きつかれる。 ファンの視線がやっぱり痛いよ… どうしてそんなに私に構うのかを尋ねる。 「んーどうしてだろうね?」 なにかしら片鱗を見せ始めながら、その場はそれで終わる。 キャラ選4 5月 以後選択不可 優奈が、偶然一人でいた和葉を見つけて話しかける。 取り巻きが揃っていない事についてを訊くと、もとめの話をする。 朝、いつも通りもとめに話しかけると、突如キレられたらしく、それによって和葉は酷く落込んでいる。 原因は和葉の取り巻きにあるらしく、自身が直接の原因で無い事、 もとめにしろ取り巻きにしろどちらか片方を切らなければいけないかもしれないという状況にどうしたらいいか悩んでいる。 選択肢 どっちもとればいい 好感度↑ どう答えていいか分からない 好感度→ 「どっちもとればいい」 迷ったならどっちもとればいい、そう提案する優奈 だが、それはいくらなんでも無茶な事じゃないかと訊く 実はそこまで考えていなかった。 和葉、大笑いして流石優奈だと言いながら頭を撫でたり。 そこにもとめ登場 今朝はすみませんでした的な感じで、あっさり解決してしまう。 「どう答えていいか分からない」 和葉の話を聞き終えた後、黙りこくる優奈。もとめの過去についても、和葉の対処法もどうすればいいかわからず。 しばらくの沈黙後、和葉はこんな話をして悪かったと謝り、その場を去る。 数日後、和葉が自己解決をした事を知る。 キャラ選5 6月 サンプル2からの改変 (?) キャラ選6 6月 そろそろ姫百合祭 日が進むにつれて、和葉が体育系の部活の生徒と試合をしているシーンをよく見かけるようになる。 偶然観戦に来ていた薫に、どうしてかと訊く。 もうすぐ姫百合祭での入れ替え戦があるため、それの前哨戦のようなものだと教わる。 優奈、私もちょっとやってみたいなぁ等と無謀な発言 個別ルート 個1 さてさて今度はテニスの試合です。 勿論和葉の十八番、当然誰が勝てるわけでもない。 これも前哨戦の一つなのかと近くにいたファンAに訊き、次期部長の選出をしていと教えてもらう。 そういえば陸上部を相手にそんな事をしていたなと思い出す優奈 しばらくして、和葉は浮かない様子 どうも今年は部長を任せられる部員がいないらしく、ええい面倒だハンデだ!2対2で一気にだ! 和葉に見つけられた優奈は強制的にコートに入れられる。 立ってるだけでいいから、と言われたので立ってるだけ。 しばらくすると、顔面に勢い良くボールが… ビックリして思わず打ち返す。 入っちゃう ……ぐ、偶然偶然! またくる。 打ち返す。 入っちゃう。 あれ? 私ったら、テニスの才能があるの?!と舞い上がる優奈 実際、優奈へと飛んできた球はほとんど的確に相手コートへと返る。 結果的には大勝(べつに和葉一人でも勝てるわけですが…) その舞い上がったテンションのまま、私も入れ替え戦に出ます!テニスで! これが優奈の志望フラグになろうとは(ry 『視点変更・和葉』 一人、部屋でボーっとする和葉 優奈とのダブルスを思い出す。優奈優奈優奈… 最近はずっと優奈の事を考えている気がする。なぜだろうか? この時点ではまだ無自覚 『視点変更・優奈』 門限ギリギリの時間まで、一人で壁打ちを試している。やはりその腕は初心者とは思えない動き。 練習を練習を…と、ひたすら壁打ち。 これに勝てば和葉先輩を…和葉先輩を何?と、こちらも口にしながら無自覚 本質はトレスフェミナになる事では無い様子 個2 ここから和葉指導のもと特訓の日々 個3 当日、入れ替え戦が始まる。 多種多様な競技で十数人の生徒が次々と挑み、轟沈していく。 そして最後は優奈の番 あんなに特訓したんだ。和葉先輩に指導してもらったんだ。できる! できない 和葉の本気モードから放たれた球は、半分も打ち返す事ができず、取ったボイントは偶然アウトになって転がり込んだ1ポイントだけ。 そして、ストレート負け。 終わってどこかに逃げて一人落込む。 ちょっと部員に勝てただけで舞い上がっちゃって何やってるんだろう…。 気が付けば夜、舞踏会がそろそろ始まる時間 目の前に和葉の姿 どうしてここに? ずっと優奈を探していたらしい。 もうすぐ舞踏会だから行こう、と誘われる。 勿論落込んでいるため、拒否する。 なにかしら説得されて付いていく 大勢のファンを掻き分け、和葉は優奈と舞踏しちゃったり。 勿論視線は今まで以上に痛く、逃げ出したいとも思うがそれでも舞踏 しばらくして、なんだろうこの感じ…的になり、回想(?) 私、和葉先輩が好き…みたいです。 場所を移す。 ここならだれも来ないと、和葉の部屋に入る。 再度告白 和葉はそれを聞いて、自身も恋をしていたことに気付き、受け入れる。 ちゅっちゅ あんあん 事後、余韻がまだ残る中、和葉の携帯に電話がかかってくる。 通話後どうかしたのかと優奈が訊くが、和葉は答えず浮かない顔 さらに、用事が出来たと言って部屋を出て行こうとする。 選択肢 ちょっと待って 好感度↑ 行ってらっしゃい 好感度→ 「ちょっと待って」 また明日も同じ時間に部屋に来ていいかと訊く、和葉了承 頬にキスをして見送る。 「行ってらっしゃい」 そのまま和葉を見送り、優奈は布団に潜り込んで少しふてくされる。 個4 翌日 自室にいると、和葉から電話が来る。 今から部屋に来てほしいとの事(前回の選択肢で微妙に優奈の台詞変化?) 部屋に行くと、浮かない顔の和葉が どうしたのかと訊くと、突然和葉は優奈に泣きつく お家柄政略結婚云々 どうしよう どうしよう(選択肢) 解決→GOOD 失敗→BAD GOOD 和葉の親を言いくるめ、結婚破棄 優奈との関係は認められないものの、実質放置 和葉にスポーツ留学等、ビッグな話が舞い込んでくるが全て蹴る。 理由は優奈との幸せな生活に邪魔だから。 そして、スポーツインストラクターの話が 二人は歓喜し、幸せな結婚生活を…(和葉…夫、優奈…妻、的な立場) 最後にやわらかくキスをして終了 BAD 結局どうしようもなく、二人で駆け落ち とある日(一ヶ月程度後?) しばらくの休学届けを二人で出し、少し学園から距離を置く(東京と静岡位の距離) ベッドであんあんしている二人 もう何回目かもわからない、気を紛らわすためにはそれしかない あんあん あんあん 自分のせいでこんな事になって申し訳ないと、謝る和葉 「いいんです。……和葉先輩と一緒ですから」 優奈の笑顔、もしくは絶頂描写で終了 ※怪しそうな部分 選1 手を振り返すとバリバリ日本新記録になりますが、大丈夫か 選3 もとめがはたしてキレるのか 選5 根本サンプルから改変していいのか 個1~3途中辺りまで テニスばかりではgdgdになりそうな悪寒、完成したとして飽きられないか 個1 視点変更 シチュエーションが被り気味なのは気のせい? BAD 休学なぞしてもいいのか 全体 容量が危険そう…
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/99.html
苦くて甘いもの 和葉はカフェが休みの今日、早起きをして朝から色々な料理を作っていた。 先日カフェにやって来たブン太が連れてきたテニス部部長の幸村から、ブン太が試合前にケーキを食べるという話を聞いて、ケーキと、他の部員の差し入れになるようにとレモンの蜂蜜漬けを昨日の晩から作った。 バナナブレッドが今焼き上がり、甘いのが苦手だという仁王の為に醤油をきかせた団子も作った。 「よしっと」 作った物を次々にタッパーに詰め、大きな紙袋に入れる。 「あれ、作りすぎたかな?」 テーブルの上に並ぶ紙袋を見て腕組みをしていると、携帯が鳴った。 「もしもし?」 電話は弟である肇からで、マンションの下に着いたという報告だった。 「肇、ちょっと上まで来て手伝って」 そう、今日は全国高校テニス大会があるのだが、それに和葉は肇と共に出かけることになったのだ。 ブン太が初めて幸村達を連れてきた翌日、幸村が一人でやって来た。 柔らかな物腰の幸村に、ブン太が是非今度の試合を和葉に見にきて欲しいと言っているから良かったら来て欲しいと言われたので、ちょうど店も休みだったし二つ返事で頷いたのだ。 テニスは高校までやっていたし今でも好きだ。ただ、怪我をしてからやめてしまい、それ以来テレビの中継を見るくらいで実際テニスコートまで行ってみる事はほとんどなくなっていた。 ブン太がテニスをやっているのを知って、助けた時は昔を思い出して少しくすぐったかった。 自分が青春を謳歌していた同じ立海大付属のテニス部のブン太。