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仮面の(スタイリッシュ)アイドル エリー SR 自然文明 (7) クリーチャー:ビーストフォーク號/カリスマ・アイドル/スーパー・アイドル 11000- ■W・ブレイカー ■このクリーチャーはバトルする時、パワーを-9000する。 ■このクリーチャーがバトルに負けた時、相手は自身のクリーチャーを1体選び、持ち主のマナゾーンに置く。 ■自分の自然のクリーチャーは、「セイバー:カリスマ・アイドル」を得る。 作者:minmin フレーバーテキスト アンタたち無名のアイドルがいくら束になったって、私の輝きの前にはすべて霞んでしまうのよ!---仮面のアイドル エリー 評価 なかなか使い道が限られますな、ランブルレクターなんてやられたら…… -- 手羽先 (2017-01-30 21 20 37) Tならペンチと相性良さそう -- Orfevre (2017-01-30 21 24 39) 名前 コメント
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前ページ次ページゼロのドリフターズ その少年は一言で言うならば、"普通"であった。今年の誕生日は既に迎えた17歳の高校二年生。 黒髪に黒瞳。青を基調としたパーカーに、群青色のジーンズ。片手にはノートパソコンが入った鞄を提げていた。 学業の成績は中の中。運動能力は優れてはいないが劣ってもいない。 体格も特筆することなく平均的。成長もぼちぼち止まってきたかも知れない172cmの中肉中背。 性格は良くも悪くも抜けている。アクシデントにも早々動じない。割かし何でもかんでも受け入れる。 良い言い方をすれば柔軟であり、悪い言い方をすれば鈍感だ。物事を深く考えない、ある種の楽観主義的性格。 変なところで負けず嫌いで、好奇心が旺盛だが、それくらいはよくある個性の内。 彼女は今まで一度もつくったことがなく、総じてよくいる平々凡々な男子である。 彼――平賀才人は、秋葉原からの帰りであった。 以前に修理したノートパソコンはすこぶる調子が良く、不具合らしい不具合は今のところない。 ただしあれやこれやと手を出している内に、メモリ不足を感じて増設に走ったのであった。 いずれはデスクトップパソコンを自作するのもいいな、などと思いながら帰路を歩む。 才人は携帯電話を開いて時刻を確認する。少し夕食には遅れてしまうだろうか。 今朝方は寒くパーカーを着ていったが、「そろそろ本格的に衣替えの季節かな」などと考える。 明確な不満こそない平凡な生活だが、何かこう劇的な刺激が欲しくもある毎日。 彼女の一人でもいれば高校生らしい青春をエンジョイ出来るのだろうが今一つ・・・・・・。 「・・・・・・なんだこれ?」 声に出てしまっていた。携帯を閉じて歩を早めようとした矢先。 歩き慣れている道。今までに、"こんなもの"は見たことがなかった。 夕暮れ時に"光り輝く鏡"。目の前にあって、しかし"それ"に自分の姿は映らない。 ということは鏡ではないのだろうか? とはいえ、巨大な電灯にしては・・・・・・。 才人は空いている左手でそっと触れてみる。 熱かったらすぐにでも引っ込めるつもりだが、表面に近付けても特に熱気は感じない。 そのまま止めずに突っ込むと、なんと指が沈み込んでいった。 「うわっ!?」 反射的に手を離す。左手を見つめて握ったり開いたりするも、特になんともないようであった。 「・・・・・・?」 首を傾げる。自分の背丈よりも大きく、薄っぺらい。幅は人一人が軽く通れるくらいの余裕がある。 目を疑ったのは僅かに浮遊していたこと。だがワイヤーかなにかで吊られてるようにも見えない。 「・・・・・・蜃気楼? オーロラ? なわけないよな」 休日の住宅街。こんな直近の地面スレスレに光る自然現象など聞いたことがない。 むしろ人工的なもの。例えば3Dを空間に立体投影するような、SF的な機器が頭に浮かぶ。 もしくは幻覚でも見ているか、眼に異常でもあるかだが、そういうのはあまり考えたくはない。 誰かに尋ねてみようと辺りを見回してみるが誰も見当たらない。 わざわざ他人の家のインターホンを押して、呼んでくるのも憚られる。 本当になんの気なしだった。ただ本能的な好奇心に才人は従った。 もしも虹の根元が目の前に見えたとしたら、誰もが触ってみたり、くぐってみたりしたくなるだろう。 そんな程度の・・・・・・ささやかで軽い心持ち。 「よっ」と軽やかにステップを踏んで飛び込んで見る――と、視界全てが純白に染め上げられたのだった。 † 才人は予想外の眩さに目を瞑りつつ、多分向こう側の地面につくんだろうなと普通に思っていた。 されど着地のタイミングがズレて、一瞬戸惑ってしまう。 例えるなら、階段を登っていて、もう一段あると思っていたのになかったような感じ。 あると思っていたものがなく、空転する足。それでもすぐに足裏が引っ付く地面は存在した。 されど視界が閉じられている上に、勢い良く飛んだこと。 さらにノートパソコンという荷物によって体のバランスが崩れ、前のめりに倒れ込む。 次の瞬間に襲い掛かるだろう痛みを予感するが――別段そんなことはなかった。 それどころか何故だか天国のような気持ち良さ。卸したての最高級寝具でもこうはいかないだろう。 未知の感触がクッションになって、五体無事にいられたのだった。 「う・・・・・・ぶ・・・・・・」 声を発せない息苦しさに気付いて、頭を上げる。ふわりと芳香が鼻腔を伝う。眼前―― ――ほんの目と鼻の先には"女の子"がいた。さらに地べたは道路ではなく、木目の床になっていた。 外にいた筈だったが、視界の端に映るのはどこかの室内であった。 頭で理解するのには十数秒とかかったものの、心の中では素直に感じたことを信じようとしていた。 ――ここは紛れもなく"天国"だと。少なくとも現実ではない。 事故にでも遭って既に俺は死んでいるのか、あるいは夢でも見ているのかも知れない。 絡み合う互いの瞳。一切合切が吸い込まれるほどに美しい翠眼。 少女もキョトンと見つめるばかりだが、それがとにかくこの世のものとは思えない美しさ。 テレビや雑誌で見てきたどんな有名人、女優やアイドルすらも比較対象にするのも失礼なくらいに。 才人自身そんなに詳しくはないが、きっとどのような名画や彫刻だって及ばぬ境地。 女神がいるとすれば、きっとこんな感じなんだろうと・・・・・・才人は呆けていた。 † ティファニアは突然のことに尻餅をつき、その上に何かが覆い被さってきた。 目を開けるとそこにいたのは・・・・・・人間のようだった。 顔が上がって目が合うと"男の子"。それも同じくらいの年の頃ではないかと思う。 いや――そんなことよりも今の状況であった。 (人・・・・・・?) 確かに。紛れもなく人間である。小動物や幻獣ではない。耳も短くエルフでもない。 どうしようもなく人間で、間違いなく召喚のゲートから出て来たのだ。 (どうして?) わけがわからない。何故"人間が召喚された"のか。 ティファニアの胸の内には様々な思いが、自分ではどうにもならぬほどに渦巻いていた。 † 金髪のツインテールにメガネをかけて、標準よりも大きな胸を機関の制服で包んでいる女。 『十月機関』の導師――『石棺』のオルミーヌは素直に感じた思いに魅かれていた。 "大師匠"に命じられて遠間から監視していた筈だったのだが、彼らにいつの間にか引き入れられてしまっていた。 廃棄物に対抗する為に漂流者を集結させる目的を持つ組織の一員が、逆に取り込まれてしまった感。 血液が染み込んだような真っ赤な甲冑。大刀を豪快に振るう、日本は戦国薩摩の剛将――島津豊久。 眼帯に着物。日本は戦国の世で培った頭脳を惜しみなく使い、異世界にてまた新たに夢を描く――織田信長。 二人の時代より遡ること400年。日本の平安は源平の時代より、女と見紛う容姿を持つ弓の名手――那須与一。 ハルケギニアとは違う異世界、日本の武士達。彼らは彼らの理で、ひた疾走る。 オルテによって弾圧されていた者達を率いて、国を"奪る"と言い放った。 漂流者が漂流者として戦う為に、彼らは彼らの国を作ると行動を開始した。 既にオルテの占領代官を倒し、帝国に小さくも確実に楔を打ち込んだ。 彼らの武器は何よりもその意志。彼らならばあの強大な黒王軍にも――と思わせられる。 「おい、オルミー乳」 「はぁ・・・・・・なんですか」 名前をわざと間違えてセクハラをしてくる自称魔王をあしらうように、オルミーヌは返事をする。 「さっき言うたのは間違いないな?」 「えぇ・・・・・・まぁ、魔導妨害があるまでは確かにここで捕捉していたらしいです」 そう言うとオルミーヌは、信長達が眺めている大きめの地図に描かれた街を指差す。 占領代官の館から奪った地図には、信長たちの手によって事細かに書き込まれ、戦略図としての機能を果たしていた。 「まずいにゃあ~、これはヤバイ」 「そんなにまずかか?」 豊久が近付いてきて、地図を覗き込みながら話に入ってくる。 「おーおー、読めるのかのー? 島津の猪武者がのー」 「馬鹿にすっどな、こんぐらいわかる」 鬼島津。豊久自身、英才教育さながらに、数多の戦場経験に裏打ちされた経験と兵法を会得している。 「じゃっどん、黒王とやらを討てば崩壊するんではなかか?」 既に見聞き及んでいる情報を統合した上での豊久の発言。 黒王軍は、軍団の長である黒王自身によるところが大きいと。 猪武者らしい結論に信長は呆れ、問われたオルミーヌが答える。 「確かに可能性はあると思いますが・・・・・・でも・・・・・・」 大将を潰して軍を瓦解させることは往々にして有り得る話。 しかし問題は件の総大将の首級を如何にして殺るかである。 「ぼくが狙撃しましょうかー?」 そう言って与一が割り込んでくる。弓の達人たる彼ならば、条件さえ揃えられれば不可能ではないだろう。 「無理だな、今のところ聞く限りじゃ根本的な戦力が違いすぎ。磨り潰されんのがオチよ」 現状では到底戦えない。単純な兵力差ばかりでなく、兵站も軍備も何もかも。まだまだ烏合の衆に過ぎない。 直接討つどころか、狙い撃つ為の前提すらも至難。 まともな軍勢を相手にするなら、こちらもまともな軍勢を用意するのが基本である。 されど王制国家には期待出来ない。とどのつまり十月機関が言うような、他国の君主頼みなんてことはありえない。 「少数には少数の利があるど」 「んなこたぁ百も承知よ。だが今はそこまで焦る必要はない」 織田信長――かつて戦国の世を支配せんとし、成し得ずとも、頂を仰ぐには至った男。 何もかもを失った異世界においても、彼の中には既に確固たる計画が生まれている。 ハルケギニアにおいても朽ちぬ夢――天下布武。 戦争をするには、軍事力を手にするには、己が上に立つしかない。 その上でしっかりと戦略を立て、戦術を練って挑むべきである。 合戦そのものはそれまで"積んだ"事の帰結。合戦に"至るまで何をするか"が戦。 その本質を理解している信長は、言い聞かせるように豊久達に断言する。 「まずは兵を集め、武器を揃え、調練せねばな」 魔法というものには驚かされたが、やはり必要な物は"誰にでも扱える武器"だ。 特定少数にしか使えないものでは、補充も効かず不確定要素も増える。 強軍を作るには兵器の開発と量産、練兵体制の確立が不可欠であると。 こっちの世界にも鉄砲は存在する。しかも火縄ではなく火打石を使ったもの。 まずはこれを大量の揃える。同時に火薬も必要になってくる。 魔法使い達が『錬金』で作れこそするものの、生成量には限度がある。 さらにオルミーヌの話では、"漂流物"の中には使い方のわからない"槍"とやらが存在するらしい。 何でも未来から漂流してくるらしい物品だとかで、"ろまりあ"に保管されていると。 今ある鉄砲よりもさらに進んだ武器。己が知る火薬よりも遥かに凄い威力の物質。 もし仮にそんなものがあったとしたら。それを解き明かすことが可能なのであれば―― 大幅な戦力上昇に繋がるやも知れない。ゆくゆくの文明の発展に寄与するやも知れない。 武器に限らず――数寄もあるといいなあなどと思いつつ――さぞ心が踊るというものである。 「――そいじゃ、今はとりあえず逃げるしかなかか」 「おう。しかし問題なのが"どこへ"かってことなんだが」 補給の為に略奪でも行おうものなら、さながら賊軍と変わりなく。 かと言って強行軍でもすれば、日干しにもなりかねない。 オルミーヌが手配している補給も、妨害の所為で明確にいつ届くかわからない。 「・・・・・・押し付けっが」 「おっ、珍しく意見が合ったにゃー」 豊久の案に信長はグニャリと顔を歪めて笑う。一方で豊久自身は、地図を眺めて二の句を紡ぐ。 「こっちの"とりすていん"ってのを利用させてもらう」 「んむ、いずれは組むことがあるとしても、今は仕方ないのう。少し面倒を見てもらおうかの」 「なれば当面の拠点は・・・・・・ここじゃな」 ドンッと音が鳴らんばかりにトリステインの国境線、森の中の一つの廃城を豊久は指で突きつける。 (おうおう、ほんに時折鋭いのォ~) 「そこからどうするんですかー?」 背後霊のように張り付いて覗き込んで聞いてくる与一に信長は答える。 「基本は頃合を見て迂回じゃな」 「んむ、そうと決まれば行くが」 「はっ?」 信長は間の抜けた声を上げて、すぐにその言葉の意味を理解する。 そうだった、こういう奴だった。こまごまとしたことを決めるべきなのに、この電光石火が如き動き。 薩人マッスィーンたる、それが彼らしく"彼の家"の個性で由縁であるのだが―― 確かに豊久の言うことは一理ないこともない。用兵において神速は基本。 早々に拠点を構築出来れば、それだけ長く兵を休めて鋭気を養うことも可能となる。 西にあるトリステイン国を、少勢ながらも既に軍となっている一団が通るには面倒が多過ぎる。 されどこのまま南下すれば東南に位置する黒王軍とかち合ってしまう可能性が高い。 黒王軍の予測進路を考えれば、いつでもトリステインになすりつけられる位置で様子を見るが上策。 戦略的にも早めに移動すべきなのは信長とて理解しているが、いくらなんでも限度がある。 妨害があるまで連絡をとっていた、補給係との合流も考えなくてはならない。 ぎゃーぎゃー言い合いながらもどこか楽しそうに軍議に興じる信長と豊久。 それらを微笑ましく眺めつつ、時折横槍を入れる与一を他所にオルミーヌは独りごちる。 (大師匠さま・・・・・・) オルミーヌは天井を仰ぐ。なんだかんだでここまで付き合わされている。 彼らは、我ら十月機関の言うことなんてまるで聞こうとしません。 知識が違う。技術が違う。考え方が違い、生き方が違う。何よりも死生観が決定的に違う。 言動も行動も、全てにおいて常軌を逸しているとしか思えない"ニッポン"の"ブシ"。 彼らはそういうものなのだと納得は出来るが、ついぞ理解することは出来ないかも知れない。 けれどどうあっても魅かれてしまいます。言い知れぬ魔力のようなものに。 さながら火蛾のように、焼かれるとわかっていても吸い寄せられてしまう。 付き合っていくのは心身共に、冗談抜きできついです。すぐにでも逃げ出したいくらいです。 でも――それでも――今は・・・・・・わたしオルミーヌは、彼らについていこうと思います。 † 「はぁ~あ・・・・・・」 もう何度目になるのかは数えていない。 ここずっと――月光浴を楽しみながらも――いつも頭に残るモヤモヤ。 年の頃は五歳を数えるくらいに見えるその少女は、夜空を見上げて歩きながら、またも大きな溜め息。 どうしてこうなったんだろう。最初は単純な好奇心だった。 漂流者は"どんな味"がするのだろうと、そんな些細な出来心であった。 それに漂流者であれば"いなくなっても騒がれない"という打算もあった。 寝静まる夜半を見計らって廃屋に忍び込むと、四人ほど寝息を立てていた。 漂流者が複数集まっているとは聞いていたが、いっぺんに獲物にありつけるのはありがたい。 まずは一番屈強そうな男を狙う。ついでに"屍人鬼"にしてやれば、他の者に気付かれた時に対応し易い。 物音一つ立てることなく近付いていき、首筋まで顔を寄せると、わたしは引っ込めていた"牙"を出す。 いざ噛み付いて"血を吸う"ところで、男と眼が合った――瞬間、天井を見つめていた。 「なんじゃお前 おまあ 、女子 おなご じゃなかか」 すぐさま明かりが灯されて、一瞬だけ目が眩む。 そして自分がようやく躰ごと半回転して組み伏せられていること。 さらに首筋に冷たい何かが当てられているということを認識する。 "獣"。わたしを組み敷いている男の飛び込んできた第一印象は"それ"だった。 状況把握の為に視線だけ動かせば、眼帯の男は観察するようにこちらを眺めている。 さらに女のような――恐らく――男もこちらを見て薄く笑みを浮べていた。 そしてかなり遅れてから騒ぎに気付いた女は、眼鏡をかけると「ギャー」と叫び声を上げて、部屋の隅まで逃げる。 獣が如き屈強な男はすぐにでも、わたしを解放して立ち上がると、刃を鞘へと納めた。 「貴様 きさん はなんぞ」 「ぇ・・・・・・あっ・・・・・・」 「随分と可愛い刺客だにゃー」 「ははっ、でもなんか不穏でしたねぇ」 後に知ったことだが、獣男の名を"トヨヒサ"。眼帯は"ノブナガ"。女男は"ヨイチ"。眼鏡が"オルミーヌ"と言った。 「くっ・・・・・・」 わたしは『先住魔法』を唱えようとするも、ほんの僅かな一瞬の間に、ヨイチが弓を手に矢をつがえていた。 毛ほどにもない気配の変化に鋭敏に対応した早業の前に、躊躇せざるを得ない。 そしてトヨヒサに鋭く見つめられただけで、完全に行動に詰まってしまった。 「・・・・・・あれ? もしかして吸血鬼!?」 オルミーヌが叫ぶ。牙を出しっ放しにしていたのが迂闊であった。 無知な漂流者と思っていたが、存外こちらの知識を有しているとは、甘く見ていたとしか言えない。 もっとも慎重だとしてもあの瞬間、咄嗟にそこまでの思考に至れたかは別であるが。 「"きゅうけつき"? なんじゃそれ そい は」 「妖魔です!! 化物ですよ! それはもうすっごく恐ろしい"らしい"――」 「落ち着けいオッパイーヌ」 「あーもう! わたしはオルミーヌだと何度も!!」 「わかったわかった、とにかくそう興奮されちゃ困る。というわけでオルミーオッパイは置いといて本人に聞こうじゃないか」 「わかってないー! 名前覚える気ないだろさては!!」 考えていることを見透かされるようなそのノブナガの片瞳に、わたしは生唾を飲み込む。 「嘘は吐かんでくれよ、与一の矢が飛ぶでの」 「百発百中ですよ」 冗談には微塵にも聞こえない圧力と、実際に矢を突きつけられた状況。 もはや真実を語る選択しかなかった。生半な嘘は通じまい。 当然そのまま殺されることすら覚悟をして・・・・・・―― ――そうしてわたしはいつの間にか、何故だか引きずり込まれてしまっていた。 連中はわたしが吸血鬼であることも無視して・・・・・・というよりは危機感がなく。 十月機関とかいう組織に属するオルミーヌ以上に、ハルケギニアに詳しいわたしを迎え入れた。 恐ろしい力があることすら気にも留めずに、都合良くわたしを使っている気でいる。 わたしは見た目よりもずっと長く生きている。 人間社会に潜む吸血鬼ゆえに、確かに生きていく為の知識はそれなりにあるつもりだ。 しかしだからと言って、エルフともまた違う――単一の人間にとって最大の敵性種族。 上手く事を運べば、町一つすら滅ぼせる吸血鬼を知恵袋代わりにするなんて―― (狂気の沙汰よ・・・・・・) と、吸血鬼でありながら人間の立場で見て素直な感想を心中で呟く。 わたしと十月機関の情報によって、ハルケギニアの情勢を把握したトヨヒサ達。 時機を見ると、なんとオルテに虐げられていた有翼人をまずは解放した。 続いてオルテの占領土政庁である執政代官の城館を襲撃。 そのまま周辺を平定して、元ゲルマニアの平民、貴族であったメイジまでも傘下に入れた。 最初こそ強固に存在した差別意識も今は薄れつつあり、連中は種族差を取り払った国を作るつもりであった。 続いてオルテ執政代官を殺して奪った資料の情報をノブナガは統合した。 元が大きい方が奪った時の見返りも大きい上に、亀裂を確信した参謀役のノブナガ曰く―― オルテの支配を解放し、他国とも同盟。オルテを内部から蚕食し「国を奪る」と言い放った。 一人の漂流者らしい者が作り上げたオルテを地上から消し去る。 その上に諸族を合して他部族連合国家を成さしめると。 トヨヒサを統領として兵権を持ち、内治には各族に自治権を与え、『武士』という制度を作ると。 そこで初めて軍権を掌握し、黒王軍に対抗出来る勢力足り得ると――そう言った。 人間も、吸血鬼も、有翼人も、他の亜人達も、東のエルフすらも引き込もうと考えている。 およそハルケギニアでは考えも及びつかない。夢想としか言いようがない。 しかし未だ小勢ではあるものの、ここは既に"移動する小さな国"に・・・・・・確かになりつつある。 黒王軍と近い性質を持ちながら、我々は我々の道を進んでいるのだ。 これにはオルミーヌも頭を痛めているようであった。 されどこれこそが漂流者の本質であると思い知らされる。 古くから流れてきていた"漂流物"の存在意義―― 「おう、"えるざ"」 "名前"を呼ばれて"わたし"は振り向いてトヨヒサの姿を確認する。身長差の為に見上げる形で。 「なあに?」 「また夜中の散歩がい」 「わたしの勝手でしょ。それで・・・・・・何の用?」 「んむ。明日以降、強行軍になる可能性がある」 「ふーん、あらそう。・・・・・・大丈夫よ、足を引っ張る気はないから」 吸血鬼にとって太陽の光は肌を焼く天敵だ。とはいえ素肌を晒さなければいいだけではある。 ローブをまとって日傘でも差しておけばとりあえずはなんとかなる。 そもそも付き合う義理はないのだから、適当に離脱したっていいのだ。 今までだっていくらでも機会はあったが、気まぐれで付き合ってただけだ、うん。 「そうか、んでは――」 納得するとトヨヒサは屈んで膝をつき、腕をまくって素肌を晒した。 「・・・・・・どういうこと?」 「場合によっちゃ俺 おい も暇じゃなくなるかも知れん」 つまり今の内に"血を吸え"ということであった。吸血鬼という種族は人間の血液を主食とする。 最初に出会った夜。エルザを利用する代わりに、血を豊久が提供する。 そんな持ちつ持たれつの契約関係が成り立っていた。 信長が「血の気の多い島津武者はちょっとくらい減らした方がいい」と言ったことに端を発した理由。 豊久も最初は渋い顔をしたものの、明確に拒絶することもなく、既に三度ほど少しずつ血を貰っている。 腹が十二分に満たされているなら半年以上吸わなくても軽く保つ。 それに執政代官の城館襲撃に際しては、オルテ人の血液を摂取してもいる。 現状では飢えて切迫している状況どころか、小腹が空いたとも言えない状態だ。 とはいえ定期的に血を吸わないと死ぬと、トヨヒサ達には後々説明していたのだが―― 豊久としては次がいつになるかわからないから、ということなのだろう。 しかし根本的な"問題"はそこではなかった。 「今、わたしと二人っきりよ?」 「それ そい がなんじゃ」 「・・・・・・そう」 呟いてエルザはゆっくりと口を近付けて、牙を突き立てる。生きた人間の血を味わう。 じわりじわりと味が広がり、空いていない胃を満たしていく。 そして頃合いと見るや口を僅かに浮かせて問い掛ける。 今までは豊久の他にも"誰かしら近くにいた"のだ。 最初に吸う時に至っては、与一に弓矢で狙いをつけられていたくらいだ。 それも当然、人間一人分の血液を飲み干すくらいわけないのだから。 「わたしが、このままあなたの血を吸い尽くしたらどうする?」 「好きにすれば良か」 「なっ・・・・・・!?」 思わずエルザは、中腰になっている豊久を睨みつける。 血を吸い尽くせばもちろん豊久は死んで、意のままに操る"屍人鬼"にすることも出来る。 「俺 おい の見る目はそこまで曇っちょらん」 言葉通り、真っ直ぐで迷いのないその双眸にエルザは奥歯を噛んだ。 生意気だ。本っ当に生意気だ。わたしよりも年下のくせに。 わたしを怖がらない、わたしを責めることをしない、わたしを・・・・・・認めてくれる。 そうだ・・・・・・トヨヒサも、ノブナガも、ヨイチも――"ここ"は居心地がいい。 気まぐれ、そう・・・・・・気紛れ。文字通り気が紛れていたのだ。 両親を失い、孤独に転々としてきたわたしの・・・・・・"帰ることが出来る場所"。 だから離れようなんて思えない、考えられない。まだ会ってそこまで月日も経ってないというのに・・・・・・。 信頼しているのだ、彼らの作る未来に、わたしの居場所に期待を抱いてる・・・・・・。 わかっていたが、ただ単に認めたくなかっただけだ・・・・・・これまでは。 「ば~か」 「なっ!? なんじゃいきなり いぎなし !! 俺 おい が馬鹿じゃど!?」 「そうよ、ばか、おおばか! お人好し!!」 エルザは「べっ」と舌を出した。呆けた豊久を尻目に背を向けて走り出す。 ――もう決めた。今決めてやった。わたしはトヨヒサの血"だけ"吸ってやる。 他の誰かの血なんて自ら望んで吸ってやるもんか。 吸血鬼のわたしを信用するなら相応の代償を支払わせてやる。 ざまあみろ。貧血になっても吸ってやる。回復したらまた吸ってやる。 何度も、何度でも、何度だって、嫌だって言っても吸ってやるんだから。 エルザは立ち止まると夜空の双月を見つめ直して、もう悩むことをやめた―― 両親が死んでから長く、ようやく灯った・・・・・・心の小さな暖かさを胸に抱いて―― 前ページ次ページゼロのドリフターズ
