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445: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 18 42 29 ~左端side~ 屋上ー 「うあーあ。やーっとくっついたかー!」 俺は思いっきり背伸びをして、一息ついた。 それを横目で見る颯斗。 「な~に? 何かご不満?」 「……いや、珍しいと思ってな」 「何がだよ?」 「そんなに清々しい顔、するのかと思っただけだ」 「あれっ? いつもこういうカッコイイ顔じゃなかった?」 「……表情が明るい」 「そーかー。そりゃ、やりがいがあるな」 「……どうかしたのか?」 「いや……。なーんか、俺も恋がしたくなったな!」 「ほーお。見物だな。また、生きる糧が見つかった」 「えっ? そんなことが颯斗っちの生きる糧になるの!?」 「面白いことがあれば、笑っていられるなら糧になる」 「……まずは俺より、颯斗っちの恋が実った方がいいよ」 「何を言っている。俺に焦がれる人などいない」 「だーかーらー!そういう考えがダメなんだってば!」 「なっ……!? お、俺には恋は必要ない!!」 「いーや、必要あるね!だって、ウブすぎるもん!何もかも!」 「俺はそんなピュアではない!」 「嘘つけ!お前今年、赤ちゃんはコウノトリで運ばれてくるのを嘘だって知っ て落ち込んでたクセに!」 「あ、あれはっ、そのっ」 そう、颯斗っちは完全なるピュアボーイ。 日本のスパイのクセに、ピュア。 人殺しをやったことがない、とは言えないが こいつはドピュアボーイなのだ。 「と、ところでだ。俺たちの仕事は、これで終わりか?」 「うん、終わりだよー。あとのことは、舞ちゃんたちの仕事~」 「そうか。では、 帰るとしようか」 「あ!そういばさー?」 「ん? どうした」 「何で颯斗っちはさ、この仕事を引き受けたの?」 俺はなんとなく気になった疑問をぶつけてみた。 「気になるのか?」 「うん!」 「そうだな……。面白そう、というのが正解だろう」 「面白そう?」 「ああ。ま、気まぐれだ」 「ふーん?」 「……何だ?」 「たまに颯斗っちって分かんない」 「俺がか?」 「うん。何考えてるの、いつも」 「そうだな……。仕事だ」 「え!普段でも仕事のこと考えてんの!?」 「何か不満でもあるのか?」 「仕事とプライベートは分けるタイプじゃないの!?」 「……? 何の話だ? 俺は常に、平常心でありたいが故、仕事のことを考え ているが?」 「あー!!もういい!!颯斗っち堅い!!あっち行け!!」 「なっ!?」 また一日、こうして思い出がつくられていく。 俺らは本来、“気持ち”を持ってはいけないと教えられてきた。 けれど、それは仕事のときの話。 プライベートでは、こうして思いっきり笑える。 俺と颯斗は昔、プライベートでも笑えなかった。 それを変えてくれたのが、蓮と蔵間。 あの3人がいてくれなかったら、 俺は笑顔を忘れていた。 今回の仕事は、俺と颯斗、引き受けた理由は同じ。 蔵間と蓮に恩返しするため。 決して恩を返せるとは思ってはいないが、 ほんの感謝の気持ち。 446: 名前:雷蓮☆2011/09/24(土) 19 36 14 ~しずほside~ それから、数日後---。 蔵間とアタシは、晴れてカレカノとなった。 「蓮、お弁当食べよー!」 「あぁ。蔵間、お前も来るだろ?」 「あぁ、行くよ。しずちゃんも一緒でいいかな?」 「しずちゃんも!?全然いいよ!」 舞がアタシの手を引っ張る。 「わっ、ちょっ、舞!?」 「屋上でいつも食べてるんだよ!しずちゃんも一緒なら、ご飯もっとおいしくなるね!」 「なっ……!」 舞はなんてことなく、恥ずかしい台詞をサラリと言う。 なんて末恐ろしい子……。 アタシの顔がみるみる赤くなっていく。 「おい、舞。俺の連れが妬くからやめとけ」 グイッ そう言って、舞の引き寄せる蓮。 舞はすっぽり蓮の腕の中。 なんて可愛い絵……。 「別に妬かないよ? 蓮じゃあるまいし」 「うるせーんだよ、動くあまのじゃく」 「お互いさまじゃないかな?」 蔵間の笑顔を近くで見れる。 アタシの毎日の楽しみで、失いたくない宝物。 ねぇ、蔵間。あなたに出会えて、本当によかった---。 455: 名前:雷蓮☆2011/09/25(日) 15 55 16 ~舞side~ 教室- 「どおおおおおりゃあああー!」 朝8時11分。 「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」 ズドォォォォンッ!! 青々と晴れ渡る空。 「んまだまだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 小鳥が歌を歌う、 バキボキバキッ!! 清々しい朝は--- 「ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ……悲鳴に変わった。 5分後- 康介は--- 「あーあ。だから言ったのに」 「うるせーやい。俺はチャレンジャーなんだよ」 蓮に勝負を挑んで完敗。 対する蓮は--- 「あーあ。ガキの相手すんのも、楽じゃねーな」 ものすごい余裕をかましていた。 「康介はガキなんだ?」 蔵間くんが微笑ましいくらい、爽快な顔で言う。 「こいつ以外に誰がいんだよ」 蓮は康介に向かってほくそ笑んだ。 「てめーらぁっ!!」 ブチ切れた康介の声は、廊下まで響いた。 「もー、静かにしてよ康介ー」 「えっ、俺っ!?」 私の我慢は限界に達していた。 「そーだよ!昨日も先輩に怒られたばっかでしょ?」 そう、康介の大声のせいで、他学年からの苦情がよくくる。 「危ない人に目をつけられたらどーすんの?」 「いや、もうつけられてるな」 「どーいうことだよ、蓮」 「そーいうことだよ、脳なし」 「う、うるせーな!!」 蓮はケッと呆れ顔で言い、手元の雑誌に目をおとした。 「蓮のけちんぼ」 「うるせー、ガキ」 「ガキじゃねえもん、大人だもん」 「世も末だな」 「海に沈めてやろうかぁ? あ"ぁん?」 「上等だ、コラァ!!表出ろやぁ!!」 「はいはい、そこまでー。うるさいからね、二人共」 蔵間くんは私と同じで、いつもケンカの仲裁役。 ほっとけば、えらい騒ぎになりかねない。 血圧の高い人たちだから。 「それより、康介。目をつけられてるっていうのは本当だよ」 「はぁ?」 「……」 蓮は蔵間くんの言葉に少し反応したけど、 すぐ雑誌に目を戻した。 「実際、先輩に目をつけられていることは事実。 これ以上やらかせば、変な噂が一人歩きして 他校の連中からも目をつけられる始末になる。 蓮はそれを心配して言っているんだよ」 さすが蔵間くん。 説得の仕方が尋常じゃないくらい、プロ並だ。 「そ、そうだったのか……。ごめん、蓮……」 康介は蓮の優しさを身に感じたのか、照れくさそうにしていた。 「せいぜい、リンチされねーよう頑張るこった」 「お、おぅ……」 「あ、そーだ」 「?」 蓮は、何かを思い出したように言った。 456: 名前:雷蓮☆2011/09/25(日) 16 00 27 「この前武塔に、お前が腹壊して便所から出てこないって嘘ついた。すまねーな」 「え……」 「それだけだ。いつも言おうと思って忘れてたから遅くなったけど、言えてよかった」 「あ……そ、そうなの……。下痢……ね……」 「ん? どうした?」 「いやー、何でもねー」 康介の目からは大粒の涙が零れていた。 その理由は言うまでもない。 459: 名前:雷蓮☆2011/09/25(日) 20 57 22 「はーい、席つけー」 ガラガラと教室のドアを開け、 入ってきたのは武塔先生。 「お前ら、職員室まで声聞こえてるぞ。その肺活力を部活でいかせー」 「うっせーな、ぶどう!!お前はひっこんでろ!」 「ぶどうじゃねぇ!!お前、教師にそんなこと言っていいのか?」 「いいに決まってんだろ!なぁ? 蓮」 いきなりふった相手は蓮。 蓮なら味方についてくれると思ったのか。 けれど、それは大きな間違いだった。 「え……? 俺、そんなことしませんけど?」 「え……」 そう、彼は自分の利益になることしか選ばない。 仲間を裏切るという行為も、簡単にやってのける。 康介は放心状態。 まぁ、無理もない……。 「れ、蓮……。お前……」 「というわけだ。俺に謝るなら、今のうちだぞー?」 ここまでくると、もう手がつけられなくなる。 私、よく今まで康介とつるんでこれたなー……。 「お、お前っ!!裏切るのかよ!?」 涙目で訴える康介。 それはまるで、捨てられた子犬のよう。 「……言っただろ? 俺は自分の利益になることでしか動かないってよ……」 蓮は最高のほくそ笑んだ顔で、康介を見下した。 これは彼にとって、大ダメージを与えた。 「「バカな奴」」 「本当~。脳なしにはぴったりの結末だけどね」 とどめに、彼の彼女の鈴音と、双子の沙奈と瀬奈の毒舌攻撃。 これは地獄である---。 460: 名前:雷蓮☆2011/09/25(日) 21 03 30 康介の反抗は、あだとなって返ってきた。 武塔先生のチョップで気絶。 あと二時間は別世界から戻ってこないと予想される。 「あーあ。からかいがいのある人がいなくなると、寂しいわ~」 「鈴音って毒舌だよね、ほんと」 「そうかな? これが普通じゃない?」 いや、レベル違いすぎるでしょ! 「「しばらくは3次元に帰ってこない康介に、合掌!」」 縁起でもないことをやり始める双子。 そこでようやく蔵間くんが口をはさむ。 461: 名前:雷蓮☆2011/09/27(火) 17 38 06 「ちょっと、康介が可哀相だよー」 「じゅん・・・」 鈴音が蔵間くんの言葉に反応した。反省してくれたのかな? 「そんなんじゃ、サディスト国の女王はつとまらないじゃない」 「え・・・・・・」 ああ・・・。そうきますか・・・。 蔵間くんが軽く引いてるのは気のせいだろうか・・・? 「さてと、そろそろ本題に入ろうか」 先生が手元の書類を整える。 「えー、このクラスに転入生がくる。ていうか、もう来てる」 ザワッ・・・ クラスのテンションは急上昇する。 なんたって、希望に満ちあふれた瞬間なのだから。 もちろん、一番黙っていられない人が目覚めないワケがない。 ガバッ! 「なにぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」 康介が勢いよく起き上がる。 その様子を見た鈴音の表情が曇る。 「ん? 鈴音、どうしたの?」 それを察した蔵間くんが声をかける。 「あ、あー、ううん、何でもないよー」 鈴音? 「さしずめ、美女でも来たらっていう不安でしょ?」 「っ!?」 「どーもー」 いきなり鈴音に話しかけたのは左端くん。 「いきなり、何を言い出すんだと思えば・・・。別にそんなこと・・・」 「なら、胸はって誰にもとられない自信あるって言えるの?」 「っ・・・!!」 「なーんて!あはは!」 「てんめぇ!!」 「わーっ!怖い怖い~」 「……舞、鈴音は天の邪鬼なのか?」 「あ、颯斗くん」 颯斗くんが珍しく机に座っている。 いつも教室のどこかの天井にいるのに。 「照れ屋ってだけだよ」 「照れ屋はあんなに暴力をふるうのか?」 「う・・・」 どう答えればいいのか、分かんないよ・・・。 「ま、とにかく、自己紹介させんぞ。おい、中に入れー」 先生が廊下にいる転入生を呼び出した。 ガラッ 「わーお・・・」 左端くんが絶句する。 いや、クラス中が静まり返った。 「初めまして。尾上 四季(おのえ しき)と申します。以後、よしなに」 転入生は男の子。 思った以上の礼儀の正しさに、みなさらに言葉を見失う。 「わぁ~、なんか面白い奴きたね~」 「お前には見習ってもらいたいものだ」 「颯斗っち、テキビシー」 「当たり前だ、バカ」 左端くんが笑いながら転入生をガンミ。 「うちの蓮くんにも、見習ってもらいたいものだね」 「蔵間、お前後でしばくぞ」 「けんかっ早いとことか」 「おい」 「舞ちゃんも怖くて仕方ないって顔してるでしょ? 彼氏なんだからそれくら い察した方がいいんじゃない?」 「お前、マジで殺す。・・・舞」 「ん?」 「あいつには近づくな」 「え? どうして?」 「蔵間のうまい手料理が食いたかったら、言うこと聞け」 「蓮ってば、そんな命令しないの!素直に嫉妬してるって言えば・・・」 「うっせーよ!!」 「はいはい」 「えー? 何、教えてよ~!」 「お前は教えても意味しらねぇだろ!!」 「言ってくれなきゃ分かんないよ~」 「そーいうことだ!」 私たちがごたごた話してるうちに、 転入生の自己紹介が終わったらしい。 