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本編に関係ない余計な情報が多すぎる。あくまで日本国召喚のwikiなのに、ミリオタの自己満足にうんざり - 名無しさん (2020-03-08 04 50 14) 軍事系の素人への解説も兼ねてるからこれでいいだろ - 名無しさん (2020-03-08 12 58 53) よくない - 名無し (2020-03-08 15 27 10) まあ肝心な作中での話にたどり着くまで長いから概要、作中での話、兵器の小ネタの順番にすれば? - 名無しさん (2020-03-08 16 16 28) 簡略化するとwikipediaのコピペか劣化版になる。これ全部で説明になってるから順番変えると意味が通じなくなる。 - 名無しさん (2020-03-08 16 39 05) 調達変更の件で、最近聞こえて来た噂では、メララ127mm砲の実性能があまりMk.45と大きく差が無い事と、日本製鋼でライセンスしてるからとの事 - 名無しさん (2020-05-19 22 41 57) 日本国召喚のwikiの、その中の兵器の解説ページなので妥当ではある - 名無しさん (2020-10-25 04 05 20)
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第113話 フェイレの決断 1484年(1944年)1月17日 午後9時30分 トアレ岬西方20マイル 巡洋艦部隊の各艦長は、最初、戦いはすぐに決着が付く物と思っていた。 相手は巡洋艦2隻、こちらは巡洋艦3隻。 しかも、2隻はブルックリン級に次ぐ重火力を有したクリーブランド級軽巡である。 これまでの戦歴から見て、敵巡洋艦2隻はなんとか討ち取れるであろうと、誰もがそう楽観していた。 「敵巡洋艦、右舷に付きます!距離18000!」 軽巡洋艦クリーブランドの艦橋に、CICから報告が送られる。 「どうやら、ヴァルケンバーグ司令は敵戦艦2隻を上手く引き付けたようだな。」 クリーブランド艦長のローレンス・デュポーズ大佐はそう呟いた後、すぐさま命令を発した。 「砲戦用意!主砲、右砲戦!」 「主砲、右砲戦、アイアイサー!」 デュポーズ大佐の命令を受け取った砲術科員が、せわしなく動き回る。 クリーブランドの前、後部に設置されている54口径6インチ砲12門が、右舷側の敵艦隊に向けられていく。 「艦長、オークランドより通信。旗艦及びクリーブランド、目標敵1番艦。コロンビア、目標敵2番艦。」 「敵1番艦との戦いは早く終わりそうだな。」 デュポーズ大佐は、余裕を含んだ口調で言った。 敵巡洋艦は、距離13000まで距離を詰めた瞬間、米巡洋艦群から先制砲撃を受けた。 敵巡洋艦もすかさず照明弾を打ち上げ、闇夜に浮かぶ米巡洋艦目掛けて、7.1ネルリ砲弾を撃ち込んで来る。 オークランド、クリーブランドは敵1番艦、コロンビアは敵2番艦に対して射撃を行った。 クリーブランドは、定石どおり交互撃ち方から始めたが、オークランドは初っ端から5インチ連装両用砲を撃ちまくった。 向けられるだけの5インチ砲が5秒、早くて4秒おきに火を噴く。 それに対し、敵1番艦は20~24秒おきに6発の7.1ネルリ弾を撃って来る。 意外な事に、最初に直撃弾を得たのは、敵1番艦であった。 射撃開始から僅か1分で、敵1番艦の第1斉射弾がオークランドの周囲に吹き上がり、次いで中央部に命中の閃光がきらめく。 「オークランド被弾!」 「なに!?」 デュポーズ艦長は思わず目を剥いた。 オークランドの中央部付近から、うっすらと煙が吹き上がっているが、幸いにも致命傷には至らないようだ。 逆に、オークランドは14門の5インチ砲を狂ったように撃ちまくった。 5インチ砲弾の曳光弾が、敵1番艦に降り注ぐ。発射速度も速いため、投射弾量は敵1番艦と比べ物にならない。 早くも敵1番艦に2発、3発と、命中弾が相次ぐ。 敵1番艦が次の斉射弾を放った。この斉射弾は、またもやオークランドを捉える。 オークランドの後部第4砲塔が7.1ネルリ弾に吹き飛ばされた。 一方、クリーブランドの第5射が敵1番艦を夾叉する。 「ようし、もう少しで命中させられるな。命中弾を浴びせれば、後は急斉射に移行して一気に叩き潰す事が出来る。」 デュポーズ大佐は余裕の表情で言った。 敵1番艦は、オークランドに砲弾2発を当て、火災を起こさせているが、敵2番艦には既に、5インチ砲弾6発が命中している。 更にクリーブランドの斉射も加われば、敵1番艦は5インチ、6インチ砲弾の嵐を受けて、たちまち廃艦となるであろう。 その時、 「オークランド魚雷発射!」 見張りから意外な報告が届く。 「魚雷だと?距離が遠すぎるぞ。」 デュポーズは、オークランド艦長の判断に眉をひそめた。 アメリカ海軍水上艦艇の搭載する魚雷は、前年の12月から新型のMk-17魚雷に更新されている。 この魚雷は、本来なら1941年の時点で開発が中止されているはずであったが、アメリカ海軍は開発を続行し、1944年10月に完成した。 Mk-17は、Mk-15と比べて性能が向上している。 弾頭の炸薬量は、Mk-15が370キロであったのに対し、Mk-17は400キロを搭載できる。 航続距離は、計画値通りには行かなかったものの、46ノットで15000メートルを走破できるため、Mk-15魚雷より有用な魚雷と言える。 ただ、どんな性能の良い魚雷でも、及び腰の発射では当たる物ではない。 現在、敵巡洋艦2隻と米巡洋艦群との距離は、まだ12900メートルもある。 この状態で魚雷を放っても、命中するのは運次第となる。 敵巡洋艦に、クリーブランドの第6射が降り注ぐ。これは、1発が敵の後部甲板に命中した。 「よし、一斉撃ち方用意。次から飛ばすぞ。」 デュポーズ艦長は、頃合良しと見て、次のステップに進む。 「コロンビア、敵2番艦を夾叉しました!」 後続のコロンビアも、ようやく敵2番艦に夾叉した。 いきなり、クリーブランドの周囲に6本の水柱が吹き上がる。 「いかん、こっちも夾叉された!」 束の間、デュポーズ大佐はひやりとなる。敵2番艦を相手取っているのは、後ろのコロンビアである。 もし、コロンビアが敵2番艦に梃子摺れば、その分クリーブランドは敵2番艦の射弾を受け続ける。 クリーブランドは、下手な重巡顔負けの防御力を有しているが、それでも7インチ相当の砲弾を立て続けに喰らえば、 いずれは致命傷を負ってしまう。 (頼むぞコロンビア。こっちには救出した味方と、乗員達がいるんだ。手っ取り早く片付けてくれよ) デュポーズ大佐は、心中でコロンビア艦長に願った。 クリーブランドは、この日最初の斉射を放った。 12門の6インチ砲が全て火を噴き、10000トンの大型軽巡が一瞬だけ、左舷に傾く。 第1斉射からきっかり6秒後に、第2斉射が放たれる。そして、そのまた6秒後に砲弾が砲身から叩き出されて行く。 ブルックリン級から受け継いだ、6インチ砲弾の急斉射だ。 クリーブランド級軽巡に乗る乗員達は、この急斉射のことをブルックリン・ジャブに因んで、クリーブランド・ジャブと呼んでいる。 第1斉射弾は1発だけが、敵1番艦の中央部に命中する。第2斉射弾は一気に3発が、敵1番艦の後部や中央部に突き刺さった。 第3斉射弾は3発が、前、中、後部と、敵1番艦の艦体に満遍なく命中した。 ふと、この艦に乗っているフェイレの事が気になった。 メンバー達はともかく、連れの青髪の女性は、今までアメリカ艦に乗った事も無ければ、このような本格的な海戦を体験した事も無い。 (恐らく、初めての事だらけで頭が混乱しとるかもしれんな) デュポーズ大佐はそう思いながら、フェイレが艦内に割り当てられた部屋であたふたとする様子が脳裏に浮かんだ。 この時、急に敵1番艦が回頭を行った。クリーブランドの放った第5斉射弾が全て、敵1番艦の左舷に落下する。 オークランドの射弾も全てが外れ弾となる。 「敵1番艦、取り舵に急転舵!」 「くそ、オークランドの放った魚雷をかわしたせいか!」 デュポーズは腹立たしげに呟く。 この時、敵1番艦には、オークランドの放った魚雷が迫っていた。 魚雷は、1本が艦首に突き刺さろうとしていたが、敵1番艦の艦長は咄嗟に舵を切り、難を逃れた。 この急転舵で、それまで良好だったオークランド、クリーブランドの射撃精度が一気に悪くなった。 敵1番艦は魚雷を回避したあと、また現針路に戻ったが、オークランドとクリーブランドの射弾は敵艦を捉えられない。 「一斉撃ち方やめ!」 デュポーズがそう命じた時、いきなりガァン!という音が鳴り、同時に艦橋が強い衝撃に揺さぶられた。 「右舷中央部に被弾!火災発生!」 被害報告が艦橋に届けられた。 「ダメコン班!消火にあたれ!」 デュポーズは艦内電話に取り付くや、すぐに消火を命じる。夜間の戦闘では、火災炎は敵の照準をやりやすくする。 そうならぬ為には、素早い消火作業が必要だ。 「交互撃ち方、射撃始め!」 デュポーズは、最初からやり直す事にした。照準が合わない以上、斉射を行うのは無駄である。 まずは、照準を再調整するのが先であった。 再び、クリーブランドが交互撃ち方を開始する。 クリーブランドが交互撃ち方で敵に砲撃を加えている間、オークランドは相変わらず、5インチ砲の急射撃で敵をねじ伏せようとする。 「ほとんど外れじゃねえか。」 デュポーズは、オークランドのあまり上手くない射撃に眉をひそめる。 しかし、投射弾量が多いためか、再び敵1番艦の艦上に命中弾が出始める。 クリーブランドも、第6射でようやく敵1番艦を夾叉した。 10秒後、クリーブランドが再び斉射弾を放った。 オークランドに砲撃を加える敵1番艦に、12発の6インチ砲弾が降り注ぐ。 3発が敵1番艦に命中する。そのうち1発は後部に命中し、砲塔らしき物が爆砕され、細長い砲身が宙に舞った。 ガガァン!と、クリーブランドが再び被弾時の衝撃に揺れる。 オークランドにも、敵1番艦から放たれた砲弾が命中し、何かの破片が飛び散る。 中央部と後部から黒煙を引きずるオークランドだが、先の被弾に怒ったかのように、5インチ砲弾が機関銃のごとき速さで次々と放たれる。 敵1番艦の艦体に、オークランド、クリーブランドから放たれた5インチ砲弾、6インチ砲弾多数が命中する。 5インチ砲弾は、敵1番艦の艦体表面を突き破る事はできないが、その断片が表面上をささくれ立て、魔道銃がギタギタに引き裂かれる。 艦橋に命中した1弾が、艦橋職員のほとんどをミンチに変えてしまった。 高初速の6インチ砲弾が、耐久度の弱くなった甲板を容赦なく突き破り、次々と艦内で炸裂する。 艦内で応急作業に当たっていた敵艦の乗員が、6インチ砲弾の炸裂で床に叩き倒された。 後部艦橋の上部に、6インチ砲弾が相次いで2発着弾した。派手に爆炎が吹き上がり、上部構造物が綺麗さっぱり消し飛んだ。 1発の6インチ砲弾は、敵1番艦の左舷側喫水線に命中する。砲弾の炸裂と共に浸水が始まり、内部に水が溜まって行く。 通常なら、すぐに応急班員が駆けつけて、浸水の拡大を防ごうとするが、応急班員は来なかった。 いや、来れなかった。なぜなら、応急班員の大部分は戦死していたからである。 クリーブランドが再び急斉射に入って10分ほどで、敵1番艦は戦闘力を失った。 無数の6インチ砲弾、5インチ砲弾を受けた敵1番艦は、艦上構想物を全て叩き潰され、全艦が火達磨となっていた。 「敵2番艦沈黙!」 見張り員が敵2番艦の様子を知らせて来る。デュポーズ大佐は、視線を敵1番艦から敵2番艦に向ける。 コロンビアの砲撃を受けていた敵2番艦は、敵1番艦よりはまだマシであった。 しかし、敵2番艦もまた、相次ぐ6インチ砲弾の被弾によって主砲塔全てを叩き潰され、戦闘力を失っていた。 「敵2番艦変針!撤退するようです!」 敵2番艦が回頭していく。戦闘力を失った今、あたら被害を増やす事は愚かであると判断したのであろう。 「賢明な判断だな。」 デュポーズ大佐はそう呟きながら、視線を敵1番艦に向ける。敵1番艦は、今や完全に停止、左舷に傾斜していた。 完全に大破状態である。いや、大破どころか、確実に沈没するかも知れないと、デュポーズは思った。 「オークランドに報告。我、敵弾5発被弾。速力31ノットに低下するも損害軽微。」 デュポーズは、通信員に報告を送らせた。 巡洋艦群は、当初の計画通り、順調に南下していった。 「しかし、敵の巡洋艦も意外とあっけなかったですな。」 緊張が解れたのか、副長がどこか呑気な口調で言って来た。 「そりゃそうだろう。数ではこっちが有利だったからな。おまけに、速射性能の高い艦ばかり集まっているからな。 あの戦いは、勝って当然だよ。」 デュポーズは副長に言い返した。 そのまま10分ほどの時間が流れた。この時、駆逐艦部隊が敵駆逐艦群を追い払ったと言う報告が入った。 それから更に10分ほどの時間が流れ、誰もが緊張から解放され、一息ついていた。 それは、突然現れた。 巡洋戦艦エレディングラの艦橋に、魔道士が慌てた表情で入って来た。 「艦長!探知魔法で敵巡洋艦3隻を捕捉しました!」 魔道士の報告に、エレディングラの艦長は頷いた。 「距離は?」 「約10ゼルドです。速力は約15リンルです。」 第11艦隊司令官イル・ベックネ少将は、隣に立っているロハクス・カリペリウに顔を向けた。 「カリペリウ正師。(魔道士上がりの幹部は、正師の俗称で呼ばれる)目標の巡洋艦です。」 「うむ。」 カリペリウは頷いた。 「陸軍の魔道士が、鍵を載せた小船が巡洋艦に向っていくと伝えておる。恐らく、その3隻の巡洋艦のうち、いずれかに鍵が乗っているであろう。」 エレディングラの魔道士は、トアレ岬の海岸から送られて来た魔法通信を受け取っている。 それによると、アメリカ軍は小船に鍵を乗せた後、沖で待機する巡洋艦に向かったと言われている。 鍵救出に赴いた敵艦隊は、戦艦を含む有力な部隊であった。 そこで、ベックネ少将は待機していた部隊に敵艦隊攻撃を命じた。 他の艦が、アラスカや巡洋艦群と戦っていた時、エレディングラはその場に居なかった。 エレディングラは、敵巡洋艦の予想針路を見越した上で、16日の午後からトアレ岬沖20ゼルドにある無人の入り江で待機していた。 そして、アメリカ艦隊出港の報告が入るや、エレディングラは出撃し、獲物を待ち構えていたのである。 「艦長、照明弾を打ち上げろ。それから、威嚇のために1度だけ斉射を行う。その次は、あなたの仕事です。」 ベックネ少将は、カリペリウに視線を向ける。 「任せておけ。あの実験体とは、北部の施設以来の付き合いだ。あしらい方は心得ておる。すぐに任務を終わらせてやるぞ。」 カリペリウは、自信たっぷりにそう言ったが、ベックネ少将はあまり信用できなかった。 (未経験者が何を言ってやがる。相手は、アメリカ海軍だぞ。こっちの説得を相手が一々応じていたら、今頃こんな苦労なんぞ しなくて済むわな) 「艦長、準備出来ました。」 「照明弾発射!」 艦長が命じた後、エレディングラの第1砲塔から照明弾が発射させられる。 敵巡洋艦群が居ると思しき海上に、赤紫色の光が灯る。 「主砲発射準備よし!」 「撃て!」 艦長の次の命令で、エレディングラは9門の13ネルリ砲から火を噴いた。 この砲撃は、威嚇である。 アメリカ巡洋艦は最大で8ネルリ相当の砲を用いている。ブルックリン級やクリーブランド級は6ネルリ相当の砲を使う。 それに対し、エレディングラの砲は13ネルリだ。敵巡洋艦に2、3発でも命中すれば、たちまち廃艦してしまうほどの威力がある。 この威嚇砲撃で、まずは相手にこちらの存在を知らせる。 そして、カリペリウ正師が敵巡洋艦にいる鍵とやらの説得に当たっている内に、距離を詰める。 敵が拒否すれば、このエレディングラの主砲で持って全て撃沈するだけだ。 「皇帝陛下は、敵が従わぬ場合は、鍵が敵に使用されぬように敵もろとも葬り去れと命じておる。私としては反対であったのだが、 陛下の命となれば仕方が無い。鍵は兵器としても・・・・女としても魅力的であったのだが。」 カリペリウが、心底残念そうな口調で呟いた。 彼としては、自分も参加した大威力攻勢魔法が、実戦で使用される事を望んでいた。 しかし、肝心の鍵は敵の手に落ちている。オールフェスは、連合軍が鍵の真の価値を知れば、連合軍も同じ物を作ると確信していた。 失うだけなら諦めが付くが、その切り札が自らの帝国を滅ぼすという事になると、シホールアンルは自らを滅ぼす兵器を一生懸命作った として、世界中から笑いものにされる。 そうならぬ為には、自らの手で葬ったほうがマシだ。 オールフェスはそう決断し、カリペリウに先の指示を送ったのである。 エレディングラは、敵巡洋艦と急速に間合いを詰めつつある。 敵巡洋艦もこちらと反航している形で進んでいたため、間合いが縮まるのが早い。 「距離10000グレルで回頭。敵巡洋艦の針路を塞ぐ。」 ベックネ少将は、艦長に命令を下す。その横では、カリペリウが何やら呟き始めた。 いきなり、上空が不気味な赤紫色の光に覆われたと思いきや、オークランドの左舷900メートルの海域に、突然9本の水柱が吹き上がった。 「な、なんだ!?」 デュポーズ大佐は、一瞬何が起きたのか理解できなかった。 「艦長!CICより報告!」 「どうした?」 「我が隊の進行方向に、敵艦らしき反応を探知しました!敵艦は1隻、戦艦です!」 「・・・・戦艦。」 デュポーズは、口の中が干上がるのを感じた。 「だとすると、先の水柱は敵艦の砲撃か!」 「艦長、オークランドが旗艦に通信を送りました!」 「砲戦用意!目標、正面より迫りつつある敵戦艦!」 デュポーズ大佐は通信員からもたらされる報告を聞きながら、咄嗟に指示を下す。 反航しているためか、距離はぐんぐん縮まっていく。 「艦長、敵戦艦は30ノット以上の高速で迫りつつあります。現在、距離は22000メートル。」 「30ノット・・・・敵は新鋭艦か。」 デュポーズは、広報にあった敵新鋭戦艦の情報を思い出した。 最近配布された情報によれば、敵の新鋭戦艦は2種類いる。 1つは16インチ相当の主砲を持ち、30ノット前後の速度を有しており、もう1つは、アラスカのライバルのような戦艦で、 主砲こそ14インチレベルと威力は低いが、速度は32ノット以上を出せると言う。 どちらにせよ、軽巡では荷が重過ぎる。闇夜の向こう側にいる敵戦艦が、その新鋭戦艦である可能性はほぼ確実だ。 距離が21000に縮まった所で、艦内電話が鳴った。 「こちら艦橋・・・・分かった。艦長。」 航海科の士官が、デュポーズを呼び出す。 「どうした?」 「艦内の部屋で休んでいた亡命者が、艦橋に来たいと言っております。」 フェイレは、予想外の出来事に困惑していた。 「フェイレ・・・・どうしたの?」 一緒に話し合っていたエリラがフェイレに話しかける。 頭の中で、その男の声が聞こえた。 『久しぶりだな、鍵よ。』 「・・・・・・・・」 『どうした?この便利な魔法を教えた恩師を忘れたかね?』 相手は、見下すような口調でフェイレに話しかけてくる。 「おい、どうしたフェイレ?体調が悪いのか?」 ヴィクターや工作部隊のメンバー達が、不安げな表情を浮かべてフェイレに近寄って来る。 「く・・・・」 フェイレは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。 『あなたは・・・・カリペリウ!』 『おお、覚えていたか。凄いな、鍵・・・・いや、フェイレよ』 『あなた、今どこにいるの?』 『ああ、今はちょいと船の中におる。大砲を積んだ船だよ。君が乗っている船より強いぞ。』 カリペリウは、自慢するように言った。 「フェイレ、一体どうしたっていうんだ?」 「相手と話し合っているの。」 「相手と・・・・・話し合い?」 フェイレの言葉に、ヴィクターらは首を捻る。その中で、エリラははっとなってフェイレに聞いた。 「もしかして、魔法通信!?」 「ご名答。」 「そんな・・・・魔法通信は、遠距離では直接、会話できるように作られてはいない筈じゃ・・・・」 「作られたのよ。あたしの頭の中で会話している男によってね。」 「なんてこったい。」 ヴィクターは呆れたように呟いた。 『どうしたフェイレ?黙ってないで何か言わないか。』 『はいはい、聞こえているわよ。』 『しかし、君も元気そうだな。こうして、元気な君と再び会話できるとは思いもよらなかったぞ。』 『それで、こうまでして魔法通信を試みてきたあなただけど、何か要求があるの?カリペリウ“先生”』 フェイレは、先生という部分に皮肉気な響きを含める。 彼女は、あの魔法研究施設で、カリペリウを始めとする魔道士達にされた、数々の実験の恨みを忘れてはいない。 もし、目の前にカリペリウがいれば、真っ先に首の骨をへし折っていただろう。 『うむ、要は相談なのだが。フェイレ、こっちに戻って来ないかね?そうすれば、君の待遇は保障しよう。』 『・・・・・・・・・・・・』 フェイレは押し黙った。 それから2分の時間が経ち、フェイレは答えた。 『少しだけ時間をちょうだい。考えてみる。』 フェイレはそう言って、カリペリウとの魔法通信を一旦中断した。 「フェイレ、一体どんな会話をしていたんだ?」 ヴィクターは心配になってフェイレに聞いた。彼女の顔は、緊張で強張っていた。 フェイレはヴィクターの質問に答えず、部屋の中にいた世話係の主計兵に尋ねた。 「ねえ、すまないけど、艦橋という所に連れて行ってもらえない?」 フェイレが、クリーブランドの艦橋に現れたのは、それから5分後の事である。 デュポーズ大佐は、艦橋に上がって来たフェイレに早速聞いた。 「ええと・・・・フェイレ、だったね?」 デュポーズの質問に、フェイレは頷く。 「君は、魔法通信で相手方と交渉したそうだね。君は相手側に何か言ったのかい?」 「いえ、あちらさんには、まだ具体的な回答はしていません。」 「どのような話をした?」 「私に対して、シホールアンルへ戻ろうと言いました。私は、少しだけ時間を下さいと回答しています。」 その時、CICから報告が入る。 「敵戦艦、変針します!」 この時、エレディングラは距離20000メートルにまで迫っていた。エレディングラは左に回頭し、3隻の巡洋艦の針路を阻んだ。 「オークランドより入電、戦隊針路270度に変針。」 「了解。面舵一杯!針路270度!」 デュポーズ大佐はそう命じてから、フェイレに顔を向ける。 「それで、君はどうしたいんだ?戻りたいのか?」 デュポーズは聞いた。その問いに対し、フェイレは黙った。 『おい、まだ決心がつかんのか?』 唐突に、カリペリウの声が頭に響く。 『うるさい。もう少し考えさせて。』 『あまり時間は無いぞ。まあ、別に拒んでもいいぞ。その時は、この船の巨砲で君もろとも皆殺しにするだけだ』 カリペリウの言葉に、思わずフェイレは身を震わせた。 『いやだ・・・・・また、あの日のようになるのは・・・・・』 彼女の脳裏に、あの2人の男女によって村を焼き尽くした記憶が蘇る。 あの日、フェイレのせいで村は全滅した。あの男女が操っていたとは言え、やったのはフェイレだ。 そして、今回も、“自分のせい”で、3隻の巡洋艦が全て撃沈されるかも知れない。 『君の判断で、あの日の惨劇を繰り返される事が避けられる。どうだね?人が大勢助けられるのだぞ。』 『で・・・も』 『でもじゃない。戦艦の巨砲の前には、君の乗っている巡洋艦なぞ、巨獣の前のザコにしか過ぎんのだ。そのザコにも、 1000名以上の人が乗っている。君がうんといえば、1000名以上の人命が救われるのだ。どうだね?』 『・・・・・・』 フェイレは押し黙った。 1000名。あの村にいた人口よりも多い。 一度は、シホールアンルに抗する事を誓ったフェイレだが、彼女の心の傷は大き過ぎた。 (自分の判断で、あの村で起きた以上の惨劇を回避できる) フェイレがそう思った時、唐突にデュポーズが声をかけてきた。 「フェイレ、敵さんは何と言って来た?」 「え?」 「敵さんは何と言って来たんだ?ちょっと教えてくれないかね?」 「は、はい。相手は、戦艦の前では、巡洋艦は何隻集まろうが、大した事は無い。人員を救いたければ、」 デュポーズは最後まで言葉を聞かなかった。 「よし、わかった!」 彼は大声でそう言うなり、通信員に指示を下した。 「オークランドに先の内容を送れ。指示を仰ぐ。」 デュポーズは通信員に、送る通信の内容を伝えた後、フェイレに視線を向ける。 「一応、前にいる軍艦が俺達の指揮を取っているんだ。まずは、あちらの艦長の指示を仰ぐ。フェイレはその指示をもとに 判断して、自分の思いをあちらさんに伝えてくれ。」 デュポーズはニヤリと笑みを浮かべる。 2分ほどでオークランドから返事が返って来た。 『フェイレ、いつまで待たせるつもりだ?』 カリペリウが苛立ったような口調で聞いて来る。そのセリフには聞き覚えがあった。 あの魔法研究施設で、魔法薬の投与を拒むフェイレに対して、カリペリウがいつも言った言葉だ。 それでも投与を拒めば、カリペリウは容赦なく暴行を加えて来た。 