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前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 「はっ…!…はっ!」 陽の光が届かぬ薄暗い森の中に、鳥の囀りと共に規則正しい息づかいが響く。 それについで小さな足でトンットンッと地面を蹴る音も続く。 その二つの音を出していたのは、まだ十代そこそこに見える黒髪の少女であった。 まるで軽業師のように地面を蹴って森の中を走り回る少女の顔は全く苦しそうに見えない。 それどころか辺りに目を配るほどの余裕をもっており、ついで背負っている一人の女の子に目をやる。 そこには、少女の背中にしがみついたまま気を失っているニナがいた。 あの時山小屋から逃げた後もずっと気絶したままで、かといって山中に放置することも出来ずこうして数十分も背負い続けて走っている。 少女は、この子を背負ってなければもう少し足を速められるかなと一時は思ったが、すぐに首を横に振った。 仮に連れて行かず、小屋に放置していたら間違いなくあの怪物の餌食になっていたであろう。 (何処かに村か何かあれば…そこに預ければいいわね) 少女はいまの状況を前向きに考えつつ、更に足を速めようとした。 その時…ふと近くから誰かの気配を感じ、動かしていた足を止めた。 走るのを止めた少女はスー…と頭を動かして辺りを見回し、木々に覆われてハッキリと見えない森の中を見透かすかのように目をこらす。 気配からして人間だとわかったが、その人間が放っている雰囲気は少し異質であった。 それは例えれば外は冷たく内が熱い、どうも曖昧な感じが否めない気配なのである。 一体誰なのかと訝しんだ少女は更に目をこらし、気配の主を捜そうとする。 だがその行為は、少女の゛命゛を狙わんとする暗殺者にとって絶好のチャンスであった。 ―――ビュウッ…ドッ! まるで風を切るかのような音が響いた後、少女の体に風系統の魔法『ウインド・ブレイク』が襲いかかった。 「ウァッ…!?」 風の塊を直接ぶつけるシンプルな魔法は辺りに注意を向けていた彼女の体にぶつかり、勢いよく吹き飛んだ。 気を失っていたニナは吹き飛ばされる直前に『ウインド・ブレイク』の衝撃で少女の背中からはじき飛ばされ、地面に転がった。 何本かの枝が折れる音が響くと共に、吹き飛ばされた少女が数秒間の時を置いて上から落ちてくる。 「ク…!」 しかし地面に激突するまであと五メイルというところでネコのようにうまく体勢を変え、なんとか着地する。 着地した少女は自分が連れてきたニナがすぐ近くにいることを確認すると、鋭い目つきでキッと頭上を睨み付ける。 その視線の先には、少女の着地した場所から数十メイルほど離れたところに生えた大木の枝の上に立つ青髪の少女がいた。 彼女の着ている白いブラウスと白のニーソックス、そしてグレーのプリーツスカートはこの森の中では酷いくらいに目立っている。 高価なアンティークドールを思わせる顔は無表情であり、掛けている眼鏡がその色のない顔に言いようのない冷たさを醸し出している。 そして背中には自分が何者であるのか証明する黒いマントを羽織り、右手には自身の背丈よりも大きい杖を持っていた。 杖とマント。その二つはこの世界に置いて゛貴族゛と呼ばれる者達のシルエットだ。 そしてこの青髪の少女は、今この山中にいる貴族の中でも特に戦いに長けた者であった。 青髪の少女―タバサは左手の人差し指でクイッと眼鏡を持ち上げる。 その眼には、目の前にいる少女を゛標的゛として見つめる冷酷な感情が見えた。 ◆ 人は誰でも間違い犯す。 しかし時と場合によっては、それが命取りになる事を忘れてはいけない。 「やっべ…八卦路はルイズが持ったままだったの忘れてたぜ!」 魔理沙が素っ頓狂な声を上げて叫んだ瞬間、目の前にいた怪物が飛びかかってきた。 指先に爪の生えた両手を前に突きだし両足もピンと張って飛ぶ姿は、正に白昼の悪魔である。 目の前の異形が攻撃を仕掛けてきた事に気づいた魔理沙は驚いた表情を浮かべたまま左手の箒をその場に放り投げると、勢いよく前転した。 自慢の洋服が土にまみれ被っていた帽子も吹っ飛んでいったが、飛びかかってきた怪物の攻撃を避けることには成功した。 「おらっ!」 すぐに立ち上がった魔理沙はこちらに背中を見せている怪物に、素早い回し蹴りをお見舞いした。 比較的運動神経が良い魔理沙の蹴りが若干効いたのか、背中に一撃を喰らった怪物は呻き声を上げて数歩よろめいた。 「ヴヴヴ…ギィ!」 しかし自分の後ろに敵がいる事を知った怪物は振り向きざまに引っ掻いてきた。 反撃を予想していた魔理沙はスッと後ろに下がると、足下に転がっていた自分の箒を手に取る。 そして、次こそはと勢いよく振り下ろしてきた怪物の爪を箒の柄で見事受け止めた。 だが箒で敵の攻撃を防いだのはいいものの、予想以上に怪物の力は強かった。 箒を持つ魔理沙の手が小刻みに震えているのに対し怪物は振り下ろした爪に力を入れて、確実に魔理沙の方へ近づけていく。 「く…頭が悪いかわりに力がヤケに強いんだよな…――こういう奴って!」 このままではやられると感じた魔理沙は苦しそうに呟くと、二撃目となる蹴りを怪物の腹に入れる。 蹴りをまともに喰らった怪物は紙を勢いよく破った時の音みたいな叫び声を上げて後ろに下がった。 敵を下がらせる事に成功した魔理沙も後ろに下がると懐に手を伸ばし、小さな小瓶を取り出した。 小瓶の中にはサイコロを小さくしたような物体が一個入っているだけであった。 「下手に力勝負しても勝ち目がないし…こいつで片づけるか」 そう言うと魔理沙は小瓶を持った右手に力を込めたかと思うと、それを勢いよく放り投げた。 投げられた小瓶はクルクルと回転しながら、腹を押さえて呻いている怪物の頭上目がけて落ちていく。 そして後二メイルという所で怪物が気づいてしまい右手の爪ではじき飛ばそうとしたが、魔理沙にとってそれはどうでも良かった。 あの投げた小瓶の゛中身゛は、かなり強い衝撃さえ与えれば…華やかで盛大な゛花火゛へと昇華するのだ。 パキィ! 横に振った怪物の爪は見事落ちてきた小瓶を砕き、その゛中身゛も粉々に砕いた。 サイコロの形から無数の欠片へと変化した゛中身゛は粉々になった際の衝撃をモロに受けて…爆発した。 瓶を割った怪物をも巻き込んだその爆発はまるで、祝祭の時に打ち上げられる花火の様に色鮮やかであった。 流石に本物の花火みたいに大きくは無いが、色鮮やかな星の形をした花火が爆発と共に打ち上がる。 爆発音もドド、ドドン、パン!…とまるで花火のような何処かおめでたい雰囲気が漂うものだ。 そんな綺麗な爆発は僅か十秒ほどで終わり、後に残ったのは薄い灰色の煙だけであった。 ※ 瓶の中に入っていた物体…それは魔理沙が作りだした゛魔法゛の一つであった。 魔法の森などに生えている化け物茸などを独自の調理法でスープを数種類作り、それをブレンドする。 そして数日掛けて乾燥させて固形物にした後、その固形物を投げつけたり加熱したりと色々実験をする。 そうすることでごく稀に魔法らしい魔法が発動することがある。 成功しても失敗しても本に纏め、また茸狩りからスタート…といったループが続く。 先程怪物に投げつけた固形物は威力が強すぎた成功例の一つを、ある程度弱めたものであった。 ※ 煙はその場に数秒ほど留まったが、初夏の香りが漂う突風に乗って空へと消えていく。 本当ならば煙の留まっていた場所にいる筈の怪物の姿は無く、代わりに小さなクレーターができていた。 魔理沙は用心しつつもそこへ近づき、クレーターを調べた。 「ふぅむ…まさか木っ端微塵になるとは予想外だったぜ。まだまだ威力が強すぎるな」 一通り調べ終えた魔理沙はすぐ傍に落ちている帽子を拾い、パパッと土を払い落とす。 そしてある程度綺麗になったソレを頭に被ると、苦笑いのような表情を浮かべて先程の爆発の事を思い出した。 「それにしても…思ってたより衝撃に対しては弱かったな。砕けた直後に反応してたし…完成までもうちょっとのところか」 彼女はひとり呟きながら、腰に付けた革袋から一冊のメモ帳を取り出した。 もう何年も使い続けているのか、そのメモ帳からは大分くたびれた雰囲気が漂っている。 魔理沙はメモ帳を開くとパラパラとページをめくろうとしたが、その前にピタリと手の動きが止まった。 苦虫を踏んだよう表情を浮かべる彼女の視線の先には、半開きのドアから山小屋の中が少しだけ見えていた。 そしてそこから、ツン鼻にくる鉄のソレと似た臭いが漂ってきている。 「まぁでも…その前にする事があるか…」 魔理沙は軽い溜め息をつくとメモ帳をしまい、小屋の中へと入ろうとしたとき… 「何処かで見た事ある花火が上がったと思ったら、やっぱりアンタだったわね」 ふと背後から着地する音共に聞き覚えのある声が聞こえ、咄嗟に後ろを振り返る。 振り返った彼女の視線にいたのは紅白の服と別離した白い袖を付けた腕を組み、いつもと変わらぬ姿と態度で佇む゛彼女゛がいた。 いつもは神社の縁側でお茶を飲んでいて、暇さえあれば話の相手や弾幕ごっこもしてくれる友人みたいな゛彼女゛。 異変が起これば、どちらが先に解決出来るかを競い合うライバルになる゛彼女゛。 そして―――゛彼女゛にとって自分が、『最初に出会った気の許せる人間』だということ。 魔理沙にとって゛彼女゛は―――博麗霊夢はそんな人間であった。 いつもはグータラとお茶を飲んでいるような彼女がどのような用事でここに来たのか、魔理沙はわかっていた。 そしてそれを知ったうえで、自らの勝利を誇る戦士のような晴れ晴れとした笑顔で霊夢の顔を見た。 「よっ、遅かったな。何処かで昼寝でもしてたのか?」 「その昼寝を邪魔する輩がいたからここまで来たんだけど。とんだ無駄足だったようね」 霊夢はそんな魔理沙とは正反対の、何処か陰のある苦笑いの表情を浮かべていた。 ◆ …一方、山小屋から大分離れた所にある街道。 首都トリスタニアと魔法学院を繋ぐ道の上を、一台の馬車がゆっくりとした速度で走っていた。 二頭の馬が引く台車の中には、学院にとって必要な食料や物資がこれでもかと詰め込まれている。 そしてその中に混じるかのように、その荷物を責任持って運ぶ業者の姿も見受けられた。 「っと…もうそろそろ学院かな?」 ガタゴトと揺れる荷台の上に座っていた一人の男が、前方にある塔を見てポツリと呟く。 その後ろでは仕事仲間の四人が、持参したチーズやライ麦パンを食べていた。 いつもは首都の出入り口にある駅で食べるのだが、今日は生憎仕事の量が多かった。 しかもその中にはいつも自分たちに依頼してくれている魔法学院への運送もあったので、いつも以上に張り切っていた。 仕事柄、何かトラブルがあって運送が遅れればそれだけで築き上げた顧客への信用が吹き飛んでしまう。 無論信用を上げるということがどれ程大変なことなのか、彼らは皆知っていた。 「よしっお前ら。昼飯中断運ぶ準備に入れ。モタモタするなよ!」 リーダーである男の一言に、後ろで食事をとっていた男達は「うーっす!」や「へ~い…」など…気合いの入っていないような返事をする。 それでも動きはテキパキとしており、食べかけであった食事を急いで口の中に入れ込み、ゆっくりと腰を上げる。 四人は足下に置いていた使い古しのカーキ色のベレー帽を被ると、思いっきり深呼吸をした。 「ん~…。それにしても、さっきの変な音やら爆発音は何だったんですかねぇ」 ふと仲間の一人が、帽子を被りながらポツリと呟いた。 彼の言う゛変な音゛に覚えのあった他の者達は顔を見合わせた後、仲間の誰かがからかうように言った。 「なんだよお前?さっきのアレにびびってるのか?」 「ちょっ…別にそんなんじゃねぇよ!」 彼の言葉に男は慌てた風に言い返すと、今度はリーダーが口を開く。 「ま、例え山の中で異変が起きようとも俺たちのする事に変わりはないさ。だろ?」 リーダーの頼りがいのあるその言葉に四人全員が彼の方へと視線を向き、頷いた。 タッタッタッタッ… その時であった、蹄と台車が軋む音と一緒に右側の森林から足音が聞こえてきたのは。 「ん?なんだ、また音が聞こえてきたぞ…これは足音か?」 リーダーは周りから聞こえてくる他の音と一緒くたにしないよう気をつけつつ、耳を澄ます。 足音は規則正しいがとても速く、どうやら森の中を全力疾走しているらしい。 「あ、兄貴…一体何なんですかこの足音」 「走っているようだが…おかしい。これは人間の足音なのか?」 うろたえている仲間の言葉に、リーダーは怪訝な表情を浮かべて足音を聞いていた。 ここら一帯の森林は走ることはおろか歩くことすら困難な程地形が複雑ではない。 やろうと思えば走ることだって出来る。しかし今聞こえてくる足音は何処かおかしかった。 聞いた感じではとても人が走っているとは思えぬほど速く、狼か野犬の足音だと思えばカンタンだった。 しかしそれよりも先に山の中から聞こえてきた甲高い声のような奇妙な音の所為で、彼らの頭の中に不気味な想像が蠢いていた。 ◆ ツン、と鼻にくる血の匂いが鬱陶しい… 山小屋に入った霊夢がまず最初に思ったことはそれであった。 僅かに開いていたドアから中に入りまず最初に感じたのは、血の匂いであった。 レミリアやフランの様な吸血鬼とか悪魔なら少しは気分を良くするかも知れないが、博麗霊夢はれっきとした人間である。 血の臭いを嗅いで気分を良くする人間など滅多にいないし、いるとすればかなりの変わり者だ。 残念ながら、変わり者は変わり者でもそれとは別のベクトルを行く霊夢にとって血の臭いは不快な代物である。 ましてや、血なまぐさい事なら霊夢より遠い存在である魔理沙にとっては尚更であった。 「ま、こんな死体を見て目の前で吐かれるよりマシ。…か」 霊夢は小屋の外で待っている魔理沙を思い出しながら呟き、足下の゛死体゛へと目を向ける。 大きな暖炉とテーブルが置かれたその部屋に、血の匂いを発する元凶である一人の死体が転がっていた。 麓に住む村人であろうかその服装は質素ではあるが丈夫な作りをしている。 逞しい体つきと手に持っている大鉈を見ればすぐに男だと判別できるが、どんな顔をしているかまでは分からなかった。 何故ならその死体は、丁度下顎から上が『切断されたように無くなっている』のだから。 まるで専用の器具スライスされたように断面がハッキリと見え、下手な人体模型よりもリアルであった。 血はもう流れてはいないが、その代わり頭を中心にして赤い水たまりが出来ている。 「アタシも何回か幻想郷で惨い死体を見たことはあるけど…こんなのは初めてね」 霊夢は一度に大量の毛虫を踏みつぶしてしまったような表情を浮かべ、死体を見つめていた。 妖怪退治と異変解決のプロである博麗の巫女である霊夢にとっても、こんな死体をお目に掛けるのは初めてであった。 頭の上半分が切断されていたところ以外の外傷はなく、無論囓られた後もない。 恐らくこの男は、『食べられるために殺された』のではなくただ『殺されるために殺された』のだろう。 魔法学院で感じたあの気配の持ち主が、魔理沙と戦った怪物であるならば…。 最初こそは上の部分だけ食べられたのだと思っていたが、すぐに前言撤回をすることとなった。 何故なら部屋の中央に置かれた大きなテーブルの真下に、もう半分が転がっていたのだから。 「全く、どうせ置くならもっと目立つところに置きなさいよ」 一人愚痴をもらした霊夢は、これからの事をもう考え始めた。 この死体の男性の事を思えば少し可哀想ではあるが、仇(だと思う)怪物は魔理沙が倒したと(思うから)問題はない。 「まぁとりあえず近くの村の人にでも教えて、埋めてもらった方が良いわね」 流石にこういう事に慣れてはいるのか、余りにも早く考えるのを終えた。 そんでもっていざ魔理沙の待つ外へ出ようとしたとき… 「 見 っ つ け た わ よ ぉ ぉ ぉ ぉ ! 」 …聞き慣れた少女の声が霊夢の耳に突き刺さった。 ただその聞き慣れた声は魔理沙の物ではなく、時間にしてみればつい一月前に知り合った者の声であった。 しかし、その声の持ち主が本物であれば幾つか疑問が浮かび上がってきた。 どうしてその持ち主がここにいるのか、どのような手段でここまで来たのか。 そんな疑問が次から次へと湧いてきたが、それを一つ一つ時間を掛けて解決するほど霊夢は暇でなかった。 「ホント、厄介事は向こうからやってくるモノね」 霊夢は頭を掻きむしりながらどう対応したら良いか考えつつ、ドアの方へと向かってゆっくりと歩き出す。 半開きになったドアの向こうから、魔理沙の慌てた声と少女―ルイズの怒鳴り声が聞こえてきた。 前ページ次ページルイズと無重力巫女さん
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26 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06 34 26 ID JoMLGd7c 「やめてくださいっ!! サイトさんのそんな言葉なんか、聞きたくありませんっ!!」 シエスタが、血を吐くような叫び声を上げる。 しかし、その正面にたつ才人も、決して、平静を保っているわけではない。まるで悪い酒でも飲んだかのように、真っ青だ。 メイド姿の少女は、そんな少年に駆け寄り。必死に訴える。 ――いまの言葉は何かの間違いで、たちの悪い冗談だから気にしないでくれ。 そう言ってくれと彼にしがみつき、懸命に訴える。 しかし、才人が吐いた言葉は、やはりさっきと変わらなかった。 「俺は、やっぱりルイズを選ぶ。だからシエスタ……俺の事は、もう、諦めてくれ」 「いやです! いやですっ!! そんなっ、そんな事出来ませんっ!! いまさらサイトさんを諦めるなんて、そんなっ!! ――出来るわけないじゃありませんかっ!!」 「シエスタ」 「じゃあ、――じゃあ、わたし妥協しますっ! 一番でなくとも構いませんっ! 二番目でっ、愛人とか妾とか、浮気相手とかで構いませんっ! ですからそんな事っ!!」 「……」 「――そんなこといわないでください……!」 才人のパーカーを、自分の涙で濡らしながら、彼女は、親に見捨てられそうな幼児のように駄々をこねる。 しかし、彼からすればやはり、 「シエスタ――」 駄々は駄々でしかなかった。 「分かってくれ、……もう、決めたんだ……!」 「いやあああああああ!!!!!」 シエスタの発狂したかのような叫びが、その空間――格納庫――にとどろく。 常ならば、愛くるしさに満ち溢れているはずのシエスタの表情は、止めどなく流れる滂沱の涙に濡れながらも、その口元にはうっすらと笑みすら浮かんでいた。 ――無論、陽気な笑顔ではない。半ば狂気さえ含んだ、うつろな笑みである。 「シエスタ……!」 27 名前:契約(その1)[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06 37 59 ID JoMLGd7c 才人は、彼女の自分に対する想いが、ここまで深かったという事に驚くと同時に、そんなシエスタを悲しませ、絶望させているという現実に、身悶えするほどの自責の念が走る。 ――しかし、だからこそケジメはつけなければならない。 何故なら、そんな彼女であればこそ、今までのように思わせぶりな態度で希望を抱かせる事こそ、シエスタにとって最も残酷な事だからだ。 実は、才人がこういう(以前の彼自身の優柔不断さから思えば、ほぼ考えられない)宣告をシエスタにしたのは、彼自身のとある環境の変化が背景になっている。 「――わたし、わたしやっぱりアレですか? もう、邪魔ですか? そうですよね? 貴族の御令嬢との間に御婚約が整えば、もうサイトさんは、平民のメイド風情がでしゃばっていい御身分じゃないですよね? そういう事なんですよね?」 シエスタの言葉が、彼の胸を刺す。 そう、このたび才人とルイズ(というよりヴァリエール公爵家)との間に、正式に婚約が結ばれたのだ。 ヴァリエール家では、二人の予想通り、次女カトレア以外の全ての家族――文字通り末端の使用人に至るまで――轟々たる猛反発が巻き起こった。 なかでも家長たる公爵本人は、額から角でも生やさんばかりの勢いで激怒し、才人に対して刺客を送り込んだと言う噂まであったという。 ――しかし、とにもかくにも、才人とルイズの奔走で、この婚約は成立した。 そして、形の上だけでも婚約が成立した以上は、才人としても、これまでのような、どっちつかずの状態を是正しなければならない。ルイズに対する誠意の話だけではない。さもなければ、そのネタを口実に、こんな婚約はあっという間に破棄されてしまうからだ。 「シエスタ……ごめん。本当にごめん。でも、俺も本気なんだ。キミの好意はありがたいし、こんな事今さら言って何だが、それ以上に本当に申し訳ないと思ってる」 しかし、シエスタはもう才人を見てはいなかった。呆然とこっちを見てはいるが、涙が流れっ放しの瞳に力はなく、表情もうつろなままだ。未だに二本の足で立っているのが不思議なくらいである。 「……もう、いいんですサイトさん。しょせんわたしは、あなたに相応しくない女だったんです」 才人はもう、たまらなくなった。 こんな彼女を見るくらいなら、いっそ口汚く罵られた方がどれだけ楽か知れない。 「サイトさん」 妙に陽気な声でシエスタが呼ぶ。 顔をあげた才人はぎょっとした。 28 名前:契約(その1)[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06 42 12 ID JoMLGd7c 「大丈夫です、サイトさん。――わたし、サイトさんの足手まといにはなりませんから」 そこには、鈍く光る薪割り用のナタの刃を、自分の首筋に当てて微笑むメイド姿の少女がいた。 「ミス・ヴァリエールとお幸せに。――あ、でも、時々は」 シエスタはそこまで言うと言葉を切った。鼻をすすり、震える肩を静め、潤んだ目で才人を見つめ、言った。 ……時々は、私を思い出してくださいね、と。 「やめろぉぉぉ!!」 思わず才人は駆け寄ろうとして、転んでしまう。 事態の余りの急転直下に、とっさに上半身と下半身のバランスが取れなかったのだ。 顔面を石畳に思い切りぶつけたが、痛がっているヒマなど無い。 彼はそのまま土下座の形で叫んだ。 「やめてくれ! やめてくれシエスタ!! 俺が悪かった。俺が悪かったから、そんな、そんな事はやめてくれっ!! お願いだ!!」 しかし、彼女は答えない。 さっきまでと変わらず、うつろな笑みを浮かべたまま、才人を見つめている。 「何でもするっ!! 君が望むことなら、俺は何でもするっ!! だから、頼むからもうやめてくれっ!!」 才人がそう叫んだ時、初めてシエスタの瞳に光が宿った。 「何でも……していただけるんですか……?」 「え……?」 「わたしが望めば、何でもしていただけるんですか……?」 才人は答えられなかった。 というより、この期に及んで、彼女が何を言おうとしているのか、彼には分からなかったと言っていい。 そんな才人に、シエスタはたたみかける。 「今一度、確認させて頂きますわ」 一歩、二歩、三歩、……ゆっくり、ゆっくりとだが、シエスタが近付いてくる。無論、その細い首には、鈍く光るナタの刃が添えられている。 「わたしが望めば、サイトさんは何でもしていただけるんですね?」 29 名前:契約(その1)[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06 44 36 ID JoMLGd7c 「……俺にできる事なら」 「それはおかしいでしょう」 シエスタは言った。 サイトさんは今“何でも”と言いました。何でもと言うのは、文字通り何でもと言う意味のはずです。――彼女の目と、ナタの鈍い輝きがそう言っている。 その目を正視できずに、才人は思わずうなだれる。 「何を……すればいいんだ?」 「はい」 シエスタはきびすを返すと、格納庫の、工具や酒ビンなどを置いてある一角から、一枚の羊皮紙と羽根ペンを取り出し、何事かをさらさらと書いた。 「これに、サイトさんのサインと血判を押して下さい」 それだけ言うと、膝をついてうなだれる彼の傍らに寄り、ペンと共にその書類を才人に差し出した。 「――これ、何て書いてあるんだ?」 しかし、シエスタは微笑むだけで答えない。 もっとも、その笑顔はさっきまでのうつろな笑みとは違い、妙に邪悪なオーラに包まれているように感じられた。 才人には、このハルケギニアの文字が読めない。 彼に出来る書類仕事は、せいぜい自分の名を署名する事くらいである。 しかし、いくら何でも、内容のわからない書面に署名と血判を要求されて、ハイそうですねと従うほどバカではない。現代日本で育った彼は、紙切れ一枚の契約書が、文字通り人生を破壊しかねない悲劇を生むという事実を、骨の髄まで知っていたからだ。 しかし、もはや情況が情況だった。 彼女の言葉に従わずして、彼女を落ち着かせる方法を、いまの才人は知らなかった。 結局、彼は――従った。 「サインと血判、だな」 シエスタはそのままうなずいた。 「それをすれば、思いとどまってくれるんだな?」 シエスタが、やはり無言でうなずくのを見て、才人はペンを手に取った。 この時、彼がこの書面に書かれた内容を知っていたら、いくら何でも署名はしなかったであろう。何故ならこの書類は、才人が危惧を抱いた通り、いや、それ以上に彼の人生を破壊する結果となった、連帯保証人同意書にも等しい、そのものズバリの『死の契約』だったからだ。 31 名前:契約(その1)[sage] 投稿日:2007/05/02(水) 06 46 26 ID JoMLGd7c 「これで、いいのかシエスタ……?」 たどたどしいハルケギニア共通語で自分の名を署名し、親指の皮を歯で噛み切ると、彼はそのまま血判を押した。 その紙面を再び手渡された時の彼女の表情には、もはやさっきまでの憂いは無かった。 悲嘆の涙はそのまま歓喜の涙へと変化し、まるで難産の末に産まれた自分の赤子を、初めてその手に抱く母親のような、そんな感動に満ち溢れていた。 シエスタは紙片を胸に抱き、言った。 「ありがとうございますっ!! ありがとうございますっ!! 大切にしますから! わたし、このサイトさんの書付、死んでも離しませんからっ!!」 「キミが喜んでくれたなら、何だか分からないけど、俺も嬉しいよ」 才人もようやく顔をほころばせた。 「で、さ。――念のために聞かせて欲しいんだけどさ、……それ、一体何が書いてあったの?」 「はい」 シエスタは、うっとりとした笑みを浮かべたまま、その紙面を読み上げた。 「サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガは、わたくしことシエスタに、病めるときも、健やかなるときも、死が二人を分かつまで、絶対の服従と永遠の忠誠を捧げる事を誓います」 才人は、呆然と立ち尽くし、何も考える事が出来なかった。 そんな才人に、嬉しそうにシエスタが身を寄せてくる。 「さてサイトさん、それじゃあ早速、命令に従って頂きましょうか。手始めに、わたしのブーツにキスをして、忠誠と服従を誓っちゃってください」 「しっ、しえすた……?」 