「ま、よろしくな、えーっと季節くんだっけ?」 康介が爽快な顔で話しかけた。 「こちらこそ、よろしくお願いします。四季と申します」 「四季か!よろしくな~」 「はい。そちらの皆様も、よろしくお願いします」 「・・・あぁ」 「よろしくねー」 蔵間くんと蓮があいさつ。 続いて、双子と左端、颯斗もあいさつ。 「鈴音です、よろしくね」 「こちらこそ。・・・鈴音サン」 「え・・・?」 464: 名前:雷蓮☆2011/09/29(木) 16 52 07 ~鈴音side~ 「え・・・?」 「はい?」 「あ、いや・・・」 「そうですか。あ」 「え?」 「兄さん、よろしくね」 「兄・・・?」 兄って誰のこと・・・? 「あれ? 聞いてないのかな?」 「おい!てめぇ。さっきから鈴音と何しゃべってんだよ!」 「こ、康介!」 「鈴音、こいつから離れ・・・」 「はぁ・・・。やっぱり、忘れているようですね」 「はぁ? お前、何言って・・・」 「この顔、忘れたの? 兄さん・・・」 「っ・・・!!お、お前っ」 「久しぶりですね、兄さん」 「四季!!」 「康介、どういうこと?」 「おい、康介。お前、舎弟とかいたのか?」 「チゲェよ!こいつは義理の弟なんだ!」 「義理の?」 「康介に、弟・・・」 「兄さんがお世話になってます。 弟といっても、年は変わりませんが。 以後、よしなに」 「お前っ!!京都に修行に行ってたんじゃ・・・」 「何年前の話ですか? 修行は終わりましたよ」 「えー・・・」 「もしかして、母様から何も聞いていないんですか?」 「え、あ、そ、その・・・」 「その顔は、聞いていたけど忘れてたって顔ですね・・・」 「いや、違うんだよ!!その、あれだよ!!あれ!!」 「何ですか? 命乞いですか?」 「や、本当ごめん!!」 私はその光景をただ、唖然として見ている。 康介に弟がいるなんて、聞いたことない。 それに、本人からも教えてもらったことすら・・・。 「弟の方が礼儀正しいな、こりゃ」 「意外だったね。まさか弟だったとは・・・」 「誰も、康介の弟かな?って想像しないだろ」 「そうだったー」 「お前ら!!笑顔でこっち見てんじゃねぇ !」 「はいはい、ごめんなさいねー」 じゅんは手をひらひらとふって、 蓮とまたいろいろ話している。 舞は康介を見て笑いをちょーこらえてる。 466: 名前:雷蓮☆2011/09/29(木) 17 52 25 「はいはい、じゃ早く席につけよー」 武塔先生がだるそうに言う。 「俺は今日調子が悪いので、帰ります!」 ガシッ 「おい待て、コラァ。まだ一時間目だぞ。さっさと授業やれや。 こちとら、お前らのつまんねぇ授業に、 わざわざ顔出してやってるってのによー」 「ででででででででも、蓮ー。先生、具合が悪くて・・・」 「関係ねーよ、俺には。さっさと授業始めやがれ、ロリコン」 「うぅ・・・」 「先生、本当に具合悪いんですか?」 じゅんが先生に問いかける。 「あぁ・・・。昨日の飲み会で二日酔いでねー・・・」 「滅多にお酒、飲まないですもんね」 「無理矢理なんだよね、校長が・・・」 「蓮、先生は本当に具合が悪いみたいだよ」 「・・・珍しいな」 「なれていない人にお酒はキツイからね。許してあげよう?」 「そーだな。今回は蔵間のに免じて、許す!」 「そりゃ、よかった・・・」 「先生、大丈夫ですか?」 舞も先生を心配そうに見つめる。 「あぁ、ありがとうね。なんとか、大丈夫ですよー・・・」 そうは言っても、顔は真っ青だ。 「大人げねぇな、ロリコン教師」 「ははは・・・ 」 もう反抗する力も残っていない先生。 「兄さん。まさかとは思いますけど、 先生にご迷惑をかけるようなことはしてませんよね?」 「えっ!? あ、あはは・・・」 「後で母様に伝えておきます」 「えっ!? ちょっ、待ってぇぇぇぇ 」 「教師に迷惑をかけるなど、言語道断! いいかげんに気づいてください。 兄さんは大切な後継ぎなのですから」 「・・・ あぁ・・・そう、だったな」 ? 今、なんて言ったの? 康介が切ない表情を浮かべている理由を、 このときはまだ知らなかったーー-。 467: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 07 52 35 ー放課後ー いつもは康介と一緒に帰るのに、今日だけは違った。 弟の四季くんが来ているから、忙しいんだろう。 だから仕方がない。 ううん、仕方がないんじゃない。 本当は今日も一緒に帰りたかった。 いつものように、笑いながら。わがままだって分かってる。 でも、どうしても一緒に帰りたいって思うほど好きなの。 「ダメだ・・・調子狂う・・・」 一人、誰もいない教室で呟いた。ここにいても何もならない。 もう帰ろう。 そう思った瞬間だった。 「その呟き・・・混沌の中に在り」 突然、背後から声がした。 「誰っ!?」 振り向くと、そこには幼い容姿の女の子がいた。 まだ10歳にもならないだろう、小さな女の子。 「今宵は夕日が綺麗だ。燃えるように紅い」 女の子の目は澄んだ青で、髪の毛は黒。 教室の窓から入ってくる風になびいて、とっても綺麗。 「ちょっ、誰よもう!こんな小さい女の子つれてきたの」 「・・・我は子供ではない」 「え・・・」 「我は海の子、天の子、大地の子」 「・・・お母さんはどこかな?」 いったい、どこから入ってきたんだろう? 校門の前には先生が立っている。ここに小さい子が入れるようなことはないは ず・・・。 「せめて、名前だけ聞かせてくれる?」 「・・・名は隗龍(かいりゅう)」 「か、かい、りゅー?」 今時、難しい名前をつける親もいるんだ・・・。 「ぬしにはこれから、重要な選択肢が待っている」 「え・・・」 「ぬしが思いを寄せる愛しき人も、また同じ」 「ちょっと待って。何、言ってるの・・・」 「それと、選択を少しでも誤れば大事になりかねぬ」 「おお・・・ごと?」 「・・・日が沈む。ぬしも現(うつつ)へ帰れ」 ※現とは現実のことです。 「ちょっと、待って!君、何で康介のこと知ってるの?」 「・・・まだ知るには早い。またな、娘」 「待っ・・・」 ブワッ 窓からの風が突風に変わる。 「っ・・・!?」 「一つ教えてやる。我は一度、死んでいる」 「っ・・・え」 バサッ 「っ!!」 隗龍は漆黒の羽をひとひら、 残して去っていった。 「羽・・・?」 ガラッ 「うわっ!!」 「っ!?」 後ろで教室のドアが開く音がした。 「さ、左端?」 「いっててー・・・。あ!鈴音!!」 「どうしたの・・・?」 「どうしたのじゃないよ!!教室のドアが中々開かないからー・・・。 待って・・・。鈴音、その手に持っているのは・・・?」 「え? あぁ、さっき隗龍っていう女の子から・・・」 「隗龍!?」 「なっ、なに?」 「隗龍に会ったの!?」 「え、左端の知り合い?」 「知り合いも何も、秘密国家機関の同士だよ!」 「えっ」 「彼女は俺とか颯斗みたいに、特殊な能力持ってるんだ」 「確かに、普通ではないね」 「隗龍は予言者で、未来のことは何でも知ってる」 「いや、それすごくない!?」 「それに、実際の隗龍の年齢は分からない」 「え、そうなの?」 「容姿からしては5、6歳なんだけどね。あと、一回死んでるっていうし」 「あ、それさっき言ってた」 「本当のことは全部、俺の親父が知ってるんだ」 「ちょっとびっくりなんだけど・・・」 「俺らの仕事に関わる人材も特殊だからねー」 「そう・・・」 「・・・予言されちゃったみたいだねー」 「お前も分かるもんね、未来のこと」 「うん!当ててほしい?」 「・・・」 「重要な選択があるってことでしょ? 隗龍ってば、未来のことあんまりベラベラしゃべるもんじゃないのにー」 「康介とアタシに何かあるんだって・・・」 「・・・もう、起きてると思うけどね」 「え・・・」 「さーてと、俺も帰って仕事しよーっと」 「ちょっ・・・」 「大丈夫大丈夫!鈴音なら乗り越えられるから~」 「聞きたいことがっ」 「また明日ね~」 「ちょっ・・・」 ガラッ・・・ 行っちゃった・・・。 一体、何が起こってるのよ? 君を好きになる5秒前 続き15
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大好きになれっ! 収録作品:超増加版 人数 難易度 総ノーツ数[1P-2P](Tr/BS)[1P-2P] チャンスタイム EFB スコア理論値[1P-2P] 備考 タイプ ボス耐久力 ザコ数 1人用 ふつう(2) 45(0/0) A ? 24 3 20,190 動画 2人用 ふつう(2) 71[37-34](0/0)[0/0-0/0] A ? 41 2 ?[?-?] 動画 Tr=Trace:"引きっぱなし!!"のノーツ数BS=BlankShot:"上に向けて撃て!!"のノーツ数EFB:エフェクトフォーメーションボーナス(詳細はルール・システムで) 名前 コメント
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385: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 20 35 11 ~放課後~ 私は日直の仕事を済ませ、変える準備をしていた。 「迷惑だった……?」 ふと前の方から女の子の声。 「舞ちゃん?」 「さっき、余計なことしちゃったかなって思って……」 「ううん、全然」 むしろ、嬉しかったし……。 自分でも何か分かんないけど……。 「私が見てる限り、しずほちゃん、恋してると思って」 「コイ?」 このアタシがコイ? 「あ、これ秘密。みーこには内緒ね」 「え……」 「みーこより、しずほの方が似合ってるって思ってね。んじゃ、また明日」 タタタッ…… それって……アタシが蔵間に恋してるってコト!? 「そうそう、そうだよー」 「うにゃっ!?」 突然、背後から聞き覚えのあるボイス。 胸がキュンと苦しくなる。 「なーに、その不審者扱い……」 「べ、別に……」 「ヤンキーのくせに、シャイなんだね」 「シャっ……!?」 「あ、この後暇?」 「は?」 「いいから、つきあってよ」 「何言って……」 「はい、しゅっぱーつ!」 「は!? おいっ、ちょっ……!!」 言われるがままに手を引っ張られる私。 無抵抗な自分に、少し違和感を覚えた。 386: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 21 44 46 ~カフエ~ 「……ちょっと」 「ん~?」 ここは港にあるカフエ。 人が少なくて、落ち着いて休むことができる。 ってチガウ!!そーじゃない!! 「何でここにいるの!?」 ガタッ いきなり大声で立ったアタシにちょっと驚く蔵間。 「まぁまぁ、座って~」 昨日と全然態度がチガウじゃん。 ついてったらめっちゃ怒ったクセに……。 「気分屋」 「俺はそんくらいで怒んないよ~?」 ハハハッっと笑い、コーヒーを飲む。 蓮の言ったとおり、ブラックだ。 「しずちゃんがまた、ついてくるかなって思って」 「誰がしずちゃんじゃ。いっぺん地獄にご案内してやろうか?」 「それは楽しそうだね~」 えへへっとなぜか頬を染める彼。 まったく……。調子、狂いっぱなしだってば……。 てか、こんなとこみーこに見られたら…… 「もうあんたのコト、ストーカーしないから。それじゃ」 ガタッ 私は危機感を感じたため、即座にその場から去ろうとした。 ……が、 ガシッ 「っ……!?」 「食い逃げ厳禁~」 「は……?」 「俺の話、まだ途中なんだけど?」 いや、全部聞いてくとか言ってないからねーっ!! 「アタシ、用事あるんで帰ります」 「俺より大事な用事?」 「そうじゃない。ただ帰りたいか……あ」 「俺のコト、そんなに嫌いなんだ」 なえかウルウルな瞳になる彼。 まさかとは思うが……アタシが泣かせてしまった? 「い、いや!!別にそんなことはないぞ!!じょ、冗談に決まっている!」 「……本当?」 「あぁ!もちろんだ!」 何言ってんだよーーっ!! 自分で言っといてなんだけど、アタシバカなんじゃね!? 「んじゃ、今日から1習間俺の奴隷!」 「……すいません。何かすっごい幻聴聞こえたんでもう一回……」 「今日から俺の彼女!」 「いや、何か悪化してるんですけど!!?」 「ハハッ!ナイスリアクション!採用!」 「あ、ありがとうございますー。一生懸命勤めま……ってチガーウ!!」 こうして私はきょうから1週間、蔵間の奴隷(パシリ)になった。 「あ、変なコトしないから大丈夫!しずちゃんには期待しないようにしてるから」 「あーそうかい。