『もう少しだけ、もう少しだけ待って。お願い。』 『わかった。あと10分の猶予をやろう。よい返事を期待しているぞ』 カリペリウは心底見下したような口調でそう言った。 彼の中では、フェイレはいつまで経っても、ただの従順な実験動物でしかなかった。 「フェイレ、奴さんは何と言って来た?」 デュポーズが聞いてきた。 「あと10分ほどで、回答を用意しておけと。」 「10分ねえ。」 デュポーズはそう言いながら、しきにり笑みを浮かべる。 「相手さんに10分も待たしちゃ悪いな。あと2分で回答を送ってやろう。」 デュポーズは、1枚の紙をフェイレに渡した。 その紙には、フェイレが初めて目にする文字が並んでいた。 文字の最後の一言は、一際大きく書かれている。 その一語は、FUCKYOUと書かれているが、英語そのものを見るのが初めてであるフェイレには、その一語の意味どころか、 読み方すらわからない。 「フェイレ、その紙に書かれている文を相手に伝えてくれ。」 デュポーズはそう言ってから、紙に書かれている内容を読み上げた。 それを聞いていた艦橋要員達は、たちまち爆笑してしまった。 「え・・・・こ、これを言うんですか!?」 フェイレが驚いたように言った。 「ああ。しっかり伝えてくれ。」 デュポーズが苦笑する。 「さっきの敵さんの言葉で、ウチのボスがカンカンになってるんだ。それに、あいつらにはブルックリン・ジャブ・・・・ いや、クリーブランド・ジャブがどのような物が分かっていないらしい。俺達は、奴らにボクシングを教えてやりたいのさ。」 「分かりました。」 フェイレは、ついに決心した。 『ええと、カリペリウ先生~、聞こえますか?』 『おお、フェイレ。どうしたんだ?何か良い事でもあったのかね?』 『はい。』 フェイレは、愉快そうな口調でカリペリウに答える。 『私は決意しました。あなたが言っていた良い返事をお伝えします。』 『ようやく決心してくれたか。物分りが良いな。』 『ええ、まずはあたしの気持ちを言います。あたしは、考えた末に決断しました。もう・・・』 一旦言葉を区切った後、フェイレは口調を変えてから会話を続けた。 『あんたらみたいな畜生とは金輪際付き合わないとね!』 『な・・・!?』 『カリペリウさん、あなたとはもうこれでお別れね。』 『なんだと貴様!』 『ふん、あなたみたいな奴と別れられてせいせいするわ。』 『ふざけるな!』 『ふざけるなはそっちよ!このFUCK野郎!!』 フェイレはそう言うなり、カリペリウとの魔法通信を切った。 「どうやら、奴さんに対して良い返事が出来たようだな。」 デュポーズはニヤニヤしながらフェイレに言った。さきほどのやり取りは、艦橋要員達にバッチリと聞こえていた。 「ええ。お陰でいくらか気分が楽になりました。」 「そうか、それは良かった。」 「艦長、オークランドより通信。敵をぶちのめせ、です!」 「ようし、分かった!主砲、左砲戦!」 デュポーズは指示を下した後、フェイレに部屋に戻るように命じた。 「おのれぇ・・・・!」 巡洋戦艦エレディングラの艦橋内では、カリペリウが顔を真っ赤に染めながら地鳴りのような声を上げていた。 「あ奴め、このわしに口汚い言葉を浴びせよった!司令!もう容赦はいらぬ!敵を皆殺しにしろ!!」 カリペリウは、怒鳴るようにしてベックネ少将に言った。 「分かりました。艦長、目標は敵1番艦だ。」 「はっ!」 艦長はベックネ少将の命令通り、アメリカ巡洋艦に射撃を命じた。まず、照明弾が打ち上げられる。 照明弾で敵巡洋艦が照らし出された後、9門の13ネルリ砲が火を噴いた。 この最初の斉射は、全てが遠弾となった。 「艦長!敵艦隊、距離を詰めてきます!現在距離9000グレル!」 「敵巡洋艦はこの距離からだと射程外のようだな。」 ベックネ少将は小声で呟く。 恐らく、3隻の敵巡洋艦は6000か、5000グレルまで接近して射撃を行うつもりであろう。 その間、エレディングラは一方的に主砲を撃てるが、エレディングラの乗員は、大多数が新米である。 猛訓練のお陰で、錬度に関しては申し分無いが、初めての実戦、それも、視界の悪い夜戦ともあって、敵艦に命中弾を 与える事は難しいであろう。 エレディングラは、40秒おきに斉射を放つが、砲弾は全て遠弾となり、敵艦の至近には1発も落下しない。 1分、2分、3分と経っても、敵巡洋艦には命中弾はおろか、夾叉弾すら得られない。 「砲術!しっかり狙え!!」 ついに堪り兼ねた艦長が、砲術科に向けて怒鳴り込んだ。 「訓練通りにやれ!そうすれば当たるぞ!」 艦長は、砲術科をしきりに叱咤するが、砲弾はいっこうに命中しない。 砲撃開始から6分、都合9度目の斉射弾が放たれる。その斉射弾が、敵巡洋艦の左舷側海面に落下する。 9本の水柱が、天を突かんばかりの勢いで立ち上がり、敵1番艦の姿が隠される。 しかし、4秒後に敵1番艦は健在な姿を現す。この時、彼我の距離は既に7500グレルを割っていた。 艦長が第10斉射の発射を待ち侘びていると、敵1番艦が艦上に発砲炎を煌かせた。 いや、敵1番艦のみではない。2番艦や3番艦も砲を撃ち始めた。 「敵艦発砲!」 見張りの上ずった声が、伝声管ごしに聞こえた。 砲弾が唸りを挙げて飛来し、それが艦上を飛び越えていく。 エレディングラの左舷に、10本以上の水柱が立ち上がる。水柱の高さはさほどでもなかった。 左舷側100メートルの海域で上がった水柱を、カリペリウはじっと見つめていた。 「なんだ、敵巡洋艦の砲力は大して威力が無いな。」 カリペリウは、敵巡洋艦を馬鹿にしていた。 それに対し、隣のベックネ少将は、望遠鏡で敵1番艦の姿を見るなり、眉をひそめた。 「アトランタ級か・・・・・・」 ベックネ少将は、敵1番艦の形を見て、それがアトランタ級巡洋艦である事を確認した。 前部や後部に階段状に並んだ連装砲塔。低めでありながら、どこか頑丈そうな感のある艦橋。 その背後に聳え立つ2本の煙突。 傍目から見れば、駆逐艦の艦体を拡大して、そこに山ほど大砲を載せたような艦だが、ベックネ少将は、この変てこな巡洋艦が 侮れぬ敵であると見抜いている。 アトランタ級は、シホールアンル海軍ではフリレンギラ級巡洋艦に相当する艦だ。 保有する大砲は5ネルリ相当の両用砲を計16門と、小柄な船体に比してかなりの重火力を装備している。 この16門の主砲は、対空戦闘のみならず、対艦戦闘でも威力を発揮している。 流石に、それなりの防御を持つ戦艦に対抗するにはかなり非力な存在ではあるが、それでも、速射性の高い砲塔から撃ち出される 多数の小口径砲弾の威力は侮れない。 それに加え、後続の2隻は、新鋭のクリーブランド級2隻である。 クリーブランド級もまた、6秒おきに発射する主砲を計12門搭載しているため、この2隻も侮れない。 並みの巡洋艦なら、下手すれば撃沈されかねぬ敵艦を、エレディングラは3隻も相手取るのだ。 (いくら巡洋艦よりも遥かに頑丈なエレディングラといえど、今回は苦戦を強いられそうだ) ベックネ少将は、内心そう思った。 エレディングラが第10斉射、第11斉射と、2度の斉射を行う間、敵巡洋艦3隻は早くも照準が正確になって来た。 敵1番艦の斉射弾が、エレディングラを包み込んだ。 「敵1番艦、本艦を夾叉しました!」 「くそ、下手な大砲、数撃てば当たるという奴か!」 艦長は苛立ったような口調で言った。 その直後、カァン!という砲弾が命中する音と、微かな振動が伝わった。 敵1番艦の射弾は、エレディングラの中央部2発命中したが、分厚い装甲に跳ね飛ばされてあさっての方向に飛んで行った。 その数秒後には、新たな斉射弾が再びエレディングラを捉えた。 この時は1発のみが中央部に突き刺さり、先と同じように装甲に阻まれ、その場で炸裂しただけであった。 敵1番艦の斉射弾は次々と命中するが、エレディングラの防御甲板は小口径砲弾の侵入を許さない。 時たま、前部や後部の被装甲部に命中し、夥しい破片が海面や甲板上に撒き散らされるが、それもかすり傷程度にしかならない。 「フハハハハハ!敵の砲弾は全く頼りにならぬな!」 カリペリウが、思わず高笑いを上げる。ベックネとしては癪に障るような笑い声だったが、カリペリウの言う事は事実でもある。 いきなり、飛来してくる砲弾の量が増えた。 「敵2番艦、3番艦、斉射に入りました!」 ついに、敵2番艦と3番艦も急斉射に入ったようだ。敵2番艦の砲弾が中央部に着弾する。 一際大きな衝撃だが、エレディングラの艦体はあまり揺れない。 分厚い防御甲板は、5インチ砲弾であれ、6インチ砲弾であれ、全て跳ね飛ばすか、表面上で炸裂させて、艦内には全くダメージが行き渡らない。 エレディングラは、相変わらず斉射弾を放つ。その動作には全く異常は無い。 まるで、貴様らの攻撃なぞ通用せぬと、敵に怒鳴り散らしているかのようだ。 「敵1番艦を夾叉しました!」 第15斉射目にして、ようやく先頭のアトランタ級を夾叉した。 右舷に5本、左舷に4本の水柱が吹き上がり、束の間、アトランタ級が水柱で出来た檻に閉じ込められたかのような錯覚を感じさせた。 敵巡洋艦3隻は、相変わらず激しい砲火を浴びせて来る。 外れ弾はかなりい多いが、敵艦は1斉射ごとに最低1発。多くて3、4発の砲弾を浴びせて来る。 「第3両用砲座損傷!火災発生!」 「第10、第11魔道銃座全壊!」 「後部甲板に火災発生!消火班を寄越してください!」 流石に、エレディングラも艦上の被害が増えてきた。 僅か5分ほどで、27発の敵弾を受けており、右舷側の両用砲、魔道銃は既に半数が破壊されている。 しかし、3基の砲塔や、艦橋はまだ健在である。敵弾が主砲か艦橋を潰さぬ限り、エレディングラは戦闘力を落とさないであろう。 第16斉射弾が放たれる。少しの間が空き、敵1番艦が再び水柱に取り囲まれる。 ふと、ベックネ少将は水柱の中に2つの閃光が見えたような気がした。 水柱が崩れ落ちると、敵1番艦の姿が露になった。 先頭のアトランタ級巡洋艦は、中央部にあった煙突のうち、後部が根元から吹き飛ばされ、煙突があった部分からは濛々と黒煙が噴出している。 その後部艦橋は、後ろ半分がごっそり削られ、残った部分は猛火に包まれている。 だが、それでも敵1番艦は生きていた。先ほど変わらず、健在な砲を用いて、エレディングラに挑んで来る。 エレディングラは、この40秒の間に新たに7発の敵弾を受けたが、被弾箇所はいずれも中央部であり、敵弾は悉く弾き飛ばされるか、 その場で炸裂していた。 第17斉射弾が放たれる。敵1番艦の中央部に再び命中の閃光が煌く。今度ははっきり命中したと分かった。 敵1番艦は中央部から爆炎を吹き上げた後、8本の水柱に隠れた。 水柱が晴れた後、敵1番艦は中央部と後部付近から大火災を起こし、速力を著しく低下させていた。 先まで、激しく撃ちまくっていた敵1番艦は、わずか3発の13ネルリ弾の前に、力尽きた。 落伍していく1番艦を、2番艦が追い抜いていく。 「目標変更、敵2番艦!」 ベックネ少将が次の目標を伝える。敵2番艦、3番艦は1番艦の仇とばかりに12門の主砲を撃ちまくる。 この時、敵2番艦と3番艦の射撃方法が先と変わっていた。 敵2番艦が射撃をする時、敵3番艦は沈黙しており、3番艦が撃つ時には2番艦が沈黙している。 交互に放たれる砲弾は、エレディングラの周囲に絶え間なく落下し、一時は吹き上がる水柱に敵艦の姿が隠れそうになる。 「交互射撃を行って、絶え間なく命中弾を与えるどころか、視界すらもさえぎろうと啜るとは。敵もやるな。」 ベックネ少将は、敵の考えた射撃方法に半ば感心していた。 「しかし、それもいつまで続くかな?」 エレディングラが、敵2番艦に対して第1斉射を放つ。 先の敵1番艦との戦闘が程よい準備運動となったのか、最初から夾叉弾を得る事が出来た。 「おお、やるな!」 艦長が、先とは打って変わった精度の良い射撃に頬を緩める。 敵弾は絶え間なく落下して来る。この時になると、中央部付近の火災も無視できなくなってきた。 既に、右舷側の両用砲、魔道銃の大半は破壊されており、各所から発生した火災が所々で結びついて、火勢が増しつつある。 それに応急班が懸命に動き回って、火災を消していく。 大抵が消火に成功するが、時折敵弾が至近に落下して来て、応急班が危うく難を逃れる場面もある。 「やはり、敵巡洋艦の砲力は侮れない物があるな。」 ベックネ少将は、ひっきりなしに伝えられる被害報告を聞いて、改めて米巡洋艦の恐ろしさを痛感した。 しかし、エレディングラの優勢は変わらなかった。 敵2番艦に対する第2斉射が放たれる。 やや間を置いて、敵1番艦の射撃でも見られたような、巨大な白い檻が敵2番艦を取り囲む。 その時、敵2番艦の第3砲塔のあたりで、爆発が起きた。第2斉射弾のうちの1発が、敵2番艦の第3砲塔に命中したのであろう。 艦上の爆発は、第3砲塔のみならず、その後ろに設置されていた副砲や、後部艦橋をも巻き添えにしていた。 派手に火炎と破片を吹き上げた敵2番艦は、1分前と比べて痛々しい姿を現していた。 唐突に、クリーブランドの艦内が揺れた。 それも、大地震にあったかのように派手に揺さぶられた。フェイレは、艦内の部屋に戻ってエリラ達と共に待機していた。 その時、クリーブランドの後部から猛烈な爆発音と衝撃が伝わってきたのだ。 エリラのあげた悲鳴が聞こえた、と思った時、意識は暗転していた。 この時、クリーブランドの第3砲塔には、敵戦艦から放たれた13ネルリ弾が命中していた。 通常なら、戦艦の主砲弾という物は艦内に侵入した後、起爆するように作られている。 艦内で起爆すれば、そこが弾薬庫ならば、その艦の搭載する弾薬に誘爆を起こさせて沈没に追い込める。 機関部ならば、艦の心臓部を一気に壊滅させ、戦闘不能に陥らせる事が出来る。 現に、オークランドは僅か3発の13ネルリ弾によって息の根を止められた。 しかし、クリーブランドに命中した敵弾は、少し変わっていた。 その敵弾は、第3砲塔に命中し、天蓋を突き破った瞬間に爆発したのである。 爆発エネルギーは第3砲塔を粉砕した後、一気に横方向へ解放された。 すぐ後方にあった5インチ連装両用砲がそのエネルギーによって砲身を吹き飛ばされ、砲塔の上半分がごっそり吹き飛んだ。 更に、後部艦橋に火炎と夥しい破片が押し寄せ、後部艦橋は瞬時に破壊された。 もし、艦内で炸裂していれば、クリーブランドは1発で弾薬庫誘爆という大惨事に発展していたが、この“不良品”の砲弾によって致命傷を免れた。 だが、傷が大きい事には変わりはなく、クリーブランドは早くも主砲1基と5インチ両用砲1基、後部艦橋を破壊されていた。 クリーブランドに残された時間は、少ないように思えた。 どれほどの時間が経ったのか。 エリラは意識を取り戻した。ベッドの支え部分に額をぶつけたせいで、前頭部が猛烈に傷んでいる。 (う・・・・痛い) エリラは心でそう呟きつつ、左手で額を押さえる。左手にぬるりとした感覚がする。 同時に、左目が異様に赤い。 「出血してる・・・・・」 彼女は、額に傷を負っていた。エリラは、何かで血を止めようと、ベッドの布を引き千切って、それを畳んでから額に当てる。 ドン!と音が鳴り、クリーブランドの艦体が揺れる。しかし、先の被弾時みたいな、猛烈な衝撃ではない。 (なんか、迷走しているみたい) エリラはふと、艦が左右に蛇行している事がわかった。 「皆は大丈夫かな?」 エリラは、仲間が心配になった。彼女は、室内を見渡す。メンバー達は、全員が床に倒れている。 一瞬、重傷を負っているのかと思ったが、よく見ると、全員無であった。 「気絶しているだけなら、さほど心配する必要は無いか。」 エリラは一安心して、部屋の出入り口を見た。出入り口から誰かが出て行く。 その誰かは、青い髪をゆらめかせていた。 「・・・・・・フェイレ!?」 はっとなったエリラは、フェイレを追いかけようとして立ち上がる。 だが、額に負ったダメージが残っているせいか、動き出した瞬間頭痛が襲って来る。 エリラはそれになんとか耐えながら、部屋を出て行ったエリラを追いかけようとする。 部屋から出た時、フェイレは階段・・・・最上甲板に出る階段を上がっていた。 「フェイレ、だめ!」 エリラは咄嗟に叫んだが、フェイレはお構い無しに階段を上がった。 艦内から出ると、そこからは海が見渡せた。夜の暗い海。 その海の向こうから、唐突に発砲炎が煌く。少しばかりの間を置いて、さほど離れていない海面に大きな水柱が立ち上がる。 フェイレが乗っている軍艦も、4基から3基に減った主砲と、健在な副砲で、雨霰と砲弾を叩きつける。 その速射性能は素晴らしい物があったが、いくら命中しても、目の前の大きな影、戦艦と思しき敵艦に全く命中しない。 フェイレは、甲板にへたれ込んでしまった。 「無理よ・・・・勝てるわけが無い・・・・・」 彼女は、空しい抵抗を続ける艦にそう言っていた。自分が馬鹿だった。 あの時、勢い込んで敵を挑発するような事を言ってしまった。その結果がこれである。 フェイレの目に、後方に見える炎の塊が移る。 自分の乗っている軍艦とは違う形の船が、炎上しながら右に傾いている。 先の艦長とのやりとりで出て来た、オークランドと言う名前の船だ。 オークランドの前部甲板には、階段式に3つ積み上げられた連装式の砲が、まだ戦えると言っているかのように砲身を右に向けているが、 火を噴く様子はない。 オークランドは、火災炎を吹きながら海上に停止していた。 「敵は、重い砲弾を受けても耐えられるように作られているのに、この艦の軽い砲弾では・・・・・・話にならないじゃない。 なのに。」 どうして?どうして諦めない? 疑問がわき起こる。ふと、遠くから何かの会話が聞こえる。 「無茶です!戦艦相手に軽巡の豆鉄砲は通用しません!」 その声は、恐怖にわなないていた。だが、 「馬鹿野郎!クリーブランドが敵のへっぽこ弾にやられるか!このクリーブランドとコロンビアが撃ちまくればいずれ・・・・」 一瞬、声が口ごもる。ふと、フェイレは、これと似たような光景をどこかで見たと思った。 その夢の中では、今と同じように、2人の男が遠くで言い合っていた。 男が何か言う前に、夢は終わっていた。その夢の続きが、今、始まろうとしている。 どのような結末になるのだろうか・・・・・ 彼女がそう思った時、またもや敵弾が落下する。クリーブランドの操艦は巧みなのか、この時も敵弾が全て外れた。 男は砲弾が落下したあとに、続きを言った。 「いずれ、ジャブの連打が効いて、相手はスタミナ切れに陥る。そうなれば、ストレートの一撃でKOだ!」 「ストレートの一撃・・・・ですか?」 「そうだ。ボクシングと同じだ。俺達が敵を苦しめている間に、味方が応援に駆けつけてくれる。」 男はそう言った後、少し黙ってから言葉を続けた。 「最も、時間を稼ぐには、やや打撃不足だがな。このクリーブランドが、戦艦並みの防御力を持っていれば、 もうちょい耐えられるはずだが。」 「防御力・・・・」 フェイレは、その言葉を反芻する。 「フェイレ!」 いきなり、後ろから声が聞こえて来た。 「フェイレ、こんな所で何しているの!?」 エリラは、額に血を流しながらも、フェイレを艦内に連れ戻そうとする。 「エリラ、ちょっとだけ待って!」 「はぁ?何言ってるの。こんな所にいたら、流れ弾に当たって死んじゃうよ!」 エリラは、フェイレに対してきつい口調で言う。だが、フェイレは譲らなかった。 「艦内にいても、いずれ死んでしまうわ。」 「・・・・あんた、まさか」 「勘違いしないで。」 フェイレはエリラの言葉を遮った。 「あたしは決めたわ。生き残るためなら、どんな事だってやる。これまでに散っていった人達の無念を晴らす為には、 この場を切り抜けるしかない。」 「この場を切り抜ける・・・・どうやって?」 「考えがあるわ。」 フェイレはそう言いながら、左舷側海域に見える敵戦艦を睨み付ける。その目は、怒りに燃えていた。 「エリラ、少し手伝ってもらうわ。」 「手伝うって?」 「あなた、相手に魔力を送る事出来る?」 「え、ええ。そう言う魔法なら扱えるけど。」 「魔力を分けてくれないかな?」 この時、敵弾が落下して来た。クリーブランドの左舷側海面に、9本の水柱が立ち上がった。水柱が崩れ落ち、大量の海水がクリーブランドの艦体に叩きつけられる。 「危ない!」 エリラとフェイレは、咄嗟に艦内に逃げ込む。海水が、洪水となって舷側に落ちていく。 2人も、大量の海水を浴び、全身濡れ鼠となった。 「げほ・・・・ひぇ、この水しょっぱい。」 フェイレは海水を飲んでしまったのか、しかめっ面を浮かべる。 「フェイレ、あなたの仕事を手伝わせて貰うわ。」 「あ、ありがとう。では、早速取り掛かるわよ。」 フェイレはエリラに礼を言うと、すぐさま舷側に飛び出した。 彼女は真っ直ぐに立ち尽くすと、呪文を唱え始めた。 「聖なる大気よ、我に力を貸し、敵の悪逆なる攻撃に我を耐えさせよ、我は全を持って、悪逆なる攻撃を防ぐ物とする・・・・」 (あなた達に埋め込まれた魔法、有効に使わせてもらうわ!) フェイレは心の中でそう叫んだ時、魔法を発動させた。 「フレアス・ライセル!」 彼女は最後に一言、鋭い声音で呟いた後、クリーブランドに奇跡が起きた。 フェイレに刻まれた魔術刻印が美しい金色の光を発する。その直後、クリーブランドの周囲に薄い金色の幕が出来上がった。 「艦長!外に異変が!」 デュポーズ艦長は、見張りに言われるまでも無く、その奇跡を目の当たりにしていた。 「・・・・美しい。」 彼は、思わずそう呟いていた。 その直後に、6インチ砲が斉射を行う。9発の6インチ砲弾は、その金色の幕を通り越して、敵戦艦に向かっていった。 入れ替わりに、敵戦艦の砲弾が落下する。その飛翔音は、先の被弾時に発生したそれと同じ・・・・いや、それよりも大きかった。 「来る!」 デュポーズが覚悟を決めた時、上空で爆発音が響いた。 「上空で爆発音・・・・?」 艦橋要員の誰かが、怪訝な表情で呟いた。 「艦長!敵弾が艦の上空で爆発しました!損害なし!」 この報告を聞いた瞬間、デュポーズは、クリーブランドを覆う金色の薄い幕が何であるか、瞬時に理解した。 「マジックバリアだ。」 「マジック・・・バリア?」 「そうだ、副長。こいつはマジックバリアだ!数日前、TG61.3がマルヒナス運河で敵のゲテモノ兵器と戦っていただろう? その時にマジックバリアによって、相当数の砲弾が敵に届く前に無効化されたと言っている。」 デュポーズは、艦橋の外を見回しながら言った。 「それと同じ事が、このクリーブランドにも起きたんだ。しかも、俺達に有利になる形で。」 「艦長!左舷中央部で、亡命者が甲板士官に、魔法防御は持って7分しか持たないと言って来ています。」 「7分か。」 デュポーズ大佐は、その報告に愁眉を開いた。 「それだけありゃ充分だ。敵にジャブの連打を叩きつけてやる。」 エレディングラの放つ砲弾は、敵2番艦に全く被害を与えなかった。 いや、与えられなかった。 「くそ、くそ、くそくそくそぉ!!!!」 ベックネ少将の隣にいるカリペリウが、怒りの余り頭を掻き毟った。 「あの小娘め!どこまで邪魔をすれば気が済むのだ!?」 2分前、敵2番艦は突如として、薄い金色の幕で覆われた。その金色の幕は、魔法防御であった。 この魔法障壁によって、エレディングラの主砲弾は、何ら効果を成さなくなった。 それに代わって、クリーブランド級の砲弾が相次いで落下して来た。 右舷中央部は、相次ぐ被弾によって完全に廃墟と化していた。その廃墟に向けて、米巡洋艦は容赦の無い砲撃を加えてくる。 6秒おきに放たれる6インチ砲の斉射や、5インチ砲の射撃は、必ず数発がエレディングラの艦体に命中する。 中央部に命中した砲弾は、艦内に侵入できないが、それでも炸裂の断片で周囲に被害を及ぼす。 前部の非装甲部に敵弾が命中し、夥しい木片と鉄片が舞い上がった。 絶え間なく飛来する5インチ砲弾は、エレディングラの艦体を、命中の閃光で“絶え間なく”灯し続ける。 無傷で残っていた魔道銃座が、5インチ砲弾の直撃を受けて、たちまち役立たずの粗大ゴミになってしまった。 後部艦橋に、1発の6インチ砲弾が命中して、爆裂する。 後部艦橋に詰めていた応急班の班長や艦橋要員が、全て床に薙ぎ倒された。 別の6インチ砲弾は、後部マストを根こそぎ引き千切り、海上に叩き落した。 艦橋下部に6インチ砲弾が命中する。 艦橋にもそれなりの防御が施されているため、砲弾は表面で炸裂するだけに留まるが、敵弾命中によってささくれ立った表面は、 エレディングラの美しい艦容を台無しにしていく。 5インチ砲弾、6インチ砲弾は、戦艦に対しては確かに弱い。 だが、それでも多数が被弾していけば、上部構造物や艦上の設置された対空火器が徐々に破壊されていく。 そして、被弾数が多ければ多いほど、受ける被害は大なる物に変わり始めた。 「か、艦長!」 いきなり、血で真っ赤に染まった水兵が艦橋に入ってきた。 「ひ、ひい!」 その姿を見たカリペリウは、思わず引いた。 血まみれとなった水兵が、最後の気力を振り絞って報告を行う。 「こ、後部第3砲塔、旋回不能です。」 