「あらかじめ言っときますけど、逃げたり逆らったりしたら、この書類をミス・ヴァリエールに届けますよ?」 と言い、サイトさんもご承知して下さってると思いますけど、 「わたし、こうと決めた事は、絶対にやり遂げるオンナですから」 そう、うそぶいた。 小悪魔のような……いや、才人には文字通りその笑顔は、悪魔の笑みに見えた。 96 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05 11 54 ID nWfBNMRn ――ぴちゃ、ぺちゃ、くちゃ……。 深夜の格納庫に、淫らな水音が響き渡る。 「ぁぁぁぁ……サイトさん、気持ちいいですよ……」 椅子に座りながらうっとりと声を上げるメイド姿の少女。 彼女のロングスカートからは、輝くばかりに白い生足がニュッと突き出され、その踵(かかと)を、一人の少年がうやうやしく手に取り、足の指の股を一心不乱に舌で清めている。 サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ……契約締結から三日後の姿であった。 「うふふふふ……さすがにサイトさん、なかなかお上手になられましたね。“お掃除”が」 シエスタは才人の頭を優しく撫でながら、やっぱり婚約者相手に毎晩実戦練習していらっしゃる方は、何事にも勘がいいですわ、と皮肉る。 「おっ、俺は、そんな事はしちゃいない――ぐぶるっ!」 真っ赤になって反論しようとした才人の口に、シエスタがそのまま、爪先を突っ込む。 「ぐっ、ぐぶぶぶ!!」 そのまま彼女は、才人の口の中で足の指をうごめかし、ついには足の親指と人差し指で、彼の舌をつまみあげた。 「〜〜〜〜〜〜〜っっっっ!!!!!」 「誰が勝手に意見をしていいと言いましたか? あなたは黙ってわたしの言う事に従っていればいいんですっ!!」 さっきまでの気持ちよさげな表情から一転、鬼のような形相に変化し、シエスタはそのまま、才人の顔面を蹴り飛ばす。 「っっ!」 目から火花が散るような激痛を覚え、思わず才人は険しい目でシエスタを睨み上げるが、 「何かおっしゃりたいのですか……!?」 逆光の中、目だけを異様に光らせ、仁王立ちに自分を見下ろすメイドの迫力に、思わず彼は目を逸らしてしまう。 97 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05 13 40 ID nWfBNMRn ――悪いのは俺だ。 ――シエスタがここまで理不尽で非常識な行為に走る原因を作ったのは、他でもない。この俺が彼女とルイズとの間を都合よく往復し、どっちつかずな態度を取り続けてきた結果なんだ――。 そういう罪悪感が、才人を縛り付ける。 無論、先日わけも分からずサインさせられた契約書の事もある。 しかし、現在の才人にとってはその書付けがルイズに露見する恐怖よりも、自分自身の罪の意識のためにシエスタには逆らえない、逆らおうという気が起こらない、と言った方が近いであろう。 そしてシエスタ自身も、彼が抱くそういう罪悪感に当然気付いている。 その証拠に――。 「勘違いなさらないで下さいねサイトさん。貴方は当然償うべき罰を受けているだけなんですよ。だって、そうでしょう? 貴方は、わたしの気持ちを裏切ったんですよ? それも、それも……貴族の爵位なんかにホイホイ釣られてっっ!!」 『裏切った』という言葉で、彼女は才人の心を刺激する。 確かにそうだろう。シエスタから見れば、そう解釈されても仕方がない。 しかし、今さら百万言を費やして説明したところで、シエスタは決して納得しないであろう。 何故なら、それを理解させるためには、才人の心は最初からルイズにのみ向いており、シエスタやアンリエッタに向けた笑顔は、単なる“よそ見”でしかなかった事を語らねばならず、そうなれば彼女は必ず三日前のように、死を選ぶであろうからだ。 契約書がルイズの目に晒されるのは怖い。想像しただけでゾッとする。 しかし、それ以上に才人が恐ろしいのは、自分が原因となって人を死に追いやる事だ。 そんな事態に比べたら、たかだかシエスタの罵倒を浴びるくらい、彼にとっては何でもない事だった。 98 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05 15 34 ID nWfBNMRn 難航中だった二人の婚約が大きく前進したきっかけは、ルイズが女性の身でありながら爵位を叙勲され、ラ・ヴァリエール公爵家より新たに分家を立て、“虚無”の血統を後世に残するべし、という勅命を受けたからだ。 “虚無”の血を残す、ということになれば、当然ルイズの相手はそこらの門閥貴族の出る幕はない。同じく“虚無”の名を冠し、同じ戦場を共に駆けた大戦の英雄、すなわちサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ以外に適任者はいない……。 ――というのが、実は才人が考え出した二人の結婚のための最終プランだったのだ。 例え才人がシュヴァリエの称号を手にしたところで、ラ・ヴァリエール公爵が、可愛い末娘を素姓も知れぬ平民上がりに降嫁させるとは、才人は到底考えてはいなかった。(その点ルイズは、少しは期待していたようだったが……) 何故なら、中世貴族にとって婚儀とは、本人同士の情愛の結果ではなく、何より家門同士の結びつきを強調するためのイベントに過ぎないからだ。生まれながらのハルケギニア人ではない才人だからこそ、今ではそれがはっきりと分かる。 ――封建社会における身分の壁とは、それほどに分厚いものであり、特権階級の者たちが自らその壁を崩す例は、絶無に等しいという事が。 つまり公爵にとっては、どうしても才人をルイズと添わせなければならない確たる理由がない限り、二人の結婚を許す事はあり得ない……。 と、そういう戦略に基づき、才人とルイズの奔走が再開された。 幸い彼らは、この国の最高主権者アンリエッタ女王陛下と旧知の仲であり、先の大戦に於いて築いた軍の高官たちとのコネなどもフルに利用し、最終的に勅命という形で、ルイズの父親に無理やり婚約を承認させた。 “虚無の使い魔”ガンダールヴは、武のみならず政略に関しても能あるところを見せたのである。 しかし、二人のこの政治的奔走は、可能な限り秘密裏に行われたため、トリステイン魔法学院に事情を知るものは誰もいなかった。つまり、キュルケやタバサやモンモランシーたちにとって、この婚約発表は全く寝耳に水であったのだ。それはシエスタも同じであった。 つまり彼女からすれば、今まで中立(?)を保っていた才人が、勅命によって、ある日いきなりルイズの婚約者になってしまったように見えたのだ。しかも、アンリエッタに文句一つ言いに行くでもなく、唯々諾々と(むしろ嬉しげに)従っている……。 許せなかった。 ルイズも、アンリエッタも許しがたいが、それ以上に彼女は才人が許せなかった。 さいわいルイズは爵位の叙勲式の打ち合わせで、いま王宮に出かけている。さらにその後、やはり関係書類の問題などで帰省せねばならず、つまり一週間は学院に帰ってこない。 (ならば、その一週間で、サイトさんをムチャクチャにしてやる。あくまで抵抗するようなら、眼前で手首でも切って、一生後悔させてやるんだからっ) と、シエスタは思った。 もはや、彼女に行動をためらわせるものは、何一つなかった。 99 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05 17 22 ID nWfBNMRn (裏切り、か……。やっぱ、そう見えるよな) その瞬間、うなだれる才人の股間に激痛が走った。 「ぅぐっ!!」 才人の唾液に濡れそぼったシエスタの生足が、そのまま彼の急所に体重をかけてきたのだ。 「あら、どうなすったんですのサイトさん?」 「っっっ! ぁしを……足を……のけて……ひふぅっっ……!!」 「ごめんなさい、聞き取れませんでしたわ。もう一度ハッキリとおっしゃって下さいます?」 そう言いながらシエスタは指を使い始める。 「ぁぁぁぁ……のけてっ! ぁしを、のけ……あああああっ!!」 「んふふふ……そんなに足を乗っけて欲しいのですか、サイトさん?」 「ちっ、ちが……どけて……あああああ!!」 「やっぱり分かりませんわ。男らしくハッキリおっしゃって下さらないと」 いかにも残念そうにシエスタは呟く。 しかし、その口調とは裏腹に、シエスタの足の指は、まさしく芸術的な機動性を発揮し、Gパンの分厚い生地の上から、彼のペニスを確実に刺激していった。 「しえすた……ああああ……しえすたぁぁぁ……!!」 「サイトさん、分かっているとは思いますが――」 シエスタは言った。 「女の子に踏まれて興奮するような変態には、お仕置きですよ?」 「えっ!?」 ハッキリ言ってそれは反則だった。 何故なら、シエスタが“興奮したら”という条件付けをした時にはすでに、 「つまり、決定ですね。サイトさんのお仕置きは……!!」 才人のペニスは、彼女の執拗な足コキによって勃起していたのだから。 「ズボンとパンツを脱いで、壁に手を突いて立って下さい」 100 名前:契約(その2)[sage] 投稿日:2007/05/04(金) 05 19 25 ID nWfBNMRn ばっし〜〜〜んっ。しこしこしこしこしこ……。 「にじゅういちっ!!」 ばっし〜〜〜んっ。しこしこしこしこしこ……。 「にじゅうにっ!!」 ばっし〜〜〜んっ。しこしこしこしこしこ……。 「にじゅうさんっ!! ほぉら背筋しゃんと伸ばしてっ! 猫背になってますよっ!!」 「……ぇすた……、ぐうっ!! ……しえ、すたぁぁ……」 「どうしましたサイトさん?」 両手の動きを止め、うつむく才人を覗き込むシエスタ。 格納庫の壁に手を突いて歯を食いしばり、必死にスパンキングの痛みをこらえる才人。 ただ痛いだけのお仕置きではない。 右手で才人の尻を叩くシエスタは、同時に左手にたっぷりと蜂蜜を垂らして擬似ローションとし、激痛以上の快感を、そのローション手コキによって与えている。 ――彼女の愛読書『バタフライ伯爵夫人の優雅な一日』から学習したテクニックだ。 これをすると、真っ赤に腫れ上がったお尻と、快感でびんびんになったペニス、さらには射精をこらえる才人の表情と、3種類の『赤』を同時に鑑賞する事が出来る。 ……シエスタはこのお仕置きが大好きだった。 「……今日は……多いよぉ……」 「多い?」 「だって、いつもは――20回で終わりなのに……」 ばっし〜〜〜んっ。 「はぐうっ!!」 シエスタは言った。 「甘いですよ、サイトさん」 スパンキングと同時に、手コキも再開される。 ばっし〜〜〜ん。しこしこしこしこしこ……。 「昨日、おととい20発だったからって、今日もそうとは限らないでしょ?」 「そっ、……んな……ぁぁぁぁ……いぎっ!……」 「と言うか、今日は回数無制限で行きます。わたしの手がくたびれるか、もしくは」 ばっし〜〜〜ん。しこしこしこしこしこ……。 「サイトさんが泣くまで、ぶつのをやめません」 212 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20 16 06 ID RlaksQe3 「つまり、騎兵の特質とは、騎馬による機動力をフルに活用し、大迂回をしつつも敵陣の側面・または後背などの最ももろい面を奇襲し、本隊の攻撃を容易せしめる事にある」 ――奇襲、と聞いた瞬間に、講義を聞く生徒たちの表情が曇った。 「つまり先生、不意打ちということですか?」 「それって、卑怯じゃないですか」 「貴公らはバカか? それとも私の話を真面目に聞いていないのか?」 アニエスはやれやれという表情で言い放った。 ……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……あと、何分だ……? ここはトリステイン魔法学院の一室。 水精霊騎士隊・通称オンディーヌの構成員は、全員この学院の学生であるため、王都にある士官学校に正式に通学する事は難しく、そのため、彼らには課外授業という形で、魔法の授業のかたわら、非常勤講師が学科や教練の指導に来るのである。 銃士隊長アニエスは、その主席講師に任命され、(本人はいやいやながらも)週二回、きっちり出来の悪い貴族のガキどもを怒鳴りつけに来る。 なんのかんのと、彼女は面倒見のいい女性だった。 ……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……おっ、おなかが、苦しい……。 「単なる騎士なら、大声上げて敵に飛び込めばそれで済む。それが奴らの仕事だからな。しかし、私がここでテーマとして取り上げているのは、単なる騎士ごときではない。“騎兵”だ。騎士と騎兵とでは、その役割は大きく違う」 アニエスは、その教鞭をぴしりと鳴らし、 「騎兵とは、最も速度を要求される兵種であるため、きらびやかな甲冑も重い馬鎧も着けず、また騎馬のみの行軍であるため、私兵を歩卒として従軍させる事も無い。そして敵陣の後背を突くといったところで、当然そこが無防備である可能性は薄い」 分かるか? つまり奇襲と言えば聞こえは悪いが、とアニエスは一声いれると、 「要するに、最も高度な馬術と、最も薄い装備で敵陣を確実に打ち崩す攻撃力、そして勇敢さが要求される兵種なのだ。――この戦術を自在に活用できれば、百戦百勝も夢ではない」 アニエスは興奮気味にドン、と教卓を叩きながら言う。 そんな彼女の迫力に、教室に居並ぶ騎士隊の小僧どもは声もない。 ……はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、やべえ……もう、授業どころじゃ……!! 213 名前:契約(その3)[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20 18 44 ID RlaksQe3 「でも、先生」 おずおずとギーシュが手を挙げる。 「さっきの質問の答えになってません」 ――あ? という表情で睨み返すアニエス。 「卑怯はやっぱり……卑怯じゃないでしょうか?」 「まだ分からんのかっ!! 戦場は遊び場ではない。騙し騙されの駆け引きこそが、勝負の趨勢をきめるのだっ!!」 ギーシュ・ド・グラモンっ、とアニエスは叫ぶように彼を呼ぶと、 「貴様、仮にもグラモン元帥の一門であろうが! 正々堂々と正面からの会戦にこだわるなど、敵の十倍の兵力を以て初めてほざける事と何故気付かんっ――って、ゴラァッ!!」 その瞬間、反射的に頭をすくめた才人の髪ギリギリを、アニエスの教鞭がうなりをあげて通過する。 ――危なかった。 ホッとしつつ顔を上げた才人を待っていたのは、怒りで真っ赤になったアニエスの瞳だった。 銃士隊隊長ともあろう剣の使い手が、説教途中に思わず晒したブザマに、教室のあちこちから失笑の声が洩れ、それがさらに彼女の怒りに油を注ぐ。 「ボっとしてた割りには御機嫌にかわしてくれたなサイト。私の授業はそんなに退屈か?」 退屈だなんてとんでもない。ただ集中できない事情があるだけだ。 しかし才人にとっての不幸は、その事情を納得いくように話せる者が、この世に一人もいないことだった。 荒廃した平成日本の教育現場とは違い、ハルケギニアには教育委員会もPTAもない。 つまり、基本的に体罰オールOKのこの世界で、教室に於いて先生を怒らせるという事は……。 「左右の者、サイトの両脇を固めて立たせろ」 アニエスは教鞭を置くと、ぽきぽきと指を鳴らし、往復ビンタをきっちり4往復いれると、そこで終業のチャイムが鳴った。 「運が悪かったなサイト。チャイムが鳴るのがもう少し早かったら、お仕置きは次の授業に持ち越しになっていただろうにな?」 アニエスがにやりと笑う。 ――持ち越しになっただけじゃ、結局ぶたれる事に変わりは無いじゃないか。 そんな発言をする勇者は、当然この教室には誰もいなかった。 214 名前:契約(その3)[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20 21 48 ID RlaksQe3 こんこん。 「サイトさんですか?」 ――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。 ドアを開ける。 そこには彼女がいた。 才人とルイズの二人が共に安眠を得る、豪奢な寝台。 そこには、漆黒のメイド服と純白のエプロンドレスを着込み、無造作に横たわる少女。 「そろそろお越しになられる頃だと思ってましたよ」。 ――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。 「し、しえすたぁ……、はやく……はやく……」 扉を閉め、倒れこむようにベッドにすがりつく才人。 「はやく、これを……取ってくれよぉ……!」 そんな才人を心の底から慈しむような表情で見つめながら、 「これ? これって何です?」 彼女は、たまらなく残忍な言葉を吐く。 「何って……しえすたぁ……!」 「いつも申し上げているでしょう? 言いたい事があるなら、男らしくハッキリおっしゃって下さいと」 「……っっ!」 才人は、アニエスの往復ビンタで真っ赤に腫らした顔を、さらに屈辱で赤く染め、口を開く。 「おっ、俺の貞操帯をはずして、……お尻に入ってるものを……取ってくれ、シエスタ」 「ふふふふふふ……、はい、よく言えました」 クスリと笑うと、シエスタはポケットから鍵束を取り出した。 才人は、そんな彼女を前にしてベルトを緩め、恥らうように鈍く輝く鉄のパンツをさらけ出した。 ――貞操帯。メイドとしてトリスタニア市街へ買出しに行った時、シエスタが密かに購入したものである。 無論、彼女が買い求めたのはそれだけではない。その他種々の性具や衣装、薬品の類いも彼女は抜け目なく購入しており、その予算は全て才人のサイフからまかなわれた。 「当然でしょう? これらの品々はみな、サイトさんを気持ちよくするために使われるのですよ?」 昂然と言い切るシエスタに、才人は何も言い返せなかった。 215 名前:契約(その3)[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20 23 59 ID RlaksQe3 「それにしてもサイトさん、そのお顔どうなさったんです?」 「アニエスさんに……ぶたれたんだよ。授業中にボケっとすんなって」 へえ、それはとんだ災難でしたね、と楽しそうに笑いながら、シエスタは貞操帯のロックを外す。 さすがに彼も、そのくすくす笑いにカチンと来たらしい。 「災難もクソも無いよっ、ケツにこんなもん仕込まれて、集中できるわけ無いだろっ!!」 思わず声を荒げるが、そんな彼の姿に威厳は皆無であった。 ベッドに手をつき、メイドに尻を差し出す少年。――しかも、その肛門からは小さなリングまで見えているのだから。 「あらあら、申し訳ございません。わたしとしましてはただ――」 彼女の細い指が菊門に吸い込まれると、やがてリングの先の糸から直径1・5センチほどの黒い球体が姿を見せた。 「サイトさんに気持ちよくなって頂きたいだけですのに」 「――ぐぅっ!」 一つ、二つ、三つ、……。 白魚のようなメイドの指先によって、次々と才人の臀部から黒球が産み出されてゆく。 「はぁぁぁぁっっ!! ごっ、ごりごりするよぉっ!!」 才人が尻を震わせ、懸命に刺激をこらえている。 「サイトさん、分かっておられるとは思いますが、今はまだお日様が出ている時間です。あまり大きな声を出されると、誰に聞かれるか分かりませんよ」 シエスタが、才人の耳朶を甘噛みしながら、囁きかける。 「でっ、でも……くうう……!」 「んふふふふ……我慢なさい。男の子でしょう?」 ――はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。 しかし、過度の快感の前には老若男女の差は無意味だ。 才人はもう全身に力が入らず、無様にベッドにしがみつき、震えながら尻をかかげる事しか出来ない。 216 名前:契約(その3)[sage] 投稿日:2007/05/07(月) 20 26 07 ID RlaksQe3 シエスタは、ベッドの上に乗って彼の側面にポジションをずらすと、そのまま右手でアナルビーズを引き抜きながら、左手をパーカーの下に潜り込ませてきた。 「しっ、しえすっ!?」 シエスタの指が才人の胸部を這い回る。 「っっっ!!」 思わず才人が息を呑んだ瞬間、彼女の舌が猛烈な勢いで彼の唇に侵入してきた。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!!」 ぴちゃ、くちゃ、ぺちゃ……。 流し込まれるシエスタの唾液が、才人の僅かに残る理性をどろどろに溶かしてゆく。 無論その間も、彼女による他の器官への攻撃は続いている。 右手の指は、さっきまで引き抜かれつつあったアナルパールを、新たに彼の菊門へ埋め込みつつ、左手の指は、びんびんに堅くなった彼の乳首を弾きまわし、才人の身体に電流を送り込み続けている。 ――くちゅ……。 たっぷり1分は続いたディープキスが、互いの唇の間に白い糸を引きながら終焉を告げる。 「サイトさん、気持ちいいですか?」 才人は答えない。 答えられない。 焦点の定まらない目で、自分を見下ろす少女を呆然と見返し、こくんと頷く。 「なら、……もっともっと気持ちよくして差し上げます」 そう言うが早いか、シエスタは、さっき再び彼のアナルに埋め込んだアナルパールを一気に引き抜いた。 「っっっっっ!!!!!!!!」 才人はもはや、声すらあげられなかった。 「じゃあサイトさん。これから、貴方の一番気持ちいいところを可愛がってあげますね」 そう言いながら彼女は、才人の剥き出しになったペニスを、そろりと撫で上げた。 484 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 06 57 33 ID NsYJzJhi その日、タバサは授業に出なかった。 彼女にしては、これは珍しい事と言わねばならない。 ガリアからの指令があれば、魔法学院の授業はおろか、あらゆるプライベートを省みずに任務に勤しむ彼女であったが、逆に言えば、そう言った任務以外の理由で授業をサボった事は無い。本来、彼女は根が真面目だった。 原因は分かっている。 昨日見た、あの風景。 あの時、タバサのまぶたに焼きついたあの荘厳なる絵画の如き、淫猥な眺め。 その焼きついた淫画を、あらためて、ぼんやりと思い出す。 (あれが、いやらしい、という事なんだ……) 男女の間には、そういった事がある、というのは知っている。 男女の間では、そういった事をする、というのも知っている。 その行為の果てに、人は子を産み、育て、死んでいくのだという事も。 しかし、それはタバサにとっては、天の果てに極楽があり地の底に地獄がある、という教えと同じくらい概念的で、実感の湧かない抽象的な知識だった。 かつてシャルロットという名で、ガリアの宮中にいた頃。さらには故国を追われ、タバサという名を名乗り、血のにじむような魔法の修行に励んでいた頃。――彼女に、そんな当たり前の性教育を施してくれる者は、誰もいなかったのだから。 もっとも、単に当たり前の性知識だけしか知らぬ者なら、その光景を見て、彼らが何をしているのかも、見当がつきかねたに違いない。 タバサとて、その博覧強記とも言えるほどの読書量と、いつもキュルケが話す、ほぼワイ談交じりの恋愛話を――半ば流しつつであっても――聞いていなければ、彼らが何をしていたか理解は出来なかったに違いない。 それほどまでに、あの二人が繰り広げていた痴態は、タバサの常識に当てはまらないものだった。 むくり。 体を起こしてみる。 ――重い。 昨夜の疲れが、まだ綿のように残っている。 気付けば、全身汗まみれだ。 (シャワー、浴びなきゃ) のろのろと、着替えを取ろうとして、その時初めて彼女は、自分が全裸であった事を思い出す。 そして、その恥じらいと共に、昨夜の自分の痴態をも。 485 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07 00 49 ID NsYJzJhi (熱い……!) 昨夜、タバサは熱にうなされていた。 尋常の投薬、治癒呪文では決して癒される事の無い高熱に。 熱を持っているのは心だけではない。むしろ肉体だ。――いや、集約すれば、肉体の一部分だ。そこから発生した膨大な熱が、放射状にタバサの全身を冒している。まるで悪性の疫病か何かのように。 タバサはそっと、その器官――股間に指を下ろす。 触れるか、触れないか、それこそギリギリのタッチで。 ――くちゅり。 「くうううううっっっ!!!!」 湿った音と共に、全身に十数回目かの電流が走る。 はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ……!! ――気持ちいい。 人間の体というものが、こんな感覚を発生させる機能を持っているということを、彼女はこの夜初めて知ったのだ。かつて読破した、どんな論文にも古文書にも研究資料にも記載されていなかった、禁断の知識。 すなわち、自慰行為。 膣孔も乳首も肉芽も、いや、その指、掌が触れるところは全て快感の電流が走り、こすり合わせる太腿さえも、たまらぬ陶酔感を彼女に与えてくれた。 昨夜からほぼ夜明けまで、タバサはこの一人遊びに没頭し、いつ眠ったのかも気がつかずに目覚めたのち、彼女はその生涯で初めて、朝寝坊という行為をしてしまった事を知った。 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 熱い湯が、きめの細かいタバサの肌を流してゆく。 昨夜来の汗の脂が、みるみるうちに清められてゆく。 自慰の快感とは、また別種の心地よさがタバサの身体を支配していた。 (サイト……) 意識がハッキリするにつれて、昨日の一件がまた、彼女の脳裡を占めてゆく。 486 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07 02 42 ID NsYJzJhi 「ああああああっ!! やめっ!! やめっ!! はぁぁぁっっっ!!」 「んふふふふ……違うでしょう? 『気持ちいいです。もっとして下さい、お姉様』でしょう?」 