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俺は目を覚ました。 ん?ここは… 俺の部屋だ。 携帯で時刻を確認する。 ……14時20分… なんと、俺はこれほどまでに爆睡してたというのか。いや、違うな…昨夜はファミレスでSOS団メンバーと ずっと話してたんだっけか。そして寝たのが朝の6時くらいだったことを考慮すると、然しておかしなことでもないな。 …そういや、俺は先ほどまで船上にいたんだよな。そして、ハルヒからいろいろと悩みを打ち明けられたんだ。 いつもの俺なら【あれは夢だ】と断じてそれで終わりだろう。が、今の俺には到底そうは思えない。 おそらくあれは実際に起こったことなんだ。あの世界の【俺】が最後に泣きこぼしてた言葉が… 鮮明に頭に残ってる。転生…即ち生まれ変わるって意味だが、一般常識で捉えた際に、まず前世の記憶は なくなるというのは間違っていない。つまり、本来なら2012年という時代に生きる俺が過去の【俺】の記憶を 取り戻すなんてことは絶対にありえないのだ。そのありえないことが現に起こってしまっている。 言わずもがな、ハルヒの能力があってのことだろう。連日俺が見た夢…いや、正しくは 実際に未来で起こりうる最悪のケース、そして世界が崩壊する様…それらをハルヒは無意識の内に 俺に見せてくれた。ならば、俺がさっきまで見ていたあの世界の記憶も…造作ないことなのであろう。 『普通の一人間として生きたいから、神に通じる能力は全て消し去りたい』そんな趣旨のことを ハルヒは言っていた。だが、ヤツのそういうとんでもパワーがなかったら、そもそも俺は過去の【俺】と… いや、俺だけじゃない。過去のハルヒのこともそうだが、一生知らぬまま生きていったに違いない。 そう、何も真相を知らぬまま… だから、俺は深く感謝したい。過去の記憶を垣間見ることができたハルヒの能力に。 …… ん?電話だ…古泉からか。何の用だろうか…まさか…!? 「もしもし!」 「おや、さすがにこの時間帯となると起きてらっしゃったみたいですね。ぐっすり眠れましたか?」 「俺のことはどうでもいい!それより何の用だ?ハルヒに何かあったのか!?」 「いえいえ、別にそういうわけではないですよ。とりあえず落ち着いてください。」 取り乱すような由々しき事態ではなかったらしい。とりあえず腰を下ろす俺。 「少々あなたとお話したいことがありましてね…急で申し訳ないのですが、 今から学校近くの公園に来てはいただけませんか?すでに長門さんもいらっしゃってます。」 「ん?昨日のことで何か話し足りないことでもあったか?」 「まあ…そんなところですね。」 今電話で話せよ…と言いたくもなったが、長門もいるとなると話は別だ。 おおよそ専門的なことでも話すのだろうから、みんなとしたほうが都合が良いって流れだな。 三人寄れば文殊の知恵…いや、ちょっと意味が違うか。 「そうそう、俺のほうでもお前らに話したいことがあったんだよ。だからちょうどいい。」 「そうなのですか?それは楽しみです。」 もちろん話すこととは、【あの世界の記憶】である。 真相を語ってやるのは、これから協力していく仲間にとっては当然のことであろう。 「じゃ、すぐ行くから待ってろよな。」 電話をきって、ただちに着替える俺。腹ごしらえに朝飯…いや、今は昼だから昼飯と言うべきか。 昼飯でも食ってから行こうと思ってたが、いかんせん目覚め時なんでいまいち食欲が沸かん。 まあ、後回しにしてしまっても大丈夫だろう。死ぬわけじゃないしな。 洗顔、歯磨き、髪の手入れ…とりあえず、最低限の身だしなみを整えた俺は 自転車に跨り、公園へと走るのであった。 「よう、待たせたな。」 「いえいえ、むしろ急に呼び出したこちらが悪いんですから。」 「……」 とりあえず、ベンチに座る俺たち三人。 「…昨日は眠れた?」 「え?」 「昨日は眠れた?」 なんと、長門さんが人間味ある暖かい言葉を俺に投げかけてくれているではないか。 「ああ、大体8時間睡眠ってところだな。ぐっすり眠れたぜ。」 「そう…よかった。」 「それで、そんときに見た内容なんだがな…。」 俺は記憶の一部始終を話した。 …… 「「……」」 長門はともかく、古泉まで黙ってしまっている。あまりの内容に面喰ってしまったのだろうか。 「これは…素晴らしいですよキョン君。涼宮さんのお気持ちがこれでようやくわかったのですから… 自称涼宮さんの専門家としては、情けないことこの上ないですけどね。」 「…私もここまでは把握していなかった。 涼宮ハルヒのカギたるあなただからこそできた所以。感謝する。」 「いやいや、感謝とかそんな大袈裟な。」 だが、長門と古泉の言いたいこともわかる。確かに俺たちは昨日涼宮ハルヒの軌跡を辿っていたわけだが、 あくまでそれは史実…つまり単なる事実に過ぎなかった。その過程の中でハルヒがどんな思いで 神の代行者として奔走していたのか…それを無視して結果論にしがみつくだけでは、 事実こそわかれど真実には到底辿り着けないだろう。 「それにしても驚きです。まさかあなたの前世がノアの一族の一人だったとは…。」 「なあ古泉、まさかとは思うが…もしかしてこれはアレか、 いわゆる世間一般で知られてる【ノアの方舟】ってやつなのか??」 「その通りです。旧約聖書の『創世記』、6章-9章に出てくるかの有名な洪水伝説のことですね。」 「あの洪水がまさか第三世界崩壊時のそれだったとはな…って、ちょっと待て。そういやノアの方舟って… あれは神話じゃなかったのか??もっとも、記憶を確かめた今となっては今更な疑問かもしれねえが…。」 「確かに、神話と捉える説が学会では有力です。しかし実際は…、長門さんお願いします。」 「【ノアの方舟】で知られている大洪水は…約3000年周期で地球を訪れる地球とほぼ同じ大きさの氷で 組成された彗星天体Mによるもの。地球軌道に近づくにつれ、天体Mは水の天体となり、地球に接近した時には 大音響と共に地球に約600京トンの水をもたらした。その津波は直撃地点付近で8750メートルとなり、 地球全域を覆い、地球上の海面を100メートル以上上昇させた。」 …… 実際にありえたってことかよ… 「3000年周期で地球を訪れる…これ自体は単なる自然現象であって涼宮さんの力とは 何ら関係なのでしょうが…問題は、それが地球軌道に大接近してしまったということでしょうか。」 「つまり、それが涼宮ハルヒこと、神の力によるものだと。」 「そういうことですね。それと、その話を聞いて2つ、わかったことがありますよ。」 …新たな情報を入手した途端にこれか。相変わらず、その理解力には脱帽と言っておこうか。 ヤツがわかったということは、おそらく長門も気付いてるんだろう。 「1つはフォトンベルトの正体…といったところでしょうか。」 「正体?どういうことだ??」 それについては散々昨日お前たちが説明してくれたじゃないか?まさか、またあのバカ長い 理解不能な 難解講座を受けるハメになるんじゃなかろうな…?それだけは勘弁してもらいたい… 「まあまあ、そう陰鬱そうな顔をなさらないでください。さすがに一から フォトンベルトの定義をしようなどとは思っていませんよ。話はごく単純です。ねえ?長門さん。」 「そう。」 まるで答えが決まってたかのごとく、長門は即答した。古泉もそれを確信していたようだし、なんとも凄まじい ツーカーの仲だな…頭の回転が速い者同士、ゆえの結果なのだが…そういう意思疎通能力が羨ましくもあった。 ちょっとでいいから俺とハルヒにも分けてほしいもんだな。というか、とりあえず話は単純そうで安心した。 「昨日長門さんがおっしゃったように、本来フォトンベルトというのは涼宮さんの力無しでは物理的には 存在しえない…しかし、そんな涼宮さんの意志とは別にフォトンベルトに近しい何かが接近している、 というのもまた事実でした。」 そういやそんな話だったな。 「僕が言いたいのはこの『近しい何か』の部分です。これについて、僕も長門さんも予兆こそできていましたが… ただ一つ、肝心な涼宮さんとの関連性が…どうしても見いだすことができなかったのです。なぜこんな得体の 知れないものが涼宮さんの意志とは別に存在しているのか?最大の謎でもありましたし、同時に戦慄さえも 感じていました。しかしここで大切なのは…涼宮さんは神というよりはむしろ、その代行者的性格のほうが 強かったということです。特に、あなたと出会ったときがそのピークだったといえるでしょう…精神的な意味でもね。 彼女自体は世界崩壊を望まないどころか神そのものに嫌悪さえ感じてたわけですし、 なれば涼宮さんと神は全く別の、独立した存在だと考えても差し支えはないわけですよね?」 古泉が確認をとるように聞いてくる。まあ…そうなんだろうな。というか、間違いない。 ハルヒと神が全くの別々の個体だということはまさに、俺がハルヒに対し説いた言葉そのものなのであるから。 「一方は世界の崩壊を望み、一方はそれを望まない。相殺されてるように見えますが… しかし、どう考えても力は神本体のほうが強いはず。すると、どうなりますか?」 「!」 ようやく気付いた。というか、なぜあのハルヒとの夢を見てこれに気付けなかった? それもそのはずなんだ、だってハルヒがそれを望まなくたって… 「宇宙のどっかにいる神が、勝手にフォトンベルトを作っちまうってことかよ??」 「その通りです。」 …なんてハタ迷惑な話なんだ…。 「しかし、かといって神の思い通りになる…というわけでもない。」 ここで長門が口を挟む。 「どういうことだ?」 「確かに、数値的にも総合的にも神の能力が涼宮ハルヒのそれを上回るのは明白。だからといって、 涼宮ハルヒの力そのものがゼロになったというわけではない。少しながらでも神に影響を与える。 その過程が、結果として不完全な疑似フォトンベルトを作り上げるのに至ったのだと、私はそう考えている。」 「…それが『近しい何か』の正体だと?」 「そう。」 なるほど、聞いてみれば確かに単純だった。しかし…神からしてみればそれは計算外だったんだろうな。 ハルヒの能力だって、元々は神がハルヒを代行者として縛りつけるための代物だったはずだ。それが、 まさかめぐりめぐって自分の首を絞めることになろうとは。滑稽とは、こういうときに使う言葉なのかもしれん。 「それと、これは憶測ですが…佐々木さんのことです。」 …… 古泉よ…急に話題を変えるのは無しだぜ?予想外の人物の名前に、 思わず心臓が跳ね上がりそうになったじゃないか!!? 「おいおい…どうしてそこで佐々木の名前が出てくる??」 「あなたは一連の話を聞いてみて思わなかったのですか?彼女のことを。」 「いや、だから俺には意味が…。」 …そういえば。なぜあいつがハルヒと類似した能力を有しているのか、それについて俺は今まで考えたことが あったろうか?ハルヒの能力、いや、ハルヒの正体が明らかになった今、当然ともいえる疑問が佐々木に向かう。 ヤツは一体何者なのか?という問い…どういうことだ?あいつも代行者なのか??いや…ハルヒから 自分以外にそういうのがいるなんて話は聞いたことがない。じゃあ何なんだ??まさか… 「まさかとは思うが…神が自分の言うことを聞かないハルヒを見限って、別の新たなる 代行者的存在として佐々木を選んだとか、そういうオチじゃねーだろうな!?」 そんなことになったらどうする…??佐々木がハルヒの前に立ちふさがることになるのか!? 当然、ヤツが全面に出てくれば橘、周防、藤原たちとも衝突せざるをえなくなる。ちょっと待て、 まさか藤原はこのために暗躍を…などと、底なし沼のごとくどんどんネガティブな方へと 発想をめぐらしていた俺を…古泉・長門の一言が現実に引き戻す。 「ははは、それは考えすぎというものです。」 「そこまで思いつめる必要はない。」 「……」 脱力する俺。しかし、次の瞬間にはこう言っていた。 「よかった…。」 当然だろう?最悪ともいえるケースが否定されたんだ。歓喜の一言も言いたくなるさ。 「というか、それまたどうして?なぜ2人はそう思うんだ?」 「落ち着いて考えてみればわかると思いますが…誰かを自分の傀儡に仕立て上げ、それを操るというのは まさに人間の発想ですよ。長門さんの話を聞く限り、神には創造・維持・破壊の3概念しかないように思われます。 大方、細かいことは全て涼宮さんに一任していた、と言ったところでしょうかね。いや、そもそも概念なる存在が あるのかどうかも疑わしい。生き物というよりは、一種のプログラムだと見なしたほうがいいのかもしれません。」 そう言われればそうだが…少し抽象的なような気もするぞ? 「長門はどう思うんだ?」 「人間的行為の是非は私にはよくわからない。しかし、古泉一樹のそれとは別に、私には考えうる理由がある。 内面的にも外見的にも涼宮ハルヒと神は互いに独立した存在とはいえ、それはあくまで最近の話。 元々は、双方は一つの存在だったはず。客観的役割で見れば彼女は代行者といえるが、 実質はもう一人の神、分身といってもいい。裏を返せば、それこそが代行者たる資格だといえる。」 「つまり、神の代行者というのは涼宮さん以外には存在不可能というわけですよ。 彼女の記憶から自分以外のそういった存在がなかったことからも、それは明らかです。 もちろん、佐々木さんがその縁者というわけでもありません。彼女はごく普通の一般人ですから。」 『彼女はごく普通の一般人』それをすぐさま確かめたかったのか、俺は長門に食いかかっていた。 「長門!それは本当か!?あいつは… 一般人でいいんだよな??」 「彼女は一般人。涼宮ハルヒと似た能力こそ持ち合わせているが、 私たちのような特異的存在とは明らかに異なる。」 「…そうか。」 …安心した。ひどく安心した。どうやら、佐々木は本格的にこの事件には関わっていないらしい。 これだけでも、俺の中で1つの不安材料が消えた。あいつをこんな得体の知れない事件に、 巻き込みたくはなかったからだ。しかし、そういうわけで結局話はふりだしに戻ってしまう。 「じゃあ、一般人なのなら、あの能力は一体どこからやってきたんだ?? まさか、自らそれを習得したわけでもあるまいし…。」 滝に打たれ、四書五経を丸覚えし、断食をし、仏道修行に励み等…様々な苦行を重ねたところで、 とてもではないが閉鎖空間構築といったトンデモ能力が開花するとは思えん…ましてや佐々木が そんなことをしてたなんて話聞いたことない、というか、個人的願望としてそんな佐々木は見たくない。 「結論から申しますと、彼女の能力は涼宮さんにより分け与えられたものなのではないか、僕はそう考えてます。」 「は??」 過程をすっとばして結論だけ聞く、その恐ろしさをまじまじと体感できた瞬間だった。 『ウサギとカメが競走しました、結果カメが勝ちました、めでたしめでたし。』 と、先生に二言で昔話をしめられた幼稚園児のごとく心境だったと言っておこうか? 