水兵はそう告げるなり、ばたりと倒れた。 「第3砲塔が旋回不能・・・・・と言う事は、主砲が3門も使えなくなったのか・・・・!」 艦長は悔しげに顔を歪めた。 その時、突然艦橋内に衝撃が走った。真上から巨大な斧を叩きつけられたかのような衝撃に、誰もがうろたえる。 咄嗟に、艦長は伝声管に取り付く。その伝声管は、艦橋トップの主砲射撃指揮所に繋がっていた。 「こちら艦長。指揮所、応答しろ!砲術長!おい!誰かおらんのか!?」 艦長は、必死になって呼び掛けるが、伝声管からは何ら返事が返って来ない。 別の伝声管が、艦長を呼び付ける。 「こちら艦橋、どうした?」 「艦橋トップの射撃指揮所が被弾しています!被害は目下調査中!」 その報告に、艦長は青ざめた。 「艦長、どうした?」 「司令・・・・敵の砲弾が、射撃指揮所を破壊しました・・・・・エレディングラは、統一射撃が不可能になりました。」 「統一射撃が不可能になってもかまわん!まだ手はあるぞ!」 この時、カリペリウが金切り声を上げた。 「砲塔にも照準装置が付いておるだろうが!それで敵に照準を定めて砲撃を行うのだ!」 「お言葉ですがカリペリウ正師。もはや状況は我が方に不利です。ここは、撤退するべきです!」 ベックネ少将は、エレディングラを撤退させる事を決めていた。 既に、陽動役の戦艦部隊は、敵新鋭戦艦との戦いに敗れ、駆逐艦部隊も撃退されている。 もし、残り2隻の敵巡洋艦を叩き沈めても、すぐに敵の新鋭戦艦や駆逐艦部隊と戦わねばならない。 そうなれば、エレディングラは撃沈されるであろう。 だが、 「ならん!!」 カリペリウは頑迷に拒否した。 「あの巡洋艦を・・・・あの小娘を殺す事が先決だ!見ろ。魔法防御が消えている、今がチャンスだ!」 ベックネ少将は後ろを振り返った。 大破したクリーブランド級は、先ほどまで魔法防御に覆われていたが、それから僅か10分後に魔法防御が切れた。 フェイレの今の魔力では、長時間魔法防御を維持させる事は不可能であった。 そのため、エリラから魔力を分けてもらい、少しでも長く魔法防御を維持させようとしたが、結局は僅か10分ほどで 2人は力尽き、魔法防御は消えてしまった。 だが、ベックネは譲らなかった。 「遅すぎます。既に、敵弾多数を受けたこの艦は、第3砲塔が使えなくなるばかりか、軍艦にとって必要不可欠な 統一射撃すら不可能になりました。この状態で、戦闘は継続できません。」 「何を言うか!貴様、臆病風に吹かれたのか!?」 その瞬間、ベックネ少将で何かが弾けた。 気が付くと、ベックネはカリペリウを殴り倒していた。 「な、な、何をするか!?」 「黙れ!」 ベックネの一喝に、カリペリウは黙ってしまった。 「私は、陛下の臣下であると同時に、多くの将兵を統べる者でもある。私には、将兵を生きて返す義務がある!このような 無駄な戦いで、あたら有能な将兵を失う事は、私にはできない!!」 「・・・・・ぐ!」 カリペリウは何も言えなかった。 「艦長、撤退だ!もはや艦の戦闘力が極度に低下した今、戦闘続行はかなり厳しい。ここは後方に下がって、態勢を立て直すぞ。」 「わかりました。」 ベックネ少将命令に艦長が頷いた時、 「本艦の後方より、小型艦4隻発見!急速接近中!」 見張りから新たな報告が艦橋に知らされた。 第43駆逐隊を指揮しているフレデリック・モースブラッガー大佐は、北西に向けて撤退しつつある敵新鋭戦艦を発見した。 「司令、見つけました。あれです。」 駆逐艦イザードの艦長は、隣にいるモースブラッガー大佐に言った。 「あれか・・・・・どうやら、巡洋艦部隊は敵さんを随分痛めつけたようだな。」 見た所、敵新鋭戦艦は、あちこちから火災を起こしている。特に、中央部の火災は酷いようだ。 しかし、それでも33ノットほどのスピードで離脱を図っている。軽巡部隊は、相当数の5インチ砲弾、6インチ砲弾を撃ち込んだようだ。 少なめに見積もっても、100発は下らぬであろう。 それでも、被害が艦内に及んでいないようであるから、流石は戦艦というべきであろう。 「さて、後は俺達の仕事だ。可愛い亡命者さんに、アメリカ海軍水雷戦隊の凄さを見せ付けてやるぞ!」 モースブラッガー大佐の言葉に、イザードの艦橋要員達は一斉に雄たけびを上げた。 「戦隊針路、300度!」 モースブラッガー大佐は各艦に指示を下した。モースブラッガーのDS(駆逐隊の意味)43は、旗艦イザードの他にヤング、 ジョンストン、ポール・ハミルトンの計4隻で編成されている。 いずれも、43年に竣工したフレッチャー級新鋭駆逐艦である。 モースブラッガーのDS43は、他の駆逐隊と共同で魚雷攻撃を行った後、敵駆逐艦部隊と砲撃戦を行った。 この戦いで旗艦イザードが損傷したが、DS43はそれ以上の損害は無かった。 巡洋艦部隊からの通信を受け取ったモースブラッガー大佐は、真っ先に自らの駆逐隊を救援に向かわせた。 37ノットの全速力で突っ走ったDS43は、途中旗艦アラスカを追い越した。 それからしばらく時間が経ち、ようやく敵新鋭戦艦と遭遇したのである。 「艦長、距離4000で左舷発射管の魚雷を撃つぞ。それから、敵戦艦の位置を旗艦に報告し続けろ。もし、俺達が しくじったら、後は旗艦に任せる。」 「わかりました。」 DS43は、敵新鋭戦艦の右舷後部から徐々に近付き始めた。 互いの距離が11000にまで近付いた時、モースブラッガーは敵戦艦の後部第3砲塔が、ずっと右舷を向いている事に気が付いた。 「あの砲塔・・・・どうやら、砲塔の旋回盤が何らかの原因で歪んで、回らなくなったな。」 「だとすると、敵戦艦は砲戦力が減少していますな。」 「ああ、だが、油断は禁物だぞ。」 この時、敵戦艦が急に回頭を始めた。 「敵戦艦、面舵に転舵!」 「前部の主砲を使うつもりだな。艦長!このまま前進だ!敵戦艦のどてっ腹に艦首を突き刺すつもりで前進しろ!」 「アイアイサー!」 唐突に、敵戦艦の前部2基の砲塔が火を噴いた。束の間、モースブラッガーはしまったと思った。 だが、敵戦艦の主砲弾は、最後尾を進むポール・ハミルトンの遥か後方に着弾した。 敵戦艦は、その後も2基の主砲から盛んに砲弾を放つが、13ネルリ弾は駆逐艦部隊の至近にすら落下しない。 「どうも、敵の砲撃がまばらに思えるな。」 「司令もそう思いますか?」 「ああ。」 モースブラッガーは頷いた。 「ひょっとすると、敵さんは統一射撃が出来なくなっているようだ。でなければ、あんなバランスの欠いた砲撃はやらない。」 彼はそう断言した。 DS43の4駆逐艦も、5インチ単装砲を発砲する。発射速度が速いため、すぐに命中弾が出始めた。 距離が7000、6000、5000と縮まっていく。 4000まであと1000メートルという所で、急に敵の砲撃が正確になって来た。 「いかん、砲撃の精度が良くなって来たぞ。今の距離は!?」 「4600です!」 回頭まであと600メートルもある。 37ノット高速で進むフレッチャー級駆逐艦は、これぐらいの距離なら短時間で走破できる。 だが、その短時間が、モースブラッガーには長く感じられた。 距離が4100になった時、敵戦艦の砲弾がイザードを夾叉した。 「こりゃやばいぞ・・・・!」 モースブラッガーは背筋が寒くなった。夾叉弾を得たとなれば、あと1度か2度で、イザードに敵弾が命中する。 敵戦艦の砲弾は、イザードよりも遥かに大きい巡洋艦が、わずか2~3発で廃艦同然にされてしまうほどの威力だ。 たかだか2000トン程度のフレッチャー級駆逐艦が敵戦艦の砲弾を食らおうものならば、一発轟沈は間違いなしだ。 (頼む!早く、早く回頭してくれ!) その時、待望の声が聞こえて来た。 「距離4000!」 その瞬間、モースブラッガーは目を見開いた。 「取り舵一杯!戦隊針路360度!」 彼の命令が、すぐさま各艦に届けられる、同時に、イザードの操舵手は、素早く面舵を切る。 この時、敵戦艦が発砲した。 回頭中のイザードがかわし切れるか、微妙だった。 イザードが完全に回頭し切った、と思った直後、イザードの艦尾から僅か70メートルの海域に大水柱が吹き上がった。 モースブラッガー大佐は九死に一生を得た、という喜びに浸る暇も無く、次の命令を発した。 「魚雷発射始めぇ!!」 彼は大音声で命じた。艦長がその指令を水雷科に伝える。 それから3秒後、イザードの左舷発射管から、5本のMk-17魚雷が発射された。 1本ずつ発射された魚雷は、白い航跡を引いて、4000メートル向こうの敵新鋭戦艦に突進して行く。 僚艦も、次々と魚雷を発射した。 「ヤング、ジョンストン魚雷発射完了!ポール・ハミルトンも魚雷発射完了!」 「敵新鋭戦艦、回頭します!」 4隻からはなたれた21インチMk-17魚雷、計20本の航跡を発見した敵艦の艦長は、すぐさま回避を命じたのだろう。 敵新鋭戦艦が艦首を左に振り始めた。しかし、その艦首に、駆逐艦から発射された魚雷が46ノットの高速で突進していった。 次の瞬間、敵新鋭戦艦の艦首に1本の水柱が立ち上がった。 それから3秒後に、中央部に2本の水柱が上がり、そして4秒後には、艦尾に高々と真っ白な水柱が、高々と吹き上がった。 水柱が崩れ落ちた後、敵新鋭戦艦は右舷側から黒煙を引きつつ、急速に速力を落とし始めた。 「敵戦艦、行足鈍ります。敵艦の艦内で浸水が発生している模様。」 見張りが、敵艦の状況を艦橋に伝えてくる。やがて、敵新鋭戦艦は右舷に傾斜しながら、海上に停止した。 「敵戦艦、停止。右舷に傾斜しています。」 モースブラッガー大佐は、敵新鋭戦艦の断末魔の姿を、じっと見つめていた。 「トルペックス火薬400キロの炸薬量を持つMk-17魚雷を、片腹に4本もぶち込まれれば、いかに頑丈な敵戦艦とは言え、 耐え切れなかったか。」 モースブラッガー大佐は、沈みつつある敵戦艦を見つめながら、小声で呟いていた。 「通信士!旗艦に報告。我、敵新鋭戦艦を雷撃、敵艦は魚雷4を被雷、撃沈確実と認む。以上だ。」 トアレ岬沖海戦は、この敵新鋭戦艦の被雷沈没を最後に幕を閉じた。 1月18日 午前8時 マルヒナス運河西方10マイル沖 フェイレは、朝早く起きると、気分転換のために甲板に上がっていた。 途中、クリーブランドの乗員達と何度か顔を合わせたが、乗員達はフェイレの勇気ある行動を褒め称えた。 フェイレは、状況を打開するために、魔法防御でこの艦を覆った。 クリーブランドが魔法防御の恩恵を得られたのは僅か10分。その10分で、状況は変わった。 魔法防御に守られたクリーブランドは、僚艦コロンビアと共同して敵新鋭戦艦を砲撃した。 狂ったように6インチ砲、5インチ砲を乱射したクリーブランドとコロンビアは、敵新鋭戦艦に対して相当な打撃を与え、 やがて、砲戦力を減らされた敵戦艦は撤退を開始した。 あの後、フェイレとエリラは、疲労のためその場に倒れてしまった。 彼女は起きた後、クリーブランドの乗員から、敵戦艦が駆けつけた味方駆逐艦に捕捉され、魚雷攻撃で撃沈されたと伝えられた。 あの激烈な海戦から、早10時間が経った。 今、フェイレは、右舷中央部の甲板で、TG57.4の僚艦を見渡していた。 特に目を引いたのは、輪形陣の真ん中に位置する戦艦である。 その戦艦は、昨日見た敵戦艦よりも強そうに見えた。 アラスカと呼ばれたその戦艦は、昨日の海戦で傷付いているが、航行には支障無いようだ。 「よっ、元気してるか?」 唐突に、後ろから声をかけられた。振り向くと、そこにはヴィクターとエリラが立っていた。 「ヴィクターさん、それにエリラ。体はもう大丈夫なの?」 「ああ、もう平気さ。」 「あたしは、まだ体がだるいけど、だいぶ回復したわ。」 「そう・・・・元気でなによりよ。」 フェイレは、心底嬉しそうな笑みを浮かべた。 「しかし、アラスカも大分傷付いているなぁ。いかに新鋭艦とはいえ、2対1の戦いはきつかったようだな。」 「ええ。それにしても、アメリカは凄い。あんな大きな軍艦を作れるなんて。」 フェイレは、驚きをまじえた口調で、ヴィクターとエリラに言った。 当の本人達は、互いに顔を見合わせると、なぜか笑い出した。 「どうしたの?急に笑い出して。」 「フェイレ、あれだけで驚いているようじゃ、これからが大変だね。」 「全くだ。俺達はもっと凄いのを見たぞ。」 「凄いの?」 「ええ。ま、港に着けば嫌でも分かるようになるよ。」 「どんな感じ?」 「それは見てのお楽しみかな。」 エリラの回答に、フェイレは口を膨らませた。 「何よ、もったいぶらないで教えなさいよ。」 「嫌だよ~。まあ、お楽しみは後に取っておくほうが良いっていうし、その時に教えるわよ。」 「むぅ、このイジワル猫!」 ヴィクターは、エリラとフェイレの掛け合いを見て、ひとまず満足していた。 (フェイレも、たった1日ですっかり変わったな。まあそれはともかく) ヴィクターは、エリラとフェイレのふざけ合いを無視して、空に目を向けた。 空は、いつに無く快晴だ。 彼は、久しぶりにリラックスした気分で、大空を眺めていた。
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568: 加賀 :2020/12/19(土) 21 30 08 HOST om126156135104.26.openmobile.ne.jp 最初の砲声を開いたのは2030と両軍とも記載されている。何故ならその時刻に『日向』から発艦した瑞雲改二22機と『利根』『筑摩』『大淀』から発艦した瑞雲改二29機が吊光弾を投下してその光を元に800キロ爆弾で連合軍艦隊を爆撃したからである。 「おのれジャップ!? 煩いカトンボを撃ち落とせ!!」 炎上する『ニューメキシコ』を他所にオルデンドルフ中将はそう叫び、対空砲火が開く。 「落ちろカトンボ!!」 対空砲火で数機の瑞雲改二が撃墜されるも大部分は爆撃に成功した。瑞雲改二隊が久米島の水上基地に引き揚げる頃には『ニューメキシコ』『ニューヨーク』『ラミリーズ』は炎上していた。炎上するその炎を求めて橋本艦隊は突撃を開始するのである。 先に突撃を開始したのは早川少将の二水戦と『大淀』である。砲火力が『大淀』と最大速度がある『島風』を先頭に飢えた獰猛の群れは獲物を求めて突撃する。 その支援射撃として『長門』『伊勢』らの戦艦が主砲を開く。先に屈したのは『ニューヨーク』だった。『日向』の35.6サンチ砲弾を七発を受けても浮いていたが突撃してきた『嵐』の酸素魚雷三本が命中して海戦後には波間に没する。だが『嵐』も『ボストン』の8インチ砲弾を五発が命中して轟沈してしまう。それを見た『大淀』が15.5サンチ砲弾を叩き込み、更に駆けつけた『摩耶』『鈴谷』が20.3サンチ砲弾を叩き込んで『ボストン』は行動を停止するのである。 だが『摩耶』『鈴谷』の周囲に大口径弾が落下して複数の水柱を噴き上げる。 「あの小賢しいジャップを追い払え!!」 『デューク・オブ・ヨーク』が突出して味方水雷戦隊の突撃を支援しようとした。『リットリオ』らでも可能だったが彼女達は『長門』と砲撃戦をしていたので『デューク・オブ・ヨーク』の艦長はそう判断したのである。実際に『デューク・オブ・ヨーク』が放った35.6サンチ砲弾は『摩耶』『鈴谷』を大破させるには十分だった。更に『大淀』を轟沈させてしまう。だが彼女が活躍したのはそこまでだった。 「『コンゴー』『ハルナ』が来ます!!」 『榛名』の速度に不安があったので26ノットで突撃し『金剛』『榛名』は35.6サンチ砲弾を距離7100で『デューク・オブ・ヨーク』に叩き込む。この砲撃で一番砲の四連装砲が使用不能となり『デューク・オブ・ヨーク』は二隻に滅多撃ちにされて炎上するのである。 「あんな旧式にィ!?」 一方で『山城』は『リシュリュー』と同航戦を選択して砲撃していた。改装によって防御力は増していた『山城』は先に波間に没した『扶桑』の分まで負けじと砲撃をするが『リシュリュー』に利はあった。 『リシュリュー』の38サンチ砲は距離20000で舷側装甲を393ミリまで貫通可能であり『山城』は瞬く間に9発の砲弾が命中するも『山城』は耐えていた。 569: 加賀 :2020/12/19(土) 21 30 46 HOST om126156135104.26.openmobile.ne.jp 「此処が堪え処だ『山城』……」 「………」 艦長の篠田少将はそう呟きそれを聞いていた二戦隊司令官の西村中将も無言だった。『山城』が炎上してその煙で飢えた獰猛達が突撃を開始していたのだ。 「ジャップの駆逐艦が来るぞ!!」 突撃してきたのは第九駆逐隊の『朝雲』『山雲』『峯雲』と第六駆逐隊の『響』『雷』『電』の六隻である。 『リシュリュー』は副砲で『朝雲』『山雲』を吹き飛ばしたが残った四隻は酸素魚雷を距離3200で発射した。その離脱中にも『雷』が轟沈するが『リシュリュー』の左舷に六本の水柱を噴き上げさせる代償はあったと言えよう。 そして『山城』はまだ『生きていた』。 「目標『コロラド』!!」 至近(距離8500)にいた戦艦『コロラド』に狙いを定めて砲撃を集中した。だが『コロラド』も黙ってはいなかった。残った主砲一基で『山城』を迎撃する。更に『アイダホ』も駆けつけて『山城』に砲撃を集中する。 だがその砲撃を元に第十六戦隊『鬼怒』『浦波』第七駆逐隊『潮』第四十三駆逐隊『松』『竹』『梅』第五十四駆逐隊『柳』『橘』『欅』 が駆けつけた。『山城』を援護すべく『鬼怒』『浦波』は探照灯を照射する。 その光を元に『潮』以下が突撃を開始するが米駆逐艦隊も防ごうと展開する。この攻撃で『竹』『橘』は撃沈されるも残りは突破に成功、『コロラド』に酸素魚雷二本が命中し砲撃も浸水増加で不能となり完全に大破、『アイダホ』に三本が命中して大傾斜するのである。 だがそれでも尚、『山城』は砲塔一基を残して戦闘可能であり狙ったのは『キングジョージ五世』である。 「薙ぎ払え!!」 『キングジョージ五世』と『クイーン・エリザベス』は接近する『山城』に砲撃を集中、『山城』は更に炎上するも行動を停止しなかった。 「あの戦艦は何なんだ……」 ローリングス大将でさえ思わずそう呟く程だった。だが不意に『キングジョージ五世』も揺れた。酸素魚雷が命中したのだが命中した箇所が舵であり舵は破壊され『キングジョージ五世』は真っ直ぐーー『山城』の方向へ進むしかなかった。 「奴等を砲撃しつつ回避しろ!!」 ローリングス大将が叫ぶが回避は不能だった。そして『山城』の艦橋では西村中将と篠田少将はニヤリと笑っていた。 「往っていいぞ篠田艦長!!」 「あいよォ!!」 『クイーン・エリザベス』が側面から『山城』を砲撃するも『山城』は航行を止めない。 「かわせ!! かわせんのか!? かわせェ!!」 「だ、駄目です!? 回避不能!! き、来ます!!」 そして二隻が衝突する寸前、小口径弾が『山城』の艦橋に命中。重体ながらもまだ生きていた篠田少将は傍で戦死して倒れている西村中将に黙祷しながらも迫り来る『キングジョージ五世』を見てニヤリと笑った。 「遅かったなァ!!」 2331、『キングジョージ五世』と『山城』は艦首から衝突した。篠田少将最期の命令は全乗員に伝えられた。 「全乗員は陸戦装備。白兵戦を展開して『キングジョージ五世』を沈めろ!!」 「突撃ィ!!」 2356、先に沈んだの『山城』であるが戦死者以外の乗員は陸戦装備をして『キングジョージ五世』に突入して白兵戦を展開、『キングジョージ五世』も0035には『山城』の後を追う形で波間に没するのである。 そして第三夜戦は終幕を迎えようとしていたのである。 570: 加賀 :2020/12/19(土) 21 33 38 HOST om126156135104.26.openmobile.ne.jp 『山城』マジ『山城』(意味分からん 至近距離でぶっぱなされる酸素魚雷は良いよね、ワビサビだよね(何 リーンホースネタ(反応してしまった俺は悪くぬぇ……) いよいよ第三夜戦も終幕へ。え?もう轟沈しない?いやまだ両軍とも轟沈祭りは終わってはいないぞい(レイプ目
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クロウ・ホーガン「汚ったねーぞ!インチキ効果もいい加減にしろ!」 公式がインチキ呼ばわり ・ DTデス・サブマリン(ノーコストで墓地から蘇生した) ・ ヒドゥン・ナイト-フック(物理的にDホイールを転倒させた) ・ 地縛神各種(アニメ効果はチート) ・ 手札から罠(クロウはデルタ・クロウ-アンチ・リバースを所持しており、使ったこともあります。) ・ 【旋風BF】【墓地BF】(タッグフォースにてクロウがアキに「人のこと……言えるの?」と突っ込まれている) プレイヤーから見たインチキカード ・ BF-疾風のゲイル ・ 裁きの龍 ・ ダーク・アームド・ドラゴン ・ 氷結界の龍 トリシューラ ・ DDB ・ ゴヨウ
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第108話 魔法防御を突き破れ 1484年(1944年)午後8時 マルヒナス西港北30マイル地点 陸上装甲艦レドルムンガは、僚艦であるバログドガ、アソルケバと共に夜の砂漠地帯を最大速度で南下していた。 「後続の突入部隊はしっかり付いて来ているか?」 第311特殊機動旅団司令官である、ルドバ・イルズド准将は、魔道参謀に聞いた。 「はい。後続部隊は2ゼルドの間隔を開けて進んでいます。アメリカ軍の橋頭堡も、あと少しで壊滅できますな。」 「ああ。なんと言っても、この最強の陸上装甲艦が、3隻もあるのだからな。」 (3隻しかない、貴重な兵器だけどな) イルズド准将は、最後の部分は口にしなかった。 レドルムンガ級陸上装甲艦は、ルベンゲーブで作られた特殊な魔法石を動力にして動いている。 ルベンゲーブが健在であれば、今頃は3隻のみならず、6隻の陸上装甲艦が、大地を疾駆していたはずであった。 だが、ルベンゲーブの魔法石精錬工場は去年6月末と、つい先日の爆撃によって壊滅してしまった。 これによって、陸上装甲艦は3隻までしか作られず、以降の建造は中止となっている。 しかし、それとは別にイルズド准将はある事を心配していた。 それは、防御用魔法石に残された魔力の事である。 イルズド准将は、昼頃に進撃してきたアメリカ軍機甲師団を砲撃で蹴散らした後、そのまま南下して橋頭堡を襲おうとした。 だが、アメリカ軍は執拗に飛空挺の大編隊を繰り出しては、彼の率いる3隻の陸上装甲艦を潰そうとした。 敵の執拗な空襲は3時間近くにもわたって行われ、少なく見積もっても600機は下らぬ飛空挺が、この陸上装甲艦攻撃に動員されたようだ。 アメリカ軍機には、ワイバーン隊が迎撃に当たってくれたが、それでも多数のアメリカ軍機がワイバーンの妨害を突破し、 3隻の陸上装甲艦に迫った。 5波にも及んだ敵の空襲に、レドルムンガは62発、バログドガは56発、アソルケバは55発の爆弾を受けた。 本来なら、とっくに屑鉄にされてもおかしくない被弾数だが、この3隻に施された防御魔法は、爆弾のエネルギーを見事に打ち消してくれた。 このため、3隻の艦には戦死者はおろか、負傷者すら居なかった。 ワイバーン隊は80騎を撃墜されるという損害を負ったが、このワイバーン隊もよく働いてくれた。 問題は、この空襲でどれぐらいの魔力が消耗したか、であった。 魔力残量はレドルムンガが82.3、バログドガが84.7、アソルケバが86.1となっている。 あれだけの空襲で、早くも魔力残量が9割を切っている。 アメリカ軍側は、途中で威力の大きい航空爆弾を使用してきたようだ。 橋頭堡のアメリカ軍は、こちらの存在を知ったからには襲撃に備えているであろう。 橋頭堡に突入すれば、敵は激しい抵抗を行うに違いない。 「だが、この艦の魔法防御なら、最後まで耐える事が出来る。それに、アメリカ軍の砲兵隊は移動目標の射撃に慣れていない ようだから、命中する砲弾も意外と少なくなるだろう。流石に、連続で弾を当てられたらうざったいが。」 「司令官、どのような敵が来ようと、このレドルムンガの前には鎧袖一触です。あと1時間もすれば、アメリカ軍は地獄を 味わう事になるでしょうな。」 主任参謀が調子の良い口調でイルズド准将に言って来た。 「うむ。今日は、良い狩ができそうだ。」 彼は自信に満ちた表情でそう言った。 その頃、レドルムンガの深部にある魔力制御室では、5人の魔道士が真剣な表情で話し合っていた。 「司令官の命令で、防御用魔法石の強度を上げたのだが、早くも不具合が生じかけている。」 魔道士の中で、指揮官と思しき男がそう言った。 「不具合・・・ですと?」 「そうだ。この魔法石は、確かに素晴らしい物だが、無理に強度を上げるとある不具合が起きるらしいんだ。その不具合というの がな、砲弾が連続して命中する事による魔力消費の増大だ。要するに、相次ぐ命中によって防御箇所の魔力の巡りが悪くなるんだ。 そうなると、必然的に魔力を多く出そうとするから、魔力消費量は大きくなる。本来ならば、このような事にはならないんだが、 無理に強度を上げた事でそういう不具合が起き易くなっている。」 