つれない女で悪かったな、クソガキ」 「しずちゃんって言ってるとこ、ツッコまないんだ?」 「あ」 389: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 18 11 55 ~3日後~ 土日の休日をはさみ、 またの学校日和がやってくる。 何よりも憂鬱だ---。 なぜなら、アタシが蔵間の奴隷になったこと知られたら 絶交の危機におちいる可能性が 大になるからである。 でも……なんか最近、そういう関係に疲れてきた。 正直、アタシって男気が強いから 女子との意見とはまったく違かったりする。 ようするに、アタシがあっさりしているから ねちねち付き合いの女子とは気が合わないということ。 それに最近のみーこの態度、冷たいし……。 きっと仲良いから嫉妬してるんだろう。 けど、アタシは嬉しくもなんともない。 蔵間への気持ちが変わってきていることに気づいたから……。 だって、会うたびに胸がキュンってなって 他の女の子と話してたりすると苦しくなっちゃう。 「これが……恋って病気……?」 そっと胸に手を当ててみる。 どんどん心臓が加速していくのが、すぐ分かった。 「心臓痛いの?」 「ぎゃっ!?」 「おはよ~」 教室にいつの間にか来ていた蔵間。 男の子の香水の匂いがする。 「お、おは、よ……」 「ん? 元気ないじゃん」 「い、いやー……」 ぎこちない私の態度に、彼はんー?っと首をかしげる。 ちょ、かわいいじゃんか!ばかやろー! 「あ!!」 「えっ!?」 「アロエじゅーす、買ってきて!」 「あ、あろえ?」 「奴隷でしょ? はい、買ってきて~」 「な、自費で買えっての!?」 「うん。何か問題でも?」 「すっごいある。とにかく、無理だか……」 「昨日、泣かせたのは誰……?」 「うっ……」 「しずちゃん、Bダーッシュ!!」 「チクショーーー!!」 こうして、私の奴隷生活24時(仮)は始まった。 391: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 18 23 11 ~蔵間side~ あれっ? こんな朝早くに教室に誰かいる! 蓮とは今日、別々で来たから今はいないはず。 舞ちゃんは蓮と一緒だし。 鈴音と康介はラブラブだから、遅くくるだろうし。 ……とするとー……もしやしずちゃん? ガラッ 「おは……」 俺が教室にあいさつをしかけたとき、 しずちゃんが自分の胸に手を当てて、 何やら苦しい表情を浮かべていた。 一体どうしたというのだろう……。 「これが……恋って病気……?」 ドクンッ えっ……。 今、しずちゃん……何て言った……? これ以上のことを聞きたいと思う自分がいたけど、 その気持ちを何とか押し殺して、俺は声をかけた。 「心臓、痛いの?」 「ぎゃっ!?」 思ったより、いい反応。 これだから、しずちゃんいじりは楽しい。 素直に俺のお願い聞いて、アロエじゅーすを買ってきてくれるとことか! ……そういえば、さっき後に誰かいた気配がしたよーな……。 ……気のせい……かな? 393: 名前:雷蓮☆2011/09/01(木) 20 10 48 ~しずほside~ タタタッ くっそぉー!! アタシをいいようにパシリ扱いしやがってー!! ドンッ 「わっ、ごめんなさ……」 「はろろ~ん」 「げっ」 運悪くぶつかった相手は、宮前左端。 一応、男。 「その反応はないでしょ、しずぽん!」 「うるせぇ。しずぽんゆーな」 「しずぽっぽー!」 「ふざけてると受け取っていいんだな?」 「えへへ~っ。あ、どっか行くの?」 「え、あぁ……まぁ」 「なになに~? 運命の告白~?」 「宮前左端を半殺しにしても、罪にはならねぇよな……?」 「ちょっ、怖いよ~!殺られる前に逃げよっ」 タタタッ チッ……。道草くっちまったじゃねぇか。 おかげで、嫌なことが終わらねぇ。 「相変わらず、口のききかたが悪いな」 「うわっ!?」 ろうかの天井からぬるっと出てきた黒鉄颯斗。 「おっと、驚かせてしまったようだな。すまない」 「すまないじゃねぇよ!おまっ、どんだけ運動神経いいんだよ!」 「何をそんなに羨ましがっているのだ!そんな褒めてもおごらないわよっ!」 「一言も褒めたつもりないんですけど!? 大丈夫!? アタシの言ったこと聞こえてました!? てか、何でお母さん口調になってんだよ!!」 「あらまぁ、宮前さんじゃないのお~」 「あらま、颯斗さん!?」 「何でお前はこっちに戻ってきてんだよ!!」 颯斗にツッコミを入れている途中、 左端がまたこちらに戻ってきた。 もう疲れてきたんですけど……。 なかなか、自動販売機にたどり着けない昼下がり---。 396: 名前:雷蓮☆2011/09/02(金) 21 47 11 ~教室~ コンッ 「いてっ」 「買ってきたぞ、この野郎」 「この野郎って……」 疲れ果てて、不機嫌なアタシ。 「何か問題でも?」 「本当は朝に頼んだのに、 お昼になってから買いにいくから 猛スピードで行って当たり前だろ。 それに、寝たふりするからさー」 「だからって、アタシが実はストーカーとかいう変な噂たてんのヤメロ」 「えーっ」 「えーじゃない。もう、お前といると疲れる」 「どこに行くの?」 「疲れたから寝る。また明日ー」 スタスタ… 「……保健室?」 アタシは変な気持ちを引きずって、 常連の保健室へと向かった。 397: 名前:雷蓮☆2011/09/02(金) 22 01 41 ~保健室~ 「それじゃあ、そこのベットで休んでなさい」 「はい」 シャッ 保健室の女の先生は、 いつもアタシをベットに寝かせてくれる。 なんか常連で、いつもここにくるときは 大抵嫌なことがあったときか悩んでいるとき。 それを察しているのか、先生はあっさりと承諾する。 「……恋なんて……できないって思ってたのに」 ぽつり、口から零れたその言葉には少しの切なさも入り交じっていた。 「女はいずれ、自分の過ちに気づく。たとえどんな形であろうとも」 先生が記録のファイルを見返しながら言う。 「アイツのこと、嫌いだった」 ベットの上で、体育座りをして窓の外を見る。 「でも……最近、 アイツへの気持ちが変わってきた。 アイツとまだ一緒の時間を過ごしたいとか、 もっとアイツの事を知りたいって思う」 独り言のはずが、声がだんだん大きくなっていく。 398: 名前:雷蓮☆2011/09/03(土) 07 29 58 「しずほちゃんも恋するのね」 先生が面白いものでも見るような目でアタシを見る。 「別に……アタシは」 「も~、しずちゃんはツンデレなんだから~」 「しずちゃんゆーな!!お休み!!」 ボフッ お決まりの捨て台詞を吐いて、アタシは布団をかぶった。 恋……か。 きっとそうなんだろうな……。 アタシもいつの間にか、蔵間に恋しちゃってんだ。 いや、自分では薄々気づいてた。 なのに、気づこうとしなかっただけなのかもしれない。 「あら、みいこさんじゃない」 「すいません、ベット空いてますか? 腹痛がヒドくて……」 え……。みーこ!? 「えぇ、空いてるわよ。どーぞ」 「ありがとうございます」 どうしよう……今朝のこととか見られてたからヤバいよね……。 シャッ …… ………… 運良く、みーこは私の二つ隣で寝た。 ふぅー……。 やっと一安心したところだった。 「協力してくれるんじゃなかったの?」 ドキンッ! 大きく心臓が跳ねる。 じわじわと迫る恐怖を感じていた。 「知ってる? 嘘つきは泥棒の始まり」 ドクンッ!! 「しずほは嘘つきなのかな……?」 「やめて……」 やめてよ……。 「それとも……」 お願い、やめて……。 「泥棒かなぁ?」 「やめてよ!!」 シャッ 「しずほさん、人の傷を悪化させるなら教室に戻りなさい」 「っ……」 「ここは保健室よ。場をわきまえなさい」 「すいません」 シャッ アタシは布団の中でうずくまり、 早くみーこが出ていくのをただただ待っていた。 401: 名前:雷蓮☆2011/09/03(土) 10 26 18 ~放課後~ 「しずちゃん、下校時刻過ぎてるけど?」 「……」 「彼女なら、もう帰ったわ」 「……」 「なんかいじめられてたみたいだけど?」 「そんなんじゃないです」 「早く解決した方がいいんじゃない?」 「どうやって解決しろってんですか……。もう後戻りなんてできないのに」 「あら、恋のライバルだったの!?」 「……そーですよ」 「あらまぁ!あ、そうそう!さっき男の子があなたのカバン、持ってきてくれたわよ?」 「えっ……」 「たしかあなたの同じクラスの蔵間くん!あの子、イケメンよねぇ」 「っ……」 ダッ 「あ、ちょっと、しずちゃん!?」 アタシは蔵間に会いたくて、飛び出した。 どうしてもあの顔がみたくて、朝早くきて……。 いつも目をとじればアイツが浮かんで‥…。 アタシはアイツがいそうなところを全部探したが、見つからなかった。 来た形跡もない。 ……仕方ない、帰ろう。 下駄箱へ向かったその時だった。 「奴隷のくせに、待たせるって何様?」 「っ!!」 この声……!! 「しずちゃん、おかえりー」 「くら、ま……?」 会いたかった人にようやく会えた。 もう一度だけでいいから、あの顔が見たかった。 「ん? どうした?」 その誰にでも優しい言葉と、笑顔と、声……。 包み込んでくれるような眼差し‥…。 すべて、抱きしめたくなった……。 414: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 10 22 30 「ん? どうした?」 「か、カバン……あり、がと」 少し照れくさくなって、 素直にありがとうと言えない。 「ん? あぁ、お礼はアメちゃんでいいよ」 アメちゃん……? 私が ? を頭に浮かべていると、 彼は呆れたように 「飴のことだよ」と教えてくれた。 妙に可愛げがある蔵間に、私は少し嫉妬した。 「何か元気ないね?」 ドキッ 「そんなこと、ないって」 ハハッと微笑して、下駄箱から自分の靴をとる。 「ふーん。めずらしいね、笑うなんて」 「え……」 「いっつも仏頂面なのに、こういうときだけ笑うんだ?」 な、何が言いたいのよ……。 「それとも、こういうときだけごまかしてんの?」 何……言ってんの……。 「しずちゃんってさ、八方美人?」 「やめてよ!!」 「っ……!」 蔵間がハッとした顔で私を見た。 「あ……ごめん。取り乱したかも」 何、謝ってんの? 「あんたはいいよね。誰にでも優しくできて、人気でさ」 心の中で思ってもない言葉が、嫌味となって口から零れる。 「おまけに顔も完璧じゃん。よかったね、生まれてきて」 違う。こんなことが言いたいんじゃない。 「こういうときだけ笑う? じゃあ、いつ笑えばいいんだよ」 黙れ、私の口。お願いだから、これ以上言うな。 「八方美人? あぁ、そうかもしれないな。 アタシなんて、人の気色うかがってばっかりの弱虫女だよ」 自分で自分を傷つけた。 残ったものは、涙と切なさと虚しさと……。 「しず……ちゃん?」 聞きたくない愛しい人の声。 「アタシがあんたに近づいたのは、みーこのため。 別にあんたに好意があったんじゃない。 プライベートに首突っ込んだのも、アタシの思いじゃない。 最初から、あんたにはうんざりしてたんだよね。 だから、もう奴隷とかやめてくんない?」 どうして、こんなにヒドい言葉しか出てこないんだろう。 本当は別れたくないのに。お願い、もう何も言わないで。 私に突き刺さった刃は、深い傷を残して床に落ちた。 「……じゃあさ、しずちゃんは俺が嫌だったから笑わなかったの?」 私は自分の口を制御しきれず、話すのを許してしまった。 「そうだよ? おかげで疲れちゃった。いいかげん、やめてよ」 蔵間はきっと傷ついた。なんてこと、してくれたんだ。 「そ……か。無理させて、ごめん……」 こんなこと聞きたかったんじゃない。 アタシが望んだ結末は、こんなんじゃないでしょ? 後悔はいつも、私をどん底へ突き落とす。 そして、その場から消えたくなる。 「っ……もう、しゃべりたくないんだよ、ばか」 ダッ…… 結局結末は、アタシの一人の暴走で終わった。 415: 名前:雷蓮☆2011/09/17(土) 10 27 15 ~蔵間side~ 「っ……もう、しゃべりたくないんだよ、ばか」 なぜかその言葉が、俺の心に刺激を与えた。 アイツはなんで、悲しそうな顔をした? 俺はどうして、追いかけないんだ? いつもの俺なら、女の子を傷つけないで終わらせるのに。 どうして、俺の心はこんなにも痛くなるんだ? 一人、床に転がったアイツの靴を見つめていた。 君を好きになる5秒前 続き13