「おっと、少し誤解があったようです。正確に言えば、涼宮さんにその意図はないわけです。 分け与えたという表現も不適切でしたね。水平面下で望んでいたというのが正しいです。」 「いや、訂正されても意味わからんが…というか、ますますわからなくなったんだが!?」 長門ーッ!助けてくれーッ!!と、期待をこめ彼女を見てみる。しかし 「心理的領分というのは私にとって専門外。残念ながらあなたに助け舟を出すことはできない。」 と一蹴されてしまった。まさか長門でもわからないことがあったとは…って、ちょっと待てよ?心理的領分?? 「もしかして古泉、お前は憶測だけで佐々木のことを言ってるんじゃあるまいな?」 「だから最初に断っておいたじゃないですか。これは憶測ですが…と。」 確かにそんな記憶がある。しまった、やられた… 「まあまあ、そんなに悲観しないでください。僕だって何も無責任にこの持論を展開しているわけではありません。 確固とした根拠こそありませんが、この推論でいくならば佐々木さんの能力についてもすんなり説明が 通りそうなのですよ。もちろん、証拠がないので可能性の1つとしてしか成りえないのもまた事実ですが。 とりあえず、非難されるのは聞いてからでも遅くないと思います。」 …そこまで言うからには聞いてやろうじゃないか。 やれやれといった表情で、とりあえず俺は首を縦に振ってやった。 「ありがとうございます。では、お話ししますね。まずは…いつから佐々木さんにその症状が現れ始めたのか という点について。それは4年前、あなたが過去へ時間遡行し中学時代の涼宮さんと会われたときだと 考えてます。そして、そのとき彼女の意識に何らかの変革が起こった。」 ああ、例の七夕の日か。そういや、あのときからハルヒはすでに団長様だったな。 俺を不審者だと罵ったり、白線引くのにコキ使ったりだとか…とにかく忙しかった印象しかない。 「で、ハルヒの意識がどうしたって?っていうか佐々木との関連性が見えんぞ。」 「あの世界の夢を見て、まだお気付きになりませんか?彼女からすれば、あの出会いは 一種のターニングポイントです。いかにそれが重要で衝撃的なものだったか…あなたにはわかるはずですよ。」 「……」 鈍感な俺でも、さすがに古泉の言わんとしてることはわかる。 ------------------------------------------------------------------------------ 「言葉通りの意味よ。あんたも転生できれば…!」 「ちょ…ちょっと待て。それは神と縁あるお前だから成せる技であって俺みたいな人間なんか…」 「そうね…でも、やってみる価値はあると思うの。…まあ、どれほど無謀な行いかってのはわかってる。 仮にあんたをあたしと同時代に転生できたとしても世界は広い…会えなきゃそれで終わりよ…だから、 そういった意味では可能性はゼロに近いのかもしれない。でも、あたしは諦めない。神の束縛に甘んじて 自身の意志で生きることを諦めていたあたしに…勇気をくれたキョンのことを、あたしは絶対諦めたくない!」 ・ ・ ・ 「言わんとしていることはわかるさ、そこまで俺も鈍くない。それでもし 何か悪いことが起こったって…そんときはその世界の俺がきっとハルヒを助けに来るはずだ… だからさ、お前は安心して転生に専念してりゃいいんだよ。」 「キョン…ありがとう。」 …… 「神の代行者としての最期にあなたのような人間に出会えて あたしは幸せだったわ…!次の世界でも会えるといいわね…いや、会いましょう!」 ------------------------------------------------------------------------------ 気が遠くなるような悠久の時を経て、俺とハルヒは七夕の日再び出会った。同じ世界、同じ時間平面上で。 俺はともかく、ハルヒからすれば…まさに【初めての再会】だったといえる。これも因果ってやつか? なぜあの日が七夕だったのか…なんとなくわかったような気がした。偶然っちゃ偶然なんだけどな。 「…ああ、そうだな。さぞかし感動的な場面だったろうよ。けどな、当の本人であるハルヒには 第三世界時の記憶がない。意識に変革も何もあったもんじゃねーだろ?」 結局これに尽きる。現に、昨日ハルヒがぶっ倒れるまでそんな予兆は一切なかったんだからな。 「ところが、本人は気付いてなくとも眠っていた記憶が呼応した可能性はあります。あなたにもさっき話したように、 例の不完全なフォトンベルト等がそうですよ。意識せずとも力を行使できる、それが涼宮さんです。 元々神の分身だったということも手伝って、やはりその能力は伊達ではありませんね。」 …古泉の言う通りだ。あいつの力は生半可なものじゃない。神に抗ってまでも転生した…証拠ならそれで十分だ。 『やっぱり物事ってのはやってみるに越したことはないと思ったわ…あたしの潜在能力って案外凄かったみたい。』 何より、自分の口からそう言ってるのを確かに聞いたんだ…俺は。 「僕が言いたいのは、4年前の七夕、涼宮さんがあなたに出会ったことで… 呼応した深層心理が佐々木さんに何らかの影響を及ぼしたのではないか?ということです。」 話が1つとんだような気がする。 「いや、だから…なぜそこで佐々木が出てくるのかと??あの時点じゃまだハルヒはヤツのことを 知ってもいなかったはずだし、それに今だって佐々木の名前こそ知ってるが…ほとんど接点がない といってもいい、それくらい互いの関係は希薄なものなはずだぞ??」 「すみません、言葉が足りませんでしたね。つまり、これから佐々木さんについて話すこと。 それこそが僕がさっき言っていた『憶測』の該当範囲です。その証拠に…長門さん。 今まで僕が彼に話していたことに、何か矛盾はありましたか?」 「ない。理にかなっていた。」 「というわけです。これまでの部分は、憶測という名の非論理的なものではなかった… ということがおわかりいただけましたでしょうか?」 まるで示し合わせてたと言わんばかりに即答する長門と古泉。意志疎通か以心伝心かは知らんが 仲良すぎだろ常識的に考えて…超人的な意味でな。って、そんなこと常識的に考察してる場合じゃなかった。 「長門の保証付きならば、俺から言うことは何もないさ。話を続けてくれ。」 「では。結論から申しますと」 また結論からか! 「涼宮さんは、あなたと過去の自分との関係に、あなたと佐々木さんとのそれを 重ね合わせたのではないか?僕はそう見てます。」 案の定、意味はわからなかった。古泉よ…お前は何度同じ過ちを繰り返せば気が済むのだ…!? 「あのな、だからっさっきの俺の質問に答えろっての!!どうしてそこで佐々木の名前が出てくるよ??」 「別に、涼宮さんは『佐々木さん』という特定の個人を敢えて選んだ、 というわけではありませんよ。偶然そうなったと言うべきか。なぜなら当時… あなたが中学生だったとき、一番仲の良かった異性が佐々木さんだったからです。違いますか?」 「な!?」 つい間抜けな顔をしてしまったかもしれない。ここにハルヒがいなくてよかった…二重の意味で。 「なんてことを聞くんだお前は??誤解ないように言っておくが…決して俺と佐々木はそんな関係じゃねーぞ!?」 「とりあえず落ち着いてください。誰も、付き合ってるなどとは言ってないではないですか。」 「むしろ動揺するほうが…変。何もやましいことがないのなら、あなたは毅然としているべき。」 「……」 あろうことか長門に諭されてしまった。これを驚かずして何と言う。というか長門… 『心理的領分というのは私にとって専門外』って、あれ嘘だろ?どうみても今のお前は…裁判にて無実の被告が ついつい検察に熱くなったとこを諌める弁護人そのものだったぜ…!?心理学の『し』の字も知らない人間が (正確には人間ではないが)どうしてそんなこと言えようか?いや、言えるはずがない…んじゃないか? 「では質問を変えましょう。友達として考えてみてください。そういう意味であるならば、 あなたは佐々木さんと…異性の中ではかなり口数が多かったほうなのではないですか?」 「まあ…否定はしないが。」 「ならば、それだけで十分です。さて…話は戻りますが、もし涼宮さんに記憶があったと仮定した場合、 果たして彼女はあなたと出会ってどういう反応をとると思いますか?彼女の立場になってみて考えてください。」 「記憶があったらだと?そりゃ…まずは喜ぶだろうな。 んで今までどうしてたとか、今何やってるのかとか…互いに質問攻めに遭うんだろう。」 「そうですね。それが常人のリアクションというものでしょう。 しかし…そんな彼女に涼宮さん自身は気付いていないわけです。」 不意に、その言い回しが気になった。 「え…?まさかハルヒの中に過去の自分と今、2つの人格があるってのか??」 「いえいえ、言葉通りの意味で受け取らないでください。今のはあくまで比喩、そういうふうに2人の人物に 分けて考えたほうが理解しやすいと思ったからです。かえってあなたを混乱させてしまったようですね、 すみません。それで話の続きですが…その過去の自分は、即ち傍観することしかできないんですよ。 自らの意志で動くことはできないんです。その場合あなたならどうします?」 「どうします?って…何もできないんじゃどうもこうもねーよ。昔の思い出に馳せるくらいしか」 「ご名答、正解です。さすがですね。」 いや、普通に答えただけで『さすが』って一体どういうことなのかと…それ以前に『正解』の意味もわからん。 「あなた同様、過去の涼宮さんもおそらくは昔を懐かしんだはずです。 懐かしんだ、この時点である意味願望とはいえませんか?」 「…懐かしんだところで何か起きるのか?過去にタイムスリップできるわけでもねえし、 何よりハルヒ本人が気付かんのだから、俺と以前のような関係に戻ることも不可能だ。」 そうだ。ましてやそんな状況でどうして佐々木を… …待てよ?ようやくだが、関連性が見えてきたかもしれない。ここまでくるのに随分かかったな…。 仮にだが、過去の俺たちの立ち位置を…無理やりにでも現在へと投射したらどうなる? あの世界の俺とハルヒは…とりあえず、【仲が良かった】のは事実だろう。そして、そのハルヒは 過去の記憶は失ってる。当人がその立ち位置に入れない…だからこそ、その代わりとなる人物に。 時間遡行してハルヒと出会った時点において…つまり、中学時代の俺が最も【仲が良かった】異性、 そんな彼女に偶発的にも影響を及ぼしてしまったのかもしれない。立ち位置を重視するのであれば、 後は佐々木が神の代行者たる機能を具えていれば完璧だ。俺は昔も今も一般人だから 何も影響が出なかったんだろうが…。 「古泉、お前の言いたかったことはわかったよ。ただ、この推論はちょっと苦しくないか? 仮定に仮定を重ねたようで、少し強引なような気がするんだが。」 「だから言ったではないですか。これは憶測だと。」 開き直ったぞこいつ!?いや、確かにお前はそう言ってたが… これではまるで予防線を張っていたみたいで気分が悪い。 「不完全なフォトンベルト…その生成の過程を見ても、この説はそれなりに良い線いってたとは思うのですけどね。 佐々木さんの能力が涼宮さんのように完成されていないのも、それで説明がつきます。」 「……」 それについては、俺は古泉とは違う見解だった。そりゃ、佐々木の能力が不完全なものだってのは知ってるさ。 橘京子や佐々木本人から散々説明くらったからな。その理由についてだが…俺は知ってんだ。 あいつが…ハルヒが第三世界終焉時、どれだけ自分の境遇、そしてその重圧に打ちのめされてきたのかを。 ならば、その代行者の証ともいえる能力を他の誰かに分け与えたりするだろうか?誰よりもその苦しみを 知ってるハルヒに、果たしてそんな真似ができるのだろうか?佐々木の能力が不完全なものとなったのは、 そんなハルヒの切実な思いが交錯した結果…少なくとも、俺はそうみてる。 「以上で僕の推論は終了なのですが…そんな僕の憶測も、一つだけ証明する手立てがあるのですよ。」 「?どういうことなんだ?」 「即ち、涼宮さんの能力が消滅したときです。それと同時に佐々木さんの能力も完全消滅するのであれば、 この説も、少しは信憑性を帯びるといったものです。」 …なるほど。ハルヒの力に誘発されての結果なのだとしたら、 確かに古泉の言う通り佐々木の能力は消えてしまうことであろう。 「さて、それで2つ目なんですが…」 「は?」 佐々木の話が終わったと思ったら、こいつはいきなり何を言い出すんだ?? これで奴の話は終わったんじゃないのか?さっきの佐々木云々はどうした?? あれは2つ目にはカウントされないのか??まさか、奴は簡単な算数さえできなくなってしまったか?? いや、それか、この歳にしてまさかの痴呆か??お前はそんな奴じゃなかったはずだぞ古泉… とまぁ、今、俺の頭の中は大量のクエスチョンマークで爆発炎上を繰り返していたのさ。 「すみません。さっきのは厳密に言えば憶測だったわけで、2つ目ではないんです。 すぐ終わる話だと思って軽く切り出したのですが…思ったより長くなってしまいました。」 なんて紛らわしい奴なんだ…と、いつもの俺なら怒りでワナワナ震えているんだろうが… 今日は佐々木の件に免じ、特別に許してやる。憶測には違いないが、可能性を示唆できただけでも… 一歩佐々木に近付けたような気がするからな。あいつのことは…大切な友達として、できる限り 知っておきたかった。何か有事が起こった際、何も知りませんでしたじゃ済まされないからな。 能力的にも立ち位置的にも、事件の当事者となりうる可能性は決して低くはないんだから尚更だ。 「で…だ。2つ目だったか?」 真剣な話の連続だったせいか、少々聞き疲れを起こしてしまってる自分がいる。 いかんな…こんな調子で、果たして奴の話をまともに聞けるのか?? 「実はその2つ目とは、あなたのことなんですが…」 一気に目が覚めてしまってる自分がいる。 「あなたって…俺か??俺が一体どうしたと??」 「涼宮さんがこの時代へと転生できたように…あなたも転生できた。それは自覚してますか?」 「…信じられないことではあるが、まあそうなんだろうよ。ハルヒが俺に見せた記憶を…俺は信じてるしな。」 「なら話は早いです。…高校入学時の涼宮さんの自己紹介…あなたは覚えてますか?」 「おいおい、いきなり話が変わりすぎじゃないか??なぜいきなりそんなことを??」 「そう思われるのも無理ありません。しかし、これでも一応話はつなげてるつもりですよ。」 うーむ…そこまで言われては仕方ない。こいつの示唆しようとしてることが いまいちわからんが…とりあえず思い出すとしようか。自己紹介、自己紹介… 確か… 『東中出身涼宮ハルヒ!ただの人間には興味ありません。 この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしの所に来なさい!