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使い魔は刺激的-1 使い魔は刺激的-2 使い魔は刺激的-3 使い魔は刺激的-4 使い魔は刺激的-5 使い魔は刺激的-6 使い魔は刺激的-7 使い魔は刺激的-8 使い魔は刺激的-9 使い魔は刺激的-10 使い魔は刺激的-11 使い魔は刺激的-12 使い魔は刺激的-13 使い魔は刺激的-14 使い魔は刺激的-15 使い魔は刺激的-16 使い魔は刺激的-17 使い魔は刺激的-18 使い魔は刺激的-19 使い魔は刺激的-20 使い魔は刺激的-21 使い魔は刺激的-22
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■ 第一章 ├ サブ・ゼロの使い魔-1 ├ サブ・ゼロの使い魔-2 ├ サブ・ゼロの使い魔-3 ├ サブ・ゼロの使い魔-4 ├ サブ・ゼロの使い魔-5 ├ サブ・ゼロの使い魔-6 ├ サブ・ゼロの使い魔-7 ├ サブ・ゼロの使い魔-8 ├ サブ・ゼロの使い魔-9 ├ サブ・ゼロの使い魔-10 ├ サブ・ゼロの使い魔-11 ├ サブ・ゼロの使い魔-12 ├ サブ・ゼロの使い魔-13 ├ サブ・ゼロの使い魔-14 ├ サブ・ゼロの使い魔-15 ├ サブ・ゼロの使い魔-16 ├ サブ・ゼロの使い魔-17 ├ サブ・ゼロの使い魔-18 ├ サブ・ゼロの使い魔-19 ├ サブ・ゼロの使い魔-20 ├ サブ・ゼロの使い魔-21 ├ サブ・ゼロの使い魔-22 └ サブ・ゼロの使い魔-23 ■ 第二章 傅く者と裏切る者 ├ サブ・ゼロの使い魔-24 ├ サブ・ゼロの使い魔-25 ├ サブ・ゼロの使い魔-26 ├ サブ・ゼロの使い魔-27 ├ サブ・ゼロの使い魔-28 ├ サブ・ゼロの使い魔-29 ├ サブ・ゼロの使い魔-30 ├ サブ・ゼロの使い魔-31 ├ サブ・ゼロの使い魔-32 ├ サブ・ゼロの使い魔-33 ├ サブ・ゼロの使い魔-34 ├ サブ・ゼロの使い魔-35 ├ サブ・ゼロの使い魔-36 ├ サブ・ゼロの使い魔-37 ├ サブ・ゼロの使い魔-38 ├ サブ・ゼロの使い魔-39 ├ サブ・ゼロの使い魔-40 ├ サブ・ゼロの使い魔-41 ├ サブ・ゼロの使い魔-42 └ サブ・ゼロの使い魔-43 ■ 間章 貴族、平民、そして使い魔 ├ サブ・ゼロの使い魔-44 ├ サブ・ゼロの使い魔-45 ├ サブ・ゼロの使い魔-46 └ サブ・ゼロの使い魔-47 ■ 第三章 その先にあるもの ├ サブ・ゼロの使い魔-48 ├ サブ・ゼロの使い魔-49 ├ サブ・ゼロの使い魔-50 └ サブ・ゼロの使い魔-51
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使い魔は引き籠り-1 使い魔は引き籠り-2 使い魔は引き籠り-3 使い魔は引き籠り-4 使い魔は引き籠り-5 使い魔は引き籠り-6 使い魔は引き籠り-7 使い魔は引き籠り-8 使い魔は引き籠り-9 使い魔は引き籠り-10 使い魔は引き籠り-11 使い魔は引き籠り-12 使い魔は引き籠り-13 使い魔は引き籠り-14 使い魔は引き籠り-15
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時を同じくして場面は変わる。 「またミスヴァリエールのようですよ、オールドオスマン。ミス・シェヴルーズの『土』の授業中、錬金を失敗して爆発を起こしたようです。」 イルーゾォが即座に尻尾を巻いて逃げ出した爆発について、取り乱す事もなく冷静に報告する女性。 ミス・ロングビル、と名乗っている。 ルイズの級友(もっとも、お互いに意地を張って友人だと認めようとはしないが)の、褐色肌の少女キュルケ程ではないが 引き締まった身体は『出る所が出ていて』、知的な印象を与えるシンプルな眼鏡と相俟って随分に魅力的な女性だ。 彼女はこの学校で働く事になってから、まだ日が浅い。 それでも十分に慣れる程、『ゼロのルイズ』の『爆発』に関する噂は溢れていて、彼女の耳にも入ってきていた。 いや、それどころではない。 生徒同士噂をする場面にルイズが居合わせ、『サイレント』の魔法で黙らせようとして危うく爆殺しかけたのを目撃したことすらあった。 珍しい女生徒だ、と彼女は思う。 貴族であるのは当然、由緒正しい家柄の生まれでありながら、魔法の成功率は『ゼロ』、 どの魔法を唱えようと、起こる事象は全て『爆発』。 そんなケースは聞いた事が無い。本当にただの落ち零れなのだろうか―――― ――――ん?スタンド?それは何です? 「それから、ミス・ヴァリエールについてもう一つ。」 「ほう?」 「彼女の使い魔が逃げ出した、と報告があります。」 「逃げ出す?ミス・ヴァリエールは、コントラクト・サーヴァントも満足に出来んかったんかの?」 「いいえ、確かに成功したと聞いたのですが・・・・」 もっとも、何の魔力も持たない平民を召喚したのを成功と呼べるならば、だが。 しかしコントラクト・サーヴァントの方は確かに成功した筈だった。 変わったルーンだが、左手にそれを確認した。と、なんとか言うハゲた教師が言っていたのだ。 「契約した使い魔が主人から逃げ出すなど、有り得るのでしょうか。」 「普通なら有り得ん。有り得んが・・・・そうじゃ、彼女の使い魔は平民じゃったかの? 人間相手のコントラクト・サーヴァントについては、前例を知らんな。」 「彼女でなくとも御しきれない可能性があるわけですね?ですが」 問題は、『逃げ出した』だけでは無いのだ。 「見つからないと?」 「はい。彼女は捜索に役立つような魔法も使えませんから、見兼ねた教員が何人か捜索したのですが、『何処にも居ない』のです。」 