「はっ、はひぃっ! ひっ、ひもひ、いいれしゅうぅ……!」 「だめでしょう、ちゃんと言われた通りに言いなさいっ!」 ここは、風の塔の一室。窓から彼女たちを照らすのは、太陽ほどにまぶしい二つの月光。 そのスポットライトのなかで、二人のメイドが、互いに荒い息を吐いて身体を重ねあっていた。 一人のメイドが、犬のように四つん這いになり、もう一人のメイドがその背後から、彼女に何かをしているようだった。 最初、タバサは彼女らが一体何をしているのか、分からなかった。 ――というのは、嘘に近い。 確かに何をしているのかは分からなかった。 しかし、その二人が発散する“淫気”は、性行為に関しては非常に幼い知識すら持たないタバサにすら一目瞭然なほど、露骨なものだった。 (これって……えっち、なの……?) キュルケから聞いていたのとは違う。 小説で呼んだものとも違う。 男子生徒が昼休みに話しているのを、何となく聞いた行為とも違う。 そもそも、性行為とは、男と女がするものであって、眼前のメイドたちのように女同士でするものではない。 でも、これは――いや、これこそが“えっち”なのだ。 タバサは、胃液が逆流するような不快感を覚えた。 同性愛に対する嫌悪感もあった。 それ以上に、人としての矜持を捨て、獣のようにまぐわう彼女たちの“淫気”に、たまらない『だらしなさ』をおぼえたのだ。 その『だらしなさ』は、年齢相応に潔癖なタバサという少女が、最も嫌悪してやまない要素であった。 そう思った瞬間には、目を逸らしていた。 目を逸らした瞬間には、きびすを返していた。 もともと、この塔にも特別な用があって来たわけではない。 ただ、この塔の、この一室から見える二つの満月が、彼女は好きなだけなのだ。 タバサは、彼女たち二人によって、宙空の双月すらも汚されたような気がした。 その声が、彼女の耳に届くまでは。 「しえす……しえすたぁぁぁ……!! あああああ……!!」 「違いますっ!! 何度言ったら分かるんですサイトさんっ!! わたしの事は『お姉様』って呼びなさいって、言ってあるでしょうっ!!」 タバサは凍りついた。 487 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07 05 44 ID NsYJzJhi ――ぱぁんっ!! 掌が、何かを平手打ちする音が聞こえた。ついでに、泥の中から何かを引っこ抜くような音も。 「ひっっ!! おっ、おねえさまぁっ!! やめないでっ やめないで続けてくださいっ!!」 「続ける……? 何を続けて欲しいんですか?」 「〜〜〜〜っっっ ひっ、ひじわるいわないれぇぇ」 「ですから、ちゃんと言いなさい。な・に・を・続けて欲しいんですか?」 「おっ、おれの……おしりマンコを……おっ、おかしてくらさいっ!!」 タバサは信じたくなかった。 これ以上見たくも無かったし、聞きたくも無かった。 でも、やはり彼女の理性は、眼前で行われている、とてもとても淫らな二人の正体を確認せざるを得なかった。 タバサは、そのバラの花びらのような唇で素早くルーンを唱える。 と、同時に、彼女の小柄な身体は、かき消すようにその場から消えてしまった。 ステルス。――空気の屈折率を変化させて、自分の姿を透明にする呪文。 トライアングル・メイジであるタバサにとっては、そう難しい呪文ではない。 そのまま足音を消し、呼吸を殺し、彼女たちが最も欲見える場所……部屋の中央まで移動する。 「おれ? おれって誰です? あなたは今の自分の立場が、まだ分からないんですか!?」 そう言いながらメイド――シエスタは、四つん這いになったもう一人のメイドのスカートをめくり上げ、そこから見える剥き出しのお尻に、強烈な平手打ちを食らわしている。 488 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07 07 23 ID NsYJzJhi ぱぁん! 「ひぎぃっ!!」 「“あたし”でしょ、サイトさん?」 ぱぁん! 「ったぁぃっ!!」 「自分の事は“あたし”って呼ぶ。そう決めたでしょっ!」 ぱぁん! 「はっ、はひっ!!」 「わかったんですか? 本当に理解したんですか? 一体何回言わせれば気が済むんですかっ!!」 ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん! ぱぁん!! 「しゅいましぇん! しゅいましぇん!! ぁぁぁぁぁ!!!!」 ――サイト……!! そこにいたのは、紛れも無い才人その人だった。 メイドの扮装に身を包み、ウィッグとカチューシャまで装着したその姿は、ぱっと見には女の子にしか見えないけど、それでも、確かに才人であった。 (何で……何でこんな……!?) タバサが知る才人は、この世に於ける彼女の唯一の“勇者”であった。 かつて彼女は才人に命を救われた。 それだけではない。 囚われの身であった母すらも、彼は命がけで救ってくれた。それも、平民の身でありながら、せっかく叙勲されたシュヴァリエの称号すら投げ捨てて。 だからタバサはこの少年に、命すらも捧げる、そう言い切る事が出来たのだ。 お前は才人が好きなのか? そう問われれば、彼女は赤面して、ただ返答に困るしかないだろう。 なぜなら、男性としての才人は、すでに自分の手の届くところにはいないのだから。 彼は元来ルイズの召喚した使い魔であり、理解者であり、戦友であり、そして恋人であり、現段階では婚約者ですらあった。 この二人の間に、割って入ることは不可能だ。 タバサはそう思っていた。 それでいい、そうでなければならない。そう思おうとしていた。 489 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07 09 37 ID NsYJzJhi しかし……。 「“あたし”はぁ……“あたし”はぁ……」 「“あたし”は? サイトさんは一体誰なんですか?」 「“あたし”は、……シッ、シエスタお姉様の、いもうとの……ドジでエッチな……どっ、どうしようもない淫乱メイドですっ!!」 しかし……。 「んふふふふっ……。よく出来ました。ご褒美は何がいいですか?」 「……ああああ、シエスタお姉様の、堅くて太いのを、……“あたし”のおしりマンコにぶちこんでくださいっ!!」 しかし……何故、こうも彼らが美しく見える!? タバサは、もはや叫びだしたくなる自分を抑えるのに、必死だった。 「ええ、どうぞ……ゆっくり味わってくださいね」 物凄い顔で微笑んだシエスタが、自らのスカートを捲り上げた時、そこには本来、女性にはあるはずのない器官が、タバサには見えた。 黒く、太く、逞しい、見事なペニス。 恐らく才人自身のイチモツよりも更に、立派なサイズであるに違いない。無論そんな事まで、今のタバサには分かるはずも無いが。 その雄渾なるディルドゥーが、彼のアナルに吸い込まれてゆく。 ゆっくり、ゆっくり。しかし、その動きはむしろスムースで、無理やり捻じ込んでいるようには全く見えなかった。 「ああああああああ……おねえさま……いいいい、れしゅぅぅぅ……」 しかし、タバサにも分かる事があった。 さっきまで彼女自身を包んでいた、身の毛もよだつような嫌悪感が、いまや雲散霧消してしまっているという事だ。 その理由すらもタバサには分かっている。 ほんの数瞬前まで、才人への想いを無意識に封印しようとしていた自分自身に対し、その行為が何の意味も持たないナルシシズムである、と彼女は気がついたのだ。 逆に言えば、今この瞬間にタバサは、自身の才人への慕情に気付き、それを認め、その上で、開き直る覚悟を決めたのである。 ――私は、サイトを奪う。このメイドからも。そして勿論、ルイズからも。 490 名前:契約(その4)[sage] 投稿日:2007/05/17(木) 07 11 45 ID NsYJzJhi 一体その考えの何が悪いというのだ。 現に、ルイズの居ぬ間に蹂躙されているサイトの、この美しさはどうだ? タバサは、今まで才人という少年を、自分が全く理解していなかった事を、つくづく思い知らされた。 彼は、略奪されるべき存在なのだ。 他者から虐待され、蹂躙され、屈服させられる瞬間、その瞬間こそ、このサイト・ド・シュヴァリエ・ヒラガという少年は、最大限の魅力を発揮するのだ。 その後、シエスタというメイドは、四つん這いになった才人のペニスをしごきつつ、気が済むまで彼の尻を掘りまくると、スペルマまみれのメイド服に身を包み、精根尽き果てた才人に水をぶっ掛け、去っていった。 才人も、ずぶ濡れのまま、よろよろと立ち上がると、そのまま塔から姿を消した。 タバサが、ステルスの呪文を解除したのは、それからだった。 それから彼女は自室に帰り、一晩中、狂ったようにオナニーに励む事となる……。 きゅっ。 シャワーの蛇口を閉めると、彼女は大浴場から出て、身体を拭く。 拭きながら考える。 才人を手中に収める方法を。 才人を服従させる方法を。 (そもそも、何故サイトは、あのメイドに逆らえないのか) ならば、才人本人よりも、メイドに直接当たるべきかも知れない。 ルイズが帰ってくるのは、もう明日だ。 なら、万一、手間取ったら命取りだ。 そこまで、思案した時、彼女はすでに制服を着終えていた。 きゅっ、とマントを引き締める。 眼鏡をかける。 ――この際、メイドと協同戦線を張るのもアリかも知れない。 眼鏡を中指で、くいっと持ち上げる。 そのレンズの奥で、タバサの碧眼が妖しく輝いた。 637 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05 20 17 ID YGULRSV0 こんこん。 シエスタが部屋をノックする。 「ミス・タバサ、お食事をお持ちいたしました」 「入って」 扉の奥から声が聞こえる。 ドア越しだけに、か細く、小さいけれど、はっきりとした意思を感じさせる声。 (ご病気だと聞いたけれど……案外具合はいいのかも) 「それでは失礼致します」 シエスタは扉を開けると、キチンと礼をし、室内に入る。 そこに、いつもルイズにしているような反抗的な態度はカケラも見受けられない。 と言うより、本来シエスタにとっては、むしろ生徒や教師一人一人に対し、こういう所作をとる事こそ自然なのだ。彼女はあくまで、この学院における使用人であり、家政婦であり、一人の平民に過ぎないのだから。 才人がハルケギニアに出現して以降、シエスタは驚くほど自分が変わったと思う。 まず、第一にメイジが怖くなくなった。 これまで彼女たちにとってメイジとは、自分たち平民にとって生殺与奪の権を握る、文字通り“怒らせれば命は無い”というほどの対象であった。 しかし、才人を通じてシエスタは、彼ら貴族もまた人間でしかない事を知った。 そして、この学院のメイジたちも同様に、才人によって、平民たちもまた人間であるという事実を知ったのだ。 結構以前までは、本音はともかく、この学院で才人の事を堂々と、 ――平民め! と、口に出して誹謗できるもの、もうあまりいなくなっていた。 (俺をそしれる資格のある者は、俺以上のことが出来るやつだけだ) 才人のその、あけっぴろげな笑顔の裏にある自信は、この学院の全ての見習いメイジたちも、無言で認めざるを得ないものがあったのだから。 もっとも、ルイズが卒業すると同時に才人が彼女をめとり、新たに領地と官位まで下賜される、という事実が発覚した現在では、そうはいかない。 いまや彼は、この学院における嫉妬と羨望の眼差しを一身に受ける存在であった。 無論、そんな風当たりなど、才人にとっては風馬牛といった感じではあったが。 しかしその中で、才人にではなくルイズに嫉妬する者がいる事を、……自分以外にそんな者が存在している事実を、うかつにもシエスタは知らなかった。 638 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05 21 47 ID YGULRSV0 「お食事、こちらに置きますね。このシチュー、精の付くものを特に多くいれてあります」 そう言いながらシエスタは、トレイをタバサの正面のテーブルに置き、彼女の方をちらりと見る。 タバサは、ソファに座って読書に勤しんでいた。 (さぼり?) 仮病を使い、授業をさぼったあげく、わざわざ自室にまで食事を届けさせる。 そういう貴族たちの尊大さは――慣れているとはいえ――やはり、やりきれないものを感じさせる。 しかし、若干の違和感もある。 少なくとも、シエスタが知るタバサという少女は、そういう貴族の典型と言うべき倣岸さを、他人に見せるタイプではない。 ルイズやキュルケたち程ではないが、それでも彼女にとってタバサはまんざら知らない仲ではない。 一応、才人たちとともに宝捜し――という名のキャンプ旅行に出かけたこともあるくらいだし、他の学院生たちよりは、寝食を共にした仲だという気安さはある。 また、その宝捜しの最後の一点である“竜の羽衣”が、曽祖父の形見だったという事実もあって、その時の一行は全員、シエスタの実家を一夜の宿として借りてまでいるのだ。 ――しかし、このタバサという異様に寡黙な少女は、その時の旅でもそうだったが、結構コミュニケーションが取りづらい。 ギーシュなどとは違い、何かと頼りにはなるのだが、宝捜しの時も直接的な面倒は、ほとんどキュルケに任せっ放しで、自分はほぼ没交渉だったような気すらするのだが。 今になって、ふと疑う。 タバサの目的は、自分をここに呼ぶ事にあったのか? 自分でなければ出来ない話を、二人きりでするために。 思い当たる節は――ない。 シエスタは、このタバサという少女が、自分同様、才人に熱い眼差しを向けているという事実を、まだ知らない。 639 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05 23 31 ID YGULRSV0 「食事、ありがとう」 ぼそりとタバサが呟く。 「ああ、いえ、とんでもない」 「おいしそう」 そう言うとタバサは、自分の食器棚から銀のスプーンを取り出し、その感謝の言葉とは裏腹に、何の感情も見せない表情で、ビーフシチューをすすり始めた。 シエスタは辛抱強く、タバサが口火を切るのを待っていたが、この寡黙なメイジは一向にそんな様子を見せない。それどころか、一瞥の視線さえシエスタに投げかける気配も無く、シチューを味わっている。 「ミス・タバサ、お紅茶はいかがでしょうか?」 トレイの上のポッドから、装飾を施したカップに、湯気の立つ紅い液体を注ぐ。 「ありがとう」 と言いながらも、やはりタバサは、ただ黙々と食事を続ける。 (ばかにしてる) さすがにシエスタも思った。 彼女は出自こそ平民の村娘ではあるが、決して気位の低い女ではない。 もっとも、そんな彼女でなければ、公爵家の令嬢を向こうに回して、男の取り合いなどできるものではない。 それとも、彼女がわざわざ自分に食事を持ってこさせたのは、特に意味も無い事だったのか。 シエスタにとっては――まあ、どっちでも良かった。 用が無いなら帰るまでだ。明晩にはルイズが、実家から帰ってくる。あの可愛い“妹”をいたぶれる機会は今夜しか、もう残っていないのだ。 そう思うと、シエスタは矢も盾もたまらず、才人の元は行きたくなった。 「では、ミス・タバサ、これでわたくしは失礼致します。食器の方は、また後ほど回収させて頂きますので、扉の外にでもお出し下さいまし。……では、失礼致しました」 「待って」 この声がかかるまでは。 「昨日の“妹”は元気?」 タバサは、この時初めてシエスタを見上げた。 その青い瞳は、いそいそと部屋を出ようとするシエスタを、明らかに嘲っていた。 そして、シエスタの表情は、タバサの碧眼以上に真っ青になっていた。 640 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05 26 33 ID YGULRSV0 「……ミス・タバサ?」 タバサは、もうシエスタを見てはいない。 さっき見せた、悪戯っぽい表情は、紅茶のカップを持つ小さな手に隠れて、シエスタには何も見えない。 しかし、その肩も、その背も、僅かに見えるその口元も、いや、彼女の全身が発する雰囲気からして、タバサは明らかに嘲っている。誰を? 無論シエスタを、だ。 「あっ……、あの……ミス? 昨日の妹って、一体何の事でしょうか?」 タバサは答えない。 今のシエスタにとっては、百万言の脅し文句より、その沈黙の方が怖い。 「ミス・タバサ。あの、ちゃんとおっしゃって下さい。私にも分かるように、その――」 「風の塔」 もう疑う余地すら残っていない。 決定的だ。シエスタの頭はもう真っ白だった。 (見られた……!!) そう、見られたのだ。 見られた以上、シエスタとしては、土下座してでもこの少女の口を封じねばならない。 なんとなれば、この一件のスキャンダルは、シエスタはともかく、才人の身柄をも決定的に失墜させるものだからだ。彼女としては、無論それは望むところではない。 シエスタは知っている。 才人が、その心底では、誰よりもルイズを愛しく思っている事を。 例え今は、彼女の体の下で、お尻を犯されむせび泣く、シエスタの“妹”奴隷であったとしても、だ。 そして、ルイズへの嫉妬はともかく、才人が幸せになる事を考えれば、今回のこの醜聞は、断じて表沙汰にするわけにはいかないのだ。 才人は、彼が望む女性と結ばれ、その上で幸せにならねばならない。 結果として、彼が自分を選ばなかった事は、骨が鳴るほどに悲しいが、だからといって、その縁談もろとも才人の将来をもを叩き潰してやる、などと考えるほどシエスタは下品な女ではない。 今回の彼女の暴挙は、自分を捨てた才人への怒りもあったが、何より、ルイズが実家から帰ってくるまでの、ほんの、お仕置きのつもりだったのだ。 だから、お尻の処女は奪っても、才人の童貞は、あくまで手をつけてはいない。 ルイズが帰り次第、シエスタは大人しく身を引く予定だったのだから……。 「それでいいの?」 タバサが眼鏡の奥から、何もかも見透かしたような、そんな目付きで問い掛ける。 641 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05 27 55 ID YGULRSV0 何がです? と、シエスタにしてみれば、聞き返すべきであったかもしれない。 タバサのペースに巻き込まれず、自分の望む方向へ話の先を取りたいなら、彼女はそうすべきであった。 しかし、シエスタの口は開かなかった。 その、喉元まで出かかった言葉は、語られる事は無かった。 (何で、私の考えてる事が……?) もはや、シエスタは冷静ではなかった。 彼女にとっては、タバサが自分の考えを読んだという事が、何より――才人との醜聞を見られたという事実そのものよりも――パニックを喚起させていたのだ。 タバサからすれば、シエスタの表情と、沈黙の呼吸、全身の雰囲気などから、彼女の意思を読み取り、ブラフをかけたに過ぎない。歴戦の戦巧者でもある彼女からすれば、たかだか平民のメイド一人、論理誘導する事など、さほど難しくは無い。 結局、シエスタは、そのタバサの問いに返答できなかった。 なぜなら、シエスタが答える前に、タバサが新たな問いを発してきたからだ。 「何故、それでいいと思うの?」 「わっ、私は何も言ってません!」 「いいえ、分かるわ。貴方はサイトを諦めようとしている。だから逆に、ルイズが帰ってくるまでに、彼の身体に自分の痕跡を残そうとしているのでしょう?」 タバサがゆらりと立ち上がり、音も無くシエスタの隣に立つ。 気配をまるで感じさせない、幽霊のような動きで。 そのまま囁く。 サイトを奪いなさい、と。 ルイズから奪いなさい、と。 サイト自身からも、ルイズを消し去りなさい、と。 「ダメですっ!! そんな事はダメですっ!!」 タバサの悪魔のような囁きに、シエスタは耳をふさいで、その場に座り込む。 642 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05 30 12 ID YGULRSV0 ――なぜ? 「サイトさんが不幸になりますっ!! サイトさんがっ!!」 ――ならないわ。 「なりますっ!! だってサイトさんが、サイトさんが好きなのは私じゃないんですもんっ!! サイトさんはミス・ヴァリエールと結ばれてこそ――」 ――違う。 シエスタは振り仰いだ。 タバサが無言で彼女を見下ろしている。 しかし、そのたたずまいは、むしろ森厳とすら言うべきであり、先程までの悪魔じみた囁きを、この少女が発していたとは到底信じがたいものがある。 タバサは言った。 「人の心は脆いもの」 例えサイトがルイズを愛していようと、それだけでは得られぬ快楽がある事を教えてあげればいい。 「現に」 タバサは続ける。 現に、あなたは実践しているではないか。男でありながら“女”として、“陰門”を征服される悦びを、あなたは彼に、十二分に教え込んでいるではないか。――と、そう言った。 「……」 シエスタは言葉を返せなかった。 才人はまだ若い。 若い男性の目には、精神的な愛情よりも、肉体的な快楽の方がより魅力的に映るであろう事は、シエスタにとっても、自明の理だという事は分かる。 しかし……。 そんな事が出来るであろうか? 殴られても蹴られても、ある意味一途にルイズへの愛を貫き続けてきた才人なのだ。 ティファニア、アンリエッタ、そしてこの自分と、他の女性に乗り換えるなら機会はいくらでもあった。しかし、それでもなお、諦めずにルイズへの想いを捨てずに、そして念願のゴールインを迎えた彼らを、快楽の力だけで、引き離す事など可能であろうか。 643 名前:契約(その5)[sage] 投稿日:2007/05/23(水) 05 31 12 ID YGULRSV0 「できるわ」 タバサは言い切った。 「あなた一人じゃ無理かもしれない。でも、私が手を貸せば、出来る」 そう言ってタバサは、へたり込むメイド少女に手を差し伸べる。 シエスタは、むしろ恐怖を持って彼女に尋ねる。 あなたは何故、そこまで自分を、一介のメイドに過ぎない自分を、ここまで後押ししてくれるのですか、と。 「決まってる」 タバサがそう言った時、シエスタの片手はすでに彼女の掌中にあった。 「私もサイトが好きだから」 そして次の瞬間には、ふわりという感触と共に、タバサの薄い胸の中に吸い寄せられていた。 「サイトを、ルイズだけのものにしたくないから」 339 名前:契約(その6)[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19 34 39 ID kIHtn6WC 「……!!」 才人は絶句した。 (どういう事態なんだ……これは……!?) いま、この部屋には、シエスタを含めて三人の女性がいる。 タバサ。シルフィード。そして、この淫靡なイベントの主催者であるシエスタ。 ――いや、何も知らない者が見れば、女性の人数は四人に見えたに違いない。そこに女装を強制された才人を加えたならば。 いつもの通り、ノックもなしにイキナリ部屋に入ってきたシエスタに、当然のように突き出された、下ろしたてのメイド服。それと、ウィッグを含む数々の化粧用品。 「こ、このあたしを、お姉様の“いもうと”に戻して頂いて、有難うございます……」 才人はそんなシエスタに、ぎこちない感謝の辞を述べ、彼女に為されるがままに着付けとメイキャップを施されてゆく。 当然、ただ着替えるだけではすまない。 才人の言葉に、鷹揚にうなづき、淫らな微笑を返しつつ、彼女はいつもの行動に移る。 唇、ペニス、アナル、乳首、耳朶、うなじ、脇の下といった、才人の全身の性感帯を撫でまわし、存分に彼の悲鳴を堪能しながら、それでもシエスタは手際よく、才人を変身させてゆく。 股間からペニスを生やした、とても残念な生き物……シエスタの“いもうと”に。 340 名前:契約(その6)[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19 36 32 ID kIHtn6WC はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、……。 メイクが完了した頃には、才人はいつものように肌を紅潮させ、息も絶え絶えになっていた。 そんな彼を見下ろし、シエスタは言う。 「喜んでくださいサイトさん。今日はね、特別ゲストがいらしてるんですよ」 「え?」 「どうぞ、準備は出来ましたのでお入りください。――ミス・タバサ」 「なっ!?」 ――いま、いま何と言いやがった!? たばさ? タバサと言ったのか!? その言葉に才人が愕然となる暇すらなかった。 扉が開いて現れたのは、まさしく、彼が知る寡黙な少女、タバサその人であった。 さらにその後ろから、 「きゅいきゅい、待ちくたびれちゃったのね!」 という、いかにも無邪気な声とともに入室してきた、もう一人の女性。 タバサと同じく、青く美しい髪を背まで伸ばした、二十歳前後の綺麗な女性。 「――しっ、シルフィ……!?」 「あっ、サイトっ!? どうしたのね? 何かいつもと違う格好してるのね」 「あ、いや、その、これは――」 ――ばたんっっ!! 必死に言い訳しようとする才人の口は、重い音と共にシエスタに閉じられた部屋の扉によって、遮られた。 「……しえすた?」 とっさに、幼児のように救いを求める視線を、シエスタに投げかける才人。 しかし、シエスタは、まるで彼の逃げ場を塞ぐかのように扉の前に仁王立ちになり、さらに彼を追い詰める。 「さあ、サイトさん、この方々に説明してあげてくださいな。――いまの自分が、一体どういう事になっているのか」 「そっ、そんなっ!?」 「逆らうんですか?」 「……!」 341 名前:契約(その6)[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19 38 25 ID kIHtn6WC ――ここまで、ここまでするのか、シエスタ……。 何度も味わった、この絶望。 絶望の淵に叩き落されていたはずの自分が、さらに深く、暗い闇の底まで引きずり落とされてゆく感覚。 逆レイプに始まり、射精管理、飲尿行為、アナル開発、野外プレイ、さらには男性用貞操帯と授業中の道具責め。そして現在の強制女装からのレズセックス。 