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「ぼかぁ生きていない!死んでいないだけだ!」 ドラのび/バールのような者(/ーもの 2001/6/14~)は、Youtuber。共産チャンネル代表。メロンchanと対立関係にあることから ワサラー団のアンチになるが結果としてワサラー団の売名行為に貢献した人物である。故に無能である。ニート株式会社代表取締役。 通称、ドラちゃん、バールのような者 サムネイル 人物像 自称プロ陰キャである。 メロンchan曰く、昔は天使のような可愛いショタが、ギトギトの換気扇みたいな声の餓鬼に変貌した。 オカルトマニアで知られている。 Youtubeでゲーム実況者として活動している。 本人の性格の歪み故か、奇怪な動画を投稿している。 全日本日本語不自由協会を設立し、ブロガーとなる。 動画投稿者でもあり、各界隈ではそれぞれ(数人ほど)のファンがいるほど知名度がある人物。だがその正体はネットにしか居場所がないプロ陰キャであることを自称する。 一人称は「ぼかぁ」 本人曰く、ネット掲示板2ちゃんねるのコテハン時代に師匠から譲り受けた一人称らしいが詳細は不明。 陰キャのはずなのに何故かネット上で顔を晒すのが好きでYoutubeでは定期的に顔出し動画を投稿している。 アダルトビデオ店のバイトの面接で落ちたり、ピンク映画館でゲイのおじさんにちんこを握られる実績がある。
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♪‐08 わたしと砂原さんが待ち伏せていたのは、 迷子センター兼遺失物預かり所兼その他雑務引き受け所兼事務所、 つまりは事務所から少しだけ離れた場所だった。 そこに向かう人が一度に確認できるポイント。 わたしたちが待っている人物は勿論、例の迷子だ。 砂原さんは言う。 「一度目のアナウンスでは、焼きそばとかを食べきれていなかったから戻れなかったけど、 これぐらい時間が経てば、さすがに親の元に戻ろうとするでしょ?」 息を潜めて見守っていると、例の迷子と思われる子供が、 事務所に向かって歩いているのが見えた。 なぜ子供というだけで、現在捜している迷子だとわかったのか。 砂原さんは呟いた。 「やっぱりあの子は“狐面を捨てていなかったね”」 そう、その事務所に向かっている子供は狐面を被っていたのだ。 紛れもなく、あの白をベースにした和風で不気味な――おや。 なにか違和感を感じる。 砂原さんの持つ狐面と見比べ、すぐに違和感の正体を見つけ出した。 右上にある、“金色の塗りつぶしがない”。 わたしは砂原さんの策に賭け金を置くと言った。 現にそれが、大きなリターンとなって眼前に迫っているのなら。 わたしはそのリターンをまた全てこれに賭けてしまおうじゃないか。 唯――唯は自分のことを、どれだけ賭けてきたのだろう。 あの周りを巻き込む幸福感は、なにを信じて得たものだろう。 踏み出す勇気か。止まらぬ覚悟か。周りの全てか。 テスト用紙が貼りだされた時、わたしに相談にきた唯の中にあったものは。 そして、それを一番身近に見ていたのは誰なのか。 いまこそ、その時だ。 わたしは子供の前に仁王立ちし、行く手を遮った。 不審そうにわたしを見上げる子供の顔に向かって、わたしは言い放った。 「逃げることはできないぞ」 「な、なんだよ……」 砂原さんの持つ狐面を指さす。 たちまち子供の顔がさあっと青ざめていった。 「既に言い逃れのための偽仮面は、こちらで回収した。 いま事務所に向かったところで無駄だ。 わたしたちはこれをお母さんには見せないし、一切を隠し通す」 「うっ、うっ……」 「教えてもらうよ。もう一人の小さな犯人のことも」 「ううううっ……!」 そう、これは―― ――立派な脅迫である。 あれだけ暑苦しい言葉を並べておきながら、小さい子供に対してこれである。 ほら、正義の味方も時には手段を選ばないというじゃないか。 要はそれと一緒で、いざというときは脅迫という手段も辞さないという、その、 そういうアレなんだ。 砂原さんの冷たい視線が痛い。 「ま、まあ待って砂原さん。そんな視線を向けるにはまだ早い」 「十分だと思うけど」 じとーっとこちらを見ている砂原さん。怖いってば。 ところでこの子供――便宜上、迷子君だからM君と呼ぼうか。 M君は俯いて、時折しゃくり声を上げていた。 「あー……ところでM君」 「M君って誰だよ……」 しまった、心の中だけで使おうとした呼称が。 とりあえず名前をしっかり聞いた上で、質問を加える。 「その狐面には金色の塗りつぶしがないみたいだね」 「なんだ、塗りつぶしって……」 「これだよ」 自分たちの持っている狐面の右上を指さす。 M君(心の中では意地で使い続ける呼称)は明らかに訝しんでいた。 知らない様子だ。しかし、それはそれで妙でもある。 「知らないんだね」 「うん」 「じゃあつまり、君のお友達が勝手に塗ったということだ」 「そう、なのかな……」 「お友達はこういうことを黙っているような仲?」 「そんなことない! あいつは、俺の一番の友達だ!」 尋問、誘導、そして自白。基本的なスキルである。 これで大体の構造が見えてきた。だからその眼はもうやめて砂原さん。 とぼとぼ歩くM君に連れられ、もう一人の犯人――M君の親友のもとにつく。 落胆した様子のM君と、もう一つの狐面を持っているわたしたちを見て、 多くのことを察したのか、その親友君も血の気が引いているようだった。 話はこうだった。 引っ越しが突然決まってしまったM君と、 最後の思い出を作りたい親友君。 しかしM君のことを探していたあの女性は、 お祭りで色々買ってくれるような人ではなく、とても厳格な人物なのだそう。 そんなことでは最後に満足のいく思い出も作れない。 ということで、親友君はこの窃盗を提案したのだ。 初めは乗り気でなかったM君。 親友君は、自分はこの自分のお面を被って行動するからバレない、 バレたとしてもお前のことはなにも言わない、と言った。 するとM君も、やはり子供ながらお祭りを存分に楽しんでみたかったのだろう、 協力する気になっていた。 ただしそれは、条件付きのものだった。 自分の作ったもう一つの狐面を被ること。 そうすれば手作り狐面を被った人物が会場内に二人いることになり、 もし狐面を被った人物を探すことになっても、 操作の手を撹乱することができると睨んだそうだ。 狐面ということで、まず自分に疑いがかかる。 手作りの狐面を気に入っているというのは本当の話なのだ、そうなって当然だろう。 そこでもう片方の狐面を捨てて、それが犯人のものだとすれば、M君は助かる。 親友君は初めから疑いもかからない。これで無事解決。 子供ながら、なかなか狡賢いことを考えるようである。 詰めの甘いところも、また子供ゆえなのかもしれない。 さて、親友君は表では納得したように見せたようだが、実のところそうではなかった。 そこで密かに、自分のお面に新しい特徴を付けた。金色の塗りつぶしだ。 これほど目立つ特徴なら見逃されることはない――つまり、M君のお面と見間違えられることはない。 勿論、このことはM君には秘密で、だからこそ狐面自体は使い続けたのだろう。 そもそも狐面を使っていなければ、狐面を捨てるというM君の計画は根本から崩れる。 あらゆることを考えた上での折衷案だったことが窺える。 「つまり、二人の気遣いが重なったおかげで、少し不可解な、 でも蓋を開けてみれば単純な事件だったってことかー……」 「そういうことになるね」 「あの、俺たちはどうなるんですか……?」 M君が恐る恐る尋ねてくる。 事情ありとはいえ、悪事を働いたことに間違いはない。 少し考える。そして、そっと笑みを浮かべて、こう語りかけた。 「わたしから親には伝えないよ。 でも、二人とも悪いことをしたって、わかってるよね?」 「うん……」 「じゃあ謝ろう。