「しかし、アメリカ軍の砲兵隊は、移動目標に慣れていないようでしたよ。昼間の戦闘だって、落ちて来る砲弾は大量にあったけど、 命中したのはほんの一握りだったみたいですし。」 「まあ、確かにそうだろう。砲兵隊というものは、大体が動かない目標を狙って撃っているからな。だが、移動目標を撃つのが 得意な奴もいるぞ。」 「敵の砲兵隊にですか?」 「砲兵隊、敵の陸軍には居ないだろう。いるとすれば海軍だな。移動目標の射撃に慣れた重砲級の主砲を持つ軍艦がいる。」 「あ、もしかしてブルックリン級の事ですか?」 「当たりだ。俺は以前、巡洋艦に乗っていたんだが、アメリカと戦うきっかけとなったあの海戦にも参加していた。その時、 乗っていた艦がブルックリン級の猛射にずたずたにされてしまってな。最初は信じられない気持ちだったよ。そのブルックリン級か、 改良型のクリーブランド級が、1、2隻は橋頭堡の近くに居るかも知れん。」 「ブルックリン級やクリーブランド級巡洋艦って、マルヒナス沖海戦で海軍の艦艇にぼろ負けした奴じゃないですか。 たいした事無いですよ。」 部下は嘲るような口調で言う。 「馬鹿にするな。」 しかし、指揮官は静かな、それでいて凄みのある口調で部下に言った。 「奴らは6秒おきに重砲級の砲弾を10発以上もぶち込んでくるんだぞ。おまけに、奴らは海軍所属だ。海軍の艦艇という物は、 移動目標の射撃に慣れている。そんな奴らが相手になったら・・・・ましてや、2、3隻のブルックリン級を、レドルムンガ級1隻で 当たる事になったら、この不具合のある魔法防御では心許ない、と思うぞ。」 「はぁ・・・・・・」 魔力制御室に、しばし沈黙が流れた。 「もし、ブルックリン級か、クリーブランド級が現れたらどうなります?」 「それは、俺にもわからんよ。司令官はイケイケドンドンな性格だからな。奴さんが現れたら、真っ先に目標を変更するかも知れん。 その時は、魔法防御が破られないうちに、砲術科が敵を仕留める事を祈るだけさ。」 指揮官は、苦笑交じりにそう呟いた。 3隻の陸上装甲艦は、大きな期待と、少しばかりの不安を乗せたまま南下続けていた。 1484年(1944年)1月12日 午後8時20分 マルヒナス西港沖3マイル地点 第61任務部隊第3任務群の軽巡洋艦4隻は、第4艦隊から派遣されて来た重巡洋艦のサンフランシスコ、ヴィンセンスと合流した。 TG61.3司令官であるアーロン・メリル少将は、隊列に加わるサンフランシスコに目を向けた。 「2隻か・・・・残りは弾薬の補給がまだ終わっていないようだな。」 「重巡部隊は今朝の戦闘で激しく撃ちまくりましたからなあ。サンフランシスコとヴィンセンスは、他艦よりも早く 補給作業を終えられたので、隊列に加わる事が出来たようです。」 予定では、出せる限りの重巡を加えると第4艦隊は言っていたのだが、その他諸々の事情で、この2隻のみがTG61.3に加えられた。 サンフランシスコとヴィンセンスは、共にニューオーリンズ級巡洋艦として生を受けている。 2艦は、普通の条約型巡洋艦とは違い、ブルックリン級と似たような背の低い箱型艦橋を採用しており、防御力もペンサコラ級、 ノーザンプトン級と比べて上がっている。 だが、ニューオーリンズ級も少し進んだ条約型巡洋艦でしかなく、防御力に関して難がある事には変わりない。 しかし、その頑丈そうな外見は、見るからに逞しく感じる。 この2隻の重巡を含めた6隻の巡洋艦で、橋頭堡を襲うであろう敵陸上装甲艦を迎撃する。 迎撃の際には水上偵察機を飛ばし、内陸部を照明弾で照らしてから敵を確認し、砲撃を行う予定だ。 「これで役者は揃った。後は、敵がいつ出て来るかだな。」 メリル少将はそう呟いた。 そのまま、1時間ほど時間が流れた。 午後9時20分 メリルの率いるTG61.3が待っていた物は、ついに姿を現した。 突如として、橋頭堡の上空に赤紫色の光が煌いた。 「司令官!陸軍から連絡です!敵陸上艦3隻が橋頭堡へ向け接近中との事です!」 通信士官が慌てて艦橋に飛び込んで来た。 メリル少将は落ち着いた表情で頷いた。 「水偵を飛ばせ!弾着観測を行う!」 彼はそう命じた。予め準備していたのだろう、僅か5分の間に各艦からOS2Uキングフィッシャー水偵が発艦した。 橋頭堡には、早くも敵陸上艦から放たれた砲弾が落下している。積み上げられた物資の間に砲弾が落下し、爆発が起きている。 「運河に入ろう。」 メリル少将は命じた。TG61.3の6隻の巡洋艦は、互いに300メートルの間隔を開けながら、18ノットの速力で運河に入っていく。 6隻全てが、幅の広い海峡と言っても遜色の無い運河に入った時、ふと、内陸のほうで照明弾が光るのが見えた。 1分後、水偵から報告が入った。 「敵陸上艦3隻発見。位置、橋頭堡より北7000メートル。方位0度方向。敵は橋頭堡に集中砲撃を行いつつあり。」 「橋頭堡より北7000・・・こちらから言えば、距離は8000メートルか。いい距離だ。」 メリル少将は不敵な笑みを浮かべた。射程距離の長い艦砲なら、8000メートルの距離は充分射程内だ。 「敵を驚かしてやろう。左砲戦、目標、内陸部の敵陸上艦。敵を釣るため、最初の3、4回だけは斉射で行うぞ。」 「アイアイサー。」 ブルックリンの主砲が、駆動音と共に左に向いていく。砲身1つ1つが生き物のように動き、目標に向けられる。 観測機の報告をもとに、照準が定められ、各主砲には6インチ、重巡には8インチの砲弾が装填される。 「主砲発射準備良し!」 メリル少将は、艦長から報告を受け取った。視線の傍らに、攻撃を受ける橋頭堡が見える。 橋頭堡は、敵陸上艦の攻撃に備えて、防御体制が整えられている。 陸軍の砲兵隊は、死に物狂いで反撃を行っているが、敵陸上艦の砲火はなかなかに激しく、橋頭堡内では損害が続出している。 (待ってろよ。俺達があの厄介な敵を引き付けてやるからな) 彼はそう思った。そして、命令を発した。 「撃ち方始めぇ!」 陸上装甲艦レドルムンガ艦橋では、司令官のイルズド准将がやや迷惑そうな表情を浮かべていた。 「あのハエ共は一体なんだ?こっちの目潰しにでも来たのか?」 「恐らく、弾着観測用の飛空挺ですな。先ほど投下したのは、観測を容易にするための照明弾でしょう。」 レドルムンガの艦長は、丁寧な口調でイルズド准将に言った。 「弾着観測か・・・・ま、夜間は視界が限定されて、遠くへの砲撃はやりにくくなるからな。」 イルズド准将はフンと鼻で笑うように言った。彼は、今砲撃している橋頭堡から、上の観測機が飛んで来ているのかと思っていた。 (どんどんあがけ。お前達の試みなんぞ、全て無駄だって事を教えてやるよ) 彼は、必死の応戦を続けるアメリカ軍に対して、内心サディスティックな気持ちでそう呟いた。 彼がおもむろに、望遠鏡で橋頭堡を眺める。 橋頭堡からは、必死に反撃の砲火が放たれる。彼は、アメリカ側も必死だなと思ったが、その時、橋頭堡の後方から発砲炎と思しき物が光った。 その発砲炎は、不思議にも一列に並んでいた。 「なっ!?」 「どうかされましたか?」 驚きの声を上げたイルズド准将に、艦長が声をかけた。 いきなり、飛翔音が響いて来たと思いきや、3隻の陸上装甲艦と橋頭堡の間を遮るようにして、砲弾が落下した。 「今のは橋頭堡からの砲撃か。敵さん、いよいよ本腰を上げて来たぞ。」 艦長は、今の弾着が橋頭堡から放たれた物だと思い込んでいた。 「艦長、橋頭堡の後方に何かいるぞ!」 「後方・・・ですか?あそこには運河しかありませんぞ?水の上に大砲は据えられ・・・・・」 艦長は最後まで言葉を言いかけてから、はっとなった。 彼は慌てて、橋頭堡の後方に視線を集中させる。すると、やはり運河と思しき所から大砲の発砲炎が見えた。 「いました・・・・・新たな敵です!」 艦長が叫んだ。 「敵は、運河に軍艦を乗り込ませ、援護射撃を行わせています!」 「照明弾を打ち上げて、敵の艦種を調べろ!」 イルズド准将はすかさず命じた。舷側にある4ネルリ砲に照明弾が装填され、発射される。 戦闘に途中参加してきた敵軍艦の真上に、照明弾が光った。その光に、敵の姿が闇夜から曝け出される。 艦長は、敵艦の特徴をすぐに見分けた。 「司令官、敵は巡洋艦を繰り出して来ました!」 「巡洋艦だと?」 「はい。先頭の巡洋艦はニューオーリンズ級、2番艦がブルックリン級、3番艦はやはりニューオーリンズ級、 残りは全てブルックリン級です。」 「ニューオーリンズ級とブルックリン級か・・・・・こいつはいい獲物だ。」 イルズド准将は凄みのある笑みを浮かべた。 「ニューオーリンズ級ならまだしも、ブルックリン級ならたいした事無い。先のマルヒナス沖海戦で、さほど脅威にならん と照明されているからな。目標を変更する!まずはあの小うるさい巡洋艦を叩く!」 彼はそう言うと、目標を橋頭堡から運河に乗り込んできた巡洋艦に変更した。 砂漠を20リンルの速度で疾走する3隻の陸上装甲艦は、同航戦の形で6隻の米巡洋艦と並走し始めた。 サンフランシスコの右舷に、10本以上の水柱が吹き上がった。 と見るや、ブルックリンの右舷にも同じように水柱が立ち上がる。 「司令!敵は食ついて来ました!」 艦長の言葉に、メリル少将は頷いた。 「ようし、ここからが本番だ。目標を割り当てる!」 彼は、凛とした口調で命令を発した。 「サンフランシスコ、ブルックリン、目標敵1番艦。ヴィンセンス、フィラデルフィア、目標2番艦。 フェニックス、ビロクシー、目標3番艦!撃ち方はじめ!」 ブルックリンの主砲が、陸地を疾走する敵1番艦に向けられる。 命令が発せられてから2分後に、ブルックリンは第1射を放った。 やや遅れて、サンフランシスコも第1射を放つ。5発の6インチ砲弾と3発の8インチ砲弾が敵1番艦の右舷側に落下する。 弾着を確認した後、第2射が放たれる。 今度は敵1番艦を飛び越した位置に砲弾が落下した。やや遅れて飛来したサンフランシスコの射弾が、やはり1番艦を飛び越す。 「敵2番艦に1弾命中!」 見張りの声が艦橋に聞こえてきた。 敵2番艦を相手取っているヴィンセンス、フィラデルフィアのペアは、早くも命中弾を得たようだ。 「後ろの奴が命中弾を出したぞ!俺達も負けるな!」 艦長が砲術科にそう言って、ハッパをかける。 ブルックリンの第3射が放たれた。5発の6インチ砲弾が大気を切り裂き、敵陸上艦に降り注ぐ。 今度は右舷側に3本、左舷側に2本の“砂柱”が立ち上がった。 これに遅れる事5秒、サンフランシスコも敵1番艦に対して夾叉弾を得た。 「夾叉を得たか。あと1射か、2射で命中弾が出るな。」 メリルはそう呟いた。その直後、ブルックリンの左舷側海面に敵の射弾が落下する。 敵艦は軽巡クラスの主砲と、駆逐艦クラスの主砲を同時に撃っているのだろう、水柱の数が20本近くはある。 その水柱に、しばしの間視界が遮られる。水柱が崩れ落ちた直後にブルックリンが第4射を放った。 やや間を置いてから、敵1番艦の前部付近に赤紫色の光がともる。 「敵1番艦に命中弾!」 「よし、一斉撃ち方に移行する!」 艦長は、見張りの報告を受けて、すかさず次の射撃ステップに進めた。しかし、覇気のある口調とは裏腹に、表情は険しい。 (無理も無い。たった今、自分達が放った砲弾が、敵にあっさり弾かれたからな) メリルは、内心で艦長の心境を察した。 敵1番艦の射弾が、再び左舷側に落下する。 落下位置は、左舷100メートルほどの所だ。敵陸上艦の射撃は、先ほどまで精度が荒かったが、今では射撃が正確になりつつある。 (敵の砲弾を浴びる前に、1発でも多く敵艦に当てて、あの忌々しい魔法バリアを破らねば!) メリルの内心に、焦りが生まれ始めた。 その思いを吹き飛ばすかのように、ブルックリンは斉射を開始した。 15門の6インチ砲の一斉射撃は、交互撃ち方の時と比べて衝撃が大きい。 その侮れぬ衝撃と同じものが、きっかり6秒後に訪れ、9700トンの艦体を絶え間なく揺さぶる。 連続衝撃の余韻が完全に抜けぬうちに、またもや6秒後に15門の6インチ砲が斉射を行う。 シホールアンル海軍に恐れられたブルックリン・ジャブが、本領を発揮し始めた瞬間だ。 サンフランシスコも、ようやく第1斉射を行った。 ブルックリンの放った第1斉射は、早くも4発が敵1番艦に命中した。 第2斉射は2発、第3斉射弾は3発が、敵1番艦に命中する。並みの巡洋艦なら、この時点で大きく傷付いている。 だが、頑丈な魔法防御で覆われたレドルムンガは、ブルックリンから放たれるジャブの猛攻をいとも簡単に防いでいる。 6秒おきにブルックリンが斉射をする。そして、敵1番艦も6秒おきに赤紫色の光を発して、6インチ砲弾の突入を阻止する。 その2秒後にサンフランシスコから放たれた8インチ砲弾が命中するが、これまた魔法防御によって阻止される。 「ヴィンセンス、フィラデルフィア、斉射開始!フェニックス、ビロクシーも斉射開始しました!」 砲戦開始から5分ほどで、6隻の重巡、軽巡がようやく本気を出し始めた。 ブルックリンは僚艦に負けじと、6秒おきの斉射を繰り返す。 第5斉射、第6斉射、第7斉射と、15発の砲弾が一定の間隔で敵1番艦に向かっていく。 サンフランシスコも、9門の8インチ砲を一斉に発砲し、6インチ砲よりも一際頼もしい砲声を辺りに響かせた。 敵1番艦のみならず、2番艦、3番艦にも赤紫色の光が明滅している。 6隻の重巡、軽巡の砲弾は、確実に命中していた。 だが、3隻の陸上装甲艦はいくら砲弾を命中させても全く応える様子が無い。 「くそ、なんて忌々しい魔法防御だ。」 メリルは、半ば苛立ったような口調で呟いた。 その時、左舷側に水柱が立ち上がった、と思いきや、背後の右舷側でも水が吹き上がる音が聞こえた。 「きょ、夾叉されました!」 「ついにか。」 艦長は苦い表情を浮かべた。 3隻の陸上装甲艦は、1番艦がサンフランシスコ、2番艦がこのブルックリン、3番艦がヴィンセンスを砲撃している。 サンフランシスコを砲撃している敵1番艦は、砲手が下手糞なのか、夾叉弾すら与えていないが、2番艦がブルックリンに夾叉弾を与えた。 砲弾が夾叉した事は、敵2番艦の照準がブルックリンを正確に捉えた事を表している。 ブルックリンが第12斉射を放った直後、敵2番艦も斉射を放つ。 そして、ブルックリンの周囲にドカドカと砲弾が落下した。 突然、ガァーン!という轟音がなり、ブルックリンの艦体が揺さぶられた。 「やられたか・・・・!」 メリルは呻くような口調で呟いた。一度命中弾が出れば、後は敵の砲弾が次々と命中する。 敵の魔法防御を打ち破るまで、果たして艦が持ってくれるだろうか・・・・・ 「左舷中央部に命中弾!損傷軽微!」 命中弾は、どうやら1発のみで済んだようだ。おまけに損傷も軽微だという事から、恐らく駆逐艦クラスの砲弾が命中したのだろう。 その一方で、敵1番艦に対して放った第12斉射弾は、5発が命中した。 それと同時にサンフランシスコの斉射弾も4発が命中する。 敵1番艦は、これまでに、60発以上の6インチ、8インチ砲弾を受けている。 並みの艦船ならば、今頃は艦上構造物を残らず破壊され、浮かぶ鉄屑の塊と化しているほどの命中弾数だ。 戦艦ですら、これほどの弾数を受けてはただでは済まないであろう。 しかし、敵1番艦は相変わらず無傷の姿で居続けている。 その1番艦は、サンフランシスコ、ブルックリンの努力を嘲笑うかのように斉射を行う。 敵の斉射弾がサンフランシスコ目掛けて殺到し、落下する。 「サンフランシスコ被弾!」 いきなり、見張りが悲痛そうな声を上げた。 メリル少将は、目の前を航行する重巡に目を向ける。サンフランシスコは、後部甲板からうっすらと煙を噴き上げていた。 敵弾は、後部甲板に命中したようだ。しかし、これだけではサンフランシスコは参らない。 逆に敵に対して、舐めるなと言わんばかりに8インチ砲の斉射を見舞う。 「あれだけならまだ大丈夫だ。」 メリルはそう言って、胸を撫で下ろした。 サンフランシスコが1斉射する間、ブルックリンは3度斉射弾を放つ。 斉射のたびに、敵1番艦は艦体を赤紫色に煌かせる。 突然、ガガァン!という衝撃がブルックリンを揺さぶる。 「後部甲板に被弾!火災発生!」 「中央部に被弾!損害軽微!」 「ダメージコントロール班は、すぐに火災を消せ!」 次々と入る被害報告に、艦長は的確に指示を出していく。 「ヴィンセンスに敵弾命中!しかし、被害は軽微の模様!」 後部艦橋にいる見張り員がそう伝えてくる。 「これで、先頭の3隻はまず被弾した訳か・・・・」 メリルはそう呟きながら、背中にひやりとする物を感じた。 敵艦は、あれだけの砲弾に叩かれながら、一向に参る様子が無い。 それもそうだ。何しろ、敵艦は強力な魔法防御のお陰で、艦自体には傷すら負っていないのだから。 それに対して、メリルの率いる部隊は、早くも3隻が損傷した。 損傷のレベルは、今のところかすり傷を負っただけに過ぎない。 だが、この状況が10分、20分と続いていけば、かすり傷はより広まっていく。 ブルックリンが更に2度斉射弾を放った所で、敵2番艦の射弾がみたびブルックリンを捉えた。 「後部カタパルトに被弾!火災発生!」 「前部甲板に命中弾!されど損害軽微!」 その報告がもたらされた直後に、今度はサンフランシスコ被弾の報告が入る。 (このままじゃ、被害が積み重なるばかりだ。火災が拡大すれば、そのうち弾薬庫誘爆の可能性もあるし、艦橋トップの測距儀に 被弾すれば、射撃そのものがおぼつかなくなる。そうなる前に、敵の魔法防御を打ち破らねば・・・・どうすればいいか・・・・) メリルは、内心でどうすればいいのか思っていた。 航空支援でも呼ぼうか・・・・・いや、航空支援を呼んだとしても、視界の悪い夜間では敵に爆弾を当てる事は難しいだろう。 敵艦は、夜間のために対空射撃が出来にくくなるだろうが、条件が悪いのはこちらも同じ・・・ その時、メリルはある事を思いついた。 「艦長!この艦の両用砲はまだ健在だな?」 メリルの問いに、ブルックリンの艦長は頷いた。 「両用砲で何をするんですか?」 「敵艦を撃て!」 メリルは即答した。 「5インチ砲を撃ちまくって、敵の魔法防御を早く消耗させるんだ!」 レドルムンガの斉射弾が、先頭を走るニューオーリンズ級に命中する。 頑丈そうな艦体の中央部と、前部に命中の閃光が灯った。 その後、中央部からちろちろと踊る火らしきものが見えた。 「ようし、いいぞ艦長!その調子だ!」 司令官席で観戦するイルズド准将は、艦長を褒めた。 「ありがとうございます。あと20分以内に、あの1番艦を仕留めて見せましょう。」 艦長は自信ありげな口調でイルズド准将に答えた。 「なあに、20分以内じゃなくて、もっとゆっくりでも構わんぞ。」 イルズドもまた、自信に満ちた表情で言った。 「何しろ、この艦には強靭な魔法防御が張られているからな。」 彼がそう言った時、艦橋の真上が赤紫色に光った。 「そうですな。ですが、あまりゆっくりやっては敵に無用の痛みを味合わせる事になります。せめてもの情けとして、敵を早めに仕留めましょう。」 「ふむ、それも良いかもしれんな。」 彼はそう言いながら、望遠鏡で1番艦やその後続艦を見る。 2番艦のブルックリン級と思しき艦は、1番艦よりも発射速度が速い。6秒から7秒おきに発射炎を煌かせている。 レドルムンガが相手している1番艦と2番艦からの命中弾は、この2番艦を務めるブルックリン級からのが圧倒的に多い。 主計科兵によると、既に130発は命中していると言う。 「魔力の残量は?」 「はあ、意外にも結構消費しているようです。残量は8割を切るようです。」 「ふむ、まだまだ行けるな。」 イルズドは余裕の表情を浮かべた。 その時、敵艦の発砲炎が急に増した。それまで、艦の前後部のみであった発砲炎が、舷側からも確認された。 敵が副砲も活用し始めた事で、敵艦は噴火しているかのように、盛んに発砲炎を煌かせる。 落下して来る砲弾は、先と比べて格段に増えている。 「旅団長、どうやら敵は副砲も使い始めたようです。」 艦長がそう言ったとき、レドルムンガも8門の5.3ネルリ砲、9門の4ネルリ砲を発射する。 「副砲もか・・・・どうやら、敵はヤケを起こし始めたな。」 イルズド准将がそう言ったとき、レドルムンガの魔法防御が、これまでに無いほどの煌きを発した。 その3秒後には、またもや強い光を発する。 「艦長、敵1番艦の砲弾7発と、敵2番艦からの砲弾10発を受けました。」 「僅か数秒間で17発もの命中弾か・・・・並みの駆逐艦なら瞬時に廃艦・・・・いや、沈没だな。」 艦長は、なぜか冷や汗を浮かべながらそう答えた。 その頃、艦深部にある魔力制御室では、防御用魔法石の残量を監視していた魔道士が、いきなり怪訝な表情を浮かべた。 「先輩、どうかしたんですか?」 若い魔道士が、変な表情を浮かべる魔道士に聞いた。 「いや、何でもない。」 やや年季の入った魔道士は、気のせいだろうと思って椅子に腰掛けた。 今、目盛りの魔力残量は79.7という位置を指している。 戦闘開始前は82以上あったが、流石に100発以上もの砲弾をぶち込まれては、魔力計の下降もやや急になっていた。 しかし、この程度の下がり具合ならまだ大丈夫であろうと魔道士は思っていた。 砲弾を喰らったのか、目盛りがまた下がった。今度は79.6と79.5の間で止まっている。 「あの魔法石は、本当に凄いよなあ。容赦無い砲撃を加えて来るブルックリン級の砲撃を、たったこれだけに抑えちまうんだから。」 先輩は、魔法石に感謝していた。 先輩の兄は、海軍の巡洋艦に乗っていたが、去年10月始めのマルヒナス海戦でブルックリン級と対決し、急死に一生を得たという。 兄曰く、ブルックリン級の猛射には今のシホールアンル艦では逆立ちしても真似できない、と。 そのブルックリン級の猛射が、この魔法石にとっては蚊が刺すに等しい。いや、蚊が刺したほうがマシと思えるような影響しか与えていない。 「精度を上げて正解だったかもしれんな。これなら、魔法石は最後まで持つだろう。」 先輩は、どこか嬉しげな表情でそう呟いていた。 その嬉しげな表情は、次の瞬間凍りついた。 1秒前まで、魔力残量は79.6と79.5の間を指していた。そして、1秒が過ぎると、残量は一気に78まで下がっていた。 「ん?今のは・・・・・?」 彼は、先ほども似たような光景を目の当たりにしていた。 2分前、彼は魔力残量が80.7から一気に79.7まで下がる様子を見ていた。 しかし、残量の下降が通常時とほぼ同じであったので、彼は異常は無いなと思った。 だが、たった今、魔力残量は1.5も下がった。 「どうしたんですか先輩?」 「・・・・・・」 彼は後輩の呼び掛けも無視して、そのまま残量の推移を見続けた。 再び残量が下がる。驚くべき事に、残量計は76を差していた。 「俺は隊長を呼んで来る。」 いきなり、先輩は部屋を飛び出して行った。 「・・・・・・」 後輩は、3秒ほど、ポカンと口を開けて、先輩の出て行った出入り口を見ていた。 「どうしたのやら・・・・」 後輩はのんびりとした口調で残量計を見つめる。残量計は、一気に76から73まで下降していた。 「・・・・・これって、何かおかしくね?」 後輩も、ようやく事態の重大さに気付き始めた。 「どうした?騒々しい。」 出入り口から、指揮官が先輩に引き連れられて制御室に入ってきた。 「まずはこれを見てください!」 「これを見ろだと?」 指揮官は、眉をひそめながら魔力残量計を見つめた。この時、再び残量が下がった。 針は73から、70まで、いや、70の目盛りを超した位置で下降していた。 「もしや・・・・・!」 顔色を変えた指揮官は、慌てた動作で伝声管に取り付いた。 「こちら魔力制御室!甲板の様子はどうなっている!?」 指揮官は、怒鳴るような声で上に聞いた。 「こちら甲板。アメリカさんは派手に大砲をぶっ放してきていますよ。敵さん、主砲のみならず、副砲まで盛んに撃ってますよ。」 「副砲だと?」 「ええ。これまた発射速度が速いんですよ。最短でも4秒おきにぶっ放してきていますよ。敵さん、照準だけは上手いもんですから、 弾がバシバシ当たりますよ。」 甲板に居る連絡員は、呑気な口調で指揮官に返事した。 「敵さんが副砲も撃ち始めて3分ぐらい経ちますが、軽く50発以上は命中していますよ。主計兵の奴が、これじゃあ、当たる数が 多過ぎて計測が追い付かんと言ってました。全く、射的の的もいい所ですよ。」 指揮官は顔を真っ赤に染めてから伝声管の蓋を「ガン!」と音が鳴るぐらい、乱暴に閉めた。 「・・・・上の様子は、どうでしたか?」 「呑気なもんだよ!魔法防御は絶対に破れんと信じ込んでいるようだな。畜生!あれほど無理矢理精度を上げるなと言ったのに!!」 指揮官は腹立たしそうに喚いた。 「敵は副砲も発射して来ている。この3分間で50発以上の敵弾が命中しているようだ。」 「40発以上・・・・・!」 先輩と後輩の2人は息を呑んだ。 「ああ。40発以上だ。敵さんの副砲は、主砲以上に発射速度が速いらしい。それで、この艦には間断無く敵弾が命中している。」 