シエスタの口が開くたびに、そこから紡ぎだされる新たな命令に才人は、いつもこの感覚を味合わされていた。すでにして希望を捨てている彼をして、更なる絶望の暗闇に叩き落す、彼女の恐るべき嗜虐性。 ――何を言ってるんですかサイトさん。まだまだ、これからなんですよ。 そして今もシエスタは、そう言わんばかりに両手を腰に当て、ねっとりとした視線を才人に送っている。 「きゅいきゅい、早く説明してサイトっ。一体なんでこんな格好してるのっ?」 「そうですよ、サイトさん。ゲストの方々をお待たせするのは、メイドとしてはとても恥ずべきことなのですよ。私は“姉”として、あなたをそんな“いもうと”に躾たつもりはありませんよ。ふふふ……」 無邪気なシルフィード。その尻馬をあおるシエスタ。 才人は、その迷える視線を、おそるおそる第三の少女……タバサに向けてみる。 タバサの、常に自己の感情を窺わせない青い瞳。 その美しい碧眼が、わずかに興奮の色合いをにじませつつ才人を射抜き、言う。 「早く」 彼は、その一言を聞いた瞬間、まるで下半身が泥になったように、その場に崩れ落ちた。 342 名前:契約(その6)[sage] 投稿日:2007/06/09(土) 19 41 27 ID kIHtn6WC この、絶望的なまでに無残な姿を晒している自分を見て、あのタバサが、僅かにであるが頬を紅潮させ、目を潤ませ、笑みすら浮かべている。それも、シエスタと同質の淫靡な微笑を。 (もうダメだ) 「……あ、あたしは……」 (ダメだよルイズ……) 「あたしは、――シッ、シエスタお姉様の“いもうと”で」 (もう……限界だ……!!) 「ドジで間抜けで、いつもお姉様にご迷惑をかけて、お仕置きをして頂いている、サイトっていうメイドです」 (俺、もう、何か、壊れちまったよ……) 才人は、全身を震わせながらひざまずき、 「ミス・タバサ、それにミス・シルフィード。こんな哀れなあたしを、ど、どうか、お姉様と三人で、……お、お仕置きして下さい……!」 そう言って才人は、三人の靴にキスをした。 348 名前:痴女109号[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 03 44 54 ID V7ARRJ95 元来、この部屋はルイズの個室だった。 そこに、使い魔として召喚された才人が同居し、さらに才人の“御付きメイド”となったシエスタが押しかけてきて、いつの間にやら三人部屋になったのだが、それでも、この部屋の家具や、クローゼットの衣装などはほとんどがルイズの私物である。 つまり、この部屋の中には当然の事ながら、ルイズの体臭こそが一番染み付いている。 ベッドにも、シーツにも、枕にも、布団にもである。 そんなルイズの匂いにまみれた夜具の中で、彼女の夫になるべき男を蹂躙する。 ――シエスタの優越感をこれ以上ないほどに刺激するこのシチュエーション。 そして、肝心の“寝取られ男”は今、彼女――シエスタにスカートをまくりあげられ、四つん這いになって剥き出しの尻をさらし、シエスタにアナルを舐められていた。 その連日の荒淫ですっかり黒ずんだ彼の菊門はパックリと口を開き、そこから伸びた黒い細紐の先には、金属製のリングが鈍く光っている。 ――シエスタのアナルパールの紐であった。 349 名前:契約(その7)[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 03 47 26 ID V7ARRJ95 「きゅいきゅい、すごい! シルフィ、とっても気持ちいいのねん!!」 ワンワンスタイルになった才人の頭部は、シルフィードの細く長い両足に挟まれ、拘束されている。 いくら人間の姿をとったところで、元はドラゴンである。恐らく彼は、かつて経験した事のないパワーで頭蓋を圧迫され、必死になってシルフィードの恥部に舌を振るっているはずだ。 「きゅいきゅい!! こんなのっ!! こんなの初めてなのねんっ!!」 いまシルフィードの神経を、どれだけの快楽電流が迸っているかは、そのムダ毛一本生えていない白い美脚が、真っ赤に紅潮している事でも予想はつく。 「きゅい〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!」 二十歳前後の容貌に似合わぬ甲高い声を発し、シルフィードの全身から、一気に力が抜けた。 首の骨を捻り折られる前に、どうやら才人が、この竜の幼生を頂上に追いやったようだ。 イったシルフィードも、イカせた才人も、互いに肩で荒い息をしながら、ベッドに突っ伏した。 (当たり前よね) シエスタは、余韻に酔いしれるシルフィードを見て、むしろ自慢気に鼻を鳴らした。 この“いもうと”は、シエスタが都合数十時間の連続調教の果てに、女性を(と言うか自分を)悦ばせるためのあらゆる手練手管を叩き込んだ、いわばシエスタ自慢の『作品』でさえある。 いかに伝説の風韻竜といえど、いかに妙齢の美女に変身していたとしても、所詮は幼竜一匹、“いもうと”の手にかかれば物の数ではない。 350 名前:契約(その7)[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 03 52 07 ID V7ARRJ95 「んふふふふ……サイトさんったら、ホント学習しない人ですねえ」 そんな上機嫌とは裏腹に、シエスタは尻肉に、がぶりと歯を立てる。 「〜〜〜〜〜っっ!!」 「私はサイトさんに『お尻を差し出しなさい』と言ったんですよ」 彼の臀部に歯型を生産しながら、シエスタは言葉を続ける。 「誰が休んでいいと言ったんです? あなたがこのベッドでお休みになれるのは、ここにいる全員が、あなたを罰し終えてからなんですよ。まだそんな事も分かりませんか?」 「すっ、すびばせんっ! お姉様っ!!」 そう言われて才人が、満面の恐怖を浮かべながらシエスタを振り返る。 が、当然シエスタは彼を許すつもりはない。 「さあ、どういうお仕置きがいいでしょうか、ミス・タバサ?」 そう言いながら、シエスタは視線をタバサに移す……が、その時になって、彼女の姿が自分の視界にないことに気が付いた。 「このリングは何?」 ――っっっ!!? 肩越しにかけられた冷静な声音に、シエスタは驚きの余り、体勢を崩して振り返る。 (いっ、いつの間に私の後ろにっ?) そこには、碧眼碧髪の眼鏡っ娘が、まるで理科の実験でも観察するような冷静な眼差しで、シエスタを見つめていた。 「それに、サイトの肛門が完全に口を開いてしまってる」 いや、彼女が見つめていたのはシエスタではない。 「何をしたらこうなるの?」 タバサの眼中にあるのは、あくまでも才人一人なのだ。 「この、お尻のリングが関係してるの?」 351 名前:契約(その7)[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 03 55 49 ID V7ARRJ95 タバサは、シエスタの隣――丁度、才人のアナルを最もいい角度で覗ける場所に移動してくると、そこで初めてシエスタを振り向いた。 「引っ張っていい?」 どうやら、タバサは才人のアナルから生えたリングに御執心らしい。 「その必要はありませんわ」 シエスタは、さっきの驚きはどこへやら、逆に誇らしげに答える。 彼女としても、才人の調教状態をタバサに示せる事が嬉しくてたまらないらしい。 「ミス・タバサのお手を煩わせるまでもありません。――サイトさん」 シエスタは、歯型をぺろりと一舐めすると、闇に沁み入るような声で命じた。 「『産卵』のお時間ですよ」 「こっ、ここでですかっ!?」 「私に恥をかかせるおつもりですか、サイトさん?」 その一言で才人の口答えは終焉を告げた。 「あ、いや、その、申し訳有りません、お姉様……」 生半可な反抗が、どれほどの“罰”となって我が身に帰ってくるか、彼はもう、骨の髄まで承知しているのだろう。タバサには、そんな才人がとても新鮮に見えた。 353 名前:契約(その7)[sage] 投稿日:2007/06/10(日) 04 01 08 ID V7ARRJ95 「ひっ、ひっ、――ふぅぅぅぅうううううう!!!」 才人が、半ば悲鳴のような声を上げながら、全身の力を振り絞っていきみだす。 すると、やがて才人のアナルから出現したのは、リングから伸びる紐に結ばれた直径3センチほどの球体だった。 「んっ、んっ、んっ、んっ、んんんんんんっ!!!」 才人の全身が、電気椅子で処刑された死刑囚のように痙攣する。 「すごい……!!」 思わずタバサが呟いた。 才人のアナルから出現した球体は、なんと一個だけではなかったのだ。 二つ、三つ、四つ、……。 ――まだ、まだある? まだ入るの!? なるほど、『産卵』とはよく言ったものだ。しかし彼女たちの眼前で全身を震わせ、球体をひり出し続ける才人の姿には、ウミガメの出産のごとき荘厳さはカケラもない。 タバサは、滅多に感情を表さぬその容貌を、驚きと悦びに染めながら、ひたすら球体を排出し続ける彼のアナルを、食い入るように見つめ、そんなタバサを、シエスタはこれ以上ないほどの優越感と誇りを持って見下ろしていた。 「お姉様ぁっ、お姉様ぁっ、もう、もう!!」 そう叫ぶ才人の肛門からは、数珠繋ぎに結ばれた“卵”が四個ぶら下がり、しかも四つ目の“卵”からは、まだ紐が彼のアナルまで続いている。 「だらしないですねぇ、サイトさん」 そう言うと、シエスタは、そこで初めてリングに指をかけ、 「御自分の異物を、排泄する事さえ出来ないのですか?」 一気に引き抜いた。 ずぶりっっ!! 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」 鈍い音がして、さらに二つ、都合六個の“卵”が、異臭にまみれてベッドに落ちる。才人自身も、それと時を同じくして、再びベッドに崩れ落ちる。 その数珠繋ぎのアナルパールを携え、ひょいと才人の枕元に移動したシエスタは、刹那、タバサに勝ち誇った眼差しを向け、戦慄すべき新たな指令を、愛する男に下した。 「さあ、サイトさん。御自分で汚したモノは、御自分で綺麗にして下さい。メイドの基本ですよ」 糞臭匂うアナルパールを、才人の口元に突きつけながら下したこの言葉は、眼前の才人にのみ向けられたものではない。つまり、 (私が命じて、サイトさんに出来ない事など、もはや存在しない。貴方と私の、今の差を思い知らせてあげますわ、ミス・タバサ……!!) 624 :契約(その8):2007/06/22(金) 01 52 27 ID o2mqbQuL (こっ、これを、……俺がっ!?) 異臭を放ちつつ突きつけられた数珠繋ぎの物体は、才人に新たなる絶望を味あわせるには充分な存在だった。 、そして、いまや彼にとって、絶望という感情は、彼の魂を闇の淵に蹴りこむだけでは済まない、むしろ甘美な響きさえ伴う、黒い欲望に同化しつつあった。 ――すなわち、マゾヒズム。 元来、平賀才人という少年には、その素養があった。 そもそも、ある日イキナリ、自分を異世界に召喚した、その実行犯たる少女に唯々諾々と従い、それでもなお、自分を人間以下に扱おうとする彼女に、好意を越えて愛情さえ抱いてしまう。 ――常識的には、はっきり言って、考えられる事ではない。 そんな非常識をあっさりクリアーしてしまう順応性。これをマゾヒズムの兆候と解釈する事に何の誤謬があるだろうか? まあいい。 とにかく、この場において確かに言える事は、彼に与えられる更なる絶望は、もはや快楽に化学変化することさえ稀ではない、という事実。 その証拠に、才人は眼前に突きつけられた、異臭漂うこの性具を見つめる眼差しに、明らかな興奮の熱を持った光を灯している。 そして、ゆっくり、ゆっくりと、『それ』を手に取った才人を、シエスタはにやりと笑って見下ろした。 625 :契約(その8):2007/06/22(金) 01 54 13 ID o2mqbQuL 「きゅい、きゅい! ズルイのねん。サイトだけ、美味しそうなお団子食べて!!」 その声の所有者が、いきなりその性具を横取りして口に放り込まなければ、彼は間違いなく、その物体を自らの口に納めていただろう。 しかし。 「――ぶほっ、なにこれっ!? ごほっ!! ごほっ!!」 「あっ、シルフィさん、だめっ!!」 シエスタが止める暇さえなかった。 シルフィードは、その堅い食感と、何よりその物質の全体を覆う臭味に驚き、アナルパールをそのまま、窓の外に放り投げてしまったのだ。 一瞬、残念そうな、ほっとしたような表情の才人を残して。 「なにこれっ!? くさいのねんっ! まずいのねんっ!! 気持ち悪いのねんっ!!」 全身に鳥肌を立たせるシルフィード。 無理もない。 才人のクンニにイカされて、ようやく天地晦冥の中から意識を取り戻したばかりの彼女は、残忍極まりないシエスタの産卵命令も、才人の出産シーンも見てはいないのだから。 つまり、このピンポン球大の性具が、そもそもどこに仕込まれていたか知らない訳だ。 「自業自得」 「きゅいきゅいっ! お姉さまヒドイのねんっ!!」 「勝手な真似するから」 そう言いながらタバサの指は、うなだれて、荒い呼吸を整えている才人の顎に、差し入れられた。 「サイト」 「……何? タバサ」 「貴方の身体で、この子を口直しさせてあげて」 そうタバサが言った瞬間、きゅいきゅい騒いでいたシルフィードが突然静かになった。 「――いいの? お姉さま」 「……」 「お姉さまより先に、シルフィがサイトを食べちゃっても」 「いいの。順番なんてもう、無意味な事だもの」 「ミス・タバサ! ちょっ、ちょっと、待って下さいっ!」 しかし、シエスタの声は結局タバサの唇によって中断された。 「んっ……んんんん〜〜〜〜っっっ!!」 イキナリ敢行されたタバサのディープキスは、数瞬であっても、メイドから判断力を奪うには充分だった。 「おっ、おい、タバサっ!!」 そして、彼女を振り返ろうとした瞬間、 「きゅい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!」 という、奇声と共に、碧髪の美女が才人の胸に飛び込んできたのだ。 「ちょっ、まっ、っっぁぁぁ〜〜〜〜〜!!」 そしてたちまちの内に、うなじの急所に吸い付かれて、何も言えなくなってしまう。 「きゅいきゅいっ! お姉さまのお許しが出たのねんっ!!」 「しるっ、しるふぃっ!!」 「きゅいきゅいっ! うるさいのねんサイトっ!」 胸のボタンを引き千切ると、そのままシルフィードは彼の乳首を音を立てて噛む。 「〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」 626 :契約(その8):2007/06/22(金) 01 55 46 ID o2mqbQuL 「どう、おいしい? サイトの体は?」 シエスタの胸を揉みながら、タバサがこちらに目をやる。 「すごいのねんっ!! とってもおいしくて、シルフィ感動しそうなのねんっ!!」 そのまま、赤子のように、ちゅうちゅう彼の乳首を吸い始めるシルフィード。 そうなのだ。 彼女は、いまでこそ美しい髪を背まで伸ばした妙齢の美女の姿をとってはいるが、本来は竜の幼生。まだまだ母のぬくもりが恋しい年頃である。 そして、そんな彼女ならばこそ、さっき才人の舌によって自分の肉体を襲った、未経験の快感についても、当然理解してはいなかった。 ――ただ一つ、タバサから言い含められたサイトの『童貞』の件を除いては。 「どういう、どういう、おつもりなんですかミス――あっ……タバサっ!?」 「……」 「あなたはサイトさんを、一体――くぅぅ――どうするおつもりなんですか」 「サイトの童貞を、あの子に奪わせる」 その言葉を聞いた瞬間に、シエスタはこの少女に対する自分の認識が、全く甘かった事を思い知った。 ――敵っっ! この方は、やっぱり敵なんだ。 ミス・ヴァリエールだけじゃない。私からすらも、サイトさんを奪おうとしている恋敵! (甘かった。気を許したわけでもなかったのに、何でこんな……!!) さっきのあの瞬間、才人は完全にアナルパールを口に入れようとしていた。 さっきのあの瞬間、才人は完全にシエスタの軍門に下った、いわば無条件降伏の状態だったのだ。 しかし、その流れはいま断ち切られた。 いま、才人の“男”は奪われつつある。 シエスタがどうしても手を付けられなかった、才人の男としてのシンボル。 ルイズへの遠慮なのか? いいや、それは言い訳に過ぎない。 シエスタには分かっていた。 彼女が、才人の“男”に手を付けなかったのは、そうする事で何かが終わってしまう、何かが変わってしまう、そう思ったからであり、それが怖かったからだ。 何故なら、才人が本当に好きなのは、あくまでも自分ではなくルイズであるという事実を、彼女は誰よりもよく知っているからだ。 しかし、このタバサという少女には、自分のような中途半端なためらいはない。 その証しに、彼女の使い魔たるシルフィードは、才人の体を……。 「きゅいきゅい、サイトのおっぱいは何にも出て来ないから、ちょっとつまらないのねん」 そう呟くと、シルフィードは才人の着るメイド服のエプロンごと、スカートを中央から縦に引き裂いた。 びびっ、びびびびびっっ!!! 「ああああっ ちょっとお前、この服タダじゃないんだぞっ!!」 この才人の叫びが照れ隠しだったのか否かは、恐らく問題ではない。 スカートを縦に割って突如出現した巨大スリットのおかげで、小さなショーツからはみだした彼の堅いペニスが、大気中に一気に晒される事になったのだ。 627 :契約(その8):2007/06/22(金) 01 59 29 ID o2mqbQuL 「きゅいきゅい!! サイトのおちんちん、可愛いぱんつからはみだしてるのねんっ!!」 「やっ、やめろぉっ!! みるな……ぁぁぁぁああああ!!!」 「んふふふふ。やっぱサイトは、いい反応してるのねん」 「あああっ!! いやだっ!! サイトさんっ!! サイトさんっ!! しっかりして下さいサイトさんっ!!」 「黙って」 自分に乗りかかるタバサの小さな体の向こうから、あからさまな才人の悲鳴が聞こえて来る。それは、“姉”を名乗り、才人の身体を思うさま蹂躙してきたシエスタにとって耐え切れる響きではなかった。 本当なら、今すぐにでも、自分にまとわり付くタバサを蹴散らして、愛する男の貞操を守りに行きたかった。 しかし、跳ね除けられない。 タバサが駆使する、舌、指などのテクニック。それに加えて、抵抗しようと暴れるシエスタの力を巧みに逸らし、流し、あるいは利用し、体格に於いて自分を圧倒しているはずのシエスタの体から引き剥がされないようにしている。 ――もっとも、『北花壇騎士七号』として、魔法・体術を含む様々な戦闘訓練を修めているタバサにとっては、たかがメイド一匹グラウンドで押さえ込むのは、造作もない事なのだが……。 (でも、手加減はしない……!!) 「ひぃぃっ!! 剥かないでっ!! そこの皮は――痛でぇぇ!! 剥かないでぇぇ!」 「きゅいきゅい、意外なのねん。サイトってば、こんなに立派なの持ってるのに、先っちょは、『お子様』なのねん?」 そう、そこに聳える才人の男根は、サイズはともかく、いまだ幼いままの形状を保っていた。 シエスタは、彼がいくら泣き叫んでも、“そこ”に手を付けてはくれなかったのだ。 そこに、シエスタ独特の不安感とルイズへの遠慮があった事は前述したが、しかし、それだけではない。 (徹底的に焦らせてあげます――!) 彼の男としての機能を、あくまでも無視し、それ以外の性感帯の開発に重点を置く事で、より深い屈辱と、それによる快楽を与えよう。当時の彼女はそう思ったからだ。 ――しかし、今は後悔している。 こんな形で、こんな形で奪われてしまうなら、私がっ!! この私が誰よりも早く奪ってしまえば良かったっっ!!! 涙ながらにシエスタは思う。 「きゅいきゅい、サイトだめなのねん。あんまりモガモガすると、おちんちんの皮が剥きにくいのねん」 「だからっ!! 剥かなくていいっ!! って、聞いてねえだろオマエ――ああああ!!」 「嫌なのねん。シルフィは剥きたいのねん。サイトのおちんちん、剥きたいのねん」 「ちょっ……何すんだよっ!?」 「だから、サイトは少し静かにするのねん」 シルフィードはくるっと体勢を入れ替えると、69の体位で自分の股間を、彼の口元に持っていった。 「男の子は我慢が大切なのねん。今からサイトは、シルフィのあそこを舐め舐めして、忍耐力を養うのねん」 628 :契約(その8):2007/06/22(金) 02 01 34 ID o2mqbQuL 「見える?」 タバサが、メガネの奥から、いつもとはまるで違う妖しい光を放ち、必死に抵抗を続けるメイド少女に囁く。 「サイトの皮が剥ける瞬間」 めり……! 「サイトが大人になる瞬間」 めりめりめりめり……!! 「ほら、どんどん剥けていく……」 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」 「あああっ、ダメなのサイトっ! もっともっとシルフィのあそこ舐め舐めするのぉ!!」 「いやっ! いやっ! サイトさんっ! サイトさんっ!! サイトさんっっ!!!」 「ほらっ、見なさいっ!! もっとしっかり、サイトが大人になる瞬間をっ!!!!」 めりめりめりめりめり……びりっ!! 「――ひっく、うぐ……ううう、あううううう……」 「そんなに泣くことないのねん。たかだか、少し血が出たくらいで」 そう。――才人は今、処女を破られた乙女のように、股間を抑えながら泣いている。 シルフィードが敢行した皮剥きプレイによって、彼の亀頭を包んでいた分厚い包皮はめくれ上がり、恥垢によって癒着していた皮が無理やり剥き下ろされ、いま、彼のペニスは軽い出血状態にあった。 しかし、それは傍目に見れば、恥垢で真っ白に染まった彼の亀頭を、鮮血がデコレートしているという、見ようによっては、これ以上はない刺激的な眺めだった。 「きゅいきゅい、それにしてもサイトのおちんちん、まるでストロベリームースみたいで、美味しそうなのねん」 「ひっ!!」 ――れろり。 シルフィードの長い舌が、彼の亀頭を舐めあげる。 「〜〜〜〜〜〜〜!!!」 「んふふふ……。もうサイトったら、気持ちよすぎて声も出ないのねん」 「ちがっ!! いだっ!! いだいようっっ!!」 「きゅいきゅい、サイトったら嘘ばっかりなのねん」 「ちがっ! うそじゃなくてっ!! ぁぁぁああああ!! もうやめてよおおお!!!」 「だったら、どうしてこんなにサイトのおちんちんは、堅いままなの?」 その一言は、彼から抵抗の言葉を奪った。 シルフィードの言う通り、彼の股間は、初めて空気に晒された彼の白い亀頭を装備した事で、いよいよその角度・硬度を増し、文字通り漲るようなサイズにまで膨張していた。 ――それも、かつて無かったほどの勢いで。 「シルフィ、サイトを立たせてあげて」 「はい、なのねん。お姉さま」 シルフィードは、サイトの背後に回りこむと脇腹に両手を入れ、竜の怪力にモノを言わせて、一気に彼を、タバサと彼女が組み敷いているシエスタに見えるように立たせた。 「サイトさん……!!」 シエスタが思わずうめき声を挙げる。 そこにいるのは、縦に大きく割られたメイド服のスカートから、血のしたたるペニスを突き出し、絶望と快楽の狭間で呆然と立ちすくむ、彼女の“妹”……。 629 :契約(その8):2007/06/22(金) 02 04 11 ID o2mqbQuL れろり。 「ぐふうっっっ!!」 シルフィードの舌が、再び才人の股間を襲う。 ちゅばっ……れろっ……じゅるっ……。 「……!!」 「サイト、痛い?」 「う、うん」 タバサの声に顔をゆがめて答える。 しかし、タバサは言う。 「嘘ね?」 「うそじゃないっ!!」 思わず言い返すが、しかし、それが単なる反射でしかない事は、彼自身が一番良く知っていた。 「だったら、何故そんなイキそうな顔をしているの」 そう言われた瞬間、心臓がドクンと激しく鳴った。 そうなのだ。 正直、シルフィードの舌など、気持ちよくも何とも無い。 ただ、これまでの人生でも、かつて無いほどの激痛が、下腹部を中心に全身の神経を貫いている。 なのに。 そう、なのに、――だ。 何故、こんなに射精感が昂ぶっている。 痛くて痛くてたまらないのに、何故こんなに、それこそ今にもイってしまいそうなほどに、射精感が全身を包んでいるのは、何故なんだ!? 彼には分からない。 シエスタが、これまで与えてくれたのは、形はどうあれ、まっとうなエクスタシーだった。ペニス以外の性感帯を刺激や、他者に屈服する快楽など、歪曲はしていても、それは紛れも無い快感で構成された責めだった。――しかし、これは……違う!! 「サイト、オナニーしなさい。このシエスタ“お姉様”にちゃんと見えるようにね」 「……」 「ミス・タバサ……」 もはやサイトは、その言葉に逆らえなかった。 彼は出来る限り亀頭を刺激しないように根元を持つと、ゆっくりと扱き始める。 「顔をあげて」 「……」 涙を堪えながら、タバサを見る才人。 「シルフィは、サイトの先っぽを舐めてあげて」 「はいなの」 「笑いなさい。サイト」 「……はい」 ――いやらしい。 タバサは心底そう思う。 もっともそこに、彼を否定したり排撃したりする心境は、一分も無い。 乱れたメイド服。 乳首があらわになった右胸。 恥骨まで切り裂かれた純白のエプロンから突き出した、剥き出しのペニス。 遠い笑みを浮かべながら自分を見つめ、震えながらそのペニスを扱く少年。 ――これが、サイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。その『本当の姿』 (まるで、天使のようだわ) 彼に、新たなる頂上への階段を上らせながら、我ながら思わずうっとりする。 630 :契約(その8):2007/06/22(金) 02 05 50 ID o2mqbQuL いまや才人は、さっきまでの激痛をまるで感じていないようだった。いや、この表現は正確ではない。 その痛みはますますひどくなる一方だ。しかし彼の神経は、その痛覚をもはや、単なる苦痛とは感じていないのだ。SMにおける鞭打ちや、蝋燭責めのように、才人は徐々にではあるが、『苦痛系』の快楽を覚えつつある、ということなのだ。 しかし、シエスタにはそれが分からない。 「何で……? 何でサイトさんは、あんなうっとりした顔を……?」 