元の持ち主たちが――帰っちゃったかもしれないけど、いるのなら」 二人は揃って首を縦に振った。 そして、身体を六十度ぐらいまで折ってから、 「ごめんなさいっ!」 ♪‐09 その後わたしたちはこの二人と行動を共にし、 色々な場所を歩き回った。 そして二人が盗んだ相手を見つけたなら、ささっと近寄り、謝罪。 大抵の人はこんな小さい子たちがと驚愕して、中には親を出せという人もいたが、 そういうときはわたしが前に出て一緒に謝った。 親に言わないと約束したのはわたしだ、これぐらい快く引き受けよう。 島さんに電話をし、今回の旨を伝える。 彼女も今回の被害者の一人なのだ。 『えぇと、そのマナブ君が引っ越しちゃうから、色々記念に?』 「うん」 ちなみにM君と読んでいた子の本名はマナブ。 Mという仮称に、全く偶然一致していたのである。 「いまこっちにいて、謝りたいって言ってるんだけど」 『いいよいいよ、気持ちだけで許したって伝えといて』 「いいの?」 『突然の引っ越しなんて可哀想だもんね。 なにより、反省しているなら良し、だよ』 「そっか……わかった、伝えておくよ」 これで恐らく、できる限りのことはしたと思う。 最後に気がかりなのは二人を探している親――あれ、そういえば。 「君は一人で来たの?」 「うん」 親友君はなかなか逞しい子みたいだ。 さて、もう一人のM君は元・迷子ということで、 早めに親のところに帰ったほうがと思ったが、 「あの人、親じゃないんだ」 「えっ」 少しの間言葉を失ってしまったけれど、 これ以上踏み込むのは、わたしのしていいことではないだろう。 複雑な家庭事情があるとするなら、 それは然るべき人や機関によって解決されるものだ。 二人を見送り、わたしと砂原さんは別れた皆のもとへ歩いていた。 「お疲れ様」 「あ、うん。ありがとう」 横でわたしを気遣ってくれる砂原さんは、結局最後まで付き合ってくれた。 策を提案し、ここまで導いてくれたのも彼女だ。 「ありがとう」 「……別に感謝されるようなことなんてしてないよ。 それより、秋山さんって思ったより足で稼ぐ人なんだね」 「どうだろう。もしそう思うなら、砂原さんに言われたからじゃないかな」 そう言うと、砂原さんはくすりと小さく笑みを浮かべた。 それはよかった、と。砂原さんはそう言った。 「まあ、わざわざついて来たかいがあったってことだね」 「助かったよ。でも、本当はどうしてついて来たの?」 まさか縞々が気になったというのが、本当の理由であるわけない。 ところが意外な沈黙。今まで言い淀むことなく話をしていた砂原さんが、 明後日の方向を向いてしまっている。 聞いてはいけないことだっただろうか。 それでも、その表情に険しさは一つも見て取れない。 いつもの、といっても今日初めて会ったみたいなものだけど、 あの肝の据わったような落ち着いた表情。 極めて冷静。冷徹ではなく、周りを静観しているよう。 砂原さんが自身の眼に映しているものとは、一体。 唯たちの姿が見え始める。 見ると、島さんたちも合流しているようだ。 なかなか賑わしく、わたしたちを出迎えてくれる様子。 不意に、砂原さんが歩調を早めた。というかほとんど走り出した。 「ちょ、え、待って、早!」 「……秋山さん、もう悪い結果は散々でしょ?」 「えっ、なに?」 「さっきの質問の答えだよ」 運動神経は悪い方じゃないけれど、砂原さんはわたしを置いていく形で、 そのまま先に行ってしまった。 わたしは徐々に速度を緩めながら、再び考え始めた。 ――もう悪い結果は散々。 これはつまり、どういうことなのだろうか。 「澪ちゃーん!」 向こうで唯が手を大きく振って、わたしを呼んでいる。 思考停止。エンジンフルスロットル。 わたしは猛然と、皆の元へと駆け出した。 何故か全員逃げる。いやなんで。 「鬼が来たぞ!」 「お、鬼ごっこなんてやる気ないぞ!?」 訴え虚しく、鬼ごっこに自動シフト。 まあこうなっては仕方ない。 全力で逃げ惑う人々を捕える、極悪非道の鬼になりきろうではないか。 さてさて今宵は大人気なく鬼ごっこなぞを嗜んだわたしたちは、 その際吹き出した汗とともにあらゆる悩みを空気中に蒸発させてしまい、 終わってみれば純粋な疲労感だけが募る重い重い身体を、 ただ持て余しているだけなのであった。 そこにいたのは想像もしたことない、幻みたいな顔ぶれ。 ううん、やはり日本の夏は特別暑いようだ。 第三章「化けるような夏」‐完‐ 戻る
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いつもの朝、俺は誰にも起こされることもなく爽やかに起床した。妹が来るのはあと5分後だ。 たまには驚かしてやるか。頭から再び布団に潜り込み妹を待った。 「キョンくん! 朝だよ~……うわぁ!」 妹が飛び付いてくるタイミングを見計らって布団から飛び起きた! ……誰だ? 「もう! 驚かせないでよ、そして自分の妹の名前も忘れたの?」 「いや、名前はしっかりと把握しているが……」 「おかーさんがご飯作ってるから早く降りて来てよ!」 そう言うと妹(?)はドタバタと階段を降りて行った。 なぜ俺が妹に疑問形を付けているのか。それはだな……。 中身はまるで変わりゃしないが外見が高校生だったからだ。 とりあえずこんな時はまず電話をするべきだ。長門、長門……っと。 あれ、おかしいぞ。アドレス帳に長門の名前がない。間違って消したか? それなら古泉だ。長門の番号は覚えているがワンタッチで済む分だけ古泉のほうが早いからな。 『もしもし。そろそろかけて来る頃だと思いましたよ。今、あなたの家の外にいますから降りてきてください』 さすがは古泉だ。頼んでもないのに頼りになる。これだけあいつが動くってことはハルヒ絡みなんだな。……やれやれ。 俺は電話を切り、制服に着替えて外に出た。すると目の前に爽やかスマイル野郎が立っている。 「単刀直入に言いましょう」 随分と急いでるな。 「それだけの緊急事態というわけですよ。……この世界は変わりました」 「……なるほど。急ぐわけだ。説明しろ。どんな理由から妹が高校生になるような世界に書き変わったんだ?」 「……そうですか。やはりアレが原因ですね。昨日の部室の出来ごとを振り返ってください」 なんなんだ? 昨日の部室か……。 「キョン、あんたちょっとカバンの中を見せなさい」 俺が古泉と囲碁をしていると本当に唐突にハルヒはそんなことを言い出した。 「断る。なぜお前にカバンを見せなければならん」 「いいから貸しなさい!」 カバンを守ろうとした俺の手より僅かに早くハルヒの手がかっさらって行った。 マズい、カバンの中にはアレが……。 「休み時間に谷口とコソコソとしてたから気になったのよ。どれどれ……」 ハルヒはそれを見ると一瞬固まり、ゆっくりと引き出した。 「言っておくが無理矢理入れられたんだ。『お前はもう少し恋愛をわかった方がいい』とか言われてな」 ハルヒの手に掴まれているもの。それはいわゆる『ギャルゲー』と呼ばれる物だ。 谷口に無理矢理入れられたって言ってるだろ。みんな、そんな目で見るな。 「……没収。あたし今日は帰るわ。あんたのバカっぷりに疲れたから」 ちょっと待てと言おうとした俺より先にハルヒは部室から出て行った。 残念ながら谷口、お前のゲームは無事には帰らないだろう。 そしてお前ら、俺をそんな目で見ないでくれ……。 って感じだったよな。まさか……。 「そのまさかですよ。彼女は帰ってあのゲームをやった。そしてそれに限りなく近くなるように世界を改変した」 どんな単純バカだ。やったゲームに影響されてその主人公になりたいと思ってるガキと一緒だな、あいつは。 「だから僕達、男性陣には影響は無いんです。あなたの妹さんが妹キャラ、他のあなたに親しい女性の方々も属性に応じて変わっていることでしょう」 大変なことになりそうだな。解決方法は? 「僕は何も出来ません。