以上!』 「今ので合ってるか?」 「よくそこまで鮮明に覚えていらっしゃいますね。感服します。」 「そりゃ、あそこまでインパクトある自己紹介はそうそう忘れたりはしないさ…って、お前俺のクラスじゃないのに 何で知ってんだ?いや、それ以前に、そんときはまだ俺の学校にはいなかったよな??」 たまに忘れがちになるが、こいつは一応転校生だった。 「簡単なことです。長門さんに聞いただけですよ。」 長門も同じく俺のクラスではないが…まあ、この長門にかかれば何でもありだ。 なんせ元はと言えばハルヒの監視役としてやってきたようなもんだったし… ならば、あの席での問題発言を傍聴していたとしても何らおかしくはないだろう。 「で、思い出したのはいいが、一体これが何だってんだ?」 「今の自己紹介…何かひっかかるような所はありませんか?」 何を言ってんだ…確かに常軌を逸した自己紹介なだけに 突っ込みどころは有り余るほどあるんだろうが……ひっかかるトコ? …… そういや…このハルヒの言葉は一連の流れとつながってるって、さっき古泉は言ってたよな。 一連の流れ…とは俺が二人に話してた【あの世界の記憶】のことだよな。いや、違う… 古泉はその後、転生の話題を出してきたじゃないか。転生… 『この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしの所に来なさい!』 結果として宇宙人である長門、未来人である朝比奈さん、そして超能力者である古泉がハルヒのもとに集った。 しかし、一つだけ欠けていた…まあ、前々からこれについては疑問に思ってはいたのだが。 異世界人 願望を実現させるハルヒの能力を考えたとき、なぜ異世界人だけハルヒの目の前に 現れなかったのか…それが不思議でならなかった。まあ、特に憂慮すべき問題ってわけでもなかったから 俺自身深く考えようともしなかったが。 そして異世界人たる人物がいないまま今日まで時を迎えてしまったわけだが… …… もし異世界人がSOS団に実はいたとしたら? それは誰だ? …… 転生… 「古泉よ、お前の言いたいことを当てていいか?違うのなら思いっきり笑いとばしてくれ」 「もう察しがついたのですか?さすがキョン君ですね。」 「…言うぞ」 …… 「俺は異世界人だったのか…?」 …… 俺はこれまで自分をごく平凡な人間だと思ってた。どこか変わったところはあったかもしれないが、 それでも自分は長門や古泉、朝比奈さんとは違うごくごく普通の人間だと思っていた。 この時代に生きうる普通の人間としてな。だが…もう、そうも言ってられないだろう。あの記憶を見た 今となってしまっては。俺という人間が…あのときの【俺】の生まれ変わりだとしたら。転生だとしたら。 俺は間接的ではあるが、別世界から来た人間ということになる。つまり、言葉通りの異世界人だ。 古泉は静かに口を開く。 「それがわかったとき、どんな気分でしたか?」 「別にどうもこうもねえさ。ああ、やっぱりな…って思っただけだ。」 どうやら、俺は古泉の言いたいことを当ててのけてやったらしい。 「いつからお気付きで?」 「さあな…微々たる気配とかでもOKなら、それは俺が朝倉に襲われたときだろうか。とはいっても、 それ自体は別にどうでもいいんだ。あの一件以来、俺はあのとんでも話を信じるようになった… マンションに呼び出されて聞かされた…そう、お前の話をな。」 俺は長門の方を見つめる。 「長門よ、涼宮ハルヒには願望を実現させる能力があるって…以前そう言ってたよな? 改めて、お前に確認しときたい。その能力ってのは…実は、この世界に限ったものだったんじゃないか?」 「…そう。」 まさかの当たりか。…なるほど、これで全てに合点がいった。 「となれば、この世界の住人ではないもの…即ち 異世界からの人間は、その影響下には入らないって認識でいいんだよな?」 「…そう。」 「わかった、ありがとな。今まで何か抱いていた…モヤモヤが消し飛んだぜ。」 …… 涼宮ハルヒという人間が願望実現という特異的な能力を有してる時点で、自身の意志でハルヒを どうこうできていた俺の存在そのものがそもそも規格外だったのだ。…まあ、おかしいとは思ってたんだが。 ただの凡人である俺が涼宮ハルヒに選ばれた人間だとか、涼宮ハルヒのカギだとか… 後、唯一ハルヒに意見や口出しできる人間が俺だったってのも…、今となっては納得できる。 俺がハルヒの能力を受け付けない、異世界人だったのだとしたらな。 …… 「おやおや、大丈夫ですか?どうか気落ちしないでください。」 なんと、今の俺は古泉から見て…どうやら気落ちしてるように見えたらしい。 「あなたが涼宮ハルヒの影響下に内包されなかったのは、決して【異世界人だから】という理由だけではない。」 長門が意味深なことを言ってきた。 「そうですよ、考えてもみてください。もしそれだけの理由であれば、極論かもしれませんが… あなたは涼宮さんの単なる他人という独立した存在でも全然問題なかったわけです。 そうである場合、決して涼宮さんのカギたる存在には成り得ません。」 「しかし、あなたは過去の世界で誓った。涼宮ハルヒと再び会うことを。」 そうだ…あの世界の俺はあんなにもハルヒに会いたがってたじゃねえか。ハルヒも同様に…。 「それも当然ですよ。なぜなら、あの世界のあなたが 涼宮さんに対して思っていたように、涼宮さんもまたあなたのことが…」 ? 「いえ、ここは言葉を濁しておくとしましょう。とにかく、あなたと涼宮さんの関係には 論理や理屈では説明できないこともある…どうか、そのことを忘れないでください。」 いつもの俺なら、古泉の言いかけた言葉などわからず仕舞いだったんだろうがな…。あの記憶の中の… 【俺】が遂げられなかった思いを克明に覚えている今の俺には…。容易く予測がつく。 …… なぜだろう?急にハルヒに会いたくなってきた自分がいる。 「…俺は」 「もう僕たちのことはほっといて、涼宮さんの所に行ってあげてはどうですか?あなたもそんな気分でしょう。」 俺が言はんとしてたことを先に言いやがった。洞察力が鋭いってレベルじゃねえぞ…。 「だがな…俺はまだ、お前らの要件を聞いちゃいねえわけで…。」 「そんなことはどうでもいい。今はあなた自身の思いに従うのが賢明。私はそう考える。」 長門… 「わかった。二人とも、どうもありがとな!行ってくる!」 俺は自転車をこぎ出した。 …… おっと、急がば回れと言うじゃないか。 俺は発進していた自転車を一旦ストップさせ、携帯電話を片手にメールを打ち始めた。 「さすがにいきなり来られても迷惑だろうからな…行くってのは一応前もってメールで知らせとかねえと…。」 よし、送信完了。じゃあ再びこぐとしよう。
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第二章 断絶 週のあけた月曜日。あたしは不機嫌オーラをばらまきながら登校した。 半径5メートル以内に人がいないのがわかる。 教室に入り、誰も座っていない前の席を睨む。 二年生になっても変わらないこの位置関係に怒りを覚えたのは初めてだ。 あいつを見ていなければいけないなんて。 幸いなことに今日は席替えがある。 入学してからずっと続いていた偶然が途切れることを祈った。 遅刻ギリギリにあいつが教室に入ってくる。 席に鞄をおろして声をかけてくる。 「土曜日はすまなかった」 無視。 「今度からはちゃんと行くからさ」 無視。 「……?おーい」 無視。 ため息をつくとキョンは前を向き、岡部が入って来た。 授業中はイライラしっぱなしでろくに話も聞いていなかったけど 学校の授業なんて余裕よ、余裕。 こんなのもわからないなんて本当にキョンはバカよね。 待ちに待った席替え。 あたしは窓際一番後ろ。 キョンは廊下側一番前。 教室はパニック寸前だった。 ……この程度のことで騒がないでよ。 キョンを谷口のバカと国木田が慰めている。キョンは憮然と、と言うか唖然としている。 キョンは鞄を持つと教室をでた。 掃除を終わらせ我がSOS団部室へ向かう。 扉を開けるとそこには古泉君と有希とみくるちゃんと…… キョンがいた。 あたしの我慢は限界に近づいている。 あたしたちに嘘ついてまでデートしてたやつがのうのうと 『あたしたち』といようとする。 「キョン」 「何だ?」 普段と全く変わらない様子についに切れた。 「なんでここにいるの」 「いちゃ悪いのか?」 「ここはSOS団の部室よ」 「それが?」 「あたしたちに嘘ついて、SOS団の用事を放って、デートしたやつに ここにいる資格はないわ」 怪訝な顔をするキョン。 「ちょっと、ま……」 もうこれ以上聞きたくない。 『『出てけ!』』 ”四重奏”とともに古泉君につかみあげられて廊下に引っ張られるキョン。 ほかの四人も我慢の限界だったみたい。 「おい、ちょっと待てって。話を……」 鈍い音がしてキョンが黙る。 やけにニコヤかな古泉君が部室に入って鍵を閉めた。 改めて部室内を見渡すとみんなの怒り具合がわかる。 古泉君はボードゲームを出してなかったし、 湯のみも有希と古泉君の分しか出てない。 「はい、みんな注目!邪魔者も出てったところで次回の不思議探索について ミーティングを行います」 ここでいったん間。 「今度の土曜日十時に街に集合よ。遅れたら、罰金だから!」 空気が一瞬重くなる。 「罰金=キョン」の方程式が成り立っているみたいだ。 「そうですね。そっちの方がいいでしょう」 古泉君がいつものように朗らかに同意する。 「はい、お茶です」 それから他愛もない談笑で時が過ぎ、有希が本を閉じてあたしたちは下校する。 そのときあたしは廊下にあるものを見つけた。 「ねえ、古泉君」 「何でしょう?」 笑って答えながら、古泉君もあたしと同じ場所を見ている。 「どのくらい強くあいつを殴ったの?」 転々と跡を残しているそれは……。 「見た通りだと思いますよ」 そう、それは血だった。 <幕間2> 朝、学校についてハルヒに土曜日のことについて謝ったが無視された。 悪いことしたな、とは思ったけどここまでひどい扱いを受けるとは。 そのことに少なからずへこんでいて、授業には全く身が入らん。 わかんねえ……、ってつぶやいたら後ろのハルヒに鼻で笑われたような気がする。 俺が何をしたってんだ。 席替えがあった。どうせハルヒの前だろうって思ってたんだが 何が起きたのか、一番遠いところに座るはめになった。 ……ざわざわしすぎだお前ら。 偶然だろ、席替えなんて。 国木田と谷口がどうやら慰めてくれてるらしいがそんなことは気にならなかった。 とりあえず部室に行ってほかのやつらに話でも聞こうか。 と思ったんだが、みんなの反応がなんか――というか、ものすごく――よそよそしい。 古泉はボードゲームを誘ってこないし、朝比奈さんは俺にお茶を入れてくれない。 長門に至っては怒りの視線をぶつけてくる。 ……はげるって。ストレスで。 しばらくして掃除当番だったハルヒが入って来た。 こっちを見てものすごく不快そうな顔をする。 そして訳の分からん難癖を付けてきやがった。 「ここはSOS団の部室よ」 ってそれくらい知ってるさ。なんで俺がいちゃいけないんだ? ……。 土曜日?デート? ああ、『あれ』か。『あれ』を見られてたのか。 そりゃ、事情を知らなきゃ怒るだろうな。 とりあえず説明しようと口を開いた俺を……。 古泉がつかんで廊下に投げ飛ばしていた。 長門にまで「出てけ」って言われたのは正直きつい。 もう一度説明しようとした俺を古泉が思いっきり殴る。 壁に頭をぶつけて意識が遠ざかる。 気づくと部室内では次の土曜日のことを話していた。 こうなったら最終手段かな。 痛む頭を抑えて俺は学校を後にした。 終章
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翌朝、俺はいつものように妹の強烈なボディーアタックを食らって目を覚ますという一部の人間にはうらやましがられそうな目覚めを演じた。しかしもちろん俺が自分をうらやむわけもなく、感慨もへったくれもないような目覚めでありよってまったく爽快な気分はしない。 爽快な気分がしないと言えば我が家の飼い猫シャミセンも完全にだらけモードで床に寝そべっている。夏の暑さにすっかり気怠くなったのだろう。 どうしてやろうかとシャミセンを見て思案する俺だったが、俺が起こしてやる前に妹によって抱きかかえられ、反抗の意思表示も軽く無視されて妹の『ごはんのうた(新バージョン)』とともに階下へと連行されていった。 朝起きたら世界が変わっていた――とかいう冗談みたいな事態になるのは絶対に避けたいものの、ならばそれをどう回避するかという問題であり、もしかすると俺は避けるよりも変わった世界を元に戻すほうが素質があるのではないかという結論に達するわけである。朝から何を言ってるんだ、俺は。 しかし、実を言うとそれは事実かもしれん。なにしろ十二月あたりに俺はそんなことを経験しているからな。 しかしまあ、そうそう世界も変わるもんじゃないだろうというのが俺の楽観的な考えである。この世界の神様だってそこまでこの世界に住んでいる人間(とりわけ俺)に理不尽な設定を押しつけるわけはないだろう、と。もっとも、あの時世界を変えたのは神様じゃなくて地球外生命体だったのだが。 朝食を食っている間、俺はそんなアホなことを考えていた。 一日の始まりというのは当然ながら自分の家にいるわけで、ということは学校の俺の後ろに誰が座っているのかは朝の時点では解らないのである。 無論、そこにいるのがカナダに転校したことになってるヤツだったらそれはもう悪夢以外の何者でもなく、今すぐ110通報してそいつを捕まえておくとか大量の保険に加入しておくとかしないとならないだろう。 ありがたいことに、あの日以来今のところそういうことにはなっていないが。 何と言っても俺が自分の教室に着いたとき、俺の後ろの席に我が団の団長が座っていてくれればそれほど安心できることもない。 そして、今日もそうだった。 谷口や国木田連中と一緒にひーこら言って坂を登り、二年五組の教室で不機嫌なオーラを放出して机に伏せているハルヒの姿を確認できたとき、俺はああ今日も無事らしいなということを悟った。 悟った、が。 俺はすぐに、今日が無事と言えるほど無事な状況ではないことを認識し直すはめになるのだった。 * 今日は特に暑かった。 昨日のように湿度を上げて嫌がらせ攻撃を仕掛けてくることはなかったが、今日は純粋に太陽光の威力が強い。誰かが太陽の表面にせっせとガソリンを注いでいるんじゃなかろうか。 「まーったく暑いわねっ!」 ハルヒの機嫌もさらに下方修正が施されているようだった。そのセリフも今日だけで三度目くらいである。朝のホームルーム前からこの状態では、午後には機関銃並の速度でグチをたれていることだろう。 「年々気温が上昇してるんだから、もっと早くから夏休みにすべきなのよ。いつまでも昔のまんまじゃ日本の社会は進歩していかないわ。