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353: 名前:雷蓮☆2011/08/19(金) 13 48 03 ~屋上~ バアンッ!! 「海馬先輩!!」 屋上にはフェンスの外で下を見下ろす、 海馬先輩の姿があった。 「っ……舞さん……みんな……」 「そんなことしないで、こっちに戻ってきてください」 「私は生きるなんて、もうできない……」 「そんなこと、誰が決めたんですか……?」 「あなたは恵まれていいですわね……。 私は小さいころから性格が悪くて、 みんなに嫌われてきた……。 親にも捨てられて、養子としてもらわれ それでまた捨てられて……」 「せんぱ……」 「変に同情してもらうより、死んでって言ってくれた方がいい」 「私、そんなこと思ってないです」 「うそ……。人間、口先では何とでも言えるわ」 「先輩から何をされても、何を言われても この気持ちは変わらないです」 「嘘って言ってるでしょ!!」 「何を根拠に言ってますか?」 「何って……」 「先輩は私の心を見すえているんですか? エスパーなんですか? 違いますよね? もし、そうだとしたら その答えは間違っていますよ?」 「だって、私はあなたにこんなヒドイことを……」 「そうですね。リハビリもしなきゃならないので、ヒドイです。 でも、そんなこと気にしてませんよ? 私は生きているんですから。 それに、あの場から逃げ出さないで救急車を呼んでくれた。 そのとき、私は先輩のこと 本当はすっごく優しい人なんだなーって思いました。 もし、本当に私のことが嫌いなら 車に引かれた私を助けるなんて到底できないですからね」 「っ……舞さん……」 「それに、土下座なんてめったにできないですよ」 「あなた!!起きていたの!?」 「そうですよ? 目は開けてませんが、耳だけは聞こえてます」 「っ……」 少しの沈黙が流れると同時に、ポツポツと雨が降り始める。 やがてそれは、大粒の雨へと変わり 闇夜をなお暗黙にさせる。 「先輩、やっぱり譲れません」 「えっ?」 「蓮は今まで会った異性の中で、一番の人です」 「っ……!!」 「たとえ、何を言われてもいじめられても。 蓮を好きって気持ちは変わらないです。 彼の一言で舞い上がったり、落ち込んだりするけど それも楽しいって思えるから。 こんな幸せ、他には絶対にないと思うんです。 だから、譲れないんです。 たとえ、それが一番仲良しの鈴音だとしても」 「っ……」 「自殺なんてしたら、本当に地獄に落ちちゃいますよ!?」 「はっ……!!っ……い」 「え……」 「生きたい!!」 「っ……!」 「舞さんみたいに、素敵な人を見つけて みんなから羨ましがられたい!!」 「なら!!なら……生きて、…生きて頑張ってください!!」 「舞……さ」 「私は先輩みたいに、鬼畜派がいても気にしません!」 「ふ…、ふふふっ……。それ、褒めてんの……?」 「ほ、ほ、褒めてます!!たぶん!!」 「ぷっ……あはははははは! 自殺なんてやーめた!! 何か、全世界の人間に羨ましがられたくなった」 「えぇ……」 「鬼畜らしく、希望はでっかく持たなきゃ」 「先輩……」 「ありがとう、舞さん。 あたし、やっぱり生きて人生楽しみたい。 舞さんみたいにいっぱい笑って、好きな人と一緒にいたい。 自殺したら、舞さんの結婚式に呼ばれなくなっちゃうし」 「そうですよー…って、えぇっ!?」 先輩はくるっと向きを変えて、 フェンスをのぼってこっち側にこようとしたとき---。 スルッ 「あっ……!!」 「海馬先輩!!」 先輩は滑って、 下へ真っ逆さまに落ちた。 「先輩!!」 「舞!!お前も行ってどうする!!」 「蓮、先輩……え……」 ヒュッ ストン なんと、下から颯斗くんが 海馬先輩を抱えて屋上へ飛んできた。 彼は本当に運動神経がはかりしれない。 脚力がハンパなかった。 「は、ははは、は颯斗くん!!?」 驚きと焦りを隠せないで、動揺していた。 「何だ?」 何食わぬ顔でこちらを見る。 先輩は気絶しているようだ。 「どどどどどどうやって!?」 「あぁ、地面を一蹴りしてここに来た」 「颯斗はスパイだからな。何でもアリだ」 「いわば、二次元で起こることもお手の物ってわけ」 蔵間くんが海馬先輩を颯斗くんから受け取り、 横抱きで屋上を後にする。 「これくらい、みんなもで普通にきるのだろう?」 「いや、できねーよ!!」 康介がツッコんた。 その後、看護師さんに見つかり 30分のお説教を受けました。 365: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 10 04 20 ~海馬side~ ~翌日~ 病室- ここ……は……? あれ……アタシ……昨日、死んだんじゃ……。 「やっと起きたんですね」 この声…… 「舞……さん……」 「同じ病室になりましたね」 彼女はそう言って、へらっと笑う。 「私……どうして生きているの……」 「颯斗くんが助けてくれたんです」 「私、あそこから落ちたのに?」 「えぇ。颯斗くんは何でもアリらしいです」 「馬鹿馬鹿しい話……」 「先輩も、自殺だなんて馬鹿馬鹿しいです」 「クスッ……確かに……」 お互いにクスクスと笑い、 病室の天井を見て息をつく。 「……舞さん、ありがとう」 私は少し微笑んで、目を閉じた。 「私、報われない自分が可愛かったの。 誰よりも不幸で、認められなくて、 孤独で可哀想な自分が……。 それが、ここまで事を大きくしてしまうなんて……。 まわりが見えていなかった。 いいえ、まわりを見ようとする心がなかった。 幼い頃、親に捨てられたときのように あんな怖い想いをしたくはなかったから……」 私は両腕を自分の顔の前でクロスさせ、 彼女に泣いていることを気づかれないようにした。 涙が抑えきれないほど、溢れてくる。 「そんな私に手を差し伸べてくれたのは、 舞さん……あなたよ……。 あなたが、暗闇の中で震えていた私を…… 温かい希望の光の中へ連れ戻してくれた……。 本当に……ありがとう……」 声が震えて、これ以上話すことはできなかった。 彼女は私の方を向かず、 天井を向いたまま--- 「先輩は怖かっただけなんです。 現実と向き合えば、何か失うことをすでに知っていたから……。 失えば、悲しみが大きいことも……。 だから先輩は私に言いましたよね? 口先では何とでも言えるって……。 私も確かにそうだと思います。 でも、言葉にしなきゃ伝わらないんです。 口では嘘も言えるし、真実も言える。 けど、口がなかったら本音も相手に自分の名前を知ってもらうことも できないんです」 その言葉に、私の心のどこかで 何かが壊れる音がした。 それはきっと、私のねじ曲がったプライが壊れた音ド。 そして心の奥で新たなものが生まれた気がした。 それはきっと、新しい自分の清らかな心。 「先輩の流した涙は、今までの中で一番綺麗な涙ですよ」 私はこの瞬間から、生まれ変わる。 さっきまでの自分にサヨナラするために。 サヨウナラ、今までの弱虫なアタシ。 コンニチワ、これからの新しいアタシ。 366: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 12 11 26 ~舞side(普通視点)~ あれから一ヶ月……。 すっかり元気を取り戻して、無事に退院することができた。 海馬先輩は私より早く、退院してすでに学園へ行っている。 ちょくちょくお見舞いに来てくれたから、全然寂しくなかった。 みんなしょっちゅう来てくれたし。 ……ある人を除いては……。 「よぉ。退院だって?」 もう荷物をまとめてある病室に、ひょこっと顔をだす彼---。 「蓮……」 「お前が学校来ねぇから、康介がうるせーんだ」 「蓮だって、充分うるさいでしょ?」 「あいつと一緒にすんな。ほら、行くぞ」 「……いい」 「はぁ? お前、まだ入院してんのかよ?」 「蓮とは一緒に行かない」 ちょっと意地悪しようと、ヘソを曲げる。 だって、お見舞いに1度しか来てくれなかったんだもん! そりゃ、用事があるから来れないんだろうけど……。 蓮は寂しくないのかなって一人で不安になって、 自分だけ一方的だったのかなとか思って……。だから、お返ししてやるの。 「蔵間くんの方がいい」 「っ……。お前、今何て……」 「私一人、ばかみたいじゃん……」 思いっきりの意地悪で、蓮を困らせようとする。 病室のベットに座っている私は、そっぽを向いて黙った。 さすがにここまで言ったら、謝ってくれるだろうと思った。ところが---。 ガタッ 「え……」 私の真っ正面に椅子を置いて、座る彼。 何がしたいのかよく分からない。 すると、いきなり蓮が自分の膝で私の膝を挟(はさ)み、逃げられないように力を入れる。 そして蓮がアクセでしていたネクタイを、 私の両手に結んで自由に動かせないようにする。 「ちょっ、蓮!?」 「……」 「蓮ってば!!これ、外して……」 「無理」 「なっ……」 「お前、俺の彼女だろ」 「えっ? そ、そうだけど……」 「なら、俺以外の男の名前なんて出すな」 「どーして?」 「どーしても」 「蓮には関係ないでしょ」 「関係あるんだよ!!」 まっすぐな瞳でみつめてくる蓮……。油断すれば吸い込まれそう。 「どうして?」 「っ……」 「蓮……?」 「っ……」 「言ってくれなきゃ分かんない」 「そんくらい気づけ!!鈍感女!!!」 突然の怒声に、肩が跳ねる。 いきなり怒られたから、さすがの私もムカッときて意地でも言わせてやろうと思った。 「何で……怒るの……」 私は頑張って涙腺をうまくコントロールし、涙を流す。 「あ、おい……」 さすがの蓮も、私が泣いて困っている。もう少し……。 「うっうぅー……」 「っわーたよ!!言うから、泣くな!!」 「ほんと……?」 「お前が俺以外の男見てたり、話してたりすると ムカッときて嫌な気分になる。 お前を俺の部屋に閉じ込めたくなっちまうんだよ。 それが怖ぇから警告してんだよ、バカ!!」 蓮は耳まで真っ赤にして、私から目をそらした。今回は私の勝ち。 「それってヤキモチ?」 「っ!!!」 私が聞いた瞬間、もっと赤くなる彼。 以前、蔵間くんに教えてもらったからこれがヤキモチだってことは分かった。 「そ、そーだよ!!かっこ悪くて悪かったな!!」 あまのじゃくの蓮が何だか可愛くって、 お見舞いにあんまり来なかったことも全部許してしまう。 私は自分で、結ばれたネクタイから両手を外し蓮を思いっきり優しく抱きしめた。 「かっこ悪くないよ? すっごく嬉しい」 「っ……!!」 「蓮がお見舞い来なくて、寂しかったから意地悪しちゃった。ごめんね?」 彼を抱きしめているから顔はよく見えないが、まだ耳は真っ赤になっている。 「……男だから、色々大変なんだよ」 「何が?」 「お前はまだ知らなくていい」 「そう?」 ガチャッ 「あー!!蓮が抜け駆けー!!」 左端君が病室に入ってきた。 「おまっ、下で待ってろっつたろ!」 「舞ぽんにやらしーことするって分かってたもんねー!!」 左端くんは私をお姫様だっこして、さっそうと逃げ出す。 「あ!!てめぇ!!」 「蓮は荷物係~!!」 「おい!!舞に触ってんじゃねぇ!!」 この後、左端くんが蓮にお仕置きされたことは言うまでもない。 それと、なぜか私も罰として一週間と離れちゃダメという 命令をくだされました。 370: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 13 21 23 ~番外編「もう二度と戻らない時間」~ 蔵間side- 「こんのぉぉぉぉぉー!!」 騒がしい教室で俺は一人、読書に専念する。 それは他の人たちにとって難しいことだとよく言うが、俺は違う。 どんな場所にいたっても冷静でいられる。 つまり、どんなに騒がしいところだろうと苛立つことはない。 「こおおおおおすけええええええーーっ!!」 ガッシャーン バリバリバリバリバリ…… パリーンッ! 「ぎいいいいやあああああああーーー……」 ……。 「ちょっとちょっと!!蓮!!」 「うるせぇ蒼太!!」 …………。 「へへっざまーみろ、蓮!!」 「てめぇ!!康介ーっ!!」 ………………ブチッ! ズドォォォォォンッ!! 「ちょーっと、静かにしてもらえない?」 「「はい……」」 俺はこんなやんちゃな二人を仕付けする。毎日こんな感じ。 「蔵間くん、おはよう」 「あ、おはよう舞ちゃん」 「ごめんね、なんかまた迷惑かけたみたいで」 「全然大丈夫だよ~。舞ちゃんのためなら!」 あと、舞ちゃんを見守ったり。たまに危ないことするしね。 舞ちゃんの言動と行動にしょっちゅう驚く。 男相手だって本当に分かっているのか、 この俺でも驚いてしまうほど。 天然で鈍感で可愛い舞ちゃんだから、かなりモテる。 