指揮官は、そう言いながら、魔力の残量を見てみた。針は今も下降を続けている。 残量は既に66を切っている。 指揮官の危惧した事態は、敵艦の砲力強化によって現実の物となった。 魔法石の精度強化による不具合は、レドルムンガのみならず、後続の2隻でも起きていた。 それから3分後。 「サンフランシスコに新たな命中弾!」 見張りが艦橋に報告するが、その声も、ブルックリンに命中した敵弾の爆発音に掻き消される。 「左舷中央部に敵弾命中!火災発生!」 「右舷後部に火災発生!」 各所から被害報告が艦橋に舞い込んで来る。 艦長はそれら1つ1つに指示を飛ばしていくが、艦長の表情は苦り切っている。 ブルックリンは、既に8発の敵弾を受けている。 左舷側の機銃座は、半数が破壊されている。 後部甲板の火災は、相次いで飛来する敵弾によって消火が満足に出来ず、徐々に拡大しつつある。 ダメコン班は懸命に消火を行おうとするのだが、至近弾や命中弾によって班員が吹き飛ばされてしまう。 サンフランシスコもまた、中央部と前部から火災を発生しており、特に前部の火災が大きくなっている。 ヴィンセンスも同様で、こちらは左舷側の両用砲2門が敵弾に叩き潰されている。 被害が積み重なっていく味方艦隊に対して、3隻の敵陸上艦は、火災はおろか、傷付く事も無く、無傷の姿のまま砲撃を続ける。 ブルックリンが何十度目かになる斉射を放つ。それと同時に4門の5インチ両用砲も火を噴く。 この射弾は、7発が命中するが、敵艦はただ赤紫色の光を放つだけで、艦自体は傷付かない。 (畜生!あれじゃ、姿だけで形の無い幽霊じゃないか!) メリルは、内心苛立っていた。 既に、ブルックリンの6インチ主砲は、弾薬庫の3割以上の砲弾をあの1番艦に向けて放っている。 サンフランシスコは発射速度が少ない分、ブルックリンよりは消費量が少ないが、それでも100発以上の砲弾を叩きつけている。 ちっぽけな小島の1つは、隙間無く穴だらけになりそうなほどの弾量だ。 それほどの砲弾を叩き込んで、得られるのは、毎回敵が見せる“赤紫色のイルミネーション”だけだ。 メリルが敵艦を幽霊と思うのも無理は無かった。 敵艦が相変わらず無傷を保つ一方、砲撃を受けるサンフランシスコ、ブルックリン、ヴィンセンスの被害は徐々に積み重なる。 砲弾が飛来するたびに、どこかの箇所が必ず壊れる。 機銃座が、一度も使用されぬまま敵弾に直撃され、爆風によってばらばらに引き千切られた。 とある1弾が、サンフランシスコの第1主砲塔に命中する。敵弾は砲塔の装甲を貫通するほど威力が無く、その場で爆発した。 主砲塔にはかすり傷すら付かなかったが、サンフランシスコ乗員には、敵の陸上艦から放たれた嘲笑とも取れた。 サンフランシスコが怒り狂ったかのように9門の8インチ主砲を轟然と唸らせ、その2秒後に5インチ砲で追い撃ちをかける。 9発の8インチ砲弾のうち5発が、そして、4発の5インチ砲弾のうち2発が敵1番艦に命中する。 その数秒後には、ブルックリンの斉射弾が命中する。 僅か10秒間の間に、20発以上の命中弾を与えられたが、その圧倒的な数の命中弾ですら、敵を傷付ける事は叶わなかった。 逆に、敵1番艦が斉射弾を叩きつける。 5.3ネルリ弾2発が中央部に、4ネルリ砲弾3発が後部と前部に命中した。 2発の5.3ネルリ弾は、2基の5インチ砲を吹き飛ばし、ついでに40ミリ連装機銃座1基を吹き飛ばして、単なる鉄屑に変換させる。 サンフランシスコが次なる斉射を放つ前に、再び敵弾がサンフランシスコを捉えた。 中央部に、敵弾2発がまとまって落下する。その3秒後、サンフランシスコは左舷側から真っ赤な火炎が吹き上がった。 この時、1発の5.3ネルリ弾が破壊された5インチ砲座に命中した。 その爆発エネルギーの余波は、繰り返し叩かれ、弱くなった甲板をぶち抜き、両用砲弾庫にまで到達した。 その瞬間、両方弾庫に収められていた砲弾、装薬が誘爆を起こしてしまった。 「サンフランシスコ大火災!」 メリルは、見張りの報告を聞くまでも無く、目の前で火炎を吹き上げるサンフランシスコを凝視していた。 「なんてこった・・・・・・!」 メリルは、顔を悲痛に歪ませた。しかし、サンフランシスコはこれで参らなかった。 左舷中央部を火炎に染めながらも、9門の8インチ砲弾を敵1番艦に叩きつける。 しかし、そのサンフランシスコの頑張りも、3分後に受けた艦尾の命中弾によって費えた。 「サンフランシスコから通信!我、操舵不能!」 「・・・・・・・」 突然の報告に、メリルは絶句した。 サンフランシスコは、艦尾に受けた命中弾によって、舵が取舵20度の方向で固定されてしまった。 舵故障の影響で、サンフランシスコは徐々に運河の左側に寄り始めた。 「サンフランシスコから追加電です。我にかまわず、任務を遂行されたし。」 「サンフランシスコに返信、了解。」 メリルは、ごくそっけない一言をサンフランシスコに返した。 隊列から落伍していくサンフランシスコの艦橋から、艦長を始めとする艦橋職員が、ブルックリンに向けて敬礼を送るのが見えた。 サンフランシスコがブルックリンの後方に流れた後、再び斉射を開始した。 戦闘開始から既に20分近くが経過した。 ブルックリンは、今や敵弾18発を受けていた。後部甲板の火災はまだ衰えていない。 中央部の機銃座は既に全滅状態にある。 敵弾がまたもや落下してきた。 ガーン!という衝撃が、ブルックリンの艦体を揺らした。 「左舷2番両用砲損傷!射撃不能!」 たった今まで、4秒か5秒おきに射撃を繰り返していた両用砲の1基が、息の根を止められた。 ブルックリンの斉射弾が得た物は、またもや赤紫色のイルミネーションだけ・・・・・ 「やばいなこれは・・・・」 メリルは、内心で負けを覚悟し始めていた。 20分に渡る砲撃戦で、サンフランシスコが大破、落伍。ブルックリンとヴィンセンスが被弾多数で中破状態だ。 救いとしては、残り3隻の軽巡が全く無傷である事だが、いつまでも全力射撃が出来るわけではない。 弾には限りがある。この調子では遅かれ早かれ、弾は尽きてしまう。 こちらが粘って、魔法防御を打ち破っても、その際に弾切れになれば敵艦に嬲り者にされるだけだ。 ブルックリンが斉射を放ったと同時に、敵2番艦の射弾が降って来る。 新たに2発がブルックリンに突き刺さり、9700トンの艦体が苦痛に悶え苦しむかのようぬ揺れる。 それから3秒後に、別の射弾が降って来た。この射弾は、ブルックリンの周囲に水柱を跳ね上げたのみだった。 だが、メリルは愕然とした表情になった。 「1番艦までもがこのブルックリンを標的にしたか・・・・・!」 そう、この射弾は敵1番艦から放たれた物だった。 ブルックリンも負けてなるかとばかりに、斉射弾を放つ。だが、その斉射弾も、敵1番艦を赤紫色に光らせたのみに留まる。 既に、300発、いや、5インチ砲も含めれば400発以上は命中させたであろう。 それだけの砲弾を受けてまだ無傷なのだ。 敵2番艦の射弾がブルックリンに降り注ぐ。今度は3発が命中した。そのうち1発は、唯一残っていた左舷側の5インチ連装砲を粉砕した。 「左舷5インチ砲被弾!射撃不能の模様!」 その報告に、メリル少将は顔を歪める。 (今回こそは、TG61.3の汚名を晴らそうと思ったのに・・・・) 彼の内心は、既に悔しさで一杯だった。 ブルックリンの斉射弾がまたもや撃ち放たれる。この斉射弾は、7発が命中したが、その7発も、魔法防御によって阻止される。 敵1番艦の艦体に、もはや見慣れた赤紫色の光が輝く。この時は、その光が一際まぶしく輝いた。 「い、一体何だ?」 一瞬、艦橋職員の誰もがその光に目を奪われる。 その光は、1秒ほどで消えた。 敵1番艦は、相変わらず無傷であった。 「・・・・・ハハハ、俺達、シホット共にとことん馬鹿にされているな。」 艦長は、力の無い声で笑っていた。彼だけじゃない、ブルックリンの乗員全員が、これまでにない徒労感を感じていた。 だから、この3秒後に、敵1番艦の艦上に浮かんだ命中弾の閃光に、最初は誰もが無反応だった。 敵1番艦には、この時、3発の6インチ砲弾が命中していた。 1発は後部、2発は中央部であった。 そのうち、中央部の命中弾は、その台形状の艦体に火災を発生させていた。 「・・・・・司令官。」 「ああ・・・何か燃えているな。」 艦長とメリルは、呆けたような、力の無い口調で言った。 心中に、ある気持ちが沸き始める。これは、もしかして夢か? 俺達は今、敵弾にやられて倒れている。今見ている光景は、体から出て来た魂が見る、ある種の夢ではないのか? 彼のみならず、全ての艦橋要員や見張り員達がそう思っていた。 だが、そうではなかった。いつの間にか放たれていた新たな斉射弾が、敵1番艦の周囲に落下した。 落下の瞬間、周囲に盛大な砂柱が立つ。その中に、明らかに命中と思しき閃光。 それも、赤紫色ではない。真っ白な閃光だ。そして、その後に見えたオレンジ色の炎。 明らかに、6インチ砲弾命中によるダメージだ! 「敵1番艦に4弾命中!火災発生!!!」 見張り員からの声が入るや否や、艦橋内で歓声が爆発した。 突然、巨大な金槌で殴られたような衝撃を感じた。 「うぉ・・・・!」 イルズド准将は、突然の衝撃に驚き、司令官席から跳ね飛ばされないように踏ん張った。 「て、て、て、敵弾命中―!!」 見張り員が、驚きの余り声をどもらせている。 「敵弾命中・・・・・魔法石の不具合は、そこまで深刻だったのか・・・・・」 イルズド准将は、小さい声音でそう呟いた。 さきほど、魔法制御室の魔道士が、魔法石に不具合が起きていると報告して来た。 そして、制御室の指揮官はこういって来た。 「直ちに戦闘を中止し、戦場から離脱すべきです!」 しかし、彼はこの進言を受け入れなかった。 この進言が成された時は、敵の先頭艦が大爆発を起こして隊列から落伍し、敵2、3番艦は火災を吹き上げて満身創痍の状態 (少なくとも、レドルムンガの艦橋からはそう見えた)だった。 その時に、先の進言がなされたのだが、イルズド准将はこのまま行けば勝てると言い、進言を一蹴した。 その結果がこれである。 「いや、勝てる!」 イルズド准将は叫んだ。その声に、艦長や幕僚が振り向いた。 「戦闘は依然、こちら側の有利だ!敵を沈めなくても、戦闘不能にさえすれば後は大丈夫だ!各艦に連絡!そのまま戦闘を続けよ!」 彼は、魔道士を睨みつけながら命令を発した。 魔道参謀は、それに気圧されて、言われるがままに魔法通信を送る。 その時、後方の艦からも眩しい赤紫色の光が放たれた。レドルムンガの魔法石が魔力切れを起こした物と、同じ現象であった。 「旅団長!このままでは、戦闘は不可能です!」 首席参謀が、いきなり胸倉を掴まんばかりの勢いでイルズド准将に詰め寄った。 その時、ブルックリン級から放たれた斉射弾が、レドルムンガを捉えた。 「右舷3番、5番両用砲損傷!」 「後部第4砲塔損傷!旋回不能!」 ブルックリン級の斉射弾は、早くもレドルムンガの砲力を奪い始めている。レドルムンガも負けじとブルックリン級に撃ち返す。 「このまま戦闘を続ければ、我が帝国にとって貴重な陸上装甲艦をあたらに失う事になります!ここは、まず引いて態勢を立て直しましょう!」 「何を言う!我々は今有利だ!」 「不利です!」 首席参謀は叩き付けるように言った。 「魔法石の不具合がレドルムンガのみならまだしも、他の2隻も同様とあっては、もはや作戦は続行できません! 戦争は、まだまだ続きます。我が帝国の勝利のためにも、ここは・・・我慢しましょう。」 首席参謀の言葉に、イルズド准将はがくりと肩を落とした。 そのまま、6秒ほどの時間が流れた。またもやブルックリン級の砲弾がレドルムンガの艦体を削り取る。 (ぼやぼやしていられない。早く新しい命令を出さねば。) イルズド准将は短い思考の後に決断した。 「わかった。魔法防御が無くなった今、今日の戦闘に勝ったとしても前線に復帰する日は遠くなるだろう。そうなれば、 いざと言う時に我々は働けなくなる。首席参謀、君の言うとおりだ。部隊を撤退させよう。」 彼の言葉に、首席参謀は申し訳なさそうな表情になった。 「すまないな。私は、思い上がっていた様だ。」 イルズド准将もまた、すまなさそうな表情で首席参謀に言った。ふと、彼の視線の端に、白熱する球体が写っていた。 (・・・・あれは?) イルズド准将は、その球体の正体を確かめようと、視線を向けた時・・・・・ 魔力制御室に、何度目かになる衝撃が伝わってきた。 「・・・・今の衝撃、だいぶ上から伝わって来たな。」 魔力制御室の隅で座っていた指揮官は、ぼそりと呟いた。 「隊長。魔法防御が無くなってから、この艦はだいぶ叩かれているようですね。」 年季の入った魔道士が、自嘲ぎみな口調で言って来た。 「そりゃそうさ。魔法防御が無くなれば、ただ陸を走るだけで普通の軍艦と変わらなくなるからな。」 指揮官はそう言いながら、魔力の残量計に視線を移す。 魔力の残量は、あと2を残した所で止まっていた。 魔法石は確かによく働き、これまで艦を無傷に保って来た。 しかし、無理に精度を上げた事により魔法石の不具合が生じてしまった。 魔法石は、最初こそは敵艦の砲撃にも微々たる反応しか示さなかったが、不具合が生じてからは、魔法石の消費量は増え始めた。 その原因は、アメリカ軍艦艇の圧倒的な投射弾量にあった。 アメリカ艦は、最初こそはあまり精度の良くない射撃を行っていたが、ひとたび照準を定めれば、猛烈な勢いで砲弾を撃ち込んできた。 移動目標の射撃に慣れた米巡洋艦にとって、レドルムンガほどの大きさの艦に弾を命中させる事ぐらい朝飯前であった。 もし、米巡洋艦の隻数が少なかったら・・・・ あるいは、多くても発射速度が速くなければ、レドルムンガの魔力消費量はある程度抑えられたかもしれない。 だが、アメリカ軍は陸上装甲艦1隻に対し、2隻で当たると言う物量戦を展開して来た。 そして、2隻分の巡洋艦が放つ投射弾量は、圧倒的であった。 10秒間の間に10発近くも命中する敵弾に、魔法石は適量の魔力を出して防ぎ続けたが、副砲でもある5インチ砲も 射撃に加わってからは、飛来する砲弾は倍に跳ね上がり、必然的に命中する弾の数も増えた。 その結果、瞬時に消費する魔力消費量は次第に増えていき、それに魔法石の不具合が加わってからは、消費量は爆発的に増えた。 魔法石の残量が30を割った時には、6インチ砲と5インチ砲弾の同時落下に、4以上も目盛りが下がるほどであり、最後に至っては 計測器が実情に追い付かぬと言う有様であった。 この様々な要因が重なった結果、魔法石は物量に負けてしまったのである。 「旅団長は撤退の指示を出さんのかな?」 指揮官は、ふとそう呟いた。 魔法石の防御が破られた以上、もはや長居は無用だ。 ここで最新鋭の陸上装甲艦を失えば、昼間の大戦果は帳消しどころか、マイナスになってしまう。 だが、いくら待っても艦の動きに変化が無い。 「ちょっと聞いてみる。」 指揮官は立ち上がって、伝声管に取り付いた。命中弾が、レドルムンガの艦体を震わせる。 レドルムンガも応戦しているようだが、このままでは致命的な損害を負いかねない。 なのに、上は何をやっているのだろうか? 「艦橋、聞こえるか?」 「・・・・・・・・・」 「こちら魔力制御室。艦橋聞こえるか?聞こえたら返事してくれ。」 「・・・・・・・・・」 全く応答が無い。それどころか、伝声管からは風を切る音が鳴るだけだ。 その時、甲板に上がっていた仲間の魔道士が、息を荒げながら中に入ってきた。 「死んだ・・・・みんな死んじまったぁ!!!」 「おい、落ち着け!落ち着かんか!!」 錯乱する部下を、指揮官は殴りつけた。 「・・・・・あ・・・・隊長。」 「艦橋はどうした?さっきから連絡しようとしても、誰も応答せん。」 指揮官の言葉を聞いた部下は、苦しそうな表情を浮かべた。 「艦橋は・・・・・火を噴いていました・・・・・」 「艦橋が火を噴いていた・・・・・本当か?」 「は・・・・はい。」 部下は素直に頷いた。指揮官は、このレドルムンガが頭脳を失った事をようやく知った。 新たなる被弾がブルックリンを襲う。26発目の被弾だ。 「第3砲塔に命中弾!砲塔旋回不能!」 その報告に、艦長は悔しげな表情を浮かべる。 「やるな、シホット!」 お返しだとばかりに、12門に減った6インチ砲が1番艦めがけて発砲を行う。 敵1番艦は、魔法防御が破られた後に放たれた7回の斉射で、ブルックリンの6インチ砲弾17発を受けていた。 そのため、艦の後部と中央部から火災を起こし、後部の主砲塔2基が破壊されている。 だが、敵も負けてなるかと叫ぶように、前部の主砲と、残り3門となった4ネルリ砲を撃つ。 1発が、ブルックリンの前部甲板に突き刺さった。 「前部甲板に命中弾!火災発生!」 その直後、敵2番艦の射弾が落下して来る。 2弾がブルックリンに命中した。1弾は後部艦橋に真上から降り注ぎ、Mk12射撃連動レーダーと後部予備測距儀を吹き飛ばした。 もう1発は第5砲塔の真上に命中したが、この砲弾は4ネルリ弾であったため、装甲を貫けず、あらぬ方向に弾き返された。 対して、敵1番艦には新たに3発が命中する。 1発が後部艦橋に命中し、2発が中央部付近に落下して、夥しい破片を吹き上げる。 その7秒後に新たな斉射弾が降り注ぎ、今度は前部に4発が纏まって命中する。 前部に満遍なく閃光が光る。 その5秒後に、前部から発砲炎が煌くが、その光は、はかない物であった。 「敵1番艦は、あまり戦力を残して無いな。」 「後一撃加えれば、敵は黙りますよ。」 先とは打って変わって、陽気な口調で艦長が言った。 敵1番艦の砲弾が落下するが、その砲弾はブルックリンを跳び越していた。 ブルックリンも敵1番艦に発砲する。 斉射弾を放った直後、敵2番艦からの射弾が降り注いできた。いきなり、艦橋前面がパッと光った。 その直後、ドォーン!という轟音が鳴り響いた。 閃光と轟音に目と耳が潰され、しばらくは何が起こったのか理解できなかった。 10秒ほどが経って、ようやく目と耳が機能し始めた。 「艦長!敵弾が第2砲塔を損傷させました!」 「本当か!?」 「はい、砲員は全員戦死です!」 その報告に、艦長はやや暗い表情を浮かべた。しかし、艦長はすぐに元の表情に戻って、新たな命令を発する。 「第2砲塔の弾薬庫に注水しろ。弾薬庫に火が回れば、この船は危ない。急げ!」 「わかりました!」 ダメコン班の班長が、急いで艦橋から飛び出していく。 第2砲塔は、黒煙を上げて炎上していたが、すぐに弾薬庫の注水を行ったため、被害は最小限に防げた。 ブルックリンは、9門に減った主砲で敵1番艦を撃ち続ける。 斉射のたびに、敵1番艦は確実に痛めつけられていくが、敵艦は相変わらず、残り2門のみとなった主砲と、残り1門の副砲を撃って来る。 突然、敵2番艦が大爆発を起こした。 敵2番艦は、ヴィンセンスとフィラデルフィアを相手取っていたが、魔法防御が破れてからは実に18発の8インチ弾、 20発の6インチ砲弾、23発の5インチ砲弾を受けていた。 一方、ヴィンセンスは敵3番艦から32発の命中弾を受け、中央部と前部から火災を起こし、対空火器は全滅。 後部第3砲塔が旋回不能となっていたが、機関部に損傷は無く、6門の8インチ砲弾を放っていた。 そして、ヴィンセンスの8インチ砲弾が敵2番艦の中央部に命中した時、敵陸上艦は大爆発を起こした。 「敵2番艦が爆発を起こしました!凄い、中央部から真っ二つだ!」 メリルは、視線を敵2番艦にうつした。 敵2番艦は、中央部の弾火薬庫から誘爆を起こしたのだろう、艦体を真っ二つに叩き折られ、地面にのめるようにして停止していた。 「まさか、砂漠の上でジャックナイフが見られるとは・・・・いずれにしろ、敵もよく戦ったな。」 メリル少将はそう呟いた。 「馬鹿にしぶといな・・・・」 艦長の呟く声が聞こえる。 メリルは敵1番艦に目線を向ける。 敵1番艦は、既に38発の命中弾を受け、今や全艦火達磨といった様相を呈している。 いつ力尽きても不思議ではない。 不思議ではないはずなのだが、敵艦はそれでも航行を続け、相変わらず残り3門となった砲を撃ち続けている。 いきなり、砲弾の飛翔音が鳴った、と思いきや、ブルックリンの艦体に衝撃が走った。 「右舷中央部に命中弾!」 「この期に及んで、まだ命中弾を出すとは・・・・しぶとすぎる・・・・」 メリルは、敵1番艦の粘りに、むしろ感嘆を覚えていた。 ブルックリンの新たな斉射弾が放たれる。9発中、2発が後部に、2発が中央部、1発が前部に命中した。 命中の閃光が、順繰りに煌いた後、敵1番艦は徐々に速力を落とし始めた。 全艦火達磨となった敵1番艦は、ブルックリンに向けて1発の砲弾も撃たなかった。 やがて、敵1番艦は滑り込むように地面に接地し、そのまま巨体を300メートルほど滑走させた。 「艦長。敵1番艦、行動停止しました。」 「ああ、今見ている。」 艦長は、淡々とした口ぶりでそう応えた。 「司令官、これで一息つけますな。」 艦長は、後ろを振り向いた。 メリル少将は、行動を停止した敵陸上装甲艦に向かって敬礼を送っていた。 「ああ、やっとな。」 メリルはそう言ってから、手を下ろした。 午後11時40分 スコックス少佐の率いる第8戦車大隊は、燃え盛る敵陸上装甲艦の側で、捕虜の収容を行っていた。 午後9時40分、スコックス少佐は橋頭堡に襲い掛かって来た3隻の陸上装甲艦を見た時、この橋頭堡も終わりだなと確信した。 だが、運河に現れた6隻の巡洋艦が、あの悪魔のような陸上艦を引き付けてくれたお陰で、橋頭堡は何とか難を逃れた。 それから40分ほどが経って、巡洋艦部隊が敵陸上艦との戦闘に勝利したと言う報告が入った。 その報告に、第4軍の将兵は誰もが信じられないと思っていた。 スコックス少佐も半信半疑でその知らせを聞いていたが、その報告が正しかった事は、今証明された。 砂漠の上で、数十人ほどのシホールアンル兵が固まって座っている。既に到着した味方部隊が、その捕虜達をトラックに乗せていた。 トラックの側には、長剣を持った男が、万歳をするように倒れている。 その男は、せめて1人でも道連れにと、長剣を振りかざしてアメリカ兵を殺そうとしたのだが、逆に返り討ちにあった。 1人の味方の死は、ただでさえ意気消沈していた生き残りの将兵の士気を、どん底まで叩き落した。 その結果、諦め切ったシホールアンル兵は、アメリカ兵の成すがままに任されていた。 「こいつぁ・・・・どでかい焚き火だなあ・・・・」 操縦手が、思わずそう言った。 「おい、不用意な言葉を奴らの前で言うな!」 スコックス少佐は厳しい口調で注意した。 「せっかく、あいつらが大人しくなっているんだ。言葉1つで奴らに暴れられたら、余計な仕事が増える。」 「は・・・・すいません。」 「まぁ、そう言いたくなる気持ちは、俺も分かるがな。」 スコックス少佐とて、目の前のシホールアンル兵を憎んでいない訳ではない。 むしろ、憎みまくっているほどだ。 並んでいるシホールアンル兵は、今日の昼頃に、師団の戦車部隊をいとも簡単に蹴散らし、そして、多くの戦友を奪った仇である。 しかし、彼は自制心で、なるべく憎しみを表に出さぬようにしている。 (ここで好き放題やれば、奴らと同じになるからな。だが、俺達はそうはならないように努力する) スコックス少佐は、内心でそう決めた。 (なにせ、俺達アメリカ軍は、敵より“進んだ軍隊”なのだから) 「敵の捕虜は、ざっと400人ほどですな。あんな火達磨になった艦から、よくぞこれだけ生き残ったものだ。」 ブルックリン艦長は、トラックに乗せられる敵艦の乗員を双眼鏡で見ながら、メリル少将に言った。 「意外と、ダメコン対策がしっかりしていたからだろうなぁ。そうでなきゃ、大半があの艦と共に火葬に付されていただろう。」 メリル少将は、苦笑しながら返事した。 彼の率いたTG61.3は、敵陸上装甲艦3隻との戦闘でサンフランシスコが大破、ブルックリン、ヴィンセンスが中破という損害を負った。 戦闘終了後、損傷艦のダメコン班からの報告によると、大破したサンフランシスコは3ヶ月。ブルックリンとヴィンセンスは長くて2ヶ月、 最低1ヶ月はドック入りしなければいけないと言われている。 その代わり、敵の砲撃を受けなかったフィラデルフィア、フェニックス、ビロクシーは砲身交換と弾薬の補充だけで済むようだ。 敵1番艦を撃破した後、残る敵は敵3番艦のみとなった。 敵3番艦は、魔法防御が打ち破られた後、フェニックス、ビロクシーから6インチ砲弾63発、5インチ砲弾45発、計108発という とんでもない数の砲弾を叩き込まれ、最後には1番艦同様、全艦火達磨となって行動不能になった。 その後、健在な5隻の巡洋艦は、消火作業を来ないながら脱出する敵兵が逃げないように、主砲を向けて監視にあたった。 味方の地上部隊が到着してからはちょっとした騒ぎが起きたようだが、シホールアンル兵は意外なほど従順であり、アメリカ兵の指示にも素直に従った。 ちなみに、陸軍からの話によると、シホールアンル軍は陸上装甲艦の後ろに新型ゴーレムの集団を率いていたようだが、そのゴーレム集団は 陸上装甲艦が撃破されたという通信が受け取ったのか、橋頭堡の目の前で姿を表すなり、いきなり引き上げて行ったと言う・・・・ 「しかし、一時は諦めかけたよ。」 「司令官もそうでしたか。」 メリルの言葉に、艦長は笑いながら言った。 「ああ。どんだけ撃ち込んでも、敵は一向に無傷のままだからな。まるで、形だけの幽霊と殴り合っているみたいだった。」 「でも、敵陸上艦の魔法防御が、思ったより脆かった事が幸いでしたね。」 「まぁ・・・・魔法防御はなんとか打ち砕けたが・・・・敵さんは最後まで立派だったな。あんな火達磨になっても、最後まで砲撃を 続ける敵のしぶとさに、俺は心を打たれたよ。」 「そうですか。」 「そうだよ。ちなみに、俺としては、今回は沈没艦を出さずに済んで良かったと思う。」 メリルは、自分に言い聞かせるようにそう断言した。 「それに、敵が魔法防御を施していたとは言え、最後まで見せたあの敢闘精神は、評価しても良い。もし、数が倍の6隻だったら、 負けていたのは俺達だったろうな・・・・・」 彼は、苦笑しながら艦長に言った。 「ええ。TG61.3の汚名も、これで幾らかは晴らせました。エインスウォースさんも喜びますよ。」 「そうだな。」 艦長の言葉に、メリルは微笑みながら、ゆっくりと頷いた。 砂漠上に横たわる敵陸上装甲艦は、赤々と燃えていた。 その炎は、最後まで戦い抜いたシホールアンル兵の限り無い闘志を如実に表しているかのようだった。