その彼を助けた偶然。 眩しい笑顔のブン太。 自分の作る料理をいつも美味しそうに食べてくれるブン太。 いつも和葉の事を慕って話しかけて来るブン太が可愛くてたまらなかった。 お母さんってこんな気持ちなのかも。 そんな事を考えていると肇がやって来た。 「お前作り過ぎ」 テーブルに並んだ紙袋を見て呆れている。 「だって、立海のテニス部って人数多いでしょ?」 「だからって試合に出るのはダブルスシングルス全員合わせても7人だぞ?」 「別にいいじゃない、レギュラーじゃない子が食べても」 「あーもー。いいや、さっさと行くぞ」 「はーい」 とても姉とは思えない和葉に、肇は大きなため息を吐いて紙袋を持った。 晴天の空の下、丸井ブン太は絶好調だった。 ぽとりと相手コートに決まった自分のボレーにしたり顔だ。 「へへ。俺って天才?」 「いいぞ、ブン太!」 立海の声援が響き渡る中、試合はブン太とジャッカルペア圧倒的有利に進んでいた。 「すごい……」 和葉は目の前で繰り広げられるブン太の試合にすっかり魅了されていた。 「ブン太の奴本当に強かったんだな。いつものあの姿からは想像できん」 隣りで肇も笑っている。 「そうだね」 和葉はドキドキしていた。 あの笑顔の可愛いブン太ではなく、今和葉の目の前で華麗な技を見せているのは格好良いブン太だった。 周囲の女の子達の声援もすごい。 色んな意味で圧倒されながら、和葉は静かに、しかし心の中では命一杯声を出しながら応援した。 試合は6-2でブン太・ジャッカルの勝利で終わり、次のシングルス2の試合へと移行した。 「これで立海は準々決勝進出か」 「去年全国大会で優勝してるんでしょ?」 「ああ。親父が言ってた」 和葉達の父親はテニス教室を開いていて、元プロでもある。 地元の有名校である立海大付属のテニス部の顧問とも知り合いで、幸村の事も二人は父親から聞いて知っていたのだ。 「ブン太君すごいんだね」 「惚れたか?」 「ぶっ! あはは! なんでそうなるのよ?」 「10も下だから眼中に無いか?」 真面目な顔で自分を見る肇に、和葉はピタリと動きを止めた。 「何言ってるの? 変な肇」 「……もうそろそろいいんじゃねえのか?」 「何が?」 「正太郎さんの事だよ」 「ーーー」 口をつぐんだ和葉に、肇は顔を歪ませる。 和葉は以前結婚していた。 正太郎というのが和葉の元夫の名前だ。 結婚したのは和葉が23歳の時で、大学時代にバイトをしていたカフェのオーナーだったのが正太郎だった。 和葉よりも10歳年上だった正太郎は、結婚前から既に病魔に侵されていて、余命3年と医者から宣告されていた。和葉はそれを承知で付き合っていた。 それでも和葉のウエディングドレス姿を見たいという和葉の母親の希望を叶えるため、無理をして結婚をしたのだ。 和葉は結婚する気などなかった。正太郎の両親は既に他界していたし、和葉の親の我が儘のために正太郎に苦労をさせたくはなかったのだ。 ただ、正太郎の側にいられればそれでいいと思っていた。 そんな正太郎からのプロポーズを和葉は最初泣きながら断った。しかし二度目のプロポーズに和葉は渋々承諾したのだ。 肇はそれを知っていた。 和葉がどれほど正太郎を大切に思っていたのか。 ふと応援席で声を上げるブン太を見る。 どことなくブン太と正太郎は似ている。 美味しい物が好きな所やいつも楽しそうに笑っている所。 和葉の作った料理を美味しい美味しいと言ってたくさん食べる所。 見た目は似ていないが、雰囲気が似ているのだ。 和葉はそれに気付いていないようだが、無意識のうちに正太郎の影を追っているのかも知れない。 結婚してたった一年後、正太郎は眠りについた。 それ以来、和葉は本格的に料理の勉強をするためフランスに渡り、2年間修行をして今の店をオープンさせた。 正太郎がやっていた店はもう無くなっていたが、今の店のこじんまりとした所を気に入って和葉は手に入れた。 正太郎が大好きだったカフェを、和葉は続けたかったのだ。 お客が笑顔になる店。 それが正太郎の口癖だった。 明るい正太郎は、死ぬ間際まで和葉に笑いかけていた。 あれから3年。 そろそろ和葉も新しい一歩を踏み出してもいいのではないかと肇は思う。 その相手が誰かは分からない。 本人がのんびりしているおかげで周囲からのラブコールに気付いてはいないが、案外モテるのだ。 弟の目から見ると何故モテるのか不思議なのだが、きっと和葉のどこか不安定な所が放っておけないのかもしれない。 「お、終わったな」 ふと気付くと試合は終わり、6-0で立海大がストレート勝ちを納めていた。 「和葉さんっ! 肇さんっ!」 ブン太が走ってこちらへやってきた。 自然と和葉は笑顔になる。 「ブン太君、お疲れさま。準々決勝進出おめでとう」 「ああ、ありがとうな。和葉さんが試合前にくれたケーキのおかげだぜぃ」 そう言って笑うブン太を、肇が何故応援したくなるのか漸く分かった。 こいつ、本当にまっすぐなんだよな。 和葉を見るブン太の目は純粋でまっすぐだ。 他の男達とは違う、ただ心の奥底からわき上がる純粋な好きという想い。 下心とかなさそうなのが、健全な男子高校生にしてみれば逆に心配ではあるが、そんな毒気の無いブン太の気持ちになら和葉が嫌な思いをする事もないだろうし、素直に和葉を任せてもいいかと思えてしまう。 やはり二人きりの姉弟だから、姉には幸せになって欲しいと思っている。 辛い経験をしているから、それはなおの事だ。 「ほらよ、これ」 「えっ? 何? 試合前にケーキもらったぜぃ? それにレモンの蜂蜜漬けも」 肇が差し出した紙袋を覗き込むと、ブン太が驚いて肇を見上げた。 「疲れを取るにはこれが一番だ」 「バナナブレッドだよ」 「和葉さん作り過ぎ」 和葉を見るブン太の顔に、肇が笑う。 「あははは、それ俺が朝言っといた」 「別にいいでしょ? 食べ盛りなんだからいっぱい食べてね」 にっこり微笑む和葉に、ブン太は顔を少し赤らめて頭を下げた。 「ありがと、皆でありがたくいただくよ」 本当に純粋で可愛い奴だ。 「こんにちは」 「あ、幸村君」 ブン太の後ろからやってきた幸村に和葉は挨拶をする。 「差し入れありがとうございます。部の連中が一瞬にして食べてしまいました」 「あんなにたくさん、申し訳ありません」 幸村の横からやって来たのは黒い帽子を被った背の高い青年。 びしっと背筋を伸ばした、少し怖そうな印象の男だった。 「あ、こいつ副部長の真田」 「ああ……」 和葉はブン太が初めて会った時から何度も口に出していた口うるさい真田が彼だと知って苦笑した。 「こんにちは。汐屋和葉です。こっちは弟の肇です」 「おいブン太、お前は食べ過ぎだ。うちの部員がお世話になっているのに、挨拶にも行かずすみません」 びしっと頭を下げる真田に、和葉と肇は顔を見合わせた。 「いやいや、うちもお客さんが来てくれて嬉しいんだから、そんなにブン太を攻めないでやってくれ」 そうだそうだと文句を言うブン太を真田はジロッと睨み、申し訳なさそうにした。 「あまりこいつを甘やかさないでください。すぐ気合いが緩みますから」 「ひでーな真田! 俺のどこが緩んでるんだよっ!」 「最近ずっとたるんどるではないかっ!」 言い合いが始まった二人を他所に、幸村が笑った。 「本当にありがとうございました。もしまたお暇があれば、見にきてください」 「ええ、もちろん」 「和葉さん、こんにちは」 「どうもっす」 次々とブン太の仲間である部員が集まって、賑やかになった。 皆に好かれているブン太の様子に、和葉は嬉しくなった。 続く… 真田ってブン太の事ブン太って呼んでましたっけ? あと、お菓子作りはド素人なので適当なこと書いてます。スミマセ……(汗) 次へ ↓ 苦くて甘いもの.4
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/235.html