思わずシエスタがそう呟いた。 まるで、今までの才人がどこかに消えてしまったような、寂寥感すら彼女は感じた。 ずぶりっ!! 「いだぁいっ!!」 それまで、ぐずぐずだったシエスタのヴァギナをやさしく責めていたタバサの指が、突然激しさを増した。 「ふかいっ! 深いですぅっっミス・タバサァっ!!」 タバサは、指を突っ込んだままくるりと体を入れ替えると、そのままメイドの上背を起こし、背後に回り込んで、自分にもたれる体勢になるシエスタを支えた。 「無理よシエスタ。貴方じゃ無理」 「ひ……っ……ぃぃぃ……!!」 「貴方には、――いいえ、私にも多分、サイトの立っているところへはいけない」 「そっ、そんな! そんなぁぁっっ!!」 「だからせめて、サイトと同時にイカせてあげる」 「いやあああ!! サイトさんっ!! サイトさぁぁぁんっっ!!!」 才人が注視すると、タバサは彼に見えやすいように自分の体の位置を入れ替えた。 シエスタのそこは、タバサの指を二本まで飲み込んでいるように見えた。 「ひいいぃぃぃっっっ!! 出るっ!! 出るようっ!!」 「きゅいきゅい、お姉さまっ、サイトがもう限界そうなのねん!!」 美味しそうに亀頭を舐め回していたシルフィードが、主を振り返る。 しかし、タバサの視線が自身の使い魔に向けられることは無かった。 「イキなさいっ、サイト!! 思いっきりブチまけなさいっっ!!」 「サイトさんっ! イクんですかぁっ!? イクんですかぁっ!!? サイトさぁぁん!!!」 「そうよ、シエスタっ! 貴方もイクのっ! 同時にイクのっ!!」 「「ああああああぁぁぁぁぁあああああ!!!!」」 どくんっ、どくんっ、どくんっ、どくんっ!!! ――サイレントの呪文をかけられてなかったら、恐らく両者のその悲鳴は、階下どころか、女子寮全体にに響き渡っていただろう。それほどのイキっぷりだった。 二人は精根尽き、特に才人はばったりとベッドに倒れ伏してしまった。 631 :契約(その8):2007/06/22(金) 02 11 21 ID o2mqbQuL 「ね、サイト」 「……」 「痛かった?」 「……」 「答えなさい」 そう言うと、少女は眼鏡の奥の碧眼を妖しく光らせ、そのペニスを一扱きする。 「〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」 「やっぱり痛いのね」 「痛い痛い痛い痛い痛い!! 決まってるだろっ!!」 そう言って声を立てる少年を、くすりと笑いながら見つめると、そのままタバサは彼の背後の美女に言った。 「それじゃあシルフィ、予定通りに」 「はいなの、お姉さまっ!」 ――予定? どうせろくでもない事だろうとは思うが、しかし、そう言ったタバサ本人はベッドの向こうに行ってしまった。 「おいシルフィ、お前の御主人様は一体――」 そう言って振り返った瞬間、またもや、この竜族の娘の怪力は、少年を押し倒していた。 「ちょっ、おい、待ってっ!」 「きゅいきゅい、これからサイトの『どーてー』は、シルフィが頂いちゃうのねん!」 「ちょっと待てぇっ!! こんな血まみれのチンコで、エッチなんか出来るかぁっ!!」 「大丈夫なのねん。サイトならしっかり、中出しまで頑張ってくれるって言ってたのねん」 「だれが?」 「お姉さまが」 「――て、おいっ、タバサぁぁっっ!!」 シルフィードの、あまりに頭の悪い物言いに再度彼女の主を振り返ろうとした、その瞬間だった。 「きゃあああああああ!!!!」 632 :契約(その8):2007/06/22(金) 02 12 44 ID o2mqbQuL メイジの衣装を投げ捨て、全裸になったタバサ。 その体格(特に上半身の或るパーツ)は、完全に年齢不相応の幼さに満ちており、とてもではないが、シエスタが絶叫を挙げて騒ぐほどの威厳は存在しない。――はずだった。 その、股間から生えた、ある『物質』を除けば。 「しょっ、しょく……!!?」 そう、彼女の股間でぐねぐねとうねるそれは、紛れも無い『触手』だった。 「ひぃっ、ひぃぃぃっっ……!!!」 シエスタは、余りの恐怖のために“それ”を見る事も出来ないらしく、チアノーゼのような顔色でベッドを逃げ回る。が、タバサはそんなメイドを全く容赦のない動きで組み敷き、横たえる。 「まっ、待てっタバサぁっ!」 その一言でこちらを振り向いた少女に、才人は恐る恐る口を開いた。 「それは……何?」 「これはトリスタニアの魔法道具店で見つけたバイオペニスの一種。『ナマコの――』」 「そんなこと訊いてるんじゃないっ!? それで……その、またぐらの化物を使って、一体シエスタをどうしようって言うんだ」 タバサは答えた。 「決まってる」 それこそ、今まで見せた事の無いような楽しげな笑みを浮かべて。 「これでこの子の処女をもらうの。血まみれのペニスで童貞を散らされる貴方の隣でね」 才人は絶望した。 その言葉を聞いた瞬間、高らかに勃起した自分自身への、絶望。 もはや、絶望を受け入れる事になんのためらいも無かった。 背後からの手に自らを委ねる。 激痛以外、もはや何も感じないはずのペニスを、シルフィードの下半身が飲み込んでゆく。 ふと、目をやると、発狂せんばかりの絶叫とともに、処女を『触手』に散らされる“姉”がそこにいた。 才人は子供のような笑みを浮かべてシエスタに手を伸ばし、彼女は、半分以上うつろになった瞳を彼に向けると、まるで、砂漠でオアシスを見つけた旅人のような勢いで、彼に熱烈なキスをした……。 107 :契約(その9):2007/07/08(日) 01 00 10 ID 5JXRtAHB 「ただいまっ! サイトっ!!」 王家の紋章入りの馬車から飛び降りるや否や、ルイズはピンク色の弾丸と化して、彼の胸に飛び込んだ。 ヴァリエール家の紋章ではない。 いまのルイズは、正式な王宮の女官“虚無の担い手”として動いている。 女王の勅を奉じる者として、国内最大級の太守であるヴァリエール公爵家に使いに行っていた。――という名目ではあるが、当然その談判の内容は、ルイズの帰省を兼ねた、結婚式の最後の打ち合わせであった。 「聞いて聞いてっ!! 母さまがね、あの母さまがねっ! やっと認めてくれたのっ!」 「俺たちのことをか……嘘だろ、あのおっかないオマエの母ちゃんが俺との事を?」 「本当よっ 私だって信じられないっ!! でも、でも、言ってくれたのよっ、『幸せになりなさい』って!」 「そっか……。分かってくれたんだ、俺たちの事」 人目もはばからず、校庭で大声をあげまくるルイズ。そんな彼女を、半分苦笑しながらも、真正面から受けとめ、こゆるぎもしない才人。 シエスタはそんな彼ら二人を、何か眩しいものでも見るように、上目遣いに見上げていた。 ――うらやましい。 心底からシエスタはそう思う。 眼前の恋敵が、溢れんばかりの多幸感を発散しながら、男の胸元を独占している。 しかし、ルイズは知らない。 彼女が抱きついたその男は、すでに全身の隅々まで開発され、征服され、何度も泣き叫び、悶え苦しみつつ、自分に許しを乞うた肉体なのだ、という事を。 にもかかわらず。 そう、にもかかわらず、だ。 108 :契約(その9):2007/07/08(日) 01 02 35 ID 5JXRtAHB 幸せそうな寝取られ女を横目に見ながら、黒い愉悦にほくそ笑む事こそ、シエスタなりの復讐のはずだった。 ――いまあなたが、惜しみなく愛をぶちまけているその男は、すでにあなたを裏切っているのですよ! 自分が一声そう叫ぶ事で、眼前の男女の愛は破綻する。 そう思うことで、恋しい男を奪われた溜飲を下げれる。 そのはずだった。 しかし、そんな思いは、たちまちの内に雲散霧消してしまっている自分に気付く。 ルイズを出迎えた、才人の嬉しそうな表情を見た瞬間に、自分の企みが、いかに矮小で醜いものであるかを、嫌でも気付かされてしまう。 ――ああ、サイトさんが、あんなに嬉しそうに……!! 彼を“妹”として責め嬲っていた頃には、決して見せてくれなかった表情……。 「なぜ落ち込むの」 氷のような声が背後から響く。それこそシエスタにだけ聞こえるように。 「ミス・タバサ……」 「あれが敵」 タバサは、眼鏡の位置を中指で、くいっと直し、 「私たちから彼を奪った、憎むべき敵」 それだけ言うと、手に持っていた分厚い本に再び視線を落とす。 「……!」 シエスタは慄然とした。 この童顔の貴族は、本心から、そう思っているのか? 才人を自分が独占するためなら、彼のささやかな幸福など破壊しても構わない、本気でそう思っているのだろうか? そんなシエスタの顔色に気付いたのだろうか。 タバサは本から視線すら上げぬまま言う。 「私は本気。そして、あなたも私に協力する義務がある」 109 :契約(その9):2007/07/08(日) 01 05 34 ID 5JXRtAHB 婚儀の話は着々と、それこそとんとん拍子に進みつつある。 トリステイン王国では、女性への爵位叙勲は前例のない事ではあったが、アンリエッタは、ルイズに対する一代限りの特例という事で、国法改正の問題に正面から向き合うことを避けた。 女性に官位を認めるには、ハルケギニア世界はまだまだ中世でありすぎた。 銃士隊長アニエスや、先代マンティコア隊隊長カリーヌほどの有能な女性軍人でさえ、その武勲によって官位が与えられる事は無かったのだ。 無論、その爵位は、才人との間に生まれた嫡子によって引き継がれ、その家系は紛れも無い貴族の、ラ・ヴァリエール一門の分家として続いてゆく。 また、その領地は王家の直轄領から下賜され、他の貴族諸侯の領地からは一寸たりとも割譲される事は無い、という一報が公表された事も、宮廷議会である貴族院を黙らせる大きな要因となった。 国土面積に限界がある以上、貴族が新たに家を興すという事は、他の領主の封土を割譲せねばならないということだ。 実力による国盗りが可能な乱世なら知らず、今のトリステインは歴とした治世である。貴族間の遺恨や王宮への不満は、下手をすれば内乱の芽に発展しかねない。 ヴァリエール公爵家からは当然、自領からの領土献上を王宮に働きかける動きがあった。 何といっても、目の中に入れても痛くない末娘の独立である。当初は分家どころか婚約自体に不快の感情を隠さなかった公爵家サイドではあったが、一旦割り切ってしまえば、その協力に骨惜しみは無かった。 しかし、アンリエッタはこれを拒否した。 ルイズに対する旧交のよしみからだけではない。 ルイズの使命は、あくまで“虚無”の血統を後世に残す事なのだ。単なるヴァリエール公爵家の分家ではない。可能な限り、王家との結びつきを強固なものにしておく必要があったのだ。 また、才人も別の理由で公爵家からの領土割譲を拒絶したかった。 これ以上、ヴァリエール公爵家から借りを作れば、もはやとことんまでルイズと、その一家に頭が上がらなくなってしまう。その事態は避けたかった。 と、まあ、そういう紆余曲折を経て、彼ら二人の婚儀を三日後に控えた頃、シエスタは独り、現状に困惑していた。 110 :契約(その9):2007/07/08(日) 01 08 43 ID 5JXRtAHB とはいえ事態は、ある意味、シエスタの当初の予定通り進みつつあった事は確かだ。 ルイズが学院を不在中の一週間で、才人の肉体に、徹底的に責められる快楽を教え込み、自分の虜とする。 そしてその上で、ルイズが帰還してからは放置を決め込み、彼の身体をさらに疼かせる。 何と言っても、あのルイズお嬢様のカマトトぶりは尋常ではない。 人一倍、そういう事に興味を持ちながら、そしていざとなれば、そういう行為に全く躊躇いを感じないくせに、しかしそれでも彼女は、本番だけは拒みつづける。頑なに。 『そういう事は結婚するまでダメなんだから。結婚しても、三ヶ月はダメなんだから』 そうやって彼を拒む事で、自分の体の価値を吊り上げようというのだろう。 いかにも貴族の乙女らしい、そしていかにもルイズらしい考え方ではある。 しかし、才人からすれば、それはもはやたまらない現状であろう。 彼はすでに、女体の美味を知ってしまっている。 そして、それ以上に、自分の体が一体の楽器であることを知ってしまっている。 他者によって責められた時、この若いオスの肉体は、どれほど美しい快楽の楽曲を奏でることが出来るか、もはや彼自身が一番知ってしまっている。 そんな彼が、シエスタに再び懇願の眼差しを向けるのは、確実すぎる事だった。 でも、シエスタの予定では、そこまでだった。 それ以上、才人の抱かれるつもりも、抱くつもりも無かった。 今まで通り、平民上がりのシュヴァリエと、ちょっと馴れ馴れしいメイドの関係に戻るつもりだった。 才人に対するあてつけもある。 ルイズに対するささやかな友情もある(一介の平民メイドの言葉ではないが)。 また、そうでなければ、結婚後、自分たちの領土に去ってしまう二人に対し、この学院に置いていかれるであろう自分が耐え切れなくなるはずだ。そう思ったからだ。 ――距離を取るなら、早いうちがいい。 これ以上、才人と関係が続けば、今度は逆に自分の心がもたない。 シエスタは、そんな事態だけはどうやってでも避けたかった。 しかし、予定はあくまで予定に過ぎない。 タバサという予定外因子が入り込んだ事で、シエスタの計画は確実に狂いつつあった。 111 :契約(その9):2007/07/08(日) 01 10 33 ID 5JXRtAHB シエスタは絶句した。 タバサの個室で、才人が二人の女性に犯されていた。 「はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ!」 「きゅいきゅい!! 気持ちいいのねっ!!」 才人のペニスを正常位でくわえ込んだシルフィード。彼女の両足はガッチリ才人の腰にホールドされ、あたしをイカせるまで放さないぞこの野郎、と言わんばかりの欲情が丸出しだ。 そしてタバサは、そんな才人の背後から、彼のアナルを指でほじくっていた。 例えばキュルケのような、彼女と親しい人間がよく見れば、タバサがいつになく興奮しているのが見えただろう。 しかし、あの褐色豊満な女メイジほどに、タバサを知悉しないシエスタから見れば、碧眼碧髪の眼鏡少女は、まるでカエルの解剖をする学者のように、冷静に見えた。 現に彼女は、シエスタの姿を見ても、顔色一つ変えずにこう言ったきりだ。 「遅い」 「たっ、たばさぁ……!! はやく、はやくぅっ!!」 そう叫びながら才人が、後ろを振り返りつつ白い尻をちらつかせる。 彼はもはや、シエスタがこの部屋に入室してきた事すら気付いていないようだ。 「早く?」 「おっ、俺のお尻まんこに、……たばさのおちんちんを、めっ、めぐんでくださいっ!!」 ――くすっ。 (ミス・タバサが笑った……!?) シエスタは、その瞬間初めて見たのだ。タバサが誰にでも分かる明らかな笑顔を浮かべたのを。その微笑みは、シエスタが予想していた数十倍の破壊力あった。 同性であるはずのシエスタでさえ、思わず赤面してしまうほどに。 いわんや、その笑顔の直撃を受けた才人は、瞬時に神経がフリーズしてしまう。 「いいわ」 タバサの股間の触手が、才人の肛門に吸い込まれたのは、その瞬間だった。 112 :契約(その9):2007/07/08(日) 01 11 55 ID 5JXRtAHB 「ひっ、ひいいいいいっっっ!! あああああああ!!」 才人の体が、より深い快感によって、これまで以上に暴れ回る。 もっとも、そのじたばたも、彼の腰に回された美女の脚と、後背位によって才人の菊門を汚す美少女によって、ガッチリと固定されていたが。 「きゅいきゅい、サイトの、またまた太くなったのね!!」 シルフィードが、半ば白目をむきながら叫ぶ。 「イクのねっ!! イっちゃうのねっ!! あああっ、お姉様ぁぁぁぁ!!!」 背まで伸びた青い髪を振り乱し、竜族の美女が虚空に叫ぶ。 恐ろしく気持ちよさげな表情で。 そして、それにつられるような形で、才人の我慢も限界を突破しつつあった。 「でるっ!! あああっ! おれもでるよぉっっっ!!」 「だめよ」 「〜〜〜〜〜っっっっ!!」 それまで気持ちよさげに喘いでいた才人の上半身が、いきなり悲鳴と共に跳ね上がった。 腰を固定するシルフィードの両脚のため、えびぞりのような形になる。 彼女と同時に絶頂を極めるはずだった才人の肉体が、いきなりのタバサの“攻撃”で思わずのけぞってしまったのだ。 「誰も射精していいなんて、言ってない」 シエスタには見えた。 タバサの小さな手が、彼の睾丸を、つぶさんばかりに握り締めていたのを。 言葉にもならない絶叫をあげながら、地獄の苦痛に悶える才人の表情は、彼の体の下でエクスタシーに身を委ねるシルフィードと、見事なまでのコントラストを形成していた。 「……た、ばさぁっ……!!」 ほろりほろりと美しい涙を流しつつ、童顔のメイジを振り返る少年。 「あなたに、自分勝手な射精をする権限はない」 タバサはちらりとシエスタを横目で見ると、 「少なくとも、私とこの子の許可を取らない射精は、絶対に許さない」 そう言われた才人は、その時、初めてシエスタと目を合わせた。 113 :契約(その9):2007/07/08(日) 01 13 39 ID 5JXRtAHB こんなはずじゃなかった。 そんな才人を見た瞬間、シエスタは心底そう思った。 少年の口元に張り付いた、媚びた笑み。 少年の目に宿る、歪んだ情欲。 なにより、少年の全身から発散される“いじめてオーラ”。 「どうすれば、どうすれば、射精を許して下さいますか……?」 才人の背後から、うなじに舌を這わせながら、眼鏡少女が答える。 「ルイズを頂戴」 びくんっ!! 震える少年に、なおも彼女が言い続ける。 「あなたの婚約者の処女を、私たちに差し出すの」 彼の視線は、まっすぐシエスタに向けられたままだ。だがその目には、シエスタの姿など、まるで映っていない事は、メイドには痛いほど理解出来た。 タバサに後ろから抱きしめられた才人の容貌は、かつてシエスタが見たことも無いほどに醜く、そしてそれ以上に官能の喜悦に満ちた、いびつな笑みを浮かべていたのだから。 ――サイトさんは“絶望”を欲している……!! 「承知したら、そう言って」 タバサは脇腹から彼のペニスに手を伸ばすと、そっと、握り締めた。 「搾ってあげる」 「ぁぁぁ……!!」 「サイトさんっ!!!」 もう、シエスタには耐え切れなかった。 「もう、もう、やめてくださいっ!! 目を覚まして、いつものサイトさんに戻って下さいっ!!」 「サイトは見たくないの? ルイズがあなた以外の者に処女を捧げる、その瞬間を」 「ああああああああ!!!!」 114 :契約(その9):2007/07/08(日) 01 15 40 ID 5JXRtAHB タバサが、才人の耳朶を甘噛みした瞬間、彼の瞳から完全に正気の光が消えた。 無論、消したのは甘噛みという愛撫にではない。 タバサが発した言葉に、自ら酔い、狂ってしまったのだ。 ウェディングドレスに身を包んだ愛する花嫁が、タバサの舌に、指に、さらに股間の触手におもうさま蹂躙されている、その想像上の衝撃映像を描きながら。 「ささげますぅっ!! ささげますぅっ!! ルイズをタバサに、ささげますぅっっ!!」 どくんっ!! どくんっ!! どくんっ!! どくんっ!! どくんっ!! どくんっ!! おそらく実際は、タバサが彼のペニスに手を触れる必要さえなかっただろう。 しかし少女は、まるで放尿のような勢いで射精する少年のペニスに手を添え、それをしごき尽くす。――あたかも一滴たりとも出し惜しみするなと言わんばかりに。 そしてシエスタは、そんな才人の姿を呆然と見つめていた。 恋人の処女を、他の女に捧げる誓いを絶叫しながら、その行為だけで興奮の余り絶頂してしまった、哀れで無様な想い人を。 常日頃、凛と雄々しい才人を汚し、堕とし、辱める。 皮肉な事に、今の才人を作り出したのは、シエスタ本人でさえあるとも言える。 シエスタは、ようやく自分の胸中にある、才人に対する鬱屈の正体が分かった気がした。 彼女が精根かけて調教した“妹”。 そんな彼をタバサが、――自分以外の女が、さらに深い快楽を――絶望という名の快楽を与えている。それがシエスタには何より許せないのだ。 才人をルイズの手に返す。 それはいい。 何故ならルイズには、才人が望む本当の快楽――絶望という名のエクスタシーを、彼が望むだけ与える事など不可能なのだから。 ――世界でサイトさんを、真なる意味で満足させられるのは、この私だけ。 そう思えばこそ、羨望の意を隠しつつも、彼女は才人を恋敵に返す事にためらいを覚えなかったのだ。しかし、もはや、情況は変わった。タバサという女のおかげで。 「ミス・タバサ」 もうシエスタは我慢する事を、やめていた。 「ミス・ヴァリエールの処女は、私が頂きたく存じます」 そう言ったシエスタの口元は、かつて才人に自分を“姉”と呼ばせていた頃と同じ、歪んだ笑みが張り付いていた。
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前ページ次ページルイズと無重力巫女さん 例えばの話だが、ある所に命を懸けた戦いをしている戦士がいるとしよう。 限られた武器と足手纏いとも言える者たちが周りにいる中、戦士の相手は凶悪な怪物。 明確な殺意をもって戦士の命を仕留めようとする、無慈悲な殺人マシーンだ。 戦士は足手纏いな者たちを守りつつ怪物を倒すことになるが、それはとても大変な事である。 戦う必要のない者たちは自分たちも戦える豪語しつつ、各々が勝手に行動しようとするからだ。 そうすれば戦士はいつものペースで動くことができないが、一方の怪物は戦いを有利に進めることができる。 例え向こうが多人数であっても、足並みを揃える事が出来なけれ文字通り単なる烏合の衆と化す。 結果向かってくる奴だけを順々に片付ければ良いし、運が良ければ思い通りの戦いができない戦士をも殺せる。 しかし、足手まといな者たちが一致団結して戦う事が出来るとすれば話は変わる。 訓練された軍隊のように足並み揃えて一斉に襲ってくると、さしもの怪物も対処しづらくなるのだ。 更にその隙を縫って戦士が強力な一撃仕掛けてくるとなれば、もはや勝ち目などない。 一見すれば怪物側が有利な戦いは、実際のところたった一つの駆け引きで勝敗が左右する大接戦。 相手の腹を探りつつどう動くべきかと考えあぐねるその時間は、当人たちにとっては命を懸けた大博打である。 しかしそれを空の上から眺めてみれば、とても面白いゲームだとも思えるだろう。 そう、自分たちが傷つくことのない場所から見れば、命を懸けた勝負すら単なるゲームになる。 「ふーん―――何だか見ないうちに、随分とややこしい事になってるじゃないか」 旧市街地に並ぶ廃屋の屋上に佇む金髪の青年が、やけに楽しそうな調子で一人呟く。 左右別々の色を持つ眼には、この廃墟群の出入り口で大騒ぎを繰り広げ始めた五人の少女達が映っている。 彼が今いる位置ではやや遠すぎるかもしれないが、そんな事を気にもせず彼女たちの姿を見つめていた。 旧市街地の入り口から少し進んだ先で、まるで決闘の場で対峙するかのように向かい合っている紅白の少女が二人。 青年から見て旧市街地側に佇む紅白の少女の傍に、腰を抜かしているピンクブロンドが目立つ少女。 そして少し離れた場所には、まるで野次馬の様に三人の様子を眺めている黒白の少女と燃えるような赤い髪の少女がいた。 日も暮れ始めて来た為か肌の色までは良くわからなかったが、青年にとってそれは些細な事に過ぎない。 今の彼にとって最も重要なのは、『三人』の姿が見れた事だけであった。 五人いる内の中ですぐに安否が確認できるのは二人。黒白の金髪少女とピンクブロンドの少女だけ。 三人目となる紅白の少女は二人いるせいで、どちらを見ればいいのか未だにわからない。 「一体どういう経緯で二人になったのかは知らないけど困るよなぁ~、あんな事勝手にされちゃあ…」 僕の目が回っちゃうじゃないか、最後にそう付け加えた彼は軽く口笛を吹く。 まるで観戦中の決闘に予期せぬ乱入者が現れた時の様に、興醒めするどころか楽しんでいるようだ。 それは正に、安全かつ他人同士の殺し合いをしっかりと見届けられる場所で歓声を上げる観客そのものである。 「しっかし何でだろうな…一人しかいない筈の彼女に二人目がいるだなんて」 落下防止にと付けられた鉄柵の上に両肘をつけた青年は、またもや呟く。 彼以外にその疑問を聞く者はいないし、当然返事が来ることも無い。 生まれた時代が違えば、目の色だけで見世物小屋にいたかもしれない青年にとって、単なる独り言であった。 そう…単なる独り言だったのだ。 「私も良くは知らないが、アレに関してはお前たちの方は心当たりがあるんじゃないか?」 気づかぬうちに、自分の後ろにいた゛者゛の言葉を聞くまでは。 「――は?」 突然背後から耳に入ってきた声に、青年はその目を見開かせてしまう。 しかし驚きはしたものの、数時間前に似たような事を経験をした彼は声が誰のものなのかを分析しようとする。 良く透き通るうえに大人びた女性の声は、想像の範囲だがきっと二十代後半なのだろう。 あるいはマジックアイテムが魔法で細工しているかもしれないが、実際のところは良くわからない。 それよりも今の青年が気になる所はたった一つだけ。それは、どうやって自分の背後に近づいたのかという事だ。 青年が経験した「数時間前に似たような事」というのは、正にそれであった。 ◆ 時間をさかのぼり今日のお昼頃であったか。 彼はちょっとした用事でブルドンネ街で買い物を楽しんでいた三人の少女を、旧市街地の教会から観察していた。 その三人こそ、今の彼が屋上から眺めている「ピンクブロンドの貴族少女」と「黒白の金髪少女」。そして何故か二人いる「紅白の黒髪少女」である。 望遠鏡を使ってわざわざ遠くから見ていた青年の姿は、他人から見れば通報されても仕方がないであろう。 そのリスクを避ける為に人気のない旧市街地から覗いていたのだが、そこで変な事が起こった。 何と誰もいなかった筈だというのに、突如自分の後ろから女の声が聞こえてきたのである。 その後は色々とありその場は置き土産を置いて後にしたが、青年は観察事態を諦めてはいなかった。 そもそも彼が三人を覗いてた理由である「ちょっとした用事」というのは、彼にとって「仕事の内の一つ」なのだ。 だからその場を去った後は、三人の動きをしっかりと見張れる所に移動していたのである。 