「ふぅむ・・・・」 それはおかしな話だった。 気配を、姿を消す等の魔法など使えない平民が、比較的上位のメイジである教職員から隠れきる?そんなことが本当に可能だろうか。 オールドオスマンは手元の鏡を手に取った。装飾を施されたそれは、剣と魔法の世界にありがちな 任意の場所を映し出す遠見の鏡だ。 「ミスヴァリエールの使い魔、ミスヴァリエールの使い魔・・・・と。なんじゃ、普通に居るではないか!」 「え?」 その鏡には、教室から教室へと移動する生徒とは逆方向へ。辺りを見回しながら歩くイルーゾォがしっかり映って居た。 (イルーゾォ本人が知ったら驚くだろう。普通なら絶対に感知されないというのに。『この道具が鏡であるがゆえに』!映ってしまったのだ!) 「そんな、彼は・・・・!」 イルーゾォは、彼を捜索して居る筈の教職員や、ルイズ本人とまでもスルリとすれ違う。 「まあ見るからに、地味な青年じゃからのう。」 「そんな筈がありますかッ!」 鏡を囲んで見合わせる二人の背中に、ひかえめなノック音が届いた。 授業終り、教室前、廊下。 鏡の中のイルーゾォは、ドアからゾロゾロと流れ出る鞄の群れ(衣服はともかく、本や鞄を『自分の一部』と定義する人間はそういない。)から、 今朝ルイズの部屋にあったそれを見つける。 大人しく授業をうけていると言う事は、少なくとも今は自分を探しては居ないようだ。 パンナコッタ・フーゴの、躾のなってない下品なスタンド。『感染すれば最期』だなんて無茶苦茶な能力だったが、 当面の『敵』であるルイズの能力は『視界に入れば最期』・・・・無茶苦茶度合いがグンと上がっている。 前に『溶けた』ように、爆発して『消し飛ぶ』・・・・想像するだに恐ろしく、胃がきゅうとなった。 きゅう、ぎゅ、ぐうぅぅぅぅぅ・・・・・ (そう言えば、腹減ったなァ) ここへ来てから、何も食ってない。ついでに言えば水だって飲んでいない。 マン・イン・ザ・ミラーをちらりと見るが、そう言う事柄に対して何も出来ないスタンドである事は、自分が一番よく知っている。 心なしか、マン・イン・ザ・ミラーが申し訳無さそうな顔をしたように見えて (実際には帽子っぽいものと、眼鏡っぽいものと、嘴っぽいものは全然動かず表情なんてわからないのだが。) 咄嗟、「大丈夫だ。」と口をついて出た。 ルイズの鞄はふわふわと大食堂の扉に吸い込まれて行く。昼食の時間なのだ。 「大丈夫、耐えりゃあいいだけだ。オレは暗殺者なんだ。」 自分に言ったのか、マン・イン・ザ・ミラーに言ったのかは自分でもわからなかった・・・・もっとも、同じ事なのかも知れないが。 そして一方、ルイズ。 ついさっきまで、私は怒り狂っていた。あの使い魔の奴!平民の癖に!地味顔!空気!変な髪形! 召喚してみれば平民だし、中々起きないし、起きればバカにしたような事ばっかり喋って、終いには操り人形の糸が切れたみたいに動かなくなって。 放っておくのもなんだから部屋に連れ帰ってみたら、一方的に会話を切り上げてどこかへ消えてしまった。 信じらんない!使い魔って言うのは一度契約したら、主人に絶対服従のはずなのに。 先生方に「使い魔を探すのを手伝ってください」って頼む時、どれだけ恥ずかしかったと思う? きっと先生や、立ち聞きしていた生徒はみんな「『ゼロのルイズ』って奴は、使い魔すら扱えないのか?」って思ったわ。 中には隠しもせずに笑った奴だっていた。風邪っぴきの奴、いつか見てなさい・・・・! でも、今は怒ってない。アイツの顔を見たら怒りは帰ってくるかもしれないけど、少なくとも今はね。 なんでかっていうと、アイツ、イルーゾォ。昨日のお昼過ぎに呼び出したでしょう?それで、すぐ居なくなって、夕御飯は食べてない。 そして朝の私は腹を立ててたから、いかにも「これは罰よ!」って感じの粗末な朝食を用意させた。 食堂の場所は教えてなかったけど、幾らなんでもお腹が減ったら出てくるだろうって思ったもの。 でも、それでもアイツは出てこなかった。そして今も。 アイツは食べ物なんか持って居なかった。あんまりぼけーっとしてるから勝手に持ち物チェックをさせてもらったの。主人だし当然の権利でしょ? 見慣れない変な服とズボンのポケットには、小ぶりのナイフと手鏡がいくつか入っているだけ。 地味顔の癖にナルシストなのかしら?(ちょっと気持ち悪い)因みにそれらは、私が預かってる。 ナイフは危ないから部屋に置いて、鏡はポケットの中にある・・・・か、返すタイミングなんて無かったのよ! とにかく大事なのは、イルーゾォは今絶対にお腹を空かせてるって事。学校の何処でも「食べ物がなくなった!」なんて騒ぎは起こってないし。 それでも・・・・それでもアイツは姿を見せない。一度も。 ――――帰ってきたら身の回りの世話をしてもらうから! ――――嫌だね 心配と自信喪失で、最高に美味しいはずの昼食は砂の味がした。 確かに一日御飯を食べないくらいじゃ死にゃあしないわ。でも、食べられるんなら食べたっていいじゃない。 そんなに、そんなに嫌なのかな。私が・・・・『ゼロのルイズだから?』 「ねえ、タバサ?ちょっと頼みがあるの。一緒に・・・・キュルケは別で。一緒に来てくれる?」