今回ばかりは全てあなたが解決しなければなりません。方法もわからないですから」 またえらく投げやりだな。主人公の悪友役はお前じゃないのか? 「残念ながら僕では無いのですよ。しばらくすればわかります。それでは僕は機関に顔を出さなければならないので」 古泉は新川さんの運転する車に乗って帰って行った。……ギャルゲーの世界か。 俺が妹に優しくしたら妹フラグが立つってのか? 試してみる価値はあるな。わが妹ながらなかなかかわいかったからな。 所詮はハルヒの作った夢世界。しばらくすれば長門が解決するか、古泉が解決方法を見つけるかするだろう。 それまではゲームの主人公という立場を楽しむのも悪くない。 妹に優しくしてみよう。あいつに『お兄ちゃん』と呼んでもらえるチャンスかもしれん。 家の中に戻り、食卓についた。……なるほど、ゲームっぽくベタだ。 妹は頬にジャムを付けながらパンを囓っていた。 多分、ゲームならこんな感じの選択肢が出るはずだ。 1、取ってあげる 2、放っておく 3、鏡を見せる ここは1を選択するべきだな。……っておい、普通に生活しろよ、俺。 俺は黙って妹の頬をティッシュで拭ってやった。よく見るとあちこち制服もおかしい。襟が曲がっていたり、シャツが出ていたり。 それを全て直してやった。 「あ、ごめんねキョンくん。ありがと……優しいね!」 妹は俺の妹とは思えないほど可愛く微笑んだ。これはいかん。将来、谷口を家に呼ぶことだけはしないでおこう。 「キョンくん、せっかく早起きしたんだからたまには早く学校に行こうよ!」 「あぁ、そうだな」 「決まりだね! カバン持ってきてあげるから早くご飯食べてね!」 妹は素早く立ち上がると階段を駆け上がっていった。 妹と登校か……。この世界だからこそ出来る芸当だよな。 そう思い、パンを水で一気に流し込んだ。 妹と並んでハイキングコースを歩く。どうせ世界を変えるならこの坂も無くしてしまえばよかったのに。 「キョンくん、カバン持ってぇ……」 妹は……弱かった。坂道を歩いて登れないくらいにフラフラになっている。 元の世界に戻ったら少し体力トレーニングをさせようと思う。 カバンを持ってやり、上を見て坂を登り始めるとラスボスを見つけた。 あのカチューシャに、背格好。間違いなく涼宮ハルヒだ。そうだな、声をかけてみるか。 どうせ、間違いなくただのツンデレキャラだろうけどな。おーい、ハルヒ……うおわっ! 振り向きざま逆水平チョップか。少し高さが違えば失明だぞ。 「おはよう、キョン。だけどね……いつから呼び捨てを許可したかしら?」 おいおい……なんだ、この主従関係。こいつはこんな関係を望んでいたのか? 「親しき仲にも礼儀あり、よ。ちゃんと年上ってことを考慮して呼び捨てはやめなさい」 はいは…ちょっと待て、今こいつはなんて言った? 「いつも通りの『ハル姉』なら許したげるわ」 …年上? ハルヒが? 嘘だろ? ツンデレ姉キャラですか。欲張りめ。 「あ~、ハルにゃんだぁ! おはよ~!」 遅れて登って来た妹がハルヒを見て嬉しそうな表情を見せた。 「あら、妹ちゃん。キョンと一緒に登校してきたの? カバン、持ってもらってるわね……」 ハルヒの目がキラリと光った。マズい、この展開は……。 100Wの笑顔を発動させつつ、俺を指差しながらハルヒは大声で言い放った。 「あたしのも持って行きなさい!」 主従関係っつーかパシりじゃねーか……。 「返事は!?」 俺は口から出る長い溜息を終わらせるとハルヒのカバンを奪いつつ返事をした。 「了解だ、ハル姉様」 やれやれ、この世界が終わるまでに俺が過労死しなけりゃいいけどな。 三人分のカバンを持ったまま坂を登り終え、一息ついた所でハルヒはカバンを奪い去った。 「ご苦労さま。それじゃあね、授業中に寝たら死刑だから」 言い方が少し丸くなってはいるが、セリフはハルヒそのままである。 「キョンくんありがと~。またおうちでね!」 妹はハルヒを追うように走って行った。さて、俺も行くか……いてててっ! 手首を合気道のような力で捻りあげられた。……なぜ!? 「ちょいとキョンくんっ。いくらあたしと知り合いだからってその格好じゃ門を通せないなあっ!」 長い髪の毛に軽快な口調。間違ない、鶴屋さんだ。しかし一つだけ違う。 腕に付く腕章には『風紀委員長』と書いてあった。 「シャツ、ネクタイっ! 今月3回目にょろよっ! ……反省文室行きだねっ。放課後にあたしのクラスまで来るにょろっ」 鶴屋さんは俺の背中をトンッと押すと、俺の後ろから来る生徒を同じように掴まえていた。……谷口か。 気を取り直して靴箱へと歩き始めた。反省文室ってなんなんだ? くそぅ……しかしサボれないな、鶴屋さん相手だし。 この世界は楽しいことばかりかと思ったが全然違うじゃねーか。さっさと元の世界に戻りたいぜ。 なんてことを考えながら靴を取ろうとすると手が女の人に当たった。 あ、すまん……朝比奈さん? 「あ、ごめんなさいっ! あの……キョンくん、でいいのかな? 同じクラスになった…」 同じクラス? あぁ、ハルヒパワーのせいか。朝比奈さんと同じクラスなんてハルヒに感謝だ。 一日中、目の保養が出来るぜ。 「はい、その通りですよ」 「あの……えっと、敬語は使わなくていいですよ?」 つい癖で出てしまうよな。これからしばらくは直さなくちゃいかん。 ハルヒはハル姉、朝比奈さんには敬語を使わない…。 「あ、いけない! 週番でした…キョンくん、先に行ってます!」 あ、そんなに走ると……やっぱりコケた。 朝比奈さんは振り向いて照れくさそうに微笑んでまた走って行った。 ……最高のクラスメートだよな。 しかし自分のクラスまで変わってなくてよかった。そんな物が変わってたら俺はどこに行きゃいいかわからなかったからな。 フラフラとゆっくり自分の教室に向かっていると、後ろからゾンビの気配を感じた。……って谷口か。 「こってりと搾られた……。今月3回目だから職員室行きだとよ……はぁ」 3回目? 俺と一緒なのに職員室行きと反省文室行きの違いか……黙っておこう。 「そうか、そりゃ気の毒だったな」 「鶴屋さんに触ってもらえるからって何回もだらけた服装で行くんじゃなかったぁ!」 ……自業自得だろ。 教室に入ると余計な物がたくさん見えてきた。まずはこいつだ。 「みんな早く席に着いて! 今週はチャイム着席強化週間だから!」 これでもかと言うくらい委員長をこなす朝倉。まぁ、長門が何もしないってことは平気なんだろう。 そして「おはようございます」と言って、何か不思議な感じのまなざしを向けてくる喜緑さん。あなたもハルヒのせいで落第ですか。 そして……。 「…………」 俺の後ろの席。席替えで窓際最後列になり、ひたすら本を読み続ける長門。 見事に固めたな、ハルヒの奴。これでこのクラスには宇宙人が3人、未来人が1人、そして…超能力者もだ。 「何故か僕もこのクラスになっていましてね。9組に行った時は恥をかきましたよ」 もうどうでもいい、好きにしてくれ。ただ席が気になるけどな。 後ろが長門。前が朝倉。右が朝比奈さん。右後ろが喜緑さん。右前が古泉だ。 どうだ、なにかおこりそうだろう? どうにか早く元の世界に戻れないのか、長門。 「……?」 首を傾げる長門。まさかこいつの能力も消えてるのか? 「…近い。恥ずかしい」 あー、見事にあの時と同じ何の能力もない長門だ。しかも少し感情が増えてるバージョンの。 「こーら、キョンくん。長門さんの読書の邪魔しちゃダメ! 前を向いて先生を待ってなさい」 はいはい、わかりましたよ朝倉委員長。ナイフで刺されたくないから言うこと聞きますよ。 「ナイフって何のこと? 夜更かしばっかりするから夢と現実が混ざっちゃうのよ」 朝倉は諦めたように前を向いた。まさに夢であるとは思ってないんだろうな。 そこからは普通に授業をこなした。朝比奈さんの落とした消しゴムを拾う回数が異常に多かった以外は普通だ。 その度に手が触れたりして少しうれしかったけどな。 