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29インチ マウンテンバイクの車輪サイズの規格のひとつ。 700C規格(ワイヤードオン、リム直径622mm)のことだが、太さ2.25インチ(57.15mm)のタイヤを取り付けた場合の外径がほぼ29インチ(736.6mm)になることから29インチと呼ばれる。 この規格を採用したマウンテンバイクは29er(トゥーナイナー)と呼ばれる。 マウンテンバイクの従来のサイズである26インチHE(リム直径559mm)より63mm直径が大きいため、同じ太さのタイヤをはいた場合に直径が63mm(約2.5インチ)大きくなる。 それによる走破性の向上から提唱された。 2001年にゲイリーフィッシャーが発表してからしばらくは、タイヤやフォークの少なさがネックだったが、徐々に29インチのマウンテンバイク・パーツを発売するブランドが増えていった。 2010年頃からはマウンテンバイクに占める割合が多くなり、一般的な規格となった。 歴史 2001年:ゲイリーフィッシャー 2011年5月22日:ワールドカップXC第2戦で、ヤロスラブ・クルハヴィが29インチで初めてワールドカップを優勝。その後も勝利を重ね年間総合優勝。 関連項目 26インチ 27.5インチ 29er 650B 700C グラベルグラインダー用細めの29インチタイヤ フックドエッジ マウンテンバイク モンスタークロス 自転車辞典 タグ タイヤ ホイール 数字 自転車用語 規格
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インチキ 【説明】 石原捕手の打つヒットのこと。転じて、石原本人を指す。 ぼてぼてのゴロが抜けたり、ふらふらっと上がった当たりを相手野手が捕れず ポテンになったりと、いんちきくさいヒットが多いことから。
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26インチ 自転車の車輪のサイズの規格のうち、基準太さのタイヤを取り付けた際のタイヤの外径が26インチ(660mm)となる規格の総称。 それぞれに互換性はない。 26インチHE ETRTO559 リムとタイヤの結合方式はフックドエッジで、リムの直径が559mm。 2インチの太さのタイヤを取り付けた場合に外径が26インチ(660mm)となるため26インチと呼ばれる。 当然、それより太いタイヤを付ければ外径は26インチ以上になり、細いタイヤを付ければその逆である。 マウンテンバイクに使われる。 650C ETRTO571 結合方式はワイヤードオンで、リムの直径が571mm。 40mmの太さのタイヤを取り付けたときに外径が26インチとなる。 女性用や子供用などのサイズの小さいロードバイクや、一部のトライアスロンバイクに使われる。 26×1-1/2(650B) ETRTO584 結合方式はワイヤードオンで、リムの直径が584mm。 1-1/2インチ(38mm)の太さのタイヤを取り付けたときに外径が26インチとなる。 ランドナーに使われるサイズ。 また、マウンテンバイクの26HEと、29インチの中間の径であることから、マウンテンバイクに採用されるようになった。この場合27.5インチとも呼ばれる。 26×1-3/8(650A) ETRTO590 結合方式はワイヤードオンで、リムの直径が590mm。 1-3/8インチ(35mm)の太さのタイヤを取り付けたときに外径が26インチとなる。 この表記方法はイギリス式で、フランス式だと650Aと呼ばれる。 かつてランドナーに使われていた。また、いわゆるママチャリの26インチはこのサイズ。 関連項目 小径車 自転車用語 +... あ行▼ アーガイル アーネット アーレンキー Aaron Gwin Aaron Chase アイウェア ISIS iドライブ Iビーム アウターチューブ 東商会 Adam Craig Adam Hauck 安達靖 アトムラブ Anita Molcik Anneke Beerten アヘッドステム アメリカンバルブ アメリカンBB アルチュラ アルミニップル アレックス アンカー アンサー アンターンダウン Andrew Neethling Andreu Lacondeguy Andrew Shandro アイアンホース アイステクノロジー アイスペック アイドゥン アキコーポレーション アクソ アケボノ アゾニック アップスウィープ アディダス アブバカ アリソン・サイダー アリビオ アルパインスター アルピナ アルマイト アルミニウム アルミニウム合金 アンソン・ウェリントン アン・キャロリーヌ・ショソン E13 イーストン イーヴィル イエティ ITA規格ノーマルサイズ 井手川直樹 Irina Kalentieva インスタントリリース インターテック インチ インディアンエアー インテグラルヘッド インデックスシフト インナーチューブ インフレーター インターナショナルスタンダード インターマックス インダストリーナイン インテンス インテンスタイヤシステム インパルス インフィニ インヴァート ウィーザピープル ウィッパーマン ウィリー ウィンドストッパー ウェーブローター ウェス ウェルゴ Wade Bootes ウェイン・ゴス ウォールライド ウッズバルブ ウルトラツアー ウェイド・シモンズ エアサスペンション エアスプリング エアターン エアロスポーク エクスターナルBB SRサンツアー SDG SPD-R Emmeline Ragot エラストマー Eric Carter エレベーテッドチェーンステイ エンデューロワールドシリーズ/2013年 エンデューロワールドシリーズ エンド金具 エンド幅 エンヴェ エイアンドエフ エクスペド エッジ エリック・ポーター エリート エルスワース オイルダンパー オーキッド オークリー オーストリッチ オーディナリー型 オーバーサイズ オーバーロックナット寸法 オールトラベル オールマウンテン(マルゾッキ) オールマウンテン 小笠原崇裕 オクタリンク オクタンワン オデッセイ オニール 鬼こぎ 小野寺健 折り畳み自転車 オルトリーブ オルベア オレンジ オリンピック か行▼ カーカス カーター・ホランド カート・ヴォレイス カートリッジBB カーリン・ダン Kyle Strait カシマコート カセットスプロケット カップアンドコーンBB カトリナ・ミラー Kamil Tatarkovic 完組ホイール カンチブレーキ カンチブレーキ台座 ガイドプーリー ガセット カイル・エベト カヤバ カルロ・ディエクマン 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バニーホップ バニーホップロックウォーク バンズ ピーク ヒールクリッカー ピボタル ビーチクルーザー ビード BB下がり BBハイト ビンディングペダル ヒルクライム ビアンキ ファティー Fabien Barel ファットバイク Fionn Griffiths フィジーク Vブレーキ Filip Polc プーリー プーリーケージ フォーク 4X(マルゾッキ) フォークロスバイク フォーミュラ フォーアーム フォークロス 4Xプロツアー ふじてんリゾート 普通自転車 フックドエッジ フットプラント Brian Lopes ブラスニップル フラットバー フラットペダル ブラックスパイア プラペダル フリーコースターハブ フリーハブ フリーホイール フリーライドバイク フルボトム フレア ブレーキローター フレーム プレスフィットBB86 プレスフィットBB92 プレスフィット30 振れ取り 振れ取り台 Brendan Fairclough フレンチバルブ プロ フロート プロテック プロファイルレーシング Floriane Pugin Florian Vogel プロロゴ フロントキャリア フロントセンター フロントディレイラー フロントバッグ Bryn Atkinson ブレーキ ブレーキシュー ブレーキ台座 ブレーキパッド ブレーキホース ブレーキレバー ブレード ファイブテン ファン ファンファンシー フェイキー フェイキーマニュアル フェルト フォックスレーシングショックス フォーバーリンケージ フファニュ フリーライド フルサスペンション フルダイナミクス フレドリック・ケシアコフ フロントスプロケット フロントハブ フロントフリップ ブラック ブリコ ブルックリンマシンワークス ブレーキフルード ブロックタイヤ ペース 北京オリンピック ペグスパナ ペダル ペダルレンチ ヘッドショック ヘッドライト ヘッドアングル ヘッドチューブ ヘッドパーツ Benny Phillips ヘルメット Helen Gaskell ヘイズ ベル ベンダー ベンド ベン・ボイコ ホイール ホーザン ホープ Paul Basagoitia ホーン ポゴ ポゴ180 Jose Antonio Hermida 歩道 ポリプロピレン ボトルケージ ボトルケージ台座 ボビング ホシ 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2012年ワールドカップ ダウンヒル 男子 20mmアクスル 20インチ 24インチ 26インチ 27.5インチ 29+ 29er 29インチ 360 3Al-2.5Vチタン 4Xプロツアー 4X(マルゾッキ) 6000番系アルミニウム合金 650A 650B 650C 661 6Al-4Vチタン 700C 720 888 9速 アルファベット▼ Aaron Chase Aaron Gwin Adam Craig Adam Hauck Andreu Lacondeguy Andrew Neethling Andrew Shandro Anita Molcik Anneke Beerten ATA ATi AXライトネス BB30 BB386EVO BB90 BB95 BBハイト BBライト BB下がり Ben Travis Benny Phillips BL-M950 BR-M739 BR-M750 Brendan Fairclough Bryn Atkinson Cameron McCaul Cameron Zink Celine Gros CFRP Chris Akrigg Chris Kovarik Christoph Sauser Claire Buchar CS-M770 CS-M771-10 Dan Atherton Danny Hart DCシューズ dkg DMR DNF DNS Dominik Raab DOT DT E13 EBC Emmeline Ragot Eric Carter ET ETA ETRTO Fabien Barel FC-M601-2 Ferdi Fasel FH-M950 Filip Polc Fionn Griffiths Florian Vogel Floriane Pugin FSA Gee Atherton Geoff Kabush Goran Jurica Greg Minnaar GT GTファクトリーレーシング(2012) Guido Tschugg Helen Gaskell HG HGチェーン HS33 IG IRC Irina Kalentieva ISCG ISIS ITA規格ノーマルサイズ Iビーム James Patterson Jana Horakova Jared Graves JD Swanguen Jeremy Horgan-Kobelski Jill Kintner JIS規格BB JIS規格ノーマルサイズ Johannes Fischbach Joost Wichman Jose Antonio Hermida Julien Absalon Julien Muller Jurg Meijer Justin Havukainen Jシリーズ K2 Kamil Tatarkovic Kathy Pruitt Kelly McGarry KHS Kyle Strait Laurence Leboucher LED Liam Killeen Manuel Fumic Marc Beaumont Martin Soderstrom Mary McConneloug Matti Lehikoinen MBUKサンタクルズ(2006) Melissa Buhl Michal Marosi Mickael Deldycke Mickael Pascal Mike Hopkins MRP MSC MSイーヴィルレーシング(2011) Nathan Rennie Nick Beer OCLV ODI OGK OLD PCD Qファクター R7 Rachel Atherton Rafael Alvarez De Lara Lucas RBデザイン RD-M772SGS Roel Paulissen Roger Rinderknecht Romain Saladini Ryder Kasprick Sabrina Jonnier Sam Blenkinsop Sam Hill Sam Pilgrim SDG Sean Watson SID SIS SL-M800 SLR SLX SLX/M660系 SLX/M670系 SPD SPD-SL SPV SRサンツアー ST-M775 Steve Peat STI TAK21 the Todd Wells Tomas Slavik TPC Tracey Hannah Tracy Moseley Troy Brosnan TSG TST5 Tyler McCaul UCI UCIマウンテンバイクワールドカップ UCIマウンテンバイクワールドカップ/2013年/ダウンヒル男子 URT UST Uターン Uブレーキ VPP 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第150話 古兵勇戦 1484年(1944年) 6月26日 午後10時 モンメロ沖南南東83マイル地点 モンメロ沖海戦の後半戦は、久方ぶりの水上砲戦という形で幕を開けることになった。 この水上砲戦は、アメリカ大西洋艦隊とマオンド海軍の主力艦部隊が互いの力を全力で出し合った海戦でもあった。 海戦の規模では、史上最大とされていた第2次バゼット海海戦を上回っており、また、その激しさも並々ならぬ物があった。 また、この海戦の特徴は、それぞれの戦艦部隊が、互いにほぼ同格の相手と共に戦ったことにある。 現場に急行したTG73.5の4隻の旧式戦艦は、マオンド側の旧式戦艦と相対し、TF72の新鋭戦艦群は、敵機動部隊から 分派された新鋭戦艦と戦った。 この後半戦では、互いの旧式戦艦と新鋭戦艦が、同格の相手と図らずして力を競い合う事になったのである。 TG73.5司令官であるフランツ・ウェイラー少将は、旗艦である戦艦ニューメキシコのCICで敵艦隊の動静を見守っていた。 「敵艦隊との距離、20マイルを切りました。」 CICのレーダー員が、敵艦隊との距離を逐一報告してくる。水上レーダーが敵艦らしきエコーを捉えたのは、10分ほど前である。 「敵の艦列は4つに別れています。反応からして、一番右と左側が駆逐艦群、右側から2番目の艦列が巡洋艦群、最後の一列が 戦艦群かと思われます。」 ニューメキシコの砲術長が、PPIスコープを見つめながらウェイラー少将に言う。 「ということは、敵艦隊は戦艦3隻、巡洋艦9隻、駆逐艦20隻を有する事になるな。」 「対して、我々は戦艦4隻、巡洋艦5隻、駆逐艦18隻。補助艦艇の数では負けますが、主力艦の数では勝っています。 それに加え、敵戦艦の最大火力は13インチ。それに対し、我が方は14インチ砲搭載艦ばかり。敵戦艦との対決では、 明らかに我々が有利です。」 参謀長が自信ありげな口調で言った。 もし、敵戦艦が全て、ジャンガルーダ級戦艦だとしても、搭載砲は13インチ相当であり、主砲の門数は合計で24門となる。 それに対し、TG73.5は、ニューメキシコ級戦艦3隻に、テキサス級戦艦1隻の4隻で、主砲は13インチよりも一際強力な 14インチ砲であり、門数は計44門と、敵戦艦群より勝る。 しかし、ウェイラー少将は参謀長ほどは楽観的ではなかった。 「艦の隻数や砲門数では優位だが、敵はこちらと違って足が速い。」 ウェイラー少将はそう言いながら、PPIスコープに向けて顎をしゃくった。 「レーダーに移っている敵艦隊は、最低でも24ノットほどの速力でこちらに近付きつつある。それに対して、我々は 21ノット程度しか出せん。僅か3ノットの差と思うかも知れんが、戦場では、こんな細かい数字でも勝利の明暗が 別れる事もある。敵戦艦群が速度の優位性を生かした戦術を取るとなれば、俺達が思わぬ苦戦を強いられる、という事もあり得る。」 「では司令官。敵戦艦群に対しては、どのような戦いをされるおつもりですか?」 「私としては、反航戦で勝負を決めたいと思っている。」 ウェイラー少将はきっぱりと言い放った。 「反航戦は、互いにすれ違い合いながらの射撃となるから砲弾は当たりにくくなる。だが、敵艦1隻に対して、4隻が 集中して統制射撃を行えば、少ない命中率もある程度補える。おまけに、旧式戦艦とはいえ、ニューメキシコは14インチ砲に 対応した防御と、長砲身の50口径砲を装備し、おまけに、今では優秀なレーダーも揃っている。これなら、敵艦の打撃にも ある程度耐えつつ、敵に対しては有効弾を浴びせ続ける事が可能だ。最も、」 ウェイラーはそこで言葉を句切ってから、PPIスコープに移っている敵の艦影に指を向ける。 「こういった作戦で行けるか否かは、敵さん次第だ。敵がこっちの意図に乗らず、同航戦を挑んでくれば、こっちもそれに 答えるしかないがね。」 「そういえば、TF72も、敵機動部隊から分派された打撃部隊と戦闘を交える事になったようですが。」 「TF72か。」 ウェイラーは、どこか羨ましげな口調でその名を呼んだ。 「・・・・アイオワ級戦艦の活躍ぶりも見たかった物だが、今はTF72よりも、我々のやるべき事を考えよう。 距離はさほど離れていない。こうしている今も、敵は主砲を撃ってくるかもしれんのだからな。」 ウェイラーの言葉が終わるのを待っていたかのように、レーダー員が新たな報告を知らせてきた。 「敵駆逐艦列2、増速しました!こちらに向かってきます!」 「ふむ、どうやら、試合開始のようだな。」 ウェイラー少将は、冗談めいた言葉を言い放った後、命令を下した。 「駆逐艦部隊は、敵駆逐艦群の突進を阻止せよ!」 この時、TG73.5は、マオンド艦隊と同様に艦種別の単縦陣を形成していた。 艦列は4つあり、一番左側と右側は駆逐艦群が、左から2番目には巡洋艦群が布陣していた。 戦艦群は、マオンド艦隊と違って、3つの列のやや後ろ側の位置に占位しており、各艦は、戦艦群が出し得る 20ノットのスピードに合わせて航行を行っていた。 20ノットの縛りから最初に解放されたのは、駆逐艦部隊であった。 第62駆逐隊は、旗艦を始めとする5隻の駆逐艦を率いながら、艦隊に向かって居るであろう敵駆逐艦群を目指して海上を驀進していた。 旗艦マクダーマットの艦橋上では、駆逐隊司令であるイーサン・ランバート大佐が隊内無線で各艦に最後の指示を送っていた。 「以上、通信終わり。」 ランバート大佐は無線のマイクを置くと、艦長に顔を向けた。 「司令、いつもの奴ですな。」 「そうだ。バークさんが考案したあの戦法で行く。」 ランバート大佐はそう言ってから、ニヤリと笑みを浮かべる。 5隻のフレッチャー級駆逐艦は、後方に第61駆逐隊の4隻を従えながら、37ノットの高速で突っ走る。 「CICより報告!敵駆逐艦群との距離、約13000メートル!」 彼我の距離は、みるみるうちに縮まってきた。 アメリカ艦隊に向かいつつあるマオンド艦隊もまた、全速力で駆逐艦部隊に接近しつつあった。 「11000です!」 ランバート大佐は、その言葉を聞いた瞬間、再び隊内無線のマイクを握りしめた。 「ジョンソン!分離だ!」 「OK!ポエニ戦法発動!」 電話口の向こうにいた第61駆逐隊は、陽気な口調で答えてきた。 それから間もなくして、後方に付き従っていた4隻の駆逐艦が面舵を切る。 「取り舵!針路290度!」 ランバートの口から命令が発せられた。艦長はその命令を航海科員に伝える。 マクダーマットの艦首が回頭を始めた。旗艦に習って、他の4隻も次々と回頭を始める。 しばしの間、針路290度方向に向かって航行した後、5隻の駆逐艦は再び現針路に戻った。 マクダーマットが回頭を終え、直進に移った瞬間、上空に照明弾が炸裂した。 アメリカ海軍の照明弾とは違って、赤紫色のバイオレンスな光が上空に煌めく。 光源魔法を仕込んでいたのだろう、その光量はDS62の姿を闇夜からくっきりとさらけ出していた。 「敵艦、照明弾発射!次いで発砲を開始!」 見張りが艦橋に伝えてくる。 「敵艦との距離は?」 「現在、敵艦は本艦の右舷前方7000メートルを航行しています。」 ランバートの質問に艦長が答えるが、それを遮るかのように砲弾の飛翔音が響いてきた。 飛翔音が大きくなった、と思いきや、音は真上を通り過ぎていった。 「敵弾、左舷側海面に着弾!」 「ふむ、照準が甘いな。最初だからこんな物だろうな。」 ランバートは呟きながら、艦長に次の指示を下した。 「砲戦始め!右、魚雷戦用意!」 彼は、同時に2つの指示を伝えた。マクダーマットの5インチ砲が火を噴いた。 マクダーマットの砲弾が落下する前に、敵の第2射が降ってきた。 敵の砲弾は、またしてもマクダーマットを飛び越える。 その一方で、マクダーマットの砲弾は、早くも第2射で敵1番艦を捉えた。 「敵1番艦に命中弾!」 その様子を、見張りが弾んだ声で伝えてきた。 一列縦隊で突き進む敵駆逐艦群は、左右から米駆逐艦部隊に撃ちまくられていた。 この時、マオンド駆逐艦部隊の指揮官は、偶数番艦は右、奇数番艦は左の敵を砲撃せよと命じ、 各艦がアメリカ駆逐艦に対して反撃を行っていた。 砲火の応酬が始まってから1分も経たぬうちに、戦況は大きく流れつつあった。 「各艦、魚雷発射準備完了!」 「DS61より入電!我、魚雷発射準備完了!」 それを聞いたランバートは、砲声に負けず劣らずの大音声で命令を発した。 「魚雷発射始め!」 命令が下るや、各艦の魚雷発射管から、21インチの魚雷が一斉に撃ち出された。 フレッチャー級駆逐艦は、5連装の魚雷発射管を2基装備している。 ランバートは、この2基のうち、1基を使用して敵の駆逐艦群をある程度減らそうと考え、各艦に使用する魚雷は5本のみと伝えていた。 この時、海に放たれた魚雷の数は、DS62だけで25本。DS61も含めれば、55本の魚雷が、投網のように放たれたことになる。 しかも、魚雷は最新鋭のMk-17魚雷であり、雷速は50ノットに近い。 Mk-17魚雷は、46ノットならば15000メートルの長射程を誇る。 だが、最高速度の49ノットの時は、射程距離は9000~10000メートルまで落ちる。 しかし、敵駆逐艦群はその射程内に収まっているため、最低でも、2、3隻は食えるだろうとランバートは確信していた。 「敵駆逐艦群、各個に回頭を始めました!」 