そして三人が導かれるようにブルドンネ街からチクトンネ街へ行くところはバッチリと見ていた。 不幸か否かチクトンネ街へ行った際に一時的に見失ってしまったが、数分前にこうして再開すことができた。 偶然にも自分が昼頃にいた旧市街地へ舞い戻る事になったのは、一種の皮肉と言えるかもしれない。 ◆ そうこうして、良からぬ展開に巻き込まれた三人の様子を観察していて、今に至る。 (一瞬聞き間違いかと思ったが…どうやら僕の予想は正しかったようだ) 彼は先程聞こえたものと、昼に聞いた声がそれぞれ別々のモノであると既に理解していた。 今聞こえた声からは、昼頃に聞いたものとは違う゛凛々しさ゛を感じていた。 昼の声は「貴婦人さ」というものが漂っていたが、今の声にはそれとは逆の…俗にいう「働く女性」というイメージがぴったりと合う。 しっかりとした性格の持ち主で、上司に対しちゃんとした敬意を払うキャリアウーマンだ。 自分とは正反対だな。月目の青年は一人そう思いながら、ゆっくりと後ろを振り返る。 彼は予想していた。振り返った先には誰もいないし、それが当然なのだと。 ただ見えるのは、落ちていく夕日と共に影に蝕まれる寂れた床だけなのだと。 昼頃の体験もそうであったし、それと似通った部分が多い今の事も同じような結末を辿るのだと、勝手に決めつけていた。 しかし、現実というのは時に奇妙で刺激的な事を不特定多数の人間に体感させる。 一人から数十人、下手すれば数百から千単位に万単位、もっともっと大きければ国家単位の人口が奇妙な体験をするのだ。 今回、現実という日常的な神様は月目の青年に奇妙な「存在」を目にする機会を与えてくれた。 そう…国を傾けかねない美貌と、この世界に不釣り合いな衣服を纏う「存在」と、彼は出会ったのである。 「君が口にしたややこしいという言葉は…残念だが私たち側も吐露したいんだがね」 距離にして四メイル程離れた所に、明らかに場違いな金髪の美女が、腰を手を当ててそう呟いた。 明らかにハルケギニア大陸の文明から作りえない青と白を基調にした衣装を身に纏った体は、まだ二十代前半といったところか。 これまで生きてきた中で数々の女性と付き合ってきた彼が直感的に思いつつも、次いでその視線を美女の衣装に注いでいく。 一目見ただけでもハルケギニアの民族衣装とも異なるが、蛮族領域に住む亜人たちや砂漠に住まうエルフたちの衣装とも印象が違う。 どちらかと言えば東方の地から時折流れてくる衣服のカタログで、似たようなものを見たことがあったと彼は思い出す。 白い服の上に着ている青い前掛けには、大した意味が無さそうに見えてその実難解そうな記号が踊っている。 もしかするとあれが東方の地で用いられる言葉なのかもしれないが、今の青年にはそれよりも気がかりな事が二つほど合った。 「――――コイツは驚いたね。さっきまで誰もいなかった場所に、僕好みの美人さんが立っているとは」 見開いていた月目をスッと細めた彼は、両腕をすっと横に伸ばし冗談めいた言葉を放つ。 大げさすぎるその動作を見た異国情緒漂う女性もまた目を細め、その口から小さな吐息を漏らす。 反応だけ見ても呆れているのかこちらの動きを読んでいるのか、それすらハッキリとしない。 こういう相手は綺麗でも付き合うのはちょっと遠慮したいな。彼がそう思おうとした直前、女性の口が開いた。 「良く言うよ…君は知っているんだろう?―――私がそこら辺にいる゛ニンゲン゛とは違うって事を」 「……?それは一体―――――!」 夕闇の中、金色の瞳を光らせた彼女がそう言ったのに対し、ジュリオは怪訝な表情を浮かべようとする。 だがその瞬間。目の前の女性を中心に、この場所ではやや不釣り合いと思える程度の匂いが突如漂い始めた。 その匂いはこの建物を降りて適当な路地裏を歩けば出会いそうな連中が放っているモノと似通っている所がある。 青年は仕事上そういう連中と接する機会が多いため、唐突に自分の鼻を刺激した匂いの正体を断定できる自信もあった。 群れを成して路地裏に屯し、時として真夜中の街へ繰り出し生ごみを漁る大都市の掃除屋。 おおよそ武器を持たなければ人間でも太刀打ちできない゛奴ら゛と似たような匂いを放つ金髪の女。 それが意味するものはたった一つ――――――文字通りの意味で、女は人間ではないという事だ。 「もしかして君、常に体を清潔にしないタイプの人かい?」 匂いの根源と、その理由を何となく把握できた青年は、ふと冗談を放つ。 プロポーズどころかデートのお誘いですらない言葉に不快なものを感じたか、目を瞑った女はこう返す。 「生憎ですが私は主人と違い、そういうお話にはあまりお付き合いできませんよ?」 「そいつは残念だ。――――…おっと、ここまで話し合ったんだから名前ぐらい教えておこうか」 女性の辛辣な返事に青年も素っ気ない言葉で対応したかと思えば、笑顔を崩さぬまま唐突な名乗りを上げた。 「僕はジュリオ…ジュリオ・チェザーレ。気軽に呼んでくれてもいいし様づけしたっていいよ?」 青年、ジュリオの名前を知った女性は呆れた風なため息をつきつつ、その口を開ける。 「―――――八雲藍だ。別にどんな風に呼んでくれたって構いはしない」 憂鬱気味な吐息を漏らした口から出た言葉は、今の彼女を作り上げた主からの贈り物。 遠い昔の時代に、東の大陸で跳梁跋扈した妖獣の一族である彼女の今が、八雲藍という存在であった。 ★ 「おぉ…。さっきとは打って変わって、奴さん積極的じゃないか」 明らかに先程とは動きの違う偽レイムの後姿を眺めつつ、魔理沙が気楽そうに言った。 先程までこちらに背を向けている相手に殺されかけたというのに、その言葉から緊張感というものを殆ど感じられない。 流石に物凄い勢いでナイフを放り投げ、口論を続けていた霊夢とルイズに急接近した時は軽く驚いたが、今はその顔にうっすらと笑みを浮かべている。 箒を右手に持ち、キュルケの隣に佇むその姿はすぐに戦えるという気配が全く見えない。 自分に危害が及ぶ事が無いと分かっているのか、それとも知り合いである巫女が勝つことを予想しているのだろう。 とにもかくにも、この場には不釣り合いと言えるくらいに、魔理沙は霊夢達の動きを傍観していた。 「さて、この似た者同士の勝負。どちらが最後まで立ってられるかな」 「三人して同じ部屋で暮らしているというのに、観客様の気分で見ているのね貴女は…」 すっかり回復し、楽しげな言葉を放つ魔理沙とは対照的に、その隣にいるキュルケは安堵することができなかった。 下手すれば死んでいたかもしれない黒白がどんな態度を見せようとも、彼女とって今の状況は゛非日常的な危機゛であることに変わりはない。 急な動きを見せた偽レイムの傍には抜かした腰に力を入れて立とうとするルイズがおり、そんな二人から少し離れた所に本物の霊夢がいる。 もし立ち上がったルイズが下手に動こうとすれば、突然殴り掛かってくるような相手に何をそれるのかわからない。 その事をキュルケ自身が察する前に霊夢も気づいているのだろうか、ナイフを片手に身構えた状態からその場を一歩も動いていない。 一方の偽レイムも先程まで霊夢達がいた場所から動いてはいないものの、いつでも仕掛けられるよう腰を低くしている。 正に先に動いたら負けという状況の中にいる三人を不安そうな目で見つめているのが、今のキュルケであった。 (本当に参ったわね…いつもとは全く違う刺激があるのは良い事だけど…あぁでもこういうのは良くないわ) 少しだけ似合っていない魔理沙の微笑を横目でチラチラ見つめつつ、手に持った杖をゆっくりと頭上に掲げていく。 それと同時に多くの男を虜にする艶やかな声でもって素早くかつ正確に、呪文の詠唱を始める。 別にあの三人の戦いの輪に巻き込まれたいという、自殺願望に近い何かを胸中に抱いているワケでは無い。 ただキュルケ本人としてはどうしてこんな事になっているのか知りたいし、その目的を達成するためにはルイズの存在が必要だ。 恐らく、自分が巻き込まれたであろう刺激に満ちた今の事態の発端を詳しく話せるのは彼女しかいないであろう。 なら彼女の使い魔と居候となっている黒白でもいいかもしれないが、部外者である自分に話してくれる可能性はかなり低い。 そこでワザと彼女らが直面している事態に首を突っ込み、彼女らと同じ場所に立つ。そんな計画がキュルケの脳内で出来上がっていた。 故に彼女は決断していた。この刺激的な一日の最後を飾るであろう魔法を、偽レイムにお見舞いしてやろうと。 幼少の頃に覚えたスペルの発言は数秒で済み、短くとも今この場で最適と思える魔法の発動が準備できた時、魔理沙が声を上げた。 「あ、お前も混じるのか。何だか随分と賑やかになってきたじゃないか」 まるでこれから起ころうとしている事を知っているのか、彼女の顔にはその場にそぐわない喜色が浮かんでいる。 実際、この世界へ来て数週間ほどしか立ってない魔理沙にとってキュルケの魔法を見るのはこれが初めてなのだ。 しかしそんな彼女にとうとう嫌気がさしたのか、嬉しそうな黒白に向けてゲルマニアの留学生魔理沙の方へ顔を向け、目を細めて言う。 「本当に呆れるわね貴女。…こんな状況でそんな表情と態度を出せるのは一種の才能なの?」 「私から見れば、これから死出の行軍に出ようとしているようなアンタの顔が、ちょっと見てられないぜ」 遠まわしに空気を読めという解釈にも取れるキュルケの言葉を聞いても、魔理沙の態度は変わりはしない。 それどころか、緊張しすぎている彼女を笑わせようと灰色の冗談を飛ばしてくる始末であった。 もはや怒るどころか呆れるしかないキュルケは、ため息つく気にもなれず相手を見下すかのような表情を浮かべる。 「そう…じゃあそこでずっと見ていなさいよ?何が起こっても私は助けないけどね」 私にとって貴女は、まだ得体の知れない相手なんだから。最後にそう付け加え、キュルケは偽レイムの方へ顔を向ける。 「生憎だがアレは不意打ちだったんだぜ。それにお前が手を出すと霊夢が嫌がるかもよ?」 まぁそれはそれで見ものだけどね。魔理沙もまたそんな言葉を付け加え、キュルケに助言を送る。 しかし魔法使いからの言葉を聞き流したキュルケは、今か今かと攻撃のタイミングを伺っている時であった。 日常からやや抜けた刺激を活性化させる為に、常人では考えもしない異世界の事件に首を突っ込もうとしている。 その結果に何が待ち受けているのかは知らないが、キュルケ自身は後悔しない筈だろう。 後戻りができそうにない、非日常的な刺激こそ……彼女が求めてやまぬ心身の特効薬なのだから。 前ページ次ページルイズと無重力巫女さん
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仮面ブシドー、推参!いざ、死合おうぞ。 CV 鎌倉仁狼介頼朝 概要 己の「剣」と「武士道」を貫く誇り高き仁義の戦士。その身に宿る鬼の力を剣に宿し、敵を叩き切る。 マスクドハンターとして覚醒する以前から剣を扱っているので、戦闘能力は高い。 牙狼一心流と呼ばれる、独自の剣術を使っている。 仮面の戦士に覚醒したきっかけ 武士道とは 干渉した世界 ハンターたちの世界 「箱庭の世界」(MHP3) 「繋がりし世界」(MH4,MH4G) 「交差する記憶の世界」(MHX,MHXX) 主な特殊能力 鬼の力 阿修羅について 素戔嗚について サムライザー 装備 MH4&4Gでの装備 MHX&XXでの装備 必殺技について 頼朝(太刀)はこちら 阿修羅(大剣)はこちら 素戔嗚(双剣)はこちら 今までの世界の戦い 仁狼記 風前の灯火 MHSとの邂逅(小次郎編) MHSとの邂逅(頼朝編) 頼朝、鬼を討つ 紅き剣と黒き蝶 紅蓮隊について 発足時 襲撃事件後 ストーリーメモ(設定集) ここを編集
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前ページ次ページルイズVSマジク~史上最哀の会合~ 第2話『音声魔術とは』 マジクは驚いた。何を驚いたかと聞かれれば今ギーシュの言った 『ゴーレム』についてである。 (確か記憶が正しければ――ゴーレムそれはドラゴン種族が1つ「天人≪ノルニル≫」がかつて作ったものだ。) (そうだよ。アレンハタムで地人兄弟がクリーオウにぶんどられたアレだ。) あのときマジクではなく彼の師がこともなく,本当にこともなくぶっつぶしたアレ。 (アレに比べると小さすぎるけど,代わりになんか無駄に細かいな?) てっとりばやく魔術を使って終わりにしようと思ったが,マジクはそれをしなかった。 (でも,あれくらいのサイズなら魔術をつかわなくてもコレを使えば何とかなるよね?) マジクは自分のブーツに目線をやる。 「ふっ。どーした平民?今さら怖気づいたのかね。何今回のことに…」 ギーシュはまだ戦ってもないのにすでに勝った気でいた。 (お師さまなら――やる。絶対にやる。それにさっきいってたよね。) 「懲りてこれから貴族に対する態度を改めるなら…」 (あれ青銅なんだよね。) マジクは突然走りだす。ギーシュ自慢の青銅のゴーレム『ワルキューレ』に向かって。 ワルキューレはマジクに向かって大ぶりに右の拳を繰り出す。 それなりに速度はあるがあまりにも単純に,そして正直に。 これが魔法に頼りっぱなしの魔法学院の生徒や,メイジというだけで恐れをなす平民なら 十分だっただろう。 だが仮にも世界を滅ぼす戦いに関係ないのに巻き込まれ,また世界は違えど 大陸一の魔術士養成機関で年間首席をとった者にはぬる過ぎた。 紙一重というにはやや遠すぎる――経験不足ゆえにひきつけるのが足りなかったが なんとかマジクは右に避ける。そしてそのまま反転して拳をふるため重心を寄せていた ワルキューレの左足に自分の右足の踵をぶち当てた――鉄骨をしこんだブーツで。 「許さないわけでもないよ。うん。あれっ?」 ギーシュが気づいたときにはワルキューレは左足を粉々に砕かれていた。 【注】ほんとに鉄骨ブーツで青銅が粉々になるかはしりません。 誰かが言ったように,世界いろいろ神様いろいろ,ついでに金属いろいろ,な方向で 思い描いたとうりになってふぅとマジクは息をつく。 (いつか旅にでるときは僕も買おうと思ったけどこのブーツ高いよなぁ。) 牙の塔をでてマジクが最初にやったことは持ち金はたいて特注のブーツを作ることだった。 「ねぇ,今の動きみた?まだぎこちないけどそれなりじゃなかった?」 野次馬が一人で誰かとは正反対の胸をもつキュルケが隣の青い髪のタバサに話しかける。 「ビックリあったくには程遠い…」 「何?それ…」 「知らない。言ってみただけ。」 「あら,そう。」 ギーシュはやっと事態をのみこんでキレた。 「ぐぬううう。いや,まずは誉めよう。よくそんな動きで僕のワルキューレを とめたものだと。」 「だが君は…僕を本気にさせたのだよ。」 ギーシュは冷たく微笑み,手に持ったバラをふった。 花びらが舞い,こんどは6体のゴーレムが現れた。 最高で7体までしかギーシュは呼び出せないのである。 「もういいでしょっ。早く謝りなさいよ。あんな動きで,今度は6体も… 相手にできるわけないじゃない。」 「おおっと。ヴァリエール残念だが今さら謝っても許しはしないよ。」 ギーシュの残酷な宣言に凍りつくルイズ。 いよいよクライマックスだと騒ぐ野次馬達をマジクは他人事のように見ていた。 ギーシュが新たなゴーレムをだした時点ですでにある決心をしていた。 ――魔術を使うと。 (そういえば,こっちにきてから使ってなかったな。) こちらで言う魔法とマジク達の世界でいう魔法。ならびに魔術が違うものだと いうのは数日来の生活で分かっていた。 なるべくなら使いたくはなかった。先ほど魔術を選ばなかったのにも関係している。 だが,いい加減ガマンするのも限界だった。 (実際僕は我慢した方なんだ。そうに違いない。お師さまを含めて 僕の知ってる魔術士ならとうの昔に使っているに違いない。) 魔法とは,神々の使う力。 魔術とは,神々からドラゴン種族とよばれる力ある種族が盗みだし, 自分達に使えるようにしたもの。 魔術とは,魔力により限定された空間に自らの理想の事象を起こすこと。 音声魔術とは,人間種族が使う力。 魔術の設計図――構成を編み,声を媒介にして発動する。 そのため魔術の効果は声が届く範囲でしか発動しない。 又,声が霧散したら効果が消えるため効果は長くて数秒。 そんなことは関係なくマジクは意識を集中する。 もっとも使い慣れた構成を―― まだ意識をしなくても使えるわけではないあの構成を。 右手を上げ,高らかに叫ぶ。 「我は放つ光の白刃っ!」 光の帯がのびる。高熱と衝撃波の渦が,6体のゴーレムのもとへ到達した。 瞬間,つんざくような轟音と跳ね返る光が,熱が,あたりすべてを純白に焼き尽くす。 光が消えたあとにはかろうじて燃え残った何かの小さな破片があるだけだった。 あたりは静まりかえる。 マジクはゆっくりギーシュのもとへ歩いて行く。震える彼のもとへ。 「えっと,こういうとき何ていうのか分からないけど。」 いったん区切ってから 「続ける?」 つぶやくようにマジクはいった。 「ま,参った」 ギーシュは犬どころか狼に噛まれた気持ちになった。 …絶対に忘れられない,と思ったかはさだかではない。 次回予告 シエスタ「ビームで簡単にミスタ・グラモンを倒したマジクさん。」 「だけど,すぐにミス・ヴァリエールに連れていかれ…」 ルイズ「きっちりかっちり説明してもらうわよ。」 マジク「うぅっ。面倒だなぁ。」 「こんなとき…都合よく説明してくれる神様がいたらなぁ。」 ???「そうであろ。そうであろ。」 「余のありがたみが,こう…背筋のあたりからゾクゾクっとのぼってきたであろ?」 シエスタ「そんなことは放っといて。」 「次回,第3話『今になって分かる説明役っぽいものの大切さ』に…」 コルベール「我は癒す斜陽の傷痕。」 前ページ次ページルイズVSマジク~史上最哀の会合~
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第五話 ギーシュ君の運命 後編 そしてルイズの運命 前回のあらすじ 義手「もっとぉぉ!!もっと踏んでぇぇぇぇっ!!らめえぇぇ!○○○ミルクで(自主規制」 ポカ~ン… その場にいた4人。ギーシュを除いて全員唖然としていた。 「モンモランシー?ギューシュってあんな性癖があるの?」 「ちょ、知らないわよ。アイツ一体何考えてるのよ。」 「「ふ~~~ん…」」 「な、何よ二人ともその目は!私はSじゃな~~~~いっ!」 「ちょ、ちょっとぉ!くっつかないでよ気持ち悪い!誰か来てぇぇぇ!!」 「駄目なヤツ何だ僕はぁぁぁ!女性を蹴ったり踏みつけたりするなんてぇぇぇ! だから君も僕を踏んでくれ!じゃないと申し訳なさ過ぎて……」 オロオロ泣き始めたギーシュ。むしろルイズがいじめているみたいに見えなくもない。 「いい加減になさい!!許すって言ったからもういいの!この件はもうナシッ!わかった?」 「ルイズ…あ゛り゛がどお゛ぉ゛ぉ゛!!!」 「だからくっつくな!汚らわしい!蹴り殺すぞ!」 終始ホントに気持ちの悪いギーシュだった。 「なぁんだ。ついに目覚めちゃったと思ったのにつまんない。授業いこ」 「ルイズ。授業が始まるのでは?放置して早く行きましょう。」 「わかったわ。すぐ行くわよ。いい加減離れろ!」ゲシッ! 「モンモランシー。僕ちゃんと謝ることができたのかな…」 「ギーシュ。あなたはよくやったわ。立派にやったのよ。私が誇りに思うくらいにね。」 「う゛ん゛!!!ぼぐがん゛ば゛っだよ゛!」 お前らも早く授業行けよ。 ジョルノは気になっている事がある。この学園の人間。 というより貴族は二つ名というものをもっている。微熱のキュルケ。 雪風のタバサ。ギーシュは青銅のギーシュと言う二つ名を持っている。 そして自分のご主人。ルイズはというとゼロのルイズ。なんでゼロのルイズなんだろう。 「ルイズ。そういえばアナタはなぜゼロのルイズと呼ばれているのです?特殊な魔法が使えるのですか?」 「い、いやそれは、その。あ、アンタには関係ないことよ!ほらアンタも早く来なさい!」 釈然としないがしかたがない。それより授業についていくか。 ルイズは焦っていた。これ以上アイツに弱みを握られるわけにはいかない。そう思っての事。 自分は魔法が使えない。私を助けてくれた時遠くから皿を投げたらしく使えない事は知らないみたいだった。 あってまだ三日目。だがもう既に手玉を取られてる状態。何とかしなくては。 (使い魔に手玉を取られる貴族なんて駄目駄目にもほどがあるわっ!) 悲しい事に。またもやルイズの考えはほどなく打ち砕かれるのだった。 その部屋は広く。大学の教義室みたいな作りの部屋だった。 大勢の生徒が集まっており皆自分の使い魔を連れている。 デッカイもぐら。赤いドラゴン。カエルもいる。人間は僕だけだ。なんかいやになりそうだ。 そこに程なくして中年女性の教師がやって来た。 「おはようございます皆さん。春の使い魔召喚は成功のようですね。私は 大変うれしく思いますよ。」 中年女性教師は当たりを見回す。ジャイアントモールにカエル。ほほう。アレはサラマンダー。 窓の外にいるのは風竜!今年はすごいですねえ。それに人間まで。ん?人間!? 「た、大変珍しい使い魔を呼んだようですねぇ。ミス・ヴァリエール。彼は、エート」 「え、えっと。彼はその、あ、亜人です!ホラ!頭の部分が亜人っぽいでしょう?」 ジョルノの目にすさまじい殺気が宿ったがルイズは冷汗流しながらシカトした。あ、舌打ちしてる。 授業が始まってどうやら錬金と呼ばれる作業に入っている。ジョルノはこの世界の魔法の力を知るために 使えはしないが授業に聞き入っていた。この教師は土系統のメイジらしく土系統のすばらしさなんとかかんとか いらぬ事をずっとくっちゃべっていた。要するに自慢がしたいだけなのだろう。馬鹿らしい。 「ルイズ。質問があります。」 「何よ。授業中よ?」 「結局アナタは何系統なんです?今の教師の話だと水、風、火、土の四系統みたいですけど。」 「……アンタは知らなくてもいい事なの。」 「ミス・ヴァリエール!授業中に話をするとは何事ですか!そうですね。 この錬金はアナタにやってもらいましょうか。」 教室に戦慄が走る。 「その、ルイズにやらせるのはやめたほうが…」 「自殺行為」 「何を言っているのですあなた達は。まったく。さあミス・ヴァリエール。気にしないで やってみましょう。何事もチャレンジですよ。」 「は、はいぃ」 既にキュルケとタバサは机の下に退避済みである。ジョルノも不穏な空気を呼んだのか机の下に隠れる。 「一体何が始まるんです?キュルケ」 「見てれば分かるわダーリン。アナタも隠れたほうがいいわ。」 「虐殺ショー」 一体何が始まるんだ。 どうしようどうしようどうしようどうしよーーーーーー! まさか。私がアイツの目の前でこんな。魔法が使えないことがバレちゃうじゃないっ! でも仕方がなかった。逃げようはない。ルイズはあきらめたのか石ころに錬金の魔法をかける! その時だった。 教室の空気が大きく振るえ爆音が響いたッ!煙が当たり一帯に立ち込める。 煙が収まるとそこには爆発を喰らって粉々になった机。死んでるようにも見える教師。 その中にはギーシュもモチロン倒れており。マリコルヌにいたっては頭がなかった。 他の生徒や使い魔も巻き込まれたのかぐったりとしている。そんな中ルイズはため息をつきながらこう言った。 「ちょっと失敗しちゃったわね」テヘッ 難を逃れた生徒達もさすがにキレる。危うくマリコルヌになりかけたのだから。 「だからゼロのルイズにやらせるなっていったんだ!」 「魔法が使えないくせにこんなことするなよ!まったく!」 「ペイジィィ!!!ジョーンズゥゥゥ!!ボーンナムゥゥ!!」 阿鼻叫喚の地獄絵図を作った本人は無傷のようだ。 「こういうことよダーリン。あの子は魔法の成功率がゼロ。だからゼロのルイズって呼ばれているのよ。」 「非常に危険」 二人がルイズのことを教えてくれたがジョルノの頭の中では別のことを考えていた。 馬鹿か!?こいつら本当に全員馬鹿なのか? ジョルノはスタンドと呼ばれる力。すなわち超能力を使うことができる。スタンドは一人にひとつ。 そしてひとつの能力。これがスタンドのルールだ。だから魔法にしてもひとつしか使えないことは 不思議とも思わない。直撃を食らえば死は免れない破壊力。普通に脅威の能力だ。それを魔法が使えない? 爆発のみに特化した能力だとは考えられないのか?これほどならば爆殺のルイズと名乗れるだろう位だろう。 そんなこんなで授業は中止。教室も大破したためその片付けをルイズとジョルノが やっている。ルイズはひどく暗い顔をしている。まあバレちゃったしね。 「…見ての通りよジョルノ。私は魔法が使えないオチこぼれ。だからゼロのルイズって呼ばれてるのよ。」 結局ばれちゃったじゃない。はあ…また馬鹿にされるわ。 「ルイズ。その事で質問があるのです。」 「なあに?」 「魔法というのは先ほど教師が言った4系統の他にはないのですか?」 「…言い伝えによると今はないけど昔は『虚無』と呼ばれる系統があったらしいわ。どんな力かは知らないけどね。」 「ルイズ。あなたはさっき魔法が使えないと言いました。しかし本当にそうでしょうか?」 「何言ってるのよアンタ。だって、何やっても失敗して爆発しちゃうのよ?」 「普通魔法を失敗したら爆発するのですか?」 「いや、私以外には今まで見た事がないって学園長に言われたけど…でも私は初歩中の初歩の魔法も使えないし」 「アナタが魔法が使えないなんて明らかに何かの間違いです。他の者が失敗して爆発しなくてあなたが 魔法を使うと爆発するならアナタは爆発を操る力。もしかしたら先ほどの『虚無』の力の可能性だって否定はできませんよ。」 「な、何馬鹿なこと言ってるのよアンタ!」 「前例がないのでしょう?でしたらむしろ否定できる要素のほうが少ないですよ。それに爆発のみ100%使えるとも 考えられます。この学園の貴族が所詮馬鹿ばかりなのでしょう。僕は馬鹿共だと思っていますが。」 言われてみれば確かに…でも、そんなこと信じられない。 「アナタはオチこぼれなどではない。先ほどの話も覚えておいて下さい。さあ早めに掃除してしまいましょう。」 「う、うん…」 励ましてくれているのかな?でもお世辞言わなそうなヤツだし。深く考えるほどジョルノの言う通りのような気がしてきた。 でもコイツに言われると何か説得力あってなんとも頼もしい。やっぱり不思議なヤツだ。 