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前ページ次ページゼロのメイジと赤の女王 ふたりが城に到着したのは、とうに日も暮れてのことだった。 ルイズは迷いのない足取りで城の中の一室に入ると、物も云わずにベッドへ飛び込んだ。 あれじゃ制服が皺になるんじゃないかなと陽子は思ったが、声をかけられるような雰囲気でもない。 何の気なしに窓へと視線をやって、驚愕に目を見張った。 「・・・月が、ふたつ・・・?!」 月影の国にも様々な非常識が溢れていたが、流石に月と太陽はひとつずつしかなかった。 ああこれはもう異世界確定だな。陽子は軽く頭を抱える。 どうしよう、不可抗力だと思うんだけど、やっぱり怒られてしまうだろうか。こんなに遠くまで来る気はなかったのだけれど。 仏頂面をさらに渋くした景麒と、穏やかなままで威圧する浩瀚を想像してしまい冷や汗を流す。 これはどうしたものかなと悩んだ末、意を決して身じろぎもしないルイズに声をかけた。 「ルイズ。悪いがもう一度教えてくれないか。わたしをこちらに呼び出したのは、何故?」 ぴくりと動いた少女は、ゆっくり起き上がりベッドに腰掛ける。 「・・・あんたなんか、呼びたくて呼んだ訳じゃないわよ」 勝手に呼んでおいてそのいい草はあんまりではないかとは思ったが、口は挟まずにおく。 「試験だったのよ。春の使い魔召喚の儀式。2年生に進級するために、使い魔を呼んで、契約する。その使い魔召喚のゲートをくぐって、あんたがここにきたの」 「つかいま、って?」 「そんなことも知らないの?メイジの目となり耳となって働き、主人の望むもの・・・秘薬なんかを見つけてきたり、その能力で主人を守る存在よ。 大概は、っていうか普通は動物か幻獣が召喚されてくるわ」 つまり使令のようなものか、と考える陽子にルイズは溜め息を吐く。 「・・・っていっても、あんたじゃ無理ね。何にも見えないし聞こえない。何よりあんた平民だもの。・・・仕方がないわ。 あんたにもできるようなことをやらせてあげる。とりあえず掃除と洗濯、その他雑用ね」 「・・・なるほど」 下働きの使用人扱いかと陽子は苦笑する。 「それはいつまでやればいいの?」 「いつまでも何も、メイジと使い魔は一心同体なんだから、一生に決まってるでしょ」 「一生?!」 突然切羽詰ったように叫ぶ陽子にルイズはびく、と肩を震わせた。しかし続けられた言葉に再び怒りに頬を染める。 「・・・それは無理だ、ルイズ」 「なんですって?!あんた、貴族の云うことが聞けないっていうの?!」 違うそういうことじゃないと激昂する少女を押し留める。そういうことじゃないんだ、もっと根本的な話。 「もしわたしがこのままもといた世界に帰れないというなら、わたしは必ず数年以内に死ぬだろうから」 「・・・・・・なによそれ」 ルイズは視線に物理的な力があれば陽子の顔など射抜いていたに違いないほどつよく彼女を睨みつけた。荒い息の下から絞り出した声は怒りに震えている。 「そんなに私の使い魔になるのが嫌だっていうの?!あんたですら私を馬鹿にするの?!あんたなんか平民の癖に!平民のあんたまで私を――――!!」 「ルイズ」 叫ぶ少女をなだめるように静かに名を呼ぶ。 「違うんだ、ルイズ。そういう理なんだよ。わたしが長い間国を空ければ、国は荒れる。国が荒れれば、麒麟は病む。麒麟が死ねば――――わたしも死ぬ」 そういうことわりなんだと静かに繰り返す。 「・・・何よそれ。意味わかんない」 「・・・かもね。わたしも最初はそうだった」 薄く笑って、陽子はルイズを見詰めた。静かな、穏やかな、誠実さが伺える、真っ直ぐな笑みだった。 「私は、王なんだ」 「・・・何それ?嘘ならもっとマシな嘘を吐きなさい」 間髪入れずに切り捨てられ、陽子は苦笑した。 本当なんだけどな、と嘆息するが、流石にこの格好が王に相応しいものではないことは陽子とて重々承知している。 執務中であるならいざしらず、そもそも民に混じろうとしてわざわざ袍など持ち出してきたのだからそれは当然のことだ。 こんなどこにでもいる子供のようななりでは、例え慶の民だとて陽子が王だと何人信じてくれるだろう。 「・・・・・・・・・もういい」 ルイズは陽子の言を世迷言の類と断じたのだろう、それ以上の話を拒むように会話を打ち切った。 「あんたは床で寝なさい。毛布は恵んであげるから。あと――――」 のろのろと着物を脱ぎネグリジェを被ったルイズは毛布と共に脱いだ下着を放って寄越した。 「明日の朝はまずそれを洗濯。それから私を起こして。いいわね、サボったら承知しないわよ」 それだけ云い置くと陽子の返事を待たずにベッドに頭までもぐりこんでしまった。 (くやしい、くやしい、くやしい・・・!) ルイズは毛布の中で必死で喚きだしたい衝動を抑えていた。泣きたいけれどそれはプライドに触る。 もうちいさな子供ではないのだ、このくらいのことで泣いたりできない。 しかし感情は嵐の海のように激しく荒れ狂い、抑える理性はその中に漕ぎ出した小船のように翻弄されるがままだった。 (せっかく使い魔を召喚できたと思ったのに、コントラクト・サーヴァントだって成功したのに、やっぱり私はゼロのままなの?) すぐに露見するような下手な嘘を吐いてまで使い魔になどなりたくないと、何度も何度も何度も何度も失敗した末にやっと呼び出せた使い魔(しかも小汚い格好の平民の少年だ!)にまで拒絶されて、ルイズは心底泣きたかった。 どうしてこんなにみじめな思いをしなければならないのだろう。 ドラゴンとかグリフィンとか、そんなものでなくていい。学院長のようなちいさなネズミでも構わなかった。 ――――平民なんて!あんな変な格好の、同い年くらいにしか見えない男の子にさえ馬鹿にされるなんて! (みてなさい) メイジを見るには、使い魔を見ろ――――。 あんな平民を召喚してしまった。構わない、凄い使い魔を召喚して見返してやりたかったけれど、そんな威を借るようなやりかたでなくたって、きっと皆を見返してみせる。 他でもない、自分自身の力で。 (みてなさい) 強い誓いを抱きながら、ルイズは瞳を閉じた。眠りはすぐに訪れた。 少女の安らかな寝息を聞きながら、やれやれと本日何度目になるかわからぬ溜め息を吐いた陽子に、冗祐が問う。 