そして昼休み、午後の授業を経て今に至る……っと。 そういえば鶴屋さんのクラスに呼び出しを食らったんだったか? とりあえず行っておくか。 スタスタと校舎内を歩き、鶴屋さんの教室へと向かった。おーい、鶴屋さーん。 「うん、ちゃんと来たねっ! エラいエラい」 で、何処に連れて行く気ですか? 手が痛いから引っ張らないでください。 そのまま一直線に屋上へ連れて行かれた。 「さぁ、この気持ちいい風と陽射の中で一枚反省文を書くにょろっ! 終わるまで見てるからねっ」 反省文室ってのは屋上ですか。まぁ、谷口のように職員室で岡部に見られながら反省文よりかは遥かにマシだよな。 カバンを机代わりにして、俺はペンを持った。なんとなく手が動く。 これも屋上効果か? 鶴屋さん様様だな。 「けっこう真面目に書いてるんだねっ。……もうちょっとゆっくりでいいにょろよ」 「そうは言っても鶴屋さんが屋上に連れてきてくれたお陰でペンが進むんですよ」 鶴屋さんはまだ書きかけの俺の反省文を黙って奪った。 「ちょっと休憩するっさ! あんまり時間取らなかったら反省にならないからねっ!」 な…早く終わらせて帰ろうと思ってた俺の気持ちわどうなるんだ。畜生、無駄だったのかよ。 「ん~、風が気持ちいいにょろっ!」 風になびいている長い髪がとても綺麗に輝いている。まるで…あぁ。そういうことか、なるほどな。 これは本来なら一枚絵ゲットのイベントなんだな。だからこんなに目の引きつけられる姿になっているんだ。 さすがはハルヒだ。一日で見事にギャルゲーを理解したみたいだ。 「さ、続きを書くっさ! あたしもちょろんと用事があるから早くねっ」 イエッサー。俺も帰りたいんで早く終わらせるつもりだ。超特急で書いてやる。 言葉通りに素早く終わらせ、鶴屋さんにO.K.をもらった帰り道。俺は何故かハルヒと歩いていた。…たまたま会ったんだよ。門の前で。 「あんたと二人で帰るのって久し振りねー」 「そうだな」 「昔はあんなに可愛かったのに今じゃこれだもん。本当なら死刑よ」 いつお前が俺の昔を知ったんだよ! なんて言えやしない。今のハルヒは姉ちゃん的存在だ。 きっと記憶を捏造して俺との昔の記憶を作ったんだろう。…この世界の昔の俺、同情するぜ。 「今のあんたはカッコいいけどね……」 「ん? なんか言ったか?」 「何も言ってないわよ! 早く帰りましょ!」 ハルヒは俺にカバンを持たせると早足で前に歩いて行った。ところで……。 「ハル姉の家ってどこだ?」 拳骨一閃。痛い、痛すぎる。クリーンヒットしたぞ。 「あんたね、冗談でもそんなつまらないこと言わないわよ。0点ね」 いや、本気だが。 「自分のお隣さんの家も分からないの?」 歩きから自転車へと移動手段を移行させていた俺とハルヒ。目の前には自宅があり、一件隣り奥を見てみた。 『涼宮』。表札にそう書いてあるじゃないか。…半分はわかってはいたさ。信じたくないだけで。 「それじゃ、また明日ね。迎えに来たげるから」 来なくていい……なんて言ったら殴られるか。 ハルヒに手を振り、家の中に入ると妹が抱き付いて来た。……高校生パワーの妹が。 「キョンくん、お帰り! 遊ぼう?」 あーはいはい。後でな。お前もいい歳なんだから抱き付いて来るな。 「いーじゃん、別に。だってほら、わたしはキョンくんが……ね?」 なぜそこで顔を赤くする。ともかく、晩メシまで寝るから後で起こしにこい。 後ろでふくれる妹を置き去りに、俺は自分の部屋へと駆け込んだ。 ふぅ、やはりここが一番落ち着くな。おやすみ……。 プルルル……プルルル……。 誰だ。人によっては無視するぞ。 ディスプレイを覗きこむと、朝から確認したが登録されていなかった番号があった。 長門か。珍しいな。 「…………」 どうしたんだよ、黙り込んで。用があるんじゃないのか? 「別に」 「お前が用も無しに連絡するなんて珍しいな」 長門は電話の向こうでしばらく黙った後、か細い声を出した。 「あなたが『一人暮らしは寂しいだろうから、いつでも話し相手くらいにはなってやるからかけてこい』と言った」 あれ、俺そんなこと言ったか? 思い出せん。 「……ごめんなさい。彼女でもないのに迷惑だった」 「ちょ…待て。長門!」 切れた……。かけ直すべきだよな。 すぐに今かかって来た番号へとかけ直した。 長門と普通の会話が出来る。それだけでかけ直す理由には十分だ。 「……なに」 「全然迷惑じゃない。むしろたくさん話そうぜ」 「……そう」 そして長門と何分くらい話しただろうか。本物の長門じゃないってわかっててもうれしいもんだよな。 「キョンくーん! ごっはんっだよー!」 電話中だ。しばらくしたら行くから。 「……いい。楽しかった。また明日」 切れた。…やれやれ。わかったよ。さっさと飯を食えばいいんだろう? 「そーだよっ! そしてわたしと遊んでくれる約束じゃん!」 結局、俺は休憩は取れないんだな。 長門もハルヒに毒された今、頼りになるのは古泉だけか。 ……本当に頼んだぞ。この生活は疲れすぎる。ちゃんと戻れたら…そうだな、飯くらい奢ってやるから。 俺は心からそう思い、妹と食事を取るために階段を降りた。 翌朝、自分で目を覚ました俺は妹の攻撃を回避したということになるだろうな。 たまには俺が起こしに行ってみる……か……。 「…………ふふ」 これは何かの間違いだろうか? 隣りに人が寝ている。……しかも下着で。 これは説明を求める必要があるな。……ハル姉。 「昨日は獣みたいだったわよ、キョン」 ま、まさか……いや。記憶にない。そんなはずがあるわけないだろう。 しかしハルヒの力で強引にというのもある。ヤバい、これは非常にやば……。 「いびきがね。あたしがあんたの横に入っても気付かないで寝たまんまなんだもん。ちょっとした仕返しよ」 ……出てけ。 「え? 何言ってんのよ。だから冗談だってば」 お前が出て行かないなら俺が出る。しばらくそこにいやがれ。 「いや、だ、だから冗談だってば……」 俺はさっさと制服に着替えて飯も食わずに外に出た。 非常に不愉快だ。本気で間違いを冒したかと思った。 いくらハルヒの世界だからとは言え、そんなことをしたら間違いなく俺は自己嫌悪で寝込んだな。 ともかくだ。あんな真似をされるのが俺は一番嫌いだ。謝るまでは許してやらん。 そう思ったまま一日を過ごしたが、ハルヒは謝りに来なかった。 少し寂しいが、あいつがそれでいいならいいだろう。 どうせ俺には関係の無いことだ。 ……この考えが間違っていた。あくまでも当事者は俺なんだよ。ついでに古泉も。 まさかこんな形を取って来るとは思わなかったぜ。 ところでだ、一つ質問をさせてもらう。 ゲームと現実の違いはなんだ? ……そう、『やり直しが利く』って所だ。 人間の人生は一度きり。だからこそ面白くもある。 しかし誰にだってやり直したいことはあるだろ? ゲームの世界ならそれが出来てしまう。 ここまで言えばわかるよな。そう、ハルヒの奴はリセットボタンを押したんだ。 おかげでまったく同じ一日目や二日目を体験し、出会い方までまったく一緒だ。 どうなってるんだよ、古泉。 「いやはや参りましたね。まさかリセットボタンを押して来るとは思いませんでした」 「いやはやじゃねえ。これってエンドレスなんじゃないか? ハルヒが気に入らなくなる度に書き替えるんなら」 古泉は溜息をついて俺の肩に手を置いた。 「仕方がありません。僕があなたの攻略本代わりになりますよ。本当ならあなたが自分で気付くのが一番いいんですけどね」 俺に何を気付けと言うんだ。 「ふふふ……とりあえず僕が言えるのはただ一つです。かりそめで良いですから涼宮さんと付き合えるように生活してください」 かりそめなんて無理だ。そんな気持ちを俺は持つ気は無い。 「ならば本心で構いません。あなたの好きな人と付き合えるようにアプローチしてください。涼宮さんを選ぶなら間違いなく帰れますが、他の人でもあるいは……」 わかったよ。どーせゲームのような世界だ。