魚雷発射から3分後に、CICから敵の新たな動静が伝えられてきた。だが、ランバートはそれに何ら反応を見せなかった。 唐突に、右舷側の海面に閃光が走った。その閃光は、敵艦が発していた発砲炎ではない。 それとは明らかに異なる物であった。 閃光がぱっ、ぱっと煌めいてはすぐに消える。最終的には、6つの閃光が煌めいた。 6つのうち、2つの閃光は取り分け明るく、真っ暗であった艦橋が電気が灯ったように明るくなったほどである。 閃光が煌めいた後、腹に応えるような音が洋上から響き渡ってきた。 「敵駆逐艦1隻、レーダーから消失!4隻が急速に速度を落としつつあります!」 CICから戦果報告が届いてきた。 DS62とDS61が放った魚雷は、マオンド駆逐艦5隻の艦腹に深々と突き刺さっていた。 最初に被雷したのは、敵3番艦であった。 3番艦の見張り員は、艦の右舷側海面1000メートルの所を突き進んでくる魚雷を発見するや、すぐに艦長に伝えた。 艦長は緊急操舵を行って回頭しようとした。 この時、3番艦には3本のMk-17魚雷が迫っていた。 3番艦は慌てて右に舵を取り、対向面積の少ない艦尾を向けようとしたが、完全に回頭仕切るまでに魚雷は3番艦の右舷後部に食らいついた。 魚雷は薄い艦腹を叩き割って後部魔動機関室に侵入。そこで炸裂した。 爆発の瞬間、3番艦の右舷後部部分には真っ白な水柱と火炎が吹き上がった。 機関の2分の1と、推進器を破壊された敵3番艦は、被雷から僅か1分後に停止し、艦の傾斜を深めていった。 次に被雷したのは4番艦と6番艦で、この2隻は右舷前部に魚雷を食らった。 被雷の瞬間、艦体は巨大な壁にぶつかったかのようにつんのめり、乗員の大半が床に転倒するか、壁などに打ち付けられた。 30ノット以上の速力で航行していたため、被雷箇所からは大量の海水が雪崩込み、前部の主要区画はあっという間に浸水し、艦長が応急班に 指示を与えようとしているときには、もはや手遅れの状態となっていた。 7番艦と8番艦には、左右から魚雷が迫ってきた。 両艦は回避運動中にまず、左舷側から1本ずつ魚雷を受け、足が鈍ったところに右舷側からやって来た魚雷をこれまた1本ずつ受けてしまった。 8番艦は左舷側に突き刺さった魚雷が弾薬庫付近で炸裂したため、たちまちのうちに誘爆、轟沈した。 7番艦は被雷後も動いていたが、両舷に大穴を開けられてはどうしようもなく、2分後に停止し、沈没し始めた。 最後の10番艦は、左舷側から接近してきた魚雷に真正面からぶつかった。魚雷は艦首に突き刺さるや、錨鎖庫の付近で炸裂した。 その次の瞬間、艦首からは高々と水柱が吹き上がり、10番艦の前部が炸裂によって、第1砲塔のあたりまで縦真っ二つに切り裂かれた。 それから1秒後には第1砲塔の弾薬庫が誘爆し、艦の前部は火の海となった。 艦長は急いで機関停止を命じたが、被雷箇所からは海水が轟々と音を立てて艦内に雪崩れ込んでいるほか、艦橋から前の部分は紅蓮の炎に 包まれているため、沈没はもはや免れぬ状況であった。 「よし、5隻は食ったか!」 ランバートはそう言ってから、やや満足した表情を浮かべた。 「敵艦隊の隊形、大幅に乱れています!」 「残りの敵艦は、砲撃で仕留めるぞ!」 ランバートはけしかけるような口ぶりで叫んだ。各艦は、ばらばらに航行する敵駆逐艦に対して砲撃を再開した。 10隻いた駆逐艦は、今や5隻に減っている。その5隻もまた、隊形が大幅に乱れた状態で航行を続けている。 DS62と61は、その5隻に対して容赦なく砲撃を行った。 敵駆逐艦は、1隻、また1隻と、集中打を浴びて炎上していく。 しかし、アメリカ側の優勢も、そう長くは続かなかった。 唐突に、右舷側海面。DS61がいる方角に照明弾と思しき光が灯った。 「DS61より緊急信!我が隊の後方に別の駆逐艦群接近!」 「チッ、もう1隊の駆逐艦群が応援にやってきたな。DS65と66はどうした!?」 「目下、敵駆逐艦を追尾中との報告が入っています。」 一瞬、ランバートは目眩を起こしかけた。 (なんてこった。DS65と66は、敵を挟めなかったのか!) ランバートは、内心でDS65と66の失態を呪った。 「DS61より更に緊急信!我、敵艦より砲撃を受ける!」 「DS61に通達!敵の残存駆逐艦はDS62が片付ける。DS61は新手の駆逐艦群を叩かれたし!」 ランバートは矢継ぎ早に電文を送らせた。 30秒ほどたって、DS61から了解との報告が入った。 「よし・・・・これで、敵の新手にも対応できるな。」 ランバートは、少しばかり安堵した表情を見せたが、その刹那。 右舷側の海面で強烈な閃光が沸き起こった。 駆逐艦ドノンスク艦長であるラナウグ・ルロンギ中佐は、アメリカ駆逐艦が火柱を吹き上げて轟沈する光景を、 驚きの混じった表情で見つめていた。 「砲弾が、魚雷を保管している場所に命中したのかもしれないな。」 ルロンギ中佐の傍らで立っていた駆逐隊司令のルスード・レトンホ大佐がつぶやいた。 レトンホ大佐は、ルロンギ中佐の所属する駆逐艦群の司令であったが、旗艦が米潜水艦に撃沈されたため、急遽ルロンギ中佐の ドノンスクに移乗し、指揮を取っていた。 ルロンギ中佐は、レトンホ大佐の指示通り、距離5000グレルで照明弾を発射し、4000グレルに迫った所で砲弾を放った。 ドノンスクの後方には、9隻の僚艦が続いていた。 10隻の駆逐艦は、左舷前方を行くアメリカ駆逐艦の後ろ姿目掛けて砲撃を続けた。 砲弾は、最初のうちは見当外れの位置に落下していたが、次第に精度が上がり、第6射目でついに命中弾が出た。 そして、ドノンスクが第10射目を撃ち込んでからやや間が開いた時、米駆逐艦は突然、大爆発を起こした。 レトンホ大佐の言うとおり、砲弾は米駆逐艦の魚雷発射管に命中していた。 その駆逐艦は、後部発射管の魚雷をまだ使っておらず、装填されたままの状態だった。 そこにドスノンクの砲弾が命中してしまった。 その瞬間、5本の魚雷は誘爆を起こし、基準排水量2000トンのフレッチャー級駆逐艦は瞬時に轟沈した。 アメリカ駆逐艦の撃沈に喜ぶ暇もなく、主砲を新たな目標に向ける。 この時、残りのアメリカ駆逐艦が転舵を開始した。 「敵艦群、面舵に変針!」 見張りの声に、ルロンギ中佐は小さく頷いた。 「ふむ、やはり、ずっと優位な位置で砲撃を続けられる訳にはいかないか。ここからが、本当の勝負だな。」 「艦長!艦隊の右舷後方より新たな生命反応!」 その報告を聞いたルロンギは、レトンホ大佐に顔を向けた。 「司令!」 「ああ、分かっている。俺達が先ほど振り切った奴らだろう。艦長の言うとおり、ここからが本当の勝負所だな。」 レトンホ大佐は、不敵な笑みを浮かべながらルロンギに言った。 それから間もなくして、両軍の駆逐艦は再び、激しい戦闘を繰り広げる事になる。 戦艦ニューメキシコのCICでは、新たに巡洋艦部隊が、敵の巡洋艦群と戦闘に入る様子が写し出されていた。 「敵戦艦部隊、尚も接近!距離は18000メートル!」 ウェイラー少将は、内心緊張しながら、レーダー員が発したその言葉を聞いていた。 「敵戦艦は、未だに発砲を行いません。」 「ふむ。照明弾すら撃って来ないな。それはともかく、17000までもう少しだな。」 ウェイラーは、4隻の戦艦に距離17000で砲撃を開始させようと考えていた。 距離17000は、ニューメキシコ級、テキサス級戦艦が搭載する14インチ砲の射程内に充分収まっている。 とある幕僚は、最大射程で砲戦を開始してはどうか?と意見具申をしてきたが、ウェイラーはそれを拒んだ。 「いくらレーダーがあるとはいえ、及び腰で砲を撃っても、弾は当たりにくい。それよりは、ある程度近付いてから砲撃を 行った方が良い。近距離ならば命中弾出やすく、敵を早く沈黙させる事が出来る。それまでは、ひたすら我慢あるのみだ。」 ウェイラー少将はそう言ってから、幕僚達を説得した。 それからしばらくが経ち、決戦の時は近付いていた。 (あと1000・・・・・あと1000メートル進めば、戦いが始まる。どちらの旧式戦艦が強いかを決める戦いが。) ウェイラーは、高鳴る鼓動を抑えながら、胸中で呟いた。 「・・・ん?」 PPIスコープを見つめていたレーダー員が、顔をより近付けた。 「敵戦艦群、転舵を開始した模様!」 急な報告に、ウェイラーは眉をひそめた。 「転舵だと?面舵か?取り舵か?」 ウェイラーはすかさず、レーダー員に聞いた。 「・・・・取り舵です!敵戦艦群は左回頭を行っています!」 「左回頭だと?右回頭の間違いじゃないのか?」 ウェイラーはレーダー員が間違えたかも知れないと思い、もう1度聞き返した。 「いえ、左回頭です!」 レーダー員は間違っていなかった。それから数分後、敵戦艦群は針路を南に取りながら航行し始めた。 ウェイラーは、頭がやや混乱しかけた。 敵戦艦群の狙いは輸送船団であったはず。なのに、何故反対方向に向かう? 「司令、直ちに回頭を行うべきです!」 幕僚の1人がウェイラーに言ってきた。 「このまま行くと、我々は敵戦艦群の背後を通り過ぎる格好になります。その間、我々は敵艦を砲撃できますが、敵の速力が 早いことや、距離の関係上、砲撃を行える時間はさほど長くはありません。恐らく、敵は我々が通り過ぎた頃合いを見計らって 一斉に転舵を行い、背後から襲い掛る積もりでしょう。」 「なるほど、追い縋って叩く、と言う訳か。25ノットの速力を有する敵艦隊ならではの戦術だな。」 ウェイラーは、幕僚の言うことを理解出来た。 要するに、敵は米戦艦群の弱点につけ込んで攻撃してくるという事だ。 「ならば、我々も回頭するべきだな。むざむざ敵の算段に乗ってやる義理はない。」 ウェイラーは忌々しげに呟いた後、4隻の戦艦に転舵を命じた。 4戦艦は、ニューメキシコを先頭に1隻ずつ回頭を行っていく。 最後尾のテキサスが回頭を終えた直後、敵戦艦部隊から発砲炎らしき光が放たれた。 やや間を置いて、4戦艦の上空に6つの毒々しい赤紫色の照明が灯った。 「敵戦艦、照明弾を発射した模様。」 「敵艦との距離は?」 ウェイラーはレーダー員に彼我の距離を問いただす。 「17600メートルです。」 「よし、こうなればもう戦うしかあるまい。各艦に令達。左砲戦、射撃準備用意。ニューメキシコ目標、敵1番艦。 ミシシッピー目標、敵2番艦。アイダホ、テキサス目標、敵3番艦。」 米戦艦群の最後尾に位置していた戦艦テキサスの艦上では、5基の45口径14インチ連装砲が左舷側に指向されようとしていた。 戦艦テキサス艦長であるチャールズ・ベーカー大佐は、テキサスの前部甲板に目を向けていた。 2基の14インチ連装砲は、左舷側に向けられつつある。 前方1000メートルを行くアイダホもまた、12門の14インチ砲を敵艦に向けている。 テキサスは、敵戦艦群の3番艦を狙う事になっている。前方のアイダホも、テキサスと同じ目標に砲撃を加えようとしている。 「しかし敵3番艦も運がないな。このテキサスと、アイダホから集中砲火を受ける事になるとは。」 ベーカー大佐は、哀れむような口ぶりで呟いた。 敵戦艦の主砲は、良くても13インチ。それに対して、テキサスとアイダホは14インチだ。 13インチ砲に相応した防御力しか持たぬ敵戦艦が、長時間14インチ砲弾の打撃に耐えられるはずが無く、ごく短時間で戦闘不能に陥ることは明らかだ。 「早く敵3番艦を片付けて、ニューメキシコとミシシッピーの応援に回りたい物ですな。」 副長の言葉に、ベーカー艦長は頷いた。 この時、CICから意外な報告が飛び込んできた。 「艦長!後方より巡洋艦と思しき艦影が接近中!距離は19000メートル!」 「・・・何?」 ベーカー艦長はぴくりと眉を動かした。 「数は何隻だ?」 ベーカーはすぐに聞き返した。 「3隻です。3隻が我が戦艦群に向けて急速に接近しつつあります!」 「3隻だと!?」 ベーカーは驚いた。敵の巡洋艦部隊は、全てが味方の巡洋艦と戦っているだろうと思っていた。 ところが、9隻居た敵巡洋艦のうち3隻が、いきなりこちらに向かってきたのだ。 「味方巡洋艦部隊はどうなっている?」 「今は、敵巡洋艦部隊と戦闘中です。」 「くそ、巡洋艦の数が敵に比べて少なすぎたな。」 ベーカーは顔をしかめながら呻く。 「旗艦より通信!各個に砲撃を開始せよ!」 通信室から別の命令が飛び込んできた。それから2秒後、旗艦ニューメキシコが発砲を開始した。 「ええい、雑魚にはかまうな!目標、敵3番艦。撃ち方始め!」 ベーカーは迷いを打ち切って、まずは目の前の敵戦艦を砲撃する事に決めた。 前を行くアイダホと、テキサスの発砲はほぼ同時であった。10門の14インチ砲のうち、半数にあたる5門が火を噴いた。 その一方で、敵戦艦部隊も砲火を放った。敵3番艦が居ると思しき海面から閃光が煌めく。 味方戦艦部隊の上空には、相変わらず毒々しい色をした照明弾が光っているが、敵戦艦部隊の上空には、照明弾は光っていない。 レーダー射撃が可能な米艦艇は、照明弾を撃ち上げなくてもレーダーで敵の位置が分かる。 そのため、事前の照明弾による目標の照射は、今ではあまり行われない作業と化していた。 (これは対艦攻撃における話であり、対地射撃に置いては別で、照明弾による目標の照射は頻繁に行われている。) 「第1射、弾着!」 CICから弾着観測が伝えられる。 「射弾は敵3番艦を通過し、左舷側海面に落下した模様。アイダホも同様です。」 「レーダー射撃とはいえ、初弾命中という訳にはいかんか。」 ベーカー大佐は、無表情でそう言いはなった。その直後、敵3番艦の射弾がアイダホに降り注いだ。 いきなり、アイダホの周囲に複数の水柱が立ち上がった、と思いきや、その後部甲板に命中弾と思しき閃光が光った。 「アイダホに敵弾命中!」 「なっ!いきなり初弾命中か!?」 ベーカー大佐は、突然の出来事に唖然となった。 20秒後に、通信班がアイダホから発せられた通信を傍受した。 「アイダホより通信。我、命中弾1を被るも、被害軽微。敵3番艦の砲弾は13インチにあらず、13インチ以下の模様なり。」 「13インチ以下・・・・と言うことは、敵3番艦は旧式のマウニソラ級戦艦か。」 ベーカーが小声で呟いた直後、テキサスが第2射を放った。 テキサスの巨体が、14インチ砲の咆哮に揺れる。 そのまま第3射、第4射、第5射と放たれるが、どれも空振りであった。 「意外と当たらん物だな。」 ベーカーは苛立ちを露わにした口調で呟く。 「艦長!敵巡洋艦3隻、尚も接近します!距離は16000メートル!」 「敵巡洋艦群、発砲を開始しました!」 CICと、見張りからの報告が同時に伝わってきた。敵巡洋艦はいつの間にか、テキサスの右舷後方に近寄っていた。 砲弾の飛翔音が聞こえた、と思うと、テキサスの右舷側海面や前方に多数の水柱が吹き上がった。 20秒後には、再び多数の砲弾が落下して、テキサスの左舷側海面が砲弾の弾着で泡立った。 水柱のうち、1つはテキサスの艦首から20メートルも離れていない位置に落下していた。 「敵巡洋艦の主砲は6インチクラスだな。」 ベーカーは、水柱の大きさを見て、敵艦の砲の口径を特定した。 「両用砲!敵巡洋艦を迎撃しろ!」 それまで沈黙していた、右舷側の両用砲座が、敵巡洋艦群に向けてくるりと回転した。 テキサス級戦艦も、改装によって両舷に6基の5インチ連装砲を搭載している。 6基のうち、3基が敵巡洋艦に向けられた。5インチ砲が発砲を開始する前に、敵の斉射弾が降ってきた。 テキサスの周囲に小さな水柱が立ち上がる。唐突に、ガキン!という何かがぶつかるような音と振動が伝わった。 「敵弾1!後部砲塔に命中!損害なし!」 後部艦橋に詰めていたダメコン班から連絡が入る。 「老いたりとは言え、流石は戦艦だ。巡洋艦程度の主砲なぞ、屁でもないか。」 ベーカーは、頬を緩ませながらそう呟いた。 前方を行くアイダホにまたもや砲弾が命中する。アイダホは、敵の斉射を4回も受けており、その都度命中弾を受けている。 命中弾の数は6発で、今の命中弾で中央部に火災が発生した。 だが、被害はまだ軽微であり、アイダホは砲を放ち続けている。 しかし、良好な射撃を続ける敵戦艦に対して、テキサスとアイダホは空振りばかりを繰り返している。 「まだ挟叉は得られんのか!?」 ベーカー大佐は苛立ちの混じった口調で、CICの砲術長を呼び出した。 「もう少し、もう少しお待ち下さい。あと3射もすれば、必ず命中弾が出ます。」 「こっちは待っても、敵は待ってくれんぞ。それに、このテキサスにはうざったい連中が噛み付いてきている。 早めに、敵戦艦を沈黙させてくれ。」 ベーカーはぶっきらぼうな口調で砲術長に言った。 この時、テキサスの5インチ砲が敵巡洋艦に向けて応戦を開始した。 それに対して、敵巡洋艦も第4斉射を放ってくる。 「敵巡洋艦群、距離14000まで接近!敵艦は我が艦の真横にいます!」 CICからの報告を聞くまでもなかった。 ベーカー大佐は、右舷側にいる敵巡洋艦が、全ての主砲を放ったのをこの目で見ていた。 「敵さんは、最大火力でテキサスを撃ってきたか・・・・!」 敵弾がテキサスに落下してきた。大半の砲弾はテキサスを外れるが、3発が艦体を叩いた。 3発中、2発は主砲の天蓋に命中してその場で爆発し、かすり傷程度しか付けなかったが、1発は艦尾の非装甲部に命中して、艦内で炸裂した。 5インチ砲が負けじと撃ち返す。5秒から4秒おきに放たれる砲弾は、全てが敵1番艦に降り注いでいた。 最初は、全ての射弾が敵1番艦を外れていたが、一度弾が命中すると、後は面白いように次々と命中弾が出る。 とある5インチ砲弾は、連装式の両用砲に命中するや、これを粉砕してただの鉄屑に変えた。 別の1発は、魔導銃がある艦尾部分に突き刺さるや、3丁の魔導銃を一斉に吹き飛ばして甲板部分を元の真っ平らな状態に戻してしまった。 敵巡洋艦も砲撃を続行する。テキサスの艦体にも、次々と命中弾が出る。 それまで激しく撃ちまくっていた両用砲の1基が、敵弾の命中を受けて叩き潰された。 前部甲板がピカッと光ったかと思うと、そこから爆炎が吹き出し、次に黒煙と破片が空高く舞い上がった。 傷自体は小さかったが、その命中箇所からはちろちろとオレンジ色の炎が見え隠れしている。 「前部甲板に命中弾!火災発生!」 「ダメコン班!直ちに消火活動に移れ!」 ベーカー艦長は、待機していたダメコン班にすかさず指示を下す。 「敵1番艦、火災発生!」 それまで、5インチ砲弾を撃ち込まれ続けていた敵1番艦から火災らしきものが起こった。 5インチ砲弾は、その小口径さゆえに、巡洋艦といった中型艦を一撃で屠る事は出来ないが、命中弾を与え続ければ目に見えない 被害も蓄積させる事が出来る。 敵巡洋艦群が8度目の斉射を放ったときには、敵1番艦は35発の5インチ砲弾を受けていた。 35発中、21発は前部部分に落下していた。 この被弾によって、敵1番艦は4基ある6ネルリ連装砲のうち、2基までもを使用不能にされた。 敵1番艦は、前部と中央部から火災を起こしており、乗員が消火活動を行っていた。 しかし、その乗員も、次々に飛来してくる5インチ砲弾にあらかた吹き飛ばされ、最後には消火班が全滅するという惨事に見舞われた。 それでも、敵1番艦は諦めずに、後部の主砲でテキサスを撃ち続けた。 新たな命中弾が、テキサスを揺さぶる。ベーカー艦長は、何かが壊れるような音を聞いた。 「第3砲塔付近に命中弾!カタパルト損傷!」 「カタパルトが吹き飛んだか。」 ベーカー艦長は悔しげに顔を歪めるが、その反面、まだ致命弾は受けていないと思い、やや安堵していた。 テキサスは、アメリカ海軍の現用戦艦の中でも最古参の艦だ。防御力はあるが、艦体はあちこちが劣化しており、巡洋艦が放つ程度の 砲弾でも、命中弾を浴び続けるのはあまり好ましくなく、金属疲労で痛んだ装甲板が敵弾の貫通を許す可能性も出て来る。 そうなっては、非常にまずい。 (畜生、こんな奴らさえ居なければ、今頃は敵戦艦との砲戦に集中できていたんだが) ベーカーの胸中に、焦りの色が見え始めていた。 その時、見張りが弾んだ声で艦橋に報告を送ってきた。 「敵1番艦沈黙!あっ、面舵に変針しました!」 ベーカーは、その言葉が正しいことを目の当たりにしていた。 右舷側海面に浮かんでいたオレンジ色の炎は、急に向きを変えると、そのまま戦場から遠ざかり始めた。 「敵1番艦撃破!」 砲術長の誇らしげな報告が艦橋に伝わってきた。しかし、喜びも束の間であった。 お返しだとばかりに放たれた2番艦、3番艦の砲弾がテキサスに落下してきた。この砲弾は、5発がテキサスに命中した。 そのうちの3発は中央部に命中し、残っていた2基の両用砲をまとめて粉砕した。 脱落した敵1番艦の仇討ちとも言える一撃である。 「右舷2番、3番両用砲損傷!」 その報告に、ベーカーは立ちくらみを起こしかけた。 「なんてこった・・・・・・」 テキサスは、現時点で使用可能な両用砲を全て失ったのである。 いや、左舷側の両用砲が残っているが、艦を回頭させなければ使えない。 (どうする?敵戦艦との撃ち合いはアイダホに任せるべきか?) ベーカー艦長はそう呟きながら、前方のアイダホに視線を移した。 アイダホは、敵戦艦に押され気味であった。アイダホは斉射に移行しているようだが、どういう訳か第4砲塔は沈黙し、 後部艦橋が無残にも破壊されていた。 アイダホに相対する敵戦艦もまた命中弾を受けている。 こちらは、テキサスとアイダホから8発の14インチ砲弾を受けているが、これまた不思議な事に、火災炎を起こしながらも 全力で反撃を行っている。 「マウニソラ級戦艦は、11インチ程度の砲しか搭載していないはずなのに・・・・まさか、艦体の防御だけはそれ以上の砲 にも耐えられるように設計されているのか?」 ベーカーの心中に、ふと、そんな疑問が沸き起こった。 「艦長、旗艦より通信です!テキサスは、敵巡洋艦との砲撃戦に集中されたし!」 「敵巡洋艦との砲撃戦に集中しろ・・・・か。」 ベーカーは、最後の言葉を反芻する。 (ここはアイダホが気になるところだが、こっちも敵巡洋艦2隻に襲われている。今はこの2隻を片付けた方がいいかもしれんな) ベーカーはそう思うなり、砲術科に指示を下した。 「砲術!右砲戦だ!」 「え?右砲戦ですか!?」 「そうだ。敵戦艦はアイダホに任せる。それよりも、俺達は右の鬱陶しい奴を片付けろと言われた。調子に乗っている連中に、 戦艦の砲撃がどれほど恐ろしいか教育してやろう!」 「わっかりました!」 電話口の相手はそう言ってから、受話器を置いた。 テキサスの主砲が、左舷から右舷に向けられる。主砲が旋回を続ける間にも、敵巡洋艦2隻からの砲撃は続く。 新たな命中弾がテキサスの艦体を震わせる。 前部甲板や中央部では火災が発生しており、ダメコン班が懸命の消火活動に当たっているのだが、相次いで落下してくる敵弾のせいで 思うように消火が捗らない。 「敵巡洋艦との距離、更に縮まります!距離は13000!」 CICからの報告が伝えられた瞬間、また新たな命中弾がテキサスを叩いた。 既に、テキサスは48発の命中弾を受けている。右舷側の両用砲は全てが粉砕され、対空火器も大半が鉄屑に変換されている。 5基の主砲塔と艦橋は無事であるが、このまま行けば、遅かれ早かれ、艦橋などの上部構造物にも致命弾が襲ってくるであろう。 敵弾を更に6発ほど受けたところで、テキサスの狙いは定まった。 「測的完了!発射準備良し!」 「撃ち方始めぇ!」 ベーカーは溜まった鬱憤を晴らすかのような大音声で命じた。 テキサスの14インチ砲が唸った。 定石通り、まずは1門ずつの交互撃ち方からだ。第2射に入る前に、敵巡洋艦が第18斉射を放つ。 敵弾が落下する前に、敵2番艦の左舷側海面に5本の水柱が吹き上がった。 その大きさたるや、敵巡洋艦の砲撃がまるで小石の投擲にしか見えぬほどである。 「第1射、弾着!」 「ううむ、全て近弾か。」 ベーカーは不満げな口ぶりで呟く。その直後、敵巡洋艦の砲弾が降ってきた。 艦橋が敵の命中弾炸裂の衝撃で、ひとしきり激しく揺れた。 14インチ砲が第2射を放つ。この第2射は、敵2番艦を飛び越えた位置に着弾して海水を吹き上げたのみに留まった。 敵巡洋艦が更に斉射を繰り返すが、テキサスの装甲は打ち抜けない。 第3射が放たれ、砲弾が緩やかな放物線を描いて、敵2番艦に殺到していった。 砲弾は2発が右舷側、3発が左舷側海面に落下した。 「敵2番艦を挟叉しました!」 「ようし、一斉撃ち方!」 ようやく挟叉を得られたことに満足したベーカーは、次の射撃ステップに進ませた。 斉射を行うまでの間、30秒は砲が撃てない。 その間、敵艦から放たれた斉射弾がテキサス目掛けて落下してきた。唐突に、これまでよりも大きな衝撃が艦齢34年を過ぎた老戦艦を打ち振るった。 ベーカーは、中央部から伝わったその衝撃に、両用砲弾庫が爆発したなと確信した。 「ダメコン班より報告!敵弾命中により両用砲弾庫が誘爆!火災が発生しています!」 「すぐに被害箇所の消火を行え!砲術、主砲は撃てるか!?」 ベーカーは新たな被害発生に対して指示を飛ばしながら、砲術科に一番気掛かりだった点をすかさず問いただした。 