蓮もそれには困りきってるけど。 371: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 14 19 44 お昼- 「おい、蔵間!!」 「……君は?」 赤い髪の毛にロングヘアー。腰まで髪が長い。 「アタシは波野目 しずほ(なみのめ しずほ)。聞き覚え、あるでしょ?」 「あぁ、もちろんさ」 今のは俺じゃない。康介だ。 「お前じゃない!!邪魔だ、羽柴康介!!」 ドカッ 「うごぉっ」 彼女のみぞおちが見事、康介に大ダメージを与えた。 「俺は君と話したことはないよね?」 「あぁ。何か不満か?」 「いいや。女の子に声をかけられるのは嬉しいけど……」 「私じゃ女の子に見えないってか?」 「そういうことじゃなくて」 「じゃあ何なんだ?」 「スカートのファスナー、開いてるよ?」 「っ……!!」 バチンッ! 「いってぇ……」 「変態野郎!!」 初めて女の子に叩かれた……。 ま、本当は痛くないんだけど。 大抵こういうときって、ありがとうとか言わないかな? 「大丈夫、蔵間くん?」 舞ちゃんが優しく俺の頬を触る。 あぁ……なんて可愛いんだろう……。 あ、蓮がすっごい剣幕でこっち見てる。 これはヤバいな。 「全然大丈夫だよ~。心配してくれてありがとうね」 「本当? なら、よかった~」 だって、ああでも言わなきゃ殺されちゃうよ……。 372: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 15 54 15 放課後- 俺はいつも帰りは寄り道をする。 俺とアイツしか知らない……いや、俺とアイツだけが知っていた場所。 商店街を抜けて外れにある小さな森。 細道を抜けると大木がある。そこを左に曲がってまっすぐ進む。 黄色い家の屋根が見えたら右に曲がって、行き止まりになったら二歩下がって左に進む。 そうすれば森を抜けて、海を一面見渡せる崖の上の花畑につく。 「また……きちゃったよ……」 俺とアイツはここで毎日語り合った。 友達の愚痴とか、噂話とか、お互いのこととか……。 「もう3年もたつのか……」 海風が髪をなびかせる。 あの日の思い出を思い起こさせるように、花の香りが胸の奥を突く。 ガサッ ふいに後ろから音がした。 ここには俺しか来ていないハズなのに……。 そうか……。俺はいつもここに来ると、背後の警戒が緩くなるんだった……。 ただただ、この場所を求めて……行けばまた、アイツが待っていてくれるようで……。 俺はゆっくりと振り返った。 「……しずほ、ちゃん?」 「うぁ……」 「どうして俺の後をついてきたの?」 「え……と」 「言わないと、ストーカーになるよ?」 「ま、待て!!そんなつもりは……」 「なら、どういうつもりで来たの? まさか、プライベートを探ってるんじゃないよね?」 「ち、違っ……」 「……俺は女の子相手なら、 何でもいい顔するわけじゃないよ」 「その、すまなかった……。お前をたまたま見つけてつい、ここまで……」 「……ま、いいや。次はないから、気をつけてね」 「あ……」 「まだ何かあるの?」 「……その……ごめん」 「……しずほちゃん、女の子らしくね」 「なっ……!!」 「ははっ……。また明日ね」 「あ、あぁ……」 俺はしずほちゃんを見送ってから、静かにため息をついた。 誰もいないことを確認し、ひっそりと言う。 「……もう戻らないのに、何やってんだよ……俺」 373: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 16 12 20 ~次の日~ 朝の教室- 俺は今日も変わらない毎日を送る。 いつものようにペースを崩さずに……。 「あ、舞ちゃんおはよ」 「蔵間くん、おはよ。えっと……恋愛小説?」 「あぁ、そうだよ。男が恋愛小説って笑えるよね」 「ううん。私はそんなことないと思う。 蔵間くんにしては珍しいねーって……」 「あぁ、そうかもしれないね。でも、これ悲恋だから」 「ハッピーエンドじゃないってこと?」 「そうだよ。俺、そういうのばっかだから」 「そうなの? あ、これオススメだよ!」 サッ 「ひまわり畑と金平糖……?」 「うん!これ、悲恋なんだけど感動するお話!」 悲恋なのに感動なんて、するのだろうか? 「読んでみてね~!」 「う、うん……」 「おい、蔵間!!まだそんなもん読んでたのか?」 「え……あぁ、ま、まぁ」 「……いいかげん、目を覚ませ」 「っ……分かってる……」 「……? 蔵間くん……?」 あれから3年たった今……。 俺はまだ引きずっている。 アイツとの思い出、笑顔、声、姿、触れた体温、感触……。 すべてこの手に、目に、頭に残っている……。 そう、俺の元カノ……。 374: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 18 44 15 ~しずほside~ 授業中- なんか、さっきの雰囲気……いつもの蔵間違かった……。 私はさきほどの蔵間の様子を、ばっちり見ていた。 あっ!それより、みーこに頼まれてたこと!! みーことは、私の親友の近藤みいこ。通称みーこ。 彼女に蔵間のことを色々探るように頼まれた。 探るっていうか、気になる人がいるかを聞き出すって言うか……。 でも、さすがにさっきの後じゃ、聞けないよね……。 「はぁー……」 「しずほっち、悩み事?」 「へ? あ、ううん!まったく、これっぽちも~」 隣の舞ちゃんが優しく声をかけてくれる。 375: 名前:雷蓮☆2011/08/29(月) 18 47 56 「そう? 困ったことあったら、何でも言ってね」 「うん!ありがとう」 なんて優しい子……。 この学園1、モテるだけあるなぁ~。 あ……。そういえば、舞ちゃんって蔵間と仲いいよね! でも、舞ちゃんに下手に聞いても怪しまれるよね……。 私はうーんと唸り声をあげながら、悩んでいた。 378: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 19 20 59 ~お昼~ 「しず、蔵間くんに聞けた?」 話しかけてきたのは、みーこだった。 「ううん、ごめん……」 「あ、謝んないでよ!しず、悪くないし!ごめんね、ありがとう」 「うん……」 みーこは蔵間のことが好きだ。 もちろん、恋愛の方向で。 私はまだ、恋とかしたことないから分かんない。 けど、いつかそんな人ができたらいいなーとは思う。 ……女たらしの蔵間のどこがいいんだか。 私は一人、心の中でつぶやいた。 「俺って、そんな風に見えるの?」 「ぎゃっ!?」 いきなり私の顔を覗き込んできた蔵間。 しかも、私の心の中の言葉を読まれた。 「ちっ、近い!!」 ドンッ 「おっ……と」 「何でアタシの心の中が読めんだよ!!」 「顔に書いてある。それに、そっちからアツイ視線送ってきたんじゃん?」 「なっ、おまっ……!!」 だんだん顔が熱くなっていくのが手に取って分かる。 「あれ? もしかして、こういうこと言われると恥ずか……」 「いっぺん死ね!!」 私は暴言を吐いて、みーこの元へ駆け寄って行った。 「……意外とシャイなんだな」 380: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 19 33 36 ~体育の授業中~ ダメだ……。 さっきのことが頭から離れん……。 「しずー!しずってばー!」 それに、顔近くてびっくりしたよー……。 「サーブ、しずだよー!?」 あぁーもう!!なんか顔、あっついんだけど!! そりゃ夏だから、気温のせいかもしれないけど……。 だけど……。なんか、近くで見たら格好良かったんですケド……。 「しずーーーっ!」 「はっ!」 「もぉー!しずって何回も呼んだのにー」 「ご、ごめんねー!えっと、サーブは……」 「しずだよーっ」 「あ、あはは~!ごめんねー」 ダメだ!集中しないと!! 「何キンチョーしてんの?」 「だって、さっきく……え?」 「ん?」 「……」 これはおかしいと思う。 なぜなら、今日は男女合同ではない。 だから、蔵間なんてここには存在しないハズなんだが……。 「こんにちわわ~」 いるんですけどーーーーーっ!! 「こんにちわわ~じゃねーよ!!何とぼけたフリしてこっち来てんだバカ!!」 「バカはないんじゃない? だってさっきアツイ視線送られて……」 「いいから、早くあっち行け!!この変態!!」 「えー」 「えーじゃねぇ!!さっさと動け!!」 まさか、こんなタイミングでこいつに会うとは……。 さすがのアタシも、疲れてくる……。 「じゃ、気を取り直してしずのサーブからいこうか!」 蔵間はアタシの隣で構えのポーズ。 「気を取り直すな!!てか、しずゆーな!!いつからお友達になったんだよ!」 382: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 19 46 36 そんなこんなで騒がしい授業も終わり……。 私は更衣室で着替え中……。 ~更衣室~ 「仲良かったね」 「……え」 「アタシのためでしょ?」 みーこが制服に着替えながら言う。 「あ、うん!もっちろん……」 ズキンッ あれ……?なんか、胸がイタイ……。 「しずもいい人、見つかるといいね!」 「あー……うん」 383: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 19 49 42 「でも、あんま蔵間くんと仲良くしなくてもいいよ? ああいうタイプ苦手でしょ?」 「あ、そ、そうだね……」 「それじゃ、先に教室行ってるね」 タタタッ なんか心臓がイタイ……。……病気なのかな? 私はこの胸の痛みの意味をまだ知らなかった……。 384: 名前:雷蓮☆2011/08/30(火) 20 04 32 ~教室~ 「でね~……」 教室に入ると、みーこが不良の蓮と話している。 珍しい光景なので、つい写メりたくなる。 「それで、好きな飲み物とかは?」 「レモンジュース好きだぜ、アイツ」 「本当!? それ、信じらんない!超かわいすぐる!!」 「あ、舞来た!んじゃな、じゃじゃ馬娘」 みーこのことを、じゃじゃ馬娘と呼ぶ蓮。 なんつーあだ名つけてんだ。 「おう!」 それに突っ込まないみーこも悪いが……。 「あ、そうそう!そこのヤンキー」 「なっ……!?」 お前にだけは言われたくねぇ!! 本当は言いたいけど、殺されそうだから黙っとく。 でも、左手の拳はしっかりつくってある。 こいつが不良じゃなかったら、一発お見舞いしてやるとこだ。 「蔵間はブラックコーヒーが好きだ」 私のそばで誰にも聞こえないくらいの音量で囁いた。 「え……」 「舞から言われてんだ。お前に協力するようにってな」 「なん……」 「俺はそれ以外の奴には、真実を言わない。レモンジュースはデマだ」 「えぇっ!?」 「ちゃんと伝えたからな。俺、じゃじゃ馬娘嫌いなんだよ……。じゃーな」 「ちょっ」 「どうかしたの、蓮」 「おっと!」 着替えが終わった蔵間が教室に入ってきた。 「いや、ちょっと雑談」 「絶対に嘘でしょ」 「お前……いいかげん人を信用することを覚えろよ」 「じゃあ、いいかげん人を騙すのはやめてください」 「うっ……」 「ほらほら、喧嘩しなーい!次、移動だよ!」 舞ちゃんが二人の間に入る。 「次言ったら殺す!!」 「殺したら、おいしいご飯食べれないよ?」 「俺、殺すなんて言ってねーよ!もー、おっちょこちょいだな~」 「そ? じゃ幻聴かな?」 すばらしいコントを交わして、教室から出て行く3人。 舞ちゃんのまとめ具合には、圧巻してしまう。 「舞ちゃんって……実はすごいの?」 あ、移動の準備しなきゃ! 私も3人の後を急いで追った。 君を好きになる5秒前 続き12
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魔女になる。 機種:NDS サウンドデザイン:芳賀賢、本山明燮 主題歌作曲:MANYO 開発元:タムソフト 発売元:トライファースト 発売年:2009年 概要 魔女に憧れる少女「ビッテ」が、魔法を使って街に起こるいろいろな問題を解決していくアドベンチャーゲーム。 魔法は「マホイタ」と呼ばれる魔方陣を描くことで発動し、タッチペンを使って入力する。 音楽は曲数は少ないものの、主題歌「たびだちのうた」をはじめ良曲が多い。 サントラは正式発売されていないが、予約特典版にミニサントラが付属。 「たびだちのうた」は霜月はるか氏のアルバム「導きのハーモニー」にも収録されている。 収録曲 BGMNo. 曲名 補足 順位 BGM01 まじょになりたい! 街・マップ移動画面など BGM02 ビッテの家 BGM04 BGM05 けっせん ~つよいきもち~ 魔方陣入力シーンなど BGM06 BGM07 BGM08 BGM09 ダーニャのとまどい BGM010 BGM011 タイトル画面 BGM012 BGM013 たびだちのうた オープニング・エンディングテーマ作曲:MANYO 歌:霜月はるか NDS321位 サウンドトラック 魔女になる。 ミニサントラCD 予約特典版に付属。 導きのハーモニー 「たびだちのうた」が収録。