これじゃあ予定が狂っちゃうわよ」 高校生の夏休みの長さに日本の社会を持ち出すのもどうかと思うが。 「その予定ってのは何だよ。俺はまだ聞かされてないぞ」 「夏休み前から文化祭映画の撮影をやるつもりだったの。去年みたいに秋に始めてると毎日すっごく忙しくなっちゃうからと思ってあたしなりに配慮したつもりだけど、でもこの暑さじゃ無理よ。外に出たら四秒で丸焼きになるわ」 むしろ好都合である。 「じゃあいっそのことやめちまおうぜ。この分だと文化祭までずっと酷暑だ。今年の文化祭は映画をやめてバンドだけで充分じゃねえか」 「ダメよ、そんなの。せっかくみくるちゃんで客寄せできるチャンスだもの。逃す手はないわ」 たとえ一年前に調子づいた拍子で言ったことでも、言ったことは必ずやり通すのが涼宮ハルヒ流である。早い話、メイワクだ。 そう、つまり今年も我がSOS団では去年に引き続き映画を撮ることになっているのである。 去年の映画のタイトルというのが『朝比奈ミクルの冒険 Episode 00』であって今年はその続編である。題名は確か、『長門ユキの逆襲Episode 00』だったっけ。作品名には長門の名前がクレジットされているものの内容は去年と同様に朝比奈さんのPVに相違なく、ハルヒは本気なのかもしれないがそこにストーリー性は皆無である。カメラマンの俺はまだいいが、高校三年生になってまでセクハラウェイトレスの扮装をさせられて幼稚園児のケンカよりもショボいと思われる戦闘シーンを演じなければならん朝比奈さんを思うと涙が出てくるね。 俺は二つ目の案を提示した。 「ならバンドのほうをやめようぜ。俺はギターなんか弾けないしボーカルなんてもっと無理だ。映画かバンドか、どっちかにしてくれ」 「ダメよ。去年は映画だけだったんだから今年は二つやるわ。来年はきっと三つやるわよ」 「来年のことはいい。しかし俺は本当に楽器なんて何もできないんだ。だからバンドはやめてくれ。あるいは、俺を除いた団員だけでやってろ」 この会話から解るとおり、呆れたことにSOS団は今度の文化祭で一般参加のバンドにまで出演する予定である。SOS団、というからにはその中には高確率で俺も入れられているのだろう。 映画のスクリーンならカメラマンである俺は映ってないからともかく、生のライブであるとうなら俺も否応なしに素顔を公表しなければならず、そうなったら最後校内だけでなく俺の近所にも俺がSOS団なる珍妙な団体に所属しているということが知れてしまう。それだけは阻止せねばならん。 しかしハルヒに意見を変えるつもりは蚊の針の先ほどもないようだった。この迷惑女は暑そうにセーラー服の胸元を手でパタつかせながら、 「何言ってるの。あんたにだってできるやつはゴマンとあるわよ。みくるちゃんと一緒にタンバリン叩いてたっていいけど、それよりもあんたには舞台の隅でカスタネットでも叩いてるほうがお似合いね」 嫌だね。なおさら嫌だ。 ――それは何の前触れもなく訪れた。 俺がどう反論の意を唱えようかと考えていると、ハルヒは次のように宣言したのだった。 「とにかく、あたしは一度言ったことをひっくり返すつもりはないわ。今年はバンドをやるし、映画も『朝比奈ミクルの初恋Episode 00』を上映させるからね!」 ハルヒは確かにそう言った。 お気づきだろうか。しごく当然のように言ってのけたため聞き流してしまいそうだったが、俺の耳及び危険レーダーはそれをしっかり察知していた。 一瞬聞き間違いかと思ったが、俺は自分の耳をそれなりに信用しているつもりである。 あれ? ハルヒは何と言った? 「こらキョン、せっかくあたしがカッコいいこと言ってるのに、あんたの今の顔はいつにも増してマヌケ面よ。写真に撮って収めておきたいくらいだわ」 いや、そんなことはいい。俺のマヌケ面写真を撮ってもせいぜい後世SOS団員の笑いのタネにさせられるだけだろう。それよりも、 「すまんハルヒ、もう一度映画のタイトルを言ってくれないか? ちょっと違ってたような気がしてな」 「『朝比奈ミクルの初恋Episode 00』よ。あんたまさか忘れたの?」 はあ? 『朝比奈ミクルの初恋Episode 00』だと? そんなもんは知らん。今年やるのは『長門ユキの逆襲Episode 00』だろうが。わざわざインチキな予告編まで作らされたんだから俺が間違えるはずはないぜ。それともハルヒが勝手に題名を変更したのか? 「はあ? って言いたいのはこっちのほうよ。『ナガトナントカのナントカ』なんて一度も聞いたことないわ。今年やるのは『朝比奈ミクルの初恋Episode 00』で、最初から変わってないわよ。予告編も作ったじゃない。寝ぼけてるようなら殴って起こしてあげるけど、どう?」 何を言うか、俺はしっかり起きている。 「起きてるわけないじゃないの。だいたいそのタイトル……何だっけ、もう一度言いなさい」 「『長門ユキの逆襲Episode 00』」 「それはどっから湧いて出たのよ。そもそもそのナガトユキとかいうのは何? 人の名前?」 ハルヒはしごく真面目な顔をしている。 おいおい、自分で考えた映画の題名を忘れたと思ったら今度は長門のことを忘れたとしらばっくれる気か。冗談なら冗談っぽく言わないと人には伝わらないぜ。だいたいそんな冗談はお前的に「笑えない」冗談に分類される気がするぞ。 「あたしは冗談を言った覚えなんかないわ。だってナガトユキなんて一度も聞いたことないもの。何、あんたの中学の時とかの同級生?」 そんなバカな。 「長門有希だ。知らないのか」 背中に若干冷たいものを感じる。まさかとは思うが……。 「知らない。あんたにそんな知り合いがいたの? どんな娘、そのナガトユキとかいう娘は。何か特殊能力があったりする?」 「うちゅ――」 う人とつなげようとして危うく思いとどまった。 「SOS団のメンバーだろうが。そして、たった一人の文芸部員だ」 一番最初に長門から受けた無機質な視線や機械的に動く指を俺は一生忘れない自信がある。そんなのは正体を知っていようがいまいがハルヒも同じはずだ。 さあハルヒ、俺の平常心をもてあそぶつもりで言った冗談ならそろそろやめにしてくれないか。そういう悪質な冗談は俺の過去の体験も手伝って見えざる第六感を刺激してくれるのでね。 しかしハルヒは心底呆れたような顔をしており、そしてとうとう、嫌な予感のしている俺にとどめを刺した。 「SOS団ってあんたねえ。本当にどうかしてるんじゃないの? SOS団は一年生の四月あたりからずっと四人だけでしょ」 俺の頭を強烈なショックがぶっ叩いた。 ありえん。 ハルヒ、俺、長門、朝比奈さん、古泉。どう考えたって五人だ。これが冗談だというならそれは長門に失礼だぜ。もし本気で言ってるなら、ハルヒの頭か世界が狂ったんだ。 「バンドは」 俺の出した声は心なしかかすれていた。 「去年、文化祭のENOZのバンドでギターをやってたのは誰だ」 「三年生の人、中西さんとか言ったかしら」 そんははずはない。 「映画はどうだ。去年、俺らが文化祭でやった映画で朝比奈さんの敵を演じたのは誰だ。黒衣纏って棒を持ってた奴だ」 「谷口」 あっさりと答えやがる。くそ谷口め。お前は脇役の脇役で水中ダイブでもしてればよかったんだ。お前に長門役を務められるほどの力量はないぞ。 などと言っていても仕方ない。 冗談であるという可能性を俺が信用できないのはハルヒの顔を見れば解る。こいつは友人が覚醒剤中毒者だったと知らされたばかりのような呆気にとられた顔をしてやがる。こんな顔は見たこともない。 「ハルヒ、お前は本当に長門を知らないのか?」 「知らないわよ、うるさいわね」 「お前、確か去年の三月にあった百人一首大会で二位だったよな」 「そうだけど、何の脈絡があるの?」 「脈絡なんかどうでもいい。それよりも、あの時一位になったのは誰だった?」 俺の記憶通りならそれは長門のはずである。読書好きのヒューマノイドインターフェース。 「さあ誰だったかしら。あたしの知ってる人じゃなかったわね。黒くて長い髪をした女子だったかしら」 長門はロングヘアではない。ハルヒは一時期髪の長かったときがあったが、長門は三年前に見たときも昨日見たときもショートカットだった。 「ねえ、あんたさっきから変だけど、どうかしたの?」 「どうもしてない」 俺は即答した。どうかしてるのはハルヒの頭か、それともこの世界か。 まさか――。 この感覚。ハルヒの病人を見るような目つき。当然いるはずの人間が突然いなくなった経験を、俺は過去にしている。 忘れもしない去年の十二月十八日。 目眩がして、世界がぐるぐる回転しているような感覚に襲われた。 あれをもう一度やらせようってんじゃねえだろうな。 断片断片が次々とフラッシュバックする。シャイな長門、髪の長いハルヒ、書道部の朝比奈さん、学生服を着た古泉。 「おいハルヒ、もう一度訊くが、お前は冗談を言っているのか? 言っているんだったらすぐにやめてくれ。土下座までならしてやる」 「もう一度言うわ。言ってない。あんた本当に頭がどうかしちゃったんでしょ」 ガラガラ。 教室の扉が開く音がして、俺は反射的にそちらを向いた。教室にいた男子が廊下に出ていっただけだった。間違ってもお前だけは出てくるなよ、殺人鬼朝倉。 俺はハルヒに向き直り、 「お前、光陽園学院にいたことはないか? というか、あそこは女子校だよな」 「そう、女子校。あんたが狂ってるものとして真面目に答えてあげるけど、あたしはあんな学校には一度もいたことがないわ。一年の最初からずっと北高生よ」 世界がおかしくなってるんだとしても、冬とまったく同じではないらしい。 「すまん。もう一つだけ訊いていいか?」 「いいけど」 「お前は一年の最初の自己紹介でこう言わなかったか? 『ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい』とな。そしてお前は俺と一緒にSOS団を設立した。合ってるか?」 ハルヒはやや複雑そうな顔をして俺を見ていたが、やがて答えた。 「ええ、 その通りよ」 * ホームルームが始まるまで、あと少ししか時間がない。 運のいいことに俺は今日普段よりも三分ほど早く学校に到着していた。それは妹の攻撃がいつにも増して強力だったからということに尽きるわけだが、そんなことはどうでもいい。 「ちょっと外に行って来る」 ハルヒにそう言って、俺は教室を飛び出した。 ハルヒは長門の存在を知らなかった。さまざまな出来事のうち長門の部分が消されて他の何かに書き換えられている。ハルヒがおかしいのか世界が変わっちまったのか。 瞬間、俺はまたしても強烈な目眩を覚えた。 デジャヴ。 三半規管がイカれたみたいに足許がぐらついてくる。 俺はこんな気持ちで、こんなふうに廊下を走ったことがあるのだ。ハルヒに引きずられて走らされたことならいくらでもあるが、自ら全力疾走なんてのはあの時と今くらいなもんだ。 そうだ。 あの時も、俺は朝倉から逃げて教室を飛び出した。そして長門はクラスにはおらず、古泉のいるはずの九組は吹き飛んでいた。 そして今、俺はまるで同じ道を辿っているではないか。 冗談じゃない。二度も同じことをやってたまるか。 長門のクラスにはすぐ着いた。朝のホームルーム前ということもあってクラスの中は雑然としており、この人混みの中で長門の小柄な姿を探すのは難しかった。目を皿にして教室のはじからはじまで走らせるが、長門らしき女子は見つからない。 「ふざけやがって」 俺は仕方なくクラスの中に足を踏み入れた。中学の級友とかで知っている顔を探しては次々と質問をぶつけていく。 長門有希という女子を知っているか。このクラスにはいないのか。この学年にはいないのか。 まるで申し合わせたかのような完璧さ。俺が声をかけた連中はそろいも揃ってトボけた顔をしやがり、当然のようにかぶりを振った。 つまり、そんな奴は知らない、と。 なんてこった……。長門を知らないのはハルヒだけではなかったのだ。 もう偶然などという言葉では片づけようがない。冗談説も通用しない。こいつらは集団で頭が爽やかなことになってるのか、まさかとは思うが世界改変があったのか。 俺はワケの解らんだろう愚問に答えてくれた連中に意識外で礼を述べると、くるりと回れ右をして絶望感を背負って廊下に出た。 何かが起こっているのだ。 ハルヒの次は長門が消える番ってか? ふざけんな。 俺は思い出す。この次、俺はいったいどこに向かったんだ。十二月十八日、長門がいないことを知った俺は誰に希望を託した? 言うまでもない、一年九組である。古泉のハンサム面がいるはずの理数クラス。そしてあの時、一年九組はなくなっていた――。 それを二年バージョンで起こす気か。大事な時だけ消えるってのはなしだぞ、古泉。 同時に朝比奈さんの顔も思い浮かんだが、いかんせん三年の教室は遠い。同学年であったのならどちらを選ぶかは微妙だが、それは今の問題ではない。 トラウマに押しつぶされそうになりながらも俺はフラフラの状態で二年八組に到着した。 その横には見間違いようもなくしっかりと教室があって二年九組というプレートが張り付けられている。突貫工事も今回は間に合わなかったらしいな。 俺は頭の隅で聞いたことがあるようなないような怪しい呪文を唱えながら、ホームルーム中なのも構わずに扉を開けた。 「どうしました?」 担任女性教師の声をバックに、教室内の全員がギョッと俺のほうを振り向く。 「古泉は、古泉一樹はいますか?」 「ああ」 くそ! 俺が見たところこの中には古泉の顔はない。そうでなくても、俺が尋常ではない表情を顔に張り付けて他教室に侵入すれば古泉は立ち上がって俺のところに来てくれるに違いない。 今度こそぶっ倒れるしかないかと思ったが、女性教師は何やら書類にさっと目を通すと俺に向かって、 「今日は休みですね。風邪だそうです」 そう言った。 九組の生徒も特に不審がった様子は見せない。クラスメイトが風邪を引いて休んだと聞かされたときのいたって普通の反応であり、そんな奴はうちのクラスにはいないという感じの反応を示している奴は一人もいない。加えて、俺の立っている入り口あたりの机が一つ空いていた。 「それで、彼に何か用だったんですか?」 「いや……別に」 俺は適当に返事をし、その空いていた椅子に古泉一樹と印字されているのを強烈に脳に複写してから九組を出た。 廊下の壁にもたれかかって、詰まっていた何かを吐き出すように深く息を吐いた。そうすると体中から力が抜けて、壁にもたれかかったままずるずると床に崩れ落ちた。 古泉はいるのだ。 確証はない。しかし、その可能性は高い。そうでなければあいつの椅子や机なんかが九組にあるわけがないのだ。 何ともいえない感情がこみ上げてきた。嬉しい、というやつだろうかね。 欠席というのが気にはかかるが、俺からすればそれも考え得る範囲である。 たぶん、あの教師が言ったような風邪というのはまずありえん。それはおそらく欠席理由にするだけの、表向きの理由だ。この非常時にマジで風邪でも引いていようものなら俺がすぐさまベッドから引きずり出してやる。 そうではなくて、古泉が欠席している理由は『機関』関連ではないかと思うのだ。長門が消えたのはほぼ確実であり何かが起こっているというのは間違いないから、その処理か何かに追われているのだろう。 気を利かして俺に電話一本もくれないような状態ってのはどんなもんかと思うが、俺は橘京子や周防九曜、敵対未来人を知っている。もしかするとあっちで大きな動きがあったのかもしれん。それがこの長門が消えているらしいという事態に直結している可能性は大いにある。 古泉の携帯電話にかけてやろうかと思ったが、ポケットにつっこんだ俺の手は虚しく布の感触に突き当たるだけだった。ちっ。教室の通学鞄の中だ。 仕方なく俺は立ち上がった。 しかし、いったい何が起こっているんだ。考えたところで解らないだろうが、考えずにはいられん。 長門がいなかった。そして誰も長門のことを知らない。知っているのは俺だけ。 シチュエーション的には冬の世界改変にそっくりである。しかしあの時、消えたと思っていたハルヒは光陽園学院にいたし、東中出身の谷口はハルヒのことを知っていた。 あいにく俺は長門の出身中学など知る由もないが、ということは今回もそういう感じの世界改変なのか。あいつも光陽園学院にいるとか、そういうオチなのか。 それとも本気でこの世界から消えちまったのか――。 長門のクラスを横切るとき、俺は廊下の窓からふと教室内を見渡してみた。 ホームルーム中で静まっているので確認しやすかったため、長門の机や椅子がないのはすぐに解った。古泉のように席が空いているということもなかった。 全員出席なのに長門はいない。 そして、恐ろしいことに誰もその矛盾に気づいていない。長門なんて女子は最初からいなかったかのように普通に振る舞っているのだ。 当然である。 最初からいなければ誰の記憶にも残らないし、いない奴の机や椅子があるわけがない。そういう理屈だ。 俺は目を背け、早足で二年五組へ戻った。