しっかりとアプローチしてみるさ。 とりあえずその場を離れた。本心での好きな奴、か。 なんだかんだでハルヒが気になるんだよな……。 「さぁ帰るわよ!」 ちょくちょく仲良くし始めた辺りから、俺はハルヒと毎日一緒に下校していた。 今日も同じようにだ。現実はこう甘くはないんだろうけどな。 もし元の世界に戻ったら日付はいつからなんだ? それとも普通に時間が流れてて俺と古泉だけが寝てたとかになるのか? まぁそんなもん考えてもしょうがないか。とりあえずは古泉の言う通り、誰かと付き合えるようにアプローチするだけだ。 「ね、ねぇキョン。ちゃんと聞いてた?」 ん、あぁ。ごめんハル姉。ボーッとしてた。 「だからさ、昔みたいに一緒に寝よっか?」 「はい?」 「一緒の布団で寝たいかなって……い、嫌ならいいわよ! ただ懐かしい思い出に浸ろうと思っただけなんだから!」 俺は恋愛なんてしたこと無いが……これが『フラグ』ってやつか? いや、まだ油断してはダメだ。 一応ここはO.K.を出しておいて、きちんとタイミングを見計らってその先、つまり告白をするべきだな。 「しょうがないな。別に構わないぞ。俺も懐かしい思い出に浸りたい気分になったからな」 「じゃあ決まりね! 帰ったら枕だけ持ってあんたの家に行くから」 ハルヒは俺を置き去りに走り去った。部屋を荒らされたく無かったら俺も走って帰れってことか。やれやれ。 しかし、あいつのあんなに喜んだ顔は初めて見たな。あんな顔して笑うのか。 元の世界に戻ったら少し喜ばせてみるか。……なんてな。 真っ暗な部屋に女と二人って緊張するな。それがどれだけ近い相手だとしてもだ。 「ふふふ、懐かしいわね」 「あぁ、懐かしいな」 ドキドキでそれどころでは無いが言っておく。ハルヒと一緒に寝た記憶なんか俺には一切ないからな。 「ねぇキョン。こっち向いて」 そりゃ無理だ。恥ずかしい。 「向きなさい」 だから無理だと言っている。 「向け!」 やれやれ。そんなに大きな声を出すんじゃねーよ。 俺はイヤイヤながらハルヒの方に顔を向けた。うお、近い。 「ふふふ。いい子ね、キョン」 いい子って歳でもないが黙っておくか。ハルヒの俺の頭を撫でる手が気持ちいいからな。 「あたしドキドキしてるかも。だってあんたの顔がこんなに近いんだもん」 暗闇の中で確認し辛いが、ハルヒの顔は赤みを帯びているような気がする。 しかし……なんだ。限界だ。告白していいか? 顔が近すぎて平常心を無くしそうだ。まだ早いのか? えぇい、わからん。どうせなら谷口に攻略法でも聞いておくんだった。 「あたしね、本当は言いたいことがあったのよ」 「なんだよ。はっきり言えよ。ハル姉らしくないな」 ハルヒはほんの少し『溜め』を作った。そして口を開いた。 「好きよ。キョン」 あぁ、そうか。だからこいつは寝る前なのに髪をポニーテールにして来たのか。 気がつくと俺は一人でベッドに寝転がっていた。 「キョンくん起きて~! あれ、起きてる……」 そして響いてくる妹の声は幼くて、身長もだいぶ縮んでいる。戻ってきたのか。 「わたし、シャミ連れて先に下に行ってるからすぐに来てね!」 妹はそう言って変な歌を歌いながら階段を降りて行った。 あんな中途半端でハルヒは満足したのか。俺は確実にO.K.を出すつもりだった。 『向こうの世界』では俺達は愛し合っていて、幸せになれるはずだった。 ならば何故、あいつはこの世界に戻したんだ? 今の俺なら簡単に答えが出せる。そう、あいつはただ俺に告白をしたいが為に『あっちの世界』に連れて行ったんだ。 素直じゃないあいつだからな。こっちの世界で俺に告白なんて死んでも出来なかったんだよ。 自慢してるつもりも無いし、古泉みたいにハルヒのことを解るわけでもない。 つまりあれだ。極端に言うと『都合のいい妄想』ってやつだ。 まぁ妄想だろうが暴走だろうが知ったこっちゃ無い。今やりたいことは一つだ。 俺は携帯を開いて電話をかけた。 「こんな朝早くに何よ。内容次第じゃ罰ゲームだからね?」 「屋上と中庭、どっちが好きだ?」 「意味わかんない。どっちかと言うと屋上よ。それがどうしたのよ?」 「50分以内に来い」 電話を切り、学校へ行く支度を終えて俺は家を出た。飛ばせば間に合うはずだ。 何をするのかって? やり残したことをするだけだ。 「50分以内とか無理矢理ね! 何をするのか教えてもらおうじゃない!」 ハルヒは屋上に見事に50分以内に来やがった。こいつの運動能力はどうなってるんだ。 「まぁいい。ほら、寝ろ」 俺はその場にカバンを枕にして寝転がり、ハルヒの為に腕を横に伸ばした。 そうだ。さっきの続きをするんだよ。文句あるか? 「な、なによ唐突に。あたしは神聖なSOS団の団長よ。そ、そんなこと簡単にさせてあげると思ってんの? ま、まぁ、あんたがどうしてもって……」 「どうしてもだ」 ハルヒはなんというか遠慮がちに俺の腕に頭を乗せた。さて、これからが本番だ。 「今日はもちろん話があるから呼んだわけだ」 「……何よ。改まって」 俺はそんなに改まってるか? まぁいい。人生初の告白と言うものをさせてもらおう。 「好きだ。ハルヒ」 飾らない言葉ってのが一番効果があると俺は思っている。だからこんなに味気無い告白をした。 「へぇ。偶然ね。あたしもよ」 そんな平然としてるフリなんかするなよ。顔真っ赤なくせに。でもって口許が緩んでるぞ。 「う、うるさいわね。そんなこと無いわよ!」 向こうで見たハルヒの本当に嬉しそうな顔がそこにはあった。 喜んでもらえたなら何よりだ。 「……で、こっからどうすんのよ。告白して終わり?」 どうすんのってなんだよ。俺はこれで幸せだ。 「あたしはまだ満足じゃないわ。あたしを喜ばせてよ」 こいつは何を言ってやがる。とりあえず青春真っ直中の俺の妄想からすると、女を喜ばせるってのは……それは無いよな。 ならばアレの次に喜ぶっつったらこれか? 俺は横を向いて、ちょんとハルヒの唇に俺の唇を触れさせた。 「一応学校だしこれで許してくれ」 また顔が赤いってのは黙っててやろう。 「うん、幸せよ。バカキョン」 やけに素直だな。まぁいいか、幸せだって言ってるんだし。 ただ一つ。決まったことがあるな。 「幸せ……」 隣りで目を瞑ったこいつの為に今日の授業は完全にサボりだってことだ。 おわり
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(あらしのようなおとこ) コジマが新井を呼ぶときのあだ名の一つ。
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鬼のような歌 1.28 横山 ソー・レッツ・ゲット・トゥルース(Mr.Children) 丸山 鬼のパンツ(作詞者不詳・L.デンツァ作曲) 2.04 大倉 砂浜(RIZE) 村上 2002 FIFA World Cup Anthem(vangelis) *