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468: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金)14 01 10 ~舞side~ 付き合い始めて、もう半月が経つ。 蓮は最近、なぜかピリピリしていた。 せっかく久しぶりに一緒に帰っているっていうのに…。 最近は委員会の仕事とか、日直の仕事で 放課後は別々に帰っていた。 それから蓮の不機嫌は始まった。 「ねぇ、蓮…?」 「…なんだよ」 「笑ってよ」 「断る」 「じゃあ、手、繋いでいい?」 「……嫌だ」 ぎゅっ 断られたけど、めげずに私から手を繋ぐ。 「ねぇ、どうしてそんなに機嫌悪いの?」 「……」 「蓮、言ってくれなきゃ分かんないよ」 「…………」 なんとか拗ねている理由を聞こうと頑張るが、 彼は心を開いてくれない。 それどころか、私と顔を合わせてもくれない。 蔵間くんといるときは、普通にしゃべってくれるのに…。 きっと蔵間くんに説教されたくないからだろう…。 「分かった。蓮の機嫌が直るまで、帰らない」 「っ……!?」 その言葉に驚いて、蓮は私の方を振り向いた。 何か言いたそうな顔で。 「やっと見てくれた」 「っ……」 プイッ 「あ……」 せっかく顔を合わせたのに、蓮はまたそっぽを向いた。 「もしさ、最近一緒に帰れなかったことで機嫌を損ねちゃったんだったら、 ごめんね?」 「っ……」 「だから、蓮……」 「…………」 「蓮……寂しいよ……」 ぱっ 近くにいるのに遠いことが悲しくて、 私は繋いでいた手を離した。 469: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 14 23 00 「舞っ…!!」 ぎゅっ 「ごめんっ!その……本当にごめん!」 「れ……ん」 「恥ずかしくて、言えるようなモンじゃねぇんだよ」 「恥ずかしい?」 「あぁ。その……お前の言う通り、一緒に帰れなくてっていうことも、だし…」 「うん……」 「あと!!お前、俺がいるってのに他の男と一緒に帰っただろ!!」 「え? あ、左端くんのこと?」 「それがっ……俺にはつらいんだよ!!」 「ど、どーいう……」 ぎゅうぅぅー 蓮の抱きしめる力が強くなる。 「お前……ヤキモチって言葉、前に教えたの忘れたのかよ?」 「え……。蓮…じゃあ、ヤキモチ……」 「うっせぇ。かっこ悪いだろーが」 「蓮……」 「誰よりも近くにいて、余裕をもつ男でありたいのに……。 これじゃあただのかっこつけじゃねぇかよ……」 ぎゅぅぅー 私も蓮にされたように、お返しをする。 「ま、舞……?」 「かっこ悪くなんてないよ。私の大好きな蓮だもん。 かっこいいとかかっこ悪いとか関係ない。 ただ、蓮を好きなの!愛してるの!それ以外、何も理由はいらないでしょ?」 「舞……。やっぱり、俺……お前が好きだ」 「私もだよ、蓮」 チュッ 「んっ……」 蓮のキスは、いつも優しくて温かかった。 いつもは恥ずかしいって思うけど、 今は全然そんなこと思わない。 私も蓮をしっかりと、この両腕で、全身で受け止めたいから。 蓮を信じているから……。 「蓮、これからっも一緒だよ」 「あぁ、お前を離す気なんてないから。俺だけしか見れないようにしてやるから、覚悟しろよ?」 「ふぇっ!? んっ……ふぁ」 蓮はまた、私に深くとろけるようなキスをする。 もしかしたら、本当に蓮の本気スイッチを入れてしまったかもしれない…。 470: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 16 20 58 ~蔵間side~ 「蔵間ーっ!」 「ん? あぁ、しずちゃん」 「うっ…。いいかげん、その名前で呼ぶのやめてよねー」 「ははっ。やだね」 「このやろーっ。あ、それどころじゃなかった!あたし、今日用事あるから先帰るね!」 「帰るなら、俺も一緒に…」 「あたし、親戚の葬式だからさ!そのまま行かなきゃ間に合わないんだ!じゃ」 「あ、うん…」 なーんだ。 俺、一人で帰るのかー…。 寂しいなぁ……。 「兄さん!!のろのろしてないで、早く帰りますよ!!」 「あぁ!わーってるよ!!チッ」 「聞こえてますよ~」 「うるっせぇな!!早く帰ればいい話だろ!?」 「分かってるんなら、早くしてください!」 「康介ー、鈴音と帰るんじゃ…」 「今日は無理だって言った!」 「珍しい……」 「じゃなー」 どてっ 「あいでっ!」 「何もないとこで何で転んでるんですか、兄さん!!役者になりきってる暇なんてありませんよ!?」 「わざとじゃねーだろ!!今のはどー見ても!!」 ……。 苦労するね、四季くんも。 「鈴音もそろそろ帰っ……」 「っ……」 鈴音……。 初めて鈴音の切ない顔を見た。 ったく、康介の奴……。 女の子一人にして、置いていくやつがあるかよ。 俺はしずちゃんに置いてかれてるけど……。 「鈴音、また明日」 「ん? あ、蔵間。また、明日……」 「あんま落ち込むなよ」 「あぁ。ありがとう……」 つくり笑いしてまで、あいさつしなくてもいいのに。 いつもはサディスト国の旗かかげて、 大威張りしてるっていうのに……。 ま、康介もドSの鈴音を気に入ってるから問題はないけど。 471: 名前:雷蓮☆2011/09/30(金) 16 52 41 帰り道、ちょっと寄り道したくなって ファミレスでパフェを食べていた。 もちろん、一人で……。 いつもはリア充の俺が、 今こうして一人でいるとリア充の奴等が憎い。 「はぁ……」 我ながら、大人げない発想だ。 ダメだ。気分転換にドリンクでも… 「こんなところでお受験対策か? 蔵間じゅん」 「げっ!!」 嫌なやつに会ってしまった。 「須江金 奏太!と、ゆかいな仲間たち…」 「ちょっと!!そんな言い方、ないんじゃないかしら?」 「お前もいたのかよ、真奈」 「失礼ね!ゆかいな仲間と絶世の美女って言ってほしいわ!」 「お前、予想外のバカだったんだな」 真奈が一番マシな奴だと思ってたけど、 やっぱりバカだったんだな。 「んじゃさー、いっそ役立たず生徒会2名と、絶世の美男ってのはどう?」 そしてこいつもバカ。 475: 名前:雷蓮☆2011/10/23(日) 13 39 00 「つーか、何でここにお前らがいんだよ」 俺がしびれをきらしながら言う。 「寂しそうにしてる蔵間くんを慰め隊がきたってのに、その顔はなんなのさ~?」 「うるせーんだよ。余計なお世話だコラ」 森 千里。こいつに絡まれると、一番やっかいだ。 「奏太!お前のお友達なんだろ。相手しろよ」 「誰がお友達だ!こいつの面倒なんて、百歩譲ってもお断りだ!」 「っていうことは、次期生徒会長の座は俺に譲るってことだね!」 「誰がそんな解釈しろっつったよ!!」 ゴンッ 奏太のチョップが垂直に千里の頭部へ。 「ぅいって~」 身構えるのが遅かった千里は、まともにそれをくらう。 「バカね。そんなことばっかりしてるから、蔵間じゅんにも甘く見られるのよ」 「おめーもだよ!!何分かったような顔してんだ!!」 真奈は奏太の蹴りをくらう。 たとえ女だろうと容赦なしの奏太。 「話は変わるんだけど、あなたの彼女は?」 「いや、話が変わりすぎだろ」 奏太のツッコミが入る。 「しずほのことか?」 「それ以外に誰がいるっていうのよ」 「腹立つ言い方しかできないのか、真奈」 さすがの俺もここでツッコミを入れなければならない。 「最寄りの警察署から連絡があってね。 最近、ここらで不審者の目撃情報が多数きていて…。 女性の一人歩きは控えるように伝えておけとのことだから、 あなたと一緒にいると思って来てみたのだけれど…。 どうやら、倦怠期のようね」 「倦怠期じゃねーよ!!普通に一緒にいなかっただけでいーだろーが!!」 佐竹 真奈の異常なボケに、正直疲れてきた。 「迎えに行ってやらないのか?」 「しずほは家族と一緒だ。俺の出る幕じゃないよ」 「親戚の葬式に出てるんじゃ、迎えに行くにも行きにくいわよねー」 「あぁ…。……って、真奈!!勝手に人の都合まで調べんな!!」 「蔵間は何かと沈黙を保つから、聞きにくいのよ。さて、学校に戻りましょ」 「人のこといじっといて、用が済めば帰んのかよ」 「さびしいでちゅか?」 「二度と面見世んな」 真奈との無駄話のおかげで、どっぷり疲れをもらった。 「蔵間じゅん。お前も、夜道には気をつけることだ」 「お前じゃねぇんだから、道に迷ったりはしねーよ」 「っ!!余計なお世話だ!!!」 「俺は寂しがり屋だから、いつでも遊びにきてちょって、さっき奏太が言ってたよ~」 「お前は何でも偽造すんじゃねぇぇぇ!!」 ツッコミ担当の奏太も、大変そうだ。 ボケが二人いたんじゃ、手が負えないだろう。 476: 名前:雷蓮☆2011/10/23(日) 14 09 29 ~鈴音side~ 学校を出て、しばらく歩いてた。 無心になって街を歩くというのは、何とも恐ろしいことだ。 「ここ……どこ?」 今、それを体験中。 アタシ、今まで何考えてここに来た!? 家に歩いてるって思ったら、何!? ここ海なんですけど!? 帰るって何!? 前世!? ザァァァァン… さざ波の音が耳を微かにくすぐる。 それでいて、どこか切なげな音。 「……もぉ、帰りたいよぉ……」 「鈴音!?」 「えっ……」 聞き覚えのある、懐かしくて、愛しくて、私が求めていたこの声…! 「こぉ…すけぇ?」 「何でこんなとこにいんだよ、お前…そんな薄着でよ。ほら、これ羽織れ」 バサッ 10月と言っても、秋の深まるころ。肌寒い日が続いている。 康介の温かさに、またじわりと涙があふれてくる。 「もぉ、ばかぁ」 一人ぼっちになって分かる、康介の大切さ。 一人ぼっちになって感じる、今までの愛しいぬくもり。 康介にわがまますぎたアタシが子どもだったんだ…。 「おいっ!? 何で泣くんだよ? っ……あぁ!ったく!」 ぎゅうっ ふいに、康介に抱きしめられる。鼓動のテンポが徐々に上がっていく。 「こ、すけぇ。ごめんね、ごめん…わがままっ、すぎた、アタシ。 いつも、自分ばっかで…うーっ…」 伝えたいことがありすぎて、うまく話せない。 ろれつがまわらない。 「っ……そんなの気にしてねぇよ。お前のそういうとこも、愛してるんだ」 「ふぇっうぅーっ……」 「だから泣くなよ。お前にはいつも、笑っててほしいんだ」 「こぉすけ、大好きだよっ。だからっ、離れないでぇっ」 「あぁ、分かってる。分かってるから、もう泣くな」 「ぐすっ、うぅー」 私は康介に抱きしめられたまま、しばらくの間泣いていた。 480: 名前:雷蓮☆2011/10/27(木) 21 45 52 ~舞sode~ 蓮と寄り道したから、家に着いたのは夜19時。 家に帰ると、違和感のあることに気づいた。 いつもは鍵がかかっているはずの玄関が開いている。 これは一体、どういうこと……? 不思議と不安より、好奇心が大きい私。 だが、油断していられない。 もしかしたら空き巣かもしれない。 ……真夜中の空き巣?? なんか、あんまり聞いたことないな。 普通、昼間とかだと思うんだけど……。 一人でそんなのんきなことを考えていると、 リビングから声がした。 「だから!!もう帰った方がいいって!!」 聞き覚えのある男の子の声。 「ですから、ご挨拶だけでもと……」 ご挨拶?? 「普通、ご挨拶ってのは家の主がいるときにするの!! 勝手に入っていいもんじゃないの!!見つかったらヤバいって!!」 この声……!! バンッ!! 私は勢いよくリビングのドアを開ける。 「うおっ!?」 「おや、来られたようですね」 「康介!四季くんまで!何でいるの!?」 そこには勝手に家に上がり込んだ康介と、四季くんの姿があった。 「改めて、ご挨拶にと……」 「不法侵入ですよ」 「けれど、今日中に終わらせたくて……」 「そういう問題じゃ……!てか、どうやって入ったんですか!?」 「企業秘密です」 「企業なんですか……?」 四季くんは私の質問を、のらりくらりと簡単にかわす。 蓮と少し、性格が似ている。……悪い意味で。 