「・・・・・・どうするので?」 「仕方がない。幸い抜け出してきたばかりだし、しばらくは付き合おう」 その間にルイズの気が変わって、わたしの話を聞いてくれればいいのだけど。苦笑して陽子は毛布と下着を拾い上げ、壁に寄りかかって座り込んだ。 長居をする気は毛頭ない。期限を切って書置きを残してきたから、それが過ぎればきっと皆一斉捜索に乗り出すだろう。 ひょっとしたら景麒がまた迎えに来てくれるかもしれない。こうまで違う世界だとちょっと不安だけれど、まあ、アレでも一応神獣だし。 できればそれまでにルイズを説得し、慶に送り返してもらえればベストなのだが。・・・きっとそのほうが説教が少なくて済む。 「悪いが冗祐、お前にも付き合ってもらうぞ。誇り高い女の子に顎で使われる切ない状況を一緒に楽しもう。 たぶん帰ったら祥瓊や鈴が可愛らしく見えること請け合いだ」 楽しそうな言葉に微かに苦笑する気配が伝わる。是、と答えた彼に笑って頷いて、陽子も眠りに落ちていった。 前ページ次ページゼロのメイジと赤の女王
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部屋に帰ってきたメローネには、新たな試練が待ち受けていた。 それは・・・自らの主ルイズを起こすこと! 「たたき起こすのは・・・駄目だな。後でひどい目に遭いそうだ。 だがただでは起きそうにない・・・。こうするか。」 そう言うとメローネはタイツの中からイヤホンを取りだし、ルイズにつけた。 そしてパソコンに繋げるとiTunesを起動した。 「ん~~・・・悪霊退散~~zzz」 「駄目か・・・これならどうだ?」 「ん~~・・・がちゃがちゃきゅ~と・・・ふぃぎゅ@~~zzz」 「ばかな・・・!起きろよ・・・!これでッ!!」 「やっつぁっつぁっぱり りっぱりらんらん~zzz」 「こいつ・・・!化け物か・・・!仕方がない、最後の手段だ!」 「わひゃあ!あ・・・頭がぁあああ!」 「おはようお嬢様。どうしたんだ?」 「あ・・・メローネか。なんかものすごい音楽が頭の中に・・・」 (チーズのうた 作詞・作曲ジャイロ・ツェペリ・・・いつの間にかiTunesに入っていた。 とんでもない電波ソングだ・・・うかつには聞けん。) ゼロの変態第四話 余の仇名はゼロ 「着替えさせて。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」 「着替えさせてって言ってんの。貴族は使用人がいるときに自分で着替えたりしないのよ。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・わかった・・・」 メローネは着替えさせている間中自分の中の獣(発情中)を押さえるのに必死だった。 着替えをすませると、2人は食堂へ向かった。 「うほっ、いい食事!」 豪華な朝食をみてのメローネの一言である。もうすこしまともな台詞を吐け。 「そういやここ最近ろくな文句って無かったもんなァ~」 なぜかって?あなた達には理解できるはずだ。 「なにいってんのよ。あんたの食事はこっち。」 ルイズの指さした先は・・・床だった。 そこには堅そうな黒パンとお茶と見間違えそうなスープ。 「感謝しなさいよ。使い魔は普通は外だけど、私のおかげであんたは中で食べられるんだから。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 さすがの彼もこのときはプッツンしかけた。 「・・・外で待っている・・・」 怒りのこもった声でそう言うと、スープを一気飲みしてパンをもって外に出た。 「さ・・・さすがにやりすぎたかしら・・・?だ・・・ダメよルイズ! ここで弱気になったら、ますますあの変態につけこまれるわ!」 一方メローネは使い魔達の中で反省中であった。 あのような仕打ちを受けると、彼らのチームがかつて『組織』から受けていた仕打ちを思い出す。 (こんなことではダメだ・・・冷静さを欠くことは死に直結する・・・。どんな世界でも・・・ この世界ではこれが普通なんだ・・・逆に考えろ・・・ 『他の使い魔達はもっとひどい食事なんだ』そう考えろ・・・) メローネは他の使い魔が肉やらなにやら食べている中で怒りを静めようとしていた。 食堂から教室へ向かう途中、メローネ達の前に1人の少女が現れた。 萌えるような赤い髪、健康そうな褐色の肌。さらに巨乳。 「あらおはよう、ルイズ。」 「あらキュルケ。おはよう。」 「聞いたわよルイズ。変態を召喚したんですってね。さすが『ゼロ』ってとこかしら? それがその使い魔?・・・ふぅん。格好以外はまともそうだけど。」 「ちょっとキュルケ!なに人の使い魔じろじろ見てんのよ!」 言い争いをしている2人を尻目にメローネは彼女とルイズが知り合い、しかも仲が悪いこと、 キュルケという少女、みくるタイプかと思ったが気が強いことなどを理解した。 彼は長門派だし、セクシーな女性よりもかわいい女の子の方が好き(無論両方とも好きだが)なので 特に必要な情報ではなかったが。 「それよりも私、昨日使い魔を召喚したのよ。ま、誰かさんと違って1発で成功したけどね。」 「へーそう。」 「お・・・お前は・・・!」 メローネはキュルケのそばに現れた火トカゲに驚愕した。なぜならそれは先刻メローネが 使い魔達の中にいたとき、親切にも自分が食べていた肉を分けてくれた張本人だったからだ! 「この子の尻尾を見て。ここまで大きくて美しい炎は間違いなく火竜山脈のサラマンダーよぉ。」 「そうかおまえは火トカゲか~。道理で燃えてたはずだ。火トカゲだもんな~」 サラマンダーと聞くと嫌な記憶が蘇るのでやたら火トカゲを連呼するメローネ。ちなみに彼はゼニガメを選んだ。 