苦くて甘いもの 和葉はカフェが休みの今日、早起きをして朝から色々な料理を作っていた。 先日カフェにやって来たブン太が連れてきたテニス部部長の幸村から、ブン太が試合前にケーキを食べるという話を聞いて、ケーキと、他の部員の差し入れになるようにとレモンの蜂蜜漬けを昨日の晩から作った。 バナナブレッドが今焼き上がり、甘いのが苦手だという仁王の為に醤油をきかせた団子も作った。 「よしっと」 作った物を次々にタッパーに詰め、大きな紙袋に入れる。 「あれ、作りすぎたかな?」 テーブルの上に並ぶ紙袋を見て腕組みをしていると、携帯が鳴った。 「もしもし?」 電話は弟である肇からで、マンションの下に着いたという報告だった。 「肇、ちょっと上まで来て手伝って」 そう、今日は全国高校テニス大会があるのだが、それに和葉は肇と共に出かけることになったのだ。 ブン太が初めて幸村達を連れてきた翌日、幸村が一人でやって来た。 柔らかな物腰の幸村に、ブン太が是非今度の試合を和葉に見にきて欲しいと言っているから良かったら来て欲しいと言われたので、ちょうど店も休みだったし二つ返事で頷いたのだ。 テニスは高校までやっていたし今でも好きだ。ただ、怪我をしてからやめてしまい、それ以来テレビの中継を見るくらいで実際テニスコートまで行ってみる事はほとんどなくなっていた。 ブン太がテニスをやっているのを知って、助けた時は昔を思い出して少しくすぐったかった。 自分が青春を謳歌していた同じ立海大付属のテニス部のブン太。その彼を助けた偶然。 眩しい笑顔のブン太。 自分の作る料理をいつも美味しそうに食べてくれるブン太。 いつも和葉の事を慕って話しかけて来るブン太が可愛くてたまらなかった。 お母さんってこんな気持ちなのかも。 そんな事を考えていると肇がやって来た。 「お前作り過ぎ」 テーブルに並んだ紙袋を見て呆れている。 「だって、立海のテニス部って人数多いでしょ?」 「だからって試合に出るのはダブルスシングルス全員合わせても7人だぞ?」 「別にいいじゃない、レギュラーじゃない子が食べても」 「あーもー。いいや、さっさと行くぞ」 「はーい」 とても姉とは思えない和葉に、肇は大きなため息を吐いて紙袋を持った。 晴天の空の下、丸井ブン太は絶好調だった。 ぽとりと相手コートに決まった自分のボレーにしたり顔だ。 「へへ。俺って天才?」 「いいぞ、ブン太!」 立海の声援が響き渡る中、試合はブン太とジャッカルペア圧倒的有利に進んでいた。 「すごい……」 和葉は目の前で繰り広げられるブン太の試合にすっかり魅了されていた。 「ブン太の奴本当に強かったんだな。いつものあの姿からは想像できん」 隣りで肇も笑っている。 「そうだね」 和葉はドキドキしていた。 あの笑顔の可愛いブン太ではなく、今和葉の目の前で華麗な技を見せているのは格好良いブン太だった。 周囲の女の子達の声援もすごい。 色んな意味で圧倒されながら、和葉は静かに、しかし心の中では命一杯声を出しながら応援した。 試合は6-2でブン太・ジャッカルの勝利で終わり、次のシングルス2の試合へと移行した。 「これで立海は準々決勝進出か」 「去年全国大会で優勝してるんでしょ?」 「ああ。親父が言ってた」 和葉達の父親はテニス教室を開いていて、元プロでもある。 地元の有名校である立海大付属のテニス部の顧問とも知り合いで、幸村の事も二人は父親から聞いて知っていたのだ。 「ブン太君すごいんだね」 「惚れたか?」 「ぶっ! あはは! なんでそうなるのよ?」 「10も下だから眼中に無いか?」 真面目な顔で自分を見る肇に、和葉はピタリと動きを止めた。 「何言ってるの? 変な肇」 「……もうそろそろいいんじゃねえのか?」 「何が?」 「正太郎さんの事だよ」 「ーーー」 口をつぐんだ和葉に、肇は顔を歪ませる。 和葉は以前結婚していた。 正太郎というのが和葉の元夫の名前だ。 結婚したのは和葉が23歳の時で、大学時代にバイトをしていたカフェのオーナーだったのが正太郎だった。 和葉よりも10歳年上だった正太郎は、結婚前から既に病魔に侵されていて、余命3年と医者から宣告されていた。和葉はそれを承知で付き合っていた。 それでも和葉のウエディングドレス姿を見たいという和葉の母親の希望を叶えるため、無理をして結婚をしたのだ。 和葉は結婚する気などなかった。正太郎の両親は既に他界していたし、和葉の親の我が儘のために正太郎に苦労をさせたくはなかったのだ。 ただ、正太郎の側にいられればそれでいいと思っていた。 そんな正太郎からのプロポーズを和葉は最初泣きながら断った。しかし二度目のプロポーズに和葉は渋々承諾したのだ。 肇はそれを知っていた。 和葉がどれほど正太郎を大切に思っていたのか。 ふと応援席で声を上げるブン太を見る。 どことなくブン太と正太郎は似ている。 美味しい物が好きな所やいつも楽しそうに笑っている所。 和葉の作った料理を美味しい美味しいと言ってたくさん食べる所。 見た目は似ていないが、雰囲気が似ているのだ。 和葉はそれに気付いていないようだが、無意識のうちに正太郎の影を追っているのかも知れない。 結婚してたった1年後、正太郎は眠りについた。 それ以来、和葉は本格的に料理の勉強をするためフランスに渡り、2年間修行をして今の店をオープンさせた。 正太郎がやっていた店はもう無くなっていたが、今の店のこじんまりとした所を気に入って和葉は手に入れた。 正太郎が大好きだったカフェを、和葉は続けたかったのだ。 お客が笑顔になる店。 それが正太郎の口癖だった。 明るい正太郎は、死ぬ間際まで和葉に笑いかけていた。 あれから3年。 そろそろ和葉も新しい一歩を踏み出してもいいのではないかと肇は思う。 その相手が誰かは分からない。 本人がのんびりしているおかげで周囲からのラブコールに気付いてはいないが、案外モテるのだ。 弟の目から見ると何故モテるのか不思議なのだが、きっと和葉のどこか不安定な所が放っておけないのかもしれない。 「お、終わったな」 ふと気付くと試合は終わり、5-0で立海大がストレート勝ちを納めていた。 「和葉さんっ! 肇さんっ!」 ブン太が走ってこちらへやってきた。 自然と和葉は笑顔になる。 「ブン太君、お疲れさま。準々決勝進出おめでとう」 「ああ、ありがとうな。和葉さんが試合前にくれたケーキのおかげだぜぃ」 そう言って笑うブン太を、肇が何故応援したくなるのか漸く分かった。 こいつ、本当にまっすぐなんだよな。 和葉を見るブン太の目は純粋でまっすぐだ。 他の男達とは違う、ただ心の奥底からわき上がる純粋な好きという想い。 下心とかなさそうなのが、健全な男子高校生にしてみれば逆に心配ではあるが、そんな毒気の無いブン太の気持ちになら和葉が嫌な思いをする事もないだろうし、素直に和葉を任せてもいいかと思えてしまう。 やはり2人きりの姉弟だから、姉には幸せになって欲しいと思っている。 辛い経験をしているから、それはなおの事だ。 「ほらよ、これ」 「えっ? 何? 試合前にケーキもらったぜぃ? それにレモンの蜂蜜漬けも」 肇が差し出した紙袋を覗き込むと、ブン太が驚いて肇を見上げた。 「疲れを取るにはこれが一番だ」 「バナナブレッドだよ」 「和葉さん作り過ぎ」 和葉を見るブン太の顔に、肇が笑う。 「あははは、それ俺が朝言っといた」 「別にいいでしょ? 食べ盛りなんだからいっぱい食べてね」 にっこり微笑む和葉に、ブン太は顔を少し赤らめて頭を下げた。 「ありがと、皆でありがたくいただくよ」 本当に純粋で可愛い奴だ。 「こんにちは」 「あ、幸村君」 ブン太の後ろからやってきた幸村に和葉は挨拶をする。 「差し入れありがとうございます。部の連中が一瞬にして食べてしまいました」 「あんなにたくさん、申し訳ありません」 幸村の横からやって来たのは黒い帽子を被った背の高い青年。 びしっと背筋を伸ばした、少し怖そうな印象の男だった。 「あ、こいつ副部長の真田」 「ああ……」 和葉はブン太が初めて会った時から何度も口に出していた口うるさい真田が彼だと知って苦笑した。 「こんにちは。汐屋和葉です。こっちは弟の肇です」 「おいブン太、お前は食べ過ぎだ。うちの部員がお世話になっているのに、挨拶にも行かずすみません」 びしっと頭を下げる真田に、和葉と肇は顔を見合わせた。 「いやいや、うちもお客さんが来てくれて嬉しいんだから、そんなにブン太を攻めないでやってくれ」 そうだそうだと文句を言うブン太を真田はジロッと睨み、申し訳なさそうにした。 「あまりこいつを甘やかさないでください。すぐ気合いが緩みますから」 「ひでーな真田! 俺のどこが緩んでるんだよっ!」 「最近ずっとたるんどるではないかっ!」 言い合いが始まった2人を他所に、幸村が笑った。 「本当にありがとうございました。もしまたお暇があれば、見にきてください」 「ええ、もちろん」 「和葉さん、こんにちは」 「どうもっす」 次々とブン太の仲間である部員が集まって、賑やかになった。 皆に好かれているブン太の様子に、和葉は嬉しくなった。 続く… 真田ってブン太の事ブン太って呼んでましたっけ? あと、お菓子作りはド素人なので適当なこと書いてます。スミマセ……(汗) 次へ → 苦くて〜.4 お帰りの際は、窓を閉じてくださいv 立海大トップに戻る