「羽柴家次期当主、羽柴康介のご挨拶に参りました。 弟の尾上 四季です」 「羽柴家? 次期当主?」 「羽柴家の後継ぎのことです」 「康介!? そんなこと聞いたことないよ!?」 「っ……あ、あぁ、まーな!かっこいいから、秘密に、しててー」 「ヘラヘラとしないでください、兄上。常に冷静でいることです」 「あ、あぁ……」 ピクッ このとき、私は康介のいつもの笑顔が偽りだと分かった。 だって……目が笑えていない。 「……かっこよくないよ」 「はい?」 四季さんが目を丸くしてこちらを見る。 「こんな康介、康介じゃない。今すぐその名前、撤回して」 「舞……」 いつもは鈍い私だけど、ずっと一緒の康介なら分かる。 すぐ状況もつかめたし、その名が嫌なのも承知。 康介が家族がらみのことで悩んでたのも、知ってるんだ。 「私は康介の相談をうけたりするから、四季くんのことも知ってるよ」 「ほぅ……。なかなかの演技力でしたね」 「康介が後継ぎになりそうってことも知ってた」 「兄上がそこまで言うとは。よほど、信頼されているようですね」 「そんな弱いもので終わる絆じゃないの。 康介とは心友なんだから」 「舞さんは部外者。何をしても無駄ですよ」 「舞!これ以上、口出しはっ……」 「不法侵入で訴えられる私の立場を甘く見ないで!!」 「……舞、その言い方、ちょっとかっこ悪い……」 「康介はだまってて!今いいとこ!」 「お前のその言葉でもう台無しだよ」 康介は私の腕を掴んだ。 「いいよ、舞」 「康介、鈴音を置いていくなんて許さないから」 「っ……!!」 「私のもう一人の心友泣かせたら、蹴るからね」 「舞……」 「先ほど、別れを告げてきたハズです。兄上、そうですよね?」 「え……?」 「四季っ!!お前っ……」 「海辺で二人寄り添い、最後の一時を過ごしましたね? 兄上はお分かりのハズ」 「別れなんて……」 「どっちにしろ、もう会えないのですからいいでしょう」 「どういうこと!? 鈴音は康介の彼女なんだよ!?」 「舞さん、鈴音さんは兄上にふさわしくないお方です。 お分かりいただけますでしょうか?」 「わかんない!!四季くんが決めないで!!」 「世間から見ても、私と同じ意見の方は多いと思いますよ?」 「どうして!?」 「王様と庶民が結婚するように、無理に近いことですから」 そう言うと、四季くんはニヤッと笑った。 481: 名前:雷蓮☆2011/10/28(金) 19 45 53 「とにかく兄上には、何が何でも後を継いでもらいます」 「康介は鈴音と一緒にいるの!!ずっとここにいるの!!」 「いいですか、舞さん。日常は突然崩れるものです」 「っ!?」 「何にでも終わりがくる、ということです」 「……」 「もう、いいでしょうか?」 「舞……、ごめん。俺……」 「嫌だ」 「え……?」 「そんなの許さない!!康介、一緒にいるって約束したんじゃないの!?」 「っ……!」 「一緒にずっといようって、鈴音と約束したんじゃないの!? 今日の鈴音、康介がいなくって寂しそうだったのに!」 「あ……」 「言葉で惑わそうったって、そうはいきませんよ」 「四季くんは黙ってて!!」 私は怒声を張り上げた。 「康介は鈴音を泣かせて楽しみたいの!?」 「っ……舞」 「うちはっ…うちはぁっ、そんな康介大っ嫌いだよ!!」 「っ!!」 いつの間にか涙があふれていた。 もう誰一人、失いたくない。 誰一人、かけちゃいけないんだ。 もう、誰かが傷つくのは見たくない。 バンッ! 突然、後ろで壁を蹴る音がした。 483: 名前:雷蓮☆2011/10/29(土) 10 24 21p 「何……やってんだ!!」 「れ、蓮!?」 振り返ると、康介たちを睨みつけている蓮がいた。 「これは……蓮さん」 「気持ち悪ぃ。さん付けすんじゃねぇよ、四季」 「これは失礼しました。……あなたも兄上を止めに?」 「んなわけねーだろ。勝手に俺の女の家に上がりやがって」 「それはあなたも一緒では?」 「てめぇみたいに初対面じゃねぇんだよ」 「そういうものなんですか」 「康介、お前……鈴音を置いてくのか?」 「っ……」 「舞を泣かした罪は後でとってもらう。 お前……鈴音なんてすぐに忘れられる存在だったのか?」 「そ、そんなんじゃ……」 「じゃあ、何なんだよ? 鈴音はお前のこと、彼氏以上に思ってるぞ。 お互いにそう思ってんじゃねぇのかよ? 鈴音の幸せを願って別れるっていうのは善じゃない。偽善だ。 お前自身の本音で行動しなきゃ、何も意味はなさないんだよ」 「っ……俺の家は元々、財閥だった。 今もその証拠が残ってる。代々の後継ぎに任命された奴は、 それをこなさなくちゃならないんだ。もう……どうしようもないんだよ……」 「……兄上。どうしてそこまで、鈴音さんを大切になさるのです? あんな女、そこら辺にいくらでも転がってるじゃないですか」 四季くんが口を開く。 どことなく、その顔が切なく見えた。 「あいつはそこら辺にいるような女じゃない。 ちょっと変わった奴だけど、一緒にいて安心する。 いつも素の俺でいられる。気をつかわないでいられるんだ。 そういう関係って、中々できるもんじゃないだろ? それに……何よりも誰よりもあいつを愛してるんだ」 「それでも、お前は手放すのか?」 「……やっぱ、無理だわ。あいつの笑顔、二度と見られなくなるのは耐えらんねぇ」 「……だってよ、鈴音」 「……え?」 「鈴音、きてるの!?」 コツ…… 「鈴……音……」 「バカ。さっき、浜辺で抱きしめてくれたみたいにぎゅっとしてよ」 「ごめん、鈴音。俺……まだお前の大切さに気づけてなかった」 「……うん」 「今日、寂しそうにしてたことも知らずに……ごめん」 「……うん、分かってる。だから、今度またしたら別れる」 「えっ!?」 「その覚悟で!いい? これは命令だから!」 「ははっ、あぁ。分かった」 そういって康介は鈴音に、小さな小包を渡した。 「……? なに、これ?」 「誓いの指輪」 「え……」 「もう鈴音を泣かせない約束。この指輪にかけて誓うよ」 「クスッ。ありがとう、康介」 ぎゅっ… 二人は強く、抱きしめあった。 そして、それを唖然と見つめる四季くん。 「……どーだ、四季。うちの康介くんの愛は」 ……え? 突然、蓮が四季くんにたずねた。 会話の切り出し方がおかしいと思うのは、私だけなのか? 「そうですね。あつすぎてヘドロが出ます。できれば、半径50センチ以内に近寄らないでほしいです」 「だろ? ま、これで不安はなくなったろ?」 「はい。ここまでいくと、もう手のつけどころがありませんし。合格です」 二人のわけの分からない会話が、私と鈴音と康介の間を飛び交う。 「お、おい、四季。どういうことだよ……?」 「すみませんね、兄上。 兄上の彼女さんへの愛を確かめろとおじに言われまして。 どうしてもときかないものですから。試してしまってすみません」 ニコッ ……ということは、 「それって嘘なんですか?」 私は目を丸くして尋ねた。 「はい、そうですよ。楽しかったですね~」 四季くんはにこにこ笑っている。 「あんなクサイ台詞、どこで覚えてきたんでしょうかね~。 最高に素晴らしかったですよ、兄上」 そう言いながらも、笑いをめちゃめちゃこらえている。 「ニコッじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇ!今までの嘘かよ!?」 「はい、そうです」 「てめぇ……さっきおごったファミレスの金返せぇぇぇぇぇぇ!!」 しばらく、私の家で馬鹿騒ぎが起こりました。 484: 名前:雷蓮☆2011/10/29(土) 15 45 32 ~次の日~ 「おい」 「何です? 兄上」 「何です?じゃねぇんだよ!!お前、帰るんじゃなかったのか!?」 「チケット、どこかになくしちゃいました」 「なくしちゃいましたじゃねぇ!!探せよ!!」 「面倒くさいです」 「なら自力で帰れ!!」 「まだ怒ってるんですか? そんなに毛嫌いなさらなくても……」 「お前の巧みな言葉に操られそうで怖いんだよ!」 「私はそんなのにひっかかる兄上が心配でなりません」 「嘘つけ!!お前、昨日楽しんでたじゃねぇか!!」 「面白かったんですもん」 「ですもんじゃねぇーーー!!」 雨の日の朝。 昨日のことが許せない康介がピリピリしていた。 「まぁまぁ。四季くんも悪気があったわけじゃないんだし……」 「ぜってぇ悪気満々だったよ、コイツ!!」 「兄としてその発言は見逃せませんね!弟の役目を果たしていただけですよ!」 ぎゃーぎゃーぎーぎーと騒ぎ立てる二人。 クラスのみんなが注目していた。 「なーにー? 喧嘩~?」 「喧嘩するなら俺が仲裁してやろう……」 喧嘩の噂を聞きつけて、左端くんと颯斗くんがきた。 「げっ!左端に颯斗!」 「その言い方はひどいんじゃない? せいぜいイケメンとか言ってほしいな~」 「バカだろ。お前バカなんだろ」 「バカバカ言ってないで、勉強ぐらいしたらどうなんだ? 喧嘩している奴に上位の成績はつかないからな」 「うるせーよ颯斗。てか、いいかげんお前はドアから出てこい。 いきなり天井から来られると、心臓に悪いんだよ」 「それは悪かった。何せ、日頃の習慣だからな」 「お前の習慣にドアという設置物は存在しないの!?」 「あはは~っ。颯斗っちは天然だからね~」 「俺はミネラルウォーターではない」 「別に天然水って言ってないけどね、颯斗くん!?」 「このとおり、颯斗っちは天然そのもの!」 「ダメだ。こいつといるとマジ疲れる。蔵間、交代」 「え、えぇ? 俺!?」 「なになに、弱気な康介くん?」 「左端。前から思ってたけどうざい」 「ははっ……。お前もな、チビ助」 「ん? 今、何か言った?」 「空耳じゃないかな?」 「そ」 そう言いながらも、二人の間で火花が散っていた。 485: 名前:雷蓮☆2011/10/30(日) 09 12 33 「おい、舞」 突然呼ばれたので肩をビクッとさせて反応してしまった。 「え、あぁ、どうしたの?」 声の主は蓮だった。 「今週の日曜、空いてるか?」 「ちょっと待ってねー」 私はカバンから手帳を出す。 「んとー……うん、OKだよ!」 「なら、デートにでも行くか」 「えっ!?」 「恋人同士なのに、ろくなデートもしてねぇんだ。行くだろ?」 「う、うん!」 そっか。よくよく考えたら、あんまりデートしたことなかったかも…。 「「スケベ不良」」 蓮との会話を聞いた双子が割って入ってきた。 ぎゅむっ 双子に抱きしめられた私。 「「舞をどうするつもり!?」」 必死に守る双子。 「ちょ、沙奈、瀬奈!?」 「「舞はまだ純粋な子なのに!!」」 蓮はそれを聞き、双子を睨む。 「とんだ妄想だな。俺はそんなつもりはさらさらないんだが?」 「「男はいつも野獣よ」」 「どこでそんな台詞覚えてきやがった、双子」 蓮の額に青い筋が浮かんでいる。 相当怒っているよう……。 「はいはい、双子も蓮も喧嘩しない!クラスのみんなが見てるでしょー」 「「エキストラだから気にしない」」 「はい!!エキストラとか言わない!!」 「「だって設定じゃん」」 「それもNG!!もうしゃべんな!!」 蔵間くんはまたまた仲裁役。 「「あ~あ。蓮の喧嘩もつまんな~い」」 「俺は疲れるんだけどな……」 蓮の視線の威圧にクラスのみんなが目をそらす。 双子はびくともしない。むしろ、面白がっている。 「「あー。そういえば~、生徒会の人が呼んでたよ~」」 「は?」 「「蓮だけ~」」 「何でそれを早く言わねーんだよ」 「「忘れてた~」」 「せってぇー嘘だろ。それ、いつ言われたんだ?」 「「昨日~」」 「そうか。ならいい。……って、昨日!?」 「「うん」」 「いいわかねーだろ!!もっと早く言えよ!!」 「「だから忘れて……」」 「そんなん嘘だろ!!」 「「うん」」 「やっぱそーじゃねぇか!!怒られんのは俺なんだぞ!」 「「だから面白くって~」」 「面白いとかの問題じゃねぇ!お前ら後で半殺しだ」 「「きゃーっ!」」 バタバタ… 双子は私を離してどこかへ逃げた。 「ちっ!クソッ!」 「まぁまぁ、蓮も落ち着いてー」 「あいつらのせいで、何か雑務やらされるかもしんねぇ」 「俺が後で弁解しとくから」 「ちっ!ちょっくら行ってくる」 「俺もついてくよ」 スタスタ… 「「やっと行った~」」 「二人共、あんまり蓮を怒らせないであげてね」 「「…舞は優しいなー」」 「そんなんじゃ……」 「「うちらは小悪魔だから優しくできないの!女の子は別だけどー」」 「二人共優しいよ」 「「舞にはね!」」 「ありがとう」 「「かわいい~!!」」 ぎゅむっ またまたハグされた。 双子は本当は優しい子。 みんなから愛されてるからこそ、できる悪戯ってものがある。 けっして悪質ではないし、ちゃんと後で謝るから可愛いもんだ。 君を好きになる5秒前 続き16