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autolink DC/W23-077 カード名:夢のような夜 葵 カテゴリ:キャラクター 色:青 レベル:3 コスト:2 トリガー:1 パワー:10000 ソウル:2 特徴:《新聞》?・《ウェイトレス》? 【自】あなたのクライマックスがクライマックス置場に置かれた時、そのターン中、このカードのパワーを+1500。 【自】あなたのクライマックス置場に「“お兄ちゃん”へ」が置かれた時、前列にこのカードがいるなら、あなたは自分の控え室の「“お兄ちゃん”へ」を1枚選び、山札に戻してよい。そうしたら、その山札をシャッフルする。 【自】このカードがフロントアタックされた時、あなたは自分の山札を上から1枚見て、山札の上か控え室に置く。 ……じゃあ、ここなら、大丈夫そうですね レアリティ:RR illust.鷹乃ゆき 12/12/26 今日のカード。 13/01/25 今日のカード。 葵にもレベル3の2枚目が登場。 CXが置かれた時にパワーがアップする効果を持っており、置かれるCXは何でもいいため、パンプがなかった前回とは違い自力で盤面をとれる可能性が高くなった。 そしてこのカードの最大の特徴であるのが対応CXである“お兄ちゃん”へが置かれた際、 控室にある同名CXをデッキに戻すというもの。 CXをデッキに戻せるという事はキャンセル率が上がるという事でもあり、最終局面であるレベル3で生き延びやすくなるというのである。 控室に“お兄ちゃん”へが3枚落ちており残りの1枚を手札に持っている状況でこのカードを3枚並べる事で、CXを3枚とも戻せるという芸当も可能になった。 もちろん3枚並べるのはロマンであろうが、2枚くらいなら現実の範囲なのでやってみる価値はあるかもしれない。 フロントアタックされた際のデッキトップチェックも持っており、攻守万能な良カードといえるだろう。 後衛にアンコール付与応援を持つフラワーズは大忙し! 葵を出しておけばかなり固くなるかもしれない。 そして特徴が魔法から新聞に変わっているので、葵デッキならず新聞にも投入が検討できる。 何より今回も描き下ろし。CXのフレーバーと合わせて葵ちゃんファンには悶えるシチュエーション間違いないであろう! ・対応クライマックス カード名 トリガー “お兄ちゃん”へ 本
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目覚めは鈍痛と何かが折れたような不快な音で始まる。 朦朧とした意識と霞む目に映るのは、すべてがさかさまになった高価な調度品や部屋の内装。 しばらく呆けてから、ここは自分の部屋で、今自分はベッドから転げ落ちて首をしたたかにうちつけ、目が覚めたのだ気付いた。 漏れ出る欠伸の大きさと、部屋に満ちる冷たい空気から、まだおきるにはずいぶんと早い時間に目が覚めたようだ。 本当は寝なおしたいところだが、自分の姿を見下ろせば寝間着ですらなく、くしゃくしゃになった高そうなシャツとスカートであり、このまま寝る気にはとてもなれない。 さりとてわざわざ着替えて寝なおす気にもなれず、私はしょうがなくベッドに座りこみ、毛布を膝にかけてただ朝が来るのをじっと待つことにする。首が猛烈に痛む。不快な音はきっと首からしたのだろう。益体も無い思考だけが頭を巡る。 兄様がここ、鬼面都市バドッカを出てからもう3日。 兄のいないこの町は、そんなことを気にせずにいつも通りの日々を迎えようとしていた。 世界はとても大きくて、空に浮かぶ7つの月が落ちでもしない限り、多少の差異は乗り越えてしまう。 私はとてもそんな風にはなれない。 置いていかれてしまった。 私の大事な人に。 気付けば窓から明るい陽光が差し込んでいる。 どうやら膝を抱えたまま居眠りをしてしまったらしい。 どうにも、調子がよくない。それは心のせいなのか、体のせいなのか、よくはわからない。 また思考が陰鬱な方向に流れようとした時に、部屋のドアをノックする音で思考が現実に引き戻される。 なんだか恨みがましいような、見当違いの感情を抱いてドアのほうを向きながら「誰?」と尋ねる。 「お召し物をお持ちしました。それと、朝食の準備が出来ております。」 ああ、もうそんな時間なのか、と思いつつ、メイドの・・・アリーアさんだったかな、に返事をしてドアをあける。 くしゃくしゃの洋服と寝癖だらけの私をみて驚いた顔をしながらもなんでもない風にしていてくれる。ちょっとだけありがたい。 「今着替えるから、少し待って。」 簡潔に告げてから着替えを受け取り、新しい服に袖を通す。あざとくなりすぎないようにシンプルな意匠の、高そうなフリルのついたシャツとマリースカート。こういう可愛らしい服は好きなハズだけど、なんとなく暗い気分になる。唇が何か紡ぎそうになるのをこらえながら、脱いだ服をアリーアさんに預けて食卓に向った。 いつも食事を取る広間の品のある木のテーブルには、私ひとり分の朝食が用意されている。 父様はいつも、朝から夜遅くまで沢山の依頼をこなすので、いつも朝早くに朝食を済ませ、家を出てしまう。 昔は父と一緒に食事が摂れないことを残念がり、食卓に同席することをせがんだものだが、今は逆に父が居ないことに安堵を覚える。 いつから自分はこんな風に誰かの不在に胸をなでおろすようになったのか、胸中に湧き上がる複雑な思い・・・はとりあえず置いておかなければならない。 なぜなら、今まさに目の前で私の為に用意されたであろう、今の自分には少し多すぎる気もする朝食を侵略している人物が居るからだ。 まだ書きかけ 頑張って完結を目指す
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autolink LS/W05-022 カード名:夢のような生活 カテゴリ:イベント 色:黄 レベル:3 コスト:4 トリガー:0 ● ● あなたは相手の前列のレベル2以下のキャラを1枚選び、手札に戻す。 すぅ… レアリティ:C illust.美水かがみ ホラーは苦手とジャックブラザーズを足して、黄色らしいバウンスを添えて割ったようなカード。 3/4とカウンターイベントの中では屈指の重さを持ち、レベル3イベントの癖に対象とできるのはレベル2キャラまで。 色々と制限の厳しいカードである。 とは言えど、前述の2枚の使い方をそのまま流用できる点は中々強力。 弓、復活!の項にもあるとおり、カウンターステップでアタック中のキャラを除去すると、ダメージステップ以降には進まないので、ダメージを受けない。 また、バウンスであるため、キャラを守ることも出来、返しのターンでそのラインでダイレクトアタックも可能になる。 また、アタック時を発動トリガーとするCXシナジー等の能力を持つカードが後に控えている状況なら、 そのカードをバウンスしてやればそれらの能力の発動を封じることも可能。 重さ、使用制限こそ厳しいが、それさえ克服できるのならば非常に小回りの効く便利なカード。
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ノイズのようなもの 「ザザ…ザ…でー…ジジジジジた……こうザザザザしん…ザザザかんザザ…ジジジジジりょう……」 概要 分類 天使? 主な生息地 不明 知能 皆無 属性 不明 危険度 S 備考 極めて危険変身後、無差別殺戮を開始する 外魔の一種。 外見は宙に浮かぶ半透明なテレビの砂嵐の映像で常に砂嵐のような音を立てている。 ナイアルラトホテプによって生み出された怪物で土地や周囲にいる人の記憶を無差別かつ強制的に読み取り、記憶されている人や魔物へと自身を変化させることが出来る。 ただし、ある程度明確なイメージが必要であり、また個人個人の記憶はその人の主観も混じるため必ずオリジナルと同じになるわけではない。 知能は殆ど持っておらず、無差別に変身しては周囲にいる人間に襲い掛かり全滅させるだけの存在。 変身後はオリジナルに近い知能と人格を持つが目的は必ず「周囲の人間を全滅させる」になる。 技・魔法 読み込み 付近の土地や人々の記憶を無差別かつ強制的に読み取る。 投影 読み込んだ記憶に存在する人や魔物に変身する。 経歴 2008年11月16日魔物討伐なりチャ 森にてらくがきらいおんさんやらくがきそうりょらと討伐隊が交戦している最中に出現。 土地の記憶を読み込んで落書き魔道士に変身。 ニナに倒されるが今度はヴァルザに変身。 最後はラウルに倒され消えていった。 2009年1月24日遺跡なりチャ 遺跡内部にて登場し、一緒にいたゲラヘッドサウルスに変身し暴れるもすぐに敗北(この際にベルゼエルに 「ていうか、あんた! わたしの研究作品パクってる癖に、よわすぎでしょ! ばーか!」 と罵られている)。 続けてルティカに変身するが身体を使いこなせず、ディプスにあっさりと倒され消えていった。 