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/100.html
苦くて甘いもの とても天気の良い朝、和葉は部屋のカーテンを開けてうんと伸びをした。 「んん~~~~~~っ! いい天気っ!」 午前中というのに日差しは強烈で、夏の表情を全面に押し出していた。 ガタガタとサイドボードの上の携帯が揺れる。 「はいはーい、おはよ」 肇からの電話を受けながら和葉は部屋を出て洗面所へ向かった。 「ーーーえ? そうなの?」 全国大会では立海大付属は惜しくも優勝を逃し準優勝に終わった。 決勝戦を観に行っていた和葉は涙を流すブン太に声をかけることが出来ず、席を立った。 負ける悔しさは和葉にも分かる。 自分が高校の時、全国大会の決勝で負けた。 ブン太達とまったく同じ状況を味わったことがあったのだ。 会場の端、植樹されている植え込みの脇のベンチに座り、和葉は項垂れる立海大のメンバーの顔を思い浮かべていた。 ふと、大好きだった正太郎の顔が頭をよぎる。 「……正太郎、さん」 自分の口からその名前を出したのは3年ぶりだった。 ポロリと涙が零れた。 「和葉さん、どうしたのっ!?」 「えっ?」 驚いて顔を上げると、そこにはブン太が立っていた。 和葉の顔を見て慌てて駆け寄って来る。 「どこか痛いの?」 心配そうに和葉を覗き込むブン太に、和葉は初めて出会った時の事を思い出した。 あれからもう3ヶ月以上が過ぎた。 あっと言う間に過ぎた気もするし、ゆっくりと流れたような気もする。 「……ぷっ。あの時とは逆だね」 笑った和葉に安心し、ブン太は次に頬を膨らませた。 「もう、心配したんだぞ!? 泣いてるんだもんな……何かあったのか?」 「大丈夫。ブン太君達が負けたの見たら、私も悔しくなっちゃって」 涙を指でぬぐうと、和葉はブン太に笑いかける。 「ーーーありがと、応援してくれて」 ドキっとした。 和葉を見るブン太の瞳が綺麗で、全部見透かされている様な気がした。 ずっと過去を引きずる弱い自分を、明るくていつでもまっすぐなブン太が揺り動かす。 足を踏み出しそうになる。 それが恐ろしくて、不安になる。 先ほどまで泣いていたのに、今は和葉の事を気づかってくれている。 優しいブン太。 「ブン太君」 じっと見つめ合っていると、ふと視線を先に逸らしたブン太が立ち上がった。 「そうだ、和葉さん」 「なに?」 「負けて傷心の俺の為に、何か美味しいもの作ってなぐさめてくれよ」 和葉は苦笑する。 「甘え上手ねえ……うん、いいよ」 「マジでっ!? やった!」 「じゃあ今度うちにおいで。テニス部の皆も連れてね?」 「え~? あいつらはいいじゃん」 「何がいいとよ?」 「げ、仁王」 ブン太が面倒くさそうに両腕を頭の後ろにやって口を尖らせていると、後ろから仁王がジャッカルとやって来た。 「幸村が呼んでるぞ」 「おっと、やべー。んじゃあ和葉さん、約束だからな!」 「うん。仁王君もジャッカル君もお疲れさま」 「応援ありがとうございます」 「またの、和葉さん」 という訳で、今日はブン太達が夕方和葉の家にやって来る。 その買い出しに今から肇と行く予定なのだが、父親に急に仕事の手伝いを頼まれたので代わりの荷物持ちを寄越したというのが電話の内容だった。 「分かった。じゃあ夕方にね」 そう言って和葉は電話を切った。 洗面台で鏡に映る自分の姿を見る。 「……荷物持ち誰かな? ま、いいか……はあ。さすがに老けてきたなあ」 ブン太の張りのある肌を思い出し、和葉はため息を吐く。 10も年が違うのだ、当たり前なのだが改めて自分との大きな差に嫌な気分になる。 正太郎も今の自分と同じ様な気持ちだったのだろうか。 バシャン! と勢い良く水で顔を洗いながらふと考える。 ちょうど和葉と正太郎も10歳離れていた。年若い和葉の事を本当に大切にしてくれていたが、年下だからといって扱い方が子どもに接するようではなかった事を思い出す。 男女や年齢など関係なく、正太郎は自分のことを同等に扱ってくれていた。 蛇口をひねって顔を洗う手を止める。 私は? 私はブン太君をどう扱ってるーーー? 濡れた顔を鏡で再び見る。 あんなに慕ってくれているブン太を、和葉は子どものように扱っていることに気付いた。 その途端和葉は胸が苦しくなった。 「? う、嘘……ちょっと、これはーーー」 ヤバい。 そう思った。 頭に浮かんだ考えを振り払うように、和葉はタオルで顔を拭いてTシャツを脱いだ。 カシャリと音がして首に下げたシルバーのチェーンが揺れた。 そのチェーンの先に通された指輪。 正太郎がくれた結婚指輪だ。 それを指で触り、和葉はぐっと目をつぶる。 過去へ自分を縛り付ける唯一のもの。正太郎はいつも笑っていた。和葉を不安にさせないために。 もっと素直に弱い部分を見せて欲しかった。 和葉を同等に扱ってくれていたのに、自分は弱い所を見せない。それはきっと年上だからという正太郎の意地。 大きくて優しかった正太郎。 死の間際には痩せて力強さなどなかったのに、痛みと苦しみの中、一度も和葉に辛いと言わなかった強い正太郎。 その正太郎を忘れて、ブン太の事を好きになりかけている自分が憎くて堪らなかった。 裏切れない。 あんなに優しかった正太郎を裏切ることなんて、和葉には出来なかった。 ピンポ~ン 着替えて化粧を終えた所でチャイムが鳴った。 えっ? ブン太君? 画面に映ったブン太の姿に、和葉は驚く。 「はい」 『おはよ~、和葉さん』 「おはよう。ブン太君どうしたの?」 『肇さんが仕事で行けなくなって、和葉さん一人で買い出しになるから手伝いに行けって。お前が食べる料理の材料買いに行くんだから、お前が行くのが当たり前だろって言われた』 ぷうっとガムを膨らませるブン太に、和葉は肇の顔を思い浮かべる。 肇の奴、代わりの人ってブン太君の事だったのね…… 一緒に立海大の試合を観に行った時、ブン太の事を10歳も年が下だから眼中にないのかと尋ねてきた。 もしかすると肇は和葉の中に芽生え始めたブン太への思いに、和葉より先に気付いていたのかも知れない。 察しの良い弟で何よりだ。 心の中でぼやきながら、それでもブン太の声を聞いて嬉しいと思ってしまう自分が確かにそこにいた。 「そう、ごめんね。そこで待ってて。すぐ降りてくから」 『ああ、分かった』 「いつもこんなに買い出しするの?」 両手一杯の買い物袋に、ブン太が尋ねる。 「ん? いつもはもっと多いよ。今日はお店休みだし、ブン太君達の分だけだから少ない方」 「これでっ!?」 「肇がいるといくらでも買えるのよね。力持ちだし」 そう言って笑う和葉に、ブン太はちょっと傷ついた。 やっぱり和葉は大きな男が好きなのだろうか。 「あの子無駄に大きいからね~」 「ーーーまあ、確かに同じ遺伝子とは思えないよな。和葉さんと肇さん」 「でしょ? 私の方がよく食べるんだけどね。不思議」 和葉の方がよく食べるというのは想像出来なかったが、ブン太はこうして和葉と休日に一緒に過ごせる事に幸せを感じていた。 いくら和葉が自分の事を子どもとしか見ていなくても、自分は和葉といられるのが嬉しいのだ。 チラリと隣りを歩く和葉を見る。 自分より背の低い和葉。ブン太の目の辺りが和葉の頭だから、10センチくらい低いだろうか。 視線を頭から少しずつ下へ移動させる。 今日はいつものパンツスタイルではなく、スカートを履いていた。 大人の女性だけあって、ブン太達の周りにいる子よりも随分丈の長いスカートを履いているが、それが似合っていた。 膝が隠れるくらいの柔らかな生地のスカートは、ヒラヒラと和葉が歩く度に軽やかに揺れる。 普段見られない足に、ブン太はドキッとする。 白くてほっそりとしたふくらはぎに締まった足首。 やべえ。俺、変態みたいだ…… 視線を違う方へやり、ブン太はぷうっとガムを膨らまして誤摩化した。 「ちょっと休憩しようか?」 「ん? ああ」 近くの喫茶店に入ってメニューを見る。 「買い出し手伝ってくれたお礼に何でも好きな物奢ってあげる」 優しい笑顔の和葉に、ブン太はまた切なくなる。 「いいよ、いつも奢ってもらってばっかだし」 「遠慮しないで。私、ブン太君が何か食べてる姿見るのが好きなんだもん」 ブン太は心臓が止まりそうになった。 和葉の口から出た「好き」という言葉。 どれほど欲しいと思ったか分からないその単語に、どんどんと心音が速くなる。 