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涼宮ハルヒの入学 version H 涼宮ハルヒの入学 version K
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涼宮ハルヒのVOC 第二話 ハルヒが「初音ミク」と言うソフトをお披露目した次の日。 俺はいつもどおり妹のボディプレスを食らい、学校で睡眠学習し、そのたびハルヒのケシカス迫撃砲を受け、そして昼の時間がやってきた。 いつものメンバーで食事をする。 「だからなぁ!!俺は二次元のよさに目覚めたんだよ!」こんな馬鹿馬鹿しいことを大声で演説しているのはご存知、谷口である。 「お前らも一回、騙されたと思ってニコ動見てみろって!!三次元に萌えが見出せなくなるぜ!」 高らかに続けたが「遠慮しとくよ。」「遠慮しとこう。」 国木田と俺の満場一致で谷口の案は却下された。 谷口は残念そうに「なんだよ~初音ミクとか最高だぜ!?な?一回見てみろって!」 ・・・・・・今なんと言った? 「・・・ぁあ!? 初音ミクだよ初音ミク!知らんのか?有名なVOCだぞ?」 ああ、知っている・・・・・・などとは言わない。 なぜなら、面倒なことになるからだ。その後も、谷口の適当な萌え話に適当な相槌を打ち、昼が終了した。 ふむ・・・歌ってくれるといっていたな… 俺はその初音ミクとやらがどのような声をしているのか、などと考えているうちに、午後の授業も終了し、団活の時間が始まった。 ハルヒは掃除当番らしく元気な声で「先に行っててっ!」といい、部室とは逆方向に走っていった。 さて、部室前だ。 コンコン とちゃんとノックをしてから入る。 ほぉーら。あの声が、今、俺の耳にはいt・・・ 「どうぞ、入ってください。」 字じゃ分からんかもしれないが、聞こえてきたのはハンサムGUYの声だった。 少々不機嫌な顔でドアを開ける。 やはり、中にいたのは古泉と長門だった。 「朝比奈さんは掃除当番で遅れるそうです。連絡がありました。」 ああ・・・朝比奈さん…なんでこんな奴に連絡を… ますます不機嫌になったのでボードゲームを準備して待っていた古泉を無視してパソコンを起動させる。いつもより立ち上がるのが遅い。 「ギ…ン ォ…ン」 ん?変な音がきこえる?…いや、気のせいか。 「どうやら機嫌を損ねてしまったようですね。」 アーアー! キコエナーイ!! 古泉は肩をすくめ、詰め将棋をしだした。 俺はと言うと静かに本を読んでいる長門の死角にディスプレイを移し(まぁ無駄だろうけど)隠しフォルダを表示させた。 今日お眼にかかることのできなかったmyエンジェルを拝むためさ!! さて……と!? 俺は驚愕した!! 隠したはずの場所にmikuruフォルダがない! まさか!!ハルヒに見つかって消去されたのか!? 「古泉!!」俺はかなり錯乱しながら聞いた。 「何でしょうか?」「最近閉鎖空間はでたか!?」 たのむ!!俺は半ば祈るような気持ちで聞いた。 「どうしたんですか?・・いえ、特に観測されてませんが?」 安心した。「そうか…ならいいんだ。」 それなら誰が・・・? 俺はひらめいた。効果音が出るくらいに。 きっと昨日の初音ミクの準備工程中に間違って消えてしまったに違いない。 そうであったと信じたい。 「おまたーーー!」「お待たせしました。」 朝比奈さんとハルヒの二人がやってきた。 朝比奈さんは「お茶いれますね~」といい、せっせとお湯を沸かし始めた。 ハルヒは俺の前までズカズカと歩き、 「ちょっとキョン!!何パソコン開いていやらしい顔してんのよ!さてはエロサイトね~~?」 断じてそんなことはない!! だがハルヒは案の定俺の話なんぞ聞いてくれるわけがなく 「罰として次の不思議探索はキョンのオゴリッ!覚悟しときなさいよ~~!!」 またか・・・コラ古泉!笑ってんじゃねぇ! 「フフフ…すみません…」 「もう怒った!今日は全勝してやるからな!」といって古泉の向かいの席に移る。 「望むところです」 ハルヒはイヤホンを耳につけパソコンをいじり、朝比奈さんはお茶を作り、長門は読書、そして俺たちはボードゲーム。これもいくつかパターンのある日常のひとつだ。 やっぱり古泉は弱かった。 飛車や角を俺の歩の前において得意げに「どうぞ?」なんていってやがる。まだまだだな。 もうそろそろ団活も終わるかな、という時刻になって、 「できたぁ!!」ハルヒが耳からイヤホンを撒き散らし叫んだ。 「何ができたんだ?」 「聞いて驚きなさい!」ハルヒはパソコンのスピーカーをこっちに向けた。 するとハルヒが文化祭で歌った曲のイントロが流れ出した。 軽音部からコピーしてもらったのか?と思ったが、 「「~~~~♪~~♪」」 聞こえてきたのはまったく別人の声だった。 俺はハルヒに質問してみた。「誰が歌ってくれたんだ?」 「ふっふっふ・・・この!!ミーちゃんよ!!」 ???誰だミーちゃんて? 「初音ミクちゃんよ!! ミクだからミーちゃん!!」 短絡的なネーミングだなぁ・・・だが声は悪くない。とても透き通っている。機械ってこんな事もできるんだな。 「いい声してるな」と言ってみる。 するとハルヒは「当たり前よ!!何せあたしが選んだ初音ミクなんだから!!」 「「・・・アリガトウ」」 ん?誰だ? 「誰かなんか言ったか?」 「言ってないわよ!あんたエロサイトの見過ぎで頭おかしくなったんじゃないの?」と、ハルヒ。それは言いすぎだろ。 「何も聞こえませんでしたが?」と古泉 「なにも。」と長門。お前久しぶりにしゃべったな。 「聞こえませんでしたけどぉ?」これは朝比奈さんだ。 ・・・空耳か 「下らないことに時間つかわないの!じゃあ今日はもう解散!!」 空耳・・・だよな。 俺は家のベッドで自分に言い聞かせて無理矢理納得した。 深夜。部室にて。 「プツン!ジーッ!・・・ゼンショウ全勝・・・ヘイサクウカンヘイサクウカン閉鎖空間・・・スミマセン・・・・オゴル コエ・・声・・・アリガトウ・・・アリガトウ・・・アリガトウアリガトウアリガ!プツン!」 「ギョ ぉ゛ ン゛」
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(これでも三訂版) ・サイレントヒルとのクロスオーバー。グロ描写注意。 「これ、返す」 「おう、やったのか」 有希がキョンに何かのゲームソフトを渡すのが見えた。有希もゲームをするのね、ちょっと意外。どんなのかしら。 「それ、何?」 「ああ、零だよ」 キョンがソフトをこちらに見せた。いかにもなパッケージをしているところからするとホラーゲームみたい。あたしが好きなジャンルではないみたい。 「お前はこういうのが好きじゃないみたいだな」 キョンがそう言ったのでびっくりした。 「な、なんで分かったのよ」 「期待して損した、みたいな表情をしてたからな」 そんな表情してたのかしら……。こいつ時々鋭いから困ったものだわ。 「で、有希、それをやってみてどうだった?」 「人間の想像力は……恐ろしい」 いつもより小さな声でそういうと俯いてしまった。 「どうしたのよ有希。まさか、怖かったの?」 「違う」 即答だった。必死さを感じたのは気のせいかしら。 「そんなことはない。決してトイレに行くことが出来なくなったり、布団に潜ったまま翌朝まで身動き出来なくなった訳ではない」 有希……全部言ってどうするの……。 「貸しておいて何だが……スマン」 「いい」 やがて古泉君やみくるちゃんがやってきた。古泉君がそのソフトの箱を見るなり言った。 「まさか貴方がそのような分野のを持っているとは思いませんでした」 「興味本位でな。あの怖いCMがちょっときになってな」 すぐにどんなのか判ったってことは古泉君もやったことあるのかしら。ちょっと内容が気になるけど……怖いのよね。 「そんなの怖くてできないです……」 そう呟いたみくるちゃんに同意せざるを得ないわ。 「キョンってどんなジャンルのゲームをするの? まさかそんなのしかないとか言わないでしょうね」 「さすがにそれはねーよ。妹もいるんだしな、パーティゲームとか大衆向けのももそれなりにあるぞ」 「ふーん、じゃあ週末はキョンの家でゲーム大会ね」 「え、ん、まあいいが」 「じゃ決定ね。ということだからみんなよろしく!」 その後、有希は読者を再開していたし、古泉君はキョンとチェスを始め、みくるちゃんは紅茶を選んでいた。 あたしは特に何をするということもなく、適当に検索して開いたページ眺めてた。 さっきの零とかいうソフトについて調べないのかって? 冗談じゃないわ、あんなアブノーマルなのあたしには向いてないもの。 「あ、あれ……?」 気が付くと、あたしは真っ暗な駅のホームに立っていた。 何で? さっきまで部室にいた筈なのに。 慌てて辺りを見回すけれど、ホームどころか駅の周辺からも人の気配が全然しない。 「どうなってるのかしら」 ホ-ムを改めて見回してみる。見たくなかったけれど。 蛍光灯だけが照らしている構内は随分と汚くて、柱なんて赤錆でボロボロになっている。地面のコンクリートが赤いのもそのせいよ。 そのせいよね……。 ここはどこの駅なのかしら。全く見覚えがない。外に明かりはなく、この駅以外は永遠に続きそうな真っ暗闇しかない。 一体何が起こったのかさっぱり分からない。あたしは一歩も動けずに 「いやああああああああああああああああああああ!!!」 その突然の叫び声にあまりに驚いたあたしは、一瞬呼吸を忘れてしまった。 「何!? 何なの!? さっきの悲鳴は何なのよ!?」 パニック寸前のあたしは一刻も早くここから出ようと、改札口へ走った。自分の荒い息遣いと壁に反響した足音だけが聞こえる。 周りを見ている余裕なんてなかった。後で思うと、見なくて正解だったかもね。 恐怖からの逃避を図ったその先で、あたしは地獄を見た。心臓が縮み上がった。全身から血の気が引く音がした。 改札口の辺りは血痕だらけになっていた。床も壁も天井も……、一体何をすればこんなに飛び散るのだろう……。 そして改札機のそばには何かが 「……みくるちゃん!?」 どうして? どうしてこんなことになってるの!? 血まみれになって倒れているみくるちゃんはあたしの声に気付いてこっちを見た。 「みくるちゃん! 何があったの!? しっかりして!」 「涼宮さん…………逃げて下さい…………。この世界は…………もう…………」 「何言ってるの!? みくるちゃん! 」 「……じ………く…………」 「 !」 「………………………」 もうみくるちゃんが何を言ったか聞き取れなかったし、自分が何を言ったかさえ覚えていなかった。 「 !」 「」 「」 「」 「」 「 「 「 「おい、ハルヒ? ハルヒ?」 あたしは気付くと、机に突っ伏して寝ていたみたいだった。額は汗でびっしょりになっていた。 ゆ、夢? そうよね、あんなこと現実にはあり得ないもの…………。 「どんな夢を見てたんだ? 随分と苦しそうだったが、大丈夫か?」 キョンはまだ呼吸の整っていないあたしを心配しているみたい。 視線を移すと、心配そうにこちらを覗くみくるちゃんが見えた。ちゃんとメイド服を来てるし、勿論血なんてついてない。 あたしは立ち上がると、何か話しているキョンを無視してふらふらとした足取りでみくるちゃんに近付いた。みくるちゃんは少し驚いた表情をしていたけどね。そんなのどうだっていいわ、さっきのが夢だっていう証拠が欲しかったから。 「みくるちゃん、何も起こってない……よね……?」 「え? は、はい、いつも通りですよ」 あたしはみくるちゃんに抱きついて泣いていた。 「す、涼宮さん?」 「ちょっと……怖い夢を見ちゃったから……。うん、大丈夫よ……」 みくるちゃんは、優しくあたしを撫でてくれた。ちょっと恥ずかしかったから、悪夢を見たのをキョンのせいにして解散した。 家に帰ってからは、一晩中なんだか怖かった。それはもうキョンから借りたゲームの所為で動けなくなった有希といい勝負だったかもしれない。 けど、何も起こらなかったし、あの夢も見なかった。 でも、翌朝にそれは起こった。 あの悪夢はただの夢だったことにほっとして、何時ものように学校に向かっていたあたしは、突然目眩に襲われて倒れた。 気がつくと、ほほにアスファルトの感触がある。その場に倒れたままだった。 「ったく……誰も助けてくれないなんて薄情な……」 ここは一通りの多い通学路なのに、人の気配が一切なかった。 そして辺りは真っ白な霧で覆われていて、5メートル先も見えない状態だった。 「え? なに……これ……」 何より不安を誘うのが、全くと言っていいほどに音が無いことだった。 音がしないなんて雪が降った日みたいだけど、今は凄く不気味に感じる。 無響室に入れられた人は不安感を抱くとかいう実験について聞いたことがあるけど、今のあたしはそれに近い環境下におかれているのかもしれない。 