2009年8月2日雨討伐なりチャ 偽エンジェル、アイスエイジらと共に登場。 ゼフィスに変身してマルシェ、テトらを襲うが攻撃を当てられず鵜飼に頭をかち割られ、続けてビデファに変身しセラ、鵜飼と戦うも敗北し、消えていった。 2009年9月24日海賊討伐なりチャ 海賊と交戦するアイラスの前に登場。 ベルファストに変身してアイラスを襲う。 一時はアイラスを追い詰めるが割り込んできたベルファスト、怒り狂うアイラスの猛攻で多大なダメージを負い、最後はベルファストに両断されて消滅した。 2009年10月12日 山岳討伐なりチャ 山地で戦闘を行うカルネア、茜飛らの前に登場。 ティマフに変身し、ティマフを襲う。 ティマフと一進一退の攻防を繰り広げるが『ヴェエメンテ』の詠唱に驚き、突っ込んで来たティマフを迎撃し、重傷を負わせる。 そのままティマフにトドメを刺そうとするも、ユキの強烈な電撃に焼き尽くされ、消滅した。 2010年1月6日討伐なりチャ 湿原で戦闘を行うナーム、マリヴィンらの前に登場。 カルネアに変身し、ムヴァ、ナームと交戦。 「ダウンバースト」で広範囲攻撃を行おうとするがヴィダスタの「洞穴陣」でどこかの雪山にワープさせられ、そのまま放逐され凍死して消滅した。 2010年11月25日 山地討伐 山地で討伐を行うティマフ、セラらの前に登場。 シャクナに変身しユキらに攻撃を仕掛ける。 マルムスティーン、ゼフィスの攻撃で致命傷を負いながらも自分を巻き込んだ猛火の濁流を放って消滅した。 2011年2月19日雨討伐 湿地で討伐を行うユカリス、ナームらの前に登場。 セルレアに変身しスピカらと交戦。 圧倒的な風の能力で暴れスピカに重傷を負わせるがスピカの術で地上まで引きずり降ろされナームやユカリスらの集中攻撃を受けて消滅した。 2011年4月10日山地討伐 山地で討伐を行うテトらの前に登場。 ケビンに変身しセツナらと交戦、強力な銃による攻撃でセツナに重傷を負わせ、シャドーに動きを封じられるも吸血鬼化で尚動かんとするが一行の集中砲火を受けて消滅した。 2011年7月17日VSハーデース長編 冥府の王と陰謀の悪魔(サタナス) 第一章『タイコウ女王とエルオラン皇子』 ニーアに生み出されて登場。 ケビンに変身しセルレア、ケビン、ユカリスらと交戦するがカルネアの作りだした隙をケビン、ディプスに突かれ倒された。 2011年9月23日偽物討伐 ニセワープ、ティフスらと共に登場。 ラジャダムに変身しティマフ、ディプス、アゲインストネスらと交戦。 ティマフ、ディプスに深手を負わせるがエーヴェルトとワープの攻撃で致命傷を負い、消滅した。 2012年2月18日の山地討伐 ベリーハンドらと共に登場。 生前のエーヴェルトに変身し、エリオらと交戦し敗走に追い込む。 その後、ザンシュとの交戦に突入した。 2012年12月16日雪原討伐 ホワイトドラゴン、ベ・チャスティらと共に登場。 ヴィーマーに変身し、レイニールやオーエスと交戦するが敗北し、更にボンカーに変身しようとするが力が足りずそのまま消滅した。 2013年12月1日平原討伐 ドウゴ、キララ、ジーヴルと共に登場。 バケルカンに変身し、ドウゴ、ユカリスらを無差別攻撃。 ヒノエに重傷を負わせ、ドウゴらも撤退に追い込み近隣の街を「ゴーストタウン」に変えた。 2014年3月23日山地討伐 アルブリック、プランツエレメントと共に登場。 ザンシュに変身し、アリア、レオンらと交戦するが最後はアスルの攻撃で致命傷を受け、消滅した。 由来 特になし。 アースガルド タタリ ニセモノ ノイズのようなもの ワラキア 天使
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681 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 32 39 ID ZLAFCsLQ 午後8時、結意と別れた俺は夕食の買い物をするために最寄りのスーパーを訪れていた。入り口付近から順当に歩き、目当ての品々をかごに入れてゆく。 さすがに時間が遅かったから、残っていた品揃えも微妙だが…。今日のメニューは…そうだな、明日香の好きなオムライスにでもしようか。 明日香は…まだふさぎこんでるだろうか?俺とて、明日香のことが嫌いなわけじゃない。むしろ、愛している。だが結局、あくまで家族としてのそれでしかない。 俺は…どうすればよかったんだろう。あのまま明日香の気持ちに応えればよかったか?それとも、もっと冷たく突き放せばよかったのか? 馬鹿な俺にだってわかる。このまま中途半端にずるずると引っ張ることがもっとも残酷であることぐらいは。 だから…いずれはっきりさせなければいけない。もう、答えは決まっているんだから。 ♪♪♪♪~♪♪~♪♪♪~ 焼き芋の機械に備えつけられたスピーカーから鳴る軽快な音楽によって俺の思考は現実に引き戻された。 そのまま、とりあえず会計を済ませることにした。今は早く家に帰ろう。その上ではっきりと言わなければならない。 俺は…家を出る。 夜の闇を薄暗い電灯が照らしている、人気の少ない道をひとり歩く。一歩踏みしめるたびに決意を反芻する。 今度こそ逃げちゃだめだ。明日香がどんなに悲しもうと、はっきり言う。それがきっとお互いのためだから。 明日香だってこれから先いくらでも出会いがあるだろう。俺よりもいいやつなんかごまんといる。 だから…きっといつか傷は癒えるはずだ。自分勝手な願望ではあるが、今の俺にはそうなってくれることを祈るしかできない。 そんなことを考えているうちに、とうとう家の前に着いた。一度深呼吸をし、ドアノブに手をかける。 「ただいま、明日香。」と、決まりの挨拶をする。が…当然返事はない。俺は靴を脱ぎ、中へと上がった。ふいに、あることに気付いた。 682 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 33 27 ID ZLAFCsLQ ―――明日香の靴がない。外出しているのか…こんな遅くに、一体どこへ? いろいろと思案してみる。まず昨日のこと…あんなことがあったからにはやはり家には居づらかったのだろうか? そこで、俺の思考はひとつの可能性にたどり着いた。…家出か? とにかく、明日香が心配だ。俺は再び靴をはき、外に出ようとした。 「待ちなさい、飛鳥。」 誰かに呼び止められた。俺は声がした方へ向き直る。そこにいたのは…明日香そっくりの少女だった。 もし髪がストレートではなくツインテールであれば、明日香にしか見えないだろう。けど、俺はこの少女を知っていた。 「亜朱架姉ちゃん…?なんでここに?」 俺が疑問に思ったのは当然だ。なぜなら姉ちゃんは父さんたちと一緒に海外へ行っていたはずだから。 「帰ってきたのよ…久しぶりね、飛鳥。」 亜朱架姉ちゃんは、神坂家の長女だ。今年でたしか20になる…が、どうみても幼女だ。最後に会ったのが四年前だけど、その時から全く変わってない。ただ、やはり言動は大人びいているが…。 「明日香を探すんでしょ?私わかるわよ、居場所。」 「どこにいるんだ!?姉ちゃん!」 「あんたの彼女のとこよ、間違いないわ。」 …おかしい。なんでついさっき再会したばっかなのに結意のことを知ってるんだ?それに、明日香の居場所も…だめだ、今はそれどころじゃない。 俺はすぐさま結意の家に向けて走り出した。 683 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 34 31 ID ZLAFCsLQ それから数分後、目的の場所へたどり着いた。ドアを引く。…鍵がかかっていた。俺は乱暴に呼び鈴を数回押し、怒鳴った。 「開けろ結意!俺だ、飛鳥だ!」 だが、いっこうに開かれる気配がない。 「どきなさい、飛鳥。」 あとを追ってきた姉ちゃんが俺を押し退け、ドアに正対する。