もちろんブン太自身の事を好きだと言っている訳ではないけれど、それでも嬉しいのだから仕方ない。 「おっ、俺だって男なんだぞ? たまには俺に奢らせてくれよなっ」 嬉しすぎてつい緩みそうになる口を必死で通常の位置に保ちながら、ブン太が言った。 そこで和葉ははっとしたような顔をして、少し俯いてブン太を見た。 「じゃあ……今日はお言葉に甘えようかなーーー」 え? ブン太は驚いた。 いつもなら 子どもは大人に甘えればいいのよ。 というはずなのに、今日の和葉はちょっと違う。 「任せろぃ!」 もう今すぐにでも仁王にそれみろと電話を掛けてしまいたい所だ。 初めて和葉が自分を子ども扱いしなかった。たったそれだけなのに、こんなに嬉しいだなんて。 先ほどのブン太が何かを食べている姿を見るのが好きだという言葉といい、幸せすぎて怖いくらいだ。 注文を取りに来た店員に和葉が注文をする。 「私はブレンドコーヒーとサンドイッチを。ブン太君は?」 「俺はチョコレートパフェとミルクレープとホットサンドと……」 そこで言葉を切ったブン太に、和葉が首を傾げる。 「飲み物は?」 「あ、えっと……ブレンドコーヒー」 本当はミルクティーにしようかと思ったのだが、ブン太はどうしても早くコーヒーをブラックで飲めるようになりたくて、最近は頑張ってコーヒーに入れる砂糖やミルクの量を減らしていた。 それは、和葉と同じブラックコーヒーを飲んで味を共有したいから。 ジャッカルと柳と柳生に健気と言わしめたブン太の乙女的思考に、仁王だけは腹を抱えて笑った。 くそっ、仁王の奴…… 人をバカにした仁王の笑い顔を思い出し、ブン太はちっと舌打ちをした。 目の前に運ばれて来たパフェにブン太はキラキラと目を輝かせる。 「くう~っ! 美味そう! いっただっきま~す!」 「そんなに慌てなくてもパフェは逃げないよ」 幸せそうにパフェを口に運ぶブン太に、和葉が苦笑する。 「逃げなくても溶けるだろぃ?」 「確かに」 何気ない会話なのに、和葉は楽しかった。 こんなにブン太と過ごす事が心地よくなるとは、正直想像もしなかった。 偶然助けただけの、高校生。 カフェの店長と客。 それだけのはずだ。 笑顔でどんどんパフェを胃の中に入れて行くブン太の幸せそうな顔に、もっと見たいと思ってしまう。 自分が作った料理やデザートを食べて、美味いと言って微笑んで欲しい。 失いかけていた感情を呼び覚ますこの目の前の少年に、和葉は切なくなった。 「和葉さん」 「ーーーえ? あ、なにっ?」 ぼんやりしていた和葉に、ブン太が不思議そうに首を傾げて尋ねる。 「いや、全然手が動いてなかったから」 「ごめん、ちょっとぼーっとしてた」 取り繕って笑う。 まさかブン太の事を考えていたからぼんやりしていただなんて、知られたら大変だ。 「もしかして、迷惑だった?」 急にしょんぼりとなったブン太に、和葉が眉間にしわを寄せる。 「迷惑? 何が?」 「だって折角の休日なのに、俺達の為にまた料理作らせるからさ……嫌なら嫌って、はっきり言っていいんだぜ? 断られたくらいで、俺ショック受けたりしねーし」 「嫌な訳ないじゃない。ブン太君達が楽しんでくれるんならね。それに私、料理くらいしか出来ないし」 「そんなことねー」 「え?」 ブン太は食べる手をすっかり止めて和葉を見つめた。 その真摯な眼差しにどきりとする。 「和葉さんは、料理が上手なだけじゃねー。優しいし、一緒にいると、楽しいし……」 ブン太なりの精一杯の告白。のつもりだった。 しかし和葉はブン太が気を遣ってくれていると思ってにっこりと微笑んだ。 「ありがと、ブン太君って優しいね」 そうじゃねーのに…… 仁王だったらこんな時相手にどんな言葉をかけるのだろう? ふっとまたあの爆笑する仁王の顔を思い出し、ブン太はこめかみに青筋を作ってホットサンドにフォークを突き立てた。 やっぱりあいつムカつくっ! きっと大人びた顔で相手を見つめて、キザなセリフを言うに違いない。 続く… 管理人の中で、仁王はたらし…w しかし死ネタ多くて本当にスンマセ……(汗) 次へ ↓ 苦くて甘いもの.5
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/60.html
絆創膏 ものすごくぼーっとしながらキャベツの千切りをしていた和葉は、ザクリとした嫌な感触と痛みで我に返った。 「いたっ……」 引き上げた指からは血が滲み出して、案外深く切った事が分かる。 あ~あ。私ってばドジ…… 「何やってんの?」 そこへ現れたリョーマに、和葉は苦笑いを向ける。 「あはは、指切っちゃった」 「えっ? もう……、何してんの?」 リョーマはすぐさま持っていたタオルで和葉の怪我した指を押さえ、椅子に座らせると慌ててどこかへ行ってしまった。 「ちょっと、リョーマ?」 一人置き去りにされた和葉は、台所の入り口を見つめたままそれでもしっかりと傷口は押さえていた。 すぐに足音がやって来てリョーマが救急箱を持って戻ってきた。 「しみるけど我慢して」 そう言って丁寧にタオルを外し、脱脂綿に消毒液をしみ込ませて傷口を拭いた。 「ひっ!?」 予想以上の痛みに和葉は声を上げる。 「我慢してって言ったじゃん」 そう言いながらリョーマはどんどん作業を進めた。 いつもは怪我をしたリョーマを和葉が手当てするのに、今日は逆だ。 なんだか自分を心配してくれているリョーマが微笑ましくて、和葉はつい笑ってしまった。 「くすっ……」 「何?」 「ううん。なんだかリョーマに手当されるのって新鮮だなあって思って」 「もうっ……あんまり心配させないでよね。はい、終わり」 そう言って和葉を見てリョーマが困ったような顔をした。 「指切ったくらいで、リョーマ大げさ」 「大げさじゃないよ。いつもは包丁で指切ったりしないくせに、どうしたの?」 「別に、ちょっと考え事してただけ」 「考え事?」 首を傾げるリョーマに、和葉は立ち上がって微笑んだ。 「さ、もうすぐななちゃんもおばさんも帰って来るから、ご飯作らなきゃ。手伝ってくれる?」 ごまかした和葉をじとっと睨んだが、きっと教えてくれないと分かっているのでリョーマもそれ以上は聞かなかった。 「分かった」 大人しく和葉の指示に従って鍋を出す。 「もうすぐ全国大会だね」 ふいに和葉が言った言葉に、リョーマは頷いた。 「楽しみだね」 そう言って笑う和葉が、どこか遠くへ言ってしまいそうでリョーマは無性に寂しくなった。 指の絆創膏を一瞬見やって、すぐに和葉を見る。 「どうしたの?」 尋ねる和葉に、リョーマは呟いた。 「俺、負けないから」 「お。強気だね」 そう言いながらも急に元気の無くなったリョーマに、和葉は少し不安になる。 先ほどの考え事という単語を意識しているのかもしれない。大したことではないのだが、3つも年下のリョーマに何でもかんでも相談する程和葉も子供ではない。結局悩んだ所で決断を下すのは自分なのだから。 こんなに自分に依存しているリョーマが、もし自分と離れてしまったらどうなるのだろうかと思ってしまう。 自惚れかもしれないが、リョーマにはもう少し自分という存在が必要だと思う。 ふと左の人差し指に巻かれた絆創膏を見る。 リョーマの自分に対する優しい気持ちが伝わってきて、ズキズキとする痛みが少し和らいだような気がした。 まだ、もう少しだけ一緒にいられるのなら…… 野菜を鍋に入れて行くリョーマを後ろから抱きしめた。 「和葉? 危ないよ?」 口ではそう言いながらも振りほどくことはしない。 和葉も分かっているから抱きしめる腕に力を入れる。 「うん……リョーマ大好き」 優しく囁いた和葉の声に、リョーマが答える。 「俺も」 そっとリョーマが触れた和葉の手には先ほど巻いた絆創膏。 この絆創膏のように、いつか和葉から離れてしまわなければいけない日が来るのかと、リョーマは胸が苦しくなった。 でもまだ、もう少しだけ一緒にいられるのなら…… END ※あとがき※ なんだ!? 絆創膏ってタイトルなのに、全然絆創膏アクセントになってない! しかも普通絆創膏だったら菊丸でしょ? って自分で自分に突っ込む。イヤーン。 これはアニメでリョーマがアメリカに行くちょっと前。という設定で書いてますね。 記憶が曖昧ですが…だって全国大会がもうすぐとか言ってるし(笑) 和葉さんはリョーマが自分の意志でテニスが上手くなりたい、強くなりたいと願っている事を嬉しく思う反面、離れて行ってしまうのがちょっと寂しいんですよ。 ああ、親心(笑) こんな話にお付き合い下さいまして、ありがとうございました!