ここは毎日通る道なのに、どう進めばいいか分からない。電柱とか、特徴がある家とか、そういった目印を探しつつ学校へ向かった。もう家を出てしまった以上、学校に行った方が安全だと思ったから。 そうして何とか進んでいた時、私は不意に足を止めた。 白い霧の中に、ぼんやりと影が見える。その形からして、路上に誰か倒れているようにしか見えなかった。 あの時のよく似た状況の記憶が頭を埋め尽くす。 嫌、見たくない…………。 それでも、あたしには前に進むしかなかった。 重い足取りでも、確実にそれに近づいていた。 やがて霧の中から見えてきたのは、血溜まりに倒れているキョンだった。 「……え…?」 今回は夢じゃない。体を流れる血が冷たく感じた。 「嘘……でしょ……?」 キョンを揺さぶっても、全然反応しない。手も首も、だらんと重力に負けたまま……。 「嘘って……、言ってよ……ねえ!」 あたしの両手が真っ赤になっていた。キョンはおびただしい量の血を流して、温かさを失っていた。 「どうすればいいの……!」 救急車を呼ぼうと思い立って、慌てて震える手で携帯を取り出した。 「……どうして?」 圏外という赤い二文字が画面に表示されていた。助けは来ない、あたしにも助けられない。 キョンは死んでしまった? これはみくるちゃんの時と同じ「夢」……よね……? でも、このべっとりとした嫌な感触や、鉄の臭いは…… ………… ………… あたしは狂ったように泣き叫んだ。声が裏返り、しわがれても構わずに叫び続けた。 「…………!」 あたしは泣くのをやめた。 足音が聞こえた。しかもそれが段々と近づいていた。 「だ、誰……誰なの!?」 あたしは虚空に向かって叫んだ。虚勢でも張っていないとおかしくなってしまいそうだった。 すると、返事が聞こえた。 「涼宮さん!?」 あの声は、古泉君! 良かった……。 霧の中から姿を現したのは間違いなく古泉君だった。 「涼宮さ…………」 古泉君はキョンの亡骸を見て言葉を失った。 「これは……」 「あたしが来た時には、もう……」 「朝比奈さんに続いてまさか彼が……」 その言葉にはっとした。 「みくるちゃんも!? どういうことなの?」 「朝比奈さんは、先日、駅の改札口で」 「何ですって!?」 古泉君の話していた内容は、あの時の夢と全く同じだった。 あたしは頭を抱えた。ひどく混乱していた。信じたくないことばかりがぐちゃぐちゃになって頭の中を掻きまわしていた。 どういうことなの? あれは夢じゃなかったの? 「このままでは、この世界は……終わってしまいます」 それは、みくるちゃんと同じ台詞だった。 『この世界は…………もう…………』 「古泉君、この世界って何なの? 何でみんな殺されたの? この世界はどうなっちゃうの!?」 あたしが古泉君に掴みかかっていたその時、後ろから声がした。 「あら、揃ったのね」 振り向いたけど霧しか見えない。 「誰よ!」 「あら、名前なんて言わなくても分かるでしょ?」 霧の中から、うっすらと影が見えてきた。 「彼を殺したのはあたしよ。話を面白くするには良い演出でしょ?」 笑っているような口調だった。 「ふざけるな!」 あたしはそいつに向かって怒鳴った。 「ふざけてはないったら。彼もあの子も必要な犠牲なんだから」 まさか、みくるちゃんもこいつが……。そう判断した瞬間、自分自身でも驚く程の激しい憎しみという感情を抱いていた。 「良いわねぇ……、良いわその表情……。あたしを殺したいの? 出来るかしら?」 あたしは呼吸が荒くなっているのが分かっていたけれど、それを抑えることはしなかった。 「悔しいのなら、学校で待ってるからいらっしゃい。面白いものを見せてあげるから」 そう言って、そいつは霧の中に消えた。 キョン…… そいつが消えた頃にあたしはようやく落ち着いた。古泉君が霧で真っ白の世界を見回しながら呟いた。 「僕自身も、裏世界にいるのは初めてなんですが……。この霧の世界……、まさにサイレントヒルですね」 「それって……あたし達はホラーゲームの世界に放り込まれたってこと? 冗談じゃないわ!」 本当に冗談じゃなかった。ホラーの世界が現実になったら……とてもじゃないけど、主人公みたいに生き残れる自信なんて……。 「しかし、このままでは何も進展しません。ここで敵の襲撃を受ければ助かる見込みはありません」 あたしは決意した。キョンの仇を取らなきゃ。 「……分かったわ、あたし達が主人公になってやろうじゃないの。主人公は不死身なんだからね」 あたしは別の世界の涼宮ハルヒだと説明すると、古泉君はあっさりと理解してくれた。 なんで不思議に思わないのだろう……。 古泉君によると、この世界のあたしは数日前に失踪してしまっている。それ以来、裏世界と呼ばれるおぞましい空間が発生し、そこで殺人事件が起こっているらしい。 その犠牲者はキョンやみくるちゃんを含めて20人を超え……。 そして、今いるのがその裏世界。惨劇の舞台に、あたし達はいる。 「つまり、狙われてるってこと?」 そう思いたくなかったけど、そう思わざるを得なかった。 あたし達はあの女のいる学校へ向かうことにした。 何かが襲ってこないか不安だったけども、静寂を破るようなことは起こらなかった。 どれくらいの時間が掛ったのだろう、霧の中を歩いて、ようやく学校に着いた。 でも、古泉君は入るのを躊躇っていた。 「どうしたの?」 「裏世界の詳細をご存知ですか?」 「どんな世界なの?」 「その世界の建物の内部はとても凄惨なことになっています。最もおぞましいと言われる程だそうです。覚悟をしないと、精神的に参ってしまいます」 あたしは頷いて学校へと入った。 覚悟はしていたつもりだった。 でも、古泉君が言っていた通り、入った瞬間に食道がケイレンを起こした。 「ぅ…………」 あの時の駅より酷い、酷過ぎる。 「大丈夫ですか?」 何もかもが赤錆と血飛沫でどす黒い赤色になっていた。血の臭いがする……。この学校のあらゆる場所で殺し合いがあったような状態だった。 「ええ。なんとかね……」 蛍光灯は全部割れていて、外の霧が唯一の明かりになっていた。 「かなりの邪念を感じますが……、とりあえず、進みましょう」 「ええ、そうするしかないわね……」 昇降口 まず、自分の上靴の場所を調べる。 履き替えるつもりなんて勿論無い。血でこんなに汚いんだから、土足でも構わないだろうし。 二度と触りたくないくらいに汚い上履き以外は、変わった物は入っていなかった。 「おや、これは心強いですね」 古泉君が見つけたのは、ショットガンだった。弾も幾つか見つけたみたいだった。 古泉君は、弾をポケットに入れると、その一つを装填して構えた。手慣れたように見えたのはどうしてだろう。 「頼れる武器があると、やはり落ち着きます」 こんな物騒なものを手にして落ち着くなんておかしいけど、今は命の危険に晒されているのだから、古泉君が正しいと思う。 「この世界がゲームと同じなら、武器はいろいろと見つかる筈ですね」 なるほど、だから学校にそんなものが置いてあるのね。 あたしも何か役に立ちそうなアイテムはないかと見回すと、傘立てに傘に混じって何かが立ててあった。 手に取ると、日本刀だった。鞘に紐がついていたので、それを腰に巻いて結んだ。 「いいものを見つけたみたいですね」 ショットガンを持った古泉君が言った。 「僕も近接武器が欲しいですね。ショットガンには弾に限りがありますから。銃身で殴るには少々重たいですし」 ズズッ…… その時何かの音がした。 「おやおや、歓迎でも来たようですね」 勿論そのままの意味でないことは知ってる。敵でしょ。 廊下で何かが動いていた。 それが這ってこちらに来ている。だんだんとその姿がはっきりと見えてきた。 ゾンビというのかは分からないけど、人の形をした血まみれの気持ち悪い生き物が近付いていた。 「涼宮さん、下がって下さい」 「いえ、その必要はないわ……」 あたしは刀を鞘から引き抜いて、銀色に輝く刃を見つめた。 決心したんだもの、あたしはキョンの仇を討つまでは……いえ、討っても死ねない! 「弾はもしもの時の為にとっときなさい!」 あたしは目の前の敵に向かって走った。 あたしの姿を認めるとそいつは何やら呻いていたけれど、そんなの気にせずに素早く背後に周りこんで、これでもかという位に斬りつけた。 背中から血を噴き出してもがいていたけど、蹴りを一発お見舞いしたら動かなくなった。 「す、凄いですね涼宮さん」 古泉君の視線で、あたしは大量の返り血を浴びていた事に気付いた。それを見たから、古泉君は少し驚いたのだろう。 「この調子ならノーダメージでいけそうね」 「では、行きましょうか」 1F 薄暗い廊下を歩いて行く。目的地は分からないけど、学校のどこかにアイツはいるから順番に回っていけばいつか見つかるだろうし。 古泉君が腕を組んで壁とにらめっこをしていた。 「これは……困りました。ここには手洗い場があったはずなんですが」 確かに、ここにはトイレがあった筈なのに、真っ赤で気味の悪い壁しかない。 「どういうこと……?」 「特に仕掛けもないようですし、配置が変えられていると考えるのが一番かと」 配置が変えられているだけじゃなかった。とても学校とは思えないくらいに廊下が入り組んでいた。 「なによこれ、迷子になっちゃいそう」 迷宮のような廊下を真っ直ぐ進んで行くと、机と椅子が山のように重なっていて行く手を阻んでいた。 「」 「これはどかしようがありません。仕方ありませんので、引き返しま……」 振り返った時に、あたし達は硬直した。 おぞましい生き物が天井からぶら下がってこちらを見ていた。 さっきのとは形が少し違う。天井から人間の上半身が生えているようだった。 あたしは思わず叫んだ。そして、 「よくも脅かしてくれたわね……!!」 冷静さを失っていた。 刀でこれでもかと言う程に斬りつけた。 「涼宮さん……落ち着いて下さい!」 古泉君があたしを止めた時には、その生き物は原形を止めない程になっていた。 説明してほしい? 簡単にいえば乱切りよ。それ以上は言いたくないから。 あたしは肩で息をしていた。なんでこんなにムキになっていたのだろう。 「冷静になることも必要ですよ。体力も消耗しますし」 古泉君は少し怯えた表情であたしを見ていた。自分の言動で逆上されることを恐れているようだった。 なんだか腫れ物に触るような扱いに感じて悲しくなった。 行き止まりから引き返す途中、あたしのクラスの教室を見つけた。 「何で気付かなかったのかしら」 ちょっと期待してたけど、中に入るとあたしの席もキョンの席も、やっぱり血がべっとりとついていた。 キョンの机の中から何かがはみ出ていた。出してみると箱があり、その中に拳銃と幾つかの弾倉が入っていた。 「何でわざわざ箱に入れてあるのかしら」 疑問に思いながらも拳銃をポケットにしまった。 「おや、これはこれは」 「どうしたの?」 古泉君が掃除用具入れから鉄パイプを見つけていた。 「手頃な武器が見つかりました」 感触を確かめるようにパイプを振っていた。 「ねぇ、おかしいと思わない?」 古泉君は表情を引き締めた。 「ええ、確かに招き入れた割に大した罠もなく、かつこれだけ武器が用意してあるというのは少々不自然です」 「だとすると、この世界にあたし達の味方がいるのかしら」 「そうとも考えられます。しかし過度の期待は禁物です。このように武器を提供するので精一杯なのかもしれませんから」 2F 階段を上ったところでいきなり現れた巨大化したゴキブリみたいな虫の大群に対し、古泉君の鉄パイプが早速活躍した。 古泉君が何とかしてくれていなかったら、あたしは卒倒してたかもしれない。想像してごらんなさい、でっかいゴキブリが顔めがけて飛んできてかじりつこうとしてくるのよ。生きた心地がしないわ。 虫の大群はいまや抜け殻の山となっていた。それを蹴散らして廊下を進み、部屋を確認していく。 「……あった!」 こんな所に部室があった。SOS団と書かれた紙に希望が膨らむ。 でも、扉をあけて中に入るとやはり酷い有り様だった。 「うわ……」 本が棚から崩れ落ちたままの状態で埃をかぶり、みくるちゃんの衣装までもが血で染まっていた。 だけどそんな中で唯一、パソコンだけが血を浴びずに綺麗なままだった。 それには二人ともほぼ同時に気付いた。 「古泉君、あのパソコン」 「何かヒントがありそうですね」 「やっぱり味方がいるって考えで正解みたい。よかった」 スイッチを押すと、黒い画面に文章が現れた。 『このメッセージは条件を満たすと表示されるものであり。そちらとの疎通は出来ない』 あらかじめ用意されたプログラムってことかしら。 『裏世界と呼ばれるその空間は現実から隔離されている別の世界』 これは古泉君から聞いたから知っている、でも、その後に表示された一文にあたし達は首をかしげた。 『しかし、神がその世界を支配すれば、その世界が現実となる』 ……つまり、この気持ち悪い世界が現実と入れ替わるってこと? 冗談じゃないわ。 それより、気になる単語があった。 「神とは何のことでしょうか……」 「少なくとも、良い神じゃなさそうね」 パソコンは神ついて詳細を述べることは無かった。でも、そいつにこの空間を支配されたらおしまいってのは分かった。 『クリーチャーは貴方達の憎悪や恐怖が実体化したもの。冷静さを保てば遭遇する頻度は下がると予測される』 つまり、あたしがもっと冷静になれば厄介な敵は現れなくなるってこと? 「ごめんね古泉君、こっからはもっと落ち着いて行動できるように気をつけるわ」 「いえいえ、謝らなくて結構ですよ」 *** 朝学校に来ると、ハルヒがいなかった。珍しく遅刻をしているようだ。 あくびをしながらその空席を見ながら座った時だった。 喜緑さんが教室にやって来た。そして真っすぐに俺のところに歩いてくる。喜緑さんが俺に用があるということは何かでっかい事件があったということだろうか。 「涼宮さんが登校途中で倒れて病院に運ばれました。これは緊急事態です」 いきなりのことに、俺は仰天した。 「なんだって……?」 俺は机上に置いたばかりのカバンを再び持つと、喜緑さんと一緒に教室を出た。授業? サボりというやつだな。 外で朝比奈さんが待っていた。 「キョン君……涼宮さんが……」 「喜緑さんから聞きました。早く病院に行きましょう」 「こちらに来てください」 喜緑さんに手招きされて近づいた瞬間、世界が一変した。 「へ?」 「ん?」 いつの間にか病院の前に立っていた。空間移動をしたらしい。 って古泉はいないが置いて来たとかそういうことはないですよね。 「既に病室にいます。詳しい話は皆さんが揃ってからに」 病室に入ると、ベッドでハルヒが眠っていた。その傍で古泉が待っていた。 「待ってましたよ」 「ハルヒは一体どうしたんだ」 「目撃者の話では、歩いていて突然全身の力が抜けたように倒れたそうです。その原因は……」 「それは私が説明します」 喜緑さんが割って入った。そんなに難しく深刻な話なのだろうか。心配になってきた。 