その日の夜 「う~~ん…このカードだ!うアアああああ!」 「残念でしたねギーシュ。それババです。これで上がりですね」 ルイズの部屋でルイズ、ギーシュ、ジョルノ、モンモン、キュルケ、シエスタの6人はトランプをしており 一位が最下位に軽い命令を下すことができる王様ゲーム式ルールで盛り上がっていた。 タバサも部屋にはいるが熱心に読書中らしい。本は止まっている。実は仲間になりたそうにこちらをみている。 「ダーリン強いわねぇ。また一番だわ。」 「ホントお強いですジョルノさん。あ、私も上がりです。」 「ギーシュはホント弱いわね。運がないのかしら」 「くっそおおおおまた僕が最下位かああああああッ!今度はどんな罰ゲームなんだ!?次は何を やらせるつもりなんだ?ぼ、僕に近寄るなァァァァアア!!」 ちなみに先ほどの罰ゲームはギーシュの有り金すべてをよこせである。軽いってレベルじゃねーぞ! その前はブリッジ体制で100回ジャンプしろだのトミノの地獄の詩を大声で読めだの散々な状態だった。 「そうですね。じゃあこうしましょう。ギーシュ。シエスタさんに謝ってください。」 「あ、謝るって僕はこのメイドになにも…」 「早くしてくださいよ。次のゲームが始まらないでしょう。さあ早く」 「空気呼んでよね。ギーシュ。早くダーリンの言う通りになさいな。」 「そ、そんな。貴族の方にそのようなことをこれ以上は…」 「今は貴族も平民もないはずよ。ねえジョルノ?」 「…助けてあげたいけどルールは絶対なのよね。これは試練よ!ギーシュ。」 「モンモランシーまでっ!やってやるさ!べ、別にソッチに目覚めたとかじゃないんだからねっ! シエスタ!あの時はスイマセンでしたァァァ!!」 出た!奥義土下座。一日何回やっているのだろう。あの時っていつさ。 (へ、平民のメイドに…なんたる屈辱ッ!で、でもこの感覚は一体ィィ!) 「なんでこんな弱いのよギーシュ。見ててこっちが惨めになりそうよ。」 「言わないでおくれモンモランシー。なぜか僕はカードはめっぽう弱いのさ。でも次こそは勝つよ。 さあ、次のゲームを始めようじゃないか」 カードだけなのだろうか。物事全般の気がしてならない。 「私も参加する」 「へ?タバサが?珍しいわねぇ。どんな風の吹き回し?」 部屋でおとなしく本を読んでいた少女はすくっと立ち上がるとキュピーンと目を光らせ 「彼を負かしてみたくなった…」 ジョルノを指差しこう言った。タバサはもうギーシュの罰ゲームなんてとっくに見飽きていた。いつもの事だし それにまだ彼の罰ゲームは見ていない。彼の悔しそうな顔を見てみたい。 私が一位になり続ければ彼はそのうち最下位になるかもしれない。タバサからは漆黒のオーラがあふれんばかりだ。 タバサとジョルノの視線がバチバチと火花を散らしてぶつかり合うッ!それはまさに破壊の小宇宙! 「いいでしょう。さあ、ゲームを始めましょう。」 その後の展開はご想像にお任せしよう。 同時刻 トリステイン魔法学園宝物庫前 (やはり強力な固定化がかけられているわね。錬金で壁を土にすることは無理みたいね ゴーレムを使うしかないのか。私のゴーレムでも破壊するのは時間がかかりそう。) 緑色の髪の女性。学園ではミス・ロングビルと呼ばれている女性だ。しかしその正体は貴族の宝を狙う 土くれのフーケと呼ばれる今話題の盗賊。ここの宝物庫にある破壊の杖と呼ばれる物が彼女の狙いだ。 ここの学園長。オールド・オスマンの秘書をしている彼女だがここの情報だけは掴めていない。 やはり下見に来て見たのは正解のようだ。 (力技だけですぐに壊すのは難しいようね。それ以外の何かで………そういえば) 今年の使い魔の儀式では亜人が召喚されたと聞く。噂では怪我を治したり物をヘビにする男。先住魔法の使い手 と聞いている。この壁もその男の力を使えばいけるかもしれない。その男をうまく利用してゴーレムを使って逃走する。 なるほどその手があった。壁をヘビに変えられるのなら。 (さてどうやってその男を利用しようかねぇ。) はたしてフーケのの目論みはうまく行くのだろうか。そんな事誰も知る由もなかった。 to be continued
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前ページ次ページとある魔術の使い魔と主 さて、そんな風に馬鹿騒ぎしている当麻達と同じ時間、 アルビオン貴族派の皇帝クロムウェルは、ウェールズを生き返らせていたりした。 しかし、そんな事は全く予想だにしていない一行であった。 まだ物語は続く…… とある魔術の使い魔と主 魔法学院へと戻った次の朝からルイズは変わった。 一言でいうなら当麻に対して優しくなったのだ。そうはいっても、普通に人間としての扱いを受けたというレベル。 どこがどう変わったかという事で、当麻の一日を見てみよう。 まず目が覚めた当麻は、ルイズを起こす前に、水が入った洗面器を用意する。朝、顔を洗う為である。 しかし、個々の部屋に水が引いているわけがなく、下に行って水道水から冷たい水を貰っている。 そして、ようやくルイズを起こすと当麻は水を掬う。顔を洗うのも当麻の仕事なのだが…… ルイズは眠たそうに目を擦るのだが、体を動かさない。 どした? と聞く当麻に対し、ぼんやりとした表情のまま口を開いた。 「そこに置いといて。自分で洗うから、いいわ」 「そっか、自分で洗うのかー……って、え?」 当麻は、ルイズの言葉に驚きを隠せなかった。 「自分でやる」なんて使い魔に見事就任してから一度も言った事がないし、言おうともしなかったのだ。 「自分で……洗うのか?」 聞き間違いかもしれないと思い、ルイズに聞いてみる。 すると、ルイズは不機嫌そうに横を向いた。口を尖らせ、頬を赤く染めている。 「自分で洗うから、いいの。だからほっといて」 ルイズは、当麻をうんしょ、と洗面器のある所から押し出す。当麻はされるがままに身を任せた。 ルイズは洗面器に手をいれ、水を掬うと思いきり顔を振って洗った。水が盛大に飛び散る。 「お前、顔を動かして洗うタイプなんだな」 何気ない一言に、洗ったはずの顔が、赤いインクを塗られたかのように再び染まっていく。 恥ずかしながらも、ルイズは怒った。 「べ、別にいいじゃない! わたしがどう洗おうと勝手でしょ!」 「いや、まぁそうだけどさ……」 世間話のつもりで話した為怒られるとは思わず、髪をかく。 その後、クローゼットまで足を運ぶと、下着を取り出してベッドに置く。 このままルイズの着替えを見ていると、犯罪者になってバッドエンド直行になってしまうので、当麻は体ごと視線を他に向ける。 顔を洗い終わったルイズは、下着にへと着替える。その間に当麻は制服を手に持って着させる準備をした。 頃合いを見計らって、視線をルイズへと持っていくと…… なぜか下着姿のルイズは、慌てた顔になって、ベッドのシーツに包みこもった。 「服、置いといて」 ぴょこっと顔だけシーツから出して言った。 おかしい、と当麻は思う。いや、これが普通の年頃の女の子が起こす当然の反応なのだが、 なにぶん今までのルイズとは真逆だったから故に、当麻は不思議に感じる。 「あの姫さま? 自分でやるのでありましょうか?」 当麻の質問に、う~~~~と唸りながらも睨んだ。 多分、いいから置けと言っているのだろうと解釈した当麻は、制服をルイズの目の前に置いた。 「……向こうむいてて」 「ん?」 「向こうむいてなさいって言ってるの!」 ボフッ、と当麻の顔に枕が投げ付けられる。見ると、ルイズの顔は湯気が出てきそうなまでに真っ赤っ赤に染まっていた。 当麻はなんだなんだー!? とルイズの変化に驚きながらもちゃっかり背中を向けたりする。 普通ならここでルイズが異性としての意識を持ち始めたのでは? と思ってもおかしくないのだが、 (あいつ、変なものでも食ったのか?) どこまでも鈍い当麻だったりする。 もちろんこれだけで終わるはずがなかった。 朝食、今回は洗濯を後回しする事になり、先に食べる事になった。 いつも通り、指定された床に向かったのだが…… そこには食事が何一つなかった。 あれ? と当麻は首を傾げる。まさか集団いじめが起きているわけがあるまい。 それとも、使い魔という立場なので、飯抜きとなったかもしれないという。しかし、その考えはすぐに違うと断言できた。 飯抜きという事は、何かしらの罰がなければならない。しかし、当の本人はそのような事をした覚えがなかった。 事情を聞こうと、ルイズに視線を向ける。視線を感じたルイズは口を開く。 「今日からあんた、テーブルで食べなさい」 「……え?」 まただ、と当麻は思った。思いがけない発言に当麻はただ困惑するばかり。 「姫、何をわたくしに求めているのでしょうか?」 「いいから。ほら、早く座って」 いつも以上にかしこもった態度をとるが、ルイズはただ当麻を促すだけ。 仕方なく、当麻はルイズの隣に腰掛ける。普段、家で食べるときはちゃぶ台で食べていた為、居心地は良いとは言い切れない。 すると、いつもそこに座っているかぜっぴきのマリコルヌがあらわれて、主のルイズに文句を言う。 「おい、ルイズ。そこは僕の席だぞ。使い魔を座らせるなんて、どういうことだ」 ルイズはきっとマリコルヌを睨んだ。 「座るところがないなら、椅子を持ってくればいいじゃないの」 「ふざけるな! 平民の使い魔を座らせて、僕が椅子をとりに行く? そんな法はないぞ! おい使い魔、どけ! そこは僕の席だ。そして、ここは貴族の食卓だ!」 当麻は困る。極論を言えば床に座って食べても問題がないので、別にどけと言われたらどいてもいいのだ。 しかし、立ち上がろうとしたその時、ルイズが当麻の裾をちょんちょんと引っ張って制止をかけた。 どうやら主はそうなって欲しくはないようだ。確かに当麻はこういったタイプの男はあまり好きではない。 めんどくさいが仕方ないか……、とため息を吐くと、やや震えているマリコルヌの目の前へと立ち上がる。 「あーじゃあ決闘しますか? 席を賭けた決闘。確か平民と貴族が決闘しちゃいけない法はありませんでしたよね?」 当麻の不敵な笑みにマリコルヌは一歩下がる。 ギーシュを倒し、あのフーケをとっ捕まえた当麻はただの平民ではない、ということはすでに学院中の噂になっているのだった。 おまけに、ルイズ達と数日学院を留守にしている間に、なにかとんでもない手柄を立てたらしい、ということさえ昨日の今日なのに噂されていた。 だからマリコルヌにはそんな当麻が恐ろしく強い人間だと感じた。そんな人間に決闘を申し込まれたら勝ち目がない。 「ないけど、いい。僕が悪かったですはい」 マリコルヌはすぐに首をぶんぶんと勢いよく振って否定した。 「じゃあ早く取りに行っちゃおうぜ? もう始まるしさ」 そう言うと、マリコルヌはすっ飛んでいった。 これでいいのか? と聞く当麻にルイズはそっぽを向いて無視するだけであった。 (不思議だな……) そういえば御坂もこんな風によくわからない態度をとったりする。 (まあいっか、飯だ飯) しかし、それは当麻にとってどうでもいい事だったりしちゃったりする。 授業が始まる前、ルイズの周りにはクラスメイトで一杯であった。 この数日間、何かとんでもない冒険をして凄い手柄を立てたらしい、との噂が今一番の話題であった。 裏付け証拠に、魔法衛士隊の隊長と出発するところを何人かの生徒たちが見ていたのである。 何かがあるに違いない。そう思ったクラスメイトたちは聞きたくてしょうがなかった。 しかし、朝食の席には教師達がいるので遠慮していた為、今爆発したのだ。 「ねえルイズ、あなたたち、授業を休んでいったいどこに行っていたの?」 クラスの代表者として話しかけてきたのは、香水のモンモランシーであった。 腕を組んで、いかにも偉そうな立場をとっている。彼らは既に席に座っていたキュルケやタバサに同じ質問をぶつけたが、 タバサはただ本を黙々と読むし、キュルケも優雅に化粧を直している。すなわち、何も喋らないのだ。 一方のギーシュは二人と違う。 きみたち、ぼくに聞きたいかね? ぼくが経験した秘密を知りたいかね? 困ったウサギちゃんだな! あっはっは! と呟くなり足を組み、人差し指を立てていた。 思いきり調子に乗っている。このままで何かも喋ってしまうので、ルイズは人込みをかきわけて、頭をひっぱたいた。 「なにをするんだね!」 「口が軽いと姫さまに嫌われるわよ。ギーシュ」 自分が好意を抱いているアンリエッタを引き合いに出されたギーシュは、黙るしかなかった。 そんな二人のやりとりを見て、ますます好奇心を隠せないクラスメイト。ギーシュも喋らない今、最後の希望はルイズである。 「ルイズ! ルイズ!」 「俺たちのルイズ! 教えてくれよ!」 「一体」「何があったんですか!?」 「誰だ今の腹話術!? 案外うまいぞ!」 「ル~イ~ズ~(×6)」 「待て待て、今のハモり完璧過ぎるぞおい!」 わいわいがやがや、と教室全体を巻き込むかのようにテンションが上がっていく。 しかし、ルイズは澄ました顔で「なんでもないわ。ちょっとオスマン氏に頼まれて、王宮までお使いに行ってただけよ。ねぇギーシュ、キュルケ、タバサ、そうよね」 と三人に振った。なんというか、怖いもの知らずである。 キュルケは意味深な微笑を浮かぶだけだし、タバサはじっと本を読んでいる。 ギーシュだけが頷いたが、そんな事はクラスメイトにとってはどうでもいい事である。 テンションがすっかり落ちたクラスメイト達は、やめだやめだといった感じに自分の席へと戻っていく。 ルイズの言動に腹を立てた人もいたらしく、負け惜しみを吐き捨てた。 「どうせ、たいしたことじゃないだろ」 「そうよね、ゼロのルイズだもんね。魔法のできないあの子に何か大きな手柄が立てられるなんて思えないわ! フーケを捕まえたのだって、きっと偶然なんでしょう? あの使い魔が助けただけじゃないかしら?」 見事な巻き毛を揺らして、モンモランシーが嫌味ったらしく言った。 流石のルイズにもこれにはカチンときた。しかし、実際そこまで活躍していないのも事実である。 きゅっと唇を悔しそうに噛み締めるが、それだけであった。 ちなみに手柄を立てた当麻は、不幸にも朝食で当たった腹痛の為、ベッドに寝込んでいた。 「だー、不幸だ……」 当麻はそう呟くと、藁で作られたベッドに身を預けた。 コルベール先生の授業を休んだ上に、腹痛も治って教室に戻ったら、ルイズがいつも通りやらかしたのだ。 しかも今回は油のせいで、余計に教室の中は惨劇であり、片付けにも時間がかかった。 もっとも、ルイズも以前よりかは手伝ってくれたおかげで、心なしか少し楽のように感じたが、 それは気持ちの問題で、体は正直である。 体の筋肉が悲鳴をあげる中、当麻は立ち上がる。就寝時間の為、ルイズの着替えを取り出そうとしたが、先にそのルイズが着替えを取り出したのだ。 ポカンと口を開けている当麻を他所に、黙々と作業を続ける。 ルイズはベッドのシーツを天井から吊り下げ、簡単なカーテンを作り上げた。 そして当麻の視界に隠れるような位置で、がさごそと着替え始めたのだ。 当麻としては、不幸の中の幸福だーと喜ぶだけである。その間にもカーテンが外された。 ネグリジェ姿のルイズが現れ、早速ベッドに横たわった。 机に置かれたランプの明かりを、杖を振って消す。窓から差し込む月明かりがなんともまあ綺麗であった。 少しでも体力を回復をしようと思った当麻はすぐ寝よ、と思い目を閉じる。 と、ルイズががばっ! とシーツごと身を起こし、当麻に声をかけた。 「ねえトウマ?」 「ん?」 しばらくの沈黙、ルイズは顔を赤くして言いにくそうにしているのだが、当麻にはわからない。 「どした?」 再び聞かれた当麻はビクッと体を跳ね上がらせた。 「えと、その……いつまでも、床ってのはあんまりよね。だから……その、ベッドで寝てもいいわよ?」 「全力で断らして頂きます」 当麻はピシャリと遮った。ルイズは思わず肩をずるっと落とした。 「な、な、な……べ、別に構わないのよ」 「いやまあ、ぶっちゃけちゃうと普段からこうやって床に寝慣れちゃって、ベッドとか苦手だったりそうであったり」 本当は健全な男子がそのようなエロゲ展開を望んでいると言えばそうなのだが、何とか自制心が欲望を押さえ込んだのだ。 やるな、上条当麻 「そ、そう? なら別に構わないわよ」 ルイズはおとなしく再びベッドに横たわる。そして思い出す。今の『普段』という言葉を。 「ごめんね、勝手に召喚したりして」 小さく、だが当麻に聞こえるように呟いた。 「ん? いや謝る程じゃねえーよ。気にすんな」 「きちんと帰る方法探したいけど……どうすればいいのかわかんないの。異世界なんて聞いたことないし」 「俺も異世界なんて聞いたことなかったんだ。なに帰還フラグはまだ残ってるって」 ルイズは、時々当麻の言っている意味がわからない事もあるが、その時はとりあえず話を進めるのが一番である。 「ねぇ、トウマのその右手の力って特別なの?」 「ん? 確かに特別だな。魔法とかに関しては『無敵』に近いからな」 「なんでわたしはゼロのルイズなのかしら……」 「おいおい、それは前に言ったけど――」 「違うの」 ルイズは割り込んだ。 「わたし、いつもダメだって言われた。お父さまにも、お母さまにも、わたしには何にも期待してない。クラスメイトにもバカにされて。ゼロゼロって言われて……。 わたし、ほんとに才能がないの。魔法を唱えても、なんだかぎこちないの。自分でわかってるの。 先生や、お母さまや、お姉さまが言ってた。得意な系統の呪文を唱えると、体の中から何かがうまれて、それが体の中を循環する感じがするんだって。 それはリズムになって、そのリズムが最高潮に達したとき、呪文を完成するんだって。そんなこと、一度もないもの」 ルイズの声がだんだん弱々しく、小さくなった。 「でもわたし、せめて、みんなができることを普通にできるようになりたい。じゃないと、自分が好きになれないような、そんな気がするの」 ルイズ自分の本音を吐き出して落ち込んでしまった。 はぁ……、と当麻はため息を吐くと、頭のスイッチを切り替えした。 「確かにさ、ここでは魔法を使えないのは珍しいのかもしれねえけど。だからって悲観することはないんだぜ?」 え、とルイズは小さく零した。 「例え魔法が使えなくてもさ、おまえは助けを求めてる人に手を差し伸べたじゃねえか」 アンリエッタの時、それがどれだけ危険な任務であったのかわかっていたのにルイズは手を指し伸べた。 「あ、あれは姫さまが言ったから……」 関係ねえよ。と当麻は否定した。 「力がなくても、誰かに力を貸そうとする人間は、誰かが助けようとするもんだ。 自分が幸せになるのが当然だと思わないで、他人が幸せになる事を考えてる人間には、誰かが関わってくれる。少なくとも俺がそんな人間だったら好きになれるぜ?」 それに、ただ馬鹿にしている奴より何倍も素晴らしいはずだ。と当麻は付け加えた。 そういわれると、ルイズもなんとなく自分が少し好きになれた。 フーケの時だってワルドの時だって命懸けで頑張った自分を。 「でもやっぱり魔法は使いたいかも……」 「つか、一つ言うとさ。俺達にもそういうランクがあるんだけど、この能力を持っているが、俺はゼロの扱いを受けてるんだぜ?」 ルイズはさりげなく、喋っている当麻に視線を向けた。 「って事はだ。その四系統だったか? それに属さない特別な力を持っていると考えた方がいいんじゃねーのか?」 たった一人だけが持つ力、響きはいんじゃねーの? と少し茶化した当麻は目をつむっていた。よっぽど今日の仕事は疲れたらしい。 ルイズは口元が緩んでしまった。なるほど、そういう解釈もあるのか、と思うとやっぱり嬉しい。 不思議だった。 なんでこの少年の言葉はこんなにも力があるのだろう? 歳は全く変わらないのに、なんでこんなにも強いのだろう? 自分の考えている問題をどうしてこんなにも簡単に答えちゃうんだろう? 胸が熱くなりながらも、ルイズはずるいと思った。 前ページ次ページとある魔術の使い魔と主
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前ページ次ページゼロ・HiME 宿から出たルイズたちは裏路地から続く長い長い階段を上がって桟橋のある丘にたどりついた。 「へえ、こらまた凄い眺めやねえ」 丘の上から見える光景に、静留が感嘆の声を上げる。 そこには四方八方に枝を伸ばした高さが数百mはありそうな巨大な樹が鎮座しており、その枝にまるで木の実のように何隻ものフネがぶら下がっていた。 「……なるほど、確かに『桟橋』どすなあ」 「いや、そんな普通のことを感心されても……」 そんな会話を交わしながら静留とルイズはワルドに先導され、樹の根元に開いた裂け目を潜り抜けて、その内部へと入り込んだ。 そこは吹き抜けのような空洞になっていて、各枝に通じる階段が縦横に張り巡らされていた。 その中からワルドが目当ての階段を見つけると、三人はその階段を駆け上り始めた。 足場の悪い階段きしむ音を聞きながら、途中の踊り場に差し掛かった時、静留は何者かの気配を感じて背後をふりかえった。 黒い影が頭上を飛び越え、のっぺらぼうな白い仮面を被った黒装束の男がルイズの側面に降り立った。 静留はデルフを鞘から引き抜くと同時にルイズに怒鳴る。 「ルイズ様!」 ルイズが振り向く。一瞬で男はルイズを抱え上げると何の躊躇もなくその身を空中へと躍らせた。 「ルイズは渡さんぞ!」 即座にワルドが杖を振り、風の鎚(エア・ハンマー)の呪文を叩きつける。それに打ち据えられた仮面の男は思わずルイズから手を離す。 「きゃあああっ!!」 「ルイズ!!」 ワルドは踊場から飛び出すと、ルイズ目掛けて急降下した。そのまま落下中のルイズを抱きとめ、空中に浮かぶ。 仮面の男は身を翻して踊り場へと引き返すと、デルフを構えた静留と対峙した。 「どこの回し者かしらんけど、しつこい男は嫌われますえ」 ワルドと同じぐらいの背格好をした男は静留の言葉には答えず、無言で突き出すように杖を構えた。 とたんに周囲に冷気が漂い男の方へと収束していく。男が呪文を放とうとしているのに気づいた静留が阻止しようとデルフを振り上げた瞬間、デルフが叫んだ。 「姐さん! 俺を突き出せ!」 静留がデルフを突き出した瞬間、男の杖から放たれた稲妻の束がデルフを持った静留の左腕に直撃した。 「こんの、くっそたれが~~~~!」 デルフの絶叫と共にほとんどの稲妻がデルフに吸い込まれるが、わずかに残った電流が静留の体を貫く。 「――くっ!」 心臓を貫くような痛みに静留は意識を手放しそうになるが、歯を食いしばってそれに耐え、男に向かってデルフを袈裟懸けに振り下す。 男は弾き飛ばされるようにして踊場から足を踏み外し、地面に向かって真っ逆さまに落ちていった。 「シズル!」 ワルドに抱えられて踊場に戻ってきたルイズが、その場にしゃがみ込んだ静留に駆け寄る。 「痛っ……心配せんでも大丈夫どす。ルイズ様の方こそ怪我とかありまへんか?」 「この馬鹿っ、私より自分の心配しなさいよ! 服の左袖が肩の方まで焼け焦げてボロボロじゃないの!」 ルイズはそう言うと服の袖を引き裂き、静留の腕に怪我がないか調べる。幸い袖のコゲで汚れたぐらいで左腕には何の外傷もなかった 「しかし、いきなり風系の上位のライトニング・クラウドを撃ってくるとはな。あいつ、相当の使い手だぜ」 デルフの言葉にワルドが驚いた表情を浮かべる 「それは本当か? 本来なら死ぬほどの威力があるはずだが……ふむ、この剣が魔法を中和したというところか。ところで君の材質は金属ではないのか?」 「知らん、忘れた」 デルフが不機嫌そうにワルドに答える。 「インテリジェンスソードか、いささか口が悪いがいい品のようだ」 「まあ、うちに相手してもらえんでスネとるだけなんで、口が悪いのは堪忍したってや」 「ちょっ、姐さん! 俺は別に……」 静留は自分の言葉に反論しようとするデルフを鞘に押し込んで黙らせると、ルイズの手を借りて立ち上がった。 「ほな、邪魔もいなくなったことやし、一気にフネのとこまでいきますか」 階段を駆け上った先は、一本の枝が伸びており、一隻のフネが係留されていた。ワルドたちがフネに乗り込むと、甲板で酒を呑んでいた船員が邪魔するように立ちふさがる。 「なんでえ、おめえら! 用があるなら、明日の朝改めて来な!」 船員は酔いの回った表情で、酒くさい息を吐きながらそう言い放った。 「僕は貴族だ。死にたくなければ、僕が杖を振るう前に急いで船長を呼ぶんだな」 「ひぃっ、き、貴族!」 杖を振り上げたワルドの脅しに船員は顔を真っ青にして、船長室にすっ飛んでいった。 「何の御用ですかな?」 睡眠中だったらしい初老の船長は寝ぼけ眼で、うさんくさげにワルドを見つめる。 「女王陛下の魔法衛士隊隊長、ワルド子爵だ」 「これはこれは……して、当船へどういったご用向きで?」 相手が身分の高い貴族と知った船長は態度を一変させると、揉み手をしながらワルドに尋ねる。 今すぐにアルビオンへと向かうと言われた船長は最初難色を示したが、ワルドが王家の勅命だと宣言し、積荷の倍に相当する報酬を保障すると言ったら、あっさりと出航することに同意した。 「アルビオンにはいつ着く?」 ワルドが尋ねると、 「明日の昼過ぎには、スカボローの港に到着しまさあ」 と船長が答えた。 静留は舷側から地面を見下ろした。『桟橋』である大樹の枝の隙間から見えるラ・ロシェールの街の明かりがぐんぐん遠くなってゆく。結構な速さのようだ。 ルイズは静留の隣に並ぶと、同じように地面の方をじっと見つめて呟く。 「いよいよアルビオンにつくわね」 「……そうどすな」 そのまま無言で佇む二人の元に、ワルドが近寄ってきた。 「船長の話では、ニューカッスル付近に陣を配置した王軍は、攻囲されて苦戦中のようだ」 ルイズがはっとした顔になった。 「ウェールズ皇太子は?」 「わからん。生きてはいるようだが……」 ワルドの答えにルイズは困ったという表情を浮かべた。 「どうやって、連絡を取ればいいかしら」 「……危険だが陣中突破しかあるまい」 ルイズは緊張した顔で頷いた。それから尋ねる。 「そういえば。あなたのグリフォンはどうしたの?」 その言葉にワルドが微笑んで口笛を吹くと、グリフォンが甲板に着地し、船員達を驚かせる。 「ほな、うちは先に寝かせてもらいますわ」 静留はそう言って舷側に座り込むと、まだ続いているルイズとワルドの会話を聞くこともなく、深い眠りについた。 前ページ次ページゼロ・HiME