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/238.html
苦くて甘いもの ブン太が決意を表明してから10分後、和葉と切原は真田、柳、柳生を連れて戻って来た。 丁度マンションの前で会ったらしい。 「じゃあ適当にくつろいでて。これからご飯作るから」 「お手伝いします」 「ありがとう、柳生君」 「俺も手伝います!」 「ありがとう切原君」 「俺も手伝うぜよ?」 「あ、ありがとう……でも皆はさすがに入りきれないから、何かあったらお願いするからゆっくりしてて」 図体のでかい男が何人もキッチンに立っていると、邪魔で仕方ない。 和葉は苦笑いをして全員をリビングへ追い出した。 和葉の住んでいるマンションは広い。 一人暮らしにはもったいないくらいの間取りだが、和葉はリビングダイニングとそこに続く部屋のドアを取り払って随分な広さを取っていた。 よく友達が泊まりに来るかららしいが、それでもまだ別に部屋が2つほどあった。 一つは和葉の寝室で、もう一つは物置として使っているという。 おかげでテニス部のレギュラー陣が全員揃っても十分な広さがあった。 いい匂いがして来て、皆が入れ替わり立ち替わり手伝いに行った。 夕方の18時になろうとしていた頃、肇がスーツ姿で現れた。 「おっ、全員揃ってんな」 「どうも、お邪魔しています」 「おう」 真田が挨拶をすると、肇はすぐに台所へ向かった。 「和葉、これ親父から」 肇が手渡したのは実家の母親が作ってくれた漬け物だ。和葉の大好物でもある。 「んー、ありがと。漬け物とか若い子食べるかな? あ、肇これ向こうに持って行って」 「年関係なく普通に食う奴は食うだろ? あいよ」 和葉と肇のキャッチボールは言葉と動作一緒くただ。 さすがに同じ遺伝子。 次に何か言う前に肇は行動に移してくれる。 肉の焼けるいい匂いが家中に漂い始め、ブン太と切原はソファーの上で腹を鳴らし始めた。 「腹減った~!」 「お前ら育ち盛りだからなー。もうそろそろ出来上がるぞ」 肇が大きなボウルに入ったサラダを3つテーブルに並べた。 「肇さんのスーツ姿、初めて見た」 「ははは、親父の仕事の手伝いだったからなあ。似合わねーだろ?」 「似合うけど、ちょっと堅気の人に見えないかも」 「それを言ったらジャッカル君も見えねーぞ?」 「俺ですかっ?」 「おお、肇さんと二人並んだらこえーだろうな!」 和気あいあいとした時間。 ブン太はずっと緊張しっぱなしだったのだが、肇の出現で少し落ち着きを取り戻していた。 「出来たよ~」 キッチンから聞こえて来た和葉の声に、全員が反応した。 「「「待ってました!」」」 食事は楽しくて美味しかった。 さすがプロの料理人が作っただけのことはある。家で食べているとは思えないクオリティの高さで、全員がその美味さにうなりを上げた。 すっかり食べ終え、用がある人間がちらほら帰り始めた。 時計を見ると、21時を少し過ぎたところだ。 いくら大学まであるエスカレーター式の学校とはいえ、一応受験生であるブン太達は、大学進級試験を受けなければいけない。柳生はもっと頭のいい大学に行くらしいので、全国大会が終わってから本格的に勉強に力を入れ始めたようだ。 ブン太はそのまま立海大に進学する予定なので、別に焦ってはいない。 かといって勉強しなくても平気なほど頭が良い訳ではないのだが。 「それじゃあ俺はこれで、本当にご馳走さまでした」 「いいえ、またいつでも遊びに来てね」 「はい。今度はお店に妹を連れて行きます」 「ありがとう。待ってるわ」 台所で後片付けの手伝いを終えた幸村が和葉と話している。そろそろ帰るつもりらしい。 ふと気付けば残っているのはブン太と仁王だけになっていた。 「それではおやすみなさい。ブン太、仁王! あまり遅くまでお邪魔して迷惑をかけるなよ」 「へ~い」 「分かっとる」 もう少しだ。 もう少ししたら、俺は和葉さんに告白するんだーーー そう考えると、ブン太は体がカチコチになってしまった。 それに気付いた仁王が笑う。 「ブン太、お前ちいと緊張しすぎじゃ」 「う、うるせー。俺は今、一生に一度の大勝負に出る所なんだ……」 「顔と言葉が合ってないのお」 「あ? 何が大勝負なんだ?」 「あっ、肇さん」 仁王と話している所へ、キッチンから牛乳を持って戻って来た肇がブン太を見下ろす。 「……それ以上でかくなる気っすか?」 「あ? ああ、これか? もうなんつーの、俺の命の水だから仕方ねえだろ。お前ももっと飲め。そうしたらもう少し成長するかもしれないぞ」 「今更頑張っても大して伸びないからいい」 「で? 何が大勝負なんだ?」 「えっ?」 すっかり話の矛先を変えられたと思っていたのに、肇は再びブン太を見下ろして尋ねる。 「なんでもない」 「ふうん」 「なんか、ブン太の奴和葉さんに相談したいことがあるそうなんですよ」 「え? 和葉に?」 「ばっ! お前なに言ってんだよっ!?」 隣りに座っていた仁王が肇を見上げてそう言った。 慌てたブン太が仁王に掴み掛かる。 「どうしたの?」 とそこへ顔を出した和葉に、肇はああと小さく呟いてブン太を見てニヤリと笑った。 「そうかそうか。ま、そーゆー事なら仕方ねえな。仁王君、そろそろ帰るか?」 「そうですね」 立ち上がった仁王の足にしがみつき、ブン太が潤んだ目で見上げる。 そんなブン太の頭をポンポンと優しく叩くと、 「ま、頑張りんさい」 と言い残してブン太の腕をほどいた。 頑張れって、どうしよう! さっき告白するって決心したのに、俺、もうマジで胃が痛くなって来た!! チキンですか? 俺ってば天才じゃなくてチキンですかっ!? あわあわと一人で慌てるブン太を他所に、肇が和葉に声をかける。 「和葉。ブン太がお前に相談したいことがあるんだそうだ。俺達もう帰るから、真剣に相談に乗ってやれ」 「え? ブン太君が私に? 私なんかで役に立てるの?」 「いや、和葉さんにしか解決出来ない悩みなんです」 「仁王君、よく分からないんだけど……食べ物の相談?」 「まあ、とにかくちゃんと話きいてやれよ。じゃあまたな」 「ご馳走さまでした。また皆で店に行きます。おやすみなさい」 「あ、うん。肇も仁王君も気をつけて帰ってね」 適当なことを言って去って行った肇と仁王を横目に、ブン太はどうしようどうしようと頭を抱える。 そんなブン太の気持ちも知らず、和葉は緑茶を入れてブン太の前に置いて隣りに座った。 「どうしたの、ブン太君。私に相談したいことって?」 ああ、そんな優しい目で見ないで欲しい。 ブン太はゴクリと唾を呑み込み、何から切り出そうかと命一杯頭を働かせて考えた。 チラリ 和葉の首からはシルバーのチェーンだけ見えている。 まずはそこから聞くべきか。 それとも、いきなり告白してしまうべきか。 「うう……」 とうとう考えすぎてうめき声が口から漏れた。 それに和葉は目を丸くする。 「ど、どうしたの? そんなに悩んでることなの?」 心配してくれる和葉に、ブン太はもう格好つけていられないと思い切り顔を上げて和葉と向かい合った。 「和葉さんっ!」 「うん?」 ………………沈黙 名前を読んではみたものの、和葉と視線が合ってしまってまた言葉が出なくなった。 誰もいなくなった部屋はとても静かで、クーラーの機械音だけが虚しく響いている。 ああ涼しいな。 なんて間抜けな事を考えてしまうのは、きっと現実逃避しかけているからだろう。 和葉はブン太の言葉の続きを待っている。 その様子にブン太は胸が苦しくなった。 「ーーー俺」 絞り出した声は自分でも情けなくなる位に弱々しくて、ブン太は和葉から思わず目を逸らした。 「俺……」 なかなか先を言い出せないブン太に、和葉は苦笑する。 「ブン太君、言いにくいことなら無理に言わなくていいんだよ?」 和葉の優しさに、ブン太はため息が出た。 やっぱり、好きだ。 自分の気持ちを誤摩化すなんて出来ない。 和葉に彼氏がいようと、自分の事を子どもとしか見てもらえなかろうと、何もしないで終わるのは嫌だ。 ようやく心が決まり、ブン太は和葉の手を取った。 「和葉さん。俺……あんたが好きだ」 「ーーーえ?」 驚く和葉。 ブン太は続けた。 「さっき、和葉さんがこけた時に首に指輪が付いたネックレスしてるのが見えた」 ぴくりと和葉の体が反応する。 「だから、もしかしたら彼氏がいるんじゃないかって思ったし、俺は和葉さんより10も年下だし、背も低いし全然眼中に無いって分かってるーーーでも! ……俺は、和葉さんが好きなんだ」 「……ブン太君」 和葉は眉を寄せて、ブン太を見た。 ブン太の真剣な目に、和葉はぐっと目をつぶる。 どうしよう。どうしよう。 そればかりが頭の中を行き来する。 ふっと正太郎の笑った顔が浮かんで来て、ブン太の笑顔と重なった。 あ…… 和葉はその時、初めて正太郎とブン太が似ていることに気付いた。 いつも笑っている所。 食べ物が大好きな所。 和葉が作った料理を、美味しい美味しいと言って食べる所。 優しい所。 でも、ブン太はブン太であって正太郎ではない。 そんな事は分かっている。 ブン太に惹かれていると気付いて、正太郎と似ていることに今気付いた。 もう、いいのかな? 心の中で、自分自身に問いかける。 もちろん答えなど帰って来ない。 「ブン太君……」 名前を呼んで目を開けると、ブン太は泣きそうな顔で和葉を見ていた。 「ありがとう。すごく嬉しいよ」 「ーーー本当、に?」 和葉の言葉にブン太は驚く。 「このネックレスはね、私の大事な人がくれたものなの」 そう言って和葉はネックレスを外した。 「物に執着しちゃいけないって、その人に言われたことがあった……大切なのは物や特別な記念日なんかじゃない。ここだって」 和葉は自分の胸に手を置いた。 