「現在、涼宮さんの精神は抜き取られて別の世界に閉じ込められているようです」 別の世界って……。 「その空間に干渉しているところですが、情報改変が殆ど出来ていません。彼女にヒントや武器を与えることが精一杯です」 武器? どういうことだ、そんなに危険な世界なのか。 「簡単に言うと、サイレントヒルの裏世界、という表現が貴方がたには一番分かりやすいと思います」 「ぇぇっ?」 隣で朝比奈さんが俺以上に驚愕していた。朝比奈さんも知ってるんですか? 「はい、ホラーゲームの初期作の一つとして有名ですから……。でも、あんなゲームの世界に閉じ込められるなんて……」 そこで朝比奈さんがハッとした表情を見せた。 「もしかして昨日の……!」 「昨日ハルヒがうなされてた悪夢のことですか?」 「はい、それが何なの予兆だったのかもしれないです」 「そんなことがあったのですか。やはり狙われていたようですね」 喜緑さんの言う『狙われていた』というのはどういうことなのだろうか。 「閉じ込められている目的は何なのですか」 喜緑さんは古泉の質問に一切のタイムラグなく回答した。 「彼女を閉じ込めた相手はあくまで本気のようで、ゲームの様に楽しませる積もりは毛頭ないようです。相手の目的は、彼女を生け贄にして神を生み出し、その力で裏世界を現実と入れ替えることと推測されます」 生け贄……? おいおいまてよ。 それって、つまり……。 このままじゃハルヒが殺されるのか!? 「なんとかして助けられないんですか!?」 「何度も裏世界の改変を試みましたが成功していません。また相手の正体は不明で、神がどのような力を持つかも推測に過ぎません」 「そういえば、長門さんはどうしたんですか?」 朝比奈さんの一言で思い出した、長門がいない。なんでこんな時にいないんだ。 「長門さんは……隣の病室にいます」 なんだって? 「彼女は裏世界への侵入を試み、現在涼宮さんを捜索中です」 *** 涼宮ハルヒの精神が隔離された空間への侵入を試みたところ、突然「目眩」という症状を起こし、気付くと学校にいた。 しかしそれは全く似て非なるものであった。配置が著しく変えられた校舎内はどこも血痕だらけで、とても禍々しい光景だった。 ここに涼宮ハルヒがいる。 ……おかしい、統合思念体との連絡がとれないので現在の状況すら把握出来ず、おまけに情報操作が全く行えない。 有機生命体の五感を頼る他ないようだ。 前方に何かがいた。 *** 3F 階段を登り終えたときから古泉君の様子がおかしい。 さっきから落ち着きがないし、まるで風邪を引いたみたいに震えて呼吸も荒い。 「古泉君、大丈……」 思わず後ずさりしてしまった。 古泉君の腕が、ところどころカビのように黒くなっているのが見えた。 「こ、古泉君?」 もう、古泉君は古泉君ではなくなっていた。 「亜阿あああぁ唖あああああああああ!!」 古泉君は意味不明な言葉を叫ぶと持っていた鉄パイプであたしを殴りにかかった。 あたしはなんとか避けたけど、古泉君はまだあたしを狙っていた。 走って逃げたけど、向こうも走ってくる、逃げるのは無理みたい。 振りかぶった隙に鉄パイプを奪い取ることには成功したけど、古泉君は素手での攻撃を止めない。何度も何度も掴み掛ろうとする。 「ちょっと…………やめ……て……」 「ぁぁぁぁぁぁぁ………………あはははははは……!」 古泉君があたしの首を締めようとしてくる。あたしはポケットから拳銃を取り出した。古泉君を突き飛ばしてその隙に距離をおき、構えた。 「ごめんなさい!」 拳銃の弾は、古泉君の頭を貫いた。糸が切れた操り人形のように倒れ、もう動かなかった。 「古泉君……何で……?」 なんでさっきまで味方だったのに突然こうなったの? しばらくして落ち着きを取り戻してから、古泉君の服のポケットからショットガンの弾を取り出す。 その時、何かが光っているのが見えた。古泉君の首に紐に通された鍵がかかっていた。 鍵には「体育館」と書いてある小さな紙が貼ってあった。 *** 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 理解不能、私にはそのような「感情」など……。 では、どうして呼吸が乱れている? どうして過度に背後を警戒する? どうして前進を躊躇う? どうして? それらの自問に答える事が出来なかった。 幾度となく殲滅させた筈のクリーチャーが再び現れた。彼らは執拗に私を喰らおうとやってくる。 それに対して、箒を分解して金属製のパイプのみにしたものを応急的な武器としているが、簡単に折れてしまいもう箒の残りは少ない。持久戦になればこちらの劣勢は明らか。 早急に新たな戦法を練らなければならない、そう思った時だった。 机の上に、いつの間にか機関銃が置いてあるのが視界に入った。 それを手に取った瞬間、メッセージを受信した。 『私達に出来るのはこれ位だけど、これで思いっきりやっちゃいなさい!』 「朝倉涼子……」 統合思念体の干渉はこれが精一杯のようだ。しかし……、 「充分」 私はその機関銃を手にすると、向かってくるクリ―チャ―を飛び越えて走った。 この裏世界はゲームではない。 たとえチートと言われようと構わない。 あらゆる手段を尽くして、この世界を終わらせる。 *** しばらく目を閉じていた喜緑さんが目を開けた。 「裏世界の観測が可能になりました」 待ちに待った知らせだった。ここに来て数時間ずっと気になっていたことをぶつける。 「ハルヒは、長門はどうなってるんですか!?」 「現在は二人共に大丈夫のようです。しかし、裏世界ではキョンさん、古泉さん、朝比奈さんは死んでいます」 「なんだって……?」 「あくまでもあの空間は仮想のものであり、そっくりにコピーしたものです。しかし、世界が入れ替わった場合はそれが現実となり、その時にはあなた方は消えてしまいます」 俺達三人は固まってしまった。 十数秒たってから、その静寂を破るように、朝比奈さんが消えそうな声で言った。 「消えちゃうんですか……」 「……くぅっ……」 ハルヒがまた苦しそうな声をを漏らした。 自分に何もしてやれないことに腹が立つ。俺達はハルヒに触れることすら許されない。接触すると相手に何かされる懸念があると言う。 目の前で苦しそうに顔を歪めながら眠っているハルヒを見てやることしか出来ない。 頼む、頼むから、無事に目覚めてくれ……。 俺達には祈ることしか出来なかった。 *** 体育館 「やっと来たのね」 古泉君の持っていた鍵で扉をあけると、体育館で待っていたのは予想通りアイツだった。 ここも照明は機能してないけど、霧がわずかな明かりとなってアイツの顔を照らしていた。 ここに来るまでに、アイツの正体はなんとなく分かっていた。 アイツの声は聞いたことがなかった。何故なら、それが自分の声だったから。 「アンタがこの世界のあたしなの?」 「そう、だったら何?」 「何でこんな事をしたの」 「この世界は唯のコピー、いつかは消される運命にある。それが気に入らないの。だから神の力でこの世界と貴方の世界を入れ替えてこの世界を本物にするの。みんな、神を生み出すのに必要な犠牲だったのよ」 神……? 「紹介するね、これがこの世界の神よ」 暗くて気付かなかったけど、アイツの隣に巨大な化け物がいた。 あたしが想像する神は、宗教とかそんなの抜きでももっと綺麗なものだった。 けど、目の前に現れた神は、とても神とは呼べないものだった。 5メートルはあろう神だという生物は、人の形はしているがひどく痩せていて、やはり血まみれだった。 「神は絶対的な存在よ、全てを支配するの。だから、人間は神にはなれないの」 アイツが話を区切る度に静まり返る体育館。「神」がこちらを見ている。その視線を受けたあたしは一歩も動くことが出来なかった。 「この神はまだまだ未熟だから、憎悪という感情が足りないの、だから貴方が神に必要な生け贄に選ばれた。そんな貴方がちょっとでも強力になってもらう為にあの男を殺したの」 あたしの怒りを増すためだけにキョンを殺したなんて……。 でもあたしは何も言えなかった。それに対して怒れば相手の思うつぼだし、こんな魔物の生け贄に選ばれたことがショックだった。 「神に逆らうことは許さない。例えあたしでもね」 突然、「神」はアイツを手にとり、じっくりと舐めるように眺めていた。 「あら、神は貴方よりあたしを先に欲しいみたいね」 「な、何言ってるの? アンタも殺されるのよ」 「いいえ、光栄なことよ。神のヴィクティムになるのだから……」 神は我慢できなくなったのか、突然そいつをまるでスナック菓子のように喰らいついた。 アイツの身体が噛み切られて……。これ以上言わせないで。 「う……わ……………………」 あたしはとっさに目を瞑り、耳を押さえた。それでも骨の砕けるような嫌な音が響いていた。 しばらくして音がなくなった。 どうやら食事が終わったらしいので目を開けるた。「神」は血をぼたぼたと垂らしながらあたしを見ている。 次に喰われるのはあたし。 アイツへの復讐は出来なかった。でも、この「神」とやらをなんとかしないと、この世界は終わらない。あたしは、ショットガンを構えた。 「くたばりなさい!!」 引金を引いた瞬間、強い衝撃で肩に痛みが走った。 あたしのような体格では、反動の大きなショットガンは身体に負担がかかることは百も承知。 でも、これは遠距離からでもダメージを与えられる数少ない武器だから、それくらいは我慢。 肩の痛みを堪え、次々と弾をこめては頭を狙って撃ち続けた。 ダメージがあったのか、「神」は呻き声を上げている。 「やったかしら」 油断してしまった。次の瞬間、その長い腕でなぎ払ってきた。 避けようとすることすらできなかったあたしの身体は宙に浮き、十数メートル飛ばされて叩きつけられた。 何とかして立ち上がったけれど、全身が打撲で痛い。ショットガンもどこかに飛んでいってしまった。こんなに暗い中ではすぐには見つからないから諦めるしかない。 「いっ……たいじゃない………………!」 あたしはふらつきながらも再び「神」と向き合い、拳銃を撃ちながらショットガンを探した。 でも「神」は怯むことなく迫ってきて、またその腕に弾き飛ばされた。 「ぅう……」 床に叩きつけられたときに頭を強く打ってしまい、立ち上がることが出来なくなっていた。 拳銃も暗闇の中に消えてしまった。 近づいてくる「神」から逃げようと痛む四肢を必死に動かして床を這ったけど、すぐに追いつかれてしまった。 あたしはとうとう「神」の手で押さえ付けられてしまった。腰には日本刀があるけど、激しい痛みで手が動かなくなっていた。 血でべとべとの「神」の手に圧縮される気分は最悪だった。 苦しい、息が出来ない。こんな化物に食べられるなんて……。 「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」 叫んでもここには誰もいないから無駄なことは知ってる。けども、最後までこいつに抗っていたかった。 その時、「神」の荒い呼吸に混じって、誰かの足音が聞こえてきた。 「させない」 ……有希!? 銃声が絶え間なく響いていた。「神」はたまらず悲鳴を上げてのけぞり、あたしはなんとか手から解放されたた。 視界が開けて、音のする方向を見ると有希がマシンガンを撃ち続けているのが見えた。 何十発撃っただろう、「神」は遂に倒れた。それでも有希は「神」が完全に動かなくなるまで攻撃をやめなかった。 マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 窓から眩しい光が射している。霧が晴れて、青空が見えた。 外に出ると、校舎は相変わらずだったけど、空気はよどみがなく透き通っていた。 太陽が眩しい。あたしと有希は、その光に包まれていった。 *** 涼宮さんが目を覚ましたようです。 状況説明が困難な為、長門さんが隣の病室にいることは涼宮さんには内緒になっています。 「…………」 涼宮さんと同時に目覚めた長門さんは、ぼんやりと自分の手を見つめていました。 「どうしました?」 「大量のエラーが発生している。身体の制御すら上手く出来ない」 彼女の手は震えていました。 「もう大丈夫ですよ」 私はそっと彼女を抱き締めました。彼女は私に顔を埋めていました。おそらく、泣いていたのだと思います。あくまでも推測ですよ。 数分間そのままでいましたが、長門さんが離れました。 「エラーの削除が完了した」 「では、そろそろ涼宮さんの所へ行きましょう。貴方は涼宮さんにプリンを買いに行ったことになっています」 「……分かった」 「では、情報操作を始めますね」 その時、彼女が小さな声でありがとうと言いました。少し恥ずかしそうでしたね。 情報操作により、私以外は今回の事件についての記憶を失い、長門さんは涼宮さんの見舞いに来たことになりました。これは、トラウマと呼ばれる精神状態に陥らない為の救済措置です。 さあ、私はこの病院にはもう用はないので学校に戻りますね。 それでは失礼します。 inspired SILENT HILL 3 おまけ 長門有希がビビりプレーヤーだったら 痛い……? 寂しい……? 怖い……? 様々なエラーが発生し、私は歩みを止めた。 それらのエラーを言語化するならば……、 「帰りたい……」 いっつも助けてくれるパパ(統合思念体)との連絡がとれないから、一人でなんとかするしかない。 でも、この間キョン君に借りたゲームをしたばっかりだから怖さ倍増なの……。 どうしよう、有希泣きそうだよ……。 「こわいよパパ……」 あー来る、こういう所絶対何か来る。ドッキリ要素というものが絶対ある。 こういう時は……、歌を歌おう。 「ある~はれ~たひ~のこt」 ガッシャーン! 突然ドアを突き破ってクリーチャー登場。 「POOOOOOOOOOO! ふっざけんにゃよ! もーやだ! 無理! 終了! 終了!」 私は走りながら思い切り泣いた。いいもん、誰も見てないから……。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁんパパァァァァァァァァ~~!!」 MISSION FAILED... おまけ 2 あのEnd マシンガンの音が止む。そして、ガシャンという大きな音を立てて床に落とした。 そしてこっちに駆け寄って、あたしの身体を支えて立たせてくれた。 「涼宮ハルヒ」 「有希……、ありがと」 「いい、私も……一人で心細かった……」 あたしと有希は抱き合ったまま、静かに泣いた。 突然、窓から眩しい光が射した。 「なにあれ!?」 空中に浮かぶ複数の円盤、それは……、 ま さ に U F O 「有希! UFOよUFO! これは調査しなきゃSOS団の名が廃るわ! あたし達の活動を全世界に広められるチャンスよ!」 あたし達は外に出た。グラウンドに着地していたUFOは合計三機。中から出てきたのは、期待通りの宇宙人! 「ユ、ユニーク(タコさんウインナー……)」 「ねえあなたたち! どこから来たの?」 「 %*#\$@=-@!」 「な、何言ってるのかサッパリね……」 「意思疎通は困難と思われる(おいしそう……)」 「+ |\ ; *// #!」 宇宙人が取り出したのは、光線銃? ビビビビビビビビビ いきなり有希が撃たれて倒れた。有希は痺れて動けない様子だった。 「………………ユニー……ク…………(一口だけでもかじってみたかった……)」 「有希ー! 有希ー! ユニークとか言ってる場合じゃないわよ! アンタ達! 何するのよ!」 「 *#/(^^) $/-!」 すると今度はあたしに光線銃を向けた。 「な、何よ! やめなさ……いやあああああああああああああ!!」 そして動けなくなったあたし達はUFOに乗せられて…… ユニーク(笑)