すると、目を閉じて手をドアにかざした。 直後、閃光がまたたいた。いや、正確には光と言うより…闇。さしずめ黒い光、か?それからドアは、音もなく開いた。 「姉ちゃん…今のは?」 「鍵を破壊したのよ。緊急事態だし…。」 「そうじゃねえよ!今の光はなんなんだ!?」 「…後で話すわ。それより……」 そう言って姉ちゃんは部屋の中を指さす。俺は黙ってうなずき、部屋へと上がり込んだ。なにか声がする。…どうやら、明日香は本当に来ていたようだ。 「この泥棒猫!あんたなんかがいるから兄貴は…兄貴は私を見てくれないのよ!」 「あなたは飛鳥くんの妹なのよ?私がいなくても、飛鳥くんはあなたには振り向かないわ。」 「うるさい!あんたなんか…死んじゃえ!」 684 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 36 19 ID ZLAFCsLQ 明日香は激昂し、手にもったナイフを結意に差し向けた。俺はすかさず止めに入る。 「やめろ明日香!こんなことしてなんになる!」 「どいてよお兄ちゃん!そいつ殺してやるわ!」 結意に向けてナイフごと突貫せんとばかりの明日香。とりあえず、後ろから羽交い締めにした。 「離して!あの泥棒猫殺さなきゃいけないの!」 こんな小さな体のどこにそんな力があったのか、今にも振りほどかれそうだった。 ―――――そのとき、再び黒い光がまたたいた。その一瞬で、ナイフは失せていた。明日香も、気を失っていた。 「…間に合ったわね。」 肩で息をしながら姉ちゃんが近づいてきた。どうやらあの光を放つのは体力を消耗するみたいだ。そのまま明日香の額に手をかざし、三たび黒い光を放つ。 「飛鳥くん…この子は?」 いきなりの明日香に瓜二つな幼女(?)の登場に結意は戸惑っていたようだ。 「俺の姉ちゃんだよ。亜朱架ってんだ。」 「…また"あすか"?」 「ああ…親父たちもなんたってこんな紛らわしい名前つけたんだろな?」と、少しでも場をなごませようとおどけて見せる。 「飛鳥、もう行きましょう。あ…結意さんでしたっけ。鍵、壊しちゃったから。明日すぐ業者をうちから手配するから今夜はチェーンロックで代用してね。 …ごめんなさいね?」 姉ちゃんは丁寧に謝り、軽くお辞儀をした。俺は、明日香を担いで結意の家を後にした。 685 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 37 40 ID ZLAFCsLQ 「なあ…さっき明日香になにをしたんだ?」俺は姉ちゃんへそう問いかけた。至極当然な質問だ。 「記憶を奪ったわ。正確には、明日香があんたに拒絶された日の記憶をね。」と、姉ちゃんは答えた。 「じゃあ、あの光はなんなんだ?鍵を壊したり、ナイフを消し去ったり…普通じゃないだろ、あれは!」 すると姉ちゃんは一考したあと、語りだした。 「私…人間じゃないのよね。」 「…はぁ?だって姉ちゃんは…」 「普通に見れば人間と変わりないわ。でも、厳密には違うの。あんた、生物の授業で習わなかった。2n=46って。」 「それなら習った。人間の染色体の数だよな。」 「そうよ。でも私は…49本あるの。」 「…多くねえか?なんでそんなにあるんだよ。」 普通に考えて意味が分からなかった。人間の染色体が49本なんて、聞いたことない。 「たぶん…いえ、絶対お父さんのせい。あんた、お父さんがなんの研究してか知ってる?」 「いや…興味なかったからな。」 「…私の遺伝子の研究よ。普通なら、こういうのは染色体異常の類として扱われるんだけど…ダウン症とかがそのいい例ね。でも私はなんの欠陥も今現在は見当たらないわ。そのかわり……」 はぁ、とため息をつき、姉ちゃんは続けた。 「年とらないのよ、私。それに、さっきの光。見たでしょ?あれは…そうね、"消去の光"ってとこかしら。」 「消去の光?なんだそりゃ。」 「任意のものを消し去れるのよ。さっきのナイフみたいに……。記憶だって、この光で奪えるわ。………こんなのって、人間じゃないでしょ?」 少し哀しそうな表情で微笑みながら姉ちゃんはそう言った。 686 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 38 59 ID ZLAFCsLQ 「お父さんたちの研究テーマは…そうね、"新人類"とでもいったところかしら。今も、日本のとある極秘の施設で研究してるはずよ。海外なんてのはたんなるカモフラージュ。それとね……」 そこで切り、俺…いや、俺たちへと向き直る姉ちゃん。 「あんたたちもそうなのよ。49本。」 「……俺たちも?でも…」 「なんの変化も見られない、でしょ?それもそうよ。それこそが私だけが研究材料として適任だった理由なんだから。でもね…一つ問題があるのよ。」 「…? 言ってみろよ。」 「………飛鳥、もう結意さんとはセックスした?」 ―――――な、なんてことを訊いてくるんだ姉ちゃん!あまりに突然だったため、どう答えたらいいかわっかんなくなってしまった! まあ…それだけで見抜かれたみたいだけど。 「…やっぱり。」 ほら、"やっぱり"! 「飛鳥……言っとくけどあんた、結意さんとのあいだに子供つくれないわよ。」 ……今度は、姉ちゃんの言ってることの意味がわからなくて沈黙してしまった。子供ができない?俺と結意の? 687 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 40 00 ID ZLAFCsLQ 「まだ授業で教わってないのね…ほんと、ゆとり教育ってダメね。いい?たとえば、犬とネコが交尾したとしても子供はできない。これはわかるでしょう?」 「ああ。」 「それと同じ。"種"が違うの。わかりやすくいうと…おたがいの染色体の本数が一致しないと子供はできないの。つまり、ヒトと猿が交配しても子供はできない。 だから……私たちは普通の人間とのあいだには子供はつくれない。わかった?」 「……なんとか。」実際頭のなかごっちゃだけど…言いたいことはわかった。 「一応、方法はあるわ。」再び姉ちゃん。「それはいったい?」とりあえず尋ねてみる。 「近親相姦なら子孫を残せるわ。あんたと明日香がくっつけばいいのよ。」 「…………!?あ、明日香と!?」 「そ、明日香とよ。私、べつに子供ほしくないし…でも明日香はその気満々みたいだし。はやいとこくっついちゃいなさい。うん、それがいいわ。」 なんかとんでもないことを言ってる気がするが………いや、言ってる! 「でも、俺たち兄妹だぞ!そんなこと―――――」 「あんた、明日香が嫌いなの?私はどうしてもあんたと明日香がくっついてもらわなくちゃ困るのよ!」 …なんで困るんだ?とは言い返せなかった。姉ちゃんの鬼気迫る表情に怖気ついてしまったからだ。 「どうしてもっていうなら…しかたないわね。」俺に手をかざす姉ちゃん。 瞬間、黒い光がまたたいた。対象は…どうやら俺みたいだ。 688 :天使のような悪魔たち 第6話 ◆UDPETPayJA [sage] :2008/11/09(日) 19 41 06 ID ZLAFCsLQ * * * * * 「…あれ、姉ちゃん。俺何してたんだ?」 「なんか、ぼーっと考え事してたわよ。しゃきっとしなさいしゃきっと!」 なんだ…?このもやもやした感覚。まるで、 「ねえ奥さん、こないだのアレお買い得だったわよねぇ!」「アレって?」「だから、アレよアレ!えっと…なんていったかしら?」みたいな感じだ。 まあ、いいか。明日になればまた結意特製の怪しさマックスの弁当箱が下駄箱に入っていることだろう。そして繰り返される日々、か。 そう思うと足取りが重く感じられたが…まあめげずにがんばろう、俺! 「飛鳥…ごめんなさいね?」突然謝りだした姉さん。 「何がだ?」と思わず聞き返す。理由がわからなかった。何を謝ってるんだ? 「ううん…なんでもないわ。ただいま、飛鳥(明日香)!」