「心?」 「そう、心……相手を思う心。大切にしたいと思う心。愛しいと思う心……心があれば、物やお金は大事じゃない。結局、何の力も発揮しないただのモノ」 正太郎に言われた言葉を思い出しながら、和葉は言った。 ブン太はじっとそれを聞いていた。 「その私の大切な人……ううん、大切だった人は、今はもういないけど、私のここにずっといる」 ズキンーーー ブン太の胸は痛かった。 でも、和葉の話を聞いていたくて、黙って和葉を見つめた。 「だけど、また新しく大切な人が出来てもいいよね?」 「えーーー?」 「今すぐに返事は出来ないけど、私もブン太君に惹かれてる」 「ーーーーーー」 「もう少しだけ、時間をくれる?」 和葉は外したネックレスをテーブルの上に置いた。 ブン太は和葉の言った言葉の意味を必死で考えていた。 「和葉さん……それってーーー?」 良く分からずに尋ねると、和葉は笑った。 「ブン太君がもう少し大人になったら、その時にきちんと返事させて?」 分からない。 やっぱり分からなかったが、今この場で振られた訳ではないということだけは分かった。 「うっそ……マジで? え? ーーー本当に? 俺が大人になってって、いつ? いつまで待ったら返事くれんの?」 その時にいい返事がもらえるかどうか分からないのだが、ブン太にとっては今振られなかったという奇跡の方が遥かに重要だったらしい。 目を輝かせて和葉に詰め寄った。 それに少し身を引いて、和葉が答える。 「そうだね、取りあえず、20歳になったら……かな?」 「20歳ぃ~~~!? って、あと3年近くもあるじゃん!! そしたら和葉さん三十路だぜっ!?」 「はは~ん、そういう事言う訳ね。じゃあ、さっきのは無かったことに……」 「うわわわわわっ! たんまっ! 違っ、そう言う意味じゃなくって!! 俺、頑張るっ! 絶対ぇ俺の事好きにさせてみせるからっ!」 必死に取り繕うブン太に、和葉は吹き出した。 「ははははっ! うん。分かった」 「絶対絶対俺にメロメロにさせてやるからな! 覚悟してろよぃ!」 「ーーーうん。じゃあまずコーヒーをブラックで飲めるようにならないとね」 「うぐっ……み、見てろよ」 「お~! ブン太、良かったじゃねえか~!」 「わあっ!?」 ドスンッ! 「えっ? はっ、肇さんっ!? 仁王!?」 突然部屋に入って来た肇と仁王に、ブン太は驚いてソファーから落ちた。 「あはははっ! い~いリアクションだな」 「ブン太、お前格好わるいぜよ」 「ななななな、なんで二人ともいるんだよっ!? 帰ったんじゃなかったのかっ!?」 目を白黒させるブン太と違い、和葉は平然と立ち上がる。 「2人とも心配して外で待ってたの?」 「ま、そういう事」 「お茶飲む?」 「コーヒー」 「ブラックで」 「はあい。あ、ブン太君は?」 「ななな、なんでそんな冷静なんだよ、和葉さんっ!?」 「え? 何でって……肇の考える事分かるもん」 ーーーーーああ、そうですか。 とそこで納得するブン太。 体をソファーに戻して座り直す。 隣りに座った仁王が、不適な笑みを向ける。 「良かったのう。取りあえず速攻で振られんかったき」 「うっせー。馬鹿」 「ま、これからまたショッキングな話聞いて、それでもめげなかった時は認めてやるよ」 向かいのソファーに座りながら言う肇に、ブン太と仁王が顔を見合わせる。 「ショッキングな話?」 「そ。これをあげた男の話」 これ。と言って肇が指差したテーブルの上のネックレス。 さっき和葉はこれをくれた人は今はもういないと言っていた。 ということは、死んでしまった。という事。 和葉の彼氏だった人は、死んだのだ。 なんか、それだけでショッキングなんですけど…… 暗くなったブン太に、肇がため息を吐く。 「覚悟しろよ。お前より和葉は大人なんだ。その分お前が経験したこともないような経験をしている。それくらいの覚悟はあるんだろ?」 「っ……あったりまえだろ? 年上に考えも無く告白なんかするかよ……」 「ーーーそれならいい。ブン太……和葉を……解放してやってくれ」 「う? うん……」 まだ今は肇の言葉の意味も和葉が先ほど言った言葉の意味もちゃんと理解出来なかったが、それでもブン太は頷いた。 大人になるまで待てと言った和葉の気持ちを考えなくてはいけない。 ただ甘えているばかりではいけないのだ。 肇は真面目な顔からいつもの笑顔に戻った。 ブン太は肇が背中を押してくれていることが嬉しかった。 チラリと隣りに座る仁王を見ると、仁王も何だか優しげに微笑んでいた。 まあ、こいつもこいつなりに俺の事心配してくれてんだろうな。ムカつくけど。 ジャッカルにも後で電話すっか……幸村は……今度でいいや。 「はい、コーヒー入ったよ~」 キッチンからコーヒーの香りがしてきて、ブン太は立ち上がった。 「手伝うぜ」 「ありがとー」 苦くて甘いものは、何ですか? 踏み出した2人の道は前途多難かも知れないけれど、それでも進まなきゃ分からない。 辛い過去の無い人なんて一人もいないのだから。 寂しさを紛らわすなんてそんなことじゃなくて、心からの安らぎを見つけること。 愛して、愛されて。 そんな関係が一番だと思える時が、きっと本当の幸せを見つけた時。 END あとがき 終わりました…… 長々とこんな話にお付き合いくださいまして本当に本当にありがとうございました。 オリキャラ満載で申し訳ないです… こんなに長くなるなんてまったくもって予想ガイ☆ でもブン太可愛いから許す(笑) 大事な人を失う悲しみとか、それを乗り越える勇気と時間って、誰にでもやってくる事ですよね。 ブン太の純粋な気持ちが和葉さんの心を溶かせて良かったと思います。 ってか、マジで10歳も年下と付き合うなんて、楽しそう(笑) 年上には年上なりの葛藤とかがあるんですよ。10歳も年下に告られたら悩むって。マジで… え~っと、このお題は「苦くて甘いもの」でした。難しかったです! 取りあえずブン太はケーキ好きみたいなんで、ブラックコーヒーは飲めないだろうなー と勝手に思って書きました。ところでブン太ってこんな性格なの?(知らないってのが酷い…w) それでは、またお会いしましょう! See you! 一つ戻る → 苦くて〜.5 お帰りの際は、窓を閉じてくださいv 立海大トップに戻る
https://w.atwiki.jp/streetpoint/pages/97.html
苦くて甘いもの 汐屋和葉は目の前の光景に酷く驚いていた。 数回の瞬きの後、辺りを見回し、その光景が夢ではないかと今度は軽く自分の頬を叩いてみる。 ペチンとした音と衝撃に夢ではないと認識する。 すると今度は焦りという感情がどかんと沸いてきて、和葉は目標物に向かって駆け寄った。 「大丈夫っ!?」 和葉の目の前で蹲る一人の青年の肩を揺さぶる。 制服で近くの立海大付属の生徒だということは分かる。 どうしよう、救急車……えっと、こういうのって学校にも連絡しないといけないのかな? 「う……」 焦りながらも色々とどう対処すべきか考えていると、赤茶色の髪のその青年は和葉の呼びかけにゆらりと反応した。 ホッとしたと同時に和葉は再び声をかける。 「どこか痛みますか? 気分悪い?」 バッグから携帯を取り出しながら聞くと、青年はゆっくりと顔を上げた。 ドキ…… 上げられた青年はとても奇麗な顔をしていて、和葉は驚いた。 「は……」 「は?」 口をぱくぱくとさせ、青年が和葉の腕を掴んだ。 「ーーー腹、減った……」 ーーーーーーーーーーーーえ? 和葉は携帯を持ち上げた状態のまま、そう言ってまた項垂れた青年の頭頂部を凝視した。 「いやあ、マジで感謝っ! お姉さんめちゃくちゃ料理上手なんだな~!」 そう言って笑顔を寄越す青年、丸井ブン太に、和葉は苦笑する。 テーブルの上の皿は全部綺麗になくなっていて、それはもう感激するくらい見事な食べっぷりだった。 「それは良かった。でもまさかこの飽食の時代の日本で、行き倒れに出会うなんて思わなかったわ」 「もうマジ俺死ぬかと思った」 「でもどうしてそんなにお腹空かせてたの?」 食後のコーヒーを煎れながら、和葉が尋ねる。 「それがさ、朝テニスの練習に遅刻しそうになったから慌てて家出て朝飯食い損なって、仕方ねえから練習終わって弁当食おうとしたら弁当家に忘れてて、購買行こうとしたら先生に捕まってさ。そんでずっとタイミング悪いまま結局何にも食べられなくて昼になって、やっと学食行けると思ったら財布まで忘れてて、誰かに金借りようとしたら今度は真田に捕まってこの間の試合の事で説教くらって、そのまま放課後の部活をふらっふらのままやって、早く家に帰って何か食おうと思ったんだけど、とうとうここのマンションの前で腹減りすぎて動けなくなったーーーっつー聞くも涙語るも涙状態でさ」 「そう……災難だったのね」 「ああ。いつもならお菓子も持って行ってんのに、今日に限って全部忘れてんだもんなあ……ガムしかねーし。ガムじゃ腹が膨れねーってことを知った。もう二度とお菓子は忘れねえ! 絶対ぇ忘れねえ!」 拳を握りしめて宣言する丸井に笑いながら、和葉はふと思い出して冷蔵庫を開けた。 「そうだ、お菓子好きってことは甘いもの好き?」 「ああ、大好きだぜぃ!」 目を輝かせる丸井に、和葉は笑う。 「良かったらケーキ作ったんだけど、食べてみてくれない?」 「えっ? 手作りケーキ!? 食う食うっ!」 丁度入り立てのコーヒーと一緒に、和葉は丸井の前に昨晩試作で作ったケーキを並べた。 「うーわー。すっげー美味そう!! いっただっきまーす!」 「どうぞ」 ゆっくりとケーキにフォークを入れ、一口食べる。 「……美味いっ!」 「本当?」 