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涼宮ハルヒの天啓 プロローグ 涼宮ハルヒの天啓 前編1 涼宮ハルヒの天啓 前編2 涼宮ハルヒの天啓 前編3 涼宮ハルヒの天啓 前編4 涼宮ハルヒの天啓 中編1 涼宮ハルヒの天啓 中編2 涼宮ハルヒの天啓 中編3 涼宮ハルヒの天啓 中編4 涼宮ハルヒの天啓 後編1 涼宮ハルヒの天啓 後編2 涼宮ハルヒの天啓 後編3 涼宮ハルヒの天啓 後編4 涼宮ハルヒの天啓 エピローグ1 涼宮ハルヒの天啓 エピローグ2 涼宮ハルヒの天啓 エピローグ3 涼宮ハルヒの天啓 エピローグ4(終) 涼宮ハルヒの天啓 番外編1 涼宮ハルヒの天啓 番外編2
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それは突然の事だった。授業が終わり、部室でハルヒが宣言したのだ。 「キョン、セックスしよ。」 今部室では幸い二人っきりだ。OKOK、落ち着け俺!今日は四月一日でもないよな。 「おい、お前いきなり何を言っているんだ?洒落にならんぞ。まったく俺だって健全な高校生なんだからな」 ハルヒは顔を俯いたまま床下を見ている。今なら説得出来そうだな、よし! 「もしかしたら、俺が本気でお前の事を犯すかもしれんぞ。さっきの言葉を本気にして…それで妊娠してお前の将来がめちゃめちゃになったらどうする?」 ハルヒは小さな言葉で呟いた。 「あたし…キョンとなら……い、いよ」 ん?小さく何を言っているのさっぱり分からん。こんなしおらしいハルヒを見るのは久しぶりだな。 だが・俺は少しハルヒに意地悪したくなったのだが、さてどうする?やっぱりこれしかないか 「おい、ハルヒよ。俺としたいのなら言うことを聞け!」 意外なことにハルヒはコクっと頭を動かし怯えた子猫の様にこちらを見る。 「とりあえずスカートを捲れ。」 ハルヒは俺の言う通りスカートを捲り上げる。驚いたね、いつもならこのエロキョーンと叫びながら殴り付けるのに もしやこれは今までの仕打ちを返すチャンスかもしれんな。それともどっきりカメラかも… だがハルヒはスカートを捲り上げたままこちらを凝視している。多分次の命令を待っているのか? 「次はブラウスとスカートを脱げ。机の上でM字開脚するんだ」 これは思った以上にとんでもない。既にハルヒは下着姿でそれもM字で股を開いている。パンツに少し染みがあるがもしかして興奮しているのか? あの唯我独尊の団長様が…見ているのも体の毒だ、触ってみたいのが健全な高校生なんだよハルヒくん 「ハルヒ、俺が今からお前の体触るからな。その時は声を出すなよ?出したら止めるからな」 「うん…分かったよキョン…我慢するね」 俺は、人差し指をハルヒの肩から文字を書くように滑らす。気が付いたのだが、なぞっているとあいつはビックと体を震わせている。 以外に敏感なんだなハルヒよ。本当なら大事な所等を攻めたいが少し焦らしてやる。その分楽しませてもらえるからな 耳に息を吹き掛けたり、甘咬みをしてみる。いつも朝比奈さんにやっている事だからな…お前も受けてみろよ 「う…っ…く…うぁ…」 強情に耐えているな。左手で股の隙間を擦ってみると息の上がりが激しくなっている。まだ秘部には到達していないのに、この調子で触ったら一体どうなるのか見当もつかない。 「ハルヒよ、今から耐えた御褒美をやるから声を上げてもいいぞ」 俺は直接ブラの隙間に手を突っ込んだ ハルヒのそれは朝比奈さんより若干劣るものの、掌に合わせたようにちょうどいい大きさだ。 少し進んだところで、指に突起が触れた。その瞬間、ハルヒは腰を跳ねた。こいつは本当に感度がいい。 「ちょっ、ちょっとまっ‥あぁっ!」 ハルヒのそれはみるみる肥大した。俺はそこを激しく責め立てる。 悶えているハルヒ。俺は顎に手を添えて強引に唇を奪う。 ちゅぱ…んん…じゅる唾液が交じり合う。お互いの舌を絡み合えをしながら歯茎等を攻める。 余っている右手をショーツの中に入れる。反応がまた変わってきた。指先で触れると、陰毛からクリトリスまですっかりベタベタしていた。 「ちゅぱ…きょきょん…もっとあたしを…ふぁぁぁ」 段々態勢がきつくなってハルヒを引き剥がそうとしたらあいつは泣きそうな顔をしてこっちを見ている。 やばい…ハルヒに初めて萌えてしまった。ここは口には出さないことにする。 「ハルヒ…これを見ろ。俺もお前で興奮している。だから、分かるよな?」 俺はズボンとパンツを降ろし外に出たジョン(息子俺命名)はビクッビクッとハルヒの方向に向いている 「キョンのおっきい…ふふふ」 いやらしい口から放たれるその言葉は俺にとって理性を壊すのに十分な威力だ。 「ハルヒ、俺のコレを静ませなければいけない。」 俺はハルヒの手をとり握らせる。初めて異性に触られる快感、細い指で上下に擦る。 「すごい、また大きくなったねキョン…」 くう…気持ちいい、いつの間にか立場が逆転していた。袋を口に含み尿道に絡めてくる細い指 思わず射精感が込み上げてくる。それを見透かしてハルヒは激しく擦り上げていく、カリが大きくなる。 「で、出る!ハルヒ離せ、顔にかかるぞ」 言った瞬間ハルヒは俺のジョンにしゃぶりついてきた。 ドピュッドピュッと俺はあいつに口内射精をしてしまった。普通なら離すのにあいつは離さず。 精液をおいしそうに飲み込む。ドロドロしていててこずっていたが、嬉しそうに100万ドルの夜景並の笑顔を振りまいていた。 嬉しそうなハルヒの笑顔…ふと思い出す。あいつは俺とのセックスが目的ではなかったのか? 実は俺のジョンも再充電している。これもハルヒが望んでいる事だろう。こうなったら話は早い 「ハルヒ…また、大きくなったのだが?責任とってくれるよな?」 「え?」 何驚いているんだよ。お前が望んだからこうなっているんじゃないか、まさかここまでしていて拒否はないだろう。 兜虫だって目の前にある蜂蜜等無視できないさ 「俺はハルヒが欲しい。一生大事にするから、抱かせてくれ」 そう言うとハルヒはニヤニヤしながら俺の顔を見つめながら話し掛ける 「ふふ、やっとあんた素直になったわね。いつまで待たせる気だったの?あたしはこうでもしないとあんたの本音が聞けなかったからね」 げっマジかよ。ハルヒにしてやられたみたいだな、しかし悔しくはない寧ろ良かったと思う。 「まあいいわキョンの好きにしなさい、初めてだから優しくするのよ?団長命令なんだからね」 ハルヒを再び抱き寄せいつもなら絶対言わない言葉をかける。 「ハルヒ…愛しているぞ…この世界で一番」 「グスッ…キョン…世界じゃなくて宇宙で一番と言いなさい。でも、ありがと…」 お互いの気持ちが重なっていく、心も肉体も。胸を揉みながら口付けを行なう。 ふと思ったことがある。それは、さっきハルヒにジョンを舐めてもらったからなお礼をしなければならん。 「お前のアソコ舐めていいか? 」 「汚いから舐めなくてもいいわよ。でもどうしてもと言うなら…あたしはいいわ」 俺は押し倒し股を開かせ初めて生で見る女性器。エロ本で見るよりも興奮した。 「まじまじ見ないでよ…恥ずかしいし、キョンは初めて見るの?もしかして佐々木さんと…」 「佐々木とは何でもない。俺はエロ本でしかないから安心しろ」 肉色はピンクに近いな。しかし昨日までハルヒとこんな関係になるとは思わなかったな。 陰芯に舌を突き出しスジを舐め回す 拡げながら舐め回すとハルヒの顔を見ながら反応楽しむ。 「あ、あん…そ、そこよキョン…うん…」 クリトリスの皮を剥き先端にピンポイント攻撃!俺は女の潮吹きを初めて食らう事になる。 「ああぁぁぁぁぁぁーっっ!いくぅぅぅーっっっ!!キョーン!!」 クンニに集中していたから避けられずに顔面に液体がおもいっきりかかってしまった。 「うわーちょっと待て!」 「ちょっとキョン大丈夫?ぷぷぷっあはははーゴメンね!あんたの顔最高」 かけた本人のくせに、まったく困ったものだ…笑った仕返しに顔を舐めてもらうか? いや止めておくか…逆なら恐ろしいことになるからな…やれやれ 「キョン?もしかして怒った?本当にゴメンね。だってすごく気持ち良かったの…」 「俺は別に怒ってないぜ。だだ少しショックだっただけだ。」 「キョン…あたし気持ち良かったの初めてだったから、許してくれるかな?それにまだアレも残っているし…」 ああそうだったぜもう少しで萎えそうだったが、どうやら俺の息子は親孝行らしい 再びキスをねだるハルヒのリクエストに答えしばらくすると俺の目を見つめ合図をする。もういいって事だな。 再び俺はハルヒを抱き寄せて正上位の体型にもっていく ハルヒの遥(陰部俺命名)を開き俺のジョンを挿入していく ハルヒの中は予想以上きつく暖かいぜ。言うならかずのこ天井ってやつかな?俺の息子への吸い付きが半端じゃない。 「キョン…が中に…くう…また大きくなるよう…」 入れたばかりなのに、射精感がまた込み上げてきそうだ。しかしハルヒは処女のはずだが… まさか既に非処女なのか?中学時代、色々な男と付き合っていたのは知っている… だがハルヒは初めてと言ったから間違いはないはずだ、俺は信じることにした 俺は少しづつストロークを上げる。そのたびにハルヒは喘ぐ。 「あん…あん…キョ…気持ちいい…もっと乱暴にしてもだ、大丈夫よ」 そうかい、ならスピードアップする。でもすぐに出そうなので体位を変える事にしたほうがいいな 「ハルヒよすまんが四つ馬になってくれ。後ろからやってみたい、いいだろう?」 ハルヒは顔を真っ赤にして少し睨みを入れて話し掛ける 「あ、あんた正気なの?後ろから?本当に初めてなの?この変態エロキョン」 後ろから突きまくる。俺は小さな葛藤と戦っていた。ハルヒを乱暴して支配したい心。もう一つは愛しくハルヒを大事にして優しくする心だ 性交しているのに冷静になれるのはなんでだろうね。まったく俺は少し変態かもな… 気付くのが遅いかもな!もう少し奥まで突いてみた。 ズズッ…クチュ…いやらしい音が部室にこだまする 「あん…キョーン!あんたのアレ…うん…子宮に当たるわ…凄い何これ」 やばい、あまりにもハルヒの中の締め付けが丁度ジョンとの相性が抜群なのだ 「キ、キョン…次はあたしがキョンを上から見たいの、だから…いいかな?」 今度は騎上位かよ!心の中で突っ込みをいれる。 「分かったよ、お前の好きにしろ。」 ハルヒは嬉しそうに俺の上に乗りジョンを掴んで再挿入を行なう。 「あん、あん、これも気持ちいいよ。やっぱりキョンとあたしは最高のパートナーね!」 俺はハルヒの胸を揉み解す。なんか俺が犯されている感じだなこれは、しかし騎上位というのは精子を出す時難しいな。いったん退けなければいけないからな そう思いながら下を確認すると結合部から出血があった。これは純潔を破った証拠なんだな… ハルヒの動きが激しさを増す。これ以上は勘弁してくれ 「おい!やばいって出そうだ。聞いているのか?」 「うん…あん…キョンキョンキョーン何で…何か来そう」 まったく聞いちゃいない!このままでは俺はやばい事になる。射精感が限界に近い 「頼むよ…ハルヒ出そうなんだ。妊娠したくないだろ!おーい」 「ちょっと待ってよキョン!もう少しもう少しで何かが来そうなの」 「な、何?キョン中でプクッとしているわ!先端が大きくなっているじゃないの!」 更にジョンを締め上げていく。ダメだ…俺は耐え切れず。そして… くう…俺はメルトダウンしてしまった。やはり騎上位はやるのではなかった。 中で精子がハルヒに吸い取られる。 「ちょっとキョン!中に何を出したの!」 「スペルマ、ザーメン、子種、精子と言われるものだが」 まあ受精すれば子供が出来る。男と女の交わりで作る。なんて神秘的なんだろな 「妊娠しちゃうじゃないの!馬鹿キョン!あんたわかってんの?」 お前が話を聞かず騎上位で退かないのが悪い!と言いたいが…言ったら閉鎖空間どころじゃないからな 万が一子供が出来たら俺が責任とる。俺だって男だからな、その位頼りにしてくれよ。 「ハルヒ、もしもだ。出来たら一緒に育てよう。俺達の子供だ、ここで赤ちゃんを流す事は考えていないぞ。親の都合で命を奪うなんて俺はしたくない」 俺って格好いいな!ハルヒは涙を流している。 「グスッ…キョン。ありがと…出来たらあたし生むから」 俺はハルヒを抱き締めキスをする。やっぱりこいつを一生大事にしないとな…そして 突然ドアが開いた。 ガラッ 「遅れてしゅみましぇーん」 「………」 部室内が異様な雰囲気となっている。朝比奈さんは目をあさっての方向に向けながら 「あ、あ、あのう、これはお楽しみのところすみましぇーん」 朝比奈さんは真っ赤なになりながらパタパタしている「本当に知らなかったのです。ま、まさか涼宮さんとキョン君が禁止事項をしているなんて」 さっきから朝比奈さんが俺のジョンを熱い眼差しで観察されていますが… あーダメですよ。いくら手で目を隠そうとも隙間から見ているのがバレバレです 「ひゃっ!……す、すいません…ごゆっくりぃ;;」 いったい朝比奈さんは何をしに来たのか…まあ団活だが… とりあえずハルヒさん服着たほうがいいんじゃないか? 「キョンもう一度する?どうせ一回も二回も同じなんだしさ」 もう一度やるのか?確かに朝比奈さんに見られて興奮しジョンも起きたままだから…つーか我ながら凄いな 「じゃあ一応鍵かけておくか?誰にも邪魔されないようにな。」 俺は扉に鍵を閉めハルヒと再び向かい合う 「一応騎上位は止めような。出すとき不便だし…結婚したら何回でもやってやるからさ」 「うん!約束よ。キョン、忘れたらどんな手を使っても思い出させるからね」 どびっきりの笑顔で俺を迎える未来の俺の妻 もう既に俺の将来も決まっていたのかね。退屈するより遥かにマシだ だからこそハルヒが必要なんだろうな。重なり合いながら今後の事を考えていた。 一応完
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元気いっぱい荒野行動配信 タグ一覧 その他 企画 単発 完結 荒野行動 鈴木けんぞう 目次 概要 概要 生放送配信日 動画公開日 作品数 1 コメント すべてのコメントを見る