「はい、主砲は健在です!射撃準備完了、これより斉射を行います!」 「よし、ぶちかませ!」 2秒後に、テキサスは10門の14インチ砲弾を放った。その衝撃たるや、交互撃ち方の時とは比べものにならない。 お返しだとばかりに放たれた10発の大口径砲弾は、マオンド巡洋艦目掛けて殺到していった。 マオンド巡洋艦の周囲に大きな水柱が立ち上がる。ベーカーは、その水柱の中に命中弾の閃光が光るのを見た。 水柱が崩れ落ちると、敵2番艦は艦体後部からオレンジ色の火災炎を背負っていた。 後部艦橋があったと思しき位置は猛火に包まれ、後部の主砲塔は沈黙している。 特に第3砲塔は爆発によって破壊されたのか、砲身が見当違いの所に向いている。 しかし、敵2番艦は依然として速力を落とさず、残った前部2基の主砲塔で反撃を行った。 「あれだけになっても、まだ刃向かってくるとは。タフな野郎だ。」 ベーカーはそう言いながらも、敵2番艦の勇敢さに感心した。 敵弾の砲弾がテキサスに落下する。 テキサスの周辺が敵弾の弾着で泡立ち、命中弾が老戦艦の艦体を一寸刻みに削り取る。 1発の砲弾は、後部艦橋の天辺に当たって炸裂し、上部取り付けられていた20ミリ機銃座をごっそりともぎ取った。 もう1発は煙突からやや後ろ側に離れたクレーンの基部に命中して、クレーンを根本から叩き折り、本体が金属的な叫喚を上げて燃えさかる舷側に倒れた。 別の1発は砲塔の側面に命中し、緊急時のために取り付けられていたゴムボート(既に、破片でボロボロになっていたが)を吹き飛ばした。 第3斉射を放つ直前に、敵巡洋艦2隻が更に斉射弾を放つ。その4秒後にテキサスは砲を放った。 第3斉射弾が弾着する前に、敵巡洋艦の放った砲弾がテキサスを叩く。 1発はテキサスの第3砲塔の天蓋に命中するが、分厚い装甲を破ることは出来ず、あらぬ方向に弾き飛ばされた。 もう1発は、テキサスの艦首側面に命中した。砲弾は錨鎖庫内で炸裂し、艦首に取り付けられていた錨を吹き飛ばした。 第3斉射弾が落下し、敵2番艦の周囲に水柱が吹き上がる。その間に、爆炎が躍り上がるのを、ベーカーはしかと目にしていた。 水柱が崩れ落ちた後、敵2番艦は艦容を一変させていた。 前部にあった2基の砲塔や、その後ろにあったやや背の低い艦橋は、後部と同様に炎に包まれている。 2基の砲塔は、命中弾のためかごっそりと無くなっている。 心なしか、艦体が前部の辺りで沈み込んでいるようにも見え、速力は急激に低下しつつあった。 敵2番艦はもはや、戦闘能力を喪失していた。 「敵2番艦撃破!沈没確実の被害を与えた模様!」 砲術長が弾んだ声で報告してきた。 「次は敵3番艦だ。」 ベーカーは別段喜ぶまでもなく、新たな指示を飛ばす。主砲の砲身が敵3番艦に指向される。 敵3番艦は、2番艦の火災炎によってその姿をさらけ出されている。 前部と後部に2基ずつ配置された砲塔に、クリーブランド級やブルックリン級に類似する背の低い艦橋を持つ巡洋艦。 艦の全長は、アメリカ海軍の大型軽巡と比べてやや小さい。 (敵はブリムゼル級巡洋艦か。) ベーカーは、敵の艦種を言い当てた。 ブリムゼル級巡洋艦は、6インチ相当の主砲を8門ほど積んでおり、実質的に軽巡洋艦に分類される艦だ。 テキサスによって撃沈破された1番艦と2番艦も同じ艦種だった。 「1隻じゃあまり強くない相手でも、複数集まるとなかなかに侮れない物だな。」 ベーカーは、背筋に冷たい物を感じながらそう呟いた。 テキサスが第1射を放つ前に、敵巡洋艦が斉射を放つ。 敵巡洋艦は、僚艦が相次いでやられたにも関わらず、決して逃げようとはしない。 テキサスは、最初から斉射を放った。テキサスの第1斉射が落下する前に、敵巡洋艦の射弾がテキサスに降ってきた。 これまでの命中弾で散々痛めつけられた老戦艦の艦体が、更なる打撃に打ち震える。 テキサスが第2斉射を放つ前に、敵巡洋艦は2度から3度の間隔で射弾を放ってくる。 既に砲撃精度が良好になっている敵3番艦の砲撃は、確実にテキサスを捉え続けた。 「後部甲板に新たな火災が発生!」 「中央部に被弾!ダメコン班に死傷者が出ています!」 「後部艦橋付近に火災が延焼中!応援を寄越して下さい!」 相次ぐ被害報告に、ベーカーはこのテキサスが容易ならぬ状況に陥っている事が分かった。 (もう少し、もう少しだけ耐えくれ!) 彼は心中で、痛みに悶えているであろう老戦艦に対して励ましの言葉を送る。 テキサスが第2斉射を放った。砲弾は、敵巡洋艦目掛けて飛来する。 だが、第2斉射弾は敵巡洋艦を飛び越えた海面で着弾し、空しく水柱を上げただけに終わった。 第3斉射を放つ間に、7発の敵弾がテキサスを痛めつける。 うち、1発が後部艦橋に着弾し、後部艦橋に詰めていた要員を1人残らずなぎ倒した。 もう1発は、あろうことか、前部艦橋の基部に命中した。 命中の瞬間、ドーン!という凄まじい轟音がなり、誰もがその衝撃に足を取られ、転倒した。 「これじゃまるで、サンドバックだな。」 ベーカーは憎らしげな口調で呟いた。実際、テキサスはサンドバックよろしく、敵巡洋艦に撃ちまくられていた。 第3斉射が轟然と放たれた。乗員の怒りと共に放たれた10発の14インチ砲弾は、敵巡洋艦目掛けて殺到する。 敵巡洋艦もまた、新たな斉射弾を撃ち放った。 双方の射弾が上空ですれ違い、双方の目標に向かって行く。先に命中したのは、テキサスから放たれた14インチ砲弾であった。 10発のうち、2発が敵3番艦の中央部に命中していた。 2発の14インチ砲弾は、敵巡洋艦の装甲を紙同然に貫き、艦底部に達した所で炸裂した。 これが1発のみであれば、敵3番艦もまた、なんとか大破の状態で損害を抑えられたであろう。 しかし、命中弾が2発であった事が、敵3番艦の命運を決定づけた。最初に着弾した砲弾は艦底部やそれより上の区画を惜しげも なく破壊し、火炎を周囲の区画に流し込んだ。 この一撃で身の毛のよだつような損害を受けた敵3番艦であったが、これだけならば、まだ助かる見込みはあった。 だが、もう1発の14インチ砲弾は、艦の大事な部分である竜骨を炸裂によってへし折ってしまった。 爆発エネルギーは竜骨を叩き割っただけでは飽きたらず、艦底部や艦腹にも大穴を開けてしまった。 これにより、敵3番艦の艦体は、真ん中の辺りで断裂する事になった。 テキサスもまた、敵3番艦に対する命中弾を確認する暇もなく、新たな命中弾に見舞われていた。 命中弾は計2発。 1発は第2砲塔の基部に命中し、甲板の板材を派手に吹き散らした物の、砲塔にはかすり傷程度しか着かなかった。 しかし、もう1発が問題であった。 命中の瞬間、ベーカーは艦橋が巨大なハンマーで真上から叩き潰されたような衝撃を感じていた。 (いかん、命中した!) 彼は、自分がいる艦橋に砲弾が命中したと思った。それほど、衝撃は凄まじかった。 だが、不思議なことに、彼は生きていた。 恐る恐る目を開けてみる。彼が居る中部艦橋は、スリットガラスが砕け散っているだけでどこも破壊されていなかった。 「艦長!大変です!」 副長が、血相を変えて艦長に歩み寄ってきた。 「艦橋トップの射撃指揮所が破壊されています!これより、統制射撃が不可能になります。」 「・・・・・なんてこったい!」 ベーカーは、余りのショックに卒倒しそうになった。敵弾は、上部艦橋に着弾していた。 改装によって、伝統の籠マストから三脚マストに変わっていたテキサスは、中部艦橋と上部艦橋に別れており、射撃指揮所や レーダー類のほとんどは、上部艦橋に配備されていた。 しかし、敵巡洋艦の射撃は、そこを見事に射貫いており、テキサスはレーダー射撃、光学照準射撃が共に出来なくなっていた。 人間で言えば、まさに目を失ったに等しい打撃を受けたのである。 「敵3番艦はどうなっている?」 彼はふと、敵3番艦の事が気になり、右舷側海面に視線を向けた。 先ほどまで航行していた敵3番艦は、もはやテキサスに対して砲撃を行える状況ではなかった。 双眼鏡越しに、中央部から炎上しながら停止している3番艦が見える。 テキサスに向けられた主砲は沈黙しており、艦の前部と後部がややそり上がっている。 どうやら、先の第3斉射弾は、敵3番艦にとって上手い具合に致命弾となったようだ。 「あの様子じゃ、敵3番艦は助かりませんな。」 「しかし、こっちも手酷い損害を受けたよ。」 ベーカーはため息を吐きながら言う。 「5基の主砲は健在だが、それを全力で発揮させる射撃装置が壊された。それに、艦体のダメージも思ったよりも酷い。 特に、右舷中央部の火災は早く消さないとまずいことになる。実質的に、テキサスは大破同然の損害を受けてしまった。 今年1月のトアレ岬沖海戦で、2隻のクリーブランド級軽巡が、敵の戦艦に対して砲弾の嵐を浴びせた。その結果、 敵戦艦は射撃不能となり、撤退を始めた。それと同じ損害を、テキサスは被ってしまった。」 ベーカーは、より一層、深いため息を吐きながら言った。 「速射性能のある巡洋艦が集まれば、戦艦も制圧できるという事が、ここで改めて証明されたわけだ。俺はつくづく、 巡洋艦の群れと戦う事がどれほど恐ろしいか思い知らされたような気がする。奴らは、雑魚ではなかったな。」 戦艦ニューメキシコは、敵戦艦との激しい撃ち合いを繰り広げていた。 ニューメキシコが第12斉射を放つと同時に、敵戦艦の砲弾が落下してくる。 艦体に激しい振動が伝わり、基準排水量33000トンの巨体がガクガクと震えた。 「今のは近かったな。」 ウェイラー少将は、声を震わせながら呟く。 CICの中からは、外の様子は見渡すことが出来ないが、それでも、次々ともたらされる情報によって状況が把握できる。 ニューメキシコは、敵1番艦からの射弾を17発も浴びており、左舷側の両用砲ならびに機銃座は全滅し、第2砲塔が使用不能となっている。 その一方で、敵1番艦に対しては13発を命中させ、主砲塔2基を使用不能にしたが、敵1番艦は残る主砲でもってニューメキシコを叩いている。 「弾着!敵戦艦に2発命中!」 CICに詰めているニューメキシコの砲術長が、艦橋に向けて砲撃の結果を知らせている。 「敵艦には、確実にダメージを与えているんだが、敵は妙にしぶといな。」 「テキサスが敵巡洋艦との砲戦に忙殺されていなければ、勝負はもっと早めに付いたのですが。」 テキサスは、何故か後方からやってきた敵巡洋艦と戦闘を行っている。 状況はテキサスにいささか不利であると伝えられているが、支援をしようにも、戦艦群との砲戦で手一杯の3戦艦ではどうすることもできない。 ここは、テキサスの奮戦に賭けるしかなかった。 第13斉射、第14斉射と、残り9門に減じたニューメキシコの主砲が唸る。 敵戦艦は、斉射弾が落下する度に艦体に穴を穿たれ、戦闘力を喪失していく。だが、それでも戦意は衰えず、依然、健在な4門の主砲で反撃してくる。 またニューメキシコに敵弾が命中した。ガガァンという砲弾が命中する音と振動が、CICに伝わった。 「後部甲板で更に火災発生!」 「第2煙突付近に命中弾!火災発生の模様!」 ニューメキシコの被害も徐々に蓄積されている。 現在、ニューメキシコは中央部と後部甲板に火災を発生させられており、損害のレベルは、現時点で中破と判定をされるほどだ。 この時、朗報と悲報が同時に入ってきた。 「テキサスより入電、我、敵巡洋艦3隻と交戦し、2隻を撃沈、1隻を大破せり。我、射撃指揮所損傷により統一射撃不能。 他にも、艦の各所で火災発生、現在消火作業中なり。」 「アイダホより入電、我、敵戦艦撃沈。我の損害、被弾24発、主砲塔2基使用不能。これよりミシシッピーの支援を行う。」 この2つの報告を聞いたウェイラーは、複雑な表情を浮かべた。 「テキサスが統一射撃不能という事は、戦艦としての役割は絶たれたも同然か。よりにもよって、第8艦隊から譲って貰った2隻の 戦艦がことごとく戦闘不能になるとは・・・・・敵の巡洋艦部隊は、上手い具合にテキサスを痛め付けたものだ。」 「アイダホも、マウニソラ級戦艦に思いも寄らぬ苦戦を強いられたようですな。しかし、ミシシッピーの支援に移るとなれば、敵2番艦は より短時間で片付けられる事になるでしょう。」 「とにかく、今は、目の前の相手を倒さねばな。」 戦艦ニューメキシコ艦長であるロイド・ブロンソン大佐は、左舷側に見えるオレンジ色の炎を見つめていた。 そのオレンジ色の炎から発砲炎が煌めく。 「畜生!マイリーの野郎はどこまでしぶといんだ。」 ブロンソン艦長は、マオンド戦艦のしぶとさに舌を巻いた。 敵戦艦は、自艦よりも強力な砲弾を受けながらも、尚も戦闘力を維持し続けている。 並みの戦艦ならば、とうに沈んでいるか、戦闘不能に陥っても不思議ではない損害を受けているはずなのだが、マオンド艦は なかなか沈黙しなかった。 (きっと、連中の艦にも優秀なダメコン班がいるに違いない、そうでなければ、あんなに戦えるはずがない) ブロンソン艦長は内心で確信する。 ニューメキシコが第15斉射を放った直後、敵戦艦の斉射弾が落下した。 4発中、1発は後部艦橋に命中して、その上部部分を爆砕した。 もう1発はクリッパー方式の艦首先端に命中し、鋭角的な角度で前方に伸びていた艦首は、この一撃で長さが短縮された。 残る2弾はニューメキシコの左舷側海面に落下した。 1つはちょうど、艦橋のすぐ側に立ち上がり、艦長はしばしの間、敵戦艦の姿を見る事が出来なくなった。 水柱が晴れると、そこにはより火災を拡大させた敵1番艦の姿があった。 敵1番艦は、中央部から後ろが火災炎に包まれ、黒煙が濛々とたな引いている。 先ほどまでは見えていた後部艦橋と思しき影は、今では小さくなっている。 ニューメキシコが放った第15斉射弾のうち、1発が後部艦橋を爆砕したのであろう。 「あの状態では、もはや戦闘は不可能だろうな。」 ブロンソン大佐はそう呟いた。だが、敵戦艦は戦闘能力を失っては居なかった。 敵戦艦の前部と、猛火に包まれていた後部分から新たに発砲炎が煌めいた。 「なっ!?」 ブロンソンは仰天した。前部はともかく、後部は完全に破壊したと思っていた。 しかし、その炎熱地獄と化して居るであろう後部の主砲塔から砲撃を行った。 ブロンソンの思いは間違ってはいたが、敵戦艦の後部部分は文字通り火炎地獄であった。 だが、そんな状況にも関わらず、砲塔内にいた砲手達は砲を撃ち放った。 ニューメキシコは第16斉射を放った。その直後に、敵戦艦の砲弾が着弾した。 いきなり、第1砲塔の辺りに閃光が煌めいた後、強烈な炸裂音が洋上を木霊した。 「なんて奴らだ!」 ブロンソンは敵1番艦の乗員の持つ戦意に、半ば恐怖にも似た感情を抱き始めていた。 ニューメキシコの射弾は、その10秒後に命中した。 敵1番艦の艦体に、4発が満遍なく命中した。 2発目は、健在であった前部の砲塔を吹き飛ばした。砲塔が破壊される際、砲身らしき物が宙に舞い上がるのが見えた。 それを機に、敵1番艦は力尽きたかのように速度を落とし始めた。 急激に速度を低下させる敵1番艦に、ニューメキシコを砲撃する余力は残されていなかった。 「艦長、先の命中弾で、第1砲塔が使用不能になりました。」 「・・・・・それは本当か?」 ブロンソン艦長は、無表情で副長に問い返す。副長の答えは、先と同じであった。 敵1番艦が放った最後の斉射は、1発だけがニューメキシコに命中した。 この命中弾は、ニューメキシコの第1砲塔を正面から叩き据えた。 砲弾が命中した瞬間、3本ある砲身は全てが爆圧でねじ曲げられ、それぞれがでたらめな方向に向けられた。 また、爆発エネルギーは主砲正面の装甲部にもダメージを与えた。 爆炎は砲塔内部まで及ばなかったが、衝撃は砲塔内部に及び、砲塔内で勤務していた砲手達は、内部に飛び散った鉄片によって負傷してしまった。 「これで、ニューメキシコは砲戦力の50%を失った事になるのか。敵もかなり手強いな。」 ブロンソン艦長は、敵1番艦に対してそのような感想を抱いた。 敵1番艦が沈黙した後、状況は大きく動いた。 唯一残った敵2番艦は、1隻で3隻のニューメキシコ級戦艦を相手取り、最終的には戦艦ミシシッピーを大破させたが、 自らも多数の砲弾を浴びせられ、最後には爆沈してしまった。 敵2番艦が爆沈すると、残りの敵艦隊は撤退を開始した。 「敵艦隊は撤退を開始しました。司令官、追撃に移りますか?」 幕僚の1人がウェイラーに尋ねてきた。だが、ウェイラーは首を縦に振らなかった。 「やめておこう。我々は、敵の旧式戦艦全てを撃沈し、他にも損害を与えたが、我々も少なからぬ手傷を負った。戦艦だけでも、 ミシシッピーとテキサスは大破し、ニューメキシコとアイダホは中破している。巡洋艦部隊も駆逐艦部隊も、損害は思ったよりも 多いようだ。ここはひとまず、ばらばらになった各艦を集めよう。」 ウェイラーは追撃を諦める事にした。 TG73.5は、ひとまず敵艦隊の撃退には成功したが、自身も少なくない損害を受けている。 こんな状態で追撃をかけても、満足な戦果は挙げられるはずもなく、かえって損害を増やすだけである。 (敵がベグゲギュスを待ち伏せている可能性もある) ウェイラーが新たなる指示を下そうとした時、とある通信士官が血相を変えながら立ち上がった。
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旧・兵器一覧(装備) 愛称 登場ターン 販売都市 価格 攻撃 耐久 機動 出力 命中 兵装 画像 備考 30mmマシンガン 1 Area01 1500 3 0 0 2 4 7 シールド1型 1 Area01 1000 0 2 0 3 0 0 RZライフル 7 非売品 6000 9 0 0 11 6 2 GW10X専用ライフル 対GWロケット 15 Area01 2000 5 0 0 5 2 8 3連ロケット 22 Area01 2500 5 0 0 4 2 8 30mmマシンガン 24 Area05 1200 3 0 0 2 4 7 対GWロケット 24 Area06 1600 5 0 0 5 2 8 カスタム品 シールド2型 24 Area06 1600 0 3 0 5 0 0 3連ロケット 37 Area07 2000 5 0 0 4 2 8 30mmライフル 45 Area01 3000 6 0 0 4 6 2 30mmライフル 45 Area05 2400 6 0 0 4 6 2 50mm迫撃砲 60 Area01 3500 7 0 0 7 5 10 50mm迫撃砲 67 Area06 2800 7 0 0 7 5 10 GWバズーカ 75 Area01 4000 8 0 -2 9 3 4 シールド2型 75 Area01 2000 0 3 0 5 0 0 50mmクラスター砲 75 Area01 4000 6 0 0 7 10 11 迫撃砲に散弾式砲弾が装填されている。 GWバズーカ 82 Area07 3200 8 0 -2 9 3 4 シールド3型 97 Area07 2400 0 4 -1 7 0 0 対GBロケット 105 Area01 5000 12 -2 -4 13 2 8 対GBロケット 112 Area08 4000 13 -2 -4 13 2 8 カスタム品 シールド1型 112 Area05 800 0 2 0 3 0 0 シールド3型 120 Area01 3000 0 4 -1 7 0 0 ツインレーザー 120 Area07 10000 18 0 0 31 10 6 テュリオン専用兵器 Area07で入手可能 40mmライフル 120 Area05 4000 9 0 0 12 7 2 50mmライフル 126 Area01 6000 10 0 0 15 8 2 バーニアパックA 126 Area07 8000 0 -1 3 18 0 0 40mmライフル 135 Area01 5000 9 0 0 12 7 2 バーニアパックA 135 Area01 10000 0 -1 3 18 0 0 50mmライフル 144 Area06 4800 10 0 0 15 8 2 カスタム品 レーザーガン 162 Area01 7500 15 0 0 18 9 6 シールド4型 180 Area01 4000 0 5 -2 10 0 0 レーザーガン 180 Area07 6800 15 0 0 18 9 6 レーザーライフル 204 Area01 8500 17 0 0 20 12 6 バーニアパックB 216 Area01 15000 0 -1 5 23 0 0 レーザーライフルCM 222 Area08 8600 19 -8 0 22 12 6 エネルギーをアップして火力を増しているが、その分制御が不安定で暴発の危険性あり。 ツインCLレーザー 240 Area01 10000 18 0 0 23 18 11 水平に拡散するビームクラスター銃 レーザーショット 264 Area01 16000 24 0 -3 28 24 11 クラスターレーザーの射程が大幅に延長され、レーザー追尾の強化により命中率もアップ UHLライフル 276 Area01 22000 33 0 -7 32 6 5 HLバズーカ 288 Area01 29000 36 0 -5 36 6 5 クラスターボム 999 非売品 19000 21 0 0 33 24 11 愛称 登場ターン 販売都市 価格 攻撃 耐久 機動 出力 命中 兵装 画像 備考 20mmガトリング 1 Area02 500 2 0 0 1 5 7 対GBロケット 1 Area02 1000 4 0 0 1 3 8 20mmガトリング 24 Area05 400 3 0 0 1 5 7 対GBロケット 24 Area06 800 4 0 0 1 3 8 愛称 登場ターン 販売都市 価格 攻撃 耐久 機動 出力 命中 兵装 画像 備考 20mmガトリング 1 Area02 500 2 0 0 1 5 7 対GBロケット 1 Area02 1000 4 0 0 1 3 8 3連ロケット 22 Area02 2500 6 0 0 4 2 8 20mmガトリング 24 Area07 400 3 0 0 1 5 7 対GBロケット 24 Area08 800 4 0 0 1 3 8 3連ロケット 45 Area08 2000 6 0 0 4 2 8 3連Cロケット 52 Area07 2800 3 0 0 4 9 11 抵抗軍が改造して作成したクラスターロケット砲。散弾式砲弾が装填されている。 愛称 登場ターン 販売都市 価格 攻撃 耐久 機動 出力 命中 兵装 画像 備考 30mm機銃 1 Area03 3000 4 0 0 20 6 7 追加装甲A 1 Area03 3000 0 3 0 20 0 0 追加装甲A 1 Area05 2400 0 3 0 20 0 0 5インチ砲 20 Area03 6000 12 0 0 41 5 3 30mm機銃 24 Area05 2400 4 0 0 20 6 7 村の武器屋は値段が少し安い、改造してパワーを上げている 5インチ砲 24 Area07 4800 14 0 0 48 6 3 追加装甲B 24 Area06 3200 0 5 0 50 0 0 10インチ砲 50 Area04 12000 20 0 -1 64 3 3 10インチ砲 56 Area08 9600 22 -2 -1 73 3 3 火薬を増量して火力を増している分、被弾に弱く暴発の危険性あり クラスターロケット 60 Area03 9000 9 -2 0 50 9 12 クラスターは誘爆の危険性が高い 対GWミサイル 60 Area04 14000 12 0 0 60 12 9 レーダー誘導型 対GWミサイル 命中率高い 対GBミサイル 70 Area04 36000 26 0 0 120 5 9 クラスターロケット 80 Area06 6900 9 -2 0 50 9 12 クラスターは誘爆の危険性が高い 15インチ砲 90 Area04 18000 28 0 -2 100 1 3 追加装甲B 90 Area04 4000 0 5 0 50 0 0 追加ジェットB 135 Area04 11000 0 -3 2 90 0 0 追加ジェットB 138 Area05 8800 0 -3 2 90 0 0 拡散烈火弾 144 Area04 45000 24 -20 -2 125 14 12 クラスターは誘爆の危険性が高い かなり重い 追加装甲C 144 Area04 5000 0 7 -1 80 0 0 拡散烈火弾 156 Area07 41000 24 -20 -2 120 14 12 クラスターは誘爆の危険性が高い かなり重い バリア発生装置 190 Area04 12500 0 10 -1 90 0 0 追加ジェットC 210 Area04 14000 0 -4 3 120 0 0 レーザー砲 270 Area04 75000 45 0 -2 130 5 5