「あら、あなたもこの子の魅力がわかるのね。そういえばあなた、名前は?」 「メローネだ。・・・それよりもうすぐ授業が始まるんじゃあないのか?」 「あ、そうね。貴方気が利くわ。じゃね、ゼロ。」 そういうと彼女は赤髪をかきあげ、火トカゲと共に去っていった。 「きー!!なによあの色情魔!火竜山脈のサラマンダー召喚したからって調子に乗っちゃって!!」 「まぁ落ち着けよ。あの火トカゲに罪はない。実際アレすごいよ?」 「うるさいっ!あんたご飯全部抜きにするわよ!」 「う・・・それは困る・・・」 あんな粗食あってもあまり変わらないのだが、ご主人様の好感度を下げないためにこういっといた。 さすがは三択恋愛の王者である。 教室にはいると生徒達の視線がいっせいにルイズとメローネに集まった。 メローネは大方ルイズを馬鹿にしているのだろうと予想した。そのうち三割はメローネに向けられていたのだが。 ルイズの言動を予想し、メローネは床に座ると他の使い魔達が集まってきた。 「なんだお前ら、そんなに俺が好きか?じゃあここは一つゲームをしよう。」 メローネはイヤホンをつけるとパソコンを起動させた。授業聞く気はゼロである。 そうこうしているうちに教師が入ってきたようである。メローネはゲームをし始めていたが。 「皆さん、春の使い魔召喚は大成功のようですね。ひとり妙な使い魔を召喚したようですが。」 教師のその一言に教室は笑いの渦に包まれる。 「おい『ゼロ』!『サモン・サーヴァント』ができなかったってそこら辺歩いてた変態つれてくるなよ!」 「違うわよ!召喚したらたまたまこの変態が出てきちゃったのよ!」 「嘘付け!」 メローネは我関せずといった態度で画面を見てにやけていた。ほかの使い魔も釘付けである。 教室が静かになった。どうやら授業が始まったようだ。 教師の名は『赤土』のシュヴルーズというらしい。 メローネはゲームをしながら、魔法には4つの属性があり、メイジにも四つのランクがあること だけは聞いていた。 だが彼も暗殺者の端くれ、教室の空気が一変したのを見逃さなかった。 「バカなっ!ヴァリエールに魔法を使わせるつもりか・・・!」 「退避ー!総員退避ー!」 「はっ!ここはどこだ・・・?次は何が起こるんだ・・・?」 ルイズが魔法を使うことになったのだろうが、生徒の脅え方が尋常ではない。ん?あのオッサンは誰だ? とりあえずメローネは生徒達に習って床に伏せることにした。その顔からは笑みが消えていた。 そのとき、大爆発が起こった。 「ちょっと失敗しちゃったわね・・・。」 そのちょっとで教室は半壊、シュヴルーズは気絶。謎のオッサンは消し飛んでいた。 「「「どこがちょっとだ!」」」 「まったく・・・今日は一段とひどいわね・・・」 そう言いつつキュルケはある疑問を感じていた。あれだけの爆発である。てっきり使い魔達が暴れて 大事になるかと思ったのだが・・・ するとキュルケの隣にいた少女が彼女の服を引っ張った。 「どうしたの、タバサ?」 「・・・あれ」 タバサと呼ばれた少女が指さした先には、使い魔達が恐怖に震えている姿があった。キュルケのフレイムは気絶している。 そして、その中心にいたのは・・・ 「は・・・はは・・・このゲーム、オレの勝ちだ・・・はは・・・」 笑いと恐怖が入り交じった顔をしている変態がいた。 ちなみに彼らがしていたゲームは「誰が『ひぐらしのなく頃に』を見て最後までリタイアしないかチキンレース」である。 「おい・・・ちょっとは手伝ってくれ。というかお前がやれよマスター。」 「ご主人様の不始末は使い魔の不始末よ。さっさと手を動かしなさい。」 ルイズ達はシュヴルーズの遺言により教室の後片付けを命じられていた。 「それにしても・・・『ゼロ』とはそういうことか」 「そうよ・・・。魔法の成功率ゼロ。だから『ゼロ』。」 メローネはルイズの態度で彼女が怒っていることを理解した。 しかもこの怒り方は戦友、ギアッチョと同じタイプだということを。 どんな言葉でも怒りを爆発させるトリガーになりかねない。彼は経験でそれを理解していた。 「・・・いけよ。」 「な、何?」 「ここは俺に任せて先に行け。昼飯を食い損ねたくはないだろう?なぁに、すぐに追いつく。」 「わ、わかったわよ・・・。」 (やっと使い魔というものがわかったのかしらこいつ・・・昼ご飯少しふやしてあげようかしら?) ルイズが去るとメローネはベイビィフェイスの手足を伸ばし掃除を始めた。 端から見るとヘンな機械がぷかぷか浮いている用にしか見えない。ルイズの前では使えないので 独りの方が作業がはかどる。 (・・・彼女は怒ると見境無いタイプだ。自分すら傷つける怒り方をするタイプだ・・・ ああゆうタイプは下手に励ますと怒り出しかねん・・・傷つけても悪いしな・・・) そしてメローネは掃除を手早く済ませると食堂へ向かった。 さらなる厄介ごとを引き起こすことも知らずに・・・