「ああ! イチジクの食感とこの下のババロアの口当たりがすげー合ってて、んで下のタルト生地に入ってるアーモンドパウダーがアクセントになっててイチジクの甘さが引き立って、すげー美味いぜっ!」 和葉は驚いた。 自分が色々と試行錯誤を重ねたタルト生地や味のマッチなどを、たったの一口で言い当てたのだ。 「これお姉さんが作ったの?」 「あ、うん」 「料理もお菓子作りも上手なんてすげーよな! 尊敬~」 「一応それが仕事だから」 丸井が向ける眼差しに、和葉は笑う。 「仕事? お姉さんってコック?」 丸井は目を丸くさせて和葉を見る。 「そう。駅前の公園の近くにある小さいカフェの店長やってるの」 「えっ、マジ!? もしかして北側の通り?」 「そう」 「俺そこ知ってる! 通りかかって気になってたんだ~! あの観葉植物とかいっぱい置いてる店だろ?」 「うん」 「あそこの店長さんなのか……あ! そういえば俺、こんなにたくさん飯食わせてもらった命の恩人のお姉さんの名前、まだ聞いてなかった」 漸く気付いた丸井は、慌てて和葉に申し訳なさそうに視線を寄越した。 「あはは、私は汐屋和葉。よろしくね……ねえ、丸井君」 「ブン太でいいぜぃ」 「えっと、じゃあブン太君。今度またケーキの試食してくれないかな?」 「えっ!? いいのっ!?」 子どもの様なキラキラの瞳に和葉は苦笑する。 「うん、ブン太君に食べてもらって色々意見を聞かせて欲しいの」 「もうそんなことなら大歓迎! 毎日でも手伝うぜ!」 満面の笑みでそう答えると、ゴクリとブン太は目の前のコーヒーに口をつける。 「うわっ! 苦っ!」 もの凄く渋い顔をして舌を出すブン太に、和葉は急いで水の入ったコップを手渡した。 「ご、ごめん! 私コーヒーはブラックだから、ついいつもの癖で……」 和葉から受け取った水を一気に飲んで、ブン太は力なく笑った。 「あはは……いや、俺、お子様だから砂糖とミルクが入ってないと飲めないんだ」 「おい和葉」 「ん~? どうしたの、肇(はじめ)?」 キッチンでパスタを作っていた和葉に、キッチンと店の仕切りから顔を覗かせた大きな男が声をかける。 「また来てるぞ」 「あ、ブン太君?」 出来上がったパスタを皿に入れて肇と呼んだ大男に手渡すと、和葉はコーヒーの準備を始めた。 「あいつすっかりお前に懐いてるな。餌付けされた犬って感じだ」 「あはは、犬って。ほら、パスタ冷めちゃうから早くお客さんに出して」 「おっと」 ブン太を餓死一歩手前から救って2週間。ブン太はしょっちゅう部活帰りに和葉の店にやって来ていた。 そうそうケーキの試食はないのだが、本人は別にそれが目的という訳ではなく、普通にお茶したりケーキを食べに来てくれている。 新しい客が増えて和葉としては嬉しいのだが、そうしょっちゅう来てはお金がかかるので申し訳なく思い色々とサービスをしている。今日はコーヒーと一緒にマカロンをサービスだ。 あの時はブラックで出して苦い思いをさせてしまったが、店にはちゃんとシュガーポットが各テーブルに置いてあるし、コーヒーを出す時は生クリームを添えている。 ブン太が飲むコーヒーは、ケーキを食べる時とは思えない分量で砂糖と生クリームが入る。よほど甘党なのだろう。 思い出すと自然と笑みがこぼれる。 入りたてのコーヒーを載せたトレーに生クリームを冷蔵庫から取り出し添えると、和葉は店内へと出て行った。 「いらっしゃい」 「あ、和葉さん」 和葉を見てブン太は嬉しそうに笑った。 この笑顔を見ると本当に若くて高校生なんだなと思うが、初めて見た時のブン太は潤んだ瞳で上目遣いに自分を見上げていて、美青年という感じだった。 確かに顔は綺麗に整っているが、どちらかと言えばこちらの笑っている可愛らしい方が、ブン太らしい。 中学高校とテニス部に所属してて、全国でも有名な立海大付属テニス部のレギュラーだというから相当テニスが上手なのだろう。 和葉のマンションの前で倒れていた時も大きなテニスバッグにもたれかかっていた。 「はい、どうぞ」 コーヒーとマカロンを出す。 「いいって! そんなにしょっちゅうタダで食わせてたら店が潰れるぜ?」 「ふふ、ブン太君一人分くらいなら心配ご無用です」 「……ま、俺としては和葉さんの美味いお菓子が食えるから幸せなんだけどさ」 そう言って照れたように笑うブン太の頭を、和葉がよしよしと撫でる。 「子どもは大人に甘えていればいいのよ」 「また子ども扱いかよ~。ちぇっ。バイトして金貯めたらみてろよぃ、店のケーキ片っ端から注文してやるからな」 「うん、楽しみに待ってるね」 「おい和葉!」 「はーい!」 肇に呼ばれ和葉が返事をすると、ブン太はムッとした顔をした。 「じゃあゆっくりして行ってね」 ブン太は返事をしなかった。 和葉が去って行ったのを確認して、カウンターの中で楽しそうに話す2人を睨む。 なんだよ、あの大男……いっつも和葉さんの事呼び捨てにしやがって、偉そうにーーー ブン太は和葉に惚れていた。 餌付けされた。 と言った方が正しいかも知れないが、すっかり懐いている事は間違いなかった。 こうやってしょっちゅう部活帰りに和葉の店に来るのも、少しでも和葉と一緒にいたいから。 聞いてはいないが和葉の年齢はきっと20代の前半くらいだろう。 自分と少なくとも5つは離れているはずの年上の和葉。それだけでもかなりハンデなのに、今目の前で和葉と話す大男。 こいつが目下ブン太の悩みの種であった。 ずっと和葉とどういう関係なのか聞けず、ブン太はやきもきしていた。 先ほど頭を撫でられた事といい、完全に子ども扱いをされるのが辛い。 男として自分を見て欲しいのだが、ブン太はやはりまだ高校生で、恋愛の駆け引きの仕方など分からない。 今まで好きになった女の子がいなかった訳ではないが、それは全部同級生か年下だったし、兄弟も弟2人という極めつけの男臭さ全開で育っているので、大人の女の人との接し方など分からないのだ。 そんなブン太の気持ちを知らない和葉は、大男と話すとキッチンへと消えて行った。 先ほどやって来たカップルの注文を作るのだろう。 っ!? ブン太は大男と目が合った。 ニヤリと不適な笑みを寄越す大男にブン太は一瞬目を丸くさせ、すぐに視線を逸らしてマカロンを口にほおり込む。 くっそー! 大男め。和葉さんと仲がいいからって、俺の事バカにしてやがんだなっ!? 口に含んだマカロンはすごく美味しくて、優しい味がした。 空腹で倒れていたブン太を嫌な顔一つせず自宅に招いて手料理をたくさん振る舞ってくれた和葉は、今時珍しいくらいに本当に優しい人だと思う。 誰に対しても優しいのは店で接客をしている姿を見れば納得だし、料理もお菓子も優しさと愛情がこもっているのが伝わってきてどれもすごく美味しい。 小さい店だが、客足が途絶える事はブン太が知る限りではなかった。 それに助けてもらった時は空腹過ぎて気付かなかったが、和葉はなかなかの美人だ。 あまり背が高い方ではないがスラリと手足が長く、Gパンもさらっと着こなしている。 仕事中は邪魔になるからだろうまとめている髪の毛も柔らかくてさらさらで、笑顔などは見る人の警戒心を一瞬でなくしてしまう。 おかげで和葉目当ての男性客も多く、和葉を独占してゆっくり話す時間がないので寂しいのだが、こうやって店に足を運ばない限り会えないのだから贅沢は言えないと我慢している。 俺ってこんなに健気な男だったんだな…… そんな事を考えながらブン太はコーヒーに生クリームをたっぷりと入れた。 「ねえ、えっと……ブン太君?」 突然名前を呼ばれ、ブン太は驚いて顔を上げた。 見上げた場所には顔は無く、もっともっと上にずらしたところでやっと顔にぶつかった。 ・ ・ ・ ・ ・ 無言で大男を睨む。 ぷっ! 急に大男が吹き出し、腹を抱えて笑い始めた。 「ーーーなんすか?」 苛々を全面に押し出しながら大男に言う。 「ははははっ! いや、くくっ……ブン太君って、マジで分かりやすいな」 は? 何の事かと大男をもう一度睨む。 大男はそれでもまだ笑いながら、これまた大きな手でブン太の頭を撫でる。 「あ~。よしよし。ブン太君は和葉の事、相当気に入ってるみたいだな」 むっ…… また呼び捨てにする大男に、ブン太が敵意むき出しの顔を向けると、大男はウインクをした。 「おっと、自己紹介がまだだったな。俺は汐屋肇。和葉の弟だ、ヨロシクな」 「えっ?」 ブン太は鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、大男改め汐屋肇を見た。 「心配すんな、あいつは俺の姉貴だ」 「弟……さん?」 どう見ても肇の方が和葉よりも年上に見えるのだが、姉弟だったのだ。 人は見た目で判断してはいけない。 ブン太は一つ賢くなった。 「ぷぷっ! あははははっ!」 再び爆笑を始めた肇に、店にいる客とキッチンから戻ってきた和葉が何事かと視線を向ける。 「な、なんで弟のくせに和葉って呼び捨て……?」 ブン太は混乱する頭で疑問を口にする。 「ああ? ああ、もうガキの頃からの癖だな。姉ちゃんなんて小学校以来呼んだ事ねえ」 なるほど、そういう事か。 ブン太は心底ほっとした。 この大男はライバルではなかったのだ。 そんなブン太に。肇は耳打ちをする。 「ま、せいぜい嫌われないように懐いとくんだな。それと、知らないだろうから言っとくが、あいつああ見えて27歳だぜ? ちなみに俺は25だ」 「いっ!?」 27ーーーマジかよ。俺と10歳も違うってのか? 衝撃の事実に頭が真っ白になる。 それでは子ども扱いされても仕方ない。 思ったよりも随分と年上だった和葉にショックを受け、さらに望みが薄い事に絶望感を感じながら、ブン太は甘いコーヒーを飲んだ。 「どうしろってんだぃ……」 続く… 次へ → 苦くて〜.2 お帰りの際は、窓を閉じてくださいv 立海大トップに戻る