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『私とあなたを好きになるための8行』 私はあなたが大好きです。 あなたのきれいな声が大好きです。 あなたの明るい声が大好きです。 あなたの一生懸命さが大好きです。 ときどき悪ふざけをするあなたが大好きです。 あなたの声を聞いていると、まるであなたの本当に触れられるような気がして、 とてもうれしくなります。 だから、私はあなたが大好きです。 私はあなたが大好きです。 あなたの優しい文章が大好きです。 あなたの楽しい文章が大好きです。 あなたのつくる世界観が大好きです。 ときどき突拍子もないセリフを書くあなたが大好きです。 あなたのシナリオを読んでいると、まるであなたの心の中の世界に迷い込んだような気がして、 とてもうれしくなります。 だから、私はあなたが大好きです。 私はあなたが大好きです。 あなたの計算された編集が大好きです。 あなたの面白い編集が大好きです。 あなたの熱意に溢れた仕事が大好きです。 ときどき意表をついて笑わせてくれるあなたが大好きです。 あなたの作品を聞いていると、まるであなたと同じ気持ちを共有している気がして、 とてもうれしくなります。 だから、私はあなたが大好きです。 私はあなたが大好きです。 あなたの「よかった」という言葉が大好きです。 あなたの「感動した」という言葉が大好きです。 あなたの書いた丁寧な感想が大好きです。 ときどきひどい無茶振りをしてくるあなたが大好きです。 あなたのレスを読んでいると、まるであなたの笑顔が私にもうつってくるようで、 とてもうれしくなります。 だから、私はあなたが大好きです。
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魔女になる。 【まじょになる】 ジャンル アドベンチャー 対応機種 ニンテンドーDS メディア 512MbitDSカード 発売元 トライファースト 開発元 タムソフト 発売日 2009年6月11日 定価 5,040円(税込) 判定 なし ポイント 大友向け…と思いきや中身は完全に女児向けどこの層狙いなのか謎な作品全体のボリュームは少なめ第5話のみ第13話クリアで解放される謎仕様 概要 特徴 問題点 評価点 総評 余談 概要 王道的な魔法少女アニメ的世界観をテーマとした、低年齢の女の子向けのアドベンチャーゲーム。 魔女に憧れる女の子・ビッテがある日手に入れた「マホイタ」をきっかけに少しずつ魔法を使えるようになり、魔法を使っていろいろな問題を解決していくお話。 特徴 マホイタという黒板のような道具に魔法陣を描いて魔法を発動させる。 最初は覚えた魔法も少なくやれる事も少ないが、話を進めると新しい魔法を覚えてできる事も増えていく。 覚えた魔法陣は「まほうメモ」に記録される。魔法を使う時にお手本として表示する事もできる。 豪華なスタッフ・キャスト キャラクターデザインはイラストレーターの七尾奈留氏が務めている。 パッケージ裏には「七尾奈留DSに初登場。」(原文ママ)の一文も。 主人公ビッテの声優には能登麻美子氏、他のキャラにも井上麻里奈氏や沢城みゆき氏など人気声優陣が並ぶ。 テーマ曲を歌っているのは歌手の霜月はるか氏とこちらも豪華。 スタッフ・キャストを見ると明らかに大きなお友達向け(*1)に見えるが、内容は完全に女児向け。 基本的な物語は「魔法を使えるようになった主人公が魔法で身近な人の手伝いをしたり事件の解決をする」と言う実に王道な物。ダーニャと言う少女もライバル的ポジションとして王道の立ち回りを見せる。 それでも「格差社会」や「人の魔法への欲」など、シリアスかつシビアな設定も存在する。 ゲームシステムも女児向けらしくとてもシンプル。また、ゲームオーバーも存在しないなど優しい設計が目立つ。物語が一本道な事も良く言えば複雑さを省いた結果だと言えるだろう。 お色気シーンのようなものは一切存在しない。冗談ではなく完全皆無なので女児も安心して楽しめる。 問題点 全13話だが、1話あたり30分程で終わるので全体のボリュームは少なめ。 その割には次に向かう場所の指示やヒントを与えられず探し回る展開も多いので、本来のプレイ層である子供にとっては「不親切」に映るかもしれない。 また、第5話のみ第13話クリアで解放されるという謎過ぎる仕様。 その第5話はビッテとダーニャを中心に展開される非常に短いストーリー。短くはあるものの物語の鍵を握るダーニャが絡む話であり、クリア後まで後回しになるせいで本編中の彼女の出番や印象を薄めてしまっている印象は否めない。 クリア後に前日譚として第4話と第6話の間の時系列に挿入したかったのだろうとは察せるが、この調整が適切だったかは疑わしい。不自然に第5話が解放されないまま進む事に違和感を感じる人は少数ではなく、やるとしても第4.5話や番外編と銘打った方が良かっただろう。 第4話では物語に小さな分岐を起こす部分がある(*2)ので、それが原因と誤解しやり直した人もいる事だろう。やはり関係は無く第13話クリアまで解放されない。 ギャラリーを開放するために本編中でアイテムを集めなければならない。 アイテムは各話の街中で見つける、「まじょわんグランプリ」で勝利するなどが必要。 街中で見つける物は基本的にノーヒント。さらに特定の話で訪れた場合でなければ手に入れる事ができないので、コンプリートはかなりの手間が掛かる。 探し回るには後述のセーブシステム、メッセージスピードと言った問題点が厄介。 「まじょわんグランプリ」はサブイベントとして開催されるランキング制のバトル大会。開催されるのは第7話から第9話の間だが、まともに戦えるのは必要な魔法が全て揃う第9話だけと不親切。 セーブは章の区切り目か話をクリアしたタイミングでしかできない。 気軽に中断できないと言うのは大きな欠点。最終話には極端に長いシーンがあるのでセーブがしたかったとの声もある。 ギャラリーアイテムに関するセーブもこの時に行われるため、アイテム回収目的で訪れた時にも物語を進めなければならない。 メッセージスピードが遅く、スキップ機能も無い。 速度はオプションで変更できるが最大にしても遅い。メッセージが流れている時にボタンを押せば一気にメッセージを表示させられるが次のメッセージまで2連打必要でテンポが悪い。 ギャラリーアイテム回収の際にはこの仕様に悩まされる事になる。各話冒頭は会話が続くので探索まで数分掛かる事がざら。 グラフィックに関する問題点。 メインキャラのグラフィックとモブキャラのグラフィックに差がありすぎる。 具体例を挙げると、メインキャラは七尾奈留らしさのある目や、全体的に鮮やかなグラデーション使いがされていて、とにかく可愛く丁寧にデザインされている。一方、モブキャラは目が白と黒の図形で描かれており、塗りもグラデーションが殆ど使われていないいわゆるアニメ塗り、輪郭線も浮き出るように目立つなど、メインキャラとは比べ物にならない低クオリティ感が感じ取れてしまう。 可愛さや格好良さが目立つデザインでないことはモブキャラだからとまだ理解できても、絵のクオリティの大きな差は引っ掛かる点である。 意図的な物かは不明だが、多くの男性キャラのデザインが評価し難い、割と気持ち悪いデザインに偏り気味。3Dグラフィックでも男性キャラはやたらと頭が大きく違和感を覚える。 一応、補足しておくと七尾奈留が男性キャラを描けないと言う事はない。 3Dグラフィックは端的に言うと人形っぽい作り。ただ、正面を向いた時に画面の方を向かせるためか、常に顎を突き出して斜め上を向いており、不自然な印象を受ける。移動する時はそのまま走るので尚更。 魔法陣の判定が少しシビア。 描写失敗と見なされたり別の魔法陣と誤って認識されてしまったりと、正しく認識されない事がそれなりに起きる。 失敗によって即ゲームオーバーになったりはしない。だが何度も失敗が続くと煩わしいほか、まじょわんグランプリで敗戦する原因にもなるので気になる人は気になる点だろう。 火Lv3の魔法陣だけは別格の高難度。まほうメモで表示したお手本をなぞっても失敗が多発する。 ハッキリしないターゲット層 前述のように内容自体は低年齢層を意識した作りになっている一方、有名な声優やイラストレータ起用を推していたりと、ターゲット層がハッキリしない。 そのため、絵や声優に惹かれて遊んだ人にとっては、薄めのボリュームにガッカリさせられてしまうだろう。せめてもう少し内容をしっかり充実させてくれていればよかったのだが。 また、秋葉原で発売記念イベントが行われたり(余談参照)、コミックマーケットで公式グッズが販売されたりと、尚更どちらが本来のターゲット層なのかよくわからない展開も行われた。 評価点 魔法陣を描くゲームシステムは面白い。このゲームの世界観と見事にマッチしており、ハードの特性を活かせている。 キャラ目掛けて魔法を使うと怒られたり反撃されたりする。その反応を見るのも中々面白い。 活かされる場面が少ないのは残念だが、ゲーム後半で使用できる「合体魔法」のアイデアも良い。 キャラの可愛らしさ。 七尾奈留の起用を売りの一つにしているだけあって、メインキャラ達は非常に可愛らしい。 特に主人公ビッテは表情豊か。少女らしい満面の笑顔などとても可愛らしい。 ボイス付きなのもポイント。パートボイスなのは残念だが、キャラデザインに合ったボイスによって可愛さにより深みを与えている。 音楽も悪くない。 「けっせん~つよいきもち~」など、地味ながらも心に残る曲もある。 ストーリー自体も基本は子供向けながら「魔法を使う事」の意味を問いかけたり、前述のような「金持ちのみが魔法を使える街」など、考えさせられる部分も多い。 総評 とにかくターゲット層を絞り込まなかった事が裏目に出た、味付けを間違えたよくわからない作品。 女児向けとしては力の入れ所がおかしく、ある程度以上の年齢の人が楽しむにはかなりの薄味。昨今の女児向け朝アニメのような作風を目指したかは定かではないが、大失敗だったと言わざるを得ない。 それでもマホイタを用いた魔法や、王道な展開かつシビアな物語・世界設計は悪くなく、大人でも一回遊ぶ分にはまずまず楽しめる。 女児向けとして見ても、七尾奈留による可愛らしいキャラクターが浮いていると言う事は無く、声優に関しても女児層からしてみれば大物でも無名でも関係ないので別に問題は無かろう。内容は完全に女児向けなので楽しめるはずである。 練り込み不足、テストプレイ不足と見られる問題点は散見されるが、致命的なバグは無く、ちゃんとゲームになっている事も一抹の救い。 余談 発売元のトライファーストはユークスの子会社だったが、2010年1月に親会社に吸収合併された。 2000年代初頭のエロゲーバブルの牽引者の一人でもあった七尾奈留氏の人気は当作発売時でも根強く残っていた為か、発売当日には秋葉原のソフマップで購入客を対象にしたスピードくじによる抽選会イベントが開催されていた。特賞が七尾奈留直筆イラストとサイン入りの色紙だったせいかソフトを数本買って抽選に挑むファンも多く、中には一人で50本も購入して色紙を当てた猛者もいた模様。 2023年現在、プレミアが付き中古価格1万~2万円程度で取引されている。 ゲームの内容は上記の通りあまり優れているとは言えず、かつてはワンコイン程度で売られている事も珍しくなかったのだが、2020年頃から価格が暴騰。 特に本作のような女主人公のマイナーなDSゲームは一部の転売ヤーやYouTuberによって買い占め・つり上げの標的にされ、このような事になったと言われている。
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第46回のテーマは「昔の恋愛」。僕たちはいったいどんなきっかけでひとを好きになるんだろう? どんなシチュエーションにグッとくるんだろう? どんなに良い思い出がたくさんあったとしても、彼女が「昔の恋人との思い出」をふと覗かせた時、傷ついてしまう自分をどう受け止めていけばいいんだろう? それは良くも悪くも、ゲームデータをリセットすればいいというような簡単なことではないはずだ。 1:21:25 <<第045回「みんなが選ぶ好きなゲーム10本」 第047回「昔の男」>> <<第045回「みんなが選ぶ好きなゲーム10本」 第047回「昔の男」>> バグ・不具合を見つけたら? 要望がある場合は? お手数ですが、メールでお問い合わせください。