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「どう?平民に見下ろされる気分は?」 トリッシュの顔を見上げるルイズ。身体を動かそうとするが、なぜか地面に服が張り付いて動けない。 「マジでビビッたわ、アンタの魔法。マリコルヌがアンタのこと『ゼロ』って言ってたけど、 それってなんでも吹っ飛ばすから『ゼロ』って呼ばれてるのかしら?」 ルイズは悔しげに顔を歪ませトリッシュから視線を逸らす。ルイズが魔法の才能『ゼロ』だから そう呼ばれていることをトリッシュは知らない。 「平民にまで………負けて……私は…」 ルイズの呟きをトリッシュは聞こえなかったのか、聞かないフリをしたのか、無視して話を続ける。 「さっきの演技も…騙されたわ。正直アンタが脚を狙わなかったら負けてたわね」 それも違う。本当は胴体を狙ったのに脚に当たった。魔法の成功率も命中率も『ゼロ』 ルイズは『ゼロ』とバカにする者たちの顔を思い出し、平民にまでバカにされ泣きそうになる。 今にも泣きだしそうなルイズに顔を近づけ、トリッシュは囁きかける。 「今からアンタを殺すんだけど、もしアンタが土下座しながら私に、 『お許し下さいトリッシュ様。二度と逆らうようなことは致しません。どうかご慈悲を』って 言うなら命を取らないであげるわ。どう?私って優しいでしょ」 トリッシュはその眼に凍てつくような殺意を込めてルイズに微笑みかける。 ルイズは視線をトリッシュに移しその眼を真っ向から見据える。その眼に強い意志が戻っていた。 「私には貴族としての『誇り』があるわ!そんな恥ずかしい真似は絶対にしない!!」 ルイズは眼に怒りを宿しながら、“さっさと殺せ”と叫ぶ。それをトリッシュは冷たい眼で見下ろしていた。 「そう。いいわ殺してあげる。だけど、その前に一つ質問をするわ」 「まだ言うつもりなの!早く殺しなさい!!」 叫ぶルイズの顔を引き寄せ、澄んだ眼でルイズを見つめトリッシュは語りかけた。 「アンタさっき『誇り』って言ったわよね。じゃあ質問よ。平民に『誇り』はあると思う?」 「なに言ってんのよ!そんなの知るわけないでしょ!!」 「真面目に、答えて」 トリッシュの有無を言わせぬ迫力にルイズは口を閉ざし……生まれて初めて平民について考えた。 しかし、判らない。公爵家の三女として生まれ、平民は貴族に傅く者。貴族に奉仕するもの。 そう教えられ、そう思って今まで生きてきた。事実、全ての平民は自分の前に跪いた。 だから平民に貴族と同じく『誇り』があるのか判らなかった。 「わから……ない…わ」 ルイズがなんとか言葉を搾り出し、それを聞いたトリッシュがルイズの顔から手を離し立ち上がる。 殺されると思い、怒りが冷めて目の前に迫る死に恐怖し身体を竦ませ眼を瞑る。 だが、幾ら待っても最後の瞬間が訪れない。 怖々と眼を開くとトリッシュはルイズを見つめていた。眼を開くのを待っていたようだ。 「アンタ。シエスタの髪をバカにしたとき、彼女の顔を見た?」 質問の意味が判らなかった。シエスタとはあのメイドのことだろう。見ていないので首を振る。 「あの子、怒りと悔しさが混じった顔をしてたわ。『誇り』を傷つけられた顔をね」 ルイズはそのときの光景を思い出した。髪を罵ったとき、あのメイドの肩が震えていた。 あの時は怯えているものとばかり思っていた。 「私はあの子のことは良く知らない。この世界のこともね。アンタたち貴族が好き勝手に 振る舞おうと正直に言って私の知ったことじゃないわ」 言葉を区切り、トリッシュはルイズを見つめる。二人の視線が絡み合った。 「でも…『誇り』を傷つけることは許せない。それを目の前で見過ごすことはできない。 それを許したら『誇り』を守って死んでいった『仲間』に対して顔向けができないわ」 ルイズは悟った。トリッシュはあのメイドを庇ってルイズと決闘した訳ではない。 メイドの『誇り』が傷つけられたから戦ったのだ。 「アンタはまだ幼いわ。自分が誰なのかも判っちゃいない。だから、今は殺さないであげるわ」 そう言ってトリッシュはルイズに背を向けて脚を引きずりながら広場から去って行った。 ルイズは呆然と座り込む。いつの間にか、動けるようになっていた。 「あ~あ、平民にまでバカにされてダメね~。あなたをライバルだと思ってた自分が情けないわ。 帰るわよタバサ。『なにをすれば良いのか』も判らないおバカはほっときましょ」 歩き出したキュルケの後をタバサが追って二人は歩き出す。 つまらなそうなキュルケの顔をタバサは感情の伺えない眼で見つめ、その視線に気付いた キュルケはタバサを無視しようと思ったが、できなかったので唇を尖らせながら話しかける。 「なによタバサ。そんな眼で見ないでよ」 「ツンデレ」 タバサは小さな声で呟き歩みを速める。その後を顔を真っ赤にしながら叫ぶキュルケが追っていった。 「おいルイズ、大丈夫か?怪我してるんだろ?」 彼女の使い魔の少年が話しかけるがルイズは放心したまま動かない。 「なんだよ負けたことを気にしてるのか?別に良いだろ?勝率が『ゼロ』からマイナスに…ふぐりッ!!」 ルイズは『ゼロ』の言葉に反応して少年の股間を蹴り上げると、フラフラと立ち上がり 覚束ない足取りで医務室を目指し歩き始めた。 ルイズが立ち去った後、広場は男たちの泣き声と呻き声の三重奏に支配された。 トリッシュがヴェストリの広場を立ち去ったのと同時刻。中庭での惨劇も終焉を迎えていた。 倒れたコルベールに使い魔が襲い掛かるが、コルベールは平然と使い魔を待ち受ける。 体当たりの直前で使い魔は軌道を変え、コルベールの脇をすり抜けて迷走し始めた。 「ミスタ・コルベール!大丈夫ですか?!」 コルベールは慌てた様子で近づく一人の生徒に微笑んで立ち上がる。 「私なら大丈夫だ。すまないが君も怪我人を運ぶのを手伝ってくれ」 「判りました!しかし、あの使い魔はいったい……?」 先程まで暴れていた使い魔が目標を見失ったように迷走する様を見て生徒は不思議がる。 「あの使い魔は私の放った炎全てに体当たりをしたんだ、外れたものも含めてね。 それを見て判ったんだよ。あの使い魔は熱を探知して襲い掛かるんだってね」 迷走する使い魔には釣り竿のような物が付けられ、その先端にはコルベールが灯した 炎が揺らめいていた。 「フギャ?!」 猫のような植物がミセス・シュヴルーズに狙いをつけた直後、猫のような植物の周りの 赤土が盛り上がりゴーレムが姿を現した。ゴーレムはそのまま猫のような植物を 地面ごと持ち上げどこかに運んでいった。 「見せようよ『背中』ねっ」 ギトーは背中の使い魔を剥がすことを諦め、杖を自分に向ける。 「じゃあ後は頼むぞ『私』」 「ああ、任せろ『私』」 自分がとり憑いた人間と同じ顔をした人間がもう一人現れ使い魔は混乱した。 「えっ?どうなってるの?えっ?」 「これが風の系統が最強たる所以だ。お前がとり憑いたのは私の分身だよ」 ギトーの『偏在』が自殺し、本体を失った使い魔も虚空へと消えていった。 教師たちの戦いの一部始終を鏡から覗いていたオスマンは、溜息を吐いて椅子に身を沈める。 この程度の事態を自力で解決できない者などオスマンの元には一人もいない。 教師たちの心配はしていなかったが、未熟な生徒たちに被害が出たことが唯一気掛かりだった。 これだけの事件となれば揉み消すことなどできない。やがて王宮より査察団が来るであろう。 そのことがオスマンの頭を悩ませた。 査察団が問題ではなく、それを率いる人物が問題なのだった。 ジュール・ド・モット。この男は女好きで有名な貴族で、トリステイン魔法学院においても若いメイドに 眼を着け自分の屋敷に迎え入れることが度々あった。 そして、この男には黒い噂があった。迎え入れたメイドが数日後に失踪するのだ。 使用人が失踪すること自体はどの貴族の屋敷でも稀にだがある。 大抵が酷い扱いを受けて逃げ出すのだが、この貴族の屋敷では必ずそれが起こった。 それもメイドだけではなくその家族も含めてだ。 しかし平民が貴族を訴え出ることなどできる訳がなく、貴族は平民のことなど気にもしない。 「若い子らを隠すかの~」 オスマンはもう考えを廻らせて、もう一度溜息を吐いた 戦場のように慌しい医務室まで続く廊下をルイズは夢遊病者のような足取りで歩いていた。 次々と運ばれる怪我人の呻き声と医師たちの叫び声も耳に届かず、トリッシュの言葉が頭の中で 渦を巻いて鳴り止まない。 貴族の『誇り』とは敵に背を向けぬこと。両親からそう教わった。だが、目の前に死が迫ったあの時、 怖かった。逃げ出したかった。死にたくないと思った。 自分が情けなくなる。魔法が使えないから他人よりも貴族らしく振る舞おうと必死だった。 それがどうだ、蓋を開けたら中身は『ゼロ』。貴族の欠片も残ってはいない。 貴族と言う肩書きを取ったら自分になにが残るのか?『ゼロ』だ。何も残らない。 自分に付けられた『ゼロ』の二つ名。今までそれを否定してきたが、それは当たっていたのだ。 魔法の才能『ゼロ』、中身も『ゼロ』、ゼロ、ゼロ、ゼロ、自分には何もない。 そう思ったら、可笑しくなって、いつの間にか泣いていた。 「ミ……ヴァ…エール?ミス・ヴァリエール?!」 誰かが自分の名前を呼んでいる。顔を上げたら一番会いたくない人物がそこにいた。 「ミス・ヴァリエール!?ご無事ですか?!酷い怪我を……早くこちらへ!」 連れられるままに医務室まで辿り着く。 「先生、怪我人です!ミス・ヴァリエールがお怪我を!!」 「すぐに終わる!そこで待たせておいてくれ」 ルイズとシエスタの間に気まずい空気が流れる。それを感じているのはルイズだけだが。 「ねえ…どうして……?」 「如何なさいました?!傷が痛み……」 「どうしてよ!!」 ルイズの叫びにシエスタの言葉は掻き消された。 「どうして……なんで…私に優しくするのよ!!」 「なぜと申されましても、私は貴族の方々をお世話する……」 「だからどうしてなのよ!!私はアンタに酷いこと言ったじゃない!アンタの髪の色をバカにしたじゃない!! どうしてなのよ……どうして…………」 感情が昂ぶり、ルイズは再び泣き出した。その様子を見てシエスタはルイズの涙を拭い優しく微笑む 「そうですね、あの時は凄く悔しかったです。私の髪の色って死んだおじいちゃんと同じ色なんです。 だから、おじいちゃんをバカにされた気がして……あっ!でも、もう気にしていませんから」 ルイズはやっとトリッシュの言葉の意味を理解した。 トリッシュは誇りを守って死んでいった仲間を、シエスタは祖父を侮辱されたことが許せなかったのだ。 いつも自分のことばかりで他人を省みなかったことが恥ずかしくなった。 「ア…アンタの髪の色ってさ……よく見ると結構キレイじゃない…私のマントみたいで……」 ルイズは真っ赤になりながらも、なんとか言葉を口にして顔を背ける。 シエスタはルイズを不思議そうな顔で見て、笑って頷いた。それを見てルイズも漸く笑った。 「なんだかさ~前より脚が太くなった気がするわ。ほら、太ももとかさ~」 「そんなはずはない。後がつかえてるんだ、早く出て行きなさい」 聞き覚えのある声にルイズとシエスタが振り向く。医者に追い出され医務室から出てきたのは 脚に包帯を巻いたトリッシュだった。 「ア、ア、アンタ!なんでここにいるのよ!?」 「なんでって、アンタに脚を吹っ飛ばされたからでしょ。もう忘れたの?」 「ミス・ヴァリエールに?!」 驚くシエスタに挨拶して、トリッシュは脚を引きずりながらルイズと擦れ違う。 その後ろ姿にルイズは恥ずかしそうに声を掛けた。 「ひょ、ひょっとして…聞いてた?」 「なにも聞いてないわ。どうしてよ!とか~私のマントが黒くてキレイだ。なんてぜ~んぜん聞いてないわ」 「ぜ、全部聞いてるじゃないのーー!!」 今度は怒りでルイズの顔が真っ赤になる。 「次!早くしなさい!!」 「ミス・ヴァリエール。先生がお待ちですから」 シエスタに促され、恨みがましい眼でトリッシュを見ながらルイズは医務室に入って行った。 翌朝のアルヴィーズの食堂。 トリッシュは相変わらず貴族の席で食事を取り、ルイズがそれに絡んでいる。 昨日とまったく同じ光景だがルイズが昨日と違い本気で怒っているのではなく、トリッシュと じゃれ合っているような印象を受ける。 ルイズが包帯が巻かれた手で白魚のムニエルと格闘していると、トリッシュがそれを取り上げ綺麗に切り分ける。 「その手じゃ食べにくいでしょ?はい、あ~ん」 「こ、子供じゃないんだから!一人で食べれるわ!!」 「あ~ん」 「い、一回だけだからね!」 ルイズは顔を真っ赤にしながら口を開ける。ルイズの口に白魚の切り身が入ろうとした時、 トリッシュはフォークを返してそれを自分の口に放り込む。 「結構イケルわね」 「あ~っ!なんでアンタが食べてんのよ!!」 キュルケは離れた席でルイズとトリッシュの微笑ましいやり取りを眺めていた。 「そうでなくっちゃ私のライバルの資格はないわ」 「あ~ん」 タバサがいつの間にか白魚の切り身が刺さったフォークを差し出している。 「私もやるわけ?」 「あ~ん」 「はいはい、しょうがないわね。」 キュルケは眼を瞑って口を開ける。タバサがフォークを口に入れようとして、その手を止める。 「かかったなアホが」 右手の切り身はフェイント!本命は左手に握られたはしばみ草が刺さったフォークだ!! キュルケの口の中は白魚のムニエルを迎える準備が完了し、後はそれを待つだけとなっていた。 そこにとっても苦いことで有名なはしばみ草が襲い掛かった!! 攻守共に完璧な攻撃が口の中を襲い、キュルケの絶叫が食堂中に響き渡った。
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今は昔 一五六五年頃 王位継承を争った ふたりの女王がいた 一人は女王エリザベス一世 もうひとりは美貌の23歳メアリー・スチュアート ともにチューダー王家の血統を継ぐ親戚同士で タルカスと黒騎士ブラフォードはメアリーの忠実なる家来だった (中略) 二人は捕らえられた そして処刑されるその寸前聞かされたことは 「メアリーはすでに処刑した」 ふたりはこうして処刑された、強い恨みを残して処刑されたのだ タルカスは その筋肉が怒りのため硬直し首を切り落とすのに処刑人は 何本ものオノを折ったという ブラフォードは その長髪がどういうわけか 処刑人の足にからみつきにいくまでくい込んで 死んでいったという そしておよそ300年後吸血鬼ディオによりゾンビとして蘇ったブラフォードとタルカス しかしタルカスは一夜で今度はただのゾンビとして再び歴史の闇に消えた 一方ブラフォードは人の心を取り戻し 300年後の世界の友人ににpluck(勇気)の剣を託して眠った しかしブラフォードは女王のもとにではなく新たな主人のもとへと旅たつ事になった 使い魔は英雄 「宇宙の果てのどこかにいる私のしもべよ!神聖で美しく!そして強力な使い魔よ! 私は心より求め!訴えるわ !我が導きに答えなさい!」 青い空、緑の草原にすさまじい爆音が響いた 「やった!さすがルイズ!何も召還できてないぜ!」 波紋が吸血鬼に流れるような勢いで笑いが広がった 「ゼロの分際で高望みしすぎたんだ」 「さようなら!ルイズ君の事はわすれない!」 「退学ゥ!退学ゥ!」 「貴族として終了のお知らせ」 「ちょっとまて!な・・・何かいるぞッ!!!」 野次を飛ばしていた内の一人が叫んだ 「こ・・・これは・・・HE・・・I・・・MI・・・・N・・・・」 その時ルイズの周りでわかりやすく「プツン」と決定的何かが切れた音が響いたという 「ミスタ・コルベール!もう一度召還さs「NO(だめでございます)」 「(しかし成功には変わりない!今すぐ契約しにいかないと!)」 ルイズがそう思ったときにはすでに使い魔に向かって全力で走り出していた! ズギュウゥウウウン! 「UOOOOOOOOOOOO!!!!」 ブラフォードは激痛により目を覚ました 「(ここは何処だ・・・!た・・・太陽!俺はゾンビになって倒されてあの世に行ったはずでは・・・」 「お・・・おわりました!」 ガクガク震えながらもルイズは契約できたと伝えた 「ふむ・・・・珍しいルーンだな・・・」 とコルベールはスタープラチナもびっくりなスピードと精密動作で ブラフォードの手に刻まれたルーンを紙に写した 「さて教室へ戻ろうか」 コルベールがそう言おうとしたときには既にほぼ全員が帰っていた 「アンタ名前は?」 「俺の名は・・・ブラフォード・・・黒騎士ブラフォードだ・・・」
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使い魔は灰かぶり-1 使い魔は灰かぶり-2
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季節は春。 ここはハルケギニア大陸にあるトリステイン王国の王立トリステイン魔法学院。 その広場では年に一度の使い魔召喚の神聖なる儀式が行われていた。 そして今その儀に向かっているのは、ルイズ・ド・ラ・ヴァリエール。 桃色がかったブロンドに白い肌、鳶色の目を持つ可憐な少女である。 だがそのルイズは今かなり焦っていた。 なぜなら使い魔を召喚する魔法『サモン・サーヴァント』を、もう3回も失敗していたからである。 「やっぱりルイズには無理なんだよ!」 「なんたって成功率『ゼロ』のルイズだもんなー!」 周りからのそんな野次にルイズは気丈に言い返す。 「黙ってて!集中が乱れるでしょ!」 そして五たび呪文を唱えだす。 (今度こそ……お願い!!) だが願い虚しく、またも大きな爆発が起きてしまう。 (……ああ……やっぱり、私、ダメなのかな…………) 五連続の失敗に気丈なルイズもさすがにガックリとうなだれる。 だが、しかしッ! 「お、おい、何かいないか?」 「本当だ!何かいるぞ!『ゼロのルイズ』が使い魔を召喚しやがった!」 周りから聞こえる声に驚き前を見上げるルイズ。 爆発の煙が晴れてきたそこには、いかにもウエスタンな格好をした男が倒れていた―― to be continued